関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

昭和が生んだ写真・怪物 時代を語る林忠彦の仕事 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

ゴールデンウィークの頃と先週の日曜日に六本木のFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で「昭和が生んだ写真・怪物 時代を語る林忠彦の仕事」を観てきました。この展示は2部に会期が分かれていて、既に第1部は終わっていますが第1部・第2部共に観てきましたので合わせてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 昭和が生んだ写真・怪物 時代を語る林忠彦の仕事 

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/18040104.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅

【会期】
  第1部 2018年4月1日(日)~5月31日(木)
  第2部 2018年6月1日(金)~7月31日(火)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
いずれの会期も空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は今年で生誕100年を迎える写真家・林忠彦のミニ個展となっています。林忠彦は戦後間もない頃に活躍した写真家で、カストリ雑誌と呼ばれる雑誌のブームに乗って人気となり、戦後・高度成長期・バブル景気といった激動の昭和時代を撮り続けた人です。ちなみにカストリ雑誌とは物資の乏しかった時代に密造されたカストリ焼酎にちなんだ名前らしく3合飲めば潰れるのと掛けて、3号も出版したら潰れるような雑誌のことを指したようです。1部・2部共に20点程度の作品が並んでいましたので、それぞれ気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1部 激動の昭和をフィルムに写し込んだ>
1部は既に終了しましたが、こちらは戦後の世相などを捉えた作品(白黒)が並んでいました。1部のテーマは多岐に渡っていたので、作品ごとにいくつかご紹介していこうと思います。

林忠彦 「歓喜の復員」 品川駅 昭和21年
こちらは旧日本軍の兵士たちが終戦で復員して来た様子を撮ったもので、みんな満面の笑みを浮かべて喜んでいる様子を捉えています。この写真は初期のカストリ時代の傑作と言えるそうで、当時の復員の様子がありありと伝わってきます。生きて帰れた安堵感と希望に満ち溢れた作品でした。

林忠彦 「引き揚げ」 上野駅
こちらは外地から引き揚げてきた民間人を撮ったもので、上野駅でゴザをひいて寝ている母子の姿もあります。周りにも力なく項垂れた人がいて、先程の作品と対照的に戦後の喪失感や混乱を写しているようでした。戦後の陰と陽の対比のようで興味深い作品です。

林忠彦 「配給を受ける長い列」 銀座 昭和21年
こちらは銀座和真の時計台を背景にバラックみたいな平屋が並び、そこに行列する人たちを撮った写真です。周りが瓦礫や空き地のようになっていて、戦後すぐの銀座の姿に驚きを感じると共に、歴史を伝える報道写真のような側面があるように思いました。戦中・戦後は銀座も大変だったんですね…。

林忠彦 「太宰治 銀座5丁目のバー [ルパン]」 昭和21年 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターで、太宰治がバーの高い椅子の上で足を組んで座っている様子を撮ったものです。1948年(昭和23年)の文士シリーズでこの作品を発表したのですが、この連載を機に林忠彦は人気の写真家となったらしいので出世作と言えそうです。元は正方形の写真を縦長にトリミングしていたそうで、今回は正方形のノートリミング版で展示していました。戦後すぐなのにスーツ姿が似合う伊達男ぶりで、表情も精悍な印象を受けました。ちなみにこの隣には坂口安吾の後ろ姿も写っているようでした。

林忠彦 「犬を負う子ら」 昭和21年
こちらはボロボロのレンガの建物を背景に2人の子供が立っている様子が撮られたもので、1人は犬を背負っています。どこかの街の跡かと思ったら三宅坂の参謀本部の跡地らしく、今では跡形も無いのもうなずける廃墟となっています。2人の子もいかにも貧しそうな格好なので、これが三宅坂かという驚きもありました。

この近くには進駐軍関連の作品もありました。

林忠彦 「銀ブラの復活」
こちらはスーツに帽子の紳士と洋装の女性が腕を組んで銀座を歩いている様子を撮った写真です。行き交う子どもたちも含めて皆一様に表情は晴れやかで、舗装された道や街の雰囲気もだいぶ綺麗になっています。まさに日本の戦後の復興の様子を伺わせ、明るい雰囲気が表れた作品でした。

林忠彦 「日劇屋上の踊り子」 ★こちらで観られます
こちらは路面電車が走る有楽町の大通りを背景に、ビルの屋上の塀で腕枕して寝ている美女を撮った写真です。メイクが濃くて踊り子らしいですが、そんな所で寝てるのがちょっとシュールw これはポーズをとらせた演出なのか分かりませんが、面白い構図です。 また、ビルの下には疾走する蒸気機関車の姿もあり、この頃の復興の力強さの象徴のようにも思えました。


<第2部 日本文化の原風景をフィルムに写し込んだ>
2部は日本の原風景ということで、日本の風景や文化を捉えた作品が並んでいて、カラーの作品が多いかな。シリーズ的な作品が多かったのでこちらは丸っと。

まずは現在は犬山にある有楽苑(うらくえん)如庵という茶室を撮った写真がありました。(★こちらで観られます) この如庵は織田信長の13歳年下の実弟であり茶人でもあった織田有楽斎によって作られた茶室で、国宝にも認定されています。ここには外観・内観・庭・蹲居(つくばい)などの写真が並び、詫た雰囲気と凛とした空気感が漂っています。日本独特の美意識が詰まったような空間はまさに日本の原風景の1つと言えるんじゃないかな。
 参考記事:【番外編】有楽苑と犬山城の写真

その先にも妙喜庵待庵などの茶室や、兼六園の夕顔亭などの写真が並び、特に夕顔亭の赤い壁は派手なようで格調高い雰囲気を出しています。こうして日本建築の写真が並ぶと、改めて幾何学的な要素と落ち着きが感じられて、建築としてだけでなく日本人の感性そのものを観ているように思いました。
 参考記事:【番外編】金沢旅行 兼六園・金沢城の写真

その先には昭和の東海道を撮ったシリーズが並んでいました。日本橋の龍のような像をアップで撮ったものや、夕暮れの品川お台場の東大、鈴ヶ森の刑場後など、独特の視点による斬新な構図や叙情的な雰囲気で撮られています。フィルムによる色の表現も繊細で味わい深いかな。今回のポスターにもなっている豊川稲荷(★こちらで観られます)などは夕暮れを背景にして強い陰影と共に神秘的な雰囲気を出していました。最後の京都の三条大橋では擬宝珠をアップで撮るなど、様々な表現を駆使する様子は歌川広重の東海道五十三次に共通するものがあるかも。東海道シリーズ全体的に古き良き日本を思い出させてくれて、懐かしい気分になるのも良かったです。


ということで、ミニ個展ですが個性あふれる作品ばかりでした。点数が少ないので満足度は3にしましたが、作風自体は好みの写真家でもっと多くの写真を観てみたくなりました。ここは無料で観られるので、六本木に行く機会があったら寄ってみるのもよろしいかと思います。


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ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 (感想後編)【上野の森美術館】

前回に引き続き上野の森美術館の「ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵」 についてです。前半は1階についてでしたが、今日は2階の奇想の作品などについてです。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

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【展覧名】
 生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 

【公式サイト】
 http://www.escher.jp/

【会場】上野の森美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年6月6日(水)~7月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間45分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前回は1階についてでしたが、今日は2階についてです。2階も非常に混んでいてどこも行列が2重3重となっていました。
後半は騙し絵的な作品が前半よりも多かったかな。詳しくは今回も気に入った作品を通してご紹介していこうと思います。なお、エッシャーの来歴については前編や参考記事をご参照ください。
 参考記事:迷宮への招待 エッシャー展 (そごう美術館)


<6章 技法>
この章はエッシャーの版画技法についてのコーナーです。エッシャーの版画はリノカットから始まり、銅版やメゾチント、木口木版、木版、リトグラフ(石版)など多彩な技法の作品を残しています。この辺の違いは普段版画を観ていないと分かりづらいかもしれないので、参考までにこちらの画像を載せておきます。

これは以前ご紹介した町田市立国際版画美術館の展示にあった版画技法をまとめたボード。分かりやすくまとまっています。
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技法の違いによって表現可能なものも変わってきます。詳しくは各作品ごとにご紹介。

85 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「西部劇」
こちらは縦長の木版作品で、映画館で西部劇を観ている人が描かれています。幾重にも観客が並び、黒地に白い輪郭で簡潔に表されているのが特徴で、映画の画面から放射状の線が力強く伸びています。これは画面からの光を感じさせて、明暗が強い印象を受けました。こちらは普通に版画として面白い作品です。

90 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「地下聖堂の行列」
こちらは木版で、暗い地下聖堂の中を 白く長い覆面で白装束の人たちが蝋燭を持って横切る様子が描かれています。ちょっと不気味ですが神秘的で、インパクトがあるので以前にも何回か観たのを覚えていました。こちらも明暗の表現が巧みな作品です。余談ですが、この覆面の人がペロペロキャンディーを持ったような食玩がうちにあります。多分、2006年のbunkamuraのガチャガチャで手に入れたやつかな。

この近くには幻想的な「花火」もありました。こちらも明暗を上手く利用した面白い作品です。

100 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「ラヴェッロとアマルフィ海岸 のための習作」
こちらは版画ではなく鉛筆とチョークによる原画です。海岸の様子が描かれ、家々が無数にあって穏やかな光景となっています。その隣にはこれをリトグラフ化したものがあり、両者を比較すると描写はかなり正確に写されている一方、リトグラフは原画より鮮明な明暗となっていているのが分かりました。比較しながら観られるのが面白い趣向です。

104 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「蟻」
こちらは蟻を拡大して描いたリトグラフの作品で、かなり細部まで観察して緻密かつリアルに描かれています。写実的なだけとも言えますが、ここまでリアルだとちょっとシュールな感じすらします。この近くにはフンコロガシやトンボなども同様の作品があって、エッシャーの昆虫に対する興味も伺えました。この後に出てくる「メタモルフォーゼⅡ」にも蜂とか出てくるし、これも奇想の作品のルーツの1つと言えそうです。

106 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「眼」 ★こちらで観られます
こちらは眼を大きく描いたメゾティントの作品で、瞳の部分に骸骨が反射して観えています。何故骸骨なのか分かりませんが、骸骨は不気味さもありつつ何か笑ってるようにも見えます。 1946年の作品なので戦争で死が身近だったことと関連があるのかもと思いながら観ていました。 なお、これもかなり細密で、メゾティントの技法によってこのような細やかな表現が可能となったようです。しかしエッシャーはメゾティントの作品を8点しか残しておらず、やはり作るのが大変だったのが原因のようです。(確かメゾティントは繊細な表現が可能な一方で何度も刷れない特徴があったと読んだかな) 表現の為に様々な技法にチャレンジしていたことが伺える作品でした。

この近くには版木なんかもありました。むちゃくちゃ混んでいたので、あまりじっくり観られずw


<7章 反射>
続いては「反射」をテーマにしたコーナーです。エッシャーは鏡面反射を使った不思議な絵が多いのも特徴で、シュールさや騙し絵的な雰囲気を出している要因の1つではないかと思います。このコーナーは展示室自体も鏡張りとなっていて、エッシャーの世界観を盛り上げていました。

117 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「鏡のある静物」
こちらは鏡が置かれた静物ですが、映っているのは左右逆だったり、街の風景が映っていたりと普通の鏡ではありません。手前には歯磨きや蝋燭があるものの、それも映ったり映らなかったりします。一部だけ映る様子がシュールかつ不思議な光景で、鏡の持つ神秘的な側面を拡張したような感じの作品でした。

123 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「三つの世界」
こちらは水面に映る木々、水面に浮かぶ落ち葉、水面下の魚 という水面に接する3つの世界を描いたものです。その発想も流石ですが、それぞれの様子を濃淡のみで表現しているのも見事です。発想の面白さだけでなく、しっかりした表現力があってこそエッシャーの魅力になっているのが再認識できると思います。


<8章 錯視>
最後の章は錯視を利用したコーナーで、多くの人はエッシャーの名前を聞くとこの章にあるような作品を想起すると思います。ここは騙し絵的な作品が多めとなっていました。

128 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「発展Ⅱ」
こちらは赤と黒の市松模様が中心から外に向かって段々と6角形になり、さらにトカゲの形になっていく様子が描かれています。トカゲは色違いにお互いに組み合っているのもエッシャーらしい画風かな。同様の「言葉(地球、空、水)」や「魚」という作品もあり平面から立体に進化する様子などもありました。ここまで観てきた作品にも同じ表現があったし、エッシャーお得意の技法です。少し先にも有名な「昼と夜」(これも同様の技法)もありました

141 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「でんぐりでんぐり」
こちらは6本足の芋虫みたいな「でんぐりでんぐり」というキャラクターを描いた作品です。芋虫が 丸まってでんぐり返しするような様子を4体で表していて、1枚で時系列を感じさせます。この隣にはこのキャラクターを使った「階段の家」もあり、エッシャーが気に入っていたのが伺えました。

145 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「相対性」
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、3つの独立した重力が作用しているような部屋の内部が描かれています。階段でお互いが繋がっているのですが、階段の両面が逆転して使われているなど、重力関係がちぐはぐな感じが面白いです。ここまで観てきた建物の構造の研究なども活かされている様子も伺えて、観れば観るほど発見がある作品でした。

この近くには「ベルヴェデーレ(物見の塔)」、「滝」(★こちらで観られます)、「上昇と下降」といった有名作が並んでいました。エッシャーの代表作が集まっているコーナーです。

152 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「メタモルフォーゼⅡ」 ★こちらで観られます
こちらは4mにもなる横長の作品で、メタモルフォーゼを書いてある白黒の画面から始まり、それが市松模様となり、トカゲとなり、6角形となり、蜂の巣となり、蜂が蝶のようになって魚と向き合うようになり、魚が鳥と向き合うようになり、鳥が赤白のブロックとなり、建物と町並みとなり、城塞がチェスのコマ(ブロック)になり、チェス盤が市松模様となり、メタモルフォーゼを書いてある白黒の画面に戻っていく という感じです。エッシャーの騙し絵的な技法が凝縮されたような大作で、その発想とデザイン的なセンスに改めて感心させられました。これは今回の展示でも大きな見どころと言えます。

最後には彫刻作品の「魚で覆われた球体」もありました。これも久々に観られて嬉しい。


ということで、今回は騙し絵一辺倒というわけではなく、エッシャーはどのように奇想の作品を作っていったのかが分かるようになっています。もうちょっと時系列でも良かったような気もしますが、エッシャー好きには深く理解できるような機会となっていると思います。混雑がとにかく大変ですが、不思議な絵が好きな方は楽しめる展示です。会期末はさらに混雑すると思われますので、気になる方はお早めにどうぞ。(割と柔軟に営業時間を延長したりしているみたいです。詳しくは公式ツイッターなどをご覧ください)
 参考リンク:公式ツイッター

おまけ:
出口の辺りにミラクルデジタルフュージョンという合成を使った撮影コーナーがありました。
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あいにく私は閉館間際だったので体験できませんでしたが。。。(というか混み過ぎでこれを体験出来る人はほんの一部かもw)


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ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 (感想前編)【上野の森美術館】

先週の日曜日に上野にある上野の森美術館で「生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵」を観てきました。非常に点数が多い展示となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 

【公式サイト】
 http://www.escher.jp/

【会場】上野の森美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年6月6日(水)~7月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間45分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
非常に混んでいて、チケット待ちで10分・入場待ちで10分くらい並びました。しかしそれ以上に大変だったのが会場内で、どこも2重3重に列ができている感じです。作品が細かい版画なので後ろから観ることも難しく、延々と並んでいたら4時間近くかかりました。普段に比べて鑑賞マナーを知らない人も多いので満員電車に4時間いるのと大差ないくらい疲れました。今回の展示では特に時系列になっている訳ではないので、先に2階から観て特に混み合う1~3章あたりは閉館時間が近づいた頃に行くほうが効率的かもしれません。しかしそれでも時間がかかって観きれない可能性もあるのでなるべく鑑賞時間に余裕を持ったほうが良さそうです。

さて、この展示は騙し絵的な奇想の版画作品で知られるマウリッツ・コルネリス・エッシャーの大規模な個展となっています。エッシャー展は過去に何回か観ていますが、今回は世界最大のエッシャーコレクションを誇るイスラエル博物館の所蔵品が150点程度(大半は版画)並んでいました。エッシャーは生涯で450点程度の作品を残しているらしいので今回の展示で1/3も観られてしまうことになります。エッシャーの来歴等については以前の記事にも書いていますのでそちらを参考にして頂ければと思いますが、簡単に説明すると、父はお雇い外国人として日本にも来た水力工学の土木技師で、エッシャー自身も建築や装飾美術を学んでいました。その後、サミュエル・イエッスルン・ド・メスキータに才能を見出され版画の基本を学び、様々な題材の版画を制作していくことになります。今回の展示では主題ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、先に言っておくと騙し絵的な作品の割合はそれほど多くはありません。今回はエッシャーの作品全体を観ながら、どうして奇想の作品を作ることができたかを紐解くような感じの内容となっています。
 参考記事:迷宮への招待 エッシャー展 (そごう美術館)


<1章 科学>
まずは科学的な志向の作品のコーナーです。エッシャーは2次元平面はどのようにタイル状にすることができるかや、三次元の格子構造に興味を持っていたようで、幾何学的なモチーフがよく使われる作風となっています。ここにもそうした表現の作品が並んでいました。

1 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「貝殻」
こちらは巻き貝の貝殻を描いた作品で、緻密で市松模様のように白黒が交互になって渦巻く様子となっています。これは1919年にハールレムの建築装飾美術学校に入学した頃の作品で、レンブラントのエッチングに着想を得て描いているようです。割と写実的な感じがしますが早くも市松模様が使われている所に驚きます。 ちなみにこの学校で建築を学び始めたエッシャーですが、そこで版画家サミュエル・イエッスルン・ド・メスキータと出会い版画の道に本格的に転じていくことになります。

5 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「蝶」
こちらは蝶が無数に描かれた作品で、上の方はかなり単純化されていますが 下の方に行くほど大きくて緻密な描写となっています。お互いが組み合って模様となるような表現や徐々にリアルになるのはエッシャーが得意としたもので、この作品でもそれを観ることができました。割と蝶への博物的な関心も伺えるように思います。

3 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「バルコニー」
こちらはバルコニーの一部がレンズで観たような球体状に膨らんでいるような感じの作品です。これも騙し絵と言うよりかはレンズの歪みをよく研究しているように思えるかな。それを絵に活かそうとする発想も面白いです。

14 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「同心円状の球面片」
こちらは線で出来た球体の中にさらに球があるような構造を描いた作品です。反復・変容・反射のイメージに強い関心があったエッシャーですが、それだけではなく結晶体にも関心を持っていたようで、この作品ではそれが活かされているように思われます。こうした結晶体への関心はライデン大学で講師をしながら結晶学を研究していた異母兄からの影響のようです。エッシャーの不思議な世界を形作るパーツを観られたような感じの作品でした。

18 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「立方体とマジックリボン」
こちらは格子の中に入っている球状のリボンを描いた作品です。穴があって立体感がつけられているのですが、見ようによってはその部分が凸型のようにも凹型にも見えるのが不思議です。絵の上の方を観ていると凸型のはずですが、メビウスの輪のようになって何時の間にか凹型になっている…という何とも面白い趣向となっていました。

エッシャーはメビウスの輪もよく描いているようで、他にも∞状の裏と表が何時の間にか逆転するモチーフの作品がありました。


<2章 聖書>
続いては聖書からの主題のコーナーです。エッシャーは敬虔なカトリック教徒だったそうで、創世記や聖人の生涯をアール・ヌーボー様式のような作風で残しています。しかし1935年にヒエロニムス・ボスの「地上の楽園」の地獄の場面を模写して以降は伝説や宗教主題への関心が弱まっていったそうで、その頃の背景にはイタリアのファシズムに対する抗議があったようです。(その後イタリアを離れて二度と戻ることはなかった) ここには聖書を題材とする作品が並んでいました。

21 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「小鳥に説教する聖フランチェスコ」
こちらはアッシジの聖フランチェスコを描いた作品で、この聖人は自然や動物を愛し、動物に説教したことでも知られています。ここでは身振りをしながら様々な鳥に説教をしていて、聖フランチェスコとモア?には後光が差しているような感じで描かれています。騙し絵的な要素は全くなく、様式化された花などは確かにアール・ヌーボー的な雰囲気もあるかな。エッシャーのちょっと意外な側面が観られる作品だと思います。

23-27 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「天地創造」
こちらは旧約聖書の天地創造を主題にしたもので、4日目を除く1~6日目の場面が展示されていました。1日目は太陽のようなものの上を飛ぶ鳥、2日目は大雨と海の潮、3日目は沢山の植物、5日目は魚や鳥たち、6日目は椰子の木の下で肩を組む裸の男女(アダムとエバ)が描かれています。こちらも装飾的な感じで、制作年も1920年代なので学校の装飾美術からの影響なのかも?と思ったのですが、解説では特に触れていなかったので詳細は不明です。

この近くには失楽園やバベルの塔を主題にした作品なんかもありました。

30 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「地獄(ヒエロニムス・ボスの絵画に基づく)」
こちらはボスの作品の模写で、巨大な樹木人間の周りを沢山の人や悪魔が群がる様子が描かれています。一見するとボスの作品そのもののように観えますが、中にはエッシャーが作ったモチーフなどもあるそうです。奇想の画家で有名なボスにエッシャーも心惹かれたのかな。こちらもルーツの一端が垣間見える作品でした。
 参考記事:ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで (Bunkamura ザ・ミュージアム)


<3章 風景>
続いては風景画のコーナーです。エッシャーは1920年代にイタリア旅行に行き、そこでスケッチを描いて、ローマの夜景などを劇的な明暗で描いた版画を作ったようです。後にイタリアを離れてからは自然描写の関心を失ったようですが、初期には後のモザイクパターンや錯視を招く画風に繋がるモチーフも観られるようで、ここにはそうした作品も並んでいます。

31 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「サンジミニャーノ」
こちらはイタリアの町並みを仰ぎ見るような感じで描いた作品で、中央にオリーブの木があります。真っ暗な空に白い建物が映え、単純化された丘が波打つような表現となっていました。かなり明暗が強くてちょっとシュールな雰囲気の作品です。

この辺の作品は版画として面白い表現の作品が多かったです。

34 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「ローマ、ボルゲーゼの聖獣」
こちらは手前に大きな龍のような像(聖獣らしい)を描き、背景にイタリアの背景が描かれた作品です。水平・垂直の直線を多用したストライプの建物が建ち並んでいて、建築を学んだだけに単純化されても特徴的な感じがします。リズミカルな画面で、パターン化されたような感じも出ていて後の作風を予感させました。

やはり建築に興味があったようで、この辺は建物を描いた作品が多かったです。(イタリアの切り立った崖にも興味があったのか、崖の絵も多い)

55 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「ポジターノの古い家」
こちらはイタリアの家を描いたもので、1軒だけ切り出したような感じで描かれています。画風は特に変わった所はないのですが、段差の多い家で階段がいくつもあるのが特徴的です。これはエッシャーの騙し絵に出てくる家の雰囲気に似ているような…。 こうした風景や建物が下地となっていったのが伺える作品でした。

56 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「アマルフィ海岸」
海岸とそこに建つ城のような建物が描かれた作品で、複雑な階段と橋が組み合っている様子が写実的に表されています。ここでは細かい線や点を使った表現で明暗もくっきりだしていて、面白い手法となっています。また、複雑な構造からは後のパラドックスのある建物を生む下地になるようなものを感じました。


<4章 人物>
続いては人物のコーナーです。エッシャーは当初は主に家族をモデルにリアルな人物像を描いていたのですが、世界大戦後は人間社会に対する見方が暗くなり 無個性で時にグロテスクな人物像を描くようになったようです。ここにはいずれの時期の作品もあって、その変遷の様子も観ることができました。

61 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「子供の頭部」
こちらは18歳の頃の初期作品で、あどけない子供の頭部を描いています。版画家の道に進む前のものらしく、やや素朴な仕上がりにも思えますが目が生き生きしているように思いました。中々貴重なコレクションです。

この辺には19~21歳頃のリノカット(ゴム版みたいな凸版の版画)の作品も何点かありました。陰影が強くてちょっと不穏な感じも受けます。

70 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「父G.A.エッシャーの肖像」
こちらは虫眼鏡で新聞のようなものを観ている帽子の老人を描いた作品です。かなり細かくて写真のようなリアルさがあり、毛の1本1本まで表現されていて版画とは思えないほどです。エッシャーの騙し絵的な作品ではこうしたリアルで個性まで伝わるような人物はあまり観ないので、戦前の頃の作風がよく分かる作品だと思います。

この近くには自画像や奥さんを描いた作品なんかもありました。作品ごとに割と表現が違うので、色々試していたのかな。自画像は12点ほど残しているそうです。

72 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「婚姻の絆」
りんごの皮のようになった2人の顔が隣り合っていて、お互いが帯状に繋がっている様子が描かれています。これは左が妻のイエッタ、右はエッシャー自身でお互いが結びついていることを表しているようです。結構不気味な感じはしますが、2人の絆の意味もあるようで奥さんとの関係性も伺えました。

この近くには何度か観たことがある「出会い」もありました。戦時中の作品で、人間を原人のように描いているのは皮肉でしょうか。


<5章 広告>
続いては実用的な版画のコーナーで、エッシャーによる挨拶状や年賀状、広告、ロゴなどの仕事が並んでいました。

75 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「レストラン インシュリンデ(ハーグ)のためのエンブレム」
こちらは円形を3つに分けたベンツのマークみたいな枠の中に、椰子の木などの南国の風景が描かれたエンブレムです。エンブレムの周りには漢字も使われていて、南洋酒櫻と書かれています。そのせいか勝手に中華料理の店かと思いましたが、そこは解説がないので定かではなかったですw こうした広告の仕事も手がけていた様子がよく分かります。

この隣にも漢字用便箋のデザインなんかもありました。父親は日本で働いていたし、中国や東洋に関心があったのかな?

78 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「アッセルベルフのための年賀状(グリーティングカード)」
こちらは白黒のパターンを組み合わせて魚と鳥が組み合うようになった作品です。鳥は上の方に行くと帆船に変わっていき、海に浮かんでいる様子となっていきます。年賀状の為に描いたようですが、この手法はエッシャーそのものといった感じの作品でした。


ということでこの辺までが1階の展示内容となっていました。割と騙し絵ではない作品が多いのですが、エッシャーの奇想な作品はいきなり作られた訳ではなく、科学や建物などへの関心から生まれているのがよく分かるのではないかと思います。後半には代名詞的な騙し絵のような作品もありましたので、次回は2階の内容をご紹介しようと思います。

 → 後編はこちら



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夢二繚乱 【東京ステーションギャラリー】

10日ほど前の土曜日に東京ステーションギャラリーで千代田区×東京ステーションギャラリー「夢二繚乱」を観てきました。

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【展覧名】
 千代田区×東京ステーションギャラリー「夢二繚乱」

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201805_yumeji.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅

【会期】2018年5月19日(土)~ 7月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
予想以上に多くの人で賑わっていて、場所によっては人だかりができるような感じでした。たまに列を作るくらいの混み具合です。

さて、今回は大正期に活躍し、現在でも人気の高い竹久夢二の大規模な回顧展となっています。この展覧会には夢二が関わった様々な媒体の作品が500点以上も展示されていて、初公開の初期の作品や『出帆』という自伝小説に関する作品なども並んでいました。私は夢二は好みでないので満足度は低めにしていますが、ファンには嬉しい内容ではないかと思います。展覧会は4章構成となっていましたので、各章ごとにご紹介していこうと思います(今回はあまりメモを取っていませんのでごく簡単に)


<第1章 夢二のはじまり>
まずは竹久夢二の若い頃のコーナーです。夢路は若い頃に新聞や雑誌に絵や詩を投稿して生活していたそうで、1905年6月に投稿した「筒井筒」という作品が入賞したことと「夢二画集 春の巻」の刊行が転機となり人気作家へとなっていったようです。ここには夢二が19歳の時に撮影した写真や、画文集『揺籃』という肉筆の中で最も若い頃の作品もあります。これは着物の女性が子供を抱いている姿が描かれていましたが、外国文学を翻訳したもののようです。若い頃からこういう仕事に携わっていた様子が伺えます。

その先には鉛筆や水彩などで描かれた作品があって、いわゆる夢二式美人と言われるスタイルで儚い雰囲気の女性像が早くも登場します。ちょっと拙い感じが好きになれない所ですがw 他には雑誌『中学世界』(筒井筒を投稿した雑誌)の編集者 西村渚山との書簡があり、この人が夢二の才能を見出したことが解説されていました。また、「夢二画集 春の巻」を始めとした画集がいくつかあり、これが出世作となったようです。

その先の小部屋には「夢二画手本」という絵の手本や子供向けの仕事のコーナーがありました。これらはシンプルな絵や童話的な雰囲気の作品で、子供向けの仕事も広く支持されたことが伺えました。…後で出てきますが、夢二が私生活がむちゃくちゃなので子供向けの仕事をしても良いのだろうか?などと思いながら観ていましたw


<第2章 可愛いもの、美しいもの>
続いては女性や子供に手の届く美術に関するコーナーです。夢二は正式に結婚した唯一の女性である岸たまきが経営する港屋に自らのデザインを提供したようで、日本橋呉服町にできた「港屋絵草紙店」は夢二の千代紙や便箋、封筒などを取り扱う一種のブランドショップだったようです。(離婚した時に自活出来るようにとこの店を出したそうです。) アール・ヌーボーや江戸趣味などを取り入れて若い女性に人気だったようで、若い画家たちも集まる一種のサロン的な面もあったようです。
また、この時期には たまきをモデルとして瞳の大きな女性像を描いていて、これが夢二式美人と呼ばれるスタイルの確立に繋がります。どこか儚げで陰りのある美人で、夢二の代名詞的なモチーフです。この先にもこのスタイルの美人画が多く出てきます。

まず肉筆画の掛け軸があり夢二式の美人が3点程度並んでいます。とろっとした表情の美人たちで色っぽい独特の雰囲気があり、細部は大胆に描いてあったりします。さらにこの時期は絵葉書、雑誌、挿絵、装幀など様々な活動を行っていたようで、少し先には絵葉書やテキスタイルが並んでいました。素朴な感じもありつつアール・ヌーボー調のテキスタイルもあったかな。絵葉書に関しては苦学生時代の頃にも早稲田の絵葉書屋に野球の早慶戦を描いた肉筆絵葉書を売り込んで生活費を稼いでいたのだとか。展示品の中には何故か鎧兜を着たり大工の格好で野球する様子が描かれた絵葉書なんかもありますw  しかしやはり女性像の絵葉書が人気だったようで、芸者や海の女を描いたものがありました。ちょっと変わった所では戦時下の人々の生活を描いたものがあり興味を引きました。

その先には装幀の仕事が並んでいます。夢二は他著の装幀300冊、自著の装幀57冊に携わったそうで、これも多彩な作品となっています。原画の横に書き込みで「中央キル」とか指定もあって実際の使われ方の指示なんかも分かりました。

その後は「子供之友」や「コドモノクニ」といった子供向けの雑誌と挿絵が並んでいます。楽しげな子供を描いているのですが、中にはマティスの「ダンス」を模したような作品(手をつなご)なんかもあって、意外な印象を受けました。


<第3章 目で見る音楽>
続いては楽譜の表紙などのコーナーです。夢二はセノオ楽譜などの表紙を手がけていて、世界各国の様々なイメージを取り入れて描いています。ここには壁一面に楽譜の表紙が並んでいるのが圧巻で、これは今回の展示の見どころと言えそうです。題材は各楽曲の国や時代を考慮したものとなっていて、絵柄自体もそれに寄せているような感じでした。他にも「新小唄」や「中山晋平作曲全集」、童謡といった楽譜集なんかも並んでいます。

この先には画家としての夢二の側面を紹介するコーナーがあり、当時の個展に出品した作品もありました。「コーヒーと女」という作品では手を組んで肘をついた姿勢でコーヒーを飲む女性が簡素な輪郭と少ない色数で描かれ、大正時代の洒落た雰囲気がよく出ていました。また、「海辺風景」という作品では寂しげな風景が漂っていて、ちょっと夢二の作品にしては珍しい気がしました。他にも着物の女性が振り返る様子が描かれた作品では色白で儚い女性が色っぽく、これが一番良い作品に思えました(タイトルは「早春第一枝」だったかな。うろ覚え)

さらにその先には『婦人グラフ』の表紙が並んでいました。この雑誌はグラビア詩で彩色木版を使った高級誌だったそうで、夢二も人気挿絵画家の1人でした。


<第4章 出帆>
最後は昭和2(1927)年に都新聞で連載された『出帆(しゅっぱん)』という自伝小説についてのコーナーです。これは登場人物の名前は変えてありますが、夢二が愛した女性たちや事件などが綴られたもので、素朴なデッサンと共に思い出が語られます。 …と書くと何だか美しい思い出のようですが全く違いますw 出てくる人物がみんな畜生だらけで、特に夢二はとんでもなく酷いw どれも濃すぎて波乱しかないのですが、少し例を挙げると唯一の妻となった たまき が病気になった時、医者を迎えに行く!と貯金通帳を持って出ていき、そのまま東北に雪見に旅行しに行って年末に帰って来たとか、刃傷沙汰になって別れたとか… 後半はお花(お葉)という元モデルの女性の話が多いのですが、この人も中々パンチの効いた人物で、後に心労で倒れてたりもします。 そんな話を新聞に載せるのだから竹久夢二は凄いw 勿論、この連載は当時大きな話題になったそうで、夢二は連載後に海外へ旅立ったそうです。
この章には134点の原画と共にそうした女性関係の年表があるので、それを読むだけでも夢二の人物像が想像できると思いますw


ということで、非常にボリュームのある内容だったと思います。とは言え、私はやはり夢二の作風は好きにはなれないかな。 「出帆」の畜生エピソードは面白かったですがw ファンの方には新しい発見もあると思いますので、夢二好き向けの展示だと思います。



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進化・深感・新幹線 【旧新橋停車場 鉄道歴史展示室】

前回ご紹介したパナソニック 汐留ミュージアムの展示を観た後、すぐ隣の旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で「進化・深感・新幹線」という展示を観てきました。

DSC07121.jpg DSC07132.jpg

【展覧名】
 進化・深感・新幹線 

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/shinbashi/

【会場】旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
【最寄】新橋駅

【会期】2018年4月24日(火)~2018年6月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は新幹線に関する歴史や仕組みを紹介するもので、展示品はそれほどなくボードでの解説が多めとなっています。1964(昭和39)年10月1日に東京~新大阪間で開業した東海道新幹線から歴史が始まり、今では北海道、東北、秋田、山形、上越、北陸、東海道、山陽、九州に新幹線が伸びていて、さらに今後も長崎や札幌にも伸びる計画があります。技術も東海道新幹線の開業当時から格段の進化を遂げていて、当時は世界で初めて時速200km超での営業運転を実現しましたが、今では東北新幹線「はやぶさ」で時速320kmでの運行が行われるなど、高速かつ乗り心地良い乗り物として日本の交通網に欠かせない存在となっています。この展示ではそうした新幹線の凄さを改めて認識できるような事柄を説明していました。

前述の通り展示内容はほぼボードの写真等で、展示品としてはいくつか模型がある程度です。マックスや0系、つばさ などの先頭車両があったかな。結構大きめなのでリアルな感じで、鉄道好きには嬉しい品だと思います。一方、ボードでは振動や騒音の少ない環境性能についてや、ブレーキの性能の高さによって安全性が保たれているといったことが紹介されています。この辺は普段 鉄道の情報に触れていない人には参考になると思いますが、鉄道好きの人には割とよく知られた内容な気がします(鉄っちゃんしか来ない展示だろうにw) ちょっと目を引いたのは秋田新幹線の線路の写真で、三線軌条とよばれるレールが3本ある様子を写していました。在来線の狭軌と新幹線の標準軌が併用されているミニ新幹線方式ならではの光景なので、マニア好みの写真と言えそうです。他には、歴史の年表や現在の新幹線の地図なんかもあったかな。延伸予定のところも描かれています。 他には若干ですが新幹線グッズやパンフレットなんかもあったと思います。


ということで、無料の展示なので不満というわけではないですが、展示品が少なめで若干物足りない感じもしました。せめてもうちょっと写真とかあったら良かったんだけど…。 まあ気軽に観られる内容なので、鉄道好きの方で新橋付近に行く機会があったら寄ってみるのもよろしいかと思います。



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