Archive | 2017年07月
今回も引き続き南仏エクス・アン・プロヴァンスの記事です。私がエクスを訪れた際、たまたま市街地にあるコーモン芸術センターでシスレー展が開催されていたので、急遽行ってみることにしました。

公式サイト:
http://www.caumont-centredart.com/
http://www.caumont-centredart.com/en/home (英語)
シスレー展の会期:2017/06/10~10/15
ここは音楽院として使われていたコーモン公爵邸を美術館に改装したらしく、2015年5月にオープンした美術館です。

入口にセザンヌの看板があるのはセザンヌがこの街の出身のためで、30分くらいのセザンヌのショートフィルムを常設していました(英語とフランス語があるようです) チケット売り場のお姉さんが日本語を勉強している人だったのでちょっと会話を楽しんでみたり。
18世紀頃の見事な建物の中で美術鑑賞できます。

年に2回ほど企画展をやっているようで、私が行った時はシスレー展でした。常設は少なめなので企画展中心の美術館なのかも。
2階から展示が始まるのですが、貴族らしい部屋を覗くことができます。

この部屋は楽器が沢山ありました。
こちらは寝室かな。

調度品もさることながら壁紙が格調高い雰囲気を出していました。
さて、ここからがシスレー展です。この美術館もフラッシュ無しなら撮影可能でしたので(太っ腹!)、気に入った作品をいくつか写真でご紹介しようと思います。なお、解説がフランス語(確か英語もあった)だったのでメモなど取っておりませんので、説明はごく簡単にw シスレーはイギリス人ですがパリ生まれで、グレールのアトリエでモネやルノワールと出会い、印象派として活動した画家です。かつてマティスがピサロに「典型的な印象派は誰か?」と訊いたところ「シスレーだ」と即答したくらい、生涯に渡って印象派らしい作品を残しました。
参考リンク:アルフレッド・シスレーのwikipedia
最初は春や農民をテーマにしたコーナーで、1865年頃の初期あたりから並んでいました。
これはアルジャントゥイユの大通りを描いた1872年の作品。

パっと観るとモネとよく似た画風かな。既に印象派らしい作風となっています。
この頃には裕福だった父が破産してしまい、中々絵が売れずに困窮していました。1871年のパリ・コミューンを避けてアルジャントゥイユに住んでいたようです(アルジャントゥイユはモネもよく絵を描いたパリ近郊の街です。)
川辺で網を広げる漁師を描いた作品。こちらも1872年制作。

穏やかで明るい色彩がシスレーらしい作品。シスレーもモネ同様に屋外で制作していました。
こちらはパリ近郊ルーヴシエンヌの雪景色。1874年制作。

白にピンクや水色を混ぜて光と影を感じさせる技法が見事です。
続いてはブージヴァル(パリ近郊の街)の四季を題材にしたコーナー。アルジャントゥイユの後に住んだ地です。
こちらは恐らくブージヴァルのセーヌ河かな。1876年の作品。

強い明暗が光を感じさせるので夏でしょうか。色合いが以前より強くなって、これぞシスレーって感じの1枚。
続いてはブージヴァルの後に住んだポール=マルリのコーナー。主に空と水が描かれた作品が並びます。
これは1872年の作品ですが、ポール=マルリでの洪水を描いたもの。

こんな光景さえも絵にしてしまうのが画家の性かなw 水の反射で普段と違う風景に見えたのかも。ちなみに、モネもこの頃の洪水の絵を残しています。
この辺で上の階に移動。

階段までも美しい美術館ですw
続いては1874年に念願だったイギリスへ行った頃のコーナー。ハンプトンコートなどで作品を描いていました。
これは恐らくハンプトンコートに近いテムズ川上流のモレジーで描いた1874年の作品。

ちょっと曇った空がイギリスっぽいかもw かなり流れが早そうな感じが出ています。
ハンプトンコートの橋の下を描いた1874年の作品。

水面の表現や爽やかな色合いはシスレーらしいけど、こんな大胆な構図は初めて観るかも。
続いてはヴニュ=レ=サブロンなどで活動した1880年代頃のコーナー。
これも恐らくセーヌ河を描いた1881年の作品。

穏やかな午後といった感じでしょうか。印象派らしい主題と作風です。
続いてはパリに隣接したセーヴルとサン=クルー辺りで描かれた当時の世相を伝える画題のコーナー。
ちょっと時代が戻って1879年の作品。

これはセーヴルの駅らしく、蒸気が出てるのは汽車がいるのを表しているのかな。強い日差しを感じさせます。
こちらはサン・マメスの川を描いた作品。

サン・マメスはシスレーがよく絵を描いた場所で、恐らくセーヌ川とロワン川が合流する辺りだと思います。
こちらは1889年に移り住んだモレ=シュル=ロワンの川辺を描いた1891年の作品。

この青の深さに晩年が近くなってきた頃の色使いを感じます。
こちらはモレの教会を描いた連作のうちの2枚。1893年と1894年に制作。

天気によって色合いが異なるのが面白い。ここでは14点の連作を残しているようです。
最後に、サン・マメスの造船所の風景。1885年制作。

水辺と青い空、シスレーが愛した画題の典型と言えそうな爽やかな作品でした。
シスレー展の後、出口に向かうところにいくつか写真が飾られていました。

詳細は分かりませんが、モダンな写真でこれは常設なのかも。
この美術館は庭も綺麗でした。

併設のカフェもあって、行ってみたかったのですがこの後さらに近くのグラネ美術館にもハシゴするという強行スケジュールだったので諦めましたw
ということで、思いがけずシスレーを存分に堪能することができました。これだけ大きなシスレーの個展は日本でも中々観られないので、非常にラッキーでした。 この美術館の過去の展示を調べるとカナレットやターナーなど非常に面白そうな展示をやっていたみたいなので、今後も期待できそうです。エクス・アン・プロヴァンスに行く機会がある方は、訪れる時に何をやっているかチェックしてみると良いかもしれません。
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ここは音楽院として使われていたコーモン公爵邸を美術館に改装したらしく、2015年5月にオープンした美術館です。

入口にセザンヌの看板があるのはセザンヌがこの街の出身のためで、30分くらいのセザンヌのショートフィルムを常設していました(英語とフランス語があるようです) チケット売り場のお姉さんが日本語を勉強している人だったのでちょっと会話を楽しんでみたり。
18世紀頃の見事な建物の中で美術鑑賞できます。

年に2回ほど企画展をやっているようで、私が行った時はシスレー展でした。常設は少なめなので企画展中心の美術館なのかも。
2階から展示が始まるのですが、貴族らしい部屋を覗くことができます。

この部屋は楽器が沢山ありました。
こちらは寝室かな。

調度品もさることながら壁紙が格調高い雰囲気を出していました。
さて、ここからがシスレー展です。この美術館もフラッシュ無しなら撮影可能でしたので(太っ腹!)、気に入った作品をいくつか写真でご紹介しようと思います。なお、解説がフランス語(確か英語もあった)だったのでメモなど取っておりませんので、説明はごく簡単にw シスレーはイギリス人ですがパリ生まれで、グレールのアトリエでモネやルノワールと出会い、印象派として活動した画家です。かつてマティスがピサロに「典型的な印象派は誰か?」と訊いたところ「シスレーだ」と即答したくらい、生涯に渡って印象派らしい作品を残しました。
参考リンク:アルフレッド・シスレーのwikipedia
最初は春や農民をテーマにしたコーナーで、1865年頃の初期あたりから並んでいました。
これはアルジャントゥイユの大通りを描いた1872年の作品。

パっと観るとモネとよく似た画風かな。既に印象派らしい作風となっています。
この頃には裕福だった父が破産してしまい、中々絵が売れずに困窮していました。1871年のパリ・コミューンを避けてアルジャントゥイユに住んでいたようです(アルジャントゥイユはモネもよく絵を描いたパリ近郊の街です。)
川辺で網を広げる漁師を描いた作品。こちらも1872年制作。

穏やかで明るい色彩がシスレーらしい作品。シスレーもモネ同様に屋外で制作していました。
こちらはパリ近郊ルーヴシエンヌの雪景色。1874年制作。

白にピンクや水色を混ぜて光と影を感じさせる技法が見事です。
続いてはブージヴァル(パリ近郊の街)の四季を題材にしたコーナー。アルジャントゥイユの後に住んだ地です。
こちらは恐らくブージヴァルのセーヌ河かな。1876年の作品。

強い明暗が光を感じさせるので夏でしょうか。色合いが以前より強くなって、これぞシスレーって感じの1枚。
続いてはブージヴァルの後に住んだポール=マルリのコーナー。主に空と水が描かれた作品が並びます。
これは1872年の作品ですが、ポール=マルリでの洪水を描いたもの。

こんな光景さえも絵にしてしまうのが画家の性かなw 水の反射で普段と違う風景に見えたのかも。ちなみに、モネもこの頃の洪水の絵を残しています。
この辺で上の階に移動。

階段までも美しい美術館ですw
続いては1874年に念願だったイギリスへ行った頃のコーナー。ハンプトンコートなどで作品を描いていました。
これは恐らくハンプトンコートに近いテムズ川上流のモレジーで描いた1874年の作品。

ちょっと曇った空がイギリスっぽいかもw かなり流れが早そうな感じが出ています。
ハンプトンコートの橋の下を描いた1874年の作品。

水面の表現や爽やかな色合いはシスレーらしいけど、こんな大胆な構図は初めて観るかも。
続いてはヴニュ=レ=サブロンなどで活動した1880年代頃のコーナー。
これも恐らくセーヌ河を描いた1881年の作品。

穏やかな午後といった感じでしょうか。印象派らしい主題と作風です。
続いてはパリに隣接したセーヴルとサン=クルー辺りで描かれた当時の世相を伝える画題のコーナー。
ちょっと時代が戻って1879年の作品。

これはセーヴルの駅らしく、蒸気が出てるのは汽車がいるのを表しているのかな。強い日差しを感じさせます。
こちらはサン・マメスの川を描いた作品。

サン・マメスはシスレーがよく絵を描いた場所で、恐らくセーヌ川とロワン川が合流する辺りだと思います。
こちらは1889年に移り住んだモレ=シュル=ロワンの川辺を描いた1891年の作品。

この青の深さに晩年が近くなってきた頃の色使いを感じます。
こちらはモレの教会を描いた連作のうちの2枚。1893年と1894年に制作。


天気によって色合いが異なるのが面白い。ここでは14点の連作を残しているようです。
最後に、サン・マメスの造船所の風景。1885年制作。

水辺と青い空、シスレーが愛した画題の典型と言えそうな爽やかな作品でした。
シスレー展の後、出口に向かうところにいくつか写真が飾られていました。

詳細は分かりませんが、モダンな写真でこれは常設なのかも。
この美術館は庭も綺麗でした。

併設のカフェもあって、行ってみたかったのですがこの後さらに近くのグラネ美術館にもハシゴするという強行スケジュールだったので諦めましたw
ということで、思いがけずシスレーを存分に堪能することができました。これだけ大きなシスレーの個展は日本でも中々観られないので、非常にラッキーでした。 この美術館の過去の展示を調べるとカナレットやターナーなど非常に面白そうな展示をやっていたみたいなので、今後も期待できそうです。エクス・アン・プロヴァンスに行く機会がある方は、訪れる時に何をやっているかチェックしてみると良いかもしれません。
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更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
まだまだネタがあるので再び南仏編の記事です。アルルやアヴィニョンの街に行った後、セザンヌの生まれ故郷であるエクス・アン・プロヴァンスに行って、セザンヌゆかりの地めぐりをしてきました。
実際にはエクス・アン・プロヴァンスに着いた次の日に行ったのですが、国鉄の在来線のエクス駅近くからバスに乗って、まずはセザンヌのアトリエに向かいました。
5番のバスに乗って15分くらいで着く「Cézanne」と直球な名前のバス停で降りるのですが、バス停からアトリエまでは100mくらいあるのに何の看板もありませんw とりあえず「Cézanne」で降りたら坂を下って行けばあります。バスの乗り方は日本と似たようなもので、バスの中でチケットを買えますが、小銭は持っていったほうが良いかな。片道券と往復券のどっちが良いか訊かれます。
そしてこちらがセザンヌのアトリエ(レ・ローヴのアトリエ)

季節によって閉館やお昼休みがあったりするので、訪れる場合は事前に営業時間を確認することをオススメします。(ここで貰ったパンフレットには定員18人で、訪れる際は予約をオススメすると書いてありましたが、私は予約はしないで行きました)
日本語公式サイト:http://jp.france.fr/ja/discover/30119
入口付近から仰ぎ見るアトリエ。セザンヌ自ら設計図を描いて建設したのだとか。

結構広い庭があるのですが、木々が生い茂っていて全体を撮るのは難しい。
ここが入口。セザンヌはここに1901年~1906年の最晩年に住んでいました。母の死後、家族の住まいを売らざるを得なくなり、新たな住居と仕事場が必要となり、ここを仕事場にしました。

死後、1921年までここは閉ざされましたが、エクスの学識者マルセル・プロヴァンスによってセザンヌの息子から買い取られ、家財道具も保全されました。さらに1954年には解体されそうになりますが、2人のアメリカ人のセザンヌ研究者によって資金が集められ、アトリエと土地がエクス市に寄贈されたそうです。(フランス人は勿体無いとは思わなかったのかな…)
少し庭を進んだ所から。ここでセザンヌも休息を取っていたのかな。

庭でも40枚くらい作品を描いているそうです。
1階の奥の部屋がチケット売り場兼ミュージアムショップとなっています。

確かここで解説機の料金も払ったような記憶があります。何と日本語の解説機もありました。(解説機自体は2階で借ります)
チケットと一緒にエクスのセザンヌめぐりの地図を貰いました。

セザンヌが通った中学とか結婚した教会とか色々あるのですが、これを観て分かる通り市街のあちこちにゆかりの地があって、エクスの街中には地面にセザンヌ関連の地であることを示すのプレートが埋まってるところもありました。セザンヌが住んだ家だけでも4軒くらいあるw エクス駅近くの観光局から徒歩で2時間かけてゆかりの地をめぐるツアーなんかもあるそうです。
気を取り直してアトリエ内部へ。

1階は観る所がなく、こちらの階段を登って2階へ。
そしてこれがセザンヌ最晩年のアトリエです。

屋外からの自然光を取り込めるような設計になっているようです。大型の「大水浴図」もここで完成させたのですが、かなり大きい作品なので北側の壁の端に通し穴を開けて、そこからカンバスを出し入れしていたそうです。
セザンヌのファンなら、あれだ!という見覚えのある品々がズラリ。

この光景は当時からそれほど変わっていないはず。

まず何と言ってもこれが気になると思いますw

林檎とナプキン。セザンヌの代名詞的なモチーフです。流石に模型ですけど、ここで描いたと思うと雰囲気が出ていましたw
こちらにも見覚えのある3つの骸骨が。

イーゼルなどもあります。
瓶や壺も絵に描かれていたのと同じ色形のものが並んでいました。

この引戸の中にはセザンヌの手紙などが展示されていました。

この他にもセザンヌが身につけていた帽子やコート、パイプ、画材道具などもありました。
ということで、セザンヌの仕事場の雰囲気を味わうことが出来ました。飾ってあるものは全部が本物というわけでもないと思いますが、名作の数々を生み出した環境を観られて大満足です。
続いて、セザンヌがアトリエから足繁く通ったテラン・デ・パントルと呼ばれる丘(画家たちの活動の場所という意味)へ向かいました。
アトリエからひたすら坂を登って行きます。歩いて約10~15分くらいかな。夏場は日陰が無くてかなり暑かったです。
道からちょっと入って、こちらの一見何も無い公園をさらに登ります。

ここでセザンヌが絵を描いていた頃の写真なんかもありました。
そして、頂上から観る光景がこちら!

セザンヌがこよなく愛して何枚も絵に描いたサント・ヴィクトワール山です!
サント・ヴィクトワール山のアップ。

この写真を撮ったあたりには、9枚のパネルがあってここで描かれた絵と実景を比べることができます。
さらにセザンヌがよく描いた白壁にオレンジ屋根の家々もあります。

こうした家はエクス近郊のあちこちで観られるのでここで描いたかは分かりませんが、後にキュビスムへと繋がる風景と言えそう。
アトリエとテラン・デ・パントルの丘はまとめて観られるので、セットで訪れるのがオススメです。本当は同様に足繁く通った石切場やジャス・ド・ブッファンの別荘(初期のアトリエ兼住居)にも行きたかったのですが、ちょっと離れていて短時間で周るのは厳しいので諦めました。
代わりに市街地に戻って、セザンヌの生家を訪れました。
ここが非常に探すのが大変でしたw
こちらが生家。

この辺はこういう家だらけなので、外見だけではセザンヌの家かどうか区別できませんw
上の写真の左隅あたりに通りに面した入口があるのですが、そこにはこのように書かれています。

うーん、こんな小さい文字は探しても中々気づけないですw とは言え、とにかく見つかって良かった。中には入れないので何となく観て終わりですw
ちなみにこの家のすぐ隣あたりにエミール・ベルナールの家や近所にエミール・ゾラの家もあったと先程の地図に載っているのですが、そちらは完全に何も書かれていないのでどの建物か分かりませんでした。
おまけで、エクスの街中をご紹介。

エクスの市街地はそれほど広くありませんが、落ち着いていて非常に綺麗なところです。この街もオプショナルツアーの発着が多いようなので、ここを拠点にあちこち行くのも良さそう。(余談ですが以前はアタック25のトップ賞がエクス・アン・プロヴァンスへの旅だった記憶がありますw)
エクスというのは湧き水が湧くところという意味らしく、街中あちこちに噴水がありました。

最後に、これはエクスのTGV駅。私はアヴィニョンからエクスまでTGVで移動したのですが、これが大失敗でした。

というのも、エクスのTGV駅からエクス市街まではタクシーくらいしか交通手段がなく、タクシー料金が40ユーロ(当時約5000円)もかかりました。エクス市街にはマルセイユまで30分もかからない在来線の駅があるので、もしエクスに鉄道で訪れるのであれば在来線をオススメします。
ということで、色々と失敗やハプニングもありましたがセザンヌの故郷を楽しんできました。セザンヌが描いた光景そのものを観ることができますので、セザンヌ好きの方はいつか訪れてみるのもよろしいかと思います。
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5番のバスに乗って15分くらいで着く「Cézanne」と直球な名前のバス停で降りるのですが、バス停からアトリエまでは100mくらいあるのに何の看板もありませんw とりあえず「Cézanne」で降りたら坂を下って行けばあります。バスの乗り方は日本と似たようなもので、バスの中でチケットを買えますが、小銭は持っていったほうが良いかな。片道券と往復券のどっちが良いか訊かれます。
そしてこちらがセザンヌのアトリエ(レ・ローヴのアトリエ)

季節によって閉館やお昼休みがあったりするので、訪れる場合は事前に営業時間を確認することをオススメします。(ここで貰ったパンフレットには定員18人で、訪れる際は予約をオススメすると書いてありましたが、私は予約はしないで行きました)
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入口付近から仰ぎ見るアトリエ。セザンヌ自ら設計図を描いて建設したのだとか。

結構広い庭があるのですが、木々が生い茂っていて全体を撮るのは難しい。
ここが入口。セザンヌはここに1901年~1906年の最晩年に住んでいました。母の死後、家族の住まいを売らざるを得なくなり、新たな住居と仕事場が必要となり、ここを仕事場にしました。

死後、1921年までここは閉ざされましたが、エクスの学識者マルセル・プロヴァンスによってセザンヌの息子から買い取られ、家財道具も保全されました。さらに1954年には解体されそうになりますが、2人のアメリカ人のセザンヌ研究者によって資金が集められ、アトリエと土地がエクス市に寄贈されたそうです。(フランス人は勿体無いとは思わなかったのかな…)
少し庭を進んだ所から。ここでセザンヌも休息を取っていたのかな。

庭でも40枚くらい作品を描いているそうです。
1階の奥の部屋がチケット売り場兼ミュージアムショップとなっています。

確かここで解説機の料金も払ったような記憶があります。何と日本語の解説機もありました。(解説機自体は2階で借ります)
チケットと一緒にエクスのセザンヌめぐりの地図を貰いました。

セザンヌが通った中学とか結婚した教会とか色々あるのですが、これを観て分かる通り市街のあちこちにゆかりの地があって、エクスの街中には地面にセザンヌ関連の地であることを示すのプレートが埋まってるところもありました。セザンヌが住んだ家だけでも4軒くらいあるw エクス駅近くの観光局から徒歩で2時間かけてゆかりの地をめぐるツアーなんかもあるそうです。
気を取り直してアトリエ内部へ。


1階は観る所がなく、こちらの階段を登って2階へ。
そしてこれがセザンヌ最晩年のアトリエです。

屋外からの自然光を取り込めるような設計になっているようです。大型の「大水浴図」もここで完成させたのですが、かなり大きい作品なので北側の壁の端に通し穴を開けて、そこからカンバスを出し入れしていたそうです。
セザンヌのファンなら、あれだ!という見覚えのある品々がズラリ。

この光景は当時からそれほど変わっていないはず。

まず何と言ってもこれが気になると思いますw

林檎とナプキン。セザンヌの代名詞的なモチーフです。流石に模型ですけど、ここで描いたと思うと雰囲気が出ていましたw
こちらにも見覚えのある3つの骸骨が。

イーゼルなどもあります。
瓶や壺も絵に描かれていたのと同じ色形のものが並んでいました。

この引戸の中にはセザンヌの手紙などが展示されていました。

この他にもセザンヌが身につけていた帽子やコート、パイプ、画材道具などもありました。
ということで、セザンヌの仕事場の雰囲気を味わうことが出来ました。飾ってあるものは全部が本物というわけでもないと思いますが、名作の数々を生み出した環境を観られて大満足です。
続いて、セザンヌがアトリエから足繁く通ったテラン・デ・パントルと呼ばれる丘(画家たちの活動の場所という意味)へ向かいました。
アトリエからひたすら坂を登って行きます。歩いて約10~15分くらいかな。夏場は日陰が無くてかなり暑かったです。
道からちょっと入って、こちらの一見何も無い公園をさらに登ります。


ここでセザンヌが絵を描いていた頃の写真なんかもありました。
そして、頂上から観る光景がこちら!

セザンヌがこよなく愛して何枚も絵に描いたサント・ヴィクトワール山です!
サント・ヴィクトワール山のアップ。

この写真を撮ったあたりには、9枚のパネルがあってここで描かれた絵と実景を比べることができます。
さらにセザンヌがよく描いた白壁にオレンジ屋根の家々もあります。

こうした家はエクス近郊のあちこちで観られるのでここで描いたかは分かりませんが、後にキュビスムへと繋がる風景と言えそう。
アトリエとテラン・デ・パントルの丘はまとめて観られるので、セットで訪れるのがオススメです。本当は同様に足繁く通った石切場やジャス・ド・ブッファンの別荘(初期のアトリエ兼住居)にも行きたかったのですが、ちょっと離れていて短時間で周るのは厳しいので諦めました。
代わりに市街地に戻って、セザンヌの生家を訪れました。
ここが非常に探すのが大変でしたw
こちらが生家。

この辺はこういう家だらけなので、外見だけではセザンヌの家かどうか区別できませんw
上の写真の左隅あたりに通りに面した入口があるのですが、そこにはこのように書かれています。

うーん、こんな小さい文字は探しても中々気づけないですw とは言え、とにかく見つかって良かった。中には入れないので何となく観て終わりですw
ちなみにこの家のすぐ隣あたりにエミール・ベルナールの家や近所にエミール・ゾラの家もあったと先程の地図に載っているのですが、そちらは完全に何も書かれていないのでどの建物か分かりませんでした。
おまけで、エクスの街中をご紹介。

エクスの市街地はそれほど広くありませんが、落ち着いていて非常に綺麗なところです。この街もオプショナルツアーの発着が多いようなので、ここを拠点にあちこち行くのも良さそう。(余談ですが以前はアタック25のトップ賞がエクス・アン・プロヴァンスへの旅だった記憶がありますw)
エクスというのは湧き水が湧くところという意味らしく、街中あちこちに噴水がありました。

最後に、これはエクスのTGV駅。私はアヴィニョンからエクスまでTGVで移動したのですが、これが大失敗でした。

というのも、エクスのTGV駅からエクス市街まではタクシーくらいしか交通手段がなく、タクシー料金が40ユーロ(当時約5000円)もかかりました。エクス市街にはマルセイユまで30分もかからない在来線の駅があるので、もしエクスに鉄道で訪れるのであれば在来線をオススメします。
ということで、色々と失敗やハプニングもありましたがセザンヌの故郷を楽しんできました。セザンヌが描いた光景そのものを観ることができますので、セザンヌ好きの方はいつか訪れてみるのもよろしいかと思います。
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先週の土曜の13時頃に六本木の国立新美術館で「ジャコメッティ展」を観てきました。それほど混むこともなく快適に鑑賞することができました。

【展覧名】
ジャコメッティ展
【公式サイト】
http://www.tbs.co.jp/giacometti2017/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/giacometti2017/
【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅/六本木駅
【会期】2017年6月14日(水)~9月4日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
さて、この展示はスイス生まれで1920年代頃からフランスで活躍した彫刻家ジャコメッティの大規模な回顧展となっています。ジャコメッティの作品は日本でもあちこちの美術館で観ることができますが、これだけまとまって観られるのは滅多に無い機会と言えそうです。(国内では11年ぶりだそうです)彫刻約50点、絵画約5点、素描と版画約80点という大ボリュームで、15章に分かれて展示されていました。メモを取ってなかったのであまり詳細なことは覚えていませんが、簡単に各章ごとにご紹介しようと思います。
<1.初期・キュビスム・シュルレアリスム>
ここはジャコメッティの初期の作品がありました。タイトル通りキュビスムへの傾倒やシュルレアリスムに参加していた時期もあるようですが、作品に如実にそれが現れていました。多面的なキュビスム作品なんかはそれはそれで結構好みだったのですが、オリジナリティという意味ではやはりその後の作品のほうが強いと思います。
<2.小像>
ここは非常に小さい人物像が並んでいました。ジャコメッティは見えたものを見えたままに作ろうとすればするほど作品がどんどん小さくなってしまったようで、指先程度の作品ばかりになったようです。本当に小さくて、マッチ箱に入るほどという喩えも大袈裟ではないほどでした。
<3.女性立像>
ここはジャコメッティの旺盛な女性関係と彼女たちをモデルにしていたことが伺える内容となっていました。また、ここからジャコメッティらしい細長い人物像が現れます。ジャコメッティは作品があまりに小型化してしまうので己に最低でも高さ1mという下限を設けたのですが、今度はどんどん細くなっていってしまったようですw 解説機では山田五郎氏が「引き算の美学」という面白い見解をしていましたが、モデルたちがナイスバディであればあるほど、ジャコメッティは不要なものを取り去っていこうとしてガリガリの細長い人物になってしまうようです。後の章では侘び・寂びに通じる表現とも言ってましたが、納得行くような行かないような…w しかし非常に本質に迫ろうとしてこうなってしまったというのがよく分かる章でした。
<4.群像>
ジャコメッティはたまたまいくつかの人物像が並んでいたのを観て面白いと思ったようで、ここには細長い人物像が数体まとまって並ぶ群像作品が展示されていました。人物は街を行き交う人のようにお互いに無関心のように並んでいるのが物語性を感じさせて面白かったです。
<5.書物のための下絵>
ここは「書物のための下絵」と題した鉛筆による素描がありました。人間の姿をしているけど、グチャグチャとした線でシルエットのように描いている独特の作風で、やっぱり細長いw(彫刻よりはだいぶ人間らしい形ではあります) ジャコメッティはあまり絵画のイメージがなかったので、こういった作品を観るのは貴重な機会だと思います。
<6.モデルを前にした制作>
ここは家族などをモデルにした彫刻作品が並んでいました。後の章でもセザンヌの話がありましたが、セザンヌ同様にジャコメッティもモデルに動かないように指示していたようで、長時間に渡って試行錯誤していたようです。ここにはそうして作られた彫像や素描などが並んでいました。
<7.マーグ家との交流>
ここは2点だけで、親交のあったマーグ家の肖像画がありました。今回の展示は南仏サン・ポール・ド・ヴァンスにあるマーグ財団美術館の所蔵品が大半となっているのですが、マーグ財団は世界3大ジャコメッティコレクションとして名高いそうです。
<8.矢内原伊作>
ここはジャコメッティのモデルとして非常にインスピレーションを与えた日本の哲学者 矢内原伊作をモデルにした作品が並んでいました。矢内原伊作は友人が書いたジャコメッティに関する本をパリに届けに行った際に意気投合し、帰国の際にせっかくだからと肖像を描いて貰うことになったのが後々大変なことになりましたw 帰国を何度も延期して(3ヶ月くらいだっけかな)モデルを務めることとなり、その後5年ほど夏になるとモデルを務めにパリに行くというのが恒例になったようです。ジャコメッティは初めて東洋人、しかも哲学者という矢内原の精神に触れたこともあり、それを表現するのに夢中になったようです。矢内原も辛抱強くモデルを務めながらジャコメッティがレストランでナプキンや新聞などに走り書きしたスケッチを集めていたようで、それも展示されていました。ここは中々の見どころと言えそうです。
<9.パリの街とアトリエ>
ここには真向かいの家を描いた油彩や、アトリエの中を描いた作品のリトグラフなどがありました。油彩作品は結構写実的で、人物像とは異なる作風にすら見えましたw ジャコメッティは住んでいたパリの町外れを世界で一番美しいところと言っていたそうですが、実際は何もない地味な通りのようです。また、アトリエはワンルームマンションの部屋よりも狭かったようですが、どんどん広く感じるようになったそうです。 …このエピソードを聞くと山田五郎氏の説が妙に納得できるw 地味な灰色の印象の街や狭い部屋に侘び寂びに似たものを感じていたのかもしれませんね。
<10.犬と猫>
ここは犬と猫の像が置かれていました。勿論、どっちも細長いですw ちょっと等身が妙な感じなのが面白い。
<11.スタンパ>
ここはスイスの故郷スタンパに関するリトグラフが並ぶ章でした。ジャコメッティの父は画家で故郷には父のアトリエがあったのですが、ジャコメッティもちょくちょく帰郷してそのアトリエにこもって制作していたようです。山に阻まれてどんなに晴れていても日が差さない街だったようで、その辺が侘び寂び的な精神の根源なのかも。母親を描いた作品などがありました。
<12.静物>
ここは林檎を描いた静物や、花束を描いた静物、セザンヌが奥さんを描いた作品の模写などがありました。ジャコメッティはセザンヌを敬愛していた様子と、やはりモデルに求めるものが共通していた様子が伺えました。
<13.ヴェネツィアの女>
ここは「ヴェネツィアの女」という1つの作品の制作過程を9バージョン並べた部屋となっています。矢内原の話にもあった通り、ジャコメッティは1つの作品を造るのに非常に時間がかかり試行錯誤を繰り返すのですが、この9つの像を観るとその苦悩ぶりが伺えます。同じ像を手直ししているはずなのに、どれも形が違って、どういう順番でこうなったのか?というのすら分かりません。作っては石膏で型を取り、また直しては石膏で型を取り を繰り返したようですが、ジャコメッティの制作の様子が伝わってくる貴重な品と言えそうです。 ちなみに、作品番号は便宜上のもので制作順では無いのだとか。9体揃い踏みも珍しいらしいので、この部屋は特に見どころとなっています。
<14.チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト>
この部屋にはジャコメッティのなかでも最大級の作品が3点並んでいました。チェース・マンハッタン銀行からの依頼を受けて、ニューヨークの広場のために作ったものの、結局実現しなかったそうです。この3点だけは撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介。

マッチ箱に入るような作品を観た後だけにかなり大きく感じますw この中ではやはり「歩く男」が一番好みです。
<15.ジャコメッティと同時代の詩人たち>
ジャコメッティは同時代の詩人たちや実存主義の哲学者に支持されていたようで、ここにはジャコメッティによる挿絵の入った詩人たちの本がありました。とは言え、3点しかありません。
<16.終わりなきパリ>
最後は版画集で、パリを描いた作品が並んでいました。予想以上にデッサン力があるのはこの展示で分かったように思いますが、割と描きたいものがハッキリわかる作品が多いように思いました。興味あるものと背景の扱いに差があるような感じかな。
ということで、今までジャコメッティの作品はいくつも観てきましたが、こうして個展を観ることでより深いところを知ることができたと思います。美術初心者向けという感じの展示ではないと思いますが、美術ファンなら楽しめる濃い内容だと思います。


【展覧名】
ジャコメッティ展
【公式サイト】
http://www.tbs.co.jp/giacometti2017/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/giacometti2017/
【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅/六本木駅
【会期】2017年6月14日(水)~9月4日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
さて、この展示はスイス生まれで1920年代頃からフランスで活躍した彫刻家ジャコメッティの大規模な回顧展となっています。ジャコメッティの作品は日本でもあちこちの美術館で観ることができますが、これだけまとまって観られるのは滅多に無い機会と言えそうです。(国内では11年ぶりだそうです)彫刻約50点、絵画約5点、素描と版画約80点という大ボリュームで、15章に分かれて展示されていました。メモを取ってなかったのであまり詳細なことは覚えていませんが、簡単に各章ごとにご紹介しようと思います。
<1.初期・キュビスム・シュルレアリスム>
ここはジャコメッティの初期の作品がありました。タイトル通りキュビスムへの傾倒やシュルレアリスムに参加していた時期もあるようですが、作品に如実にそれが現れていました。多面的なキュビスム作品なんかはそれはそれで結構好みだったのですが、オリジナリティという意味ではやはりその後の作品のほうが強いと思います。
<2.小像>
ここは非常に小さい人物像が並んでいました。ジャコメッティは見えたものを見えたままに作ろうとすればするほど作品がどんどん小さくなってしまったようで、指先程度の作品ばかりになったようです。本当に小さくて、マッチ箱に入るほどという喩えも大袈裟ではないほどでした。
<3.女性立像>
ここはジャコメッティの旺盛な女性関係と彼女たちをモデルにしていたことが伺える内容となっていました。また、ここからジャコメッティらしい細長い人物像が現れます。ジャコメッティは作品があまりに小型化してしまうので己に最低でも高さ1mという下限を設けたのですが、今度はどんどん細くなっていってしまったようですw 解説機では山田五郎氏が「引き算の美学」という面白い見解をしていましたが、モデルたちがナイスバディであればあるほど、ジャコメッティは不要なものを取り去っていこうとしてガリガリの細長い人物になってしまうようです。後の章では侘び・寂びに通じる表現とも言ってましたが、納得行くような行かないような…w しかし非常に本質に迫ろうとしてこうなってしまったというのがよく分かる章でした。
<4.群像>
ジャコメッティはたまたまいくつかの人物像が並んでいたのを観て面白いと思ったようで、ここには細長い人物像が数体まとまって並ぶ群像作品が展示されていました。人物は街を行き交う人のようにお互いに無関心のように並んでいるのが物語性を感じさせて面白かったです。
<5.書物のための下絵>
ここは「書物のための下絵」と題した鉛筆による素描がありました。人間の姿をしているけど、グチャグチャとした線でシルエットのように描いている独特の作風で、やっぱり細長いw(彫刻よりはだいぶ人間らしい形ではあります) ジャコメッティはあまり絵画のイメージがなかったので、こういった作品を観るのは貴重な機会だと思います。
<6.モデルを前にした制作>
ここは家族などをモデルにした彫刻作品が並んでいました。後の章でもセザンヌの話がありましたが、セザンヌ同様にジャコメッティもモデルに動かないように指示していたようで、長時間に渡って試行錯誤していたようです。ここにはそうして作られた彫像や素描などが並んでいました。
<7.マーグ家との交流>
ここは2点だけで、親交のあったマーグ家の肖像画がありました。今回の展示は南仏サン・ポール・ド・ヴァンスにあるマーグ財団美術館の所蔵品が大半となっているのですが、マーグ財団は世界3大ジャコメッティコレクションとして名高いそうです。
<8.矢内原伊作>
ここはジャコメッティのモデルとして非常にインスピレーションを与えた日本の哲学者 矢内原伊作をモデルにした作品が並んでいました。矢内原伊作は友人が書いたジャコメッティに関する本をパリに届けに行った際に意気投合し、帰国の際にせっかくだからと肖像を描いて貰うことになったのが後々大変なことになりましたw 帰国を何度も延期して(3ヶ月くらいだっけかな)モデルを務めることとなり、その後5年ほど夏になるとモデルを務めにパリに行くというのが恒例になったようです。ジャコメッティは初めて東洋人、しかも哲学者という矢内原の精神に触れたこともあり、それを表現するのに夢中になったようです。矢内原も辛抱強くモデルを務めながらジャコメッティがレストランでナプキンや新聞などに走り書きしたスケッチを集めていたようで、それも展示されていました。ここは中々の見どころと言えそうです。
<9.パリの街とアトリエ>
ここには真向かいの家を描いた油彩や、アトリエの中を描いた作品のリトグラフなどがありました。油彩作品は結構写実的で、人物像とは異なる作風にすら見えましたw ジャコメッティは住んでいたパリの町外れを世界で一番美しいところと言っていたそうですが、実際は何もない地味な通りのようです。また、アトリエはワンルームマンションの部屋よりも狭かったようですが、どんどん広く感じるようになったそうです。 …このエピソードを聞くと山田五郎氏の説が妙に納得できるw 地味な灰色の印象の街や狭い部屋に侘び寂びに似たものを感じていたのかもしれませんね。
<10.犬と猫>
ここは犬と猫の像が置かれていました。勿論、どっちも細長いですw ちょっと等身が妙な感じなのが面白い。
<11.スタンパ>
ここはスイスの故郷スタンパに関するリトグラフが並ぶ章でした。ジャコメッティの父は画家で故郷には父のアトリエがあったのですが、ジャコメッティもちょくちょく帰郷してそのアトリエにこもって制作していたようです。山に阻まれてどんなに晴れていても日が差さない街だったようで、その辺が侘び寂び的な精神の根源なのかも。母親を描いた作品などがありました。
<12.静物>
ここは林檎を描いた静物や、花束を描いた静物、セザンヌが奥さんを描いた作品の模写などがありました。ジャコメッティはセザンヌを敬愛していた様子と、やはりモデルに求めるものが共通していた様子が伺えました。
<13.ヴェネツィアの女>
ここは「ヴェネツィアの女」という1つの作品の制作過程を9バージョン並べた部屋となっています。矢内原の話にもあった通り、ジャコメッティは1つの作品を造るのに非常に時間がかかり試行錯誤を繰り返すのですが、この9つの像を観るとその苦悩ぶりが伺えます。同じ像を手直ししているはずなのに、どれも形が違って、どういう順番でこうなったのか?というのすら分かりません。作っては石膏で型を取り、また直しては石膏で型を取り を繰り返したようですが、ジャコメッティの制作の様子が伝わってくる貴重な品と言えそうです。 ちなみに、作品番号は便宜上のもので制作順では無いのだとか。9体揃い踏みも珍しいらしいので、この部屋は特に見どころとなっています。
<14.チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト>
この部屋にはジャコメッティのなかでも最大級の作品が3点並んでいました。チェース・マンハッタン銀行からの依頼を受けて、ニューヨークの広場のために作ったものの、結局実現しなかったそうです。この3点だけは撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介。



マッチ箱に入るような作品を観た後だけにかなり大きく感じますw この中ではやはり「歩く男」が一番好みです。
<15.ジャコメッティと同時代の詩人たち>
ジャコメッティは同時代の詩人たちや実存主義の哲学者に支持されていたようで、ここにはジャコメッティによる挿絵の入った詩人たちの本がありました。とは言え、3点しかありません。
<16.終わりなきパリ>
最後は版画集で、パリを描いた作品が並んでいました。予想以上にデッサン力があるのはこの展示で分かったように思いますが、割と描きたいものがハッキリわかる作品が多いように思いました。興味あるものと背景の扱いに差があるような感じかな。
ということで、今までジャコメッティの作品はいくつも観てきましたが、こうして個展を観ることでより深いところを知ることができたと思います。美術初心者向けという感じの展示ではないと思いますが、美術ファンなら楽しめる濃い内容だと思います。
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


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先週の日曜日に上野の東京都美術館で「ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション」を観てきました。意外にもそれほど混んでおらず、自分のペースで観ることができました。

【展覧名】
ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション
Great Collectors: Masterpieces from the Museum of Fine Arts, Boston
【公式サイト】
http://boston2017-18.jp/
http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_boston.html
【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅
【会期】2017年7月20日(木)~10月9日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
まだ始まったばかりの展覧会ということもあってか、それほど混んでいませんでした。中はたまに列ができる程度くらいだったかな。
さて、この展示はアメリカのボストン美術館のコレクションを総合的に紹介するもので、西洋美術の品だけでなく日本や中国の品々も並んでいます。ボストン美術館は市民の寄付などによって約50万点とも言われる膨大なコレクションがあり、ちょくちょく日本でも展覧会が開かれていますが、今回のように総合的な展覧会は約40年ぶりとのことです。選りすぐりの約80点ほどが地域やカテゴリごとに章分けされて並んでいましたので、簡単にですが章ごとにその様子をご紹介しようと思います。 ※公式サイトで見どころが紹介されていますので、各章のタイトルの隣にリンクを貼っておきます。
参考記事:
ボストン美術館 日本美術の至宝 感想前編(東京国立博物館 平成館)
ボストン美術館 浮世絵名品展(山種美術館)
ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想前編 (森アーツセンターギャラリー)
<1 古代エジプト美術|Ancient Egyptian Art> ★作品紹介
まずは古代エジプトに関する展示でした。ボストン美術館はハーバード大学と共に共同発掘などを進めていたそうで、ここにはその成果が並んでいます。この章の点数は10点ほどで、時代も古王朝時代もあれば新王朝時代もあるといった感じで、これだけ観てもエジプトの歴史や文化を知るのは難しいようにも思いますが、オリックス型の壺など現代人から観ても面白い形の品などもありました。一番の見どころはツタンカーメン像の頭部かな。
<2 中国美術|Chinese Art> ★作品紹介
ここは6点ほどで、北宋・南宋の頃の絵画作品が並んでいました。特に見どころは陳容の「九龍図巻」で、約10mにもなる巻物を観ることができます。酒に酔いながら描いたと言われてるようですが、そうは思えないほど緻密さと力強さのある龍たちが舞うように描かれています。
<3 日本美術|Japanese Art> ★作品紹介
ここはボストン美術館中国・日本美術部長を勤めた岡倉天心やその先生でもあったフェノロサ、モース(大森貝塚を発見した)、ビゲローといった名だたる人物によって集められたコレクションが並んでいました。彼らが活動した当時の日本は、明治時代の廃仏毀釈と西洋重視の中にあり仏教美術だけでなく日本美術全般が憂き目を見ていた頃ですが、彼らの活動によって日本美術の正当な評価、保全が進められました。
ここは結構見どころがあって、野々村仁清の香合、尾形乾山と光琳による角皿、酒井抱一による花魁図(抱一の修行時代のもの)、司馬江漢や与謝蕪村、京画壇の合作などなど素晴らしい品が並びます。私が特に好きなのは曾我蕭白の「風仙図屏風」で、来日は蕭白展以来じゃないかな? 龍によって強力な風が吹いている緊張感が見事で、一方ではどことなく漫画チックなユーモアもある名品です。 また、今回の展示の目玉になっているのが英一蝶による「涅槃図」で、これは大きさと経年劣化からボストン美術館でも展示が難しかったものらしく、1年におよぶ修復の末に展示されるようになったそうです。画題自体は珍しくないですが、釈迦の入滅に集まった菩薩や人、動物たちの悲しむ様子が表情豊かに描かれていました。ひっくり返った象とか中々可愛いです。
<4 フランス絵画|French Paintings> ★作品紹介
ボストン美術館が誇るコレクションの中でも、特に素晴らしいのがフランス絵画のコレクションです。中でも印象派の作品は当時のフランスでも評価が定まっていない時期から集めていたこともあり、名品揃いとなっています。
ここにはミレー、コロー、ブーダン、クールベ、モネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、ドガ、セザンヌといった近代絵画の歴史そのものと言える画家たちの作品が並んでいます。しかもそれぞれの代名詞的なモチーフの作品となっているのも良かったです。私の好きなアンリ・ファンタン=ラトゥールの静物などもあって嬉しい。
そして、今回の展示で最も見どころとなっているのがゴッホのルーラン夫妻を描いた2枚です。 ★作品紹介
これはゴッホがアルルにいた頃に世話になった郵便配達員(厳密にはアルル駅の郵便管理)のジョゼフ・ルーランと、その妻オーギュスティーヌ・ルーランをそれぞれ描いた作品で、いずれも椅子に座った姿で描かれています。ゴッホは彼らを何度も描いていていくつか似た絵もあるのですが、これはそのうちの1つとなっています。この2枚を比較すると、だいぶ画風が違っているのが分かるのですが、夫人のほうはアルルで生活を共にしたゴーギャンからの影響が強く観られます。平面的で強い色彩となっていて装飾的な雰囲気がありました。 (ちなみにゴーギャンもゴッホの作風に影響を受けた作品を残しています。共同生活は破綻しましたが、お互い影響を受けたようです。)
参考記事:
ザ・コレクション・ヴィンタートゥール 感想前編(世田谷美術館)
ゴッホゆかりの地めぐり (南仏編 サン・レミ/アルル)
<5 アメリカ絵画|American Paintings> ★作品紹介
こちらは地元アメリカの画家による作品が並ぶコーナーです。アカデミックで優美な作風のジョン・シンガー・サージェントやウィンスロー・ホーマー、ジョージア・オキーフなど10点程度とちょっと少なめ。私はジョージア・オキーフが大好きなので2点とは言え観られたのは嬉しいです。しかしエドワード・ホッパーとかも欲しかったなあというのが正直なところかな。
<6 版画・写真|Prints and Photographs> ★作品紹介
こちらは主に白黒の版画で、エドワード・ホッパーやウィンスロー・ホーマー、アンセル・アダムスなど19世紀後半から20世紀半ばあたりの作品が並びます。ここも10点程度で小さな作品が主なので割とあっさり見終わってしまうかもしれませんが、ホーマーの「八点鐘」やホッパーの「機関車」など素晴らしい作品も含まれています。
<7 現代美術|Contemporary Art> ★作品紹介
最後は現代アートのコーナーです。ここは5点しかなかったのですが、アンディ・ウォーホルの「ジャッキー」のような有名作もありました。また、サム・テイラー= ジョンソンの「静物」は今回唯一の映像作品なのですが、美味しそうに盛られた果実がゆっくりと腐り落ちていく様子を映し出していて面白かったです。 他には村上隆の大型作品なんかもありました。
ということで、幅広いコレクションを観ることができました。特に見どころは日本美術とフランス絵画のコーナーじゃないかな。ちょっとテーマの幅が広すぎてそれぞれの背景まではあまり紹介されていませんが、様々な文化・芸術に関心を持つ良い機会になると思います。そう言った意味でも夏休み向けの展示じゃないかな。

【展覧名】
ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション
Great Collectors: Masterpieces from the Museum of Fine Arts, Boston
【公式サイト】
http://boston2017-18.jp/
http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_boston.html
【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅
【会期】2017年7月20日(木)~10月9日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
まだ始まったばかりの展覧会ということもあってか、それほど混んでいませんでした。中はたまに列ができる程度くらいだったかな。
さて、この展示はアメリカのボストン美術館のコレクションを総合的に紹介するもので、西洋美術の品だけでなく日本や中国の品々も並んでいます。ボストン美術館は市民の寄付などによって約50万点とも言われる膨大なコレクションがあり、ちょくちょく日本でも展覧会が開かれていますが、今回のように総合的な展覧会は約40年ぶりとのことです。選りすぐりの約80点ほどが地域やカテゴリごとに章分けされて並んでいましたので、簡単にですが章ごとにその様子をご紹介しようと思います。 ※公式サイトで見どころが紹介されていますので、各章のタイトルの隣にリンクを貼っておきます。
参考記事:
ボストン美術館 日本美術の至宝 感想前編(東京国立博物館 平成館)
ボストン美術館 浮世絵名品展(山種美術館)
ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想前編 (森アーツセンターギャラリー)
<1 古代エジプト美術|Ancient Egyptian Art> ★作品紹介
まずは古代エジプトに関する展示でした。ボストン美術館はハーバード大学と共に共同発掘などを進めていたそうで、ここにはその成果が並んでいます。この章の点数は10点ほどで、時代も古王朝時代もあれば新王朝時代もあるといった感じで、これだけ観てもエジプトの歴史や文化を知るのは難しいようにも思いますが、オリックス型の壺など現代人から観ても面白い形の品などもありました。一番の見どころはツタンカーメン像の頭部かな。
<2 中国美術|Chinese Art> ★作品紹介
ここは6点ほどで、北宋・南宋の頃の絵画作品が並んでいました。特に見どころは陳容の「九龍図巻」で、約10mにもなる巻物を観ることができます。酒に酔いながら描いたと言われてるようですが、そうは思えないほど緻密さと力強さのある龍たちが舞うように描かれています。
<3 日本美術|Japanese Art> ★作品紹介
ここはボストン美術館中国・日本美術部長を勤めた岡倉天心やその先生でもあったフェノロサ、モース(大森貝塚を発見した)、ビゲローといった名だたる人物によって集められたコレクションが並んでいました。彼らが活動した当時の日本は、明治時代の廃仏毀釈と西洋重視の中にあり仏教美術だけでなく日本美術全般が憂き目を見ていた頃ですが、彼らの活動によって日本美術の正当な評価、保全が進められました。
ここは結構見どころがあって、野々村仁清の香合、尾形乾山と光琳による角皿、酒井抱一による花魁図(抱一の修行時代のもの)、司馬江漢や与謝蕪村、京画壇の合作などなど素晴らしい品が並びます。私が特に好きなのは曾我蕭白の「風仙図屏風」で、来日は蕭白展以来じゃないかな? 龍によって強力な風が吹いている緊張感が見事で、一方ではどことなく漫画チックなユーモアもある名品です。 また、今回の展示の目玉になっているのが英一蝶による「涅槃図」で、これは大きさと経年劣化からボストン美術館でも展示が難しかったものらしく、1年におよぶ修復の末に展示されるようになったそうです。画題自体は珍しくないですが、釈迦の入滅に集まった菩薩や人、動物たちの悲しむ様子が表情豊かに描かれていました。ひっくり返った象とか中々可愛いです。
<4 フランス絵画|French Paintings> ★作品紹介
ボストン美術館が誇るコレクションの中でも、特に素晴らしいのがフランス絵画のコレクションです。中でも印象派の作品は当時のフランスでも評価が定まっていない時期から集めていたこともあり、名品揃いとなっています。
ここにはミレー、コロー、ブーダン、クールベ、モネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、ドガ、セザンヌといった近代絵画の歴史そのものと言える画家たちの作品が並んでいます。しかもそれぞれの代名詞的なモチーフの作品となっているのも良かったです。私の好きなアンリ・ファンタン=ラトゥールの静物などもあって嬉しい。
そして、今回の展示で最も見どころとなっているのがゴッホのルーラン夫妻を描いた2枚です。 ★作品紹介
これはゴッホがアルルにいた頃に世話になった郵便配達員(厳密にはアルル駅の郵便管理)のジョゼフ・ルーランと、その妻オーギュスティーヌ・ルーランをそれぞれ描いた作品で、いずれも椅子に座った姿で描かれています。ゴッホは彼らを何度も描いていていくつか似た絵もあるのですが、これはそのうちの1つとなっています。この2枚を比較すると、だいぶ画風が違っているのが分かるのですが、夫人のほうはアルルで生活を共にしたゴーギャンからの影響が強く観られます。平面的で強い色彩となっていて装飾的な雰囲気がありました。 (ちなみにゴーギャンもゴッホの作風に影響を受けた作品を残しています。共同生活は破綻しましたが、お互い影響を受けたようです。)
参考記事:
ザ・コレクション・ヴィンタートゥール 感想前編(世田谷美術館)
ゴッホゆかりの地めぐり (南仏編 サン・レミ/アルル)
<5 アメリカ絵画|American Paintings> ★作品紹介
こちらは地元アメリカの画家による作品が並ぶコーナーです。アカデミックで優美な作風のジョン・シンガー・サージェントやウィンスロー・ホーマー、ジョージア・オキーフなど10点程度とちょっと少なめ。私はジョージア・オキーフが大好きなので2点とは言え観られたのは嬉しいです。しかしエドワード・ホッパーとかも欲しかったなあというのが正直なところかな。
<6 版画・写真|Prints and Photographs> ★作品紹介
こちらは主に白黒の版画で、エドワード・ホッパーやウィンスロー・ホーマー、アンセル・アダムスなど19世紀後半から20世紀半ばあたりの作品が並びます。ここも10点程度で小さな作品が主なので割とあっさり見終わってしまうかもしれませんが、ホーマーの「八点鐘」やホッパーの「機関車」など素晴らしい作品も含まれています。
<7 現代美術|Contemporary Art> ★作品紹介
最後は現代アートのコーナーです。ここは5点しかなかったのですが、アンディ・ウォーホルの「ジャッキー」のような有名作もありました。また、サム・テイラー= ジョンソンの「静物」は今回唯一の映像作品なのですが、美味しそうに盛られた果実がゆっくりと腐り落ちていく様子を映し出していて面白かったです。 他には村上隆の大型作品なんかもありました。
ということで、幅広いコレクションを観ることができました。特に見どころは日本美術とフランス絵画のコーナーじゃないかな。ちょっとテーマの幅が広すぎてそれぞれの背景まではあまり紹介されていませんが、様々な文化・芸術に関心を持つ良い機会になると思います。そう言った意味でも夏休み向けの展示じゃないかな。
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先日、会社の帰りに日本橋三井ホールで「アートアクアリウム 2017」を観てきました。この展示は毎年非常に混みますが、平日の夜はそれほどでもありませんでした。

【展覧名】
アートアクアリウム展2017 & ナイトアクアリウム
【公式サイト】
http://artaquarium.jp/
【会場】日本橋三井ホール
【最寄】三越前駅
【会期】2017年7月7日(金)~9月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_4_⑤_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
冒頭にも書きましたが、この展示は非常に混むので久しく行っていなかったのですが、会社の研修で帰りが早かったので覗きに行ってみたら空いていたのでそのまま観てきました。平日の夜も結構遅くまでやっているので、空いているのが良いという方は金曜以外の平日が良いかもしれません。
さて、この展示は毎年恒例となりつつありますが、金魚と日本の伝統を現代風にアレンジした見せ方を売りにしたものです。今回の日本橋会場のテーマは「江戸・金魚の涼」、会場コンセプトは「龍宮城」ということでしたが、基本的には以前とあまり変わってませんでしたw 動画は撮れなくなっていましたがフラッシュ無しで撮影することができましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。なお、この展示は時間ごとに呼び名が違うようで私が行ったのはナイトアクアリウムの時間帯でした。(夜はイベントとかお酒の販売があります)
参考記事:
アートアクアリウム展2013 & ナイトアクアリウム (日本橋三井ホール)
アートアクアリウム展2012 & ナイトアクアリウム (日本橋三井ホール)
スカイ アクアリウム2011 (森アーツセンターギャラリー)
スカイアクアリウムⅢ (TOKYO CITY VIEW)
最初にあったのは九谷焼でできた水槽

ゆらゆら泳ぐ金魚が涼しげです。

以前は金魚の種類が書いてあったのですが、今回は書いてなくて何の品種かわからないのが残念。
こちらは以前からあるダイヤ型の水槽。

時間が立つと青や緑に色が変わっていきます。
こんな感じで川をイメージした天井になっていました。

でっかい切子の水槽。

上の器だけでなく、下の台座のほうにも金魚が入っていました。
容器の中はこんな感じ。

和風の要素が盛りだくさんです。
奥は広いスペースになっていて、階段状に水槽が置かれています。

階段の脇にも水槽が並んでいます。

たまに金魚じゃないのもいましたw

この辺で写真を撮ってるとエビじゃん!という声が何度も聞けますw
ちょっと黄色っぽい金魚が好み。

こちらも時間ごとに色が変わる水槽。

この辺は以前と変わってないかな。
様々な色に染まる水槽

遠くの方はもはや水槽の中身が見えないw
大きな巾着みたいな水槽。

これが一番沢山の金魚がいたかも。以前に比べて金魚そのものを近くで観るのが難しくなってる気がします。
階段状になっている水槽。

ここは金魚だけでなくグッピーみたいな青い小魚もいました。
こちらも巾着みたいな水槽。上から水が流れ落ちています。

周りにあるのは鞠っぽい感じ。
こちらは恒例の映像が後ろで流れる水槽。

今回は竜宮城をテーマにした内容で、竜宮城の中を飛び回るような映像でした。
最後には新作の玉手箱の形の水槽と、掛け軸のような水槽がありました。

玉手箱の中はこんな感じ。

掛け軸のはこんな感じ。

白黒で水墨みたいなイメージなのかな。
ということで、久々に行きましたが例年通りの内容となっていました。このお祭りをアートと呼ぶのかはさておき、普通の水族館では観られない雰囲気のある演出となっているので、カップルや家族向けのイベントだと思います。土日はかなり混むと思いますので、お出かけの際は時間に余裕を持っていくと良いかと思います。

【展覧名】
アートアクアリウム展2017 & ナイトアクアリウム
【公式サイト】
http://artaquarium.jp/
【会場】日本橋三井ホール
【最寄】三越前駅
【会期】2017年7月7日(金)~9月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_4_⑤_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
冒頭にも書きましたが、この展示は非常に混むので久しく行っていなかったのですが、会社の研修で帰りが早かったので覗きに行ってみたら空いていたのでそのまま観てきました。平日の夜も結構遅くまでやっているので、空いているのが良いという方は金曜以外の平日が良いかもしれません。
さて、この展示は毎年恒例となりつつありますが、金魚と日本の伝統を現代風にアレンジした見せ方を売りにしたものです。今回の日本橋会場のテーマは「江戸・金魚の涼」、会場コンセプトは「龍宮城」ということでしたが、基本的には以前とあまり変わってませんでしたw 動画は撮れなくなっていましたがフラッシュ無しで撮影することができましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。なお、この展示は時間ごとに呼び名が違うようで私が行ったのはナイトアクアリウムの時間帯でした。(夜はイベントとかお酒の販売があります)
参考記事:
アートアクアリウム展2013 & ナイトアクアリウム (日本橋三井ホール)
アートアクアリウム展2012 & ナイトアクアリウム (日本橋三井ホール)
スカイ アクアリウム2011 (森アーツセンターギャラリー)
スカイアクアリウムⅢ (TOKYO CITY VIEW)
最初にあったのは九谷焼でできた水槽

ゆらゆら泳ぐ金魚が涼しげです。

以前は金魚の種類が書いてあったのですが、今回は書いてなくて何の品種かわからないのが残念。
こちらは以前からあるダイヤ型の水槽。

時間が立つと青や緑に色が変わっていきます。
こんな感じで川をイメージした天井になっていました。

でっかい切子の水槽。

上の器だけでなく、下の台座のほうにも金魚が入っていました。
容器の中はこんな感じ。

和風の要素が盛りだくさんです。
奥は広いスペースになっていて、階段状に水槽が置かれています。

階段の脇にも水槽が並んでいます。

たまに金魚じゃないのもいましたw

この辺で写真を撮ってるとエビじゃん!という声が何度も聞けますw
ちょっと黄色っぽい金魚が好み。

こちらも時間ごとに色が変わる水槽。

この辺は以前と変わってないかな。
様々な色に染まる水槽

遠くの方はもはや水槽の中身が見えないw
大きな巾着みたいな水槽。

これが一番沢山の金魚がいたかも。以前に比べて金魚そのものを近くで観るのが難しくなってる気がします。
階段状になっている水槽。

ここは金魚だけでなくグッピーみたいな青い小魚もいました。
こちらも巾着みたいな水槽。上から水が流れ落ちています。

周りにあるのは鞠っぽい感じ。
こちらは恒例の映像が後ろで流れる水槽。

今回は竜宮城をテーマにした内容で、竜宮城の中を飛び回るような映像でした。
最後には新作の玉手箱の形の水槽と、掛け軸のような水槽がありました。

玉手箱の中はこんな感じ。

掛け軸のはこんな感じ。

白黒で水墨みたいなイメージなのかな。
ということで、久々に行きましたが例年通りの内容となっていました。このお祭りをアートと呼ぶのかはさておき、普通の水族館では観られない雰囲気のある演出となっているので、カップルや家族向けのイベントだと思います。土日はかなり混むと思いますので、お出かけの際は時間に余裕を持っていくと良いかと思います。
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今回でアヴィニョンの記事は最後となります。前回ご紹介したプティ・パレ美術館に行った後、歩いて10分くらいの所にあるカルヴェ美術館にも行ってきました。
日本語公式サイト:http://jp.france.fr/ja/discover/31175
この美術館は元々18世紀の貴族の屋敷だったところを利用しているのですが、入口を観るとそんなに広くないのかな?と思いました。

しかし、中に入ると結構な広さな上、予想以上に素晴らしいコレクションのある美術館でした。この美術館でも撮影ができましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。
まず最初はネーデルラントやフランドル絵画のコーナーがありました。
こちらは何とヒエロニムス・ボス。

奇想の絵画で有名ですが、この絵でも東方三博士の礼拝をテーマに後ろにいる人たちがちょっとひょうきんな感じかなw
こちらはピーテル・ブリューゲル父(の写しかな)

恐らく沢山のことわざが隠されていると思うのですが、解説なしでは当時のことわざは分かりませんw
こちらはヤン・ブリューゲル父

何かの祭礼かな?
こちらはアブラハム・ブルーマールトという1600年前後のオランダの画家の作品。

マニエリスムの画家らしく、ルネサンスの流れから少し劇的な感じに進んでいるように思えます。
こちらはPieter Boutというベルギーの画家。

風景が得意だったようで、空気感と緻密さが美しい光景となっていました。
続いて古代エジプトのコーナー。これはファイアンス製のシャブティかな。(死者に変わってあの世で働いてくれる人形)

ここは点数はそれほどでもなかったですが、棺など大きなものもありました。
彫刻作品のコーナーもありました。

ここも中々見応えあります。
こちらはジェームス・プラディエという彫刻家によるもの。

滑らかで官能的な雰囲気がありました。
彫刻コーナーの奥には、近代絵画のコーナーがありました。ここには好みの作品が多く展示されていました。
こちらはエミール・ベルナール

大胆な筆使いを残しつつ軽やかな印象を受けるのがとても好み。
こちらはモーリス・ド・ヴラマンク

ヴラマンクの肖像画は割と珍しいかも。肖像でも荒々しいようです。
こちらはLouis Agricol Montagnéというアヴィニョン出身の画家。

しっかりしたデッサンで、印象派以降の近代的な画風のようです。
こちらもLouis Agricol Montagnéの作品。

恐らく印象派に影響を受けたのかな。穏やかな雰囲気と光と影の表現が好み。
こちらはピエール・ボナール

あまりボナールっぽくない印象派風ですが、親密な主題はボナールならでは。
こちらはラウル・デュフィ

全然デュフィとは分からない画風でしたが、灯りが郷愁を誘う好みの作品でした。
こちらはRené Seyssaudというマルセイユ出身の画家。

フォーヴィスムやゴッホのような強い色彩が目を引きました。この画家の作品は数点ありましたがいずれもかなり好みなので個展を観てみたい。
こちらはLaure Garcinというパリの画家の作品。

ちょっと詳細は分かりませんが、独特の裸体表現と神話的な雰囲気が面白い。
こちらはAuguste Chabaudというニーム(アヴィニョン周辺の大きな街)出身の画家

クロワゾニスム的なくっきりとした輪郭が強い存在感でした。
近代絵画のコーナーから戻り、彫刻とエジプトのコーナーを通り抜けると中世のコーナーがあります。
こちらはNicolas Mignardという1600年代半ばのフランスの画家の画家

バロック様式の画家らしく、ピエタのシーンが一層劇的な光景となっています。
こちらはReynaud Levieuxという1600年代半ばの地元ニーム出身の画家

この天使はガブリエルで、ザカリヤにヨハネの誕生を予言しにきた所のようです。緻密な描写が見事。
1階はこれくらいで、続いて2階へ。

貴族の屋敷って感じですw
2階は1階ほど広くはないですが、大型作品が並んでいました。

これだけ大きいのが揃うと中々壮観。

こちらは1700年代半ばのアヴィニョン出身のクロード・ジョセフ・ヴェルネの作品

夕景が叙情的で理想的な美しさです。
この辺にはユベール・ロベールなどもありました。(さっきの写真の左端に写ってます)
最後にご紹介するのは、巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッド!

これはジョゼフ・バラというフランス革命に参加した少年が王党派に反抗して処刑されたシーン。力ないけど恍惚のような表情が見事。
参考:ジョゼフ・バラのwikipedia (バージョン違いのダヴィッドの絵が載ってました)
ということで、幅広いコレクションで巨匠も抑えつつ南仏の画家のコレクションも観られるという充実ぶりでした。今回の南仏美術館めぐりの中でもかなり気に入った作品の多いところでした。 もしアヴィニョンに行く機会があったら寄ってみるとよろしいかと思います。
アヴィニョンはこのくらいでこの後、エクス・アン・プロヴァンスに向かいました。また別の機会でご紹介しようと思います。
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日本語公式サイト:http://jp.france.fr/ja/discover/31175
この美術館は元々18世紀の貴族の屋敷だったところを利用しているのですが、入口を観るとそんなに広くないのかな?と思いました。

しかし、中に入ると結構な広さな上、予想以上に素晴らしいコレクションのある美術館でした。この美術館でも撮影ができましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。
まず最初はネーデルラントやフランドル絵画のコーナーがありました。
こちらは何とヒエロニムス・ボス。

奇想の絵画で有名ですが、この絵でも東方三博士の礼拝をテーマに後ろにいる人たちがちょっとひょうきんな感じかなw
こちらはピーテル・ブリューゲル父(の写しかな)

恐らく沢山のことわざが隠されていると思うのですが、解説なしでは当時のことわざは分かりませんw
こちらはヤン・ブリューゲル父

何かの祭礼かな?
こちらはアブラハム・ブルーマールトという1600年前後のオランダの画家の作品。

マニエリスムの画家らしく、ルネサンスの流れから少し劇的な感じに進んでいるように思えます。
こちらはPieter Boutというベルギーの画家。

風景が得意だったようで、空気感と緻密さが美しい光景となっていました。
続いて古代エジプトのコーナー。これはファイアンス製のシャブティかな。(死者に変わってあの世で働いてくれる人形)

ここは点数はそれほどでもなかったですが、棺など大きなものもありました。
彫刻作品のコーナーもありました。

ここも中々見応えあります。
こちらはジェームス・プラディエという彫刻家によるもの。

滑らかで官能的な雰囲気がありました。
彫刻コーナーの奥には、近代絵画のコーナーがありました。ここには好みの作品が多く展示されていました。
こちらはエミール・ベルナール

大胆な筆使いを残しつつ軽やかな印象を受けるのがとても好み。
こちらはモーリス・ド・ヴラマンク

ヴラマンクの肖像画は割と珍しいかも。肖像でも荒々しいようです。
こちらはLouis Agricol Montagnéというアヴィニョン出身の画家。

しっかりしたデッサンで、印象派以降の近代的な画風のようです。
こちらもLouis Agricol Montagnéの作品。

恐らく印象派に影響を受けたのかな。穏やかな雰囲気と光と影の表現が好み。
こちらはピエール・ボナール

あまりボナールっぽくない印象派風ですが、親密な主題はボナールならでは。
こちらはラウル・デュフィ

全然デュフィとは分からない画風でしたが、灯りが郷愁を誘う好みの作品でした。
こちらはRené Seyssaudというマルセイユ出身の画家。

フォーヴィスムやゴッホのような強い色彩が目を引きました。この画家の作品は数点ありましたがいずれもかなり好みなので個展を観てみたい。
こちらはLaure Garcinというパリの画家の作品。

ちょっと詳細は分かりませんが、独特の裸体表現と神話的な雰囲気が面白い。
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クロワゾニスム的なくっきりとした輪郭が強い存在感でした。
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こちらはReynaud Levieuxという1600年代半ばの地元ニーム出身の画家

この天使はガブリエルで、ザカリヤにヨハネの誕生を予言しにきた所のようです。緻密な描写が見事。
1階はこれくらいで、続いて2階へ。

貴族の屋敷って感じですw
2階は1階ほど広くはないですが、大型作品が並んでいました。

これだけ大きいのが揃うと中々壮観。

こちらは1700年代半ばのアヴィニョン出身のクロード・ジョセフ・ヴェルネの作品

夕景が叙情的で理想的な美しさです。
この辺にはユベール・ロベールなどもありました。(さっきの写真の左端に写ってます)
最後にご紹介するのは、巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッド!

これはジョゼフ・バラというフランス革命に参加した少年が王党派に反抗して処刑されたシーン。力ないけど恍惚のような表情が見事。
参考:ジョゼフ・バラのwikipedia (バージョン違いのダヴィッドの絵が載ってました)
ということで、幅広いコレクションで巨匠も抑えつつ南仏の画家のコレクションも観られるという充実ぶりでした。今回の南仏美術館めぐりの中でもかなり気に入った作品の多いところでした。 もしアヴィニョンに行く機会があったら寄ってみるとよろしいかと思います。
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今回も南仏アヴィニョンの記事です。前回ご紹介した教皇庁の隣にあるプティ・パレ美術館にも行ってみました。

日本語公式サイト:http://jp.france.fr/ja/discover/31175
この美術館は元々14世紀に建てられた枢機卿の館を利用したもので、13~16世紀にかけてのイタリアと地元プロヴァンスの作品が並んでいます。恐らくほぼ全てがキリスト教関連の美術品で、館内では写真を撮ることもできましたので写真を使ってご紹介しようと思います(作者の名前を撮り忘れたのが多いので絵の詳細が分かりませんが、気に入った作品をご紹介します。)
館内の様子。建物自体も歴史ある趣があります。

最初は彫刻作品がありました。

祈っているのは聖人たちかな?
展示室の様子。

こんな感じでキリスト教美術の数々が並んでいます。
ちょっと壊れているキリスト像。

眼差しが印象的です。
こちらは聖母子。

聖母マリアの服の色が赤青じゃなく黄色と青なのは記憶にないかも。キリストは祝福のポーズをしています。
こちらは磔刑図。

キリストの左で槍を持ち祈っている兵士は聖ロンギヌスでしょうか。
恐らく聖人たちの肖像

ちょっとどれが誰だか分かりませんが、金色の背景が荘厳な印象を醸し出していました。
こちらも聖母子。

変わった形をしているので、祭壇にでも使われていたのかな?
こちらは恐らく受胎告知。

だいぶ平面的ですが緻密な描写となっています。ルネサンスに近い時代かな。
そして、この美術館の見どころはこの部屋です。

何と、サンドロ・ボッティチェッリの作品が5点ほど並んでいました。
こちらはサンドロ・ボッティチェッリ初期の聖母子。

やはりここまで観てきた作品とは異なる表現に思えます。流石と言える名品。
これもボッティチェッリ。

花の女神かな? ちょっと女性の体が硬いようにも思えますが、この美術館でキリスト教でない主題の作品ははこれくらいだったかも
再び他の画家たちの作品が続きます。これは恐らく東方三博士の礼拝。

中央には父なる神、左側には磔刑にされてるキリストの姿もあるようでした。
こちらは十字架を運ぶキリスト。

作者は分かりませんが、かなり写実的な印象を受ける描写で陰影や表情も見事でした。
見終わると中庭に出ます。

3階建てで中々のボリュームあるコレクションでした。
ということで、キリスト教関連の美術品が中心となっていました。ちょっと聖人などは詳しいことが分かりませんでしたが定番の主題などもあり、キリスト教美術の歴史が伺えました。特にボッティチェッリの作品は大きな見どころとなっていますので、アヴィニョンに行く機会があったら足を運んでみるのもよろしいかと思います。
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【番外編 フランス旅行】 パリ市立近代美術館
【番外編 フランス旅行】 パリ市街の写真

日本語公式サイト:http://jp.france.fr/ja/discover/31175
この美術館は元々14世紀に建てられた枢機卿の館を利用したもので、13~16世紀にかけてのイタリアと地元プロヴァンスの作品が並んでいます。恐らくほぼ全てがキリスト教関連の美術品で、館内では写真を撮ることもできましたので写真を使ってご紹介しようと思います(作者の名前を撮り忘れたのが多いので絵の詳細が分かりませんが、気に入った作品をご紹介します。)
館内の様子。建物自体も歴史ある趣があります。

最初は彫刻作品がありました。

祈っているのは聖人たちかな?
展示室の様子。

こんな感じでキリスト教美術の数々が並んでいます。
ちょっと壊れているキリスト像。

眼差しが印象的です。
こちらは聖母子。

聖母マリアの服の色が赤青じゃなく黄色と青なのは記憶にないかも。キリストは祝福のポーズをしています。
こちらは磔刑図。

キリストの左で槍を持ち祈っている兵士は聖ロンギヌスでしょうか。
恐らく聖人たちの肖像

ちょっとどれが誰だか分かりませんが、金色の背景が荘厳な印象を醸し出していました。
こちらも聖母子。

変わった形をしているので、祭壇にでも使われていたのかな?
こちらは恐らく受胎告知。

だいぶ平面的ですが緻密な描写となっています。ルネサンスに近い時代かな。
そして、この美術館の見どころはこの部屋です。

何と、サンドロ・ボッティチェッリの作品が5点ほど並んでいました。
こちらはサンドロ・ボッティチェッリ初期の聖母子。

やはりここまで観てきた作品とは異なる表現に思えます。流石と言える名品。
これもボッティチェッリ。

花の女神かな? ちょっと女性の体が硬いようにも思えますが、この美術館でキリスト教でない主題の作品ははこれくらいだったかも
再び他の画家たちの作品が続きます。これは恐らく東方三博士の礼拝。

中央には父なる神、左側には磔刑にされてるキリストの姿もあるようでした。
こちらは十字架を運ぶキリスト。

作者は分かりませんが、かなり写実的な印象を受ける描写で陰影や表情も見事でした。
見終わると中庭に出ます。

3階建てで中々のボリュームあるコレクションでした。
ということで、キリスト教関連の美術品が中心となっていました。ちょっと聖人などは詳しいことが分かりませんでしたが定番の主題などもあり、キリスト教美術の歴史が伺えました。特にボッティチェッリの作品は大きな見どころとなっていますので、アヴィニョンに行く機会があったら足を運んでみるのもよろしいかと思います。
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南仏編のネタがまだまだあるので、また少しずつご紹介していこうと思います。今回はアヴィニョン教皇庁(法王庁)とその近くにあるサン・ベネゼ橋についてです。
日本語公式サイト:http://jp.france.fr/ja/discover/56620
カトリックの教皇はどこにいるか?と訊かれたらローマのヴァチカンと誰もが答えると思いますが、実は1309年から1377年に渡ってフランスに教皇庁があった時代がありました。きっかけはフランス王と教皇ボニファティウス8世との対立によって引き起こされたフランス軍による教皇の別荘襲撃事件で、その教皇は事件直後に病死したそうです。そしてそれ以降の教皇はフランス王の言いなりとなったらしく、フランス王の要請のもとフランス人枢機卿(後に教皇になった)クレメンス5世によってこの地に教皇庁が移されました。(他にも原因があって、当時のイタリア教皇領が無政府状態だったり内輪もめしてたりと、様々な理由が絡んでいたようです) 勿論、それに対する反発も大きくイタリア人の人文主義者ペトラルカが現存の都市の中で最悪みたいなことを言ったり、バビロン捕囚になぞらえてアヴィニョン捕囚と言われたりと当時の評価は酷かったようです(実際に行ってみると美しいところですw)
やっかみもあるとは言え、権力の腐敗と堕落は確かだったようで、このアヴィニョン捕囚時代は教皇7代(全員フランス人!)で約70年ほど続きましたが、シエナのカタリナと呼ばれる聖女の助言によって、イタリアの平和回復の為に法王庁はローマに戻ることになりました。
参考リンク:アヴィニョン捕囚のwiki
こちらがアヴィニョン教皇庁。

結構多くの観光客が来ていて、チケットを買うのにちょっと並びました。サン・ベネゼ橋との共通券があり、有料で日本語ガイドの貸出もあったので借りました。(メモしてなかったので大半を忘れましたが、非常に詳細な解説でした)
丁度、現代アートとのコラボ展示みたいなのをやっていました。この後の写真にちょいちょい写ってきます。

期間:2017/05/19~2018/01/14
回廊のようなところ。堅牢な建物となっています。

中で写真を撮ることもできます。

解説を忘れたのでこれが何の部屋か忘れましたが、フレスコ画などもありました。
こちらの映像では増改築の様子が流れていました。

何度も増改築して現在の姿になったようですが、とても覚えきれないくらい改修してますw 大きく分けて新宮殿と旧宮殿があるようですが、解説なしでは見分けがつきませんでした。
元は何の部屋か忘れましたが、後の時代に兵士たちの控室になった部屋。

壁がボロボロになって使い込まれた感がw
ここは先程の回廊を見渡せる2階部分

ここは確か食堂だったかな。

食事の時は厳格なルールがあって、席順なんかも権力で決まってたようです。
この部屋からアビニョンの街並みが見えます。

この街はグルッと城壁が囲っていて、いかにも中世ヨーロッパの街といった感じです。
こちらは聖堂。

かなりの広さで驚き。流石は教皇庁
教皇の控室から見下ろした光景。

私が行った時は仮設の観覧席がありましたが、ここはかつて教皇の祝福を求めて人々が集まったところ。この写真を撮ったあたりから教皇が顔を出して人々に祝福をしました。
聖堂の下は法廷となっていました。

ここの屋根はゴシック建築らしい雰囲気
再び外観の写真。

こう見えて21時くらいですが、夕日に照らされると非常に荘厳な印象です。
教皇庁の隣にはノートルダム・デ・ドン聖堂があり、その前は丘に続く道があります。

この丘への道あたりにプチトラン(汽車の形の観光カート)がいて、アヴィニョンの城壁内を周っています。私も乗ったのですが車両によっては日本語ガイドもあるようでした(私が乗った車両はフランス語のみでしたw)
こちらがノートルダム・デ・ドン聖堂

上のほうにいるマリア像が遠くからも目立ちます。キリスト像も目を引きました。
続いて教皇庁との共通券でサン・ベネゼ橋にも行きました。こちらがその橋。

元々は900m先の塔まで伸びた橋だったのですが、度重なる戦乱やローヌ川の氾濫によって川の半ばくらいで落ちてしまっていて修復もされずに残っています。
この橋は「アヴィニョンの橋の上で」という童謡で世界的に有名らしく、私の周りでもアヴィニョンに行ったというとこれを思い起こす人がいました。
こんな感じの曲。1970年頃にNHKのみんなのうた で流れてたそうですが流石に生まれてなかった私は知りませんでした…。
この歌はアヴィニョンに教皇庁が来るぞー!ってことではしゃいでる曲のようですw
これが橋の入口。城壁と繋がっていました。

この橋をかけるのにはかなり難航したらしく、30人がかりで重い岩を持ち上げようとしたもののびくともしなかったそうです。しかしそこにベネゼという神がかった少年が一人でそれを持ち上げて投げ飛ばし、橋の基礎にしました。それを観ていた民衆たちは驚き熱狂し、工事への寄付金が集まってこの橋の完成へと至りました。
橋の上の様子。

輪になって踊るには狭い気がしますがギリギリ行けそうw
橋から観るローヌ川

非常に綺麗ですが、割と流れが早くて驚きました。
橋脚あたりに降りられる所があり、そこから観た光景。

間近に川の流れが観られます。
こちらは先程の丘への道を登った所にあるロシェ・デ・ドン公園から観たサン・ベネゼ橋

この公園には小さな動物園みたいなのもあって、市民の憩いの場となっていました。
かなり見晴らしが良いので、オススメのスポットです。

最後にお得情報を。アヴィニョンではこちらのパスが役立ちました。

これはアヴィニョンの大通りにある観光局で無料で貰えるもので、日本語版もあります。このパスを持って美術館などに行くと初回は通常料金となりますが、次の施設からは割引料金となります。元々無料なので、アヴィニョン観光に行くならまずは手に入れたいパスです。
ということで、アヴィニョンの歴史と街並みを楽しむことができました。割と小さい街ですが、アルルを始めとしたこの辺の観光の拠点にもなる街ですので、南仏に行く機会がある方は行き先候補として検討してもよろしいかと思います。
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やっかみもあるとは言え、権力の腐敗と堕落は確かだったようで、このアヴィニョン捕囚時代は教皇7代(全員フランス人!)で約70年ほど続きましたが、シエナのカタリナと呼ばれる聖女の助言によって、イタリアの平和回復の為に法王庁はローマに戻ることになりました。
参考リンク:アヴィニョン捕囚のwiki
こちらがアヴィニョン教皇庁。

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丁度、現代アートとのコラボ展示みたいなのをやっていました。この後の写真にちょいちょい写ってきます。

期間:2017/05/19~2018/01/14
回廊のようなところ。堅牢な建物となっています。

中で写真を撮ることもできます。

解説を忘れたのでこれが何の部屋か忘れましたが、フレスコ画などもありました。
こちらの映像では増改築の様子が流れていました。

何度も増改築して現在の姿になったようですが、とても覚えきれないくらい改修してますw 大きく分けて新宮殿と旧宮殿があるようですが、解説なしでは見分けがつきませんでした。
元は何の部屋か忘れましたが、後の時代に兵士たちの控室になった部屋。

壁がボロボロになって使い込まれた感がw
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ここは確か食堂だったかな。

食事の時は厳格なルールがあって、席順なんかも権力で決まってたようです。
この部屋からアビニョンの街並みが見えます。

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こちらは聖堂。

かなりの広さで驚き。流石は教皇庁
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この丘への道あたりにプチトラン(汽車の形の観光カート)がいて、アヴィニョンの城壁内を周っています。私も乗ったのですが車両によっては日本語ガイドもあるようでした(私が乗った車両はフランス語のみでしたw)
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こんな感じの曲。1970年頃にNHKのみんなのうた で流れてたそうですが流石に生まれてなかった私は知りませんでした…。
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これが橋の入口。城壁と繋がっていました。

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この展示は7/17に観てきました。質・量ともに圧倒的で非常に満足度の高い内容となっていました。今季一押しの展示です。

【展覧名】
生誕140年 吉田博展 山と水の風景
【公式サイト】
http://www.sjnk-museum.org/program/current/4778.html
【会場】東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2017年7月8日(土)~8月27日(日)
前期:7月8日~7月30日 後期:8月1日~8月27日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
既に人気が出ていて、多くの人が来場していました。たまに列を組んで観るような感じですが、ちょっと待てばじっくり観ることもできました。
さて、この展示は日本よりも海外での評価が高い明治時代の画家 吉田博の大規模な回顧展で、巡回展として日本各地を周っています。実は去年に郡山市立美術館で行われた展示を観てきたのですが、その時もかなりの人気となっていて、美術好きだけでなく幅広い層の支持を受けていました。そしてついに東京での開催を迎え、ますます人気になって行きそうな予感がします。 巡回先によって出品作品が異なり、東京開催でも前期・後期で大規模な作品入れ替えがあるなど、ボリュームのほうも大充実で、画業の始まりから晩年まで様々な作風の作品を楽しむことができました。6つの章に分かれて展示されていたので、各章ごとに大まかな内容を0ご紹介しようと思います。
<第一章 不同舎の時代:1894-1899> 17点(うち前期のみ展示13点)
吉田博は元々は上田博として久留米に生まれ、子供の頃から絵が好きだったこともあり九州の洋画家の草分けとされる吉田嘉三郎に見込まれて24歳で養子に入りました。吉田嘉三郎は博に跡を継がせるために京都の田村宗立の弟子入りを命じ、博はそこで修行していました。しかし京都で写生旅行に来ていた三宅克己と出会うとその水彩画に魅せられ、更なる研鑽を積むために東京に出て不同舎の小山正太郎に学ぶようになりました。
ここにはそうした少年時代のスケッチから不同舎で実力をつけた頃の作品が並んでいます。13歳の頃の船の絵などは高いデッサン力があったことがよくわかります。主題は主に風景で、鉛筆で描いたものも素晴らしいですが水彩はさらに叙情性があり、古き良き日本の原風景を軽やかな色彩と精緻な筆致で瑞々しく表現していました。不同舎では結構色々な所に遠征していたようで、日光で描いた作品もいくつかあり、これも良い作品が多かったです。
<第二章 外遊の時代:1900-1906> 23点(うち前期のみ展示16点)
不同舎で力をつけた吉田博は弟弟子の小杉未醒らの心を捉える「吉田流」とも言える境地まで達していたようですが、その頃の中央画壇は黒田清輝ら白馬会が要職を占め、その一派が国費で留学している状態だったらしく、吉田博はそれに憤慨していたようです。折しも義父が亡くなり義理の家族も含めて6人を養う身となっていたこともあって 絵を売って生活をしていたのですが、横浜でアメリカ人に特によく売れたことから不同舎の後輩の中川八郎と共にアメリカ経由の渡欧を決意したようです。(その背景には三宅が絵を売りながら渡米したことも影響したようです) そして言葉もわからないまま現地に行った所、作品を持ち込んだデトロイト美術館の館長の激賞を受けて急遽2人展を開くことになり、1000ドルを超える大金を得ることができました。その後、この大金を元にボストンに移り、さらにイギリス、フランス、ドイツ、スイス、イタリアを巡って2年ほどで帰国しました。帰国後、吉田博は白馬会に押されて停滞気味だった明治美術会を「太平洋画会」と名を改め、若手を中心とした組織にして やがて白馬会に対抗していくことになります。
そして更に2年後には今度は義理の妹と共に再度アメリカに渡り兄妹展を開催すると、これまた大好評で大金を得ることができました。そしてまたイギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、スイス、イタリア、スペイン、モロッコ、再びスペイン、イタリア、エジプトなど3年近くかけて外遊したようです。
ここには外遊時に売ったのと同じような主題の作品があり、外国人受けする日本の風景や街並みを描いた作品がありました。霧がかった情感たっぷりの風景などは現代の我々から観ても理想化された日本の自然のように映ると思います。その後は留学時に描いた油彩画なども並んでいて、西洋の風景でありながらもどこか日本的な感覚の作品などもありました。ちなみに、この章に展示されているプラド美術館で描いたヴェラスケスの模写と、ヴェニスで描いた風景画は夏目漱石の「三四郎」の話の中でも紹介されていて、ヴェラスケスの模写はあまり出来が良くないというセリフもあるようですw(実際、それほど似てる模写ではないですが。)
<第三章 画壇の頂へ:1907-1920> 34点(うち前期のみ展示7点)
再帰国後、白馬会と太平洋画会の対立は再び深まり、博覧会の審査員の大半が白馬会で占められたことに抗議して賞の返還をするなどの事件もあったようです(この辺の事情が吉田博があまり紹介されない一因だったのかも) その後の文展では公平に審査員が分配されると吉田博は3等を受賞するなど活躍し、さらに若くして文展の審査員を務めるなど洋画界の頂へと登りつめて行きました。しかし、その後、新しく作られた国民美術協会の会頭が黒田清輝になると吉田博は脱退し、恐らくそれが原因で文展の審査員からも外されました。(黒田清輝は知れば知るほど功罪の多い人物ですw) その頃、吉田博は再び外遊を計画しようとしたものの第一次世界大戦が始まりそれどころではなくなってしまいましたが、それが逆に転機となり国内の山々を描くことに熱中しはじめ、実際に山に登っては山を描くというスタイルになっていきました。
ここには文展に出品された作品や、信州や沖縄など日本各地の風景画、穂高山や槍ヶ岳などの高山を描いた作品が並んでいました。特に山間の絵は雲間から見える陽光が描かれるなど、神秘的かつ雄大な光景の作品が目につきました。吉田博はこの頃の西洋画の動向には全然興味がなかったようで、写実的で緻密な独自の画風を貫いていたようです。たまにちょっと印象派のような大胆さやナビ派のような装飾的で平面的な感じの作品があったりもしますが、意図して描いたのかまでは分かりませんでした。
<第四章 木版画という新世界:1921-1929> 68点(うち前期のみ展示20点)
大正9年に吉田博の転機となる仕事が舞い込み、それから木版画の世界へと進んでいくことになります。それは明治神宮完成の木版画の依頼で、版元は渡邊庄三郎(伊東深水や川瀬巴水の版元として有名)でした。しかしこの仕事では7点の原画を提供するだけだったようです。その後、関東大震災が起きた際に被災した太平洋画会の仲間を救おうと再びボストンに絵を売りに行ったところ、売上は芳しくなく既に日本人画家という物珍しさは失われていましたが、アメリカでは日本の木版画に人気が出ていることが分かりました。当時は低俗な浮世絵でももてはやされていたようですが、吉田博はそういったものどころか伊東深水や川瀬巴水にも飽き足らずに自分が新しい木版画の世界を開拓する気持ちで挑み始めました(この時既に自身の木版も高い評価を得ていたようです。) ちょうどこの頃に懇意にしていた山案内人が亡くなったこともあり、山への情熱が薄れて木版に集中したらしく、帰国した年に17点、その翌年に41点と驚異的なペースで制作しました。吉田博の木版の特徴は原画から彫り、摺りまですべて自らが監修を行っていたことで、自身が猛勉強するだけでなく職人たちの指導も行っていたようです。また、同じ版木の色を変えることで朝昼晩というように表現する「別摺」という技法を生み出し、それも高く評価されたようです。さらに、かなりの大型作品もあり紙と版木の反り返る率の違いに苦労したという話なども紹介されていました。
この章はまず明治神宮の作品がありました。これは縦長の掛け軸のような感じで明治神宮を見渡す構図なのですが、まあこの後に出てくる版画に比べれば地味な印象かなw その後にあった別刷りを使った帆船の版画は特に見どころとなっていて、薄めの色のグラデーションが神々しいほどの光を感じさせます。他にはアメリカの絶景や山を主題にした作品群、欧州やエジプトを主題にした作品群、日本アルプスを主題にした作品群、東京の風景を主題にした作品群、動物や人物を主題にした作品群 などこれまでの吉田博のルーツを感じさせる作品がずらっと並んでいました。この章にも油彩もありましたが、やはり今回の展示で一番の魅力はこの章の木版だと思います。「自摺」と印のあるものが多く、これは自分が摺りを監修した証らしく、品質に高い誇りを持っていたのが伺えます。ちなみに、亡くなったダイアナ元英皇太妃も執務室に吉田博の作品を飾っていたという逸話も紹介されていました。
<第五章 新たな画題を求めて:1930-1937> 30点(うち前期のみ展示9点)
版画の仕事が安定してくると、夏は旅して写生を行い秋から春に木版を造るようになっていたようです。また、大正13年から秋の帝展の審査にも復帰し、毎年山をテーマにした大作を出品するのが恒例となりました。その後、昭和5年になると息子を連れてインドと経由地のアジア各国に旅行に行ったそうで、この旅はヒマラヤへの憧れと世界不況によってアメリカでの売上が見込めないことが背景にあったようですが、今までとは異なる雰囲気の画題を残しています。さらに60歳を超えてからは山登りを止めたものの、昭和11年には朝鮮半島・中国を訪れています。(昭和12年から日中戦争が勃発しているので、当時の政情とも関係があったのかもしれません。) この章ではこれまでの欧米日をテーマにした作品とは異なるアジアの風景が描かれた作品が並んでいました。
ここは油彩も見事で、インドの王宮内を描いた作品なども目を引きました。勿論 版画もどれも素晴らしく、異国情緒があり神秘的でありつつもどこか温かみを感じる表現となっていました。
<第六章 戦中と戦後:1938-1950> 9点(うち前期のみ展示1点)
最後は戦中と戦後のコーナーです。戦中は従軍画家として戦地で取材をしていたようで、急降下する戦闘機から観る光景などを描いています。しかし取材旅行や木版画の仕事はできなくなったようで、官展への出品もこの頃は行っていません。また、戦争末期の頃は製鉄所や造船所といった軍需産業の工場を描いていたようで、特に溶けた金属が赤く光っている絵が気に入ったらしく数点展示されています。終戦の際は疎開先にいたのですが、終戦後はアメリカでの知名度から進駐軍からの引き合いも多かったようで、戦災を免れた自宅はさながらサロンのようになっていたそうです。そこにはマッカーサー夫人なども来ていたようで、マッカーサーが日本に来た時に真っ先に「吉田博はどこにいる?」と言ったという伝説まであります(本当かは分かりませんがw)
しかし終戦後わずか5年程度で亡くなってしまい、念願だった木版の世界百景を叶えることはできず不同舎時代のような日本らしい風景の木版が最後で、油彩では山からの眺めを描いた作品で絶筆となりました。ここにはそうした作品が並び、頑固一徹の人物であったと締めくくられていました。
ということで、久々に長文の記事になりましたがそれだけ満足感が高かった展示でした。これだけ素晴らしい内容なので図録も買いました(買ったのは去年の郡山の展示ですが) 美術初心者にも分かりやすい作品と展示構成になっていると思いますので、この夏 特にオススメしたい展示です。後期展示も行くかもw

【展覧名】
生誕140年 吉田博展 山と水の風景
【公式サイト】
http://www.sjnk-museum.org/program/current/4778.html
【会場】東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
【最寄】新宿駅
【会期】2017年7月8日(土)~8月27日(日)
前期:7月8日~7月30日 後期:8月1日~8月27日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
既に人気が出ていて、多くの人が来場していました。たまに列を組んで観るような感じですが、ちょっと待てばじっくり観ることもできました。
さて、この展示は日本よりも海外での評価が高い明治時代の画家 吉田博の大規模な回顧展で、巡回展として日本各地を周っています。実は去年に郡山市立美術館で行われた展示を観てきたのですが、その時もかなりの人気となっていて、美術好きだけでなく幅広い層の支持を受けていました。そしてついに東京での開催を迎え、ますます人気になって行きそうな予感がします。 巡回先によって出品作品が異なり、東京開催でも前期・後期で大規模な作品入れ替えがあるなど、ボリュームのほうも大充実で、画業の始まりから晩年まで様々な作風の作品を楽しむことができました。6つの章に分かれて展示されていたので、各章ごとに大まかな内容を0ご紹介しようと思います。
<第一章 不同舎の時代:1894-1899> 17点(うち前期のみ展示13点)
吉田博は元々は上田博として久留米に生まれ、子供の頃から絵が好きだったこともあり九州の洋画家の草分けとされる吉田嘉三郎に見込まれて24歳で養子に入りました。吉田嘉三郎は博に跡を継がせるために京都の田村宗立の弟子入りを命じ、博はそこで修行していました。しかし京都で写生旅行に来ていた三宅克己と出会うとその水彩画に魅せられ、更なる研鑽を積むために東京に出て不同舎の小山正太郎に学ぶようになりました。
ここにはそうした少年時代のスケッチから不同舎で実力をつけた頃の作品が並んでいます。13歳の頃の船の絵などは高いデッサン力があったことがよくわかります。主題は主に風景で、鉛筆で描いたものも素晴らしいですが水彩はさらに叙情性があり、古き良き日本の原風景を軽やかな色彩と精緻な筆致で瑞々しく表現していました。不同舎では結構色々な所に遠征していたようで、日光で描いた作品もいくつかあり、これも良い作品が多かったです。
<第二章 外遊の時代:1900-1906> 23点(うち前期のみ展示16点)
不同舎で力をつけた吉田博は弟弟子の小杉未醒らの心を捉える「吉田流」とも言える境地まで達していたようですが、その頃の中央画壇は黒田清輝ら白馬会が要職を占め、その一派が国費で留学している状態だったらしく、吉田博はそれに憤慨していたようです。折しも義父が亡くなり義理の家族も含めて6人を養う身となっていたこともあって 絵を売って生活をしていたのですが、横浜でアメリカ人に特によく売れたことから不同舎の後輩の中川八郎と共にアメリカ経由の渡欧を決意したようです。(その背景には三宅が絵を売りながら渡米したことも影響したようです) そして言葉もわからないまま現地に行った所、作品を持ち込んだデトロイト美術館の館長の激賞を受けて急遽2人展を開くことになり、1000ドルを超える大金を得ることができました。その後、この大金を元にボストンに移り、さらにイギリス、フランス、ドイツ、スイス、イタリアを巡って2年ほどで帰国しました。帰国後、吉田博は白馬会に押されて停滞気味だった明治美術会を「太平洋画会」と名を改め、若手を中心とした組織にして やがて白馬会に対抗していくことになります。
そして更に2年後には今度は義理の妹と共に再度アメリカに渡り兄妹展を開催すると、これまた大好評で大金を得ることができました。そしてまたイギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、スイス、イタリア、スペイン、モロッコ、再びスペイン、イタリア、エジプトなど3年近くかけて外遊したようです。
ここには外遊時に売ったのと同じような主題の作品があり、外国人受けする日本の風景や街並みを描いた作品がありました。霧がかった情感たっぷりの風景などは現代の我々から観ても理想化された日本の自然のように映ると思います。その後は留学時に描いた油彩画なども並んでいて、西洋の風景でありながらもどこか日本的な感覚の作品などもありました。ちなみに、この章に展示されているプラド美術館で描いたヴェラスケスの模写と、ヴェニスで描いた風景画は夏目漱石の「三四郎」の話の中でも紹介されていて、ヴェラスケスの模写はあまり出来が良くないというセリフもあるようですw(実際、それほど似てる模写ではないですが。)
<第三章 画壇の頂へ:1907-1920> 34点(うち前期のみ展示7点)
再帰国後、白馬会と太平洋画会の対立は再び深まり、博覧会の審査員の大半が白馬会で占められたことに抗議して賞の返還をするなどの事件もあったようです(この辺の事情が吉田博があまり紹介されない一因だったのかも) その後の文展では公平に審査員が分配されると吉田博は3等を受賞するなど活躍し、さらに若くして文展の審査員を務めるなど洋画界の頂へと登りつめて行きました。しかし、その後、新しく作られた国民美術協会の会頭が黒田清輝になると吉田博は脱退し、恐らくそれが原因で文展の審査員からも外されました。(黒田清輝は知れば知るほど功罪の多い人物ですw) その頃、吉田博は再び外遊を計画しようとしたものの第一次世界大戦が始まりそれどころではなくなってしまいましたが、それが逆に転機となり国内の山々を描くことに熱中しはじめ、実際に山に登っては山を描くというスタイルになっていきました。
ここには文展に出品された作品や、信州や沖縄など日本各地の風景画、穂高山や槍ヶ岳などの高山を描いた作品が並んでいました。特に山間の絵は雲間から見える陽光が描かれるなど、神秘的かつ雄大な光景の作品が目につきました。吉田博はこの頃の西洋画の動向には全然興味がなかったようで、写実的で緻密な独自の画風を貫いていたようです。たまにちょっと印象派のような大胆さやナビ派のような装飾的で平面的な感じの作品があったりもしますが、意図して描いたのかまでは分かりませんでした。
<第四章 木版画という新世界:1921-1929> 68点(うち前期のみ展示20点)
大正9年に吉田博の転機となる仕事が舞い込み、それから木版画の世界へと進んでいくことになります。それは明治神宮完成の木版画の依頼で、版元は渡邊庄三郎(伊東深水や川瀬巴水の版元として有名)でした。しかしこの仕事では7点の原画を提供するだけだったようです。その後、関東大震災が起きた際に被災した太平洋画会の仲間を救おうと再びボストンに絵を売りに行ったところ、売上は芳しくなく既に日本人画家という物珍しさは失われていましたが、アメリカでは日本の木版画に人気が出ていることが分かりました。当時は低俗な浮世絵でももてはやされていたようですが、吉田博はそういったものどころか伊東深水や川瀬巴水にも飽き足らずに自分が新しい木版画の世界を開拓する気持ちで挑み始めました(この時既に自身の木版も高い評価を得ていたようです。) ちょうどこの頃に懇意にしていた山案内人が亡くなったこともあり、山への情熱が薄れて木版に集中したらしく、帰国した年に17点、その翌年に41点と驚異的なペースで制作しました。吉田博の木版の特徴は原画から彫り、摺りまですべて自らが監修を行っていたことで、自身が猛勉強するだけでなく職人たちの指導も行っていたようです。また、同じ版木の色を変えることで朝昼晩というように表現する「別摺」という技法を生み出し、それも高く評価されたようです。さらに、かなりの大型作品もあり紙と版木の反り返る率の違いに苦労したという話なども紹介されていました。
この章はまず明治神宮の作品がありました。これは縦長の掛け軸のような感じで明治神宮を見渡す構図なのですが、まあこの後に出てくる版画に比べれば地味な印象かなw その後にあった別刷りを使った帆船の版画は特に見どころとなっていて、薄めの色のグラデーションが神々しいほどの光を感じさせます。他にはアメリカの絶景や山を主題にした作品群、欧州やエジプトを主題にした作品群、日本アルプスを主題にした作品群、東京の風景を主題にした作品群、動物や人物を主題にした作品群 などこれまでの吉田博のルーツを感じさせる作品がずらっと並んでいました。この章にも油彩もありましたが、やはり今回の展示で一番の魅力はこの章の木版だと思います。「自摺」と印のあるものが多く、これは自分が摺りを監修した証らしく、品質に高い誇りを持っていたのが伺えます。ちなみに、亡くなったダイアナ元英皇太妃も執務室に吉田博の作品を飾っていたという逸話も紹介されていました。
<第五章 新たな画題を求めて:1930-1937> 30点(うち前期のみ展示9点)
版画の仕事が安定してくると、夏は旅して写生を行い秋から春に木版を造るようになっていたようです。また、大正13年から秋の帝展の審査にも復帰し、毎年山をテーマにした大作を出品するのが恒例となりました。その後、昭和5年になると息子を連れてインドと経由地のアジア各国に旅行に行ったそうで、この旅はヒマラヤへの憧れと世界不況によってアメリカでの売上が見込めないことが背景にあったようですが、今までとは異なる雰囲気の画題を残しています。さらに60歳を超えてからは山登りを止めたものの、昭和11年には朝鮮半島・中国を訪れています。(昭和12年から日中戦争が勃発しているので、当時の政情とも関係があったのかもしれません。) この章ではこれまでの欧米日をテーマにした作品とは異なるアジアの風景が描かれた作品が並んでいました。
ここは油彩も見事で、インドの王宮内を描いた作品なども目を引きました。勿論 版画もどれも素晴らしく、異国情緒があり神秘的でありつつもどこか温かみを感じる表現となっていました。
<第六章 戦中と戦後:1938-1950> 9点(うち前期のみ展示1点)
最後は戦中と戦後のコーナーです。戦中は従軍画家として戦地で取材をしていたようで、急降下する戦闘機から観る光景などを描いています。しかし取材旅行や木版画の仕事はできなくなったようで、官展への出品もこの頃は行っていません。また、戦争末期の頃は製鉄所や造船所といった軍需産業の工場を描いていたようで、特に溶けた金属が赤く光っている絵が気に入ったらしく数点展示されています。終戦の際は疎開先にいたのですが、終戦後はアメリカでの知名度から進駐軍からの引き合いも多かったようで、戦災を免れた自宅はさながらサロンのようになっていたそうです。そこにはマッカーサー夫人なども来ていたようで、マッカーサーが日本に来た時に真っ先に「吉田博はどこにいる?」と言ったという伝説まであります(本当かは分かりませんがw)
しかし終戦後わずか5年程度で亡くなってしまい、念願だった木版の世界百景を叶えることはできず不同舎時代のような日本らしい風景の木版が最後で、油彩では山からの眺めを描いた作品で絶筆となりました。ここにはそうした作品が並び、頑固一徹の人物であったと締めくくられていました。
ということで、久々に長文の記事になりましたがそれだけ満足感が高かった展示でした。これだけ素晴らしい内容なので図録も買いました(買ったのは去年の郡山の展示ですが) 美術初心者にも分かりやすい作品と展示構成になっていると思いますので、この夏 特にオススメしたい展示です。後期展示も行くかもw
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前回ご紹介した出光美術館の展示を観た後、歩いて三菱一号館美術館まで移動して「レオナルド×ミケランジェロ展」を観てきました。(この展示は7/16に観てきました。)

【展覧名】
レオナルド×ミケランジェロ展
【公式サイト】
http://mimt.jp/lemi/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅
【会期】2017年6月17日(土)~9月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
非常に混んでいて、チケット売り場も10分くらい並びました。中は列を組んで観る感じで、たまに人だかりができるような混雑でしたが展示の最後の方になるにつれて混雑が解消されていました。
さて、この展示は誰もが知るルネサンス時代の2大巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティの「素描展」です。油彩もありますが、帰属作品や模作なので基本的には素描と資料が中心です(65点程度)。特に時系列になっている訳でなく、題材ごとに章立てされ2人の仕事や価値観を比較して行く内容となっていました。特にメモを取ってこなかったので簡単に章ごとの様子をご紹介しようと思います。
<序章:レオナルドとミケランジェロ─そして素描の力>
ここにはレオナルドの自画像(ファクシミリ版という精巧なコピー)やミケランジェロの肖像(マルチェッロ・ヴェヌスティに帰属)がありました。また、レオナルドの代表作「岩窟の聖母」のための天使の素描などもあり、精密かつ綿密な素描による準備の様子が伺えました。一方のミケランジェロは「レダと白鳥」の為の素描があり、どう観ても女性のようでしたがモデルは男性とのことです。こちらも目鼻だけを隣に描き直しているなど、入念な素描となっていました。この2点は今回の展示でも特に見どころになっていると思います。
レオナルドもミケランジェロも素描を非常に重要視していたらしく、この辺ではその言葉なども紹介されていました。
<I.顔貌表現>
ここは顔を題材とした作品が並んでいました。レオナルドは老人を描いたものや、顔や目の比率を計算しているメモのようなものがあり、人体工学的な研究が確認できます。また、レオナルドは面白いと思った顔の人に会うと一日中付け回して顔をじっくり観て、後で帰ってから素描するという逸話もあり、相当に研究熱心というか常人離れした観察力が垣間見えるエピソードでした。
<II.絵画と彫刻:パラゴーネ>
ここでは「パラゴーネ」という当時盛んに論じられた「絵画と彫刻はどっちが優れた芸術か?」という論争をテーマにしていました。レオナルドは平面を立体に見せるので絵画の方が上だと主張していたようですが、ミケランジェロは優劣をつけることはなく、自然を母として建築・彫刻・絵画の3姉妹がいるとして、お互いの争いは無意味であると考えていたようです。
ここにあった作品はやはり人物像の準備素描が多かったかな。ミケランジェロのほうは蝋で出来た彫刻の構想を練るためのものもあり、素描と同様に彫刻においても様々な検討をしていたようです。ミケランジェロはやはり彫刻家としての側面も強いだけあって、絵もレオナルドよりも肉感的というか筋肉隆々な印象を受けます。
<III.人体表現>
この章ではレオナルドとミケランジェロの直接対決とも言えるフィレンツェ政庁舎(ヴェッキオ宮殿)の壁画について紹介していました。この壁画はレオナルドが「アンギアーリの戦い」、ミケランジェロが反対側に「カッシーナの戦い」を描くという美術史上の大事件だったのですが、ミケランジェロの方は素描だけ完成したものの壁画は未完に終わりました。(その素描も今回の展示に出品なし) ここで面白いのはレオナルドも実はミケランジェロのダヴィデ像に触発されていたらしく、「アンギアーリの戦い」のための素描などには立派な肉体の人物像などが描かれていました。
一方、この章のミケランジェロの見どころは壁一面に並んだ「最後の審判」の素描群でした。これは本人が描いたものでなくジョルジョ・ギージという画家による模作ですが、キリストやマリアを中心に天使たちや天国に行く人々、地獄に行く人々、死者たちの復活など様々な場面が描かれています。その表情や肉体表現などが劇的で、これはかなり見応えがありました。
この辺で上の階は終わりで、休憩室で写真を撮ることができました。

<IV.馬と建築>
ここから下の階となります。ここには実現しなかったレオナルドによる建築の設計図や、馬を描いた作品が並んでいました。レオナルドは馬が大好きだったらしく足や筋肉だけを描いた作品などがあり、人物像と同じくらいの情熱が感じられます。一方でミケランジェロは点数も少なめで、レオナルドほどの馬への熱意は無かったようでした。
<V.レダと白鳥>
ここは代理対決みたいな展示で、どちらもオリジナルが失われた「レダと白鳥」の模作が並んでいました。
参考リンク:公式サイト「レダと白鳥」に見る2人の対比
ミケランジェロのほうは割と物語に忠実で、白鳥に化けたゼウスがレダと絡み合うような官能的で優美な雰囲気の作品になっています。一方、レオナルドの作品は立った裸婦として描かれたレダが、ちょっと黒めで大きな白鳥を抱いている姿で描かれています。白鳥がどこかオッサンっぽくてゼウスのイメージそのものw 傍らには2組の双子が描かれているなど、物語のその後の顛末も暗示しています。立った姿で描くという発想に感心させられる1枚です。
ちなみにレオナルドの完成作は後の時代に不道徳ということで燃やされたのだとか。ミケランジェロの作品も意図的に失われたらしいので、時代の価値観によってどんな名画でも憂き目に合う可能性はありますね…。
<VI.手稿と手紙>
ここにはレオナルドの発明品の案をイラスト化したものや、両者の私的な手紙がありました。レオナルドは万能の天才と言われている通り、軍事や土木関係にも携わっていたのですがここには鎌のようなもので攻撃する戦車や、水車のようなものを描いたものがありました。しかし、戦車は「味方も傷つける」みたいなコメントを書いているようで、実用には向かないと考えていたようです。
ミケランジェロは手紙があり、かなり年下の男性と恋人同士みたいな内容を取り交わしていたようです。同性愛者という説があるのも納得の内容です。
<終章:肖像画>
最後はまた肖像画の素描が数点並んでいました。しかしそれだけではなく、いつもはショップとなっている1階に、ミケランジェロの未完成作(17世紀の彫刻家によって完成)が展示されていて、ここでは写真を撮ることもできました。
こんな感じ。

この展示を観る時はスマフォ等撮影できるものを持っていくと良いと思います。
ということで、貴重な内容で2人の対比がよく分かる構成となっていました。とは言え、素描中心なので美術初心者にはややハードル高めかもしれません。 レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティが好きな方向けの展示と言えそうです。

【展覧名】
レオナルド×ミケランジェロ展
【公式サイト】
http://mimt.jp/lemi/
【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅
【会期】2017年6月17日(土)~9月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
非常に混んでいて、チケット売り場も10分くらい並びました。中は列を組んで観る感じで、たまに人だかりができるような混雑でしたが展示の最後の方になるにつれて混雑が解消されていました。
さて、この展示は誰もが知るルネサンス時代の2大巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティの「素描展」です。油彩もありますが、帰属作品や模作なので基本的には素描と資料が中心です(65点程度)。特に時系列になっている訳でなく、題材ごとに章立てされ2人の仕事や価値観を比較して行く内容となっていました。特にメモを取ってこなかったので簡単に章ごとの様子をご紹介しようと思います。
<序章:レオナルドとミケランジェロ─そして素描の力>
ここにはレオナルドの自画像(ファクシミリ版という精巧なコピー)やミケランジェロの肖像(マルチェッロ・ヴェヌスティに帰属)がありました。また、レオナルドの代表作「岩窟の聖母」のための天使の素描などもあり、精密かつ綿密な素描による準備の様子が伺えました。一方のミケランジェロは「レダと白鳥」の為の素描があり、どう観ても女性のようでしたがモデルは男性とのことです。こちらも目鼻だけを隣に描き直しているなど、入念な素描となっていました。この2点は今回の展示でも特に見どころになっていると思います。
レオナルドもミケランジェロも素描を非常に重要視していたらしく、この辺ではその言葉なども紹介されていました。
<I.顔貌表現>
ここは顔を題材とした作品が並んでいました。レオナルドは老人を描いたものや、顔や目の比率を計算しているメモのようなものがあり、人体工学的な研究が確認できます。また、レオナルドは面白いと思った顔の人に会うと一日中付け回して顔をじっくり観て、後で帰ってから素描するという逸話もあり、相当に研究熱心というか常人離れした観察力が垣間見えるエピソードでした。
<II.絵画と彫刻:パラゴーネ>
ここでは「パラゴーネ」という当時盛んに論じられた「絵画と彫刻はどっちが優れた芸術か?」という論争をテーマにしていました。レオナルドは平面を立体に見せるので絵画の方が上だと主張していたようですが、ミケランジェロは優劣をつけることはなく、自然を母として建築・彫刻・絵画の3姉妹がいるとして、お互いの争いは無意味であると考えていたようです。
ここにあった作品はやはり人物像の準備素描が多かったかな。ミケランジェロのほうは蝋で出来た彫刻の構想を練るためのものもあり、素描と同様に彫刻においても様々な検討をしていたようです。ミケランジェロはやはり彫刻家としての側面も強いだけあって、絵もレオナルドよりも肉感的というか筋肉隆々な印象を受けます。
<III.人体表現>
この章ではレオナルドとミケランジェロの直接対決とも言えるフィレンツェ政庁舎(ヴェッキオ宮殿)の壁画について紹介していました。この壁画はレオナルドが「アンギアーリの戦い」、ミケランジェロが反対側に「カッシーナの戦い」を描くという美術史上の大事件だったのですが、ミケランジェロの方は素描だけ完成したものの壁画は未完に終わりました。(その素描も今回の展示に出品なし) ここで面白いのはレオナルドも実はミケランジェロのダヴィデ像に触発されていたらしく、「アンギアーリの戦い」のための素描などには立派な肉体の人物像などが描かれていました。
一方、この章のミケランジェロの見どころは壁一面に並んだ「最後の審判」の素描群でした。これは本人が描いたものでなくジョルジョ・ギージという画家による模作ですが、キリストやマリアを中心に天使たちや天国に行く人々、地獄に行く人々、死者たちの復活など様々な場面が描かれています。その表情や肉体表現などが劇的で、これはかなり見応えがありました。
この辺で上の階は終わりで、休憩室で写真を撮ることができました。

<IV.馬と建築>
ここから下の階となります。ここには実現しなかったレオナルドによる建築の設計図や、馬を描いた作品が並んでいました。レオナルドは馬が大好きだったらしく足や筋肉だけを描いた作品などがあり、人物像と同じくらいの情熱が感じられます。一方でミケランジェロは点数も少なめで、レオナルドほどの馬への熱意は無かったようでした。
<V.レダと白鳥>
ここは代理対決みたいな展示で、どちらもオリジナルが失われた「レダと白鳥」の模作が並んでいました。
参考リンク:公式サイト「レダと白鳥」に見る2人の対比
ミケランジェロのほうは割と物語に忠実で、白鳥に化けたゼウスがレダと絡み合うような官能的で優美な雰囲気の作品になっています。一方、レオナルドの作品は立った裸婦として描かれたレダが、ちょっと黒めで大きな白鳥を抱いている姿で描かれています。白鳥がどこかオッサンっぽくてゼウスのイメージそのものw 傍らには2組の双子が描かれているなど、物語のその後の顛末も暗示しています。立った姿で描くという発想に感心させられる1枚です。
ちなみにレオナルドの完成作は後の時代に不道徳ということで燃やされたのだとか。ミケランジェロの作品も意図的に失われたらしいので、時代の価値観によってどんな名画でも憂き目に合う可能性はありますね…。
<VI.手稿と手紙>
ここにはレオナルドの発明品の案をイラスト化したものや、両者の私的な手紙がありました。レオナルドは万能の天才と言われている通り、軍事や土木関係にも携わっていたのですがここには鎌のようなもので攻撃する戦車や、水車のようなものを描いたものがありました。しかし、戦車は「味方も傷つける」みたいなコメントを書いているようで、実用には向かないと考えていたようです。
ミケランジェロは手紙があり、かなり年下の男性と恋人同士みたいな内容を取り交わしていたようです。同性愛者という説があるのも納得の内容です。
<終章:肖像画>
最後はまた肖像画の素描が数点並んでいました。しかしそれだけではなく、いつもはショップとなっている1階に、ミケランジェロの未完成作(17世紀の彫刻家によって完成)が展示されていて、ここでは写真を撮ることもできました。
こんな感じ。



この展示を観る時はスマフォ等撮影できるものを持っていくと良いと思います。
ということで、貴重な内容で2人の対比がよく分かる構成となっていました。とは言え、素描中心なので美術初心者にはややハードル高めかもしれません。 レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティが好きな方向けの展示と言えそうです。
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