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警視庁カメラマンが撮った昭和モダンの情景 石川光陽写真展 【旧新橋停車場 鉄道歴史展示室】

先週の土曜日に新橋~銀座~京橋と展覧会をいくつか巡ってきました。まずは新橋にある旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で「警視庁カメラマンが撮った昭和モダンの情景 石川光陽写真展」を観てきました。

IMAG0024.jpg

【展覧名】
 警視庁カメラマンが撮った昭和モダンの情景 石川光陽写真展

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/shinbashi/index.html

【会場】旧新橋停車場 鉄道歴史展示室  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅  都営大江戸線汐留駅


【会期】2010年12月7日(火)~ 2011年3月21日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
ここは無料で入れるので、隣のパナソニック電工 汐留ミュージアムに行くついでにいつもセットで見ているのですが、あまり存在を知られていないようで、いつも空いています。この日も自分のペースでゆっくり観ることができました。

この展覧会は石川光陽という昭和の警察官が撮った写真展で、九段下にある昭和館の収蔵品が主(約80点程度)となっています。
 参考リンク:昭和館の公式サイト
初めて知った人なのでざっくりと経歴をご紹介すると、この人は九段で写真の修行をしたそうで、その腕を買われて1927年(昭和2年)に警視庁に入庁しました。戦時中は特命を受けて空襲の様子を撮影するなど、警察官として写真を撮り続けたようです。その作風には緊張感や使命感があるとのことでしたが、それだけではなく人々の営みを暖かく撮っているようにも見えました。 展示は3つの章に分かれていたので、それぞれの章の雰囲気を簡単にご紹介しようと思います。

<第1章 交通と乗り物>
こちらはこの展示室に相応しい内容かな。昭和初期の交通機関に関する写真が並んでいるコーナーでした。気になった写真はざっと↓こんな感じ
 東京駅前・・・市電が走る様子(★こちらで観られます) あそこにも走ってたとは知りませんでした。
 東京駅構内?・・・特急富士を見送る人々を撮った写真  参考記事:鉄道博物館の案内 (ヒストリーゾーン)
 万世橋・・・橋は変わらないけど今の電気街とはだいぶ雰囲気が違う(あの辺に駅があったらしい)
 上野駅・・・今より広々した感じ
 御茶ノ水・・・橋の様子は今と変わらず
 新宿・・・市電の終点だったらしく、今のアルタの辺りとは全くわからなかった。
 横浜駅・・・アールデコ風で凄い立派! 荘厳でカッコいい。
 中目黒・・・高架の辺りは今も面影があるみたい
他にも沢山の駅や交通機関の写真があります。(ちょうど居合わせた年配の夫婦客が懐かしいとか、昔はこうだったというようなことを言ってテンションが上がってました。解説よりも詳しい会話してたかもw)  写真以外にも当時の切符や絵葉書もあって、当時の様子がよくわかります。


<第2章 都市と下町>
[モダン都市大東京]
続いては都市生活を撮った写真のコーナーです。主に銀座・日本橋を撮った写真で、今と変わらず活気がある風景となっていました。資生堂パーラーやライオンといったモダンなお店などもあり、みんな生き生きとした感じがして、まだ暗い時代ではなさそうでした。

[下町・市場・商店街]
こちらは同じ都市でも下町が題材です。気になったのは、
 昼間の吉原や浅草の六区(★こちらで観られます)・・・六区は大衆的な感じかな。ちと怪しいw
 神保町・・・今とまったく変わってないような雰囲気。
 赤羽や中野・・・どの辺かわかりませんが商店街活気付いている様子です。
この他にも何故かビールや栓抜き、コップ、ビールのポスターなども展示されていました。


<第3章 警察官として>
ここは打って変わってシリアスな写真も並び、警察官ならではといったコーナーでした。
 交通整理をする警察官など・・・きびきびした警官や子供に慕われている警官などがありました。
 馬上パン食い競争をする騎馬警官・・・みんなで上を向いて可笑しいw
 満州の皇帝溥儀が歌舞伎座に来たときの様子・・・まさに厳戒態勢。緊張します。
 メーデー・・・多くの人々が行進している様子。この頃の最大規模らしい。
 空襲後の東京駅・・・先ほどの写真で観た丸屋根が崩れ落ちているようでした。
 2.26事件(★こちらで観られます)・・・極めつけはこれじゃないかな。シャッター音すらヒヤヒヤする中で見付からないように撮ったもの。クーデター真っ最中。
 アメリカのMPと警官が一緒に交通整理をしている所・・・GHQ統制下の様子。
 列車に乗った警官・・・戦後の混乱で列車内の治安が悪くなったらしい。
他にも履歴書や、家族の写真、戦後に東京タワーを撮った写真などもありました。


ということで、今の様子と比べて、面影があるところもあれば全く違うところもあって、昭和の頃の世相が分かるような気がしました。当時を知る人には懐かしいのかも。 無料でこれだけ観られるのは有難いです。

この後、パナソニック電工 汐留ミュージアムに行きました。次回はそちらをご紹介いたします。


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赤摩千穂 WORKS展「クツ? くつ・・・ それでも靴!」 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

前回ご紹介した出光美術館に行った後、ポーラミュージアム アネックスにハシゴして会期末が近かった赤摩千穂 WORKS展「クツ? くつ・・・ それでも靴!」を観てきました。既にこの展覧会は終わっていますが、面白い内容でしたので一応ご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 赤摩千穂 WORKS展「クツ? くつ・・・ それでも靴!」

【公式サイト】
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/archive/detail_201012.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス (POLA MUSEUM ANNEX)  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。


【会期】2010年12月4日~2011年1月16日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況(祝日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
連休最終日の夕方だったこともあり、お客さんはまばらでした。
この展覧会は赤摩千穂氏の個展で、私はまったくこの作家のことを知りませんでしたが、観れば直感的にわかる内容で楽しめました。タイトルの通り、これでも靴なの??と思うような靴を使った作品が並んでいて、その発想の面白さに驚かされました。

ざっと会場の様子をご紹介すると、いくつかのコーナーに分かれていて最初は「大人の標本」というコーナーでした。ハチを模した靴、触角のついたバッタのような緑の靴(★こちらで観られます)、カブトムシ風のかかとに角が生えたような靴、カタツムリのような靴…というように小さな生き物をイメージした靴が並んでいました。蛙だけちょっと分かりづらいですが、他は観た瞬間に分かってワクワクしました。 靴の隣にはその素材も展示されていて、その形だけではなく素材感によってもモチーフを想起されられます。この時点でかなり興味が沸いてきました。

続いては、松竹梅をテーマに靴を使って作られた作品がありました。まず梅は「梅に鶏図」という金屏風のような作品で、ハイヒールを装飾して振り返った鶏が作表されています。 胴の部分が靴の本体になっていて、靴の形が鶏の形に上手いこと生かされていました。これも発想が非常にユニークで驚きます。
その隣の竹は、「竹に筍図」というタイトルで、茶色い小さな靴が5足並んで、筍みたいな感じでした。これは素材感がぴったりでした。
締めの松は松山水図というタイトルで、松の葉が生えたような靴が作品に組み込まれていました。ヒールの部分が枝で、本体辺りがこんもりした松の葉のようでした。

続いてのコーナーはベビーシューズを使ってお寿司を模した作品が並ぶコーナーでした。ベビーシューズをシャリに見立て(側面に凹凸がついてお米っぽいw)、その上にネタが乗っています。トロ、うに、いくら、海老、たまご等など、可愛らしくて美味しそうな寿司になっていました。靴で寿司を作るというあ遊び心はどうやったら湧くんだろうかw

部屋の中央には巨大なバナナを思わせる靴がありました。質感も色あいもバナナっぽかったです。何故これだけ巨大だったのかはわからず。

最後のコーナーは「幸せのテーブル」というコーナーで、ここはケーキやローストチキンを模した靴が並んでいました。(ポスターの作品などです) ヒールの部分がケーキの断面のようになっていたり、靴の先が菓子の素材のようになっているのが面白いです。題材も華やかなので、ここは特に気に入りました。この靴は市販したら売れるかも??w
 
ということで、小展ながらも赤摩千穂氏のセンスが光る内容で楽しめました。見ていてワクワクするような作品ばかりで、また機会があったらもっと観たいと思いました。


おまけ:
この日もポーラミュージアムの下のフロア(2階)にあるHIGASHIYA GINZAでお茶してきました。
 参考記事:HIGASHIYA GINZA (銀座界隈のお店)

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前回同様、水出し玉露を飲んだのでご紹介は割愛しますが、この水出し玉露の美味さは次元が違います。 初来店の連れが驚いている反応をニヤニヤしながら見てましたw 一緒に頼んだ和菓子も美味しかった…。


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琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 【出光美術館】

先週の祝日に、有楽町駅の出光美術館で「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―」を観てきました。この展覧会は期間が2つに分かれていて、この日は「第1部 煌めく金の世界」の内容となっていました。

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【展覧名】
 酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―
 第1部 煌めく金の世界

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】
 JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅


【会期】
 第1部 煌めく金の世界  2011年01月08日(土)~02月06日(日)
 第2部 転生する美の世界 2011年02月11日(金)~03月21日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(祝日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
流石にこれだけの展示となると人が多かったですが、たまに混みあってる感じがする程度で、基本的には自分のペースで観ることが出来ました。

今月、琳派作品を観る機会はこれで3回目です。琳派好きの私としてはこれだけ一気に展示があるのは嬉しい限りです。(おかげで満足度⑤を頻発してますがw)
 参考記事:
  本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)
  帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展 感想前編(千葉市美術館)

さらにこの展示は時期によって作品もがらっと変わります。1部は琳派の始祖である俵屋宗達の作品が多めで、2部は酒井抱一の作品が中心となるようです。
今日は、その1部の中で気に入った作品を章ごとにご紹介しようと思います。


<第1章 美麗の世界 ―琳派はここからはじまった>
まずは宗達と光悦の作品が並んだコーナーです。琳派とは尾形光琳の作風を受け継ぐ流派のことですが、光琳は宗達や光悦に多大な影響を受けました。解説によると宗達と光悦は王朝時代の雅な美意識を踏まえながら豊かに翻訳して斬新な造形美を作っていったようです。ここにはそうした伝統と革新を感じさせる作品が並んでいました。

本阿弥光悦/俵屋宗達 「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」
光悦の書と宗達の画の断簡が4枚展示されていました。これらは元は25mにもおよぶ巻物だったのを分割したものです。蓮の葉が水に浮かぶ光景から枯れる様子までを背景にして、歌が詠まれています。まさに流れるような華麗な文字が美しく、書が分からない私でも光悦は別格で好みです。宗達の画も華やかさと儚さを併せ持つようで、品格がありました。

本阿弥光悦/俵屋宗達 「花卉摺絵古今集和歌巻」
宗達の画を元にした版木を使って花模様の金泥に金砂子を撒き、その上に歌を詠んだ作品です。これも煌びやかなのに落ち着きがあり、優雅な雰囲気がありました。

この近くには光悦の兎の香合もあり、それも好みでした。(所々にある工芸作品も1部・2部で内容が変わります。) さらに少し進むと扇形の宗達の作品が続きます。宗達は元々は扇屋だったので、扇は重要な作品ではないかと思います。
 参考リンク:俵屋宗達のwikipedia

伝 俵屋宗達 「梅に柳図扇面」
これは扇型の作品です。緑色の梅と柳が描かれているのですが、どうやら作成途中か工房での見本のようなものだったらしく、扇に「銀泥」とか「箔」と書かれています。こういう作品は当時の様子が分かって面白いです。 この隣も同じように色指定などが描かれた作品でした。

俵屋宗達 「扇面散図屏風」
6曲1双の屏風です。金地の画面に沢山の扇が置かれていて華やかな印象を受けます。1つ1つの扇の意匠が違っていて、花鳥風月がなんとも優雅です。この作品の扇は屏風に直接描いているようでした。

この近くには尾形乾山の扇形の器や野々村仁清の色絵茶碗などもありました。

俵屋宗達 「扇面散貼付屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風です。左右に10枚ずつ扇が貼り付けてあり、下地は金銀を使って草花が描かれています。先ほどの作品の扇は整然とした感じでしたが、こちらは扇が舞い飛んでいくような光景となっていて、風雅な雰囲気に思いました。これは今回の展示でも見所の1つだと思います。


<第2章 金屏風の競演 ―伊年印草花図屏風>
続いてのコーナーは宗達の屏風を中心に「伊年印」と呼ばれる印の押された作品が並んでいました。寛永年間(1624~44)初期より、宗達の工房で制作された一連の草花図屏風には宗達の署名が無いらしく、「伊年」と印章されているそうです。

伝 俵屋宗達 「月に秋草図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の金屏風です。右隻に銀の半月が昇り、所々に萩やススキなどの秋草が金地に浮かぶように描かれていて、天と地の境目が曖昧です。近くで見ていると吸い込まれそうに思えたのですが、それは奥行きを感じたからかも?? 本人の作かは私には分かりませんが、好みの作品でした。

[伊年]印 「四季草花図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の小さめの屏風です。右隻から左隻にかけて春~冬の花々が描かれています。花は鮮やかなように思えましたが、よく観ると淡い塗り方のようで、背景の金地が透けて見えたのはちょっと驚きました。 あちこちに花が並ぶ華やかな作品でした。大胆な花の配置も見所です。

[伊年]印 「四季草花図屏風」
前の作品と名前が同じですが、こちらも四季の花を描いた屏風です。こちらは花が上下2段に並んでいて、びっしり描かれてる感じがします。中には季節違いの順序になっているものもあるようでした。これはちょっと賑わい過ぎて野暮な気がw

俵屋宗達/烏丸光広 「西行物語絵巻 第四巻」
これは大和絵風の巻物です。老僧と西行が野原の中で座って話しているようで、周りは秋草や飛び跳ねる鹿が描かれています。その鹿たちのせいか、軽やかで繊細な雰囲気を感じました。解説によると、粗末な老僧と周りの華やかさが対比になっているようでした。

この部屋の中央は焼き物も展示されていました。主に乾山の角皿です。


<第3章 光琳の絵画 ―大胆かつ絶妙なデザイン構成>
続いて3章は大きな部屋の両脇に光琳の屏風が並んでいました。ここは点数少なめですが、濃密な内容となっていました。

伝 尾形光琳 「紅白梅図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の金屏風です。右席は大胆な余白に梅の枝が1本伸びています。左隻はぐねぐねと凄いうねりを見せる2本の梅が描かれ、紅白の花を咲かせています。この大胆な造詣センスから本人の作ではないかと考えられているようです。色の配置も絶妙で、たとえ本人の作品でないとしても今回の展覧会の中でも特に素晴らしい作品だと思います。

尾形光琳 「太公望図屏風」 ★こちらで観られます
2曲の屏風です。川の畔で笑顔で釣りをしている太公望が描かれています。画面の右上が緑、左下は藍色というように色面に分かれていて白い服の太公望に目が行きました。解説によると、背後の崖の輪郭は太公望の背中に集中するようい描かれているそうで、確かにその通りでした。構図が計算されているんですね。

尾形乾山 「梅・撫子・萩・雪図」
これは光琳の弟の乾山(陶芸で有名)の作品で、色紙くらいの小さな掛け軸が4幅並んでいました。金地を背景に墨でタイトルになっているモチーフと歌が描いているのですが、奥に気に入ったのは梅です。単純化されていて兄に通じるものを感じました。


<第4章 琳派の水墨画 ―宗達・光琳・抱一まで>
琳派の絵師は金屏風だけでなく水墨画も1つの主要なジャンルとして制作をしていました。これまでの作品以上に緩急をつけた印章を受ける作品が並んでいました。

伝 俵屋宗達 「龍虎図」
2幅セットの作品です。右幅は下からぬっと顔を出す龍が描かれ、左幅はそれを上から見下ろすような虎が描かれています。どちらも漫画のキャラクターのような愛嬌があってちょっと可愛いw 龍図の雲の濃淡は穏やかで、たらしこみによるにじみが使われているようでした。

尾形光琳 「竹虎図」
竹の中で前足をそろえて座る虎を描いた作品です。にらめつけるような顔をして、口をへの字にするなど、一応険しい表情なのですが、丸っこくて可愛らしい雰囲気のほうが強いかなw これもユーモラスで好みでした。 …というか水墨画も全部良いですw

酒井抱一 「白蓮図」
1部で唯一の抱一の作品。大きく蓮と白い花が描かれています。花は透明感を感じ、単純化されているのが優美な雰囲気を出していました。2部の作品も楽しみです。


<工芸>
ここまであまりご紹介しませんでしたが、工芸も良い品が並んでいました。最後の部屋にも尾形光琳の弟の尾形乾山の作品が並んでいました。

尾形乾山 「銹絵馬図茶碗」
小さめの白い茶碗に簡略化された馬が描かれています。軽やかで愛らしい雰囲気が好みです。 この近くには光琳による茶碗絵手本もありました。これは弟のために描いた絵付けの手本で、梅、竹、布袋?、馬、鹿などがすらっと簡潔に描かれています。どれをとっても気品と動きがあって何とも優美でした。光琳恐るべし…。

尾形乾山 「色絵龍田川文透彫反鉢」
深い鉢に川の流れやもみじが描かれている色絵です。特に面白いのは淵の部分で、もみじや流れの形に切り取られていて、絵と一体になっているようでした。色合いも雅です。

尾形乾山 「銹絵染付金銀白松波文蓋物」
蓋と中の様子が見られるように展示された箱です。蓋には白、金、黒を使って簡略化された松が折り重なるように描かれています。中は白地に様式となった波が描かれているなど、単純化・様式化のセンスが素晴らしい作品でした。

他にも蒔絵などもありました。


ということで、展示されている内容が素晴らしくて、テンションあがりっぱなしの展覧会でした。流石に数年前の近代美術館や東博の琳派展とまではいきませんが、これだけの内容を民間でやってくれるのは凄いと思います。 1部・2部ともに会期が短めですので、気になる方はすぐに行くことをお勧めします。私は勿論、2部にも行くつもりです。

おまけ:
この展示とは別に、小部屋でルオーとムンクの作品が常設されています。ムンクの作品は中々お目に掛けないので、これも1つの見所じゃないかな。


追記:
後日、2部にも行ってきました。感想はこちら


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ホームクッキンヴィレッジヴァンガード 【千葉界隈のお店】

前々回前回とご紹介した千葉市美術館の展示を観た後、近くのパルコに入って少し買い物をした後、パルコ内のヴィレッジ ヴァンガード ダイナーHOME COOKIN VILLAGE VANGUARD (Village Vanguard DINER)というお店でハンバーガーを食べてきました。(チェーン店かもしれませんが、美味しかったのでご紹介しとこうかとw)

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【店名】
 ヴィレッジ ヴァンガード ダイナーHOME COOKIN VILLAGE VANGUARD (Village Vanguard DINER)

【ジャンル】
 アメリカ料理、ハンバーガー

【紹介サイト】
 食べログ:http://r.tabelog.com/chiba/A1201/A120101/12004693/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など

【近くの美術館】
 千葉市美術館



【この日にかかった1人の費用】
 1500円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
このお店はバラエティ雑貨のヴィレッジヴァンガードがやっているハンバーガーショップで、隣にヴィレッジ ヴァンガードもありました。中途半端な時間に行ったせいかお客さんもまばらでゆっくりすることができました。

お店の雰囲気もクラシックなアメリカン風です。店員さんが凄く親切で、メニューについて訊くと熱っぽく答えてくれました。
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この日、ダブルチーズアボガドバーガー(1050円)とサニーフルーツティーを頼みました。連れはマンゴージュース(490円)

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左がサニーフルーツティー。マンゴーの果肉、オレンジ、レモンが混ざったアイスティで、少し酸味あってトロピカルな風味でした。たまに甘い果肉が美味しいです。
右がマンゴージュース。濃厚だけどさっぱりした味とのことでした。

そしてこれがダブルチーズアボガドバーガー。凄いボリューム感w
P1170115.jpg

1人で食べるには多そうだったので切り分けました。
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肉の味がしっかりするジューシーなハンバーグ、塩加減の良いベーコン、アボガド、たまねぎ、美味しいチーズがたっぷり・・・と味のバランスも良くて美味しかったです。意外とさっぱりしてもたれないのも良かった。

ということで、予想以上に美味しいハンバーガーでした。私は頼みませんでしたが、チリソースは自家製でおすすめらしいです。値段はちょっと高いですが、アメリカンな美味しいハンバーガーを食べたいときには良いかと思います。


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帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展 (感想後編)【千葉市美術館】

今日は前回の記事に引き続き、千葉市美術館の「帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
 前編はこちら

P1170102.jpg

まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展

【公式サイト】
 http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2010/1214/1214.html

【会場】
 千葉市美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】
 千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など

【会期】
 2010年12月14日(火)~2011年1月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
1章は若冲や蕭白、2章は琳派ときて、3章以降は禅画や文人画が主な内容となっていました。

<第3章 白隠と禅の書画>
3章は禅画のコーナーです。達磨や僧を描いた水墨画が並んでいました。前編でご紹介したようにギッター博士の最初の絵画コレクションは白隠の達磨図で、禅画は早いうちから興味があったようです。

46 円山応挙 「達磨図」
珍しい応挙の禅画です。やや横向きでこちらを見るような達磨が描かれています。濃淡を使い分けていて、濃く描かれた目線の鋭さが印象的でした。

48 仙義梵 「欠伸布袋図」
大胆にデフォルメされた布袋が大の字になって大きくあくびをしている様子を描いた作品です。何とも気持ち良さそうな顔をしていてユーモラスな印象を受けました。 似たような絵を出光で観たような記憶があります。

50 中原南天棒 「達磨図」
達磨の言葉である「不識」という字が力強く豪胆に書かれています。(読めませんがw) その文字の下の方の湾曲部分にはへの字口できょとんととぼけた表情の達磨が描かれています。気合の入った文字と対照的な脱力系の達磨がなんとも面白いです。この中原南天棒は幕末から大正時代の僧で、日本よりは海外で有名で評価が高い画家です。今回の展示で一気にファンが増えるのでは??

36 白隠慧鶴 「達磨図」
これがギッターコレクション最初の作品です。掛け軸に大きく達磨の顔が描かれています。太い輪郭でぎょろっとした表情をしていて、威厳があります。上には賛があり、「直指人心 見性成仏」という禅の言葉が書かれていて、これは、「直接人の本質的な心を指して、その心にある仏性を見て取れば悟りは開ける」という意味だそうです。ギッター博士はこの書は読めないし、仏教徒でもありませんが、書と画に惹かれるものがあったんでしょうね。ある意味、自分の心と向き合っている人なのかも。

この辺は白隠のユーモアある作品が並んでいました。最近、白隠の作品を観る機会が何度かありましたが中々面白い作風です。
 参考記事:
  諸国畸人伝 (板橋区立美術館)
  細川家の至宝-珠玉の永青文庫コレクション- (東京国立博物館 平成館)

51 中原南天棒 「托鉢僧行列図」
この展覧会でも特にインパクトがあって人気が出そうなのはこの作品です。2幅セットの掛け軸で、右幅はこちらに向かってくる托鉢僧の行列、左幅は帰って行く行列が描かれています。僧たちはデフォルメされていて、人と言うよりはペンギンみたいな感じですw ぞろぞろ~~っと配給を貰って、そそくさ~っと帰って行く… 自分を中心に列を作られているような感覚になる作品でした。
この隣にも似たような行列の絵がありましたが、こちらのセットの方が良いですね。 中原南天棒の作品はもっと観たい!と思えてきました。どこかで企画展やらないかなw


<第4章 自然との親しみ>
3章で上階は終わりで4章から下階になります。このコーナーは応挙関連の絵師や文人画が多かったように思います。

57 源 「松に虎図」
円山応挙の唯一の内弟子である源の作品です。この絵は鋭い目(若干猫みたいな目)をした虎がこちらを伺っている様子が描かれているのですが、驚くべきはその毛並みです。ミリ以下の細い毛がびっしり描かれていて、本物のような雰囲気が出ていました。どれほどの労力と精神力を使ったのか… 驚きでした。

58 源 「桜に鴉図」
これも源です。桜の木の枝に留まるつがいのカラスが大きめに描かれていて、周りには金泥による霞が立ちこめています。桜の花は入念に描かれていて、全体的にも優美な雰囲気がありました。この作品はこの展示の中でもかなり好みだったかも。

この後から文人画が結構増えてきました。池大雅や谷文晁の作品などもありました。

63 山本梅逸 「四季草花図」
6曲1双の屏風です。淡い色で描かれた繊細な画風で、右隻には梅や牡丹、左隻には松、竹、菊、芙蓉などが咲き誇っていました。色合いのせいか、華やかと言うよりはしっとりした雰囲気に思えました。

59 渡辺南岳 「群鶴図」
この人は応挙や源にも学んだ絵師です。これは2曲の金屏風に3羽の鶴が描かれているのですが、よく見ると鶴の羽は1本1本描き込まれていました(源の虎の毛と争うくらいの緻密さです) 毛並みの美しさや優美さを感じる一方で、写実性もある作品でした。


<第5章 理想の山水>
このコーナーは主に文人画のコーナーでした。私は文人画はあまり好みでないので、見ても良さがピンとこないのですが、ギッターコレクションは文人画も充実しているようでした

73 池大雅 「山水に稲田図」
掛け軸の縦長の画面で、上から山、川、田というように風景が展開しています。稲田や山々がリズミカルに並んでいて穏やかな光景となっていました。

この辺には谷文晁や与謝蕪村の作品などもありました。

68 雲谷等益 「山水図」
2幅セットの掛け軸です。その名の通り山水を描いた作品なのですが、この人は雪舟4代を名乗っていただけあって、雰囲気が雪舟と似ているように思います。墨の濃淡を自在に扱っているような感じでした。
 参考記事:本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)

82 谷文晁 「山水図」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風で、金地に墨で描かれた作品です。山々に囲まれた湖が描かれているのですが、迫力を感じる崖があるかと思えば、霞むような山々があるなど、濃淡の使い分けが良かったです。金地に黒がよく映えて、奥行きも感じられるようでした。


<第6章 楽しげな人生>
6章はそれ以外の江戸絵画という感じかな。浮世絵の肉筆などもあり、当時の風俗を知ることができるような粋な作品が並んでいました。

88 伝 土佐大掾元庸 「洛中洛外図」
6曲1双の金地の洛中洛外図屏風です。大和絵風に右隻は東山、右隻は二条城などが描かれ、かなり細かい描写となっています。遠近法はちょっと変ですが、生き生きとした人々が描かれていて、栄えて平和な様相となっていました。

93 川又常正 「納涼美人図」
川の側の席に腰掛けて休んでいる、団扇を持った遊女を描いた作品です。右にはタバコ盆を持ってくる禿(かむろ)の姿もあります。遊女と禿だけが色鮮やかで、白い肌やポーズから色気を感じました。
この辺はこうした美人画が多くて好みの内容でした。

97 歌川国貞 「美人見立士農工商図」 ★こちらで観られます
2枚セットの美人画です。右は赤い枝垂桜模様の振袖を着ている武家の女性と、カゴを持ってしゃがんでいる青い着物の農家の女性が描かれています。 左はしゃがんで扇子を作っている女性と、髪結いと思われる女性が描かれています。 実はこの4人合わせて士農工商の身分を表しているようで、階級ごとに装いやポーズが異なっているのが面白かったです。

106 富田渓仙 「遊里風俗図」
6曲1双の屏風で、1扇ごとに江戸の吉原や京の祇園、長崎、大坂、中国など各地の遊郭を描いた絵となっています。簡略化された画風でのびのびとした印象を受けると共に、当時の様子を窺い知ることができるように思いました。

この辺は他に与謝蕪村なども文人画もありました。


ということで、正直なところ1章2章が大満足だとすると、3章6章は満足、4章5章は作品によってという感じですw (ミーハーですみませんw) しかし、トータルで考えるとやはり千葉まで行った甲斐があると思える素晴らしい内容でした。図録を買おうか悩みましたが、絵葉書5枚にしました。ミュージアムショップには中原南天棒の「托鉢僧行列図」をTシャツにしたものもありましたw
もうすぐ終わってしまいますがお勧めの展覧会です。それにしても千葉市美術館は最近良い展覧会を連発していますね。


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帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展 (感想前編)【千葉市美術館】

先週の日曜日に千葉に遠征して千葉市美術館で「帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展」を観てきました。見所が多く、メモも多めにとってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展

【公式サイト】
 http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2010/1214/1214.html

【会場】
 千葉市美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】
 千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など


【会期】2010年12月14日(火)~2011年1月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
会場は結構な賑わいで、場所によって(特に最初の方)は混み合っていました。1つの絵に1~2人ついてるくらいかな。中盤以降はそんなに混んでいなかったので、一時的なものだったのかもしれません。

さて、この展示はアメリカの日本美術のコレクターである眼科医のギッター博士と奥さんの2人で40年間かけて集めたコレクションを展示しています。(110点程度)ギッター博士は在日米軍の医師として日本に滞在していたことをきっかけに日本美術のコレクションを始めたそうで、その内容は江戸時代を代表する絵師を網羅する素晴らしいものでした。(最近、満足⑤の頻度が高い気がしますが、若冲や琳派は好みのど真ん中なので、自然と満足度も高くなりますw)
今回の展示は同時開催の企画は無く、2フロアに渡って広々と展示されていました。全6章構成となっていたのですが、特に前半に好みの作品が集中していたので、今日は1~2章、後編は3~6章をご紹介しようと思います。なお、似たような作品名が多いので、一応作品番号もつけておこうと思います。


<第1章 若冲と奇想の画家たち>
まずは若冲や蕭白といった最近注目度の上がっている奇想の絵師を取り上げたコーナーでした。最初から見所が多くて驚きますw

1 伊藤若冲/無染浄善 「達磨図」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている達磨図です。ぎょろっとした目、濃い眉、大きな髭など少しコミカルな雰囲気のある水墨で、若干うつろな顔をしているかな。 ダイナミックな筆遣いに思える一方で、緩急をつけた表現となっているようでした。初っ端からインパクト大です。

2 伊藤若冲/無染浄善 「寒山拾得図」
子供のような寒山と拾得の姿を描いた作品です。寒山は後姿で眠っているのかな? 拾得はうつ伏せで眠そうな顔で箒を眺めています。何とものんびりした雰囲気で、可愛らしい無邪気な印象を受けました。こんな可愛い寒山拾得は観たことが無いw 解説によるとこの2人の姿勢が三角形を描いているそうで、確かにそうなっていました。可愛いだけじゃないんですねw
ちなみに、寒山と拾得はよく主題とされますが、その見分け方は、寒山は巻物を持っていることが多く、拾得は箒を持っていることが多いようです。

この隣も若冲の寒山拾得図だったのですが、以前ここで観た作品と同様の特徴がありました。
 参考記事:
  伊藤若冲 アナザーワールド (千葉市美術館)
  伊藤若冲 アナザーワールド 2回目(千葉市美術館)

7 伊東若冲 「白象図」 ★こちらで観られます
これも今回の大きな見所じゃないかな。正面を向いた白い象が描かれた作品で、単純化されていてキャラクターのような愛嬌があります。体が丸く、その両脇は画面からはみ出しているのが迫ってくるような感じを生み出していました。なお、白くなっているところは地を塗り残しているようで、黒と白を反転させるような表現となっているのも面白かったです。
この隣には卵型の胴をした若冲が得意とする鶴の図もありました。

9 曾我蕭白 「二老人図」
滝の畔で鬼のような形相の人物と、穏やかな顔をした老人(仙人みたいな)が巻物を広げていて、鬼の顔の人が何かを教えているような場面を描いた作品です。これは呂洞賓に仙術を教えているところではないか?とのことでしたが定かではないようです。蕭白には鬼気迫る作品がありますが、これは穏やかな雰囲気を感じました。
 参考リンク:呂洞賓のWikipedia

11 曾我蕭白 「蘭亭曲水図」
川の畔に立つ建物(蘭亭)に42人の名士が集い、曲水の宴をした故事に主題した作品です。立派な川が流れ、奥には山々が見えているのですが、墨の濃淡がくっきりしていて力強い印象を受けました。

18 徴翁文徳 「龍虎図」
6曲1双の屏風です。右が2頭の虎、左が龍となっていて、お互いに向き合うように対峙しています。右隻は背景が白っぽく、左から強い風が吹いているような感じがしました。虎の毛並みはふわっとしているのが繊細で、目はぎょろっとしているのは逆に大胆な感じです。 左隻はダイナミックに渦巻く波(雲?)が力強かったです。こちらは背景が黒っぽく、右隻とコントラストになっているようでした。 ギッターさんも一押しの作品です。
14 長澤蘆雪 「月に竹図」
これもかなり気に入った風情ある作品で、右下から左上に向かって伸びる竹と、ぼんやり浮かぶ満月が描かれています。この絵は輪郭線をとらない技法で描かれているらしく、月はしっとりした雰囲気を出していました。また、この月は白く塗り残しているそうで、こうした技法は師匠の円山応挙を思わせるとのことでした。(そう言えば応挙は雪を塗り残してたりします。)
 参考記事:円山応挙-空間の創造 (三井記念美術館)

16 長澤蘆雪 「赤壁図」
中国の絶壁を主題にした作品です。崖の下の川を行く舟が描かれ、もやが立ち込めるような雰囲気です。絶壁は大きく雄大で、岩山と岩山の合間に月が浮かんでいるのが風流な感じでした。


<第2章 琳派の多彩>
続いては琳派のコーナーでした。尾形光琳の作品こそありませんでしたが、光琳に絶大な影響を与えた宗達や、光琳に影響を受けた抱一や其一の作品などがあり、煌びやかなコーナーとなっていました。

20 俵屋宗達 「四睡図」
虎、豊干禅師、寒山、拾得の1匹+3人が寝ている様子を描いた水墨画です。丸っこい虎に寄りかかって寝ている顔が気持ち良さそうw 簡略化されていますが、丁寧な筆を感じる作品でした。 それにしても個人で宗達の作品を持ってるって凄いですね。

21 俵屋宗達 「鴨に菖蒲図」
翼を広げて飛び立つ鴨と、左下に白いあやめが描かれた作品です。鴨は首や羽にはにじみを利用した「たらしこみ」の技法が見られるかな。黒い頭と白い腹の色合いなども含めて濃淡が素晴らしい作品でした。

この辺りで約8分の映像コーナーがありました。最初はギッター博士は最初にハニワに興味を持ち、次に焼き物、その次に江戸絵画というように興味を広げて行ったようです。最初の絵画コレクションは白隠の達磨図だったそうで、これは後ほど展示されています。 インタビューを聞いているとギッター博士は中途半端に日本語を覚えようとせず、感覚で作品を集めているようでした。ニューオリンズの自宅に集めた作品を並べているのですが、2005年にカトリーナが来た際、ギリギリで作品は生き残ったようです(確か5点くらいは駄目になってしまったそうですが…) もうちょっと被害があったらここの作品は消えていたのか…と考えると、個人蔵は危なっかしい気もしますw

26 酒井抱一 「秋冬草花図」
「ぬるで」という赤く紅葉した木や桔梗、葛など秋冬の草花が色鮮やかに描かれた作品です。優美な曲線を描いた姿や、たらしこみを使ったような葉っぱの表現など、非常に好みの作品でした。

27 鈴木其一 「蓬莱山図」
様式化された波間の中、そびえるように立つ岩山(蓬莱山)が描かれた作品です。岩山には松や桜、山の上には赤い太陽と2羽の鶴の姿もあり、お目出度い雰囲気があるかな。緻密な描写と様式化が共存しているところや、鮮やかな色彩から雅なものを感じました。

25 酒井抱一/花山院愛徳 「朝陽に四季草花図」 ★こちらで観られます
今回の展示で最も気に入った作品です。3枚セットの掛け軸で、中央は赤い太陽が描かれ、将軍家を讃える歌も書かれています。右幅の上部には桜、下部には様式化された流水に杜若と河骨、左幅の上部は紅葉、下部には笹に水仙が描かれていました。色彩感覚に気品があり、草花からは軽やかな印象を受けました。素晴らしい!

29 鈴木其一 「秋草図」
赤く染まる秋草と桔梗を描いた作品です。解説によると後方は墨の濃淡でシルエットのように描き、手前は鮮やかな色で際立たせているそうです。描きなれている主題のようで、流麗な雰囲気がありました。

30 酒井鶯蒲 「紅楓図」
たらしこみで描かれた木に、様々な赤色に染まる楓を描いた作品です。1枚1枚の色合いが異なっているのが面白く、華やかな印象を受けました。


と言うことで、1~2章は好みの絵師の作品ばかりで目移りしてしまうほどでしたw ギッター博士は全米でも指折りの眼科医のようですが、個人でこれだけのコレクションを集めるとは…と、感心するばかりの内容です。 個人蔵であることも考えると非常に貴重な機会だと思いますので、おすすめです。
次回は残りの3~6章をご紹介します。


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C'EST BON PLAGE (セボンプラージュ)【渋谷界隈のお店】

記事が前後しますが、前回ご紹介したたばこと塩の博物館の展示を観る前に、おもての通り沿いにあるミュージアムカフェでお茶してきました。ここをミュージアムカフェだと思っている人は少なそうですけどw

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【店名】
 C'EST BON PLAGE (セボンプラージュ)

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 http://www.jti.co.jp/Culture/museum/WelcomeJ.html
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13087221/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 渋谷駅


【近くの美術館】
 たばこと塩の博物館 (この施設のカフェです)
 Bunkamuraザ・ミュージアム

【この日にかかった1人の費用】
 1050円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_③_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_③_4_5_名店

【感想】
たばこと塩の博物館は空いていても、それとは関係なくこのお店はよく混んでいるように思います。この日もお店の中は満席で、ビニールカーテンで外と区切られた席に通されました。テラスもあるのですが、そちらは寒すぎるので流石に無理w このビニールカーテンのところにはストーブもあったのですが、1月だと少し寒かったです。 

さて、席に着いて早速注文をと思ったのですが、店員さんがまったく来る気配がありません。というか、満席に近いのに3人しか店員さんがいないので、大忙しという感じでした。頼んでから品が出てくるまでも結構長かった…。

この日はコーヒー(500円)とショコラ(550円)を頼みました。
まずはコーヒー。香りも味も良かったですが、私にはちょっと薄く感じました。後味が軽くて飲みやすいけど物足りない。
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ショコラはもっちりした食感で、意外と甘さ控えめでした。こちらは中々の美味しさ。
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ということで、味は問題ないのですが混んでいて待たされるのが難点という印象でした。屋内でなければ冬の時期は寒いので、テラスで長居は厳しいかな。 空いている時なら良いお店なんだろうなと思います。


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小林礫斎 手のひらの中の美 ~技を極めた繊巧美術~ 【たばこと塩の博物館】

前回ご紹介した松濤美術館の後、ちょっと離れていますが、たばこと塩の博物館までハシゴして、「小林礫斎 手のひらの中の美 ~技を極めた繊巧美術~」を観てきました。

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【展覧名】
 小林礫斎 手のひらの中の美 ~技を極めた繊巧美術~

【公式サイト】
 http://www.jti.co.jp/Culture/museum/tokubetu/1011_event/index.html

【会場】たばこと塩の博物館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】渋谷駅


【会期】2010年11月20日(土)~2011年2月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_4_⑤_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
館内は空いていて、自分のペースでじっくりと観ることができました。
元々、そんなに期待して来たわけではなく、せっかく渋谷まで来たのに松濤美術館だけじゃ勿体無いなー、bunkamuraはこの前観たばかりだし・・・、そうだ!たばこと塩の博物館でも観てみるか~。 ←これくらいのノリで訪問しましたw

まず、小林礫斎(こばやしれきさい)って誰?というところからですが、私は全く知りませんでした。礫斎というのは号のようで、代々襲名され今回の展示の主役は4代目になります。3代目の父について牙彫を修行して、指物(さしもの。釘などを使わずに木と木を組み合わせて作る家具)も習得したそうです。 19歳の時にタバコ盆で全国工芸展覧会で一等賞を取り、その後はタバコ入れが主な仕事としていました。(たばこ繋がりでこの博物館でやっているのも納得) 仕事の傍ら余芸としてミニチュアなどを作成していたようで、今回の展示はこのミニチュア作品が主な内容となります。部屋いっぱいに様々なミニチュアが沢山置かれているのですが、凄い点数です。しかも1点1点のクオリティが半端じゃなくて驚きの連続でした。 下手すると全部メモを取る勢いになりかねないので、メモはあまり取らずに目の前の品に集中してきました。今回の記事では会場の雰囲気だけご紹介しようと思います。


まず入口付近で普段は無い虫眼鏡やルーペのようなものを貸し出していて、「眼精疲労に気をつけて鑑賞してください」というメッセージがありました。(実際、結構目が疲れますw) この気遣いは有難いのですが、虫眼鏡の度を合わせるのが至難だったので、自前のスコープ(モノキュラー)を使いました。 スコープを持ってる方は持参した方が良いかと思います。

入口付近は絵画のミニチュアが展示されているのですが、これが超細かいです。縦2cm×横18cmに12図が描かれている画帖や、1面あたり1.06cm×0.8cmの日本画など、指先のような小ささの絵が並んでいます。(有名なところでは鳥獣戯画の模写とかです。)。 単に小さいだけではなく、絵や書が色鮮やかかつ繊細な技法で描かれ、オリジナルのクオリティをそのままに小さくしたような感じすら受けます。観れば観るほど驚嘆するばかりで、質と量に圧倒されっぱなしでした。

その近くには、小さい象牙蒔絵のタンスやミニチュアの文台などもあり、こちらも恐ろしく精巧です。解説によるとこれらは実物と同じように可動するとのことで更に驚きでした。最早、すげー!すげー!の連呼が止りませんw 
礫斎はこうした作品を「繊巧美術」と名づけたそうで、素材や細工についても誤魔化しも妥協も許さず作成していたようです。地下にあったVTRの解説によると、こうしたミニチュアタンスの金具などは礫斎ではなく職人に頼んでいたようですので、礫斎以外にもこうした驚異の繊細さを持った人がいたようです。
また、こうした作品の多くは中田実という人の集めたコレクションだそうです。この人は裏千家の茶人の息子で、自身も優れた茶人だったようですが茶人にはならなかったそうです。はじめは切手のコレクターとして名高かったのですが、礫斎と出会ってからは礫斎の作品コレクションを優先し、作品の依頼なども行っていたそうです。

その後もずら~~っとミニチュア作品が続きます。この展覧会は特にルートは無いようなので、ぐるっと周ってから中央のケースを見ていったのですが、並んでいたのは、そろばん、印籠、家具、うちわ、煙草入れ、人形、瓢箪、印、シガレットケース、キセル、タバコ盆、江戸玩具(ここは旧倉田家のコレクションが中心)などです。…と、軽く紹介しましたが1つ1つにすげーを連呼してますw 今回のポスターになっている人形は1.69cm×0.62cmという細かさで、一寸法師やアリエッティが巨人に見える程の小ささですw その人形に合わせて作られたコマなんて2mmも無いんじゃないかな…。

作品以外には礫斎の使用した自作の製作道具も展示されていました。しかし、見るからに細かい道具は1つくらいで、あとは意外と大きくてまた驚き。何故これでこんな細かいものが??  また、製作途中の仕掛品というものもあり、屏風を作っている途中のもの? などがあり製作過程をうかがわせました。


ということで、誰がどう見ても「凄い!」と言わざるを得ない内容だと思います。これだけ短時間に「すげえ!」を連呼した展示はあまり記憶にありませんw しかも入場料は100円で、カタログは800円というコストパフォーマンス。渋谷に行く機会があったらこの展示を観ることをお勧めします。 地下には映像コーナーもありますのでお見逃し無く。

おまけ:
1Fでは1コマ漫画展という企画もやっていました。
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期間:2010/12/18~2011/1/30
内容はその名の通り、1コマの漫画風絵画展で、タバコをテーマにした作品が多かったです。


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大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションのモダーンズ 【松濤美術館】

つい先日の土曜日に、渋谷の松濤美術館に行って「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションのモダーンズ」を観てきました。

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【展覧名】
 大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションのモダーンズ

【公式サイト】
 http://www.city.shibuya.tokyo.jp/edu/koza/11museum/tenrankaisyosai.html#15
 http://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/museum/index.html

【会場】渋谷区立松濤美術館 ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】神泉駅/渋谷駅


【会期】2010年11月30日(火)~2011年1月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
思った以上にお客さんがいて、混んでいるというほどではありませんが、賑わっていました。

今回の展覧会は「大正イマジュリィの世界」ということですが、そもそもイマジュリィってなんだ?と思ったら、これはフランス語でイメージ図像を指す言葉だそうです。「デザインとイラストレーションのモダーンズ」の方が今回の展覧会の趣旨としてわかりやすいかな。大正期のポスターや本の装丁・挿絵などから雑誌や絵葉書など、様々なところに使われたイラストを展示する内容でした。 2部構成で、地下が第1部、2Fが第2部となっていて、全部で約300点と非常に点数も多い充実の内容となっていました。あまりメモを取らなかったので、今回は1点ずつ紹介するのではなく、会場の雰囲気がどんな感じだったか、ざっくりご紹介しようと思います。


<第1部 大正イマジュリィの13人>
まず1部ですが、ここには13人の作品が並んでいました。最初にあるボードでは白樺派の「真善美」というのを説明していましたが、特に分からなくても問題ありません。

[藤島武二]
まずは洋画家の藤島のコーナーです。杜若を図案化したものや、本の表紙や装丁、カレンダーなどがありました。藤島作品は様々なところで観ますが、こうしたものは初めて観るものが多く、作風も様々で新鮮味がありました。こういう仕事もしていたのかと、参考になります。

[杉浦非水]
続いて杉浦非水です。大正時代のポスターと言えばこの人抜きには語れないかな。三越のポスターやアール・ヌーボー/アール・デコ風のポスターなどが並んでいました。この人の作品は単純化された中にも独特の暖かみのようなものを感じます。
 参考記事:所蔵作品展 アール・デコ時代の工芸とデザイン (東京国立近代美術館 工芸館)

[橋口五葉]
この人は「我輩は猫である」の装丁にも関わったそうです。もともと日本画の橋本雅邦に師事し、後に洋画に転向しています。浮世絵の研究もしていたとのことで、浮世絵風の作品やアール・ヌーボー風など、様々な画風を見せてくれました。

[坂本繁二郎]
牛や馬の画家として認知されている画家だけに、やはり牛を描いた作品などがありますが、油彩と何か違いを感じます。郷愁を誘う雰囲気は共通するけど色合いとかかな。これも参考になるコーナーでした。
 参考記事:
  東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
  ポーラ美術館の常設

[竹久夢二]
私はあまり好みではないですが、この人も忘れてはいけない存在ですね。レコードのジャケットなどが展示されていて、夢二らしい作風の作品が多かったと思います。

[富本憲吉]
この人はバーナード・リーチとも交流のあった陶芸家です。結構、素朴というかプリミティブというか(同じかw)、力強さを感じる作品が多かったかな。

[高畠華宵]
このコーナーは線が細い女性像が多く、いずれも目が色っぽいのが良かったです。妖艶な雰囲気すら漂っていました。大正時代の絵を漠然とイメージすると、日本画とも洋画とも言えないこの人の画風はそれに合っている気がします。

[広川松五郎]
本業?は染色の人です。本の各ページの上部が影絵のようになっているカットなどが展示されていました。デザイン的で線の細い感じを受けました。

[岸田劉生]
岸田劉生のコーナーもありました。洋画で有名な人ですが、ここに並んだ作品はどちらかと言うと日本画作品の方に近い画風だったように思いました。麗子っぽい子供もよく描かれていましたw
 参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)

[橘小夢]
この人は初めて知ったのですが、素晴らしいですね~。繊細で優美な女性像が多いのですが、妖しい!w 耽美で艶やかで怪奇で…。洋画を黒田清輝に、日本画を川端玉章に学んだそうですが、師匠たちとはだいぶ違いましたw 今後もっと沢山作品を観たくなりました。

[古河春江]
古河春江もあってちょっと驚き。独特のシュールな感じも少し感じますが、よく観る絵画作品とはまた違った感じかな。結構、よく観る画家でもイマジュリィとなると違って見えるのが面白いです

[小林かいち]
この人は最近再評価(むしろ再発見)されつつある謎が多い画家なのですが、夢二からの抒情画やアールヌーボーが合わさったスタイルの作品が並んでいました。忘れ去られていた人ですが、夢二より断然好みです!w 色彩感覚が美しく、優美でありながら静けさ・儚さを感じます。特に絵封筒の作品が良かった。2009年にこの人の展示があったのをスルーしたのが悔やまれます…。今後の発見にも期待です。

[蕗谷虹児](ふきやこうじ)
この人も抒情画の画家です。夢二と似た画風かな。私はそんなに好みではないのでさらっと流してしまった^^;


<第2部 さまざまな意匠>
続いて2階の第2部は意匠によってコーナーが分かれていました。

[エラン・ヴィタルのイマジュリィ]
エラン・ヴィタルとは「生への跳躍」や「生への飛翔」という意味らしく、生きることへの衝動のようなものだそうです。ここには本が並び、植物を描いたものが多かったかな。 生き生きした感じでした。

[子ども・乙女のイマジュリィ]
このコーナーは子ども向けの品々に描かれたイマジュリィが並んでいました。この時代に生きていない私でもどこか懐かしいものを感じるのは何故だろう…。

[浮世絵のイマジュリィ]
ここは小村雪岱や鏑木清方の作品などが並んでいました。どちらもかなり好みなので嬉しい。 雪岱の装丁は独特の儚さを感じます。
 参考記事:
  清方/Kiyokata ノスタルジア (サントリー美術館)
  小村雪岱とその時代 (埼玉県立近代美術館)

[京都アール・デコのイマジュリィ]
関東大震災後の一時期、大阪・京都が日本の中心となった時期があったそうで、ここにはそうした時代のアール・デコ風の作品が並んでいました。気品を感じる作品があったように思います。

[震災のイマジュリィ]
このコーナーは関東大震災をテーマにした作品が並んでいて、壊滅した町並みや被災の様子を伝える作品などがありました。

[怪奇美のイマジュリィ]
ここは妖しい雰囲気の作品が並んだコーナーでした。まあ、妖しさで言えば地下の展示のほうが印象に残っていますが。

[尖端都市のイマジュリィ]
このコーナーは印象が浅くてあまり思い出せませんw 復興したイメージの作品だったかな。

[新興デザインのイマジュリィ]
ここは幾何学的なキュビスムを思わせるデザインなどが並んだコーナーでした。デュフィの書があったのもここだったかな。

[大衆文化のイマジュリィ]
ここも記憶が薄いので何ともいえないw 観た時は2階も良い作品が多いな~と思ったのですが、どうも地下の展示ばかりが心に残っています。


ということで盛り沢山かつ個性的な内容で、特に地下の1部は非常に楽しむことができました。橘小夢と小林かいちという素晴らしい画家の作品に出会えただけでも大きな収穫でした。
もうすぐ会期が終わってしまいますので、気になる方はお早めにどうぞ。


おまけ:円形の中庭の中心
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映画 「ノルウェイの森」 (ネタバレなし)

最近、映画館通いが復活しつつあるのでまた映画の記事ですw 金曜日の夜に、レイトショーで「ノルウェイの森」を観てきました。映画館の会員デーだったので1000円で観ることが出来ました。

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【作品名】
 ノルウェイの森

【公式サイト】
 http://www.norway-mori.com/index.html

【時間】
 2時間20分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_3_④_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_④_5_名作

【感想】
レイトショーということもあり、そんなにお客さんは多くなかったです。公開から結構経ってるせいかも。
さて、この映画はいわずと知れた超有名小説の映画版です。学生のころに図書館で読んだ記憶がありますが、当時の私はエロ小説かこれは?という感想が真っ先に挙がってきたものですw  まあ、私はその程度の理解力ということで大目に見て頂きたいのですが、現代文学の傑作にストーリー④かよ!と怒られそうですねw しかし、映画を観たら、あれ?こんなにシンプルな話だっけ?というのが率直な所です。原作の細かい所はほぼ忘れていたけど、何か端折られた感がしました。 生と性をテーマに、俗っぽい所や生々しさを含みつつ、考えさせられるところは同じだったけど、これは原作原理主義者の人には拒否反応がありそうな気がします。

役者は凄かったです。主役クラスは皆、目や表情で伝えてくるのを感じました。映画の方が雰囲気が分かりやすいので、私には丁度良いかな。話し方や仕草もちょっと誇張されてるくらいがイメージにあっているように思いました。この辺も思い入れの強い人にはどうかな?と思うところもありましたが、緑は特にぴったりだったと思います。

映像も味があって、世代の違う私にはいまいち分かりづらかった当時の様子がイメージできたのも良かったかな。出てくる風景や家具、服なども洒落ていて、それが1つの魅力になっているように思います。あと、音楽は楽曲使用に相当苦労したでしょうねw

ということで、原作に思い入れが無い私としては、シンプルになってしまった感じはするけど、良い出来だと思います。(もちろん、原作を知らなくても充分内容はわかります。) 今観てみると主人公の周りの人々の心情も多少は理解できた気がしました。 全てのファンにお勧め!というわけでは無いですが、こういう作品は全てのファンが納得するのは無理なんじゃないかな。

蛇足:性描写が結構多いので、原作を知らない方は不意打ちされないよう気をつけてください。


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