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2009年の振り返り

2009年も今日でお終いなので、今年の美術展について振り返りをしようかと思います。結構、美術展サイトだけでなく映画や音楽のサイトでも今年のベスト10みたいな感じで振り返っているサイトが多いみたいですので、それに便乗しますw とはいえ10個に絞るのは大変なので、ちょっと趣向を変えようかと。いくつかのテーマでベスト5を選びたいを思います。かなり好みといまの気分のみで決めているランクです。

部門別にご紹介。

<総合満足 現代美術部門ベスト5> ※イベント除く
 1位:野村仁 変化する相―時・場・身体 (国立新美術館)
 2位:アーティスト・ファイル2009 (国立新美術館)
 3位:ヴィデオを待ちながら 映像、60年代から今日へ (東京国立近代美術館)
 4位:河口龍夫展 言葉・時間・生命 (東京国立近代美術館)
 5位:アイ・ウェイウェイ展 何に因って? (森美術館)

野村仁展は心底面白かったです。私は現代アートに苦手意識がありますがここに挙げた5つはどれも楽しめました。これ以外にも、マーク・ロスコ展ヴェルナー・パントン展等も面白かったです。イベントも含めるとアートフェア東京2009 (東京国際フォーラム)は来年も期待したい超面白イベントでした。


<総合満足 西洋美術部門ベスト5>
 1位:国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア (Bunkamura)
 2位:生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ (国立新美術館)
 3位:ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 (国立西洋美術館)
 4位:フランス絵画の19世紀 美をめぐる100年のドラマ (横浜美術館)
 5位:THE ハプスブルク(ハプスブルク展) (国立新美術館)

やはり西洋美術は充実した内容が多くて、選ぶのは大変でした。結局大きな展示が名を連ねていますが、好みの問題で1位はトレチャコフ美術館展にしました。心底ほれましたw 逆にゴーギャン展2009 (東京国立近代美術館)とかは凄いと思ってもあんまり好みじゃないのでランク外w むしろウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)なんかはノーマークの掘り出し物でした。


<総合満足 日本美術部門ベスト5> ※仏教系の展示は日本美術と分けました。
 1位:皇室の名宝―日本美の華 <1期>(東京国立博物館 平成館)
 2位:速水御舟展 -日本画への挑戦- (山種美術館)
 3位:清方/Kiyokata ノスタルジア (サントリー美術館)
 4位:MAKISHIMA NYOKYU 牧島如鳩展 ~神と仏の場所~ (三鷹市美術ギャラリー)
 5位:没後60年記念上村松園/美人画の粋(すい) (山種美術館)

皇室の名宝展は別格かな。 4位の牧島の個性はかなり衝撃でしたw もう個展を観る機会も無いのではと心配です。 このほかにも斎藤真一展 瞽女と郷愁の旅路 (武蔵野市立吉祥寺美術館) (近日紹介予定) や没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年(府中市美術館)なども心に残りました。


王道はこんな感じだったかなと。この西洋・日本の区分けだと両方入ってしまう、奇想の王国 だまし絵展 (Bunkamuraザ・ミュージアム) や日本の美術館名品展 (東京都美術館)も勿論良かったです。

他にも良い展示は沢山あったので、色々な切り口でご紹介。


<仏教系展覧 ベスト5>
今年は仏教に関する展示が多かったように思います。仏教系の展示は日本美術と分けてランクをつくりました。
 1位:国宝 阿修羅展 (東京国立博物館)
 2位:国宝 三井寺展(サントリー美術館) (まだブログがありませんでした)
 3位:聖地チベット-ポタラ宮と天空の至宝- (上野の森美術館)
 4位:平泉~みちのくの浄土~ 世界遺産登録をめざして (世田谷美術館)
 次点:尼門跡寺院の世界 皇女たちの信仰と御所文化 (東京藝術大学大学美術館)

阿修羅展は別格で、全体でも1~2を争う満足度でした。 3位だけ国外ですが、これもかなり素晴らしい内容でした。 尼門跡展は凄いものをそろえてるのはわかったのですがいまいち趣味じゃないのが多かったので次点にしました。


<後学となった展覧会 ベスト5>
後々の鑑賞に役立つ情報が多かったランキングです。
 1位:知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」 -道教の神々と星の信仰- (三井記念美術館)
 2位:錦絵はいかにつくられたか (国立歴史民俗博物館)
 3位:フランス絵画の19世紀 美をめぐる100年のドラマ (横浜美術館)
 4位:日本美術のつくり方 (東京国立博物館)
 5位:日本の美術館名品展 (東京都美術館)

 道教展はその後に観たいくつもの展示で有り難味を感じました。今後の自分の財産となりそうな展示でした。 アカデミスムにフォーカスしたフランス絵画展もそういう感じです。名品展はその後の山梨遠征の参考にしました。


<展示品の品揃えに驚いた展覧 ベスト5>
とにかく、凄い!と驚きを感じた展覧です。
 1位:皇室の名宝―日本美の華 <1期>(東京国立博物館 平成館)
 2位:国宝 阿修羅展 (東京国立博物館)
 3位:古代ローマ帝国の遺産 - 栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ- (国立西洋美術館)
 4位:ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 (国立西洋美術館)
 5位:一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子 (サントリー美術館)

ほとんど国立の大型展ですみませんw やっぱりそこは流石としか言いようがないです。そして5位に入れた薩摩切子展は現存する薩摩切子の大半が展示されているという凄い展示でした。


<お客が大入りだった ベスト5>
 1位:奇想の王国 だまし絵展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
 2位:ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 (国立西洋美術館)
 3位:国宝 阿修羅展 (東京国立博物館)
 4位:皇室の名宝―日本美の華 <2期>(東京国立博物館 平成館)
 5位:皇室の名宝―日本美の華 <1期>(東京国立博物館 平成館)

チケットで並ぶor入場規制を食らったのが1~3位。阿修羅展やルーブル展は中に入るといくらかマシでしたが、騙し絵展は無茶苦茶大変でした。名宝展は入場規制は無かったけど2期は辛かった…。


参考:<古代のロマン>
今年は古代をテーマにした展示が多かったように思います。海のエジプト展やトリノ展には行けずじまいで、私は古代に関するのは4つしかいっていませんでしたが、2009年の1つの特徴だと思うので、トピックとして挙げておきます。
 1位:特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン (1日ブログ記者) (国立科学博物館)
 2位:古代ローマ帝国の遺産 - 栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ- (国立西洋美術館)
 3位:古代カルタゴとローマ展 ~きらめく地中海文明の至宝~ (大丸ミュージアム・東京)
 4位:国宝 土偶展 (東京国立博物館 本館特別5室)

シカン展は当時の文化を様々な面を詳細に知ることができる素晴らしい情報量でした。また、ブログ記者という新しい広報のありかたも面白かったです。最近ではブロガー向けの内覧会も増えているようですので楽しみです。

<フレッシュな美術館 ベスト5>
今年は新しい美術館や移転などに話題が事欠きませんでした。新しさを感じた順です。

 1位:三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」 (三菱一号館美術館)
 2位:美術を変えた9人の画家 (ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX)
 3位:速水御舟展 -日本画への挑戦- (山種美術館)
 4位:国宝那智瀧図と自然の造形 (根津美術館)
 5位:六本木アートナイト

1位は新設、2~4位はリニューアル・移転です。5位は今年から始まり来年も行われるアートイベントです。 この不況時に新しい美術館ができるのは嬉しい限りですが、その影で、青山ユニマット美術館の閉館などもありました。


ということで、ミーハーなランキングですみません^^; 今年も沢山の美術品を観て色々と学び、癒されていました。だいぶ色々挙げましたがこれでも挙げ切れなかったものが多くて、本当に恵まれた1年でした。
また来年も沢山色々観られることを祈っております。。皆様よい年越しを…。


おまけ:あまり使われてなさそうですが、左サイドの「全ての記事を表示する」のリンクを押すといままでの全タイトルが出てきて、検索などがしやすいです。 今回の記事はどういう展覧会の中から選んでいるのか知りたい方は、こちらを押してみて参考にしてください。(「全ての記事を表示する」と同じ飛び先です)


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映画「アバター」<通常版> (一部ネタばれあり)

以前、映画「2012」を観たとき、貰ったスクラッチで「アバター」の招待券が当たったので、観に行ってきました。せっかくなら話題の3Dのを観たかったのですが、私が観たのは通常版でした。タダ券なので仕方ないかw

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【作品名】
 映画「アバター」<通常版>

【公式サイト】
 http://movies.foxjapan.com/avatar/

【時間】
 2時間40分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_③_4_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_④_5_名作

【感想】
まず、何と言っても映像が凄いです。通常版でこれだけ凄いのだから3Dはもっと凄いのかと思うと、ちょっと損した気分かもw どういう技術かわかりませんが、実写なのかCGなのか境目はわからず、ナヴィ(青い皮膚の人間のような原住民)の表情から気持ちが読み取れるほど、表現力がありました。


ここから軽いネタばれがあります。白字で書いておきますので、読んでも良いという方はドラッグで反転させて読んでください。
ネタばれここから

先日、地上波でラストサムライをやっていたようですが、アバターを観て、何故このタイミングでラストサムライを流したのか理解しました。と、いうのもストーリーはラストサムライ(というか、ダンス・ウィズ・ウルブズ)の焼き増しのようなもので、舞台が異星になっただけのような…。独特の風習などの設定はインディアンや南方の部族を合わせたようで、別に異星にする必要はなかったような…。まあ、最後のほうで一応納得できる展開につながるのは良かったかな。押井守氏はこれを観て「やりたいことを全部やられた」と言ったそうですが、むしろ、あんたパクられてるよ!w 映像で押し切られるけど、中身や細部はどこかで観たような…ってのが多かったように思います。
ネタばれ終了。

 参考ニュース:押井守監督:アバターに「やりたいことを全部やられた」と脱帽


ということで、映像は凄いけど、ストーリーや設定はもっとオリジナリティが欲しかったです。まあ、つまらないわけではないし、3Dで観たらもっと楽しめたのかも。


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東京国立博物館の案内 【2009年12月】 その2

昨日に続き、東京国立博物館の常設展示です。
 ※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れます。(撮影禁止の作品もあります)
ここは常設と言いつつも揃えが膨大で、ずーっと会えない作品も多々あるので特別展並に頻繁にチェックしたいところです。

 参考記事:
   東京国立博物館の案内 【建物編】
   東京国立博物館の案内 【常設・仏教編】
   東京国立博物館の案内 【常設・美術編】
   東京国立博物館の案内 【2009年08月】
   東京国立博物館の案内 【2009年10月】
   東京国立博物館の案内 【2009年11月】
   東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放】
   東京国立博物館の案内 【2009年12月】

伊万里 「色絵翡翠図平鉢」 <いろえかわせみずひらはち>
翡翠の可愛らしい様子が描かれています。
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企画展示で「四季花鳥図(冬)」をやっていました。
右:杜貫道 「離合山水図」 <とうかんどう りごうさんすいず>
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左:呂文英 「売貨郎図」 <りょぶんえい ばいかろうず>
右:呂紀 「四季花鳥図(冬)」 <りょき しきかちょうず ふゆ>
中国の絵が中心でした。 企画展示の写真はここまでです。
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国宝室の「元暦校本万葉集」
平安時代につくられた写本らしいです。2~3冊くらいありました。
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「月次風俗図屏風」 <つきなみふうぞくずびょうぶ>
庶民から武家、公家に至るまでの季節ごとの風俗を描いていて、右から正月~12月まであるようです。右はアップ。
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筆者不詳 「長恨歌図屏風」 <ちょうごんかずびょうぶ>
白楽天の叙事詩「長恨歌」を題材にした作品。楊貴妃が殺されたのを悲しむ玄宗皇帝の様子らしいです。
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呉春 「鶴図屏風」 右隻
呉春は江戸時代の俳人で、四条派の祖です。与謝蕪村に南画、円山応挙に写生画を学んだらしいです。
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呉春 「鶴図屏風」 左隻
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増山雪園 「四季花鳥画帖」 <ましやませつえん>
絵も漢詩も増山雪園のものらしいです。写生的で風流な雰囲気です。
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左:立原杏所 「葡萄図」 <たてはらきょうしょ>
右:岡本豊彦 「孔雀図」
葡萄図のほうは酔いながら描かれたのだとか。先進的です。
孔雀のほうは先ほどの呉春の弟子。線に四条派の特徴があるようです。
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筆者不詳 「洛中洛外図屏風(右隻)」
詳しいことはわかりませんが見入った作品。
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左:鈴木春信 「火鉢を囲む二美人」
右:栄松斎長喜 「四季の美人・初日の出」 <えいしょうさいちょうき >
この時期にぴったりの浮世絵がありました。
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名前をメモするのを忘れていました…。凧揚げに羽子板。お正月ですね。
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伝 菱川師宣 「四季風俗図巻」
菱川師宣の工房の作らしいです。横に長く、花見、夏の舟遊びなどが描かれています。これは花見のあたりです。
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歌川広重 「東海道五拾三次之内・京師」
有名な東海道五拾三次。
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着物のコーナー。華やかな着物が沢山飾られていました。
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おまけ
もう終わってしまったようですが、近くの西洋美術館では毎年恒例のガーデン・イルミネーションを開催していたので帰り道に寄ってきました。
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東京国立博物館の案内 【2009年12月】

土偶展を観てきた後、いつもどおり常設も観にいき今回も写真を撮ってきました。
 ※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れます。(撮影禁止の作品もあります)
結構撮ってきたので、2回にわけて一部をご紹介しようかと思います。

 参考記事:
   東京国立博物館の案内 【建物編】
   東京国立博物館の案内 【常設・仏教編】
   東京国立博物館の案内 【常設・美術編】
   東京国立博物館の案内 【2009年08月】
   東京国立博物館の案内 【2009年10月】
   東京国立博物館の案内 【2009年11月】
   東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放】

まずは仏教のコーナー
左:「阿弥陀如来立像」
中央:「慈恩大師坐像」
右:「毘沙門天立像」
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左:「阿弥陀如来および両脇侍立像(善光寺式三尊像)」
右:「金銅種子華鬘」 <こんどうしゅじけまん>
華鬘は今年はよく展覧会でもみました。
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左:「秋草蒔絵見台」
右:「源氏蒔絵鏡台および内容品」
可憐な蒔絵。ここは蒔絵のコレクションも豊富です。
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太刀 「伯耆安綱(名物 童子切安綱)」 <ほうきやすつな (めいぶつどうじぎりやすつな)>
平安時代の刀匠、伯耆安綱の太刀。国宝です。 酒天童子伝説と結びついた名前のようです。
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左:橋本周延 「江戸婦女」 <はしもとちかのぶ>
右:川端玉章 「玩弄品行商」 <かわばたぎょくしょう がんろうひんぎょうしょう>
歌川派の周延、円山派の玉章。
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左:望月玉泉 「保津川湍淵遊鱗」 <ほづがわたんえんゆうりん>
右:森川曽文 「群鹿」 <ぐんろく>
明治以降の日本画
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川瀬巴水 「東京十二題」 <かわせはすい>
左:「木場の夕暮れ」
右:「深川上の橋」
夕暮れのグラデーションが美しい作品2枚。
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川瀬巴水 「東京十二題」 <かわせはすい>
左:「雪に暮れる寺嶋村」
右:「雪の白髭」
雪景色が静かな2枚です。「東京十二題」はこれら以外にも多くの作品がありました。
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貴賓室(通称:便殿)
貴賓室の前で少し休憩。ここからは2階。
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紺紙金銀字大唐西域記 巻第四 (中尊寺経)
今年何度か観る機会のあった中尊寺経。金と銀の行が交互にきます。ぼけててすみません。
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「古経貼交屏風」
奈良時代から鎌倉時代までの31枚の経を貼り付けた屏風
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雪村周継 「松鷹図」
雪村<せっそん>の作品は凄い久々に観た気がします。素晴らしい!
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左:円山応挙 「梅図襖」
右:円山応挙 「青松白鶴図」 <せいしょうはっかくず>
実際にはこの2点は離れたところにありますが、応挙繋がりで。「梅図襖」はこの博物館の庭園にある応挙館の本物ですね。
 参考記事:東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放】
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後陽成天皇 「調度手本(三社託宣)」
天皇がこんなに上手いなんて凄い…。
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筆者不詳 「網干図屏風」
作者は分かりませんが見事で面白い作品でした。
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ということで、今回も満喫してきました。まだまだあるので、次回も一部だけご紹介しようかと思います。


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国宝 土偶展 【東京国立博物館 本館特別5室】

先日、上野の東京国立博物館に行って、「国宝 土偶展」を観に行ってきました。展覧会の名前から結構地味な印象というか、いつも置いてあるじゃん…と思いつつも、そういえば土偶って何なんだろ?という疑問から観に行く気が起きました。

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【展覧名】
 文化庁海外展 大英博物館帰国記念 「国宝 土偶展」

【公式サイト】
 http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6908

【会場】東京国立博物館 本館特別5室
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2009年12月15日(火)~2010年2月21日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
サブタイトルにあるように、この展示はイギリスの大英博物館で9/10~11/22に展示され好評を博した土偶展の帰国記念展示となっていて、結論から言うと予想以上に楽しめる内容でした。展示室は本館の1Fの中央奥の部屋(最近、アジアの仏像があったところです。)と決して広いわけではありませんが、70点あまりの土偶などが並んでいました。まだ始まったばかりの展示なのに結構な混み具合で、観るのに前の人が観終わるのを待つような時もありました。
色々と土偶について知ることができる内容でしたので、今回も章に沿って気に入った作品を通じてご紹介します。

<第1章 土偶のかたち>
まず、土偶とは何か?を改めて知ることができるコーナーです。土偶の使われ方は完全に解明されているわけではないようですが、いくつかの説があるようで、
 ・安産/子孫繁栄の祈願
 ・自然界の動植物の繁殖/豊穣の祈願
 ・病気や怪我の治癒/身代わり
 ・祖先の姿。生と死の象徴
 ・死者の鎮魂と再生の祈願
 ・護符/呪物
といった目的が考えられているようです。このコーナーでは最初期の土偶から後年まで幅広い時代の様々な土偶が展示されていました。

長野県茅野市中ッ原遺跡出土 「仮面土偶」 ★こちらで観られます
いきなりインパクトのある土偶です。逆三角形▽の顔を持つ土偶で、足は太く丸みを帯びて安定感があり、ガンダムのジオングが思い浮かびましたw 仮面はキツネのような顔にも見えるかな。よく観ると服のような文様と渦巻のような文様が多用されていました。

茨城県利根町花輪台貝塚出土 「発生期の土偶」
これは最初期の土偶でBC7000年~BC4000年くらいのものです。腰のくびれで女性と分かります。その形からバイオリン型土偶とも呼ばれているそうです。かなり小さくて、まだそんなに凝ったつくりではないように思いました。
ちなみに、土偶はほぼ女性なのだとか。これも女性なの?っていう作品も多いですが、よく観ると乳房が出ているなど女性と分かる特徴を持っています。また、この作品のように初期の土偶は関東東部など一部の地域でしか作られていなかったそうです。

青森県青森市三内丸山遺跡出土 「十字形土偶」 ★こちらで観られます
その名の通り頭と手足で十字形になっていて、磔刑にされたムンクの叫びという感じかなw 叫ぶような顔が印象的でした。

山形県舟形町西ノ前遺跡出土 「立像土偶」 ★こちらで観られます
先進的なデザインで、現代アートのようなすらっとした流線型が美しい作品。横から見るとお尻が出っ張っていて、手はなく(肩しかない?) 顔も目っぽい穴しかありません。 何故無いのか不明ですが、土偶は性別を越えた存在なので、作られなかったとも考えられていると解説されていました。(って、あれ?土偶はほぼ女性って言ってたばかりでは?w)

山梨県笛吹市上黒駒出土 「土偶」 ★こちらで観られます
猫顔でにゅっと長い腕を胸の前に出した土偶。その指は何故か3本しかありません。にゃんこ顔で可愛いですが、宇宙人かも!?と思わせるものがありましたw

群馬県東吾妻町郷原出土 「ハート形土偶」 ★こちらで観られます
これは教科書にも載っていた有名な土偶ですね。何度か観たことがあります。何故ハート型をしているのか解説はありませんでしたが、こうしたハート型の土偶はいくつかあるらしく、この展示でも何点か観ることが出来ました。縄文人の豊かな想像力を感じる作品です。

埼玉県さいたま市真福寺貝塚出土 「みみずく土偶」
これはミミズク風と紹介されていましたが、私は南米辺りの神像を彷彿しました。結構凝ったデザインなのに何か共通するものを感じました。

秋田県大館市塚ノ下遺跡出土 「土偶」
これはどうみてもグレイタイプの宇宙人のような顔ですw アーモンド状の黒い目は天然のアスファルトで入れているのだとか。土偶=宇宙人像説を唱える人の気持ちがわからなくもないw

青森県つがる市亀ヶ岡遺跡出土 「遮光器土偶」 ★こちらで観られます
これも教科書に載っていたし、最も有名な土偶かもしれません。この博物館で常設展示されていたやつだと思います。左足がかけていますが、蛙みたいで大きな遮光器をつけたような顔が独特です。 ちなみに、これを名づけた人が、イヌイット達が使う遮光器に似ていることから遮光器土偶と呼んだようですが、遺跡からは遮光器は見つかっていないので、遮光器ではないようです。 なんでこんなデザインにしたのか?謎です。そういえばアラハバキ(荒覇吐)はこの土偶と関係があるのかも気になるところです。

<第2章 土偶芸術のきわみ>
このコーナーは3点しかありません。と言うのも、土偶は18000点程度見つかっているようですが、その中で国宝指定されている土偶はたった3点で、このコーナーではその3点とも観ることが出来ました。それだけこの展覧会は貴重な機会なのです。

長野県茅野市棚畑遺跡出土 「縄文のビーナス」 ★こちらで観られます
曲線の多い、ふくよかな女性を思わせる土偶で、その美しさから「縄文のビーナス」と呼ばれています。頭の上には渦巻き状の文様があり、これは髪を結っているのを表現しているようです。また、下半身はどっしりしてお腹が出ている様子は妊婦のようでした。安産祈願のために作ったのかな? その曲線と簡略化は近現代のアートのようでした。

青森県八戸市風張1遺跡出土 「合掌土偶」 ★こちらで観られます
今回特に驚いた作品で、体育座りで合掌するハート型の顔の土偶です。神に祈っているとかお産をする姿とか様々な説があるようです。天然のアスファルトを接着剤として使い、補修されているのが確認されていて、大切に扱われていたことが想像されます。細部まで細かい文様がついていたのも凝っていて驚きました。

北海道函館市著保内野遺跡出土 「中空土偶」 ★こちらで観られます
結構大きな中が空っぽの土偶です。これだけの大きさのものを空にするのは高度な技術を要するようです。体には細かい文様がついていて、まるでズボンを履いているようにも見えます。また、黒漆が塗られていたという解説もありました。 よく観ると頭と両足の間に穴があいていて、これは空気を通して焼き上げるためのものではないかと思われているようです。ここまでくると完全に芸術品ですね。

<第3章 土偶の仲間たち>
最後のコーナーは土器や土面、動物を象った土偶っぽいものが紹介されていました。

群馬県渋川市道訓前遺跡出土 「深鉢形土器」
大きな土器です。上に取っ手のような輪が4つ付いていて、胴部側面には凹凸で模様が描かれています。これは4人が手を繋いだ姿を配置しているといわれているらしいですが、まったくそうは見えませんでした。 かなり手の込んだ土器であるのは確かでした。

最後にはイノシシの姿の土偶?などもあり可愛らしかったです。また、地下のミュージアムショップの前では5分程度の解説映像があり、土偶はわざと壊されているものもあると紹介されていました。身代わり説はここから来ているんでしょうね。


ということで、予想よりかなり楽しめる内容でした。こうして見ると縄文人の美的センス、発想力には驚かされるばかりです。発想に乏しい私は、すぐに宇宙人説に飛びつきたくなりましたw 何千年も経っているのに斬新に感じます。お勧めです。

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清方/Kiyokata ノスタルジア 2回目【サントリー美術館】

以前、サントリー美術館の「清方/Kiyokata ノスタルジア―名品でたどる 鏑木清方の美の世界―」をご紹介しましたが、また観てきました。全部で8回の入れ替えがあるのですが、特に前半4回と後半4回で入れ替えが大きく、趣旨は同じでも前回行った時とはかなり異なる内容でした。 …勿論今回も年間パスで入場しました。こういう模様替えの時に最も威力を発揮しますw

前回の記事はこちら

写真は使いまわしですみません(><)
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【展覧名】
清方/Kiyokata ノスタルジア―名品でたどる 鏑木清方の美の世界―

【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/09vol06/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2009年11月18日(水)~2010年1月11日(月・祝)
 ※8回の展示替えがあります。
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日18時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
細かい話は前回も書いたので、今回は単に気に入った作品をご紹介しようかと思います。素晴らしい作品が次々と現れる内容でした

今回も章の区切りをメモっていなかったのですが、構成は以下のようになっています。
<第一章 近代日本画家としての足跡>
<第二章 近世から近代へ-人物画の継承者としての清方>
<第三章 「市民の風懐に遊ぶ」-清方が生み出す回顧的風俗画>
<第四章 清方が親しんだ日本美術>
<第五章 清方の仕事-スケッチ、デザイン>


鏑木清方 「秋宵」
結婚した年に奥さんを元にして描いた作品。ハイカラな袴姿の女学生が洋風の柱を背にしてバイオリンを弾いています。その左薬指には指輪をつけていました。色白ですらっとした立ち姿が鏑木清方の作品らしい清清しい雰囲気でした。奥さんは自分が清方の作品に影響を与えるのを自覚していて、常に立ち居振る舞いに気をつけていたそうです。そうした奥さんをモデルにした作品は多々観られるようです。

鏑木清方 「朝涼」 ★こちらで観られます
緑の草原を背景に横向きで歩く着物の女性です。髪は三つ編みで、左手で髪を触りながら歩いているようです。足元には蓮の花も見られ、頭の上には薄く白い月が浮かんでいます。朝の散歩かな?清楚で生気を感じました。 これは金沢八景の別荘付近で歩く自分の娘を描いたそうで、この作品を描くことでスランプを脱することができたのだとか

鏑木清方 「遊女」
泉鏡花の「通夜物語」の遊女を描いているそうです。前回観た「妖魚」も泉鏡花に影響されて描かれた作品でしたが、これは「妖魚」と同じ場所に代わりに展示されていました。遊女が前のめりに火鉢にもたれかかり、少し見上げるようなポーズをしています。気だるい妖艶な雰囲気が漂い、顔からは憂いも感じます。少し口をあけているのは誰かと会話しているのかな。着物の鮮やかさも見所でした。

鏑木清方 「暮雲低迷」
風景画の屏風です。一時期風景画も描いていたようです。これは箱根の温泉宿を描いていて、周りにはモヤが立ち込めていてまるで仙境のようになっています。手前には桜の花が咲き、宿のベランダ?では着物の女性が外を眺めています。また宿の前では籠に乗って温泉宿に今まさに到着した客も描かれていました。実際にはこんなに盛り沢山な風景は無いとは思いますが、風景というよりはその場の人の動きなどが中心になっているようでした。清方は「人のいない風景画は死んでいるようだ」と言って、人が主役に見える風景画を描いたそうです。

鏑木清方 「松と梅」
2枚セットの大きな絵です。右には松を背景にした青い服の女性、左には梅を背景に赤い服の女性が描かれています。これらには寛永期などの風俗画の技法が用いられていると解説されていました。また、余白が大きく取られていたのが印象的でした。

鏑木清方 「江の島 箱根」
左右2枚セットの作品。右の作品は背景が海で江ノ島っぽいです。薄い橙色の着物が目を引く女性が描かれ、振り返るポーズで頭の上に傘、手にはキセルを持っています。それらから、生き生きとした動きを感じました。
左の作品は、両手で髪を触り、手ぬぐいを噛んでいる女性が描かれています。多分、風呂上りで髪を直しているのかな。ポーズが可愛かったです。

鏑木清方 「初冬の雨」
後ろを向いて傘を差した女性と、障子を開けて会話している女性が描かれています。足元にはサザンカが咲き、冬であることがうかがえます。また、家の中の女性は袖の中に手を入れていて寒さが伝わってくるようでした。なお、この障子を開けた座敷の中と戸外の人という構図は、鈴木春信の浮世絵によく出てくる構図らしいです。影響を受けているんですね。

懐月堂度辰「女形図」
今回も、影響を受けた先人の作品も参考展示されています。
これはよく観る機会がある懐月堂の作品。(多分、着物は別物だとは思いますが) カラフルで輪郭が太く、デフォルメされた感じの美人画です。曲線が多くて優美さがあります。

勝川春章 「花下の遊女」
これも参考展示です。群青色の内掛けを着た遊女とお付の禿が、足を止めてこちらに振り返っています。声をかけられたような感じでした。頭上には満開の桜も描かれ可憐な雰囲気の作品でした。

鏑木清方 「新年附録時代美人風俗雙六 (色刷付録『文藝倶樂部』第19 巻第1号)」
全体的に赤い色が多めの、美人画で作られたスゴロクです。玉藻の前があがりなのは分かりましたが、どういう順序で進むのか全然わからなかったw というかスゴロクっぽくなかったかも。 美人は歌舞伎を題材にしているらしく艶やかかつ華やかでした。

鏑木清方 「初冬の花」
障子を開けて足元のサザンカを見る美女が描かれています。山吹色で雪のような模様のついた着物を着ていて、着物の中に手を隠して寒そうでした。初々しい感じの作品です。

伝 尾形光琳 「秋草図屏風」
清方は琳派からも影響を受けていたので、尾形光琳作と伝わる屏風もありました。厚く盛り上がった白い花など秋の草花が描かれていました。少し色が落ち着いていて、見た感じ、私の持っている光琳の作品とはちょっとイメージと違っているように思えました(特に解説が無かったので私の勘ですw)


ここら辺で4Fは終わりで3Fへ。
3Fの最初には前回同様、東北新聞のコピー、製作過程、イーゼル、絵の具皿、団扇、雑誌の表紙、袱紗、風呂敷などがありました。遺愛品は変わっていないようですが、それ以外は前回と入れ替わっていました。


鏑木清方 「朝夕安居」
明治の頃の夏の日の夜を描いた絵ですが、実際には太平洋戦争の後に描かれた作品です。体を洗う女性や、ランプの手入れをする女性、夜の茶屋で星を眺める男性や、女性店員に声をかける男性など、当時の平和でのんびりした様子を描いています。平和の尊さ、何気ない日々の幸せを表現しているようでした。

鏑木清方 「保名」
この辺には扇形を貼り付けた掛け軸などが並んでいました。歌舞伎をテーマにしているようです。これは恋人を亡くし狂人となった男の話を描いたもので、昔の病人がする鉢巻のようなものを頭に巻き、仰ぎ見るようなポーズで描かれていました。悲しくも恐ろしさを感じます。

鏑木清方 「道成寺(山づくし)・鷺娘」
大きな屏風です。右隻は歌舞伎の道成寺の演目が主題で、胸に鼓を持って身をそらす女性が描かれています。緑のモミジ模様の着物が華やかですが妖しい雰囲気が漂います。(この女性は後に蛇に変化します。)
左隻はさぎ娘が主題で、町娘に化けた白鷺が描かれています。全身白い服と頭に白布をまとい清楚さがありました。清方はこうした変化物が特に好みの主題だったようです。

鏑木清方 「明治風俗十二ヶ月(七月~十二月)」
これは前回もご紹介した作品ですが、今度は7~12月が展示されていました。特に気に入ったのは8月と12月(何月か書かれていないので多分ですw) 8月は「氷」と描かれた暖簾の下で、着物の女性が氷をかんなで削っているように見えました。涼しげな装いと夏の雰囲気が爽やかでした。12月は雪の降る中、人力車から降りる女性と車夫(引く人)が描かれています。マスクのように口まで布で覆った女性を下ろそうと車夫は後ろ向きになっていますが、背中には雪が積もり始めていました。また、背景のガス灯の光もしんしんと降り続ける雪の静けさを感じさせるようでした。寒そうですが風情のある作品でした。

鏑木清方 「白雨」
白雨というのはにわか雨のことです。薄く透き通る緑の小袖を着た女性(中に青い小袖を着ているのが透けて見える)が雨戸を閉めようとしています。斜めに雨の様な線が入り、飛沫がはねているのがわかります。 女性のうなじ辺りには強風に煽られた簾が揺れているようで、簾越しにうなじが透けて見えます。透ける着物と透ける簾が重なっている部分もあり、その表現に驚きました。

水野年方 「婦有喜倶菜」
最後にも参考展示があります。これはドレスを着た女性達が描かれた浮世絵です。見た目は浮世絵なのにドレスを着ている…。洋の東西が混ざったような面白い絵でした。

ということで、今回もだいぶ満足しました。余裕があればもう一度行くかもしれません。妖魚などもう一度観たかったなあ…。もう半分しか見られませんが、きっちり押さえて後々まで覚えておきたい美術展です。


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糸あやつりの万華鏡 -結城座・375年の人形芝居- 【INAXギャラリー】

前回ご紹介したポーラミュージアムアネックスとは違う日に行ったのですが、すぐ近くのINAXギャラリーにも行ってきたので、銀座繋がりでご紹介。

写真がまともに撮れてなくてすみません(><)
P1100428.jpg


【展覧名】
 糸あやつりの万華鏡 -結城座・375年の人形芝居-

【公式サイト】
 http://www.inax.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_001519.html
 http://www.inax.co.jp/gallery/user_exh/w_0912youkiza.html

【会場】INAXギャラリー
【最寄】銀座線京橋駅 都営浅草線宝町
【会期】2009年12月3日(木)~2010年2月20日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
ここはいつも無料ですが、日曜日がお休みです。 今回は貸しきり状態で観ることができました。小さな展示スペースで、特に作品ごとに展示していたわけではないので、ざっくりと回顧します。

結城座は日本で最も古い演劇団体らしく、ベスト3に入る宝塚などと比べても突出して伝統があるそうで、今年で375年にもなるようです。私はその存在自体を知らなかったのでボードでの解説や上演の映像で概要を知ることができるのは有り難かったです。しかし、操り人形の動かし方などに興味が有ったので、そちらの説明も欲しかったかな。せっかく物語の人形が並んでいるのに、その人形達の役どころもよく理解できなかったのも残念。(分かる人には分かるんでしょうけど。)

まずは結城座の主役である操り人形のコーナーです。衣装を着た人形や、からくりがむき出しになった人形、頭だけの人形などが所狭しと並んでいました。時代劇だけかと思うとそうではなく、古今東西様々な人形がいました。中にはモヒカンの頭(ユピュ王の登場人物)とかもありましたw 平均的な操り人形は60cm程で、小さいものは5cm、大きいものでは2mにもなるそうです。また、操り人形の作り方というコーナーもあり、人形の頭は取り外し可能で、取替えできると説明されていました。こうした人形は古典劇では使いまわすようですが、新しい作品では外部のデザイナーがデザインを描き、それを元に一座の人たちが紙で作っているようです。その頭の中は空洞になっているのだとか。昔は桐で作っていたみたいなので、だいぶ軽量化されてきているのかもしれません。そこから伸びる糸は基本的に17本、少ないのは1本、多くて50本あるようで、まるで人間のような滑らかな動きをする映像がありました。それにしても、人形達の表情はちょっと誇張されたようですが愛嬌のある顔をしていました。(私はからくり人形をあまり知らなかったのでからくりサーカスの漫画を思い出しましたw)
奥のほうでは実際に人形劇をやっている映像を流していて、ハイライト的なシーンを集めているようでした。

ということで、この劇団の存在を知らなかったですが、それなりに楽しむことができました。好きな人にとっては特に面白く感じるのかもしれません。また、隣の展示室では「松岡圭介 -蠢くひとがた-展」(すでに終了)と「福本 歩 展 -フクモ陶器 晩餐会-」(すでに終了)も観てきました。 今は別の展示になっていると思いますが、別の部屋もセットで楽しめますので、機会があったら寄ってみてください。


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Brilliant Noel -輝きのガラス- 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

先日、日曜日の夜にポーラミュージアム アネックスへ「Brilliant Noel -輝きのガラス-」を観にいってきました。この時間は空いているようで、お客さんは私しかいない貸しきり状態で観ることが出来ました。

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【展覧名】
 Brilliant Noel -輝きのガラス-

【公式サイト】
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/detail.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス (POLA MUSEUM ANNEX)
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅
【会期】12月5日~12月27日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日19時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前回の「Blank Space」でシアター風になっていた部屋も元のギャラリー風に戻っていました。素早い…。 今回も15分くらいで回れるくらいの規模ですが、これだけの内容で無料というのが嬉しい限りです。簡単にいくつかご紹介。

田中 香菜 「Woman in Light---Guadalupe」 ★こちらで観られます
入口付近にある作品。地面にある鏡の上に色つきの小さい物が敷き詰められ、そこに当たった光が反射して聖母のような女性が壁に映っています。クリスマスで盛り上がる今の時期に相応しい、神秘的で煌びやかな作品でした。心温まります。

エミール・ガレ 「雪景文花器」 ★こちらで観られます
松に積もる雪と根元にいる鷹?が描かれた花器。白く柔らかな雪が積もる様子が日本風な感じでした。

ドーム兄弟 「雪景文花器」
ガレと同じ名前の作品ですが、こちらはドーム兄弟の作品。大きな花器で、雪で白くなった木々と、それに群がるカラスが描かれています。雪の白とからすの黒が対照的でした。
この辺りにはアラベスクのような模様の作品もありました。

「江戸切子 八目籠目文 菊繋ぎ文」
クリスタルガラスの江戸切子です。中から光を照らして展覧方法も綺麗でした。

田中 香菜 「Rejuvenation」 ★こちらで観られます
会場の真ん中に、上からガラス玉を吊るしたような作品がありました。観る角度によっては単に沢山ガラス玉を吊るしているだけに見えますが、展覧会の入口方面から奥に向けて、人の形のトンネルのようになっていました。入口の作品と同じ人が作ったようですが、これも温かみのある清らかな雰囲気でした。

三代目秀石・堀口徹 「雪どけ」
大きな皿です。円と六角形の模様が雪の結晶のようでした。この人の作品もいくつかありましたがいずれも洗練されたデザインで素晴らしかったです。

ということで、いつもながら無料なのにレベルの高い内容でした。これまた会期が短いのが残念なくらいです。もうすぐ終わってしまいますが、銀座に出かける機会があったらお勧めです。


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天空のクリスマス『スカイ・イルミネーション2009』  【TOKYO CITY VIEW】

「ヴァン クリーフ&アーペル展」「医学と芸術展」を観た後、東京シティビューで開催中の天空のクリスマス『スカイ・イルミネーション2009』も観てきました。これは毎年行われているイルミネーションで、今年はフラワーアーティストのニコライ・バーグマン氏のフラワーデザインが観られる内容でした。
写真を撮ってきたので、それを使ってご紹介。(※載せてはまずいものがありましたら、すぐに掲載を下げますのでご連絡ください)
公式サイト:http://www.roppongihills.com/feature/sky-illumination2009/

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まずはいつもどおり夜景を撮ったのですが、ボケていてすみません。
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フラワー・キュービック・ツリーという作品。四角いボックスでできたツリーです。ハート型のオブジェもありました。
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随所に作品が置かれています。
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壁にも作品。
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ちょっとグロく写っているかもw 現代アートみたいです。
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クリスマスのせいか赤色の作品が多めでした。
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再び夜景。ちょっと左側が反射してしまっています…。スカイデッキにでれば良かったのですが、寒いので屋内で我慢ですw
Lumixを使って撮った、一般の方々の写真展も開催されていました。
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この青いツリーも作品なのかな? 
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右の作品は静物画のような写真が撮れたw
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東京シティビューの中にあるバー。お洒落な雰囲気で作品も近くにありました。
こんな感じであちこちにフラワーデザインがあり、夜景と共に楽しめました。
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おまけ:六本木ヒルズ地上階~六本木駅周辺のイルミネーション。
左の写真はこの日一番自分で気に入ったかもw
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いつもよく観る蜘蛛もイルミネーションで闇として浮かびあがるようでした。
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ということで、中々お洒落な雰囲気になっていました。今、クリスマス前で特に盛り上がりをみせていて、音楽ライブのイベントなどもやっているようですので、興味のある方は公式サイトで確認してみてください。


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医学と芸術展:生命(いのち)と愛の未来を探る 【森美術館】

森アーツセンターギャラリーで「ヴァン クリーフ&アーペル ザ スピリット オブ ビューティー展」を観た後、階上の森美術館に移動し、「医学と芸術展:生命(いのち)と愛の未来を探る」を観てきました。 前回書き忘れていましたが、「ヴァン クリーフ&アーペル展」「医学と芸術展」、そして東京シティビューの3つの入場券のセットが2000円とお得な価格になっていました。

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【展覧名】
医学と芸術展:生命(いのち)と愛の未来を探る

【公式サイト】
 http://www.mori.art.museum/contents/medicine/index.html

【会場】森美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2009年11月28日(土)~2010年2月28日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時30頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この展覧はその名の通り、医学や人体をテーマにした内容で、古今東西の様々な美術品がテーマに沿って展示されていました。ルネサンスから現代まで、時代も地域もバラバラでかなり広範囲な内容となっていますので、そこに繋がりや流れを感じようとするのは難しいかもしれません。(少し散発的な気もします。) テーマも大雑把なので、無料で貸してくれる解説機を借りたほうが細かい解説で理解は深まると思います。 ・・・とはいえ、何じゃこれ!?という驚きに満ちた内容で、特に知識が無くても楽しめる妙なものも多かったので、細かいことは気にしなくても良いかも知れません。とりあえず気に入った作品を通じてご紹介しようかと思います。

<第一部 身体の発見> ★展示風景 その1 その2 その3
このコーナーは身体の科学的/美的探究の歴史を振り返るコーナーでした。

ジャック=ファビアン・ゴーティエ・ダゴティ
右:「横からみた妊婦解剖図」 左」「切開された赤ん坊を抱く女性の解剖図」
上記の展示風景その2に写っている1760年代の2枚の縦長の絵です。
右の絵は、横向きの裸婦が子供を抱いている絵ですが、母親のおなかは破れたように内臓まで見えいます。子供も肉がむき出しになってるのが怖い…。
左の絵は、踊るように手を上げる裸婦が描かれ、おなかには子供が宿っているのが透けて見えます。これも筋肉まで透けて見えるのが理科室の解剖人間みたいでした。また、胎児が上向きになってたりするのが違和感を感じたのですが、これは正確な描写ではないようです。しかし18世紀当時は珍しいということで人気を博したのだとか。裸婦の足元に沢山いる内臓むき出しの子供など不気味な雰囲気もありました。

白宜洛(パイ・イールオ) 「リサイクル」 ★こちらで観られます
リアカーと巨大な心臓の模型を使った2009年作の現代アートです。周りには新聞や空き缶が転がっていています。これは臓器の売買なども思わせる「リサイクル」をテーマにしているようでした。先ほどの17世紀作品と同じ部屋にあるのですが、何の脈絡も無く面食らいました。こんな感じの取り合わせが最後まで続きますw

レオナルド・ダ・ヴィンチ 「頭蓋骨の習作」 ★こちらで観られます(下の中央あたりです)
何とレオナルド・ダ・ヴィンチの作品も3点ありました。いずれも1500年前後に描かれた人体のスケッチで、エリザベス女王のコレクションだそうです。スケッチとはいえダ・ヴィンチの作品を観るのは2~3年ぶりかな。(ちなみにミケランジェロの素描もあります)
この作品は2つの頭蓋骨が上下に描かれています。上は横向きの骸骨に四角が描かれ、下はそこを切除した後の絵となっています。ダ・ヴィンチは人体を知ることは宇宙を知ることと考えていたらしく、超精密な描写と細かいメモを取って観察しているのが伺えました。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 「脳室」
雄牛の脳の解剖図です。脳室に蝋を流し込み、固めてから開いたようです。脳室の関係を明らかにするために描かれていて、これも精密な描写で細かく描かれていました。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 「肝臓の血管」
これも毛細血管まで描かれていそうな精密なスケッチです。ダ・ヴィンチはこれを「血管の木」と呼んでいたそうです。画家の才能を持ちつつ科学的な医師のような才能ももつマルチぶりがよくわかる作品でした。

円山応挙 「波上白骨座禅図」 ★こちらで観られます
1780年代の作品。ここら辺まで来ると、ダ・ヴィンチの後に応挙という取り合わせのぶっ飛び具合にもそろそろ慣れてきましたw これは海原の上に浮かぶように座禅をする白骨が描かれています。会場でもただならぬ存在感を持っていました。白骨の下にある波は、人の煩悩を表し、座禅で押さえ込もうとしているのだろうか?という解説もありました。なお、応挙は西洋の解剖も学んでいたそうです。

河鍋暁斎 「骸骨図」
流れるような筆遣いで1871年に描かれた2枚の掛け軸です。これは即興で描かれたものらしく、かなり簡素に描かれていますが、男女の骨の違いを書き分けているとのことです。余白には精子と卵子を思わせる記号的なものもあり、明治初期の河鍋暁斎が西洋医学に長けていたことが伺える作品でした。

この辺りには象牙の人体模型が沢山ありました。取り外すとおなかの部分が開き、理科室の解剖人形みたいな感じです。特に妊娠した女性の模型が多かったかな。 また、チベットなどの人体の観念図などもあり、様々な人体観が楽しめます。正確なものもあれば、そうでないのもあり、カオスな展覧コーナーですw

黒田清輝 「レンブラント・ファン・レイン作『トゥルプ博士の解剖講義』模写」
レンブラントの作品を模写した黒田清輝の1888年作品で、遠目からレンブラントっぽいと思いました。(流石に近寄るとちょっと違う気がします) この絵は黒い広つば帽の男性が死体の腕を器具でつまみ上げて、7人の男性達に講義をしている様子が描かれています。17世紀当時はこうした解剖が大学で行われ、市民も一種のエンターテインメントとして見物していたそうで、「解剖学シアター」とも言える存在だったようです。この絵の周りでもそうした様子が描かれた作品がいくつかありました。ちょっと怖いですが、こうした背景もあり当時のオランダ医学は進んでいたのだろうなと思いながら観ていました。

グンター・フォン・ハーゲンス 「頭から脊柱までの人体切断片」
2006年くらいに作られた現代アートです。以前、この美術館でデミアン・ハーストの輪切りになった牛を見たことがありますが、これは縦に薄く輪切りになった人間です。本物かどうか解説はなかったですが、このリアルさは本物だと思います。少し小柄な感じで、樹脂によって固定されているようでした。んー、本物だとしたら倫理上の問題とか大丈夫だったのか心配になりました。


<第二部 病と死との戦い> ★展示風景
このコーナーは先ほどの人体中心のコーナーと少し違い、医学や老いへの抵抗が中心となっているコーナーのようでした。

アーネスト・ボード 「歯科手術で初めてのエーテル使用」
歯医者が麻酔のエーテルを患者に嗅がせているシーンを描いた絵です。この作品は1846年の作品ですが、この頃には麻酔が使われていたようで、痛み無しで手術が可能となっていたようです。医学の進歩を感じる作品でした。

狩野一信 「五百羅漢図 第59幅 神通」
1854年の作品。おどろおどろしい雰囲気の羅漢の掛け軸で、全部で100幅あるうちの1幅らしいです。集まった羅漢が怪我人や病人に処方箋を書いている様子をが描かれているようです。羅漢も医者のような処方箋を書いているのがちょっと現実味を感じます。

デミアン・ハースト 「外科手術(マイア)」 ★こちらで観られます
2007年の作品で絶対に写真だと思ったら絵でした。近くで何度観ても写真に見えるほど写実的です。この絵は作者のパートナー(奥さん?)の帝王切開の手術の様子を描いていて、チューブの中を赤い血が流れる様子など緊迫感のある絵でした。デミアン・ハーストといえば、この美術館で観た「母と子、分断されて」(輪切りの牛の親子)のイメージが強いですが、これだけ写実的な絵がかけるとは知りませんでした。


この辺は様々な医療器具が並んでいました。薬瓶、義手、義足、義眼、注射器、切断用のこぎりなどの手術道具、巨大な人工呼吸器、電気治療器具、果ては貞操帯やマスターベーション防止器なんてものまでありましたw また、メメント・モリ(汝、死ぬことを忘るることなかれ)をテーマにした作品が多いのも特徴でした。

アルヴィン・ザフラ 「どこからでもない議論」
2000年に作られた横長の抽象画のような作品ですが、これは板の上に貼られたサンドペーパーで骸骨をすり潰すまで削って描いたものらしいです。何てことを…と思いましたが、こうして作品として生き続けているのかもしれません。

スージー・フリーマン&リズ・リー 「記念日」
2000年に作られた、6500個もの経口避妊薬を縫い付けて作られたウェディングドレス。計算すると25年分もの量らしいです。これから家庭を作っていくはずの女性に避妊薬というブラックジョークみたいな作品ですが、家族計画を考えさせるような面もあるようでした。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「ポール・ガシェ医師の肖像」
1890年の作品で、ゴッホの生涯唯一の銅板画です。描かれている医師は最晩年の主治医らしく、パイプをくわえ温厚そうな顔をしています。白黒でもゴッホとわかる独特の筆致が印象的でした、ゴッホは最後は孤独の内に自殺しますが、この絵は意外と親しげな雰囲気を持っているように思えました。(いい作品ですが、この展覧会の主題とは医師って点しか接点がないような気がw)

ヴェルター・シェルス 「ライフ・ビフォア・デス」
2003~2005年頃に撮られた、左右一対の白黒の大きな写真です。全部で26対あるようですが、ここでは4対が展示されていました。その中で1対ピックアップして紹介すると、左は温和な老いた男性がこちらを見ている写真、右は目を閉じて眠っているような写真です。実はこの右の写真は、左の写真を撮った1ヵ月後に男性が死に、その直後に撮られた写真だということでした。これらは本人や家族の了承を得て撮られているらしく、死は終わりではないと信じている人など、死に際しての考えや意味を問いかけるような作品でした。皆一様に穏やかな死に顔だったのが心に残ります。


<第三部 永遠の生と愛に向かって>
最後のコーナーは現代医学・科学から得たインスピレーションをアートにした作品が主に成っていました。

ジル・バルビエ 「老人ホーム」 ★こちらで観られます
2002年の作品。歩行器をつけたスーパーマンや、点滴を受けて横たわるキャプテンアメリカなど、老いたアメコミヒーロー達の実物大の蝋人形です。若くて強い彼らもいずれは老いや死を迎えることから逃げられないというのを、ユーモアをもって皮肉っていると解説されていました。単純に何だこれ!?って面白さがあります。

パトリシア・ピッチニーニ 「ゲーム・ボーイズ・アドヴァンス」 ★こちらで観られます
2002年の作品。壁でゲームボーイ(今ならDSかな)で遊んでいる子供が2人いるぞ?と思ったら作品でした。普通に服を着ていて完全に会場に溶け込んでいますw しかし顔を観ると子供なのに老人のような顔で、皺があり白髪交じりと解説されていました(白髪はないように思うけど…) これはクローン羊のドリーからインスピレーションを受けた作品で、クローンはオリジナルの細胞の年齢で生まれる(最初から老いている)というのを表現したそうです。 未来にはこういう事態もありえるのかな? 薄気味悪いです。

イ・ビョンホ 「ヴァニタス胸像」
2009年の作品です。胸像の顔の部分がゴムのようになっていて、時間と共に空気が入ったり抜けていきます。それが人物の年が老いたり若くなったりするように見えました。こうして見ると弛みが老いて見える一番の原因なのかな。

野村仁 「tRNA+チトクロームC又は双胴の鳥」
1992年の作品です。これは野村仁展でも似たような作品を観たことがあるかも。作品の近くに寄るとコンピューターの声でtRNAの4つの塩基の名前を読み上げます。tRNAの組み合わさった様子が双胴の鳥のように見えるということで、このタイトルになったようでした。流石、科学とアートの融合といえばこの方の得意な分野ではないでしょうか。

ロナ・ポンディック 「クリムソン・クイーン・メイプル(しだれモミジ)」 ★こちらで観られます
2003年に作られた、銀色の木の模型です。綺麗だなと思ってよく観てみると、人の顔のような果実?が付いています。これは作者の顔で、クローン技術と生命の樹をモチーフにしているようです。ちょっと不気味ですが意味深でした。


最後には今回の展示にもあった義手や人体模型を使った映像作品もありました。


ということで、面白くて色々とカオスな内容でした。時代や国を飛び越えても、共通して人体に関心を寄せるのは当然といえば当然かもしれません。その表現やアプローチの違いが多様に垣間見れる展示でした。ヴァン クリーフ&アーペル展と合わせてお勧めです。


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21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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■2012/1/27
NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
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■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
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■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

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