関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

台所見聞録-人と暮らしの万華鏡- 【LIXILギャラリー】

今日も写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、すぐ近くのLIXILギャラリーで「台所見聞録-人と暮らしの万華鏡-」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 台所見聞録-人と暮らしの万華鏡-

【公式サイト】
 https://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1903/

【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)

【会期】2019年6月6日(木)~8月24日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は台所をテーマにしたもので、その歴史や風土による違いなどを紹介する内容となっています。建築家の宮崎玲子 氏の調査によると、北緯40度を境にして南北で火と水の使い方に特徴があるそうで、寒い北では部屋の中央に火を置く生活、熱い南では火を遠ざけるような造りとなっているようです。また、北は細菌の繁殖が少なく 土も乾燥して落ちやすいので水の使用量は少なくて済むのに対して、南は調理に水を必要とし洗う頻度も高いので 水を多く必要とするようです。この展示ではそうした様々な台所を模型や絵などで解説していましたので、詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。

こちらは会場の様子。
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手前は世界の家の模型が置かれていて、仕切りの奥は主に日本の台所の近代史となっていました。まずは世界の台所から観ていきました。

こちらはドイツのフランケン地方の家の模型です。小作人向けの家で20世紀初頭頃までは見られた家のようです。
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寒い地方なので火を使う台所も家の中心に置かれています。

奥の部屋はこんな感じ。
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クッキングストーブによって隣の部屋も暖められ、煙は煙突から排出されるようです。確かに火を使うのを前提として家を設計しているのが分かりますね。

こちらはロシアのカレリア地方の労働者の家の模型。
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ペーチカと呼ばれる暖炉で部屋全体を温めるそうで、隣の家と二分して使っているようです。左端にあるのがそうかな? 台所に流しがない場合もあるそうで、水は汲み置きを使うのだとか。水がすぐに凍ってしまう極寒の地ならではの生活スタイルと言えそうでした。

この近くにはエスキモーの家なんかもありました。

壁には模型が無い様式のパネルなどもありました。こちらはイタリアのアルベルベッロ
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犬山のリトルワールドで観た覚えがあります。今はガスで火を使っているのだとか。
 参考記事:【番外編】野外民族博物館 リトルワールドの写真 後編(2013年12月)

こちらは日本の武蔵野の農家。
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日本は囲炉裏に鍋を釣って調理する習慣が広がりましたが、南の地域ではかまどが使われたようです。こちらは囲炉裏とかまどが併設されています。やはり日本の中でも暑さ・寒さでスタイルが違うようですね。

こちらはインドのタミル地方の商人の家。
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インドでは台所は神聖な神様の住まいで、履物を脱いで裸足で入るそうです。暑いので火の制御に神経を使うのだとか。

続いて近代日本の台所の歴史のコーナーです。

こちらは明治13年の『くりやのこころへ』
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ここで注目なのは、調理を床の上で行っていることです。魚も床に近い所にあるし、衛生面が気になる所です。

明治後期以降に立って調理するスタイルになっていったようで、台所の近代化は「立働式」「衛生」「利便」の3つの理念があったようです。

こちらは『増補注釈 食道楽』春の巻という明治38年の小説の挿絵。
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大隈重信の家の台所で、しっかり立って作業しています。イギリスから取り寄せたオーブンなんかもあるようで、流石は権力者のおうちです。

こちらは昭和5年の『新編 家事教科書 上巻』
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日本の台所は広すぎて無駄な動きが多かったと解説しているようです。確かにさっきの明治の頃の様子を観ると、昔はリビングの真ん中で家事するのと変わらないようなw 徐々に今のスタイルに近づいてきています。

こちらは『婦人之友』の昭和23年10月号
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収まりが良くて機能的な構成になっているように思えます。この頃になるとだいぶ効率化されている感じがします。

こちらは立って調理するに当たって、人間の稼働を考えた上で設計する人間工学を示したもの
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日本の平均的な女性の身長を元に作るという発想は非常に近代的かつ利便性を感じさせます。

こちらは台所の素材に関するコーナー。
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明るく清潔な状態、耐水性・耐火性、美的な印象などを求めて新しい材料が採用されていった歴史があるようです。ステンレスはちょっと安っぽい見た目に思えますが、錆びにくいし耐久性は高いですね。

最後に建築家による台所の設計のコーナーがありました。

こちらはル・コルビュジエの集合住宅であるユニテ・ダビタシオンの台所。
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台所と居間を一続きの部屋としているらしいので、かなり現代に近いデザインかも。ユニテは色々と先進的で流石は世界遺産です。
 参考記事:ル・コルビュジエ 「ラ・シテ・ラディユーズ(ユニテ・ダビタシオン)」 【南仏編 マルセイユ】

こちらはル・コルビュジエの弟子のである前川國男の自邸
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今は たてもの園にありますが、台所は入った記憶がない…w 白くコンパクトにまとまっている点がル・コルビュジエと共通するのだとか。
 参考記事:江戸東京たてもの園 の写真 その1 (江戸東京たてもの園)

他にもミース・ファン・デル・ローエやフランク・ロイド・ライトなど名だたる建築家の設計も紹介されていました。


ということで、様々な台所にまつわる事柄を知ることができました。気候や宗教と相まって進化した各地の台所や、合理化していく過程なども観ることが出来て予想以上に面白かったです。ここは無料で観ることができますので、京橋~銀座付近に行く機会があったら気軽に覗いてみるとよろしいかと思います。




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Ryu Itadani「ENJOY the VIEW」 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

今日は写真多めです。先週の日曜日に銀座でギャラリーめぐりをした際、ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEXでRyu Itadani「ENJOY the VIEW」を観てきました。この展示は撮影可能でしたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 Ryu Itadani「ENJOY the VIEW」

【公式サイト】
 https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅・京橋駅

【会期】2019年6月7日(金)~6月30日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんは多かったですが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は2010年にポーラ美術振興財団・在外研修員に選ばれ、現在は国内外で活躍する板谷龍一郎(いただに りゅういちろう)氏の個展となっています。板谷龍一郎 氏は街や植物、愛用の文房具など身の回りのものをアクリルで色鮮やかに描いている方のようで、近年では青山のIntersect By Lexusなどに作品提供を行ったりもしているようです。この展示でも独特の画風の作品が並んでいましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。

板谷龍一郎 「Wasser Taxi」
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こちらは水上タクシーを描いたもの。非常に濃厚な色面と輪郭を使って鮮やかな画風となっています。やや素朴な雰囲気もありつつ、どこかワクワクするような気持ちが伝わってくるような楽しげな絵に見えました。

板谷龍一郎 「Cabo da Roca(02)」
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こちらはポルトガルのロカ岬を描いた作品。3枚連続で1つの光景となっています。うねるような色面の組み合わせがリズミカルで、流れを感じさせるかな。

こちらは先程の作品のつなぎ目のアップ。
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板谷龍一郎 氏はキャンバスの側面にまで彩色されているようで、横から見ると立体的な感じもありました。

板谷龍一郎 「Tokyo2018」
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こちらは東京を描いた作品。東京タワーや六本木あたりのビルが見える公園なので有栖川宮記念公園あたりでしょうか? 木々やビルの色が多彩ですが、調和も感じられるように思います。フリーハンドで描いたような味わいがあって無機質なモチーフでもどこか温かみを感じました。

他にも名所などを描いた作品がいくつかありました。

板谷龍一郎 「On The Table」
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こちらは静物画。ここまで観てきた絵に共通するのですが、割と表面が盛り上がっていて色面の中にも凹凸のあるマチエールとなっています。この絵ではそれが紫陽花の花によく合った表現のように思えました。

この辺には文房具をモチーフにした小品が並んでいました。
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モチーフの選び方がウォーホルのキャンベル・スープ缶みたいな感じw

板谷龍一郎 「GOLDEN FLUID ACRYLICS」
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こちらはアクリル絵の具を描いています。これを使って作品を描いているのかも?? よく観ると微妙に角度を変えて描いているようです。手描きの感じに味わいがありますね。

板谷龍一郎 「Zoo」
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青空を見上げるペンギン。物思いに耽っているのか、背中が若干寂しげに見えるかな。左上の塊は何か分からずちょっと気になるw

板谷龍一郎 「Tsuta(012)」「Rose #06」「Monstera」「Tulip」
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こちらは植物を描いたキューブ状の作品。

横から観るとこんな感じで、側面にも絵が描かれています。
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画風は平面的だけど、全体的には立体的になっているのが面白い発想です。

何と下にも絵が繋がっていますw もちろん、上にも描かれていました。
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下から観る人なんて滅多にいないと思いますが、もし実際に観る機会があったら覗いて観てくださいw

他にも草花を描いた小品がいくつかありました。
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いずれも鮮やかな色彩と相まって華やかな雰囲気でした。


ということで、独特のアクリル画を堪能することができました。解説などが無いので実際の制作意図などは分からないですが、画風だけでも楽しめる画家ではないかと思います。今後も活躍が期待される方ですので、気になる方はこの機会に是非どうぞ。ここは無料なので気軽に観ることができます。

おまけ:
ビルの1Fにも作品がありました。
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Cafe and ... 【土呂界隈のお店】

前々回、前回とご紹介した さいたま市大宮盆栽美術館に行った後、すぐ近くにあるCafe and ... というお店でお茶してきました。

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【店名】
 Cafe and ...

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 https://www.facebook.com/cafeand275/
 https://twitter.com/cafe_cafeand
 食べログ:なし
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 土呂駅

【近くの美術館】
 さいたま市大宮盆栽美術館

【この日にかかった1人の費用】
 700~800円程度

【味】
 不味_1_2_③_4_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_③_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_③_4_5_名店

【感想】
空いていてゆっくりとお茶することができました。

こちらは さいたま市大宮盆栽美術館から土呂駅に向かう方向に50mくらい歩いた所にあるお店で、一見すると普通のアパートみたいな感じですが、1階部分がカフェとなっています。そこはかとなく香る昭和感が気になって入ってみましたw

お店の中はこんな感じ。
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中も普通のご家庭みたいな見た目ですが、椅子などは洒落ていました。軽快な音楽が流れて落ち着いた雰囲気です。

この日はかぼちゃのプリンとコーヒーのセットを頼みました。うろ覚えですが700~800円くらいだったと思います。
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まず かぼちゃのプリンは意外と硬めで、繊維までしっかり入ってカボチャの風味が強めでした。味は甘過ぎず軽やかで美味しかったです。コーヒーはコクがあってまろやかな感じかな。苦味はなく若干の酸味で飲みやすい感じでした。


ということで、落ち着いてお茶することができました。盆栽美術館には併設カフェがなく駅までもちょっと距離があるので、美術館のすぐ近くにあるこのお店は便利な所にあると思います。飲み物メニューの種類も結構あるので盆栽美術館に行く際に寄ってみるのもよろしいかと思います。



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〈盆栽〉の物語~盆栽のたどった歴史 【さいたま市大宮盆栽美術館】

前回ご紹介した さいたま市大宮盆栽美術館の常設を観た後、企画展「〈盆栽〉の物語~盆栽のたどった歴史」を観てきました。

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【展覧名】
 企画展〈盆栽〉の物語~盆栽のたどった歴史

【公式サイト】
 http://www.bonsai-art-museum.jp/ja/exhibition/exhibition-4156/

【会場】さいたま市大宮盆栽美術館
【最寄】土呂駅

【会期】2019年5月18日(土)~7月3日(水)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は盆栽美術館の企画室で行われているもので、パネルを使って盆栽の歴史を紹介する内容となっています。浮世絵もいくつかあるものの基本的にはパネルのみなので作品充実度は低めにしましたが、知られざる盆栽の歴史を分かりやすく紹介していました。素人でもその成り立ちを理解できるようになっていましたので、簡単にその様子をご紹介していこうと思います。


まず「盆栽」という言葉自体は200年くらい前から使い始めたそうで、意外と歴史が浅い感じがします。しかし、鉢植えに植えて愛でるという文化は古代からあったようで、その始まりは1300年前(8世紀)の中国の壁画にまで遡るようです。この時代の李賢という王子の為の墓の内部に、浅い鉢に入った植物と石のような塊が描かれているようで、何と呼ばれていたか定かではないものの鉢に植物を入れて愛でる習慣があったことが確認できるようです。隣にはその絵のパネル(今回のポスターの絵)があり、聖徳太子のような格好で盆栽を両手に持って立つ人物が描かれていました。まあ日本の文化の雛形は大体は中国から来ているのでこれは予想通りかな。

次に日本における最も古い盆栽についてですが、700年程前(14世紀)の鎌倉時代の「春日権現験記」の中に描かれているのが確認できるようです。(この写真はロビーの映像を撮ったものです)
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屋敷の軒先に砂を敷き詰めて樹木を植えた石付き盆栽の形式で描かれているそうで、その絵のコピーも展示されています。巻物を寝転んで観ている2人女性が描かれた長閑なシーンに確かに盆栽らしきものが描かれています。他にも鳥小屋とかもあって、裕福な屋敷の趣味の1つといった感じでした。

その後、500年前(16世紀)になると屏風絵などに盆栽が描かれていて、当時の辞書やイエズス会の日本辞書には盆山(ぼんさん)という名前となっているようです。見た目は完全に今の盆栽と同じように見えるので、この頃には既に形式的には現在と似たものになっていたのかもしれません。さらに桃山時代には能の演目「鉢木」が登場し、多くの絵や絵本、江戸時代には浮世絵として取り上げられるようになったそうです。この話は現在の佐野の佐野源左衛門常世が雪の夜に 旅の僧に一夜の宿を与えた内容で、その際に薪木も無い状態だったので せめてもの もてなしで愛蔵の梅・松・桜の鉢植えを切って薪として火にくべました。その後、 佐野源左衛門が いざ鎌倉の号令に従い馳せ参じた際、大将の北条時頼が実は自分が雪の晩の僧であったと明かし、恩賞を与えたというストーリーとなっていました。何処まで史実か私には分かりませんが、盆栽が価値のあるものという認識があってこその話だと思うので、桃山時代の頃にはそういう認識だったのかもしれませんね。近くにはそれを題材にした小林清親の作品なども展示してありました。

江戸時代に入ると大名庭園に盆栽が姿を表すようになり、徳川家にとって松は特別な意味がありました。一方、江戸時代後期には庶民にも鉢植えの愛好が広がり当時の浮世絵にもそれが描かれ、庶民も盆栽を愛でて四季の移ろいを身近に感じていたようです。ここには歌川国貞や歌川豊国の浮世絵なども展示されていて、盆栽や鉢植えと共に美人が描いてあるのが多かったかな。座敷に飾ってあったりして生活に溶け込んでいる感じがします。
また、江戸時代の「草木育種」という本に「盆栽」の記述があるようですが、ここでは「はちうへ」とわざわざルビが振られているので、読み方はまだ「ぼんさい」ではなかったと考えられるようです。

さらに江戸時代には中国文化に憧れた文人が茶の湯の席で座敷飾りに盆栽を使ったようで、茶器と同じ土で焼かれた鉢は現在に続く盆栽の鉢の典型となったようです。こうした茶会の出品目録に盆栽の文字が記されるようになっていったのだとか。

明治時代になると日清戦争の影響で煎茶の文化は退潮していきますが、政財界の盆栽愛好家が盆栽の担い手となっていったようです。中でも大隈重信はその代表格で屋敷の中に無数に盆栽が飾られている写真が展示されていました。他にも夏目漱石や正岡子規なども愛好していたようで、夏目漱石の『虞美人草』に盆栽の話が出てくると紹介されていました。
また、この時代は万国博覧会が盛んに行われていた頃で、1873年のウィーン万国博覧会や1878年の第3回パリ万国博覧会などで日本庭園が作られ、そこに盆栽も飾られました。1889年の第4回パリ万国博覧会でも盆栽は注目を集めたようで、当時の写真や目録、版画などを展示していました。この頃はジャポニスム全盛期なので盆栽もその一端を担った様子が伝わってきました。
また、明治時代には国内においても盆栽は女性の教養の1つとして奨励されていたようで、それも絵や写真と共に紹介されていました。お爺さんの趣味のイメージがあるので女性とは意外ですね。生花は女性のイメージですが。

昭和の1930年代頃になると、盆栽研究家の小林憲雄によって盆栽芸術運動が展開され、美術館での展覧会を求めたようです。その結果、現在の東京都美術館を会場に1934年には国風盆栽展が開催されることとなり、この展示は現在にまで毎年開催されています。これは盆栽が芸術として認識されたことを象徴する出来事と言えるかもしれません。ここには当時の会場の写真などが展示されていました。

その後は大宮の盆栽村の誕生について紹介されていました。関東大震災の後に盆栽業者が移住してきて盛んになった訳ですが、戦時中は贅沢品とみなされて影響を受けたようです。しかし戦後は盆栽界も復興を遂げ、東京オリンピックや大阪万博には盆栽村からの出品もあったようです。ここには吉田茂や佐藤栄作、西ドイツの大統領が盆栽村を訪れた写真などが並んでいて、政界や海外からも注目されていたことが伺えました。

最後に盆栽の国際化について紹介されていました。1980年に「世界盆栽水石展」が大阪で開かれ、諸外国の盆栽指導者に呼びかけて「世界盆栽会議」が開かれたそうです。この会議は今でも続いているそうで、1989年に大宮で開催された時の写真なども展示されていました。本当に日本より外国の方が盆栽に熱心だったりしますね。


ということで、盆栽の歴史を知ることができました。全く知らない世界でしたがこれを観ることで流れが分かったように思います。ここは予想以上に面白いところですので、ご興味ある方は是非どうぞ。


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【さいたま市大宮盆栽美術館】の案内

今日は写真多めです。先週の土曜日に埼玉県の土呂(大宮の隣の駅)にある さいたま市大宮盆栽美術館に行ってきました。一部で撮影可能となっていましたので写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【公式サイト】
 http://www.bonsai-art-museum.jp/ja/

【会場】さいたま市大宮盆栽美術館
【最寄】土呂駅

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この美術館は盆栽をテーマにした展示を行っていて、常設だけでなく企画展も行われ盆栽に関する様々な事柄を紹介しています。この美術館のある一帯は盆栽町という名前で盆栽が盛んな地域で、関東大震災の後に多くの盆栽職人が移り住んできたことで盆栽の街になったようです。盆栽というと年寄りの趣味というイメージがありますが、むしろ海外で高い評価を得ているようで この日も多くの外国人観光客が訪れていました。むしろ聞こえてくる会話の半分以上は英語だったような…w 常設では一部が撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います

この美術館にはブログ休止中にも訪れたことがあるのですが、季節によって展示内容も変わるところがあるようです。
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今回はさつきの盆栽の展示がありました。(2019年6月16日まで) ロビーのこの作品だけ撮影可能でしたが他にもいくつか常設内にあって、見事な花を咲かせていました。

こちらもロビーから観た光景。
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この写真で見えている場所では撮影できないですが、見事な盆栽ばかりです。

こちらは2回のテラスから撮った光景。
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それほど広くはないものの、多くの盆栽が展示されています。奥にあるのは企画展の部屋です。

常設に入ると、盆栽の見方についての解説がありました。私は盆栽について全くの無知なのでこれは中々嬉しい解説です。盆栽に関しては祖父の盆栽の松の葉っぱをむしって怒られた記憶しか無いので…w

まず盆栽は正面と裏があるようです。盆栽家は見所を見極めて正面に鉢を植えるので、正面が最も見栄えするようです。また、盆栽は下から見上げるように観るのもポイントらしく、盆栽は大樹の姿を凝縮しているので下から見ると大樹の威容を感じられるそうです。
続いて、根の張り具合(根張り)も見所で、あらゆる方向に根を張る「八方根張」が理想とされるようです。また、もみじ等は甲羅状に広がる「盤根」という根張りが良いらしく、写真付きで解説していました。
次に幹は「立ち上がり」という根本から最初の枝までの部分が重要らしく、そこから上に向かって伸び広がることで大木のような迫力を生むそうです。一方、枝は「枝ぶり」といってバランス良く見苦しい「忌み枝」が無いのが良いとされるようです。また、そこから伸びる葉っぱについても同じ品種でも個性があるとのことでした。後の方に盆栽の形の整え方の解説もあるのですが、針金などで整えているようで相当に手間がかかるようです。私が葉っぱを引っこ抜いて怒られたのも当然ですねw
他にも「ジン(神)」と「シャリ(舎利)」という木肌についての解説もありました。これは後ほど写真でご紹介しますが、幹や枝の一部が枯れたもので、松の真柏は白い肌を見せることがあるようです。それがコントラストを生むようで枝先の枯れをジン、幹の枯れをシャリと呼ぶのだとか。

盆栽の見方の後には盆栽村の歴史が紹介されていました。先述の通り関東大震災の後に団子坂の盆栽業者が移ってきたことなどが書かれています。そして、その後には3つの和室があり、真・行・草の格式それぞれの飾り方を示していました。やはり真が一番格式が高く感じられるかな。何となく盆栽にも格式に応じたものがあることが分かります。(ここは撮影禁止。外国人は撮りまくってましたがw)

その後は庭にある盆栽を見ていくことになります。この一角は撮影可能です。
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割と近づいて観られるので先程学んだ見方を早速実践することができますw

「黒松」 (推定樹齢120年)
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非常に立派な松で、こんもりして整った枝ぶりでした。それほど大きくないのに威厳が半端ないw

下から見るとこんな感じ。
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背景次第では大木の写真に見えるのではないでしょうか。まさに大樹を感じさせますね。

「真柏」 (推定樹齢350年)
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こちらは先程の「シャリ」の肌となっていました。白くなって何だか神々しい。白に緑が映えます。

「五葉松」 (推定樹齢120年)
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こちらはもはや松林!w 大きさ以上に大きく見えるのが何とも不思議です。枝や幹の伸び方も勢いを感じさせました。

盆栽というと松のイメージですが、他にも色々ありました。

「山もみじ [紅陵]」 (推定樹齢120年)
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こちらはもみじ。やはり大木みたいな形をしています。根張が甲羅状というのも何となく分かるかな? うねっていて迫力ありました。

「五葉松 [舞子]」 (推定樹齢350年)
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こちらは横に広がった感じの松。樹齢は350年ということで江戸時代から作られてきたとは恐れ入りますね…。

「花梨」 (推定樹齢150年)
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こちらは花梨。花梨の盆栽なんてあるのかという感じですが、幹や整った枝ぶりなんかは松とは味わいがありました。

「真柏 [寿雲]」 (推定樹齢800年)
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こちらは何と樹齢800年! 800年かけて作り上げる芸術品なんて他にあるのでしょうか?? シャリが渦巻いていて何ともダイナミックで、圧巻の作品でした。

「津山檜」 (推定樹齢70年)
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こちらは檜。段々になっている枝葉の重なり具合が重厚感ありました。檜の盆栽なんてあるんですね。

「いちょう」 (推定樹齢50年)
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円形になったいちょう。これはちょっと可愛らしい印象を受けました。


この後、先程ロビーから見えていた撮影禁止エリアの盆栽も観てきました。松だけでなく楓や欅、杉などもありました。松もシャリの作品が結構あって見応えあります。


ということで、盆栽に関して全く無知な私でも見方を知って楽しむことができました。色々な角度で観たり もっと知見を身につけると一層楽しいのだろうと思います。盆栽は外国からも注目されている日本の伝統ですので、一度は訪れておきたい美術館ではないでしょうか。色々と発見がある所でした。

おまけ;
美術館の裏手では盆栽の販売も行っているようでした。
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私はレモングラスとコスモスを育てているので精一杯なので買いませんでしたが、いつかはやってみようかな?w


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Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
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■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
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■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

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美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
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このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
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