関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

動きの中の思索―カール・ゲルストナー 【ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)】

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、銀座に移動してギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 動きの中の思索―カール・ゲルストナー 

【公式サイト】
 http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000749

【会場】ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
【最寄】銀座駅

【会期】2019年11月28日(木)~2020年01月18日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はスイスを代表するグラフィックデザイナー、カール・ゲルストナーの日本初となる個展となっています。カール・ゲルストナーはフリッツ・ビューラー・スタジオにて見習いとして研鑚を積むかたわらバーゼル工芸学校で学び、1949年から医薬品メーカーのガイギー社のデザインチームの一員となり、そこでコピーライター兼編集者のマルクス・クッターと出会いました。1959年に2人で広告代理店ゲルストナー+クッターを設立し、さらに1963年に建築家パウル・グレディンガーを迎えて、社名をGGK (ゲルストナー グレディンガー クッター)と改め、ヨーロッパ有数の成功を収めていったようです。しかし、1970年にゲルストナーはアートと厳選されたデザインプロジェクトに専念するため、同社を離れていったそうで、この展示では1950~1960年代頃の作品が中心となっていました。詳しくは気に入った作品の写真と共にご紹介していこうと思います。

まず1階はこんな感じで白黒のデザイン画が並んでいました。
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壁もデザイン画に合わせていて洒落た雰囲気となっています。

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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こちらはレモネードの広告。グラスを側面から捉えたシンプルな構図なのに洗練された雰囲気で涼しげに思えます。このセンスはヨーロッパ的なものを感じます。

ゲルストナー+クッター 「シュロッターベック:シトロエン2CV advertisement for automobile dealership」
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こちらは白黒の対比が強めとなったシトロエンの広告。車自体はそれほど大きくなくコラージュされた櫛や鏡?などより小さいw 車のスペックではなく洒落たライフスタイルを魅せるような広告ですね。

ゲルストナー+クッター 「ラインブリュッケ  advertisement for department store」
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こちたはデパートの広告。女性のハイヒールが何とも優美。このシルエットの美しさが特徴なのかもしれません。

ゲルストナー+クッター 「シュロッターベック:シトロエン2CV advertisement for automobile dealership」
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再びシトロエン。何故か背景に象がいてちょっとシュールw シトロエンは車の形自体が美しいので、エレガントな雰囲気の女性もよく似合います。

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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再びレモネード。このクローズアップのセンスは芸術的です。文字がやけに控えめなのも現代の日本の広告には無い感性ですw

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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こちらもレモネードの広告。ガラスの透明感とレモネードの雫の清涼感が伝わってきます。もはや抽象絵画的な美しさw

ゲルストナー+クッター 「ラインブリュッケ advertisement for department store」
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こちらはデパートの調理器具の広告かな。調理器具が勢いよく伸びているような印象を受けますw こちらもシルエットを上手く生かしているように思いました。

カール・ゲルストナー 「スイス航空」
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恐らく今でも同じロゴじゃないかな。スイス国旗に近いとは言え、シンプルかつ高級感があるように思えます。

カール・ゲルストナー 「シェル石油(ロンドン)」
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こちらは誰もが観たことがあると思われるCI。これも名前通りの貝ではありますが、赤地に黄色で非常に目立ちますよね。

カール・ゲルストナー 「クリシェ・シュヴィッター」
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これは広告なのかすら分からずw 幾何学模様の抽象画のような印象を受けます。この人の作品は軽やかなリズム感があるように思えました。

続いて地下の展示。地下はカラフルな作品もありました。

カール・ゲルストナー 「メタクローム」
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あまり解説がないので詳細は分かりませんが、実験的な雰囲気があるように思えます。色と幾何学模様の組み合わせは現代アートそのものw

カール・ゲルストナー 「カロ64」
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こちらは壁にずらりと並んでいました。

一部をアップにするとこんな感じ
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微妙に1枚1枚異なる色合いとなっています。この作品は習作や専用ケースまで展示されていて、並々ならぬこだわりを感じさせます。とは言え、ちょっと意図は分からずw

ガラスケースには著書や習作などが並んでいました。

カール・ゲルストナー 「スイス時計連盟」
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スイスと言えば時計が有名ですが、こちらはスイス時計連盟の略称のなかにスイス国旗を表すという面白いアイディアとなっていました。

カール・ゲルストナー 「1955年作品シリーズより」
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こちらは先程の作品どうように色面のパズルのような作品。これも意図は分かりませんが広告というよりはアートに観えます

カール・ゲルストナー/マルクス・クッター 「メルクール」
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こちらはシンプルに文字主体ですが、力強くも柔らかい印象を受けました。


ということで、解説が少ないので何の為の広告なのか分からないのもありましたが、洗練されたデザインがかなり好みでした。ここは無料で観ることが出来ますので、銀座に行く機会があったら寄ってみるのもよろしいかと思います。




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ものいう仕口-白山麓で集めた民家のかけら- 【LIXILギャラリー】

今日は写真多めです。この前の土曜日に京橋のLIXILギャラリーで「ものいう仕口-白山麓で集めた民家のかけら-」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 ものいう仕口-白山麓で集めた民家のかけら-

【公式サイト】
 https://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1909/

【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)

【会期】2019年12月5日(木)~2020年2月22日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は福井県白山麓にあった築200年以上の古民家で使われた江戸時代の「仕口」が並ぶ内容となっています。「仕口」は柱と梁のような方向の異なる部材を繋ぎ合わせる工法とその部分で、複雑な形で家を支えています。かなりマニアックなテーマで未知の世界でしたが、実物と図解でどのように接合していたか分かるようになっていましたので、その写真を使ってご紹介していこうと思います。

こちらが仕口。一見すると穴の空いた柱のように観えます。
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図解と共に観ると柱と梁を繋いでいた様子が分かります。先っぽの穴は伐採後に積雪を利用して山から里に下ろす際に引っ張る為の穴と考えられるのだとか。中々荒削りな見た目で古民家の力強い印象そのものです。

こちらも太い梁の一部だった材木
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上面は素材感がありますが、切り込み部分は綺麗な直角となっています。

組み込みの図解はこんな感じ。
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梁・桁をクロスさせるための仕口のようで、台形の突出部と組み合わせるシンプルな組み方となっています。台形の形を蟻の頭に見立てて蟻と呼んだのだとか。

こちらは鴨居と大黒柱の部分で使われていた仕口
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図解と実物を見比べるとかなり大きな大黒柱だと思われます。組み方も複雑で、民家と言えども高度な技術が使われていたことがよく分かりますね。

こちらもフォークのように先が割れている仕口。
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複雑な形で、何処にどう繋げるのか想像もつかないw まずは形を観て予想してもカスリもしませんでしたw

正解はこちら。梁と梁を繋ぐ仕口です。
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解説を読んでもかなり専門的で難解でしたが、雪国ならではの間取りによってこうした仕口が生まれたようです。

こちらは穴の数が多い仕口。
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いくつもの梁を繋いでいて高機能w 白山麓は木が巨木に育つそうで、巨木は得難く扱いが難しいものの 十分な長さと強さがあるので短い材を繋ぐ継手の必要がなく結果として手間を省けたようです。それにしてもこんなに複雑な形を考えられるのは職人技ですね。

工具も並んでいました。こちらは墨壺
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木材などに線を引いて目印をつける道具です。鶴と亀の装飾が付いていて縁起が良くてお洒落。

こちらは釿(ちょうな。手斧)
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木材を加工する時の工具で、宮大工の様子を描いた作品などでもよく見かけます。昔はこれで手作業で彫っていたんですね。

最後にもう1つ 恐ろしく複雑な形の仕口。
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もはやセンター的なポジションで無数の木材を束ねています。今まであまり意識していませんでしたが、仕口には長年の叡智が込められていますね。


ということで、専門性の高い内容でしたが 古民家に隠された凄い技術を目の当たりにすることが出来ました。これを観ることで今後 古民家を観る際の参考になりそうです。ここは無料で観ることが出来ますので、古民家好きの方はチェックしてみてください。


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坂田一男 捲土重来 【東京ステーションギャラリー】

先日ご紹介したインターメディアテクに行く前に、東京駅にある東京ステーションギャラリーで「坂田一男 捲土重来」を観てきました。

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【展覧名】
 坂田一男 捲土重来

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201912_sakata.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅

【会期】2019年12月7日(土)~2020年1月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_4_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は1920年代にパリで最新鋭の芸術潮流で活動した坂田一男という画家の個展となっています。出身地の岡山以外では大きく紹介されることがなかった知る人ぞ知るといった画家(私も知らなかったw)ですが、当時は世界的に高い次元に到達していたようです。フェルナン・レジェに師事しキュビスム~ピュリスム辺りの画風から独自の道へと進んで行ったようで、全般的に抽象画が多かったように思います。展示は活動時期ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、展示順と章が合わないところがありますが、観た順で書いて参ります。


<I 滞欧期まで 事物の探求 ― 事物に保管されたもの/空間として補完されたもの>
まずは初期のコーナーです。坂田一男の画家としての出発は1921年の渡仏後と見なす事ができるそうで、渡仏して数年でフェルナン・レジェに師事しました。レジェやオザンファンら同世代の仕事に接近し、その革新を理解して行動を共にするようになっていったそうで、ここではそうした時代の作品が並んでいました。

1-9 坂田一男 「コンポジション(顔と壺)」
こちらは幾重にも四角や長方形の色面が並び、そこにコックらしき人物の顔と壺が縦半分だけ描かれている半具象・半抽象の作品です。キュビスム的でレジェにも似た作風となっていて、落ち着いた色彩で静かな印象を受けます。中央に青い柱のようなものがあるのが大胆で、幾何学的な構成が巧みな作品でした。

この辺は同様のキュビスム的な作品が並んでいました。レジェほどは有機的な感じがせず、より平面的に思えます。

1-4 坂田一男 「キュビスム的人物像」 ★こちらで観られます
こちらは円錐形を無数に組み合わせた人物像で、パッと観た時に東郷青児の初期作品と似た印象を受けました。淡く明るめの色で意外と優しい印象を受けますが、マリオネット的な無機質さがあるかな。この作品では陰影が付けられていて立体的な感じも出ていました。

このへんは円形や円錐を組み合わせた人物像が並んでいました。それぞれ作風が違っていたりして試行錯誤の様子が伺えます。


<II 帰国後の展開 戦中期 カタストロフと抵抗 ― 手榴弾>
続いては帰国後のコーナーです。1933年にフランスから帰国し、戦時中においてもブレることなく一貫して抽象的思考を持続していたようです。この時期、手榴弾の主題が登場し柄のついた手投げ弾がコンポジションの中に現れるようになったようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

2-1 坂田一男 「コンポジション」 ★こちらで観られます
こちらは平坦な色面を組み合わせたキュビスム~ピュリスムのような作品です。中央に柄のついた白い逆三角形の物体が大きく描かれていて、これが件の手投げ弾のようです。一見すると電気ランプのような…w 大きく存在感があるものの、手投げ弾にしては明るい印象を受けました。

この隣ににも似たような2枚の作品がありました。素描にも手投げ弾のコンポジションがあったけど、静かな雰囲気で爆発しそうには観えなかったw

2-56 坂田一男 「端午」
こちらは黒い四角の中に赤い鯉のぼりが上向きになっている様子が描かれた半具象・半抽象の作品です。近くに赤・青・白のポールやロープらしきものも描かれています。黒地に赤白なので色の対比が強く非常に目を引きます。しかし画面は以前よりもざらついたマチエールになっているように思えました。

この近くには多くのデッサンが並んでいました。デッサンもキュビスム風で、中には鯉のぼりを描いたものもあります。また、銃を持つ兵士を描いた作品もいくつかあり、時代を感じさせました。

1-26 ル・コルビュジエ 「ニレ」
こちらはル・コルビュジエによるスケッチです。建築家で名高いル・コルビュジエですが、ピュリスムの画家としても活動していて このスケッチでは円やモコモコした感じの謎の静物を描いています。ニレなのかはちょっと分からないw 手を思わせるものなどもあるかな。解説が無いので坂田一男と直接関係があったのかは定かではないですが、これを観ても坂田一男はキュビスムよりはピュリスムに近いものがあるように思えました。

この近くにはニコラ・ド・スタールやモランディの作品もありました。モランディにも似ている部分があるかも。上階はこの辺までで、続いて下階の内容となります。

2-35 坂田一男 「コンポジション」
こちらは平面的な四角を背景に壺と工業製品が半分ずつ縦にくっついたような謎の静物画です。直線と円を組み合わせていて、色面でも錆のようなものを感じさせる描写もあります。背景には窓のような規則正しい格子があるなど、リズム感ある画面となっていました。


<II 帰国後の展開 戦中期 カタストロフと抵抗 ― 冠水>
引き続き帰国後の戦中~戦後のコーナーで、手榴弾と同じくこの時期の重要なモチーフとして冠水が挙げられるようです。1949年に瀬戸内海に面したアトリエが高潮の被害にあい、多くの絵画が冠水してしまいました。しかし坂田一男は冠水の影響を画面の構造として取り組んだ作品(画面が剥落してそこに別の絵画が浮上するような)を製作するようになったようです。ここにはそうした作品などが並んでいました。

2-67 坂田一男 「静物Ⅱ」
こちらは機械のようなものと中央に黒い壺型のものが描かれた作品です。キャンバスのあちこちがひび割れて剥落しているのが特徴で、まるで遺跡から出土したような風合いとなっています。これが冠水を逆手に取った作品だと思いますが、隣にそっくりの絵があり、比べてみると両方とも剥落している所があるので意図してやっているようにも思えました。ちょっとこの辺は何処までが偶然なのか分からないですが、風化した味わいが出ていて面白い独自性です。

近くには同様に剥落したような作品が並んでいました。


<III-1 戦後1 スリット絵画 ― 積層される時空 ― 海/金魚鉢>
続いては戦後のコーナーです。戦後の最も特徴的なスタイルはスリット状の形が横縞模様のように配置された縦位置の絵画だそうで、このシリーズの始まりではガラスの器の断面が重なったような透明な奥行きが示されたようです。時には金魚が描かれた金魚鉢も登場したようですが、やがて重なりの効果は後退して船の形が現れたようです。これはアトリエのある瀬戸内海をモチーフにしたと考えられるようで、ここにはそうした題材の作品が並んでいました。

4-1-11 坂田一男 「象岩」
こちらは赤い背景に象の横顔に見えるシルエットが描かれた作品です。シンプルな造形になって描かれていますが、実際にこの形の岩が瀬戸内海にあるらしく、隣りにあった写真と比べるとよく特徴が現れています。抽象的な表現ではあるけど具象的な特徴を捉えているのが面白い作品でした。

3-1-19 坂田一男 「金魚」
こちらは黄色を背景に横線が無数に描かれ、下の方は金魚鉢となっていて金魚が泳いでいるのが描かれています。かなりタッチが粗めで今までと異なる印象を受けるかな。隣にも金魚鉢を描いた作品がありましたが、そちらは白地に輪郭線のみで描いていて同じモチーフでも受ける印象はだいぶ違います。またここに来て画風を模索している様子が伺えました。

この辺はアンフォルメルのようなざらついたマチエールの作品が並んでいました。時期的にも近いので欧米の先端を取り入れたのかな?

3-1-14 坂田一男 「エスキース・コンポジション」
こちらはピンクがかった白地に横線と横帯が並ぶコンポジションです。下の方にはコマのような形の輪郭線があり、その下に薄い水色の横帯があるので瀬戸内海に浮かぶ船を思わせます。こちらも絵肌はざらついて風化したような質感になっていて、この時期の特徴のように思えました。

この近くにはこの作品と似た構図の絵がいくつかありました。明らかに船っぽい形の作品もあります。


<III-2 坂田一男のパラダイム>
こちらは同時代の作家との比較の章で、上階などにも点在して展示されています。坂田一男が当時の画家と同様の問題(課題)を共有し事物の探求をしている様子が伺える内容となっていました。

3-2-8 ジャスパー・ジョーンズ  「国旗」
こちらは裏返しになったアメリカの国旗で、落書きのようにグチャグチャな筆致となっています。その作品の下に坂田一男の「コンポジション」が並んで展示されていて、風化したような質感を出しています。画面に別の層を生み出すという点において両者は共通しているようで、お互いに革新的なアプローチの試行が伺えました。


<IV-1 戦後2 残された資料 時間の攪乱=アナーキーなアーカイブ>
続いて資料に関するコーナーです。坂田一男の作品は製作年が書かれていないので確定は難しいようですが、1944年と1954年の2度の冠水被害以降にアナクロリズム すなわち正常な時間の流れを失効させ異なる時間を並列に混ぜ合わせ・重ね合わせ・入れ替えることが重要な革新となったようです。ここはそうした時間の撹乱をテーマにした内容となっていました。

4-1-4 坂田一男 「上巳」
こちらは両手を広げた人物と その傍らに立つ小さめの人物をマネキンのように描いた作品です。桃の節句の雛人形らしく、平坦でシンプルな構図で背景の薄いオレンジに浮き上がるような色合いとなっています。この辺は人物を思わせる作品が並んでいて絵柄は似ていますが、マチエールが違っていたりして印象の違いを比較することができました。

近くには大量のデッサンが並んでいました。機械やマネキンを思わせるモチーフが多いように思います。


<IV-2 戦後3 黙示録=捲土重来>
最後は晩年のコーナーです。この頃には黒を基調とした作品やキリストの復活を思わせる図像の作品があるようで、捲土重来(巻回されうる時空の可能性)は坂田一男が終生 追求した画題で その果てに改めて聖書にたどり着いたようです。

ここはデッサンが大量にあり、確かに被昇天図や最後の晩餐を思わせる群像的な作品がありました。しかし形はハッキリせず沸き立つ黒い岩のようにも思えるのが独特で、指摘がなければ聖書主題には観えなかったかもw 最後まで謎めいた画家でした。


ということで、画風が変わり続けて中々とっつきづらい画家のように思えますが、こんな個性派がいた事を知ることが出来て満足できました。普段から洋画をよく観ている方にも目新しい展示だと思います。



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十九世紀ミラビリア博物誌――ミスター・ラウドンの蒐集室より 【インターメディアテク】

先週の日曜日に丸の内のインターメディアテクで「十九世紀ミラビリア博物誌――ミスター・ラウドンの蒐集室より」という展示を観てきました。

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【展覧名】
 特別展示『十九世紀ミラビリア博物誌――ミスター・ラウドンの蒐集室より』

【公式サイト】
 http://www.intermediatheque.jp/ja/schedule/view/id/IMT0198/module/default

【会場】インターメディアテク
【最寄】東京駅

【会期】2019年10月19日~2020年02月24日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はインターメディアテクの一室で行われている小規模なもので、銀行家ジョージ・ラウドン氏の博物誌的に貴重なコレクションを紹介する内容となっています。ラウドン氏は、ボヘミア生まれの標本師ブラシュカ父子が制作した19世紀ガラス標本に衝撃を受け、それ以来 近代科学の教育遺産を蒐集したようです。小規模ながらも多彩な内容となっていましたので、簡単に振り返ってみようと思います。

まずは「平天儀と平天儀図巻」という日本の1801~1802年頃の本がありました。こちらは地球・月・太陽・星などを描いた円盤状の部分があり、中央にかなり精密な世界地図があります。円盤は回転するようになっていて円のふちには十二支の名が書かれ方角を指しているようです。また、その内側には星座も描かれていて星の方向を確認する道具かな? 江戸時代にこんなものがあったのかと驚かされました。
この近くには1890年頃にパリ天文台が撮った月面写真や1849年にヘンリー・ブラントが作った月面の模型など天文学に関する品が並んでいました。いずれも宇宙好きには興味を引くものばかりです。

続いてのケースは生物学のコーナーでした。1855年に描かれたマストドンの骨格図があり、マンモスよりも小型のようですが立派な2本の牙を持ったリアルな図解です。そんな時代に既に古代生物の研究が行われていたというのも知らなかったので、これも目新しく感じました。
さらにその先にはウマ蹄・球節模型がありました。これは1893年のフランスの研究教材で、馬の蹄あたりの動脈・静脈、骨などがむき出しになった模型となっています。これも緻密な解剖の結果を反映しているように思えるかな。解剖人形はよく知られていますが解剖蹄なんてマニアックなものもあったとは…w
そしてもう1つ、「蛇頭骨 鉄製モデル」という模型も目を引きました。こちらは19世紀末にドイツで作られた平面的な蛇の頭の模型で、関節部分がクランクのように可動するようになっていて、どのように関節や骨が動くのかを再現しています。図解するよりも実際に動くところを観たほうが理解しやすいので、これは教育で用いるのに非常に実用的に思えました。

その先には観相学人形というものがありました。これは中国製の人の頭の模型で、顔には升目状の線があり各目には天中や天庭など部位の名前が書いてあります。手相の何とか線を説明するみたいな感じかなw こんなものまで集めたのかとこれまた驚きました。

その先にはジョージ・ラウドン氏が感銘を受けたレオポルド・ブラシュカとルドルフ・ブラシュカというガラス工芸技師の父子による模型が並んでいました。カタツムリ、ナメクジなどが並んでいて本物さながらの出来栄えです。微妙にざらついた肌の質感などはキモいくらいのリアリティw これは芸術品とも言えるほどのクオリティで、ジョージ・ラウドン氏が驚いたのも無理はないと思えました。
その隣には鰻、チョウザメ、ナマズ、タラなどの標本もありました。こちらは石膏に魚の皮を張って彩色したもののようですが、こちらもまた目を見張る精巧さでした。

少し入口方向に戻った辺りにはフランチェスコ・カルニエ・ヴァレッティという19世紀の果物模型の名手によるリンゴの模型がありました。模型はワックスを使って作っているそうで、遠目から観ると本物に観えますw また、少し離れた所には同じ作者によるザクロの模型もあり、こちらも今割ったばかりと言った感じのザクロに観えました。西洋の模型の写実性は半端じゃないw

近くには2つの頭を持つ猫の標本(双頭子猫標本)もありました。頭が横長になって4つ目があり、大きさは鼠くらいです。ちょっと怖いですが、こうした異類形は凶兆として遠ざける姿勢がある一方で、崇敬の念で敬う姿勢もあったようです。これは特に貴重な標本に思えました。

その先には胃石という石がありました。これは球に近い子供の頭くらいはある大型の石で、象か牛の胃の中で固まった石と考えられるようです。中世では胃石は解毒作用があると信じられていたそうで、王や貴族が珍奇なものを集めた「驚異の部屋」には不可欠だったのだとか。普通に丸っこい石に見えるんですけどねw

最後に江戸時代に加藤竹斎という人物が考案した木材扁額という作品もありました。これは棕櫚・モクセイ、椿などが描かれた植物画で、絵馬に似ています。やはり江戸時代は西洋に負けないくらい研究熱心だったのが伺えました。


ということで、科学研究の歴史の一端を知ることが出来ました。まるで化学室に迷い込んだような気分でワクワクさせられますw ここは無料で観ることが出来ますので、東京駅付近に立ち寄る機会があったらチェックしてみるのもよろしいかと思います。



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Digital×北斎【序章】~先進テクノロジーで見えた170年目の真実~ 【NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)】

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、同じNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で「Digital×北斎【序章】~先進テクノロジーで見えた170年目の真実~」という展示を観てきました。

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【展覧名】
 Digital×北斎【序章】~先進テクノロジーで見えた170年目の真実~

【公式サイト】
 https://www.ntt-east.co.jp/pr/hokusai.html

【会場】NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
【最寄】初台駅

【会期】2019年11月1日(金)~2020年3月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
結構多くの人で賑わっていましたが、自分のペースで観ることができました。

さて、こちらはICCの入口付近に特設されたスペースで行われている展示で、葛飾北斎の富嶽三十六景を始めとした絵画の超精密なデジタルコピーが並ぶという内容となっています。その技術は何と20億画素とのことで、絵柄だけでなく和紙の繊維1本1本まで再現するという超高解像度となっています。この展示では撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。


<Zone 1. 冨嶽を観る>
まずは葛飾北斎の冨嶽三十六景をコピーしたコーナーです。山梨県立博物館所蔵の認定マスターレプリカ47作品が所狭しと並んでいました。

原画:葛飾北斎 「尾州不二見原」
DSC00887_20200108001212e67.jpg
こちらは桶の中に富士が見えるという機知に富んだ構図が面白い作品。これがコピーと見抜ける人は滅多にいないのでは??というくらいの高精細ぶりです。ベロ藍の色合いまでしっかり再現。

原画:葛飾北斎 「遠江山中」
DSC00888_202001080012146ed.jpg
こちらも木材と富士が平行するような構図が面白い作品。オリジナルの版画は痛みやすいので公開には大きな制限があるようですが、コピーなら気軽に観ることが出来ますね。

原画:葛飾北斎 「凱風快晴」
DSC00894_20200108001215224.jpg
冨嶽三十六景の中でも特に有名な赤富士。こちらも見事にオリジナルの色合いが再現されています。

アップにするとこんな感じ
DSC00895.jpg
一見すると和紙の質感に思えますが、実際には普通の紙に印刷しているようです。って、プリンタも凄くね?w

原画:葛飾北斎 「深川万年橋下」
DSC00898_202001080012188a9.jpg
こちらも私の好きな構図の作品。ここまで来るとコピーというのを忘れてきますw

アップにするとこんな感じ
DSC00899_202001080012202b7.jpg
完全に和紙っぽい感じになっています。細かい人々の仕草もつぶさに観ることができました。

原画:葛飾北斎 「東海道金谷ノ不二」
DSC00909_20200108001221dd3.jpg
こちらは拡大して観られるように虫眼鏡がついていました。

拡大すると冨嶽三十六景の真価が分かります。
DSC00910_20200108001223637.jpg
波の表現や傘の目、人々の表情などかなり細かいところまで描き込まれていて、版画でこれだけの表現ができていたことに改めて驚かされます。

こちらは映像の神奈川沖浪裏を使った体験コーナー
DSC00938_20200108001433cdf.jpg
デジタルコピーは単純なコピーだけでなく、拡大縮小を自在に行えるので、ここではジェスチャーで拡大して観るという体験ができました。応用が効くというのは研究にも使えそうですね。


<Zone 2. 海を越えた北斎>
続いては西洋絵画のコーナー。ここはオルセー美術館所蔵の作品のコピーが展示されていました。

原画:ドミニク・アングル 「泉」
DSC00940.jpg
これは観た瞬間にコピーっぽさを感じました。アングルは絵肌が滑らかなのでコピー向きな気がしますが、油彩は版画に比べて発色に違和感が大きいように思えます。

原画:エドゥアール・マネ 「笛を吹く少年」
DSC00946.jpg
こちらも写真で観るとそっくりですが、実際に観ると実物よりも平坦に観えたかな。

原画:ポール・セザンヌ 「サント・ヴィクトワール山」
DSC00949.jpg
セザンヌはオリジナルとの違いがわかりやすいかも。遠目では似ていてもマチエールが違います。

この辺は北斎の作品と共に西洋絵画が並んでいました。
DSC00965_20200108001440a1a.jpg
ゴッホやセザンヌは日本からの影響が強いので、その対比かもしれませんね。

原画:フィンセント・ファン・ゴッホ 「コンドヴィルの藁ぶき屋根の家」
DSC00966.jpg
コピーが難しそうに思えたのはゴッホでした。そもそも厚塗りを平面にするというのは難しいのでは?? 絵具の反射なども無いので遠目でもフェイクと分かります。

アップするとこんな感じ
DSC00963_202001080014393c4.jpg
凄く細かい所まで再現されているだけに惜しいw 3Dスキャンをして3Dプリンタで再現して欲しいところです。

他にはモネなどもありました。


<Zone 3. 新たな対話>
最後は双方向的なインスタレーションのように映像が並んでいました。

原画:フィンセント・ファン・ゴッホ 「アルルのゴッホの寝室」
DSC00999_20200108001443c31.jpg
発色が明る過ぎて写真でもフェイクと分かるかなw 媒体も違うのでこの辺は難しそう。

原画:葛飾北斎 「ローヌ川の星降る夜」
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こちらは星が瞬いているような感じになっていました。絵を元に映像化することが出来るのは面白い活用ですね。

原画:オーギュスト・ルノワール 「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」
DSC01007_20200108001446869.jpg
発色が良すぎて別物感があるけど、デジタルフォトフレームとしてインテリアに使ってみたいかもw


ということで、冨嶽三十六景に関しては驚異的なコピーでしたが、油彩に関しては素材感に課題があるように思えました。こうした技術が貴重なオリジナルの代わりに研究や公開で活躍する機会が増えるかもしれません。中々興味深い技術でした。



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