Archive | 2013年10月
今日は前回の記事に引き続き、国立新美術館の「アメリカン・ポップ・アート展」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら

【展覧名】
アメリカン・ポップ・アート展
【公式サイト】
http://www.tbs.co.jp/american-pop-art2013/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/american_pop_art/index.html
【会場】国立新美術館 企画展示室2E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2013年8月7日(水)~10月21日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前半では3章までご紹介しましたが、今日は残りの4~8章についてです。
<4 クレス・オルデンバーグ>
続いては日用品などを作品に取り入れたクレス・オルデンバーグのコーナーです。クレス・オルデンバーグは1956年にニューヨークに移り住みダウンタウンを拠点とし、後に「ハプニング」と呼ばれる演劇的イベントを始めたそうで、それは当時主流の抽象表現主義から脱し新しい表現を模索する過程だったようです、1960年からは厚紙や新聞・広告を使ったオブジェで空間を埋め尽くし、その中でハプニングを行いました。その後、大量生産される日用品や食品を石膏で形作ったオブジェからなる「ザ・ストア」というシリーズを手がけ、同名のスペースを開いて販売したそうです。これは芸術と商業活動の垣根をなくすことで芸術を日常と結びつけようとしたものらしく、ここにはそうした作品も並んでいました。
087 クレス・オルデンバーグ 「女性用ブラウス」
これは石膏や針金の骨組みで作られた大きなオブジェで、タイトルから察するに女性のブラウスなのかな?? 緑色に彩色されゴツゴツした印象を受け、前半分しかないので実際に着ることはできなそうに見えます。解説によると、これはザ・ストアで売られていたようで、日用品と芸術の中間といった感じの作品でした。
108 クレス・オルデンバーグ 「幾何学的なネズミ、スケールB」
これは赤いアルミの板でできた円や四角、チェーンで出来たオブジェで、某ネズミのキャラクターの顔を思わせる形をしています。解説によると、クレス・オルデンバーグはネズミを複製やコピーの象徴としてよく作品にしていたそうで、これもいくつものバージョンが作られたそうです。この近くにはティーバッグを巨大化させたものや、ティーバッグとミッキーマウスを合わせたような作品もあり、確かに似たモチーフを使っているようでした。
90 クレス・オルデンバーグ 「ジャイアント・ソフト・ドラム・セット」 ★こちらで観られます
これはビニール製のドラムセットがグニャグニャになって置かれている作品で、「ソフト・スカルプチャー」と呼ばれるシリーズの1つのようです。解説によると、クレス・オルデンバーグはジョン・パワーズ氏に招かれたアスペンで目にした山々や入道雲の形、雷鳴の音などから着想を得たらしく、そこで出会った人物にも影響を受けているようです。これは意図は分かりませんが、硬いイメージのドラムセットが柔らかくなったようで、ダリの記憶の固執を彷彿とさせました。
この近くにはこの作品の為の習作素描などもありました。
この辺の休憩室では7分程度の映像が流れ、キミコ・パワーズ夫人によるコレクションの説明がありました。本当に家の中に飾ってあって驚きなのですが、それ以上にこの夫人は一体何歳なのだろうか??と見た目の若さに驚きましたw
<5 友人としてのアーティストたち>
続いてはパワーズ夫妻と作家たちの交流のコーナーです。ここには様々なアーティストの作品があり、誕生日祝いなど親しい関係が垣間見える品々が並んでいました。
113 ジャスパー・ジョーンズ 「無題(6つのクロスハッチ)」
これは前編で紹介したジャスパー・ジョーンズのハッチングの作品を小さくしたようなものです。色合いがまた違っていて綺麗で、下の方にはサインがありました。個人的な関係が伺えます。
127 アンディ・ウォーホル 「キミコ・パワーズ」
これは入り口にもあったキミコ・パワーズ夫人の肖像で、やや上向きでこちらをチラッと観る夫人が描かれています。直筆のサインも入っていて夫妻に宛てたものというのが分かります。この作品のヴァリエーションは次のアンディ・ウォーホルのコーナーでも出てくるのですが、作者自身も傑作と思っていたようで、魅力的な女性像です。色合いが非常に鮮烈な作品でした。
この近くにはリキテンスタインの作品などもありました、
<6 アンディ・ウォーホル>
続いては最も楽しめたアンディ・ウォーホルのコーナーです。アンディ・ウォーホルは1950年代にイラストディスプレイを手がける商業デザイナーとして成功を収め、60年代に入ると画家として活動するようになりました。新聞・雑誌に掲載された広告、キャンベル・スープやコカ・コーラといった量産される商品、マリリン・モンローやエリザベス・テイラーといった映画スターを主題として次々に発表し、ポップアートの寵児として注目を集めました。大量生産・大量消費される時代で記号化された情報は大量に配信され、ウォーホルはこうした社会の劇的な変化で生まれた記号社会のシステムをいち早く作品にしたと言えるようです。ここにはそうした大量生産・大量消費を思わせる作品が並んでいました。
129 アンディ・ウォーホル 「200個のキャンベル・スープ缶」 ★こちらで観られます
これはスープの缶詰が横20個×縦10個(合計200個)並んでいる様子が描かれた作品です。いずれも赤と白の缶で同じように見えますが、味が何種類かありますw 同じ商品を連続して規則的に並べ、1枚の画面を埋め尽くすという技法を初めて使ったこの作品は、最も重要な作品の1つとして挙げられるようで、実際これはかなり有名だと思います。よくよく観ると微妙に色なども違って見えるのですが、これは1つ1つ実際に描いていたためのようで、これ以降の作品では容易に複製できるシルクスクリーンを使うようになったようです。ぎっしり並べられると結構なボリューム感というか圧迫感があるかなw 規則正しく整然とした感じもあり、ただの缶なのに非常にインパクトがありました。
近くにはこれと同じ缶が大きく描かれている作品などもありました。
136 アンディ・ウォーホル 「マリリン」
これはアメリカの超有名人マリリン・モンローを描いた作品で、縦5×横2で10枚の色違いの同じ絵が並んでいます。これは映画「ナイアガラ」のスチール写真を元にシルクスクリーンで複製し、顔の色をそれぞれピンクや緑など明るい色合いにしたもので、こちらもアンディ・ウォーホルの中でも特に有名な作品です。同じ絵柄でも色が違うと印象もだいぶ違って見えて面白く、連続することで広告のような感じにも見えます。マリリン・モンローはメディアで大量消費される存在であったので、それを意図しているのかな。これぞアメリカン・ポップアートといった感じの作品です。
この近くには同様に毛沢東の顔を連続して描いた作品もありました。続いての部屋は部屋一面にキミコ・パワーズの肖像が並んでいました。
140 アンディ・ウォーホル 「キミコ・パワーズ」 ★こちらで観られます
顔を上げてこちらに目を向けるキミコ・パワーズ夫人の肖像で、この展覧会でも目にするのは3回目ですが、ここでは緑、赤、青、ピンクといった色違いで3×3枚(合計9枚)展示されていました。アンディ・ウォーホルは1970年代後半に有名人ではない一般人の肖像も描くようになり、これは個人を描いた作品の中で最も早い時期の作品のようです。元は25点あったのを9点で再構成したようですが、色の並び順も含めて華やかな雰囲気がありました。
この近くにはショートヘアで正面向きのキミコ・パワーズ夫人の肖像もありました。
その先は花や影などをモチーフにした作品が並んでいました。
<7 ロイ・リキテンスタイン>
続いては漫画を引用した絵画で有名なロイ・リキテンスタインのコーナーです。ロイ・リキテンスタインは漫画など大衆文化を取り入れたクールでドライな作風で、ポップアートを代表する作家としてたちまち高い評価を得たそうです。その多くは白と黒の無彩色と、赤、青、黄の三原色だけで描かれていて(時折 茶と緑も使われる)、太い輪郭や印刷の網点など新聞に掲載された漫画の様式を用いています。ここにはそうした漫画風の作品が並んでいました。
166 ロイ・リキテンスタイン 「ブルーン!」 ★こちらで観られます
これはVAROOM!という文字と、星形に破裂している爆風が漫画風に描かれた作品です。背景には小さな点が並び、文字は黄色字に赤で強烈なインパクトがあります。これは漫画で用いられたものをそのまま取り入れた作品らしく、これだけ観ると文脈などがないので抽象的にすら見えました。とは言え、分かりやすくてポップな雰囲気もあり、その簡潔さも魅力に感じられました。
168 ロイ・リキテンスタイン 「鏡の中少女」 ★こちらで観られます
これは金髪の少女が手鏡を持ってのぞき込んでいる様子が描かれた作品で、鏡には笑っている少女の顔が映し出されています。これも漫画そのものといった感じで、網点が使われているのもそう感じさせます。解説によると、こうした手鏡を観る構図は西洋絵画の「ヴァニタス(虚栄)」の寓意の伝統に連なっているようで、その表情は自分に酔っているような感じにも見えました。何かか皮肉があるのかも…
179 ロイ・リキテンスタイン 「大聖堂シリーズ」
これは6枚連続の作品で、モネの「ルーアン大聖堂」を網点で描いたものが並びます。丸い点々を用いた表現は広告の拡大のようにも見えますが、輪郭を用いずモネの作品の雰囲気がよく出ています。(これは離れて観たほうがよくわかります) 解説によると、こうした巨匠の作品を引用した作品に度々挑んだようで、逆にこれによって網点での表現力に驚かされました。
この先は静物画で、直線と円を組み合わせたキュビスムを漫画にしたような作品も並んでいました。
<8 メル・ラモス/ジェイムズ・ローゼンクイスト/トム・ウェッセルマン>
最後は3人のアーティストのコーナーです。
192 トム・ウェッセルマン 「グレート・アメリカン・ヌード#50」 ★こちらで観られます
これはタバコを持った赤いドレスの金髪の女性が室内で横たわっている様子が描かれた作品です。背景にはルノワールの「劇場の桟敷席(音楽会にて)」やセザンヌの林檎とナプキンなどの名画の複製があり、右上には絵に取り付けられたコンセントと棚もあり、ラジオジンジャーエール、林檎などが置かれています。女性は享楽的な雰囲気があり、解説によると、これは大量生産されたものに囲まれる同時代の女性を描いたらしく、豊かなアメリカを表しているようです。私には一種の皮肉のようにも見えましたが、明るく派手な印象を受けました。
参考記事:奇跡のクラーク・コレクション展-ルノワールとフランス絵画の傑作- 感想前編(三菱一号館美術館)
191 トム・ウェッセルマン 「ラナイ」 ★こちらで観られます
これは缶詰の桃や上下逆さの自動車、プールサイドの裸の女性、鉛筆などが描かれた作品で、タイトルの「ラナイ」とはハワイの島の名前で、居間として使われるベランダのことも指すそうです。モチーフは具象的ですが脈絡なく並んでいるので意図を探るのは難しいかな。しかし、色が明るくポップな雰囲気があるのが心地よく、どうやらこの作家は以前に看板描きをしていたようです。作品自体の大きさもかなりのもので、看板描きというルーツもうなずけました。
198 トム・ウェッセルマン 「横たわるエイミー」
これはスティールドローイングという金属板を切り出して作った作品で、腕と足を上げ横たわっている裸婦が表されています。その造形は官能的だけど顔はなく無機質な感じもしました。近くには同様に花を切り出した作品があったのですが、それも華やかなようで無機質さも感じられました。
ということで、前半は微妙でしたが後半はポップで楽しい作品が並んでいました。特にアンディ・ウォーホルの作品は必見だと思います。もうすぐ終わってしまいますが、アメリカン・ポップアートや現代アートが好きな方にお勧めの展示です。
おまけ:
展示室の最後にキャンベル・スープが並んでいました、

アップにするとこんな感じ。ずらりと並んでいます。

ミュージアムショップでも実際の缶詰が売っていたので買おうとしたら、ぎっしり並んだ行列を見て諦めましたw
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら


【展覧名】
アメリカン・ポップ・アート展
【公式サイト】
http://www.tbs.co.jp/american-pop-art2013/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/american_pop_art/index.html
【会場】国立新美術館 企画展示室2E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2013年8月7日(水)~10月21日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前半では3章までご紹介しましたが、今日は残りの4~8章についてです。
<4 クレス・オルデンバーグ>
続いては日用品などを作品に取り入れたクレス・オルデンバーグのコーナーです。クレス・オルデンバーグは1956年にニューヨークに移り住みダウンタウンを拠点とし、後に「ハプニング」と呼ばれる演劇的イベントを始めたそうで、それは当時主流の抽象表現主義から脱し新しい表現を模索する過程だったようです、1960年からは厚紙や新聞・広告を使ったオブジェで空間を埋め尽くし、その中でハプニングを行いました。その後、大量生産される日用品や食品を石膏で形作ったオブジェからなる「ザ・ストア」というシリーズを手がけ、同名のスペースを開いて販売したそうです。これは芸術と商業活動の垣根をなくすことで芸術を日常と結びつけようとしたものらしく、ここにはそうした作品も並んでいました。
087 クレス・オルデンバーグ 「女性用ブラウス」
これは石膏や針金の骨組みで作られた大きなオブジェで、タイトルから察するに女性のブラウスなのかな?? 緑色に彩色されゴツゴツした印象を受け、前半分しかないので実際に着ることはできなそうに見えます。解説によると、これはザ・ストアで売られていたようで、日用品と芸術の中間といった感じの作品でした。
108 クレス・オルデンバーグ 「幾何学的なネズミ、スケールB」
これは赤いアルミの板でできた円や四角、チェーンで出来たオブジェで、某ネズミのキャラクターの顔を思わせる形をしています。解説によると、クレス・オルデンバーグはネズミを複製やコピーの象徴としてよく作品にしていたそうで、これもいくつものバージョンが作られたそうです。この近くにはティーバッグを巨大化させたものや、ティーバッグとミッキーマウスを合わせたような作品もあり、確かに似たモチーフを使っているようでした。
90 クレス・オルデンバーグ 「ジャイアント・ソフト・ドラム・セット」 ★こちらで観られます
これはビニール製のドラムセットがグニャグニャになって置かれている作品で、「ソフト・スカルプチャー」と呼ばれるシリーズの1つのようです。解説によると、クレス・オルデンバーグはジョン・パワーズ氏に招かれたアスペンで目にした山々や入道雲の形、雷鳴の音などから着想を得たらしく、そこで出会った人物にも影響を受けているようです。これは意図は分かりませんが、硬いイメージのドラムセットが柔らかくなったようで、ダリの記憶の固執を彷彿とさせました。
この近くにはこの作品の為の習作素描などもありました。
この辺の休憩室では7分程度の映像が流れ、キミコ・パワーズ夫人によるコレクションの説明がありました。本当に家の中に飾ってあって驚きなのですが、それ以上にこの夫人は一体何歳なのだろうか??と見た目の若さに驚きましたw
<5 友人としてのアーティストたち>
続いてはパワーズ夫妻と作家たちの交流のコーナーです。ここには様々なアーティストの作品があり、誕生日祝いなど親しい関係が垣間見える品々が並んでいました。
113 ジャスパー・ジョーンズ 「無題(6つのクロスハッチ)」
これは前編で紹介したジャスパー・ジョーンズのハッチングの作品を小さくしたようなものです。色合いがまた違っていて綺麗で、下の方にはサインがありました。個人的な関係が伺えます。
127 アンディ・ウォーホル 「キミコ・パワーズ」
これは入り口にもあったキミコ・パワーズ夫人の肖像で、やや上向きでこちらをチラッと観る夫人が描かれています。直筆のサインも入っていて夫妻に宛てたものというのが分かります。この作品のヴァリエーションは次のアンディ・ウォーホルのコーナーでも出てくるのですが、作者自身も傑作と思っていたようで、魅力的な女性像です。色合いが非常に鮮烈な作品でした。
この近くにはリキテンスタインの作品などもありました、
<6 アンディ・ウォーホル>
続いては最も楽しめたアンディ・ウォーホルのコーナーです。アンディ・ウォーホルは1950年代にイラストディスプレイを手がける商業デザイナーとして成功を収め、60年代に入ると画家として活動するようになりました。新聞・雑誌に掲載された広告、キャンベル・スープやコカ・コーラといった量産される商品、マリリン・モンローやエリザベス・テイラーといった映画スターを主題として次々に発表し、ポップアートの寵児として注目を集めました。大量生産・大量消費される時代で記号化された情報は大量に配信され、ウォーホルはこうした社会の劇的な変化で生まれた記号社会のシステムをいち早く作品にしたと言えるようです。ここにはそうした大量生産・大量消費を思わせる作品が並んでいました。
129 アンディ・ウォーホル 「200個のキャンベル・スープ缶」 ★こちらで観られます
これはスープの缶詰が横20個×縦10個(合計200個)並んでいる様子が描かれた作品です。いずれも赤と白の缶で同じように見えますが、味が何種類かありますw 同じ商品を連続して規則的に並べ、1枚の画面を埋め尽くすという技法を初めて使ったこの作品は、最も重要な作品の1つとして挙げられるようで、実際これはかなり有名だと思います。よくよく観ると微妙に色なども違って見えるのですが、これは1つ1つ実際に描いていたためのようで、これ以降の作品では容易に複製できるシルクスクリーンを使うようになったようです。ぎっしり並べられると結構なボリューム感というか圧迫感があるかなw 規則正しく整然とした感じもあり、ただの缶なのに非常にインパクトがありました。
近くにはこれと同じ缶が大きく描かれている作品などもありました。
136 アンディ・ウォーホル 「マリリン」
これはアメリカの超有名人マリリン・モンローを描いた作品で、縦5×横2で10枚の色違いの同じ絵が並んでいます。これは映画「ナイアガラ」のスチール写真を元にシルクスクリーンで複製し、顔の色をそれぞれピンクや緑など明るい色合いにしたもので、こちらもアンディ・ウォーホルの中でも特に有名な作品です。同じ絵柄でも色が違うと印象もだいぶ違って見えて面白く、連続することで広告のような感じにも見えます。マリリン・モンローはメディアで大量消費される存在であったので、それを意図しているのかな。これぞアメリカン・ポップアートといった感じの作品です。
この近くには同様に毛沢東の顔を連続して描いた作品もありました。続いての部屋は部屋一面にキミコ・パワーズの肖像が並んでいました。
140 アンディ・ウォーホル 「キミコ・パワーズ」 ★こちらで観られます
顔を上げてこちらに目を向けるキミコ・パワーズ夫人の肖像で、この展覧会でも目にするのは3回目ですが、ここでは緑、赤、青、ピンクといった色違いで3×3枚(合計9枚)展示されていました。アンディ・ウォーホルは1970年代後半に有名人ではない一般人の肖像も描くようになり、これは個人を描いた作品の中で最も早い時期の作品のようです。元は25点あったのを9点で再構成したようですが、色の並び順も含めて華やかな雰囲気がありました。
この近くにはショートヘアで正面向きのキミコ・パワーズ夫人の肖像もありました。
その先は花や影などをモチーフにした作品が並んでいました。
<7 ロイ・リキテンスタイン>
続いては漫画を引用した絵画で有名なロイ・リキテンスタインのコーナーです。ロイ・リキテンスタインは漫画など大衆文化を取り入れたクールでドライな作風で、ポップアートを代表する作家としてたちまち高い評価を得たそうです。その多くは白と黒の無彩色と、赤、青、黄の三原色だけで描かれていて(時折 茶と緑も使われる)、太い輪郭や印刷の網点など新聞に掲載された漫画の様式を用いています。ここにはそうした漫画風の作品が並んでいました。
166 ロイ・リキテンスタイン 「ブルーン!」 ★こちらで観られます
これはVAROOM!という文字と、星形に破裂している爆風が漫画風に描かれた作品です。背景には小さな点が並び、文字は黄色字に赤で強烈なインパクトがあります。これは漫画で用いられたものをそのまま取り入れた作品らしく、これだけ観ると文脈などがないので抽象的にすら見えました。とは言え、分かりやすくてポップな雰囲気もあり、その簡潔さも魅力に感じられました。
168 ロイ・リキテンスタイン 「鏡の中少女」 ★こちらで観られます
これは金髪の少女が手鏡を持ってのぞき込んでいる様子が描かれた作品で、鏡には笑っている少女の顔が映し出されています。これも漫画そのものといった感じで、網点が使われているのもそう感じさせます。解説によると、こうした手鏡を観る構図は西洋絵画の「ヴァニタス(虚栄)」の寓意の伝統に連なっているようで、その表情は自分に酔っているような感じにも見えました。何かか皮肉があるのかも…
179 ロイ・リキテンスタイン 「大聖堂シリーズ」
これは6枚連続の作品で、モネの「ルーアン大聖堂」を網点で描いたものが並びます。丸い点々を用いた表現は広告の拡大のようにも見えますが、輪郭を用いずモネの作品の雰囲気がよく出ています。(これは離れて観たほうがよくわかります) 解説によると、こうした巨匠の作品を引用した作品に度々挑んだようで、逆にこれによって網点での表現力に驚かされました。
この先は静物画で、直線と円を組み合わせたキュビスムを漫画にしたような作品も並んでいました。
<8 メル・ラモス/ジェイムズ・ローゼンクイスト/トム・ウェッセルマン>
最後は3人のアーティストのコーナーです。
192 トム・ウェッセルマン 「グレート・アメリカン・ヌード#50」 ★こちらで観られます
これはタバコを持った赤いドレスの金髪の女性が室内で横たわっている様子が描かれた作品です。背景にはルノワールの「劇場の桟敷席(音楽会にて)」やセザンヌの林檎とナプキンなどの名画の複製があり、右上には絵に取り付けられたコンセントと棚もあり、ラジオジンジャーエール、林檎などが置かれています。女性は享楽的な雰囲気があり、解説によると、これは大量生産されたものに囲まれる同時代の女性を描いたらしく、豊かなアメリカを表しているようです。私には一種の皮肉のようにも見えましたが、明るく派手な印象を受けました。
参考記事:奇跡のクラーク・コレクション展-ルノワールとフランス絵画の傑作- 感想前編(三菱一号館美術館)
191 トム・ウェッセルマン 「ラナイ」 ★こちらで観られます
これは缶詰の桃や上下逆さの自動車、プールサイドの裸の女性、鉛筆などが描かれた作品で、タイトルの「ラナイ」とはハワイの島の名前で、居間として使われるベランダのことも指すそうです。モチーフは具象的ですが脈絡なく並んでいるので意図を探るのは難しいかな。しかし、色が明るくポップな雰囲気があるのが心地よく、どうやらこの作家は以前に看板描きをしていたようです。作品自体の大きさもかなりのもので、看板描きというルーツもうなずけました。
198 トム・ウェッセルマン 「横たわるエイミー」
これはスティールドローイングという金属板を切り出して作った作品で、腕と足を上げ横たわっている裸婦が表されています。その造形は官能的だけど顔はなく無機質な感じもしました。近くには同様に花を切り出した作品があったのですが、それも華やかなようで無機質さも感じられました。
ということで、前半は微妙でしたが後半はポップで楽しい作品が並んでいました。特にアンディ・ウォーホルの作品は必見だと思います。もうすぐ終わってしまいますが、アメリカン・ポップアートや現代アートが好きな方にお勧めの展示です。
おまけ:
展示室の最後にキャンベル・スープが並んでいました、

アップにするとこんな感じ。ずらりと並んでいます。

ミュージアムショップでも実際の缶詰が売っていたので買おうとしたら、ぎっしり並んだ行列を見て諦めましたw
参照記事:★この記事を参照している記事
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ご紹介が遅くなりましたが、10日ほど前に乃木坂の国立新美術館で「アメリカン・ポップ・アート展」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

【展覧名】
アメリカン・ポップ・アート展
【公式サイト】
http://www.tbs.co.jp/american-pop-art2013/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/american_pop_art/index.html
【会場】国立新美術館 企画展示室2E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2013年8月7日(水)~10月21日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
入場規制などはありませんでしたが、かなり混み合っていてどこに行っても人だかりができているような感じでした。これからは会期末なのでさらに混雑も予想されますので、観に行かれる際は多めに時間を見積もっておいたほうがよろしいかと思います。
さて、今回の展示は1960年代以降に大きく花開いた大量生産・大量消費の大衆文化を主題とするアメリカのポップアートについての展覧会で、世界最大級のアメリカンポップ・アートのコレクションを誇るジョン&キミコ・パワーズコレクションから構成されています。これらの作品はコロラド州の広大なパワーズ邸で実際に飾られていたものらしく、ジョン&キミコ・パワーズ夫妻は評価が定まらない頃から実際にアーティストたちと交流し、パトロン及びコレクターとして収集してきたそうです。1999年にジョン・パワーズ氏が亡くなってからもキミコ・パワーズ夫人は積極的に活動を続け、2011年にはパワーズ・アート・センターを設立したそうです。
展覧会ではそのパワーズ夫妻とアーティストとの関係を取り上げながら、作家ごとに章が分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品とともにご紹介していこうと思います。
<冒頭>
まず冒頭には今回の展示品を所有し実際に家に飾っていたというジョン&キミコ・パワーズ夫妻の肖像が並んでいました。
145 アンディ・ウォーホル 「ジョン・パワーズ」
こちらはアメリカン・ポップアートを代表するアーティストであるアンディ・ウォーホルによる肖像画で、サックスを持ったジョン・パワーズ氏が描かれています。ジョン・パワーズ氏はジャズも好きだったそうで、その顔は爽やかな微笑みを浮かべ非常に優しそうな雰囲気があります。緑の背景にオレンジの服など、アンディ・ウォーホルならではの鮮烈で軽やかな色合いで、楽しげな雰囲気がありました。
この隣にはキミコ・パワーズ夫人の肖像もありましたが、それは後の章で詳しくご紹介します。 ちなみにジョン・パワーズ氏は出版社を営んでいた実業家で、奥さんのキミコ・パワーズ夫人は名前の通り日本出身の方です。日本美術のコレクションでも有名らしいので、相当な富豪なのかな。
<1 ロバート・ラウシェンバーグ>
そして1章はアメリカン・ポップアートの少し前の時代のロバート・ラウシェンバーグのコーナーです。ロバート・ラウシェンバーグは1954年から自ら「コンバイン」と名づけた 絵画と彫刻を組み合わせた作品を作り、荒々しい筆の絵と日用品や新聞、雑誌の切り抜きなどを画面上で統合したそうです。これは当時のアメリカ美術の主流だった抽象表現主義を受け継ぐ一方で、オブジェの導入は続く60年代を予感させるそうで、その後1962年に最初のリトグラフを完成させ写真イメージと手描きを組み合わせた版画を制作し、ポップアートとは対照的に表現主義的とも言うべき画面を生み出しました。ラウシェンバーグはあらゆるものが芸術たりえると考えていたらしく、絵画・彫刻・写真・版画といったジャンルを超え、舞台芸術などにも及び、芸術と日常を等価なものとして扱い、ポップアートへ繋がる新たな芸術表現の領域を開いたそうです。ここにはそうした表現主義的な作品が並んでいました。
001 ロバート・ラウシェンバーグ 「ブロードキャスト」
これは大型の作品で、絵画と彫刻が一体化したような感じです。絵は抽象的でさっぱり分かりませんが、「HELP!」と描かれた新聞や、競馬の写真、櫛、2つのつまみなどが貼り付けられています。解説によると、このつまみはラジオの一部だそうで、絵の中にラジオが入っていて、以前は実際に聴くこともできたそうです。また、ラウシェンバーグは「僕達は現代社会のノイズの中で生きている」と言っていたらしく、この作品を鑑賞するときは2つのつまみを回して観るようにとも言っていたようです。まさにノイズのようなカオスな雰囲気の作品でした。
この少し前には白黒のコラージュのような作品も並んでいました。またこの先はリトグラフで、やはり雑誌の切り抜きなどの上に彩色していて抽象的かつ難解な印象を受けました。
012 ロバート・ラウシェンバーグ 「リボルバー」
これは円形の透明な回転盤が5枚重なり、そこに様々なイメージが描かれた作品です。大型で直系2mくらいあるんじゃないかな? 脇には5つのスイッチがあり、これを押すと2つの方向に回転するらしく、偶然重なった毎回違うイメージを鑑賞するようです。残念ながら今回の展示では回っていませんでしたが、面白い発想です。解説によると、ラウシェンバーグは芸術と科学の融合に強い関心を持っていたそうで、この作品からもそうした傾向が伺えました。
この先には布や厚紙で作られた作品などもありました。描いてあるものはよく分かりませんw
<2 ジャスパー・ジョーンズ>
続いては有名なジャスパー・ジョーンズのコーナーです。ジャスパー・ジョーンズは1954年に星条旗をモティーフにした作品の制作を始めたそうで、完成した旗の絵は彼をポップアートの偉大な先駆者として認知させると共に、20世紀で最も重要な美術品の1つとなっているそうです。また、60年以降はワークス・オン・ペーパー(紙を支持体とする作品)の制作にも精力的に取り組んだらしく、ここにはそうした作品が並んでいました。
036 ジャスパー・ジョーンズ 「4つの顔のある標的」
これは赤を背景に青と黄色の縞模様の円(射的の標的)が描かれ、その上に人の鼻と口だけオレンジ地で描かれた作品です。絵のあちこちにはmの字のようなギザギザが黒で書かれていて、抽象的な感じです。解説によると、ジャスパー・ジョーンズは50年台の抽象表現主義が抽象的な色彩と形態で絵のイリュージョン(幻影)の代わりとしたのに対して、もともと2次元のイメージを選び絵画からイリュージョンを取り除こうとしたそうです。…と、理屈を聞けば何となく分かった気になりますが、小難しくて取っ付きづらい印象を受けましたw ジャスパー・ジョーンズはどうも理屈っぽすぎて苦手…。
052 ジャスパー・ジョーンズ 「彩色された数字」
こちらももともと固定された2次元の記号である数字をモチーフにした作品で、緑や青、紫などでグラデーションが付けられています。7の数字には反転したモナ・リザのような人物も見られるかな。それぞれの数字で表現が異なっていましたが、これも理屈ありきといった感じでした。
この先には数字を白黒にした版画もありました。
047 ジャスパー・ジョーンズ 「白いアルファベット」
これは真っ白な画面の作品で、近寄ってよく観るとabcというように規則正しく小文字のアルファベットの形に絵の具が盛り上がって並んでいるのが分かります。これは絵の具の上からゴム印を押しているそうで、画家のオリジナルを主張しなくても絵画作品となることを表したかったのではないかとのことです。これはアメリカン・ポップアートの考え方に近づいてきたんじゃないかな。中々驚きのある作品でした。
044 ジャスパー・ジョーンズ 「地図」 ★こちらで観られます
これは真っ暗な画面の作品で、よく観ると上下左右4つの画面に分かれ、そこにアメリカの48州(アラスカとハワイを除く)が描かれていて、地名の文字なども見えています。解説によると、右下の部分だけは木炭で他は油彩となっているらしく、明確な意図を語っていなかったものの、この木炭の部分に描かれた州はジャスパー・ジョーンズの出身地ジョージア州を含む人種差別が根深い地域で、それを暗示しているのかもしれないようです。 また、この絵を逆さにすると国旗も浮かび上がるのだとか。
076 ジャスパー・ジョーンズ 「セミ」
これは6枚からなるシルクスクリーンの作品で、5~6本の線が規則的に並ぶ模様のような絵?です。 赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫の色合いに仕上がっていて、1つ1つは見ても意味が分かりませんが、6枚揃うと色の違いで華やかに見えだいぶ印象が変わってきました。
この5~6本の線のモチーフはお気に入りだったのか、何点か似た作品がありました。
077 ジャスパー・ジョーンズ 「うす雪」
こちらも何本かの線で描かれた作品です。ジャスパー・ジョーンズはハッチング(陰影をつけるために用いる手法)を並べた作品を一時期よく描いていたらしく、この作品では上から白が薄っすらと塗られていて、確かに薄く積もった雪を思わせます。解説によると、ジャスパー・ジョーンズはジョン・パワーズ氏に日本の本を勧められたそうで、その中に「うす雪」という言葉があり、この名前が使われたそうです。
この辺にはこれと同じような感じの作品が数点展示されていました。
<3 ラリー・リヴァーズ/ジム・ダイン>
続いてはラリー・リヴァーズとジム・ダインについてのコーナーです。ラリー・リヴァーズは画家を志した時から抽象表現主義の奔放な筆致を用いながらも具体的な対象を描くということに関心を抱いていたそうで、アメリカ人なら誰もが知っている既成のイメージを取り上げ、絵画の主題は高尚であるべきとする固定化した芸術観に一石を投じました。その為、今日では抽象表現主義とポップアートの中間に位置づけられているようです。
一方、ジム・ダインは1960年頃から身近なオブジェを取り入れた作品の制作を始め、ポップアートに結びつけたそうです。しかし繰り返し描いたオブジェは愛着のある私的な物(言わば自身の代理)であり、ポップアートの匿名性やオブジェに対する客観的でクールな態度は観られないようです。そしてその目的は自己の存在みつめ、その生々しい感覚を作品を通して伝えることだったらしく、ちょっとポップアートとスタンスが違いそうです。ここにはその2人の作品が少しだけ並んでいました。
084 ラリー・リヴァーズ 「ジム・ダインの防風窓」
窓と網戸に描かれた肖像で、腕組するひげの人物(ジム・ダイン)が描かれ、窓枠が額縁のようになっています。腕は手前の網、顔の輪郭はガラス、目はその奥というようにいくつか立体に観るのが面白いかな。意図するものは分かりませんでしたが、窓に描くという発想に驚きました。
近くには色見表のような巨大な作品もありました。
ということで、前半は理屈っぽい作品が多くて難解な印象を受けました。ちょっとこの辺は好みではないのであまり楽しめませんでしたが、その後の展開を知る上では重要な流れかな。後半は一気に面白い内容となっていましたので、次回は残りの内容をご紹介しようと思います。
→ 後編はこちら
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
アメリカン・ポップ・アート展
【公式サイト】
http://www.tbs.co.jp/american-pop-art2013/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/american_pop_art/index.html
【会場】国立新美術館 企画展示室2E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2013年8月7日(水)~10月21日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
入場規制などはありませんでしたが、かなり混み合っていてどこに行っても人だかりができているような感じでした。これからは会期末なのでさらに混雑も予想されますので、観に行かれる際は多めに時間を見積もっておいたほうがよろしいかと思います。
さて、今回の展示は1960年代以降に大きく花開いた大量生産・大量消費の大衆文化を主題とするアメリカのポップアートについての展覧会で、世界最大級のアメリカンポップ・アートのコレクションを誇るジョン&キミコ・パワーズコレクションから構成されています。これらの作品はコロラド州の広大なパワーズ邸で実際に飾られていたものらしく、ジョン&キミコ・パワーズ夫妻は評価が定まらない頃から実際にアーティストたちと交流し、パトロン及びコレクターとして収集してきたそうです。1999年にジョン・パワーズ氏が亡くなってからもキミコ・パワーズ夫人は積極的に活動を続け、2011年にはパワーズ・アート・センターを設立したそうです。
展覧会ではそのパワーズ夫妻とアーティストとの関係を取り上げながら、作家ごとに章が分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品とともにご紹介していこうと思います。
<冒頭>
まず冒頭には今回の展示品を所有し実際に家に飾っていたというジョン&キミコ・パワーズ夫妻の肖像が並んでいました。
145 アンディ・ウォーホル 「ジョン・パワーズ」
こちらはアメリカン・ポップアートを代表するアーティストであるアンディ・ウォーホルによる肖像画で、サックスを持ったジョン・パワーズ氏が描かれています。ジョン・パワーズ氏はジャズも好きだったそうで、その顔は爽やかな微笑みを浮かべ非常に優しそうな雰囲気があります。緑の背景にオレンジの服など、アンディ・ウォーホルならではの鮮烈で軽やかな色合いで、楽しげな雰囲気がありました。
この隣にはキミコ・パワーズ夫人の肖像もありましたが、それは後の章で詳しくご紹介します。 ちなみにジョン・パワーズ氏は出版社を営んでいた実業家で、奥さんのキミコ・パワーズ夫人は名前の通り日本出身の方です。日本美術のコレクションでも有名らしいので、相当な富豪なのかな。
<1 ロバート・ラウシェンバーグ>
そして1章はアメリカン・ポップアートの少し前の時代のロバート・ラウシェンバーグのコーナーです。ロバート・ラウシェンバーグは1954年から自ら「コンバイン」と名づけた 絵画と彫刻を組み合わせた作品を作り、荒々しい筆の絵と日用品や新聞、雑誌の切り抜きなどを画面上で統合したそうです。これは当時のアメリカ美術の主流だった抽象表現主義を受け継ぐ一方で、オブジェの導入は続く60年代を予感させるそうで、その後1962年に最初のリトグラフを完成させ写真イメージと手描きを組み合わせた版画を制作し、ポップアートとは対照的に表現主義的とも言うべき画面を生み出しました。ラウシェンバーグはあらゆるものが芸術たりえると考えていたらしく、絵画・彫刻・写真・版画といったジャンルを超え、舞台芸術などにも及び、芸術と日常を等価なものとして扱い、ポップアートへ繋がる新たな芸術表現の領域を開いたそうです。ここにはそうした表現主義的な作品が並んでいました。
001 ロバート・ラウシェンバーグ 「ブロードキャスト」
これは大型の作品で、絵画と彫刻が一体化したような感じです。絵は抽象的でさっぱり分かりませんが、「HELP!」と描かれた新聞や、競馬の写真、櫛、2つのつまみなどが貼り付けられています。解説によると、このつまみはラジオの一部だそうで、絵の中にラジオが入っていて、以前は実際に聴くこともできたそうです。また、ラウシェンバーグは「僕達は現代社会のノイズの中で生きている」と言っていたらしく、この作品を鑑賞するときは2つのつまみを回して観るようにとも言っていたようです。まさにノイズのようなカオスな雰囲気の作品でした。
この少し前には白黒のコラージュのような作品も並んでいました。またこの先はリトグラフで、やはり雑誌の切り抜きなどの上に彩色していて抽象的かつ難解な印象を受けました。
012 ロバート・ラウシェンバーグ 「リボルバー」
これは円形の透明な回転盤が5枚重なり、そこに様々なイメージが描かれた作品です。大型で直系2mくらいあるんじゃないかな? 脇には5つのスイッチがあり、これを押すと2つの方向に回転するらしく、偶然重なった毎回違うイメージを鑑賞するようです。残念ながら今回の展示では回っていませんでしたが、面白い発想です。解説によると、ラウシェンバーグは芸術と科学の融合に強い関心を持っていたそうで、この作品からもそうした傾向が伺えました。
この先には布や厚紙で作られた作品などもありました。描いてあるものはよく分かりませんw
<2 ジャスパー・ジョーンズ>
続いては有名なジャスパー・ジョーンズのコーナーです。ジャスパー・ジョーンズは1954年に星条旗をモティーフにした作品の制作を始めたそうで、完成した旗の絵は彼をポップアートの偉大な先駆者として認知させると共に、20世紀で最も重要な美術品の1つとなっているそうです。また、60年以降はワークス・オン・ペーパー(紙を支持体とする作品)の制作にも精力的に取り組んだらしく、ここにはそうした作品が並んでいました。
036 ジャスパー・ジョーンズ 「4つの顔のある標的」
これは赤を背景に青と黄色の縞模様の円(射的の標的)が描かれ、その上に人の鼻と口だけオレンジ地で描かれた作品です。絵のあちこちにはmの字のようなギザギザが黒で書かれていて、抽象的な感じです。解説によると、ジャスパー・ジョーンズは50年台の抽象表現主義が抽象的な色彩と形態で絵のイリュージョン(幻影)の代わりとしたのに対して、もともと2次元のイメージを選び絵画からイリュージョンを取り除こうとしたそうです。…と、理屈を聞けば何となく分かった気になりますが、小難しくて取っ付きづらい印象を受けましたw ジャスパー・ジョーンズはどうも理屈っぽすぎて苦手…。
052 ジャスパー・ジョーンズ 「彩色された数字」
こちらももともと固定された2次元の記号である数字をモチーフにした作品で、緑や青、紫などでグラデーションが付けられています。7の数字には反転したモナ・リザのような人物も見られるかな。それぞれの数字で表現が異なっていましたが、これも理屈ありきといった感じでした。
この先には数字を白黒にした版画もありました。
047 ジャスパー・ジョーンズ 「白いアルファベット」
これは真っ白な画面の作品で、近寄ってよく観るとabcというように規則正しく小文字のアルファベットの形に絵の具が盛り上がって並んでいるのが分かります。これは絵の具の上からゴム印を押しているそうで、画家のオリジナルを主張しなくても絵画作品となることを表したかったのではないかとのことです。これはアメリカン・ポップアートの考え方に近づいてきたんじゃないかな。中々驚きのある作品でした。
044 ジャスパー・ジョーンズ 「地図」 ★こちらで観られます
これは真っ暗な画面の作品で、よく観ると上下左右4つの画面に分かれ、そこにアメリカの48州(アラスカとハワイを除く)が描かれていて、地名の文字なども見えています。解説によると、右下の部分だけは木炭で他は油彩となっているらしく、明確な意図を語っていなかったものの、この木炭の部分に描かれた州はジャスパー・ジョーンズの出身地ジョージア州を含む人種差別が根深い地域で、それを暗示しているのかもしれないようです。 また、この絵を逆さにすると国旗も浮かび上がるのだとか。
076 ジャスパー・ジョーンズ 「セミ」
これは6枚からなるシルクスクリーンの作品で、5~6本の線が規則的に並ぶ模様のような絵?です。 赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫の色合いに仕上がっていて、1つ1つは見ても意味が分かりませんが、6枚揃うと色の違いで華やかに見えだいぶ印象が変わってきました。
この5~6本の線のモチーフはお気に入りだったのか、何点か似た作品がありました。
077 ジャスパー・ジョーンズ 「うす雪」
こちらも何本かの線で描かれた作品です。ジャスパー・ジョーンズはハッチング(陰影をつけるために用いる手法)を並べた作品を一時期よく描いていたらしく、この作品では上から白が薄っすらと塗られていて、確かに薄く積もった雪を思わせます。解説によると、ジャスパー・ジョーンズはジョン・パワーズ氏に日本の本を勧められたそうで、その中に「うす雪」という言葉があり、この名前が使われたそうです。
この辺にはこれと同じような感じの作品が数点展示されていました。
<3 ラリー・リヴァーズ/ジム・ダイン>
続いてはラリー・リヴァーズとジム・ダインについてのコーナーです。ラリー・リヴァーズは画家を志した時から抽象表現主義の奔放な筆致を用いながらも具体的な対象を描くということに関心を抱いていたそうで、アメリカ人なら誰もが知っている既成のイメージを取り上げ、絵画の主題は高尚であるべきとする固定化した芸術観に一石を投じました。その為、今日では抽象表現主義とポップアートの中間に位置づけられているようです。
一方、ジム・ダインは1960年頃から身近なオブジェを取り入れた作品の制作を始め、ポップアートに結びつけたそうです。しかし繰り返し描いたオブジェは愛着のある私的な物(言わば自身の代理)であり、ポップアートの匿名性やオブジェに対する客観的でクールな態度は観られないようです。そしてその目的は自己の存在みつめ、その生々しい感覚を作品を通して伝えることだったらしく、ちょっとポップアートとスタンスが違いそうです。ここにはその2人の作品が少しだけ並んでいました。
084 ラリー・リヴァーズ 「ジム・ダインの防風窓」
窓と網戸に描かれた肖像で、腕組するひげの人物(ジム・ダイン)が描かれ、窓枠が額縁のようになっています。腕は手前の網、顔の輪郭はガラス、目はその奥というようにいくつか立体に観るのが面白いかな。意図するものは分かりませんでしたが、窓に描くという発想に驚きました。
近くには色見表のような巨大な作品もありました。
ということで、前半は理屈っぽい作品が多くて難解な印象を受けました。ちょっとこの辺は好みではないのであまり楽しめませんでしたが、その後の展開を知る上では重要な流れかな。後半は一気に面白い内容となっていましたので、次回は残りの内容をご紹介しようと思います。
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最近公私ともに忙しく、今日は軽めの記事です。 先日、レイトショーで映画「謝罪の王様」を観てきました。

【作品名】
謝罪の王様
【公式サイト】
http://www.king-of-gomennasai.com/
【時間】
2時間10分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
公開された間もないこともあってか、レイトショーでもお客さんが多く入っていました。
さて、この映画は水田伸生監督・宮藤官九郎脚本のコメディで、役者陣もこの2人が手がけた「舞妓Haaaan!!!」で主演を務めた阿部サダヲが再度主演となっているなど、ファンにはお馴染みのメンバーが集結した作品です。 今回は「謝罪」がテーマとなっていてポスター等でも土下座姿が前面に出されていて、ちょっと変わった主人公となっています。
ストーリーも奇抜で、2013年連続テレビ小説「あまちゃん」でも見せたクドカンならではの小ネタを交えつつ様々な事件が巻き起こっていきます。その構成も面白くて、あれはそういうことだったのかという納得感が随所にあり、話の作り方の上手さを感じます。 前半はやや暴走気味のテンションについていくのが大変でしたが、後半になるにつれ映画館でも笑いが起きていて、最後まで楽しめました。
役者はどれも個性的な役ばかりで、それがまた可笑しかったです。タレントなども出てきますが、それもハマってて1つの見どころとなっていました。
ということで、少々はっちゃけ過ぎなくらいに可笑しくて笑えるコメディでした。レンタルで十分という人もいると思いますが、映画館で自然に起こる観客の笑いも楽しめる1つの要素じゃないかな。あまり難しいことを考えずに笑いたい人にはお勧めできそうです。

【作品名】
謝罪の王様
【公式サイト】
http://www.king-of-gomennasai.com/
【時間】
2時間10分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
公開された間もないこともあってか、レイトショーでもお客さんが多く入っていました。
さて、この映画は水田伸生監督・宮藤官九郎脚本のコメディで、役者陣もこの2人が手がけた「舞妓Haaaan!!!」で主演を務めた阿部サダヲが再度主演となっているなど、ファンにはお馴染みのメンバーが集結した作品です。 今回は「謝罪」がテーマとなっていてポスター等でも土下座姿が前面に出されていて、ちょっと変わった主人公となっています。
ストーリーも奇抜で、2013年連続テレビ小説「あまちゃん」でも見せたクドカンならではの小ネタを交えつつ様々な事件が巻き起こっていきます。その構成も面白くて、あれはそういうことだったのかという納得感が随所にあり、話の作り方の上手さを感じます。 前半はやや暴走気味のテンションについていくのが大変でしたが、後半になるにつれ映画館でも笑いが起きていて、最後まで楽しめました。
役者はどれも個性的な役ばかりで、それがまた可笑しかったです。タレントなども出てきますが、それもハマってて1つの見どころとなっていました。
ということで、少々はっちゃけ過ぎなくらいに可笑しくて笑えるコメディでした。レンタルで十分という人もいると思いますが、映画館で自然に起こる観客の笑いも楽しめる1つの要素じゃないかな。あまり難しいことを考えずに笑いたい人にはお勧めできそうです。
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前々回、前回とご紹介した三菱一号館美術館の展示を観た後、近くの丸ビルの中にある「もつ福」というお店で夕飯をとりました。

【店名】
もつ福
【ジャンル】
モツ鍋
【公式サイト】
http://www.aki-nai.com/motsufuku/marubiru/index.html
http://www.marunouchi.com/shop/detail/1151
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1302/A130201/13032279/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
東京駅
【近くの美術館】
三菱一号館美術館
東京ステーションギャラリー
【この日にかかった1人の費用】
2500円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日17時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
結構人気のお店のようで、夕飯には早い時間に行ったのですが予約が多いらしく残席の確認をしてから通されました。後から来た人は入れないくらいだったので、混みやすいのかも??
お店の中はこんな感じ。丸ビルの中にこんな居酒屋風のお店があるのかとちょっと驚きw

モツ鍋は最近まであまり食べたことがなく選び方が分からなかったので、人気メニューの明太子モツ鍋というのを頼みました。
また、ちょっと写真を撮り忘れてしまったのですが、このお店の名物ということでレバカツ(390円)と、やわらかゆで牛たん(490円)というのも頼んでみました。いずれも1人・1組で注文数が限定されているようです。

牛たんの方は煮こんであり確かにトロトロになっていました。味も染み込んでいて美味しいです。レバカツもあまり食べたことがないので他と比較できませんが、ソースが特に美味しかったです。
そしてこちらが明太子モツ鍋(1249円×2人前)

これも初体験の味でしたが、明太子が全体的に広がっていくので、スープと明太子の味がモツに絡まって美味しかったです。
ということで、ちょっと変わったモツ鍋を食べてきました。(私が知らないだけでポピュラーなものかもしれませんがw) 非常に便利な場所にある反面、混雑することもあるようなので、行くとしたら予約したほうが無難そうです。

【店名】
もつ福
【ジャンル】
モツ鍋
【公式サイト】
http://www.aki-nai.com/motsufuku/marubiru/index.html
http://www.marunouchi.com/shop/detail/1151
食べログ:http://tabelog.com/tokyo/A1302/A130201/13032279/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
東京駅
【近くの美術館】
三菱一号館美術館
東京ステーションギャラリー
【この日にかかった1人の費用】
2500円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日17時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
結構人気のお店のようで、夕飯には早い時間に行ったのですが予約が多いらしく残席の確認をしてから通されました。後から来た人は入れないくらいだったので、混みやすいのかも??
お店の中はこんな感じ。丸ビルの中にこんな居酒屋風のお店があるのかとちょっと驚きw

モツ鍋は最近まであまり食べたことがなく選び方が分からなかったので、人気メニューの明太子モツ鍋というのを頼みました。
また、ちょっと写真を撮り忘れてしまったのですが、このお店の名物ということでレバカツ(390円)と、やわらかゆで牛たん(490円)というのも頼んでみました。いずれも1人・1組で注文数が限定されているようです。

牛たんの方は煮こんであり確かにトロトロになっていました。味も染み込んでいて美味しいです。レバカツもあまり食べたことがないので他と比較できませんが、ソースが特に美味しかったです。
そしてこちらが明太子モツ鍋(1249円×2人前)

これも初体験の味でしたが、明太子が全体的に広がっていくので、スープと明太子の味がモツに絡まって美味しかったです。
ということで、ちょっと変わったモツ鍋を食べてきました。(私が知らないだけでポピュラーなものかもしれませんがw) 非常に便利な場所にある反面、混雑することもあるようなので、行くとしたら予約したほうが無難そうです。
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今日は前回の記事に引き続き、三菱一号館美術館の「近代への眼差し 印象派と世紀末美術」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
近代への眼差し 印象派と世紀末美術
【公式サイト】
http://mimt.jp/meihin/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅
【会期】2013年10月5日(土)~2014年1月5日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前編では4章までご紹介いたしましたが、後編は5章から8章についてです。
<5章 版画家ヴァロットンの誕生>
5章はスイスの画家ヴァロットンの版画作品のコーナーです。ヴァロットンは1881年から版画制作を手がけ、1882年にはパリのアカデミー・ジュリアンで学びました。当初はドライポイントとエッチングを制作していたようですが、1891年から木版を手がけるようになったそうで、その契機の1つに浮世絵に衝撃を受けたことがあったようです。1890年代はボナールやヴュイヤール、ドニなどナビ派の画家たちと活動を共にし、独自の表現を確立する糧となったようです。その後「ラ・ルヴュ・ブランシュ」をはじめ各国で版画を掲載し国際的な評価を受けたそうで、ここにはそうした版画作品が並んでいました。
078-083 フェリックス・ヴァロットン 「アカデミー・フランセーズ会員」
これは最も格式がある学術団体のメンバーを描いた版画シリーズです。頭はリアルに描かれ、賢そうな面々が並んでいるのですが、いずれも2頭身くらいとなっていて胴体は戯画的な印象を受けます。顔とのギャップが余計に可笑しく見えるw 中には人形を抱えた紳士もいて、風刺的な印象を受けました。
084-089 フェリックス・ヴァロットン 「息づく街パリ」
こちらはパリの市民たちを描いた版画シリーズです。バイオリンを持って歌う人と見物する大勢の人、喧嘩して警官に連行されている人、切符売り場の行列、馬に踏まれた事故、にわか雨が降ってきた街の様子 など活気に満ちた雰囲気となっています。ちょっと人々がアホっぽく見えるのが逆にパリ市民への愛を感じさせるかな。にわか雨の作品は歌川広重の東海道五十三次「庄野 白雨」を彷彿とする描写でした。
この近くにはさらに単純化された版画も何点かありました。簡潔かつ心理描写が巧みな感じで、見ていて非常に楽しいです。この辺りが今回の展示で一番楽しめました。
097 フェリックス・ヴァロットン「動揺」
これは室内の男女を描いた作品で、女性の前で男性が膝をついて逢引をしているような感じに見えます。しかし2人は左奥の方のドアを見つめていて、見つかってはいけない所に人が来てしまった瞬間を思わせます。その顔は目を点で表すなど非常に簡素であるものの、その心理が瞬時に伝わってきて緊張感がありました。この後どうなってしまうんだろ…と物語を考えてしまうような作品でした。
<6章 ルドン 夢の色彩>
続いては階を下ったところにある6章です。前編では白黒のルドンの版画作品をご紹介いたしましたが、6章では色彩を用いて幻想的な表現を行った時代の作品が並んでいました。
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
105 オディロン・ルドン 「夜 Ⅴ.巫女たちは待っていた」
これは版画シリーズで何枚かあるうちの1つで、神殿の前で並んで立つ3人の巫女たちが描かれています。1人は手を組んでいて、1人は腕組み、もう1人は隣の女性にもたれかかっていて、明らかに退屈してそうなポーズです。やや右の方を見ているので、何かの到着を心待ちにしているのかな。意味や話の筋は分かりませんでしたが、神秘的な雰囲気の神殿と3人の巫女の人間的な仕草の取り合わせが面白かったです。
この先には「夢想」のシリーズもありました。
113 オディロン・ルドン 「小舟」 ★こちらで観られます
これは2人のベールを被った女性が寄り添ってマストのある小舟に乗っている様子を描いた作品で、周りは夜で空には星も輝いています。解説によると、この2人は聖女らしく、エルサレムからフランスへ逃れたという伝説を元にしていると考えられるようです。赤いベールに青い服の女性とオレンジのベールの女性として描かれていて、2人は寄り添い静かに光を放っていました。神秘的な作品です。
114 オディロン・ルドン 「グラン・ブーケ(大きな花束)」 ★こちらで観られます
これは花の入った壺を描いた巨大な作品で、元々は食堂を飾る壁画だったそうです。青い花瓶に実在か空想か分からない花が無数に入っていて、オレンジ、黄色、緑など明るい色合いになっているのですが、それでもぼんやりとした感じがあり独特の幻想性があります。これはこの美術館の所蔵品でも白眉と言って良い作品じゃないかな。一度は観ておきたい作品です。
<7章 ルノワールとモネの後半生>
続いてはルノワールとモネの油彩が並ぶコーナーです。ここは点数は少なめでした。
115 クロード・モネ 「プティ・タイイの岬、ヴァランジュヴィル」
これは高い位置から見下ろす視点で、海の断崖の上に立つ小屋が描かれた作品です。この小屋は税関吏の見張り小屋らしく、モネの作品には度々登場してくるお馴染みの風景です。やや薄めの色彩で画面は明るく感じられるのですが、それ以上に興味を持ったのは構図でした。何故か家は画面下に切れるように配置されているのが面白く、画面外の世界への広がりを感じさせました。
解説によると、モネはこの地に42歳の頃にやってきて作品を残しているようですが、その15年後に再訪してこれを描いたようです。この頃は仲間のカイユボットやベルト・モリゾを相次いで亡くしていたらしく、自らの若いころを振り返り思い出の地を巡っていたようです。
116 ピエール=オーギュスト・ルノワール 「パリスの審判」
こちらは3人の裸婦が並び、中央の裸婦(ヴィーナス)にリンゴを渡す白いフードの人物(パリス)が描かれた作品です。これは西洋絵画でよく題材にされるギリシャ神話のミスコンとも言えるパリスの審判の話で、ヴィーナス、アテナ、ヘラの3女神の中で最も美しい(最も賄賂が魅力的なw)ヴィーナスに、審判役となった牧童のパリスが黄金の林檎が渡すシーンが描かれています。全体的にぼんやりした感じはルノワールの晩年らしい作風かな。大きなお尻や小ぶりな乳房なども特徴的で、全体的に柔らかい印象を受けました。 前半に観た「麦藁帽子の女性」とはだいぶ作風が変わっているのが伺えます。
<8章 画商ヴォラールと画家たち 出版事業を中心に>
最後は伝説の画商ヴォラールに関係する画家たちのコーナーとなっていました。ヴォラールはゴッホ、セザンヌ、ゴーギャン、ナビ派などの展覧会を開催した画商で、その名前からアート泥棒(vole art ヴォラール)とベルナールに揶揄されたこともあったそうです。ここにはそのヴォラールが画家たちとともに出した版画作品などが展示されていました。
133 モーリス・ドニ 「アムール(愛) けれどあまりにも高鳴る心」
これは版画で、椅子に座った裸婦が胸に手を当てて目を閉じている様子が描かれ、画面を斜めに横切るような構図となっています。かなり薄く明るい色合いで、優美な印象を受けるのですが、タイトルの通り恋わずらいといった感じが出ていました。
この先にはこの作品のシリーズが数点ならんでいました。これも好みの作品が多かったです。 また、この近くにもルドンやヴァロットンの作品がありました。
125 モーリス・ドニ 「アムール(愛) それは敬虔な神秘さだった」
掌を前に出し目をつぶる少女の横顔と、顔を寄せて目をつぶる祈りのポーズの母親?の横顔が描かれた作品です。背景には光の差し込む窓が描かれ、2人とも逆光で顔が暗めになっています。その光の表現のため光に包まれるような安らかな印象を受け、神聖な雰囲気がありました。
この近くにはボナールによるパリの日常を描いた版画シリーズもありました。
147 エドモン=フランソワ・アマン=ジャン 「婦人・秋」
この画家は一時期スーラとアトリエを共有していた人物で、この作品は横2mくらいある大きな油彩です。2人の女性が沼地のほとりの草むらで横たわり、周りには沢山の鳥達が描かれています。それを2人で見上げていて、楽しげな雰囲気がありました。ややぼんやりしていて、解説では詩の情景を絵にしたようだとのことでした。
なお、この画家は日本から留学に来ていた児島虎次郎と出会い、虎次郎は彼にアドバイスされながら絵画蒐集を進めたそうで(スポンサーは大原孫三郎)、それが現在の大原美術館の礎となったようです。
参考記事:大原美術館名品展 (宇都宮美術館)
最後にはボナールが挿絵を手がけた詩画集があり、実際に復刻版を閲覧することができました。
ということで、予想以上に楽しめる内容で特にヴァロットンのコーナーは収穫でした。三菱一号館美術館では2014年にヴァロットン展も予定されているので、期待が高まります。それ以外の作品も見どころが多かったので満足できました。
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
近代への眼差し 印象派と世紀末美術
【公式サイト】
http://mimt.jp/meihin/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅
【会期】2013年10月5日(土)~2014年1月5日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前編では4章までご紹介いたしましたが、後編は5章から8章についてです。
<5章 版画家ヴァロットンの誕生>
5章はスイスの画家ヴァロットンの版画作品のコーナーです。ヴァロットンは1881年から版画制作を手がけ、1882年にはパリのアカデミー・ジュリアンで学びました。当初はドライポイントとエッチングを制作していたようですが、1891年から木版を手がけるようになったそうで、その契機の1つに浮世絵に衝撃を受けたことがあったようです。1890年代はボナールやヴュイヤール、ドニなどナビ派の画家たちと活動を共にし、独自の表現を確立する糧となったようです。その後「ラ・ルヴュ・ブランシュ」をはじめ各国で版画を掲載し国際的な評価を受けたそうで、ここにはそうした版画作品が並んでいました。
078-083 フェリックス・ヴァロットン 「アカデミー・フランセーズ会員」
これは最も格式がある学術団体のメンバーを描いた版画シリーズです。頭はリアルに描かれ、賢そうな面々が並んでいるのですが、いずれも2頭身くらいとなっていて胴体は戯画的な印象を受けます。顔とのギャップが余計に可笑しく見えるw 中には人形を抱えた紳士もいて、風刺的な印象を受けました。
084-089 フェリックス・ヴァロットン 「息づく街パリ」
こちらはパリの市民たちを描いた版画シリーズです。バイオリンを持って歌う人と見物する大勢の人、喧嘩して警官に連行されている人、切符売り場の行列、馬に踏まれた事故、にわか雨が降ってきた街の様子 など活気に満ちた雰囲気となっています。ちょっと人々がアホっぽく見えるのが逆にパリ市民への愛を感じさせるかな。にわか雨の作品は歌川広重の東海道五十三次「庄野 白雨」を彷彿とする描写でした。
この近くにはさらに単純化された版画も何点かありました。簡潔かつ心理描写が巧みな感じで、見ていて非常に楽しいです。この辺りが今回の展示で一番楽しめました。
097 フェリックス・ヴァロットン「動揺」
これは室内の男女を描いた作品で、女性の前で男性が膝をついて逢引をしているような感じに見えます。しかし2人は左奥の方のドアを見つめていて、見つかってはいけない所に人が来てしまった瞬間を思わせます。その顔は目を点で表すなど非常に簡素であるものの、その心理が瞬時に伝わってきて緊張感がありました。この後どうなってしまうんだろ…と物語を考えてしまうような作品でした。
<6章 ルドン 夢の色彩>
続いては階を下ったところにある6章です。前編では白黒のルドンの版画作品をご紹介いたしましたが、6章では色彩を用いて幻想的な表現を行った時代の作品が並んでいました。
参考記事:
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
105 オディロン・ルドン 「夜 Ⅴ.巫女たちは待っていた」
これは版画シリーズで何枚かあるうちの1つで、神殿の前で並んで立つ3人の巫女たちが描かれています。1人は手を組んでいて、1人は腕組み、もう1人は隣の女性にもたれかかっていて、明らかに退屈してそうなポーズです。やや右の方を見ているので、何かの到着を心待ちにしているのかな。意味や話の筋は分かりませんでしたが、神秘的な雰囲気の神殿と3人の巫女の人間的な仕草の取り合わせが面白かったです。
この先には「夢想」のシリーズもありました。
113 オディロン・ルドン 「小舟」 ★こちらで観られます
これは2人のベールを被った女性が寄り添ってマストのある小舟に乗っている様子を描いた作品で、周りは夜で空には星も輝いています。解説によると、この2人は聖女らしく、エルサレムからフランスへ逃れたという伝説を元にしていると考えられるようです。赤いベールに青い服の女性とオレンジのベールの女性として描かれていて、2人は寄り添い静かに光を放っていました。神秘的な作品です。
114 オディロン・ルドン 「グラン・ブーケ(大きな花束)」 ★こちらで観られます
これは花の入った壺を描いた巨大な作品で、元々は食堂を飾る壁画だったそうです。青い花瓶に実在か空想か分からない花が無数に入っていて、オレンジ、黄色、緑など明るい色合いになっているのですが、それでもぼんやりとした感じがあり独特の幻想性があります。これはこの美術館の所蔵品でも白眉と言って良い作品じゃないかな。一度は観ておきたい作品です。
<7章 ルノワールとモネの後半生>
続いてはルノワールとモネの油彩が並ぶコーナーです。ここは点数は少なめでした。
115 クロード・モネ 「プティ・タイイの岬、ヴァランジュヴィル」
これは高い位置から見下ろす視点で、海の断崖の上に立つ小屋が描かれた作品です。この小屋は税関吏の見張り小屋らしく、モネの作品には度々登場してくるお馴染みの風景です。やや薄めの色彩で画面は明るく感じられるのですが、それ以上に興味を持ったのは構図でした。何故か家は画面下に切れるように配置されているのが面白く、画面外の世界への広がりを感じさせました。
解説によると、モネはこの地に42歳の頃にやってきて作品を残しているようですが、その15年後に再訪してこれを描いたようです。この頃は仲間のカイユボットやベルト・モリゾを相次いで亡くしていたらしく、自らの若いころを振り返り思い出の地を巡っていたようです。
116 ピエール=オーギュスト・ルノワール 「パリスの審判」
こちらは3人の裸婦が並び、中央の裸婦(ヴィーナス)にリンゴを渡す白いフードの人物(パリス)が描かれた作品です。これは西洋絵画でよく題材にされるギリシャ神話のミスコンとも言えるパリスの審判の話で、ヴィーナス、アテナ、ヘラの3女神の中で最も美しい(最も賄賂が魅力的なw)ヴィーナスに、審判役となった牧童のパリスが黄金の林檎が渡すシーンが描かれています。全体的にぼんやりした感じはルノワールの晩年らしい作風かな。大きなお尻や小ぶりな乳房なども特徴的で、全体的に柔らかい印象を受けました。 前半に観た「麦藁帽子の女性」とはだいぶ作風が変わっているのが伺えます。
<8章 画商ヴォラールと画家たち 出版事業を中心に>
最後は伝説の画商ヴォラールに関係する画家たちのコーナーとなっていました。ヴォラールはゴッホ、セザンヌ、ゴーギャン、ナビ派などの展覧会を開催した画商で、その名前からアート泥棒(vole art ヴォラール)とベルナールに揶揄されたこともあったそうです。ここにはそのヴォラールが画家たちとともに出した版画作品などが展示されていました。
133 モーリス・ドニ 「アムール(愛) けれどあまりにも高鳴る心」
これは版画で、椅子に座った裸婦が胸に手を当てて目を閉じている様子が描かれ、画面を斜めに横切るような構図となっています。かなり薄く明るい色合いで、優美な印象を受けるのですが、タイトルの通り恋わずらいといった感じが出ていました。
この先にはこの作品のシリーズが数点ならんでいました。これも好みの作品が多かったです。 また、この近くにもルドンやヴァロットンの作品がありました。
125 モーリス・ドニ 「アムール(愛) それは敬虔な神秘さだった」
掌を前に出し目をつぶる少女の横顔と、顔を寄せて目をつぶる祈りのポーズの母親?の横顔が描かれた作品です。背景には光の差し込む窓が描かれ、2人とも逆光で顔が暗めになっています。その光の表現のため光に包まれるような安らかな印象を受け、神聖な雰囲気がありました。
この近くにはボナールによるパリの日常を描いた版画シリーズもありました。
147 エドモン=フランソワ・アマン=ジャン 「婦人・秋」
この画家は一時期スーラとアトリエを共有していた人物で、この作品は横2mくらいある大きな油彩です。2人の女性が沼地のほとりの草むらで横たわり、周りには沢山の鳥達が描かれています。それを2人で見上げていて、楽しげな雰囲気がありました。ややぼんやりしていて、解説では詩の情景を絵にしたようだとのことでした。
なお、この画家は日本から留学に来ていた児島虎次郎と出会い、虎次郎は彼にアドバイスされながら絵画蒐集を進めたそうで(スポンサーは大原孫三郎)、それが現在の大原美術館の礎となったようです。
参考記事:大原美術館名品展 (宇都宮美術館)
最後にはボナールが挿絵を手がけた詩画集があり、実際に復刻版を閲覧することができました。
ということで、予想以上に楽しめる内容で特にヴァロットンのコーナーは収穫でした。三菱一号館美術館では2014年にヴァロットン展も予定されているので、期待が高まります。それ以外の作品も見どころが多かったので満足できました。
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前回ご紹介した展示を観た後、ちょっと移動して三菱一号館美術館で始まったばかりの「近代への眼差し 印象派と世紀末美術」を観てきました。

【展覧名】
近代への眼差し 印象派と世紀末美術
【公式サイト】
http://mimt.jp/meihin/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅
【会期】2013年10月5日(土)~2014年1月5日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
初日で雨が降っていたのですが、それでも結構多くのお客さんで賑わっていました。元々会場が狭いので、場所によっては混雑してる感じもしました。
さて、今回の展示は三菱一号館美術館のコレクションをテーマごとに見ていくという内容です。三菱一号館美術館は3年前にオープンしたばかりで、いくつか今までもコレクションを観た覚えがありますが、そんなに点数があるのだろうか?と疑問に思っていました。しかし、この展示には149点もの作品が集まりコレクションが充実してきたことが伺えます。(版画が多め) 展覧会は時代や画家によって章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品とともにご紹介していこうと思います。
参考記事:
三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」 (三菱一号館美術館)
マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)
<1章 ミレーと印象派>
まずはバルビゾン派のミレーと、印象派の画家たちの作品のコーナーです。ここは目新しい解説は無かったので省略致します。
003 カミーユ・ピサロ 「窓から見たエラニーの通り、ナナカマドの木」
手前に赤い実のなった木が大きく描かれ、その奥に道と立ち並ぶ家々が描かれた作品です。全体的に点々で描かれた点描画となっていて、これはスーラたち新印象主義の技法に倣って作品を描いていた時代の作品のようです。また、手前の木はかなりの存在感があり、これは浮世絵からの影響のようです。明るめの色彩となっていて穏やかな雰囲気があり、その人柄や後進からも学んだ姿勢が伺える作品でした。
007 ピエール=オーギュスト・ルノワール 「麦藁帽子の女性」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、黄色い帽子を被った長い赤毛の女性が描かれています。指で髪を摘み、夢見るような表情に見えるかな。解説によると、この頃のルノワールはラファエロやアングルに回帰していたそうで、輪郭線が明確になっているという特徴があります。その為か色合いはルノワールらしいですが、シャープな印象を受けました。右薬指の指輪や耳飾りなども含めて可憐な印象を受ける作品でした。
参考記事:
ルノワール-伝統と革新 感想前編(国立新美術館)
ルノワール-伝統と革新 感想後編(国立新美術館)
この近くにはりんごを描いたセザンヌの作品もありました。
009 クロード・モネ 「草原の夕暮れ、ジヴェルニー」 ★こちらで観られます
樹の下で地面に座って休んでいる男女を描いた作品で、背景には広々とした草原が広がり遠くには背の高い木も見えています。夕暮れ時らしく空はピンクに染まり、全体的に穏やかな雰囲気でのんびりした風景でした。
<2章 ルドンの「黒」>
続いてはオディロン・ルドンの版画作品が並ぶコーナーです。ここには版画集「夢の中で」と「ゴヤ頌」のシリーズが並んでいました。
参考記事:
オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想前編(損保ジャパン東郷青児美術館)
オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想後編(損保ジャパン東郷青児美術館)
017 オディロン・ルドン 「夢の中で Ⅶ.猫かぶり」
目がつり上がり後頭部が小さい異形の小人と、同じような顔立ちの女性?が向き合っている様子が描かれた作品です。確かにタイトルのように猫みたいな顔にも見えるかな。2人の間が最も暗い闇となっている表現が面白く、静かで妖しい雰囲気がありました。
026 オディロン・ルドン 「ゴヤ頌 Ⅵ.めざめた時、私はきびしく無情な横顔の叡智の女神を見た」
これは横向きの女性の頭部を書いたもので、無表情でどこを見ているのかも分からない目つきをしています。花の髪飾りがついているのですが、可憐さはあまりなく幻想的な感じすらしました。緻密な線で陰影が付けられるのも面白いです。
<3章 トゥールーズ=ロートレックと仲間たち>
3章はロートレックのポスターなどが並び、後半はレスタンプ・オリジナルに関するコーナーとなっています(レスタンプ・オリジナルは4章にも続きます)
参考記事:トゥールーズ=ロートレック展 (三菱一号館美術館)
027 アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「メイ・ベルフォール」 ★こちらで観られます
これは大きなリボンのボンネットを被り赤いドレスを着た黒髪の女性(歌手)が、右向きに立って黒猫を抱いている様子が描かれた作品です。黒・赤・白の色の対比が強く、顔はあどけない感じに見えます。 また、この隣には恋人の女性を描いた「メイ・ミルトン」(★こちらで観られます)も展示されていました。こちらは左向きで白いドレスの裾を広げるポーズをした金髪女性で、まるで浮世絵の歌舞伎役者のように誇張された感じの顔つきをしています。解説によると、2人は対として描かれたのではないかとのことで、赤と白、向き合うようなポーズなど、確かに頷ける対照的な2枚でした。
この近くにはロートレックの有名な「悦楽の女王」や「ムーラン・ルージュ・ラ・グーリュ」などもありました。また、ロートレックが手がけたラ・ルヴュ・ブランシュ誌の付録やポスターなども展示されています。
[レスタンプ・オリジナル]
続いてはアンドレ・マルティという出版者が発行した「レスタンプ・オリジナル」という版画集についての小コーナーで、これにはロートレックも関わっています。アンドレ・マルティは独創的で斬新な作品を手がけた敏腕出版者だそうで、「レスタンプ・オリジナル」にはロートレックをはじめルノワールやヴュイヤール、ジュール・シェレなどかなり豪華な面々が参加しているらしく、ここではまずロートレックの「レスタンプ・オリジナル」の作品が紹介されていました。
050 アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「第1年次のための表紙」 ★こちらで観られます
これはピンクの服を着た女性(踊り子)が手に持った紙を読んでいる姿が描かれた版画で、その後ろには出版の作業をしている男性の姿も描かれています。解説によると、これは刷り上がった版画を観てチェックしているらしく、かなり真剣な面持ちに見えます。全体的に色合いは少ないですが、ロートレックらしい色遣いと鋭い観察眼が楽しめました。
この近くにはロートレックがカフェ・ゴヤールの客を描いたシリーズ版画も展示されていました。
<4章 レスタンプ・オリジナル>
続いても「レスタンプ・オリジナル」のコーナーで、こちらは画家を問わず展示されていました。「レスタンプ・オリジナル」は1893年~1895年に出版された創作(オリジナル)版画集で、毎号10点の版画を収め 限定100部で頌布されたそうです。アンドレ・マルティが企画し、著名な画家や版画家から新人に至るまで幅広い人々を起用したそうで、シャバンヌ、ルノワール、ピサロ、ルドン、ゴーギャン、ブラックモン、シュレなどが起用されました。また、こうした既に評価されていた芸術家だけではなく、ナビ派の画家などにも門戸を開いていたようで、ここには意外な作家の作品なども展示されていました。
059 オーギュスト・ロダン 「アンリ・ベックの肖像」
これは口ひげを生やした劇作家のアンリ・ベックという人物を描いた肖像です。彫刻家で有名なロダンですが、生涯に13点の版画を残して、これは以前作った彫刻を元に版画化したようです。前、横、斜めの向きから描かれていて、立体的な考察は流石かな。緻密に描かれているものの、ロダンの彫刻に通じる力強い印象を受けました。
061 ウジェーヌ・カリエール 「ネリー・カリエール」
これは女性の横向きの顔が闇に浮かぶように描かれた作品です。髪と背景の境がなく、目は描かれていないのが不気味な感じです。細い線を重ねて表現しているためか全体的にぼんやりしていて、まるで幽霊のような儚い印象を受けました。これは中々インパクトがあります。
この近くにはシャバンヌやピサロ、ゴーギャン、ルドンの版画作品もありました。
066 アンリ・ファンタン=ラトゥール 「聖アントニウスの誘惑」
こちらは膝をついて髑髏を手に持つフードを被った聖アントニウスと、その後ろにいる2人の裸婦が描かれた作品です。これは聖アントニウスの幻視で、裸婦たちは親しげに寄り添い、官能的な雰囲気で聖アントニウスを誘惑しているようです。しかし聖アントニウスはその誘惑を髑髏を持って退けているらしく、じっと考えているようでした。黒っぽい色合いで地味な聖アントニウスに比べ、白く華やかに表現された裸婦たちが対照的に見えました。 ちなみにルドンに版画を教えたのはラトゥールなのだとか。
この近くは結構知らない画家の作品もあり楽しめました。みんな主義や画風はバラバラで、才能のみでレスタンプ・オリジナルの仕事に抜擢されているようです。
072 アンリ・ブテ 「パリの女」
これは縦長の作品で、街中を歩く黒いドレスを着た女性の後ろ姿が描かれています。背景には夜の街?が描かれ、若干の哀愁を感じさせます。女性はスラっとしていてシルエットは美しいものの、ややぼんやりしていて幻想的な雰囲気もありました。
この近くにはアメリカのホイッスラーなどの作品までありました。
ということで、今日はこの辺までにしておこうと思います。正直、最初の方はビッグネームが揃っているものの目新しい感じがせず、コレクションの方向性もよく分かりませんでしたが、レスタンプ・オリジナルの辺りから徐々に面白くなってきました。後半には今回の展示で最も気に入ったヴァロットンの版画なども展示されていましたので、次回はそれについてご紹介して参ります。
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
近代への眼差し 印象派と世紀末美術
【公式サイト】
http://mimt.jp/meihin/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅
【会期】2013年10月5日(土)~2014年1月5日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
初日で雨が降っていたのですが、それでも結構多くのお客さんで賑わっていました。元々会場が狭いので、場所によっては混雑してる感じもしました。
さて、今回の展示は三菱一号館美術館のコレクションをテーマごとに見ていくという内容です。三菱一号館美術館は3年前にオープンしたばかりで、いくつか今までもコレクションを観た覚えがありますが、そんなに点数があるのだろうか?と疑問に思っていました。しかし、この展示には149点もの作品が集まりコレクションが充実してきたことが伺えます。(版画が多め) 展覧会は時代や画家によって章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品とともにご紹介していこうと思います。
参考記事:
三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」 (三菱一号館美術館)
マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)
<1章 ミレーと印象派>
まずはバルビゾン派のミレーと、印象派の画家たちの作品のコーナーです。ここは目新しい解説は無かったので省略致します。
003 カミーユ・ピサロ 「窓から見たエラニーの通り、ナナカマドの木」
手前に赤い実のなった木が大きく描かれ、その奥に道と立ち並ぶ家々が描かれた作品です。全体的に点々で描かれた点描画となっていて、これはスーラたち新印象主義の技法に倣って作品を描いていた時代の作品のようです。また、手前の木はかなりの存在感があり、これは浮世絵からの影響のようです。明るめの色彩となっていて穏やかな雰囲気があり、その人柄や後進からも学んだ姿勢が伺える作品でした。
007 ピエール=オーギュスト・ルノワール 「麦藁帽子の女性」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、黄色い帽子を被った長い赤毛の女性が描かれています。指で髪を摘み、夢見るような表情に見えるかな。解説によると、この頃のルノワールはラファエロやアングルに回帰していたそうで、輪郭線が明確になっているという特徴があります。その為か色合いはルノワールらしいですが、シャープな印象を受けました。右薬指の指輪や耳飾りなども含めて可憐な印象を受ける作品でした。
参考記事:
ルノワール-伝統と革新 感想前編(国立新美術館)
ルノワール-伝統と革新 感想後編(国立新美術館)
この近くにはりんごを描いたセザンヌの作品もありました。
009 クロード・モネ 「草原の夕暮れ、ジヴェルニー」 ★こちらで観られます
樹の下で地面に座って休んでいる男女を描いた作品で、背景には広々とした草原が広がり遠くには背の高い木も見えています。夕暮れ時らしく空はピンクに染まり、全体的に穏やかな雰囲気でのんびりした風景でした。
<2章 ルドンの「黒」>
続いてはオディロン・ルドンの版画作品が並ぶコーナーです。ここには版画集「夢の中で」と「ゴヤ頌」のシリーズが並んでいました。
参考記事:
オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想前編(損保ジャパン東郷青児美術館)
オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想後編(損保ジャパン東郷青児美術館)
017 オディロン・ルドン 「夢の中で Ⅶ.猫かぶり」
目がつり上がり後頭部が小さい異形の小人と、同じような顔立ちの女性?が向き合っている様子が描かれた作品です。確かにタイトルのように猫みたいな顔にも見えるかな。2人の間が最も暗い闇となっている表現が面白く、静かで妖しい雰囲気がありました。
026 オディロン・ルドン 「ゴヤ頌 Ⅵ.めざめた時、私はきびしく無情な横顔の叡智の女神を見た」
これは横向きの女性の頭部を書いたもので、無表情でどこを見ているのかも分からない目つきをしています。花の髪飾りがついているのですが、可憐さはあまりなく幻想的な感じすらしました。緻密な線で陰影が付けられるのも面白いです。
<3章 トゥールーズ=ロートレックと仲間たち>
3章はロートレックのポスターなどが並び、後半はレスタンプ・オリジナルに関するコーナーとなっています(レスタンプ・オリジナルは4章にも続きます)
参考記事:トゥールーズ=ロートレック展 (三菱一号館美術館)
027 アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「メイ・ベルフォール」 ★こちらで観られます
これは大きなリボンのボンネットを被り赤いドレスを着た黒髪の女性(歌手)が、右向きに立って黒猫を抱いている様子が描かれた作品です。黒・赤・白の色の対比が強く、顔はあどけない感じに見えます。 また、この隣には恋人の女性を描いた「メイ・ミルトン」(★こちらで観られます)も展示されていました。こちらは左向きで白いドレスの裾を広げるポーズをした金髪女性で、まるで浮世絵の歌舞伎役者のように誇張された感じの顔つきをしています。解説によると、2人は対として描かれたのではないかとのことで、赤と白、向き合うようなポーズなど、確かに頷ける対照的な2枚でした。
この近くにはロートレックの有名な「悦楽の女王」や「ムーラン・ルージュ・ラ・グーリュ」などもありました。また、ロートレックが手がけたラ・ルヴュ・ブランシュ誌の付録やポスターなども展示されています。
[レスタンプ・オリジナル]
続いてはアンドレ・マルティという出版者が発行した「レスタンプ・オリジナル」という版画集についての小コーナーで、これにはロートレックも関わっています。アンドレ・マルティは独創的で斬新な作品を手がけた敏腕出版者だそうで、「レスタンプ・オリジナル」にはロートレックをはじめルノワールやヴュイヤール、ジュール・シェレなどかなり豪華な面々が参加しているらしく、ここではまずロートレックの「レスタンプ・オリジナル」の作品が紹介されていました。
050 アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「第1年次のための表紙」 ★こちらで観られます
これはピンクの服を着た女性(踊り子)が手に持った紙を読んでいる姿が描かれた版画で、その後ろには出版の作業をしている男性の姿も描かれています。解説によると、これは刷り上がった版画を観てチェックしているらしく、かなり真剣な面持ちに見えます。全体的に色合いは少ないですが、ロートレックらしい色遣いと鋭い観察眼が楽しめました。
この近くにはロートレックがカフェ・ゴヤールの客を描いたシリーズ版画も展示されていました。
<4章 レスタンプ・オリジナル>
続いても「レスタンプ・オリジナル」のコーナーで、こちらは画家を問わず展示されていました。「レスタンプ・オリジナル」は1893年~1895年に出版された創作(オリジナル)版画集で、毎号10点の版画を収め 限定100部で頌布されたそうです。アンドレ・マルティが企画し、著名な画家や版画家から新人に至るまで幅広い人々を起用したそうで、シャバンヌ、ルノワール、ピサロ、ルドン、ゴーギャン、ブラックモン、シュレなどが起用されました。また、こうした既に評価されていた芸術家だけではなく、ナビ派の画家などにも門戸を開いていたようで、ここには意外な作家の作品なども展示されていました。
059 オーギュスト・ロダン 「アンリ・ベックの肖像」
これは口ひげを生やした劇作家のアンリ・ベックという人物を描いた肖像です。彫刻家で有名なロダンですが、生涯に13点の版画を残して、これは以前作った彫刻を元に版画化したようです。前、横、斜めの向きから描かれていて、立体的な考察は流石かな。緻密に描かれているものの、ロダンの彫刻に通じる力強い印象を受けました。
061 ウジェーヌ・カリエール 「ネリー・カリエール」
これは女性の横向きの顔が闇に浮かぶように描かれた作品です。髪と背景の境がなく、目は描かれていないのが不気味な感じです。細い線を重ねて表現しているためか全体的にぼんやりしていて、まるで幽霊のような儚い印象を受けました。これは中々インパクトがあります。
この近くにはシャバンヌやピサロ、ゴーギャン、ルドンの版画作品もありました。
066 アンリ・ファンタン=ラトゥール 「聖アントニウスの誘惑」
こちらは膝をついて髑髏を手に持つフードを被った聖アントニウスと、その後ろにいる2人の裸婦が描かれた作品です。これは聖アントニウスの幻視で、裸婦たちは親しげに寄り添い、官能的な雰囲気で聖アントニウスを誘惑しているようです。しかし聖アントニウスはその誘惑を髑髏を持って退けているらしく、じっと考えているようでした。黒っぽい色合いで地味な聖アントニウスに比べ、白く華やかに表現された裸婦たちが対照的に見えました。 ちなみにルドンに版画を教えたのはラトゥールなのだとか。
この近くは結構知らない画家の作品もあり楽しめました。みんな主義や画風はバラバラで、才能のみでレスタンプ・オリジナルの仕事に抜擢されているようです。
072 アンリ・ブテ 「パリの女」
これは縦長の作品で、街中を歩く黒いドレスを着た女性の後ろ姿が描かれています。背景には夜の街?が描かれ、若干の哀愁を感じさせます。女性はスラっとしていてシルエットは美しいものの、ややぼんやりしていて幻想的な雰囲気もありました。
この近くにはアメリカのホイッスラーなどの作品までありました。
ということで、今日はこの辺までにしておこうと思います。正直、最初の方はビッグネームが揃っているものの目新しい感じがせず、コレクションの方向性もよく分かりませんでしたが、レスタンプ・オリジナルの辺りから徐々に面白くなってきました。後半には今回の展示で最も気に入ったヴァロットンの版画なども展示されていましたので、次回はそれについてご紹介して参ります。
参照記事:★この記事を参照している記事
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この間の土曜日に、銀座に新たに出来た資生堂銀座ビル花椿ホールで、「資生堂銀座ビル 花椿ホールオープニングプログラム Japan Original Beauty 一瞬も 一瞬も美しく ~企業広告「わたしの開花宣言」シリーズと 『ジョジョの奇妙な冒険』とのコラボレーションによるヘア・メーキャップ作品展示~」を観てきました。
※今回は「ジョジョの奇妙な冒険」の漫画の内容を知っている方向けの記事になります。漫画自体の説明などは省略します。

【展覧名】
資生堂銀座ビル 花椿ホールオープニングプログラム Japan Original Beauty
一瞬も 一瞬も美しく ~企業広告「わたしの開花宣言」シリーズと
『ジョジョの奇妙な冒険』とのコラボレーションによるヘア・メーキャップ作品展示~
【公式サイト】
https://www.facebook.com/shiseido.corporate/app_532780830135607
【会場】資生堂銀座ビル 花椿ホール
【最寄】銀座駅、新橋駅、有楽町駅など
【会期】2013年10月4日(金)~10月9日(水)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
結構お客さんはいましたが、作品も大きいので快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示はたびたびこのブログでも取り上げている漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボレーションしたヘアメイクの写真19点と、「わたしの開花宣言」という文藝春秋で掲載されている企業広告に載った10人の女性の写真とインタビューから成る展示です。全く異質な組み合わせなので、両方楽しむ人は少なそうな気がしますが、私はジョジョの方を目当てに行きました。点数は少なめでメモもあまり取りませんでしたので、ざっくりとご紹介しようと思います。
参考記事:
ジョジョの奇妙な冒険25周年記念「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展」 (森アーツセンターギャラリー)
【番外編】荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町 (せんだいメディアテーク)
岸辺露伴 新宿へ行く 展 (グッチ新宿)
まず展示室に入ると、ジョジョに出てくる人物たちを再現した写真が並んでいます。これは資生堂のヘアチーフとして活躍されているヘア・メーキャップアーティスト原田忠 氏が手がけたものらしく、クオリティの高い再現度となっています。
だいたいはWeb上に上がっている写真(★こちらで観られます)通りで、集合写真とバラの写真はポーズなど一緒で単体か集合かの違いくらいかな。最初に6部のFF、ウェザー・リポート、4部の音石明、岸辺露伴、東方仗助、再度6部の徐倫、エルメェス、SBRの大統領、ブラックモアなどが再現されていて、特に仗助の髪型には驚きw よくあれを再現したものだw 逆に大統領は女っぽい感じが強かったかな。逆の壁側にはタブレットがあり、漫画の登場シーンのページと資生堂のコスメが映されていました。このコスメでメイクしましたよってことかな。
部屋の奥中央には一同が会した集合写真があり、その後はまた単体の写真となります。
5部のリゾット、セッコ、ディアボロ、ブチャラティ、ジョルノ、ポルナレフ(見た目は3部風)、アバッキオ、ミスタ、メローネとあり、5部は特に充実してました。ミスタやジョルノの再現がやけにカッコイイ一方で、リゾットとディアボロは誰か分からないくらい違う感じがするかな。ブチャラティはやや女性的な感じが強かったです。
これでジョジョの写真は終わりで、部屋の中央の通路に「私の開花宣言」のパネルが並んでいました。女優など各界の著名な女性の写真とインタビューが並んでします。
そして出入口付近には記念撮影できるコーナーがあり、ここは10分くらい並びました。これは画面に顔を向けると、顔認識してその上からジョジョのキャラ風の補正がかかるというもので、露伴や大統領など4人のキャラからランダムに選択され、変身後の姿が写されていました。これはQRコードで自分のスマフォにも落とせるので、仲間内で見せ合うと楽しいですw ちなみに私は露伴でしたw
ということで、展示されているものはWebにあがっている写真を大きくしただけといった感じでしたが、ジョジョへの愛が感じられる面白い展示でした。最後の記念撮影も楽しめたし、ファンには面白いイベントだと思います。会期がごく短いので気になる方はすぐにでもどうぞ。
参照記事:★この記事を参照している記事
※今回は「ジョジョの奇妙な冒険」の漫画の内容を知っている方向けの記事になります。漫画自体の説明などは省略します。


【展覧名】
資生堂銀座ビル 花椿ホールオープニングプログラム Japan Original Beauty
一瞬も 一瞬も美しく ~企業広告「わたしの開花宣言」シリーズと
『ジョジョの奇妙な冒険』とのコラボレーションによるヘア・メーキャップ作品展示~
【公式サイト】
https://www.facebook.com/shiseido.corporate/app_532780830135607
【会場】資生堂銀座ビル 花椿ホール
【最寄】銀座駅、新橋駅、有楽町駅など
【会期】2013年10月4日(金)~10月9日(水)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
結構お客さんはいましたが、作品も大きいので快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示はたびたびこのブログでも取り上げている漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボレーションしたヘアメイクの写真19点と、「わたしの開花宣言」という文藝春秋で掲載されている企業広告に載った10人の女性の写真とインタビューから成る展示です。全く異質な組み合わせなので、両方楽しむ人は少なそうな気がしますが、私はジョジョの方を目当てに行きました。点数は少なめでメモもあまり取りませんでしたので、ざっくりとご紹介しようと思います。
参考記事:
ジョジョの奇妙な冒険25周年記念「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展」 (森アーツセンターギャラリー)
【番外編】荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町 (せんだいメディアテーク)
岸辺露伴 新宿へ行く 展 (グッチ新宿)
まず展示室に入ると、ジョジョに出てくる人物たちを再現した写真が並んでいます。これは資生堂のヘアチーフとして活躍されているヘア・メーキャップアーティスト原田忠 氏が手がけたものらしく、クオリティの高い再現度となっています。
だいたいはWeb上に上がっている写真(★こちらで観られます)通りで、集合写真とバラの写真はポーズなど一緒で単体か集合かの違いくらいかな。最初に6部のFF、ウェザー・リポート、4部の音石明、岸辺露伴、東方仗助、再度6部の徐倫、エルメェス、SBRの大統領、ブラックモアなどが再現されていて、特に仗助の髪型には驚きw よくあれを再現したものだw 逆に大統領は女っぽい感じが強かったかな。逆の壁側にはタブレットがあり、漫画の登場シーンのページと資生堂のコスメが映されていました。このコスメでメイクしましたよってことかな。
部屋の奥中央には一同が会した集合写真があり、その後はまた単体の写真となります。
5部のリゾット、セッコ、ディアボロ、ブチャラティ、ジョルノ、ポルナレフ(見た目は3部風)、アバッキオ、ミスタ、メローネとあり、5部は特に充実してました。ミスタやジョルノの再現がやけにカッコイイ一方で、リゾットとディアボロは誰か分からないくらい違う感じがするかな。ブチャラティはやや女性的な感じが強かったです。
これでジョジョの写真は終わりで、部屋の中央の通路に「私の開花宣言」のパネルが並んでいました。女優など各界の著名な女性の写真とインタビューが並んでします。
そして出入口付近には記念撮影できるコーナーがあり、ここは10分くらい並びました。これは画面に顔を向けると、顔認識してその上からジョジョのキャラ風の補正がかかるというもので、露伴や大統領など4人のキャラからランダムに選択され、変身後の姿が写されていました。これはQRコードで自分のスマフォにも落とせるので、仲間内で見せ合うと楽しいですw ちなみに私は露伴でしたw
ということで、展示されているものはWebにあがっている写真を大きくしただけといった感じでしたが、ジョジョへの愛が感じられる面白い展示でした。最後の記念撮影も楽しめたし、ファンには面白いイベントだと思います。会期がごく短いので気になる方はすぐにでもどうぞ。
参照記事:★この記事を参照している記事
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前回ご紹介した東京国立近代美術館の常設展示を観た後、少し離れたところにある工芸館に移動して、「クローズアップ工芸」という展示を観てきました。

【展覧名】
クローズアップ工芸
【公式サイト】
http://www.momat.go.jp/CG/closeupcrafts2013/index.html
【会場】東京国立近代美術館 工芸館
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2013年9月14日(土)~12月8日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
こちらは空いていてゆっくり観ることができました。
さて、この展示は近現代を代表する5人の工芸作家を取り上げたもので、その細部にフォーカスするというオムニバス形式の展覧会となっています。詳細な情報は少なめでしたので、簡単に気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。
まずは友禅染の森口華弘 氏のコーナーです。
4-12 森口華弘 「縮緬地友禅訪問着 菊」
これは背中に菊の花が花畑のように広がっている模様の友禅染の着物です。肩・首辺りは特に花が密集し、下のほうは茎が多めに見えるかな。放射状になり遠近感があるのも面白かったです。かなり斬新な印象を受けました。
4-17 森口華弘 「友禅訪問着 双華」
これは背中の方の下部を中心に、短い線が無数に放射されているような意匠の着物です。ピンク、金、白、青など色も多彩で、渦巻いているような感じがします。これも観たこともないような斬新な模様で、華やかな印象を受けました。
少し先にはこの作品のための下絵などもありました。
続いては彫金の鈴木長吉 氏の作品のコーナーです。
1-2 鈴木長吉 「十二の鷹」 ★こちらで観られます
これは様々な金属製の鷹が12羽並んでいる壮観な作品で、身を低くしていたり、下を向いていたり、羽を広げていたり、緊張感漂う鷹たちが1本の止まり木に並んでいます。それぞれ細部までリアルに作られていて、羽毛の質感などは1本1本の毛まで表すほどです。どれも威厳があり、生き生きとしていました。解説によると、作者は実際に鷹を飼って観察し、古い資料や名画に基づいて研究していたとのことです。これは一見の価値があると思います。
この近くには二代橋本長兵衛の助けを借りて徳川家光が描いたとされる「架鷹図屏風」などもありました。
続いては富本憲吉 氏による独特の文様で彩色された陶磁器が並ぶコーナーです。
2-13 富本憲吉 「色絵金彩羊歯模様大飾壺」 ★こちらで観られます
これは金銀を背景に、風車のようにねじれた白い花が描かれた飾壺です。この花は定家葛という花で実際にこうしてねじれて咲くそうで、それが様式化されパターンとなって表されています。金銀と相まって非常に絢爛かつ優美な印象を受け、気品が感じられました。
2-14 富本憲吉 「色絵金銀彩羊歯文六角小箱」
これは6角形の底の浅い陶器の小箱で、表面は赤と金の菱型文様が並ぶ柄となっています。ひし形には小さなシダの葉っぱが表されていて、何とも洒落た感じです。この近くには同様にシダ模様の箱や壺があり、いずれも幾何学的美しさと有機的美しさの両面を感じさせました。
2-8 富本憲吉 「色絵金銀彩羊歯文八角飾箱」
これは8角形の飾り箱で、白い枠に金と銀のシダの模様が描かれ、下地は青となっています。その色合いが美しく、形と意匠の面白さもあり非常に気に入りました。
続いては松田権六 氏による蒔絵の箱のコーナーです。
3-7 松田権六 「蒔絵玉すだれ文盤」
これは四角い形の蒔絵の文盤で、白い花(玉すだれ)が表されています。花は皿のふちを沿うように表されているのが面白く、リズミカルな雰囲気でした。非常に鮮やかな色合となっているのも好みです。
3-10 松田権六 「蒔絵竹林文箱」
これは黒漆の蒔絵の箱で、上面には金で竹林の葉っぱが表され、横には3羽の雀の姿があります。周りには大小 不揃いの金粉が用いられていて、それが雪のように見えて雅な印象を受けました。 仲良く並ぶ雀たちも可愛いかったです。
最後は小名木陽一 氏による繊維を使った現代アート作品のコーナーです。
5-2 小名木陽一 「赤い手ぶくろ」 ★こちらで観られます
これは人の背丈よりも大きな真っ赤な手袋で、壁から伸びてきているような感じで展示されていました。作者は素材と技法を工夫して作品の形を立体的に保つ試みを続け「繊維の自立」を目指しているそうで、これもそうした作品のようです。色と形に非常に驚きました。
この部屋にはもう1点立体的作品がありました。
ということで、伝統的なジャンルでありながら斬新な作品が多く観られて中々楽しめる内容でした。 この工芸館はあまり知られていないようですが、日本の工芸の素晴らしさがよく分かる作品がよく出てきますので、東京近代美術館に行く機会があったら、足を伸ばしてみることをお勧めします。
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
クローズアップ工芸
【公式サイト】
http://www.momat.go.jp/CG/closeupcrafts2013/index.html
【会場】東京国立近代美術館 工芸館
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2013年9月14日(土)~12月8日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
こちらは空いていてゆっくり観ることができました。
さて、この展示は近現代を代表する5人の工芸作家を取り上げたもので、その細部にフォーカスするというオムニバス形式の展覧会となっています。詳細な情報は少なめでしたので、簡単に気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。
まずは友禅染の森口華弘 氏のコーナーです。
4-12 森口華弘 「縮緬地友禅訪問着 菊」
これは背中に菊の花が花畑のように広がっている模様の友禅染の着物です。肩・首辺りは特に花が密集し、下のほうは茎が多めに見えるかな。放射状になり遠近感があるのも面白かったです。かなり斬新な印象を受けました。
4-17 森口華弘 「友禅訪問着 双華」
これは背中の方の下部を中心に、短い線が無数に放射されているような意匠の着物です。ピンク、金、白、青など色も多彩で、渦巻いているような感じがします。これも観たこともないような斬新な模様で、華やかな印象を受けました。
少し先にはこの作品のための下絵などもありました。
続いては彫金の鈴木長吉 氏の作品のコーナーです。
1-2 鈴木長吉 「十二の鷹」 ★こちらで観られます
これは様々な金属製の鷹が12羽並んでいる壮観な作品で、身を低くしていたり、下を向いていたり、羽を広げていたり、緊張感漂う鷹たちが1本の止まり木に並んでいます。それぞれ細部までリアルに作られていて、羽毛の質感などは1本1本の毛まで表すほどです。どれも威厳があり、生き生きとしていました。解説によると、作者は実際に鷹を飼って観察し、古い資料や名画に基づいて研究していたとのことです。これは一見の価値があると思います。
この近くには二代橋本長兵衛の助けを借りて徳川家光が描いたとされる「架鷹図屏風」などもありました。
続いては富本憲吉 氏による独特の文様で彩色された陶磁器が並ぶコーナーです。
2-13 富本憲吉 「色絵金彩羊歯模様大飾壺」 ★こちらで観られます
これは金銀を背景に、風車のようにねじれた白い花が描かれた飾壺です。この花は定家葛という花で実際にこうしてねじれて咲くそうで、それが様式化されパターンとなって表されています。金銀と相まって非常に絢爛かつ優美な印象を受け、気品が感じられました。
2-14 富本憲吉 「色絵金銀彩羊歯文六角小箱」
これは6角形の底の浅い陶器の小箱で、表面は赤と金の菱型文様が並ぶ柄となっています。ひし形には小さなシダの葉っぱが表されていて、何とも洒落た感じです。この近くには同様にシダ模様の箱や壺があり、いずれも幾何学的美しさと有機的美しさの両面を感じさせました。
2-8 富本憲吉 「色絵金銀彩羊歯文八角飾箱」
これは8角形の飾り箱で、白い枠に金と銀のシダの模様が描かれ、下地は青となっています。その色合いが美しく、形と意匠の面白さもあり非常に気に入りました。
続いては松田権六 氏による蒔絵の箱のコーナーです。
3-7 松田権六 「蒔絵玉すだれ文盤」
これは四角い形の蒔絵の文盤で、白い花(玉すだれ)が表されています。花は皿のふちを沿うように表されているのが面白く、リズミカルな雰囲気でした。非常に鮮やかな色合となっているのも好みです。
3-10 松田権六 「蒔絵竹林文箱」
これは黒漆の蒔絵の箱で、上面には金で竹林の葉っぱが表され、横には3羽の雀の姿があります。周りには大小 不揃いの金粉が用いられていて、それが雪のように見えて雅な印象を受けました。 仲良く並ぶ雀たちも可愛いかったです。
最後は小名木陽一 氏による繊維を使った現代アート作品のコーナーです。
5-2 小名木陽一 「赤い手ぶくろ」 ★こちらで観られます
これは人の背丈よりも大きな真っ赤な手袋で、壁から伸びてきているような感じで展示されていました。作者は素材と技法を工夫して作品の形を立体的に保つ試みを続け「繊維の自立」を目指しているそうで、これもそうした作品のようです。色と形に非常に驚きました。
この部屋にはもう1点立体的作品がありました。
ということで、伝統的なジャンルでありながら斬新な作品が多く観られて中々楽しめる内容でした。 この工芸館はあまり知られていないようですが、日本の工芸の素晴らしさがよく分かる作品がよく出てきますので、東京近代美術館に行く機会があったら、足を伸ばしてみることをお勧めします。
参照記事:★この記事を参照している記事
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前々回、前回とご紹介した展示を観た後、同じ館内で常設展も観てきました。今回の常設も期間が設けられ「所蔵作品展 MOMAT コレクション」というタイトルがつけられていました。
【展覧名】
所蔵作品展 MOMAT コレクション
【公式サイト】
http://www.momat.go.jp/Honkan/permanent20130810.html
【会場】
東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー
【最寄】
東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2013年8月10日(土)~ 10月14日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間45分程度
【感想】
常設もいつもより多くの人で賑わっていましたが、自分のペースで観ることができました。
さて、ここの常設に行くのはリニューアル後は2回目ですが、今回は新収蔵品もあり 観たことがない作品が多めで驚きました。ここの常設は写真が撮れますので(ルール厳守。一部撮影不可)、いくつか気に入った作品を写真でご紹介しようと思います。
参考記事:
東京国立近代美術館の案内 (2013年03月)
東京国立近代美術館の案内 (2012年02月)
東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)
東京国立近代美術館の案内 (2011年06月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年05月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年04月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)
東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
加山又造 「千羽鶴」

こちらは特に好きな作品で、琳派からの影響を強く感じさせます。意匠化されたリズミカルな鶴が何とも優美でした。
景色の良い休憩室からの眺め。

落ち着ける風景でゆっくり休めました。リニューアルして会場もだいぶ綺麗になりました。
和田英作 「おうな」

こちらは夕暮れ?とやや疲れた雰囲気の老婆が郷愁のようなものを感じさせました。風景は指導を受けた黒田清輝からの影響を感じさせるかな。人物が大きく横向きに描かれているのも目を引きます。
岸田劉生 「川幡正光氏之肖像」

岸田劉生の写実的な肖像画。いわゆる「岸田の首狩り」と呼ばれた頃のものだと思います。 眼の光や顔のテカリまで表現されていてリアルで、この重厚な感じが独特で好みです。
参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)
萬鉄五郎 「立木風景」

こちらも重厚な雰囲気の作品。萬鉄五郎は日本のフォーヴィスムの主要な画家ですが、非常に力強く、土の匂いを感じさせるような作風に思います。
萩原守衛(荻原碌山) 「坑夫」

ロダンの作品を観て彫刻家になった人の作品だけに、ロダンからの強い影響を感じさせます。このゴツゴツした感じや動きのあるポーズが坑夫の逞しさをよく表しているように思いました。顔も賢人のようです。
安井曾太郎 「松原氏像」

誠実そうな紳士の肖像。明るい色合いで背景に緑が使われているためか爽やかに見えます。恐らく私はこれは初見かな。。。
梅原龍三郎 「姑娘(クーニャン)」

姑娘というのは中国語で若い未婚女性を指すそうです。梅原龍三郎にしては淡い色合いに思えましたが、瑞々しい雰囲気の女性が可憐で好みでした。
北脇昇 「空の訣別」

まるで戦闘機の戦いを描いているように見えますが、よく観るとサンゴや貝がモチーフになっている作品。シュールなような意味深なような…。一種の怖さを感じます。
参考記事:番外編 Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語 (青森県立美術館)
麻生三郎 「自画像」

これは夜に目があったら怖いw 非常にインパクトのある自画像です。目の中に赤が入るとこんなに強い印象を受けるのかと驚きました。
勝呂忠 「重い月」

魚や人の体が折り曲がって幾何学的な枠に収まっているような感じの作品。何を描いているのか解釈が難しいですが、この作者は宗教的な題材も多く手がけたので魚と月はそれぞれキリスト教とイスラム教を意味しているのではないかとのことです。このざらついた質感や色合いが哀しみのように感じられて目を引きました。
尾藤豊 「ダム工事現場」

パッと見た時にサーカスかと思いましたw クレーンや馬など様々なものが単純化され色面で表されているのが面白く、幾何学的なリズムが心地よく感じられました。
藤田嗣治 「少女」

これは藤田が晩年によく描いた子供の作品かな。まるで聖女のような気品があって、手ぶりで何かを訴えているようにも見えました。
藤田嗣治 「シンガポール最後の日(プキ・テマ高地)」

これは藤田が積極的に戦争画に取り組んでいた頃の作品。結果的にこうした作品が戦後に非難されたわけですが、新しい歴史画を作ろうとしていたのかな?と思わせる迫力がありました。乳白色の時代の雰囲気はまったくありません。
藤田嗣治 「動物宴」

これも藤田の晩年の作品。擬人化された動物たちが楽しげですが、お行儀が悪いですw 何か意図があるのかも。背景の裸婦像も気になります。
速水御舟 「京の家」
速水御舟 「奈良の家」


この2点は新収蔵品で並んで展示されていました。色面と三角を多用した画面で非常にすっきりしていて、色の対比と相まってリズムが感じられました。速水御舟は様々な画風を試みた画家ですが、これはまるで洋画のような雰囲気でした。
参考記事:再興院展100年記念 速水御舟-日本美術院の精鋭たち- (山種美術館)
狩野芳崖 「獅子図」

背景は伝統的な日本画ですが、獅子は唐獅子ではなくライオンそのものといった感じの作品。これは来日したサーカスをスケッチして描いたそうです。陰影も西洋画的につけられて、新しい日本画を感じさせました。
土田麦僊 「島の女」

こちらは竹内栖鳳の弟子の麦僊の作品。一見してゴーギャン風の作品ですが、ゴーギャンに憧れて八丈島で取材して描いたものだそうです。明るめで平面的ですが、女性の輪郭などは非常に優美で日本画的な雰囲気がありました。
前田青邨 「猫」

白猫がうずくまってじーっと何かを見ている様子。猫の周りはやや茶色で地面を表していますが、余白へと繋がり広がりを感じさせました。
高山辰雄 「いだく」

これはしみじみと静かに幸せが伝わってくる作品でした。神秘的な雰囲気です。
東山魁夷 「映象」

闇に包まれた湖畔の情景が静かに広がっている様子。幻想的でやや寂しい雰囲気に思えました。
ということで、常設も楽しんできました。ここの常設は近代の洋画コレクションだけでなく現代アートの作品なども充実していますので、この美術館を訪れる機会があったら一緒に足を運ぶことをお勧めします。見どころが多くて廻るのが大変なくらいの充実ぶりですw
【展覧名】
所蔵作品展 MOMAT コレクション
【公式サイト】
http://www.momat.go.jp/Honkan/permanent20130810.html
【会場】
東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー
【最寄】
東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2013年8月10日(土)~ 10月14日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間45分程度
【感想】
常設もいつもより多くの人で賑わっていましたが、自分のペースで観ることができました。
さて、ここの常設に行くのはリニューアル後は2回目ですが、今回は新収蔵品もあり 観たことがない作品が多めで驚きました。ここの常設は写真が撮れますので(ルール厳守。一部撮影不可)、いくつか気に入った作品を写真でご紹介しようと思います。
参考記事:
東京国立近代美術館の案内 (2013年03月)
東京国立近代美術館の案内 (2012年02月)
東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)
東京国立近代美術館の案内 (2011年06月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年05月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年04月)
東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)
東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
加山又造 「千羽鶴」

こちらは特に好きな作品で、琳派からの影響を強く感じさせます。意匠化されたリズミカルな鶴が何とも優美でした。
景色の良い休憩室からの眺め。

落ち着ける風景でゆっくり休めました。リニューアルして会場もだいぶ綺麗になりました。
和田英作 「おうな」

こちらは夕暮れ?とやや疲れた雰囲気の老婆が郷愁のようなものを感じさせました。風景は指導を受けた黒田清輝からの影響を感じさせるかな。人物が大きく横向きに描かれているのも目を引きます。
岸田劉生 「川幡正光氏之肖像」

岸田劉生の写実的な肖像画。いわゆる「岸田の首狩り」と呼ばれた頃のものだと思います。 眼の光や顔のテカリまで表現されていてリアルで、この重厚な感じが独特で好みです。
参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)
萬鉄五郎 「立木風景」

こちらも重厚な雰囲気の作品。萬鉄五郎は日本のフォーヴィスムの主要な画家ですが、非常に力強く、土の匂いを感じさせるような作風に思います。
萩原守衛(荻原碌山) 「坑夫」

ロダンの作品を観て彫刻家になった人の作品だけに、ロダンからの強い影響を感じさせます。このゴツゴツした感じや動きのあるポーズが坑夫の逞しさをよく表しているように思いました。顔も賢人のようです。
安井曾太郎 「松原氏像」

誠実そうな紳士の肖像。明るい色合いで背景に緑が使われているためか爽やかに見えます。恐らく私はこれは初見かな。。。
梅原龍三郎 「姑娘(クーニャン)」

姑娘というのは中国語で若い未婚女性を指すそうです。梅原龍三郎にしては淡い色合いに思えましたが、瑞々しい雰囲気の女性が可憐で好みでした。
北脇昇 「空の訣別」

まるで戦闘機の戦いを描いているように見えますが、よく観るとサンゴや貝がモチーフになっている作品。シュールなような意味深なような…。一種の怖さを感じます。
参考記事:番外編 Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語 (青森県立美術館)
麻生三郎 「自画像」

これは夜に目があったら怖いw 非常にインパクトのある自画像です。目の中に赤が入るとこんなに強い印象を受けるのかと驚きました。
勝呂忠 「重い月」

魚や人の体が折り曲がって幾何学的な枠に収まっているような感じの作品。何を描いているのか解釈が難しいですが、この作者は宗教的な題材も多く手がけたので魚と月はそれぞれキリスト教とイスラム教を意味しているのではないかとのことです。このざらついた質感や色合いが哀しみのように感じられて目を引きました。
尾藤豊 「ダム工事現場」

パッと見た時にサーカスかと思いましたw クレーンや馬など様々なものが単純化され色面で表されているのが面白く、幾何学的なリズムが心地よく感じられました。
藤田嗣治 「少女」

これは藤田が晩年によく描いた子供の作品かな。まるで聖女のような気品があって、手ぶりで何かを訴えているようにも見えました。
藤田嗣治 「シンガポール最後の日(プキ・テマ高地)」

これは藤田が積極的に戦争画に取り組んでいた頃の作品。結果的にこうした作品が戦後に非難されたわけですが、新しい歴史画を作ろうとしていたのかな?と思わせる迫力がありました。乳白色の時代の雰囲気はまったくありません。
藤田嗣治 「動物宴」

これも藤田の晩年の作品。擬人化された動物たちが楽しげですが、お行儀が悪いですw 何か意図があるのかも。背景の裸婦像も気になります。
速水御舟 「京の家」
速水御舟 「奈良の家」


この2点は新収蔵品で並んで展示されていました。色面と三角を多用した画面で非常にすっきりしていて、色の対比と相まってリズムが感じられました。速水御舟は様々な画風を試みた画家ですが、これはまるで洋画のような雰囲気でした。
参考記事:再興院展100年記念 速水御舟-日本美術院の精鋭たち- (山種美術館)
狩野芳崖 「獅子図」

背景は伝統的な日本画ですが、獅子は唐獅子ではなくライオンそのものといった感じの作品。これは来日したサーカスをスケッチして描いたそうです。陰影も西洋画的につけられて、新しい日本画を感じさせました。
土田麦僊 「島の女」

こちらは竹内栖鳳の弟子の麦僊の作品。一見してゴーギャン風の作品ですが、ゴーギャンに憧れて八丈島で取材して描いたものだそうです。明るめで平面的ですが、女性の輪郭などは非常に優美で日本画的な雰囲気がありました。
前田青邨 「猫」

白猫がうずくまってじーっと何かを見ている様子。猫の周りはやや茶色で地面を表していますが、余白へと繋がり広がりを感じさせました。
高山辰雄 「いだく」

これはしみじみと静かに幸せが伝わってくる作品でした。神秘的な雰囲気です。
東山魁夷 「映象」

闇に包まれた湖畔の情景が静かに広がっている様子。幻想的でやや寂しい雰囲気に思えました。
ということで、常設も楽しんできました。ここの常設は近代の洋画コレクションだけでなく現代アートの作品なども充実していますので、この美術館を訪れる機会があったら一緒に足を運ぶことをお勧めします。見どころが多くて廻るのが大変なくらいの充実ぶりですw
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今日は前回の記事に引き続き、東京国立近代美術館の「竹内栖鳳展 近代日本画の巨人」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
竹内栖鳳展 近代日本画の巨人
【公式サイト】
http://seiho2013.jp/
http://www.momat.go.jp/Honkan/takeuchi_seiho/index.html
【会場】東京国立近代美術館
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】
前期:2013年09月03日(火)~09月23日(月)
後期:2013年09月25日(水)~10月14日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日11時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前編では2章の1908年までご紹介しましたが、今日はそれ以降の晩年までのコーナーについてです。
参考記事:
没後70年 竹内栖鳳 前期 (山種美術館)
没後70年 竹内栖鳳 後期 (山種美術館)
<第3章 新たなる試みの時代 1909-1926>
3章は新たな表現や取り組みについてのコーナーです。竹内栖鳳は美術学校の教諭として、多数の弟子を抱える画塾「竹杖会」の主として、また1907年から始まった文部省美術展覧会(文展)の審査員として、画壇での地位を確立していきました。土田麦僊を始めとする弟子たちが頭角を現すようになると、1918年には彼らによって作られた国画創作協会の顧問にもなったようです。 栖鳳はそうした後進の活躍を見守る立場になっても新たな表現を意欲的に研究し続けたそうで、動物画では個々の性質を捉え一瞬の動きを表そうとし、風景画では伝統的な山水でも西洋的な遠近の表現でもない作品を生み出したそうです。また、1920年からは2度に渡って中国に滞在していて、この旅行は主題・色彩感覚ともに風景画の深化をもたらす結果になったようです。さらに、この時期に短期間ながらも人物画を研究し、一瞬の仕草の中に心情を描き出したそうで、ここにはそうした40歳代以降の作品が並んでいました。
55 竹内栖鳳 「蹴合」
これは実物くらいの2羽の軍鶏が描かれた作品で、向き合って闘っている様子が表されています。足を前に出し爪で攻撃しようとしていて、羽をばたつかせるなど躍動的に表現されています。一瞬の動きをよく捉えていて、「動物を描かせてはその匂いまで描く」と言われた栖鳳のこだわりが感じられました。また、この作品の隣には下絵もあり、入念な準備の様子も伺えたのも面白かったです。
参考記事:画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~ (大倉集古館)
続いては旅に関する小コーナーです。主に4つの旅について取り上げていて、幸野楳嶺の弟子時代に師について東海・北越を旅していたのをはじめ、パリ万国博覧会視察でのヨーロッパ各国への旅、狩野派や模写作品といったルーツにまつわる中国への旅、そして昭和期に4度訪れた潮来 について紹介されていました。
69 竹内栖鳳 「城外風薫」 ★こちらで観られます
これは中国の運河の街である蘇州を描いた作品です。街に川が流れ2つの橋が架かり、その周りには民家が軒を連ねています。遠くには高い塔も見えていて、橋には行き交う人々の姿もあります。全体的に明るい色合いで人々の営みも感じられるせいか、どこか懐かしい雰囲気があるかな。解説によると、栖鳳が修行時代によく模写した狩野派の絵には塔が描かれていることが多かったようで、栖鳳はそうした塔が好きだったそうです。その為、狩野派の根源である中国で塔を観るのが念願だったらしく、この絵でも塔が描かれているのはそうした背景があるようでした。
64 竹内栖鳳 「羅馬之図」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の屏風で、全体的に黄土色に染まり手前には木が数本並び、奥にはアーチが連なる古代ローマの遺跡が立ち並んでいます。手前の木はハッキリ描かれていますが、遺跡はややぼんやりしているので、遠近感よりも夢想的な雰囲気に感じられます。また、遺跡の上では鳥が休んでいて、遠くからも鳥が飛んでくる様子がしみじみとしていて悠久の時の流れを感じさせました。解説によると、竹内栖鳳は渡欧の際にコローの作品を観て感銘を受けたらしく、この絵にもコロー的な湿潤な空気感が感じられました。
この隣には打って変わって漢画風の岩山を描いた作品もありました。また、潮来を描いた写生帖などもあり、栖鳳はいたこは蘇州に似ていると言っていたそうです。(潮来も水郷の街なので似ていたのかも) 他にも北越や富士を描いた写生帖、ヨーロッパの絵葉書などもならんでいました。
40 竹内栖鳳 「絵になる最初」 ★こちらで観られます
これは着物を脱いで裸婦のモデルになる直前の姿を描いた女性像です。手を口の前に当て、頬は赤らんでいて目は横に逸らしている様子が恥ずかしげに見えます。優美な線で描かれていて、若く瑞々しい雰囲気がありました。解説によると、栖鳳の人物画は数少ないようですが、これはかなりの傑作じゃないかな。
この隣には天女を描いた作品や裸婦のスケッチ、長い間行方不明となっていた41「日稼」などもありました。人物画は少ないのに見応えがあるので、寡作だったのは何とも勿体無いように思えます。
94 竹内栖鳳 「夏鹿」
これは6曲1双の屏風で、右隻は6~7頭の鹿たちが群れていて、顔を寄せたり、屈んだり、上の方を見ていたりと、のんびりした雰囲気となっています。一方、左隻ではジャンプをした鹿が1頭だけ描かれ、非常に躍動感がありました。これも左右で動と静の対比なのかな?
この隣には下絵もあり、足の曲がり具合や体の傾きなどに多数の修正跡が残っているのが面白いです。紙を上から貼り付けて修正していて、配置や細部まで計算していたようです。本画にはいない鳥の姿などもあって、栖鳳の制作過程や構図の取捨が伺えるようでした。
<第4章 新天地をもとめて 1927-1942>
最後は晩年のコーナーです。昭和期に入ると、栖鳳はしばしば体調を崩していたようで、1931年(昭和6年)に療養のために湯河原へと赴きました。やがて回復した後は東本願寺の障壁画に挑むなど以前にも増して精力的に活動したようですが、湯河原が気に入ったらしく、京都と湯河原を行き来しながら制作を続けたそうです。また、この頃の栖鳳は洗練を増した筆致で対象を素早く的確に表現するようになっていたそうで、昔のように細密に写生するよりは、対象の動きと量感をスピード感のある線で大掴みに捉えたものが多いそうです。 晩年も実験的な作品を生み出し続け、若いころと同じ主題に再度取り組むこともあったようですが、その表現は若いころとは違っていたようです。ここにはそうした晩年でも尽きることのなかった新天地に関する品が並んでいました。
88 竹内栖鳳 「水村」 ★こちらで観られます
これは水墨で描いた潮来の情景で、右のほうに小さな橋が架かり、そこを親子らしき2人が渡っている様子が描かれています。左には鬱蒼とした森があり、大胆かつ情感溢れる趣きとなっているように感じました。解説によると、栖鳳は潮来を中国の風景のようだと言って愛していたそうです。また、この頃 栖鳳は特注の和紙(滲みがでやすい栖鳳紙)を使うこともあったらしく、滲みと濃淡で湿気を感じさせるような表現になっていて、コローの空気感にも通じるものがあります。なお、晩年には詩情の表現とも言える作品が多数あるらしく、俳句が書き込まれたものや、季語になるモチーフを描いたものもあるのだとか。
72 竹内栖鳳 「酔興」
これは踊る猫を杯を持ったネズミが酒盛りをしている所を描いたもので、手前にはひょうたんが描かれています。いずれも戯画的な簡略表現で、大津絵みたいな感じかな。ユーモラスな作風がこれまで観てきたものとだいぶ違うので意外な感じを受けました。
この辺には他にも雲から落ちる雷様を描いた作品などもありました。
103 竹内栖鳳 「家兎」
これは3羽の兎を描いた作品で、1羽は木で出来た小さな小屋の中、小屋の入口にもう1羽、そして小屋の上から中を覗き込む1羽が描かれています。ふわふわした毛並みと柔らかそうな耳が可愛らしく、仕草も無邪気な印象を受けます。この近くにはこうした可愛らしい動物の作品が並び、動物たちへの愛情が感じられました。
106 竹内栖鳳 「雄風」
これは昭和天皇即位を記念して描いた2曲1双の屏風で、右隻はソテツの木の脇からこちらに向かって歩いてくる虎、左隻にはソテツの下で横たわる虎が描かれています。体は柔らかい輪郭線で表現されていて、写実的だった若いころの作品に比べるとだいぶ写意的な感じを受けます。解説によると、この虎は動物園で写生したそうで、ぼかしの表現やスピード感のあるソテツの表現には昔にはなかった特徴が観られるとのことでした。
最後は水の写生に関するコーナーです。日本画の線描の表現を採用しつつ、西洋に学んだ光や色の感覚的表現を取り入れたそうで、数点の作品が並んでいました。
116 竹内栖鳳 「渓流(未完)」
これは壁画のように大きな未完の作品で、晩年に療養した湯河原の渓流を描いたものです。線で流れが表され、淡い色合いで岩を描いているのですが、確かに描きかけといった感じかな。最後まで様々な表現を模索した栖鳳の気概が感じられました。
ということで、充実の内容でした。これだけの機会は滅多にないので図録も買ってきました。この記事を書いている時点で既に前期は終わってしまいましたが、後期には目玉作品の「班猫」も出品されますので、お勧めです。
参照記事:★この記事を参照している記事
前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
【展覧名】
竹内栖鳳展 近代日本画の巨人
【公式サイト】
http://seiho2013.jp/
http://www.momat.go.jp/Honkan/takeuchi_seiho/index.html
【会場】東京国立近代美術館
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】
前期:2013年09月03日(火)~09月23日(月)
後期:2013年09月25日(水)~10月14日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日11時半頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前編では2章の1908年までご紹介しましたが、今日はそれ以降の晩年までのコーナーについてです。
参考記事:
没後70年 竹内栖鳳 前期 (山種美術館)
没後70年 竹内栖鳳 後期 (山種美術館)
<第3章 新たなる試みの時代 1909-1926>
3章は新たな表現や取り組みについてのコーナーです。竹内栖鳳は美術学校の教諭として、多数の弟子を抱える画塾「竹杖会」の主として、また1907年から始まった文部省美術展覧会(文展)の審査員として、画壇での地位を確立していきました。土田麦僊を始めとする弟子たちが頭角を現すようになると、1918年には彼らによって作られた国画創作協会の顧問にもなったようです。 栖鳳はそうした後進の活躍を見守る立場になっても新たな表現を意欲的に研究し続けたそうで、動物画では個々の性質を捉え一瞬の動きを表そうとし、風景画では伝統的な山水でも西洋的な遠近の表現でもない作品を生み出したそうです。また、1920年からは2度に渡って中国に滞在していて、この旅行は主題・色彩感覚ともに風景画の深化をもたらす結果になったようです。さらに、この時期に短期間ながらも人物画を研究し、一瞬の仕草の中に心情を描き出したそうで、ここにはそうした40歳代以降の作品が並んでいました。
55 竹内栖鳳 「蹴合」
これは実物くらいの2羽の軍鶏が描かれた作品で、向き合って闘っている様子が表されています。足を前に出し爪で攻撃しようとしていて、羽をばたつかせるなど躍動的に表現されています。一瞬の動きをよく捉えていて、「動物を描かせてはその匂いまで描く」と言われた栖鳳のこだわりが感じられました。また、この作品の隣には下絵もあり、入念な準備の様子も伺えたのも面白かったです。
参考記事:画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~ (大倉集古館)
続いては旅に関する小コーナーです。主に4つの旅について取り上げていて、幸野楳嶺の弟子時代に師について東海・北越を旅していたのをはじめ、パリ万国博覧会視察でのヨーロッパ各国への旅、狩野派や模写作品といったルーツにまつわる中国への旅、そして昭和期に4度訪れた潮来 について紹介されていました。
69 竹内栖鳳 「城外風薫」 ★こちらで観られます
これは中国の運河の街である蘇州を描いた作品です。街に川が流れ2つの橋が架かり、その周りには民家が軒を連ねています。遠くには高い塔も見えていて、橋には行き交う人々の姿もあります。全体的に明るい色合いで人々の営みも感じられるせいか、どこか懐かしい雰囲気があるかな。解説によると、栖鳳が修行時代によく模写した狩野派の絵には塔が描かれていることが多かったようで、栖鳳はそうした塔が好きだったそうです。その為、狩野派の根源である中国で塔を観るのが念願だったらしく、この絵でも塔が描かれているのはそうした背景があるようでした。
64 竹内栖鳳 「羅馬之図」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の屏風で、全体的に黄土色に染まり手前には木が数本並び、奥にはアーチが連なる古代ローマの遺跡が立ち並んでいます。手前の木はハッキリ描かれていますが、遺跡はややぼんやりしているので、遠近感よりも夢想的な雰囲気に感じられます。また、遺跡の上では鳥が休んでいて、遠くからも鳥が飛んでくる様子がしみじみとしていて悠久の時の流れを感じさせました。解説によると、竹内栖鳳は渡欧の際にコローの作品を観て感銘を受けたらしく、この絵にもコロー的な湿潤な空気感が感じられました。
この隣には打って変わって漢画風の岩山を描いた作品もありました。また、潮来を描いた写生帖などもあり、栖鳳はいたこは蘇州に似ていると言っていたそうです。(潮来も水郷の街なので似ていたのかも) 他にも北越や富士を描いた写生帖、ヨーロッパの絵葉書などもならんでいました。
40 竹内栖鳳 「絵になる最初」 ★こちらで観られます
これは着物を脱いで裸婦のモデルになる直前の姿を描いた女性像です。手を口の前に当て、頬は赤らんでいて目は横に逸らしている様子が恥ずかしげに見えます。優美な線で描かれていて、若く瑞々しい雰囲気がありました。解説によると、栖鳳の人物画は数少ないようですが、これはかなりの傑作じゃないかな。
この隣には天女を描いた作品や裸婦のスケッチ、長い間行方不明となっていた41「日稼」などもありました。人物画は少ないのに見応えがあるので、寡作だったのは何とも勿体無いように思えます。
94 竹内栖鳳 「夏鹿」
これは6曲1双の屏風で、右隻は6~7頭の鹿たちが群れていて、顔を寄せたり、屈んだり、上の方を見ていたりと、のんびりした雰囲気となっています。一方、左隻ではジャンプをした鹿が1頭だけ描かれ、非常に躍動感がありました。これも左右で動と静の対比なのかな?
この隣には下絵もあり、足の曲がり具合や体の傾きなどに多数の修正跡が残っているのが面白いです。紙を上から貼り付けて修正していて、配置や細部まで計算していたようです。本画にはいない鳥の姿などもあって、栖鳳の制作過程や構図の取捨が伺えるようでした。
<第4章 新天地をもとめて 1927-1942>
最後は晩年のコーナーです。昭和期に入ると、栖鳳はしばしば体調を崩していたようで、1931年(昭和6年)に療養のために湯河原へと赴きました。やがて回復した後は東本願寺の障壁画に挑むなど以前にも増して精力的に活動したようですが、湯河原が気に入ったらしく、京都と湯河原を行き来しながら制作を続けたそうです。また、この頃の栖鳳は洗練を増した筆致で対象を素早く的確に表現するようになっていたそうで、昔のように細密に写生するよりは、対象の動きと量感をスピード感のある線で大掴みに捉えたものが多いそうです。 晩年も実験的な作品を生み出し続け、若いころと同じ主題に再度取り組むこともあったようですが、その表現は若いころとは違っていたようです。ここにはそうした晩年でも尽きることのなかった新天地に関する品が並んでいました。
88 竹内栖鳳 「水村」 ★こちらで観られます
これは水墨で描いた潮来の情景で、右のほうに小さな橋が架かり、そこを親子らしき2人が渡っている様子が描かれています。左には鬱蒼とした森があり、大胆かつ情感溢れる趣きとなっているように感じました。解説によると、栖鳳は潮来を中国の風景のようだと言って愛していたそうです。また、この頃 栖鳳は特注の和紙(滲みがでやすい栖鳳紙)を使うこともあったらしく、滲みと濃淡で湿気を感じさせるような表現になっていて、コローの空気感にも通じるものがあります。なお、晩年には詩情の表現とも言える作品が多数あるらしく、俳句が書き込まれたものや、季語になるモチーフを描いたものもあるのだとか。
72 竹内栖鳳 「酔興」
これは踊る猫を杯を持ったネズミが酒盛りをしている所を描いたもので、手前にはひょうたんが描かれています。いずれも戯画的な簡略表現で、大津絵みたいな感じかな。ユーモラスな作風がこれまで観てきたものとだいぶ違うので意外な感じを受けました。
この辺には他にも雲から落ちる雷様を描いた作品などもありました。
103 竹内栖鳳 「家兎」
これは3羽の兎を描いた作品で、1羽は木で出来た小さな小屋の中、小屋の入口にもう1羽、そして小屋の上から中を覗き込む1羽が描かれています。ふわふわした毛並みと柔らかそうな耳が可愛らしく、仕草も無邪気な印象を受けます。この近くにはこうした可愛らしい動物の作品が並び、動物たちへの愛情が感じられました。
106 竹内栖鳳 「雄風」
これは昭和天皇即位を記念して描いた2曲1双の屏風で、右隻はソテツの木の脇からこちらに向かって歩いてくる虎、左隻にはソテツの下で横たわる虎が描かれています。体は柔らかい輪郭線で表現されていて、写実的だった若いころの作品に比べるとだいぶ写意的な感じを受けます。解説によると、この虎は動物園で写生したそうで、ぼかしの表現やスピード感のあるソテツの表現には昔にはなかった特徴が観られるとのことでした。
最後は水の写生に関するコーナーです。日本画の線描の表現を採用しつつ、西洋に学んだ光や色の感覚的表現を取り入れたそうで、数点の作品が並んでいました。
116 竹内栖鳳 「渓流(未完)」
これは壁画のように大きな未完の作品で、晩年に療養した湯河原の渓流を描いたものです。線で流れが表され、淡い色合いで岩を描いているのですが、確かに描きかけといった感じかな。最後まで様々な表現を模索した栖鳳の気概が感じられました。
ということで、充実の内容でした。これだけの機会は滅多にないので図録も買ってきました。この記事を書いている時点で既に前期は終わってしまいましたが、後期には目玉作品の「班猫」も出品されますので、お勧めです。
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Author:21世紀のxxx者
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。
関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。
画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。
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