関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

「六本木アートナイト2018」の予告

日付が変わって本日となりましたが、今年も毎年恒例の六本木アートナイトが今週の土日に行われます。記事にする頃にはとっくに終わっているので、先に概要だけご紹介しておこうと思います

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【展覧名】
 六本木アートナイト2018

【公式サイト】
 http://www.roppongiartnight.com/2018/

【会場】
 六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、 21_21 DESIGN SIGHT、
 国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース

【最寄】
 千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅

【会期】
  2018年5月26日(土)10:00 ~ 5月27日(日)18:00
  コアタイム 5月26日(土)18:00 ~ 5月27日(日)6:00

このイベントは六本木の街全体が現代アートの展示場のようになる一種のお祭りで、街のあちこちにインスタレーションが置かれたり、パフォーマンスがあったりします(毎年内容は変わります) 昨年は9月末に開催されたので、もうやるのかという感じですが 最初からこの時期にやってれば良かったのでは?と思えるベストシーズンだと思います。ちょっと今年は にわか雨が降るかもという予報ですが、それさえ無ければ暑くもなく寒くもない丁度いいコンディションになりそうです。

前回は蜷川実花 氏がメインプログラム・アーティストを務めて近年の中では盛り上がりを見せましたが、今回は「街はアートの夢を見る」をテーマに金氏徹平 氏、鬼頭健吾 氏、宇治野宗輝 氏という3名のアーティストが主要なメンバーとして挙げられています。私としては宇治野宗輝 氏に注目していて、この方は昨年のヨコハマトリエンナーレ2017や森美術館のMOMコレクションなどでも活躍されていました。今回も既存製品を使った大掛かりなインスタレーションが観られるのではないかと思います。
 参考記事:
  MOMコレクション005 リサイクル&ビルド(森美術館)
  ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス (横浜赤レンガ倉庫1号館)

また、「DUNDU(ドゥンドゥ)光の巨人」というドイツのパペットシアターも今回の目玉と思われ、下記の時間帯に現れるようです
 ①18:45頃~ 六本木ヒルズアリーナ他
 ②20:30頃~ 国立新美術館 屋外エリア
 ③22:00頃~ 東京ミッドタウン プラザ1階
こちらは是非観ておきたいので、その時間に観に行こうと考えています。

ちょっとフライングですが、金曜の夜に森美術館に行った際に設営している様子を撮ってきました。
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こちらはオープニングを行う会場の設営の様子。準備万端ですね

何やらロボット的なものがいました。
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今回はパペットもいるしロボットが活躍するのかな?

毛利庭園の池には灯篭流しみたいなのがありました。
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綺麗でお祭り気分を盛り上げてくれそうです。

ということで、今年も夕方から3時間くらいは楽しんでこようと思います。昨年も沢山写真を撮ってきたものの会期の迫ったネタが多すぎてアートナイトの様子をご紹介しそびれましたが、今年は記事化するつもりです(多分) 割と年によって当たり外れがあるので観るまではどれくらい盛り上がるか分かりませんが、現代アート好きの方はチェックしてみてください。

 参考記事:
  「六本木アートナイト2012」と「アートフェア東京2012」の予告
  「六本木アートナイト2013」と「アートフェア東京2012」の予告
  「六本木アートナイト2014」の予告
  「六本木アートナイト2017」の予告

 「写真で旅する世界遺産」と「六本木アートナイト」と桜装飾 (2009年)
  六本木アートナイト2010 (前編)
  六本木アートナイト2010 (後編)
  六本木アートナイト2012 (前編)
  六本木アートナイト2012 (後編)
  六本木アートナイト2013 (前編)
  六本木アートナイト2013 (後編)
  六本木アートナイト2014 (前編)
  六本木アートナイト2014 (後編)
   ※2011年は東日本大震災で中止。2015、2016年はブログ休止中


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【東京国立近代美術館】の案内 (2018年05月)

今回は写真多めです。前々回・前回とご紹介した東京国立近代美術館の展示を観た後、本館所蔵品ギャラリーで常設作品も観てきました。ここの常設は期間が設けられているので、まずは概要についてです。

【展覧名】
 所蔵作品展 MOMAT コレクション

【公式サイト】
 http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20171114/

【会場】
  東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー

【最寄】
  東京メトロ東西線 竹橋駅

【会期】2017年11月14日~2018年5月27日
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【感想】
12月に訪れた時と同じ会期内のはずですが、だいぶ内容が変わっていました。今回も4階から下っていくルートで、気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。

 ※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れますが、撮影禁止の作品もあります。
 ※当サイトからの転載は画像・文章ともに一切禁止させていただいております。

参考記事:
 東京国立近代美術館の案内 (2017年12月前編)
 東京国立近代美術館の案内 (2017年12月後編)
 東京国立近代美術館の案内 (2017年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2014年01月)
 東京国立近代美術館の案内 (2013年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2013年03月)
 東京国立近代美術館の案内 (2012年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2011年06月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年05月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年04月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)

船田玉樹 「花の夕」
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非常に華やかな色彩が目を引いた作品。ピンクの円を叩きつけるように描いているのも面白い表現でした。

川合玉堂 「行く春」
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こちらは長瀞の光景を描いた作品です。桜の華やいだ雰囲気と 川を行く船の詩情が好み。奥行きを感じる表現となっているようでした。

菊池芳文 「小雨ふる吉野」
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こちらも桜をテーマにした作品。遥か遠くまで桜が続いている様子が霞んだように表現されていました。小雨という割には結構な雨かも。

中村不折 「廓然無聖」
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「廓然無聖」とは聖と俗の区別がない悟りの境地のことだそうで、達磨が武帝にそのように答えたシーンが描かれています。しかしこれを観た瞬間にキリスト教の作品かと思いました。フランスで学んだ成果が出ているようです。

中川八郎 「杏花の村」
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こちらも花をテーマにした作品。明るい色彩で長閑で清々しい光景となっています。

織田一磨 「東京風景より 上野廣小路」
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こちらは関東大震災の前の上野の風景。情感溢れる描写のおかげかもしれませんが、かつてはこんなお洒落な街だったんですね。

織田一磨の「東京風景」は他にも数点あっていずれも叙情的で好みでした。

伊東深水 「夜の池之端」
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こちらも上野の不忍池の近くの池之端の光景。関東大震災前まではここに花柳界があったそうで、三味線を持っている人影がそれっぽいかな。夕暮れの雰囲気がよく出ています。

この辺には川瀬巴水の作品もありました。関東大震災前の東京は美しい街だったんですね…。その後には関東大震災直後の光景を描いた作品が並んでいました。

長谷川利行 「タンク街道」
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こちらは千住にあったガスタンク。長谷川利行は粗めのタッチでモダンな建物をよく描いているのが魅力です。最近、府中市美術館で個展をやっているので観に行きたいと考えています。
 参考リンク:長谷川利行展 七色の東京

藤牧義夫 「橋」
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若くして消息不明となった版画家による作品。素朴なようで力強い独特の作風が目を引きました。4年くらいしか活動期間がないようですが、個展を観てみたい。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「'ディナモ'スポーツ・クラブ」
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ロシア構成主義の芸術家の作品。画家だけでなく写真家としても活動していて、面白い構図の作品を残しています。この作品でも幾何学模様のような人の流れを撮っていて、写真なのにロトチェンコっぽさを感じました。
 参考記事:ロトチェンコ+ステパーノワーロシア構成主義のまなざし (東京都庭園美術館)

この近くには国吉康雄やパウル・クレーなどもありました。

古賀春江 「月花」
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童話のような温かみを感じる作品ですが、パウル・クレーからの影響も見て取れる作品。シュルレアリスムの印象が強い画家ですが、結構色々と画風を描いていたのが伺えます。

猪熊弦一郎 「○○方面鉄道建設」
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恐らく泰緬鉄道の敷設の様子が描かれた作品。抽象画や伸びやかな作品を多く残した いのくまさん ですが、戦争中は従軍画家として戦地に赴き、こうした写実的な作品も描いていました。
 参考記事:猪熊弦一郎展 猫たち (Bunkamura ザ・ミュージアム)

山下菊二 「植民地工場」
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共産党員でもあった画家で、工場労働者の過酷さをシュルレアリスム風に描いているようです。タイトルも批判的な感じですね。この人の作品は不穏な作風が多い気がします。

海老原喜之助 「殉教者」
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元々、副題に「サン・セバスチャン」とあったらしいので、矢で射られて殉教した聖セバスティアヌスのことだと思われます。荒々しくキュビスム風かつプリミティブな印象を受ける作風でインパクトがありました。戦争の犠牲者への鎮魂も込められているのだとか。

麻生三郎 「仰向けの人」
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どう観ても抽象画で、どこが人やねん!とツッコみたくなりますが… よーーーく観るといますね。シミのような人影が。ちょっと不穏な雰囲気の作品です。

難波田龍起 「昇天」
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いくつもの人の輪郭のようなものが魂の昇天のように揺らめいて見えました。静かな雰囲気だけど所どころの赤や くすんだ色合いが独特の雰囲気です。

今回は池袋モンパルナス関連の画家が結構多かった気がします。
 参考記事:東京⇆沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村 (板橋区立美術館)

続いて日本画のコーナー。

小倉遊亀 「O夫人坐像」
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小倉遊亀の肖像は人柄が伝わってくるような表情が素晴らしいと思います。姿勢を正して礼儀正しく賢そうな奥さんですね。日本画なのに洋画のような軽やかさがあるのも好み。

安田靫彦 「大観先生像」
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今回の横山大観展に合わせて大観の肖像がありました。これだとちょっと神経質そうにも観えますが、美術に対しては厳しい人なのでそれが出ているのかな。

平櫛田中 「鶴氅」
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こちらは平櫛田中や横山大観らが敬愛してやまなかった岡倉天心をモデルにした像。遠目からでも岡倉天心と分かるくらい写真とそっくりの風貌で、流石は平櫛田中ですね。

安田靫彦 「居醒泉」
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こちらはヤマトタケルが伊吹山の神に襲われて倒れた後、居醒泉を飲んで蘇生したシーン。一見すると昼寝しているみたいですがよく観ると薄っすらと目を開けています。手に力を感じないものの、その先に居醒泉の水があるようです。せっかく蘇生しても病身となって死んでしまうようですが…

下村観山 「木の間の秋」
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横山大観の盟友でもある下村観山の作品もありました。琳派を意識して描いたようですが、西洋的な写実性も合わせもっているようです。陰影が不思議な感じで独特の表現となっています。

今回、2階の展示は割愛します。残念ながら今回はスケジュールの関係で工芸館にも行けませんでした。


ということで、今回の常設も楽しんできました。今回は横山大観展にちなんだ作品なんかもあって、余韻を感じることもできるんじゃないかな。他にも素晴らしい作品が多く展示されていますので、横山大観展に行かれる方は常設も覗いてみるとよろしいかと思います。




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生誕150年 横山大観展 (感想後編)【東京国立近代美術館】

前回に引き続き東京国立近代美術館の「生誕150年 横山大観展」 についてです。前半は第1会場の1~2章についてご紹介しましたが、今日は残りの3章についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

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【展覧名】
 生誕150年 横山大観展

【公式サイト】
 http://taikan2018.exhn.jp/
 http://www.momat.go.jp/am/exhibition/yokoyama-taikan/

【会場】東京国立近代美術館
【最寄】竹橋駅

【会期】2018年4月13日(金)~2018年5月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前半も混んでいましたが、後半の第二会場の「生々流転」は特に混んでいました。多分ここで列に並ぶと結構な時間がかかりそうです。


<第3章 「昭和」の大観>
こちらは昭和時代のコーナーで、59歳から最晩年までの作品が並んでいました。大観は大正15年に宮内省から下命されて「朝陽霊峯」を描いて以降、富士の絵を量産していくことになります。戦前、富士は国のシンボルとして考えられていたそうです。 そして絵筆を以て国に報いる「彩管報国」を唱えて、「海に因む十題」「山に因む十題」の売上を陸海軍に献納するなど、国に奉仕する姿勢を見せていたようです。また、昭和5年のローマでのローマ日本美術展では作家総代を務め、「夜桜」を展示し国の花である桜に大和心を世界に向けて発信しました。
 参考記事:大倉コレクションの精華II-近代日本画名品選- (大倉集古館)

戦後になって富士の持つ意味が変わっても大観は富士を描いたそうで、それ以外の題材と共に情趣あふれる作品を残したようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

70 横山大観 「紅葉」 ★公式サイトで観られます
こちらは6曲1双の屏風で、真っ赤に色づいた楓の大木が描かれています。背景には川が流れ、青地に赤が映える非常に華やかな雰囲気です。たらしこみ等が使われ葉っぱや波は様式化されているなど 大和絵や琳派の伝統を感じる一方で、川面にプラチナの箔が使われているなど斬新さも感じられます。右隻には川の上を飛び立つ鶺鴒の姿もあり、動きも感じられました。色彩の強さが絢爛で、伝統と革新が融合した面白い作品です。

この近くには「夜桜」もありました。大倉集古館の展示でよく観る作品ですが、現在建て替えで休館中なの久々に観られました。

73 横山大観 「野の花」 ★公式サイトで観られます
こちらは2曲1双の屏風で、岩の元で正座を崩したような姿勢で休んでいる若い女性が描かれています。黒目の大きな美人で、頭には頬かむりのようなものを被っていて農婦なのかな? 周りには百合や桔梗などが咲き、軽やかな色彩で情感ある野原となっています。草は勢いよく伸びやかで、ちょっと琳派的な雰囲気もあるように思いました。遠くを観るような女性の目がミステリアスで、目線の先に何があるのか気になりました。

78 横山大観 「海に因む十題のうち 海潮四題・秋」
浜辺に押し寄せる波を描いた作品で、遠くには太陽が輝いています。浜辺には鳥が3羽いて、雄大さだけでなく叙情的な光景です。こうした海の景色は日本中で観られるように思いますが、日本の精神性を重ねたのも頷けるような作品でした。

この辺にはこの作品の他にも「海に因む十題」「山に因む十題」からの作品が並んでいました。先述の通りこれらを売って陸海軍に売上を献納したのですが、それは4機の「大観号」という軍用機となりました。当時はこうした行動が世間に好意的に受け止められたようです。富士や海といった日本を象徴するモチーフもこの頃の世相にマッチしていたんでしょうね。

ここで第1会場は終わりで、一旦外に出て次の会場に進みます。


<第2会場>
続いての第2会場は「生々流転」と「生々流転 小下絵画帳」だけが展示されていました。

60 横山大観 「生々流転」 ★公式サイトで観られます
こちらは40mにも及ぶ水墨の巻物で、水が山に降り注ぎ、川を下って海に流れ、また海で雲になっていく「流転」の様子が描かれています。川沿いの野山や家々など延々と水が辿っていく様子は情趣溢れる光景となっていて、描写が細かいのに40mもあることに驚かされます。「片ぼかし」を多用している様子も確認できて恐ろしく手がかかっているんじゃないかな。たまに朦朧体のような表現もあるような…?? 後半の海に至ると4mに及ぶ波だけ描かれた部分があって、嵐の前の静けさといった感じです。そしてクライマックスは水蒸気が上がっていって大きな竜巻のような渦(冒頭のポスターの渦)となり、波と混ざるような表現がダイナミックでした。そしてまた雨となって山へと降り注ぐのが輪廻転生のようで、水の一生を感慨深い気持ちで観ることができました。解説によると、この作品を展覧会に出した初日に関東大震災が起きたそうで、この作品も被災したようですが奇跡的に無事だったみたいです。エピソードまで劇的ですね。以前の展覧会で下絵は観たことがあったので、この機に観られて良かった。
 参考記事:横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い 感想後編(横浜美術館)


<第3会場>
今回は2Fのギャラリー4まで会場が続いていました。最後の第3会場は5点のみで、今回の展覧会のミュージアムショップもこちらにあります。

90 横山大観 「霊峰飛鶴」
青い富士の山頂付近を背に無数の鶴が右から左へと舞い飛ぶ様子が描かれた作品です。背景は黄土色の雲?が富士山のオーラのような感じで描かれていて、富士山の存在感を強めています。非常に日本的なモチーフの取り合わせでドラマチックな印象を受けると共に、富士山の超然とした雰囲気が感じられました。

91 横山大観 「風蕭々兮易水寒」
こちらは再興院展に大観が最後に出品した同名の作品のバリエーションです。(会期によってはそちらも展示されていたようです) 枯れ木の元で川(海?)を観ている犬(馬みたいなw)が描かれたもので、寒々しく寂しい光景となっています。解説によると、これは後に始皇帝となる秦王の政を暗殺しに行った荊軻が詠んだ詩句を題材にしているそうで、その詩には再び帰ることがないという覚悟を詠まれていたようです。寂しい光景なのはそのせいかな。院展に最後に出品されたというのと関連付けて考えると大観自身の心情でもあったのではないかと考えながら観ていました。

89 横山大観 「或る日の太平洋」
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※写真はかなり前に常設展示されていた時に撮影したものです。(今回の展示は撮影不可です)
この章にはこの作品もありました。波濤がダイナミックで力強く、富士山はそれを越える巨大な存在として描かれているように思います。


ということで、後半は見栄えのする大作が中心となっていました。割と観たことがある作品が多かったものの 総じて大観の代表作がずらりと並ぶ素晴らしい展示だと思います。まさに大観の決定版でこれだけ見事な内容は中々無いので図録も購入しました。(大観の交友関係とか苦労時代のエピソード等はざっくりしてたので、大観をあまりご存知ない方にはその辺が伝わらない気はしますが…)
もう会期末で非常に混んでいますので、これから行かれる方は十分に時間を取って行くことをお勧めします。



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生誕150年 横山大観展 (感想前編)【東京国立近代美術館】

10日程前の土曜日に、竹橋の東京国立近代美術館で「生誕150年 横山大観展」を観てきました。非常に濃密な内容で見どころが多かったので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、この展示は展示期間が小刻みになっていて、私が観たのは5/12時点の内容となります。

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【展覧名】
 生誕150年 横山大観展

【公式サイト】
 http://taikan2018.exhn.jp/
 http://www.momat.go.jp/am/exhibition/yokoyama-taikan/

【会場】東京国立近代美術館
【最寄】竹橋駅

【会期】2018年4月13日(金)~2018年5月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
かなり混んでいて、あちこちで列を組んで観るような感じでした。もう会期末で日によっては入場待ちも発声するようなので、おでかけの際には公式ツイッター等で状況を確認することをオススメします。
 公式ツイッター:https://twitter.com/TAIKAN_2018

特に「生々流転」という作品では非常に長い列が出来ていて、私は2列目から観てきたのですが それでも2時間以上かかりました。最前列で観るともっと時間がかかるかもしれません。スケジュールには余裕を持って行ったほうが良さそうです。


さて、今回の展示は近代日本画の巨匠である横山大観の大規模な回顧展となっています。横山大観の展示はいくつも観てきましたが、これだけ大規模かつ充実した内容は久々だと思います。展示室も第1会場から2階の第3会場までいつもよりも広めとなっていて、40mに及ぶ「生々流転」も全場面を観ることができました。時代ごとに3つの章に分かれていましたので、各章ごとに気に入った作品を挙げていこうと思います。なお、横山大観の略歴等に関しては過去に何度も記事化しているので詳細は下記をご参照ください。
 参考記事:
  横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い 感想前編(横浜美術館)
  横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い 感想後編(横浜美術館)
  横山大観 ―東京画壇の精鋭― (山種美術館)


<第1章 「明治」の大観>
まずは明治時代のコーナーで、22~44歳頃までの作品が並んでいました。横山大観は出来たばかりの東京美術学校の第一期生として入学し、岡倉天心や橋本雅邦らに目をかけられて学んでいきました。その後、自らも東京美術学校で教授となったのですが、明治31年に岡倉天心が美術学校騒動と呼ばれる事件(図案科の福地復一と対立し、九鬼隆一の奥さんと不倫したという怪文書などが出た事件)で校長職を追われると、大観も教授職を辞して日本美術院の設立に参加し、岡倉天心と共に行動しました。この頃は朦朧体と揶揄された輪郭の無い画風で世間からの評価は厳しく、五浦に都落ちして貧乏な生活をしてたりもします。しかし、大観の新しさは3つあるそうで、
 ・人物の感情や主題の気分を画面全体で表現した
 ・筆線を廃し、色をぼかした表現(朦朧体)
 ・そこから飛躍した色彩の取り組み
が挙げられるようです。ここにはそうした初期からの作品が並んでいました。

1 横山大観 「村童観猿翁」
こちらは卒業制作で描いた作品です。牛に群がる子供たちが描かれ、牛の上には赤い着物の猿の姿もあります。その後ろには帽子の男性が座っていて、この男性が操る猿回しの芸を子供たちが観ている様子となっています。背景の草木は写生的に描かれ、子供は大和絵風に見えるかな。解説によるとこの猿回しは橋本雅邦をモデルにしていて、子供たちは同級生の画家たちのようです。楽しげで当時の東京美術学校の雰囲気まで伝わってくるようでした。
 参考記事:東京美術学校から東京藝術大学へ 日本絵画の巨匠たち (ホテルオークラ アスコットホール)

15 横山大観 「迷児」 ★公式サイトで観られます
こちらは孔子、釈迦、老子、キリストに囲まれた子供を描いた作品で、絹の裏に金箔を塗って木炭で描いた白黒の画面となっています。ぼんやりとした明暗のあるモノトーンで静かな印象となっていますが、これは当時の日本の状況を表しているらしく この子はどの宗教を選ぶべきか迷っているようです。右端で1人だけ空を観ている人物がいるのですが これは老子で、大観自身は老子の思想に興味があったのだとか。三教図はたまに観る主題ですが、そこに時事ネタを入れた点などは斬新さを感じます。
 参考記事:横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い 感想前編(横浜美術館)

18 横山大観 「ガンヂスの水」 ★公式サイトで観られます
こちらは中洲の木々が川に飲み込まれてうねっている様子を描いた作品です。全体的に輪郭のない朦朧体で描かれていて、ぼんやりした印象を受けます。ハッキリしなくて、解説では川なのに草原のようにも見えると言っていて、確かにそう見えなくもないw なお、この作品は岡倉天心の勧めで親友の菱田春草とインドや欧米を旅行した際に観た光景だと思われます。帰国してから朦朧体から離れていくことになります。

25 横山大観 「瀑布(ナイヤガラの滝・万里の長城)」
こちらは左隻に明治37年に観たナイアガラの滝、右隻に明治43年に観た万里の長城を金屏風に描いた作品です。岩や砦に緑や青の点描や たらしこみ(滲みを活かし色を重ねる)といった技法が使われ、割と線描も使ってデフォルメされた感じです。いずれも日本画としては変わった題材なのが大観独特かも。雄大さを感じるしっかりとした日本画となっているのは流石でした。

22 横山大観 「白衣観音」 ★公式サイトで観られます
こちらは今回の展示で100年ぶりに発見された作品で、岩に腰掛けて右手を施無畏印のように挙げる観音の姿が描かれています。とは言え、手足や首に装身具があって普通のインド人の女性のようにも見えるかな。白い薄布をまとっていて透けるような清らかさがあります。しかしデッサンは苦手だったようで、ハッキリ言えば下手ですw 特に組んでいる足の辺りは等身が妙な感じがしました。一方で顔は見通すような意志の強そうな表情となっていて印象的でした。

23 横山大観 「流燈」 ★こちらで観られます
こちらは大観がブレイクするきっかけとなった作品で、3人の異国情緒ある女性が描かれています。こちらの女性たちは大観の作品とは思えないくらい華やかで、デッサンもしっかりした感じです。また、髪の毛の表現は輪郭がないのですが、手や衣には輪郭が使われるなどそれまでの朦朧体から一歩踏み出したような画風となっています。そう言えばこの作品を観た日にちょうど美の巨人でも紹介されていました。これを観た当時の人もこれが大観?て思ったのは我々現代人と同じだったんですねw
 参考リンク:美の巨人たち 横山大観らしからぬ“かわいい”作品『流燈』で挑んだ新たな日本画!


<第2章 「大正」の大観>
続いては大正時代のコーナーです。この頃、師である岡倉天心や 苦楽を共にしてきた親友の菱田春草を亡くし、大観は失意の中にいたようです。しかし文展に出品した「瀟湘八景」が新聞記者時代の夏目漱石たちに個性的な自己表現と評されるなど、画業の評価は高まっていったようです。大正は個性の時代でもあり、下村観山らと共に再興した日本美術院は自由と個性を掲げて時代の風に乗っていくことになります。
 参考記事:日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』 感想前編(東京都美術館)

この時期の大観は彩色画と水墨画を平行して描いていたようで、彩色画は大和絵や琳派、水墨画は古画を学んでいたようです。色使いやデフォルメなどに試みがあるそうで、中でも「片ぼかし」という技法がこの頃からの特徴となります。これは弧を描く線の内側だけをぼかす技法で、この時代以降 水墨画で多用しているのが確認できます。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

35 横山大観 「山茶花と栗鼠」
こちらは2曲1双の屏風、左隻にお互い向き合って木の実を食べる2匹のリスが描かれています。右隻には花の咲く木と小枝を抱えたリスが小さく描かれていて、いずれも可愛らしい印象を受けます。リスは毛並みを1本1本描いていて、どこか人間のような目つきをしているかなw 周りの草や木は何処と無く琳派風で、木の幹にはたらしこみなども使われていました。

37 横山大観 「瀟湘八景」
こちらは8幅対の掛け軸で、第6回文展で夏目漱石に評価された作品のヴァリエーションとなります(文展出品作も会期によって展示していたようです) この画題は昔から様々な画家に描かれていますが、ここでは風景だけでなく長閑な風俗画のような側面もあるように思います。雨や湿気などを感じさせ、伸びやかな構図がいずれも面白い作品でした。漱石は大観の作品について、聖人君子のような脱俗ではなく平民的なのんきな脱俗的作品といった旨の評をしたようです。確かに大観は大らかさを感じさせて、絵の巧さよりも情感ある画面を作るのが得意な気がします。

42 横山大観 「竹雨」
こちらは丘の竹林とそこに歩く傘を持った人を描いた水墨の作品です。人物の輪郭や土の際辺りには片ぼかしの技法が使われているのがよく分かります。絵の上の方は湿気に烟る竹といった感じですが、下の方は割とラフな描写となっているのが面白く、やや素朴で力強い印象を受けました。

47 横山大観 「秋色」
こちらは6曲1双の屏風で、槇や蔦のオレンジや黄色、緑といった葉っぱが生い茂る中で、鹿の親子が実を食べようとしている様子が描かれています。その色の取り合わせが不穏な位に鮮やかで、特に葉っぱの赤と緑が引き立てあっているように見えます。解説によると、モチーフなどからも尾形光琳の「槇楓図屏風」に似ているところがあると考えられているようですが、かなり大胆で 琳派というよりは西洋のナビ派のような雰囲気があるように思いました。

45 46 横山大観 「雲去来 習作」「雲去来」
こちらはいずれも水墨画で、習作と本図がセットっで展示されていました。桃みたいな形の山々と麓の木々や家々を描いていて、一見すると両者はよく似ているように思います。しかし解説によると、習作では淡くて柔らかいぼかしをしているのに対して、本画は雲と山肌の境目が画然としていて雲を諧調を連ねるようになっているそうです。そう言われて観ると確かに本画の方は遠くの山の輪郭までハッキリ見えるかな。 習作と本画を見比べることで制作過程も知ることが出来る面白い展示方法でした。ちなみに日本画では小下絵はよく観ますがこうした習作を作るのは珍しいようです。

43 横山大観 「荒川絵巻(長瀞之巻・赤羽之巻)」
こちらは小杉未醒と共に荒川に写生旅行に行った際に描いた作品で、今の東京都北区の赤羽辺りの川辺を描いているようです。もちろん現在の様子とはだいぶ違って急な土手があったり山の中のような風景となっていて、中洲で作業する人がいるなど当時の生活の様子も伺えます。こちらの作品では片ぼかしを多用していて、ちょっと南画みたいな雰囲気にも思えたかな。途中で雨が激しく降っている様子もあり、情趣あふれる作品となっていました。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。前半から既に代表作の嵐ですが、1点だけ不満があるのが会期が細かすぎてお目当ての品を揃って観るのが困難だったことです。今回私はポスターになっている「群青富士」は観られなかったのが残念でした。それだけ目玉作品が沢山あるというのは実に贅沢な話ですがw 後半にはさらに驚くべき作品がありますので、次回は残りの3章と第2~3展示室の様子をご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら



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人間・髙山辰雄展――森羅万象への道 【世田谷美術館】

前々回ご紹介した静嘉堂文庫の展示を観た後、世田谷美術館に移動して「人間・髙山辰雄展――森羅万象への道」を観てきました。この展示は前期・後期で大幅な展示替えがあるようで、私が観たのは前期の内容でした(既に後期の内容となっています)

DSC05119_20180522004947247.jpg

【展覧名】
 人間・髙山辰雄展――森羅万象への道 

【公式サイト】
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00188

【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅

【会期】
 前期:2018年4月14日(土)~5月13日(日)
 後期:2018年5月15日(火)~6月17日(日)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて今回の展示は髙山辰雄(1912~2007年)という つい最近まで活躍されていた画家の個展となっています。髙山辰雄は戦後画壇の最高峰として杉山寧、東山魁夷ともに「日展三山」と称された画家で、静かで深い精神性を感じさせる作風となっています。この美術館のある世田谷で人生の後半を過ごして創作の拠点としていたようで、今回は生まれ故郷の大分県立美術館の所蔵品と共に70年に渡る画業を一気に回顧する内容となっていました。

まず簡単に略歴があり、それによると髙山辰雄は大分県大分市に生まれ、1931年に東京美術学校の日本画科に入学し、在学中の1934年に帝展に初入選しました。松岡映丘に師事し、山本丘人らと共に研鑽を積んだそうです。 戦後間もない頃にはゴーギャンの伝記に感銘を受けたそうで、1950年代は鮮やかな色彩の時代と呼べる作品が残されています。その後は点描による静謐で幻想的な画風となっていき、生と死や人間の存在などを描くようになっていったそうです。

展覧会構成は概ね時代ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。なお、私が観たのは前期の内容(既に後期)で、この記事で挙げる作品は既に展示していないものも含まれておりますのでご了承ください。(展示リストで会期を確認することができます)
 参考リンク:展示リスト(pdf)


<冒頭>
まず最初に大きな屏風が展示されていました。こちらは会期によって変わるようです。

34 髙山辰雄 「朝」
こちらはダイジェスト的に冒頭にあった屏風で、大きな丸い朝日と その前に広がる野山が描かれています。空や川は金色で表されていて、川辺には髪を整えるような仕草の裸婦が立っています。近くにはうずくまったり寝ている裸婦もいるので、まだ朝早い時間なのかな? 全体的にゴーギャンのタヒチの絵のような原始の世界を思わせる雰囲気があり、影響が見て取れます。しかし静かで内省的な印象を受けるのが独特で、大画面なのに迫力よりも精神性が感じられました。(1973年の作なので、ずっと後の画風です)


<1章 若き研鑽の日々>
ここから時代を追っていく感じになります。若い頃は松岡映丘の弟子らしい作品なんかもありました。

1 髙山辰雄 「温泉」 ★公式サイトで観られます
これは帝展に初出品で初入選した作品で、大分の柴石温泉に入る裸婦が描かれています。渓流のような温泉となっていて、川の流れの途中のくぼみのような所で2人の裸婦がくつろいでいるようです。髪を結んで切れ長の目をした女性たちは どこか仙女のような雰囲気があるかな。 流れを細い線で描いたり写生的な画風で、草花や岩などからは日本画というよりは洋画のような色彩すら感じられました。

11 髙山辰雄 「浴室」
こちらも裸婦を描いた作品で、髪を結わえる女性と、たらいで髪を洗う女性が描かれています。水面の透明で透ける表現などは細やかで、写実的な感じです。一方、女性たちは細い輪郭で体を柔らかく描いていて色気があると共に、どこか原始的な力強さのようなものも感じられました。


<2章 ゴーギャンとの出会い>
続いては1945~60年代のコーナーです。この時期、ゴーギャンの伝記を読んで感銘を受けたそうで、確かにゴーギャン風の作品が並んでいます。

16 髙山辰雄 「沼」
緑の山を背に、オレンジの空と湖が描かれ、手前には2人の褐色の肌の裸婦が描かれた作品です。顔はモディリアーニみたいな感じですが、色合いの強さや原始を感じる雰囲気なんかはまさにゴーギャン的な作風に思えます。1人はこちらを向き、もう1人は後ろ向きで肩を寄せるポーズとなっているのも観念的で面白い構図となっていました。

この隣にも色彩豊かな人物像があり、それも顔はモディリアーニ風に思いました。

25 髙山辰雄 「穹」
深い青の夜空に、大きな白い月が左上に浮かんでいる様子が描かれた作品です。よく観ると下の方には森や岩のようなものもあり、明るい月光が照らしています。月は表面の陰影までしっかり描かれていて、ここだけリアルで立体的な感じです。神秘的な光景の中に月が浮かび上がってくるように見えました。


<3章 人間精神の探求>
続いては1970~90年代の作品のコーナーです。この時代は人間をテーマに、点描で描いた静謐な作風となっているようで、大型の見事な作品がずらりと並んでいました。

37 髙山辰雄 「食べる」 ★公式サイトで観られます
赤黒い背景に、茶色っぽい子供が茶碗に向かって黙々と食べている様子が描かれた作品です。テーブルには水しかなく、どこか寂しく不安になるような光景です。子供が小さめに描かれていることもあってポツンとした印象がするのですが、一心不乱で食べている姿は生きる力強さを感じさせるようにも思いました。これは以前に見た時もインパクトがあったのでよく覚えていました。
 参考記事:日本の美術館名品展 感想後編(東京都美術館)

46 髙山辰雄 「海」
暗い海と空を描いた作品で、中央辺りに水平線が白く輝いているように明るくなっています。全体的にざらついたマチエールで、よく観ると暗い所でも波や雲にムラがあってうねりを感じさせます。暗い色調の中ですがどこか希望を感じさせるような風景となっていました。

49 髙山辰雄 「少女」 ★公式サイトで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、砂漠のような背景の中に黄色い服の少女が描かれています。足元には寝ている猫もいて、全体的に静かな画面です。少女は無表情のようでちょっと微笑んでいるような表情にも見えるかな。シュルレアリスム的な寂寞とした雰囲気がある一方で、少女の瞑想的な表情が独特で見入ってしまう作品でした。

59 髙山辰雄 「青衣の少女」
こちらもポスターになっている作品で、冒頭の写真はこちらです。窓辺に横たわる緑がかった青い服の女性が描かれ、じっと指を見つめています。わきには赤い花がありますが決して派手さはなく落ち着いた色合いです。窓の外は暗く、夜の室内かな? 静かに物思いに耽るような表情が素晴らしく、精神性を感じさせる作品となっていました。

69 髙山辰雄 「一軒の家」
森の中に佇む1軒の家を描いた作品で、家の中からはかすかに光が漏れて見えます。森は周りは山なのか空なのか抽象的な感じで混ざり合っているのですが、左上の辺りに細い月が浮かんでいます。この月はよく観ると金属製のオブジェを貼り付けていて、銀色に鈍く光っていました。こうした手法の作品はこれだけだったので ちょっと驚きましたが、幻想的な雰囲気でどこか懐かしいような光景となっていました。

この近くにも暗闇の中の一軒家を描いた作品がありました。割と好みのモチーフなのかも

74 髙山辰雄 「牡丹(阿蘭陀壺に)」
帆船と風車が染め付けされた花瓶に入っている紫の牡丹を描いた作品です。背景はくすんだ壁で、全体的に沈んだ色合いとなっていて静かな印象を受けます。花もしっとりとした感じで、静物なのに深い精神性が感じられるようでした。

この近くに同様の花の静物がありました。

126 髙山辰雄 「山百合」
こちらは水彩のスケッチで、山百合を写実的に描いています。輪郭がしっかりしていて色合いは抑え気味ですが陰影もついていて花の細部まで観察している様子が伺えます。ここまで観てきた画風とはだいぶ異なりますが、高い描写力を持っているのがよく分かる作品でした。

この辺りは小下図のコーナーとなっていました。パステルや鉛筆で描かれた葉書と色紙の間くらいの大きさの作品で、ゴーギャンに傾倒した時代の作品や南画風の作品などもありました。

119 髙山辰雄 「作品-Ⅰ」
こちらは彫刻作品で、頬杖をついてしゃがんでいる人物が表されています。アフロのような髪型で全体的に量感のあるゴツゴツした彫りとなっていて、プリミティブな印象を受けます。これ以外にも彫刻作品がいくつかあったのですが、いずれも絵と同様にざらついた感じの彫跡となっていました。太めですがちょっとジャコメッティみたいな雰囲気もあって、これはこれでもっと観たかった。


<4章 森羅万象への道>
最後は1990~2000年代の晩年のコーナーです。色彩を抑えた画風で郷里の大分の自然を繰り返し描いていたそうです。

112 髙山辰雄 「雲煙に飛翔」
黄土色の地に墨のような色で、天と地の境目が曖昧になった抽象的な風景と鳳凰が描かれた屏風作品です。左の方に2羽の鳳凰が飛んでいるのですが、厳しい表情をしているように見えるかな。2羽の周りは黄土色がオーラのように包んでいて、光り輝いているようにも見えます。モノトーンで静かな画面ですが、雄大さと厳かな雰囲気がありました。

99 髙山辰雄 「夜の風景」
こちらは夜の街頭を背景に、白い道の真ん中に立つ灰色の犬を描いた作品です。ちょっと凛々しい顔をしてどこかをじっと見つめているように見えます。犬がポツンとしていて寂しい光景にも思えますが、何だか犬が賢人のような佇まいのように思えました。

105 髙山辰雄 「雪の宿」
山の麓に建ついくつかの雪の積もった宿を描いた作品です。画面の上部の中央には半月が浮かび、空には冬の澄んだ空気感があるように思えます。宿は中から黄色い光が漏れていて、寂しいような温かみがあるような、冬独特の風景となっていました。こういった夜の建物が好きだったのかな。

展覧会の最後には髙山辰雄が手がけた本の挿絵などが並んでいました。


ということで、瞑想的な深い精神性を湛えた作品ばかりで非常に満足できました。後期も観たいけど流石に行けなそうなので図録も購入しました。ちょっと万人受けはしなそうな感じですが、絵をよく観ている方には面白い展示ではないかと思います。今回は常設も素晴らしかったので、それも合わせて楽しめました。


おまけ;
今回の常設は時間がなくてメモを取れませんでしたが、小堀四郎と村井正誠という2人の画家を取り上げたミニ個展となっていました。こちらも良い展示なので本当ならもっとじっくり観るべきでした。

DSC05117.jpg

【展覧名】
 それぞれのふたり 小堀四郎と村井正誠

【公式サイト】
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection/detail.php?id=col00100

【会期】
 2018年4月14日(土)~7月8日(日)


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