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《塩田千春》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、ベルリンを拠点に活躍をされている塩田千春 氏を取り上げます。塩田千春 氏は記憶、不安、夢、沈黙など 形の無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られ、時に恐怖すら感じるような生々しい作品もあります。現在は大規模な個展が各国の美術館を巡回していて、世界的な注目を集めています。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。

塩田千春 氏は1972年に大阪で生まれ、1992~1996年に京都精華大学美術学部で洋画を専攻、彫刻科で村岡三郎 氏の助手も務めたそうで、在学中にオーストラリアに留学もしています。19歳の時滋賀県立近代美術館でポーランドのマグダレーナ・アバカノヴィッチの個展を観たのを契機に、彼女のもとで学ぶためにドイツ留学を決意し、1996年に渡欧しハンブルグ美術大学に入学。1997~1998年はブラウンシュヴァイク美術大学でマリーナ・アブラモヴィッチに師事し、その後ベルリン芸術大学でレベッカ・ホルンにも師事しました。その後はベルリンを拠点に数多くの展覧会で作品を発表していて、すべて合わせると300以上もの展覧会に出品しています。2019年には森美術館で大規模な個展が開催され、2021年には台湾、中国へと巡回し、その後にはオーストラリアやインドネシアも予定されています。今日はその2019年の展示を振り返る形でご紹介してまいります。
 参考記事:塩田千春展:魂がふるえる (森美術館)
 

塩田千春 「蝶のとまっているひまわり」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは5歳の頃の絵。ミロ的な簡略化を想起してしまうのは考えすぎかなw 何故か鏡文字になっているサインや色彩感覚など、非凡なものを感じさせます。

この作品は牧歌的ですが、若い頃からちょっと生々しい表現が多いので、この後ご注意。

塩田千春 「絵になること」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは大学在学中にオーストラリアに交換留学に行っていた頃の作品。自分が絵になる夢を観たそうで、自身が絵画の一部となった感覚を表そうとしているようです。血まみれの事件じゃないのねw

塩田千春 氏には全身を使った作品がいくつかあり、こうした作風も特徴のように思えます。

塩田千春 「物質としての存在のあり方」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは京都の法然院を会場にしたインスタレーションの記録写真。生と死、輪廻転生などを表現しているそうで、「生まれた時に物質として見えるのはへその緒、死ぬ時に残るのは灰」という言葉からへその緒をイメージしました。

この個展もそうでしたが、会場と一体化するような作品も特徴の1つかもしれません。

塩田千春 「私の死はまだ見たことがない」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは180個もの牛の頬骨を使った作品。タイトルはマルセル・デュシャンの墓碑の「されど、死ぬのはいつも他人ばかり」に呼応しているとのことで、確かに他者の死を連想させるモチーフになっています。水を求めて集まってきたような配置になっていて、その中心には本人が首だけ出して埋まってるという…w 死んでいるのに生き物のように見えるのが面白い作品です。

沢山のものを集めて表現するという手法もいくつかの作品で共通しているように思えます。それが迫ってくるような存在感を出していてちょっと怖いものもw

塩田千春 「親戚の顔」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは塩田千春 氏の親戚の写真を並べた作品。ドイツの地で自分の帰り道がないように感じて昔のことを思い起こしたそうです。記念写真が多くて一家の歴史を観るような感じかな。一種のノスタルジーなのかもしれません。

先述の通り、記憶は塩田千春 氏の作品にとって重要なテーマとなっています。同様に夢など形のない観念的なものに関心があるようです。

塩田千春 「アフター・ザット」「皮膚からの記憶」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
「皮膚からの記憶」は2001年の第1回ヨコハマトリエンナーレでも出品された作品。泥だらけのドレスをシャワーで流し落とすインスタレーションですが、「ドレスは身体の不在を表し、どれだけ洗っても皮膚の記憶は洗い流すことができない」とのことですが、ちょっと不穏なものを感じるw

塩田千春 「皮膚からの記憶」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
これだけ並ぶと無茶苦茶怖いですw このインパクトは一度観たらトラウマレベル

インスタレーションだけでなく映像作品も作られています。

塩田千春 「眠っている間に」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは映像作品。糸が張り巡らされている中で何人か寝ている様子が映されていました。糸が繭のようで人々は荘子の「胡蝶の夢」を観て夢と現実の狭間にいるとのことで、シュールさも感じられます。やはりここでも糸を使っていて幻想的な雰囲気を出していました。

映像でも塩田千春 氏自ら作品の中に登場することもあります。

塩田千春 「ウォール」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらも映像作品。またもや自ら体を張っていますw 血が連想させる家族・民族・国家・宗教などの境界線を壁に喩えているそうで、「その壁を超えることの出来ない人間の存在を表現」しているとのことです。チューブの中の血が巡る様子は中々美しく、これもへその緒などを思わせるものがありました。

インスタレーションでは黒や血のような赤い色が多く使われているように思います。心身を表しているからかも。

塩田千春 「外在化された身体」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは心と身体がバラバラになっていくの表現しているようです。下の方に手が転がっていて、ボロボロのネットは心なのかな?

塩田千春 「静けさのなかで」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは9歳の頃に隣の家が火事になり、次の日に外にぽつりとピアノが置かれていたという体験に基づく作品。言い知れぬ不安と死を感じる一方で、廃墟的な美しさも感じられます。

黒い糸を張り巡らせた焼けた椅子の作品などもあり、黒はそうしたイメージを増幅させます。

塩田千春 「時空の反射」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは鏡を使ってドレスが2つあるように見えています。黒い糸はどうしても死を連想させるかな。純白のドレスなのにちょっと不穏というかw

この展示の際、これまでの特徴が合わさったような大型作品がありました。

塩田千春 「集積-目的地を求めて」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは沢山のスーツケースを階段状に赤い糸で吊るした作品。かなり圧倒的な光景です。

塩田千春 「集積-目的地を求めて」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
裏から観ることもできます。作者の言葉によると「スーツケースの山を見るとその数だけ人の生をみてしまう。故郷を離れどこかに目的地を求め、どうして旅に出たのか。その出発の日の朝の人々の気持ちを思い起こしてしまう」ということで、このスーツケースは持ち主の人生そのものを表しているのかもしれません。連なり混じり合うような配置も作者の境地を反映しているようです。

最後に塩田千春 氏の作品を象徴するようなインタビュー作品。

塩田千春 「魂について」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらはドイツの小学生に魂(ゼーレ)って何?と聞いたインタビュー映像。割と深い回答が多くてちょっとビックリ。塩田千春 氏病気で生きることに精一杯だったそうで、魂について今一度考えさせられるような映像でした。


ということで、ちょっと生々しいほどに生命や死、記憶や夢といったものを感じさせる作品となっています。海外で高い評価を受けていて 日本よりも海外での展示に忙しそうではありますが、ちょうど2021年9月4日から始まった奥能登国際芸術祭2020+にも参加されているようです。今後もそうした機会があると思いますので、また是非じっくり観たいアーティストの1人です。


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《田根剛》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、今まさに日本を代表する建築家になりつつある田根剛 氏を取り上げます。田根剛 氏は26歳の若さでエストニア国立博物館の国際コンペを勝ち抜き、その壮大なスケールの設計で世界的な注目を浴びました。建設する土地について調べ、時には負の遺産を活かすというスタイルで「Archaeology of the Future(未来の考古学)」と呼称しています。周囲に調和しつつ斬新さ・大胆さが一目で分かるのも特徴で、これからの一層の活躍が見込まれる方です。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。

 参考記事:
  田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ― Search & Research (TOTOギャラリー・間)
  田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building (東京オペラシティアートギャラリー)
  CITIZEN“We Celebrate Time”100周年展 (スパイラルガーデン)


田根剛 氏は1979年の東京生まれで、北海道東海大学芸術工学部建築学科に入学し、在学中にスウェーデンの工科大学へ留学して建築を学びました。卒業後にはデンマーク王立アカデミーにて客員研究員となりデンマークやイギリスの設計事務所に務めています。そして2006年に26歳の若さで国際コンペ「エストニア国立博物館」で最優秀賞授賞し、一夜にして世界的な注目を集めました。そして、2008年にはフランスで新進建築家賞を受賞し「世界の最も影響力ある若手建築家20人」にも選出されるなど、今注目の建築家です。2012年には日本の世間を騒がせたザハ・ハディド氏の新国立競技場のデザイン案がありましたが、その際、惜しくも採用されなかった11名のファイナリストに名を連ね、そのデザイン案の「古墳スタジアム」が更に注目を集める機会となったようです。 

田根剛 「エストニア国立博物館」
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まずは出世作の実際の写真。上から観るとこんな感じで、むちゃくちゃ長くて滑走路みたい…と思った方は勘が鋭い。この博物館は元ソ連の軍用地の滑走路に接続する感じで建ってます。

この設計は負の遺産である軍用滑走路をエストニアの記憶として継承しようと活かした点が評価され、「メモリーフィールド(記憶の原野)」と名付けられました。2006年に最優秀案として選ばれ、2016年に開館しています。

こちらはエストニア国立博物館の模型。
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入口の大屋根も特徴かな。こんな大胆な案を26歳で考案したのかと驚きます。

こちらはサイズが小さめの模型。
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10年かかって作っただけあって、もはや地形と化しているくらいでかいw

田根剛 氏の大きな特徴として、徹底的に現地を調査し、その歴史やロケーションを建築に活かす点が挙げられます。

これは田根剛 氏の個展の際に床にあった資料。
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TRACE 記憶が発掘される といったことが書いてあり、遺跡のような写真がいくつも並んでいます。こうした資料からインスピレーションを受けて設計をしているようです。

このスタイルを「Archaeology of the Future(未来の考古学)」と自ら呼称しているようです。

田根剛 「古墳スタジアム」
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続いてこちらは先述の新国立競技場の最終選考案の模型。一見驚きですが、古代から続くオリンピックを日本の古代の古墳の形の競技場でというアイディアは秀逸ですね。お墓だけどw

この案を作る際にも古墳を調べたりしていたようです、神宮の森というロケーションを考えると緑が多いのもよく合いそうです。ちなみにご存知の通り、このコンペを勝ったザハ・ハディド氏の案は費用面などでケチが付き、後任の案は隈研吾 氏が選ばれました。

田根剛 「A House fro Oiso」
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こちらは大磯の家の模型で実際に完成した建物です。大磯は縄文の古代から人が住んでいた地で、縄文=竪穴、弥生=高床、中世=掘立柱、江戸=町家、昭和=邸宅 という各時代の住居を統合するというコンセプトとなっています。

こちらが実際の家の映像。
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違和感なく周囲に溶け込んでいて、落ち着きと洒落た感じがあります。確かに高床式倉庫っぽい見た目ですね。

こちらは部屋の中の様子。
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石壁の土台のような所が1階のようです。中もモダンさがありつつ落ち着くものを感じるのは日本の住居の歴史の結晶だからでしょうか。

田根剛 「カイタック・ツインタワー」
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こちらは香港の複合施設の選考案。九龍城や高層ビル群などをイメージしているようです。九龍城は魔境みたいなイメージですが、確かに多くの人の記憶に残っているしロマンがありますよねw これもワクワクさせてくれます。

田根剛 「Todoroki House in Valley」
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こちらは木々に囲まれた等々力渓谷の近くの家。森と共生するような佇まいで、洗練されているのにどこか懐かしくもあって、楽しそうな家です。

田根剛 「10 Kyoto」
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こちらは京都のプロジェクト。角度によってはピラミッドみたいな形をしていて、「条」で区切る京都の碁盤の目の歴史なども考察しているようです。この木は古材を再生させて使うようで、京都の山間部の工場で古材を集ています。

田根剛 「アルチュール・ランボー美術館」
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こちらはフランスの美術館の設計案で優秀案を受賞した作品。詩人のアルチュール・ランボーにまつまる建築として美術館と劇場の統合を試みているそうです。アルチュール・ランボーの故郷の風車小屋の中身を解体し、展示室と劇場にする計画だったようです。

田根剛 「LIGHT is TIME シチズン、ミラノサローネ」
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こちらは2014年にミラノのシチズンに作られたインスタレーションのデザイン。トンネルみたいなw

こちらもミラノのインスタレーション。時計の地板を8万枚・ワイヤー4000本以上使っているようです。
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こちらは2018年末に南青山のシチズンでミラノのインスタレーションを再現した際の写真。
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規則的にびっしりと金色の粒粒が並んでいる空間となっています。

そのうちの1つをアップで撮るとこんな感じ。
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これは「地板」という時計を支える基盤の部品だそうで、全部で12万個もの地板を使っているようです。

写真で観ると放射状のように見えますが、整然と並んでいます。
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光と時をテーマにしていて「光は時間であり、時間は光である」という考えで作られているのだとか。理屈抜きでも星空のように輝いて美しい光景です。


ということで、土地の歴史や文化を取り入れた設計が特徴の建築家となります。まだ40代なのでこれからの一層の活躍が期待される方です。最近では2020年に弘前れんが倉庫美術館が竣工するなど、大型プロジェクトを国内で観られる機会も増えるかも知れませんね。


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《蛭田美保子》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、食物を使って本来の意味とは異なる写実を描く蛭田美保子 氏を取り上げます。蛭田美保子 氏は1991年の京都生まれで、2017年に京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了したまだ若い画家です。寿司や植物といったものをモチーフに、装身具や動物のような別のものにも見えてくる不思議な静物を描き、時に神々しく、時に生々しい 独特な色彩感覚も特徴となっています。学生時代から注目を集め、2017年には東京都美術館のグループ展「現代の写実―映像を超えて」の出品者の1人に選ばれるなど、これからの活躍も期待されています。今日はその2017年の展示を振り返る形で、当時の記事で使わなかった写真を追加しながらご紹介してまいります。なお、解説は特にありませんので私の簡単な感想のみとなります。

先述の通り、蛭田美保子 氏は2017年に京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了しました。その前年の2016年には京都銀行の「美術研究支援制度」で作品を買上げられていて、現在は主に新制作協会の会員として活躍されています。2013年以降、新制作展に出品されることが多いようで、それ以外のグループ展や個展も毎年のように開催されているのでそうした機会に目にすることができます。


蛭田美保子 「貴婦人」
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こちらは2016年の水彩作品で装身具をまとったトウモロコシ。タイトルの通り貴婦人のような華麗さがありますね。擬人化のようでもあり装身具のようでもあり、こうした本来の意味と異なるものに見えるのはシュルレアリスム的にも思えます。

こうした作品は食物を実際に加工してオブジェ化し、写実するという手法で制作しているようです。自分で食材を買い、料理してそれを自由に組み合わせて構成し水彩で写実的に描いてから大きな油彩に仕上げるというステップを踏んでいます。

蛭田美保子 「捕食」
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こちらは2017年の水彩作品。一種の食虫植物のようなグロさもあり、写実で描いたものとは思えないほどのモチーフとなっています。この発想力も魅力の1つと言えそうです。

蛭田美保子 「タコとラディッシュのサラダ」
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こちらは2017年の水彩作品。確かにサラダにこの組み合わせは有り得るかもしれませんが、こんな見た目で並べるのは斬新ですw ラディッシュも穴を開けてタコの吸盤に似せるなどユーモアを感じます。写実という枠でもまだまだこれだけ表現ができることに驚きますね。

蛭田美保子 「よそ行き」
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こちらは2016年の水彩作品。海苔巻を豪華な紐で包んだような不思議なモチーフで、陰影もついて実在感があります。この華麗さや豪華さ、鮮やかな色彩なども特徴の1つではないかと思います。

蛭田美保子 「絢爛豪華な装身具」
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こちらは2017年の油彩の大型作品。先程の作品をパワーアップさせたような装身具をまとった巻き寿司みたいなものが描かれています。米粒だけでなく金糸の一本一本まで丁寧に描き込まれている描写力も凄いですが、何故こうしたものを思いつくのか驚きます 全体的に陰影や立体感があるのに無重力みたいに見えるのも奇妙で面白い。

蛭田美保子 「食像崇拝」
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こちらは2016年の油彩作品。赤い部分は肉を思わせるけど何だろう… 下の方は波打っていたりして動きのようなものを感じます。爽やかさとグロさが同居するような色彩が印象的。

蛭田美保子 「光来フラガンシア」
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こちらは2016年の油彩作品で、フランガンシアはスペイン語で「香気」を意味します。トウモロコシが装身具をまとい、柔らかい光を浴びてどこか神聖さすら感じさせるかな。背景も不思議な空間で神話画みたいなw

蛭田美保子 「捕食-被食関係」
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こちらは2017年の油彩作品。トマトやナス、パスタのようなものがモチーフになっていると思いますが毒々しい色彩で血や腐食を思わせるグロさがあります。蔦のようにうねる様子がタイトルの捕食の様子を思わせるかな。ダイナミックでインパクトが大きい作品です。


ということで、食物を使った静物を得意とされています。非常に覚えやすい個性で 新制作展などで見かけるとすぐに分かると思いますので、目にする機会があったらじっくりと細部まで観てみると面白いと思います。



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《田中智》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、ミニチュア作家の田中智 氏を取り上げます。田中智 氏は経歴があまり公表されていないので詳しいことが分かりませんが、食べ物やお菓子、花などをモチーフにミニチュアを作成されている方で、「nunu's house」というブランド名で活躍しています。全て素材から作る事をコンセプトに参考資料を忠実に再現、リアリティを追求する事を目標にしているそうで、その再現性は圧巻です。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。

先述の通り田中智 氏のプロフィールの詳細はあまり分かりませんが、ミニチュアは2001年から制作を開始して関西、東京を中心に活動されています(以前、大阪在住と紹介されていました)。SNSや公式サイトで作品を発信しつつ、依頼を受けて制作することもあるようで企業や雑誌の仕事でメディアで取り上げられることもあります。また、ミニチュアアート展などに出品し、2018年には銀座のポーラミュージアム アネックスで個展が開催されました。今日はその2018年の展示を振り返る形で、当時の記事で使わなかった写真を追加しながらご紹介してまいります。なお、作品名や解説などは特にありませんので私の簡単な感想のみとなります。

 公式インスタグラム:https://www.instagram.com/nunus_house/?hl=ja
 公式twitter:https://twitter.com/miniature_mh?lang=ja
 公式サイト:http://nunus-house.boo.jp/
 
 参考記事:田中智 ミニチュアワールド「Face to Face もっとそばに」(ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX)


今回ご紹介するミニチュアは概ね1/12スケールとなっています。これとかはもっと小さいと思いますがw
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指より小さい土鍋に具がぎっしり入ったおうどんです。モチーフも可愛らしい。

こちらはフルーツジュース
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キウイの種とかオレンジのツブツブとかも表現されています。この作品を観ていた際、スモールライトで小さくしたんじゃないか?という話をしていた人達がいて、完全に同意ですw

こちらはコンビニのデリ
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普通にコンビニの品を撮ったようなリアリティがありますがミニチュアです。パッケージまでしっかり作られています。

パンとジャムのセット。
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このパンも質感が本物みたい…。ジャムのツヤもジャムらしさがよく出ていました。

こちらはオムライス
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色艶や素材感もそれぞれ異なっているのが分かると思います。その出来栄えに驚くばかり。

こちらは素麺。
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麺も1本1本丁寧に作られています。ここまで来ると執念すら感じるw

こちらは卵かけごはん。
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米の1粒1粒まで作られていて驚きますが、こうしたお米のミニチュアの作り方は後ほどご紹介。

こちらはお寿司
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かなり拡大すれば作り物と分かりますが、それぞれの特徴がよく出ていると思います。

ここまで何度か出来ていたお米のミニチュアの作り方はこんな感じ。
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彫刻している訳ではなくて米粒を本当に握る感じで作るんですね… しかもミリとかそういう単位じゃないw 

更に手のかかる販売棚のような作品もあります。
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1つ作るもの大変そうなのにこの数w 華やかで美味しそうです。

こちらも沢山のケーキやアフタヌーンティーみたいなセット
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熊?のキャラクターの容器に入っている芸の細かさ!

食べ物だけでなく対象は静物にも及びます。
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紫陽花の花1枚1枚丁寧に作られていて可憐ですね。

こちらはPC
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ファンの細かい穴まで表現。ディスプレイの鈍い反射も素材感がすごい

こちらは白木のスッキリした印象のキッチン。
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この展示を観ていた際、会場内で作者は男性なのか女性なのか?という会話を何度も耳にしましたが、確かにこのセンスは女性的なものも感じます。

キッチンのアップ。
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よく観るとボードや小物に文字がしっかり描かれています。電気もついて凝りに凝っています。


ということで、驚くばかりのミニチュアを作られている方です。実物を観られる機会はそれほど多くありませんが、ネットや著書でも観ることが可能なので興味がある方はSNSなどをチェックしてみてください。また展示があったら見に行きたいと思います。






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《最果タヒ》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、独特なセンスで注目を集める若手の女性詩人 最果タヒ(さいはて たひ)氏を取り上げます。学生時代からブログで詩作を始め、SNSなどで話題となり21歳の最年少で中原中也賞を受賞しました。漫画家やイラストレーターと共作した作品もあり、詩集を発表すると異例の部数を記録しています。2019年には横浜美術館での個展、2020年には さいたま国際芸術祭2020や大都市での個展など今まさに注目を集めるアーティストです。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。

最果タヒ 氏は1986年に兵庫県神戸市で生まれました。2004年にインターネット上で詩作を始めブログを開始します。2005年からは現代詩手帖(思潮社)の新人作品欄に投稿を始め、翌年には第44回現代詩手帖賞を受賞しています。そして2007年に第1詩集『グッドモーニング』(思潮社)を出版すると、これが第13回中原中也賞を受賞しました。さらに2009年から別冊少年マガジン(講談社)創刊号から詩の連載『空が分裂する』を開始し、各回で絵を漫画家やイラストレーターが担当しています。2012年からは別冊少年マガジンで連載小説『魔法少女WEB』を開始するなど、活躍の幅を広げています。また、現在でもtwitterや公式サイトで情報発信を続けられていて、独特の詩をwebで楽しむこともできます。
 twitter:https://twitter.com/tt_ss
 公式サイト:http://tahi.jp/

近年では美術館での個展も開催されるようになり、2019年には横浜美術館、2020年には大阪パルコなど4会場で個展が開催されています。今日はその2019年の展示を振り返る形で、当時の記事で使わなかった写真を追加しながらご紹介してまいります。なお、作品名や解説などは特にありませんので私の簡単な感想のみとなります。
 参考記事:氷になる直前の、氷点下の水は、蝶になる直前の、さなぎの中は、詩になる直前の、横浜美術館は。 ―― 最果タヒ 詩の展示 (横浜美術館) 

こちらは当時の会場風景
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この時は詩の森のような感じで展示されていました。

最果タヒ氏の詩は読点で終わるものが多くて、他のパネルと繋がっているのかと思ったのですがそうでもなかったかな。

例えばこちら。
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それは過冷却水じゃないだろうかと考えてしまう私には詩を解する心が無いのかもw

中途半端な感じで終わるのは、読み手が詩の空白を埋めることで詩が完成するという意図があるようです。

こちらも気になるところで終わる作品。
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美しくなれないのか、なりたくないのか… 打ち消し語で終わると言葉の背景が気になりますね。

一方でこんな作品も。
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え、そういうこと?w この2つを繋げて考えてはいけないのかもw

ちょっと毒のあるような作風も特徴かな
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サディスティックなのかマゾヒスティックなのか。

一方で生活感のある作品もあります。
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これをやってたらなんか嫌なことでもあったのかと心配しそうw

こちらは生活感がありつつ哲学的な感じ
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牛乳好きなのかな?w やや後ろ向きな雰囲気

こちらは文章になっている長めの詩です
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儚い印象と内向きな雰囲気があるように思えました。

こちらも長めの作品
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ロマンティックで情熱的な印象を受けるかな。2人だけの世界みたいなイメージ?

こちらも長文。当時の会場もこんな感じで明暗が強めであえて読みづらくしているようでした。
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恋人たちについて詠っているようで、愛が信仰の対象となり余計に孤独になった という部分がなるほどを思ったり。

こちらは気になるパワーワードw
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気分どん底って感じがヒシヒシと伝わってきます。

こちらも何があったのかちょっと心配になるワード
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こういう時あるよな…と共感してしまうのが流石ですね

こちらは深くて胸に来ました
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確かに絆というのはいつも何処かで作られ続けていますよね。

こちらは4つとも気になった作品
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割とストレートで平易な言葉を使っているのも特徴なのかも

これも非常に気になりますw
DSC03923.jpg
言霊的な怖さがありましたw

こちらも意味は分からないけどインパクトのある作品。
DSC03925.jpg
言葉の裏の物語を想像させます。

こちらもドラマチックな雰囲気の作品。
DSC03927_202108050124441cf.jpg
好きな人でも探しているのでしょうか。不安な気持ちも含まれているように思います。

こちらはセットで面白かった作品。
DSC03932.jpg
水族館で魚を観て美味しそうって言う人を思い出しましたw どういう意味でこういう詩を書いたのか気になります。

たまに謎の詩もあったり
DSC03929.jpg
環境問題の話?と思うのは考えすぎでしょうかw この一種変わったセンスが面白い


ということで、独特の世界観の詩を作られています。ネットから生まれたというのも新世代っぽいし、観られる機会も増えてきていますので今後の動向に注目したいアーティストです。


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■2009/10/28
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