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シュルレアリスム展 (感想前編)【国立新美術館】

先週の金曜日(祝日)に、国立新美術館で「シュルレアリスム展―パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による―」を観てきました。本格的な大展示でしたので、感想を前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 シュルレアリスム展―パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による―

【公式サイト】
 http://www.sur2011.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/surrealisme/index.html

【会場】国立新美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2011年2月9日(水)~2011年5月15日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(祝日16時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この日は雪が降っていたにも関わらず結構混んでいました。金曜日だったので20時まで開館していたのですが、16時でも1作品に2~3人つくくらいで、場所によっては列になっているところもありました。

今回の展示はシュルレアリスムの成り立ちから終焉までを一気に知ることができる内容となっていて、絵画、彫刻、オブジェ、素描、写真、映画などパリの国立ポンピドゥセンターの作品170点も並んでいました。解説は結構詳しく書いてあったりするのですが、観念的で理解するには難解なところが多かったように思いました。(元々理解するためのジャンルでもないかなw) 詳しくは各章ごとに気に入った作品を通してご紹介しようと思います。


<Ⅰ ダダからシュルレアリスムへ 1919-1924>
入口に合わせ鏡があって、シュルレアリスムの雰囲気にあった神秘的な感じでした。

まず最初の章はシュルレアリスムの元となったダダイズムのコーナーです。ダダイズムは1910年代にマルセル・デュシャンらが中心となった運動で、既存の考えを根本から破壊するものです。ここにはそうしたダダに参加した画家の作品やシュルレアリスムになった経緯に関する資料などが並んでいました。
 参考リンク:ダダイスムのwikipedia

マックス・エルンスト 「ユビュ皇帝」 ★こちらで観られます
今回のポスターになってる作品の1つです。赤いポストのような人のようなコマのような謎のもの(皇帝?)が砂漠の上に浮かんでいます。何か驚いたような話しているようなポーズをしているかな。色は空の青、皇帝の赤、砂漠の黄色と分かりやすい色分けとなっていて、それも現実感を消しているように思いました。

マルセル・デュシャン 「瓶掛け」 ★こちらで観られます
デュシャンはダダの中心人物です。この作品は宙に浮かんだ、リング状の6つの鉄輪を塔のようにしたもので、とげとげして瓶掛けとなっています。これはレディメイド、つまり既製品にデュシャンがサインをしただけのようで、下の方に名前がありました。既製品に名前を書くだけで芸術品なの??と驚きますw 芸術とは何かを問いかけるような作品でした。

ジョルジョ・デ・キリコ 「ギョーム・アポリネールの予兆的肖像」 ★こちらで観られます
サングラスをした石膏像(ギリシャ神話のオルフェウス)、浮かんでいる柱のようなもの、背景には人影が描かれています。この作品はシュルレアリスムの名付け親である詩人のアポリネールに贈られたそうで、画面奥の影はアポリネールで、その頭に半円が描かれているのですが、後にアポリネールが頭を負傷し、この絵がそれを予言していたとされたそうです。デ・キリコ独特の形而上絵画らしい現実感を超えた作品となっていました。
 参考リンク:形而上絵画のwikipedia

ジョルジョ・デ・キリコ 「二人の人物」
肩を組むマネキンのような2人を描いた作品です。これもデ・キリコならではのモチーフかな。胴の部分に船が描かれていて、意味は分かりませんが奇妙で少し不安を感じました。

この先にはアンドレ・ブルトンのコーナーがありました。ブルトンはダダと決別して、「シュルレアリスム宣言」をした芸術家です。 「いとしい想像力よ、 私がお前のなかでなによりも愛しているのは、 お前が容赦しないということなのだ」という宣言の中の一文が今回の展覧会のポスターなどにも使われています。 ここにはブルトンの写真や本が並んでいて、解説によるとブルトンは人生を変えるのは芸術、世界を変えるのは政治を考えてフランス共産党に入ったそうです。
 参考リンク:アンドレ・ブルトンのwikipedia
この後にもシュルレアリスム関連の書籍が並んでいました。


<Ⅱ ある宣言からもうひとつの宣言へ 1924-1929>
続いて2章は1924年~1929年頃のシュルレアリスムのコーナーとなっていました。まず、1つの大部屋に2つの映画が映されていました。

ルネ・クレール 「眠るパリ」
こちらは36分の映画です。トーキーらしいですが音無しでした。一部しか観ませんでしたがエッフェル塔に昇ったりしていてストーリーがあるようです。

マン・レイ 「ヒトデ」
こちらも同じ部屋にあった2分程度の無声映画です。ぼんやりした感じの映像で、眠る女性や焚き火のそばの女性などが映し出されていましたが、かなり難解でしたw (これは去年のマン・レイ展観た気がします。)
 参考記事:マン・レイ展 知られざる創作の秘密 (国立新美術館)

[内的なモデル]
アンドレ・マッソン 「室内の男」
マッソンの作品が並んでいたコーナーがありました。この作品は人を中心に様々な静物が配された作品です。色は曖昧な感じで透明に見える部分もありました。どちらかというとキュビスム的な感じかな。

ルネ・マグリット 「ダヴィッドのレカミエ夫人」
これは横浜美術館にもある作品かな。新古典主義の画家ジャック=ルイ・ダヴィッドの「レカミエ夫人」をモチーフにブロンズで出来た作品で、ベッドの上に棺が乗っていて、上半身部分が起き上がるような感じです。意図はよく分かりませんが発想が面白いです。

マックス・エルンスト 「キマイラ」
キマイラというのは複数の生物が合体した怪物のことで、これは鳥と女性の上半身が合体したような姿をしている作品です。 黒い背景に水色の影のようなものがあり、水色の輪郭が三角形を描いているようでした。

ルネ・マグリット 「秘密の分身」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品です。海を背景に男性の顔が描かれているのですが、顔の皮が切り取られたように左側にズレています。むき出しになった顔の内部は洞窟のようになっていて、鈴のようなものが沢山見えます。ちょっとグロテスクな感じがするかも。 解説によると、1枚の中で平面と立体を表現しているらしく、コラージュ的な要素があるとのことでした。

[甘美な死骸]
この辺りには「甘美な死骸」という作品が並んでいました。これは紙を折り畳み、複数の画家・作家がお互いに協力しあうことができないまま、1つの文または1つのデッサンを作っていく遊びです。この遊びで生まれたのが「甘美な 死骸は 新しい ワインを 飲むだろう」という文章で、それにちなんだ名前となっているようです。
何点かそうしてできた作品が並んでいて、ミロ、モリーズ、マン・レイ、タンギーの合作などもありました。(★こちらで観られます) 奇妙な生物のように見える絵ですが、意外とちゃんと1つにまとまっているように見えました。(境目とかどうしてるのか分かりませんが繋がっています) 他にも紙に色鉛筆で描いた作品などがありましたが、悪戯書きにしか見えないのもありましたw

[自動記述]
マッソンとミロの作品が並んだ自動記述(オートマティスム)のコーナーがありました。自動記述は意識せずに絵を描く手法で、無意識の世界が描かれます。

ジョアン・ミロ 「シエスタ」 ★こちらで観られます
爽やかな水色を背景に、白い不可解なモチーフが浮かぶように描かれています。解説によるとこの作品はステファヌ・マラルメの「青い空」という詩を題材にしているようです。また、絵の右上には太い12という文字が書かれ、これは昼寝の時間を指しているのでは?という解釈もありました


<Ⅲ 不穏な時代 1929-1939>
続いての3章は第二次世界大戦に向かっていった不穏な時代の作品が並ぶコーナーでした。最初にブルトンの本や日本の本なども展示されていました。その後に[侮蔑された絵画]というエルンストのコラージュ作品のあるコーナーなどもありました。

[シュルレアリスムのオブジェ]
冒頭のデュシャンのレディメイドを発想にした作品のコーナーです。日常のものを用途から切り離してオブジェ化することで、まったく別のものに見えてくる面白みがありました。

ヘルベルト・バイヤー 「ガラスの眼」
仕切りのある箱に入った12個の義眼です。整然と並ぶと義眼というか「物」っぽく見える気がしました。一種のゲシュタルト崩壊みたいなものかなw

マン・レイ 「数学的オブジェ」
螺旋の穴の空いた木の板のようなものを撮った作品です。数学的というのは数学のグラフの形みたいなところかな? これ以外にも似た作品がいくつかあり、意外と優美に見えるのが面白かったです。


3章の途中でちょっと中途半端なところですが、今日はこの辺までにしようと思います。理論的・実験的な作品もあるので難解ですが、シュルレアリスムというジャンルを詳しく知るのに良い機会だと思います。これぞ!という決定的な作品がもうちょっと欲しい気もするかな。次回は後半の展示をご紹介します。


 ⇒後編はこちら



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ヴァレリオ・ベッルーティ展 -KIZUNA- 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

前回ご紹介した出光美術館の展示を観た後、延々と歩いて銀座のポーラミュージアム アネックスにハシゴして「ヴァレリオ・ベッルーティ展 -KIZUNA-」を観てきました。

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【展覧名】
 ヴァレリオ・ベッルーティ展 -KIZUNA-

【公式サイト】
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/detail.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス (POLA MUSEUM ANNEX)  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅


【会期】2011年1月22日(土)~2011年3月13日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間10分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
会場は空いていて、静かに鑑賞することができました。

今回の展示はヴァレリオ・ベッルーティというイタリア人のアーティストの個展となっているのですが、あまり詳しいことはわからず、2009年にヴェネチアビエンナーレに出品した若手実力派と紹介されていました。フレスコ画の技法などを用いた画風で、その多くの作品は子供がモティーフとなっているようで、この展覧会でもそうした作品が並んでいました。

まず、入口に布に描かれたフレスコ風の作品が2~3点あり、簡素ながらも感情に直接訴えてくるような画風で、少女の姉妹などが描かれていました。

メインの展示室には11枚の垂れ幕のような作品が、部屋をぐるっと周るように展示されていました。それぞれ薄着の少女が描かれていて、素朴ながらもどこか儚げな感じがしました。11枚のうち両端は垂れ幕の低い位置に少女が描かれ、真ん中あたりは高い位置に少女が描かれているので、昇っていくアニメーションのようにも思えたかな。

この垂れ幕の裏あたりには「襟元」という13×4枚のレリーフがありました(★こちらで一部観られます
少女が腕組みをしているタイルがずらりと並び、微妙に色や質感が違っていました。ちょっと怖いような気もしますが、シュールさや古代彫刻のような神秘的な雰囲気があるように思いました。

奥の部屋には「絆」という3分くらいのアニメーション作品がありました。(★こちらで一枚だけ観られます
300枚ものドローイングから成るアニメで、静かで悲しげな曲と共に流れていきます(この曲は坂本龍一氏のオリジナル曲だそうです) 深い赤い背景に、白黒の少女が机に向かって何か作業をしているのですが、たまに背景の赤がしたたって血のように見えました。 意味はよくわかりませんでしたが、寂しくやるせない雰囲気を感じました。

ということで、もう少し情報が欲しかったようにも思いますが、どこか幻想的で郷愁を誘われる展示でした。無料で短時間で見ることができるので、近くに行く機会があったらフラっと寄ってみるのも面白いかと思います。


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琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 【出光美術館】

つい先日の日曜日に、出光美術館で「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―」の第2部「転生する美の世界」を観てきました。1部とはガラリと変わり、絵画作品は全て入れ替わっているようでした。
 参考記事:琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 (出光美術館)

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【展覧名】
 酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―
 第2部 転生する美の世界

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅

【会期】
 第1部 煌めく金の世界  2011年01月08日(土)~02月06日(日)
 第2部 転生する美の世界 2011年02月11日(金)~03月21日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
始まって3日目でしたが既に混みあっていて、大盛況となっていました。1つの作品に2~3人がつくような感じで、場所によっては人だかりができていました。

内容としては俵屋宗達らが中心だった1部と比べて、酒井抱一とその弟子の鈴木其一の作品が中心となっていました。非常に素晴らしい作品の数々にテンションも上がりっぱなしですw 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


<第1章 琳派の系譜 ―風神雷神・歌仙・物語絵>
最初のコーナーはいきなり目玉作品が展示されていました。

鈴木其一 「三十六歌仙図」
時代を超えた三十六歌仙が所狭しと描き込まれた掛け軸です。それぞれの衣の色の鮮やかさもあり、非常にカラフルな印象を受けます。人々は流れるように配置されていて、実際に数えると35人いるようです。(もう1人は高貴な斎宮女御であるため、御簾の裏に隠れている) また、この作品は絵の周りの表装の部分も肉筆で描かれていて、天と地の部分に流水に扇紋、中廻しに幾何学的な蜀江文が施されていて、作品の華やかさを盛りたてていました。素晴らしい作品です。

参考画像
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酒井抱一 「風神雷神図屏風」 ★こちらで観られます
2曲1双の屏風です。師弟関係はありませんが琳派の始祖である俵屋宗達、尾形光琳と共通の画題で、光琳の影響を強く感じます。光琳の風神雷神は先日観たばかりですが、比べてみるとややこちらのほうが2神が大きく描かれているように思いました。また、一見お互いに視線を合わせているように見えましたが、よくよく見ると微妙に合わないなど、光琳の作品との違いもあるようです。どことなくこちらは軽やかで少し気安い感じがするかな。これを観るのは3年ぶりくらいなので、今回は貴重な機会だと思います。
なお、この作品からは離れていましたが、宗達・光琳の作品の写真もあります。比べて観ると面白いかと。
 参考記事:本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)

俵屋宗達 「歌仙図色紙(大伴中納言家持)」
大伴家持の肖像と歌が描かれた色紙です。家持は線で描かれ、シャープな印象を受けます。色紙の方は金で描かれた草木を背景に、流れるような字が書かれていました。解説によるとこれは元々、三十六歌仙として6曲1双の屏風に貼り付けられていたものだそうです。完成作を観てみたかったですね…。何とも残念なことです。

この辺には宗達作と伝わる作品が並んでいました。下手すると全部メモする勢いになるので、ここはあえて割愛します。

酒井抱一 「八ツ橋図屏風」
メトロポリタン美術館が所有する尾形光琳の同名の作品を模倣した屏風です。根津美術館の燕子花図屏風にも似ているけど、あれには橋がないのでちょっとまた違うかな。金地にたくさんの燕子花(かきつばた)がリズミカルに描かれ、それを縫うように簡素な橋がかけられています。近くにあった写真で光琳の作品と比べると、色が淡くてスッキリした印象を受けるかな。燕子花の配置も整理しているようです。私としては光琳のほうが好きですが、こちらもかなり見応えがありました。
 参考記事:国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開 (根津美術館)


<第2章 薄明の世界 ―江戸琳派の銀屏風>
続いて2章は銀屏風のコーナーです。江戸時代中期に銀地屏風の志向が高まったそうで、抱一にとっても創作の要だったそうです。1章でいきなり豪華絢爛な作品が並んでいましたが、こちらは風流な趣を感じる作品が多かったように思います。

酒井抱一 「紅白梅図屏風」 ★こちらで観られます
今回の展覧会で最も好みなのはこの作品です。6曲1双の屏風で、落ち着いた銀地に右隻に紅梅、左隻に白梅が向き合うように描かれています。紅梅の枝は幾重にも曲がりくねって力強さを感じる一方、白梅は湾曲した曲線の枝で簡潔な印象を受けました。白梅の方は銀地に白い花が非常に清廉で、銀が雪か月光のように思えてきました。この趣は銀じゃないと出せない味です。

酒井抱一 「四季花鳥図屏風(裏・波濤図屏風)」
内裏雛のミニチュアの屏風で、表裏両方観られるように展示されていました。表面は金屏風で、大和絵風にケシや杜若、アジサイ、朝顔、桔梗など四季の花が鮮やかに描かれています。それに対して裏面は銀地に胡粉で、うねる波が描かれていて、激しい印象を受けました。こちらも銀と白が素晴らしい作品でした。
目線を作品の位置に合わせないとよく分からないのでご注意。

鈴木其一 「芒野図屏風」
銀地にびっしりと、単純化されたススキの野原が描かれています。そこに蛇行するようにもやが立ち込めていて、これは月光の中の霧を描いているようです。静かな空気感と共に、幻想的な雰囲気を漂わせていました。

この辺りには尾形乾山の焼き物(これも凄く良い)もありますが、今回は焼き物のご紹介は割愛します。何せ絵だけでも凄いことになってるのでw


<第3章 抱一の美 ―詩情性・情趣性の絵画>
続いて3章は酒井抱一のコーナーです。酒井抱一は姫路城主の酒井雅楽頭家という名門武家の次男として、江戸の別邸で生まれました。若い頃から能や茶、俳諧を嗜んでいたようで、狩野派や南蘋派、円山・四条派などの絵も研究していたそうです。やがて40歳くらいから尾形光琳の画風を学んだ(私淑)そうで、ここには琳派風作品の初期の作品も展示されていました。
 参考リンク:酒井抱一のwikipedia 

酒井抱一 「燕子花図屏風」 ★こちらで観られます
青の杜若(2本だけ白)が群生している様子が描かれた屏風です。花はコの字を左右反転したように配置されていて、何故か中央部が余白になっていて洒脱な印象を受けました。色は鮮やかですが細やかさがあり、奥の方の花は濃く手前は少し明るいなど、色に差があります。葉っぱには滲みを使った「たらしこみ」の技法も見られました。また、右下の方の葉っぱには、とんぼが留まっている様子が描かれ、優美な印象を受けました。
解説によるとこれは41歳の頃の作で、琳派風の草花図を描き始めた初期のものだそうです。

酒井抱一 「十二ヵ月花鳥図貼付屏風」
6曲1双の屏風で、1扇ごとに1ヶ月ずつ、1月~12月の代表的な花鳥が描かれています。右隻から1月なのですが、展覧会の流れは左隻からなので、気づかないと逆行して見ることになるかもw 特に気に入ったのはアジサイで、色合いが何とも上品で雅な雰囲気がありました。これも今回の見所の1つだと思います。


<第4章 其一の美 ―明快性・機知性の絵画>
最後は抱一の弟子の其一の章です。其一は神田の紫染職人の子で、18歳で抱一の内弟子となりました。その作風には確かな描写に裏打ちされた構図と機知な趣向があるそうで、理知的な作品と解説されていました。
 参考リンク:鈴木其一のwikipedia

鈴木其一 「桜・楓図屏風」
6曲の小さい屏風です。手前に満開の桜の木のてっぺん辺り、奥に青々とした楓の葉とどっしりした幹が描かれています。華やかさと重厚さが対比的で、色もピンクと緑で対照的な面白さがありました。

鈴木其一 「四季花木図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風です。右隻は梅や牡丹、杜若など春夏の草花が描かれ、左隻は楓や桔梗など秋冬の草花となっています。大和絵や琳派らしい雰囲気を感じる一方で、この作品はどことなく中国画的なものを感じました。(其一は他の琳派の絵師に比べるとそんなに好きでもないのもそのせいかもw) 


ということで、非常に満足できる内容でした。これだけの展示が1ヶ月ちょっとしかないのは勿体無いとしか言いようがあります。気になる方はお見逃しのないようお早めにどうぞ。お勧めの展覧会です。


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仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護 【東京国立博物館 平成館】

ご紹介が前後しましたが、前々回前回とご紹介したトーハクの常設を観る前に、平成館の特別展「仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護」を観てきました。

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【展覧名】
 仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護

【公式サイト】
 http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=01&event_id=7966
 http://www.asahi.com/hirayama/
 http://www.nhk.or.jp/event/hirayama/

【会場】東京国立博物館 平成館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2011年1月18日(火)~3月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんが入っていて、前半の小さめの作品の前などは少し混み合っていましたが、後半は巨大な作品が多いので、あまり気にならない程度でした。場所によってかな。

さて、今回の展示は昨年他界した平山郁夫 氏の作品と共に、氏の行ってきた文化財保護の活動を伝える内容となっていました。展示は2部構成で、1部は仏教伝来の道を平山郁夫の絵画作品と共に、保護した文化財と共に辿る内容、2部は薬師寺に奉納された大壁画作品とその下絵となっていました。 詳しくは章ごとにご紹介しようと思います。なお、遺跡から出土したものなどは作者名が不明ですので、代わりに出土地域を記載しておきます。似たような名前の作品も多いので展示番号も併記します。

【1部 文化財の保護と継承 ― 仏教伝来の道】
最初は文化財関連の展示です。

<序章 平山郁夫 取材の軌跡>
最初に平山氏が文化財と共に写っている写真のスライドがありました。平山氏は150回以上も海外で取材をしているそうで、アジアだけでなく欧米やアフリカなどでも活動をしていたそうです。 近くに大きな地図パネルがあり、どこで取材してきたかをプロットしていました。こうした取材で平山氏は文化財や文化遺産の危機的状況を認識し、文化財保護を目的とした文化財赤十字の活動に従事したそうです。

写真の反対側のケースにはずらりと水彩の素描作品が並んでいました。ギリシャ、ローマ、西アジア、中央アジア、インド、カンボジア、中国、朝鮮、日本など各地の光景が描かれ、いずれも淡い色彩で爽やかな印象を受けました。


<第1章 インド・パキスタン-マトゥラー・ガンダーラ>
ここからは地域別のコーナーとなります。この章はインド・パキスタンといった仏教源流の地を題材にしていました。19世紀後半以降に多くの文化財が流出したそうで、平山氏は自ら美術館を建設して文化財の散逸防止に力を尽くしたそうです。

1 平山郁夫 「天堂苑樹」
青と緑の森の中、黄土色にぼんやり光る多くの人影が描かれた作品です。この人影は菩薩らしく、みんな座っているのですが1人だけ立ち上がっていて、これが釈迦のようです。(菩薩たちに説法しているシーンらしい) 手前には白い象が眠っているなど、どこか幻想的で厳かな雰囲気がありました。

2 インド・チャンドラケートゥガル 「ラクシュミー女神像奉献板」「女神像奉献板」
こちらはインドのベンガル出土のヤクシニーかラクシュミーと思われる女神像です。石で出来ていて護符として使われていたそうです。彫が細かく、精密な技術を伺わせました。

4 中インド 「欄循柱」
四角柱で三面にインドのヤクシニーとヤクシャが彫り込まれています。現世利益がある像だそうで、道中の無事などを祈ったようです。仏塔の一部だったらしいですが、今はこうして柱だけになってしまっているようです。

この辺には仏頭や装飾品、舎利容器などが展示されていました。少し進むと仏陀や菩薩の石像が並んでいるのですが、日本とは違う雰囲気がします。(アジア館や本館の1Fで観るような仏像です) たまに欠損しているのが何とも残念…。


<第2章 アフガニスタン-バーミヤン>
続いては紛争の続くアフガニスタンのコーナーです。ここは有名なバーミヤン遺跡など石窟など仏教美術の花が咲いた地ですが、1970年代から戦乱で多くの文化財が破壊され、さらに略奪によって海外に流出していったそうです。この章はそうした流出作品も含んだ内容となっていました。

16-1 平山郁夫 「バーミアン大石仏を偲ぶ」 ★こちらで観られます
石の崖に彫られた巨大な仏像を描いた作品です。顔の部分が切り取られているのが無残ですが、それ以上の悲劇がこの仏像を襲います。2001年にイスラム原理主義のタリバンによってこの石仏は爆破されてしまいました。(彼らにとっては他教の偶像に過ぎないのかも…) この報を受けた平山氏はこの石仏を思い出して一気にこの作品を描きあげたそうです。そう聞くとこの作品自体が文化財破壊の警鐘のように思えました。
 参考リンク:ターリバーンのwikipedia

16-2 平山郁夫 「破壊されたバーミアン大石仏」 ★こちらで観られます
こちらは先ほどの石仏が壊されてしまった無残な残骸を描いた作品です。瓦礫の脇に描かれた人の大きさからその破壊の大きさが分かり、これは酷い…と思わずにはいられません。 解説によると、この石仏を再建しようという会議があった時、平山氏は反対したようです。その心は、同じ過ちを犯さないようにこうした破壊を負の遺産として残すという考えのようです。確かに、綺麗に直ったら歴史と共に忘れられてしまうかも…。文化財保護を長い視点で見た考えの深さに敬服しました。

23 「壁画 仏陀坐像」
この辺には壁画の断片が並んでいました。結構壊れていてよく分かりませんが、一部は破壊される以前の写真も展示されていて当時の面影を垣間見ることが出来ます。なお、ここに並んでいるのは内乱で破壊され流出したものを東京藝術大学で修復したものだそうです。平山氏はこうした作品を「難民」として保護し、国情が安定したら祖国に返還することを提唱したそうで、この辺には所有者が「流出文化財保護日本委員会保管」となっている作品が多く有りました。所有ではなく「保管」なんですね。

17 アフガニスタン・ハッダ 「執金剛神またはヘラクレス頭部」
巻き毛と巻き髭の西洋風の壮年男性の頭部です。解説によるとヘラクレスか、それをモデルにした執金剛神(仏陀の道案内者)ではないかとのことです。ヘラクレスが仏像のモデルとは中々驚きです。確かに西洋東洋 両方の雰囲気があり、当時の東西交流を感じさせました。

この辺には石仏が並んでいました。これらも流出品だそうです。


<第3章 中国-西域>
3章はウイグル自治区のコーナーです。この地には砂漠に埋もれた遺跡などが次々と発見されたそうですが、砂漠にあるため、今なお崩壊の危機に晒されているようです。

24 平山郁夫 「楼蘭の遺跡 昼」
大画面の作品で、一見したところ岩山のように見えますが廃墟になった楼蘭の遺跡を描いているようです。茶色い岩肌が荒涼とした雰囲気を出していて、岩に見えるのは仏塔なのかな?? 目の前にその光景が広がるような作品でした。

この辺は仏頭の作品が並んでいました。

34 中国・新疆ウイグル自治区クチャ スバシ 「舎利容器」 ★こちらで観られます
尖がった蓋を持つ円筒の舎利容器です。赤を基調に周囲に様々な人々が描かれ、舞人や楽人など楽しげな雰囲気があります。上部には文様がびっしり描きこまれているなど異国情緒溢れる作品でした。日本の舎利容器とはだいぶ違いますねw この作品も東西文化の融合であると解説されていました。

この辺には小さな壁画の破片などもありました。


<第4章 中国-敦煌>
続いては中国の敦煌です。この地はシルクロードの要衝として栄え、4世紀以降には大規模な石窟寺院が造営されていたそうです。しかし、この地も砂漠にあるため、埋没の危機に晒されているのだとか。

38 中国・甘粛省敦煌莫高窟 「菩薩立像幡」
敦煌の石窟で発見された細長い旗のような作品。色鮮やかに菩薩が描かれ、光輪などにはぼかしの技法も見られます。これは唐時代の中央の仏画様式を踏襲しているそうで、保存状態も良く、貴重な作品のようでした。
この辺にはこうした布地に描かれた仏の像の作品や、写経などが展示されていました。

36-2 平山郁夫 「敦煌三危」 ★こちらで観られます
四曲一双の屏風かな? 手前にこんもりした緑の森、奥には黄土色の砂漠や山々が連なっています。右のほうには石窟が描かれ、遺跡を見渡すような光景となっていました。世界にはこんな風景もあるのかとしみじみ…。砂漠がこれだけ広いと保護も大変そうです。


<第5章 中国-西安・洛陽[龍門石窟]・大同[雲崗石窟] >
次も中国のコーナーです。西安は長年、中国の政治の中心地だけあって、今でも石窟など沢山の遺跡があるそうです。しかし、自然や人為的な物事によって甚大な被害が出ているそうです。(詳しい説明はありませんでしたが人為的って文化大革命のことでしょうかね??)

44 中国・山西省雲崗石窟 「仏頭」
雲崗石窟にあった仏の頭です。ふっくらした顔でヘレニズム文化の影響なども観られるとのことでした。 この辺は石仏や仏頭などが並び、先ほどのインドの仏像よりは日本に近いように思いますが、まだ違和感がありますw

ちなみに音声ガイドを聞いていると、この辺で喜多郎風の音楽が流れてきましたw シルクロードと言ったら喜多郎の音楽が聴きたくなるなあw NHKでまた再放送して欲しいw


<第6章 カンボジア-アンコールワット>
続いてはカンボジアのアンコールワットです。非常に有名な遺跡ですが、この地も内戦によって破壊が進んだそうです。

49 平山郁夫 「アンコールワットの月」 ★こちらで観られます
夜のアンコールワットを深い青で描いた絵です。満月が浮かび、手前の水面に反射しています。よく見ると月の他にも小さな星々が煌めき、静かな夜を感じさせました。

53 カンボジア・シェムリアップ州 アンコールトム東南部のテラスNo.61 「ナーガ上の仏陀坐像」 ★こちらで観られます
今回特に気に入った作品で、とぐろを巻く大蛇の上で瞑想する仏陀を彫った石仏です。仏陀の上には蛇の頭部が傘のように覆いかぶさっていて、これは雨から仏陀を守ってくれているそうです。今まで見てきた仏像と比べると彫りが柔らかい感じで、優美なものを感じます。アンコールワットの仏像はかなり好きかも?? 解説によると、これはアンコールトムという所のテラスにあった優品だそうです。ちょっと壊れているのが残念。


【2部 文化財保護活動の結実 ― 「大唐西域壁画」】
階段を挟んだ向かいの部屋に移動すると2部となっています。こちらは全て平山郁夫氏の絵画作品で、氏の画業の集大成・文化財保護の結実とも言える巨大な壁画が並びます。これらは1976年に薬師寺から依頼され制作したもので、薬師寺の玄奘三蔵院には壁面13面に玄奘三蔵(三蔵法師)が歩いた中国・長安からインド・ナーランダ寺院へ至る7場面が展開しているそうです。門外不出とされていたようですが、今回全て見ることができました。薬師寺の写真もあり、どのように飾られているかも分かります。

59-1 平山郁夫 「明けゆく長安大雁塔・中国」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、黄色い空を背景に塔がそびえています。この塔は玄奘が持ち帰った膨大なお経を収めているそうで、どこか厳かな雰囲気がありました。かなり大きな壁画なので、目の前で観ると迫力があります。

59-4 平山郁夫 「西方淨土 須弥山」 ★こちらで観られます
険しいヒマラヤを西方淨土にある須弥山のモチーフとした作品です。大画面に広がる山々が雄大というよりは神々しく、迫り来る感じを受けます。解説によると真冬に取材に行ったらしく、山は一瞬しか見えなかったものの、バベルの塔を想起したそうです。(何か宗教が混じってる気がしますが) 山の持つ巨大なパワーが伝わるようで、しばらくじっと観ていました。

59-7 平山郁夫 「ナーランダの月・インド」 ★こちらで観られます
大乗仏教研究の中心地となった寺の夜を描いた作品です。寺と言っても岩山と一体化したような感じで、月明かりに照らされ静かな雰囲気を出しています。手前にはぼんやりとした人影が手を合わせているようで、解説によると、これはここで5年の修行をした玄奘を思わせるとのことでした。

最後はこうした壁画の下図のコーナーでした。同じサイズの下図3点と、取材のスケッチが並び、制作写真などもありました。(スケッチは4000点にも及ぶのだとか。) 先ほどの「ナーランダの月・インド」も同サイズの下図があったのですが、玄奘が描かれていないなど若干の違いがあるようでした。


ということで、アジア館と平山郁夫絵画展を合わせたのような感じで、時代や地域が広い内容でした。1部はもう少し絞ったほうが分かりやすいんじゃないかなと思いますが、貴重な品々を観ることができました。シルクロードに興味がある方には面白い展示だと思います。私には世界史の勉強が必要だったかな^^; 2部は生で観ておかないと駄目ですねw こちらのほうが私は満足でした。


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東京国立博物館の案内 【2011年02月】

前回ご紹介した黒田清輝の展示を観た後、トーハクの「平常展」改め「総合文化展」も観てきました。今回も写真を撮ってきましたので、それを使ってご紹介しようと思います。
 ※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れます。(撮影禁止の作品もあります)
  もし掲載に問題がある場合はすぐに下げますのでお申し付けください。
なお、私が観たのは2011年2月6日だったのですが、2月8日に結構入れ替わったようで、ご紹介する作品には既に展示されていないものも含まれています。

公式サイト
 http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=00&mansion_id=M1


 参考記事:
   東京国立博物館の案内 【建物編】
   東京国立博物館の案内 【常設・仏教編】
   東京国立博物館の案内 【常設・美術編】
   東京国立博物館の案内 【2009年08月】
   東京国立博物館の案内 【2009年10月】
   東京国立博物館の案内 【2009年11月】
   東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放】
   東京国立博物館の案内 【2009年12月】
   東京国立博物館の案内 【2009年12月】 その2
   東京国立博物館の案内 【2010年02月】
   東京国立博物館の案内 【2010年06月】
   東京国立博物館の案内 【2010年11月】
   博物館に初もうで (東京国立博物館 本館)
   本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)


呂紀 「四季花鳥図(冬)」
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中国書画のコーナーにあった作品です。本当は4幅対で春夏秋冬となっているそうです。デフォルメされた川の流れが何とも優雅かつダイナミックです。色を押さえた中で咲く花が鮮やかに思いました。


伝 狩野元信 「囲棋観瀑図屏風」
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これは1月に来た時もあったかな。狩野派の礎を築いた狩野元信の作と伝わっています。右隻に瀑布、左隻には囲碁をする人たちが描かれています。


抱玉 「紅白梅図屏風」
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抱玉は琳派の酒井抱一の弟子です。琳派らしい構図と題材だと思うけど、光琳や抱一に比べるとちょっと硬い印象かも。


与謝蕪村 「蘭亭曲水図屏風」
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中国の蘭亭で詩を読んだ41人を題材にした作品。(画面にはそんなにいなそうです) 普段、蕪村はあまり好みではないのですが、これは色合いが鮮やかで気に入りました。


野々村仁清 「色絵牡丹図水指」
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今回特に目に留まったのが仁清のこの水指。色絵が何とも優美で細やかです。


狩野山雪 「林和靖・山水図」
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3幅対の掛け軸。1つ1つは繋がっていないようにも見えるけど、対になると広がりを感じるなあ。


佐竹義躬 「紅梅椿図」
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この絵師は秋田蘭画に属す人で、いち早く西洋画の技法を用いています。陰影などにそれが観られるようです。


喜多川歌麿 「青樓十二時 續・亥ノ刻」
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これは以前サントリー美術館の記事でご紹介した作品です。禿(かむろ)が眠そうw
 参考記事:歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎 (サントリー美術館)


歌川広重 「江戸名所三ツの眺・日本橋雪晴」
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今回も浮世絵は豊作でした。雪の後に晴れた清々しい雰囲気を感じます。


歌川広重 「名所江戸百景・愛宕下藪小路」
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こちらは色合いが美しい。雪なのに何か楽しい雰囲気を感じるんだよなあ。


歌川豊国 「炬燵美人図」
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こたつで本を読む美人。こたつの上で丸くなる猫も可愛い^^ 今も昔も変わらぬ風景かな。
この隣には以前ご紹介した北斎の羅漢図もありました。


ということで、わずか1ヶ月前に来たばかりなのに既に多くの作品が入れ替わっていて、今回も良い作品に出会えました。ここはいつも国宝や重要文化財などが展示されていて、見逃すと次はいつになるか分からないくらいですw 日本の文化を凝縮したような素晴らしい所です。

おまけ:
本館正面奥の階段付近。最近。某映画で出てきましたw
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黒田清輝と京都 【東京国立博物館 本館18室】

先日、上野の東京国立博物館に行って、特別展と常設を観てきました。実際には特別展から先に観たのですが、今日はちょっと忙しいので先に常設の方からご紹介しようと思います。
本館1階の平成館よりにある18室では「特集陳列 黒田清輝と京都」が開催されていました。

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【展覧名】
 特集陳列 黒田清輝と京都

【公式サイト】
 http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=01&event_id=7547

【会場】東京国立博物館 本館18室  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2011年2月1日(火)~2011年3月13日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
お客さんは途切れないものの空いていて、静かな中で鑑賞することができました。常設の1部屋なので、15分もあれば見終わるくらいです。

以前にもここで黒田記念館所蔵の黒田清輝の作品を展示していたことがあるので、定期的に企画されているのかな? 今回は「黒田清輝と京都」というタイトルですが、観ただけで京都らしい!と感じる作品はないかもw どちらかというと以前ご紹介した「昔語り」という戦中に失われた作品の下絵を中心とした内容に感じました。なお、本館の常設はルールを守れば撮影禁止作品以外は写真を撮ることができますので、撮ってきた写真を使ってこの展覧の一部をご紹介しようかと思います。

 参考記事:  ※「昔語り」については岩手の記事でご紹介しています
  黒田記念館の案内 (2010年11月)
  近代日本洋画の巨匠 黒田清輝展 (岩手県立美術館)
  農村(田園)へのまなざし (東京国立博物館 本館18室)
  黒田清輝のフランス留学 (東京国立博物館)

黒田清輝 「舞妓」
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今回のポスターになっている作品。舞妓ということで京都らしいのはこの作品くらいかな。柔らかい色合いの着物が艶やかで好みです。障子や手すりなど水平垂直の線が多いせいか、かっちりした印象も受けました。

黒田清輝 「昔語り下絵(清閑寺景)」
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お寺の風景を描いた作品で、昔語りの完成作の背景に似ています。ちなみに清閑寺は京都の東山(清水寺の南東あたり)にあるお寺なので、昔語りは京都が舞台だったことがわかります。

黒田清輝 「昔語り下絵(男と舞妓)」
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僧の話を聴く男と舞妓だけをクローズアップした下絵です。隠れて手を繋いでいちゃついていますw 舞妓の方はちょっと不安そうな感じもするから怖がってるのかも?

他にもこうした昔語りに関する下絵が並んでいます。
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こちらは写生帖。京都に滞在した際に描いたもののようです。
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画稿も何点か。先ほどの舞妓の素描も描かれています。
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黒田清輝 「昔語り下絵(構図 II)」
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これが現存する下絵の中で一番、完成作を想像しやすい作品なんじゃないかな(多分) 先ほど観た背景や男女、しゃがみこむ仲居などの姿もあります。これでもまだ完成じゃないというのだから、よほど拘りの1枚だったのでしょう…。


ということで、1つの絵を完成させるのにここまで入念に準備をしていたのかと、改めて驚かされる内容でした。完成作が失われてしまったのは本当に惜しいことです。今後はそういう悲劇が無いことを祈ります。

この後も常設を観てきました。1月に行った時と若干かぶっていましたが、また内容が変わっていましたので、次回はそれをご紹介しようと思います。


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流旅転生 鈴木藏の志野 【智美術館】

前回ご紹介した智美術館内のお店でお茶をした後、智美術館の「流旅転生 鈴木藏の志野」を観てきました。

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【展覧名】
 流旅転生 鈴木藏の志野

【公式サイト】
 http://www.musee-tomo.or.jp/exhibition.html

【会場】菊池寛実記念 智美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】神谷町/六本木一丁目/溜池山王/虎ノ門


【会期】2010年11月20日(土)~2011年3月21日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間50分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私が展覧会を観始める頃、ちょうど鈴木藏氏本人の講演会が終わったようで、館内は結構混んでいました(しかし、帰り際には空いてきたので、普段はそんなに混んでいないと思います)

さて、今回の展示は鈴木藏 氏の個展となっておりますが、この方は50年以上も志野焼を中心に活動し、1994年に人間国宝となった陶芸家です。あまり詳しいことは展覧会では分からなかったのですが、タイトルになっている「流旅転生」というシリーズをはじめ様々な志野焼が並んでいて、伝統と現代的な感性を感じる内容となっていました。いくつか気に入った作品をメモしてきたので、それを通して展覧会の様子をご紹介しようと思います。なお、似た名前の作品が多いので、作品番号も記載しておこうと思います。
 参考リンク:
  志野のwikipedia
  鈴木藏のwikipedia

まずは「流旅転生」シリーズの並んだコーナーでした。これは志野で作られた会席用のセットで、絵巻風に深山の清水が川となって大海に注ぎ、やがては天に昇って雨となるという様子を表現しています。突出、酒器、刺身、焼物、揚物、煮物、ご飯に汁物、水菓子、甘味、お茶、抹茶碗などのための器が並んでいました。料理が進むと場面も進んでいきます。

62,4 鈴木藏 「志埜土瓶 流旅転生ノ内」「志埜湯呑 流旅転生ノ内」
朱色っぽい六角形の土瓶と、六角形の湯呑のセットです。表面にはぽつぽつと穴が空いていて、いかにも志野という感じですが、色が深く力強い印象を受けました。

32 鈴木藏 「織部大皿 うづしお」
今回の展示で数少ない織部焼きの大皿です。緑がかった色をしていて、ダイナミックな渦を巻いた表面をしています。その色の濃淡も含めて見事に渦潮の荒々しい様子を見てとることができました。

2 鈴木藏 「志埜花器 流旅転生ノ内」
への字型が3つ合わさったような変わった形の大きな花器です。上のほうは朱色で、中ほどは黒っぽく、下の方は白っぽい色をしています。その形と幾何学性も感じる模様が面白く、志野でこんなに大きなものを焼いているのかと驚きがありました。 この辺にはこうした花器が3つ並んでいます。

11 鈴木藏 「志埜向付 流旅転生ノ内 刺身皿」 ★こちらで観られます
山の形をした5つセットの刺身皿です。山の上のほうは赤く、下の方は白くなっていて、中ほどには松なども描かれています。見ているうちに白い部分は雪景色のように見えてきました。 解説によると鈴木氏はしばしば志野を水墨に例えているそうで、確かにこの作品などは水墨の趣がありました。
近くには丸皿や長皿のセットもあります。

20 鈴木藏 「志埜大皿 流旅転生ノ内 果物大皿」
大きな四角い皿で、河口付近で川が集まって、海とであって渦を巻く様子が表現されています。薄い青やピンクの渦となっていて、絵柄だけでなく実際に凹凸があり、形も大胆に湾曲していて迫力がありました。

23,24 鈴木藏 「志埜土瓶 流旅転生ノ内」「志埜湯呑 流旅転生ノ内」
6角形の土瓶と湯呑です。冒頭でご紹介したセットに比べると色が違い、白っぽく薄っすらとピンクがかった繊細な色をしていました。こちらは静かで温かみを感じました。

2部屋目付近からは「流旅転生」というタイトルではない作品も展示されていました。

31 鈴木藏 「志埜大皿」
四角い大皿です。先ほどの渦の大皿に似た形をしていますが、こちらは川が蛇行するような模様と凹凸がついていて、ちょっと黒味を帯びたような赤が印象的でした。表現するものによって色も合わせているのが面白いです。

39 鈴木藏 「志埜大皿」
中央がくぼんでいて、縦にギザギザと凹凸のついた大皿です。(というか洗濯板みたいなw) ヒダが深くて荒々しい感じもしますが、志野らしい優雅な色合いでした。何故か1/4くらいは黒っぽくなっていたのは何かを表現したものだったのかな??

56 鈴木藏 「志埜茶碗」
薄いピンク色の茶碗です。滑らかでつるっとした感じを受けて、今までの作品と違った印象に思いました。いびつな形も含めて艶かしいです。
この辺にはこうした志野の茶碗が数点展示されていました。

42 鈴木藏 「志埜花生」
全体が朱色に塗られた大きな花生です。色の持つパワーと形から、生命力を感じました。これだけ強い花生にはどんな花が合うんだろう。

3部屋目は2つの花器がありました。

45 鈴木藏 「志埜花器」
巨大な花器です。山の形をしていて上の方は黒く、中ほどは朱色、下の方は白っぽい色をしています。非常に大胆で、その大きさからも山を連想させました。

出入口付近では再び流旅転生のシリーズが並んでいました。

10 鈴木藏 「志埜箸置 流旅転生ノ内」
鯉が身を捻るようなポーズをしている箸置です。朱色がちょうど魚の模様のようで、優雅な雰囲気がありました。可愛らしいです。

7,8 鈴木藏 「志埜徳利 流旅転生ノ内」
2つの徳利です。朱色をしていて素朴な感じを受けます。朱の地に白が滴るように色づけされている部分があり、これは岩場から清水が滲み出ている様子を思わせるとのことでした。(確かにそう見える。) 恐らくこれは流旅転生の最初のほうの場面だと思います。

9 鈴木藏 「志埜ぐい呑 流旅転生ノ内」
5つのピンク色のぐい呑です。淡い色合いが可憐で、形もすっきりした感じでした。解説によると、残雪に咲く早春の花をイメージしているようでした。


ということで、予想以上に楽しめる展示でした。伝統的な志野がこんなにも多彩で現代的だとは驚きでした。色彩や形も面白くて陶器が好きな人には特に面白い展示じゃないかな?? 私的には当たりだと思います。

これにて六本木一丁目からスタートした美術館めぐりもひとまず終了です。次来るのは夏くらいだろうな…。


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ヴォワ・ラクテ 【六本木一丁目/神谷町界隈のお店】

前回ご紹介した大倉集古館の展示を観た後、徒歩2分くらいの所にある智美術館にハシゴしてきました。まずは展示を観る前に、館内のお店でお茶してきました。

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【店名】
 ヴォワ・ラクテ

【ジャンル】
 カフェ・レストラン

【公式サイト】
 http://www.musee-tomo.or.jp/voielactee.html
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 神谷町/六本木一丁目/溜池山王/虎ノ門


【近くの美術館】
 智美術館(館内のお店です)
 大倉集古館
 泉屋博古館分館

【この日にかかった1人の費用】
 650円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
閉店時間が近かったこともあり、あまりお客さんがいなくて静かに休憩することができました。このお店は美術館の中にありますが、入館料を払わなくてもお店には入れます。

店内はこんな感じ。全面ガラスで開放感があります。
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席からは庭の風景を眺めることができます。都心なのにこの余裕が良いですねw 静かな音楽が流れてて落ち着きます。
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さて、この日はコーヒー(650円)だけを頼みました。あんまり長居すると展覧会を観る時間がなくなるのでw
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来た瞬間に酸っぱめの香りがしました。飲んでみると苦味はあまりなく、酸味がじわじわ広がる感じかな。始めは薄いと思ったけど、酸味好きの人には良いかもしれません。私の好みは濃厚な苦味なので、ちょっと系統が違ったかもw

ということで、ゆっくりできるお店でした。サービスもなかなか良くて好感が持てました。この近くには以前ご紹介したカメリアもありますが、智美術館に行くのであればこちらも便利だと思います。夜にはディナーメニューのレストランになるようです。
 参考記事:ダイニングカフェ カメリア [camellia] (六本木一丁目/神谷町界隈のお店)

この後、智美術館の展覧会を観てきました。次回はそれをご紹介しようと思います。


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煌めきの近代~美術から見たその時代 【大倉集古館】

前回ご紹介した泉屋博古館分館を観て買い物に行った後、大倉集古館にハシゴして「煌めきの近代~美術から見たその時代」を観てきました。この展示は展示時期によっていくつか作品が入れ替わるようで、私が観たのは2月5日の内容となります。

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【展覧名】
 館蔵品展 煌めきの近代~美術から見たその時代

【公式サイト】
 http://www.shukokan.org/exhibition/index.html
 http://d.hatena.ne.jp/shukokan/20101201/1291182045

【会場】大倉集古館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木一丁目/溜池山王/神谷町


【会期】2011年1月2日(日)~3月21日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
閉館時間まで1時間程度しかなかったこともあり、空いていて快適に観ることができました。

さて、今回の展示は幕末・明治~昭和あたりまでの画家・作家の作品を集めた展示となっていました。これと言ってテーマは無いようで、時代でざっくりまとめた感じかな。冒頭にも書きましたが、この展示は作品の入れ替えが結構あるようで、ポスターの横山大観「夜桜」はまだ展示時期ではなくちょっと残念。(公式ブログに作品リストがあって、そこで展示時期も分かります) それでも気に入る作品がいくつかありましたので、それをご紹介しながら会場の雰囲気をお伝えしようと思います。


<1階>
まず1階です。今回の展示には音声解説機もあるようでしたが、閉館まであまり時間も無かったので、借りませんでした。

橋本雅邦 「山水図」
6曲の屏風です。墨の濃淡で山、松林、道行く旅人などが描かれています。霞むような山がそびえ、ぽつんと描かれた旅人達から山の大きさを感じました。旅人は結構のんびりした雰囲気も出してたように思います。

伊藤若冲 「乗興舟」
意外にも若冲の作品もありました。これは黒地を背景に白で描かれた風景の巻物で、水墨画の白黒が逆転したような感じを受けます。淀川を舟で下った際の情景が描かれているようで、町並みや城、旅する人々、小舟など川から見える風景が続き、所々地名が付いていました。白の輪郭が太めで素朴な感じもしますが、反転したモノクロが独特で、情感溢れる作品となっているように思います。濃淡はざらつくような感じの表面で、自然なグラデーションとなっていました。解説によると、この白黒反転は「拓版画」の技法を使っているそうで、当時この技法を使った作品は中国から多数輸入されていたようです。勿論、若冲もそれを知っていて、それに倣った花鳥画がいくつか存在するようですが、この作品はそれをさらに発展させて、型紙や霧吹きなど友禅染の手法も取り入れているとのことでした。
 参考記事:
  伊藤若冲 アナザーワールド (千葉市美術館)
  伊藤若冲 アナザーワールド 2回目(千葉市美術館)

1階の奥の方には「自在置物」という鉄で出来た蟷螂や蟹の置物や、蒔絵、螺鈿の卓、火鉢、硯箱、壺などがあり、一番奥の辺りは常設品が並んでいました。

ぐるっと周って入口付近に戻ってくると、書が3点展示されていました。これは西郷隆盛、徳川慶喜、勝海舟の3人の書で、西郷隆盛の筆は大胆な感じ、勝海舟は繊細な感じ、徳川慶喜は力強くも流麗な感じを受けました。好みとしては徳川慶喜の書が一番かな。


<2階>
続いて2階は絵画中心の内容となっていました。

佐々木尚文 「雪之水車」
水車をつけられた2隻の舟が川に繋がれて浮かび、手前の小舟では蓑を着た農夫が何かの作業をしています。周りは雪で覆われ、舟にも雪が積もっています。暗い空からも胡粉で描かれた雪がしんしんと雪が降っていて、雪の日の雰囲気がよく出ていました。冬の厳しさと静けさを感じます。
解説によるとこの人は川合玉堂の弟子だそうです。近くには玉堂の作品も展示されていました。

「御家流十組香三十種」
カルタか百人一首のように思いましたが、香を入れる包みのようです。古十種、中十種、新十種の合計30点の包みが展示されていました。歴史や花鳥風月を主題にした大和絵風の絵が描かれ、鮮やかで優美な雰囲気を出していました。それぞれの絵が中の香を想像させるものらしいです。

少し進むと蒔絵のコーナーもありました。硯箱や文台、香合などがあり、変わったところでは香木を割るための大工道具のような蒔絵もありました。

横山大観 「山四趣」
4幅セットの掛け軸です。いずれも山を描いた作品ですが、右から順に春夏秋冬を主題にしています。春は霞むように、夏は雲が沸き立つように、秋は寂しくも爽やかに、冬は静寂に包まれているように、それぞれの季節の空気感を出しているように思いました。

横山大観 「秋色」 ★こちらで観られます
金を裏箔に用いた輝くような地の6曲1双の屏風です。右隻には紅葉しつつある大きな葉っぱを持つ木々(槇に紅葉した蔦?)が描かれ、葉っぱは赤、黄、緑というように美しい色の取り合わせとなっています。よく見ると琳派の使うたらしこみの技法も使われています。 左隻は2頭の鹿がいて、1頭は寝そべり、もう1頭は木になった実を見つめていました。解説によると、この作品が描かれた頃、院展のメンバーを中心に琳派的傾向の作品が流行ったそうで、この絵も俵屋宗達がよく描いた主題で琳派の手法を取り入れて描いているようでした。確かに鹿や葉っぱは宗達がよく描いてるかも。現代風な感じと琳派の作風を感じる作品でした。
 参考記事:
  琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 (出光美術館)
  生誕250年 酒井抱一 -琳派の華- (畠山記念館)

三木翠山 「鏡」 ★こちらで観られます
赤い着物を着た女性を描いた作品です。手鏡を持って髪を直しているところかな? 少し微笑んでいるように見え、楽しげな感じを受けます。着物の模様は絢爛かつ鮮やかで、女性の色白の肌を一層優美に引き立てている思いました。

橋本関雪 「暖日」
寝そべってこちらをじっと見ているペルシャ猫を描いた作品です。細い線で描かれ、毛並みも五分で柔らかく表現されています。猫は可愛いところもあるのですが、それ以上に威厳を感じましたw 結構、キッとした表情をしています。


ということで点数は少ないですが、若冲や大観の作品は見応えがありました。ぐるっとパスがあれば提示のみで観られるのも嬉しいです。気になる方は作品の展示期間をチェックしておくことをお勧めします。


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中国青銅鏡 【泉屋博古館 分館】

つい先日の土曜日に、六本木一丁目付近へ買い物に行った際に、周辺の展覧会巡りをしてきました。まずは泉屋博古館分館で「中国青銅鏡」を観てきました。

P1170464.jpg

【展覧名】
 中国青銅鏡

【公式サイト】
 http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

【会場】泉屋博古館 分館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】六本木一丁目/神谷町

【会期】2011年1月8日(土)~3月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
ここはいつも空いていますが、この日はそこそこお客さんがいました。それでも充分に快適な環境だったので、自分のペースで観てきました。

さて、今回の展示は中国の青銅鏡を主題とした中々渋い展示となっています。一口に中国の青銅鏡と言っても春秋時代(前5世紀)頃から戦国時代に量産され、漢時代に絶頂となった歴史があり、様々な時代の作品が並んでいました。また、鏡は霊力を持って吉祥をもたらす道具と考えられていたそうで、背面の文様でその効果を保証しているとのことです。その為、それぞれの時代の思想や価値観(神仙思想や宇宙観)を反映したような作品が多いように思いました。
各作品についている解説や、会場でもらえるパンフレットでは文様や時代背景について丁寧に書かれているのですが、私にはちょっと難しくてメモを取るのを半ば諦めました^^; その為、今回は展覧会の雰囲気だけでもご紹介しようと思います。最近、中国関連の展示が多いので徐々に歴史や当時の価値観を学んでいこうと思います…。
 参考記事:誕生!中国文明 (東京国立博物館 平成館)

まず最初の部屋には春秋時代の作品が並んでいました。鳳凰や「ち」という幼い龍などの文様の作品が多く、薄手で細かく文様が刻まれています。また、この辺は円形の鏡ばかりが並んでいました。 銅鏡と言えば真っ先に円形のものが思いつくので当たり前のように感じますが、これは「天円地方」という中国古来の宇宙観を体現したもので、天は円く、地は方形という意味があるそうです。一応、円以外の作品もあるのですが、この時期から少し後までは円が多く、唐や宋の時代の作品には八花や八稜といった形もありました。
時代順に作品が並び、戦国時代より少し時代が進んだ前漢~後漢時代の作品には四神(朱雀、白虎、青龍、玄武)や西王母・東王父(崑崙・蓬莱に住む神仙)などを配した作品が多かったように思います。道教由来の思想かな?

この辺は古い銅鏡だけに文様が見えづらい作品もいくつかあったかも…。ミュージアムスコープを持っている人は持っていった方が良さそうです。

1部屋目を出て2部屋目に移る途中、ロビーでは銅鏡の作成方法や再現?なども展示されていました。道教には不純物が少ないとも解説されていました。

2部屋目は唐時代の鏡が中心となっていました。銅鏡は南北朝時代に一時停滞した後、再び大流行したそうです。ここには「さんげい」という獣の文様があり、これは獅子の影響を受けた獣のようで、短いたてがみで犬や豹のような姿をしています。(とは言え、作品によっては小動物のような感じも受けましたがw) また、さんげいと共に葡萄の蔦を茂らせた海獣葡萄文という文様もいくつか展示されていました。
他には四神や十二支を配した鏡や、葡萄や柘榴など植物文様の鏡がありました。十二支は道教の思想、葡萄や柘榴は子孫繁栄の意味を持っていると思います(多分)
 参考記事:
  知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」 -道教の神々と星の信仰- (三井記念美術館)
  吉祥のうつわ展-中国陶磁にみる祝い寿ぐ文様の世界 (松岡美術館)

この辺は八花や八稜といった、花の形を思わせる道教ばかり並んでいました。この頃になると「天円地方」の思想も薄らいでいったようで、思想の違いが作品に現れているのが面白いです。
そして、今回最も気に入ったのが「瑞花鳳凰八稜鏡」という日本の平安時代の鏡で、これは国宝に認定されています。(日本産か中国産かは分からず…) 八稜(尖った八角形)をしていて、鏡面には仏たちが細かく刻まれています。背面には鳳凰が彫られているなど観るからに価値の高そうな風格を持っていました。

その後、唐以降の作品もいくつか並んでいました。宋の時代にはまた盛り返したそうですが、以前の模倣が多かったそうです。


ということで、少し難しく思うところもありましたが、中国古来の考えや趣向が詰まったような展示だったと思います。点数は80点程度なのでじっくり観ようと思えば、もう少し時間がかかるかもしれません。中国文明が好きな方には面白いんじゃないかな。 ぐるっとパスがあれば提示のみで入場できるし、気になる方は公式ページをチェックしてみると良いかもしれません。


おまけ:
この後、去年ご紹介したファミリーセールの2011年版に行ってきたのですが、特に何も買わず収穫が無かったので、ご紹介は割愛しますw
 参考記事:ファミリーセール 2010冬 (スピックインターナショナル)


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