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ベルヴェデーレ 【川村記念美術館のお店】

先週の土曜日に千葉県佐倉の川村記念美術館まで行って「マリー・ローランサンの扇」展を観てきました。上野から京成電鉄で京成佐倉、そこから送迎バスに乗って行くルートで、ちょうどお昼頃に美術館に着きました。展覧を観る前にまずはレストランで昼食を食べることにして、バス停を降りてすぐのレストラン「ベルヴェデーレ」に行ってきました。
ここは以前もご紹介したのですが、飲食店テンプレートで書いていなかった頃なので改めてご紹介します。
 参考記事:川村記念美術館の案内

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【店名】
 ベルヴェデーレ

【ジャンル】
 レストラン/カフェ

【公式サイト】
 http://kawamura-museum.dic.co.jp/shop_restaurant/restaurant.html
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 JR佐倉駅 または 京成佐倉駅

【近くの美術館】
 川村記念美術館の敷地内です

【この日にかかった1人の費用】(※お酒は飲んでいません)
 1200~1600円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日12時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
このレストランは美術館の敷地内にあるのですが、目の前に池が見える展望で食事することができました。(席によっては見えないです) 店内の雰囲気も良く、この写真は人を避けて撮っていますが半分くらいの席が埋まっているくらいの混み具合でした。
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私はランチプレート1200円を頼みました。
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この日はかさご(白身魚)のフリット、ミートボールの玉葱スープ、サラダ、マカロニ、パンのセットで、特に白身魚とミートボールが美味しかった! 多分、時期によってメニューは変わりそうですが、去年行ったときも美味しかったので、ここは何でも美味しいのかも。

連れはパスタセット1600円を頼んでいました。まずは季節の野菜サラダ。
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パスタは5種類の中から選びます。これは春キャベツのアンチョビ風味のタリオリーニ。少し貰って食べたら、湯で加減がよくキャベツの甘さもあって美味しかったです。
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パスタセットのデザート。
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食後のコーヒー。連れは紅茶。コーヒーも言うことなしです。
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ということで、美術館のレストランは美味しい店が多いという自論がまたも証明されてしまいましたw 美術品を観る前に美味しい食事をしながら美しい風景を見る。週末はこうありたいという理想的なランチでした。この後、少し敷地内を散歩してから美術館へ向かいました。

おまけ。この池に面したあたりの席でした。
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藤田嗣治-東京・ニューヨーク・パリ 【目黒区美術館】

前回の記事でご紹介したベルナール・ビュフェ展を観た後、同時開催されていた「藤田嗣治-東京・ニューヨーク・パリ」展も一緒に観てきました。こちらは1部屋のみの展示でした。

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【展覧名】
 藤田嗣治-東京・ニューヨーク・パリ

【公式サイト】
 http://www.mmat.jp/event/buffet/press.htm (ビュフェ展と共用みたいです)

【会場】目黒区美術館
【最寄】JR・東京メトロ 目黒駅
【会期】2010/02/11(木・祝) ~04/11(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
こちらも空いていて、のんびり観ることが出来ました。この展示は、GHQの関係で来日したフランク・シャーマン氏の「シャーマン・コレクション」(目黒区美術館所蔵)の中の絵手紙や絵葉書などが中心の展覧でした。油彩はわずかで、リストでは葉書などを含めて100点ほどありますが、そんなにあったかな?というくらいあっさり観ることができます。藤田については何度か個展を観ていますが、これは回顧展というよりは目黒美術館の所蔵コレクション展といった感じでした。

いつもどおり気に入った作品などをさらっとご紹介します。説明が少なかったので簡単な感想のみです。
 参考記事;よみがえる幻の壁画たち レオナール・フジタ展 (そごう美術館)

「動物群」
兎、鳥、狐、犬、鼠などが右から左へと走っていく様子が描かれた油彩画。1924年の作品のようですが藤田っぽさをあまり感じませんでした。

「裸婦」
リトグラフのコーナーがあり、これもモノクロのリトグラフです。手を胸に当てる裸婦が描かれていて、こちらは藤田らしい線の細い描写で描かれていました。

「裸婦と猫」
エッチングです。ベッドで寝る裸婦の上半身と、横で寝る猫が描かれています。藤田作品に欠かせない裸婦と猫の両方が出てきましたw 猫の安らかな顔や、肉球などが可愛らしい^^ この絵の隣には猫の親子の絵もありました。

「静物(インク壷)」
机の上に手紙が散りばり、その上にインク壷や鉛筆、万年筆、ハサミ、マッチ、鍵、磁石とそれにくっついたピンなどが描かれています。手紙を差し出す手が浮いてるように見えました。ちょっと謎ですw このインク壷も他の絵で見覚えがあるかな。

「人形を持った少女」
1951年の作品で、後期の藤田らしい作品です。手に南米風の人形を持った女の子が描かれ、あどけないけれども目に知性を感じました。

「レスリング」
これは去年・一昨年に開催されたレオナール・フジタ展で観た「闘争」を想起するような素描でした。かなり変色していてわかりづらかったですが、裸でレスリングをしている2人の男たちの筋肉がしなやかでした。

「ポスター 時代の証人・画家展(ガリエラ美術館)」
3美神のような女性が描かれたポスターです。これも以前観た「花の洗礼」に似ている気がしました。


部屋の一角には手紙のコーナーがありました。実に様々な絵が描かれ、そのお茶目な人柄が垣間見れる手紙でした。大きな磁石で飛行機を引き寄せる絵や、福助のような顔の半分が眼鏡のキャラクターの絵といったユーモラスなものから、ご飯を食べたり、アイロンをかけたり、絵を描いたりと日常の風景までも描かれています。
これらはフランク・シャーマンに宛てた手紙で、細かい文字で書かれていました。見たところ英語かな。フランス語じゃないのが意外だった。また、日本人に宛てた日本語の絵葉書もあり、「1万枚くらい描けば上手くなるよ」と書いてあったりしましたw 1万枚って…w


また、近くには遺品のトランクやテーブルなども展示されていました。

「円形テーブル」
テーブルの表面に、トランプや眼鏡、ハサミ、パイプ、懐中電灯などが描かれています。騙し絵的な遊び心を感じます。それにしても本当に藤田は器用な人のようで、絵画以外でも色々あります。

「鯰と蛙の図」
水墨画のような小さな屏風です。なまずと2匹の蛙がコミカルにかかれています。特にとぼけた顔のなまずが可愛かったです。 隣にはスイカの掛け軸など、和風の作品が並んでいました。

「眼」
眼というか、日食(月食?)を描いたものです。ちょっとかけた太陽から放射状に光が延びている様子が描かれていました。

「エッフェル塔(皿)」
陶器のコーナーもありました。気に入ったのは丸い皿にエッフェル塔が描かれた作品ですが、他にもアダムとイブの皿や、洋服をきてパイプを吸う猫が描かれた作品などもありました。この辺は遊び心が感じられる作品が多かったかな。近くには木の玩具なんかもあったし。


ということで、藤田をあまり知らない人が観たら楽しめるかわかりませんが、藤田をよく知る人が観れば人柄などがより深く理解できるような内容だったと思います。ビュフェ展とセットと考えれば中々楽しめました。


おまけ:美術館の前で咲いていた椿
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ベルナール・ビュフェ展 【目黒区美術館】

目黒駅前でブュッフェランチを済ました後、目黒区美術館に行って、「ベルナール・ビュフェ展」を観てきました。ブュッフェに行った後にビュフェを観た!って駄洒落みたいなルートですw 更に言えばこの日は寒い雨の日で、ビュフェの作風のような雰囲気の天気でした。

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【展覧名】
 ベルナール・ビュフェ展 『木を植えた男』の著者ジャン・ジオノとの出会い

【公式サイト】
 http://www.mmat.jp/event/buffet/press.htm

【会場】目黒区美術館
【最寄】JR・東京メトロ 目黒駅


【会期】2010/02/11(木・祝) ~04/11(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
作品点数があまり多くないので、作品充実度は普通にしていますが、全て静岡県のベルナール・ビュッフェ美術館の所蔵品で、好みの作品も結構あって満足度は高めでした。去年そごう美術館でやってたビュフェ展を逃しただけに、今回は逃せなかったw
 参考リンク:
   ベルナール・ビュフェ美術館
   ビュフェとアナベル-愛と美の軌跡展 (於そごう美術館 2009年7月29日~8月31日)

寒い雨の日だったこともあるせいか、空いていてゆっくり観ることが出来ました。会場はいくつかのブースに分かれていて、テーマごとに作品が並び、年代ごとの変遷とかはよくわかりません。 とりあえず、観た順に気に入った作品をいくつかご紹介しようと思います。(全体的に解説などは少なかったので、観た感想のみとなります。) 

冒頭にビュフェの生い立ちと今回の展示について簡単な説明がありました。ビュフェは1928年のパリ生まれで、第二次世界大戦中はドイツの占領下で絵を学んだようです。(そのせいか、当時の世相を反映したような不安を感じるような作風に思います)戦後にアンデパンダン展やサロン・ドートンヌに出品し、19歳の時に批評家賞を受賞しました。22歳の時、『木を植えた男』の原作者のジャン・ジオノと出会い、その後『純粋の探求』に挿絵を21点つけるなどの交流があったようです。その出会いが今回のサブタイトルとなっていて、作品も展示されています。勿論、他にも初期の作品から並んでいるようでした。

<アトリエと肖像>
「アトリエ」
灰色がかった室内の風景です。中では細長い顔の自分?が絵を描いています。平面的でちょっとキュビスム風かなと思いました。

「自画像」
全裸で靴下を履こうとしている自画像です。細く角ばった体で、直線的かつ平面的なベッドや床の描写が独特でした。

「化粧台」
全裸の女性が窓際で白い椅子に座り髪を結おうとしているところです。机や洗面器、鏡など簡素化されシンプルな感じです。女性の顔は悩みでもありそうな憂いのある顔になっていました。

「裸婦」
後ろ向きで腰に手を当てて立つ裸婦です。すらっと長く細い胴体で、藤田嗣治の作品のような白の色使いと相まって美しいです。背景の部屋と裸婦の肌の色が同じようで微妙に違う色使いで細やかでした。

<神と人>
「戦争の惨禍」
メモを間違えてタイトルは間違っているかも…。高射砲のようなものと、仰向けになって死んでいる3人の裸の男達が描かれています。背景は夕暮れ時の廃墟のようです。非常に暗く陰鬱な印象の作品でした。また、この作品の隣にも街の中のバリケードの前で仰向けになって死んでいる裸の男性と夕陽が描かれていました。戦争後の悲惨さを淡々と語っているようでした。

「キリストの十字架からの降架」
結構大きな作品です。磔になった人と、血だらけで運ばれる3人が描かれています。運ぶ人は近代風の格好で、前には抱き合う男女などもいます。拷問の跡のようなむごい感じです。タイトルからすると神聖な場面っぽいですが、ちょっと怖かった。

<風景>
「波」
油彩だけど水墨画のような作品で、灰色と黒の濃淡で描かれています。どこから海と空が分かれているか大体はわかるけれどおぼろげです。白い波しぶきや黒い水面などが嵐の夜のようでした。

「ナンスの農場」
広い野原にぽつんと家が建っています。灰色の空、灰色の野原、黒い木々… モノトーンで寂しい雰囲気の絵でした。

「風景」 ★こちらで観られます
曇った空の下、奥に向かって延びる道とその沿線の電信柱が目をひきます。向こうには家々が見え、右側には何も無い野原がひろがっています。この作品も農村の寂しさが漂いますが、電柱や杭が等間隔に規則正しくならび、垂直の電柱、水平の杭と地平線、斜めに走る道など、幾何学的な要素も感じました。

<静物>
「黒いダリア」
テーブルの上に置かれた花瓶に、真っ黒な花が描かれています。影のようでダリアなのかは不明ですが、真っ黒な花は中々にインパクトがありますw また、直角のテーブルや格子状に無数の線がひかれた背景など、この作品にも幾何学的なものがありました。

「赤い鳥」
241×282cmもある大きな作品です。巨大な赤い鳥の横で、仰向けの裸婦が、肘で顔を隠し右足をあげて性器をむき出しにしています。背景は縦横に線が入り、木彫り彫刻の彫り跡ような表現になっていました。近寄るとかなりの絵の具の厚みがあり、強烈な印象が残りました。

「コンロのある静物(表)」 「アイロンのある静物(裏)」
裏表に同じような絵が描かれています。白いテーブルの上にコンロ?とフォーク、スプーン、アイロンが描かれていて、キュビスム的な要素を感じました。

「二羽のひな鶏」
黒い机の上に乗った2羽の鳥の絵です。4本の指が長くちょっと怖いw テーブルの上にはナイフとフォークが於かれ、無数の引っかき傷のようなものもありました。食べるのかなw

<サーカスと道化>
「サーカス」
壁画のように巨大な作品。馬と、その上に乗り傘を持って帽子を被る女性が描かれています。腹が出て中年のおばさんみたいな…。周りには尖がり帽子の3人の男もいたのですが、みんな嫌そうな顔をしているように見えましたw どういうシーンなのか気になります。

最後の部屋はビュフェとジャン・ジオノの共作『純粋の探求』とジオノの『木を植えた男』のコーナーで、実際に本もおかれていました。(短編なのでちょっと時間があれば読破できそう) なお、『木を植えた男』は戦時中には反戦的であるとして出版できなかったそうです。

「挿画本『純粋の探求』より」
21枚あったのですが、気に入ったのは農村の風景で、ピラミッドのような山や真っ直ぐな直線的な畑など幾何学的に単純化された風景画でした。他には静物画や街の風景などが多かったです。


ということで、寂しさ、惨さ、荒廃…などの言葉が浮かぶ展覧会でした。しかし、いずれの作品も静けさがあり、淡々とした空気が流れていたように思います。こういう画家は珍しいと思いますので、だいぶ楽しめました。

この後、隣の部屋で同時開催の「藤田嗣治-東京・ニューヨーク・パリ」も観てきました。次回ご紹介しようと思います。 

 ⇒ こちらに書きました。



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PLATES & E.A.T 【目黒界隈のお店】

前回の記事でご紹介した恵比寿の山種美術館を観た後、電車で目黒に移動して目黒区美術館にハシゴしたのですが、その前に目黒駅周辺で食事をすることに。駅ビルのアトレ(南北線の方)の中にある「PLATES & E.A.T」というイタリアンのお店に行ってきました。

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【店名】
 PLATES & E.A.T

【ジャンル】
 イタリアン

【公式サイト】
 ホットペッパーの紹介ページ
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 JR・東京メトロ 目黒駅

【近くの美術館】
 目黒区美術館

【この日にかかった1人の費用】
 1300円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_③_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
何故、このお店に惹かれたかというと、ここにはブュッフェ(要はバイキング)があるためです。・・・バイキング好きとしては挑まねばなるまいw

この日、私はパスタorピザとブュッフェのBセット(1300円)を頼みました。
早速、ブュッフェへ。こんな感じでそれなりに種類があります。これだけでお腹一杯になるのではw
P1110758.jpg P1110759.jpg

盛って来ました。肉料理が結構あったので目移りして肉肉しい皿になってしまったw お味も中々で、この値段ならブュッフェとパンだけでも満足できます。
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連れはこんな感じ。勿論、飲み物も飲み放題です。
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ブュッフェの品を食べている間に、セットのピザ(日替わり)が来ました。このピザもまた美味しかった。
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連れはパスタのセット。どれも美味しいです。
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この後、2回くらいちょこちょことサラダなども取りに行ってお腹も一杯になりました。

最期にデザート。このデザートも美味しくてまたいくつも食べてしまったw
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ということで、この値段でこれだけ食べて味も良いと、満足度の高いお店でした。庭園美術館や松岡美術館とはちょっと離れてるかなと思いますが、目黒区美術館に行く際には最適かもしれません。また近いうちに行こうと思います。

この後、目黒区美術館に行ってきました。次回ご紹介しようと思います。


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この記事とは全く関係ありませんが、このブログもようやく1年くらいが経ちました。1年くらいというのは始めた日を正確に覚えていないからです。自分でも意外とマメに続いたかなと思います。これからも細々と続けていこうと思いますのでよろしくお願いします。


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大観と栖鳳-東西の日本画 【山種美術館】

10日ほど前の日曜日に降りしきる雨の中、山種美術館に行って、「大観と栖鳳-東西の日本画」展を観てきました。

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【展覧名】
開館記念特別展Ⅲ 大観と栖鳳-東西の日本画

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.or.jp/exh_current.html
 http://www.yamatane-museum.or.jp/doc/outline_100206_japanese.pdf (pdf)

【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅
【会期】2010年2月6日(土)~3月28日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日11時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この展覧会の1つ前の東山魁夷展の時は空いていましたが、この展覧会は寒い雨にも関わらず結構人がきていました。とは言え混んでいるというわけでもなく、自分のペースで観ることが出来ました。この展覧会は2つの章に分かれている構成で、横山大観と竹内栖鳳(たけうちせいほう)の2人を主にしています。また、その弟子達などの作品も含めて展示されていました。
今回も章ごとに気に入った作品をご紹介しようかと思います。

<第1章:横山大観と東京画壇>
まずは大観の章です。大観の作品はこのブログでもちょくちょく出てきますが、その生涯をご紹介したことはないかも。良い機会なのでさらっと要約すると、大観は東京藝術大学の1期生で、岡倉天心や橋本雅邦の薫陶を受けました。(同期生には菱田春草や下村観山もいるという凄い面子です。)その後、東京美術学校の助教授に就いたりしたようですが、内部のごたごたで辞めてしまい、下村観山らと日本美術院の創立に参加します。そして大観らは伝統を継承しつつも西洋画の画法を取り入れるなど革新的な技法に挑戦していきました。
この章ではそうした大観の挑戦や、東京画壇/官展系の画家の作品が展示されていました。

横山大観 「心神」
雲の上の富士山の頂上を描いた絵です。タイトルの心神というのは富士山のことで、大観の魂とも言える題材かもしれません。富士山を愛していたのがよく分かる作品でした。

菱田春草 「釣帰」
川で小舟に乗る人々が描かれていて、全体的にぼや~っと霞んだ雰囲気が出ています。これは当時「朦朧体」と呼ばれ、かなり批判されたようです(大観も線描を抑えた没線描法の朦朧体を用いています) 微妙な空気感があって叙情的に思いますが、当時の人にはぼんやりしてはっきりしないと思われたのかな。芸術の観方というのも時代とともに移り変わって面白いものです。

小林古径 「清姫のうち 日高川」 ★概要のpdfで観られます
十二単の女性が左手を前にかざし、長い髪を風になびかせているようです。服も風ではだけ、筆の流れを感じます。目の前には暗い川?が流れちょっと不吉な感じに思いました。これは道成寺の登場人物の清姫らしいです。怖いわけだw
 安珍・清姫伝説のwiki

横山大観 「燕山の巻」
17mにもなる巻物です。北京の遠方を描いた作品のようで、墨の濃淡で山々などを描いていました。万里の長城とかもあったかな。 雄大で静かな雰囲気が漂っていました。

下村観山 「老松白藤」
見事な金屏風です。二又に分かれる松の幹が大きく描かれていて、それに絡みつく藤の枝と白い花が垂れています。装飾性があり、琳派のような雰囲気もありました。

安田靫彦 「出陣の舞」
桶狭間の戦いの前に織田信長が踊った舞「敦盛」を描いたもの。「人間五十年 下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり」ってやつです。 橙色の扇子を持って、千鳥の模様の服を着た信長は、きりっとした理知的な顔をしていました。室内ですが背景が夕陽のような色になっており、結構明るめの色調にも思えました。

横山大観 「楚水の巻」
これまた長さ14mの巻物です。揚子江の沿岸の風景が描かれ、朝、昼、雨、夕の4場面があるようです。家々や川で漁をする人、森、牛と共に旅する人などが描かれていました。後ろの方には上から縦に線が入る雨のシーンもあり、特に良い場面に思えました。

鏑木清方 「伽羅」
身をくねらせ打掛?をかけて横になる着物の女性が描かれています。黒い香枕が脇にあり、これがタイトルの伽羅(香木)の由来のようです。面長で清楚な美人画で色気もありました。

伊東深水 「婦人像」
洋装の木暮実千代という女優の像です。赤い手袋、白い帽子、胸元の大きく開いた花柄の服とネックレスなどを身につけており、ひじをついてあごを押さえるポーズをとっています。金の背景に赤が映え、黒漆の机に反射している表現も見事でした。そして何と言っても目が生き生きしてました。

川端龍子 「鳴門」
大きな屏風です。目の覚めるような鮮やかな青色の海にダイナミックな渦潮と岩のようなものや舟が描かれています。飛沫や水の流れは単純化して描かれ、その上を滑空する鳥からは自由な感じを受けます。荒々しくも流れるような屏風でした。

横山大観 「木兎」
おぼろげなくらい背景に木に止まるミミズクが描かれています。こちらを見ている眼は黄色く光り、ちょっと可愛いw 夜ですが、ミミズクの周りは白っぽくなってミミズクの存在が浮き上がって見えるように思いました。


<第2章:竹内栖鳳と京都画壇>
2章は竹内栖鳳(せいほう)のコーナーです。竹内栖鳳は京都の生まれで、町絵師や幸野楳嶺(こうのばいれい)に学びました。その後、西洋画の技法と理論を学び日本画に活かしていきました。また竹内栖鳳は弟子の素質を見抜く力も凄かったようで、長所を伸ばす教育で多くの逸材を育てたようです。このコーナーでは竹内栖鳳と、その弟子である上村松園、土田麦僊、村上華岳などの逸品が並んでいました

橋本関雪 「霜の朝」
淡い色調で白いリスがチョロチョロしている様子が描かれています。その毛並みはふわっとした感じが出ていました。作者の橋本関雪は沢山の動物を飼ってその様子を観察していたそうです。可愛らしい作品でした。

竹内栖鳳 「晩鴉」
水墨画です。簡略化されたような家とその周りの川や林が淡く描かれています。その滲むようなおぼろげな様子が幻想的です。左下には頭を垂れている小さなカラスが描かれていて、タイトルの晩鴉というのは夕暮れに家に帰るカラスのことなんだとか。どこか寂寥感のようなものを感じました。

竹内栖鳳 「緑池」
淡く描かれた緑の水面から顔を出す蛙が描かれています。その水面と水中の描き分けに驚きました。どこまでが水面なのか曖昧なようで水中の違いがわかるのが凄かったです。

竹内栖鳳 「班猫」 ★概要のpdfで観られます
ポスターの作品です。このポスター観て行こうと思ったw 背を向け身をひねって顔をこちらに向けている猫です。毛づくろいでもしているのかな。その碧の眼はちょっと上目遣いで少し妖しさもあります。この猫は栖鳳が焼津に滞在した際に近所にいた猫で、これを見た栖鳳は中国皇帝の猫を想起し、飼い主に譲ってもらうよう交渉したそうです。そして自宅に連れ帰り、その様子を覗ってこの絵を描いたのだとか。その成果だと思いますが、胡粉を使って描いた毛はフワフワした感じが凄く、よく見ると毛並みまでわかるくらい描かれているのも驚きでした。これはこの展覧会でも必見の品です。

土田麦僊 「大原女」
大きな屏風です。右隻は柴を頭に乗せる大原女が描かれ、左隻は竹林と桜、水車のある小屋などが描かれています。女性達の足は下書きのような線で描かれていて、これは未完成なのか足の動きを出しているのか不明だそうです。また、解説によると桜の花弁は長谷川等伯の息子の久蔵の書いた桜図襖絵を思わせるそうです。

ここから第二会場です。狭いながらも素晴らしい作品がありました。

上村松園 「新蛍」 ★概要のpdfで観られます
これは以前、上村松園展の記事でご紹介したかな。この美術館の作品でもかなり好きな作品です。

村上華岳 「裸婦図」 ★概要のpdfで観られます
これも上村松園展の記事でご紹介しました。モナリザを意識していたのでは?という解説もありました。

西山翠嶂 「狗子」
伏せて寝る白と茶色の2匹の子犬を描いた絵です。特にすやすやとねる茶色の犬は可愛いかった! 毛並みまで綺麗に描いてあったのも良かったです。


ということで、以前観た作品も多いですが、ここのコレクションのレベルの高さを感じる展覧会でした。あまり規模は大きくない割りに、だいぶ満足できました。日本画好きの方にお勧めです。


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【江戸東京博物館】の案内 (2010年03月)

江戸東京博物館で「チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展」を観た後、いつもどおり常設にも行ってきました。(ここの常設は写真を撮ることができます)
つい2ヶ月くらい前にも館内を紹介していますので、今回は入れ替えが多かった絵の作品だけご紹介しようかと思います。

参考記事:
 江戸東京博物館の案内 (東京編 2009年12月)
 江戸東京博物館の案内 (絵画編 2009年12月)
 江戸東京博物館の案内 (江戸編 2009年12月) 

「江戸図屏風」(複製)
常設の入口の橋を渡るとあります。本物は佐倉の歴博にあるそうです。明暦の大火で燃える前の江戸の様子が描かれています。
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「江戸名所図屏風」(複製)
これも複製。本物は出光美術館所蔵。細かく描かれた市中の生活の様子が観ていて飽きません。
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「明暦の大火 罹災市街の図」(複製)
原題は「1657年3月4日火事にあった江戸市街の図」といいオランダ使節団の一員が描いたものと考えられているようです。丸焼けですね…。
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「江戸火事図巻」(複製)
これも明暦の大火を描いたものと考えられている絵巻です。振袖火事の伝説もある大火で、江戸の大半が焼けて3~10万の住民が死んだ大惨事となりました。
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(左):歌川芳藤 「新版 主従心得須語録」
(右):歌川芳藤 「おもちゃ絵 子供年中行事絵」
地方から江戸に奉公に出る子供が長者になるまでをすごろくにしたもの。転落すると夜逃げというシビアな人生ゲームみたいなw おもちゃ絵は様々な年中行事が描かれています。
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歌川国芳 「源頼光公館土蜘作妖怪図」(複製)
源頼光と家臣の四天王を描いたもの。この絵のことかわかりませんが、国芳は徳川将軍を頼光、四天王に水野忠邦にみたて、天保の改革で処罰された者たちが妖怪となって襲い掛かるという絵を描いたのだとか。その危険な皮肉に、版元は恐れて絵も版木も処分したそうです。過激ですね
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(左):歌川国芳 「面白くあつまる人」
(右):歌川国芳 「みかけはこはゐがとんだいい人だ」(複製)
昨年、右の絵を観た人も多いのでは? 渋谷のbunkamuraでやっていた「奇想の王国 だまし絵展」にも出品されていた作品です。人が集まって大きな人になっています。キモいけど面白いw
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好みの美人画もありました。
(左):落合芳幾 「両国八景之内 新柳街の秋の月」
(中):落合芳幾 「両国八景之内 広小路の夜雨」
(右):落合芳幾 「両国八景之内 両国橋の帰帆」
特に右の作品の色合いが好きです。
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常設展示室5階 第2企画展示室ではえどはくでおさらい!明治・大正時代 ~教科書でみたあの人、この絵~をやっていました。
 会期:2010年2月16日~3月28日
 公式サイト:http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/about/josetsu/dai2/2009/0216/0216.html
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メモを取らなかったので感想は割愛しますが、小学生にもわかるように説明されているようでした。私の時代とはだいぶ違うのでどの辺が教科書に載ってるのかはわかりませんでしたw

ということで、絵だけ紹介しましたがここの常設は家が丸ごといくつも入っているようなところですので、じっくり観たら2時間くらいかかるかな。結構、外国人にも有名な観光名所みたいです。


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チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展 【江戸東京博物館】

先週の土曜日に冷たい雨の降る中、江戸東京博物館へ「チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展」を観に行ってきました。

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【展覧名】
 チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展

【公式サイト】
 http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2010/0202/0202.html

【会場】江戸東京博物館
【最寄】JR両国駅/大江戸線両国駅
【会期】2010年2月2日(火)~2010年4月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
まず、混み具合ですがそれなりに混んでいて、1点に1人は鑑賞しているくらいの混み具合でした。そこまで混んでいたわけではないので自分のペースで観られました。

さて、この展覧会はその名の通り、モンゴルの歴史を知りながら楽しむことができるのですが、中国の国宝にあたる中国国家一級文物が惜しげなく並んでいる作品の充実具合となっています。一口にモンゴルと言っても様々な文化や部族を知ることができ、有意義な展覧会となっていました。ただ私の好みとは違ったので、満足度としては普通にしてます。 価値が分からない奴と言われればその通りだとは思いますがw

いつも通り、章ごとにご紹介します。時事comが提供しているyoutubeがありましたので、これで大体中の様子もわかるかも。


<第1章 戦国時代のモンゴル>
まずは、チンギスハーン以前の戦国時代のモンゴルのコーナーです。最初の章では紀元前475年くらいから1125年にかけて、台頭しては消えていった5つの部族について取り上げられていました。勢力を拡大した時期には中国や西方オアシスを勢力下に置き、逆に漢民族が力をつけている時は統制下に入るという繰り返しだったようで、お互いの交易や文化交流も盛んにあったそうです。

[東胡族](とうこぞく)
この部族は中国の春秋時代から内モンゴル東部にいたそうで、高い青銅器文化を持っていたようです。匈奴に侵攻したものの、後に逆に侵略されて崩壊していきました。

「許季姜の青銅き」
青銅で出来た取っ手と台のついた器です。裏には許季姜が作ったもので、子々孫々まで伝えるようにと漢文で書かれているのだとか。既に中国との深い交流を持っていたようです。 見た目は結構シンプルで、縦に入った線にデザイン性を感じました。
この他にも短剣、馬面飾り、柄杓などの青銅器も並び、8点中6点が一級文物という貴重な品々が並んでいました。


[匈奴族](きょうどぞく)
東胡を滅ぼした部族です。東は遼河、西はパミール高原、北はバイカル湖、南は長城に至る広大な領土を持ち、ゴビ砂漠の南北の草原を統一したそうです。その生活は、肉と乳製品を食料とし、狩猟を基本的な訓練としドーム型の移動式住居に住んでいました。
後に南北に分裂し、南は漢に滅ぼされました。

「水晶と瑪瑙の首飾り」
天然の水晶や瑪瑙に穴をあけて繋いだ首飾りです。素朴なつくりかもw 草原文化と中原文化の交流を伺わせるそうですが、その辺は何のことか分かりませんでした。


[鮮卑族](せんぴぞく)
東胡族の流れを継ぐ部族です。東胡族が滅ぼされた後、鮮卑山に篭ってこの名前を名乗ったそうで、その後フルンボイルというところに移り、北魏を建てて仏教を崇拝しました。 その後は東西に分裂したそうです。

「金製鹿頭形冠飾り」 ★こちらで観られます
雄鹿と雌鹿の顔と角を象った金の髪飾りです。枝のような角に葉っぱがついて木のようになっています。細かい金の粒が施され、所々に嵌め込まれた小さい宝石はシルクロードなどの交流の影響らしいです。華やかで洒落たセンスでした。
ここには他に、金の飾り板や金印など、煌びやかな品や、俑(死者と共に埋葬する人形)など中国っぽさを感じる品もありました。

「銅製熊足形案」
3匹の金の熊が足になり、平たい銅の皿を支えているものです。目などには宝石をつけていたらしいですが失われています。そのデザインが面白かったです。
なお、この鮮卑族は強大な国家で、中国に倣い中央集権となっていたそうです。こうした金の作品などから何となく国力が伝わってきました。


[突蕨族](とっけつぞく)
突蕨可汗という国を建てた部族です。東西に分裂し、東は唐に滅ぼされたものの、その後独立しました。また、モンゴルの遊牧民の中で最初に文字を作り出したそうで、200年くらい活躍し、その文化は1300年頃まで影響を与えたようです。

「浮き彫り臥鹿文様銀皿」
見事な銀の皿です。中央に伏せた鹿が浮き彫りになり、周りはびっしりと細かく草花の文様が描かれています。これは遊牧民と中国との交流や中原文化の融合を示すものなのだとか。日本の正倉院にも似たようなものが伝わっているそうで、昔からの各国の交流を表しているようでした。
この辺には瓶や壷などもありました。


[契丹族]
起源4世紀からの歴史を持つ部族で、唐の時代の内モンゴルの主要な遊牧部族です。916年に「契丹」、翌年に「大遼」と名前を定め、1125年に女真族に滅ぼされました。それだけ長く存在しただけあって、契丹の経済・軍事・文化は高度なものだったようです。

「万歳台金花銀硯箱」
昇り竜が浮き彫りになっている金の硯箱です。龍に蓮の花が絡みついていて、龍の口は蓮の花をくわえています。細かくて意匠も面白い作品でした。

「動物型玉はい」
白玉で作られたもので、へび、猿、蠍、ヒキガエル、トカゲの五毒のモチーフがキーホルダーのようにぶら下がっている作品です。澄んだ色合いが美しくモチーフも面白いです。 これは十二支の影響も受けているそうで、隣には道教の影響を受けた金の冠や、さらに隣には鳳凰や如来が彫刻された靴などもありました。契丹族には様々な宗教や文化が入り混じっているようです。

「黄金のマスク」 ★こちらで観られます
王族の墓に埋められていた金のマスクです。死者に金銀の装飾をするのは北アジアに見られる風習だそうで、これもそういう文化圏なのかな。目が細く釣りあがり、顔がこけてあごが尖っている特徴があります。アジア的な顔立ちですね。黄金のマスクというとエジプトとかを想起しますが、こういったものまであるとは驚きでした。 なお、これが出土した墓は中国の道教の影響も受けていると解説されていました。

このあたりは金の馬具が並んだコーナーがありました。龍の文様が入っている馬具もあり、龍は聖なるもので高貴な身分の象徴としていたようです。馬具は結構大きいのですが細かい細工が施されていました。
また、馬具の近くには壷なども飾ってありました。

「菩薩頭像」
穏やかに笑んでいる菩薩の頭です。隣には涅槃の釈迦の像など仏教を取り入れたことを示す品々がならんでいました。仏教を取り入れることで中央集権の中国を真似たようで、これは日本の奈良・平安時代の方針に似ているかもと思いました。また、その一方で古来のシャーマニズムの文化も守っていたそうです。


<第2章 一代の天驕~モンゴル帝国の勃興>
2章はおまちかねのモンゴル帝国の勃興です。テムジンは諸部族を統合して、チンギス・ハーンとなりました。その末子トルイの次男のフビライは大元王朝を成立して、中国に移りました。イスラムやキリスト教徒の商人とも交易をして繁栄しました。 後期は政治腐敗で国力が衰え、農民の反乱で滅んでいきました。 この章ではそうしたモンゴル帝国の時代の作品が並んでいました。

「伝・チンギス・ハーンの鞍」 ★こちらで観られます
チンギス・ハーンの鞍と伝えられるものです。戦闘・狩猟・日常のそれぞれの用途の鞍があるようで、戦闘と狩猟の鞍が並んでいました。両方の鞍には龍のすかしが入っていました。ちなみにチンギス・ハーンの墓はいまだにどこにあるかわかっていないそうです。

この辺りにはチンギス・ハーンの肖像画(のコピー)をはじめ、印鑑や銃、金の鞍、かんざし、杯、香炉など、その時代の様子がわかるような品が並んでいて、フビライの時代には景徳鎮などの磁器もありました。また、テントが2つと投石器などの模型も展示されていました。

<第3章 明・清時代のモンゴル>
1368年あたりからハーンの権力は衰えて行き、内紛などで国力を下げていきました。やがて1636年の清の成立があり、1757年にはモンゴルの大部分が清の支配下となりました。さらにその後、1911年に清が崩壊すると、モンゴルは独立していきました。ここではそうした衰えて行った頃の品が並んでいました。

「十字形銅杖飾り」
十字架です。ネストリウス派キリスト教は景教と呼ばれ、唐の時代にモンゴルに入り、元の時代に再び盛んになったそうです。蓮の花なども描かれ、仏教の影響も感じました。東西の交流があった国らしさを感じます。

この辺りには牡丹の花模様がびっしり描かれたイスラム教徒の石棺もありました。この頃のモンゴルはあらゆる宗教に寛容だったようですが、逆にそれが国の寿命を縮める原因となってしまったようです。また、モンゴルにはチベット仏教が広がったようで、これは以前観たチベット展を思い出させるような内容でした。

それ以外にも、シャーマンの服やチベット仏教の服、モンゴルの女性の服などのコーナーもありました。(上記の時事comのyoutubeでちらっと見られます)

「龍が彫ってある王座」 ★こちらで観られます
背もたれに龍が描かれ、肘掛が見事な鹿の角でできた王座。清の支配下でも王家の存続を認められていたそうです。結構立派です。

「大威徳金剛の面」
大きくてインパクトのある顔をした紙製の牛の面です。頭には5つの髑髏があり、額には第三の目があります。これは見るからにチベット仏教の影響を感じる面でした。

「龍紋彫刻馬頭琴(モリン・ホール)」 ★こちらで観られます
会場内で柔らかい弦楽器の音色が響いていたのですが、この馬頭琴の音色でした(youtubeで流れている音楽です) 頭に馬の彫刻がつき、2束の馬の尻尾の弦がついています。これを観ていて「スーホの白い馬」の話を思い出しましたw


ということで、様々な文化や宗教が融合していて、貴重で歴史的に重要な品々が多い展覧会でしたが、肝心のチンギス・ハーンの時代は気に入るものが少なく、全体的に少し無骨な感じの展示品もあり、総合的には普通の満足度かな^^; 最近観たチベット展の方が好みですw
しかし、一気にモンゴルの歴史と文化を知る機会だと思いますので、興味のある方はこの機会に行って観るのも良いかと思います。


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カフェ「すいれん」 【上野界隈のお店】

前回の記事と前後しますが、国立西洋美術館でフランク・ブラングィン展を観た後、常設を観る前に、美術館内のカフェ「すいれん」で一休みしました。名前はモネの睡蓮にちなんだものかな。

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【店名】
 カフェ「すいれん」

【ジャンル】
 カフェ・レストラン

【公式サイト】
 http://www.nmwa.go.jp/jp/shop-cafe/cafe.html
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【近くの美術館】
 国立西洋美術館 (館内)
 上野の森美術館
 東京国立博物館
 東京都美術館
 国立科学博物館
 東京文化会館
 上野動物園
  など

【この日にかかった1人の費用】
 750円程度

【味】
 不味_1_2_③_4_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_②_3_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_③_4_5_名店

【感想】
まあ普通の喫茶店といったくらいなのですが、美術館内にあるので一応ご紹介しておこうかなと。ここには久々に来たのですが、満席でもないのに何故か入口の外で待たされました。5分くらい待って、中へ。

店内から中庭を眺めながらお茶できるのが嬉しい^^
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この日はケーキセット750円を頼みました。頼んだらすぐ出てきました。
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ケーキはムースとチョコがちょうどいい甘さでそれなりに美味しいです。コーヒーはうすくてあまり香りもないかも。アメリカン?
そして、何よりも気になったのは接客。なんか粗いというか…。最初の案内も微妙でしたが、受け答えがぶっきらぼうで、伝票は置き忘れてるしレジでもやたら手間取るしで、素人っぽさが半端じゃなかったw 一人の店員でなく複数人がそんな感じなのがどうなんでしょうか。世界遺産を目指している建物のカフェならもう少し何とかならないものか?と思いました。 まあ、久々に行ったのでたまたまだったかもしれないですけど…。場所が場所だけにまた行くと思いますが、せめて接客は改善されていくことを祈るのみです。


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国立西洋美術館の案内 【常設 2010年02月】

前回ご紹介した、「フランク・ブラングィン展」を観た後、休憩を入れてからいつも通り常設展を観てきました。1月に行ったときは本館が閉鎖されていましたが、2月末には全館観ることができました。

公式サイト
 http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html

今回も作品の写真を撮ってきましたので、一部をご紹介しようと思います。
 ※常設展はフラッシュ禁止などのルールを守れば撮影可能です。(中には撮ってはいけない作品もあります。)
  掲載等に問題があったらすぐに削除しますのでお知らせください。

参考記事
 国立西洋美術館の案内 【常設】
 国立西洋美術館の案内 【常設 2009年10月】
 国立西洋美術館の案内 【常設 2010年01月】

オーギュスト・ロダン 「考える人」
言わずと知れた有名作品ですね。いつの間にか入口付近に移動していました。外にもこれより大きな作品や、この作品の母体となる地獄の門もあります。
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アンドレアス・リッツォス 「イコン:神の御座を伴うキリスト昇天」
立派なイコンで、これも旧松方コレクションです。15世紀の作品で日本には中々ない貴重なコレクションじゃないかな。
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今回の常設は良い宗教画が多かったです。宗教画は色々と難しいので、理解できていませんがw

左:ロレンツォ・レオンブルーノ・ダ・マントヴァ 「キリスト降誕」
16世紀始め頃の作品。美術史を研究する上でも非常に重要な作品なのだとか。理屈ぬきにしてもこの色使いの鮮やかさは素晴らしい!

右:ボニファーチェ・デ・ピターティ(通称ボニファーチョ・ヴェロネーゼ)(に帰属)
「聖家族、トビアスと大天使、聖ドロテアと幼い洗礼者聖ヨハネ」

これも16世紀中盤頃の宗教画。
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パオロ・ヴェロネーゼ(本名パオロ・カリアーリ) 「聖カタリナの神秘の結婚」
これも16世紀の作品。聖カタリナはよく題材にされているように思いますが、この作品はルネサンスの理想の女性像としてのカタリナとして重要な意味を持っていると解説されていました。
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ディルク・パウツ派 「三連祭壇画 悲しみの聖母」「荊冠のキリスト」
1月に行った時にも観ましたが最近購入された作品。マリアの静かな悲しみは不思議と人間ぽさを感じました。
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ヨース・ファン・クレーフェ 「三連祭壇画 キリスト磔刑」
これも見事な三連祭壇画。この祭壇は16世紀の北方で一般的だった形式らしいです。左右の男女(夫婦)は寄進者らしい。
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この他にも見事な宗教画が多くありましたが、これくらいにしておきますw

ピーテル・ブリューゲル (子) 「鳥罠のある冬景色」
通称:地獄のブリューゲルの作品で、この常設の中でもマイベスト3に入るお気に入り作品です。右の鳥罠と、穴が開いた氷上でのスケート。命の危うさを示唆していて、ブリューゲル親子らしい作品じゃないかな。
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ヤン・ブリューゲル (父) 「アブラハムとイサクのいる森林風景」
こちらは通称:花のブリューゲルの作品。神聖な雰囲気がありながら、ほっとするような感じやリアリティを感じます。
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ペーテル・パウル・ルーベンス 「豊穣」
フランドル絵画が大好きなのでこの辺は回るのが異様に遅かったw この女性の肌や肉感的な表現、色彩などかなり好みです。
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グイド・レーニ 「ルクレティア」
貞淑のシンボルとしてよく題材にされるルクレティア。清楚さがよく伝わってくる感じです。
 ルクレティアのwiki
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ヤン・ステーン 「村の結婚」
この人の作品には何か隠れた意味があるのでは?と勘ぐってしまうのですが、この作品の真意はいかに。
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ヤン・ファン・ホイエン 「マース河口(ドルトレヒト)」
抑えた色調が叙情的な雰囲気の作品でした。
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ピエトロ・ロンギ 「不謹慎な殿方」
不謹慎すぎw めっちゃ覗いてますw
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新館ではフランク・ブラングィン展の関連展示として、「所蔵水彩・素描展-松方コレクションとその後」が開催されていました。
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一応、テンプレート
【展覧名】
 所蔵水彩・素描展-松方コレクションとその後

【公式サイト】
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/wadr201002.html#mainClm

【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2010年2月23日(火)~5月30日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

結構、点数も多かったのですが、3枚だけご紹介しようかと思います。

ギュスターヴ・モロー 「聖なる象(ぺリ)」
幻想的で異国情緒漂う素晴らしい作品。モローの作品にハズレ無しです。
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藤田嗣治 「裸婦」
墨で描かれただけでこんなにも柔らかく繊細な描写とは…。驚嘆します。
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ポール・シニャック 「漁船」
シニャックの水彩は3点くらい船の絵がありました。フランク・ブラングィンでも解説されていましたが、造船業の松方幸次郎のお気に入りの題材と思われます。シニャックは水彩は点描じゃないのかな。
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と、この辺にしておこうかと思います。勿論、この後1Fにも行きました。今回ご紹介した以外にも印象派やエコールドパリの画家など近代の作品もこれ以上ないくらい充実しておりますので、やはり西洋美術館にいくなら常設もワンセットで行くことをお勧めします。


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フランク・ブラングィン展 【国立西洋美術館】

2週間ほど前になりますが、国立西洋美術館へ始まったばかりの「フランク・ブラングィン展」を観に行ってきました。

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【展覧名】
 国立西洋美術館開館50周年記念事業
 フランク・ブラングィン展

【公式サイト】
 http://www.fb2010.jp/main/
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/current.html

【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2010年2月23日(火)~5月30日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間40分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
メジャーどころの展覧会が多いイメージの国立西洋美術館ですが、たまに隠れた実力派の個展もやってくれるのも嬉しいところです。あまり知られていないためか、お客さんが少なめで快適に観ることができました。しかし、このフランク・ブラングィンという人は、運が無かった為にあまり名前が知られなかったと言えるかもしれません。実際に観てみると多才な人で驚く作品が結構ありました。

簡単に略歴をご紹介すると、フランク・ブラングィンは英国人で、アーツ・アンド・クラフツ運動で有名なウィリアム・モリスの工房の職人として働いていました。その後、アーツ・アンド・クラフツ運動 → アール・ヌーヴォー → アール・デコという時代の流れを背景に、油彩画だけでなく壁画や版画、陶器、家具のデザインなど幅広いジャンルで活躍しました。また、この国立西洋美術館とも非常に縁の深い存在で、この美術館の根幹となった松方幸次郎のコレクションは、ブラングィンにアドバイスを貰いながら集めていたようです。やがて2人は「共楽美術館」という美術館を夢見て、ブラングィンはその設計を行いました。 しかし、世界大恐慌や関東大震災によってスポンサーである松方幸次郎の川崎造船所は破綻し、共楽美術館の計画は頓挫しました。また、ロンドンに保管していた松方コレクションの倉庫が火災で燃えてしまい、ブラングィンの作品も燃えたようです。こうした不運が災いしてブラングィンは人々から忘れられていきました…。しかし、没後50年で再び脚光を浴び、また、共楽美術館の夢の後継者と言える国立西洋美術館が50年を迎えるこのタイミングで、松方幸次郎との関係を軸に今一度回顧する機会が設けられたようです。
と、予備知識はこんな感じです。より詳しくは、いつもどおり章ごとに気に入った作品と通してご紹介しようと思います。

<第1部:松方と出会うまでのフランク・ブラングィン>
まずは活動を始めてから松方と出会うまでの足跡を辿るコーナーからです。ブラングィンはゴシック復興をになう建築家を父に持ち、その始まりはウィリアム・モリスの元でカーペットの図案を写す仕事から始まりました。その後,
サミュエル・ビングの「アール・ヌーヴォー」という名の店(アール・ヌーヴォー様式の語源となった店です)で装飾を手がけ、ウィーン分離派などにも参加したそうです。 このコーナーにはそうしたモリスの工房時代の作品も並び、絵だけでなくランプシェードのデザイン、メタルプレート、椅子など様々なものがありました。

フランク・ブラングィンのデザイン 「版画 キャビネット」 ★こちらで観られます
キャビネットです。自分が使うためにデザインしたものだったかな。異国風の風景の中、捧げ物をする様子が描かれています。よくみると引き出しの取っ手のようなところが日本刀の鍔をイメージした感じでした。隣には椅子も展示されていました。

フランク・ブラングィン 「音楽」 ★こちらで観られます
パリにオープンしたサミュエル・ビングの店「アール・ヌーヴォー」に飾られた絵画作品で、これと共に「ダンス」という作品もあったようです。また、現在は残っていませんが外壁の壁画も手がけていたそうです。
この作品には、南の島のようなところで笛を吹く2人の裸同然の男性が描かれ、子供?が背に手をかけている様子も見られます。単純化され平面的な感じで、装飾性の強い絵に思いました。また、アール・ヌーヴォーらしい植物の表現も優美でした。

この作品の近くにはアール・ヌーヴォーの店の外観写真も飾られていて、外壁のデザインも厚紙で作られていました。優美な曲線と単純化されたデザインが特徴的です。(★こちらで観られます) それ以外にもティファニーのステンドグラスの原画も描いたり、カーペットの作品(★こちらで観られます)なども残したようです。


その後、ブラングィンはモリスの工房を離れて生活のために船員として働きながら、スケッチをする生活をしていました。そしてこの経験が元になり、穏やかな色調が特徴の油彩画を描いていき、フランスのサロンで3等賞をとったそうです。それに対して、その2年後のサロンでは今度は強い赤や青の色彩を打ち出しました。最初は自国の英国では批判されたようですが、やがて英国でも評判が上がり、ついに日本にもその名が届くようになりました。夏目漱石の「それから」にもブラングィンの絵について書かれているそうです。(「それから」は読んでいないので私は分かりませんがw)


フランク・ブラングィン 「海の葬送」 ★こちらで観られます
船の上での葬送を題材に、抑えられた色彩で描かれた作品です。甲板の上で布に包まれ、板のようなものに載った遺体を皆で持ち上げています。手前では仲間がじっと見守っているようです。私は暗く静かな雰囲気に思いましたが、解説によると、悲しみより傍観者の視線で淡々としているそうです。

フランク・ブラングィン 「海賊バカニーア」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品です。小舟で港を航行する海賊が持っている旗が、大きく深い赤で描かれ、遠くから観ても目を引きます。海は深い群青色で描かれているのが対照的です、背景の町は明るく淡い感じかな。全体的に強い光が当たっているかのように色が鮮やかでした。イギリスではケバケバしいと不評だったそうですが、フランスでは大人気で、展覧した場所の絨毯が摺りきれるくらい人が集まったのだとか。カンディンスキーなどの芸術家にも感銘を与えたそうです。

フランク・ブラングィン 「造船」
大きな2艘の船を作る人々が描かれています。木で船の骨組みを作っているところかな。小さく見える人々から、その船の大きさが想像できます。この作品も光が当たったような鮮やかな色彩が美しいです。
もうお気づきかもしれませんが、ブラングィンの作品には船や労働者がよく出てきます。もちろんそれは自身が船乗りをやっていた影響で、人々との交流で船の知識を蓄えていきました。そして、そうした彼の作風を、川崎造船所の社長である松方幸次郎も気に入ったのではないか?と考えられるようです。

フランク・ブラングィン 「りんご搾り」 ★こちらで観られます
沢山のりんごが転がっている秋の田園にいる4人の子供と3人の女性が描かれています。りんごを持っている裸の子供はキューピッドのような雰囲気に思えました。この作品も豊かな色彩で、彼の代表作とも言えるそうです。

<第2部:ブラングィンと松方幸次郎>
川崎造船所の初代社長である松方幸次郎とブラングィンは1916年に出会い、松方はブラングィンの才能に惚れ込んで、コレクションのアドバイザーにもなってもらったそうです。やがてコレクションを「共楽美術館」として展示し、日本の画家たちに本物の西洋画を見せることを夢見たようですが、金融危機と関東大震災で事業が破綻し実現しませんでした。もう場所も建物の設計(ブラングィン設計)も出来ていたようなので、かなり実現に近かったのでは…。 このコーナーでは2人の夢であった共楽美術館に関する展示もありました。

フランク・ブラングィン 「戦時広告ポスター:復讐の誓い」
一部、リトグラフのコーナーがありました。これは戦争のポスターで、泣いている子供や倒れている女性、立って手を挙げる男や飛行船などが描かれています。単に勇ましいだけではなく、社会情勢を描いていると解説されていました。また、海外滞在時にこうした戦争ポスターを観たのが松方が収集を始めたきっかけだったそうです。

この作品以外にも、ガスマスクをした人々の作品や、キリストの十字架を背負う姿の絵に、第一次世界大戦の兵士が紛れているような絵など、戦争関連の絵が並んでいました。ちょっと暗い気分になりますが、貴重な歴史の生き証人に思えました。


リトグラフのコーナーを抜けると、設計を元につくられた共楽美術館のCG映像がありました。西洋のお城のような立派な美術館で、これが出来ていたら今の西洋美術館は無かったのかもw ちょっと複雑な気分です。 ★外観をこちらで観られます
そして、この隣の部屋は共楽美術館のイメージに沿って作られていました。これにはちょっと驚きでした。


フランク・ブラングィン 「松方幸次郎の肖像」
パイプをくわえたスーツ姿の松方幸次郎が描かれ、背後には装飾的な紫のチューリップが描かれています。この作品は1時間くらいで描かれたらしく、素早い筆致で描かれているようでした。

この部屋には磁器の作品などもありました。磁器にはアーツ・アンド・クラフツの思想が見られるようです。他にも装飾パネルやテーブル、椅子などの作品もあり、デザインを再現した椅子に座って休むこともできました。

フランク・ブラングィン 「蹄鉄工」
1918年のヴェネツィア・ビエンナーレ(国際博覧会)が行われた際、ブラングィンは展示室のデザインを手がけました。そして、そこに飾られた1枚がこの作品です。大きなハンマーを持った人々が働いている姿が描れ、影と明るいところの色などが対比的に感じました。また、労働を賛歌しているように思いました。(労働賛歌を感じる絵は多々ありました。)

フランク・ブラングィン 「白鳥」 ★こちらで観られます
森の中、水色の影?が白い羽に落ちている2羽の白鳥が描かれています。周りにはオレンジ色の花をはじめ様々な草花が描かれ、色鮮やかな作品です。装飾的で華やかな雰囲気を持っていました。これはかなりの見所だと思います。

フランク・ブラングィン 「パナマ=太平洋国際博覧会出品<火:原始の火>のための習作」 ★こちらで観られます
フランク・ブラングィン 「パナマ=太平洋国際博覧会出品<空気:風車>のための習作」
フランク・ブラングィン 「パナマ=太平洋国際博覧会出品<空気:狩人たち>のための習作」
フランク・ブラングィン 「パナマ=太平洋国際博覧会出品<水:魚網>のための習作」
4枚の壁画のための習作作品です。元々は8枚あったそうですが、残りの4枚は行方不明になっています。4大元素をテーマにしているようで、
<火:原始の火> 地平線と焚き火をする人々
<空気:風車> 風車と人々
<空気:狩人たち> 狩人と木々
<水:魚網> 網を引っ張る人々
が描かれていました。実際の壁画はどのようなものだったのでしょうか。ブラングィンは冒頭に書いたとおり、火災で多くの作品が失われてしまい、正当な評価を受けずに埋もれていったそうです…。

フランク・ブラングィン 「ヴェネツィアの朝市」
明るいオレンジがかった絵で、川の市場で人々が買い物している様子を描いています。これも色鮮やかで華やかさと活気を感じました。

<第3部:版画、壁面装飾、その多様な展開>
今まで観てきたとおり、ブラングィンは色々手がけていますが、中心となるのは壁画だったようで、アメリカやカナダでも作品を作成したそうです。映像でイギリスの壁画を見ることもできました。また、版画についても本格的に取り組んだようで、私が特に驚いたのも版画作品でした。

フランク・ブラングィン 「帆桁の向こうに見えるサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、ヴェネツィア」 ★こちらで観られます
聖堂を背景に手前に船が横切る構図のエッチングで、歴史と工業が交錯する様子が描かれています。その瞬間を捉えるセンスも凄いです…。なお、この作品はヴェネツィア・ビエンナーレで金賞をとったそうで、版画家としても名声を高めて行ったようです。

フランク・ブラングィン 「ハンニバル号の解体」
船を解体する様子が描かれたエッチングです。解体が進み内部が見え始めています。かなり大きな船ですが、滅び行くような雰囲気で、まさに最期を迎えているように思えました。
他にも橋を描いた作品や、日本的なモチーフの作品などもありました。私は版画作品は地味なものが多いと思いがちですが、この人の作品はドラマチックで面白いです。

フランク・ブラングィン原画・漆原由次郎彫り、摺り「ブリュージュのベギン会修道院」 ★こちらで観られます
まったく同じ版画を色を変えて摺った2枚の作品。日本人の彫りと摺りで作られています。左にあった作品は夜の家のようです。灯りが漏れていてほっとする雰囲気がありました。それに対して右にあった作品は、朝もやの中の家のように見えました。色が違うだけでこれだけ雰囲気が違うとは驚きです。漆原由次郎との合作は何点かありましたが、特に夜のは好みで驚嘆しました。


ということで、非常にマルチな才能を持った作家でした。この展覧会を観るだけでも、当時かなりの有力作家であったことが伺えました。火災さえなければ、今日でも有名になっていたのではないかと思います。せめて共楽美術館が出来ていれば…。うーん残念。
ちなみに公式ページでは謎の職業診断がありますw 試してみるのも一興じゃないかな。
この後、「すいれん」でお茶してから常設も観てきました。


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