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アール・ヌーヴォーのポスター芸術展 【松屋銀座】

前回ご紹介したポーラミュージアム アネックスを観た後、すぐ近くにある松屋銀座の8Fで、「アール・ヌーヴォーのポスター芸術展」を観てきました。

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【展覧名】
 アール・ヌーヴォーのポスター芸術展

【公式サイト】
 http://www.matsuya.com/ginza/topics/100804e_artnouveau/index.html

【会場】松屋銀座
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅


【会期】2010年8月25日~9月6日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場には結構人がいて、デパートの展示なのでちょっと騒がしい感じもしますが、混んでいるというほどでもありませんでした。
内容は、さらっと観られるだろうと思っていたら予想以上に濃い内容で驚きでした。チェコ国立プラハ工芸美術館とチェコ国立モラヴィア・ギャラリーのコレクションを中心に、130点くらいあるそうで、アール・ヌーヴォーだけでなく同時期の作品なども含め展示されていました。詳しくは気に入った作品を中心にご紹介していこうと思います。なお、作品リストは無かったので、メモを元に作品名を書いています。間違っていたらすみません^^;

<冒頭>
最初はハイライト的に数点の有名作が並んでいました。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「ディヴァン・ジャポネ」 ★こちらで観られます
黒い服と帽子の女性が横向きで座っている様子が描かれ、背後には杖を持ったシルクハットの老人、左上には黒い長手袋をした舞台の女性や楽器のようなものが描かれています。今回の展覧会の解説にはありませんでしたが、これは「日本の長椅子」という意味の名前のキャバレーのポスターです。その名の通り、日本の浮世絵的などから影響を受けたものだったと記憶しています。
ロートレックはこの他にも結構あるのですが、bunkamuraのロートレック・コネクション展の時にも観られたポスターがいくつかありました。
 参考記事:ロートレック・コネクション (Bunkamuraザ・ミュージアム)

アルフォンス・ミュシャ 「椿姫」
これは「椿姫」の芝居のポスターです。 目をつぶり白いドレスを着た女性が描かれ、足元や髪には椿の白い花があります。うっとりするような表情や、周りに無数に浮かぶ青い星(六ぼう星みたいな)などから可愛らしく可憐な雰囲気がありました。(物語を考えると何か違う気もしますがw)
この辺には今回のポスターになっている「JOB」(煙草のポスター)や「ジスモンダ」など先日のアルフォンス・ミュシャ展の時にも観られたポスターもいくつかありました。
 参考記事:アルフォンス・ミュシャ展 (三鷹市美術ギャラリー)
 参考リンク:「ジョブ」の画像

ウィリアム・ブラッドリー 「ヴィクター自転車」 ★こちらで観られます
白、黒、薄い青の3色のポスターで、軽やかに自転車に乗った女性と、それを見つめる男性が描かれています。周りには白い花が浮かぶように描かれ、華やかでちょっと幻想的な雰囲気を感じました。男の目も女性に憧れているように見えたかな。
解説によると、当時は自転車は女性解放の象徴だったそうです。


<第1章 ウィーン分離派と世紀末 美術の潮流>
1章はウィーン分離派に関するコーナーでした。クリムトらによって結成されたウィーン分離派は、グラフィックデザインへの志向が強かったので、ポスター作品も多いようです。解説によると、大胆な構図や斬新なタイポグラフィ(文字)、色彩とフォルムの組み合わせの完成度が高いそうで、ここには気に入る作品が多くありました。
なお、この章はこの展覧会でも特に凄いところで、ウィーン分離派展のポスターがずらずらずら~~~っと並んでいます。これだけ一気に観る機会なんて滅多にないかも知れません。
 参考記事:ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)

グスタフ・クリムト 「第1回ウィーン分離派展」 ★こちらで観られます
これは記念すべき第1回のウィーン分離派展のポスターです。2枚同じようなポスターが並び、右は検閲前、左は検閲後となっています。検閲前のポスターの上部には、裸のテセウスがミノタウロスに剣を突こうとしている様子が描かれ、ポスターの右側には槍と人面の大きな縦を持ったアテナが描かれています。解説によると、テセウスは分離派、ミノタウロスは古い美術界、アテナは分離派の守護神を表しているそうです。このポスターは、テセウスの局部が描かれていることが検閲に引っかかった為、手前に黒い木立を描いて隠すことで検閲に通ったようです。その検閲前後の違いをじっくり見比べられるのが面白かったです。
 ミノタウロスの参考リンク:ミーノータウロスのwikipedia

アルフレート・ロラー 「第14回ウィーン分離派展」
波線で描かれた髪や、目のマークのようなドレスなど、幾何学的なパターンを使って描かれた女性像です。白い球体をもって、お辞儀をするようなポーズで、エジプトの壁画みたいな雰囲気のデザインで面白かったです。解説によると、この第14回ウィーン分離派展はマックス・クリンガーのベートーベン像の為だけに開催されたそうです。

ロラーはこの他に第4回と第9回も好みでした。

フェルディナント・アンドリ 「第26回ウィーン分離派展」
三角や波線のパターンの連続で山のようなものを描いたポスターです。幾何学的な美しさと先進性を感じました。

エゴン・シーレ 「第49回ウィーン分離派展」
シーレはウィーン分離派ではありませんが、第49回ウィーン分離派展は非会員の作品ばかりを集めた内容で、ポスターも非会員のシーレが抜擢されました。ポスターには、9人の男たちがL字に曲がった長い机に向かって本を読んでいるところが描かれています。背景が黒く机が灰色なせいか、静かで厳粛な雰囲気を感じます。また、オレンジや赤の服からは不思議な力強さを感じました。
解説によると、一番奥の人物はシーレで、一番手前の誰も座っていない席はこのポスターを描いている時に亡くなったクリムトの席と考えられているようです(シーレにはこのポスターと同じ時期に「友達/食卓の客」という2点の絵画作品があるようで、それらからこのポスターについて様々な考察ができるようです)
なお、シーレはこの第49回で名声を高めましたが同じ歳にスペイン風邪で夭折してしまいました…。


<第2章-1 市民生活の夢とポスター 新しい演劇・コンサート・展覧会・博覧会>
2章は2つに分けられていて、まずは19世紀に広がった新しい娯楽に関するポスターのコーナーです。この頃は新しい市民の娯楽が次々と登場したようで、ポスターでもそれらを宣伝していたようです。また、この時期にポスターが広まった理由の1つに、リトグラフ技術の発達があると説明されていました。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「歓楽の女王」
 ↓これは以前、東急のショーウインドウに飾られていた複製を撮影したものです。
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この作品はロートレックコネクション展でもご紹介しましたが、今回の展示でも観られました。好色の銀行家と娼婦がキスしているところをシニカルに描いている作品ですが、この銀行家はロスチャイルドをモデルにしているという説が紹介されていました。

ロートレックの「ジャヌ・アヴリル」やミュシャの「メディア」などもこのコーナーで観ることができました。

ジョン・ハッサル 「ニューコミックオペラ "アマシス"」
象形文字のようなものが描かれたオベリスクの上部に窓?があり、そこからエジプト風の人物が手と顔を出しています。そして、オベリスクの下の方にはニヤニヤ笑っている猫がいて、猫の周りにある音符から察するに歌っているようです。しかし、猫の頭上には赤いレンガのようなものがあり、危ない!というシーンとなっています。 もしかして上の人が落としたのかも?? ストーリーを考えてしまうような面白い作品でした。

ジョルジュ・ド・フール 「サロン・デ・サン」
帽子を被った女性が白い花を両手でいじっている様子で、目は横に向けて悩んでいるように見えます。繊細な筆遣いと共に好みの作品でした。

この辺にはムーラン・ルージュやムーラン・ド・ラ・ギャレットといったキャバレーのポスターや、ミュシャの「ハムレット」や「サマリアの女」など芝居のポスター、ロダン展・ムンク展などの展覧会のポスターなどもありました。展覧会のポスターは内容と全然違う絵だったりするのが面白かったw


<第2章-2 市民生活の夢とポスター 都市に溢れる様々な商品-出版・自転車・飲料・観光ポスター>
2章の2つ目は、出版や商品のポスターのコーナーです。この時代は新しいメディアの時代で、出版界では雑誌や書籍の創刊が相次いだそうです。それに合わせて様々なポスターが作成されたようで、面白いポスターがいくつも並んでいました。

グスタフ・クリムト 「厚紙カレンダー(文字印刷前)」
10人くらいの女性や少女が花束を持ってこちらを向いている様子が描かれています。淡い雰囲気がありつつも華やかな色使いが好みでした。みんな真顔で向いているのがちょっと神秘的で不思議な感じがしたかな。

フランク・ヴァーベック 「新聞 "ザ・ジャーナル"」
大きな帽子を被って傘を持った女性と、足元のうさぎが描かれた作品です。服、帽子、うさぎは新聞を貼り付けたようなデザインとなっていて、あちこちに「THE JOURNAL」と入っていたのが面白かったです。

この辺はミュシャから影響を受けたようなポスターが多かったかな。また、アール・ヌーヴォー期のドレスを展示したコーナーがありました。この時期のドレスは極端にくびれたウェストと大きく突き出た胸(S字型のライン)に特徴があるそうで、コルセットをつけて着ていたようです。 やがてポール・ポワレがコルセット無しのドレスを出すと、急速に衰退してしまったそうで、当時スポーツが盛んになったこと等がその背景としてあったようです。
ドレスの他に、扇や化粧道具なども置かれていました。

テオフィル=アレクサンドル・スタンラン 「ヴァンジャンヌの殺菌牛乳」
真っ赤な服を着た金髪の少女が大きく描かれ、両手で牛乳の入った杯を持って、そおっと飲んでいるようです。そして、その足元では3匹の猫がそれを物欲しそうに見ていて、1匹は前足を少女の膝の上に乗っけているのが可愛いです。これは牛乳の広告で、それまで牛乳は長距離輸送ができなかったのですが、この時期にワインの低温殺菌法を応用してそれが可能になったそうです。このポスターでは少女が飲むことで安全性を強調しているようでした。
また、この少女はスタンランの娘だそうで、彼らの家は猫屋敷と言われるほど猫がいたそうです。以前「シャ・ノワール巡業公演」という黒猫のポスターも観たし、本当に猫好きっぽいw

アドルフ・カペロス 「海上輸送ロイド・トリエステ」
写実的に満月の中で航海している船の甲板が描かれ、甲板の柵に2人の人魚が掴まったり乗ったりしていて、それを観た船員は驚いているようです。 このシーンのどこが広告になるのか分かりませんが、物語的で面白かったです。

エテルス 「墨(インク)」
鮮やかに描かれた日本風の絵です。座って紙に文字を書く人と、それを見つめる赤い着物の女性が描かれ、華やかな印象をうけました。日本の浮世絵そのものという感じすらしました。

この辺には化粧品や香水のポスターも並んでいました。また、再び当時のドレスが展示されていて、今度はアール・デコ期のドレスでした。この頃になるとウェストラインがかなり低い(直線のドレス)が流行っていたそうで、中流階級にも広がっていたそうです。当時のダンスの流行などもこのデザインの広まりを後押ししたようでした。

この辺はもう出口が近いので、映像のコーナーもありました。当時の時代背景や今まで観てきた作品をおさらいするような内容で、語りは三遊亭円楽でしたw

アルフレート・ロラー 「シュネーベルク鉄道」
最後は旅行や輸送関連の作品が並んでいます。これは、羽の生えた巨人が煙を吐きながら山の間を飛んでいるポスターで、背中には10人ほどの観光客が乗っています。どうやらこれは登山鉄道を擬人化したもののようで、逞しさを感じさせる作品でした。

A・M・カッサンドル 「北極星号」 ★こちらで観られます
以前ご紹介したカッサンドルのこの作品もありました。もう完全にアール・デコですw 結構、微妙な濃淡があるのですが、これはエアブラシで色合いを出しているそうです。
 参考記事:所蔵作品展 アール・デコ時代の工芸とデザイン (東京国立近代美術館 工芸館)


ということで、予想以上に充実していて、有名作からあまり見る機会のないものまで幅広くて参考になりました。 会場を出てからもミュージアムショップのグッズが中々凝っていて、これも1つの楽しみになると思います。
たった2週間しか開催されていないのが勿体無いくらいですので、興味がある方はすぐに行くことをお勧めします。

この後、さらに銀座の展覧会をハシゴしてきました。


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マティス Jazz 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

昨日の土曜に、ポーラミュージアム アネックスで始まったばかりの「マティス Jazz」を観てきました。この展覧会はポーラミュージアム アネックスのリニューアル1周年を記念した展覧会でした。

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【展覧名】
 マティス Jazz

【公式サイト】
 http://www.pola.co.jp/m-annex/
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/detail.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス (POLA MUSEUM ANNEX)
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅


【会期】2010年8月28日(土)~10月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場には何人かお客さんがいましたが、ゆっくりと観ることができました。
今回の展覧会はアンリ・マティスの晩年の傑作「ジャズ」シリーズ20点を全て展示するという内容で、展示方法も面白い趣向となっています。(このシリーズは何度か観たことがありますが、一気に観る機会は中々無いかも?)
まず、作品についてですが、マティスは晩年に大病を患った後、絵画作成は体に負担が大きいので諦めていたそうで、その代わりに色紙をハサミで切って、切り紙絵を作っていました。この「ジャズ」はそうした切り絵絵が元になった版画作品で、美術批評家で出版人のテリアードによって出版されたものです。

そして、今回驚いたのは会場そのものです。会場はまるでバーのカウンターのようになっていて、椅子に座ってテーブルに向かって作品を眺めることになります。また、会場内にはJazzの音楽が流れていて、これはDJ AMIGOという女性アーティストがマティスの「ジャズ」からインスピレーションを受けて作った音楽のようでした。この雰囲気の中で観るマティスはいつもと以上に音楽的な軽やかさを感じさせました。

さて、ここからはいつも通り気に入った作品などを紹介しようと思うのですが、残念ながら公式ページには画像がなく、どの作品も文字で説明するのは非常に難しいので、今回は他所から引っ張ってきた画像でご紹介します。ここから先の画像はamazonのアフィリエイト広告になります。(商品が消えたりすると表示されなくなるかもしれません。) ちょっと余白が大きいので、作品と文章が離れてしまいますがw クリックするとamazonで版画集が買えるようです。


アンリ・マティス 「道化師」
この作品は↓の画像にはありませんが、右側に大きく「JAZZ」という流れるような大きなサインが入っている作品です。このジャズシリーズは「書」とも言えそうなマティスの字も見所の1つだと思います。 なお、この絵に描かれている人の赤い所は血で、檻の中で黄色い獣と戦っている様子なのだとか。 意外と怖い絵です。



アンリ・マティス 「白い象の悪夢」
これは玉乗りの玉に乗っている白い象と、ジャングルを描いたものです。そして赤い稲妻のようなものは…。赤い矢です! 突き刺さりまくって正に悪夢の様相を呈しています。



アンリ・マティス 「フォルム」
このシリーズで私が一番好きなのがこの作品。色が反転したトルソ(胸像)が並んでいます。マティスは彫刻にも打ち込んでいたそうですが、この緩やかな曲線が何とも優美です。



アンリ・マティス 「ナイフ投げ」
これもサーカス関連の作品のようで、左がナイフを投げる男、右が的になる女性のようです。そう言われるとナイフを振りかざしている人と両手を挙げている女性に見えるかも。特に左側の方は躍動的な感じがします。 それにしても、この色彩感覚が見事すぎます。



アンリ・マティス 「礁湖」
「礁湖」というのはサンゴ礁で囲まれた湖のことだそうで、同じ名前の作品が3枚あります。この周りのは植物なのかな?湖?? 生き生きとした音楽的なものを感じます。



アンリ・マティス 「礁湖」
これも礁湖を描いたものです。10数年前にタヒチを訪れた記憶を元に描いているそうです。抽象的で何処が何か分かりませんが色彩が非常に美しくて好みです。



アンリ・マティス 「礁湖」
こちらも礁湖。添えられたテクストにも、礁湖に対する思いが込められているようでした。


上記以外では今回のポスターになっている「イカロス」(青地に黒い人型の絵)も好みでした。このように一見明るく楽しげに見える作品たちですが、ちょっと怖いシーンや不思議さもありました。 なお、解説によるとこの作品の原画が描かれたのは第二次世界大戦の頃のフランスで、ナチスの支配下でマティスの妻と娘は投獄されていたそうです。 体も弱り家族の安否も分からないような逆境の中でも、こんな素晴らしい作品を作っていたことに驚きです。

ということで、20点しかないのに濃密で満足できる展覧会でした。さらに、会場では20点すべての作品写真と解説が入ったパンフレットが貰えました。無料のアートスペースとは思えない至れり尽くせりのサービスに頭が下がる思いです。流石はポーラさんと感心しっぱなしでした。

この後、中央通りを南下して新橋まで3件ほど銀座のアートめぐりをしてきましたw 次回も銀座の展覧会をご紹介しようと思います。


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ル・ジャルダン 【世田谷美術館のお店】

ここ何日か世田谷美術館の展覧会をご紹介しましたが、前回ご紹介した常設を観た後、美術館内にあるル・ジャルダンというお店で軽くお茶してきました。

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【店名】
 ル・ジャルダン

【ジャンル】
 レストラン/カフェ

【公式サイト】
 http://www.setagaya.co.jp/le_jardin/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 用賀駅

【近くの美術館】
 世田谷美術館 (館内のお店です)

【この日にかかった1人の費用】
 900円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
このお店は特別展を出たところに入口があるのですが、中々にわかりづらい入口ですw 
↓館内からはこんな感じの通路を通っていきます。右の写真はお店の前から美術館側を見た写真。
P1140498.jpg P1140513.jpg

見取り図を見ると場所がよくわかるかな。
 参考リンク:館内の見取り図

お店の雰囲気は非常によく、こんな感じで大きな窓から外が見渡せます。
この日は猛暑だったので誰もいませんでしたが外の席もあるようです。
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この日はケーキセット(900円)を食べました。
私はペシュールにしました。チーズクリームに桃の風味で、軽やかな美味しさです。隣にあるブルーベリーがめっちゃ酸っぱいw
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連れは洋梨のタルト。こちらも上品な甘さで美味しいようです。
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飲みものは私はコーヒー。あまりくせがなく飲みやすかったです。なかなか美味しい。
連れは紅茶。これは普通かもw
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ということで、非常に雰囲気がよく中々美味しいお店でした。美術館の余韻の一時にぴったりです。レストランもやっているお店ですので、美術館でご飯にしたい時にも便利そうです。


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【世田谷美術館】の常設 (2010年08月)

先日ご紹介した世田谷美術館のザ・コレクション・ヴィンタートゥール展を観た後、常設展も観てきました。私はこの美術館には何度となく行っていますが、常設は何故か観る機会がなく、ゆっくり観ることができたのは初めてかもしれません。(大体は閉館ぎりぎりまで特別展を観ているのが原因だと思うのですが、たまに早く観終わっても常設が無い時だったりしてましたw)

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2010年8月22日時点では常設は2部構成となっていて、第1部は「建畠覚造―アトリエの時間」展、第2部は「素朴派の絵画」展となっていました。
1部の方が作品も多く、本格的な展覧会だったのですが、特別展で精神力をかなり消耗したので、1部ではあまりメモを取りませんでしたw (文章で説明できるような作品ではなかったし) なので、1部は混み具合のテンプレートとごく簡単な感想だけにして、好みの作品が揃った2部は作品ごとにご紹介しようと思います。


<第1部 建畠覚造―アトリエの時間 ミュージアム コレクションⅠ>

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【展覧名】
 建畠覚造―アトリエの時間 ミュージアム コレクションⅠ

【公式サイト】
 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection.html
 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection_list.html

【会場】世田谷美術館 2階展示室
【最寄】用賀駅
【会期】2010年4月16日~9月5日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【感想】
常設は空いていて、のんびり観ることができました。一応、ごくごく簡単に説明すると、柔らか味と幾何学的な雰囲気を持つ立体作品(マケット)が会場のあちこちに置かれ、その配置も含めてシュールでスタイリッシュな空間となっていました。また、壁には素描も並らんでいました。 作品はどれも複雑な形態をしていて、結構面白かったです。

続いて、第2部の「素朴派の絵画」はメモを取ってきました。

<第2部 素朴派の絵画>
2部は小部屋で10点ほどの内容となっています。点数は少ないですが、ルソー、ボーシャンなど名作ぞろいで、小展ながらもこの美術館の看板作品とも言える作品も含まれていました。

カミーユ・ボンボア 「森の中の休憩」
緑の森(山?)の中で腰掛けて、こちらを観ている2人のふくよかな女性が描かれた絵です。緑が強く黄色の服との対比が目に鮮やかです。ちょっとのんびりしつつも色が深い作品です。

アンリ・ルソー 「サン=ニコラ河岸から見たサン=ルイ島」
この作品は以前にもご紹介しましたが、改めて感想を…。 満月の浮かぶ河岸の風景を描いた作品で、右には高い建物も見えます。また、所々にぽつんとおもちゃの人形のような人物が立っていて、どこか超現実的な不思議な光景でした。うろおぼえですが、サン=ニコラ河岸からはサン=ルイ島は見えないはずだった気がします。いろんな意味でルソーらしいかもw かなり好みです。
 参考記事:日本の美術館名品展 感想前編 (東京都美術館)

アンリ・ルソー 「フリュマンス・ビッシュの肖像」 ★こちらで観られます
草原の中の道で、軍服を着てサーベルをさげた人が立っている姿を描いた作品です。背景には山が描かれているのですが、地平線がやけに低く描かれています。また、男の立っている道も狭く感じられるため、男が巨人なのではないか?と思えてきましたw かなりインパクトがあってシュールさを感じます。これはこの美術館のコレクションの中でも看板作品と言って良いかと思います。
ルソーはこの他にも1枚ありました。この日は特別展の2枚と合わせて5枚のルソーを拝めました。

アンドレ・ボーシャン  「花」
アンドレ・ボーシャンは2枚ありました。これは、目の前の大きく描かれた植木鉢に沢山の花々が入っている様子を描いた作品です。赤、オレンジ、白など、びっしりと多くの花が咲き誇っています。背景には町や木々が描かれているのですが、遠近感が奇妙なため、花が大きく浮いているようにも思えてきます。ボーシャンは園芸で生計を建てていたせいか、植物へのこだわりや愛情がこうした絵にも表れているのかもしれません。
 参考記事:アンドレ・ボーシャン いのちの輝き(ニューオータニ美術館)

ルイ・ヴィヴァン 「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」
パリにあったキャバレー「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を描いた作品で、そのシンボルである風車が2つ描かれています。そして、周りの道、レンガ、建物の壁、風車の羽などに濃い黒い線で、格子柄と直線が多様されているのが特徴的でした。また、ちょっと単純化された人々の描写も面白かったです。

ということで、2部は15分くらいで観終わりました。1部と合わせて30分~40分くらいだったですが、好みの作品が多く楽めました。


この後、美術館の周りにある彫刻作品の写真を撮ってきましたので、合わせてご紹介しようかと思います。

<彫刻作品>

菊池一雄 「ながれA」
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庭でのんびりしているようなw この作品は置いてある場所も良いですね。

アンソニー・カロ 「垣間見るアルカディア」
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カロはイギリスの著名な彫刻家で、ムーアの弟子でもあります。…私には作品の意図がまったくわかりませんでしたw

バリー・フラナガン 「馬とクーガ」
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この人もイギリスの彫刻家です。馬に乗っかっているクーガ(ピューマ?)は擬人化されてるのかな? 何故馬に乗っているんだろ??

左:本郷新 「わたつみのこえ」
中;佐藤助雄 「桃源」
右:淀井敏夫 「海の鳥と少年」
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美術館入口付近の3点の彫刻。特に「海の鳥と少年」が好みです。躍動感を感じます。

ということで、特別展と共に常設もたっぷりと楽しめました。特にルソーは必見だと思いますので、特別展に行ったら観ることをお勧めします(9/5以降もルソーを展示しているかは分からないので、お早めにどうぞ)
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ザ・コレクション・ヴィンタートゥール (感想後編)【世田谷美術館】

今日は前回の記事に引き続き、世田谷美術館の「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール スイス発-知られざるヨーロピアン・モダンの殿堂-」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
 前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
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【展覧名】
 ザ・コレクション・ヴィンタートゥール スイス発-知られざるヨーロピアン・モダンの殿堂-

【公式サイト】
 http://www.collection-winter.jp/
 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

【会場】世田谷美術館
【最寄】東急田園都市線 用賀駅

【会期】2010年08月07日(土)~10月11日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
昨日は1~4章をご紹介しましたが、今日は残りの5~8章についてです。

<第5章 ヴァロットンとスイスの具象絵画>
5章はヴァロットンを中心としたコーナーとなっていました。ヴァロットンはナビ派の1人で、最近終了したオルセー展でも「ボール 《ボールで遊ぶ子供のいる公園》」 「夕食、ランプの光」といった作品が展示されていたのが記憶に新しいところです。彼はスイス出身だそうで、解説では「形態を即物的に冷淡かつ簡潔に把握する」と紹介されていました。 また、このコーナーには同時期のスイスの画家も紹介されています。
 参考記事:
  オルセー美術館展2010 ポスト印象派 感想後編 (国立新美術館)
  オルセー美術館展2010 ポスト印象派 2回目感想後編 (国立新美術館)

フェリックス・ヴァロットン 「水差しとキズイセン」 ★こちらで観られます
透明なガラスの水差に入った黄色い花(キズイセン)と、その周りの赤い本や黄色い本、果物(オレンジ)、市松模様の陶磁器などが描かれた静物画です。明るく平面的な感じを受ける画面でしたが、写実的で質感のある画風に思えました。

フェリックス・ヴァロットン 「5人の画家」 ★こちらで観られます
黒い服を着た5人の男性が部屋に集まっている様子が描かれ、どうやらこの5人はナビ派の画家のようです。解説によると、左端で立っているのがヴァロットン、その下で座っているのがボナール、その隣がヴィヤールとのこと(他2名は思い出せず)で、各自の手の仕草は雄弁であるが人物は凝固したような冷たい描写と説明されていました。結構明るい感じでアカデミー的なものも感じました。

ルネ・ヴィクトール・オーベルジョノワ 「オランピア礼賛」
これは同時代のスイスの画家の作品です。マネの「オランピア」に捧げた作品だそうで、暗い画面で横を向いてもたれかかる裸婦、左側で後ろ向きの女性が振り返っている姿、黒い犬などが描かれています。絵自体はあまり似ていませんが、主題は確かにオランピアを連想させました。


<第6章 20世紀Ⅰ:表現主義的傾向>
続いて6章はドイツで生まれた表現主義のコーナーです。表現主義は心の内側を重視した一派で、ドレスデンで結成された「ブリュッケ(橋)」やミュンヘンの「青騎士」「ミュンヘン新芸術家協会」といった集団があるようです。このコーナーには有名どころではカンディンスキー(青騎士)やクレーなどが並んでいました。
…そう言えば、最近観たベルギーの画家たちもドイツの表現主義に影響を受けたコーナーがありました。また、今年の11月からは三菱一号館美術館で青騎士の展示も始まるようですので、しばらく表現主義に注目したいところです。
 参考記事:アントワープ王立美術館コレクション展 (東京オペラシティアートギャラリー)

エーリッヒ・ヘッケル 「池で水浴する者たち」
湖で水浴する3人の女性らしき姿が、フォーヴィスム並の強烈な色彩で描かれています。とにかくその色使いにインパクトがあったのですが、解説によると、「無垢なる自然と一体化する共同体」という理想を追求していたそうです。

ワシリー・カンディンスキー 「はしごの形(しみの上の)」 ★こちらで観られます
これはカンディンスキーがバウハウスで教官をしていた頃の抽象画で、今まで観たカンディンスキーの中でもかなり好みの作品でした。いくつかの三角が重なった木のようなもの、ハシゴらしきもの、黄色い円を背景に赤線の3重丸と十字で太陽を表現したようなもの、色とりどりの円など、風景画のようにも見えます。その幾何学性と柔らかな色合いが面白かったです。

パウル・クレー 「ごちゃごちゃに」
このコーナーはクレーも2枚ありました。クレーはスイス生まれらしいです。この作品は、オレンジの画面に無数の点や正体不明のものが描かれ意味はよく分かりませんw タイトルの通りごちゃごちゃな感じを受けましたが、色彩感覚は好みでした。

オスカー・ココシュカ 「アヴィニョン」
色鮮やかに描かれた町の絵です。見渡すように広々とした視点で、右の方には教会も見えています。明るくて開放的だなーなんて思いながら観ていましたが、解説によると人工的な明るさで不穏な光とまで言われていましたw 昨年この画家の絵を観ましたが、その時は簡素化された童話のような絵だったので、この作品はだいぶ作風が違っていて興味深かったです。
 参考記事:ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)

マックス・ベックマン 「ストレリチアと黄色いランのある静物」
太い輪郭で描かれた花瓶に入った花の絵です。何故か背景には真っ黒なトンネルの入り口のようなものが描かれています。これはなんだか分かりませんが、迫力と不気味さを感じました。なお、以前にもご紹介しましたが、ベックマンはナチスに頽廃芸術の烙印を押され追放されたことについて説明されていました。(他にもクレー、シーレ、シャガール、カンディンスキーなどもそうだったと記憶しています) ベックマンも中々日本では観る機会が少ないので、本格的に観てみたいものです。むしろ、頽廃芸術の烙印を押された画家を集めた展示とか観たいw
 参考記事:ルートヴィヒ美術館所蔵 ピカソと20世紀美術の巨匠たち (そごう美術館)


<第7章 20世紀Ⅱ:キュビスムから抽象へ>
7章はキュビスムのコーナーです。ピカソ、ブラック、レジェなどの有名どころから、あまり観る機会のない画家までありました。

ジョルジュ・ブラック 「桃と梨」
横長のキャンバスに桃と梨1つずつ描かれ、それ以外は四角など幾何学的な図形が描かれています。これは引き出しや壁紙のようで、キュビスムらしい単純化・幾何学化が観られます。桃と梨はセザンヌの影響を感じるかな。

パブロ・ピカソ 「二人の人物」
真っ暗な背景に2人の女性らしきものが描かれ、左は赤い服、右は黄色の服を着ています。多面的で幾何学的なところも興味深いですが、色彩が強かったのも印象深かったです。

ル・コルビュジエ 「ヴァイオリン、骨、サン=シュルビス聖堂の構成 またはバロック様式の聖堂とヴァイオリンの静物」
建築家として有名なル・コルビュジエの絵画作品です。ル・コルビュジエは元々は絵に力を入れていて、キュビスムをさらに推し進めたピュリスムを掲げた画家でもあります。あまり絵画作品を観ないので、結構貴重かも(最近だと3年くらい前に森美術館で何枚か観た記憶があります)
この絵はバイオリンと骨?が単純化・分解されて描かれ、直線なども多用されています。聖堂についてはよく分からなかったw こういう構成的な感覚が建築家の仕事にも役立ったのだろうなと思いながら観ていました。


<第8章 20世紀Ⅲ:素朴派から新たなリアリズムへ>
最後は素朴派とジャコメッティのコーナーです。ここには今回の目玉であるルソーの作品もありました。

アルベルト・ジャコメッティ 「林間地(9人の人物による構成)」
これは実際には6章あたりの小部屋にありました。前編の3章では父のジョヴァンニ・ジャコメッティをご紹介しましたが、後半では息子のアルベルトの彫刻が観られます(絵画作品もあります)
これはかなり細長い人物像が9体並んでいる彫刻です。細すぎて稲穂みたいに見えるかもw 解説によると人物像同士や観客との距離感が人間のあり方を示しているそうです。

アドルフ・ディートリッヒ 「エシュリバッハの冬の風景」
この人はスイスの素朴派の画家です。広々とした空、静かに波がたつ湖、白い雪景色、赤いコテージなどが描かれています。その色彩が非常に鮮やかで、透明感があるように思いました。何とも清清しい1枚でかなり気に入りました。

アンリ・ルソー 「赤ん坊のお祝い!」 ★こちらで観られます
右手で服の裾を捲り上げて花を入れ、左手で操り人形を持つ赤ん坊?が直立している姿を描いた作品です。赤ん坊のはずなのですが、周りの木々と比べると巨大な体に見えますw また、左手に持つ操り人形は、赤ん坊の半分ほどもあるのですが、いとも軽々持ち上げているのもパワフルですw そして、顔はキリッとしていて威厳すら感じました。解説によると、この絵は赤ん坊の生まれた時に依頼して描いたそうで、背景の木々には成長への祈りも込められているようです。 何故かシュルレアリスムのような雰囲気する不思議な魅力を持った作品でした。ルソーの作品は何を観ても面白いです。

この辺りにはマグリットなどもありました。


ということで、90点程度でしたが近代の西洋絵画の歩みを一気に観たような気がします。その上、スイスの美術館ならでは作品も観られる素晴らしい内容でした。ゴッホやルソーの作品は美術好きでなくても惹かれるものがあると思いますので、今後はさらに人気が出そうな気がします。
この後、常設も観てきました。常設にも自慢のルソーなどが並んでいましたので、次回はそれをご紹介しようかと思います。

おまけ:
画像はありませんが、ミュージアムショップにはルソーの「赤ん坊のお祝い!」の金太郎飴などもありました。世田谷美術館の「フリュマンス・ビッシュの肖像」の金太郎飴と並んでいて面白かったですw
 参考リンク:
  ミュージアムショップ公式サイト (両方の金太郎飴の画像もあります)
  「フリュマンス・ビッシュの肖像」の金太郎飴の画像付エキサイトニュース


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ザ・コレクション・ヴィンタートゥール (感想前編)【世田谷美術館】

先週の土曜日に、用賀にある世田谷美術館で「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール スイス発-知られざるヨーロピアン・モダンの殿堂-」を観てきました。今回はメモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 ザ・コレクション・ヴィンタートゥール スイス発-知られざるヨーロピアン・モダンの殿堂-

【公式サイト】
 http://www.collection-winter.jp/
 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

【会場】世田谷美術館
【最寄】東急田園都市線 用賀駅


【会期】2010年08月07日(土)~10月11日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
まずは気になる混雑具合ですが、この日はかなり暑かったのにも関わらず、めげずにやってきた人たちで賑わっていました。1枚の絵に1~3人が鑑賞している程度の混み具合で、狭くなっているところは結構混んでる感じもしましたが、それ以外の所はそれほど気にせず観る事が出来ました。(今後人気が出て混みそうな気もしますので、気になる方はお早めにどうぞ…)

この美術館へはいつも歩いて行っているのですが、この暑さでどうしたものか…と思ったら、用賀駅から臨時の直行バスが運行されていました。もちろん、帰りもバスが出ています。(この写真は帰りのバスです。)
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20分に1本くらいだったかな(うろおぼえ) 通常のバスも走っているので、結構便利です。

さらに美術館の前にはウォーターサーバーが置かれていました。暑い中歩いてきた人にはありがたいサービスです。
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さて、肝心の内容についてですが、今回の展示はスイスの北部にあるヴィンタートゥール美術館の所蔵展となっています。ヴィンタートゥールは10万人程度の小さい町だそうですが、資産家が多く、1848年のヴィンタートゥール美術協会の設立以来、美術愛好家や美術家の寄付によってコレクションを形成し、1916年に美術館が作られたそうです。展示品には、フランスの有名画家からスイスの画家、ドイツの画家など、近代ヨーロッパ絵画を幅広く揃えていて、有名どころを押さえつつもスイスらしい内容となっていました。(しかも90点すべてが日本初公開!) 詳しくは章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。今回の展示は8章構成となっているので、前編は1~4章までにしようと思います。


<第1章 フランス近代Ⅰ:ドラクロワから印象派まで>
最初の章はロマン派~印象派のコーナーでした。特に印象派が中心となっていて、各画家1点という感じでしたが、ルノワールだけは数点ありました。

ウジェーヌ・ドラクロワ 「グレーハウンド犬を伴うアルジェの女」
ソファに腰掛ける女性とその脇の犬とマンドリンを描いた作品です。ぼや~っとした感じの画面で、気だるい魅力を感じる作品でした。これは北アフリカに旅行した時の様子を描いたもののようです。

ウジェーヌ・ブーダン 「ラレ=ヴェルトの運河、ブリュッセル」
少し曇った空の下、運河に浮かぶ船が何艘かいる様子を描いた作品です。空の微妙な空気感が素晴らしく、ブーダンらしい落ち着いた雰囲気かな。この辺にはコローの良い作品もあったのですが、コローはブーダンを「空の王者」と呼んだそうです。(コローの空気感も負けてはいないとは思いますが。)

クロード・モネ 「乗り上げた船、フェカンの干潮」 ★こちらで観られます
縦長の絵で、潮が引いて陸に上がった船が少し傾いている様子が描かれています。船も目を引きますが、ブーダンとはまた違った薄曇の空の表現が面白かったです。最近この作品に似たモネの絵を観た記憶があるのですが、度忘れしていつだったか思い出せず…。

アルフレッド・シスレー 「朝日を浴びるモレ教会」 ★こちらで観られます
白い壁の教会を見上げるように大きく描いた作品です。教会は堂々とした風格があり、太陽の光が強く当たっています。その明暗が細やかで、移り行く光を捉えようとしていた印象派らしい作品だと思います。空が青々として、朝の清清しさを感じました。

この辺にはピサロやドガ(馬のブロンズ像)、ドーミエ(ブロンズ像)などもありました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「水浴の後」 ★こちらで観られます
これはルノワールの晩年の作で、緑の中で水浴する裸婦たちを描いた作品です。手前で振り返っている裸婦が大きく描かれ、バラ色の顔や豊満な体が目を引きました。右手を挙げて左手で押さえるポーズに動きを感じるかも。
ルノワールはこれ以外にも静物、風景画、ブロンズ像などもありました。


<第2章 フランス近代Ⅱ:印象派以後の時代>
続いて2章は印象派の次の時代でした。特に目玉は今回のポスターにもなっているゴッホかな。他にはルドンの良い作品が何点かありました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「郵便配達人 ジョゼフ・ルーラン」 ★こちらで観られます
鮮やかな黄色を背景に、郵便配達人を描いた肖像画です。この人物はゴッホの世話をしてくれたルーラン夫妻の夫であるジョゼフ・ルーランで、濃い青の制服と立派な長い髭が特徴的です。この黄色と青の対比が強烈で、筆にも力強さがありました(それほど厚塗りではありません)。 これだけパワーがあるのに親密さが溢れていたのも流石です。
近くにはゴーギャンの作品もありました。

オディロン・ルドン 「アルザス または読書する修道僧」 ★こちらで観られます
朱色の服を着て、朱色の本を読む修道僧が描かれています。背景には黄土色や緑などの混じった青空が描かれ、少し古びた絵のような感じすらします。じっと本を読む修道僧の姿や、全体の色合いなどから神秘的で静かな雰囲気を感じました。
ルドンはこの他にも比較的写実的な風景画や、花瓶を描いた作品などもありました。花瓶の絵もかなり良かったです。


<第3章 ドイツとスイスの近代絵画>
3章はスイスならではのコレクションのコーナーとなっていました。アンカーやホードラーといったスイスの代表的な画家や、彫刻家のジャコメッティの父親の作品なども並んでいて、中々観られない画家が多かったように思います。

ヴィルヘルム・トリューブナー 「ゼーオンにて」
川とその周りの風景を描いた作品です。最初は印象派のように明るい色彩だと思いましたが、輪郭線は明確で、印象派より平坦な筆遣いかも。ぺったりした感じの作風でした。

アルベルト・アンカー 「コーヒーとコニャック」
アカデミックなしっかりした雰囲気を持った静物画で、テーブルの上にカップや水差、砂糖?などが並んでいます。解説によると器の位置関係が絶妙で、器同士が重なり合いそうで重ならないように描かれているそうです。色も器の白や黒、背景の暗い赤というように対比的に使っているようでした。 この画家はスイスの国民的画家なのですが、3年くらい前にbunkamuraで個展を観て大好きになったので、久々に観られて嬉しいです。できれば人物画も観たかったw

フェルディナント・ホードラー 「自画像」
この人もアンカーと並ぶスイスの国民的画家です。これはこちらを向いている自画像で、様々な色彩を駆使して緻密な色使いで描かれ、力強い印象があります。私見ですが、明るいシーレという印象を受けましたw

ジョヴァンニ・ジャコメッティ 「アネッタ」
有名な彫刻家ジャコメッティ! …のお父さんの作品です。(有名な息子はアルベルト・ジャコメッティ。後の章で彼の作品も出てきます)
横向きで椅子に手をかけて座っている女性が描かれていて、これは画家の妻のようです。模様のついた白い服が、背景の強い黄色によく映えています。解説によると、彼女の視線の先(画面外)には子供のアルベルトがいるそうで、どこか幸せそうな印象を受けました。また、この作品の隣にはにこやかな自画像もありました。こちらも強い色彩で心に残りました。

この辺にはナビ派を思わせるような画家の作品もありました。また、リストでは2章に入っていますが、この辺にあるマイヨールの女性像なども好みでした。


<第4章 ナビ派から20世紀へ>
4章はナビ派やフォーヴィスムが中心のコーナーでした。(何故かユトリロもこのコーナーにありました。)

ピエール・ボナール 「婦人帽子屋」
女性が椅子に腰掛けて赤い帽子をつくろっていて、背面には鏡らしきものが描かれています。女性は静かに一生懸命帽子を作っているようです…。 解説ではボナールらがこうした何気ない室内画を描いたので「アンティミスト(親密派)」と呼ばれたことについて説明していました。

ピエール・ボナール 「ヒナゲシとキンポウゲ」
白い花瓶に入った朱色の花が描かれています。平面的ですが、色鮮やかで生き生きとしていました。
この作品の隣も梨のようなものを描いた静物で、この辺はボナールがずらっと並んでいました。(リストによると6点)

エドゥアール・ヴュイヤール 「室内、夜の効果」
赤いタンスの左横の影の中でこちらを向いている黒い服の女性(母親?)と、右側の逆光の中にいる黒い服を着た妹を描いた作品です。ぼんやり描かれていて薄暗く、静かな印象です。解説によると、平面的な表現がそれを強めているとのでした。また、2人は目をあわしていないとも説明されていました。

モーリス・ド・ヴラマンク 「野菜農園の道」
緑や赤などの大きめの点で描かれた畑と、ぺったり描かれた背景が強烈な印象の作品です。これはヴラマンクらがフォーヴ(野獣)と呼ばれ始めた年の作品らしく、後年とは違った荒々しさがありました。

アルベール・マルケ 「ラ・ヴァレンヌ=サン=ティレール」
川の畔を描いた風景画で、左側の道には黒い人影も見えます。ぺったりしつつも柔らかい色調で、穏やかな印象を受けました。明るく爽やかな作品です。

モーリス・ユトリロ 「ボントワーズのノートル=ダム教会」
これはユトリロの作品の中でも評価の高い「白の時代」の作品です。中央に白い壁の教会が描かれ、微妙な色の変化と質感があり、豊かな表現となっています。空は少しどんよりして、人は一人もおらず、教会はぽつんと建っているように見えました。ちょっと寂しい雰囲気かも。
 参考記事:モーリス・ユトリロ展 -パリを愛した孤独な画家- (損保ジャパン東郷青児美術館)


ということで、この辺で半分くらいです。前半は先日終了したオルセー展に出ていた画家とも被る所が多かったと思います。特に2章が見所だったかな。ゴッホとルドンは特に良かったです。
明日は表現主義、キュビスム、素朴派などのコーナーについてご紹介しようと思います。


  ⇒後編はこちら



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目黒寄生虫館の案内

先日ご紹介した山種美術館の後、隣の目黒駅に移動して、「目黒寄生虫館」に行ってきました。ここは世界で唯一の寄生虫をテーマとした博物館となります。

※ご注意
ここは館内の写真を撮れるので、今回の記事は寄生虫の写真なども交えてご紹介します。一応、なるべく遠目の写真を使っていますが、虫が嫌い・怖い方は今回の記事は観ないことをお勧めします。 (概要以降で警告の上、追記+空白行送りの形とします。)

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【公式サイト】
 http://kiseichu.org/default.aspx

【会場】目黒寄生虫館
【最寄】目黒駅


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
ここは無料で観られるディープスポットとして有名なためか、子供から大人まで幅広いお客さんで賑わっていました。(そんなに混んでいる感じはしません)
広さは普通の雑居ビルの1~2階と言った程度で、30分もあれば十分に周ることが出来ます。

さて、ここからは館内で撮った写真と共に振り返ろうと思います。
寄生虫の写真を観ても大丈夫という方は「続きを読む」のボタンを押して追記をご覧下さい
(単独記事形式で表示している場合はボタンがありません)
続きを読む


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Cafe 椿 【山種美術館のお店】

前回ご紹介した山種美術館の展示を観る前に、館内にある「Cafe 椿」でお茶してきました。(記事が前後しますが、非常に暑い日だったので先にゆっくり涼んでいました。)

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【店名】
 Cafe 椿

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.or.jp/news.html
 http://www.yamatane-museum.or.jp/doc/release3-3.pdf (pdf)
  ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

 食べログ
 http://r.tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13098102/

【最寄駅】
 JR・東京メトロ 恵比寿駅

【近くの美術館】
 山種美術館 ※館内にあります

【この日にかかった1人の費用】
 1000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
いつもは混んでいますが、この日はたまたま空いていて、ゆっくりすることができました。
この日は「夏の朝」というお菓子とコーヒーのセット(1000円)を頼みました。
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「夏の朝」のアップ。これはこの日の展示にも出品されていた宗達と光悦の合作「四季草花下絵和歌短冊帖」にちなんだ「朝顔」だそうです。見た目も涼しげで上品ですが、味の方もしっとりと甘さ控え目で大人の趣がありました。
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 参考記事:江戸絵画への視線 (山種美術館)

こちらはアイスコーヒー。あまり苦くなく、酸味が強めだったように思います。暑い日にはすっきりしてありがたいです。
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連れは紅茶。良い香りでアールグレイかな? 美味しそうでした。
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ということで、洒落ていてゆっくりできるカフェでした。カフェの隣では山種美術館の紹介映像も流れているので、これを観ながらのんびりするのも良いかと思います。


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江戸絵画への視線 【山種美術館】

今日のお昼過ぎに、山種美術館で「開館記念特別展Ⅵ 江戸絵画への視線 -岩佐又兵衛《官女観菊図》 重要文化財指定記念-」を観てきました。色々とネタを溜め込んでいるのですが、残りの会期が短くなってきているので先にご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
開館記念特別展Ⅵ 江戸絵画への視線 -岩佐又兵衛《官女観菊図》 重要文化財指定記念-

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.or.jp/exh_current.html

【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅
【会期】2010年7月17日(土)~9月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日 時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
それなりにお客さんはいましたが、混む合うこともなく自分のペースでゆっくりと観ることができました。
今回の展示は2008年3月に岩佐又兵衛の「官女観菊図」が重要文化財の指定を受けた記念の展覧会だそうで(記念にしてはだいぶ経ってますがw)、江戸期のコレクションを中心に紹介するという内容でした。山種美術館の創始者である山種二が美術品を集め出したのは、子供の頃に酒井抱一の作品に感動したのがきっかけらしく、最初に買った抱一は贋作だったのだとか。それに懲りてからは画家に直接購入するスタイルが多かったために近現代のコレクションが増えたそうです。 しかし、江戸時代の作品も来歴がしっかりしたものを集めていたようで、この展覧会で観ることが出来ました。詳しくは気に入った作品を通してご紹介しようと思います。

<琳派>
まず最初は琳派のコーナーです。尾形光琳の作品はありませんでしたが、宗達、抱一、其一といった前後の時代の優品が揃い、いきなりメインディッシュが来たような濃密な内容となっていました。

俵屋宗達(絵)・本阿弥光悦(書) 「新古今集鹿下絵和歌巻断簡」 ★こちらで観られます
銀色の地面に立つ首を捻ったような姿勢の金の鹿の断簡です。鹿の左右には光悦の書が書かれ、鹿と書が軽やかな雰囲気を出していました。この断簡は元は巻物で、12の断簡に分割されてしまったものの1枚となります。(最近だとサントリー美術館の展示で何枚か観る機会がありました。) 何度観ても素晴らしい作品です。
 参考記事:美しきアジアの玉手箱―シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展 (サントリー美術館)

俵屋宗達(絵)・本阿弥光悦(書) 「四季草花下絵和歌短冊帖」
これも宗達と光悦の合作で、18枚の短冊に絵と短歌が描かれた作品です。金銀で描かれ非常に優美な雰囲気の短冊がずらりと並び、壮観な光景でした。特に「千羽鶴」「すすきに桔梗」「波に梅」などが気に入りました。

酒井抱一 「飛雪白鷺図」
これは掛け軸で、川で斜め上を見ている白鷺、水辺に生えた草、上部には飛んでいる白鷺などが描かれています。白鷺や周りに雪のように散った白(胡粉)が美しい作品でした。
この辺は全部メモする位の勢いで、素晴らしい作品ばかりでした。

酒井抱一 「菊小禽図」
赤、黄、白といった花が左上に向かって伸びている様子が描かれた作品です。非常に色鮮やかで、細かさを感じる一方で装飾的な美しさも感じました。華やかです。

酒井抱一 「秋草図」
大きくおぼろげな満月?(右半分しか見えない)を背景に、ススキ、朝顔、撫子などが咲いている様子を描いた作品です。軽やかで品格を感じる曲線や、落ち着いた色彩が優雅な雰囲気を出していました。

鈴木其一 「伊勢物語(高安の女)」
伊勢物語を題材にした作品です。うっすらとした色で、右には部屋の中を覗く男、左には部屋の中でご飯をよそっている女性が描かれています。ドラマ的だなと思ってみていたのですが、解説によると、男は自分でご飯をよそる女を卑しく思い、嫌気がさしてしまったシーンだそうです。

酒井抱一 「秋草鶉図」 ★こちらで観られます
2曲の屏風で、金地に黒い月(元々は銀色)が浮かび、その下には飛んだり休んだりしている鶉(うずら)達がいます。また、その周りにはススキなどの秋草や紅葉した楓の葉、赤い花などがあり、草の緑の曲線が金地に映えてなんとも華やかな雰囲気を出していました。解説によると、これは深まる秋の武蔵野をイメージしたそうです。多分以前にも観たと思いますが、非常に気に入ったので帰りに絵葉書を買いました。

鈴木其一 「四季花鳥図」
こちらは2曲1双の屏風で、右隻には大きなヒマワリや朝顔、鶏たちなどが描かれ、左隻には菊やススキ、水仙などとオシドリが描かれていました。全体的に装飾的かつ平面的で、非常に華やかな印象を受けました。


<やまと絵>
続いては大和絵関連のコーナーでした。こちらには今回の展覧会のきっかけとなった岩佐又兵衛の「官女観菊図」も展示されていました。

伝 土佐光吉 「松秋草図」
2曲の金屏風です。左には大きく単純化された松、右にはススキや女郎花、白菊などが描かれ、大和絵風ののっぺりした色彩となっています。松の幹と風に揺れる秋草の曲線が呼応しているように見えたのが面白かったです。

岩佐又兵衛 「官女観菊図」 ★こちらで観られます
今回のポスターの作品です。モノクロで、牛車の中で御簾を上げる侍女と足元の菊を見る2人の宮廷女官が描かれています。よく見ると、3人の女性の唇はうっすらと赤くなっていて艶やかさがありました。 これは元々は6曲1双の押絵屏風の1扇のようで、CGによる屏風の再現写真もありました。

作者不詳 「源平合戦図」
源平の合戦を描いた6曲1双の見事な屏風です。金雲が漂う中で無数の兵士達が戦い、右隻には一ノ谷の戦いのシーン(鵯越(ひよどりごえ)や敦盛の最期)などが描かれ、左隻では屋島の戦いのシーン(那須与一や義経弓流し)などが描かれているようです。与一はどれか見つけられませんでしたが、躍動感があり緊迫した雰囲気も感じました。


<狩野派>
狩野派のコーナーは3枚だけでした。

狩野常信 「七福神図」
これは巻物の作品で、打ち出の小槌から玩具?を出す大黒、頭の長い福禄寿、鯛をじゃんじゃん釣っている恵比寿、腰掛ける毘沙門、鹿を連れた寿老人などが描かれ、それぞれの周りには唐子(中国風の子供)たちが走り回っていたりして楽しそうな雰囲気です。七福神が一際大きく描かれていたのは神だからかな? 縁起の良さそうな絵でした。
 七福神の見分け方の参考記事:
  ユートピア ―描かれし夢と楽園― (出光美術館)
  ゑびす大黒-笑顔の神さま-展 (INAXギャラリー)


<文人画>
今回の展示の中で一番作品が多かったのはこの文人画のコーナーでした。私は文人画はそんなに好きではないのですが、池大雅や谷文晁など大物の作品が並んでいました。

池大雅 「指頭山水図」
筆を使わず指先や爪、掌などで描く「指墨(指画)」という技法で描かれた掛け軸です。中国の風景を理想化したような光景が広がり、淡い色彩で手で描いたとは思えないくらい軽やかな印象がありました。

山本梅逸 「花虫図」
(これは作品番号のメモを間違ったかも??) 雄と雌の孔雀が見つめあっている所が描かれ、立派な尾羽の雄は振り返る姿勢で、雌は伏せています。雄の羽の質感や、背景にうっすらと描かれた渓流の動きがが見事でした。


<諸派>
ここは様々な流派の作品が並んでいました。

伝 長沢芦雪 「唐子遊び図」
沢山の唐子が描かれた掛け軸です。琴を弾く子、書画を描く子とそれを囲って見る子達、手ぬぐいをかぶってふざけている子、囲碁の石をぶちまけている子、喧嘩をしている子など、てんやわんやな事態になっていますw 琴、碁、書、画は君子のたしなみだったようですが、子供たちにかかるとカオスでしたw 生き生きとした感じがよく出ていました。

岸連山 「花鳥図」
6曲1双の屏風で、右隻には松の下で群れている鶴や白鷺、松の枝にはオウムの姿も描かれています。それに対し左隻には、威厳に満ちた孔雀などが描かれていました。所々に金砂子が散らされ絢爛な印象を受ける作品でした。 この人は南蘋派と狩野派の折衷の作風らしく、そのせいか、同じく南蘋派から影響を受けた若冲と似た題材に思えました。
 参考記事:伊藤若冲 アナザーワールド (千葉市美術館)

<江戸絵画への視線(近代絵画)>
最後は江戸以降の近代の作品が並んでいました。

柴田是真 「墨林筆哥」
8枚つづりの漆絵の画帖?です。小さな蛙たちに囲まれて三味線を弾いて歌う蛙、雪の富士山、笠、雁?の群れなどが濃い色彩で描かれています。漆で描かれているのに自由闊達で、重厚感と華麗さを併せ持っていました。
 参考記事:柴田是真の漆×絵 (三井記念美術館)

速水御舟 「名樹散椿」
これは以前にもご紹介した作品ですが、何度観ても素晴らしいので再度ご紹介w 2曲1双の金屏風に、朱色の椿が咲き誇っている様子が描かれています。うねった幹や装飾的な花や葉っぱは琳派からの影響を感じさせます。色鮮やかで絢爛な作品です。
 参考記事:速水御舟展 -日本画への挑戦- (山種美術館)

前田青邨 「鶺鴒」
海の上を飛ぶ鶺鴒(せきれい)を、さらに上から観たような視点で描かれた作品です。その変わった視点も面白いですが、海は琳派が得意とした「たらしこみ」の技法で描かれ、にじみが海らしい雰囲気を出していました。海の色も鮮やかで、鶺鴒とともに清々しく思いました。


ということで、40数点の展示でしたがかなり濃密な内容となっていました。特に琳派の作品は素晴らしかったので、日本画が好きな方は必見の内容だと思います。お勧めです。


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幻想の回廊 【東京オペラシティアートギャラリー】

前回ご紹介した東京オペラシティアートギャラリーの「アントワープ王立美術館コレクション展 アンソールからマグリットへ ベルギー近代美術の殿堂」を観た後、同じチケットで上の階で開催されている「幻想の回廊」展も観てきました。

P1140466.jpg
(↑下の方にちょろっと同時開催の旨が書いてありますw)

【展覧名】
 幻想の回廊 東京オペラシティコレクションより

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh121.php

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅
【会期】2010年7月28日(水)~10月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この展覧会はこの美術館の収蔵品展だったのですが、これが予想以上に面白くて、むしろベルギー展よりもテンションが高かった気がしますw 内容としては、30年前~3年前くらいの現代日本の作品によって様々な幻想世界が展開されていました。詳しくは気に入った作品をご紹介していこうと思います。

五味文彦 「卓上のうつろい」
テーブルの上に乗ったガラスの器が描かれた絵です。超精密な写実で、写真だと思ってしまいました。この人の作品は3つあったと思いますが、いずれも驚愕のリアルさでした。スーパー・リアリズムってやつかな。
 参考記事:トリック・アートの世界展 -だまされる楽しさ- (損保ジャパン東郷青児美術館)

河原朝生 「時間の部屋」 ★こちらで観られます
真っ赤な壁の部屋に、時計、観葉植物、オレンジのカーペットの上の猫などが簡略化された姿で描かれ、やや小さめにぽつんと配されています。がらんとした部屋や平面的な色彩のせいか、現実にそぐわない事物はないはずなのに超現実的な感覚になりました。

川村悦子 「冬の旅Ⅱ」 ★こちらで観られます
高い建物から眼下に広がる農村を観た風景画です。全体的に白い結露のようなものがかかり、あちこちで水が垂れている表現もあります。そのため、まるで寒い日にガラス越しに風景を見ているような感じになりました。真ん中には手で露を払ったような跡も観られて面白かったです。露の無いところは鮮やかに、露のあるところは半透明気味になっている色彩の使い分けも素晴らしいです。

川口起美雄 「月が少し浮力を与えるⅡ:記憶」
夜空に満月が浮かぶ水辺の光景です。畔には木の枝でできた巨大な鳥の模型のようなものと赤い鳥が見え、特に現実から逸脱するような光景ではないと思うのですが、どこかマグリットの作品のような雰囲気があり、シュールさを感じました。

川口起美雄 「ペリカンの庭-Mussetに-」
夕闇の中、立派な屋敷の階段の下にペリカンが佇んでいる様子が描かれた作品です。屋敷とペリカンという取り合わせも不思議な感じがしますが、屋敷の灯の辺りには浮かんだ岩があるなどシュールさが漂います。
この人の作品は他にも岩が浮かぶような絵がありました。

この辺にはニルス=ウドという人の植物(すすき、花びら、松葉など)で作ったオブジェの写真の作品も10点くらい並んでいました。

相笠昌義 「みる人」
赤いスカートの女性や初老の男性、よりそう男女など、7人の人々が一定の間隔で真っ白な壁を眺めている様子が描かれています。多分、展覧会の絵を見ているつもりだと思うのですが、肝心の絵は無く、熱心に壁を見ているのが面白いです。この画家の個展(損保ジャパン)を見逃したのが惜しくなってきましたw

野又穫 「崇高なる空1」
巨大な塔を描いた絵です。結構細密に描かれていて、塔にかけられた梯子などとの対比から塔の大きさが伝わり、圧倒的な存在感を感じました。近くにはこの画家の巨大な建造物の作品が5点くらいありました。いずれも人の姿は見えず荘厳な雰囲気がありました。

この辺には落田洋子という人のシュールな作品が5~6点ありました。文章で表現できないくらいシュールなのでご紹介できないですが、面白い絵でした。

藤野級井 「海が遠くなっていく」
部屋の窓から都会の風景を見ている男女らしき骸骨を描いた作品です。骸骨は服を着ていて、脇には顔が真っ黒で横たわっている赤子らしき姿もありました。ちょっと怖い雰囲気もありましたが、意味ありげな作品でした。

船山滋生 「森」
金属の板の前に立つ女性像らしきものが4体並んだ作品です。首と手が壊れた像、顔しかない像、全部残っている像、手足しかない像というように、壊れて風化したような質感でした。歴史的な作品のように思えて面白いです。

元田久治 「Revelation - Electric City」
現代の秋葉原が壊滅したような白黒の絵です。かなりリアルで、石丸電機やセガのあたりが描かれていました。(多分、最近この人の作品を他所で観たと思うのですが、いつの機会か思い出せず…)

ということで、予想外に面白い展示で得した気分になれました。日本の幻想美術も素晴らしいですね。アントワープ王立美術館コレクション展に行ったらセットで見ることをお勧めします。
さらに、最後の廊下では川見俊という若手作家のコーナーがありました。こちらは少し早めに展示が終わってしまいそうです。

【展覧名】
 project N 42 川見俊 KAWAMI Shun

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh122.php

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【会期】2010/07/01~09/05

平面的な濃い色彩で、地方によくある民家を描いた作品がずらっと並んでいました。これらはペンキで描かれているそうで、実際に静岡県にある家を撮影して、写真を元に描いているそうです。陰影などが無いせいか、実際の風景を基にしているのに異世界のような面白さがありました。また、格子越しに見える風景の絵もあり、こちらは格子が主役のようになっていて幾何学的かつリズムのようなものを感じました。



おまけ:
東京オペラシティアートギャラリーと同じ建物内にあるNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)では「トイ・ストーリー3の世界展」が開催されているようでした。私はトイ・ストーリーには興味が無いのでスルーしましたが、親子できょろきょろと会場を探す人が結構いて、人気がありそうでした。
P1140473.jpg

【展覧名】
 トイ・ストーリー3の世界展

【公式サイト】
 http://nttls-exhibition.jp/toy3/

【会場】NTTインターコミュニケーション・センター ICC
【会期】2010/07/01~09/05

 関連記事:
  オープン・スペース 2010 (NTTインターコミュニケーション・センター ICC)
  ICCカフェ (初台界隈のお店)

興味がある方は2つの美術館のハシゴも良いかと思います。両方ぐるっとパスが使えます。


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