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ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 (感想後編)【横浜美術館】

昨日の記事に引き続き、「ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡」の後半の記事になります。混み具合などについても書いていますので、前編をお読みでない方は前編から読んでいただけると嬉しく思います。
 前編:ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 感想前編(横浜美術館)

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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/pompei/

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2010年3月20日(土)~6月13日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

参考記事:
 古代ローマ帝国の遺産 - 栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ- (国立西洋美術館)
 古代カルタゴとローマ展 ~きらめく地中海文明の至宝~ (大丸ミュージアム・東京)

【感想】
全体で10章あるうち、今日は6章、7~10章をご紹介します。(何故か5章の前に6章が来ていましたので6章は前編でご紹介しました。)

<第5章 家々を飾る壁画>
5章はポンペイの家々に飾られたフレスコ画のコーナーでした。ところ狭しと並んだフレスコの数々は圧巻です。なお、詳しい人には今更でしょうが、イタリア語の「フレスコ」は英語にすると「フレッシュ」で、「新鮮な」という意味だと解説してくれます。乾ききらぬうちに素早く仕上げるフレスコは、描き直しもできないので高度な技術が要求されます。ここでは当時の職人たちの素晴らしい描写を見ることができました。

「三脚を飾るクピドたち」 ★こちらで観られます
木枠に収められた珍しいフレスコ画です。10人のキューピッドたちが木の塔(やぐら?)のような三脚をたててます。キューピッドたちは手に月桂樹を持ったり、大きな竪琴を押さえているなど、アポロを象徴するモチーフが散りばめられていました。仕事してるのか遊んでるのかわかりませんが可愛らしい様子です。 なお、この作品は商家の中に飾っていたようです。教養を示していたのかな。

「ディオニュソスとアリアドネ」
大き目のフレスコで、眠りの神ヒュプノスの膝で眠るアリアドネを見つけるディオニソスが描かれています。その周りにも多くの人々が描きこまれていましたが、2人は特に目を引きやすかったです。結構鮮やかでドラマチックでした。
この部屋には他にも神話を題材にした作品が多いので、ある程度ギリシアやローマの神話を知っていると一層楽しめると思います。


この辺で一旦、入口付近に戻ってくるのですが、ホールには映像のコーナーもありました。CG再現などで当時のポンペイの様子が分かりやすく簡潔にまとまっていて理解が進みました。ポンペイもローマと同じく公共浴場が社交場となっていたことなども分かり、次章以降の予備知識にもなります。


<第7章 家具調度>
このコーナーは家々にあった家具や調度品に関するコーナーでした。必見は何と言っても最初にある高温浴室でしょうか。日本で言うと弥生時代の頃にこんな高度な文明があったのかと驚かされる内容となっていました。

「ボスコレアーレ、ピサネッラ荘の高温浴室」 ★こちらで観られます
大理石で出来た個人宅用の浴槽と、ボイラーなどの設備です。蛇口を捻るとお湯が出る仕組みや、浴槽の下部にある青銅の筒を熱することで追い炊きも出来るようでした。ちょっと浴槽が狭いですが、現代の日本と同じようなシステムが2000年前に存在したことに驚きです。さらに床暖房の機能まであったのだとか。うちのお風呂より凄いかも…w

「イルカのモザイク」 ★こちらで観られます
どう見てもイルカには見えませんが、白黒のイルカのモザイクです。むしろドジョウのような姿で、尻尾の先が5つに分かれています。憎めないひょうきんな顔をしてました。ちょっとしたゆるキャラかもw

「金庫」
重厚感たっぷりの金庫です。金属製で丸い突起が幾何学的に並び、所々にシュロ、豹、イノシシ、ディアナ、キューピッド、サテュロスなどが彫刻されていました。当時、金庫は目立つところに置かれて、財力を誇示していたそうです。

「飲料加熱器(サモワール)」
台座にライオンの足が彫刻された銅の容器です。中で飲み物を温めたそうで、注ぎ口には量を調節できる仕組みがあるそうです。見た目も面白い上に実用性もばっちりで、恐ろしく高度な文明を垣間見た気分になりました。

「三灯式樹木形燭台」
樹木のような形をした燭台で、枝から吊り下げられたランプに火をつけて使っていたようです。ランプもカタツムリの形で、台座もライオンの足だったりと自然をモチーフにした作品で面白いです。これがアールヌーボーの展示に紛れていたら20世紀のものと信じてしまいそうw 本当にローマ人の文化レベルは半端じゃない!


<第8章 生産活動>
ポンペイの市民にとって労働は家の中で行う仕事のことで、農作業や土木工事は奴隷の仕事だったそうです。市民はそうした奴隷仕事を管理したり、商業や手工業や家事が主な仕事内容だったと解説されていました。ここでは当時のポンペイの人(奴隷を含む)の活動が分かるような品が並び、鍬、鎌、熊手、斧、金槌、鍋、フライパン、ナイフなどがずらっと並んでいました。

「果物と野禽のある静物」 「パン」
どちらもフレスコの静物画です。この時代に静物まで描かれていること自体も面白いですが、当時の様子が伝わってくるような描写も目を引きました。

「果物のある静物」
こちらも静物のフレスコで、チーズ?とガラスの容器に入った桃のような果物が描かれています。透明なガラスに入っている表現が見事で、ガラスの質感まで感じます。解説によると、ローマ時代に吹きガラスの技法が発達したらしく、以前より安価に買えるようになって広まったようですが、透明に近いのは高価だったそうです。

「ガルム用の壷が描かれたモザイク床の断片」
「ガルム」というのは特産品だそうで、魚醤のような調味料で肉料理に合うと解説されていました。このモザイクにはそのガルムの入れた壷と文字が書かれ、文字は「最上級の一番絞り」という意味なのだとか。お店の広告みたいなものかな? 意訳かもしれませんが現代に通じるフレーズですねw

「遊ぶクピドたち」 ★こちらで観られます
小さくブロック分けされたフレスコ画です。キューピッドが仕事の真似をしたり、遊んでいたりと可愛らしい様子が描かれています。靴を作っているところなど当時の仕事風景も想像できました。

この辺りにはアンフォラ(壷のようなもの)や鍋、竿秤、鉗子、ガラス器なども展示されていました。鉗子って外科手術に使ったのかな?? 本当に恐るべし文明です。


<第9章 饗宴の場>
ローマ人は色々な娯楽や快楽を楽しんでいたようですが、宴会も楽しんでいたようで、解説では「金持ちは食べるために吐き、吐くために食べる」という言葉を紹介していました。吐いてまで食べるとは…w ここではそうした宴に使われたであろう品々が並んでいました。

「カメオガラスのパテラ」 ★こちらで観られます
パテラというのはフライパンのような形の身を清める儀式に使うものだそうで、これはコバルトブルーのガラス器です。ブルーの上に白いガラスでシレヌス(ディオニソスに従う精霊)などの絵が描かれていました。深い青が光を透過する様子が非常に美しく、展示方法も良かったと思います。この展覧会の中でもかなり気に入りました。

この辺にはほかにも色ガラスの見事な器が多々ありました。

「宴会の情景」
3枚の宴会の情景を描いたフレスコです。フレスコに描かれた人物の頭の上には文字が描かれ、それぞれのセリフになっているようで、「私は飲むよ」とか「元気でやれよ」など声をかけて楽しんでいる様子が伺えます。一種の漫画?w 

このコーナーの最後あたりに銀食器のコーナーがありました。 ★こちらで観られます
4つずつのセットで杯や皿など様々な銀食器が並んでいます。それぞれには花鳥風月や神話をモチーフにした装飾もあり、華麗で優美な気品を出していました。2000年も経過したら酸化して黒ずんでいそうなものですが、しっかり銀色だったのも良かったです。

<第10章 憩いの庭園>
最後のコーナーは庭園に飾った水盤や庭園風景のフレスコなどが並ぶコーナーでした。

「噴水用水盤」
半球状の水盤の中に、子供の胸像が彫られていました。作品の上部に鏡を設置して、中を覗けるように展示されているのが嬉しい配慮でした。この子供はイシスに捧げた子供なのだとか。・・・ちょっと怖い話ですw

「ディオニュソス神話の表された庭園用クラテル」
巨大な杯のような形の大理石の壷かな? 胴部分にサテュロスやディオニソスが彫られていて躍動的です。結構凹凸も深くて相当手間がかかっていそうでした。非常に豪華です。

「神託を伺うアキレスの表された円形浮彫」 ★こちらで観られます
女神のお告げを聞くアキレスが浮き彫りにされた円形の大理石像です。かなり細かく彫られ、女神のまとう服のひだや髪の毛などの表現が見事でした。これも今回の展示の中でもかなり気に入りました。


ということで、こんな貴重な品々をよく借りてきたものだと感心する内容でした。当時のポンペイの様子がよくわかったのも面白かったですが、何よりも文明の高度さと文化の深さに驚き、今日の我々と当時のポンペイのどちらが「豊か」なのか考えさせられたかも。たった1万人でここまで文化的な都市を作れることに驚嘆でした。心底素晴らしいです!
まだ期間はありますので気になる方はお早めにどうぞ。

 ・・・蛇足ですが、ポンペイは男性器を崇拝していたとよく聞きますが、特にこの展覧では触れていませんでしたw


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ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 (感想前編)【横浜美術館】

今日は休みを取って降りしきる雨の中、横浜美術館で「ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡」を観てきました。驚きの多い内容で、去年観た西洋美術館のローマ展やカルタゴ展と同様に充実した内容となっていました。見所も多かったので、前編・後編にわけて詳しくご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/pompei/

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2010年3月20日(土)~6月13日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

参考記事:
 古代ローマ帝国の遺産 - 栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ- (国立西洋美術館)
 古代カルタゴとローマ展 ~きらめく地中海文明の至宝~ (大丸ミュージアム・東京)

【感想】
今日は平日で雨なのでそんなに混んでないのでは?と読んでいたのですが、結構混んでいて各作品に2~3人ついているくらいの混み具合でした。これが連休や土日になったら推して知るべしという感じでしょうか。かなり人気がありそうです。
なお、今回も作品リストはありますが館員の方に訊かないと貰えませんでした。また、余談ですが、リストをくれた館員さんは丁寧な対応をしてくれましたが、相変らずこの美術館の応対は上から目線というか、客を厄介者程度に思っているような感じの応対でイラっとくる事がありました。せっかく素晴らしい展示をやっているのに残念な限りです。それさえなかったら最高の満足度なんですが…。

さて、気を取り直して感想に入ります。今回の展示は10章に分かれ、様々な観点からイタリアのポンペイ遺跡から出土した品が展示されていました。今日は1章~4章と6章について気に入った作品と共に振り返ろうと思います。

<プロローグ>
まずはポンペイの説明をしたプロローグです。非常に簡単に説明すると、ポンペイは紀元前1世紀頃にローマの支配下に入った町で、今のナポリ近郊にありました。西暦62年に大地震で打撃を受けた後、復興を進めていましたが79年にヴェスヴィオ火山の噴火によって町ごと火山灰に埋もれてしまいました。しかし、幸か不幸かその火山灰によって町はタイムカプセルのように眠り続け、18世紀に発掘されるまで日の目を見ずに良い保存状態で残り、現在の私たちに当時の様子を伝える貴重な存在となっています。その様子は後の章でご紹介していこうと思います。
 参考:ポンペイのwiki

「噴火犠牲者の型取り」
樹脂製の噴火の犠牲者を型取ったものです。噴火の衝撃で堀に落ちた人だそうで、うつ伏せになって倒れた様子が生々しいです。その後、火山灰が降り積もって地中に埋まり、体が朽ちて骨だけ残して空洞となった所に、発掘隊が樹脂を注入し型を取ったそうです。その際、犠牲者は2体発見されたそうで、もう1人は足枷がついていたのだとか。隣には奴隷の足枷も展示されていました。

最初のあたりにはフレスコ(壁画)も展示されていました。この展覧会は驚くほどフレスコが多かったです。

<第1章 ポンペイ人の肖像>
ポンペイの人口は1万人弱くらいだったそうで、支配者層から奴隷まで幅広い身分の人が住み、余暇地、商業都市、港湾都市、交易都市といった様々な側面があったそうです。ここにはそうしたポンペイに住んでいた人々の像が並んでいました。

「マルクス・ノニウス・バルブスの彫像」 ★こちらで観られます
3体の大理石の像が並んでいたうちの1体です。左手に巻物を持った男性像で、足元に公文書を入れる筒を置いています。顔は聡明そうで身にまとった服のひだが流れるようでした。この像はこの人が建てた公共施設においてあったそうで、功績を誇示したのでしょうか。 この像の他の2体も良く、特にギリシア風の女性像は好みでした。

「女性肖像(小アグリッピーナ?)」
この像は上半身像で、暴君として有名な皇帝ネロの母親アグリッピーナではないかと考えられているようです。(ネロ時代の通貨に描かれた肖像に似ているそうです) この母親はネロを皇帝につけるために画策し、皇帝を毒殺するなどした人物で、願いどおりネロが皇帝に就くと自分も政治に口を出したそうです。巻髪が目立つ丸顔で、大きな目をしていました。顔からは恐ろしい側面は感じないかも。


<第2章 信仰>
続いて信仰に関するコーナーです。ローマ帝国は4世紀頃にキリスト教を国教としましたが、それ以前は多神教で、特にギリシア文化をよりどころにしていたようです。ギリシアの神とローマの神を同一視し、都市の公共の場や神殿に像を置いていました。ここではそうした像やフレスコが並んでいました。

「ポセイドン像」
堂々たる海の神ポセイドンの像で、紀元前5世紀頃のギリシアの作品を模倣したものだそうです。裸で左手を挙げた姿をしていて、左手には三叉の矛を持っていたはずですが失われています。右手にはイルカ?を持っていました。 中々威厳を感じる像でした。

「アキレスとキローン」 ★こちらで観られます
この辺には5点のフレスコがずらっと並んでいましたが、特に目をひいたのが今回のポスターにもなっているこの作品です。上半身が人間で下半身が馬の「キローン」が少年時代のアキレスに竪琴を教えている様子が描かれています。キローンの思慮深い顔と、キローンを見上げるアキレスの目が印象的で、2人の感情まで伝わってきそうな作品でした。それにしても色が鮮やかで、保存状態が良いのが何よりです。ポンペイならではかもしれません。

「ウェヌス像」 ★こちらで観られます
少し身をくねらせたウェヌス(英語読みするとヴィーナス)の像です。上半身裸で、下半身は金色のマントをまとっています。大理石に彩色された像が残っているのは珍しいことだそうです。手に金色の林檎を持っているのはパリスの審判で貰った林檎でしょうか。手を置く台も女性像で、全体的に洗練された雰囲気が漂います。解説によると初期ヘレニズム様式をローマ時代に模倣したものなのだとか。非常に優美で官能的な像でした。

この辺りにはヘラクレスやアポロの像などもあり、いずれも躍動感がありました。ローマの神像はカッコよくて良いw


<第3章 娯楽>
ローマ人は戦車競走・球技・レスリングなどのスポーツや、詩の朗読や演劇、ゲームなど様々な娯楽を持っていたようですが、中でも剣闘士の試合は特に人気があったようで、1万人の人口なのに2万人も収容できる闘技場もあったようです。ここではそうした娯楽をテーマにした作品が並んでいました。

「コルヌス(ホルン)」
非常に長く細い管を持ったホルンです。これは青銅で出来ていますが、元々は動物の角などが使われていたそうです。闘技場でも吹かれていたようですが、どういう音色だったのか興味が沸きました。

「遊技用チップ」 「魚型遊技用チップ」 「アーモンド形遊技用チップ」 「鶏型遊技用チップ」
動物の骨でできたチップです。作品名の通り、魚の形をしたものや鶏?の形をしたものがあり可愛らしい^^ それぞれ数字や文字が刻まれていて、ゲームに使われたのは分かりますがルールなどはわからないそうです。

「垢すりヘラ」
緩やかなカーブをした孫の手みたいな垢すりです。これは漫画『テルマエ・ロマエ』にも出てきたなあw 銅で出来ていて、持つところには銀でボクシングのような運動競技者が彫刻されていました。裏にはイルカが描かれているそうで凝っています。それにしてもこんなもので垢が取れるのでしょうか??w
余談ですが、今回の展示はお風呂に関する内容もあったので、テルマエ・ロマエを読んだのもちょっと役に立ったかもw
 参考:テルマエ・ロマエの紹介ページ

「剣闘士の兜」「脛当」「短剣」「ボクシング用グローブをつけた前腕」 ★こちらで観られます
剣闘士の武具と、手の彫像です。いずれも重厚感があります。これを着て戦ったのかと思うと相当重そうで、兜は前しか見え無そうに思えました。
当時、剣闘士はヒーローだったようで、この作品の近くには小さな剣闘士像や剣闘士のことを書いた落書きも展示されていました。縁起担ぎなのか、新年に剣闘士像を贈ったのだとか。その人気ぶりが伺えるコーナーでした。


<第4章 装身具>
古代ローマの貴婦人は凝りに凝った化粧をしていたようで、蜂の巣の穴ほど化粧があるとまで言われたそうです。ここではそうした女性達を飾った装飾品が展示されていました。

「蛇型腕輪」
蛇がとぐろを巻いたように螺旋を描く金の腕輪です。蛇の胴の部分は細くなっているのが優美で妖しい魅力がありました。アールヌーボーみたいw

「宝石箱」
木製の箱に骨製の枠をはめた宝石箱が2つ並んでいました。この木の部分は現代の再現で、骨の部分が当時の物となっています。カリアティッド(女性像が柱になっているもの)が精巧で、台座にも細かい彫刻が施されていました。宝石箱まで凝っていた様子がわかります。

「入浴する女性像のある手桶」
大きな銀製の丸い手桶です。側面には浮彫で入浴している女主人が召使に髪をとかせ、足を洗わせ、香水を持ってこさせている様子が彫刻されています。また、その逆側には薄い衣を着た女性を中心に召使たちが世話をしている様子が彫られていました。これが当時の様子なのかな?(解説によるとヴィーナスの伝説の一部ではないかという一説も紹介されていました) 華やかで気品のある作品で、気に入りました。

「首飾り」 ★こちらで観られます
細い金の糸のようなものをいくつも束ねて編み上げた首飾りです。留め金には愛の象徴である車輪が2つつけられ、胸元にはほぼ円形の三日月が配されています。三日月には魔よけの意味があるのだとか。非常に繊細かつ豪華な首飾りでした。ローマ帝国の技術は半端じゃないw


<第6章 祭壇の神々>
ポンペイの家々に祭られた神像のコーナーです。何故か5章より先に6章がきました。ポンペイの家々には、「ララリウム」と呼ばれる祭壇が設けられ「ラル」という家の守り神や「ゲニウム」という家父長の守り神を祀っていたそうです。その信仰では、神々と協調して平和を築くのが大切と信じていたと解説されていました。

「ラル小像」 ★こちらで観られます
これが「ララリウム」の語源となった「ラル」の像で、角杯を持った手を挙げる若者の姿をした神の像です。頭に植物の冠を被り、結構人間的な感じですが覇気を感じました。

ここには他にもユピテル(ゼウス)、ヘルクレス、ウェヌス(ヴィーナス)、ミネルウァ(アテナ)、メルクリウス(マーキュリー)、イシスなどの像もあり各地の神々が習合したような感じでした。片足をあげたウェヌス像は特に好みだったかな。


ということで、この辺で大体半分くらいです。当時の様子がわかる構成も面白く、充実した内容となっています。まだまだ後半にも素晴らしい展示が続いていましたので、次回は後半をご紹介しようと思います。


 ⇒後編も書きました。こちらです。




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ユビュ 知られざるルオーの素顔 【パナソニック電工 汐留ミュージアム】

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で「正岡子規と明治の鉄道」を観た後、隣にあるパナソニック電工 汐留ミュージアムで「ユビュ 知られざるルオーの素顔」を観てきました。

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【展覧名】
 ユビュ 知られざるルオーの素顔

【公式サイト】
 http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/exhibition/10/100410/index.html

【会場】パナソニック電工 汐留ミュージアム
【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅  都営大江戸線汐留駅

 

【会期】2010年4月10日(土)~2010年6月13日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
この美術館は元々ルオーの作品がセールスポイントなので、よくルオーの作品展をやっているイメージがありますが、今回は『ユビュおやじの再生』という版画集にスポットを当てた内容となっていました。これは今まであまり全貌を明らかにされていなかった観点の展覧会のようです。

<ユビュおやじの再生>
そもそも「ユビュおやじ」とは何ぞや?という所からですが、元はフランスのアルフレッド・ジャリが創作した不条理な劇『ユビュ王』の主人公です。この劇は当時のフランスで大いに流行ったようで、その作品に即発された画商のアンブロワーズ・ヴォラールがユビュの使用権を買い上げ、フランスの植民地を舞台とした『ユビュおやじの再生』という著書を書きます。そして、その挿絵をルオーに依頼したのが、一連の作品のきっかけになりました。 挿絵の依頼は1917年で、1918~19年頃には22点の挿絵を完成させたようですが、1928年に再加筆や修正が行われ、1932年になって『ユビュおやじの再生』が出版されたようです。この展示では加筆の様子などが分かりますが、かなりこだわりがあったように思います。 また、ルオーは挿絵を絵解きの為のものとせずに、ルオー自身の視点で描いていると解説されていました。最初のコーナーにはそうした22点の挿絵がずらっと並んでいました。

ちなみにアンブロワーズ・ヴォラールは印象派の肖像作品にも出てくる人で、セザンヌ、ピカソ、ゴーギャン、ゴッホ、ルオーなどを有名にした画商です。
 参考:アンブロワーズ・ヴォラールのwiki

ジョルジュ・ルオー 「バンブーラ踊り」
両手を挙げて立つ腰巻をした上半身裸の黒人男性が描かれている版画作品。両手は異様に長く、足よりも長く描かれていて力強さとインパクトがありました。解説によるとルオーの原始美術への憧れを示しているようです。

この辺りには画面いっぱいに描かれた上半身の肖像画(版画)が多かったように思います。

ジョルジュ・ルオー 「結婚」
2人の裸の黒人男女が抱き合っている絵です。(物語上ではユビュと黒人女性の結婚らしいです。) 輪郭が太くて曲線が多い描写で、力強さとしなやかさを感じました。

この辺りにはルオーの手紙なども展示されていました。また、パソコンで『ユビュおやじの再生』を読むことができるようになっていました。

ジョルジュ・ルオー 「マリココ」 ★こちらで観られます
今回のポスターの作品で、これは今後のバテケ族の王の姿らしいです。簡略化されているけれども描かれた人の個性を感じ、力強い雰囲気があるように思います。解説によると、「ルオーの描く黒人ほど黒人らしい黒人は見たことが無い」と評されたそうです。

ジョルジュ・ルオー 「行列」
男か女かも分からないくらい簡略化された黒人が並んでいる様子が描かれ、右にはちょっと雰囲気の違う服と帽子を身につけた人(植民者?)が描かれています。黒く太い輪郭で描かれ、この作品からも曲線に生命感を感じられました。

ジョルジュ・ルオー 「画商ヴォラールと摺り師クロへのオマージュ」
手紙が絵になっているような作品です。作品の隣に訳が描いてあるのですが、内容がよくわからなかったですw セザンヌへの批判のようなもの? 難しかったです(><)

<エチュード>
このコーナーは下絵や原画などのコーナーでした。下絵は完成と区別がつかないくらいで、微妙な変更を加えていたようです。

ジョルジュ・ルオー 「植民地行政官」
1918年、1919年、1935年の作品が並んで展示されていました。その修正具合がわかるのですが、本当に微妙w かなりのこだわりをもって挑んでいたことがわかります。

このほかにも先ほどの「バンブーラ踊り」や「大きな帽子の娼婦」「熱帯の風景」なども比較展示されていました。雑誌の間違い探しコーナーみたいに、それぞれの違いを見つけてきましたが、私にはどうしてこのように直したのか理解するのは不可能でしたw

<ヴァリアント(類似、再作成)>
こちらは『ユビュおやじの再生』の挿絵と似たような絵を紹介するコーナーでした。少し色や形が違う作品や、ポーズだけ似ていて全く異なる人物になっている作品など様々でした。

ジョルジュ・ルオー 両腕を挙げた裸体像 ★こちらで観られます
「バンブーラ踊り」の類似作品です。肌の色がオレンジ色に変わり、顔つきや背景もガラっと変わっています。ポーズもちょっと違うし、違う点の方が多いかも。派生しているのがわかり面白かったです。

最後の方はあまり関係ない作品もあったかな。ルオーのコレクションで名高い出光美術館の作品が多かったように記憶しています。


<特別展示>
最後は今回の特別展とはあまり関係ないコーナーです。このミュージアムのルオーの油彩コレクションを集めた部屋で、新収蔵品が3点ありました。

ジョルジュ・ルオー 「古びた町外れにて 又は[台所]」
古びた台所を描いた作品で、壁にはフライパンなどが描かれ、部屋の中で2人の人物が何かをしています。手前の男性はキリストらしき人物とのことでした。

ジョルジュ・ルオー 「キリスト」
うつむく横向きのキリストが描かれ、頭の上には赤い光りが描かれています。また、背景には海が見えます。色鮮やかで透明感があり、最高傑作の1つではないかと解説されていました。


ということで、1つの画集を深く掘り下げたような内容でした。ルオーが好きな人には面白いだろうとは思いますが、ちょっと玄人向けかも?と思う内容でした。


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正岡子規と明治の鉄道 【旧新橋停車場 鉄道歴史展示室】

先週の日曜日に、新橋に行って、旧新橋停車場 鉄道歴史展示室とパナソニック電工汐留ミュージアムの展示を観てきました。まずは無料で入れる旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で「正岡子規と明治の鉄道」を観てきました。

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【展覧名】
 正岡子規と明治の鉄道

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/shinbashi/index.html

【会場】旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅  都営大江戸線汐留駅



【会期】2010年4月6日~7月19日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
特別展と言ってもそんなに広いところではなく15分もあれば観て周れるくらいです。今回の展示は正岡子規の名前が入っているものの、どこら辺が正岡子規なのかちょっとわかりづらいかもw まず最初の方には東北本線に関する資料や正岡子規が東北を旅したときの旅風景の写生や写真などが展示されていました。当時の様子がわかり、汽車、徒歩、馬、人力車なども使って東北をめぐったのがわかります。
また、正岡子規と言えばいち早くベースボールを日本に紹介した人でもありますが、野球についても詩?が残されていました。後はいつもどおりの資料展示かな
 参考;正岡子規のwiki

ということで、そんなに充実しているわけではないですが、無料で観られるし鉄道に関する詳しい資料があるので、鉄道好きには楽しいかもしれません。
この後、パナソニック電工汐留ミュージアムにハシゴしてルオーの版画の展示を観てきました。


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六本木クロッシング2010展:芸術は可能か? 【森美術館】

森アーツセンターギャラリーでボストン美術館展を観た後、さらにハシゴして森美術館で「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」展を観てきました。この展覧会は以前この美術館で行われた「アイ・ウェイウェイ展」の実験的な取り組みを活かし、写真撮影が可能な美術展となっていました。
 参考記事:アイ・ウェイウェイ展 何に因って? (森美術館)

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【展覧名】
 六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?

【公式サイト】
 http://www.mori.art.museum/contents/roppongix2010/related/index.html
 http://www.flickr.com/groups/moriartmuseumrx2010

【会場】森美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2010年3月20日~7月4日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日19半時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この展覧会は日本の現代アートが題材で、現在活躍中の作家さんの作品が多々並んでいます。夜に行ったせいかそれほど混むこともなく、自分のペースで観ることができました。しかし、映像作品の1つは上映中に途中入場できないものがあり、それは諦めてきたので1時間くらいで観て周ってきました。そして、冒頭に書いたように写真が撮れましたので、それを使ってご紹介しようかと思います。

 写真は営利目的に使うものではありません

展覧会の入口に写真撮影の注意事項がありますので、撮影の際はよく読んでルールを守ってください。
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また、公式サイトにも以下のように書かれていますので抜粋。
 公式サイト(抜粋元):http://www.mori.art.museum/contents/roppongix2010/related/main.html#02
*********** 抜粋 ここから *******************************************************

【撮影された写真の利用に関して/When using photographs taken of the exhibition】
●撮影された作品写真は、非営利目的の利用でお使いいただけます。営利目的には利用できません。
●撮影された作品写真に変更を加えることはできません。
●本サイトに写真をアップロードされるときに、「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止」をお選びください。
●撮影された作品写真に来館者が写っている場合、その写真の公表にあたって移りこんだ方の肖像権に触れる場合がありますので、ご注意ください。

【写真を撮るときの注意/Regulations for photographing】
館内にて撮影される際、下記の行為はご遠慮ください:
●作品に触れない
●他の鑑賞者の鑑賞を妨げない
●フラッシュを使わない
●動画の撮影は行わない
●撮影不可の表示サインの作品の撮影は行わない

*********** 抜粋 ここまで *******************************************************

なお、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンでライセンスをダウンロードしてライセンス条件を記載することで掲載も可能です。(全部、入口の注意事項に書いてあります。)

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
 http://www.creativecommons.jp/
 http://creativecommons.org/about/downloads/

前置きが長くなりましたw それではいくつか気になった作品をご紹介します。

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88x31.png
作家:照屋勇賢 「来るべき世界に」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

この作品は「沖国大米軍ヘリ墜落事件」からインスピレーションを得た作品で、墜落現場が封鎖されて大学関係者も立ち入り出来なかったのに、ピザの配達人だけは通行を許可されたというのが皮肉になっているようです。ピザの箱の中にはスケッチが描かれていました。
 参考:沖国大米軍ヘリ墜落事件のwiki


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88x31.png
作家:照屋勇賢 「告知-森」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

こちらもピザの作品と同じ方です。これはシャネルの紙袋を木の形に穴を開けた作品で。どうやら環境問題を取り上げているようです。他にも高級ブランドやマクドナルドの袋を使った作品もありました。


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88x31.png
作家:志賀理江子 「シリーズ <カナリア門>」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

こちらは円形にずらっと並んだ写真作品です。写真だけど何が写っているのかよくわからない感じのものもあり、幻想的な感じでした。


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作家:相川勝 「CDs」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

この人の作品はつい最近、アートフェア東京2010でも鑑賞しましたが、そこで教えていただいた通り、この展覧会にも出展されていました。
 参考記事:アートフェア東京2010 (東京国際フォーラム) <eitoeiko>
CDを聞くと、相川氏が自分の声で演奏や歌を真似した音楽が流れますw うーん、微妙に違う気がw


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相川勝 「CDs」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

こちらはCDのジャケットです。よく観ると本物のジャケットを手描きで模写したものであることがわかります。ライナーノーツとかも手描きでした。 それにしても私の部屋にあるCDとの被り率が高くて親近感がw ナパームデスとかまであったのは違う意味で感動。

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作家:ログズギャラリー 「DELAY_2007.5.26」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは映像のコーナー。自動車から観た風景を64個のモニターで流すものです。ちょっとずつ時間差なのかな。中々スタイリッシュでした。


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作家:加藤翼
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

この人も映像作品なのですが、これは「引き倒し」というプロジェクトの1場面です。大きな木の箱を引っ張り、引き起こして倒すという行動によって他者とのコミュニケーションを生むのだとか。

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作家:加藤翼
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは先ほどの「引き落とし」で使われる木の箱のモデルのようです。映像で観ると、実際に使っているのはもっと大きいものなのかも。


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作家:HITOTZUKI(Kami+Sasu) 「The Firmament」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

この作家は「日と月」を意味する2人組のユニット(Kami氏とSasu氏)で、男女や陰陽という相反する要素を1つに融合するという意味があるそうです。部屋一面に描かれたポップで鮮やかな絵が躍動的で明るいイメージを持っていました。


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作家:宇治野宗輝 「TANSU ROBO」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

なんだかドンドコと音がするぞ?と思ったら、家電製品などを組み合わせてテクノ風の音楽を鳴らす作品がありました。こちらはロボットのようです。

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作家:宇治野宗輝 「CAR」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

ロボットの隣には車もあり、こちらも音を鳴らしています。この他に「TOWER」という作品もあり3つのセクションで1つの音楽を作っていました。


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作家:小金沢健人 「CANBEREAD」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

こちらは映像作品。部屋一面にグラスの上を指でこする映像が流され、その音も流れていました。意味はわかりませんが、部屋一面に映っているのは非日常的な感じがしました。


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作家:青山悟
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

こちらは暗い部屋の中にぼ~っと浮き上がるように展示されている刺繍の作品です。絵だと思ったくらい精巧にできていました。新聞の一部を引き伸ばしたような作品もあって、解説を読むまで刺繍とは気づけなかったw


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作家:森村泰昌 「なにものかへのレクイエム(独裁者を笑え スキゾフレニック)」
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは作家自らがチャップリンの「独裁者」を真似して演技したものです。2つの画面で英語で話したりしていました。ちょっと珍妙な感じもしますが面白いです。


最後のあたりには今回のタイトルにもなった「芸術は可能か?」という作品もあり、様々な作家の名言などがありました。


ということで、これ以外にも沢山の作家の作品があって、どれも何だこれ??という驚きがあり私のような素人でも楽しめる内容だったと思います。日本の新進の作家さんたちの自由な発想力には驚かされます。ユーモアたっぷりの展覧でした。 ボストン美術館展とセットで観てみるのも面白いかと思います。


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ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想後編 【森アーツセンターギャラリー】

前回の記事に続き、ボストン美術館の感想となります。混み具合などについては前編に書いていますので、読んでいない方は前編から読んで頂けれると嬉しいです。
 前編:ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想前編 (森アーツセンターギャラリー)

今日は4章から8章をご紹介しようと思います。まずは概要のおさらいです。

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【展覧名】
 ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち

【公式サイト】
 http://www.asahi.com/boston/
 http://www.roppongihills.com/art/events/2009/12/macg_boston.html

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2010年4月17日(土)~6月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前編は伝統的な絵画が多かったように思いますが、後半は印象派の作品が多かったと思います。特にモネは1つの章になるほどの充実振りでした。

<IV 描かれた日常生活>
4章は生活の中にある風景を描いた作品のコーナーでした。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「花輪を編む娘」
タイトルどおり立って花輪を編み娘が描かれ、手に視線を向けて作っています。背景には森と城が見え、これはコローがイタリア旅行した頃を思い出して描いたそうです。少しぼやけたようなコローらしい描写で少女の周りが柔らかく感じました。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「鎌を持つ草刈り人」
これは一昨年に西洋美術館のコロー展でも展示されていた作品なので、ご存知の方も多いかも。頬杖をついて左手で鎌を持った女性が、親しげな表情でこちらを見ています。観ていると女性と対話しているような感覚になるのが面白い作品です。

ジャン=フランソワ・ミレー 「馬鈴薯植え」 ★こちらで観られます
ミレーらしい主題で畑で農作業をしている夫婦が描かれている作品です。くわで土を掘る夫、手で馬鈴薯をなげる妻、背景には木の下で休む赤子とロバも見えます。遠く見える野原や空は明るく、光が2人当たり崇高な雰囲気すらありました。

エドゥアール・マネ 「音楽の授業」
先日のマネ展の記事で、マネはサロンに出品し続けたとご紹介しましたが、この作品もサロンに出品した作品です。ギターを持ったひげの男性と、楽譜を膝に乗せた女性が描かれています。2人とも黒っぽい服を着ているのはマネならではの黒へのこだわりでしょうか。特に女性のドレスが艶やかです。何故か2人の視線はあわず、2人ともどこを見ているのかよくわからないのが気になりました。何か意味があるのかな? また、明暗の対比と奔放な筆さばきにベラスケスの影響が観られると解説されていました。
 参考記事:マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ガーンジー島の海岸の子供たち」
中央にすみれ色の帽子を被り、子供たちを軽く押さえている白っぽいドレスの女性が描かれ、その右にはピンクの服の女性、左には座っている子供たち、背景はちょっとぼやけた感じですが夏の浜辺で遊ぶ子供たちが描かれています。中央の女性は非常に優美で、慈愛を感じさせる表情に心を奪われました。明るく爽やかで、今まで観てきたルノワールの作品の中でもかなり好みの作品となりました。

クロード・モネ 「アルジャントゥイユの自宅の庭のカミーユ・モネと子ども」 ★こちらで観られます
赤とピンクの花が咲き誇る庭に腰掛けて針仕事をしている妻と子供の姿を描いた作品です。花の赤、草の緑、妻と子供の服の青と、色の使い方も面白いですが、何よりも幸せに満ちたのんびりとした風景が心に残りました。どうやらボストン美術館はモネの作品の揃えは特に素晴らしいようです。

エドガー・ドガ 「田舎の競馬場にて」 ★こちらで観られます
こちらは第1回印象派展に出品した作品だそうです。競馬場を題材にした作品なのに、競馬場は背景に使われているくらいで、手前に大きく描かれた見物人の馬車が主役の絵となっています。馬車には子供に授乳する母親や、ちょこんと座った犬など一家団欒の様子が描かれていました。解説によると、馬車の馬は画面の外にはみ出ていて、これは浮世絵の技法からの影響とのことでした。見た瞬間、ちょっと左に寄ってるぞ?と思ったらそういうことなんですねw

<VI モネの冒険>
さて、今回の展示はモネ好きの人にはたまらないコーナーがあります。10点のモネの風景画が展示されているこのコーナーには、モネの代表的な連作が少しずつ楽しめるようになっていました。どれも素晴らしくて、私のテンションは最高に上がってしまいましたw (何故か6章となっていますが5章より先に展示されています)

クロード・モネ 「アルジャントゥイユの雪」
街からちょっと外れた場所から描いた作品です。点で表された雪が降り、傘をさした人たちや雪の積もった街が見えます。ちょっと薄暗くて寒さが伝わってくるようでした。 解説によると、水平の草地や垂直の塀が描かれ安定した構図のようです。

クロード・モネ 「ヴァランジュヴィルの崖の漁師小屋」 ★こちらで観られます
この小屋の絵は(似たような絵を)よく見ますが、この作品は特に良い作品に思います。光に溢れた鮮やかな色合いで、海の崖に立つ小屋が描かれています。海は緑が混じった青で、オレンジの小屋とは補色関係であると解説がありました。また、海の上に白いものが描かれているのですが、それが船なのか波なのかわからないくらい簡略化されていました。 これだけ明るいと心も晴れるようで、爽やかな気分になれました。

クロード・モネ 「積みわら(日没)」 ★こちらで観られます
これも私が今まで観てきた積み藁の中でもかなり好みの作品です。積み藁が夕陽をまとって赤く染まっている絵です。ちょうど積み藁が夕陽をさえぎっていて、後光が差しているかのように輪郭が輝いています。その日光のやわらかな表現が素晴らしく、心休まる風景でした。

クロード・モネ 「ルーアン大聖堂の正面とアルバーヌ塔(夜明け)」 ★こちらで観られます
連作シリーズにはルーアン大聖堂もありました。青く描かれた聖堂が、霧の中に立っています。後ろの塔には日が当たりだしたのか薄いピンクに染まってきていて、夜明けの頃の空気感があります。静かな雰囲気ながらも夜明けの清清しさや、心地よい明るさを感じる作品でした。

クロード・モネ 「睡蓮の池」
モネの連作と言えばやはり睡蓮は外せませんが、勿論この展示にもありました。これは自宅の日本風の太鼓橋の周りを描いたもので、赤や緑が混じった風景は抽象画のようにすら思えるくらい簡略化され、色が主役になっています。しかし、ちょっと離れてみると水面の動きまで感じられるようで驚きました。素晴らしいです。

<V 風景画の系譜>
5章は風景画のコーナーです。ちょっと時代が戻って印象派以前の作品が多かったかな。

テオドール・ルソー 「森の中の池」
バルビゾン派のTルソーの作品。手前に木々に囲まれた暗い池が描かれ、奥には日の当たる草原に牛達が見えます。全体的に非常に緻密に描かれ、特に手前と奥の明暗の対比を感じます。解説によると、池が描く曲線なども慎重に構成されているのだとか。単に綺麗な風景ってだけでなく奥深いです。

ギュスターヴ・クールベ 「森の小川」
森の中の暗い小川と、その川べりでこちらを見る鹿が描かれています。背景には画面をはみ出して伸びる木々が描かれ、非常に力強さを感じ迫力がありました。はみ出し者のクールベに似つかわしいかもw


この章の後にまた休憩所があります。ここまでの記事でわかるかと思いますが、実に様々な時代・地域・流派の作品が並んでいるせいか、休憩所にはこの展示に出品されている画家の簡単なプロフィールなどが紹介されていました。休みながらおさらいもできる中々良い趣向でした。


<VII 印象派の風景画>
7章は印象派の風景画が並んでいました。と言ってもここまででもだいぶ並んでたとは思いますがw

ポール・シニャック 「サン=カの港」
新印象主義のシニャックの点描で描かれた作品です。砂浜を描いているのですが、シニャックにしては点が小さいような気がします。また、独特のピンクや紫がかった色合いもあまり感じず、ちょっと薄めに感じました。私があまり観たことがないシニャックのように思いました。

アルフレッド・シスレー 「サン=マメスの曇りの日」 ★こちらで観られます
大好きなシスレーの作品も3枚あり、特に気になったのがこの作品です。セーヌ川のほとりを描いた絵で、川沿いの木や街、木材の作業をしている人、船などが見えます。また、画面の多くの部分は曇り空が描かれ、雲がリズミカルな模様で描かれていました。普通、曇り空なんてつまらないと思うだろうに、こんな面白く描きあげるとは…。そのセンスが凄いとしか言いようが無いw

ポール・セザンヌ 「池」
緑豊かな池のほとりで寝転がったり座っている人々が描かれた作品です。観ていると平面的な感じを受け、遠近感もおかしな感じです。表現の実験的な作品なのかもしれません。後世に絶大な影響を与え時代を作り上げたセザンヌの新しい表現を感じる作品でした。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「オーヴェールの家々」 ★こちらで観られます
今回の目玉作品の1つでポスターにもなっている作品です。明るい色彩で家々が描かれ、力強さを感じる一方、流れるような印象も受け、手前に描かれた家の屋根の色からはリズム感も感じます。また、間近で観るとゴッホらしく厚く塗られた筆跡がよく分かりました。ゴッホは直接感情に訴えかけるものがありますね。

カミーユ・ピサロ 「エラニー=シュル=エプト、雪に映える朝日」 ★こちらで観られます
ピサロも3枚あって特に気に入ったのがこの作品で、これは自宅の窓から描いたそうです。 薄いオレンジがかった枯れ木と雪原が描かれ、手前には両手にバケツ?を持った女性が描かれています。雪の色には紫や青も使われ影の表現も見事です。全体的に暖色系なせいか、冬の雪景色なのに温かみを感じる作品でした。解説によると当時ピサロは「自然に対する感動を感じる」と賞賛されたようです。

<VIII 静物と近代絵画>
最後のコーナーは静物のコーナーでした。

アンリ・ファンタン=ラトゥール 「卓上の花と果物」 ★こちらで観られます
卓上に置かれた洋ナシ、葡萄、桃などを描いた作品です。本物のような質感がありました。解説によると構成もよく練られているようです。左の方のことかな?

ジョルジュ・ブラック 「桃と洋梨と葡萄のある静物」
いかにもブラックの作品といったキュビスム様式で描かれた静物です。輪郭が太く簡略化されていました。多面的というのはあまり感じなかったかなあ。
このコーナーにはマティスなどもありました。

ということで、80点の展覧で40点近く紹介したと思いますが、これでも紹介しきれてない感がしますw 本当に全部気に入るくらいの内容で、心底満足できました。これは近いうちにもう一度行こうと心に決めております。 会期が進むと混む可能性があるので、気になる方はお早めにどうぞ。
 ⇒後日、再度行ってきました。
  参考記事:ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 2回目(森アーツセンターギャラリー)

この後、さらにハシゴして森美術館で「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」を観てきました。六本木クロッシング2010では写真撮影もできました(勿論ルール厳守)ので、次回はそれをご紹介しようと思います。


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ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想前編 【森アーツセンターギャラリー】

マドラウンジでお茶をした後、森アーツセンターギャラリーへ行って、「ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち」展を観てきました。80点の展示でしたがあまりに見所が多くて30点くらいメモを取ってきたので、久々に前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち

【公式サイト】
 http://www.asahi.com/boston/
 http://www.roppongihills.com/art/events/2009/12/macg_boston.html

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2010年4月17日(土)~6月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
行ったのは初日だったのですが、早速多くの人で賑わっていました。1つの絵に3~4人程度が付いているくらいの混み具合で、絵と絵が離れているところはそんなに気にならないのですが、狭くなっているところはちょっとキツいかもしれません。六本木はヒルズは観光地ということもあって混んでるのかも。会期が進むにつれ、さらに混むことも予想されます。

さて、肝心の中身についてですが、ボストン美術館の16世紀~20世紀の名品が並び、テンションが上がりっぱなしの内容でしたw 構成は題材のジャンル(肖像とか風景とか)で分けられていて、あまり時代の流れや流派には拘らない展示だと思います。全部で8章あるのですが、今日は1章から3章をご紹介しようと思います。
なお、この展示には作品リストがありませんので、画家や作品の名前はメモと音声ガイドについてきたリストを元に書いています。間違っていたらすみません。

<I 多彩なる肖像画>
まずは肖像画のコーナーです。

ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケス 「ルイス・デ・ゴンゴラ・イ・アルゴテ」 ★こちらで観られます
初っ端にベラスケスの作品が観られます。これは彼の出世作のようで、描かれている人は詩人だそうです。こちらをにらみつけ、唇を閉じてちょっと不機嫌そうな感じがして、ベラスケスの観察眼を伺わせます。そして黒衣の黒の使い方は後のマネへの影響というのがわかる気がしました。

エドゥアール・マネ 「ヴィクトリーヌ・ムーラン」 ★こちらで観られます
ベラスケスの隣に並べて展示されています。つい先日、三菱一号館美術館で「マネとモダン・パリ」を見た際にベラスケスからの影響について詳しく紹介されていましたが、こちらの作品は実際にベラスケスの作品と見比べながら鑑賞できるのが面白かったです。強い光に当たったような女性の肖像で、隣の絵と同じような身の構え方で、こちらを見ている様子が似ていて、影響の1つの現われなのかも?と思わせました。
 参考記事:マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「ヨハネス・エリソン卿」 ★こちらで観られます
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「ヨハネス・エリソン師の妻 マリア・ボッケルーノ」 ★こちらで観られます
レンブラントが28歳の時の作品で、大きな2枚セットの夫婦の肖像です。どちらも全身が描かれていて、全身像で対の作品は全部で3対しかないそうで、これはその中の貴重な1対になります。まず左側は夫で、胸に手を当てて椅子に座る牧師が描かれています。そして右側には黒い広つば帽をかぶった黒衣の妻が描かれています。光が上半身にあたっているような表現で、黒も微妙な明暗があるようでした。さすがはレンブラントといった作品です。
なお、当時は肖像画は宗教画に比べて軽んじられていたそうです。(というか絵=宗教画みたいな時代だったんでしょうね。)

アンソニー・ヴァン・ダイク 「ペーテル・シモンズ」
ヴァン・ダイクの作品もあって嬉しい限り。これは胸に手を当てる黒衣に白いレースの服装の男性の肖像です。描かれた人は画家とのことですが、貴族のような格好をして描いたそうです。絵の左下にはうっすらと手が描かれていた跡が残っていて、元々は手を胸に当てるのではなく伸ばして描かれていたのがわかります。試行錯誤したのかな?色々と想像できて面白いです。

アンソニー・ヴァン・ダイク 「チャールズ1世の娘、メアリー王女」
こちらもヴァン・ダイクの作品で、10歳くらいのメアリー王女が描かれています。落ち着いた目をしていて、既に王女らしい風格を感じさせます。着ているドレスの光沢までわかるような表現や、細かく描かれたレースなどは驚きでした。

トマス・ゲインズバラ 「エドマンド・モートン・プレイデル夫人」
金色に輝くドレスをまとう横向きの貴族の女性を描いた作品です。その手には花のつぼみを持っていて優美です。どこか威厳を感じるのですが、柔らかい雰囲気も持った作品でした。

ジョセラ・フロランタン・レオン・ボナ 「メアリー・シアーズ」
蝶ネクタイのようなもの?と胸にバラの飾りをつけた青い服を着た女性の肖像です。背景が暗く、体には光があたって浮かび上がったように見えます。真顔でこちらを見る目も印象的でした。

エドガー・ドガ 「エドモンドとテレーズ・モルビッリ夫妻」
ドガの妹とその夫を描いた作品です。座って寄り添う2人がこちらを見ていて、妻(妹)は頬に手を当てて何か驚いたような表情をしているように見えます。どういう文脈かわかりませんが、生活の中のありふれた風景の中から一瞬を切り取っているような感じでした。そういったドガの感性が踊り子などの名作を生み出したのかな。

なお、この辺にはドガ2点、ロートレック、ピカソ、コローなどもありビッグネームが目白押しとなっています。

<II 宗教画の運命>
続いて2章は宗教画のコーナーです。

ドメニコ・フェッティ 「改悛のマグダラのマリア」
手を組み本を読むマグダラのマリアの横顔が描かれた作品です。空には赤子の顔が雲間から見え、右の背景には磔刑になっているキリストの影が見えドラマチックな感じです。衣服のひだや髪など強弱のついた表現かな。なお、この画家は35歳の若さで夭折したようですが、ヴェネツィアの画家達に大きな影響を与えたようです。

フランチェスコ・デル・カイロ 「洗礼者聖ヨハネの首を持つヘロデヤ」
上を向いて聖ヨハネの生首を持っているヘロデヤが描かれています。解説によると、この画家はカラヴァッジオの影響を強く受けたようで、恍惚の表情を見せるヘロデヤの表現からそれを感じさせます。(しかしヘロデヤをこのように描くにはカイロ独自らしいです) 光の劇的な使い方も素晴らしい作品でした。

エル・グレコ 「祈る聖ドミニクス」 ★こちらで観られます
エル・グレコの晩年の作品です。手を合わせ祈る聖ドミニクスが描かれ、背景は荒涼として暗い感じがします。解説によると、人物のはっきりした輪郭と背景の光を浴びた雲と空が対照的なのだとか。そう言われて観ると黒の部分とかは輪郭がわかるかも??という感じでした。なおこの作品はドガが所有していたそうです。

ジャン=フランソワ・ミレー 「刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)」
積み藁の近くで休んでいる農民達を描いた作品で、バルビゾン派のミレーらしい題材でどこが宗教画なんだろう?と思いました。実はこれは旧約聖書に書かれた「ルツとボアズ」の物語を描いた作品だそうで、宗教画の題材を借りて当時の農村を描いたようです。左のほうで青い服を着ている女性がルツなのだとか。どこか物語性があるのは感じましたが、素人が見ても気づかないですねw
 参考:ルツ記のwiki

ウィリアム・アドルフ・ブーグロー 「兄弟愛」 ★こちらで観られます
戸外で母親が2人の裸の子供を抱く姿が描かれ清廉さを感じます。解説によるとラファエロの聖母子からの影響が観られるそうです。アカデミックな柔らかく洗練された表現が素晴らしかったです。 なお、この作品はあえて「兄弟愛」という宗教画らしくない題名にしたとも解説されていました。

<III オランダの室内>
3章はオランダの室内がテーマとなっていました。ここだけ限定的なジャンルの分け方だなと思ったのですが、それには理由があります。17世紀のオランダはプロテスタントの社会で、宗教画は偶像と見なされていたそうで、その代わりとしてこうした室内の絵や、風景画、静物画などが発展したようです。プロテスタントのお陰で宗教画中心だった絵画も広がりを見せたのですね。

ピーテル・デ・ホーホ 「オランダの家の室内」 ★こちらで観られます
薄暗い室内に2人の女性が描かれた作品で、奥の部屋のドアは開き、明るい町並みも見えています。そのため明暗の対比が鮮明に感じます。また、室内の床の模様やドアに四角を多用しているのが幾何学的で面白いです。室内の暖炉の前に座る女性とカゴをもった女性は話をしているのかな。足元には犬も寄ってきて日常の一場面を想像させます。こうした家事をする姿はプロテスタントらしい風景と解説されていました。それにしても、どこかの展示で観たような気がするんだけど思い出せない・・・勘違いかもw

エマニュエル・デ・ウィッテ 「アムステルダムの新教会内部」 ★こちらで観られます
こちらは教会の内部を描いた作品で、大きな柱と美しい曲線を描く高い天井が目を引き神聖さを感じます。しかしよく観ると柱に粗相をしている犬や、床にお墓の穴を掘っている人たちなど意外と庶民的な雰囲気が漂い平和な感じです。また、外から差し込む光によってついた明暗が見事でした。

この辺で半分くらいかな。休憩スペースがあり、ボストン美術館について解説されていました。ボストン美術館はアメリカにも本格的な美術館を建てようという志を持った市民たちの寄付によってコレクションが集められました。現在ではなんと45万点もの作品があるのだとか。この先には印象派の作品が多かったのですが、印象派が現れて評価がまだ定まらない頃から印象派の収集に熱心な寄付者が多かったそうです。
次回はそうした印象派の傑作が集まっていた後半をご紹介しようと思います。お楽しみに…。


 ⇒後編も書きました。こちらです。




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マドラウンジ 【六本木界隈のお店】

前回ご紹介したサントリー美術館の「和ガラス -粋なうつわ、遊びのかたち-」を観た後、六本木ヒルズに移動し、東京シティビューの中にある「マドラウンジ」でお茶してきました。以前ご紹介した「Sunset Cafe ~Watta Juice!」のすぐ近くです。
 参考記事:TOKYO CITY VIEW と Sunset Cafe ~Watta Juice! (六本木界隈のお店)

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【店名】
 マドラウンジ

【ジャンル】
 カフェ/レストラン

【公式サイト】
 http://www.ma-do.jp/
 http://www.roppongihills.com/tcv/jp/others/mado_lounge.html
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 六本木駅

【近くの美術館】
 森美術館
 森アーツセンターギャラリー

【この日にかかった1人の費用】
 800円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_③_4_5_名店

【感想】
ここはいつもは席が埋まっているイメージがありますが、この日はすんなり席を確保することができました。ここでご飯を食べたことは無いのでご飯の方はわかりませんが、飲み物は先にレジで注文して席で待つスタイルのようです。

この日座った席は窓際だったのでかなり良い眺めです。この景色は西側かな。もうちょっと北の方は新宿方面で、青山霊園や新美術館も見える席もあいます。
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頼んだのはハワイコナのコーヒー、800円也。これで丁度1杯分くらいです。
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ハワイコナは久々に飲みましたが、こういう味なのかなあ。香りが良く、味は癖がなくすっきりして美味しいのですが、ちょっと薄めで物足りない感がw 酸味や苦味はあまりありませんでした。まあ私にはもっと庶民的なコーヒーの方が合ってるんでしょうw 同じ高いコーヒーなら椿屋の方が美味しい気もしますが、景色とセットならこのお値段も納得かな。
 参考記事:椿屋珈琲店 六本木茶寮 (六本木界隈のお店)

この後、「ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち」と「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」をハシゴしてきました。次回以降、特にボストン美術館展については詳しくご紹介しようと思います。
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和ガラス -粋なうつわ、遊びのかたち- 【サントリー美術館】

先週の土曜日に六本木で美術館巡りをしてきたのですが、まずはサントリー美術館で「和ガラス -粋なうつわ、遊びのかたち-」を観てきました。私が行ったのは前期でした。今回もメンバーズクラブのカードで入りました。(メンバーズクラブの紹介ページ

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【展覧名】
 和ガラス -粋なうつわ、遊びのかたち-

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/10vol01/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2010年3月27日(土)~5月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_4_⑤_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
今回の展示は「和ガラス」ということで国産のガラス器の展示となっています。テーマとしては結構大きな括りで、去年の同時期に行われた薩摩切子展のような歴史的な流れの構成ではなく、用途でコーナーを分けて優品を紹介するという感じでした。難しいことを考えなくても、一目で麗しいガラス器は広く人々に訴えるものがあると思います。満足度を④にしていますが⑤でも良い位好みの作品が多くありました。

参考記事:
  一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子 (サントリー美術館)
  一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子 2回目(サントリー美術館)


最初に簡単な説明があり、日本でのガラス工芸は飛鳥時代のビーズのような装身具が作られていたと解説されていました。本格的にガラスが作られたのは江戸時代で、ヨーロッパから入ったガラスに憧れて工夫されていったようです。今回の展示も江戸時代の作品が多かったかな。詳しくは章ごとにご紹介していこうと思います。まずはこの展覧会の象徴的な作品が展示されています。

「藍色ちろり」 ★こちらで観られます
深い藍色のちろり(急須のような形の酒を温める容器)です。取っ手を捻ってあるのが面白く技術を感じます。何と言ってもその色合いが美しいです。
また、この作品の近くには朝顔のようなデザインと色のガラス容器もあり可憐でした。


<プロローグ:「写す」 ― 憧れの和ガラス>
最初のプロローグの「写す」はヨーロッパの真似をして作られた作品を紹介するコーナーです。丸パクリだろwっていうくらい似ているガラス器などが展示されていました。

「つまみ脚付杯」 「つまみ脚付杯」 「乳白色ツイスト脚付杯」
ほとんどそっくりの3点です。2つの国産の杯は、台の部分が凝っているイギリスのグラスを真似て作ったものですが、台の部分の技法がわからなかったようで、捻ったような細工となっています。比べてみるとイギリスのものとは違った新しい味わいが出ているのが面白かったです。

このコーナーには絵や書物などもありました。特に面白かったのが加賀屋という店のカタログのようなもので、何枚か出版年が違うバージョンがあり、徐々に売っているガラス器が多様になっていく様子がわかります。特に切子(カットグラス)が増えていったようで、当時のガラス技術の進歩をうかがわせました。

他にも、色眼鏡や遠眼鏡(望遠鏡)が展示されていて、北斎の浮世絵の中には遠眼鏡を覗かせる商売があったことが描かれていました。当時のガラスへの関心が分かって面白いです。

<第1章:「食べる・飲む」 ― 宴の和ガラス>
1章は飲食の際に用いるガラス器を集めたコーナーでした。

「色替唐草文六角三段重」 ★こちらで観られます
六角形で唐草文が入った器が3段に重なっています。上段は緑、中段は無色、下段は黄色と色が違うのが面白いです。大正の民藝運動を起こした柳宗悦が中国で買ってきた作品だそうですが、元々は長崎で作られたもののようです。

「藍色十角鉢」
十角形の形の器です。形も面白いですが、ここには深いエメラルドグリーン、黄緑、紫、透明、藍色などの涼しげな色の器が並び眼に鮮やかでした。

「水色徳利」
その名の通り水色のとっくりです。色は口の方が濃く、下に向かってグラデーションがあり気品があります。形もすらっとした雰囲気で、細く伸びた口、柔らかい丸みの胴の部分は特に優美でした。シンプルですが色・形ともに素晴らしい作品でした。

「ギヤマン彫りふきのとう文緑色脚付杯」
ギヤマン彫りというのは欧米ではダイヤモンドポイント彫りと呼ばれ、ダイヤ並の硬い石をつけた工具でガラスの表面を引っかき、文様を描く技法です。この作品は鮮やかなエメラルドグリーンで、表面に薄っすらとふきのとうが描かれていました。可憐です。

「練上手徳利・脚付杯」
この展覧には「練上手」という作品がよく出てきましたが、これは色々な色を混ぜた状態で固めたガラスです。黄色、赤、緑などの縞模様が出来ていますが、全体的には茶色っぽいかな。不思議な色合いが面白いです。

「ガラス徳利・二段重・小皿入り提重」
簡単に言えばピクニック用の容器セットです。徳利・二段重・4枚の小皿があり、皿には寿を文様化したものが刻まれています。また、それらが入っている木枠も洒落ていて、格子状に組まれて中が覗けるようになっていました。

「色替八角皿揃」 ★こちらで観られます
中央に緑の8角形の皿があり、その周りを無色と紫の皿が取り囲み、1回り大きな八角形(ちょっと円に近い)を形づくっています。組み合わせが面白く、こうしてセットで残っているのは貴重なのだとか。また、解説によるとこの作品が作られた頃には既に絵ガラスの技法が伝わっていたようですが、あえてガラス本来の美しさを大事にしているようです。

「青色菊形向付 6口」
青色の器で、そうめんのつゆ入れみたいな感じかもw それぞれ縦に22本の溝があるのが美しい作品でした。

「薩摩切子藍色被脚付杯」 「薩摩切子紅色被皿」
この2つはちょうど去年の今頃に薩摩切子展でも展示されていたかな。特に薩摩切子紅色被皿の色合いの力強さはよく覚えていました。今回の展示は結構見覚えのある作品も多かったかも。

「切子蓋付三段重」 「切子三ツ組盃・盃台」 ★こちらで観られます
丸い台に乗った3つの切子が華麗で幾何学的な美しさを感じます。塔のようでカッコいいです。 ここら辺は去年の展示の美味しいところを持ってきた感じなのかな。

<第2章:「装う」 ― みだしなみの和ガラス>
2章はガラスを使った装身具に関するコーナーでした。ガラスで出来た櫛や印籠、手ぬぐいなどまでありました。

「グラヴュール芦に雁図櫛」
透明で何とも涼しげな感じの櫛で、べっこうに嵌め込まれた板ガラスに、飛び立つ鳥が描かれています。裏面から見ると違う絵柄に見えるのだとか。素晴らしい技術です。ここら辺りには他にも髪関連の装飾品が並んでいました。

「ビーズ飾り梅に尾長鳥文印籠・瓢形根付」
「ビーズ飾り印籠袋・切子瓢形根付」 ★こちらで観られます
ビーズ編みの印籠と、瓢箪型の根付です。特に後者は切子となっていて手が込んでいます。持ち主の洒脱なセンスが伺えました。現代にこんなストラップがあったら欲しいんだけどなあw

「ねじり棒手拭掛」 ★こちらで観られます
この辺で最も、おおっ!?と驚いたのがこの手ぬぐいかけです。S字を組み合わせた部分と、ねじった棒を丸めた円が1つになって手ぬぐいかけになっています。洗練されたデザインが現代的で衝撃でした。なお、ガラスのように強度が高くないものを手ぬぐいかけの素材にしているのは、非日常的な遊郭などで使用するためのものではないかと解説されていました。

2章で4Fは終わりです。3Fに降りるとすぐに、風鈴の音が聞こえてきました。(構成的には風鈴は4章のもののようです)

「風鈴の森2010」篠原まるよし風鈴
500個もの風鈴が天井から釣り下がっていました。ちりんちりんと涼しげな音を鳴らしていて、風流な空間となっています。これらは江戸時代のデザインの復刻が3種類、現代のデザインが3種類の計6種類のようでした。現代のはスズランのような形もあり、それぞれ微妙に音が違うようでした。ちなみに、風鈴を庶民が楽しめるようになったのは明治以降なのだとか。


<第3章:「たしなむ」― 教養と嗜好の和ガラス>
3章は文具や喫煙具が並んでいるコーナーでした。

「薩摩切子文具揃」 ★こちらで観られます
薩摩切子の文具セットです。赤と青のついたてのようなものがあるのですが、何に使うのかいまだによく理解できていませんw それにしてもガラス器で書道とは洒落た感じです。

「緑色ガラス棒入り鳳凰文透かし絵煙草盆」
こちらはタバコの箱です。縦に緑のガラス棒が沢山入っていて、光の加減では鳳凰が見えるようです。私も一生懸命観たのですがちょっと見えなかったかな。

「ビーズ飾り硯箱」 ★こちらで観られます
2mm以下のビーズで作られた硯箱の蓋が見事な作品。小さな6角形で大きな6角形を描く模様を作っています。果てしなく手間がかかっていそうで驚きでした。

「箸 5膳」
ガラス製の細いお箸です。青いお箸や透明のお箸が並び、繊細かつ華麗でした。美しさに目を奪われました。

「ビーズ飾り台子」
側面にビーズを並べて馬の絵が描かれいる大きな台です。(タンスみたいな棚) ビーズでここまで絵を描くとは…。恐るべし根性ですw


<第4章:「愛でる」 ― 遊びの和ガラス>
最後のコーナーは遊び心満点の非日用品のコーナーでした。

「ビーズ飾り風声」
これはビーズ飾りや金属板をぶら下げているもので、風が通ると金属同士がぶつかり合って涼しげな音がでる仕組みです。色と風の音で暑さを忘れようとした当時の風流な感性がうかがえます。他にも燈籠などもありました。

鳥高斎栄昌 「若那屋内白露」
遊女が手に金魚の入ったガラス器(金魚玉)を持っている浮世絵です。その顔は非常に嬉しそうで爽やかな雰囲気でした。

「金彩波頭文金魚玉」 ★こちらで観られます
実際の金魚玉も展示されていました、金魚を入れた丸っこい入れ物で、横には波紋が描かれています。周りをビーズで編んだ紐で縛って、持ちやすくなっていました。昔よく観た金魚鉢みたいな感じかな。可愛らしいデザインです。

「数眼鏡」
亀の甲羅のようにカットが入ったレンズです。中を覗くと、ものが万華鏡のように見えるのが面白かったです。なかなか遊び心を感じます。

「ガラス棒入り虫籠」 ★こちらで観られます
ガラスの棒で檻を作った虫かごです。非常に細いガラスで出来ていて、ちょっとはかない感じもするかな。見た目と虫の音を楽しんだのでしょうか。技術と遊び心に感心しました。


ということで、色々なガラスを使った作品にかなり満足できました。今回は2回の展示替えのようですので、後半の展示もまた観てみたいです。好みの展示でした。


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国立科学博物館の案内 (日本館)

前回に引き続き、国立科学博物館に関する記事です。今日は昔からある日本館のフロアをご紹介しようと思います。

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国立科学博物館 公式サイト:http://www.kahaku.go.jp/
前回:国立科学博物館の案内 (地球館)

<全球型映像施設「シアター36○」> ★詳細紹介ページ
いつ出来たかわかりませんが、2005年「愛・地球博」の長久手日本館にあった「地球の部屋」が日本館地下1階に移設され、「THEATER36○(シアター・サン・ロク・マル)」という名前になって展示されています。せっかくなので観に行ったら20分くらい並びました。
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この日は「マントルと地球の変動 驚異の地球内部」と「海の食物連鎖 太陽からクロマグロをつなぐエネルギーの流れ」 という映像を流していました。あわせて10分程度の番組です。
球体の中に橋が架かっていて、そこから球の内部全体に映る映像を観るのですが、結構な迫力で飛んでるような錯覚を覚えます。ちょっと酔いそうでしたが面白い施設でした。

<1F 自然を見る技> ★詳細紹介ページ
続いて1階。フーコーの振り子。
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1階は観測や機械が多いかな。大きな望遠鏡や時計が展示されています。
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建物自体も中々風情があります。
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2階3階はどこまでが2階か忘れたのでまとめてご紹介。

<2F 日本人と自然> ★詳細紹介ページ
<2F 生き物たちの日本列島> ★詳細紹介ページ
<3F 日本列島の生い立ち> ★詳細紹介ページ
<3F 日本列島の素顔> ★詳細紹介ページ

日本の動物の剥製のコーナー。剥製は色々なところで観ることが出来ます。
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こちらは日本についてのコーナー
今まで日本列島に住んだ人口の合計は5億人らしいです。各時代の人口がわかります。そう考えると今の人口は凄い…。
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若冲の絵にでも出てきそうな鶏の剥製。立派な尾です。
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こちらは各時代の日本の生活の再現コーナー。時代順に並び、一番最後に現代人というところがありそこに入って記念撮影もできますw
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3階から見上げる天井。影がちょっと変な形なのは風船の影です。
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こちらも剥製や標本。日本にも様々な生物がいます。
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海の生物たち。蟹が美味しそう…
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ここの目玉はフタバスズキリュウの化石です。高校生だった鈴木さんが見つけたのでその名がつけられました。
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アンモナイトの化石もあります。
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と、日本館は日本の自然などを主題としていました。地球館の方が色々あるとは思いますが、身近な感じで興味深いところです。日本館は観るのに1時間くらいだったかな(映像を合わせると1時間半くらい) 地球館と合わせてたっぷりと楽しむことができるので、一度は観てみると面白いかと思います。

おまけ:
出口にいる鯨。実物大かな。
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こちらは国立科学博物館の入り口にある機関車。
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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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■2011/11/21
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■2011/9/29
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■2009/10/28
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