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珈琲茶房 椿屋 丸ビル店 【東京駅界隈のお店】

前回ご紹介した三の丸尚蔵館の展示を見た後、三菱一号館にハシゴしたのですが、その移動途中に丸ビルの中にある「珈琲茶房 椿屋 丸ビル店」でお茶してきました。

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【店名】
 珈琲茶房 椿屋 丸ビル店

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 http://www.tsubakiya-coffee.com/shop.html
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1302/A130201/13094587/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 東京駅・二重橋前駅・大手町駅・有楽町駅・日比谷駅など

【近くの美術館】
 三菱一号館美術館、出光美術館 など



【この日にかかった1人の費用】
 980円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日 時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
丸ビルは人気スポットということもあって、混んでいて、表で5分くらい待たされました。(本当はここの地下にある千疋屋に行こうと思っていたのですがそっちはもっと並んでたので断念しましたw)

このブログでは過去に何度も椿屋を紹介してきましたが、別に関係者ではありませんw どこも安定して落ち着けるお店なので非常に重宝しています。
 参考リンク:
  椿屋珈琲店 (銀座界隈のお店)
  椿屋珈琲店 上野茶廊 (上野界隈のお店)
  珈琲茶房 椿屋 渋谷店 (渋谷界隈のお店)
  椿屋珈琲店 六本木茶寮 (六本木界隈のお店)

このお店も他の店舗と同じような内装ですが、駅を見渡せる風景は中々良いですね。
他のお客さんが多かったので窓は写せませんでしたが、左のほうに窓の一部が写っています。
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この日はチョコケーキと水だしアイスコーヒーのセット(980円)を頼みました。
このお店の値段って店舗によってまちまちな気がするw
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まずはチョコケーキ。
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チョコはどっしりして良い香りがしました。あまり甘くて上品な美味しさです。

続いて水出しコーヒー。
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水出しコーヒーはまろやかで、苦味は弱めです。後味にコーヒーらしい香ばしさが残って美味しかったです。


ということで、こちらの店舗も期待通りのお店でした。水出しコーヒーはこれからの時期にぴったりです。この界隈には良いカフェが沢山ありますが、丸ビルの中のお店もどんどん入ってみたいと思います。

この後、三菱一号館の展示を見てきました。次回はそれをご紹介しようと思います。


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美術染織の精華-織・染・繍による明治の室内装飾 【三の丸尚蔵館】

この前の土曜日に、大手町~竹橋の近くにある三の丸尚蔵館で「美術染織の精華-織・染・繍による明治の室内装飾」を観てきました。この展示は3期に分かれていて、私が行ったのは第3期でした。

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【展覧名】
 美術染織の精華-織・染・繍による明治の室内装飾

【公式サイト】
 http://www.kunaicho.go.jp/event/sannomaru/tenrankai54.html

【会場】三の丸尚蔵館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】竹橋駅、大手町駅、東京駅など

【会期】
  2011年4月16日(土)~7月10日(日)
   第1期:4月16日(日)~5月8日(日)
   第2期:5月14日(土)~6月12日(日)
   第3期:6月18日(土)~7月10日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
ここは公園内にある無料の施設ということもあって、結構お客さんはいましたが、自分のペースでゆっくり観ることができました。

さて、今回の展示は織物や刺繍に関する展示です。明治時代、西洋化する室内空間を飾るために京都の西陣を中心に天鵞絨友禅(びろうどゆうぜん)などの織物が盛んになったそうで、そうしたものが並ぶ内容となっています。タイトル的にちょっと地味な内容かもなあと思っていたのですが、まるで絵画のような織物が多々あり、作品を観るたびに驚きの声を上げていました。 点数は少ないですが、気に入った紹介をいくつかご紹介しようと思います。

「天鵞絨友禅「山水図」衝立」
衝立に描かれた絵画と思ったら織物でまずビックリ。手前に川、奥に畔と木々、白い家、背景には山々も見えます。自前のミュージアムスコープでよ~く観ると、非常に細かく織り込まれていて確かに織物ですw 色合いも油絵みたいで日本画と洋画の両方の作風を感じました。解説によるとこうした衝立は暖炉の前に置いて使われたようです。

西村治兵衛 「綴錦「平等院鳳凰堂図」壁掛」
横が3mくらいある壁画のような壁掛けです。これも絵のようで、手前に水辺、左に平等院鳳凰堂が描かれ、水面には小さな舟の姿もあります。空にはうっすらと雁が列を作っている様子も描かれていました。雄大で静けさがあり、これも織物なのかというくらい色彩表現も緻密でした。
これを観た時に以前観た皇室の名宝展を思い出しました。そう言えばこういうのがありました!w (1~2期は以前ご紹介した川島甚兵衞の作品なども展示されていたようです)
 参考記事:皇室の名宝―日本美の華 <1期> 感想後編(東京国立博物館 平成館)

西村總左衛門 「天鵞絨友禅「嵐ノ図」掛幅」 ★こちらで観られます
これも大きな掛け軸風の織物です。木に止まる鷲が羽をやや広げて上を向き、足はガッシリと木の枝につかまっています。右上からは灰色の線が降り、これは嵐の風の勢いを感じさせ、鷲は嵐に耐えているのだとわかります。舞い飛ぶ木の葉やしなる木なども嵐の激しさを強調していて、じっとしている鷲の力強さも感じさせるようでした。

この辺はこうした掛け軸風の作品が並びます。

「天鵞絨友禅「龍図」掛幅」
これは狩野探幽の「龍図屏風」(6隻1双)の右隻を元にした織物です。雲間からぬっと顔を出す龍が描かれ、両手の爪も少しだけ雲間から現れています。水墨の濃淡の妙もそのままに表現され、厳格な面持ちの龍は迫力がありました。

飯田新七 「刺繍「四季草花図」屏風」 ★こちらで観られます
刺繍でできた4曲の屏風です。アジサイ、牡丹?、ユリ、杜若、ススキ、もみじ、朝顔など、異なる季節の草花がいっせいに咲いている様子が描かれています。花にボリューム感があり、刺繍の光沢と相まって独特の美しさがありました。解説によるとこれは霞ヶ関宮で使われていたそうです。

部屋の壁には技法や宮殿で飾られた様子を撮った写真が展示されていました。
こうした織物は海外でも評価され、女優のサラ・ベルナール(ミュシャがよくポスターを描いた女優)も買い上げたというエピソードも紹介されていました。
 参考記事:アルフォンス・ミュシャ展 (三鷹市美術ギャラリー)


ということで、小展でしたが予想以上に楽しめる内容でした。戦前の職人魂は半端じゃないですねw

おまけ
三の丸尚蔵館近くの城壁が崩れていました。震災で壊れたようですね…。
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おまけ2
すぐ近くにあじさいが綺麗に咲いていました。
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【東京国立近代美術館】の案内 (2011年06月)

前回ご紹介したパウル・クレー展を観た後、常設展を観てきました。何枚か写真を撮ってきましたので、いくつか気に入った作品を写真でご紹介しようと思います。

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今回の展示はタイトルがついていて、期間も設定されているようでしたので、テンプレートもつけておきます。前期・後期があるようで、私が見たのは前期でした。

【展覧名】
 所蔵作品展「近代日本の美術」 +緊急企画「特集 東北を思う」

【公式サイト】
 http://www.momat.go.jp/Honkan/permanent20110517.html

【会場】
  東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】
  東京メトロ東西線 竹橋駅

【会期】
  前期:5月17日(火)~6月26日(日)
  後期:6月28日(火)~7月31日(日)

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【感想】
ここは事前に受付で写真撮影の許可を貰ってルールを守れば撮影可能です。(中には撮影してはいけない作品もあります。)
 詳しくはこちら
 ※掲載に問題がある場合はお知らせください。即刻掲載を下ろします。

参考記事:
 東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年05月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年04月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)


太田喜二郎 「新緑の頃」
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光輝主義(リュミニスム)の画家エミール・クラウスの弟子である太田喜二郎の作品です。光に溢れた明るさが好みです。
 参考記事:フランダースの光 ベルギーの美しき村を描いて (Bunkamuraザ・ミュージアム)


梅原龍三郎 「黄金の首飾り」
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どこかルノワールっぽい感じもしますが、梅原独特の色使いを感じました。


下村観山 「唐茄子畑」
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下村観山の見事な屏風。これは今回の「東北を思う」の対象作で、下村観山が北茨城の五浦にいた頃に描いたものだそうです。


鏑木清方 「墨田河舟遊」
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鏑木清方の屏風。涼しげな美女がたくさん描かれていてなんとも優美です^^


萬鉄五郎 「手袋のある静物」
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岩手出身の萬鉄五郎の作で、こちらも「東北を思う」の対象作です。東北の素朴で力強い風土が詰まった感じを受けます。


岸田劉生 「壺の上に林檎が載って在る」
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岸田劉生の精密画。質感が何ともリアルですが、単に写実的なだけでなくデロリの美の片鱗が伺えるように思いました。


アンリ・マティス 「ルネ、緑のハーモニー」
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マティスの作品。これは初めて観たかも。背景の緑が明るい雰囲気です。


パウル・クレー 「刺(とげ)のある道化師」
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この日はクレーの展示をやっているためか、常設にもクレーが5点くらい展示されていました。これは転写の作品かな??


パウル・クレー 「花のテラス」
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こちらもクレーの作品。なんでクレー展に出さなかったんだろw 色とりどりでリズミカルな面白さがあります。


北脇昇 「独活(うど)」
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うどと言うか人間が血を流しているような生々しさがありますね。シュールでちょっと怖さもあって面白いです。
 参考記事:陰影礼讃―国立美術館コレクションによる (国立新美術館)


小林古径 「唐蜀黍(とうもろこし)」
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この屏風もかなり気に入りました。静かなのに生き生きしていて優美で…。古径にハズレはありませんw


イッテン、 ヨハネス 「ヨハネス・イッテン版画集 より 5. 少女」
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こちらは特集コーナーの1点です。スイス生まれでバウ・ハウスで講師もした画家で、経歴がパウル・クレーと似てると思ったらクレーをバウハウスに招聘したのもこの人だそうです。これらはバウ・ハウスで講師をする直前頃の作品のようでした。筆致が素早くて力強いですね。

藤田嗣治 「サイパン島同胞臣節を全うす」
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藤田が従軍画家だった頃に描いた作品。タイトルが無いと藤田と分からないほど画風が違って見えます。


松本竣介 「並木道」
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この画家は岩手県出身で、これも「東北を思う」の対象作です。ちょっとルソーみたいな雰囲気もあって好みの画家です。
 参考記事:
  陰影礼讃―国立美術館コレクションによる (国立新美術館)
  岩手県立美術館の案内 (番外編 岩手)


ニコラ・ド・スタール 「コンポジション(湿った土)」
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パレットナイフで描かれた長方形が独特の作風です。アンフォルメルの展示を思い出しました。
 参考記事:アンフォルメルとは何か?-20世紀フランス絵画の挑戦 (ブリヂストン美術館)


東山魁夷 「青響」
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これも「東北を思う」の対象作。取材地が福島の土湯峠だそうで、青が響くというタイトルが似つかわしい深遠さがありました。

この他にも2Fに大岩オスカールなどの人気作家の作品もありましたが、最近の作品なので写真は見送ります^^; 最後の2Fの部屋は「路上(On the Road)」道を主題にした作品が並んでいました。


東山魁夷 「道」
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これも「東北を思う」の対象作。青森の海岸にある牧場をスケッチにこの絵の着想を得たそうです。単純な構図にも思えますが、この道に意味深なものを感じました。


野村仁 「道路上の日時」
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以前、個展を見てすっかりファンになってしまった野村仁の作品。地面に書いた文字が消えたらまた書くというのを繰り返してとった34枚の写真です。時間の流れを感じます。


ということで、今回もたっぷり楽しんできました。クレー展は混んでいるのにこちらに来る人は少ないのが何とも勿体無い。こちらも素晴らしい作品が目白押しなので、クレー展に行くときはこちらもお勧めです。(ちょっと足が持たないかもしれませんがw)


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パウル・クレー おわらないアトリエ 【東京国立近代美術館】

前回ご紹介した東京国立近代美術館工芸館の展示を見た後、本館に移動して今回のお目当ての「パウル・クレー おわらないアトリエ」を観てきました。

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【展覧名】
 パウル・クレー おわらないアトリエ

【公式サイト】
 http://klee.exhn.jp/index.html
 http://www.momat.go.jp/Honkan/paul_klee_2011/index.html

【会場】東京国立近代美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2011年5月31日(火)~7月31日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんがいて、チケットも2~3分くらいの列ができていました。中に入ると狭いところがある(特に前半)ので、混雑感があり、観ていてちょっと疲れるくらいの混み具合でした。クレーってこんなに人気があるんですね。

さて、今回の展示は6章に分かれていて、前半は活動拠点の変遷、中盤は創作方法ごとに分けた展示、最後は画家自らが分類した「特別クラス」の作品の展示となっていました。非常に点数が多く、パウル・クレー・センターの所蔵品をはじめ、180点も展示されていてボリュームたっぷりでした。詳しくは各章ごとにご紹介しようと思います。

なお、以前にも書きましたが私にとってクレーは苦手な部類です^^; 多分、好きな人にはこの上ない展示だと思うので、そこは好みの問題として受け取ってくださいw
 参考記事:20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代(bunkamura)


<自画像>
まずは自画像のコーナーです。簡略化された自画像が数点並んでいました。
ここにあった解説によると、クレーは4歳の頃の絵から9000点ものリストを作っていたそうで、何を使ってどのように描いたかを記録するのは極めて重要な関心ごとだったようです。

パウル・クレー 「思索する芸術家」
頭をおさえた自画像で、簡略化された顔の表現となっています。ちょっと落書きみたいなw この辺には他にも「感じとる芸術家」などもあり、自画像的な絵でどう作品を作り出したかを描いているようでした。この作品は生前には発表されなかったのだとか。

解説によると、クレーが40歳頃、ドイツ革命が起きてクレーもそれに参加しましたが、共和国が倒れてベルンに逃亡せざるを得なかったそうです。

パウル・クレー 「素描 19/75 に基づいて」
これは発表した作品で、目をつぶって真正面を見る自画像です。耳が無く、顔は四角くて深く何かを考えているようでした。手などもなく表情だけ大きく描かれていたのも印象的でした。

この辺にはクレーの使っていた道具やスケッチブックなどもありました。また、クレーのアトリエの写真のコーナーもあり、これは自分で撮ったもののようです。自分の絵の変遷の節目に撮られたものが多いらしく、アトリエは生涯5箇所を転々としたようです。その話は次の章に繋がります。


<現在/進行形――アトリエの中の作品たち>
続いてはアトリエの変遷を追う形で小部屋に分かれて展示されたコーナーです。ここが狭くて一番混雑感があるかも。何回か人とぶつかるくらいの混雑ぶりでした。

パウル・クレー 「赤い旗のある建築」
幾何学的でどこか有機的なブロック?などのある作品です。上のほうには赤い旗のようなものがあってタイトル的には建物なのかな?w
解説によると、この頃にはマルクやマッケらと知り合い、クレーは「青騎士」に入っていたそうです。ピカソやマティスにも感銘を受けていたそうで、若干そうした画家たちの影響を受けているようにも思えました。
 参考記事:カンディンスキーと青騎士展 (三菱一号館美術館)

この辺は具象と抽象との境目的な感じの作品が中心かな。

パウル・クレー 「花ひらく木」 ★こちらで観られます
これはここの所蔵品で、升目のように色とりどりの四角形が並んだ抽象画です。ランダムな感じの色がリズミカルで、これは意味は分からなくても楽しいです。花には見えないけどw
 参考記事;東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)

パウル・クレー 「花ひらいて」「無題」 ★こちらで観られます
これは先ほどの「花ひらく木」とよく似た作品で、2回りくらい大きくなっています。それもそのはず「花ひらく木」を90度回転させて倍の大きさにしたものだそうで、近くの映像でそれを分かりやすく説明していました。また、この作品には裏面もあり、木のようなものが逆さに描かれていました。間違って逆さに展示しているわけではなさそうですw 表と裏の絵の関連性はよく分かりませんが、解説によると2次元的なものを3次元的にしているとのことでした。

この辺はバウハウスの教員として引っ越してきたヴァイマールにいた時代の部屋の写真と作品が並びます。(その前はミュンヘンかな) 中には「花ひらく木」が室内に飾られた写真もありました。その次はデッサウ時代、デュッセルドルフ時代、ベルン時代と続きます。ベルンの頃にはナチスに追われて引っ越したようです。
 参考記事:バウハウス・テイスト バウハウス・キッチン展 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)

パウル・クレー 「山への衝動」 ★こちらで観られます
これもここの所蔵品で、山を登る汽車らしきものを描いた抽象っぽい作品です。太く黒い線が山や木を連想させ、リズミカルで楽しげな雰囲気に思えました。この作品の隣にはこれを描いているクレーの写真もあって、参考になります。
 参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)

パウル・クレー 「獣たちが出会う」
黒い輪郭と淡い赤や黄色、青で描かれた動物たち?を描いた作品です。迷路のような暗号のような感じで表されているので、実際には獣なのかわかりませんがw
この辺には記号やコンポジション的な作品が並んでいました。


<プロセス1:写して/塗って/写して――油彩転写の作品>
続いては様々なクレーの技法を紹介する章が4つ続きます。クレーは最初に素描家としてスタートし、後に色彩を表現するようになったのですが、プロセス1のコーナーには「油彩転写」という素描を活かす技法の作品が並んでいました。これは素描を描いて、黒く塗りつぶた紙を置き、その上に別の紙を置いて素描をなぞると転写されるという仕組みです。(カーボン紙で写しをとるみたいな感じです) ちょっと言葉では分かりづらいですが、映像でも解説があるので分かりやすかったです。(映像は公式サイトでも見る事ができます)

パウル・クレー 「バルトロ:復讐だ、おお!復讐だ!」 ★こちらで観られます
杖をついた人?を単純化した作品で、転写を使って描かれています。幾何学的で簡潔に描かれ、どこかカンディンスキーの作風のようにも思いました。色彩はクレーらしいです。また、この辺は水彩と素描がセットで展示されているので見比べることができて面白いです。

パウル・クレー 「綱渡り師」 ★こちらで観られます
綱渡りしている人を幾何学的に単純化した作品です。これも元となった素描と一緒に展示されているのですが、針でなぞった跡があり、その製作工程を伺わせます。また、水彩の作品にはその勢いと手を置いた跡も残っていて、一種の臨場感がありました。 さらにそれをリトグラフにしたものも展示されていて、並べてみると同じようでもだいぶ印象が違って見えて面白かったです。

パウル・クレー 「蛾の踊り」
蛾と言うよりは人のような形をした像で、背景にはタイル状に緑~青のグラデーションがあります。その色合いのせいか、静かで神秘的な雰囲気がありました。また、こちらの作品にも元となった素描がセットで展示されていました。


<プロセス2:切って/回して/貼って――切断・再構成の作品>
続いては一度出来た作品を、切り離してから回したり入れ替えて、台紙に貼るという技法のコーナーです。創造的である一方で破壊的でもあるという意味もあるようでした。

パウル・クレー 「E.附近の風景(バイエルンにて)」 ★こちらで観られます
キュビスムを思わせる赤い屋根?や建物のようなものが描かれ、所々に記号のような木や、アルファベットのEなども書かれ、上2/3、下1/3くらいで切り離されて2つに分割されている作品です。何故切り離したのか、絵の意味は何かなどはよく分かりませんが、絵を切り離して再構成するという発想が斬新で面白かったです。

パウル・クレー 「「ハルピア・ハルピアーナ」、テノールとソプラノビンボー(ユニゾン)のため、変ト長調で」
これも分割されたものを1つに再構成した作品で、右、左、下の3枚から成ります。左は手を広げた人のような形の楽器や弦楽器がいくつか描かれ、猫?の姿もあります。右にはハープのような楽器があり、右端には細い腕のようなものがありました。これは左の絵の楽器の腕の部分で、絵を左右に分割したあと、入れ替えさせていることがわかります。また、下部は楽譜となっていて、全体で音楽に関する主題となっているようでした。解説によると、この絵は猫の不協和音を表現しているそうです。
ちなみにクレーは音楽一家でバイオリンはプロ級の腕前だったのだとか。


<プロセス3:切って/分けて/貼って――切断・分離の作品>
続いては元々1つであった作品を複数に分割して別々の作品とする技法のコーナーでした。

パウル・クレー 「赤いXのある」「赤い丸屋根のある」
もとは1つの作品を2つにしたものです。「赤い丸屋根のある」は恐らく風景画で、色面と黒い輪郭で丸屋根の建物らしきものを描いています。一方、「赤いXのある」はX字の階段のようなものが描かれた作品でした。…既に分かれているせいかもしれませんが、元々分かれてもおかしくないように見えます。解説によると、分かれたことで縦長となり水平方向が強調されるなどの効果があるそうでした。

ここには片割れだけの作品もありますが、やはりセットのほうが分かりやすいです。


<プロセス4:おもて/うら/おもて――両面の作品>
4つ目の技法はキャンバスの両面に描くもので、先ほどの「花ひらいて」と「無題」と同じような感じです。今は表裏で引き剥がされてしまった作品もあるので、これも両面で見られるのは貴重なようでした。

パウル・クレー 「海辺にかたちづくられるもの(表)」「無題(裏)」 ★こちらで観られます
表は薄い青地に黒い線が迷路のように描かれた抽象画、裏は色とりどりのレンガが積み重なったような作品です。意図はよく分かりませんが、両面まったく印象の異なる作品となっているのが面白いです。対になってるのかな?と考えてみたり。
それにしても、表裏で分かるように展示されているのが理屈抜きで面白いです。

パウル・クレー 「鉛直」
赤っぽい砂漠のような画面に、上にT字、下に逆さになったT字が群がったようなものが描かれています。これは重力の方向を示すそうで、下は地面に縛られ、上は自由な宇宙を表現しているようです。私にはT字がむしろ墓標のように見えたかなw この作品は表面しか展示されていないのですが、絵の中央あたりにうっすらと横になった人のようなものがあり、これは裏面が写りこんだものだそうです。隣にX線写真で裏の絵もわかるようになっていました。裏側はアウトサイダー的なものと解説していましたが、ある意味クレー自身の裏側なのかも…。


<過去/進行形――"特別クラス"の作品たち>
最後は画家自身が選んだ「特別クラス」という作品群です。クレーは自分の作品を8つのカテゴリに分類していたそうですが、それ以外に特別クラスという270点ほどの作品があるそうです。これらは、自分や妻のためのものや、自身の模範とした作品のようでした。さすがに良い作品が多いコーナーとなっていました。

パウル・クレー 「オスタームンディゲンの石切場にて、2台のクレーン」
非常に具象的な水彩画で、2台のクレーンと石切り場の様子を描いた作品です。労働者の姿も見られますが、どこかガランとして寂しい雰囲気でした。まだ抽象化する前の作品かな?

パウル・クレー 「襲われた場所」 ★こちらで観られます
背景に階段状のグラデーションがあり、そこに町のような幾何学模様が描かれ、画面上部には屈折した黒く太い矢印が下を指しています。これも意味はよく分かりませんが、矢印が強い印象を与えていて、タイトルと合わせて考えると何か強力なものがここにやってきたような感じがしました。
この作品については2011/7/2に放送される「美の巨人」で取り上げられるそうなので、ちょっと楽しみです。
 参考リンク:「美の巨人」公式サイト

パウル・クレー 「山のカーニヴァル」 ★こちらで観られます
少し暗い画面の中、鳥、仮面の女、仮面の子供、ロボットのような謎のもの等々が描かれています。ちょっと神秘的な感じもしますが、どこか楽しげで温かみがあるように感じました。

パウル・クレー 「プルンのモザイク」
細かい四角がモザイク上に描かれ、そのうえにT字や丸などが描かれた作品です。青や紫のモザイクの色彩が綺麗で、単純な記号もリズミカルで楽しげでした。

最後には22分の映像がありました。この部屋はクレー最後の仕事場の再現なのかな。


と言うことで、技法なども分かって参考になる展示でした。…と言いつつ、記事を書いていて少々記憶が怪しいところがあったので、自分の中で消化できていないかもw  技法や背景は分かっても絵そのものの意味がよく分からないのと、混んでてあまり落ち着かなかったせいかな…。 まあ、苦手な私でも結構楽しめたほうだと思いますので、クレーが好きな人には非常に魅力ある展示ではないでしょうか。興味がある方はこれ以上混まないうちにお早めにどうぞ。

この後、常設展示も観てきました。次回は常設の様子をご紹介しようと思います。



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増田三男 清爽の彫金 - そして、富本憲吉 【東京国立近代美術館 工芸館】

先週の日曜日に、竹橋の東京国立近代美術館へ行ってきました。まずは工芸館の「増田三男 清爽の彫金 --- そして、富本憲吉」と同時開催の「所蔵作品展 新収蔵作品展2008-2010」を観てきました。

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【展覧名】
 増田三男 清爽の彫金 --- そして、富本憲吉

【公式サイト】
 http://www.momat.go.jp/CG/masuda2011/index.html

【会場】
 東京国立近代美術館 工芸館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅


【会期】2011年5月17日(火)~6月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
館内は空いていて、ゆっくりみることができました。本館のパウル・クレー展はチケットを買うのにも列が出来ていたので、こちらで購入。どうせ両方いくので、こちらで買えばチケットを買う時間を省けますw

さて、今回の展示は増田三男という彫金家の展示となっています。私も知らなかったので、簡単に略歴をまとめると、増田三男は埼玉県生まれで浦和高校で教師をしながら活動した作家です。日本伝統工芸展に出品を重ねて、81歳のときに重要無形文化財(人間国宝)に指定されたそうで、おととしに100歳で亡くなりました。もう一人、展覧会の名前になっている富本憲吉は増田三男が崇敬していた師で、富本憲吉も増田三男を高く評価していたようです。
なお、彫金とは金属の表面に模様を彫る、透かす、はめ込むなどの技法のことを指します。今回の展示にはそうした作品が並んでいましたので。いくつか気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


<工芸館1室>
まずは増田三男のコーナーです。

増田三男 「山茱萸文黄銅壺(さんしゅゆもん おうどう つぼ)」
壷に心中で彫金された作品で、花が咲く枝にとまる小さな鳥と蝶が舞う姿が表現されています。結構簡潔な感じですが、風合いがよく好みでした。すぐ近くにはその下図もあります。

この辺には燭台、箱、タバコセット、衝立などの戦前・戦中の作品なども並んでいました。

増田三男 「鍍金箱 残月狐影」
ススキ野に弓形の月と頭の大きな狐が彫金された箱です。デフォルメされた狐がちょこんとしていて可愛らしい^^ 箱の横には升目に分かれた月の満ち欠けの様子も表されていました。 …お堅いイメージだったのが一気に面白さを感じてきましたw

この辺にはネックレスやペンダントなどのアクセサリーのコーナーがありました。下絵も一緒に展示されています。

増田三男 「金彩銀蝶文箱」
上面に蝶、側面に楕円と十字を組み合わせたような幾何学的な文様の箱です。蝶の部分は浮き上がっていて、これは裏打ち出しという技法を使った作品のようです。完成までに相当の試行錯誤があったそうで、その苦心を感じさせる手の込んだつくりでした。


<第2室>
続いての2室では師匠でもある富本憲吉の作品もありました。富本憲吉は古典的な装飾模様の安易な模倣は厳しく戒めていたそうで「模様より模様を作るべからず」を信条としていたそうです。

富本憲吉 「色絵竹模様珈琲碗 六客」
6客のコーヒーセットです。円の中に笹の葉のようなものとざるのような模様が、側面とコーヒーカップに描かれています。白地に赤や緑で、柿右衛門様式にも近いように思いましたが、独特の洒落た雰囲気がありました。

この辺には富本憲吉の色絵陶器が並んでいました。また、部屋の中央には巻物に書かれた書と絵もあり、こちらも見事な作品でした。

増田三男 「金彩黒銅箱 雑木林月夜」
今回のポスターにもなっている作品で、富本憲吉の「竹林月夜」という作品を念頭に作ったそうです。上面に満月、側面に単純化された雑木林が描かれていて、こげ茶地に金の満月と、金地にこげ茶の林が対照的な色合いで、静けさと品格を感じました。どこか琳派的なものも感じるかな。


<第3室>
増田三男は師からの「模様から模様を作るな」という教えを守り、写生を元に模様を創作する課題に取り組んだそうです。ここにはそうしてできた独創的な模様の作品が並んでいました。

増田三男 「金彩銅壺 木枯」
茶色地に金色の木々が描かれた壷です。流れるようにしなやかに単純化された枯れ木が施され、優雅な雰囲気がありました。彫金もさることながら意匠が面白いです。

この辺は箱が多いかな。蝶やウサギを題材にしたものが何点かあります。

増田三男 「金彩竹林水指」
単純化された沢山の竹(の根のあたり)が表された水差しです。胴をぐるっと廻るように竹が並び、升目のような節と相まって幾何学的なリズム感があります。これは自然美と構成美が合わさったような面白さがありました。素晴らしいです。

増田三男 「金彩兎文香爐」
立方体の香炉で、側面に後ろを向いて伏せている赤目の白兎が現されています。上部は漢字?のようなものがあり、そこに穴が開いていました。何と言ってもウサギが可愛くて、上部の金が満月のように静かな輝きでした。

増田三男 「雪装雑木林月夜飾箱」
銀色の地の箱で、上部にアーモンド形の月が浮かび、側面には枯れ木と林と雪面が表されています。雪にはウサギの足跡があり、右側面には穴の中に入っているウサギの姿もありました。こちらも冬の静けさとウサギの可愛らしさを感じる作品でした。

ここら辺で企画展は終わりです。

<所蔵作品展 新収蔵作品展2008-2010>
続いて、半分は所蔵作品展となっていました。こちらは事前に申告をすれば撮影可能だったので写真を撮ってきたのですが、最近の作品が多いので写真のご紹介はやめておきます^^; 伝統的な工芸に現代的な要素を加えた作品が多く、発想豊かで遊び心を感じさせる作品が多々ありました。こちらもセットで楽しめる内容だと思います。


と言うことで、今回もなかなか楽しめました。工芸館はいつも思わぬ面白さがあるように思います。パウル・クレー展に行かれる際にはこちらにハシゴしてみるのも良いかと思います。

次回はパウル・クレー展についてご紹介する予定です。


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カフェテラス 古瀬戸 【神保町界隈のお店】

今日はちょっと忙しいので、軽めの記事です。先日、国立近代美術館へ行ってパウル・クレーの展示などを観てきたのですが、その帰りに神保町まで歩いて、古書街で美術書を見てきました。その際に神保町駅近くにある「カフェテラス 古瀬戸」というお店でお茶してきました。
(国立近代美術館の記事は後日ご紹介の予定です^^;)

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【店名】
 カフェテラス 古瀬戸

【ジャンル】
 カフェ

【紹介サイト】
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13011635/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 神保町駅、九段下駅、竹橋駅、小川町駅など

【近くの美術館】
 特になし。 1km圏内に昭和館、明治大学博物館、国立近代美術館など


【この日にかかった1人の費用】
 950円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_③_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日18時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
ちょっと遅い時間ということもあってか、空いていてゆっくりすることができました。

若干わかりづらい所にありますが、ここを選んだのは表に壁画のある内装のポスターが気になったので入ってみました。
実際の内装はこんな感じ。西洋のフレスコみたいな絵が壁面いっぱいに描かれています。
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この壁画は画家でありモデルであった城戸真亜子によりものです。私はこの人の事を知らなかったのですが、海ほたるの壁画も手がけているそうです。wikipediaにもこのお店の壁画のことが書かれていました。
 参考リンク:城戸真亜子のwikipedia
近代的要素とやや日本的な感じもするかな。なぜか桃太郎の桃みたいなものも描かれていました(桃はあちこちにある)

さて、この日はコーヒー(525円)とチーズケーキ(470円)をセットで頼みました。セットだと50円引きです。
P1200088.jpg

まずはチーズケーキ。
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非常に濃厚で本当にチーズみたいな感じです。どっしりしていてチーズ好きには嬉しい。舌触りも滑らかで美味しかった。

続いてコーヒー。
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コーヒーは深く焙煎しているようで、苦くはないけどこくの強く味です。香りも香ばしくて飲みごたえがありました。

ということで、どちらも味が深い本格派でなかなか美味しかったです。
すぐ近くには美術館がありませんが、この辺の古書街は巡っていて楽しくなるので、こういうカフェとセットで楽しみたいものです。
…何か気になるカフェが他にも結構あったので、また神保町に行こうかなw



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不滅のシンボル 鳳凰と獅子 【サントリー美術館】

前回ご紹介したニューオータニ美術館の展示を見た後、バスで六本木まで移動してサントリー美術館で「開館50周年記念 美を結ぶ。美をひらく。 II 不滅のシンボル 鳳凰と獅子」を観てきました。この展覧会は7期に分かれていて、私が行ったのは1期でした。

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【展覧名】
 開館50周年記念 美を結ぶ。美をひらく。 II 不滅のシンボル 鳳凰と獅子

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/11vol03/index.html

【会場】
 サントリー美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2011年6月8日(水)~7月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
予想以上にお客さんがいて、ちょっと混んでいるように感じました。

冒頭にも書きましたが、この展示は7期に分かれていて、会期によっては狩野永徳・狩野常信の「唐獅子図屏風」も展示されるという豪華な内容となっています。(永徳は5~7期) 行く時期によって内容が大きく異なりますので、お目当ての作品がある方は作品リストをご確認しておくことをお勧めします。
 参考リンク:作品リスト(pdf)

私はこの展示は2回行っていて、先日ご紹介した国立新美術館の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」の後にも行ったのですが、その時は2期でした。 と言っても1期と同じ内容のようで、混み具合も同じくらいでした。

さて、今回はタイトル通り、鳳凰と獅子という霊獣を主題にした作品を集めた展覧会となっていて、古今の絵画や工芸、衣装、面や銅鏡などもあるという幅広い内容となっていました。12の章に細分化されていましたので、詳しくは気に入った作品と共に章ごとにご紹介しようと思います。


<第1章 暮らしの中の鳳凰と獅子 ― 御輿・獅子舞・狛犬>
まず入口に狛犬が置かれていました。1章はそうした暮らしとの関わりをテーマにしています。そもそも鳳凰と獅子についてですが、鳳凰は優れた天子が世に出てくる兆しとされた想像上の鳥です。それに対して獅子はライオンを原型としていますが、半ば想像上の動物となっていて姿もライオンからかけ離れた姿をしています。「獅子」と「ライオン」は別物と考えた方がいいかもしれません。

「日吉山王・祇園祭礼図屏風」
6曲の屏風で、日吉山王の祭りの様子を描いています。大和絵風で手前に琵琶湖があり、舟に乗った神輿の上には鳳凰の像も観られます。そういえばお神輿の上には鳳凰をよく観ますね。 金雲や山並みがリズミカルで、祭りは勇壮な雰囲気がありました。


<第2章 古代における鳳凰と獅子 ― 銅鏡や磚をめぐって>
続いては古代の鳳凰と獅子のコーナーです。鳳凰は麒麟、亀、龍と共に四瑞として古くから尊ばれていて、唐時代の銅鏡にもその姿が見られます。また、銅鏡には獅子に似た「さんげい」という獣の姿もよく用いられます。
 参考記事:中国青銅鏡 (泉屋博古館 分館)
ここにはそうした銅鏡や、リリーフなど古い時代の作品が並んでいました。

「鳳凰文磚」 ★こちらで観られます
鳳凰は飛鳥・白鳳時代に日本にも伝わってきたそうで、これは鳳凰のリリーフです。石に彫られていて、翼を広げて見事な尾をしています。堂々としていて風格すら感じました。解説によると、これは須弥壇の側面にはめ込まれていたそうで、朝鮮からの影響があるとのことです。また、これは官製はがきの図案の元となっていて、確かに見覚えがありました。

「銅製貼銀?金双鳳?猊文八稜鏡」
作品名の漢字が難しすぎて表示できませんw これは8枚の蓮の葉を並べたような八稜の銀色の鏡で、真ん中に紐を通すための穴があり、そこが獅子の姿となっています。その周りを囲うようにさんげいと鳳凰が追いかけっこするように取り囲んでいて、緻密な彫りでまるで螺鈿のような輝きがありました。この頃にはすでに獅子と鳳凰がセットとなっていたようです。
この辺は銅鏡が数点ならんでいました。


<第3章 獅子舞と狛犬―正倉院の頃から始まる守護獣の歴史>
続いては獅子舞と狛犬のコーナーです。獅子舞というと日本のお正月のイメージですが、獅子舞は大陸からもたらされた伎楽の師子(しし)などに端を発しているそうです。ここにはそうしたルーツを感じさせる作品もありました。

「伎楽面 師子 正倉院宝物模造品」
これは正倉院の宝物を再現したものです。真っ赤な肌に緑のふさふさした毛で、大きな牙とぎょろっとした目が特徴です。迫力があって、ちょっと恐ろしい感じもしますが、ライオンからは程遠く、むしろ熊みたいな感じでした。これが獅子舞の元と言われると確かにそう見えるような見えないようなw

「金銅獅子唐草文鉢」 ★こちらで観られます
これは国宝で、金色の大きめな鉢です。側面に文様があり、わかりずらいですが四頭の獅子が描かれているようです。これは托鉢や供養具として用いるものだそうで、観た瞬間から一級品ならではの風格を感じました。素晴らしいです。
なお、この展示は国宝も数点ある貴重な内容です。たまにそうとは気がつかない時もありますがw

「獅子・狛犬」
2頭セットの狛犬で、元は3対あるものだそうです。右は口を開けている阿行、左は口を結んだ吽行で、2つ合わせて阿吽(あうん)となっています。それ以外は似ているのですが、阿の方は獅子で、吽のほうは狛犬なのだとか。本当に犬のようにちょこんとしていて、ちょっと愛嬌すら感じられましたw
この辺には何対かの狛犬が並んでいました。


<第4章 仏教における獅子 ―文殊菩薩像を中心に>
続いては仏教と獅子の関わりについてのコーナーです。獅子は文殊菩薩の眷属で、よく文殊菩薩を背に乗せた姿で表現さてます。ここにもそうした作品が展示されていました。

「文殊渡海図」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている国宝です。青い獅子の上に座る文殊菩薩と眷属たちがかかれ、雲に乗って海を渡っているようです。非常に力強く、吼えるようなしぐさの獅子に威厳を感じます。その一方で、上に乗る文殊菩薩は凛々しい雰囲気がありました。

この辺はこうした獅子に乗った仏を表現した作品が並び、曼荼羅や舎利容器を乗せた獅子の像(舎利容器を文殊菩薩に見立てている)、舎利塔などもありました。


<第5章 鳳凰降臨― 彫像や神宝にみる高貴なシンボル>
ここは4点くらいしかなかったかな。鳳凰は建物の上に飾られることがあり、ここにはそうした品が並んでいました。

「鳳凰 模造」
有名な宇治の平等院鳳凰堂の南北の両端にある金銅製の鳳凰像! …の模像ですw 直立して翼を広げ、立派な尾を持っている姿は神々しく、顔はやや険しく威厳や高貴さを感じさせました。これも10円玉の表に描かれていると言えば描かれていますね。


<第6章 よみがえる鳳凰 ―東アジアにおける鳳凰図の展開>
ここは今回の見所の1つで、掛け軸や屏風作品の並んだコーナーでした。

伊藤若冲 「旭日鳳凰図」
久々に観る若冲の鳳凰図です。極彩色の鳳凰が二羽(鳳と凰の雌雄かな)、岩にとまっていて、右上の真っ赤な旭日を見上げています。羽、尾、打ち寄せる波などは非常に細かく描かれ、色合いとともに優美で威厳のある雰囲気がありました。特に尾は躍動感もあって、本当に素晴らしい作品です。
 参考記事:皇室の名宝―日本美の華 <1期> 感想前編 (東京国立博物館 平成館)

狩野探幽 「桐鳳凰図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の金屏風です。右隻には桐の木がある川のほとりで休む雌雄の鳳凰、真ん中には雛らしい鳳凰の姿も見えます、左隻は空からふわ~っと降りてくる白っぽい鳳凰と岩にとまった鳳凰が描かれています。煌びやかで豪華な画面ですが、優美で厳かな雰囲気すら感じました。
ちなみに、鳳凰は桐と竹とよくセットで描かれていますが、これは鳳凰は桐の木に棲み、竹の実を食べるという伝承を元にしています。また、この絵のように五鳳凰図は中国の故事にのっとり優れた天子が集まることを表しているそうです。この絵には表装の飾り金具に三つ葉葵の門が入っていることから徳川将軍家との関わりもあるようでした。

この辺には鳳凰をかたどった青磁や白磁の器などもありました。


<第7章 工芸にみる鳳凰と獅子 ―唐物や茶道具を中心に>
続いては茶道具や蒔絵などの工芸品のコーナーです。

「桐竹鳳凰蒔絵文台・硯箱」 ★こちらで観られます
蒔絵の文台と硯箱のセットで、蓋に桐の木の上に立つ鳳凰の姿があります。文台のほうにも竹林を背景に堂々とした鳳凰が表されていました。また、この作品で特に面白いのが硯箱の中で、卵の形をした水滴がありました。銀色で滑らかな質感があり、本当に卵みたいな…。小さくて可愛らしかったです。

「鳳凰(旧金閣所在)」
これは火事で焼け落ちた以前の金閣寺の唯一の生き残りと言える、屋根の上の鳳凰のオリジナルです。偶然、火事のときは補修のため取り外されて難を逃れたそうです。 直立する鳳凰で、非常に凛々しい雰囲気がありました。
 参考記事:番外編 京都旅行 金閣寺エリアその1


<第8章 屏風に描かれた鳳凰と獅子 ―「唐獅子図屏風」から若冲まで>
続いては屏風のコーナーです。1~2期には伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風」のみが展示されていました。

伊藤若冲 「樹花鳥獣図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風で、去年の「伊藤若冲 アナザーワールド」にも展示された点描画のような作品です。1cm四方くらいの升目に区切られていて、モザイクのようになっています。 右隻には大きく描かれた白象を中心にたくさんの動物が描かれ、象の右には上を見上げる青い唐獅子の姿もあり、他にも虎や鹿、猿、熊などもいて、どこか涅槃図を思わせます。実際、唐獅子の見上げるポーズは涅槃図を元にしていると考えられるようです。それに対して左隻は、羽を広げて尾を翻す鳳凰と、その周りに集まる鳥たちが描かれています。鶏やアヒル、オシドリなどもいますが、こちらにも日本にはいなそうな鳥の姿もありました。色合いも鮮やかで、見事としか言いようがありません。新印象主義の画家が見てたらどう思ったんだろうかw
 参考記事:伊藤若冲 アナザーワールド (千葉市美術館)


<第9章 獅子の乱舞 ―芸能と獅子をめぐって>
ここからは下の階です。階段下のあたりには能や歌舞伎に取り入れられた獅子のコーナーがありました。

「能面 獅子口」
石橋(しゃっきょう)という能の演目で使われる金色の獅子面です。大きく口を開け、眉をひそめた顔は迫力があります。また、この隣には「観世流十番綴謡本」という謡本や小鼓胴に描かれた獅子、石橋に使われる牡丹の造花などもありました。
ちなみに石橋の先には文殊菩薩の浄土があるそうで、修行が足りないと渡れないようです。
 参考記事:石橋 (能)のwikipedia

「天台岳中石橋図 旧慈門院襖絵」
歌舞伎の「石橋」をイメージした襖絵です。アーチ状の石の橋の上に、じっと身を潜めている獅子が描かれ、頭には牡丹を乗せて毛が非常に長い姿をしています。…むしろリボンをつけたシーズー犬みたいな感じですw 顔も愛嬌があって面白かったです。 牡丹と獅子のセットはこの演目に由来するのかなあ??

ここには他にも振袖や人形なども展示されていました。

歌川広重 「獅子の児おとし」
「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」という諺をそのまま絵にしたような作品です。必死に登ってくる子獅子を見守る親獅子がかかれ、厳しくも親子の絆を感じさせます。ちょっと心配そうに見えるかな。 縦長な絵であるせいか、崖が非常に切り立った感じがより緊張感を増していました。


<第10章 江戸文化にみる鳳凰と獅子 ―色絵陶磁器から水墨画まで>
続いては江戸時代にお目出度い象徴として市民に受け入れられた鳳凰と獅子についてのコーナーです。ひたすら明るく華やいだ存在として表現されているようでした。

最初に鳳凰の大皿が3枚あり、その後に香炉に乗る獅子、お琴とその入れ物に象嵌された鳳凰、振袖などの作品などもありました。

長沢蘆雪 「唐獅子図屏風」
8曲1双の獅子を描いた水墨の屏風です。右隻は今にも飛び掛ろうと身を低くしている獅子、左は大きく口を開けて2本足で立って襲い掛かるような獅子が描かれ、お互いに向き合うようになっています。毛の表現が非常にスピード感のある描き方で、動きや躍動感を感じさせました。迫力があります。


<第11章 蘭学興隆から幕末へ―洋風画と浮世絵をめぐって>
続いては江戸時代から幕末の時代で、オランダから輸入された写実的なライオンの図鑑が入ってきた影響も分かるコーナーでした。

宋紫石 「ライオン図」
この作品の近くにヨンストン著『動物図譜』という作品があり、それを見て描いたライオンと獅子の中間のような作品です。見た目はだいぶライオンっぽくなりましたが、滝の前で狛犬のように座っているのは獅子っぽく、まだ生態までは伝わっていなそうな感じでした。

葛飾北斎 「鍾馗騎獅図」
これは北斎が85歳頃の肉筆画で、疾走する獅子にまたがった鍾馗が描かれています。この獅子は完全に唐獅子っぽくて、毛を翻して飛んでいくような勢いがあります。前をじっと見て右手で鞭のようなものを持つ鍾馗も迫力がありました。 それにしてもやけに進行方向である左側に被写体が寄っているような…。迫力の源にはその効果もあるのかも。


<第12章 不滅のシンボル―人間と共に生きる鳳凰と獅子>
最後は明治以降のコーナーです。明治になると動物園のライオンを写生した作品も現れました。

竹内栖鳳 「大獅子図」 ★こちらで観られます
4曲の大きな屏風です。リアルなライオンが寝そべっていて、左に向かって吼えるような顔をしています。描写の線が細くて、ふわふわした毛並みの表現や、威厳に満ちた迫力ある顔などが緻密にかかれていました。
この絵の隣には52ページに渡って描かれた写生帖もありました。アントワープで写生したそうです。

最後には鳳凰と唐獅子の布団地、花瓶、七宝の時計、壷などもありました。


ということで、予想以上に楽しめる内容でした。最近は地味めな展示が多かったので、こんなに豪華な作品が出てくるとは驚きw ちょうどこの日にサントリー美術館の会員の更新を行ったので、できれば会期違いで出てくる8章の作品は3つとも観たいと思っています。
 参考リンク:サントリー美術館のメンバーズ・クラブ

体力があれば国立新美術館のワシントン・ナショナル・ギャラリー展とハシゴしてみるのも良いかも知れません。



後日、唐獅子図屏風もある5期の展示も見てきました。その時の記事はこちら




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大谷コレクション展 【ニューオータニ美術館】

10日ほど前の日曜日に、ニューオータニ美術館で「大谷コレクション展」を観てきました。

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【展覧名】
 大谷コレクション展

【公式サイト】
 http://www.newotani.co.jp/group/museum/exhibition/201106_ootani/index.html

【会場】ニューオータニ美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京メトロ 赤坂見附駅・永田町駅


【会期】2011/6/4(土)~2011/7/10(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて、貸しきり状態で観ることができました。

今回の展示は特にテーマなどは無く、洋画と日本画のコレクションを展示するという内容となっていました。いくつか気に入った作品をメモしてきましたので、ご紹介しようと思います。

キース・ヴァン・ドンゲン 「花」
紫や青のアジサイの花を描いた作品です。デフォルメされていて色が強く、近くで見ると絵の具が厚塗りされているのがよく分かります。アジサイにはちょうど良い表現に思いました。

モーリス・ド・ヴラマンク 「花束」
今回のポスターになっている作品です。花束が描かれ筆跡がしっかりと残っているのですが、それが長方形の点描のようになっていて、ぱっと見た感じはヴラマンクっぽさを感じませんでした。解説によると、フォービスムに移行した年の作品だそうで、まだ画風が定まっていない試行錯誤の様子が伺えるようでした。

モーリス・ド・ヴラマンク 「トンネル」
3方を建物に囲まれ、正面の建物に小さなトンネルのような道がある風景を描いた作品です。手前は白と茶が混じった、雪がぬかるんだような地面で、そこに1人の男が左の建物に向かっているようです。雪と土の混ざる様子は非常に素早い筆致を感じさせ、ヴラマンクお得意の表現となっていました。

この辺には、キスリング、ローランサン、シュザンヌ・ヴァラドン(ユトリロの母)などの作品もありました。

アンドレ・ブラジリエ 「ヴェニス」
ヴェニスの海辺の早朝?を描いた作品で、手前にたくさんの黒いゴンドラと背の高い杭のようなものが描かれ、奥には霧に霞む聖堂らしき建物も見えます。ゴンドラは整然と並び、杭と共にリズミカルな印象を受けました。また、全体的に薄い青で爽やかさを感じる作品でした。

アンドレ・コタボ 「赤いバラのブーケ」
小さな花瓶に入ったたくさんのバラが描かれた作品です。バラが多すぎて、実際にこんなに入るのだろうか?と疑問に思うほどですw 非常に鮮やかな赤と葉っぱの緑が補色関係となって響きあい、華やかな印象を受けます。また、マチエールが厚く、本当の花のような凹凸がつけられているのも面白かったです。

続いて、奥の部屋は日本画のコーナーです。ここに平櫛田中 作の「大谷米太郎」の像があるのですが、これが実物大でリアルすぎて、誰か座ってる!と驚きましたw (今までこいつには何度も驚かされていますw)

荒木十畝 「夏汀飛燕」 ★こちらで観られます
これは掛け軸で、非常に長い草の上を舞う2羽の燕を描いた作品です。草むらには杜若なども描かれ、緑や青が鮮やかで初夏の爽やかな雰囲気があります。簡略化され装飾的な画風からは琳派からの影響を感じるのですが、実際に荒木十畝は琳派を敬愛していたようです。中々軽やかで優美な作品でした。

速水御舟 「伊勢物語」 ★こちらで観られます
2幅対の掛け軸です。右幅はあばらやの中の女性とそれを訪ねてきた?烏帽子の男性が描かれ、上部には山や月が浮かんでいます。左幅は 「 の形をした家の中で話す着物の女性と烏帽子の男性が描かれ、手前には2羽の黒い鶏、中央には上方に向かって伸びる木が描かれています。どちらも色は強いのですがさらっと描かれた感じで、柔らかく優美な雰囲気がありました。

川合玉堂 「松籟濤聲」 ★こちらで観られます
手前に断崖絶壁とそこに生えた松、奥に砂浜と小舟を海に向かって押している人々描かれています。波は飛沫が白くなっていて、波音まで聞こえそうです。手前と奥の色の濃さのや違いや構図などから遠近感を非常に意識させるように思いました。


ということで、静かに観ることができて良かったです。ここはぐるっとパスの提示で入れるのが嬉しいです。 結構さらっと観られるので、気になる方はチェックしてみてください。


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ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション  (感想後編)【国立新美術館】

今日は前回の記事に引き続き、国立新美術館の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション」 の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
 前編はこちら

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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション
【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/washington/index.html
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/nga/index.html

【会場】国立新美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2011年6月8日(水)~9月5日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
さて、前編では2章の印象派の展示までご紹介しましたが、まだ印象派のコーナーが続いています。今日は2章の途中から最後までをご紹介しようと思います。


<第2章 印象派>
印象派のコーナーには女性画家の作品を並べたコーナーがありました。

エヴァ・ゴンザレス 「家庭教師と子ども」
門の近くで座ってこちらをじっと見る女性と、後ろを向いて門で遊んでいる子供を描いた作品です。何故かこんなところで腰掛けていたり地面に傘が落ちていたりと、ちょっと意味深でシュールな感じすら受けましたが、この取り合わせはどこかで見たような…。と思ったら、前編でご紹介したマネの「鉄道」とちょっと似たところがあるように思いました。(座ってこちらを見る女性と、背を向けている子供という点が共通しています) 解説によると、この画家は元はマネのモデルを務めていた女性で、マネの唯一の公式の弟子でもあります。同時代のモリゾやカサットといった女性画家に比べて再評価が遅れていますが、近年見直されてきているそうです。

ベルト・モリゾ 「姉妹」
バラ模様のソファに腰掛ける2人の女性を描いた作品です。2人とも水玉模様の服を着ていて、右の女性は扇子を持っています。背景の壁にも扇子が飾ってあり、これはドガがモリゾに贈った扇子だそうです。全体的に華やかな物が多く描かれていますが、2人ともどこか虚ろな感じで寂しい雰囲気がありました。解説によると、この作品はモリゾが姉と別れた頃に描いた作品だそうで、姉妹の絆を込めたのでは?との解釈でした。

この辺にはモリゾの作品が3枚あります。モリゾはかなり好きな女性画家なのでこれは嬉しい。

メアリー・カサット 「青いひじ掛け椅子に座る少女」 ★こちらで観られます
今回のポスターにも使われている作品で、アメリカ生まれの印象派でパトロンでもあった女性画家カサットの絵です。青いソファでぐで~っと寝そべるように座っている少女と、隣のソファでうつぶせている黒い犬が描かれ、少女は退屈そうに見えます。全体的に青が多く、白い服、白い肌の少女は画面の中で非常に目を引きました。解説によると、カサットはこの絵で様々な青を試そうとしていたそうで、同じ青でも微妙な色の違いで明暗などを感じました。

カサットも3点あり、いずれも良かったです。女性画家コーナーも充実しています。
この辺の休憩室では「珠玉のコレクションを作った人々」という2分半程度の映像がありました。メロン一家だけでなく、たくさんの財界人、市民などによって寄贈され、ラファエロ、ティチアーノ、フェルメール、レンブラント…といった印象派以前の巨匠の作品も所蔵していることが紹介されていました。


<第3章 紙の上の印象派>
続いてはエッチングやリトグラフなどの版画やパステルなどの作品のコーナーです。油彩に比べると地味な感じもしますが、面白い作品が並んでいました。

エドゥアール・マネ 「ベルト・モリゾ」
これは先ほどご紹介したモリゾを描いた肖像で、恐らくオルセーにある「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」を単色の版画にしたものだと思います。結構、簡素な感じになっていて、油彩とはまた別の雰囲気がありましたが、やはりモリゾは美人ですw
 参考記事:マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)

この辺にはマネやピサロのリトグラフなどもありました。

エドガー・ドガ 「ディエ=モナン夫人」
パステルで描いた下絵作品で、本画はシカゴ美術館にあります。ピンク色の帽子を被ってちょっと笑っているような表情をしています。顔や帽子はささっと塗ったような塗り方ですが、個性がよく現れているように思いました。解説によると、本画はまるで酔っ払いのようだと受け取られなかったそうですが、確かに気の強い怖そうなおばちゃんって感じがしましたw

この辺にはドガのリトグラフや、何年か前にbunkamuraにも来たルノワールの「田舎のダンス」の下書きのような作品などが展示されていました。

ポール・セザンヌ 「ゼラニウム」
これは水彩画で、緑鮮やかな葉っぱ(ゼラニウム)を描いた作品です。水彩ならではの透明感があり、塗り残した部分は光があたっているような感じがしました。解説によると、セザンヌは鉛筆の下書きと着色を交互に行う技法だったそうです。

ポール・ゴーギャン 「ノア・ノア(かぐわしい)」
これはゴーギャンがタヒチから一時帰国した際にタヒチを題材に作った版画シリーズの1枚です。白黒で、中央に「NOANOA」と描かれた標識のようなものが立ち、その周りに2人の作業する女性と獣、家々などが描かれています。素朴な雰囲気があり、原始的なパワーがありました。
 参考記事:
  ゴーギャン展2009 (東京国立近代美術館)
  森と芸術 (東京都庭園美術館)

この辺にはゴッホの「ガジェ医師(パイプを持つ男)」なども展示されています。
 参考記事: 
  医学と芸術展:生命(いのち)と愛の未来を探る (森美術館)
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)

メアリー・カサット 「入浴」
青いお風呂に黄色い服の女性が手を入れて湯加減をみている様子を描いた版画です。左手で子供を抱いていて、日常を描いたような感じを受けます。それと共に、シンプルな線を使った表現は明らかに浮世絵からの影響を感じさせました。(近くで見ていたお客さんが和風だね~と言ってましたが、かなり的を射ていると思います) 実際にカサットは万博で浮世絵を見て心を奪われたそうです。

カサットの版画も5点くらいありました。


<第4章 ポスト印象派以降>
最後はポスト印象派以降のコーナーです。このコーナーがまた素晴らしく、特にセザンヌとゴッホは見所となっていました。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック  「犬を抱く女性」
珍しいロートレックの油彩作品です。庭で木の椅子に腰掛けて黒い犬を抱える女性が描かれ、背景には木を組んだ壁も見えます。女性は背筋をぴんと伸ばしこっちを見ていて、その顔はちょっと気が強そうな内面まで伝わるようでした。結構勢い良く描かれたようなタッチも面白い作品です。
先ほどの版画のコーナーにもロートレックの作品は2点ほどありました。

ポール・セザンヌ 「『レヴェヌマン』紙を読む画家の父」 ★こちらで観られます
縦長の大きなキャンバスに描かれた等身大くらいの老紳士の肖像で、これはセザンヌの父親です。背の高い椅子に座り、目を細めて新聞を読んでいて、厳格そうな感じがあります。解説によると、父親は息子に銀行家になって欲しかったそうです。それに対して、この新聞は『レヴェヌマン』という当時の革新であった印象派を支持した新聞に差し替えられているそうで(実際読んでいたのは保守的な新聞)、父に自分の芸術を理解して欲しかったのか、それとも反骨なのか、セザンヌからの返答のような感じでした。 また、パレットナイフで厚塗りされた技法はクールベからの影響とも説明されていました。

ポール・セザンヌ 「りんごと桃のある静物」
机の上のリンゴや壷、カーテンなどを描いた静物です。現実ではこういう配置にはならなそうですが、セザンヌは正確に描くことよりも色と形をどう調和させるかを重視し、厳格な構成を作っているようでした。質感や形はちょっと重い雰囲気もありましたが、後世への影響を感じさせる作品でした。

ポール・セザンヌ 「赤いチョッキの少年」 ★こちらで観られます
これも今回の展示のポスターにも使われている作品です。腰に手を当てる赤いチョッキと帽子の男が描かれ、ちらっと右のほうを見ています。背景が抽象的だったり、着ている服から幾何学的な要素を感じるなど、色合いも含めて後のキュビスムがセザンヌから学んでいったのがよくわかる作品でした。これはかなりの傑作だと思います。

セザンヌはこの他にも2点の風景画がありました。

ジョルジュ・スーラ 「オンフルールの灯台」 ★こちらで観られます
手前に浜辺、中央奥に灯台、右奥に建物が建っている風景画です。スーラお得意の細かい点描によって表現されていて、ちょっとざらついたような感じを受けます。絵の中に人っ子一人見当たらず、時間が止まったような静けさがありました。また、全体的に直線が多く使われ、垂直・水平・対角線など幾何学的な要素もあるように思いました。

ポール・ゴーギャン 「ブルターニュの踊る少女たち、ポン=タヴェン」 ★こちらで観られます
3人の少女たちがお互いに背を向けて手を繋ぎ、踊っている様子を描いた作品です。「クロワゾニスム」という技法が使われ平坦でデフォルメされたような印象を受けます。また、背景には町並みなども見えますが、素朴な雰囲気が強いように思いました。 それにしても、左端の子は無表情であまり楽しくなさそうですw

フィンセント・ファン・ゴッホ 「自画像」 ★こちらで観られます
左向きで絵筆とパレットを持つゴッホの自画像です。痩せていて、緑と黄色で描かれた顔は死者のようですが、顔の表情は険しく強い意思を感じます。また、ゴッホの頭の周りには細長い線が無数に渦巻いていて、それがオーラのようになり鬼気迫る雰囲気を強めているように思いました。解説によると、この絵は有名な耳切り事件の後に描かれたそうで、精神病の発作を起こしていた時期の作品のようです。また、これは鏡に映った自分を描いているのですが、隠れている方の耳は既に切られているそうです。 そうした時期の顔のせいか、昨年観た自画像より緊張感を感じました。
 参考記事:ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)

ゴッホはこれを含めて3点ありましたが、どれも素晴らしいです! 最後の最後まで大満足でした。


ということで、美術ファン必見の素晴らしい内容となっていました。あまりに良かったのでこれ以上置く場所が無いと自覚しつつもカタログを買ってしまった^^; ショップは他にもグッズが充実していて、ちょっと面白かったのが今回の展覧会の絵の中に出てくる犬グッズ! 目の付け所がツボでしたw

これからどんどん人気が出て混んでくると思われますので、行く予定の方はお早めにどうぞ。私はリピート確定です^^



追記:
後日、改めて2回目を見てきました。その時の感想はこちらです。
  ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション 2回目感想前編(国立新美術館)
  ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション 2回目感想後編(国立新美術館)



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ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション  (感想前編)【国立新美術館】

つい昨日のことですが、土曜日の午後に国立新美術館で始まった「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション」を観てきました。色々とネタを溜めていますが、注目度の高い展示ですので先にご紹介しておこうと思います。 メモもたくさん取りましたので、前編・後編に分けようと思います。

P1190660.jpg

【展覧名】
 ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/washington/index.html
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/nga/index.html

【会場】国立新美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅

【会期】2011年6月8日(水)~9月5日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
入口付近は空いていたので、これは意外と混んでないのでは??と一瞬期待しましたが、甘かったw 中に入ると結構混んでいて、1つの絵に3~4人くらいの混み具合でした。 しかし、展覧会の奥の方はあまり混んでいなかったし、17時頃にさらっと2週目した時には空いていたので、まだゆっくり観られる時間帯もありそうです(開催1週間目時点での状況ですので、会期が進むほどに混雑が予想されます) 観るなら今のうちですね。
 ※公式サイトで最新の込み具合の分かるページが出来たようです。こちらです。

さて、今回はアメリカのワシントン・ナショナル・ギャラリーの貴重なコレクション、特に印象派とポスト印象派が中心の展覧会となっています。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは1941年にアンドリュー・メロンという実業家のコレクションが基となってできた美術館で、まるで神殿のような建物の大美術館です。 その後、多くの実業家や市民の寄贈によってコレクションが増え、今では印象派・ポスト印象派だけでも400点を数えるほどだそうです。成り立ちは昨年の六本木でも展覧会を行ったボストン美術館に似ているかな。アメリカ人の寄贈の考え方は素晴らしいですね…。

今回はそこから日本初公開50点を含む80点が展示されています。(さらに常設作品は通常は12点しか貸し出ししないらしく、今回は8点も貸し出されています。) まさに空前絶後の大盤振る舞いとなっているのは、70周年に伴う回収工事のためのようで、本当に今後はこんな機会は無さそうです。この辺の事情は去年ここで展示を行ったオルセー美術館と同じのようですが、海外勢が震災と原発で貸し渋るこの時期にこれだけのものが観られるとは本当にありがたい話です。もちろん、貴重なだけでなく中身も素晴らしかったので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
 参考記事:
  ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想前編 (森アーツセンターギャラリー)
  オルセー美術館展2010 ポスト印象派 感想前編 (国立新美術館)


<第1章 印象派登場まで>
まず最初は印象派の少し前の時代の作品が並んだコーナーです。主にバルビゾン派やマネの作品が並んでいました。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「うなぎを獲る人々」 ★こちらで観られます
小川とその周りの森を描いた作品で、全体的に緑がかっています。川の中でしゃがんでいる人がうなぎを取っているようで、他にも畔の木に登る人やエプロンのようなもので何かを集めている?女性なども描かれています。緑が柔らかく、空気感も穏やかでのんびりした雰囲気の作品でした。

この辺はコロー以外にもバルビゾン派のドービニーやデュプレなどの作品もありました。また、モネの師でもあるブーダンや、クールベなどもあります。

エドゥアール・マネ  「オペラ座の仮面舞踏会」 ★こちらで観られます
黒い服に黒いシルクハットを被ったたくさんの人々が集まるオペラ座のフロアが描かれた作品です。後ろ姿のピエロ?や、男性に抱きつくように話す女、仮面の女たち(高級娼婦)の姿も見られます。絵の上のほうには2階のバルコニーも描かれていて、解説によるとこのバルコニーによって構図は上下に分割され、両端の人物は突然切り離されているとのことで、確かにピエロは左半分が画面から出ていました。こうした表現は枠内にしっかり収めていた同時代の画家とは異なっていて、大胆な革新が伺えるようです。また、私が気になったのは色使いで、柱の白やシルクハットの光などで上手く黒が引き立っているように思いました。そのせいか、黒が大半を占めるのに明るく楽しげな印象を受けます。やはりマネの黒の使い分けは素晴らしいです。
 参考記事:マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)

エドゥアール・マネ 「鉄道」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、当時のサロンに入選した作品です。鉄道というタイトルですが目の前に描かれているのは母子らしい2人の人物で、列車の姿はなく、線路と蒸気でその姿を連想させるのみです。母親らしき人物は膝に子犬を乗せて本を開いていて、こちらに気が付いたようにちらっと視線を向けています。それに対して娘は後ろ向きで立ち、鉄格子を掴んで駅の様子を見ているようでした。一見、日常風景をそのまま描いたようにも見えますが、2人の衣装は紺と白で対照的で向いている方も逆だったりと、色々と解釈できそうです。しかし、解説によるとサロンでは酷評されたようで、1枚の絵に1つの題材の同時代の画家には受けが悪かったようでした。なお、左上に描かれている家はマネの家だそうです。めっちゃ駅近ですねw

余談ですが、この絵のようにこの展覧会の絵の中には何匹かの犬が現れます。全部覚えておくと、最後のミュージアムショップで面白いアイテムが見つかると思います^^

アンリ・ファンタン=ラトゥール 「皿の上の3つの桃」
小さな静物画で、皿の上に乗った3つの桃が描かれています。ざらざらした質感の茶色い机や生き生きとした桃など、シンプルながらも静物で名高いラトゥールの力量を感じさせる作品でした。

フレデリック・バジール 「エギュ=モルトの城壁」
手前から砂浜と港が描かれ、奥には白い城壁が横に伸びています。さらにその上は抜けるような青空となっていて、海・空・白い城壁の取り合わせが非常に爽やかな印象を与えます。色は強めでぺったりした感じで印象派よりも後の時代の作風を髣髴しました。
この画家は印象派誕生の一翼を担った人で、議員の息子として生まれ、印象派への財政支援もしていました。解説によると、アカデミックな人物造詣と戸外制作を融合した明暗の際立った作風(ちょうどこの作品みたいな感じかな?)だったそうですが、29歳の時に普仏戦争で戦死したのだとか。

フレデリック・バジール 「若い女性と牡丹」
若い黒人女性の花売りが花々に向かい、右手で牡丹の花を持ってこちらをじっと見ている様子が描かれています。ちょっと無表情で怖いw 手前の花はバラやチューリップなど春の花が描かれ、赤・黄色・白など色も鮮やかでした。解説によると、この作品はマネのオランピアに着想を得たそうで、恐らく花を持った黒人の従者のことだろうと思います。
 参考リンク:マネのオランピアのwikipedia (オランピアの画像があります)


<第2章 印象派>
続いては今回特に充実していた印象派のコーナーです。印象派とは何か?という説明は省略しますが、この章を観ればよくわかると思います。(冒頭に解説もあります) 錚々たる面々に加えて、女性画家のコーナーもあり、嬉しいサプライズでした。※女性画家のコーナーは後編でご紹介します。
どれを観ても素晴らしいので、この時点で図録を買うことを心に決めましたw 

クロード・モネ 「アルジャントゥイユ」
左に川、右に小道と木々を描いた作品です。川には帆をかけた小舟が浮かび、非常に穏やかな光景となっています。右から木漏れ日が道に落ちている様子も見事で、光の移り変わりを感じることができました。のどかで心休まります。

クロード・モネ 「日傘の女性、モネ夫人と息子」 ★こちらで観られます
緑の傘を差して振り返る白いドレスの女性(モネ夫人)と、帽子を被った息子を描いた作品です。空には流れる雲、手前には緑の草に夫人の影が落ちていて、風の流れや日差しを感じます。夫人の顔の上にすら~っと筆跡が残っていたり、塗り残しがあったりして、それが非常に生き生きとした勢いも感じさせました。これぞ印象派!という明るいエネルギーにあふれています。これには何枚か似た作品がありますが、心底素晴らしい作品でした。

クロード・モネ 「ヴェトゥイユの画家の庭」 ★こちらで観られます
家の前のひまわり畑を描いた作品です。真ん中に上に向かって道がまっすぐ伸びていて、そこに3人の人物も描かれています。ひまわりの緑の葉と黄色い花がお互いに色を引き立てていて、明るい雰囲気がありました。 しかし、解説によるとこの頃はモネにとって苦しい時期だったようで、ヴェトゥイユでは妻のカミーユもなくしているようでした。

この辺にはモネの晩年の代表的な連作の太鼓橋の作品などもありました。

エドガー・ドガ 「アイロンをかける女性」
左を向き、テーブルに置かれた服?にアイロンをかける女性を描いた作品です。力を入れて真剣に向き合っている感じがよく出ています。上にはたくさんの衣服があり、色や構成も考えられているようでした。

この近くにはドガの踊り子を題材にした作品もありました。これがまた内幕を知ってしまったような気持ちになる作品なので面白いです。 また、昨年のドガ展で観た落馬の絵もありました。
 参考記事:ドガ展 (横浜美術館)

ギュスターヴ・カイユボット 「スキフ(一人乗りカヌー)」
恐らく川の上で描いた作品です。目の前で 帽子を被り黄色いオールを持った男性がカヌーを濃いでいる様子が描かれていて、奥や右側にも同じ格好の人がボートをこいでいます。周りは緑に囲まれ、水面まで緑に染まっているのが何とも美しく、その水面をボートが波を分けて滑らかに進んでいる表現が見事でした。革新性を感じつつも優雅な雰囲気の作品でした。

カミーユ・ピサロ 「カルーゼル広場、パリ」 ★こちらで観られます
高い階のアパルトマンから観た公園の風景で、周りをルーブルなどの建物に囲まれています。人々が公園に集まり、穏やかな日差しと明るい緑がのんびりした雰囲気を出していました。

ピサロも3点くらいありました。 解説機だとこの辺で何故かアンジェラ・アキのテーマソング?も聴くことができますw テレビ屋さんの発想かな? そういうのは要りませんから…。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ポン・ヌフ、パリ」 ★こちらで観られます
手前から奥に伸びていくパリ最古の橋を描いた作品です。奥には町並みと青空が広がり、橋にはたくさんの人々や馬車が行きかい活気がありました。全体的に明るく、観ていて楽しい気分になってくる作品です。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「モネ夫人とその息子」 ★こちらで観られます
扇子を持ち白い帽子と白いドレスを着たモネのカミーユ夫人と、それに寄りかかる息子を描いた作品で、右には鶏の姿もあります。軽やかな色彩で幸せな雰囲気に満ちていました。
解説によると、ルノワールがこれを描いた時に、モネ家にはマネが先に来ていて、この2人を描こうとしていたそうです。そこにやってきたルノワールはモデルの準備ができた2人を描かないと勿体無いと思ったらしく、これを描いたのだとか。 しかし、隣で描いていたマネは気になって仕方なかったそうで、モネに止めさせてくれと言ったそうですw  しかし止めなかったようで、モネは出来上がったこの作品を生涯大切にしていたそうです。マネやルノワールとの友情を感じるエピソードでした。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「踊り子」
振り返る踊り子を描いた作品です。ふわっとしたスカートで、背景の緑地に溶け込むような色合いで描かれています。可愛らしい顔で輝くような美しさでした。 解説によると、伝統的な形式で描かれているようですが、筆跡を残さないのを範とした当時は批判されたそうです。 

この辺はルノワールの作品ばかりなのですが、どれも凄くてw 以前ルノワール展でご紹介した「アンリオ夫人」なども並んでいます。
 参考記事:ルノワール-伝統と革新 感想前編(国立新美術館)

と言うことでまだ2章の途中ですが、この辺で丁度展示の半分くらいなので今日はここまでにしようと思います。本当に素晴らしい展示となっていますので、美術好き、特に印象派隙の方は絶対に観ておいた方が良い内容と言えます。会期は長めですが、比較的空いている今のうちに行っておくことをお勧めします。

次回は2章の続きから4章までをご紹介します。お楽しみに^^

おまけ:
この日は以前ご紹介したラ・リングア・オチアイでランチしたのですが、前にも増して美味しかったです^^
 参考記事:ラ・リングア・オチアイ (六本木界隈のお店)



   続いて、後編はこちら




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