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イチハラヒロコ展「期待して当たり前なんだし。」 【東京ミッドタウン】

前回ご紹介した展示を見た後、ミッドタウンの中を歩いていたら至る所に詩のような看板があり、こちらはイチハラヒロコ展「期待して当たり前なんだし。」という展示となっていました。

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【展覧名】
 イチハラヒロコ展「期待して当たり前なんだし。」

【公式サイト】
 http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/2013/6863.html

【会場】東京ミッドタウン
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】2013年1月15日(火)~3月24日(日)

・第1弾 01月15日(火)~:9作品
・第2弾 01月21日(月)~:3作品追加 合計12作品
・第3弾 01月23日(水)~:2作品追加 合計14作品
・第4弾 01月28日(月)~:8作品追加 合計22作品
・第5弾 01月31日(木)~:4作品追加 合計26作品
・第6弾 02月04日(月)~:11作品追加 合計34作品
・第7弾 02月12日(火)~:2作品追加 合計39作品
・第8弾 02月23日(土)~:2作品追加 合計41作品
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
会場はミッドタウンの地下~3階の様々な場所となっていたので、探しながら見て回りました。期間によって作品が追加されることもあるようです。

さて、この展示はイチハラヒロコという言葉だけで表現するアーティストの作品が並んでいました。恐らく改装工事をしているところに作品を印字しているようで、あちこちあるので全部見て回れたかはわかりませんw 独特の言葉が並んでいましたので、いくつか気に入ったものをご紹介しようと思います。

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何が完売したのかわからないですが、文字と語感の存在感がすごいw wikipediaで調べてみると、作品には主に写植、モリサワのゴシックMB101が用いられるとのことで、他の作品もこの字体となっているようです。
 参考リンク:イチハラヒロコのwikipedia

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天国ではなくヘブンとするところに洒落っ気を感じます。今回のテーマは「ラブにまつわることばの展覧会」ということで、恋愛に関係ありそうな言葉が多いです。

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これも恋愛関連の言葉かな? 大人買いを連想しますがw 一度言ってみたい言葉です。

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いいこともそうでないことも確かにそうですね…。

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今回の展示名になっている作品。バレンタインデーとホワイトデーに関する言葉かな。様々なものに期待を込めたメッセージのようです。

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私はこれが一番気に入りました。謙虚なのか尊大なのかw 言葉に勢いがあります。

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良いことだけでなくネガティブなことも倍なのだろうか…w 

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女性のお怒りが込められてそうな言葉です。

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これは深い言葉だと思いました。芸術は日々の中にあると思います。

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こちらも中々良い言葉。ちょっと理想的ですが、元気になれそうです。

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みんなそう思うw 直球すぎて面白いです。ってか、さっきのいい言葉は何だったのかw


ということで、心のなかでツッコミを入れつつ見てきました。意図するところはよくわからなくても短文で親しみやすいので、楽しめました。まだしばらく展示されていますので、ミッドタウンに行かれる場合は見て回ると面白いと思います。六本木アートナイトの際には、布忍神社(大阪)とイチハラ氏のコラボレーションの「恋みくじ」(1回100円)も登場するそうです。


 参照記事:★この記事を参照している記事


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絶対風景 絶景でつづる日本列島 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

前回ご紹介した展示を観た後、ミッドタウンに移動して、FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で「絶対風景 絶景でつづる日本列島」を観てきました。

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【展覧名】
 絶対風景 絶景でつづる日本列島

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/1302220123.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】2013年2月22日(金)~3月13日(水)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_4_⑤_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが、混んでいるというわけでもなくゆっくり自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展示は「絶対風景」ということで、とにかく日本の美しさを表現した写真展となっていました。誰が見ても綺麗だと感じる分かりやすい内容で、海や山、草木などを撮った写真が並んでいます。四季があり東西南北で気候の異なる日本は様々な自然の姿があるというのが再認識できるような写真が多く、雄大な光景や幻想的な風景が並びます。展示されている写真が大きかったこともあり、実際にその場で目の当たりにしているかのように感じられました。
撮り方も凝っているようで、これはどこでどのように撮ったのだろうか?と気になる作品も多かったです。(撮影地は日本各地に渡っているようで、プロやハイアマチュアによって撮られているようです。) 表現の仕方が作家によって違うので、その個性が見られたのも良かったかな。単に綺麗なものを綺麗に撮っているだけではない感じを受けました。


ということで、日本の美しさを凝縮したような写真が並ぶ展示でした。ここは無料だし20分くらいで見られるくらいの規模なので、近くを通る際は覗いてみるのも良いかと思います。2月末までは以前ご紹介した「日本の美 伊勢神宮」-写真 渡辺義雄-」も同時開催しています。
 参考記事:日本の美 伊勢神宮-写真 渡辺義雄- (FUJIFILM SQUARE フジフイルム スクエア)


 参照記事:★この記事を参照している記事


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平成24年度(第16回)文化庁メディア芸術祭 【国立新美術館】

この前の日曜日に、六本木の国立新美術館で、最終日となった「第16回文化庁メディア芸術祭」を観てきました。こちらはすでに終了していますが、面白い内容でしたの記事にしておこうと思います。

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【展覧名】
 第16回文化庁メディア芸術祭

【公式サイト】
 http://j-mediaarts.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/jmaf16/index.html

【会場】
 A:国立新美術館[1階 企画展示室1E/3階 講堂/3階 研修室A・B]
 B:東京ミッドタウン[ガレリア地下1階 アトリウム/ミッドタウン・タワー5階 インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター(東京ミッドタウン・デザインハブ内)] C:シネマート六本木[1階 エントランス/3階 スクリーン4]
 D:スーパー・デラックス

【最寄】
 千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅

【会期】2013年2月13日(水)~2月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
無料ということもあり非常に混んでいて、どこもかしこも人だらけで満員電車のように混んでいました。去年も最終日に行って混んでいたのに、また同じ轍を踏んでしまいましたw 恐らく来年もやるので、次こそは早めに行きたいところです。

さて、この展示は1997年から毎年開催されている文化庁主催の芸術祭です。今年も4つの会場に分かれて開催されていたのですが、私はメイン会場の国立新美術館の展示だけ観てきました。展覧会はアート、エンタメ、漫画、アニメの4つの部門に分かれていて、さらにそれぞれのブースに分かれている感じです。今回は写真を撮っても良かったので、いくつか写真を使ってご紹介しようと思います。
 参考記事:平成23年度(第15回)文化庁メディア芸術祭 (国立新美術館)


<アート部門>
まずはアート部門です。映像作品が多めだったと思います。

Cod.Act (Michel DECOSTERD / Andre DECOSTERD) 「Pendulum Choir」
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こちらはアート部門の大賞作品で、映像が流れていました。9人のアカペラが機械に固定されていて、生きた音響要素となるようです。何だか人間が機械的で怖いw ちょっとシュールな作品でした。

YANG Wonbin 「Species series」
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こちらは映像作品と共に展示されていた傘のゴミのような作品です。実はこれはロボットで、ゆっくりとゆらゆらと動いていました。何故こんなゴミっぽい形にしたのかは分かりませんが、他にも紙くずのようなロボットなども映像に出てきて、その発想が変わっていて面白かったです。

大脇理智 「skinslides」
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こちらは床に写った影絵のようなインスタレーション。音もするのですが、まるで下に人間がいるような感じでちょっと不気味w インタラクティブアートとのことでしたが、どうインタラクティブなのかはよく分かりませんでした。

三上晴子 「欲望のコード」
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これは以前に見覚えがありました。天井からカメラが吊り下がっていて、写されたものが蜂の巣のようなスクリーンに無数に映されるというもので、壁にも小刻みに動く機械が並んでいます。監視するように動きまわるカメラはちょっと暴力的に思えるほど迫り来る感じを受けました。
 参考記事:三上晴子 欲望のコード (NTTインターコミュニケーション・センター ICC)


<エンターテインメント部門>
続いてはエンターテインメントのコーナーです。

真鍋大度/MIKIKO/中田ヤスタカ/堀井哲史/木村浩康 「Perfume "Global Site Project"」
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こちらはエンタメ部門の大賞を受けた映像作品で、アイドルのPerfumeの世界デビューのためのプロジェクトです。幾何学的な要素で構成された人型のものがテクノ音楽に合わせて踊るというもので、リズミカルかつ近未来的な雰囲気がありました。

大西景太 「ハイスイノナサ「地下鉄の動態」」
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こちらも音楽に合わせた映像作品。音を視覚化したような映像が面白く、様々な音が絡みあう感じやリズムを刻む様子などが見て取れました。

倉田稔 「勝手に入るゴミ箱」
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こちらは可動式のゴミ箱で、このゴミ箱とキネクトみたいなセンサーで構成されています。ちり紙を丸めてゴミ箱に投げるという経験をしたことがある方は多いと思いますが、このゴミ箱はそのゴミの動きを察知して勝手にゴミをナイスキャッチしてくれますw 実際に動くところは見られませんでしたが、映像でその凄技ぶりを見ることができました。メイキングも面白いです。

新井風愉 「永野 亮「はじめよう」」
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これは永野亮というアーティストのミュージックビデオで、全編に渡って浮遊しているような人々が映しだされています。見ればその種はすぐに分かるのですが、その発想が面白くて親しみが持てました。

↓メイキング映像もあり、実際はこんな感じで撮影されていることが分かります。予想以上にローテクですw
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neurowear 「necomimi」
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これはニュースでも話題になった猫耳のおもちゃ。脳波に合わせて動くという、ハイテクなんだけど脱力系のおもしろアイテムです。私は装着しませんでしたが実機もあり、大勢の人が並んで楽しんでいました。
 参考記事:amazonでnecomimiの検索結果

倉田光吾郎/吉崎航 「水道橋重工「KURATAS」」
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こちらもニュースで話題になった人型ロボット。ガンダムというよりはレイバーとかヴァンツァーを彷彿とするかな。実物がなかったのが残念ですが、中に人が入って操縦する様子を映像で流していました。搭乗者が微笑むとBB弾のガトリングガンが発射される「スマイルショット」など、ジョークギミックも面白いです。


<マンガ部門>
続いては漫画のコーナー。こちらには原画などが並んでいました。

ブノワ・ペータース/フランソワ・スクイテン 訳:古永 真一/原 正人 「闇の国々」
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こちらは大賞となった作品で、フランス・ベルギーのコミックのようです。緻密な描写の漫画で、絵画的な感じを受けるページもあり、1ページに1週間もかけて制作されているのだとか。ちょっと面白そうでした。

漫画のコーナーも結構色々あったのですが、私の知らない漫画ばかりでしたw


<アニメーション部門>
最後はアニメのコーナーです。PVのように短い紹介映像が流されていました。

細田守 「おおかみこどもの雨と雪」
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こちらは昨年ヒットしたアニメ映画。私はまだ観ていませんが、「時をかける少女」や「サマーウォーズ」を手がけた監督の作品なので面白そうです。早く見ないと…。

杉井ギサブロー 「グスコーブドリの伝記」
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こちらは宮沢賢治の小説をアニメ映画化した作品です。私はそれほど満足したわけではないですが、映像の幻想性などは良かったとおもいます。
 参考記事:映画「グスコーブドリの伝記」(ややネタバレあり)

モンキー・パンチ/山本沙代 「LUPIN the Third ~峰不二子という女~」
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こちらは昨年放送されていたルパン3世のアニメで、主人公は峰不二子となっている作品です。私も録画して観ていましたが、5話くらいで観なくなりましたw 本編はそんなに面白いとは思いませんでしたが、独特の作画は良かったと思います。


ということで、今年も大いに楽しむことができました。こちらは毎年開催されるので、来年も楽しみです。今年はどんな新しいメディア作品ができるのかな…。来年こそは超混みの最終日は避けたいと思いますw


 参照記事:★この記事を参照している記事




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ラ・プレシューズ 【恵比寿界隈のお店】

前回ご紹介した展示を観た後、恵比寿駅のアトレで買い物をしたついでに、ラ・プレシューズというお店でお茶してきました。

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【店名】
 ラ・プレシューズ

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 http://www.la-precieuse.com/
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13040274/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 恵比寿駅

【近くの美術館】
 山種美術館
 東京都写真美術館
  など


【この日にかかった1人の費用】
 940円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_②_3_4_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日16時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_③_4_5_名店

【感想】
私が行った時は特に待ちませんでしたが、非常に混んでいて大きなテーブル席での相席となりました。帰る頃には表で並んでいる人がいたので、いつも混んでいるのかもしれません。

さて、このお店は恵比寿の駅ビルのアトレの中にあるお店で、4階にあります。恵比寿にほど近い広尾に本店があるようで、ケーキが人気のようです。…しかし、この日はケーキが売り切れまくっていて選択肢がほとんど無い状態でしたw

店内はこんな感じ。
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見た目は普通ですが、非常に人の出入りが多くて落ち着きませんでした。大声で話す人が多いのも居づらかった…。場所が場所だけに雑多な雰囲気です。席移動も頼まれたし、ゆっくりしていられません。


この日はドフィノア(490円)とコーヒー(450円)を頼みました。
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まずはドフィノア。これくらいしかケーキは残ってなかったw
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こちらはカラメルにクルミのケーキで若干プリンみたいな味がするかな。かりかりする層があって若干食べづらいですが香りが良かったです。クルミのお酒が使われているのだとか。

続いてコーヒー。
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こちらはコクと軽い酸味があり、まろやかな口当たりでした。NARUMIのカップが洒落ています。


ということで、ケーキとコーヒーは美味しかったのですが、あまり落ち着けないお店でした。どうもこういう雰囲気が苦手なので、混んでいる時はもう行かないかも…。 味は良いので、空いている時に行くか持ち帰りで利用したいお店でした。



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琳派から日本画へ ―和歌のこころ・絵のこころ― 【山種美術館】

先週の日曜日に、恵比寿の山種美術館にいって、「琳派から日本画へ ―和歌のこころ・絵のこころ―」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれていて、私が観たのは前期の内容でした。

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【展覧名】
 琳派から日本画へ ―和歌のこころ・絵のこころ―

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html

【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅


【会期】
 前期:2013年02月09日(土)~03月03日(日)
 後期:2013年03月05日(火)~03月31日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外と空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回は俵屋宗達から始まり尾形光琳を中心に広まった「琳派」の展示となっています。琳派という言葉ができたのは割と最近(50年くらい前?)ですが、現代でも非常に人気が高く、近現代の作家にも大きな影響を与えました。また、琳派の造詣は平安時代の料紙装飾からの影響があり、その主題にも和歌や物語が取り入れられているようです。今回の展示はそうした前後の流れを踏まえた上で「和歌」と「装飾性」をテーマに選ばれた作品が並んでいました。詳しくはいつもどおり気に入った作品を通してご紹介しようと思います。


<第1章 歌をかざる、絵をかざる ―平安の料紙装飾から琳派へ―>
まずは琳派までの流れのコーナーです。書をしたためる料紙を飾ることは奈良時代から行われていたそうで、平安時代には仮名の発達と共に華やかさを増し、金銀を多用した豪華な料紙が美麗な書を飾るようになったそうです。こうした料紙装飾の伝統を積極的に取り入れたのが琳派で、和歌も重要なテーマとして作品に取り入れられました。特に伊勢物語が重視されたようで、八橋などをモチーフにした作品が作られたそうです。ここにはそうした流れが分かる作品が並んでいました。

14 俵屋宗達・本阿弥光悦 「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」
鹿が振り返る姿を金泥と銀泥で描いた作品です。元は20mもある絵巻でしたが分割されて断簡となったもので、ここには西行法師の「心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮」という新古今和歌集の歌を、本阿弥光悦が舞うように書いています。流麗でかろやかな文字と鹿の優美さがマッチしていて、何とも優美な作品でした。
 参考記事:美しきアジアの玉手箱―シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展 (サントリー美術館)

3 藤原定信 「石山切(貫之集下)」 ★こちらで観られます
草花がうっすら描かれた料紙に雅な雰囲気の筆運びで歌が詠まれた作品です。これは元は金箔・銀箔だったそうで、若干劣化してわかりづらいですが、紙への美意識も伝わってきました。

この辺にはこうした古筆切が並んでいました。

16 本阿弥光悦 「摺下絵古今集和歌巻」
こちらは巻物で、竹、梅、芍薬などの下絵が描かれていて、その上に古今和歌集の恋歌が詠まれている作品です。デフォルメされていて滲みがあり、何とも落ち着きと風情を感じます。解説によると、字を書いた本阿弥光悦は料紙にあわせてスペースを詰めたり離したりしているようで、舞うように書かれています。また、この巻物を巻くと表面には松が描かれているそうで、中を開くと竹→梅と並ぶ松竹梅となっているようでした。王朝文化を汲んだ機知ある作品のように思えました。

22 俵屋宗達 (款) 「源氏物語図 関屋・澪標」
これは6曲1双の屏風で、1隻ずつ源氏物語の場面が描かれています。右は石山詣に向かう源氏がかつての恋人の空蝉と再会する「関屋」のシーンで、右下と左上に牛車が描かれ2人の存在をほのめかしています。一方、左隻は住吉詣に訪れた源氏が船で訪れた明石の上と会う「澪標(みおつくし)」のシーンで、浜辺に置かれた牛車を中心に沢山の人々が集まり、左上の辺りに船の姿があります。こちらも源氏と明石の上の姿は直接描かれるわけでないようですが、その存在を感じさせるようでした。やや色が薄くて平面的な感じを受けるかな。解説によると、静嘉堂文庫にある俵屋宗達の屏風(国宝)とほぼ同じ構図で工房の作品と考えられるとのことで、たらし込みやパターン化された波などにはその後の琳派に通じるものを感じました。

この近くには今回のポスターにもなっている30 酒井抱一「秋草鶉図」もありました。これは結構よく観る気がしますが非常に良い作品です。

25 尾形乾山 「八橋図」
これは尾形光琳の弟の乾山が描いた八橋図です。陶芸で有名な乾山ですが絵も描いていて、大らかな作風が特徴かな。こちらには4つしか橋が無いように見えますが、その周りには杜若が咲き、伊勢物語の歌らしきものもの書かれていました。かなり簡略化されて落書きみたいなくらいにデフォルメされていて、これはこれで面白さを感じますw

23 尾形光琳 「四季草花図巻」 ★こちらで観られます
四季を題材にした作品で、額装されて2つの季節が展示されていました(展示替えで他の季節も見られるようです。) 牡丹、立葵、杜若などがかかれ、若干くすんだ色合いに劣化していますが、デフォルメされた曲線の花が優美な雰囲気です。解説によると、これは弘前藩の津軽家に伝わったものらしく、牡丹が最初に描かれているのは津軽家の家紋が牡丹であることと関係があるようでした。

近くには28酒井抱一の「月梅図」や3幅セットの35酒井鶯蒲「紅白蓮・白藤・夕もみぢ図 1」、(本阿弥光悦の孫の光甫のサインが入っているが、実際には抱一の養子の酒井鶯蒲が描いた)なども展示されていました。


<第2章 歌のこころ、絵のこころ ―近代日本画の中の琳派と古典―>
続いては琳派の影響についてのコーナーです。明治30~40年頃に尾形光琳を見直す動きがあったようで、大正頃になると俵屋宗達にも注目が集まったそうです。その憧れと研究は横山大観や下村観山、菱田春草らの日本美術院の画家に端を発したそうで、ここには近世以降の琳派学習が垣間見れる作品が並んでいました。

39 下村観山 「老松白藤」 ★こちらで観られます
六曲一双の金屏風に、大きな松の幹と枝、そこに垂れ下がる白い藤の花が描かれています。金地は金属のような光沢で輝き、そこに鮮やかな松の緑が映えています。単純化されて華やかな雰囲気は確かに琳派を思わせるかな。解説によると、木の上の方はあえて描かず、木の大きさを強調しているようでした。

隣には大観の作品もありました。

42 小林古径 「采」(しゅうさい)
赤々とした柿の実と枝葉が描かれた作品で、下の方には柴垣も描かれています。柿の枝にはたらしこみの技法が使われ、柴垣には大和絵の手法が使われているようで、全体的にはすっきりとした印象を受けました。単純化され、葉っぱや柿の色なども琳派と共通するものを感じます。

49 速水御舟 「紅梅・白梅」
2幅対の掛け軸で、右は赤い花を咲かす紅梅、左は細い月を背景に咲く白梅が描かれています。細くカクカクした長い枝が繊細な印象をうけるかな。左右で向き合うような配置で背景には薄っすらと雲があり、夜に静かに咲いているような感じを受けました。

52 加山又造 「濤と鶴 (小下絵)」
黒と銀でうねる海を表し、その上に金色の鶴が無数に飛んでいる様子が描かれた作品です。意匠化された波や鶴、色合いなどはまさに琳派的で、躍動感と流れを感じました。これはこの山種美術館のエントランスにある陶板壁画の下絵とのことでした。

この近くには川端龍子の八ツ橋の屏風も展示されていました。続いて第二会場です。

54 上村松園 「詠哥」 ★こちらで観られます
筆と短冊を持って振り返る着物の女性を描いた作品です。やや口を開いて誰かと話しているようにも見えるかな。松園らしい上品では華やかな美人画で、色合いも鮮やかでした。確かに松園にも琳派的な要素があるかも。

この近くには松岡映丘の「春光春衣」も並んでいました。


ということで、私は琳派が大好きなので楽しめる内容となっていました。それほど琳派の作品が多いわけではないですが、その雰囲気は伝わってきます。後期は内容が変わるようですが、気になる方はぜひどうぞ。


 参照記事:★この記事を参照している記事


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三輪壽雪・休雪 ― 破格の創造 展 【智美術館】

前回ご紹介したオークラのお店でお茶した後、すぐ近くの智美術館で「三輪壽雪・休雪 ― 破格の創造 展」を観てきました。

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【展覧名】
 三輪壽雪・休雪 ― 破格の創造 展

【公式サイト】
 http://www.musee-tomo.or.jp/exhibition.html

【会場】菊池寛実記念 智美術館
【最寄】神谷町/六本木一丁目/溜池山王/虎ノ門


【会期】2013年1月19日(土)~3月31日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私が観始めた頃にギャラリートークが終わったらしく、結構多くのお客さんで賑わっていました。

さて、今回の展示は三輪壽雪(みわじゅせつ)氏と三輪休雪(みわきゅうせつ)氏という親子2人の萩焼の展示となっています。三輪家は長州藩の御用窯として江戸時代前期から続いてきた萩焼の名門陶家だそうで、代々「休雪」の名を継承するらしく、今の休雪氏は12代目で、その父の壽雪氏は11代休雪だったそうです。壽雪氏(11代休雪)は茶陶を製作の中心に据え、三輪家の伝統の上に独自の個性を表出させた造詣を追求してきたそうで、特に近年は荒々しい肌を持つ「鬼萩手」の茶碗は圧倒的な存在感があるようです。一方、12代休雪氏は萩焼の手法による彫刻的な作品を制作し、内的な世界を表現しているそうで、愛(エロス)と死(タナトス)という本質的なテーマを自らのライフストーリーに重ね合わせているようです。展覧会は壽雪氏7点、休雪氏38点で構成されていましたので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。

三輪休雪 「龍人伝説 初陣前夜」
裸の下半身(女?)の胴体部分が龍の頭になっている作品です。着色されて異様な雰囲気があり、どういう意図があるかわからないですが迫力と妖しさがありました。展示室の前にあったので、まず最初に驚く作品です。これが萩焼??

三輪壽雪 「鬼萩窯変割高台茶碗」
白地にピンクがかった色の大きめの茶碗で、所々に茶色いざらついた部分があります。その大きさと肌地からも荒々しく力強い感じを受けますが、高台の部分(底の部分)が十字の形に割れているようで、隣にあった高台の写真を見ると大胆に分かれているのが分かりました。どっしりとしつつも気品を感じる作品です。

三輪休雪 「ハイヒール」 
これは先の尖った白と薄いピンクのハイヒールの形の陶器で、確かに萩焼っぽさもあるもののその造詣はまったく予想もしていなかったもので驚きました。どこか艶かしさと女性の華やかさを感じさせました。

三輪休雪 「LOVE」
これは口の大きいビンのようなものから真っ赤な流体が飛び出している作品です。その赤が強烈で、硬い焼き物のはずなのに どろっとした雰囲気があります。こちらも従来の用途のある焼き物とは一線を画する作風に思いました。完全に現代アートです。

三輪壽雪 「鬼萩割高台茶碗」
こちらは父の壽雪氏の作品で、白地に焦げ茶のざらついた部分のある茶碗です。やはり高台の部分は十字に割れているようで、荒々しい雰囲気と白の美しさの両面性があるように思えて面白い作風でした。
この辺は壽雪氏の作品がまとまって展示されていました。点数少な目です。

三輪休雪 「被疑者」
これは1つ目の人物の胸像で、手を開いて上を向き、口には帯のようなものが2重3重に重なっています。それが口を封じられて苦しんでいるように見え、タイトルとの相関性を何となく感じました。動きと表情の豊かな作品です。

この辺にはこうした人物像が何点か並んでいました。1つ目や苦しみを感じる表情などが異様な雰囲気です。また、女性器を思わせるモチーフなども散見されました。解説によると、休雪氏は画家になる夢があったそうで、東京藝術大学彫刻科で学んだそうです。先ほどのハイヒールの作品は大学修了時のデビュー作で、「Love」も最初期の作品とのことでした。

三輪休雪 「騎士の休息3」
焦げ茶、オレンジなどの色合いが渦巻いている作品で、アンモナイトのような形をしています。その側面にはLoveと書いてあり、意図は良く分かりませんが、ちょっと機械のようにも見えて、有機的な面と無機的な面があるように思えました。
こちらは3点セットで同じ色合いの作品(形はまったく異なる)が並んでいました。

三輪休雪 「愛壷」
これは金ぴかに光る王冠のような作品で、側面には草花の文様が施されています。どっしりした風格で、色もついているのでこれも陶器だということを忘れてしまうところですw ちょっと光りすぎな感じもしますが、存在感のある作品でした。

三輪休雪 「天・地・人 愛」
これは蓮の花を思わせる白い台の上に載った白い釈迦?のような人物像です。ずんぐりした姿にデフォルメされていて、抱擁するようなポーズをしてるのですが、どことなくピカソの古典回帰の頃のような力強い生命感があるように思いました。
この辺には仏教関係の作品が何点か展示されていました。

三輪休雪 「龍人伝説 六鈷杵」
とろけるような感じで幾重にも重なるオレンジ色の台に、仏具の6つ爪の金剛杵が突き刺さっている作品です。台は唇か女性器を思わせてどことなくエロティックに思える一方、金剛杵は鱗がついていて龍の爪のようでした。柔と剛の対照的な組み合わせも面白いです。
このシリーズには乳房をつかむ龍の手のような作品もありました。これも陶器だということを忘れてしまいそうですw

三輪休雪 「摩利耶 No.9」
女性の胸部を象った作品で、首は無くそこには穴が開いています。胸元には十字の装飾があり、色合いと滑らかな造詣から色気を感じました。
この辺は女性の胸だけを表した作品が幾つか並び、女性の名前がついていて意味ありげでした。

三輪休雪 「続・卑弥呼の書 No.2」
これはかなり巨大な作品で、小部屋を埋め尽くすほどの大きさです。開かれた金色の本がモチーフとなってて、割れて焼け焦げたような感じになっています。本の表面には文字のようなものがあり、中央には花か女性器を思わせる裂け目がありました。これは分割して焼いたのかな?? 窯には入らなそうな大きさです。 古代と女性の神秘が表されているように思いました。


ということで、従来の萩焼のイメージを一新するような斬新な展示となっていました。陶器の展示というよりは現代アートの展示という感じかな。予想以上に楽しめる内容でした。


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テラスレストラン 【六本木一丁目/神谷町界隈のお店】

前回ご紹介した展示を見た後、ホテルオークラの中にあるテラスレストランというお店でお茶してきました。

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【店名】
 テラスレストラン

【ジャンル】
 レストラン

【公式サイト】
 http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/restaurant/list/terrace_restaurant/
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130704/13002198/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 六本木一丁目/溜池山王/神谷町

【近くの美術館】
 大倉集古館
 智美術館
 泉屋博古館分館

【この日にかかった1人の費用】
 1860円程度

【味】
 不味_1_2_③_4_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_③_4_5_名店

【感想】
結構混んでいましたが、すぐに席に座ることができました。

さて、このお店は大倉集古館の目の前にあるホテルオークラの1階にあるお店です。坂の斜面にあるので大倉集古館の近くの入り口は5階なのがちょっとわかりづらいw 別館にも以前ご紹介したカメリアというお店があり、大倉集古館に行くときは結構利用するのですが、こちらも気になっていたので初めて入ってみました。
 参考記事:ダイニングカフェ カメリア camellia(六本木一丁目/神谷町界隈のお店)


中はこんな感じ。
P1080436.jpg
意外と普通の食堂みたいな感じかなw まわりもガヤガヤしていて落ち着けるかというと微妙でした。

こちらのお店は庭園が見られます。
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小さいお庭ですが滝などもありました。真冬に行ったので彩りはなかったです。

この日はケーキとフルーツの盛り合わせと、アイスティーを頼みました。
P1080440.jpg

まずはケーキとフルーツ。ケーキはいくつかの中からショートケーキにしました。
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フルーツは固くて甘くない…。むしろ酸っぱくてこれはかなり不満でした。一方、ケーキはクリームの甘い香りが好みで、実際に食べるとやや甘めかな。まあ普通のケーキです。

続いて紅茶。
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うろおぼえですがこれはダージリンだったかな。いい香りで飲みやすかったです。これはおかわりもできました。


ということで、思ったより賑やかでイメージと違っていました。そして、フルーツがはっきり言って不味かったw サービス料金も入れると1800円もするのにこれは割に合わないと思います。やはりオークラはこういう罠がある…。店員さんの接客が丁寧だっただけに残念でした。



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画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~ 【大倉集古館】

この前の土曜日に神谷町の近くにある大倉集古館で、「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」を観てきました。

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【展覧名】
 館蔵品展「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」

【公式サイト】
 http://shukokan.org/exhibition/index.html#link01

【会場】大倉集古館
【最寄】六本木一丁目/溜池山王/神谷町


【会期】2013年1月2日(水)~3月17日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくりと観ることができました。

さて、今回の展示は大倉集古館の所蔵品展で、近代の日本画を東西に分けて紹介するという内容となっています。その為、観たことがある品が結構ありましたが、西は狩野派や円山四条派の円山応挙と呉春、東は江戸に移った狩野探幽の江戸狩野派や近代の横山大観などビッグネームの作品も展示されていました。詳しくは気に入った作品をいくつか挙げてご紹介しようと思います。(実際の展示順は東西あまり関係なかったので観た順です。) なお、作品によっては展示替えがあるようですので、お目当ての品がある方は事前にHPで確認しておくことをお勧めします。
 参考記事:作品リスト


西:竹内栖鳳 「蹴合」 ★こちらで観られます
向き合う2羽の軍鶏が闘鶏している様子が描かれた作品です。左の軍鶏は足をあげていて、左の軍鶏は身を低くして顔を伺っているようなポーズです。細密かつ気品のある作風で、軍鶏の毛のフワッとした感じがよく出ていました。

西:松花堂昭乗 「布袋各様図巻」
これは巻物で、様々な姿の布袋様が描かれた墨画です。細めの輪郭線で描かれ、にこにこして袋に座ったり、裁縫したり、大きなひょうたんを抱いていたり、本を読んでいたりと、何だかゆるキャラのような微笑ましいキャラクターです。デフォルメ具合が面白く、のんびりした感じの作品でした。
解説によるとこの作者は真言宗の僧で、小堀遠州や狩野探幽らと交わり、茶や書画にも親しんだそうで、特に書は本阿弥光悦・近衛信尹とともに「寛永の三筆」と呼ばれていたとのことでした。

西:呉春 「漁夫図」
これは6曲1双の屏風で、右隻は川辺で漁師たちが荷物を持って歩く姿が描かれ、先頭には提灯を持った人、周りには子供や犬の姿もあります。一方、左隻には川で漁をしている人々が描かれ、魚籠を持ったり大きな網を持っています。全体的にあまり色はなく、落ち着いた印象を受けるとともに、輪郭線が強めに感じました。人々の表情は穏やかで、のどかな雰囲気の作品でした。

この近くには川合玉堂の「高嶺の雲」という屏風作品もありました。

東:横山大観 「瀟湘八景 [瀟湘夜雨]」
これは8幅セットの掛け軸のうちの1つで、中国の「瀟湘」の風景が描かれた水墨画です。木々と家々、橋などが描かれているのですが、ぼや~っとしていて霧に包まれたような感じを受けました。叙情性がありしんみりした味わいのある作品です。この両脇にも同じ瀟湘八景の作品が並んでいました。

続いては2階の展示室です。2階の最初の辺りには「大津絵」のコーナーがありました。大津絵とは江戸時代に大津周辺で土産物として盛んに作られた民画で、簡略化された素朴な太めの線と明快な着色が特徴のようです。

西:「大津絵 [天狗と象の鼻くらべ]」
こちらは掛け軸で、下の方には上を向いて鼻を伸ばす象の姿があり、その鼻は上部にいる天狗の鼻に巻き付いています。天狗はちょっと困った顔をしていて、これをやるから許してくれとまんじゅうを差し出していました。簡素で漫画みたいなデフォルメが面白いのですが、これには自慢する心情を戒める意味が込められているとのことでした。

東:前島宗祐 「鶏頭小禽図」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、赤と白の花が咲き、その細い枝に1羽の瑠璃色の鳥が逆さになってとまっています。色の取り合わせが良いせいか、落ち着いた雰囲気で、葉っぱは優美な曲線を描いていました。解説によると、この作者は狩野派の絵師で、16世紀中頃に北条氏に仕え、小田原に名を残したそうですが20点ほどしか現存していないようです。また、中国南宋の宮廷画院の花鳥の影響を受けているとのことでした。

西:伊藤若冲 「乗興舟」
こちらは以前もご紹介しましたが、久々なので再度感想をメモしました。こちらは白と黒が反転したような「拓版画」の技法で描かれた巻物で、淀川を船で下った際の情景が描かれています。川にそって並ぶ町や山などには所々に地名が描かれていて、その場所を示しているようです。独特の濃淡とざらついた質感が面白い作品でした。
 参考記事:煌めきの近代~美術から見たその時代 (大倉集古館)

西:円山応挙 「雁図」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の屏風で、右隻は舞い飛ぶ6羽の雁と白い波、左隻は水辺で羽休めしている7羽の雁が描かれています。左右で静と動の対比になっているのが面白く、金泥で波と背景が曖昧になっているためか奥行きを感じさせました。こちらも今回の展示の見どころだと思います。

東:狩野探幽 「松竹に鶴・柳に猿図」
6曲1双の屏風で、右隻は松の木の下にいる3羽の鶴が描かれています。上を向いて口を開けたり、毛づくろい?していたり、屈んで水面をじっとみたりとそれぞれのんびりしているようです。一方、左隻には柳の木にぶら下がっている猿たちが描かれていて、異常に手が長くささっと描かれたような感じに見えます。解説によると、鶴は狩野派の伝統の型を忠実に伝え、猿は「猿猴捉月図」の形をとっているとのことでした。大胆で楽しげな雰囲気があり、子供の猿も描かれていて可愛らしかったです。

この隣には探幽の弟の安信の屏風絵もありました。


ということで、静かな中でじっくりと東西の作品を観ることができました。若冲の作品など見どころもありますので、気になる方はチェックしてみてください。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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書聖 王羲之 (感想後編)【東京国立博物館 平成館】

今日は前回の記事に引き続き、東京国立博物館 平成館の日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「書聖 王羲之」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「書聖 王羲之」

【公式サイト】
 http://o-gishi.jp/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1569

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】2013年1月22日(火)~3月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前半は序章・1章の王羲之までの書体の歴史や王羲之の手紙などについてご紹介しましたが、残りは2章は「蘭亭序」という代表作、3章は王羲之の後世への影響についての章となっています。

1章と2章の間辺りには再度、書体の歴史についてのコーナーがありました。楷書の始まりは3世紀初頭と考えられるそうですが、現存する品から考察すると5世紀あたりまでは隷書の名残が大きかったようです。そして6世紀頃になると隷書から楷書への移行期となり、7世紀頃にようやく楷書は隷書から独立した表現となったそうです。王羲之の書には当時代の楷書の筆法を色濃くとどめているとのことでした。


<第2章 さまざまな蘭亭序>
353年3月3日、会稽郡の長官だった王羲之は風光明媚な会稽山陰(かいけいさんいん)の蘭亭に当時の名士41人を招き、曲水の宴を開いて皆で詩を詠みました。これは川の上流から酒の盃が流れてくるまでに詩を詠むか、できなければ酒を飲むというものらしく、王羲之はこの詩会の序文を書くと入神の出来栄えだったそうです。王羲之は酔いが冷めた後日にも何度も書き直したものの、これ以上のものは書けず、本人も最高傑作と認めて子孫に伝えました。(しかしそんな大傑作も後世になると唐の太宗皇帝の使いが子孫を騙して盗みとり、最後は太宗皇帝の墓に副葬品として埋葬されてしまったようです…。) ここにはその蘭亭序の様々な模本が展示されていました。

67 王羲之等 「蘭亭図巻-万暦本-」 ★こちらで観られます
これは1417年に刊行された蘭亭図巻を重刻したもので、最初は文字ですが、途中からは小川の両脇に並んで座って、詩を詠む人々の絵が描かれています。それぞれの人物の隣には名前も書かれていて、みんな楽しそうな雰囲気です。生き生きとしていて、当時の情景をイメージさせてくれました。

この辺りには壁に映し出された大きな映像があり、先ほどの「蘭亭図巻-万暦本-」の流觴曲水(りゅうしょうきょくすい)の宴をアニメーションにしたものでした。

続いては第二会場です。第二会場に入ってすぐの辺りには日本の近代画家の中村不折の「賺蘭亭図」という作品もありました。これは太宗皇帝が蘭亭序を手に入れた時の逸話を絵画化したもので、太宗皇帝は部下を一介の書生として王羲之の子孫に送り込んだそうです。そしてその部下が子孫と仲良くなり、蘭亭序を見せてもらうようになると、留守を見計らって盗んで皇帝の元へと運び去ったのだとか。皇帝とはいえ無茶苦茶なことをしてでも手に入れたかったようですね。

ここから先には蘭亭序の模本が沢山並んでいましたが、閉館時間が迫りつつあったので、メモする作品をだいぶ絞っていきました。前半の大混雑が祟りました。

86 王羲之 「游丞相旧蔵蘭亭序-御府領字従山本-」
これは100本の蘭亭序を蒐集し、後に宰相(丞相)になった游似(游丞相)のコレクションです。藍色の紙に黄色の字が書かれているのですが、「次」の字の にすい が さんずい になっているなど、特有の傾向があるとのことでした。これだけ見ても素人の私にはちっとも違いは分かりませんでしたが…w

次の部屋に行く辺りに、王羲之の人柄が想像できるエピソードがありました。王羲之はガチョウと真珠が大好きだったそうで、ある時大事な真珠が無くなってしまい、親友がそれを盗んだのだろうと疑い責め立てたそうです。その親友の老僧は、疑われたのを苦にして死んでしまったそうですが、後日に王羲之がガチョウを食べようとした際、なんとガチョウの腹の中から真珠が出てきたそうです。王羲之は親友の老僧を疑ったことを心から悔み、自宅をお寺に寄付したそうですが、何だかとってもやるせないエピソードです。 やはり王羲之は器の小さい駄目なやつかも…w
この先にはスランプになったこともあったというエピソードなどもありました。


<第3章 王羲之書法の受容と展開>
最後は神格化された王羲之の後世における受容と展開についてです。こちらも時間がなかったので早足で周ったのでメモも少なめです。(この章の作品同士の繋がりはあまり感じないので、影響作品の羅列といった感じかも)

109 宣統帝 「楷書七言聯」 ★こちらで観られます
これは清朝最後の皇帝である愛新覚羅溥儀(ラストエンペラー)が書いた作品で、金地に7文字ずつ2幅対で並んでいます。この字は蘭亭序からの引用らしく、若干ふにゃふにゃした感じにも見えましたが、王羲之の楷書が文人たちの間では常識のようになっていた様子が伺えました。
なお、蘭亭序は全28行324字が使われ、重複を除くと204種類の字となるそうです。歴代の文人は蘭亭序の文字を用いて詩を詠んでいたそうで、この作品も含めてこの辺にはそうした作品が並んでいました。

99 池大雅 「蘭亭曲水・龍山勝会図屏風」
こちらは日本の江戸時代の絵の屏風で、右隻に蘭亭曲水、左隻に同じ時代の龍山勝会という酒宴の様子が描かれています。全体的に薄い色合いで、蘭亭曲水は春の渓谷で人々が詩を詠み楽しんでいる姿が描かれていました。 私もこの蘭亭を主題にした作品は結構観たことがあるので、日本でもお馴染みの画題だったのではないかと思います。

この辺にまた王羲之のエピソードがありました。王羲之の書は生前から高い人気だったそうで、ある時 老婆が営む売れない扇屋で、商品の扇に5文字ずつ書いたそうです。老婆はそれに怒ったのですが、王羲之はこれは100銭でも売れると言ったそうで、老婆がその扇を売ると、本当に皆が競って買っていったそうです。そして後日、老婆がまた扇に字を書いてもらおうと尋ねると、王羲之は笑って取り合わなかったのだとか。今でもその扇に文字を書いた場所は観光地になっているようで、まさに伝説のような話でした。

この先には奈良時代に日本に伝わった法帖などもありました。皆、よく王羲之を写していますがそれぞれがちょっとずつ違う感じに見えました。

132 董其昌 「行草書羅漢賛等書巻」
これは前編でご紹介した「行穣帖」に奥書をした董其昌の作品です。天真爛漫な躍動する書を理想としていたそうで、流麗な文字が並び、最後の方は記号かと思うほどに文字が繋がり躍動感があります。
解説によると、董其昌は若い頃に地方の試験で首席だったのですが、書が下手で次席に落とされるという苦い経験があったそうです。そして、それを機に董其昌は発奮し、書に励み能書として名を馳せるほどになったそうです。王羲之の書には深く啓発されたようですが、あまりの素晴らしさに3年間も書の稽古を諦めてしまったのだとか。

この辺にも結構見どころはあったのですが、閉館まで残り10分くらいとなり慌てて周っていましたw

159 趙之謙 「隷書張衡霊憲四屏」
太く黒々とした字が並ぶ掛け軸で、重厚感があり迫りくる印象を受けます。解説によると、この作者は篆刻(印章作成)においても一家を成し、書では隷書が他の書体に先駆けて独特の様式を完成させたそうです。こちらも個性的でインパクトのある作品でした。

最後に王羲之の墓の写真なども展示されていました。今でも56代目の当主が墓を守っているのだとか。


ということで、書は見方がよくわからず私には難しめの内容でしたが、書いてあることや王羲之という人物、その後の影響などについて知ることができて参考になりました。予想以上には楽しめましたので、書が好きな方には必見の展示なのかもしれません。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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書聖 王羲之 (感想前編)【東京国立博物館 平成館】

先週の土曜日に、上野の東京国立博物館 平成館で、日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「書聖 王羲之」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「書聖 王羲之」

【公式サイト】
 http://o-gishi.jp/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1569

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2013年1月22日(火)~3月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
入場規制はなかったものの、非常に混んでいて自分のペースで見るのは困難でした。特に最初の方はガラスケースの前にずっと人だかりができていて、全然前に進めない感じです。(おかげで最後の方は閉館時間が近づいて早足で見るハメになりましたw) これからお出かけされる方は、時間に十分な余裕を持って行くことをお勧めします。

さて、今回は書聖とも讃えられる歴史的な能書である王羲之(おうぎし)についての展示となっています。王羲之(303年~361年?異説あり)は貴族の息子として生まれ、中国3世紀の東晋時代に活躍した人物で、従来の書法を飛躍的に高め芸術へと昇華させました。生前から高い評価を得ていたそうで、王羲之の書は歴代の皇帝にも愛されたようです。特に、唐の太宗皇帝は全国に散在する王羲之の書を収集し、宮中に秘蔵すると共に精巧な複製を作らせ家臣に下賜したほどだったそうです。しかし王羲之の最高傑作の蘭亭序は太宗皇帝の陵墓に副葬され、その他の真筆も戦乱などで失われてしまったらしく、現在では真筆は1つも残っていないようです。その為、現在では唐の宮廷で作られた精巧な複製が王羲之の字姿を類推する上で最も信頼おける資料となっているらしく、今回の展示ではそうした模本や拓本が並んでいました。(模本や拓本も貴重) 展示は前半が王羲之についてのコーナーで、後半は王羲之の後世への影響といった感じで分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。


<序章 王羲之の資料>
まず最初に王羲之の資料のコーナーがありました。書聖と崇められる王羲之が活躍した頃は草書、行書、楷書など新しい書体が変遷し、精良な文房諸具が出現し始めた頃だったそうで、書体はまだその字姿を変える余地が十分に残されていたそうです。前述したように現在は真筆が残っておらず、伝わっているのは唐時代の精巧な模本と、宋時代の拓本(法帖)などで、ここには王羲之の逸話を描いた最古の写本や晩年の手紙の拓本が並んでいました。

2 「世説新書巻第六残巻-規箴・捷悟-」
こちらは王羲之の逸話が書かれた作品です。王羲之が死んだ友人の悪口を言っているのをたしなめられたというエピソードが書かれているそうで、意外と器が小さい人物なのかも…w この先にはもっと駄目なエピソードもあるので、今思えばこの程度の話は軽いジャブみたいなものでしたw

1 王羲之 「十七帖-上野本-」
こちらは晩年の手紙29通を収めた拓本です。流麗な文字が並んでいるのですが、その中に平仮名の「や」「は」「ち」「ゐ」などに見える文字があるのがちょっと驚きでした。ちなみに拓本は文字を木や石に刻し、その上に紙を乗せ墨で文字を写したものだそうで、模本に比べて拓本は大量に制作することができたようです。しかし、拓本は翻刻を重ねるごとに本来の字姿からは遠ざかっていったのだとか。


<第1章 王羲之の書の実像>
続いての1章は王羲之以前の書体の変遷や、王羲之の唐時代の模本、宋時代の拓本などが並ぶコーナーです。篆書(てんしょ)は紀元前3世紀、隷書(れいしょ)は紀元前2世紀に公式の書体として完成したそうで、さらに早く書くために草書や行書が派生したそうです。やがて後漢時代の頃には流麗な草書も出現して、人々は美しい草書に没頭していき、だんだんと凝ったものになり、早く書くためのものだったはずが「忙しくて草書を書く暇がない」と言った人まで現れるようになるなど、草書を上手く書こうと時間をかけていたようです。この章はそうした書体の変遷から紹介されていました。

9 「急就章?」
結構曲線の多い字体で書かれたもので、これは前漢時代に作られた文字学習の教科書の冒頭部分が刻まれているようです。隷書や草書、行書の発展過程を示しているとのことでした。

この近くには石碑に刻まれた文字の拓本などもありました。そしてその後は王羲之の学んだ書についてのコーナーです。王羲之は若い頃に多くの能書を排出した衛夫人と叔父の王よく に書の手ほどきを受けたそうで、古典は三国時代の魏の鍾よう の楷書と後漢時代の張芝の草書を学んだそうです。王羲之は「張芝には敵わないが、張芝と同じくらい猛練習すれば遅れは取らない」と言っていたそうで、ここにはその張芝と鍾ようの作品も並んでいました。

14 張芝 「八月帖(玉煙堂帖)」
黒い紙に黄色で書かれた作品で、何が書いてあるかは読めませんが流麗な文字となっています。これは確かに素人目にも美しく感じられて、王羲之が褒めるだけのことはありました。

この隣には鍾ようの作品もありました。王羲之は鍾ようの楷書には比肩しうると言っていたそうです。また、少し先には叔父の王よく の作品や同時代の他の能書の肉筆資料なども並んでいました。

その後は王羲之の楷書についての小コーナーです。王羲之の書で残っているものの多くは日常の些細なことを書いた草行書で、楷書は少ないそうです。また、王羲之の書は40代の頃に大いに進歩したと考えられるそうで、格段に進歩を遂げたのは49歳の頃とのことでした。

19 王羲之 「心太平本黄庭経-宇野本-」
こちらは養生法を書いた道家の教典です。きっちりとしてスッキリした字体で細かく書かれ、読みやすい綺麗な字が並んでいます。この後に出てくる草書や行書と比べると優等生的な雰囲気がありました。

続いては王羲之の草書・行書の小コーナーです。

24 王羲之 「十七帖-王文治本-」
29通の手紙が納められた作品で、「十七日先書」で始まることから十七帖と呼ばれるそうです。中身は友人や親類の消息、薬の効能、贈り物のお礼など日常の些細なことが書かれているそうで、美しい文字が流れるように並んでいます。こちらも平仮名のように崩された字があり、すらすらっと書かれた感じがしました。
それにしても、この後もプライベートの些細なことを書いた手紙は多いのですが、字が上手いが為に後世までそれを晒される続けるというのはちょっと気の毒かも…w

この近くには子供時代のエピドートがありました。王羲之は人前に出ると言葉がつかえて思うように話せない引っ込み思案な子供だったようです。

26 王著(編) 「淳化閣帖-材官本-」
こちらも王羲之の草書の作品なのですが、その文字の横に楷書の赤字が小さく添えられているのが特徴的です。これは1521年に明の宋昌が読みづらい字に楷書を添えたものだそうで、随所に赤字が添えられています。 …と言うか、ほとんどに赤字が入っているようなw やはり昔の人でも達筆は読みづらいものもあったのかもしれません。

この隣には「死罪」の書き出しで「死罪」で終わる、謎の手紙の 25王著(編)「淳化閣帖-夾雪本-」などもありました。

27 王著(編) 「淳化閣帖-呉廷旧蔵-」
こちらは相手の病気を気遣っている内容の手紙です。やはり文字は美しいのですが、中身の訳が面白く、最後に「私は相変わらず疲れています」と、ネガティブなことが書かれていますw この後に並んでいる作品にも同じようにいつも体調不良を訴えているものが多いので、本当に悪かったのかもしれませんが、ちょっと人間味があって面白く思いました。
他にも、息子の1人がまだ結婚していないとか、そんな内容の手紙が続きます。字が上手いとこんな内容の手紙も崇められてしまうのですねw

32 華夏(編) 「真賞斎帖-火前本-」
こちらは結構大きく太い字で書かれた手紙で、名帖と評されたそうですが、原版は倭寇の乱で消失したそうです。こちらも流麗に書かれていますが、字が太くてダイナミックな印象を受けました。

この隣には睡眠や食事もできないと体調不良の愚痴が書かれた33「二王帖選」などもありました。毎回のように愚痴が書かれていますw また、この辺りには3分半の映像があり、唐時代の職人がどのように王羲之の書を写したかを説明していました。先に細い輪郭を書いて、中を墨で埋めていくようなやり方だったようで、何本もの線を集積して筆の動きや勢いも再現できるようでした。

60 原跡=王羲之 「行穣帖」 ★こちらで観られます
こちらは唐の職人が写した模本で、沢山の朱印が押され、多くの学者や権力者が鑑賞したことを示しているようです。王羲之の字は2行15文字だけで、「貴方は領内の作柄を視察に行かれました。そのうち9人が帰り、貴方の指示を伝えてきました。そのように決めて良いかどうかということですが、概ねそのようにして良いでしょう」という意味のことが書かれているそうです。 …こんな大仰な朱印が押されているので何かの詩かと思ったら、普通の手紙ですねw 結構太い字で書かれているのですが、バランスや流れが独特な感じを受けました。 この書の後には明時代の董其昌や陳継儒、呉廷といった人たちの奥書があり、その感動を書いているとのことでした。

64 原跡=王羲之 「王羲之尺牘 大報帖」 ★こちらで観られます
こちらは世界初公開の新発見の模本で、恐らく唐時代のものと考えられるそうです。文字の太い所と細い所に差があり、強弱を感じます。こちらの手紙にも私は日々疲れていますと書かれていて、このフレーズにも王羲之っぽさを感じてきましたw

この近くには乾隆帝が編纂したコレクションなどもありました。

この部屋の奥の方にはまたエピソードがありました。ある武人が娘の婿探しにと王氏の元に使いをやった際、子息たちはみんな取り澄ましていたそうですが、1人だけ東側の寝台の上に腹を丸出しにして寝そべって食事をしている奴がいたそうです。その報告を受けた武人は何を思ってか、その男を娘の婿にすると言ったそうで、その駄目そうな息子がまさしく王羲之でしたw この故事は「東床担腹」として広く伝わり、今でも中国では娘の婿を意味するそうです。うーん…、知れば知るほど「書聖」のイメージとのギャップが凄くて驚きますが、ちょっと憎めない奴です王羲之。


ということで、長くなってきたので今日はこの辺にしておこうと思います。正直、書はあまり興味がないジャンルなので見ても違いが分かるか不安でしたが、書体の歴史についてのコーナーなどもあり参考になりました。2章にはさらなる目玉作品もありましたので、次回はそれをご紹介していこうと思います。


   → 後編はこちら



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