Archive | 2013年04月
今日は前回の記事に引き続き、サントリー美術館の「もののあはれ」と日本の美の後編をご紹介いたします。前編にはその成り立ちなども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら
まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
「もののあはれ」と日本の美
【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2013_2/index.html
【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2013年4月17日(水)~6月16日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
前編では上階の展示をご紹介しましたが、今日は下階の後半の展示についてご紹介します。
<第六章 「もののあはれ」と花鳥風月 移り変わる日本の四季>
雪月花や花鳥風月など季節の移ろいと共に姿を変える自然の風物は日本人が思い浮かべる「もののあはれ」の情趣を代表する取り合わせと言えます。この章ではそうした題材の作品が並び、会場内には鳥の声が流れていました。
71 狩野永納 「春夏花鳥図屏風」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の金地の屏風で、右隻は川辺に桜や牡丹、柳などの植物と、キジ、鶯、燕などの鳥が描かれています。これは春の花鳥かな? 一方、左隻はアヤメ、松、ゆりなどの植物と三光鳥(サンコウチョウ)という鳥などが描かれていて、こちらは恐らく夏だと思います。 色が強めで明るく華やかな印象で、鳥の舞い飛ぶ感じが軽やかでリズムを感じました。
73 「秋草鶉図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風で、緑のススキが茂り、その中にウズラたちが描かれています。金地の地面の上ではウズラの親子たちが、餌を食べていたり羽を広げたり、それぞれのんびりしていて、特に子供の姿が可愛らしいです。また、ススキは長めなのですが。これは細かい曲線を幾重にも重ねて描いているようで生命力と優美さを感じさせました。 解説によると、この屏風は左右で同じように見えて右から左へと季節が流れているとのことでした。
62 仁阿弥道八 「色絵桜楓文透鉢」 ★こちらで観られます
これは大きな鉢で、中に真っ赤な紅葉と満開の桜が描かれ、側面にまで絵が続いています。デフォルメされた感じのデザインで、側面に穴が開いていて枝の隙間を表す点などが、仁清の作品を彷彿とさせました。しかし、仁清にはないどっしりとしたたくましい印象も受けるかな。色が鮮やかなのも派手に見えました。
87 本阿弥光悦/俵屋宗達 「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」
左右で色の違う料紙に、金泥や墨で蓮が描かれ、そこに小倉百人一首の歌が詠まれた作品です。これは絵を俵屋宗達、書は本阿弥光悦が書いたもので、元々は巻物だったようですが後に分割されて断簡となり、一部は関東大震災で失われてしまったそうです。簡潔かつ流麗な宗達の絵と、軽やかでリズムのある光悦の文字が踊るようで、非常に素晴らしい作品でした。
<第七章 秋草にみる「もののあはれ」 抒情のリズムと調和の美>
藤袴、女郎花、萩、ススキなど、秋草は絵巻や屏風など美術の各分野に登場します。そのほとんどは脇役ですが、季節感を持ち込みその場面を暗示したりしてくれる役割をはたすようです。ここにはそうした秋草をテーマにした作品が並んでいました。
102 「時雨螺鈿鞍」 ★こちらで観られます
これは螺鈿などが施された漆塗りの馬の鞍です。前面と後面に葛の葉と松などが流れるように配置されていて、かなり緻密に表現されています。よく観ると中には文字らしきものが散らされていて、これは「わが恋は 松を時雨の 染めかねて 真葛が原に 風さわぐなり」という慈円の歌を表しているようです。この豪華かつ機知に富む作品は見れば見るほど驚きがありました。
この辺には蒔絵の鏡台や湯おけなどもありました。
123 鈴木其一 「芒野図屏風」
これは2曲1隻の屏風で、無数のススキが銀と墨で描かれています。逆に言うとそれしか描かれていないのですが、蛇行するようにやや白っぽいススキがあり、その色の配置によって霧が立ち込めているように見えるのが面白いです。神秘的で静けさや湿気までもが感じられそうな作品でした。
参考記事:琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 (出光美術館)
<第八章 暮らしの中の「もののあはれ」 近世から近現代へ>
最後は近現代のコーナーです。花見や月見、花火など生活のなかにある「もののあはれ」に関する作品が並んでいました。
143 鏑木清方 「五月雨 小下絵」
これは2曲1双の屏風で、右隻は輿に乗った着物の女性の後姿が描かれています。一方、左隻は頭に布をかぶった青い着物の女性が、地面に足を乗せて座っています。解説によると、この2人は紅葉狩りに来た姉妹とのことで、画面には舞い散る葉っぱがヒラヒラと舞っている様子も描かれていました。淡い色合いが何とも清楚で、女性たちは清方の美人らしい品と色気がありました。季節感もあり情緒を感じる作品です。
134 歌川広重 「東都両国遊舩之図」
これは3枚続きの浮世絵で、画面のやや上の方に左右に向かって橋がかかり、そこには沢山に人が描かれています。さらに手前には屋形船が無数に出て賑わっているようで、夕暮れの空には花火が花開いていました。楽しげで今も昔も変わらない儚く美しい花火への思いが伝わってきました。
ということで、「もののあはれ」という独特の感覚についてよく知ることのできる展示でした。とは言え、似たような章があったり作品同士の繋がりが無いので、全体的にはそれほどまとまりが無かったかな。展示されている作品は良い物が多いので、気になる方はチェックしてみてください。
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら
まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
「もののあはれ」と日本の美
【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2013_2/index.html
【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2013年4月17日(水)~6月16日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
前編では上階の展示をご紹介しましたが、今日は下階の後半の展示についてご紹介します。
<第六章 「もののあはれ」と花鳥風月 移り変わる日本の四季>
雪月花や花鳥風月など季節の移ろいと共に姿を変える自然の風物は日本人が思い浮かべる「もののあはれ」の情趣を代表する取り合わせと言えます。この章ではそうした題材の作品が並び、会場内には鳥の声が流れていました。
71 狩野永納 「春夏花鳥図屏風」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の金地の屏風で、右隻は川辺に桜や牡丹、柳などの植物と、キジ、鶯、燕などの鳥が描かれています。これは春の花鳥かな? 一方、左隻はアヤメ、松、ゆりなどの植物と三光鳥(サンコウチョウ)という鳥などが描かれていて、こちらは恐らく夏だと思います。 色が強めで明るく華やかな印象で、鳥の舞い飛ぶ感じが軽やかでリズムを感じました。
73 「秋草鶉図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風で、緑のススキが茂り、その中にウズラたちが描かれています。金地の地面の上ではウズラの親子たちが、餌を食べていたり羽を広げたり、それぞれのんびりしていて、特に子供の姿が可愛らしいです。また、ススキは長めなのですが。これは細かい曲線を幾重にも重ねて描いているようで生命力と優美さを感じさせました。 解説によると、この屏風は左右で同じように見えて右から左へと季節が流れているとのことでした。
62 仁阿弥道八 「色絵桜楓文透鉢」 ★こちらで観られます
これは大きな鉢で、中に真っ赤な紅葉と満開の桜が描かれ、側面にまで絵が続いています。デフォルメされた感じのデザインで、側面に穴が開いていて枝の隙間を表す点などが、仁清の作品を彷彿とさせました。しかし、仁清にはないどっしりとしたたくましい印象も受けるかな。色が鮮やかなのも派手に見えました。
87 本阿弥光悦/俵屋宗達 「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」
左右で色の違う料紙に、金泥や墨で蓮が描かれ、そこに小倉百人一首の歌が詠まれた作品です。これは絵を俵屋宗達、書は本阿弥光悦が書いたもので、元々は巻物だったようですが後に分割されて断簡となり、一部は関東大震災で失われてしまったそうです。簡潔かつ流麗な宗達の絵と、軽やかでリズムのある光悦の文字が踊るようで、非常に素晴らしい作品でした。
<第七章 秋草にみる「もののあはれ」 抒情のリズムと調和の美>
藤袴、女郎花、萩、ススキなど、秋草は絵巻や屏風など美術の各分野に登場します。そのほとんどは脇役ですが、季節感を持ち込みその場面を暗示したりしてくれる役割をはたすようです。ここにはそうした秋草をテーマにした作品が並んでいました。
102 「時雨螺鈿鞍」 ★こちらで観られます
これは螺鈿などが施された漆塗りの馬の鞍です。前面と後面に葛の葉と松などが流れるように配置されていて、かなり緻密に表現されています。よく観ると中には文字らしきものが散らされていて、これは「わが恋は 松を時雨の 染めかねて 真葛が原に 風さわぐなり」という慈円の歌を表しているようです。この豪華かつ機知に富む作品は見れば見るほど驚きがありました。
この辺には蒔絵の鏡台や湯おけなどもありました。
123 鈴木其一 「芒野図屏風」
これは2曲1隻の屏風で、無数のススキが銀と墨で描かれています。逆に言うとそれしか描かれていないのですが、蛇行するようにやや白っぽいススキがあり、その色の配置によって霧が立ち込めているように見えるのが面白いです。神秘的で静けさや湿気までもが感じられそうな作品でした。
参考記事:琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 (出光美術館)
<第八章 暮らしの中の「もののあはれ」 近世から近現代へ>
最後は近現代のコーナーです。花見や月見、花火など生活のなかにある「もののあはれ」に関する作品が並んでいました。
143 鏑木清方 「五月雨 小下絵」
これは2曲1双の屏風で、右隻は輿に乗った着物の女性の後姿が描かれています。一方、左隻は頭に布をかぶった青い着物の女性が、地面に足を乗せて座っています。解説によると、この2人は紅葉狩りに来た姉妹とのことで、画面には舞い散る葉っぱがヒラヒラと舞っている様子も描かれていました。淡い色合いが何とも清楚で、女性たちは清方の美人らしい品と色気がありました。季節感もあり情緒を感じる作品です。
134 歌川広重 「東都両国遊舩之図」
これは3枚続きの浮世絵で、画面のやや上の方に左右に向かって橋がかかり、そこには沢山に人が描かれています。さらに手前には屋形船が無数に出て賑わっているようで、夕暮れの空には花火が花開いていました。楽しげで今も昔も変わらない儚く美しい花火への思いが伝わってきました。
ということで、「もののあはれ」という独特の感覚についてよく知ることのできる展示でした。とは言え、似たような章があったり作品同士の繋がりが無いので、全体的にはそれほどまとまりが無かったかな。展示されている作品は良い物が多いので、気になる方はチェックしてみてください。
参照記事:★この記事を参照している記事
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前回ご紹介したお店でお茶する前に、サントリー美術館で「もののあはれ」と日本の美 を観てきました。この展示は9つの期間に分かれていて、私が観たのは最初の1期の内容でした。メモを多めに取ってきたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

【展覧名】
「もののあはれ」と日本の美
【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2013_2/index.html
【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2013年4月17日(水)~6月16日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
お客さんは結構いましたが、特に混んでいるというわけでもなくゆっくりと観ることができました。
さて、今回は「もののあはれ」についての展示となっています。「もののあはれ」という言葉は人生の機微や四季の移ろいなどに触れた時に感じる、優美で繊細な しみじみとした情感を意味するそうで、古今和歌集や源氏物語に代表されるように、古来日本人は自然の美しさに人生の喜びや哀愁を託して和歌を詠み、物語を作ったそうです。この展覧会では雪月花や花鳥風月に代表される自然の景物を詠んだ和歌や、貴族を主人公とした物語絵に伺える「もののあはれ」を基調とする美意識に着目し、平安以来の美術にその継承と変化を探るという趣旨となっていました。テーマごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<冒頭>
まずは冒頭に見どころとなる作品が展示されていました。
101 「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」
これは大きめの蓋付きの蒔絵の箱で、蓋と側面に螺鈿を使った「浮線綾」という花のような丸紋が表されています。鏡で裏蓋を見ることができたのですが、そちらには30種類もの四季の花が金色で描かれていて、豪華さと落ち着いた気品を漂わせていました。特に裏面の草木の優美さは好みです。
<第一章 「もののあはれ」の源流 貴族の生活と雅びの心>
1章は「もののあはれ」のルーツについてのコーナーです。「もののあはれ」につながる要素は昔からあるそうですが、平安時代や鎌倉時代の貴族たちの生活の中で洗練された感覚と言えるようです。ここでは「もののあはれ」に通じる情趣が育まれた背景が紹介されていました。
5 「豊明絵草紙」
これは巻物で、1人の貴族が極楽往生するまでの物語が描かれています。屋根のない部屋を上から覗き込むような「吹抜屋台」の技法で描かれ、墨一色の「白描絵」でかなり緻密な表現になっています。ストーリーは、妻が病気で臨終するの際に、主人公は念仏を勧められるというもので、その後主人公は現世を儚み子息と分かれて仏道に入ります。そして山の庵で念仏三昧をしていると、子息が訪れ末子の死が告げられ、最後は死期を悟った主人公がひたすら念仏を唱えて往生するそうです(最後は挿絵無し) そういった話なので結構悲しんでいるシーンが多めのようでしたが、庭の草花の美しさや人々の感情、雅な雰囲気など当時の美意識が伝わってくるようでした。
<第二章 「もののあはれ」という言葉 本居宣長を中心に>
「もののあはれ」の「あはれ」を巡って解釈に広がりがあるそうで、「哀れ」という漢字を当てるとどこか悲しくはかなげなイメージになりますが、本体は賛嘆や愛情を含めて深く心惹かれる感じを意味していたそうです。この「もののあはれ」を江戸時代に考察したのが本居宣長で、その著作によるば「もののあはれ」を知ることが人生を深く享受することに繋がると指摘しているそうです。ここには本居宣長に関する著作や自画自賛像などが並んでいました。
7 本居宣長 「紫文要領 稿本」 ★こちらで観られます
これは本居宣長による源氏物語の解釈本です。当時、本居宣長は「もののあはれ」とは何かと訊かれた際にうまく答えられなかったそうで、やがてそれは美の理念であると気づいたそうです。この本では源氏物語は「もののあはれ」の文学であると論じているそうで、従来の仏教的な解釈と比べて画期的な考えだったようです。現代の我々は古文などで源氏物語=もののあはれの文学と習うのは本居宣長によるところが大きいと思いますが、それ以前は違った解釈が主流だったというのはちょっと意外でした。 きっちりとした字で規則正しく描かれ、所々に打ち消し線のようなものもあり、稿本であることを伺わせました。
この近くにもう一冊、本居宣長の本がありました。こちらは「もののあはれ」を和歌の生まれる基盤と結びつけて論じているそうです。
<第三章 古典にみる「もののあはれ」 『源氏物語』をめぐって>
源氏物語は平安時代の貴族たちがどのように四季の自然を愛で どんな思いで人と関わっていたかを伝えてくれるそうです。その情趣豊かな物語は絵巻や屏風、工芸などにも取り上げられ、ここにはそうした品々が並んでいました。
13 岩佐又兵衛 「官女観菊図」 ★こちらで観られます
元は押絵貼り屏風の中の1扇だったものが掛け軸になった作品で、牛車に乗る3人の女性が車の脇の菊を鑑賞している様子が描かれています。御簾を上げる女性は楽しそうな感じで、菊を見る2人もしみじみと喜んでいるようです。ほぼ白黒の作品ですが、ほんのちょっぴりだけ頬に朱が塗られているようで、自然に対する気持ちが伝わってきました。
17 「浮舟螺鈿蒔絵焚殻入」
これは小さめの蒔絵の入れ物で、フタの付いた丸い形をしていて、中には炊き終わった香木の欠片などが入れられるそうです。側面には金色で船に乗る男女が描かれ、所々に螺鈿を使って草花が表されています。解説によると、これは源氏物語の「浮舟」に取材しているそうで、浮舟の心が定まらないのを小舟になぞらえた歌で表した話となっているようです。草木は何とも可憐で、全体的に気品溢れる作品でした。
25 土佐光起 「清少納言図」
雪の積もる庭と、部屋の中で御簾を上げる清少納言が描かれた作品です。これは枕草子の299段「香炉峰の雪」の話をテーマにしていて、中宮の定子から「香炉峰の雪やいかならん」と訊かれた際に清少納言が御簾を上げて応えたという話を元にしています。これは白楽天の詩句になぞらえて機知を利かせた応答で、枕草子でも結構有名な話かも。御簾越しに見える清少納言の顔の表現が見事で、知的な雰囲気がありました。私の清少納言のイメージではもっと得意げな顔をしてても良いと思いますがw
この隣には3幅対の狩野常信の「紫式部・黄蜀葵・菊図」もありました。草花の繊細な描写が情趣豊かです。
<第四章 和歌の伝統と「もののあはれ」 歌仙たちの世界>
物語の展開の中でも「もののあはれ」の情趣が際立っているのは和歌が詠み交わされる場面と言えるそうで、和歌は書跡における文字の美しさと料紙装飾とともに鑑賞され受け継がれてきました。三十六歌仙などは絵画化された作品も作られ、ここにはそうした作品が並んでいました。
32 「西行物語絵巻 白描本」
これは西行の物語を描いた作品で、西行が23歳の時に出家し諸国行脚をしながら仏道と和歌に半生を費やした様子が描かれているようです。展示されていたのは、元々は北面の武士だった西行が友人の死をきっかけに出家するシーンで、家の縁側で娘を蹴り落としているところが描かれています。ちょっと家族が可哀想ですが出家はこういうものかな…。 また、もう1巻では吉野の山で川辺に座っている姿が描かれ、四季と名所も合わせて描いているようでした。いずれも色の無い白描絵ですが、しみじみとした雰囲気が出ていました。
この近くには鈴木其一「四季歌意図巻」や尾形乾山「短冊皿」など和歌をテーマにした作品もありました。
<第五章 「もののあはれ」と月光の表現 新月から有明の月まで>
月は「もののあはれ」を誘う屈指の存在として和歌に詠まれ、絵画や工芸においても表されてきました。ここにはそうした月を主題にした作品が並んでいました。
52 「砧蒔絵硯箱」 ★こちらで観られます
これは蒔絵の硯箱で、蓋の表には右上に満月が表され、下の方には草原の中に硬そうな(陶器?)枕が転がり、その枕にはバクが描かれています。また、裏面には板葺き屋根の家で砧(きぬた)を打つ男女が描かれています。解説によると、表面の枕の近くには「しられ」「ぬ」「る」という3組の文字が隠されている「葦手絵」の技法が使われているようで、この文字によって裏面と合わせて「衣打つ 音を聞くにぞ 知られぬる 里遠からぬ 草枕とは」という千載和歌集の俊成の和歌を表しているそうです。パッと見るとシュールな光景にすら見えますが、非常に緻密かつ機知に富んだ作品で見応えがありました。
ちなみに、じっくり観ても文字を探すのは困難でしたw e国宝で超拡大して調べてみてもまだ分からない…w ウォーリーを探せとか苦手だったもんなあ…。
参考リンク:e国宝の「砧蒔絵硯箱」のページ
近くには長谷川等伯の一派がよく描いた「柳橋水車図屏風」などもありました。また、月齢(月の満ち欠け)に関する説明が月の形と共に展示されていました。
ということで、長くなってきたので今日はこの辺にしておこうと思います。侘び寂びと並び日本独特の「もののあはれ」という情感を主題にしているのが変わっていて参考になります。下階となる6章以降も様々な視点から考察していましたので、次回はそれについてご紹介します。
→ 後編はこちら
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
「もののあはれ」と日本の美
【公式サイト】
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2013_2/index.html
【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2013年4月17日(水)~6月16日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
お客さんは結構いましたが、特に混んでいるというわけでもなくゆっくりと観ることができました。
さて、今回は「もののあはれ」についての展示となっています。「もののあはれ」という言葉は人生の機微や四季の移ろいなどに触れた時に感じる、優美で繊細な しみじみとした情感を意味するそうで、古今和歌集や源氏物語に代表されるように、古来日本人は自然の美しさに人生の喜びや哀愁を託して和歌を詠み、物語を作ったそうです。この展覧会では雪月花や花鳥風月に代表される自然の景物を詠んだ和歌や、貴族を主人公とした物語絵に伺える「もののあはれ」を基調とする美意識に着目し、平安以来の美術にその継承と変化を探るという趣旨となっていました。テーマごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<冒頭>
まずは冒頭に見どころとなる作品が展示されていました。
101 「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」
これは大きめの蓋付きの蒔絵の箱で、蓋と側面に螺鈿を使った「浮線綾」という花のような丸紋が表されています。鏡で裏蓋を見ることができたのですが、そちらには30種類もの四季の花が金色で描かれていて、豪華さと落ち着いた気品を漂わせていました。特に裏面の草木の優美さは好みです。
<第一章 「もののあはれ」の源流 貴族の生活と雅びの心>
1章は「もののあはれ」のルーツについてのコーナーです。「もののあはれ」につながる要素は昔からあるそうですが、平安時代や鎌倉時代の貴族たちの生活の中で洗練された感覚と言えるようです。ここでは「もののあはれ」に通じる情趣が育まれた背景が紹介されていました。
5 「豊明絵草紙」
これは巻物で、1人の貴族が極楽往生するまでの物語が描かれています。屋根のない部屋を上から覗き込むような「吹抜屋台」の技法で描かれ、墨一色の「白描絵」でかなり緻密な表現になっています。ストーリーは、妻が病気で臨終するの際に、主人公は念仏を勧められるというもので、その後主人公は現世を儚み子息と分かれて仏道に入ります。そして山の庵で念仏三昧をしていると、子息が訪れ末子の死が告げられ、最後は死期を悟った主人公がひたすら念仏を唱えて往生するそうです(最後は挿絵無し) そういった話なので結構悲しんでいるシーンが多めのようでしたが、庭の草花の美しさや人々の感情、雅な雰囲気など当時の美意識が伝わってくるようでした。
<第二章 「もののあはれ」という言葉 本居宣長を中心に>
「もののあはれ」の「あはれ」を巡って解釈に広がりがあるそうで、「哀れ」という漢字を当てるとどこか悲しくはかなげなイメージになりますが、本体は賛嘆や愛情を含めて深く心惹かれる感じを意味していたそうです。この「もののあはれ」を江戸時代に考察したのが本居宣長で、その著作によるば「もののあはれ」を知ることが人生を深く享受することに繋がると指摘しているそうです。ここには本居宣長に関する著作や自画自賛像などが並んでいました。
7 本居宣長 「紫文要領 稿本」 ★こちらで観られます
これは本居宣長による源氏物語の解釈本です。当時、本居宣長は「もののあはれ」とは何かと訊かれた際にうまく答えられなかったそうで、やがてそれは美の理念であると気づいたそうです。この本では源氏物語は「もののあはれ」の文学であると論じているそうで、従来の仏教的な解釈と比べて画期的な考えだったようです。現代の我々は古文などで源氏物語=もののあはれの文学と習うのは本居宣長によるところが大きいと思いますが、それ以前は違った解釈が主流だったというのはちょっと意外でした。 きっちりとした字で規則正しく描かれ、所々に打ち消し線のようなものもあり、稿本であることを伺わせました。
この近くにもう一冊、本居宣長の本がありました。こちらは「もののあはれ」を和歌の生まれる基盤と結びつけて論じているそうです。
<第三章 古典にみる「もののあはれ」 『源氏物語』をめぐって>
源氏物語は平安時代の貴族たちがどのように四季の自然を愛で どんな思いで人と関わっていたかを伝えてくれるそうです。その情趣豊かな物語は絵巻や屏風、工芸などにも取り上げられ、ここにはそうした品々が並んでいました。
13 岩佐又兵衛 「官女観菊図」 ★こちらで観られます
元は押絵貼り屏風の中の1扇だったものが掛け軸になった作品で、牛車に乗る3人の女性が車の脇の菊を鑑賞している様子が描かれています。御簾を上げる女性は楽しそうな感じで、菊を見る2人もしみじみと喜んでいるようです。ほぼ白黒の作品ですが、ほんのちょっぴりだけ頬に朱が塗られているようで、自然に対する気持ちが伝わってきました。
17 「浮舟螺鈿蒔絵焚殻入」
これは小さめの蒔絵の入れ物で、フタの付いた丸い形をしていて、中には炊き終わった香木の欠片などが入れられるそうです。側面には金色で船に乗る男女が描かれ、所々に螺鈿を使って草花が表されています。解説によると、これは源氏物語の「浮舟」に取材しているそうで、浮舟の心が定まらないのを小舟になぞらえた歌で表した話となっているようです。草木は何とも可憐で、全体的に気品溢れる作品でした。
25 土佐光起 「清少納言図」
雪の積もる庭と、部屋の中で御簾を上げる清少納言が描かれた作品です。これは枕草子の299段「香炉峰の雪」の話をテーマにしていて、中宮の定子から「香炉峰の雪やいかならん」と訊かれた際に清少納言が御簾を上げて応えたという話を元にしています。これは白楽天の詩句になぞらえて機知を利かせた応答で、枕草子でも結構有名な話かも。御簾越しに見える清少納言の顔の表現が見事で、知的な雰囲気がありました。私の清少納言のイメージではもっと得意げな顔をしてても良いと思いますがw
この隣には3幅対の狩野常信の「紫式部・黄蜀葵・菊図」もありました。草花の繊細な描写が情趣豊かです。
<第四章 和歌の伝統と「もののあはれ」 歌仙たちの世界>
物語の展開の中でも「もののあはれ」の情趣が際立っているのは和歌が詠み交わされる場面と言えるそうで、和歌は書跡における文字の美しさと料紙装飾とともに鑑賞され受け継がれてきました。三十六歌仙などは絵画化された作品も作られ、ここにはそうした作品が並んでいました。
32 「西行物語絵巻 白描本」
これは西行の物語を描いた作品で、西行が23歳の時に出家し諸国行脚をしながら仏道と和歌に半生を費やした様子が描かれているようです。展示されていたのは、元々は北面の武士だった西行が友人の死をきっかけに出家するシーンで、家の縁側で娘を蹴り落としているところが描かれています。ちょっと家族が可哀想ですが出家はこういうものかな…。 また、もう1巻では吉野の山で川辺に座っている姿が描かれ、四季と名所も合わせて描いているようでした。いずれも色の無い白描絵ですが、しみじみとした雰囲気が出ていました。
この近くには鈴木其一「四季歌意図巻」や尾形乾山「短冊皿」など和歌をテーマにした作品もありました。
<第五章 「もののあはれ」と月光の表現 新月から有明の月まで>
月は「もののあはれ」を誘う屈指の存在として和歌に詠まれ、絵画や工芸においても表されてきました。ここにはそうした月を主題にした作品が並んでいました。
52 「砧蒔絵硯箱」 ★こちらで観られます
これは蒔絵の硯箱で、蓋の表には右上に満月が表され、下の方には草原の中に硬そうな(陶器?)枕が転がり、その枕にはバクが描かれています。また、裏面には板葺き屋根の家で砧(きぬた)を打つ男女が描かれています。解説によると、表面の枕の近くには「しられ」「ぬ」「る」という3組の文字が隠されている「葦手絵」の技法が使われているようで、この文字によって裏面と合わせて「衣打つ 音を聞くにぞ 知られぬる 里遠からぬ 草枕とは」という千載和歌集の俊成の和歌を表しているそうです。パッと見るとシュールな光景にすら見えますが、非常に緻密かつ機知に富んだ作品で見応えがありました。
ちなみに、じっくり観ても文字を探すのは困難でしたw e国宝で超拡大して調べてみてもまだ分からない…w ウォーリーを探せとか苦手だったもんなあ…。
参考リンク:e国宝の「砧蒔絵硯箱」のページ
近くには長谷川等伯の一派がよく描いた「柳橋水車図屏風」などもありました。また、月齢(月の満ち欠け)に関する説明が月の形と共に展示されていました。
ということで、長くなってきたので今日はこの辺にしておこうと思います。侘び寂びと並び日本独特の「もののあはれ」という情感を主題にしているのが変わっていて参考になります。下階となる6章以降も様々な視点から考察していましたので、次回はそれについてご紹介します。
→ 後編はこちら
参照記事:★この記事を参照している記事
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先週の土曜日に、六本木のミッドタウンで展覧会を観てきました。展示についての記事を準備中ですので、先に展示の後に寄った「ジャン=ポール・エヴァン」というお店をご紹介しようと思います。

【店名】
ジャン=ポール・エヴァン
【ジャンル】
カフェ/洋菓子
【公式サイト】
http://www.tokyo-midtown.com/jp/shop-restaurants/food-cafe/SOP0000060/index.html
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13037391/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
六本木駅/乃木坂駅
【近くの美術館】
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
国立新美術館
など
【この日にかかった1人の費用】
1400円程度
【味】
不味_1_2_3_4_⑤_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
ちょうど満席くらいで1~2分待ってからの入店となりました。このお店はいつも混んでいるので今まで中々入れなかったのですが、この日は夕方に行ったこともあってかいつもよりは待ち時間が少なかったのではないかと思います。
さて、このお店は有名なショコラティエ(チョコレート菓子の職人)であるジャン=ポール・エヴァン氏のお店で、名前がそのまま店名になっているチョコレートのブランド店です。ジャン=ポール・エヴァン氏はフランス国家最優秀職人賞を受賞した職人だそうで、このお店ではチョコレートの販売と併設のカフェの2つの業態となっています。
店内はあまり席は多くなく若干狭いのですが、座り心地の良い椅子が使われていて見た目ほど窮屈な感じはしませんでした。早速メニューを頂いて頼もうとすると、結構売り切れてしまったものが多く、選択肢は限られていましたw いくつか頼みたいのがあっただけにちょっと残念ですが、この日はフランボアーズのチョコケーキとカフェ(コーヒー)を頼みました。
まずはフランボアーズのチョコケーキ(662円)

濃厚で香りの良いチョコレートで、フランボアーズ風味のソースの爽やかさと相まって非常に美味しく、上品な感じでした。
続いてカフェ(700円程度)

こちらは酸味が強めでコクがあり、苦味は少なめでした。フランボワーズのケーキだったので酸味よりは苦味が欲しかったですが、このコーヒーも非常に美味しかったです。
最後にお会計はテーブル会計でした。こちらのお店の店員さんは気が利くようで、こまめに接客してくれたのも好印象でした。
ということで、予想していたよりも満足することができました。やはりチョコレート屋さんのチョコレートは美味しい…w 帰りにお土産でショップのほうでチョコレートも買いました。1つ400円くらいしますが、それだけの美味しさがあります。種類も豊富なので選ぶのも楽しかったです。 近いうちにでも再訪して、売り切れだったケーキを食べてみたいと思うのですが、美味しいだけに大人気で中々入れないのが難点かもw 数ある六本木の中でもオススメのお店です。

【店名】
ジャン=ポール・エヴァン
【ジャンル】
カフェ/洋菓子
【公式サイト】
http://www.tokyo-midtown.com/jp/shop-restaurants/food-cafe/SOP0000060/index.html
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13037391/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
六本木駅/乃木坂駅
【近くの美術館】
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
国立新美術館
など
【この日にかかった1人の費用】
1400円程度
【味】
不味_1_2_3_4_⑤_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
ちょうど満席くらいで1~2分待ってからの入店となりました。このお店はいつも混んでいるので今まで中々入れなかったのですが、この日は夕方に行ったこともあってかいつもよりは待ち時間が少なかったのではないかと思います。
さて、このお店は有名なショコラティエ(チョコレート菓子の職人)であるジャン=ポール・エヴァン氏のお店で、名前がそのまま店名になっているチョコレートのブランド店です。ジャン=ポール・エヴァン氏はフランス国家最優秀職人賞を受賞した職人だそうで、このお店ではチョコレートの販売と併設のカフェの2つの業態となっています。
店内はあまり席は多くなく若干狭いのですが、座り心地の良い椅子が使われていて見た目ほど窮屈な感じはしませんでした。早速メニューを頂いて頼もうとすると、結構売り切れてしまったものが多く、選択肢は限られていましたw いくつか頼みたいのがあっただけにちょっと残念ですが、この日はフランボアーズのチョコケーキとカフェ(コーヒー)を頼みました。
まずはフランボアーズのチョコケーキ(662円)

濃厚で香りの良いチョコレートで、フランボアーズ風味のソースの爽やかさと相まって非常に美味しく、上品な感じでした。
続いてカフェ(700円程度)

こちらは酸味が強めでコクがあり、苦味は少なめでした。フランボワーズのケーキだったので酸味よりは苦味が欲しかったですが、このコーヒーも非常に美味しかったです。
最後にお会計はテーブル会計でした。こちらのお店の店員さんは気が利くようで、こまめに接客してくれたのも好印象でした。
ということで、予想していたよりも満足することができました。やはりチョコレート屋さんのチョコレートは美味しい…w 帰りにお土産でショップのほうでチョコレートも買いました。1つ400円くらいしますが、それだけの美味しさがあります。種類も豊富なので選ぶのも楽しかったです。 近いうちにでも再訪して、売り切れだったケーキを食べてみたいと思うのですが、美味しいだけに大人気で中々入れないのが難点かもw 数ある六本木の中でもオススメのお店です。
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今日は前回の記事に引き続き、損保ジャパン東郷青児美術館の「オディロン・ルドン ―夢の起源―」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
オディロン・ルドン ―夢の起源―
【公式サイト】
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_redon.html
【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2013年4月20日(土)~6月23日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日 時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前編では2章の途中までご紹介しましたが、今日は残り半分についてです。後半も以前ご紹介した作品が多いですが、改めてご紹介致します。
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
<第2部:「黒の画家-怪物たちの誕生」>
前編でご紹介した最初の石版画集「夢のなかで」の次にはダーウィンの死の翌年に描かれた石版画集「起源」が並んでいました。
60 オディロン・ルドン 「石版画集[起源] おそらく花の中に最初の視覚が試みられた」 ★こちらで観られます
植物の花の部分が目になったような不思議な生物?を描いた作品で、これは「起源」シリーズの9枚のうちの3枚目にあたります。妙なリアルさと艶かしい感じで、左上を見つめる目が強烈なインパクトです。この起源シリーズはこうした目を描いた作品が多く、種の発生から進化していく様子が表現され、最後に人間が現れるという流れとなっています。セイレーンやサテュロスといった半人半獣の生き物もその過程として描かれているのが興味深いです。残念ながら全部は揃わず3点は写真で代用されていました。
67 オディロン・ルドン 「沼の花」
こちらは木炭画で、帽子をかぶった人の顔を持つ植物が水面から伸びている様子が描かれています。目に生気がなく、どこを見ているのかわからない感じで、背景は鳥の姿?があるもののガランとした印象を受け寂しげです。解説によると、ルドンは1880年~85年頃にこうした人の顔を持つ花を繰り返し描いたそうで、その陰鬱な雰囲気は孤独な幼少期を過ごした作者の内面を映しているのではないかとのことでした。
82 オディロン・ルドン 「蜘蛛」
これは今回のポスターにもなっている作品で、ルドンの中でも特に有名かな。ニヤニヤした人の顔を持つ黒い蜘蛛が描かれ、毛むくじゃらでどことなく憎めない感じです。不気味だけど可愛いやつですw
この近くには「目を閉じて」のリトグラフ版などもありました。
続いては石版画集「ゴヤ頌」のコーナーです。ゴヤはスペインの画家ですが、晩年はルドンの生まれ故郷のボルドーで過ごしていて、幻想的で陰鬱な印象を受ける点においてルドンと共通するものを感じます、
参考記事:
プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想前編(国立西洋美術館)
プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想後編(国立西洋美術館)
69 オディロン・ルドン 「石版画集[ゴヤ頌] 夢の中で私は空に神秘の顔を見た」
やけに長い男の顔が描かれた作品で、左側は影になりやや上目遣いでこちらを伺っているように見えます。寂しげというかちょっと不安げなようにも見えましたが、幻想的な夢の中のような雰囲気がありました。
続いては版画集「夜」のコーナーです。これは前編でご紹介した師匠のブレスダンの肖像とされる素描を元にした作品で、この作品を作る前年にブレスダンが亡くなっているのでオマージュ的な意味があるようでした。
77 オディロン・ルドン 「石版画集[夜] 堕天使はその時黒い翼を開いた」
月?の下で黒く硬そうな羽を広げた坊主頭の堕天使が描かれた作品です。ギョロッとした目つきですが虚ろな表情で、どことなく力無い印象を受けました。何かに疲れてる感じかなw
その次は「聖アントワーヌの誘惑」のコーナーで、これは42点もあるようですが今回の展覧会では海に関する5点が選ばれて展示されていました。
85 オディロン・ルドン 「オアンネス:混沌の最初の意識である私は、物質を固くし、形体を定めるために、深淵からおどり出てきた」
人の顔のついた魚と、その周りの貝殻のようなものが描かれた作品です。魚はじっと考え事をしているような顔つきで、これは海の神のようです。解説によると、この頃のフランスでは深海調査が行われていたようで、ルドンも海に関心を向けていたとのことです。聖アントワーヌの誘惑は夢のなかのような世界が描かれることが多い題材ですが、ルドンにはぴったりなモチーフに思えました。
その後はボードレールの詩集「悪の華」を題材にした版画集のコーナーです。こちらにはベルギーの摺師イブリーの技法が使われているそうで、ルドンが描いた素描をイブリーが銅版に転写して版画化しているそうです。また、前編でご紹介したとおり、ルドンは「悪の華」もクラヴォーの家で読んでいたようで、ここにはそれを絵画化した作品が並んでいました。
96 オディロン・ルドン 「石版画集[悪の華] 章末の挿絵」
これは顔がついた花で、目は真っ黒で生気がなく転がっているような印象を受けます。これが「悪の華」のイメージなのかな? 悪というにはあまりにも儚くて妖しい雰囲気の花でした。
続いては「夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出のために)」のコーナーです。こちらはクラヴォーが自殺した翌年に作られた版画集です。
98 オディロン・ルドン 「石版画集[夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出のために)] …それは一枚の帳、ひとつの刻印であった…」
これは聖ヴェロニカがキリストの汗を拭った際に、ベールに顔が写ったという奇跡を題材にした作品で、ここではキリストの顔はクラヴォーとなっていて、やや虚ろな感じもします。しかしキリストに見立てるという点からルドンのクラヴォーへの畏敬の念が感じられました。ここまで作品を観てくると、クラヴォーから得たものはルドンの絵画世界に大きく影響しているのが分かります。
106 オディロン・ルドン 「神秘的な紳士 あるいは オイディプスとスフィンクス」 ★こちらで観られます
これは神殿のような所で、左に甲冑を着た若い騎士が、目を閉じた生首を抱えるようなポーズで(よく観ると首は浮いている)描かれ、右には首を傾げて謎かけしているスフィンクスが描かれた作品です。木炭の上にパステルで色付されているようで、青を背景に神秘的で静かな雰囲気がありました。解説によると、これはギュスターヴ・モローの作品から影響を受けているそうで、象徴主義ならではの精神的なものが感じられました。
この辺は木炭画が並んでいました、女性の横顔を描いた作品が多かったかな。
<第3部:色彩のファンタジー>
最後は色彩の作品のコーナーです。1890年代にルドンは黒を捨てて色彩画家に転身したのですが、この時期は普仏戦争からのショックも和らぎ、1889年の息子の誕生や、「黒」の故郷とも言えるペイルルバートの売却(1898年)などの私生活の変化の時期に符号するようです。色彩の移行に伴い主題も変化したそうで、神話や宗教に関連する伝統的な主題を改めて取り上げたようです。そうした意味では伝統回帰とも言えますが、表現的な色彩と写実的絵画の奥行きを拒否した空間は20世紀のモダニズムの到来を告げているようです。
晩年の色彩のルドンは輝きに満ちていたように思われますが、第一次世界大戦によって再び暗雲が迫ったそうです。一人息子のアリが出征してしまい、ルドンは戦争のニュースを求めて外出した際に肺炎となり、1916年に76歳でパリの自宅で亡くなりました。ここにはそうした色彩の時代の作品が並び、最晩年までの作品も展示されていました。
115 オディロン・ルドン 「神秘的な対話」
屋外の石柱が立ち並ぶ所で、2人の女性が何かを話し合っている?様子が描かれた作品です。赤い植物を持ってうつむく女性と、指を指すような感じの黄色い布をかぶった女性で、背景はピンクの雲が浮かび、足元には色とりどりの花が咲いています。夢の中のようなぼんやりした雰囲気が漂い、まさに神秘的な印象を受けました。
この辺には主に岐阜県美術館の作品が並んでいたので、見覚えのある作品もありましたが、初めてみる海外所蔵の作品も何点かありました。
127 オディロン・ルドン 「オフィーリア」
目を閉じている悲劇のオフィーリアを描いた作品です。水に沈んでいるのか、肩から下は緑に流れて行くような感じで、周りは暗く右上にオレンジの月のようなものが描かれています。意外と顔は穏やかで、やや緑がかっているかな。精神性を感じさせる表情でした。
この隣にもオフィーリアを描いた作品が並んでいました。こちらはだいぶ構図が違っていました。
122 オディロン・ルドン 「青い花瓶の花々」
これは青い花瓶に入った黄色、オレンジ、白、赤、青などの花々が描かれた作品です。実際の花を元にしているのか細部まで描かれていますが、ぼんやりとしていて緑~ピンクの背景の中に浮かんでいるように見えました。何故か全体的に上の方に寄っているのが気になったかなw
この辺はこうした花を描いた作品が何点か並んでいました。
137 オディロン・ルドン 「オルフェウスの死」
これは竪琴の上に横たわるオルフェウスの生首が描かれた作品です。周りは植物の歯のようなものがありますが、曖昧で川なのか緑なのかはハッキリとは分かりません。オルフェウスの顔もちょっと透けていて、額のあたりは背景がそのまま見えているなど、儚い印象を受けました。しかし全体的には明るく暖かな色合いなのが不思議で面白かったです。また、題材のためかどことなくギュスターヴ・モローを彷彿としました。
135 オディロン・ルドン 「アポロンの戦車」 ★こちらで観られます
これは天に向かって駆ける4頭の天馬と、その後ろに引かれる戦車に乗ったアポロンが描かれた作品です。その下には岩山が描かれていて、天馬・アポロン・岩山はすべて赤っぽい色合いの濃淡が付けられています。その繊細な色の違いが幻想的で、燃え立つような印象を受けました。解説によると、これはルーヴル美術館のアポロンの間にあるドラクロワの絵に影響を受けているとのことです。また、この絵は見覚えがあると思ったら、隣に同じ構図の作品があり、そちらでは天馬・アポロン・岩山がより具象的な感じで色もそれぞれに合った色となっていました。しかし私としては象徴的な赤の濃淡の作品のほうが好みでした。
この辺にはもう1枚のアポロンの戦車の絵がありました。独特のくすんだ感じの色合いが好みです。
145 オディロン・ルドン 「マドンナ」
縦長の大きめの作品で、聖母と白い花をつける植物が描かれています。画面全体がアーチ状に囲まれ、聖母は顔の辺りが赤く神聖な印象を受けます。色数が少ないので全体的に落ち着いた雰囲気にも思えるかな。解説によると、白い花は希望や新しい生命の誕生を暗示しているそうで、手前に配置されているのはジャポニスムの影響とのことでした。
151 オディロン・ルドン 「聖母」 ★こちらで観られます
明日加筆します。
これはルドンが亡くなった時にイーゼルに掛けられていた未完の作品で、息子のアリが戦争から無事に帰ってくることを祈って描かれたそうです。全体的に赤の濃淡でうつむいたマリアが描かれ、こちらも神聖かつ静かな雰囲気の作品となっていました。完成したらどう変わっていったのだろうか…。
ということで、ルドンの世界をじっくりと堪能することができました。黒も色彩もそれぞれ個性的な世界観となっていて印象深い内容です。会期は長めとなっていますので、気になる方は是非どうぞ。私は図録も買ってきました。
おまけ:
最近、「悪の華」というアニメが放送されていて、ボードレールやルドン風の作品がちょこっと出て来ました。まあ、本筋はあまりそれらと関係無さそうですが、これでルドンに興味を持つ人も出てくるかも??
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
オディロン・ルドン ―夢の起源―
【公式サイト】
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_redon.html
【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2013年4月20日(土)~6月23日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日 時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前編では2章の途中までご紹介しましたが、今日は残り半分についてです。後半も以前ご紹介した作品が多いですが、改めてご紹介致します。
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
<第2部:「黒の画家-怪物たちの誕生」>
前編でご紹介した最初の石版画集「夢のなかで」の次にはダーウィンの死の翌年に描かれた石版画集「起源」が並んでいました。
60 オディロン・ルドン 「石版画集[起源] おそらく花の中に最初の視覚が試みられた」 ★こちらで観られます
植物の花の部分が目になったような不思議な生物?を描いた作品で、これは「起源」シリーズの9枚のうちの3枚目にあたります。妙なリアルさと艶かしい感じで、左上を見つめる目が強烈なインパクトです。この起源シリーズはこうした目を描いた作品が多く、種の発生から進化していく様子が表現され、最後に人間が現れるという流れとなっています。セイレーンやサテュロスといった半人半獣の生き物もその過程として描かれているのが興味深いです。残念ながら全部は揃わず3点は写真で代用されていました。
67 オディロン・ルドン 「沼の花」
こちらは木炭画で、帽子をかぶった人の顔を持つ植物が水面から伸びている様子が描かれています。目に生気がなく、どこを見ているのかわからない感じで、背景は鳥の姿?があるもののガランとした印象を受け寂しげです。解説によると、ルドンは1880年~85年頃にこうした人の顔を持つ花を繰り返し描いたそうで、その陰鬱な雰囲気は孤独な幼少期を過ごした作者の内面を映しているのではないかとのことでした。
82 オディロン・ルドン 「蜘蛛」
これは今回のポスターにもなっている作品で、ルドンの中でも特に有名かな。ニヤニヤした人の顔を持つ黒い蜘蛛が描かれ、毛むくじゃらでどことなく憎めない感じです。不気味だけど可愛いやつですw
この近くには「目を閉じて」のリトグラフ版などもありました。
続いては石版画集「ゴヤ頌」のコーナーです。ゴヤはスペインの画家ですが、晩年はルドンの生まれ故郷のボルドーで過ごしていて、幻想的で陰鬱な印象を受ける点においてルドンと共通するものを感じます、
参考記事:
プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想前編(国立西洋美術館)
プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想後編(国立西洋美術館)
69 オディロン・ルドン 「石版画集[ゴヤ頌] 夢の中で私は空に神秘の顔を見た」
やけに長い男の顔が描かれた作品で、左側は影になりやや上目遣いでこちらを伺っているように見えます。寂しげというかちょっと不安げなようにも見えましたが、幻想的な夢の中のような雰囲気がありました。
続いては版画集「夜」のコーナーです。これは前編でご紹介した師匠のブレスダンの肖像とされる素描を元にした作品で、この作品を作る前年にブレスダンが亡くなっているのでオマージュ的な意味があるようでした。
77 オディロン・ルドン 「石版画集[夜] 堕天使はその時黒い翼を開いた」
月?の下で黒く硬そうな羽を広げた坊主頭の堕天使が描かれた作品です。ギョロッとした目つきですが虚ろな表情で、どことなく力無い印象を受けました。何かに疲れてる感じかなw
その次は「聖アントワーヌの誘惑」のコーナーで、これは42点もあるようですが今回の展覧会では海に関する5点が選ばれて展示されていました。
85 オディロン・ルドン 「オアンネス:混沌の最初の意識である私は、物質を固くし、形体を定めるために、深淵からおどり出てきた」
人の顔のついた魚と、その周りの貝殻のようなものが描かれた作品です。魚はじっと考え事をしているような顔つきで、これは海の神のようです。解説によると、この頃のフランスでは深海調査が行われていたようで、ルドンも海に関心を向けていたとのことです。聖アントワーヌの誘惑は夢のなかのような世界が描かれることが多い題材ですが、ルドンにはぴったりなモチーフに思えました。
その後はボードレールの詩集「悪の華」を題材にした版画集のコーナーです。こちらにはベルギーの摺師イブリーの技法が使われているそうで、ルドンが描いた素描をイブリーが銅版に転写して版画化しているそうです。また、前編でご紹介したとおり、ルドンは「悪の華」もクラヴォーの家で読んでいたようで、ここにはそれを絵画化した作品が並んでいました。
96 オディロン・ルドン 「石版画集[悪の華] 章末の挿絵」
これは顔がついた花で、目は真っ黒で生気がなく転がっているような印象を受けます。これが「悪の華」のイメージなのかな? 悪というにはあまりにも儚くて妖しい雰囲気の花でした。
続いては「夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出のために)」のコーナーです。こちらはクラヴォーが自殺した翌年に作られた版画集です。
98 オディロン・ルドン 「石版画集[夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出のために)] …それは一枚の帳、ひとつの刻印であった…」
これは聖ヴェロニカがキリストの汗を拭った際に、ベールに顔が写ったという奇跡を題材にした作品で、ここではキリストの顔はクラヴォーとなっていて、やや虚ろな感じもします。しかしキリストに見立てるという点からルドンのクラヴォーへの畏敬の念が感じられました。ここまで作品を観てくると、クラヴォーから得たものはルドンの絵画世界に大きく影響しているのが分かります。
106 オディロン・ルドン 「神秘的な紳士 あるいは オイディプスとスフィンクス」 ★こちらで観られます
これは神殿のような所で、左に甲冑を着た若い騎士が、目を閉じた生首を抱えるようなポーズで(よく観ると首は浮いている)描かれ、右には首を傾げて謎かけしているスフィンクスが描かれた作品です。木炭の上にパステルで色付されているようで、青を背景に神秘的で静かな雰囲気がありました。解説によると、これはギュスターヴ・モローの作品から影響を受けているそうで、象徴主義ならではの精神的なものが感じられました。
この辺は木炭画が並んでいました、女性の横顔を描いた作品が多かったかな。
<第3部:色彩のファンタジー>
最後は色彩の作品のコーナーです。1890年代にルドンは黒を捨てて色彩画家に転身したのですが、この時期は普仏戦争からのショックも和らぎ、1889年の息子の誕生や、「黒」の故郷とも言えるペイルルバートの売却(1898年)などの私生活の変化の時期に符号するようです。色彩の移行に伴い主題も変化したそうで、神話や宗教に関連する伝統的な主題を改めて取り上げたようです。そうした意味では伝統回帰とも言えますが、表現的な色彩と写実的絵画の奥行きを拒否した空間は20世紀のモダニズムの到来を告げているようです。
晩年の色彩のルドンは輝きに満ちていたように思われますが、第一次世界大戦によって再び暗雲が迫ったそうです。一人息子のアリが出征してしまい、ルドンは戦争のニュースを求めて外出した際に肺炎となり、1916年に76歳でパリの自宅で亡くなりました。ここにはそうした色彩の時代の作品が並び、最晩年までの作品も展示されていました。
115 オディロン・ルドン 「神秘的な対話」
屋外の石柱が立ち並ぶ所で、2人の女性が何かを話し合っている?様子が描かれた作品です。赤い植物を持ってうつむく女性と、指を指すような感じの黄色い布をかぶった女性で、背景はピンクの雲が浮かび、足元には色とりどりの花が咲いています。夢の中のようなぼんやりした雰囲気が漂い、まさに神秘的な印象を受けました。
この辺には主に岐阜県美術館の作品が並んでいたので、見覚えのある作品もありましたが、初めてみる海外所蔵の作品も何点かありました。
127 オディロン・ルドン 「オフィーリア」
目を閉じている悲劇のオフィーリアを描いた作品です。水に沈んでいるのか、肩から下は緑に流れて行くような感じで、周りは暗く右上にオレンジの月のようなものが描かれています。意外と顔は穏やかで、やや緑がかっているかな。精神性を感じさせる表情でした。
この隣にもオフィーリアを描いた作品が並んでいました。こちらはだいぶ構図が違っていました。
122 オディロン・ルドン 「青い花瓶の花々」
これは青い花瓶に入った黄色、オレンジ、白、赤、青などの花々が描かれた作品です。実際の花を元にしているのか細部まで描かれていますが、ぼんやりとしていて緑~ピンクの背景の中に浮かんでいるように見えました。何故か全体的に上の方に寄っているのが気になったかなw
この辺はこうした花を描いた作品が何点か並んでいました。
137 オディロン・ルドン 「オルフェウスの死」
これは竪琴の上に横たわるオルフェウスの生首が描かれた作品です。周りは植物の歯のようなものがありますが、曖昧で川なのか緑なのかはハッキリとは分かりません。オルフェウスの顔もちょっと透けていて、額のあたりは背景がそのまま見えているなど、儚い印象を受けました。しかし全体的には明るく暖かな色合いなのが不思議で面白かったです。また、題材のためかどことなくギュスターヴ・モローを彷彿としました。
135 オディロン・ルドン 「アポロンの戦車」 ★こちらで観られます
これは天に向かって駆ける4頭の天馬と、その後ろに引かれる戦車に乗ったアポロンが描かれた作品です。その下には岩山が描かれていて、天馬・アポロン・岩山はすべて赤っぽい色合いの濃淡が付けられています。その繊細な色の違いが幻想的で、燃え立つような印象を受けました。解説によると、これはルーヴル美術館のアポロンの間にあるドラクロワの絵に影響を受けているとのことです。また、この絵は見覚えがあると思ったら、隣に同じ構図の作品があり、そちらでは天馬・アポロン・岩山がより具象的な感じで色もそれぞれに合った色となっていました。しかし私としては象徴的な赤の濃淡の作品のほうが好みでした。
この辺にはもう1枚のアポロンの戦車の絵がありました。独特のくすんだ感じの色合いが好みです。
145 オディロン・ルドン 「マドンナ」
縦長の大きめの作品で、聖母と白い花をつける植物が描かれています。画面全体がアーチ状に囲まれ、聖母は顔の辺りが赤く神聖な印象を受けます。色数が少ないので全体的に落ち着いた雰囲気にも思えるかな。解説によると、白い花は希望や新しい生命の誕生を暗示しているそうで、手前に配置されているのはジャポニスムの影響とのことでした。
151 オディロン・ルドン 「聖母」 ★こちらで観られます
明日加筆します。
これはルドンが亡くなった時にイーゼルに掛けられていた未完の作品で、息子のアリが戦争から無事に帰ってくることを祈って描かれたそうです。全体的に赤の濃淡でうつむいたマリアが描かれ、こちらも神聖かつ静かな雰囲気の作品となっていました。完成したらどう変わっていったのだろうか…。
ということで、ルドンの世界をじっくりと堪能することができました。黒も色彩もそれぞれ個性的な世界観となっていて印象深い内容です。会期は長めとなっていますので、気になる方は是非どうぞ。私は図録も買ってきました。
おまけ:
最近、「悪の華」というアニメが放送されていて、ボードレールやルドン風の作品がちょこっと出て来ました。まあ、本筋はあまりそれらと関係無さそうですが、これでルドンに興味を持つ人も出てくるかも??
参照記事:★この記事を参照している記事
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前回ご紹介したカフェでお茶する前に、損保ジャパン東郷青児美術館で「オディロン・ルドン ―夢の起源―」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

【展覧名】
オディロン・ルドン ―夢の起源―
【公式サイト】
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_redon.html
【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2013年4月20日(土)~6月23日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
初日で雨が降っていたこともあってか、意外と空いていてゆっくり観ることができました。
さて、今回の展示はフランス象徴主義を代表する画家オディロン・ルドンの個展となっています。日本では1985年以降、ルドン展はよく行われてきたようですが、その大半は国内で圧倒的な質・量を誇る岐阜県美術館のルドンコレクションに大きく依存しているようです。しかし今回の展示ではそれに加えてルドンの出身地であるボルドーにあるボルドー美術館からの出品作もあり、形成期から色彩の時代まで様々な作品が展示されていました。時代ごとに章が分かれていましたので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
<第1部:幻想のふるさとボルドー - 夢と自然の発見>
まずはボルドーでの青春期についてのコーナーです。ルドンは1840年にフランスのボルドーで生まれ、15歳で最初の絵の師匠であるスタニスラス・ゴランに学んだそうです。また、植物学者のクラヴォーにロマン主義的な情熱と自然科学の情熱を教えられたようで、クラヴォーから学んだ知識見識は後々までルドンに影響を与えています。20代になると国立美術学校建築科を受験しましたが失敗し、さらに25歳の時にはパリでのアカデミックな画家修業にも挫折したようです。そうして、ルドンが故郷に戻った際、たまたまボルドーにいた放浪の版画家ブレスダンに師事し、小画面の版画作品にロマンティックな空想を繰り広げるブレスダンの芸術世界にも強い影響を受けました。また、ルドンは当初は歴史的な風景画家を目指していたそうで、ルドン家のぶどう園(ペイルルバート)があったメドック地域やピレネー、ブルターニュなどで写生を行なっていたそうです。ここにはそうした若い時期の作品が並んでいました。
1 スタニスラス・ゴラン 「アブデルカデルのボルドー出航」
この絵は帆船の後姿を描いたカラーリトグラフで、港に集まる多くの人々も描かれています。これはルドンの最初の師匠の作品で、淡い水彩のような色合いが幻想的です。解説によると、この画家は今では忘れ去られていますが当時はかなり評価が高かったそうで、この絵ではアルジェリアのフランス植民地化に抵抗した人物の物語の一場面を描いているとのことでした。リトグラフなので何とも言えませんが、色合いにルドンに通じるものがあるかも??
この辺にはゴランの作品は何点かあったのですが、他の作品はルドンとはちょっと違う方向性に思えました。また、他にはボルドーの風景を描いたリトグラフ(別の作者の作品)などもありました。
11 ロドルフ・ブレスダン 「善きサマリア人」
これは帰郷後に師事したブレスダンの作品で、キリストの語った善きサマリア人の説話を題材にした白黒のリトグラフです。中央にラクダと、その下に倒れている男が描かれ、その傍らには助けているターバンの人物が描かれています。周りは鬱蒼とした木々や植物が描かれ、よく観ると鳥や猿の姿もあり、繊細かつ緻密な明暗で表現されていました。緻密というよりは猛烈に細かいと言った方が良いかもw 写実性があるのにどことなく妖しげで幻想的な作品でした。
この辺はブレスダンの作品が並んでいました。いずれも超細密で、骸骨(死神)が描かれていたり、寓話を主題にした作品が並んでいます。こうした空想的なところはルドンに通じるものを感じます
参考記事:19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)
17 オディロン・ルドン 「浅瀬(小さな騎馬兵のいる)」
これは以前もご紹介したことがありましたが、改めてご紹介します(この後も結構以前ご紹介したものが多いですが、一応書いておきます)
こちらはルドン25歳ころの作品で、切り立った岸壁と手前で馬に乗っている騎士たちが描かれています。師匠のブレスダンと同じく緻密で、渦巻く雲に流れを感じます。解説によると、フランスの「ローランの歌」を想起させるそうで、この物語はルドンのお気に入りだったようです。また、雲などはブレスダン風に描かれているものの、それらに比べて騎士が小さいのはブレスダン以上にロマン主義の美意識を表しているとのことでした。
この辺は若い頃の版画が並んでいました。また、少し進むと植物学者のクラヴォーに関するコーナーとなっています。クラヴォーは大変な読書家で、ボードレールやエドガー・アラン・ポーなどの現代文学や、ヒンズーの詩、スピノザ哲学など多くの蔵書を持っていたようで、それらはルドンに影響を与えて行きました。また、ルドンがダーウィンの種の起源を知ったのもクラヴォーからだったようで、後にこれらに関した作品も製作しています。それだけ多くの影響を与えたクラヴォーですが、1890年に首吊り自殺をしてしまったようで、その翌年にルドンは版画集を彼に捧げたそうです(後のコーナーで出てきます) ここにはクラヴォーによる植物の素描があり、図鑑や理科の教科書にあるような正確さで種子や雄しべ・雌しべなどの拡大図が並んでいました。かなり精緻で、よくよく考えるとルドンの作品に出てくるモチーフを想起させました。これだけ影響が多いので、クラヴォーはルドンの精神的な師匠と言える存在だったのかも。
26 オディロン・ルドン 「樹(樹のある風景の中の二人の人物)」
これは大きな2本の樹と2人の男女が描かれた素描です。木炭で描かれていて、空気感が伝わってくるようなぼんやりした感じがカミーユ・コローに通じるものがあるなと思ったら、実際にルドンは1864年にバルビゾン村でコローに助言を受けていたそうです。その際に、「想像に富むイメージの隣に自然に直接取材した事物を置くように」と言われたらしく、ルドンは生涯これを守ったようです。そう言われてみると確かにその言葉に沿った作品が多いので、これはルドンにとって相当大事な出来事だったのだろうと推測できました。
この近くには子供の頃に育った辺りの風景素描もありました。
[「作者のためのエチュード」(色彩による風景画習作)]
ルドンは当初、黒の画家として知られていましたが、その頃にも色彩による風景画小品を制作していたようで、これを「作者のためのエチュード」(エチュード=習作)と呼んで大事に手元に置いていたようです。そうした作品では自然をモデルとしていて、20代はバルビゾン派と自然主義風景画に関心を示していたようです。当時の展覧会にも2点ほど風景画習作を出品していたようですが、制作年が書かれていないため製作時期については分からないとのことです。ここにはそうした作品がいくつか並んでいました。
31 オディロン・ルドン 「モルガの海」
これはブルターニュの海岸を描いた作品で、砂浜と空だけのシンプルな画面のなっています。ややくすんだ色合いが幻想的で、その後のルドンの色合いが既に観られるように思いました。
この辺には山や建物、岩を描いた簡素な風景画が並んでいました。いずれも幻想的でやや寂しげな印象を受けます。また、少し先にはドラクロワの模写などもありました。
37 オディロン・ルドン 「ロンスヴォーのローラン」
こちらは、先述の作品と同じく中世フランスの叙事詩ローランの歌に取材した作品です。大きな暗い色の岩を背景に、馬に乗った赤いマントの騎士が描かれ、右下には沢山の兵士たちの姿もあります。騎士は振り返っていて顔はよくわからずややぼんやりしているのはルドンらしい雰囲気を感じるかな。題材的にも興味深い作品で、歴史画家になりたかったのが伝わってくるように思いました。 解説によると、この作品はサロンで入選したそうで、それによって父親や弟もオディロンを画家として認めたそうです。そのためか画家自身はこの作品を生涯手放すことはなかったとのことでした。
この近くにはルドンの家庭環境についての説明もありました。オディロン・ルドンは子供の頃は身体が弱くて親戚の老人に育てられていますが、3人の男兄弟と1人の妹がいたそうで、長男のエルネストは音楽の神童としてボルドーの社交界で注目される存在だったそうです。また、妹と弟の1人は早くして死んでしまったものの、末の弟は建築家となって後に国立美術学校の教授になっています。オディロン・ルドンは兄と仲が良かったようですが、後にぶどう園(ペイルルバート)の売却を巡って激しく対立したとのことでした。
この近くには兄のエルネストの楽譜の複製なども展示されていました。
40 オディロン・ルドン 「自画像」
これはルドンの自画像で、おでこが広く口ひげを生やした姿をしています。背景は真っ暗で溶け込みそうな感じかな。知的そうにも見えますが、ちょっと神経質そうな印象を受けました。
<第2部:「黒の画家-怪物たちの誕生」>
続いては版画などの白黒の作品のコーナーです。ルドンは1870年に起きた普仏戦争に従軍し、戦後はパリのルーヴル美術館で巨匠たちを研究する傍ら国立自然誌博物館や植物園に通い、生物学や人類学の標本を観察していたそうです。そして夏になるとボルドーに帰り、ペイルルバートで木炭画を描いていたようです。その後1879年(39歳)の時に最初の石版画集「夢のなかで」を発表し、これが職業画家としてのルドンのデビュー作となりました。これには進化論などの自然科学の影響をとどめる空想的な怪物が描かれていて、続く1880~1890年代にはルドンの黒の幻想は前衛的な文学者や若い芸術家に歓迎されたそうです。ちょうどこの頃は物質主義的な時代から精神的なものを求める時代となりあったのが背景としてあるようで、ここにはそうした時期の黒の作品が並んでいました。(ここの解説や感想は以前の記事と丸かぶりですがご容赦ください…w)
46 オディロン・ルドン 「石版画集[夢のなかで] 賭博師」
これは大きなサイコロを担いだ人物が描かれた作品で、手前には黒い樹が描かれています。描かれたもの自体は写実的ですが、どこかシュールなものすら感じ、賭博師はちょっと苦しそうなポーズに見えました。
この近くにはギュスターヴ・モローの作品をモチーフにした「石版画集[夢のなかで] 幻視」なども並んでいました。
53 オディロン・ルドン 「石版画集[夢のなかで] 眼は奇妙な気球のように無限に向かう」
これはルドンの作品でも特に有名かな。 目玉のような気球から吊り下がったお盆の上に乗った人の首が描かれた作品です。気球のギョロッとした目が異様でちょっと怖いw 解説によると、三角、球、円などが多用されているそうで、このシリーズではデューラーから学んだ造形も見られるとのことです。独創的な世界に見えるけど、結構色々な事物に影響を受けた上での作品なのですね…。
ということで、ちょっと中途半端ですが長くなったので今日はこの辺までにしようと思います。さすがに版画などは見慣れた作品が多いですが、初期からじっくりと観ていけるので参考になりました。後半には見どころとなる色彩の時代の油彩もありましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。
→ 後編はこちら
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
オディロン・ルドン ―夢の起源―
【公式サイト】
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_redon.html
【会場】損保ジャパン東郷青児美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2013年4月20日(土)~6月23日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
初日で雨が降っていたこともあってか、意外と空いていてゆっくり観ることができました。
さて、今回の展示はフランス象徴主義を代表する画家オディロン・ルドンの個展となっています。日本では1985年以降、ルドン展はよく行われてきたようですが、その大半は国内で圧倒的な質・量を誇る岐阜県美術館のルドンコレクションに大きく依存しているようです。しかし今回の展示ではそれに加えてルドンの出身地であるボルドーにあるボルドー美術館からの出品作もあり、形成期から色彩の時代まで様々な作品が展示されていました。時代ごとに章が分かれていましたので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
<第1部:幻想のふるさとボルドー - 夢と自然の発見>
まずはボルドーでの青春期についてのコーナーです。ルドンは1840年にフランスのボルドーで生まれ、15歳で最初の絵の師匠であるスタニスラス・ゴランに学んだそうです。また、植物学者のクラヴォーにロマン主義的な情熱と自然科学の情熱を教えられたようで、クラヴォーから学んだ知識見識は後々までルドンに影響を与えています。20代になると国立美術学校建築科を受験しましたが失敗し、さらに25歳の時にはパリでのアカデミックな画家修業にも挫折したようです。そうして、ルドンが故郷に戻った際、たまたまボルドーにいた放浪の版画家ブレスダンに師事し、小画面の版画作品にロマンティックな空想を繰り広げるブレスダンの芸術世界にも強い影響を受けました。また、ルドンは当初は歴史的な風景画家を目指していたそうで、ルドン家のぶどう園(ペイルルバート)があったメドック地域やピレネー、ブルターニュなどで写生を行なっていたそうです。ここにはそうした若い時期の作品が並んでいました。
1 スタニスラス・ゴラン 「アブデルカデルのボルドー出航」
この絵は帆船の後姿を描いたカラーリトグラフで、港に集まる多くの人々も描かれています。これはルドンの最初の師匠の作品で、淡い水彩のような色合いが幻想的です。解説によると、この画家は今では忘れ去られていますが当時はかなり評価が高かったそうで、この絵ではアルジェリアのフランス植民地化に抵抗した人物の物語の一場面を描いているとのことでした。リトグラフなので何とも言えませんが、色合いにルドンに通じるものがあるかも??
この辺にはゴランの作品は何点かあったのですが、他の作品はルドンとはちょっと違う方向性に思えました。また、他にはボルドーの風景を描いたリトグラフ(別の作者の作品)などもありました。
11 ロドルフ・ブレスダン 「善きサマリア人」
これは帰郷後に師事したブレスダンの作品で、キリストの語った善きサマリア人の説話を題材にした白黒のリトグラフです。中央にラクダと、その下に倒れている男が描かれ、その傍らには助けているターバンの人物が描かれています。周りは鬱蒼とした木々や植物が描かれ、よく観ると鳥や猿の姿もあり、繊細かつ緻密な明暗で表現されていました。緻密というよりは猛烈に細かいと言った方が良いかもw 写実性があるのにどことなく妖しげで幻想的な作品でした。
この辺はブレスダンの作品が並んでいました。いずれも超細密で、骸骨(死神)が描かれていたり、寓話を主題にした作品が並んでいます。こうした空想的なところはルドンに通じるものを感じます
参考記事:19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)
17 オディロン・ルドン 「浅瀬(小さな騎馬兵のいる)」
これは以前もご紹介したことがありましたが、改めてご紹介します(この後も結構以前ご紹介したものが多いですが、一応書いておきます)
こちらはルドン25歳ころの作品で、切り立った岸壁と手前で馬に乗っている騎士たちが描かれています。師匠のブレスダンと同じく緻密で、渦巻く雲に流れを感じます。解説によると、フランスの「ローランの歌」を想起させるそうで、この物語はルドンのお気に入りだったようです。また、雲などはブレスダン風に描かれているものの、それらに比べて騎士が小さいのはブレスダン以上にロマン主義の美意識を表しているとのことでした。
この辺は若い頃の版画が並んでいました。また、少し進むと植物学者のクラヴォーに関するコーナーとなっています。クラヴォーは大変な読書家で、ボードレールやエドガー・アラン・ポーなどの現代文学や、ヒンズーの詩、スピノザ哲学など多くの蔵書を持っていたようで、それらはルドンに影響を与えて行きました。また、ルドンがダーウィンの種の起源を知ったのもクラヴォーからだったようで、後にこれらに関した作品も製作しています。それだけ多くの影響を与えたクラヴォーですが、1890年に首吊り自殺をしてしまったようで、その翌年にルドンは版画集を彼に捧げたそうです(後のコーナーで出てきます) ここにはクラヴォーによる植物の素描があり、図鑑や理科の教科書にあるような正確さで種子や雄しべ・雌しべなどの拡大図が並んでいました。かなり精緻で、よくよく考えるとルドンの作品に出てくるモチーフを想起させました。これだけ影響が多いので、クラヴォーはルドンの精神的な師匠と言える存在だったのかも。
26 オディロン・ルドン 「樹(樹のある風景の中の二人の人物)」
これは大きな2本の樹と2人の男女が描かれた素描です。木炭で描かれていて、空気感が伝わってくるようなぼんやりした感じがカミーユ・コローに通じるものがあるなと思ったら、実際にルドンは1864年にバルビゾン村でコローに助言を受けていたそうです。その際に、「想像に富むイメージの隣に自然に直接取材した事物を置くように」と言われたらしく、ルドンは生涯これを守ったようです。そう言われてみると確かにその言葉に沿った作品が多いので、これはルドンにとって相当大事な出来事だったのだろうと推測できました。
この近くには子供の頃に育った辺りの風景素描もありました。
[「作者のためのエチュード」(色彩による風景画習作)]
ルドンは当初、黒の画家として知られていましたが、その頃にも色彩による風景画小品を制作していたようで、これを「作者のためのエチュード」(エチュード=習作)と呼んで大事に手元に置いていたようです。そうした作品では自然をモデルとしていて、20代はバルビゾン派と自然主義風景画に関心を示していたようです。当時の展覧会にも2点ほど風景画習作を出品していたようですが、制作年が書かれていないため製作時期については分からないとのことです。ここにはそうした作品がいくつか並んでいました。
31 オディロン・ルドン 「モルガの海」
これはブルターニュの海岸を描いた作品で、砂浜と空だけのシンプルな画面のなっています。ややくすんだ色合いが幻想的で、その後のルドンの色合いが既に観られるように思いました。
この辺には山や建物、岩を描いた簡素な風景画が並んでいました。いずれも幻想的でやや寂しげな印象を受けます。また、少し先にはドラクロワの模写などもありました。
37 オディロン・ルドン 「ロンスヴォーのローラン」
こちらは、先述の作品と同じく中世フランスの叙事詩ローランの歌に取材した作品です。大きな暗い色の岩を背景に、馬に乗った赤いマントの騎士が描かれ、右下には沢山の兵士たちの姿もあります。騎士は振り返っていて顔はよくわからずややぼんやりしているのはルドンらしい雰囲気を感じるかな。題材的にも興味深い作品で、歴史画家になりたかったのが伝わってくるように思いました。 解説によると、この作品はサロンで入選したそうで、それによって父親や弟もオディロンを画家として認めたそうです。そのためか画家自身はこの作品を生涯手放すことはなかったとのことでした。
この近くにはルドンの家庭環境についての説明もありました。オディロン・ルドンは子供の頃は身体が弱くて親戚の老人に育てられていますが、3人の男兄弟と1人の妹がいたそうで、長男のエルネストは音楽の神童としてボルドーの社交界で注目される存在だったそうです。また、妹と弟の1人は早くして死んでしまったものの、末の弟は建築家となって後に国立美術学校の教授になっています。オディロン・ルドンは兄と仲が良かったようですが、後にぶどう園(ペイルルバート)の売却を巡って激しく対立したとのことでした。
この近くには兄のエルネストの楽譜の複製なども展示されていました。
40 オディロン・ルドン 「自画像」
これはルドンの自画像で、おでこが広く口ひげを生やした姿をしています。背景は真っ暗で溶け込みそうな感じかな。知的そうにも見えますが、ちょっと神経質そうな印象を受けました。
<第2部:「黒の画家-怪物たちの誕生」>
続いては版画などの白黒の作品のコーナーです。ルドンは1870年に起きた普仏戦争に従軍し、戦後はパリのルーヴル美術館で巨匠たちを研究する傍ら国立自然誌博物館や植物園に通い、生物学や人類学の標本を観察していたそうです。そして夏になるとボルドーに帰り、ペイルルバートで木炭画を描いていたようです。その後1879年(39歳)の時に最初の石版画集「夢のなかで」を発表し、これが職業画家としてのルドンのデビュー作となりました。これには進化論などの自然科学の影響をとどめる空想的な怪物が描かれていて、続く1880~1890年代にはルドンの黒の幻想は前衛的な文学者や若い芸術家に歓迎されたそうです。ちょうどこの頃は物質主義的な時代から精神的なものを求める時代となりあったのが背景としてあるようで、ここにはそうした時期の黒の作品が並んでいました。(ここの解説や感想は以前の記事と丸かぶりですがご容赦ください…w)
46 オディロン・ルドン 「石版画集[夢のなかで] 賭博師」
これは大きなサイコロを担いだ人物が描かれた作品で、手前には黒い樹が描かれています。描かれたもの自体は写実的ですが、どこかシュールなものすら感じ、賭博師はちょっと苦しそうなポーズに見えました。
この近くにはギュスターヴ・モローの作品をモチーフにした「石版画集[夢のなかで] 幻視」なども並んでいました。
53 オディロン・ルドン 「石版画集[夢のなかで] 眼は奇妙な気球のように無限に向かう」
これはルドンの作品でも特に有名かな。 目玉のような気球から吊り下がったお盆の上に乗った人の首が描かれた作品です。気球のギョロッとした目が異様でちょっと怖いw 解説によると、三角、球、円などが多用されているそうで、このシリーズではデューラーから学んだ造形も見られるとのことです。独創的な世界に見えるけど、結構色々な事物に影響を受けた上での作品なのですね…。
ということで、ちょっと中途半端ですが長くなったので今日はこの辺までにしようと思います。さすがに版画などは見慣れた作品が多いですが、初期からじっくりと観ていけるので参考になりました。後半には見どころとなる色彩の時代の油彩もありましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。
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先日、土曜日に新宿の展覧会を観に行ってきたのですが、記事を準備中なので先に展覧会の後に行った新宿東口の「Cafe comme ca」というお店をご紹介しようと思います。

【店名】
Cafe comme ca
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
http://www.cafe-commeca.co.jp/
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13017390/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
新宿駅・新宿三丁目駅
【近くの美術館】
コニカミノルタプラザ
損保ジャパン東郷青児美術館
【この日にかかった1人の費用】
1630円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
雨が降っている夕方にも関わらず、多くの人で賑わっていました。特に入店待ちはありませんでしたが、かなり人気がありそうです。駅前すぐという立地も良いのかも。
さて、このお店は有名なアパレルブランドのコムサが経営しているお店で、階下にはコムサのお店があります。このカフェは5階にあり、大きなフロアに簡素なテーブルが並んでいる感じです。(人が多すぎたので店内の写真は撮りませんでした) 若干殺風景で、あちこちで大声で話している人が多いかな。店員さんも絶え間なく行き来していて、慌ただしい雰囲気です。狭いので普通にぶつかってきますw しかし部屋の目立つ所にケーキが並んでいるのですが、まるで美術品か宝石のような綺麗な色合いでした。
色々美味しそうなケーキがあって迷いましたが、やはり好物のベリー系が気になったのでフレッシュベリーのタルト(1050円)を頼みました。頼んでから結構待たされたw

こちらのクリームは上品で軽やかな甘さでした。フルーツの味が濃くて香りも良く、とても美味しいです。
飲み物はブレンドコーヒー(580円)を頼みました。

こちらは軽い酸味でコクがあります。苦味はなくまろやかな感じでした。コーヒーも飲みごたえのある美味しさです。
ということで、アパレルの片手間かと思ったら予想以上に美味しいお店でした。値段が高めな割にガヤガヤして落ち着かず、接客や内装もかなり微妙ですが、味はそれを補って余りある美味しさだと思います。場所も便利なので、そのうちまた足を運んでみようと思います。

【店名】
Cafe comme ca
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
http://www.cafe-commeca.co.jp/
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13017390/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
新宿駅・新宿三丁目駅
【近くの美術館】
コニカミノルタプラザ
損保ジャパン東郷青児美術館
【この日にかかった1人の費用】
1630円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
雨が降っている夕方にも関わらず、多くの人で賑わっていました。特に入店待ちはありませんでしたが、かなり人気がありそうです。駅前すぐという立地も良いのかも。
さて、このお店は有名なアパレルブランドのコムサが経営しているお店で、階下にはコムサのお店があります。このカフェは5階にあり、大きなフロアに簡素なテーブルが並んでいる感じです。(人が多すぎたので店内の写真は撮りませんでした) 若干殺風景で、あちこちで大声で話している人が多いかな。店員さんも絶え間なく行き来していて、慌ただしい雰囲気です。狭いので普通にぶつかってきますw しかし部屋の目立つ所にケーキが並んでいるのですが、まるで美術品か宝石のような綺麗な色合いでした。
色々美味しそうなケーキがあって迷いましたが、やはり好物のベリー系が気になったのでフレッシュベリーのタルト(1050円)を頼みました。頼んでから結構待たされたw

こちらのクリームは上品で軽やかな甘さでした。フルーツの味が濃くて香りも良く、とても美味しいです。
飲み物はブレンドコーヒー(580円)を頼みました。

こちらは軽い酸味でコクがあります。苦味はなくまろやかな感じでした。コーヒーも飲みごたえのある美味しさです。
ということで、アパレルの片手間かと思ったら予想以上に美味しいお店でした。値段が高めな割にガヤガヤして落ち着かず、接客や内装もかなり微妙ですが、味はそれを補って余りある美味しさだと思います。場所も便利なので、そのうちまた足を運んでみようと思います。
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前回ご紹介した常設を観る前に、東京国立博物館 平成館で「国宝 大神社展」を観てきました。この展示は途中で展示替えがあるようで、私が観たのは前期の内容でした。(いくつか入れ替え時期があるようですが、大きく変わるのは5/6までの前半期と5/8からの後半期)

【展覧名】
国宝 大神社展
【公式サイト】
http://daijinja.jp/
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1573
【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2013年4月9日(火) ~ 2013年6月2日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
入口はそんなに混んでいる感じはしませんでしたが、中に入ると列を組んで見る感じで混雑していました。特に最初の方はガラスケースに入った細かい作品が多いので、中々進まないし後ろから観るのは大変だからかも。時間には余裕を持って見に行ったほうが良さそうです。
さて、今回の展示は「神社」に関する展示です。今年は伊勢神宮の第62回式年遷宮が行われるそうで、それを記念して神社本庁をはじめ全国の神社の全面的な協力を得て、神宝などがまとまった形で観られる機会となっています。国宝・重要文化財が多数展示されていて、本当に日本中の貴重な品が集まった感じです。ちなみに、式年遷宮というのは20年に1度御社殿を作り替えて神様にも移って頂くという大規模な儀式で、およそ1300年前に第1回が行われてから現在まで続けられています。展覧会はテーマごとに6つの章に分かれていましたので、気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
<第1章 古神宝>
神社に御社殿が作られ神々が祀られるようになると、祭神の為に装束や身の回りの調度、服などの寝具が備えられました。これらは本来は人目に触れないものですが、役目を終えて殿内から取り下げられたものを古神宝というそうで、ここにはそうしたが古神宝並んでいました。王朝貴族が用いたものに倣っているようで優美で華麗な品々となっています。
41 「桐蒔絵手箱および内容品」 和歌山・熊野速玉大社
こちらは蒔絵の箱と、その中に収められた化粧道具です。高蒔絵の技法(漆を盛り上げて文様を浮き彫りにする技法)で植物図が表され、重厚で格調高い雰囲気です。解説によると、中の化粧品は化粧の歴史を知る上でも貴重な品とのことでした。
この近くには神様の服が並んでいました。結構大きめに見えます。どこを見ても国宝だらけで歴史的な価値のある品々が目白押しです。
42 「橘蒔絵手箱および内容品」 和歌山・熊野速玉大社 ★こちらで観られます
螺鈿細工が施された蒔絵の箱で、橘?の花の部分が螺鈿で表されていて可憐な雰囲気があります。この品も含め熊野速玉大社に伝わる箱は神宝目録などによってどこに奉納されたかがわかるそうで、先ほどの作品41は十二社で最も神格の高い結宮、この作品は中四社の1つ聖宮へ奉納されたそうです。…と受け売りしてみても私は十二社や中四社が何のことだか知らないので、凄さがいまいち分かりませんが…w とりあえず、この品自体の美しさは素晴らしいものがありました。
この先には春日大社の品々も並んでいました。春日大社は都が奈良に移った際に平城京の繁栄を願って作られたそうで、藤原氏の氏神でもあるそうです。木笏などはただの木に見えましたが、れっきとした国宝ですw 武具や神剣などもあり、そっちなら私でも価値が何となく分かるかも??(多分)
29 「金銀装鳥頸太刀」 和歌山・熊野速玉大社
こちらは熊野十二社の速玉宮に伝わった太刀で、柄頭に鳥の首が象られています。側面には麒麟の姿もあり金色の網目のようになっています。これは分かりやすい豪華さで、非常に緻密な細工が施されていました。
<第2章 祀りのはじまり>
続いては神社そのものについてのコーナーです。日本では仏教伝来よりも前に自然や精霊を崇拝する神道の原型と言える原始宗教があったとされているようで、ここでは特に山の神と海の神に注目し、山ノ神遺跡と沖ノ島祭祀遺跡について取り上げていました。
60 「山ノ神遺跡出土品」 奈良県桜井市山ノ神遺跡出土 ★こちらで観られます
奈良の三輪山には神が宿ると信仰を集めていたそうで、これは古墳時代遺跡から出た小さな勾玉や臼、杵などの出土品です。やけに小さいのですが、神様が使うものなので人間とは違い大きかったり小さかったりするようです。また、この山ノ神遺跡の神様はお酒の神様なので、酒造りと関係が考えられるとのことでした。
その次は九州北部の玄界灘に浮かぶ沖ノ島を信仰対象としたコーナーとなっていました。沖ノ島祭祀遺跡は海の正倉院と呼ばれるそうで、貴重な品々が残っているようです。
66 「金銅製棘葉形杏葉」 福岡県宗像市沖ノ島祭祀遺跡(7号)出土 福岡・宗像大社
金色に光る葉っぱのような形の馬の装金具で、簡略化された文様もあり重厚な印象を受けます。これは岩陰祭祀の代表的な奉納品とのことですが、海に馬の装飾があるのが不思議に思えました。
この近くには銅鏡などもあり、中国の神仙思想のモチーフなども象られていました。場所が場所だけに大陸との繋がりも感じさせます。
72 「金銅製雛機」 伝福岡県宗像市沖ノ島祭祀遺跡(4号〔御金蔵〕)出土 福岡・宗像大社 ★こちらで観られます
これは精巧に作られた機織り機のミニチュアです。こうした折機は伊勢神宮にも伝わっているそうですが、意外なものが捧げられていて驚きました。しかも本当に布が織られているような感じで、完成度の高さを感じます。神様が使う品かな?
この辺には日本書紀もありました(前期のみ。後期は古事記が出るようです) また、沖縄の信仰についての品も並んでいます。
<第3章 神社の風景>
神社は社殿が森に囲まれ、鎮守の杜と称されるように森と深い繋がりがあるようで、背後に神の宿る山があることも多いそうです。その為、神道美術においては社殿を中心とした神域や神奈備山(かなびやま)を含んだ風景に重点を置いた絵画表現が行われるようになったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
100 「富士浅間曼荼羅」 静岡・富士山本宮浅間大社
大きくそびえる富士山と、その手前の浅間大社を俯瞰するように描いた作品です。富士山の右には日輪、左には月輪があり、富士山の中央には金色の参道が描かれています。頂上あたりには鳥居があり、富士山自体がご神体らしい雄大な姿に見えました。
この辺には同様に伊勢神宮の曼荼羅や、神社の縁起を描いた作品が並んでいました。
<第4章 祭りのにぎわい>
続いてはお祭りについてのコーナーです。そもそもお祭り(祭礼)とは、神や祖霊などを慰め、鎮め、奉仕して、その神威による加護を請い平和や豊穣を祈願し感謝するのもので、祭礼の際には特別に用意された食事が備えられ、人々も相伴にあずかる「神人共食」が行われます。また、舞楽や神楽、能など様々な芸能も奉納されてきました。ここにはそうした祭礼に用いる品々などが展示されています。
114 伝 土佐光茂 「日吉山王祇園祭礼図屏風」
これは6曲1双の金屏風で、右隻は日吉大社の祭礼、左隻は祇園祭の様子が描かれています。金雲がたなびく中、多くの人々が祭りに出ていて活気が伝わってきます。はしゃいでいる子供や喧嘩している人など、人々の興奮や熱気まで描かれているようでした。
116 「沃懸地螺鈿金銅装神輿」 和歌山・鞆淵八幡神社
こちらはお神輿で、上には鳳凰が置かれ四方には宝相華唐草の透かし彫りの帽額(もこう)や華鬘(けまん)といった装飾品が付けられ、螺鈿の細工が施されています。これは今まで観たことがないような豪華な雰囲気で、堂々たる風格があります。解説によると、石清水八幡宮から和歌山の鞆淵八幡神社に贈られたお神輿とのことでした。
118 119 「袍 藍綾地松皮菱丸紋散模様」、「舞楽面 納曾利」 広島・嚴島神社
平家一門が厳島神社に奉納した「納曾利(なそり)」という舞楽の為の面と衣装がセットで展示されていて、面は金色の目が飛び出て上下に金の牙が生えた顔をしています。かなり恐ろしげな雰囲気ですが、納曾利は双龍の舞と言われ、雄雌の龍が舞を楽しむ姿を表しているようです。また、納曾利は中国の陵王の舞と共に対として舞われたそうで、陵王の舞楽面なども近くに展示されていました。
<第5章 伝世の名品>
5章からは第2会場となります。先述した古神宝意外にも神社には沢山の宝物が伝えられているそうで、今でも絵馬をはじめ様々な品が奉納されているようです。この章ではそうした品の中から優品が展示されていました。
152 「直刀 黒漆平文大刀」 茨城・鹿島神宮
これは2m以上ある巨大な刀です。刃はまっすぐで、直刀としては日本最大のものらしく、鞘は黒漆塗りで宝相華唐草が表されています。その大きさに誰もが驚くと思いますが、装飾も見事な出来栄えでした。
この先には銅鏡などもありました。また、蒔絵の文台や手箱なども展示されています。
173 「平家納経 願文・観普賢経」 広島・嚴島神社
これは平清盛が一門の繁栄を願い奉納した経巻で、冒頭に金の鹿が描かれ、料紙には金銀が散らされているという絢爛な作りとなっています。展示されていたのは願文らしく、清盛の願いが描いてるようでした。また、その隣には観普賢経もあり、こちらには剣を持った十二単の女性が描かれていて、これは厳島に祀られる神様を描いた姿とのことです。花が咲いているような料紙が非常に華やかで、これは今回の展示でも見応えがありました。
この作品もそうですが、結構、神社でも仏教に関する品が納められているようでした。神仏習合や本地垂迹説の思想によるものなのかな?
182 狩野元信 「神馬図絵馬」 兵庫・賀茂神社
これは衝立のようにすら見える大きな絵馬で、2枚対となってそれぞれに白馬とそれをつなぎとめる烏帽子の男性が描かれています。馬は強い目をしていて力強くたくましい印象を受けます。また、人物は写実的で見事な描写となっていました。解説によると、この作品は絵馬の形式の展開を考える上でも重要な意義がある品とのことでした。
146 「七支刀」 奈良・石上神宮 ★こちらで観られます
これは有名な品で、左右に3本ずつ枝を生やしたような形の刀です。剣の中央の両面には金で文字が書いてあり、そこには年記・目的・経緯などが描かれているようですが、まだ不明な点のあるようです。中国の東晋で369年に製作され百済王から贈られたと考えるのが有力のようですが、その変わった形と共にミステリアスな雰囲気がありました。
この近くには唐風装飾を施した馬具一式や、鎧なども展示されていました。
157 「大太刀 銘 奉納八幡宮御宝殿北条左京太夫平氏綱 天文七戊戌年八月二日 所願成就皆令満足 相州綱広作 桐鳳凰蒔絵太刀」 神奈川・鶴岡八幡宮
これは北条氏綱が八幡宮に奉納した太刀で、長く反り返った形をしています。その形状が勇壮かつ華麗な雰囲気で、鞘には蒔絵で桐と鳳凰が金で表されているなど、神に捧げるに相応しい格式の高さを感じさせました。
<第6章 神々の姿>
最後は神像のコーナーで、私としてはここが一番の見どころだったと思います。神像が作られるようになったのは8世紀と考えられるようですが、現存しているのは9世紀以降のものしかないようです。ここにはそうした古い時代の貴重な神像なども展示されていました。
224 厳成 「随身立像」 岡山・高野神社 ★こちらで観られます
これは2対の像で、お寺の阿吽の仁王像のように神門を守護するように置かれているそうです。烏帽子をかぶった「随身」という貴族警護の武官らしく、右の像は口を開け、左は口を結んでいるなど阿吽っぽい感じを受けます。今は破損していますが、元々は矢をつがえるポーズをしていたようで、緊張感を漂わせていました。この迫力は中々の見どころでした。
193 「女神坐像(八幡三神像のうち)」 京都・東寺(教王護国寺) ★こちらで観られます
これは京都の東寺(教王護国寺)に祀られた大きめの女神像で、左手に木の枝を持って座り長い髪を垂らした姿をしていて、一見すると仏像との共通点が多いように思えます。しかし解説によると、起伏が単純化され面や細く鋭い目・眉は仏像にはない表現で神らしさを表すのだとか。神像は仏像に影響を受けて作られたのですが、独自の進化もあるようです。 どっしりとした存在感を感じる像でした。
190 「男神坐像」 京都・松尾大社 ★こちらで観られます
こちらは現存する中で最初期の神像で、貴族のような冠と袍(ほう)を身につけた神様が表されています。また、胸の前で手を組んだポーズをしているのは元々は笏を持っていたと推測されるようです。 この神像はかなり赤みがかっているのですが、それは神らしさを表しているようで、全体的に厳しそうな緊張感がありました。
ここにはこちらを含めて女神像、御子神と推測される神像などがありました。いずれも力強い印象を受けます。
197 「家津美御子大神坐像」 和歌山・熊野速玉大社 ★こちらで観られます
胸の前で笏を持ち座る神像で、顔は赤く目がつり上がり、少し口が開いているように見えます。これは9世紀末頃の神像で、足(膝)の部分の奥行きが少なく、衣のひだが単純化しているという、この頃生まれた神像独特の表現が観られるとのことです。こちらも厳しめで力強い印象を受けるかな。神像は皆、威厳に満ちています。
207 「武装神坐像」 京都・大将軍八神社
これは方角の神を祭った大将軍八神社に伝わった神像で、鎧兜を身につけて座る姿をしています。その顔は恐ろしげで、見た感じ仏像の四天王像を彷彿としますが、坐像や金色の四天王像は稀にしかないようです。制作当時の日本式の甲冑を着ているらしく、貴重な作例のようでした。
この辺は大将軍八神社にある80体もの神像のうち、3~4体程度が展示されていました。
227 「春日神鹿御正体」 ★こちらで観られます
これは鹿の像で、雲の上に立ち背中に鞍をつけ、その上に榊(さかき)という木に円い鏡を飾ったようなものを載せています。鏡には春日社の本地五仏が線刻で描かれ、鞍には鳳凰などが描かれていました。細密で春日大社の使いとしての気品がある姿です。
239 「吉野御子守神像」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、十二単を着た貴族風の女性の姿の神様が描かれています。背景には吉野の山があり、この神様は吉野御子守神で、元々は「みくまり」という水の神様だったそうです。その名前の響きがやがて「みこもり」となり子宝安産の神として祀られたようで、その為か雅な雰囲気と共に慈愛のようなものを感じさせる表情となっていました。
この近くには神を描いた掛け軸などが展示されていました。
ということで、貴重な品々を観ることができました。特に神像のコーナーなどは見応えがあったのですが、作品同士の繋がりはあまりなく、展覧会の中ではあまり神話について語られないので、ある程度の基礎知識が必要かもしれません。価値を知っている人には凄い展示だと思いますが、この場で知識を得るにはちょっと難しめな内容でした。
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
国宝 大神社展
【公式サイト】
http://daijinja.jp/
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1573
【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2013年4月9日(火) ~ 2013年6月2日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
入口はそんなに混んでいる感じはしませんでしたが、中に入ると列を組んで見る感じで混雑していました。特に最初の方はガラスケースに入った細かい作品が多いので、中々進まないし後ろから観るのは大変だからかも。時間には余裕を持って見に行ったほうが良さそうです。
さて、今回の展示は「神社」に関する展示です。今年は伊勢神宮の第62回式年遷宮が行われるそうで、それを記念して神社本庁をはじめ全国の神社の全面的な協力を得て、神宝などがまとまった形で観られる機会となっています。国宝・重要文化財が多数展示されていて、本当に日本中の貴重な品が集まった感じです。ちなみに、式年遷宮というのは20年に1度御社殿を作り替えて神様にも移って頂くという大規模な儀式で、およそ1300年前に第1回が行われてから現在まで続けられています。展覧会はテーマごとに6つの章に分かれていましたので、気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
<第1章 古神宝>
神社に御社殿が作られ神々が祀られるようになると、祭神の為に装束や身の回りの調度、服などの寝具が備えられました。これらは本来は人目に触れないものですが、役目を終えて殿内から取り下げられたものを古神宝というそうで、ここにはそうしたが古神宝並んでいました。王朝貴族が用いたものに倣っているようで優美で華麗な品々となっています。
41 「桐蒔絵手箱および内容品」 和歌山・熊野速玉大社
こちらは蒔絵の箱と、その中に収められた化粧道具です。高蒔絵の技法(漆を盛り上げて文様を浮き彫りにする技法)で植物図が表され、重厚で格調高い雰囲気です。解説によると、中の化粧品は化粧の歴史を知る上でも貴重な品とのことでした。
この近くには神様の服が並んでいました。結構大きめに見えます。どこを見ても国宝だらけで歴史的な価値のある品々が目白押しです。
42 「橘蒔絵手箱および内容品」 和歌山・熊野速玉大社 ★こちらで観られます
螺鈿細工が施された蒔絵の箱で、橘?の花の部分が螺鈿で表されていて可憐な雰囲気があります。この品も含め熊野速玉大社に伝わる箱は神宝目録などによってどこに奉納されたかがわかるそうで、先ほどの作品41は十二社で最も神格の高い結宮、この作品は中四社の1つ聖宮へ奉納されたそうです。…と受け売りしてみても私は十二社や中四社が何のことだか知らないので、凄さがいまいち分かりませんが…w とりあえず、この品自体の美しさは素晴らしいものがありました。
この先には春日大社の品々も並んでいました。春日大社は都が奈良に移った際に平城京の繁栄を願って作られたそうで、藤原氏の氏神でもあるそうです。木笏などはただの木に見えましたが、れっきとした国宝ですw 武具や神剣などもあり、そっちなら私でも価値が何となく分かるかも??(多分)
29 「金銀装鳥頸太刀」 和歌山・熊野速玉大社
こちらは熊野十二社の速玉宮に伝わった太刀で、柄頭に鳥の首が象られています。側面には麒麟の姿もあり金色の網目のようになっています。これは分かりやすい豪華さで、非常に緻密な細工が施されていました。
<第2章 祀りのはじまり>
続いては神社そのものについてのコーナーです。日本では仏教伝来よりも前に自然や精霊を崇拝する神道の原型と言える原始宗教があったとされているようで、ここでは特に山の神と海の神に注目し、山ノ神遺跡と沖ノ島祭祀遺跡について取り上げていました。
60 「山ノ神遺跡出土品」 奈良県桜井市山ノ神遺跡出土 ★こちらで観られます
奈良の三輪山には神が宿ると信仰を集めていたそうで、これは古墳時代遺跡から出た小さな勾玉や臼、杵などの出土品です。やけに小さいのですが、神様が使うものなので人間とは違い大きかったり小さかったりするようです。また、この山ノ神遺跡の神様はお酒の神様なので、酒造りと関係が考えられるとのことでした。
その次は九州北部の玄界灘に浮かぶ沖ノ島を信仰対象としたコーナーとなっていました。沖ノ島祭祀遺跡は海の正倉院と呼ばれるそうで、貴重な品々が残っているようです。
66 「金銅製棘葉形杏葉」 福岡県宗像市沖ノ島祭祀遺跡(7号)出土 福岡・宗像大社
金色に光る葉っぱのような形の馬の装金具で、簡略化された文様もあり重厚な印象を受けます。これは岩陰祭祀の代表的な奉納品とのことですが、海に馬の装飾があるのが不思議に思えました。
この近くには銅鏡などもあり、中国の神仙思想のモチーフなども象られていました。場所が場所だけに大陸との繋がりも感じさせます。
72 「金銅製雛機」 伝福岡県宗像市沖ノ島祭祀遺跡(4号〔御金蔵〕)出土 福岡・宗像大社 ★こちらで観られます
これは精巧に作られた機織り機のミニチュアです。こうした折機は伊勢神宮にも伝わっているそうですが、意外なものが捧げられていて驚きました。しかも本当に布が織られているような感じで、完成度の高さを感じます。神様が使う品かな?
この辺には日本書紀もありました(前期のみ。後期は古事記が出るようです) また、沖縄の信仰についての品も並んでいます。
<第3章 神社の風景>
神社は社殿が森に囲まれ、鎮守の杜と称されるように森と深い繋がりがあるようで、背後に神の宿る山があることも多いそうです。その為、神道美術においては社殿を中心とした神域や神奈備山(かなびやま)を含んだ風景に重点を置いた絵画表現が行われるようになったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。
100 「富士浅間曼荼羅」 静岡・富士山本宮浅間大社
大きくそびえる富士山と、その手前の浅間大社を俯瞰するように描いた作品です。富士山の右には日輪、左には月輪があり、富士山の中央には金色の参道が描かれています。頂上あたりには鳥居があり、富士山自体がご神体らしい雄大な姿に見えました。
この辺には同様に伊勢神宮の曼荼羅や、神社の縁起を描いた作品が並んでいました。
<第4章 祭りのにぎわい>
続いてはお祭りについてのコーナーです。そもそもお祭り(祭礼)とは、神や祖霊などを慰め、鎮め、奉仕して、その神威による加護を請い平和や豊穣を祈願し感謝するのもので、祭礼の際には特別に用意された食事が備えられ、人々も相伴にあずかる「神人共食」が行われます。また、舞楽や神楽、能など様々な芸能も奉納されてきました。ここにはそうした祭礼に用いる品々などが展示されています。
114 伝 土佐光茂 「日吉山王祇園祭礼図屏風」
これは6曲1双の金屏風で、右隻は日吉大社の祭礼、左隻は祇園祭の様子が描かれています。金雲がたなびく中、多くの人々が祭りに出ていて活気が伝わってきます。はしゃいでいる子供や喧嘩している人など、人々の興奮や熱気まで描かれているようでした。
116 「沃懸地螺鈿金銅装神輿」 和歌山・鞆淵八幡神社
こちらはお神輿で、上には鳳凰が置かれ四方には宝相華唐草の透かし彫りの帽額(もこう)や華鬘(けまん)といった装飾品が付けられ、螺鈿の細工が施されています。これは今まで観たことがないような豪華な雰囲気で、堂々たる風格があります。解説によると、石清水八幡宮から和歌山の鞆淵八幡神社に贈られたお神輿とのことでした。
118 119 「袍 藍綾地松皮菱丸紋散模様」、「舞楽面 納曾利」 広島・嚴島神社
平家一門が厳島神社に奉納した「納曾利(なそり)」という舞楽の為の面と衣装がセットで展示されていて、面は金色の目が飛び出て上下に金の牙が生えた顔をしています。かなり恐ろしげな雰囲気ですが、納曾利は双龍の舞と言われ、雄雌の龍が舞を楽しむ姿を表しているようです。また、納曾利は中国の陵王の舞と共に対として舞われたそうで、陵王の舞楽面なども近くに展示されていました。
<第5章 伝世の名品>
5章からは第2会場となります。先述した古神宝意外にも神社には沢山の宝物が伝えられているそうで、今でも絵馬をはじめ様々な品が奉納されているようです。この章ではそうした品の中から優品が展示されていました。
152 「直刀 黒漆平文大刀」 茨城・鹿島神宮
これは2m以上ある巨大な刀です。刃はまっすぐで、直刀としては日本最大のものらしく、鞘は黒漆塗りで宝相華唐草が表されています。その大きさに誰もが驚くと思いますが、装飾も見事な出来栄えでした。
この先には銅鏡などもありました。また、蒔絵の文台や手箱なども展示されています。
173 「平家納経 願文・観普賢経」 広島・嚴島神社
これは平清盛が一門の繁栄を願い奉納した経巻で、冒頭に金の鹿が描かれ、料紙には金銀が散らされているという絢爛な作りとなっています。展示されていたのは願文らしく、清盛の願いが描いてるようでした。また、その隣には観普賢経もあり、こちらには剣を持った十二単の女性が描かれていて、これは厳島に祀られる神様を描いた姿とのことです。花が咲いているような料紙が非常に華やかで、これは今回の展示でも見応えがありました。
この作品もそうですが、結構、神社でも仏教に関する品が納められているようでした。神仏習合や本地垂迹説の思想によるものなのかな?
182 狩野元信 「神馬図絵馬」 兵庫・賀茂神社
これは衝立のようにすら見える大きな絵馬で、2枚対となってそれぞれに白馬とそれをつなぎとめる烏帽子の男性が描かれています。馬は強い目をしていて力強くたくましい印象を受けます。また、人物は写実的で見事な描写となっていました。解説によると、この作品は絵馬の形式の展開を考える上でも重要な意義がある品とのことでした。
146 「七支刀」 奈良・石上神宮 ★こちらで観られます
これは有名な品で、左右に3本ずつ枝を生やしたような形の刀です。剣の中央の両面には金で文字が書いてあり、そこには年記・目的・経緯などが描かれているようですが、まだ不明な点のあるようです。中国の東晋で369年に製作され百済王から贈られたと考えるのが有力のようですが、その変わった形と共にミステリアスな雰囲気がありました。
この近くには唐風装飾を施した馬具一式や、鎧なども展示されていました。
157 「大太刀 銘 奉納八幡宮御宝殿北条左京太夫平氏綱 天文七戊戌年八月二日 所願成就皆令満足 相州綱広作 桐鳳凰蒔絵太刀」 神奈川・鶴岡八幡宮
これは北条氏綱が八幡宮に奉納した太刀で、長く反り返った形をしています。その形状が勇壮かつ華麗な雰囲気で、鞘には蒔絵で桐と鳳凰が金で表されているなど、神に捧げるに相応しい格式の高さを感じさせました。
<第6章 神々の姿>
最後は神像のコーナーで、私としてはここが一番の見どころだったと思います。神像が作られるようになったのは8世紀と考えられるようですが、現存しているのは9世紀以降のものしかないようです。ここにはそうした古い時代の貴重な神像なども展示されていました。
224 厳成 「随身立像」 岡山・高野神社 ★こちらで観られます
これは2対の像で、お寺の阿吽の仁王像のように神門を守護するように置かれているそうです。烏帽子をかぶった「随身」という貴族警護の武官らしく、右の像は口を開け、左は口を結んでいるなど阿吽っぽい感じを受けます。今は破損していますが、元々は矢をつがえるポーズをしていたようで、緊張感を漂わせていました。この迫力は中々の見どころでした。
193 「女神坐像(八幡三神像のうち)」 京都・東寺(教王護国寺) ★こちらで観られます
これは京都の東寺(教王護国寺)に祀られた大きめの女神像で、左手に木の枝を持って座り長い髪を垂らした姿をしていて、一見すると仏像との共通点が多いように思えます。しかし解説によると、起伏が単純化され面や細く鋭い目・眉は仏像にはない表現で神らしさを表すのだとか。神像は仏像に影響を受けて作られたのですが、独自の進化もあるようです。 どっしりとした存在感を感じる像でした。
190 「男神坐像」 京都・松尾大社 ★こちらで観られます
こちらは現存する中で最初期の神像で、貴族のような冠と袍(ほう)を身につけた神様が表されています。また、胸の前で手を組んだポーズをしているのは元々は笏を持っていたと推測されるようです。 この神像はかなり赤みがかっているのですが、それは神らしさを表しているようで、全体的に厳しそうな緊張感がありました。
ここにはこちらを含めて女神像、御子神と推測される神像などがありました。いずれも力強い印象を受けます。
197 「家津美御子大神坐像」 和歌山・熊野速玉大社 ★こちらで観られます
胸の前で笏を持ち座る神像で、顔は赤く目がつり上がり、少し口が開いているように見えます。これは9世紀末頃の神像で、足(膝)の部分の奥行きが少なく、衣のひだが単純化しているという、この頃生まれた神像独特の表現が観られるとのことです。こちらも厳しめで力強い印象を受けるかな。神像は皆、威厳に満ちています。
207 「武装神坐像」 京都・大将軍八神社
これは方角の神を祭った大将軍八神社に伝わった神像で、鎧兜を身につけて座る姿をしています。その顔は恐ろしげで、見た感じ仏像の四天王像を彷彿としますが、坐像や金色の四天王像は稀にしかないようです。制作当時の日本式の甲冑を着ているらしく、貴重な作例のようでした。
この辺は大将軍八神社にある80体もの神像のうち、3~4体程度が展示されていました。
227 「春日神鹿御正体」 ★こちらで観られます
これは鹿の像で、雲の上に立ち背中に鞍をつけ、その上に榊(さかき)という木に円い鏡を飾ったようなものを載せています。鏡には春日社の本地五仏が線刻で描かれ、鞍には鳳凰などが描かれていました。細密で春日大社の使いとしての気品がある姿です。
239 「吉野御子守神像」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、十二単を着た貴族風の女性の姿の神様が描かれています。背景には吉野の山があり、この神様は吉野御子守神で、元々は「みくまり」という水の神様だったそうです。その名前の響きがやがて「みこもり」となり子宝安産の神として祀られたようで、その為か雅な雰囲気と共に慈愛のようなものを感じさせる表情となっていました。
この近くには神を描いた掛け軸などが展示されていました。
ということで、貴重な品々を観ることができました。特に神像のコーナーなどは見応えがあったのですが、作品同士の繋がりはあまりなく、展覧会の中ではあまり神話について語られないので、ある程度の基礎知識が必要かもしれません。価値を知っている人には凄い展示だと思いますが、この場で知識を得るにはちょっと難しめな内容でした。
参照記事:★この記事を参照している記事
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先週の土曜日に、上野の東京国立博物館で展示を観てきたのですが、その際に常設展も観てきました。特別展の記事は現在準備中なので、先に常設展をご紹介しておこうと思います。
※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れます。(撮影禁止の作品もあります)
※当サイトからの転載は画像・文章ともに一切禁止させていただいております。
公式サイト
http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=hall&hid=12&date=
参考記事:
東京国立博物館の案内 【建物編】
東京国立博物館の案内 【常設・仏教編】
東京国立博物館の案内 【常設・美術編】
東京国立博物館の案内 【2009年08月】
東京国立博物館の案内 【2009年10月】
東京国立博物館の案内 【2009年11月】
東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放】
東京国立博物館の案内 【2009年12月】
東京国立博物館の案内 【2009年12月】 その2
東京国立博物館の案内 【2010年02月】
東京国立博物館の案内 【2010年06月】
東京国立博物館の案内 【2010年11月】
博物館に初もうで (東京国立博物館 本館)
本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)
東京国立博物館の案内 【2011年02月】
東京国立博物館の案内 【2011年07月】
東京国立博物館の案内 【2011年11月】
博物館に初もうで 2012年 (東京国立博物館 本館)
東京国立博物館140周年 新年特別公開 (東京国立博物館 本館)
東京国立博物館の案内 【2012年03月】
東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放 2012】
東京国立博物館の案内 【2012年11月】
博物館に初もうで 2013年 (東京国立博物館 本館)
東洋館リニューアルオープン (東京国立博物館 東洋館)
飯島光峨 「花下躍鯉」

ぼんやりした幻想的な雰囲気の作品。鯉は上から観た構図、月は下から観た構図となっているようです。水音だけが聞こえてきそう。
速水御舟 「萌芽」

尼僧が木々に囲まれた神秘的な作品。背景と尼僧の色合いの強さのバランスがそう思わせるのかも。
鏑木清方 「黒髪」

こちらは第11回文展で特選第一席となった作品だそうです。清方らしい清純かつ繊細な美女が描かれていました。
左:伊東深水 「近江八景 三井寺」
右:伊東深水 「近江八景 堅田浮御堂」

今回は伊東深水の版画が結構ありました。こちらは近江八景に関する作品。日本ならではの叙情性と美意識を感じさせます。
左:伊東深水 「春」
右:伊東深水 「ひでり雨」

伊東深水は人物像もありました。いずれも艶やかで気品のある美人です。
左:岡田三郎助 「傾く日影(雑草)」
右:中沢弘光 「霧(裸婦)」

洋画にも美しい女性を描いた作品がいくつかありました。ラファエル・コランの弟子の岡田三郎助と、コランの孫弟子(黒田清輝の弟子)にあたる中沢弘光はさすがに共通するものを感じるかな。これも神秘的で好みです。
続いて2階。
手鑑 「月台」

こちらは明治~大正時代の歌人 大口周魚が収集した古筆や写経の断簡。流麗な文字と綺羅びやかな料紙が華やかな印象です。
狩野探幽 「孫思ぱく図」

孫思ぱく は唐時代の中国の名医だそうです。輪郭の太い孫思ぱくと、輪郭のない没骨法で描かれた虎を描き分けているらしく、背景も孫思ぱくの視線に合わせて斜めに線が入っています。ヒゲがなびいて見えるせいか軽やかな印象を受けました。
狩野永納 「神農図」

こちらは数々の植物を自ら試して薬草を発見したとされる神農の図です。口に加えているのも恐らく薬草かな。仙人のような人間離れした雰囲気がありました。
白隠慧鶴 「布袋図」

こちらは白隠の布袋図。大胆な輪郭線で描かれ、なんとも緩い雰囲気です。笑顔と大きな寿がおめでたい感じ。
参考記事:
白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
「源平合戦図」

こちらの屏風は源平合戦が細かく描かれていました。合戦だけどどこか雅な感じを受けます。
近衛信尹 「源氏物語抄」

こちらは源氏物語を書いた作品。字の美しさと紙の美しさが非常に優美です。
「打掛 綸子地橘に几帳模様」

何とも華やかな印象の打掛。几帳模様が舞うように描かれていて、爽やかかつ気品を感じさせました。
ということで、今回も常設を楽しんできました。ここの常設は本当に素晴らしいので、特別展に行かれる際は合わせてみることをお勧めします。
※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れます。(撮影禁止の作品もあります)
※当サイトからの転載は画像・文章ともに一切禁止させていただいております。
公式サイト
http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=hall&hid=12&date=
参考記事:
東京国立博物館の案内 【建物編】
東京国立博物館の案内 【常設・仏教編】
東京国立博物館の案内 【常設・美術編】
東京国立博物館の案内 【2009年08月】
東京国立博物館の案内 【2009年10月】
東京国立博物館の案内 【2009年11月】
東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放】
東京国立博物館の案内 【2009年12月】
東京国立博物館の案内 【2009年12月】 その2
東京国立博物館の案内 【2010年02月】
東京国立博物館の案内 【2010年06月】
東京国立博物館の案内 【2010年11月】
博物館に初もうで (東京国立博物館 本館)
本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)
東京国立博物館の案内 【2011年02月】
東京国立博物館の案内 【2011年07月】
東京国立博物館の案内 【2011年11月】
博物館に初もうで 2012年 (東京国立博物館 本館)
東京国立博物館140周年 新年特別公開 (東京国立博物館 本館)
東京国立博物館の案内 【2012年03月】
東京国立博物館の案内 【秋の庭園解放 2012】
東京国立博物館の案内 【2012年11月】
博物館に初もうで 2013年 (東京国立博物館 本館)
東洋館リニューアルオープン (東京国立博物館 東洋館)
飯島光峨 「花下躍鯉」

ぼんやりした幻想的な雰囲気の作品。鯉は上から観た構図、月は下から観た構図となっているようです。水音だけが聞こえてきそう。
速水御舟 「萌芽」

尼僧が木々に囲まれた神秘的な作品。背景と尼僧の色合いの強さのバランスがそう思わせるのかも。
鏑木清方 「黒髪」

こちらは第11回文展で特選第一席となった作品だそうです。清方らしい清純かつ繊細な美女が描かれていました。
左:伊東深水 「近江八景 三井寺」
右:伊東深水 「近江八景 堅田浮御堂」


今回は伊東深水の版画が結構ありました。こちらは近江八景に関する作品。日本ならではの叙情性と美意識を感じさせます。
左:伊東深水 「春」
右:伊東深水 「ひでり雨」


伊東深水は人物像もありました。いずれも艶やかで気品のある美人です。
左:岡田三郎助 「傾く日影(雑草)」
右:中沢弘光 「霧(裸婦)」


洋画にも美しい女性を描いた作品がいくつかありました。ラファエル・コランの弟子の岡田三郎助と、コランの孫弟子(黒田清輝の弟子)にあたる中沢弘光はさすがに共通するものを感じるかな。これも神秘的で好みです。
続いて2階。
手鑑 「月台」

こちらは明治~大正時代の歌人 大口周魚が収集した古筆や写経の断簡。流麗な文字と綺羅びやかな料紙が華やかな印象です。
狩野探幽 「孫思ぱく図」

孫思ぱく は唐時代の中国の名医だそうです。輪郭の太い孫思ぱくと、輪郭のない没骨法で描かれた虎を描き分けているらしく、背景も孫思ぱくの視線に合わせて斜めに線が入っています。ヒゲがなびいて見えるせいか軽やかな印象を受けました。
狩野永納 「神農図」

こちらは数々の植物を自ら試して薬草を発見したとされる神農の図です。口に加えているのも恐らく薬草かな。仙人のような人間離れした雰囲気がありました。
白隠慧鶴 「布袋図」

こちらは白隠の布袋図。大胆な輪郭線で描かれ、なんとも緩い雰囲気です。笑顔と大きな寿がおめでたい感じ。
参考記事:
白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
「源平合戦図」

こちらの屏風は源平合戦が細かく描かれていました。合戦だけどどこか雅な感じを受けます。
近衛信尹 「源氏物語抄」

こちらは源氏物語を書いた作品。字の美しさと紙の美しさが非常に優美です。
「打掛 綸子地橘に几帳模様」

何とも華やかな印象の打掛。几帳模様が舞うように描かれていて、爽やかかつ気品を感じさせました。
ということで、今回も常設を楽しんできました。ここの常設は本当に素晴らしいので、特別展に行かれる際は合わせてみることをお勧めします。
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前々回、前回とご紹介した国立新美術館の展示を観た後、乃木坂駅付近にあるメルセデス・ベンツのショールームに併設されているDOWN STAIRS COFFEE(ダウンステアーズコーヒー)というお店でお茶して来ました。

【店名】
DOWN STAIRS COFFEE(ダウンステアーズコーヒー)
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
http://www.mercedes-benz-connection.com/floor/downstairs.html
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13129689/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
乃木坂駅/六本木駅
【近くの美術館】
国立新美術館
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
など
【この日にかかった1人の費用】
1100円程度
【味】
不味_1_2_③_4_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_③_4_5_名店
【感想】
ティータイムには遅い時間でしたがちょうど満席くらいで、人気のお店のようでした。
さて、こちらは冒頭にも書いたようにメルセデス・ベンツのショールームにあるお店です。ちょっと前までは国立新美術館の前の道の入口あたりにあったのですが、最近少し乃木坂寄りに移動しました。このカフェも以前からあったようですが、今までは気づかず新しい場所に移ってきて初めて気がついて、興味が湧いたので入ってみました。私にはとてもベンツは買えませんが、別にそれは気にしなくても大丈夫そうですw
中はこんな感じ。いわゆるシアトル系カフェというやつで、先にカウンターで頼んでセルフで持って行くタイプです

店内はゆったりした音楽が流れ、場所柄もあり外国のお客さんが多いようでした。近未来的なフォルムのベンツも置かれていて、洒落た雰囲気です。 中央のテーブル席には電源があって、PCや携帯を充電してる人が結構いました。
この日、私はクロワッサン(700円)とホットラテ(400円)を頼みました。
まずはクロワッサン。

こちらは卵がたっぷり入っていました。味はごく普通かな。直前まで冷蔵庫に入っていたので冷たいw これで700円…。うーん…w
こちらはホットラテ。

ラテアートが洒落ていますが、紙コップかあ…。 中身は牛乳たっぷりで、コーヒーの味は薄めです。ぬるいのもちょっと好みではありませんでした。
ということで、元々好きではないシアトル系のお店ということもあり、値段の割にはどうかなという感じでした。お店は洒落ているし電源も使えるのは便利ですが、スタバなどとあまり変わらないかも。やはりベンツを愛でながらゆっくり考えたい方向けのお店かなと。

【店名】
DOWN STAIRS COFFEE(ダウンステアーズコーヒー)
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
http://www.mercedes-benz-connection.com/floor/downstairs.html
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13129689/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
乃木坂駅/六本木駅
【近くの美術館】
国立新美術館
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
など
【この日にかかった1人の費用】
1100円程度
【味】
不味_1_2_③_4_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_③_4_5_名店
【感想】
ティータイムには遅い時間でしたがちょうど満席くらいで、人気のお店のようでした。
さて、こちらは冒頭にも書いたようにメルセデス・ベンツのショールームにあるお店です。ちょっと前までは国立新美術館の前の道の入口あたりにあったのですが、最近少し乃木坂寄りに移動しました。このカフェも以前からあったようですが、今までは気づかず新しい場所に移ってきて初めて気がついて、興味が湧いたので入ってみました。私にはとてもベンツは買えませんが、別にそれは気にしなくても大丈夫そうですw
中はこんな感じ。いわゆるシアトル系カフェというやつで、先にカウンターで頼んでセルフで持って行くタイプです

店内はゆったりした音楽が流れ、場所柄もあり外国のお客さんが多いようでした。近未来的なフォルムのベンツも置かれていて、洒落た雰囲気です。 中央のテーブル席には電源があって、PCや携帯を充電してる人が結構いました。
この日、私はクロワッサン(700円)とホットラテ(400円)を頼みました。
まずはクロワッサン。

こちらは卵がたっぷり入っていました。味はごく普通かな。直前まで冷蔵庫に入っていたので冷たいw これで700円…。うーん…w
こちらはホットラテ。

ラテアートが洒落ていますが、紙コップかあ…。 中身は牛乳たっぷりで、コーヒーの味は薄めです。ぬるいのもちょっと好みではありませんでした。
ということで、元々好きではないシアトル系のお店ということもあり、値段の割にはどうかなという感じでした。お店は洒落ているし電源も使えるのは便利ですが、スタバなどとあまり変わらないかも。やはりベンツを愛でながらゆっくり考えたい方向けのお店かなと。
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今日は前回の記事に引き続き、国立新美術館の「カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源-」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら

【展覧名】
カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源-
California Design, 1930-1965: "Living in a Modern Way"
【公式サイト】
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/california/index.html
【会場】国立新美術館 企画展示室1E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2013年3月20日(水・祝)~6月3日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
4時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前半では誕生と形成についてご紹介しましたが、後半は残りの2つの章についてです。
<第3章 カリフォルニア・モダンの生活>
カリフォルニアの気候と文化は、モダニズムが根付き繁栄するのにまさに理想の環境と言えたそうで、カリフォルニアモダンは機能を重視し装飾を廃したユートピア的な性格を有していたようです。「カリフォルニア・モダン」とは特定の美学を厳密に指すのではなく緩い括りのようですが、
・民主主義的で色々と他と組み合わせて容易にコーディネートできる
・アジアやメキシコから影響を受けている
・屋内外の区別やリビング/ダイニング/寝室といった空間の境界を曖昧にした住宅空間で、カジュアルなライフスタイル
といった特徴があるようです。この章ではカリフォルニアモダンの住宅の内部に焦点を絞り、いかに空間を演出したかを検証するという趣旨となっていました。
[中産階級のユートピア]
カリフォルニアでは戦後に様々なデザインの語彙が生まれ、その中に「ケース・スタディ・ハウス」というプログラムがありました。これは「アーツ&アーキテクチャー」という雑誌の編集長だったジョン・エンテンザによってプログラムに参加する建築家が選ばれ、住宅計画を誌面(1945年~1966年)で紹介したものだそうで、規格化された部品を多用し低コストで建設されたプロトタイプの建築は絶大な影響力を及ぼしたそうです。しかし、36案の図面しか取り上げられず実際には建設されないものもあったそうで、むしろ中産階級に適切な価格のモダン住宅を提供したのは、ジョセフ・アイクラーを始めとする宅地開発業者だったようです。開放的な設計やガラス張りの壁面といったカリフォルニアならではのデザインは保守的な住宅と一線を画すものとして喧伝されたそうで、ここにはそうした住宅の写真なども展示されていました。
V6 チャールズ・イームズ/レイ・イームズ 「ハウス:5年後の記憶」
こちらはイームズ夫妻のモジュール式建築の住宅を紹介する映像です。安価な材料でできているそうですが、明るくスッキリした印象で安っぽさを感じさせません。ちょっと和風なところもあれば いかにもカリフォルニアといった色彩のものもあり、様々なものが混在しているようです。シンプルながらも優美で開放的な住宅となっていました。
この近くにはケーススタディのデザイン案や実際に建てたケース・スタディ・ハウスの写真などもありました。どれも実際に住んでみたいですw
J103 ウォレス・ネフ 「エアフォーム・ハウス」
こちらはカマクラやドラゴンボールに出てくるカプセルハウスを彷彿とする半球状の住宅が立ち並ぶ写真です。解説によると、これはゴム製の半球状のバルーンにコンクリートを吹きつけて建設するそうです。窓があるのもありましたが、ちょっと日当たりは良くなさそうに見えるかも…w 近未来っぽい雰囲気がありました。
この辺にはソファ・テーブル・ランプ・絵画などがセットになった一角がありました。リビングをそのまま展示したかのような感じで面白いです。ランプや絵は抽象的な図様となっていました。
また、その少し先にはレコードのジャケットも何枚か展示されていました。ロスはレコード産業の中心地として台頭しつつあったそうです。ジャケットのデザインも独特な華やかさがあって面白い。
[アトミック・デザイン]
戦後の冷戦時代は、ロケットや原子をモチーフにした形態や装飾が登場するなど、原子はデザインにもインパクトを与えたようです。原子や原子爆弾に肯定的なデザインは日常生活に溶け込み需要されていたそうで、ここにはそうした作品が並んでいました。
J136 チャールズ・イームズ、レイ・イームズ 「ハング・イット・オール」
これは帽子やコートを掛ける家具で、引っ掛ける部分が球体となっていてカラフルでポップな印象を受けます。このコーナーの趣旨から推測すると原子をモチーフにしたのかな? そう思って観ると確かに原子模型に似ているように思えてきます。 この品は実際に使っている所も見たことがあるのでちょっと意外でした。
この辺には原爆のキノコ雲を思わせるドレスや、子供向けのゲームなどもありました。核抑止論の時代とはいえ、現代日本の私から観るとちょっと狂った感性に思えました。
[カジュアル・ダイニング]
カリフォルニアのモダン住宅ではリヴィングとダイニングを合わせて1つの空間にすることで、行き来しやすい居住空間が生まれました。これは小さいスペースに甘んじざるをえない戦後の住宅状況の反映であって、そのテーブルウエアのほとんどに1つの形式に縛られることのない様々な機能があるそうです。
ここは数点のみで、皿や砂糖入れ、コショウ入れなど斬新なデザインの品々が展示されていました。
[子どもためのデザイン]
戦後の若年家族の急激な増加はベビーブーム文化の呼び水となったそうで、子供の持つ開かれた可能性は多くのデザイナーに刺激を与えたようです。彼らは子供が手がけた作品に見られる自発性や直接性を取り入れたそうで、ここには子供のためのデザインの数々が並んでいました。
J150 ギア・カヴァナー 「都市計画玩具(プロトタイプ)」
赤、青、黄色など色とりどりで単純な形の積み木で街を形作った作品です。下敷きの布には道路が描かれ小さなコケシのような人形も置かれています。これはこの積み木(ブロック)で自由に計画都市を構成して遊べるものらしく、結構楽しそうなコンセプトでした。デザイン的にも洒落ていてポップな感じです。
この辺にはマテル社のバービールックのCMやポラロイド社のカメラのCMなどの映像があり、少し進むとバービー人形と恋人のケン、厚紙でできたバービーの家などもありました。
[インドア/アウトドア・リヴィング]
温和なカリフォルニアの人々は屋外の暮らしになれ親しんでいたらしく、屋内と屋内を兼用する家具を必要としたようです。その為、デザイナーたちはあらゆる天候に耐えうる家具を製造したそうで、ここにはそうした作品が並んでいます。
J160 ミラー・イー・フォン 「椅子 [ロータス]」
これは藤を使って作られた椅子です。包み込むような形で、かなり大柄な人でもゆったり座れそうw 藤で出来ているのでサイズの割りには軽いのかな。解説によると、カジュアルな家具の素材としての藤は幅広く使われたようで、カリフォルニアと環太平洋との積年の関係を表しているようでした。
[水着]
カリフォルニアの女性ファッションでも最も際立って特徴が見られるのは水着だそうで、この業界の2大企業であるコール・オブ・カリフォルニア社とカタリナ社を始め中小の競合企業がひしめいているようです。ここには個性豊かな水着が並んでいました。
J165 メアリー・アン・デウィーズ 「女性用水着」
これは一見するとワンピースのような花がら水着で、ドレスのようにも見えます。しかしよく観ると上下に分かれているようで、場所や状況によって水着にしたりプールサイドのカクテルパーティにも使えるそうです。多彩なシーンに対応しているのはやはりカリフォルニアの特徴なのかも。華やかな印象のある水着でした。
この近くにはアメリカの国旗のような柄の水着やネイティブアメリカン風の水着もありました。
<第4章 カリフォルニア・モダンの普及>
1945年以降、国内消費に関する統制が解除されると、新しいプロダクトを渇望する動きが加速したそうです。こちらでは美術館と小売業者・雑誌との協力やアメリカ国内外で開催された展覧会についてを取り上げていました。
[雑誌]
大戦終結以前にアーツ&アーキテクチャー誌はカリフォルニアにおけるモダニズムの普及に欠かせない最も重要な出版物へと変貌していたそうで、最前線を求めるエリート層から一定の支持を得ていたようです。一方、より幅広い読者に向けられていたのは一般的な情報誌やライフスタイル誌だったらしく、ここにはそうした雑誌が並んでいます。
まずアーツ&アーキテクチャー誌が並び、いずれも先進的なテキスタイルなどが表紙となっていました。また、ライフスタイルの雑誌もあり、こちらはリビングの絵を表紙にしていて、イメージしやすく分かりやすそうでした。
[モダンデザインの流通]
ここまで展示を観ると、カリフォルニアの人々はよほど優れたデザインに囲まれた生活をしていたのだろうと想像しますが、実際にカリフォルニアでモダンデザインの魅力に興味を抱いていた人々の割合はそれほど大きくなかったようです。しかし多くの野心的な小売業者は進歩的な少数派に自らの命運をかけてモダンデザインの専門店を開いていったらしく、ここには家のイメージ図や宣伝に使ったギフトボックス、モダンな住宅の広告写真などが展示されていました。
J88 レイモンド・ローウィ 「スチュードベーカー アヴァンティ」
こちらはこのコーナーかわかりませんが、このフロアの中央に置かれていた白い車(スポーツクーペ)です。流線型が使われ当時は先進的なデザインだったのだろうと思いますが、丸いライトやサイドミラーなどは時代を感じるかな。今観るとまだ硬いデザインに思えました。なお、この車は相当スピードが出るようで、CM?_映像でも砂漠を突っ走るスピード感あるシーンなどが用いられていました。
[ハリウッド]
ハリウッドはカリフォルニアファッションのアイデンティティの中心だったそうで、映画で女優が着た衣装に似た服が全米中の店舗で販売されるなど、映画産業の販売力の大きさは強く認識されていたそうです。一方、建築へのハリウッドの影響はそれに比べて婉曲的だった(家が出てくるシーンが少ないため)そうですが、モダン住宅が舞台となる場合はチャールズ・イームズのように装飾顧問を務めることもあったようです。ここにはそうしたハリウッドとの繋がりを示す品が並んでいるのですが、点数は少なめで、宣伝用の水着や当時のデザインとハリウッドに関する映像などが展示されていました。ファッションリーダーと言えば女優なので、これは当然とも言える繋がりかな。
[「カリフォルニア・デザイン」展]
インダストリアル・デザインの水準を高めることは長いこと美術館の使命と考えられていたそうで、ミッドセンチュリーの時代においても全米の美術館が目標に掲げていたようです。1958年末には第1回カリフォルニアデザイン展がパサデナ美術館(現ノートン・サイモン美術館)で行われ、以降20年以上継続して開催されたようです。ここにはそれに関する品が並び、展覧会のカタログや椅子(2脚)などが展示されていました。(ここも点数が少ない)
[アメリカ国内外で開催された展覧会]
カリフォルニアデザインの展示は数多く開催されたようで、1945年以降はアメリカ政府が組織した海外の展覧会も行われたそうです。これには政治的なメッセージも含まれていたらしく、資本主義やアメリカ式の生活が優れていることの実証として提示されたようです。そして、誰もが成功と余暇を手にすることのできる理想郷としてのカリフォルニアはアメリンドリームの象徴となっていったそうです。
J224 チャールズ・イームズ、レイ・イームズ 「ESU(イームズ・ストレージ・ユニット)」
これは鉄や板でできた棚で、引き出しなどが備えつけられています。見た目はシンプルですが、多目的に使えそうな機能的なデザインに思えました。
[美術と工芸の決別]
1950年代終わりになると、ピーター・ヴォーカスによってデザイナー=クラフツマン運動を打破し、工芸の機能性を否定した美術作品としての陶芸のありかたが主張されたそうです。ここではそうした美術と工芸の決別について取り上げられていました。
J234 ピーター・ヴォーカス 「5000フィート」
これは抽象的で何を表しているのか分からない陶芸作品です。ゴツゴツしていて、強いて言えばモニュメント的な作品かな。これは確かにここまで観てきたような機能性・目的のある作品とは意を異にしているのが一目でわかります。芸術のための芸術といった感じかな。新たな潮流を感じさせました。
ということで、じっくりと楽しんできました。よく見る品もあるので、詳しいことを知ることができて参考になりました。情報量がかなり多い展示でしたので、デザイン好きな方には特に楽しめる内容だと思います。会期も長いので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら

【展覧名】
カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源-
California Design, 1930-1965: "Living in a Modern Way"
【公式サイト】
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/california/index.html
【会場】国立新美術館 企画展示室1E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2013年3月20日(水・祝)~6月3日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
4時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前半では誕生と形成についてご紹介しましたが、後半は残りの2つの章についてです。
<第3章 カリフォルニア・モダンの生活>
カリフォルニアの気候と文化は、モダニズムが根付き繁栄するのにまさに理想の環境と言えたそうで、カリフォルニアモダンは機能を重視し装飾を廃したユートピア的な性格を有していたようです。「カリフォルニア・モダン」とは特定の美学を厳密に指すのではなく緩い括りのようですが、
・民主主義的で色々と他と組み合わせて容易にコーディネートできる
・アジアやメキシコから影響を受けている
・屋内外の区別やリビング/ダイニング/寝室といった空間の境界を曖昧にした住宅空間で、カジュアルなライフスタイル
といった特徴があるようです。この章ではカリフォルニアモダンの住宅の内部に焦点を絞り、いかに空間を演出したかを検証するという趣旨となっていました。
[中産階級のユートピア]
カリフォルニアでは戦後に様々なデザインの語彙が生まれ、その中に「ケース・スタディ・ハウス」というプログラムがありました。これは「アーツ&アーキテクチャー」という雑誌の編集長だったジョン・エンテンザによってプログラムに参加する建築家が選ばれ、住宅計画を誌面(1945年~1966年)で紹介したものだそうで、規格化された部品を多用し低コストで建設されたプロトタイプの建築は絶大な影響力を及ぼしたそうです。しかし、36案の図面しか取り上げられず実際には建設されないものもあったそうで、むしろ中産階級に適切な価格のモダン住宅を提供したのは、ジョセフ・アイクラーを始めとする宅地開発業者だったようです。開放的な設計やガラス張りの壁面といったカリフォルニアならではのデザインは保守的な住宅と一線を画すものとして喧伝されたそうで、ここにはそうした住宅の写真なども展示されていました。
V6 チャールズ・イームズ/レイ・イームズ 「ハウス:5年後の記憶」
こちらはイームズ夫妻のモジュール式建築の住宅を紹介する映像です。安価な材料でできているそうですが、明るくスッキリした印象で安っぽさを感じさせません。ちょっと和風なところもあれば いかにもカリフォルニアといった色彩のものもあり、様々なものが混在しているようです。シンプルながらも優美で開放的な住宅となっていました。
この近くにはケーススタディのデザイン案や実際に建てたケース・スタディ・ハウスの写真などもありました。どれも実際に住んでみたいですw
J103 ウォレス・ネフ 「エアフォーム・ハウス」
こちらはカマクラやドラゴンボールに出てくるカプセルハウスを彷彿とする半球状の住宅が立ち並ぶ写真です。解説によると、これはゴム製の半球状のバルーンにコンクリートを吹きつけて建設するそうです。窓があるのもありましたが、ちょっと日当たりは良くなさそうに見えるかも…w 近未来っぽい雰囲気がありました。
この辺にはソファ・テーブル・ランプ・絵画などがセットになった一角がありました。リビングをそのまま展示したかのような感じで面白いです。ランプや絵は抽象的な図様となっていました。
また、その少し先にはレコードのジャケットも何枚か展示されていました。ロスはレコード産業の中心地として台頭しつつあったそうです。ジャケットのデザインも独特な華やかさがあって面白い。
[アトミック・デザイン]
戦後の冷戦時代は、ロケットや原子をモチーフにした形態や装飾が登場するなど、原子はデザインにもインパクトを与えたようです。原子や原子爆弾に肯定的なデザインは日常生活に溶け込み需要されていたそうで、ここにはそうした作品が並んでいました。
J136 チャールズ・イームズ、レイ・イームズ 「ハング・イット・オール」
これは帽子やコートを掛ける家具で、引っ掛ける部分が球体となっていてカラフルでポップな印象を受けます。このコーナーの趣旨から推測すると原子をモチーフにしたのかな? そう思って観ると確かに原子模型に似ているように思えてきます。 この品は実際に使っている所も見たことがあるのでちょっと意外でした。
この辺には原爆のキノコ雲を思わせるドレスや、子供向けのゲームなどもありました。核抑止論の時代とはいえ、現代日本の私から観るとちょっと狂った感性に思えました。
[カジュアル・ダイニング]
カリフォルニアのモダン住宅ではリヴィングとダイニングを合わせて1つの空間にすることで、行き来しやすい居住空間が生まれました。これは小さいスペースに甘んじざるをえない戦後の住宅状況の反映であって、そのテーブルウエアのほとんどに1つの形式に縛られることのない様々な機能があるそうです。
ここは数点のみで、皿や砂糖入れ、コショウ入れなど斬新なデザインの品々が展示されていました。
[子どもためのデザイン]
戦後の若年家族の急激な増加はベビーブーム文化の呼び水となったそうで、子供の持つ開かれた可能性は多くのデザイナーに刺激を与えたようです。彼らは子供が手がけた作品に見られる自発性や直接性を取り入れたそうで、ここには子供のためのデザインの数々が並んでいました。
J150 ギア・カヴァナー 「都市計画玩具(プロトタイプ)」
赤、青、黄色など色とりどりで単純な形の積み木で街を形作った作品です。下敷きの布には道路が描かれ小さなコケシのような人形も置かれています。これはこの積み木(ブロック)で自由に計画都市を構成して遊べるものらしく、結構楽しそうなコンセプトでした。デザイン的にも洒落ていてポップな感じです。
この辺にはマテル社のバービールックのCMやポラロイド社のカメラのCMなどの映像があり、少し進むとバービー人形と恋人のケン、厚紙でできたバービーの家などもありました。
[インドア/アウトドア・リヴィング]
温和なカリフォルニアの人々は屋外の暮らしになれ親しんでいたらしく、屋内と屋内を兼用する家具を必要としたようです。その為、デザイナーたちはあらゆる天候に耐えうる家具を製造したそうで、ここにはそうした作品が並んでいます。
J160 ミラー・イー・フォン 「椅子 [ロータス]」
これは藤を使って作られた椅子です。包み込むような形で、かなり大柄な人でもゆったり座れそうw 藤で出来ているのでサイズの割りには軽いのかな。解説によると、カジュアルな家具の素材としての藤は幅広く使われたようで、カリフォルニアと環太平洋との積年の関係を表しているようでした。
[水着]
カリフォルニアの女性ファッションでも最も際立って特徴が見られるのは水着だそうで、この業界の2大企業であるコール・オブ・カリフォルニア社とカタリナ社を始め中小の競合企業がひしめいているようです。ここには個性豊かな水着が並んでいました。
J165 メアリー・アン・デウィーズ 「女性用水着」
これは一見するとワンピースのような花がら水着で、ドレスのようにも見えます。しかしよく観ると上下に分かれているようで、場所や状況によって水着にしたりプールサイドのカクテルパーティにも使えるそうです。多彩なシーンに対応しているのはやはりカリフォルニアの特徴なのかも。華やかな印象のある水着でした。
この近くにはアメリカの国旗のような柄の水着やネイティブアメリカン風の水着もありました。
<第4章 カリフォルニア・モダンの普及>
1945年以降、国内消費に関する統制が解除されると、新しいプロダクトを渇望する動きが加速したそうです。こちらでは美術館と小売業者・雑誌との協力やアメリカ国内外で開催された展覧会についてを取り上げていました。
[雑誌]
大戦終結以前にアーツ&アーキテクチャー誌はカリフォルニアにおけるモダニズムの普及に欠かせない最も重要な出版物へと変貌していたそうで、最前線を求めるエリート層から一定の支持を得ていたようです。一方、より幅広い読者に向けられていたのは一般的な情報誌やライフスタイル誌だったらしく、ここにはそうした雑誌が並んでいます。
まずアーツ&アーキテクチャー誌が並び、いずれも先進的なテキスタイルなどが表紙となっていました。また、ライフスタイルの雑誌もあり、こちらはリビングの絵を表紙にしていて、イメージしやすく分かりやすそうでした。
[モダンデザインの流通]
ここまで展示を観ると、カリフォルニアの人々はよほど優れたデザインに囲まれた生活をしていたのだろうと想像しますが、実際にカリフォルニアでモダンデザインの魅力に興味を抱いていた人々の割合はそれほど大きくなかったようです。しかし多くの野心的な小売業者は進歩的な少数派に自らの命運をかけてモダンデザインの専門店を開いていったらしく、ここには家のイメージ図や宣伝に使ったギフトボックス、モダンな住宅の広告写真などが展示されていました。
J88 レイモンド・ローウィ 「スチュードベーカー アヴァンティ」
こちらはこのコーナーかわかりませんが、このフロアの中央に置かれていた白い車(スポーツクーペ)です。流線型が使われ当時は先進的なデザインだったのだろうと思いますが、丸いライトやサイドミラーなどは時代を感じるかな。今観るとまだ硬いデザインに思えました。なお、この車は相当スピードが出るようで、CM?_映像でも砂漠を突っ走るスピード感あるシーンなどが用いられていました。
[ハリウッド]
ハリウッドはカリフォルニアファッションのアイデンティティの中心だったそうで、映画で女優が着た衣装に似た服が全米中の店舗で販売されるなど、映画産業の販売力の大きさは強く認識されていたそうです。一方、建築へのハリウッドの影響はそれに比べて婉曲的だった(家が出てくるシーンが少ないため)そうですが、モダン住宅が舞台となる場合はチャールズ・イームズのように装飾顧問を務めることもあったようです。ここにはそうしたハリウッドとの繋がりを示す品が並んでいるのですが、点数は少なめで、宣伝用の水着や当時のデザインとハリウッドに関する映像などが展示されていました。ファッションリーダーと言えば女優なので、これは当然とも言える繋がりかな。
[「カリフォルニア・デザイン」展]
インダストリアル・デザインの水準を高めることは長いこと美術館の使命と考えられていたそうで、ミッドセンチュリーの時代においても全米の美術館が目標に掲げていたようです。1958年末には第1回カリフォルニアデザイン展がパサデナ美術館(現ノートン・サイモン美術館)で行われ、以降20年以上継続して開催されたようです。ここにはそれに関する品が並び、展覧会のカタログや椅子(2脚)などが展示されていました。(ここも点数が少ない)
[アメリカ国内外で開催された展覧会]
カリフォルニアデザインの展示は数多く開催されたようで、1945年以降はアメリカ政府が組織した海外の展覧会も行われたそうです。これには政治的なメッセージも含まれていたらしく、資本主義やアメリカ式の生活が優れていることの実証として提示されたようです。そして、誰もが成功と余暇を手にすることのできる理想郷としてのカリフォルニアはアメリンドリームの象徴となっていったそうです。
J224 チャールズ・イームズ、レイ・イームズ 「ESU(イームズ・ストレージ・ユニット)」
これは鉄や板でできた棚で、引き出しなどが備えつけられています。見た目はシンプルですが、多目的に使えそうな機能的なデザインに思えました。
[美術と工芸の決別]
1950年代終わりになると、ピーター・ヴォーカスによってデザイナー=クラフツマン運動を打破し、工芸の機能性を否定した美術作品としての陶芸のありかたが主張されたそうです。ここではそうした美術と工芸の決別について取り上げられていました。
J234 ピーター・ヴォーカス 「5000フィート」
これは抽象的で何を表しているのか分からない陶芸作品です。ゴツゴツしていて、強いて言えばモニュメント的な作品かな。これは確かにここまで観てきたような機能性・目的のある作品とは意を異にしているのが一目でわかります。芸術のための芸術といった感じかな。新たな潮流を感じさせました。
ということで、じっくりと楽しんできました。よく見る品もあるので、詳しいことを知ることができて参考になりました。情報量がかなり多い展示でしたので、デザイン好きな方には特に楽しめる内容だと思います。会期も長いので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
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