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カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源- (感想前編)【国立新美術館】

先日ご紹介した展示を見る前に、六本木の国立新美術館で、「カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源-」を観てきました。かなり情報量の多い展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源-
 California Design, 1930-1965: "Living in a Modern Way"

【公式サイト】
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/california/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室1E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅


【会期】2013年3月20日(水・祝)~6月3日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 4時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
思ったより空いていてゆっくりと見ることができました。映像などもじっくり観てきたのでかなり時間がかかって、4時間も見てしまったw 普通の人なら1時間半くらいで見られるくらいだと思います。

さて、今回の展示は20世紀半ばのミッドセンチュリーと呼ばれる時代のカリフォルニアで生まれたデザインの数々をテーマとしています。カリフォルニアは20世紀初頭から多くの移民を受け入れてきたそうで、世界一の経済力を誇るアメリカの大衆文化の中心として飛躍的に発展を遂げました。その際の急激な人口増加に伴い住宅や生活空間への新たな受容が生じたそうで、カリフォルニアにおけるモダンデザインもその影響を受けて発展したようです。当初、モダンデザインを先導していたのはヨーロッパからの居住者だったそうですが、この地域ならではの大胆かつ実験的なデザイン活動が展開されていったのは第二次世界大戦の後のことらしく、戦後は航空機産業の一大拠点となり軍事目的で開発された素材や技術の新たな利用手段が模索されたようです。(曲面に成型加工したベニアを重ねた板「成型合板」を活用したチャールズ&レイ・イームズの取り組むはその最たるものと言えるそうです)
西海岸ならではのデザインの特徴としては、開放性や鮮烈な色彩などが挙げられるようで、西海岸の温和な気候や開放的な環境に応じて、屋内と屋外の境界が曖昧な住宅やファッション、気楽で快適な生活を営むための機能に富んだ家具などが次々と生み出されたそうです。この展示ではそうしたカリフォルニア・デザインの品々が250点ほど並び、誕生・形成・生活・普及という4つの章に分けて展示されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<イントロ>
まずはカリフォルニアデザインを俯瞰するように代表的な作品などが並んでいました。

J1 オプコ・カンパニー 「アイスガン」
昔のSFに出てくるレーザーガンのような形のアイスクラッシャーです。赤い色で重厚感がありますが、ちょっと古いセンスかなw 解説によると、これはカクテル用のアイスクラッシャーらしく、パーティーにファンタジーや演劇の要素を取り入れるためにこうしたものを作ったそうです。フラッシュ・ゴードンの武器を真似たらしく、いかにもそれっぽい作りですw また、1930年代のデザイナーはスピード感に魅了されて航空力学的に優れた形状とされるティアドロップ(涙)型のデザインをあらゆるものに採用したそうで、この作品も滑らかな曲線をしていました。

J253 ウォーリー・バイアム 「エアストリーム・トレイラー・インク」
こちらはリビングルームのようなキャンピングトレーラーで、周りは銀色の金属製となっています。解説によると、こちらも1930年代に一世を風靡した流線形を取り入れたデザインのようで、戦前・戦時中に航空産業が成長していたロサンゼルスの地の利が活かされているそうです。飛行機のデザインに由来する技術(アルミニウムをつなぎとめてフレームを組む技術)に熟達した職人を多く雇っていたらしく、カリフォルニアという土地だからこその品のようでした。こういうトレーラーは旅情を感じさせて憧れます。


<第1章 カリフォルニア・モダンの誕生>
1920年代の好景気の中、カリフォルニアは未曾有の人口増加を経験したそうで、それに伴い新たな住宅が必要となりました。第二次世界大戦までにはカリフォルニアの文化と自然環境に根付いた独自のモダニズム建築が登場したそうで、楽観主義・民族主義・大胆な実験精神・新しい技術への志向といった特質があるようです。そして、光鮮やかな色彩への志向やアジアやラテンアメリカからの影響を受け入れ、この地域ならではのデザインを生み出していったようです。
また、新しい技術や革新的な素材、単純化された幾何学的な形を称賛する一方で、かつてのアーツ・アンド・クラフツ運動に見られたように、その土地性や自然環境に根ざした固有の感覚を忘れることはなかったらしく、快適さや娯楽よいった要素をふんだんに取り入れ、環境に適応したようです。ここにはそうしたカリフォルニア・モダンの人間味溢れる作品が並んでいました。

J9 J10 スペンス・エア・フォトズ 「ウィルシャー通りとフェアファックス通りの交差点1922年」「ウィルシャー通りとフェアファックス通りの交差点1929年」
これは同じ場所を撮った2枚の航空写真です。お互い7年程度しか違わないのですが、元々荒地が広がっていたのが、家がびっしり立ち並ぶ住宅街へと変貌しているのが一目でわかりました。これだけ家が建てば様々なデザインも必要とされるのも頷けるかな。

J22 ローソン・タイム社 「置き時計 [ゼフュロス]」
こちらはデジタル表示の置き時計で、S字を90度ひねったようなフォルムで真鍮でできています。その形と曲線が優美で、光沢と落ち着いた色合いが好みでした。解説によると、これが作られた1938年ころはまだデジタル時計は珍しかったようで、ひと目で正確な時間が分かるのをセールスポイントにしていたそうです。また、ゼフュロスというのはギリシア神話の風の動きの神なのだとか。


この近くには柑橘系のフルーツの広告や建物の写真などもありました。フランク・ロイド・ライトの設計した建物の写真もあり、フランク・ロイド・ライトはカリフォルニアの建築家で影響力のあるR・M・シンドラーとリチャード・ノイトラを雇っていたとのことでした。


<第2章 カリフォルニア・モダンの形成>
1945年以降、アメリカは工業・軍事・文化の面において世界最大の影響力を持つ国となり、この発展に大きく寄与したのが航空産業を有したカリフォルニアでした。航空産業はカリフォルニアの日用品のデザインと製造業に衝撃を与えたそうで、中でも1940年代初頭に開発されたファイバーグラスや成型合板、ワイヤーメッシュ、合成樹脂などは革新的な素材として戦後は平和利用の道が模索されました。これらの素材が安価に用いられることが可能になると、中産階級に向けられたカリフォルニア・モダンの市場が登場し、伝統的な工芸で活動していた芸術家もモダニズムとその実験精神に反応したそうで、結果としてアトリエと工場の距離を縮めようとした「デザイナー=クラフツマン」による生産活動のモデとなったようです。この章ではそうしたカリフォルニア・モダンの形成について取り上げていました。

[第2次世界大戦中のデザインと建築]
先述の通り、住宅需要の高まりがデザイン活動の隆盛を推し進めたようですが、大戦時は建築資材が厳しく制限されていたそうです。そうした中で政府に雇われたリチャード・ノイトラらは想像力豊かな解決案を提示したそうです。まずは戦時のデザイン・建築が並んでいます。

J32 マーギット・フェレギ 「女性用水着 [魅惑のスーツ]」
これは光沢のあるベージュの水着です。パンツの方は横の部分が網目となっていて、かなり大胆な印象を受けます。解説によると、これは大戦中のゴムの消費制限に伴い、弾力素材の代わりに編み上げで身体にフィットするようにデザインしたもののようです。また、この会社は水着以外に兵士のパラシュートも作っていたそうで、この水着も自社の愛国的な対応として宣伝されたとのことでした。 そんなプロパガンダ的な側面があるとは驚きでしたが、太ももあたりはかなりセクシーな水着なのは確かですw

この隣にも物資統制をクリアしたドレスなどもありました。

J33 フジエ・フジカワ 「悪を見よ、悪を聞け、そしてFBIに通報せよ」
悪魔の顔を背景に目・耳・口が赤い輪郭線で描かれ、右下には「FBI」と書かれたポスターで、これはタイトル通り「悪を見よ、悪を聞け、そしてFBIに通報せよ」というプロパガンダのポスターのようです。 解説によると、この作者は日系アメリカ人を収容所に入れる「大統領令9066号」によって、ハートマウンテン収容所に送られたそうで、シルクスクリーンの技術をそこでのポスター製作の他、皮肉にもこうしたプロパガンダのポスターにも活用したそうです。戦時の暗い歴史を垣間見たような作品でした。
 参考記事:尊厳の芸術展 The Art of Gaman (東京藝術大学大学美術館)

V1 サンフランシスコ美術館 チャールズ・イームズ 「ストーリー・オブ・イームズ・チェア 1953年」
こちらは有名なデザイナーのチャールズ・イームズへのインタビュー番組の映像です。形や素材作り、広告作りなど様々な逸話が紹介されていて、1つの椅子を作るまでにこれだけの労力とアイディアが込められているのかと感心させられました。
この近くには他にも映像があり、イームズ・シェル・チェアに座って見ることができました。座り心地がしっくりくるのはちゃんと理由があるんですね。素材の使い方についても参考になりました。

[戦時中の新たな素材と技術の活用]
大戦後、戦争で生じた余剰品が再利用され、軍事用に開発された新素材と技術は戦後デザインや大量生産に大きな衝撃を与えました。ここではそうした新素材の1つである成型合板を身近なものにしようとしたイームズ夫妻の試みなどが展示されていました。

J37 ルーサー・コノヴァー 「椅子」
黒い鉄の足のついた木の椅子で、台形の形に鉄が組まれています。これは戦時の余剰品の素材を使っているそうで、容易に入手できる素材と単純な製造工程で作れたようです。その為か見たところシンプルな感じもありましたが、簡潔で幾何学的な雰囲気が面白かったです。

J40 チャールズ・イームズ、レイ・イームズ 「DCW(ダイニング・チェア・ウッド)」
こちらは成型合板製の椅子で、負荷を分散するゴム製のショックマウントが採用されています。横から観ると座る部分の下にそれらしきものが見えるかな。仕上げにはベニアが使われているらしく、木目もあってどことなく重厚な雰囲気がありました。

この辺には成型合板でできた軍隊用の添え木もありました。

[移民デザイナー]
1930年代終わりから1940年代にかけて、ヨーロッパからカリフォルニアに多くの建築家・デザイナーが移住してきたそうで、その最たる理由はナチスの迫害から逃れるためだったようです。ヨーロッパの伝統を続ける者、新しいものとの融合を目指す者など様々な方向性があったようです。

J49 ボール・ラースロー 「テキスタイル(ボール・ラースロー・ヨーロッパ・グループ)」
抽象的で生物か幾何学模様か分からないものが描かれたテキスタイルです。パッと見た感じでジョアン・ミロを彷彿としたのですが、どうやら実際にミロから影響を受けているようです。解説によると、大戦後に大判ガラスが家庭でも入手できるようになり、大きな窓を設置しこうしたテキスタイルはカーテンなどに使われたそうです。リズミカルで楽しげな雰囲気の作品でした。

[デザイナー=クラフツマン]
大衆にも手の届く芸術を生み出すために産業との協力を模索した「デザイナー=クラフツマン」という概念は、カリフォルニア独自というわけではないようですが、この地で最良の成果を生み出したそうでです。ここにはそうした作品が並んでいました。

J58 サム・マルーフ 「ロッキング・チェアー」
これは木でできたロッキングチェア(ゆりかごのような椅子)です。足の部分が後ろにかなり長く伸びていて、曲線が優美な雰囲気を出しています。正面から観ると足はハの字に開いていて、どこから見ても美しい椅子でした。一度座って揺らしてみたい…w

J66 メリー・レンク 「髪飾り[たたみ折り]」
これは銀色のギザギザした形の髪飾りです。銀でできたシュシュみたいなものかなw 卵の容器をヒントにしたそうで、折りたたんだ形が非常にユニークでした。

[小規模生産]
戦後、ヨーロッパの国々が自国の経済の立て直しに粉骨している間は国際的な競争が生まれず、カリフォルニアの新しい製造業者に利点をもたらせたそうで、熟練の職人と産業が協力して製作に励み、小規模な生産事業の運営に成功しました。
技術を身につけた労働力、カリフォルニアの起業家の冒険的な精神などは新しい会社を設立する上で好都合だったようですが、その大部分は十分な資金の投入ができず、小規模になる傾向だったようです。しかし、中にはガレージで数人規模だった会社がグッドデザイン賞を受賞し、全国に商品が流通するという事例もあったそうです。ここにはそうして生まれた作品が並んでいました。

J73 イーディス・ヒース 「ティーポット」
これは黒っぽいこげ茶色のティーポットです。…というよりは急須に見えるかなw 色形・落ち着きなどが日本の伝統を彷彿とさせました。解説によると、これは鋳込み成型で出来ているらしく、全米で発売されるようになったそうです。

この近くにはテキスタイルや本の表紙なども並んでいました。

ということで、前半から面白いデザインの家具などが並んでいて非常に参考になりました。イームズチェアなどは元々好きだったので、こういう機会で詳しく知ることができるのは嬉しいです。後半も陽気で明るく楽しいデザインが並んでいましたので、次回は残りの展示についてご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら


 参照記事:★この記事を参照している記事



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ブラッセリー TOURS 【表参道界隈のお店】

前回ご紹介した六本木の展示を観た後、千代田線で1駅移動して表参道駅のすぐ近くにある「ブラッセリー TOURS」というお店で夕食を摂りました。

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【店名】
 ブラッセリー TOURS

【ジャンル】
 レストラン/ビストロ

【公式サイト】
 無し
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1306/A130602/13023635/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 表参道駅

【近くの美術館】
 根津美術館、岡本太郎記念館、エスパス ルイ・ヴィトン東京など


【この日にかかった1人の費用】
 4000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日19時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
特に予約などせずにふらっと入ったのですが、ちょうど満席くらいでした。あまり席数は多くなく、2階は1席で3階が4~5組くらいといった感じでした。

中はこんな感じ。駅から近くて大通りもすぐ近くなのですが、お店自体の入口が裏手にあり、隠れ家的な雰囲気があります。
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ワインがすべてオーガニックワインというこだわりがあるようでした。結構安くて連れも飲んでいました。

特にコースなどは選ばず、適当に食べたいものを頼んで行きました。(連れが頼んだのでメニューの名前を忘れてしまいましたw)

まずこちらはオードブル盛り合わせ。
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これはいつも同じメニューか分かりませんが、どれも美味しかったです。特にサーモンは柔らかくて好みでした。ちなみに私はピクルスは若干苦手なので中央のはあまり食べていません…w

これはチキンのハーブ焼きだったかな。食べてから撮るのを忘れて、一部分だけ撮ってみましたw
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香りが良くて、食欲が増します。ワインとの相性も良いようでした。

主食としてパスタも頼みました。ナスとベーコンのトマトパスタだったかな。
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こちらは見た目通りの味で、具材も麺も美味しかったです。

最後に海老の料理もメインとして頼みました。
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この日食べた中でこちらが一番美味しかったです。海老自体もぷりぷりで良かったのですが、ソースも美味しくてバケットにつけたりしながら楽しみました。

この他にワインやバゲットも頼んだので、2人合わせて7000~8000円くらいだったかな。これだけ色々食べてこの味なら十分満足でした。駅からも近いし、ちょっと隠れ家的な雰囲気も良かったのでいずれまた利用してみようと思います。



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エドワード・S・カーティス作品展『アメリカ先住民の肖像』 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

日付が変わって昨日となりましたが、土曜日の夕方に六本木のミッドタウンにあるFUJIFILM SQUAREでエドワード・S・カーティス作品展『アメリカ先住民の肖像』を観てきました。

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【展覧名】
 エドワード・S・カーティス作品展『アメリカ先住民の肖像』

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/13030104.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅

【会期】2013年3月1日(金)~5月31日(金)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日18時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
閉館ぎりぎりくらいだったこともあり、空いていました。

さて、この展示はエドワード・S・カーティスという1863年生まれのアメリカの写真家が撮ったアメリカ先住民の写真が並ぶ内容となっています。独学で写真を学んだカーティスは若くして肖像写真家として評価を得ていたそうで、1900年から大富豪のJPモルガン氏やTルーズベルト大統領の支援を得てミシシッピー河西部からアラスカにかけて全域を踏破したそうです。そしてアメリカ先住民に深く入り込み、彼らとの親交を深めて80以上の部族の生活や肖像などを調査・撮影したそうです。カーティスは単にアメリカ先住民を記録に残すために撮影したのではなく、近代化によって失われようとするアメリカ先住民の最後の輝きを深い敬意と共に写し撮ったとのことで、この展示ではそうした作品が並んでいました。あまり点数は多くなかった(20点くらいかな?)ですが、気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。

エドワード・S・カーティス 「ズニ族の酋長 1905年頃」 ★こちらで観られます
布を頭に巻いたアメリカの先住民族の酋長を撮った写真です。非常に凛々しい顔つきで、意志の強そうな目つきをしています。パッと見た感じで銅版画の肖像を彷彿としたのですが、これはプラチナプリントという技法で印刷された写真らしく、この技法だと黒の絞りが良く階調の幅が広いので、グレーの調子がほとんど無限に表現できるそうです。顔の皺までくっきりしていて生命感がより良く伝わってきました。印刷方法でも結構印象が変るものですね。

エドワード・S・カーティス 「ズニ族のキアキマッシ・ワイフシワ」
こちらはズニ族のキアキマッシ(家の首長)という、祀祭者の中で最も重要な人物を撮った写真です。口を布で覆ってこちらをじっと見ていて、顔だけだと老婆のようにも見えますが男性のようです。若い頃はフランク・ハミルトン・クッシングという人と暮らしていたそうで、クッシングがまとめた「ズニ族民話」はこの人(ワイフシワ)が語ったものだったようです。聡明な人物らしく、優しそうな眼に見えました。

エドワード・S・カーティス 「バッド・ランズのオアシス 1905年」 ★こちらで観られます
湿地で水を飲む白い馬と、それに乗った羽飾りをつけた男性が撮られた写真です。いかにもインディアンといった感じの装飾で、これがほんの100年くらい前とは思えないほど昔ながらの生活に見えました。

エドワード・S・カーティス 「漆黒の外衣 ネ・ペルセ族 1910年」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、羽飾りをつけ民族衣装に身を包んだ人物の横向きの姿が写されています。こちらはフォトグラヴェールという技法で印刷されているようで、明暗がくっきりしているように見えるかな。遠くを見るような目で偉人のような威厳を感じさせました。

エドワード・S・カーティス 「滅びゆく民 ナヴァホ族 1904年」
馬に乗って隊列を組む人々の後姿を撮った写真です。タイトルがちょっと気になりますが、確かに哀愁と言うか儚いものを感じるかな。解説によると、この写真の意図するものは部族の力を奪われ原始的な衣服を剥ぎ取られた1つの民族としてのインディアンが、未知の将来という暗い闇の中へ入っていこうとする姿とのことで、当時の彼らの立場が見事に表現されているように思いました。

エドワード・S・カーティス 「キャニオン・デ・シェイ ナヴァホ族」 ★こちらで観られます
これはナヴァホの国の中心の辺りの写真で、そびえ立つ巨大な岩壁とその手前を行く馬に乗った人々が写されています。岩壁の大きさに対して人々と馬はかなり小さく見えて、アメリカの自然の雄大さを感じさせます。また、人々はぽつんとした感じで写っているせいか、やや儚くも自然と共に生きているように思えました。

近くには民族衣装を着た女性の写真などもありました。


ということで、確かにアメリカの先住民の誇りや文化を感じさせる写真だったと思います。プリントの方法も思った以上に良くて、それも1つの面白さとなっていました。ここは無料で会期も長めですので、近くに寄ることがあったら足を運んでみるのも良いかと思います。




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映画「クラウド アトラス」(ごく軽いネタバレあり)

日付が変わって昨日となりましたが、レイトショーで映画「クラウド アトラス」を観てきました。今回はややネタバレを含んでいますので、予備知識無しでこの映画を観たい方は感想部分は読まないようにしてください。

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【作品名】
 クラウド アトラス

【公式サイト】
 http://wwws.warnerbros.co.jp/cloudatlas/index.html

【時間】
 2時間40分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_3_④_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_④_5_名作

【感想】
公開から結構経っていることもあって、ほとんど貸切状態で見ることができました。

さて、この映画は同名の小説を原作としたもので、監督/脚本はマトリックスで有名なウォシャウスキー姉弟がつとめています。私はウォシャウスキー姉弟のファンなのでそれを目当てに見に行きました。その為 何の予備知識も無かったのですが、冒頭は結構面食らいました。というのも、この映画は過去から未来までの6つの異なる時代の物語がシャッフルするかのようにちょっとずつ進んでいく(火の鳥太陽編とかみたいな感じ)ので、最初はそれぞれの相関関係が全く分からずついていくのが大変です。見終わる頃には何となく全体観がつかめて共通のメッセージも伝わってくるのですが、1回観ただけでは気づいていないこともありそうです。

また、この映画はSFの映像も見どころですが、それ以上に凄いのが俳優たちの変身ぶりでした。トム・ハンクスやハル・ベリーといった有力どころが1人で何役もこなす(時代ごとに別の役をやっている)のですが、まるっきり別人に見えたり年を取っていたりと、演技とメイクの凄さに驚きました。途中までまったく気が付かない人物もいたし…w

各ストーリーそのものについては、面白いというほどでもないかなw それぞれは意外とあっさりとした話で特に意外性もないのですが、お互い複雑に絡み合う繋がりを感じるところに肝があるように思いました。’


ということで、話の繋がりや役者・映像については満足できました。ちょっとオススメはしづらいけど、ひと味違った感じの映画です。


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Paris、パリ、巴里 - 日本人が描く 1900-1945 【ブリヂストン美術館】

前回ご紹介した展示を観た後、ブリヂストン美術館で「Paris、パリ、巴里 - 日本人が描く 1900-1945」を観てきました。

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【展覧名】
 Paris、パリ、巴里 - 日本人が描く 1900-1945

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

【会場】ブリヂストン美術館
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・日本橋駅・都営浅草線宝町駅


【会期】2013年3月23日(土)~6月9日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。

さて、この展示はテーマ展示で、いつもの常設作品と若干の他の美術館の所蔵品を合わせ、日本人洋画家のフランス・パリ留学時代をテーマにした内容となっていました。だいたいは常設中心の展示ですので、今回は私が「初めてみる作品」(他の美術館の所蔵品など)と、「最近入れ替わって展示されたと思われる作品」を中心にいくつかご紹介しようと思います。(代表的なコレクションというわけではありません。代表的なものは公式ページで確認できます)
 参考リンク:現在展示中の収蔵作品


<第1章 パリ万博から第一次世界大戦まで1900-1914>
まずは1900年代初頭のコーナーです。

8 藤島武二 「ヴェルサイユ風景」
こちらは藤島武二が38歳から4年間にわたるヨーロッパ留学(前半の2年間はパリ、後半はローマ)に行った際に描いた、ヴェルサイユ宮殿の庭の風景です。左上にごく薄いピンクの建物があり、手前に壺や植木が描かれています。全体的に赤みがかっているのは夕方なのかな?? 手前は物が多いですが奥が広々した感じで、空の色と相まって爽やかな雰囲気でした。

5 浅井忠 「読書」
こちらは女性が本を読んでいるところを描いた肖像画で、浅井忠がパリ郊外のグレーにいた頃に、ホテルの中で和田英作と共に描いたそうです。女性は手に本を持ち目を閉じるような静かな表情で、全体的に柔らかい光が感じられました。リラックスした雰囲気を感じる作品です。

6 和田英作 「読書」
こちらは先述の浅井忠の作品と同じ時に描かれた作品で、浅井忠よりも横からの構図となっています。背景は暗めで、全体的にどっしりとした重厚感があるかな。こちらも静けさを感じますが、思慮深そうな雰囲気に思えました。2人の作品を並べることで作風の違いを楽しめる面白い趣向です。(※浅井忠の作品の展示は5/3まで)

12 満谷国四郎 「坐婦」
こちらは満谷国四郎の2回目のパリ訪問時(37歳)の作品で、テーブルに向かい椅子に座る女性が本を読んでいる様子が描かれています。顔は簡略化されていて、テーブルの上には薄いピンクのチューリップ?の花束が入った花瓶とオレンジが乗った皿が置かれています。柔らかい色合いで、色の明るさを感じるかな。解説によると、それまでの暗い写実的な画風から大きく変わり画面が明るくなっているそうです。印象派やポスト印象派の影響を受けているようで、確かにそのように見えました。

7 岡田三郎助 「臥裸婦」
これは岡田三郎助が4年間の留学から帰国する直前に描いたもので、草むらで仰向けになって体を反り、頭の後ろで腕を組む裸婦が描かれています。透き通るような白い肌をしていて、淡い草の色などと共に清純そうな感じを受けるかな、解説によるとこれは師匠のラファエル・コランの影響を受けているようで、コランや黒田清輝に通じるものを感じました。また、身体がだいぶ反り返っているのは岡田三郎助の大胆な試みと言えるとのことでした。


<第2章 黄金の1920年代と両大戦間期1918-1945>
続いては1918年から第二次大戦頃までの内容となっていました。

29 遠山五郎 「婦人読書図」
緑のチェックのワンピースを着た女性が膝に広げた本を読んでいる様子を描いた作品です。目を閉じるかのような表情で、顔は赤みがかっているせいか生気を感じ、どことなくルノワール風にも見えるかな。何故かキスリングもちょっと彷彿とします。(画風は似ていませんが…) 対比的な色使いでありながら落ち着いた雰囲気があり、独特な面白さがありました。

22 小出楢重 「パリ・ソンムラールの宿にて」 ★こちらで観られます
これは小出楢重のわずか5ヶ月程度のフランス留学の際に描かれた作品で、窓から外を望む構図で、道沿いに背の高い建物が軒を連ねる様子が描かれています。結構大胆なタッチで、素早く描かれているように見えるかな。解説によると、小出楢重は友人への手紙の中で「フランスには芸術がない」とこぼしていたそうですが、パリへの留学によって絵の具が伸びやかになったのがわかるとのことでした。

31 佐伯祐三 「コルドヌリ(靴屋)」
こちらは佐伯祐三の1回目のパリ時代の作品で、白壁の靴屋の入口が描かれています。壁は風化したような重厚感があり、扉の辺りには沢山の靴がかけられていて、扉の上に「CORDONNERIE」と黒々と書かれています。後の作品と比べてみると全体的にはスッキリした感じですが、壁の質感が独特で気に入りました。なお、このお店を描いた作品は少なくとも4点はあるのだとか。

32 佐伯祐三 「休息(鉄道工夫)」
赤い壁を背にして四角いテーブルに向かって酒を飲む3人の男達が描かれた作品です。これはパリで描いたのか東京で描いたのか分からないようですが、顔つきは西洋人っぽくて、労働者らしい風貌です。背景の赤と相まって労働者の逞しさ・力強さが伝わってくるようでした。

33 佐伯祐三 「広告貼り」
これは2度目のパリ時代の作品で、建物の壁が広告で埋めつくされている様子が描かれています。赤字や黒地で文字が書かれているのですが、広告は積み重なるような感じを受けるかな。よく観ると左下の方に1人の人物がぽつんと立っていて、それがかえって物悲しい印象になっているように思いました。

34 佐伯祐三 「レストラン(オデル・デュ・マルシェ)」 ★こちらで観られます
これはこの美術館所蔵の佐伯のカフェの絵とおなじカフェで描かれたもので、一目で同じ店であることが分かります(この絵の隣に展示されている) 店内は黒い服の人物が座っている以外は空席で、右上は広告が埋め尽くしています。佐伯らしい重厚な色彩の一方で文字が軽やかなリズムを生んでいるように見えるかな。ぽつんとしているお客さんはちょっと寂しい感じにみえました。

24 坂本繁二郎 「パリ郊外」
カーブした道をこちらに向かってくる黒い帽子をかぶった女性を描いた作品です。周りには背の低い建物が立ち並び、左の建物は壊れています。全体的に黄土色っぽい感じで、ぼんやりして女性の顔も定かではないですが、そのせいか落ち着いた雰囲気がありました。解説によると、坂本繁二郎はパリではモンパルナスに住んでいたようですが、風景画は市街より郊外、もしくはブルターニュ地方を好んだとのことでした。のんびりしていて幻想的な作品でした。

40 伊原宇三郎 「椅子によれる」
楽譜を持って椅子に腰掛ける白い布を頭にかぶせた裸婦が描かれた作品です。どっしりとした肉付きで、一目でピカソの新古典主義時代の作品からの影響が見て取れます。陰影が強く力強い生命感がありました。

38 岡鹿之助 「魚」
窓の外に広がる海とそこに浮かぶヨットを背景に、窓際におかれた籠とその中に入った魚、海老、レモンなどを描いた静物画です。その手前にも黒いお盆に乗った小エビや、ヒラメなどが描かれているのですが、いずれも平面的で立体感がありません。素朴派的な描き方というよりかはキュビスム的な要素を感じるかな。点描のようなざらついた質感も面白く、遠近法なども無視した独特の味わいのある作品でした。

19 藤田嗣治 「カルポーの公園」
木々の立ち並ぶ雪景色の公園を高い位置から見下ろすように描いた作品です。公園には黒っぽい服を着た人々が無数に描かれ、縄跳びで遊んだりベンチで休んだり、乳母車の周りで談笑していたりとくつろいだ雰囲気があります。解説によると、実際にはこの頃は第二次大戦が迫りつつあった時期のようですが、絵の中ではそれを感じさせません。また、藤田といえば乳白色の画風ですが、この絵ではそれとは違い印象派のようなタッチで厚塗されているのも意外でした、藤田がいくつかの描き方を使いこなしていたのを示しているようです。

藤田も数点展示されていました。


ということで、今回は観たことがない作品が結構多めでした。特に佐伯祐三の好みの作品が観られて良かったです。会期も長めですので、ご興味があるかたはチェックしてみてください。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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清川あさみ「こども部屋のアリス」絵本原画展 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

前回ご紹介したお店でお昼を済ませたあと、銀座のポーラミュージアム アネックスで清川あさみ「こども部屋のアリス」絵本原画展を観てきました。この展示は既に終了していますがご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 清川あさみ「こども部屋のアリス」絵本原画展

【公式サイト】
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/
 http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/detail.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス (POLA MUSEUM ANNEX)
【最寄】東京メトロ 銀座駅・銀座一丁目駅 JR有楽町駅


【会期】2013年3月8日(金)~4月7日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私が行ったのは最終日だったこともあり結構お客さんはいましたが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展覧会は清川あさみ 氏という女性アーティストの個展となっていました。元々はモデルだった方で、「美女採集」という作品でアーティストとしてもブレイクしたそうで、最近では「銀河鉄道の夜」や「グスコーブドリの伝記」などの絵本シリーズを手がけているそうです。(モデル時代も有名だったようで、連れもこの方のことをよく知っていると言っていました)
今回の展示ではタイトルの通りルイス・キャロルの「こども部屋のアリス」がテーマとなっていて、会場には家の形をした箱が並び、レースやビーズ、スパンコール?などで作られた人形を使って「こども部屋のアリス」の世界を表現していました。

↓こちらは1階のショーウォンドに展示されていた作品。
P1100138.jpg
他の作品もこのような作風でアリスの物語を表現していました。メルヘンチックで可愛らしいですが、ちょっとシュールでアリスのイメージに合っています。素材や構成が面白く、箱のなかで表現する点からちょっとジョゼフ・コーネルを思い起こしました。

アリスの他にもトランプの兵士やチシャ猫などお馴染みのキャラクターも箱の中で生き生きと表され、絵と人形が合体しているものもあり、2Dと3Dが織り交ぜられたような表現も面白かったです。作者自身の言葉によると、作者はナンセンスものは苦手とのことですが「こども部屋のアリス」を読んでルイス・キャロルが短くも無垢な少女時代を愛しむ姿がうかび、優しく知的に見えたとのことで、奇想天外な話がいつの時代も世界中に愛される理由が分かったそうです。 そのせいか、清川あさみ 氏の作品からも無垢なものへの愛情が感じられるように思いました。

ということで、小展ながらも独特の世界観が楽しめる内容となっていました。既に終わってしまいましたが、今後も活躍される方だとと思うので参考になる展示でした。


 参照記事:★この記事を参照している記事


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ドゥエ・アンジェリー 【銀座界隈のお店】

前回ご紹介した展示を観た日は、銀座のドゥエ・アンジェリーというイタリアンレストランでお昼を済ませてから美術館めぐりをしてきました。

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【店名】
 ドゥエ・アンジェリー

【ジャンル】
 イタリアン

【公式サイト】
 http://www.melsa.co.jp/gin2/g2shop/due.html
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13037437/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 銀座一丁目駅、銀座駅、宝町駅など

【近くの美術館】
 ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
 警察博物館
 INAXギャラリー
 国立近代美術館フィルムセンター
  など

【この日にかかった1人の費用】
 1200円程度

【味】
 不味_1_2_③_4_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
こちらは銀座のメルサの4階という若干気づきにくい場所にあるせいか、空いていて快適に食事をすることができました。私はこの後ポーラのアネックスに行くつもりだったので、その辺で探していたら偶然みつけた感じです。


店内はこんな感じ。窓から光が差し込んで明るい店内となっていました。
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この日はピザのセット(1200円)を頼んでみました。こちらは先に出てきたサラダとスープ。
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これは可も不可もないかな。まあ見た目通りの無難な感じです。

そしてこちらがピザ。
P1100130.jpg
見た瞬間に冷凍ピザかと思ったw チーズが沢山乗っているのは嬉しいですが、味は普通。 意外とボリュームがあります。

こちらはデザートのムース。
P1100133.jpg
うーん、普通w なんか物足りない。


ということで、決して不味いわけではないですが、味はあまり記憶に残らなそうな感じでした。しかし銀座の駅のすぐ前でこの内容で1200円というのを考えると悪くなかったと思います。頼んでからすぐ来たのも良かったし雰囲気も落ちつけたので、総合的にはまずまずの満足度でした。



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鳥山明 The World of DRAGON BALL 【日本橋タカシマヤ】

つい数時間前ですが、日曜日の夕方に日本橋タカシマヤで「鳥山明 The World of DRAGON BALL」を観てきました。残りの会期も少ないので、早めにご紹介しておこうと思います。
 ※この展示は漫画・アニメ「ドラゴンボール」の漫画の内容を知っている方向けの記事になります。漫画自体の説明などは省略します。

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【展覧名】
 鳥山明 The World of DRAGON BALL

【公式サイト】
 http://www.takashimaya.co.jp/base/st/tokyo/dragonball/

【会場】日本橋タカシマヤ
【最寄】日本橋駅


【会期】2013年3月27日(水)~4月15日(月) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
チケットは5分くらいで買えましたが、中は満員電車のように人でギッシリで、中々思うように進めませんでした。多分、会期末までこういう状態だとは思いますが帰る頃(18時頃)には若干空いているようでした。狙い目は夜かも?

さて今回の展示は今の30代未満であれば誰もが知っているであろう漫画「ドラゴンボール」に関する展示です。ドラゴンボールは1984年から1995年に渡って少年ジャンプで連載されアニメも大人気となった作品ですが、今年17年ぶりに映画「ドラゴンボールZ 神と神」が制作され現在公開中(2013年4月現在)となっています。それに合わせてこの展示ではドラゴンボールの原画を始め、原作者の鳥山明 氏と孫悟空を担当した声優の野沢雅子 氏の対談映像など、ファンなら見てみたいと思わせる内容となっていました。いつもどおりメモを取ってきましたので、流れにそってご紹介していこうと思います。(今回は感想というよりは内容の羅列といった感じかもしれませんw)


<キャラクター>
まず最初は正方形のシートが壁一面に並んでいるコーナーでした。ドラゴンボールには500を超えるキャラクターがいるそうで、50音順に1キャラずつ並んでいます。主要なキャラは大きめになっているのですが、中にはこんなのいたっけ?というものや、こいつに名前があったのかというキャラクターもいますw 映画のガーリックジュニアとかアニメオリジナルのドラゴンボールGTのキャラなどもいるので、全部知っている人は相当なマニアかも。最新の映画からもビルスというキャラクターなどがありました。ちなみに今回の映画は鳥山明 氏も深く関わっているそうです。

<DRAGON BALL年代記>
続いてはドラゴンボールの物語上の歴史を並べた年表が展示されていました。設定としては歴史は1億年以上前からあるようですが、原作でも書かれてたのは7500万年前に老界王神がZソードに封じ込められた話が一番古いかな。紀元前と紀元後に分かれているようでしたが、紀元0年は何が基準なのかはわからずw とりあえず、749年9月1日に悟空とブルマが出会うというのが物語の原点で、そこから先は日付単位となっていました(それ以前もサイヤ人の話なども書かれています) アニメオリジナルの話や映画も織り込まれていて、そんなのあったなーなんて思いながら見ていたのですが、驚いたのがフリーザ編。子供心にどんだけ引き伸ばすんだよ!とツッコミを入れながら観ていたフリーザ編はなんと物語上ではたったの1週間くらいのようで、クリスマスイブにナメック星が消滅している設定でした。1週間なんて悟空が気合を入れてドカバキやったら終わる期間では…w さらに先を観ていくとストーリー通りの流れで、最後は889年に悟空とベジータの子孫が天下一武道会で対決するという話でした。これは何だったか忘れましたが話自体は観た覚えがあります。(アニメだったかな?)

<原画ギャラリー>
続いてはお待ちかねの鳥山明氏の原画のコーナーです。まずは記念すべき第1話のカラー原画が並んでいて、脇にページ数などが書き込まれていました。セリフを貼りつけたのも分かりますが、絵などは漫画と同じですw (当たり前ですが) その先には神龍が初めて出てきてウーロンがギャルのパンティを貰ってるシーンや、悟空の巨大化の見開き、孫悟飯(爺さんの方)が正体を明かすシーン、チチと結婚して飛び去っていくシーン、ラディッツと対峙するシーン、幼い悟飯が爆発的なパワーでラディッツに体当たりするシーン、ナッパがクンってやってるシーン(中々ツボをおさえてますw)、ピッコロが悟飯をかばうシーン、ベジータがフリーザを倒してくれと泣いて頼むシーンなどが並んでいました。いずれもよく覚えているシーンだけに、こうして原画を見ていると連載当時に毎週楽しみにしていたのを思い出しました。

[Special 1 修行]
ここは悟空の修行に関する原画が並んでいました。懐かしの牛乳配達や、カリン塔、界王星、宇宙船内の修行のシーンなどがあります。

その後はまた時系列で、超サイヤ人の覚醒(クリリンが爆死する辺りから)や、フリーザとの戦い(カラー)などがあり、クリリンのことかーっ!のシーンもありました。

[Special 2 ギニュー特戦隊]
ここはギニュー特戦隊のファイティングポーズのシーンが展示されていました。連載当時、これをクラスで真似したやつがいました…w

[Special 3 フュージョン]
こちらは悟天とトランクスのフュージョンのシーンとゴテンクスが展示されていました。サイズについての書き込みなどもあります。

[Special 4 エッチ]
ここはドラゴンボール(特に初期)ならではのエッチなシーン集となっていました。フカフカキンタマとかパフパフとか…w 結構もろに乳出ししてて緩い時代だったんだなとw

その後はまた時系列で、セルゲームで悟空が悟飯と交代するシーンがあり、セリフのないカラー原稿もあります。その先には魔人ブウ相手に自爆するベジータが最後にトランクスと話しているシーンや、ピッコロがバビディを斬殺するシーン、悟空があの世に戻っていくシーン、ベジータがお前がナンバーワンだと言うシーン、最後の元気玉をためるシーンなどがありました。ファンならすぐに思い浮かぶような名シーンじゃないかな。

[Special 5 天下一武道会]
こちらは天下一武道会のシーン集となっていました。初回のバクテリアンとかランファン、ナムあたりは何とも懐かしいw 


その後はVSシリーズとなっていて、
 悟空VS桃白白で悟空のかめはめ波が効かないシーン、
 悟空VS悟飯(爺さんの方)、
 亀仙人VSピッコロ大魔王で魔封波が失敗するシーン、
 悟空VSピッコロ大魔王で悟空が貫通するシーン、
 悟空VSマジュニアで最後の体当たりのシーン、
 悟空VSラディッツでピッコロの魔貫光殺砲で諸共死ぬシーン、
 ベジータVSキュイでキュイが爆死するシーン(汚ねえ花火のセリフの所はなかったw)、
 ベジータVSドドリアでベジータが圧倒しているシーン、
 ベジータVSザーボン2回目でベジータが圧倒しているシーン、
 悟飯VSフリーザ第二形態、
 ピッコロVSフリーザ第三形態、
 フリーザ最終形態にデンデが殺されるシーンや悟空が戦うシーン、
 ベジータVS18号でドカバキやってるシーン、
 悟飯VSセルの最後のかめはめ波のシーン、
 悟空VSベジータ(バビディの力を得た方)、
 ベジータVS魔人ブウでベジータが自爆するシーン
などとなっていました。これもいまだによく覚えているシーンばかりでしたw
 

[10年後]
漫画原画コーナーの最後は、最終話のカラー原画でした。ウーブとかパンが出てくる話ですが、連載当時と2004年発行の完全版では最後の4ページが修正されているようで、修正版ではウーブが筋斗雲に乗って悟空と一緒に飛び立って行き、最後にベジータが「必ず勝ってやる」と言って終わっていました。このバージョンは初めて観ました。


<カラーイラストギャラリー>
こちらはフルカラーの原画のコーナーで、コミックやジャンプの表紙などが並んでいました。これは結構見覚えがあるのも多いですが、観た覚えがないのもあったかな。こうして一気にみてみると、絵柄が結構変わっていることに改めて気づきます。どんどん垢抜けていく感じかな。


<アニメギャラリー>
こちらはTVアニメと劇場版のコーナーでした。TVシリーズの設定資料の複製やセル画が並んでいます。設定のほうはセルやクリリンなどがあり、セル画はかなり初期のものや映画のセル画、ギニュー戦のセル画、ブウの時の天下一武道会のセル画などがありました。 また、その反対側の壁には今までの映画17作のポスターも展示されています。多分私が観たのは半分にもならないかな…w さらにこの部屋の壁には映像もあり、初期からGTまでのアニメがハイライト的に流れています。免許を取る話とか、今でも語り草になっている引き伸ばし回が流れていてちょっと笑ってしまった…w あれは本当に酷かったw


<お宝ミュージアム>
ここにはドラゴンボール関連のグッズが並んでいました。会報誌とか、「鳥山明保存会」という会が所蔵する会員向けのポストカード(年賀状や残暑見舞い)、GTのギルと宇宙船のスケッチなどが並びます。その先には東映アニメーション所蔵のフィギュアが並び、これが結構大きめでリアルでした。 その後には野沢雅子 氏の所蔵するドラゴンボールグッズがあり、カンペンやノート、パーカーなどがあり、特に目を引いたのは赤ん坊の悟空が乗っていた宇宙船(脱出ポッド)のフィギュアでした。これは結構なレアものなのだとか。
このスペースの反対側には海外版ドラゴンボールの漫画が展示されていました。30カ国以上で販売されていて、アニメは40カ国以上で放送されたそうです。アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス… など並んでいて、複製も展示されていたのですが、擬音は日本語だったり現地の言葉に差し替わっていたりまちまちのようでした。

<シアターゾーン>
こちらは約20分の映像コーナーで、海外版アニメの比較と、鳥山明 氏と野沢雅子 氏の対談の映像の2本立てとなっていました。まず海外版との比較は、悟空とベジータがかめはめ波とギャリック砲をぶつけるシーンをそれぞれの国の声で流しています。…海外版は凄い違和感がするw 全体的にあまり上手くない上、悟空の声が歳相応の若者の声なのが違和感の原因かな。よく考えるとそっちの方が自然な配役なのかもしれませんが、鳥山明 氏が言うように悟空は野沢雅子 氏の声以外はしっくりきませんでした。悟空の声が女性なのは(この映像で見た限りでは)日本だけのようでした。

対談の方は残念ながら鳥山明 氏の姿は映されず、お腹から下あたりしか見えませんw 悟空と鳥山明 氏の共通点は?との問いには好きなことしかやらないのと、威張るのが嫌いとのことで、悟空と野沢雅子 氏の共通点については、自分は悟空の分身だと思っているとの回答でした。確かに多くの人はそう思っているかも…w ちなみに悟空、悟飯、悟天の声の使い分けはその場で声を変えて一気に収録していたそうです。相当に役を理解していないとできない芸当ですね。 トークの最後は最新作の「神と神」についても語っていました。


<神と神>
最後は最新の映画の紹介となっていました。あらすじやキャラクターの設定資料、台本、声優のメッセージなどが展示されています。私はいまのところ観にいく予定はないですが、作者自身も気に入っているようです。


ということで、ドラゴンボールの世界を一気に見るような内容となっていました。以前ご紹介したジョジョ展などと違い原画と資料しか無いような気はしますが、その分原画が多目なのでファンにはたまらない展示ではないかと思います。もう会期も少ないし、混んでいますので気になる方はお早めにどうぞ。


おまけ:
出口辺りにあった記念撮影コーナー。かめはめ波が撃てますw
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 参照記事:★この記事を参照している記事



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【東京国立近代美術館】の案内 (2013年03月)

前々回前回とご紹介した展示を観た後、東京国立近代美術館の常設も観てきました。今回の常設は「所蔵作品展 MOMAT コレクション」というタイトルで、館内はリニューアルされていました。

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【展覧名】
 所蔵作品展 MOMAT コレクション

【公式サイト】
 http://www.momat.go.jp/Honkan/permanent20130124.html

【会場】
  東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー

【最寄】
  東京メトロ東西線 竹橋駅


【会期】
  前期:2013年1月24日(木)~ 3月17日(日)
  後期:2013年3月19日(火)~ 5月26日(日)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【感想】
こちらは空いていました。とは言え、閉館まであまり時間がなかったので早足で観てきました。

ここの常設は写真が撮れるので(ルール厳守。一部撮影不可)、いくつか気に入った作品を写真でご紹介しようと思います。以前は事前の登録が必要でしたが今は登録なしになったようです。

参考記事:
 東京国立近代美術館の案内 (2012年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2011年06月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年05月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年04月)
 東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)
 東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)

冒頭にも書きましたが、こちらの常設はリニューアルされていました。4階にこうしたスペースも設けられていたようです。
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展示室もだいぶスッキリした感じ。
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この後、上から順に階を下っていくように見て行きました。

安田靫彦 「挿花」
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凛とした雰囲気の美人と若干の緊張感が好みでした。こちらは奥村土牛からの寄贈されたようです。

菊池芳文 「小雨ふる吉野」
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6曲1双の屏風。今の季節に合った華やかな作品でした。

満谷国四郎 「椅子による裸婦」
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こちらはポーズも良かったですが、背景の椅子が気になりました。リズムを感じます。

川上涼花 「鉄路」
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坂を登って行く列車が描かれた作品。写真のブレのような表現にスピードを感じます。坂上の中央に太陽が輝くような明るさがゴッホのようだと思ったら、ゴッホから影響を受けているようでした。

萬鉄五郎 「立木風景」
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やや重めの色合いが萬らしい作品。ちょっとセザンヌっぽい感じもするかな。

椿貞夫 「冬枯の道」
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これは岸田劉生とよく似ていますが、仲間の椿貞夫の作品でした。リアルでどっしりした感じを受けます。
近くには岸田劉生の作品もありました。

オスカー・ココシュカ 「版画集「つながれたコロンブス」より 2.新しきコロンブスと聖ゲオルギウス」
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こちらはウィーンで活躍したココシュカの版画。詳しくは分かりませんが、手前がコロンブスで後ろの槍の人物が聖ゲオルギウスかな。聖書の啓示などに基づき、夢幻的な男女の愛と葛藤を描いた12枚の版画らしく、ここには他の作品もありました。

浜田浜雄 「ユパス」
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幻想的な風景を描いた作品。実際にあるようで夢の中のようなシュールな雰囲気でした。

寺田政明 「魔術の創造」
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こちらもシュルレアリスム的な作品。具象のような抽象のような何とも判別できない品なのに、何故かしっくりくる色形でした。

靉光 「蝶」
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こちらは妖しく幻想的な雰囲気の蝶。どこかルドンに通じるものを感じます。

ジャン・デュビュッフェ 「土星の風景」
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タイトル通り土星を彷彿とする作品。様々な技法試していたようで、表面の質感が複雑な仕上げとなっていました。

ジョアン・ミロ 「絵画詩(おお!あの人やっちゃったのね)」
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これは「絵画詩」と呼ばれるシリーズで、フランス語で「おお!あの人やっちゃったのね」と書かれているそうです。記号みたいのは文字なのか人なのか分かりませんが、流れるような洒落た感じがありました。代表的なミロの作風とはちょっと違った雰囲気。

中村研一 「北九州上空野辺軍曹機の体当りB29二機を撃墜す」
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一瞬、幻想的な絵かと思ったら戦争画でした。昔はこれを見て国威発揚となったのでしょうか…。

川端龍子 「洛陽攻略」
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こちらも戦争画。兵士は占領して仏像を調査しているのかな?? 仏像の大きさが際立って見えました。

こちらの部屋は「建物を思う部屋」という名前になって保存されていました。
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東山魁夷 「残照」
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自然の雄大さと、どこか郷愁を感じる作品。空気感まで伝わってきそうです。

山口蓬春 「春」「夏」「秋」「冬(枯山水)」
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こちらは4枚セットの作品。明るくも幻想的な色合いがなんとも好みでした。

山元春挙 「雪松図」
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こちらは驚くほどの大画面の作品で、松に囲まれているかのような空間となっていました。作者の名前からも分かるように、円山応挙からの影響を感じます。

草間彌生 「冥界への道標」
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こちらは壁にびっしりと突起物が並んだ作品。草間彌生の作品によく出てくる突起です。ちょっと不気味な感じもするかなw
 参考記事:草間彌生 ボディ・フェスティバル in 60's 展 (ワタリウム美術館)



ということで、観たことがない作品が結構ありました。リニューアルされて見やすくなっていたのも良かったです。特別展に行かれる方は、こちらの常設も見ることをお勧めします。



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フランシス・ベーコン展 (感想後編)【東京国立近代美術館】

今日は前回の記事に引き続き、東京国立近代美術館の「フランシス・ベーコン展」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら

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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 フランシス・ベーコン展

【公式サイト】
 http://bacon.exhn.jp/index.html
 http://www.momat.go.jp/Honkan/bacon2013.html

【会場】東京国立近代美術館
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅

【会期】2013年3月8日(金)~5月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では1940年代から50年代にかけての作品を紹介しましたが、後編ではそれ以降の1992年までのコーナーとなっていました。


<2 捧げられた身体 1960s>
ベーコンは1959年9月にコーンウォール地方のセント・アイヴスに滞在していたそうで、当時その地には英国の抽象画家たちが多く集まっていたそうです。そして恐らくこの時期の経験があってか、ベーコンの60年代の作品は大きく変化していきます。背景がシンプルな色面となり、画面内に描かれる家具もずっとモダンになったそうで、それはベーコンが画家になる以前に一時期インテリア・デザイナーとして働いていた経験も活かされているようです。また、背景がシンプルな色面となると、人物像の輪郭やポーズが重要な要素となるらしく、その際にベーコンが大いに参照したのはマイブリッジの写真や友人のプロ写真家に撮らせた恋人や親友の写真だったそうです。ベーコンはモデルではなく写真を用いることで人間の姿を遠慮無く歪めることができたようで、それにより日常とも非日常ともつかない空間の中で見る人に対して捧げられているかのような身体が描かれた作品が作られたようです。1958年頃のメモには「特定の場所におけるイメージと動きを儀式的なイメージに変容させること」という言葉が残されているようで、ここにはそうした考えが伺える作品が並んでいました。

19 フランシス・ベーコン 「ジョージ・ダイアの三習作」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている3点セットの作品で、パブで知り合ったベーコンの恋人のジョージ・ダイアという男性(ベーコンは同性愛者)が描かれています。ピンクを背景に、右向き、正面向き、左向きの3枚となっていて、具象的な肖像を元に歪められて溶けたような独特の表現です。いずれも顔の中央辺りには黒い弾丸の穴のようなものがあり、解説によると、これはダイアの自らを壊したいという内面を思わせるそうで、この絵が描かれた2年後にダイアは自殺してしまったそうです。ダイアは小さな犯罪を繰り返す粗野な人物だったそうですが、この絵では歪んだ激しさと共にどこか艶かしい雰囲気もあるように思いました。

この隣には有名な精神分析学者のフロイトの孫で、20世紀後半を代表する具象画家であるルシアン・フロイドを描いた3枚セットの作品もありました。

23 フランシス・ベーコン 「裸体」 ★こちらで観られます
赤っぽい背景に、首の後で手を組んでソファで横たわる裸婦を正面から描いた作品です。歯を見せて叫ぶようにも見えますが、顔つきや表情ははっきりとはわかりません。ポーズは色っぽく見えるのですが、どこか痛みのようなものを感じさせました。解説によると、同性愛者のベーコンがこうした裸婦を描くのは珍しいことのようです。

この近くにはベーコンの言葉が描かれた壁がありました。17歳の時に、道端の犬の糞を見てふいに人生はこのようなものだと悟ったとのことでした。…って、人生は犬の糞ってことかな?w

35 土方巽 「舞踏公演[疱瘡譚](『四季のための二十七晩』より)の記録映像」
こちらはベーコンからインスピレーションを得た日本の舞踏家で振り付け師である土方巽氏の舞踏公演の映像です。帽子をかぶったヒゲのオッサンがヨガのようにももがいているようにも見える動きをしていて、異様な感じです。痛みや苦しみを感じさせてやや怖いですが、強烈に記憶に残りました。確かにどことなくベーコンと共通するものを感じます。解説によると、立てない身体の在り方がベーコンとの関連性とのことでした。

この近くには土方巽のダンスの舞踏譜やスクラップブックなどもあり、ベーコンの絵をスクラップしているようでした。


<3 物語らない身体 1970s-1992>
1970年以降、ベーコンは大きなサイズの三幅対(3枚セット)の作品に積極的に取り組んだそうで、複数の空間と人物を描いているにも関わらずそこに決まったストーリーが生まれることを何とか避けようとしていたそうです。それはストーリーができると登場人物はそれに服従してしまう、つまり自由を失うことであると考えていたためのようで、ここにはそうした考えに基づく作品が並んでいました。

29 フランシス・ベーコン 「横たわる人物」
オレンジの地と円形の茶色を背景に、横たわる男性の裸体が描かれた作品です。男性には何故か白い襟だけついていて、背後には鏡が置かれています。また、男性の下には牛の影などがあり、闘牛を思わせました。これはむしろストーリーを考えさせるようにも思えましたが、ややシュールな雰囲気があるかな。顔が今までに比べると意外と具象的なのも気になりました。

26 フランシス・ベーコン 「三幅対-人体の三習作」
大きな三幅対の作品で、それぞれにピンクを背景に白いレールのようなものに乗った裸体の人物が描かれています。右は下を見るようなポーズ、中央は黒い傘をさす人物、左は這っているような感じのポーズ となっていて、身体は女性のように見えますが顔は男のように見えます。解説によると、このフォルムはカラヴァッジョからの影響だそうで、地のピンクについては若い時に家具のデザインでしばしば用いた色だったとのことでした。これは確かにストーリーはよく分からないかな。画面は広いのに何だか窮屈そうに描かれていました。

31 フランシス・ベーコン 「ジョン・エドワーズの肖像のための三習作」
これも三幅対で、いずれも椅子に座って足を組む若い男性が描かれています。顔は消されたように見えますが、それ以外は結構写実的で、空色を背景に円形や部屋を思わせる幾何学的な線などもあります。 そして色使いは今までと違って穏やかで、爽やかな雰囲気すらありました。解説によると、この人物は新しい恋人だったようで、この人物と出会うことでベーコンはダイアの死の失意から再び生の世界に戻ってきた言えるそうです。そして父のように接して、遺産相続に指名するほどだったとのことでした。そのためかこの頃(70代)はそれまでの暴力的なところはなく落ち着いた作風になっているようでした。

33 フランシス・ベーコン 「三幅対」 ★こちらで観られます
こちらも三幅対の作品で、左右は黒い背景に男性の裸の下半身とポートレートが描かれ(足の付根あたりに顔が置かれるような感じ)、中央には頭の無い裸体と謎の黒い矢印のようなものが描かれています。黒い背景は窓のように見えて、暗い所からこちら側に入ってくるような印象を受けるかな。解説によると、これはベーコン最後の三幅対らしく右の作品はベーコン自身、左はアイルトン・セナとも友人とも言われているようです。これを描いたのは死ぬ数カ月前のことだったようですが、今までの画業を要約したかのようだとのことで、確かに肉体表現や2つの世界を行き来する感じなど前半で観た内容なども想起させるものがありました。


<4 エピローグ:ベーコンに基づく身体>
ベーコンは多くのクリエイターに影響を与えたそうで、この章ではダンサーや振り付け師をフォーカスしていました。大きなプロジェクター3面に上、正面、横から撮った前衛的な踊りの映像が映されていて、地面をのたうち回っているようにも見えますw これはベーコンの絶筆からインスピレーションを受けたそうで、結構激しい動きをしながら真っ白なところに黒い跡をつけていました。確かにベーコン的なひねったポーズが印象的だけどちょっと難解w

最後にベーコンのアトリエの写真が大きく飾られていました。ぐちゃぐちゃに散らかっていて、壁にも絵の具が塗られていましたw


ということで、点数は少なかったですが濃い内容となっていました。シリーズものや三幅対なども見ることができて、だいぶ堪能できました。日本ではほとんど紹介されることの無かった画家だけに貴重な機会だと思いますので、気になる方は是非どうぞ。


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