関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

東京スケイプ Into the City 【世田谷美術館】

前回ご紹介した世田谷美術館のレストランで食事を摂った後、特別展とミュージアムコレクション展を観てきました。まずは会期末が迫っている「ミュージアム コレクションⅡ 東京スケイプ Into the City」を先にご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 ミュージアム コレクションⅡ
 東京スケイプ Into the City

【公式サイト】
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection/detail.php?id=col00101

【会場】世田谷美術館 2階展示室
【最寄】用賀駅

【会期】2018年7月21日(土)~10月21日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は世田谷美術館のコレクションの中から「東京の街」をテーマにした写真を紹介するものとなっています。110点近くも並んでいて、一口に東京と言っても時代も違えば視点も異なる様々な作品となっていました。1930年代から2000年代まで年代ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<I:1930s~>
まずは戦前・戦中のコーナーです。ここには時代の影を感じさせるような作品もありました。

7 濱谷浩 「芸者を乗せた人力車」 1938年
こちらは人力車を引く帽子の男性を撮った写真です。足元がボケていて、前傾姿勢と相まってスピード感が感じられます。まだこの時代には人力車が普通に使われていたんですね。乗っている芸者の表情は分かりませんでしたが、当時のありふれた光景を上手く切り取ったような作品でした。

10 濱谷浩 「切り絵師」 1939年 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは建物の柱にもたれ掛かって切り絵を作る帽子に丸メガネの男性を撮った写真です。手前には人物を象った切り絵が並んでいて、パフォーマンスしながら売るスタイルかな? 白黒の陰影が深く、スラリとした出で立ちがダンディな一方、一人ぼっちの哀愁漂う雰囲気もあって都会の孤独や当時の社会の様子まで思わせる作品でした。

14 桑原甲子雄 「麹町区馬場先門2.26事件当時(千代田区)[東京昭和十一年]より」 1936年
こちらは2.26事件当時の写真で、手前に鉄条網が張られ、奥には雪の積もった皇居の馬場先門辺りの光景が広がっています。そして中央には一際大きな太陽があり、画面右側には帽子を被った2人の人物のシルエットが強い陰影となっています。この太陽と2人の影が何とも象徴的で不穏さを感じさせ、寒々とした光景と鉄条網が事件当時の緊迫感を伝えているように思いました。ドラマティックで歴史的にも興味深い写真です。

この近くには戦前・戦中の風景写真もありました。ゴミゴミしていたり、整然としていたり 同じ東京でもえらく雰囲気が違って観えます。世田谷のボロ市の写真なんかもあって、流石は地元の美術館ですねw


<II.1940s~1950s>
続いては戦争色が濃い1940年代と戦後間もない1950年代のコーナーです。

37 師岡宏次 「強制疎開」 1945年
こちらはバラバラに壊れた建物の残骸のある街角を撮った写真で、近くの銅像の手が折れているなど 恐らく爆撃を受けた後だと思われます。その脇をモンペ姿の女性たちが荷物を持って疎開していく様子となっていて、街自体はモダンな雰囲気なのに戦争の影響が強く感じられました。

33 師岡宏次 「銀座爆撃のあと(2)」 1945年
こちらは銀座和光の向かいの建物の上から撮った銀座の様子で、あちこちが歯抜けのように爆撃されて瓦礫の山となっています。それでも多くの人が行き交い、市電が走っているなど割と活気があるのが驚きです。制作年だけだと終戦間際か終戦後か分かりませんが、当時の日本人の逞しさを感じる写真となっていました。

この辺には銀座の焼け跡を撮った写真が並んでいました。これらも歴史的資料としても貴重だと思われます。

42 師岡宏次 「深大寺そば [想い出の武蔵野]より」 1955年 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは深大寺のお蕎麦屋さんの店先でお蕎麦を食べている女性を撮った白黒写真です。その横で、鶏が女性の方を向いて立っていて まるでお蕎麦を食べるのを観ているような光景となっていますw 1955年にもなると戦争の時代から徐々に遠ざかって平和でのんびりした雰囲気が漂っていました。ちょっとほっこりする写真です。


<III.1960s~1970s>
続いては高度成長期のコーナーです。ここには現在以上に猛烈だった時代を感じさせる作品が並んでいました。

52 桑原甲子雄 「渋谷駅 [東京戦後]より」 1965年 ★こちらで観られます(pdf)
今回のポスターになっている白黒写真で、渋谷駅の東口辺りを2階くらいから見渡す光景となっています。すぐ手前には都電が何本もいて、奥にはバスが4~5台止まっているなど大量輸送の時代を感じさせます。奥にはちょっと前に無くなった東急のホームもあって懐かしさもあるかなw 沢山の人がいて賑わっているようですが、どこか寂しい風景のようにも思えました。 それにしても、何故か画面の左上辺りに窓枠みたいな黒い線があるのが非常に目を引いて、窓から外を覗いているようなアクセントになっていました。

58 桑原甲子雄 「池袋駅前 [東京戦後]より」 1966年
こちらは池袋駅前の都電の駅から通りを撮った白黒写真で、車が渋滞している様子となっています。そして背景の建物は様々な広告や看板がぎっしりと詰まっていて、文字で看板が埋まりそうなほど中々の密度と圧迫感ですw 構図も面白くて、都市の過密ぶりを感じさせました。


<IV.1980s~>
続いてはバブル時代に向かっていく1980年代のコーナーです。ここはまたこれまでとは違った雰囲気の都市風景となっていました。

69 宮本隆司 「日比谷映画劇場 [建築の黙示録]より」1984年
こちらは劇場の取り壊し現場の白黒写真で、ショベルカーが劇場内に入り込んで、周りは瓦礫だらけとなっています。劇場という楽しい空間が破壊されていくのは哀愁を感じると共に 組み合わせが非日常的なせいかシュールさも感じられました。
この作品はシリーズのようで何点かあり、古い建物をぶっ壊す様子が写っていました。建物好きとしては古い建物はなるべく大事にして欲しいものですが…。

87 平嶋彰彦 「住吉一丁目・同潤会猿江裏町アパート」 1986年 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは螺旋階段の上から下を見下ろすような構図の白黒写真です。あちこちがボロボロになっているのも分かるのですが、手すりと遠近感によって目の形のように見えるのが面白く、視点と着想が素晴らしい作品でした。


<V.Toward 1990s>
続いてはバブル絶頂から崩壊後の1990年代のコーナーです。(と言っても1988年の作品もこのコーナーにあります)

108 荒木経惟 「[東京物語] より」 1988年 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは白黒のスナップショットのような作品です。人のいない寂しげな公園や、みんな横を向いていて無関心な感じの人々を撮った作品があり、都会の空虚さが表れているように思いました。
荒木経惟 氏は他にも奥さんが死に向かっている頃の「冬へ」などもありました。
 参考記事:
  荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017- (東京都写真美術館)
  荒木経惟 写狂老人A (東京オペラシティアートギャラリー)


<VI.2000s and then>
最後は2000年代のコーナーです。ここは割と現在に近い光景ですが、もう2000年代も結構遠ざかって来てますね…。

111 勝又公仁彦 「Dwelling」 2008年 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは住宅街の行き止まりの道を撮ったカラー写真が16枚並んだ作品です。1枚1枚はよくある風景なのですが、同じような風景が16枚もセットになると風景に個性が無くなってテンプレートのように思えてきますw いずれも人が1人もいないこともあって、生活感溢れるはずの住宅街が無機質なもののように観えてくるのも面白かったです。
 参考記事:写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち- (21_21 DESIGN SIGHT)


ということで、予想以上に面白い内容でした。当時の情景を伝えるだけでなく各写真家の視点や構図も素晴らしく、個性が感じられました。もうすぐ会期末となりますので、気になる方はすぐにでもどうぞ。


おまけ:
写真の展示の後に小コーナーで同時開催で「濱田窯の系譜-濱田晋作 濱田友緒展」も開催していました。

<濱田窯の系譜-濱田晋作 濱田友緒展>
 【会期】2018年7月21日(土)~10月21日(日)

こちらは濱田晋作4点・濱田友緒16点の陶磁器が並んでいました。色・形ともに伝統と革新の両面が感じられて、少数ながらも見応えがありました。



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ル・ジャルダン (2018年10月)【世田谷美術館のお店】

先週の日曜日に世田谷美術館に行ってきたのですが、その際にまずは併設のレストランでお昼を摂りました。このお店は以前もご紹介したことがありますが、だいぶ前なので改めて記事にしておこうと思います。

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【店名】
 ル・ジャルダン

【ジャンル】
 レストラン・カフェ

【公式サイト】
 http://www.setagaya.co.jp/le_jardin/
 食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131707/13013764/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 用賀駅

【近くの美術館】
 世田谷美術館(館内のレストランです)

【この日にかかった1人の費用】
 2200円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
この日は美術館自体がそれほど混んでいなかったこともあって、すぐに入ることが出来ました。(人気の展示の時は結構混んでる時もあります。)

さて、このお店は世田谷美術館の奥の方にあるレストランで、14時以降はカフェとなります。(公式サイトでは14時半からと書いてあります) さらに夜はディナータイムもあるそうで、ディナーは予約制のようです。以前にご紹介した際はカフェタイムについてご紹介していたのですが、この日はレストランとして利用してみました。
 参考記事:ル・ジャルダン (世田谷美術館のお店)

美術館から長い通路を抜けて行くことが多いけど、お店のすぐ横からも中に入ることができます。
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美術館に併設されていることもあって2017年7月~2018年1月の改修の際には休業していたようです。

中はこんな感じ。全面ガラス張りで非常に開放感があります。
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この日は日差しが強いということで、やや内側の席を勧めてくれました。心配りが素晴らしいお店です。

外の景色はこんな感じ。
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公園を眺めながらランチを摂りました。

この日のランチは2200円のコースのみとなっていました。以前は違うのもあったように記憶しているので、時期によって変わるのかも。たまにコラボメニューとかやってるし。

こちらはコースのサラダ。
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まあ、これは普通でしたw ちょっとドレッシングが多すぎて酸っぱいかなw

続いてこちらは前菜。多分、前菜の内容も固定ではないと思います。
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赤いのはちょっと忘れましたがリンゴだったかな。真ん中にある木の葉みたいなのはイカスミのサブレです。

サブレの下にはイカが隠れていました。
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黄色いのはカレー風味のソースです。イカは生臭さが一切なく、ソースに馴染んで美味しかったです。

付け合せのパン。
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こちらもサクサクした食感で温かくて美味しかったです。ついでにカレーやココアを塗って楽しめました。

メインは魚か肉を選べたので肉にしました。ラムのハンバーグです。
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こちらは濃厚なラムの味と香りが口に広がって非常に美味しかったです。ラム好きにはたまりません。結構、肉の食感も楽しめるしソースも肉の味を引き立てていました。

食後にはコーヒーもつきました。
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コーヒーはスッキリして軽やかな感じです。苦味も少なめで、まろやかで飲みやすかったです。


ということで、ちょっと高めのランチでしたが それに見合った内容で今回もクオリティの高い料理と雰囲気を楽しんできました。この日は晴れて気持ちも良かったので、心地よく過ごすことができました。店員さんの心配りも細やかで素晴らしかったです。この後、世田谷美術館の特別展と常設展を観てきましたので、次回以降はそれらについてご紹介しようと思います。


おまけ:
レストランから美術館に向かう回廊がちょっと面白い光景なので、写真を撮ってみました。
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一点透視図法の見本みたいな光景ですw

美術館からレストラン方向。
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ここの椅子で外を眺めるのも良いかも。


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横山操展 ~アトリエより~ 【三鷹市美術ギャラリー】

10日ほど前の日曜日に三鷹市美術ギャラリーで「横山操展 ~アトリエより~」を観てきました。この展示は既に終了していますが、今後の参考になると思いますので記事にしておこうと思います。

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【展覧名】
 横山操展 ~アトリエより~

【公式サイト】
 http://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/20180804/

【会場】三鷹市美術ギャラリー
【最寄】三鷹駅

【会期】2018年8月4日(土) ~ 10月14日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は現代の日本画家 横山操の個展となっていました。横山操は盟友の加山又造にも影響を与えた個性的かつ現代的な作風で、加山又造が特に好きな私としては是非観ておきたい展示でした。しかし完成作はそれほどなく、素描やスケッチ、製作中の作品などが多めで「~アトリエより~」というサブタイトルはそれを表していたのかも…。
まず簡単に横山操についてですが、1920年に新潟県西蒲原郡吉田町(現・燕市)に生まれ、14歳で上京し文京区の図案社などで働きながら画家を目指しはじめました。その後20歳で召集され、中国各地を転戦した後にシベリアで抑留されて復員したのは1950年の戦後だったようです。戦後は川端龍子の青龍社を中心に大画面の日本画を描くと共に、故郷の山並みや夕景を叙情的に表現したそうです。復員の翌年に結婚して1952年には娘を授かり、都内を移り住んでいたようで、1959年には三鷹に自宅・アトリエを建てました。何故かその際に過去の作品の大半を焼却してしまったようです…。何かの覚悟かもしれませんが、その後はますます活躍したそうで、1966年には多摩美術大学日本画科教授に就任し 後進の育成にも力を注ぎます。(今回の展示でも多摩美術大学の出品が結構あったのはその所縁だと思われます) しかし教授就任の5年後の1971年に脳卒中で倒れ、半身不随で利き腕の右手が使えなくなってしまいます。それでもリハビリをして左手で描くなど再び歩み始めましたが、1973年に再び脳卒中に倒れ、亡くなったそうです。
と、そんな波乱に満ちた人生を送られて画風も結構変わっていたりしますが 展覧会は特に章分けされる訳ではなく、概ね時代順となっているようでした(制作年不明も多数あります) 簡単に会場の様子と気に入った作品をご紹介していこうと思います。

1 横山操 「梅に鶯」 ★こちらで観られます
こちらは復員の翌年に描かれたもので、花咲く梅にとまる鶯が描かれています。鶯は写実的ですが、梅の枝はデフォルメされていて琳派風に思えます。所々に滲みを活かしたたらし込みのような技法も見受けられるかな。小品ながら春の温かみや期待を感じさせるような作品でした。

3 横山操 「舞妓」
こちらは金と銀の扇の間に白い顔の舞妓の顔が描かれた作品です。美人ですが強い目をしていて緊張感のある面持ちに思えるかな。金や銀の部分は盛り上がって ざらついた質感となっていて、舞妓も太めの輪郭を使って描かれるなど全体的に力強い表現となっていました。

この辺は舞妓をモチーフにした作品が並び、スケッチなどもありました。その少し先には「操と基子夫人による手作りの年譜」というスクラップブックのようなものがあり、横山操自身と奥さんがまとめた受賞や批評の新聞記事をまとめたような内容となっていました。

70 横山操 「未完 3」
こちらは富士山の山頂付近を描いた作品で、かなり太い黒で山の稜線を型どっています。細かい粒のようなものが見えるほどマチエールがざらついていて、かなりの重厚感があって もはや油彩にしか思えません。未完とのことですが、堂々たる風格を漂わせる作品でした。
同様の「未完 4」も赤い富士を描いていて見事でした。未完の富士は4点くらいあったかな。

この辺にはイーゼル、定規、パレットナイフ、筆、箔、硯、受賞メダルなど制作や受賞に関する品なども並んでいました。

21 横山操 「春夏秋冬屏風」
こちらは六曲一隻の屏風で、20cmくらいの太さの筆跡で「春夏秋冬」と左上から右下にかけて下がっていくように書かれています。かすれたり滲んだり飛び散ったり と かなり豪快な印象です。非常に勢いを感じさせる筆跡でした。

72 横山操 「小説「石版東京図絵(作:永井龍男)」挿絵原画」
こちらは1967年に毎日新聞で連載された小説の挿絵で、明治~大正の東京の街の暮らしや 大震災、戦後に街が変わっていく様子など主人公の関由太郎の成長と共に描くストーリーのようです。非常にシンプルなモノクロの挿絵ですが、当時の情感が漂い どこか郷愁を誘います。また、絵の端々には指示書きのようなものがあって、「中心より左の位置にする」といったことやサイズ等が書かれていました。 物語の最初の辺りは明治42年の国技館や落成当時の帝劇などの瀟洒な建物の絵があって、今とは違った豪華さがあります。一方で当時の子供たちの素朴な可愛さが伝わる絵もあったりします。また、大震災の火事や人々が逃げ惑う様子、焼け野原となったシーンなどは恐ろしさやその後の寂しさを見事に表現していました。その後はしばらく長閑な雰囲気が漂っていて、途中から女性キャラも加わって人間模様を感じさせるような挿絵となっていました。話を知らずに絵だけ観てると中身が気になってきますw

この近くには当時の小説の本や新聞なんかもありました。その後は外国の風景のスケッチのコーナーです。中国・イタリア・フランスなどの絵が並んでいました。

41 横山操 「北京天安門」
こちらは北京の天安門を描いたスケッチです。フリーハンドで描いていてやや右下下がりになっているように思えますが威圧的な構えの雰囲気がよく伝わってきます。画面には1人も人がいない静けさが漂っているのもそれを感じさせる要因かもしれません。

その先には日本の風景のスケッチもいくつかありました。

33,34 横山操 「紅梅図屏風」「白梅図屏風」 ★こちらで観られます
今回の展示の一番の見どころはこれかな。六曲一双の屏風で、左隻は銀地に白い花を咲かせる白梅図、右隻は金地に赤い花を咲かせる紅梅図となっています。何故か紅梅図の左から三番目の曲は欠けているのが残念。題材や滲みを使っている点などは琳派風ですが、紅梅図は色が強く花がかなり大きく感じられ、赤い花の中には無数の黄色い雄蕊が描かれているのが絢爛さを感じさせます。一方の白梅は黒々とした木と白い花が静けさを漂わせ、さらにその上からモヤのように白を塗り重ねていて、霞むような幻想性がありました。対比的で非常に面白い作品で見応えがありました。

その後は再びスケッチ作品が並んでいました。農家や町並み、木々などを描いていて輪郭の強さが目を引きました。

82 横山操 「夜の教会」
これもコンテによるスケッチで、縦の画面の下の方に明かりが灯る三角屋根の家のシルエットがあり、屋根に十字架が載っています。背景の空が大きく取られ、黒のグラデーションで夕暮れを表していて、シンプルだけど非常にしんみりとした雰囲気があり好みでした。力強い作品があったと思えばこういう繊細さもあるのが面白いです。

この近くにあった「月明河岸」も叙情的だったし、繊細な表現の作風もかなり良いです。
その先には顔料や朱肉、奥さんの墨跡や娘さんの水彩画なんかもありました。娘さんの絵も琳派的な雰囲気の題材で、趣味の範囲とは思えない出来でした。

92 横山操 「茜」
こちらは中央に川が流れる野原を描いたもので、枯れ木が立ち並び背景には夕暮れの山も描かれています。稜線と木以外はあまり輪郭が使われていない柔らかめの表現となっていて、これまでの作品とはちょっと趣が違うようにも感じたかな。特に夕日の色合いが寂しさと神々しさを感じさせて、また違った魅力となっていました。
この近くの「むさし乃」(★こちらで観られます)も赤い滲みを使っていて、幻想的な雰囲気でした。最晩年で画風が変わったのかも。


ということで、もうちょっと完成した作品を観てみたかったというのが正直なところですが、それでも風情ある絵が多かったのが良かったです。既に終わってしまいましたが記憶に留めておきたい画家です。


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ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ 【パナソニック 汐留ミュージアム】

前回ご紹介した展示を観る前に汐留にあるパナソニック 汐留ミュージアムで「ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」を観てきました。

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【展覧名】
 開館15周年特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ

【公式サイト】
 https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/18/180929/

【会場】パナソニック 汐留ミュージアム
【最寄】新橋駅/汐留駅

【会期】2018年9月29日(土)~12月9日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんがいて賑わっていましたが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は非常に厚い画面が個性的なジョルジュ・ルオーに関する展示で、特にキリスト教の主題を集めた内容となっています。このパナソニック 汐留ミュージアムはルオーのコレクションを持っていることもあって、ちょくちょくルオーの展示が開催されますが、今回は聖なる芸術の意味とその現代性(モデルニテ)を問うということで、ヴァチカン美術館を始めとした国内外90点もの宗教画が集まっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、ルオーの画業全体については今回の展示では特に紹介されていませんでしたので、以前の記事などを参照して頂ければと思います。

 参考記事:
  パリ・ルオー財団特別企画展 I LOVE CIRCUS (パナソニック 汐留ミュージアム)
  ジョルジュ・ルオー 名画の謎 展 (パナソニック 汐留ミュージアム)
  ルオーと風景 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
  ユビュ 知られざるルオーの素顔 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)


<冒頭>
まず冒頭に白黒映画のダイジェストを流していました。これはルオーの友人で画家でもあった。モーリス・モレル神父が監修した映画で、ルオーの「ミセレーレ」について紹介するものでした。ミセレーレについては1章で取り上げています。


<第1章 ミセレーレ-甦ったイコン>
1章は41歳の1912年から15年を費やして作った版画集「ミセレーレ」についてのコーナーです。こちらは父の死がきっかけとなり第一次世界大戦の際に構想が深まった銅版画のシリーズで、慈悲と戦争をテーマにしています。1927年には58点がほぼ完成していたようですが1948年になって出版されたようで、ルオーのライフワーク的な作品と言えそうです。ここにはその中の作品や制作にまつわる関連作品などが並んでいました。

9 ジョルジュ・ルオー 「『ミセレーレ』33 そして柔らかな麻布を持ったヴェロニカは、今なお道を行く…」
こちらは目を閉じたキリストの顔が麻布に写った聖顔布(ゴルゴダの丘に向かうキリストの汗を聖女ヴェロニカが拭ったところ、顔が布に写ったという奇跡)を表した作品です。頭の茨の冠まで写っていて痛々しいですが、太くて濃い輪郭が力強い印象となっています。ルオー独特の荘厳さも感じるかな。この版画集にはルオーらしさが詰まっています。

16 ジョルジュ・ルオー 「『ミセレーレ』の本扉のための構想画(両面)」
こちらは水彩のようなミセレーレの構想の為の作品で、両面に絵があって両方とも観られるように展示されていました。表面は十字架の立ち並ぶ丘と、その上に浮かぶ骸骨のような人の顔が描かれています。裏面はそれを白黒にして丘ではなく十字の立ち並ぶ墓のような感じかな。構図自体はよく似ていて、構想の推敲が伺えるようでした。

この辺には銅版も3点ありました。

19 ジョルジュ・ルオー 「青い鳥は目を潰せばもっとよく歌うだろう」、通称「青い鳥」 ★こちらで観られます(PDF)
こちらは目を閉じて首を傾けて歌っているいる女性を描いた作品です。穏やかな顔で笑顔に見えるかな。油彩で顔や体は白っぽい色合いになっていて可憐な印象を受けます。解説によると、苦難の中でも愛溢れる存在でいられる人間の姿だそうで、清らかな雰囲気もありました。そう言われてみればタイトルがちょっと怖いですね…。 なお、この作品はミセレーレに組み込まれる予定だったようですが、未採用となったのだとか。

この辺には未採用になった作品や 試し摺りに着色した作品などもありました。

25 ジョルジュ・ルオー 「磔刑」
こちらはミセレーレを元に描いた磔刑のキリスト像です。磔刑の場面なのに真正面を向いていて顔は力強く感じられ、背景の太陽を始めオレンジ色が多く占める画面には生命力が感じられます。周りにはマグダラなマリアや聖母マリア、弟子の聖ヨハネなどの姿もありますが、キリストが特に目を引きました。ステンドグラスの為に描いたらしく、輝くような印象を受ける作品でした。


<第2章 聖顔と聖なる人物-物言わぬサバルタン>
続いては聖顔をテーマにしたコーナーです。聖顔の主題は1904年頃に登場し、1930年代に確固とした図像を確立して最晩年まで描かれたようで、モチーフは聖女ヴェロニカの聖顔布やトリノの聖骸布の顔写真に影響を受けたようです。また、章のサブタイトルの「サバルタン」とは従属的地位にある被抑圧者のことだそうで、鞭打たれ辱めを受けたキリストはサバルタンと重なるとのことで、キリスト以外の受難の聖人たちを主題にした作品もありました。

28 ジョルジュ・ルオー 「聖顔」 ★こちらで観られます(PDF)
こちらは大きな目を開いたキリストの顔で、顔全体は縦長で茨はほぼ無く、頭から黄色い光が出ています。こうした特徴は1930年代の聖顔の典型的作風だそうで、輪郭の黒の強さで一際キリストの顔に目が行き、特に眼に力を感じました。また、キリストの周りには幾重にも枠が囲うような構図となっていて、荘厳な雰囲気もあるように思えました。

32 ジョルジュ・ルオー 「聖顔」
こちらは1940年代の典型的な聖顔の様式だそうで、縦長の卵型の頭に目は大きなアーモンド型、鼻筋は非常に長くなっています。画面に占める顔の割合が大きくなっているのも先程の作品との違いに見えるかな。顔の周りは緑色の落ち着いた雰囲気となっていて、キリストは話しかけてくるようにじっと見つめる目が印象的でした。

この辺にはトリノの聖骸布に関する本もありました。ルオーはトリノの聖骸布の論文を描いた生物学者と知り合いだったそうで、大きな関心を持っていたようです。ここにあった聖骸布の写真を観ると、確かにルオーの聖顔の顔に似た輪郭となっていました。

37 ジョルジュ・ルオー 「キリスト」
こちらはミセレーレの「イエスは辱められ」を油彩にした作品で、横向きで俯いて祈っている様子が描かれています。青と緑の混ざった空には四角い朱色の雲が浮かんでいて不思議な光景です。この雲はキリストの受難を象徴しているのだとか。静かで深い精神性をたたえた雰囲気となっていました。
↓以前のポスターのこれです。
P1020054.jpg
余談ですが、この雲を観ると萬鉄五郎がルオーから影響を受けているのを思い出しますw
 参考記事:岩手県立美術館の案内 (番外編 岩手)

40 ジョルジュ・ルオー 「我らがジャンヌ」 ★こちらで観られます(PDF)
こちらは馬に乗ったジャンヌ・ダルクを描いたもので、点を見上げて旗を掲げる姿となっています。背後の空には月のようなものが浮かび、明るく光っています。馬の足元の背景には赤く燃える屋敷のようなものがあり、これはジャンヌ・ダルクの火刑かキリストの受難を暗示しているそうです。ルオーは1940年頃にこうしたジャンヌ・ダルクを描くようになったそうで、背景にはナチスの暗い影があったようです。抑圧者から国を救うジャンヌ・ダルクに世相を重ねたのかな? 色彩豊かで絵としても面白い作品でした。

39 ジョルジュ・ルオー 「ヴェロニカ」 ★こちらで観られます(PDF)
こちらは今回のポスターの作品で、先述の聖顔の奇跡の際に汗を拭った聖女です。面長の顔に大きな目で歯を出して微笑むような表情をしています。キリストに比べると色白となっていて、可憐な雰囲気かな。マチエールも比較的スッキリしていて、美しい顔で描かれていました。

この近くには1950年代の彫刻のように厚塗りされた作品もありました。


<第3章 パッション[受難]-受肉するマチエール>
続いての3章は版画集「受難」のコーナーで、「受難」は全24章からなる散文詩に色摺り銅版17点と木工版画82点を添えて画商のアンブロワーズ・ヴォラールによって1939年に出版されたシリーズです。この頃のルオーは版画と油彩を往復しながら新しいマチエールの追求に熱中し、乾いた絵の具を何度も削りとる方法から厚塗りへと変化していったそうで、晩年には分厚いマチエールになっていきます。ここには「受難」に関する作品などが並んでいました。

50 ジョルジュ・ルオー 「三本の十字架 (『受難』の木版画のための下絵)」
こちらは下絵で、ゴルゴダの丘に立つ3本の十字架と、その下に立つ2人の人物が描かれています。月光の中に立っているらしく、静かな雰囲気が漂っています。かなり小さくて細部はわかりづらいですが、ひと目でルオーと分かる筆致となっていました。

この辺には「受難」の本や油彩の下絵などもありました。

60 ジョルジュ・ルオー 「受難(エッケ・ホモ)」 ★こちらで観られます(PDF)
こちらは俯いている半裸のキリストの上半身を描いたもので、アーチ状の窓から外を見ているような感じの構図になっています。目を閉じて瞑想しているようで、やや悲しそうな表情に見えます。かなり凹凸がある画面で、凹んでいる場所もありました。ルオーの画風の変遷も観られる作品です。


<特別セクション 聖なる空間の装飾>
こちらのコーナーだけ撮影可能となっていました。4点だけ展示されています。

4点はこんな感じです。
DSC04778.jpg
油彩2点、ステンドグラス1点、十字架1点となります。

この十字架は17世紀バロック様式だそうで、この像を気に入ってルオーが入手して像に着色して毎日祈りを捧げていたそうです。
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ルオーの死後に娘のイザベルによって清春芸術村のルオーに捧げた礼拝堂に寄贈されたのだとか。そう言えばこの十字架もステンドグラスも見覚えがありました。
 参考記事:清春芸術村の写真 後編 (山梨 北杜編)

ステンドグラスと、その原画と思われる油彩画
DSC04768.jpg DSC04762.jpg
2つを比べるとよく似ています。元々ルオーはステンドグラス職人の元で働いていたので、絵画もステンドグラスのような太い輪郭があるのはそのせいなのかも。

もう1点も花束でした。
DSC04775.jpg
こちらも生命力と力強さを感じる筆致です。


<第4章 聖書の風景-未完のユートピア>
最後はユートピア的な風景のコーナーです。1930年代(60歳頃)以降、ルオーの風景画は実在する風景と関連性が希薄になったそうで、宗教的な風景に変わっていったようです。そうした聖書から選んだ場面は「降誕」「エジプトへの逃避」「子供たちを我もとに来させよ」「マルタとマリアの家のキリスト」の4つが多いようで、ここにはそれを思わせるユートピア的作品が並んでいました。

71 ジョルジュ・ルオー 「古びた町外れにて または 台所」
こちらは台所に座るキリストと、その隣でキリストの話を聞くマリアを描いた作品です。これはマルタとマリアの家の話をテーマにしていて、マルタがちっとも働かないとマリアを咎めるも、キリストはマリアは良い方を選んだと言う話です(キリストの話が最も大切というエピソードです) しかしここでは何故か2人は顔を合わせず、画面の左端の方にいて台所が主役のように見えました。また、輪郭線は細めでキリストもスラッとした印象を受けるなど、ちょっと不思議な作品でした。

73 ジョルジュ・ルオー 「ステラ・ウェスぺルティーナ(夕の星)」
こちらは夜空と大きなアーチ状の窓を背景に揺りかごで寝ている赤ちゃんと、それにそっと手を近づけるキリストを描いた作品です。これは「子供たちを我もとに来させよ」をテーマにしているようで、第二次世界大戦以降に子供たちを見守るキリストを描くようになったようです。表情は細かく描いていませんが、落ち着いた雰囲気で慈愛に満ちた作品となっていました。

81 ジョルジュ・ルオー 「秋 または ナザレット」 ★こちらで観られます(PDF)
こちらはキリストが幼少期を過ごしたナザレの地を描いたそうで、木々が立ち並び奥へと続く道や、ドーム状の屋根の建物が並ぶ様子が描かれています。空にはオレンジ色の太陽があり、全体的に暖色系の温かみのある画面となっていて、安らぎを感じます。木々の下では2組の母子らしき姿やキリストらしい姿もあり、まさにユートピア的な平和な光景となっていました。

77 ジョルジュ・ルオー 「エジプトへの逃避」
こちらは馬に乗る白い服の人と、後ろに立つ赤い服の人が描かれた作品です。その2人は何となく分かるのですが、めちゃくちゃ厚塗りで細部などはよく分からない程です。太陽の周りは彫ってあるような凹凸で、全体的に黄色~赤の色調となっているのと共に生命力が感じられました。

この近くの「キリスト教的夜景」もポンピドゥー所蔵の見応えのある作品でした。また、ルオーコレクションの部屋では聖書以外のテーマの作品も並んでいて新所蔵品などもありました。


ということで、ルオーの信心深さを感じさせる作品が並んでいました。重厚な作風が宗教画によく合っていて、慈愛から哀しみまで様々なテーマを見事に描いています。解説などは少なめで聖書の話を理解していないと分からない部分もあると思いますが、西洋画好きの方には面白い内容だと思います。



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横尾忠則 幻花幻想幻画譚 1974-1975 【ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)】

今日は写真多めです。先週の土曜日に銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で「横尾忠則 幻花幻想幻画譚 1974-1975」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

DSC04781.jpg DSC04783_201810140115260c7.jpg

【展覧名】
 横尾忠則 幻花幻想幻画譚 1974-1975

【公式サイト】
 http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000728

【会場】ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
【最寄】銀座駅

【会期】2018年09月05日(水)~10月20日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんが多く、作品が小さめなこともあってやや混雑感もありましたが概ね快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は現代の日本を代表するアーティストの1人である横尾忠則 氏の展示で、1974~75年にかけて東京新聞で連載された『幻花』の挿絵の原画が371点も並ぶ内容となっています。この『幻花』は瀬戸内晴美 氏(現在の・瀬戸内寂聴 氏)の小説で、室町幕府の8代将軍 足利義政の時代の正室 日野富子と愛妾の今参局との人間関係や幕府の衰退を書いているそうです。その挿絵なので さぞかし古風な人たちが出てくるのだろうなあと予想してしまいますが、予想外の挿絵を繰り出す奔放ぶりに目を見張ります。当時40歳を前に時代の寵児として若者文化を牽引していた横尾忠則 氏ですが、この原画は2015年に横尾忠則現代美術館で一般公開されるまでその存在を知られることが無かったようです。 オカルトブームやサイケデリックな文化が隆盛していた70年代半ばの空気も取り込んだような作品が並んでいましたので、詳しくは写真でご紹介していこうと思います。

私は『幻花』を読んだことが無いのですが、どうやらキンドル版とかもあるようです。横尾氏の作品集もあるんですね。


展覧会はこんな感じで、小説の話の順に章ごとに30章くらいまでブロックに分けて展示しています。
DSC04810.jpg
粗筋も横に書いてあるのですが、これだけ読んでもよく分からないので、今回の記事では話は端折ります。解説も特にないので、これ以降はほぼ私のテキトーな感想のみです。

最初の辺りにシュルレアリスム的な挿絵があって、いきなり戸惑いました。
DSC04791_20181014011528c46.jpg
えーっと、確か室町幕府の話だったはずですよね?w ダリみたいな作品もあったり、いきなりかっ飛ばしてます。

時代小説の挿絵を観に来たと思ったら、いつのまにかUFOを観ていた…。何を言っているのか わからねーと思うが(略
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完全にムー的な要素満載ですが、前回の記事の続きではありませんw どうやら瀬戸内 氏の遅筆さに業を煮やして、中身を知らないうちに描き貯めて海外に行った際の挿絵のようです。とは言え、もっと無難な絵が描けたはずだろうにUFOにピラミッドとは驚きです。 しかもこの後も何度もUFOは出てきますw 挿絵の概念がぶっ飛びますね。

こちらは蹴鞠のシーンで、ようやく時代に即した感じですが…
DSC04853.jpg
陰影が強くて何やら不穏な雰囲気となっていました。

こちらは指紋でしょうか??
DSC04864_20181014011534e16.jpg
何のシーンだか分かりませんが、これも不吉な予感しかしないw 斬新な手法です。

こちらは恐らく登場人物の顔かな。
DSC04868_201810140115353f3.jpg
緻密で強い目をしていますが、何処と無く女の執念のようなものを感じる…。画面いっぱいに顔を描く大胆な構図も面白い。

再びSF的なものが出現しましたw
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当時の読者は読んでて不思議に思ったりしなかったんでしょうか?? 挿絵だけ観ると完全にSFです。

こちらはポスターにもなってた作品。
DSC04885_20181014011538cb6.jpg
これは蕪かな? 何だかちょっとエロティックな感じに見えるのは私だけでしょうかw

謎のピラミッド再び。ちょいちょい出てきます。
DSC04893.jpg
もはや何の話だか忘れてきましたw 日野富子が火星にピラミッドを見つけた話だなきっと(大嘘)

たまに西洋の伝統美術からの引用のような作品もあります
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死神でしょうか。これは象徴的な感じを受けます。

こちらはキリストかと思いました。後光も差して聖者らしき雰囲気。
DSC04901_201810140121261e0.jpg
とは言え、キリスト教はこの時代には伝わって来てません。話のどういう部分で使われたのか気になります。

こちらもポスターに使われていた作品。
DSC04907_20181014012128646.jpg
象徴的で挿絵として色々な場面に当てはまりそう。これもどういう話で使ったのかな。

こちらは一休さん。大人の一休さんのイメージ通りに描いています。
DSC04922_201810140121292cc.jpg
この幻花でも一休さんが出てくるようです。久々に挿絵らしい挿絵が!w

と思ったらUFOが飛び立っていく挿絵がまた出てきたりw
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室町幕府はどこを目指していたんだろうか…。

地下にも展示は続いています。

こちらは具象だけどコラージュ的な作品。
DSC04959.jpg
こちらも愛欲を表現しているように思えました。

こちらは当時の東京新聞。先程のキリストらしき人物の回が載っていました。
DSC04969.jpg
各記事には「幻花」のロゴが付いているのですが、結構色々な種類があるようでした。

そしてこちらは「幻花」のロゴのコーナー。
DSC04978.jpg
40種類くらいあるようでした。妖しい雰囲気が漂うロゴが多かったかな。

こちらは仁王像を彷彿とさせる挿絵。
DSC04993.jpg
円の窓からのぞいているような表現が面白い。

地獄の鬼のようなキャラクター。人を振りかぶっているように見えます
DSC05029.jpg
動きと迫力があり、口から花を出すのがシュールに思えました。

こちらは特に面白さを感じた作品。
DSC05037_201810140123098ad.jpg
一筋の稲妻が黒く表現されているところがカッコいい。光なら白と思ってしまいますが。

こちらは鳥獣戯画のような作品。
DSC05066.jpg
ウサギやカエルの周りに線で動きを付けていて、コミカルかつ軽やかな雰囲気となっていました。

こちらも意味するところは分かりませんが、ちょっと意味深な感じ。
DSC05074.jpg
泣いているのでしょうか。 目からウロコが落ちた訳では無いと思いますがw

般若心経の一部で「ぎゃーてーぎゃーてー」のフレーズ
DSC05017.jpg
彼岸の世界に往生しなさいという意味なので、死を感じさせるかな。カエルの鳴き声がそう聞こえるのでしょうか…


ということで、挿絵だけ観てると内容が全く分からないだけに、逆に小説本編が気になってくる作品となっていましたw 自由奔放でどこかサブカルチャーの要素を感じるのは横尾忠則 氏の魅力ではないかと思います。この展示は無料な上に撮影も出来るので、ファンの方は是非どうぞ。


おまけ:
つい最近、西脇市岡之山美術館の職員が横尾忠則 氏との待ち合わせに遅刻して、横尾氏が制作意欲を削がれてしまった為に展覧会が延期するという事件がありました。
 参考リンク:横尾忠則さん、美術館職員遅刻に立腹、作品できず…特別展延期
物議を醸しましたが、無事開催されることを祈ります。


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