関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

映画「キングダム」 (ややネタバレあり)

先日、会社帰りに映画「キングダム」を観てきました。この記事にはややネタバレが含まれていますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください。

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【作品名】
 キングダム

【公式サイト】
 https://kingdom-the-movie.jp/

【時間】
 2時間15分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_3_④_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_④_5_名作

【感想】
公開初日ということもあってレイトショーでも満席でした。これはGWに更に人気になりそうな予感です。

さて、この映画は同名の漫画を実写映画化したもので、後に始皇帝となる秦王の嬴政が中華統一を目指すという話です。早速簡単なネタバレですが、原作はまだまだ統一する気配はないので、映画化と聞いた時にどこまでやるんだろ??と思ったら映画版は弟の反乱の辺りまでとなっていました。かなり序盤で映画1本なので、この先どこまでやるのか気になる所ではありますw

まず、ストーリーについてですが、これはほぼ原作通りだと思います。多少の脚色があったりしますが特に気にならないレベルです。各キャラクターも概ねイメージ通りで、原作ファンは安心して観ることができるのではないかと思います。ただ、映画の中では主要キャラ以外は一度も会話シーンが無いのに急に名前を呼んだりするので、この辺は原作を読んでいないと誰?となる可能性があるかもしれませんw (壁とか いつの間にか仲間っぽくなってたりw)
次にキャストですが、これが結構ハマっていました。信役の山﨑賢人は少々過剰気味な演技に思えるものの、それも含めて信っぽかったし、政と漂役の吉沢亮も意志の強さを感じさせるような演技でした。勿論、他のメンバーもレベルが高くて見応えありました(ランカイは流石にあれでしたが…w) 予告編でコスプレ大会になるのではと懸念してたので、これは嬉しい誤算です。映像面に関しても違和感無くて良かったかな。まあハリウッドなんかと比べると普通ですが、日本の映画でここまで出来るようになったのは凄いことだと思います。

ということで、予想以上に良い出来となっていて楽しめました。原作を知らない方でもこの映画から物語が始まるので安心して観ることができると思います。勿論、終わり方も今後に繋がる感じでしたので、次回作も楽しみです。原作ファンも納得できる作品でした。


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荒木悠展 : LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ 【資生堂ギャラリー】

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、銀座の資生堂ギャラリーで「荒木悠展 : LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ」という展示を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 荒木悠展 : LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ

【公式サイト】
 https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/

【会場】資生堂ギャラリー
【最寄】銀座駅 新橋駅など

【会期】2019年4月3日(水)~6月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は1985年生まれの気鋭のアーティストである荒木悠 氏の個展となっています。国際的に評価されている映像作家であり、世界各地で滞在制作し文化の伝播と誤訳、その過程で生じる差異や類似などに着目して社会・歴史を背景にした映像作品を制作していうそうです。一方、タイトルにある「 LE SOUVENIR DU JAPON」はフランス語で「日本のお土産」という意味のようで、今回の展示では明治18年に日本の鹿鳴館の舞踏会に参加し、その様子を紀行文に書いたフランスのピエール・ロティという作家をテーマにした作品が展示されています。ピエール・ロティは『秋の日本』という著作で日本の自然や美意識を著し、鹿鳴館での舞踏会は「江戸の舞踏会」という章で紹介されているようです。そしてその著作を参考にして、芥川龍之介が1920年に『舞踏会』を書いたそうで、そちらもモチーフとして使われていました。 冒頭に書いたように撮影可能となっていましたので、詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。

こちらは入り口にあった「Product Placement II シャンデリア」「Product Placement IV赤い絨毯 」「Product Placement III 鏡」
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メビウスの輪のようなシャンデリアが鏡に写っているという作品。キャプションもないのでちょっと意図は分かりませんが、舞踏会と関係があるのかな?

今回のメインホールは「The Last Ball」という2画面から成る映像作品となっていました。
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片方はピエール・ロティが紀行文で書いた視点と芥川龍之介の『舞踏会』のヒロインである明子の視点が混じったような映像、もう片方は3種類の映像となっていました。

大型の画面はこんな感じ。ちょっとシュールw ヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きダニューブ(ドナウ)」が流れます
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舞踏会の2人はお互いにiphoneを持っていて、お互いを撮りあうようにクルクル回っていました。

相手を撮ろうとするけど自分は撮られないようにしているのか、まるで追っかけっこしてるようで可笑しいw 右側の映像がちょっと色味が変わってると思ったら2人の瞳の色の違いで見え方が違うのを表しているようです。明子はグリーン、ロティはマゼンダの色彩設定にしているのだとか。
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たまに映像が重なるように見えます。片方はドキュメンタリー、片方はフィクションの存在であり、相対するものが一致するような面白さがありました。

続いては小ホール。

こちらは階段箪笥
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これも突拍子もなく置いてありましたが、やはり紀行文と関係があるのかな?

壁際には3種類の映像作品が並んでいました。
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それぞれ東京、日光、京都の現代の様子と、ピエール・ロティの『秋の日本』を訳した(原作には忠実ではない戯訳とのこと)字幕がセットになっています。

こちらは日光の様子
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ちょっと字幕を撮り忘れましたが、現代でも外国人に人気のところですね。

東京はこの会場のすぐ近くも写していました。
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ここ以外も様々な場所が出てきます

当時は鉄道馬車だったんでしょうか。
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今は地下鉄ですw 130年の隔たりが感じられて面白い映像でした。

京都の辺りはそれほど変わっていないように思えました。
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最後にこちらは資生堂の創業者であり写真家でもあった福原信三による「ヘルン旧居(松江風景)より」
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小泉八雲の旧居を取ったものらしく、西洋から帰った後に日本の風景 しかも日本国籍を取った小泉八雲の家を撮ったこの写真が今回の展示のテーマと深い繋がりがあるようでした。


ということで、恐らく私は半分も理解できていないと思いますが、現在と過去、史実とフィクションといったものが混ざり合う映像が面白く感じられました。今後ますます活躍が期待される方だと思いますので、映像系の作品がお好きな方は是非どうぞ。無料で観ることができます。



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貨物ステーション カモツのヒ・ミ・ツ 【旧新橋停車場 鉄道歴史展示室】

前回ご紹介したパナソニック汐留美術館の展示を観た後、すぐ近くの旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で「貨物ステーション カモツのヒ・ミ・ツ」という展示を観てきました。

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【展覧名】
 貨物ステーション カモツのヒ・ミ・ツ

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/shinbashi/

【会場】旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
【最寄】新橋駅

【会期】2019年3月19日(火)~6月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は旧新橋停車場が1914年に汐留駅(国鉄時代末期の1986年まで)になった際に貨物ターミナルとして使われていたという歴史に因んだもので、日本の貨物列車の歴史や現在の様子を紹介するものとなっています。大半はパネル展示なので珍しい品はそれほど無いですが、鉄道好きとしては普段接する機会の少ない貨物について知る機会として楽しみにしていましたw いくつかの章に分かれて展示されていましたので、簡単に各章ごとに振り返ってみようと思います。


<災害と鉄道貨物輸送>
こちらは災害からの復興で活躍する鉄道貨物についてのコーナーです。311の際も日本海側を経由して被災地に緊急石油輸送していたそうで、普段貨物が通らないような場所も使って対応した様子が紹介されていました。その際、貨物を牽引した機関車に付けられていた「立ち上がろう東北」のヘッドマークなども展示されています。
さらに記憶に新しい2018年7月の西日本豪雨の際には一部区間が寸断されるほどでした。この際にも「頑張ろう岡山」「頑張ろう広島」のヘッドマークをつけて走ったようで、それも観ることができました。

<鉄道による貨物輸送の始まり>
続いては貨物の歴史のコーナーです。1873年9月15日に新橋~横浜観で日本初の定期・不定期1往復の貨物列車が運転開始されたそうですが、当時は舟運や馬に比べて高い上に横浜との間しか運べないので大して使われることは無かったようです。
やがて1900年頃になって鉄道網が張り巡らせると、私設鉄道が買収され全国一体の貨物輸送ネットワークが形成されていきます。そして第一次世界大戦の頃から日本は重工業を中心に一気に発展すると、輸出が激増し国内産業・工業生産の為の貨物輸送の需要も高まり、貨車の行き先が複雑化して滞留するのが問題となっていきました。そこで「貨物集結輸送方式」が全国で本格化し、操車場の整備が進められていきます。この新橋の地も1914年に汐留駅となって貨物専用の駅として再出発することとなりました。
戦時中の1937年になると戦局が悪化し制海権を失ったことで貨物が増え、旅客を削減して貨物を増発していたようです。更に戦局が悪化すると輸送能力が下がったようですが、戦後には物不足の中で輸送量も急速に回復し、復興を牽引する役割を担うことになります。
ここはそうした歴史を示すパネルなどが並んでいました。この頃の貨物は国力と連動しているように思えます。

<操車場の仕組み>
ここでは操車場の仕組みを紹介していました。複数の線路に大まかな行き先別に貨車が並んでいて、1両ずつ仕分けして同じ方向の編成を作っていきます。これで効率良く運べる… と、思ったけどこれが後々に問題となっていきますw 1960年代になると高度成長期を迎え貨物輸送のピークを迎えるのですが、1970年には急激に取扱量が減ります。というのも、エネルギー革命によって石炭輸送が減ったのに加え、道路網が整って自動車貨物輸送が増えたことが原因で、列車からの積み替え不要で時間のロスが少ないので自動車の方が優位となってしまいました。所要時間が競争力となっていくと、ターミナルで仕分けしたり積み替えとか時間が掛かって駄目と判断されたようです。それは国鉄も自覚していたようで1959年には操車場を経由せず直行で運ぶコンテナ特急「たから」が登場したり、1969年にはトラックとの協同一貫輸送「フレートライナー」方式なども登場していったようです。しかし、先述の貨車集結輸送方式は根本的な時間の短縮ができないので、1984年2月に操車場を全廃して拠点間直行方式へと転換を図ることになります。

ここには「たから」のテールマークや、1967年のEF90のポスターがありました。EF66 901は時速100m出るらしいので相当なスピードアップです。また、フォークリフトで積み替え可能な国鉄コンテナのポスターもありました。中身を出さずにコンテナ丸ごとトラックに積み替えるだけで運べるので、これも時間の短縮に繋がります。到着時間も分かるのも売りだったようです。

その先にはTOMIXの模型があり、操車場を再現していました。現在でも全国に貨物駅は242駅あるそうで、コンテナの扱いはそのうち125駅だそうです。いくつもの線路が枝分かれしていて、線路脇でコンテナの積み替えしているのも再現されています。

<築地に鮮魚を運んだ冷蔵車>
ここには冷蔵機能を持つレサ10000形の1/15の模型がありました。長崎~東京間の「とびうお」や博多~大阪間の「ぎんりん」などで活躍したそうです。真っ白な車体となっていて、白くすることで冷蔵庫内の温度上昇を防いでいるのだとか。

<東海道新幹線 貨物電車>
こちらは実現しなかった東海道新幹線の貨物列車の計画に関するコーナーです。夜間に走らせる予定でしたが、保守作業の時間が確保できないので実現できませんでした。この計画を観る限り、新幹線には見えないかなw 機関車の動力部がどこにあるのか謎の車体となっていました。

<貨物駅の写真>
最後は貨物駅の写真のコーナーです。客車と違ってプラットフォームがないので普通の道路に貨物列車が止まっているように見えますが、この道路を使って作業するようです。最長550mにも及ぶそうで一般の駅とは全く異なる光景となっていました。


ということで、貨物の歴史や仕組みを知ることが出来ました。時代と共に技術や運用方法も変わってきているので、今後も貨物列車は形を変えつつ活躍していくのではないかと思います。展示品は少ないですが、鉄道好きには楽しい展示だと思います。


おまけ:
私が知っている汐留駅はカートレインの発着駅だったことです。 子供の頃、いつか乗りたいと思っていましたが大人になる前に駅自体が無くなってしまいましたw


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ギュスターヴ・モロー展― サロメと宿命の女たち ― 【パナソニック汐留美術館】

10日ほど前に新橋のパナソニック汐留美術館で「ギュスターヴ・モロー展― サロメと宿命の女たち ―」を観てきました。

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【展覧名】
 ギュスターヴ・モロー展― サロメと宿命の女たち ―

【公式サイト】
 https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/19/190406/

【会場】パナソニック汐留美術館
【最寄】新橋駅/汐留駅

【会期】2019年4月6日(土)~ 6月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場が狭いこともあって割と混雑感がありましたが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は象徴主義の巨匠であるギュスターヴ・モローの個展で、パリのギュスターヴ・モロー美術館の作品を中心に特に女性像に着目していくつかの系統に分けて紹介する内容となっています。このパナソニック汐留美術館はジョルジュ・ルオーのコレクションを所有しているため毎年のようにルオー展を開催していますが、今回はちょっと変化球でルオーのアカデミー時代の先生であったモローを取り上げた感じでしょうか。展示はテーマごとに4章構成となっていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 モローが愛した女たち>
まずはギュルターヴ・モローが愛した恋人と母親をモデルにした作品が並ぶコーナーです。モローは建築家の父と音楽好きの母の元で育ち、両親を心から敬愛していたようです。特に母は妹を13歳で亡くしたことを機に絆を強めたそうで、この世で最も大切な存在と表現して繰り返し描きました。また、結婚はしなかったものの30年近く共に過ごしたアレクサンドリーヌ・デュルーも親密な視点で度々描いたようで、彼女が亡くなった際には墓は2人のイニシャルのAとGを重ねたデザインを施すほど愛は深かったようです。モローは小説家のジョリス=カルル・ユイスマンスに「パリの真ん中に閉じこもった神秘主義者」と呼ばれ、ミステリアスなファム・ファタル(破滅を招く運命の女)を描き続けたわけですが、社交界やジャーナリズムに距離を置いて生涯独身を貫き、老いた母親と自宅にひきこもって生活していたようです。ここには身近だった2人の女性を描いた作品が並んでいました。

1 ギュルターヴ・モロー 「24歳の自画像」
まずは自画像がありました。横向きでやや下の方に目をちらっと向けている表情に見えるかな。油彩での自画像はこれが唯一だそうで、アカデミックな教育で成果が得られずロマン主義へと傾倒した頃の姿のようです。ややぼんやりして顔に柔らかい光が当たるような表現なので、ちょっとそれも頷けるかも。口髭や顎髭があるけど厳格さはそれほど感じず、優しい雰囲気に見えました。既にモローっぽさを感じるような神秘性も若干あります。

この辺は母を描いた鉛筆の素描や、パレット、母に宛てたメモなんかがありました。母の晩年は耳が悪かったらしく、筆談で自分の絵を説明していたそうで、今ではそれが貴重な資料になっているようです。

6 ギュルターヴ・モロー 「アレクサンドリーヌ・デュルー」 ★こちらで観られます
こちらは鉛筆とインクのデッサンで、横向きで顔をこちらに向ける恋人のアレクサンドリーヌ・デュルーが描かれています。2人はモローのイタリア留学後に出会ったそうで、当時 彼女は家庭教師をしていて、モローが絵の手ほどきをしたのがきっかけだったようです。心優しい人だったようで、この絵でも理知的な目をしています。さっと描いたように見えるけど、流石のデッサン力で逆に画力の高さを再認識しました。

この隣にも木炭による肖像がありました。ランプのもとで新聞?を読んでいるようでリラックスした親密さを感じます。ちなみに母が亡くなってからはこの恋人が心の支えとなっていたのですが、彼女にも先立たれてしまい晩年は喪失感と共に制作をしていたようです。先述のお墓のデザインと実際のモンマルトルにあるお墓の写真なんかも観ることができました。また、パリのギュルターヴ・モロー美術館には彼女に送った作品なんかもあるらしく、写真で紹介していました。

10 ギュルターヴ・モロー 「パルクと死の天使」
こちらは馬に乗った死の天使と、手綱を引くパルク(人間の運命を支配する女神)を描いた作品です。右の方には丸い太陽があり、天には星が1つ輝いています。この2柱は顔もわからないほど粗いタッチとなっていて、死の天使は剣を構えて背後に光輪もあって威圧感のようなものを感じます。解説によると、この作品は恋人の死後に描かれたらしく、悲しみや喪失感のエネルギーをこの絵に転嫁しているとのことでした。


<第2章 《出現》とサロメ>
続いてはモローがよく描いた「サロメ」についてです。サロメは舞の褒美としてヘロデ王に洗礼者ヨハネの首を所望したユダヤの王女ですが、モローが数多く描いたファム・ファタルの中でも突出して描いたテーマでもあります。モローはサロメを男を幻惑する妖女として描いていて、ここにはそれを代表する作品も並んでいました。

11 ギュルターヴ・モロー 「洗礼者聖ヨハネの斬首」
こちらは油彩でサロメを描いた中で最も早い時期の作品です。中央の祭壇のような所で手を合わせ跪いている半裸のヨハネの姿が描かれ、後ろでは剣を構えた刑吏、その脇にはじっと見つめている黄色い衣のサロメの姿もあります。背景には縦長の円柱などがあり、明暗が神秘的な効果を生んでいて、左上から差し込む光が天からの光のようにも思えました。静かだけど恐ろしくも劇的な1枚です。

この辺には首を切ったあとの作品もありました。

16 ギュルターヴ・モロー 「サロメ」
こちらは1876年のサロン出品作「ヘロデ王の前で踊るサロメ」より 踊るサロメ像の部分の習作で、完成作と同じサイズで描かれています。祈るように右手を顔の前に出し目を瞑り、東洋風の長い衣をまとっている姿で、美しく魔術的な雰囲気があります。これだけ観るとミステリアスな美女って感じで、ファム・ファタルの妖しい色気が漂っていました。

18 ギュルターヴ・モロー 「出現」 ★こちらで観られます
こちらは中央に光り輝く光背を持つヨハネの首が空中に浮かび、それをサロメが指さしているという幻視の場面を描いた作品です。ヨハネの首は血が滴り目を開いてサロメを観ています。一方、サロメは睨むような顔に見えますが、後ろにいる王などはヨハネの首に気づいていないようで、サロメだけにしか見えていないようです。この絵は未完成らしく、背景の柱や宮殿の装飾などは白い線が下書きのように残っているのも特徴じゃないかな。偶像や装飾なども細かく描かれていて、緻密さが逆に際立って分かるようになっていました。ポーズや構成なども含めて独創的な作品です。

34 ギュルターヴ・モロー 「サロメ」
こちらは手をクロスして肩の上に置き、花を持っているサロメの裸婦像です。均整の取れた体つきで、腰を捻って優美な姿となっています。暗い背景に白く輝くような肌が特に妖しい美しさで、背後では王や母と思われる人物が裸体をじっと見つめています。妖艶さと神秘性を兼ね備えていて、まさにファム・ファタルといった1枚でした。


<第3章 宿命の女たち>
続いてはファム・ファタルの女たちを描いたコーナーです。魅惑的で呪われた宝石のように輝くような女性ばかりで、モローは「女というのはその本質において未知と神秘に夢中で、背徳的 悪魔的な誘惑の姿をまとって現れる 悪に心を奪われる無意識的存在なのである」という言葉を残しているそうです(現代だったら大問題になりそうな発言ですw) 歴史画家を自認して神話や聖書を題材にした作品を手がけていたこともあって、ここには神話に出てくるファム・ファタルたちが並んでいました。

37 ギュルターヴ・モロー 「トロイアの城壁に立つヘレネ」
こちらは夕日を背に城壁の上に立つヘレネを描いた作品です。パリスの審判のエピソードでパリスがウェヌスとの約束(賄賂みたいな)によってヘレネを掠奪して2人は結ばれる訳ですが、それがきっかけでトロイア戦争が起きてしまうので、ヘレネは傾国の美女として描かれています。ヘレネの右下には戦争で命を落とした兵士が折り重なっていて、血があちこちに滴っています。ヘレネの顔はのっぺらぼうのように何もないのですが、それでも美しく気品がある雰囲気をまとっています。不吉さと美しさが同居する破滅的な魅力がありました。

この近くには淫蕩のメッサリーナ、サムスンの怪力の秘密である髪を切ったデリラ、謎掛けをしては旅人を殺すスフィンクス、オルフェウスを八つ裂きにしたバッカスの巫女などの絵もありました。

47 ギュルターヴ・モロー 「ヘラクレスとオンファレ」
こちらはヘラクレスとリュディアの王女オンファレを描いた作品で、友人を殺した罰としてヘラクレスがオンファレの奴隷となるものの、愛人となったとエピソードとなっています。ここでは2人とも裸体で、座って花冠を被っているヘラクレスの頭に手をおいて立つオンファレの姿があり、背後には翼をもったキューピッドのような人物も描かれています。オンファレはなまめかしく柔らかい肉体表現で、それに従うヘラクレスは神妙な感じに見えるかな。筋骨隆々なのに良いようにされているようで面白かったですw

49 ギュルターヴ・モロー 「セイレーン」
こちらは夕日を背景に海の岩場で腰掛ける3人の裸婦を描いた作品です。足は蛇のようになっていて、男の死体に巻き付いている様子も描かれていて、どうやら彼女たちは船乗りを引き寄せては殺すセイレーンのようです。幻想的で美しい夕景と裸体の艶やかさとは似つかわしくないような、恐ろしさが同居しているのが何とも面白い。これぞファム・ファタルって感じでした。

この隣にも似た作品がありました。

51 ギュルターヴ・モロー 「レダ」
こちらはレダと白鳥の神話を元にした作品で、裸体のレダがゼウスが変身した白鳥を抱き寄せて口づけするように顔を近づけています。ストーリー的には白鳥(ゼウス)がレダに迫るはずなので、この構図は役割が逆になっているようでちょっと珍しいかも。むしろレダが誘っているような感じです。色は薄く、下書きが見えているので未完成かもしれないと思いながら観てました。暗い中で白く浮かび上がるような色彩でした。

57 ギュルターヴ・モロー 「エウロペの誘拐」 ★こちらで観られます
こちらはオウィディウスの変身物語の一場面で、王女エウロペと牡牛に姿を変えたゼウスが描かれています。顔だけゼウスになって光り輝いているのがちょっとキモいw 背に乗るエウロペはゼウスと視線をあわせていて官能的な雰囲気すらあるかな。エウロペの乗り方が妙な感じですが、体を斜めにして飛ぶような姿勢になっているのも面白い構図でした。大型なので特に目を引く作品です。

この近くにはアダムとエヴァのエヴァ、恋に破れて投身自殺した詩人サッフォー、クレオパトラなどをテーマにした作品もありました。


<第4章 《一角獣》と純潔の乙女>
最後の章は清らかな乙女のコーナーです。背徳的な美女を描いていた一方で汚れなき乙女も描いていたようで、処女だけが捕獲できる一角獣の題材はそれにぴったりだったようです。また、母と恋人を失った孤独の中で手がけたのは愛と慈悲の象徴である聖母マリアで、15世紀のヴェネツィア派の画家カルパッチョに構図を学んだ作品などもあるようです。ここにはそうした清らかな女性像が並んでいました。

63 ギュルターヴ・モロー 「一角獣」 ★こちらで観られます
こちらはクリュニー中世美術館のタピストリーを参照して描いた作品で、水辺の森で脇にユニコーンを抱えて寝そべる裸婦が描かれています。その脇にもドレスの女性が両脇にユニコーンを抱えていて、穏やかで理想郷のような光景です。女性の装飾品は中世フランス風らしく、細かい紋様がありかなり緻密です。女性たちは優しい眼差しをしていて、ここまで観てきた女性たちとはちょっと雰囲気が違っていましたw

66 ギュルターヴ・モロー 「妖精とグリフォン」
こちらは岩の洞窟の中で頭の後ろに手を回して横たわる真っ白な体の裸婦と、その手前で伏せたグリフォンが描かれた作品です。解説によると、冒し難い美しさゆえに欲望の対象となる女性を象徴的に描いているそうで、グリフォンは険しい表情でそれを護っているようです。真っ白で大理石像のように見えますが、確かに気品ある姿となっていました。
なお、この絵のバージョン違いを観たアンドレ・ブルトンは絵の虜になったのだとか。

最後にパリのギュルターヴ・モロー美術館の案内の映像もありました。狭い美術館に14000点もあるそうで、2回は画家の愛した調度品なんかも展示しているようです。パリに行った時、時間がなくて行けなかったのが悔やまれる…


ということで、ファム・ファタルだけでなく母や恋人、清らかな女性を描いた作品まであってモローの女性観を多面的に観ることができました。元々モローが好きなので十分満足できましたが、できればもう少し油彩が観たかったようにも思います。とは言え、サロメなど見応えのある作品もあるので、この展示でモロー好きが増える気がします。洋画好きにオススメの展示です。


おまけ:
ちなみの今回の展示から「パナソニック 汐留ミュージアム」から改名したわけですが、また改名か!と思ったのは私だけでないはずw その前は「パナソニック電工汐留ミュージアム」で、その前は「松下電工 汐留ミュージアム」と、本社の名前が変わる度にコロコロ変わってきました。今回は大阪のパナソニックミュージアムと紛らわしいのと博物館に指定されたので変更したのだとか。覚えづらいんで今度こそ定着してほしいものです…。



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更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
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映画「バイス」 (ネタバレあり)

先日の会社帰りにレイトショーで映画『バイス』を観てきました。この記事にはネタバレが含まれていますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください。

DSC04308_201904180134444c5.jpg

【作品名】
 バイス

【公式サイト】
 https://longride.jp/vice/

【時間】
 2時間10分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_③_4_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_③_4_5_名作

【感想】
空いていてほぼ貸し切り状態だったような… ちょっと日本では苦戦してそうです。

さて、この映画は史実と検証(一部憶測含む)を元に作られた政治もので、ジョージ・ウォーカー・ブッシュ(子ブッシュ)の時代に副大統領を努めたディック・チェイニーの半生を描いた物語となっていて、今年のアカデミー賞では作品賞にノミネート、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞という評価を受けています。タイトルの「バイス」は英語で悪徳を意味する「vice」と、副大統領を意味する「vice president」を掛けたものですが、チェイニーはその両方が当てはまる史上最強&最悪の副大統領として描かれています。実際のチェイニーは911の時にアルカイダ殲滅の流れをイラク戦争まで持って行ったのですが、それもこの映画で描かれています。私はラムズフェルドの方が記憶に残っていたわけですが、その理由も影のように静かに事を進めるチェイニーらしい特徴だったのかもしれません。

ここからネタバレがあるのでご注意ください。

映画の序盤は平凡(と言ってもイェール大学の中ではという話)で喧嘩と酒に明け暮れた駄目なやつだったのが、奥さんに諭されて更生して政治の道に進み、やがて出世していく… と、立身出世の話のようになっています。この辺は家族思いの描写もあって憎めないやつに思えますが、やがてウォーターゲート事件に巻き込まれなかったことでチャンスを得て、ラムズフェルドの元で虎視眈々と権力を狙って行く様子などは野心が強く伺えます。その後も何度か挫折を味わいながらも奥さんのサポートで盛り返していきますが、自身の大統領選の出馬を考えた時に、中傷合戦や娘の事情などを考慮して一度は政界から引退もしています。その辺りで偽のエンドロールが流れてちょっと驚きw 副大統領になっていない内に終わる訳がないので席を立つ人はいませんでしたが、一応これに騙されないようご注意w

そして子ブッシュの誘いで副大統領になると、表向きはブッシュを立てつつ裏では自分の陣営で周りを固め、通信を傍受し情報を操作するなど、影の大統領としての活動が描かれます。この映画を観る限りだと、無知なブッシュを老練なチェイニーと取り巻き達が上手く誘導しているような印象を受けるかな。弁護士やシンクタンクを上手く使いながら法的解釈を広げて世論操作していく様子などは ちょっとした悪のカタルシスのようなものさえ感じますw そして911が起きると、それを好機と捉えてイラク侵攻まで進んでいく流れは 映画の作り手の解釈も加味されている気がするものの、概ね史実に思えました。結局イラクから大量破壊兵器は出てこず、何のための戦いだったのか?というのは今でも中東情勢に影を落としているので、チェイニーの影響力は計り知れないものがあります。

と、1990年代くらいからは当時の新聞やニュースをよく観ていたので私は理解できましたが、アメリカの政治の制度や政治家同士の対立構造については無知なので、その辺の事情があまり飲み込めないままに進んでいってしまいました。一々説明しないでテンポも早いので、予備知識がないとあっという間に置いていかれる可能性があります。特に911以降の流れについては知識が必須だと思います。 また、エンドロールの途中に「この映画、臭いと思ったらリベラル臭い。偏っている」という自虐ネタみたいなセリフがあって、それは随所で感じますw それに対して「事実を言ったらリベラルか?」と反論しているセリフもあって、その程度の批判は折込済と言ったところでしょうか。私はアメリカ人ではないのでどっちでも無いですが、アカデミー賞にノミネートされたってのはこの辺にあるのかなと邪推してみたり。陰謀論的な話があったのでオカルト好きとしてはそこをもうちょっと掘り下げて欲しかったかなw 


ということで、総合的に面白かったか?というと何とも言えませんw 公平かつ忠実に作ってるようでチェイニーの悪行を皮肉交じりに煽りながら糾弾しているのは確かです。そのテイストを下品に感じるか、痛快と感じるかは人によると思います。私はマイケル・ムーアなんかも楽しめますが、これは作り手の小粋な正義マンぶりがちょっと苦手でしたw もっとドキュメンタリー的に作ってくれたら面白く思えたのかも。アメリカの政治や歴史に興味がある人向けの映画だと思います。



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