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松岡コレクションの日本油彩画 【松岡美術館】

今日は写真多めです。前回ご紹介した東京都庭園美術館の展示を観た後、徒歩10分くらいのところにある松岡美術館に足を伸ばして「松岡コレクションの日本油彩画」という展示を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
 松岡コレクションの日本油彩画

【公式サイト】
 http://www.matsuoka-museum.jp/exhibition/exhibition.html

【会場】松岡美術館
【最寄】白金台駅

【会期】2018年10月24日(水)~2019年2月11日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は松岡美術館のコレクションの中から近現代の日本人による油彩画を27点紹介する内容となっています。松岡美術館の創立者 松岡清次郎は美大系予備校を運営していたこともあって団体展に興味があったそうで、昭和50年代をピークに日展、新制作展、二紀展、独立展、一水会展、二科展、国展などに足繁く通ったそうです。今回はそうして松岡清次郎が集めた絵画が並んでいましたので、気に入った作品をいくつか挙げて行こうと思います。


中川八郎 「雪景」
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こちらは1922年の作品。中川八郎は吉田博と共に渡米し、後に太平洋画会の設立に関わった画家です。写実的ながら冬の寒さや労働の大変さが伝わってくるような情感が漂っていました。
 参考記事:生誕140年 吉田博展 山と水の風景 (東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)

小林武雄 「帰鷺」
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こちらは1972年の作品で、作者は教員を務めながら油絵を学んでいたようです。鷺が舞立つ様子が表され躍動感があります。ややぼんやりしたマチエールと曇天が静かな雰囲気で、連続性を感じる鷺の動きに自然と目を引かれました。

この先は1980年代以降の作品が多かったかな。割と最近の作品多めです。

江藤哲 「犬吠埼」
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この方は特許庁に務めながら公募展に出品していたそうで、その後退職して芸術大学の教授にまでなっています。非常に力強く重厚な色彩で岩と波を表現していて、この日観た作品の中で一番好みだったかも。青空と灯台が爽やかなのも対照的でした。

石川滋彦 「教会の見える運河」
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岡田三郎助に学んだという本格派の作品。全体的に画面が明るく、暖かい日差しが感じられます。 「水と緑の画家」として知られるとのことで、爽やかな画風でした。

荒谷直之助 「チョッキの娘」
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こちらも黒田清輝に学んだという凄い経歴の持ち主による作品。目力のある気品ある顔立ちが目を引き、赤いチョッキと背景が華やかな雰囲気となっています。チョッキと背景の色を似た色にするという発想にちょっと驚き。陰影がある為か ごっちゃにならないで上手く調和してますね。

清水破魔雄 「トレドの裏通り」
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この方は日展の桜田精一に支持した日展系の画家のようです。古い壁の質感が見事で、隙間から見える教会が旅情を感じさせます。私もこういう構図の写真をよく撮るので、歩いていて眼の前に広がった時の高揚感を思い起こすような構図でした。

山川利夫 「白い鳩(サンマルコにて)」
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この方は美術教師をしながら日展などで活躍した画家のようです。2人の女性が画面いっぱいに描かれて非常に洒落た雰囲気。肩にとまった白い鳩と目を合わせているのも面白いかな。舞い飛ぶ鳩もいたりして臨場感もありました。

田坂乾 「ヴェネーチァ海辺」
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この方は有島生馬や山下新太郎に支持して一水会などで活躍したようです。淡い色彩で、マルケに通じるような色彩感覚に思えます。透明感があって穏やかな画風となっていました。

大國章夫 「オーヴェールの孤独」
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この方は猪熊弦一郎に師事したそうで、ゴッホの足跡を追ってオーヴェールにまで行って描いたそうです。むしろヴラマンクの描いた風景に似ているような気がしますが、寒々とした雰囲気がタイトルの通り孤独を感じさせます。この絵はゴッホの墓の土を絵の具に混ぜて描いたというのだから ゴッホの気持ちに思いを馳せているようでした。

「夜 朝 昼(アカデミー・グランドショメールのモデル達)」
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こちらは藤田嗣治に学んだ竹谷富士雄に師事した画家。パリの学校で描いたモデルだそうで、ポーズを変えて群像になっています。藤田の孫弟子ということもあって、乳白色の肌や線の細い感じは似ているかも。神秘的な雰囲気の作品でした。

安田謙 「机上静物」
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この方は須田国太郎に師事して独立展で活躍されたようです。非常に緻密かつ濃密な色彩で、キュビスム的な構図に見えるかな。1つ1つはリアルなんだけど、組み合わせると現実にはない光景となるのが面白い。 下の方にいる猫が悪戯っぽくて可愛いw

この辺も良い絵が多かったのですが、ガラスの反射の映り込みがきつくて良い写真が撮れなかった…w

角浩 「ベネチヤ異変」
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この方は新制作展で活躍されたようです。モノクロームの画面に現実と非現実が混じった幻想的な光景となっていて、気品も感じられます。自らを「ネオ・クラシカル・ロマンティシズム」と称したのだとか。


ということで、作品数はそれほど多くありませんが個性豊かな作品ばかりで見応えがありました。この記事を書いている時点で会期末となっていますので、気になる方はお早めにどうぞ。
この後、同時開催の展示も観てきましたので、次回も写真を使ってご紹介していこうと思います。


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アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン 【ヤマザキマザック美術館】(名古屋編)

今日も引き続き名古屋編です。名古屋城を観た後、地下鉄でヤマザキマザック美術館に行って、「アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン」を観てきました。

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【展覧名】
 アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン

【公式サイト】
 http://www.mazak-art.com/cgi-bin/museum/infoeditor/info.cgi?action=data_list&mode=schedule-current

【会場】ヤマザキマザック美術館(名古屋)
【最寄】新栄町駅(名古屋市営地下鉄東山線)

【会期】2018年11月17日(土)~2019年2月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は日本の洋画黎明期に活躍した巨匠である浅井忠とアール・ヌーヴォー美術についてをテーマにしていて、前半はよく知られる浅井忠の画業、後半はフランスで収集したアール・ヌーヴォーの作品や自らが制作した工芸品などが並んでいました。名古屋観光に時間を取りすぎて閉館までわずか1時間で特別展と常設を観るという事態となってしまったので、細かいメモは取らずに早足で観てきました。各章ごとにごく簡単に内容を振り返ってみたいと思います。


<第一部〔浅井忠が滞欧期および帰国後に制作した油彩画・水彩画〕>
まずは浅井忠の絵画作品が並んでいました。油彩と水彩があり、浅井忠がフランス留学して学んだグレーやフォンテーヌブローといった地の風景画があります。この辺は割と見慣れた感じがするかな。バルビゾン派ゆかりの地でもあり、そこからの影響も伺えます。
その先はナポリやヴェネツィア、香港など様々な海外風景があり異国情緒の魅力溢れる作品となっていました。
そしてこの章の最後には帰国後の日本の風景もあり、聖護院や比叡山などを題材としていて、海外の光景とは違う日本独特の叙情性を出しているように思えました。


<第二部〔浅井忠、建築家武田五一が、京都高等工芸学校の教材としてフランスで蒐集した作品をはじめとする
19世紀末~20世紀初頭のポスター・工芸作品〕>

続いてはアール・ヌーヴォーの工芸品が並ぶコーナーです。浅井忠が留学した1900年頃はパリ万国博覧会が開かれていて、その監査役の職も務めていたようです。また、アール・ヌーヴォーの火付け役であるサミュエル・ビングとも交流があったそうで、思った以上にアール・ヌーヴォーに深い関わりがあったようです。

ここにはティファニーの壺や皿などが並び、特に花形のガラスの花瓶などは形の面白さと優美さを兼ね揃えていました。また、エミール・ガレの葉っぱ型のペン皿には蛙がとまったデザインとなっていて目を引きました。他にもショワジールロワによる日本製に見える陶器なども良かったかな。この辺りはアール・ヌーヴォーの王道と言った感じです。華やかで造形の面白さがあります。

その先には同時代のシェレやロートレック、ボナール、ミュシャなどの作品があります。また、ここにあったミュラーの「サダヤッコ」は名古屋にゆかりのある作品で、後日ご紹介予定の文化のみち「二葉館」を建てた川上貞奴をモデルにした作品です。

更に進むとガレの家具などがあり、寄せ木で花鳥を表していました。テーブルの足がトンボだったり、日本の技・精神性など幅広く深い理解をしていたのが伺える作品ばかりです。


<第三部〔浅井忠絵付陶芸作品、浅井忠の工芸図案、それをもとに制作された工芸作品〕>
最後は浅井忠による工芸品のコーナーです。浅井忠はアール・ヌーヴォーに影響を受けたようで、グレーの隣村の陶芸家の元で作陶するほどだったようです。

ここには陶芸の図案などがあり、花をデザインした壺や絵皿も展示されていました。アール・ヌーヴォーだけでなく蒔絵なんかもあって猪を図案にした作品などは今年の干支っぽくて面白い意匠でした。かなりアール・ヌーヴォーに寄せたデザインとなっているのが分かります。

また、ルイ・マジョレル、マイセン、バカラなどを使ったアール・ヌーヴォー調の食卓の再現があって、これがかなり見事です。テーブルの上に美しく優美な食器が並んでいました。 さらにルイ・マジョレルの巨大なベッドやテーブル、大型オルゴールなどもあり、猫が乗っかっているように見える彫刻付きの家具なんかもありました。この美術館はアール・ヌーヴォーのコレクションも有名なので、こうした作品が観られるのも流石と言ったところかな。ちなみにオルゴールは14時から実際に演奏を聞けるようでしたが、私が行った頃には終わっていましたw


ということで、かなり早いペースで観たのが悔やまれるほど良い品が並んでいました。ざっと観たくらいではありますが、浅井忠とアール・ヌーヴォーの関係の深さがよく分かるのも良かったです。さらにこの美術館には常設に素晴らしい絵画コレクションがあるので名古屋に行ったら是非立ち寄りたい美術館だと思います。次回はその常設で撮ってきた写真を使ってご紹介の予定です。


【名古屋編(2019年)】
  熱田神宮の写真
  名古屋城周辺の写真
  アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン (ヤマザキマザック美術館)
  ヤマザキマザック美術館の案内 (名古屋編)
  ウィリアム・モリスと英国の壁紙展 -美しい生活をもとめて- (松坂屋美術館)
  リニア・鉄道館 前編
  リニア・鉄道館 後編
  徳川美術館の案内
  徳川園の写真
  文化のみち二葉館の写真
  文化のみち橦木館と周辺の写真

【長島編(2019年)】
  なばなの里のイルミネーション

【犬山編(2019年)】
  博物館明治村の写真 前編 2019年01月
  博物館明治村の写真 後編 2019年01月

【犬山編(2013年)】
  野外民族博物館 リトルワールドの写真 前編(2013年12月)
  野外民族博物館 リトルワールドの写真 後編(2013年12月)
  有楽苑と犬山城の写真
  なり多 【愛知県犬山界隈のお店】
  博物館明治村の写真 前編 2013年12月
  博物館明治村の写真 後編 2013年12月

【名古屋編(2013年)】
  矢場とん 三越ラシック店【名古屋 栄界隈のお店】
  あつた蓬莱軒 松坂屋店【名古屋 栄界隈のお店】





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吉村芳生 超絶技巧を超えて 【東京ステーションギャラリー】

昨年末の休日に東京駅の中にある東京ステーションギャラリーで「吉村芳生 超絶技巧を超えて」を観てきました。

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【展覧名】
 吉村芳生 超絶技巧を超えて

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201811_yoshimura.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅

【会期】2018年11月23日(金・祝)~2019年1月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんが結構いましたが大型の作品が多かったのでそれほど混雑感は無く快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は吉村芳生という2007年の「六本木クロッシング:未来への脈動」展 以降に注目を集め、惜しくも2013年に亡くなった現代画家の個展となっています。吉村芳生は日常のありふれた光景を描く画家なのですが、モチーフの選び方が非常に独特で 金網や新聞紙の模写など予想外の作品ばかりです。しかもその表現方法が恐ろしく根気のいる技法となっていました。 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<ありふれた風景>
まずは初期作品などのコーナーです。吉村芳生は山口芸術短期大学を卒業後に広告代理店にデザイナーとして勤務していたようですが、仕事をやめて東京に出て創形美術学校で版画を学びました。そして版画やドローイングを中心に、撮影した写真を利用して作品を制作したようで、自画像や新聞紙といった身の回りのものを描いていたようです。早速かなり独特の作品が並んでいました。

16 吉村芳生 「365日の自画像 1981.7.24-1982.7.23」
こちらは365日分の自画像のうち192点をずらっと展示していました。口ひげを生やして真正面を向いていて、まるで写真のような写実性ですが鉛筆で描かれています。明暗が見事で特に髪の毛や瞳の光がリアルに感じるかな。とにかく点数が圧倒的で、毎日の表情も様々で服装も変わっていきます。背景も屋内・屋外だったりするのですが、構図は全て真正面となっていました。こちらは写真に撮ったのを描き写したそうで、完成までに9年かかったのだとか。初っ端から驚きの作品でした。

この近くには友達を描いたハガキ大の作品などもありました。

1 吉村芳生 「ドローイング 金網」
こちらは17mもある金網を描いたドローイングで、六角形状にねじれた金網が整然と連なっています。その展示光景も圧巻ですが、そもそも何でこんなものを描いたんだ?という疑問がw 解説によるとこれは紙に写した凸凹の痕跡を鉛筆でなぞって70日かけて制作したそうで、「機械文明が人間から奪ってしまった感覚を再び自らの手に取り戻す作業」としてマラソンに例えていたそうです。よく観ると単純なコピーではなく一部が たわんでいたりして、本当に写して制作されたのが分かりました。ちょっと狂気すら感じる作品ですw

11 吉村芳生 「ドローイング 新聞 ジャパン・タイムズ 10点より」
こちら新聞の記事・写真・広告などの誌面をそのまま絵で描いた作品です。乾ききっていない新聞を転写し、それを頼りに鉛筆で写しているそうで、文字はタイポグラフィと手書きの中間みたいな味わいがあります。細かくて気が狂いそうな作業に思えるのですが、これが何枚も並んでいるので唖然とさせられました。身の回りを描くと言っても、これをモチーフにしようと思うか?? と、ツッコミを入れたくなる気持ちで一杯ですw

4 吉村芳生 「ROAD No.10」
こちらは車に乗った視点で道路を描いたドローイングです。近寄って観てみると無数の小さなグリッド状になっていて、1つ1つに斜めの細かい線が引いてあります。この斜めの線で濃淡を出したドット絵みたいな感じかな。解説によると、何度も版を腐食させて10段階の階調の明暗となっているようです。これも恐ろしく手間が掛かっていて、何気ない光景をこれだけ全力で表現しているようでした。…ヤバい作品しかないw

22 吉村芳生 「ジーンズ」
こちらはLeeのジーンズを描いた作品ですが、やはり尋常ではない表現方法となっていますw 生地の目まで正確に模写したものを10段階の色調の濃淡で表していて、離れてみると写真のように見えます。隣には下絵もあったのですが、グリッドに0~9の数字を入れて色調を指定している様子が伺えました。これも執念を感じるほどの徹底ぶりです。

この近くにあった「SCENE 85-8」という作品は見覚えがありました。この美術館の所蔵品かな?

26 吉村芳生 「徳地・冬の幻想」
こちらは雪の積もった木が描かれた作品です。この作品だけ他と異なる趣向で、雪の出す陰影がまるで人や動物の顔の様に見えてくるという仕掛けになっています。ちょっと心霊写真のようにも見えますが、探しきれないくらいの姿があって、その点は流石と言った感じでした。


<百花繚乱>
続いては花を描いた作品のコーナーです。1990年頃に初めて花を題材にして以降、色鉛筆で描いた花の絵へと重心を移していったそうで、花の絵は売り絵に格好の題材だったというのが背景にあるようです。(実際、花の絵のシリーズは人気があったそうです) また、2007年頃からは大型の作品を描くようになり、タイトルも意味深になっていったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

56 吉村芳生 「ケシ」
こちらは屏風のような六曲の大画面にケシが並ぶ様子を描いた作品です。柔らかい色合いが色鉛筆らしさを感じさせるかな。色が明るく感じられて特に赤が眩しいほどです。ここまでモノクロの版画だったので一気に華やかになったように思えます。また、大画面なのに細部まで精密に描写されていて、蕾の毛のようなものまで分かるほどです。これも写実的な表現方法ではあるものの、またこれまでと違う表現となっていました。

この近くには同様の作品が並んでいて、ケシは結構多いかな。他はタンポポや藤、ひまわり等がありました。

61 吉村芳生 「無数の輝く生命に捧ぐ」
こちらはフェンス越しの藤の木を描いたもので、横は10mくらいあるんじゃないか?という巨大な作品です。色は淡めで荘厳な雰囲気があり、近くで観ると藤に囲まれているような錯覚を覚えます。近くにはこの作品の構想の写真もあって見比べることもできるのですが、絵は実際の光景と違っていて、写真を張り合わせて合成しているようです。こちらもグリッドをつけたりして綿密な準備が伺えました。
なお、解説によると この作品の制作動機は東日本大震災だそうで、花の1つ1つが亡くなった人の魂だと思って描いたとのことでした。それでこの意味深なタイトルになっているんですね…。

62 吉村芳生 「コスモス(絶筆)」
こちらはコスモスを描いた作品なのですが、右側1/4程度が空白となっています。これは製作途中で画家が亡くなった絶筆である為で、左から右へと描いて行く流れであったのがひと目で分かります。下書き・下塗りするわけでなく、きっちりと順序よく描いていく辺りに性格が出ている気がしました。絶筆ゆえに制作過程も知ることが出来る興味深い作品です。

この辺には色鉛筆も展示されていました。赤でも似たような色を色調を変えて取り揃えていて、かなり短くなるまで使い込んでいました。また、コスモスを描いた作品は何枚かあるのですが、綺麗に描いた後にわざとダメージ加工したような作風となっています。花のシリーズの中でもコスモスはそれが顕著に表れているように思えました。

60 吉村芳生 「未知なる世界からの視点」
こちらも全長10m以上ありそうな最大級の作品で、菜の花が川面に写っている様子が描かれています。上下で2分されていて上が水面で下が実景かな? 上のほうが揺らめいて見えます。似たような光景が延々と続いていて、「永遠に繰り返す命のような世界、浄土のような感じ」として、「あの世の世界を描いている」と語っていたそうです。長閑に見えるようで、何処と無く寂しげな雰囲気もあり 確かにあの世とこの世の狭間のような印象を受けました。


<自画像の森>
最後は自画像のコーナーです。最初の章で365枚の自画像も出てきましたが、吉村芳生は非常に多くの自画像を描いていて世界で最もたくさん自画像を描いた画家ではないかとのことです。さらに2000年代からは新聞紙の模写の上に自画像を描くという合体技も表れたようで、ここには多種多様な自画像が並んでいました。

38 吉村芳生 「新聞と自画像 2008.10.8 毎日新聞」
こちらは新聞紙の上に鉛筆で自画像をドローイングしたように見える作品です。この日の記事はノーベル賞を日本人が3人受賞したニュースとなっていて、もちろんこの記事も色鉛筆や水彩で描いています。文字はタイポグラフィそのものに見えるくらい正確に模写しているし、広告欄までしっかり再現しています。新聞紙を描くだけでも大変なのに自画像まで描くとは…。まさに吉村芳生の集大成的な画風です。

この近くには北京五輪開幕や秋葉原の大量殺傷事件の日の記事を背景にした同様の作品が並んでいました。結構大きな出来事があった日が選ばれやすいのかな? この日に広告出した会社は芸術作品として残るとは思ってもみなかったろうなあ。

41 吉村芳生 「新聞と自画像 2009年 全364点」
こちらは休刊日の1月2日を除いた364日分の新聞に描いた自画像で、この作品では笑ったり しかめっ面をしていたりと表情豊かに描かれています。初期に比べるとだいぶ年をとっていてシワや髪の毛のボリュームに老いを感じさせるかな。ニュースと自画像の表情の相関性が気になるところですが、あるような無いような…w とにかく毎日これだけ精密な絵を描いていたことに圧倒されました。

42 吉村芳生 「[3.11から] 新聞と自画像 全8種(見・吁・光・阿・吽・失・共・叫)」
こちらは2011年の東日本大震災をテーマにした新聞に自画像を描いた8点セットの作品です。叫ぶような顔や悲しみの表情をしていて、痛ましい記事と呼応するようになっています。吉村芳生は東日本大震災にかなりショックを受けると同時に、それを作品で表現していたようです。作者自身の思いがよく分かる表情となっていました。

この後も同様の作品が並んでいました。多分、本物の新聞紙の上に描いた作品もあるんじゃないかな。(文字が手書き感がないのがあるのでそれで見分けていました) 最後にパリ滞在時の新聞に描いた自画像などもありました。


ということで、ヤバい!を連呼するような細密かつ巨大なドローイングが並んでいて、絵画の概念をぶっ壊すほどの驚きの多い展示となっていました。。技術も凄いけど、精神的にタフ過ぎるw 分かりやすい凄さなので、美術初心者でも楽しめると思います。もう会期末ですが、記憶に残る画家だと思うのでご興味ある方は是非どうぞ。


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明治150年記念 NIPPON 鉄道の夜明け 【旧新橋停車場 鉄道歴史展示室】

前回ご紹介した展示を観た後、新橋の旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で「明治150年記念 NIPPON 鉄道の夜明け」を観てきました。

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【展覧名】
 明治150年記念 NIPPON 鉄道の夜明け

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/shinbashi/

【会場】旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
【最寄】新橋駅

【会期】2018年12月18日(火)~2019年3月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_①_2_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は2018年が明治150年に当たるのを記念して企画されたもので、日本の鉄道の歴史の中で特に黎明期についてパネルなどで紹介する内容となっています。日本は明治維新の後にイギリスの援助を受けてエドモンド・モレル等お雇い外国人を招聘し、その指導の元に鉄道が敷設されるわけですが、この展示ではそれ以前の歴史から紹介されていて、意外なエピソードなどもありました。3章構成となっていましたので、簡単に各章ごとにその様子を振り返ってみようと思います。


<1章 夜明け前>
まずは鉄道敷設以前のコーナーです。ここには「別段風説書」という出島のオランダ商館長から提出された書物のコピーがあり、パナマ地峡やエジプトに鉄道を敷設するという記事が乗っています。まだ時代は江戸幕府ですが、鎖国中でもオランダを仲介して割と世界情勢について幕府の上層部は知っていたらしく、その中に鉄道も含まれているようです。(読んでも鉄道って何だ?ってなりそうな気がしますが)

さらに1853年にロシアの軍艦が来た際、蒸気機関車の鉄道を載せていたらしく佐賀藩がそれを実見したそうです。そして佐賀藩はその模型を自力で作ったようで、当時の再現模型の写真のコピーが展示されていました。模型と言ってもNゲージみたいなものではなく 縁日で子供を載せる機関車くらいあるやつで、仕組みを知ったとしてもそれを再現できるとは驚きでした。また、実はペリーも蒸気機関車を持ってきていたそうで、人を乗せて走っている様子を描いた絵のコピーも展示されていました。いずれも こんなものがあったとは意外です。

その先にはジョン万次郎から伝え聞いた「漂客談奇」の一部から鉄道についての記事のコピーが抜粋されていました。「レイロウ(レイルロード)」について語っているのですが、絵は無く分かりづらそうです。一方、同じく浜田彦蔵が漂流してアメリカの船で助けられた漂流記が並んでいて、こちらは下手だけどアメリカの汽車が描かれていました。テイストとしてはUFO目撃談のイラストみたいな感じですw まあ、当時の日本人にとっての鉄道は現在のUFOみたいなもんでしょうね。

そして章の最後には伊藤博文ら5人組がイギリスに密航した話が紹介されていて、中でも井上勝は鉱山と鉄道を学び 後に初代鉄道頭となっています。ここはその解説と写真くらいだったかな。


<2章 鉄道の夜明け>
続いてはよく知られる鉄道開業の頃のコーナーです。エドモンド・モレルら外国人技師を招聘した話があり、モレルの写真とか工部省の関連資料の写真、当時の辞令とか鉄道開業のイラストなんかもあります。(コピーばかりです) 烏帽子姿の明治天皇が横浜駅で汽車から降りている様子もあり、当時いかに大イベントだったのかが伝わってきました。

さらにここには開業の頃の錦絵のコピーもあり、横浜近くの海の上の専用線路を走っている様子が多かったように思います。他には当時の横浜駅の駅舎や新橋駅の写真などもありました。


<3章 日本の鉄道のその後>
最後はその後の鉄道史を一気に紹介するコーナーです。

昭和の頃の機関車や、ボンネット型のこだま号、戦前の燕号、0系ひかり、東北上越新幹線の開業などの写真が並んでいます。また、1号機関車というイギリスに発注した機関車の写真と模型があって、1880年に神戸に転属した旨などが紹介されていました。


ということで、大半はコピーによるパネル展示となっていましたが、特に夜明け前の1章の内容は知らなかったことが多かったので楽しめました。ここは無料で展示を観ることができるので、新橋やパナソニック 汐留ミュージアムに行く機会があったらついでに寄ってみるのもよろしいかと思います。



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国宝 雪松図と動物アート 【三井記念美術館】

先週の土曜日に三越前の三井記念美術館で「国宝 雪松図と動物アート」を観てきました。

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【展覧名】
 国宝 雪松図と動物アート

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

【会場】三井記念美術館
【最寄】三越前駅

【会期】2018年12月13日(木)~2019年1月31日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は毎年恒例の円山応挙の国宝「雪松図屏風」と共に、三井記念美術館のコレクションの中から動物をテーマにした作品がセレクトされた内容となっています。絵画・工芸・茶道具などに様々な動物が表されていて、巨匠たちの作品も多数ありました。詳しくは部屋ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<展示室1>
まず最初の部屋には動物をモチーフにした工芸品が並んでいました。

1-4 野々村仁清 「色絵鶏香合」
こちらは野々村仁清による鶏型の香合。彩色されていて色とりどりの華やかさがあり、ふっくらしたフォルムが可愛らしい作品です。仁清の同様の作品は結構観ますが、こちらも遊び心溢れていて良い品でした。

近くには鹿や狐の香合などもありました。他にも水指、堆朱、釜などに動物が表されていて、特に龍が多かった気がします。

1-15 惺斎 「竹置筒花入 銘白象」
こちらは竹でできた花入れで、どこにも象の姿はありません。しかし花入れの下の方に粒状の突起やシミのようなものがあり、この表面が象の足の肌を想起させ、竹の形も足っぽく見えてきます。背面には「白象」の号が入っていて、絶妙な銘名となっていました。


<展示室2>
続いての部屋は1点のみの展示です。

2-1 野々村仁清 「信楽写兎耳付水指」 ★こちらで観られます
こちらは蓋の方が胴より広い円筒形の水指で、側面に兎の顔が付いています。この兎の耳が非常に長くて、2又になって蓋を支えてる感じかな。解説によると、円形の口を付き、器全体を臼と見なすと「月に兎」の意匠となるようです。さらに側面の凹凸を波状文と見れば謡曲「竹生島」の寓意にもつながるのだとか。ユーモアや機知に富んだ作品となっていました。

展示室3は茶室で、動物にまつわる品は特に無かったかな。国宝の「志野茶碗 銘卯花墻 」が展示されています。


<展示室4>
続いては今回のタイトルになっている円山応挙の「雪松図屏風」を含め、屏風や掛け軸が並ぶコーナーです。

4-1 沈南蘋 「花鳥動物図」 ★こちらで観られます
こちらは全11幅のうち6幅が展示されていました。そのうちの「藤花独猫」は藤・牡丹・タンポポなどが咲く中に猫の姿があります。花は写実的なのに猫はぐにゃっとして妙な素朴さがあるかなw 他の幅にはリス、馬、猿、虎、鹿、鶴などの姿があり丹念に描かれていました。沈南蘋は円山応挙や伊藤若冲に影響を与えた中国の画家なのですが、その影響力も観ることができたように思えます。

4-3 円山応挙 「蓬莱山・竹鶏図」
こちらは3幅対で、中央に松にとまる鶴、右幅には雄鶏、左幅には雌鶏となっていて、左右の幅の竹も中央に向かって伸びて対になっている構図となっています。また、雄鶏は立派な尻尾を持っていて厳しい表情をして緊張感があるのですが、雌鶏は白く淡い色彩で優しい印象を受けました。中央には松の鶴意外にもダイナミックな渓流や舞い飛ぶ鶴もいて雄大な風景です。お正月らしいお目出度いモチーフに溢れた作品でした。

この他に応挙は亀を描いたものと龍を描いたものもありました。そして、今回の目玉の「雪松図屏風」(★こちらで観られます)もあります。この作品については何度もご紹介しているので、今回は割愛。今回もじっくり鑑賞できました。

4-8 山口素絢 「雪中松に鹿図屏風」 ★こちらで観られます
こちらは元々は一双の屏風のうちの右隻で、金地を背景に雪の中に2頭の鹿が歩いている様子が描かれています。毛並みを1本1本書いていて、写実的な一方で現代的な感性も感じるかな。足元にいくつかのヤブコウジという植物があり、その赤い実が白い中でアクセントとなっているようでした。

4-6 長沢芦雪 「白象黒牛図屏風」 ★こちらで観られます
こちらは六曲一双の屏風で、右隻に白い象、左隻に黒っぽい牛が共にうつ伏せになっている様子が描かれています。お互いに向き合って白黒の対比になっているようで、象の背中には黒いカラス、牛のお腹の辺りに白い犬と言った感じで、こちらも対になった色合いです。画面一杯に描かれた2頭はボリューム感があって、優しげな顔と共に大らかな雰囲気となっていました。それにしても牛の傍らの白い子犬のトボけた表情と足を崩す姿勢が何とも可愛いw マスコットになりそうなくらいの愛らしさでした。
なお、こちらと同様の作品はこれを含めて3点確認されているそうで、複数の注文に応じたと考えられているのだとか。

近くには森狙仙が得意とした猿を描いた「岩上群猿図屏風」(★こちらで観られます)なんかもありました。こちらも動物画の名手なので見どころと言えそうです。

4-10 酒井抱一  「秋草に兎図屏風」
こちらはヘギというものを貼って木目を出した地に描いた作品で、ススキやクズの葉っぱが傾いでいるのと共に、木目が強風に見えるという面白い趣向です。薄っすらと右上に浮かぶ月と、左で逃げるような姿勢の兎もいて、静と動が同居しているような画題となっていました。流石は酒井抱一と言った感じのアイディア溢れる作品です。


<展示室5>
続いては小さい絵画や工芸などのコーナーです。

5-1 円山応挙 「梅花双鶴図小襖」
こちらは小さな襖で、紅白の梅を背景に2羽の鶴が寄り添うように描かれています。解説によると、手前が丹頂鶴で奥は真鶴だそうで、小さめですがお目出度い雰囲気となっています。鶴の羽根は1本1本浮き上がるような感じで描かれているのも驚異的でした。

この近くには応挙の絵を蒔絵にしたものや盃なんかもありました。

5-10 永樂和全 「交趾写銭亀香合」
こちらは小さな亀の形の香合です。黄色い甲羅で丸っこい意匠が何とも面白いw 他にも獅子や龍、鹿、カニなど様々な香合があり それぞれ個性的でした。

5-23 円山応挙 「昆虫・魚写生図」
こちらは掛け軸にびっしりと虫や魚が細かく描かれ、その傍らに名前が添えられているスケッチブックみたいな作品です。カマキリ、コオロギ、バッタ、イナゴ、ハエ、カタツムリ、ゴリ、カマツカ、オイカワ、コアユなどで、実物大くらいのもあるかな。写実的で鱗なども1つ1つ描かれていて応挙の観察力も伺えました。

5-24 高瀬好山 「昆虫自在置物」
こちらは金属で出来た昆虫型の置物です。蝶、トンボ、蜂、カブトムシ、蝉、カミキリなどが並び、中でもクワガタムシは本物そっくりに見えるクオリティです。さらにこれは自在置物なので関節などが動くんですよね…。まさに明治の超絶技巧のリボルテック!w 隣には伊勢海老など大きめの自在置物もあって、一度動くところを実際に観てみたいものです。

この近くには源琦の「東都手遊図」なんかもありました。お目出度い雰囲気の玩具が並ぶ作品です。


<展示室6>
この部屋は小部屋で、動物をモチーフにした切手が並んでいました。日本の明治の頃の古い切手からモンゴルやルワンダといった馴染みの無い国のコレクションまで実に様々な切手が所狭しと並びます。その中でちょっと懐かしかったのが1988年のパンダの切手シリーズとか年賀状の干支のお年玉郵便切手などで、自然保護シリーズというのも見覚えありました。子供の頃、はがきを貰ってはお湯で糊を剥がして集めたものですが、今ではハガキ自体出さないですね…。


<展示室7>
最後は巻物や蒔絵、能衣裳などのコーナーです。

7-12 「百馬図巻」
こちらは沢山の馬が群れている様子を描いた巻物で、それぞれ色や模様が違う馬が並びます。毛色などが漢字名とカタカナの和訓が記されているのですが、こんなに種類あるの?ってくらいあります(若干無理やりな気がしますが) それぞれの馬のポーズや表情も豊かで、競馬好きとしては目を引く作品でした。

7-16 象彦・戸嶌光孚 「遊鯉蒔絵額」 ★こちらで観られます
こちらは一際大きな高蒔絵で描いた作品で、錦鯉が餌に群れている様子が表されています。近づいてみると凹凸もあって、実際に立体的な感じです。それもあって蒔絵とは思えないほどの迫力があり、うねりのような動きも感じられました。

7-1 「十二類合戦絵巻」 ★こちらで観られます
こちらは十二支と狸の戦いを描いた絵巻です。場面ごとに分かれているのですが、あらすじとしては 鹿の代わりに歌の判者となった狸が罵倒され、それを恨んで狼・熊・狐・トビなどを仲間に入れて十二支に戦いを挑み、敗れるという話です。最初は歌合の様子、その後に戦いの様子があり擬人化された十二支や狸たちが甲冑を着て入り乱れています。最後は敗北した狸が出家して腹鼓みをしながら念仏をする様子もあるのですが、やはり歌への思いが残っているようで草庵で歌を詠む姿で終わっていました。ちょっと哀れさもあって憎めないやつですね…。この作品もお正月にぴったりの画題でした。

最後に狂言や能の動物の面が並んでいました。


ということで、様々な表現による様々な動物を観ることができました。特に応挙の作品が多めとなっていた絵画作品はどれも名品で良かったです。お正月に即した作品も結構あったので、この機会に三井記念美術館の誇る国宝と共に楽しんでみるのも良いのではないかと思います。




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