Archive | 2012年10月
前回ご紹介した展示を観た後、同じミッドタウンにあるサントリー美術館で「お伽草子 この国は物語にあふれている」を観てきました。この展示は7つの期間に分かれていて、私が行ったのは2012/10/10~10/15の期間でした。

【展覧名】
お伽草子 この国は物語にあふれている
【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2012_05/?fromid=topmv
【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2012年9月19日(水)~11月4日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんが多くて、小さな絵巻の前などは人だかりが出来る所もありました。
さて、今回は「御伽草子」についての展示です。現代日本でもお伽話や絵本が広く読まれていますが、絵解きによる物語を楽しむ文化は昔の日本にもあったようで、室町時代から江戸時代初期にかけて、短編小説の「御伽草子」が作られていました。御伽草子は幅広い階層に愛読されたらしく、400種類を超える現存作品の中には一寸法師や浦島太郎、酒呑童子など今でもよく知られている物語も含まれています。 この展示ではそうした御伽草子の絵巻を中心に、その当時の社会の投影を読み解くという試みがされていました。序章から5章まで章分けされていましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。
なお、冒頭でも書いた通りこの展示は細かい期間分けがありますので、お目当ての作品がある方は予め作品リストで期間を確認しておくことをお勧めします。
参考リンク:作品リスト
<序章>
まずは「御伽草子」の語源についてのコーナーです。御伽草子は初版の年月は分からないようですが、享保14年(1729年)頃までには大坂の版元「大坂心斎橋順慶町 書林 渋川清右衛門」という人物がいにしえの物語23篇を選び、箱入り木版横本として刊行していたようです。つまり「御伽草子」という名称は渋川清右衛門の23篇の商標とも言うべきものだったらしく、その話の中には一寸法師、浦島太郎、酒呑童子、鉢かつぎ なども含まれているそうです。しかし時代が下るに従って23篇に限定されず、類する作品を御伽草子と呼んで広く用いられていくようになったそうです。ここには御伽草子の元祖とも言える渋川版の御伽草子が並んでいました。
1-21 「御伽草子渋川版 浦島太郎」
これが渋川版の御伽草子で、お馴染みの浦島太郎の刊もありました。船の上で亀を釣り上げている浦島太郎が白黒の線で描かれていて、そのシーンを端的に表しています。右のページにはひらがな多めのテキストが書かれていました。亀はいじめられていたわけでなく、釣り上げられていたのですね…。何故話が変わって行ったのかは分かりませんでしたが興味深い改変でした。
浦島太郎はこの後の章でも何回か出てきます。ここには同じように渋川版が5篇並んでいました。
<第1章 昔むかし―お伽草子の源流へ>
平安時代に始まった物語文学は、鎌倉時代を経てやがて公家の衰微に伴って衰えて行ったと言われているそうです。そうした中で鎌倉末期になると、物語文学の系譜に連なりながらも表現・題材共に公家文学とは全く異なる革新的な作り物語が現れ、これが御伽草子の萌芽と言えるようです。御伽草子の特徴は大きく3つ挙げられるそうで、以下のように説明されていました。
・短編であること。 これは頻繁に起こる戦に人々の心は落ち着かず、比較的短時間で読める短編が好まれたのではないかとのこと
・テーマ。 時代の意識などを反映し、名もない庶民が主人公になった話、動物たちが人間のように振舞っている話、昔話に近い民間説話など、多種多用なテーマ
・絵を伴うこと
ここには絵巻を中心に上記のような特徴を持つ ぶっ飛んだ物語が並んでいました。
4 「掃墨物語絵巻」
これは色付きの絵巻で、娘を訪れた僧侶が 白粉と眉墨を取り違えて化粧をした娘を観て驚いて逃げている様子が描かれています。僧侶は屋敷から離れた所まで逃げているのですが、一目散に背を向けて逃げているの面白いです。また、絵巻を進んでいくと屋敷の中のシーンもあり、母親が眉墨で顔が真っ黒な娘を観て恐れおののいている様子が描かれています。母親はこれを観て鬼と間違ったそうですが、やがて娘と気づいたようで隣の部屋(次の場面)では娘が鏡を見せられています。さらにその次の部屋では娘が顔を洗って仏心を起こしている様子が描かれ、娘の方はこれがきっかけとなって出家したそうです。非常にユーモラスで、そこまで逃げなくてもという程の僧侶の逃げっぷりが可笑しく感じられました。
2 「浦嶋明神縁起絵巻」
浦嶋神社の縁起を描いた絵巻で、浦島太郎の前段階と考えられ、その起源は日本書紀にまで遡るそうです。釣った亀が美女になり、竜宮城ではなく空の上の蓬莱宮に連れていかれ、そこで3年のつもりが300年経ってしまい、失意のうちに玉手箱を開けて老人になる様子が描かれています。我々の知る浦島太郎の話とちょっと異なる点があるようで、後日談で玉手箱を開けた所に祠が建てられ浦島を祀ったようです。社の前で盛大な祭りが始まる様子なども描かれていました。
この近くには鈴の音のようなオナラをして長者になった老人の物語の5「福富草紙」の絵巻もありました。老人に弟子入りした強欲な隣人が老人から嘘の薬を飲まされ、中将の家で下痢を撒き散らすというストーリーが笑えます。
<第2章 武士の台頭 ―「 酒呑童子」を中心に>
武家が政権を掌握して武家の時代が訪れると、武家を主人公にした武家物語が登場しました。先行する平家物語や太平記などの軍記物から影響を受けつつ、史実よりも人間ドラマを中心に据える点が特徴だそうで、そうした傾向は超人的な武士像を生み出すこととなったようです。そして、特殊な能力を持つ英雄たちによる怪物(鬼)退治の説話へと繋がって行き、特に平安時代の武将である源頼光たちの酒天童子退治は圧倒的な支持を得て沢山のテキスト・絵画・芝居などが作られました。怪物を退治し世の中の秩序の安定を保つのは武家のあるべき姿と考えられていたようで、ここにはそうした話が並んでいました。
9 狩野元信 「酒伝童子絵巻」 ★こちらで観られます
酒天童子の話は鬼の棲家を丹波国大江山とする系統と、近江国伊吹山とする系統があるそうで、これは後者を代表する作品です。ストーリーをかいつまむと、都から貴族の娘が姿を消す事件が相次ぎ 陰陽師の安倍晴明が占ったところ、それは鬼の仕業と判明します。そこで源頼光とその四天王に鬼退治の勅命が下り、藤原保昌も加わって鬼退治に向かい、酒天童子たちに毒の酒を飲ませる作戦を行います。この作品では鬼たちが眠った所を源頼光らが襲う様子が描かれていて、巨大で赤い肌の酒天童子の首をはねられて血がブッシャーーーーーと飛び散っています。さらに飛んだ首は源頼光の頭に食らいついていて、非常に恐ろしい場面となっていました。まさにスプラッターさながらで驚かされます。続きの場面では配下の鬼たちとも交戦し、首をはねたり血みどろの戦いを繰り広げていました。色鮮やかで迫力ある作品です。なお、解説によるとこの作品は1522年に小田原城主 北条氏綱の注文で作られたのだとか。既に地方の大名にまで御伽草子が広まっていたことを示すようです。
この隣にも大江山版で現存最古の酒天童子の話もありました。また、近くにはこの話の後日談もあり、室町時代は誰もが一種の改作者となって新たな本文や絵を自由に作っていたそうです。内容は酒天童子の残党が羅生門に住み着いたので退治する話のようでした。
ここには酒天童子以外にも巨大な蟹を退治する話を描いた六曲一双の屏風もあります。こちらでも血が飛び散ってましたw
<第3章 お伽草子と下剋上>
続いては御伽草子と下克上についてのコーナーです。御伽草子が作られた時代は南北朝の対立や戦国時代など全国で戦乱の続いた不安動揺の時代でした。しかし、この時代の文芸にとっては決して不幸の時代では無かったそうで、意外にも文芸が身分的・地域的に発展していったそうです。また、この時代「下克上」は一般の風潮だったらしく、先程も出てきた「福富草子」をはじめ、主人公の才覚一つで成り上がる一寸法師やものぐさ太郎など、立身出世の物語が作られ、当時の民衆の力の高揚が伺えるようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
32 「ささやき竹物語」
この話は、姫を見初めた毘沙門堂の別当 阿闍梨(偉い僧)が、姫の親夫婦の寝室の隣の部屋から竹筒を使って寝ている夫婦に偽のお告げをするというもので、この作品にはその様子が描かれています。壁に竹筒を差しているのが滑稽で、毘沙門の名を語り姫を阿闍梨に嫁にやれと言っているようです。両親はそれがお告げであると信じこんで嫁を寺に送るのですが、行く途中で姫は男に助けられ、後にその男と結ばれます。一方で阿闍梨の元には姫の代わりに牛が届くそうで、オチも含めて笑えます。解説によると、敬いの対象出会った僧侶も滑稽に描かれているなど下克上の風紀が見られるようでした。
この近くには那須野で沢山の武士たちに狩られている 馬より大きな二股の狐を描いた26「玉藻前草子絵巻」がありました。色鮮やかで緊迫した雰囲気の作品です。また、好色の僧が夜の暗がりの中で老婆と気づかず一夜を共にする「おようのあま絵巻」という作品などもあり、これも笑えました。
少し進むとまた34「福富草紙」と35「浦島太郎絵巻」があります。結構、素人が描いたような絵も多く、妙な味わいがあります。中には大量生産で簡素化された作品もありました。
<第4章 お伽草子と[場]― すれ違う物語・行きかう主人公>
続いては物語に特定の場所が出てくる作品のコーナーです。「昔々~」と始まると「ある所で」と続けたくなってしまいますが、御伽草子では物語の具体的な場所が示されることが少なくなかったそうです。特に清水寺が登場する御伽草子は40篇を越え、これは現存作品(400篇)の内、実に1割を占めているようです。ここにはそうした清水寺を描いた作品などが並んでいました。
48 「物ぐさ太郎」
これは寝てばかりの ものぐさ太郎の話を描いたもので、ものぐさ太郎は落ちた餅も拾わないほどのものぐさぶりのようです。しかし、国司からの命令で都での夫役に就くことになると人が変わったようにマメになり、帰国する際には女性を連れて女房にしようと考えたようです。清水寺の前で美女を見つけようとしているシーンも描かれていて、美女を見つけると追い回し、和歌を詠むなど機転の効いた受け応えをしたらしく、それが功を奏して最後は見事に妻を娶ったそうです。どの場面を観ても駄目人間のナンパ野郎にしか見えませんが…w これも簡素な画風でしたが駄目人間ぶりがよく伝わってきました。
この近くには清水寺の参詣曼荼羅や、道成寺の縁起を書いた異本の60「賢覚草紙絵巻」もありました。道成寺の話の中でも清水寺に参拝するシーンがあるのだとか。
少し進むと源義経と弁慶が清水寺の舞台で戦っている様子が描かれた62 「義経記」もあります。また、何故か義経が1000人の辻斬りをしている作品もあり、1000人目(弁慶)を仲間にするようにという大日如来のお告げを受けるシーンが描かれていました。義経と弁慶の立場が逆転しているような??
61 「藤袋草子絵巻」
これは女の赤子を拾って育てた翁が、農作業のキツさに耐えかねて「猿でも良いから手伝ってくれたら娘を嫁になる」と言うと、本当に猿がやってきて手伝いをするという話です。手伝いが終わると娘は連れ去られて猿の嫁になるのですが、娘は泣いてばかりいるので元気づけようと酒宴をしている様子が描かれています。結構緻密に描かれて楽しそうな雰囲気で、烏帽子をかぶった猿が娘と目を合わせているようです。…ちょっと猿が可愛らしいw
しかしこの後、猿は姫を袋に入れて木に吊るし(逃亡防止)、姫のために果物を取り行きます。すると狩人がその袋を見て娘を助け出し、娘の代わりに袋には犬が入れられます。 そしてそれを開けた猿たちは皆、猿に噛まれて死んでしまい、娘は狩人と結ばれてめでたしめでたしというストーリーでした。 って、いくらなんでも猿が可哀想! 契約を遂行しただけでここまでの仕打は酷いw ちょっと理不尽な話でした。
解説によると、この本も清水観音のご利益を示しているらしく、清水寺は当時絶大な信仰を集めていたとのことでした。
<第5章 見えない世界を描く― 異類・異界への関心>
最後は異形の者達が描かれた作品のコーナーです。御伽草子には動物・植物・器々の擬人化など人間とは異なる者たちが書かれた物語も多いそうで、こうした「異類物」は人間と異類の交渉を扱った物語と 異類だけの物語の2種に大別できるそうです。
室町時代の公家は完全に政治の実権を失い、伝統文化の護持者としての存在意義くらいしかなかったそうで、その有り余る閑と知識を費やして物語を作り、異類や異界に感心を向けたようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
40-3 「鼠草子絵巻」
これは畜生道から抜け出すために人間の娘と結婚したネズミの権頭の話で、清水観音に祈願して長者の娘を娶ります。しかし清水観音へのお礼参りの際に妻に正体がネズミであることがバレて、結局は破局を迎えてしまいます。 この作品では姫君が残していった道具が並んで描かれていて、目に手を当てて悲しみながら和歌を詠む権頭の姿がありました。 琴、櫛、碁盤、鏡、髪など様々なものが並び、源氏物語を踏まえた歌もあることから公家の教養高い人物の作ではないかと考えられるようでした。…と、そんなインテリなネズミなのに嫁に逃げられているのが何だか気の毒に思えます。この当時はそんな教養のある人間も少ないだろうにw
83 渡辺南岳 「殿様蛙行列図屏風」
これは六曲一双の水墨の屏風で、トノサマガエルの殿様を中心に沢山の擬人化されたカエルが大名行列している様子が描かれています。さっと描かれたような感じで、カエルはちょっと間が抜けた表情で面白かったです。江戸時代にこんな風刺的な作品を描いて、怒られなかったのかな??
この近くには天狗の物語もありました。
78 「付喪神絵巻」
これは年末のすす払いで路上に打ち捨てられた古道具たちが付喪神(九十九神/つくもがみ。長年使われた道具が化けて神や妖怪に成ったもの)になる話で、長年の奉公が報われなかったと人間への復讐を相談する様子が描かれています。様々な道具に顔が付けられ妖怪みたいな感じですが、可愛らしい印象を受けます。この時、付喪神の中で数珠の一蓮だけは復讐に反対していたようですが、仲間はずれにされています。
この隣には復讐を果たして娯楽に興じる付喪神たちが描かれたシーンもあり、一時の余韻に浸っているようでしたが、妖怪が横行したとして天皇が祈祷を行わせ妖怪たちは降伏することになります。そして最後には付喪神たちは山中に住む数珠の一蓮を訪ね、出家して成仏するそうです。解説によると、これは心を持たない者でも成仏できるという仏教の教えが影響しているようでした。
この近くには79「百鬼夜行絵巻」などもありました。これはストーリーはよく分からないですが、ユーモラスな妖怪たちが生き生きと描かれていました。
そして出口付近には蒔絵の唐櫃や文机、箪笥、手拭掛なども展示されていました。
ということで、予想以上に楽しめました。どの物語もあまり堅苦しい感じではなく、笑いありスプラッターあり下ネタありと多彩で面白かったです。当時の世相からの考察も興味深かったので、昔話などが好きな方は特に楽しめると思います。お勧めの展示です。
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
お伽草子 この国は物語にあふれている
【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2012_05/?fromid=topmv
【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2012年9月19日(水)~11月4日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんが多くて、小さな絵巻の前などは人だかりが出来る所もありました。
さて、今回は「御伽草子」についての展示です。現代日本でもお伽話や絵本が広く読まれていますが、絵解きによる物語を楽しむ文化は昔の日本にもあったようで、室町時代から江戸時代初期にかけて、短編小説の「御伽草子」が作られていました。御伽草子は幅広い階層に愛読されたらしく、400種類を超える現存作品の中には一寸法師や浦島太郎、酒呑童子など今でもよく知られている物語も含まれています。 この展示ではそうした御伽草子の絵巻を中心に、その当時の社会の投影を読み解くという試みがされていました。序章から5章まで章分けされていましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。
なお、冒頭でも書いた通りこの展示は細かい期間分けがありますので、お目当ての作品がある方は予め作品リストで期間を確認しておくことをお勧めします。
参考リンク:作品リスト
<序章>
まずは「御伽草子」の語源についてのコーナーです。御伽草子は初版の年月は分からないようですが、享保14年(1729年)頃までには大坂の版元「大坂心斎橋順慶町 書林 渋川清右衛門」という人物がいにしえの物語23篇を選び、箱入り木版横本として刊行していたようです。つまり「御伽草子」という名称は渋川清右衛門の23篇の商標とも言うべきものだったらしく、その話の中には一寸法師、浦島太郎、酒呑童子、鉢かつぎ なども含まれているそうです。しかし時代が下るに従って23篇に限定されず、類する作品を御伽草子と呼んで広く用いられていくようになったそうです。ここには御伽草子の元祖とも言える渋川版の御伽草子が並んでいました。
1-21 「御伽草子渋川版 浦島太郎」
これが渋川版の御伽草子で、お馴染みの浦島太郎の刊もありました。船の上で亀を釣り上げている浦島太郎が白黒の線で描かれていて、そのシーンを端的に表しています。右のページにはひらがな多めのテキストが書かれていました。亀はいじめられていたわけでなく、釣り上げられていたのですね…。何故話が変わって行ったのかは分かりませんでしたが興味深い改変でした。
浦島太郎はこの後の章でも何回か出てきます。ここには同じように渋川版が5篇並んでいました。
<第1章 昔むかし―お伽草子の源流へ>
平安時代に始まった物語文学は、鎌倉時代を経てやがて公家の衰微に伴って衰えて行ったと言われているそうです。そうした中で鎌倉末期になると、物語文学の系譜に連なりながらも表現・題材共に公家文学とは全く異なる革新的な作り物語が現れ、これが御伽草子の萌芽と言えるようです。御伽草子の特徴は大きく3つ挙げられるそうで、以下のように説明されていました。
・短編であること。 これは頻繁に起こる戦に人々の心は落ち着かず、比較的短時間で読める短編が好まれたのではないかとのこと
・テーマ。 時代の意識などを反映し、名もない庶民が主人公になった話、動物たちが人間のように振舞っている話、昔話に近い民間説話など、多種多用なテーマ
・絵を伴うこと
ここには絵巻を中心に上記のような特徴を持つ ぶっ飛んだ物語が並んでいました。
4 「掃墨物語絵巻」
これは色付きの絵巻で、娘を訪れた僧侶が 白粉と眉墨を取り違えて化粧をした娘を観て驚いて逃げている様子が描かれています。僧侶は屋敷から離れた所まで逃げているのですが、一目散に背を向けて逃げているの面白いです。また、絵巻を進んでいくと屋敷の中のシーンもあり、母親が眉墨で顔が真っ黒な娘を観て恐れおののいている様子が描かれています。母親はこれを観て鬼と間違ったそうですが、やがて娘と気づいたようで隣の部屋(次の場面)では娘が鏡を見せられています。さらにその次の部屋では娘が顔を洗って仏心を起こしている様子が描かれ、娘の方はこれがきっかけとなって出家したそうです。非常にユーモラスで、そこまで逃げなくてもという程の僧侶の逃げっぷりが可笑しく感じられました。
2 「浦嶋明神縁起絵巻」
浦嶋神社の縁起を描いた絵巻で、浦島太郎の前段階と考えられ、その起源は日本書紀にまで遡るそうです。釣った亀が美女になり、竜宮城ではなく空の上の蓬莱宮に連れていかれ、そこで3年のつもりが300年経ってしまい、失意のうちに玉手箱を開けて老人になる様子が描かれています。我々の知る浦島太郎の話とちょっと異なる点があるようで、後日談で玉手箱を開けた所に祠が建てられ浦島を祀ったようです。社の前で盛大な祭りが始まる様子なども描かれていました。
この近くには鈴の音のようなオナラをして長者になった老人の物語の5「福富草紙」の絵巻もありました。老人に弟子入りした強欲な隣人が老人から嘘の薬を飲まされ、中将の家で下痢を撒き散らすというストーリーが笑えます。
<第2章 武士の台頭 ―「 酒呑童子」を中心に>
武家が政権を掌握して武家の時代が訪れると、武家を主人公にした武家物語が登場しました。先行する平家物語や太平記などの軍記物から影響を受けつつ、史実よりも人間ドラマを中心に据える点が特徴だそうで、そうした傾向は超人的な武士像を生み出すこととなったようです。そして、特殊な能力を持つ英雄たちによる怪物(鬼)退治の説話へと繋がって行き、特に平安時代の武将である源頼光たちの酒天童子退治は圧倒的な支持を得て沢山のテキスト・絵画・芝居などが作られました。怪物を退治し世の中の秩序の安定を保つのは武家のあるべき姿と考えられていたようで、ここにはそうした話が並んでいました。
9 狩野元信 「酒伝童子絵巻」 ★こちらで観られます
酒天童子の話は鬼の棲家を丹波国大江山とする系統と、近江国伊吹山とする系統があるそうで、これは後者を代表する作品です。ストーリーをかいつまむと、都から貴族の娘が姿を消す事件が相次ぎ 陰陽師の安倍晴明が占ったところ、それは鬼の仕業と判明します。そこで源頼光とその四天王に鬼退治の勅命が下り、藤原保昌も加わって鬼退治に向かい、酒天童子たちに毒の酒を飲ませる作戦を行います。この作品では鬼たちが眠った所を源頼光らが襲う様子が描かれていて、巨大で赤い肌の酒天童子の首をはねられて血がブッシャーーーーーと飛び散っています。さらに飛んだ首は源頼光の頭に食らいついていて、非常に恐ろしい場面となっていました。まさにスプラッターさながらで驚かされます。続きの場面では配下の鬼たちとも交戦し、首をはねたり血みどろの戦いを繰り広げていました。色鮮やかで迫力ある作品です。なお、解説によるとこの作品は1522年に小田原城主 北条氏綱の注文で作られたのだとか。既に地方の大名にまで御伽草子が広まっていたことを示すようです。
この隣にも大江山版で現存最古の酒天童子の話もありました。また、近くにはこの話の後日談もあり、室町時代は誰もが一種の改作者となって新たな本文や絵を自由に作っていたそうです。内容は酒天童子の残党が羅生門に住み着いたので退治する話のようでした。
ここには酒天童子以外にも巨大な蟹を退治する話を描いた六曲一双の屏風もあります。こちらでも血が飛び散ってましたw
<第3章 お伽草子と下剋上>
続いては御伽草子と下克上についてのコーナーです。御伽草子が作られた時代は南北朝の対立や戦国時代など全国で戦乱の続いた不安動揺の時代でした。しかし、この時代の文芸にとっては決して不幸の時代では無かったそうで、意外にも文芸が身分的・地域的に発展していったそうです。また、この時代「下克上」は一般の風潮だったらしく、先程も出てきた「福富草子」をはじめ、主人公の才覚一つで成り上がる一寸法師やものぐさ太郎など、立身出世の物語が作られ、当時の民衆の力の高揚が伺えるようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
32 「ささやき竹物語」
この話は、姫を見初めた毘沙門堂の別当 阿闍梨(偉い僧)が、姫の親夫婦の寝室の隣の部屋から竹筒を使って寝ている夫婦に偽のお告げをするというもので、この作品にはその様子が描かれています。壁に竹筒を差しているのが滑稽で、毘沙門の名を語り姫を阿闍梨に嫁にやれと言っているようです。両親はそれがお告げであると信じこんで嫁を寺に送るのですが、行く途中で姫は男に助けられ、後にその男と結ばれます。一方で阿闍梨の元には姫の代わりに牛が届くそうで、オチも含めて笑えます。解説によると、敬いの対象出会った僧侶も滑稽に描かれているなど下克上の風紀が見られるようでした。
この近くには那須野で沢山の武士たちに狩られている 馬より大きな二股の狐を描いた26「玉藻前草子絵巻」がありました。色鮮やかで緊迫した雰囲気の作品です。また、好色の僧が夜の暗がりの中で老婆と気づかず一夜を共にする「おようのあま絵巻」という作品などもあり、これも笑えました。
少し進むとまた34「福富草紙」と35「浦島太郎絵巻」があります。結構、素人が描いたような絵も多く、妙な味わいがあります。中には大量生産で簡素化された作品もありました。
<第4章 お伽草子と[場]― すれ違う物語・行きかう主人公>
続いては物語に特定の場所が出てくる作品のコーナーです。「昔々~」と始まると「ある所で」と続けたくなってしまいますが、御伽草子では物語の具体的な場所が示されることが少なくなかったそうです。特に清水寺が登場する御伽草子は40篇を越え、これは現存作品(400篇)の内、実に1割を占めているようです。ここにはそうした清水寺を描いた作品などが並んでいました。
48 「物ぐさ太郎」
これは寝てばかりの ものぐさ太郎の話を描いたもので、ものぐさ太郎は落ちた餅も拾わないほどのものぐさぶりのようです。しかし、国司からの命令で都での夫役に就くことになると人が変わったようにマメになり、帰国する際には女性を連れて女房にしようと考えたようです。清水寺の前で美女を見つけようとしているシーンも描かれていて、美女を見つけると追い回し、和歌を詠むなど機転の効いた受け応えをしたらしく、それが功を奏して最後は見事に妻を娶ったそうです。どの場面を観ても駄目人間のナンパ野郎にしか見えませんが…w これも簡素な画風でしたが駄目人間ぶりがよく伝わってきました。
この近くには清水寺の参詣曼荼羅や、道成寺の縁起を書いた異本の60「賢覚草紙絵巻」もありました。道成寺の話の中でも清水寺に参拝するシーンがあるのだとか。
少し進むと源義経と弁慶が清水寺の舞台で戦っている様子が描かれた62 「義経記」もあります。また、何故か義経が1000人の辻斬りをしている作品もあり、1000人目(弁慶)を仲間にするようにという大日如来のお告げを受けるシーンが描かれていました。義経と弁慶の立場が逆転しているような??
61 「藤袋草子絵巻」
これは女の赤子を拾って育てた翁が、農作業のキツさに耐えかねて「猿でも良いから手伝ってくれたら娘を嫁になる」と言うと、本当に猿がやってきて手伝いをするという話です。手伝いが終わると娘は連れ去られて猿の嫁になるのですが、娘は泣いてばかりいるので元気づけようと酒宴をしている様子が描かれています。結構緻密に描かれて楽しそうな雰囲気で、烏帽子をかぶった猿が娘と目を合わせているようです。…ちょっと猿が可愛らしいw
しかしこの後、猿は姫を袋に入れて木に吊るし(逃亡防止)、姫のために果物を取り行きます。すると狩人がその袋を見て娘を助け出し、娘の代わりに袋には犬が入れられます。 そしてそれを開けた猿たちは皆、猿に噛まれて死んでしまい、娘は狩人と結ばれてめでたしめでたしというストーリーでした。 って、いくらなんでも猿が可哀想! 契約を遂行しただけでここまでの仕打は酷いw ちょっと理不尽な話でした。
解説によると、この本も清水観音のご利益を示しているらしく、清水寺は当時絶大な信仰を集めていたとのことでした。
<第5章 見えない世界を描く― 異類・異界への関心>
最後は異形の者達が描かれた作品のコーナーです。御伽草子には動物・植物・器々の擬人化など人間とは異なる者たちが書かれた物語も多いそうで、こうした「異類物」は人間と異類の交渉を扱った物語と 異類だけの物語の2種に大別できるそうです。
室町時代の公家は完全に政治の実権を失い、伝統文化の護持者としての存在意義くらいしかなかったそうで、その有り余る閑と知識を費やして物語を作り、異類や異界に感心を向けたようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
40-3 「鼠草子絵巻」
これは畜生道から抜け出すために人間の娘と結婚したネズミの権頭の話で、清水観音に祈願して長者の娘を娶ります。しかし清水観音へのお礼参りの際に妻に正体がネズミであることがバレて、結局は破局を迎えてしまいます。 この作品では姫君が残していった道具が並んで描かれていて、目に手を当てて悲しみながら和歌を詠む権頭の姿がありました。 琴、櫛、碁盤、鏡、髪など様々なものが並び、源氏物語を踏まえた歌もあることから公家の教養高い人物の作ではないかと考えられるようでした。…と、そんなインテリなネズミなのに嫁に逃げられているのが何だか気の毒に思えます。この当時はそんな教養のある人間も少ないだろうにw
83 渡辺南岳 「殿様蛙行列図屏風」
これは六曲一双の水墨の屏風で、トノサマガエルの殿様を中心に沢山の擬人化されたカエルが大名行列している様子が描かれています。さっと描かれたような感じで、カエルはちょっと間が抜けた表情で面白かったです。江戸時代にこんな風刺的な作品を描いて、怒られなかったのかな??
この近くには天狗の物語もありました。
78 「付喪神絵巻」
これは年末のすす払いで路上に打ち捨てられた古道具たちが付喪神(九十九神/つくもがみ。長年使われた道具が化けて神や妖怪に成ったもの)になる話で、長年の奉公が報われなかったと人間への復讐を相談する様子が描かれています。様々な道具に顔が付けられ妖怪みたいな感じですが、可愛らしい印象を受けます。この時、付喪神の中で数珠の一蓮だけは復讐に反対していたようですが、仲間はずれにされています。
この隣には復讐を果たして娯楽に興じる付喪神たちが描かれたシーンもあり、一時の余韻に浸っているようでしたが、妖怪が横行したとして天皇が祈祷を行わせ妖怪たちは降伏することになります。そして最後には付喪神たちは山中に住む数珠の一蓮を訪ね、出家して成仏するそうです。解説によると、これは心を持たない者でも成仏できるという仏教の教えが影響しているようでした。
この近くには79「百鬼夜行絵巻」などもありました。これはストーリーはよく分からないですが、ユーモラスな妖怪たちが生き生きと描かれていました。
そして出口付近には蒔絵の唐櫃や文机、箪笥、手拭掛なども展示されていました。
ということで、予想以上に楽しめました。どの物語もあまり堅苦しい感じではなく、笑いありスプラッターあり下ネタありと多彩で面白かったです。当時の世相からの考察も興味深かったので、昔話などが好きな方は特に楽しめると思います。お勧めの展示です。
参照記事:★この記事を参照している記事
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
前回ご紹介した展示を観た後、ミッドタウンに移動して表通りにあるFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で「マグナムを創った写真家たち~キャパ、カルティエ=ブレッソン、ロジャー、シーモア~」を観てきました。

【展覧名】
マグナムを創った写真家たち~キャパ、カルティエ=ブレッソン、ロジャー、シーモア~
【公式サイト】
http://fujifilmsquare.jp/detail/12090101.html
【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2012年9月1日(土)~11月30日(金)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間15分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
狭い展示スペースなのでたまに人が溜まる感じでしたが概ね空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は「マグナム・フォト」という写真家グループに関する展示です。展示品は点数が少ないので作品充実度を②にしましたが、この「マグナム・フォト」は現在では世界的に有名な団体で、この展示ではその創設者4人(ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デビッド・シーモア)の作品を展示していました。
参考リンク:マグナム・フォトのwikipedia
「マグナム・フォト」は1947年に設立されたそうで、当時はプロ写真家の写真でも作者の意向を無視したトリミングや不正確なキャプションがつけられるような状況だったらしく、これを憂いたロバート・キャパが、写真家の権利を確保し自由な写真活動をするための組織を発案し、仲間たちと共に設立したそうです。
会場の最初の辺りにはロバート・キャパによるイスラエル建国に伴う移民の写真(★こちらで観られます)や、仲間のデビッド・シーモアによる強制収容所で育った少女が自分の家を描いている写真(★こちらで観られます)など、戦後の新しい動きや戦争の傷跡を思わせる写真が並んでいました。特に少女の描く「家」はぐちゃぐちゃに描かれていて、こちらを見る表情と共に何か恐ろしいものを感じました。
その後はロバート・キャパのコーナーのようで、まずはソ連の共産主義政権下のファッションショーの様子を撮った作品が気になりました。大きなスターリン?の肖像が飾られた部屋の中で、大勢の男性がまるで会議か面接のように机に向かって女性の立ち姿を見ている様子は、とてもファッションショーには思えませんでした。時代の空気を感じさせます。
キャパは他にもピカソと息子のクロードが海で遊んでいる様子を撮った写真もあり、これは1948年の作品だったのでピカソは結構年老いていますが、息子は4~5歳くらいに見えました。生き生きした雰囲気で息子は非常に楽しそうです。
キャパはもう1人 大芸術家を撮った作品があり、アンリ・マティスがアトリエで絵を描いている様子が撮られていました。床に新聞紙を敷き詰めて壁に巨大な紙を置き、自分の背丈より高い棒を使ってドローイングする様子で、腰に手を当ててじっくり伺っているような感じに見えました。これはマティスの制作の様子や人柄が伝わってくるようで面白かったです。 …キャパの作品はちょっと怖いくらいに歴史の明暗を感じました。
続いてはアンリ・カルティエ=ブレッソンという人のコーナーです。どうやらメンバー各自で受け持ちの地域があったらしく、この人はアジアを撮った作品が多いようでした。
中でも目を引いたのは戦後すぐの中国の写真で、最後の宦官というタイトルで年老いた宦官(去勢された官吏)が撮られた作品です。老人はシワだらけで耳が尖っているように見えてちょっと宇宙人みたいな…。どこか異様な雰囲気がありました。 ブレッソンの作品は他にも激動の時代性を感じる作品があり真に迫るものがありました。
続いてはジョージ・ロジャーという写真家のコーナーで、この人はアフリカを撮った写真が並んでいました。長い棒を持つ均整の取れた身体のファイターの後ろ姿や、砂漠の中で頭に籠や荷物を乗せて歩く女性たちが列をなしている様子 など、アフリカの神秘や力強さを感じさせました。
最後はデビッド・シーモアで、この人も時代を感じさせる作品がいくつかあり、アメリカの美術史家バーナード・ベレンソンが、カノーヴァの彫刻(ベッドに横たわって肘をつく女性像)に見入っている様子を撮った写真がありました。女性像の後ろからベレンソンの顔を伺うように撮った構図が非常に面白かったです。
他にもイタリアのカフェで水兵に闇市で手に入れたタバコを売っている少女を撮った作品や、今回のポスターにもなっているギリシアのシクラデス諸島の街の路地を撮った写真などがありました。撮られた人の感情や人々の生活が伝わってきます。
ということで、点数は少なめですが濃密な作品が並んだ展示でした。これだけ時代が経っても面白く感じられるのは驚きです。ここは無料で入れるし大通り沿いにあるので、気になる方は是非どうぞ。もう1つの大きめの展示スペースでは短期間の写真展が入れ替わりで開催されているので、そちらと合わせて楽しむことができます。
参照記事:★この記事を参照している記事


【展覧名】
マグナムを創った写真家たち~キャパ、カルティエ=ブレッソン、ロジャー、シーモア~
【公式サイト】
http://fujifilmsquare.jp/detail/12090101.html
【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2012年9月1日(土)~11月30日(金)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間15分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
狭い展示スペースなのでたまに人が溜まる感じでしたが概ね空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は「マグナム・フォト」という写真家グループに関する展示です。展示品は点数が少ないので作品充実度を②にしましたが、この「マグナム・フォト」は現在では世界的に有名な団体で、この展示ではその創設者4人(ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デビッド・シーモア)の作品を展示していました。
参考リンク:マグナム・フォトのwikipedia
「マグナム・フォト」は1947年に設立されたそうで、当時はプロ写真家の写真でも作者の意向を無視したトリミングや不正確なキャプションがつけられるような状況だったらしく、これを憂いたロバート・キャパが、写真家の権利を確保し自由な写真活動をするための組織を発案し、仲間たちと共に設立したそうです。
会場の最初の辺りにはロバート・キャパによるイスラエル建国に伴う移民の写真(★こちらで観られます)や、仲間のデビッド・シーモアによる強制収容所で育った少女が自分の家を描いている写真(★こちらで観られます)など、戦後の新しい動きや戦争の傷跡を思わせる写真が並んでいました。特に少女の描く「家」はぐちゃぐちゃに描かれていて、こちらを見る表情と共に何か恐ろしいものを感じました。
その後はロバート・キャパのコーナーのようで、まずはソ連の共産主義政権下のファッションショーの様子を撮った作品が気になりました。大きなスターリン?の肖像が飾られた部屋の中で、大勢の男性がまるで会議か面接のように机に向かって女性の立ち姿を見ている様子は、とてもファッションショーには思えませんでした。時代の空気を感じさせます。
キャパは他にもピカソと息子のクロードが海で遊んでいる様子を撮った写真もあり、これは1948年の作品だったのでピカソは結構年老いていますが、息子は4~5歳くらいに見えました。生き生きした雰囲気で息子は非常に楽しそうです。
キャパはもう1人 大芸術家を撮った作品があり、アンリ・マティスがアトリエで絵を描いている様子が撮られていました。床に新聞紙を敷き詰めて壁に巨大な紙を置き、自分の背丈より高い棒を使ってドローイングする様子で、腰に手を当ててじっくり伺っているような感じに見えました。これはマティスの制作の様子や人柄が伝わってくるようで面白かったです。 …キャパの作品はちょっと怖いくらいに歴史の明暗を感じました。
続いてはアンリ・カルティエ=ブレッソンという人のコーナーです。どうやらメンバー各自で受け持ちの地域があったらしく、この人はアジアを撮った作品が多いようでした。
中でも目を引いたのは戦後すぐの中国の写真で、最後の宦官というタイトルで年老いた宦官(去勢された官吏)が撮られた作品です。老人はシワだらけで耳が尖っているように見えてちょっと宇宙人みたいな…。どこか異様な雰囲気がありました。 ブレッソンの作品は他にも激動の時代性を感じる作品があり真に迫るものがありました。
続いてはジョージ・ロジャーという写真家のコーナーで、この人はアフリカを撮った写真が並んでいました。長い棒を持つ均整の取れた身体のファイターの後ろ姿や、砂漠の中で頭に籠や荷物を乗せて歩く女性たちが列をなしている様子 など、アフリカの神秘や力強さを感じさせました。
最後はデビッド・シーモアで、この人も時代を感じさせる作品がいくつかあり、アメリカの美術史家バーナード・ベレンソンが、カノーヴァの彫刻(ベッドに横たわって肘をつく女性像)に見入っている様子を撮った写真がありました。女性像の後ろからベレンソンの顔を伺うように撮った構図が非常に面白かったです。
他にもイタリアのカフェで水兵に闇市で手に入れたタバコを売っている少女を撮った作品や、今回のポスターにもなっているギリシアのシクラデス諸島の街の路地を撮った写真などがありました。撮られた人の感情や人々の生活が伝わってきます。
ということで、点数は少なめですが濃密な作品が並んだ展示でした。これだけ時代が経っても面白く感じられるのは驚きです。ここは無料で入れるし大通り沿いにあるので、気になる方は是非どうぞ。もう1つの大きめの展示スペースでは短期間の写真展が入れ替わりで開催されているので、そちらと合わせて楽しむことができます。
参照記事:★この記事を参照している記事
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
前回まで六本木・乃木坂の記事が続きましたが、先週の土曜日も六本木で美術館巡りをしてきました。まずは乃木坂駅の前にあるTOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)で、「山下保博×アトリエ・天工人展 Tomorrow-建築の冒険-」を観てきました。

【展覧名】
山下保博×アトリエ・天工人展 Tomorrow-建築の冒険-
【公式サイト】
http://www.toto.co.jp/gallerma/ex121013/index.htm
【会場】TOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅など
【会期】2012年10月13日(土)~2012年12月22日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
初日に行ったのですが、結構若いお客さんが入っていました。と言っても混んでいるわけではなく、快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は 山下保博 氏とその事務所のアトリエ・天工人(テクト)による個展です。私はこの方を知らなかった(というより現代の建築家をほとんど知らないw)のですが、2004年ar+d award(国際新人賞)2004年最優秀賞など数多くの建築の賞を受けていているそうで、国内外で活躍されている方のようです。 この展覧会では冒険をテーマにその仕事を7つのコーナーに分けて展示していましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。なお、今回も写真を撮ることができましたので、写真を使ってご紹介していきます。
<構造からの冒険>
まずは建物の自由な構造についてのコーナーです。
「セル・ブリック」

これは土地のコストの高い東京で、最大限の内部空間とたくさんの収納を確保する為に考えた構造らしく鉄板で収納ボックスを270個も作って組み合わせているそうです。ちょっと近未来的なデザインがカッコいい! 夏の光を遮って冬の光を取り入れる効果もあるそうで、よくそんな発想が生まれるものだと感心させられました。
「ペンギン・ハウス」

これは敷地面積50平方メートルという狭いスペースに建てられた建物。名前の通りペンギンみたいな姿がちょっと可愛らしいw 3階からの眺めが良さそうです。
骨組みも見ることが出来ました。
<環境からの冒険>
続いては建築と環境についてのコーナーです。
「A-ring」

こちらは環境共生型の建築。屋根に太陽光パネルがあるのは分かりやすいですが、その他にも地熱利用やアルミ・雨水・ミストによる打ち水機能をもつ塀、オールLED化など様々な工夫がされているようです。ランニングコストゼロを目指したそうで、ちょっと住んでみたい。
この先には国際コンペで2等となったオペラハウスの構想などもありました。
<化学からの冒険>
こちらは数学や物理ではなく無限の可能性を秘める化学によって建築を構築するというコーナーです。
この辺りの展示風景。重厚な壁に十字架の穴が空いているものが建物の内外に続いています。これには驚き。この壁は上の階にも続いています。

「土の礼拝堂」

先ほどの壁はこの建物の壁を模したものかな。堅牢な印象を受けます。
「土の礼拝堂」を上から見た様子。

「熱の美術館」

こちらは未完の建築だそうで、現在もブラッシュアップしているそうです。熱による現象を体感する施設らしく、蜃気楼や水の状態変化など様々な現象が起きるのを想定しているようです。
「熱の美術館」を横から見た様子。

この幾何学的でちょっと遺跡みたいな感じが好みです。
上の階に行く階段付近。こちらにも壁が続いています。

この裏側には「土ブロック」と「Earth Bricks」の作り方が説明されたボードとブロック作りの道具も展示されていました。
<五感からの冒険>
ここから上階で、こちらは精神的に五感を刺激させて、空間を豊かに認識させるという方法に関するコーナーです。特に空間を認識するために重要な要素は視覚で、6割以上を担っているそうです。
「Lucky Drops」

「Lucky Drops」というのはワインの最後の一滴のことで、日本の諺の「残り物には福がある」と同じ意味だそうです。これは細長い台形の地に建てたそうで、地下がメインの場所になっているので外光を取り入れて視覚的な広がりを確保しているのだとか。実際に建てられた写真を観るとびっくりするほど横幅がありませんw
<街づくりを冒険>
こちらは自分たちが本当に住みたいと思うような「美と健康の街づくり」についてのコーナーです。
「ケーススタディ1 神奈川県藤沢市遠藤」

このプロジェクトは自産自消、自然エネルギー、農の活用 を要素に含んでいるそうで、日の向きなどを計算しているようです。他にも綿密な計算があるようで、これは一種の理想郷のようでした。こういう街で暮らしてみたい…。
この他にも福岡県のケーススタディなども展示されていました。
<重力からの冒険>
続いては重力や不動産としての建築から解放されたいという思いを表現したコーナーです
「モバイル・すまいる」

これは見た通り移動できる家です! 東日本大震災の支援プロジェクトだそうで、実際に使っている映像などもありました。昔からキャンピングカーとか好きな私としてはこれはワクワクさせられました。
「Magritte's」

これはルネ・マグリットの「ピレネーの城」(岩が空を飛んでいる絵)をモチーフに重力からの解放をテーマにしているそうです。土台の辺りが浮いてるみたいな感じに見えますが、そこから採光しているようでした。
<再編集からの冒険>
最後はそれぞれの地域の伝統的・文化的なものや時間を見直して新しい視点から編集するというコーナーです。
「アンバー・ブリック」

これはオーストリアの村にリスト生誕200周年を記念して日本の建築家約10組が音楽練習場つきのコテージを作るプロジェクトだそうです。この村は琥珀の流通地点だったそうで、その地域の歴史や住民の思いを封印するという考えのようです。この日観た中でも最も斬新な印象を受けます。
横から観るとこんな感じ。

宝石が並んでいるようで非常に面白いです。
ということで、観ているだけでワクワクするような建物の模型が並んでいました。クライアントの要望や建物に要求される条件などをクリアしつつ、より機能的で斬新な発想で設計された作品の数々に唸らされました。勿論デザインの美しさも楽しめたので満足な展覧会でした。ここはミッドタウンや国立新美術館に近いし無料なので、セットで行ってみるのもお勧めです。
おまけ:
帰る時にチラッとポスターの人物と似た人がギャラリーの人と話しているのを見たのですが、もしかして本人??
参照記事:★この記事を参照している記事


【展覧名】
山下保博×アトリエ・天工人展 Tomorrow-建築の冒険-
【公式サイト】
http://www.toto.co.jp/gallerma/ex121013/index.htm
【会場】TOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅など
【会期】2012年10月13日(土)~2012年12月22日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
初日に行ったのですが、結構若いお客さんが入っていました。と言っても混んでいるわけではなく、快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は 山下保博 氏とその事務所のアトリエ・天工人(テクト)による個展です。私はこの方を知らなかった(というより現代の建築家をほとんど知らないw)のですが、2004年ar+d award(国際新人賞)2004年最優秀賞など数多くの建築の賞を受けていているそうで、国内外で活躍されている方のようです。 この展覧会では冒険をテーマにその仕事を7つのコーナーに分けて展示していましたので、詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。なお、今回も写真を撮ることができましたので、写真を使ってご紹介していきます。
<構造からの冒険>
まずは建物の自由な構造についてのコーナーです。
「セル・ブリック」

これは土地のコストの高い東京で、最大限の内部空間とたくさんの収納を確保する為に考えた構造らしく鉄板で収納ボックスを270個も作って組み合わせているそうです。ちょっと近未来的なデザインがカッコいい! 夏の光を遮って冬の光を取り入れる効果もあるそうで、よくそんな発想が生まれるものだと感心させられました。
「ペンギン・ハウス」


これは敷地面積50平方メートルという狭いスペースに建てられた建物。名前の通りペンギンみたいな姿がちょっと可愛らしいw 3階からの眺めが良さそうです。
骨組みも見ることが出来ました。
<環境からの冒険>
続いては建築と環境についてのコーナーです。
「A-ring」


こちらは環境共生型の建築。屋根に太陽光パネルがあるのは分かりやすいですが、その他にも地熱利用やアルミ・雨水・ミストによる打ち水機能をもつ塀、オールLED化など様々な工夫がされているようです。ランニングコストゼロを目指したそうで、ちょっと住んでみたい。
この先には国際コンペで2等となったオペラハウスの構想などもありました。
<化学からの冒険>
こちらは数学や物理ではなく無限の可能性を秘める化学によって建築を構築するというコーナーです。
この辺りの展示風景。重厚な壁に十字架の穴が空いているものが建物の内外に続いています。これには驚き。この壁は上の階にも続いています。

「土の礼拝堂」

先ほどの壁はこの建物の壁を模したものかな。堅牢な印象を受けます。
「土の礼拝堂」を上から見た様子。

「熱の美術館」

こちらは未完の建築だそうで、現在もブラッシュアップしているそうです。熱による現象を体感する施設らしく、蜃気楼や水の状態変化など様々な現象が起きるのを想定しているようです。
「熱の美術館」を横から見た様子。

この幾何学的でちょっと遺跡みたいな感じが好みです。
上の階に行く階段付近。こちらにも壁が続いています。

この裏側には「土ブロック」と「Earth Bricks」の作り方が説明されたボードとブロック作りの道具も展示されていました。
<五感からの冒険>
ここから上階で、こちらは精神的に五感を刺激させて、空間を豊かに認識させるという方法に関するコーナーです。特に空間を認識するために重要な要素は視覚で、6割以上を担っているそうです。
「Lucky Drops」


「Lucky Drops」というのはワインの最後の一滴のことで、日本の諺の「残り物には福がある」と同じ意味だそうです。これは細長い台形の地に建てたそうで、地下がメインの場所になっているので外光を取り入れて視覚的な広がりを確保しているのだとか。実際に建てられた写真を観るとびっくりするほど横幅がありませんw
<街づくりを冒険>
こちらは自分たちが本当に住みたいと思うような「美と健康の街づくり」についてのコーナーです。
「ケーススタディ1 神奈川県藤沢市遠藤」


このプロジェクトは自産自消、自然エネルギー、農の活用 を要素に含んでいるそうで、日の向きなどを計算しているようです。他にも綿密な計算があるようで、これは一種の理想郷のようでした。こういう街で暮らしてみたい…。
この他にも福岡県のケーススタディなども展示されていました。
<重力からの冒険>
続いては重力や不動産としての建築から解放されたいという思いを表現したコーナーです
「モバイル・すまいる」

これは見た通り移動できる家です! 東日本大震災の支援プロジェクトだそうで、実際に使っている映像などもありました。昔からキャンピングカーとか好きな私としてはこれはワクワクさせられました。
「Magritte's」

これはルネ・マグリットの「ピレネーの城」(岩が空を飛んでいる絵)をモチーフに重力からの解放をテーマにしているそうです。土台の辺りが浮いてるみたいな感じに見えますが、そこから採光しているようでした。
<再編集からの冒険>
最後はそれぞれの地域の伝統的・文化的なものや時間を見直して新しい視点から編集するというコーナーです。
「アンバー・ブリック」

これはオーストリアの村にリスト生誕200周年を記念して日本の建築家約10組が音楽練習場つきのコテージを作るプロジェクトだそうです。この村は琥珀の流通地点だったそうで、その地域の歴史や住民の思いを封印するという考えのようです。この日観た中でも最も斬新な印象を受けます。
横から観るとこんな感じ。

宝石が並んでいるようで非常に面白いです。
ということで、観ているだけでワクワクするような建物の模型が並んでいました。クライアントの要望や建物に要求される条件などをクリアしつつ、より機能的で斬新な発想で設計された作品の数々に唸らされました。勿論デザインの美しさも楽しめたので満足な展覧会でした。ここはミッドタウンや国立新美術館に近いし無料なので、セットで行ってみるのもお勧めです。
おまけ:
帰る時にチラッとポスターの人物と似た人がギャラリーの人と話しているのを見たのですが、もしかして本人??
参照記事:★この記事を参照している記事
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
前回、前々回とご紹介した国立新美術館の展示を観た後、美術館のすぐそばにあるスパングルというお店でお茶してきました。

【店名】
スパングル
【ジャンル】
レストラン・カフェ
【公式サイト】
http://www.spangle-all.com/cafe/
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13056479/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【近くの美術館】
国立新美術館
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
など
【この日にかかった1人の費用】
1070円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
ここは前々から気になっていたのですが、いつも混んでいたので初めて訪れました。この日の夕方は混んでいませんでしたが、土日の昼は混んでいるイメージがあります。
このお店は国立新美術館に表門から入ったことがある人なら誰でも通ったことがあるような場所にあります。ミッドタウンからもすぐ近くなので美術館巡りの際に利用しやすい所です。お店の地下にはシュミレーションゴルフがあるそうで、カフェはそこの併設といった感じのようです。
お店の中の雰囲気はこんな感じ。あまり広くはありませんが落ち着いて洒落た雰囲気です。

この日はカウンターに座りました。

夜はバータイムになっているようで、お酒が並んでいます。食べ物も軽食メニューなどがありました。
この日、私はチョコバナナのクレープ(650円)とコーヒーのセット(+420円)を頼みました。
まずはチョコバナナのクレープ。

これは食べる時にちょっと驚いたのですが、冷たいクレープでした。甘さは控えめで私には丁度いい位かな。中にチョコの小さな塊も入っていて、ポキっとするチョコの食感も良くて美味しかったです。
続いてコーヒー。

こちらは薄めの味で軽やかで良い香りでした。
ということで、落ち着いた雰囲気の中で美味しいお茶ができました。混んでなければもっと使って行きたい所です。国立新美術館の行き帰りの際によく通る道なので、利便性が高いのも良いと思います。

【店名】
スパングル
【ジャンル】
レストラン・カフェ
【公式サイト】
http://www.spangle-all.com/cafe/
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13056479/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【近くの美術館】
国立新美術館
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
など
【この日にかかった1人の費用】
1070円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
ここは前々から気になっていたのですが、いつも混んでいたので初めて訪れました。この日の夕方は混んでいませんでしたが、土日の昼は混んでいるイメージがあります。
このお店は国立新美術館に表門から入ったことがある人なら誰でも通ったことがあるような場所にあります。ミッドタウンからもすぐ近くなので美術館巡りの際に利用しやすい所です。お店の地下にはシュミレーションゴルフがあるそうで、カフェはそこの併設といった感じのようです。
お店の中の雰囲気はこんな感じ。あまり広くはありませんが落ち着いて洒落た雰囲気です。

この日はカウンターに座りました。

夜はバータイムになっているようで、お酒が並んでいます。食べ物も軽食メニューなどがありました。
この日、私はチョコバナナのクレープ(650円)とコーヒーのセット(+420円)を頼みました。
まずはチョコバナナのクレープ。


これは食べる時にちょっと驚いたのですが、冷たいクレープでした。甘さは控えめで私には丁度いい位かな。中にチョコの小さな塊も入っていて、ポキっとするチョコの食感も良くて美味しかったです。
続いてコーヒー。

こちらは薄めの味で軽やかで良い香りでした。
ということで、落ち着いた雰囲気の中で美味しいお茶ができました。混んでなければもっと使って行きたい所です。国立新美術館の行き帰りの際によく通る道なので、利便性が高いのも良いと思います。
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
今日は前回の記事に引き続き、国立新美術館の「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
国立新美術館開館5周年
リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝
【公式サイト】
http://www.asahi.com/event/liechtenstein2012-13/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/liechtenstein/index.html
【会場】国立新美術館
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2012年10月3日(水)~12月23日(日・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前半では名画ギャラリー(前半)のイタリア・バロックまでご紹介しましたが、今日は残りの半分についてです。
[ルーベンス]
リヒテンシュタイン家ではルーベンスの没後数年から作品を集め始めたそうで、2012年現在で36点を所蔵しているそうです。今回の展示ではその中から10点が出品され、貴重な大作も展示されていました。
38 ペーテル・パウル・ルーベンス 「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」 ★こちらで観られます
今回のポスターの作品で、実物は意外と小さめです。これはルーベンスの5歳の娘の顔が大きく描かれ、つぶらな瞳でこちらを見て凛々しい雰囲気です。(ポスターには「ようこそ、わが宮殿へ」なんてフレーズが添えられていますが、小さな女の子ですw) 頬が赤く染まり血色が良く、聡明そうに描かれていてルーベンスからの愛情が感じられました。一方、服の部分はさっと描かれていて下書きみたいに見えました。 解説によると、この子はこの絵の5年後にわずか12歳で亡くなったのだとか。
36 ペーテル・パウル・ルーベンス 「キリスト哀悼」
手足をだらりとさせたキリストの亡骸の周りに集まって悲しむ人々を描いた作品です。母マリアは目を閉じていて、土気色のキリストは力なく横たわっています。そのキリストの斜めに横たわる構図が目を引き、ドラマチックな雰囲気を出しているように思いました。右のほうでは大粒の涙を流している人物も描かれているなど、人それぞれの感情が読み取れるようでした。
39 ペーテル・パウル・ルーベンス 「マルスとレア・シルヴィア」 ★こちらで観られます
胸に手を当てる女性と、黒い甲冑に赤いマントの男性が踏み込んで女性の手に触れている様子が描かれた作品です。踏み出す仕草や質感溢れる甲冑、翻るマントなど劇的な雰囲気とダイナミックな動きがあり、明暗や色使いなども見事です。女性の驚く表情などからその場面のストーリーが伝わってきそうなのですが、これはかまどの女神ヴェスタの神殿で巫女のレア・シルヴィアが火を絶やさぬようにしていたところ、その姿に心惹かれた軍神マルスが彼女の寝ている隙に忍び寄っている場面だそうで、マルスの下にはマルスを引っ張るキューピッドの姿もあります。後にこの恋は成就したらしく、キューピッドがそれを暗示しているようです。 そしてレア・シルヴィアには双子の子供ができ、その双子がローマを建国したのだとか。
42 ペーテル・パウル・ルーベンス 「占いの結果を問うデキウス・ムス(デキウス・ムスの連作より)」 ★こちらで観られます
これはデキウス・ムスというローマの執政官を主題にした8点の連作のうちの1点で、かなり大きめの大作です。赤いマントのデキウス・ムスが戦争に勝つためには自軍の将軍が犠牲にならねばならないという予言を受けていたそうで、自分か仲間のどちらが犠牲になるべきかを占っている様子が描かれています。周りにはローマの兵士らしき人物や 捧げられた牛などが描かれ、牛の肝臓に異常があったらしくそれを指さす老人も描かれています。つまり占いの結果はデキウス・ムスが犠牲になるべきと出たようで、デキウス・ムスは胸に手を当てて驚いているようでした。こちらの作品もドラマチックで心情が巧みに表現されているように思いました。
この隣には連作のもう1点もありました。また、少し進むとこの作品を陶板にしたものや版画にした作品もありました(いずれも別の作者の模作)
<クンストカンマー>
続いては豪華な工芸品が並ぶコーナーです。16世紀以降、中欧の王侯貴族の間で「クンストカンマー」と呼ばれる一室を設ける習慣が広まったそうで、そこには美しい工芸品や東洋の珍しい陶器、最新技術の時計など珍奇にして貴重な品々が収められたそうです。リヒテンシュタイン家のカール1世のクンストカンマーは、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世も魅了されたほどだったそうで、皇帝の死後には皇帝が宮廷に集めた芸術家に直接注文して工芸品を手に入れていたそうです。ここにはそうして集められた品々が並んでいました。
75 ヨアヒム・フリース 「ぜんまい仕掛けの酒器(牡鹿に乗るディアナ)」
これは金銀に光る酒器で、鹿の上に乗るディアナを象っています。どこからどう見ても彫刻像ですが、分解することができるらしく、鹿の身体に酒を満たすようです。さらにこれはゼンマイ仕掛けで動きまわるそうで展示ケースの脇でその映像を観ることができました。酒宴の席でこれが目の前に止まった人がその酒を飲むというのを繰り返していき、複雑な形の容器からこぼさずに飲むというのが宴を盛り上げたそうです。彫刻像としても優美な雰囲気ですが、まさか分解して動きまわるとは驚きでした。確かに珍奇な品です。
76 コジモ・ディ・ジョヴァンニ・カストルッチ/オッタヴィオ・ミゼローニ/ジュリアーノ・ディ・ピエロ・パンドルフィーニ 「貴石象嵌のチェスト」 ★こちらで観られます
側面に様々な貴石を組み合わせて風景や草花を表現したチェストで、これは貴石象嵌という手法だそうです。緻密で普通に絵のように見えますが、よく観ると石の模様が生かされ、その継ぎ目も観ることができました。解説によると、これはカール1世の注文で作られ10年かかったそうです。こちらもその手間に驚かされる作品でした。
78 マティアス・ラウフミラー 「豪華なジョッキ」 ★こちらで観られます
これは象牙で作られたジョッキで、側面や把手にぎっしりと人々の彫刻が彫られています。これは「サビニの女たちの略奪」という話をモチーフにしているそうで、人々が繋がり合うように表され、かなり立体的で緻密でした。変なところを持つと折れてしまいそう…w 作った人の技術の高さが伺えます。
<名画ギャラリー>
最後は再び絵画作品が並ぶコーナーです。
[17世紀フランドル]
17世紀のフランドル絵画は侯爵家のコレクション形成当初から中核をなしてきたそうです。ここにはブリューゲル一家などの作品も並んでいました。
31 ヤン・ブリューゲル(父) 「若きトビアスのいる風景」
右側に川、左に大勢の人々と木々が描かれた風景画で、背景には山が描かれ遠くの風景は青みがかっていて遠近感を感じさせます。右下の方にはかなり小さめに、父の目の薬となる魚を取るトビアスと、それにお供した天使ラファエルの姿もあります。こうした主題のモチーフを目立たない場所に置くのはヤン・ブリューゲル(父)の常套の手段だったそうで、風景の方が主役になっているように思いました。そうした点や空気感などからフランドルらしさを感じる作品でした。
32 ピーテル・ブリューゲル(子) 「ベツレヘムの人口調査」
これはピーテル・ブリューゲル(父)の作品の模写で、雪景色の村の中、沢山の人々が左下の建物に集まってきている様子が描かれています。これは聖書にもあるベツレヘムの人口調査の場面らしく、右下辺りには牛に乗るマリアの姿もあります。村に流れる川は凍っているようで、そり遊びに興じる人たちもいてのんびりした雰囲気に思えました。ブリューゲルの作品なので、何か隠された意図もありそうな気がしますが、私には読み取れませんでしたw
参考記事:
ブリューゲル版画の世界 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
ブリューゲル版画の世界 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
33 ヤン・ブリューゲル(子) 「死の勝利」
沢山の骸骨たちと人々が戦っている様子を描いた作品で、多くの人は右の方にある横長の建物のような所に逃げようと必死になっています。しかし中には何故か寝そべって弦楽器を奏でている人もいて意味深です。背景には沢山の骸骨に追われる人々や、首吊りの処刑が行われているなど、不気味で緊迫した雰囲気がありました。…たまに可笑しさも感じられるのも面白いです。
[17世紀オランダ]
続いては17世紀オランダのコーナーです。こちらもフランドルに並ぶ充実ぶりのようで、巨匠の作品が並んでいました。
52 アンソニー・ヴァン・ダイク 「マリア・デ・タシスの肖像」 ★こちらで観られます
光沢のあるドレスを着て真珠の首飾りをした若い女性を描いた作品です。これは有力者である郵便局長の娘を描いたものだそうで、こちらを見て微笑む顔が優美で、魅力的な女性です。写実的で緻密な画風で描かれ、特に服の腕の辺りの質感が見事に思えました。
56 フランス・ハルス 「男の肖像」
黒い帽子に黒い服の男性が微笑んでこちらを見ている様子を描いた作品で、手に何か持っていて、作者は顔と手に注力して描いたそうです。表情豊かな顔はハルスらしい作風かな。生き生きした雰囲気があります。 結構素早いタッチで描かれているのも興味深かったです。
54 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「キューピッドとしゃぼん玉」 ★こちらで観られます
これはレンブラントが28歳頃の初期の作品で、クッションに寄りかかって手にシャボン玉の道具を持って遊んでいるキューピッドが描かれています。腰に矢の束をつけていますが弓は傍らに置いてやや左の方を向いていて、背景は真っ暗です。キューピッドにはスポットライトでもあたったような光が差し込んでいて、明暗の表現が対比的でした。解説によると、シャボン玉は愛の儚さを象徴しているそうで、レンブラント自身もこの頃結婚したのですが8年後に妻を亡くしてしまったそうです。
[18世紀-新古典主義の芽生え]
続いては18世紀のコーナーです。18世紀にはイタリアのヘルクラネウムやポンペイの遺跡が発掘されたのをきっかけに古典古代を志向する動きがありました。ここにはそうした作品が並んでいます。
62 ジョヴァンニ・パロオ・パニーニ 「古代ローマの傑出した遺跡と彫刻のある奇想」
コロッセオを背景にオベリスクやパンテオン、凱旋門などローマの見所が一堂に会したような風景を描いた作品です。これはカプリッチョ(奇想画)で、本当にありそうな風景にも見えます。どこか神話的で穏やかな雰囲気がありました。
このコーナーにはカナレットの作品などもありました。
[ビーダーマイヤー]
最後は「ビーダーマイヤー」についてのコーナーです。ビーダーマイヤーは1815年~1848年に至る時期に中央ヨーロッパで展開された様式で、身近な人物や風景、生物など親しみやすい題材を細やかな情感を込めながら優美に描れたそうです。侯爵家のコレクションの中ではバロックに次ぐ第2の中核として積極的に購入されているらしく、ここにはそうした作品が並んでいました。
64 エリザベート・ヴェジェ=ルブラン 「虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人(旧姓マンデルシャイト女伯)」 ★こちらで観られます
ヴィジェ=ルブランはロココ風の画家だと思いますが、定義の問題なのかな? この絵は紅の衣をまとい黄色の布をはためかせて飛んでいる女性が描かれ、背景には山や青空に浮かぶ虹や沸き立つ雲が描かれています。解説によるとこれはアロイス1世の妻のカロリーネを虹の女神に見立てたもので、作者がフランス革命の際に亡命してウィーンに滞在した時に描かれた作品だそうです。知的な顔で優しそうな表情をしていて優美な雰囲気なのですが、これには面白い逸話があり、裸足で描かれていることが一族のお偉方に問題視されたそうです。どうやら靴を履いていないのがはしたないと思われたようですが、その反応を見た侯爵は、絵の下に靴を置いて「絵の中の夫人から靴が滑り落ちた」と説明したそうです。その話も含めて面白い作品でした。
参考記事:
マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想前編(三菱一号館美術館)
マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想後編(三菱一号館美術館)
68 フリードリヒ・フォン・アメリング 「マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン候女 2歳の肖像」 ★こちらで観られます
これはリヒテンシュタインの候女の2歳の頃の寝顔を描いた作品で、柔らかい日差しの中安らかな顔で眠っています。小さな人形を抱いていて非常に可愛らしく、絵の前では多くの人が可愛いを連呼していましたw 写真のような写実性で透き通る色彩も素晴らしいです。
解説によるとこの作者はオーストリアのビーダーマイヤーを代表する画家で、アロイス2世侯の注文によって侯爵家の子供たちを描いたのだとか。
71 フェルディナント・ゲオルグ・ヴォルトミュラー 「銀器の花瓶の花、燭台、銀器」
超緻密で色鮮やかに描かれた静物です。ピンクや黄色のバラなど花々が描かれ、手前にはガラスの容器なども置かれています。その質感や反射が非常にリアルでした。また、背景は暗く手前の品々が明るく感じられるのも面白かったです。
ということで、見応えのある展示でした。特にルーベンスとフランドルのコレクションが好みです。前半のバロックサロンのように会場と一体となった展示方法も面白かったので、今季お勧めしたい展示の1つです。
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
国立新美術館開館5周年
リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝
【公式サイト】
http://www.asahi.com/event/liechtenstein2012-13/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/liechtenstein/index.html
【会場】国立新美術館
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2012年10月3日(水)~12月23日(日・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前半では名画ギャラリー(前半)のイタリア・バロックまでご紹介しましたが、今日は残りの半分についてです。
[ルーベンス]
リヒテンシュタイン家ではルーベンスの没後数年から作品を集め始めたそうで、2012年現在で36点を所蔵しているそうです。今回の展示ではその中から10点が出品され、貴重な大作も展示されていました。
38 ペーテル・パウル・ルーベンス 「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」 ★こちらで観られます
今回のポスターの作品で、実物は意外と小さめです。これはルーベンスの5歳の娘の顔が大きく描かれ、つぶらな瞳でこちらを見て凛々しい雰囲気です。(ポスターには「ようこそ、わが宮殿へ」なんてフレーズが添えられていますが、小さな女の子ですw) 頬が赤く染まり血色が良く、聡明そうに描かれていてルーベンスからの愛情が感じられました。一方、服の部分はさっと描かれていて下書きみたいに見えました。 解説によると、この子はこの絵の5年後にわずか12歳で亡くなったのだとか。
36 ペーテル・パウル・ルーベンス 「キリスト哀悼」
手足をだらりとさせたキリストの亡骸の周りに集まって悲しむ人々を描いた作品です。母マリアは目を閉じていて、土気色のキリストは力なく横たわっています。そのキリストの斜めに横たわる構図が目を引き、ドラマチックな雰囲気を出しているように思いました。右のほうでは大粒の涙を流している人物も描かれているなど、人それぞれの感情が読み取れるようでした。
39 ペーテル・パウル・ルーベンス 「マルスとレア・シルヴィア」 ★こちらで観られます
胸に手を当てる女性と、黒い甲冑に赤いマントの男性が踏み込んで女性の手に触れている様子が描かれた作品です。踏み出す仕草や質感溢れる甲冑、翻るマントなど劇的な雰囲気とダイナミックな動きがあり、明暗や色使いなども見事です。女性の驚く表情などからその場面のストーリーが伝わってきそうなのですが、これはかまどの女神ヴェスタの神殿で巫女のレア・シルヴィアが火を絶やさぬようにしていたところ、その姿に心惹かれた軍神マルスが彼女の寝ている隙に忍び寄っている場面だそうで、マルスの下にはマルスを引っ張るキューピッドの姿もあります。後にこの恋は成就したらしく、キューピッドがそれを暗示しているようです。 そしてレア・シルヴィアには双子の子供ができ、その双子がローマを建国したのだとか。
42 ペーテル・パウル・ルーベンス 「占いの結果を問うデキウス・ムス(デキウス・ムスの連作より)」 ★こちらで観られます
これはデキウス・ムスというローマの執政官を主題にした8点の連作のうちの1点で、かなり大きめの大作です。赤いマントのデキウス・ムスが戦争に勝つためには自軍の将軍が犠牲にならねばならないという予言を受けていたそうで、自分か仲間のどちらが犠牲になるべきかを占っている様子が描かれています。周りにはローマの兵士らしき人物や 捧げられた牛などが描かれ、牛の肝臓に異常があったらしくそれを指さす老人も描かれています。つまり占いの結果はデキウス・ムスが犠牲になるべきと出たようで、デキウス・ムスは胸に手を当てて驚いているようでした。こちらの作品もドラマチックで心情が巧みに表現されているように思いました。
この隣には連作のもう1点もありました。また、少し進むとこの作品を陶板にしたものや版画にした作品もありました(いずれも別の作者の模作)
<クンストカンマー>
続いては豪華な工芸品が並ぶコーナーです。16世紀以降、中欧の王侯貴族の間で「クンストカンマー」と呼ばれる一室を設ける習慣が広まったそうで、そこには美しい工芸品や東洋の珍しい陶器、最新技術の時計など珍奇にして貴重な品々が収められたそうです。リヒテンシュタイン家のカール1世のクンストカンマーは、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世も魅了されたほどだったそうで、皇帝の死後には皇帝が宮廷に集めた芸術家に直接注文して工芸品を手に入れていたそうです。ここにはそうして集められた品々が並んでいました。
75 ヨアヒム・フリース 「ぜんまい仕掛けの酒器(牡鹿に乗るディアナ)」
これは金銀に光る酒器で、鹿の上に乗るディアナを象っています。どこからどう見ても彫刻像ですが、分解することができるらしく、鹿の身体に酒を満たすようです。さらにこれはゼンマイ仕掛けで動きまわるそうで展示ケースの脇でその映像を観ることができました。酒宴の席でこれが目の前に止まった人がその酒を飲むというのを繰り返していき、複雑な形の容器からこぼさずに飲むというのが宴を盛り上げたそうです。彫刻像としても優美な雰囲気ですが、まさか分解して動きまわるとは驚きでした。確かに珍奇な品です。
76 コジモ・ディ・ジョヴァンニ・カストルッチ/オッタヴィオ・ミゼローニ/ジュリアーノ・ディ・ピエロ・パンドルフィーニ 「貴石象嵌のチェスト」 ★こちらで観られます
側面に様々な貴石を組み合わせて風景や草花を表現したチェストで、これは貴石象嵌という手法だそうです。緻密で普通に絵のように見えますが、よく観ると石の模様が生かされ、その継ぎ目も観ることができました。解説によると、これはカール1世の注文で作られ10年かかったそうです。こちらもその手間に驚かされる作品でした。
78 マティアス・ラウフミラー 「豪華なジョッキ」 ★こちらで観られます
これは象牙で作られたジョッキで、側面や把手にぎっしりと人々の彫刻が彫られています。これは「サビニの女たちの略奪」という話をモチーフにしているそうで、人々が繋がり合うように表され、かなり立体的で緻密でした。変なところを持つと折れてしまいそう…w 作った人の技術の高さが伺えます。
<名画ギャラリー>
最後は再び絵画作品が並ぶコーナーです。
[17世紀フランドル]
17世紀のフランドル絵画は侯爵家のコレクション形成当初から中核をなしてきたそうです。ここにはブリューゲル一家などの作品も並んでいました。
31 ヤン・ブリューゲル(父) 「若きトビアスのいる風景」
右側に川、左に大勢の人々と木々が描かれた風景画で、背景には山が描かれ遠くの風景は青みがかっていて遠近感を感じさせます。右下の方にはかなり小さめに、父の目の薬となる魚を取るトビアスと、それにお供した天使ラファエルの姿もあります。こうした主題のモチーフを目立たない場所に置くのはヤン・ブリューゲル(父)の常套の手段だったそうで、風景の方が主役になっているように思いました。そうした点や空気感などからフランドルらしさを感じる作品でした。
32 ピーテル・ブリューゲル(子) 「ベツレヘムの人口調査」
これはピーテル・ブリューゲル(父)の作品の模写で、雪景色の村の中、沢山の人々が左下の建物に集まってきている様子が描かれています。これは聖書にもあるベツレヘムの人口調査の場面らしく、右下辺りには牛に乗るマリアの姿もあります。村に流れる川は凍っているようで、そり遊びに興じる人たちもいてのんびりした雰囲気に思えました。ブリューゲルの作品なので、何か隠された意図もありそうな気がしますが、私には読み取れませんでしたw
参考記事:
ブリューゲル版画の世界 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
ブリューゲル版画の世界 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
33 ヤン・ブリューゲル(子) 「死の勝利」
沢山の骸骨たちと人々が戦っている様子を描いた作品で、多くの人は右の方にある横長の建物のような所に逃げようと必死になっています。しかし中には何故か寝そべって弦楽器を奏でている人もいて意味深です。背景には沢山の骸骨に追われる人々や、首吊りの処刑が行われているなど、不気味で緊迫した雰囲気がありました。…たまに可笑しさも感じられるのも面白いです。
[17世紀オランダ]
続いては17世紀オランダのコーナーです。こちらもフランドルに並ぶ充実ぶりのようで、巨匠の作品が並んでいました。
52 アンソニー・ヴァン・ダイク 「マリア・デ・タシスの肖像」 ★こちらで観られます
光沢のあるドレスを着て真珠の首飾りをした若い女性を描いた作品です。これは有力者である郵便局長の娘を描いたものだそうで、こちらを見て微笑む顔が優美で、魅力的な女性です。写実的で緻密な画風で描かれ、特に服の腕の辺りの質感が見事に思えました。
56 フランス・ハルス 「男の肖像」
黒い帽子に黒い服の男性が微笑んでこちらを見ている様子を描いた作品で、手に何か持っていて、作者は顔と手に注力して描いたそうです。表情豊かな顔はハルスらしい作風かな。生き生きした雰囲気があります。 結構素早いタッチで描かれているのも興味深かったです。
54 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「キューピッドとしゃぼん玉」 ★こちらで観られます
これはレンブラントが28歳頃の初期の作品で、クッションに寄りかかって手にシャボン玉の道具を持って遊んでいるキューピッドが描かれています。腰に矢の束をつけていますが弓は傍らに置いてやや左の方を向いていて、背景は真っ暗です。キューピッドにはスポットライトでもあたったような光が差し込んでいて、明暗の表現が対比的でした。解説によると、シャボン玉は愛の儚さを象徴しているそうで、レンブラント自身もこの頃結婚したのですが8年後に妻を亡くしてしまったそうです。
[18世紀-新古典主義の芽生え]
続いては18世紀のコーナーです。18世紀にはイタリアのヘルクラネウムやポンペイの遺跡が発掘されたのをきっかけに古典古代を志向する動きがありました。ここにはそうした作品が並んでいます。
62 ジョヴァンニ・パロオ・パニーニ 「古代ローマの傑出した遺跡と彫刻のある奇想」
コロッセオを背景にオベリスクやパンテオン、凱旋門などローマの見所が一堂に会したような風景を描いた作品です。これはカプリッチョ(奇想画)で、本当にありそうな風景にも見えます。どこか神話的で穏やかな雰囲気がありました。
このコーナーにはカナレットの作品などもありました。
[ビーダーマイヤー]
最後は「ビーダーマイヤー」についてのコーナーです。ビーダーマイヤーは1815年~1848年に至る時期に中央ヨーロッパで展開された様式で、身近な人物や風景、生物など親しみやすい題材を細やかな情感を込めながら優美に描れたそうです。侯爵家のコレクションの中ではバロックに次ぐ第2の中核として積極的に購入されているらしく、ここにはそうした作品が並んでいました。
64 エリザベート・ヴェジェ=ルブラン 「虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人(旧姓マンデルシャイト女伯)」 ★こちらで観られます
ヴィジェ=ルブランはロココ風の画家だと思いますが、定義の問題なのかな? この絵は紅の衣をまとい黄色の布をはためかせて飛んでいる女性が描かれ、背景には山や青空に浮かぶ虹や沸き立つ雲が描かれています。解説によるとこれはアロイス1世の妻のカロリーネを虹の女神に見立てたもので、作者がフランス革命の際に亡命してウィーンに滞在した時に描かれた作品だそうです。知的な顔で優しそうな表情をしていて優美な雰囲気なのですが、これには面白い逸話があり、裸足で描かれていることが一族のお偉方に問題視されたそうです。どうやら靴を履いていないのがはしたないと思われたようですが、その反応を見た侯爵は、絵の下に靴を置いて「絵の中の夫人から靴が滑り落ちた」と説明したそうです。その話も含めて面白い作品でした。
参考記事:
マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想前編(三菱一号館美術館)
マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想後編(三菱一号館美術館)
68 フリードリヒ・フォン・アメリング 「マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン候女 2歳の肖像」 ★こちらで観られます
これはリヒテンシュタインの候女の2歳の頃の寝顔を描いた作品で、柔らかい日差しの中安らかな顔で眠っています。小さな人形を抱いていて非常に可愛らしく、絵の前では多くの人が可愛いを連呼していましたw 写真のような写実性で透き通る色彩も素晴らしいです。
解説によるとこの作者はオーストリアのビーダーマイヤーを代表する画家で、アロイス2世侯の注文によって侯爵家の子供たちを描いたのだとか。
71 フェルディナント・ゲオルグ・ヴォルトミュラー 「銀器の花瓶の花、燭台、銀器」
超緻密で色鮮やかに描かれた静物です。ピンクや黄色のバラなど花々が描かれ、手前にはガラスの容器なども置かれています。その質感や反射が非常にリアルでした。また、背景は暗く手前の品々が明るく感じられるのも面白かったです。
ということで、見応えのある展示でした。特にルーベンスとフランドルのコレクションが好みです。前半のバロックサロンのように会場と一体となった展示方法も面白かったので、今季お勧めしたい展示の1つです。
参照記事:★この記事を参照している記事
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
1週間ほど前の土曜日に、乃木坂・六本木の国立新美術館に行って、「国立新美術館開館5周年 リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」を観てきました。充実した内容となっていましたので、前編・後編にわけてじっくりとご紹介しようと思います。

【展覧名】
国立新美術館開館5周年
リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝
【公式サイト】
http://www.asahi.com/event/liechtenstein2012-13/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/liechtenstein/index.html
【会場】国立新美術館
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2012年10月3日(水)~12月23日(日・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
開催して初めての土曜日に行きましたが、すんなりチケット購入&入場することができました。しかし会場内は結構混んでいて、列を組んで鑑賞するような感じでした。
さて、今回はリヒテンシュタイン侯国というスイスとオーストリアの間にある国(日本の小豆島と同じくらいの面積の小さな国)を治めるリヒテンシュタイン家のコレクション展となっています。リヒテンシュタイン家は12世紀には名前が登場したオーストリアの名門貴族だそうで、ハプスブルグ家の重臣として活躍し、1608年に「候」の爵位を授与され、1719年に現在の侯国の国土に当たる領土の自治権を神聖ローマ皇帝から与えられました。歴代のリヒテンシュタイン家では芸術の庇護を家訓としたそうで、代々 美術品を収集し、1810年にはウィーン郊外のロッサウに「夏の離宮」という所でコレクションの公開を始めたそうです。しかし第二次世界大戦を機にそのコレクションは侯国の首都ファドゥーツに秘蔵され、2004年の夏の離宮の再公開まで一般の目に触れる機会はごく僅かとなっていたそうです。そのコレクションは1600点の絵画や工芸などを含め総数は3万点にも及ぶそうで、今回はその中から特に充実しているバロック美術を中心にルネサンスから19世紀前半までの作品が並んでいました。様式や時代によって章ごとに分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
<エントランス>
まずエントランス付近はマルカントニオ・フランチェスキーニという画家の大作や、彫像などが並ぶコーナーです。17世紀末、リヒテンシュタイン候のヨハン・アダム・アンドレアス1世はロッサウに夏の離宮の造営を始め、その際にフランチェスキーニに2組の連作絵画を注文したそうです。それにより2組26点の絵画が作られたそうですが、ここにはそれぞれの組から2点ずつが出品されていました。宮殿の1室のような展示会場となっているのも雰囲気を盛り上げてくれます。
84 マルカントニオ・フランチェスキーニ 「大蛇ピュトンを殺すアポロンとディアナ」
かなり大きめの作品で、地面に這いつくばる大蛇?に向けて弓を構える赤い衣をまとったアポロンと、同じく弓と矢を持ち 屈んで怪物を見ているディアナが描かれています。鮮やかな色彩(特に赤が映える)で、2人の肌は滑らかな感じに見えたので、どこかルーベンスのような肉体表現に思えました。
この隣には「アポロンとディアナの誕生」という同じ連作の作品も並んでいました。
81 マルカントニオ・フランチェスキーニ 「アドニスの死」
こちらも大きな作品で、仰向けに倒れている若者が、覆いかぶさるように襲ってくるイノシシに槍を向けて抵抗している様子が描かれています。これはヴィーナスの恋人のアドニスで、かなり必死の形相をしています。周りには3匹の犬や逃げ惑うキューピッド(ヴィーナスの息子)も描かれ、動きや緊迫感があるように思いました。結局この時にアドニスは死んでしまうわけですが…。
この隣には同じくアドニスの連作の「死せるアドニスの変身」もありました。
<バロックサロン>
続いては今回の展示の中でも特に驚かされるバロックのコーナーです。バロックとは16世紀末から18世紀初頭にヨーロッパに展開された芸術様式で「歪んだ真珠」が語源とされています。この言葉は18世紀の中頃に使われ始め、ルネサンスの古典の美から逸脱したという批判の意味を込めて呼ばれました。その後、否定的な見方は19世紀まで続いたようですが今日では古典主義と相対するもう1つの美学として評価されているようです(私はむしろバロック絵画の方が好きですw) バロックの特徴は劇的な表現で、絵画では強い明暗表現や対角線を活かした動きのある構図、鮮やかな色使いが際立つそうです。また、建築においてはルネサンスが円を構成の中心に据えたのと異なり、楕円から導き出された曲面・曲線が多用され、躍動感に満ちているようです。バロック期の教会や宮殿は過剰な程の装飾も特徴らしく、天井画や漆喰装飾で壮大に飾られているそうです。
そしてこの「バロックサロン」についてですが、ウィーンでは1700年頃に政局が安定し建築ブームが起きたそうで、こうした流れの中でヨハン・アダム・アンドレアス1世候はウィーンに「都市宮殿」と「夏の離宮」を造営しました。いずれもイタリアの美術家の協力でバロック様式で構想され、バロックの造形原理の1つである「左右対称性」に基いて設置されたタペストリーや天井画が嵌めこまれているようです。ここではその室内様式と展示様式を再現していて、宮殿の大広間のような展示室となっていました。…確かに作品の配置も左右対称性に基いて置かれています。
86-89 アントニオ・ベルッチ 「絵画の寓意」「占星術の寓意」「彫刻の寓意」「音楽の寓意」 ★こちらで観られます
4枚の天井画で、楕円形の絵が天井に嵌めこまれて展示されています。それぞれは芸術の寓意を表しているようで、絵を描く半裸の女性とその先生らしき人を描いた作品(絵画)、ノミを持って彫刻像を作る若者を描いた作品(彫刻)、コンパスを持つ老人と話す女性を描いた作品(占星術)、音楽を奏でる人々を描いた作品(音楽)となっています。いずれもバロック様式らしい色の鮮やかさがあり、生き生きとした雰囲気でした。4つ並ぶと天井が高く抜けるように見えるのもこの頃の作品の特徴とのことです。
この部屋はタペストリーが周りを囲み、机、陶器、時計、燭台、彫刻、テーブル、長椅子など様々なものが置かれていました。見事な配置で本当に宮殿に入ったような感覚ですw
138 「枝付き大燭台」 ★こちらで観られます
巨大な塔のようになった燭台で、人物像が支えているような台座に中国や日本の染付が載せられ、そこに燭台の装飾がつけられています。壺や皿などは東洋で、金色の装飾はバロック風というのが面白いです。東洋と西洋が組み合わさったようで、その大きさと相まって見栄えがしました。
107 フィリッポ・パローディ 「悪徳の寓意」
腕とお腹を鎖で繋がれた男性の裸体の胸像です。大きく口を開けて上を仰ぎ見る表情は苦しそうに見えます。髪の毛は物凄い勢いで逆毛立っていて、迫力とインパクトがありました。何でこんなものをこの部屋に置いたのだろうか…w
ここには他にも飾り枠付きの鏡やコンソールなど、ちょっとやりすぎとも思えるくらいの装飾の作品が並んでいました。装飾のバロックはあまり好みじゃないかなw
<リヒテンシュタイン候爵家>
続いてはリヒテンシュタイン候爵家についてのコーナーです。先述の通りリヒテンシュタイン家はハプスブルグ家の重臣だったそうで、1608年に当主カール1世が神聖ローマ皇帝ルドルフ2世から「候」の爵位を授けられました。美術品の蒐集が本格的になったのもこの頃だそうで、その後17世紀後半のヨハン・アダム・アンドレアス1世は候国の礎を築き、2つの宮殿を造りました。ここには年表や家系図、地図などと共にリヒテンシュタイン候爵家に関する品が並んでいました。
5 マッティン・ファン・マイテンス(工房) 「女帝マリア・テレジアの肖像」
笏?を持ち白いドレスを着た女帝マリア・テレジアを描いた肖像です。こちらをじっと見る目は威厳に満ちていて、頭や首、腕などには様々な宝飾が光って見えました。まさにハプスブルグ家の栄光が伝わってくるようです。ちなみに、この女帝はかの有名なマリー・アントワネットの母でもあります。意外と家庭的な所もある人だったようです。
参考記事:マリー・アントワネット物語展 (そごう美術館)
3 作者不詳 「ヨハン・アダム・アンドレアス・リヒテンシュタイン1世候の肖像」
黒い甲冑に赤いマントの男性の肖像です。この人が何度も名前が出てきたヨハン・アダム・アンドレアス1世で、経営・財政の手腕に秀でていて、審美眼にも非常に優れていたそうです。凛々しい雰囲気でしたが、凄いボリュームの巻き髪でモコモコしているのが気になりましたw
この辺には夏の離宮を描いた作品も並んでいました。これも左右対称に見えます。
<名画ギャラリー>
続いては名画のコーナーです。リヒテンシュタイン家のコレクションの中核はバロック期の作品で、特に歴代の侯爵はルーベンスに魅了されていたそうです。また、バロック期に先立つルネサンスの充実にも注いだそうで、このコーナーにも何点か展示されています。 さらに18世紀後半の新古典主義や、19世紀前半に中央ヨーロッパで隆盛した「ビーダーマイヤー」様式の絵画も蒐集されたようです。この章は前半後半に分かれ、様式ごとに小コーナーに分かれて展示されていました。
[ルネサンス]
まずはルネサンスです。リヒテンシュタイン家ではバロックに比べて手薄だったので、19世紀にルネサンス作品を積極的に購入したそうです。
22 ルーカス・クラナッハ(父) 「聖エウスタキウス」 ★こちらで観られます
赤い甲冑を着た騎士が跪いて上を向き、祈るポーズをしています。その目線の先には崖の上に立つ鹿がいて、鹿の角の間からは磔刑のキリスト像が生えています。周りでは犬や馬が休んでいて、狩りの帰りの途中のようです。 解説によると、これはローマの将軍エウスタキウスだそうで、このキリスト像の鹿と出会った奇跡をきっかけにキリスト教に改宗し、後に殉教して聖人となったそうです。これはまさにその奇跡の瞬間で、非常に色鮮やかで緻密に描かれています。犬や馬の毛並みが分かるほどに細かく写実的なのですが、全体的に理想的な美しさや気品が感じられました。
18 ラファエッロ・サンティ 「男の肖像」 ★こちらで観られます
これは初期のラファエロの肖像作品で、帽子をかぶりこちらをじっと観ている男性が描かれています。やや斜めに身体を向けているのはこの頃の特徴のようです。ラファエロらしい知的な雰囲気があり、鮮やかで明るく見える色彩が見事でした。内面まで伺わせる表情も流石です。解説によると、これはウルビーノ公を描いたものと考えられてきたそうですが、現在では否定され誰だかは分かっていないとのことでした。
[イタリア・バロック]
続いてはイタリアの多様なバロックについてのコーナーです。
24 グイド・レーニ 「マグダラのマリア」
香油壺を持ち上を仰ぎ見る髪の長い女性を描いた作品で、これはマグダラのマリアで、香油壺はキリストの足に香油を塗ったことに由来します(伝統的な絵画で香油壺を持っている女性像を見たらマグダラのマリアと考えて良いと思います) 上から光が差し込むようなドラマチックな明暗がつけられ、髪も光を反射していました。その表情も劇的です。 解説によると、この作者は17世紀ボローニャ派の巨匠だそうです。
25 クリストファーノ・アッローリ 「ホロフェルネスの首を持つユディット」
髭もじゃの男性の生首の髪を掴んで持ち上げる女性を描いた作品で、これはユディットが敵将のホロフェルネスの首を取った直後のシーンです。(ユディットはホロフェルネスに下るふりをして酔わせ、寝ている隙に首を取って持ち帰ったという人物です。)
ユディットは右手には剣を持っていて、こちらに冷淡な目を向けています。右にはやや年老いた侍女がユディットの顔を覗き込むような感じで描かれ、怯えているように見えました。2人の表情の違いが対比的でユディットの落ち着きがより強調されているように思えます。解説によると、このユディットのモデルは画家自身が報われない恋をした女性だったようで、哀れな自分をホロフェルネスに見立てているとのことでした。こんな目で見られるなんてよほど冷たくされたのかな…w
この辺の休憩室では7:40の映像を流していました。リヒテンシュタイン家やコレクションについて知ることができるので、ここまでの復習にもなります。
ということで、まだ「名画ギャラリー」の章の途中ですがこの辺で半分くらいなので今日はここまでにしておこうと思います。後半は前半以上に好みの作品が多かったので、次回はそれについてご紹介しようとおもいます。
→ 後編はこちら
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
国立新美術館開館5周年
リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝
【公式サイト】
http://www.asahi.com/event/liechtenstein2012-13/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/liechtenstein/index.html
【会場】国立新美術館
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2012年10月3日(水)~12月23日(日・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
開催して初めての土曜日に行きましたが、すんなりチケット購入&入場することができました。しかし会場内は結構混んでいて、列を組んで鑑賞するような感じでした。
さて、今回はリヒテンシュタイン侯国というスイスとオーストリアの間にある国(日本の小豆島と同じくらいの面積の小さな国)を治めるリヒテンシュタイン家のコレクション展となっています。リヒテンシュタイン家は12世紀には名前が登場したオーストリアの名門貴族だそうで、ハプスブルグ家の重臣として活躍し、1608年に「候」の爵位を授与され、1719年に現在の侯国の国土に当たる領土の自治権を神聖ローマ皇帝から与えられました。歴代のリヒテンシュタイン家では芸術の庇護を家訓としたそうで、代々 美術品を収集し、1810年にはウィーン郊外のロッサウに「夏の離宮」という所でコレクションの公開を始めたそうです。しかし第二次世界大戦を機にそのコレクションは侯国の首都ファドゥーツに秘蔵され、2004年の夏の離宮の再公開まで一般の目に触れる機会はごく僅かとなっていたそうです。そのコレクションは1600点の絵画や工芸などを含め総数は3万点にも及ぶそうで、今回はその中から特に充実しているバロック美術を中心にルネサンスから19世紀前半までの作品が並んでいました。様式や時代によって章ごとに分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
<エントランス>
まずエントランス付近はマルカントニオ・フランチェスキーニという画家の大作や、彫像などが並ぶコーナーです。17世紀末、リヒテンシュタイン候のヨハン・アダム・アンドレアス1世はロッサウに夏の離宮の造営を始め、その際にフランチェスキーニに2組の連作絵画を注文したそうです。それにより2組26点の絵画が作られたそうですが、ここにはそれぞれの組から2点ずつが出品されていました。宮殿の1室のような展示会場となっているのも雰囲気を盛り上げてくれます。
84 マルカントニオ・フランチェスキーニ 「大蛇ピュトンを殺すアポロンとディアナ」
かなり大きめの作品で、地面に這いつくばる大蛇?に向けて弓を構える赤い衣をまとったアポロンと、同じく弓と矢を持ち 屈んで怪物を見ているディアナが描かれています。鮮やかな色彩(特に赤が映える)で、2人の肌は滑らかな感じに見えたので、どこかルーベンスのような肉体表現に思えました。
この隣には「アポロンとディアナの誕生」という同じ連作の作品も並んでいました。
81 マルカントニオ・フランチェスキーニ 「アドニスの死」
こちらも大きな作品で、仰向けに倒れている若者が、覆いかぶさるように襲ってくるイノシシに槍を向けて抵抗している様子が描かれています。これはヴィーナスの恋人のアドニスで、かなり必死の形相をしています。周りには3匹の犬や逃げ惑うキューピッド(ヴィーナスの息子)も描かれ、動きや緊迫感があるように思いました。結局この時にアドニスは死んでしまうわけですが…。
この隣には同じくアドニスの連作の「死せるアドニスの変身」もありました。
<バロックサロン>
続いては今回の展示の中でも特に驚かされるバロックのコーナーです。バロックとは16世紀末から18世紀初頭にヨーロッパに展開された芸術様式で「歪んだ真珠」が語源とされています。この言葉は18世紀の中頃に使われ始め、ルネサンスの古典の美から逸脱したという批判の意味を込めて呼ばれました。その後、否定的な見方は19世紀まで続いたようですが今日では古典主義と相対するもう1つの美学として評価されているようです(私はむしろバロック絵画の方が好きですw) バロックの特徴は劇的な表現で、絵画では強い明暗表現や対角線を活かした動きのある構図、鮮やかな色使いが際立つそうです。また、建築においてはルネサンスが円を構成の中心に据えたのと異なり、楕円から導き出された曲面・曲線が多用され、躍動感に満ちているようです。バロック期の教会や宮殿は過剰な程の装飾も特徴らしく、天井画や漆喰装飾で壮大に飾られているそうです。
そしてこの「バロックサロン」についてですが、ウィーンでは1700年頃に政局が安定し建築ブームが起きたそうで、こうした流れの中でヨハン・アダム・アンドレアス1世候はウィーンに「都市宮殿」と「夏の離宮」を造営しました。いずれもイタリアの美術家の協力でバロック様式で構想され、バロックの造形原理の1つである「左右対称性」に基いて設置されたタペストリーや天井画が嵌めこまれているようです。ここではその室内様式と展示様式を再現していて、宮殿の大広間のような展示室となっていました。…確かに作品の配置も左右対称性に基いて置かれています。
86-89 アントニオ・ベルッチ 「絵画の寓意」「占星術の寓意」「彫刻の寓意」「音楽の寓意」 ★こちらで観られます
4枚の天井画で、楕円形の絵が天井に嵌めこまれて展示されています。それぞれは芸術の寓意を表しているようで、絵を描く半裸の女性とその先生らしき人を描いた作品(絵画)、ノミを持って彫刻像を作る若者を描いた作品(彫刻)、コンパスを持つ老人と話す女性を描いた作品(占星術)、音楽を奏でる人々を描いた作品(音楽)となっています。いずれもバロック様式らしい色の鮮やかさがあり、生き生きとした雰囲気でした。4つ並ぶと天井が高く抜けるように見えるのもこの頃の作品の特徴とのことです。
この部屋はタペストリーが周りを囲み、机、陶器、時計、燭台、彫刻、テーブル、長椅子など様々なものが置かれていました。見事な配置で本当に宮殿に入ったような感覚ですw
138 「枝付き大燭台」 ★こちらで観られます
巨大な塔のようになった燭台で、人物像が支えているような台座に中国や日本の染付が載せられ、そこに燭台の装飾がつけられています。壺や皿などは東洋で、金色の装飾はバロック風というのが面白いです。東洋と西洋が組み合わさったようで、その大きさと相まって見栄えがしました。
107 フィリッポ・パローディ 「悪徳の寓意」
腕とお腹を鎖で繋がれた男性の裸体の胸像です。大きく口を開けて上を仰ぎ見る表情は苦しそうに見えます。髪の毛は物凄い勢いで逆毛立っていて、迫力とインパクトがありました。何でこんなものをこの部屋に置いたのだろうか…w
ここには他にも飾り枠付きの鏡やコンソールなど、ちょっとやりすぎとも思えるくらいの装飾の作品が並んでいました。装飾のバロックはあまり好みじゃないかなw
<リヒテンシュタイン候爵家>
続いてはリヒテンシュタイン候爵家についてのコーナーです。先述の通りリヒテンシュタイン家はハプスブルグ家の重臣だったそうで、1608年に当主カール1世が神聖ローマ皇帝ルドルフ2世から「候」の爵位を授けられました。美術品の蒐集が本格的になったのもこの頃だそうで、その後17世紀後半のヨハン・アダム・アンドレアス1世は候国の礎を築き、2つの宮殿を造りました。ここには年表や家系図、地図などと共にリヒテンシュタイン候爵家に関する品が並んでいました。
5 マッティン・ファン・マイテンス(工房) 「女帝マリア・テレジアの肖像」
笏?を持ち白いドレスを着た女帝マリア・テレジアを描いた肖像です。こちらをじっと見る目は威厳に満ちていて、頭や首、腕などには様々な宝飾が光って見えました。まさにハプスブルグ家の栄光が伝わってくるようです。ちなみに、この女帝はかの有名なマリー・アントワネットの母でもあります。意外と家庭的な所もある人だったようです。
参考記事:マリー・アントワネット物語展 (そごう美術館)
3 作者不詳 「ヨハン・アダム・アンドレアス・リヒテンシュタイン1世候の肖像」
黒い甲冑に赤いマントの男性の肖像です。この人が何度も名前が出てきたヨハン・アダム・アンドレアス1世で、経営・財政の手腕に秀でていて、審美眼にも非常に優れていたそうです。凛々しい雰囲気でしたが、凄いボリュームの巻き髪でモコモコしているのが気になりましたw
この辺には夏の離宮を描いた作品も並んでいました。これも左右対称に見えます。
<名画ギャラリー>
続いては名画のコーナーです。リヒテンシュタイン家のコレクションの中核はバロック期の作品で、特に歴代の侯爵はルーベンスに魅了されていたそうです。また、バロック期に先立つルネサンスの充実にも注いだそうで、このコーナーにも何点か展示されています。 さらに18世紀後半の新古典主義や、19世紀前半に中央ヨーロッパで隆盛した「ビーダーマイヤー」様式の絵画も蒐集されたようです。この章は前半後半に分かれ、様式ごとに小コーナーに分かれて展示されていました。
[ルネサンス]
まずはルネサンスです。リヒテンシュタイン家ではバロックに比べて手薄だったので、19世紀にルネサンス作品を積極的に購入したそうです。
22 ルーカス・クラナッハ(父) 「聖エウスタキウス」 ★こちらで観られます
赤い甲冑を着た騎士が跪いて上を向き、祈るポーズをしています。その目線の先には崖の上に立つ鹿がいて、鹿の角の間からは磔刑のキリスト像が生えています。周りでは犬や馬が休んでいて、狩りの帰りの途中のようです。 解説によると、これはローマの将軍エウスタキウスだそうで、このキリスト像の鹿と出会った奇跡をきっかけにキリスト教に改宗し、後に殉教して聖人となったそうです。これはまさにその奇跡の瞬間で、非常に色鮮やかで緻密に描かれています。犬や馬の毛並みが分かるほどに細かく写実的なのですが、全体的に理想的な美しさや気品が感じられました。
18 ラファエッロ・サンティ 「男の肖像」 ★こちらで観られます
これは初期のラファエロの肖像作品で、帽子をかぶりこちらをじっと観ている男性が描かれています。やや斜めに身体を向けているのはこの頃の特徴のようです。ラファエロらしい知的な雰囲気があり、鮮やかで明るく見える色彩が見事でした。内面まで伺わせる表情も流石です。解説によると、これはウルビーノ公を描いたものと考えられてきたそうですが、現在では否定され誰だかは分かっていないとのことでした。
[イタリア・バロック]
続いてはイタリアの多様なバロックについてのコーナーです。
24 グイド・レーニ 「マグダラのマリア」
香油壺を持ち上を仰ぎ見る髪の長い女性を描いた作品で、これはマグダラのマリアで、香油壺はキリストの足に香油を塗ったことに由来します(伝統的な絵画で香油壺を持っている女性像を見たらマグダラのマリアと考えて良いと思います) 上から光が差し込むようなドラマチックな明暗がつけられ、髪も光を反射していました。その表情も劇的です。 解説によると、この作者は17世紀ボローニャ派の巨匠だそうです。
25 クリストファーノ・アッローリ 「ホロフェルネスの首を持つユディット」
髭もじゃの男性の生首の髪を掴んで持ち上げる女性を描いた作品で、これはユディットが敵将のホロフェルネスの首を取った直後のシーンです。(ユディットはホロフェルネスに下るふりをして酔わせ、寝ている隙に首を取って持ち帰ったという人物です。)
ユディットは右手には剣を持っていて、こちらに冷淡な目を向けています。右にはやや年老いた侍女がユディットの顔を覗き込むような感じで描かれ、怯えているように見えました。2人の表情の違いが対比的でユディットの落ち着きがより強調されているように思えます。解説によると、このユディットのモデルは画家自身が報われない恋をした女性だったようで、哀れな自分をホロフェルネスに見立てているとのことでした。こんな目で見られるなんてよほど冷たくされたのかな…w
この辺の休憩室では7:40の映像を流していました。リヒテンシュタイン家やコレクションについて知ることができるので、ここまでの復習にもなります。
ということで、まだ「名画ギャラリー」の章の途中ですがこの辺で半分くらいなので今日はここまでにしておこうと思います。後半は前半以上に好みの作品が多かったので、次回はそれについてご紹介しようとおもいます。
→ 後編はこちら
参照記事:★この記事を参照している記事
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
前回ご紹介した根津美術館の展示を観た後、少し歩いて表参道にあるエスパス ルイ・ヴィトン東京で「Madness is part of Life(狂気は生の一部)」を観てきました。

【展覧名】
Madness is part of Life(狂気は生の一部)
【公式サイト】
http://espacelouisvuittontokyo.com/ja/
【会場】エスパス ルイ・ヴィトン東京
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅、表参道駅
【会期】2012年9月29日(土)~2013年1月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況(祝日15時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
以前に比べると結構お客さんが増えているようでしたが、快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示はブラジル人アーティストのエルネスト・ネト氏の個展となっています。エルネスト・ネト氏は全世界で高く評価されているそうで、今回の作品では人間性を問題として取り上げ、ポスト新具体主義から継承した、モノの重みを通じての現実認識として想定された人間性は「身体を通じての関係性の構築」と呼ぶそうです。…はい、文字だけ見ると難しくてお手上げですw しかし実際にこの展示を見ると何となくその意味するところが見えて来るように思えました。 何故ならばこの展示は作品に触れて体験することが出来るようになっているためで(一部の作品は触れられない)、展示空間自体を創造するような感じでした。 この展示では写真を撮ることができましたので、何枚かの写真でご紹介しようと思います。
参考記事:骨展 (21_21 DESIGN SIGHT)
まず展示室を入ると左の写真のような光景が広がります。何だこれ??と驚きましたw この巨大作品については後ほど。

右の作品には触ることはできませんが、ネットでボールをまとめたような感じで、卵や受精、精子などをイメージしているようです。
こちらもネットにくるまれたボールが詰まった作品。

近くで見るとこんな感じ。柔らかいビニールボールで出来ていました。今回の作品はいずれもこのボールを使っています。

そして先程の巨大作品ですが、これは「A vida e um corpo do qual fazemos parte(われわれは生という体の一部)」という作品で、何と中に入ることができます。

中は通路になっていて、アスレチックのようです。結構沈みこんで足を取られるので、確かに自分の重みを感じます^^; たまに人とすれ違うと揺れて酔いそうw 奥にたどり着くと居住スペースのようになっていました。
実際にここで寝っ転がりながら体験している人もいました。

これも宙に浮いているのでやや揺れますが、ハンモック的な感じかな。こんな視点でこの会場を観ることできるのは最初で最後なのでは??
会場から見える屋上部分にも似た作品が置かれていました。

ということで、色々と意味が込められているようですが、それが分からなくても直感的に楽しめる展示となっていました。ここは無料で見られるのですが、いつも通り立派な冊子(カタログと言って良いくらいの出来でインタビューや経歴が載っている)も貰えるし、趣向も面白いのでまだまだ人気が出そうなスポットです。表参道に行く機会があったら是非チェックして見ることをお勧めします。
おまけ:
ルイヴィトンの1階には本人そっくりの草間彌生の像が置かれていました。他のルイヴィトンのお店でも似たディスプレイを観たので、ここだけじゃないのかもしれませんが。

参考記事:
【番外編】十和田市現代美術館の常設 2012年8月(十和田市現代美術館)
草間彌生 永遠の永遠の永遠 (埼玉県立近代美術館)
草間彌生 ボディ・フェスティバル in 60's 展 (ワタリウム美術館)
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
Madness is part of Life(狂気は生の一部)
【公式サイト】
http://espacelouisvuittontokyo.com/ja/
【会場】エスパス ルイ・ヴィトン東京
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅、表参道駅
【会期】2012年9月29日(土)~2013年1月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況(祝日15時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
以前に比べると結構お客さんが増えているようでしたが、快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示はブラジル人アーティストのエルネスト・ネト氏の個展となっています。エルネスト・ネト氏は全世界で高く評価されているそうで、今回の作品では人間性を問題として取り上げ、ポスト新具体主義から継承した、モノの重みを通じての現実認識として想定された人間性は「身体を通じての関係性の構築」と呼ぶそうです。…はい、文字だけ見ると難しくてお手上げですw しかし実際にこの展示を見ると何となくその意味するところが見えて来るように思えました。 何故ならばこの展示は作品に触れて体験することが出来るようになっているためで(一部の作品は触れられない)、展示空間自体を創造するような感じでした。 この展示では写真を撮ることができましたので、何枚かの写真でご紹介しようと思います。
参考記事:骨展 (21_21 DESIGN SIGHT)
まず展示室を入ると左の写真のような光景が広がります。何だこれ??と驚きましたw この巨大作品については後ほど。


右の作品には触ることはできませんが、ネットでボールをまとめたような感じで、卵や受精、精子などをイメージしているようです。
こちらもネットにくるまれたボールが詰まった作品。

近くで見るとこんな感じ。柔らかいビニールボールで出来ていました。今回の作品はいずれもこのボールを使っています。

そして先程の巨大作品ですが、これは「A vida e um corpo do qual fazemos parte(われわれは生という体の一部)」という作品で、何と中に入ることができます。


中は通路になっていて、アスレチックのようです。結構沈みこんで足を取られるので、確かに自分の重みを感じます^^; たまに人とすれ違うと揺れて酔いそうw 奥にたどり着くと居住スペースのようになっていました。
実際にここで寝っ転がりながら体験している人もいました。

これも宙に浮いているのでやや揺れますが、ハンモック的な感じかな。こんな視点でこの会場を観ることできるのは最初で最後なのでは??
会場から見える屋上部分にも似た作品が置かれていました。

ということで、色々と意味が込められているようですが、それが分からなくても直感的に楽しめる展示となっていました。ここは無料で見られるのですが、いつも通り立派な冊子(カタログと言って良いくらいの出来でインタビューや経歴が載っている)も貰えるし、趣向も面白いのでまだまだ人気が出そうなスポットです。表参道に行く機会があったら是非チェックして見ることをお勧めします。
おまけ:
ルイヴィトンの1階には本人そっくりの草間彌生の像が置かれていました。他のルイヴィトンのお店でも似たディスプレイを観たので、ここだけじゃないのかもしれませんが。

参考記事:
【番外編】十和田市現代美術館の常設 2012年8月(十和田市現代美術館)
草間彌生 永遠の永遠の永遠 (埼玉県立近代美術館)
草間彌生 ボディ・フェスティバル in 60's 展 (ワタリウム美術館)
参照記事:★この記事を参照している記事
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
この前の祝日に表参道の根津美術館に行って、「平家物語画帖 諸行無常のミニアチュール」を観てきました。なお、この展示には前期・後期があるようで、私が行ったのは後期の内容でした。

【展覧名】
コレクション展 平家物語画帖 諸行無常のミニアチュール
【公式サイト】
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html
【会場】根津美術館
【最寄】表参道駅
【会期】2012年9月8日(土)~10月21日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況(祝日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
小さな画帖が多いのでたまに列になる所もありましたが、基本的にはあまり混むこともなく快適に鑑賞することができました。
さて、今回は根津美術館のコレクション展で平家物語をテーマにした内容となっています。平家物語は平家一門の盛衰を語る軍記物語の最高傑作で、13世紀半ばことには成立していたと考えられるそうです。その後の文芸に与えた影響は大きく、この展示では平家物語を120図の扇形の紙に絵画化した平家物語の画帖を中心に、平家物語に取材した作品が並んでいました。点数自体はあまり多くないので充実度は③にしましたが、貴重な品が並んでいましたので簡単に会場の雰囲気をご紹介しようと思います。
まず最初に屏風があり、その後に壁にそって遠大な画帖が並んでいました。
「平家物語画帖」 ★こちらで観られます
今回の展示のメイン作品で、金箔を散らした料紙に扇状の絵が描かれた作品です。文字が書かれた帖と絵が描かれた帖が交互に並んでいて、上帖40図、中帖41図、下帖39図に渡って平家一門の栄枯盛衰を物語っています。画風は大和絵で細やかに描かれていて、文字も流麗で非常に美しく雅な雰囲気です。
当時の合戦や話し会う様子などが逸話を交えながら進められていくのですが、まず上帖で印象的なシーンとしては、鵺(ぬえ)のような怪物退治(実際の鵺退治の話はその10年後)や、物の怪のシーン(特に平清盛の庭にドクロが集まったシーン)、馬の尻尾にネズミが一晩で巣を作る怪異など、ちょっと不思議な逸話が並び、その他には富士川の戦いの際に水鳥が一斉に羽ばたいたのを源氏の軍勢が来たと思って逃げ出したという有名な話もありました。
続いての中帖で気になったシーンは、木曾義仲の家臣である手塚光盛が斉藤実盛を討つ場面で、生首を首実検している様子が描かれていました。斉藤実盛は老いを恥じて髭を染めていたので、それを洗い落としてようやく誰だか確認できたようです。
その後しばらく進むと、生食(いけずき)に乗った佐々木高綱と磨墨(するすみ)に乗った梶原景季が先陣を争う宇治川先陣争いの様子も描かれていました。この1番手争いでは佐々木が先に行った梶原に馬の腹帯が緩んでいると声をかけ、梶原がそれを直しているうちに佐々木が抜け出すという話です。これは日本画でよく観る主題なので要チェックです。中帖には他にも巴御前の戦いや木曾義仲の最期、源義経のひよどり越えなど有名なシーンが多めでした。
最後の下帖は海でのシーンが多く、特に有名なのは那須与一の話です。扇に向かって弓を構える射落とす場面で、その場の緊張感が感じられます。さらに進むと壇ノ浦の戦いでの安徳天皇と平時子の入水のシーンや、入水から1人助かった建礼門院徳子が出家して大原に隠棲し、後白河法皇がそこを訪れる様子を描いた場面などもありました。
前期後期で展示品が分かれているので話が飛ぶのが残念でしたが、劇的な場面を観られたのは良かったです。なお、こちらの作品と同じような図がベルリン国立アジア美術館に59図、徳川美術館に60図、遠山記念館に36図伝わっているとのことでした。
この近くには那須与一の話をパロディ化した宮川長春の「見立那須与一図」や曽我物語図屏風(鎌倉初期頃の仇討ちの話)などもありました。 これを観た後、一旦前の部屋の画帖と反対側の展示に戻りました。
平頼盛 「厳島切(無量義経断簡、手鑑文彩帖所収)」
青~紺の料紙に金字で3行だけ書かれた断簡で、3行目には「無量義経」と書かれています。解説によるとこの断簡は平清盛の異母弟の平頼盛が書いたそうで、貴重なもののようでした。結構字が綺麗です。
この辺にはいくつかこうした断簡がありました。また、鵺に似た怪物を象った冷泉為恭「小督仲国図(諸図貼交画帖のうち)」などもあります。
「保元平治物語図扇面」
これは今回初公開の品だそうで、平家物語画帖と同一の集団の作と考えられる作品です。 色紙のようなものに扇形の絵が貼られていて、確かに扇は先ほど観た画帖と同じサイズです。また、展示されていたそれぞれのシーンの隣には他の作品の写真が展示されていたのですが、かなり似た構図の作品が他にもあるようで、平家物語画帖と共有したシーンもありました。転用しているところやタッチからも同じ集団の作というのも頷けました。
「平家琵琶 銘 和国」
木で出来た琵琶とバチがセットで展示されていました。平家物語の成立と流布には琵琶法師が大きく関わっていたようで、彼らの語りは平曲と呼ばれ、伴奏の際にこうした平家琵琶が使われたそうです。雅楽の琵琶に似ていますが、それに比べると一回り小さいようでした。胴の辺りに細かい彫刻もあり優美な琵琶でした。
…余談ですが平家物語と琵琶というと耳なし芳一を連想しますが、実際に琵琶法師たちと平家物語は深い関係があったようですね…。
この先の展示室2は今回は禅僧の名筆展となっていました。上の階は常設ですが、展示室5で平家物語に関する面の展示もやっていました。平家は色白で上品な顔であるのに対して、源氏は戦で焼けて赤っぽい顔で、ちょっと怖いくらいの勇ましさがあります。どうも平家には滅びゆく美しさ・妖しさがあるようで、源平でこれだけ違う印象を受けるのが面白かったです。
ということで、今後の作品鑑賞に参考になりそうな展示でした。特に平家物語画帖はこの機に観ることができて良かったです。日本画や歴史に興味がある方向けの展示だと思いますが、気になる方はチェックしてみてください。
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
コレクション展 平家物語画帖 諸行無常のミニアチュール
【公式サイト】
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html
【会場】根津美術館
【最寄】表参道駅
【会期】2012年9月8日(土)~10月21日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況(祝日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
小さな画帖が多いのでたまに列になる所もありましたが、基本的にはあまり混むこともなく快適に鑑賞することができました。
さて、今回は根津美術館のコレクション展で平家物語をテーマにした内容となっています。平家物語は平家一門の盛衰を語る軍記物語の最高傑作で、13世紀半ばことには成立していたと考えられるそうです。その後の文芸に与えた影響は大きく、この展示では平家物語を120図の扇形の紙に絵画化した平家物語の画帖を中心に、平家物語に取材した作品が並んでいました。点数自体はあまり多くないので充実度は③にしましたが、貴重な品が並んでいましたので簡単に会場の雰囲気をご紹介しようと思います。
まず最初に屏風があり、その後に壁にそって遠大な画帖が並んでいました。
「平家物語画帖」 ★こちらで観られます
今回の展示のメイン作品で、金箔を散らした料紙に扇状の絵が描かれた作品です。文字が書かれた帖と絵が描かれた帖が交互に並んでいて、上帖40図、中帖41図、下帖39図に渡って平家一門の栄枯盛衰を物語っています。画風は大和絵で細やかに描かれていて、文字も流麗で非常に美しく雅な雰囲気です。
当時の合戦や話し会う様子などが逸話を交えながら進められていくのですが、まず上帖で印象的なシーンとしては、鵺(ぬえ)のような怪物退治(実際の鵺退治の話はその10年後)や、物の怪のシーン(特に平清盛の庭にドクロが集まったシーン)、馬の尻尾にネズミが一晩で巣を作る怪異など、ちょっと不思議な逸話が並び、その他には富士川の戦いの際に水鳥が一斉に羽ばたいたのを源氏の軍勢が来たと思って逃げ出したという有名な話もありました。
続いての中帖で気になったシーンは、木曾義仲の家臣である手塚光盛が斉藤実盛を討つ場面で、生首を首実検している様子が描かれていました。斉藤実盛は老いを恥じて髭を染めていたので、それを洗い落としてようやく誰だか確認できたようです。
その後しばらく進むと、生食(いけずき)に乗った佐々木高綱と磨墨(するすみ)に乗った梶原景季が先陣を争う宇治川先陣争いの様子も描かれていました。この1番手争いでは佐々木が先に行った梶原に馬の腹帯が緩んでいると声をかけ、梶原がそれを直しているうちに佐々木が抜け出すという話です。これは日本画でよく観る主題なので要チェックです。中帖には他にも巴御前の戦いや木曾義仲の最期、源義経のひよどり越えなど有名なシーンが多めでした。
最後の下帖は海でのシーンが多く、特に有名なのは那須与一の話です。扇に向かって弓を構える射落とす場面で、その場の緊張感が感じられます。さらに進むと壇ノ浦の戦いでの安徳天皇と平時子の入水のシーンや、入水から1人助かった建礼門院徳子が出家して大原に隠棲し、後白河法皇がそこを訪れる様子を描いた場面などもありました。
前期後期で展示品が分かれているので話が飛ぶのが残念でしたが、劇的な場面を観られたのは良かったです。なお、こちらの作品と同じような図がベルリン国立アジア美術館に59図、徳川美術館に60図、遠山記念館に36図伝わっているとのことでした。
この近くには那須与一の話をパロディ化した宮川長春の「見立那須与一図」や曽我物語図屏風(鎌倉初期頃の仇討ちの話)などもありました。 これを観た後、一旦前の部屋の画帖と反対側の展示に戻りました。
平頼盛 「厳島切(無量義経断簡、手鑑文彩帖所収)」
青~紺の料紙に金字で3行だけ書かれた断簡で、3行目には「無量義経」と書かれています。解説によるとこの断簡は平清盛の異母弟の平頼盛が書いたそうで、貴重なもののようでした。結構字が綺麗です。
この辺にはいくつかこうした断簡がありました。また、鵺に似た怪物を象った冷泉為恭「小督仲国図(諸図貼交画帖のうち)」などもあります。
「保元平治物語図扇面」
これは今回初公開の品だそうで、平家物語画帖と同一の集団の作と考えられる作品です。 色紙のようなものに扇形の絵が貼られていて、確かに扇は先ほど観た画帖と同じサイズです。また、展示されていたそれぞれのシーンの隣には他の作品の写真が展示されていたのですが、かなり似た構図の作品が他にもあるようで、平家物語画帖と共有したシーンもありました。転用しているところやタッチからも同じ集団の作というのも頷けました。
「平家琵琶 銘 和国」
木で出来た琵琶とバチがセットで展示されていました。平家物語の成立と流布には琵琶法師が大きく関わっていたようで、彼らの語りは平曲と呼ばれ、伴奏の際にこうした平家琵琶が使われたそうです。雅楽の琵琶に似ていますが、それに比べると一回り小さいようでした。胴の辺りに細かい彫刻もあり優美な琵琶でした。
…余談ですが平家物語と琵琶というと耳なし芳一を連想しますが、実際に琵琶法師たちと平家物語は深い関係があったようですね…。
この先の展示室2は今回は禅僧の名筆展となっていました。上の階は常設ですが、展示室5で平家物語に関する面の展示もやっていました。平家は色白で上品な顔であるのに対して、源氏は戦で焼けて赤っぽい顔で、ちょっと怖いくらいの勇ましさがあります。どうも平家には滅びゆく美しさ・妖しさがあるようで、源平でこれだけ違う印象を受けるのが面白かったです。
ということで、今後の作品鑑賞に参考になりそうな展示でした。特に平家物語画帖はこの機に観ることができて良かったです。日本画や歴史に興味がある方向けの展示だと思いますが、気になる方はチェックしてみてください。
参照記事:★この記事を参照している記事
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
前々回、前回とご紹介した東京都美術館の展示を観た後、少し歩いて不忍池の南側にある「みつばち」という甘味処であんみつを食べてきました。

【店名】
みつばち
【ジャンル】
甘味処
【公式サイト】
http://www.mitsubachi-co.com/
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13003590/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
御徒町駅、上野広小路駅、湯島駅など
【近くの美術館】
国立西洋美術館
上野の森美術館
東京国立博物館
東京都美術館
国立科学博物館
東京文化会館
上野動物園
など
【この日にかかった1人の費用】
630円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(日曜日17時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
ちょっと遅い時間に行ったこともあり、空いていました。(お店に入った時は結構席が埋まっていました)
お店の中はこんな感じ。昔ながらの甘味処といった風情で、創業100年の老舗のようです。

席につく前に注文と会計をするスタイルで、私はこの日、小倉あんみつ(580円)に白玉トッピング(+50円)を頼みました。

左の朱色の容器の中に黒蜜が入っています。自分で好きなだけかけられるのが嬉しい。
黒蜜をかけたところ。

こちらは黒蜜が上品な甘さで、やや塩味がついた小豆と合ってすごく美味しかったです! アンコも甘すぎず軽やかで、きめ細かい舌触りでした。中に入っていたあんずは爽やかで、寒天もプツプツした食感が良いし、これだけ美味しいあんみつは中々無いと思います。
ということで期待以上に美味しいあんみつでした。この近くには同じく老舗のみはし もありますが、これは甲乙つけ難い美味しさです。このお店には他にも小倉アイスなど様々な名物メニューがあるようなので、是非また行ってみたいと思います。よく近くに行くのに知らなかったのが悔しいくらいですw
店頭ではお土産も売っていたし、公式サイトではネット販売で全国にも発送するようなので甘いもの好きの方はチェックしてみて下さい。
参考リンク:公式サイトのネット販売のページ
参考記事:みはし (上野界隈のお店)

【店名】
みつばち
【ジャンル】
甘味処
【公式サイト】
http://www.mitsubachi-co.com/
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13003590/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
御徒町駅、上野広小路駅、湯島駅など
【近くの美術館】
国立西洋美術館
上野の森美術館
東京国立博物館
東京都美術館
国立科学博物館
東京文化会館
上野動物園
など
【この日にかかった1人の費用】
630円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(日曜日17時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
ちょっと遅い時間に行ったこともあり、空いていました。(お店に入った時は結構席が埋まっていました)
お店の中はこんな感じ。昔ながらの甘味処といった風情で、創業100年の老舗のようです。

席につく前に注文と会計をするスタイルで、私はこの日、小倉あんみつ(580円)に白玉トッピング(+50円)を頼みました。

左の朱色の容器の中に黒蜜が入っています。自分で好きなだけかけられるのが嬉しい。
黒蜜をかけたところ。

こちらは黒蜜が上品な甘さで、やや塩味がついた小豆と合ってすごく美味しかったです! アンコも甘すぎず軽やかで、きめ細かい舌触りでした。中に入っていたあんずは爽やかで、寒天もプツプツした食感が良いし、これだけ美味しいあんみつは中々無いと思います。
ということで期待以上に美味しいあんみつでした。この近くには同じく老舗のみはし もありますが、これは甲乙つけ難い美味しさです。このお店には他にも小倉アイスなど様々な名物メニューがあるようなので、是非また行ってみたいと思います。よく近くに行くのに知らなかったのが悔しいくらいですw
店頭ではお土産も売っていたし、公式サイトではネット販売で全国にも発送するようなので甘いもの好きの方はチェックしてみて下さい。
参考リンク:公式サイトのネット販売のページ
参考記事:みはし (上野界隈のお店)
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
今日は前回の記事に引き続き、東京都美術館の「メトロポリタン美術館展 大地、海、空-4000年の美への旅」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
【特別展】メトロポリタン美術館展 大地、海、空-4000年の美への旅
Earth, Sea and Sky: Nature in Western Art; Masterpieces from The Metropolitan Museum of Art
【公式サイト】
http://met2012.jp/
http://www.tobikan.jp/museum/2012/metropolitan2012.html
【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2012年10月6日~2013年1月4日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前編では1~3章までをご紹介しましたが、今日は残りの4~7章までをご紹介します。
<第4章 草花の庭>
4章は庭や草花に関するコーナーです。楽園という言葉は「囲われた庭」を意味するペルシャ語に由来しているそうで、開墾されたり栽培されるなど人の手の入った庭は肯定的に受け止められていたそうです。また、花も絵によく描かれますが、盛りの短い花は儚さの象徴でもあるようです。ここにはそうした主題の作品が並んでいました。
この章の冒頭には花をモチーフにしたモザイク模様のタイルの作品(トルコ16世紀後半)、びっしりと草花が表された大きなカーペット(北ネーデルランド1600年頃)、写実的な絵画「ガラスの花瓶の花束」(フランドル1662年)、日本風の陶器の器(日本・アメリカ1902~1918年頃)などが並んでいました。後半の展示も幅広い年代・地域の作品が並んでいます。
70 ルイス・コンフォート・ティファニー/ティファニー・ファーニス 「花形の花器」 1902~1918年 アメリカ ★こちらで観られます
一輪のオレンジ色の花をそのまま花器にしたような作品です。その色形に気品があって可憐な雰囲気がありました。今回はティファニーの作品もいくつか出品され、この隣にもティファニーの花器があったのですが、こちらの作品の方が好みでした。
72 フェリクス・オベール 「アイリス」 1897~1898年 フランス
水の中に咲くアイリスを描いた作品(綿ビロードにプリントしたもの)で、水はオレンジで波を赤で表現しています。意匠化されたデザインは日本の琳派を思い起こすかな。時期的にジャポニスムが流行った頃の作品だと思います。よく観るとアイリスは連続したパターンを組み合わせていて、その繋ぎ目が自然で群生しているような感じを出していました。
この近くにはヴェルサイユの庭を描いたルノワールの作品(フランス1900~1905年)や、日本的なデザインを取り入れた衣装戸棚(アメリカ1880~1885年)、ガレの飾り棚(フランス1900年頃)などもありました。
74 オディロン・ルドン 「中国の花瓶に活けられたブーケ」 1912~1914年頃 フランス ★こちらで観られます
赤黒い背景に、花瓶とそこに活けられた花々を描いた作品です。背景には立体感がなく、宙に浮かんでいるかのような幻想的な空間となっています。ポピーやマリーゴールド、金木犀?などの花が描かれ、写実的でありながらどこか神秘的にすら感じました。背景が赤いのにオレンジやピンクなどの花も鮮やかに見えるのも不思議です。これは今回の展示の中でもかなり気に入りました。
<第5章 カメラが捉えた自然>
続いては写真のコーナーです。写真は19世紀に発明されたそうで、ここには白黒写真が並び、動物や庭、花、風景などこれまで観てきた主題の作品も展示されていました。
78 ギュスターヴ・ル・グレイ 「海上の帆船」 1856年 フランス
海に浮かぶ帆船を撮ったモノクロ写真です。プリントがやや茶色がかっている為か夕暮れのように見えますが、実際の時間帯は分かりません。写真でありながら雲などは絵画のような感じに思えました。
解説によるとこの頃発明されたネガは銀板と違い紙に何枚も焼き付けられることが画期的だったそうで、この作品も鶏の卵を髪に塗ったものにプリントしていて、それによってきめ細かいプリントができたそうです。
この近くには花や湖、植物を撮った写真などが並んでいました。凝った構図の作品もあって面白いです。
86 アルベルト・レンガー=パッチェ 「あくびをするヒヒ」 1928年頃 ドイツ
口を開けてあくびしているヒヒを撮った写真で、顔はほとんど口しかうつっていないほど大きなあくびです。まさに決定的瞬間を撮ったような感じで、愉快でちょっと獣の怖さを感じました。
89 杉本博司 「ボーデン湖、ウットヴィル」 1993年 日本 ★こちらで観られます
これは湖を撮った白黒の写真で、画面の中央辺りに水平線があるのですが、灰色の水面と白い空しかないため抽象画にすら見えます。よく観ると微妙な濃淡もあり、シンプルな構図ながらも何らかの意味がありそうに思えました。
<第6章 大地と空>
続いては風景画のコーナーです。1章では理想化された風景をご紹介しましたが、こちらは様々な風景を描いた作品が並んでいました。
[6-1:森へ]
96 アンリ・ルソー 「ビエーヴル川の堤、ビセートル付近」 1908~1909年頃 フランス ★こちらで観られます
これは絵画作品で、幹まで緑色をした木々が立ち並び、下の方には川が流れている様子が描かれています。また、木々の間の道には人形か小人のような人たちが歩いていてシュールな感じを受けます。遠くには石のアーチのようなものや木々が描かれ、ルソーらしい素朴な雰囲気がありました。木は何の木かわかりませんでしたが、うねっていて生命力が感じられました。
参考記事:アンリ・ルソー パリの空の下で ルソーとその仲間たち (ポーラ美術館)
98 ジョン・ヘンリー・ダール/モリス商会のジョン・マーティン 「緑樹」 1892年 イギリス
これは大きなタペストリーで、右から順にどんぐり、栗、西洋なしの木が描かれ、その上に巻物のようなものが描かれています。この巻物には右から順に、帆船、屋根の樽木、彫刻とそれぞれの用途が書かれいているそうです。全体を埋め尽くすように草や花が表され、そこには鹿や狐、逃げていく兎などの姿もありました。意匠化されていてどことなく中世のような印象を受ける作品でした。
参考記事:
ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (横須賀美術館)
ウィリアム・モリス ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン展 (うらわ美術館)
94 フィンセント・ファン・ゴッホ 「糸杉」 1889年 オランダ ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、ゴッホがサンレミの精神病院に入院してすぐの頃の作品だそうです。中央からやや左の所に画面を突き出すほどの高い杉が描かれ、右上には三日月が浮かんでいる様子が描かれています。周りの大気や杉の葉がうねるように渦巻いていて、ちょっと異様な感じもします。近くで観ると厚塗されていて様々な色が重なるような感じが力強く、糸杉はそびえ立つような感じでした。
解説によると、ゴッホは「糸杉はエジプトのオベリスクと同じように美しい」と言っていたそうで、ヒマワリに匹敵する重要なモチーフだったようです。地中海地方では糸杉を墓地に植えるらしく死と関連付けられることもあるようですが、ゴッホはそれも知っていたのだとか。
参考記事:
ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)
ここら辺で次の階に移ります。音声ガイド(通常版)では坂本龍一氏がゴッホの糸杉からインスピレーションを得て作曲したテーマ曲を聞くこともできます。
[6-2:岩や山]
100 アルバート・ビアスタット 「マーセド川、ヨセミテ渓谷」 1866年 アメリカ ★こちらで観られます
これはカルフォルニアにある切り立った断崖絶壁と川が描かれた作品で、川岸にはアメリカ先住民らしき人々が集まり、水面には船の姿もあります。その人々と風景の大きさを比べると、山の雄大さがよく分かります。また、非常に緻密で写真のような写実性があり、光の表現が柔らかく明るさを感じました。解説によると、この作者はこの地の写真を観て実際に訪れてみたそうです。そして自らもここで写真を撮ったりしていたとのことでした。
[6-3:空]
110 エドワード・ホッパー 「トゥーライツの灯台」 1929年 アメリカ ★こちらで観られます
これは丘の上に建つ灯台を描いた作品で、真っ青な空には2筋の羽根のような雲が描かれています。灯台には光が強く当たっているような表現で、全体的に滑らかな感じを受けます。若干寂しさも感じつつ、どこか不思議な雰囲気が好みでした。ホッパーは好みなのでこれもかなり気に入りました。
111 ジョージア・オキーフ 「骨盤Ⅱ」 1944年 アメリカ
これはニューメキシコの砂漠で白骨化した動物の骨を描いた作品で、大きくトリミングされ、骨の穴から背景の青空が見えるような構図です。その構図が面白く、白~乳白色の骨は優美で色気すら感じるほどでした。解説によると、オキーフは骨に死を感じず、生身の動物よりも命を感じたそうです。その為か爽やかで明るい雰囲気もありました。
この近くにあったジョン・フレデリック・ケンセットの「海上の日没」(アメリカ1872年)という作品も好みでした。この人はハドソンリヴァー派の画家で、メトロポリタン美術館の創始者の1人だそうです。
<第7章 水の世界>
最後は水に関する作品のコーナーです。古くから文化と切り離し難い水は作品の主題になっていたようで、水の生き物や、水の動き・透明性・反射といった特性を表していたようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
[7-1:水の生物]
112 「カエルの分銅」 メソポタミア 古バビロニア時代(BC2000~1600年) ★こちらで観られます
伏せたカエルを模した分銅で、砂粒のような肌の素材でできていて 見た目以上に重いらしく4.7kgもあるそうです。足の方に向かって流線的な形をしているのが優美で、これは現代でも通じそうなデザインセンスでした。
この先には壺や皿などが並んでいました。タコの足をモチーフにした壺(ミュケナイ BC1200~1100年頃)、ロブスターのハサミの形の壺(ギリシア BC460年頃)、魚の形の容器(後期ローマまたはビザンティン 300~600年頃)、子供を背に載せたヒキガエルの銅像(イタリア 16世紀初頭)、魚・蛇・カエル・ザリガニなどが池から出てくるような意匠の大皿(フランス1575~1600年頃)、ピンクの貝を杯にしたもの(ポーランド 16世紀後半)、ティファニーの魚やカエルをモチーフにした銀の花瓶や盆(アメリカ1870年代)、ウィリアム・ド・モーガンのラスター彩の大皿(イギリス1890年頃)などがありました。
[7-2:海と水流]
127 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む」 1835年頃 イギリス ★こちらで観られます
ヴェネツィアの水路を描いた作品で、中央に何艘もの船が描かれ両脇にはヴェネツィアの街が並んでいます。全体的に明るく、水彩のような透明感があります。また、緻密に描かれていて、ヴェネツィアの活気や爽やかな気候まで伝わってくるような詩情溢れる画面となっていました。
この近くにはモネのエトルタの海の絵(フランス1883年)や、ユベール・ロベールの橋を描いた作品(フランス1776年)、カナレットのヴェネツィアを描いた作品(イタリア1740年頃)などもありました。
130 ポール・セザンヌ 「レスタックからマルセイユ湾を望む」 1885年頃 フランス ★こちらで観られます
高い所から見渡すように描かれた風景画で、手前に赤い屋根の家が立ち並び、中央に青い海が広がっています。奥には向こう岸の山が見え、その色合いはセザンヌならではです。また、家々は幾何学的でそこにもセザンヌの特徴が観られました。広々していて明るい雰囲気の作品です。
この隣にはヴラマンクの作品(フランス1905年)もありました。
133 ウィンスロー・ホーマー 「月光、ウッドアイランド灯台」 1894年 アメリカ ★こちらで観られます
夜の海を描いた作品で、手前に岩があり激しい波も見えます。画面の中には描かれていませんが空には月が浮かんでいるようで、非常に強い月光が海を明るく照らしています。また、遥か先の水平線のあたりには赤い点があり、これがタイトルにもなっている灯台の光のようでした。かなり素早いタッチで描かれ、細部はよく分からないところもありますがそれが劇的な雰囲気でした。解説によると、これは夏のある夜に画材を持って海の岩に赴き、そこで午前一時まで月光の下4~5時間で描いたとのことでした。
ということで、特に一番上の階に気に入った作品が多かったように思います。ホッパー、オキーフ、ホーマーなどアメリカの画家の作品も見応えがありました。全体的には様々な時代・地域の作品が揃った世界最大級の美術館ならではの展覧会です。
おまけ:
今回は音声ガイドが2種類用意されていて、通常版の他に、英語も学べる!【リトル・チャロ版】というのがあります。(チャロはNHK・Eテレの英語番組のキャラクター) 私は通常版だったのですが、連れはチャロ版を借りていました。チャロ版は簡単な英語を織り交ぜつつチャロと博士が会話するような感じだったらしく、チャロのコメントがちょっとお馬鹿で可愛かったそうです。
参考リンク:音声ガイドの案内
通常版では先述の通り坂本龍一氏のテーマ曲を聞くこともできるのですが、私にとってのメトロポリタン美術館のテーマソングは「タイムトラベルは楽しい」のフレーズの「メトロポリタンミュージアム」(みんなの歌)が不動ですw チャロを出すくらいならメトロポリタンミュージアムをテーマソングにしてほしかったw
追記:後日、再度この展示を観に行ってきました。
メトロポリタン美術館展 大地、海、空-4000年の美への旅 2回目感想前編(東京都美術館)
メトロポリタン美術館展 大地、海、空-4000年の美への旅 2回目感想後編(東京都美術館)
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
【特別展】メトロポリタン美術館展 大地、海、空-4000年の美への旅
Earth, Sea and Sky: Nature in Western Art; Masterpieces from The Metropolitan Museum of Art
【公式サイト】
http://met2012.jp/
http://www.tobikan.jp/museum/2012/metropolitan2012.html
【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2012年10月6日~2013年1月4日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前編では1~3章までをご紹介しましたが、今日は残りの4~7章までをご紹介します。
<第4章 草花の庭>
4章は庭や草花に関するコーナーです。楽園という言葉は「囲われた庭」を意味するペルシャ語に由来しているそうで、開墾されたり栽培されるなど人の手の入った庭は肯定的に受け止められていたそうです。また、花も絵によく描かれますが、盛りの短い花は儚さの象徴でもあるようです。ここにはそうした主題の作品が並んでいました。
この章の冒頭には花をモチーフにしたモザイク模様のタイルの作品(トルコ16世紀後半)、びっしりと草花が表された大きなカーペット(北ネーデルランド1600年頃)、写実的な絵画「ガラスの花瓶の花束」(フランドル1662年)、日本風の陶器の器(日本・アメリカ1902~1918年頃)などが並んでいました。後半の展示も幅広い年代・地域の作品が並んでいます。
70 ルイス・コンフォート・ティファニー/ティファニー・ファーニス 「花形の花器」 1902~1918年 アメリカ ★こちらで観られます
一輪のオレンジ色の花をそのまま花器にしたような作品です。その色形に気品があって可憐な雰囲気がありました。今回はティファニーの作品もいくつか出品され、この隣にもティファニーの花器があったのですが、こちらの作品の方が好みでした。
72 フェリクス・オベール 「アイリス」 1897~1898年 フランス
水の中に咲くアイリスを描いた作品(綿ビロードにプリントしたもの)で、水はオレンジで波を赤で表現しています。意匠化されたデザインは日本の琳派を思い起こすかな。時期的にジャポニスムが流行った頃の作品だと思います。よく観るとアイリスは連続したパターンを組み合わせていて、その繋ぎ目が自然で群生しているような感じを出していました。
この近くにはヴェルサイユの庭を描いたルノワールの作品(フランス1900~1905年)や、日本的なデザインを取り入れた衣装戸棚(アメリカ1880~1885年)、ガレの飾り棚(フランス1900年頃)などもありました。
74 オディロン・ルドン 「中国の花瓶に活けられたブーケ」 1912~1914年頃 フランス ★こちらで観られます
赤黒い背景に、花瓶とそこに活けられた花々を描いた作品です。背景には立体感がなく、宙に浮かんでいるかのような幻想的な空間となっています。ポピーやマリーゴールド、金木犀?などの花が描かれ、写実的でありながらどこか神秘的にすら感じました。背景が赤いのにオレンジやピンクなどの花も鮮やかに見えるのも不思議です。これは今回の展示の中でもかなり気に入りました。
<第5章 カメラが捉えた自然>
続いては写真のコーナーです。写真は19世紀に発明されたそうで、ここには白黒写真が並び、動物や庭、花、風景などこれまで観てきた主題の作品も展示されていました。
78 ギュスターヴ・ル・グレイ 「海上の帆船」 1856年 フランス
海に浮かぶ帆船を撮ったモノクロ写真です。プリントがやや茶色がかっている為か夕暮れのように見えますが、実際の時間帯は分かりません。写真でありながら雲などは絵画のような感じに思えました。
解説によるとこの頃発明されたネガは銀板と違い紙に何枚も焼き付けられることが画期的だったそうで、この作品も鶏の卵を髪に塗ったものにプリントしていて、それによってきめ細かいプリントができたそうです。
この近くには花や湖、植物を撮った写真などが並んでいました。凝った構図の作品もあって面白いです。
86 アルベルト・レンガー=パッチェ 「あくびをするヒヒ」 1928年頃 ドイツ
口を開けてあくびしているヒヒを撮った写真で、顔はほとんど口しかうつっていないほど大きなあくびです。まさに決定的瞬間を撮ったような感じで、愉快でちょっと獣の怖さを感じました。
89 杉本博司 「ボーデン湖、ウットヴィル」 1993年 日本 ★こちらで観られます
これは湖を撮った白黒の写真で、画面の中央辺りに水平線があるのですが、灰色の水面と白い空しかないため抽象画にすら見えます。よく観ると微妙な濃淡もあり、シンプルな構図ながらも何らかの意味がありそうに思えました。
<第6章 大地と空>
続いては風景画のコーナーです。1章では理想化された風景をご紹介しましたが、こちらは様々な風景を描いた作品が並んでいました。
[6-1:森へ]
96 アンリ・ルソー 「ビエーヴル川の堤、ビセートル付近」 1908~1909年頃 フランス ★こちらで観られます
これは絵画作品で、幹まで緑色をした木々が立ち並び、下の方には川が流れている様子が描かれています。また、木々の間の道には人形か小人のような人たちが歩いていてシュールな感じを受けます。遠くには石のアーチのようなものや木々が描かれ、ルソーらしい素朴な雰囲気がありました。木は何の木かわかりませんでしたが、うねっていて生命力が感じられました。
参考記事:アンリ・ルソー パリの空の下で ルソーとその仲間たち (ポーラ美術館)
98 ジョン・ヘンリー・ダール/モリス商会のジョン・マーティン 「緑樹」 1892年 イギリス
これは大きなタペストリーで、右から順にどんぐり、栗、西洋なしの木が描かれ、その上に巻物のようなものが描かれています。この巻物には右から順に、帆船、屋根の樽木、彫刻とそれぞれの用途が書かれいているそうです。全体を埋め尽くすように草や花が表され、そこには鹿や狐、逃げていく兎などの姿もありました。意匠化されていてどことなく中世のような印象を受ける作品でした。
参考記事:
ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (横須賀美術館)
ウィリアム・モリス ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン展 (うらわ美術館)
94 フィンセント・ファン・ゴッホ 「糸杉」 1889年 オランダ ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、ゴッホがサンレミの精神病院に入院してすぐの頃の作品だそうです。中央からやや左の所に画面を突き出すほどの高い杉が描かれ、右上には三日月が浮かんでいる様子が描かれています。周りの大気や杉の葉がうねるように渦巻いていて、ちょっと異様な感じもします。近くで観ると厚塗されていて様々な色が重なるような感じが力強く、糸杉はそびえ立つような感じでした。
解説によると、ゴッホは「糸杉はエジプトのオベリスクと同じように美しい」と言っていたそうで、ヒマワリに匹敵する重要なモチーフだったようです。地中海地方では糸杉を墓地に植えるらしく死と関連付けられることもあるようですが、ゴッホはそれも知っていたのだとか。
参考記事:
ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)
ここら辺で次の階に移ります。音声ガイド(通常版)では坂本龍一氏がゴッホの糸杉からインスピレーションを得て作曲したテーマ曲を聞くこともできます。
[6-2:岩や山]
100 アルバート・ビアスタット 「マーセド川、ヨセミテ渓谷」 1866年 アメリカ ★こちらで観られます
これはカルフォルニアにある切り立った断崖絶壁と川が描かれた作品で、川岸にはアメリカ先住民らしき人々が集まり、水面には船の姿もあります。その人々と風景の大きさを比べると、山の雄大さがよく分かります。また、非常に緻密で写真のような写実性があり、光の表現が柔らかく明るさを感じました。解説によると、この作者はこの地の写真を観て実際に訪れてみたそうです。そして自らもここで写真を撮ったりしていたとのことでした。
[6-3:空]
110 エドワード・ホッパー 「トゥーライツの灯台」 1929年 アメリカ ★こちらで観られます
これは丘の上に建つ灯台を描いた作品で、真っ青な空には2筋の羽根のような雲が描かれています。灯台には光が強く当たっているような表現で、全体的に滑らかな感じを受けます。若干寂しさも感じつつ、どこか不思議な雰囲気が好みでした。ホッパーは好みなのでこれもかなり気に入りました。
111 ジョージア・オキーフ 「骨盤Ⅱ」 1944年 アメリカ
これはニューメキシコの砂漠で白骨化した動物の骨を描いた作品で、大きくトリミングされ、骨の穴から背景の青空が見えるような構図です。その構図が面白く、白~乳白色の骨は優美で色気すら感じるほどでした。解説によると、オキーフは骨に死を感じず、生身の動物よりも命を感じたそうです。その為か爽やかで明るい雰囲気もありました。
この近くにあったジョン・フレデリック・ケンセットの「海上の日没」(アメリカ1872年)という作品も好みでした。この人はハドソンリヴァー派の画家で、メトロポリタン美術館の創始者の1人だそうです。
<第7章 水の世界>
最後は水に関する作品のコーナーです。古くから文化と切り離し難い水は作品の主題になっていたようで、水の生き物や、水の動き・透明性・反射といった特性を表していたようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
[7-1:水の生物]
112 「カエルの分銅」 メソポタミア 古バビロニア時代(BC2000~1600年) ★こちらで観られます
伏せたカエルを模した分銅で、砂粒のような肌の素材でできていて 見た目以上に重いらしく4.7kgもあるそうです。足の方に向かって流線的な形をしているのが優美で、これは現代でも通じそうなデザインセンスでした。
この先には壺や皿などが並んでいました。タコの足をモチーフにした壺(ミュケナイ BC1200~1100年頃)、ロブスターのハサミの形の壺(ギリシア BC460年頃)、魚の形の容器(後期ローマまたはビザンティン 300~600年頃)、子供を背に載せたヒキガエルの銅像(イタリア 16世紀初頭)、魚・蛇・カエル・ザリガニなどが池から出てくるような意匠の大皿(フランス1575~1600年頃)、ピンクの貝を杯にしたもの(ポーランド 16世紀後半)、ティファニーの魚やカエルをモチーフにした銀の花瓶や盆(アメリカ1870年代)、ウィリアム・ド・モーガンのラスター彩の大皿(イギリス1890年頃)などがありました。
[7-2:海と水流]
127 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む」 1835年頃 イギリス ★こちらで観られます
ヴェネツィアの水路を描いた作品で、中央に何艘もの船が描かれ両脇にはヴェネツィアの街が並んでいます。全体的に明るく、水彩のような透明感があります。また、緻密に描かれていて、ヴェネツィアの活気や爽やかな気候まで伝わってくるような詩情溢れる画面となっていました。
この近くにはモネのエトルタの海の絵(フランス1883年)や、ユベール・ロベールの橋を描いた作品(フランス1776年)、カナレットのヴェネツィアを描いた作品(イタリア1740年頃)などもありました。
130 ポール・セザンヌ 「レスタックからマルセイユ湾を望む」 1885年頃 フランス ★こちらで観られます
高い所から見渡すように描かれた風景画で、手前に赤い屋根の家が立ち並び、中央に青い海が広がっています。奥には向こう岸の山が見え、その色合いはセザンヌならではです。また、家々は幾何学的でそこにもセザンヌの特徴が観られました。広々していて明るい雰囲気の作品です。
この隣にはヴラマンクの作品(フランス1905年)もありました。
133 ウィンスロー・ホーマー 「月光、ウッドアイランド灯台」 1894年 アメリカ ★こちらで観られます
夜の海を描いた作品で、手前に岩があり激しい波も見えます。画面の中には描かれていませんが空には月が浮かんでいるようで、非常に強い月光が海を明るく照らしています。また、遥か先の水平線のあたりには赤い点があり、これがタイトルにもなっている灯台の光のようでした。かなり素早いタッチで描かれ、細部はよく分からないところもありますがそれが劇的な雰囲気でした。解説によると、これは夏のある夜に画材を持って海の岩に赴き、そこで午前一時まで月光の下4~5時間で描いたとのことでした。
ということで、特に一番上の階に気に入った作品が多かったように思います。ホッパー、オキーフ、ホーマーなどアメリカの画家の作品も見応えがありました。全体的には様々な時代・地域の作品が揃った世界最大級の美術館ならではの展覧会です。
おまけ:
今回は音声ガイドが2種類用意されていて、通常版の他に、英語も学べる!【リトル・チャロ版】というのがあります。(チャロはNHK・Eテレの英語番組のキャラクター) 私は通常版だったのですが、連れはチャロ版を借りていました。チャロ版は簡単な英語を織り交ぜつつチャロと博士が会話するような感じだったらしく、チャロのコメントがちょっとお馬鹿で可愛かったそうです。
参考リンク:音声ガイドの案内
通常版では先述の通り坂本龍一氏のテーマ曲を聞くこともできるのですが、私にとってのメトロポリタン美術館のテーマソングは「タイムトラベルは楽しい」のフレーズの「メトロポリタンミュージアム」(みんなの歌)が不動ですw チャロを出すくらいならメトロポリタンミュージアムをテーマソングにしてほしかったw
追記:後日、再度この展示を観に行ってきました。
メトロポリタン美術館展 大地、海、空-4000年の美への旅 2回目感想前編(東京都美術館)
メトロポリタン美術館展 大地、海、空-4000年の美への旅 2回目感想後編(東京都美術館)
参照記事:★この記事を参照している記事
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
プロフィール
Author:21世紀のxxx者
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。
関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。
画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。
↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。
【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。
【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)
更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
展覧スケジュール
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト
カテゴリ
リンク
このブログをリンクに追加する
日ごろ参考にしているブログです。こちらにも訪れてみてください。
<美術系サイト>
弐代目・青い日記帳
いづつやの文化記号
あるYoginiの日常
影とシルエットのアート
建築学科生のブログ
彫刻パラダイス
ギャラリークニャ
「 10秒美術館 」 ~元画商がほんのり捧げる3行コメント~
だまけん文化センター
横浜を好きになる100の方法
美術品オークション
<読者サイト>
アスカリーナのいちご日記
Gogorit Mogorit Diary
青い海(沖縄ブログ)
なつの天然生活
月の囁き
桜から四季の花まで、江戸東京散歩日記
うさみさんのお出かけメモ (u_u)
森の家ーイラストのある生活
Croquis
ラクダにひかれてダマスカス
<友人のサイト>
男性に着て欲しいメンズファッション集
Androidタブレット比較
キャンペーン情報をまとめるブログ
日ごろ参考にしているブログです。こちらにも訪れてみてください。
<美術系サイト>
弐代目・青い日記帳
いづつやの文化記号
あるYoginiの日常
影とシルエットのアート
建築学科生のブログ
彫刻パラダイス
ギャラリークニャ
「 10秒美術館 」 ~元画商がほんのり捧げる3行コメント~
だまけん文化センター
横浜を好きになる100の方法
美術品オークション
<読者サイト>
アスカリーナのいちご日記
Gogorit Mogorit Diary
青い海(沖縄ブログ)
なつの天然生活
月の囁き
桜から四季の花まで、江戸東京散歩日記
うさみさんのお出かけメモ (u_u)
森の家ーイラストのある生活
Croquis
ラクダにひかれてダマスカス
<友人のサイト>
男性に着て欲しいメンズファッション集
Androidタブレット比較
キャンペーン情報をまとめるブログ
最新記事
-
最近観た展示 (202303) (05/26)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2023年04月号】 (04/01)
-
最近観た展示 (202302) (03/10)
-
最近観た展示 (202301) (02/10)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2023年01月号】 (01/01)
-
2022年の振り返り (12/31)
-
最近観た展示 (202212) (12/30)
-
最近観た展示 (202211) (12/29)
-
最近観た展示 (202210) (11/11)
-
最近観た展示 (202209) (10/07)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年10月号】 (10/02)
-
最近観た展示 (202208) (08/30)
-
最近観た展示 (202206~07) (07/28)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年07月号】 (07/07)
-
映画「トップガン マーヴェリック」4DX SCREEN吹替版 (ややネタバレあり) (06/21)
-
映画「シン・ウルトラマン」(ややネタバレあり) (06/20)
-
メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 (感想後編)【国立新美術館】 (06/12)
-
メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 (感想前編)【国立新美術館】 (06/06)
-
ダミアン・ハースト 桜 【国立新美術館】 (05/23)
-
最後の印象派、二大巨匠 シダネルとマルタン展 【SOMPO美術館】 (05/16)
-
最近観た展示 (05/09)
-
ミロ展-日本を夢みて (感想後編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】 (04/25)
-
ミロ展-日本を夢みて (感想前編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】 (04/20)
-
奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム 【東京都庭園美術館】 (04/11)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年04月号】 (04/01)
-
【密蔵院】の安行寒桜の写真 (03/27)
-
グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生【世田谷美術館】 (03/22)
-
大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!【うらわ美術館】 (03/14)
-
大・タイガー立石展 世界を描きつくせ! 【埼玉県立近代美術館】 (03/07)
-
もうすぐ再開予定 (02/28)
-
2021 MOMASコレクション 第3期 【埼玉県立近代美術館】 (01/21)
-
鎌倉の写真 (2021年11月) (01/18)
-
没後70年 吉田博展 【川越市立美術館】 (01/16)
-
今後の更新について (01/14)
-
【山崎美術館】の案内 (2021年11月) (01/11)
-
保岡勝也 「旧山崎家別邸」 (01/09)
-
映画「劇場版 呪術廻戦 0」(ややネタバレあり) (01/07)
-
TERUHISA KITAHARA 鉄道コレクション展 【京橋エドグランタウンミュージアム】 (01/05)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年01月号】 (01/01)
-
2021年の振り返り (12/31)
-
ヘラルボニー/ゼロからはじまる 【BAG-Brillia Art Gallery】 (12/29)
-
映画「キングスマン:ファースト・エージェント」(ややネタバレあり) (12/27)
-
横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】 (12/26)
-
第15回 shiseido art egg 【資生堂ギャラリー】 (12/23)
-
映画「マトリックス レザレクションズ」(ややネタバレあり) (12/21)
-
ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ 【パナソニック汐留美術館】 (12/19)
-
鈴木其一・夏秋渓流図屏風 【根津美術館】 (12/16)
-
【根津美術館】の紅葉 2021年11月 (12/14)
-
カフェラヴォワ 【新宿界隈のお店】 (12/12)
-
川瀬巴水 旅と郷愁の風景 【SOMPO美術館】 (12/10)
最新コメント
- 21世紀のxxx者:イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン (感想後編)【三菱一号館美術館】 (12/09)
- ゆーき:イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン (感想後編)【三菱一号館美術館】 (12/09)
- 21世紀のxxx者:奇蹟の芸術都市バルセロナ (感想前編)【東京ステーションギャラリー】 (01/03)
- うさぴょん:キヨノサチコ絵本原画の世界 みんな大好き!ノンタン展 【松屋銀座】 (03/21)
- 21世紀のxxx者:川豊 【成田界隈のお店】 (03/04)
- 21世紀のxxx者:劇団四季 「MAMMA MIA!(マンマ・ミーア!)」 (03/04)
- 萌音:川豊 【成田界隈のお店】 (03/03)
最新トラックバック
月別アーカイブ
- 2023/05 (1)
- 2023/04 (1)
- 2023/03 (1)
- 2023/02 (1)
- 2023/01 (1)
- 2022/12 (3)
- 2022/11 (1)
- 2022/10 (2)
- 2022/08 (1)
- 2022/07 (2)
- 2022/06 (4)
- 2022/05 (3)
- 2022/04 (4)
- 2022/03 (4)
- 2022/02 (1)
- 2022/01 (9)
- 2021/12 (12)
- 2021/11 (14)
- 2021/10 (10)
- 2021/09 (6)
- 2021/08 (9)
- 2021/07 (10)
- 2021/06 (9)
- 2021/05 (11)
- 2021/04 (12)
- 2021/03 (12)
- 2021/02 (13)
- 2021/01 (13)
- 2020/12 (13)
- 2020/11 (14)
- 2020/10 (14)
- 2020/09 (14)
- 2020/08 (15)
- 2020/07 (14)
- 2020/06 (15)
- 2020/05 (15)
- 2020/04 (16)
- 2020/03 (24)
- 2020/02 (26)
- 2020/01 (28)
- 2019/12 (28)
- 2019/11 (26)
- 2019/10 (28)
- 2019/09 (28)
- 2019/08 (28)
- 2019/07 (28)
- 2019/06 (28)
- 2019/05 (28)
- 2019/04 (28)
- 2019/03 (28)
- 2019/02 (26)
- 2019/01 (29)
- 2018/12 (29)
- 2018/11 (28)
- 2018/10 (29)
- 2018/09 (27)
- 2018/08 (29)
- 2018/07 (29)
- 2018/06 (28)
- 2018/05 (29)
- 2018/04 (28)
- 2018/03 (29)
- 2018/02 (26)
- 2018/01 (28)
- 2017/12 (30)
- 2017/11 (28)
- 2017/10 (30)
- 2017/09 (27)
- 2017/08 (26)
- 2017/07 (25)
- 2017/06 (9)
- 2017/05 (18)
- 2015/04 (1)
- 2014/12 (1)
- 2014/10 (1)
- 2014/09 (1)
- 2014/08 (1)
- 2014/07 (1)
- 2014/06 (1)
- 2014/05 (1)
- 2014/04 (6)
- 2014/03 (12)
- 2014/02 (11)
- 2014/01 (16)
- 2013/12 (15)
- 2013/11 (17)
- 2013/10 (22)
- 2013/09 (23)
- 2013/08 (22)
- 2013/07 (24)
- 2013/06 (20)
- 2013/05 (25)
- 2013/04 (23)
- 2013/03 (24)
- 2013/02 (23)
- 2013/01 (27)
- 2012/12 (24)
- 2012/11 (27)
- 2012/10 (28)
- 2012/09 (27)
- 2012/08 (28)
- 2012/07 (28)
- 2012/06 (27)
- 2012/05 (22)
- 2012/04 (18)
- 2012/03 (28)
- 2012/02 (26)
- 2012/01 (28)
- 2011/12 (28)
- 2011/11 (27)
- 2011/10 (28)
- 2011/09 (27)
- 2011/08 (27)
- 2011/07 (28)
- 2011/06 (27)
- 2011/05 (28)
- 2011/04 (27)
- 2011/03 (23)
- 2011/02 (26)
- 2011/01 (28)
- 2010/12 (28)
- 2010/11 (28)
- 2010/10 (29)
- 2010/09 (27)
- 2010/08 (29)
- 2010/07 (28)
- 2010/06 (28)
- 2010/05 (27)
- 2010/04 (27)
- 2010/03 (31)
- 2010/02 (27)
- 2010/01 (29)
- 2009/12 (29)
- 2009/11 (28)
- 2009/10 (24)
- 2009/09 (25)
- 2009/08 (27)
- 2009/07 (23)
- 2009/06 (20)
- 2009/05 (29)
- 2009/04 (30)
- 2009/03 (14)
- 2009/02 (5)
- 2009/01 (2)
- 2008/11 (1)
メディア掲載
記事の共有
この記事をツイートする
ツイート
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード

アクセスランキング
twitter
メールフォーム
※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。