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ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで (感想後編)【ブリヂストン美術館】

今日は前回の記事に引き続き、ブリヂストン美術館の「オルセー美術館、オランジュリー美術館共同企画 ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 オルセー美術館、オランジュリー美術館共同企画
 ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで

【公式サイト】
 http://debussy.exhn.jp/
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

【会場】ブリヂストン美術館
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・都営浅草線宝町駅
【会期】2012年7月14日(土)~10月14日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編は5章までご紹介しましたが、後編は6章から10章をご紹介します。7章の後には4章の内容が再び出てきます。


<第6章 ペアレスとメリザンド>
6章はドビュッシー作曲の歌劇「ペアレスとメリザンド」についてのコーナーです。これは1902年にオペラ・コミック座で上演され、その後各国で人気を博した作品で、ドビュッシー自身が全てを完成させた唯一のオペラのようです。 ドビュッシーは1892年にモーリス・メーテルリンクの同名の戯曲を読み、1893年にはリュニェ・ポー演出による劇も観ていたそうで、原作者のメーテルリンクに許しを得て10年かけて作曲しました。大雑把なストーリーとしては、ゴローという男が森で見つけたメリザンドを妻にしたものの、メリザンドは弟のペアレスを愛していて、ゴローは嫉妬に苦しみ、ついにはペアレスを刺してしまいます。メリザンドはこれを悲しむあまりに息を引き取り、後にはゴロー1人が残るという話のようです。

まずこの章の最初にメーテルリンクを描いた肖像画があり、その後に衣装のデザイン画などが並びます。この衣装はフランドル絵画から影響を受けているそうです。音声解説では貴重な当時の曲を聴くこともできました。

アンリ=エドモン・クロス 「髪」 ★こちらで観られます
長い髪をとかす女性を描いた作品で、顔は見えず後ろを向く色っぽいポーズをしています。点描の技法で描かれていて、人物像は新印象主義が苦手とされた分野ですが、構図と相まって神秘的な雰囲気がありました。
この作品は直接は「ペアレスとメリザンド」とは関係無さそうですが、解説によるとメリザンドは背の丈ほどの髪だったそうで、退廃的な空気の流れるこの時代の芸術家は長い髪の女性に惹かれていたとのことでした。

モーリス・ドニ 「イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像」
庭や川や森を背景に、白い花を持つ白いドレスの女性を描いた作品で、脇には花を摘む女性と後ろ向きで髪を押さえる女性の姿もあります。白いドレスの女性はこちらに微笑んでいるようで、清純な感じです。また、恐らく両脇の人物も同じ人(ルロールの娘)のようですが、ポーズのせいかこちらは色っぽく見えました。全体的に明るい雰囲気の作品です。

この辺にはヴァレンティーヌ・ユゴーによる「ペアレスとメリザンド」の舞台装飾の原画もありました。暗い森?や建物が描かれ幻想的というかちょっと怖い感じでした。


<第7章 《聖セバスチャンの殉教》《遊戯》>
前章の「ペアレスとメリザンド」の成功によってドビュッシーは劇音楽の制作を考えるようになったそうで、バレエやオペラの企画が10点ほどあったそうですが、未完で終わったものもあるようです。1911年に作った「聖セバスチャンの殉教」は5時間を超える上演の長さや、詩人ダヌンツィオの難解な様式、主演が期待ほどの成功をもたらさなかったことなどから人気と言えるものでは無かったようで、さらにパリの司教が倒錯したこの作品の観覧を禁じたそうです。
また、1912年にバレエ・リュスのディアギレフに依頼されて作った「遊戯」はニジンスキーが演じたものの評判は芳しくなかったそうで、結局4回しか上演されなかったようです。これはドビュッシーの中でも最も前衛的な曲なのだとか。

レオン・バクスト 「[遊戯]のためのデザイン」 ★こちらで観られます
これはニジンスキーが演じたバレエ「遊戯」のためのデザイン画で、褐色の地に鉛筆と一部にパステルを使って描いています。川辺の岩場?や大きな城塞のようなものを背景に、左下のほうには小さく剣と盾を持つ男の影も描かれています。どのような場面かは分かりませんが、モノクロの中にぼんやりと色がついているのが神秘的な雰囲気でした。

ここには「おもちゃ箱」という曲の楽譜もありました。これは2番目の妻と子供をもうけ、子供向けに書いた曲らしく可愛らしい挿絵がついていました。


<第4章 アール・ヌーヴォーとジャポニスム>
次の部屋に進むと再度アール・ヌーヴォーのコーナーとなっていました。前半よりもこちらの方がアール・ヌーヴォーっぽい作品が並んでいます。

クロード・ドビュッシー 「海-3つの交響的スケッチ」 ★こちらで観られます
これは楽譜の表紙に葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の左側の波がトリミングされたような構図の模写が描かれたものです。この頃フランスではジャポニスムが盛り上がりを見せていて、ドビュッシーも浮世絵を家に飾っていたらしく、この楽譜を見るだけでもドビュッシーのジャポニスムへの傾倒が伝わってくるようでした。

この近くにはストラヴィンスキーと一緒に写った写真もありました。そこにも北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」と喜多川歌麿の「当時金盛美人揃 玉屋内しづか」が飾られている様子が写されています。

「日本の扇子」
ドビュッシーが庇護してくれたルロール家の娘イヴォンヌに贈った大きめの日本の扇で、表面は木の葉っぱにとまったり周りで飛ぶ鳥たち、裏面には葉っぱが数枚書かれています。また、表面にはイヴォンヌに捧げた曲?の楽譜が手書きされていて、これは「ペアレスとメリザンド (第1幕第3場 城の前にて花を抱えたジュヌヴィエーヴとメリザンド)」と書かれているそうです。そして裏面にも「イヴォンヌ・ルロール嬢に捧ぐメリザンドの妹の思い出として クロード・ドビュッシー94年2月」とあり、こちらも音符などが書かれていました。ルロール家との関係の深さや日本美術への関心が伺えます。

この近くには歌川広重の東海道五十三次シリーズがあり、「庄野 白雨」2枚(刷りが違う)と「水口」が並んでいました。「水口」は友人に贈ったものらしく、当時は20フラン~25フラン程度で売られていたそうです。これは彼のつましい生活を支えた音楽レッスンの1回分の授業料だったそうで、東海道五十三次は何枚か所有していたようです。
 参考記事:浮世絵入門 -広重《東海道五十三次》一挙公開- (山種美術館)

この辺には「アルケル」と名付けられた木彫りの蛙の文鎮もあり、これはドビュッシーが愛用し旅先にも持っていくほどだったそうです。ちなみにアルケルはペアレスとメリザンドの祖父の名前なのだとか。

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー 「紫と緑のヴァリエーション」 ★こちらで観られます
これは縦長の作品で、手前に3人のドレスを着た女性が描かれ、奥の海?を眺めて佇んでいます。水面にはヨットが浮かんでいてのんびりした光景ですが、ちょっと暗めに見えるかな。全体的に大胆な構図で、地と水辺の境をかなり下の方に描いているせいか水辺が広々とした感じに見えました。特に解説はありませんでしたがホイッスラーもジャポニスムに影響された人なので、これも浮世絵からの影響なのかな?

この両隣にはブリヂストン美術館所蔵のゴーギャンが2点並んでいます。


<第9章 霊感源としての自然-ノクターン、海景、風景>
8章の前に9章となっていました。ドビュッシーの音楽には自然を主題にしたものが数多くあり、ヴィクトル・ユゴーやポール・ヴェルレーヌ、モーリス・メーテルリンクの詩をしばしば引用し、引用元をハッキリとタイトルに表したそうです(雲、海、雪の上の足跡、枯葉、霧 など)
また、ドビュッシーの芸術は印象派の絵画を音楽に書き換えたに過ぎないと見なされていたようですが、実際のところは印象派と距離を置こうとしていたそうです。モネの睡蓮の思索的雰囲気を取り入れているものの、愛したのはターナーの作品に見られる神秘的な光や曖昧な形態だったそうで、それを自分の音楽に取り入れたとのことでした。

ウィンスロー・ホーマー 「夏の夜」
暗闇の中で明るく光る海を背景に、手前に踊る2人の女性、その右に5人くらいの人影が描かれています。海と踊る2人は影の部分との対比が強く輝くようで、神秘的な雰囲気があります。一方で強烈な明暗がちょっと不安なものを感じさせました。

この辺にはブリヂストン美術館所蔵のコローやブーダンの海の絵や、モネの睡蓮などもありました。

クロード・モネ 「嵐、ベリール」 ★こちらで観られます
岩場に打ち寄せる波を描いた作品で、白く打ち寄せる波は勢いを感じさせますが、抽象的な感じにも見えます。ごつごつした岩や薄暗い背景などからは自然の厳しさも感じさせました。
この近くにあったアレクサンダー・ハリソンの「海景」(オルセー美術館所蔵)という穏やかな夕日の海を描いた作品も好みでした。

エドゥアール・マネ 「浜辺にて」 ★こちらで観られます
これは今回の目玉の1つで2年くらい前に三菱一号館美術館で観た記憶があります。浜辺で寝転がる黒い服の男性(マネの弟のウジェーヌ)と、本を読み足を伸ばし座る女性(マネの妻シュザンヌ)が描かれ、どうやら海にバカンスに来ているようです。お互いに視線を合わせることはなく、どことなく寂しげな感じに見え、波の音が聞こえてきそうな静けさがありました。解説によると、これはこの場で素早く描いたと考えられるようで、砂が混じっているようです。結構色鮮やかで、やはり弟の黒い服の色使いが気になりました。
 参考記事:マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)

この辺にあったシャルル・ラコストの「影の手」という夕闇に手のように広がる雲を描いた作品も面白かったです。


<第8章 美術と文学と音楽の親和性>
ドビュッシーは若い頃から美術雑誌や詩集の熱心な読者で、詩に基づいて作曲したりしていました。前編でも書いたように独立芸術書房に出入りしていたおかげで若い世代の作家たちと知り合い、その中のフェルディナン・エロールの紹介で尊敬するステファヌ・マラルメにも出会うことができたようです。(ドビュッシーはマラルメの「まぼろし」と「牧神の午後」に曲をつけています)
また、ワーグナーに魅了されていたそうで、2回ほどドイツのバイロイトにまで歌劇を聴きに訪れていたそうです。ドビュッシーはワグナーのピアノ曲や全ての役を演じることができるほど好きだったようですが、ドビュッシーの作品にはその信奉の痕跡はなく、既に自己の様式を確立していたようです。
他にもお気に入りの作家の名前がいくつか挙げられていて、芸術方面ではロダンやクローデル、アール・ヌーヴォーなど様々な作家・芸術に親しんでいたようでした。

エドゥアール・マネ 「ステファヌ・マラルメの肖像」 ★こちらで観られます
「牧神の午後」を書いた詩人の肖像で、ソファ?に座り タバコを持つ手で本を押さえているヒゲの男性が描かれています。目線も本に向かっているのですが、ちょっと気難しそうな雰囲気の人に見えました。黒い服が艷やかに感じられるのは流石といった感じです。
なお、解説によるとマラルメは「火曜会」という会合を開いていたそうで、ドビュッシーはその場でターナーやホイッスラー、ドガの絵を知って魅了されたそうです。(特にドガ) マネとドガも火曜会に参加していたメンバーなのだとか。

この辺はドビュッシーの楽譜や、ルドンやギュスターヴ・モロー、カリエールなどの作品もありました。ルドンは「選ばれし乙女」に感激してドビュッシーに絵を捧げています。そして少し進むと何気なくポール・セリュジエの「タリスマン(護符)」が展示されていました。ナビ派結成の記念碑的な作品です。
 参考記事:オルセー美術館展2010 ポスト印象派 感想後編(国立新美術館)


<第10章 新しい世界>
ドビュッシーの成熟期の作品の特徴は、旋律・音色・リズムがそれぞれ分割される簡潔な手法だそうで、これは絵画で言えばフォーヴィスムのような時代を先取りした冒険だったようです。その為、音楽界を混乱させたそうですが、フォーヴィスムのドラン達のサロン・ドートンヌへの発言などからは自分を前衛芸術家の一員とみなしていたわけではないと推察できるようです。また、ドビュッシーは20世紀初頭の絵画から距離を置いていたようですが、ターナーやホイッスラー、ドガなどを着想源としてしているとのことでした。

ポール・ゴーガン 「牛のいる海景」
手前には黒い牛の姿があり、背景では谷間に打ち寄せる波が白い飛沫をあげ、その左右に岩が並んでいます。平坦で遠近感があまり感じられず、色面がくっきりわかれるような画風で妄りの草とオレンジの岩というように色の対比も面白かったです。これは最近日本で観た記憶があります。
 参考記事:ゴーギャン展2009 (東京国立近代美術館)

ジョルジュ・ラコンブ 「紫色の波」
この人はナビ派の画家で彫刻家でもある人です。ブルターニュ地方の海の洞窟を中から描いた作品で、ハート型の洞窟の入口から夕日で紫に染まった波が手前に向かって押し寄せてきます。波は意匠化されて浮世絵を思わせ、波に飲まれつつも波を2つに分ける岩は冠を被った人のシルエットのように見えました。淡めの色彩や大胆な意匠化が面白い作品です。

この部屋はブリヂストン美術館の常設品が多いかな。他にはドビュッシーの「水に映る影」の楽譜やカンディンスキーやパウル・クレーなどの作品も展示されています。


ということで、オルセー美術館を始めとする貴重なフランスの品々を観ることができました。多くの名品が来ていて、音楽家からのアプローチというのも面白いと思うのですが、展覧会の構成はどこか散漫とした感じにも思えました。章ごとの趣旨と展示品の関連がよく分からないというか…。 しかし、交流の様子などは参考になったので、音楽・美術ともに好きな方には特に面白い展示だと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事


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ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで (感想前編)【ブリヂストン美術館】

先日ご紹介した三井記念美術館の展示を観た後、京橋のブリヂストン美術館にハシゴして「オルセー美術館、オランジュリー美術館共同企画 ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで」を観てきました。

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【展覧名】
 オルセー美術館、オランジュリー美術館共同企画
 ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで

【公式サイト】
 http://debussy.exhn.jp/
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

【会場】ブリヂストン美術館
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・都営浅草線宝町駅

【会期】2012年7月14日(土)~10月14日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんが多く入っていましたが、混雑しているというほどでもなく自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展示はフランスの作曲家ドビュッシーを主役にして、その周辺の芸術家を紹介するという趣旨で、パリのオルセー美術館・オランジュリー美術館との共同企画となっています。私は今年のゴールデンウィークにオランジュリー美術館に行って、この展示を観てきたのですが、多少の違いはある(特にブリヂストン所蔵の作品など)ものの、大体は同じような内容だったのではないかと思います。

ドビュッシーはフランスの代表的な作曲家で、伝統的な楽式・和声を超えた自由な音の響き等の特徴から音楽における印象派と呼ばれたそうです。1888年のフランスアカデミーでそう呼んだそうですが、必ずしも美術との関連から呼んだ訳ではないそうで、伝統手法を無視した作曲を非難するためだったようです。また、現在の音楽史の通説では印象派というよりは象徴派に位置づけられているそうで、ドビュッシーが活躍した時代は印象派と象徴派が拮抗しながら影響しあう時代だったようです。ドビュッシーの創作には同時代のジャンルを超えた芸術からの影響があったらしく、この頃は音楽・美術・文学・舞台芸術が共鳴しあい共同で作品を作ることもあったようです。

展覧会はそうしたドビュッシーに影響を与えたものや人物などをテーマに10章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。


<第1章 ドビュッシー 、音楽と美術>
まずはドビュッシー自身や美術との関係を解説するコーナーです。ドビュッシーは「音楽と同じくらい絵が好き」と述べていたそうで、若い頃から芸術や詩人に興味を持っていたようです。ドガ、ホイッスラー、ターナー、ルドン、詩人のボードレール等々と頻繁に会っていたらしく、その交流の背景には彼の困難な時期を支えた3家族の存在がありました。それは画家のアンリ・ルロール、作曲家のエルネスト・ショーソン、高級官僚アルチュール・フォンテーヌで、彼らとの交流でナビ派などの絵画も目にする機会も得たようです。

マルセル・バシェ 「クロード・ドビュッシーの肖像」 ★こちらで観られます
これはドビュッシーの肖像です。口ひげを生やした黒髪の人物で、ややワイルドな雰囲気もあるかな。解説によるとこれはローマ賞を受けてローマへ留学していた頃の姿のようです。
近くにはドビュッシーの写真もありました。


<第2章 《選ばれし乙女》の時代>
ドビュッシーは同時代のラファエル前派やウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツの作品に魅せられていたそうで、ローマ留学の送付作品の1つにロセッティの詩「祝福されし乙女」を選んだそうです。その詩に共感したドビュッシーが作曲した「選ばれし乙女」は、彼の言葉によると「神秘的で少し異教的な雰囲気のあるささやかなオラトリオ(聖譚曲)」だそうで、批評家のウィリーは「画家フラ・アンジェリコ(ルネサンス期の画家)による調和の取れたステンドグラスをそこに観てとった」そうです。そしてこの「選ばれし乙女」の初演を観たオディロン・ルドンは感激し、自らの作品をドビュッシーに贈ったとのことでした。ここには軽やかで妖しい魅力のある女性像の作品が並んでいました。

モーリス・ドニ 「ミューズたち」 ★こちらで観られます
木々の並ぶ戸外で椅子に腰掛ける女性たちや背景で散歩?する女性たちを描いた作品です。アール・ヌーヴォー風の葉っぱや曲線、木々の直線など単純化された中にも装飾性とリズムがあり、地面はまるで絨毯のようです。落ち着いた色合いで神秘的な雰囲気に思いました。解説によるとこの女性たちはどこかドニの妻に似ているそうです。

この隣にはドニの「木々の下の人の行列」もありました。両方とも最近観た覚えがあるのでオルセー美術館展だったかな??
 参考記事:オルセー美術館展2010 ポスト印象派 感想後編(国立新美術館)

エドワード・バーン=ジョーンズ 「王女サブラ」 ★こちらで観られます
戸外の柵の向こうに沢山の花が咲いているのを背景に、赤い衣を着た女性が小さな本を開いて立って読んでいる様子が描かれた作品です。右手では衣をつまみ、静かで優美な雰囲気があります。柔らかい色合いだけど鮮やかに感じるのは師匠のロセッティと通じるものを感じるかな。解説によると、この女性は聖ゲオルギウスの物語で竜の生贄にされる王女らしく、この後に彼女に降り注ぐ苦難を考えると一層に清純で儚い雰囲気に思えました。
 参考記事:
  バーン=ジョーンズ展-装飾と象徴 感想前編(三菱一号館美術館)
  バーン=ジョーンズ展-装飾と象徴 感想後編(三菱一号館美術館)

この隣にはロセッティの「祝福されし乙女(習作)」もありました。これが着想源となったようで、羽ペンを持って首を傾げた女性の半身像となっていました。習作なので描きかけの感じです。また、ドビュッシーの写真やドニの挿絵入りの伴奏譜なども展示されています。


<第3章 美術愛好家との交流-ルロール、ショーソン、フォンテーヌ>
1887年にローマ留学から戻ったドビュッシーは、象徴派の画家たちと交流したそうです。また、ドビュッシーはカフェや独立芸術書房(アール・アンデパンダン)でほぼ毎日過ごしたらしく、この書房はルドンの作品を展示し、ドニの挿絵入りの本を刊行するなど象徴派を積極的に紹介する発信地だったようです。
1890年代になると3人の友人(ルロール、ショーソン、フォンテーヌ)とその家族がドニとドビュッシーを支援したようで、彼らは親戚関係で、3人の妻たちはいずれも音楽家で画家のモデルにもなったそうです。彼らの邸宅ではまだ無名であったアンドレ・ジッドやポール・ヴァレリーといった作家と知り合ったり、ドガやルドンの作品を目にし、実際に彼らとも出会うことが出来たそうです。 この章にはその3家族に関する品が並んでいました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ピアノに向かうイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロール」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、白いドレスの女性がピアノを弾き、その隣で赤いドレスの女性が楽しそうに見守っています。背景にはドガの踊り子の絵と競馬の絵が画中画として描かれていて、これはルロールの家の中の様子と彼の娘たちのようです。(ピアノを引いている方が姉) 何とも幸せそうな光景で、優雅な雰囲気がありました。
解説によるとこの頃ドビュッシーは恋愛スキャンダルを起こして多くの人が周りから去ったようですが、ルロール一家は変わらぬ付き合いをしてくれたそうで、ドビュッシーはルロールの娘に曲も捧げているとのことでした。

アンリ・ルロール 「室内、ピアノを弾くルロール夫人」
自身も画家でコレクターでもあったルロールの作品で、ドア越しに向こうの部屋が見えていて、そこで夫人がピアノを弾いている様子がややぼんやりした感じのタッチで描かれています。手前の部屋は無人で、静かな中に音楽が聞こえてきそうな感じが出ていました。 ルロールの作品も予想以上に良くて結構好みです。

この辺にはルロールとドガの写真もありました。交流があったのがよく分かります。


<第4章 アール・ヌーヴォーとジャポニスム>
ドビュッシーは近代性を愛し、アール・ヌーヴォー様式を高く評価してピアノ曲でアラベスクを作曲したそうです。彼のアパルトマンにはアール・ヌーヴォーの陶器などがあり、アール・ヌーヴォー・アラベスクの部屋と呼ばれたらしく、彼はジークフリート・ビングの店(アール・ヌーヴォー発祥の店)の馴染み客だったそうです。その為か、ドビュッシーの「版画」、「塔」、「そして月は廃寺に落ちる」、「金色の魚」といった作品には日本などの遠方の国々の音楽の響きや調和が引用されているとのことです。

モーリス・ドニ 「ファランドール」
横長の作品で、3人の女性が手を取ってどこかに歩いて行くような光景が描かれています。背景には広々とした川や町が広がり、収穫物?が入ったカゴを持ち上げる女性の姿などもあります。手を取り合う3人の女性の顔は曖昧でよく分かりませんが、どことなく楽しげな雰囲気で、淡く水色やピンクの多い画面は幻想的に見えました。

エミール・ガレ 「海」
玉ねぎの上のほうを伸ばしたような形の青い器で、側面に粒のようなものがあり、胴の部分には貝を思わせるものが飛び出ています。その為、海の飛沫や岩などを彷彿させました。色合と意匠が合って面白い作品です。

この隣には葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」も並んでいました。これは後の方のコーナーにもあったので、関連性については後編で書こうと思います。また、北斎の この作品を参考にしたカリエスの花瓶・水筒・壺、ロダンやクローデルの彫刻、ショーソンのピアノ曲の楽譜、ガレのガラス器など様々なものが並んでいます。

モーリス・ドニ 「木の葉に埋もれたはしご(天井装飾のための詩情に満ちたアラベスク文様)」
大きなハシゴに登る4人の女性を描いた作品で、女性たちはオレンジがかったドレスを着ていて背景には単純化された緑の葉が画面を覆っています。ハシゴに登っているのですが、見上げる構図のためか何となく昇天図を思い起こしました。葉っぱやドレスの曲線が優美で、ちょっと陶酔したような女性の表情が色っぽく見えました。

この先には最近ブリヂストン美術館に収蔵されたカイユボットの作品や、ドビュッシーがショーソンの家で観たシャヴァンヌの作品などもあります。その為アール・ヌーヴォーのコーナーという感じはあまりしないかも…。というか、アール・ヌーヴォーのコーナーは2つに分かれていて、後半にもう1度展示室があります。後のコーナーのほうがアール・ヌーヴォーらしい感じです。

5章に向かう途中の通路にはドビュッシーの肖像画やマスク、胸像などがありました。


<第5章 古代への回帰>
若いころのドビュッシーはバンヴィルの近代ギリシャの詩に基づく曲を作ったそうです。そしてその後、ステファヌ・マラメル(詩人)の依頼によって「牧神の午後への前奏曲」という曲を作り、これは30代の傑作となりました。さらにその10年後、この楽曲に魅せられた天才バレエ・ダンサーのニジンスキーがバレエを生み出し歴史に名声を残します。ニジンスキーはその振り付けを考える際、ギリシャの壺絵を観察してアイディアを得ていたそうです。
また、1890年代にギリシャのデルフォイ遺跡の発掘が成功した際、フランスでも大きな話題となったそうで、1900年のパリ万博ではそれらの彫刻が展示され、その後にルーヴル美術館に展示されたそうです。ドビュッシーもそれに熱狂し、「デルフォイの舞姫」という曲が生み出されたとのことでした。
ここにはそうした古代文明への熱狂を伺わせる作品が並んでいて、「牧神の午後のための序曲」の楽譜や、牧神を演じるニジンスキーの写真、バレエのシーンを撮った写真などが展示されていました。少し進むとテラコッタ製の「カノーポス」というエジプトのミイラを収めた壺や、エトルリアの壺などもありました。
 参考記事:大英博物館 古代エジプト展 感想前編(森アーツセンターギャラリー)


ということで長くなってきたので今回はこの辺にしておきます。ドビュッシーは印象派と呼ばれているようですが、この展示ではナビ派(というかドニ)や象徴派、アール・ヌーヴォーなどの要素が強いようにも思えました。後半にも色々と影響を与えたものが展示されていましたので、次回は最後までご紹介しようと思います。



   → 後編はこちら



 参照記事:★この記事を参照している記事



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LA BETTOLA per tutti(ラ・ベットラ・ペル・トゥッティ) 【三越前界隈のお店】

前回ご紹介した三井記念美術館の展示を観る前に、同じビルの地下にある「LA BETTOLA per tutti(ラ・ベットラ・ペル・トゥッティ)」でランチを摂っていました。

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【店名】
 ラ・ベットラ・ペル・トゥッティ 日本橋店 (LA BETTOLA per tutti)

【ジャンル】
 イタリアン

【公式サイト】
 http://food-koritoreru.com/labettola/
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1302/A130202/13019708/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 三越前駅 新日本橋駅

【近くの美術館】
 三井記念美術館
 日本銀行金融研究所貨幣博物館
  など


【この日にかかった1人の費用】
 1700円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_③_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日12時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
特に待つこともなくすんなりと入ることができましたが、ほぼ満席のようでした。

さて、このお店は著名な落合務シェフの「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」から暖簾分けを受けたお店だそうで、入口に落合シェフ監修のデザートのPOPなどもありました。それだけに期待度も高めでした。

中はこんな感じ。静かな音楽が流れ落ち着いた雰囲気ですが、ちょっと狭いかな。
P1020928.jpg

この日、私はLunch A Course(1500円)をノルマーレ(大盛り、+210円)にしたものを頼みました。

まずこの日の前菜は「冷製枝豆のスープ」「豚舌とグリル野菜のマリネ」「マト鯛のエスカベッシュ」の3品。
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スープはクリーミーで風味も良くて美味しかったです。冷製と魚のマリネは特に変わった所もなく普通。

自家製フォカッチャ
P1020932.jpg
これも特に可も不可もない普通のパンかな。

そして、この日のパスタ3品の中から「いろいろキノコのクリームソース」というのを選びました。
P1020937.jpg
こちらもクリームが濃厚で美味しかったです。キノコの香りも良かったのですが、キノコしかないので、一定以上食べると若干単調かも…。途中から黒胡椒をかけて風味を変えて食べてみました。

そして食後のコーヒー。
P1020939.jpg
こちらは強い酸味があって、やや苦味があります。香りも良くて美味しかったです。


ということで、十分美味しかったと思いますが、値段の割には普通に思えるものもあった気がします。落合シェフプロデュースの他のお店と比べて考えると手頃なので、期待度が高かったせいでそう思えたのかなw
 参考記事:ラ・リングア・オチアイ (六本木界隈のお店)




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三井版 日本美術デザイン大辞展 【三井記念美術館】

先週の日曜日に、三越前の三井記念美術館で「三井版 日本美術デザイン大辞展」を観てきました。

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【展覧名】
 美術の遊びとこころⅤ 三井版 日本美術デザイン大辞展

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

【会場】三井記念美術館
【最寄】銀座線三越前/新日本橋駅/東京駅/神田駅


【会期】2012/06/30(土)~2012/08/26(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外にも非常に空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は「美術の遊びとこころ」という三井記念美術館が行なっている古美術の入門編的な展示シリーズの5回目となっています。日本美術には様々な用語があり、初心者には難しく思えるものですが、この展示ではよく出てくる日本美術の用語を実際の品を観ながら学べるという趣旨となっていました。だいたいは「あ」から50音順に用語が並んでいて、(展示スペースの関係などでたまに場所が違います)主に三井記念美術館の所蔵品だったと思います。詳しくは気に入った作品と共に用語ごとにご紹介しようと思います。
なお、50音順でどういう用語に関して取り上げているかは公式サイトの作品リストで確認できます。

 参考リンク:作品リスト(PDF)


[あしでえ/葦手絵]
漢字や仮名文字を岩や樹木、鳥、水草などの風景に隠すように描いた絵画を指します。葦の葉に似せて書いた書体から「葦手絵」と呼ばれるようになったそうです。

2 田中親美(模写) 「平家納経 法華経 分別功徳品第十七 ( 模本)」
これは巻物で、大正時代に模写した平家納経の写本です。金箔が散らされた料紙の上に、法華経が書かれ、その右に色紙サイズの絵が描かれています。蓮の花の咲く水辺で平安貴族風の男女4人がそれを眺めていて、意匠化され小さな四角の箔が散らされた様子は絢爛豪華かつ雅な雰囲気があります。解説によると、この絵の男性の左下には「加」と「奈」の文字を岩の輪郭として描いているとのことでしたが、なかなかそうは読めませんでしたw また、岩に止まる水鳥を「と」と「る」にしているようですが、これも見つからず…。 遊び心を感じる趣向ですが、これに気づくには相当に詩歌や教養が必要そうでした。

ここには蒔絵の葦手絵(★こちらで観られます)もありました。こちらは何とか分かりますw


[うろこもん/鱗文]
これは三角形を組み合わせた連続した文様のことで、魚や蛇の鱗の形に似ているので、近世以降に「鱗形」とも呼ばれるようになったそうです。その歴史は古く、古墳や埴輪の文様にも使われていたそうで、能や歌舞伎においては怨霊や鬼、蛇の化身(道成寺の清姫など)の衣装に使われるようです。また、一方では魔除けの意味もあるとのことでした。

8 仁清 「色絵鱗文茶碗」 ★こちらで観られます
黒地の茶碗で、側面に金・白・赤の三角が帯になって並んでいます。黒の中に帯があると引き締まって見え、その色合いと模様のためか、凛とした雰囲気があるように思いました。

少し進んで次の部屋に入ると[絵手本]として北斎漫画などが並んでいました。


[おおつえ/大津絵]
大津絵はその名の通り近江国の大津に関連があり、彼の地でお土産物として売られていた絵画です。その場で素早く描いていたそうで、初めは仏画だったようですが後に戯画が増え、「鬼の念仏」など決まった題材が描かれるようになったそうです。

17 河鍋暁斎 「浮世絵大津之連中図屏風」
これは2曲1隻の屏風で、大津絵に出てくる簡略的な鬼や座頭、奴(やっこ)などと共に右下に美しい男女が描かれています。美女が美男の髪をといているようで、その視線の先に三味線を弾く鬼、合いの手を入れる座頭、鏡を観る後ろ姿の奴がいるという感じです。 男女は繊細に描かれているのですが、それと対照的に鬼たちはさらっと描いたような感じで、それが大津絵風の描き方のようでした。豪放で陽気な雰囲気があり、パロディ的な面白さがありました。


[うんりゅう/雲龍]
雲龍は雲に乗って天に登る龍を描いた画題です。龍の角は鹿、頭はラクダ、爪は鷹といったように実在の動物の各部を組み合わせているようです。
ここは展示スペースの関係で1作品だけ展示順が後回しになっていました。

13 狩野探幽 「雲龍図(附:探幽書状)」 ★こちらで観られます
これは水墨画で、雲間から首と爪をのぞかせる龍を描いた作品です。太い輪郭で描かれ、画面のあちこちに墨が撒き散らされているような感じで迫力があります。また、怒ったような顔をしていて、下の波が大きく跳ねている様子も圧巻でした。これは今回の見所の1つだと思います。


[げちょう/牙彫]
牙彫とは主に象牙を彫って作った彫刻のことです。

30 竹内実雅 「牙彫田舎家人物置物」
これは茅葺き家とその周りの木々や沢山の人々などが彫られた牙彫です。1本の象牙で出来ているとのことですが、家の中の人、格子の窓、水車、天秤を持つ人など、神業とも言える精密な仕事ぶりにただただ驚嘆するばかりでした。これはスコープで観るとさらに凄さが分かると思います。

31 安藤緑山 「染象牙果菜置物」 ★こちらで観られます
これは牙彫に着色して作ったミカン、ナス、いちじく、柿、仏手柑などの彫刻です。特にミカンは本物と間違えても不思議ではないほど写実的に作られていて、これも仕事ぶりに驚きでした。それぞれモチーフごとに質感も違うのに、それも見事使い分けて再現しています。

この辺は[こしらえ](刀剣を腰につけるための外装飾)や、[歳寒三友](さいかんさんゆう:冬に友とすべき3つの植物 松竹梅のこと。松は冬でも緑、竹は寒さでもまっすぐ、梅は早春に花をつける)に関する品などが並んでいました。


[すやりがすみ/すやり霞]
すやり霞とは遠近感や山の高さを表す横長の雲のようなもので、絵巻では転換や時間の経過を表す時にも使われるようです。素槍というすっきりした槍のような形をしていることからすやり霞と呼ばれるようです。

42 亀岡規礼 「酒呑童子絵巻」 ★こちらで観られます
これは人一倍大きな酒呑童子が赤い血?の入った盃を持ち、周りにはお付きの女性や鬼たち、向かいには源頼光とその四天王などが描かれた物語の絵巻です。宴会の様子らしく扇子を持った男性が踊っているのを見ているようです。周囲には水色の雲のような素槍霞が立ち込め、幻想的な雰囲気を演出していました。

この近くには[鍾馗]のコーナーがあり円山応挙の鍾馗図が展示されていました。また[青海波(せいがいは)]などは様々な所で観るので参考になりそうです。

この部屋にあったボードには工芸品の名前の付け方について書かれていました。例えば「色絵鱗紋茶碗」という名前では、まず「色絵」という造形や技法・装飾技法がきて、次に「鱗紋」という文様、最後に「茶碗」という器形・用途となっているようです。ルールは機関や組織によって変わるそうですが、興味深い解説でした。


[そとぐま/外隈]
外隈は描かれているモチーフの外側をぼかすことによってモチーフを浮き立たす技法です。

46 円山応挙 「富士図」
これは雪の積もった白い富士とその周りの空が描かれた作品で、富士はぼんやり霞がかったような感じで外隈の技法が使われています。筆線を用いず稜線を外側から形作っているとのことで、周りの薄い空色によって山の形が浮き立つように表現されていました。非常に情感があり雄大な雰囲気があります。応挙は狩野探幽の外隈を意識しているとのことでした。

この近くには漆を何重に塗り重ねたものを彫り込んだ[彫漆(ちょしつ)]、中国の[饕餮文(とうてつもん)]の銅器、鯉が滝を登ると龍になるという[登竜門]の文様の青磁の花入れ、漆に金色の梨地を撒いた[梨子地]の硯箱、料紙に貼る金箔・銀箔を細長く切った[野毛]と粉末の[砂子] などが並んでいました。


[ふきぬきやたい/吹抜屋台]
吹抜屋台とは絵画の技法で、建物の屋根や天井の描写を省略して室内の人物などの様子を俯瞰するように描く表現です。大和絵の邸宅のシーンでよく観られます。

64 醍醐冬基 「源氏物語画帖」 ★こちらで観られます
吹抜屋台で描かれた邸宅の中で平安貴族風の男女が話している様子が描かれた大和絵です。源氏物語のワンシーンらしく、どの帖か分かりませんでしたが雅で繊細な印象を受けました。


[ねつけ/根付]
根付は印籠や袋、煙草入れなどにつけられた小さな装飾品で、現代のストラップのようなものです。

60 「子犬根付・枇杷に鼠根付・猿に蟹根付」
ここには3つの根付がありました。
仔犬の根付は2匹の犬が寄り添い、前足をかけて仲睦まじい様子でした。これは微笑ましくて可愛い^^
ビワとそれと同じくらい小さなネズミの根付はネズミの毛まで細かく表現されています。この細かさは高い技術を感じます。
猿と蟹の根付は、伏せて頭を押さえる仕草の猿と 上からのしかかる蟹となっていて、猿蟹合戦を思わせます。これも相当細かい表現で遊び心を感じました。

この小部屋には他に、刀の[鍔(つば)]や、麦をイメージする何本も筋状の線が描かれた[麦藁手(むぎわらで)]文様の茶碗などがありました。


[たがそで/誰が袖]
誰が袖は人は描かれず、物干しに掛けられた色鮮やかな衣が並ぶという趣向の画題です。古今和歌集の歌に詠まれたのが語源のようです。

47 「誰が袖図屏風」 ★こちらで観られます
金地を背景に緑の竿に掛けられた小袖が描かれたもので、誰が袖の典型的な作品だと思います。華やかな雰囲気があるものの、誰もいないので静けさを感じます。当時の人はこれを観て、どんな人がこれを着ているのだろうか?と想像を掻き立てられたのではないかな。

この辺には[溌墨(はつぼく)]という輪郭を用いず墨をそそいで形象を表現する技法で描かれた橋本雅邦の作品もありました。溌墨は中国 唐時代では前衛的な技法だったようで、それまでの中国画では輪郭線を重視していたようです。

少し進むと[三所物(みところもの)]のコーナーがあり、刀剣の金具のうち、目貫、小柄(こづか)、笄(こうがい)をそのように呼ぶようでした。


[もっこつほう/没骨法]
没骨はモチーフを描く際に輪郭線(骨法)で形態を象らず、墨や絵の具を面的に広げて、その濃淡で立体感や質感を表現する技法です。中国で生まれ専ら花鳥画に用いられたそうです。

76 円山応挙 「水仙図」
これは水仙が1本、横長に描かれた掛け軸です。薄っすらとした濃淡で表現され、曲線が優美な雰囲気でした。

この辺には[名物裂(めいぶつぎれ)]という中国や東南アジアの布を本にしたものや、[滅金(めっき)]を施したキジの置物、[焼締め]という釉薬を施さない技法で作られた水指、[瓔珞(ようらく)]という金銀宝石で出来た飾りのついた厨子、[楽焼]という轆轤(ろくろ)をつかわず手びねりで作った茶碗などがありました。楽焼は黒楽、赤楽、青楽、白楽と色ごとに並んでいます。


[るすもんよう/留守文様]
留守文様は工芸の意匠で、古典文学や故事、逸話、和歌、謡曲にちなんだ主題を表す場合に使われ、その登場人物の姿を全く描かず背景や持ち物だけ描いて、人物の存在を暗示するそうです。

89 「菊水蒔絵高坏」
これは3つの猫足のついた円形の皿のような杯で、全体を梨子地で覆い、流水と菊の模様が金銀の蒔絵で描かれています。これは菊慈童という不老長寿を得た人物(周の王に仕えた侍童)の物語を題材にしているそうで、優美な雰囲気がありました。しかし素人目には物語を描いているとは分からず、これに気づくにはかなりの教養が必要なのでは…w この作品の上には菊慈童を描いた蒔絵の絵もありました。


ということで、知っているようで知らなかった用語などもあり、これはかなり参考になりました。日本美術は歴史が古く種類も富んでいるので鑑賞するにはある程度の知識が必要な時もありますが、この展覧会を観ておけば頻出の用語はおさえられると思います。美術に興味がある初心者の方には特にお勧めです。出品されている作品自体も面白かったです。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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東京ドームで野球観戦

今日は久々にちょっと毛色の違った記事です。日付が変わって昨日となりましたが、2012/7/26(木)に、東京ドームでDeNA 対 巨人のナイターを観てきました。

P1030548.jpg

後楽園にはラクーアや礫川浮世絵美術館でちょくちょく行くのですが、東京ドームで野球を観るのは4~5年ぶりでした。野球好きの友達に券を貰って誘われて行ったのですが、野球選手の名前も知らない程度の知識ですw 幸い友達は詳しいので解説して貰いながら観てきました。

私は2回くらいから観ていたのですが、既にDeNAが2点取っていて、巨人がそれを追いかける展開でした。2回、3回と1点ずつ取り返し、4回に長野のソロホームランで逆転したのですが、ドラマはまだまだこの先にあり、巨人は5回にさらに満塁と大きなチャンスを迎えました。私は巨人側の席で観ていたので周りの応援の方たちもイケイケの勢い! これは大量得点の予感が!と思ったのも束の間、まさかの無得点で攻撃終了。この時の周りのテンションの下がりっぷりはヤバかった…w これで一気に流れが再逆転し、次の6回にはラミレスにホームランを浴びて再度追いつかれました。6回裏の巨人の反撃はあっという間に終了で、本当に試合の流れが変わったのを感じます。 さらに7回表もまさかの悪送球が原因で1点を失い、満塁の危機を何とか切り抜けるような状況でした。この時の巨人側の空気の重さは半端なかったw しかし、7回裏になるとまた流れが変わり、満塁からの押し出しデッドボールで同点に追いつき、さらに押し出しフォアボールで巨人が再逆転しました。

その時の様子がこちら。

加治前が粘ってフォアボールとなりました。その後もチャンスだと思ったのですが続かず…。その後、巨人は8回裏にもタイムリーでダメ押しの1点追加で逃げ切り体制へ

この試合は何度も何度もピッチャーが変わり、DeNAはクレイマー、菊地、藤江、加賀、篠原、大原慎、山口、巨人はホールトン、高木京、西村、山口、マシソンと継投していきました。変わりすぎて何が何だか…w

こちらは巨人の抑えマシソン。先日160kmの球を投げて話題となった投手です。
P1030581.jpg

ちょっとランナーを出したものの最後は打ち取り試合終了。


どちらも選手が何人も交代する熱戦でした。スコアボードはこんな感じ。
P1030585.jpg

決勝点が押し出しフォアボールという試合で、誰がヒーローインタビューをするのだろう??と思っていると…
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何と、決勝点のフォアボールを得た加治前でしたw 野球好きの友人もこれは珍しいと言ってました。


ということで、かなり久々の野球観戦でしたが予想以上に楽しめました。試合の内容そのものもちょっと変わっていて面白かったのですが、周りの応援の人たちのテンションが内容に応じて変わっていくのも私には新鮮でした。(攻められてる時はゲームしてる子とかいるしw) やはりスポーツ観戦は生で観るほうが良いですね。

おまけ:試合終了後も帰らずにジャビット君たちのショー?を観ていました。
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この日は両チームにホームランがあったのですが、それによってビッグマックのスペシャルクーポンをゲットしました。
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最近はこういうゲーム的な要素もあるようです。




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館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技 エヴァの原点は、ウルトラマンと巨神兵。 【東京都現代美術館】

先週の土曜日に、東京都現代美術館へ行って「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技 エヴァの原点は、ウルトラマンと巨神兵。」を観てきました。

いつもどおりその様子を書いていこうと思うのですが、今回の展示は予備知識が無いほうが驚きも多いと思います。この記事にはネタバレ的な内容を多く含んでいますので、純粋に予備知識無しで観に行きたい方は感想部分は読まない方が良いかと。(展示を見終わってから読んでくださいw) とりあえず最初はいつもどおり混み具合などについてレポートします。

P1020897.jpg P1020900.jpg

【展覧名】
 館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技
 エヴァの原点は、ウルトラマンと巨神兵。

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/tokusatsu/
 http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/137/

【会場】東京都現代美術館
【最寄】清澄白河駅、木場駅、菊川駅など


【会期】2012年7月10日(火) ~ 10月8日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
曇っていて時折雨が降るような日でしたが、混んでいて場所によってはごった返すような感じでした。特に展覧会の最後にある「特撮スタジオ・ミニチュアステージ」という撮影可能なコーナーでは、撮影の順番待ちをする長い列ができていました。
私が行った時はまだ会期初頭だったこともあってか入場制限するほどではありませんでしたが、待ち時間の立て札も用意されていたので今後は混むと予想されます。ご興味ある方は早めに観に行くことをお勧めします。

さて、今回の展示はこの美術館で毎年のように夏に開催されるスタジオジブリ関連の展示で、今回はアニメ映画(と漫画)「風の谷のナウシカ」に出てくる巨神兵のスピンオフ的な短編映画を中心に、庵野秀明(あんのひであき)氏が影響を受けた特撮の世界を紹介する内容となっています。庵野秀明 氏はアニメ「エヴァンゲリオン」シリーズや「ふしぎの海のナディア」などで大人気の監督で、大阪芸術大学を退学した後にトップクラフト(後にスタジオジブリへ改組された母体)で働き、「風の谷のナウシカ」の巨神兵の原画を手がけたそうで、それが現在の活躍の原点の1つとなったようです。

展覧会は大きく3つに分けると、最初に様々な特撮番組に関するコーナー、次に今回の展示のために作られた特撮による短編映画とそのメイキング、最後に特撮技術について という感じでした。実際にはさらに細かく分かれていましたので、詳しくはコーナーごとにその様子をご紹介しようと思います。(場所によってはコーナーの区切りが分からない所もあったので区分けが間違っていたらごめんなさい)
なお、今回は音声ガイドがかなり充実していて、何と70箇所も聞くことができました。もし観に行くことがあれば借りることをお勧めします。

 参考リンク:
  庵野秀明のwikipedia
  音声ガイドについて

 参考記事:
  借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展 (東京都現代美術館)
  映画 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 を観た (ネタバレなし)


ここから先は詳細な内容です。ネタバレを含んでいます。


<冒頭>
最初に挨拶と趣旨説明があり、そこには女性漫画家の安野モヨコ氏による庵野秀明 氏の肖像が展示されていました。ご存知の方も多いかもしれませんが、このお2人は夫婦です。

<原点 人造>
まずは特撮作品に関するミニチュアやデザイン画、当時のポスターなど制作資料などが並ぶコーナーです。ここは私は知らない作品が多かった…w

「『モスラ』、東京タワー」
展示室に入ってすぐ目に入るのは東京タワーの模型で、1.5mくらいはあると思います。東京タワーは映画「モスラ」で初めて破壊されるシーンがあったそうで、ここに置いてあるものは2003年に当時と同じ製作所で同じように作られたもののようでした。その上の壁面には大きなポスターがあり、モスラの幼虫がタワーを壊している様子が描かれていました。タワーの模型は思った以上に精巧にできていました。

「海底軍艦」
これは特撮映画の潜水艦の絵などで、潜水艦の先にはドリルがついていて空を飛び地に潜る万能戦艦だそうです。絵を描いた小松崎茂という画家はプラモデルの箱絵でよく観た人で、ちょっと懐かしい画風です。ドリルは当時は大人気だったようで昭和っぽさを感じます。
 参考リンク:
  海底軍艦 (映画)のwikipedia
  小松崎茂のwikipedia

この辺には「緯度0度大作戦」「惑星大戦争」といった特撮のSF映画のデザイン画などもありました。

「轟天号/宇宙防衛艦 轟天/ドリル」 ★こちらで観られます
最初の部屋の中央には沢山の模型が並んでいて、これもその1つです。小松崎茂 氏によるデザインのメカのようで、やはりドリルが先端についています。当時の子供たちはどれだけドリルが好きだったのだろうか… 力強くもアナログな雰囲気がありました。

「映画『日本沈没』 わだつみ」
これは映画「日本沈没」に出てきた潜水艦わだつみ の模型です。白いボディが本物さながらのリアルな塗装で、錆びついたようなウェザリングが凄い…。この質感には驚きました。

「劇中新聞」
特撮映画の中で使われた新聞も展示されていました。文字の大きなタイトルのところだけ劇中の事件にしているものもあれば、ちゃんと記事まで書いているものもありました。記事まではパッとみてもわからないからタイトルだけで十分かもw

「メカゴジラ2スーツ、人工頭脳(『メカゴジラの逆襲』)」
メカゴジラ2で使われたスーツも展示されていました。見上げるような大きさで金属感がよく出ています。隣には電子頭脳も展示されていて、メカゴジラが好きな人には楽しめそうです。迫力あるスーツでした。

この辺にはモノレールの模型などもあります。

「ジェットジャガー(『ゴジラ対メガロ』)」
これはロボットヒーローの仮面のようで、ゴジラシリーズに出てくるそうです。自転車選手が被っているヘルメットのような長く尖った頭をしていて、顔は般若をイメージしているようです。そのせいかどちらかというと敵っぽい顔に見えるような…w ちょっと怖くてインパクトがありました。
 参考リンク:ジェットジャガーのwikipedia

続いての部屋は小松崎茂 氏や成田亨 氏の描いた未来的の乗り物などのコーナーでした。
 参考リンク:成田亨のwikipedia

「小松崎茂のボックスアート」
プラモデルの箱のために描かれた絵です。いくつか並んでいたのですが、炎や煙を吐いて飛んだり、飛沫を上げる戦艦?のようなものが描かれ、ダイナミックな雰囲気です。子供の頃にこの人の描いた箱絵をよく見ていたんだなあと感慨深いものがありました。好きだった人には堪らないと思います。

「成田亨 マイティジャックのイメージ画」
これはマイティジャック号(MJ号)という空飛ぶ戦艦を描いた油絵で、こちらも飛ぶ瞬間や夕日を背にして飛ぶ姿が描かれています。部屋の中央には大きなマイティジャック号の模型があり、この絵がそのまま模型になったような感じでした。他にも設計図なども展示されています。
 参考リンク:マイティジャックのwikipedia


<原点Ⅱ 超人>
続いてのコーナーは特撮ヒーローに関するコーナーです。大半はウルトラマンに関する品で、これなら私も子供の頃に観たので見覚えのあるものばかりでしたw

「成田亨 デザイン画1(ウルトラマン、セブンなど)」
油彩のウルトラマンのデザイン画で、ほぼ誰もが知っているウルトラマンの姿をしていますが、カラータイマーはありません。解説によると口元はアルカイックスマイル(古代ギリシャ美術に見られる微笑み)をイメージしているそうです。
この近くには目がつり上がった偽ウルトラマンや、初稿デザイン、ウルトラセブン、キングジョーなどの絵もありました。

「成田亨 デザイン画2(科特隊基地、マークなど)」
ウルトラマンに出てくる科学特捜隊の飛行機「ビートル」のデザインや、ウルトラセブンのウルトラ警備隊のマーク、基地やコスチュームのデザインなどが並んでいました。また、この部屋の入口付近にはウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマンの飛翔ポーズの模型が展示されています。ウルトラマンたちの模型には背中に蓋があり、これは電飾用の電池ボックスだそうです。
今でこそ見慣れた姿ですが、当時は斬新なデザインだったのでは?? 科特隊のデザインなどからは当時の未来観が伺えます。

この近くには池谷仙克 氏による帰ってきたウルトラマンのデザインのコーナーもありました。

「スカイホエール(ZAT『ウルトラマンタロウ』)」
これはウルトラマンタロウのZATの飛行機の模型で、かなり大きなものです。青いボディに赤い縁で、何とも形容しがたい斬新なデザインです。他にも翼がドーナツ状の「コンドル1号」や、ラピッドパンダというピエロの鼻のようなものがついた白いワゴンタイプの特殊車両などの模型もあり、いずれも非常に個性的な姿です。子供の頃、何故かこのラピッドパンダ号が怖かった覚えが…w

この辺には歴代ウルトラマンシリーズの戦闘機の模型が並び、ジェットビートル、ウルトラホーク1号、マットアロー、タックアローなども並んでいました。また、ウルトラマンたちのマスクや関連アイテムもあり、ウルトラマンキング、ウルトラマン(Bタイプ)、ウルトラマン80、ウルトラセブンのマスクや、流星バッチ、ウルトラバッチ(タロウの変身道具)、カラータイマー、歴代の隊員の銃などもありました。

ウルトラマンシリーズのコーナーの後にはその他の特撮番組・特撮ヒーローたちのコーナーです。

「バッカスⅢ世(『スターウルフ』)」
これはアメリカのスターウォーズの影響を受けて作られた「スターウルフ」という作品に出てくる宇宙船で、銀色に輝く重厚な姿で尾翼の横に4つのエンジンを並べた形をしています。確かにスターウォーズを思わせる要素があり、色とエンジンあたりがそう思わせるのかな?と思いながら観ていました。

「特撮ヒーローのマスク2(『トリプルファイター』ほか)」
ここにはトリプルファイターというヒーローを始め沢山のヒーローのマスクが展示されていました。トリプルファイターは円谷プロのヒーローなのでウルトラマンっぽさもあるのですが、どちらかと言うと宇宙人(リトルグレイみたいな)を彷彿とさせるつり上がった大きな目が怖いw 
また、近くには流星人間ゾーンというウルトラマンに似た銀色の仮面のヒーローも展示されていました。このヒーローは東映なのでゴジラやキングギドラもゲスト怪獣も出てきたそうです。
 参考リンク:
  トリプルファイターのwikipedia
  流星人間ゾーンのwikipedia

ここには他にジャンボーグ、スペクトルマン、グリーンマン、ライオン丸、ミラーマン、アイアンキング、シルバー仮面など個性的なヒーローのマスクが並び、ちょっと異様な雰囲気がありましたw どこかB級な感じが…。 この章の最後あたりにはブースカの弟チャメゴンのマリオネットなどもあります。


<力>
ここからは実際に使われたミニチュアなどのコーナーです。まずこの章には平成ガメラのガメラと、今はなき渋谷パンデオンのビル、空飛ぶヘリなどのミニチュアが並んでいました。また、2006年版「日本沈没」に使われた民家のミニチュアがあり、これは昭和30年代風の雰囲気があります。そしてこの部屋の頭上には映画「沈まぬ太陽」に使われた飛行機が釣り下げられ、これはまるで本物のようなリアルさでした。
他にも電柱や信号機、鉄塔、横浜赤レンガ倉庫など、街並みを再現する際にリアリティが出るミニチュアなどもありました(ミニチュアといっても結構大きい)いずれも煤けたような質感が見事で、本物がそのまま小さくなったように見えます。

この章の最後のあたりには銀座和光ビルや崩れ落ちた国会議事堂もありました。


<巨神兵東京に現る>
そしていよいよ今回のメインである短編映画「巨神兵東京に現る」のコーナーです。最初に焼けただれひしゃげた東京タワーやビルの模型があり、その後に上映ルームがあります。この映像は約9分で、3分のインターバルをおいて交代で観ていく感じです。スタジオジブリ作品のロゴが映った後、霊感のある女の子(声は林原めぐみ 氏)が語り部となって、巨神兵が現れる予兆から始まります。その後、突如として東京の上空に巨神兵が現れ、やがて口からレーザーを発射して東京を焼き尽くしていきます。
これは一切CG無しで撮られた特撮映画なのですが、てっきりCGも入っているのかと誤解するほどの出来で、後でメイキングを観てその凄さを改めて知りました。 ビルに落ちる巨神兵の影、崩れ落ちるビル、レーザーによってマグマのように溶け落ちるビル、湧き上がるキノコ雲… こんなところまで特撮でやっているのか!?と驚くものばかりです。 また、巨神兵は立ち上がるとむしろエヴァンゲリオンの初号機みたいに見えましたw めちゃくちゃ巨大で東京タワーを見下ろすような感じかな。

ちなみにこのタイトルは「宇宙人 東京に現る」のオマージュの意味もあるようでした。(岡本太郎が宇宙人をデザインした特撮映画です)
 参考記事:
  顔は宇宙だ。 (PARCO FACTORY パルコファクトリー)
  生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)


<軌跡>
続いては今回の「巨神兵東京に現る」に関わった人やメイキングに関する章です。
まず、監督を務めた庵野秀明 氏の小コーナーで、庵野氏は友人に誘われて就職活動として宮崎駿 氏のスタジオに訪問し、いきなり原画として採用されたという逸話が紹介されていました。近くには宮崎駿 氏の直筆の落書きがあり、「秀明 早く、急げ、遅い、カット出せ」とか「寝過ぎる 今にゴキに食われるぞ 早くカットあげろ」と書かれていましたw やはりアニメ制作は大変そうですが、新人を見守る温かみがあるような感じがします。

その先には今回の短編映画のイメージボードがあり、前田真宏 氏、樋口真嗣 氏のラフスケッチや絵コンテもありました。(マス目のある手帳のようなものに描かれたものも)

その次は造形師の竹谷隆之 氏のコーナーで、今回の巨神兵のデザイン画や小さな雛形、背景画などがありました。(今回の巨神兵は着ぐるみのように中に入るものではなく、展示の最後の方で観ることができます。)

そしてこの章にも15分の映像があり、「巨神兵東京に現る」のメイキングを観ることができます。まず巨神兵をどう操っているのか気になったのですが、これは人形とその後ろの人を棒で繋ぐような感じで、映像中ではドリフのラインダンスみたいな感じと言っていました。これによって役者の動きがダイレクトに伝わり、非常に人間っぽいリアルな動きが可能になったようです。後ろの1人と補助の2人の合計3人で息を合わせて演じているようで、演技するのも難しそうに見えました。 また、背景に出てきたキノコ雲もセットで作ったもので、これは綿をリング状にしたものをいくつも重ね、レバーで押し上げるような仕組みでした。これは特に発想が面白いです。
他にも粘液状にしたオレンジの塗料を使って溶けたビルを再現したり、紐を引っ張って倒壊させるビルなど、様々な手法が紹介され、今回の短編のために考えだされたアイディアもあるようでした。このメイキングは必見です。

この章の最後には東京駅周辺の都市模型がありました。超精密で見覚えのある建物もあって面白いです。


<特撮美術倉庫> ★こちらで観られます
この章からは下の階となります。まずは撮影所の美術倉庫を再現したコーナーで、部屋ごと倉庫になったような感じになっています。所狭しと様々なミニチュアが置かれ、ヘリ、飛行機、電車、機関車、戦車などいずれも大きめで本物さながらといった感じです。特に映画「ローレライ」に出てきた潜水艦 伊507は全長6mもあり、迫力と重厚感がありました。

他にもキングギドラやモスラの幼虫、ゴジラの足や頭などもあり、特にキングギドラは彫刻のような造形の細かさと強い存在感がありました。


<特撮の父>
続いては特撮の父と呼ばれる円谷英二 氏のコーナーです。ここには台本やフィルム、撮影用カメラ、「オキシジェン・デストロイヤー/NBミッチェル」というゴジラを死に追いやったカプセルに入った銀の装置などがありました。円谷英二 氏はオヤジと呼ばれ親しまれ、誰も観たことがない映像を次々と生み出したそうです。
 参考リンク:円谷英二のwikipedia


<技>
続いては特撮に関する技術のコーナーで、何人かのスタッフの名前を挙げて紹介していました。

[井上泰幸]
この方は円谷作品の特撮美術のスタッフで、セットデザインや市街のスケッチ、ネッシーやヘドラ(ゴジラシリーズに出てきた怪獣)などが展示されていました。

[大澤哲三]
この方は特撮美術デザイナーで、セットデザインやメカゴジラの基地のような絵が展示されていました。

[高山良策]
この方は大魔神をデザインしたそうで、大魔神の図面や模型が展示されていました。またガメラやゴジラの雛形、舌や目玉などのパーツも並んでいます。
 参考リンク:大魔神のwikipedia

[原口智生]
この方のコーナーには平成ガメラのガメラ2と3の模型がありました。5年くらい前のウルトラマンメビウスでも監督をしていたそうです。 …私は当時、いい年してメビウスを毎週楽しみにしてましたw

[東宝 小林知己の工房再現]
ここには机を中心に特撮の美術工房が再現されていて、机の上に置かれたゴジラの小さめの頭部や、近くに置かれた全身像などが展示されていました。原型制作の映像もあり、中々興味深いコーナーです。

[機電 倉方茂雄]
機電というのはウルトラマンの目やカラータイマーのような電飾を光らせる仕事のようで、ここにはそれらやウルトラセブンの目などが展示されていました。映像でも説明を見ることができます。

[木工の技]
ここには撮影用の建物があり、1/10のテスト用(本番は1/5を使った)がありました。テスト用と言ってもかなりリアリティを感じます。

[板金の技]
ここは板金のコーナーです。車やヘリを作る際、木で型を作り、材料はスズや真鍮がよく使われるそうです。


<研究>
ここは再度「巨神兵東京に現る」に使われた技術などに関するコーナーです。撮影の仕方を絵で説明した美術プランや、メイキング映像もあります。また、メイキングにも出てきた巨神兵の人形、キノコ雲、崩れるビルの模型なども置かれていて、巨神兵は人の背くらいで細身な姿でした。

次の部屋に進むと谷間を走るハイウェイのミニチュアがあります。これにはミニカーが置かれているのですが、手前のミニカーは大きめで、奥のミニカーが小さめとなっています。(送電の鉄塔も同じように手前と奥でサイズが違う) これを手前の低い位置から観ると実景の遠近感のように感じられるのが非常に面白いです。また、背景にはエアブラシで描かれた雲があるのですが、この背景が情感を盛り上げていました。職人技でたった2日で描いたようですが、この熟練の技にも驚嘆します。

ここにも映像があり、特撮の技術について紹介していました。ミニチュアの海に寒天を敷き詰めて小さな凹凸で波を表現する手法、セットを逆さ吊りにすることで爆発物が舞い上がるように見せる手法など、豊かな発想の技術が面白いです。
また、飛行機を逆さ吊りにして鏡越しに撮影する手法を再現したミニチュアもあり、これによってピアノ線がなくリアルな奥行きが出る映像になるようでした。

この章の最後には鏡を使った合成の原理を学べる体験コーナーもありました。結構単純な仕組みですが、2つの場面が1つになるのを体験すると感激できます。


<感謝 原点Ⅲ>
続いては諸般の事情で展示できなかった作品のコーナーです。沢山の怪獣や、ウルトラマン、仮面ライダー、ゴジラなどの人形や乗り物、変身ベルトなどが展示されています。ここまで仮面ライダーがあまり無かったのはやはり地震の影響なのかな??と思ってみたり…。

また、映像で様々なヒーローの登場&戦闘シーンが流されていました。ゴジラやモスラ、ウルトラマンが多かったかな。BGMも懐かしいw


<特撮スタジオ・ミニチュアステージ>
最後に撮影可能なミニチュアのスタジオがありました。ここは撮影スポットによっては混んでいて列に並ぶ感じです。(私は並ばずに撮れることだけ撮影しましたw)

庵野氏とビルのセット。ひしゃげた東京タワーの辺りは大人気の撮影スポットでした。
IMAG0001.jpg IMAG0006.jpg

道路。戦車がいて、この先に東京タワーがあります。
IMAG0003.jpg

市街地を上から撮ったところ。家の近くで撮った写真と言ったらミニチュアだと分からないんじゃないかな?w
IMAG0005.jpg

もう1つの人気スポット。右下に部屋の断面があります。
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この部屋は短編映画の中にも出てきて、この部屋から眺めた風景が撮れるようです。…ここはだいぶ列が長いので残念ながらパスw

展覧会を出ると、グッズもかなり充実していました。


ということで、前半は思い入れのない作品に関する展示もあったのでよく分からないところもありましたが、後半は体験もできてかなり面白い展示となっていました。特に「巨神兵東京に現る」とそのメイキング、技術の辺りは特撮は総合芸術なのではないか?と思わせるものがありました。展覧会全体を通して、特撮の火を絶やしたくないというメッセージも伝わってきます。特撮好きだったお父さん世代から子供まで幅広く楽しめそうな展示でした。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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映画「グスコーブドリの伝記」(ややネタバレあり)

先日、宮沢賢治原作のアニメ映画「グスコーブドリの伝記」を観てきました。

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【作品名】
 グスコーブドリの伝記

【公式サイト】
 http://wwws.warnerbros.co.jp/budori/

【時間】
 1時間50分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_③_4_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_③_4_5_名作

【感想】
公開から2週間程度経っていることもあってか、空いていて快適に観ることができました。

さて、こちらの映画は冒頭に書いた通り宮沢賢治が原作の童話をアニメ映画にしたものですが、私は原作を読んだことがなかったのでこれを機に知りたいと思い観に行きました。その為感想も原作は知らない上でのものになります。連れはストーリーを詳しく知っていたので原作との比較を教えて貰いました。 また、この作品は以前にもアニメ映画化されているそうです。今回の作品では登場人物は擬人化された猫のキャラクターになっていて、こういうものかと思ったら以前のアニメ化の際は人間だったのだとか。

名作と名高い作品にストーリー③をつけてしまったわけですが、これが正直なところですw ややネタバレをすると、木こりの息子の「グスコーブドリ」(グスコーは姓でブドリという名前)は妹のネリと共に父母の元、幸せに暮らしていましたが、何年も続く冷害で飢饉が訪れ、グスコーブドリの苦難の人生が始まります…。
最初の辺りの話が結構長めになっていて、冷害の苦しさや飢饉で困窮した感じがよく伝わってきます。たまに夢か現実か分からない幻想的なシーンが何度か入ってくるのですが、それは何の為のシーンなのかよく分からなかった…。ラストになっていくに連れて段々とブドリの目指すものが見えてくるのですが、ラストを観てしばし呆気にとられましたw 原作は知らないけど肝心な所が端折られている感じがしますw (後で連れに聞いたら、同じようなことを言ってたので、ストーリーも原作と違うのかな??) いまいち腑に落ちない感じでした。

アニメーションは綺麗で、ファンタジックな雰囲気です。また、声優は人気俳優の小栗旬や林家正蔵などが担当しているのですが、結構味があって良かったと思います。 アニメそのもののクオリティは満足です。
ちなみに作中やスタッフロールによく謎の文字が出てくるので、宮沢賢治も使っていたエスペラント語の文字か?と思ったのですが、エスペラントの文字とも違うようでした。謎です…。


ということで、何となく分かったような分からないような状態で映画館を後にしました。今の東北の状況を鑑みると、この作品の状況に近いものを感じますが、それ故にもっとメッセージ性を打ち出せば良かったのではないかと思いました。

おまけ:
以前アニメ化されたものは評判が良いようです。いずれ原作とともに観てみたいと思います。




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浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- (後期 感想後編)【太田記念美術館】

今日は前回の記事に引き続き、太田記念美術館の「浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし-」 後期展示の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。

 前編はこちら
  → 浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- 後期 感想前編(太田記念美術館)

 前期展示はこちら
  → 浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- 前期 感想前編(太田記念美術館)
  → 浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- 前期 感想後編(太田記念美術館)


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし-

【公式サイト】
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H240607nekozukushi.html

【会場】太田記念美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅

【会期】
 前期:2012年06月01日(金)~2012年06月26日(火)
 後期:2012年06月30日(土)~2012年07月26日(木)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では2階の半分くらいまでご紹介しましたが、今日は2階の残りと地下の展示についてです。2階は通路も狭いので進むのは中々大変で時間もかかります。また、ここから先は国芳門下以外の作品も多いですが、江戸っ子が猫好きだったのを伺わせる作品が続きます。

 参考記事:
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館))
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館))
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
  奇想の絵師歌川国芳の門下展 (礫川浮世絵美術館)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  月岡芳年「月百姿」展 後期 (礫川浮世絵美術館)



<第三景 猫のお化け>
3章は猫のお化けのコーナーです。

99 歌川国芳 「曲亭翁精著八犬士随一 犬村大角」
人よりも大きな猫に刀を突きつけている里見八犬伝の八犬士の1人を描いた作品です。これは父親になりすましていた怪猫を退治している場面らしく、大きな口を開けて断末魔の形相をした化け猫は恐ろしくて迫力があります。よく観ると猫の毛は1本1本毛並みがついていて、これは恐らく空摺りの手法ではないかな?? 

104 歌川芳員 「百種怪談妖物双六」
下の方に振り出し、上のほうで猫が踊っている所が上がりの双六です。雪女や海坊主、からかさ、ろくろ首、豆腐小僧、九尾の狐など様々な妖怪が並び、手ぬぐいをかぶって踊る猫のゴールには前期に展示されていた歌川国芳の「五拾三次之内 岡崎の場」によく似た場面が描かれていました。師匠の国芳からの影響をよく感じさせます。


<第四景 猫は千両役者>
続いての4章は猫を役者のように描いた作品のコーナーです。

121 四代歌川国政 「芸競猫の戯」
3枚続きの画面に擬人化され着物をきた猫たちが沢山描かれた作品です。指相撲や、腕相撲、棒や手ぬぐいの引っ張り合い、お互いの首に紐を繋げて引っ張り合う遊びなどに興じているようで、楽しげで中には真剣そうな感じの猫もいます。当時の遊びの様子も垣間見られるような作品でした。

ここには前期でご紹介した「流行猫の戯」のシリーズなどもありました。


<第五景 猫の仕事・猫の遊び>
5章は猫の役割や猫の玩具が並ぶコーナーです。

125 歌川広重 「鼠おとし ひやかし」
上下2段に分かれた作品で、上段は肩にネズミを乗せた男が、四角いものを寝ている猫の上から押し当てる(殴ってる?)様子が描かれています。一方、下段ではほおかむりした男が薄緑の着物の男の腰の布を引っ張っている様子が描かれ、薄緑の男は何故か頭が家の壁にめり込んでいました。どちらも意味はよく分かりませんが、可笑しくてちょっとシュールな雰囲気がありました。

126 歌川芳艶 「猫子つみどうけかつせん」
擬人化された猫とネズミの合戦を描いた作品で、猫たちは「ネズミ捕り」と描かれた大きな青い幟を立てて、槍を突き出し弓を構えています。その右には張子の犬の上に乗ったネズミの仙人のようなものがいて、これは妖術師のようです。その後ろには張子の犬と刀で応戦するネズミたちも描かれていました。その光景だけでも面白いのですが、よく観ると肉球みたいなマークの旗印もあり、細かいユーモアも楽しめました。
この作品の隣にも同名のほぼ同じ作品があったのですが、仙人の代わりに鏡餅を持ち上げるネズミが描かれていました。

このコーナーではネズミは悪役のようですが、白ネズミは大黒天の使いなので、大黒天とネズミの関係を感じさせる作品などもありました。


<第八景 猫の絵本>
2階の内周は猫が出てくる草紙などのコーナーです。

218~230 山東京山・歌川国芳 「朧月猫の草紙 初編~七編/二編~七編(袋)」
これは猫の「こま」の物語で、擬人化された猫が宴会をしたり踊ったり、日常の光景のようなシーンも描かれています。物語の内容は分かりませんでしたが生き生きとした雰囲気で、色鮮やかな本もありました。

232 歌川国芳 「窓辺深閏梅 口絵」
本の口絵の口上のページが展示されていて、そこに後ろ姿で地獄を描いた派手なドテラを着た歌川国芳自身が描かれています。周りには5匹の猫が戯れている様子も描かれ、猫好きでドテラがトレードマークだった国芳の特徴がよく表されているようでした。

243 仮名垣魯文・三代歌川広重 「百猫画譜」
これは猫たちの日常を描いたような白黒の画譜です。20枚くらい展示されていたのですが、木に登ったり、柱で爪を研いだり、子猫にお乳をあげたり、屋根の上で喧嘩したり、喉を撫でられたり、伸びをしたり、ネズミを捕まえたり、毛づくろいしたり etc… 猫好きなら観ていて楽しくなるような光景ばかりです。猫の気ままで可愛い雰囲気がよく出ていました。


<第六景 猫の事件簿>
6章からは地下の展示室で、今回も地下は2階に比べるとゆったり見られました。この章では事件を描いた作品に出てくる猫を取り上げています。

165 落合芳幾 「東京日々新聞 八百五十六号」
新聞の挿絵で、自分に刃を向けて振り返る女性と その背後で巻物を読むような仕草の猫が描かれています。これは継母に金持ちの妾になるよう強要された女性が自害した事件を伝えた新聞で、新聞ながらも色鮮やかです。この作品の隣には歌川国芳の「見立挑灯蔵 三段目」という作品があったのですが、その絵の中の猫とこの絵の猫のポーズは同じで、師匠の作品を参考にして描いたのがよく分かりました。両者を比較出来る面白い展示法でした。

174 二代歌川広重 「いさましき虎の世渡り」
「志やも」という看板のあるお店の中で、擬人化された虎が軍鶏鍋を食べていて、猫の女中にお酒のおかわりを告げている様子が描かれています。店の外には豹の飛脚が歩いていて、動物に見立てた日常の光景のようです。解説によると、この絵が描かれた1860年に両国で豹の見世物があり大人気を博したそうで、それにちなんでこの絵にも豹が描かれているようでした。なんだかほのぼのした作品です。

この隣にあった歌川小芳盛の「けだものしょ職尽し」という作品には猫の三味線屋が描かれていて、ブラックユーモアのようなものを感じましたw 三味線には猫の皮が使われますからね…。


<第七景 猫のまち>
最後はおもちゃ絵などのコーナーです。

188 歌川芳藤 「新板猫の戯画」
上中下の3段になった錦絵で、上段には猫の閻魔と猫の鬼が描かれ、土下座するようなネズミたちの姿もあります。中段には猫の鬼たちに釜茹にされているネズミや、針の山、血の池などを行くネズミが描かれ、まさに地獄絵図です。そして下段には賽の河原で石を積むネズミたちが描かれ、大黒天の像に向かって積んでいるようで、三途の川の近くには奪衣婆のような猫や金棒を持った猫の鬼などもいます。 全体的にユーモアを感じますが猫が怖いw ちょっとネズミに同情したくなる光景でした。

この辺は擬人化された猫を描いた作品が多いかな。当時の風俗が感じられます。

215 「大新板猫のいしょう付」
5匹の裸の猫と着物が描かれている作品で、上下の中央で反転するように描かれ、切り取って猫に着物を着せて遊ぶおもちゃ絵のようです。着物は何着もあるのですが、中には洋服の官服(サーベルを持っている)などもあり、明治期に作られたもののようでした。あまり上手い描写というわけではないですが、面白い作品でした。


ということで、後期の展示もたっぷり楽しむことができました。若干、後期の方が有名な作品が多かったように思います。もう残す期間もわずかとなっていますので、ご興味ある方はお早めにどうぞ。特に猫好きには楽しい展示です。


参照記事:★この記事を参照している記事




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浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- (後期 感想前編)【太田記念美術館】

前回ご紹介したエスパス ルイ・ヴィトン東京の展示を観た後、太田記念美術館にハシゴして「浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし-」を再度観てきました。

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【展覧名】
 浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし-

【公式サイト】
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H240607nekozukushi.html

【会場】太田記念美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅


【会期】
 前期:2012年06月01日(金)~2012年06月26日(火)
 後期:2012年06月30日(土)~2012年07月26日(木)
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前期に行った時よりさらに混んでいて、基本的に列を組んで観るような感じでした。中々進まなかったりして、前より観るのに時間がかかりましたw

この展示は以前、前期の内容をご紹介しましたが今回は後期の内容で大幅に入れ替わっていました。各章の趣旨などは前期と変わっていませんので、今回は各章の説明などは割愛して、まだご紹介していない作品と入れ替わっていると思われる作品の中で気に入ったものについて書いていこうと思います。

 前期:
  浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- 前期 感想前編(太田記念美術館)
  浮世絵猫百景-国芳一門ネコづくし- 前期 感想後編(太田記念美術館)

 参考記事:
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館))
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館))
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
  奇想の絵師歌川国芳の門下展 (礫川浮世絵美術館)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 後期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  月岡芳年「月百姿」展 後期 (礫川浮世絵美術館)


<肉筆>
まずは座敷にある肉筆の掛け軸のコーナーです。

44 歌川豊国 「美人戯画」
桜の花が咲く軒先で長い帯を垂らした着物の美人と、それにじゃれつく猫を描いた作品です。猫は一心不乱にじゃれついていて顔は見えませんが、それが可愛いw この女性は寛政の三美人の1人らしく、色白で紫と青の着物が艶やかでした。

48 歌川貞秀 「猫を抱き上げる美人」
ぶちのある猫を高い高いするようい持ち上げる美女を描いた作品です。女性は舌を出しているのですが、舌に白い玉のようなものを乗せています。(これが何かはわからず) 猫は逃げる素振りもなくじっとしている様子でした。犬猫を飼うと誰しもがこれをやるのでは…w 今も昔も変わりませんね。


<第一景 猫百変化>
続いては、猫が文字になったり擬人化されるなど様々なものに変化した作品のコーナーです。ここからは版画の浮世絵です。

3 歌川国芳 「絵鏡台合かが身 猫」
団扇の形の作品で、6匹の猫がじっと座ったり 後ろ足を上げて飛び跳ねたり、じゃれあったりしている様子が描かれています。これだけ観ると楽しげな猫の絵に思えますが、実はこれは本来は影絵とセットで、影絵になると右から獅子、ミミズク、般若の形になるそうです。残念ながら影絵バージョンとのセット展示では無かったのですが、ちょっと離れて観ると確かにそうした形になっているのが面白かったです。国芳は結構こうした影絵とセットの作品を描いています。

27 歌川国芳 「たとゑ尽の内」
猫に関する例えを題材にした3枚続きの作品のうち、左の1枚だけが展示されていました。左上で招き猫のようなポーズをして目の前の食べ物を見ずに振り返っているのは「猫も食わない」、左下でキセルを持って着物を着た擬人化された猫は「猫と庄屋に取らぬは無い」という諺?で、猫の目の前にはネズミの擬人像もあります。これは猫はネズミを見たら必ず取るように、庄屋は必ず袖の下を受け取るという意味だそうです。ちょっと皮肉が効いていますw さらに左下には袋に頭を突っ込んだ猫や、その上には顔を手で拭うような猫などもいて諺を示しているようでした。可笑しくて機知に富んだ作品です。

35 歌川国芳 「名誉右に無敵左り甚五郎」
中央に背中を向け派手なドテラを着た左甚五郎、周りには仁王や閻魔、仏たちなど沢山の彫刻が集まり、命を吹き込まれたような様子が描かれています。この左甚五郎は国芳に見立てているそうで、左甚五郎の脇には眠り猫のような猫が身を捻って毛づくろいをしていました。表情や仕草が面白くて命を宿した感じがよく出ていました。


<第二景 猫の一日~遊んで眠ってしかられて>
続いての2章からは2階で、2階は特に混んでいます。

40 歌川広重 「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」
吉原の座敷と思われる部屋の出窓から下の景色を見ている白猫の後ろ姿が描かれた作品です。遠くには富士山が見え、手前の道には小さく描かれた人々が凄い行列を作っています。これは酉の市だそうで、それがタイトルの由来かな。窓の格子・障子の幾何学性もあり面白い構図と主題の作品です。
 参考記事:東京国立博物館の案内 (2010年11月)

50 鈴木春信 「風流五色墨 素丸」
火鉢の脇で箸を持って眠り込んでいる女性と、その膝の上に乗って眠る猫を描いた作品です。女性も猫もなんとも気持ちよさそうで微笑ましい光景です。その後ろでは2人の女性が寝ている女性の着物に紐を結んでいて、もう一方の紐は柱に結んでいるようです。悪戯っぽくてほのぼのした雰囲気がありました。背景の障子には年の瀬の宴会に興じる2人の人物の影もありました。

この辺には鳥居清長や歌麿、54歌川国芳「山海愛度図会 七 ヲゝいたい 越中滑川大蛸」(★こちらで観られます)などもありました。

56 歌川国芳 「山海愛度図会 三十八 えりをぬきたい 遠江須之股川」 ★こちらで観られます
後ろ姿で色白の首筋を見せる女性が、手に鏡を持ち、そこに顔が写っている様子が描かれた作品です。女性は楽しそうな表情をした美人で、その鏡の下には2匹の猫がじゃれあっていました。左上には画中画があり、海の側で魚介類を売る人々が描かれています。(意味はわからず) あえて顔を鏡越しにするのも面白いですが、その豊かな表情からは美人の心情まで伝わってきそうでした。猫はおまけ的な存在で無邪気ですw

この辺には猫を十六羅漢に見立てた作品もあり、猫の可愛いらしさとユーモアが感じられました。また、近くには以前の国芳展でご紹介した79「絵兄弟やさすかた 鵺退治」などもあります。

59 月岡芳年 「風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗」 ★こちらで観られます
寝ている猫に覆いかぶさるように抱きついている華やかな着物の女性を描いた作品です。猫が可愛くて仕方がないといった感じの女性に対して、猫はやれやれといった感じなのが面白いw 猫の首輪と女性の襦袢はお揃いの柄になっているなど、猫好きの女性であることがよく伝わって来ました。

82 小林清親 「カンバスに猫」
これは錦絵ですが、画中画として鶏が描かれたキャンバスがあり、その絵に興奮した猫が爪を立てて寄りかかっている様子が描かれています。もう1匹の猫も後ろで身構えていて、周りの絵の具や筆が飛んでいるなど勢いを感じます。絵に反応している様子がちょっとお馬鹿で可愛いw

この隣にあった高橋弘明の「白猫」という作品は凹凸で毛並みが表現されていて驚きました。多分、空摺りの技法じゃないかな。


ということで、今日はここまでにしようと思います。前期同様に後期も楽しくて可愛い猫たちが沢山集まっていました。次回は3章から8章までを一気にご紹介しようと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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AWAKENING 【エスパス ルイ・ヴィトン東京】

先週の日曜日に表参道辺りで買い物ついでにアート巡りをしてきました。まずはルイ・ヴィトン表参道店にあるエスパス ルイ・ヴィトン東京で「AWAKENING」を観てきました。

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【展覧名】
 AWAKENING

【公式サイト】
 http://espacelouisvuittontokyo.com/ja/

【会場】エスパス ルイ・ヴィトン東京
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅、表参道駅

【会期】2012年6月9日~9月9日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていましたが、映像作品の鑑賞に使うヘッドフォンの台数は少ないようで、全機貸し出し中となっていました。まあ、しばらく他を見ているうちに借りることができたので、ほぼ自分のペースで観られたかな。

さて、このアートスポットはまだ出来てから日が浅いのですが、今回の展示は2回目のグループ展だそうで、フィンランドの3人の現代アーティストの作品が並ぶ内容でした。写真を撮ることもできましたので、何枚か撮ってきた写真を使ってご紹介しようと思います。

ペッカ・ユルハ 「I HAVE SEEN THE LIGHT」
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フィンランドの実業家が「私は光を見た」と言ってアートに出会い収集を始めたそうで、この作品ではその言葉をタイトルにしています。これはまさに光を反射しながら揺れ動く綺麗な作品でした。

ペッカ・ユルハ 「THE WALLS HAVE EARS, EARS HAVE PRETTY」
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こちらもクリスタルを連ねた作品ですが、面白いのが壁が耳のようになっているところです。そのためこれはイヤリングを表しているようです。壁に耳ありって言葉は向こうにもあるのかな??

部屋の中央にはドクロの形に配置された無数のクリスタルもありました。この写真はあえて出し惜しみしておきます^^;

ハンナレーナ・ヘイスカ 「RIDESTAR」
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これは映像作品で、映像はヘッドフォンを使って見ます。現実逃避、崇高な感情、絶望的な恋などをテーマにしているそうで、毛の長い生物(馬のように見える)が水辺にいるシーンなどが映されていました。象徴的で何らかのメッセージがありそうな作品です。
この人はもう1点の映像もありました。

サミ・サンパッキラ 「STARWALL」
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この作品は部屋の奥のガラスに穴の開いた幕が吊り下がっていて、それが星の配置になっているという作品です。実際にある日のある時間になると、この作品と本物の星が重なるというので驚きです。しかし明るい東京ではこのようには見えなそうですね。発想が面白く、スケールの大きな作品でした。

サミ・サンパッキラ 「THE BIG CRUNCH」
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こちらは入口にあった映像作品で、森の中で倒れている人物のお腹の中からガラスの塊のようなもの(水晶みたいな)を取り出すシーンなどが映されていました。この作品のすべてのイメージは黄金分割に従って構成されているそうですが、それは流石に私にはわかりませんでしたw 神秘的で呪術的なものか?と思ったのですが宇宙の大収縮をテーマに比喩的に表現しているようです。


ということで洒落た雰囲気の現代アートの展示となっていました。ここは解説つきの立派な冊子もくれるし館内の方も親切なので、流石はラグジュアリーブランドと感心させます。無料で観られますので気になる方は是非どうぞ。


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