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よみがえる不朽の名作 土門拳の『古寺巡礼』 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

日付が変わって昨日となりましたが、土曜日の夕方に六本木のミッドタウンにあるFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で、よみがえる不朽の名作 土門拳の『古寺巡礼』を観てきました。この展示は2期に分かれていて、私が観たのは後期(第2部)の内容でした。

P1110422.jpg

【展覧名】
 よみがえる不朽の名作 土門拳の『古寺巡礼』
 第二部:『古寺巡礼』-浄土と禅宗世界への憧れ-平安後期から桃山

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/1306140123.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】
 第一部:『古寺巡礼』-仏教文化の開花-飛鳥~平安前期
  2013年6月14日(金)~2013年6月27日(木)

 第二部:『古寺巡礼』-浄土と禅宗世界への憧れ-平安後期から桃山
  2013年6月28日(金)~2013年7月10日(水)
    ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり鑑賞することができました。

さて、今回の展示は著名な写真家の土門拳の仏教美術の写真に焦点を当てた内容となっています。土門拳は明治42年(1909年)に山形の酒田に生まれ、6歳の時に東京に移り住み横浜で育ったそうです。中学の時は画家を志望していたようですが、営業写真館の門下生を経て昭和10年(1935年)に日本工房に入社し、報道写真を撮り始めました。昭和14年(1939年)に室生寺を訪れると、魅せられて生涯を通してのテーマとなり、古寺巡礼の契機となったそうです。戦後になると土門拳はカメラ雑誌の審査員となりアマチュア写真家の指導を行うなど多大な影響を与え、伝統文化・人物・社会性の高いテーマなど、多岐にわたって代表作を残しました。昭和38年(1963年)には今回の展示のタイトルにもなっている「古寺巡礼」を刊行し、昭和43年(1968年)に脳出血の後遺症で右半身不髄となってからも長期休養後に車椅子で撮影を再開したそうです。さらに「古寺巡礼」の第5集の完成後も室生寺を撮り続けたそうで、「女人高野室生寺」を刊行しました。その後、昭和58年(1983年)に全作品を酒田市に寄贈し、現在では土門拳記念館に展示されているとのことです。展覧会にはそうしたお寺や仏像などの写真が並び、第二部は平安後期から桃山時代に作られたものが写されていました。詳しくは気に入った作品をいくつか挙げながらご紹介しようと思います。

土門拳 「妙喜庵待庵」
千利休が作ったと考えられる茶室で、元は天王山に作ったものを京都に移築してきたそうです。2畳しかない部屋に掛け軸が掛かっている様子が写されていて、壁などは古びた感じがします。掛け軸の書は流麗な印象で、部屋は直線直角が多い幾何学的な雰囲気でした。2畳の狭い部屋なのに広がりを感じ、静かな風格が漂っているようでした。

土門拳 「龍安寺」
有名な枯山水の庭を斜めに見る構図で撮った写真です。結構広々した感じで、所々に浮かぶ岩と白い石が、川の流れや一種の小宇宙のような趣でした。渋いです。
 参考記事:番外編 京都旅行 金閣寺エリアその2

土門拳 「室生寺」
これは今回のポスターにもなっている作品で、仏像の横顔のアップが写されています。目を閉じて穏やかな表情で、やや表面は剥落しているので時間の経過を感じさせます。真っ暗な背景だったせいか、時間が止まったような静けさを湛えていました。

土門拳 「永保寺会開山堂外陣 東面三手先詰組・北面海老虹梁」
これは鎌倉時代末期の唐様建築の「開山堂」の梁などを撮った2枚の写真で、お互いに木が組み合っている様子がアップで取られています。整然と規則正しく並ぶ幾何学性が美しく感じられ、梁を撮った写真も優美な線を描いていました。これは写真家の目の付け所も凄いと思います。

土門拳 「嵯峨野石仏郡」
これは樹の根元に7体程度の石仏が並んでいる様子が撮られた写真です。石仏や木の表面には苔が生えていて、石仏の顔は判別がつかないくらい摩耗してるなど悠久の時を感じさせます。画面全体に侘びた雰囲気があり、目に見えない湿気か冷気のようなものが写っているように思えました。

土門拳 「中尊寺大日如来坐像(一字金輪)全身・面相」
右手を握り、その中に左手の人差し指を入れる「智拳印」を結んでいる中尊寺の大日如来坐像を正面から撮った写真と顔だけのアップ写真です。冠をかぶり光背を背にしているのですが、いずれも優美な雰囲気で、全体的に丸みを帯びたふくよかな感じを受けます。解説によるとこれは藤原末期の作品だそうで、豊満な肉体に色気があるとのことでした。遠くを見渡すような目も印象的です。

土門拳 「中尊寺金色堂内陣正面全景」
阿弥陀如来を中心に観音菩薩・勢至菩薩が両脇に立ち、周りには地蔵菩薩や四天王(持国天・増長天)が並んでいる様子が撮られた写真です。すべて金色に輝いているのですが、ギラギラした感じではなく、神々しくも落ち着いた雰囲気で静かに光を放っています。周りの柱や須弥壇の装飾も華麗な細工が施されていて、藤原三代の栄華が偲ばれるようでした。
 参考記事:中尊寺の写真 (番外編 岩手)

土門拳 「三十三間堂内陣 千体千手観音立像群」
金色に輝く千手観音がズラリと並んでいる様子が撮られた写真です。やや斜め下から観た構図で、その数の多さが際立って感じられました。金色でこれだけの数の立像がいるのに静謐で整然とした雰囲気なのも興味深かったです。
この近くには三十三間堂の風神雷神を撮った写真もあり、特に雷神の顔のアップはまるで生きているかのような迫力がありました。
 参考記事:番外編 京都旅行 祇園~清水寺エリアその2

土門拳 「平等院鳳凰堂 大棟南端鳳凰詳細」
これは鳳凰堂の左側の鳳凰をアップで撮ったものです。今まさに飛び立たんとするような躍動感あふれる姿勢で、表情もキリッとしていて風格が感じられます。胸前だたりは金色の部分が残っていて、昔は金色だったのかなと想像させました。


ということで、満足度の高い写真展となっていました。仏教美術もこうして観せられるとまだまだ魅力に気づいていなかったのだと痛感させられた気がします。写真家独自の視点なども含めて興味深い内容でしたので、写真や仏教美術が好きな方は是非どうぞ。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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映画「アフターアース」(ややネタバレあり)

先日、仕事の帰りにレイトショーで映画「アフターアース」を観てきました。

2013-06-27 20.27.19

【作品名】
 アフターアース

【公式サイト】
 http://www.afterearth.jp/

【時間】
 1時間40分程度

【ストーリー】
 退屈_1_②_3_4_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_③_4_5_名作

【感想】
ほぼ貸切状態で空いていました。結構公開されて間もないはずですが…。

さて、この作品は人気俳優のウィル・スミスと実の息子ジェイデン・スミスが親子役で挑むSFとなっています。私はSFは片っ端から観たい人なので特に前知識なども無くSFという理由だけで観に行きました。物語はタイトルの通り地球が舞台で、人類が住めなくなった地球に何千年後にその親子が宇宙船の事故で不時着するという内容です。ストーリー的に登場人物は少なそうだと予期していたのですが、ほとんどのシーンで2人しか出てこないような…w 親子の絆というのを前面に押し出している感じですが、逆に言うとそれ以外のドラマ性は多くありませんでした。というか、ストーリーは有って無いような薄いものなので、すぐに忘れてしまいそうw

役者に関しては、ウィル・スミスがいつものようなジョーク交じりの役ではなく、頑固な軍人というのは目新しかったかな。息子のジェイデン・スミスも既に立派な役者だと思います。一方、SFファンとしてがっかりだったのは未来考証の部分で、最近のSF映画は未来観を使いまわしているのか?というくらい見飽きたデザインやテクノロジーでした。そもそもこのストーリーなら別にSFにする必要も無かったのでは…。人類に見捨てられた地球という設定もまったく活かされておらず、このタイトルにも疑問を感じます。

ということで、中身の薄い映画でした。つまらないというほどではなかったとは思いますが、少なくとも映画館で観る必要は無かったかな。そのうちTVでやるのを待てば良いのではないかとw



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CREPERIE Ti ROLANDE(クレープリー ティ・ロランド) 【渋谷界隈のお店】

前回ご紹介した日本民藝館を観た後、駒場東大前から隣の神泉駅に移動して、bunkamuraの近くにあるCREPERIE Ti ROLANDE(クレープリー ティ・ロランド)というお店でお茶してきました。

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【店名】
 CREPERIE Ti ROLANDE(クレープリー ティ・ロランド)

【ジャンル】
 フレンチ

【公式サイト】
 http://ti-rolande.com/
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13115058/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 京王井の頭線神泉駅/渋谷駅

【近くの美術館】
 松濤美術館
 Bunkamuraザ・ミュージアム
 戸栗美術館
  など


【この日にかかった1人の費用】
 2000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
ちょうど満席くらいでしたが待たずに座ることができました。

さて、このお店はbunkamuraから神泉のほうに向かうとあるお店で、以前ご紹介したガレットリアのすぐ近くにあります。こちらもガレットとクレープが美味しいと評判のお店で、パリで1937年に創業した「クレープリーTi Jos - ティ・ジョス」というお店の三代目経営者の方(ロランド・オリトロー夫人)がプロデュースされたお店だそうです。ブルターニュ本来のスタイルだそうで、フランス風の味を求めて行ってみました。
 参考記事:ガレットリア (渋谷界隈のお店)

お店の中はこんな感じ。
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アールデコみたいで洒落ています。

この日は「バラ色の人生-バラの香りとミックスベリーのクレープ」(1400円)とアイスコーヒー(500円くらいだったかな??)を頼みました。
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結構時間がかかるなと思ったら、予想以上に手の込んだエレガントなクレープで驚き!これは食べるのがちょっと勿体無いかもw バラの香りが良く、中にクリームとストロベリーのアイスが入っています。実はちょっと食べづらいけどお洒落で美味しかったです。周りのゼリーも意外と美味しいw
コーヒーはまろやかで苦味・酸味はないけどコクと香りがありました。

連れは「シェロレット - グリオットチェリー、バニラアイスクリームとストロベリーシャーベットのハーモニー」(1300円)とアイスミルクティー(500円くらい?)を頼んでいました。
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少しだけ貰ってみたら、チェリーがやや酸っぱくて爽やかで、甘いアイスと合っていました。こちらも美味しかったです。


ということで、ちょっと高いですが驚きのある内容で満足できました。ここはこうしたデザートメニューだけでなくランチやディナーもやっているようなので、そのうち利用してみたいと思います。神泉・松濤に行く時は美味しいクレープのお店が2軒あるので迷ってしまいそうですw




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つきしま かるかや 素朴表現の絵巻と説話画 【日本民藝館】

前回ご紹介した旧前田侯爵邸を見学した後、すぐ近くにある日本民藝館にハシゴして、「つきしま かるかや 素朴表現の絵巻と説話画」を観てきました。

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【展覧名】
 つきしま かるかや 素朴表現の絵巻と説話画

【公式サイト】
 http://www.mingeikan.or.jp/events/special/201306.html

【会場】日本民藝館
【最寄】駒場東大前駅、池ノ上駅、東北沢駅など


【会期】2013年6月11日(火)~8月18日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度 (+常設 0時間30分程度)

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが、特に混むことはなくゆっくりと見て回ることができました。
さて、この日本民藝館は、民藝運動の提唱者である柳宗悦が1936年に開設した施設で、民藝に関する様々な品を展示し、民藝思想の普及に努めているようです。1階と2階に常設の品が並び、2階の大展示室で企画展が行われているようでしたので、ごく簡単にその様子をご紹介しようと思います。なお、この日本民藝館は柳宗悦の方針によって解説などは少なく、直観で見ることが肝要と考えているようです。その為、詳しい説明などはほとんどありませんでした。(柳宗悦については以前の記事をご参照頂けると嬉しいです)
 参考記事:柳宗悦展-暮らしへの眼差し (そごう美術館)


<常設1階>
まず1階には日本の染色などが展示されていました。主に浴衣のような普段着が並び、昔の人々の生活が伺えます。また、他の部屋には陶器のコーナーがあり、中国の陶器や益子焼、瀬戸焼など様々な品が並んでいました。いずれも一級品というわけではなく素朴な雰囲気ですが、生活の中から生まれた用の美を感じさせます。


<常設2階>
続いて2階にも陶器が並び、他には棟方志功やバーナード・リーチといった民藝活動や柳宗悦に関する作家の作品が並んでいました。また、江戸時代の時計、釜、お盆、酒器など生活に使われる品が並び、タイムスリップしたような感じを受けます。美術館で見るような絢爛な作品とは違い、ちょっと緩さがあって大らかな感じかなw
何故か地獄や極楽、閻魔を含む十王を描いた作品も散見され、これは今回の企画展と関係あるのかな??


<つきしま かるかや>
大展示室が今回の企画展の開催場所となります。この展示は「築島物語絵巻」と絵入本「かるかや」(サントリー美術館蔵)を中心に、お伽草子絵巻や仏教説話画が並ぶ内容となっていました。大津で売られていたお土産用の「大津絵」や、大江山の酒呑童子退治を描いた作品(血がドバドバ出て生首が飛んでいる場面が描かれた絵巻)、曽我物語を題材にした戦いのシーンの屏風、旗印を貼りあわせて作った6曲屏風、浦島の絵巻、築島物語の絵巻などが並んでいます。いずれも素朴な表現で、緊張感よりも親近感を覚える作品が多かったように思います。


<西館>
点数も少ないので本館の展示は足早に観てきたのですが、この日はたまたま柳宗悦が住んでいた西館の公開日となっていましたので、そちらも観てきました。西館の公開日は公式サイトで確認することができます。
 参考リンク:開館日カレンダー

こちらが西館。堅牢そうな印象ですが、戸を開けるといきなり玄関なのでちょっと驚き。
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この長屋門は栃木から移築してきたそうで、西館はこれと柳宗悦が設計した母屋(1935年完成)と共に成っているようです。

1階の長屋門には柳兼子記念室という部屋があり、こちらは柳宗悦の妻で当時の日本を代表する声楽家の柳兼子に関する部屋となっていました。音楽が流れていて、当時の公演ポスターなどが貼られています。

母屋には1階に客間や食堂があり、和風が多めですが洋風の折衷となっています。流石に家具などの趣味が良く、落ち着きや温もりと共にデザイン性を感じる品々が使われていました。バーナード・リーチも日本に来た時はこの家に滞在していたそうです。

2階には書斎があり、実際に当時の本が並んでいました。これぞ書斎!といった感じで本が壁を埋め尽くしていて研究熱心だったことが伺えました。落ち着きのある佇まいです。


ということで、各作品の詳しいことは分かりませんでしたが、独特の味わいのある品々を見ることが出来ました。日本でもクラフトマンシップが「民藝」として認知されるようになって久しいので、一度は民藝運動の中心地として観ておいても良いかと思います。もし行かれる際は西館が開館している日をおすすめします。


 参照記事:★この記事を参照している記事




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旧前田侯爵邸の写真 (2013年6月 和館編)

前々回前回と旧前田侯爵邸の洋館をご紹介してきましたが、洋館を観た後に裏手にある和館も見学してきました。

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 公式サイト:http://www.city.meguro.tokyo.jp/gyosei/shokai_rekishi/konnamachi/michi/rekishi/hokubu/kyumaeda/



こちらに伺った時、たまたま団体さんがいて混んでいました。(恐らくギャラリートークのタイミングだったようです) しかし、しばらくすると一気に人が引けて、ゆっくりと鑑賞することができました。

さて、こちらは前々回ご紹介した洋館と渡り廊下で繋がっている和館で、昭和5年(1930年)に竣工されたそうです。洋館と同様に第二次大戦後はアメリカ軍に接収されたようですが、今はこうして公園の建物として一般公開されています。ここでも写真を撮ることができましたので、詳しくは何枚か写真を使ってご紹介しようと思います。(ただし商用撮影については事前の申請が必要で、撮影日時の制限や撮影料金がかかるようです。)

※当サイトからの画像および文章の転用は一切禁止とさせて頂いております。

まずは門をくぐったあたり。
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全体を見渡すことはできませんでしたが、こちらも結構な広さです。2階も見えますが見学できるのは1階だけでした。

玄関。履物を脱いでの見学となります。
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ここは外国のお客さんを迎えるための建物だったようです。照明などはモダンな感じがするかな。

中は書院造りで、こちらは玄関からまっすぐ進んだ所にある二の間。
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こちらの照明も洋風で面白いw

二の間からは緑豊かな庭園が望めます。
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滝らしきものも見えました。奥には数寄屋造りの茶室もあるようですが、この先には勧めませんでした。

こちらは二の間の奥にある一の間(表座敷)。
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いかにも書院造りと言った感じかな。団体客の話がちらっと聞こえた際、以前は日本画が飾ってあったようなことを言っていた記憶が…。

こちらは一の間から庭園を見たところ。何とも清々しい光景です。
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この建物は会議や趣味の会で借りることもできるそうです(詳しくは管理者にお問い合わせください)

一の間から二の間を振り返った様子。
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注目は欄間です。めちゃくちゃ細かい!!

これが欄間のアップ
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透かし彫りになっているのは家紋? 整然としていながら可憐な印象を受けました。

こちらは長押の釘隠し。
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雪輪を思わせる意匠が洒落ていました。


ということで、和館も楽しんできました。洋館とはまた違った落ち着きある趣で、こちらも楽しむことができました。入れるところは少なめですが、洋館と共にお勧めのスポットです。

おまけ:この和館のすぐ近くには日本近代文学館もあります。今回は行きませんでしたが、本好きの方はこちらも要チェックです。
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 公式サイト:http://www.bungakukan.or.jp/




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cafe marquis(カフェ・マルキス)【駒場東大前界隈のお店】

前回ご紹介した旧前田侯爵邸に行った際、洋館1階の元サロンの部屋にあるcafe marquis(カフェ・マルキス)というお店でお茶してきました。

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【店名】
 cafe marquis (カフェ・マルキス)

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 無し
 食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1318/A131811/13129676/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 駒場東大前駅、池ノ上駅、東北沢駅など

【近くの美術館】
 旧前田侯爵邸、日本近代文学館、日本民藝館など



【この日にかかった1人の費用】
 400円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_4_⑤_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
空いていてほとんど貸切状態でゆっくりすることができました。

さて、このお店は前回の記事でご紹介した旧前田侯爵邸の1階にあります。落ち着いた趣味の邸宅がそのままカフェになっているので、何とも贅沢な空間となっています。

店内は1部屋のみですが、こんな感じ。
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特等席とも言えるのは窓辺の席かな。緑溢れる庭を眺めることができます。
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店員さんも親切で話を伺うこともできました。

これは後で別の場所から撮った庭。広い原っぱのようになっています。
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食べ物はアイスクリームくらいしか無かったので、私はアイスコーヒー(400円)にしました。
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苦味が強めで酸味は無く、コクがあって好みの味でした。付け合せについているクッキーは普通ですがこちらも美味しかったです。

連れはアイスカフェオレ(450円)を頼んでいました。
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こちらはまろやかで軽めの味だったようです。


ということで、華族のお宅で贅沢なティータイムを過ごして来ました。デザートメニューが無いのは残念ですが、場所が場所だけに当然かもしれませんw 邸宅自体も無料で見学できるし、かなりオススメのスポットです。




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旧前田侯爵邸の写真 (2013年6月 洋館編)

風邪で熱を出してしばらくブログを休止していましたが、だいぶ良くなったので様子を見ながら再開です。先週の土曜日に、駒場東大前にある旧前田侯爵邸を見学してきました。

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 公式サイト:http://www.city.meguro.tokyo.jp/gyosei/shokai_rekishi/konnamachi/michi/rekishi/hokubu/kyumaeda/



この日、13時頃から見学をしてきたのですが、私が行った時は空いていました。見終わった頃に団体さんが観に来ていたので、タイミングが良かったのかもしれません。

さて、この建物は駒場東大前の駒場公園の中にあり、江戸時代には加賀藩の藩主だった旧前田家(明治以降は華族)の当主 前田利為(としなり)侯爵が昭和4年~5年(1929年~30年)に建てたものです。建設当初は東洋一の邸宅とまで呼ばれたようですが、それほど長く住んでいたわけではないようで、昭和19年(1944年)に中島飛行機が一部を譲り受け、終戦後の昭和20年(1945年)には連合軍に接収されたそうです。 さらにその後、富士産業(旧中島飛行機)を経て昭和31年(1956年)に接収が解除され、東京都が買い上げて整備して昭和42年(1967年)から公園となったようです。

中はマナーを守れば個人の写真はOKでしたので、詳しくは何枚か写真を使ってご紹介しようと思います。(ただし商用撮影については事前の申請が必要で、撮影日時の制限や撮影料金がかかるようです。)
※当サイトからの画像および文章の転用は一切禁止とさせて頂いております。

まずは外観。重厚なイギリスのチューダー様式となっています。
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設計は東京帝国大学の教授だった塚本靖と、宮内省の担当技師だった高橋禎太郎だそうです。

中に入るとこんな感じ。
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床は寄木作り、壁は漆喰、王朝風の装飾、と様々な様式が用いられているようです。

奥から玄関を観た風景。
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左は階段下にあったステンドグラス、右は玄関脇にあった応接室。
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華麗さと落ち着きのある雰囲気が素晴らしい! 外も緑溢れていて清々しいです。応接室の隣のサロンはカフェになっています。

こちらは大客間から観た小客間
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壁やマントルピースまで気合の入った装飾です。

こちらは小客間から観た大客間
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ピアノがあるからここでパーティとかするのかな。

こちらも大客間の角度違い。このシャンデリアも気品がありました。
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こちらは大食堂のマントルピース
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この建物の装飾はほとんど建設当時のものが残っているようです。壁の板一枚まで装飾されています。

この先には小食堂もありました。それより先もあるようですが、見学はできないので続いて2階へ。

こちらは階段を上がりきった2階の廊下。
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ちょくちょくこの時計が音楽を鳴らして時間を知らせていました。

この階段のステンドグラスも非常に綺麗です。
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2階は中庭を中心にロの字のようにぐるりと1周する感じで観て行きます。1階はお客さんを迎えたり食事を摂るところしたが、上は家族や使用人の部屋がありました。(使用人ゾーンと家族のゾーンはきっちり分かれています)

こちらは旧三女居室
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華麗な装飾で令嬢らしい雰囲気。

こちらは寝室
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ダブルに見えるけどシングルを2つ並べているのかな。

こちらも寝室(上の写真より右のほう)
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ここは奥には入れないようになっていますが、窓からは緑の木々が見えました。

こちらは旧夫人室
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ここは館の中でも一番華やかで明るい雰囲気でした。

窓には花がらの可憐なステンドグラスがありました。確か夫人の名前に因んだものだったかな。右のは恐らく暖房器具。細やかな植物紋です。
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この隣には次女の部屋、その先には「次の間」という小部屋もありました。

これは書斎。ここも中には入れません。
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当時の写真には電話が写っているようで、洋館には8本の電話が引きこまれていたそうです。

この隣には長女の部屋と細長い小部屋(今は空の展示準備室)がありました。

こちらは三男の居室。
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何か急に普通の部屋になったような…。シャンデリアと装飾が無いと雰囲気がだいぶ違います。

この先は従者や女中などの部屋があります。

これは会議室。
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こざっぱりしていますが広さはかなりありました。

この近くには集会準備室や湯沸室などもありますが、これは当時からあるのかはわかりません。

こちらは女中室。
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女中室は何部屋かあり、結構な人数がいたのではないかと伺えます。

これは中庭にあった煙突。
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この辺りで1周となり三女の部屋あたりに戻ってきます。上の階に行く階段もあるのですが、そこは見学出来ません。3階は看護師さんが住んでいたそうです。


ということで、非常に豪華で趣味の良い邸宅でした。周囲も木々に囲まれて静かな環境で、見学も快適でした。かなりオススメのスポットです。
この後、併設のカフェにも行きましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。


おまけ:今までご紹介した古い邸宅に関する記事を集めてみました。(岩崎邸は撮影禁止になる前に撮っていたものです。また、庭園美術館は2013年6月現在は改装工事中となっています。)

 参考記事
  東京都庭園美術館の写真その1
  東京都庭園美術館の写真その2
  アールデコの館 庭園編(東京都庭園美術館)
  アールデコの館 旧朝香宮邸編(東京都庭園美術館)
  旧岩崎邸の写真 その1
  旧岩崎邸の写真 その2
  旧岩崎邸の写真 2010年10月
  旧田中家住宅の写真 2010年11月
  旧古河庭園 外観の写真
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映画「華麗なるギャツビー」 (ネタバレなし)

今日は久々に映画の記事です。この前の日曜日に映画「華麗なるギャツビー」を観てきました。この映画は2Dと3Dがあるようで私が観たのは2Dでした。

P1110250.jpg

【作品名】
 華麗なるギャツビー

【公式サイト】
 http://www.gatsbymovie.jp/

【時間】
 2時間20分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_3_4_⑤_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_④_5_名作

【感想】
公演が始まって初めての日曜日だったこともあり、結構お客さんは多めでした。

さて、この映画はアメリカの小説家フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルドによる小説「グレート・ギャツビー」(1925年)を映画化した作品で、映画での日本語タイトルは「華麗なるギャツビー」となっています。私はこの映画に先立って小説を買っていたのですが、忙しくてまだ読んでいないので、映画と小説との違いについては分かりませんが、日本でも村上春樹が翻訳した小説も刊行されるなど、非常に著名な作品だと思います。
そんな傑作を元にしている為、ストーリーは考えさせられたり共感が持てたりと様々な要素があり、ある男の人生を中心に交錯する人間関係を描いています。邦題に「華麗なる」とついているのは確かに全編に漂う雰囲気を表しているようにも思えました。しかし、映画での表現はある意味現代的で、当時のアメリカ的なものではなく違和感を感じるところもありました。テクノっぽい音楽を使ったりするのはこういうストーリーには似つかわしくないような…。やけにスピード感があったり、そもそも何で3Dなんてあるの??という疑問がw 内容的にもっとシリアスな路線で良かったと思うけど、どうにもハリウッド的でした。

役者は実力派が多い中で、一番凄みを感じたのはレオナルド・ディカプリオでした。最近はイケメン俳優のイメージよりもどんどん貫禄ある実力派に移行している感じですが、今回も当たり役だったと思います。素人目にも役柄になりきっている感じが伝わりました。また、今回の見どころの1つとして女優がすごく綺麗ですw ファッションも含めてクールでスタイリッシュでした。演技も良かったし、役者に関してはだいぶ満足です。

ということで、題材も役者も良くて面白かったのですが、味付けがおかしかった気がしますw 周りの人々も特に感動しているわけでもなく、もうちょっとどうにかなったのではないか?という惜しい感じでした。



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エミール・クラウスとベルギーの印象派 【東京ステーションギャラリー】

前回ご紹介した展示を観た後、東京駅に移動して東京駅丸の内北口の前にある東京ステーションギャラリーで「エミール・クラウスとベルギーの印象派」を観てきました。

P1110226.jpg

【展覧名】
 エミール・クラウスとベルギーの印象派

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/now.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅、大手町駅など


【会期】2013年6月8日(土)~7月15日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて自分のペースで鑑賞することができました。

さて、今回の展示はベルギーで独自の発展を遂げた印象派「ルミニスム(リュミニスム、光輝主義)」の第一人者であるエミール・クラウスを中心に、その前後の時代を取り上げる内容となっています。エミール・クラウスは1849年にベルギーに生まれ、アントワープ美術アカデミーで伝統的な美術を学んだそうですが、アカデミックな教育を重視した歴史画には興味を示さず、肖像画や風俗画、そして風景画への傾倒を強めていったそうです。フランス美術、特に印象派や新印象主義から影響を受け、やがてベルギー印象派の中心画家として活躍するようになり、1900年前後には光の表現に関心を持つルミニスムを代表する画家として、同じ傾向の画家に大きな影響を与える存在となっていったようです。その影響は日本人にも及んでいるそうで、児島虎次郎や太田喜二郎はエミール・クラウスに直接指導を受けました。 しかし、1924年にクラウスが亡くなると、ルミニスムは忘れ去られていき、再び脚光を浴びたのは1974年のゲント美術館の回顧展だったそうで、この時以降、世紀末のベルギー美術を回顧する展覧会ではクラウスは欠かすことのできない画家とされているようです。今回の展示では時代や作者ごとに章が分かれていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
 参考記事:
  ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)
  フランダースの光 ベルギーの美しき村を描いて (Bunkamuraザ・ミュージアム)


<第2章 ベルギーの印象派:新印象派とルミニスム>
最初は1章ではなく2章の内容となっていました。1887年にブリュッセルの芸術家グループ「20人会」の展覧会に、点描で描かれたジョルジュ・スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」が展示されたそうで、これはその前年に大々的に紹介されたモネやルノワールといった印象派以上にベルギーに大きな衝撃を与え、多くの追随者を生んだそうです。そしてベルギーの印象派は、20人会の解散後にこれを継承する形で1893年に創設された「自由美学」へと舞台を移し、ルミニスムと呼ばれる傾向に収斂されていったそうです。新印象主義の影響を強く受けた画家たちも距離を置くようになり、ベルギー独自の印象主義を模索する段階へと移っていきました。ここにはそうした時代の画家の作品が並んでいました。

32 テオ・ヴァン・レイセルベルヘ 「昼寝をするモデル」
草むらで頭の後ろで手を組んで枕にして眠る裸婦を描いた作品です。細長い線が幾重にも並ぶ手法で描かれていて、肌に緑や青も使われ木漏れ日を感じさせます。解説によると、この作者は20人会のメンバーで、ホイッスラーに影響を受けていたそうですが、スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」に衝撃を受けて新印象主義の技法を取り入れるようになったそうです。確かに点描の点を伸ばしたような感じで、同様の技法を用いたゴッホにも似た感じを受けました、

34 ジョルジュ・レメン 「若い女性とさくらんぼ」
こちらも20人会のメンバーの作品で、白地に赤い模様の装飾的なテーブルクロスの上にある さくらんぼの入った皿と、手を結んで座る赤っぽい服の女性が描かれています。背景は緑となっているので色が対比的に感じられますが、意外と落ち着いた雰囲気です。表現方法にはやはり新印象主義の影響があったらしく細かい点描が使われていましたが独自性もあり、表現方法よりも女性の内面的なもののほうが印象的でした。

35 アンナ・ド・ウェールト 「夏の朝」
これはクラウスの弟子の女性画家の作品で、晴れた緑の野を背景に、小さめの積み藁が並んでいる様子が描かれています。明暗はあるのですが、全体的に光に溢れているように感じるのは師匠と似ているかも。印象派的な雰囲気もありつつ、細かい点を使った新印象主義の要素もあるのが面白かったです。


<第3章 フランスの印象派:ベルギーの印象派の起源>
続いてはベルギーの印象派の先駆けとなった本家フランスの印象派と新印象主義のコーナーです。印象派は粗い筆触で色彩を並置させ、遠目に観ると色が混ざって見える「視覚混合」を行い、より明るい色彩を生み出すことに成功しました。そしてスーラやシニャックたち新印象主義は、印象派の画家たちが感覚的に行なっていた技法をさらに科学的に実現し、色の取り合わせの方法や効果、光と絵の具の色彩の違いについての研究を元に、小さな色の点を画面に並べる点描技法によって、より厳密な画面を作り出しました。その後シニャックはベルギーの画家たちと積極的に交流していたそうで、20人会のメンバーにもなっているようです。ここにはそうした画家たちの作品が並んでいました。

44 クロード・モネ 「霧の中の太陽(ウォータールー橋)」 ★こちらで観られます
空に浮かぶ太陽と水面に映った光、周りはぼんやりした青で包まれていて、よくよく観ると橋の形の影が浮かんでいる様子が描かれた作品です。これはモネがイギリスに行った際に描いた連作の1つで、全体的に抽象的に見えるほどぼんやりと霧(実際にはスモッグ)が立ち込めています。光の移ろいを表そうとしたモネらしい主題の作品でした。

この辺はモネも他に、新印象主義を取り入れて点描も描いたことのあるピサロの作品などもありました。

47 ポール・シニャック 「サン=トロペの松林」
なだらかな丘陵から街と水辺を見下ろすような風景画です。右には木々が立ち並び、モザイクのように点描で描かれているのですが、シニャックにしては点々が細かく感じられました。

この辺はシニャックの他にもエドモン・クロスやマルタン、シダネルなどの作品もありました。


<第1章 エミール・クラウスのルミニスム>
続いては本題のエミール・クラウスのコーナーです。クラウスが画家として歩み始めた1860年~1870年代前半のベルギーでは、フランスの影響で写実主義が流行していたそうです。そして1871年にパリ・コミューンが起きると、社会主義者が大量にフランスから亡命してきたこともあって、社会の現実を写実的な手法で描くことが行われたようで、クラウスも初期は貧しい人々の姿を緻密で滑らかなタッチで描いていたそうです。その後、1882年にアステヌという地に訪れたクラウスはこの地に陽光荘と名付けたアトリエを構え、農民たちや農村を描くようになりました。1887年以降のベルギーでの新印象主義のブームの際には、クラウスは一過性の流行を表面的になぞることはなかったそうで、1889年から数年間は冬季になるとパリに滞在して、そこでモネから多大な影響を受けました。やがて1904年に「生と光」という画家グループが結成され、「ルミニスム」と呼ばれる光の探求を掲げ、クラウスはその中心的存在となったようです。 しかし、第一次世界大戦の戦果から逃れるために1914~1919年はロンドンに亡命し、モネと同様にテムズ川の風景画を数多く制作したそうです。その際、モネは大気全体を描こうとしたのに対し、クラウスは光の粒子1つ1つまで描き表そうとする熱烈な光の追求を見せたようです。ここにはそうしたクラウスならではの光り溢れる作品が並んでいました。

1 エミール・クラウス 「昼休み」
これは陽光荘時代の作品で、草原でかごを持った農家の女性の後ろ姿が描かれています。その先では杖を持っている3人の女性たちの姿もあり、休憩しているようです。草原は広々として穏やかな雰囲気で、全体的に印象派っぽさはあまり感じず、シャープで写実的な印象を受けました。裕福そうではないですが、幸せそうな光景の作品です。

6 エミール・クラウス 「野の少女たち」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターになっている作品で、草むらの脇の道を両手で靴を持ってこちらに歩いてくる2人の少女が描かれ、その背景にも4人の少女の姿が描かれています。左半分には黄色い草が輝くように描かれ、少女たちの顔は逆光で暗めの色が使われています。その色合いと逆光の効果が全体から光を感じさせる要素となっているようで、強い日差しに照らされているのがよく表されていました。こちらも穏やかな農村といった感じの作品です。

この辺りで下階へと移動します。

5 エミール・クラウス 「レイエ河畔に座る少女」 ★こちらで観られます
白い花の咲く河畔で横向きで座っている少女が描かれた作品です。遠くを眺めるような顔つきで、背景には向こう岸に広がる草木が描かれています。これものんびりした農村風景ですが、少女の顔つきが真剣そうで、何かを悩んでいるようにも見えました。

この辺にも農村風景を描いた作品が並んでいました。スペースの関係で、2章の大型作品もありました。

4 エミール・クラウス 「そり遊びをする子どもたち」
これはかなり大型の作品で、凍ったかわでソリ遊びなどをしている子どもたちを描いた作品です。夕暮れなのか雪や氷には柔らかいピンクや青が使われていて、光を反射している様子が表されています。ソリの跡や少年の影などにも緻密な明暗があるのも流石です。解説によると、クラウスの出しになったモンティニーという画家はこの作品を観て画家を志したのだとか。確かに見栄えもして素晴らしい作品です。

7 エミール・クラウス 「魚捕り」
これも大型作品で、中央に大きな木があり その背後には水辺で船に乗って魚を獲っている2人の人物が描かれています。真ん中に木が来るのは大胆な構図で、もしかしたら浮世絵などの影響なのかな?? また、一見して点描画と分かる表現もこれまでと違っていて興味深いです。解説によると、クラウスの作品の中でも新印象主義の影響を感じさせる数少ない作品なのだとか。

16 エミール・クラウス 「レイエ川を渡る雄牛」 ★こちらで観られます
これはパリ万国博覧会で金賞を受賞した同名の大型作品を小型に再作成したものです。沢山の牛達が川から岸へと上がってくる様子が描かれ、画面左上には船に乗っている男性と2人の子供の姿もあります。近くで観ると結構粗いタッチに見えますが、離れてみると波が揺らめき煌めく様子や、牛に木漏れ日が落ちている様子などが表現されているのが分かり、牛達にも動きや心情が表されているように思えました。これは今回の展示の中でも見どころの1つだと思います。

19 エミール・クラウス 「刈草干し後の休息」
こんもりした緑の草の山が並ぶ川岸で、3人の女性が向き合って休んでいる様子が描かれた作品です。背景の木々の向こうにはオレンジ色に染まる空が広がり、夕暮れのようです。一日の労働の後らしく、どことなくミレーの晩鐘のように神聖な雰囲気すらあるように感じました。

26 エミール・クラウス 「ウォータールー橋、黄昏」
これは亡命時代の作品で、先ほどのモネと同じくウォータールー橋が描かれています。高い所からの構図となっていて、これは当時の自宅からの光景のようです。周りには靄が立ち込め、背景には薄っすらとウェストミンスターらしき建物も見えます。空には明るい太陽が輝き、その光が川にも反射していて、ぼんやりとしながらも強い光を感じました。幻想的で、モネとはまた違った光の表現が面白い作品です。


<第4章 ベルギーの印象派 日本での受容>
最後はベルギーの印象派から直接影響を受けた2人の日本人画家についてのコーナーです。東京美術学校西洋画科の黒田清輝の門下生の太田喜二郎と児島虎次郎はベルギーに留学したそうで、まず太田喜二郎が黒田の勧めで1908年にベルギーに渡り、クラウスを訪ねて教えを請い、ゲント美術アカデミーに入学したそうです。そしてルミニスムの技法を貪欲に吸収して1913年に帰国しました。一方、児島虎次郎は最初にフランスで黒田清輝の師匠のラファエル・コランに学ぼうとしましたが、そこで馴染めず1909年に太田を頼ってベルギーに移ってきました。そこでは短期のつもりだったようですが、ゲント美術アカデミーの校長の勧めで入学し、太田と同様にクラウスを訪れ批評を求めたそうです。児島虎次郎は留学中の1911年にパリのサロン・ナショナルで初出品で入選し、アカデミーを首席で卒業するなど大きな成果を残したそうで、1912年に帰国しました。ここにはそうした2人の作品が並んでいました。
 参考記事:大原美術館名品展 (宇都宮美術館)

64 太田喜二郎 「乳屋の娘」
大きな水瓶?を持ってこちらを向いて立つ女性が描かれた作品です。背景には木や草が生い茂っていて、女性よりも明るめの色で描かれています。解説によると、太田喜二郎の残した日記には、クラウスが「いつも日に向かって画をすえて」と指示したことが残っているそうで、この作品も逆光で描かれているようです。クラウスからの教えが端的に表されているように思える作品でした。

55 児島虎次郎 「和服を着たベルギーの少女」 ★こちらで観られます
これがパリのサロンで入選した作品で、紫を基調に装飾的な花の文様の入った着物と、オレンジの帯を身につけたベルギーの少女が描かれています。背景の棚には日本趣味の品があり、左半分は庭らしき光景が見えます。かなり厚塗されていて、筆跡がよく分かる大胆な表現となっていて、解説によると装飾性においてはナビ派、強烈な色彩においてフォービスム、激しい筆致においては表現主義を吸収しているとのことでした。これはかなりの傑作じゃないかな。こちらを見る女性の知的な表情も魅力的でした。

この辺には太田の講義ノートやスケッチ帳、日記などもありました。

67 太田喜二郎 「麦秋」 ★こちらで観られます
これは帰国後の作品で、稲刈り(麦刈?)をしている3人の農家の女性が描かれています。広い笠をかぶって腰をかがめて作業している女性、藁束を持ってこちらを見る女性などまるでその場に居合わせたような臨場感があります。また、新印象主義を彷彿とさせる細長いタッチが使われていて、視覚の中で黄色、緑、赤などが混じって光り輝くような明るさがありました。農作業をテーマにしているのも師匠と似ているかも。

58 児島虎次郎 「酒津の農夫」
これは帰国後の作品で、柵の上に座る帽子をかぶった老人が描かれています。背景には農村と丘が描かれていて、こちらも厚塗されて波打つようなタッチでした。色合いは強くないのですが、光を感じ、真っ赤になった老人の肌など生き生きとした力強さを感じました。


ということで、結構高い期待値を持って行ったのですが、それに応えてくれるような満足度の高い展示となっていました。私が元々リュミニスムが好きというのもありますが、これはあまり絵に関心がない人でも好きになれる画風だと思います。まだ会期は結構残っていますので、気になる方は是非どうぞ。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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椿会展 2013 初心 【資生堂ギャラリー】

前回ご紹介したお店でお昼を済ませた後、銀座~新橋にある資生堂ギャラリーで「椿会展 2013 初心」を観てきました。

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【展覧名】
 椿会展 2013 初心

【公式サイト】
 http://group.shiseido.co.jp/gallery/exhibition/index.html

【会場】資生堂ギャラリー
【最寄】銀座駅 新橋駅など


【会期】2013年4月12日(金)~6月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は資生堂ギャラリーが毎年行なっている椿展です。この椿展は1947年から行われているグループ展で、今までメンバーを変えながら6期まで続いてきていて、今年から7期に入るようです。今回のメンバー選出のテーマは3.11だったようで、5人の世代も拠点も異なるアーティストが選ばれたそうです。また、タイトルに「初心」とあるのは第七次椿会が5年通して追求するテーマだそうで、メンバー5人が再び立ち上がるにあたって初心とは何か、ものづくりのきっかけは何だったのかを問い直す時期にあると考えて決めたそうです。気に入ったいくつかの作品でメモを取ってきましたので、簡単にですが作品と共にご紹介しようと思います。

1 畠山直哉 「CAMERA」 ★こちらで観られます
こちらは階段の踊場にあった作品で、暗い室内を撮った白黒写真です。スポットライトのように、カーテンや部屋の隅に光が当たっている様子が撮られていて、パっと観た時に何だか分からなかったw 部屋の隅の写真が多いので幾何学的な要素があり、明暗のせいか写真なのに抽象的な印象も受けました。構図やモチーフに面白さを感じる作品です。

4 青木陵子 「ひかりのプレゼント」
これはコンテや色鉛筆で描かれた作品で、葉っぱなどをモチーフにした抽象的な絵が10枚くらい壁を埋めるように展示されていました。何を表現しているのかはわかりませんでしたが、柔らかくぼんやりした色合いで、優しい雰囲気の作風でした。

5 赤瀬川原平 「ハグ1」
こちらはプリントされた大きな白黒作品で、離れて観るとぼんやりと聖徳太子の1000円札が浮かび上がって見えます。こちらも意図はわかりませんが、発想の面白い作品でした。

7 内藤礼 「ひと」
こちらは虫眼鏡を借りて見るような小さな木彫りの人物像です。簡素で単純化されていて、目の部分だけちょっと黒く着色されています。ちょこんとしていますが、仏像のような気品があるように思いました。そしてちょっと可愛いw

8 伊藤存 「見えない土地の建造物」
これは布に白や茶色、緑などの控えめな色合いの糸が刺繍されている作品です。4面を合わせたような大きな作品なので見栄えがします。線は自由自在に波打っているような感じで、抽象画のような印象を受けました。

9 赤瀬川原平 「ハグ2」
これは椅子とテーブルのセットで、それぞれの表面には彫った跡があり、荒削りな感じがします。しかし、これは普通の椅子をわざわざ削って作っているようで、所々に元の痕跡が観られました。ハンドメイドに見えるけど既成品なのが面白かったです。

この近くには青木陵子 氏の素描が並んでいました。かなり薄っすらとしていて、人物や鹿、馬などが描かれ繊細な印象でした。

12畠山直哉 「Untitled」
これはカント、マルクス、ヘーゲル、キルケゴール、ニーチェなど主に哲学者の名前が道路に白いチョークで書かれているのを撮った作品です。道路の無機的な感じと偉人の名前の取り合わせが私の中で異質に感じられたので、そのギャップが面白く感じられました。
この隣には同様にフッサールやハイデガーの名前が並ぶ作品もありました。


ということで、詳しいことは分からないので勝手な感想のみとなりますが、私なりに楽しめました。特に畠山直哉 氏の作品はもっと見たくなりました。今後も椿会で活動するようですので、楽しみにしてようと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事



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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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