関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

サラ・ベルナールの世界展 【松濤美術館】

この前の土曜日に神泉の松濤美術館で「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」を観てきました。

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【展覧名】
 パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展

【公式サイト】
 https://shoto-museum.jp/exhibitions/186sara/

【会場】松濤美術館
【最寄】渋谷駅・神泉駅

【会期】2019年12月7日(土)~2020年1月31日(金)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
さて、この展示はフランスのベル・エポック(良き時代)を象徴するサラ・ベルナールをテーマにしたもので、以前ご紹介した横須賀美術館の展示の巡回展となっています。巡回展なので中身はほぼ同じとなっていて、サラ・ベルナールの肖像、セルフプロデュースの一環としてミュシャやラリックの才能を見出した話、自らの著書や彫刻などが並ぶ内容となっています。同じ内容なので詳しくは横須賀美術館の時の記事をご参照頂ければと思いますが、章構成がやや異なっていましたので補足的に簡単にご紹介しておこうと思います。
 参考記事:サラ・ベルナールの世界展 (横須賀美術館)


<1章:サラ・ベルナールの肖像―女優、時代の寵児として>
まずは上階で、サラ・ベルナールの写真や肖像のコーナーです。

ここには58歳の時の写真とはとても思えないW.& D. ダウニー「街着姿のサラ・ベルナール」(★こちらで観られます)を始め、吸血鬼のようだと言って受け取りを拒否したナポレオン・サロニー「街着姿のサラ・ベルナール」、透き通るようなパステルで瑞々しい印象を受けるルイーズ・アベマの肖像画「サラ・ベルナール」(★こちらで観られます)、ファム・ファタール的な雰囲気で描かれたウォルター・スピンドラーの「サラ・ベルナールの横顔」などが並んでいます。基本的に美しい姿となっているのに異彩を放っているのがロートレックの「サラ・ベルナール」で、こちらは口をへの字にして老けた感じがあります。手を広げて何かの儀式のようにすら観えましたw

部屋の中央あたりには舞台で身につけていた装飾品が並び、ドレスの他に胸飾りや胸当てがありました。イミテーションを使っているように見えるけど、遠くからは分からないような細部までしっかりと細工が施されています。また、ルイーズ・アベマの「扇子 サラ・ベルナール」が2点あり、こちらは大きめの扇子で一方はフランスを国旗を持ったサラ・ベルナールが描かれ女神のような雰囲気となっています。愛国的なモチーフに囲まれているのでそうした意図がありそうです。また、もう一方は子供の日の記念扇子らしく裏面に著名人の名前が書いてありました。

その先も写真や肖像で、椿姫とテオドラに関するものが多かったように思います。ここはミュシャにも影響を与えたウジェーヌ・サミュエル・グラッセの「ジャンヌ・ダルク」があり、修正前後を見比べることができるようになっていて この展示の見どころの1つとなっています。

奥の部屋は私生活やプライベートに関する品が並んでいました。サラ・ベルナールはユダヤ人で高級娼婦の母を持ち、父はよく分かっていません。また、息子がいてポーランド貴族の娘(王女?)と結婚したようです。しかしこの息子が賭博で借金を作ってはサラ・ベルナールに返済させていたのでお金に余裕があるというわけでも無かったようです。お金に困って銀器のセットを売った話と共に銀器が紹介されていました。

こちらはサラ・ベルナールの私邸の写真(記念撮影のコーナーにあった拡大コピーです)
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これだけ観ると大女優らしい感じですが、苦労も絶えなかったようですね。

その後は舞台のブロマイド、友人、家族(夫。異父妹2人、息子)、戯曲家、恋人たちの写真もありました。


<2章:パトロンとしてのサラ・ベルナール―ミュシャ、ラリックとの関係>
この章からは地下で、ここにはミュシャやラリックの作品が並んでいました。

ここで面白いのがアルフォンス・ミュシャの『ル・ゴロワ』誌 1894年クリスマス特別号『ジスモンダ』特集 付録紙面 で、これはまだ無名のポスター作家だった時に描いたものらしく、読者に大好評だったので これがきっかけでサラ・ベルナールの公演のポスター製作の依頼を受けるようになったそうです。締め切りがわずか5日だったというのは有名な話通りですが、クリスマスで他の人がいなかったからミュシャが引き受けた…というよく聞く話は誇張されているのかもしれませんね。
ここにはミュシャの出世作「ジスモンダ」(★こちらで観られます)を始め、夫と子を殺した狂気の女の舞台「メディア」、男装の「ロレンザッチオ」などお馴染みの作品が並んでいました。少し先にはミュシャに帰属となる衣裳案のスケッチもあります。

このコーナーの見どころはミュシャがデザインしルネ・ラリックが製作したとされる「舞台用冠 ユリ(エドモン・ロスタン作『遠国の姫君』にて使用)」(★こちらで観られます)で、2人の共作はこの1作のみとされるので貴重な品と言えます。

今回はラリックの作品は若干少なかったかな? 香水瓶、ガラス壺などがありますが点数はあまりありません。いずれもアール・ヌーヴォー的な動植物の文様となっていて優美な雰囲気となっていました。


<3章:サラ・ベルナールとその時代-ベル・エポック>
続いてはサラ・ベルナールが活躍したベル・エポックの時代のポスターなどが並ぶコーナーです。

ここにはミュシャの代表作「黄道十二宮」「夢想」「JOB」などが並び、油彩で祖国チェコに帰った頃の「巫女」もありました。また、テオフィール=アレクサンドル・スタンランの描いた「シャ・ノワール」(黒猫が描かれたポスター)やジュール・シェレの「カルナバル 1894年」といったこの時代の有名なポスターもあり、見所となっています。

ここでちょっと面白いのが長い衣を回転させて踊るロイ・フラーに関するポスターで、サラ・ベルナールとは違った方向で一世を風靡した様子が伺えました。他にロートレックやボナールのポスターなどもあります。


<4章:サラ・ベルナール伝説>
最後は再びサラ・ベルナールについてで、ここには自著や彫刻など女優以外の仕事などを紹介していました。

アンドレ・ジルによる「サラ・ベルナール」という風刺画では左手にパレット、右手に彫刻用の道具を持って白い仮面を頭に付けた姿で描かれ、虎の尻尾と獣の足がつけられていました。ここではサラ・ベルナールは芸術家=オーケストラとして描いているようですが、獣の足は彼女の悪魔的とされる趣味に基づいているようです。さらに青い蝶が無数に描かれていて、これは電報(プチ・ブルー)を表しているとのことで、当時のサラ・ベルナールの多才さや幅広い社交を逆に皮肉っているように観えました。

少し先には自著の『雲の中で ある椅子の印象』があり、これは気球に乗って雲の中に飛び立つ話のようです。翌日に報告書を書くものの、その中ではあえて椅子が印象を語る… というちょっと変わった形式の脚色になっているようです。また、自作の戯曲『告白』もあり、これは今でも上演される演目なのだとか。女優だけでなく戯曲にも才があったんですね。

最後に彫刻に関する品があって、サロンに出品した「嵐の後」の石膏原型の写真がありました。また、キメラのような自刻像もあり 悪魔的な趣味というのも頷けるかなw 何度観ても彫刻は上手すぎて怪しい気はしますw

他にサラ・ベルナールの日に関する品などもありました。


ということで、内容的には同じでしたが 忘れていた部分もあって再度楽しむことが出来ました。ミュシャをはじめ多くの芸術家にインスピレーションを与えた女優だけに、知っておくと今後の美術鑑賞の際に見識が広がると思います。



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大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演 (感想後編)【江戸東京博物館】

今日は前回に引き続き江戸東京博物館の特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」についてです。前編は歌麿と写楽のコーナーについてご紹介しましたが、後編は残りの北斎・広重・国芳についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」

【公式サイト】
 https://dai-ukiyoe.jp/

【会場】江戸東京博物館
【最寄】両国駅

【会期】2019年11月19日(火)~2020年1月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
後半も前半同様に凄い混みようでした。後半も引き続き気に入った作品と共にその様子をご紹介していこうと思います(超有名作や以前に詳しくご紹介したものはこの記事ではあまり詳しく書いていませんので、参考記事をご参照ください)


<第3章 葛飾北斎>
3章は葛飾北斎についてです。葛飾北斎は勝川春章に入門して画業を始め、30回の改名や90回以上の転居を繰り返し、90年の生涯で様々な画風の作品を残しました。特に「冨嶽三十六景」や「北斎漫画」は海外の画家にも大きな影響を与えたことで知られます。ここにはそうした北斎の代表作が並んでいました。
 参考記事:
  新・北斎展 HOKUSAI UPDATED 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  新・北斎展 HOKUSAI UPDATED 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  ホノルル美術館所蔵「北斎展」 (三井記念美術館)

まず最初に「冨嶽三十六景」が並んでいました。「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」など誰もが知る作品で、この展示でも特に人だかりが出来ていたかも。この辺は見慣れた感がありますが、何度見ても斬新な構図です。

187 葛飾北斎 「諸国瀧廻り 相州大山ろうべんの瀧」
こちらは「諸国瀧廻り」のシリーズの1つで、伊勢原の大山寺にある良弁の滝を描いた作品です。滝壺にフンドシ姿の男達が滝に打たれていて、身を清めています。と言っても楽しげで行楽のような雰囲気かな。みんな木刀を持っていて、それを奉納するお参りのようです。このシリーズでは水の飛び散る表現がそれぞれ違っていて、その違いを見比べると一層に北斎の水の表現へのこだわりが感じられました。

196 葛飾北斎 「諸国名橋奇覧 三河の八つ橋の古図」
こちらは板の橋が並ぶ様子が描かれていて、伊勢物語の八ツ橋を想起させる場面となっています。しかし8つどころではなく板の橋が曲がりくねっていてカクカクした構図で収まっています。また、橋の脇に咲いているはずのカキツバタは葉っぱだけになっているなど 伊勢物語とはちょっと違った印象です。遠近感がある構図なのは西洋からの影響かな。人々が行き交って楽しげな光景でした。

221 葛飾北斎 「芥子」 ★こちらで観られます
こちらは薄いオレンジのケシの花を描いた作品です。満開・蕾・枯れた花と時期の異なる花が並んでいて、1枚で時間の経過を感じさせます。風に揺られているのか一様に右向きに傾いでいて、茎が大きくカーブしています。これが動きを感じさせると共に神奈川沖浪裏の大波を彷彿とさせました。

近くには同様に花を描いたシリーズが並んでいました。冨嶽三十六景と同じ時期の作品群のようです。


<第4章 歌川広重>
続いては歌川広重のコーナーです。広重は歌川豊広の元に入門し、役者絵・美人画・武者絵などを手掛けていましたが北斎の「冨嶽三十六景」に刺激を受けてか風景画を描くようになり、1833年の保永堂版「東海道五拾三次之内」が大ヒットし、以降は多くの風景画を手掛けました。ここにはそうした多くの風景画が並んでいました。

まずは代表作の「東海道五拾三次之内」が並んでいました。雪の蒲原 や 庄野白雨といった特に重要な作品や、鞠子の名物茶屋など旅情を誘う作品などまさに名作と呼ぶに相応しいシリーズです。
 参考記事:殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次-保永堂版・隷書版を中心に- (サントリー美術館)

257 歌川広重 「木曽海道六拾九次之内 上ヶ松」
こちらは「木曽海道六拾九次之内」のシリーズの1枚で、橋の上から滝を眺める旅姿の2人の男が描かれています。そこに薪を背負った地元の人が通りかかり、滝には無関心そうなのが旅人と対比になっていて面白い趣向です。やけに細長く斜めった山や 氷のようにささくれた川の流れなど、表現方法も変わっていて斬新さもありました。

259 歌川広重 「木曽海道六拾九次之内 中津川」
こちらもシリーズの1枚で、川辺に並ぶ家々と手前に3人の雨合羽の人物が描かれた作品です。全体的に細い線が縦に連なり大雨の風情が出ています。解説によると中津川は2種類の版があり、こちらの「雨の中津川」は遺存例が少ない知られざる傑作とのことで、庄野白雨とはまた違った魅力のある作品となっていました。

272 歌川広重 「近江八景之内 矢橋帰帆」
こちらは琵琶湖に浮かぶ沢山の船を描いた作品です。船は対角線上に連なっていて、構図の面白さがあります。また、奥には比叡山らしき山があり その上は赤い夕日のような色合いとなっていて、叙情的な雰囲気となっていました。タイトルからも船が帰る時間なんでしょうね。こちらも素晴らしい傑作です。

280 歌川広重 「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」 ★こちらで観られます
こちらは亀戸の梅園にあった梅の名木を描いた作品です。手前にうねる幹が描かれ その後ろに満開の梅があり、空は赤のグラデーションに染まっています。また、よく観ると見物客の姿も多くて華やかな雰囲気です。それにしても目の前を木が塞ぐというのは大胆な構図で、こうした構図は西洋の印象派などにも影響を与えています。また、この絵はゴッホが模写していることで有名で、世界的な名画と言えそうです。木の配置も踊ってるような流れを感じました。

この隣の「名所江戸百景 日本橋江戸ばし」も擬宝珠が風景を塞ぐという驚きの構図となっていました。また、近くには猫が窓から外を見ている「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」や、舞い降りる鷹と共に空中から眺めたような「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」といった有名作もありました。


<第5章 歌川国芳>
最後は幕末に活躍した歌川国芳のコーナーです。国芳は歌川豊国に入門し、水滸伝をテーマにした武者絵がヒットし人気絵師となりました。その性格は親分肌の粋な江戸っ子そのものだったそうで、奇想と反骨の想像力で動物の擬人化、判じ絵、妖怪絵などなど独創的な作品を送り出しました。ここには国芳の代表作が並んでいました。
 参考記事:
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)

314 歌川国芳 「通俗水滸伝豪傑百八人之壹人 短冥次郎阮小吾」
こちらは出世作の水滸伝のシリーズで、取っ組み合って水中で争う2人の武者が描かれています。周りには魚も泳いでいて結構深いところまで沈んでいるように見えるかな。逞しい体つきに全身カラフルな彫り物をしていて、険しい表情を浮かべているなど全体的に力強く 緊張感があります。解説によると実際の水滸伝にはこういう水中戦の場面は無いらしいので国芳のイマジネーションの表れのようでした。

近くには猫が集まって骸骨模様に見える「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」や巨大な骸骨の妖怪が現れる3枚続きの「相馬の古内裏」など国芳ならではの発想の作品が並んでいました。

336 歌川国芳 「四條縄手の戦い」
こちらは6枚続きの大パノラマの作品で、1枚に1人づつ武者たちが描かれています。足利尊氏に仕えた武将 高師直が率いる6万の大群と楠木正行の最後の戦いをテーマにしていて、左から右に雨あられのごとく矢が飛んでいます。それぞれの武者はそれを前屈みになって防ぎながら左に向かって奮戦していますが、既に体には多くの矢が突き刺さり、血みどろで顔は青ざめています。壮絶な最期を迎える瞬間といった感じで、鬼気迫るものがありました。

346 歌川国芳 「流行猫のおも入」
こちらは3×3マスの猫の首輪の枠に入った9匹の人面猫を描いた作品です。それぞれ役者の顔を猫風に描いていて、やけに渋い顔をした猫もいてキモかわいいw 恐らく役者絵が禁じられた時の作品だと思いますが、規制をバネに一層に想像力豊かな絵に仕上げる所に反骨精神と洒落っ気を感じます。
この辺りは擬人化のシリーズや影絵のシリーズ、「寄せ絵」と呼ばれる 集合すると別のものに見える作品などもありました。本当に驚くべき発想ばかりです。

366 歌川国芳 「たとゑ尽のうち」
こちらは猫に関する諺や たとえ話を3枚続きの画面に沢山描いた作品です。猫背、猫舌、猫に小判、猫に鰹節などは見てすぐに分かりますが、猫に紙袋(後ずさりする様子。尻込み)、猫の尻に才槌(相応しくないもの)など現代ではあまり使われないものもあり、見ても分からないものもありますw こちらも擬人化されている猫がいて、面白可笑しい雰囲気がありました。きっと現場猫の先祖だな…w


ということで、後半も見どころの多い内容となっていました。この記事を書いている時点でちょうど終わってしまいましたが、これだけ豪華なラインナップは中々無い機会だったと思います。浮世絵入門になりそうな展示でした。



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大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演 (感想前編)【江戸東京博物館】

前回ご紹介した常設を観る前に江戸東京博物館で特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」を観てきました。メモを多めに取ってきたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、この展示は8つの会期があり、私が観たのは最後から2番めの会期でした。

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【展覧名】
 特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」

【公式サイト】
 https://dai-ukiyoe.jp/

【会場】江戸東京博物館
【最寄】両国駅

【会期】2019年11月19日(火)~2020年1月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会期末が近いこともあって非常に混んでいて、チケットを買うのに20分くらい並びました。中に入っても列が幾重にも出来ていて、あまり自分のペースで観ることはできませんでした。

さて、この展示は2014年に行われた開館20周年記念特別展「大浮世絵展」の第2段で、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳という5人の浮世絵師の代表作が集まる内容となっています。世界各国の著名な美術館・博物館から摺りの良い品が集まっていて、作者ごとに章分けされていました。詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 喜多川歌麿>
まずは歌麿のコーナーです。喜多川歌麿は狩野派の鳥山石燕に学び、北川豊章の号で役者絵などを描いていました。1781年からは歌麿と改め、蔦屋重三郎のサポートを得て活動しはじめ一気に実力を発揮していきました。ここにはそうした歌麿の代表的な作品が並んでいました。
 参考記事:歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎 (サントリー美術館)

2 喜多川歌麿 「婦人相学十躰 浮気之相」
こちらは横を見ている女性像で、腰の辺りまで描かれた半身像となっています。胸が露わで湯上がりの姿らしく、誰かと話しているような振り返るポーズをしています。このシリーズは観相学をテーマにしていて、この女性は浮気の相とのことですが、恋愛の浮気のこととは限らず落ち着きの無い様子という意味もあるようです。見た目は涼し気な美人といった感じで、切れ長の目が艷やかでした。

この辺は人相学のシリーズが並んでいました。色彩は淡めで線の細い画風です。

31 喜多川歌麿 「歌撰恋之部 あらはるる恋」
こちらは団扇を持ち項垂れるようなポーズの女性が描かれた作品です。簪を挿し直そうとしているけど、恋する気持ちが表に出て動揺しているのが現れた場面のようです。このシリーズは恋の諸相を描いたもので、心情表現が巧みな作品となっていました。

55 喜多川歌麿 「櫛」
こちらは更紗模様を背景に、鼈甲の櫛を持つ遊女が描かれた作品です。櫛が透けて顔が見えるような構図で、繊細な表現となっています。一方、背景がアジア風なので他の作品には無い異国情緒が感じられました。

この辺は遊女の生活を描いた作品などが並んでいました。

61 喜多川歌麿 「針仕事」
こちらは3枚続きの美人画で、質素な服を着た針仕事をする女性たちが描かれています。右下には猫に鏡を向けている子がいて、猫が毛を逆立てていたり、足元で子供が団扇で遊んでいたりと家庭的な雰囲気となっています。左下には布を透かして じっくり見ている女性がいて、その布越しに顔が見えるという 先ほどの「櫛」と似た発想も見受けられます。この頃は派手な絵が禁じられたりしていたようですが、日常の様子を描いても魅力ある作品となっていました。

この近くには同様に透かしものを通して美人が見えるという作品がありました。得意の構図だったと思われ、高度な技術と共に面白い趣向となっていました。

73 喜多川歌麿 「錦織歌麿形新模様 浴衣」
こちらは花柄の着物を着た女性を描いた作品です。珍しいのが着物を輪郭線を用いずに描いている点で、平面的に見えることもあって花模様が非常に目を引きます。手や顔には輪郭があるので、体だけちょっと違和感もあるけど、実験的で斬新な作風となっていました。

勿論、この他にも見どころが多く今回の5人の中では最も目新しさがあったように思います。


<第2章 東洲斎写楽>
続いては写楽のコーナーです。美術に詳しくない人でもその名を知っているほど有名な浮世絵師ですが、実際には突然デビューして1~2年で消えた謎の人物です。蔦屋重三郎の元で黒雲母摺28枚の大首絵というド派手なデビューを飾り当時センセーショナルを巻き起こしましたが、誇張した突飛な画風は長く支持されなかったようです。大田南畝の言葉を借りれば「あまりに真を画かんとて、あらぬさまにかきしかば、長く世におこなわれず、一両年にして止む」ということで短命の活動期間となっています。それでも10ヶ月で140点もの作品を発表するなど足跡は大きく、海外でもロートレックをはじめとして多くの芸術家に影響を与えました。現在、その正体は阿波侯の能役者 斎藤十郎兵衛が有力視されているようです。ここにはそんな写楽の代表作が並んでいました。
 参考記事:
  写楽 感想前編(東京国立博物館 平成館)
  写楽 感想後編(東京国立博物館 平成館)

105 東洲斎写楽 「3代目大谷鬼次の江戸兵衛」 ★こちらで観られます
こちらは写楽の作品の中でも特に有名な悪役を描いた大首絵です。黒雲母を背景に、着物の中から両手を開いて出し見得を切る姿で描かれていて、敵役らしい険しい表情を浮かべています。こちらは盗賊の頭で、今まさに襲いかかる所らしく 目は釣り上がり口をへの字にしていて誇張した感じに観えます。西洋の美術よりも早くこの境地に至っていたことに驚かされる1枚です。

110 東洲斎写楽 「初代市川男女蔵の奴一平」
こちらは先程の江戸兵衛に金を奪われる人物を描いた大首絵です。刀を持って金を守ろうとしていますが、やや頼りない顔つきで上半身が後ろに倒れ気味で腰が引けた感じになっています。やられ役だけあって既にその様子が表れているのが面白い。

115 東洲斎写楽 「市川鰕蔵の竹村定之進」 ★こちらで観られます
こちらは『恋女房染分手綱』のヒロインの父親役を描いた大首絵です。切腹する場面らしく歯を食いしばっていて鬼気迫る形相をしています。やはり誇張された表情ですが、真に迫る役者ぶりが伝わってくるようでした。

132 東洲斎写楽 「初代中山富三郎の松下造酒之進娘宮ぎの」
こちらは悲劇のヒロイン役をする女形の役者を描いた作品です。やたら目と口が小さく 鼻が長くて顎が出ている特徴的な顔つきとなっています。それでも微笑んでいるような感じが出ていて、戯画になりそうでならないギリギリの線に思えるかなw この初代中山富三郎は「ぐにゃ富」というあだ名が付いていたそうで、他の作品でも同様に描かれているので実際にこんな顔つきだったのかも? ひと目で覚えられる個性がありました。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。浮世絵の中でも特に有名な絵師の代表作を集めているので 割と見慣れた作品が多いですが、浮世絵のベスト盤とも言える内容だと思います。美術初心者でも楽しめるラインナップなので、人気なのも頷けました。後半も面白い作品が目白押しとなっていましたので、次回は残り3人についてご紹介の予定です。

 → 後編はこちら



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動きの中の思索―カール・ゲルストナー 【ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)】

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、銀座に移動してギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 動きの中の思索―カール・ゲルストナー 

【公式サイト】
 http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000749

【会場】ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
【最寄】銀座駅

【会期】2019年11月28日(木)~2020年01月18日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はスイスを代表するグラフィックデザイナー、カール・ゲルストナーの日本初となる個展となっています。カール・ゲルストナーはフリッツ・ビューラー・スタジオにて見習いとして研鑚を積むかたわらバーゼル工芸学校で学び、1949年から医薬品メーカーのガイギー社のデザインチームの一員となり、そこでコピーライター兼編集者のマルクス・クッターと出会いました。1959年に2人で広告代理店ゲルストナー+クッターを設立し、さらに1963年に建築家パウル・グレディンガーを迎えて、社名をGGK (ゲルストナー グレディンガー クッター)と改め、ヨーロッパ有数の成功を収めていったようです。しかし、1970年にゲルストナーはアートと厳選されたデザインプロジェクトに専念するため、同社を離れていったそうで、この展示では1950~1960年代頃の作品が中心となっていました。詳しくは気に入った作品の写真と共にご紹介していこうと思います。

まず1階はこんな感じで白黒のデザイン画が並んでいました。
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壁もデザイン画に合わせていて洒落た雰囲気となっています。

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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こちらはレモネードの広告。グラスを側面から捉えたシンプルな構図なのに洗練された雰囲気で涼しげに思えます。このセンスはヨーロッパ的なものを感じます。

ゲルストナー+クッター 「シュロッターベック:シトロエン2CV advertisement for automobile dealership」
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こちらは白黒の対比が強めとなったシトロエンの広告。車自体はそれほど大きくなくコラージュされた櫛や鏡?などより小さいw 車のスペックではなく洒落たライフスタイルを魅せるような広告ですね。

ゲルストナー+クッター 「ラインブリュッケ  advertisement for department store」
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こちたはデパートの広告。女性のハイヒールが何とも優美。このシルエットの美しさが特徴なのかもしれません。

ゲルストナー+クッター 「シュロッターベック:シトロエン2CV advertisement for automobile dealership」
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再びシトロエン。何故か背景に象がいてちょっとシュールw シトロエンは車の形自体が美しいので、エレガントな雰囲気の女性もよく似合います。

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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再びレモネード。このクローズアップのセンスは芸術的です。文字がやけに控えめなのも現代の日本の広告には無い感性ですw

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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こちらもレモネードの広告。ガラスの透明感とレモネードの雫の清涼感が伝わってきます。もはや抽象絵画的な美しさw

ゲルストナー+クッター 「ラインブリュッケ advertisement for department store」
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こちらはデパートの調理器具の広告かな。調理器具が勢いよく伸びているような印象を受けますw こちらもシルエットを上手く生かしているように思いました。

カール・ゲルストナー 「スイス航空」
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恐らく今でも同じロゴじゃないかな。スイス国旗に近いとは言え、シンプルかつ高級感があるように思えます。

カール・ゲルストナー 「シェル石油(ロンドン)」
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こちらは誰もが観たことがあると思われるCI。これも名前通りの貝ではありますが、赤地に黄色で非常に目立ちますよね。

カール・ゲルストナー 「クリシェ・シュヴィッター」
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これは広告なのかすら分からずw 幾何学模様の抽象画のような印象を受けます。この人の作品は軽やかなリズム感があるように思えました。

続いて地下の展示。地下はカラフルな作品もありました。

カール・ゲルストナー 「メタクローム」
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あまり解説がないので詳細は分かりませんが、実験的な雰囲気があるように思えます。色と幾何学模様の組み合わせは現代アートそのものw

カール・ゲルストナー 「カロ64」
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こちらは壁にずらりと並んでいました。

一部をアップにするとこんな感じ
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微妙に1枚1枚異なる色合いとなっています。この作品は習作や専用ケースまで展示されていて、並々ならぬこだわりを感じさせます。とは言え、ちょっと意図は分からずw

ガラスケースには著書や習作などが並んでいました。

カール・ゲルストナー 「スイス時計連盟」
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スイスと言えば時計が有名ですが、こちらはスイス時計連盟の略称のなかにスイス国旗を表すという面白いアイディアとなっていました。

カール・ゲルストナー 「1955年作品シリーズより」
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こちらは先程の作品どうように色面のパズルのような作品。これも意図は分かりませんが広告というよりはアートに観えます

カール・ゲルストナー/マルクス・クッター 「メルクール」
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こちらはシンプルに文字主体ですが、力強くも柔らかい印象を受けました。


ということで、解説が少ないので何の為の広告なのか分からないのもありましたが、洗練されたデザインがかなり好みでした。ここは無料で観ることが出来ますので、銀座に行く機会があったら寄ってみるのもよろしいかと思います。




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坂田一男 捲土重来 【東京ステーションギャラリー】

先日ご紹介したインターメディアテクに行く前に、東京駅にある東京ステーションギャラリーで「坂田一男 捲土重来」を観てきました。

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【展覧名】
 坂田一男 捲土重来

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201912_sakata.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅

【会期】2019年12月7日(土)~2020年1月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_4_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は1920年代にパリで最新鋭の芸術潮流で活動した坂田一男という画家の個展となっています。出身地の岡山以外では大きく紹介されることがなかった知る人ぞ知るといった画家(私も知らなかったw)ですが、当時は世界的に高い次元に到達していたようです。フェルナン・レジェに師事しキュビスム~ピュリスム辺りの画風から独自の道へと進んで行ったようで、全般的に抽象画が多かったように思います。展示は活動時期ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、展示順と章が合わないところがありますが、観た順で書いて参ります。


<I 滞欧期まで 事物の探求 ― 事物に保管されたもの/空間として補完されたもの>
まずは初期のコーナーです。坂田一男の画家としての出発は1921年の渡仏後と見なす事ができるそうで、渡仏して数年でフェルナン・レジェに師事しました。レジェやオザンファンら同世代の仕事に接近し、その革新を理解して行動を共にするようになっていったそうで、ここではそうした時代の作品が並んでいました。

1-9 坂田一男 「コンポジション(顔と壺)」
こちらは幾重にも四角や長方形の色面が並び、そこにコックらしき人物の顔と壺が縦半分だけ描かれている半具象・半抽象の作品です。キュビスム的でレジェにも似た作風となっていて、落ち着いた色彩で静かな印象を受けます。中央に青い柱のようなものがあるのが大胆で、幾何学的な構成が巧みな作品でした。

この辺は同様のキュビスム的な作品が並んでいました。レジェほどは有機的な感じがせず、より平面的に思えます。

1-4 坂田一男 「キュビスム的人物像」 ★こちらで観られます
こちらは円錐形を無数に組み合わせた人物像で、パッと観た時に東郷青児の初期作品と似た印象を受けました。淡く明るめの色で意外と優しい印象を受けますが、マリオネット的な無機質さがあるかな。この作品では陰影が付けられていて立体的な感じも出ていました。

このへんは円形や円錐を組み合わせた人物像が並んでいました。それぞれ作風が違っていたりして試行錯誤の様子が伺えます。


<II 帰国後の展開 戦中期 カタストロフと抵抗 ― 手榴弾>
続いては帰国後のコーナーです。1933年にフランスから帰国し、戦時中においてもブレることなく一貫して抽象的思考を持続していたようです。この時期、手榴弾の主題が登場し柄のついた手投げ弾がコンポジションの中に現れるようになったようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

2-1 坂田一男 「コンポジション」 ★こちらで観られます
こちらは平坦な色面を組み合わせたキュビスム~ピュリスムのような作品です。中央に柄のついた白い逆三角形の物体が大きく描かれていて、これが件の手投げ弾のようです。一見すると電気ランプのような…w 大きく存在感があるものの、手投げ弾にしては明るい印象を受けました。

この隣ににも似たような2枚の作品がありました。素描にも手投げ弾のコンポジションがあったけど、静かな雰囲気で爆発しそうには観えなかったw

2-56 坂田一男 「端午」
こちらは黒い四角の中に赤い鯉のぼりが上向きになっている様子が描かれた半具象・半抽象の作品です。近くに赤・青・白のポールやロープらしきものも描かれています。黒地に赤白なので色の対比が強く非常に目を引きます。しかし画面は以前よりもざらついたマチエールになっているように思えました。

この近くには多くのデッサンが並んでいました。デッサンもキュビスム風で、中には鯉のぼりを描いたものもあります。また、銃を持つ兵士を描いた作品もいくつかあり、時代を感じさせました。

1-26 ル・コルビュジエ 「ニレ」
こちらはル・コルビュジエによるスケッチです。建築家で名高いル・コルビュジエですが、ピュリスムの画家としても活動していて このスケッチでは円やモコモコした感じの謎の静物を描いています。ニレなのかはちょっと分からないw 手を思わせるものなどもあるかな。解説が無いので坂田一男と直接関係があったのかは定かではないですが、これを観ても坂田一男はキュビスムよりはピュリスムに近いものがあるように思えました。

この近くにはニコラ・ド・スタールやモランディの作品もありました。モランディにも似ている部分があるかも。上階はこの辺までで、続いて下階の内容となります。

2-35 坂田一男 「コンポジション」
こちらは平面的な四角を背景に壺と工業製品が半分ずつ縦にくっついたような謎の静物画です。直線と円を組み合わせていて、色面でも錆のようなものを感じさせる描写もあります。背景には窓のような規則正しい格子があるなど、リズム感ある画面となっていました。


<II 帰国後の展開 戦中期 カタストロフと抵抗 ― 冠水>
引き続き帰国後の戦中~戦後のコーナーで、手榴弾と同じくこの時期の重要なモチーフとして冠水が挙げられるようです。1949年に瀬戸内海に面したアトリエが高潮の被害にあい、多くの絵画が冠水してしまいました。しかし坂田一男は冠水の影響を画面の構造として取り組んだ作品(画面が剥落してそこに別の絵画が浮上するような)を製作するようになったようです。ここにはそうした作品などが並んでいました。

2-67 坂田一男 「静物Ⅱ」
こちらは機械のようなものと中央に黒い壺型のものが描かれた作品です。キャンバスのあちこちがひび割れて剥落しているのが特徴で、まるで遺跡から出土したような風合いとなっています。これが冠水を逆手に取った作品だと思いますが、隣にそっくりの絵があり、比べてみると両方とも剥落している所があるので意図してやっているようにも思えました。ちょっとこの辺は何処までが偶然なのか分からないですが、風化した味わいが出ていて面白い独自性です。

近くには同様に剥落したような作品が並んでいました。


<III-1 戦後1 スリット絵画 ― 積層される時空 ― 海/金魚鉢>
続いては戦後のコーナーです。戦後の最も特徴的なスタイルはスリット状の形が横縞模様のように配置された縦位置の絵画だそうで、このシリーズの始まりではガラスの器の断面が重なったような透明な奥行きが示されたようです。時には金魚が描かれた金魚鉢も登場したようですが、やがて重なりの効果は後退して船の形が現れたようです。これはアトリエのある瀬戸内海をモチーフにしたと考えられるようで、ここにはそうした題材の作品が並んでいました。

4-1-11 坂田一男 「象岩」
こちらは赤い背景に象の横顔に見えるシルエットが描かれた作品です。シンプルな造形になって描かれていますが、実際にこの形の岩が瀬戸内海にあるらしく、隣りにあった写真と比べるとよく特徴が現れています。抽象的な表現ではあるけど具象的な特徴を捉えているのが面白い作品でした。

3-1-19 坂田一男 「金魚」
こちらは黄色を背景に横線が無数に描かれ、下の方は金魚鉢となっていて金魚が泳いでいるのが描かれています。かなりタッチが粗めで今までと異なる印象を受けるかな。隣にも金魚鉢を描いた作品がありましたが、そちらは白地に輪郭線のみで描いていて同じモチーフでも受ける印象はだいぶ違います。またここに来て画風を模索している様子が伺えました。

この辺はアンフォルメルのようなざらついたマチエールの作品が並んでいました。時期的にも近いので欧米の先端を取り入れたのかな?

3-1-14 坂田一男 「エスキース・コンポジション」
こちらはピンクがかった白地に横線と横帯が並ぶコンポジションです。下の方にはコマのような形の輪郭線があり、その下に薄い水色の横帯があるので瀬戸内海に浮かぶ船を思わせます。こちらも絵肌はざらついて風化したような質感になっていて、この時期の特徴のように思えました。

この近くにはこの作品と似た構図の絵がいくつかありました。明らかに船っぽい形の作品もあります。


<III-2 坂田一男のパラダイム>
こちらは同時代の作家との比較の章で、上階などにも点在して展示されています。坂田一男が当時の画家と同様の問題(課題)を共有し事物の探求をしている様子が伺える内容となっていました。

3-2-8 ジャスパー・ジョーンズ  「国旗」
こちらは裏返しになったアメリカの国旗で、落書きのようにグチャグチャな筆致となっています。その作品の下に坂田一男の「コンポジション」が並んで展示されていて、風化したような質感を出しています。画面に別の層を生み出すという点において両者は共通しているようで、お互いに革新的なアプローチの試行が伺えました。


<IV-1 戦後2 残された資料 時間の攪乱=アナーキーなアーカイブ>
続いて資料に関するコーナーです。坂田一男の作品は製作年が書かれていないので確定は難しいようですが、1944年と1954年の2度の冠水被害以降にアナクロリズム すなわち正常な時間の流れを失効させ異なる時間を並列に混ぜ合わせ・重ね合わせ・入れ替えることが重要な革新となったようです。ここはそうした時間の撹乱をテーマにした内容となっていました。

4-1-4 坂田一男 「上巳」
こちらは両手を広げた人物と その傍らに立つ小さめの人物をマネキンのように描いた作品です。桃の節句の雛人形らしく、平坦でシンプルな構図で背景の薄いオレンジに浮き上がるような色合いとなっています。この辺は人物を思わせる作品が並んでいて絵柄は似ていますが、マチエールが違っていたりして印象の違いを比較することができました。

近くには大量のデッサンが並んでいました。機械やマネキンを思わせるモチーフが多いように思います。


<IV-2 戦後3 黙示録=捲土重来>
最後は晩年のコーナーです。この頃には黒を基調とした作品やキリストの復活を思わせる図像の作品があるようで、捲土重来(巻回されうる時空の可能性)は坂田一男が終生 追求した画題で その果てに改めて聖書にたどり着いたようです。

ここはデッサンが大量にあり、確かに被昇天図や最後の晩餐を思わせる群像的な作品がありました。しかし形はハッキリせず沸き立つ黒い岩のようにも思えるのが独特で、指摘がなければ聖書主題には観えなかったかもw 最後まで謎めいた画家でした。


ということで、画風が変わり続けて中々とっつきづらい画家のように思えますが、こんな個性派がいた事を知ることが出来て満足できました。普段から洋画をよく観ている方にも目新しい展示だと思います。



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