関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち 【世田谷美術館】

前々回・前回とご紹介した静嘉堂文庫美術館の展示を観た後、バスで世田谷美術館に移動して「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」を観てきました。

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【展覧名】
 ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち

【公式サイト】
 http://paris2017-18.jp/
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00187

【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅

【会期】2018年01月13日~04月01日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
土曜日に行ったこともあって割とお客さんが多かったですが、混んでいるというほどでもなく概ね自分のペースで見ることができました。


さて、この展示は今も昔もファッションや文化をリードしてきた パリに住む女性たち「パリジェンヌ」をテーマにした内容となっています。特定の画家や時代をテーマにしている訳ではない珍しい展示で、18世紀以降の各時代のパリジェンヌをとりまく環境や、その役割、芸術との関わりなどで章分けされていました。ごく簡単にメモしてきましたので、構成に沿って振り返ってみようと思います。


<第1章 パリという舞台 ~邸宅と劇場にみる18世紀のエレガンス>
まずはパリがフランスの中心となっていった頃のコーナーです。ルイ14世の時代の後、フランスの文化の中心はヴェルサイユからパリへと変わったそうで、文化の場として女主人が個人の邸宅を「サロン」として文化人を集めた交流を行っていたようです。このサロンによって新しい考えや芸術が広がっていったので、歴史的にもその役割は大きいものだったと思われます。また、舞踊の中心地もパリに移動したそうで、舞台のドレスや工夫をこらした髪型が刊行物によって流行していったようです。

ここにはサロンの邸宅の室内を描いた絵があり、割とこじんまりした空間で芸術論議をしていた様子が伺えます。また、日本の柿右衛門様式のティーセットやロココ時代のドレスなどがあり、様々な様式を取り入れた文化的に豊かな集いであったのも分かります。ドレスはこの先にも多く展示されているので、各時代の特徴を比べて観られるのもこの展示の見どころと言えそうです。

その先には当時の髪型と帽子の様子が分かる作品もありました。逆立った髪型や巨大な帽子を被った女性像の中には、船の形(当時のフリゲート艦)の形の帽子なんかも描いてあります。こうした帽子は他の展示でも観たことがありますが、なんど見ても奇抜で驚かされます。帽子の高さは1.2mもあるらしいので背が高い女性だと背丈と合わせて高さは3m近くあったんじゃないかなw
 参考記事:マリー・アントワネット物語展 (そごう美術館)

その先にはバレエの踊り子について取り上げていて、マリー・サレという踊り子についてやバレエの衣装なんかが紹介されていました。当時のバレエの衣装は結構重そうなドレスなのが意外でした。


<第2章 日々の生活 ~家族と仕事、女性の役割>
フランス革命を経てナポレオンの時代になると社会は大きく変化していき、フェミニズム運動なども起こりました。そして小説家や批評家として活躍する女性も現れたようですが、女性は結婚して母となり家庭を護るという価値観は依然根強く、女性は辛抱していたようです。ちなみにこの頃のフランスでは子供を育てるのは乳母が一般的だったようですが、ジャン=ジャック・ルソーによって母親が直接育てるべきという教育論が唱えられたそうです。その為か絵画でも母子を描く作品が強調されるようになったようで、ここにはそうした労働や日常での女性を描いた作品などが並んでいました。

ここには「良き母親」という作品があり、三人の子供と穏やかに過ごす女性が描かれていました。恐らくこれが当時 女性に求められた理想像で、現在でも少なからずこうした姿が求められている部分があると思います。また、アンリ・ファンタン=ラトゥールによる「窓辺で刺繍をする人」では2人の姉妹が刺繍をしていて、明暗の強さも相まって静けさと親密な空気が感じられました。これも女性像として象徴的かもしれません。
さらに隣の「アイロンをかける若い女性」という作品はこちらをふと観た女性が描かれているのですが、女性の目が強くて、目が合うような感じが面白かったです。17世紀オランダ絵画からの影響があるようで、強い明暗で写実的 かつ くっきり描かれているのも好みでした。

そしてここにはオノレ・ドーミエによる「青鞜派」という版画作品が2点あります。これは小説家を目指す女性を風刺したもので、背後で子供がたらいに頭を突っ込んでいるのに気付かずに小説に夢中になっている様子や、旦那のズボンのボタン付けを拒否する様子などが描かれていて、女性の社会進出に対して批判的な感じです。ドーミエ自身は権力に対して批判的な革新派なのですが、女性に対しては古風な価値観を持っていたという意外な側面が伺える作品でした。


<第3章 「パリジェンヌ」の確立 ~憧れのスタイル>
続いてはパリジェンヌというスタイルが確立されていく時代のコーナーです。この時代の展覧会を観ているとよく出てくる話ですが、昔のパリは不衛生でゴミゴミした街だったのをナポレオン3世が1853年にジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン男爵に命じて大改造を行い、一気に近代都市へと変貌を遂げました。そうした状況を背景にファッション業界は重要な位置を占め、その働き手としても女性が活躍していくようになります。そしてパリジェンヌのスタイルは憧れの対象となり、やがて海を渡りアメリカなどにも広がっていきました。

ここには印象派の先駆けであるブーダンによる「海岸の着飾った人々」という作品があり、ドレスを着た女性たちが海岸に集まっている風景が描かれています。海岸は社交の場の雰囲気そのものといった感じですが、少しだけ海で海水浴している人の姿もあります。背景には着替え用の小さいテントがあるのですが、この頃は水着ではなく上着にズボンの姿で海に入ったらしく、それでも人目につくのを嫌がってテントごと海に入ることがあったと紹介されていました。
この辺にはコルセットしてフリフリした感じのドレスを着た女性を描いた作品も多く、まだまだ女性たちもあまり弾けてないというか、貞淑な感じもするかな。コルセットは気絶するほど締め付けるらしいので相当大変だったようです。

そしてその後にイギリス人のファッションデザイナー シャルル・フレデリック・ウォルトによって生み出されたオートクチュールについてのコーナーがあります。現在のファッションショーやモデルの活用を思いついたのもウォルトで、ウォルトによってデザイナー主導のモードが始まったと言えるくらい革新的なファッション界の巨人です。ここには手袋やサテンの靴、コルセットなどがあり 特に靴とコルセットは当時オシャレな人達がこだわったアイテムだったようです。また、着飾った人達を描いたコスチュームプリントもあり、髪型などもカタログのように描かれていました。(恐らくこうしたもので流行が広まったんでしょうね)

このコーナーには今回のポスターにもなっているジョン・シンガー・サージェントの「チャールズ・E. インチズ夫人(ルイーズ・ポメロイ)」があり、ウォルトのデザインに着想を得た赤いイブニングドレスを着た女性が描かれています。キリッとした表情と深い赤がエレガントな雰囲気を醸しているのですが、これはフランスではなくアメリカの女性をフランスの流行に合わせているようでした。まさに海を超えてもパリジェンヌが手本となっていたことが伺えます また、フランスからアメリカに帰ったウィリアム・モリス・ハントによる「マルグリット」という作品でも当時のフランス風のお下げ髪の女の子を描いていて、やや暗い象徴的な雰囲気がありつつもフランスからファッションに至るまで影響を受けている様子がよく分かりました。


<第4章 芸術をとりまく環境 ~製作者、モデル、ミューズ>
4章からは2階です。ここは女性がモデルを務めたり自身が芸術家である女性画家を取り上げたコーナーとなっていました。当時、絵画を学ぶアカデミーには女性は入ることができませんでしたが、印象派など新しい勢力に参加していたようです。

まずは印象派に参加したベルト・モリゾの静物がありました。モリゾの静物は珍しく20点ほどしかないようですが、静物も大胆なタッチで如何にも印象派風に描かれています。青い背景に器の中の白い花という爽やかな色彩で、モリゾらしい安らぐ雰囲気があったように思います。また、ここにはアメリカの印象派画家メアリー・カサットの作品もあり、ソファで本を読む女性が描かれていました。こちらも印象派そのものといった感じですが、色彩が濃厚でサテンが輝くような質感の表現などは独自性があり見事でした。
その近くにはカサットと姉と共にルーヴル美術館で観ている様子が描かれた作品もあり、そうやって絵を学んで行った様子が伺えます。

このコーナーでちょっと驚いたのはサラ・ベルナールによる女性の横顔の肖像(ブロンズ肖像)です。ミュシャなどに描かれた大女優であるサラ・ベルナール自身もこうした作品を作っていたようで、自宅にアトリエを設けて制作し、官展にまで出品していたようです。その腕前も中々で、凹凸のせいでやや老けた貴婦人に見えますが、彫刻家の作品かと思いました。ちなみにこの女性はサラ・ベルナールの恋人だった人のようです。

その先にはルノワールやロートレック、ピカソなどによる女性像が並び、ミューズとしての女性たちが紹介されています。洗濯女よりはモデルのほうが高給取りだったようですが、不安定な職業だったようです(今もそうでしょうけど) そして、ここに今回の目玉となるマネの「街の歌い手」がありました。流しの歌手がぶどうを食べてギターを持っている様子が描かれ、彼女のイヤリングはぶどうっぽい形をしています。これは代表作「草上の昼食」と同じモデルのヴィクトリーヌ・ムーランを使って描いたものですが、マネが道端でこういう女性を見つけてモデルの誘いを断られたらしいので、実際にその時の印象を込めているのかもしれません。灰色のドレスに黒い帽子という派手さはない格好ですが、たくましく生きている強さが感じられます。 なお、モデルのムーランもその後に画家として活動していたというのが最近の調査で分かったそうです。この時代の女性も懸命に頑張っていたんですね。


<第5章 モダン・シーン ~舞台、街角、スタジオ>
最後は主に1900年頃からそれ以降についてのコーナーです。1900年にパリ万国博覧会が行われた頃はキャバレーが次々と開店し、歌手や踊り子が活躍したそうです。仕事やスポーツに勤しむ女性たちも増え、活動的になった様子も絵に描かれています。ここにはジュール・シェレによるポスターや絵葉書、写真などがあり、カンカン踊りや舞台の様子、新聞売りや花売りをする女性が表されていました。中年の女性なんかは堂々としていて中々たくましいです。当時の1/3くらいの労働人口は女性だったらしいので、結構進出していたようです。
しかし女性が完全に自由だったわけではなく、女性がズボンを履けるのは自転車に乗る時だけ、しかも公園とか限られた場所だったりしたようで、女性のあるべき姿みたいなのは依然として残っていたのかもしれません。

この先にはモンパルナスのキキの写真なんかもありました。エコール・ド・パリの時代の画家達の作品によく出てくるミューズなので、この顔は覚えておくと良いかもw

そしてこの部屋の真ん中にはアールデコ期のドレスや第二次大戦後のドレスなどもあります。1960年代の宇宙をイメージしたドレスなんかもあって面白いコーナーです。第一次世界大戦で男が戦場に行った後はますます女性が社会進出していったわけですが、段々と動きやすい格好担っている様子が分かります。最後には戦後のファッション写真などもありました。



ということで多岐にわたる内容となっていました。パリジェンヌというか女性の社会進出みたいな内容にも思えましたが、パリジェンヌが単にオシャレなだけでなく逞しく生きてきたのもよく伝わりました。そのテーマが強いので好みの作品はそれほど多くなかったので満足度は普通ですが、こうした背景をご存知ない方はこの展示を見ることで近代芸術の背景も知ることができると思います。





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【静嘉堂文庫美術館】の建物と庭園

前回ご紹介した静嘉堂文庫美術館の展示を観た後、敷地内の庭園も観てきました。まだこの美術館の庭園についてご紹介したことが無かったので、写真を使ってご紹介しておこうと思います。

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 公式サイト:http://www.seikado.or.jp/about/garden.html

まずは静嘉堂文庫とは何かというそもそもの話ですが、ここは三菱財閥を発展させた岩﨑彌之助(三菱第2代目社長)とその息子の岩崎小彌太(三菱第4代目社長)の親子によって作られ、古典や古美術品を集めて保存するのが目的となっています。古美術品は6500点、古典籍は何と20万冊もあるそうで、国宝や重要文化財も多く含まれ、敷地内の美術館で展示されたりしています。一時期は国立国会図書館の支部だったようで、その後に三菱の私立図書館に戻ったのが1970年、一般公開されたのは1977年、美術館ができたのは100周年の1992年なので、こうしてこの地で展示を観られるのは長い歴史の中では割と最近です

こちらが静嘉堂文庫。
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桜井小太郎による設計で1924年に建てられました。当時のイギリス郊外住宅の様式を元にしているようです。

こちらは入口。残念ながら私は中に入ったことはありません。
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研究目的の学者さんなどは本を閲覧できるようですが、事前の予約が必要のようです。大学生などは教授の紹介状も必要なのだとか。(建物に入れるのかも分かりません)

続いては美術館の裏手にある庭園を観てきました。

美術館には展望室もあって見晴らしの良い風景が広がります。
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眺めだけで良いなら美術館の中から楽しめますw 冬は寒いせいか庭園まで来る人は少数派でした。

庭園は斜面に広がる感じです。5~10分くらいで観られるくらい。
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こんな寒い中でも綺麗な花を見ることができます。

2月の上旬でしたが、この日は水仙の花が沢山咲いていました。
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辺りに爽やかな香りが漂っていました。水仙は見た目も香りも良いし、こんな寒い時期に花を咲かす貴重な植物ですね。

こちらは紅梅。勾配に紅梅なんて親父ギャグみたいなことを考えてましたw
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白梅もあるので、紅白揃ってめでたい感じ。幹や枝のうねり具合が琳派の作品みたいで面白い。

花のアップ。
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梅は四君子と呼ばれるうちの1つですが(梅、蘭、竹、菊)、その香りの清廉さなどもその理由の1つだったと記憶しています。

庭から見上げた美術館。
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割とアップダウンがあるのでいい運動になりますw

続いて、美術館の正面左手方向にある岩﨑家廟を観てきました。
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こちらは裏手。教会のようで教会ではない独特の形をしています。

こちらが正面から観た様子。大きな香炉みたいなのがあって、西洋風と東洋風が合わさったような不思議な場所です。
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設計したのはジョサイア・コンドルで、この時代の三菱財閥の建物と言えばジョサイア・コンドルです。実際にここはお墓となっているようなので、辺りには静寂が漂います。ここ最近、三菱財閥の建物めぐりをしている気がしないでもないw
 参考記事:
  山のホテルと箱根神社の写真 (箱根編)
  三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」 (三菱一号館美術館)

ということで、15分くらいで観られる庭園ですが、歴史ある建物と真冬でも咲いている花を楽しむことができました。ちなみに次回の展示「酒器の美に酔う」では曜変天目も出てくるようです。(期間中に展示替えがあるようなので全期間で観られるかは不明) この美術館に訪れる際にはお庭も見学することをお勧めします。
 展覧会名:酒器の美に酔う
 会期:2018年4月24日~6月17日


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歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~ 【静嘉堂文庫美術館】

10日ほど前の土曜日に世田谷の静嘉堂文庫美術館で「歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~」を観てきました。この展示は前期・後期に会期が分かれていて、私が観たのは前期の内容でした。

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【展覧名】
 歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~ 

【公式サイト】
 http://www.seikado.or.jp/exhibition/index.html 

【会場】静嘉堂文庫美術館
【最寄】用賀駅

【会期】
 <前期>2018年1月20日(土)~2月25日(日)
 <後期>2018年2月27日(火)~3月25日(日)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
予想以上にお客さんが多くてやや混んでいる感じもしましたが、だいたい自分のペースで鑑賞することができました。

さて、この展示は江戸時代の浮世絵師 歌川国貞についての展示となっています。歌川国貞は59歳の時に師の名前を継いで三代歌川豊国を名乗ったので、三代歌川豊国の名前で紹介している美術館も多い気がしますが、いずれの時代も美人画を得意として数多くの作品を残しています。今回の展示でも美人画を中心にそれ以外の題材の作品もありましたので、簡単にいくつか気に入った作品をご紹介しようと思います。(作品リストに年数が書いていないので当記事の中では歌川国貞の名前でで統一しておきますが、豊国時代の作品もあります)

歌川国貞 「今様見立士農工商 職人」「今様見立士農工商 商人」
まず冒頭で目を引いたのがそれぞれ3枚続のこの2つの作品です。錦絵作りを行う様子と販売する様子が描かれているのですが、全て女性となっています。鮮やかな画中画や美人達の生き生きとした姿が華やかで、3枚続きならではの大画面の見栄えもありました。

その後には化粧をしたり子供を風呂に入れる女性など、様々な女性像が並んでいます。こうした日常風景も実は何かの見立てだったりしますが、当時の風俗が伝わってくると共に親密さが感じられます。こうした画題は後に西洋の印象派の画家たちも描くようになったのを考えると、浮世絵からの影響は表現だけでなく画題にも及んでいたのではないかと思います。

歌川国貞 「今様化粧鏡」(シリーズ作品)
こちらは「合わせ鏡」、「眉かくし」、「牡丹刷毛」、「眉毛抜き」、「房楊枝」、「鉄漿つけ」のシリーズ6点が並んでいました。いずれも手鏡の中に反射して映る女性像といった感じの構図となっているのが面白くて、お歯黒や眉毛抜きといったお化粧している姿が描かれています。特に「合わせ鏡」は鏡を合わせて女性の背中側まで描かれているという変わった構図で、ウィットに富んだ作品となっていました。
 参考リンク:今風化粧鏡(牡丹刷毛)

この近くにはポーラ美術館所蔵の日本髪の雛形や髪飾りなどが展示されていました。昔は髪型や化粧で身分が分かったりしたみたいなので、この辺が詳しくなると浮世絵の人物を見る時に面白くなると思います。

歌川国貞 「娼家内証花見図」
こちらも3枚続きの大画面で、2階建ての屋内の様子が描かれています。恐らく花魁たちだと思うのですが、女性たちの多く描かれ喧騒が聞こえてきそうなくらいに動きのあるポーズをしています。そしてこの作品で面白いのが非常に強い遠近法を使っている点で、消失点が分かるような感じです。その効果で広々した家だという印象を受け、いち早くそうした西洋絵画の手法を取り入れているように思えました。

歌川国貞 「訛織当世島(くわえ楊枝)」「訛織当世島(金花糖)」
こちらは2枚セットで展示されていました。くわえ楊枝のほうはタイトル通り楊枝を加えた粋な女性、金花糖は子供と金魚を観ている女性が描かれているのですが、この両作品で面白いのは背景です。縦に波線のようなものが描かれていて、その縞模様がモダンでアールデコの建物の壁紙などを予見しているのような雰囲気です。どうしてこうした背景にしたかは分かりませんが、かなり洒落た印象になっていて好みでした。

歌川国貞・歌川広重 「風流源氏夜の庭」
こちらは既に三代豊国の時代だったと思います。遠近法や明暗の表現が使われた山と川の夜の風景を背景に、行灯を持つ女性と見送るような人物が描かれています。やや人物が大きすぎる感じもしますが、こうした表現も西洋画的なものを感じます。この作品は『偐紫田舎源氏』に題材したもので、歌川国貞はこの本の挿絵を手掛けたことで有名です。

この近くには源氏絵のコーナーがありました。

歌川国貞・歌川広重 「双筆五十三次」(シリーズ作品)
双筆というのは2人の合作という意味で、このシリーズでは人物を歌川国貞(三代豊国)、背景を歌川広重が担当しています。シリーズのうち10点ほど展示されていたのですが、人物と風景はいずれも独立した画面となっているものの、絵の中の土地に合わせた人物を描いているようでした。完全な合作ではないですが2人の巨匠のコラボぶりが面白いです。人物と風景の何が関連しているかは解説を読まないと分かりませんがw
 参考リンク:双筆五十三次

歌川国貞 「仁木弾正左衛門直則 五代目松本幸四郎 秋野亭錦升 後 錦紅」
こちらは今回のポスターにもなっている目玉作品です。鼻の高い役者が横向きで描かれ、肩から上しかない大首絵となっています。引き締まって凛々しい表情には緊張感があり、ちょっと悪そうな顔をしていましたw この横向きの顔というのもルネサンス(とその影響を受けた)肖像以外で見る機会は少ないので面白い構図でした

歌川国貞 「豊国漫画図絵 袴垂保輔」「豊国漫画図絵 将軍太郎良門」
こちらは2点セットで並んでいました。いずれも悪党を役者の見立てで描いたシリーズで、口をへの字に曲げて見栄を切るような憎たらしい表情をしていますw 個性的な雰囲気がある為か、こうした悪党を描いたシリーズは当時人気があったようです。

歌川国貞 「芝居町 新吉原 風俗絵鑑」
こちらは版画ではなく肉筆画。吉原の芝居小屋を描いたもので、大パノラマで芝居小屋の中のお客さんまでも描かれています。お客さんは何かを食べたり喧嘩したりしていて、お前ら芝居観てないだろ?wとツッコミを入れながら観てきましたw 配達している人なんかもいて、現代で言えば劇場よりは野球観戦のほうが雰囲気が近いかも。とにかく多くの人が描かれていて、圧巻の作品です。


ということで、それほど広くない会場に多くの作品が並んでいました。しかも発色の良い摺りが多かったので、満足度の高い内容でした。艶やかな美人が沢山観られる展示ですので、美術初心者でも楽しめる内容だと思います。


おまけ:
静嘉堂文庫美術館に行く前に、以前ご紹介した西庵カフェでお蕎麦を食べてきました。静嘉堂文庫の近くにあるしアートの図録なんかもおいてあるお店なので、この美術館に行く方にお勧めのお店です。
 参考記事:西庵カフェ 【用賀界隈のお店】

西庵カフェの外観
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洒落た雰囲気で時期によってはお花も咲いています。

内装はこんな感じ。
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静かな空間で美術展の図録なんかを観ながらくつろげました。

こちらはかき揚げ蕎麦の大盛り
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蕎麦もツユもかき揚げも美味しいですw この後デザートも頼んでそれも美味しいので何を食べても美味しいお店だろうと思いますw


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クインテットIV 五つ星の作家たち 【東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館】

今日は写真多めです。1週間程ほど前の祝日に新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「クインテットIV 五つ星の作家たち」を観てきました。この展示は既に終了してしまいましたが、撮影可能となっていたので写真を使ってご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 クインテットIV 五つ星の作家たち

【公式サイト】
 http://www.sjnk-museum.org/program/past/5165.html

【会場】東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
【最寄】新宿駅

【会期】2018年1月13日(土)~2月18日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんがいましたが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はこの美術館が力を入れている現代画家を紹介するもので、今までも同じ名前で開催されたことがあります。4回目となる今回は「具象と抽象の狭間」をテーマに将来有望な5人の画家の作品を合わせて80点ほど展示していて、1人ずつ章分けされていました。詳しくは各人ごとに写真を使ってご紹介していこうと思います。


<船井美佐>
まずは1974年生まれで日本画も学んでいた船井美佐 氏のコーナーです。

船井美佐 「womb-世界の内側と外側はどちらが 内側で外側なのか」
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早速、大型の作品がありました。何を意味しているかは分かりませんが、花のような星雲のようなものが軽やかな色彩で表されていて目に鮮やかです。

船井美佐 「Hole/桃源郷/境界/絵画/眼底」「楽園/境界」「Hole/Trans rabbit, Kaiba」「まる・さんかく・しかく」
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船井氏の展示スペースはこんな感じでした。絵画だけでなく鳥や動物を象った立体作品や、鏡を使った作品などもあって部屋全体に独特のリズムがありました。

船井美佐 「Strokes/猿」「Strokes/馬」
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こちらも動物をモチーフとしていますが、先程の絵とはだいぶ違う雰囲気に思えました。具象と抽象を自在に使いこなしている感じがします。


<室井公美子>
続いては1975年生まれで大学で洋画の講師もやっている室井公美子 氏のコーナーです。

室井公美子 「Psyche (プシュケー)」
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プシュケーを日本語にすると命のことですが、タイトルの意味とこの絵にどのような関係性があるのかは分かりません。滴ったり飛び散るような表現が独特で勢いが感じられました。

室井公美子 「Santa Cecilia (聖チェチェリア)」
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聖チェチリアは殉教した聖女で、音楽を奏でる姿などが題材とされます。この絵の右側に人影っぽく見えるのがそうなのかな?と考えながら観ていました。

室井公美子 「Anima (アニマ)」
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アニマも命という意味があります。こちらは一層激しく滴っていますが、色の取り合わせが好みでした。右上辺りのは顔かな??


<竹中美幸>
続いては1976年生まれで最近数々の賞を受賞している多摩美大出身の竹中美幸 氏のコーナーです。

竹中美幸 「titles 2017-1」
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こちらの作品はフィルムに色をつけて表しています。透明感があって爽やかな印象を受けました。

フィルムのアップ。
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昔から透明なものが好きだったそうですが、キャンバスではなくフィルムを使うという発想が面白い。

竹中美幸 「内側の気配」「外側の気配」
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こちらは水彩やパステルを使った作品。上の絵から下の絵が抜け出したような感じになっていて、これも発想の面白さがあります。色彩もやはり軽やかです。

竹中美幸 「何処でもないどこか(境界に浮かぶ橋)」
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こちらは何と樹脂を使った作品。ゼリー状のものが張り付いて模様を作っています。

樹脂部分のアップ
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部屋の光も反射していて輝くような透明感でした。

この隣には雨滴のように見える同様の樹脂の作品もありました。素材の選び方も自由な感じ。


<田中みぎわ>
続いては1974年生まれで東京藝術大学で日本画を学んだ田中みぎわ 氏のコーナーです。

田中みぎわ 「夜長の雨」
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墨や胡粉を使って烟るような湿気を表しているように思います。モノクロで静かな情景は長谷川等伯に通じるものを感じました。

こちらは先程の絵のアップ。
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かなり細部まで繊細かつ緻密に描かれています。近くで見たり離れて観たりすると印象が変わりました。

田中みぎわ 「やさしい雨」
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こちらはかなりの大型作品。雨の降る海を観ているような気分になれました。

この他にも月光を描いた作品や川の情景など、どこか懐かしさと叙情性のある作品が並んでいました。


<青木恵美子>
最後は1976年生まれで昨年にはFACE展グランプリやVACA展でも活躍していた青木恵美子 氏のコーナーです。

青木恵美子 「夏色」
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強い色彩ですが、色をぼかしているせいかちょっとやわらかい印象も受けました。

青木恵美子 「INFINITY Blue No6」
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こちらは非常に厚塗りされていて彫刻作品のような立体感のある絵画です。描いているのは花だと思いますが、色の強さと相まって力強い生命力が感じられました。

斜めから見るとその盛り上がり具合がよく分かります。
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盛り上がりが本当に花びらのようになっています。

青以外にも紫やピンクなどのカラーバリエーションもありました。

青木恵美子 「INFINITY Colors」
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こちらは小型にしたバージョン。カラーバリエーションも様々でした。


ということで、5人とも同年代の女性でしたがそれぞれ異なる個性を楽しむことができました。抽象画は難しいのでもうちょっと制作意図を知りたかったかな。とは言え、今回の展示の趣旨の通りまだまだこれからの活躍が楽しみな方たちですので、今後もこうした機会があれば他の作品も観てみたいと思います。もう終わってしまいましたが印象深い展示でした。





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竹村京 ーどの瞬間が一番ワクワクする? 【ポーラ美術館 アトリウム ギャラリー】

今回で箱根編は最終回です。前回ご紹介したポーラ美術館の常設を観た後、アトリウム ギャラリーで「竹村京 ーどの瞬間が一番ワクワクする?」を観てきました。この展示も撮影可能でしたので写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 竹村京 ーどの瞬間が一番ワクワクする?

【公式サイト】
 http://www.polamuseum.or.jp/hiraku_project/02/
 http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20180113ag01/ 

【会場】ポーラ美術館 アトリウム ギャラリー
【最寄】なし

【会期】2018年1月13日(土)~3月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は竹村京 氏という1975年生まれの女性アーティストの個展となっています。この方ポーラ美術振興財団の在外研究員としてベルリンで研修をしていたそうで、写真やドローイングの上に刺繍を施す手法が特徴のようです。展覧会は20点程度と小規模でしたが、その特徴がよく分かる内容となっていましたので写真を使ってご紹介しようと思います。

こちらはトランプらしき作品。
DSC00024.jpg
よく見ると手描きみたいな部分と元々の絵柄のような部分があるのでコピーした上からドローイングしてるのかな? ちょっと観ただけでは意図が分からないので解説が欲しかったw

こちらはトランプの上に刺繍が施されている作品。
DSC00029.jpg
これは解説によるとドイツ製のトランプを地にオーストリア製のトランプの図柄を日本製の絹糸で刺繍しているそうで、時代性や国籍の組み合わせの偶然性を表しているようです。ハートのマークの刺繍がポップで楽しげな印象に思えました。

この辺りにはこうしたトランプの作品が並び「Playing Cards 2017,Austrian Cards on German Cards」というタイトルで24点あるようです。

こちらもトランプに刺繍されています。
DSC00031.jpg
ハートのキングのはずが刺繍はクラブになっているようなw 遊び心を感じます。

こちらはタロットかと思いましたがやはりトランプかな?
DSC00033.jpg
よく見ると下地とずれて上から描いたような複雑な構成となっています。

こちらは下地のトランプの草花文と刺繍が一体化しているような作品。
DSC00035.jpg
離れて見るとどこから絵なのかちょっと分からないくらい自然な感じに見えました。

こちらは「Playing Dominos in J.Cityのためのドローイング」という作品。
DSC00039.jpg
このカードみたいなのはインドネシアのジョグジャカルタで流行っているドミノというカードゲームらしく、現地の人と遊んだ時の配置を日本の絹糸で縫いとめたそうです。楽しんだ瞬間を縫い止めて取っておくような作品に思えて今回の展示のタイトルはそういう意味なのかな?と考えながら観ていました。

こちらは「May I open the book?」という作品
DSC00058.jpg
ちょうど節分のちょっと前頃に行ったので、豆まきの鬼かな?と思いましたが詳細は不明。背景の子供たちの写真と相まって、鬼なのに可愛らしい楽しげな雰囲気がありました。

こちらも背景に子供の写真を使った作品。
DSC00056.jpg
下地のポーズを活かして手に持った本がめくれて飛び出したような遊び心が感じられます。左の子も大きな本を開いているように見えました。


ということで、小展示でしたがユニークな作品が並ぶ内容となっていました。もうちょっとキャプションがあったほうが楽しめるようにも思えますが、トランプの刺繍なんかは単純に面白い作品だったように思います。気軽に楽しむことができるので、ポーラ美術館に行く機会があったらアトリウム ギャラリーも覗いてみることをお勧めします。



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