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白髪一雄 【東京オペラシティアートギャラリー】

前回ご紹介した常設を観る前に東京オペラシティアートギャラリーの企画展「白髪一雄」を観てきました。この展示は一部で撮影可能となっていましたので、写真と共にご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 白髪一雄 

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh229/

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅

【会期】2020年1月11日(土)~3月22日(日) ※2月29日(土)~ 3月16日(月)は臨時休館
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。しかしこの展示はコロナウィルス予防の影響で臨時休館していて、その後の予定も変わる可能性もあるみたいです。お出かけの際は公式サイトをチェックした上、感染予防の注意を最大限するようお願いいたします。

さて、この展示はロープに掴まって足で床においたキャンバス等に直接描く「フット・ペインティング」で名高い現代画家 白髪一雄の個展となっています。白髪一雄は具体美術協会に参加し立体作品なども残していますが、波打つような大迫力の大型作品が特に魅力ではないかと思います。今回の展示ではそうした作品に加えて制作資料などを含めて120点ほど並んでいました。展示は8つの章に分かれていましたので、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、今回は作品解説も章立てのキャプションもほぼ無いので、私の簡単な感想が中心となります。


<第1章 知られざる初期作品>
まずは初期のコーナーです。白髪一雄は幼少期より書画骨董、チャンバラ映画や芝居、浮世絵版画や中国の怪異小説(特に水滸伝)などに親しんでいたそうで、最初は日本画を学んでいたものの京都の美術専門学校を出てから油彩画に転向したそうです。少年時代には地元の尼崎のだんじり祭で山車と山車が衝突による流血の情景を目にしたことがあるらしく、それが白髪一雄の原風景となり後に血のイメージを意識した作品に繋がっていくようです。ここには初期の1949~52年頃の作品が並んでいました。

1 白髪一雄 「鳥監」
こちらは黒い鳥かごに入った4羽の鳥を描いた作品です。フラミンゴのような鳥の姿が確認できますが、かなり簡略化されていて筆致は早めです。まだ具象は残っているものの 既に大胆な表現となっていて、色も明るく塗り方も荒い感じでした。

この辺はまだ具象的な作品がありました。キュビスムを取り入れた感じのもあったりして 画風は安定せず、模索している様子が伺えました。

6 白髪一雄 「妖草II」
こちらは暗い背景に三角が無数に並ぶような抽象的な作品です。白い部分があって目に鮮やかだけど、不穏な色彩に思えるかな。初期の岡本太郎を思わせるような不協和音と不気味さを感じる作品でした。

この近くには既に抽象化が進んでいる作品が並んでいました。


<第2章 「具体」前夜:抽象からフット・ペインティングへ>
続いて2章はフットペインティングを始めた頃のコーナーです。白髪一雄は1952年に金山明・村上三郎・田中敦子らと先鋭的な表現をめざして「0会(ゼロ会)」を結成し、1953年~54年辺りから手を使って制作するようになり、更に素足で描く「フット・ペインティング」を創始していきました。当時はキャンバスではなく紙に描いていたようです。ここには1953~1954年頃の抽象画が並んでいました(フットペインティングっぽいのは次の章だったような…)

11 白髪一雄 「作品」
こちらは赤い渦巻のような抽象画です。中心に目のような物があり、暗い赤バラと言うか台風の目と言うかw 隣にも似た感じの作品があり、それは中心から無数に放射線状に線が飛び出すような感じでした。明暗があって微妙に花のようにも思えるけど、視覚的効果が面白い作品でした。


<第3章 「具体」への参加>
続いては具体美術協会に加入した頃のコーナーです。白髪一雄は1955年に「0会(ゼロ会)」の仲間とともに、吉原治良率いる「具体美術協会」に参加し、実験的な作品やパフォーマンスを発表していきました。1956年あたりは野外作品なども手掛けていたようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

19 白髪一雄 「ミスター ステラ」
こちらは巨大なキャンバスに足で描いたアクションペインティング作品で、赤と黒が渦巻いて流れを感じます。この頃には代名詞的なフットペインティングの作風が出来上がっていたように見えるかな。タイトルはフランク・ステラを意識したのではないか?と思えました。

17 白髪一雄 「作品(赤い材木)」 ★こちらで観られます
こちらは赤い四脚のような木製の作品です。側面がギザギザしていて色と共に荒々しい造形に思えます。何に使った作品か分かりませんでしたが、力強い印象を受けました。


<第4章 「水滸伝シリーズ」の誕生>
続いては『水滸伝』の登場人物の名前などがつけられた水滸伝シリーズのコーナーです。豪傑たちの名前と共に血を連想させる赤・黒に染まる大型作品が多く並んでいます。一部、3章の内容もこの章に展示されていました。

22 白髪一雄 「天異星赤髪鬼」
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とにかく赤黒く染まった画面がおどろおどろしい程のインパクトです。赤髪鬼というタイトルも納得ですが、むしろ血みどろの事件現場みたいな…w 少年時代のトラウマ炸裂と言った所でしょうか。

16 白髪一雄 「赤い液(再制作:大)」(複製)
こちらはガラスの水槽のようなものに謎の白い物体と赤い液体状に見えるものが入っている作品です。まるで実験室で臓器を入れたガラス瓶のようなイメージかなw やや不気味さを感じつつ、こんな立体作品もあったのかと驚きました。 わざわざ再制作するほど気に入ってたのかな?

26 白髪一雄 「長義」
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こちらは床に置かれて展示されていました。実際に描く時もこんな感じで置いていると思われます。やや小さめですが、飛び散るような勢いがあり大型作品と同じくらい力強く感じられました。

33 白髪一雄 「猪狩壱」
こちらはイノシシの毛皮をキャンバスの上に張り、その上から赤と黒の絵の具を塗りたくった作品です。やはり絵の具は飛び散っていて、首がもがれて血を出して倒れているような印象を受けます。中々スプラッターな感じでショッキングです。年表によると1961年に初めてイノシシの毛皮を使った作品を制作したそうで、白髪一雄は当時 猟友会に入っていたそうです。そしてその時に観た石仏・石塔・梵字などに強く惹かれ、密教への関心を深めていきました。(この後、密教関連の章があります。)

14 白髪一雄 「指で強く押してください」
これは前章の内容ですがこの章にありました。茶色いウレタンのザラついた表面に×や+に見える切り込みがあり、切り込みに沿って赤が塗られています。タイトルのように実際に押すことは出来ませんが、何かの傷のように見えたかな。この頃の作品は痛みのようなものを感じさせるように思いました。

28 白髪一雄 「地暴星喪門神」
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こちらは水滸伝の豪傑のあだ名を作品名にしたもの。天○星とか地○星というあだ名で108人いるうちの1人です(聖闘士星矢のスペクターではなく水滸伝が元ネタですw) 何だか馬が跳ねるような感じに見えるかな。具象的ではないけど躍動感があるのが面白い。

この辺は同様に水滸伝の豪傑の名前のシリーズが並んでいました。


<第5章 スキージ・ペインティングと制作の変容>
続いては素足にかわってスキージ(長いヘラ)を用いて描いていた頃のコーナーです。1965年からスキージを用いる制作が始まり、スキージをコンパスのように用いて扇形や半円をモチーフにした作品を制作していたようです。ここにはそうした素足では描けないような作品が並んでいました。

39 白髪一雄 「色絵」
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見事に半円形になった作品。勢いは変わりませんが、流れに方向性が出たように思えます。色彩についても確かに色絵の陶器を思わせるような感じかな。以前より明るくなったように思えました。

41 白髪一雄 「平治元年十二月二十六日」
こちらはかなり巨大な作品で、先程の「色絵」のキャンバスを2枚繋いでいます。うねりのような幅の広い流れがあり、やはりスキージならではの表現となっていました。とにかく間近で観ると迫力があります。


<第6章 「具体」の解散と密教への傾倒>
続いては密教への傾倒に関するコーナーです。猟友会の活動の際に観た梵字などから1960年代頃から密教への関心を深め、1971年には比叡山延暦寺で得度して天台宗の僧侶(法名は白髪素道)にまでなっています。一方この頃、具体美術協会の吉原治良が亡くなり具体美術協会は解散したようです。ここには密教の教えを取り入れたような大型作品が並んでいました。

45 白髪一雄 「貫流」
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白黒で流水や山水を思わせるかな。今までの赤っぽい色合いから一気にモノクロの水墨的な印象を受ける色彩に変わったように思えます。

50 白髪一雄 「密呪」
こちらは暗い背景に9の字肩に赤黒いものが描かれた作品です。周りには絵の具が飛び散っていて、ブラックホールのような印象を受けるかな。もしくは曼荼羅のようなものでしょうか。やはりスキージを使っているようで、これまでにない神秘性も加わっているように思えました。

この辺には密教の仏の名前のタイトルの作品が多く並んでいました。


<第7章 フット・ペインティングへの回帰と晩年の活動>
続いては再びフットペインティングに回帰した晩年のコーナーです。仏道修行の後、スキージで円相を多く描いていたようですが、動きに乏しい円の反復で制作は停滞したようで 1978年に久しぶりに足だけで描く作品を制作したようです。そして仏教的なタイトルは減っていき、代わりに中国史などにまつわるタイトルが増えたようです。1984~90年代なかばになると黒・白黒・白のみの作品が制作されたようですが、一方で1990年代には黄色・オレンジ・ピンクなど明るい色彩が以前よりも頻繁に使用されるようになったようです。ここにはそうした時期の作品が名編んでいました。

58 白髪一雄 「酔獅子」
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たしかに獅子が下向きで身構えているようにも見えるかもw 足だけで描いた作品はスキージに比べると有機的で無秩序な動きで、炸裂するような勢いを感じさせますね。

54 白髪一雄 「扶桑」
こちらは白地に白のペインティングをした作品です。厚塗り具合は他の作品と同じですが、白一色なのが何とも斬新。厚塗りで物理的に立体感があるので、影がついて流れが確認できます。これまでの色彩感覚とは全く異なる方向性で驚きました。

55 白髪一雄 「游墨 壱」
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こちらは黒一色。墨跡のようで日本っぽさを感じるかな。モノクロの作品も新しい境地のように思えました。

57 白髪一雄 「うすさま」
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こちらが晩年の作品。青やオレンジ、ピンクなどこれまで観なかった明るい色彩が特徴です。色というのは不思議なもので、これは何となく温かみを感じますw タイトルは恐らく烏枢沙摩明王のことでしょうね。


<第8章 水彩・素描にみる形成期の模索と制作の裏側>
こちらは資料のコーナーです。制作に使われた品などが並んでいました。

62 白髪一雄 「尼崎与茂川夜景」
こちらは夜の川の畔の家々を描いた水彩画です。家の明かりが川面に映って揺らめく様子が叙情的で、ここまで観てきた作品とはえらく作風が違っています。1948年頃の作品のようで、1章よりも前の頃はこういう絵を描いていたのかと驚きました。

65 白髪一雄 「無題」
こちらは1952年頃の椅子に座る裸婦を描いた素描です。やけにカクカクしていてキュビスム的な感じもしつつ、細長い身体がベルナール・ビュフェの作風に似ているように思えます。生きる痛みのようなものを感じさせる裸婦でした。

この先には1960~70年代に使っていたスキージ(スキー板みたいな)や天井から吊り下がるロープ、絵の具、絵の具を入れた缶などがありました。また、水彩による下絵のようなものもあり、画風は油彩に似ているものの墨一色や赤黒が多かったように思えます。

少し進むと『具体』誌に載せた文章の原稿などもあり、最後に映像で制作風景を流していました。上半身裸で缶に絵の具を入れて床に置いた画面に撒くように塗っています。そしてロープに掴まり、足で滑るように伸ばして描くスタイルとなっていました。サポートを務める奥さんの存在も大きいように思えます。


ということで、白髪一雄の作風の変遷を代表作と共に観ることができました。もうちょっと解説やキャプションが欲しかった所ですが、ダイナミックな作品ばかりで間近で観ると圧倒されました。休館期間もありますが、騒動が落ち着いたら現代アートの好きな方はチェックしてみてください。


おまけ:
この記事で コロナウィルス騒動による休館ラッシュ前に行った展示のメモが尽きましたw 次回はとりあえず現在の休館状況のまとめでも書こうかと思います。



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[汝の隣人を愛せよ][今井麗 IMAI Ulala] 【東京オペラシティアートギャラリー】

先日ご紹介したICCに行く前に東京オペラシティアートギャラリーで展示を観てきました。企画展は準備中なので先に常設をご紹介しようと思います。今回は「収蔵品展069 汝の隣人を愛せよ」と「project N 78 今井麗 IMAI Ulala」いう2つの内容となっていました。

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【展覧名】
 収蔵品展069 汝の隣人を愛せよ
 project N 78 今井麗 IMAI Ulala

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh230.php
 http://www.operacity.jp/ag/exh231.php
  
【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅

【会期】2020年1月11日(土)~3月22日(日) ※2月29日~3月16日は臨時休館
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の収蔵品展は「汝の隣人(となりびと)を愛せよ」という聖書の一節をタイトルにしていて、自己と他者との関係を問うようなテーマの作品が中心となっています(と言ってもテーマに沿ってるのか分からない絵が多いですがw) また、後半では今井麗(いまい うらら)氏という1982年生まれの現代画家が紹介されていて、こちらは撮影可能となっていました。詳しくはそれぞれ気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<汝の隣人を愛せよ>
まずは収蔵品展です。今回はシュルレアリスム的な作品が多めだったように思います。

39 加藤清美 「哀しき旅人その2」 ★こちらで観られます
こちらは今回のパンフレットに載っている作品で、枯れ木の側に茶色い服の旅人の後ろ姿と、空飛ぶ人物(女性?)が描かれています。2人はお互いの存在にあまり関心がないように見えて、特に空飛ぶ人がシュールに思えます。枯れ木のせいか寂しげな雰囲気もあって独特の世界観となっていました。
この近くには似たような雰囲気の作品が3点ありました。静かで人形のように無表情なのがちょっと怖いw

5 有元利夫 「花火のある部屋」
こちらは舞台のようなところを描いたもので、中央にはステッキを持ったドレスの女性、その周りを4つの噴出花火が囲っている様子が描かれています。しかし花火には勢いは感じられず、静かで静止したように見えるかな。マジックか儀式のようにも思えます。くすんだマチエールで、中世のフレスコ画を思わせる味わいとなっていて、一層にシュールに感じられました。
この近くにはスケッチもありました。
 参考記事:有元利夫展 天空の音楽 (東京都庭園美術館)

61 落田洋子 「完璧なプライバシー」
こちらは4本の煙突から煙を出すホテルと、その前に裸の男たちが無数に集まっている光景を描いた作品です。左右にはやたら大きめの人が雲のような(綿のような)ものを抱いていたりして、中々に不条理な雰囲気です。ホテルも缶の容器みたいに見えるし、ミニチュアの世界か夢の中といった感じに見えました。タイトルも意味深だけど意図は分からず。

76 相馬武夫 「午後の詩興」 ★こちらで観られます
こちらは今回のパンフレットに載っている作品で、服だけで人の頭の無い人物像と 裸婦がテーブルで向き合っている様子が描かれています。背景は草原で水晶玉のようなものを運ぶ給仕らしき姿があり、シュールな光景です。裸婦は無表情だし全体的に物哀しい雰囲気があるかな。空から降り注ぐ光のような表現もあったりして、何らかの意図はありそうでした。

40 河原朝生 「室内I:夏の終わり」
こちらは赤い壁紙の部屋の中から海に浮かんでいる船を観ている男女が描かれた作品です。女性は椅子に座っていて、男性はステッキを持っています。平面的で空虚な部屋で、静かな色彩と共に時間が止まったような雰囲気となっていました。これも描かれているもの自体は現実的だけど超現実的な感じになるのが面白い。

62 オノデラユキ 「古着のポートレート No.10」
こちらは空を背景に 服だけが撮られた白黒写真で、まるで人が着ている時のような感じになっています。透明人間がいたらこう見えるのではないか?という奇妙さがあり、やや迫りくるような雰囲気で不安も覚えましたw 発想が面白い作品です。

18 舟越桂 「[午後にはガンター・グローヴにいる]のためのドローイング」
こちらは廊下の奥で真正面を向いて立っているように見えて目を引きました。黒い服の男性の立像のドローイングで、目の表現などに舟越桂らしさを感じるけど温和な印象に思えました。立派な人物像なので完成作を観てみたくなります。

44 香月泰男 「シベリヤ・シリーズ 雪(窓)」
こちらは4つの黒い窓枠の中に4人の顔が描かれた作品です。目が三角だったりして素朴な表現ですが、苦しそうな顔や憔悴した顔などシベリア抑留の辛さが伝わってくるように思えます。恨めしそうに外を見る目が何とも悲しい。地獄の中のような印象深い作品です。

この辺は素描が並んでいました。小作青史の恐ろしげな絵(★こちらで観られます)や池田龍雄の妖怪のような禽獣記シリーズ(★こちらで観られます)などが並んでいます。

0 加藤ゆわ 「瞬秋」
こちらは2人の着物の女性が並んで歩く様子が描かれた作品です。1人は歯を出して笑っていて、もう1人は頭の上に載ったイチョウの葉っぱを観るように視線を上に向けています。葉っぱが頭に載ったのを かしましく笑い合ってる場面でしょうか。ハッキリ言って2人とも可愛くはないw 美化せずにありのままの日常といった感じに思えます。 画風は全体的に色が明るく平面的で滑らかな仕上げとなっていました。

1 相笠昌義 「みる人」
こちらは真っ白な壁の部屋で等間隔に並んでいる人たちを描いた作品です。どうやら絵画展の様子から絵画を透明にしたような感じらしく、人々が熱心に壁を眺めているような光景になっていますw 、また、やけに白い空白部分が広い構図となっていてガランとした雰囲気となっているのも面白い。近くには相笠昌義 氏の作品が他に2点ほどあって、どれも好みでした。


<今井麗 IMAI Ulala>
続いては今井麗 氏のコーナーです。多摩美術大学の出身で、オルセー美術館でマネの「アスパラガス」を観たことを画家志望の契機にあげているそうで、静物画を中心に描いているようです。ここは撮影可能でしたので写真と共にご紹介して参ります。

今井麗 「テラス」
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明るく爽やかな色調で平面的な画風かな。穏やかな光景の中にあるキャラクターの顔が特に目を引きますw 食べかけのケーキがあったりして、ここには描かれていない人の存在や その人となりを想像させるように思えました。

今井麗 「山型食パン」
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何の変哲もないモチーフですが、何故か瑞々しく幸せな雰囲気があるように思えます。親しみやすい画風ですね。

今井麗 「木星」
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唐突にウルトラマンのダダが出てきましたw この画家の特徴として、こうした玩具やキャラクターが静物に紛れている点があると思います。恐竜みたいな姿もいくつかあるし、ちょっとシュールな感じがありました。

今井麗 「パイナップル」
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パイナップルの剥かれた皮や芯といった食べない部分を描いた静物。 何故そっち?w モチーフの選び方に独特のセンスがあって面白い。

今井麗 「グラビア」
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バナナの上に熊の顔を載せたらポーズを取ったグラビア写真みたいになってますw 熊が手を合わせているように見えているのが騙し絵的で愉快でした。

今井麗 「リベンジマッチ」
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左にいる清掃員に変装した人物はカルロス・ゴーンですねw 2019年の作品なので世相を取り込んでいるようです。熊と猿がプロレスみたいになっていたり、何かのストーリーがありそうな感じでした。


ということで、今回も両方とも楽しむことができました。ここは他の美術館とは一味違った現代絵画のコレクションを楽しめるので、オペラシティを訪れた際に立ち寄ってみるのも良いかと思います。
次回は同じ東京オペラシティアートギャラリーの企画展についてご紹介の予定です。


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開かれた可能性-ノンリニアな未来の想像と創造 【NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)】

先週の休みに初台のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で「開かれた可能性-ノンリニアな未来の想像と創造」という展示を観てきました。この展示は既に終了していますが、撮影可能となっていましたので写真と共にご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 開かれた可能性-ノンリニアな未来の想像と創造

【公式サイト】
 https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2020/open-possibilities/

【会場】NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
【最寄】初台駅

【会期】2020年1月11日(土)~3月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はシンガポールと東京で開催される巡回展で、科学技術を用いたアート作品が並ぶ内容となっていました。科学と伝統を融合させるような作品もいくつかあり、テクノロジーへの多様な視点を紹介することで、決してリニア(直線的)ではない未来への可能性を想像させるのが目的のようです。展示は撮影可能となっていましたので、詳しくは写真と共にご紹介して参ります。

市原えつこ 「仮想通貨奉納祭」
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こちらは「サーバー神輿」で、展示会場にあったQRコードでビットコインによる投げ銭ができるという作品です。お金が入るとLEDファンが回転して人工知能が音声合成した祈り・煩悩の言葉が鳴り響き、「ワッショイ・セレブレーション機能」が発動するそうです。八百万の神もついに仮想空間にも進出した感じでしょうかw バズワードてんこ盛りのやり過ぎ感が逆に皮肉っぽくて面白く思えました。

市原えつこ+中臺久和巨 「天狗ロボット」
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こちらはロボットのNaoが天狗の面を付けている作品。デジタルシャーマン・プロジェクトということで民間信仰の天狗をモチーフにしています。触ることが出来て、頭に触れると野太い声で自分は天狗であることを告げて一喝してきましたw 見た目と声・話し方のギャップが凄くて中々シュール。ロボットがシャーマンになるという発想がぶっ飛んでいて驚きでした。

Waft Lab 「Solah Trabas(ソラー・トラバス)」
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「トラバス」というのは危険なドライブのスリルを楽しむジャワ島の一部のオフロードバイクの文化のことだそうです。ホイールが光ったりして、彼の地のデコトラみたいなものかな?w 共に流れる音楽はトランスとジャワの儀式を融合させたものだそうで、こちらも現地の文化や宗教をデジタルなものと組み合わせた感じの作品でした。

INTER-MISSION 「ラプス・プロジェクト(パノラマ・ラプス)」
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こちらは3つの映像作品で、「シンガポール国立博物館」「シンガポール国立美術館」「シンガポール美術館」をデジタル消去してはじめから存在しなかったように見せているようです。と、言われても現地の景色を知らないので どの辺が現実と違うのか分かりません…w これが上野とかなら身近なんですけどねw もし身近ならパラレルワールドか異世界に迷い込んだような不思議さが感じられそうに思えました。

やんツー 「造山運動」
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こちらは山を描いた絵…ではなくリアルタイムの仮想通貨の価格推移のチャート図です。タイトルの「造山運動」は地殻変動を指す言葉のようで、価格推移になぞらえているそうです。まあ、観た感じでチャート図と分かりますよねw むしろ急激に上がったり下がってたりする方が興味を引きました。仮想通貨って結局まともに使われずに投機の玩具みたいになってますけど普及するんですかね??

ヘリ・ドノ 「ガムラン・オブ・飲むニケーション」
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こちらは部屋全体が機械仕掛けの作品となっていました。人形たちが楽器を鳴らすような感じです。

一部分をアップにするとこんな感じ。この人形たちは見覚えがあります。
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この人形はワヤン・クリッと呼ばれるインドネシアの伝統的な影絵芝居のための人形で、ガムランと呼ばれる民族音楽を奏でています。考えてみれば人形劇とロボットは似たようなものなので、違和感がないかな。伝統とテクノロジーの融合は昔からあったのかも??と思わせました。

葉山嶺 「裁縫鳥の真珠」
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こちらは映像作品で、香港で撮った映像と、作者により野鳥の鳴き声を混ぜたもの。結構上手いので普通に鳥の声だと思ってました。 テクノロジーを使って人間以外の存在と人間による演劇的な会話 という意味があるようですが、解説も難解なので理解できたかは怪しいですw


ということで、中には理解が難しいものもあったので 分かったような分からないような感じですが、新しいテクノロジーを使ったアートの数々となっていました。安易に有用性や危険性を示すのではなく、思いもよらないような分野と融合しているのがユニークでした。


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朝鮮王朝の宮廷文化 【東京国立博物館 平成館】

今日は写真多めです。先日ご紹介した東京国立博物館 平成館の特別展を観た後、企画展の「朝鮮王朝の宮廷文化」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。なお、この展示は東京国立博物館の臨時休館によって実質上の終了となっています。

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【展覧名】
 朝鮮王朝の宮廷文化

【公式サイト】
 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2006

【会場】東京国立博物館 平成館 企画展示室
【最寄】上野駅

【会期】2020年2月4日(火)~ 3月15日(日)→2月26日(水)をもって閉幕
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は平成館の1階の企画展示室で行われていたミニ特集で、朝鮮王朝の宮廷に関わる調度や服飾などが並ぶ内容となっていました。朝鮮王朝は1394年に首都を開京(現在の開城)から漢陽(現在のソウル)に遷し漢城と改称したそうで、漢城は風水に適した地でもあったようです。そこに古代中国の礼制に基づいた景福宮を造営し、その後 東方には離宮として昌徳宮が作られました。そして景福宮で国家行事を行い、昌徳宮で日常政務を行う体制となったようで、今回はそうした宮廷の品が並んでいました。ちょうどこの記事を書いた日から東京国立博物館は臨時休館になってしまったので、もう観ることはできませんが どのような内容だったかご紹介しておこうと思います。
 参考リンク:全館臨時休館のお知らせ 2020年2月27日~3月16日

「宮廷儀式図屏風」 朝鮮時代・19世紀
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こちらは宮廷で儀式を行う場面を描いた屏風。解説によると、王に慶賀を言上する礼のようです。

王の辺りをアップするとこんな感じ。
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肝心の王がいない!w これは玉座の後ろの日月五峰図屏風を王の象徴としているとのことです。日本や中国と似ているけどちょっと違う服装をしてますね。

「雑像(穿山甲)」「雑像(二口龍)」「雑像(沙和尚)」 朝鮮時代・19世紀
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こちらは何やらゆるい造形の像が並んでました。一番左のとか謎すぎる造形です。朝鮮の品って大体こういう緩さがあるような気がします。

趙斗淳 他(撰)「大典会通」 朝鮮時代・高宗2年(1865)
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こちらは1865年に編纂された法典です。1485年に施行された根本法典と補完するための書をまとめたものらしく、完全版と言った所でしょうか。意味は分かりませんが漢字で書かれていて読みやすい字体でした。

「団領(武官服)」「団領(文官服)」 朝鮮時代・19世紀
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団は丸、領は襟のことらしく 襟の部分が丸くなっています。似たような服に見えますが真ん中の絵の部分で文官・武官の見分けがつきます。

こちらは鳥のマークの文官
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この鳥の種類や数で階級を識別していたようです。2羽の鶴は身分が高そうな感じがしますが、実際の所は分かりません。時代によって規定も変わったらしいので、覚えるのも大変だったのでは。

こちらは獣のマークの武官
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モチーフは2頭の虎ですが、やはりゆる~いデザインですw 武官がこんな可愛い虎の服を着てたんですねw

「科挙及第図」 原本:朝鮮時代・16世紀
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こちらは官吏になる為の試験「科挙」の合格者の祝宴の様子を描いたもの。たくさん並んでいるのが文官と武官の合格者のようです。下の方には合格者の名前も書いてあります。中国の科挙は驚異的な記憶力や文字の上手さが求められるものですが、朝鮮もそうだったんでしょうね。まさにエリートの集まりです。

こちらは景福宮勤政殿の唐家の写真
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玉座の後ろにあるのが先程の王の象徴の日月五峰図屏風のようです。確かに太陽・月・5つの山が描かれています。

こちらは昌徳宮宣政殿の写真
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日常政務を行った宮殿の一部のようですが、かなり質素でお寺みたいな…。建築様式は日本とよく似ています。

「金冠」 朝鮮時代・19~20世紀
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こちらは宮廷で被っていた冠。見た目からして偉い人のものだろうと予測しましたが、縦に並ぶ金の線で階級が分かるようです。この5本の線(五梁)の冠は延臣の最高位の正一品という身分を表しているのだとか。金細工の鳳凰も豪華で、よくこんな冠が日本にあるものだとちょっと驚きでした。

「白磁硯」「長生白磁面取筆筒」「筆」「金銅水滴」 朝鮮時代・18~20世紀
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こちらは朝鮮王朝の上流階級の両班が使った文房具。特に教養がある両班をソンビと呼ぶそうで、清廉を心がけてこうした簡素な文房具で書画や詩文に親しんだようです。結構使い込んだ感じがするし、日本の侘び寂びに似たような質素さですね。

「鳳凰長生螺鈿二層箪笥」 朝鮮時代・19世紀
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こちらは同じ形の箪笥を2層にした籠(ノン)という品。右は下の段のアップです。螺鈿細工で蝶や鳳凰、鹿など様々な吉祥文様が埋めています。華やかでこの展示の中でも特に見栄えのする作品でした。

「日月松竹螺鈿衣装箱」 朝鮮時代・18~19世紀
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こちらも螺鈿細工による箱。分かりづらいですが、表面の右上に太陽、左上に三日月らしきものが表されています。木は松や竹で、勢いよく茂っています。朝鮮王朝は太陽と月のモチーフがよく出てくるのかな? 日本の品でも観ることはありますが、この展示だけでも何度も出てきました。

「牡丹蝶螺鈿箱」 朝鮮時代・17~18世紀
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こちらも黒漆に螺鈿の箱。日本でもこの組み合わせの工芸は数多くありますが、デザインに違いが感じられて面白い。

「長生七宝簪・粧刀・眼鏡入」 朝鮮時代・19~20世紀
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こちらは七宝でできた品々。簪は女性の髷髪に刺して使ったもので、夏は玉製 冬は七宝製を用いたとのことなので、ここにあるのは冬用のようです。

特に目を引いたのはこちらの眼鏡入
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鮮やかな青と透明感が見事です。形も丸っこくって可愛らしい

「三回装襦」「裳」 朝鮮時代・19~20世紀
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韓国の民族衣装といえばチマチョゴリですが、上衣の襦(チョゴリ)と下衣の裳(チマ)から成るようです。脇の部分に色がついてるこちらは両班が着た「三回装襦」で、庶民は「半回装襦」という脇下部分以外が色の違うものを着ていたのだとか。色で年代を分けたりもしてたようなので、服だけで身分がわかったんでしょうね。中国と似た制度に思えます。

「真鍮飯床器」 朝鮮時代・19世紀
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こちらは食器。これも身分ごとに食器の数が違うそうです。真鍮製のようですが私は焼肉屋とかで出てくる金属の食器がめちゃくちゃ苦手ですw これも日本と同じようで異なる点ですね。


ということで、ミニ展示でしたがあまり知らない韓国の宮廷文化について知ることができました。韓国の美術品というと青磁・白磁・ゆるい感じの書画あたりしか思い浮かばなかったので、目新しい感じがしました。もう実質的に終わってしまいましたが、今後の参考になる展示でした。


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日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」 (感想後編)【東京国立博物館 平成館】

今日は前回に引き続き東京国立博物館 平成館の日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」についてです。前編は第一会場についてご紹介しましたが、後編では残りの第二会場についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」

【公式サイト】
 https://izumo-yamato2020.jp/
 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1971

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅

【会期】2020年1月15日(水)~ 3月8日(日) → 2月26日(水)をもって閉幕
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
後半は作品が大きいこともあり前半以上に快適に鑑賞することができました。引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第3章:大和 王権誕生の地>
第二会場に入っても3章が続いています。第一会場と同じく大和に伝わった品々が並んでいました。

57 「ガラス椀」「ガラス皿」「金製垂飾付耳壺」「金製方形板」など 新沢千里126号墳出土 古墳時代5世紀
こちらはペルシャ由来のガラス椀や、シルクロードを渡ってきた深い青色のガラス皿、朝鮮半島の新羅から来た金製垂飾付耳壺、中国東北部から伝わった「金製方形板」など新沢千里126号墳から出土した品々です。特に「金製方形板」は文様も唐草と龍という中国っぽいモチーフで海外から渡来した感じがあります。豪華なだけでなく国際色豊かな埋葬品となっていて、解説によると中国か朝鮮から来た女性のお墓なのではないかとのことでした。

この近くには大陸や朝鮮と交流した際の舟「模造 準備造船」もありました。一部だけ木材が残っているようですが、こんな小さい舟で渡れるの?とやや心もとない感じがしました。

58-1 「七支刀」 古墳時代4世紀 ★こちらで観られます
こちらは4世紀に百済王から倭王へと贈られたと考えられる刀です。剣の横に6つの枝状の部分がある唯一無二の形をしていて、そこに碑文が書かれています。かすれて分かりづらいものの、年記とご利益などが書かれているようです。また、裏面には作刀の経緯などが記されているようですが、金の象嵌の抜けが多いので内容については議論が交わされているのだとか。教科書などでも観られる特に有名な国宝で、目の当たりにできる貴重な機会と言えそうです。何故こんな形なのか、当時の日本と朝鮮の関係はどのようなものだったのか、色々と想像させるミステリアスな刀です。GB世代としてはsaga2で最強の武器だったのが真っ先に思い出されるw

61-2 「埴輪 見返りの鹿」 平所遺跡出土 古墳時代5~6世紀
こちらは振り返る姿勢をしている鹿の埴輪です。かなり写実的で鹿の仕草を忠実に表現していて、耳をピンと立てているのは人の気配を感じて慌てて振り返ったのを表しているようです。さらに口の上下がやや歪んでいるのは草を食んでいた感じが出ていて、彫刻としても見事な造形となっていました。この作者は相当な観察眼と技術の持ち主だと思います。

この近くには各地の遺跡の太刀や馬具などが並んでいました。

73 「須恵器 出雲型子持壺」 山代二子塚古墳出土 古墳時代6世紀
こちらは球形の壺に吸盤のように小さな壺が無数に貼り付けられている変わった形をした品です。プラネタリウムの真ん中にある機械みたいなイメージと言うか…w さらに足の部分には三角の穴も無数にあってちょっとキモいw 解説によると6~7世紀の出雲東部で見られる特殊な須恵器らしく、供物の供献を象徴化した儀式用の壺と考えられるようです。何故こんなキモい造形が生まれたのか好奇心が湧きますが、集合体恐怖症を引き起こしそうな異様な雰囲気でした。

76 「勾玉・管玉」 上野1号墳出土 古墳時代4世紀
こちらは瑪瑙、ガラス、翡翠を使って作られた勾玉と管玉です。瑪瑙は宍道湖辺りの山で取れたものらしく、出雲で作られた品のようです。この辺には出雲産の勾玉なども展示されていて、平安時代あたりまでは玉作りの地として大量に生産していたようです。そうした勾玉などは全国各地の権力者に渡ったようなので、信仰の道具においても出雲は存在感があったのかもしれません。出雲の意外な側面を知ることが出来る品々でした。

この近くには神賀詞(かんよごと)という祝詞の映像を流していました。何を言っているのかさっぱり分かりませんが、字幕で何となく意味が分かりますw これは出雲国造が新任した際などに都に上って天皇の長寿と国の安寧を祈って奏上するそうで、内容は国譲り神話の際に八咫鏡に魂を入れ込めて贈った話などを語っているようでした。祝詞は素人には日本語なのかも判別つきません…


<第4章:仏と政(まつりごと)>
最後は仏教伝来に関するコーナーです。6世紀半ばに仏教が伝来すると、古墳が果たした政治や権力の象徴の役割は寺院が担うようになっていきました。飛鳥時代後期には全国各地に寺院が作られ、遣隋使や遣唐使の派遣で大陸から最新の制度や知識が伝わり、やがて中央集権国家へと歩んでいきます。仏像なども多く作られていたようで、この章では主に仏像が並んでいました。

94 「観音菩薩立像」 飛鳥時代(692年)
こちらは頭が大きめでほっそりした身体つきの観音菩薩像です。左手で水瓶を摘んでいたりしてやや見慣れない表現に思えます。解説によると、これは出雲の有力者が両親のために作った像のようです。7世紀末期には日本各地に仏教が広まっていたようで、神道の中心地である出雲でも仏教を信仰している様子が伺えました。当時の歴史を考えると宗教を使った権力闘争みたいな側面もありますからね…。

96 「持国天立像」 飛鳥時代7世紀 ★こちらで観られます
こちらは当麻寺に伝わる脱活乾漆造の四天王像のうちの持国天像です。脱活乾漆造は漆を重ねる技法で、有名な所では興福寺の阿修羅像なんかもこの技法が使われています。この持国天は邪鬼の上に乗って剣を持ち、体躯は2mくらいはありそうな堂々たる印象です。中国初唐時代の様式に影響を受けているそうで、髭を生やしていることもあって中国の武将のような顔つきに思えました。金彩が一部に残っているので昔は金ピカだったのかな??

この近くには日本現存最古級の石仏「浮彫伝薬師三尊像」(★こちらで観られます)もありました。また、少し先には伎楽面のコーナーもあります。

102-1.2 四天王像のうち「多聞天立像」「広目天立像」 奈良時代8世紀
こちらは唐招提寺の四天王像のうちの2天で、鑑真と共に来日した工人の関与が推定されている仏像です。多聞天は左手に宝塔、右手に槍を持ち眉をひそめて険しい顔つきをしています。どっしりとした体つきなのも威圧的な感じを受けます。一方の広目天は右手に筆、左手に巻物を持っていてこちらも定番の持ち物です。足元に衣の裾があり、こうした表現はそれまでの日本になかった表現らしく 中国彫刻からの直接的な影響を受けた工人が関わったことを推定する根拠になっているようでした。この頃は何でも中国から学んでいたのが伺えますね。

この近くにあった奈良の金剛山寺と世尊寺の2体の「十一面観音菩薩立像」も巨大で迫力がありました。いずれも一木造りで、そうとは思えないほど大きくて威厳のある仏様です。

その先には島根の萬福寺(大寺薬師)の四天王像(★こちらで観られます)が全員揃って並んでいました。こちらも一木造りで、等身大よりやや大きめです。特に剣を振りかざし叫ぶような顔つきの増長天に勇ましさを感じました。

111 「法隆寺金堂壁画 複製登板(第一号壁)」 令和元年
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こちらは撮影可能となっていました。オリジナルは7世紀末~8世紀初頭に制作されましたが、1949年の金堂火災によって焼失してしまいました。その火事によって文化財保護が成立したので、今では文化財保護の本尊と言えるかも。こうした壁が第12号壁まであったようなので、損失は計り知れませんね。

最後に神と仏の習合についても触れられていました。日本人は昔から何でも日本化してしまいますが、神は仏の化身の1つと考えて同一視していく独特の信仰です。スサノオノミコトと習合した牛頭天王の坐像や、修験道の蔵王権現などが並んでいました。


ということで、後半も貴重な品々を観ることが出来ました。特に七支刀は今回の展示でも見どころではないかと思います。早くも会期末が迫ってきていますので、気になる方はお早めにどうぞ。コロナウィルスが怖いので、お出かけの際は感染予防だけは万全を期すようお願いします。



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