Archive | 2011年12月
2011年もおしまいなので、今日は今年の美術展について振り返ります。今年は震災によって中止・延期などもありましたが、その後も貴重な作品を見ることが出来たのはありがたいことです。今年も日本画、西洋画個展、西洋画テーマ展示、絵画以外 の4つの部門で2011年で良かったと思う順に挙げてみようと思います。まあ、毎年のことですが大規模展示を上位に挙げるミーハーなところはご容赦ください^^;
参考記事:
2010年の振り返り
2009年の振り返り
<総合満足 日本画展ベスト10>
1位:酒井抱一と江戸琳派の全貌 (千葉市美術館)
2位:琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 (出光美術館)
3位:没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- (森アーツセンターギャラリー)
4位:江戸の人物画―姿の美、力、奇(府中市美術館)
5位:伊東深水-時代の目撃者 (平塚市美術館)
6位:生誕130年 松岡映丘-日本の雅-やまと絵復興のトップランナー (練馬区立美術館)
7位:破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 (太田記念美術館)
8位:国宝 燕子花図屏風 2011 (根津美術館)
9位:五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信 (江戸東京博物館)
10位:ザ・ベスト・オブ・山種コレクション [前期] 江戸絵画から近代日本画へ (山種美術館)
まずは日本画ですが、今回振り返ってみて一番充実していたのは日本画の展示だったのではないかなと思うくらいです。特に大好きな琳派や歌川国芳関連の展示が多かったのが良かったです。おかげで上位は琳派ばかりにしてしまいましたw
<総合満足 西洋画 個展ベスト10>
1位:アンリ・ル・シダネル展 (埼玉県立近代美術館)
2位:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)
3位:プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 (国立西洋美術館)
4位:レンブラント 光の探求/闇の誘惑 (国立西洋美術館)
5位:アルプスの画家 セガンティーニ -光と山- (損保ジャパン東郷青児美術館)
6位:モーリス・ドニ -いのちの輝き、子どものいる風景- (損保ジャパン東郷青児美術館)
7位:牛島憲之 ―至高なる静謐― (松濤美術館)
8位:パウル・クレー おわらないアトリエ (東京国立近代美術館)
9位:藤島武二・岡田三郎助展 ~女性美の競演~ (そごう美術館)
10位:トゥールーズ=ロートレック展 (三菱一号館美術館)
2010年が西洋画大豊作の年だったので、年初に今年はどうなるかな?と思っていましたが、2011年は誰もが知る巨匠だけでなく個性派の個展が多かったように思います。特にシダネルやセガンティーニなど、日本では中々観られない画家の作品はかなり良かったです。勿論、ゴヤやレンブラントも流石で、クレーやドニなども詳しく知る機会となっていました。また、日本人西洋画の個展も素晴らしく、特に岡本太郎は一気にファンになってしまいました。
<総合満足 西洋画 テーマ展示ベスト10>
1位:ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション (国立新美術館)
2位:フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
3位:マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- (三菱一号館美術館)
4位:フェルメールからのラブレター (Bunkamuraザ・ミュージアム)
5位:シュルレアリスム展 (国立新美術館)
6位:「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」展 (国立新美術館)
7位:描かれた不思議 トリック&ユーモア展 エッシャー、マグリット、国芳から現代まで (横須賀美術館)
8位:アンフォルメルとは何か?-20世紀フランス絵画の挑戦 (ブリヂストン美術館)
9位:花ひらくエコール・ド・パリの画家たち (平塚市美術館)
10位:森と芸術 (東京都庭園美術館)
個展以外の西洋画の展示については、地震さえなければプーシキン美術館展もあったんだろうなあと思うとちょっと残念ですが、それでもフェルメールは合計4点来たし、ワシントン・ナショナル・ギャラリーやフィリップス・コレクションなどアメリカの重要なコレクションを観ることができました。また、ルブランを始めとしたフランスの女性画家の展示やアンフォルメルの展示など中々取り上げられなかったテーマを見ることが出来たのも今後の参考になりそうです。
<総合満足 絵画以外 ベスト10>
1位:大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美 (国立西洋美術館)
2位:空海と密教美術 (東京国立博物館 平成館)
3位:世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~ (江戸東京博物館)
4位:マイセン磁器の300年 壮大なる創造と進化 (サントリー美術館)
5位:あこがれのヴェネチアン・グラス ― 時を超え、海を越えて (サントリー美術館)
6位:メタボリズムの未来都市展 (森美術館)
7位:不滅のシンボル 鳳凰と獅子 (サントリー美術館)
8位:草間彌生 ボディ・フェスティバル in 60's 展 (ワタリウム美術館)
9位:映画パンフレットの世界 (東京国立近代美術館フィルムセンター)
10位:国立エルミタージュ美術館所蔵 皇帝の愛したガラス (東京都庭園美術館)
最後に、絵画以外の展示についてですが、今年は歴史系の展示が充実していたので上位に挙げました。特にギリシャ展の美しい彫刻の数々は記憶に残りそうです(ギリシャの金融危機の折、皮肉な感じですが…) また、空海の展示はほとんど重要文化財か国宝という貴重な内容で、日本の文化の様々なところに影響を与えているだけに参考になる展示でした。 他には、ヴェネツィア展を含めてガラス関係の展示が多かったように思います。おかげでガラスの歴史に詳しくなれた気がしますw
ということで、多難な年でしたが、そんな中でも素晴らしい展示を続けてくれた美術関係者の皆様に感謝しております。来年もビッグな展示が控えていますので、楽しみにしております。
皆様よいお年を^^
参考記事:
2010年の振り返り
2009年の振り返り
<総合満足 日本画展ベスト10>
1位:酒井抱一と江戸琳派の全貌 (千葉市美術館)
2位:琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 (出光美術館)
3位:没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- (森アーツセンターギャラリー)
4位:江戸の人物画―姿の美、力、奇(府中市美術館)
5位:伊東深水-時代の目撃者 (平塚市美術館)
6位:生誕130年 松岡映丘-日本の雅-やまと絵復興のトップランナー (練馬区立美術館)
7位:破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 (太田記念美術館)
8位:国宝 燕子花図屏風 2011 (根津美術館)
9位:五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信 (江戸東京博物館)
10位:ザ・ベスト・オブ・山種コレクション [前期] 江戸絵画から近代日本画へ (山種美術館)
まずは日本画ですが、今回振り返ってみて一番充実していたのは日本画の展示だったのではないかなと思うくらいです。特に大好きな琳派や歌川国芳関連の展示が多かったのが良かったです。おかげで上位は琳派ばかりにしてしまいましたw
<総合満足 西洋画 個展ベスト10>
1位:アンリ・ル・シダネル展 (埼玉県立近代美術館)
2位:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)
3位:プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 (国立西洋美術館)
4位:レンブラント 光の探求/闇の誘惑 (国立西洋美術館)
5位:アルプスの画家 セガンティーニ -光と山- (損保ジャパン東郷青児美術館)
6位:モーリス・ドニ -いのちの輝き、子どものいる風景- (損保ジャパン東郷青児美術館)
7位:牛島憲之 ―至高なる静謐― (松濤美術館)
8位:パウル・クレー おわらないアトリエ (東京国立近代美術館)
9位:藤島武二・岡田三郎助展 ~女性美の競演~ (そごう美術館)
10位:トゥールーズ=ロートレック展 (三菱一号館美術館)
2010年が西洋画大豊作の年だったので、年初に今年はどうなるかな?と思っていましたが、2011年は誰もが知る巨匠だけでなく個性派の個展が多かったように思います。特にシダネルやセガンティーニなど、日本では中々観られない画家の作品はかなり良かったです。勿論、ゴヤやレンブラントも流石で、クレーやドニなども詳しく知る機会となっていました。また、日本人西洋画の個展も素晴らしく、特に岡本太郎は一気にファンになってしまいました。
<総合満足 西洋画 テーマ展示ベスト10>
1位:ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション (国立新美術館)
2位:フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
3位:マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- (三菱一号館美術館)
4位:フェルメールからのラブレター (Bunkamuraザ・ミュージアム)
5位:シュルレアリスム展 (国立新美術館)
6位:「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」展 (国立新美術館)
7位:描かれた不思議 トリック&ユーモア展 エッシャー、マグリット、国芳から現代まで (横須賀美術館)
8位:アンフォルメルとは何か?-20世紀フランス絵画の挑戦 (ブリヂストン美術館)
9位:花ひらくエコール・ド・パリの画家たち (平塚市美術館)
10位:森と芸術 (東京都庭園美術館)
個展以外の西洋画の展示については、地震さえなければプーシキン美術館展もあったんだろうなあと思うとちょっと残念ですが、それでもフェルメールは合計4点来たし、ワシントン・ナショナル・ギャラリーやフィリップス・コレクションなどアメリカの重要なコレクションを観ることができました。また、ルブランを始めとしたフランスの女性画家の展示やアンフォルメルの展示など中々取り上げられなかったテーマを見ることが出来たのも今後の参考になりそうです。
<総合満足 絵画以外 ベスト10>
1位:大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美 (国立西洋美術館)
2位:空海と密教美術 (東京国立博物館 平成館)
3位:世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~ (江戸東京博物館)
4位:マイセン磁器の300年 壮大なる創造と進化 (サントリー美術館)
5位:あこがれのヴェネチアン・グラス ― 時を超え、海を越えて (サントリー美術館)
6位:メタボリズムの未来都市展 (森美術館)
7位:不滅のシンボル 鳳凰と獅子 (サントリー美術館)
8位:草間彌生 ボディ・フェスティバル in 60's 展 (ワタリウム美術館)
9位:映画パンフレットの世界 (東京国立近代美術館フィルムセンター)
10位:国立エルミタージュ美術館所蔵 皇帝の愛したガラス (東京都庭園美術館)
最後に、絵画以外の展示についてですが、今年は歴史系の展示が充実していたので上位に挙げました。特にギリシャ展の美しい彫刻の数々は記憶に残りそうです(ギリシャの金融危機の折、皮肉な感じですが…) また、空海の展示はほとんど重要文化財か国宝という貴重な内容で、日本の文化の様々なところに影響を与えているだけに参考になる展示でした。 他には、ヴェネツィア展を含めてガラス関係の展示が多かったように思います。おかげでガラスの歴史に詳しくなれた気がしますw
ということで、多難な年でしたが、そんな中でも素晴らしい展示を続けてくれた美術関係者の皆様に感謝しております。来年もビッグな展示が控えていますので、楽しみにしております。
皆様よいお年を^^
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先日ご紹介した文化村の展示を見る前に、神泉・松濤にある渋谷区立松濤美術館で、「開館30周年記念特別展 渋谷ユートピア1900-1945」を観てきました。この展示は前期・後期があるようで、私が観たのは前期の内容でした。

【展覧名】
開館30周年記念特別展 渋谷ユートピア1900-1945
【公式サイト】
http://www.shoto-museum.jp/05_exhibition/#A001
【会場】松濤美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】神泉駅/渋谷駅
【会期】
前期:2011年12月06日~2012年01月09日
後期:2012年01月11日~2012年01月29日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間15分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。
さて、今回の展示は渋谷区立の美術館に相応しい、渋谷を拠点に活動した芸術家をテーマになっていました。フランスにモンパルナスやバルビゾン村、ジベルニーなどの芸術家村があったように、日本でも芸術家の集まった地域があり、池袋モンパルナス、落合文士村、田端文士村、浦和アトリエ村などと共に、渋谷区の代々木、恵比寿、原宿などにも芸術家村がありました。展覧会は10章+序章・終章に分かれてその様子を紹介していましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品をあげて感想を書いていこうと思います。
<序章.逍遙する人-《落葉》と代々木の菱田春草>
まずは菱田春草のコーナーで、少数だけ展示されていてます。(章のタイトルになっている「落葉」は後期の展示作品のようです。) 菱田春草は目の治療で代々木に住んでいた時期があるそうです。
菱田春草 「鹿」
掛け軸の作品で、長く伸びる木とひょろ長い枯葉の木の下に立派な角を持った鹿が伏せています。その毛並みは緻密に描かれていて、滑らかな感じがする一方で、葉っぱなどは様式化されているように思いました。全体的に押さえ気味の色調で、晩秋の雰囲気がありました。
<Ⅰ章.岡田三郎助と伊達跡画家村>
渋谷で最も美術家が集まっていたのが、伊達跡画家村というところで、これは今の恵比寿ガーデンプレイスの東南あたりのようです。ここは伊予宇和島藩伊達家の下屋敷があったところで、当時は便利なところだったので明治末期から画家が集まったそうです。その中でも最初に住んだのは岡田三郎助で、以降は多くの画家が岡田を慕って続くように集いました。また、岡田は邸内に女子美術研究所を作ったり寄宿生たちを住ませるなど、この地を拠点に後進の育成にも取り組んでいたようです。
参考記事:藤島武二・岡田三郎助展 ~女性美の競演~ (そごう美術館)
岡田三郎助 「セーヌ河上流の景」
印象派風に描かれたセーヌ河の河岸を描いた作品です。1899年の作なのでフランスに留学して2年頃の作品じゃないかな。やや暗めで落ち着いた感じがあるけれど、情感豊かでした。
岡田三郎助 「ポスター 三菱呉服店 むらさきしらべ(第17回新柄陳列会)」
これは以前にもご紹介しましたが、鼓を叩く着物の女性を描いた三越呉服店のポスターです。凛とした表情をしていて、どことなく緊張感のある雰囲気で好みです。
杉浦非水 タイトル失念…
杉浦非水もやはり恵比寿に住んでいたようで、何点か展示されていました。メモを取り忘れてタイトルを失念しましたが、図案化されたアールヌーボー的な雰囲気で、着物の女性と花の入った花瓶や家具などが描かれた作品が良かったです。華やかな蝶柄の服がお洒落で軽やかな雰囲気でした。
この辺には杉浦非水の有名な「東洋唯一の地下鉄道」や「非水図按集」といった作品もありました。
参考記事:
所蔵作品展 アール・デコ時代の工芸とデザイン (東京国立近代美術館 工芸館)
江戸東京博物館の案内 (2011年06月)
伊東深水 「愛犬 『主婦之友』新年号付録・第18巻第1号」
伊達跡に住んでいた伊東深水のコーナーもありました。これは短い黒髪の着物の女性が、毛の長い犬の手を持って慈愛の眼で観ている作品です。犬も賢そうで、もふもふした毛並みの表現となっていました。
参考記事:伊東深水-時代の目撃者 (平塚市美術館)
<Ⅱ章.永光舎山羊園と辻永>
続いては辻永という画家のコーナーです。辻永は伊達跡の一角に永光舎という山羊園を営んでいたそうで、最盛期には山羊30頭あまりも飼っていて、山羊の画家と認識していたようです。岡田三郎助を師と仰いでアトリエに出入りし、最初はセガンティーニの影響を受けたそうで、一時期は山羊の絵ばかりを描いていたそうです。また、植物を描いたスケッチも2万点ほどあるそうで、ここでも何点か並んでいました。
参考記事:アルプスの画家 セガンティーニ -光と山- (損保ジャパン東郷青児美術館)
辻永 「牧場にて」
木の柵に囲まれた所に10~15匹ほどの山羊がのんびりしている所を描いた作品です。どちらかというとナビ派と象徴主義の間のような淡くて装飾的な雰囲気に見えるかな。あちこちに木漏れ日が落ちているのが紫っぽく表現されているのも面白いです。
この隣にも山羊の絵がありました。また、紙に描かれた植物の写生がたくさんあります。山羊の絵とは画風がだいぶ違って、かなり写実的に可憐な花々を描いていました。
<Ⅲ章.切通しの道と草土社-岸田劉生の風景>
続いては岸田劉生とその仲間のコーナーです。岸田劉生は今の代々木3丁目付近に住んでいた時期があるそうで、(3年ほどしか住んでいなかったようですが)東近美にある「道路と土手と塀(切通之写生)」のような代表作を描いたり、彼の作品で有名な娘の麗子が生まれたり、この代々木の風景との出会いを通して仲間たちと草土社を結成するなど、濃密な時間を過ごしていたようです。ここには切通之写生のコピーなどと共に、似た作品が展示されていました。
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
岸田劉生 「赤土と草(草と赤土の道)」
草土社の名前の由来になった小さめの作品です。赤土の登り坂が描かれ、その両脇と道の真中には緑の草が生い茂っています。その色使いが補色のせいか力強くて、うっそうとした雰囲気を強めているように思いました。
この隣にも冬の道路(原宿辺り)を描いた作品がありました。ちょっと寒々しい雰囲気です。
椿貞雄 「横堀角次郎兄像」
この人は草土社に参加した画家で、岸田劉生の仲間です。写実的に描かれた赤いニット帽を被った男性の肖像で、顔のテカりやシワも細かく描かれた感じや、背景の暗さなどが一時期の岸田劉生の作風によく似ています。肖像を描きまくった岸田劉生に影響されたのかな? この画家自身も岸田劉生の作品で観た覚えがあります。
参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)
横堀角次郎 「細き道」
先ほどの椿貞雄に描かれていた画家の作品で、両脇に沢山の木や草が伸び、中央に赤土の道が伸びる風景が描かれています。道の先には家が描かれ、ちょっと全体的にぼんやりしていますが当時のこの辺りの風情が伝わってくるようでした。
<Ⅳ章.束の間のユートピア-村山槐多の終焉>
続いては22歳で夭折した大正期の画家、村山槐多のコーナーです。村山槐多は死ぬ3ヶ月前に代々木上原に住んだようで、仲間を集めて代々木ユートピアと称して、ほとんど共同生活のような感じだったそうです。 しかし、そのすぐ後にスペイン風邪で死んでしまったようです…。
村山槐多 「田端風景」
渋谷ではなく田端ですが風景を描いた作品で、手前に木が立ち奥に家らしきものが描かれています。しかし、抽象的に見えるくらい簡略化されていて詳細はわかりません。全体的に迫ってくるような力強さやプリミティブなものを感じる独特の作風でした。
この辺には村山槐多の裸婦のスケッチ(これもかなりの力強さ)や仲間たちの作品もありました。
<Ⅴ章.竹久夢二のモダンとおんな>
続いては現在の宇田川町(道玄坂のあたり)に住んでいた竹久夢二のコーナーです。まずは楽譜や書簡の扉絵が並び、当時の写真なども展示されていました。
参考記事:大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションのモダーンズ (松濤美術館)
竹久夢二 「立春大吉」
これは肉筆の掛け軸で、梅の木の下、黄色い着物の女性が板のようなものを持ち、袖まくりをしながら歩いている様子を描いています。髪は短く線の細い女性で、やや頼りなく儚げに見えるかな。版画とはちょっと雰囲気がある作品でした。
<Ⅵ章.詩人画家富永太郎の筆とペン>
地下階の最後は24歳で夭折した詩人で画家の富永太郎コーナーです。富永太郎の詩は37篇、絵は18点しかないそうですが、未完でありながら明治から大正の感性のあり方を具現化した画家だったそうで、この松涛美術館のすぐ近くに住んでいたようです。裕福な家に育ったのですが、駆け落ちしたり転々としたようで、後に結核になって実家に戻りました。
富永太郎 「自画像」
振り返る自画像です。こちらを怪訝そうな目で見ていて、暗めの色を使っているためか重厚な雰囲気がありました。
近くに他の作品もあったのですが、色々な作風があるようで、マティスやピカソを彷彿とするような画風もありました。また、詩の原稿や本、手帳なども展示さてています。
<Ⅶ章.フォービズムの風-独立美術協会の周辺>
ここから2階の展示です。まずは代々木一帯で日本的フォービスムを具現化していた画家たちのコーナーで、その中で最も早く代々木に来たのは児島善三郎だそうです。また、石原雅夫という画商の店が初台の近くにあったそうで、彼はフランスからアンポールという絵の具や画材を輸入していたらしく、「アンポールの会」という組織も作られたようです。初台の店まで新宿や落合あたりの画家もやってきて、店はサロンのようになっていたそうです。
児島善三郎 「桜の頃」
左側に湾曲する川が描かれ、奥にはそこに架かる橋などが見えます。右側にはその脇で花を咲かす沢山の桜並木が描かれ、右下にはん帽子をかぶった人の姿もあります。全体的に単純化されていて、木々や湾曲から心地よいリズムを感じますが、児島善三郎にしては整然とした感じで、まだ具象的で色もそんなに強くないかな。
この隣には「赤松の丘」(★こちらで観られます)という作品もあったのですが、同じ年に描かれたとは思えないくらい単純化されていました。
寺田政明 「谷中真島町(モデル坂付近)」
街角の風景を描いた作品で、太く黒い輪郭に風化したような塗り方で描かれています。力強くてやや佐伯のような画風に見えるかな。そのせいか日本の街角とは思えないくらい重厚で洒落た雰囲気がありました。近くで観ると絵の具が厚塗りされています。
<Ⅷ章. 郊外を刻む-版画家たちの代々木グループ>
代々木上原には代々木グループという版画家のグループがいたそうで、平塚運一や棟方志功も名を連ねていたそうです。
前田政雄 「代々木風景」
代々木の普通の道を描いた版画で、細い線を使った表現となっています。その為、どこか整然としたものを受けつつ、白と黒の強いコントラストが全体に力強さを与えているように思いました。
ここには他にも数点並んでいたのですが、明治神宮を主題にした作品が多かったように思います。
<Ⅸ章. 同潤会アパートメントに住む―蔵田周忠と型而工房>
続いては建築家の蔵田周忠のコーナーです。蔵田周忠は昭和のはじめに代官山同潤会アパートに住んでモダニズムの住宅設計や生活向上を目指した「型而工房」の活動を展開したそうです。そして、千駄ヶ谷に内田邸、代官山にトモエ薬局という建物の設計をしたようで、ここに関連資料が並んでいました。
まず、千駄ヶ谷の内田邸ですが、家の図面や写真、模型が展示されています。直線と直角が多い幾何学的な設計で、モダンな雰囲気を感じます。 一方、代官山のトモエ薬局も図面と写真が展示されていて、こちらも三角を組み合わせたような形ですっきりしていました。
他にも同潤会アパートの手すりや食堂の扉などが展示されていました。
<Ⅹ章.安藤照とハチ公と塊人社-昭和前期の彫刻家たち>
10章は渋谷駅の前にあるハチ公像に深い関わりのある安藤照らのコーナーです。現在の渋谷駅前のハチ公像は2代目で、安藤照の息子の安藤士(たけし)が作ったそうで、初代は安藤照が作ったものの戦争の際に金属回収で溶かされてしまったらしく現存しません。安藤照は塊人社という若手の彫刻グループの中心メンバーだったらしく、マイヨール的なおおらかな造形だったそうです。しかしその作品のほとんどは戦災で失われたらしく、ここも写真が中心となっていました。
安藤照 「ハチ公伏臥像」
伏せて横を観る姿の小さなハチ公像です。これは皇室に献上する作品として製作したものの1体(全5体あった)だそうで、戦後に安藤家から彫り出されたそうです。左前足は溶けているのですが、これは空襲で焼けてしまったとのことでした。その由来のせいか全体的にちょっとゴツゴツした印象もうけますが、ハチ公は意志の強そうな顔をしていました。
周りには安藤照の作品の写真があり、確かにマイヨールのような優美な雰囲気がありました。
<終章.都市の遊歩者-谷中安規と《街の本》>
最後は戦後のコーナーで、復興して行く盛場を描いた谷中安規の作品が1点だけ展示されていました。
谷中安規 「街の本 渋谷」
黒地に赤の切り絵のような作品で、汽車の後ろ姿やネオンの建物が描かれています。ちょっと寂しいような感じも受けましたが、郷愁を誘われるちょっとシュールな雰囲気がありました。
ということで、有名な作家から知らない作家まで、幅広く活動を知ることが出来ました。普段は画家ごとに取り上げられることが多いですが、特定の地域でお互いの活動の影響を知ることができるというのは面白いと思います。
おまけ:
板橋でも池袋モンパルナスの展示が開かれています。私は会期中に行けるかどうか…。
展覧会名:池袋モンパルナス展 ようこそアトリエ村へ
参考リンク:http://www.itabashiartmuseum.jp/art/schedule/now.html
期間:2011年11月19日(土)~2012年1月9日(祝)

【展覧名】
開館30周年記念特別展 渋谷ユートピア1900-1945
【公式サイト】
http://www.shoto-museum.jp/05_exhibition/#A001
【会場】松濤美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】神泉駅/渋谷駅
【会期】
前期:2011年12月06日~2012年01月09日
後期:2012年01月11日~2012年01月29日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間15分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。
さて、今回の展示は渋谷区立の美術館に相応しい、渋谷を拠点に活動した芸術家をテーマになっていました。フランスにモンパルナスやバルビゾン村、ジベルニーなどの芸術家村があったように、日本でも芸術家の集まった地域があり、池袋モンパルナス、落合文士村、田端文士村、浦和アトリエ村などと共に、渋谷区の代々木、恵比寿、原宿などにも芸術家村がありました。展覧会は10章+序章・終章に分かれてその様子を紹介していましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品をあげて感想を書いていこうと思います。
<序章.逍遙する人-《落葉》と代々木の菱田春草>
まずは菱田春草のコーナーで、少数だけ展示されていてます。(章のタイトルになっている「落葉」は後期の展示作品のようです。) 菱田春草は目の治療で代々木に住んでいた時期があるそうです。
菱田春草 「鹿」
掛け軸の作品で、長く伸びる木とひょろ長い枯葉の木の下に立派な角を持った鹿が伏せています。その毛並みは緻密に描かれていて、滑らかな感じがする一方で、葉っぱなどは様式化されているように思いました。全体的に押さえ気味の色調で、晩秋の雰囲気がありました。
<Ⅰ章.岡田三郎助と伊達跡画家村>
渋谷で最も美術家が集まっていたのが、伊達跡画家村というところで、これは今の恵比寿ガーデンプレイスの東南あたりのようです。ここは伊予宇和島藩伊達家の下屋敷があったところで、当時は便利なところだったので明治末期から画家が集まったそうです。その中でも最初に住んだのは岡田三郎助で、以降は多くの画家が岡田を慕って続くように集いました。また、岡田は邸内に女子美術研究所を作ったり寄宿生たちを住ませるなど、この地を拠点に後進の育成にも取り組んでいたようです。
参考記事:藤島武二・岡田三郎助展 ~女性美の競演~ (そごう美術館)
岡田三郎助 「セーヌ河上流の景」
印象派風に描かれたセーヌ河の河岸を描いた作品です。1899年の作なのでフランスに留学して2年頃の作品じゃないかな。やや暗めで落ち着いた感じがあるけれど、情感豊かでした。
岡田三郎助 「ポスター 三菱呉服店 むらさきしらべ(第17回新柄陳列会)」
これは以前にもご紹介しましたが、鼓を叩く着物の女性を描いた三越呉服店のポスターです。凛とした表情をしていて、どことなく緊張感のある雰囲気で好みです。
杉浦非水 タイトル失念…
杉浦非水もやはり恵比寿に住んでいたようで、何点か展示されていました。メモを取り忘れてタイトルを失念しましたが、図案化されたアールヌーボー的な雰囲気で、着物の女性と花の入った花瓶や家具などが描かれた作品が良かったです。華やかな蝶柄の服がお洒落で軽やかな雰囲気でした。
この辺には杉浦非水の有名な「東洋唯一の地下鉄道」や「非水図按集」といった作品もありました。
参考記事:
所蔵作品展 アール・デコ時代の工芸とデザイン (東京国立近代美術館 工芸館)
江戸東京博物館の案内 (2011年06月)
伊東深水 「愛犬 『主婦之友』新年号付録・第18巻第1号」
伊達跡に住んでいた伊東深水のコーナーもありました。これは短い黒髪の着物の女性が、毛の長い犬の手を持って慈愛の眼で観ている作品です。犬も賢そうで、もふもふした毛並みの表現となっていました。
参考記事:伊東深水-時代の目撃者 (平塚市美術館)
<Ⅱ章.永光舎山羊園と辻永>
続いては辻永という画家のコーナーです。辻永は伊達跡の一角に永光舎という山羊園を営んでいたそうで、最盛期には山羊30頭あまりも飼っていて、山羊の画家と認識していたようです。岡田三郎助を師と仰いでアトリエに出入りし、最初はセガンティーニの影響を受けたそうで、一時期は山羊の絵ばかりを描いていたそうです。また、植物を描いたスケッチも2万点ほどあるそうで、ここでも何点か並んでいました。
参考記事:アルプスの画家 セガンティーニ -光と山- (損保ジャパン東郷青児美術館)
辻永 「牧場にて」
木の柵に囲まれた所に10~15匹ほどの山羊がのんびりしている所を描いた作品です。どちらかというとナビ派と象徴主義の間のような淡くて装飾的な雰囲気に見えるかな。あちこちに木漏れ日が落ちているのが紫っぽく表現されているのも面白いです。
この隣にも山羊の絵がありました。また、紙に描かれた植物の写生がたくさんあります。山羊の絵とは画風がだいぶ違って、かなり写実的に可憐な花々を描いていました。
<Ⅲ章.切通しの道と草土社-岸田劉生の風景>
続いては岸田劉生とその仲間のコーナーです。岸田劉生は今の代々木3丁目付近に住んでいた時期があるそうで、(3年ほどしか住んでいなかったようですが)東近美にある「道路と土手と塀(切通之写生)」のような代表作を描いたり、彼の作品で有名な娘の麗子が生まれたり、この代々木の風景との出会いを通して仲間たちと草土社を結成するなど、濃密な時間を過ごしていたようです。ここには切通之写生のコピーなどと共に、似た作品が展示されていました。
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
岸田劉生 「赤土と草(草と赤土の道)」
草土社の名前の由来になった小さめの作品です。赤土の登り坂が描かれ、その両脇と道の真中には緑の草が生い茂っています。その色使いが補色のせいか力強くて、うっそうとした雰囲気を強めているように思いました。
この隣にも冬の道路(原宿辺り)を描いた作品がありました。ちょっと寒々しい雰囲気です。
椿貞雄 「横堀角次郎兄像」
この人は草土社に参加した画家で、岸田劉生の仲間です。写実的に描かれた赤いニット帽を被った男性の肖像で、顔のテカりやシワも細かく描かれた感じや、背景の暗さなどが一時期の岸田劉生の作風によく似ています。肖像を描きまくった岸田劉生に影響されたのかな? この画家自身も岸田劉生の作品で観た覚えがあります。
参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)
横堀角次郎 「細き道」
先ほどの椿貞雄に描かれていた画家の作品で、両脇に沢山の木や草が伸び、中央に赤土の道が伸びる風景が描かれています。道の先には家が描かれ、ちょっと全体的にぼんやりしていますが当時のこの辺りの風情が伝わってくるようでした。
<Ⅳ章.束の間のユートピア-村山槐多の終焉>
続いては22歳で夭折した大正期の画家、村山槐多のコーナーです。村山槐多は死ぬ3ヶ月前に代々木上原に住んだようで、仲間を集めて代々木ユートピアと称して、ほとんど共同生活のような感じだったそうです。 しかし、そのすぐ後にスペイン風邪で死んでしまったようです…。
村山槐多 「田端風景」
渋谷ではなく田端ですが風景を描いた作品で、手前に木が立ち奥に家らしきものが描かれています。しかし、抽象的に見えるくらい簡略化されていて詳細はわかりません。全体的に迫ってくるような力強さやプリミティブなものを感じる独特の作風でした。
この辺には村山槐多の裸婦のスケッチ(これもかなりの力強さ)や仲間たちの作品もありました。
<Ⅴ章.竹久夢二のモダンとおんな>
続いては現在の宇田川町(道玄坂のあたり)に住んでいた竹久夢二のコーナーです。まずは楽譜や書簡の扉絵が並び、当時の写真なども展示されていました。
参考記事:大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションのモダーンズ (松濤美術館)
竹久夢二 「立春大吉」
これは肉筆の掛け軸で、梅の木の下、黄色い着物の女性が板のようなものを持ち、袖まくりをしながら歩いている様子を描いています。髪は短く線の細い女性で、やや頼りなく儚げに見えるかな。版画とはちょっと雰囲気がある作品でした。
<Ⅵ章.詩人画家富永太郎の筆とペン>
地下階の最後は24歳で夭折した詩人で画家の富永太郎コーナーです。富永太郎の詩は37篇、絵は18点しかないそうですが、未完でありながら明治から大正の感性のあり方を具現化した画家だったそうで、この松涛美術館のすぐ近くに住んでいたようです。裕福な家に育ったのですが、駆け落ちしたり転々としたようで、後に結核になって実家に戻りました。
富永太郎 「自画像」
振り返る自画像です。こちらを怪訝そうな目で見ていて、暗めの色を使っているためか重厚な雰囲気がありました。
近くに他の作品もあったのですが、色々な作風があるようで、マティスやピカソを彷彿とするような画風もありました。また、詩の原稿や本、手帳なども展示さてています。
<Ⅶ章.フォービズムの風-独立美術協会の周辺>
ここから2階の展示です。まずは代々木一帯で日本的フォービスムを具現化していた画家たちのコーナーで、その中で最も早く代々木に来たのは児島善三郎だそうです。また、石原雅夫という画商の店が初台の近くにあったそうで、彼はフランスからアンポールという絵の具や画材を輸入していたらしく、「アンポールの会」という組織も作られたようです。初台の店まで新宿や落合あたりの画家もやってきて、店はサロンのようになっていたそうです。
児島善三郎 「桜の頃」
左側に湾曲する川が描かれ、奥にはそこに架かる橋などが見えます。右側にはその脇で花を咲かす沢山の桜並木が描かれ、右下にはん帽子をかぶった人の姿もあります。全体的に単純化されていて、木々や湾曲から心地よいリズムを感じますが、児島善三郎にしては整然とした感じで、まだ具象的で色もそんなに強くないかな。
この隣には「赤松の丘」(★こちらで観られます)という作品もあったのですが、同じ年に描かれたとは思えないくらい単純化されていました。
寺田政明 「谷中真島町(モデル坂付近)」
街角の風景を描いた作品で、太く黒い輪郭に風化したような塗り方で描かれています。力強くてやや佐伯のような画風に見えるかな。そのせいか日本の街角とは思えないくらい重厚で洒落た雰囲気がありました。近くで観ると絵の具が厚塗りされています。
<Ⅷ章. 郊外を刻む-版画家たちの代々木グループ>
代々木上原には代々木グループという版画家のグループがいたそうで、平塚運一や棟方志功も名を連ねていたそうです。
前田政雄 「代々木風景」
代々木の普通の道を描いた版画で、細い線を使った表現となっています。その為、どこか整然としたものを受けつつ、白と黒の強いコントラストが全体に力強さを与えているように思いました。
ここには他にも数点並んでいたのですが、明治神宮を主題にした作品が多かったように思います。
<Ⅸ章. 同潤会アパートメントに住む―蔵田周忠と型而工房>
続いては建築家の蔵田周忠のコーナーです。蔵田周忠は昭和のはじめに代官山同潤会アパートに住んでモダニズムの住宅設計や生活向上を目指した「型而工房」の活動を展開したそうです。そして、千駄ヶ谷に内田邸、代官山にトモエ薬局という建物の設計をしたようで、ここに関連資料が並んでいました。
まず、千駄ヶ谷の内田邸ですが、家の図面や写真、模型が展示されています。直線と直角が多い幾何学的な設計で、モダンな雰囲気を感じます。 一方、代官山のトモエ薬局も図面と写真が展示されていて、こちらも三角を組み合わせたような形ですっきりしていました。
他にも同潤会アパートの手すりや食堂の扉などが展示されていました。
<Ⅹ章.安藤照とハチ公と塊人社-昭和前期の彫刻家たち>
10章は渋谷駅の前にあるハチ公像に深い関わりのある安藤照らのコーナーです。現在の渋谷駅前のハチ公像は2代目で、安藤照の息子の安藤士(たけし)が作ったそうで、初代は安藤照が作ったものの戦争の際に金属回収で溶かされてしまったらしく現存しません。安藤照は塊人社という若手の彫刻グループの中心メンバーだったらしく、マイヨール的なおおらかな造形だったそうです。しかしその作品のほとんどは戦災で失われたらしく、ここも写真が中心となっていました。
安藤照 「ハチ公伏臥像」
伏せて横を観る姿の小さなハチ公像です。これは皇室に献上する作品として製作したものの1体(全5体あった)だそうで、戦後に安藤家から彫り出されたそうです。左前足は溶けているのですが、これは空襲で焼けてしまったとのことでした。その由来のせいか全体的にちょっとゴツゴツした印象もうけますが、ハチ公は意志の強そうな顔をしていました。
周りには安藤照の作品の写真があり、確かにマイヨールのような優美な雰囲気がありました。
<終章.都市の遊歩者-谷中安規と《街の本》>
最後は戦後のコーナーで、復興して行く盛場を描いた谷中安規の作品が1点だけ展示されていました。
谷中安規 「街の本 渋谷」
黒地に赤の切り絵のような作品で、汽車の後ろ姿やネオンの建物が描かれています。ちょっと寂しいような感じも受けましたが、郷愁を誘われるちょっとシュールな雰囲気がありました。
ということで、有名な作家から知らない作家まで、幅広く活動を知ることが出来ました。普段は画家ごとに取り上げられることが多いですが、特定の地域でお互いの活動の影響を知ることができるというのは面白いと思います。
おまけ:
板橋でも池袋モンパルナスの展示が開かれています。私は会期中に行けるかどうか…。
展覧会名:池袋モンパルナス展 ようこそアトリエ村へ
参考リンク:http://www.itabashiartmuseum.jp/art/schedule/now.html
期間:2011年11月19日(土)~2012年1月9日(祝)
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前回ご紹介したフェルメールの展示を観る前に、同じ東急の中(8F)にあるタントタント渋谷店というイタリアンで遅いランチをとっていました。

【店名】
タントタント渋谷店
【ジャンル】
イタリアン
【公式サイト】
http://www.lemondedesgourmet.co.jp/restaurant/tanto-shibuya/index.html
食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13001925/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
渋谷駅/京王井の頭線神泉駅
【近くの美術館】
Bunkamuraザ・ミュージアム
松濤美術館
たばこと塩の博物館
など
【この日にかかった1人の費用】
2300円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
ランチには遅い時間に行ったせいか、空いていてゆっくり食べることができました。
店内はこんな感じ。さっぱりしたシンプルな内装です。

ちなみにタントタントというのはもっと沢山という意味らしいです。何か日本語の「たんと」に似てますw (でも量は普通です)
ランチメニューでも1人1800円くらいからとちょっと高めですが、クリスマスイブだったのでちょっと奮発。 この日はペアピッツァランチ(2名で3990円)を頼みました。
いくつか組み合わせを選べるのですが、前菜orサラダは前菜、5種類から選べるパスタは+315円の追加料金のかかるズワイ蟹とフレッシュトマトのスパゲティの大盛り(更に+315円)、4種類から選ぶピッツァは粗挽きソーセージとスウィートコーン モッツァレッラのピッツァ を頼みました。
まずは前菜。

こちらはいずれも期待通りの味でした。特にぷりぷりの海老が美味しかったです^^
こちらはピッツァ。

頼んだ後にマルゲリータにしてけば良かったかなと思いましたが、こちらも十分美味しかったです。生地がパリッとしているところとモチッとしたところがしっかり分かれています。
こちらはスパゲティ

丁度いい茹で加減で、味付けも良かったです。
食後はコーヒーにしました。

こちらもしっかりした美味しいコーヒーでしたが、特別なものというほどでもありません。
連れは紅茶でした。こちらも良い香りです。

デザートはメイプルのケーキ。

これは至って普通w
ということで、若干高めだと思いますが、接客も良くてゆっくりと食べることが出来ました。この辺には食べる所が多いですが、洒落てるところで静かに食べるのは結構難しいので、今後も重宝しそうです。

【店名】
タントタント渋谷店
【ジャンル】
イタリアン
【公式サイト】
http://www.lemondedesgourmet.co.jp/restaurant/tanto-shibuya/index.html
食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13001925/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
渋谷駅/京王井の頭線神泉駅
【近くの美術館】
Bunkamuraザ・ミュージアム
松濤美術館
たばこと塩の博物館
など
【この日にかかった1人の費用】
2300円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
ランチには遅い時間に行ったせいか、空いていてゆっくり食べることができました。
店内はこんな感じ。さっぱりしたシンプルな内装です。

ちなみにタントタントというのはもっと沢山という意味らしいです。何か日本語の「たんと」に似てますw (でも量は普通です)
ランチメニューでも1人1800円くらいからとちょっと高めですが、クリスマスイブだったのでちょっと奮発。 この日はペアピッツァランチ(2名で3990円)を頼みました。
いくつか組み合わせを選べるのですが、前菜orサラダは前菜、5種類から選べるパスタは+315円の追加料金のかかるズワイ蟹とフレッシュトマトのスパゲティの大盛り(更に+315円)、4種類から選ぶピッツァは粗挽きソーセージとスウィートコーン モッツァレッラのピッツァ を頼みました。
まずは前菜。

こちらはいずれも期待通りの味でした。特にぷりぷりの海老が美味しかったです^^
こちらはピッツァ。

頼んだ後にマルゲリータにしてけば良かったかなと思いましたが、こちらも十分美味しかったです。生地がパリッとしているところとモチッとしたところがしっかり分かれています。
こちらはスパゲティ

丁度いい茹で加減で、味付けも良かったです。
食後はコーヒーにしました。

こちらもしっかりした美味しいコーヒーでしたが、特別なものというほどでもありません。
連れは紅茶でした。こちらも良い香りです。

デザートはメイプルのケーキ。

これは至って普通w
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先週の土曜日に、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで、「フェルメールからのラブレター展 コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ」を観てきました。色々とネタを溜め込んでいますが、注目の展覧会ですので先にご紹介しておこうと思います。

【展覧名】
フェルメールからのラブレター展
コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/11_loveletter/index.html
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/11_loveletter.html
【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅
【会期】2011/12/23(金・祝)~2012/3/14(水)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
展示が始まって2日目でしたが、混んでいて絵の前に列ができるくらいでした。しかし帰る頃には結構空いていたので、行くなら夜の時間帯が良いかもしれません。会期が進むと混んでくると予想されますので、早いうちがおすすめです。
さて、今回は手紙を主題としたフェルメールの作品3点を含む約40点程度の17世紀オランダ絵画展示となっています。フェルメールの作品は全世界で30数点なので、いかに貴重な内容か分かると思います。展覧会は4つの章に分かれていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。
参考記事:
フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画
ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 2回目 (国立西洋美術館)
<第1章 人々のやりとり-しぐさ、視線、表情>
まずは日常の場面を描いた作品のコーナーです。ここにある作品は17世紀オランダの当時の実景を描いているように見えますが、実はアトリエで考察されて描かれているようで、楽しみのための作品という性格も強いようです。また、飲み食いや会話を楽しみ、音楽を奏でる人々の絵に道徳的な言葉を添えて、欲望のままに生きることを注意したり、絵にオランダのことわざを込めていることもあるようです。
クウィレイン・ファン・ブレーケレンカム 「感傷的な会話」
部屋の窓際で話している座った長髪の男性と、椅子に腰掛けた女性を描いた作品です。左から光が差して、部屋の壁には岩山の絵が飾ってあります。また、男の足元にはバイオリンがあり、これは「あなたと音楽を奏でたい」という意味で求愛の場面を示しているそうです。お互いのポーズは控えめで、この頃のマナーの入門書に従って描かれているとも説明されていました。この頃の恋愛は結婚を前提であれば比較的自由だったそうですが、背景にある岩山の絵が、ちょっと困難な雰囲気を象徴しているようでした。
ヘラルト・テル・ボルフ 「眠る兵士とワインを飲む女」
赤い椅子に腰掛けてグラスのワインを飲む女性と、テーブルでうつぶせになって寝る若い兵士を描いた作品です。非常に写実的で、特に女性の服の質感が光の反射によってよく分かります。 解説によると、2人のロマンスは実らなかったと思われるそうで、女性のモデルは画家の妹の恋愛の苦しみを反映しているようです。この画家は主題や様式の点においてフェルメールに影響を与えたとも説明されていました。
この近くにはデ・ホーホの作品などもありました。
ヤン・ステーン 「生徒にお仕置きをする教師」 ★こちらで観られます
木のスプーンのようなもので子供を叩いた教師と、叩かれて泣く男の子が描かれた作品です。男の子の足元には破れたテストの答案のようなものがあり、結果が悪かったのかな? 周りには沢山の子供たちが勉強しているのですが、男の子の脇でにやっと笑っている女の子や、じっと観ている子など 各人の性格が出ているように思いました。解説によると、この子たちは画家の10人の子供たちを描いているそうです。ちょっと可哀想ですが、この頃の子供も読み書きを頑張っていたんですね。
<第2章 家族の絆、家族の空間>
続いては家庭の様子を描いた作品のコーナーです。オランダ黄金時代の風俗画は、人々の様子や衣装などの日常を伝え、その中には既婚女性がよく描かれているそうです。同様に召使いの出てくる絵も多いように思われますが、この頃召使いがいたのは10%~20%程度の家庭だけだったようです。ここにはそうした家庭や家族の作品が並んていました。
ヘンドリック・マルテンスゾーン・ソルフ 「エーワウト・プリンスとその家族」
左のベッドの上で銀の何か(ガラガラ?)を持ってはしゃぐ子供と、右端で机に手をついている女の子、その2人の手を持っている女性が描かれた作品です。色鮮やかで細かく写実的に描かれていて、これは市議会議員の家を描いているそうです。右の子の前にはちんちんのポーズで立っている犬もいて微笑ましい光景です。子供たちの元気と母親の愛情が表れているように思えました。
ヤン・ステーン 「アントニウスとクレオパトラの宴」
これは歴史物で、家族や家庭を描いたものではないですが、この章にありました。古代ローマのアントニウスとエジプトのクレオパトラの宴が開かれ、並外れた大金を宴に費やすという賭けをしたクレオパトラが、価値の高い真珠を酢に解かせて飲み干したという逸話のシーンのようです。中央で胸に左手を当てて右手を差し出しクレオパトラを見つめる鎧姿のアントニウスと、ワイングラスを持って椅子に腰掛けるクレオパトラが描かれています。クレオパトラはあまりエジプトっぽくないかな。周りには片膝をついてワインの瓶と皿を持つ少年や、沢山の人々がいて、中には異様に小さくてピエロのような姿の人もいました。解説によると、この絵は虚栄は美徳ではないと説いているとのことで、戒めるためか全体的にお行儀の悪い雰囲気がありました。
ピーテル・デ・ホーホ 「中庭にいる女と子供」 ★こちらで観られます
壁に囲まれた中庭で、パンの入った籠を抱えて水差しを持った召使いの女性と、それを真似るように鳥かごを持った少女が描かれています。解説によると、この鳥かごは自由の代わりに安全をという意味が込められているようで、壁に囲まれた中でこそ安全が守られるというのを暗に表しているようでした。ほのぼのしている絵ですが、単にそれだけではなく様々な意味がありそうでした。
<第3章 手紙を通したコミュニケーション>
17世紀のオランダは最も識字率が高い国だったそうで、手紙のやり取りが多かったようです。そのネットワークは日本の出島にも届けられるほどだったそうですが、往復に2年かかることもあったようです。ここにはそうした手紙を主題とした作品が並んでいるのですが、描かれた背景などから手紙の相手や内容を読み解く手がかりが見つけられるとのことでした。
ヨハネス・フェルメール 「手紙を書く女」 ★こちらで観られます
机に向かってペンを走らせる黄色い服を着た女性が、ふとこちらを見るような感じの作品です。女性の顔から胸前、手のあたりにかけて光があたっているようで、目線も自然とその辺に向かいます。この手紙は男性に宛てた恋文ではないかとのことで、背景には愛の調和を示す楽器を描いた画中画がぼんやり浮かんでいました。光の加減や服、銀器などの表現は流石で、静かな時間の中の一瞬の様子を感じさせました。
ヨハネス・フェルメール 「手紙を読む青衣の女」 ★こちらで観られます
青い服を着た女性が手に持った手紙をじっと読んでいる様子を描いた作品です。女性の背後には大きな世界地図があり、送り主が旅に出ているのを感じさせます。この作品はつい最近修復されたそうで、全体的に明るい色となっていて、特にラピスラズリを使った青い服は優美な雰囲気を出しています。光から差し込む光は柔らかく表現されていて、女性の真剣な顔には静かな緊張感があるように思いました。
ヨハネス・フェルメール 「手紙を書く女と召使い」 ★こちらで観られます
窓際のテーブルに向かい手紙を書く女主人と、その背後で窓の外を見ながら待っている召使いを描いた作品です。解説によると、一見穏やかな光景に見えますが、手前には書き損じの手紙が転がっていて、テーブルクロスの色に表されるように最初は激情に駆られて手紙を書いていたのではないかとのことです。しかし、背景には赤子のモーセが敵であるファラオの娘に拾われるという「モーセの発見」の絵が飾ってあり、これは敵にも慈悲を持つ主題であることから、人の心を落ち着かせる物語であると考えられていたそうで、女主人は平静を取り戻しているのを示しているとのことでした。1枚の絵でそれだけの意味やストーリー性をを込められるというのが凄い…(読み解く人も凄い) また、こちらの絵も光を感じる作品で特に女主人の肩と帽子に当たる光が目を惹きました。
…それにしても召使いの早く書けよと言わんばかりの所在の無さはヤバいw
ヤーコブ・オホテルフェルト 「ラブレター」
椅子に座った白いサテンのドレスの女性が手紙を読んでいるところを描いた作品です。女性の後ろでは髪を召使いがセットしているのですが、手紙を読むのに夢中であまり気を払っていない様子です。女性の右には空の椅子があり、ここに手紙を渡した男がいたのではないかとのことで、やはり手紙は恋文のようです。 女性の心理までも伝わってきそうな作品でした。
エドワールト・コリエル 「レター・ラック」
暗い背景に帯で留られた沢山の手紙を描いた作品です。非常に写実的で陰影で立体感がつけられているので、暗い所で観たら本当にレターラックがあると間違えそうです。これは一種のだまし絵(トロンプ・ルイユ)のようで面白かったです。以前にここで似た作品を観たのを思い出しました。
参考記事:
奇想の王国 だまし絵展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
奇想の王国 だまし絵展 2回目 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
この辺にはラブレターの文例集やこの頃の手紙についての説明ボードがありました。当時のオランダの手紙には封筒がなく、折りたたんでから蝋で封をしていたそうです。
さらに少し進むと約6分の映像があり、フェルメールの「手紙を読む青衣の女」の修復に関する内容など、展示品4点の見所などを説明していました。
<第4章 職業上の、あるいは学術的コミュニケーション>
最後は学問や職業における手紙などを取り上げたコーナーです。読み書きを教わる子どもや、お互いにコミュニケーションのネットワークを持っていた学者や科学者なども描かれています。
フェルディナント・ボル 「本を持つ男」
黒い帽子を被り、右手でペン?を持ち左手で本を押さえて、遠くを見るような目で思案する学者を描いた作品です。写実的でありながらどこか優美で知的な雰囲気があり、明暗の巧みさがレンブラントみたいだと思ったら、レンブラントの弟子の作品でした。かなり私の好みの画風です。
ヤン・リーフェンス 「机に向かう簿記係」 ★こちらで観られます
この画家はレンブラントのライバルだった人です。左から光の差し込む場所で、机に目を向ける老人が座っている様子を描いた作品で、手前の本のようなものは帳簿らしいですが、宗教画の聖人か?と思うくらい賢そうな雰囲気です。特に驚きなのはヒゲの表現で、毛並みや光の反射など、レンブラントに負けないくらいの素晴らしい作品でした。
ヤン・ステーン 「弁護士への訪問」
ヒゲを撫でながら話しかける男と、机で手紙を書きながら本を押さえ、親身に話を聞いている弁護士を描いた作品です。しかし、後ろで弁護士の助手が他の客に渡している文書は不当に報酬を上げていると分かるらしく、実は悪徳弁護士のようです。ヤン・ステーンならではの皮肉の効いた内容となっていたのが面白かったです。
ということで、点数は少ないですが濃密な内容の展覧会となっていました。この展示を含め、2012年はフェルメール作品の来日が目白押しとなっていますので、是非全部観ておきたいところです。会期は長めですが混むのが嫌な方はお早めにどうぞ。
おまけ:
東急のショーウィンドウの写真。

余談ですが、bunkamuraのリニューアル後の一発目の展示ということで、どう変わったのかも楽しみにしていたのですが、ロッカーの位置が変わって展示スペースはむしろ狭くなったような…。

【展覧名】
フェルメールからのラブレター展
コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/11_loveletter/index.html
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/11_loveletter.html
【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅
【会期】2011/12/23(金・祝)~2012/3/14(水)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
展示が始まって2日目でしたが、混んでいて絵の前に列ができるくらいでした。しかし帰る頃には結構空いていたので、行くなら夜の時間帯が良いかもしれません。会期が進むと混んでくると予想されますので、早いうちがおすすめです。
さて、今回は手紙を主題としたフェルメールの作品3点を含む約40点程度の17世紀オランダ絵画展示となっています。フェルメールの作品は全世界で30数点なので、いかに貴重な内容か分かると思います。展覧会は4つの章に分かれていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。
参考記事:
フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画
ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 2回目 (国立西洋美術館)
<第1章 人々のやりとり-しぐさ、視線、表情>
まずは日常の場面を描いた作品のコーナーです。ここにある作品は17世紀オランダの当時の実景を描いているように見えますが、実はアトリエで考察されて描かれているようで、楽しみのための作品という性格も強いようです。また、飲み食いや会話を楽しみ、音楽を奏でる人々の絵に道徳的な言葉を添えて、欲望のままに生きることを注意したり、絵にオランダのことわざを込めていることもあるようです。
クウィレイン・ファン・ブレーケレンカム 「感傷的な会話」
部屋の窓際で話している座った長髪の男性と、椅子に腰掛けた女性を描いた作品です。左から光が差して、部屋の壁には岩山の絵が飾ってあります。また、男の足元にはバイオリンがあり、これは「あなたと音楽を奏でたい」という意味で求愛の場面を示しているそうです。お互いのポーズは控えめで、この頃のマナーの入門書に従って描かれているとも説明されていました。この頃の恋愛は結婚を前提であれば比較的自由だったそうですが、背景にある岩山の絵が、ちょっと困難な雰囲気を象徴しているようでした。
ヘラルト・テル・ボルフ 「眠る兵士とワインを飲む女」
赤い椅子に腰掛けてグラスのワインを飲む女性と、テーブルでうつぶせになって寝る若い兵士を描いた作品です。非常に写実的で、特に女性の服の質感が光の反射によってよく分かります。 解説によると、2人のロマンスは実らなかったと思われるそうで、女性のモデルは画家の妹の恋愛の苦しみを反映しているようです。この画家は主題や様式の点においてフェルメールに影響を与えたとも説明されていました。
この近くにはデ・ホーホの作品などもありました。
ヤン・ステーン 「生徒にお仕置きをする教師」 ★こちらで観られます
木のスプーンのようなもので子供を叩いた教師と、叩かれて泣く男の子が描かれた作品です。男の子の足元には破れたテストの答案のようなものがあり、結果が悪かったのかな? 周りには沢山の子供たちが勉強しているのですが、男の子の脇でにやっと笑っている女の子や、じっと観ている子など 各人の性格が出ているように思いました。解説によると、この子たちは画家の10人の子供たちを描いているそうです。ちょっと可哀想ですが、この頃の子供も読み書きを頑張っていたんですね。
<第2章 家族の絆、家族の空間>
続いては家庭の様子を描いた作品のコーナーです。オランダ黄金時代の風俗画は、人々の様子や衣装などの日常を伝え、その中には既婚女性がよく描かれているそうです。同様に召使いの出てくる絵も多いように思われますが、この頃召使いがいたのは10%~20%程度の家庭だけだったようです。ここにはそうした家庭や家族の作品が並んていました。
ヘンドリック・マルテンスゾーン・ソルフ 「エーワウト・プリンスとその家族」
左のベッドの上で銀の何か(ガラガラ?)を持ってはしゃぐ子供と、右端で机に手をついている女の子、その2人の手を持っている女性が描かれた作品です。色鮮やかで細かく写実的に描かれていて、これは市議会議員の家を描いているそうです。右の子の前にはちんちんのポーズで立っている犬もいて微笑ましい光景です。子供たちの元気と母親の愛情が表れているように思えました。
ヤン・ステーン 「アントニウスとクレオパトラの宴」
これは歴史物で、家族や家庭を描いたものではないですが、この章にありました。古代ローマのアントニウスとエジプトのクレオパトラの宴が開かれ、並外れた大金を宴に費やすという賭けをしたクレオパトラが、価値の高い真珠を酢に解かせて飲み干したという逸話のシーンのようです。中央で胸に左手を当てて右手を差し出しクレオパトラを見つめる鎧姿のアントニウスと、ワイングラスを持って椅子に腰掛けるクレオパトラが描かれています。クレオパトラはあまりエジプトっぽくないかな。周りには片膝をついてワインの瓶と皿を持つ少年や、沢山の人々がいて、中には異様に小さくてピエロのような姿の人もいました。解説によると、この絵は虚栄は美徳ではないと説いているとのことで、戒めるためか全体的にお行儀の悪い雰囲気がありました。
ピーテル・デ・ホーホ 「中庭にいる女と子供」 ★こちらで観られます
壁に囲まれた中庭で、パンの入った籠を抱えて水差しを持った召使いの女性と、それを真似るように鳥かごを持った少女が描かれています。解説によると、この鳥かごは自由の代わりに安全をという意味が込められているようで、壁に囲まれた中でこそ安全が守られるというのを暗に表しているようでした。ほのぼのしている絵ですが、単にそれだけではなく様々な意味がありそうでした。
<第3章 手紙を通したコミュニケーション>
17世紀のオランダは最も識字率が高い国だったそうで、手紙のやり取りが多かったようです。そのネットワークは日本の出島にも届けられるほどだったそうですが、往復に2年かかることもあったようです。ここにはそうした手紙を主題とした作品が並んでいるのですが、描かれた背景などから手紙の相手や内容を読み解く手がかりが見つけられるとのことでした。
ヨハネス・フェルメール 「手紙を書く女」 ★こちらで観られます
机に向かってペンを走らせる黄色い服を着た女性が、ふとこちらを見るような感じの作品です。女性の顔から胸前、手のあたりにかけて光があたっているようで、目線も自然とその辺に向かいます。この手紙は男性に宛てた恋文ではないかとのことで、背景には愛の調和を示す楽器を描いた画中画がぼんやり浮かんでいました。光の加減や服、銀器などの表現は流石で、静かな時間の中の一瞬の様子を感じさせました。
ヨハネス・フェルメール 「手紙を読む青衣の女」 ★こちらで観られます
青い服を着た女性が手に持った手紙をじっと読んでいる様子を描いた作品です。女性の背後には大きな世界地図があり、送り主が旅に出ているのを感じさせます。この作品はつい最近修復されたそうで、全体的に明るい色となっていて、特にラピスラズリを使った青い服は優美な雰囲気を出しています。光から差し込む光は柔らかく表現されていて、女性の真剣な顔には静かな緊張感があるように思いました。
ヨハネス・フェルメール 「手紙を書く女と召使い」 ★こちらで観られます
窓際のテーブルに向かい手紙を書く女主人と、その背後で窓の外を見ながら待っている召使いを描いた作品です。解説によると、一見穏やかな光景に見えますが、手前には書き損じの手紙が転がっていて、テーブルクロスの色に表されるように最初は激情に駆られて手紙を書いていたのではないかとのことです。しかし、背景には赤子のモーセが敵であるファラオの娘に拾われるという「モーセの発見」の絵が飾ってあり、これは敵にも慈悲を持つ主題であることから、人の心を落ち着かせる物語であると考えられていたそうで、女主人は平静を取り戻しているのを示しているとのことでした。1枚の絵でそれだけの意味やストーリー性をを込められるというのが凄い…(読み解く人も凄い) また、こちらの絵も光を感じる作品で特に女主人の肩と帽子に当たる光が目を惹きました。
…それにしても召使いの早く書けよと言わんばかりの所在の無さはヤバいw
ヤーコブ・オホテルフェルト 「ラブレター」
椅子に座った白いサテンのドレスの女性が手紙を読んでいるところを描いた作品です。女性の後ろでは髪を召使いがセットしているのですが、手紙を読むのに夢中であまり気を払っていない様子です。女性の右には空の椅子があり、ここに手紙を渡した男がいたのではないかとのことで、やはり手紙は恋文のようです。 女性の心理までも伝わってきそうな作品でした。
エドワールト・コリエル 「レター・ラック」
暗い背景に帯で留られた沢山の手紙を描いた作品です。非常に写実的で陰影で立体感がつけられているので、暗い所で観たら本当にレターラックがあると間違えそうです。これは一種のだまし絵(トロンプ・ルイユ)のようで面白かったです。以前にここで似た作品を観たのを思い出しました。
参考記事:
奇想の王国 だまし絵展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
奇想の王国 だまし絵展 2回目 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
この辺にはラブレターの文例集やこの頃の手紙についての説明ボードがありました。当時のオランダの手紙には封筒がなく、折りたたんでから蝋で封をしていたそうです。
さらに少し進むと約6分の映像があり、フェルメールの「手紙を読む青衣の女」の修復に関する内容など、展示品4点の見所などを説明していました。
<第4章 職業上の、あるいは学術的コミュニケーション>
最後は学問や職業における手紙などを取り上げたコーナーです。読み書きを教わる子どもや、お互いにコミュニケーションのネットワークを持っていた学者や科学者なども描かれています。
フェルディナント・ボル 「本を持つ男」
黒い帽子を被り、右手でペン?を持ち左手で本を押さえて、遠くを見るような目で思案する学者を描いた作品です。写実的でありながらどこか優美で知的な雰囲気があり、明暗の巧みさがレンブラントみたいだと思ったら、レンブラントの弟子の作品でした。かなり私の好みの画風です。
ヤン・リーフェンス 「机に向かう簿記係」 ★こちらで観られます
この画家はレンブラントのライバルだった人です。左から光の差し込む場所で、机に目を向ける老人が座っている様子を描いた作品で、手前の本のようなものは帳簿らしいですが、宗教画の聖人か?と思うくらい賢そうな雰囲気です。特に驚きなのはヒゲの表現で、毛並みや光の反射など、レンブラントに負けないくらいの素晴らしい作品でした。
ヤン・ステーン 「弁護士への訪問」
ヒゲを撫でながら話しかける男と、机で手紙を書きながら本を押さえ、親身に話を聞いている弁護士を描いた作品です。しかし、後ろで弁護士の助手が他の客に渡している文書は不当に報酬を上げていると分かるらしく、実は悪徳弁護士のようです。ヤン・ステーンならではの皮肉の効いた内容となっていたのが面白かったです。
ということで、点数は少ないですが濃密な内容の展覧会となっていました。この展示を含め、2012年はフェルメール作品の来日が目白押しとなっていますので、是非全部観ておきたいところです。会期は長めですが混むのが嫌な方はお早めにどうぞ。
おまけ:
東急のショーウィンドウの写真。

余談ですが、bunkamuraのリニューアル後の一発目の展示ということで、どう変わったのかも楽しみにしていたのですが、ロッカーの位置が変わって展示スペースはむしろ狭くなったような…。
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先週、会社の帰りに六本木のサントリー美術館で、「殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次-保永堂版・隷書版を中心に-」を観てきました。ここ数日、六本木の展覧会をご紹介していますので、こちらも合わせてご紹介しておこうと思います。

【展覧名】
殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次-保永堂版・隷書版を中心に-
【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/11vol06/index.html
【会場】サントリー美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2011年12月17日(土)~2012年1月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(平日18時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
3連休前の週末でしたが、平日ということもあり空いていてゆっくりと観ることができました。
さて、今回の展示は非常に有名な歌川広重の東海道五十三次をテーマにした内容となっています。
東海道というのは江戸時代の江戸日本橋と京都を結ぶ街道で、元々は幕府の物資や役人の為の道でしたが、江戸時代に大名に課せられた参勤交代の制度によって街道と宿場は発展し、江戸中期以降は庶民にも利用されるようになり賑わいました。東海道は伊勢参りのルートでもあったため、老若男女が伊勢詣の為に使ったそうで、中には犬の伊勢詣もあったそうです。
そんな東海道を浮世絵にした歌川広重の東海道五十三次は、1833年に版元の保永堂[ほえいどう](竹内孫八)と僊鶴堂 [せんかくどう](鶴屋喜右衛門)から共同出版され、後に保永堂単独の出版となりました。そして広重の代表作と言える大ヒット作となり、広重は生涯に20種類以上の東海道ものを制作したようです。1840年に丸屋清次郎の寿鶴堂[じゅかくどう]から出版された「東海道」もその中の1つで、画中の題が隷書体(れいしょたい)で書かれていることから隷書版東海道と呼ばれるそうです。この展示では保永堂版と隷書版を比較するなど、様々な表現の工夫や変化も見られるようになっていました。詳しくは気に入った作品を通してご紹介しようと思います。なお、過去にも何度か東海道五十三次シリーズはご紹介していますので、今回はなるべく以前ご紹介しなかった作品を挙げていこうと思います。
参考記事:
浮世絵入門 -広重《東海道五十三次》一挙公開- (山種美術館)
広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展 (うらわ美術館)
1 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」 ★こちらで観られます
2 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日本橋 行烈振出 (変わり図)」
まずはスタートの日本橋の図は2枚並んでいました。朝之景のほうは奥から日本橋を渡ってくる大名行列の先頭と、その手前に天秤を担ぐ魚売り達が描かれ、右には犬の姿もあります。それに対して行烈振出は橋の前の人々がだいぶ増えて、日本橋の賑わいを感じさせます。これは行烈振出のほうが後の版らしく、だいぶごちゃっとした雰囲気になっていました。
3 歌川広重 「隷書版 東海道一 五十三次 日本橋」
これも日本橋ですが東海道五十三次シリーズではなく隷書版東海道の作品で、上記2点と並んで展示されていました。左右に広がる日本橋を俯瞰するような感じで、橋の向こうには富士山を背景に沢山の蔵が規則的に並んでいます。蔵には商標を記しているのですが、よく観ると、右から順に、「新坂五十三次芝丸清板」と読めるそうです(芝と板は読めませんでしたがw) 広重の作品にもこうした遊びが随所にあって面白いです。
この辺にはこうした変わり図と隷書版を合わせた3枚セットの作品が並んでいました。変わり図は色合いや構図が若干変わっていて、一種の間違い探しみたいなw やはり変わる前の方が好みのものが多いかな。
15 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 戸塚 元甼別道」
16 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 戸塚 元町別道 (変わり図)」
平均的な旅人が1泊目に宿を取るのが戸塚だったそうで、ここでも2枚が展示されていました。元甼別道の方では辺りが暗くなり、右には橋を渡ってくる旅人、左では米屋の前で馬から飛び降りている男性などが描かれています。それに対して変わり図では旅人は馬に乗る姿に変わっていて、米屋の戸が窓となっていて背景が見えなくなっているなどの変化があります。気のせいか色も明るく昼間のような雰囲気でした。 解説によると、こうした変更は版元の意向で行われていたようです。
19 歌川広重 「隷書版 東海道七 五十三次 藤澤」
夕暮れから夜頃の藤沢の宿場町の様子を描いた作品です。たくさんの人が道を行き交い、提灯を持った女性は人々に声をかけたり、旅人の客引きをしているようです。旅先の夜の情景を思い出すような、楽しくてどこか懐かしさも感じるような雰囲気でした。
この隣にあった五十三次の平塚も大好きな作品です。少し進むと富士山が描かれた「武蔵野図屏風」や尾形乾山と尾形光琳の合作「銹絵雪景富士図角皿」などがあり、箱根付近の富士の雰囲気を盛り上げていました。
参考記事:夢に挑む コレクションの軌跡 (サントリー美術館)
27 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 箱根 湖水圖」
切り立った山と、その急坂を行く大名行列、左半分には芦ノ湖の美しい風景と富士山が描かれた作品です。天下の険の名に相応しく、そびえる山が強調されて当時の難所であったことが伺えます。色とりどりに描かれているのもリズミカルで観ていて楽しい作品です。
参考記事:芦ノ湖~大涌谷の写真
31 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 沼津 黄昏圖」
逆くの字に曲がる道を行く3人の旅人を描いた作品で、周りは夜で、中央辺りに大きな丸い月が浮かんでいます。旅人のうちの1人は背中に大きな天狗の面を背負っていて、この人は金毘羅参りに行くそうです。(奉納のための天狗の面を背負う約束事があるそうで、後の方の展示でも同様に天狗の面を背負っている作品がありました。) 月夜のせいか静かな雰囲気でした。
この辺にも屏風があったかな。
35 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 吉原 左冨士」」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、江戸から京都に向かう際、いつも右側に見えているはずの富士山が、蛇行する道によって左側に見えるので左富士と呼ばれる地域を描いています。松並木を行く馬の背に3人の子供たちが乗っているのですが、寝ている子もいるような…。また、道は結構細くて馬1頭で道を塞いでいますw 手前から奥に続く並木は遠近感と長い距離を感じさせました。この構図が好みです。
この近くには大好きな「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」もありました。
48 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 丸子 名物茶店 (初摺)」 ★こちらで観られます
49 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 鞠子 名物茶店 (後摺)」
こちらは初摺と後摺をセットで展示していました。どちらもとろろで有名な丸子(まりこ)の茶屋のような所で2人の男がとろろ汁を食べている様子と、女性が器を出しているところが描かれ、茶屋の先にはもう一人の男が道を歩いています。解説によると、この2人は東海道中膝栗毛の弥次さん喜多さんを思わせる(物語では2人は食べられなかったらしい)そうです。 2枚は一見両方同じように見えますが、タイトルが丸子と鞠子で違ったり、女中と食べている男の着物の色が後摺では薄くなっていたり、道の男の服の模様が無くなっているなどの変更点がありました。絵師は初摺しかチェックしなかったのでこうした変更は日常茶飯事だったそうで、初摺のほうが気合が入っているように感じました。
この先には最大の難所である大井川の近くの宿場が続きます。
59 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日坂 佐夜ノ中山」
Jの字を書くような急坂を描いた作品です。構図も面白いですが、中央辺りの道の中ほどに置かれた夜啼石(よなきいし)という大きな石を見物している人々が目を惹きます。解説によるとこの石には伝説があり、この石の傍らで山賊に殺された妊婦がこの石に乗り移って、夜な夜な泣いたそうです。赤ん坊は助かり、後に母の仇を討つというストーリーですが、こちらや「東海道廿六 五十三次 日阪」ではそれほど皆恐れずに見物しているように見えました。
この次は大好きな「東海道五拾三次之内 掛川 秋葉山遠望」もありました。
64 歌川広重 「隷書版 東海道廿八 五十三次 袋井」
田んぼの間を走るじぐざぐの道と、右から左に上げられている3つの大凧を描いた作品です。凧の配置には幾何学的なリズムがあって心地よく、背景のジグザグの道も含めて面白い作品でした。
上階は荒井までです。続いて下の階に進むと、階段の下には日本橋の絵を立体化したようなパネルもありました。
下の階の最初は「天童広重と円山応挙」というコーナーとなっています。これは、1848年~1854年頃に山形の天童藩からの依頼で描いた広重の肉筆画で、それが天童広重と呼ばれているようです。当時の天童藩は財政難で十年年賦という地方債のようなもの?を出していて、その満了期に近づくと広重の絵を渡して慰労と新たな10年の上納の契約をさせていたそうです。こうして描かれた広重の作品は円山応挙や松村景之ら四条派の描写を学んだ形跡が観られるとのことで、応挙の作品と共に展示されていました。
歌川広重 「王子音無川・東都王子不動之瀧・王子滝之川」
3枚セットの肉筆の掛け軸で、中央に白い滝、右に大きな川とその川岸の家々、左は紅葉に染まる川岸を写実的に描いています。遠近感とかは応挙に似てると言われれば似てるかな。版画の浮世絵とはまた違った情緒ある主題で面白かったです。
参考記事:円山応挙-空間の創造 (三井記念美術館)
ここから再び五十三次です。
81 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 赤阪 旅舎招婦ノ圖」
旅館の中庭から部屋を観たような構図の作品です。廊下を手ぬぐいを下げて歩く客や、支度をする飯盛女や遊女、キセルを吸ってくつろぐ客など全体的に楽しげな雰囲気です。庭には石灯籠とソテツの木があるなど、中々良さそうな宿で旅情がありました。
この1つ前には客引き女(留女)がしつこいので有名だった「御油」などもあります。
85 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 岡崎 矢矧之橋 (初摺)」
86 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 岡崎 矢矧之橋 (後摺)」
これも初摺と後摺が並んで展示されていました。左下から右にかけて橋が描かれ、橋の上には大名行列が並び、背景には岡崎城と山が見えます。2つを比べると、奥の山が左に伸びていたり、後摺ではグラデーションが簡略化されているなどの違いがありました。比べてみると色々と違いがありますね。(結構、工程を簡単にしているように思えます)
92 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 宮 熱田神事」
右に大きな鳥居の左半分だけが描かれ、それ以外の画面には沢山の人々が綱を引っ張って走る様子を描いています。先頭付近には馬がいて、これは馬を奉納する神事だそうです。全体的に勢いがあり、鳥居の配置が大胆に思いました。
この辺にある「四日市 三重川」や「庄野 白雨」は何度観ても大好きです。
97 歌川広重 「隷書版 東海道四十四 五十三次 四日市」 ★こちらで観られます
大きな鳥居のある宿場町を描いた作品で、沢山の旅人が行き交っている中、首に何かを巻きつけた犬の姿があります。解説によるとこの犬は主人のために伊勢参りにいく途中らしく、旅人に名物のまんじゅうを貰っていました。こういう感じで人々に恵んで貰いながら犬も旅したそうですが、賢すぎて驚きます。 犬に目的地が分かるのか、川や関所はどうやって通過したのかなど不思議です。 今回の展覧会のタイトルも本当に描かてているんですねw
111 歌川広重 「隷書版 東海道五十一 五十三次 水口」
左右の山に囲まれたじぐざぐの坂道を行く旅人が描かれた作品で、坂の上には牛を連れた人も描かれています。その先には入道雲と青空が広がり、緑や青、雲の白など爽やかな印象を受けます。また、ここは美松という枝が数十に分かれる珍しい松が名物のようで、辺りにはそれっぽい松も生えていました。 隷書版も結構いい作品が多くて面白いです。
この辺になるとゴールの京都も近くなっていて、「近江名所図屏風」など近江や京都の街を俯瞰するような風景の屏風が並び雰囲気を盛り上げます。これはこれで圧巻です。それ以外も蒔絵や櫛など近江八景を題材にした作品もありました。
119 歌川広重 「隷書版 東海道五十五 五十三次 大尾 京」
終着点の三条大橋の上を沢山の人々が行き交う様子を描いた作品です。三条大橋から観た風景となっていて、大原女や茶筅売など地元の商売人などの姿があり、背景には八坂の塔、清水寺などが描かれていました。非常に活気があり五十三次シリーズよりもこっちの方が好みかもw
120 歌川広重 「保永堂版 真景 東海道五十三驛 續画」
これは保永堂版東海道五十三次の55枚をセット販売する際に使われた袋で、道中の登場人物を彷彿とする35人の人々がぎっしり描かれているのが楽しげです。「えぶくろ」と呼ばれていたそうですが、今は切り取られていて原型は不明とのことでした。現存数も少なく貴重な品のようです。
ということで、毎年のように観ている東海道五十三次ですが、隷書版や変わり図との比較が観られたのでいつも以上に楽しめることができました。保存状態も良いので、このシリーズをまだ観たことがない方はこの機に一気に観ることをお勧めします。何度観ても浮世絵ってこんなに面白いんだ!という感動と新しい発見のある作品です。

【展覧名】
殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次-保永堂版・隷書版を中心に-
【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/11vol06/index.html
【会場】サントリー美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2011年12月17日(土)~2012年1月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(平日18時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
3連休前の週末でしたが、平日ということもあり空いていてゆっくりと観ることができました。
さて、今回の展示は非常に有名な歌川広重の東海道五十三次をテーマにした内容となっています。
東海道というのは江戸時代の江戸日本橋と京都を結ぶ街道で、元々は幕府の物資や役人の為の道でしたが、江戸時代に大名に課せられた参勤交代の制度によって街道と宿場は発展し、江戸中期以降は庶民にも利用されるようになり賑わいました。東海道は伊勢参りのルートでもあったため、老若男女が伊勢詣の為に使ったそうで、中には犬の伊勢詣もあったそうです。
そんな東海道を浮世絵にした歌川広重の東海道五十三次は、1833年に版元の保永堂[ほえいどう](竹内孫八)と僊鶴堂 [せんかくどう](鶴屋喜右衛門)から共同出版され、後に保永堂単独の出版となりました。そして広重の代表作と言える大ヒット作となり、広重は生涯に20種類以上の東海道ものを制作したようです。1840年に丸屋清次郎の寿鶴堂[じゅかくどう]から出版された「東海道」もその中の1つで、画中の題が隷書体(れいしょたい)で書かれていることから隷書版東海道と呼ばれるそうです。この展示では保永堂版と隷書版を比較するなど、様々な表現の工夫や変化も見られるようになっていました。詳しくは気に入った作品を通してご紹介しようと思います。なお、過去にも何度か東海道五十三次シリーズはご紹介していますので、今回はなるべく以前ご紹介しなかった作品を挙げていこうと思います。
参考記事:
浮世絵入門 -広重《東海道五十三次》一挙公開- (山種美術館)
広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展 (うらわ美術館)
1 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」 ★こちらで観られます
2 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日本橋 行烈振出 (変わり図)」
まずはスタートの日本橋の図は2枚並んでいました。朝之景のほうは奥から日本橋を渡ってくる大名行列の先頭と、その手前に天秤を担ぐ魚売り達が描かれ、右には犬の姿もあります。それに対して行烈振出は橋の前の人々がだいぶ増えて、日本橋の賑わいを感じさせます。これは行烈振出のほうが後の版らしく、だいぶごちゃっとした雰囲気になっていました。
3 歌川広重 「隷書版 東海道一 五十三次 日本橋」
これも日本橋ですが東海道五十三次シリーズではなく隷書版東海道の作品で、上記2点と並んで展示されていました。左右に広がる日本橋を俯瞰するような感じで、橋の向こうには富士山を背景に沢山の蔵が規則的に並んでいます。蔵には商標を記しているのですが、よく観ると、右から順に、「新坂五十三次芝丸清板」と読めるそうです(芝と板は読めませんでしたがw) 広重の作品にもこうした遊びが随所にあって面白いです。
この辺にはこうした変わり図と隷書版を合わせた3枚セットの作品が並んでいました。変わり図は色合いや構図が若干変わっていて、一種の間違い探しみたいなw やはり変わる前の方が好みのものが多いかな。
15 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 戸塚 元甼別道」
16 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 戸塚 元町別道 (変わり図)」
平均的な旅人が1泊目に宿を取るのが戸塚だったそうで、ここでも2枚が展示されていました。元甼別道の方では辺りが暗くなり、右には橋を渡ってくる旅人、左では米屋の前で馬から飛び降りている男性などが描かれています。それに対して変わり図では旅人は馬に乗る姿に変わっていて、米屋の戸が窓となっていて背景が見えなくなっているなどの変化があります。気のせいか色も明るく昼間のような雰囲気でした。 解説によると、こうした変更は版元の意向で行われていたようです。
19 歌川広重 「隷書版 東海道七 五十三次 藤澤」
夕暮れから夜頃の藤沢の宿場町の様子を描いた作品です。たくさんの人が道を行き交い、提灯を持った女性は人々に声をかけたり、旅人の客引きをしているようです。旅先の夜の情景を思い出すような、楽しくてどこか懐かしさも感じるような雰囲気でした。
この隣にあった五十三次の平塚も大好きな作品です。少し進むと富士山が描かれた「武蔵野図屏風」や尾形乾山と尾形光琳の合作「銹絵雪景富士図角皿」などがあり、箱根付近の富士の雰囲気を盛り上げていました。
参考記事:夢に挑む コレクションの軌跡 (サントリー美術館)
27 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 箱根 湖水圖」
切り立った山と、その急坂を行く大名行列、左半分には芦ノ湖の美しい風景と富士山が描かれた作品です。天下の険の名に相応しく、そびえる山が強調されて当時の難所であったことが伺えます。色とりどりに描かれているのもリズミカルで観ていて楽しい作品です。
参考記事:芦ノ湖~大涌谷の写真
31 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 沼津 黄昏圖」
逆くの字に曲がる道を行く3人の旅人を描いた作品で、周りは夜で、中央辺りに大きな丸い月が浮かんでいます。旅人のうちの1人は背中に大きな天狗の面を背負っていて、この人は金毘羅参りに行くそうです。(奉納のための天狗の面を背負う約束事があるそうで、後の方の展示でも同様に天狗の面を背負っている作品がありました。) 月夜のせいか静かな雰囲気でした。
この辺にも屏風があったかな。
35 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 吉原 左冨士」」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、江戸から京都に向かう際、いつも右側に見えているはずの富士山が、蛇行する道によって左側に見えるので左富士と呼ばれる地域を描いています。松並木を行く馬の背に3人の子供たちが乗っているのですが、寝ている子もいるような…。また、道は結構細くて馬1頭で道を塞いでいますw 手前から奥に続く並木は遠近感と長い距離を感じさせました。この構図が好みです。
この近くには大好きな「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」もありました。
48 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 丸子 名物茶店 (初摺)」 ★こちらで観られます
49 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 鞠子 名物茶店 (後摺)」
こちらは初摺と後摺をセットで展示していました。どちらもとろろで有名な丸子(まりこ)の茶屋のような所で2人の男がとろろ汁を食べている様子と、女性が器を出しているところが描かれ、茶屋の先にはもう一人の男が道を歩いています。解説によると、この2人は東海道中膝栗毛の弥次さん喜多さんを思わせる(物語では2人は食べられなかったらしい)そうです。 2枚は一見両方同じように見えますが、タイトルが丸子と鞠子で違ったり、女中と食べている男の着物の色が後摺では薄くなっていたり、道の男の服の模様が無くなっているなどの変更点がありました。絵師は初摺しかチェックしなかったのでこうした変更は日常茶飯事だったそうで、初摺のほうが気合が入っているように感じました。
この先には最大の難所である大井川の近くの宿場が続きます。
59 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日坂 佐夜ノ中山」
Jの字を書くような急坂を描いた作品です。構図も面白いですが、中央辺りの道の中ほどに置かれた夜啼石(よなきいし)という大きな石を見物している人々が目を惹きます。解説によるとこの石には伝説があり、この石の傍らで山賊に殺された妊婦がこの石に乗り移って、夜な夜な泣いたそうです。赤ん坊は助かり、後に母の仇を討つというストーリーですが、こちらや「東海道廿六 五十三次 日阪」ではそれほど皆恐れずに見物しているように見えました。
この次は大好きな「東海道五拾三次之内 掛川 秋葉山遠望」もありました。
64 歌川広重 「隷書版 東海道廿八 五十三次 袋井」
田んぼの間を走るじぐざぐの道と、右から左に上げられている3つの大凧を描いた作品です。凧の配置には幾何学的なリズムがあって心地よく、背景のジグザグの道も含めて面白い作品でした。
上階は荒井までです。続いて下の階に進むと、階段の下には日本橋の絵を立体化したようなパネルもありました。
下の階の最初は「天童広重と円山応挙」というコーナーとなっています。これは、1848年~1854年頃に山形の天童藩からの依頼で描いた広重の肉筆画で、それが天童広重と呼ばれているようです。当時の天童藩は財政難で十年年賦という地方債のようなもの?を出していて、その満了期に近づくと広重の絵を渡して慰労と新たな10年の上納の契約をさせていたそうです。こうして描かれた広重の作品は円山応挙や松村景之ら四条派の描写を学んだ形跡が観られるとのことで、応挙の作品と共に展示されていました。
歌川広重 「王子音無川・東都王子不動之瀧・王子滝之川」
3枚セットの肉筆の掛け軸で、中央に白い滝、右に大きな川とその川岸の家々、左は紅葉に染まる川岸を写実的に描いています。遠近感とかは応挙に似てると言われれば似てるかな。版画の浮世絵とはまた違った情緒ある主題で面白かったです。
参考記事:円山応挙-空間の創造 (三井記念美術館)
ここから再び五十三次です。
81 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 赤阪 旅舎招婦ノ圖」
旅館の中庭から部屋を観たような構図の作品です。廊下を手ぬぐいを下げて歩く客や、支度をする飯盛女や遊女、キセルを吸ってくつろぐ客など全体的に楽しげな雰囲気です。庭には石灯籠とソテツの木があるなど、中々良さそうな宿で旅情がありました。
この1つ前には客引き女(留女)がしつこいので有名だった「御油」などもあります。
85 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 岡崎 矢矧之橋 (初摺)」
86 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 岡崎 矢矧之橋 (後摺)」
これも初摺と後摺が並んで展示されていました。左下から右にかけて橋が描かれ、橋の上には大名行列が並び、背景には岡崎城と山が見えます。2つを比べると、奥の山が左に伸びていたり、後摺ではグラデーションが簡略化されているなどの違いがありました。比べてみると色々と違いがありますね。(結構、工程を簡単にしているように思えます)
92 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 宮 熱田神事」
右に大きな鳥居の左半分だけが描かれ、それ以外の画面には沢山の人々が綱を引っ張って走る様子を描いています。先頭付近には馬がいて、これは馬を奉納する神事だそうです。全体的に勢いがあり、鳥居の配置が大胆に思いました。
この辺にある「四日市 三重川」や「庄野 白雨」は何度観ても大好きです。
97 歌川広重 「隷書版 東海道四十四 五十三次 四日市」 ★こちらで観られます
大きな鳥居のある宿場町を描いた作品で、沢山の旅人が行き交っている中、首に何かを巻きつけた犬の姿があります。解説によるとこの犬は主人のために伊勢参りにいく途中らしく、旅人に名物のまんじゅうを貰っていました。こういう感じで人々に恵んで貰いながら犬も旅したそうですが、賢すぎて驚きます。 犬に目的地が分かるのか、川や関所はどうやって通過したのかなど不思議です。 今回の展覧会のタイトルも本当に描かてているんですねw
111 歌川広重 「隷書版 東海道五十一 五十三次 水口」
左右の山に囲まれたじぐざぐの坂道を行く旅人が描かれた作品で、坂の上には牛を連れた人も描かれています。その先には入道雲と青空が広がり、緑や青、雲の白など爽やかな印象を受けます。また、ここは美松という枝が数十に分かれる珍しい松が名物のようで、辺りにはそれっぽい松も生えていました。 隷書版も結構いい作品が多くて面白いです。
この辺になるとゴールの京都も近くなっていて、「近江名所図屏風」など近江や京都の街を俯瞰するような風景の屏風が並び雰囲気を盛り上げます。これはこれで圧巻です。それ以外も蒔絵や櫛など近江八景を題材にした作品もありました。
119 歌川広重 「隷書版 東海道五十五 五十三次 大尾 京」
終着点の三条大橋の上を沢山の人々が行き交う様子を描いた作品です。三条大橋から観た風景となっていて、大原女や茶筅売など地元の商売人などの姿があり、背景には八坂の塔、清水寺などが描かれていました。非常に活気があり五十三次シリーズよりもこっちの方が好みかもw
120 歌川広重 「保永堂版 真景 東海道五十三驛 續画」
これは保永堂版東海道五十三次の55枚をセット販売する際に使われた袋で、道中の登場人物を彷彿とする35人の人々がぎっしり描かれているのが楽しげです。「えぶくろ」と呼ばれていたそうですが、今は切り取られていて原型は不明とのことでした。現存数も少なく貴重な品のようです。
ということで、毎年のように観ている東海道五十三次ですが、隷書版や変わり図との比較が観られたのでいつも以上に楽しめることができました。保存状態も良いので、このシリーズをまだ観たことがない方はこの機に一気に観ることをお勧めします。何度観ても浮世絵ってこんなに面白いんだ!という感動と新しい発見のある作品です。
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先日ご紹介した森アーツセンターギャラリーの展示を観た後、同じ六本木ヒルズの1階上にある森美術館にハシゴして、メタボリズムの未来都市展を観てきました。(実はこれを観に行くのは2回目なのですが、1回目はかなりさっと観たのでご紹介を後回しにしていました。)

【展覧名】
メタボリズムの未来都市展 戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン
【公式サイト】
http://www.mori.art.museum/contents/metabolism/index.html
【会場】森美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】2011年9月17日~2012年1月15日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日19時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんは多かったですが、展示作品も大きめなのでさほど気にならず自分のペースで観ることができました。
さて、この展示はメタボリズムという戦後日本で起こった建築の一大運動を取り上げた初の展覧会となっています。メタボリズムと聞くと中年太りを想像してしまう昨今ですが、元々は新陳代謝を意味する言葉です。今回のテーマであるメタボリズム運動は、1960年に東京で介された世界デザイン会議に際して紹介されたもので、新陳代謝を繰り返しながら成長するように建築も成長に合わせて有機的に変化すべきという意味が込められているようです。今回は500点以上の写真や模型、資料などが並んでその運動について紹介していましたので、メモを元にざっくりとご紹介していこうと思います。
<メタボリスムの誕生>
メタボリズムは1960年に提唱された運動ですが、それには日本最大の建築家であった丹下健三の影響を受けたようです。最初のコーナーでは1938年頃から1958年までの日本の建築の歴史などを紹介し、メタボリズムの誕生について説明していました
まずは壁面のパネルの中に収まるように写真や映像、模型などがあり、日本の建築の歩みが分かるコーナーです。以前ご紹介した白井晟一の原爆堂の計画などもありました。
参考記事:建築家 白井晟一 精神と空間 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
その逆側には現在の広島平和記念資料館の広島ピースセンターのコーナーがあり、図面や地図が並んでいます。これはただの建築だけではなく、都市そのものの計画の中にあり、建物もそこに垂直に配されるような感じでした。この考えがメタボリズムに繋がっていくようです。 少し離れた所には1/100の模型もあります。
さらに進むと広島の基町 長寿園高層アパートの写真や図面、世界デザイン会議のポスターや会議関連の資料(出席者の名簿など)と一緒に川添登・菊竹清訓・黒川紀章らによって書かれたメタボリスムの提案の本の複製などもありました。
また、この部屋の中央には黒川の農村都市計画の模型と資料があったのですが、田んぼの上に幾何学的な都市が浮いているような斬新な計画で、その浮いている部分に都市機能を持たせて住むようでした。(これは実現せず) 他にも菊竹のスカイハウスという実現した計画(自宅)の資料や写真、模型などもあり、こちらは柱ではなく4面の壁で家を支えるような感じで、1階部分が無く浮いているような建物です。ちょっと耐震構造が心配に見えるけどどうなんだろうか…。 ちなみに菊竹清訓は上野にあった樅の木のような形のビルや江戸東京博物館や昭和館など、結構身近に観ていた建物も作っているので、何となくその面影も感じられました。
この部屋の最後あたりには丹下健三の25000人の為のコミュニティ計画という海に浮かぶ大きな構造の計画(実現せず)もあり次の章につながっていきます。
<メタボリズムの時代>
ここはまず、壁一杯の大きな画面に映像が流れ、東京湾を埋め立てて都市にするという計画や、沢山の建物が組み合わさったような築地再開発の構造などをCGで再現するコーナーがありました。CGで観るとイメージがつきやすいのですが、これが半端じゃなくデカイ建物で構成されていて、こんなに巨大なものを計画しても作れないだろ…とつまらないツッコミを入れたくなりましたw (資金とか以前に、物理的にそんな荷重に耐えられるのだろうかという疑問が…) 彼らメタボリストは都市の諸問題は無秩序な建設と解体が繰り返されるためであると考えたらしく、それを抑制するメガストラクチャーを提唱したようです。住宅やオフィス、交通網、インフラなどが一体となった都市を構想し、それが先ほどの東京湾の計画のような所に表れているようでした。近くには幾何学的に組み合わされた1/5000の模型などもあるのですが、やはりその巨大さと変わった形が強い印象を与えます。
さらに、丹下健三の実現した計画もいくつか紹介されていて、静岡新聞・静岡放送の東京支社や、山梨文化会館の写真がありました。山梨文化会館は甲府に行った時に近くから見て凄い存在感があったのを思い出しましたw (静岡新聞は銀座辺りだったかな) どちらも円筒形と箱のような形を組み合わせた独特のデザインです。
参考記事:舞鶴城(甲府城)の写真 (山梨旅行)
次の部屋では日本全国、特に東京から大阪にかけてを1つの巨帯都市とする日本列島改造に関する資料などのコーナーでした。 近くには伊勢神宮など日本の建築に関する本が並んだラックがあったのですが、これは日本の伝統建築を再解釈した川添登のコーナーのようで、彼の著書である『民と神』という本などもありました。彼の設計には日本の伝統を取り入れた様子が伺えます。
さらに隣の部屋では菊竹清訓の池袋計画、東京湾計画、海上都市といったものの模型や資料がありました。円筒に円筒が生えてくるような形の無数のビルがあるのがちょっと怖いw
その次には磯崎新の空中都市計画というコーナーがあり、丸の内や新宿、渋谷などの構想図とCG映像が展示されていました。これも巨大で円筒と円筒の間に建物があるような感じです。彼らは木のようなデザインに特徴があるような気がします。ここには他に、螺旋を組み合わせたような黒川紀章の計画もありました。これも巨大すぎて建物と言うよりは都市そのものといった感じでした。
次の部屋は実現した計画に関する資料が多いコーナーで、まずは大谷幸央の国立京都国際会館や出雲大社庁の舎などがありました。国立京都国際会館は京都の地下鉄の終点にある建物なので観た覚えがあるのですが、出雲大社庁の舎はその形に驚きました。合掌造りや神社を思わせる日本的な雰囲気と幾何学的な要素があり私の目には斬新に映りました。
他にも実現したものが沢山紹介されていて菊竹清訓のホテル東光園(米子)、大高正人の千葉県立中央図書館、黒川紀章の山形ハワイドリームランド(山形。今はもうない)、丹下健三の東京カテドラル聖マリア大聖堂(目白)や東京オリンピックの屋内総合競技場などもありました。また、次の部屋では南極の昭和基地が紹介されていて驚きました。こうして見ると結構実現している上、あれもそうだったのかという感じです。
さらに進むと黒川紀章の作ったカプセル建築というものがあります。これはコンテナのような部屋で、取替可能なメタボリズムを象徴するものです。1個作るのに1960年代当時のカローラ1台分くらいのコストらしくかなり安上がりのようです。この計画は実際に中銀のカプセルタワー(銀座)で実現していて、高速道路からも見えるので有名かな。映像で中の様子も分かるのですが、宇宙船を彷彿するけど狭そうw それでもこういう考えは夢があって好きですw 今回の展示に合わせて六本木ヒルズにも1つ置かれているようでした。
<空間から環境へ>
続いては「環境」をテーマにしたコーナーです。以前は空間が注目されていましたが、メタボリストの関心は代替可能で流動性のある環境へと映ったようです。このコーナーの最初には目玉のようなポスターが並び、これは環境をテーマにした展示のポスターのようでした。また、その近くには現代アートのような作品もありましたが、難しくて正直ここはわかりませんでしたw
そして次の部屋は大阪万国博覧会に関するコーナーで、大阪万博の建物の模型や資料が沢山並んでいました。エキスポ全体の模型や、大屋根と太陽の塔の模型などがある他、東芝IHI館にあった黒川紀章のテトラユニット(逆三角錐の作品)などもあります。
参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)
この章の最後の方にはこどもの国の計画の模型のコーナーもありました。
<グローバル・メタボリズム>
続いては世界に進出していったメタボリズムのコーナーです。万博以降、活動はグローバルとなり、世界各地で実現された計画が紹介されていました。
丹下らによるユーゴスラビア(現在のマケドニア)のスコピエ都心部再建計画の模型や写真、丹下のボローニャ市北部開発計画の模型と写真、菊竹の四方100m高さ32mもあるアクアポリス(沖縄国際海洋博覧会の建物)が船に引っ張られて移動する様子などが紹介されていました。特に巨大な建築物が船に曳航される写真は驚きです。
最後はメタボリズムラウンジという、現在進行中のプロジェクトを紹介するコーナーでした。
ということで、建築に詳しくない私でも楽しめましたが、情報量が多くて一度や二度では消化できなそうな感じでした。 意外と知っている建物が出てくるので、あれもこれもそうだったのか!と驚きもあったかな。その内、こういう建物を見て回りたいと思いました。今後の参考にもなりそうですので、建築好きの方は是非どうぞ。

【展覧名】
メタボリズムの未来都市展 戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン
【公式サイト】
http://www.mori.art.museum/contents/metabolism/index.html
【会場】森美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】2011年9月17日~2012年1月15日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日19時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんは多かったですが、展示作品も大きめなのでさほど気にならず自分のペースで観ることができました。
さて、この展示はメタボリズムという戦後日本で起こった建築の一大運動を取り上げた初の展覧会となっています。メタボリズムと聞くと中年太りを想像してしまう昨今ですが、元々は新陳代謝を意味する言葉です。今回のテーマであるメタボリズム運動は、1960年に東京で介された世界デザイン会議に際して紹介されたもので、新陳代謝を繰り返しながら成長するように建築も成長に合わせて有機的に変化すべきという意味が込められているようです。今回は500点以上の写真や模型、資料などが並んでその運動について紹介していましたので、メモを元にざっくりとご紹介していこうと思います。
<メタボリスムの誕生>
メタボリズムは1960年に提唱された運動ですが、それには日本最大の建築家であった丹下健三の影響を受けたようです。最初のコーナーでは1938年頃から1958年までの日本の建築の歴史などを紹介し、メタボリズムの誕生について説明していました
まずは壁面のパネルの中に収まるように写真や映像、模型などがあり、日本の建築の歩みが分かるコーナーです。以前ご紹介した白井晟一の原爆堂の計画などもありました。
参考記事:建築家 白井晟一 精神と空間 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
その逆側には現在の広島平和記念資料館の広島ピースセンターのコーナーがあり、図面や地図が並んでいます。これはただの建築だけではなく、都市そのものの計画の中にあり、建物もそこに垂直に配されるような感じでした。この考えがメタボリズムに繋がっていくようです。 少し離れた所には1/100の模型もあります。
さらに進むと広島の基町 長寿園高層アパートの写真や図面、世界デザイン会議のポスターや会議関連の資料(出席者の名簿など)と一緒に川添登・菊竹清訓・黒川紀章らによって書かれたメタボリスムの提案の本の複製などもありました。
また、この部屋の中央には黒川の農村都市計画の模型と資料があったのですが、田んぼの上に幾何学的な都市が浮いているような斬新な計画で、その浮いている部分に都市機能を持たせて住むようでした。(これは実現せず) 他にも菊竹のスカイハウスという実現した計画(自宅)の資料や写真、模型などもあり、こちらは柱ではなく4面の壁で家を支えるような感じで、1階部分が無く浮いているような建物です。ちょっと耐震構造が心配に見えるけどどうなんだろうか…。 ちなみに菊竹清訓は上野にあった樅の木のような形のビルや江戸東京博物館や昭和館など、結構身近に観ていた建物も作っているので、何となくその面影も感じられました。
この部屋の最後あたりには丹下健三の25000人の為のコミュニティ計画という海に浮かぶ大きな構造の計画(実現せず)もあり次の章につながっていきます。
<メタボリズムの時代>
ここはまず、壁一杯の大きな画面に映像が流れ、東京湾を埋め立てて都市にするという計画や、沢山の建物が組み合わさったような築地再開発の構造などをCGで再現するコーナーがありました。CGで観るとイメージがつきやすいのですが、これが半端じゃなくデカイ建物で構成されていて、こんなに巨大なものを計画しても作れないだろ…とつまらないツッコミを入れたくなりましたw (資金とか以前に、物理的にそんな荷重に耐えられるのだろうかという疑問が…) 彼らメタボリストは都市の諸問題は無秩序な建設と解体が繰り返されるためであると考えたらしく、それを抑制するメガストラクチャーを提唱したようです。住宅やオフィス、交通網、インフラなどが一体となった都市を構想し、それが先ほどの東京湾の計画のような所に表れているようでした。近くには幾何学的に組み合わされた1/5000の模型などもあるのですが、やはりその巨大さと変わった形が強い印象を与えます。
さらに、丹下健三の実現した計画もいくつか紹介されていて、静岡新聞・静岡放送の東京支社や、山梨文化会館の写真がありました。山梨文化会館は甲府に行った時に近くから見て凄い存在感があったのを思い出しましたw (静岡新聞は銀座辺りだったかな) どちらも円筒形と箱のような形を組み合わせた独特のデザインです。
参考記事:舞鶴城(甲府城)の写真 (山梨旅行)
次の部屋では日本全国、特に東京から大阪にかけてを1つの巨帯都市とする日本列島改造に関する資料などのコーナーでした。 近くには伊勢神宮など日本の建築に関する本が並んだラックがあったのですが、これは日本の伝統建築を再解釈した川添登のコーナーのようで、彼の著書である『民と神』という本などもありました。彼の設計には日本の伝統を取り入れた様子が伺えます。
さらに隣の部屋では菊竹清訓の池袋計画、東京湾計画、海上都市といったものの模型や資料がありました。円筒に円筒が生えてくるような形の無数のビルがあるのがちょっと怖いw
その次には磯崎新の空中都市計画というコーナーがあり、丸の内や新宿、渋谷などの構想図とCG映像が展示されていました。これも巨大で円筒と円筒の間に建物があるような感じです。彼らは木のようなデザインに特徴があるような気がします。ここには他に、螺旋を組み合わせたような黒川紀章の計画もありました。これも巨大すぎて建物と言うよりは都市そのものといった感じでした。
次の部屋は実現した計画に関する資料が多いコーナーで、まずは大谷幸央の国立京都国際会館や出雲大社庁の舎などがありました。国立京都国際会館は京都の地下鉄の終点にある建物なので観た覚えがあるのですが、出雲大社庁の舎はその形に驚きました。合掌造りや神社を思わせる日本的な雰囲気と幾何学的な要素があり私の目には斬新に映りました。
他にも実現したものが沢山紹介されていて菊竹清訓のホテル東光園(米子)、大高正人の千葉県立中央図書館、黒川紀章の山形ハワイドリームランド(山形。今はもうない)、丹下健三の東京カテドラル聖マリア大聖堂(目白)や東京オリンピックの屋内総合競技場などもありました。また、次の部屋では南極の昭和基地が紹介されていて驚きました。こうして見ると結構実現している上、あれもそうだったのかという感じです。
さらに進むと黒川紀章の作ったカプセル建築というものがあります。これはコンテナのような部屋で、取替可能なメタボリズムを象徴するものです。1個作るのに1960年代当時のカローラ1台分くらいのコストらしくかなり安上がりのようです。この計画は実際に中銀のカプセルタワー(銀座)で実現していて、高速道路からも見えるので有名かな。映像で中の様子も分かるのですが、宇宙船を彷彿するけど狭そうw それでもこういう考えは夢があって好きですw 今回の展示に合わせて六本木ヒルズにも1つ置かれているようでした。
<空間から環境へ>
続いては「環境」をテーマにしたコーナーです。以前は空間が注目されていましたが、メタボリストの関心は代替可能で流動性のある環境へと映ったようです。このコーナーの最初には目玉のようなポスターが並び、これは環境をテーマにした展示のポスターのようでした。また、その近くには現代アートのような作品もありましたが、難しくて正直ここはわかりませんでしたw
そして次の部屋は大阪万国博覧会に関するコーナーで、大阪万博の建物の模型や資料が沢山並んでいました。エキスポ全体の模型や、大屋根と太陽の塔の模型などがある他、東芝IHI館にあった黒川紀章のテトラユニット(逆三角錐の作品)などもあります。
参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)
この章の最後の方にはこどもの国の計画の模型のコーナーもありました。
<グローバル・メタボリズム>
続いては世界に進出していったメタボリズムのコーナーです。万博以降、活動はグローバルとなり、世界各地で実現された計画が紹介されていました。
丹下らによるユーゴスラビア(現在のマケドニア)のスコピエ都心部再建計画の模型や写真、丹下のボローニャ市北部開発計画の模型と写真、菊竹の四方100m高さ32mもあるアクアポリス(沖縄国際海洋博覧会の建物)が船に引っ張られて移動する様子などが紹介されていました。特に巨大な建築物が船に曳航される写真は驚きです。
最後はメタボリズムラウンジという、現在進行中のプロジェクトを紹介するコーナーでした。
ということで、建築に詳しくない私でも楽しめましたが、情報量が多くて一度や二度では消化できなそうな感じでした。 意外と知っている建物が出てくるので、あれもこれもそうだったのか!と驚きもあったかな。その内、こういう建物を見て回りたいと思いました。今後の参考にもなりそうですので、建築好きの方は是非どうぞ。
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今日はちょっと遅くなってしまったので、写真の記事です。前々回、前回とご紹介した森アーツセンターギャラリーの展示と森美術館の展示(次回ご紹介します)を観た後、六本木ヒルズの中や周辺で行われているイルミネーションなどを観てきました。毎年行われているイルミネーションですが、去年は見忘れた気がします。
公式サイト:
Artelligent Christmas 2011
天空のクリスマス2011~Gift for tomorrow~
参考記事:
天空のクリスマス『スカイ・イルミネーション2009』 (TOKYO CITY VIEW)
まずは展望台からご紹介。

これは記念撮影をしてもらえる所にあったツリー。人気があって結構並んでいました。
今回の目玉とも言えるのはこちらのスケートリンク。

1ヶ月間しかやっていないようですが、こんなところにあるとは驚きです。靴代は500円で手袋も300円で貸してくれるようです。
期間:2011年11月25日(金)~12月25日(日)
今年買ったカメラの性能を試そうと久々にここの夜景を撮ってみました。

展望台にはこの他に写真展などもありましたが、今回は以前に比べると地味な感じがするかも…。
続いて地上階。クリスマスマーケットというものが開催されていました。

このマーケットの中にあった変わった置物。中には人形もいます。

寒いので近くまでしか行きませんでしたが、毛利庭園にもイルミネーションがあります。

こちらも綺麗に木の形になったイルミネーション。

これは六本木駅のあたりにあったツリーと東京タワー。

この近くには暖色系のイルミネーションもありました。
ということで、今年はイルミネーションをやってるだけでも有難い状況ではありますが、若干地味だったように思います。スケートリンクにお金を使いすぎたのではないかと勘ぐってみたりw それでもここは夜景も綺麗ですので、近くにはミッドタウンもあるので、イルミネーションのハシゴをしてみるのも良いかと思います。
参考記事:MIDTOWN CHRISTMAS 2011 (ミッドタウンクリスマス2011)
公式サイト:
Artelligent Christmas 2011
天空のクリスマス2011~Gift for tomorrow~
参考記事:
天空のクリスマス『スカイ・イルミネーション2009』 (TOKYO CITY VIEW)
まずは展望台からご紹介。

これは記念撮影をしてもらえる所にあったツリー。人気があって結構並んでいました。
今回の目玉とも言えるのはこちらのスケートリンク。

1ヶ月間しかやっていないようですが、こんなところにあるとは驚きです。靴代は500円で手袋も300円で貸してくれるようです。
期間:2011年11月25日(金)~12月25日(日)
今年買ったカメラの性能を試そうと久々にここの夜景を撮ってみました。

展望台にはこの他に写真展などもありましたが、今回は以前に比べると地味な感じがするかも…。
続いて地上階。クリスマスマーケットというものが開催されていました。


このマーケットの中にあった変わった置物。中には人形もいます。

寒いので近くまでしか行きませんでしたが、毛利庭園にもイルミネーションがあります。

こちらも綺麗に木の形になったイルミネーション。

これは六本木駅のあたりにあったツリーと東京タワー。


この近くには暖色系のイルミネーションもありました。
ということで、今年はイルミネーションをやってるだけでも有難い状況ではありますが、若干地味だったように思います。スケートリンクにお金を使いすぎたのではないかと勘ぐってみたりw それでもここは夜景も綺麗ですので、近くにはミッドタウンもあるので、イルミネーションのハシゴをしてみるのも良いかと思います。
参考記事:MIDTOWN CHRISTMAS 2011 (ミッドタウンクリスマス2011)
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今日は前回の記事に引き続き、森アーツセンターギャラリーの「没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師-」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師-
【公式サイト】
http://kuniyoshi.exhn.jp/
http://www.roppongihills.com/art/macg/events/2011/12/macg_kuniyoshi.html
【会場】森アーツセンターギャラリー ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】
前期 2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)
後期 2012年01月19日(木)~2012年2月12日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前編では3章までご紹介しましたが、後編は4章から最後までご紹介します。
参考記事:
歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
奇想の絵師歌川国芳の門下展 (礫川浮世絵美術館)
<第4章 美人画-江戸の粋と団扇絵の美>
4章は美人画のコーナーです。国芳は美人画も手がけていたようで、国芳の美人画は健康的で明るく、笑い顔が多く描かれているそうです。ここには貴重な団扇絵や肉筆画なども展示されていました。
178 歌川国芳 「美人子ども十二ヶ月シリーズ 清月の月」
大きな川に船が浮かぶ様子を背景に、バルコニーのようなところで飲み物の器を持って中秋の名月を見物している美人(目線は月を観ていませんが)と、後ろ姿の子供を描いた作品です。女性の着物は雪の結晶を意匠化した「雪輪文様」となっていて、これは当時のファッションを取り入れているようです。また、左の障子には、月明かりに照らされたヤシの木の葉っぱのようなもの影が見えているのが面白かったです。風情のある一枚でした。
216 歌川国芳 「艶姿十六女仙 豊干禅師」
手を裏返して組み、伸びをするようなポーズの女性と、その隣でアクビをしながら伸びをしている猫を描いた作品です。お互いの動きがシンクロするようで何とも微笑ましい光景です。猫も気持ちよさそうで可愛い^^
217 218 歌川国芳 「金龍山おくやまの景」「両国夕景」
両方共3枚セットの作品で、隣り合って展示されていました。どちらも中央に盆を持って歩く女性、左に子供を背負った女性と傘を持った子供、右に店先の椅子に座る客が描かれています。よく観ると背景が違っているものの、人物の位置とポーズが共通していて、「金龍山おくやまの景」は手品の見世物小屋の前にいる人々、「両国夕景」は両国の夕暮れ時で、右にいる人物が先ほどの絵では男だったのが女性に変更されています。(ポーズも反転した感じ) どうして似た構図にしたのかは分かりませんが、背景が変わるとがらっと違う印象になったのが面白かったです。
203 歌川国芳 「鏡面シリーズ 猫と遊ぶ娘」
猫の手を持ってポーズをとらせる美人を描いた団扇です。右上辺りに鏡のような枠があり、団扇を観ると鏡を見るような感じになることから鏡面シリーズと呼んでいるらしく、この作品以外にも何点か鏡面シリーズが展示されています。その発想も面白いですが、猫と戯れる様子は現代人のそれと変わらず、無邪気で可愛らしかったです。
411 歌川国芳 「夏衣美人図」
これは肉筆の掛け軸で、藍色の藤の柄の着物を着た色白の美人を描いた作品です。帯と胸元に手を当て、少し身をくねらせた姿が優美で、微笑んだ顔が優しそうでした。あえて藍一色の衣が涼しげです。
この辺には肉筆画が4点ほど並んでいました。(肉筆画・版木・版本は10章の位置づけのようですが色々な所にあります)
<第5章 子ども絵-遊びと学び>
この時代、天保の改革によって錦絵は啓蒙を旨とすべしというお達しがあり、子供を描いた作品が多く作られるようになったそうです。国芳も温かい眼差しで子供たちを描いたようで、のびのびとした雰囲気の作品が並んでいました。
231 歌川国芳 「稚遊雪花月の内 雪」
雪の降り積もる所で3人の女の子たちがせっせと雪を集めて雪うさぎなどを作って遊んでいる様子を描いた作品です。楽しそうに作業していて、微笑ましい光景です。 絵の左上には丸印に雪と書かれ、近くには花と月もあって雪月花となっているようでした。
この辺には士農工商を題材にした作品や、襖の開け閉めなどの作法を教えるような絵もありました。
<第6章 風景画-近代的なアングル>
国芳には風景を描いた作品もあるのですが、中にはオランダの本の挿絵などを元にした作品もあるようです。西洋の技法を自分のものとして消化し、作品に反映しているケースもあり、ここにはそうした作品も並んでいました。、
263 歌川国芳 「近江の国の勇婦於兼」
手綱を踏んで暴れ馬を抑えている おかね という怪力の女性を描いた作品です。馬は陰影が濃く、西洋の技法を感じる一方で、おかねは普通の浮世絵風となっています。また、この作品の隣にはニューホフ著の東西海陸紀行という本の写真があり、背景が似ていると解説されていました。この馬もイソップ物語に似たのがいるらしいので、それを元にしているのかもしれません。西洋絵画を研究していたのがよく分かる1枚です。
この辺には東都名所シリーズも並んでいました。
274 歌川国芳 「東都富士見三十六景 昌平坂の遠景」 ★こちらで観られます
右に坂道、左に遠くの富士山が見える昌平坂という所を描いた作品です。坂はかなりの傾斜のようで、中央付近のちょっと高くなった部分でそのキツさがわかります。また、坂の向こうから来る人が上半身だけ描かれている表現や近景・中景・遠景の構図も面白かったです。
<第7章 摺物と動物画-精緻な彫と摺>
続いては摺物という注文制作による非売品などを展示したコーナーです。摺物は新年の配り物や役者の披露の際に配られたそうで、売買で禁じられた金刷りや銀刷りの贅沢な品もあるようです。ここは6点のみでしたが貴重な作品が並んでいました。
295 歌川国芳 「しんば連 魚かし連 市川三升へ送之」 ★こちらで観られます
江戸から追放された父に会いに行く市川海老蔵のはなむけに描かれた作品です。手前に海老蔵が扮する鍾馗様が赤色で描かれた旗、その後ろには大きな鯉のぼりが描かれています。これだけ観ると端午の節句を思い浮かべますが、旅の無事を祈る意味が込められているようです。とにかく変わった構図で、旗の幾何学的な形と対角線上にぬっと出てくる鯉の姿にインパクトがありました。
<第8章 戯画-溢れるウィットとユーモア>
国芳と言えば戯画を思い浮かべる人も多いかと思いますが、天保の改革で役者絵などが禁止された際に、国芳は動物や妖怪などを使って表現したり、隠喩で批判したりと却って幅広い作風を生み出しました。ここにはそうした反骨とユーモアを感じる作品が並んでいました。
312 歌川国芳 「道外化もの夕凉」
店先に腰掛けて、タバコを吸ったり何かを飲んで談笑する妖怪たちを描いた作品です。何の妖怪なのかは分かりませんが異形の姿をしているものの、楽しげな雰囲気が伝わって来ました。
この辺には猫を擬人化した絵などもありました。
322 歌川国芳 「[絵鏡台合かゞ身]猫/しゝ・みゝづく・はんにやあめん」 ★こちらで観られます
2枚セットで左は障子に映る影、右はその障子の裏側を描いています。左は向き合う獅子、般若、みみずくの影ができているのですが、左には猫が飛び跳ねたり取っ組み合いしている様子となっていて、獅子と般若の目玉は猫の鈴の影だったりします。形は同じなのに全く別のものに見えるのがトリックアート的で面白いです。
この隣にも七福神が曲芸しているのがかたつむりや蛇の影になる作品もあります。また、猫が集まって「ふぐ」の文字になっている当て字の作品もありました。
少し進むと、キツネの嫁入りや狸の金玉シリーズ、巨人の朝比奈三郎のシリーズ、何人もの人が合体して1人の人を成す358「としよりのよふな若い人だ」360 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」などもあります。この辺は定番ですが何度観てもその発想の自由さに驚きます。
362 歌川国芳 「たとゑ尽の内」 ★こちらで観られます
3枚セットの作品で、揃って展示されるのは初めてのことだそうです。いずれも猫たちを描いていて、鰹節を見つめる猫や、小判を見ている猫、お膳に向かって舌を出している猫とそっぽを向いた猫など無数の猫がいます。これは猫に関することわざを集めたもので、先ほどのは猫に鰹節、猫に小判、猫舌、猫も食わない などとなるようです。非常に機知に富んでいて、国芳の猫好きぶりが伝わって来ました。
この先にも海老や金魚の影絵の作品や370「荷宝蔵壁のむだ書」といった国芳の独創性を感じる作品が並んでいます(この辺も以前の記事でご紹介したので割愛します)
<第9章 風俗・娯楽・情報>
最後はメディアとしての役割をした錦絵のコーナーです。当時の流行や事件を感じさせる作品が並んでいました。
383 歌川国芳 「勇国芳桐対模様」
3枚セットで、国芳一門が山王祭を観に行列して出かける様子を描いた作品です。左で背を向けて手を広げているのが国芳らしく、自分を描く時は顔を描かなかったそうです。列には沢山の弟子が並び、自分の名前が書かれた扇子などを持っているので誰が誰か分かるようです。皆明るい表情でお祭りの楽しさや国芳一門の人情味が伝わってくるようでした。
国芳は江戸っ子気質の親分で、弟子を可愛がり弟子に慕われたそうです。気取ったことはしない粋な国芳の人柄が作品のあちこちで感じられます。
394 歌川国芳 「大漁鯨のにぎわひ」
3枚セットで、中央に大きな鯨がいてその周りには舟に乗った沢山の見物人の姿があります。この鯨は迷いこんで死んでしまったようですが、小高い山のような大きさで、皆で指を指したりして大いに盛り上がっています。舟まで出して物見高いというか野次馬というか…w 背景には舞飛んでくる鶴や富士山なども描かれ、のんびりした雰囲気がありました。
最後には「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」の版木も展示されていました。また、水滸伝の双六や書簡、国芳の死絵(死んだ人を描いた作品)などもあります。
ということで、定番の作品から珍しい作品まで、非常に充実した内容となっていました。 国芳の作品は色々と洒落や批判が込められているので、もうちょっと解説があっても良いように思いますが、その一方で単純な面白さもあるので絵に詳しくない人でも楽しめるのが国芳の魅力だと思います。決定版とも言える内容だったので、図録も買いました。 これは後期も楽しみです。
おまけ:
今回の展示はグッズも豊富でした。

追記:後期も行ってきました。
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師-
【公式サイト】
http://kuniyoshi.exhn.jp/
http://www.roppongihills.com/art/macg/events/2011/12/macg_kuniyoshi.html
【会場】森アーツセンターギャラリー ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】
前期 2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)
後期 2012年01月19日(木)~2012年2月12日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前編では3章までご紹介しましたが、後編は4章から最後までご紹介します。
参考記事:
歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
奇想の絵師歌川国芳の門下展 (礫川浮世絵美術館)
<第4章 美人画-江戸の粋と団扇絵の美>
4章は美人画のコーナーです。国芳は美人画も手がけていたようで、国芳の美人画は健康的で明るく、笑い顔が多く描かれているそうです。ここには貴重な団扇絵や肉筆画なども展示されていました。
178 歌川国芳 「美人子ども十二ヶ月シリーズ 清月の月」
大きな川に船が浮かぶ様子を背景に、バルコニーのようなところで飲み物の器を持って中秋の名月を見物している美人(目線は月を観ていませんが)と、後ろ姿の子供を描いた作品です。女性の着物は雪の結晶を意匠化した「雪輪文様」となっていて、これは当時のファッションを取り入れているようです。また、左の障子には、月明かりに照らされたヤシの木の葉っぱのようなもの影が見えているのが面白かったです。風情のある一枚でした。
216 歌川国芳 「艶姿十六女仙 豊干禅師」
手を裏返して組み、伸びをするようなポーズの女性と、その隣でアクビをしながら伸びをしている猫を描いた作品です。お互いの動きがシンクロするようで何とも微笑ましい光景です。猫も気持ちよさそうで可愛い^^
217 218 歌川国芳 「金龍山おくやまの景」「両国夕景」
両方共3枚セットの作品で、隣り合って展示されていました。どちらも中央に盆を持って歩く女性、左に子供を背負った女性と傘を持った子供、右に店先の椅子に座る客が描かれています。よく観ると背景が違っているものの、人物の位置とポーズが共通していて、「金龍山おくやまの景」は手品の見世物小屋の前にいる人々、「両国夕景」は両国の夕暮れ時で、右にいる人物が先ほどの絵では男だったのが女性に変更されています。(ポーズも反転した感じ) どうして似た構図にしたのかは分かりませんが、背景が変わるとがらっと違う印象になったのが面白かったです。
203 歌川国芳 「鏡面シリーズ 猫と遊ぶ娘」
猫の手を持ってポーズをとらせる美人を描いた団扇です。右上辺りに鏡のような枠があり、団扇を観ると鏡を見るような感じになることから鏡面シリーズと呼んでいるらしく、この作品以外にも何点か鏡面シリーズが展示されています。その発想も面白いですが、猫と戯れる様子は現代人のそれと変わらず、無邪気で可愛らしかったです。
411 歌川国芳 「夏衣美人図」
これは肉筆の掛け軸で、藍色の藤の柄の着物を着た色白の美人を描いた作品です。帯と胸元に手を当て、少し身をくねらせた姿が優美で、微笑んだ顔が優しそうでした。あえて藍一色の衣が涼しげです。
この辺には肉筆画が4点ほど並んでいました。(肉筆画・版木・版本は10章の位置づけのようですが色々な所にあります)
<第5章 子ども絵-遊びと学び>
この時代、天保の改革によって錦絵は啓蒙を旨とすべしというお達しがあり、子供を描いた作品が多く作られるようになったそうです。国芳も温かい眼差しで子供たちを描いたようで、のびのびとした雰囲気の作品が並んでいました。
231 歌川国芳 「稚遊雪花月の内 雪」
雪の降り積もる所で3人の女の子たちがせっせと雪を集めて雪うさぎなどを作って遊んでいる様子を描いた作品です。楽しそうに作業していて、微笑ましい光景です。 絵の左上には丸印に雪と書かれ、近くには花と月もあって雪月花となっているようでした。
この辺には士農工商を題材にした作品や、襖の開け閉めなどの作法を教えるような絵もありました。
<第6章 風景画-近代的なアングル>
国芳には風景を描いた作品もあるのですが、中にはオランダの本の挿絵などを元にした作品もあるようです。西洋の技法を自分のものとして消化し、作品に反映しているケースもあり、ここにはそうした作品も並んでいました。、
263 歌川国芳 「近江の国の勇婦於兼」
手綱を踏んで暴れ馬を抑えている おかね という怪力の女性を描いた作品です。馬は陰影が濃く、西洋の技法を感じる一方で、おかねは普通の浮世絵風となっています。また、この作品の隣にはニューホフ著の東西海陸紀行という本の写真があり、背景が似ていると解説されていました。この馬もイソップ物語に似たのがいるらしいので、それを元にしているのかもしれません。西洋絵画を研究していたのがよく分かる1枚です。
この辺には東都名所シリーズも並んでいました。
274 歌川国芳 「東都富士見三十六景 昌平坂の遠景」 ★こちらで観られます
右に坂道、左に遠くの富士山が見える昌平坂という所を描いた作品です。坂はかなりの傾斜のようで、中央付近のちょっと高くなった部分でそのキツさがわかります。また、坂の向こうから来る人が上半身だけ描かれている表現や近景・中景・遠景の構図も面白かったです。
<第7章 摺物と動物画-精緻な彫と摺>
続いては摺物という注文制作による非売品などを展示したコーナーです。摺物は新年の配り物や役者の披露の際に配られたそうで、売買で禁じられた金刷りや銀刷りの贅沢な品もあるようです。ここは6点のみでしたが貴重な作品が並んでいました。
295 歌川国芳 「しんば連 魚かし連 市川三升へ送之」 ★こちらで観られます
江戸から追放された父に会いに行く市川海老蔵のはなむけに描かれた作品です。手前に海老蔵が扮する鍾馗様が赤色で描かれた旗、その後ろには大きな鯉のぼりが描かれています。これだけ観ると端午の節句を思い浮かべますが、旅の無事を祈る意味が込められているようです。とにかく変わった構図で、旗の幾何学的な形と対角線上にぬっと出てくる鯉の姿にインパクトがありました。
<第8章 戯画-溢れるウィットとユーモア>
国芳と言えば戯画を思い浮かべる人も多いかと思いますが、天保の改革で役者絵などが禁止された際に、国芳は動物や妖怪などを使って表現したり、隠喩で批判したりと却って幅広い作風を生み出しました。ここにはそうした反骨とユーモアを感じる作品が並んでいました。
312 歌川国芳 「道外化もの夕凉」
店先に腰掛けて、タバコを吸ったり何かを飲んで談笑する妖怪たちを描いた作品です。何の妖怪なのかは分かりませんが異形の姿をしているものの、楽しげな雰囲気が伝わって来ました。
この辺には猫を擬人化した絵などもありました。
322 歌川国芳 「[絵鏡台合かゞ身]猫/しゝ・みゝづく・はんにやあめん」 ★こちらで観られます
2枚セットで左は障子に映る影、右はその障子の裏側を描いています。左は向き合う獅子、般若、みみずくの影ができているのですが、左には猫が飛び跳ねたり取っ組み合いしている様子となっていて、獅子と般若の目玉は猫の鈴の影だったりします。形は同じなのに全く別のものに見えるのがトリックアート的で面白いです。
この隣にも七福神が曲芸しているのがかたつむりや蛇の影になる作品もあります。また、猫が集まって「ふぐ」の文字になっている当て字の作品もありました。
少し進むと、キツネの嫁入りや狸の金玉シリーズ、巨人の朝比奈三郎のシリーズ、何人もの人が合体して1人の人を成す358「としよりのよふな若い人だ」360 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」などもあります。この辺は定番ですが何度観てもその発想の自由さに驚きます。
362 歌川国芳 「たとゑ尽の内」 ★こちらで観られます
3枚セットの作品で、揃って展示されるのは初めてのことだそうです。いずれも猫たちを描いていて、鰹節を見つめる猫や、小判を見ている猫、お膳に向かって舌を出している猫とそっぽを向いた猫など無数の猫がいます。これは猫に関することわざを集めたもので、先ほどのは猫に鰹節、猫に小判、猫舌、猫も食わない などとなるようです。非常に機知に富んでいて、国芳の猫好きぶりが伝わって来ました。
この先にも海老や金魚の影絵の作品や370「荷宝蔵壁のむだ書」といった国芳の独創性を感じる作品が並んでいます(この辺も以前の記事でご紹介したので割愛します)
<第9章 風俗・娯楽・情報>
最後はメディアとしての役割をした錦絵のコーナーです。当時の流行や事件を感じさせる作品が並んでいました。
383 歌川国芳 「勇国芳桐対模様」
3枚セットで、国芳一門が山王祭を観に行列して出かける様子を描いた作品です。左で背を向けて手を広げているのが国芳らしく、自分を描く時は顔を描かなかったそうです。列には沢山の弟子が並び、自分の名前が書かれた扇子などを持っているので誰が誰か分かるようです。皆明るい表情でお祭りの楽しさや国芳一門の人情味が伝わってくるようでした。
国芳は江戸っ子気質の親分で、弟子を可愛がり弟子に慕われたそうです。気取ったことはしない粋な国芳の人柄が作品のあちこちで感じられます。
394 歌川国芳 「大漁鯨のにぎわひ」
3枚セットで、中央に大きな鯨がいてその周りには舟に乗った沢山の見物人の姿があります。この鯨は迷いこんで死んでしまったようですが、小高い山のような大きさで、皆で指を指したりして大いに盛り上がっています。舟まで出して物見高いというか野次馬というか…w 背景には舞飛んでくる鶴や富士山なども描かれ、のんびりした雰囲気がありました。
最後には「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」の版木も展示されていました。また、水滸伝の双六や書簡、国芳の死絵(死んだ人を描いた作品)などもあります。
ということで、定番の作品から珍しい作品まで、非常に充実した内容となっていました。 国芳の作品は色々と洒落や批判が込められているので、もうちょっと解説があっても良いように思いますが、その一方で単純な面白さもあるので絵に詳しくない人でも楽しめるのが国芳の魅力だと思います。決定版とも言える内容だったので、図録も買いました。 これは後期も楽しみです。
おまけ:
今回の展示はグッズも豊富でした。

追記:後期も行ってきました。
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
参照記事:★この記事を参照している記事
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前回ご紹介したお店でお茶した後、六本木ヒルズに移動して、森アーツセンターギャラリーで「没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師-」を観てきました。驚くほどの質・量の展示となっていたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。なお、この展示は前期・後期の2期制となっていて、この日は前期の内容となっていました。

【展覧名】
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師-
【公式サイト】
http://kuniyoshi.exhn.jp/
http://www.roppongihills.com/art/macg/events/2011/12/macg_kuniyoshi.html
【会場】森アーツセンターギャラリー ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】
前期 2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)
後期 2012年01月19日(木)~2012年2月12日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
初日に行ったのですが早速混んでいて、列を組んでいる場所があるなど、若干観るのに支障があるほどでした。
さて、今回の展示は江戸時代後期の絵師、歌川国芳の没後150年を記念した展示となっています。今年は既に大田記念美術館でも国芳の大きな展示があったので、また似た内容なんだろうなとタカをくくっていたのですが、前期後期合わせて約420点という驚きの点数な上に、肉筆や新発見の作品もあるという充実ぶりで、私も観たことがない作品も多々あり圧倒されました。(今回は作品リストをもらうことはできませんでしたが、公式サイトで入れ替え予定を含めて確認できます。)
題材ごとに章が分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品を通じてご紹介しようと思います。なお、国芳の生い立ちなどは以前にもご紹介していますので、今回は割愛します(参考記事をご覧頂けると嬉しいです)
参考リンク:作品リスト(pdf)
参考記事:
歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
奇想の絵師歌川国芳の門下展 (礫川浮世絵美術館)
<第1章 武者絵-みなぎる力と躍動感>
まずは出世作となった水滸伝シリーズを含めた武者絵のコーナーです。早速、妖怪退治の作品なども出てきます。
3 歌川国芳 「西村屋版武者絵シリーズ 源頼光」
2枚セットで、右に刀を振り下ろす源頼光、左に飛び跳ねる人間の腕の生えた土蜘蛛?が描かれています。その下には転がり込むような人も描かれ、動きを感じます。想像上のシーンであるにも関わらず劇的で恐ろしげな雰囲気の作品でした。
8 歌川国芳 「清盛入道布引滝遊覧悪源太義平霊討難波次郎」 ★こちらで観られます
これは以前もご紹介しましたが、3枚セットで中央に人魂のようなものが集まった雲?に乗った白黒の源義平(悪源太義平)の怨霊が、稲光を飛び散らせている様子を描いた作品です。タイトルが長くて難しいので噛み砕くと、源義平は平治の乱の際に敗れて打ち首された人物で、雷になって必ず復讐すると言い残したそうで、平清盛が布引の滝に遊覧に行った帰りに急に曇って雷となった源義平が現れます。そして清盛のお供をしていた難波次郎が雷に打たれて死ぬのですが、この絵でも中央あたりで後ろにぶっ飛ばされている様子がドラマチックに描かれています。この稲光の表現が非常に斬新で、激しい勢いがあり中央に目が行く仕掛けになっているように思いました。
この辺には大コウモリと戦う美家本武蔵の作品などもありました。
17 歌川国芳 「通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進・跳潤虎陳達」
これは国芳が人気となった出世作のシリーズで、太い棒を持った男がヒゲの男を足蹴にして押さえつけている様子を描いています。棒の男は足までびっしりと刺青が彫られ、鬼気迫る表情をしていました。解説によると、このシリーズのヒットで江戸では刺青ブームも起こったそうです。
この辺には水滸伝のシリーズが並んでいました。ちょっと怖いくらいの刺青も見所です。
30 歌川国芳 「本朝水滸伝剛勇八百人一個 土喜大四郎元貞」
水滸伝と同じ版元から出版した日本の英雄シリーズです。鎧武者が赤鬼と相撲をしているような様子を描いたもので、後ろでは仏に似た人物がいますが見た目が妖怪っぽく、腹のあたりから沢山の小さな骸骨たちが這いでてきています。鬼の筋肉の輪郭の太さなどから力強さを感じました。なお、解説によるとタイトルでは800人となっていますが現在確認されているのは30図程度だそうです。この辺には他にも本町水滸伝シリーズが並び、大きなイモリや大猿と戦う武者たちの姿が描かれています。
40 歌川国芳 「坂田怪童丸」 ★こちらで観られますs
これは今回のポスターにもなっている作品で、巨大な鯉を持ち上げる赤い肌の怪童丸(金太郎)を描いた作品です。周りに飛び散った飛沫からは躍動感、怪童丸の肌の色や魚の大きな身体からは怪力やずっしりした重さを想像させますが、一方で魚の背中にかかった水が透けている様子など、繊細な表現も観ることが出来ました。
余談ですが、金太郎は後に源頼光の四天王となり様々な妖怪を退治するわけですが、大人の姿も国芳は結構描いているように思います。
この部屋の中央には「宇治川合戦」の版木なども展示されていました。また、「稗史水滸伝」という漫画サイズの水滸伝の単行本もあり、見開きで絵が描かれていてまさに漫画のような感じでした。これも人気があったそうです。
64 歌川国芳・歌川広重 「源頼朝大仏供養之図」
3枚セットの作品で、お寺の境内で3人の武者がポーズをとっている様子が描かれ、中央の背景にはお堂の中に大仏の鼻から口あたりが見えています。これは歌川広重との合作だそうで、左端と右端に武者たちを見ている人物が1人ずついて、これが広重が描いたところのようです。正直、国芳の武者との作風の見分けは難しかったですが、合作があるとは興味深いです。
この近くには以前ご紹介した53「源頼光公館土蜘作妖怪図」や66「弁慶が勇力戯に三井寺の梵鐘を叡山へ引揚る図」などもありました。
68 歌川国芳 「相馬の古内裏」
こちらは国芳の中でも特に有名な作品で、3枚続きの絵に巨大な骸骨が2人の武士の背後に現れる様子が描かれています。これは平将門の娘で謀反を企む瀧夜叉姫が妖術で呼び寄せた骸骨で、左の方で巻物を広げて操っているようです。武士たちは刀を持って振り返るような感じでした。解説によると、この作品は山東京伝の読本を題材にしたそうですが、読本では数百の骸骨だったのを国芳は1体の巨大な骸骨で表現したようです。また、骸骨は解剖学的にも正確だそうで、陰影を使った表現とともに西洋から影響を受けたのではないかと推測できるようでした。
この隣には69「宮本武蔵の鯨退治」も展示されています。
72 歌川国芳 「源頼朝卿富士牧狩之図」
6枚セットの作品で、画面中に沢山の武者や馬が描かれ狩りをしている様子のようです。鹿や熊、猿、、うさぎなどが追われ、背景には巨大な富士の裾野が広がります。一番左の画面では巨大な猪が描かれ、その隣にはそれに吹き飛ばされたような人物が2人描かれていました。パノラマ的で迫力があり、物語性もあって面白い作品です。
88 歌川国芳 「源牛若丸僧正坊ニ隨武術を覚図」
3枚セットで、中央に山伏の格好をした白く長いヒゲの巨大な老人が座り、その周りには鳥の顔をした天狗たちが沢山います。そして、右には棒を持って後ろっ飛びで高く舞い上がっている牛若丸の姿があり、武術を覚えているようでした。ちょっと疑問に思ったのが、中央にある篝火から出た煙が、周りの木々にかかっている様子が描かれているのですが、その順序が妙で、マグリットの白紙委任状のような違和感がありました。これは何の意味があるんだろ…。
この辺はこうした3枚セットの作品が並びます。結構知らない作品が多いです。
93 歌川国芳 「川中嶋合戦」
3枚セットの作品で、左に馬に乗って鬼気迫る表情で斬りかかってくる上杉謙信が描かれ、中央に軍配でそれを防いでいる武田信玄が描かれています。右には謙信めがけて槍を突き出す蜂河野善右衛門?という武者がいて、中央付近で刀、軍配、槍が交差した面白い構図となっていました。
この近くには縦長の91「吉野山合戦」などもありました。
99 歌川国芳 「[程義経恋源一代鏡 三畧伝]大物浦」
右に赤い船に乗る義経と弁慶が描かれ、その船に怨霊の顔を持ったヘイケガニが登ってきます。暗い海の大きな波の中には沢山の平氏の亡霊たちがいて、恐ろしい光景となっていました。うねるような亡霊の表現に独創性を感じます。
この部屋の中央には版木と、七ツ組入子枕という小さめの本があり、これには西洋貴婦人なども描かれていました。西洋にも目を向けていたようすが分かります。
<第2章 説話-物語とイメージ>
続いては説話を題材にした作品のコーナーで、和漢のあらゆる啓蒙的な主題を扱っているようでした。
111 歌川国芳 「地獄図」
3枚セットで描かれた地獄絵で、中央に閻魔大王が座り、周りでは釜茹でや火に投げ込まれる亡者、針の山?などが描かれています。ちょっと見分けづらいのですが、地獄の様子を凝縮したような感じでした。 地獄絵では弟子の河鍋暁斎のほうが有名な気がしますが、師匠も流石です。
近くには竜宮を題材にした作品などもありました。
117 歌川国芳 「二十四孝童子鑑 王ほう」
中国の親孝行の人物24人の説話を題材にしたシリーズの1枚です。木の裏にお堂のようなものがあり、その背景の雲から沢山の稲妻が画面に広がっています。これは雷を嫌っていた死んだ母親のために、雷の中で慰めの墓参りを行なっている人を描いているようです。 また、陰影を施した画面には西洋からの影響が観られるとのことでした。
この隣には同じ絵柄で色なしの作品もありました。
この辺には休憩所があり、国芳の年表や人柄がわかるようなエピソードがボードで説明されていました。
<第3章 役者絵-人気役者のさまざまな姿>
多くの浮世絵師と同じように国芳も役者絵を手がけ、役者の魅力を伝えるだけではなく様々な要素を加味していたようです。ここにはちょっと変わった役者絵が並んでいました。
134 歌川国芳 「二代目岩井粂三郎のかつしかのお十・三代目尾上菊五郎の木下川与右衛門・四代目坂東三津五郎の渡し守浮世又平」
3枚セットの作品で、1枚に1人ずつ刀を構えてポーズを取る武者姿の役者が描かれています。その背景には人より大きな鯉が飛び跳ねるように描かれ、周りには波のうねりも描かれていました。この鯉をめぐる演目らしいですが、この背景のおかげで全体的にダイナミックな雰囲気となっていました。
138 歌川国芳 「三代目尾上栄三郎のお弓・五代目松本幸四郎の直助・三代目尾上菊五郎のお岩ぼうこん、小平ぼうこん、与茂七三役早替・五代目市川海老蔵の神谷伊右衛門」
これはお岩さんの四谷怪談を題材にした3枚セットの作品で、川のそばにいる3人の役者が描かれています。中央は卒塔婆を持っている松本幸四郎で、左は釣りをしているお岩さんを殺した夫役の市川海老蔵、右にはねずみに囲まれた尾上菊五郎がいて、中央下には戸板に乗って流れてきたお岩さんの姿があります。舞台のワンシーンを描いたような光景で、単純な役者絵とは違い物語の核心部分がわかるようでした。
142 歌川国芳 「十二代目市村羽左衛門の悪源太義平・四代目中村歌右衛門の岩木三郎太夫広綱・二代目市川九蔵の八町礫の鬼平次」
橋の下で戦う3人の役者を描いた作品で、左右の橋桁から2人が斬りかかってくるのを、中央の人物が刀の刃と柄の部分で受け止めています。背景には「月に雁」を彷彿とするような光景が描かれているのも含め、面白い構図でした。
ということで、今日はこの辺までにしておこうと思います。9章までありますが章によってボリュームはまちまちですw この後も面白い作品が多々ありましたので、後編では続きから最後までをご紹介しようと思います。
→後編はこちら
追記:後期も行ってきました。
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師-
【公式サイト】
http://kuniyoshi.exhn.jp/
http://www.roppongihills.com/art/macg/events/2011/12/macg_kuniyoshi.html
【会場】森アーツセンターギャラリー ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】
前期 2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)
後期 2012年01月19日(木)~2012年2月12日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
初日に行ったのですが早速混んでいて、列を組んでいる場所があるなど、若干観るのに支障があるほどでした。
さて、今回の展示は江戸時代後期の絵師、歌川国芳の没後150年を記念した展示となっています。今年は既に大田記念美術館でも国芳の大きな展示があったので、また似た内容なんだろうなとタカをくくっていたのですが、前期後期合わせて約420点という驚きの点数な上に、肉筆や新発見の作品もあるという充実ぶりで、私も観たことがない作品も多々あり圧倒されました。(今回は作品リストをもらうことはできませんでしたが、公式サイトで入れ替え予定を含めて確認できます。)
題材ごとに章が分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品を通じてご紹介しようと思います。なお、国芳の生い立ちなどは以前にもご紹介していますので、今回は割愛します(参考記事をご覧頂けると嬉しいです)
参考リンク:作品リスト(pdf)
参考記事:
歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
奇想の絵師歌川国芳の門下展 (礫川浮世絵美術館)
<第1章 武者絵-みなぎる力と躍動感>
まずは出世作となった水滸伝シリーズを含めた武者絵のコーナーです。早速、妖怪退治の作品なども出てきます。
3 歌川国芳 「西村屋版武者絵シリーズ 源頼光」
2枚セットで、右に刀を振り下ろす源頼光、左に飛び跳ねる人間の腕の生えた土蜘蛛?が描かれています。その下には転がり込むような人も描かれ、動きを感じます。想像上のシーンであるにも関わらず劇的で恐ろしげな雰囲気の作品でした。
8 歌川国芳 「清盛入道布引滝遊覧悪源太義平霊討難波次郎」 ★こちらで観られます
これは以前もご紹介しましたが、3枚セットで中央に人魂のようなものが集まった雲?に乗った白黒の源義平(悪源太義平)の怨霊が、稲光を飛び散らせている様子を描いた作品です。タイトルが長くて難しいので噛み砕くと、源義平は平治の乱の際に敗れて打ち首された人物で、雷になって必ず復讐すると言い残したそうで、平清盛が布引の滝に遊覧に行った帰りに急に曇って雷となった源義平が現れます。そして清盛のお供をしていた難波次郎が雷に打たれて死ぬのですが、この絵でも中央あたりで後ろにぶっ飛ばされている様子がドラマチックに描かれています。この稲光の表現が非常に斬新で、激しい勢いがあり中央に目が行く仕掛けになっているように思いました。
この辺には大コウモリと戦う美家本武蔵の作品などもありました。
17 歌川国芳 「通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進・跳潤虎陳達」
これは国芳が人気となった出世作のシリーズで、太い棒を持った男がヒゲの男を足蹴にして押さえつけている様子を描いています。棒の男は足までびっしりと刺青が彫られ、鬼気迫る表情をしていました。解説によると、このシリーズのヒットで江戸では刺青ブームも起こったそうです。
この辺には水滸伝のシリーズが並んでいました。ちょっと怖いくらいの刺青も見所です。
30 歌川国芳 「本朝水滸伝剛勇八百人一個 土喜大四郎元貞」
水滸伝と同じ版元から出版した日本の英雄シリーズです。鎧武者が赤鬼と相撲をしているような様子を描いたもので、後ろでは仏に似た人物がいますが見た目が妖怪っぽく、腹のあたりから沢山の小さな骸骨たちが這いでてきています。鬼の筋肉の輪郭の太さなどから力強さを感じました。なお、解説によるとタイトルでは800人となっていますが現在確認されているのは30図程度だそうです。この辺には他にも本町水滸伝シリーズが並び、大きなイモリや大猿と戦う武者たちの姿が描かれています。
40 歌川国芳 「坂田怪童丸」 ★こちらで観られますs
これは今回のポスターにもなっている作品で、巨大な鯉を持ち上げる赤い肌の怪童丸(金太郎)を描いた作品です。周りに飛び散った飛沫からは躍動感、怪童丸の肌の色や魚の大きな身体からは怪力やずっしりした重さを想像させますが、一方で魚の背中にかかった水が透けている様子など、繊細な表現も観ることが出来ました。
余談ですが、金太郎は後に源頼光の四天王となり様々な妖怪を退治するわけですが、大人の姿も国芳は結構描いているように思います。
この部屋の中央には「宇治川合戦」の版木なども展示されていました。また、「稗史水滸伝」という漫画サイズの水滸伝の単行本もあり、見開きで絵が描かれていてまさに漫画のような感じでした。これも人気があったそうです。
64 歌川国芳・歌川広重 「源頼朝大仏供養之図」
3枚セットの作品で、お寺の境内で3人の武者がポーズをとっている様子が描かれ、中央の背景にはお堂の中に大仏の鼻から口あたりが見えています。これは歌川広重との合作だそうで、左端と右端に武者たちを見ている人物が1人ずついて、これが広重が描いたところのようです。正直、国芳の武者との作風の見分けは難しかったですが、合作があるとは興味深いです。
この近くには以前ご紹介した53「源頼光公館土蜘作妖怪図」や66「弁慶が勇力戯に三井寺の梵鐘を叡山へ引揚る図」などもありました。
68 歌川国芳 「相馬の古内裏」
こちらは国芳の中でも特に有名な作品で、3枚続きの絵に巨大な骸骨が2人の武士の背後に現れる様子が描かれています。これは平将門の娘で謀反を企む瀧夜叉姫が妖術で呼び寄せた骸骨で、左の方で巻物を広げて操っているようです。武士たちは刀を持って振り返るような感じでした。解説によると、この作品は山東京伝の読本を題材にしたそうですが、読本では数百の骸骨だったのを国芳は1体の巨大な骸骨で表現したようです。また、骸骨は解剖学的にも正確だそうで、陰影を使った表現とともに西洋から影響を受けたのではないかと推測できるようでした。
この隣には69「宮本武蔵の鯨退治」も展示されています。
72 歌川国芳 「源頼朝卿富士牧狩之図」
6枚セットの作品で、画面中に沢山の武者や馬が描かれ狩りをしている様子のようです。鹿や熊、猿、、うさぎなどが追われ、背景には巨大な富士の裾野が広がります。一番左の画面では巨大な猪が描かれ、その隣にはそれに吹き飛ばされたような人物が2人描かれていました。パノラマ的で迫力があり、物語性もあって面白い作品です。
88 歌川国芳 「源牛若丸僧正坊ニ隨武術を覚図」
3枚セットで、中央に山伏の格好をした白く長いヒゲの巨大な老人が座り、その周りには鳥の顔をした天狗たちが沢山います。そして、右には棒を持って後ろっ飛びで高く舞い上がっている牛若丸の姿があり、武術を覚えているようでした。ちょっと疑問に思ったのが、中央にある篝火から出た煙が、周りの木々にかかっている様子が描かれているのですが、その順序が妙で、マグリットの白紙委任状のような違和感がありました。これは何の意味があるんだろ…。
この辺はこうした3枚セットの作品が並びます。結構知らない作品が多いです。
93 歌川国芳 「川中嶋合戦」
3枚セットの作品で、左に馬に乗って鬼気迫る表情で斬りかかってくる上杉謙信が描かれ、中央に軍配でそれを防いでいる武田信玄が描かれています。右には謙信めがけて槍を突き出す蜂河野善右衛門?という武者がいて、中央付近で刀、軍配、槍が交差した面白い構図となっていました。
この近くには縦長の91「吉野山合戦」などもありました。
99 歌川国芳 「[程義経恋源一代鏡 三畧伝]大物浦」
右に赤い船に乗る義経と弁慶が描かれ、その船に怨霊の顔を持ったヘイケガニが登ってきます。暗い海の大きな波の中には沢山の平氏の亡霊たちがいて、恐ろしい光景となっていました。うねるような亡霊の表現に独創性を感じます。
この部屋の中央には版木と、七ツ組入子枕という小さめの本があり、これには西洋貴婦人なども描かれていました。西洋にも目を向けていたようすが分かります。
<第2章 説話-物語とイメージ>
続いては説話を題材にした作品のコーナーで、和漢のあらゆる啓蒙的な主題を扱っているようでした。
111 歌川国芳 「地獄図」
3枚セットで描かれた地獄絵で、中央に閻魔大王が座り、周りでは釜茹でや火に投げ込まれる亡者、針の山?などが描かれています。ちょっと見分けづらいのですが、地獄の様子を凝縮したような感じでした。 地獄絵では弟子の河鍋暁斎のほうが有名な気がしますが、師匠も流石です。
近くには竜宮を題材にした作品などもありました。
117 歌川国芳 「二十四孝童子鑑 王ほう」
中国の親孝行の人物24人の説話を題材にしたシリーズの1枚です。木の裏にお堂のようなものがあり、その背景の雲から沢山の稲妻が画面に広がっています。これは雷を嫌っていた死んだ母親のために、雷の中で慰めの墓参りを行なっている人を描いているようです。 また、陰影を施した画面には西洋からの影響が観られるとのことでした。
この隣には同じ絵柄で色なしの作品もありました。
この辺には休憩所があり、国芳の年表や人柄がわかるようなエピソードがボードで説明されていました。
<第3章 役者絵-人気役者のさまざまな姿>
多くの浮世絵師と同じように国芳も役者絵を手がけ、役者の魅力を伝えるだけではなく様々な要素を加味していたようです。ここにはちょっと変わった役者絵が並んでいました。
134 歌川国芳 「二代目岩井粂三郎のかつしかのお十・三代目尾上菊五郎の木下川与右衛門・四代目坂東三津五郎の渡し守浮世又平」
3枚セットの作品で、1枚に1人ずつ刀を構えてポーズを取る武者姿の役者が描かれています。その背景には人より大きな鯉が飛び跳ねるように描かれ、周りには波のうねりも描かれていました。この鯉をめぐる演目らしいですが、この背景のおかげで全体的にダイナミックな雰囲気となっていました。
138 歌川国芳 「三代目尾上栄三郎のお弓・五代目松本幸四郎の直助・三代目尾上菊五郎のお岩ぼうこん、小平ぼうこん、与茂七三役早替・五代目市川海老蔵の神谷伊右衛門」
これはお岩さんの四谷怪談を題材にした3枚セットの作品で、川のそばにいる3人の役者が描かれています。中央は卒塔婆を持っている松本幸四郎で、左は釣りをしているお岩さんを殺した夫役の市川海老蔵、右にはねずみに囲まれた尾上菊五郎がいて、中央下には戸板に乗って流れてきたお岩さんの姿があります。舞台のワンシーンを描いたような光景で、単純な役者絵とは違い物語の核心部分がわかるようでした。
142 歌川国芳 「十二代目市村羽左衛門の悪源太義平・四代目中村歌右衛門の岩木三郎太夫広綱・二代目市川九蔵の八町礫の鬼平次」
橋の下で戦う3人の役者を描いた作品で、左右の橋桁から2人が斬りかかってくるのを、中央の人物が刀の刃と柄の部分で受け止めています。背景には「月に雁」を彷彿とするような光景が描かれているのも含め、面白い構図でした。
ということで、今日はこの辺までにしておこうと思います。9章までありますが章によってボリュームはまちまちですw この後も面白い作品が多々ありましたので、後編では続きから最後までをご紹介しようと思います。
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前回ご紹介したTOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)の展示を観た後、ミッドタウンに移動して、「A917」というお店でお茶してきました。

【店名】
A917
【ジャンル】
レストラン/カフェ
【公式サイト】
http://www.cafecompany.co.jp/brands/a971/index.html
食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13037330/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
六本木駅/乃木坂駅
【近くの美術館】
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
国立新美術館
など
【この日にかかった1人の費用】
450円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
このお店はミッドタウンの入口にあるので非常に目立つため、一度入ってみようと思っていたのですが、ちょうどティータイムの頃に行ったにも関わらず、空いていてゆっくりすることができました。
入って店員さんに説明を受けたのですが、1階と2階でメニューが違うそうで、私が行った時は1階にはコーヒーなどは無く、2階はドリンクしかないという状態でした。入り口の看板にはメニューあったのにわかりづらいシステムです…。
店内は落ち着いた雰囲気でしゃれた音楽が流れていました。

この日、コーヒーのブレンド(450円)を頼みました。食べ物は本当にありませんw

ちょっと酸味のありそうな香りだったのですが、飲むと控えめな苦味で飲みやすかったです。量もたっぷりで、値段の割に美味しい。
ということで、意外とリーズナブルに美味しいコーヒーを飲めて、雰囲気も良くゆっくりできたのですが、これでデザートがあればと悔やまれます。というか、階でメニューが違うというのが意味が分かりません。(時間帯でも違うのかも) とりあえず店に入る際に何が頼めるのか確認してから入った方が良さそうです。


【店名】
A917
【ジャンル】
レストラン/カフェ
【公式サイト】
http://www.cafecompany.co.jp/brands/a971/index.html
食べログ:http://r.tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13037330/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
六本木駅/乃木坂駅
【近くの美術館】
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
国立新美術館
など
【この日にかかった1人の費用】
450円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
このお店はミッドタウンの入口にあるので非常に目立つため、一度入ってみようと思っていたのですが、ちょうどティータイムの頃に行ったにも関わらず、空いていてゆっくりすることができました。
入って店員さんに説明を受けたのですが、1階と2階でメニューが違うそうで、私が行った時は1階にはコーヒーなどは無く、2階はドリンクしかないという状態でした。入り口の看板にはメニューあったのにわかりづらいシステムです…。
店内は落ち着いた雰囲気でしゃれた音楽が流れていました。

この日、コーヒーのブレンド(450円)を頼みました。食べ物は本当にありませんw

ちょっと酸味のありそうな香りだったのですが、飲むと控えめな苦味で飲みやすかったです。量もたっぷりで、値段の割に美味しい。
ということで、意外とリーズナブルに美味しいコーヒーを飲めて、雰囲気も良くゆっくりできたのですが、これでデザートがあればと悔やまれます。というか、階でメニューが違うというのが意味が分かりません。(時間帯でも違うのかも) とりあえず店に入る際に何が頼めるのか確認してから入った方が良さそうです。
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