Archive | 2012年09月
前回ご紹介したお店でお昼をとった後、高尾山口駅の駅前にある高尾山トリックアート美術館に行ってきました。(行ったのは2012年6月です。)

【公式サイト】
http://www.trickart.jp/
【会場】高尾山トリックアート美術館
【最寄】高尾山口駅
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_4_⑤_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
入口でグループごとに説明を受けることもあってか、入場に5分程度待ちました。結構人気のようで、若い人や子連れが多く訪れていました。
さて、ここはその名の通り錯覚やだまし絵的な要素の絵が並ぶ施設です。これまでも何度かトリックアートに関してはご紹介してきましたが、ここは「作品」というよりはトリックに重きを置いているので、アートと呼ぶべきなのかは分かりませんが、老若男女が楽しめる内容となっています。館内では写真を撮ることもできましたので、何枚か使ってご紹介しようと思います。
参考記事:
描かれた不思議 トリック&ユーモア展 エッシャー、マグリット、国芳から現代まで (横須賀美術館)
トリック・アートの世界展 -だまされる楽しさ- (損保ジャパン東郷青児美術館)
奇想の王国 だまし絵展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
奇想の王国 だまし絵展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
奇想の王国 だまし絵展 2回目 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
奇想の王国 だまし絵展 2回目 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
迷宮への招待 エッシャー展 (そごう美術館)
まず入口で鑑賞方法について説明を受けます。両目で観ると平面と立体の違いがすぐ分かりますが、観る際にこれで片目を隠して錯覚を引き起こしやすくします。

まあこれが無くてもよく騙されますがw
これは階段に下っている所です。

…というのは嘘で、これは床に描かれた絵です。写真になるとより本物らしく見えるのが面白い。
最初のコーナーはエジプト風の部屋が続きます。これは立体か平面かどちらでしょうか…。

こちらは柱の辺りに立つと、まるで柱の上に乗っているように見えるトリックです。

ワニに襲われてるような感じで立つと面白い写真が撮れます。
これは向こうから大きな岩が転がってくる絵です。

岩の横に立って力を入れて押し返すようなポーズをとって撮影している人が多かったです。どこまでが平面か分かるかな?
この他にも様々なトリックが待ち受けていて、マジックミラーを使ったトリックなどが面白かったです。
1000円が落ちてました。落とし物かと拾おうと思うと…。

絵でしたw これは不意打ちでリアルなので騙されました。
この辺から先の部屋に進むには隠し扉を探す必要があります。これが結構難しくて、館内地図が無ければどこから行くのか気づけなかったかもw
進むと断崖絶壁が! というのは勿論嘘ですw

この写真は2階から撮って貰いました。1階だとよく分からないのですが、2階に行くとこんな感じで見えます。
この辺から2階です。
これは飛び出しているように見えるクジラ。影のつけ方のせいか本当に飛び出して見えます。

絵の前で逆立ちしてみました。

…というのも嘘ですw これは種がわかっても面白い写真が撮れるかも。
ここは鏡の部屋です。

…と、これも嘘です。 実際はどうなっているかは秘密にしておこうと思います。
こちらは絵が自分を追いかけてくるかのように見える作品。

↑と↓は同じ絵です。

見る場所が違うと景色も違います。種は1枚目の方で分かるかも。
これはどこまで絵か分かるかな??

この近くにはエッシャーの作品のコピーなどもありました。
こちらの抽象画は全くもって意味不明ですが、下にある柵を上げると一気に具象的な絵に見えます。

これは特に驚かされました。
アングルの「泉」の複製がありました。少年が手にカップを持って水を貰っているところ。

実は少年も絵です。かなりリアルでお客さんの子供かと思いましたw
フィレンツェのメディチ家礼拝堂にあるミケランジェロの「ロレンツォ・デ・メディチの墓碑」の素描のような作品。この2枚の写真は同じ絵を別の角度で撮っています。

間近で右から左へと進みながら観ていくと、どんどん足が長くなってみるのが面白いです。
この近くには同じようにマネのオランピアを描いた作品もありました。
この2枚も同じ絵です。見る角度で違って見えるのが面白い

これはアナモルフォーシスのトリック(歪んだ遠近感を用いたトリック)を使っているようです。
ボケていてすみません。左は絵の下にこの3人の背の高さは同じです。って書いてありますが、にわかには信じがたいw是非PCに指や定規を当てて確認してみて下さい。これは驚き。

右はルーブルにあるアルチンボルドの四季のうち夏かな。果物と野菜で皇帝の顔を描いています。
この辺には他にもトリックが用いられた作品や、視覚の錯覚についての解説などがありました。
休憩スペースには猫がいました。

これも絵ですがw
見終わって出ると、入口付近のテラスでジュースを1杯無料で頂けました。

駅からこの施設を見ると沢山の人が集まって賑わっているように見えるのは、ここでジュースを飲んでいる人が目に入るからかなw 実際にも多くの人がいますが、客寄せ効果があるのかも??
ということで、視覚の不思議やトリックを楽しむことができました。ここは直感的に面白さが分かるので、子供でも楽しめると思います。トリックには驚かされるし写真も撮れるので、カメラを持って遊びに行くと楽しいと思います。(家に帰ってみるとまたびっくり) 高尾山に行くときはここも検討してみると良いかもしれません。
参照記事:★この記事を参照している記事

【公式サイト】
http://www.trickart.jp/
【会場】高尾山トリックアート美術館
【最寄】高尾山口駅
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_4_⑤_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
入口でグループごとに説明を受けることもあってか、入場に5分程度待ちました。結構人気のようで、若い人や子連れが多く訪れていました。
さて、ここはその名の通り錯覚やだまし絵的な要素の絵が並ぶ施設です。これまでも何度かトリックアートに関してはご紹介してきましたが、ここは「作品」というよりはトリックに重きを置いているので、アートと呼ぶべきなのかは分かりませんが、老若男女が楽しめる内容となっています。館内では写真を撮ることもできましたので、何枚か使ってご紹介しようと思います。
参考記事:
描かれた不思議 トリック&ユーモア展 エッシャー、マグリット、国芳から現代まで (横須賀美術館)
トリック・アートの世界展 -だまされる楽しさ- (損保ジャパン東郷青児美術館)
奇想の王国 だまし絵展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
奇想の王国 だまし絵展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
奇想の王国 だまし絵展 2回目 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
奇想の王国 だまし絵展 2回目 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
迷宮への招待 エッシャー展 (そごう美術館)
まず入口で鑑賞方法について説明を受けます。両目で観ると平面と立体の違いがすぐ分かりますが、観る際にこれで片目を隠して錯覚を引き起こしやすくします。

まあこれが無くてもよく騙されますがw
これは階段に下っている所です。

…というのは嘘で、これは床に描かれた絵です。写真になるとより本物らしく見えるのが面白い。
最初のコーナーはエジプト風の部屋が続きます。これは立体か平面かどちらでしょうか…。

こちらは柱の辺りに立つと、まるで柱の上に乗っているように見えるトリックです。

ワニに襲われてるような感じで立つと面白い写真が撮れます。
これは向こうから大きな岩が転がってくる絵です。

岩の横に立って力を入れて押し返すようなポーズをとって撮影している人が多かったです。どこまでが平面か分かるかな?
この他にも様々なトリックが待ち受けていて、マジックミラーを使ったトリックなどが面白かったです。
1000円が落ちてました。落とし物かと拾おうと思うと…。

絵でしたw これは不意打ちでリアルなので騙されました。
この辺から先の部屋に進むには隠し扉を探す必要があります。これが結構難しくて、館内地図が無ければどこから行くのか気づけなかったかもw
進むと断崖絶壁が! というのは勿論嘘ですw

この写真は2階から撮って貰いました。1階だとよく分からないのですが、2階に行くとこんな感じで見えます。
この辺から2階です。
これは飛び出しているように見えるクジラ。影のつけ方のせいか本当に飛び出して見えます。

絵の前で逆立ちしてみました。

…というのも嘘ですw これは種がわかっても面白い写真が撮れるかも。
ここは鏡の部屋です。

…と、これも嘘です。 実際はどうなっているかは秘密にしておこうと思います。
こちらは絵が自分を追いかけてくるかのように見える作品。

↑と↓は同じ絵です。

見る場所が違うと景色も違います。種は1枚目の方で分かるかも。
これはどこまで絵か分かるかな??

この近くにはエッシャーの作品のコピーなどもありました。
こちらの抽象画は全くもって意味不明ですが、下にある柵を上げると一気に具象的な絵に見えます。

これは特に驚かされました。
アングルの「泉」の複製がありました。少年が手にカップを持って水を貰っているところ。

実は少年も絵です。かなりリアルでお客さんの子供かと思いましたw
フィレンツェのメディチ家礼拝堂にあるミケランジェロの「ロレンツォ・デ・メディチの墓碑」の素描のような作品。この2枚の写真は同じ絵を別の角度で撮っています。


間近で右から左へと進みながら観ていくと、どんどん足が長くなってみるのが面白いです。
この近くには同じようにマネのオランピアを描いた作品もありました。
この2枚も同じ絵です。見る角度で違って見えるのが面白い


これはアナモルフォーシスのトリック(歪んだ遠近感を用いたトリック)を使っているようです。
ボケていてすみません。左は絵の下にこの3人の背の高さは同じです。って書いてありますが、にわかには信じがたいw是非PCに指や定規を当てて確認してみて下さい。これは驚き。


右はルーブルにあるアルチンボルドの四季のうち夏かな。果物と野菜で皇帝の顔を描いています。
この辺には他にもトリックが用いられた作品や、視覚の錯覚についての解説などがありました。
休憩スペースには猫がいました。

これも絵ですがw
見終わって出ると、入口付近のテラスでジュースを1杯無料で頂けました。


駅からこの施設を見ると沢山の人が集まって賑わっているように見えるのは、ここでジュースを飲んでいる人が目に入るからかなw 実際にも多くの人がいますが、客寄せ効果があるのかも??
ということで、視覚の不思議やトリックを楽しむことができました。ここは直感的に面白さが分かるので、子供でも楽しめると思います。トリックには驚かされるし写真も撮れるので、カメラを持って遊びに行くと楽しいと思います。(家に帰ってみるとまたびっくり) 高尾山に行くときはここも検討してみると良いかもしれません。
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前回ご紹介した高尾山に登った時、麓にある高橋家というお蕎麦屋さんでお昼を摂っていました。

【店名】
高橋家
【ジャンル】
蕎麦
【公式サイト】
http://www.takahasiya.com/
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1329/A132905/13016415/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
高尾山口駅
【近くの美術館】
高尾山トリックアート美術館
【この日にかかった1人の費用】
1050円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
このお店は高尾山名物のお蕎麦屋さんの中でも有名なようで、お店の中で15分くらい待ちました。頼んでからも10分くらい待つので、食べるまでに30分くらいかかりました。
お店の中はこんな感じ。お店の入り口あたりに柿の木があり、お店を貫いています。お店のメニューには柿にちなんだものもあるようです。
ちらっと写っていますがダイソンの羽根のない扇風機を実際に使っているところを初めて見ましたw
この日は冷やしとろろそば(900円)の大盛り(+150円)を頼みました。

中にとろろを入れたところ。

蕎麦の良い香りがして、細くて歯応えがありました。しゃっきりした感じで美味しいです。とろろも粘り気が強めで満足できました。つゆは意外と普通かな。
ということで、登山客に人気のお店でした。勿論温かいお蕎麦もあるので、これから涼しくなる時期にはそちらも美味しそうです。高尾山口駅から高尾山に向かう途中に必ず通る所にあるので、またいずれ行ってみたいと思います。

【店名】
高橋家
【ジャンル】
蕎麦
【公式サイト】
http://www.takahasiya.com/
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1329/A132905/13016415/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
高尾山口駅
【近くの美術館】
高尾山トリックアート美術館
【この日にかかった1人の費用】
1050円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
このお店は高尾山名物のお蕎麦屋さんの中でも有名なようで、お店の中で15分くらい待ちました。頼んでからも10分くらい待つので、食べるまでに30分くらいかかりました。
お店の中はこんな感じ。お店の入り口あたりに柿の木があり、お店を貫いています。お店のメニューには柿にちなんだものもあるようです。


ちらっと写っていますがダイソンの羽根のない扇風機を実際に使っているところを初めて見ましたw
この日は冷やしとろろそば(900円)の大盛り(+150円)を頼みました。

中にとろろを入れたところ。

蕎麦の良い香りがして、細くて歯応えがありました。しゃっきりした感じで美味しいです。とろろも粘り気が強めで満足できました。つゆは意外と普通かな。
ということで、登山客に人気のお店でした。勿論温かいお蕎麦もあるので、これから涼しくなる時期にはそちらも美味しそうです。高尾山口駅から高尾山に向かう途中に必ず通る所にあるので、またいずれ行ってみたいと思います。
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先々週・先週あたりで大型展示が相次いで終了してしまい、今週は端境期のようになっているので、この機に貯めてあるネタを紹介しようと思います。もう3ヶ月ほど前ですが2012年6月に高尾山に登山に行って来ました。
公式サイト:高尾山公式ホームページ

高尾山にはいくつかルートがあるのですが、この日は6号路→稲荷山コーズ という自然が多めのルートで登りました。

行ったのは6月だったのでアジサイが綺麗でした。

高尾山は修験道の修行の場でもあるためか、滝やお洞のようなものもあります。

少し登ると琵琶滝という滝もありました。

偉いお坊さんが高尾山に登った際、どこからともなく琵琶の音が聞こえてきたらしく、鹿に案内されるようについていくと、岩に座した白髪の老人が琵琶を奏でていたそうです。 お坊さんがその美しい調べに心を動かされ 悟りの道を教えて欲しいと尋ねた所、老人は岩に溶けこむように消えて、白髪のような白い滝が現れたそうです。そこで悟りを開くために修行の場としたとのことでした。
少し進むと木の根がうねる道が続きます。周りの木々を覆う緑も綺麗で自然を満喫。

このコースは綺麗な川が横に流れていました。暑かったので水が冷たくて気持ちよかったです。右は硯岩という石。

気分は山奥に着た感じですが、実はこのコースは道幅が狭くて登山客が渋滞するような感じでしたw

あまりに混雑しているので6号路から離れて稲荷山コースという若干整備された道へとコースを変えました。

ここは頂上近くになると階段が続くのがちょっとキツイですw
そしてようやく山頂(標高600m程度)。とは言え最初の看板から100分程度で登れました。

晴れていれば富士山も見えるようですが、この日はちょっと曇り気味。まあ曇っていたお陰で直射日光がなかったので、天気に関しては一長一短だったかな。
頂上にはお店や自販機もあります。

お茶は1本200円!w 運ぶのも大変だからかな。
高尾ビジターセンターという施設もありました。

私は中には入らなかったのですが、高尾の自然や登山ルートなどについての情報が得られるようです。
公式サイト:高尾ビジターセンター
山頂も結構多くの登山客で賑わっていました。

混んでいますが屋根付きのベンチなどもあるので、そこでおにぎりで軽い昼食を摂りました。
ここからは往路です。帰りは1号路という薬王院のあるルートにしました。薬王院の建物が結構あります。これは奥之院。

薬王院の敷地にはあちこちに六根石という石車のついたものがありました。6個どころではなく20箇所くらいあったと思いますが、六根というのは眼、耳、鼻、舌、身、意(心)のことだそうです。この石車を「懺悔 懺悔 六根清浄」と唱えながら回すそうです。
公式サイト:高尾山薬王院
長い階段を下っていったので、逆にここを登るのは大変そう…。ここからどんどん山門へと逆行していきました。
天狗は飯縄大権現の眷属だそうで、高尾山は飯縄信仰と天狗信仰の地だそうです。
これは薬王院飯縄権現堂の前に立っていた天狗。

薬王院飯縄権現堂(御本社)

とりあえずお参り。
御本社の脇に巨大な下駄の奉納品がありました。天狗と言えば下駄ですね。

こちらは御本堂。

ここには大きな天狗の面が飾られていました。顔は阿吽みたいな感じかな?

近くには先程と同じように天狗の像もあります。
これは山門付近。八部衆の1人 八大龍王の像がありました。

近くには「願叶輪潜(ねがいかなうわくぐり)」という人がくぐれる石の建造物や、天狗の像、巨大な六根清浄の石車などもあります。
この先は石畳で道も広いので結構歩きやすかったです。しばらく行くと蛸杉(たこすぎ)という名の木やサル園・野草園もありました。

本当にタコの足みたいな根っこが面白いです。
さらに下って行くと山の東側が一望できるところがあります。主に八王子や橋本あたりが見えました。また、この辺まで来るとリフトがあるので、帰りはこれに乗りました。

こちらも中々眺めが良かったです。
ということで、山登り初心者の私でも楽しむことができました。途中で休んでいる時に声かけてきたお爺さんが言うには、最近ミシュランで3つ星がついてから観光客も増えているそうで、確かにそれが頷けるような魅力ある山でした。秋には紅葉も綺麗らしいので、山好きだけでなく多くの人に楽しめそうです。
公式サイト:高尾山公式ホームページ

高尾山にはいくつかルートがあるのですが、この日は6号路→稲荷山コーズ という自然が多めのルートで登りました。

行ったのは6月だったのでアジサイが綺麗でした。

高尾山は修験道の修行の場でもあるためか、滝やお洞のようなものもあります。


少し登ると琵琶滝という滝もありました。


偉いお坊さんが高尾山に登った際、どこからともなく琵琶の音が聞こえてきたらしく、鹿に案内されるようについていくと、岩に座した白髪の老人が琵琶を奏でていたそうです。 お坊さんがその美しい調べに心を動かされ 悟りの道を教えて欲しいと尋ねた所、老人は岩に溶けこむように消えて、白髪のような白い滝が現れたそうです。そこで悟りを開くために修行の場としたとのことでした。
少し進むと木の根がうねる道が続きます。周りの木々を覆う緑も綺麗で自然を満喫。


このコースは綺麗な川が横に流れていました。暑かったので水が冷たくて気持ちよかったです。右は硯岩という石。


気分は山奥に着た感じですが、実はこのコースは道幅が狭くて登山客が渋滞するような感じでしたw

あまりに混雑しているので6号路から離れて稲荷山コースという若干整備された道へとコースを変えました。


ここは頂上近くになると階段が続くのがちょっとキツイですw
そしてようやく山頂(標高600m程度)。とは言え最初の看板から100分程度で登れました。

晴れていれば富士山も見えるようですが、この日はちょっと曇り気味。まあ曇っていたお陰で直射日光がなかったので、天気に関しては一長一短だったかな。
頂上にはお店や自販機もあります。

お茶は1本200円!w 運ぶのも大変だからかな。
高尾ビジターセンターという施設もありました。

私は中には入らなかったのですが、高尾の自然や登山ルートなどについての情報が得られるようです。
公式サイト:高尾ビジターセンター
山頂も結構多くの登山客で賑わっていました。

混んでいますが屋根付きのベンチなどもあるので、そこでおにぎりで軽い昼食を摂りました。
ここからは往路です。帰りは1号路という薬王院のあるルートにしました。薬王院の建物が結構あります。これは奥之院。


薬王院の敷地にはあちこちに六根石という石車のついたものがありました。6個どころではなく20箇所くらいあったと思いますが、六根というのは眼、耳、鼻、舌、身、意(心)のことだそうです。この石車を「懺悔 懺悔 六根清浄」と唱えながら回すそうです。
公式サイト:高尾山薬王院
長い階段を下っていったので、逆にここを登るのは大変そう…。ここからどんどん山門へと逆行していきました。
天狗は飯縄大権現の眷属だそうで、高尾山は飯縄信仰と天狗信仰の地だそうです。
これは薬王院飯縄権現堂の前に立っていた天狗。


薬王院飯縄権現堂(御本社)

とりあえずお参り。
御本社の脇に巨大な下駄の奉納品がありました。天狗と言えば下駄ですね。

こちらは御本堂。

ここには大きな天狗の面が飾られていました。顔は阿吽みたいな感じかな?


近くには先程と同じように天狗の像もあります。
これは山門付近。八部衆の1人 八大龍王の像がありました。


近くには「願叶輪潜(ねがいかなうわくぐり)」という人がくぐれる石の建造物や、天狗の像、巨大な六根清浄の石車などもあります。
この先は石畳で道も広いので結構歩きやすかったです。しばらく行くと蛸杉(たこすぎ)という名の木やサル園・野草園もありました。


本当にタコの足みたいな根っこが面白いです。
さらに下って行くと山の東側が一望できるところがあります。主に八王子や橋本あたりが見えました。また、この辺まで来るとリフトがあるので、帰りはこれに乗りました。


こちらも中々眺めが良かったです。
ということで、山登り初心者の私でも楽しむことができました。途中で休んでいる時に声かけてきたお爺さんが言うには、最近ミシュランで3つ星がついてから観光客も増えているそうで、確かにそれが頷けるような魅力ある山でした。秋には紅葉も綺麗らしいので、山好きだけでなく多くの人に楽しめそうです。
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前回ご紹介した府中市美術館の特別展を観た後、常設展も観てきました。今回の常設は「明治・大正・昭和の洋画」と「小特集 江戸時代の絵画」というタイトルで、期間が設けられていました。
【展覧名】
明治・大正・昭和の洋画
小特集 江戸時代の絵画
【公式サイト】
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/jyosetu/ichiran/24_permanent_collection/index.html
【会場】府中市美術館
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など
【会期】2012年9月12日(水)~11月11日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日16時半頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
閉館近い時間だったこともあって空いていました。ちょっと急ぎ足での鑑賞です。
さて、今回の常設は冒頭にも書いたように「明治・大正・昭和の洋画」と「小特集 江戸時代の絵画」という2つのコーナーとなっていました。小特集の方は小さい部屋にあるだけなので、ほとんどは「明治・大正・昭和の洋画」かな。まだ観たことが無い作品も結構あったので気に入った作品をいくつかご紹介しようと思います。
参考記事:
府中市美術館の常設 (2012年04月)
府中市美術館の常設 (2011年10月)
府中市美術館の常設 (2011年03月)
府中市美術館の常設 (2010年10月)
<明治・大正・昭和の洋画>
まずは明治・大正・昭和の洋画家のコーナーです。
久米桂一郎 「果園の春」
3本の木が立ち並ぶ果園を描いた作品です。淡い色合いで師匠のラファエル・コランや黒田清輝の画風に近いように感じるかな。軽やかさと落ち着いた雰囲気を感じる画風が好みでした。
この辺にはラファエル・コラン「フロレアル」などもありました。藝大の所蔵品のとは違うのかな?
ジャン=ポール・ローランス 「イレーヌ」
十字架のついた大きな金の球体を左手に持ち、玉座に座った女性を描いた作品です。頭には豪華な冠をかぶり耳に大きな真珠?の耳飾りをつけています。写実的で落ち着いた色合いのためか女性からは威厳を感じ、おごそかな雰囲気がありました。アカデミックな作品ならではの気品が感じられます。
太田喜二郎 「ベルギー風景」
高い位置からの視点でベルギーの教会を描いた作品です。全体的に白みがかっていて非常に光の明るさを感じます。恐らくベルギーの光輝主義(リュミニスム)の影響じゃないかな。 描かれた時間帯は分かりませんが、清々しい雰囲気がありました。
参考記事:フランダースの光 ベルギーの美しき村を描いて (Bunkamuraザ・ミュージアム)
正宗得三郎 「ノートルダム寺院」
高い所からノートルダム寺院を描いた作品で、左端に窓枠のようなものが描かれてているので恐らく窓から観た風景だと思います。やや印象派のような感じですが色は強めで、ノートルダム寺院には重厚感がありました。周りに集まる人影もあり、その対比から寺院の大きさや堂々とした雰囲気が伝わって来ました。
猪熊弦一郎 「窓」
これは以前もご紹介しましたが改めて。窓辺に座る赤い服に青いスカートの女性を描いた作品で、強い色と黒いふちによって力強い印象を受けます。隣の壁も青で、窓の外の緑が明るく見えました。猪熊さんの作品の中では具象的な感じです。
参考記事:
猪熊弦一郎展『いのくまさん』 (そごう美術館)
猪熊弦一郎展『いのくまさん』 (東京オペラシティアートギャラリー)
倉田三郎 「アウシュビッツ」
奥に伸びる道を1人の男性が歩き、その右脇に大きな木、左側と奥には茶色い建物が描かれています。一見するとおだやかでのんびりした公園の風景のように見えましたが、タイトルを見て驚きました。茶色い建物は施設の跡でしょうか…。画風とのギャップを感じさせます。
梅原龍三郎 「台湾風景」
赤い門と赤い塔のようなものが描かれ、手前には緑の木が描かれています。補色関係のためその色の取り合わせが強く感じられ、赤が目に鮮やかな作品でした。
この辺にはチャールズ・ワーグマンの作品などもありました。明治の日本の風景を油彩で見るのは中々面白いです。
<小特集 江戸時代の絵画>
小部屋には江戸時代の作品が6点並んでいました。
長谷川等彝 「洋犬図屏風」
これは2曲1隻の屏風で、左右に猟犬のような耳の長い犬が描かれています。右は秋草を背景にしていて、左は朝顔を背景に寝そべり、横では2匹の仔犬がじゃれあっていました。この時代に洋犬が描かれているのも面白いですが、結構写実的な画風も洋風で興味深かったです。仔犬も可愛いw
ここには他に以前ご紹介した谷文晁「駱駝図」などもありました。
この後いつも通り牛島憲之記念館の方も観てきましたが、大体観たことがある作品だったので今回はメモを取りませんでした。
ということで閉館が近かったのでちょっと急ぎ足で観てきましたが、充実したコレクションの一端を観ることができました。デルヴォー展を観に行かれる方は、こちらも一緒に観てくることをお勧めします。
参照記事:★この記事を参照している記事
【展覧名】
明治・大正・昭和の洋画
小特集 江戸時代の絵画
【公式サイト】
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/jyosetu/ichiran/24_permanent_collection/index.html
【会場】府中市美術館
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など
【会期】2012年9月12日(水)~11月11日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日16時半頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
閉館近い時間だったこともあって空いていました。ちょっと急ぎ足での鑑賞です。
さて、今回の常設は冒頭にも書いたように「明治・大正・昭和の洋画」と「小特集 江戸時代の絵画」という2つのコーナーとなっていました。小特集の方は小さい部屋にあるだけなので、ほとんどは「明治・大正・昭和の洋画」かな。まだ観たことが無い作品も結構あったので気に入った作品をいくつかご紹介しようと思います。
参考記事:
府中市美術館の常設 (2012年04月)
府中市美術館の常設 (2011年10月)
府中市美術館の常設 (2011年03月)
府中市美術館の常設 (2010年10月)
<明治・大正・昭和の洋画>
まずは明治・大正・昭和の洋画家のコーナーです。
久米桂一郎 「果園の春」
3本の木が立ち並ぶ果園を描いた作品です。淡い色合いで師匠のラファエル・コランや黒田清輝の画風に近いように感じるかな。軽やかさと落ち着いた雰囲気を感じる画風が好みでした。
この辺にはラファエル・コラン「フロレアル」などもありました。藝大の所蔵品のとは違うのかな?
ジャン=ポール・ローランス 「イレーヌ」
十字架のついた大きな金の球体を左手に持ち、玉座に座った女性を描いた作品です。頭には豪華な冠をかぶり耳に大きな真珠?の耳飾りをつけています。写実的で落ち着いた色合いのためか女性からは威厳を感じ、おごそかな雰囲気がありました。アカデミックな作品ならではの気品が感じられます。
太田喜二郎 「ベルギー風景」
高い位置からの視点でベルギーの教会を描いた作品です。全体的に白みがかっていて非常に光の明るさを感じます。恐らくベルギーの光輝主義(リュミニスム)の影響じゃないかな。 描かれた時間帯は分かりませんが、清々しい雰囲気がありました。
参考記事:フランダースの光 ベルギーの美しき村を描いて (Bunkamuraザ・ミュージアム)
正宗得三郎 「ノートルダム寺院」
高い所からノートルダム寺院を描いた作品で、左端に窓枠のようなものが描かれてているので恐らく窓から観た風景だと思います。やや印象派のような感じですが色は強めで、ノートルダム寺院には重厚感がありました。周りに集まる人影もあり、その対比から寺院の大きさや堂々とした雰囲気が伝わって来ました。
猪熊弦一郎 「窓」
これは以前もご紹介しましたが改めて。窓辺に座る赤い服に青いスカートの女性を描いた作品で、強い色と黒いふちによって力強い印象を受けます。隣の壁も青で、窓の外の緑が明るく見えました。猪熊さんの作品の中では具象的な感じです。
参考記事:
猪熊弦一郎展『いのくまさん』 (そごう美術館)
猪熊弦一郎展『いのくまさん』 (東京オペラシティアートギャラリー)
倉田三郎 「アウシュビッツ」
奥に伸びる道を1人の男性が歩き、その右脇に大きな木、左側と奥には茶色い建物が描かれています。一見するとおだやかでのんびりした公園の風景のように見えましたが、タイトルを見て驚きました。茶色い建物は施設の跡でしょうか…。画風とのギャップを感じさせます。
梅原龍三郎 「台湾風景」
赤い門と赤い塔のようなものが描かれ、手前には緑の木が描かれています。補色関係のためその色の取り合わせが強く感じられ、赤が目に鮮やかな作品でした。
この辺にはチャールズ・ワーグマンの作品などもありました。明治の日本の風景を油彩で見るのは中々面白いです。
<小特集 江戸時代の絵画>
小部屋には江戸時代の作品が6点並んでいました。
長谷川等彝 「洋犬図屏風」
これは2曲1隻の屏風で、左右に猟犬のような耳の長い犬が描かれています。右は秋草を背景にしていて、左は朝顔を背景に寝そべり、横では2匹の仔犬がじゃれあっていました。この時代に洋犬が描かれているのも面白いですが、結構写実的な画風も洋風で興味深かったです。仔犬も可愛いw
ここには他に以前ご紹介した谷文晁「駱駝図」などもありました。
この後いつも通り牛島憲之記念館の方も観てきましたが、大体観たことがある作品だったので今回はメモを取りませんでした。
ということで閉館が近かったのでちょっと急ぎ足で観てきましたが、充実したコレクションの一端を観ることができました。デルヴォー展を観に行かれる方は、こちらも一緒に観てくることをお勧めします。
参照記事:★この記事を参照している記事
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10日ほど前の日曜日に、府中市美術館で「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」を観てきました。

【展覧名】
ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅
【公式サイト】
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/delvaux/index.html
【会場】府中市美術館
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など
【会期】
2012年9月12日(水)~11月11日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
開催して初めての日曜日だったこともあってか、空いていてじっくりと観て周ることができました。
さて、今回の展示はベルギーの幻想の画家ポール・デルヴォーの個展となっています。ポール・デルヴォーは、先日ご紹介したアンソールや有名なシュルレアリスムの画家マグリットと共にベルギーを代表する画家で、裸婦たちが夜の神殿を歩くような不思議な光景を描くことで知られています。今年はベルギーのポール・デルヴォー美術館の開館30周年だそうで、この展示はそこで行われた「ポール・デルヴォー展 - 夢をめぐる旅」という展覧会を元に日本向けに新たに再構成して巡回しているようです。初期から晩年まで5つの章に分けて展示されていましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。
…それにしても「夢にデルヴォー」ってキャッチコピーは面白い。 誰もがツッコミたくなるダジャレのようでよく特徴が出てますw
参考記事:
ジェームズ・アンソール ―写実と幻想の系譜― (損保ジャパン東郷青児美術館)
アントワープ王立美術館コレクション展 (東京オペラシティアートギャラリー)
ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)
ベルギー幻想美術館 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
<冒頭>
まず冒頭にデルヴォーの画風がよく分かる作品がハイライト的に展示されていました。
ポール・デルヴォー 「夜明け」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている作品で、手前に建物の中の白い服の女性が描かれ、戸口の外には布をかぶった裸婦や背景の山が描かれています。モチーフ自体は現実にもありそうなものですが、手前の女性がやけに大きく、奥の女性が極端に小さく見えるなど遠近感が奇妙に感じられます。また、建物には強い光が差し込んでいて明暗は強いものの、何故か細部が平坦に感じられ、全体的にガランとした雰囲気です。それが形而上絵画やシュルレアリスムらしさを感じさせ、夢の中のような独特の世界となっていました。
ここにはデルヴォーの言葉がありました。
「私は一貫して、現実をある種の「夢」として描き表そうとしてきました。事物が本物らしい様相を保ちながらも詩的な意味を帯びている。そんな夢として 作品は登場する事物の全てが必然性をもった虚構の世界となるのです。」
展覧会を一通り観てからもう一度この言葉を読むと、デルヴォーの特徴を端的に表している言葉ではないかと思います。
<第1章 写実主義と印象主義の影響>
1章は初期のコーナーです。ポール・デルヴォーは1897年にベルギー南部の母の実家で生まれ、ブリュッセルで育ちました。弁護士をしていた厳格な父、家庭的な母(ちょっと過保護)、後に弁護士になる弟 といったように芸術とは無縁の家庭だったようですが、少年時代のデルヴォーは内気で黙々と絵を描いていたそうです。
高校を卒業するとデルヴォーは画家を望んだようですが両親に反対され、建築を学ぶ学校に進学しました。しかし、数学で落第して道を失いかけた時、家族の休暇ででかけた街で偶然出会った王室公認の有名画家(フランツ・クルテンス)にデルヴォーの水彩画が激賞されたため、ついに美術学校に入学することが許されたそうです。この頃の作風は写実主義や印象主義の影響を受けた穏やかな風景画が多いようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「グラン・マラドの水門(南側の眺望)」
川と川岸を描いた作品で、これはベルギー南部の生家近くの風景のようです。光が差す明るい画面で、厚塗されている画風はまさに印象派風といった感じです。温かみがあり穏やかな雰囲気の作品でした。
この近くには最初期の美術学校時代の油彩や、正確に描かれたスケッチなどもありました。一見すると印象派っぽいですが、デルヴォーはモネ達 印象派と違って曇りがちな空を描いているそうで、それはベルギーの画家の伝統と言えるそうです。
ポール・デルヴォー 「森の小径」 ★こちらで観られます
両脇にブナの木が立ち並ぶ森の中の一本道を描いた作品です。木々や道には木漏れ日が落ちているようで、光と影の表現が心地よく感じられます。緑が茂っていて爽やかな雰囲気でした。
ポール・デルヴォー 「リュクサンブール駅(未完)」
沢山の貨物列車が並ぶ鉄道の駅を描いた作品です。デルヴォーは子供の頃に駅長になるのが夢だったほどの鉄道好きで、モチーフとしてよく出てきます。この絵は未完成のようで、右半分は色が塗られているのですが左半分は下書きのみです。蒸気の表現や人々の労働の様子などが面白く、ちょっと印象派風にも思えました。解説によると、建物の表現などには建築を学んだ甲斐も感じられるようです。また、製作過程を知る上で貴重な品のようでした。
<第2章 表現主義の影響>
続いては表現主義からの影響についてのコーナーです。
一通りの技術を身につけたデルヴォーは30代を迎える頃、さらに自分らしい表現を身につけようと、有名画家の描き方や流行の画風を次々と取り入れたそうです。その中でも最も影響を受けたのが 細部の描写に拘らず感情を直接的に表そうとする「表現主義」の技法だったようで、これによって内面世界へと表現が深化していったようです。また、私生活では1929年に後の妻となるタムと出会い恋に落ちましたが、両親の反対によって2人の仲は引き裂かれてしまったようです。その為かこの頃は暗い色調の重苦しい雰囲気の絵が多く、喪失感がそのまま出ているそうです。ここにはそうした時期の多彩な画風の作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「森の中の裸体群」
暗い枯れ木の森の中、沢山の裸体の男女が様々なポーズをとっている様子を描いた作品です。人々は大きさもまちまちで、顔はモディリアーニの描く人物のような感じです。全体的に暗いこともあってかちょっと不穏な雰囲気で、どこか異様な光景に見えました。
この辺にあった「ボワフォールの風景」は水彩ですが、幾何学的な描き方や色使いがセザンヌを思わせました。
ポール・デルヴォー 「バラ色の婦人」
手前に肘をついて横たわる裸婦が描かれ、その後ろにも3人の胸を出した女性が描かれています。全体的に茶色がかっていて、後ろの方は背景に溶けこむような感じです。これは当時流行していた表現主義に影響を受けたようで、この頃から裸婦を描くようになったそうです。前の時代に比べるとだいぶ写実から離れた感じがしました。
この辺は裸婦を描いた作品がいくつかありました。確かに画風がよく変わります。
<第3章 シュルレアリスムの影響>
デルヴォーが試行錯誤の時代を脱したきっかけの1つがシュルレアリスムとの出会いだったようです。1920年代にパリで始まったこの運動は1934年にはブリュッセルでも「ミノトール展」という展示が開催され、デルヴォーはデ・キリコやマグリット、ダリ、エルンストらの作品を観て大きな衝撃を受けたようです。そしてその影響からデルヴォーの作品は謎めいた雰囲気が強く漂うようになり、シュルレアリストが好んだ手法を用いるようになったようです。しかしシュルレアリスムの思想や運動からは距離をとり、シュルレアリスムに感化されつつもあくまで独自の画風を作り上げようとしたそうです。ここにはそうしたシュルレアリスムに影響を受けた以降の作品が並んでいました。
参考記事:
シュルレアリスム展 感想前編(国立新美術館)
シュルレアリスム展 感想後編(国立新美術館)
ポール・デルヴォー 「訪問Ⅳ」
ドアを開けて家に入ってくる赤いドレスと羽帽子の女性と、それを迎える緑の服の女性が描かれた作品です。そう説明すると普通の場面のようですが、どこか奇妙に感じられるのが面白い所で、現実のようで非現実な雰囲気です。解説ではお互いに目を見ていないと指摘していたのですが、確かに左の人物はその通りで(右は左の女性を見ているような…)それが奇妙に感じる理由かもしれません。また、平坦な感じもその一因ではないかと思いました。
デルヴォーの作品にはこうした 視線を合わさずちょっとボーっとしてるような感じの無表情な女性がよく出てきます。この後の章でもそうした女性たちが沢山でてきました。
この辺には水彩の習作もありました。
<第4章 ポール・デルヴォーの世界>
続いての4章は最大の見所で、裸婦、機関車、神殿などデルヴォーの作品によく出てくるモチーフごとに5つのコーナーと、フレスコのコーナーに分かれていました。
[欲望の象徴としての女性、男性の居場所]
デルヴォーの描く女性は美しく魅力的でありながら人を寄せ付けない冷たさがあるようです。デルヴォーにとって女性は欲望の象徴でありながら強い恐れを抱く存在であったのではないかと推測されるようで、そうした女性観に特に大きな影響を与えたのは母親と元恋人のタムだったようです。
母親はやや過保護で悪い女性から息子を守ろうとしたため、デルヴォーは思春期に女性に対する抑圧された感情を持ったそうです。一方、タムは初恋の相手で18年後に運命的な再開を果たすのですが、別離直後はその不在を埋めるように執拗に彼女の肖像を描いていたそうです。
また、デルヴォーの作品にはたまに男性も描かれるのですが、これはジュール・ベルヌの小説に出てくるリーデンブロック教授らしく、自分の作品の中で生きたいと考えたデルヴォー自身が姿を変えたものとも考えられるようです。
まずここには鉛筆で描かれたタムの肖像が数点ありました。タムへの手紙などもあり、その存在の大きさが伝わります。
ポール・デルヴォー 「行列」 ★こちらで観られます
大きめの作品で、白い布をまとった裸婦10人くらいが手にランプを持って、静かにこちらに行進してくる様子が描かれています。周りには生垣に囲まれた空き地や電車と線路があり、背景にはレンガ造りの家やまっすぐに生えた木々なども描かれています。1つ1つを観れば現実のようでありながら、無表情で目が死んだような裸婦たちがシュールで、強く印象に残りました。一方でどこか懐かしさを感じるかな。不思議な魅力を持った作品です。
この辺にはタムやダニエルという女性モデルの素描(裸婦像)などもありました。素描は写実的です。また、「リーデンブロック教授の習作」という作品もありました。
[生命の象徴としての骸骨]
デルヴォーが初めて骸骨に出会ったのは小学校の頃だったそうで、生物室の骨格模型を見て衝撃を受けたようです。少年時代には骸骨を非常に恐れていたようですが、後に突如として美しさと表現力を持ったものとして目に映るようになったそうです。
骸骨は死を表すモチーフとして古くから描かれてきましたが、デルヴォーはこれを人体の基本構造と捉えて生命の本質と考えたらしく、生き生きと描かれているようです。ここにはそうした骸骨をモチーフにした作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「会話」 ★こちらで観られます
部屋の中で頬杖をついて左手を差し出す裸婦と、その隣で寄り添うように同じポーズを取る骸骨が描かれています。骸骨はかなり精密に描かれていて、背景には影も写っています。タイトルの示すように会話をしているようにも見えますが、実際の意味する所はよく分かりません。骸骨が親しげな感じに見えるのが面白く、女性も夢見るような表情で目をつぶっているので、どちらかというと明るい雰囲気に思えました。
この辺には磔刑にされた骸骨や骸骨人間を描いた「《磔刑Ⅱ》(1953年)のための習作」や「《キリストの埋葬》(1951年)のための骸骨の習作」などもありました。
[汽車、トラム、駅]
先述したようにデルヴォーは幼い時から電車が好きで、家の窓から路面電車(トラム)を毎日眺め、駅長になるのが夢でした。デルヴォーは後に、電車や汽車は「子供時代そのもの」だったと語っていたようで、子供時代に直結するモチーフのようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
まずこのコーナーの最初には汽車と客車が描かれたビールのコースターや、路面電車(トラム)を描いたスケッチ、電車が出てくる作品の習作などがありました。
ポール・デルヴォー 「トンネル」
これはかなり大きめの作品で、手前に沢山の女性たちがレースの服や帽子で着飾って集まっています。(たまに裸婦も混じっている) その左側には唐突に鏡が置かれ、鏡の前には誰も居ないのに、鏡の中に少女がぽつんと立っています。また、背景の中央にはトンネルへと向かう列車の後部が描かれ、背景の左右にはプラットフォームのようなものや長い階段なども見えます。女性たちが集まっているのにお互いに無関心な感じがする点や遠近感が奇妙で、さらに鏡の少女は何かを訴えるような表情をしているのが強く印象に残りました。
この近くにはこの作品の習作が2点あったのですが、鏡の前に少女が立っていたのが、その次の習作では鏡の中だけになっているのが分かりました。女性たちの配置などもだいぶ変わっているようで、試行錯誤が伺えました。
[建築的要素]
続いてはデルヴォーの作品の背景によく出てくる古代神殿についてのコーナーです。デルヴォーは高校の授業で出会った「オデュッセイア」など古代文学の世界に魅了され、空想の世界に思いを馳せていたそうで、画家となってからはギリシアやイタリアで実物をスケッチすることもあったそうです。しかし作品にする際には街頭や列車と組み合わせ、現実にはない風景としていったようです。ここにはそうした題材の大型作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「夜の使者」 ★こちらで観られます
大きめの正方形の作品で、手前に5人の女性と1人のメガネの紳士が集まり、その足元にはランプが置かれています。背景には下り坂とそこを横切る路面電車、遠くにはギリシア風の神殿のような建物群が描かれています。手前の物思いにふけるような顔の女性や、光を見つめている女性、ボーっとしている女性など 何を考えているのかちょっと意味深で幻想的にすら見える感じが面白いです。背景の世界はデルヴォーの心象風景なのかな? シュールでありながら、どこか現実感があるように思えました。
この辺は水彩の習作が多めでした。
ポール・デルヴォー 「エペソスの集いⅡ」 ★こちらで観られます
手前に赤いソファで寝ている女性、左に裸婦と胸だけ出した女性、右には手鏡を見ている女性と、鏡の枠のようなものが唐突に直立しています。その背景には路面電車と街頭、奥には古代の神殿のような建物群と海があり、これがエペソス(ギリシアの都市)のタイトルの由来のようです。暗い中で女性たちの肌が白く明るく描かれ、少し妖しい雰囲気があるかな。右の女性の手鏡には何も映らず、枠だけの鏡には若干の反射があるなど謎だらけですが、夢のなかにいるような懐かしいような気分になりました。これはかなり良かったのですが、ベルギーでは切手にもなったほどの有名作のようです。
[ルーツとしての過去のオブジェ]
続いてはデルヴォーの家をモチーフにした作品のコーナーです。デルヴォーはベルギーのアンテイにある生家を繰り返し描いていたようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「アンテイの台所」
これはデルヴォーの家の台所を描いた作品で、細かいところまで家の様子が再現されています。しかしこれは記憶を辿って描いているそうで、画風としては特にシュールなところはないように見えるのかな。すっきりした印象を受けます。 解説によると、画中のランプなどは子供の頃から身近だったものらしく、その後重要なモチーフとなったようです。
ここには他に生家を正面から描いた作品が2点ありました。赤い屋根に白い壁で中々立派な家です。 また、白黒のグリーティングカードも6枚あり、中には「TAM ET PAUL」と書かれたものもありました。
[フレスコ壁画]
デルヴォーは50代の頃、画家としての地位を築き壁画の依頼も受けるようになったそうです。ここにはリエージュ大学の動物学研究所のフレスコ壁画のための習作が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「リエージュ大学動物学研究所のフレスコ《創世記》(1960年)のための下絵」
凸型の板に描かれた作品で、中央に泉があってその周りに白い衣をまとう女性が描かれ、背景には野が広がり水牛やサイ、鹿などがのんびりしています。これは創世記をモチーフにしているようで、タッチ自体はデルヴォーっぽいですがシュルレアリスム的な印象は薄いように見えるかな。(影や泉への反射などにデルヴォーらしさがあるようです) 動物が多く出てくるので動物学の研究所に相応しい画題のようでした。
この近くにはフレスコのために描いた動物や人物の素描もありました。
<第5章 旅の終わり>
最後は晩年のコーナーです。デルヴォーは晩年、徐々に視力を失っていったそうで、汽車や骸骨などのモチーフは見られなくなり、裸婦を大きく描くことが多くなったそうです。晩年の作にはシュルレアリスム的な空間や滑らかな絵肌もないようですが、デルヴォーが一貫した幻想世界そのものといった感じのようで、それまでのある種の緊張感は無くなり平穏で瞑想的な雰囲気が増しているそうです。その後デルヴォーは視力のほとんどを失っても水彩画の制作を続けていたのですが、最愛の妻タムの死を境に筆を置いたようです。ここにはそうした作風の作品が数点並んでいました。
ポール・デルヴォー 「カリュプソー」
カリュプソーは古代ギリシアのオデュッセイアの海の女神で、手前の右に大きく裸婦が描かれています。遠くを見るような表情をしていて、背景には海?と山らしきものがぼんやりと描かれています。たしかにざらついた画面で、淡い色合いが幻想的な雰囲気に見えました。ここまで観てきたどの作品ともだいぶ違う印象を受けます。解説によると、この作品が油彩の最後となったようです。
ここには他に水彩も2点並んでいました。
<出口>
出口にはデルヴォーゆかりの品が並んでいました。オイルランプ、汽車の模型、大きなパレットと沢山の筆、手鏡などで、これは作品の中に出てきたモチーフかも? 資料として中々興味深いです。
ということで、デルヴォーの画風の変遷や主な画題について知ることもでき、非常に満足できる展覧会でした。大型作品が予想以上に良かったので、それだけでも感激できました。今回は図録も購入したので、しばらくデルヴォーに浸っていようと思いますw 今季お勧めの展覧会です。
おまけ:
図録には埼玉県立近代美術館の「森」も載っているので、埼玉への巡回の際には一緒に展示されるかも?
参考記事:MOMASコレクション3 (埼玉県立近代美術館)
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅
【公式サイト】
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/delvaux/index.html
【会場】府中市美術館
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など
【会期】
2012年9月12日(水)~11月11日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
開催して初めての日曜日だったこともあってか、空いていてじっくりと観て周ることができました。
さて、今回の展示はベルギーの幻想の画家ポール・デルヴォーの個展となっています。ポール・デルヴォーは、先日ご紹介したアンソールや有名なシュルレアリスムの画家マグリットと共にベルギーを代表する画家で、裸婦たちが夜の神殿を歩くような不思議な光景を描くことで知られています。今年はベルギーのポール・デルヴォー美術館の開館30周年だそうで、この展示はそこで行われた「ポール・デルヴォー展 - 夢をめぐる旅」という展覧会を元に日本向けに新たに再構成して巡回しているようです。初期から晩年まで5つの章に分けて展示されていましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。
…それにしても「夢にデルヴォー」ってキャッチコピーは面白い。 誰もがツッコミたくなるダジャレのようでよく特徴が出てますw
参考記事:
ジェームズ・アンソール ―写実と幻想の系譜― (損保ジャパン東郷青児美術館)
アントワープ王立美術館コレクション展 (東京オペラシティアートギャラリー)
ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)
ベルギー幻想美術館 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
<冒頭>
まず冒頭にデルヴォーの画風がよく分かる作品がハイライト的に展示されていました。
ポール・デルヴォー 「夜明け」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている作品で、手前に建物の中の白い服の女性が描かれ、戸口の外には布をかぶった裸婦や背景の山が描かれています。モチーフ自体は現実にもありそうなものですが、手前の女性がやけに大きく、奥の女性が極端に小さく見えるなど遠近感が奇妙に感じられます。また、建物には強い光が差し込んでいて明暗は強いものの、何故か細部が平坦に感じられ、全体的にガランとした雰囲気です。それが形而上絵画やシュルレアリスムらしさを感じさせ、夢の中のような独特の世界となっていました。
ここにはデルヴォーの言葉がありました。
「私は一貫して、現実をある種の「夢」として描き表そうとしてきました。事物が本物らしい様相を保ちながらも詩的な意味を帯びている。そんな夢として 作品は登場する事物の全てが必然性をもった虚構の世界となるのです。」
展覧会を一通り観てからもう一度この言葉を読むと、デルヴォーの特徴を端的に表している言葉ではないかと思います。
<第1章 写実主義と印象主義の影響>
1章は初期のコーナーです。ポール・デルヴォーは1897年にベルギー南部の母の実家で生まれ、ブリュッセルで育ちました。弁護士をしていた厳格な父、家庭的な母(ちょっと過保護)、後に弁護士になる弟 といったように芸術とは無縁の家庭だったようですが、少年時代のデルヴォーは内気で黙々と絵を描いていたそうです。
高校を卒業するとデルヴォーは画家を望んだようですが両親に反対され、建築を学ぶ学校に進学しました。しかし、数学で落第して道を失いかけた時、家族の休暇ででかけた街で偶然出会った王室公認の有名画家(フランツ・クルテンス)にデルヴォーの水彩画が激賞されたため、ついに美術学校に入学することが許されたそうです。この頃の作風は写実主義や印象主義の影響を受けた穏やかな風景画が多いようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「グラン・マラドの水門(南側の眺望)」
川と川岸を描いた作品で、これはベルギー南部の生家近くの風景のようです。光が差す明るい画面で、厚塗されている画風はまさに印象派風といった感じです。温かみがあり穏やかな雰囲気の作品でした。
この近くには最初期の美術学校時代の油彩や、正確に描かれたスケッチなどもありました。一見すると印象派っぽいですが、デルヴォーはモネ達 印象派と違って曇りがちな空を描いているそうで、それはベルギーの画家の伝統と言えるそうです。
ポール・デルヴォー 「森の小径」 ★こちらで観られます
両脇にブナの木が立ち並ぶ森の中の一本道を描いた作品です。木々や道には木漏れ日が落ちているようで、光と影の表現が心地よく感じられます。緑が茂っていて爽やかな雰囲気でした。
ポール・デルヴォー 「リュクサンブール駅(未完)」
沢山の貨物列車が並ぶ鉄道の駅を描いた作品です。デルヴォーは子供の頃に駅長になるのが夢だったほどの鉄道好きで、モチーフとしてよく出てきます。この絵は未完成のようで、右半分は色が塗られているのですが左半分は下書きのみです。蒸気の表現や人々の労働の様子などが面白く、ちょっと印象派風にも思えました。解説によると、建物の表現などには建築を学んだ甲斐も感じられるようです。また、製作過程を知る上で貴重な品のようでした。
<第2章 表現主義の影響>
続いては表現主義からの影響についてのコーナーです。
一通りの技術を身につけたデルヴォーは30代を迎える頃、さらに自分らしい表現を身につけようと、有名画家の描き方や流行の画風を次々と取り入れたそうです。その中でも最も影響を受けたのが 細部の描写に拘らず感情を直接的に表そうとする「表現主義」の技法だったようで、これによって内面世界へと表現が深化していったようです。また、私生活では1929年に後の妻となるタムと出会い恋に落ちましたが、両親の反対によって2人の仲は引き裂かれてしまったようです。その為かこの頃は暗い色調の重苦しい雰囲気の絵が多く、喪失感がそのまま出ているそうです。ここにはそうした時期の多彩な画風の作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「森の中の裸体群」
暗い枯れ木の森の中、沢山の裸体の男女が様々なポーズをとっている様子を描いた作品です。人々は大きさもまちまちで、顔はモディリアーニの描く人物のような感じです。全体的に暗いこともあってかちょっと不穏な雰囲気で、どこか異様な光景に見えました。
この辺にあった「ボワフォールの風景」は水彩ですが、幾何学的な描き方や色使いがセザンヌを思わせました。
ポール・デルヴォー 「バラ色の婦人」
手前に肘をついて横たわる裸婦が描かれ、その後ろにも3人の胸を出した女性が描かれています。全体的に茶色がかっていて、後ろの方は背景に溶けこむような感じです。これは当時流行していた表現主義に影響を受けたようで、この頃から裸婦を描くようになったそうです。前の時代に比べるとだいぶ写実から離れた感じがしました。
この辺は裸婦を描いた作品がいくつかありました。確かに画風がよく変わります。
<第3章 シュルレアリスムの影響>
デルヴォーが試行錯誤の時代を脱したきっかけの1つがシュルレアリスムとの出会いだったようです。1920年代にパリで始まったこの運動は1934年にはブリュッセルでも「ミノトール展」という展示が開催され、デルヴォーはデ・キリコやマグリット、ダリ、エルンストらの作品を観て大きな衝撃を受けたようです。そしてその影響からデルヴォーの作品は謎めいた雰囲気が強く漂うようになり、シュルレアリストが好んだ手法を用いるようになったようです。しかしシュルレアリスムの思想や運動からは距離をとり、シュルレアリスムに感化されつつもあくまで独自の画風を作り上げようとしたそうです。ここにはそうしたシュルレアリスムに影響を受けた以降の作品が並んでいました。
参考記事:
シュルレアリスム展 感想前編(国立新美術館)
シュルレアリスム展 感想後編(国立新美術館)
ポール・デルヴォー 「訪問Ⅳ」
ドアを開けて家に入ってくる赤いドレスと羽帽子の女性と、それを迎える緑の服の女性が描かれた作品です。そう説明すると普通の場面のようですが、どこか奇妙に感じられるのが面白い所で、現実のようで非現実な雰囲気です。解説ではお互いに目を見ていないと指摘していたのですが、確かに左の人物はその通りで(右は左の女性を見ているような…)それが奇妙に感じる理由かもしれません。また、平坦な感じもその一因ではないかと思いました。
デルヴォーの作品にはこうした 視線を合わさずちょっとボーっとしてるような感じの無表情な女性がよく出てきます。この後の章でもそうした女性たちが沢山でてきました。
この辺には水彩の習作もありました。
<第4章 ポール・デルヴォーの世界>
続いての4章は最大の見所で、裸婦、機関車、神殿などデルヴォーの作品によく出てくるモチーフごとに5つのコーナーと、フレスコのコーナーに分かれていました。
[欲望の象徴としての女性、男性の居場所]
デルヴォーの描く女性は美しく魅力的でありながら人を寄せ付けない冷たさがあるようです。デルヴォーにとって女性は欲望の象徴でありながら強い恐れを抱く存在であったのではないかと推測されるようで、そうした女性観に特に大きな影響を与えたのは母親と元恋人のタムだったようです。
母親はやや過保護で悪い女性から息子を守ろうとしたため、デルヴォーは思春期に女性に対する抑圧された感情を持ったそうです。一方、タムは初恋の相手で18年後に運命的な再開を果たすのですが、別離直後はその不在を埋めるように執拗に彼女の肖像を描いていたそうです。
また、デルヴォーの作品にはたまに男性も描かれるのですが、これはジュール・ベルヌの小説に出てくるリーデンブロック教授らしく、自分の作品の中で生きたいと考えたデルヴォー自身が姿を変えたものとも考えられるようです。
まずここには鉛筆で描かれたタムの肖像が数点ありました。タムへの手紙などもあり、その存在の大きさが伝わります。
ポール・デルヴォー 「行列」 ★こちらで観られます
大きめの作品で、白い布をまとった裸婦10人くらいが手にランプを持って、静かにこちらに行進してくる様子が描かれています。周りには生垣に囲まれた空き地や電車と線路があり、背景にはレンガ造りの家やまっすぐに生えた木々なども描かれています。1つ1つを観れば現実のようでありながら、無表情で目が死んだような裸婦たちがシュールで、強く印象に残りました。一方でどこか懐かしさを感じるかな。不思議な魅力を持った作品です。
この辺にはタムやダニエルという女性モデルの素描(裸婦像)などもありました。素描は写実的です。また、「リーデンブロック教授の習作」という作品もありました。
[生命の象徴としての骸骨]
デルヴォーが初めて骸骨に出会ったのは小学校の頃だったそうで、生物室の骨格模型を見て衝撃を受けたようです。少年時代には骸骨を非常に恐れていたようですが、後に突如として美しさと表現力を持ったものとして目に映るようになったそうです。
骸骨は死を表すモチーフとして古くから描かれてきましたが、デルヴォーはこれを人体の基本構造と捉えて生命の本質と考えたらしく、生き生きと描かれているようです。ここにはそうした骸骨をモチーフにした作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「会話」 ★こちらで観られます
部屋の中で頬杖をついて左手を差し出す裸婦と、その隣で寄り添うように同じポーズを取る骸骨が描かれています。骸骨はかなり精密に描かれていて、背景には影も写っています。タイトルの示すように会話をしているようにも見えますが、実際の意味する所はよく分かりません。骸骨が親しげな感じに見えるのが面白く、女性も夢見るような表情で目をつぶっているので、どちらかというと明るい雰囲気に思えました。
この辺には磔刑にされた骸骨や骸骨人間を描いた「《磔刑Ⅱ》(1953年)のための習作」や「《キリストの埋葬》(1951年)のための骸骨の習作」などもありました。
[汽車、トラム、駅]
先述したようにデルヴォーは幼い時から電車が好きで、家の窓から路面電車(トラム)を毎日眺め、駅長になるのが夢でした。デルヴォーは後に、電車や汽車は「子供時代そのもの」だったと語っていたようで、子供時代に直結するモチーフのようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
まずこのコーナーの最初には汽車と客車が描かれたビールのコースターや、路面電車(トラム)を描いたスケッチ、電車が出てくる作品の習作などがありました。
ポール・デルヴォー 「トンネル」
これはかなり大きめの作品で、手前に沢山の女性たちがレースの服や帽子で着飾って集まっています。(たまに裸婦も混じっている) その左側には唐突に鏡が置かれ、鏡の前には誰も居ないのに、鏡の中に少女がぽつんと立っています。また、背景の中央にはトンネルへと向かう列車の後部が描かれ、背景の左右にはプラットフォームのようなものや長い階段なども見えます。女性たちが集まっているのにお互いに無関心な感じがする点や遠近感が奇妙で、さらに鏡の少女は何かを訴えるような表情をしているのが強く印象に残りました。
この近くにはこの作品の習作が2点あったのですが、鏡の前に少女が立っていたのが、その次の習作では鏡の中だけになっているのが分かりました。女性たちの配置などもだいぶ変わっているようで、試行錯誤が伺えました。
[建築的要素]
続いてはデルヴォーの作品の背景によく出てくる古代神殿についてのコーナーです。デルヴォーは高校の授業で出会った「オデュッセイア」など古代文学の世界に魅了され、空想の世界に思いを馳せていたそうで、画家となってからはギリシアやイタリアで実物をスケッチすることもあったそうです。しかし作品にする際には街頭や列車と組み合わせ、現実にはない風景としていったようです。ここにはそうした題材の大型作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「夜の使者」 ★こちらで観られます
大きめの正方形の作品で、手前に5人の女性と1人のメガネの紳士が集まり、その足元にはランプが置かれています。背景には下り坂とそこを横切る路面電車、遠くにはギリシア風の神殿のような建物群が描かれています。手前の物思いにふけるような顔の女性や、光を見つめている女性、ボーっとしている女性など 何を考えているのかちょっと意味深で幻想的にすら見える感じが面白いです。背景の世界はデルヴォーの心象風景なのかな? シュールでありながら、どこか現実感があるように思えました。
この辺は水彩の習作が多めでした。
ポール・デルヴォー 「エペソスの集いⅡ」 ★こちらで観られます
手前に赤いソファで寝ている女性、左に裸婦と胸だけ出した女性、右には手鏡を見ている女性と、鏡の枠のようなものが唐突に直立しています。その背景には路面電車と街頭、奥には古代の神殿のような建物群と海があり、これがエペソス(ギリシアの都市)のタイトルの由来のようです。暗い中で女性たちの肌が白く明るく描かれ、少し妖しい雰囲気があるかな。右の女性の手鏡には何も映らず、枠だけの鏡には若干の反射があるなど謎だらけですが、夢のなかにいるような懐かしいような気分になりました。これはかなり良かったのですが、ベルギーでは切手にもなったほどの有名作のようです。
[ルーツとしての過去のオブジェ]
続いてはデルヴォーの家をモチーフにした作品のコーナーです。デルヴォーはベルギーのアンテイにある生家を繰り返し描いていたようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「アンテイの台所」
これはデルヴォーの家の台所を描いた作品で、細かいところまで家の様子が再現されています。しかしこれは記憶を辿って描いているそうで、画風としては特にシュールなところはないように見えるのかな。すっきりした印象を受けます。 解説によると、画中のランプなどは子供の頃から身近だったものらしく、その後重要なモチーフとなったようです。
ここには他に生家を正面から描いた作品が2点ありました。赤い屋根に白い壁で中々立派な家です。 また、白黒のグリーティングカードも6枚あり、中には「TAM ET PAUL」と書かれたものもありました。
[フレスコ壁画]
デルヴォーは50代の頃、画家としての地位を築き壁画の依頼も受けるようになったそうです。ここにはリエージュ大学の動物学研究所のフレスコ壁画のための習作が並んでいました。
ポール・デルヴォー 「リエージュ大学動物学研究所のフレスコ《創世記》(1960年)のための下絵」
凸型の板に描かれた作品で、中央に泉があってその周りに白い衣をまとう女性が描かれ、背景には野が広がり水牛やサイ、鹿などがのんびりしています。これは創世記をモチーフにしているようで、タッチ自体はデルヴォーっぽいですがシュルレアリスム的な印象は薄いように見えるかな。(影や泉への反射などにデルヴォーらしさがあるようです) 動物が多く出てくるので動物学の研究所に相応しい画題のようでした。
この近くにはフレスコのために描いた動物や人物の素描もありました。
<第5章 旅の終わり>
最後は晩年のコーナーです。デルヴォーは晩年、徐々に視力を失っていったそうで、汽車や骸骨などのモチーフは見られなくなり、裸婦を大きく描くことが多くなったそうです。晩年の作にはシュルレアリスム的な空間や滑らかな絵肌もないようですが、デルヴォーが一貫した幻想世界そのものといった感じのようで、それまでのある種の緊張感は無くなり平穏で瞑想的な雰囲気が増しているそうです。その後デルヴォーは視力のほとんどを失っても水彩画の制作を続けていたのですが、最愛の妻タムの死を境に筆を置いたようです。ここにはそうした作風の作品が数点並んでいました。
ポール・デルヴォー 「カリュプソー」
カリュプソーは古代ギリシアのオデュッセイアの海の女神で、手前の右に大きく裸婦が描かれています。遠くを見るような表情をしていて、背景には海?と山らしきものがぼんやりと描かれています。たしかにざらついた画面で、淡い色合いが幻想的な雰囲気に見えました。ここまで観てきたどの作品ともだいぶ違う印象を受けます。解説によると、この作品が油彩の最後となったようです。
ここには他に水彩も2点並んでいました。
<出口>
出口にはデルヴォーゆかりの品が並んでいました。オイルランプ、汽車の模型、大きなパレットと沢山の筆、手鏡などで、これは作品の中に出てきたモチーフかも? 資料として中々興味深いです。
ということで、デルヴォーの画風の変遷や主な画題について知ることもでき、非常に満足できる展覧会でした。大型作品が予想以上に良かったので、それだけでも感激できました。今回は図録も購入したので、しばらくデルヴォーに浸っていようと思いますw 今季お勧めの展覧会です。
おまけ:
図録には埼玉県立近代美術館の「森」も載っているので、埼玉への巡回の際には一緒に展示されるかも?
参考記事:MOMASコレクション3 (埼玉県立近代美術館)
参照記事:★この記事を参照している記事
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先週の金曜日の会社帰りにレイトショーで映画「アベンジャーズ」を観てきました。この映画には2Dと3Dがあり、私が観たのは2Dのほうでした。

【作品名】
アベンジャーズ
【公式サイト】
http://www.marvel-japan.com/movies/avengers/home.html
【時間】
2時間20分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_③_4_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_③_4_5_名作
【感想】
公開終了間近の映画なので、ほとんど貸切じゃないか?というくらい空いていました。こういうジャンクフードみたいな映画こそ大画面の映画館で観たいので、独占状態で見られるのはありがたいw
さて、この映画はマーヴェル・コミックス原作の映画で、アイアンマン、ハルク、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカという4人のアメコミヒーローが共闘するという内容です。アイアンマンの映画でもアヴェンジャーズというチームの構想についてチラホラと匂わしていたので、いずれやるのだろうと予想していましたが、4人とも映画が出揃ったことで満を持しての登場と言った感じです。映画の主人公が4人もいて「日本よ、これが映画だ」なんて挑戦的なキャッチコピーも話題になったので、どれだけ力を入れてきたのか!?と期待していました。
私はキャプテン・アメリカはまだ観ていないのですが、4人についての基本的なキャラ付けについては全くというほど説明がないので、いずれかのシリーズを観ていないとあまり楽しめないと思われます。
参考記事:
映画「マイティ・ソー」 (ネタバレなし)
映画「アイアンマン2」(ネタバレ無し)
肝心の内容はというと、ハッキリ言って凡作です。 ストーリーが単純過ぎる上にテンポが悪いので、前半はダレ気味に感じました。むしろこの4人以外のメンバーが主人公みたいな所もあるので、船頭多くして船山に登ると言う感じかな。ヒーローたちの個性を強調するのに腐心している感じはしましたが、時間かけ過ぎ…。アクションや映像は相変わらず凄いのですが、見所はそれだけで、中盤以降のご都合主義的な展開なども含めてストーリーと敵がどうにもショボかったです。
ということで、DVDかテレビで観れば十分だったように思います。壮大な構想だった割には個々の作品のほうが面白いように思います。 以前はマーヴェルの映画はハズレ無しと思っていましたが、最近は微妙な感じかな。ちなみにこの映画の最後にアイアンマン3の予告をしていました。今回のメンバーの中ではあのシリーズが一番面白いので、挽回に期待です。

【作品名】
アベンジャーズ
【公式サイト】
http://www.marvel-japan.com/movies/avengers/home.html
【時間】
2時間20分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_③_4_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_③_4_5_名作
【感想】
公開終了間近の映画なので、ほとんど貸切じゃないか?というくらい空いていました。こういうジャンクフードみたいな映画こそ大画面の映画館で観たいので、独占状態で見られるのはありがたいw
さて、この映画はマーヴェル・コミックス原作の映画で、アイアンマン、ハルク、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカという4人のアメコミヒーローが共闘するという内容です。アイアンマンの映画でもアヴェンジャーズというチームの構想についてチラホラと匂わしていたので、いずれやるのだろうと予想していましたが、4人とも映画が出揃ったことで満を持しての登場と言った感じです。映画の主人公が4人もいて「日本よ、これが映画だ」なんて挑戦的なキャッチコピーも話題になったので、どれだけ力を入れてきたのか!?と期待していました。
私はキャプテン・アメリカはまだ観ていないのですが、4人についての基本的なキャラ付けについては全くというほど説明がないので、いずれかのシリーズを観ていないとあまり楽しめないと思われます。
参考記事:
映画「マイティ・ソー」 (ネタバレなし)
映画「アイアンマン2」(ネタバレ無し)
肝心の内容はというと、ハッキリ言って凡作です。 ストーリーが単純過ぎる上にテンポが悪いので、前半はダレ気味に感じました。むしろこの4人以外のメンバーが主人公みたいな所もあるので、船頭多くして船山に登ると言う感じかな。ヒーローたちの個性を強調するのに腐心している感じはしましたが、時間かけ過ぎ…。アクションや映像は相変わらず凄いのですが、見所はそれだけで、中盤以降のご都合主義的な展開なども含めてストーリーと敵がどうにもショボかったです。
ということで、DVDかテレビで観れば十分だったように思います。壮大な構想だった割には個々の作品のほうが面白いように思います。 以前はマーヴェルの映画はハズレ無しと思っていましたが、最近は微妙な感じかな。ちなみにこの映画の最後にアイアンマン3の予告をしていました。今回のメンバーの中ではあのシリーズが一番面白いので、挽回に期待です。
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先週に土曜日に新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で「アントワープ王立美術館所蔵 ジェームズ・アンソール ―写実と幻想の系譜―」を観てきました。

【展覧名】
アントワープ王立美術館所蔵 ジェームズ・アンソール ―写実と幻想の系譜―
【公式サイト】
http://www.nhk-p.co.jp/tenran/20120414_130813.html
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html
【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2012年9月8日(土)~11月11日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展覧会はベルギー近代絵画を代表する画家の1人、ジェームズ・アンソールを中心にした展示です。結論から言うと、これはアンソールの個展というほどでもなく、アンソールの周辺の画家や影響を与えた画家の作品が多数でした。その中にはルーベンスやピーテル・ブリューゲル(子)の作品もあるので、それはそれで見応えがあるのですが、今回の記事ではアンソールを中心にご紹介していこうと思います。
まず冒頭に簡単な説明がありました。ジェームズ・アンソール(1860年~1949年)は「仮面の画家」とも称され、仮面や怪物、骸骨といったグロテスクなモチーフや、地元オステンドのカーニヴァルの情景を華麗な色彩で描きました。当時はあまりに斬新かつ個性的な画風のため、世間に受け入れられなかったようですが、その後 表現主義やシュルレアリスム運動に影響を与えていきます。また、その一方では、伝統的なフランドル絵画や19世紀フランス印象派に影響を受けていたらしく、今回の展示ではそうした画家の作品も展示されています。展覧会は2つの章といくつかの節に分かれていましたので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
参考記事:
アントワープ王立美術館コレクション展 (東京オペラシティアートギャラリー)
ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)
ベルギー幻想美術館 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
<第1章 写実と反アカデミズム>
まずは反アカデミスムについてのコーナーで、神話や歴史画のための手段として写実的に描くアカデミーに対して、見たものをありのままに描く写実主義(レアリスム。クールベやマネらの動き)について取り上げています。
アンソールは1877年~1880年までブリュッセルの美術アカデミーで学んだのですが、当時の学長のジャン・フランソワ・ポルタールスは進歩的な考えの持ち主だったようです(後に結成された革新的な美術グループ「二十人会」のメンバーのほとんどがポルタールスの教え子だったそうなので、理解ある教育者だったようです。) しかしアンソールはアカデミーを必要悪としてその価値観に反感を抱いていたらしく、陰影で3次元的に表現することなどを学んだものの重要とは考えていなかったようです。ここにはそうしたアンソールのアカデミー時代の作品などが展示されていました。
[1-1 アンソールの美術アカデミーにおける古典的描写方法の習得]
まずは古典的描写に関するコーナーです。
ペーテル・パウル・ルーベンス 「ミネルヴァ」 ★こちらで観られます
これはフランドルの巨匠ルーベンスの作品で、鎧のミネルヴァが裸の女性の怪物に槍を突き刺しているシーンが描かれています。解説によるとこの女性は性欲、妬み、無知、不和を象徴しているらしく、美と醜の対比となっているようです。あまり大きな作品ではなかったですが、生き生きとした肉体表現などは流石でした。
アンソールはルーベンスから構図や色彩などを学んでいるようで、この辺にはルーベンスの模写なども展示されていました。また、アンソールのアカデミー時代の歴史画の素描やアントワープのアカデミーの学長の作品なども並んでいます。
[1-2 外光主義(プレネリスム)]
以前は風景画でも屋内で描かれていましたが、19世紀には戸外で実景を観察し戸外で制作する外光主義の画家が現れました。外光主義の画家たちは、17世紀のオランダ風景画家や風俗画家にその先駆を見出し、彼らを理想としていたようです。アンソールの作品にも同様の賞賛が見られるそうで、ここには外光主義の作品などが並んでいます。
ギュスターヴ・クールベ 「オルナンの岩」
岩の崖と合間の川を描いた作品です。ちょっとぼやけているように見えますが写実的で、水の流れなどその場の雰囲気がよく出ています。解説によると、アンソールの初期にはクールベの独特のマチエールのような扱いが見られるそうで、クールベはレンブラントに匹敵すると讃えていたそうです。
この辺にはベルギーの印象派の作品などもありました。また、少し進むとターナーを模写したアンソールの作品などもあります。
ジェームズ・アンソール 「白い雲」 ★こちらで観られます
海とその上に浮かぶ白い雲を描いた作品で、これはパレットナイフで描かれているそうです。その為、ざらついた感じで厚塗されていて、構図はシンプルな感じに見えました。
なお、これは24歳の頃の作品で、20歳でアカデミーを去って故郷のオステンドに戻っていたそうです。
この辺は海を描いた作品が何点かありました。写実的に描いていた時期は短いのだとか。
ジェームズ・アンソール 「フランドル通りの音楽」
見下ろす視点で街の中を沢山の人達が隊列のようになってパレードしている?様子を描いた作品です。直線直角の多い構成で色もはっきりしているので、アンソールの他の作品と比べてだいぶ違う画風に見えました。解説ではぎこちなく素人が描いたような感じとのことでしたが、この頃のアンソールは群衆を描くことに興味を持っていたようです。こんな画風もあったのかとちょっと驚きでした。
この近くには光輝主義(リュミニスム)のエミール・クラウスの作品などもありました。
参考記事:フランダースの光 ベルギーの美しき村を描いて (Bunkamuraザ・ミュージアム)
解説機ではこの辺でアンソールが作曲した曲も聴くことができました。軽やかで楽しげな感じです。アンソールの作曲に関しては最後あたりで紹介されていますので、詳しくは後ほど。
[1-3 アンソールとブリュッセルの仲間たちによる写実的な静物画と肖像画]
アンソールとその周辺の画家は、17世紀のオランダの画家を理想の画家として見出していたらしく、特に肖像や静物に影響が色濃く見られるようです。しかし、重視したのはその写実性ではなく、反理想主義的な性格だったそうです。ここにはそうした静物画・肖像画が並んでいました。
ジェームズ・アンソール 「シノワズリー(または大きなシノワズリー、団扇と織物)」
団扇や花瓶を描いた静物画です。ぼんやりした感じではっきりとは分かりませんが、日本の団扇じゃないかな? ちょっと幻想的な感じにも見えます。
解説によると、アンソールは日本・中国・朝鮮の品をすべてシノワズリー(中国趣味)と不正確に呼んでいたそうで、最初はその色合いに惹かれていたそうですが、やがて奇怪な仮面や架空の生き物に心惹かれるようになったそうです。
ここには他に17世紀の静物やアンソールの静物2点、仲間の作品などもありました。
ジェームズ・アンソール 「花と野菜」
テーブルに乗った沢山の野菜や花瓶に入った花々を描いた作品で、中でも赤い茎の野菜とヒマワリの花が目を引きます。花を頂点に三角形になった構図で、背景は赤や青が混じった幻想的な雰囲気でした。また、野菜は黒い輪郭で描かれているのに対して花は輪郭が無いなど描き方に違いがあるようで面白かったです。
この先は肖像のコーナーです。17世紀の肖像画や、アンソールによるフェルディナント・ボルの作品(以前はレンブラントとされていた作品)の模写、フランス・ハルスの模写などが並んでいました。
ジェームズ・アンソール 「青いショールの老夫人(画家の祖母)」
手を組んで座る青いショールを羽織った老女を描いた作品で、これはアンソールの祖母のようです。理想化されることなくちょっと力ない感じに見えるかな。この祖母は仮面をつけたカーニヴァルが好きだったそうで、アンソールが子供の頃に祖母がつけていたカーニヴァルの仮面はアンソールの記憶に残り、そうした環境が芸術家としての素養となっているようです。
この辺は仲間の肖像画やヴュイヤールの作品などもありました。
[1-4 画家は近代の真の英雄である]
続いては画家の自画像や、画家仲間・思想家などを描いた肖像が並んだコーナーです。
ジェームズ・アンソール 「イーゼルに向かう自画像」 ★こちらで観られます
筆を持って絵に向かった画家自身を描いた作品で、振り返ってこちらを見ています。(これは鏡を使って描いているらしく、30歳頃の姿だそうです。) 解説によるとアンソールは自画像をよく描いていたそうですが、自意識を顕示するかのように描いていたようで、この絵でも身なりの良いブルジョワとして描いています。どことなくよそよそしいとも解釈されていましたが、確かに親しみを持てる感じではないかな。また、この構図と色彩はホイッスラーからの影響だそうです。これについては私はそう感じることはできませんでしたが…。
この辺にはアンリ・ファンタン=ラトゥールの「自画像のための習作」などもありました。こちらは明暗表現が好みでした。
[1-5 近代生活のイメージ]
続いては近代の風俗を描いたコーナーです。
アルフレッド・ステヴァンス 「絶望的な女」
椅子に座った貴族かブルジョワの女性が描かれた作品です。この画家は19世紀後半にベルギーで人気だった画家で、かなり写実的な画風で描かれています。女性は手紙を読んだ後らしく、ぼんやりと宙を眺めていてショックを受けている感じが伝わってきます。また、肌や装飾品には質感が感じられました。解説によると、アンソールは最初はこの画家に興味を持ったようですが、後に卑猥で凡庸などと酷評したそうです。 素人目には良い絵に見えるんですけどねえ…。
ジェームズ・アンソール 「オステンドの昼食後(またはオステンドの午後)」
室内でテーブルに向かって座る2人の女性を描いた作品で、1人はカップを持ち、1人は帽子をかぶって余所見している感じです。明暗が強めで暗い所は曖昧になっているかな。日常生活を垣間見たような光景で、2人はあまり会話も無さそうな感じに見えました。
この近くには素描などもありました。
ジェームズ・アンソール 「牡蠣を食べる女(または色彩の国にて)」 ★こちらで観られます
白いテーブルに向かって牡蠣を食べる女性と、テーブルの上に乗った沢山のガラス瓶や花束、食器などが描かれた作品で、背景の棚?には鏡もあります。瓶の透き通る感じや 様々な色の花のせいか、全体的に明るい画面に見えるかな。アンソールはこの頃、色彩上での光の効果に関心を示していたそうで、確かに色彩と光に力を入れているのを感じる作品でした。
[1-6 貧しき人々の尊厳]
続いては貧しい人々を描いたコーナーです。
ジェームズ・アンソール 「漕ぎ手(または渡し守)」
こちらを向いてボートを漕いでいる帽子の男性が描かれた作品で、背景には霧に霞む海が描かれています。男性の目の辺りは眼帯をつけているかのように縁取られていて、顔は無表情です。この人物は貧しい身分の男性と思われますが、堂々として威厳が感じられました。
ここにも17世紀の作品と19世紀の作品が何点かづつ並んでいます。
<第2章 グロテスク絵画に向けて>
アンソールが画家になって5年間は日常の現実を極めて詳細に描いていたそうですが、二十人会が開催した展覧会でルノワール、モネ、ルドン、スーラ、ゴーギャン、ゴッホなどの作品と出会い、何らかの影響を受けたようです。他の画家たちとは違いアンソールはそうした絵画に追従することはなかったようですが、重要な影響を受けたのは間違いないようで、アンソールの新しい絵画は現実的であると同時に奇妙でグロテスクと言えるものとなっていったようです。この章ではいくつかの節に分解してグロテスクに向けた作品が並んでいました。
まずこの章の始めの方にアンソールに影響を与えたものについて解説されていました。
レンブラント
→神秘的で劇的な光の表現
ルーベンス、ドラクロワ
→表情豊かな輪郭線
ジャポニスム、シノワズリ、初期フランドル美術
→非現実・奇怪な生物のモチーフ
14・15世紀に描かれた「死の舞踏」など
→骸骨のモチーフ
イタリアの仮面劇、カーニヴァル、地元オステンドの土産物など
→仮装・仮面のモチーフ
[2-1 光の感受性]
ここにはレンブラントの模写が2点並んでいました。
アンソールは1880年代半ば以降に宗教的な主題に回帰すると共に、光と線を異なった角度から見つめ直し、そこでレンブラントを参照して劇的な光の表現を学んだそうです。
[2-2 線の感受性]
ここはルーベンスの銅版画などが並んでいました。ライオンが描かれた作品が多いかな。ドラクロワの模写などもあります。
[2-3 ジャポニスム]
ここは「日本の木版画の模写'武者'」という作品のみでした。アンソールによる模写ですが、結構日本らしい雰囲気が出ています。
[2-4 創造手段としてのあやかし]
ここは小さな「怪物のいるフリーズ」という作品のみでした。怪物というか抽象画みたいな感じかな。
アンソールは1886年頃にルドンの影響を受け、写実絵画に代わるものを求めていたようです。確かにアンソールはルドンと通じるものを感じます。
[2-5 アンソール芸術における"死の舞踏"とその他の骸骨]
ここは骸骨を主題にした戯画的な作品が2~3点ほどありました。
ジェームズ・アンソール 「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」 ★こちらで観られます
中心に首を吊った人物が描かれ、その前で2人の骸骨がハタキやモップのようなものを持って争い、その間には1人仰向けに倒れています。両脇にはドアから沢山の人々がカーニヴァルの仮面をつけて様子を観ていて、グロテスクさと滑稽さを感じます。解説によると、首吊りの死体は自画像らしく、3人の骸骨たちは祖母・母親・叔母という説や、妹やアンソールの愛人など周りの人々であるという説もあるそうです。骸骨や首吊りなど不吉なモチーフなのに、どこか楽しげなのが印象的な作品でした。
ジェームズ・アンソール 「絵を描く骸骨」 ★こちらで観られます
セルフポートレートを元に描いた作品で、イーゼルに向かったスーツ姿の骸骨が絵を描いている様子が描かれています。しかしイーゼルにはキャンバスがなく宙に描いている感じに見えるかな。また、周りには沢山の絵が置かれていて、所々に骸骨や仮面が転がっていました。明るめの色と描かれているもののギャップが面白い作品です。
[2-6 仮装]
ジェームズ・アンソール 「愛の園」
仮装した男女が集まるパーティーの様子?を描いた作品です。背景には燃え立つようにピンク・紫・青が混ざり合った空間があり、幻想的な雰囲気です。ちょっとぼんやりして抽象的な感じすらしました。
この近くには似た雰囲気の作品もありました。
[2-7 カリカチュア、悪魔、仮面]
ここはカリカチュア(風刺画・戯画)や幻想的な作品が並ぶコーナーで、今回の展示で最も見所と言えそうです。
ジェームズ・アンソール 「陰謀」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、アンソールの中でも最も有名な仮面の絵だそうです。沢山の仮面の人物たちが並んでいる様子が描かれていて、これはカーニヴァルの陰謀遊びに着想を得ているのでこうしたタイトルになっているようです。誇張された表情をした仮面でちょっと怖いようにも思いますが、右にいる骸骨?のような仮面はやけに楽しそうに見えたりと、憎めない感じです。明るい色彩で、その色の取り合わせの為か華やかさとグロテスクの両面が感じられました。
ここにはピーテル・ブリューゲル(子)の小さめの作品(★こちらで観られます)もありました。諺を描いたもので、これも滑稽で面白い作品です。
[2-8 プリミティヴィスム いわゆる15世紀の初期フランドル美術の再発見]
ここはキリスト関連の作品が並んでいました。
ジェームズ・アンソール 「悲しみの人」 ★こちらで観られます
ここまで観てきた作品と一線を画するような大胆なタッチで描かれた作品で、キリストを描いているはずですが、まるで日本の鬼のような表情をしています。背景は赤く染まり、口を開いて歯を見せる顔は苦悶のようにも見えました。これは中々インパクトのある作品です。
この辺りにもピーテル・ブリューゲル(子)の「七つの善行」(★こちらで観られます)という作品があり、これはこれで見応えがあります。
[2-9 風刺]
続いては風刺画のコーナーです。
ジェームズ・アンソール 「ワーテルローの機甲部隊」
物凄い数の兵士たちが戦っている様子が描かれている作品で、所々に煙がたち激しい戦闘であることが伺えます。簡素な画風で描かれているのですが、みっしりとした群衆表現が面白かったです。
最後には音楽に関するコーナーもありました。アンソールは幼い頃から音楽好きで自分でも作曲していたようです。しかし、楽譜を読むことも書くことも出来なかったようなので、当時の流行音楽の派生と考えられるようです。最後の部屋の中央に楽譜があったのは他の人が書いたのかな?? 解説機ではその音楽を聴くこともできました。結構単純なメロディが繰り返される感じでした。
ということで、予想外に良い作品にも出会えたのですが、構成がいまいち分からずアンソールについては断片的にしか理解できませんでした。画風も結構変るので、このタイトルならもう少しアンソールに絞って欲しかったかな…。とは言え、私が理屈好きなだけなので、感性が豊かな人には琴線に触れるものがあると思います。「陰謀」など名品がありますので気になる方はチェックしてみてください。
参照記事:★この記事を参照している記事


【展覧名】
アントワープ王立美術館所蔵 ジェームズ・アンソール ―写実と幻想の系譜―
【公式サイト】
http://www.nhk-p.co.jp/tenran/20120414_130813.html
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html
【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2012年9月8日(土)~11月11日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展覧会はベルギー近代絵画を代表する画家の1人、ジェームズ・アンソールを中心にした展示です。結論から言うと、これはアンソールの個展というほどでもなく、アンソールの周辺の画家や影響を与えた画家の作品が多数でした。その中にはルーベンスやピーテル・ブリューゲル(子)の作品もあるので、それはそれで見応えがあるのですが、今回の記事ではアンソールを中心にご紹介していこうと思います。
まず冒頭に簡単な説明がありました。ジェームズ・アンソール(1860年~1949年)は「仮面の画家」とも称され、仮面や怪物、骸骨といったグロテスクなモチーフや、地元オステンドのカーニヴァルの情景を華麗な色彩で描きました。当時はあまりに斬新かつ個性的な画風のため、世間に受け入れられなかったようですが、その後 表現主義やシュルレアリスム運動に影響を与えていきます。また、その一方では、伝統的なフランドル絵画や19世紀フランス印象派に影響を受けていたらしく、今回の展示ではそうした画家の作品も展示されています。展覧会は2つの章といくつかの節に分かれていましたので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
参考記事:
アントワープ王立美術館コレクション展 (東京オペラシティアートギャラリー)
ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)
ベルギー幻想美術館 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
<第1章 写実と反アカデミズム>
まずは反アカデミスムについてのコーナーで、神話や歴史画のための手段として写実的に描くアカデミーに対して、見たものをありのままに描く写実主義(レアリスム。クールベやマネらの動き)について取り上げています。
アンソールは1877年~1880年までブリュッセルの美術アカデミーで学んだのですが、当時の学長のジャン・フランソワ・ポルタールスは進歩的な考えの持ち主だったようです(後に結成された革新的な美術グループ「二十人会」のメンバーのほとんどがポルタールスの教え子だったそうなので、理解ある教育者だったようです。) しかしアンソールはアカデミーを必要悪としてその価値観に反感を抱いていたらしく、陰影で3次元的に表現することなどを学んだものの重要とは考えていなかったようです。ここにはそうしたアンソールのアカデミー時代の作品などが展示されていました。
[1-1 アンソールの美術アカデミーにおける古典的描写方法の習得]
まずは古典的描写に関するコーナーです。
ペーテル・パウル・ルーベンス 「ミネルヴァ」 ★こちらで観られます
これはフランドルの巨匠ルーベンスの作品で、鎧のミネルヴァが裸の女性の怪物に槍を突き刺しているシーンが描かれています。解説によるとこの女性は性欲、妬み、無知、不和を象徴しているらしく、美と醜の対比となっているようです。あまり大きな作品ではなかったですが、生き生きとした肉体表現などは流石でした。
アンソールはルーベンスから構図や色彩などを学んでいるようで、この辺にはルーベンスの模写なども展示されていました。また、アンソールのアカデミー時代の歴史画の素描やアントワープのアカデミーの学長の作品なども並んでいます。
[1-2 外光主義(プレネリスム)]
以前は風景画でも屋内で描かれていましたが、19世紀には戸外で実景を観察し戸外で制作する外光主義の画家が現れました。外光主義の画家たちは、17世紀のオランダ風景画家や風俗画家にその先駆を見出し、彼らを理想としていたようです。アンソールの作品にも同様の賞賛が見られるそうで、ここには外光主義の作品などが並んでいます。
ギュスターヴ・クールベ 「オルナンの岩」
岩の崖と合間の川を描いた作品です。ちょっとぼやけているように見えますが写実的で、水の流れなどその場の雰囲気がよく出ています。解説によると、アンソールの初期にはクールベの独特のマチエールのような扱いが見られるそうで、クールベはレンブラントに匹敵すると讃えていたそうです。
この辺にはベルギーの印象派の作品などもありました。また、少し進むとターナーを模写したアンソールの作品などもあります。
ジェームズ・アンソール 「白い雲」 ★こちらで観られます
海とその上に浮かぶ白い雲を描いた作品で、これはパレットナイフで描かれているそうです。その為、ざらついた感じで厚塗されていて、構図はシンプルな感じに見えました。
なお、これは24歳の頃の作品で、20歳でアカデミーを去って故郷のオステンドに戻っていたそうです。
この辺は海を描いた作品が何点かありました。写実的に描いていた時期は短いのだとか。
ジェームズ・アンソール 「フランドル通りの音楽」
見下ろす視点で街の中を沢山の人達が隊列のようになってパレードしている?様子を描いた作品です。直線直角の多い構成で色もはっきりしているので、アンソールの他の作品と比べてだいぶ違う画風に見えました。解説ではぎこちなく素人が描いたような感じとのことでしたが、この頃のアンソールは群衆を描くことに興味を持っていたようです。こんな画風もあったのかとちょっと驚きでした。
この近くには光輝主義(リュミニスム)のエミール・クラウスの作品などもありました。
参考記事:フランダースの光 ベルギーの美しき村を描いて (Bunkamuraザ・ミュージアム)
解説機ではこの辺でアンソールが作曲した曲も聴くことができました。軽やかで楽しげな感じです。アンソールの作曲に関しては最後あたりで紹介されていますので、詳しくは後ほど。
[1-3 アンソールとブリュッセルの仲間たちによる写実的な静物画と肖像画]
アンソールとその周辺の画家は、17世紀のオランダの画家を理想の画家として見出していたらしく、特に肖像や静物に影響が色濃く見られるようです。しかし、重視したのはその写実性ではなく、反理想主義的な性格だったそうです。ここにはそうした静物画・肖像画が並んでいました。
ジェームズ・アンソール 「シノワズリー(または大きなシノワズリー、団扇と織物)」
団扇や花瓶を描いた静物画です。ぼんやりした感じではっきりとは分かりませんが、日本の団扇じゃないかな? ちょっと幻想的な感じにも見えます。
解説によると、アンソールは日本・中国・朝鮮の品をすべてシノワズリー(中国趣味)と不正確に呼んでいたそうで、最初はその色合いに惹かれていたそうですが、やがて奇怪な仮面や架空の生き物に心惹かれるようになったそうです。
ここには他に17世紀の静物やアンソールの静物2点、仲間の作品などもありました。
ジェームズ・アンソール 「花と野菜」
テーブルに乗った沢山の野菜や花瓶に入った花々を描いた作品で、中でも赤い茎の野菜とヒマワリの花が目を引きます。花を頂点に三角形になった構図で、背景は赤や青が混じった幻想的な雰囲気でした。また、野菜は黒い輪郭で描かれているのに対して花は輪郭が無いなど描き方に違いがあるようで面白かったです。
この先は肖像のコーナーです。17世紀の肖像画や、アンソールによるフェルディナント・ボルの作品(以前はレンブラントとされていた作品)の模写、フランス・ハルスの模写などが並んでいました。
ジェームズ・アンソール 「青いショールの老夫人(画家の祖母)」
手を組んで座る青いショールを羽織った老女を描いた作品で、これはアンソールの祖母のようです。理想化されることなくちょっと力ない感じに見えるかな。この祖母は仮面をつけたカーニヴァルが好きだったそうで、アンソールが子供の頃に祖母がつけていたカーニヴァルの仮面はアンソールの記憶に残り、そうした環境が芸術家としての素養となっているようです。
この辺は仲間の肖像画やヴュイヤールの作品などもありました。
[1-4 画家は近代の真の英雄である]
続いては画家の自画像や、画家仲間・思想家などを描いた肖像が並んだコーナーです。
ジェームズ・アンソール 「イーゼルに向かう自画像」 ★こちらで観られます
筆を持って絵に向かった画家自身を描いた作品で、振り返ってこちらを見ています。(これは鏡を使って描いているらしく、30歳頃の姿だそうです。) 解説によるとアンソールは自画像をよく描いていたそうですが、自意識を顕示するかのように描いていたようで、この絵でも身なりの良いブルジョワとして描いています。どことなくよそよそしいとも解釈されていましたが、確かに親しみを持てる感じではないかな。また、この構図と色彩はホイッスラーからの影響だそうです。これについては私はそう感じることはできませんでしたが…。
この辺にはアンリ・ファンタン=ラトゥールの「自画像のための習作」などもありました。こちらは明暗表現が好みでした。
[1-5 近代生活のイメージ]
続いては近代の風俗を描いたコーナーです。
アルフレッド・ステヴァンス 「絶望的な女」
椅子に座った貴族かブルジョワの女性が描かれた作品です。この画家は19世紀後半にベルギーで人気だった画家で、かなり写実的な画風で描かれています。女性は手紙を読んだ後らしく、ぼんやりと宙を眺めていてショックを受けている感じが伝わってきます。また、肌や装飾品には質感が感じられました。解説によると、アンソールは最初はこの画家に興味を持ったようですが、後に卑猥で凡庸などと酷評したそうです。 素人目には良い絵に見えるんですけどねえ…。
ジェームズ・アンソール 「オステンドの昼食後(またはオステンドの午後)」
室内でテーブルに向かって座る2人の女性を描いた作品で、1人はカップを持ち、1人は帽子をかぶって余所見している感じです。明暗が強めで暗い所は曖昧になっているかな。日常生活を垣間見たような光景で、2人はあまり会話も無さそうな感じに見えました。
この近くには素描などもありました。
ジェームズ・アンソール 「牡蠣を食べる女(または色彩の国にて)」 ★こちらで観られます
白いテーブルに向かって牡蠣を食べる女性と、テーブルの上に乗った沢山のガラス瓶や花束、食器などが描かれた作品で、背景の棚?には鏡もあります。瓶の透き通る感じや 様々な色の花のせいか、全体的に明るい画面に見えるかな。アンソールはこの頃、色彩上での光の効果に関心を示していたそうで、確かに色彩と光に力を入れているのを感じる作品でした。
[1-6 貧しき人々の尊厳]
続いては貧しい人々を描いたコーナーです。
ジェームズ・アンソール 「漕ぎ手(または渡し守)」
こちらを向いてボートを漕いでいる帽子の男性が描かれた作品で、背景には霧に霞む海が描かれています。男性の目の辺りは眼帯をつけているかのように縁取られていて、顔は無表情です。この人物は貧しい身分の男性と思われますが、堂々として威厳が感じられました。
ここにも17世紀の作品と19世紀の作品が何点かづつ並んでいます。
<第2章 グロテスク絵画に向けて>
アンソールが画家になって5年間は日常の現実を極めて詳細に描いていたそうですが、二十人会が開催した展覧会でルノワール、モネ、ルドン、スーラ、ゴーギャン、ゴッホなどの作品と出会い、何らかの影響を受けたようです。他の画家たちとは違いアンソールはそうした絵画に追従することはなかったようですが、重要な影響を受けたのは間違いないようで、アンソールの新しい絵画は現実的であると同時に奇妙でグロテスクと言えるものとなっていったようです。この章ではいくつかの節に分解してグロテスクに向けた作品が並んでいました。
まずこの章の始めの方にアンソールに影響を与えたものについて解説されていました。
レンブラント
→神秘的で劇的な光の表現
ルーベンス、ドラクロワ
→表情豊かな輪郭線
ジャポニスム、シノワズリ、初期フランドル美術
→非現実・奇怪な生物のモチーフ
14・15世紀に描かれた「死の舞踏」など
→骸骨のモチーフ
イタリアの仮面劇、カーニヴァル、地元オステンドの土産物など
→仮装・仮面のモチーフ
[2-1 光の感受性]
ここにはレンブラントの模写が2点並んでいました。
アンソールは1880年代半ば以降に宗教的な主題に回帰すると共に、光と線を異なった角度から見つめ直し、そこでレンブラントを参照して劇的な光の表現を学んだそうです。
[2-2 線の感受性]
ここはルーベンスの銅版画などが並んでいました。ライオンが描かれた作品が多いかな。ドラクロワの模写などもあります。
[2-3 ジャポニスム]
ここは「日本の木版画の模写'武者'」という作品のみでした。アンソールによる模写ですが、結構日本らしい雰囲気が出ています。
[2-4 創造手段としてのあやかし]
ここは小さな「怪物のいるフリーズ」という作品のみでした。怪物というか抽象画みたいな感じかな。
アンソールは1886年頃にルドンの影響を受け、写実絵画に代わるものを求めていたようです。確かにアンソールはルドンと通じるものを感じます。
[2-5 アンソール芸術における"死の舞踏"とその他の骸骨]
ここは骸骨を主題にした戯画的な作品が2~3点ほどありました。
ジェームズ・アンソール 「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」 ★こちらで観られます
中心に首を吊った人物が描かれ、その前で2人の骸骨がハタキやモップのようなものを持って争い、その間には1人仰向けに倒れています。両脇にはドアから沢山の人々がカーニヴァルの仮面をつけて様子を観ていて、グロテスクさと滑稽さを感じます。解説によると、首吊りの死体は自画像らしく、3人の骸骨たちは祖母・母親・叔母という説や、妹やアンソールの愛人など周りの人々であるという説もあるそうです。骸骨や首吊りなど不吉なモチーフなのに、どこか楽しげなのが印象的な作品でした。
ジェームズ・アンソール 「絵を描く骸骨」 ★こちらで観られます
セルフポートレートを元に描いた作品で、イーゼルに向かったスーツ姿の骸骨が絵を描いている様子が描かれています。しかしイーゼルにはキャンバスがなく宙に描いている感じに見えるかな。また、周りには沢山の絵が置かれていて、所々に骸骨や仮面が転がっていました。明るめの色と描かれているもののギャップが面白い作品です。
[2-6 仮装]
ジェームズ・アンソール 「愛の園」
仮装した男女が集まるパーティーの様子?を描いた作品です。背景には燃え立つようにピンク・紫・青が混ざり合った空間があり、幻想的な雰囲気です。ちょっとぼんやりして抽象的な感じすらしました。
この近くには似た雰囲気の作品もありました。
[2-7 カリカチュア、悪魔、仮面]
ここはカリカチュア(風刺画・戯画)や幻想的な作品が並ぶコーナーで、今回の展示で最も見所と言えそうです。
ジェームズ・アンソール 「陰謀」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、アンソールの中でも最も有名な仮面の絵だそうです。沢山の仮面の人物たちが並んでいる様子が描かれていて、これはカーニヴァルの陰謀遊びに着想を得ているのでこうしたタイトルになっているようです。誇張された表情をした仮面でちょっと怖いようにも思いますが、右にいる骸骨?のような仮面はやけに楽しそうに見えたりと、憎めない感じです。明るい色彩で、その色の取り合わせの為か華やかさとグロテスクの両面が感じられました。
ここにはピーテル・ブリューゲル(子)の小さめの作品(★こちらで観られます)もありました。諺を描いたもので、これも滑稽で面白い作品です。
[2-8 プリミティヴィスム いわゆる15世紀の初期フランドル美術の再発見]
ここはキリスト関連の作品が並んでいました。
ジェームズ・アンソール 「悲しみの人」 ★こちらで観られます
ここまで観てきた作品と一線を画するような大胆なタッチで描かれた作品で、キリストを描いているはずですが、まるで日本の鬼のような表情をしています。背景は赤く染まり、口を開いて歯を見せる顔は苦悶のようにも見えました。これは中々インパクトのある作品です。
この辺りにもピーテル・ブリューゲル(子)の「七つの善行」(★こちらで観られます)という作品があり、これはこれで見応えがあります。
[2-9 風刺]
続いては風刺画のコーナーです。
ジェームズ・アンソール 「ワーテルローの機甲部隊」
物凄い数の兵士たちが戦っている様子が描かれている作品で、所々に煙がたち激しい戦闘であることが伺えます。簡素な画風で描かれているのですが、みっしりとした群衆表現が面白かったです。
最後には音楽に関するコーナーもありました。アンソールは幼い頃から音楽好きで自分でも作曲していたようです。しかし、楽譜を読むことも書くことも出来なかったようなので、当時の流行音楽の派生と考えられるようです。最後の部屋の中央に楽譜があったのは他の人が書いたのかな?? 解説機ではその音楽を聴くこともできました。結構単純なメロディが繰り返される感じでした。
ということで、予想外に良い作品にも出会えたのですが、構成がいまいち分からずアンソールについては断片的にしか理解できませんでした。画風も結構変るので、このタイトルならもう少しアンソールに絞って欲しかったかな…。とは言え、私が理屈好きなだけなので、感性が豊かな人には琴線に触れるものがあると思います。「陰謀」など名品がありますので気になる方はチェックしてみてください。
参照記事:★この記事を参照している記事
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前回ご紹介した三菱一号館美術館の展示を観た後、有楽町駅のすぐ近くにある ITOCiA(イトシア)の中にある椿屋珈琲店 有楽町茶寮でお茶してきました。


【店名】
椿屋珈琲店 有楽町茶寮
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
http://www.tsubakiya-coffee.com/shop.html
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1301/A130102/13043940/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
有楽町駅、銀座一丁目駅、銀座駅など
【近くの美術館】
出光美術館など
【この日にかかった1人の費用】
1400円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日20時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
夜に行ったのですが、結構お客さんがいるようでほぼ満席くらいでした。
さて、このお店はイトシアの中にあり。以前ご紹介した珈琲茶館集と同じフロアにあります。椿屋は結構色々行っていますがこの支店は初めてでした。椿屋は東京・銀座あたりにはやけに多いような気が…w
参考記事:
珈琲茶房 椿屋 丸ビル店 (東京駅界隈のお店)
椿屋珈琲店 (銀座界隈のお店)
椿屋珈琲店 上野茶廊 (上野界隈のお店)
珈琲茶房 椿屋 渋谷店 (渋谷界隈のお店)
椿屋珈琲店 六本木茶寮 (六本木界隈のお店)
珈琲茶館 集 イトシアプラザ有楽町店 (有楽町界隈のお店)
店内はこんな感じ。他の店舗と同じような感じでくつろげます。

店員さんもすごく気が利いて物腰が柔らかいし、居心地が良いです。
この日はケーキセット(1400円)を頼みました。他よりちょっと高いかも??

ケーキはフルーツケーキにしました。

フルーツケーキは軽やかで、ピンクグレープフルーツなどの柑橘系も酸っぱくなくて美味しかったです。これはかなり好み。
飲み物はコーヒーにしました。

苦味と酸味は軽めでしたが、深いコクと香りでまろやかでした。器も趣味がいいです。
ということで、こちらのお店も落ち着いてとお茶することができました。お昼くらいに行くと、もっと混んでいるので中々行けないのですが、今後も使って行きたいお店です。
これで椿屋の店舗のコンプリートにまた近づいた…w 自分の行動範囲にいくつか店舗があるので、椿屋は美術館に行く時以外でも愛用しています。



【店名】
椿屋珈琲店 有楽町茶寮
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
http://www.tsubakiya-coffee.com/shop.html
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1301/A130102/13043940/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
有楽町駅、銀座一丁目駅、銀座駅など
【近くの美術館】
出光美術館など
【この日にかかった1人の費用】
1400円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日20時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
夜に行ったのですが、結構お客さんがいるようでほぼ満席くらいでした。
さて、このお店はイトシアの中にあり。以前ご紹介した珈琲茶館集と同じフロアにあります。椿屋は結構色々行っていますがこの支店は初めてでした。椿屋は東京・銀座あたりにはやけに多いような気が…w
参考記事:
珈琲茶房 椿屋 丸ビル店 (東京駅界隈のお店)
椿屋珈琲店 (銀座界隈のお店)
椿屋珈琲店 上野茶廊 (上野界隈のお店)
珈琲茶房 椿屋 渋谷店 (渋谷界隈のお店)
椿屋珈琲店 六本木茶寮 (六本木界隈のお店)
珈琲茶館 集 イトシアプラザ有楽町店 (有楽町界隈のお店)
店内はこんな感じ。他の店舗と同じような感じでくつろげます。

店員さんもすごく気が利いて物腰が柔らかいし、居心地が良いです。
この日はケーキセット(1400円)を頼みました。他よりちょっと高いかも??

ケーキはフルーツケーキにしました。

フルーツケーキは軽やかで、ピンクグレープフルーツなどの柑橘系も酸っぱくなくて美味しかったです。これはかなり好み。
飲み物はコーヒーにしました。

苦味と酸味は軽めでしたが、深いコクと香りでまろやかでした。器も趣味がいいです。
ということで、こちらのお店も落ち着いてとお茶することができました。お昼くらいに行くと、もっと混んでいるので中々行けないのですが、今後も使って行きたいお店です。
これで椿屋の店舗のコンプリートにまた近づいた…w 自分の行動範囲にいくつか店舗があるので、椿屋は美術館に行く時以外でも愛用しています。
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10日ほど前の土曜日に丸の内の三菱一号館美術館で「シャルダン展-静寂の巨匠」を観てきました。

【展覧名】
シャルダン展-静寂の巨匠
【公式サイト】
http://www.mimt.jp/chardin/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅
【会期】2012年9月8日(土)~2013年1月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
開催初日に行ったためか、かなり空いていてじっくりと観ることができました。
さて、今回の展示は18世紀フランスを代表する静物画・風俗画の巨匠ジャン・シメオン・シャルダンの日本初の個展となっています(一部、他の画家の作品もあり) 私はシャルダンの名前は聞いたことはあったものの作品を観たことがあるか定かではなかったのですが、今回はルーヴル美術館を始め国内外の有名美術館や個人蔵の作品38点が集い、その画業を知るまたとない機会となっていました。38点というと点数が少ないように思えますが、ルーヴル美術館ですら所有数が40点未満らしく、元々作品点数が少ない画家のようです。
参考記事:マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想前編(三菱一号館美術館)
まず入口付近に簡単な概要がありました。ジャン・シメオン・シャルダン(1699年~1779年)はロココ時代の中でリアリズムを先取りしていたらしく、当時の批評家に高く評価され王侯貴族にも愛好されたそうです。しかし没後は長く顧みられることはなく、19世紀半ば以降にようやく再評価されたそうで、ミレー、マネ、セザンヌ、マティスなど多くの画家に影響を与え、小説家のプルーストは「失われた時を求めて」という作品でシャルダンの静物を賞賛したそうです。ちなみにシャルダンを再評価したのはフェルメールを再評価したトレ=ビュルガーという評論家らしく、その審美眼には驚かされます。
展覧会は時代ごとに5つの章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。
<第1章 多難な門出と初期静物画>
1章は初期のコーナーです。シャルダンは1699年にビリヤード台職人の息子としてパリに生まれ、幼い頃から画家を志していたそうです。そしてアカデミーや歴史画家の元で修行した後、1724年に聖ルカ・アカデミーの親方画家になりました。この頃に数点の風俗画を描いているようですが間もなく静物画に転向したらしく、この転機をもたらしたのは一匹の死んだ兎(または野兎)だったそうです。シャルダンはこの兎をできる限り忠実に情熱を持って描写したようで、それこそが自分の進む道だと気づいたそうです。
その後1728年にパリのシテ島で開催された野外展覧会「青年美術家展」に数点の作品を出品すると注目を集め、29歳という遅い年齢ながらも念願の王立絵画彫刻アカデミーの入会を果たしました。(準会員と正会員の資格を1日で得たそうです) しかし、シャルダンは動物と果物に卓越した画家としてアカデミーに登録されていたそうで、これは当時の絵画の位階としては最低のジャンルだったようです。しかも小さな作品を遅い筆運びで仕上げるので、十分な収入を期待できるものではなく、この頃にはまだ大きな労苦があったそうです。 このコーナーではそうした時期の作品が並んでいました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「ビリヤードの勝負」
部屋の中のビリヤード台が中心に描かれ、そこで白い服の人物が球を突き、左の方では赤い服の男性は杯に酒を注がれています。沢山の人達がビリヤードの様子を観ていて、台の上には酒の空き瓶のようなものが吊られている様子も描かれています。そのモチーフからシャルダンの父の職業(ビリヤード台職人)との関連性が思い浮かぶかな。精密で写実的な雰囲気です。 解説によると、これは本格的に画家の道を歩み始めた頃の作品らしく、現存する中でも最初期の油彩だそうです。これだけ大人数を配した作品はこの後は無かったそうで、シャルダンは最初は歴史画家を目指していたものの、やがて静物画に自分の道を見出したようです。
この辺には初期の静物である「食事のしたく(別名)銀のゴブレット」という作品もありました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「死んだ野兎と獲物袋」
茶色い兎が足を紐で縛られ、倒れている様子を描いた作品で、傍らには獲物の袋?もあります。写真のようにリアルと言うわけではないですが、力なく横たわって口のあたりに血のような跡もあり、死んだばかりのような感じを受けます。背景は暗い空間で何もありませんが、影が映っているなど繊細な明暗を感じました。華やかなロココ時代にあって無駄なものを削ぎ落した画風のようです。
この隣にも兎の絵がありました。こうした兎の絵で転機を迎えたのかな?
<第2章 「台所・家事の用具」と最初の注文制作>
続いては台所用品を描いた作品が並ぶコーナーです。シャルダンは1728年に王立絵画彫刻アカデミーの会員となりましたが、当初から高い名声を得ていたわけではなく、つましい生活を余儀なくされていたそうです。そこで、それまでの獲物と果物のモチーフに加え、台所や家事の用具も描いて制作の領域を広げようと試みました。するとその探求に応えるように最初の注文を獲得したようで、さらに私生活でも最初の妻マルグリト・サンタールと1731年に結婚し、その年の11月には長男のジャン・ピエールも生まれました(後に娘も生まれたようです)。
この頃のシャルダンは平凡でありふれた日常の品々が形作る曲線や斜線、素材が生み出す色彩の変化や光の反射を好んで描いたそうで、銅版やカンバス、木板など異なるものに描き独特の効果が出ているようです。初期に比べて形態や色彩を多様化させる関心が見られるようで、構成も計算されているそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「肉のない料理」「肉のある料理」
こちらは2点が対になるように展示されていました。左は吊り下げられた魚、卵、金属の器、陶器の容器などが描かれ、右は吊り下げられた赤い肉、赤っぽい鍋?、陶器の器、ガラスの瓶などが描かれています。絵の構図もお互いが対になるような配置になっていて、解説によるとこれは自然と三角形を形作る構図になっているらしく、確かに吊られた魚と肉を頂点に、瓶や鍋が三角の辺になるようになっていました。これは驚くと共に近代的な感じを受けます。色合いの対称性も面白いです。
なお、この絵はフェルメールを再発見したテオフィル・トレ(トレ=ビュルガーの本名)が一時期所有していたそうです。絵にはキリスト教の四句節の意味もあるそうで、色々と興味深い作品でした。
この辺にはテーブルに乗った玉ねぎや肉の静物、鳥の絵などもありました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「錫引きの銅鍋」
これは静物で、中央に茶色い銅鍋があり、その脇にたまご、胡椒入れ、陶器、ポロ葱?などが描かれています。そんなにリアルさはありませんが、17世紀のオランダの静物に倣ったのか、フランドルの静物に通じるものを感じます。また、明るめの光を感じ、静かな雰囲気があるように思いました。
<第3章 風俗画-日常生活の場面>
続いては風俗画のコーナーです。シャルダンは1733年頃から友人の肖像画家ジョゼフ・アヴェドの助言によって風俗画を手がけるようになり、この転向はシャルダンに大きな恩恵をもたらすことになります。当時、風俗画は静物よりも絵画のジャンルとして位階が高く、シャルダンは新たにロシアの女帝やスウェーデン王妃、王侯貴族、ブルジョアなど新しい顧客を獲得しました。さらに風俗画は版画化の対象にもなり、当時の風俗画の大流行と相まって莫大な収入を約束されたようです。1734年から20年間はそうした成功の日々だったようですが、1735~1737年にかけて妻と娘を相次いで亡くす不幸にも見舞われたそうです。しかし、1737年にサロン(官展)が再開されると、ほぼ毎年参加するなど精力的に活動していたようで、ほとんどの作品を版画化させ、レプリカなどの制作もためらわなかったそうです。さらに1740年にはベルサイユ宮殿で国王ルイ15世に2点の風俗画(「働き者の母」と「食前の祈り」)を献上する栄誉に浴しました。
その後、1742年に大病を患った後に1744年には裕福な未亡人フランソワーズ=マルグリット・プジェと再婚します。この妻によってシャルダンはブルジョアの世界に招き入れられ、彼の目はブルジョアに向けられるようになったそうです。ここにはそうした成功をもたらせた風俗画が展示されていました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「食前の祈り」
テーブルを中心に母親と2人の子供が描かれ、手前では女の子のような格好をしている男の子(当時のフランスの風習で男の子でも女の子の格好をしていた)が手をあわせてお祈りをしています。奥にいる姉は椅子に座ってそれをちらっとみているようで、ちょっとお姉さんぽい感じです。庶民の生活を垣間見たような微笑ましい光景で温かみを感じさせました。
なお、こちらは先述のようにルイ15世に献上した作品と同じですが、これはそれを描き直したものだそうで、いくつかバージョンがあるらしくこの辺にはロシアの女帝エカテリーナ2世が所有していた同名作品もありました。比べるとかなりそっくりです。さらにこれは版画化され、シャルダンの収入源にもなったようです。
近くには「画家ジョゼフ・アヴェドの肖像(別名)錬金術士」という作品もありました。ここに描かれた画家が風俗画を薦めた人です。また、シャルダンを紹介した美術年鑑や日本の本なども並んでいて、「羽根を持つ少女」という作品についてよく書かれているようでした。
ジャン・シメオン・シャルダン 「羽根を持つ少女」
ラケットとバドミントンの羽根を持つ少女が描かれた作品です。椅子の前でポーズを取っていますが、ちょっとボーっとしているような感じで子供らしく、純朴な可愛さがありました。解説によると、羽根や少女の上半身などに円錐形が用いられているそうで、確かに幾何学的な面白さがあり、さらに柔らかく繊細な光の表現も絶妙です。セザンヌに影響を与えたという話も腑に落ちる気がしました。
この隣にもそっくりな作品(ジャン・シメオン・シャルダンに帰属「羽根を持つ少女」)が展示されていました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「病後の食事(別名)思いやりのある看護人」
テーブルの前に立ち卵の殻を向いているピンクの服の女性を描いた作品で、テーブルには大きなパンや水差しが置かれています。この絵は他と比べて結構スッキリした印象を受けるかな。より繊細で柔らかい雰囲気で、陰影の付け方が巧みに見えました。
解説では、この作品と同じ部屋にあった「買い物帰りの女中」という作品と比べると、絵肌の粗さが消えてより滑らかに洗練され、作品の持つ空気は優しさを増したと評価していました。
次の部屋には最後の油彩風俗画の「セネリット(鳥風琴)」という作品もありました。だいぶ筆が細かいように見えます。
ジャン・シメオン・シャルダン 「良き教育」 ★こちらで観られます
赤いカーテンの窓辺で母親が娘に聖書を教えている様子を描いた作品です。娘は手を組んでじっと聴いているような感じで、窓の側には女の子が身に付けるべき裁縫の道具も置かれています。左の窓から差し込む光は明るく、2人を柔らかく包み込んでちょっとぼやけるような感じにも見えました。微笑ましい光景でこれはかなり気に入りました。
この近くには彫刻をデッサンする若い画家を描いた「デッサンの勉強」などもあり、教育をテーマにした2枚が並ぶ趣向のようでした。
<第4章 静物画への回帰>
続いては再び静物のコーナーです。シャルダンは1748年に15年ほど描くのをやめていた静物画へと回帰し、1750年代半ばには完全に風俗画を放棄して静物に専念していたようです。 大きな成功を収めた風俗画から退いた理由は不明のようですが、この頃も着実に画家の地位は高まっていきます。1752年に王から年金を授かったのを皮切りに、1755年には王立絵画彫刻アカデミーの会計官とサロン展示係に就任し、1757年にはルーヴル宮のアトリエ兼住居が与えられたそうです。(しかし、時間と気力を要するアカデミーの任務は制作の支障ともなったようです)
この時期の静物が初期の作品と大きく異なっているのは、狩猟の獲物や果実の種類、用具が豊かになっている点だそうで、これは2人目の妻がもたらした高価な調度品などによるモチーフの変化のようです。そして、画風自体も筆運びはより柔らかく滑らかになり、初期の特徴の厚塗りはなくなり、モチーフを忠実に描くよりも明暗表現を重視し時間をかけるようになりました。また、この頃はパステル画に転向しているのですが、これは油彩に使われる鉛で目を患ったためのようです。
その後、シャルダンは王立アカデミーを取り巻く環境の変化で冷遇を受けたり、息子が亡くなるなど悲しい出来事もあったようですが、サロンに意欲的に出品を続けていたようです。しかし1779年にルーヴル宮の居室で80年の人生を終え、しばらく忘れられた存在となって行きました…。(晩年に冷遇されたせいかな??) ここにはそうした静物画が展示されていました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「カーネーションの花瓶」
花瓶に入ったカーネーションやクロッカス、月下香、スイートピーなどが描かれた作品で、花瓶はオランダのデルフト焼なのかな?? 白や赤の花が咲き誇る中、1輪のカーネーションが花瓶の脇に転がっていて、解説によると、落ちた花は伝統的には儚さを表しますが、この頃になると摘んできたばかりであることを示したそうです。(私は儚いように見えましたが…w) また、この作品は結構大胆な筆触で、解説では後の印象派のようだとも言っていました。背景は暗くて、そこは初期の静物と同じ特徴に見えるかな。全体的にどこか幻想的で、むしろ後の象徴主義のような感じも受けました。
<第5章 シャルダンの影響を受けた画家たちと《グラン・ブーケ》三菱一号館美術館のコレクションから>
下の階に進むと4章の途中で一旦5章となり、三菱一号館美術館の所蔵品が並ぶコーナーとなっていました。影響を受けた画家として、
ミレー
セザンヌ(シャルダンの「赤エイ」を模写していた)
マルケ(影響は受けていないが模写していた)
ルドン(シャルダンを観たか確証はなし)
が紹介されていました。ちょっと無理やりな感じもしますが、ルドンのグラン・ブーケは良い作品なので、間に常設が挟まってると思えば得した気分になれますw
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
<第4章 静物画への回帰>
最後の長い部屋は再び4章です。
ジャン・シメオン・シャルダン 「配膳室のテーブル」 ★こちらで観られます
テーブルに乗った様々なものの静物で、布、白い陶器、皿、銀のコンロなどが描かれています。この銀のコンロなどは贅沢品のようで、妻によってもたらされたそうです。全体的にちょっとぼんやりした感じですが、質感が出ていて円形が並びリズム感があるように思えました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「木いちごの籠」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターで、テーブルの上の籠に盛られた真っ赤な木苺と、水の入ったグラス、白いカーネーション、桃と赤い果実?が描かれています。背景は暗く、赤く三角形に盛られた木苺が特に目を引くのですが、これは木苺の下にあるカーネーションの白が色を引き立てているそうです。また、光の当たる様子が実物のようでありながらも夢の中のような幻想的なものに感じられ、むしろ崇高なものに見えてきました。近づいて観るとそんなに細かく描いているわけでもないのに、離れてみると質感を感じるのも不思議です。これは10分くらい観ていましたが、かなり気に入りました。
この辺で解説機で面白いエピソードが聞けました。シャルダンは色彩について訊かれた際に、「色彩は使うが絵は色彩で描くのではなく、感情で描くものだ」と答えたようです。
ジャン・シメオン・シャルダン 「桃の籠」
テーブルに乗った桃と、その下に置かれたナイフ、脇のくるみ、左にはワインの入ったグラスが描かれています。グラスの淵や桃は光を反射していて、明暗が巧みに感じられます。また、手前に伸びたナイフは立体感を出しているそうで、そちらも質感豊かに表現されていました。
この辺も静物画でした。なお、シャルダンの晩年はアカデミーの首席画家が交代らしく、それが原因で不遇となり、忘れ去られたようです。そして後にレアリスムの画家たちに再発見されたとのことでした。
ということで、忘れられた巨匠の作品をじっくりと楽しむことができました。小さめで静かな雰囲気の作品が多いので、正直な所 素人目にはちょっと地味な画風にも思えましたが、パッと見の派手さではなく、日本の侘び寂びにも似たジワジワ来る感じが良かったです。アーティストのためのアーティストという印象も受けたかな。 かなり貴重な機会だと思いますので、気になる方は是非どうぞ。
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
シャルダン展-静寂の巨匠
【公式サイト】
http://www.mimt.jp/chardin/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅
【会期】2012年9月8日(土)~2013年1月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
開催初日に行ったためか、かなり空いていてじっくりと観ることができました。
さて、今回の展示は18世紀フランスを代表する静物画・風俗画の巨匠ジャン・シメオン・シャルダンの日本初の個展となっています(一部、他の画家の作品もあり) 私はシャルダンの名前は聞いたことはあったものの作品を観たことがあるか定かではなかったのですが、今回はルーヴル美術館を始め国内外の有名美術館や個人蔵の作品38点が集い、その画業を知るまたとない機会となっていました。38点というと点数が少ないように思えますが、ルーヴル美術館ですら所有数が40点未満らしく、元々作品点数が少ない画家のようです。
参考記事:マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想前編(三菱一号館美術館)
まず入口付近に簡単な概要がありました。ジャン・シメオン・シャルダン(1699年~1779年)はロココ時代の中でリアリズムを先取りしていたらしく、当時の批評家に高く評価され王侯貴族にも愛好されたそうです。しかし没後は長く顧みられることはなく、19世紀半ば以降にようやく再評価されたそうで、ミレー、マネ、セザンヌ、マティスなど多くの画家に影響を与え、小説家のプルーストは「失われた時を求めて」という作品でシャルダンの静物を賞賛したそうです。ちなみにシャルダンを再評価したのはフェルメールを再評価したトレ=ビュルガーという評論家らしく、その審美眼には驚かされます。
展覧会は時代ごとに5つの章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。
<第1章 多難な門出と初期静物画>
1章は初期のコーナーです。シャルダンは1699年にビリヤード台職人の息子としてパリに生まれ、幼い頃から画家を志していたそうです。そしてアカデミーや歴史画家の元で修行した後、1724年に聖ルカ・アカデミーの親方画家になりました。この頃に数点の風俗画を描いているようですが間もなく静物画に転向したらしく、この転機をもたらしたのは一匹の死んだ兎(または野兎)だったそうです。シャルダンはこの兎をできる限り忠実に情熱を持って描写したようで、それこそが自分の進む道だと気づいたそうです。
その後1728年にパリのシテ島で開催された野外展覧会「青年美術家展」に数点の作品を出品すると注目を集め、29歳という遅い年齢ながらも念願の王立絵画彫刻アカデミーの入会を果たしました。(準会員と正会員の資格を1日で得たそうです) しかし、シャルダンは動物と果物に卓越した画家としてアカデミーに登録されていたそうで、これは当時の絵画の位階としては最低のジャンルだったようです。しかも小さな作品を遅い筆運びで仕上げるので、十分な収入を期待できるものではなく、この頃にはまだ大きな労苦があったそうです。 このコーナーではそうした時期の作品が並んでいました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「ビリヤードの勝負」
部屋の中のビリヤード台が中心に描かれ、そこで白い服の人物が球を突き、左の方では赤い服の男性は杯に酒を注がれています。沢山の人達がビリヤードの様子を観ていて、台の上には酒の空き瓶のようなものが吊られている様子も描かれています。そのモチーフからシャルダンの父の職業(ビリヤード台職人)との関連性が思い浮かぶかな。精密で写実的な雰囲気です。 解説によると、これは本格的に画家の道を歩み始めた頃の作品らしく、現存する中でも最初期の油彩だそうです。これだけ大人数を配した作品はこの後は無かったそうで、シャルダンは最初は歴史画家を目指していたものの、やがて静物画に自分の道を見出したようです。
この辺には初期の静物である「食事のしたく(別名)銀のゴブレット」という作品もありました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「死んだ野兎と獲物袋」
茶色い兎が足を紐で縛られ、倒れている様子を描いた作品で、傍らには獲物の袋?もあります。写真のようにリアルと言うわけではないですが、力なく横たわって口のあたりに血のような跡もあり、死んだばかりのような感じを受けます。背景は暗い空間で何もありませんが、影が映っているなど繊細な明暗を感じました。華やかなロココ時代にあって無駄なものを削ぎ落した画風のようです。
この隣にも兎の絵がありました。こうした兎の絵で転機を迎えたのかな?
<第2章 「台所・家事の用具」と最初の注文制作>
続いては台所用品を描いた作品が並ぶコーナーです。シャルダンは1728年に王立絵画彫刻アカデミーの会員となりましたが、当初から高い名声を得ていたわけではなく、つましい生活を余儀なくされていたそうです。そこで、それまでの獲物と果物のモチーフに加え、台所や家事の用具も描いて制作の領域を広げようと試みました。するとその探求に応えるように最初の注文を獲得したようで、さらに私生活でも最初の妻マルグリト・サンタールと1731年に結婚し、その年の11月には長男のジャン・ピエールも生まれました(後に娘も生まれたようです)。
この頃のシャルダンは平凡でありふれた日常の品々が形作る曲線や斜線、素材が生み出す色彩の変化や光の反射を好んで描いたそうで、銅版やカンバス、木板など異なるものに描き独特の効果が出ているようです。初期に比べて形態や色彩を多様化させる関心が見られるようで、構成も計算されているそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「肉のない料理」「肉のある料理」
こちらは2点が対になるように展示されていました。左は吊り下げられた魚、卵、金属の器、陶器の容器などが描かれ、右は吊り下げられた赤い肉、赤っぽい鍋?、陶器の器、ガラスの瓶などが描かれています。絵の構図もお互いが対になるような配置になっていて、解説によるとこれは自然と三角形を形作る構図になっているらしく、確かに吊られた魚と肉を頂点に、瓶や鍋が三角の辺になるようになっていました。これは驚くと共に近代的な感じを受けます。色合いの対称性も面白いです。
なお、この絵はフェルメールを再発見したテオフィル・トレ(トレ=ビュルガーの本名)が一時期所有していたそうです。絵にはキリスト教の四句節の意味もあるそうで、色々と興味深い作品でした。
この辺にはテーブルに乗った玉ねぎや肉の静物、鳥の絵などもありました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「錫引きの銅鍋」
これは静物で、中央に茶色い銅鍋があり、その脇にたまご、胡椒入れ、陶器、ポロ葱?などが描かれています。そんなにリアルさはありませんが、17世紀のオランダの静物に倣ったのか、フランドルの静物に通じるものを感じます。また、明るめの光を感じ、静かな雰囲気があるように思いました。
<第3章 風俗画-日常生活の場面>
続いては風俗画のコーナーです。シャルダンは1733年頃から友人の肖像画家ジョゼフ・アヴェドの助言によって風俗画を手がけるようになり、この転向はシャルダンに大きな恩恵をもたらすことになります。当時、風俗画は静物よりも絵画のジャンルとして位階が高く、シャルダンは新たにロシアの女帝やスウェーデン王妃、王侯貴族、ブルジョアなど新しい顧客を獲得しました。さらに風俗画は版画化の対象にもなり、当時の風俗画の大流行と相まって莫大な収入を約束されたようです。1734年から20年間はそうした成功の日々だったようですが、1735~1737年にかけて妻と娘を相次いで亡くす不幸にも見舞われたそうです。しかし、1737年にサロン(官展)が再開されると、ほぼ毎年参加するなど精力的に活動していたようで、ほとんどの作品を版画化させ、レプリカなどの制作もためらわなかったそうです。さらに1740年にはベルサイユ宮殿で国王ルイ15世に2点の風俗画(「働き者の母」と「食前の祈り」)を献上する栄誉に浴しました。
その後、1742年に大病を患った後に1744年には裕福な未亡人フランソワーズ=マルグリット・プジェと再婚します。この妻によってシャルダンはブルジョアの世界に招き入れられ、彼の目はブルジョアに向けられるようになったそうです。ここにはそうした成功をもたらせた風俗画が展示されていました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「食前の祈り」
テーブルを中心に母親と2人の子供が描かれ、手前では女の子のような格好をしている男の子(当時のフランスの風習で男の子でも女の子の格好をしていた)が手をあわせてお祈りをしています。奥にいる姉は椅子に座ってそれをちらっとみているようで、ちょっとお姉さんぽい感じです。庶民の生活を垣間見たような微笑ましい光景で温かみを感じさせました。
なお、こちらは先述のようにルイ15世に献上した作品と同じですが、これはそれを描き直したものだそうで、いくつかバージョンがあるらしくこの辺にはロシアの女帝エカテリーナ2世が所有していた同名作品もありました。比べるとかなりそっくりです。さらにこれは版画化され、シャルダンの収入源にもなったようです。
近くには「画家ジョゼフ・アヴェドの肖像(別名)錬金術士」という作品もありました。ここに描かれた画家が風俗画を薦めた人です。また、シャルダンを紹介した美術年鑑や日本の本なども並んでいて、「羽根を持つ少女」という作品についてよく書かれているようでした。
ジャン・シメオン・シャルダン 「羽根を持つ少女」
ラケットとバドミントンの羽根を持つ少女が描かれた作品です。椅子の前でポーズを取っていますが、ちょっとボーっとしているような感じで子供らしく、純朴な可愛さがありました。解説によると、羽根や少女の上半身などに円錐形が用いられているそうで、確かに幾何学的な面白さがあり、さらに柔らかく繊細な光の表現も絶妙です。セザンヌに影響を与えたという話も腑に落ちる気がしました。
この隣にもそっくりな作品(ジャン・シメオン・シャルダンに帰属「羽根を持つ少女」)が展示されていました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「病後の食事(別名)思いやりのある看護人」
テーブルの前に立ち卵の殻を向いているピンクの服の女性を描いた作品で、テーブルには大きなパンや水差しが置かれています。この絵は他と比べて結構スッキリした印象を受けるかな。より繊細で柔らかい雰囲気で、陰影の付け方が巧みに見えました。
解説では、この作品と同じ部屋にあった「買い物帰りの女中」という作品と比べると、絵肌の粗さが消えてより滑らかに洗練され、作品の持つ空気は優しさを増したと評価していました。
次の部屋には最後の油彩風俗画の「セネリット(鳥風琴)」という作品もありました。だいぶ筆が細かいように見えます。
ジャン・シメオン・シャルダン 「良き教育」 ★こちらで観られます
赤いカーテンの窓辺で母親が娘に聖書を教えている様子を描いた作品です。娘は手を組んでじっと聴いているような感じで、窓の側には女の子が身に付けるべき裁縫の道具も置かれています。左の窓から差し込む光は明るく、2人を柔らかく包み込んでちょっとぼやけるような感じにも見えました。微笑ましい光景でこれはかなり気に入りました。
この近くには彫刻をデッサンする若い画家を描いた「デッサンの勉強」などもあり、教育をテーマにした2枚が並ぶ趣向のようでした。
<第4章 静物画への回帰>
続いては再び静物のコーナーです。シャルダンは1748年に15年ほど描くのをやめていた静物画へと回帰し、1750年代半ばには完全に風俗画を放棄して静物に専念していたようです。 大きな成功を収めた風俗画から退いた理由は不明のようですが、この頃も着実に画家の地位は高まっていきます。1752年に王から年金を授かったのを皮切りに、1755年には王立絵画彫刻アカデミーの会計官とサロン展示係に就任し、1757年にはルーヴル宮のアトリエ兼住居が与えられたそうです。(しかし、時間と気力を要するアカデミーの任務は制作の支障ともなったようです)
この時期の静物が初期の作品と大きく異なっているのは、狩猟の獲物や果実の種類、用具が豊かになっている点だそうで、これは2人目の妻がもたらした高価な調度品などによるモチーフの変化のようです。そして、画風自体も筆運びはより柔らかく滑らかになり、初期の特徴の厚塗りはなくなり、モチーフを忠実に描くよりも明暗表現を重視し時間をかけるようになりました。また、この頃はパステル画に転向しているのですが、これは油彩に使われる鉛で目を患ったためのようです。
その後、シャルダンは王立アカデミーを取り巻く環境の変化で冷遇を受けたり、息子が亡くなるなど悲しい出来事もあったようですが、サロンに意欲的に出品を続けていたようです。しかし1779年にルーヴル宮の居室で80年の人生を終え、しばらく忘れられた存在となって行きました…。(晩年に冷遇されたせいかな??) ここにはそうした静物画が展示されていました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「カーネーションの花瓶」
花瓶に入ったカーネーションやクロッカス、月下香、スイートピーなどが描かれた作品で、花瓶はオランダのデルフト焼なのかな?? 白や赤の花が咲き誇る中、1輪のカーネーションが花瓶の脇に転がっていて、解説によると、落ちた花は伝統的には儚さを表しますが、この頃になると摘んできたばかりであることを示したそうです。(私は儚いように見えましたが…w) また、この作品は結構大胆な筆触で、解説では後の印象派のようだとも言っていました。背景は暗くて、そこは初期の静物と同じ特徴に見えるかな。全体的にどこか幻想的で、むしろ後の象徴主義のような感じも受けました。
<第5章 シャルダンの影響を受けた画家たちと《グラン・ブーケ》三菱一号館美術館のコレクションから>
下の階に進むと4章の途中で一旦5章となり、三菱一号館美術館の所蔵品が並ぶコーナーとなっていました。影響を受けた画家として、
ミレー
セザンヌ(シャルダンの「赤エイ」を模写していた)
マルケ(影響は受けていないが模写していた)
ルドン(シャルダンを観たか確証はなし)
が紹介されていました。ちょっと無理やりな感じもしますが、ルドンのグラン・ブーケは良い作品なので、間に常設が挟まってると思えば得した気分になれますw
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
<第4章 静物画への回帰>
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ジャン・シメオン・シャルダン 「配膳室のテーブル」 ★こちらで観られます
テーブルに乗った様々なものの静物で、布、白い陶器、皿、銀のコンロなどが描かれています。この銀のコンロなどは贅沢品のようで、妻によってもたらされたそうです。全体的にちょっとぼんやりした感じですが、質感が出ていて円形が並びリズム感があるように思えました。
ジャン・シメオン・シャルダン 「木いちごの籠」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターで、テーブルの上の籠に盛られた真っ赤な木苺と、水の入ったグラス、白いカーネーション、桃と赤い果実?が描かれています。背景は暗く、赤く三角形に盛られた木苺が特に目を引くのですが、これは木苺の下にあるカーネーションの白が色を引き立てているそうです。また、光の当たる様子が実物のようでありながらも夢の中のような幻想的なものに感じられ、むしろ崇高なものに見えてきました。近づいて観るとそんなに細かく描いているわけでもないのに、離れてみると質感を感じるのも不思議です。これは10分くらい観ていましたが、かなり気に入りました。
この辺で解説機で面白いエピソードが聞けました。シャルダンは色彩について訊かれた際に、「色彩は使うが絵は色彩で描くのではなく、感情で描くものだ」と答えたようです。
ジャン・シメオン・シャルダン 「桃の籠」
テーブルに乗った桃と、その下に置かれたナイフ、脇のくるみ、左にはワインの入ったグラスが描かれています。グラスの淵や桃は光を反射していて、明暗が巧みに感じられます。また、手前に伸びたナイフは立体感を出しているそうで、そちらも質感豊かに表現されていました。
この辺も静物画でした。なお、シャルダンの晩年はアカデミーの首席画家が交代らしく、それが原因で不遇となり、忘れ去られたようです。そして後にレアリスムの画家たちに再発見されたとのことでした。
ということで、忘れられた巨匠の作品をじっくりと楽しむことができました。小さめで静かな雰囲気の作品が多いので、正直な所 素人目にはちょっと地味な画風にも思えましたが、パッと見の派手さではなく、日本の侘び寂びにも似たジワジワ来る感じが良かったです。アーティストのためのアーティストという印象も受けたかな。 かなり貴重な機会だと思いますので、気になる方は是非どうぞ。
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先週の日曜日に映画「バイオハザードV リトリビューション」を観てきました。この映画は2Dと3Dがありますが、私が観たのは2Dでした。

【作品名】
バイオハザードV リトリビューション
【公式サイト】
http://www.biohazard5.jp/
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_③_4_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
公開間もない頃に行ったので多くのお客さんで賑わっているようでした。
さて、この映画は同名のゲームを原作にしたシリーズで、今回で5作目になります。私はゲームの方はプレイしたことがないのですが、映画の方は全部観ています。しかし4が全然思い出せなかったので、映画館に行く前にブルーレイを借りて予習をしておきました。(ちょうど私が5を観た日に地上波でも4をやっていたようで、何となくそれも観ていたら最後に5の冒頭部を延々と流していたのでちょっと驚きました…w)
5のストーリーについてですが、これは完全に4と話が繋がっているので、この作品から観ると人物関係や世界観などがよく分からないかもしれません。シリーズを通して観ている人向けです。また、今回は1~3についても関係する所があるので、1~3も思い出せると楽しめると思います(さらにゲームの方が分かるともっと面白いようです)
とは言え、今回も話はあまり進まず、ひたすら戦闘といった感じです。今までの中で一番ゲームっぽさを感じる話になっているので、それが面白く感じられました。まあ、ストーリーは印象に残らないので、また話を忘れてしまう可能性もありますが…w
役者や映像もこれといって目新しい感じはしませんが、今までの作品が好きな人には嬉しい内容になっているかと思います。近未来的な感じもいつも通りです。戦闘シーンと敵キャラは流石に楽しめます。
ということで、良い意味で今まで通りの路線なので、このシリーズが好きな人はこれも満足できるのではないかと思います。あまり捻りもないけれど、見終わると面白かったと感じるのは明快だからかな? 時間もあまり長くなくスッキリまとまった感じでした。
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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。
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最近観た展示 (05/09)
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ミロ展-日本を夢みて (感想後編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】 (04/25)
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ミロ展-日本を夢みて (感想前編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】 (04/20)
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奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム 【東京都庭園美術館】 (04/11)
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展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年04月号】 (04/01)
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【密蔵院】の安行寒桜の写真 (03/27)
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グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生【世田谷美術館】 (03/22)
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大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!【うらわ美術館】 (03/14)
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大・タイガー立石展 世界を描きつくせ! 【埼玉県立近代美術館】 (03/07)
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もうすぐ再開予定 (02/28)
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2021 MOMASコレクション 第3期 【埼玉県立近代美術館】 (01/21)
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鎌倉の写真 (2021年11月) (01/18)
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没後70年 吉田博展 【川越市立美術館】 (01/16)
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今後の更新について (01/14)
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【山崎美術館】の案内 (2021年11月) (01/11)
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保岡勝也 「旧山崎家別邸」 (01/09)
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映画「劇場版 呪術廻戦 0」(ややネタバレあり) (01/07)
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TERUHISA KITAHARA 鉄道コレクション展 【京橋エドグランタウンミュージアム】 (01/05)
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展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年01月号】 (01/01)
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2021年の振り返り (12/31)
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ヘラルボニー/ゼロからはじまる 【BAG-Brillia Art Gallery】 (12/29)
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映画「キングスマン:ファースト・エージェント」(ややネタバレあり) (12/27)
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横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】 (12/26)
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第15回 shiseido art egg 【資生堂ギャラリー】 (12/23)
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映画「マトリックス レザレクションズ」(ややネタバレあり) (12/21)
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ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ 【パナソニック汐留美術館】 (12/19)
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- 21世紀のxxx者:奇蹟の芸術都市バルセロナ (感想前編)【東京ステーションギャラリー】 (01/03)
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