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アートフェア東京2011 【東京国際フォーラム】

日付が変わって昨日となりましたが、土曜日の夕方に有楽町の東京国際フォーラムに「アートフェア東京2011」を観に行ってきました。

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【展覧名】
 アートフェア東京2011

【公式サイト】
 http://www.artfairtokyo.com/

【会場】東京国際フォーラム 展示ホール&ロビーギャラリー  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京駅・有楽町駅


【会期】2011/7/29(金)~7/31(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
夕方なら空いているのではないか?と予想したのですが、混んでいてチケットを買うのにも10分くらいかかりました。こんな感じで並んでいました。
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さて、このイベントは毎年4月上旬頃に開催されているのですが、今年は東日本大震災の影響で7月末まで延期されていました。イベント内でも震災の被災者へのメッセージや、カタログの一部が義援金に回される旨が放送されるなど、震災への配慮が見られます。
と、いまだに震災は収束を見せない状況ではありますが、今回のイベントも去年に負けず劣らずに数多くのギャラリーが集まって多くの人々で賑わっていました。このイベントの面白いところは実際に美術品を買えることなんですが、今年も驚きの価格のついた作品などもありました。詳しくは気になったブースを通してご紹介しようと思います。

 参考記事:
  アートフェア東京2010 (東京国際フォーラム)
  アートフェア東京2009 (東京国際フォーラム)


会場は大きく分けて2つあり、まずはメイン会場です。端から蛇行する順序で観てきました。実際には現代アートが多めなのですが、メモしてきたのは伝統的な作品が多いかもw

A05 <ギャルリー サン・ギョーム> ★ブース紹介ページ
ここにはエゴン・シーレのリトグラフやジョセフ・コーネル、ピカソ、マン・レイなど有名作家の作品などがありました。マン・レイの空飛ぶ唇の絵もあったのですが、しっかり売れていました。(値段は分かりません)
 参考記事:マン・レイ展 知られざる創作の秘密 (国立新美術館)

A09 <柳ヶ瀬画廊> ★ブース紹介ページ
ここには熊谷守一の猫を描いた作品などが並んでいました。油彩やパステルの作品があり、どれも静かに眠っている姿で可愛らしいです。単純化された形態もいい感じ。

A03 <千代春画廊> ★ブース紹介ページ
笹本正明 氏の黄色~金色を中心とした幻想的な作品が並んでいました。色合いや緻密さがクリムトを彷彿とさせる華麗さです。また、それだけではなく不思議な光景がシュールで面白かったです。

この辺には過去のアートフェアのカタログなども並ぶショップもありました。何と500円!w 定価で買ってる私としては何だか切なくなりますが、バックナンバーは嬉しいですね。

E03 <ギャラリー銀座アルトン> ★ブース紹介ページ
去年もこのギャラリーの卯野和宏 氏の作品がかなり気に入りましたが、今年も卯野和宏 氏の作品がずらっと並んでいました。いずれも写真のように写実的に描かれた現代女性の肖像なのですが、女性の神秘性を強調しているような美しさがあって好みです。今年も堪能してきました^^


この辺は中国関連の作品を取り扱うギャラリーが集まっていて、俑や磁器などが売られていました。

E13 <青木画廊> ★ブース紹介ページ
ここは色々な作家の作品があってどれも良かったのですが、特に面白かったのは江本創という作家の作品です。小さな悪魔?や一角獣風の頭と人の体の怪物など、5体の異形のミイラが並んでいました。造形も凄いですが古びた感じがリアルでした。
 参考リンク:青木画廊の江本創紹介ページ

E14 <ギャルリーためなが> ★ブース紹介ページ
ここで気に入ったのはチェン・ジャン・ホンという画家の作品でした。オレンジや黄色、黒など墨絵の雰囲気のある抽象画のような作品です。よく観ると蓮を描いたもののようで、どことなく琳派の作風を思い起こします。水墨のように見えましたが油彩のようでした。この人の作品は雅でかなり気に入りました。

B23 <三田アート画廊> ★ブース紹介ページ
ここには葛飾北斎の冨嶽三十六景や歌川広重の東海道五拾三次など浮世絵が並んでいました。美術館でよく見る「神奈川沖浪裏」や「凱風快晴」などもあったのですが、こちらのお値段は何と1800万円!! 欲しい方がいらしたら是非w 伊東深水などもあったのですが、こちらも220万円くらいでした。やはり有名作は高いんですねえ。
 参考記事:
  本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)
  浮世絵入門 -広重《東海道五十三次》一挙公開- (山種美術館)
  広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展 (うらわ美術館)

B15 <角匠> ★ブース紹介ページ
こちらも浮世絵を扱っているブースで、喜多川歌麿などがありました。特に目玉は新発見の肉筆かな。落款が無いそうですが、今回初めて公の場に出てきたそうです。また、その他にも歌麿の春画などもありました。歌麿の名前はそちらでも海外で有名ですもんねw

ちなみに去年のこのブースは北斎の肉筆画が1億3000万円で売られていました。

C13 <GALLERY水無月> ★ブース紹介ページ
ここは奥村晃史という画家の作品が並んでいました。写実的な動物を描いた作品が多いのですが、シュルレアリスム的な不思議な画風となっていて、ウィットに富んだ面白い作品がありました。

E07 <画廊くにまつ> ★ブース紹介ページ
ここは多くの作家の作品があったのですが、一番目を引いたのは松尾太一という作家の作品でした。透明なポリエステル樹脂に包まれた生花で、赤紫の可憐な花が閉じ込められています。透明の樹脂も有機的で優美なフォルムをしていました。それにしてもどのように生花のまま閉じ込めたんだろう??と不思議に思います。

E09 <ギャラリー紅屋> ★ブース紹介ページ
ここにも個性的な現代作家の作品が並んでいたのですが、面白かったのは有井カヅキという画家の絵です。歌川国芳の「相馬の古内裏」や「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」などを元に、この画家オリジナルのファンシーなキャラクターが入っていたり、絵の一部が改変されていました。中々茶目っ気があって楽しい雰囲気ですw
 参考記事:
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)

このブースにはロッカクアヤコ氏の作品なども展示されていました。

D15 <ギャラリー戸村> ★ブース紹介ページ
ここは今年も高松和樹 氏の作品が並んでいて、これを楽しみにしていました。黒地に白いアクリルで年輪を重ねるように描かれた少女たちの絵は今年も大人気で、軒並み売り切れでした。これは本気で欲しいです(しかも買えそうな値段だったりします) 他にも、パネルにアクリルで描いた髑髏のシリーズなどもあり、これは初めて見る作風でした。これも3万円くらいなので買おうと思えば買えるかも??

D12 <SHINOBAZU GALLERY> ★ブース紹介ページ
ここには柳ヨシカズ氏などの作品がありました。名画を鏡写しにして2つを1つにくっつけたような作風で、ダ・ヴィンチのモナ・リザとフェルメールの真珠の耳飾りの少女をモチーフにした作品がありました。
 参考記事:ダ・ヴィンチ ~モナ・リザ25の秘密~ (日比谷公園ダ・ヴィンチミュージアム)

また、斎藤真一の2人の瞽女(ごぜ)を描いた作品などもあり、しばし見入りました。
 参考記事:斎藤真一展 瞽女と郷愁の旅路 (武蔵野市立吉祥寺美術館)

D03 <西村画廊> ★ブース紹介ページ
ここにも最近の画家の作品などヴァリエーション豊富に並んでいたのですが、目立っていたのは舟越桂のスフィンクスの像でした。無表情でバッタ?を食べている耳の垂れた人間風のスフィンクスで、女性の乳房と男性器を持っている両性的な面があります。この人のスフィンクスは何度観ても言い知れぬ不安を覚えますw その後ろにはドローイングの作品などもありました。

S03 <モア・トゥリーズ> ★ブース紹介ページ
ここには栗林隆 氏の作品が並んでいました。栗林隆 氏は元々海外で評価が高かったようですが、日本ではあまり知名度が無かったそうです。しかし、2010年のネイチャー・センス展を通じて国内でも名前が知られるようになったようです。(巨大な林や山を作ってた人です)
 参考記事:ネイチャー・センス展 (森美術館)

今回はペンギンを題材にした作品が並び、ペンギンのためのトレンチコートやペンギン型のバッグなどがありました。トレンチコートをきたペンギンのマネキンは何とも可愛くて洒落ていました。壁にはそれを絵にした作品もあります。 バッグの方はクチバシや羽もついているリュックのようなもので、これも面白くて可愛らしい作品でした。


メイン会場のご紹介はこれくらいにして、続いては上階LobbyGalleryのPROJECTSのコーナーです。

L11 <無人島プロダクション> ★ブース紹介ページ
ここでは加藤翼 氏の引き倒しプロジェクトの映像が流れていました。巨大な木の箱を引っ張る沢山の人々の様子が映しだされ、私が観た時は上野の東博の前にあった噴水あたりのシーンでした。また、ちょっと小さめの木の箱も置かれていました。これは以前に森美術館でも観ましたが大きな木の箱を引っ張り、引き起こして倒すという行動によって他者とのコミュニケーションを生むという意味のようです。
 参考記事:六本木クロッシング2010展:芸術は可能か? (森美術館)

L20 <NANZUKA UNDERGROUND> ★ブース紹介ページ
ここには本堀雄二 氏の仏像作品が並んでいました。仏像といっても木や銅で作られたものではなく、ダンボールを重ねて作られていて、横から観ると色々なダンボールが使われていることがわかります。シルエットしかわかりませんが不動明王、四天王、千手観音など何体もの仏像が並んでいて見ごたえがありました。
 参考記事:植物化石-5億年の記憶- 展 (INAXギャラリー) ※同時開催「本堀雄二 -紙の断層 透過する仏-展」


ということで、今年も楽しむことができました。驚きに慣れてきたこともあり去年に比べると満足度を下げましたが、十分面白いイベントです。この記事を書いた時点で既に2日終わってしまいましたが、気になる方は最終日に是非足を運んでみてください。 また来年も行きたいと思います^^


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セラン (SELAN) 【外苑前界隈のお店】

前々回前回と明治神宮外苑周辺をご紹介してきましたが、今日で最終回です。秩父宮記念スポーツ博物館に行った後、外苑前の方向(銀杏並木)に向かい、近くのセラン (SELAN)というお店でお茶してきました。

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【店名】
 セラン (SELAN)

【ジャンル】
 カフェ/レストラン

【公式サイト】
 http://www.kihachi.jp/shoplist/index.html#cafe
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1306/A130603/13001949/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 青山一丁目駅、外苑前駅

【近くの美術館】
 聖徳記念絵画館
 秩父宮記念スポーツ博物館
 ワタリウム美術館
 カナダ大使館高円宮記念ギャラリー
  など


【この日にかかった1人の費用】
 945円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
この日は18時からディナータイムらしく、店内のティータイムは17時半くらいまでだそうで、店内は既にお客さんが減っていました。外にはテラス席もあり、こちらも人気となっていました。暑かったけどこれくらいの時間になると丁度良い感じかな。
ちなみに、このお店は以前ご紹介したキハチの系列店のようです。
 参考記事:キハチ (桜木町界隈のお店)

窓が広く、鮮やかな緑の銀杏を見ながらのんびりしてきました。秋には紅葉の名所にもなります。近くの並木はこんな感じ。
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この日はケーキセット(945円)を頼みました。
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まずはマンゴーのショートケーキ。
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爽やかさで香り豊かなマンゴーと、マンゴークリームというマンゴー尽くしのケーキです。軽やかな甘味で夏によく合います。

続いてアイスティー
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こちらも香りが良くて美味しいです。知ってる味だけど紅茶の銘柄は私にはわからずw いつもはコーヒー派ですが、この日は暑くて喉が乾きすぎたので、きんきんに冷えているアイスティーは地獄に仏でしたw


ということで、お洒落でゆっくりと景観を楽しめるお店です。味もコストも中々良いし、この界隈に行ったらオススメできるお店の1つです。まあ、ここらへんはカフェ激戦区なので良いカフェだらけで逆に悩みますがw


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【秩父宮記念スポーツ博物館】の案内

前回ご紹介した聖徳記念絵画館の展示を見た後、少し離れた国立競技場の中にある秩父宮記念スポーツ博物館を観てきました。

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【公式サイト】
 http://naash.go.jp/muse/

【会場】秩父宮記念スポーツ博物館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】国立競技場駅、信濃町駅、千駄ヶ谷駅、青山一丁目駅、外苑前駅など


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
閉館まで30分しかなかったこともあり、ほとんど貸切状態でした。かなり足早に鑑賞してきましたw

さて、ここは言わずと知れた国立競技場の一角にある博物館です。東京オリンピックの会場だったこともあり、とりわけオリンピックに関する品が多く、その歴史や過去の大会に関する品が並んでいます。また、日本のスポーツそのものの歴史をテーマにした展示もありました。いくつかの章になっていたので、ざっと章ごとにご紹介しようと思います。

まず最初に国立競技場の中を見学してきました。受付をすれば一部だけ入ることができます。…まあ、何度か来たことがあるので、特に新たに感じる所は無かったのですが、初めて来た人はその広さを堪能できると思います。 この日はカンカン照りだったのですが、競技場は遮蔽物が少ないのでずっと日差を受けることになり、3分くらいで撤退しましたw

<オリンピックと日本(古代~トリノオリンピック)>
博物館に戻って、最初はオリンピックのコーナーです。1階には何度かご紹介した東京オリンピックのポスター(★こちらで観られます)なども展示されていました。
 参考記事:
  国立歴史民俗博物館[れきはく]の案内  (2011年02月後編)
  江戸東京博物館の案内 (2011年06月)

2階に上がると、古代オリンピックのコーナーです。オリンピア遺跡の復元模型や、ホッケーのようなゲームをする人々を描いたレリーフ(複製)、競技者の像(複製)が並びます。(★こちらで観られます) また、徒競走、円盤投げ、幅跳び、やり投げ、レスリング、ボクシング、パンクラチオンなどが描かれた遺物などもあり、当時の様子を知ることができます。中にはストリギスという汗取りヘラもあり、古代ギリシアは全裸にオリーブオイルを塗って競技をしたことが説明されていました。このヘラで競技後に汗と油を取っていたようです。
ちなみに私はこの展示を観た次の日に西洋美術館の古代ギリシャ展に行ったので、ちょっとした予習になりましたw
 参考記事:
  大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美 感想前編(国立西洋美術館)
  大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美 感想後編(国立西洋美術館)


少し進むと、近代オリンピック誕生のコーナーです。近代オリンピックは、フランス人のピエール・ド・クーベルタンがイギリスに遊学した際に、教育にスポーツが取り入れられていたことに感動したのがきっかけとなり生まれました。当時のフランスはプロシアとの戦争に負けて疲弊していたため、フランス青年の心身の教育が必要と考えたようで、スポーツが世界平和の近道であると確信したそうです。そして、その頃行われていた古代ギリシャ遺跡の発掘が進んだことも影響して、1894年にパリでオリンピック復興宣言に至り、1896年のアテネオリンピックの開催へと繋がって行きました。
 参考リンク:ピエール・ド・クーベルタンのWikipedia

この辺には1936年の大会からの聖火のトーチ(聖火リレーの時に持って走るやつ)や各大会の日本のデレゲーションユニフォーム(開会式の時に着ている服)が並んでいます。あまり間近で見る機会がないトーチですが、最近のトーチは流線型で未来的な雰囲気でかっこ良かったです。


この部屋の奥には近代オリンピックの歩みについてのコーナーもあります。第1回は1896年のアテネ大会ですが、日本は1912年の第5回のストックホルム大会から参加したようです。冬季オリンピックも1924年のシャモニー・モンブラン大会から開始されていたのですが、その前年に関東大震災があったため日本は参加せずに1928年第2回のサンモリッツ大会から参加しています。また、世界大戦の為に第6回ベルリン(1916)、第12回東京(1940)、第13回ロンドン(1944)は開催されなかったようです。予想以上に世相に左右されているんですね。
この辺はオリンピック関連の品々(★こちらで観られます)のコーナーで、初参加のストックホルム大会のスパイクやユニフォーム、馬の鞍、1936年ベルリン大会で使われた鞍馬、東京オリンピックのユニフォームとボールでなどが並んでいます。最近の品だと2008年北京のバドミントンのオグシオコンビのユニフォーム(予備用)などもあって、たまに知ってる名前があると興味がわきます。 しかし、私が一番目を引いたのが、歴代大会のマスコットキャラのぬいぐるみ! こんなやついたなーと結構思い出せるのですが、中でも1984年ロサンゼルスの「イーグルサム」などは子供の時大好きでした。…って年がバレますねw ちょっとした郷愁を誘われました。

この辺には映画「オリンピア」を流しているTVなどもあり、その後ろは各大会のメダルのコーナーです。(★こちらで観られます)
第1回アテネの参加メダルや、日本初のメダル、各国大会のメダルなどが並び、中には1988年の鈴木大地選手の金メダルなども展示されていました。また、東京オリンピックのメダルをデザインしていたのは岡本太郎だったようで、オタマジャクシのような紋様が彫られた、岡本太郎らしい作風でした。
 参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)

この章の最後は、日本で開催された3つのオリンピックに関する展示でした。1964年東京、1972年札幌、1998年長野の3つです。こちらもユニフォームやメダル、ポスターなどが展示されています。


<草分け時代のスポーツ・花開くスポーツ(明治初期~昭和前期) ― 戦争によって、ゆがめられたスポーツ ―>
続いては日本のスポーツ史に関するコーナーです。この辺からはかなり急ぎで観たのであまりメモを取っていないのですが、明治から大正にかけて欧米の様々なスポーツを摂取した様子が分かる内容となっています。ラケットや野球道具、昔の写真などが並んでいて、特に面白かったのはゴム底になった足袋でした。当時の日本にあるもので代用したんでしょうね、時代を感じます。(★こちらで観られます


<戦後のスポーツ復興(戦後~現在)>
少し進むと戦後のコーナーです。戦後はスポーツがより重要な存在となり、敗戦に沈む人々に希望を与え、国際的復活の象徴となりました。ここには当時の写真やトロフィー、参加証、ユニフォーム、旗、メダル、ボール、バボちゃんのぬいぐるみなどが並んでいます。まあ、ここは観てもあんまりピンとこないかなw ちょっと変わったものでは、東京オリンピックに向けて練習に使った「電気走調機ペースメーカー」というマシンがありました。これは競技場のトラックにレールを敷いてその上に走る装置で、世界記録と同じペースで回っていく機械のようでした。受信機でコーチの指示も出せるらしいので、結構練習になりそうでした。


<スポーツ芸術>
ここはブロンズ像やオリンピックの様子を描いた絵画のコーナーです。とは言え、あまり心に響く作品も無かったので割愛w


<明治神宮大会>
ここは戦前・戦中に、国立競技場の前身である明治神宮競技場で開催されていた明治神宮大会(現在の国体にあたるスポーツ大会)に関する資料のコーナーです。賞状みたいなのがあったかな。ここも特に観ても感じるものはなかったので割愛。


<日本の古いスポーツ(明治時代以前)>
ここは日本の伝統文化をスポーツに取り入れたコーナーです。力石という重量挙げのような物や、剣術、蹴鞠をする人形、弓、流鏑馬(やぶさめ)の人形などが展示されています。スポーツというか蹴鞠以外はどれも武道なんじゃ…w 


<冬のスポーツ>
こちらは前章と同じ部屋のコーナーです(この辺は章の区切りが細かいw) 大正時代のそりや竹で作ったスキー、下駄に刃を付けたスケート靴などが並んでいます。…足袋もそうでしたが、日本の有り物で西洋の道具を作る発想は面白いです。 下駄のスケートとか、地面を蹴ったら脱げないのか心配ですw


<秩父宮殿下遺品室>
最後はこの施設の名前にもついている秩父宮殿下(昭和天皇の弟)の遺品が並ぶコーナーです。スポーツの宮様と呼ばれるほどスポーツがお好きだったようで、スキーや剣道、登山の道具などが並んでいました。
 参考リンク:秩父宮殿下のWikipedia


ということで、スポーツの歴史(特にオリンピック)について大まかに知ることができました。つい最近には、サッカーのなでしこジャパンが女子ワールドカップで優勝したニュースがありましたが、昔から復興期にはこうした明るい話題が世の中を牽引していたのが分かります。今後も日本のスポーツ界に期待したいところです。

おまけ:
入口にあるファルピ・ヴィニョーリの「御者の像」 馬がいないとちょっと変な感じですw
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重要文化財指定へ わが国初期の美術館建設の軌跡 【聖徳記念絵画館】

もう10日以上前ですが、信濃町の近くにある聖徳記念絵画館に行ってきました。ここは特に展示の入れ替えが無いのでご紹介を後回しにしていましたが、忘れてしまうのでそろそろ記事にしておこうと思います^^;

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【展覧名】
 重要文化財指定へ わが国初期の美術館建設の軌跡

【公式サイト】
 http://www.meijijingugaien.jp/art-culture/seitoku-gallery/

【会場】聖徳記念絵画館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】信濃町駅、国立競技場駅、千駄ヶ谷駅、青山一丁目駅、外苑前駅など


【会期】2011年7月2日(土)~12月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて、貸切みたいでした。…空いているのは良いのですが、節電のためか冷房が効いておらず、扇風機だけという状態というのが辛かった! 外よりはマシですが、この日は特に暑い日だったので中もかなりの暑さで汗だくになって鑑賞しましたw

さて、今回の「重要文化財指定へ わが国初期の美術館建設の軌跡」というのは一部に資料的なものがあるだけなので、特別展というほどのものでもありません。なので、この展示については割愛して、常設をご紹介しようと思います。

この絵画館は神宮外苑にあり、明治天皇・昭憲皇太后を称え、明治時代の偉業を絵画で示しています。建物に入って右半分が日本画、左半分は西洋画となっていました。測ったわけではないですが2.5m四方くらいの絵が80点あまりもずら~~~っと並んでいます。詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


<日本画>
まずは日本画のコーナーです。明治天皇が生まれた頃から主な出来事を絵にしていました。

高橋秋華 「ご降誕」
緑の御簾の垂れ下がる部屋の中、何人かの皇族らしき人々が画面の右のほうに注目しています。天井には金雲が立ち込め、大和絵風の雰囲気です。御簾の透き通る感じが見事で、高貴な雰囲気がありました。

この辺は明治天皇の成長が分かる作品が並んでいます。皇太子になった頃や、天皇になった頃など人生の節目が描かれていました。

邨田丹陵 「大政奉還」 ★こちらで観られます
徳川慶喜が二条城に家臣を集めて会議をしている様子を描いた作品です。広い部屋の畳の上で、家臣たちは畏まり、緊張感があります。この歴史的な瞬間を描いた作品は教科書か何かで観た気がします。厳粛な雰囲気のある作品でした。
 参考記事:【番外編】 京都旅行 二条城

この辺は明治維新の頃の動乱の様子を描いた作品などがありました。画家は作品ごとに違うのですが、不思議と画風が似ているように思います。

結城素明 「江戸開城談判」 ★こちらで観られます
これは写真で観たことがある人も多いのでは? 和室で正座をして向き合う西郷隆盛と勝海舟を描いた作品です。西郷はよく知られている上野の銅像と似た姿をしています(実際には別人らしいですけど) 2人ともピシっと背を伸ばし、手を太ももに置いた姿勢が凛としていて、話しあうというか目と目で会話しているような感じを受けました。

この辺には明治天皇が江戸に来た時の様子などが展示されています。

山口蓬春 「岩倉大使欧米派遣」 ★こちらで観られます
アメリカに視察に行く全権大使岩倉具視を始め、大久保利通、伊藤博文らも同行した使節団一行を見送る様子を描いた作品です。港の石垣には沢山の見送る人々が押しかけ、小さな蒸気船(沖の船まで乗る小舟)には岩倉、木戸、大久保が立って見送りを受けています。沖には大きなアメリカ号の姿がありました。遠近感が妙な感じでしたが、その時の人々の期待と不安が分かるような作品だと思います。
 参考リンク:岩倉使節団のWikipedia

この辺は近代化・不平等条約解消といった明治期の目標がよく分かる展示となっています。鉄道の開通式や、軍隊の演習、富岡製糸工場への視察などの作品が並びます。

近藤樵仙 「西南役熊本籠城」
西南戦争を題材として、山の斜面で沢山の兵士たちが戦っている様子を描いた作品です。車輪のついた大砲を押して山を登る者や、山から大砲を撃つ者など、緊迫した光景です。画面中央の辺りには熊本城の周辺が火事になって、激しい炎と、もうもうとした煙が上がっていました。戦争の生々しさが表れています。


<西洋画>
続いて西洋画のコーナーです。こちらも壁画のような大きな作品(すべて同じサイズ)が並び、明治天皇が崩御されるまでの様子が描かれていました。やはり、どこそこに行ったとか会議のシーン、戦争シーンなどが多いです。

北蓮蔵 「岩倉邸行幸」
和風の板張りの部屋の縁側あたりで直立している明治天皇と、布団から半身を起こして貰い、家人と共に天皇に向かって合掌している老いた岩倉具視を描いた作品です。布団の上には袴が置かれ、これを礼装の代わりとしているそうです。病気の岩倉はこの翌日に亡くなったそうですが、礼儀正しく毅然としていました。また、明治天皇はその姿勢を含めて威厳があり、神格化されている雰囲気を感じました。

この辺には修復中の作品も数点あり、展示されていませんでした。

金山平三 「日清役平壌戦」
ピョンヤンでの清国との戦争を描いた作品です。あちこちに煙が立ち上る平原を背景に、手前では倒れたり仲間を助けている兵士の姿が描かれています。右のほうには馬に乗った参謀の姿もあり、臨場感があります。解説によると、この戦いの勝利によって日清戦争が有利になったそうです。この作品の隣には黄海での海上戦の様子を描いた作品もありました。

この辺は日清戦争の頃の時勢が分かる作品が多く、台湾の領土化や日英同盟の様子なども描かれています。

荒井陸男 「日露役旅順開城」
日露戦争の激戦の末にロシアが降服して、要塞司令官ステッセルが乃木将軍に愛馬を送る様子を描いた作品です。黒い帽子に青い制服を着た兵士たちや、白い馬、それを迎える日本の軍人たちが描かれています。絵の題材や構図などはどうとも思わなかったのですが、どことなくセザンヌのような色合いと雰囲気を感じました。
 参考記事:旧乃木邸の写真

中村不折 「日露役日本海海戦」
戦艦三笠の甲板から大砲を見るような構図で、海戦の様子が描かれています。大砲は赤い火柱を上げて弾を発射しているようで、船の周りの水面も水柱が立っています。敵のバルチック艦隊の姿こそ見えませんが、戦いのど真ん中の激しさを物語っているようでした。いわゆる東郷ターンで勝った時かな。
 参考リンク:日本海海戦のWikipedia

田辺至 「不豫」
二重橋の広場に沢山の人達が集まって、お辞儀や土下座のような姿勢で祈っている様子を描いた作品です。これは明治天皇の平癒を祈っているらしく、この時既に昏睡状態となっていたそうです。悲嘆にくれる老若男女の様子から明治天皇が国民に慕われていたのが伝わる一方で、ちょっと時代の違いを感じます。もう1つ気になったのが、他の作品は写実的な絵が多いなかで、これは少しぼんやりした画風でした。何か意味があるのかな?
 参考記事:皇居周辺の写真 (二重橋~桜田門~国会議事堂)

最後に建物の中央部分の奥の部屋も見ました。ここには明治天皇の御料馬「金華山号」の剥製と骨格が展示されていました。また、ステンドグラスになっている所もあり、建物自体も楽しめます。重要文化財に指定されたようですが、こんなに立派なのに今更なんだ!?と逆に驚きw


ということで、エアコンが効いていないのが辛かったですが、建物と共に大作の数々を観ることができました。学生の時に勉強した日本史を目の当たりにできたような気がします。受験生の人なんかは息抜きにここで絵を観ておくと明治期の出来事がよく覚えられるんじゃないかなw
地下には休憩室もあり、自販機でジュースを買って一休みすることもできます。何度も行く所ではないと思いますが、一度は足を運んでみると面白いと思います。


おまけ:
絵画館の周りの写真。この辺のランドマーク的な存在です。目の前の神宮球場では甲子園の予選をやっているようで盛り上がっていました。
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没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術 【ブリヂストン美術館】

前回ご紹介したお店で休憩した後、ブリヂストン美術館に移動して、「没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術」を観てきました。

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【展覧名】
 没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

【会場】ブリヂストン美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・都営浅草線宝町駅


【会期】2011年7月17日(日)~9月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(祝日16時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
思ったより空いていて、自分のペースで観ることができました。とは言え、行った時間が遅かったので見終わる頃には閉館ギリギリでしたがw

今回の展覧会は青木繁の没後100年を記念した展示で、この美術館にしては珍しくほとんどの部屋が特別展となっていました。こんなに良い内容なのに人が少ないのは、そもそも青木繁の名前でピンとくる人が少ないためではないか?とちょっと寂しいことを考えてみたりw しかし、青木繁を知らなくてもこの展示を見れば一気に知ることができる充実のラインナップとなっていて、青木繁というと若くして死んだプライドの高い孤高の天才というイメージでしたが、この展示を全部観終わった頃に思い返してみたら半分当たっていて半分間違っていたように思います。(何年か前に同じような展覧会があった気がしますが忘れてます^^;)

先にざっと青木繁の生涯の概要をご紹介すると、1903年(東京美術学校の在学中)に白馬会第8回展で白馬賞を受賞し、翌年に出品した「海の幸」などで注目を浴びました。しかし、家の都合で帰郷すると、東京に戻ることが出来ず、中央画壇に戻ることなく28歳の若さで亡くなりました。死後、友人たちがその業績を広く知らせるために遺作展を開催し、改めて注目を浴びたそうです。今回はそうした時系列に沿って展覧会が進んでいきます。詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


最初の1部屋だけこの美術館が誇る印象派などの主要なコレクションが並び、それ以外の部屋が特別展となっていました(古代の部屋は閉鎖)

青木繁 「自画像」
冒頭にあった自画像です。大きな目と厚い唇をした赤い服の自画像で、斜め向きでこちらに目を向けています。茶色の背景なのですが、それに溶け込むような感じかな。美大の卒業制作として描かれた作品らしく、左下に「かつて東京美術学校に在る日 青木繁」と書いてありました。解説によると、途中で絵の具がなくなり、間に合わせの絵の具を使ったことによって調子が変わったと言っていたとのことでした。ちょっと神経質そうな感じがするように思いました。


<第1章 画壇への登場─丹青によって男子たらん 1903年まで>
まずは画壇に登場した頃までのコーナーです。青木繁は1882年に旧久留米藩士の息子として生まれました。中学の頃から仲間と文芸雑誌を作り、洋画家の森三美(坂本繁二郎も師事した人)から手ほどきを受けていたそうです。1899年には地元の学校を退校して上京し、小山正太郎(フォンタネージに師事した洋画家)の画塾に入り、1900年には東京美術学校の西洋画科選科に入学しました。(当時の教師陣には黒田清輝や藤島武二もいました。)
ちなみに、青木繁が画家を志すようになったのはアレクサンダー大王を崇拝していたからだそうです。…って話が見えませんねw どうやら青木繁は、この時代に軍人になっても到底にアレクサンダーの心事に到達できないと考えたようで、その結果、芸術によって高潔で偉大で真実な者になれるという考えに至ったようです。ここには画家を志した学生時代の作品も含め、初期の作品が並んでいました。


青木繁 「輪転」
金色に光る大きな太陽と、その周りを渦巻くような緑の円、その円の流れの中で踊るような裸婦が4人描かれた作品です。ぼんやりしていて神秘的で、渦が輪廻の輪なのかなと思いながら観ていました。
青木繁にはこうした神話や宗教を思わせる神秘的な作品が結構あるように思います。後半には神話のコーナーもありました。

青木繁 「舞妓」
黒田清輝の「昔語り」に描かれた芸妓の上半身の下絵を模写した作品です。黒田の原作によく似ていて、本人の作そっくりでした。 青木繁は黒田清輝に対しては尊敬と反発が相半ばの複雑な感情を持っていたそうです。たまに黒田っぽいなと感じる作品があるけど、全般的には作風はあまり似てないように思います。
 参考記事:
  黒田清輝と京都 (東京国立博物館 本館18室)
  近代日本洋画の巨匠 黒田清輝展 (岩手県立美術館)

この辺にはスケッチや水彩が壁一面に並んでいます。赤城山など様々な場所を旅していたようで、写実的でささっと描いたような作品がありました。また、代表作の黄泉比良坂の習作などもあります。画風も様々です。


<第2章 豊饒の海─《海の幸》を中心に 1904年>
青木繁は東京美術学校卒業後の1904年の7月中旬に、画家仲間の坂本繁二郎、森田恒友、恋人の福田たね と一緒に4人で房州布良(千葉の館山付近)に1ヶ月半ほど滞在したそうです。そこで、代表作「海の幸」も描かれ、9月下旬に未完成のまま出品したそうですが、多くの人から高い評価を受けたそうです。同時に、布良滞在中には点描による外光表現の模索や、モネ的な要素の作品も描いていたようです。また、同じ年の作品からはラファエル前派の影響もあるそうで、1904年は青木繁の充実の年とのことでした。ここにはその頃の作品が並んでいました。
 参考記事:
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (目黒区美術館)
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (横須賀美術館)

青木繁 「海景(布良の海)」 ★こちらで観られます
ゴツゴツした岩場に波が押し寄せる風景を描いた作品です。波が複雑な色をしていて、確かにモネからの影響を連想させます。海の力強さと、色合いの緻密さを感じる作品でした。
 参考記事:うみのいろ うみのかたちーモネ、シスレー、青木繁、藤島武二など (ブリヂストン美術館)

この辺には点描を若干使った作品もありました。

青木繁 「海の幸」 ★こちらで観られます
おそらくこの画家で一番有名な作品です。裸の漁師が2列×5人並んで左へと歩いて行く様子を描いていて、先頭の人はサメのような大きな魚を担いでいます。画面中央あたりには銛に乗っけた魚の姿もあり、堂々たる凱旋の雰囲気があります。赤い輪郭線などで描かれているので、原初的な風景と相まって非常に力強い生命感を感じました。また、人々の顔は細かく描かれている人もいれば、まだ描かれていないような人もいて、未完成だったことが伺えました。

青木繁 「農家」
緑に囲まれた藁葺き屋根の農家を描いた作品です。ぼんやり柔らかい色使いはこの部屋の他の作品とはだいぶ印象が違っていて、どこか黒田清輝の作風を思わせました。

この辺の作品も作風が色々あるように思います。

青木繁 「男の顔(自画像)」
髪が長く口ひげを生やした自画像です。入口にあった自画像と似たポーズで描かれていますが。こちらはまるでキリストのような風貌に見えました。顔自体は変わりませんが、雰囲気は結構違うように思います。

この辺りの部屋にはカルタに絵を描いた作品や、本の挿絵、扇なども展示されています。「女の顔」という作品も好みでした。 さらに進むと、次の部屋にはスケッチや漫画のような戯画もあって興味深かったです。


<第3章 描かれた神話─《わだつみのいろこの宮》まで 1904-07年>
青木は国内外の神話や聖書を拠り所にしていたそうで、特に日本の神話は発想の大きな源だったようです。ここにはそうした神話や聖書を題材にした作品が並んでいました。

青木繁 「大穴牟知命」 ★こちらで観られます
古事記のオオナムチノミコト(大国主命)の受難の物語を描いた作品です。中央下部に裸で仰向けになって倒れる大国主命が描かれていて、これは焼き石に打たれたらしく苦しそうに少し弓なりに仰け反っています。その周りでは2人の白い衣の女性が介抱していて、1人はこちらをチラッとみていて、こちらに気がついたような感じで、神話だけど生々しい雰囲気がありました。この作品はラファエル前派の影響を感じます。

青木繁 「旧約聖書物語挿絵 1.光あれ」
暗い海面の向こうに、十字型の白い光を放つ太陽が輝く様子を描いた作品です。これは旧約聖書の物語の挿絵の原画のようで、天地を創造した神が「光あれ」と光を造ったシーンのようです。それに相応しく、神聖で力強い光の表現となっていました。
この隣には同じ本の挿絵の作品が並び、モーセやダビデ王を描いた作品もありました。実際の本も展示されています。

青木繁 「わだつみのいろこの宮」 ★こちらで観られます
これもこの展示の目玉の1つです。古事記の綿津見の宮物語を題材にした作品で、釣り針を取りに来た山幸彦と豊玉姫の出会いのシーンとなっています。(後に2人は結婚) 縦長の画面で、上部に腰掛けている山幸彦、下部に豊玉姫と侍女らしき女性が一緒に瓶を持っています。右の女性が豊玉姫かな? 山幸彦と見つめ合っていて、柔らかい雰囲気ながらも一種の緊張感と神秘性を感じました。また、山幸彦が下ろした腕と、2人の女性が三角形を描いている構図も面白かったです。解説によると、縦長の画面に3人の人を嵌めこむ構図はエドワード・バーン=ジョーンズなどのイギリス美術の影響だそうです。
近くにはこの作品のための下絵もあり、入念に準備した様子が分かるのですが、残念ながらこの作品は東京府勧業博覧会で3等賞という不本意な結果に終わったそうです。それに対して抗議した雑誌への投稿なども展示されていました。こんなに良い作品なのに…。

青木繁 「日本武尊」
右手で槍を持ち左手で剣を握る男性と、その傍らで剣と矢を背負って座る男性を描いた作品です。どちらが日本武尊(ヤマトタケル)か分かりませんが、2人とも英雄然としています。 この作品をパッと観た時、ラファエル前派の作品を彷彿とさせました。と言うか、西洋の英雄像みたいな雰囲気があるように思います。

この辺は息子を描いた作品や、嫁との合作なども展示されていました。


<第4章 九州放浪、そして死 1907-11年>
青木繁は1907年に父の危篤の報を受けて九州の久留米に帰省しました。その後、家庭の事情で再上京もかなわず画壇復帰出来ないという状態となったようです。この頃、九州各地を放浪ししていたようですが、これは友人・知人のネットワークを利用しようとしていたとの見方もあるようです。しかしその後、復帰の夢も果たせぬまま肺病が悪化して夭折してしまいました…。 九州時代は精彩を欠いているとの評価ですが、この章には九州時代の作品が並んでいました。

青木繁 「秋声」
細い木の幹にもたれ掛かるような着物の女性を描いた作品です。だいぶスッキリした作風で、色合いも薄くなっているように思います。森の中に立って物思いに耽るような顔が神秘的でした。この作品を観ていると、似た作品を最近観た気がするのですが、思い出せずw

この辺には佐賀の風景を描いた作品や、犬など身近な題材の作品が多かったように思います。

青木繁 「朝日(絶筆)」 ★こちらで観られます
大きめの作品で、絶筆です。青い海の上にピンク~紫に染まる空と、今まさに登ってくる太陽が見えます。明るい色使いで希望を感じさせ、穏やかで清々しい雰囲気がありました。とても絶筆とは思えません…。ちょっと藤島武二の作風に近いように思いました。


<第5章 没後、伝説の形成から今日まで>
最後は没後のコーナーです。青木繁が亡くなって1年後に、坂本繁二郎らによって遺作展が開催され、翌年には画集が発刊されたそうです。1933年には郷里の久留米で青木繁特集が組まれ、河北倫明によって青木の評伝がまとめられたそうです。これによって、我々一般人にも知られるようになったようで、それに関する資料も展示されていました。

青木繁 「海景(円光寺坂戸)」
「海の幸」を描いた翌年にも房州を再度訪れていたようで、その際に滞在した寺で描いた作品です。4面の木の板に焼けた釘で荒波が描かれていて、ちょっと抽象的な感じもしますが波の激しさを感じます。結構大きかったです。

この辺には書簡や手紙、青木繁に関する本が展示されていました。高校の教科書もあって、青木繁の作品が載っています。 他にも羽子板やイーゼル、パレットなども展示されていました。

青木繁 「初代冨安猪三郎氏像」
紋付の正装をした初老の男性を描いた肖像画です。少し斜めからの構図で、口を結び遠くを見るような目をしています。かなり写実的ですが、実直そうな人柄が感じられました。
この辺で最後なのですが、肖像画がまとめて展示されていました。どれも人格まで伝わってきそうです。


ということで、一気に青木繁のことを知ることができました。代表作を一気に観ることができたのは収穫です。青木繁好きの方は是非とも足を運んでみてください。


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千疋屋 京橋本店 【京橋界隈のお店】

前回ご紹介した三井の展示を観た後、銀座線で京橋に移動してブリヂストン美術館にハシゴしたのですが、その前に近くの「千疋屋 京橋本店」でお茶してきました。

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【店名】
 千疋屋 京橋本店

【ジャンル】
 カフェ/レストラン

【公式サイト】
 http://www.senbikiya.co.jp/s_kyobashi.htm
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1302/A130202/13036931/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 JR東京駅・銀座線京橋駅・都営浅草線宝町駅


【近くの美術館】
 ブリヂストン美術館
 東京国立近代美術館フィルムセンター
 INAXギャラリー
 ポーラミュージアムアネックス

【この日にかかった1人の費用】
 1050円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(祝日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
このお店は入口あたりが果物屋さん、奥がカフェになっていて、この日はそんなに混まずにゆっくりとお茶することができました。三越前の三井 記念美術館のビルにも千疋屋のカフェはあるのですが、こちらの方が空いているかも。
 参考記事:Caffe di FESTA (三越前界隈のお店)

店内はこんな感じ。
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この日はケーキセット(1050円)を頼みました。
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まずこちらはレアチーズとフルーツのケーキ。
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甘いかおりのするチーズクリームも非常に美味しかったですが、やはりフルーツが美味しいです。特に夏みかん?とぶどう、キウイなどが好み。クリームのなかにもブルベリーが入っていて爽やかです。

こちらはブレンドコーヒー。
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苦味があるけど酸味はなくて後味すっきり。まあコーヒー屋さんじゃないので、これくらいの味なら十分満足です。


ということで、これで1050円はだいぶ満足な内容でした。もちろんフルーツジュースやゼリー、切り身などもあって、これは結構高いけどいずれ食べてみたいと思います。ちなみに、月・水・木曜日に人数限定予約制でフルーツバイキングもあって、相当お得な感じがします。これは仕事帰りにでも行ってみたい!


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日本美術にみる「橋」ものがたり -天橋立から日本橋まで- 【三井記念美術館】

この前の祝日に、日本橋の三井記念美術館で 日本橋架橋百年記念 特別展 日本美術にみる「橋」ものがたり -天橋立から日本橋まで-を観てきました。この展示は5期に分かれていて、私が行ったのは1期でした。

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【展覧名】
 日本橋架橋百年記念 特別展
 日本美術にみる「橋」ものがたり -天橋立から日本橋まで-

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

【会場】三井記念美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】銀座線三越前/新日本橋駅/東京駅/神田駅

【会期】2011年7月9日(土)~9月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(祝日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
あまり混んでいなかったので、自分のペースでゆっくり観ることができました。

さて、今回の展覧会は日本橋が石造りになってから100年ということで橋をテーマにしていました。陶器、蒔絵、屏風などなど様々な作品がテーマごとに分かれて並んでいましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。なお、冒頭に書きましたように会期が細かく分かれていますので、気になる作品がある方は事前に展示時期を確認することをお勧めします。(念のため、この記事では作品番号も併記しておこうと思います)
 参考記事:作品リスト(PDF)


<展示室1 工芸に見る 橋の意匠>
まずは工芸のコーナーです。陶器や蒔絵などが並んでいました。

1-1 野々村仁清 「色絵柳橋図水指」 ★こちらで観られます
壺のような形の水差しです。色絵で側面に、赤と銀の板が交互に並んだ赤い欄干の橋が描かれています。その隣には緑の柳があり、上には銀色の雲も描かれていました。解説によると、これは源氏物語の宇治橋をイメージしているそうで、橋に柳というのは中国から伝わった組み合わせだそうです。雅で大胆な構図が面白い作品でした。

この辺は蒔絵の印籠や香合に描かれた橋、志野茶碗などもありました。

1-10 「住吉蒔絵貝桶 (1対の内1合)」
大きな8角形の蒔絵の貝桶です。黒地に金で松や鳥居、川にかかる太鼓橋、御所車、空飛ぶ鶴などが描かれています。これは貝遊びの道具を入れるための容器で、本来は2つセットなのですが1つだけ展示されています。これも源氏物語を題材にしたもので、明石の君が源氏一行の住吉詣を伺っているシーンを表しているようでした。非常に絢爛で、おめでたい文様が多い作品でした。

この辺は見事な蒔絵が並んでいました。宇治橋や住吉を主題にした作品が多いかな。


<展示室2 工芸に見る 橋の意匠>
展示室2は1点のみの展示です。

2-1 「志野茶碗 銘 橋姫」 ★こちらで観られます
白い志野茶碗で、側面に水墨のように簡略化された橋の欄干が描かれ、裏には屋根が描かれています。素朴でどっしりしている一方で、水墨的な情感がありました。解説によると、これも源氏物語に関係があるそうですが、その他に橋姫伝説というものを題材にしているとも考えられるようです。これは恋敵を呪い殺すために丑の刻参りの格好をして宇治川に21日間水に浸かり続けて鬼となった女の伝説だそうで、そう思いながら観るとちょっと恐ろしい一面があるのかも。


<展示室3 橋にちなんだ茶道具取り合わせ>
ここは茶室に志野茶碗などが展示されていました。数点しかないのでご紹介は割愛します。

<展示室4 神仏の橋、名所・文学の橋>
[神仏の橋-天界・浄土とこの世の架け橋-]
続いては宗教的な意味のある作品や名所・文学を題材にした作品が並んだコーナーです。橋にはこの世と浄土を繋ぐ架け橋という意味もあったようです。

4-1 「二河白道図」 ★こちらで観られます
画面の下はこの世、上には三尊像のいる極楽が描かれた作品です。この世と極楽の間には細い道が描かれていて、今は変色していますが元は白い道だったそうで、これが2つの世界を繋ぐ橋かな?道の左側は真っ赤な怒りの火河、右側は濁った貪欲の水河を示していて、これがタイトルの二河白道のようでした。宗教観が強く反映された作品です。

4-15 雪舟等楊 「天橋立図」 ★こちらで観られます
大きな水墨の掛け軸で、国宝です。天橋立とその周りの様子を空から観たような視点で描いていて、砂浜部分には松が生えている様子が分かります。また、山の上や沿岸部に寺がいくつもあり、○○寺というように横に名前が書いてありました。水墨の濃淡によって神仙の雰囲気がありますが、曼荼羅的な要素もあるように思いました。こんな視点って本当にあるのかな??

[神仏の橋-聖俗境界の橋-]
神社や寺社に橋が多いのは聖と俗の境目であるそうで、ここには神社の曼荼羅に描かれた橋などが展示されていました。言われてみれば確かに寺社には橋が多いかも??

4-4-1 狩野探幽 「東照社縁起絵巻(仮名本) 第三巻」 ★こちらで観られます
深沙大王(じんじゃだいおう)が蛇を橋にした伝説が縁起となっている大和絵風の絵巻です。川にかかる橋と湖が描かれ、細かくて軽やかな雰囲気があり、絵の隣の書も美しい作品でした。

この辺は日光を題材にした作品が3点ほどならび、その後は伊勢と八坂神社の掛け軸などもありました。

[名所・文学の橋]
ここには源氏物語や伊勢物語を題材にした作品が並んでいました。

4-21「柳橋水車図屏風」 ★こちらで観られます
6曲の屏風で、1双のうち左隻のみを展示していました。単純化された金色の橋と緑の柳が描かれ、左端には水車が回っています。銀の様式化された波の中に、護岸用の蛇篭もあり、幾何学的なリズム感や静かな風情を感じます。
これは長谷川等伯の弟子に伝わった作の1つらしく、これと似た作品はいくつか眼にしたことがあります。解説によるとこれも源氏物語の宇治橋を連想するとのことでした。会期によって左隻・右隻を入れ替えるようですが、この作品は1双で観るから価値があるのでは?w 
 参考記事:没後400年 特別展「長谷川等伯」 感想前編(東京国立博物館 平成館)

4-28 伊藤若冲 「乗興舟」 ★こちらで観られます
白黒が反転したモノクロな絵巻です。拓本画という技法でちょっとざらっとした質感があります。この作品は何度かご紹介していますが、この作品は桂川と宇治川が合流しているところを描いているというのは初めて知りました。何度観ても斬新な面白さのある作品です。
 参考記事:
  煌めきの近代~美術から見たその時代 (大倉集古館)
  伊藤若冲 アナザーワールド 2回目(千葉市美術館)


<展示室5 諸国の橋>
続いては浮世絵などのコーナーです。珍しい橋を集めた葛飾北斎の「諸国名橋奇覧」(冨嶽三十六景と同じ頃の作品)などを始め、日本全国の変わった橋を題材にしていました。

5-2 葛飾北斎 「諸国名橋奇覧 かうつけ佐野ふなはしの古づ」
これは群馬にあった橋を描いた浮世絵です。川にくの字になっている橋がかけられ、周りは雪景色となっていて、橋の上には傘をかぶって雪の積もった人々が渡っています。この橋の何が変わっているかというと、橋の下に沢山の小舟が並んでいて、その上に橋をかけた浮き橋のようでした。橋自体も変わっていますが、北斎独特の季節感やその場所の個性を引き立てるような構図も良かったです。

5-11 歌川広重 「東海道五十三次之内 掛川〔秋葉山遠望〕(保永堂版)」
東海道五十三次の中でも好みの作品です。手前に大きな橋、奥に山があり、画面からはみ出して凧が飛んでいる様子も描かれています。橋を行き交う人は身を低くして傘を抑えていて、糸が切れて飛んでいった凧と共に風の強さを感じました。
 参考記事:広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展 (うらわ美術館)

この部屋には大坂を描いた屏風や青銅製の擬宝珠(ぎぼし)などもありました。


<展示室6 橋の番付 日本大橋尽くし>
この部屋は狭い小部屋なのですが、浮世絵と共に当時の橋のことがよく分かる作品が並んでいました。

6-9 五雲亭貞秀 「浪速大湊一覧」
大坂の街を鳥瞰するような視点で描いた3枚セットの続絵です。手前には遠近感を強調した大きな天満橋がかかり、そこに大名行列が隙間なくギッシリと並んでいます。背景の景色には無数の運河のような川とそこにかかる橋が描かれ、八百八橋と呼ばれた大坂に相応しい風景となっていました。

ここら辺には北斎の諸国名橋奇覧シリーズもあり、山口の錦帯橋や岡崎の矢作橋などを題材にした作品が並んでいました。

6-1 「日本大橋尽番付」 ★こちらで観られます
これは橋を相撲の番付に見立てて書いた番付表です。東西に分かれているのですが、横綱は無かったらしく、東の大関には矢作橋(二百八ケン=374m)、西の大関には錦帯橋(百六五ケン=225m)の名前がありました。どうやら東西の橋の長さ対決のようですが、それだけではなくさらに洒落がきいていて、行事の名前欄にも千住橋や両国橋の名前となっていました。見た目も相撲の番付表みたいだし、発想が面白い作品でした。


<展示室7 京の橋・江戸の橋>
最後の部屋は京都と江戸の橋を題材にしたコーナーです。

[京の橋]
まずは京都です。

7-6 「洛中洛外図屏風(歴博D本)」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風です。右隻には鴨川にかかる三条大橋などが描かれ、下のほうには祇園祭の山鉾巡業の様子が描かれています。鴨川の向こう岸には神社仏閣が多いかな。左隻には二条城を中心に堀川通りが描かれ、こちらにも祇園祭の一行がいました。幾何学的ですっきりとした画風に思いましたが、人々の賑わいが伝わってくるようでした。
 参考記事:
  【番外編】 京都旅行 祇園~清水寺エリアその1
  【番外編】 京都旅行 祇園~清水寺エリアその2
  【番外編】 京都旅行 銀閣寺・下鴨神社
  【番外編】 京都旅行 堀川今出川エリア

[江戸の橋]
最後は江戸のコーナーで、日本橋についても触れられていました。

7-11 「隅田川風物図巻」
10mにもなる絵巻で、スタートには富士山をバックにした江戸城が描かれています。日本橋、江戸橋などから永代橋などまで江戸の色々な橋が並んでいて、こうして観ると江戸も水の街であったように思えます。解説によると、この作品にはカラクリがあり、裏から光を照らすと花火の火花や家の灯りが透けて見えるそうです。せっかくならちょっと観てみたいものですw
なお、この作品は展示期間で場面替えをするそうです。

7-23 歌川広重 「東海道五十三次之内 日本橋〔行烈振出〕(保永堂版)」
有名な東海道五十三次の一番最初のスタート地点です。そのため、タイトルもすごろくに見立てて振り出しとなっています。日本橋を渡ってくる大名行列や、手前にいる沢山の行商人などが描かれ、雑多で活気のある様子が伝わります。この作品は摺りによって若干の変更が行われているわけですが、これは保永堂版であるものの、保永堂が独自で出した異版だそうです。まあ単独で見てもどこがどう違うというのを見つけるのは無理ですけどねw

この辺には歌川広重は数点あり、ゴッホも模写した「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」などもありました。
 参考記事:浮世絵入門 -広重《東海道五十三次》一挙公開- (山種美術館)

7-28 堀潔 「日本橋と旧帝国製麻kk」 ★こちらで観られます
石橋になった日本橋と、東京駅や三菱一号館のような建物を描いた作品です。日本橋には道路が通り、自動車や自転車があります。奥には赤い壁の建物は、ジョサイア・コンドルの弟子の辰野金吾が設計した旧帝国製麻kkで、昭和60年に取り壊されたそうです。繊細な筆致で明るい色合いとなっていて、写実的でありながら爽やかな雰囲気がありました。すぐ近くにあった昭和10年ころの写真と見比べてもそっくりでした。
 参考記事:三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」 (三菱一号館 美術館)


ということで、思った以上に色々な作品があって楽しめる展示でした。空いている時に観られたのも良かったw 夏に相応しい涼しげなテーマですので、目から涼を取り入れるのも良いかもしれません。


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猫まるカフェ 【上野界隈のお店】

ここ数日、上野の展示についてご紹介しましたが、展覧会を観た後に上野駅のすぐ近くにある「猫まるカフェ」に遊びに行ってきました。

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【店名】
 猫まるカフェ

【ジャンル】
 猫カフェ

【公式サイト】
 http://www.nekomarucafe.com/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【近くの美術館】
 国立西洋美術館
 上野の森美術館
 東京国立博物館
 東京都美術館
 国立科学博物館
 東京文化会館
 上野動物園
  など

【混み具合・混雑状況(日曜日17時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【感想】
ここはカフェですが飲み物は自販機でのフリードリンクになりますので、混み具合以外の評価テンプレートは割愛します。 ここは最近よく通っているのですが、昼間に行ったのは初めてで、予想以上にたくさんのお客さんで賑わっていました。

さて、このカフェはズバリ、猫カフェです! 可愛いにゃんこたちと遊べる空間となっていて、時間制で課金させる仕組みになっています。雑居ビルの上の方にあるので歩いていて見つけるのは困難なのですが、それでも人気のお店です(今までご紹介しなかったのはこれ以上人気になると自分が行ったときに混むのでは?というケチな了見ですw)

入口に猫スタッフの一覧があります。↓こんなにたくさんのにゃんこと遊べます。
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部屋はこんな感じで猫の遊び道具がたくさんあります。部屋の奥には様々な猫グッズもあり、これも面白いです^^
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さて、前置きが長くなりましたが、ここは写真を撮ってOKなので、撮ってきた写真を何枚かご紹介しようと思います。


箱の中でぐっすりと寝ているほっけちゃん。可愛い顔して寝ています。
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こちらはメインクーンのまや様。ここの猫スタッフで一番好きなのですが、白目むいて寝てますねw
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入店してすぐに気がついたのですが、みんなお昼寝してる!w どうやらこの時間はお昼寝タイムだったようです。私はいつもは会社帰りに寄るのですが、猫は夜行性なので夜のほうが元気ですね。

ようやく起きている子を見つけました。すごい猫目でみつめてきました。かごにスッポリハマってるのは自分から入っていってますw
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三毛のベティちゃん。この子はじ~~っと寝ていました。
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この子は雫ちゃんかな。ちっちゃい子で、ゴロゴロっと転がる姿が可愛いです。
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あちこちでお昼寝をしていて、頭の上でも寝ていましたw
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ブリティッシュショートヘアーのブリトニーちゃん。トンネルの中で寝てたので覗いたらじ~~っと見つめられました。
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まや様が小屋から出てきた!と思ったらまた寝てしまったw もっふもふです。
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今度こそ起きてきた!と思ったらちょっとご機嫌斜め。この日はあまり遊べず終い。
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なんかゆる~いポーズで下を見下ろしてるのが可愛い^^
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ということで、この日は寝てる姿ばかりでしたが、可愛い猫たちに囲まれて楽しい時間を過ごすことができました。今回ご紹介しなかった子でも可愛い子がいるので、思わず何度も通ってしまいます^^


おまけ
ご飯とおやつの時間に行くと、みんな仲良く円を組んで食べているのを見ることもできます。この時間を狙っていくと一層楽しいです。
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【国立西洋美術館】の案内 (常設 2011年07月)

前々回前回と、西洋美術館の展示をご紹介しましたが、特別展の後に常設も観てきました。

公式サイト
 http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html

今回も作品の写真を撮ってきましたので、一部をご紹介しようと思います。
 ※常設展はフラッシュ禁止などのルールを守れば撮影可能です。(中には撮ってはいけない作品もあります。)
  掲載等に問題があったらすぐに削除しますのでお知らせください。

参考記事
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年10月 絵画編)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年10月 彫刻編)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年06月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年02月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年01月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2009年10月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2009年04月)

ここには中世から近代まで様々な画家の作品があるのですが、今回は近代の作品をご紹介しようかとおもいます。

クロード・モネ 「セーヌ河の朝」
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全体的に緑ですが、光によって微妙な色の違いがありますね。流石です。確かジヴェルニーの展覧会に出品されていたのでジヴェルニー周辺を描いたのかな。
 参考記事:モネとジヴェルニーの画家たち 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)


クロード・モネ 「チャーリング・クロス橋、ロンドン」
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ロンドンに行った時の作品。ロンドンの作品は霧がかっている作品が多いように思います。中央で煙のようなものも見えますね。

今回は版画室は締切となっていました。


エミール・ベルナール 「吟遊詩人に扮した自画像」
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装飾的でどこか神話のような雰囲気もあるように思います。色合いも美しい。

この辺はナビ派の作品が並んでいます。
 参考記事:オルセー美術館展2010 ポスト印象派 感想後編(国立新美術館)


モーリス・ドニ 「シエナの聖カテリーナ」
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この色合いと構図が何とも斬新で、素晴らしい^^ 今回特に気に入った作品です。


エドゥアール・ヴュイヤール 「縫い物をするヴュイヤール夫人」
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ヴュイヤールらしい渋い作品。額と絵が一体化しているように見えて気になりました。


アンドレ・ボーシャン 「アルクマールの運河、オランダ」
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ここにボーシャンのこんな良い作品があったとは知りませんでした。素朴派とされるボーシャンですが、結構繊細なんですよね。爽やかで好みです。


フェルナン・レジェ 「赤い鶏と青い空」
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私はレジェというとこれを真っ先に思い浮かべます。単純化されて強い色彩の作風で面白いです。


マックス・エルンスト 「石化した森」
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まさに石で出来た森のような風景を描いた作品です。背景にある輪っかはエルンストの作品によく出てきますが、鳥の眼を思わせます。
 参考記事:シュルレアリスム展 感想前編(国立新美術館)


ジャン・デュビュッフェ 「ご婦人のからだ(「ぼさぼさ髪」)」
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ひっかき傷のような線が無数にあって独特の雰囲気があります。ご婦人というより山姥みたいなw
 参考記事:アンフォルメルとは何か?-20世紀フランス絵画の挑戦 (ブリヂストン美術館)


ジャクソン・ポロック 「ナンバー8,1951 黒い流れ」
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これは一体何なんだろう?w 来年の2月には東京国立近代美術館でジャクソン・ポロック展も行われるので、この人の目指した芸術が分かるようになれるのが楽しみです。


ということで、今回はこれくらいにしておきます。ここの常設は特別展並に充実した内容となっていますので、もし足を運ぶのであれば常設も観ておくことをお勧めします。


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大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美 (感想後編)【国立西洋美術館】

今日は前回の記事に引き続き、国立西洋美術館の「大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美」 の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
 前編はこちら

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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 大英博物館 古代ギリシャ展  究極の身体、完全なる美

【公式サイト】
 http://www.body2011.com/
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/current.html#mainClm

【会場】国立西洋美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】2011年7月5日(火)~2011年9月25日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
さて、前編では2章の人を主題にしたコーナーの途中までご紹介しましたが、まだこのコーナーが続いています。今日は2章の途中から最後までをご紹介しようと思います。


<第2章 人のかたち>
[人の顔]
前編でも変わった人物像をご紹介しましたが、人間の個性に対するギリシャ人の関心は顔に向かっていったそうで、目を描き込んだり嵌めこんだりして生命力を獲得して行ったようです。ギリシャ後期のヘレニズム期には有名な人物の肖像の要望があまりにも多くなったそうで、将軍、詩人、哲学者の肖像などはある程度決まった表現で形式が繰り返された(パターン化された)そうです。ここにはそうした様々な人物の顔を題材にした作品が並んでいました。

57 「赤像式カンタロス(酒杯)」
表にサテュロスの顔、裏にマイナスの顔がついた杯で、2人の頭の部分に杯の口があります。2人とも酒の神ディオニソスの従者で、サテュロスは角が生え目を見開いて歯を食いしばるような顔をしています。 まるで鬼のようで狂気があるかな。女性信者のマイナスは目を見開いてニヤっと笑うような感じで、コミカルで面白い顔でした。

51 「クリュシッポス肖像頭部」
「オイディプス王」の物語を書いたギリシャ三大悲劇詩人の1人クリュシッポスの肖像です。あごひげを生やした厳格な面持ちをしていて、写実的な感じを受けますが、実はこれが作られたときにはクリュシッポスは既に死んでいたそうです。当時は故人の写真などあるわけもないので、どうやって肖像を作ったのか?という疑問が出るわけですが、これは哲学者の肖像を元に細部を変えているものらしく、この作品の隣に元にした像も展示されていました。元にした作品はハゲてるけど確かに顔は似ていて、パターンをアレンジしている様子がよく分かりました。昔の人の肖像はアテにならないのが多いですねw

54 「喜劇役者の像」
奴隷役の仮面をつけた喜劇役者の像です。石に腰掛けていて、ひしゃげるほどニヤケた顔の面を付けています。その面の口の中には本人の唇が見えているのが面白く、本当に面をつけているような感じでした。

この辺には誇張された仮面の浮き彫りなど面白い作品がありました、漫画のようなメデューサの顔の描かれたアンフォラ(壺)もあります。

一旦、ここで階段の横にある扉を通って、入口付近の映像のある休憩室で休みました。8分間の映像ではペルシャとの戦争に勝利して自信を得たことなどを紹介していました。その自信によって神よりも自分たち人間を重視するようになり、生々とした表現を求めていったそうです。


<オリンピアとアスリート>
ここからは下の階の展示で、この章はオリンピアで行われた古代オリンピックやアスリートをテーマとしていました。

[アスリート]
ギリシャの若い男はいつでも戦争に招集される覚悟で鍛えていたようで、外見上の肉体の完璧さは内面の道徳的な正しさを反映していると考えていたようです。裸で訓練していたらしく、裸体像が並んでいます。

58 「円盤投げ(ディスコボロス)」 ★こちらで観られます
間違いなく今回の展示で一番の見所の彫刻で、ぐるっと周りを360度周りながら見ることができました。オリジナルはギリシャ人彫刻家のミュロンのブロンズ像ですが、これはそれを元にローマ時代に作られた大理石のコピー(ローマンコピー)で、思っていたより大きくて驚きます(と言いつつ私は15年くらい前に大英博物館で観ているはずなのですが、ほとんど忘れていましたw) 円盤投げ選手の写実的な像で、円盤を構えて今にも投げそうな緊張感があり、血管が浮き上がる様子までも見ることができます。ピンと張った腕や弓のようにしなる体、踏みしめる足の指まで、筋肉の収縮や力の伝達を感じ、まるで時間が止まったかのような雰囲気すらありました。「究極の身体、完全なる美」というサブタイトルに名前負けしてませんね。これにはかなり感動しました。
解説によるとこれはローマ皇帝ハドリアヌスの別荘で発見されたとのことでした。

このコーナーには他にもアンフォラに描かれた運動選手たちの作品が並んでいます。裏面は女神アテナになっているのが多いかな。 さらにここには約2分の映像もあり、全裸で競技する古代オリンピックの再現映像となっています。円盤投げや幅跳びなどの競技があり、5日間程度で行われたそうです。前後の3ヶ月は戦争も休戦していたらしく、古代ギリシャ人にとって神聖なもののようでした。

[オリンピア]
このコーナーは1点だけで、オリンピアの1/200の模型が置かれていました。
ここで下階の展示は終わりで、再び上階に戻ります。


<人々の暮らし>
最後の章はギリシャ人たちの暮らしに関するコーナーです。ギリシャ初期は人の姿はいくつかに様式化されていましたが、後期のヘレニズム期には人間の多様性が認識され、様々な年齢、人種、体型が幅広く表現されたそうです。ここにはちょっと驚くような慣習と共に様々な作品が並んでいました。

[誕生、結婚、死]
まずは誕生、結婚、死という人生の大きな節目に関するコーナーです。

75 「クス(酒瓶)」
黒地に茶色でここまで観てきたアンフォラのような質感の小さな酒瓶です。2~3歳をいき抜いた子供に初めて葡萄酒を味見させるための物だそうで、側面には遊んでいる子供の姿が描かれています。何とものどかで平和な世であったのかと思いましたが、これが作られた時は戦争の時代だったそうです。その時代のアテネ人の苦悩と対照的であると。解説されていました。

この辺には小さな酒瓶が並び、はいはいする子供なども描かれていました。また、読み書きや計算を学ぶ人達の像もあります。

79 「テティスを捕えるペレウスの浮彫」
真ん中に大きな女性(テティス?)、左にペレウス、右にライオンに変身したテティスが戦っている様子が浮き彫りされた作品です。ペレウスに対して全力で抵抗している感じかな? 解説によると、この頃の結婚は予め決まった相手とのものだったらしく、花婿が力づくで花嫁を奪う側面があったようで、この作品にはそれが反映されているとのことでした。ちなみに女性は15歳くらいで30歳くらいの男性と結婚し、あまり家の外に出ることはなかったようです。何だか女性団体が聞いたら激怒しそうな風習ですねw

86 「コリントス式兜」 ★こちらで観られます
顔を覆ったブロンズ製の兜です。鼻までガッチリとガードしていて、顔もわからなくなるくらいなのですが、これには個々の兵士の特徴を消すという意味もあったそうです。また、耳も隠されているため、伝令が聞こえずづらいという弱点もあったのだとかw
この作品の隣には鎧や脛当て、出征の様子を描いたアンフォラなどもありました。

97 「腕輪」 ★こちらで観られます
C字型の金の腕輪で、両端に牡牛の頭を象った細工があります。非常に精巧に作られていて、さらにかつては目に七宝が施されていたそうです。当時の技術の高さと豊かさを感じます。
ここには金の装飾品が並び、耳飾りや冠もありました。この頃既に鉱山もあったようで、あとは砂金なども使っていたとのことでした。

100 「少女の墓碑」
未婚のまま死んだ少女の墓碑です。複雑に髪の毛を結った少女(解説ではメロンのような頭と言われてましたw)が鏡を持っている姿です。あの世で立派な婦人になるという意味があるのか、立派な姿をしていました。
この辺は墓碑のコーナーとなっています。

[性と欲望]
さて、続いてのコーナーはギリシャ文明の性に関するコーナーで、変態だ!と思ってしまう衝撃の品々もありますw 隠し立てしない性的表現はありふれていて、幅広い造形物に見られるそうで、欲望を掻き立てるものとは限らず、お守りや豊穣の祈りの意味もあるとのことでした。

109 「サテュロスから逃れようとするニンフの像」 ★こちらで観られます
裸の男女の像で、女性に後ろから抱きつくサテュロスと必死に抵抗するニンフがモデルとなっています。ニンフはサテュロスの髪を引っ張っていて、サテュロスは痛そうな顔をしていますが離そうとしていないような…w その顔も含めて滑稽な感じがありました。解説によると、この時代の男女の関係は厳しくコントロールされていたそうで、自由奔放な性のイメージのこの作品は一種のポルノグラフィティのようなものだそうです。

102 「エロス像」 ★こちらで観られます
背中に羽の生えたエロス(キューピッド)の像です。トレードマークの弓を持っていますが、子供の姿ではなく青年の姿をしているのはちょっと違和感があるかな。 彼の矢に打たれると恋に落ちるという伝説は有名ですが、これが置かれていたのは教育の場の運動場だそうです。男しかいないはずの運動場に何故キューピッドが…?と思ったら、教育の場は若者(男)と年長者(男)の恋の出会いの場であったらしく、若者の成長に必要なこととして奨励されていたそうです。 ウホッw 15の嫁だの年上同性の恋人だの、古代ギリシャ人は衝撃的ですね。

この辺には乳房型の酒の杯や、地面からキノコのように生えた男根に水をやる女性が描かれた壺、若者に言い寄る男が描かれた壺、ポン引きの像など、なかなかにぶっ飛んだ品が多くて目を白黒させられましたw こういう側面もあるんですね。

[個性とリアリズム]
ギリシャは都市国家(ポリス)の集まりであったのですが、やがて都市国家の垣根も越えて交流が広がり、他の民族とも出会い交流するようになったそうです。芸術面においても人間に関するより広い題材と多様な様式が生まれたそうで、ここにはそうした作品が並んでいました。

112 「ソクラテス小像」
小太りのオッサンの姿をしたソクラテスの小さな像です。真理を探求した高邁な精神と対照的な姿をしていて、禿げて丸々とした頬に鷲鼻、太鼓腹をしていたそうです。しかし、それでも表情はどこか厳格そうに見えたかな。人は見かけじゃないとは言いますが、ギリシャ文明においては見た目は内面の現れという考えじゃなかったっけかw

119 「ナックルボーンの勝負を巡って争う二人の少年の像」 ★こちらで観られます
ナックルボーンというのはサイコロの起源で羊や山羊の骨の遊びだそうで、その遊びが元で争う2人の少年を像にしたもののコピーです。とは言え、1人は腕だけのこして失われていて、残った少年はその腕に噛み付いています。いかにも子供の喧嘩という感じがありありで、今も昔も変わらぬヤンチャな子供のエネルギーを感じました。

この辺には少年の小像や、黒人の頭の水差しもありました。また、一番最後にはアンフォラや小像で役者や剣闘士などを表した作品があり、こちらも滑稽な作品や「グロテスク」と呼ばれる意図的に醜く表現された作品も並んでいます。 障害を持って生まれた人は、踊りや芝居をして生きるしか道がないという暗い側面も知ることができました。(そう言えば、冒頭に諸々に差別する気は無いと注意書きがありましたが、最後の章は確かに人権に関わるものが多かったかも…)


ということで、充実していて情報量の多い展覧会となっていました。混雑で鑑賞に差し障りが出るくらいだったので満足度は④くらいですが、空いていたら⑤だったと思います。西洋美術の源流とも言える展示となっていますので、これは後々にも参考になると思います。会期が進むとますます混雑が予想されますので、興味のある方はお早めにどうぞ。


おまけ:
最近定番となりつつあるガチャガチャが今回の展示にもありました。
1回400円! 高いので1回だけやってみましたw
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なんと一発で円盤投げ(ディスコボロス)を当てました!^^ こんな感じでよく出来ています。
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  → 関東 > 絵画

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