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バーン=ジョーンズ展-装飾と象徴 (感想後編)【三菱一号館美術館】

今日は前回の記事に引き続き、三菱一号館美術館の「バーン=ジョーンズ展-装飾と象徴」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 バーン=ジョーンズ展-装飾と象徴

【公式サイト】
 http://www.mimt.jp/bj/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅

【会期】2012年6月23日(土)~2012年8月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前編は上階の大部屋までご紹介しましたが、今日は残りの後半についてです。前半同様に題材ごとに章分けされていました。


<トロイ戦争-そして神々>
この章は前編でもご紹介しましたが、次の部屋にも続いていました。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「牧神の庭」
石に腰掛けて芦で出来た笛を吹く裸体の牧神パンと、その近くで身を寄せて座る裸体の男女が、笛の音を聴いている様子が描かれてます。背景には緑豊かな山が描かれ、若干遠近感が奇妙に思えましたが、細かい描写の草花や柔らかい陰影のついた人体表現が好みでした。この作品は完成までにだいぶ時間がかかったようです。

近くには郡山市立美術館が誇る名品「フローラ」もありました。こちらは何度観ても華やかな雰囲気があります。
 参考記事:
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (横須賀美術館)
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (目黒区美術館)


<寓意・象徴-神の世界と人の世界>
バーン=ジョーンズは19世紀後半に広がった象徴主義の画家の1人とされていて、ここには寓意画や唯美主義的な傾向の作品が並んでいました。解説によると、これらはウォルター・ペイターが提示した「すべての芸術は音楽の状態に憧れる」というテーゼをジョーンズなりに具現化したものと言えるそうです。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「魔法使い」
バーン=ジョーンズが亡くなった年に描いた作品で、青いローブをまとった魔法使いの男性と、紫のローブを着た娘が描かれています。2人は一緒に凸面鏡に映しだされた嵐の中の船を見ていて、これはシェイクスピアの最後の戯曲「テンペスト」を思わせるそうです。戯曲テンペストでは元はミラノ公だった魔法使いが、自分を追いやった者たちの船を魔法で難破させるそうで、それを娘に語っているシーンを描いているものと考えられるようです。また、この頃のバーン=ジョーンズは人前に出ることがなかったそうで、画中に魔法使いは自分をモデルにしているらしく、これは自らの制作活動を魔術的な秘技になぞらえているのではないかとのことでした。 そう言われてみると男性はどこか隠者めいた雰囲気です。また、暗い背景に半開きの扉から光が差し込む様子なども描かれていて、全体的に神秘的で意味深な感じがしました。
 参考リンク:テンペスト(シェイクスピア)のwikipedia

この近くには細かい描写で幻想的なエッチング作品なども並んでいました。


<ピグマリオン-「マイ・フェア・レディ」物語>
続いてはキプロス人彫刻家(元の話では王)のピグマリオンの伝説に基づく作品のコーナーです。この話はピグマリオンが自分で作った女性像に恋し、ウェヌス(ヴィーナス)に祈って像を人間の女性にして貰うストーリーで、ここにはそれを題材にした4点の連作が並んでいます。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「ピグマリオンと彫像(恋心、心抑えて、女神のはからい、成就)」 ★こちらで観られます
4枚セットの油彩で、ピグマリオンの話が4つの場面で表されています。まず「恋心」では腕を組んで思索に耽るピグマリオンが描かれ、結構な美男子で女性かと思いましたw 色鮮やかながら落ち着いた雰囲気で、細密な描写です。 その次の「心抑え」では女性像と顎に手を当ててそれをじっと見るピグマリオンが描かれています。女性像の滑らかな体は優美で色気があります。一歩踏み出して今にも動きそうです。 そして次の「女神のはからい」では薄い衣と植物の冠を被ったウェヌスが現れ、女性像がウェヌスに倒れこむように手をかけています。既に「ガラテア」という人間の女性となったようです。そして最後の「成就」では裸婦のガラテアに跪いて手を握り締めるピグマリオンが描かれていました。ガラテア(女性像)は若干目が虚ろに見えましたが、ピグマリオンは深く感激しているように思えました。この中で一番の好みは「心抑えて」で、人間と像の違いを巧みに描き分けているのに驚きました。
なお、この絵は注文されて作られたのですが、バーン=ジョーンズはその注文主の娘のマリア・ザンコバという女性の虜となり、道ならぬ恋に落ちたそうです。(彼女の自殺未遂騒動を経て、女がパリに去るまで関係が続いたそうです。) 実はピグマリオンの女性像の下絵はマリア・ザンコバの横顔らしく、その素描も展示されていました。凄い美人で気持ちはわからんでもないw


<いばら姫-「眠れる森の美女」の話>
グリム童話にも収められた「いばら姫(眠れる森の美女)」は、バーン=ジョーンズにおいても重要な位置を占める物語だったようで、30年に渡ってこの主題を繰り返し描いたそうです。ここにはそれを題材にした作品が並び、今回の展示の目玉とも言える作品もありました。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「王宮の中庭・習作」-連作「いばら姫」
6枚のグアッシュの習作で、1枚に1人ずつ女性が眠っている姿が描かれています。機織りしている途中に寝たり、壁に持たれて寝ていたり、水汲みの途中で寝ていたりしていて、どれも突然に深く静かな眠りについたような感じがします。習作ですが完成度は高いようで、物語に合った面白い作品でした。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「眠り姫」-連作「いばら姫」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、横が2mくらいありそうな大画面となっています。ベッドのような所で横たわる姫と、その脇や足元で眠る3人の女性たちが描かれ、背景には緑の幕や野薔薇が描かれています。全体的に落ち着いた色合いで、眠る女性たちは穏やかな表情を浮かべています。幕や姫の衣の表現が流麗な印象で、神秘的な雰囲気がありました。解説によると、画面の右上には止まった砂時計が描かれ、これは永遠に少女のままでいることを暗示しているとのことです。
この絵は本当に素晴らしくて10分くらい観ていましたw どこか耽美なせいかラファエル前派のミレイのオフィーリアを観た時と似た感覚を覚えました。これが観られるだけでも価値の高い展覧会だと思います。


<書籍-学生出版から世界最美の本へ>
続いての部屋には大きな旧約聖書があり、バーン=ジョーンズはそのうちの1枚を担当したようです。これにはセガンティーニやシャヴァンヌなど各国の錚々たる画家が動員されたらしく、バーン=ジョーンズはキリスト降架の場面を描いていました。
 参考記事:
  アルプスの画家 セガンティーニ  -光と山- (損保ジャパン東郷青児美術館)
  オルセー美術館展2010 ポスト印象派 2回目感想後編(国立新美術館)

ここには他にもウィリアム・モリス著「世界の果ての旅」もあり、こちらは植物文様の装丁が非常に美しかったです。


<チョーサー「薔薇物語と愛の巡礼」>
続いてはイングランドの詩人チョーサーの物語を題材にした作品のコーナーです。チョーサーの物語は古代神話をかなり素材に使っているらしく、当時は俗語とされた英語(ラテン語・フランス語が中心だった)で書かれたためにイギリス近代文学の祖と呼ばれるそうです。また、バーン=ジョーンズはオックスフォード時代にモリスと共に夜を過ごす時はチョーサーを読んでいたそうで、昼間は2人で図書館で中世に関するものは何でも読んでいたそうです。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「[怠惰]の戸口の前の巡礼」
チョーサーの薔薇物語のワンシーンで、詩人が散歩に出かけた際、閉ざされた庭に行き付きノックして待つと、怠惰を擬人化した女性が彼を招き入れたという場面を描いています。戸口に青い頭巾と衣の男性が立ち、両手の掌を上にして何かを訴えているような感じです。その視線の先には門から出てきた女性が手を差し伸べていて、緑の衣に薔薇の花輪を被った姿をしていました。全体的に色鮮やかで、物語がそのまま絵になったようなストーリー性を感じます。この後の話は分かりませんが、背景にはがれきのようなものにカラス?がとまったりしていて何となく不穏な空気も感じました。

この近くには結構大きなタペストリーもあり、これも緻密で色鮮やかで見栄えがしました。


<旅の終わり-アーサー王・聖杯・キリスト>
バーン=ジョーンズは障害を通してステンドグラスの作品も残していたそうで。ステンドグラス用の下絵から水彩や油彩に発展したものも少なくないようです。ここには聖杯を追うアーサー王の伝説や、キリスト教を題材にした作品が並んでいました。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「種を蒔くキリスト」「波を鎮めるキリスト」
2枚対になるように展示されていた作品で、タイトル通り種を蒔くキリストの絵と、船に乗って様式化された波を鎮めようとしているキリストが描かれています。太い輪郭とデフォルメされた画風でステンドグラスを思わせました。波の様式化にはデザインセンスを感じます。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「聖杯堂の前で見る騎士ランスロッドの夢」
暗闇の中、井戸のようなものにもたれかかって眠るランスロッド(アーサー王の騎士で随一の槍の使い手)が描かれ、その右には聖杯のある教会から出てきた羽の生えた天使が描かれています。ランスロッドはアーサー王の妻と不倫していたらしく、その罪ゆえに聖杯を手に入れることはできないと夢のなかで悟らされ、天使はここから去るようにと告げているようです。兜を脱ぎ剣を置いて眠っているのですが、背景にある木にかかった盾は聖杯入手に失敗した象徴とのことでした。背景が暗いこともありやや不吉な雰囲気があり、解説によるとバーン=ジョーンズは周りの夜の雰囲気に苦心したそうです。また、これはもともとタペストリーの連作だったそうですが、この1枚だけを絵画化したそうです。

この辺には世界的にも貴重な郡山市立美術館の「アヴァロンにおけるアーサー王の眠り」もありました。

今回は久々に1階にも展示が続いていました。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「東方の三博士の礼拝」
かなり大きなタペストリーで、東方の三博士がイエス、マリア、ヨセフの聖家族のもとに礼拝しに来た様子が織られています。東方の三博士は宝を捧げ、背後には手の中に光を持つ天使の姿があり、周りはゆりや薔薇などたくさんの草花が覆っていて装飾的な雰囲気です。タペストリーとは思えないくらいの鮮やかさで、各人の表情も緻密に表現されていました。これも生で観ると驚きの大きい必見の作品です。

最後には戯画的な自画像もありました。実は結構ユーモアのある人だったようですが、作品にはそういう雰囲気は出していなかったようで、脱力系の自画像は意外に思えました。


ということで、かなり見応えのある内容で、特に「いばら姫」には感動しました。あまりに好みだったので図録も買いました。空いていて快適に観られたのも良かったです。今期お勧めの展示です。


おまけ:
この展示の公式サイトには私も大好きなジョジョの奇妙な冒険の作者 荒木飛呂彦 氏の対談も載っています。
 参考リンク:荒木飛呂彦氏の対談(PDF)
 参考記事:岸辺露伴 新宿へ行く 展 (グッチ新宿)

先日発売されたダ・ヴィンチ誌では蕭白に似ていると言われていましたが、今度はバーン=ジョーンズと共通点があるのでは?という内容でした。バーン=ジョーンズも荒木氏もミケランジェロに影響を受けたから似ているのかも。 それにしても本当に荒木氏は若々しいですw 今年は美術個展にアニメ化に対談にと各方面で大活躍ですね。


ダ・ヴィンチ 2012年 08月号


 参照記事:★この記事を参照している記事



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バーン=ジョーンズ展-装飾と象徴 (感想前編)【三菱一号館美術館】

先週の土曜日に、東京・有楽町の三菱一号館美術館に行って「バーン=ジョーンズ展-装飾と象徴」を観てきました。満足度の高い展示でしたので、前編・後編に分けてじっくりご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 バーン=ジョーンズ展-装飾と象徴

【公式サイト】
 http://www.mimt.jp/bj/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅


【会期】2012年6月23日(土)~2012年8月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
予想していたより空いていて、快適に鑑賞することができました。こんなに充実した展覧会なのにある意味驚きです。

さて、今回の展示はイギリス絵画の巨匠エドワード・バーン=ジョーンズの個展です。
バーン・ジョーンズと言うとアーツ・アンド・クラフツ運動の旗手ウィリアム・モリスとの繋がりや、師匠のロセッティからの流れでラファエル前派の文脈で紹介される機会が多いように思いますが、意外にもバーン=ジョーンズの個展は日本で初めてだそうです。展覧会はバーミンガム美術館の所蔵品を中心に、国内外の厳選された作品が80点ほどの集まった濃い内容で、主題となる題材ごとに章分けされていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
なお、ラファエル前派やアーツ・アンド・クラフツに関する解説は少なめでしたので、ご存じない方は参考記事を読んで頂ければと思います。
 参考記事:
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (横須賀美術館)
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (目黒区美術館)
  ウィリアム・モリス ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン展 (うらわ美術館)


<ポートレート-画家と自画像>
まず最初にエドワード・バーン=ジョーンズの肖像画がありました。

ジョージ・フレデリック・ワッツ 「エドワード・バーン=ジョーンズの肖像」
同時代のワッツによるエドワード・バーン=ジョーンズを描いた肖像で、暗闇に浮き上がるようにヒゲが長い初老の男性の顔が写実的に描かれています。知的な雰囲気があり、穏やかそうな顔でした。解説によると、バーン=ジョーンズはワッツが庇護を受けていたプリンス家の芸術サロンに通い、美術批評家のジョン・ラスキンやワッツから様々な影響を受けていたそうです。


<旅立ち-「地上の楽園」を求めて>
バーン=ジョーンズは早くからギリシア神話、アーサー王の物語、チョーサーの詩、トリスタンとイゾルデなど複数の物語に興味を持っていたそうで、ここはその出発点を示すコーナーです。
親友のウィリアム・モリスは神話や伝説を独自の解釈でアレンジして長編詩「地上の楽園」を書きました。その際、バーン=ジョーンズが挿絵を描く計画があったようですが、結局挿絵は実現せずテキストだけで出版されました。しかし、バーン=ジョーンズはこの「地上の楽園」から主題の提示と暗示を受けて、多くの作品を制作したようです。解説ではバーン=ジョーンズの生涯は、モリスが活字で実現しようとした「地上の楽園」を絵画で具現化する歩みと言えるとのことでした。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「迷宮のテセウスとミノタウロス-タイル・デザイン」
石を積み上げた迷宮の中、アリアドネの糸と剣を持って進むテセウスが描かれた作品です。角を曲がった奥には頭だけ覗かせてじ~~っと待ち構えるミノタウロスの姿もあり、物語的な雰囲気があります。しかしミノタウロスはちょっと可愛く見えるかなw 足元には小さな花?や骨が沢山転がっている描写も面白かったです。

近くにはアーサー王や、トリスタンとイゾルデの物語を描いた作品もありました。そして次の部屋の最初には「オックスフォード・ケンブリッジ・マガジン」という本があり、これは7人の同志を結成して刊行した全12号の本(展示は1号と2号)で、キリスト教社会主義の理想を唱えているようです。ここでバーン=ジョーンズは優れた文才も発揮したそうで、最初期の挿絵も入っていました。(絵はコピーのみ)

エドワード・バーン=ジョーンズ 「慈悲深き騎士」 ★こちらで観られます
粗末な建物の中で跪いて祈る姿の黒い鎧の騎士と、それを向かい入れるように手を差し伸べるキリストを描いた作品で、背景には森や花々などが描かれています。これは11世紀のフィレンツェにいた聖グアルベルトの逸話を題材にしたものだそうで、聖グアルベルトが兄弟の仇を討とうとした際、相手が命乞いしてきたので相手を赦しました。するとその後立ち寄った教会(粗末な建物に見えますが)でキリストの祝福を受けたらしく、これはまさに祝福のシーンのようです。ラファエル前派の特徴を受け継いでいるとのことで、確かに色鮮やかで緻密な描写や、草花への視線はそうした雰囲気が強かったように思います。

この辺は素描などが展示されていました。


<クピドとプシュケ-キューピッドの恋>
1865年にウィリアム・モリスが書いた物語詩「クピドとプシュケ」は、バーン=ジョーンズに本のデザインを任せたそうですが、様々な理由によって見送られたそうです。しかしバーン=ジョーンズの描いた原画はその後、クピドとプシュケとを主題にした作品の源になったそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。

エドワード・バーン=ジョーンズ/ウォルター・クレイン 「泉の傍らに眠るプシュケをみつけるクピド」-連作「クピドとプシュケ」(パレス・グリーン壁画)
木?で出来たテラスのような所で、だらんと寝転んでいる上半身半裸の女性プシュケと、その隣でプシュケの顔を覗き込むように立つクピドが描かれた作品です。クピドの背には青い羽が生え、手には弓を持ち、肩には衣が丸くなったものが掛かっています。クピド(キューピッド)は意外と大人っぽく描かれ、流れるような衣のひだの表現などが見事でした。
解説によると、これは1872年に裕福な地方貴族のジョージ・ハワードによってモリス商会に依頼されたそうですが、バーン=ジョーンズは多忙で数年後にウォルター・クレインに引き継いだそうです。しかしその出来に満足できず、結局自分で修正の筆を入れて、完成したのは10年も後だったそうです。
この隣にも同じシリーズの「プシュケを山へ運ぶゼフュロス」という作品もありました。また、「クピドとプシュケ-11点一組の水彩習作」という習作もあります。

次の部屋にはウィリアム・モリスの「地上の楽園」の本もありました。全8巻で24編あるそうです。


<聖ゲオルギウス-龍退治と王女サブラ救出>
この章では聖ゲオルギウスの龍退治に関する作品が並んでいました。聖ゲオルギウスは伝説上の聖人で、リビアのシレーヌで毒を持ち生贄を要求するドラゴンを倒し、王女を助けたとされる人物です。(後にマクシミリアヌス帝治下でキリスト教弾圧で殉教)
 参考記事:ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年 (国立西洋美術館)

エドワード・バーン=ジョーンズ 「闘い:龍を退治する聖ゲオルギウス」-連作「聖ゲオルギウス(全7作品中の第6)」
黒い鎧に赤いマントを羽織った騎士が、足元の黒い怪物(龍)の口に剣を突き刺すシーンが描かれた作品です。隣には祈るようなポーズで見守る白い服の王女の姿もあります。龍はトカゲか犬のような姿で這いつくばり、キバで応戦しています。一方、騎士は冷淡な感じの表情で、王女は不安げな顔をしていました。解説によると、龍は異教、王女はキリスト教を象徴するそうです。ちなみにバーン=ジョーンズは画家になる前は聖職への道を志していたのだとか。

この辺には兜や、槍で怪物を刺す裸体像の素描などもありました。

なお、バーン=ジョーンズは学生時代に美術批評家のジョン・ラスキンと親交を得たことにより、イタリア15世紀の画家たちに関心を持ったそうです。1859年に初めてイタリアを訪れた際にはヴェネツィアでカルパッチョの絵を模写していたようです。
 参考記事:
  世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~ 感想前編(江戸東京博物館)
  世界遺産 ヴェネツィア展 ~魅惑の芸術-千年の都~ 感想後編(江戸東京博物館)


<ペルセウス-大海蛇退治と王女アンドロメダ救出>
続いてはギリシア神話のペルセウスを題材にした作品のコーナーで、この話もモリスによって物語詩に翻案されたそうです。バーン=ジョーンズは1875年に政治家に新居の装飾を依頼され、大量の準備デッサンを制作したそうで、その出発点はモリスの挿絵本のための下絵や大英博物館での壺絵の研究だったようです。
 参考記事:
  大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美 感想前編(国立西洋美術館)
  大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美 感想後編(国立西洋美術館)

エドワード・バーン=ジョーンズ 「果たされた運命:大海蛇を退治するペルセウス」-連作「ペルセウス」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている1.5m四方くらいある大きな下絵で、左に背を向ける裸婦(アンドロメダ)、右に長く渦巻くような青い大海蛇と、それと戦う鎧をまとったペルセウスの姿が描かれています。グアッシュで描かれ やや淡い色合いですが、非常に見栄えがします。1枚にぴったり収まるような構図でありながら大胆な構成で、蛇の力強さや闘いの緊張感が伝わって来ました。これはかなりの傑作だと思います。

この隣にあった「メドゥーサの死 Ⅱ」(★こちらで観られます)もかなりの緊迫のシーンでした。どちらも政治家の家の装飾のための下絵です。近くには連作ペルセウスの7枚の写真があり、どれもドラマチックなシーンとなっていました。


<トロイ戦争-そして神々>
ここは神話に取材したその他の魅力ある作品のコーナーです。バーン=ジョーンズはイタリア旅行で触れたルネサンス絵画から様式だけでなく主題の選択にも影響を受けたと推察されるそうで、ここにもそうした作品が並んでいました。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「ステュクス河の霊魂」
真っ暗な背景に白い体の人々がお互いに肩を組んだりしている様子が描かれた作品です。まるで亡霊が彷徨っているようだと思ったらまさしくそのとおりで、これはギリシア神話の中の、あの世とこの世を分ける川(日本で言えば三途の川みたいな)の岸らしく、船賃がなく向こうに渡れない者たちが川岸で取り残されているそうです。見ていて不安になるようなちょっと怖い作品でした。

この辺にはボッティチェリから影響を受けた三美神などもありました。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「ペレウスの饗宴」
横長の油彩画で、長いテーブルを中心に沢山の神々(裸が多い)が描かれ、皆が右の方に注目しています。右端にはコウモリのような羽を持つ青いドレスの女性が描かれ、これは宴席に呼ばれなかった不和の女神エリスのようです。その近くには使者の神メリクリウスが「最も美しいものへ」と描かれた巻物とりんご(何故か金でなく赤)を持ち、左のほうではユーノー・ウェヌス・ミネルヴァの3人が、我こそが相応しいとばかりに手を伸ばしていました。これが発端となり、3人の女神のミスコンとも言える「パリスの審判」に繋がり、ウェヌス(ビーナス)がパリスへの見返りとしてスパルタ王の妻ヘレネを与えると約束したことがトロイア戦争につながっていきます。 この絵は色鮮やかで、動きを感じる肉体表現からは確かにルネサンス絵画を彷彿させました。今後の戦争を予兆するようなエリスの不穏な雰囲気も面白いです。


<寓意・象徴-神の世界と人の世界>
この章は先の部屋にあるのですが、1点だけ大部屋に展示されていました。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「運命の車輪」 ★こちらで観られます
縦長で、左に運命の女神フォルトゥナが立ち、画面いっぱいに描かれた車輪を回しています。その車輪には上から順に、鎖でつながれた奴隷、笏を持つ王、月桂樹の冠の詩人が磔になっていて、これはどのような身分の者でも栄枯盛衰の輪からは等しく逃れられないということを表しているようです。こちらの作品も肉体表現が見事で、筋肉の付き方がリアルです。解説によるとミケランジェロの模写をしたりしていたようで、確かにミケランジェロの「瀕死の奴隷」などを思い浮かべる作品でした。


ということで、前半から見所の多い展示となっています。特にペルセウスと運命の車輪は見応えのある作品だと思います。後半にはさらに驚きの作品が待っていましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。


   →  後編はこちら



おまけ:
この日は先日ご紹介したPAUL(ポール)でランチをとってから三菱一号館美術館に行きました。またハムのクレープを頼んでしまった…w 最近のお気に入りです。
 参考記事:PAUL(ポール)(東京駅界隈のお店)


 参照記事:★この記事を参照している記事




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スイスの絵本画家 クライドルフの世界 【Bunkamuraザ・ミュージアム】

前回ご紹介した東急本店の中のお店でお茶した後、Bunkamuraザ・ミュージアムへ行って「スイスの絵本画家 クライドルフの世界」を観てきました。

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【展覧名】
 スイスの絵本画家 クライドルフの世界

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_kreidolf/index.html
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_kreidolf.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅


【会期】2012/6/19(火)~7/29(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日17時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外とお客さんが多かったですが、特に鑑賞に支障が出るほどではありませんでした。

さて、今回の展示はエルンスト・クライドルフという絵本画家の個展です。私は全く知らなかったのですが、スイスでは国民的な絵本画家で、19世紀~20世紀初頭のヨーロッパの絵本の黎明期を代表する人物だそうです。展覧会はプロローグとエピローグを含み7つの章に分かれていましたので、各章ごとにその様子を振り返ってみようと思います。


<プロローグ: 肖像と風景>
まずは絵本画家になる前のコーナーです。クライドルフは子供時代から昆虫や植物をスケッチするのが好きだったそうで、ミュンヘンの美術アカデミーで学び、簡潔で個人的な様式を完成させていったそうです。しかし、健康的な問題と疲労から学業の中断を余儀なくされたらしく、特に1889年に姉のヘルミーがこの世から去ると、精神状態は不確かさと絶望に満ちたそうです。そしてその年に静養のために南アルプスのパルテンキルヘンへと赴くことになりました。当初は数週間の滞在の予定でしたが、約6年間この地に留まったそうで、無数の素描や水彩を制作しました。また、この地では生涯の友になる詩人のレオポルド・ヴェーバーに出会ったそうで、共に周囲の山々に入っては植物や動物を描いていたようです。この章ではその前後の時代の作品を中心に紹介していました。

エルンスト・クライドルフ 「自画像」 ★こちらで観られます
これは冒頭にあった水彩の自画像で、描いたのは1916年なので後の時代の作品です。やや横向きで髭を生やし、精悍な顔つきをしていますがちょっと神経質っぽい雰囲気もあるかな。手前には擬人化されたバッタやてんとう虫など4匹の虫が行列するような感じで、苗・花・実・スコップを持っています。これは人の一生を表しているそうで、スコップは墓掘りを連想するようです。精密な虫の描写や、一見楽しげに観えて意味深な所が面白かったです。

この辺には家族を描いた素描が並んでいました。写実的な画風です。

エルンスト・クライドルフ 「牧歌的な朝」
窓辺で植木に水をあげる女性、それを見つめる猫、もう1匹の寝そべる猫を描いた水彩画です。窓の外から光が差し込むような明るさで、全体的に爽やかな雰囲気があります。しかしこの頃は弟や祖母、母たちが相次いで亡くなったそうで、辛い時期だったと思われます。この女性は妹がモデルになっているようでした。

少し進むとアルプスの風景と植物などが描かれた水彩のコーナーでした。

エルンスト・クライドルフ 「パルテンキルヘン」 ★こちらで観られます
これは油彩で、見下ろすような視点で山間の街並みを望む風景を描いています。遠くには高いアルプスの山々が見え、穏やかな日差しの中でのんびりした雰囲気です。写実的でありつつ、情感が伝わる風景画でした。


<第1章:初期の絵本>
クライドルフはある日、花を手折ったのですがすぐにそれに後悔したそうで、しおれ行く花の命を永らえさせる為に「プリムラ、リンドウ、エーデルワイス」という習作を描きました。そしてこれを着想源とした「プリムラの花園」から「花のメルヘン」という絵本が育まれていったそうです。喪失と不安定な時期の中で、子供の頃から魅了されていた花や植物、昆虫に慰めを見出し、擬人化された物語を生み出したようで、クライドルフは絵と文だけではなく見返しや表紙・扉絵も手がけ、総合芸術と呼ばれる芸術を作っていきました。
「花のメルヘン」の後、「フィッツェブッツェ」という本の挿絵を描いたのですが、これは賛否両論だったようで、子供たちに相応しくないと批判されたそうです。また、友人のレオポルド・ヴェーバーに献じられた「眠れる木」では様式化された花々や巻き蔓による装飾があるそうで、アール・ヌーヴォー様式が用いられているとのことでした。ここにはそうした作品が本ごとに並んでいました。

エルンスト・クライドルフ 「プリムラ、リンドウ、エーデルワイス」 ★こちらで観られます
これが絵本のきっかけになった作品で、1894年11月末に季節外れのプリムラとリンドウを摘んだ際に描かれました。青いリンドウとプリムラが写実的に描かれ、可憐な雰囲気です。色鮮やかなせいか儚くも生き生きとした描写に思いました。

エルンスト・クライドルフ 「花のメルヘン 原画」 ★こちらで観られます
絵本画家になるきっかけとなった「プリムラの花園」を含む絵本の原画シリーズです。擬人化された昆虫や植物が登場する絵本で、連続した物語は無いそうですが、1枚1枚にストーリーを感じるような情景となっています。「プリムラの花園」にはリンドウの花を思わせる帽子をかぶった女性が、プリムラ殿下と腕を組んで歩く様子が描かれていました。 キャラクター化され可愛らしい雰囲気で、ここまで見た写実的な画風とは違って見えます。その他にも結婚式や舞踏会などのシーンもあって楽しげで穏やかです。「ヒマワリ夫人とダリヤ夫人」という作品のヒマワリ夫人の顔は中々インパクトがありましたw

エルンスト・クライドルフ 「眠れる木 原画」
これは友人のレオポルド・ヴェーバーに捧げた絵本で、表紙やタイトルに植物が象られています。確かにアール・ヌーヴォー的な要素がありますが、それほどでもないかなw 擬人化された木や嵐、火事、雨などが出てくる話で、木の爺さんが気の毒な場面が多かったように思います。

エルンスト・クライドルフ 「フィッツェブッツェ 原画」
これは子供に相応しくないと批判された本で、フィッツェブッツェとは子供の玩具の1種で、糸引き人形の名前のようです。子供の感覚に合う本を目指したらしく、メルヘンチックな雰囲気があるのですが、何故批判されたのかは分かりませんでした。

この部屋の中央あたりでは実際の絵本も展示されていました。


<第2章:くさはらの中の生き物たち>
続いてはバッタや小人が出てくる作品が並ぶコーナーです。クライドルフはどちらも好きだったそうで、いくつもの絵本に描かれているようです。

エルンスト・クライドルフ 「くさはらのこびと 原画」 ★こちらで観られます
小人とバッタの物語を描いた絵本です。小人が結婚式に行っていた間に、バッタたち(飼っている)が隣の家の草を食べてしまい、隣家と喧嘩になります。するとその喧嘩を見て悲しんだお日様が姿を隠してしまい、最後は小人たちは仲直りをするというストーリーのようです。バッタは馬車馬のような存在で、小人は三角帽子にヒゲ姿という伝統的な描写となっていました。最初は何だか楽しげなシーンですが、途中で言い争い、バッタの馬に乗った騎士みたいな小人が戦っているシーンもありました。…喧嘩じゃなくて戦争だろこれはw

この章の冒頭にはかなり精密に描かれたバッタやトンボのスケッチがあり、姿は写実的なのに擬人化された動きをする「走るバッタ」という作品もありました。

エルンスト・クライドルフ 「バッタさんのきせつ 原画」 ★こちらで観られます
これもバッタの絵本ですが、起承転結の物語ではないようです。姿はバッタそのものですが擬人化されたポーズで、綱渡りしたり、玉乗りしたり、ボーリングしたり…と楽しそうです。しかし蜘蛛の巣に捕まってぐるぐる巻のバッタも描かれ、これは子供にはちょっと怖そうなシーンでしたw


<第3章:アルプスの花の妖精たち>
クライドルフにとって花と植物は特別な位置を占める題材だったようで、花の儚さを知ることが自身の芸術家としての道のりにどれほど重要な意味があったかと書いているそうです。ここにはそうした花を題材にした作品が並んでいました。

エルンスト・クライドルフ 「詩画集 花 原画」 ★こちらで観られます
これは友人の作家の本の挿絵で、詩から得た発想を活かした作品だそうです。花や植物が写実的に描かれ、その周りに妖精や擬人化されたものが描かれています。花そのものの美しさを感じたり、それが1つの要素となっている絵があったりと面白味がありました。

この章の最初には黒を背景に精密に描かれたスケッチがありました。植物図鑑のような感じです。

エルンスト・クライドルフ 「アルプスの花物語 原画」 ★こちらで観られます
これは草花を擬人化して自然の本質を描こうとしたクライドルフの代表作だそうで、植物の特徴や花にまつわる神話から着想を得て描かれています。アドニスの花を題材にしたものや、擬人化された蝶たちと共に踊る様子、岩の裂け目に隠れているプリムラたち など、様々なものが描かれているのですが、それが生態の特徴を表しているようでした。

この辺にはクライドルフの世界を再現した古谷桂子 氏によるジオラマもありました。


<第4章:妖精と小人-メルヘンの世界の住人たち>
クライドルフは自分の作品に古典や神話、キリスト教の物語、伝説、メルヘンの登場人物などを取り入れて、新たな解釈を加えたそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。

エルンスト・クライドルフ 「ふゆのはなし 原画」
これは7人の小人と白雪姫の話をさらに広げた物語です。小人たちが7年に1度会いに来る白雪姫と再開する話で、白雪姫に会うために旅する小人たちが、おばけのような雪の積もった所や氷の洞窟などを通っていく様子が描かれています。リスにソリを引かせたりするシーンもあり、クライマックスには白雪姫との宴が描かれ、温かく輝くような雰囲気でした。その後も一緒に雪遊びをしていますが、最後は別れで悲しんでいました。どことなくユーモアを感じる作品です。

この辺には「花を棲みかに(春の使い)」(★こちらで観られます)という擬人化された花や虫たちの物語もありました。

エルンスト・クライドルフ 「妖精たち小人たち(小人と妖精たちのところで)」 ★こちらで観られます
これはノームやエルフが出てくる物語で、どれものんびりとした日常を感じさせます。、穏やかで楽しげな場面の続く作品でした。

この辺には実際の絵本を読めるコーナーもありました。日本語の本も多く、ミュージアムショップにも置いてあるようです。


<第5章:子供たちの教育>
クライドルフは自身の本だけではなく他の作家の詩や文章の挿絵も描いていたそうで、詩歌の核心を表すことに集中する一方、その中には物語的要素や隠れた意味もあるそうです。そして、クライドルフは第一次世界大戦の末期頃に小学3年生用の読本「庭の赤いバラ」の挿絵を依頼され、それが人気を博します。これはゲーテ、グリム、アンデルセンなどの作家や詩人の文章からなり、詩、歌、冒険、妖精などの物語が含まれていたそうです。
一方、「古い俗曲」という本の挿絵では女性を題材にして、女性への賞賛、恐れ、憧れ、裏切り、魅力などを扱っているそうです。
ここにはそうした作品が並んでいました。


エルンスト・クライドルフ 「古い俗曲 原画」
裸婦や酔った家政婦、泣きながら林檎をかじる少女など、様々な題材が描かれた作品です。物語的な場面が多く、確かに女性の色々な面を捉えているように思えました。

この辺には「昔の子供の詩 原画」という民謡や子供の歌に添えられた挿絵もありました。昆虫や動物を題材にしたものだけでなく人間を中心にしたものもあるかな。

エルンスト・クライドルフ 「庭の赤いバラ 原画」 ★こちらで観られます
これが人気を博した作品で、擬人化された昆虫なども出てきます。繋がっているかは分かりませんが、それぞれ物語のワンシーンのような場面となっていました。


<エピローグ:夢の世界>
最後は夢をテーマにした作品などが並ぶコーナーです。この辺は閉館が迫っていたのでメモは短めですw

エルンスト・クライドルフ 「夢の人物 原画」
友人のレオポルド・ヴェーバーの本で、暗めの夜のシーンが多めです。神秘的でお化けのようなものも出てきて、「死者の国」というようなちょっと怖い絵もありました。

エルンスト・クライドルフ 「[運命の夢と幻想]シリーズ」 ★こちらで観られます
これは自叙伝な作品で、自画像もこれに含まれています。やや暗めの背景に畑で作業する人(空に謎の人影)や、恋人と寄り添う人などが描かれていて、「青春時代」や「別れ」といった意味深なタイトルとなっていました。自身の精神世界をも表現しているようです。

エルンスト・クライドルフ 「魔法の庭」
庭を描いた作品で、色とりどりの花が咲き、孔雀を始め珍しい鳥の姿もあります。左から柔らかい日差しが差し込み、穏やかで理想郷的な風景です。淡い色彩で爽やかな雰囲気がありました。
解説によるとクライドルフは1917年に再びベルンに移り住んでからは油彩にも再び取り組んだとのことでした。

最後にはスケッチブックや自筆の絵葉書、メガネやルーペなどの遺品もありました。


ということで、全然知らない作家でしたが独特の世界観を楽しむことができました。日本語の絵本もあるようで、ミュージアムショップでも売られていました。(amazonにもあるようです) 絵本好きの方には特に面白い展示だと思います。
 参考リンク:クライドルフの絵本一覧(amazon)


おまけ:
東急のショーウィンドウにあったグッズの写真
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 参照記事:★この記事を参照している記事




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銀座立田野 【渋谷界隈のお店】

先週の日曜日に、渋谷のBunkamuraで展覧会を観てきたのですが、その前に同じ東急の中にある「銀座立田野 東急本店5階店」というお店でお茶してきました。

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【店名】
 銀座立田野 東急本店5階店

【ジャンル】
 甘味処

【公式サイト】
 http://www.ginza-tatsutano.co.jp/tenpo4.html#top
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13007395/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 渋谷駅/京王井の頭線神泉駅

【近くの美術館】
 Bunkamuraザ・ミュージアム
 松濤美術館
 たばこと塩の博物館
  など


【この日にかかった1人の費用】
 1680円程度

【味】
 不味_1_2_3_4_⑤_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_4_⑤_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
遅い時間に行ったこともあり、空いていました。

このお店の本店はその名の通り銀座にあるそうで、明治28年から続く老舗だそうです。渋谷の東急本店のお店は5Fにありました。
店内はこんな感じ。綺麗で店員さんの対応も丁寧です。
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しかしお店の中でもデパートの館内放送が流れているので、あまり落ち着ける感じでは無かったかな。

この日は白玉あんみつ(893円)と冷やし抹茶(787円)にしました。
まずは抹茶。
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抹茶の風味が豊かで美味しいです。しかし値段も高いのでコストパフォーマンスは微妙かなw 

そしてあんみつ。
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こちらは上品な甘さのアンコと、食感の気持ちいい寒天が美味しかったです。小豆は十勝産の「宝珠」、寒天は伊豆神津島のものを使っているそうです。


ということで、美味しいあんみつだったと思います。こだわりの食材を使っているためか値段を考えるとちょっと贅沢した時向けかな。お土産用もあるようで、そっちの方が安いみたいです。




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福田平八郎と日本画モダン 【山種美術館】

先週の日曜日に、恵比寿の山種美術館へ行って「特別展 生誕120年 福田平八郎と日本画モダン」を観てきました。この展示は前期・後期に期間が分けられていて、私が行ったのは後期の内容でした。

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【展覧名】
 特別展 生誕120年 福田平八郎と日本画モダン

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html

【会場】山種美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅


【会期】2012年5月26日(土)~7月22日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
予想以上に混んでいて、あちこちの作品に人だかりができるような感じでした。

さて、今回の展示は大正から昭和にかけて活躍した日本画家、福田平八郎と同時代の画家たちがテーマとなっていました。
入口辺りに簡単な略歴があり、それによると福田平八郎は大分県生まれで、1910年の中学3年の際、留年したのをきっかけに画家を目指すようになり、京都市立絵画専門学校別科に籍を置きました。その翌年には京都市立美術工芸学校に入学し、竹内栖鳳ら京都画壇の教授陣の指導を受けます。1915年には京都市立絵画専門学校のに再入学し、1917年に卒業しました。 その後は第1回帝展に入選するなど早くから才能を開花させ、京都市立絵画専門学校の助教授や京都市立美術工芸学校の教諭にも就任したそうです。
福田の画風はシンプルで、色面を使いデザイン的な要素がありますが、最初からそうした画風ではなかったらしく、20~30代にかけては写実性と細部描写に強いこだわりがあったそうです。しかし、昭和に入る頃にスランプに落ち入り、そこから脱却したきっかけは1928年の中国旅行と1930年に結成した六潮会への参加でした。六潮会には洋画家や美術評論家など所属も出身もことなるメンバーが集まり、京都画壇しかしらなかった福田平八郎の研鑽の場となっていきました。

展覧会は2つの章に分かれ、前半が福田平八郎で、後半は六潮会のメンバーを含む同時代の画家たちの作品が並んでいました。詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。


<第1章 福田 平八郎>
まずは福田平八郎のコーナーです。若いころの作品から晩年まで様々な時期の作品がならんでいました。

福田平八郎 「筍」
これは冒頭に展示されていた福田平八郎の特徴がよく分かる作品で、2本のタケノコが描かれています。漆のような茶色い表面で節々から緑の葉が出ていて、背景は薄い線で竹の葉が一面に敷き詰められている様子が描かれています。タケノコは写実的で、単色で輪郭だけの葉っぱと対比的な感じを受けました。シンプルな形にされたデザイン感覚が面白いです。解説によると、これは戦時中に絵を描くのもはばかれる中で、こっそりと京都の竹林で写生していたとのことです。

福田平八郎 「鮎」
赤い半円を背景に、11匹の鮎が泳いでいる様子が描かれています。写実的なようで意匠化されたように見え、身を捻っている姿に動きを感じました。背景が何で赤なんだろう?とちょっと疑問もありますがその理由は分かりませんでした。

この辺は鮎を描いた作品が何点か並んでいました。福田平八郎は釣りが好きだったらしく、釣りをしながらスケッチを描いていたそうです。

福田平八郎 「青柿」
柿の木の1本の枝が描かれた作品で、枝には無数の葉っぱがついています。その葉っぱは非常に明るい青が使われていて、まずその色彩感覚に驚きました。葉脈の部分は黄土色で描かれ、所々に滲みを使った表現も使われているなど、色へのこだわりを感じます。色のインパクトのためか大振りな葉っぱからは強い生命力を感じました。
当時これを見た正井和行氏は、福田平八郎から「君、この絵が分かるか?」と訊かれ、それまでの日本画にない色彩の分割に理解できず「分かりません」と答えたそうです。これは確かに驚く作品でした。

福田平八郎 「花菖蒲」
淡い空色を背景に、2本の青い花菖蒲が並んでいる様子を描いた作品です。しかし、よく観ると根本は3本あり、真ん中の菖蒲は茎も伸びず葉っぱだけ描かれていることがわかります。こちらも単純化されたデザインのようになっていますが、濃淡はつけられているようでした。青と葉っぱの緑が鮮やかで、清純な雰囲気がありました。

近くには花菖蒲のスケッチもありました。スケッチは色鉛筆を使っていたらしく、形や線よりも色を強く感じていたそうです。

福田平八郎 「雨」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている作品で、屋根瓦が並んでいる所をトリミングしたような大胆な構図となっています。瓦の表面は風化したようなざらつきを感じさせ、染みのような丸い点が所々にあります。これは大粒の雨が瓦に落ちてきたのを表現しているらしく、雨が落ちたばかりの所は白い点、染み込んでいる所は黒っぽい点 という感じ1つ1つが違っています。この斬新な構図のリズム感も面白いですが、雨の情感が溢れる繊細な表現力と発想も見事でした。

福田平八郎 「桃と女」
これは24歳の頃に描かれた6曲1隻の屏風で、2人の前掛けをした農婦と、その周りに緑豊かな葉をつける桃の木が描かれています。木は単純化されているようにも見えますが、女性の顔には陰影が付けられ写実性があるようでした。右下には「九州」という落款があり、これは大分出身ということで何気なしにこの名前にしたとのことです。

近くには「牡丹」もありました。この作品はこの美術館でよく観るかな。
 参考記事:百花繚乱 -桜・牡丹・菊・椿- (山種美術館)


<第2章 日本画モダン>
明快な色面と単純化された形態、斬新な構図 といった福田平八郎の打ち出した新しいスタイルは、1930年代以降の日本画壇の傾向でもあったそうです。この章では5つのポイントに分けて同時代の画家を紹介していました。なお、この章のタイトルにもなってる「日本画モダン」というのは本展覧会にあたり監修者の山下裕二氏が考えた造語だそうです。 この章を観てみると的確な名前だと思います。


[琳派へのオマージュ]
加山又造 「涛と鶴(小下絵)」
2枚セットで、図案化された渦巻くような波濤と、その上を舞う無数の銀の鶴たちが描かれた作品です。黒と銀の線の波と 鶴たちの色は落ち着いていて、どこか雅なものを感じました。確かに琳派を思われる色と意匠化があるかな。
ちなみにこの作品は山種美術館の入口を飾っている銅板の壁画の下絵だそうです。

ここには俵屋宗達と本阿弥光悦の合作「四季草花下絵和歌短冊帖」もありました。全然 時代は違いますが、意匠化という点では偉大な先輩かな。
 参考記事:ザ・ベスト・オブ・山種コレクション [前期] 江戸絵画から近代日本画へ (山種美術館)

[主題の再解釈]
ここは後期は落合朗風の「エバ」だけ展示されていました。何度かご紹介したことがあるので今回は割愛。
 参考記事:
  日本画と洋画のはざまで (山種美術館)
  ザ・ベスト・オブ・山種コレクション [後期] 戦前から戦後へ (山種美術館)

[大胆なトリミング・斬新なアングル]
奥村土牛 「北山杉」
土牛の晩年の作品で、手前にゴツゴツした2本の古木があり、横に伸びる枝からはまっすぐ上に伸びる細い木々が大胆な構図で描かれています。淡い色彩と相まって、幻想的で不思議な光景となっていました。

守屋多々志 「慶長使節支倉常長」
これは6曲の屏風で、黄色い屋根の並ぶローマの街並みを背景に、市松模様の床と丸みのある柱が並ぶ回廊が描かれています。その回廊の縁には刀を杖のように持った侍、白黒の猟犬?、右の方にも真っ黒で毛の長い犬の姿もあります。これは江戸時代はじめに伊達政宗がローマに派遣した慶長使節の支倉常長を描いたものだそうで、ちょっとミスマッチな感じが面白いです。きりっとした表情でローマの様子を観ていて、孤高な雰囲気があるように見えました。柱や回廊には影が付けられ、立体感・遠近感があり広々とした奥行きを感じます。日本画と西洋画の中間のような作品でした。

中村岳陵 「晴れし海」
この画家は六潮会のメンバーで、ゴツゴツした岩とその奥にちょっとだけ海が観えている様子を描いています。岩の上には細かい金粉のようなものが散らされていて、ざらついた質感や風格を感じさせました。結構、陰影も強く写実的です。

[構図の妙]
杉山寧 「榕」
青暗い夜の中、複雑に絡み合ううねった木と、オレンジの鳥が描かれています。これは沖縄で写生したガジュマルと、エジプトなどで見たヤツガシラという鳥だそうで、鳥はトサカと長いくちばしが特徴的に見えます。ガジュマルの木は奇妙な形ですが生命力があるように思えました。背景の色のせいか夜の静けさも感じます。

山口蓬春 「榻上の花」
この画家は六潮会のメンバーで、元は洋画科だったものの日本画科に転向した経歴を持っています。この作品は、窓辺の椅子に乗ったアジサイと洋なしが描かれ、見た目やモチーフは洋画そのものです。というのも、山口蓬春はマティスやブラックの作風を日本画に取り入れようとしたそうで、カーテン?の単純化された模様からはマティスからの影響が観られるとのことでした。この和洋折衷は面白くて好みでした
近くには以前見たことがある「夏の印象」(★こちらで観られます)もありました。
 参考記事:文化勲章受章作家の競演 日本絵画の巨匠たち (ホテルオークラ アスコットホール)

[風景のデザイン化]
加倉井和夫 「冱田」
灰色っぽい画面に茶色っぽい四角が規則的に並んだ様子が描かれた作品です。抽象画か?と思ったら、田んぼの稲の刈株を描いたものだそうで、所々に白くなっているところは水が凍っている様子のようです。そう言われて観ると、やや氷が溶けているところや青空の反射なども確認できて、春が近いことを思わせるような光景でした。これは構図の選択や発想も面白かったです。

中村岳陵 「緑影」
川の中を泳ぐ10匹程度の鯉を描いた作品です。列をなして泳ぐ様子は動きを感じさせ、ゆるやかなカーブを描いているのが優雅です。水面には青い空や岸の様子?が反射し、透明感や水のゆらめきを感じました。湖底に影が落ちていたりもするので表現が巧みです。今の時期にぴったりの涼しげな雰囲気の作品でした。

続いて第二会場です。

正井和行 「流水」
福田平八郎の唯一の弟子と言える人の作品で、手前に砂浜に立つ細い杭、そして奥に向かって蛇行していく白い川が描かれています。これは大井川の河口だそうで、広々として、川が光って観えます。神秘的な一方で、全体的に灰色っぽいせいか少し寂しげな雰囲気がありました。単純化されたところは先生に似ているように思えます。


ということで意外と福田平八郎の作品は少なく、代表作の「漣」は前期のみで観られなかったのが残念でしたが、それでも楽しむことができました。もうすぐ終わってしまいますので、興味がある方はお早めにどうぞ。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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アラブ・エクスプレス展 アラブ美術の今を知る 【森美術館】

前々回前回とご紹介した森アーツセンターギャラリーの展示を観た後、1つ上のフロアの森美術館で「アラブ・エクスプレス展 アラブ美術の今を知る」を観てきました。

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【展覧名】
 アラブ・エクスプレス展 アラブ美術の今を知る

【公式サイト】
 http://www.mori.art.museum/contents/arab_express/index.html

【会場】森美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅


【会期】2012年6月16日(土)~10月28日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日19時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
夜の時間帯だったこともあり、空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はアラブ社会の現代アートを取り上げた内容となっています。私は、アラブという括りは何となく中東を指すのだろうという感じで、アラブ美術と言えば古い陶器などを思い起こしたのですが、現在のアラブ社会は急速に変化を遂げて文化も多様化し、アートの世界も成熟しつつあるそうです。そもそも偶像禁止のイスラム社会で美術をやって良いのだろうか?と疑問に思ったのですが、地域や宗派によって状況が違ったり、アメリカやヨーロッパなどで活動しているアーティストもいるなど事情もそれぞれ異なるようでした。(各作家がムスリムかも分からないし) とにかく私の持っていたアラブのイメージとはだいぶ違った内容となっていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。

なお、今回の展示は久々に写真撮影が可能となっていましたのでそれを使って書いていきます。ただし撮影と掲載についてはルールが設けられていますので、それを順守する必要があります。展覧会で撮影したい方は、入口に写真撮影の注意事項がありますので、撮影の際によく読んでルールを守るようお願いします。
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 参考記事:
  アイ・ウェイウェイ展 何に因って? (森美術館)
  六本木クロッシング2010展:芸術は可能か? (森美術館)
  ネイチャー・センス展 (森美術館)


 ※写真は営利目的に使うものではありません。
また、当ブログは文章・画像ともに全面転載禁止です。



<第1章 日々の生活と環境>
まずはアラブの日常についてのコーナーです。アラブと言っても一括りに出来ないほど多様性に富んでいるそうで、宗教戒律、衣服の様式、言語方言などの文化・慣習は地域ごとに大きくことなるそうです。

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作家:ハリーム・アル・カリーム (イラク生まれ、アラブ首長国連邦/アメリカ在住)
「無題1(「キングズ・ハーレム」シリーズより)」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

いきなりピンぼけの写真じゃないかと思われたかもしれませんが、こういうぼやけた感じの絵です。いかにもアラブの女性が着ている服に見えますが、これは架空のものでこのような衣装は無いそうです。解説によると、西洋中心に語られてきた歴史に懐疑を投げかける意味もあるそうで、確かにアラブは大体こういう服だろうという勝手なイメージを抱いていました^^;



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作家:リーム・アル・ガイス (アラブ首長国連邦生まれ、在住)
「ドバイ:その地には何が残されているのか?」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

部屋の一角を使った大型のインスタレーションで、ドバイのブルジュ・ハリファや工事現場をモチーフにしているようです。1羽の鳥が俯瞰するように飛んでいるのはドバイを見守る作者の視線とも言えるとのことでした。タイトルも意味深な感じがします。



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作家:サーディク・クワイシュ・アル・フラージー (イラク生まれ、オランダ在住)
「私の父が建てた家(昔むかし)」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これはアニメーション作品で、物悲しい音楽と共にややシュールな雰囲気の映像が流れます。この大きな人物は作者本人と思われるようです。見ているとちょっと怖くてどこか懐かしい感じがします。 それにしても、まどか☆マギカの魔女にいそうな感じが…w



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作家:マハ・ムスタファ (イラク生まれ、カナダ/スウェーデン在住)
「ブラック・ファウンテン」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは噴水のように黒い液体が出てくる作品で、アラブで吹き上がる黒い液体と言えば原油を彷彿とします。実際、この作者は湾岸戦争の際にイラクでこれを浴びるという経験をしたそうで、原油は富と戦争をもたらす存在であり、絶え間なく原油に関する諸問題が沸き上がってくるのを暗示しているのではないかとのことでした。



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作家:ムハンマド・カーゼム (アラブ首長国連邦生まれ、在住)
「ウィンドウ」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

急激な経済成長をとげるドバイで、建設が進む高層ホテルを題材にした作品です。経済成長を支えているのは人口の7割もいる移民たちだそうで、弱い立場の移民からの搾取構造への批判がほのめかされているそうです。これ以外にも数枚写真があるのですが、ドバイの発展ぶりや外国人労働者の存在感を感じる作品でした。



<第2章 「アラブ」というイメージ:外からの視線、内からの声>
続いてはアラブのイメージについてのコーナーです。アラブといえば砂漠やイスラム教の風習、最近だとテロなどのイメージがあるのではないかと思いますが、そうしたイメージはステレオタイプなもののようです。(日本をフジヤマ、ゲイシャの国と思うのと同じようなものだそうですw) ここにはそれに異を唱える者や、逆に作品に取り込んでそれを揶揄するようなものなどが並んでいました。


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作家:ミーラ・フレイズ (アラブ首長国連邦生まれ、在住)
左から「グラディエーター」「マドンナ」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは映画や歌手の名前がついた作品ですが、モチーフはイスラム女性が身に付けるヴェールのようです。まるで仮面のようでちょっと可笑しい感じがします。作者はこの慣習に否定的なわけではないようですが、宗教的な事情に疎い私にはこんな作品を作っても良いのかと驚きでした。



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作家:シャリーフ・ワーキド (ナザレ生まれ、イスラエル/パレスチナ在住)
「次回へ続く」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは映像作品で、何かを読み上げている様子が流れているのですが、言葉が分からず(字幕はある)テロリストの犯行声明のような雰囲気の映像に見えます。しかし、実際に読み上げているのは千夜一夜の物語だそうです。偏見に近いイメージを持たれていることへの皮肉と批判が込められているようでした。

この辺は戦争関係の作品が多いかも。


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作家:オライブ・トゥーカーン (アメリカ生まれ、在住)
「(より)新しい中東」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは鑑賞者参加型の作品で、中東地域の国々をパズルのようにしたものを鑑賞者がピースを付け替えることができます。(手袋を着用する必要があります) 一見ゲームのような面白い作品ですが、パレスチナは動かせないようで、国境をどうするべきかなど国際情勢を考えさせるような深い作品でした。



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作家:アーデル・アービディーン (イラク生まれ、フィンランド在住)
「アイム・ソーリー」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

展示室で煌々と点滅するド派手なネオンです。作者はイラク戦争のあった2003年にアメリカを旅行した際、イラク人であると告げると「I'm sorry」(申し訳ない、お気の毒に)という言葉を何度もかけられたそうです。出兵を謝っているのかイラクの状況を同情しているのか分からない、その時の釈然としない感じが表されているようです。とりあえず、このネオンは謝っているようには思えない明るさで楽しそうに見えますw 近くにはアイムソーリーの飴もあるのですが、私が行った時は無くなっていました。皮肉なのか分かりませんが面白い作品です。



<第3章 記憶と記録、歴史と未来>
3章は記憶と記録、歴史化ということを焦点にしたコーナーで、作家たちの自分の体験を未来に伝えていきたいという意志を感じさせる作品が並びます。特に宗教紛争や戦争・内戦などに関する作品が多かったかな。

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作家:アブドゥルナーセル・ガーレム (サウジアラビア生まれ、在住)
「道」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これはアラビア文字で「道」とびっしりと書かれている橋です。この橋は1982年の洪水の際に避難してきた村人たちもろとも鉄砲水で流されるという悲劇があったそうで、長年放置されたままだったそうです。報道もされなかった惨事を作者が掘り起こし記録することで、犠牲者や我々にとっての正しい道とは何かを問いかけているとのことでした。ちょっと怖い印象でしたが解説を読むと墓標のように思えてきます。



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作家:ハラーイル・サルキシアン (シリア生まれ、シリア/イギリス在住)
「処刑広場」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

一見するとアラブの街並みに見えますが、実はこれらはシリアにある公開処刑が行われた場所の写真のようです。朝に撮られているのですが、公開処刑の時間に合わせているのだとか。結構都会なのにそんな歴史があるとは…。



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作家:ハリーム・アル・カリーム (イラク生まれ、アラブ首長国連邦/アメリカ在住)
「無題1(「都会の目撃者」シリーズより)」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

口をふさがれた女性たちですが、目が訴えかけているように思えます。これは言論の弾圧とその抵抗を示しているようで、この作家はフセイン政権下で3年も洞窟に身を隠した経験があるのだとか。強い意志を感じます。



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作家:ハリール・ラバーハ (エルサレム生まれ、パレスチナ在住)
「2つの展覧会(「美術展:レディメイドの表象」シリーズより)」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは写真に見えますが絵です。パレスチナに関する展覧会の様子を写真に撮って、それを絵画化しているのだとか。パレスチナの美術史を歴史化する意味があるそうです。2枚セットでいくつか展示されていました。



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作家:ジョアナ・ハッジトマス&ハリール・ジョレイジュ (レバノン生まれ、レバノン/フランス在住)
「戦争の絵葉書(「ワンダー・ベイルート」シリーズより)」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは絵葉書が沢山置かれた作品で、1枚貰うことができます。右の写真の絵葉書を貰ったのですが、焼け焦げたような感じになっています。これは中東のパリとも呼ばれる美しいベイルートを絵葉書としたものですが、ベイルートの街はレバノン内戦に巻き込まれたようです。作者は街が爆撃されるたびにその場所のネガを焼いたのだとか。美しい街が燃えていく様子が悲しく見えます。



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作家:アハマド・バシオーニ (エジプト生まれ、2011年他界)
「記録映像 《30日間同じ場所で走り続けて》」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは屋外に置かれたビニールの部屋で、ビニール製の服を着た作者が1日1時間、30日間に渡って走ったのを記録した映像作品です。センサー類がつけられ発汗量や歩数が示されたそうです。驚いたことに、この作者は昨年(2011年)のエジプトの革命で狙撃されて亡くなったのだとか。まさに生きた証と言える作品です。



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作家:エブティサーム・アブドゥルアジーズ (アラブ首長国連邦生まれ、在住)
「リ・マッピング」

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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これは幾何学化されたアラブの国々だそうで、高さは美術館やギャラリーの数によって決まっているそうです。非常に現代的な雰囲気でした。



<Arab Lounge>
最後にアラブラウンジというアラブを紹介する書籍や映像のコーナーです。テーブルにはアラブに関する数字が書かれていたり、壁にはクイズが映しだされていました。


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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

これはイラクにまつわる数字を書いたもの。国家歳入の90%が石油であることや、2003年に「おしん」放送開始 とか書いてありますw 他にもエジプトやイエメンなどもありました。


ということで、やはり戦争や抑圧をテーマにした作品が多く、こんなにもアラブには興味深い作家がいるのかと驚く内容でした。戦争や革命など壮絶な経験をしているアーティストが多いだけに、作品にも深いメッセージ性があるように思えました。非常に参考になる展示でした。



アラブ展の後は、いつも通り同時開催のMOM PROJECTのコーナーもあります。今回は韓国のイ・チャンウォンという作家が紹介されていました。

【展覧名】
 MOM PROJECT 017 イ・チャンウォン

【公式サイト】
 http://www.mori.art.museum/contents/mamproject/project017/index.html

【会期】2012年6月16日(土)~10月28日(日)

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作家:イ・チャンウォン 「パラレル・ワールド」
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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

壁に映し出された幻想的な影です。



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作家:イ・チャンウォン 「パラレル・ワールド」
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この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

影はこうした型抜きされたもので作られていました。光には角度がつけられているので、いくつもの影が交差しているようでした。
こちらの展示も1点のみですが楽しめました。

 参照記事:★この記事を参照している記事




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大英博物館 古代エジプト展 (感想後編)【森アーツセンターギャラリー】

今日は前回の記事に引き続き、森アーツセンターギャラリーの「大英博物館 古代エジプト展」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 大英博物館 古代エジプト展

【公式サイト】
 http://egypt2012.jp/
 http://www.roppongihills.com/events/2012/07/macg_egypt2012.html

【会場】森アーツセンターギャラリー  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】2012年7月7日(土)~9月17日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では2章の前半部までご紹介しましたが、後編では今回の見所である「グリーンフィールド・パピルス」を含む後半の内容をご紹介します。


<第3章 世界最長の『死者の書』《グリーンフィールド・パピルス》> ★こちらで観られます
3章は全長37mにも及び100以上の章を持つ世界最長の死者の書「グリーンフィールド・パピルス」についてのコーナーです。この死者の書の所有者はネシタネベトイシェルウという女性神官で、彼女は当時テーベを中心にエジプトを支配していたアメン大司祭の娘だそうです。この死者の書が作られる少し前の第18~19王朝の時代では、死者の書は一般的に男性のために作られていたそうですが、これが作られた第2中間期の第21王朝時代になると、位の高い女性が自分用に持つようになっていたそうです。
断簡のように区切られたグリーンフィールド・パピルスが部屋をぐるりと取り囲むように展示されている風景はまさに圧巻で、それだけでも必見の内容と言えます。最初の方は破けていたり変色しているのですが、これはパピルスを巻いた際に最初のほうが外側にくるため劣化しやすかったためのようです。しかし、それ以外のところは保存状態もよく、死者が旅する様子がよく分かりました。

最初に黒髪のネシタネベトイシェルウがオシリス神を礼拝している様子(★こちらで観られます)から始まり、葬送行列、口開けの儀式、太陽神礼拝と続きます。絵は思った以上にシャープな印象で細かく描かれていました。

少し進むと、人の顔を持った鳥の姿の精霊「バー」を連れたネシタネベトイシェルウが太陽神ラーと対面している様子や、蛇を退治する太陽神、布をかぶって目だけ出す謎の人物(神?)、スカラベの頭を持つケプリ神(太陽神と同一視されることもある神)など変わった姿の神々が続きます。また、死者の書はその名の通り文字が多く、様々な呪文が書かれているのですが、黒文字の中に時折 赤文字があるのが気になりました。特に解説がないので理由は分かりませんが、ここがテストに出るんでしょうか?w

少し進んで場面21・場面22にはワニや蛇や待ち受ける試練(★こちらで観られます)があり、死者はこれを呪文で退治します。ワニは振り返るような姿をして、蛇は標本のような姿で描かれていました。

その後には沢山の鳥人間(バー)達や、足のある蛇やワニ、羊、鳥などが描かれ、これは呪文で変身しているシーンのようです。ワニだけやけにリアルな感じがします。

場面45~49には冥界の門が描かれているのですが、四角く幾何学的な形をしていて意外と小さな門でした。門と言うよりはエレベーターの扉みたいな感じに見えます。死者はこうした門を沢山通って行くそうです。

その先には隼の頭をした太陽神ラーと、トキの頭をした知恵と書記の神トトが描かれています。小舟に巨大な隼の頭だけ乗ったラーはちょっと異様だけど可愛いw ラーとトトはこの後も何度も出てきます。

場面58は捕獲網から逃れるシーンが描かれています。3人の神々が地引網のようなものを引いていて、ここにはこの網から逃れる呪文が書かれているようです。何故 網に引っ掛けられるかは謎ですが、ちょっと面白いw

そしていよいよ場面63は最大の関門であるオシリス神の審判のシーンです。(★こちらで観られます) ここではオシリス神の前で42項目の罪を否定して潔白を証明する必要があり、天秤を使って判決が下されます。天秤の片方には真理や正義を司るマアト女神の小像が載せてられ、もう一方には死者(ネシタネベトイシェルウ)の心臓が載せてられます。心臓といっても容器のようなものに入っているように見えるかな。 この天秤が釣り合うとイアルの野という楽園で再生が叶うのですが、釣り合わないと天秤の前にいる怪物アメミトに心臓を食べられ2番目の死を迎えます。アヌビス神が計り、天秤の傍らにはトキの頭のトト神が計量を記録しているようでした。厳粛な雰囲気のある緊張のシーンです。
ちなみに42項目の罪は最後に書かれているのですが、こんな感じです。(写真は会場外の入口付近の壁に書いてあったものです)
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公式サイトには全項目載っています。
 参考リンク:オシリス審判 審判の否定告白42カ条

同じ内容の罪が多くて、嘘をつく・騙す・悪口・暴力あたりが頻出しているようです。中には「自分の心臓を食べなかったこと」というのもあるのですが、これは悲嘆にくれなかったことという意味のようです。これらを全部クリアするのは不可能なので、乗り越えるにはやはり呪文が必要となりますw(それについては後述します)

審判の後は楽園イアルの野に向かうシーンとなり、ヌウト女神に供物を捧げる様子や、先ほどの布を被った謎の人物などが現れます。天秤で計っているシーンももう1回でてきました。

そしてついにイアルの野にたどり着きます。(★こちらで観られます) イアルの野では雌牛を使って畑を耕している様子などが描かれ、前世と同じように肥沃な土地で永遠の生命を授かるそうです。しかしここで疑問が…。というのも、せっかく永遠の生命を貰っても、神官であろうと神の命令があれば農作業などをしないといけないらしく、それはむしろ前世より大変なのでは??と思ってしまいます。これについても対策があるようで後のコーナーで紹介されていました。

この「グリーンフィールド・パピルス」にはさらに続きがあり、場面87には天地創造の神話が描かれています。(★こちらで観られます)通常、死者の書ではほとんど描かれていないらしく、「グリーンフィールド・パピルス」はこのシーンが有名なようです。
両手をあげる大気の神シュウが、その上の大きな女神ヌウト(天空の神)を支えていて、その足元に大地の神ゲブが横たわっている様子が描かれていて、これはいつも離れることがないほど仲が良かったゲブとヌウトをシュウが引き離した為、天地が分かれたのを表しているようでした。巨大なヌウトが一際目を引きました。

最後の場面90~92には42カ条の否定告白が書かれていました。


<第2章 冥界の旅2>
「グリーンフィールド・パピルス」の後、再度2章となります。ここには冥界の旅にまつわる品が並びます。

[セネトゲーム]
ここには冥界の旅の過程を象徴するゲームに関する品が展示されていました。セネトとは通過という意味を持つそうで、30マスの盤上を2人で駒を進めて遊ぶ双六的なゲームのようです。3000年にもわたって親しまれたのだとか。

41 「動物の風刺パピルス」
人間のように振る舞う猫やハイエナ、動物のままのアヒルや山羊などが描かれたパピルスです。左の方にはライオンとガゼルがセネトゲームに興じる姿もあり、ライオンが勝ち誇ったような顔で駒を進めているのが面白いです。古代エジブトの風刺画は動物を人間になぞらえているものが多いらしく、解説ではエジプト版の鳥獣戯画と言っていましたが、確かにそんな感じでした。
絵の前には木製のゲーム盤と駒もありました。どういうルールかはパッと観ただけでは分かりません。

[守護と呪文の力]
続いては死後に出会う危険に対処する呪文や、心臓を守る護符・呪文、木棺などが展示されていました。

45 「供物台」
これは供物を載せる台に空気と水を与える呪文が刻まれた品です。うっすらと2人の人物が刻まれ文字が描かれていました。台にまで呪文を書くとは驚きです。

この辺には「ホルアアウシェブの人形棺と女性のミイラ」という品もありました。

[審判]
ここはオシリス神の審判についてのコーナーです。現実には42の罪悪は誰でも心当たりがあったはずなので、オシリス神の審判の際には心臓が自分を裏切って不利な証言をしないように言い聞かせる呪文があったそうです。罪を否定して無かったことにして、心臓に沈黙せよと命じることで神々から悪事を隠し通せると考えたようですが、それが前提の宗教だと、誰も正しく生きようと思わなくなるのでは??という疑問も湧きますw
ここには天秤やマアト女神のペンダント、マアトの小像、心臓の護符、呪文を刻んだ大きなスカラベ形の護符などがあり審判に備えているようでした。

60 「パセンホルの人形棺」
これは大きな人形(ひとがた)棺で、びっしりと装飾文様が描かれています。胸のあたりには審判のシーンがあり、計量するアヌビス、死者の手を引くトト、死者と向き合うオシリスなどが描かれていました。また、解説によると周りは否定告白の呪文で埋め尽くされているようです。

[来世の楽園]
イアルの野は審判をくぐり抜けた者だけがたどり着く楽園で、緑が茂り 実り豊かで 水を湛えるナイルのイメージだそうです。来世でも畑を耕すなど労働が必要とされたようですが、シャブティと呼ばれる身代わり小像を副葬しておくと、その労働を免れるとされたそうです。…試練の末に辿り着いた楽園は永遠の労働でしたというオチではキツイですもんねw ここにはそうした楽園に関する品が並んでいました。

63 「テントアメニィイの『死者の書』:イアルの野」
牛を引いて畑を耕したり、刈り入れて脱穀している様子を描いたパピルスです。平和そうでのんびりした雰囲気がありますが、あの世では神の命令があれば王でもこうした作業に従事しなければならないようで楽園なのかなこれは?w 
ちなみにイアルとは植物のイグサのことだそうです。

64-65 「ヘヌウトメヒトのシャブティ」「ヘヌウトメヒトのシャブティボックス」
彩色された木彫りの人形が沢山あり、それが箱のなかに収まっています。ミニチュアの道具などもあって、どうやらこの人形が楽園で死者の代わりに仕事をやってくれるようです。最初は副葬するのは1体だったようですが、後に増えてファラオは700体も収めたようです。中国の俑みたいなものかな? 死んだらシャブティを入れてもらわないと、あの世で大変ですからね。


<第4章 『死者の書』をめぐる研究>
最後は死者の書にまつわる研究のコーナーです。死者の書以外にも様々な葬送文書が作られたそうで、『アムドゥアト書』や『洞窟の書』というものもあったらしく、新王国時代の王墓の壁に刻まれたそうです。『アムドゥアト書』は太陽神の夜の12時間の旅を解説したもので、第21~22王朝では死者の書と対にされたそうです。

[様々なパピルス文書]
169-170 「パシェブムウトウブケトの『アムドゥアト書』」
右端に小さな壺(心臓)を持つ女性が描かれ、蛇などに姿を変えた神々に礼拝している様子が描かれています。これは死者の書の呪文を象徴しているようです。ストーリーは違えど死者の書に似た感じを受けました。
この辺にあった洞窟の書にも、スカラベやアヌビスっぽいものが描かれていて、やはり死者の書と似た雰囲気でした。

[死者の書を記す]
最後は死者の書の制作に関するコーナーです。パピルスはB.C.3000年頃に作られたそうで、2~3mある多年草のパピルス草から作られます。茎を薄くスライスしたものを重ね互いに圧着して作るようです。また、パピルスに字を書く書記についても紹介されていました。

174 「ペスシュウペルの書記像」
これは書記の彫像で、賢そうな顔をしています。当時の書記は知的階級だったそうで、能力があれば誰でもなれたようですが、昼も夜も勉強していたようです。この展覧会にあった品を思い出すだけでも大変そうな仕事ですね。
この辺には木製のパレットなどもありました。

最後には約6分の映像があり、エジプト人の死生観をおさらいできました。

会場を出るとショップがあります。こちらも充実の内容で、200円のガチャガチャもありました。
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ということで、かなり見応えのある内容となっていました。貴重な品々だけでなく、複雑なエジプトの宗教観が分かりやすく解説されているのも魅力ではないかと思います。これは小中学生の夏の自由研究にもなるかも?w この夏にはもう1つ大きなエジプト展があるので、2つ合わせて観ておきたいところです。

おまけ:
金曜日の22:15~23:30はナイトミュージアムだそうで、特別な音響演出や演奏なども楽しめるそうです。
 参考リンク:大英博物館 古代エジプト展 ナイトミュージアム

追記:
後日、上野の森のツタンカーメン展にも行って来ました。シャブティやカノポスが多く出ていますので、先に六本木を観て死生観を知っておいた方が、上野の展示も理解しやすいかと思います。
 参考記事:
  エジプト考古学博物館所蔵 ツタンカーメン展 感想前編(上野の森美術館)
  エジプト考古学博物館所蔵 ツタンカーメン展 感想後編(上野の森美術館)



 参照記事:★この記事を参照している記事




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大英博物館 古代エジプト展 (感想前編)【森アーツセンターギャラリー】

前回ご紹介したカフェでお茶した後、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーに行って、「大英博物館 古代エジプト展」を観てきました。非常に情報量の多い展示となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 大英博物館 古代エジプト展

【公式サイト】
 http://egypt2012.jp/
 http://www.roppongihills.com/events/2012/07/macg_egypt2012.html

【会場】森アーツセンターギャラリー  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅

【会期】2012年7月7日(土)~9月17日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私が行ったのは初日で、小雨~大雨となる悪天候の日でしたが混んでいて展示物によっては人だかりができる程度でした。しかし思ったほどの混み具合でもなく18時を過ぎると普通に空いていたので、遅い時間帯を狙って観るといいかもしれません。なお、今回は会場内にはロッカーがありませんでしたので、大きな荷物は地上階のロッカーに預けておくのが無難だと思います。

さて、今回の展示は大英博物館の誇る古代エジプトのコレクションを集めた展示で、特に「死者の書」と呼ばれる古代エジプト人の宗教観がよく分かる書物をテーマにした内容となっています。2011年に大英博物館で開催されたものの巡回らしく、全長37mの死者の書を大英博物館以外で展示するのは初の機会となっているようです。詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 古代エジプトの死生観>
まずは古代エジプト人の死生観についてのコーナーです。古代エジブト人は人間の生死を自然の営みと同じく繰り返すものと考えていたようで、その為人間も来世で再生・復活すると信じていたそうです。復活を迎えるために死者は保存料、包帯、装飾品によって特別な処理を施して墓に埋葬され、食料、飲み水、衣類などと共に呪術的な品々や文書が供えられました。中でも重要とされたのが今回のテーマの「死者の書」で、これは死後の世界のガイドブックと言える存在で、元来は「日の中に出ていくための書」と呼ばれたそうです。
また、古代エジプトでは人間は「バー」と「カー」と呼ばれる2つの魂(精霊)を持つと考えられていたようで、バーは人の頭と腕を持つ鳥の姿、カーは両腕を挙げた姿をしています。バーは日中は肉体を離れて自由に行動し、夜に戻ってミイラと一体になるそうで、死者が死後も生き続けるにはバーが死者の肉体と再び合体することが重要とされたようです。一方、カーは死後は墓場で供物を受け取り生命力を維持する役割があると考えられたようです。

[永遠の生命を求めて]
死者の再生・復活に特に重要な神と考えられていたのは、太陽神ラーと冥界の王となったオシリス神でした。オシリスは元は豊穣の神でありエジプトの最初の王だったのですが、弟のセトの裏切りによって殺され、バラバラにされたそうです。しかし妻で妹のイシスによってオシリスはミイラにされ、後に復活しました。オシリスは死者の世界で支配者となり、イシスはオシリスの復活とともにホルスを身ごもったそうで、後にホルスはセトと戦い父の仇を討ったそうです。エジプトでミイラが作られていたのは、このオシリス復活神話にあやかっていた為のようで、様々な品でオシリスやラーがモチーフとなっていました。

1 「オシリス神像」 ★こちらで観られます
緑色の肌で、羽のついた白く長い帽子をかぶった男性神の像です。肌が緑なのは植物の色で生命の豊穣と復活を意味しているそうで、手には王杖と穀竿を握っていたと説明されていましたが、これには王杖と穀竿は見当たりませんでした。この像の中には死者の書が入っていたらしく、細かい文様が施され鮮やかな色合いでした。

この辺は太陽神やオシリス、ホルス?などが描かれた供養碑などもありました。ホルスは頭が隼なのですが、ラーも隼の頭なので顔が似ていて私は混同している可能性が高いですw 頭の上に丸い太陽を乗せているのはラーかな??
ちなみに幼い神ホルスは母イシスと共にキリスト教美術に影響を与え、聖母子像の原型になっていきました。
 参考記事:ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち (国立新美術館)

[呪文の変遷]
死者の書は死者を守護するための呪文の集大成で、200種類以上の章(呪文)があるそうですが、その呪文は古王国時代(B.C.2686年~B.C.2181年)から歴史が続いているようです。古王国時代はピラミッドの墓室の内壁に記された「ピラミッドテキスト」と呼ばれる呪文で、王が神に生まれ変わるためのものだったようです。その後の中王国時代(B.C.2025年~B.C.1750年)になると、呪文は棺に書かれた「コフィンテキスト」となり、復活の願いは庶民にも広がっていったそうです。そして第2中間期(B.C.1750年~B.C.1550年)に死者の書が現れ、第2中間期末頃には体系化していきました。死者の書の呪文の多くはコフィンテキスに起源を持っているようですが、全く新しいものもあるそうです。
また、新王国時代(B.C.1550年~B.C.1070年)の初めからは長方形の棺に代わって人型棺(ひとがたかん。人の形をした棺)が使われたそうで、これによって小さく丸めやすいパピルス(繊維のような紙)に書かれた死者の書が広がっていきました。
 参考リンク:古代エジプトの歴史

5 「死者の書が描かれたミイラの覆い布」
今から3500年前のミイラを覆っていた布で、1.5m四方くらいの布製の死者の書です。文字や褐色の肌の人物たちが描かれ、4段になっています。みんな右向きをしていて、これは右から読むことを示しているようです。解説によると、上から順に
 ・変身の呪文
 ・息をする呪文
 ・冥界の門を開ける呪文
 ・ミイラを墓に運ぶ場面
が描かれているようでした。結構ボロボロになっていますが絵や文字がしっかり見え、これぞエジプト!という平面的で呪術めいた雰囲気がありました。

4 「セニの外棺に記された『コフィン・テキスト(棺柩碑文)』-死者の書の前身」
大きな棺で、コフィンテキストと呼ばれる碑文が描かれたものです。特に棺の中に文字や人々、動物など様々なものが描かれていて、これが死者の書の前身だそうです。底面までびっしりと描かれていて驚きました。
ただ、この品はやや高めの所に展示してあるので背が高くないと中は覗けないかも??

この辺には人形(ひとがた)の棺もあり、こちらも中までびっしり文字が書かれていました。


<第2章 冥界の旅>
続いては死者の書に書かれている内容についてのコーナーです(2章の後半は3章の後にあります。) 古代エジプトでは権力者が死ぬとミイラにされ、埋葬の際には「口開けの儀式」というものが行われたようです。手斧(ちょうな)というもので口を開けることで供物を食べたり呪文を唱えられるようになるそうで、体の他の部分に触ることで五感も取り戻すことができるとされたそうです。また、死者が復活・再生へと旅する冥界は現世に近いものと考えられたらしく、墓には日常の品々が供えられました。冥界では様々な難関が待ち受けているのですが、中でも最大の難関は冥界の王オシリスの審判で、その判決に寄って死者が永遠の命に値するかが決まったそうです。ここにはそうした冥界の旅にまつわる品が並んでいました。

[旅立ちの儀式]
死者の書にはミイラ作りへの言及はあまりないそうですが、復活を成し遂げたオシリス神の体と同じ状態にすることを目的としたそうで、オシリスを再生し保存したアヌビス神も葬送の場面によく登場するそうです。

10 「フウネフェルの『死者の書』:口開けの儀式」 ★こちらで観られます
これは死者の書で、パピルスに彩色され口開けの儀式の様子が描かれています。直立する仮面をかぶったミイラと、それを背後で支えるジャッカルの頭をしたアヌビス(の格好をした神官)、その周りには家族や神官たちが祈りを捧げています。神官の1人は手斧(ちょうな)という大工道具をミイラの口の前に出していて、これで口を開けて呪文が唱えられるようにします。また、この絵は2段構成となっていて、下の段には牛の心臓を捧げる様子なども描かれていました。こちらも色鮮やかで事細かに描かれ当時の儀式の様子がよく伝わって来ました。
少し進むと手斧もあり、木と金属で出来ているけど斧っぽさはあまりないような…w

[使者とのつながり]
死者が冥界に入った後でも家族は日常的に死者と接触できたそうで、埋葬、葬送、墓を定期的に訪れ供物を捧げる といったことは家族の役割とされていたようです。死者は生きている者に対して、助けにもなれば害にもなると考えられていたらしく、死者の扱いは生きている者に大きな影響を与えたようです。

14 「役人の供養像」
頭にエジプトらしい頭巾のようなものをかぶった人物の半身像です。これは供養の為の像らしく、食物や必需品が捧げられたそうです。その際には死者の精霊カーも像の中に宿っていると考えられていたとのことでした。
それにしても、死んでからも食料を捧げるってかなり大変なのでは…。よっぽど裕福だったのでしょうか??

[旅への装い]
先述のように死者は守護の力をもつ副葬品で守られていたようで、ここにはそうした品が並びます。

18 「ミイラマスク」 ★こちらで観られます
見開いた大きな目で、青と金のシマシマ模様の髪をした、いかにもミイラのマスク!といった感じの金のマスクです。後頭部には人の顔の鳥などが描かれていて、これは精霊バーのようです。また、頭の上にも文様があり、これは死者を守る呪文のようでした。全体的に黄金に光っていて非常に見栄えがするのですが、マスクが金なのは錆びることがなく神々の象徴とされていたためのようです。また、これは何枚も重ねた布を石膏で固めて作っているとのことでした。これは今回の展覧会でも見所の1つだと思います。

この先には石やガラスでできた小さな護符が並んでいました。また、カノポスという臓器を入れる4つの容器もあり、それぞれアヌビスやラー(ホルスかも)などの顔がついていました。さらに少し進むと人々が帆船の帆を広げている船の模型もあり、かなり精巧に作られていました。

32-34 「紅玉髄とガラスの首飾り」「ビーズの首飾り」「トカゲ形護符の金製ネックレス」
金やガラス、紅玉髄(べにぎょくずい、またはカーネリアンという赤い鉱物)などで作ったネックレスです。特に面白かったのはトカゲ形護符で、これは小さなトカゲが沢山連なったネックレスとなっていました。トカゲは尻尾を失っても生えてくるので、再生の象徴だったそうです。金で出来ているのも錆びない永遠の象徴とのことでした。

16-17 「神官イレトホルイルウの人形棺」「神官イレトホルイルウのミイラ」 ★こちらで観られます
人形(ひとがた)棺と金のマスクをかぶったミイラのセットです。この人物は神官だったそうで、CTスキャンによって中年男性だったことや護符が包帯の内側にあることも分かっているそうです。棺には沢山の文様がありました。これもかなり目をひく品です。

[冥界の風景]
門、丘、洞窟などは冥界の地形で、超自然的な力を持ち、死者が何らかの挑戦を受ける通過儀礼の象徴だったそうです。死者はそこで試練を乗り越えて旅しなければならず、死者の書はそれに必要な知識を提供するものだったようです。

36 「ネブセニィの『使者の書』:聖なる場所に宿る霊を知る呪文」
パピルスにびっしりと象形文字が描かれ、窓のような感じのところに神の姿が3人ずつ描かれています。アトゥム、セベク、ハトホルといった名前があるとのことで、その霊を知る呪文なのかな?

この先には休憩スペースがあり、グリーンフィールドパピルスの主要場面の解説がありました。実物を観る前に予習することができます。


ということで、前半から情報の多い内容となっていました。一部に複製品もありますが、棺やマスクなど貴重な品が多く、テーマ的にも面白い展示です。後半には今回の目玉である「グリーンフィールド・パピルス」もありましたので、次回はそれを含めてご紹介しようと思います。



  → 後編はこちら




 参照記事:★この記事を参照している記事




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BRASSERIE Le DUC(ブラスリー ル・デュック) 【六本木界隈のお店】

前回ご紹介した展示を観た後、六本木ヒルズに移動して2つの美術館にハシゴしたのですが、その前に六本木ヒルズノースタワーの1階にあるBRASSERIE Le DUC(ブラスリー ル・デュック)というお店でお茶してきました。

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【店名】
 BRASSERIE Le DUC(ブラスリー ル・デュック)

【ジャンル】
 レストラン・カフェ

【公式サイト】
 http://le-duc.jp/ 
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13136860/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 六本木駅

【近くの美術館】
 森美術館
 森アーツセンターギャラリー


【この日にかかった1人の費用】
 1350円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
お客さんは結構いましたが、外の席が開いていたのですぐに座れました。

さて、この店は以前ご紹介した花畑牧場カフェの跡地に出来たお店です。前にあった花畑牧場カフェにはある意味驚かされましたが、今度は見た目からして全く別物の洒落たカフェになりましたw 2012年2月から変わったようです。
 参考記事:花畑牧場カフェ 六本木ヒルズ店 (六本木界隈のお店)

オープンになっていて外で食べましたが、中はこんな感じで、ヨーロッパ風の雰囲気です。
P1020510.jpg
ワインなども色々揃っているようでした。

この日はお腹が減っていたので、オムレツ(500円)、ポテトフライ(400円)、ブレンドコーヒー(450円)を頼みました。今思えば地味なものを頼んでしまったw
P1020514.jpg
品が揃うとすぐにテーブル会計します。この辺も外国っぽい感じ。

まずはポテト。
P1020513.jpg
やや塩味がついていて、ボリュームたっぷりです。何の油か分かりませんでしたが、あっさりしています。お味は普通かな。

続いて最近ハマっているオムレツ。
P1020515.jpg
来たと同時にバジルの良い香りがしました。

こちらは中にトロッとしたチーズが入っています。
P1020517.jpg
こしょうやチーズ自体も風味が良く、バジルの香りと合って美味しかったです。

そしてコーヒー。
P1020511.jpg
やや苦味がありますが、薄めでまろやかでした。香りも良いです。


ということで、洒落た雰囲気のお店となっていました。意外と安いし美味しいので使いやすいのではないかと思います。六本木のいい場所にあるのも便利なので、いずれレストランメニューも試してみようと思います。



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紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち- 【サントリー美術館】

前回ご紹介したFUJIFILM SQUAREの展示を観た後、同じミッドタウンにあるサントリー美術館で「沖縄復帰40周年記念 紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち-」を観てきました。この展示は大きく分けて3つ(正確には6つ)の会期があり、私が行ったのは7/7の内容でした。

P1020495.jpg P1020494.jpg

【展覧名】
 沖縄復帰40周年記念 紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち-

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2012_03/index.html

【会場】サントリー美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】2012年6月13日(水)~7月22日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外と混んでいて所々に人だかりができるほどでした。女性が多かったかな。

さて、この展示は沖縄が日本に復帰して40年を記念した展示で、紅型(びんがた)と呼ばれる沖縄の衣装を取り上げた内容となっています。紅型は琉球王朝時代に王族や士族など特定の階層に用いられ発展した染色技法で、「紅」は色全般、「型」は形を示し、その技法は18世紀中頃には確立していたと考えられるそうです。沖縄の海外貿易によりもたらされた多彩な素材を元に、王府に庇護され首里や那覇で作られたそうですが、王朝の崩壊後は衰え、第二次大戦の際には大きな打撃を受けたそうです。そのため現在観られる紅型の多くは戦前に本土に渡ったそうで、今回は貴重な品々を集めた内容となっていました。

まず入口に大きな赤い紙を切り抜いた龍の型紙がありました。中国のデザインにも似ていますが、ちょっと違うようにも思えるかな。
そしてその先からが本題で、4つの章に分かれていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。なお、紅型にも使われる型紙とは何か?については三菱一号館美術館で行われた展示を参考にして頂ければと思います。
 参考記事:KATAGAMI Style ― 世界が恋した日本のデザイン (三菱一号館美術館)


<特別展示 琉球国王尚家に伝わる紅型衣裳>
まずは国宝がずらりと並ぶ特別展示のコーナーです。琉球が統一された15世紀以降、諸外国との交流によって琉球では文化が花開きました。中国との冊封・朝貢の関係となり、多くの漆工品や紅型が中国に献上されたそうで、当時から評価されていたことが伺えるようです。琉球王家の紅型の図案は絵師が関わり、王府の管理の下で士族の資格を与えられた紺屋が型地紙を彫って染色したそうで、素材には最上のものが使われたようです。龍や鳳凰など中国王権を象徴する模様や、枝垂れ桜、菖蒲、雪輪など日本の自然風物など珍しい外国の模様を意匠したようで、それによって王家の権威を示したとのことでした。(しかし、沖縄ならではの模様はないのだとか) ここにはそうした王家の為の紅型が並んでいました。

3 「国宝 黄色地鳳凰牡丹扇面模様胴衣 (裏)赤縮緬地」
はっぴのような形で、黄色を地に赤っぽい鳳凰や牡丹、扇などの模様のある衣です。背中を中心に同じ模様が左右反転していて、上下にも同じ模様が連続しています。これは女性用のドウジンと呼ばれる着物だそうで、色が強烈で非常に派手な印象を受けます。平面的な図面は中国風にも思えますが、ややカクカクした感じに思えました。
解説によると黄色は王家のみが仕える格式高い色で、模様にも身分によって制限があったそうです。鳳凰は王族の女性や成人前の男性が使う模様とのことでした。

ここには国宝が4点並んでいました。


<第1章 紅型の「いろ」と「かたち」>
続いては様々な色や形を紹介するコーナーです。紅型は模様の形を作り出すため、糊防染(のりぼうせん)を行い、顔料や染料で色を染める琉球の技法で、1692年に書かれた本では「形付(かたつき)」と記されていたそうですが、王朝末期には「美形」との表記があり「びんがた」に近い呼び方になったと推定されるようです。いずれも鮮やか過ぎるくらい強烈な色をしているのですが、これは強い日差しに対応できる顔料を用いているためとのことでした。ここでは地の色ごとに小コーナーに分かれて展示されていました。

[黄色地]
先述のように黄色地の紅型は王族の服で格式が高いものですが、この辺は黄色地の服が何着も並ぶ貴重な内容でした。

14 「黄色地雲に松梅鶴流水菖蒲模様衣裳」
黄色地に青と緑の松、その下に青と赤の梅の花と鶴、下の方には菖蒲が描かれた紅型で、意匠化され同じ場面が連続しています。色合いが補色関係になっていることもあり強い色合いですが、洒落た意匠で気品を感じました。

16 「黄色地流水に網干魚籠菊紫陽花模様衣裳」
黄色地に釣った魚を入れる魚籠(びく)と三角の網が描かれ、その周りにアジサイや紅葉がある模様の紅型です。川が流れる様子もあり、雅で日本風の雰囲気に思えます。隣にはこの服の模様に似た型紙があり、紙を模様の形に細かく繰り抜いて糸て張っていました。

[白地]
続いては白地の紅型です。白地は王族や士族などで多く用いられたようです。

26 「白地流水蛇籠に桜葵菖蒲小鳥模様衣裳」
白地に水辺の菖蒲、その上に小鳥が飛んでいる様子が模様となっている紅型です。やはり赤、青、黄色などが多用され色鮮やかに見えます。しかし、意匠は日本の小袖を彷彿とするような流水や網目などで、涼し気な雰囲気がありました。また、胴体部分にはパターン化された模様が上下左右4回繰り返されているのですが、絶妙な配置で鳥が群れて池が広がるような繋がり方となっていました。隣には型紙もあるので、デザインを深く楽しむことができます。

この近くの白地の紅型を見ていると、どれも日本に比べて色は強めで、模様もぎっしりしているように思えてきました。

[青地]
続いては青地です。琉球では琉球藍が自生していたこともあり、青地が一番多く作られたそうで、士族らが着ていたようです。

101 「浅地波頭に鶴桜模様衣裳」
ダイナミックに渦巻く渦潮と波濤、その周りに色とりどりの桜、その上に鶴が飛んでいる様子が模様になった紅型です。地の青が空や海を思わせ、渦潮によく合う色合いです。こうしたデザインは他に類が観られないようですが、凄い勢いを感じる面白い着物でした。
この近くには子供用の小さな着物も何点かあります。大人用の生地を仕立て直したものらしく、大人の着物のように綺麗にパターンが並ぶことはないようでした。

[花色地]
続いては花色地というピンク色の地のコーナーです。これは中国から輸入したエンジが無いと作れないそうで、上流士族の女性が着ていたそうです。

54 「花色地斜格子に橘梅扇文箱模様衣裳」
ピンク地に格子模様があり、その上に菊、たちばな、梅、扇などが描かれています。格子の中は網目状で、かなり細かい表現です。全体的にピンクなこともあって、華やかな雰囲気のある着物でした。隣には型紙もあります。

ピンク地は落ち着いたピンクで優美な印象の着物ばかりでした。上流階級向けのためか細かい模様の意匠が多いように思いました。

少し進むと紅型の出来るまでの工程説明や原材料などもあります。そしてさらに進むと青地の作品が再度並んでいました。

137 「紺青地菊に扇模様衣裳」
深い青地に菊や2枚セットの扇が何セットか散らされたような模様の紅型です。扇は白に赤い花模様なのですが、開き具合や角度のせいか扇が蝶のように観えるのが面白いです。また、解説によるとこの青は藍ではなくベロ藍と呼ばれる少し赤みを帯びた人口顔料とのことでした。

近くには緑地の紅型もありました。

[染分地]
153 「染分地遠山に椿柴垣梅桜菖蒲模様衣裳」
緑、紫、黄色、赤の雲で色分けされた「染分地」と呼ばれる模様の紅型です。雲の中には柴垣と椿(緑雲)、菊(紫雲)、桜(黄雲)、菖蒲(赤雲)が描かれ日本的な情緒が漂います。解説によるとこれは四季のある日本への憧れが表されているそうです。非常に大胆な色合いと意匠の作品でした。

この辺は染分地が何点か並んでいました。
この辺で上階は終わりで続いて下階です。階段を降りると30分ほどのVTRがあり、紅型の制作風景を流していました。硬く締まった豆腐を乾かしたものを台にして型を彫り、彫り抜いたら糸掛して漆を塗って補強する様子や、防染糊はもち米と糠を4:1に混ぜて作る様子など、実際の作業を観ると気が遠くなるような手間がかかっているのがわかります。型紙を衣に当てて防染糊を塗っていくのですが、地染めの時は柄の部分に糊を塗るのが難しそうでした。

下階には染地型と白地型の2種類の型紙のコーナーがありました。模様を残し地を彫るのが白地型で、模様の形に彫り抜き地を残すのが染地型のようです。

168 「黄色地垣根に薔薇模様裂地」、169 「垣根に薔薇模様白地型紙」
白地型紙とそれを使った着物のセットです。黄色地にじぐざぐの垣根に薔薇が咲いた模様で、色の対比もあり華やかな印象を受けます。紅型の型紙は裏表無く使用出来るそうで、上下逆の模様も可能とのことでした。

この辺は型と着物がセットで展示されていました。


<第2章 もうひとつの紅型 ― 筒描>
続いて2章は筒描というものを取り上げたコーナーで、ここは3点程度と点数少なめです。紅型には円錐状の袋(ホイップクリームの袋みたいなもの)に入れた米糊を絞り出して模様を描き、地染めを施す「筒描」という技法があるそうです。この筒描は型を使わずにフリーハンドで描かれるようで、おおらかな雰囲気の作風とのことでした。この辺にはそうした作品が並んでいました。

186 「浅地鶴亀松竹梅模様風呂敷」 ★こちらで観られます
青地に竹の輪を中心に松や梅が描かれた風呂敷です。ダイナミックに描かれていて意匠も面白く、中心には鶴と亀の姿もありました。おめでたくて勢いを感じます。

この辺には防染糊を出していく糊袋もありました。デコレーションケーキを作る袋みたいな感じですw


<第3章 初公開 松坂屋コレクションの紅型衣裳>
最後は松坂屋がデザインの研究を目的として集めたコレクションのコーナーで、その多くはかつて岡田三郎助が収集したものだそうです。貴重なコレクションが並んでいました。
 参考記事:藤島武二・岡田三郎助展 ~女性美の競演~ (そごう美術館)

202 「白地稲妻に鶴亀梅の丸模様衣裳」
黄色、赤、青、エンジのガンジ型と呼ばれる稲妻紋や、丸紋のようになった鶴、亀、梅、雪輪のようなものなどが描かれた紅型です。稲妻は昔から子供の健やかな成長を祈るもののようですが、これは結構大きめの衣裳に思えます。色鮮やかで散らされた丸紋がリズミカルに観えました。

この辺にはお碗、食籠、お盆などの漆工品も展示されていました。

223 「水色地菱草花に熨斗模様衣裳 (裏)水色地梅楓尽くし模様」 ★こちらで観られます
水色地で、表面は菱形や草花などが散らされた模様の紅型です。それに対して裏地は異なるモチーフで、びっしりと梅と葉っぱ?などが描かれていました。表は涼しげに観えましたが裏はちょっとやりすぎな感じが…w 裏表でだいぶ違う印象を持ちました。

215 「花色地霞雪輪鶴亀に枝垂桜燕模様衣裳」
ピンク地に枝垂れ桜、翼広げた燕、丸紋となった鶴や亀などが描かれています。燕は流麗なフォルムが優美で動きを感じる姿勢をしていました。これは子供用に仕立て直しているようですが、面白い意匠でした。


ということで、日本の着物とはまた違った印象を受ける展覧会でした。私は紅型というものを知ったのがつい最近だったので、かなり参考になりました。また、紅型は沖縄の歴史にも深く関わっているので、それも含めて興味深い内容でした。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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