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311 失われた街 展 【TOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)】

この前の土曜日に、乃木坂~六本木にかけて美術館巡りをしてきました。まずは乃木坂駅のすぐ脇にあるTOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)で「311 失われた街 展」を観てきました。

PC162377.jpg PC162375.jpg

【展覧名】
 311 失われた街 展

【公式サイト】
 http://www.toto.co.jp/gallerma/ex111102/index.htm

【会場】TOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅など


【会期】2011/11/2~12/24
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
混んでいるという程ではないですが、若い人を中心に結構お客さんが入っていました。

こちらの展覧会は2011年3月11日に発生した東日本大震災で被害を受けた地区の模型を展示するという内容で、建築の意味と建築に何が出来るかということを問う意味があるようでした。中で写真を撮ることもできましたので、何枚か撮ってきた写真を使ってご紹介しようと思います。

これは野田(岩手県九戸郡野田村)の地震前の模型
PC162378.jpg
ここには高さ12mにも及ぶ津波が押し寄せ1500世帯のうち480世帯が全壊・半壊したそうです。
今回の展示はこうした1/500の模型が14個展示されています。

これは釜石(岩手県釜石市)
PC162390.jpg
立派な港でしたが、ここも出来たばかりの防波堤を越えた津波によって市街地に被害が出たようです。今回の津波は大きすぎた…。

こちらは鹿折(宮城県気仙沼市)
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ここは水産加工の工場が発展していたようですが、津波で漁船や漂着物が流れ、重油タンクの流出によって大火災が発生したそうです。

こちらは陸前高田(岩手県陸前高田市)
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奇跡の一本松だけ残った松林も再現。結局一本松も力尽きたようですが、当時は復興のシンボル的存在でした。

続いて上の階。

これは放射線の量を示したグラフ。チェルノブイリと同じ最悪のレベル7のせいか真っ赤です。
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こちらは相馬港(福島県相馬市)
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こちらにも巨大な津波が押し寄せました。さらに福島第一原発の事故で追い打ちをかけられ復興に支障が出ているようです。

これはタッチパネルで地震の情報をグラフなどで観られるようになっていました。
PC162441.jpg

これは石巻(宮城県石巻市)
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川の中州に丸いドームの「石ノ森萬画館」があり、観光名所となっていました。こちらは1960年のチリ地震の際の津波を参考に建てられたため、1階は被災したものの2階の収蔵庫などは無事だったようです。


ということで、あの時の恐ろしさを再認識する内容となっていました。模型でも震災前に様々なものが築かれていた様子がわかり、失われたものの大きさが浮き彫りになるように思います。これは人によっては悲しい展示になっているようにも思いますが、中々重い内容でした。



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奇想の絵師歌川国芳の門下展 【礫川浮世絵美術館】

この間の土曜日に、東京ドームの裏手にある礫川(こいしかわ)浮世絵美術館で「奇想の絵師歌川国芳の門下展」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれていたようで、私が観たのは後期でした。

PC162369.jpg

【展覧名】
 奇想の絵師歌川国芳の門下展(芳年、芳幾、芳艶、他)

【公式サイト】
 http://homepage2.nifty.com/3bijin/menu_j.html

【会場】礫川浮世絵美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】後楽園駅・春日駅


【会期】
 前期:2012年11月1日(火)~11月25日(金)
 後期:2012年12月1日(木)~12月25日(日)

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回の展覧会は没後150年を迎え盛り上がりをみせている歌川国芳の門弟たちの作品を集めた展示となっています。歌川国芳は自らの作品の素晴らしさだけでなく、親分肌で多くの弟子の可愛がり、弟子たちに慕われた絵師で、その流れは明治以降も脈々と続いていくことになります。この展示では師匠の影響を感じさせる作品などがありましたので、気に入った作品をいくつかご紹介しようと思います。

 参考記事:
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)


歌川芳虎 「[錦昇堂役者大首] 新洞左エ門娘夕しで坂東三津五郎 秀佳」
青地を背景に左を見る美人の胸から上だけの大首絵です。ちょっと上目遣いで色っぽい雰囲気がありました。この隣には背景の色が深くなった復刻版もあったので、人気があったのかな?

歌川芳春 「深川仮宅全盛揃 岡田屋内若人」
片膝を突いて座りながらキセルを持ち、やや振り返っている姿の沢山の簪をさした女性を描いた作品です。着物の模様や色が派手で、女性は楽しそうな表情をしています。このポーズが気に入ったのかわかりませんが、隣には同じポーズで違う場面の作品もありました。

この辺は主にこうした美人画が並んでいました。

月岡芳年 「おしやう吉三(小団次)、土佐得江門娘一とせ(歌女之丞)、木屋手代重三郎(羽左衛門)」
2枚続で、墓の前で争う2人の男と1人の女を描いた作品です。吉三と書かれた男は口をへの字にして何かを振り上げ、全身に龍の刺青をしています。もう1人の十三郎と書かれた人物は手を前に出し、やめてくれと懇願しているような感じです。そして2人右では背を向けた釣り目の女が笑っているような表情でした。3人はどういう関係なのかは分かりませんが、カラフルでちょっと怖いくらいのドラマチックなシーンとなっていました。特に襲う方の男の目はいっちゃってますw

この辺には月岡芳年の作品が何点かありました。
 参考記事:月岡芳年「月百姿」展 [後期](礫川浮世絵美術館)

歌川芳艶 「自来也越後妙高山の蟇を助け大蛇を撃つ図」
3枚続で、右に自来也(じらいや)と刀を持つ美女丸、もう一人名前がわからない男が描かれ、その下には竹槍を持ったカエルたちが左に向かって突進していきます。中央では沢山の蛇とカエルたちが戦っていて、その上に雲に乗った蝦蟇仙人の姿もあります。そして左には黒姫夜叉五郎と2人の男が蛇に巻きつかれたカエルを眺めているようでした。 どうやらこれは蛇退治の様子の絵らしく、ちょっとコミカルな感じもしつつ、ストーリーが伝わってくるように思いました。
こういう妖怪など出てくるのは師匠の国芳の譲りなのかな。想像力豊かに描いています。

月岡芳年 「芳年漫画 土蜘」
2枚続で碁盤に向かって突っ伏している感じの武士と、その後ろで身をくの字にして身体から蜘蛛の巣を出している女性が描かれています。この女性が土蜘蛛なのか怪しい雰囲気に見えました。だいぶピンチの場面です。
この隣には大江山の鬼退治の3枚続の作品もありました、こちらはすごい迫力でした。

歌川芳藤 「新坂さかなつくし」
1枚の中にところ狭しと沢山の魚とその名前が描かれた作品で、いわゆる「○○つくし」の典型といった感じです。たこ、さんま、たい、エイ、カレイ、車海老、ヒラメなどなど、数えるのも大変なくらいいます。ややデフォルメされているようにも思いますが、基本的には写実的に描かれていました。図鑑みたいだけどどこか洒落ているのが面白いです。

落合芳幾 「擬九星市川系譜 元祖 二代B」
上下に並んだ円形の中に描かれた、役者の顔だけの肖像です。上は目玉が丸く飛び出すように描かれた初代市川団十郎で、下は五右衛門のような頭をした2代目が描かれています。共に個性的な顔立ちで、特徴をデフォルメしたような感じがありました。
ここには擬九星市川系譜のシリーズ作品が並び、9代目までありました。

落合芳幾 「東京日々新聞第壱号」
これは絵が中心となった新聞らしく、包丁を振り上げて女の首を踏んでいる男が描かれています。下の女は男の足を掴み、必死にもがいているような感じです。男の挙げた包丁は東京日々新聞のタイトル部分を隠すように描かれ、画面から飛び出してくるような雰囲気がありました。


ということで、国芳の弟子たちも面白い作品を描いていたことがわかる展示でした。河鍋暁斎もあるかなと期待したのですが、今回はありませんでした。 とは言え、これだけ才能ある弟子がいるとは国芳の凄さがますます伝わってくるように思います。


おまけ:
この日、六本木で始まった歌川国芳の展示も観たのですが、こちらを先に観ておきました。六本木の展示は後日ご紹介の予定です。



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ガンジス 【初台界隈のお店】

ここ数日、初台の展覧会についてご紹介しましたが、その前にオペラシティの中で「ガンジス」というお店でお昼を摂っていました。

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【店名】
 ガンジス 初台オペラシティ店

【ジャンル】
 インド風カレー

【公式サイト】
 http://www.ganges.jp/shop/opera.html
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1318/A131807/13004254/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 初台駅


【近くの美術館】
 NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
 東京オペラシティアートギャラリー

【この日にかかった1人の費用】
 1000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
割りと遅い時間に入ったこともあり、空いていてゆっくりとランチをとることができました。

お店の中はこんな感じで、インド風の雰囲気です。お店の方も恐らく向こうの方のようで、気配りもよくて快適でした。
PC102346.jpg

この日は祝祭日のランチメニューの中から、「ガンジスカレーセット(1000円)」にしました。
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鳥肉、野菜、マトンの中から選べるようでしたので、鳥肉をチョイス。飲み物もつくので、こちらはラッシーを選びました。

まずラッシーが来ました。
PC102347.jpg
このラッシーは結構濃い目なのですが、そこにちょっと変わった味が加わって、スパイスのような香りがしました。これはちょっと驚きつつも美味しかったです。

続いてカレー
PC102350.jpg
私はあまり辛くしなかったので、辛すぎることもなくコクのあるカレーを食べることができました。インドカレーらしい美味しさです。

カレーはライスとナンを選べる上、どちらもおかわり自由です。
PC102351.jpg
このナンが美味しくて暖かいので、2~3枚分食べましたw 誰でもお腹いっぱいにすることができます。


ということで、コストパフォーマンスを考えるとかなり良いランチだったと思います。おかわり自由もあるので、お腹が減っている時には重宝しそうです。味も良いし、また行ってみたいと思います。



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三上晴子 欲望のコード 【NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)】

前回ご紹介した東京オペラシティ アートギャラリーの展示を観た後、同じオペラシティの中にあるNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で、「三上晴子 欲望のコード」と「オープン・スペース2011」を観てきました。

PC102362.jpg PC102361.jpg

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【展覧名】 三上晴子 欲望のコード
【公式サイト】 http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2011/Desire_of_Codes/index_j.html
【会期】 2011年10月22日(土)~12月18日(日)

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【展覧名】 オープン・スペース2011
【公式サイト】 http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2011/Openspace2011/index_j.html
【会期】 2011年10月22日(土)~2012年3月18日(日)

******************************************************************************

【会場】NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】初台駅
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
会場自体は空いていましたが、体験型の作品(「三上晴子 欲望のコード」の視線を使ったインスタレーションと「オープン・スペース2011」の「無響室」)は予約で待ち時間があるようでした。

さて、今回の展示は「三上晴子 欲望のコード」から先に観たのですが、これは大きな部屋のインスタレーション1点と、体験型の作品1点のみなので、観るのが早い人は合わせても5分くらいで見終わると思います。なので、今回は同時に開催していた「オープン・スペース2011」も合わせてご紹介しようと思います。


<三上晴子 欲望のコード>
まずは三上晴子という「情報環境と身体」をテーマに双方向性の作品を作っているアーティストの展示です。

三上晴子 「Eye-Tracking Informatics-視線のモルフォロジー」
こちらは入口のある階のシアタールームにあった体験型の作品です。1時間ほどの予約待ちだったので私は実際には体験しませんでしたが、他の人がやっているのを見学することが出来て、仕組みはだいたい分かりました。目線に反応して宇宙のような画面の中を光の線が走っていくもので、自分の視線が左を向くと左へ、右に向くと右に光が進んで行きます。そしてその軌跡が赤い光線として残り、その軌跡が束になると模様のようになっていきました。視線を追うといういつもの行動が作品となっていく発想が面白く、出来た光線もイルミネーションのようで幻想的でした。

三上晴子 「Desire of Codes | 欲望のコード」 ★こちらで観られます
こちらは今回のタイトルにもなっている作品で、大きな部屋に3つのパーツで構成されています。まず壁に等間隔で並んだ無数のカメラがあり、カタカタと音を立てながら部屋の中を撮っているようです。また、部屋の中央にはロボットアームに付けられたカメラが設置され、近くを歩いていると監視するように撮りにきて、足元にその映像が投影されました。そして3つめは部屋の正面で、虫の複眼を思わせるいくつかの映像に別れた円形のスクリーンがあり、世界中の監視カメラや過去のこの部屋の映像などを流しているようでした。
解説によると、この作品は「現在の情報化された環境と知覚に生きるわたしたちの新たな欲望とはなにか」を問題点としているようです。 私にはそこまで深い意味は理解するのは難しかったですが、無機質なものが勝手に動くとちょっと怖いw 特に追っかけてくるカメラは不気味でした。


<オープン・スペース2011>
続いては毎年変わるオープン・スペースの展示です。今回も2010年から変わったところが多かったのですが、気に入ったものだけご紹介しようと思います(というかよく分からなかったのも何点かあるのでw)
 参考記事:
  オープン・スペース 2010 (NTTインターコミュニケーション・センター[ICC])
  コープ・ヒンメルブラウ:回帰する未来 (NTTインターコミュニケーション・センター[ICC])

デイヴィッド・ボウエン 「テレプレゼント・ウォーター」 ★こちらで観られます
こちらはハワイ沖の波をリアルタイムに天井から吊り下げられたグリッド(格子状)の構造物で表すという作品です。1/12の縮尺で再現されているようで、操り人形のようでありながら非常に滑らかで、機械っぽさがなく本物の波の動きのように思えました。これは人工物に自然さを感じると解説されていましたがまさにその通りでした。
この人の作品は他に「ソナー・ドローイング・デヴァイス」と「フォトトロピック・ドローイング・デヴァイス」というものもありました。

この辺には小部屋のような所に入るコーナーや、様々な大きさの円を重ねて描いた大きな絵のような図形のような作品などもありました。

真鍋大度+石橋素 「プロポーション」 ★こちらで観られます
これは部屋中にポップな曲が流れ、画面にはそのPVのように幾何学的な模様が映し出される映像が投影されている作品です。これを観ただけではなんのこっちゃ?と思いましたが、部屋の後ろには工業用のロボットアームなどが取り付けられた所があり、じつはそのアームの先についたカメラに写された実景を映像としているようです。ミニチュア的なものや光による演出などを使っていて、無骨な感じのロボットアームがまるでビデオジョッキーのように見えるのが面白かったです。

この部屋の近くには、ヴァニタス画をモチーフにした映像作品や、箱を弦に吊るして音を出す作品などもあります。また、「ジャグラー」や「無響室」なども今年もありました。

重田佑介 「がそのもり」 ★こちらで観られます
こちらの作品は1つ部屋全体を使ったもので、靴を脱いで真っ白な絵本を持って体験します。部屋のあちこちにドット絵で描かれたキャラクター(たくさんのファミコンのキャラのようなものが動く)を投影していて、白い絵本を差し出すとそこに映像が写っていきます。桃太郎や裸の王様?など様々な童話をモチーフにしたドット絵キャラ達が、どんどんあちこちに移動していくので、それを追っかけながら自分も絵本を持って移動する感じです。愛嬌のあるキャラクターたちの物語を観ることが出来て、これは大人も童心に帰って楽しめる作品でした。


ということで、去年のほうが面白かった気がしないでもないですが、今年も面白い発想の作品がありました。ここは科学的なインスタレーションが楽しめるので、オペラシティに行く機会があったら是非脚を運んでみると良いかと思います。



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寺田コレクションの若手作家たち 【東京オペラシティ アートギャラリー】

前回ご紹介した東京オペラシティ アートギャラリーの特別展を観た後、上の階で開催されている「寺田コレクションの若手作家たち」も合わせて観てきました。

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【展覧名】
 寺田コレクションの若手作家たち

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh136.php

【会場】東京オペラシティ アートギャラリー  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】初台駅


【会期】2011/10/18(火)~12/25(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
こちらも空いていて自分のペースで観ることができました。

この展示はこのビルの事業者の1人である寺田小太郎 氏の集めた現代日本作家の作品が並んだ展示でした。特に章分けや詳しい解説などなどはありませんでしたので、気に入った作品の感想だけご紹介しようと思います。


山本麻友香 「Flower Field」
草むらで体育座りしている少年を描いた作品で、少年の頭には鹿の角が生えています。白目の無い目をしていて、小動物っぽさを感じます。
この辺には山本麻友香の作品がいくつか並んでいるのですが、いずれも少年がモチーフで、静かで無垢な雰囲気がありました。

山本麻友香 「new cow」 ★こちらで観られます
少年の顔に黒い斑点があり、頭の上に耳もついて牛のように見える肖像画です。ちょっとシュールな感じもしますが、か弱く無防備な印象を受けました。

小西真奈 「夜」 ★こちらで観られます
入江?のようなところで水の中に入っている女性の後姿を描いた作品です。周りは夜のようですが、背景の岩は明るく描かれ、神秘的な雰囲気がありました。
この隣にはDark Lakeという作品もあったのですが、どこかポッパーのような感性があるように思いました。

伊庭靖子 「Untitled」
白地に染付の6角形の器を描いた作品です。リアルな質感で描かれ、光が反射する様子を精密に表現しています。写実的ながらもどこか艶かしい雰囲気があるように思いました。

島伸彦 「Field Book」
切り絵のような感じの5点セットの作品です。いずれもウサギらしいシルエットが表されていて、色の取り合わせや構図にデザインセンスの良さを感じます。軽やかだけど神秘的な印象の作品でした。
この人の作品は他にも壁一面にパターン化されたペンギンや猿、牛などの切り絵のような作品がありました。

富田菜摘 「半蔵」「才蔵」
空き缶やクリップ、金網、髪留めなどを組み合わせて作られたイグアナのようなものが2体並んで展示されていました。どちらも胸前や手足に金網があるせいか、鎖帷子を着た忍者のような雰囲気があり、タイトルもうなずけます。その発想が面白い作品でした。

向山裕 「かいだこ "Argonouta argo"」
巻貝の中に入ったようなタコを描いた作品です。2匹を描いたのか想像上の生物かはわかりませんが、奇妙なリアリティがありややグロテスクな感じも受けました。ぐにゃっとした体と貝の部分の質感の対比も面白かったです。

時松はるな 「ブラーボ!」 ★こちらで観られます
大きな絵で、単純化されたブルマの女子学生たちが手を上げたり叩いたりしてこちらを応援しているような作品です。ずら~っと女子学生が並んでいるのですが、不思議なことにみな同じような顔と髪型をしていて、満面の笑みを浮かべていてもちょっと不気味な気もしますw 何を意図しているのかわかりませんが、この密度は独特の雰囲気でした。

入江明日香 「祇園守木槿」
4枚セット(屏風仕立てなのかも?)で、空の中に、少女や犬?、ウサギ、鷲など様々なものが描かれた半具象・半抽象の作品です。女性的で非常に華やかな色使いで、周りを飛ぶ蝶や花なども含めて幻想的な雰囲気となっていました。これはかなり好みでした。


ということで、こちらでも面白い作品を観ることができました。特別展を観に行く際にはこちらも観ておくと良いかと思います。



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感じる服 考える服:東京ファッションの現在形 【東京オペラシティ アートギャラリー】

この前の日曜日に初台の東京オペラシティ アートギャラリーに行って、「感じる服 考える服:東京ファッションの現在形」を観てきました。

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【展覧名】
 感じる服 考える服:東京ファッションの現在形

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh135/

【会場】東京オペラシティ アートギャラリー  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】初台駅


【会期】2011年10月18日(火)~12月25日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることが出来ました。

さて、この展示は注目を集めている日本のファッションの可能性を探るというテーマの展示で、これもファッションなの?と驚くような作品も含めて10組のデザイナーの作品が並んでいました。パンフレットに解説があったのですが、あまり読まずに感覚で楽しんできましたので、今回は簡単な感想を中心にご紹介しようと思います。なお、今回の展覧室は低めの梁があちこちに伸びていて、パーティションのようになっていることに驚きます。この展示方法も作品の一部と言えるかもしれません。


<サスクワァッチファブリックス/SASQUATCHfabrix.(Wonder Worker Guerrilla Band/横山大介・荒木克記)> ★こちらで観られます
まずは入口に何枚ものレザーを継ぎ接ぎにした服を着た牛の像が置かれていました。普段レザーについてあまり考えもしませんですが、こうして観ると急に可哀想な気がするような…。ユーモアなんでしょうが、これはあまり好意的に受け止められませんでした。
この牛の他に、展示室を進むと同じような馬の像などもあります。

<アンリアレイジ/ANREALAGE (森永邦彦)> ★こちらで観られます
やたら細長い服を集めた部屋と、縦を圧縮して押しつぶされたような服を集めた部屋のコーナーです。子供の頃に読んだデブの国ノッポの国の童話が頭をよぎる…w 基準を問い直すのがテーマだそうですが、比率を変えただけで異世界のようでした。

この辺には観光地にあるような顔出しパネルの作品?などもありました。

<ソマルタ/SOMARTA (廣川玉枝)> ★こちらで観られます
黒の無縫製ニットで出来た、レース模様で全身を包む服が並んだコーナーです。未来的でちょっとSFっぽさがありつつ、色気のようなものも感じます。 マネキンも面白くて、仏像で言えば迦楼羅(かるら)のようなクチバシを持った異形の者もいました。その後ろにはいくつかの球体を包んだ黒の無縫製ニットがあり、これもその空間の雰囲気を異世界のようにしているように思いました。

<h. NAOTO (廣岡直人)> ★こちらで観られます
いわゆるゴスロリの服が30着程度、太いチェーンに吊り下げられているコーナー。ビジュアル系のライブ衣装みたいというか、この人によってそうしたカルチャーが広まったようです。壁には肖像画のようなものがあったり、マネキンに血を思わせる赤い飛沫があったりと独特の世界観がありました。 ビジュアル系好きの女性に人気がありそうです。

この先にはミリタリー服を着ているような大きな球体があり、あちこちに穴があって目玉が覗いているような作品でした。これは最初の牛の人の作品かな?

<まとふ/matohu (堀畑裕之・関口真希子)> ★こちらで観られます
白いカーテンに仕切られた苔のむす小さな山のある庭の作品です。え、ファッションなのに庭?と一瞬疑問に思いましたが、この庭の先に苔のような質感と色合いの上着と、玉虫染のジャケットがあり、なるほどと納得。 昔からの日本人の感性を服に取り入れているようで面白かったです。

<ケイスケカンダ/keisuke kanda (神田恵介)> ★こちらで観られます
ウェディングドレスをパーツごとに分解して縦列されたような作品や、学生の恋愛を描いた漫画、神田恵介の服を着た女子高生を浅田政志が撮るという「卒業写真の宿題」などが並んだコーナーです。ちょっと見落としたのですが、ここには四畳半の部屋をすべて服の素材で作るというのもあったようです(梁などで視界が塞がれるので見落としました…) 服で出来た部屋というのは面白そうですね…。これは私のミスが悔やまれますw

<ミントデザインズ/mintdesigns (勝井北斗・八木奈央)> ★こちらで観られます
カラフルな服を着たマネキン達と、モノトーンの服を着たマネキン達が通路を挟んで向きあうように並んだコーナーです。足元や後ろの壁は雑誌か何かを長く裁断したもので作られています。紙くずをあえてファッションに取り入れようとするのが面白いです。紙くずでなければショーウィンドウを飾っていても何ら不思議はないですw

この辺にはまた球体のジーンズの作品がありました。

<ミナ ペルホネン/mina perhonen> ★こちらで観られます
ここは一番ファッションの展示という雰囲気があったかな。壁や梁に写真が貼られ、展示スペースにはガラスに収まった服が展示されていました。観た時は分かりませんでしたが、解説によると1着の服に多くの技術や人の感情が集積されているのを語りかけてくるようだとのことでした。

<リトゥンアフターワーズ/writtenafterwards (山縣良和)> ★こちらで観られます
小屋の中で白熊やライオン、鹿、鳥たち等々の沢山の動物がお金を刷っているという作品です。その隣の部屋には穴からその様子を見ている裸の男性がいて、これはアダムだそうです。鶴の恩返しと失楽園を混ぜたようなストーリーがあるようですが、これがファッションなの?と驚きます。 さらに何故か徳永英明の「夢を信じて」が流れていて、昔のアニメ「ドラゴンクエスト」のエンディング曲だったのを思い出しましたw 資本主義に対するメッセージのような作品なのかな。

<シアタープロダクツ/THEATRE PRODUCTS (武内 昭・中西妙佳・金森 香)> ★こちらで観られます
小さな服屋さんのような部屋と、そこで撮ったと思われる映像があり、ヘッドフォンで音を聞くこともできます。お店の中のキャッシャーやバーコードの音を音楽の一部としてライブするような内容です。これは納品チェックライブというもののようで、期間中に実演もあるようでした。発想が音に向かっているのが面白いです。

最後はファッションショーの映像で、ここまで観た作品なども出ているようでした。出入り口にはいくつかの服も展示されています。


ということで、中々驚きの多い展示となっていました。さしてファッションに詳しくない私でも楽しめたので、ファッション好きの人は特に楽しめるのではないかと思います。



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珈琲茶館 集 イトシアプラザ有楽町店 【有楽町界隈のお店】

前回ご紹介したブリヂストン美術館の展示を観た後、有楽町駅前まで移動して、珈琲茶館 集 イトシアプラザ有楽町店というところでお茶してきました。

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【店名】
 珈琲茶館 集 イトシアプラザ有楽町店

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 http://www.shu-group.com/sakan/itocia.html
 食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1301/A130102/13045330/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 有楽町駅、銀座一丁目駅、銀座駅など

【近くの美術館】
 出光美術館など


 
【この日にかかった1人の費用】
 1100円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日17時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
ここはいつも混んでいるのですが、この日も混んでいてお店の前で10分くらい待ってから入りました。

さて、このお店は以前ご紹介した「珈琲茶館 集」という系列のお店の1つで、近くにはもう1店あるようです。中の雰囲気は綺麗ですが他の2店にあったような絵などは飾られていないようでした。

 参考記事:
  珈琲茶館 集 目黒店 (目黒界隈のお店)
  珈琲茶館 集 (原宿界隈のお店)

この日、グアテマラ(800円)とティラミス(500円)を頼みました。セットにするとそこから200円引きとなります。
PC032280.jpg

まずはグアテマラ
PC032282.jpg
運ばれてきてすぐに非常に良い香りが広がりました。やや酸味があるけどまろやかで飲みやすい味で美味しいです。

続いてティラミス
PC032283.jpg
こちらも甘さ控えめで美味しいですが、コーヒーほどの驚きは無いかな。


ということで、混んでて騒がしいですが洒落てるお店で美味しいコーヒーを楽しむことができました。場所も良いので今後も使いたいと思います。



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野見山暁治展 【ブリヂストン美術館】

先週の日曜日に、京橋のブリヂストン美術館に行って、「野見山暁治展」を観てきました。

PC032264.jpg PC032265.jpg

【展覧名】
 野見山暁治展

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

【会場】ブリヂストン美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・都営浅草線宝町駅
【会期】2011年10月28日(金)~12月25日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが、ゆっくり自分のペースで観て回ることが出来ました。

さて、今回の展示は野見山暁治(のみやま ぎょうじ)という今も活躍している文化功労者にも選ばれた画家の個展となっています。私はこの方を知らなかったのですが冒頭の説明によると、野見山暁治は1920年に当時は炭鉱の街だった福岡県穂波町に生まれました。画家を志して東京美術学校に入学したものの、卒業と同時に応召したそうで、その後戦地で病いとなり送還されて終戦を迎えました。戦後、風景画に活路を見出し、さらに憧れのパリに1952年から12年間滞在して西洋の感覚や考えを体得したそうですが、やがて自己の東洋に目覚めていったそうです。そして1964年に日本に帰国し、美術団体には属さずに今日まで作品を発表している他、東京芸術大学などで後進の育成にも携わっているようです。この展示では中学美術部時代から今年制作した作品までその変遷を追える内容となっていました。詳しくは各章ごとにご紹介しようと思います。


<第1章 不安から覚醒へ-戦前から戦後にかけて>
まずは初期のコーナーです。前述の通り東京美術学校に入学した野見山氏は、アカデミックな教育に馴染めずに画集や雑誌で知った佐伯祐三や萬鉄五郎を通じてフォーヴィスムに強い関心を示したそうですが、戦争で中断を強いられます。敗戦後には今西中通との出会いによってセザンヌやキュビスムに導かれ、骸骨や静物を描いたそうです。そして、エル・グレコの「トレド風景」の中に「情念のキュビスム」を感じ取ったそうで、それは故郷の炭鉱に共通することを発見したそうです。このコーナーにはそうした時代の作品が並んでいました。

野見山暁治 「自画像」
17歳頃の自画像で、坊主頭でくりっとした表情の若者が描かれています。色合いのせいか一時期の岸田劉生のようなタッチに思えたかな。最初の辺りは色々な画風があって、模索している感じを受けました。

野見山暁治 「群像(坑内)」
これは戦後の作品で、大きな画面に暗く青みがかった感じで裸の人達が作業しているような光景が描かれています。セザンヌやキュビスムを感じさせる構成と色合いが面白いのですが、下の方には頭を抱えてうずくまっているような人がいるなど、悲しげな雰囲気もあるように思えました。

この辺は焼け跡の風景や廃坑になった炭鉱の風景など、暗く重い色でキュビスム風の作品が何点かありました。

野見山暁治 「骸骨」
髑髏を描いた静物で、絵の具がやや盛り上がっているくらい何度も塗ったような重厚な雰囲気があります。背景は暗く、髑髏にも風合いがあり死を感じさせました。

この近くには花と骸骨を描いたものや、病める女などの作品があり死や悲しみを題材にしているように思えました。


<第2章 形をつかむ-滞欧時代>
1952年にフランスに渡ると、日本にいた頃と色彩感覚が変わったそうで、フォーヴのような鮮烈な色が使われて、自由さや闊達な力強さが出たようです。滞在3年目には奥さんの陽子を日本から呼び寄せ、順調に見えたパリの暮らしですが、それから程なくして奥さんがガンで亡くなってしまったそうです。その喪失感から救ったのはパリの郊外のライ・レ・ローズでの丘陵だったそうで、毎日のようにその丘を描いているうちに西洋の造形感覚と立体感、量感をつかみとったそうです。また、この頃(1958年頃)にはブリヂストン美術館で個展が開かれ、それがきっかけなのか注目が集まり第二回安田賞の受賞につながったとのことです。(この辺が今回の展示の経緯なのかな)
しかし、野見山は自分の中の東洋に行き当たり、中国宋時代の山水に西洋にない深淵を見出したそうです。そして、自然の本質をつかもうとすればするほど具象性を失い抽象的な画風となったようですが、その画風は個展を開いたパリの画廊には理解されず、野見山はパリを離れたようです。スペインに10ヶ月ほど滞在した後に日本に帰国する決意をしたそうで、ここには主にパリ時代の作品が並んでいました。

野見山暁治 「アニタ(Ⅰ)」
青を背景にした人物像で、やや単純化されていますが特徴的な顔つきをしています。黒い輪郭が力強く、岩肌のような質感がありつつ確かに以前よりも明るめの色使いとなっていました。

野見山暁治 「ベルギーのボタ山」
青い空を背景に紫がかった三角の山が描かれた作品です。山の手前には赤い屋根の家が立っているのですが山や家の形が幾何学的でリズムを感じます。色が強くて確かにフォーブ的な要素を感じました。

野見山暁治 「風景(ライ・レ・ローズ)」
風景なのか抽象なのかちょっと難しい作品です。空に月のようなものが浮かんでいるように見えるのですが、手前は家なのか何か分かりませんでした。しかし、明るい黄色や赤、白などの色の力は以前よりも強く感じ、黒い輪郭がうねった感じも動きを感じました。

この辺から半分抽象のような風景画?が並んでいました。

野見山暁治 「シャワーの女」
緑の背景に上を向いてシャワーを浴びている女性の姿を描いた作品です。新古典主義の頃のピカソのように、素朴ながらも生命力のある女性像で、ちょっと怖いくらいの造形となっていました。


<第3章 自然の本質を突きつめる-90年代まで>
野見山 氏は西洋の真似をしても意味が無いと自分の生まれた土地に根を下ろそうとしたそうですが、12年間のフランス生活で西洋の徹底した個人主義と合理主義を身に付けていたため、言葉のニュアンスや考え方、習慣のズレなどに戸惑いスランプとなったそうです。 しかし、やがて日本の暮らしに馴染むと、広い空間に何かがゆっくりねじれながら動くような心象風景ともいうべき作品が描かれたそうです。
さらに70年代の初頭にはこれまでと異なった制作方法を行い、克明なデッサンを元に油彩を描いたそうですが、水筒が異様な風貌の人間の姿に描かれるなど、幻想的な作風になったそうです。
そして1976年に糸島半島の岬にアトリエを持つと、さらに作風が変化したそうで、台風がアトリエを襲った際には自然の奥に潜むデーモンの気配を察したらしく、その経験から見せかけの現実の底にあるものを引っ張り出そうとしてますます抽象化が進んだそうです。
ここにはそうした時代の作品が並んでいました。


野見山暁治 「風景」
大きな画面の作品で、青地を背景に黒い岩のような花のような謎のものが描かれています。右には黄色と白の謎のものがあり、海の底か青空を連想しましたが、実際には何を描いているかわかりませんでした。具象的のようで抽象的な作品です。

この近くにはこうした謎の景色の絵が並びます。色は明るく青や緑を多用している作品が多かったように思います。ぼかしや絵の具が垂れるような表現、塗り残し?のような所があったり、筆の勢いを感じたりと、何だか分からなくてもエネルギーを感じます。

野見山暁治 「蔵王」
青空を背景にした山を描いたのかな? 若干、頂上付近は山っぽい感じですが、雪?の所以外は水色と黒で表現されています(川かな?)。絵がかなり大きいこともあって威厳と荒々しい雰囲気が伝わって来ました。

野見山暁治 「終日」
大勢の人のようなものが、左下から渦を巻くように右上に流れていくように見える絵です。うねりを感じ、抽象的でどこか不安になるものがありました。

この辺にはこうしたうねりを感じる作品が並びます。暗めの色が多いですが激しさを感じました。

続いては水彩のコーナーで、1990年代~2000年代の作品が並んでいました。抽象的でタイトルも意味深ですがよくわかりません^^; その次の部屋は大型作品のコーナーで、もはや何が描いてあるのか全くわからなくなっていました。


<第4章 響きあう色彩-新作をめぐって>
最後は最近の作品のコーナーです。2000年代になると色は鮮やかに明るく華やかになったそうですが、ますます抽象化は進んでいったそうです。これまでは画面の中心にメインの形象がありましたが、ここ数年は形にこだわらず色彩そのものの効果で画面を自由に作っているそうです。

野見山暁治 「誰にも負けない」
中央に丸っこい岩のようなものがあり、右に赤紫の3本の」」」のようなものが描かれています。色の取り合わせは派手になっていて、塗り残しや絵の垂れた感じが、風が吹いているかのようで力強さを感じました。それにしてもタイトルはどういう基準でつけているんだか分かりませんw

この辺はもはや言葉では説明できない作品が多いのですが、大型の作品が中心でした。タイトルを観ても読み解けるわけではなかったです^^; 最後には自画像もあるのですが、これも線で描かれているのに抽象的でした。


ということで、抽象絵画が苦手な私には難しめの内容でしたが、独特の色合いから受ける強いエネルギーが印象に残りました。抽象絵画が好きな方には特に面白いかと思います。

おまけ:
今回の常設は1部屋のみとなっていました。



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アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue 【21_21 DESIGN SIGHT】

前回ご紹介したイルミネーションを観た後、すぐ近くの21_21 DESIGN SIGHTで「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」を観てきました。(写真は予め昼間に撮っておきました)

PC022177.jpg PC022173.jpg

【展覧名】
 アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue

【公式サイト】
 http://www.2121designsight.jp/program/index.html

【会場】21_21 DESIGN SIGHT  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅


【会期】2011年9月16日 (金)~2012年4月8日 (日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日18時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることが出来ました。

さて、今回の展覧会は有名な日本人デザイナーの三宅一生 氏の服を、写真家のアーヴィング・ペン氏が撮ったものを展示するという内容となっています。
まず簡単に2人について紹介があり、それによると三宅一生 氏は1970年に三宅デザイン事務所を創設し、1973年からパリ・コレクションに参加して「一枚布」という考えのもと、体とそれを覆う布との関係を追求しているそうで、現在も複数のプロジェクトを進行しているようです。
一方、アーヴィング・ペン氏は1917年にニュージャージー州に生まれ、1934年にフィラデルフィア・ミュージアム・オブ・インダストリアル・アートに入学してデザインを学び、1943年に初制作のカラー静物写真がVOGUEの表紙を飾りました。その後、1960年以降はポートレート、ファッション、静物など多くの作品をてがけ、J・ポール・ゲッティ美術館、メトロポリタン美術館、近代美術館、ワシントンナショナル・ギャラリーなど多くの美術館にも作品が所蔵されています。(残念ながら一昨年2009年に亡くなっています)
この2人の出会いは1983年のVOGUEの編集ページでペン氏が三宅氏の服を撮影したのがきっかけだそうで、三宅氏はこんな見方が出来るのかと驚いたそうです。その為、その後のパリ・コレクションで発表した服の撮影をペン氏に頼むようになり、1987~99年の13年間にわたり年2回の撮影が行われたようです。しかし、三宅氏は一度も撮影に立ち会うことはなくペン氏に任せていたようで、そこには「Visual Dialogue」(視覚的対話)と呼べるものが交わされていたそうです。そして、その2人の創作のプロセスに関わっていた北村みどり女史がこれらを集大成して今回の展示のディレクションを行なっています。2人の視覚的対話のエピソードなどもわかるような内容でしたので、会場の雰囲気をご紹介しようと思います。


まず階段を降りると、さらっと描かれたスケッチとポスターが沢山あるのですが、これは一旦後回しにします。展示室に入ると、最初の部屋はアニメーションで2人の仕事を紹介するコーナーです。お洒落な感じのイラストで、日本語の音声と英語のメッセージが出てきます。簡単な流れとしては、三宅氏の作った服をペン氏が撮って、グラフィックデザイナーの田中一光氏がポスターにするという感じで、
デザイン → 仮縫い、制作 → パリコレに出品 → モデルのオーディション → スタッフとのミーティング → パリコレのリハーサル → 本番 → ショーが終わると東京に送り、ペン氏が撮るものを選ぶ → 北村みどり女史がニューヨークに運ぶ → ペン氏が撮る → 北村女史が写真とスケッチを持って帰る → 写真を田中一光事務所に持ち込んでポスターを作る という流れとなっていました。このアニメでも三宅氏はペン氏の感性に任せている様子が分かりました。 映像が終わると、近くにはこのアニメに使われたドローイングなども展示されていました。

続いては横30mくらいある部屋に6面の巨大なモニタがあり、そこに真っ白を背景にペン氏の撮った写真が映し出されるコーナーです。私はあまり三宅氏の作品を知らなかったのですが、これも服なの?という色も形も面白い服が出てきます。さらにその服の面白さだけでなくモデルのポーズや髪型なども含めて芸術的な写真が素晴らしく、何枚かでストーリーがありそうにも思えました。18分くらいの映像ですがあっという間に感じました。

この部屋を出ると、そこにはペン氏の写真が並んでいて、花を撮ったものや、カエルの足とカタツムリを組み合わせたようなグロい感じの作品もいくつかありました。今回のポスターになっている赤い花の写真もここにあり、いずれもどこか艶かしくて鮮烈な印象が共通している気がします。

そして最後には1987年からのポスターと、ペン氏が撮影のために描いたスケッチが並んでいます。ポスターはタイポグラフィが加わるとまた違った印象です。アニメ映像にもあった1994年の作品もありました。 一方、スケッチは写真を撮る前のイメージを描いたものらしく、ラフだけど独創的な雰囲気が既にあるように思いました。最初は落書きみたいに思いましたがw


ということで、先進的で洒落た雰囲気の展覧会だったと思います。ポスターと映像が多いのに入館料が1000円というのは高い気もしますが、モードや写真が好きな人には非常に面白い展示ではないかと思います。


おまけ:
この日は帰りに以前ご紹介した、とんかつのイマカツで夕飯を摂りました。何度行っても美味しいお店です。
 参考記事:六本木 イマカツ (六本木界隈のお店)

おまけ2:
この記事とは全く関係ありませんが、この記事を書いていた時に月食があったので写真に撮ってみました。
PC092331.jpg
こんなに観測しやすかったのは初めてかもw






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MIDTOWN CHRISTMAS 2011 (ミッドタウンクリスマス2011)

前々回前回とミッドタウンの展示をご紹介しましたが、ミッドタウンでは今年も「MIDTOWN CHRISTMAS」をやっていました。今年は震災と電力不足でやらないかも??と思っていましたがやってくれて嬉しいです。今回も写真を撮ってきましたので、それを使ってご紹介しようと思います。

こんな感じでマップもあります。
PC022211.jpg

 参考記事:
  MIDTOWN CHRISTMAS 2009 (ミッドタウンクリスマス2009)
  MIDTOWN CHRISTMAS 2010 (ミッドタウンクリスマス2010)

 公式サイト:
  http://www.tokyo-midtown.com/jp/xmas/2011/
 
 期間:
  2011/11/15~2011/12/25


まずは六本木駅方面にあったビッグサンタブーツ。表と裏で撮りました。
PC022196.jpg PC022195.jpg

これはメッセージインザバンブー。
PC022190.jpg PC022192.jpg
去年もあったメッセージ入りの竹のようなイルミネーションです。

これはダズリングツリー
PC022187.jpg PC022257.jpg
6mくらいあるツリーだそうです。右は以前ご紹介したIDEE CAFE PARCのテラス席から撮りました。お茶しながらツリーが観られます。
 参考記事:IDEE CAFE PARC (六本木界隈のお店)

続いてはガレリアの中のサンタツリー
PC022203.jpg PC022205.jpg
これも例年通りかな。1800体のサンタが飾られています。

そしてやはりメインはミッドタウン裏手のスターライトガーデンです。
PC022213.jpg
今年は期間によって2部構成になっているそうで、この記事で紹介しているのは第1部です。
 第1部:2011/11/15(火)~12/04(日)
 第2部:2011/12/05(月)~12/25(日)

今年も動画を撮りました。上の方から観ると例年とあまり変わらないように見えます。

ちなみに周りの声は私とは全く関係ない人です。

赤色もありました。

何か地球のようなものもあります。

この地球は中からせり上がってくるという手の込んだものでした。


これはオーロラ・ロードとツリーイルミネーション。
PC022218.jpg PC022247.jpg

こちらも例年通りのシャンゼリゼ・イルミネーション
PC022252.jpg

これは奇跡の木。
PC022260.jpg
この木は樹齢60年のクスノキだそうです。


ということで、今年も綺麗なイルミネーションを楽しむことができました。2部のイルミネーションも気になるので、近いうちにもう一度行ってみようかと思います。夕方以降に六本木に行く機会があったら是非観てみると良いかと思います。


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プロフィール

21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
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■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
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■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
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  → 関東 > 絵画

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