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借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展 【東京都現代美術館】

昨日、映画『借りぐらしのアリエッティ』をご紹介しましたが、今日のお昼に東京都現代美術館に行って「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」を観てきました。色々ネタを溜め込んでいますが、人気がありそうなので先にご紹介しようかと思います。

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【展覧名】
 借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/karigurashi/
 http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/117/

【会場】東京都現代美術館
【最寄】清澄白河駅、木場駅、菊川駅など


【会期】2010年7月17日(土) ~ 2010年10月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3F(アリエッティの家):0時間20分程度
 1F(種田陽平展)   :1時間10分程度

【混み具合・混雑状況(祝日12時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_4_⑤_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
まだ始まって3日目でしたが早速込み合っていました。中に入ってしまえばそんなに混雑感は無いのですが、入場規制があったので混雑度は①にしました。 私が行った時間はチケットを買うのも中に入るのも待ち時間はありませんでしたが、特別展を観終わった14時頃には10分待ち、常設を観終わって帰る15時過ぎには15分待ちという感じで、列を作って並んでいました。
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スタッフの方に聞いた所、お昼頃が一番空いているらしく、その前後や開館直後は混みやすいようです(日によって違うとは思います) これから夏休みにかけてお客さんも増えると思いますので、ある程度の混雑は覚悟しておいた方が良いかもしれません。

さて、この展覧会は大きく分けて3階のアリエッティの家と1階の種田陽平展となっていて、まずは3階から観て行くことになります。今回の音声ガイドは中々に充実していて、3階では自動再生される効果音、1階では種田陽平氏本人による作品の解説を聞くことができました。効果音があると雰囲気が出ますので、借りてみるのも一興だと思います。


<3階> (ここからちょっとだけネタバレがあります)
最初は子供も楽しめるアリエッティの家の再現コーナーです。この家を観ても映画のネタバレは無いので、先にこの展示を観ても大丈夫です。まあ、多少なりともこの映画に興味がある方なら知っていると思いますので、ごく軽いネタバレをすると、アリエッティは指くらいの大きさの小人です。そのため、再現された家は我々が小人になったような錯覚を覚えるような品々で作られています。
まずアリエッティの部屋があり、その後には水汲み場、リビング、映画に出てくる仕掛け、お父さんの作業場、人間の部屋などが再現されていました。アリエッティの部屋自体もダンボールで出来てる設定ですが、壁紙が高島屋の包みだったり、あちこちに巨大な(自分が小さいので大きく見える)切手を額縁に入れて飾っていたり、ビンの栓で作った家具や、植木鉢で出来た釜戸、腕時計のベルトを外して壁に掛けた時計…と挙げたら限が無いくらい、あちこちから集めてきた品々が生活用具となっていて非常に面白いです。また、たまに巨大な虫がいたり、アリエッティが描いた落書きがあちこちにあるなど凝りに凝っていました。最後には庭の再現もあり、木のように見える草を縫って歩くと、3Fは終了です。ここまでで約20分くらいだったかな。 最早、展覧会というよりは会場自体が作品と言えます。本格的な造り込みで驚かされました。こんな機会は今しかないのでは?と思いますので、作品充実度は⑤にしておきました。


<1階>
続いて1階は、3階の巨大な再現を作った映画美術監督の種田陽平氏の展示となっています。まずはこの家のフロアプラン/間取りのイメージ画や、3階展示室の1/50の模型、庭の1/20の模型などは並んでいました。 …庭の模型には1つ1つの葉っぱにサイズ指定が描かれてました。恐るべし細やかさ…。
さらに進むと種田陽平氏の名言みたいなコーナーが少しあり、その後には今まで手がけた映画美術の仕事を振り返るコーナーとなります。ここからはいくつかの小コーナーに分かれていました。

[HOT SET]
欧米では撮影中のセットのことを「HOT SET」と呼ぶそうで、生き生きとしたセットであるべきという意味がありそうです。ここには種田陽平氏がセットを手がけた「有頂天ホテル」のホテルのロビーや、「キルビル vol.1」の和風の部屋などの、セットの写真や図案などが並んでいました。映画では実物のホテルを撮ったものに見えるけど、セットだったとは驚きです。しかも何年も使っている感じが出ているのに恐れ入ります。 さらにホテルのアメニティまで作られていたようで、それも展示されていました。
また、解説機を借りると、キルビルの撮影の時に、タランティーノ監督が人が死ぬシーンの度に喜んでた!など非常に面白い裏話が聞けました。

[TOWN]
街角そのものを作ってしまうという規模の大きいセットです。「ザ・マジックアワー」「不夜城」「ヴィヨンの妻」といった作品のセットの写真が展示されていました。特にマジックアワーは模型も展示されていて、寸法まで書いてあります。 いずれのセットも非常にリアルに作られていますが、それ以上に映画の内容を深く考察した上で作られている所が素晴らしいです。そう言えば先日観たシャガール展でも舞台美術の解説でシャガールが似たような事を言っていたような??と思いながら解説機を聞いていました。

[TRIP]
こちらは、「西の魔女が死んだ」「昴-スバル-」「怪談」「フラガール」「詭絲 -SILK-(台湾のホラー映画)」「いま、会いにゆきます」「冷静と情熱のあいだ」「仏」「死国」「千年旅人」「スワロウテイル」「悪人」(2010年秋公開予定)といった作品のセットの写真が並んでいました。特にスワロウテイルで大きな評価を受けたようです。また、悪人のコーナーでは映画の中で妻夫木聡と深津絵里が壁に描いた絵がそのまま切り取られて展示されていました。まだ公開されていませんが、公開されたらこれも見所になるかも?

[FAR AWAY]
ここは「何処か遠くに行ってみたい」というのをテーマに描かれた映画以外の為の絵のコーナーでした。絵本に出てきそうな光景から、外国らしい風景、ふとした日常にありそうな街角など、ほっとするような少し寂しいような絵が並んでいます。旅情を感じ、それぞれの構図も面白かったです。映画以外のためとのことですが、ストーリー性も感じさせました。

この辺には本人が出演している映像のコーナーもありました。ちょっと人が多かったのでここはパスしました^^;

[VARIATION + GHIBLI]
ここはまずローマの「チネチッタ」という撮影所のポスターがありました。世界の巨匠と呼ばれる美術担当が毎年手がけているそうですが、2009年は種田陽平氏が担当したそうで、世界的にも注目されているのがわかります。
その後はアニメ映画の「イノセンス」での仕事や、ミスタードーナツ、サッポロビール、日清などのCM、L'Arc-en-Cielの「花葬」、ポルノグラフィティの「アポロ」などのPVの仕事も紹介されていました。全く知りませんでしたが、意外と色々なところで種田陽平氏の作品を目にしているようです。
他にはジブリ美術館の「小さなルーブル展」で初めてジブリとコラボレーションしたことやオランダのインスタレーションの展覧会に参加したことなども紹介されていました。

これだけ多くのヒット作に携わっていた人だとは知らず、あれもこれもそうだったのか!と驚きがありました。解説機で聞く当時の話も、そこまで考えて作っていたのかと思うことばかりですので、この辺の作品が好きな方にはたまらない内容だと思います。


[アリエッティの世界]
最後は再びアリエッティに関する内容です。ここには美術ボードやアリエッティのイメージボードが並んでいました。美術ボードは等身大のアリエッティの像を置いてそこから世界がどう見えるのか、色々なものと対比しながら描いたそうです。また、アリエッティのイメージは初期と比べると最終版はだいぶ違うことがわかります。最初は青い服で髪はショートだったみたいで、完全に別人です。ラピュタのシータみたいなイメージもあったりしますが、どんどん変わっていって、その性格まで変わっていそうな表情が面白かったです。最後の最後では原寸大のアリエッティの部屋と居間の模型もありました。


ということで、後半は子供には分からないかも知れませんが、前半のアリエッティの家は興奮しまくっている子供が大勢いましたw 7/24~10/3は「こどものにわ」展も同時開催されるようですので、(私が行った時はまだこちらは準備中でした。) この夏休み、子供と一緒に楽しみたい方はアリエッティの映画を観てこの美術館に足を運ぶというのも良いかと思います。(映画好きの大人は後半も楽しめると思います。) 展覧会の後のショップはアリエッティ以外のジブリ作品のグッズも沢山ありました。

おまけ:来場者には小さなブックレットのおまけもついてきます。「借りぐらしのアリエッティ2 吉田昇美術ボード集」というもので、カラーのしっかりした本となっています。アリエッティの設定や美術監督のインタビューなども入っているのでファンには嬉しいグッズです。(1は前売りを買うと貰えたらしいです)
こんな感じ。100円玉と比べると大きさが分かるかと。
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映画「借りぐらしのアリエッティ」 ネタバレなし

つい昨日、公開初日だったスタジオジブリの最新作『借りぐらしのアリエッティ』を観てきました。まだ観ていない方も多いと思いますので、ネタバレ無しでざっくりとした感想を書こうかと思います。

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【作品名】
 借りぐらしのアリエッティ

【公式サイト】
 http://www.karigurashi.jp/index.html

【時間】
  1時間30分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_3_④_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_④_5_名作

【感想】
初日だったこともあってか、映画館は老若男女でぎっしり満員でした。早めに席を予約しておいて良かった…。
今回は新しい監督の作品ということで、どうなるのか全く予想ができず、期待と不安が半ばでしたが、どうやら心配しなくて大丈夫だったようです。今回は都会でも田舎でもない郊外の夏を舞台にしていて、ジブリならではの爽やかな雰囲気が出ています。明るく鮮やかな色彩のアニメーションは流石で、CGなどとは違う味わいがある映像となっています。それと、今回は音響もかなりこだわっていたんじゃないかな? 場面場面で使われる音や歌は映画を盛り上げていました。
さて、内容についてはネタバレになるので深くは追求しませんが、私は面白いと感じました。徐々に引き込まれていくようなワクワクした流れで、日常が非日常に見える世界観が良かったです。ただ、それを物足りないと感じる人もいそうな気もするので、賛否がわかれるかも?? 特に観終わった時にあれっ??という反応をしていた人が多かったかも。
あと、声優は芸能人が多いようですが、主人公は良かった。違和感無く個性を出していました。男の子の方も最初は棒であれ?と思いましたが、キャラに合っていたように思います。

ということで、私はぽにょより楽しめました。ただ、評価は分かれそうだなーとは思います。どこまで人気が出るかな??


後日、東京都現代美術館で「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」を観てきました。
 参考記事:借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展 (東京都現代美術館)




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シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い―交錯する夢と前衛― 【東京藝術大学大学美術館】

先週の土曜日に東京藝術大学大学美術館で「ポンピドー・センター所蔵作品展 シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い―交錯する夢と前衛―」を観てきました。シャガール展はあちこちでしょっちゅうやってるイメージがありますが、この展示はほぼ全てがパリのポンピドー・センターが所有する作品で、質・量ともにレベルの高い展示となっていました。

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【展覧名】
 ポンピドー・センター所蔵作品展 シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い―交錯する夢と前衛―

【公式サイト】
 http://marc-chagall.jp/
 http://www.asahi.com/chagall/
 http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2010/chagall/chagall_ja.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2010年7月3日(土)~10月11日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
まだ始まったばかりですが、結構な人気で会場は賑わっていました。1枚の絵に2~3人くらい付くくらいで、場所によっては混んでるなーと感じるくらいでした。
中身については、思った以上に充実した内容でした。シャガール展はリトグラフが中心だったりしますが、これは油彩が多くて良かったです。テーマとしても今までのシャガール展ではあまり見られなかった、ロシア・アヴァンギャルドとの関わりを主題にしていて、祖国ロシアでの活動なども知る機会となっていました。…詳しくは章ごとに気に入った作品を振り返りながらご紹介しようと思います。なお、最近ロシア・アヴァンギャルドに関する展示が多く、何度かこのブログでもご紹介しております。参考記事を読んで頂くと今回の展覧の理解が深まるかもしれません。

 ロシア・アヴァンギャルドの参考記事:
  ロトチェンコ+ステパーノワーロシア構成主義のまなざし (東京都庭園美術館)
  ロシアの夢 1917-1937 革命から生活へ-ロシア・アヴァンギャルドのデザイン (埼玉県立近代美術館)
  青春のロシア・アヴァンギャルド展 埼玉編
  「カナダ・アニメーション映画名作選」と「無声時代ソビエト映画ポスター展」
(余談ですが、↑の青春のロシア・アヴァンギャルド展は埼玉会場の前年にbunkamuraでもやっていたのですが、その時に出ていたシャガールは贋作騒ぎがありました…)


<第1章 ロシアのネオ・プリミティヴィスム>
まずはシャガールとネオ・プリミティヴィスムとの関わりのコーナーでした。シャガールは1887年にロシアのユダヤ人の町で生まれ、1909年にサンクトペテルブルグのレオン・バクストの教室に通って絵を学んだそうです。(レオン・バクストはセルゲイ・ディアギレフが率いる伝説のバレエ団「バレエ・リュス」の舞台装置を手がけるなどしてパリで成功を収めました人です。
 参考リンク:バレエ・リュスのwiki )

シャガールはフランスのフォーヴィスムの強い色彩を取り入れながら故郷の町などを描いていたようですが、素朴な手法はロシアのネオ・プリミティヴィスムのラリオーノフやゴンチャローワと結びつけることができるそうです。(詳しくは後ほど…) 1912年にはラリオーノフが組織した「ロバの尻尾」展というのにも参加していたようなので、彼らと交流を持っていたのは確かなようです。ここではラリオーノフやゴンチャローワの作品も並び、シャガールが彼らから影響を受けたのを観ることができるコーナーとなっていました。

マルク・シャガール 「死者」
街の通りに死んだ人が横たわり、その周りを燭台に乗った蝋燭が囲っています。道には、両手を挙げて悲しむ女や家に入ろうとする人、無関心に掃除をする人などが描かれ、屋根の上にはバイオリンを弾く人の姿も見えます。家に対してやけに人が大きく、素朴な印象を受けました。(プリミティブ≒原始・素朴) 解説によると、これはロシアの慣用表現を絵としたもので、子供の頃の記憶を元に描いたそうです。意味よりも本質を描くというスタンスなのだとか。

マルク・シャガール 「収穫」
頭に農作物の入ったカゴを乗せる女性を描いた作品です。黄色い上着、赤いスカート、青と白の木など、色の対比が強く、フォービスム(野獣派)から色彩の影響を受けたことが伺えます。解説によるとパリに出た後に描かれた作品のようで、あくまでも農作業というテーマに拘ったとのことでした。これも力強く素朴な雰囲気を感じさせました。

ナターリヤ・ゴンチャローワ 「収穫物を運ぶ女たち」 ★こちらで観られます
ロシアの女性画家ゴンチャローワの作品で、伝統的なロシアの民衆美術にインスピレーションを受けた「ネオ・プリミティヴィスム」の様式で描かれています。2人の女性が並んで頭の上に収穫物を載せている絵で、単純化されていて輪郭が太く、濃い色彩で平面的な感じがします。解説によると民衆版画を思わせるとのことで、確かにその通りに思いました。素朴ながらも心に訴える力がありました。

ナターリヤ・ゴンチャローワ 「葡萄を搾る足」
大きく描かれたタライと葡萄の紫に染まった足が描かれた作品です。背景には浮かぶように見える葡萄も見えます。また、何を表現しているのか分かりませんが、赤い線が流れるように沢山描かれていました。半分抽象画みたいな感じかも。隣の作品も似た雰囲気の作品でした。

ミハイル・ラリオーノフ 「風景」 ★こちらで観られます
ラリオーノフはゴンチャローワの夫です。これは庭に生えている木を描いた作品で、木の黄色、緑、家の柵の白などの色彩が目に鮮やかです。柵の下には犬の姿も見え、のどかな雰囲気がありました。解説によると、色彩、単純化、遠近感を無視した表現はシャガールに通じるそうです。

ナターリヤ・ゴンチャローワ 「ジャガイモ農園」
ジャガイモを掘ったり拾ったり袋に入れたりして収穫する女性たちを描いた作品です。全体的に平面的で、むしろゴーギャンみたいな雰囲気に近いようにも思え、生き生きした作品でした。
この近くには版画のコーナーもありました。


<第2章 形と光 -ロシアの芸術家たちとキュビスム>
シャガールは1911年にパリに到着し、翌年にはモンパルナスにあった「ラ・リュッシュ(蜂の巣)」という集合アトリエに住んだようです。ここには多くの芸術家、詩人、文学者などもいたそうで、ザツキン、リプシッツ、アーキペンコなどの彫刻家とも交流があったそうです。そうした芸術家達の影響で、キュビスムやオルフィスム(キュビスムをさらに抽象化したような作風)にも触れ、シャガールはキュビスムの形状とフォーブの強い色彩を持つスタイルとなったようです。
また、その頃モスクワではラリオーノフとゴンチャローワはキュビスムとイタリアの未来派を合わせたような「立体未来派」というグループに与したそうです。その後、さらにそれを推し進め、「レイヨニスム(光線主義)」という放射状の光線に基づいた作風へと変わっていきました。この章ではそうしたキュビスムに関連した作風・作者の作品が並んでいました。
 参考:キュビスムのwiki

アレクサンドル・アルキペンコ 「ドレープをまとった女性」
彫刻家の中でもかなり好きな作家です。キュビスムの彫刻作品で、曲線・直線などを多用しながら単純化された形態で、どこか優美さを感じる女性像です。独特の質感も好みです。

ナターリヤ・ゴンチャローワ 「帽子をかぶった婦人」
まるでピカソのキュビスム時代の作品のような感じの絵です。羽根付き帽子、目、五線譜、数字、アルファベットなどが画面に散らされています。解説によると、当時の雑誌にこの羽根付き帽子を被って写る画家本人の写真が載っていたらしく、この作品は画家自身を示しているようでした。また、未来派からの影響もあるとのことで、先ほどご紹介したネオ・プリミティヴィスムとはだいぶ違う作風で驚きます。

ミハイル・ラリオーノフ 「晴れた日」
これは、色とりどりの斜線が描かれていて、その上にペースト状の紙で出来た分厚いレリーフが付いた抽象画です。どうやら光を表現したようで、これが「レイヨニスム(光線主義)」という作風らしいです。解説によると、エネルギーである光を物質化しているとのことでした。ラリオーノフもがらっと作風が変わっています。

マルク・シャガール 「ロシアとロバとその他のものに」 ★こちらで観られます
これは初期の代表作と言える作品で、今回のポスターにもなっています。屋根の上にいる赤い牛と、その乳を飲む緑の子牛と人間の子供が描かれ、その後ろには首と体が離れた人が空を飛んでいます。ちょっとシュールな感じを受けますが、ロシアでは夢想している人のことを「頭が飛び立っている」と言うらしく、その慣用表現を絵にしているようです。よく見ると顔は空を見つめているようでした。また、足元の町並みに描かれた教会にはユダヤの象徴であるダビデの星が描かれるなどロシアの思い出を感じさせます。解説によると、詩人のアポリネールはこれを見て、「シュールナチュレル(超自然的)」と呟いたとのことでした。強い色彩で大きな画面に描かれていることもあり、印象に強く残る作品でした。

オシップ・ザッキン 「形と光」
キュビスムの彫刻家であるザツキンもかなり好きですが、彼もラ・リュッシュのメンバーだったようです。 これは金色の彫刻で、ボリューム感があり、凹凸が複雑な形をしています。解説によると、そこに光が当たると部分部分が強調されるとのことで、確かに観る角度によって雰囲気が違いました。

地下の展示はここら辺までです。続いて一気に3Fに移動します。なお、地下の奥には1時間近い本人出演の映像もありました。10分くらいだけ観たけど長いので途中退出w


<第3章 ロシアへの帰郷>
シャガールは1914年にベルリンで初の個展を開いたそうですが、丁度その年に第一次世界大戦が始まると、ロシアに留まることを余儀なくされました。また、その翌年には最愛の妻となるベラと結婚をするなど、シャガールにとっても激動の時期だったようです。 さらに1917年にはロシア革命(10月革命)が起き、シャガールはこれを好意的に受け止めました。1918年になると、その革命政府から芸術人民委員に任命され、故郷で美術学校を設立して運営することになりました。学校を運営する際にはロシアアバンギャルドの旗手であるカジミール・マレーヴィチを招いたのですが… 彼とは対立することになってしまいました。 シュプレマティズムという前衛的な抽象画を推し進めていたマレーヴィチにとっては、シャガールは古臭く見えたようで、カリスマ性もあったことから学生達はマレーヴィチについていってしまったようです。こうした経緯からマレーヴィチとは反目しあっていたようですが、彼から影響を受けている作品などもあるようでした。

ワシリー・カンディンスキー 「アフティルカ 赤い教会の風景」 ★こちらで観られます
最初に、同じロシア出身のカンディンスキーの作品が何点か並んでいました。彼もシャガール同様に世界大戦でロシアに帰還したそうです。音楽的で踊るような抽象画が有名なカンディンスキーですが、ここにはモスクワ郊外で描いた具象的な絵が並んでいました。どことなくセザンヌを思い出させるような色彩と構成に思えたかな。

マルク・シャガール 「緑色の恋人たち」 ★こちらで観られます
深い緑を背景に、濃い赤の服を着た女性と、その胸に寄り添う男性が描かれています。その緑と赤に加え、白っぽい肌など非常に色が映えているように思います。解説によるとこの作品はロシアのイコン(聖像)のように描かれているとのことでした。そのせいか、どこか神秘的な雰囲気を感じました。

マルク・シャガール 「立体派の風景」 ★こちらで観られます
曲線・扇形・直線を多用した抽象画のように見えますが、真ん中に白い建物が描かれ、これはシャガールの設立した学校を描いたものです。また、その前を青い傘をもって歩いているのはシャガール自身のようで、「傘の下」というのは神に守られていることを示すそうです。結果的にはマレーヴィチと反目してしまいましたが、この作品の二次元的な表現からはマレーヴィチからの影響も観られるようでした。

カジミール・マレーヴィチに基づく 「アルファ」「ゴタ」「ゼタ」 ★こちらで観られます
マレーヴィチの作品は建物の模型作品が3点ありました。(この説明の流れではマレーヴィチは嫌な奴にしか思えないかもw) 彼の進めていたシュプレマティズムというのは白地に濃い白の十字を描いたものとか、究極までに対象を排除した抽象画が有名ですが、模型作品は初めて観ました。これは石膏とガラスでできている真っ白な立方体の集まりで、現代人の私が観ても近未来的な建物に見えました。これと比べたら既存の芸術は旧態然と見えてしまっても仕方ないかも…。


<第5章 歌劇「魔笛」の舞台美術>
続いては何故か4章の前に5章がきました。一気に時代が進んで1964年のニューヨークの話になりますが、シャガールはメトロポリタン歌劇場のこけら落としの演目であるモーツァルトの「魔笛」の装飾衣装を依頼されたそうです。この章ではその衣装デザインや舞台装置などが並んでいました。

まずは衣装デザインのコーナーでした。魔笛はファンタジーの世界なので、役柄の特性を把握しながら作ったそうで、色とりどりの衣装に銀紙みたいなものが貼られていました。人物も感情豊かに描かれ、動物や怪物にまで衣装デザインがあったのも面白かったです。

マルク・シャガール 「モーツァルトへのオマージュ」
これは舞台背景の幕のデザインです。全体的に黄色が多く、鳥、バイオリン、抱き合う男女などシャガールらしいモチーフが描かれていまました。
この後にも幕のイメージなどがあり、コラージュの手法が観られました。なお、魔笛はモーツァルトが所属していた秘密結社フリーメイソンの思想が反映されているそうで、3という数字がよく使われるようです。シャガールはその信条そのものには興味はなかったようですが、よく理解して描いていたそうです。

マルク・シャガール 「背景幕 第Ⅱ幕第30場 フィナーレ」 ★こちらで観られます
これはフィナーレを飾る背景幕です。真っ赤な画面に沢山の人々が踊っているような絵です。これは太陽の赤い光で劇の内容にぴったり合い、歌劇を大いに盛り上げたそうです。 力強くも華やかでフィナーレに相応しい素晴らしい作品でした。


<第4章 シャガール独自の世界へ>
この4章が最後の章ですが、話は3章の直後に戻ります。しばらくロシアにいたシャガールでしたが、1923年にはパリに移住し、独自の道を歩みだしました。1940年代にはナチスがパリを占拠したので、ユダヤ人であるシャガールはプロヴァンスに逃れ、翌年にはアメリカに亡命したそうです。その亡命中に最愛のベラが急死すると、悲しみのあまりしばらく絵を描けなくなってしまいました。その後、なんとか立ち直ると1930年代に描いた大作に再び手を入れなおしたりしたそうです。このコーナーではそうした独自の世界から晩年にかけての作品が観られました。

マルク・シャガール 「家族の顕現」
イーゼルに向かうシャガールが描かれ、振り返った彼の背後には亡くなった弟や妹、最愛のベラが立ち、その足元には故郷の風景が広がっています。下の方は青、人々の上は赤、花嫁の白など、色彩の取り合わせが美しく、柔らかく温かみを感じる作品でした。解説によると、これは亡命した時にも持ち出せた作品だそうで、何度も描き直していたとのことでした。かなり好みの作品でした。

マルク・シャガール 「彼女を巡って」 ★こちらで観られます
これは1933年に描いた大作「サーカスの人々」を2分割した左側で、ベラの死後に手直しした作品です。現在は、大きな水晶玉の左横にいる頭の上下が逆になったシャガールと右側で頬杖をついて物思いに耽っているようなベラが描かれています。(←泣いているらしい)  絵の近くには元の絵の白黒写真もあり、現在と比べてみると、シャガールの持ち物は本から絵筆になっていて、シャガール本人であることが強調され、ベラは元々手を組んでいたようです。上部には軽業師や抱き合う花嫁・花婿が描かれるなど、「失われた幸せ」を強調するような修正となっているようでした。全体的に青で悲しい雰囲気に包まれ、ベラを失った悲しみがそのまま出ているように思いました。

マルク・シャガール 「日曜日」 ★こちらで観られます
ベラを失って悲しみにくれていたシャガールですが、その後1952年にヴァランティーナ・ブロドスキー(ヴァヴァ)と再婚しました。これはそのヴァヴァとシャガールの顔が空に浮かんで描かれた絵で、下にはエッフェル塔やノートルダム寺院、上にも町並みなどが描かれています。黄色、赤、白という感じで色がブロックに分かれているような感じで、色の鮮やかさが戻ってきたように思えました。やはり内面がそのまま絵に出てるようですね。

マルク・シャガール 「イカルスの墜落」
これは蝋で固めた鳥の羽で飛んで逃げたイカロスの伝説を描いた作品です。伝説では空から落ちてくるのはエーゲ海ですが、落ちる場所がシャガールの故郷に置き換わっているようです。沢山の人が逃げて見守っているのがちょっと酷いw これは90歳くらいの時の作品だそうで、イカロスに自分と重ねているとも解説されていました。


と言うことで、ロシアアバンギャルドとの関わりやシャガール自身の傑作も観られた充実の内容でした。私自身、まだまだシャガールについて知らないことが多かったので、今後の鑑賞にも役立ちそうです。今年は西洋絵画展の当たり年ですが、これもまた見逃せない内容だと思います。


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上野動物園の案内 西園

前回の記事に続き上野動物園の続きになります。今日はモノレールの駅より不忍池方面の西園についてご紹介しようと思います。

まずは前編へのリンクと概要のおさらいです。
 前回の記事:上野動物園の案内 東園

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【公式サイト】
 http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/index.html

【施設名】
 上野動物園
  ※営業時間・休館日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この日は園内自体はそんなに混んでいませんでしたが、モノレールは混んでいました。懸垂式がテナガザルみたいです。
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西園のモノレールの駅の近くは「なかよし広場」という比較的身近な動物がいるエリアで、中には触って良い動物もいました。

非常に耳の長い白兎。可愛いです^^
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こちらはハクビジン。餌やりを見ることができました。
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若冲の描く鶏そっくりなのがいました! こんなに優美な鶏が観られるのは感激です。ライオンとかより嬉しいかもw
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こちらはマレーヤマアラシ。この針は体毛が変化したものです。当たったら痛そう。
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ペンギン。暑くないのかな??
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近くにはカンガルーもいました。ぴょんぴょん飛びます。
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フラミンゴ。片足で立つのがトレードマークですが、2本で立ってるのが多いようなw 色合いが綺麗です。
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シマウマ。こうして見ると白と黒がしっかり分かれているのがわかります。
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珍獣のコビトカバ。結構大きいのに小人とは如何に?とカバを見るまでは思っていました。
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近くにカバもいたのですがでかい!! かなりの大きさで驚きました。(カバのいた室内は園内でも最も匂いがキツイところでした。マスクをしていても凄かった…)

これはサイだったかな。
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何故か屋内にいるキリン。模様が綺麗です。
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初めて知ったオカピという珍しい動物。後ろ足からお尻にかけてシマウマみたいな模様があるのでシマウマの仲間と思われていたようですが、キリンの仲間だそうです。(さらに言えば両者とも牛の仲間です。)
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西園の奥には爬虫類の建物もあったのですが、不気味なのでパスしてまた東園に戻ってきました。

まだ見てなかったアビシニアコロブスというアフリカのオナガザルの一種。木の葉を主食にしているそうで、動物園ではケヤキや桜、柳、ジャガイモ、果物などをあげているそうです。
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毛筆みたいな白い尻尾が何とも愛嬌があります。生まれてきた時は全身真っ白なのだとか。

上野駅方面の出入口付近まで戻ったところにある五重塔。上野東照宮の一部として建てられ、その後は寛永寺の一部となったようです。元々この辺りは寛永寺の土地なので、その名残です。
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五重塔の近くには鹿がいました。やはり鹿と仏教施設はワンセットなのかな?w
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ということで、超久々の動物園でしたが中々楽しめました。普段、美術品の中に登場する動物達はよく見ていますが、やはり実物も観ておく必要はありますねw 仕草や動きなども含めて参考になりました。 今更ですが、動物園も面白いところです^^


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上野動物園の案内 東園

半月ほど前に上野動物園に行ってきました。しょっちゅう上野恩賜公園には行ってますが、動物園に行ったのは超久々。絵の中の動物はよく観るけど本物を見るのも久々でした。

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↑閉園してから入口を撮ってしまった…。

【公式サイト】
 http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/index.html

【施設名】
 上野動物園
  ※営業時間・休館日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
上野動物園は以前ご紹介した葛西臨海水族園と同じく東京動物園協会が管理しているそうで、ぐるっとパスで入れるのが嬉しいです。上野動物園と聞くと真っ先にパンダのイメージですが、2010年6月時点ではパンダはいません。(ついでにこの日はシロクマもいなかったです) ちょっと残念ですが、あまり混んでいないのでゆっくり巡ることができました。 園内で沢山写真を撮ってきましたので、今日は東園というモノレールの駅の東側あたりをご紹介しようと思います。なお、今回の写真はコンパクトデジカメのみです。

 参考記事:
  葛西臨海水族園の案内 前編
  葛西臨海水族園の案内 後編


まずは入口付近。猛禽類が沢山いるエリアです。ハリー・ポッターに出てきたフクロウみたいなのがいました。ミミズクとフクロウの違いは未だに分かりませんw
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確かこれはコンドル。ハゲワシと似てますがコンドル科とタカ科の違いがあるそうです。
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続いて大きなにゃんこ達のエリア。
虎はかなり間近で見られましたが、こっちを観る気が全くないようでした。この縞模様が何とも美しい。
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続いてライオンの雄。雌も何匹か見ました。いかにも強そうで百獣の王と呼ばれますが、実際に狩りをするのは雌達なので、用心棒というかヒモ的なw
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この近くにはシロテナガザルもいました。身軽に動いて可愛いです。
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こちらは孔雀。羽は広げてなかったです。
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何か思案しているようなゴリラ。よく観ると子供を抱いています。
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歩き回るゴリラ。手にしがみつく子供が可愛いです。
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こちらは真っ白なオウム。このオウムを観ていると、この前観てきた若冲の描いたオウムの見事さが一層理解できる気がします。
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 参考記事:伊藤若冲 アナザーワールド (千葉市美術館)

こちらは沢山の鳥がいる建物にいたカラフルなインコ。目がちょっと怖いw
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オウムの近くにいたアリクイ。こっちを見ず一心不乱に水を飲んでいる様子。
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タンチョウ。ちょっと若冲の鶴図を思い出す後姿をしてくれたw
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こちらはヘビクイワシという1科1属1種という特殊な生態系の鳥。サハラ砂漠に住んで蛇や昆虫、トカゲ、鼠などを食べるそうです。凛々しい姿をしてます。
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白黒の美しい鳥も近くにいました。
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熊。のそのそっと歩いて木に登っていました。山では出会いたくないものですが、見るだけなら可愛い。
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象。意外と活発で歩きまくっていました。3~4頭仲間がいたかな。結構匂いがキツイw(ちなみに私は匂いに敏感なのでこの日はマスクを装着していましたが、それでもキツイ。)
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サル山。ここは結構見ていて飽きないかも。こんな急な崖もひょいひょいと飛んでいくのが凄いです。
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体重計に乗っかる猿。約8kgと結構身軽です。犬より軽いかも。
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アメリカバク。夢を食べる獏は中国の伝説上の生き物なのですが、このバクがモデルになったとも、獏に似ているからバクと呼ばれるとも言われているようです
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 参考:バクのwiki

ということで、東園にはスターが多いように思いますした。しかし、西園も中々親しみのある動物がいたので、次回はそれをご紹介しようと思います。


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喫茶館 英國屋 【新宿界隈のお店】

損保ジャパン東郷青児美術館で「トリック・アートの世界展 -だまされる楽しさ-」を観た後、近くの地下道に入って、エルタワービルの地下2Fにある「喫茶館 英國屋」で軽い食事とお茶をしてきました。

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↑この地図だと左下あたりです。

【店名】
 喫茶館 英國屋

【ジャンル】
 カフェ/レストラン

【公式サイト】
 http://www.cafe-eikokuya.jp/store/storelist.html

食べログ
 http://r.tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13054797/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 新宿駅


【近くの美術館】
 損保ジャパン東郷青児美術館

【この日にかかった1人の費用】
 1000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_③_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
このお店は以前ご紹介した東京駅の大丸にある「カフェ 英國屋」と同じ系列です。新宿のお店には今回初めて行ったのですが、ランチメニューがあって、意外とお手ごろな価格で食べることが出来ました。そのせいか、15時という時間にも関わらずほぼ満席で混みあっていました。(周りにも色々なお店があるのにこの店だけぶっちぎりで混んでたw) 店内は隣の席が近くて狭く、賑やかな雰囲気です。東京駅のお店とは違い、あまり落ち着けないかもしれません。

参考記事:
 カフェ 英國屋 【東京駅界隈のお店】

この日、私はつくねのドリアのランチセットを頼みました。飲み物がついて1000円です。東京駅のお店だとコーヒーだけで700円くらいだったような…w
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濃厚なチーズの味が美味しかったです。コロッところがってるつくねはまずまずのお味かな。

連れはチキンときのこのドリアのランチセットでした。
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少しだけ貰いましたが、チキンが美味しかったです。つくねのより美味しいかも。

食後のコーヒー
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運ばれてきたときに香りが良かったので期待したのですが、飲んだら意外と薄かったかもw 東京駅の英國屋とは味が違うのかな? それでも美味しいから良いですが。

連れはオレンジジュース
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ということで、東京駅のお店とは若干違った印象を受けるお店でしたが、中々使い勝手の良いお店でした。新宿は美術館以外にも行くことが多いので、今後活用していこうと思います。


おまけ:
このお店のあるエルタワービルの隣は松岡セントラルビルで、松岡美術館の所蔵品のコピーが飾られている一角があります。(英國屋から新宿駅に向かう途中の地下にあります)

軽く展覧会気分です。2010年7月現在で松岡美術館に展示されているルノワールの作品もありました。
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 参考記事:モネ・ルノワールと印象派・新印象派展 (松岡美術館)

これ以外にもモディリアーニなどもありました。人の行きかう通路にこういうのがあると文化的な感じがします。
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トリック・アートの世界展 -だまされる楽しさ- 【損保ジャパン東郷青児美術館】

つい一昨日の日曜日に、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で「トリック・アートの世界展 -だまされる楽しさ-」を観てきました。色々とネタは溜め込んでいるのですが、人気が出そうな展覧会なので先にご紹介しておこうかと思います。(感想はトリックのネタバレが大いに含まれていますので、混み具合についての記載の後に空白行を入れておきます。)

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【展覧名】
 トリック・アートの世界展 -だまされる楽しさ-

【公式サイト】
 http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html

【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2010年7月10日(土)~8月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
まず気になる混み具合についてですが、私が行ったのは開始して2日目(7/11)でしたが多少の混雑がありました。エレベーターとチケット買いはすぐに出来たのですが、私の後には少し列が出来ているくらいでした。中に入ると1つの作品に3~4人くらいついていて、奥まったあたりは窮屈な感じを受ける所もあったかな。普段はあまりいない子供が多いので、ちょっと賑やかな感じです。これから夏休みになったら混むことも予想されますので、気になる方はお早めに行くのが無難かと思います。


さて、ここから先はネタバレOKな人向けの記事になります。 しばらく空白行を入れますので、画面をスクロールしていってください。






























**************** ネタバレあり感想 ここから ***********************

ここからはいつもどおりのネタバレしまくりの感想となります。 今回の展示は70程度の作品で、その半数以上が高松市美術館の所蔵品となっていました。ほとんどが日本の現代の作家で、視覚の錯覚を起こすものや超リアルな作品など、様々なトリックが楽しめました。詳しくは気に入った作品を通してご紹介しようと思います。
なお、高松市美術館の所蔵品は一部、高松市のWEBで観ることができます。検索をかけると解説なども読めますので、気になる作品があったら検索して見てください。
 参考リンク:高松市収蔵品情報システム

また、トリックアートの歴史などについては去年のbunkamuraのだまし絵展の記事にも書いておりますので、参考にして頂ければと思います。

 参考記事:
  奇想の王国 だまし絵展 感想前編 (Bunkamuraザ・ミュージアム)  
  奇想の王国 だまし絵展 感想後編 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  奇想の王国 だまし絵展 2回目 感想前編 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  奇想の王国 だまし絵展 2回目 感想後編 (Bunkamuraザ・ミュージアム)


<第1章 虚と実をめぐって>
最初は絵と現実があいまいになる錯覚、遠近感の錯覚などがテーマになった章でした。

高松次郎 「影の圧搾」
bunkamuraのだまし絵展にもこの人の影シリーズの作品がありましたが、この展覧会でも5点ほど影シリーズの作品がありました。(解説によると1964年にこうした影シリーズを始めたのだとか。)
この作品は白地に薄い灰色で影のような女性のシルエットが描かれた作品で、影の中に同じ影があり、その中にも同じような…という入れ子の構造になっていました。不思議な世界に迷い込むような雰囲気をもっていました。

高松次郎 「No.190」
前述の作品と同じように白地なのですが、そこにフックがとりつけられています。フックの下から伸びるように描かれた灰色の影の絵と、実際にライトで照らされたフックの影のどちらが本物の影なのか、ちょっと錯覚を覚えました。遊び心を感じます。

高松次郎 「遠近法のテーブル」
最初の部屋は高松次郎の作品が全部で11点あるのですが、影シリーズの他に遠近法を題材にした作品も5点ほど並んでいました。これは格子の升目が三角状に伸びている置物で、遠近法を表現した作品です。ちょっと極端な感じがしますが、升目によって遠近感がついているように見えるのが面白かったです。

堀内正和 「うらおもてのない帯」
これは金色のブロンズで出来た帯の輪です。帯は途中でねじれていて、表面だったはずの面が一周するといつの間にか裏面となっているという「メビウスの輪」の構造となっています。単純ながらも不思議さがあり面白いです。その色と緩い曲線のせいか、どこか優美な雰囲気もありました。

小本章 「Seeing 85-23」
これは海辺に木のオブジェを置いた写真作品です。オブジェの上には絵が描かれているようで、背景の島あたりで絵と写真の境界線が繋がっているような不思議な光景となっていました。


<第2章 オプ・アートとライト・アート>
続いての章はオプ・アートとライト・アートという光に関する2つの手法のコーナーです。 オプ・アートというのはJ・アルバースが始めた表現で、視覚的・光学的効果を狙った抽象絵画の一種のようです。また、ライト・アートというのは蛍光灯やネオン、レーザー光線などを使った作品でした。 ここではそうした光のトリックを用いた作品が並んでいました。

ヴィクトル・ヴァザルリ 「バンクーバー」
六角形の中にある六角形と菱形の格子が描かれた幾何学的な抽象画です。格子の面ごとに明暗がついていて、こちら側に膨らんでいるようにも見えます。しばらく観ていると逆にへこんでいるようにも見えました。視覚の錯覚が起きて面白いです。この近くにはこうした作品が7~8点ありました。

宮脇愛子 「WORK #9」
円形の筒に斜め格子の穴が空いている作品です。真鍮で出来ているようで、穴の中の金属部分に向こう側の様子が反射しています。近寄って向こうを覗くと、万華鏡のように見えました。単純な仕掛けですが、レンズも無いのにこのように見えるのはちょっと不思議でした。

伊藤隆康 「負の楕円」
アクリル板を何枚も並べている作品です。それぞれのアクリル板には穴が開けられていて、その穴の連続体がレモン状の空洞になっています。その空洞部分が物が浮いているように見えるのが面白く、これが「負」の意味なんだなと納得しました。存在しない部分が逆に存在感を出していて面白いです。

河口龍夫 「無限空間におけるオブジェとイメージの相関関係又は8色の球体」 ★こちらで観られます
これはマジックミラーで囲まれた4つの部屋があり、その境目に半球状のボールのようなものがついている置物です。鏡の効果でまるで浮いているように見え、角度を変えるとボールの色が変わるように見えるのが面白かったです。マジックの種明かしのような作品でした。

名和晃平 「PixCell 【LEGO-F1 (Ferrari) #1】」
アクリルの箱に入ったフェラーリのF1模型です。プリズムシートを貼っているそうで、観る角度を変えると消えたり2重に見えました。ちなみにこのフェラーリはネットオークションで購入したものなのだとか。


<第3章 スーパー・リアリズム>
続いて3章はスーパー・リアリズムのコーナーでした。これはその名の通り、写実を超えた写実といえば良いでしょうか。一瞬を写した写真のような絵や、現実のものと錯覚してしまうような絵などが展示されたコーナーでした。

上田薫 「なま玉子J」 ★こちらで観られます
生卵が割れて落ちる姿を写真のように描いた作品です。実際に写真を撮影してからそれを元に絵を描いているそうで、流体となっている玉子の一瞬を捉えています。このリアルな描写には驚きです。まさにスーパー・リアリズムですね。
なお、以前ご紹介した「なま玉子」とよく似ているように思いました。
 参考記事:群馬県立近代美術館の常設 【2010年02月】

上田薫 「スプーンのゼリーB」
こちらも超リアルな作品で、スプーンで赤いゼリーをすくう様子が描かれています。ゼリーとスプーンには微妙に空などが反射して見え、驚異的な質感です。これと同じように玉子をスプーンですくっている絵も展示されていました。

佐藤正明 「Newsstand #56-A,B」
左右に並んだ2枚の絵がお互いに鏡写しのように反転している作品で、それぞれには外国によくある街の新聞屋さんが描れています。(キオスクの軒先みたいな感じです)これはそんなにリアルではありませんが、よく観ると完全に鏡写しになっているわけではなく、雑誌の表紙の人の服の色が違うなど微妙な違いがありました。私は雑誌の間違い探しみたいに見ていましたw この辺にはこの人の街の新聞屋さんを反転させたような作品が何枚かありました。

佐藤正明 「Subway No23」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品です。穴だらけの地下鉄の駅を描いた作品なのですが、観ていると迫り来るような穴に不安のようなものを感じます。批評家によると、我々の内面の安定と充足を揺るがすとのことでした。

金昌烈 「作品 (水滴)」
水滴が紙の上に落ちているように見える絵画です。50~100種類の水滴の影の型紙を切り抜いてスプレーで琥珀色に吹き付けているそうで、その上に白を塗って光の反射や透明感を出しているようでした。本当に水に濡れたように見えて面白かったです。 この辺りには同じように水滴を題材にしたこの作家の作品が何点かありました。

三島喜美代 「Newspaper」
新聞紙を丸めたようなデザインの陶器です。(表面の絵付が新聞紙っぽい) これは艶があるのですぐに陶器とわかりますが、柔らかそうで硬い意外性のある作品でした。解説によると、メディアの情報に埋没する不安を意味しているそうです。

中川直人 「反射のある静物Ⅱ」
筆、パレット、貝殻、鏡、スニーカー、ガラスの水差に入った花などが描かれた静物画です。花などは絵っぽい感じもしますが、ガラスや鏡はリアルな質感で驚きました。 また、この隣にもこの人の静物画がありましたが、そちらに描かれた絨毯は毛の1本1本まで描かれているようなリアルさがありました。

坂本一道 「バベル」
これはリアルさは無いですが奇妙な錯覚を感じる作品です。升目で区切られた木目の四角と丸い球が格子状に並んでいるのですが、遠近感の表現や升目同士の繋がりが奇妙で違和感を感じました。ちぐはぐなところがバベルという作品の意味なのかな?と思ってみたり。


<第4章 古典絵画をめぐって>
最後は古典のオマージュ的(パロディ的かも?w)な作品が並んでいました。

福田美蘭 「侍女ドーニャ・マリア・アウグスティーナから見た王女マルガリータ、ドーニャ・イサベル・ベラスコ、矮人マリア・バルボラ、矮人ニコラシート・ペルトゥサートと犬」
これはベラスケスの「ラス・メニーナス」に描かれた王女マルガリータの隣に立つ侍女の立場になり、侍女の見ている光景はこうだろうと描いた絵です。目の前に大きく迫る王女の頭が目立ちますw その発想がまず面白いですが、複雑な構造を見せる原画と違い、普通の人間が見ている光景そのものといった感じで面白かったです。
 参考リンク:ラス・メニーナスのwiki

この人のこのシリーズはいくつかあり、ボッティチェッリの「春」のゼフィロスからの視線(これが不気味で笑えるw)や、マネの「草上の昼食」に出てくる右に座っている男の視線、ダヴィンチの「聖アンナと聖母子」のキリストの視線 などの作品もありました。

森村泰昌 「肖像(ヴァン・ゴッホ)」 ★こちらで観られます
ゴッホの自画像そっくりに成りすまして写っている作家本人のポートレートです。特殊メイクでゴッホに扮しているようですが、写真なのか絵なのか全然わかりませんw 目とかは確かに写真に思えるけど、帽子などは絵の質感そのものでした。見分けがつかなかったほどで驚きでした。
この人はこうした歴史上の人物に変装する作品が多いですw 最近だと六本木クロッシング2010展で見かけました。
 参考記事:六本木クロッシング2010展:芸術は可能か? (森美術館)

森村泰昌 「ボデゴン(鼻つき洋梨)」
ボデゴンというのはスペインの静物のことで、これは18世紀スペインのルイス・メレンデスの「果実」を立体化した洋梨の形の置物です。そして、その洋梨の側面に人間の鼻がつけられていますw  この花は作者自身の鼻を模ったものだそうで、茶目っ気ありました。


ということで、日本の現代アートが多目のトリックアート展でした。驚きあり笑いありで子供も楽しめると思いますが、基本的にはしっかりした「美術展」です。観光地にあるようなトリックアートとは一線を隔すものがありますので、美術ファンにも興味深い内容だと思います。気になる方はお早めにどうぞ。

**************** ネタバレあり感想 ここまで ***********************

空白行送り








































おまけ:1Fではワークショップも開催されているようでした。
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屏風の世界 ―その変遷と展開― 【出光美術館】

ここ何日か新橋・銀座周辺をご紹介していますが、その前に有楽町の出光美術館で「日本の美・発見IV 屏風の世界 ―その変遷と展開―」も観てきました。

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【展覧名】
 日本の美・発見IV 屏風の世界 ―その変遷と展開―

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館
【最寄】JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅

【会期】
   前期:2010年06月12日~07月04日
   後期:2010年07月06日~07月25日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この展覧会は前期・後期に分かれているようで、私が行ったのは前期でした。(前期・後期では3章が入れ替わるようです。) 結構多くの人で賑わっていましたが、屏風は大きくて一気に何人も見られるのでそんなに混雑感はありませんでした。点数はあまり多くないですが、質の高い内容となっています。

そもそも屏風は「風をさえぎるもの」であり、中国で風除けの調度品として生まれました。7~8世紀に日本に伝わり、室町時代には紙製の蝶番(ちょうつがい)が発明されると、画面が連続する日本式屏風が創案されたそうです。今回の展示ではそうした日本らしい屏風が比較的初期から展示されていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。

<Ⅰ "日本式"屏風の誕生>
屏風は平安時代には寝殿造りの間仕切りや、密教の儀礼の際に使われる道具だったそうです。室町時代に床や棚のある書院造となると、屏風は座敷飾りとして大画面となりました。先述のように蝶番が紙になったことで自由に折り曲げることが可能となり、水墨や金箔を使った表現が使われるようになったそうです。このコーナーではそうした屏風の変遷を見ることもできました。

「日月四季花鳥図屏風」 ★こちらで観られます
室町時代の大和絵風の作品では最古のもので、六曲一双ですが一隻ごとに完結する「日月形式」となっているそうです。右隻は桜の木とその下にいる雉?が描かれ、空には太陽が昇っています。これは春と夏の季節のようです。左隻には松、紅葉、菊、鹿が描かれ、空には銀の細い月がありました。こちらは秋冬かな。また、左右に繋がるように銀の雲が流れているのも風情がありました。 結構ボロボロになっていますが、見事で歴史的にも貴重なもののようでした。

伝 土佐光信 「四季花木図屏風」
こちらもやまと絵風の六曲一双の屏風です。右隻には梅、松、甘草、アジサイなどが描かれ、左隻には竹、紅葉などが描かれています。また、下の方には図案化された波が漂っていました。解説によると、これは左右を入れ替えれも連続するように描かれているようです。これも少し古びていますが見応えがありました。

能阿弥 「四季花鳥図屏風」
これは四曲一双の水墨の屏風です。右隻には燕やサギ?、山鳥などが自由に飛んだり休んでいる様子が描かれています。左隻にも雁のような鳥が飛んでいて、どうやらこれも四季の流れを表しているようでした。鳥が可愛らしく自由な感じがしました。

伝 雪舟等楊 「四季花鳥図屏風」
雪舟の作と伝わる作品で、元は一双だったのですがこの右隻のみが残っているようです。竹と松が描かれ、松の枝は水に潜ってからまた昇ってくる「水くくり」の枝となっています。、また、右端にはピンクの牡丹、空には鳥も描かれ背景は霧に消えていくようなうっすらした景色が広がります。カクカクとした青い松などは確かに雪舟ぽいかも。本人の作かはわかりませんが、解説によると中国の呂紀から学んだ影響が観られるとのことでした。

狩野元信 「西湖図屏風」
これは階段部分になっているところに展示されていた作品です。中国の名勝地である西湖を描いたもので、手前に横一直線に走る道が描かれ、奥には多くの舟の浮かぶ湖が見えます。また、所々に半円形の橋が架かり、人々がわたっているのも見えました。とにかく大画面で、雄大な景色が目の前に広がっているかのように見える迫力がありました。屏風の前にはソファもあるので、ゆっくりと座りながら観られたのも良かったです。


<Ⅱ 物語絵の名場面>
2章は物語の名場面を主題にした作品が並んでいました。お馴染みの源氏物語や伊勢物語といったものから、様々な物語が並んでいました。

「天神縁起尊意参内図屏風」 ★こちらで観られます
六曲一隻のみの屏風です。これは学問の神で有名な北野天神の縁起を描いた作品で、菅原道真の怨念で荒れ狂う加茂川を渡る僧が描かれています。周り中から押し寄せてくる波の中、黒い牛が頭を下げて走る姿勢で牛車を引き、周りのお供もダッシュで逃げている様子が観られます。色数は少ないですが、波や牛などから緊張感が伝わってくる素晴らしい作品でした。
解説によると、絵巻の1場面を取り上げて描くというのは室町時代には見られたそうです。

伝 俵屋宗雪 「業平東下り図屏風」
こちらも六曲一隻のみです。金地にどーんとそびえる富士山が描かれ、富士の裾野のあたりに馬に乗った業平とその一行が描かれています、業平は振り返って富士山を見ているようです。富士山と金の迫力があるので、心情よりもそっちに眼が行ってしまいそうでしたが、面白い作品でした。

「宇治橋柴舟図屏風」
金地に橋と水車、柳が描かれた作品。側は細い線で1本1本描かれていて装飾的でした。これは何度か似たような作品を観たことがあるように思います。
 参考記事:東京国立博物館の案内 (2009年08月)

伝 岩佐又兵衛 「蟻通・貨狄造船図屏風 (ありどおし・かてき)」
和漢の有名な故事が描かれた六曲一双の作品です。左隻には紀貫之が明神に詩を捧げたら自分の馬の病気が治ったという話が描かれています。コミカルな感じの馬が可愛いw 人々の顔も誇張されて何を言っているのか伝わってきそうです。 右隻には巨大な鳥と龍の頭の彫刻をつけた舟が描かれ、凄い迫力です。まるで妖怪みたい…。中々に遊び心を感じる作品でした。

伝 岩佐又兵衛 「三十六歌仙図屏風」
三十六歌仙、平家物語、伊勢物語などが描かれている六曲一双の作品です。画面の上部に横一直線に座る三十六歌仙がかかれ、その頭の上に和歌が書かれています。下には金雲に囲まれた川のようなところに楕円の枠がいくつも浮かび、円の中には物語の名場面が描かれていました。走馬灯のように物語が流れていく感じがして煌びやかな作品でした。

岩佐勝友 「源氏物語図屏風」
源氏物語の54帖の名場面を一気にならべた作品です。金雲が立ち込める中、屋根を透視するように屋敷を俯瞰した図となっています。「野分」などタイトルも入り、雲で場面を区切られているような感じでした。色鮮やかで繊細に描かれ、絢爛な作品でした。

なお、この部屋あたりから蒔絵や色絵の大皿もありましたが、今回の展覧会の趣旨は屏風なのでご紹介は割愛します。


<Ⅲ 風俗画の熱気と景観図の大空間>
最後のコーナーは前期・後期で入れ替えがあるみたいですが、私が観たのは風俗画のコーナーでした。

「祇園祭礼図屏風」
六曲一双で金雲が立ち込める街を俯瞰した構図で描かれています。タイトルの通り、祇園祭りが練り歩く様子が描かれ、行列する人々、山車、神輿、傘、扇など、祭りの賑わいを伝えてきます。しかし、全体的に落ち着いた雰囲気があり、解説によると祭りの厳かさに主眼が置かれているということでした。当時の様子がよく分かる作品でした。

「江戸名所図屏風」 ★こちらで観られます
あまり見かけない八曲一双のかなり横長の屏風で、超細密に上野~品川までの江戸の名所を描いています。よく観ると遠近感や建物と人の大きさがおかしな感じですが、ぎっしり描かれた町並みからその賑わいを感じます。また、屋根などが幾何学的に描かれていてリズム感を感じるところもありました。

「世界地図・万国人物図屏風」 ★こちらで観られます
六曲一双の世界地図の屏風です。右端の第1~2扇と左端の第5~6扇は民族衣装を着た各国の男女が描かれ、真ん中に大きな地図が描かれていました。ちょっと大雑把な世界地図ですが、江戸時代にこうした作品があるのは面白いです。両端に民族衣装を着た人が描かれているのはこういう世界地図を描いた作品では多いのかな??
 参考記事:皇室の名宝―日本美の華 <1期> 感想前編 (東京国立博物館 平成館)
 

このコーナーには今回のポスターにもなっている南蛮屏風もあり、折りたたんで展示されている意味についてなどの説明もありました。

<屏風の構造と作り方>
出口の近くに屏風の作り方を説明したコーナーもありました。1扇ごとに工程が進む感じで作られていてわかりやすいです。簡単にまとめると、
 1 骨木地面:格子状の木枠を作る
 2 骨しばり:下地が歪まないように強靭な美濃紙を貼る
 3 胴貼り :下地や木の脂を吸収して透けてくるのを防ぐために、泥土を混入した紙を練る
 4 みの掛け:美濃紙を重ね合わせるようにずらして貼っていく
以上の1~4の工程で屏風の画面をつくるようでした。こういうのを知っておくと、今後の鑑賞にも役に立つので嬉しいです。


ということで、だいぶ楽しめる展覧会でした。やはり屏風は日本美術の中でも特に華のある作品だと思います。知っていそうで意外と知らない屏風そのものについても知ることができたのも良かったです。 もうすぐ終わってしまいますが、これもお勧めできる展覧会でした。


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宮越屋珈琲 【新橋・汐留界隈のお店】

パナソニック電工 汐留ミュージアムと資生堂ギャラリーを回った後、ちょうどその2つの間くらいにある宮越屋珈琲というお店でお茶してきました。

DSC_13512.jpg

【店名】
 宮越屋珈琲

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 http://www.miyakoshiya-coffee.co.jp/jp/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 新橋駅


【近くの美術館】
 パナソニック電工 汐留ミュージアム
 資生堂ギャラリー
 旧新橋停車場 鉄道歴史展示室など

【この日にかかった1人の費用】
 1150円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日18時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
このお店は北海道を中心に多店舗展開しているようですが、東京では3~4店くらいしか無いようです。私が行ったのは東京新橋店でした。1Fはコーヒー豆などを売っていて、2Fが喫茶店となっています。あまり混んでおらずシックで落ち着いた店内でゆっくりすることができました。

この日はグアテマラのストレート(850円)とクッキー 3個(300円)を頼みました。 豆の銘柄が選べるのが嬉しいです。
DSC_13514.jpg

コーヒーのアップ。深いコクと適度な酸味があって非常に美味しいコーヒーでした。本格的な味わいです。
DSC_13516.jpg

クッキーのアップ。来た瞬間に甘くて良い香りがしました! 3つとも味が異なりますがどれも実際は甘さひかえめで上品な味でした。
DSC_13515.jpg

ということで、かなり満足できるお店でした。それなりのお値段ですが、これだけ美味しいコーヒーを飲めれば満足できます。パナソニック電工 汐留ミュージアム → 宮越屋珈琲 → 資生堂ギャラリーというルートで今後も通おうと思います。


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ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新 【パナソニック電工 汐留ミュージアム】

前回の記事でご紹介した資生堂ギャラリーに行く前に、パナソニック電工 汐留ミュージアムで「HANS COPER ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新」を観てきました。この展示は楽しみにしていた展示でした。

DSC_13507.jpg

【展覧名】
 HANS COPER ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新

【公式サイト】
 http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/exhibition/10/100626/

【会場】パナソニック電工 汐留ミュージアム
【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅  都営大江戸線汐留駅
【会期】2010年6月26日(土)~2010年9月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
混んでいたわけではありませんが、私が行った頃にはチケット売り場に何人か並んでいて、会場にも絶えず人が来ていました。結構人気があるのかも。

今回の展示は陶芸家のハンス・コパーの個展で、日本では初めての大規模な回顧展だそうです。いつも、陶芸はわからない!と言っている私ですが、ここ1年間ですっかりルーシー・リーに魅せられてしまい、その助手として出発したハンス・コパーの個展も首を長くして待っておりました。
構成はルーシー・リーの助手の時代から晩年まで時系列で辿っていき、類似の作品はまとめて展示するなど作風の変遷が見て取れるのが良かったです(解説は少ないので深い理解は難しいかも) 詳しくは章ごとに気に入った作品とともにご紹介しようと思います。同じ名前の作品も多いので、念のため作品番号もつけておきます。

 参考記事
  ルーシー・リー展 (国立新美術館)
  アートフェア東京2010 (東京国際フォーラム)
  U-Tsu-Wa (21_21 DESIGN SIGHT)


<アルビオン・ミューズ 1946~1958>
まずは彼の陶芸家としてのスタートの時代についての章です。ハンス・コパーは1920年にドイツのザクセンで生まれました。彼はユダヤ人だったので、戦争の時代になるとナチスの迫害を逃れてロンドンに亡命しました。ロンドンでも辛酸を舐めたようですが、苦労の末に1946年にルーシー・リーの工房で働き出しました。工房では急速に技術を身につけていったそうで、特にテーブルウェアでの貢献は大きいようです。コパーがロクロをひいて成形したものにリーが釉薬を施すなど、共同の作品も作られ、1950年には2人の合同展も開かれたそうです。(今回の展示でもそうした共同作も観ることができました。)

まず最初に、まるで宝石か貴金属のようなルーシー・リーの美しいボタンが展示されています。このボタンは戦争の時代に依頼を受けて作られたものですが、釉薬の使い方などはその後のリーの作品にも繋がっていると思います。 また、こうした戦争時代~戦後に材料などが不自由だったことも、後のコパーに大きな影響を与えているとのことでした。

102 ハンス・コパー 「セルフポートレート」
自画像です。キャンバスに引っ掻き傷のように描かれていました。コパーは絵にも関心があったようで、何点か絵画の作品もありました。

1 ハンス・コパー 「ポット」
縦に無数の白い線が入った焦げ茶の器です。これはルーシー・リー展でも観られた掻き落としの技法かな? リーの作品とよく似ているように思いました。

3~5 ハンス・コパー 「ポット」
幾何学模様の入ったざらついた素地の器です。円形の口など未来的な雰囲気を持っていてどこかキュビスムのような感じを受けました。解説によると、リーの工房で作られた初期の作品は焦げ茶の地に白で半抽象の文様が表された作品が多いようです。どうやらピカソなどに憧れていたようなので、実際にキュビスムからも影響を受けているようでした。

99 ハンス・コパー/ルーシー・リー 「プレート6点組」
焦げ茶の皿に、白い円のような渦巻き模様のような文様が入った作品です。シンプルながらも洗練された雰囲気がありました。

101 ハンス・コパー/ルーシー・リー 「コーヒーセット7点組」 ★こちらで観られます
取っ手の長い水差、コーヒーカップ、受け皿のセットです。いずれも焦げ茶で、白い2本の横線と、無数の縦線が描かれていて、垣根のような文様となっています。これもシンプルでありながら優美な作品で、人気商品となったとのことでした。(←売ってたら欲しいw)

105 ハンス・コパー 「頭部」
これはコパーの彫刻作品。老婆の頭部のようで、リーの顔かな??と思いましたが詳細は不明です。

7~8 ハンス・コパー 「頭部」
2点の彫刻作品です。いずれも柔らかい曲線と円を組み合わせたキュビスム的な彫刻で、素地が土器のような質感です。形から先進さを感じる一方で、質感から素朴さ・古代の遺物のような風格を感じました。

106 ハンス・コパー 「ドローイング(ヌード)」
ドローイングと版画のコーナーもありました。これは女性の体を簡略化された輪郭線と薄っすらと塗った水性インクで表現したものです。理知的でどこか洒落た雰囲気に思いました。絵画にも美的センスを感じます。
解説によると、コパーは1956年に「空間の鳥」等を作った彫刻家コンスタンティン・ブランクーシを訪ねにパリに行ったそうで、フランスからの帰国後に一時期絵画に関心があったとのことでした。

10 ハンス・コパー 「ポット」 ★こちらで観られます
これは縦長の楕円形の白い器です。胴の部分がくびれていて、どうやら2つの器をくっつけたように見えます。また、表面をよく見てみると層のようになって斜めに流れるような肌理があるようでした。これも一見シンプルな形に見えますが、その造詣に驚きます。

6 ハンス・コパー 「ポット」
平たい口、丸い2つの鉢を合わせた胴、台形の台という4つの部分をくっつけて作られた作品で、この技法は「合接」と呼ぶそうです(先ほどの作品もこの技法だと思います)
 非常に変わった形をしていて、表面にも直線を境に茶色とクリーム色に分けるなど幾何学的な要素を感じます。解説によると、この2色の色分けの複雑な質感は、何度も水で溶いた粘土をかけて乾かし、研磨し、掻きとるというのを繰り返して出しているとのことでした。 リーの作品にも「コンビネーションポット」というパーツを組み合わせた作品がありますが、リー以上に複雑な形状となっているように思いました。


<ディグズウェル 1959~1963>
コパーは1959年にリーの工房を離れ、ディグズウェル・アーツ・トラストの運営するディグズウェル・ハウスに移りました。ここでは自分の時間を全て制作に使うことが出来たそうで、同じハウス内の他ジャンルの芸術家との交流を持つことも出来るなど、恵まれた環境だったようです。また、コパー自身はこの時代を「建築の時代」と呼んでいるそうで、タイル、レンガ、便器、洗面器、公共建築の壁画、大聖堂の燭台 など建築に関わる作品を残しているそうです。いくつかそうした作品も並んでいました。

28~29 ハンス・コパー 「コベントリー大聖堂の燭台のためのマケット」
第二次世界大戦で壊れたコベントリー大聖堂を再建する際に作った、聖堂内に置く6本の燭台の制作模型です。階段の手すりの柱みたいな形と言えば良いのかな?w 3つくらいの部品が合接し、すらっとした優美な姿をしています。 この模型から実際に聖堂のための燭台を作っている写真も展示されていたのですが、観たところかなり大きく2m以上はありそうでした。

25~27 ハンス・コパー 「ポット」「花生」
カップの下に皿を合わせたようなもの、その下に台という感じで、4つくらい繋げている形をしています。しかし、これは陶器ではなくブロンズで出来ていて、ディグズウェル・ハウスの芸術家たちに手伝って貰って作成したそうです。陶器とは違った精悍な感じで黒光りしていました。質感が違うとまた別の味わいがあって面白いです。また、ディグズウェル・ハウスでの交流が伺える作品でした。

31 ハンス・コパー 「ウォールディスク」 ★こちらで観られます
これは今回の展示の中でも面白い展示方法の作品です。壁に、10個くらいのドーナツ状の陶器を嵌め込んでいる作品で、覗き穴のように向こうが見えます。(これは実際にこのように使われていたそうです) 中々遊び心を感じます。それにしても、結構厚い壁に嵌め込まれていました。


<ロンドン 1963~1967>
コパーは1963年にロンドンに戻ってきて工房を構えたそうです。そのせいか、この時期は多作な時期だそうで、究極にまで彼の個性が花開いた時期でもあるようです。 また、19677年にはリーとの共同展が開催されるなど、評価が高まっていったそうです。

この辺には平らな皿(帽子のつば状の円盤)を乗っけた丸いポットがずらっと並んでいました。幾何学的な感じとざらっとした質感が特徴に思えます。こうした形が面白い作品が多くなってくるのがこのコーナーでした。

38 ハンス・コパー 「ティッスル・フォーム」
巨大な器で、公式ページの頭にある写真の作品に似ています。ざらついた茶色の表面で、開いた口、2枚の鉢をくっつけたような胴、胴の真ん中に目玉のような茶色いへこみ、そして台 といった不思議な形状をしています。もはや文章では伝えるのが至難なくらい面白い形の作品で、自由な発想で作られているように思います。 結構大きいので迫力もありました。

<フルーム 1967~1981>
ロンドンで暮らした後、田舎暮らしに憧れて1967年にフルームという土地に移ったそうです。この頃には古代美術への親近感を示す「キクラデス・フォーム」という作品が生まれるなど、さらなる進化をしていたようですが、1975年に筋肉が萎縮する病気と診断され、1980年まで制作を続けたものの、その翌年の1981年に生涯を終えました。なお、この頃には国際的な評価も高くなっていたそうです。

68~69 ハンス・コパー 「スペード・フォーム」
これは正方形の胴の下に円筒が伸びたような形で、横から見るとふくらみがあるのがわかります。この辺にはこうしたスペード・フォームという作品がいくつかありました。(スペードと言うよりは四角いスコップの先のような形のが多いかもw) 形ごとに何点かずつ比較しながら観られたのが面白かったです。

81 ハンス・コパー 「ティッスル・フォーム」
ティッスル・フォームというのはアザミ形のことで、アザミの花の形に似ているそうです。広く開いた口、丸い胴、円筒の組み合わせで、真ん中に円の文様が見えました。形が独特で、用途がよく分かりませんが神秘的な感じがしました。

86,90 ハンス・コパー 「キクラデス・フォーム」 ★こちらで観られます
白いやじりを下向きにして、そこに黒い台をつけたような形をしたものと、黒くて先の丸まった壷のようなものに台をつけたような形の2点の作品です。「キクラデス・フォーム」というのは古代エーゲ海のキクラデス彫刻にちなんで彼の妻が名づけたそうです。台との境がかなり細くなっていて、どうやってバランスをとっているのか?と思ったら、中に編み針を芯として差し込んでいるのだとか。
この辺にはこうした台との境が極端に細い白黒の作品がならんでいました。


ということでこれでコパーの作品は終わりですが、まだ続きがあります。


<ルーシー・リーの陶芸>
最後はルーシー・リーのコーナーでした。流れ的に最初の方が良かったのでは?とも思いますが、代表的な作風が観られてプチ ルーシー・リー展といった趣きでした。

123 ルーシー・リー 「花生」
ブロンズとピンクの釉薬が交互に帯状になっている花生けです。ピンクの帯には掻き落としで縦線が無数に描かれています。また、器の下の方にはコバルトブルーの帯も1本だけあり、色を引き締めているようでした。美しい色と形で、流石はルーシー・リーといった華やかさがありました。

130 ルーシー・リー 「花生」
薄い水色で首の長い器です。表面には気泡のようなボツボツがあるので、溶岩釉と言われる技法だと思います(多分) 釉薬や色、質感などの面白さを味わえる作品でした。

131 ルーシー・リー 「花生」
薄い茶色と焦げ茶でできたスパイラル文の器です。これも溶岩釉のようでした。(スパイラル文についてはルーシー・リー展の記事をご参照ください。)


ということで、非常に充実した内容で期待して待っていた甲斐がありました。特にルーシー・リー展をご覧になった方は必見の展覧会じゃないかと思います。 両者とも知らない方でも、なんだこれ!?と驚く形状の作品が多いので楽しめるんじゃないかな? お勧めの展覧会です。


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