関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

終わりのむこうへ : 廃墟の美術史 【松濤美術館】

先週の日曜日に渋谷の松濤美術館で「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」を観てきました。

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【展覧名】
 終わりのむこうへ : 廃墟の美術史

【公式サイト】
 http://www.shoto-museum.jp/exhibitions/181haikyo/

【会場】松濤美術館
【最寄】渋谷駅・神泉駅

【会期】2018年12月8日(土)~2019年1月31日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんは多かったですが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は「廃墟」をテーマにした絵画展で、古今東西の画家の作品が並ぶ内容となっています。廃墟の絵画は西洋美術の中で繰り返し描かれていたのですが、18世紀から19世紀にかけて廃墟趣味が流行し、廃墟が主役の地位となっていったようです。この廃墟を描く美学は近代の日本にも伝わり、現代まで息づく流れとなっています。展示は大きく2階と地下に分かれていて、時代を追っていく感じになっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<I章 絵になる廃墟:西洋美術における古典的な廃墟モティーフ>
まずは2階の展示で、ここは17~18世紀の廃墟を主題にした作品から始まります。18~20世紀にも廃墟のテーマは引き継がれていったようで、ざっくりとその伝統を観ることができました。

2 ユベール・ロベール 「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」
これはポスターを撮ったものです。
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こちらは今回のポスターの1つとなっている作品で、コリント式の柱や回廊のある神殿の廃墟の中の人々を描いています。人のおかげで廃墟の大きさがわかるのですが、かなりの広さです。遠近感が強いのも一層そう感じさせるかな。人々の服装も古代風で、神話のような理想的な美しさがありました。ユベール・ロベールといえば廃墟なので、このチョイスは王道ですね。
 参考記事:
  ユベール・ロベール-時間の庭 感想前編(国立西洋美術館)
  ユベール・ロベール-時間の庭 感想後編(国立西洋美術館)
  
5 アンリ・ルソー 「廃墟のある風景」
こちらは打って変わって近代絵画のルソー。崩れかかった壁のある廃墟と、教会の屋根が見えていて手前には籠を持った女性が歩いている姿もあります。解説によると、ルソーの中で他に類のない主題なので、版画作品などをもとに描いていると考えられるそうです。全体的に滑らかな筆致で、現実を描いているのにややシュールな雰囲気もありました。これは以前観た時の記憶が蘇りました。
 参考記事:レオナール・フジタ ― ポーラ美術館コレクションを中心に 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)


<II章 奇想の遺跡、廃墟>
続いては18~19世紀頃のコーナー。この頃あえて廃墟や遺跡を好んで描く廃墟趣味が隆盛したそうで、その背景には18世紀にポンペイ遺跡などが相次いで見つかって世間の関心を得たのと、上流階級が「グランド・ツアー」というイタリアへの留学で歴史遺跡を訪ねるのが流行したことがあるようです。ここには地誌的・歴史的な正確さに基づいて描かれた作品が並んでいました。

6-11 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ 「『ローマの景観』より」
これはポスターを撮ったものです。
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こちらはローマ遺跡を描いたエッチングの版画集で、かなり精密で濃淡を活かして質感や遠近感を出しています。所々に人を配して廃墟の大きさや偉大さを示しつつ、時間の経過も感じさせます。 流石に人が小さすぎるのでは?と思うような絵もありましたが、丹念な描写に圧倒されました。
 参考記事:ピラネージ『牢獄』展 (国立西洋美術館)


この辺は確かにかなり緻密で写実的な版画が並んでいました


<III章 廃墟に出会った日本の画家たち: 近世と近代の日本の美術と廃墟主題>
続いては日本人による廃墟の絵画です。近代までは日本に廃墟を描いた作品はなかったようですが、廃墟趣味の輸入版画を元に浮世絵にした作品なんかも存在するようです。明治以降は洋画教育の中で伝播していったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

28 亜欧堂田善 「独逸国廓門図」
こちらは江戸時代にドイツを描いたもので、オベリスクやドーム状の宮殿が立ち並ぶ光景となっていて、観た感じは西洋画そのものです。廃墟ではないな…w  解説によると、ドイツではなく実際には古代ローマの繁栄の図などを元に描いているそうで、先程のピラネージの版画の中にも似た作品があるようです。亜欧堂田善は日本の西洋画の先駆け的な存在ですが、この作品は特に西洋から学んでいる様子がよく分かりました。

この近くには浮世絵になった奇妙な西洋風景などもありました。また、日本の近代絵画に大きな影響を与えたフォンタネージによる廃墟のデッサンなどもあります。

34 不染鉄 「廃船」
こちらは昨年話題になった不染鉄による作品で、巨大な貨物船らしき廃船が壁のように大きく描かれています。手前には家々が立ち並んでいるのですが、その大きさの違いで圧倒的な迫力を感じます。重く暗い色合いで水が滝のように落ちている様子など、船というよりは遺跡と言った感じに見えました。重厚感・威圧感がある一方、戦時中に帰ってこなかった船を想う気持ちもあるようでした。

45 岡鹿之助 「廃墟」
こちらは積み重なるような廃墟の建物を描いた作品で、フランスのロワール地方に現存する中世の廃墟だそうです。まるでテトリスのように積み上がっていて、細かい引っかき傷のようなマチエールが風化した質感を出していました。素朴で静かで超現実的な雰囲気のある作品です。

2階はこんな感じで、続いて地下の展示です。


<IV章 シュルレアリスムのなかの廃墟>
地下の最初はシュルレアリスムのコーナーです。ここは姫路のデルヴォーが多めで、マグリットやデ・キリコなど横浜美術館の所蔵品なども並んでいました。

47 ポール・デルヴォー 「水のニンフ(セイレン)」
こちらは海で水浴びしている裸婦(ニンフまたはセイレーン)を描いたもので、背景には古代神殿のようなものが立ち並び、浜辺で1人のステッキを持った紳士がニンフ達を眺めています。ニンフたちは目が死んでいて怖いのですが、神殿との取り合わせも奇妙で 夢の中の世界のような不思議さがありました。

この隣には名作の「海は近い」(★こちらで観られます)もありました。デルヴォーはリトグラフも含めて6点もあって、これだけでもデルヴォー好きとしては嬉しい驚きです。
 参考記事:
  ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅 (府中市美術館)
  ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅 (埼玉県立近代美術館)

53 ジョルジオ・デ・キリコ(工房) 「吟遊詩人」
こちらは普段は横浜美術館の常設にある作品で、単純化された建物の間に立つマネキンが描かれています。左端には人の影が伸びていて、ちょっと不穏な雰囲気があるかな。ぺったりとした画風で、寂しさと共に言い知れぬ魅力も感じる作品です。これぞデ・キリコといったモチーフと画風となっています。

この近くには同じく横浜美術館のマグリットの作品もありました。


<V章 幻想のなかの廃墟:昭和期の日本における廃墟的世界>
続いては昭和期の日本のシュルレアリスムに描かれた廃墟のコーナーです。

56 北脇昇 「章表」
こちらは丘の上の城塞の壁のようなものが並ぶ光景で、かなり単純化されていて不思議な親しみを感じます。解説によると、北脇は1930年台に中国に旅行したことがあるそうで、その時見た風景なのかもしれないとのことです。実在すると言っても絵は心象風景のような雰囲気で、どこか柔らかいような感じを受けました。

57 浜田浜雄 「ユパス」
こちらは女性の横顔のような岩や、人体を思わせる岩などが並ぶ水辺と、そこを歩く4人の少女が描かれた作品です。滑らかな色合いで、抽象化している部分もあって廃墟という感じはそれほどしないかな。ダリに強い影響を受けているのが見て取れて、夢の中を描いているような感じでした。


<VI章 遠い未来を夢見て: いつかの日を描き出す現代画家たち>
最後は現代日本のアーティストたちによる廃墟のコーナーです。ここは今回の見どころの1つだと思います。

65 大岩オスカール 「動物園」 ★こちらで観られます
こちらはかなり大型の作品で、北千住の廃墟が描かれています。柱が立ち並ぶ工場のような堅牢な建物の内部で、瓦礫が転がり何かの機材も見えています。一方、柱の外には町並みが描かれ、遠くにはビルが並んでいるなど明るい雰囲気です。明暗が強く、光の当たる柱を境に違う世界が同居しているようにも見えるかな。柱は神殿のような荘厳な雰囲気も出していました。

68 元田久治 「Indication : Diet Building, Tokyo 3」
こちらは廃墟になった国会議事堂を描いた作品で、木々が生い茂って一体化しつつあり、国会議事堂がラピュタになったみたいな感じですw 俯瞰する構図でくすんだ色合いとなっているのも面白く、失われた文明を目の当たりにしているようなSF感がありました。
 参考記事:現代の写実―映像を超えて (東京都美術館)

67 元田久治 「Foresight: Shibuya Center Town」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。
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こちらは渋谷の駅あたりが廃墟になった様子。リアルさがあって、滅んだら本当にこういう風になりそうな…。元田氏の作品は身近な場所ほど面白く感じられます。

他にも渋谷駅の銀座線の線路辺りを俯瞰する構図の作品などもありました。

71 野又穫 「交差点で待つ間に」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。
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一見すると大都会の交差点を描いたように見えて、左下の犬の像なんかは渋谷っぽく思えます。しかしよく観ると建物は古代風なパーツがあったりして、独特の建築様式となっていて異世界感があります。解説によると、これはピラネージのオマージュから渋谷の交差点と古代ローマを混ぜた感じになっているそうで、白っぽく淡い色調も白化した世界のような静かな雰囲気となっていました。
 参考記事:幻想の回廊 (東京オペラシティアートギャラリー)


と言うことで、廃墟と言っても遺跡から架空の廃墟まで様々な作品がありました。遺跡や廃墟はそれ自体も心惹かれる存在ですが、特に地下の展示は想像力豊かで面白い内容だったと思います。廃墟の絵画の歴史も分かるし、廃墟好き必見の展示です。


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CITIZEN“We Celebrate Time”100周年展 【スパイラルガーデン】

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観る前に表参道駅の駅前にあるスパイラルガーデンで「CITIZEN“We Celebrate Time”100周年展」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 CITIZEN“We Celebrate Time”100周年展

【公式サイト】
 https://citizen.jp/100th/event/spiral/index.html

【会場】スパイラルガーデン
【最寄】表参道駅

【会期】2018年12月7日(金)~12月16日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
初日の夜に行ったのですが、田根剛 氏の講演会があった為か結構混んでいて場所によっては人だかりができていました。

さて、この展示は1918年に創業したシチズンの100周年を祝うイベントで、注目を集めている若手建築家の田根剛のインスタレーションが話題となっています。半分くらいはそのインスタレーションで、残り半分はシチズンや「時」をテーマにした内容となっていて、8つの章に分かれていました。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。


<01. LIGHT is TIME - We Celebrate Time ver.>
まずは田根剛 氏の「LIGHT is TIME」です。(実際には2章の方が入口に近いですが章の順にご紹介) この作品は元々2014年の「ミラノサローネ」というミラノで行われた世界最大級の家具見本市で作られたインスタレーションで、今回は日本での凱旋展示と言った所でしょうか。田根剛 氏はこの冬に相次いで個展を開催していて、この展示を含めて3つ同時開催という盛況ぶりです。その建築作品は土地の歴史を深掘りすることでインスピレーションを得るという特徴があり、この作品でも時計の部品を使って作られています。
 参考記事:
  田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building (東京オペラシティアートギャラリー)
  田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research (TOTOギャラリー・間)

会場に入るとこんな感じ。
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規則的にびっしりと金色の粒粒が並んでいる空間となっています。

そのうちの1つをアップで撮るとこんな感じ。
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これは「地板」という時計を支える基盤の部品だそうで、今回は全部で12万個もの地板を使っているようです。

写真で観ると放射状のように見えますが、整然と並んでいます。
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光と時をテーマにしていて「光は時間であり、時間は光である」という考えで作られているのだとか。理屈抜きでも星空のように輝いて美しい光景です。

部屋の真ん中には60個のムーブメントに囲まれたメッセージが置かれていました。
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「時計は生命を宿した製品です」とのことで、シチズンの信念かな?

「LIGHT is TIME」は部屋の周りの螺旋状の通路を登って上の方からも観ることができます。
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結構沢山の人が角度を変えて楽しんでいました。

私はこれが目当てだったので、これで概ね満足w 一応、他の展示も見て回ってきました。


<02. Synchronized Time>
こちらは1秒に起こることの映像と共にいくつかのムーブメントが展示されていました。

こんな感じでずらっと並んでいます。
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特に解説なども無いのでよく分かりませんが1つ1つ違った動きをしてたように思います。

そのうちの1つのアップ
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小刻みに動いていて、「1秒間に起こる出来事の共時性と針に有機的な動きを与え視覚化した」とのことです。

映像では1秒間で起きるできごとをどんどん流していました。
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24時間×60分×60秒として考えれば、それほど多くない気ももしますw 1秒という時間を考えさせる内容ではあったかな。


<03. Making Time>
こちらは時計の設計図や映像などが流れていたコーナー。

こんな感じで設計図がありました。
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ただ、ここは講演会待ちの人の列が出来ていてほとんど観られませんでしたw まあ時計マニアではないので、特に気にしませんでしたがw


<04. Thinking Time>
こちらはかつて革新的だったシチズンの時計などが並ぶコーナー。

こちらはクオーツ(水晶)を想起したデザインの作品。これは時計じゃないとは思うんですが…w
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クオーツ時計は時計愛好家にはあまり好まれていないようですが、確実に時計に革命を巻き起こした技術ですね。

こちらは1978年のデジアナという時計。
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デジタル時計とアナログ時計が合体していますが、お互いの時間が違ってるのはどういうこっちゃ?w

こちらは1984年のサウンドウィッチ
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腕時計にラジオが付いているという斬新なデザインです。腕に巻いたらめっちゃイヤホンが邪魔になりそうw 携帯ラジオに時計をつければ良いのでは?という疑問も湧きますが、こういう攻めたガジェットは好きですw

こちらは1924年の16型懐中時計。
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シチズンと名付けられた尚工舎時計研究所の第一号。シチズンの時計作りの歴史はこの時計から始まったんですねえ。


<05. Discovering Time>
続いては時計や時間についての歴史のコーナー。

ここはパネルのみで、暦の始まりなんかを紹介していました。
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5000年前の古代エジプトの時代には1年が12ヶ月365日となっていたそうで、暦の歴史は相当古いようです。


<06. Tuning Time>
こちらは時計作りの道具やチューニングの写真などのコーナー。

工具を観ても何に使うかすら検討もつかないw
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細かい作業が多そうなので、不器用な私にはとても無理な仕事です…。


<07. Encountering Time>
続いては1967年から1970年までシチズン広報誌に連載された、寺山修司の掌編15編を収めた書籍『時をめぐる幻想』の挿絵が並ぶコーナーです。ここは予想以上に面白いコーナーでした。

こちらは「魔女時計」
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妖しくて まどマギに出てきそうな…w 大抵の時計は丸か四角ですが、これは人形の形をした時計とのことでした。

こちらは「花時計」
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花車のようなものが女性の頭の上に乗っていて可憐な印象を受けました。

こちらは「火時計」
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不動明王の光背のような火炎を背負う女性が妖しい色気でこれも面白い絵でした。

他にも猫時計という作品なんかもありました。


<08. CITIZEN Shop>
これは2階にあったショップのコーナーだと思います。ここでは撮影しませんでしたが、様々な時計にまつわる品などが売られていました。


ということで、田根剛 氏のインスタレーションを目当てに行ったのですが思った以上に色々と展示してありました。この展示を含めると田根剛 氏の展示は現在3箇所で同時開催という異例の盛り上がりぶりですので、3点制覇して一気に詳しくなれるチャンスかもしれません。この展示は残り期間が短いので気になる方はお早めにどうぞ。


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JESUS RAFAEL SOTO - Pénétrable BBL Bleu 【エスパス ルイ・ヴィトン東京】

先週の金曜日の会社帰りに表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で「JESUS RAFAEL SOTO - Pénétrable BBL Bleu」という展示を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 JESUS RAFAEL SOTO - Pénétrable BBL Bleu

【公式サイト】
 http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/

【会場】エスパス ルイ・ヴィトン東京
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅、表参道駅

【会期】2018年12月7日^2019年5月12日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
初日の閉館間際に行ったこともあってか結構お客さんはいたように思いますが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はオプアートやキネティック彫刻などで知られるヘスス・ラファエル・ソトによるインスタレーション「Pénétrable BBL Bleu」1点だけという内容となっています。(充実度2なのはその為です) 簡単にヘスス・ラファエル・ソト自身についての解説を要約すると、1923年ベネゼエラ出身で、20代後半でフランスに渡りアバンギャルドモダニズムに傾倒し、抽象芸術界の一員として活動したそうです。その後、1960年代後半にはキネティック・アートを牽引する存在となり、今回展示されている「Pénétrable(浸透可能なるもの)」シリーズは1967年からキャリア終盤まで続きたそうで、その名の通り没入型のインスタレーションとして制作されました。冒頭に書いたように撮影可能となっていましたので、写真と共に振り返ってみようと思います。

この人がヘスス・ラファエル・ソト。
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2000年にキャリアを終え2005年に亡くなってしまいましたが、日本でも埼玉県立近代美術館に所蔵品があるので意外とソトの作品を目にしたことがある方も多いかもしれません。
 参考記事:MOMASコレクションⅢ 2012 (埼玉県立近代美術館)

こちらが「Pénétrable BBL Bleu」 正直、読めないですw 意訳の「浸透可能なるもの」で覚えておこうと思います。
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青いチューブのようなものが無数にぶら下がったインスタレーションで、この作品は1999年にブリュッセル・ランベール銀行(BBL)で開催された回顧展の為に制作したものだそうです。青々とした簾みたいだな…というのが第一印象でした。

観ていたらギャラリーの方に、この作品は中に入ることが出来ますと言われて驚き。入るって何?みたいなw とりあえず何でも体験するのがモットーなので入ってみることにしました。

1本1本は柔らかめのチューブみたいなもので出来ています。
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これなら顔に当たっても痛くないので、突っ込んでみることにしました。

こちらが中に入った様子。青い麦畑の中に入ったような光景です
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進む時はやはり簾をくぐるような感覚でした。没入するような作品との関わりを体験するのが趣旨のようです。

やや上を見上げた様子。青々として抽象絵画を想起します。ちょっと目がチカチカするのはオプアートの画家でもある為でしょうかw
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インタビュー映像などを観ると、ヘスス・ラファエル・ソトは印象派に大きな影響を受けていたようで、この作品もモネの睡蓮と同じアイディアから作られているのだとか。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家

モーセのようにこの青いチューブの海を割ってずんずん歩いてみました。

ペチペチという音を立てながら柔らかいチューブが当たるのも体験型ならではです。子供は絶対楽しいやつだこれ と思いながら体験してきました。

部屋の奥から観た会場全体はこんな感じ。
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割と縦長になっているようでした。

夜に行ったら外の夜景も綺麗で、それも含めて楽しめます。
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青い海を抜けたら夜景が広がっている…という幻想的な会場構成ですね。

近くの教会だっけかな? 
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表参道は冬はイルミネーションもやっているので、夜に行くと一石二鳥でした。


ということで、意図を理解できたかは怪しいところですが 単純に何だこれ!?という驚きと 没入型の仕掛けが面白い展示となっていました。ここは無料で観られる上、10分くらいあれば存分に楽しめると思いますので、表参道に行く機会があったらフラっと訪ねてみるのもよろしいかと思います。


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扇の国、日本 【サントリー美術館】

先週の土曜日に六本木ミッドタウンのサントリー美術館で「扇の国、日本」を観てきました。

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【展覧名】
 扇の国、日本

【公式サイト】
 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_5/

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2018年11月28日(水)~2019年1月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は日本で生まれ発展した扇を主題にしたもので、その歴史と共に多様な美術表現を紹介する内容となっています。扇は日本で発祥したのは分かっているものの その起源の詳細は不明のようですが、10世紀末には中国や朝鮮半島に日本の特産品と渡っていることが明らかになっているようです。扇は宗教・祭祀・日常用としての役割もありつつ身近な美術品であり、コミュニケーションツールとしても使われていたようです。その為、扇は日本人の求めた美のエッセンスが凝縮されているとも言えるようで、この展示ではその様子をテーマごとに章分けしていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<序章 ここは扇の国>
まずは明治11年(1878年)にパリで行われた万国博覧会に出品された扇が並ぶコーナーです。この頃、欧米ではジャポニスムが流行していて、それをさらに加速させたこの万博には幅広い時代と流派を網羅した100本の扇が出品されたようです。ここにはそのうちの数点が展示されていました。

1-6 長沢芦雪 「雀図扇面」
こちらは金地に墨で描かれた扇で、岩にとまってこちらを振り向く雀が描かれた作品です。雀はキョトンとした顔をして可愛らしい!w 一方、岩には滲みを使った濃淡で表現していて、それが苔むしたように見えるのが風情がありました。

1-3 狩野探幽 「山水図扇面」
こちらは遠くに雲間の山を望み、手前に楼閣やその周りの様子が描かれた扇です。こちらも金地に墨の濃淡で表され、優美な雰囲気があります。伝統的な山水のようでもあり、扇でも見応えのある作品でした。


<第1章 扇の呪力>
続いては祭祀に関するコーナーです。扇は大きく分けて2種類あり、1つは奈良時代に生まれた薄い板を綴じ重ねた「檜扇」で、もう1つはやや遅れて平安時代に生まれた骨に紙や絹を張った「紙扇」です。平安時代半ばには檜扇は冬扇、紙扇は夏扇とされたようですが、季節を問わず重要な装いには檜扇が正式とされたようです。ここでは神事などで使われた扇が並んでいました。

2 「彩絵檜扇」 ★こちら観られます
こちらは伝わった扇では最も古い品で、檜に彩色して楓や草花を表しています。かなりボロボロになっていますが、群青と緑青のぼかしなどもあって華やかな印象を受けます。解説によると、こちらは糸を通す穴がないので、実用ではなく広げて御神体として使われたとのことでした。扇って御神体にもなるんですね。

この隣には扇箱もありました。なお、10世紀末の『往生要集』には扇は願主が臨終の際に地獄に落ちるのを食い止める道具の1つとして書かれているようです。風を起こして熱地獄を払うと考えていたとのことでした。

17 九条兼孝 「後月輪殿扇次第」
こちらは月の満ち欠けの絵や細かい文字がびっしり書かれた扇です。何やら走り書きみたいに見えるのですが、これは儀式の進行を裏表に書いておいたカンペみたいなもので、当時の扇はメモ帳としての役割もあったようです。割と目立つので片面にしておけばバレなそうなのに…w やってることはパワポのアンチョコと同じですねw ちなみに、檜扇は笏や木簡を介して誕生したと考えられるようです。木簡を並べて束にして紐を通せば扇っぽくなりそうなので、確かにルーツになのかも。


<第2章 流れゆく扇>
続いては扇面散らしを題材にした美術品が並ぶコーナーです。扇面流しは京都の渡月橋から流して楽しんだのが発祥だそうで、多くの画家によって描かれたモチーフとなっています。ここには古今の扇流しを描いた作品が展示されていました。

26 27 狩野杢之助 「扇面流図(名古屋城御湯殿書院一之間北側襖絵)」
こちらは将軍専用の浴室の襖に描かれた襖絵で、川を流れる扇が描かれています。広がっていたり閉じていたりして、扇に描かれている画中画も楼閣、草花、鳥、月花など様々です。散らされた扇が雅な雰囲気で、お風呂を観ながら水に因んだ作品を楽しんだのかな? ロケーションに合わせた主題が面白い作品でした。

23 伝本阿弥光悦 「扇面流図屏風」
こちらは六曲一隻の屏風で、川を流れる扇面が描かれ、下の方には蛇籠なども見受けられます。この作品でも扇は開いていたり 半開きだったり 閉じていたりするかな。扇は料紙に和歌や漢詩が描かれていて、寛永の三筆の1人である本阿弥光悦の達筆も楽しめます。(伝なので本人であると確定しているわけではないですが) また、琳派の祖である俵屋宗達と交流を持っていた為か草花は宗達っぽさもありました。絵も凄いんですね…。

34 「舞踊図」 ★こちら観られます
こちらは三面から成る作品で、それぞれ扇を持って踊る女性像が描かれています。頭の上や横に手を伸ばして扇を広げていて、動きを感じるかな。扇面と着物も美しく、扇は一瞬の美しさを強調する役割があるようです。儚さの美意識とも重ねているとのことで、まさに日本的な美を表している作品と言えそうです。


<第3章 扇の流通>
続いては扇の流通や広がりについてのコーナーです。10世紀末には日本の特産品として大陸にも送られるようになり、日明貿易の頃には主要な輸出品になっていったようです。また、扇は季節の贈答品や日常に身につけるアクセサリー的な役割もあったようで、国内外の大量消費が扇の量産を促し美術と商業が結びつく嚆矢となったようです。ここにはそうした当時の様子が伺える品も並んでいました。

48 「扇屋軒先図」 ★こちら観られます
こちらは二曲一隻の屏風で、軒先で扇を作っている工房の様子が描かれています。京都が生産拠点で、紙を折ったり骨を通したり糊を運んでいたりと分業で大量生産しているようです。中には子供らしき姿もあって、結構忙しそうです。庶民の扇はマニュファクチュア的な感じで作ってたんですねえ。

この近くには1562年頃に中国に渡った相国寺の僧が扇1本で百科事典のセットと交換したというエピソードが書かれた日記もありました。国内外で大人気だったようです。

60 狩野派ほか 「扇面貼交屏風」
こちらは南禅寺に伝わる六曲八隻の屏風に240面の扇面を貼り付けたもののうち、1隻が展示されていました。金地に様々な主題の扇が貼り付けられていて、実際に使われた痕跡もあるようです。中国の故事や花鳥などをモチーフに画風も様々で、贈った相手の名前なんかもあるようです。まあ、今で言うところのコレクションシートみたいなものかなw リサイクルの美術とも言えるようですが、こういう収集癖はすごく身近な感じがします。 私もCDジャケットを部屋に並べたりしてましたので…w

この隣にも60面の画帳などもありました。作者の名前もあって、正しいコレクターぶりですw 他にも掛け軸に張ったものなど、扇を美術品にリサイクルするのは割とよく行われていたのかも。
なお、扇は今の価値でいうと3000円~10万円くらいだったようで、結構幅広い価格帯です。さらに特注品なんかもあったので、コレクションしたくなる気持ちも分かりますね。

この辺で上階は終わりです。階段を降りると垂れ幕に扇が舞い落ちる映像が流れていました。


<第4章 扇と文芸>
続いては扇と文芸、特に源氏物語などについてです。扇は各場面を端的に表わしているので、いくつかの場面を集めるとストーリー全体を楽しめるようにもなるようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

70 「酒呑童子絵扇面」
こちらは酒呑童子と源頼光の一行の戦いのクライマックスを描いた扇です。既に酒呑童子の首が撥ねられているのですが、首だけになっても襲いかかってきているようで恐ろしげな場面です。扇の形にモチーフが配置されているのが特徴で、物語を分かりやすく伝えるような構成となっていました。

73 「源平合戦扇面貼交屏風」
こちらは元々は六曲一双の屏風で1曲に5枚の扇面が並んでいるので合計60枚の扇面となるようですが、1隻のみの展示(30面)となっていました。それだけ揃うと物語のストーリーも見えてきて、ダイジェスト版のような印象を受けるかな。特に戦うシーンが多く、結構細かい描写となっていました。1つ1つがわかりやすい構成の絵が集まると絵物語みたいになるんですね。セリフがあったら漫画になりそうw

71 「源氏物語絵扇面散屏風」 ★こちら観られます
こちらも六曲一双のうちの1隻で、5×6で30枚の扇面が散らされています。扇は実際に使用されたもので、源氏物語の名場面をまとめて屏風にしているようで、ほぼ全編が揃っているようです。しかし普通は右から左へとストーリーになるはずですが、ここでは春夏秋冬の順で並んでいるとのことでした。絵柄は似ているので元々同じシリーズの扇だったのかな? 雅で見栄えのする屏風でした。

この近くには扇絵の人物が分からなくなって占いで判定する「花鳥風月物語絵巻断簡」という物語もありました。当時からこれ誰だ?となるのはよくあったそうで、花鳥風月物語では源氏物語の光源氏と伊勢物語の在原業平の区別がつかないで占ったようです。当時の人はむしろ謎解きを楽しんでいたようで、色々楽しみ方があったんですね。


<第5章 花ひらく扇>
続いては扇の名品などが並ぶコーナーです。ここには豪華な顔ぶれの作品が並んでいました。

86 鳥居清広 「ぢがみうり 中村富十郎」
こちらは扇型の容器を背負って売り歩く 女性のように白い肌の男性を描いた浮世絵です。この人物は「地紙売り」という扇を売り歩く人だそうで、イケメンが多かったことから浮世絵でも色男として描かれることが多いようです。そのせいか八頭身くらいあるスラッとしたスタイルで、粋な雰囲気の人物でした。

近くには地紙売りを美人に置き換えた作品もありました。

96 宗達派 「扇面貼交屏風」
こちらは六曲一隻の扇面を貼った屏風で、金地に56の扇が開いたり閉じたりしています。折り跡がないので元々貼るために作られたようですが、物語や武士の姿など緻密に描かれています。ちょっと劣化が進んでいるのが残念な感じもするかな。解説によると、これらの絵は保元物語が多めとのことでした。

この隣にも琳派風の扇面散らしもありました。また、本阿弥光悦の「扇面鳥兜螺鈿蒔絵料紙箱」も見事です。

101 尾形光琳 「達磨慧可図」
こちらは水墨の扇で、背中を向けた達磨と、弟子入りしようとしている慧可の姿が描かれてます。この慧可は弟子入りするために自ら左手を切り落として差し出すのですが、そのエピソードのためか静かながらも緊迫した雰囲気が漂っています。簡素に描いているものの、尾形光琳らしい雅さもあって正に名品といった感じでした。

126 酒井抱一 「雷神図」
こちらは俵屋宗達をはじめ琳派が模倣していった風神雷神図のうちの雷神を描いた扇です。勿論、風神もあるようですが今回は展示していませんでした。やや色合いが薄めですが、滲みを使っていたり洒脱さもあって酒井抱一らしさを感じました。


<終章 ひろがる扇>
最後は扇以外の扇をモチーフにした作品のコーナーです。

まずは扇型の釘隠し、刀の鍔、目貫などがあり、扇の形そのものも愛好されていた様子が伺えました。扇って形だけでも何故か優美な印象を受けますね…。

166 海北友雪 「一の谷合戦図屏風」 ★こちら観られます
こちらは六曲一双の屏風で、右隻は青い背景に金の扇の画中画に熊谷直実、左隻は金の背景に青い扇の画中画に平敦盛が描かれています。その色の対比が非常に強く、わざわざ扇の形にしている点も面白いです。解説によると、屏風を折りたたむのを扇を折りたたむのに見立てているとのことで、その発想にも驚きの作品でした。

141 「織部扇面形蓋物」 ★こちら観られます
こちらは扇型の蓋付きの織部で、蓋の表面には竹骨を表したような凹凸まで付けられています。模様は幾何学的で先進性も感じるかな。先述のように扇は邪気を払うものという考えもあって、この形にしたのだとか。今回の展示でこの辺の考え方を知ることが出来たのは大きな収穫だったと思います。

この辺には同様の扇形の陶器がいくつかありました。尾形乾山の作品もあります。他には扇が描かれた小袖なんかもあって、扇そのものがモチーフとして広く使われていることが伺えました。そして最後にシーボルトによる本があり、そこには出島は扇のような形と書いてあるとのことでした。外国にとって日本はまさに扇の国だったということでしょうねw


ということで、普段よく観ているけれど意外と知らなかった話も多くて楽しめました。今後の美術鑑賞にも役立つと思いますので、特に日本美術に興味がある方は是非どうぞ。


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民藝 MINGEI -Another Kind of Art展 【21_21 DESIGN SIGHT】

前回ご紹介した展示を観た後、すぐ近くの21_21 DESIGN SIGHTに移動して「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」を観てきました。

DSC07764.jpg

【展覧名】
 民藝 MINGEI -Another Kind of Art展

【公式サイト】
 http://www.2121designsight.jp/program/mingei/

【会場】21_21 DESIGN SIGHT
【最寄】六本木駅・乃木坂駅

【会期】2018年11月2日 (金)~2019年2月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

この展示は民間の無名の職人が作った生活の美である「民芸」をテーマにした内容で、駒場にある日本民藝館のコレクションの中から同館の館長である深澤直人 氏が100点あまりをチョイスした品が並んでいました。民芸は柳宗悦や河井寬次郎、濱田庄司らによって興された民藝運動から始まったもので、日本民藝館は1936年にその運動の拠点として建てられました。元々は白樺派として西洋美術に傾倒していた柳宗悦ですが、貰った朝鮮磁器の土産を気に入ったのをきっかけに東洋や工芸への興味を持ったと言われています。その後、磁器のみならず数多くの生活用品に美を見出して蒐集・紹介されていきました。(さらに詳細は下記の記事などをご参照ください)
 参考記事:
  柳宗悦展-暮らしへの眼差し (そごう美術館)
  没後50年 河井寬次郎展 ― 過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯な今 ― (パナソニック 汐留ミュージアム)
  ウィンザーチェア -日本人が愛した英国の椅子 (日本民藝館)
  つきしま かるかや 素朴表現の絵巻と説話画 (日本民藝館)

今回の展示はあまりメモを取らなかったので、ごく簡単に展示の様子を振り返ると、まず最初に柳宗悦による「打テヤモロ手ヲ」という書があり、これは美しい品を見た際に両手を打って称賛・驚嘆する姿勢を表しているようです。美しいものを称えることで人生を豊かにすると解釈することも出来るんじゃないかな。生活に美を見出した柳宗悦だけに説得力があります。

会場の入口付近のみ撮影可能となっていました。
DSC07768_201812050127157c8.jpg
雑誌『民藝』の表紙がずらっと並んでいます。

表紙のアップ。
DSC07771_201812050127166b3.jpg
これだけ観ると現代アートみたいな表紙もあります。それでも人間味があってちょっと緩いんですよね。

現代の作家による作品もいくつか並んでいました。作者名を撮り忘れたので、無記名ですみません。

派手な取り合わせなのに落ち着いて見える不思議。
DSC07789.jpg
現代的なセンスと昔からの技術を感じます

模様が流れるようで美しい器
DSC07796.jpg
これも素朴さと革新の両面があるように思えました。

こちらは後で出てくる映像で作ってたやつかな
DSC07801.jpg
シンプル故に幾何学的な美しさもあるように思います。

このコーナーで特に面白い形だったのがこちら
DSC07814_201812050127246fe.jpg
力強さと流麗な雰囲気があって、民藝の魅力が詰まっています。

その先は映像で、現代の職人たちの手仕事の様子が流れていました。網カゴを作ったり陶芸だったり人が変わっていくのですが、みんな惚れ惚れするような手さばきで延々と観らていられますw 映像自体も面白い視線で撮られていてセンスを感じました。

大部屋には沢山の民芸品が並んでいます。いくつかの島ごとに並んでいてそれぞれテーマがあるのかな。器、置物、皿、箕など素朴で力強く「用の美」を感じさせるものや、大黒像や仏像など土着的な祈りを感じさせる品もあります。(ちなみに木喰仏の価値を再発見したのも柳宗悦の功績の1つだったりするので、この辺の美意識は流石です。) また、中にはユーモアがあったり、高い技巧を感じさせるものもあるなど一口に民藝と言っても個性はそれぞれです。しかし、いずれも奇をてらう訳ではなく、生活で使われてきた温かみを感じさせてくれます。一流の美術品の緊張感ある切れ味とはまた違った 純粋性があるので そう思えるのかもしれません。その純粋な素朴さの中で稀に現代アート顔負けの驚くようなデフォルメやフォルムの妙を見せるものもあります。不揃いで人間味がある一方で、純粋が故に洗練の局地をも凌駕してしまう。これが民藝の魅力なのではないかと思いました。

最後に日本民藝館の紹介と柳宗悦による「今見ヨ イツ見ルモ」という書で締められていました。いつも観る物でも今(改めて)観よという意味だったと思います。今回の展示は日本民藝館によく並んでいる品が中心だなーなんて思いながら観ていた私を戒める為に展示しているかのようでしたw


ということで、もっとちゃんと観ろよと柳宗悦に怒られそうな感想のみですが、それぞれの作品の解説などはあまり無いので、感性でじっくり向き合って観てみるのもよろしいかと思います。 民藝は日本人の感性がナチュラルに表されているので、心に響くものがあると思います。さらに日本民藝館は建物自体が魅力的なので、この展示が気に入ったら駒場にも足を運んでみるとよろしいかと。



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