関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

アントワープ王立美術館コレクション展 【東京オペラシティアートギャラリー】

先週の日曜日に初台へ行って、東京オペラシティアートギャラリーで「アントワープ王立美術館コレクション展 アンソールからマグリットへ ベルギー近代美術の殿堂」を観てきました。いつもどおり、ぐるっとパスを使って入りました。

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【展覧名】
 アントワープ王立美術館コレクション展
 アンソールからマグリットへ ベルギー近代美術の殿堂

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh120/

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅
【会期】2010年7月28日(水)~10月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
思ったより空いていて、自分のペースでじっくりと観ることが出来ました。
今回の展示はベルギーのアントワープ王立美術館のコレクションが並ぶ展示で、特に近代絵画を中心に70点ほどの内容となっていました。ベルギーと言えば真っ先に思い出すマグリットやデルヴォーを始め、アンソール、クノップフといったベルギー展ならではの名前も並び、ほとんどが日本初公開となっているそうです。詳しくはいつも通り章ごとに気に入った作品を紹介していこうと思います。
なお、館内は冷房が効いていて寒いくらいでしたので、苦手な人は何か用意して行ったほうが良いかもしれません。

<第1章 アカデミスム、外光主義、印象主義>
まずはフランスからの影響が色濃いコーナーでした。写実主義(レアリスム)はフランスでは1850年代から始まっていましたが、ベルギーでは1860年代に本格化したそうです。1883年には「20人会」という前衛グループが発足され、フランスの印象派や新印象主義をベルギーに紹介しました。特に1887年に紹介されたスーラの影響は大きく、点描画が流行したそうです。1910年には印象派やセザンヌの影響を受けたクウテルスが「ブラバントフォーヴィスム」を展開するなど、フランスの影響を受けつつも独自の絵画様式が生まれていたようです。
・・・この辺の流れは2009年に行われた2つのベルギー絵画展(特に損保ジャパンの展示)でもご紹介しましたので、気になる方は参考記事も読んでみてください。

 参考記事:
  ベルギー幻想美術館 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)

ルイ・アルタン(ド・サン=マルタン) 「海景」
海辺の港湾の風景で、船が何艘か浮いている様子が描かれています。色は抑えられているように思いますが、微妙な空の色合いを表現していて穏やかな雰囲気があります。ぱっと観た感じでも印象派からの影響を感じる作品でした。(この画家は冬をパリで過ごしていたらしいので、印象派から影響を受けたのは間違いなさそうです。)

フランツ・クルテンス 「陽光の降り注ぐ小道」
縦長での絵で、木々の隙間から光が差し込む並木道が描かれています。上部まで緑が多い、光の明暗が見事です。これも印象派やバルビゾン派の影響を感じる作品でした。解説によると、元々は写実主義だったそうです。

ジェームス・アンソール 「待ち合わせ」
20人会にも参加していたアンソールの作品で、戸の開いた室内でテーブルに向かって座っている黒い帽子と白?のドレスを着た女性が描かれています。室内は少し薄暗く、女性の顔は帽子で隠れて見えていません。テーブルの表面には反射する外の光など写実的な感じもあるのですが、何処か神秘的な静けさを感じました。

ジャン・バティスト・デ・グレーフ 「公園にいるストローブ嬢」 ★こちらで観られます
森を背景に、白い服を着た少女が花束を持ってこちらを観ています。背後に羊がのそっと出てきた感じも可愛いw 全体的に明るい画面で鮮やかな色彩です。解説によるとこの画家は写実主義を守ったそうですが、アカデミックと印象派の間のように見えたかな。

ジェームス・アンソール 「防波堤の女」
薄暗い空の下、防波堤で傘をさしている後ろ向きの女性が描かれています。海を眺めているのかは分かりませんが、少し寂しいと言うか情感があるように思いました。解説によるとクールベのようにパレットナイフを用いて描いていたらしく、さっと描かれたようなタッチが不思議な魅力を出していました。

アルフレッド・ウィリアム・フィンチ 「西フランドルの風景」 ★こちらで観られます
これはかなり細かい点描で描かれた作品です。手前に濃い緑の木々、奥に薄い緑の草原、上部には空が描かれています。緑にはオレンジの点が混ざり、黄緑には黄色や水色、空にもオレンジや白といった別の色が混じっていました。スーラの影響がわかりやすい作品でした。

アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ 「洗濯をする女」
庭で物干しを持ち上げて洗濯物を干す女性が描かれた絵です。全体的に斜線のような(点描を線に伸ばした感じの)表現となっていて、独自の新しい技法でした。荒い木版の彫り跡のような力強い表現に思いました。
解説によると、この人は建築家・デザイナーとして名高い人だそうで、画家としては点描やゴッホ、ゴーギャンに影響を受けたそうです。その後、絵に満足できず応用芸術に向かったとのことでした。

リク・ワウテルス 「白衣の女」
窓の側で座っている画家の妻を描いた肖像画です。少し柔らかいけれど大胆な色彩で、セザンヌの影響を受けているのを感じました。隣にはナビ派を柔らかい色彩にしたような教会の絵もありました。


<第2章 象徴主義とプリミティヴィスム>
2章は象徴主義となっていました。クノップフ、スピアールト、レオン・フレデリックなどの作品が並んでいました。

ジェームス・アンソール 「フランドル通りの軍楽隊」
高い階の部屋から見下ろすように街中の道が描かれています。通りには軍楽隊がパレードをしているようで、人々がぎっしりと川の流れのように行進していました。町の建物は定規で線を引かれたようにきっちりしていて濃い色彩です。それに対して、左側の手前に描かれたベルギー旗などは単純化されたような感じでした。アンソールは色んな画風がありますね…。

フェルナン・クノップフ 「エドモン・クノップフの肖像」 ★こちらで観られます
横向きの男性像で、長らく自画像と考えられていたそうですが、どうやら父親を描いたものす。理知的な紳士の姿から内面まで伝わってきそうです。柔らかく落ち着いた色彩で、象徴主義的な幻想性のある静かな雰囲気が漂っていました。

レオン・スピアールト 「海辺の女」 ★こちらで観られます
暗めの海を見ている黒い服を着た女性の後姿を描いた作品です。ぼーっと浮かぶような女性に神秘性を感じます。解説によると、水平に描かれた水平の手すりには構図の計算があるようです。また、スピアールトは不眠症で夜の海岸をよく徘徊していたとも説明されていましたw 絵はほぼ独学で学んだようです。
この辺にはスピアールトの作品が4枚くらいありました。どれも幻想・神秘という言葉が似合います。

レオン・フレデリック 「咲き誇るシャクナゲ」 ★こちらで観られます
鉢に植えられた赤いシャクナゲが室内の椅子の上に乗せられ、黄色い服の少女が脇でじっと見つめている絵です。葉の緑、花の赤、服の黄色が目に鮮やかで、光と影の使い分けが生き生きとした雰囲気を出しているように思いました。穏やかで幸せそうです。

ヴァレリウス・デ・サデレール 「フランドルの雪景色」 ★こちらで観られます
雪の積もった山村の風景を描いた作品です。一目でピーテル・ブリューゲルの絵を連想させましたが、地平線がやけに低い位置に描かれているところが独特かな。広く描かれた空に沈む太陽のグラデーションは見事で、郷愁を誘いました。人っ子一人いない静かな風景でした。


<第3章 ポスト・キュビスム:フランドル表現主義と抽象芸術>
3章はピカソらが作り上げたキュビスムと、ドイツで生まれた表現主義(画家の主観を通して事象を捉える表現)から影響を受けた画家を紹介するコーナーでした。この章の画家の作風はバラバラだったかな。

グスターヴ・デ・スメット 「パリーの肖像」 ★こちらで観られます
金髪で大きな黒い目の少年が描かれ、背景には海が見えます。全体的に単純化され平面的な感じで、キュビスムからの影響を感じました。解説によると、2次元性を強調するような装飾性や親密感、キュビスム的アプローチの調和を図っているそうです。中々好みの作品でした。

フリッツ・ファン・デン・ベルへ 「人生」
右には暗い街角で手を挙げて叫んでいるような老婆、左には家の中の男の影と横たわる娼婦らしき女、背景には暗い教会が描かれています。直線や三角が多くてキュビスム的な要素を感じます。解説によると、この娼婦は老婆の若い頃ではないか?とのことで、画風にはフランドル表現主義の特徴が出ているとのことでした。 タイトルからして若い頃の成れの果てなのかな?ちょっと怖い教訓めいた作品に思いました。

グスターヴ・ファン・デ・ウーステイネ 「リキュールを飲む人たち」 ★こちらで観られます
一見、3人の男女が食卓を囲んでいるように見える絵です。しかしよく見ると、手前で横を向く男性の手にはパレットと絵筆が握られ、2人の女性は絵の中の人物であることが分かります。ちょっと騙し絵的な要素もあって面白かったです。


<第4章 シュルレアリスム>
最後はお待ちかねのシュルレアリスムのコーナーですが、他の章に比べて少ないように思います。マグリットは3点、デルヴォーは2点といった感じで全部で7点しかありません。しかし、いずれも面白くて素晴らしい作品でした。

ルネ・マグリット 「復讐」
部屋の中でイーゼルに置かれた風景画があり、その絵から雲が部屋にはみ出ているという不思議な光景です。雲が現実に対して「復讐」して絵から逃げているそうです。抜け出た雲は後ろの壁に影を落としているなど、現実と絵の境界が曖昧になるような描写が面白かったです。

ルネ・マグリット 「9月16日」
今回のポスターにもなっている作品です。夕闇の中に一本の木が立ち、その背景にあるはずの三日月が木の前面に回りこんでいるように見えます。この月が無ければ何ということも無い絵ですが、この月があるだけで超現実的な不思議な光景となっているのが面白かったです。流石はマグリットという作品でした。

ポール・デルヴォー 「バラ色の蝶結び」
古代都市のような町と岩山を背景に、虚ろな目をした女が蝶結びのバラ色の大きなリボンを羽織るように観につけています。その周りでも裸の女たちが夢遊病のように立っていて、足元には大きなリボンや骸骨なども落ちていました。 怖い夢の世界のようで、観ているだけで不安な気持ちになってきますw この作品もかなり良かったです。

ポール・デルヴォー 「ウェステンデの海」
これはモノクロの水彩画です。浜辺を描いた静かな風景画で、ボードを見るまでデルヴォーの作品だとは分かりませんでした^^; 微妙な濃淡で描かれていて、油彩のシュールな絵とは違った魅力がありました。


ということで、シュルレアリスムのコーナーがもう少し欲しかったかな。これが中心かと思ってきたので、ちょっと残念…。 とは言え、ベルギーならではの感性を味わえる内容だったのは良かったと思います。
この後、上の階の常設にも行ってきました。シュルレアリスムを求めてやってきた私的には常設の方が「当たり」だったかもw 次回ご紹介しようと思います。


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ヘンリー・ムア 生命のかたち 【ブリヂストン美術館】

前回ご紹介したブリヂストン美術館館内のカフェでお茶した後、「テーマ展示 ヘンリー・ムア 生命のかたち 」を観てきました。いつも通りぐるっとパスを使って入りました。

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【展覧名】
 テーマ展示 ヘンリー・ムア 生命のかたち

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibit/index.php?id=80

【会場】ブリヂストン美術館
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・都営浅草線宝町駅
【会期】2010年7月31日(土)~2010年10月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 特別展:0時間30分程度
 常設展:0時間50分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いている環境の中でじっくりと観ることが出来ました。今回は近代彫刻家の中でも特に有名なヘンリー・ムーアをテーマにした展示で、入口付近の2部屋を使った展示でした。 彫刻6点、素描40点ということで、そんなに品数は多くないのですが、今まで知らなかったような作品もあって参考になる内容でした。詳しくは気になった作品を通してご紹介しようと思います。
なお、★マークをつけた作品は公式サイトで「展示作品」のところから進むと観られます。★マークを押すと公式のTOPにリンクしています(各作品説明に直リンクできないので…))

<第1章 生命のかたち>
まず1章は彫刻と素描のコーナーで、4つのテーマに分けて展示していました。冒頭には遍歴が説明されていましたので簡単にご紹介しますと、ムーアは1930年代にイギリスの画家、彫刻家、建築家によって結成された「ユニット・ワン」という前衛的なグループに参加し、シュルレアリスムなどにも影響を受けていました。 第二次世界大戦の後、ロンドン大空襲の際に地下鉄に避難した人たちを描いた素描シリーズが国際的に高い評価を受け、さらにそれに続いて炭鉱労働者の素描シリーズも手がけたそうです。また、シュメール、エジプト、アフリカ、オセアニア、古代メキシコ(マヤ)などの原始彫刻にインスピレーションを受け、小石や骨の構造研究なども行っていたようです。
ムーアの作品は「人間存在」について向き合っていて、どんなに抽象化されても人体の基本的な要素が暗示されているそうです。ここに並んだ作品もそうした背景が伺えるものとなっていました。

[1.横たわる人体]
まず最初はムーアの作品でもよく見る横たわるポーズについてです。 ムーアは「立つ」「座る」「横たわる」の3つのポーズを比較し、「横たわる」は「最も自由かつ安定している」と語ったそうです。各作品には胴に比べ頭が小さいという特徴があり、これは胴にスケール感を持たせ、人体をモニュメンタルに感じさせるためと解説されていました。

ヘンリー・ムーア 「横たわる人体」 
横になった女性像です。緩やかな曲線が滑らかな印象を持たせ、小さい頭には白い点のような目があるなど、単純化/象徴化されたような姿をしています。いかにもムーアの作品という姿ですが、何故か懐かしさと神秘性を感じます。古代文明からインスピレーションを受けているせいかな?

ヘンリー・ムーア 「荒れ模様の空の下に横たわる人体」
ここからはリトグラフのコーナーです。これはムーアの彫刻をそのまま絵にしたような作品ですが、彫刻よりも人間っぽい等身をしているように思いました。それにしても、ムーアのリトグラフや素描がこれだけあるとは思いませんでした。

ヘンリー・ムーア 「横たわる人体のための習作」 
6体の横たわる人体らしきものが描かれた習作です。もはや人体とは思えないほど変形していて、シュルレアリスムやキュビスムの影響を感じるかな。6体とも違った姿をしているので、色々試行錯誤していたのかな?と思ったり。

ヘンリー・ムーア 「衣装をまとった横たわっている人体」
膝を立てて横たわっている姿の女性彫像です。結構人体らしい形で、腰より下にボリューム感があり、なめらかな雰囲気でした。

ヘンリー・ムーア 「ふたつのかたちによる横たわる人体:2重円」 
これは2つのパーツからなら彫刻作品です。左側には上を見上げる人の顔のようなもの、右は腰かお尻のような形があります。 タイトルから察するにこれも横たわった人体を表現しているようです。よく分からないと思いつつも、人体っぽさを感じる作品でした。


[2.母と子]
ムーアは母と子の主題は時代や地域を越えた永遠性を持ったものと考えていたらしく、初期の彫刻作品から母と子を主題としていたようです。戦時中に防空壕の中の母子を描いてからはさらに重要なテーマとなり、やがて父親も加わり「ファミリーグループ」の連作が展開されたとのことでした。

ヘンリー・ムーア 「波を背景にした母と子」(Ⅰハードグレー、Ⅱイエロー、Ⅲソフトグレー) 
これは色違いの3枚のリトグラフです。線で描かれた波を背景に、中央より左で母が子を抱いた姿が影のように描かれています。波のうねりがちょっと怖いような寂しいような印象を受けました。 母親がしっかり子供を抱いて守っているように見えたかな。

ヘンリー・ムーア 「母と子:腕」
膝を立てて座る母親と、その膝の上に立って母の肩に手を乗せている子供の彫刻です。抽象化されていますが母と子の絆を感じる作品でした。近くにはこれと似た小さな作品もありました。

ここには他にもファミリーグループの習作もあります。


[3.座る女のポーズ]
座る女は抽象的な「横たわる人体」と異なり、子供を抱いたり、本を読んだりしていて、何か意図的でリアルな対象として描かれたそうです。ここには、鳩を持って座る女、腕を組む女など様々な動きをしている絵画作品がありました。


[4.頭部(ヘルメット・ヘッド)]
このコーナーは二重の扇形の中に目が描かれたような「ヘルメット・ヘッド」というシリーズが並んでいました。この主題は内部を外部が保護するというテーマに発展していき、やがては子宮に守られた子という関係にも発展したそうです。

ヘンリー・ムーア 「ヘルメット・ヘッド 黙視」
抽象画のような作品です。中央に四角の枠があり、左に円の1/4が2重に描かれています。円の中には目がついていて、ヘルメットを被った人が窓から覗いているような感じです。目が怖くて不気味w この辺にはこの主題の作品(ヘルメットを被った人がこっちを観ているような絵など)が5点くらいありました。

ヘンリー・ムーア 「ヘルメット・ヘッド No.6」 
これは彫刻作品です。ヘルメットと言うか、ゆで卵の白身の部分みたいな覆いの中に、モニュメントが入っている2重の構造となっています。内部のモニュメントは川村記念美術館にある作品を小さくしたような形でした。
↓これに似てます
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 参考リンク:川村記念美術館の案内


<第2章 ストーンヘンジ-有機的な形>
2章はストーンヘンジらしき巨石を描いた素描のコーナーでした。ムーアは23歳の時に初めてストーンヘンジを観たそうで、74歳の時に「黒い素描」というシリーズを描きました。ここにはそうした巨石を題材にした、質感溢れ威厳に満ちた作品が並んでいました。

ヘンリー・ムーア 「ストーンヘンジ Ⅳ 輪の内側」
白黒のリトグラフで、写実的にストーンヘンジが描かれています。静かな雰囲気の中で重厚感と圧倒的な存在感がありました。この辺には色々な角度から描かれた19点の素描が四方にずらりと並んでいました。作品の題材も相まって、壮観な光景となっています。

最後は参考になる本が展示されていました。解説にあった防空壕や炭鉱を描いた版画などもあり、ちょっと怖い雰囲気を感じました。

ということで、テーマ展示はここまでです。ムーアの作品は結構な数を観ていますが、こうして体系立った展示は中々ないので貴重な体験でした。


<常設>
ここからは常設です。ここの常設は相変らず幅広く充実しているのですが、このブログでも何度か紹介しておりますので、私の感覚で「最近入れ替わって展示されたと思われる作品」だけをいくつかご紹介しようと思います。
 参考記事:
  美の饗宴・東西の巨匠たち (ブリヂストン美術館)
  印象派はお好きですか? (ブリヂストン美術館)

エドゥワール・ヴゥイヤール 「鏡の前」
水色のドレスを着た女性が、こちらを向いて暖炉の上の鏡の前に立っています。鏡には女性の背中と赤いカーテン、薄っすらした光などが見えます。パステルの色合いのせいか温かみを感じる作品でした。

エミール=アントワーヌ・ブールデル 「レダと白鳥」
両手を左にのばしている裸婦(レダ)と、その背後に覆いかぶさるような巨大な白鳥が描かれています。白鳥はレダに顔を近づけていて、物語の内容をよく伝えているように思いました。また、四角い絵の中に絶妙に納まった構図も面白かったです。ブールデルの絵画作品は6点ほどありました。

オシップ・ザツキン 「三人の女」
これはグアッシュで、3人の女性が肩を組むように立っている様子を描いたものです。真ん中の女性の顔は左右が白黒に分かれていて、背景はそこを境に左が白、右が黒というように分かれていました。抽象的で彫刻作品の面影を感じます(入口にある三美神と共通するものがあるかも)

この辺には他にもロダン、アーキペンコ、マリーニ、ジャコメッティなど彫刻家の絵画作品が並んでいて、観たことが無い作品が多かったです。ムーア展に合わせた企画かな。

オディロン・ルドン 「裸婦」
鉛筆とパステルで描かれた素描みたいな感じの作品です。何かを追いかけているようなポーズの裸婦が描かれ、足の辺りにオレンジの花か蝶のような模様が描かれています。体の周りには薄い紫のオーラのようなものが漂い、不思議で幻想的な作品でした。

[新収蔵品特別展示]
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「サーカスの舞台裏」
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これは最近コレクションに加わったようでした。白黒の油彩画で、馬に手をかけるピエロのような人が描かれ、両脇には黒い帽子の男と踊り子のような女性の姿があります。解説によると、白黒なのは薄暗い舞台裏を意識したものではないかとのことで、静寂の中に本番の緊張感があるそうです。

これ以降では以前と違う作品は気づかなかったかな。


ということで、常設もいつも通り楽しんできました。ぐるっとパスで入れる上、静かに鑑賞できて、本当に素晴らしい美術館です。


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Tearoom Georgette (ジョルジェット) 【京橋界隈のお店】

前回ご紹介した出光 美術館の展示を観た後、京橋へ移動してブリヂストン美術館にハシゴしてきました。 展示を観る前に館内にあるTearoom Georgette (ジョルジェット)で一休みしてきました。

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【店名】
 Tearoom Georgette (ジョルジェット)

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/tea/index.html
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1302/A130202/13040960/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 JR東京駅・銀座線京橋駅・都営浅草線宝町駅

【近くの美術館】
 ブリヂストン美術館(館内にあるお店です)

【この日にかかった1人の費用】(※お酒は飲んでいません)
 900円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
カフェの名前の由来はブリヂストン美術館の看板娘であるルノワールの「座るジョルジェット・シャルパンティエ嬢」の名前かな?
↓この絵の女の子が「座るジョルジェット・シャルパンティエ嬢」です。
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この日は何人かお客さんがいる程度であまり混んでいませんでした。店内は非常に落ち着いた雰囲気で、美術関連の本が置かれ、フレスコ画が飾られています。この写真には写っていませんが右側の壁面にフレスコ画があります。
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この日はケーキセット(900円)を頼んで、ケーキは洋梨のタルト、ドリンクはコーヒーにしました。
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まずは洋梨のタルト。甘い香りですが、食べてみると梨は少し風味がある程度かも。まずまずの美味しさです。
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続いてコーヒー。こちらもスタンダードな美味しさかな。苦みや香りはあまりなく、すっきりした感じに思いました。
コーヒーはおかわりできるようですが、普通に2杯分くらいあったので十分かも。ビスケットもついてきました。
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ということで、落ち着いた雰囲気の中でゆっくりすることができました。店員さんは細やかな目配りと心配りで親切でした。この美術館は展示物も素晴らしいですが、カフェもさすがです。 なお、会計はテーブル会計でした。

この後、ブリヂストン美術館の展示を観てきました。


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日本美術のヴィーナス -浮世絵と近代美人画- 【出光美術館】

先週の土曜日に、日比谷の出光美術館で「日本美術のヴィーナス -浮世絵と近代美人画-」を観てきました。

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【展覧名】
 日本美術のヴィーナス -浮世絵と近代美人画-

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館
【最寄】JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅

【会期】
  前期:2010年7月31日~8月22日
  後期:2010年8月24日~9月12日

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間10分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この日は結構お客さんが多くて、1作品に1人~2人くらいの混み具合でした。主に年配の方が多かったかな。中々に賑わっていました。
今回の展示は女性の「清涼美」をキーワードに出光美術館の優美な美人画コレクションの数々が展示されていました。詳しくは章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。


<第一章 清涼の美人>
今回の展覧は特に章分けの必要性を感じませんでしたが、まず最初は今回の展示のテーマでもある「清涼」のコーナーとなっていました。

「普賢菩薩騎象図」 ★こちらで観られます
雲に乗った白い象の背に乗る普賢菩薩を描いた掛け軸です。手を合わせて澄んだ表情をしていて、唇の赤が艶やかな雰囲気を出していました。
解説によると、インドから伝わった神々(吉祥天や弁才天)を除けば、仏には性別が無いそうですが、普賢菩薩や観音菩薩のように女性をイメージした仏はしばしば描かれたそうです。

喜多川歌麿 「更衣美人図」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている掛け軸です。少し首を傾げて右手に扇子を持ち、左手で右肩を触っている着物の女性像です。色白で優美な雰囲気が漂い、赤い着物がちょっと見えているのが艶やかさを引き立てているように思いました。

勝川春湖 「蛍狩美人図」
蛍狩りに来た若い2人の姉妹が描かれた掛け軸です。背景には葦の葉のみが描かれ、周りには蛍はいないようです。うちわを持って薄い緑の着物を着た姉は清涼という言葉がぴったりな雰囲気を出していました。勝川春湖はこの作品の近くにあった作品も良かったです。

鳥文斎栄之 「舟遊図」
霞がかった満月の下、川の上に屋形船が何艘か浮かび、左側には大勢で賑わう橋が描かれています。手前では柳の木下で屋形船が留まり、中の男達が舟の脇の2人の女性に声をかけているようです。この手前の風景だけが色濃く描かれ、紫と青の女性の着物が清涼感と色気を出していました。また、全体的に楽しげで粋な雰囲気を感じる作品でした。

この辺には蒔絵や陶磁器などもあったのですが、今回のメインは美人画なのでご紹介は割愛します。

「誰が袖図屏風」
6曲1双の金屏風です。画面に人の気配は無く、左右に「衣桁」という着物をかける物干しみたいなものがあり、細やかで色とりどりの着物がかかっています。扇、草花、水車など、着物の意匠も様々で華やかです。左隻にはお膳のようなものやカゴのようなものもありました。この主題は好みです。


<第二章 古雅の幻影>
このコーナーは古典や故事、謡曲のイメージを要素に入れて、別のもので表現する「見立て」が使われた作品が多くありました。

喜多川歌麿 「娘と童子図」 ★こちらで観られます
緑色の着物を着た若い女性が赤い鞠を持っていて、足元にいる幼い弟がその鞠に向かって手を伸ばして欲しがっている様子が描かれています。弟の前にはコマと紐が転がっていて、どうやらコマ遊びには飽きてしまったようです。 微笑ましい光景ですが、これは善財童子を伴う観音を思わせるそうで、さらに訶梨帝母(鬼子母神)を基にしているとも考えられるとのことです。参考として醍醐寺の訶梨帝母の絵の写真が解説にありました。

葛飾北斎 「月下歩行美人図」
大きな月と、その下を歩く女性を描いた作品です。背景には何も無く、女性の白い顔が一際目を引き、周りは静かで幻想的な雰囲気の作品でした。 ・・・これは見立てかは分かりませんでした。

<第三章 美人たちの遊宴>
このコーナーは遊宴をテーマにしていて、多くの美人が楽しみに興じている姿が描かれた作品が並んでいました。

菱川師宣 「遊楽人物図貼付屏風」
6曲の小さな屏風です。1扇ごとに美人たちが遊楽にふけっている様子が描かれていて、桜の下での宴会の様子、三味線を弾いている様子、碁を打っている様子、本を読んでいる様子、花札?に興じている様子など、様々な場面となっていました。いずれも複数の人々が描かれ、女性の華やかさと楽しげな雰囲気を感じました。着物も華やかです。

勝川春章 「美人鑑賞図」 ★こちらで観られます
この作品は以前にもご紹介いたしましたが、またメモしてしまったw 広い屋敷の中で10人くらいの女性が寄り合って掛け軸を見ている様子が描かれ、女性の着物が画面に彩りを与えているように思います。1人の女性のひざの上には猫が乗っかっていて、もう1匹掛け軸の入れ物にじゃれている猫も見られます。また、障子の横には牡丹が飾られていました。解説によると、猫は長寿の象徴、牡丹は富貴の象徴であり、吉祥のモチーフになっているようでした。まあ、難しいことを考えなくても一目で素晴らしさが分かるかとw
 参考記事:ユートピア ―描かれし夢と楽園― (出光美術館)

宮川長春 「江戸風俗図巻」
これは巻物で、川にかかる橋と屋形船が描かれています。上部には金砂子が撒かれ、絢爛豪華な雰囲気があります。この作品は春夏秋冬の場面があるようで、観たのは恐らく夏のようでした。 風情があって、楽しそうな人々の様子が色鮮やかに描かれていました。


<第四章 伝統美と革新のあいだ>
最後のコーナーは私にとっては大ヒットでした。ここは明治以降に浮世絵などを参考に描かれた日本画が並ぶコーナーでした。

上村松園 「四季美人図」 ★こちらで観られます
これは4幅セットの掛け軸です。桜の木の下で着物を翻す女性、屋形船の上で透ける団扇を持って立つ女性、障子を開けて足元の花を観る女性、雪の積もった傘を持って雪道を歩く女性 というように四季の女性達を描いています。いずれも瑞瑞しい美しさを感じる松園ならではの作品でした。 また、美人を画面からはみ出るように描いた構図が面白かったです。

上村松園 「灯」
水色の着物を着た女性が、袂で手に持つ燭台の蝋燭の炎を覆っている様子が描かれた絵です。白い肌の顔に赤い口紅が何とも艶やかで、その仕草と共に雅な雰囲気がありました。女性の上半身だけ大きく描かれているのですが、これは喜多川歌麿の大首絵の影響のようです。また、この作品は松園の母が死んだ3年後に描かれたものだそうで、思慕の情が表現されているのではないかと解説されていました。

菊池契月 「友禅の少女」
青い着物を着た黒髪で白い肌の女性が、赤い椅子に腰掛けてじっとこちらを観ています。こちらを見透かすような神秘的な目と、黒、赤、白、青といったハッキリした鮮やかな色彩が清廉な雰囲気を出しているように思いました。菊池契月はこの隣にあった作品も良かったです。

この部屋の中央あたりには陶磁器、化粧道具、香炉なども展示されていました。

鏑木清方 「五月晴」
両脇に杜若が咲いている橋を渡る女性を描いた作品です。扇の上に盃を載せて運んでいるようですが、視線を道の横に向けていました。薄い青の着物には紅白の牡丹も描かれ、清方らしい清らかな美人でした。
この辺は清方に深水といった大好きな画家の絵が並んでいて全部好みでしたw 隣にあった「たけくらべ」の絵も良かった…。

伊東深水 「通り雨」
薄い紫と赤の着物を着た女性が、青い傘を開こうとしている様子が描かれています。真っ白な肌に、口紅の赤や着物の色が映えて艶やかです。表情にも色気があって、この展覧の中でも色っぽさが群を抜いていたと思います。非常に魅力を感じる女性像でした。


ということで、華やかで好みの作品が多い内容で、特に四章は良かったです。夏に相応しい涼しげな美女が揃った展覧会でした。 …公式サイトを観ていると、後期の方が揃えが良さそうに思えてきますw 後期も行こうか悩む…。


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ネイチャー・センス展 【森美術館】

森アーツセンターギャラリーで地球最古の恐竜展を観た後、さらにハシゴして森美術館で「ネイチャー・センス展 吉岡徳仁、篠田太郎、栗林 隆  日本の自然知覚力を考える3人のインスタレーション」展を観てきました。この展覧会は以前この美術館で行われた「アイ・ウェイウェイ展」や「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」の取り組みを活かし、写真撮影が可能な美術展となっていました。
 参考記事:
  アイ・ウェイウェイ展 何に因って? (森美術館)
  六本木クロッシング2010展:芸術は可能か? (森美術館)

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【展覧名】
 ネイチャー・センス展 吉岡徳仁、篠田太郎、栗林 隆  日本の自然知覚力を考える3人のインスタレーション

【公式サイト】
 http://www.mori.art.museum/contents/sensing_nature/index.html

【会場】森美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2010年07月24日~11月07日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(お盆の平日19時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
下の階の恐竜展は子連れで混んでいましたが、こちらは客層が違うので空いていてゆっくり観ることができました。
今回の展示は、吉岡徳仁、篠田太郎、栗林 隆の3氏のインスタレーション作品が並ぶ展示で、自然との関わりをテーマにしているとのことでした。詳しくは写真と共にご紹介しようと思います。
なお、展覧会で撮影したい方は、展覧会の入口に写真撮影の注意事項がありますので、撮影の際はよく読んでルールを守るようお願いします。(無茶する人が出ると止めてしまいそうだし…)
写真は営利目的に使うものではありません
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<吉岡徳仁>
まずトップバッターは吉岡徳仁氏。部屋に入ると↓このような光景が広がります。
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作家:吉岡徳仁 「スノー」
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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは雪をイメージしたインスタレーションで、中ではファンの風によって羽毛が舞い上がっていました。ゆっくりと舞い降りてくる姿は正に雪のようです。
↓巻き散るところのアップ
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作家:吉岡徳仁 「スノー」
88x31.png
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

毎回姿を変えていく雪は、再現性の無い自然そのものといった感じで神秘性がありました。


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作家:吉岡徳仁 「ウォーターフォール」
88x31.png
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これはスペースシャトルにも使われている特殊な光学ガラスを使った作品で、楕円状の横から覗いて見ると、逆側までクリアに見えるほどの透明度があります。、表面には川の流れのような波紋があり、滝の流れを連想させました。


<篠田太郎>
続いて篠田氏の作品。こちらも面白いインスタレーションが並んでいました。

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作家:篠田太郎 「残響」
88x31.png
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

コの字型に並んだ3面のモニターに映ったビデオ作品です。立川周辺の風景や、首都高速の下の水路の風景が映されていて映像だけでなく会場内に音が鳴り響いていていました。解説はちょっと難しいのですが、作者と外界との境界を表現しているようでした。


DSC_14088.jpg DSC_14084.jpg
作家:篠田太郎 「銀河」
88x31.png
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは天井から水滴が一斉に落ちてきて、下の水面に無数の波紋が広がっていく作品です。北斗七星をモチーフにした京都の東福寺東庭に着想を得て作られた作品だそうで、そのせいか枯山水のような宇宙観を感じました。


<栗林隆>
最後は栗林氏で、この展覧会で特に驚いた作品がありました。

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作家:栗林隆 「ヴァルト・アウス・ヴァルト(林による林)」
88x31.png
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

写真だと何だか分からないかもしれませんが、鑑賞者はボール紙の下を歩いて進んで行き、そのボール紙のあちこちに穴が空いていて、そこから上を覗くと真っ白な木立が見えるというインスタレーションです。何だか自分がもぐらになったようなw この写真は穴から見えた光景を撮ってみました。 解説を読み忘れましたが、この人は境界線をテーマにした作品が多いらしいので、これもそういう意味なのかも??

この後、「インゼルン2010(島々)2010」という作品があったのですが、これが一番の驚きの作品で、何と会場内に高さ4メートルくらいの山ができていましたw これは実物で観て欲しいので写真は出し惜しみしておきますw 頂上部分がガラスで区切られ、その断面が世界地図になっていました。


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作家:栗林隆 「YATAI TRIP(ヤタイトリップ)」
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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

屋台と、それを持って各地(韓国?)を旅した時の映像が流れていました。解説によると「屋台は広がると周囲の外部空間を取り込み、部屋や庭のような内部空間になる」そうで、人との距離感や境界をあぶりだすとのことでした。


ということで、深い意味を理解するのは難しいですが、直感でも面白く感じる作品が多かったのが良かったです(写真も取れるしw)
展覧会を出ると、ネイチャーブックラウンジという子供の本から西洋の古写書まで600冊の本を並べたラウンジがありました。
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会期中にはここでイベントなども行われるそうです。詳しくは公式サイトでご確認ください。


<MOM PROJECT>
会場の出口付近には毎回恒例のMOM PROJECTが開催されています。今回はトロマラマというインドネシアのアーティストグループを紹介していました。映像作品が多かったかな。

【公式サイト】 http://www.mori.art.museum/contents/mamproject/project012/index.html
【会期】2010年07月24日~11月07日

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作家:トロマラマ 「戦いの狼」
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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これはインドネシアでカリスマ的人気の「セリンガイ」というヘヴィメタルバンドのために作った映像作品と、それを作るのに使った版木のような原画?を展示したコーナーです。コマ送りのアニメーションとなっていて、素朴で力強いのにスタイリッシュな雰囲気も感じました。この映像は面白くて素晴らしかったです。 (ちなみに私はメタル好きなのですが、このバンドは全く知りませんでしたw 曲自体は好みじゃなかったかもw)

これにて、今回の展示は終わりです。MOM PROJECTは毎回ご紹介していませんでしたが、今回は今までで一番楽しめたかも。 ネイチャー・センス展とMOM PROJECT、共に森美術館のセンスが光る展覧会でした。


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地球最古の恐竜展 【森アーツセンターギャラリー】

前回ご紹介したサントリー美術館の展示を観た後、六本木ヒルズに移動して森アーツセンターギャラリーで「地球最古の恐竜展」を観てきました。六本木ヒルズは去年まで夏はアクアリウムをやっていましたが、今年はそれに代わるものとしてこの展示をやっているようです。
 参考記事:スカイアクアリウムⅢ (TOKYO CITY VIEW)

なお、この展覧会はルールを守れば写真を撮ることができましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 地球最古の恐竜展

【公式サイト】
 http://www.kyoryu-saiko.jp/pc/top.html
 http://www.roppongihills.com/feature/dinosaurs/index.html

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2010年7月10日(土)~9月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間50分程度

【混み具合・混雑状況(お盆の平日18時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
特に入場制限などは無くすんなり会場に入ることができましたが、中は混んでいました。流石に子供連れが多く、ふいに走って突っ込んでくる子供もいたりして中々落ち着いて観るのは難しいですw しかし、展示物が大きいのと低身長の子供が多いので、作品を観るだけならちょっと離れれば難しくありませんでした。

内容についてですが、今回の展覧会はアルゼンチンのサンファン国立大学自然科学博物館の協力により「三畳紀」という時代の恐竜が展示されています。…って「三畳紀」がよく分からなかったので、ざっくりと調べて以下にまとめてみました。(一部、時代が重なっているのはそういうものだと思ってくださいw)

 古生代
  カンブリア紀 (約5億4500万年前~約5億0500万年前) 三葉虫などの時代
  オルドビス紀 (約5億0900万年前~約4億4600万年前) オウムガイや三葉虫の時代
  大量絶滅 6000光年以内の超新星爆発のガンマ線バーストによって全生物の85%程度が絶滅
  シルル紀 (約4億3500万年前~約4億1000万年前) 陸上植物の生まれた時代
  デボン紀 (約4億1600万年前~約3億6700万年前) 両生類、昆虫、シダ植物などが生まれた時代
  大量絶滅 気候変動によって海洋生物の大量絶滅。全生物の85%程度が絶滅
  石炭紀 (約3億6700万年前~約2億8900万年前) 爬虫類、哺乳類型爬虫類(単弓類)などが生まれた時代
  ペルム紀 (約2億9000万年前~約2億5100万年前) 豊かな生態系の時代
  P-T境界 火山活動(スーパープルーム?)による気候の大変動で90~95%程度の生物が絶滅

 中生代
  三畳紀 (約2億5100万年前~約1億9500万年前) 詳しくは後ほど…。
  大量絶滅 火山活動?によって全生物の76%程度が絶滅
  ジュラ紀 (約1億9500万年前~約1億3500万年前) 大型恐竜の時代。被子植物や始祖鳥なども生まれた。
  白亜紀 (約1億4550万年前~約6550万年前) ティラノサウルスやトリケラトプス、プテラノドンなどの時代
  K-T境界 隕石?によって恐竜やアンモナイトが絶滅 全生物の70%程度が絶滅

 新生代
  第三紀 (約6500万年前~約250万年前) 哺乳類・鳥類が栄えてきた時代
  第四紀 (約258万8000年前~現在) 人類の時代

関連記事:
 植物化石-5億年の記憶- 展 (INAXギャラリー)
 国立科学博物館の案内 (地球館)

上記のように、史上最大規模の絶滅(P-T境界)が起きた時代の後が「三畳紀」となります。地球は5回ほど大量絶滅に見舞われてきましたが、その次に来る時代は逆にチャンスの時代で、がら空きとなったニッチ(生態的地位)を埋めるように新しい種が台頭してきます。 この三畳紀では恐竜の先祖、ワニの先祖、哺乳類の先祖が新たな王者となるべく覇権を争っていたようで、意外にも最初は哺乳類の先祖が栄えていました。また、ワニの先祖も恐竜を捕食するなど、決して恐竜の時代ではなかったようです。 今回の展示ではそうした3つの種が争っていた様子などを再現し展示していました。(↑のを読めば分かると思いますが、ティラノサウルスなどメジャーな恐竜の時代とは違います)

入口付近。パノラマの映像で発掘した場所を映しています。今回の展覧はこうした映像やCGなどが充実していて、当時の様子を背景に映すなど凝った造りになっています。
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「イスチグアラスティア」という「ディキノドン類」の生物。爬虫類と哺乳類の特徴を併せ持っていた生物だそうです。「キノドン類」はP-T境界を生き延びてこの時代に栄え、哺乳類の先祖になっていきます。
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どうやらこの骨は一部だけ本物で、残りは模型のようです。

「フレングエリサウルス」という恐竜類の生物。恐竜の先祖で、現在見つかっている中で最古の恐竜です。恐竜は三畳紀に生まれました。
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「シロスクス」という「クルロタルシ類」の生物で、ワニの先祖のグループです。恐竜そっくりで、骨格から速く走れたと考えられるそうです。
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「サウロスクス」というクルロタルシ類の生物。三畳紀後期に捕食者として頂点に君臨していたそうです。これも速く走れたと考えられているそうです。
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少し進むと、恐竜の巨大化の謎についての解説がありました。先ほどの「フレングエリサウルス」もそうでしたが、最初は恐竜といってもそんなに大きくなかったのですが、三畳紀の後期にかけて次第に巨大化していきます。巨大化の理由は諸説あるようですが、「大きいほうが食べられないから」という理由を挙げていました。(この日の前日に観たディスカバリーチャンネルの恐竜番組でも体が大きいほど安全だったと言ってたのを思い出しました) 

一旦、シティビューの辺りに出るとこんな感じ。手前が「ファソラスクス」(ワニ) 奥が「レッセムサウルス」(恐竜)です。レッセムサウルスはでかくて写真に入りきらなかったw
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角度違い。「ファソラスクス」はこの時代の捕食者としては最大級だそうです。こんな大きなワニがいたから恐竜も巨大化したのかも。
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この辺には恐竜にしか見えないワニの先祖が展示されていて驚きました。あんまり紹介しすぎるのもあれなので、出し惜しみしておきますw

これは「エクサエレトドン」という哺乳類になりきれていないキノドン類です。子供に乳や餌をやるなど哺乳類と共通する特徴があったようです。
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哺乳類はこの三畳紀の末に現れたそうです。ちなみに哺乳類は、乳をやること、毛があって自分で発熱できること、よく聴こえる耳の3つの特徴があるそうです。…って、中学の頃に教科書で習った気がするw

冒頭に骨があった、フレングエリサウルス(左。肉食恐竜)とイスチグアラスティア(右。草食のディキノドン類)が戦っている様子を展示していました。背景の映像がどんどん変わって臨場感があります。
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この辺には植物の化石や肉食動物の糞の化石などもありました。また、マジックミラーを使った展示コーナーも見所です。(この記事に載せていないだけで恐竜の模型は沢山展示されています)

さらに進むと、進化ツリーのコーナーがありました。床に矢印があるのは国立科学博物館と同じような趣向かも。
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ここには枝分かれしていった様々な恐竜が展示されていました。

先ほどは骨だった「フレングエリサウルス」 こういう姿だったのかな。動きを感じるポーズで迫力があります。
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他にもエオラプトルや新種の恐竜などもいました。ラプトルなら聞いたことあるなあw

最後は映像コーナーで、恐竜の絶滅なども説明していました。やはり隕石説が有力みたいです。


ということで、単純に恐竜の模型を観るだけでも面白いと思いますが、今まで観たことも聴いたことも無い古代生物の生態を観られる展示でした。ワニが強かったことや、哺乳類の先祖が恐竜より先に栄えていたこと、恐竜絶滅よりも深刻な絶滅が以前にあったことなどは特に面白く感じました。安易に誰でも知ってる恐竜展にしなかったのは素晴らしいと思います。子供たちも大喜びしているようで、階下の恐竜グッズショップも賑わっていました。恐竜に興味がある方は足を運んでみると良いかと思います。


おまけ:東京シティビューからも恐竜が一部観られます。また、1Fにも1体展示されていました。
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この後、森美術館にもハシゴしました。


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誇り高きデザイン 鍋島 【サントリー美術館】

今日、お盆休みを利用して六本木で美術館巡りをしてきたのですが、まずはサントリー美術館で始まったばかりの「誇り高きデザイン 鍋島」を観てきました。この展覧は3期に分かれているようで、私が行ったのは1期でした。 今回もメンバーズクラブのカードで入りました。(メンバーズクラブの紹介ページ

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【展覧名】
 誇り高きデザイン 鍋島

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/10vol03/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2010年8月11日(水)~10月11日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(お盆の平日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場は意外と人が多くて、2~3作品に1人くらいの割合でお客さんが入っていました。作品はガラスケースの前にいかないとよく分からないので、見る場所が限られている分、ちょっと混んでいるなと感じるくらいの混み具合でした。(この日はミッドタウン自体も混んでいたのでお盆休みの観光客が多かったのかも??)

さて、内容についてですが、まずは「鍋島」とは何かというプロローグがありました。鍋島は江戸時代に佐賀藩が藩直営の釜を設け、将軍への献上や他大名の贈答のために作った磁器のことです。献上品として作られている為、民間の作品とは一線を画す品質があり、費用もたっぷりかけた作品が多いようです。冒頭では代表的な作品が2点並んでいました。

「染付松樹文三足大皿」 ★こちらで観られます (4章のところです)
薄い青で松の木を描いた染付けです。松の葉は松というよりいがぐりのように見え、幹は単純化されて平面的な感じです。また、横から観ると3本の足がついていました。装飾性と高い技術を感じさせる作品でした。

「色絵植木鉢岩牡丹文大皿」
植木鉢に乗った白や赤の牡丹が描かれた皿です。植木鉢は単純化されていましたが、花は細やかに描かれ、庭のようにも見えました。園芸は当時の大名の高尚な趣味だったそうですので、大名への贈答品という用途に沿った絵柄に思いました。これは色鍋島の名品とのことです。


<第1章 鍋島藩窯の歴史>
1章は鍋島の歴史を初期から後期まで一気に辿る内容でした。佐賀藩の初代藩主 鍋島勝茂は当初、中国の景徳鎮を将軍に献上していたそうですが、当時の中国は明朝から清朝に移る内乱時代で、景徳鎮の輸入が激減してしまいました。そこで、佐賀藩は景徳鎮に代わる磁器を1640年くらいから開発したそうです。最初は有田に釜があったそうですが、やがて伊万里の大山内山に移り、17世紀末から18世紀始めにかけて最盛期を迎えました。最盛期には豪華な色絵が多かったそうですが、その後の幕府の質素倹約の方針によって、染付けや青磁が中心となっていきました。また、時代が進むとデザインの定型化が進んでいったそうです。 そして最後は、江戸が終わり明治維新となった1871年(明治4年)に廃釜となったようです。 この章ではそうした各時代の作品が並んでいました。

「色絵山水花鳥文大皿(中国景徳鎮窯)」 「色絵山水花鳥文大皿(肥前有田)」 ★こちらで観られます
ほぼ同じような絵柄の皿が2枚並んで展示されていて、1枚は中国の景徳鎮、もう1枚は有田で作られた作品です。いずれも中央に正方形の四角、その周りに4つの円形の枠があり、その枠の中には花鳥が描かれていて、枠に入っていないところには貝などの海の生き物が描かれていました。景徳鎮の作品は濃い緑を基調にしていますが、有田の作品は水色で爽やかです。そのせいか背景に描かれた渦の文様が細かく描かれているのがよく分かります。何かと有田のほうがスッキリした感じだったかな。この作品に後の方針の礎が詰まっているようでした。

「色絵群馬文皿」
5枚セットの小皿です。いずれも白い馬2頭と薄い青(染付けの青)の馬が群れている様子が描かれています。似ていますが5枚とも絵が違っていて、可愛らしく生き生きとした姿で描かれていました。

「染付枝垂桜文三足大皿」
これは初期の鍋島の大皿です。枝垂れ桜(しだれざくら)の3本の枝と花が大きく描かれ、優雅な雰囲気でした。この辺には桜柴垣や花筏など華やかな作品が多かったかな。

この辺で、解説機では鍋島の3つの特徴を紹介していました。
色: 色は赤、青、緑、黄色の4種類で、色が少ないぶん細部にこだわりをもっていたそうです。
デザイン: 画面いっぱいに描かれる特徴があるようです。↑の作品もそうでした。
裏面: 裏面にまで紋様があるそうです。鍋島はあくまでも実用品であるためと説明されていました。

「色絵桜柴垣文向付 六客」
6個セットの器です。側面には赤と白で描かれた桜の花と緑の葉が描かれ、背景にはびっしりと青い柴垣が描かれていました。色合いが美しく可憐な雰囲気を感じました。この辺には似た意匠の大皿もあったので、人気があったデザインなのかもしれません。

「色絵竹笹文大皿」
反り合ってくっついている2本の竹が、円状に5セット描かれている絵皿です。よく観るとその10本の竹が梅の花の形を作っているのが驚きです。また、竹の緑の鮮やかさが印象的でした。解説によるとこの作品の頃には最盛期を過ぎて、色数を減らしていたそうです。

「青磁染付竹文三足大皿」
青磁というよりは薄い緑の地をしている大皿で、そこに水墨画のように竹と葉っぱが描かれています。多分、質素倹約の時代の作品だと思いますが、派手さはないもののしっとりと上品な作品でした。


<第2章 構図の魅力>
鍋島はデザインに苦心していたようですが、マンネリに陥ったこともあったようで、民間の釜の作品で珍しいものがあったらそれを採用するようにと指示されていたそうです。この章では、そのような経緯で元にした民間の作品との比較などを交えつつ、主要なデザインを4つに分類して紹介していました。

[連続文様]
「色絵更紗文皿」
青い菱形を中心に4つの唐花文(赤い花と緑の葉)が並び、その周りを青い枠が囲っているパターンがいくつも連続している作品です。この作品の隣には「染付更紗文皿」という民間の釜の染付けが並んでいて、パターンの連続という共通点があるものの、ちょっとずれていたり歪んでいたりしていました。それに比べると「色絵更紗文皿」はパターンが整然と並び、完成度の高さが伺えました。こういう参考展示は鑑賞しやすくて良いです。
この辺は更紗文や雷文などの連続紋様の作品が並んでいました。

「色絵毘沙門亀甲文皿」
これは毘沙門亀甲という文様(テトラポットが組み合わさったような文様)が連続する作品です。この近くには全く同じ文様の作品が3つあったのですが、鍋島はこうした同じ規格の作品を作るために「仲立紙」という下絵を写す技法を使っていたそうです。単独で観ても幾何学的なデザインが面白いですが、3つ並ぶとその技術力の高さも目に見えて、より興味深い展示となっていました。

[散らし文]
「青磁染付雪輪文皿」 ★こちらで観られます
これは雪の結晶文様をアトランダムに配置した青磁の染付けです。結晶の中にぼかした藍色が描かれたものと、真っ白な結晶が交互に重なり合って描かれ、リズミカルな感じをうけました。なお、当時は大雪の年は豊作であると考えられていたため、雪輪文は吉兆の文様とされていたそうです。

[割付]
「染付銀杏唐花文皿」
円を中心に3方向に向かって複雑な唐草文が描かれ、花以外の所は放射状の線が描かれている皿です。これは割付というモチーフの配置を工夫したデザインだそうで、幾何学的な美しさと文様の迫力を感じる作品でした。

[白抜]
「色絵唐花文皿」
皿の中心が白く、周りに文様が描かれたものを白抜というそうで、これも白抜の皿です。皿の円周に唐花のモチーフが5つ並んでいて、真ん中の白抜は☆の形になっていました。赤、緑、黄色の色も華やかでした。

「染付雲雷文大皿」
これも白抜を使った作品で、この展覧会でも特に気に入りました。 円周にはカクカクした細かい雷文がぎっしり描かれ、所々に雲がたなびいています。また、中央付近の雷文はぼかされていて、白抜された部分があたかも朧月のように見えるのが素晴らしい発想でした。ぼや~っとした感じがよく出ていて見事です。

「染付月兎文皿」 ★こちらで観られます
これはどの分類の作品かわかりませんが、兎が丸まった姿を円形に描いた染付けです。皿自体の円と兎の円で2重の円となっているのですが、残された余白の部分が三日月の形となっているのが洒落ています。隣には民間の兎の染付けが並んでいましたが、洗練度がだいぶ違ったように思いました。(民間の方も愛らしくて好きな作風でしたがw)


<第3章 鍋島の色と技>
3章では鍋島の色や技をテーマにしていました。前述の通り、鍋島は青、赤、緑、黄の4色が使われていますが、特に重要なのは染付けの色である青だったそうです。また、色を組み合わせることで茶や紫なども表現できたようでした。ここにはそうした技を感じる作品が並んでいました。

「色絵蒲公英文皿製作工程」
これは色鍋島が出来るまでの工程が一目で分かるものです。一工程に一枚ずつ展示され、どのように作られていくかがわかります。こういう展示があると理解も進むので嬉しいです。
この辺には参考展示の屏風も並んでいました(その意図は分からず…。)

「色絵蔬菜文皿」 ★こちらで観られます
紫の茄子、赤い豆の鞘、緑の葉っぱなど色とりどりの植物が並んだ絵皿です。薄く上品な色合いで爽やかさがありました。解説によると、子孫繁栄の意味を持つ吉祥の皿とのことでした。

「青磁染付七壺文皿」 ★こちらで観られます
扇を重ねたような波を表す「青海波文」を背景に、7つの壺が平面的に描かれた皿です。ひび割れたような地の壺や、緑っぽい青磁、真っ白な白磁など、1つの皿の中でも色の違いが楽しめました。また、単純化されて浮かんでいるような壺もデザインとして面白かったです。

「青磁葉形皿」「染付蜘蛛巣文葉形皿」
いずれも葉っぱの形をした皿で、糸切り細工という技法で作られています。「青磁葉形皿」は薄い緑色で、葉っぱそのもののような色形となっていました。うっすらと葉脈まで描かれているのも面白いです。 それに対して「染付蜘蛛巣文葉形皿」は白地に藍色の染付けで蜘蛛の巣が描かれていました。蜘蛛も吉祥の文様らしいですが、形とデザインが洒落ているように思いました。

「色絵大根文皿」
二又の大根が、葉っぱを含めてぐるっと皿の円周を囲っている皿で、色合いや大根自体が優雅な雰囲気を出しています。解説によると、中央に描かれた青海波文には「墨はじき」という手間がかかる技法が使われているそうで、その技法によって控えめな色合いをだしているようでした。


<特別展示 十四代 今泉今右衛門作品>
ここからは階下の3Fです。階段の下には現代の作家である十四代今泉今右衛門の作品がずらっと並んでいました。

十四代今泉今右衛門 「雪花墨はじき雪文鉢」
これは2007年の作品で、12個の突起が星型のような雪文の鉢です。真っ白で大きく、幾何学的な形が斬新ですが、優美さを兼ねそろえていました。
この方の作品は鍋島の技術を使いつつ独自の作風のようで、この展覧会の中でも一際モダンな雰囲気のコーナーとなっていました。


<第4章 尺皿と組皿>
尺皿というのは直径30cmくらいの大皿のことで、組皿は何枚かセットの皿のことです。大皿は離れて観ても見栄えのする絵柄が選ばれたそうで、ここでもそうした特長を観ることができました。

「色絵桃文大皿」 ★こちらで観られます
大きめの桃の実が3つ並び、その上に花が咲いている絵が描かれた大皿です。遠くから観ても桃だとすぐにわかりますが、近づいて観てみると、左右の桃の実の表面には赤く小さな点描が施され、本物の桃のような質感がありました。遠くから観るのと近くで観るのとで違った楽しみ方ができるように思いました。

「染付雪景山水文大皿」
川が流れる仙人でも住んで居そうな景色を描いた大皿です。染付けの濃淡がまるで水墨画のようで、ぼかした表現などが面白い作品でした。

「色絵蜘蛛巣紅葉文皿 五客」
山の形をした小さな皿の5枚セットです。それぞれには蜘蛛の巣に色とりどりのもみじがひっかかっている様子が描かれていて、意匠の面白さがありました。これは当時も人気があったそうです。
この辺には5つセットの皿が何セットかありました。


<第5章 鍋島の主題 四季と吉祥>
最後は鍋島でよく出てくる四季と吉祥という主題を集めた章でした。(四季を主題にした作品が多いのは、季節で器の使い分けをしていた為のようです。)

「色絵青海波牡丹文皿」
青海波文の中に浮かぶように牡丹が描かれた作品で、花の赤と葉っぱの緑が鮮やかです。 牡丹は富貴を象徴する花とのことで、季節を感じるだけでなく吉祥の意味があるようでした。
この辺には他にも秋草などの意匠の作品もありました。

「色絵三瓢文皿」 ★こちらで観られます
青海波文を背景に、3つのひょうたんが画面を埋め尽くすように並んだ絵皿です。(確かひょうたんは子孫繁栄の意味だったかな) ひょうたんは上から順に、緑、白、青となっていて、特に白は周りの色に引き立てられて目を引きました。また、黄色や赤い紐もアクセントになっているように思いました。

「青磁色絵桃宝尽文皿」
四足皿(盆のような皿)が2つ並んだ絵が描かれた青磁の皿です。片方の皿には桃の花と実(桃は不老長寿の吉祥文)が並び、もう片方には巾着や宝珠、軍配、法螺貝、打ち出の小槌など様々なお宝が乗っていました。また、薄めですが色彩も豊かでした。


ということで、歴史から特徴まで色々と知ることが出来て面白い内容でした。私は磁器作品には疎いのですが、素人でも興味を持って観られるような構成で流石サントリー美術館という感じでした。今後の鑑賞にも役立ちそうです。


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有元利夫展 天空の音楽 【東京都庭園美術館】

ちょっとご紹介の順が前後しますが、先日ご紹介した泉屋博古館分館を観た後、南北線で白金台に移動して東京都庭園美術館で「有元利夫展 天空の音楽」を観てきました。

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【展覧名】
 有元利夫展 天空の音楽

【公式サイト】
 http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/arimoto/index.html

【会場】東京都庭園美術館
【最寄】目黒駅(JR・東京メトロ) または 白金台駅(東京メトロ)
【会期】2010年7月3日~9月5日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
館内は結構お客さんがいて、2~3作品に1人くらいの割合だったと思います。狭い部屋だとちょっと人が多目だなと感じるくらいでした。
この展示は38歳の若さで亡くなった有元利夫の没後25年に合わせたもので、3年くらい前にも横浜のそごう美術館で回顧展があったようですが、私はこの画家を知りませんでした。紹介によると、東京芸術大学を卒業して画家になった人で、フレスコ画と仏画に共通点を見出して独自の世界を作り上げた人だそうで、中世のような現代のような不思議な画風に惹かれて観に行きました。詳しくは気に入った作品をご紹介しようと思います。
なお、章分けは一応あるのですがリストと展示順は全然違いますので、観てきた順に挙げていこうと思います。
 参考リンク:2007年の「光と色・想い出を運ぶ人 有元利夫展」の公式サイト


有元利夫 「花降る日」 ★こちらで観られます
入口付近にあった作品です。五段ケーキのような所で、赤い服の女性が立った布のようなものを両手で持っています。背景は朱色で、上から光が差し込んでいるようです。また、画面のあちこちに赤と白の花びらが舞っていました。超現実的な雰囲気の作風も好みでしたが、特に気になったのはその画面そのもので、本当にフレスコ画のような質感をしていて、剥落している所も多々ありました。

有元利夫 「厳格なカノン」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている代表作です。ハシゴを上る女性が描かれ、その右側には青い垂れ幕のようなもの、背景は青空の風景が広がります。これは多分、舞台を描いている作品のようで、地面には定規で引いたような升目があったり、似たような舞台の作品が隣にありました。ハシゴの先がうっすらと垂れ幕の後ろに見えたりするなど、中世の絵みたいな感じもしますが、このシュールさはシュルレアリスムのようにも思えました。

有元利夫 「テアトルの道」 ★こちらで観られます
厳格なカノンの隣に展示されていた舞台をテーマにした作品です。ふくよかな裸婦が階段を下っていく様子が描かれているのですが、背景は青空、階段は地面に突如現れているなど、現実離れしている感じがします。絵の上部には扇形の幕らしきものがあるので、これによって舞台のセットを描いたものだとわかりました。解説には本人の言葉が書かれていて「舞台は嘘をつく空間で、一杯嘘をついて一杯演技して様式を抽出すれば、より真実に近づき本当のリアリティが出せる」とのことでした。この不思議な光景が心を掴んでくるのも奇妙なリアリティのせいかな?
この作品の隣にはこれをブロンズ像にした作品もありました。

有元利夫 「私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ(卒業制作・10連作のうち5点)」
これは芸大が買い上げた10点の卒業制作のうちの5点です。「聖十字架物語」などをモンタージュしたそうで、白馬に乗る人、赤い服を着て楽器を持つ女性など、宗教的な雰囲気の画風で描かれていました。また、アメリカ画家のベン・シャーンを模した作品などもありました。いづれも独特の質感で近年の作とは思えない風格がありました。

この辺にはフレスコにした理由についても本人の言葉で紹介されていました。要約すると、油彩が横に絵の具が重なるのに対してフレスコは縦に染み込む事と、風化によって欠落やヒビが出て、暗示や象徴性が強まる事を挙げていました。確かに剥落などを観ていると古い作品のようで深い精神性を感じます。

有元利夫 「室内」
赤い壁を背景に、白い玉がいくつも浮かぶ室内が描かれ、そこに緑の服の女性が布を両手で持って立っています。何をしているか分かりませんが、これも夢の中のような非現実的な風景です。この人の作品はこうした玉や花や人などが浮かんでいることが多いのですが、これは有元利夫にとってのエクスタシー表現とのことでした。 また、どこかアンリ・ルソーのような素朴で力強いものも感じました。

有元利夫 「白い部屋」
白というよりはクリーム色の壁を背に、白いテーブルの席に着いた女性を描いていて、女性の腕は異様に太く、テーブルの上の赤い果物を触っています。テーブルの上にはガラスのコップもあったりするのですが、全体的にやけにさっぱりした部屋でシュールなものを感じました。また、絵の上部はアーチ状になっていたのが気になったかな。

この辺にはこの絵と同じように腕の太い女性が描かれたアーチ状の作品が3点くらいありました。(テーブルに向かう女性像が多かったかな。) また、部屋の奥の方には彫刻作品のコーナーもあり、スカートが異様に長く円錐や四角錐の形になっている女性像がいくつかありました。 さらに部屋の最後には唐突に仏像の手が展示されていたのですが、これは16~18世紀の東南アジアの仏像の手だそうで、古物商から買った蒐集品のようでした。

1Fの廊下沿いの小部屋では絵葉書くらいの銅板のコーナーがありました。クラシック音楽の作曲家と曲名がタイトルになった作品が並び、特にヴィヴァルディの「四季」は春夏秋冬の4つが揃っていました。(「冬」はテーブルでうつぶせになってる女性が描かれているのですが、何故これが冬なんだろ?w) このコーナーから分かる通り、有元利夫はバロック音楽が大好きだったようで、反リアリズム性、様式性、シンメトリカル、簡素で典雅 などを理由に挙げていました。マンネリで良いとかも言ってた記憶がw こうした音楽好きは2Fの作品でも観ることができました。

有元利夫 「雲のフーガ」
ここからのご紹介は2Fに展示されていた作品です。これは舞台の上に立ち、青空のパネルを持つ女性が描かれていて、背景の青空と手に持つパネルが連続しているようにも見える騙し絵的な要素がある作品です。(完全に溶け込んではいるわけではありませんが) この人の作風はシュルレアリスムのような感じがすると思って観ていましたが、特にこれはマグリットの「囚われの美女」みたいな発想に思いました。そう言えば平面的な色の青空のパネルもどことなくマグリットみたいな雰囲気があるように思います。
 マグリット「囚われの美女」の参考記事:ベルギー幻想美術館 (Bunkamuraザ・ミュージアム)

有元利夫 「ささやかな時間」 ★こちらで観られます
テーブルに肘をついて縦笛を構える女性を描いた作品です。どこを見ているか分からない目をしていますが、嬉しそうな表情をしているように思いました。これがささやかな楽しみなのかな?

この作品の近くには縦笛を吹く女性の絵が2枚くらいと、実物のリコーダー、自分で作った手製のリコーダーケースなどもありました。また、隣の部屋には7つの音楽という画曲のコーナーがあり、7枚の作品が展示されていて有元利夫の音楽への情熱を感じました。有元利夫自身が作曲した曲もあるそうで、展覧会では聴けませんでしたが、公式サイトのyoutubeの動画で聴くことが出来ます。

有元利夫 「無題」 ★こちらで観られます
乾漆と磁器の2体の彫像で、いずれもオレンジと白のチェック柄の服を着たアルルカン(道化師)です。乾漆の方は歩くような姿勢をしていて、磁器のほうは座っていました。いずれも生き生きとしていました。
有元利夫はセザンヌやピカソが描いたアルルカンの作品が好きで、パリで本物のアルルカンの衣装を手に入れたそうです。そのため、作品にもよくアルルカンが出てくるとのことでした。

有元利夫 「雲のアルルカン」
雲を背景にした白とピンクのチェック柄の服を着たアルルカンの肖像です。ちょっと目がうつろだったかもw 本当にアルルカン好きみたいです。

有元利夫 「花降る森」
枯れ木の暗い森の中で、白い服の女性が青い布のような(弾力が無くてガラス戸のようにも見える)ものを持っています。また、上部からは花びらが舞っていて、死を感じる枯れ木の森と対照的な感じです。何故こうしたかは分かりませんが、心に残る作品でした。

この辺にあった本人の解説によると、絵の人物のスカートはみんな足元を隠しているそうで(たまにそうでもないのもあります)、足が見えると何をしているかがわかってしまうためにそうしているようでした。これも象徴性を強めるために考えたことなのかもしれません。

一番奥の部屋には、絵皿、湯のみ、判子、人形のブローチ(←ちょっと怖いw)、木製のこいのぼり、スケッチブックなどが置かれたコーナーがありました。中にはほうれん草チャーハンの作り方が書かれたメモまでありますw この辺りにあった解説によると、有元利夫は小学2~3年の頃にゴッホに衝撃を受けて、ゴッホのようになりたいと絵の道具をせがんだそうです。

2Fの廊下には自画像や夫人像がありました。2枚はだいぶタッチが違って、自画像はごつごつした質感をしているのに対して、夫人像はぺったりした色彩でした。また、近くにあった写真を見ると自画像はよく特徴が出ていました。

有元利夫 「出現」
水浴をしている裸婦を描いていて、頭の後ろから太陽が出ています。また、頭を中心にV字のようになった背景があり、女性からは何本かの波線がオーラのように出ていて存在感がありました。 それにしても色合いに風格があって、これだけ観てきても最近の作品とは思えないくらいでした。


ということで、今まで全然知らない画家でしたが、「当たり」の展覧会だったと思います。独特の世界観に引き込まれるようで良かったです。 展覧会の構成や画風の変遷がよく分からなかったのが残念かな。図録を買えばよかったかも…。


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和菓子の歴史 【虎屋文庫】

先日、会社のお昼休みを利用して、赤坂見附にある虎屋文庫で「和菓子の歴史」を観てきました。ここは以前にご紹介した「とらや」の赤坂本店の2Fにある展示室です。
 参考記事:喫茶・虎屋菓寮 (とらや赤坂本店) 【赤坂見附界隈のお店】

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【展覧名】
 和菓子の歴史

【公式サイト】
 http://www.toraya-group.co.jp/gallery/dat01/dat01_024.html
 http://www.toraya-group.co.jp/gallery/dat_index.html

【会場】虎屋文庫
【最寄】赤坂見附/永田町


【会期】2010年7月23日(金)~9月20日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(平日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
このお店はちょくちょく寄っているのですが、虎屋文庫は常に展覧会をやっているわけではないので、訪れたのは初めてでした。展示室はビルの1室程度の広さで、ほぼ貸しきり状態で観ることができました。
この日は、和菓子の店らしく「和菓子の歴史」ということで、菓子(本物か模型か分からずw)と共に書物などが並んでいました。特に美術品は無いので資料展と言った感じでしたが、解説がしっかりしていて和菓子の歴史をざっくりと知ることが出来ました。時代ごとに大まかにご紹介しようと思います。


<和菓子のルーツ>
最初は和菓子のルーツのコーナーでした。今の和菓子は江戸時代から作られたそうで、それ以前は木の実や果物、だんごや餅などが食べられていたそうです。一番最初には縄文クッキーの再現というものがあり、これは縄文時代に食べられていたと考えられている木の実の粉を丸めて焼いたものだそうです。嗜好品かどうかは不明とのことですが、見た目は確かにクッキーみたいでした。

<唐菓子>
唐菓子(とうがし)は飛鳥時代~平安時代に遣唐使によってもたらされたもので、米や麦の粉を生地にして揚げた物です。宴などに用いたそうですが、鎌倉時代には唐菓子はあまり作られなくなり、神社や寺社の供物としてして用いられるようになったそうです。山梨の「ほうとう」は唐菓子が変化したものとの解説もありました。
ここには書物や揚げた菓子などがあったかな。近くには「蘇」という当時最高級のチーズもありました。

<点心>
鎌倉時代から室町時代にかけては「点心(てんじん)」という食べ物が紹介されていました。これは禅僧がもたらした朝夕の食事の間に摂る小食のことだそうで、間食的なものかな?羊羹や饅頭の原型となる菓子もこの時代に生まれたそうで、近くには羊羹のコーナーもありました。ここには「鼈羹(べっかん)」という四角錘(すっぽんらしい)の羊羹のようなものや、「魚羹(ぎょかん)」という魚の形をしたお菓子がありました。 禅僧は生臭なものは禁じられていたので、こうした形の食べ物が作られたようです。

<南蛮菓子>
戦国時代から江戸初期にかけてはポルトガル人などがもたらした南蛮菓子を紹介していました。当時、非常に珍重されキリスト教の布教にも利用されていたそうです。ここには「コンフェイト」という金平糖の元となったお菓子や、カステラなどがありました。
また、南蛮菓子は鶏卵や砂糖を多く使う特徴があるそうで、「鶏卵素麺」という江戸時代に日本独自で作られた食べ物も展示されていました。

<上菓子>
江戸時代には砂糖の流通が増えて多様なお菓子が作られました。中でも白砂糖を使った上等な菓子を上菓子と呼んだそうで、これは茶の湯の影響も受けているため見た目も美しいお菓子でした。ここには、ピンク色で単純化された桜の花の形をしたお菓子や、なすび型のお菓子、みかんそのものの色形のお菓子、家紋のようなお菓子など、手の込んだボリューム感あるお菓子が並んで絢爛豪華でした。また、和歌の浦という絵のような鮮やかで細かい菓子もありました。
こうした上菓子を武家や公家も好んだそうで、彼らに納入した菓子屋には「御用菓子屋」を名乗る者も出たそうです。また、京都で生まれた上菓子は江戸に「下り京菓子」として伝わり、さらに参勤交代で各地方にも広がっていったそうです。

<茶の湯と菓子>
16世紀の茶会の菓子は柿や栗などの素朴なものだったようですが、17~19世紀には銘のついたお菓子などが用いられたようです。ここには「山川」などの名前がついたお菓子も展示されていました。また、しいたけ、昆布、タコなどの煮物や、「ふのやき」という利休の好んだお菓子もありました。ふのやきは小麦粉を薄く焼いてミソを塗って巻いたものらしいので、結構美味しそうだったw

<名物菓子>
このコーナーは江戸時代に生まれた名物菓子の紹介です。桜餅や大福餅、安倍川餅など今でも定番のお菓子が展示されていました。

<庶民の菓子贈答>
ここは年中行事や冠婚葬祭にあわせた菓子があったかな。柏餅や牡丹餅、鯛形という鯛の形のお菓子、軽焼というお菓子などがあります。 この軽焼というのは病気が軽く済むようにという意味があるそうです。また、当時は天然痘には赤いものを食べると良いと言われていたらしく、赤い小豆を使った赤飯や牡丹餅が作られたそうです。ここにはそうしたことが書かれた書や菓子製法の本などもありました。

<近現代の菓子>
明治時代に入ると欧化政策の影響で洋風の菓子が作られたようです。あんぱんやシベリヤ、バナナの色形をした菓子、花瓶に入った花を模した菓子(今回のポスターにも載ってるやつ)、タイヤキ、今川焼き、あんみつなどもありました。面白かったのが、「ゴルフもなか」というゴルフボールそのもののような現代の菓子までありました。

<戦争と菓子>
第二次世界大戦の頃は戦場に慰問品としてお菓子が送られていたそうです。その一方、日常では食料が統制され、菓子作りに使う金属も回収されるなど、菓子文化にとっても厳しい時代だったようです。ここには爆弾三勇士という爆弾を抱えた人が彫られたタイヤキの型のようなものや、旭日旗と爆弾が描かれた菓子など、菓子まで戦争をモチーフにしたものとなっているようでした。

<戦後の復興と菓子>
戦後は闇市でも菓子はわずかだったそうですが、昭和27年に砂糖の統制が解除されると再び菓子作りが盛んになったそうです。ここには軍用機のジェラルミンを加工して作った菓子型や、漫画の「あんみつ姫」なども並んでいました。

<羊羹のコーナー>
会場の中央辺りには羊羹のコーナーもありました。羊羹の起源は羊肉の料理を模して作った精進料理だったそうで、「点心」の一種のようでした。また、江戸時代の羊羹は重かったらしく重さを再現したものなどもありました。


ということで、身近でありながら歴史を知らなかった和菓子について、よく知ることが出来る内容だったと思います。無料で観られるし、とらやの喫茶もあるので遊びに行ってみるのも面白いと思います。



おまけ:
この日とは別の日(1週間くらい前)ですが、地下の喫茶・虎屋菓寮で1250円もするカキ氷(宇治金時)を食べてきました。隣に置いた500円玉で大きさが想像できるかと思いますが、巨大ですw 食べきれない人にはハーフサイズもあります。
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氷の中にはアンコも入っていて、結構甘くてどっしりした味です。量が多いので食べているうちに寒くなってお茶が恋しくなってきましたw 一昨年も食べましたが、年に1回くらいなら高級カキ氷も話のネタになるんじゃないかな?
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近代日本画にみる東西画壇 -東京・京都・大阪の画家たち- 【泉屋博古館 分館】

先週の土曜に六本木一丁目に行く用事があったので、ついでに泉屋博古館分館で「近代日本画にみる東西画壇 -東京・京都・大阪の画家たち-」を観てきました。

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【展覧名】
 近代日本画にみる東西画壇 -東京・京都・大阪の画家たち-

【公式サイト】
 http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

【会場】泉屋博古館 分館
【最寄】六本木一丁目/神谷町

【会期】
  前期:2010年7月17日(土)~8月22日(日)
  後期:2010年8月24日(火)~9月26日(日)

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私が行った時間のちょっと前からギャラリートークが始まったようで、いつもよりは人が多かったように思います。私は残念ながらタイミングが合いませんでしたが、自分のペースで観ることができました。
この展示は日本の近代絵画を江戸(東京)・京(京都)・大坂(大阪)の3都市に分けていて、その風土の特徴に沿って展示しているようでした。詳しくは章ごとに気になった作品をご紹介しようと思います。なお、この展示は前期・後期に会期が分かれているようで、私が観たのは前期でした。公式HPを見ると後期の方が充実してそうな気がします…w 


<東京画壇>
東京(江戸)は「粋」が特徴だそうです。これといって「粋」を感じることは無かったですが、有名所の作品もありました。

菊池容齋 「鼠狐言帰」
長い巻物の作品です。右側にはネズミたちが大名行列のような格好をして、輿入れをしているようです。また、中央より左側は同じように狐の輿入れを描いています。いずれも淡い色彩で、擬人化された動物が面白かったです。

橋本雅邦 「許由」
これは掛け軸です。古代中国の許由という伝説上の人物が左下で背を向けている様子が描かれ、右上からは木が垂れています。それ以外は余白となっていて、バランスを感じました。また、墨の微妙な濃淡で描かれていたのも良かったです。 なお、この許由と言う人物は帝に位を譲ると言われた際に、穢れた事を聞いたと耳を洗ったという故事で有名です。

狩野芳崖 「寿老人」
これは以前の記事でもご紹介しましたが、今回も観ることが出来ました。
木の下で腰掛ける寿老人が太い輪郭で濃く描かれ力強いです。周りには鶴や蝙蝠、鹿、松竹梅などお目出度いもの尽くしとなっています。細かさと大胆さが何度観ても見事です。
 参考記事:新春展 春の妝(よそお)い (泉屋博古館 分館)

高島北海 「蜀道青橋駅瀑布図」
これは色付きの掛け軸です。画面の上からジグザグに落ちてくる滝が描かれ、下の方では2人の中国の人?が滝を見ています。周りの緑が淡くて爽やかな明るさのある作品でした。滝の大きさを感じました。

東山魁夷 「スミオ」
手前には森が広がり、奥には川?が何本か見えている風景です(湿地かも) 俯瞰したような視点で描かれ、水平線まで見えて自然の雄大さを感じます。また。画面には人も動物もいないようで、青と緑が混じったような東山魁夷の独特の色もあって静けさを漂わせているように思いました。

<京都画壇>
京都(京)は「雅」が特徴だそうです。竹内栖鳳などは確かに「雅」というのに相応しいかも。

竹内栖鳳 「禁城松翠」 ★こちらで観られます
城のお堀で小舟を漕ぐ人が描かれ、石垣の上からは大きな松の木が垂れ下がってきています。松は黒と緑が混じったような色の濃さで、周りの淡い黄色の色彩と比べて非常に目を引きました。こんもりした感じがよく出ているように思いました。

富岡鉄斎 「静居対話図」
水墨で描かれた山と、その麓のあずまやを描いた作品です。ぼんやりしているような墨が抽象画みたいでした。

木島桜谷 「菊花図」
これは一際目を引く6曲1双の金屏風です。左隻の上部から右隻の下部にかけて、対角線上に並んだ無数の菊が描かれています。白や赤の花が並び、深い緑の葉っぱや背景の金地に映えて鮮やかです。右隻は特に白い花が多くてリズミカルな感じもしました。色の対比が強い作品でした。

原田西湖 「乾坤再明」
これは天岩戸の物語を描いた作品だそうで、ふくよかな女性(天照?)が矛を持ち、光が差してくる左上を見上げています。透ける様な白い衣を着て、うっとりとしたような表情をしていました。また、その右下では写実的な鶏が朝を告げているようでした。何か明るい希望を感じる作品だったように思います。


<大阪画壇>
大坂は婀娜(あだ。なまめかしいこと)が特徴だそうです。ここにずらっと並んだ上島鳳山の作品などはそれを感じさせてくれました。

上島鳳山 「十二月美人(子日・羅浮・観桜・郭公・青楓・青簾)」
これは12枚セットの美人画で、1~12月まであるようですが前期では1月~6月が展示されていました。色鮮やかで理想的な女性達が描かれ、特に羅浮山(2月?)という作品の、木に腰掛ける物憂げな美人画が気に入りました。優美で華やかさがあって良かったです。

深田直城 「春秋花鳥」
2幅セットの掛け軸で、右は雉と桜、左は月を背景に秋草と鳥が描かれています。いずれも細やかで繊細な美しさを感じました。

村田香谷 「四時花鳥」
非常に鮮やかな色で描かれた巻物です。花や鳥などが所狭しと描き込まれ、色も賑やかな様子でした。


ということで、小展ながらも中々楽しめました。ここはぐるっとパスで入れるので、お得な気分です。近くにも大倉集古館や智美術館などもあるので、他の美術館とハシゴしてみるのも良いかと思います。


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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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