Archive | 2017年11月
前回ご紹介した松坂屋上野店の隣に新しくオープンした「PARCO-ya」のTOHOシネマズ上野で、映画「ゴッホ~最期の手紙~」を観てきました。この記事はややネタバレを含んだ内容となっていますので、これから事前知識無しで観たいという方はご注意ください。

【作品名】
ゴッホ~最期の手紙~
【公式サイト】
http://www.gogh-movie.jp/
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_4_⑤_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_4_⑤_名作
【感想】
金曜日の会社帰りに寄ってのですが、関東でも上映しているところが少ないこともあってか結構混んでいました。(私が観た時は東京は上野だけだったと思いますが、六本木でも上映しているようです。詳しくは公式サイトでご確認ください)
さて、この映画はその名の通りフィンセント・ファン・ゴッホについての映画です。公式サイトで分かる程度のネタバレになりますが、まず冒頭から既にゴッホは亡くなっていて、ゴッホがよく肖像画に描いていたアルルの郵便配達人ジョゼフ・ルーランとその息子のアルマン・ルーランの会話から始まります。アルマン・ルーランは酒場などでブラブラしていたのですが、父親からフィンセントが死ぬ前に弟のテオ宛に書いた手紙を届けて欲しいと依頼されます。そしてアルルからパリへ行き、画材屋のタンギー爺さんに話を訊いたりしながら手紙を届ける旅に出るわけですが、途中で何故ゴッホは自殺したのか?という疑問を追いかけるようになり、関係者に聴き込んでいくことになります。それが何ともミステリーで、推理小説のようにゴッホの人間関係を深掘りしながら当日の様子なども詳細に描写されます。
と、これ以上のネタバレは止めておこうと思いますが、この映画を観る前に最低限知っておいたほうが良いのがゴッホに関する予備知識です。例えば下記の点は抑えておいたほうが良いかな。
・フィンセント・ファン・ゴッホは弟のテオと非常に仲がよく、画商だったテオに世話になりながら毎日のように手紙を交わしていた
・ゴッホは画家を集めて南仏のアルルで共同生活をするのを夢見たものの、それに応じたのはゴーギャン1人だった。
・アルルでは郵便配達員のジョゼフ・ルーランの夫妻と深い親交を結んでいた
・ゴーギャンとの生活も短期間で破綻し、狂気に駆られたゴッホは自らの耳を切り落とした。
・アルルとサン・レミの精神病院での療養の後、パリ北西部にあるオーヴェル=シュル=オワーズに移った。
・オーヴェルでは自身も芸術家を志したことがあるたガシェ医師と懇意になり、近くのラヴー旅館という小さなホテルに住んだ
・オーヴェールではガシェ医師の家族や、地元の人々も絵に残している。
・オーヴェールの麦畑で拳銃自殺を図り、即死ではなくラヴー旅館まで歩いて帰ってきたものの約1日後に死んだ。
と、いった感じです。ゴッホのwikipediaのリンクを貼ろうと思いましたが、この映画のネタバレ要素が結構あるので止めておきますw 下記の記事などをご参考にして頂ければと思います。
参考記事:
ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)
ゴッホゆかりの地めぐり 【南仏編 サン・レミ/アルル】
と、内容自体もかなり興味深い話になっているのですが、この映画が革新的なのが全編に渡って油彩画を使ったアニメーションとなっている点です。まず最初に役者たちが普通に演技を行ったのを、わざわざ油彩画にし直すという非常に凝った手法になっています。(その為アニメーションであるにも関わらず配役の名前もクレジットされているのですが、いずれも本人に激似の人たちばかりなので実写版も観てみたかったような…w) そしてその各シーンはゴッホの描いた名画をモチーフにしているので、ゴッホ好きなら あの絵だ!!と思うことも多々あると思います。これらの絵は何と1秒に12枚の油彩を描いたそうで、総勢125名によって6万2450枚もの油彩画を使っています。(メインはカラーの油彩画、回想シーンは白黒という切り分けも面白いです) その色、そのタッチ すべてがゴッホ風で観たことがある絵が動くのは本当に驚きと感動がありました。余談ですが、日本からは唯一、古賀陽子 氏という31歳の若い女性が参加していて、同時期に東京都美術館で開催されているゴッホ展で古賀氏の描いたゴッホ風の絵を観られる機会もあります。
ということで、ストーリーも映像も非常に素晴らしい内容となっていて大満足の作品でした。しかも上野で開催されている「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」に出品されている作品も出てきますので、ゴッホ展に行くなら是非セットで観て欲しい映画です。ゴッホの事を知っている人ほど楽しめる映画だと思います。(知らないと話についていけないかもしれませんが…)
それにしても、こんな良い映画が一部の映画館でしかやってないなんて本当に勿体無い!

【作品名】
ゴッホ~最期の手紙~
【公式サイト】
http://www.gogh-movie.jp/
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_4_⑤_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_4_⑤_名作
【感想】
金曜日の会社帰りに寄ってのですが、関東でも上映しているところが少ないこともあってか結構混んでいました。(私が観た時は東京は上野だけだったと思いますが、六本木でも上映しているようです。詳しくは公式サイトでご確認ください)
さて、この映画はその名の通りフィンセント・ファン・ゴッホについての映画です。公式サイトで分かる程度のネタバレになりますが、まず冒頭から既にゴッホは亡くなっていて、ゴッホがよく肖像画に描いていたアルルの郵便配達人ジョゼフ・ルーランとその息子のアルマン・ルーランの会話から始まります。アルマン・ルーランは酒場などでブラブラしていたのですが、父親からフィンセントが死ぬ前に弟のテオ宛に書いた手紙を届けて欲しいと依頼されます。そしてアルルからパリへ行き、画材屋のタンギー爺さんに話を訊いたりしながら手紙を届ける旅に出るわけですが、途中で何故ゴッホは自殺したのか?という疑問を追いかけるようになり、関係者に聴き込んでいくことになります。それが何ともミステリーで、推理小説のようにゴッホの人間関係を深掘りしながら当日の様子なども詳細に描写されます。
と、これ以上のネタバレは止めておこうと思いますが、この映画を観る前に最低限知っておいたほうが良いのがゴッホに関する予備知識です。例えば下記の点は抑えておいたほうが良いかな。
・フィンセント・ファン・ゴッホは弟のテオと非常に仲がよく、画商だったテオに世話になりながら毎日のように手紙を交わしていた
・ゴッホは画家を集めて南仏のアルルで共同生活をするのを夢見たものの、それに応じたのはゴーギャン1人だった。
・アルルでは郵便配達員のジョゼフ・ルーランの夫妻と深い親交を結んでいた
・ゴーギャンとの生活も短期間で破綻し、狂気に駆られたゴッホは自らの耳を切り落とした。
・アルルとサン・レミの精神病院での療養の後、パリ北西部にあるオーヴェル=シュル=オワーズに移った。
・オーヴェルでは自身も芸術家を志したことがあるたガシェ医師と懇意になり、近くのラヴー旅館という小さなホテルに住んだ
・オーヴェールではガシェ医師の家族や、地元の人々も絵に残している。
・オーヴェールの麦畑で拳銃自殺を図り、即死ではなくラヴー旅館まで歩いて帰ってきたものの約1日後に死んだ。
と、いった感じです。ゴッホのwikipediaのリンクを貼ろうと思いましたが、この映画のネタバレ要素が結構あるので止めておきますw 下記の記事などをご参考にして頂ければと思います。
参考記事:
ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)
ゴッホゆかりの地めぐり 【南仏編 サン・レミ/アルル】
と、内容自体もかなり興味深い話になっているのですが、この映画が革新的なのが全編に渡って油彩画を使ったアニメーションとなっている点です。まず最初に役者たちが普通に演技を行ったのを、わざわざ油彩画にし直すという非常に凝った手法になっています。(その為アニメーションであるにも関わらず配役の名前もクレジットされているのですが、いずれも本人に激似の人たちばかりなので実写版も観てみたかったような…w) そしてその各シーンはゴッホの描いた名画をモチーフにしているので、ゴッホ好きなら あの絵だ!!と思うことも多々あると思います。これらの絵は何と1秒に12枚の油彩を描いたそうで、総勢125名によって6万2450枚もの油彩画を使っています。(メインはカラーの油彩画、回想シーンは白黒という切り分けも面白いです) その色、そのタッチ すべてがゴッホ風で観たことがある絵が動くのは本当に驚きと感動がありました。余談ですが、日本からは唯一、古賀陽子 氏という31歳の若い女性が参加していて、同時期に東京都美術館で開催されているゴッホ展で古賀氏の描いたゴッホ風の絵を観られる機会もあります。
ということで、ストーリーも映像も非常に素晴らしい内容となっていて大満足の作品でした。しかも上野で開催されている「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」に出品されている作品も出てきますので、ゴッホ展に行くなら是非セットで観て欲しい映画です。ゴッホの事を知っている人ほど楽しめる映画だと思います。(知らないと話についていけないかもしれませんが…)
それにしても、こんな良い映画が一部の映画館でしかやってないなんて本当に勿体無い!
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今回は写真多めです。2週間ほど前に御徒町の松坂屋上野店で、「PIECE OF PEACE―『レゴブロック』で作った世界遺産展PART-3―」という展示を観てきました。この展示は既に終了してしまいましたが、撮影可能でしたので写真を使ってご紹介しておこうと思います。

【展覧名】
PIECE OF PEACE―『レゴブロック』で作った世界遺産展PART-3―
【公式サイト】
https://www.pofp.jp/
【会場】松坂屋上野店本館6階催事場
【最寄】御徒町駅
【会期】2017年10月28日(土)~11月9日(木)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
そこそこお客さんがいましたが、快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は上野松坂屋のリニューアルと その隣にPARCO-yaが2017/11/4にオープンしたのを記念したもので、世界的に有名なレゴブロックを使って世界遺産の建物などを再現するという内容となっています。パート3となっているのは今回が3回目の開催ということらしく、初回は2008年に日本全国13箇所で開催され、2回目は世界遺産40周年を記念して2012年に行われたそうです。今回は約5年ぶりということで、前回から新たに増えた世界遺産なども展示されていました。冒頭にも書いたように撮影可能となっていましたので、気に入ったものをいくつか写真でご紹介していこうと思います。
まずこちらは広島の厳島神社。

見事な再現ぶりで、クオリティの高さが伺えます。鳥居の反った所とか細かいところまで気を配ってます。
今回の作品は「マスタービルド」の大澤よしひろ氏 達が手がけているそうで、マスタービルドは世界に18人しかいないプロフェッショナルです。それ以外の方が作った作品もありますが、いずれの出来も素晴らしくその凄さはこれからお見せする作品の写真で伝わってくると思います。
こちらはすぐ近くにある上野の国立西洋美術館。

前回の記事でもご紹介したル・コルビュジエの設計した建物で、日本にあるル・コルビュジエ作品はこの美術館のみです。これも素晴らしい再現度で、13000個ものブロックで作られているのだとか。ちゃんとモデュロールを意識した寸法です。
こちらは軍艦島。明治日本の産業革命遺産として2015年に登録されました。

これは6000ピースくらいらしく、ちょっと単純化しているかな。
しかし近くに寄ってみるとこんな感じです。

細かいブロックが転がっていて廃墟感もちゃんと再現されているのが面白い。
こちらは平泉の毛越寺の浄土庭園。2011年登録。

ちょうど登録される少し前に平泉に行って盛り上がっていたのを思い出しました。
参考記事:毛越寺の写真 【番外編 岩手】
こちらも平泉で、中尊寺金色堂。

中を覗くと須弥壇のようなものまでありました。こだわりが凄いw
参考記事:中尊寺の写真 【番外編 岩手】
この近くにあった姫路城なども圧巻の出来栄えでした。続いてはアジアの世界遺産のコーナー。
これはラオスのルアン・パバーンの町。1995年に登録。

この重厚な屋根をよく表現したものだと驚くばかりです。壁面の装飾などもちゃんと再現しています。
こちらはカンボジアのアンコール。

13000ピースを使い240時間かけて作られた大作。緻密さだけでなく大きさにも驚かされました。
こちらは万里の長城。

これは900ピースと少なめですが、土台の部分と一体となっているのが他と異なっているかも。
この辺にあったインドのタージ・マハルもかなり見ごたえがありました。
こちらはちょっとアジアから離れてイースター島のモアイ。

苔に侵食されているのを表現する為に緑を混ぜるなど、細部への工夫も観られます。
こちらはエジプトのメンフィスのギザなどにあるピラミッド。

ちゃんとスフィンクスもいますw 風化した感じも出ていてこれもリアルです。
こちらはロシアのモスクワ、クレムリンの赤の広場です。角度違いで同じものを撮っています。

これは何と16000ピースで576時間もかけて作った大作。色の配置や建物の構造を相当よく考えないとこんな複雑なものは作れないと思います。
こちらはイタリアのピサの斜塔。

もうこれくらいでは驚けなくなってきましたが、傾斜もしっかりブロックで再現していました。
そして再び驚くような作品がw ローマのコロッセオ!!

7000ピース程度と意外と見た目ほどでは無いようですが、432時間かけて作られた圧巻の作品です。
こちらはフランスのモンサンミッシェル。

ちゃんと修道院へと向かう道ができています。傾斜を高さが一定のブロックで表現するのは大変そう。
こちらも驚きましたw スペインのサグラダ・ファミリア。アントニオ・ガウディの設計です。

こちらは25000ピース! 私が作ったらそれこそ未完成のまま何百年かかることやらw 特に聖堂の中央辺りの細かさがヤバイ。
こちらはオーストラリアのシドニーにあるオペラハウス。ヨーン・ウッツォンの設計です。

ちょっと本物に比べるとカクついてる感じがするけど、貝殻みたいな見た目はよく再現されています。
と、世界遺産のレゴブロックはこんな感じで、最後の方は著名人やアーティストによるレゴを使った創作のコーナーとなっていました。
これは みうらじゅん氏がデザインした「郷土LOVEちゃん」

隣りにあるイラストと比べるとよく分かります。着物の日本の形をよく再現できたもんですねw
こちらはフラワーアーティスト東信 氏の「盆栽」

タイトル通り、年季の入った盆栽そのものとなっていました。割とリアルでレゴと親和性あるかもw
こちらはリリー・フランキー氏による「ピサとおでんくん」

またピサの斜塔が出てきましたが、こちらはおでんくんもいてほのぼのした雰囲気。
こちらは楳図かずお氏の「まことちゃんハウス」

これ、実際に三鷹にある楳図かずお氏の家ですw 近隣住民が建設反対してた話を聞いたことがありますw
こちらは河森正治 氏の「レゴは思考プロセスを具現化するための最適なツール」

この人はアニメ「マクロス」シリーズや「アクエリオン」などでメカをデザインしたらしく、絵だけでなくレゴでのシミュレートもしていたのだとか。仕事で使う人もいるんですね。
こちらはバルーンアーティストのDaisy Balloon(細貝里枝 氏、河田孝志 氏)による「構築」

レゴでできたドレス! しかも2着。 花瓶もレゴだしw
この他にも多々面白いアート作品がありましたが、画像が重くなるのでこれにて終了。会場外には実際にレゴブロックで遊べるワークショップコーナーもありました。
ということで、レゴブロックでここまで表現できるのかと驚きの展示でした。私も子供の頃によくレゴブロックで飛行機などを自作していたので、ちょっと懐かしい気分になったりしました。この展示はもう終わってしまいましたが、最近では名古屋にレゴランドも出来たみたいなので、今後もレゴには注目したいと思います。

【展覧名】
PIECE OF PEACE―『レゴブロック』で作った世界遺産展PART-3―
【公式サイト】
https://www.pofp.jp/
【会場】松坂屋上野店本館6階催事場
【最寄】御徒町駅
【会期】2017年10月28日(土)~11月9日(木)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
そこそこお客さんがいましたが、快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は上野松坂屋のリニューアルと その隣にPARCO-yaが2017/11/4にオープンしたのを記念したもので、世界的に有名なレゴブロックを使って世界遺産の建物などを再現するという内容となっています。パート3となっているのは今回が3回目の開催ということらしく、初回は2008年に日本全国13箇所で開催され、2回目は世界遺産40周年を記念して2012年に行われたそうです。今回は約5年ぶりということで、前回から新たに増えた世界遺産なども展示されていました。冒頭にも書いたように撮影可能となっていましたので、気に入ったものをいくつか写真でご紹介していこうと思います。
まずこちらは広島の厳島神社。

見事な再現ぶりで、クオリティの高さが伺えます。鳥居の反った所とか細かいところまで気を配ってます。
今回の作品は「マスタービルド」の大澤よしひろ氏 達が手がけているそうで、マスタービルドは世界に18人しかいないプロフェッショナルです。それ以外の方が作った作品もありますが、いずれの出来も素晴らしくその凄さはこれからお見せする作品の写真で伝わってくると思います。
こちらはすぐ近くにある上野の国立西洋美術館。

前回の記事でもご紹介したル・コルビュジエの設計した建物で、日本にあるル・コルビュジエ作品はこの美術館のみです。これも素晴らしい再現度で、13000個ものブロックで作られているのだとか。ちゃんとモデュロールを意識した寸法です。
こちらは軍艦島。明治日本の産業革命遺産として2015年に登録されました。

これは6000ピースくらいらしく、ちょっと単純化しているかな。
しかし近くに寄ってみるとこんな感じです。

細かいブロックが転がっていて廃墟感もちゃんと再現されているのが面白い。
こちらは平泉の毛越寺の浄土庭園。2011年登録。

ちょうど登録される少し前に平泉に行って盛り上がっていたのを思い出しました。
参考記事:毛越寺の写真 【番外編 岩手】
こちらも平泉で、中尊寺金色堂。

中を覗くと須弥壇のようなものまでありました。こだわりが凄いw
参考記事:中尊寺の写真 【番外編 岩手】
この近くにあった姫路城なども圧巻の出来栄えでした。続いてはアジアの世界遺産のコーナー。
これはラオスのルアン・パバーンの町。1995年に登録。

この重厚な屋根をよく表現したものだと驚くばかりです。壁面の装飾などもちゃんと再現しています。
こちらはカンボジアのアンコール。

13000ピースを使い240時間かけて作られた大作。緻密さだけでなく大きさにも驚かされました。
こちらは万里の長城。

これは900ピースと少なめですが、土台の部分と一体となっているのが他と異なっているかも。
この辺にあったインドのタージ・マハルもかなり見ごたえがありました。
こちらはちょっとアジアから離れてイースター島のモアイ。

苔に侵食されているのを表現する為に緑を混ぜるなど、細部への工夫も観られます。
こちらはエジプトのメンフィスのギザなどにあるピラミッド。

ちゃんとスフィンクスもいますw 風化した感じも出ていてこれもリアルです。
こちらはロシアのモスクワ、クレムリンの赤の広場です。角度違いで同じものを撮っています。


これは何と16000ピースで576時間もかけて作った大作。色の配置や建物の構造を相当よく考えないとこんな複雑なものは作れないと思います。
こちらはイタリアのピサの斜塔。

もうこれくらいでは驚けなくなってきましたが、傾斜もしっかりブロックで再現していました。
そして再び驚くような作品がw ローマのコロッセオ!!

7000ピース程度と意外と見た目ほどでは無いようですが、432時間かけて作られた圧巻の作品です。
こちらはフランスのモンサンミッシェル。

ちゃんと修道院へと向かう道ができています。傾斜を高さが一定のブロックで表現するのは大変そう。
こちらも驚きましたw スペインのサグラダ・ファミリア。アントニオ・ガウディの設計です。

こちらは25000ピース! 私が作ったらそれこそ未完成のまま何百年かかることやらw 特に聖堂の中央辺りの細かさがヤバイ。
こちらはオーストラリアのシドニーにあるオペラハウス。ヨーン・ウッツォンの設計です。

ちょっと本物に比べるとカクついてる感じがするけど、貝殻みたいな見た目はよく再現されています。
と、世界遺産のレゴブロックはこんな感じで、最後の方は著名人やアーティストによるレゴを使った創作のコーナーとなっていました。
これは みうらじゅん氏がデザインした「郷土LOVEちゃん」

隣りにあるイラストと比べるとよく分かります。着物の日本の形をよく再現できたもんですねw
こちらはフラワーアーティスト東信 氏の「盆栽」

タイトル通り、年季の入った盆栽そのものとなっていました。割とリアルでレゴと親和性あるかもw
こちらはリリー・フランキー氏による「ピサとおでんくん」

またピサの斜塔が出てきましたが、こちらはおでんくんもいてほのぼのした雰囲気。
こちらは楳図かずお氏の「まことちゃんハウス」

これ、実際に三鷹にある楳図かずお氏の家ですw 近隣住民が建設反対してた話を聞いたことがありますw
こちらは河森正治 氏の「レゴは思考プロセスを具現化するための最適なツール」

この人はアニメ「マクロス」シリーズや「アクエリオン」などでメカをデザインしたらしく、絵だけでなくレゴでのシミュレートもしていたのだとか。仕事で使う人もいるんですね。
こちらはバルーンアーティストのDaisy Balloon(細貝里枝 氏、河田孝志 氏)による「構築」

レゴでできたドレス! しかも2着。 花瓶もレゴだしw
この他にも多々面白いアート作品がありましたが、画像が重くなるのでこれにて終了。会場外には実際にレゴブロックで遊べるワークショップコーナーもありました。
ということで、レゴブロックでここまで表現できるのかと驚きの展示でした。私も子供の頃によくレゴブロックで飛行機などを自作していたので、ちょっと懐かしい気分になったりしました。この展示はもう終わってしまいましたが、最近では名古屋にレゴランドも出来たみたいなので、今後もレゴには注目したいと思います。
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


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前回ご紹介したbunkamuraザ・ミュージアムの展示を観に行った際、bunkamuraル・シネマで映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」も観てきました。この記事には割と多めにネタバレが含まれていますので、これから事前知識無しで観たいという方はご注意ください。

【作品名】
ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ
【公式サイト】
http://www.transformer.co.jp/m/lecorbusier.eileen/
http://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/17_corbusier.html
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
結構混んでいて、チケットを取ったのがギリギリだったのでちょっと見づらい席での鑑賞となりました。
さて、この映画は日本でも国立西洋美術館の世界遺産入りで回顧が盛り上がっている建築家ル・コルビュジエと、女性家具デザイナーアイリーン・グレイの名前を冠したタイトルとなっています。早速ネタバレをしてしまいますが、このタイトルだけ観るとこの2人が主軸の映画のようですが、半分そうと言えますが半分は違っているように思います。というのも、主人公はアイリーン・グレイとその恋人で建築家・批評家の評論家ジャン・バドヴィッチ(ル・コルビュジエの仲間)で、ストーリーは2人の人間ドラマと、アイリーン・グレイの代表作である「E.1027」という家を如何に作り、その家がどうなって行ったかという話が主な筋書きです。勿論、その中でル・コルビュジエとアイリーン・グレイがお互いの建築論をぶつけ合う所なども非常に重要なポイントになってきますが、基本的にはアイリーン・グレイとジャン・バドヴィッチの視点で描かれ、ル・コルビュジエは狂言回しのような感じで出てきます。
ル・コルビュジエについては当ブログでも何度も取り上げているので下記の記事などを参考にして頂ければと思いますが、アイリーン・グレイについて簡単に説明すると、アイルランド出身の女性家具デザイナーで、主にフランスで活躍しました(劇中でも英語で話すことが多い) 最初はアール・デコ風の家具を作っていたようですが、1920年代頃からより先進的なデザインとなっていき、1925年にはスチールパイプを使った家具なども作り始めました。その才能はすぐに世間に評価され、自身のデザイン事務所を立ち上げるなどして成功を収め、当時から有名なデザイナーとなっていました。映画の冒頭にも出てきますが、2009年のクリスティーズのオークションでは「ドラゴンチェア」が約28億円で落札されるなど、今でも高い評価を受けるデザイナーです。
参考記事:
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想前編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想後編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと国立西洋美術館 (国立西洋美術館)
ル・コルビュジエ 「ラ・シテ・ラディユーズ(ユニテ・ダビタシオン)」 【南仏編 マルセイユ】
そしてアイリーン・グレイは映画でも描かれているジャン・バドヴィッチとの出会いをきっかけに、2人で住む家を制作する為ジャン・バドヴィッチから建築について学び、南仏のカップ・マルタン(ニースの東、モナコのちょっと東あたり)に「E.1027」という2人の名前を込めた別荘を建てました。この「E.1027」は長年ル・コルビュジエの建物と勘違いしていた人も多かったのですが、それにはいくつか理由がありそれがアイリーン・グレイのル・コルビュジエへの愛憎両極端の理由とも言えます。
まず、この建物はル・コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」(ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面)を参考にし、その要素を含んでいます。一方で、自分たちの住みやすさを重視した設計や装飾を廃する内装などアイリーン・グレイの感性も取り入れていて、細かいところまで計算された傑作となっています。しかしそのオリジナルな部分にル・コルビュジエは一種の嫉妬を感じたらしくアイリーン・グレイを批判をしています。また、恋人のジャン・バドヴィッチも手柄を横取りするようなことをしてアイリーン・グレイの不興を買い、徐々にお互いの間に溝が出来てしまって、やがてアイリーン・グレイはこの家を出て行くことになります。
そしてアイリーン・グレイは装飾の無い部分に美学があったようですが、彼女が去った後にル・コルビュジエは許可もなくそこに壁画を描いてしまいますw これがアイリーン・グレイを激怒させ、尊敬しているけれど許せない!というアンビバレントな感情へと繋がっていきます。ル・コルビュジエはこの家を批判したものの相当気に入っていたようで、後にすぐ裏に休暇小屋を建てるなどしているので、そうした彼の作品が周辺にあることもル・コルビュジエの設計と思われていた理由だと思われます(というかいつも勝手に家の中に上がり込んでるしw)
参考記事:中村好文展 小屋においでよ!(TOTOギャラリー・間)
この映画はそうした2人の美学の違いと衝突も面白いのですが、出て来る家具や建物が非常に美しいのも見どころです。私は今年の6月にニースに行ったのですが、この「E.1027」は時間的に諦めてしまったのを今更後悔しながら観ていました。先に映画を観てたら絶対に実物を観たかった…。
そしてもう1つ面白いのがル・コルビュジエの描写です。まず、登場シーンの半分くらいは上半身裸!w 南仏は暑いので仕方ないですが、こんなに裸だったの?ってくらい裸でうろつきますw また、自信家で人の言うことなんかお構いなしという性格で、アイリーン・グレイの感情を逆撫でる畜生ぶりを見せてくれましたw 一方で、この家がどんだけ好きやねん!と突っ込みたくなるくらい入り浸ってるので、アイリーン・グレイのことを心底から評価していたのは分かるかな。最後までこの家に魅せられて近くで溺れ死んでしまったのだから本望なのかも。
と、ちょっと長くなってしまいましたが他にも様々な見どころがあり、ストーリー的にも面白いと思います。勿論、事前にこの2人について知っておいたほうが楽しめると思いますので、ご興味ある方は簡単にでも2人の作品や生涯について調べてから観ることをお勧めします。
なお、この映画は恐らくbunkamuraでしか上映していないようです。2017/11/24(金)までは上映予定となっておりますが、もう期間も短いので気になる方はお早めにどうぞ。
おまけ:
映画館の中には簡単に予習できるアイリーン・グレイとル・コルビュジエの年表などもありました。ちょっと早めに行って予習するのも良いかと。


【作品名】
ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ
【公式サイト】
http://www.transformer.co.jp/m/lecorbusier.eileen/
http://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/17_corbusier.html
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
結構混んでいて、チケットを取ったのがギリギリだったのでちょっと見づらい席での鑑賞となりました。
さて、この映画は日本でも国立西洋美術館の世界遺産入りで回顧が盛り上がっている建築家ル・コルビュジエと、女性家具デザイナーアイリーン・グレイの名前を冠したタイトルとなっています。早速ネタバレをしてしまいますが、このタイトルだけ観るとこの2人が主軸の映画のようですが、半分そうと言えますが半分は違っているように思います。というのも、主人公はアイリーン・グレイとその恋人で建築家・批評家の評論家ジャン・バドヴィッチ(ル・コルビュジエの仲間)で、ストーリーは2人の人間ドラマと、アイリーン・グレイの代表作である「E.1027」という家を如何に作り、その家がどうなって行ったかという話が主な筋書きです。勿論、その中でル・コルビュジエとアイリーン・グレイがお互いの建築論をぶつけ合う所なども非常に重要なポイントになってきますが、基本的にはアイリーン・グレイとジャン・バドヴィッチの視点で描かれ、ル・コルビュジエは狂言回しのような感じで出てきます。
ル・コルビュジエについては当ブログでも何度も取り上げているので下記の記事などを参考にして頂ければと思いますが、アイリーン・グレイについて簡単に説明すると、アイルランド出身の女性家具デザイナーで、主にフランスで活躍しました(劇中でも英語で話すことが多い) 最初はアール・デコ風の家具を作っていたようですが、1920年代頃からより先進的なデザインとなっていき、1925年にはスチールパイプを使った家具なども作り始めました。その才能はすぐに世間に評価され、自身のデザイン事務所を立ち上げるなどして成功を収め、当時から有名なデザイナーとなっていました。映画の冒頭にも出てきますが、2009年のクリスティーズのオークションでは「ドラゴンチェア」が約28億円で落札されるなど、今でも高い評価を受けるデザイナーです。
参考記事:
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想前編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想後編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと国立西洋美術館 (国立西洋美術館)
ル・コルビュジエ 「ラ・シテ・ラディユーズ(ユニテ・ダビタシオン)」 【南仏編 マルセイユ】
そしてアイリーン・グレイは映画でも描かれているジャン・バドヴィッチとの出会いをきっかけに、2人で住む家を制作する為ジャン・バドヴィッチから建築について学び、南仏のカップ・マルタン(ニースの東、モナコのちょっと東あたり)に「E.1027」という2人の名前を込めた別荘を建てました。この「E.1027」は長年ル・コルビュジエの建物と勘違いしていた人も多かったのですが、それにはいくつか理由がありそれがアイリーン・グレイのル・コルビュジエへの愛憎両極端の理由とも言えます。
まず、この建物はル・コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」(ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面)を参考にし、その要素を含んでいます。一方で、自分たちの住みやすさを重視した設計や装飾を廃する内装などアイリーン・グレイの感性も取り入れていて、細かいところまで計算された傑作となっています。しかしそのオリジナルな部分にル・コルビュジエは一種の嫉妬を感じたらしくアイリーン・グレイを批判をしています。また、恋人のジャン・バドヴィッチも手柄を横取りするようなことをしてアイリーン・グレイの不興を買い、徐々にお互いの間に溝が出来てしまって、やがてアイリーン・グレイはこの家を出て行くことになります。
そしてアイリーン・グレイは装飾の無い部分に美学があったようですが、彼女が去った後にル・コルビュジエは許可もなくそこに壁画を描いてしまいますw これがアイリーン・グレイを激怒させ、尊敬しているけれど許せない!というアンビバレントな感情へと繋がっていきます。ル・コルビュジエはこの家を批判したものの相当気に入っていたようで、後にすぐ裏に休暇小屋を建てるなどしているので、そうした彼の作品が周辺にあることもル・コルビュジエの設計と思われていた理由だと思われます(というかいつも勝手に家の中に上がり込んでるしw)
参考記事:中村好文展 小屋においでよ!(TOTOギャラリー・間)
この映画はそうした2人の美学の違いと衝突も面白いのですが、出て来る家具や建物が非常に美しいのも見どころです。私は今年の6月にニースに行ったのですが、この「E.1027」は時間的に諦めてしまったのを今更後悔しながら観ていました。先に映画を観てたら絶対に実物を観たかった…。
そしてもう1つ面白いのがル・コルビュジエの描写です。まず、登場シーンの半分くらいは上半身裸!w 南仏は暑いので仕方ないですが、こんなに裸だったの?ってくらい裸でうろつきますw また、自信家で人の言うことなんかお構いなしという性格で、アイリーン・グレイの感情を逆撫でる畜生ぶりを見せてくれましたw 一方で、この家がどんだけ好きやねん!と突っ込みたくなるくらい入り浸ってるので、アイリーン・グレイのことを心底から評価していたのは分かるかな。最後までこの家に魅せられて近くで溺れ死んでしまったのだから本望なのかも。
と、ちょっと長くなってしまいましたが他にも様々な見どころがあり、ストーリー的にも面白いと思います。勿論、事前にこの2人について知っておいたほうが楽しめると思いますので、ご興味ある方は簡単にでも2人の作品や生涯について調べてから観ることをお勧めします。
なお、この映画は恐らくbunkamuraでしか上映していないようです。2017/11/24(金)までは上映予定となっておりますが、もう期間も短いので気になる方はお早めにどうぞ。
おまけ:
映画館の中には簡単に予習できるアイリーン・グレイとル・コルビュジエの年表などもありました。ちょっと早めに行って予習するのも良いかと。

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10日程前の土曜日に渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代」を観てきました。

【展覧名】
オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel/
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅
【会期】2017/10/7(土)~12/17(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間45分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
夜に行ったこともあり、空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示はドイツに生まれスイスに亡命して活動した画家オットー・ネーベルについての展示です。オットー・ネーベルはパウル・クレーと深い親交を結んだ画家で、割と画風もクレーに似ていているように思います。今回はその2人の交流を軸に、カンディンスキーやシャガールなど周辺の画家も交えつつ あまり日本で知られていないオットー・ネーベルの魅力を伝える内容となっています。時代の変遷や題材によって12の章に分かれた構成となっていましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。
<プロローグ:オットー・ネーベル -「シュトゥルム」と「バウハウス」時代の芸術家>
まずはオットー・ネーベルの画業の始まりについてのコーナーです。オットー・ネーベルは最初から画家を志していたわけではなく、俳優の養成所に通ったり建築技師として出発したそうです。さらに詩を書いたりもしたそうで、様々な分野への感心があったことが伺えます。その後、兵役中にフランツ・マルクの作品に感銘を受けて絵画への感心を深めていきます。そしてドイツのヴァイマールにある美術学校バウハウスと縁が深い雑誌「シュトゥルム」の仕事や、奥さんがバウハウスでアシスタントとして働いていたこともあってバウハウスにいた面々と知己を得ていき、そこでパウル・クレーやカンディンスキーと出会いました。(オットー・ネーベル自身はバウハウスで直接的な活動をした訳ではないようです)
ここにはバウハウスでデザインされた家具や雑貨、バウハウス展のポスターなどが並んでいました。すっきりしたシンプルなデザインのものが多く、先進的な印象を受けます。また、オットー・ネーベルによる雑誌「シュトゥルム」に載せたリノカット(合成樹脂を彫った版画)がありました。月と十字を組み合わせた絵で、既に斬新なセンスがあるように思えました。
<1.初期作品>
続いては初期作品のコーナーです。オットー・ネーベルの初期(1920年代)の頃の作品は1943年の空襲の際に大半が失われたようで、貴重な品が並んでいます。
ここにはシャガールの作品も並んでいたのですが、この頃のオットー・ネーベルの作品の中にはシャガールからの影響を感じさせる作品がいくつかあります。コラージュ的なモチーフや色合いがそう思わせるのですが、実際にオットー・ネーベルは雑誌「シュトゥルム」の仕事を通じてシャガールの作品を観る機会があったそうです。(2人が会ったことがあるかどうかは不明)
また、重厚な色彩で幾何学的な構成のキュビスム的な作品や、1920年代後半にスイスに篭って描いた南国風の強い色彩の作品など、様々な画風にチャレンジしていた様子も分かります。それぞれ後の作風にも反映されているように思えるので、一旦最後まで展示を観た後に観返してみるのも面白いと思います。
この章にはパウル・クレーの作品もありました。オットー・ネーベルもクレーも「退廃芸術」としてナチスに追われ、1933年にスイスのベルンに移住していて、お互いそこで苦労しながらも家族ぐるみで支え合ったようです。当時は外国人には仕事もなかったようで辛い日々だったのだとか。ここにあるクレー作品には「移住していく」という作品もあり、その時代の立場を感じさせるものもありました。
ちなみにオットー・ネーベルはこの頃に製紙工場を作ったりもしていたようです。すぐに止めてしまったようですが、本当に多彩な活動をしていたようです。
<2.建築的景観>
続いてはスイスに行く少し前の1930年前後に描いた「建築的景観」をテーマにした作品が並ぶコーナーです。建築技師を目指しただけあって建築に興味があったのは想像に難くないですが、ここには直線を多用した海辺の風景を描いたものがあり、三角や四角などを使って建物も描いています。やや抽象的ながらも具象の面白さも残っている作風で、色は強いものと淡いものがありました。色彩が違っても落ち着いた印象を受けるのは同じなので、単に強弱の違いなのかも知れません。
なお、この色彩感覚については後述の4章で出て来る「イタリアのカラーアトラス」という1931年に作った色見本帳が重要な存在で、その作品以降のオットー・ネーベル自身に大きな影響を与えていくことになります。
<3.大聖堂とカテドラル>
続いては教会の内部などを描いた作品が並ぶコーナーで、ここは5点しか無いものの1931~47年頃まで時代の幅があります。やや大きめの作品で、柱やステンドグラスを落ち着いた色彩で平坦に描き、幾何学的な美しさと色彩のセンスが光る作品だと思います。少数ながらもかなり気に入った章でした。
<4.イタリアの色彩>
続いては今回のポスターにもなっている先述の「イタリアのカラーアトラス」があるコーナーです。オットー・ネーベルは1931年にイタリアに3ヶ月滞在したそうで、様々な場所で目にした色を色見本帳という形でまとめました。観た感じはスケッチブックに四角の色面を規則正しく並べているだけに思えますが、微妙な色彩の違いを表してメモなども書き残しているようでした。これがこの後のオットー・ネーベルには欠かせない基礎となっていきます。
ここにはイタリアの町を描いた作品もありました。やはり四角や円を多用する幾何学的な単純化を施していて、落ち着いた色彩で表現されています。クレーの作風に通じるものがあり、いずれの作品にもリズム感があるように思えました。
これはbunkamuraのショーウィンドウに飾ってあったレプリカの写真。

こうした作品がいくつか並んでいます。
この辺に映像コーナーがありました。クレーとの交流やクレーとの作風の違いなども解説してくれます。風景を幾何学的に描くのはクレーと同じですが、オットー・ネーベルはミリ単位の細かい点描を使っているのが特徴で、一種のタイル画的な感じがします。また、オットー・ネーベルの人柄を表すエピソードも面白くて、自身の全ての絵の解説を記録してらしく、点描の点の数までも把握していたのだとか。 …かなり細かい性格なのかもしれませんねw
<5.千の眺めの町 ムサルターヤ>
続いてもイタリアのコーナーです。1937~38年(スイスに亡命中)にイタリアのフィレンツェに滞在し、シリーズ作「ムサルターヤの町」を描きました。ここはそのうち4点と東洋人を描いた作品1点だけですが、前述した細かい点描を施した「描かれたモザイク画」の技法の絵も展示されています。このシリーズでこの技法が生まれたようで、途方もないほど細かい点が打たれているのがよく分かりました。これを数えたとか嘘でしょ?w
<6.「音楽的」作品>
続いては「音楽的」な作品のコーナーです。何が音楽的かというと、タイトルが音楽用語になっていて、細かい線と点を使いこれまでの直線的な表現とは異なる有機的な形が飛び跳ねるように描かれた抽象画になっています。これはカンディンスキーの得意とする表現に通じるものがあるかな。温かみを感じる色彩が多いのはオットー・ネーベルの特徴かも。本人はこうした作品を「非対象的」と言っていたそうです。
ここにはカンディンスキーの作品も2点あり、その影響や違いなどを観ることができました。カンディンスキーはオットー・ネーベルとは長い間の友人で、ゲッテンハイム財団にかけあってオットー・ネーベルの生活の支援を取り付けるなど、苦しい時に助けてくれたようです。
<7.抽象/非対象>
続いては徐々に具象から離れていった頃のコーナーです。オットー・ネーベルは1938年から「非対象」という言葉を使い始め具象を離れていったようです。ここにある作品は1936~1973年までかなり幅広い年代になっているので一概には言えませんが、クレーやカンディンスキーの作風に似た幾何学的な作品が多く並びます。やはり細かい点が打たれているところに違いが感じられるかな。色も線も軽やかな印象を受けます。
ちょっと面白いエピソードとして、オットー・ネーベルは1935年のクリスマスに奥さんからプレゼントで中国の易経の本を貰ったそうです。そこに載っていた卦のヘキサグラムを観て自分の作風の後押しであると感じ取ったようで、易経から影響を受けたタイトルの作品もありました(絵自体は他と似た感じでしたが)
ここにもカンディンスキーの石版画が数点ありました。(宮城県美術館からの出品が多く、パナソニックミュージアムにも沢山出品しているのにここにもあるとは…恐るべしコレクション)
<8.ルーン文字の言葉と絵画>
ここから先は時代順が結構バラバラで、題材ごとに章分けされてる感じです。この章ではルーン文字(ゲルマン人が使っていた古北欧語)をモチーフに使った作品が並びます。私はルーン文字を正確に知っている訳ではないのですが、うねった象形文字みたいなものが絵画的に表現されています。これはクレーの作品だろう?と思ってキャプションをみたらオットー・ネーベルだった作品もあって、結構画風が似ているものもありますw ここはやや点数多めでした。
<9.近東シリーズ>
こちらは1962年にイスタンブールやソチに旅行した時に触発された作品のコーナーで、4点しかありませんが先程のルーン文字と似た感じ作風かな。象形文字みたいなモチーフを使った抽象画が並んでいました。(ちょっと具象が入ったのもあるかな。)
<10.演劇と仮面>
続いては演劇などをテーマにした作品のコーナー。若い頃に俳優の養成所に通っていたのが幸いしたのか、スイスの亡命中は演劇で日々の生活の糧を得ていたそうで、奥さんと共演したこともあったそうです。ここにはそうした演劇への感心や仮面などから取材したと思われる作品が並び、色面を使って平坦に表された人物像などがありました。ピカソのキュビスムを思い起こすものもありましたが、基本的にはここまで観てきたスタイルで描いたもので、独特の面白味を感じました。
<11.リノカットとコラージュ -ネーベルの技法の多様性>
最後はリノカット版画のコーナーで、白黒と多色摺りの療法が並んでいます。技法が変わってもオットー・ネーベルらしさが出ているように感じるかな。版木やスケッチブックなども展示されていました。
ということで、bunkamuraらしい良質な展示であまり知らなかったオットー・ネーベルの魅力について詳しく知ることができました。特にクレーが好きな方はきっとこの展示も楽しめると思います。以前の記事にも書いたように、この展示はパナソニック 汐留ミュージアムの「表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち 」と東京ステーションギャラリーの「シャガール 三次元の世界」と相互半券割引サービスもやっているようなので、三館制覇してみるのも楽しいと思います。
参考記事:
表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち (パナソニック 汐留ミュージアム)
シャガール 三次元の世界 (東京ステーションギャラリー)
おまけ:
bunkamuraの通り沿いのショーウィンドウにあったレプリカの写真。細かい点の数がいくつあるか数えてみてくださいw 眼精疲労でぶっ倒れると困るので程々にw






【展覧名】
オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel/
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅
【会期】2017/10/7(土)~12/17(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間45分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
夜に行ったこともあり、空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示はドイツに生まれスイスに亡命して活動した画家オットー・ネーベルについての展示です。オットー・ネーベルはパウル・クレーと深い親交を結んだ画家で、割と画風もクレーに似ていているように思います。今回はその2人の交流を軸に、カンディンスキーやシャガールなど周辺の画家も交えつつ あまり日本で知られていないオットー・ネーベルの魅力を伝える内容となっています。時代の変遷や題材によって12の章に分かれた構成となっていましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。
<プロローグ:オットー・ネーベル -「シュトゥルム」と「バウハウス」時代の芸術家>
まずはオットー・ネーベルの画業の始まりについてのコーナーです。オットー・ネーベルは最初から画家を志していたわけではなく、俳優の養成所に通ったり建築技師として出発したそうです。さらに詩を書いたりもしたそうで、様々な分野への感心があったことが伺えます。その後、兵役中にフランツ・マルクの作品に感銘を受けて絵画への感心を深めていきます。そしてドイツのヴァイマールにある美術学校バウハウスと縁が深い雑誌「シュトゥルム」の仕事や、奥さんがバウハウスでアシスタントとして働いていたこともあってバウハウスにいた面々と知己を得ていき、そこでパウル・クレーやカンディンスキーと出会いました。(オットー・ネーベル自身はバウハウスで直接的な活動をした訳ではないようです)
ここにはバウハウスでデザインされた家具や雑貨、バウハウス展のポスターなどが並んでいました。すっきりしたシンプルなデザインのものが多く、先進的な印象を受けます。また、オットー・ネーベルによる雑誌「シュトゥルム」に載せたリノカット(合成樹脂を彫った版画)がありました。月と十字を組み合わせた絵で、既に斬新なセンスがあるように思えました。
<1.初期作品>
続いては初期作品のコーナーです。オットー・ネーベルの初期(1920年代)の頃の作品は1943年の空襲の際に大半が失われたようで、貴重な品が並んでいます。
ここにはシャガールの作品も並んでいたのですが、この頃のオットー・ネーベルの作品の中にはシャガールからの影響を感じさせる作品がいくつかあります。コラージュ的なモチーフや色合いがそう思わせるのですが、実際にオットー・ネーベルは雑誌「シュトゥルム」の仕事を通じてシャガールの作品を観る機会があったそうです。(2人が会ったことがあるかどうかは不明)
また、重厚な色彩で幾何学的な構成のキュビスム的な作品や、1920年代後半にスイスに篭って描いた南国風の強い色彩の作品など、様々な画風にチャレンジしていた様子も分かります。それぞれ後の作風にも反映されているように思えるので、一旦最後まで展示を観た後に観返してみるのも面白いと思います。
この章にはパウル・クレーの作品もありました。オットー・ネーベルもクレーも「退廃芸術」としてナチスに追われ、1933年にスイスのベルンに移住していて、お互いそこで苦労しながらも家族ぐるみで支え合ったようです。当時は外国人には仕事もなかったようで辛い日々だったのだとか。ここにあるクレー作品には「移住していく」という作品もあり、その時代の立場を感じさせるものもありました。
ちなみにオットー・ネーベルはこの頃に製紙工場を作ったりもしていたようです。すぐに止めてしまったようですが、本当に多彩な活動をしていたようです。
<2.建築的景観>
続いてはスイスに行く少し前の1930年前後に描いた「建築的景観」をテーマにした作品が並ぶコーナーです。建築技師を目指しただけあって建築に興味があったのは想像に難くないですが、ここには直線を多用した海辺の風景を描いたものがあり、三角や四角などを使って建物も描いています。やや抽象的ながらも具象の面白さも残っている作風で、色は強いものと淡いものがありました。色彩が違っても落ち着いた印象を受けるのは同じなので、単に強弱の違いなのかも知れません。
なお、この色彩感覚については後述の4章で出て来る「イタリアのカラーアトラス」という1931年に作った色見本帳が重要な存在で、その作品以降のオットー・ネーベル自身に大きな影響を与えていくことになります。
<3.大聖堂とカテドラル>
続いては教会の内部などを描いた作品が並ぶコーナーで、ここは5点しか無いものの1931~47年頃まで時代の幅があります。やや大きめの作品で、柱やステンドグラスを落ち着いた色彩で平坦に描き、幾何学的な美しさと色彩のセンスが光る作品だと思います。少数ながらもかなり気に入った章でした。
<4.イタリアの色彩>
続いては今回のポスターにもなっている先述の「イタリアのカラーアトラス」があるコーナーです。オットー・ネーベルは1931年にイタリアに3ヶ月滞在したそうで、様々な場所で目にした色を色見本帳という形でまとめました。観た感じはスケッチブックに四角の色面を規則正しく並べているだけに思えますが、微妙な色彩の違いを表してメモなども書き残しているようでした。これがこの後のオットー・ネーベルには欠かせない基礎となっていきます。
ここにはイタリアの町を描いた作品もありました。やはり四角や円を多用する幾何学的な単純化を施していて、落ち着いた色彩で表現されています。クレーの作風に通じるものがあり、いずれの作品にもリズム感があるように思えました。
これはbunkamuraのショーウィンドウに飾ってあったレプリカの写真。

こうした作品がいくつか並んでいます。
この辺に映像コーナーがありました。クレーとの交流やクレーとの作風の違いなども解説してくれます。風景を幾何学的に描くのはクレーと同じですが、オットー・ネーベルはミリ単位の細かい点描を使っているのが特徴で、一種のタイル画的な感じがします。また、オットー・ネーベルの人柄を表すエピソードも面白くて、自身の全ての絵の解説を記録してらしく、点描の点の数までも把握していたのだとか。 …かなり細かい性格なのかもしれませんねw
<5.千の眺めの町 ムサルターヤ>
続いてもイタリアのコーナーです。1937~38年(スイスに亡命中)にイタリアのフィレンツェに滞在し、シリーズ作「ムサルターヤの町」を描きました。ここはそのうち4点と東洋人を描いた作品1点だけですが、前述した細かい点描を施した「描かれたモザイク画」の技法の絵も展示されています。このシリーズでこの技法が生まれたようで、途方もないほど細かい点が打たれているのがよく分かりました。これを数えたとか嘘でしょ?w
<6.「音楽的」作品>
続いては「音楽的」な作品のコーナーです。何が音楽的かというと、タイトルが音楽用語になっていて、細かい線と点を使いこれまでの直線的な表現とは異なる有機的な形が飛び跳ねるように描かれた抽象画になっています。これはカンディンスキーの得意とする表現に通じるものがあるかな。温かみを感じる色彩が多いのはオットー・ネーベルの特徴かも。本人はこうした作品を「非対象的」と言っていたそうです。
ここにはカンディンスキーの作品も2点あり、その影響や違いなどを観ることができました。カンディンスキーはオットー・ネーベルとは長い間の友人で、ゲッテンハイム財団にかけあってオットー・ネーベルの生活の支援を取り付けるなど、苦しい時に助けてくれたようです。
<7.抽象/非対象>
続いては徐々に具象から離れていった頃のコーナーです。オットー・ネーベルは1938年から「非対象」という言葉を使い始め具象を離れていったようです。ここにある作品は1936~1973年までかなり幅広い年代になっているので一概には言えませんが、クレーやカンディンスキーの作風に似た幾何学的な作品が多く並びます。やはり細かい点が打たれているところに違いが感じられるかな。色も線も軽やかな印象を受けます。
ちょっと面白いエピソードとして、オットー・ネーベルは1935年のクリスマスに奥さんからプレゼントで中国の易経の本を貰ったそうです。そこに載っていた卦のヘキサグラムを観て自分の作風の後押しであると感じ取ったようで、易経から影響を受けたタイトルの作品もありました(絵自体は他と似た感じでしたが)
ここにもカンディンスキーの石版画が数点ありました。(宮城県美術館からの出品が多く、パナソニックミュージアムにも沢山出品しているのにここにもあるとは…恐るべしコレクション)
<8.ルーン文字の言葉と絵画>
ここから先は時代順が結構バラバラで、題材ごとに章分けされてる感じです。この章ではルーン文字(ゲルマン人が使っていた古北欧語)をモチーフに使った作品が並びます。私はルーン文字を正確に知っている訳ではないのですが、うねった象形文字みたいなものが絵画的に表現されています。これはクレーの作品だろう?と思ってキャプションをみたらオットー・ネーベルだった作品もあって、結構画風が似ているものもありますw ここはやや点数多めでした。
<9.近東シリーズ>
こちらは1962年にイスタンブールやソチに旅行した時に触発された作品のコーナーで、4点しかありませんが先程のルーン文字と似た感じ作風かな。象形文字みたいなモチーフを使った抽象画が並んでいました。(ちょっと具象が入ったのもあるかな。)
<10.演劇と仮面>
続いては演劇などをテーマにした作品のコーナー。若い頃に俳優の養成所に通っていたのが幸いしたのか、スイスの亡命中は演劇で日々の生活の糧を得ていたそうで、奥さんと共演したこともあったそうです。ここにはそうした演劇への感心や仮面などから取材したと思われる作品が並び、色面を使って平坦に表された人物像などがありました。ピカソのキュビスムを思い起こすものもありましたが、基本的にはここまで観てきたスタイルで描いたもので、独特の面白味を感じました。
<11.リノカットとコラージュ -ネーベルの技法の多様性>
最後はリノカット版画のコーナーで、白黒と多色摺りの療法が並んでいます。技法が変わってもオットー・ネーベルらしさが出ているように感じるかな。版木やスケッチブックなども展示されていました。
ということで、bunkamuraらしい良質な展示であまり知らなかったオットー・ネーベルの魅力について詳しく知ることができました。特にクレーが好きな方はきっとこの展示も楽しめると思います。以前の記事にも書いたように、この展示はパナソニック 汐留ミュージアムの「表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち 」と東京ステーションギャラリーの「シャガール 三次元の世界」と相互半券割引サービスもやっているようなので、三館制覇してみるのも楽しいと思います。
参考記事:
表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち (パナソニック 汐留ミュージアム)
シャガール 三次元の世界 (東京ステーションギャラリー)
おまけ:
bunkamuraの通り沿いのショーウィンドウにあったレプリカの写真。細かい点の数がいくつあるか数えてみてくださいw 眼精疲労でぶっ倒れると困るので程々にw




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今日も無料で観られるギャラリー巡りです。前回の新橋から1駅離れた有楽町駅の北西あたりにあるGOOD DESIGN Marunouchiで「GOOD DESIGN AWARD 2017 食べるデザイン」という展示を観てきました。この展示は既に終了していますが、撮影可能となっていたので写真を使ってご紹介しようと思います。

【展覧名】
GOOD DESIGN AWARD 2017 食べるデザイン
【公式サイト】
https://www.g-mark.org/gdm/exhibition30.html
【会場】GOOD DESIGN Marunouchi
【最寄】有楽町駅
【会期】2017/11/1(水)~11/13(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
私が行った日は後述するイベントを開催していたこともあって結構お客さんが多かったですが、普段はそこまで混んでいない施設だと思います。
さて、この施設はこのブログが休止していた2015年の夏くらいに有楽町近く(出光美術館と三菱一号館美術館の間くらい)に出来た施設で、その名の通りGOOD DESIGN賞を受賞した品々などを紹介する展示を行っています。 今回は2017年に受賞した作品のうち、「食」に関するものがピックアップして並んでいました。冒頭にも書いた通り、ここは撮影可能となっていますので詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
ゑびや 「ブランディング [伊勢 ゑびや]」

こちらは伊勢にあるお土産物屋さんのブランディング。伊勢海老と恵比寿様を掛けて「ゑびや」という名前にしているそうで、伊勢海老のマークが分かりやすい。他のマークも含めて好みの単純化でした。
株式会社インプロバイド 「北海道のお土産サービス [旬を届ける。TABEGORO(タベゴロー)]」

こちらもお土産品ですが、これは店舗で実物ではなく申し込み用紙を買って、家に帰ってから魚介や生鮮食品の宅配手配をすることで新鮮な旬のものをお土産に出来るという仕組み。グッドデザイン賞はこうした仕組みやプロジェクトもデザインとみなして対象としているのが特徴かな。 観光中の荷物にならないのは嬉しいけど、帰ったらすぐ食べたい派にとっては買った店で宅配便で出すのと違いがないかも…w
白山陶器株式会社 「ボール [コメット]」

こちらはシンプルな形のボールですが、サイズ違いのボールを重ねて収納することができるデザインです。大きさが違うものが複数あると用途が分けられるので便利だし、重ね置き出来るとキッチンがスッキリするのも良いと思います。単純に1つ1つの形も有機的で好み。
株式会社長門屋本店 「和菓子 [PONTE シリーズ]」

こちらは福島の和菓子屋さんの和菓子。このシュルレアリスムの絵画みたいな切り口が何とも面白い。
株式会社明治 「チョコレート [明治THE chocolate]」

こちらはご存知の方も多いかな。チョコレートっぽくないパッケージも話題になりましたが、受賞理由はそこではなくカカオ農家への支援に関してでした。育成技術の向上や適正価格での継続購入などを行い、現地との良好な関係を築いた点が評価されたようです。カカオは中国などの新興国がガンガン買ってるので、そのうち高級化して食べられなくなるかも?なんて話もあるので、これは納得。ただでさえカカオは育てづらいし。
参考記事:
チョコレート展 感想前編(国立科学博物館)
チョコレート展 感想後編(国立科学博物館)
NPO法人ちょうしがよくなるくらぶ 「非常食および非常用具 [もしものおまもり]」

非常食をお守りのデザインにしたもので、もしもの時は食べられるお守りです。非常食は実用性オンリーみたいな所があって普段おうちに置くのは不格好なところもありますが、こういうデザイン化する発想があれば身近にいつも置いておきたくなるかも。
BambooCut 「梅干し [備え梅]」

こちらも非常食。「うれしい備災品」を目指した梅干しで、これもお守りみたいになっています。クエン酸が多いので疲労防止になるようですが、私は漬物全般が苦手なので嬉しくないかもw 連れはメッチャ欲しい!を連呼してたので、梅干し好きには嬉しい備災品のようです。
黒保根おいしいお米をつくる会 お米 [求人米「あととりむすこ」]

こちらは農家の後継者を求める広告。「農家の一番の広告は、つくった美味しい作物である。」という考えから生まれたそうで、確かにこれを食べればどういうお米かよく分かりそう。英語版もあるところを観ると門戸は日本人に限られていなそうですが、それだけ後継者不足が深刻なのが伺えます。
NKアグリ株式会社 「にんじん [こいくれない]」

こちらは赤が深い人参で、見た目も独特ですが普通の人参には入っていないリコピンを含んでいるそうです。旬になるのを全国のセンサーで予測して出荷するなど、テクノロジーを活用しているのも驚きの人参です。
神山しずくプロジェクト 「食器 [SHIZQ]」

これは徳島県神山町産杉を材料とした食器ブランド。木目の美しさが木のぬくもりを感じさせます。こちらも林業の衰退に危機感を持って作られたそうで、デザインを通じて日本の様々な第一次産業の現在が見えるように思いました。みんな戦ってますね…。
大堀相馬焼 松永窯 「クロテラス」

こちらは書道の硯に使う素材を釉薬として使った食器。黒々して緑や黄色が映えそうな落ち着いた雰囲気が好みでした。これも福島の相馬焼きということで、被災地復興の1つと言えそうです。
リヤカーゴプロジェクト 「リヤカーゴ」

これはリアカーとカーゴが合体した一種の屋台。様々な場所に出向くことができるようで、これも震災復興に関係しているようです。こんなにコンパクトなのに収容力が結構ありそうでした。
ということで、デザインと一口に言ってもプロダクトだけでなくプロジェクトなども対象になっていて、幅広い内容となっていました。(今回ご紹介しなかった品も公式サイトに写真と説明が載っています) 既に次の展示も始まっていますが、ここは常に最先端のデザインに出会うことができる場所なので、出光美術館や三菱一号館美術館に行く際にはハシゴして寄ってみるのも良いかと思います。
ちなみに今年の4月にはこの施設からも近いKITTE丸の内の3階に、グッドデザイン賞受賞商品の専門店「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」もオープンしています。
参考リンク:GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA
おまけ:
今回、この施設の前にある通りで「ジャパンハーヴェスト」という農業に関する展示が行われていました。(それを観に行ったついでに寄りました)
公式サイト:ジャパンハーヴェスト2017
期間:2017/11/4~5
会場はこんな感じ。

東京駅前から御幸通り/丸の内仲通りを通って有楽町駅近くまで続いています。
会場の通りはこんな感じでかなりの活気でした。

スタンプラリーをしてくじ引きをしたらジャガイモまで貰えましたw
こちらは作物収穫体験のコーナー。

凄い混んでいたので諦めましたが、東京のど真ん中で農業体験ができるのが面白いw
東京駅前では「大田楽」という踊りも披露されていました。

非常に躍動感のある踊りで、見ごたえがありました。
他にも様々なブースがあって楽しめました。今回、グッドデザイン賞も食をテーマにしたのは間違いなくこのイベントに合わせたものだったんでしょうね。
おまけ2
この展示もですが、短期の展示はブログで記事を書く前に終了するケースが多くて申し訳ないです。常に2週間分くらいは記事のネタをストックしているので、どうしても記事化が遅れてしまいます…。先日からその補完としてツイッターで速報を入れるようにしましたので、そちらも参考にして頂けると嬉しいです。
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【展覧名】
GOOD DESIGN AWARD 2017 食べるデザイン
【公式サイト】
https://www.g-mark.org/gdm/exhibition30.html
【会場】GOOD DESIGN Marunouchi
【最寄】有楽町駅
【会期】2017/11/1(水)~11/13(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
私が行った日は後述するイベントを開催していたこともあって結構お客さんが多かったですが、普段はそこまで混んでいない施設だと思います。
さて、この施設はこのブログが休止していた2015年の夏くらいに有楽町近く(出光美術館と三菱一号館美術館の間くらい)に出来た施設で、その名の通りGOOD DESIGN賞を受賞した品々などを紹介する展示を行っています。 今回は2017年に受賞した作品のうち、「食」に関するものがピックアップして並んでいました。冒頭にも書いた通り、ここは撮影可能となっていますので詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
ゑびや 「ブランディング [伊勢 ゑびや]」

こちらは伊勢にあるお土産物屋さんのブランディング。伊勢海老と恵比寿様を掛けて「ゑびや」という名前にしているそうで、伊勢海老のマークが分かりやすい。他のマークも含めて好みの単純化でした。
株式会社インプロバイド 「北海道のお土産サービス [旬を届ける。TABEGORO(タベゴロー)]」

こちらもお土産品ですが、これは店舗で実物ではなく申し込み用紙を買って、家に帰ってから魚介や生鮮食品の宅配手配をすることで新鮮な旬のものをお土産に出来るという仕組み。グッドデザイン賞はこうした仕組みやプロジェクトもデザインとみなして対象としているのが特徴かな。 観光中の荷物にならないのは嬉しいけど、帰ったらすぐ食べたい派にとっては買った店で宅配便で出すのと違いがないかも…w
白山陶器株式会社 「ボール [コメット]」

こちらはシンプルな形のボールですが、サイズ違いのボールを重ねて収納することができるデザインです。大きさが違うものが複数あると用途が分けられるので便利だし、重ね置き出来るとキッチンがスッキリするのも良いと思います。単純に1つ1つの形も有機的で好み。
株式会社長門屋本店 「和菓子 [PONTE シリーズ]」

こちらは福島の和菓子屋さんの和菓子。このシュルレアリスムの絵画みたいな切り口が何とも面白い。
株式会社明治 「チョコレート [明治THE chocolate]」

こちらはご存知の方も多いかな。チョコレートっぽくないパッケージも話題になりましたが、受賞理由はそこではなくカカオ農家への支援に関してでした。育成技術の向上や適正価格での継続購入などを行い、現地との良好な関係を築いた点が評価されたようです。カカオは中国などの新興国がガンガン買ってるので、そのうち高級化して食べられなくなるかも?なんて話もあるので、これは納得。ただでさえカカオは育てづらいし。
参考記事:
チョコレート展 感想前編(国立科学博物館)
チョコレート展 感想後編(国立科学博物館)
NPO法人ちょうしがよくなるくらぶ 「非常食および非常用具 [もしものおまもり]」

非常食をお守りのデザインにしたもので、もしもの時は食べられるお守りです。非常食は実用性オンリーみたいな所があって普段おうちに置くのは不格好なところもありますが、こういうデザイン化する発想があれば身近にいつも置いておきたくなるかも。
BambooCut 「梅干し [備え梅]」

こちらも非常食。「うれしい備災品」を目指した梅干しで、これもお守りみたいになっています。クエン酸が多いので疲労防止になるようですが、私は漬物全般が苦手なので嬉しくないかもw 連れはメッチャ欲しい!を連呼してたので、梅干し好きには嬉しい備災品のようです。
黒保根おいしいお米をつくる会 お米 [求人米「あととりむすこ」]

こちらは農家の後継者を求める広告。「農家の一番の広告は、つくった美味しい作物である。」という考えから生まれたそうで、確かにこれを食べればどういうお米かよく分かりそう。英語版もあるところを観ると門戸は日本人に限られていなそうですが、それだけ後継者不足が深刻なのが伺えます。
NKアグリ株式会社 「にんじん [こいくれない]」

こちらは赤が深い人参で、見た目も独特ですが普通の人参には入っていないリコピンを含んでいるそうです。旬になるのを全国のセンサーで予測して出荷するなど、テクノロジーを活用しているのも驚きの人参です。
神山しずくプロジェクト 「食器 [SHIZQ]」

これは徳島県神山町産杉を材料とした食器ブランド。木目の美しさが木のぬくもりを感じさせます。こちらも林業の衰退に危機感を持って作られたそうで、デザインを通じて日本の様々な第一次産業の現在が見えるように思いました。みんな戦ってますね…。
大堀相馬焼 松永窯 「クロテラス」

こちらは書道の硯に使う素材を釉薬として使った食器。黒々して緑や黄色が映えそうな落ち着いた雰囲気が好みでした。これも福島の相馬焼きということで、被災地復興の1つと言えそうです。
リヤカーゴプロジェクト 「リヤカーゴ」

これはリアカーとカーゴが合体した一種の屋台。様々な場所に出向くことができるようで、これも震災復興に関係しているようです。こんなにコンパクトなのに収容力が結構ありそうでした。
ということで、デザインと一口に言ってもプロダクトだけでなくプロジェクトなども対象になっていて、幅広い内容となっていました。(今回ご紹介しなかった品も公式サイトに写真と説明が載っています) 既に次の展示も始まっていますが、ここは常に最先端のデザインに出会うことができる場所なので、出光美術館や三菱一号館美術館に行く際にはハシゴして寄ってみるのも良いかと思います。
ちなみに今年の4月にはこの施設からも近いKITTE丸の内の3階に、グッドデザイン賞受賞商品の専門店「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」もオープンしています。
参考リンク:GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA
おまけ:
今回、この施設の前にある通りで「ジャパンハーヴェスト」という農業に関する展示が行われていました。(それを観に行ったついでに寄りました)
公式サイト:ジャパンハーヴェスト2017
期間:2017/11/4~5
会場はこんな感じ。

東京駅前から御幸通り/丸の内仲通りを通って有楽町駅近くまで続いています。
会場の通りはこんな感じでかなりの活気でした。

スタンプラリーをしてくじ引きをしたらジャガイモまで貰えましたw
こちらは作物収穫体験のコーナー。

凄い混んでいたので諦めましたが、東京のど真ん中で農業体験ができるのが面白いw
東京駅前では「大田楽」という踊りも披露されていました。

非常に躍動感のある踊りで、見ごたえがありました。
他にも様々なブースがあって楽しめました。今回、グッドデザイン賞も食をテーマにしたのは間違いなくこのイベントに合わせたものだったんでしょうね。
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この展示もですが、短期の展示はブログで記事を書く前に終了するケースが多くて申し訳ないです。常に2週間分くらいは記事のネタをストックしているので、どうしても記事化が遅れてしまいます…。先日からその補完としてツイッターで速報を入れるようにしましたので、そちらも参考にして頂けると嬉しいです。
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今日も再び無料で観られる銀座のギャラリーについてです。前回ご紹介した展示を観る前に、新橋近くの資生堂ギャラリーで「LINK OF LIFE 2017 まわれ右脳!展」という展示も観ていました。この展示は既に終了していますが、撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しておこうと思います。

【展覧名】
LINK OF LIFE 2017 まわれ右脳!展
【公式サイト】
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2017_05.html
【会場】資生堂ギャラリー
【最寄】銀座駅 新橋駅など
【会期】2017年10月26日(木)~11月10日(金)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間15分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
結構混んでいて、多くのお客さんで混み合っていました。
さて、この展示は化粧品メーカーの資生堂の研究成果を外部のアーティストやテクノロジーと融合させアート作品として発表するもので、2015年から始まり今回で3回目となっています。今年のテーマは『右脳を刺激して感性を研ぎ澄ませ、遊びゴコロを満たして美しさを重ねる』=『asobi-neering(アソビニアリング)』となっていて、直感的に楽しめる作品が並んでいました。冒頭に書いたように撮影可能でしたので、写真でご紹介していこうと思います。
こちらは「The Scent of Life」という作品。

カラフルなフラスコが並んで実験室みたいなワクワク感がありました。詳しい意味は分かりませんがw
これもThe Scent of Lifeの一部かな。いくつかのグラスが逆さに置いてあり、中に香水瓶のようなものが入っています。

このグラスを手に持って匂いを嗅ぐと、移り香でフルーティーな香りがしました。それぞれ匂いが違い、女性の多様性を表現しているのだとか。鑑賞者は傍目から見ると利きワインやってるみたいな絵面になります。
続いてこちらは「Human × Shark」という作品。今回最もインパクトがあったのがこの作品です。

こちらもシャーレの上に乗った紙をピンセットで摘んで匂いを嗅ぐのですが、青いほうはサメのフェロモンの匂いがしますw 具体的にいうとイカとかが古くなったアンモニアっぽい生臭い香りですw 一方、赤い方は花のような香りがするのですが、この2つの香りを混ぜると意外にもサメの匂いがかなり薄れて、ちょっとアクセントが効いた香水のようになりました。こんな臭いものも混ぜれば感じ方が変わるというのが面白かったです。
最後が「A Room of Dis-edge 身体の境界線がとける部屋」という作品。

こちらはヘッドフォンを装着して鑑賞します。この円形の上には水が張られていて、そこに指を入れるとズズズズズ…というラジオのチューニングのような音が聞こえました。これは自分の身体の中を通る電気を利用したもので、鑑賞者同士で手をつなぐと音が変わるというのも不思議でした。アートと科学の融合が体験できる作品です。
ということで、3点しかなかったのであっという間に見終わってしまいましたが、科学実験室みたいな面白さのある展示でした。2週間程度しか期間がなく今年は既に終了しておりますが、来年以降も同様の展示が期待できそうなので、記憶に留めておきたい展示です。

【展覧名】
LINK OF LIFE 2017 まわれ右脳!展
【公式サイト】
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2017_05.html
【会場】資生堂ギャラリー
【最寄】銀座駅 新橋駅など
【会期】2017年10月26日(木)~11月10日(金)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間15分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
結構混んでいて、多くのお客さんで混み合っていました。
さて、この展示は化粧品メーカーの資生堂の研究成果を外部のアーティストやテクノロジーと融合させアート作品として発表するもので、2015年から始まり今回で3回目となっています。今年のテーマは『右脳を刺激して感性を研ぎ澄ませ、遊びゴコロを満たして美しさを重ねる』=『asobi-neering(アソビニアリング)』となっていて、直感的に楽しめる作品が並んでいました。冒頭に書いたように撮影可能でしたので、写真でご紹介していこうと思います。
こちらは「The Scent of Life」という作品。

カラフルなフラスコが並んで実験室みたいなワクワク感がありました。詳しい意味は分かりませんがw
これもThe Scent of Lifeの一部かな。いくつかのグラスが逆さに置いてあり、中に香水瓶のようなものが入っています。

このグラスを手に持って匂いを嗅ぐと、移り香でフルーティーな香りがしました。それぞれ匂いが違い、女性の多様性を表現しているのだとか。鑑賞者は傍目から見ると利きワインやってるみたいな絵面になります。
続いてこちらは「Human × Shark」という作品。今回最もインパクトがあったのがこの作品です。

こちらもシャーレの上に乗った紙をピンセットで摘んで匂いを嗅ぐのですが、青いほうはサメのフェロモンの匂いがしますw 具体的にいうとイカとかが古くなったアンモニアっぽい生臭い香りですw 一方、赤い方は花のような香りがするのですが、この2つの香りを混ぜると意外にもサメの匂いがかなり薄れて、ちょっとアクセントが効いた香水のようになりました。こんな臭いものも混ぜれば感じ方が変わるというのが面白かったです。
最後が「A Room of Dis-edge 身体の境界線がとける部屋」という作品。

こちらはヘッドフォンを装着して鑑賞します。この円形の上には水が張られていて、そこに指を入れるとズズズズズ…というラジオのチューニングのような音が聞こえました。これは自分の身体の中を通る電気を利用したもので、鑑賞者同士で手をつなぐと音が変わるというのも不思議でした。アートと科学の融合が体験できる作品です。
ということで、3点しかなかったのであっという間に見終わってしまいましたが、科学実験室みたいな面白さのある展示でした。2週間程度しか期間がなく今年は既に終了しておりますが、来年以降も同様の展示が期待できそうなので、記憶に留めておきたい展示です。
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前回ご紹介した銀座の無料で観られるギャラリー巡りの後、汐留のパナソニック 汐留ミュージアムで「表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち」を観てきました。

【展覧名】
表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち
【公式サイト】
https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/17/171017/index.html
【会場】パナソニック 汐留ミュージアム
【最寄】新橋駅/汐留駅
【会期】2017年10月17日(火)~12月20日(水)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
祝日に行ったのですが、意外にも結構混んでいて場所によっては列を組むような感じでした。
さて、今回の展示はこの美術館が収集しているジョルジュ・ルオーに関する展示ですが、ヴァシリー・カンディンスキーとパウル・クレーとの関わりについてという変わった主題となっています。この美術館では過去にルオーとマティスの関係(2人とも先生がギュスターヴ・モロー)に関する展示など、ルオーの人脈に関する展示もやっていますが、ルオーとカンディンスキーやクレーとの接点についてはよく分からない、強いて言えばこの2人が並ぶと言えば青騎士かバウハウスあたりで接点でもあったのかな?という程度で観に行きました。展覧会ではその3人を含めて他にも様々な画家を紹介していて3章構成となっていましたので、各章ごとに簡単にご紹介していこうと思います。
<第1章 カンディンスキーとルオーの交差点>
まず最初はカンディンスキーとルオーの出会いについてです。この2人はルオーが館長を務めていたギュスターヴ・モロー美術館で出会いました。(ギュスターヴ・モローはルオーの学生時代の先生で、パリにある自邸を自分の作品を飾る美術館にしたいと考えていたらしく、モローの死後の1903年に実現されました。) また、この2人とも1904年のサロン・ドートンヌやアンデパンダン展など同じ展覧会に出品するなど、割と似たようなフィールドで活動していたようです。そしてカンディンスキーは1910年にドイツのミュンヘン芸術家協会の展示で多くのパリの画家を紹介したのですが、その際にルオーの作品も紹介する等、その作風を評価していたようです。(え、それだけ?って感じですが、お互いを認識していたのは確かなようです)
この章には2人の初期作品が並んでいました。ルオーは黄土色が背景の象徴主義的な作品が多くて、モローに通じるものを感じるかな。一方のカンディンスキーはまだ具象的ですが、大胆で力強い厚塗り作品がありました。また、「商人たちの到着」という作品はテンペラで描かれ、やや素朴で民衆芸術からの影響と、ロシアの伝統的な風景が色濃く表されていました。後のカンディンスキーとはだいぶ雰囲気が違いますが、これはかなりの傑作に思います。
こちらは会場を出た所にある「商人たちの到着」をパネルにした記念撮影所。

この頃から既に色彩感覚の豊かさを感じます。
<第2章 色の冒険者たちの共鳴>
続いては色彩感覚の共有についてです。ルオーは強烈な色彩が野獣のようだと言われたフォーヴィスムの画家として認知されている一方、カンディンスキーは青騎士というグループを作りました。また、青騎士と交流をしたブリュッケというドイツ表現主義のグループもこの章で紹介されていて、この3つの流派は色彩やモチーフの選び方に共通するものを見出すことができるようです。しかし方向性自体は違っていて、青騎士は内的必然性を重視し自分の内なる声を聞くことを標榜し、ブリュッケはアフリカ美術などプリミティブな物や古き良き時代へのあこがれが観られます。ルオーは色彩の強さはフォーヴィスムですが、割と独自の道を進んでいる感じかな。
参考記事:
カンディンスキーと青騎士展 (三菱一号館美術館)
ジョルジュ・ルオー 名画の謎 展 (パナソニック 汐留ミュージアム)
パウル・クレー おわらないアトリエ (東京国立近代美術館)
[クレー]
ここからは小コーナーに分かれていて、まずは青騎士展に参加したパウル・クレーの初期のエッチングや素描がありました。若い婦人や競馬を描いたものなど、まだ具象的な感じがします。
[理想郷、失われた風景への郷愁]
ここにはブリュッケの画家マックス・ベヒシュタインの版画集「われらの父」6点などが並んでいました。全知全能の神が畏怖すべき存在として描かれているのですが、力強い一方で素朴な味わいがあります。この素朴でプリミティブな感じは後のロシア・アバンギャルドに通じるものを感じました。
また、カンディンスキーの「ファウスト 第二部アーリエルの場」という作品では虹などが描かれ、派手な色合いが使われています。風景や人の描写はデフォルメされているけど色合いが強烈で、確かにフォーヴィスムと似た手法が使われているかも。
その先にはヌードとプリミティブのコーナーもありました。ヌードでも緑とオレンジのような補色関係の色を使って、鮮やかな対比を生み出しています。また、この辺にはルオーの描いた「ユビュ」も展示されていて、人物画は定番ではあるように思いますが、確かに共通したモチーフ選びの様子や、素朴な雰囲気が伺えました。
参考記事:ユビュ 知られざるルオーの素顔 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
[うどめく色と形]
ここはルオーの風景画などがありました。ルオーらしさを感じる厚塗りの画風で描かれています。それよりも気に入ったのはマックス・ベヒシュタインの「帆船」という船を描いた作品で、緑を背景に太い輪郭の帆船が描かれ力強い印象を受けました。
[人々の姿]
ここはルオーの自画像や画商のヴォラールなどを描いた肖像などがありました。「アヌーシュカ」という作品なんかはルオーっぽくなくてちょっと面白いかな。しかしここで気に入ったのはブリュッケのメンバーの作品で、彫刻刀の太い彫り跡を思わせる線で描かれた女性像(カール・シュミット=ロットルフ「女性頭部」)やゴッホのような筆致の作品もあって、プリミティブな力強さに心惹かれました。(よく知ってる画家よりも未知のものに惹かれてしまいますw)
<第3章 カンディンスキー、クレー、ルオー、それぞれの飛翔>
最後は3人のその後の作品にコーナーです。もうこの辺になるとルオーとの交流の話と関係ない感じですが、それぞれ素晴らしい作品が並んでいました。
[クレー]
クレーは結構多く並んでいました。バウハウスで教師を務めた頃の作品があり、温かみのある幾何学的な抽象画が特徴です。ここで見どころは「橋の傍らの三軒の家」という作品で、家は三軒どころじゃないように見えますが三角と丸を組み合わせた抽象とも単純化とも取れるような画風で描かれています。黒を背景にオレンジや青で描かれた家々は、観ているとちょっと郷愁を誘われるような温かみがありました。
第一次世界大戦以降はサーカスの主題などもあり、クレーらしい作品が多いです。それにしてもこの章は宮城県美術館所蔵の作品が多くて、その質と量に驚かされます。
[カンディンスキー]
カンディンスキーは少なめかな。カンディンスキーもバウハウスで教鞭をとった画家ですが、1920年代には幾何学的なモチーフが中心となっていて、むしろ記号みたいなものが並びます。(観ようによっては微生物みたいな感じw) また、カンディンスキーは音楽のようなリズム感を絵で表現した画家としても知られていて、楽譜のようなモチーフも散見されました。色の取り合わせも素晴らしく、久々に「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬) も観られて満足。
[ルオー]
ルオーはこの美術館が特に力を入れているので見慣れた感じではありますが、キリスト関連の作品(ミセレーレ等)やサーカス関連など宗教や市井の人々を描いたルオーらしさを感じる作品が多数並んでいました。力強い黒い輪郭と、ざらざらした表面、厚塗りで盛り上がった画面などが特徴です。 バレエ・リュスの舞台装飾の習作などもあり、幅広い活躍をしていたことも伺えました。
ということで、濃密な交流というよりは一時の交差といった感じにも思えましたが、意外な組み合わせを楽しむことができました。また、その他の画家たちの作品が結構好きなのがあって得した気分です。どちらかと言うとこの3人を知っている人向けの展示だと思いますが、単純に良い絵が多い展示ですので、洋画が好きな人は楽しめると思います。
なお、この展示と並行するようにbunkamuraではオットー・ネーベル展が開催され、そこでもクレーの作品が多数展示されています(カンディンスキーも少々)。そちらと半券相互割引もやっているようなので、クレー好きの方は両方楽しむと良いかもしれません。そちらについては後日ご紹介の予定です。

【展覧名】
表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち
【公式サイト】
https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/17/171017/index.html
【会場】パナソニック 汐留ミュージアム
【最寄】新橋駅/汐留駅
【会期】2017年10月17日(火)~12月20日(水)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
祝日に行ったのですが、意外にも結構混んでいて場所によっては列を組むような感じでした。
さて、今回の展示はこの美術館が収集しているジョルジュ・ルオーに関する展示ですが、ヴァシリー・カンディンスキーとパウル・クレーとの関わりについてという変わった主題となっています。この美術館では過去にルオーとマティスの関係(2人とも先生がギュスターヴ・モロー)に関する展示など、ルオーの人脈に関する展示もやっていますが、ルオーとカンディンスキーやクレーとの接点についてはよく分からない、強いて言えばこの2人が並ぶと言えば青騎士かバウハウスあたりで接点でもあったのかな?という程度で観に行きました。展覧会ではその3人を含めて他にも様々な画家を紹介していて3章構成となっていましたので、各章ごとに簡単にご紹介していこうと思います。
<第1章 カンディンスキーとルオーの交差点>
まず最初はカンディンスキーとルオーの出会いについてです。この2人はルオーが館長を務めていたギュスターヴ・モロー美術館で出会いました。(ギュスターヴ・モローはルオーの学生時代の先生で、パリにある自邸を自分の作品を飾る美術館にしたいと考えていたらしく、モローの死後の1903年に実現されました。) また、この2人とも1904年のサロン・ドートンヌやアンデパンダン展など同じ展覧会に出品するなど、割と似たようなフィールドで活動していたようです。そしてカンディンスキーは1910年にドイツのミュンヘン芸術家協会の展示で多くのパリの画家を紹介したのですが、その際にルオーの作品も紹介する等、その作風を評価していたようです。(え、それだけ?って感じですが、お互いを認識していたのは確かなようです)
この章には2人の初期作品が並んでいました。ルオーは黄土色が背景の象徴主義的な作品が多くて、モローに通じるものを感じるかな。一方のカンディンスキーはまだ具象的ですが、大胆で力強い厚塗り作品がありました。また、「商人たちの到着」という作品はテンペラで描かれ、やや素朴で民衆芸術からの影響と、ロシアの伝統的な風景が色濃く表されていました。後のカンディンスキーとはだいぶ雰囲気が違いますが、これはかなりの傑作に思います。
こちらは会場を出た所にある「商人たちの到着」をパネルにした記念撮影所。

この頃から既に色彩感覚の豊かさを感じます。
<第2章 色の冒険者たちの共鳴>
続いては色彩感覚の共有についてです。ルオーは強烈な色彩が野獣のようだと言われたフォーヴィスムの画家として認知されている一方、カンディンスキーは青騎士というグループを作りました。また、青騎士と交流をしたブリュッケというドイツ表現主義のグループもこの章で紹介されていて、この3つの流派は色彩やモチーフの選び方に共通するものを見出すことができるようです。しかし方向性自体は違っていて、青騎士は内的必然性を重視し自分の内なる声を聞くことを標榜し、ブリュッケはアフリカ美術などプリミティブな物や古き良き時代へのあこがれが観られます。ルオーは色彩の強さはフォーヴィスムですが、割と独自の道を進んでいる感じかな。
参考記事:
カンディンスキーと青騎士展 (三菱一号館美術館)
ジョルジュ・ルオー 名画の謎 展 (パナソニック 汐留ミュージアム)
パウル・クレー おわらないアトリエ (東京国立近代美術館)
[クレー]
ここからは小コーナーに分かれていて、まずは青騎士展に参加したパウル・クレーの初期のエッチングや素描がありました。若い婦人や競馬を描いたものなど、まだ具象的な感じがします。
[理想郷、失われた風景への郷愁]
ここにはブリュッケの画家マックス・ベヒシュタインの版画集「われらの父」6点などが並んでいました。全知全能の神が畏怖すべき存在として描かれているのですが、力強い一方で素朴な味わいがあります。この素朴でプリミティブな感じは後のロシア・アバンギャルドに通じるものを感じました。
また、カンディンスキーの「ファウスト 第二部アーリエルの場」という作品では虹などが描かれ、派手な色合いが使われています。風景や人の描写はデフォルメされているけど色合いが強烈で、確かにフォーヴィスムと似た手法が使われているかも。
その先にはヌードとプリミティブのコーナーもありました。ヌードでも緑とオレンジのような補色関係の色を使って、鮮やかな対比を生み出しています。また、この辺にはルオーの描いた「ユビュ」も展示されていて、人物画は定番ではあるように思いますが、確かに共通したモチーフ選びの様子や、素朴な雰囲気が伺えました。
参考記事:ユビュ 知られざるルオーの素顔 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
[うどめく色と形]
ここはルオーの風景画などがありました。ルオーらしさを感じる厚塗りの画風で描かれています。それよりも気に入ったのはマックス・ベヒシュタインの「帆船」という船を描いた作品で、緑を背景に太い輪郭の帆船が描かれ力強い印象を受けました。
[人々の姿]
ここはルオーの自画像や画商のヴォラールなどを描いた肖像などがありました。「アヌーシュカ」という作品なんかはルオーっぽくなくてちょっと面白いかな。しかしここで気に入ったのはブリュッケのメンバーの作品で、彫刻刀の太い彫り跡を思わせる線で描かれた女性像(カール・シュミット=ロットルフ「女性頭部」)やゴッホのような筆致の作品もあって、プリミティブな力強さに心惹かれました。(よく知ってる画家よりも未知のものに惹かれてしまいますw)
<第3章 カンディンスキー、クレー、ルオー、それぞれの飛翔>
最後は3人のその後の作品にコーナーです。もうこの辺になるとルオーとの交流の話と関係ない感じですが、それぞれ素晴らしい作品が並んでいました。
[クレー]
クレーは結構多く並んでいました。バウハウスで教師を務めた頃の作品があり、温かみのある幾何学的な抽象画が特徴です。ここで見どころは「橋の傍らの三軒の家」という作品で、家は三軒どころじゃないように見えますが三角と丸を組み合わせた抽象とも単純化とも取れるような画風で描かれています。黒を背景にオレンジや青で描かれた家々は、観ているとちょっと郷愁を誘われるような温かみがありました。
第一次世界大戦以降はサーカスの主題などもあり、クレーらしい作品が多いです。それにしてもこの章は宮城県美術館所蔵の作品が多くて、その質と量に驚かされます。
[カンディンスキー]
カンディンスキーは少なめかな。カンディンスキーもバウハウスで教鞭をとった画家ですが、1920年代には幾何学的なモチーフが中心となっていて、むしろ記号みたいなものが並びます。(観ようによっては微生物みたいな感じw) また、カンディンスキーは音楽のようなリズム感を絵で表現した画家としても知られていて、楽譜のようなモチーフも散見されました。色の取り合わせも素晴らしく、久々に「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬) も観られて満足。
[ルオー]
ルオーはこの美術館が特に力を入れているので見慣れた感じではありますが、キリスト関連の作品(ミセレーレ等)やサーカス関連など宗教や市井の人々を描いたルオーらしさを感じる作品が多数並んでいました。力強い黒い輪郭と、ざらざらした表面、厚塗りで盛り上がった画面などが特徴です。 バレエ・リュスの舞台装飾の習作などもあり、幅広い活躍をしていたことも伺えました。
ということで、濃密な交流というよりは一時の交差といった感じにも思えましたが、意外な組み合わせを楽しむことができました。また、その他の画家たちの作品が結構好きなのがあって得した気分です。どちらかと言うとこの3人を知っている人向けの展示だと思いますが、単純に良い絵が多い展示ですので、洋画が好きな人は楽しめると思います。
なお、この展示と並行するようにbunkamuraではオットー・ネーベル展が開催され、そこでもクレーの作品が多数展示されています(カンディンスキーも少々)。そちらと半券相互割引もやっているようなので、クレー好きの方は両方楽しむと良いかもしれません。そちらについては後日ご紹介の予定です。
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今日も無料で観られる銀座の小展示についてです。前回ご紹介したLIXILの展示を観た後、徒歩5分くらいの所にあるポーラミュージアム アネックスにもハシゴして、アルベルト・ヨナタン「TERRENE」という展示を観てきました。この展示は既に終わってしまったので記事にしないつもりでしたが、撮影可能だった為 写真を使って説明できるのでご紹介しておこうと思います。(なお、このギャラリーは既に次の展示を行っていますが、毎回無料の展示です)

【展覧名】
アルベルト・ヨナタン「TERRENE」
【公式サイト】
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/archive/detail_201710.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅
【会期】2017年10月7日(土)~11月5日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は特に調べて行ったわけではなく、いつものギャラリー巡りのコースなのでフラッと寄ってみたのですが、何処か見覚えのある作風で誰だっけ??と思い出せずにいたのですが、キャプションを読んでつい先日のサンシャワー展で観た作家の1人であることを思い出しましたw(一応記憶には残っていたので私の目は節穴ではなかったw)
参考記事:サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで 感想後編(森美術館)
改めて紹介すると、アルベルト・ヨナタン氏はインドネシア出身のアーティストで、2012年から京都で活動している陶芸中心の作家です。今回の展示名の「Terrene」は「土からきたもの又は土のようなもの」を指すそうで、ラテン語の土(terra)を語源としています。作者はこの言葉に「無形」と「物質」という相反する言葉を想起するそうで、光と影のようにお互いがお互いの概念を形作るのに必要な存在と考えているよです。今回はその「物質」と「無形」と、「世俗的」と「精神的」という正反対の間を探るというのがテーマになっているそうで、10点程度の作品が並んでいました。 …と、ちょっとキャプションを読んでも完全に理解するのは難しいので、写真でご紹介していきますw (1つ1つの解説もないので私の勝手な感想のみです)
こちらが会場風景

手前の床に何やら沢山の陶器が並んでいて、不思議な円を描いています。
先程の写真のアップ。

1つ1つは水滴のようなメタルスライムのような形をしています。驚くことにこれらは雛形を使っているのではなく全部自分の手で作っているのだとか。その形がどこか仏塔を想起しました。
壁には絵画作品もありました。

シュルレアリスム的な感じですが、目が怖いw フリーメイソンのプロビデンスの目みたいなw
こちらも絵画作品。

これはユダヤ教のカバラを想起しました。サンシャワー展では宗教関連の章に展示されてたし、この作家の作品はどこか宗教的なものを感じます。
そしてこちらが今回のポスターにもなっている作品。

木のように見えますが、無数の陶器を組み合わせて作っています。幾何学模様が何とも美しい。
こちらがアップ。

これも恐らく手作り。よくぴっちり合うものだと感心します。
近くにあったこちらは設計図かな?

こちらは鳥の形の陶器が円形に並んでいる様子。

遠目から見たら仏教の華籠に似たようなものを感じたかな。
近くで観るとこんな感じ。

1羽1羽がかなり精密に作られています。これには驚きました。
最後に陶器を使った映像作品もありました。

これは一見すると静止画に見えますが、ゆ~~っくりと水が流れ出したりして時間が経過している様子が映されていました。
ということで、現代的な雰囲気がありつつ どこか宗教的なニュアンスを感じる作品を観ることができました。立て続けに作品を目にする機会があったわけですが、世界的にも注目されている作家らしいので、今後も目にする機会がありそうです。もう終わってしまいましたが、覚えておきたいアーティストでした。

【展覧名】
アルベルト・ヨナタン「TERRENE」
【公式サイト】
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/archive/detail_201710.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅
【会期】2017年10月7日(土)~11月5日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は特に調べて行ったわけではなく、いつものギャラリー巡りのコースなのでフラッと寄ってみたのですが、何処か見覚えのある作風で誰だっけ??と思い出せずにいたのですが、キャプションを読んでつい先日のサンシャワー展で観た作家の1人であることを思い出しましたw(一応記憶には残っていたので私の目は節穴ではなかったw)
参考記事:サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで 感想後編(森美術館)
改めて紹介すると、アルベルト・ヨナタン氏はインドネシア出身のアーティストで、2012年から京都で活動している陶芸中心の作家です。今回の展示名の「Terrene」は「土からきたもの又は土のようなもの」を指すそうで、ラテン語の土(terra)を語源としています。作者はこの言葉に「無形」と「物質」という相反する言葉を想起するそうで、光と影のようにお互いがお互いの概念を形作るのに必要な存在と考えているよです。今回はその「物質」と「無形」と、「世俗的」と「精神的」という正反対の間を探るというのがテーマになっているそうで、10点程度の作品が並んでいました。 …と、ちょっとキャプションを読んでも完全に理解するのは難しいので、写真でご紹介していきますw (1つ1つの解説もないので私の勝手な感想のみです)
こちらが会場風景

手前の床に何やら沢山の陶器が並んでいて、不思議な円を描いています。
先程の写真のアップ。

1つ1つは水滴のようなメタルスライムのような形をしています。驚くことにこれらは雛形を使っているのではなく全部自分の手で作っているのだとか。その形がどこか仏塔を想起しました。
壁には絵画作品もありました。


シュルレアリスム的な感じですが、目が怖いw フリーメイソンのプロビデンスの目みたいなw
こちらも絵画作品。

これはユダヤ教のカバラを想起しました。サンシャワー展では宗教関連の章に展示されてたし、この作家の作品はどこか宗教的なものを感じます。
そしてこちらが今回のポスターにもなっている作品。

木のように見えますが、無数の陶器を組み合わせて作っています。幾何学模様が何とも美しい。
こちらがアップ。

これも恐らく手作り。よくぴっちり合うものだと感心します。
近くにあったこちらは設計図かな?

こちらは鳥の形の陶器が円形に並んでいる様子。

遠目から見たら仏教の華籠に似たようなものを感じたかな。
近くで観るとこんな感じ。

1羽1羽がかなり精密に作られています。これには驚きました。
最後に陶器を使った映像作品もありました。

これは一見すると静止画に見えますが、ゆ~~っくりと水が流れ出したりして時間が経過している様子が映されていました。
ということで、現代的な雰囲気がありつつ どこか宗教的なニュアンスを感じる作品を観ることができました。立て続けに作品を目にする機会があったわけですが、世界的にも注目されている作家らしいので、今後も目にする機会がありそうです。もう終わってしまいましたが、覚えておきたいアーティストでした。
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今回は画像多めです。先日、銀座で無料で観られるギャラリー巡りをしてきました。まずは京橋方面にあるLIXILギャラリーで「超絶記録!西山夘三のすまい採集帖」を観てきました。

【展覧名】
超絶記録!西山夘三のすまい採集帖
【公式サイト】
http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003793.html
【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)
【会期】2017年9月7日(木)~11月25日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は西山夘三(にしやまうぞう)という建築家の展示となっています。私はこの方を知らなかったのですが、「ダイニング・キッチン」という今では誰でも知っている住宅の間取りを考案した人物だそうで、大阪万博では丹下健三と共に会場計画のチーフプランナーを務め、京大で建築学科のの教授として教鞭を執っていたようです。
参考リンク:西山夘三のwikipedia
そんな大発明をした西島氏ですが、その根底には膨大な研究があったようで、各地の建築を記録し「日本のすまい」という著作なども残しています。また、私生活においても相当な収集癖があったそうで、今回の展示でそうした様子が示されていました。この展示は撮影可能でしたので、詳しくは写真と共に章立てに沿ってご紹介していこうと思います。
<漫画家志望>
まずは学生の頃に漫画家を目指していたことについてのコーナーです。この後のコーナーで沢山のスケッチが出て来るのですが、漫画家志望だったのが遺憾なく発揮されているので、そのルーツを最初に観るような感じの内容となっています。その正確な描写と鋭い観察眼は漫画で養われたのではないかと思える作品が並んでいました。
まずこちらは壮年自体の自画像。

戯画的にざっくり描いていますが、写真と見比べるとかなり特徴を捉えています。
ちなみに、今回の展示では画用紙をめくって観るというちょっと変わった展示方法をしているところがありました。めくると次の紙が出てきます。恐らくプリントじゃないかな。
こちらは17歳頃の漫画。

流石に現代の若者と比べると素朴な感じがしますが、猫らしい動きに観察眼があるように思えます。
こちらは高校時代の絵日記。

これも簡素ながら生活の様子がよく伝わります。日々の様子をつぶさに観察して収集するというのはこの後もずっと続いていくことになります。
<体系的すまい採集帖>
続いては京大退官後にライフワークだった日本住宅研究の集大成として刊行された『日本のすまい』についてのコーナーです。全3巻で1200ページもある本らしく、そこには庶民の住宅がスケッチで描かれています。写真で撮ったものもわざわざスケッチにしたというこだわりぶりで、入念に描き込まれていました。
こちらは青山にあった同潤会アパートの内部の設計。

1941年に住宅営団に職を得て、同潤会の代官山アパートで暮らしていた頃に描いていたそうです。
同潤会アパートの間取りのスケッチも展示されていました。

実際には俯瞰することができないのに非常にリアルに描かれていて、立体把握が流石です。ちょっと漫画チックなところに温かみも感じます。
この辺には京都や名古屋の町家、農家などのスケッチもありました。
こちらは戦後に建設された大阪市営の応急バス住宅。バスを改造して家にしたものです。

部屋は4畳分くらいしかないので土間を建て増ししているようです。こんな家があったというのも驚きですが、戦後間もない頃にこれを描いて記録してたというのも凄い。鉄板なので夏暑く冬寒いという最悪の住宅だったそうで、すぐ壊されたのだとかw
こちらは1954年に建設された鉄道住宅! 市電を10台並べていて、各家は2畳と4畳の部屋があるそうです。。

意外にもこちらはバス住宅よりは恵まれていたそうで、ダイニング・キッチンと言える部屋もあったようです。ちょっと鉄道マニアとしては心惹かれるものがありますw 内部のスケッチも展示されていましたが割と機能的に見えるし、14年住んでた人もいたらしいのでミニマリストみたいな人なら行けるかも??
こちらは京都の南禅寺付近にあった豪華なラブホテル!!w

冷蔵庫の中身や皿の枚数まで数えてますw 図面や写真が残っていたとしても、こんなものまでスケッチしようと考える人は他にいなそうw 今となっては貴重ですね。(しかもいくつか他のラブホテルもスケッチがありました。)
こちらは世界遺産にもなった軍艦島!

鳥瞰図のようになっているのは何かを参考にしたのかわかりませんが、かなり詳細です。勿論、内部の様子や部屋の間取りを描いたスケッチもありました。
他にもドヤや炭鉱住宅、学生寮などをスケッチしたものもありました。住宅があれば何処にでも行って幅広く「採集」しているのがよく分かります。
これは低質な建売住宅のスケッチ。

縦長で横は1.8mしかないビックリハウスw こんな酷い家も採集しているのが面白い。
住まい採集の際に撮った写真。

いわゆる長屋かな。住みづらそうですが、割と絵になる風景です。
こちらが『日本のすまい』

ちょっと読んでみたいけど、読むだけでも相当エネルギーが必要かも。
<自伝的住み方記録>
ここまででも執念とも言えるべき住まい採集の様子が分かると思いますが、その対象は自らの家も例外ではありませんw
こちらは1940年の結婚直後に住んだ京都下鴨の借家。

家がみすぼらしいのは困ると妻の実家に押し切られてこんな大邸宅に住むことになったそうです。
その後、東京に引っ越した際には先程の同潤会アパートに住んだりもしています。
こちらは1944年に再び京都に戻って住んだ大学官舎

8室44畳という豪邸! しかし疎開でここには1年くらいしか住んでいなかったようです。
これは借家を買い取った「生け垣の家」 (1949年に引っ越して1956年に買い取り)

この図面は1966~72年頃の子どもたちが独立して出ていった頃の自分の部屋。どんどん家の様子が変わっていくのも観ることができて面白いです。
これは1947年発行の『これからのすまい』で提案された住宅模型。西山氏自らが手作りした模型です。(両側から同じものを撮っています)

子供3~5人の7人家族向けらしく、その後の公共住宅のモデルになったそうです。
こちらは自分の子どもたちの為に西山氏が設計し注文制作した机や椅子

椅子の下にも引き出しがあるなど、収納力たっぷりです。このギミックの椅子はそそりますw
<おそるべし、記録魔>
ここまでも十分すぎるほどに記録魔ぶりが伝わってきましたが、記録するのは建物だけではありません! 病気の時だって記録します!
食べたものもスケッチ。

食べた感想もちゃんと残しています。お店の名前と電話番号も書いてあるしw
これは胃潰瘍で入院した部屋を描いたもの。

ベッドの周り以外も描いてあるから観に行ったのかなw 何の検査をしたかもきっちり記録しています。
学者は収集癖があるといいますが、記録魔もここまで来ると基礎研究そのものですね。
<実証的すまい調査>
西山氏の原点は「住み方の調査」であり、それはスケッチだけではなく暮らしの実態を把握するために様々な調査を行っていたようです。
これは「中部3都市住み方調査」という論文のための調査票。

手作業で住んでいる人の職業ごとの人数を調べています。それ以前に出した調査例の母数が100では足りないとダメ出しされて、このような大規模調査を行ったそうですが、それが西山住宅論の原点となったようです。
こちらは住宅に対するアンケート。

私も仕事でアンケートの作成から分析までやりますが、どの作業も絶対に手作業でやりたくはないですw この時代よくやったものだと感心させられます。
ということで、建物のスケッチ自体も面白かったですが、その執念とも言える記憶魔ぶりが可笑しくて予想以上に楽しい展示でした。私もブログで観た展示をコレクションしているようなものなので、ちょっと親近感が沸きましたw ここは無料で観られますので、住宅に興味がある方はチェックしてみてください。
おまけ:
ギャラリー2では、クリエイションの未来展 第13回 清水敏男監修 「鈴木基真展 MOD」 という展示をやっていました。
【展覧名】
クリエイションの未来展 第13回 清水敏男監修 「鈴木基真展 MOD」
【公式サイト】
http://www1.lixil.co.jp/gallery/contemporary/detail/d_003863.html
【会期】
2017年10月12日(木)~12月24日(日)
こちらは点数が少なかったので詳細は割愛しますが、展示風景はこんな感じ。

壁に建っている家みたいなのが興味を引きました。
私が観た時はこういう展示風景でしたが、公式サイトではちょっと違う写真もあるので、変わるのかな?

ちょっと各作品の解説を要約するのが難しいので、ご興味ある方は公式サイトをご覧ください。
私が行った時、ギャラリー3は展示替えの準備中でした。この記事を書いている時点で新しい展示が始まっているようです。

【展覧名】
超絶記録!西山夘三のすまい採集帖
【公式サイト】
http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003793.html
【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)
【会期】2017年9月7日(木)~11月25日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は西山夘三(にしやまうぞう)という建築家の展示となっています。私はこの方を知らなかったのですが、「ダイニング・キッチン」という今では誰でも知っている住宅の間取りを考案した人物だそうで、大阪万博では丹下健三と共に会場計画のチーフプランナーを務め、京大で建築学科のの教授として教鞭を執っていたようです。
参考リンク:西山夘三のwikipedia
そんな大発明をした西島氏ですが、その根底には膨大な研究があったようで、各地の建築を記録し「日本のすまい」という著作なども残しています。また、私生活においても相当な収集癖があったそうで、今回の展示でそうした様子が示されていました。この展示は撮影可能でしたので、詳しくは写真と共に章立てに沿ってご紹介していこうと思います。
<漫画家志望>
まずは学生の頃に漫画家を目指していたことについてのコーナーです。この後のコーナーで沢山のスケッチが出て来るのですが、漫画家志望だったのが遺憾なく発揮されているので、そのルーツを最初に観るような感じの内容となっています。その正確な描写と鋭い観察眼は漫画で養われたのではないかと思える作品が並んでいました。
まずこちらは壮年自体の自画像。

戯画的にざっくり描いていますが、写真と見比べるとかなり特徴を捉えています。
ちなみに、今回の展示では画用紙をめくって観るというちょっと変わった展示方法をしているところがありました。めくると次の紙が出てきます。恐らくプリントじゃないかな。
こちらは17歳頃の漫画。

流石に現代の若者と比べると素朴な感じがしますが、猫らしい動きに観察眼があるように思えます。
こちらは高校時代の絵日記。

これも簡素ながら生活の様子がよく伝わります。日々の様子をつぶさに観察して収集するというのはこの後もずっと続いていくことになります。
<体系的すまい採集帖>
続いては京大退官後にライフワークだった日本住宅研究の集大成として刊行された『日本のすまい』についてのコーナーです。全3巻で1200ページもある本らしく、そこには庶民の住宅がスケッチで描かれています。写真で撮ったものもわざわざスケッチにしたというこだわりぶりで、入念に描き込まれていました。
こちらは青山にあった同潤会アパートの内部の設計。

1941年に住宅営団に職を得て、同潤会の代官山アパートで暮らしていた頃に描いていたそうです。
同潤会アパートの間取りのスケッチも展示されていました。

実際には俯瞰することができないのに非常にリアルに描かれていて、立体把握が流石です。ちょっと漫画チックなところに温かみも感じます。
この辺には京都や名古屋の町家、農家などのスケッチもありました。
こちらは戦後に建設された大阪市営の応急バス住宅。バスを改造して家にしたものです。

部屋は4畳分くらいしかないので土間を建て増ししているようです。こんな家があったというのも驚きですが、戦後間もない頃にこれを描いて記録してたというのも凄い。鉄板なので夏暑く冬寒いという最悪の住宅だったそうで、すぐ壊されたのだとかw
こちらは1954年に建設された鉄道住宅! 市電を10台並べていて、各家は2畳と4畳の部屋があるそうです。。

意外にもこちらはバス住宅よりは恵まれていたそうで、ダイニング・キッチンと言える部屋もあったようです。ちょっと鉄道マニアとしては心惹かれるものがありますw 内部のスケッチも展示されていましたが割と機能的に見えるし、14年住んでた人もいたらしいのでミニマリストみたいな人なら行けるかも??
こちらは京都の南禅寺付近にあった豪華なラブホテル!!w

冷蔵庫の中身や皿の枚数まで数えてますw 図面や写真が残っていたとしても、こんなものまでスケッチしようと考える人は他にいなそうw 今となっては貴重ですね。(しかもいくつか他のラブホテルもスケッチがありました。)
こちらは世界遺産にもなった軍艦島!

鳥瞰図のようになっているのは何かを参考にしたのかわかりませんが、かなり詳細です。勿論、内部の様子や部屋の間取りを描いたスケッチもありました。
他にもドヤや炭鉱住宅、学生寮などをスケッチしたものもありました。住宅があれば何処にでも行って幅広く「採集」しているのがよく分かります。
これは低質な建売住宅のスケッチ。

縦長で横は1.8mしかないビックリハウスw こんな酷い家も採集しているのが面白い。
住まい採集の際に撮った写真。

いわゆる長屋かな。住みづらそうですが、割と絵になる風景です。
こちらが『日本のすまい』

ちょっと読んでみたいけど、読むだけでも相当エネルギーが必要かも。
<自伝的住み方記録>
ここまででも執念とも言えるべき住まい採集の様子が分かると思いますが、その対象は自らの家も例外ではありませんw
こちらは1940年の結婚直後に住んだ京都下鴨の借家。

家がみすぼらしいのは困ると妻の実家に押し切られてこんな大邸宅に住むことになったそうです。
その後、東京に引っ越した際には先程の同潤会アパートに住んだりもしています。
こちらは1944年に再び京都に戻って住んだ大学官舎

8室44畳という豪邸! しかし疎開でここには1年くらいしか住んでいなかったようです。
これは借家を買い取った「生け垣の家」 (1949年に引っ越して1956年に買い取り)

この図面は1966~72年頃の子どもたちが独立して出ていった頃の自分の部屋。どんどん家の様子が変わっていくのも観ることができて面白いです。
これは1947年発行の『これからのすまい』で提案された住宅模型。西山氏自らが手作りした模型です。(両側から同じものを撮っています)


子供3~5人の7人家族向けらしく、その後の公共住宅のモデルになったそうです。
こちらは自分の子どもたちの為に西山氏が設計し注文制作した机や椅子

椅子の下にも引き出しがあるなど、収納力たっぷりです。このギミックの椅子はそそりますw
<おそるべし、記録魔>
ここまでも十分すぎるほどに記録魔ぶりが伝わってきましたが、記録するのは建物だけではありません! 病気の時だって記録します!
食べたものもスケッチ。

食べた感想もちゃんと残しています。お店の名前と電話番号も書いてあるしw
これは胃潰瘍で入院した部屋を描いたもの。

ベッドの周り以外も描いてあるから観に行ったのかなw 何の検査をしたかもきっちり記録しています。
学者は収集癖があるといいますが、記録魔もここまで来ると基礎研究そのものですね。
<実証的すまい調査>
西山氏の原点は「住み方の調査」であり、それはスケッチだけではなく暮らしの実態を把握するために様々な調査を行っていたようです。
これは「中部3都市住み方調査」という論文のための調査票。

手作業で住んでいる人の職業ごとの人数を調べています。それ以前に出した調査例の母数が100では足りないとダメ出しされて、このような大規模調査を行ったそうですが、それが西山住宅論の原点となったようです。
こちらは住宅に対するアンケート。

私も仕事でアンケートの作成から分析までやりますが、どの作業も絶対に手作業でやりたくはないですw この時代よくやったものだと感心させられます。
ということで、建物のスケッチ自体も面白かったですが、その執念とも言える記憶魔ぶりが可笑しくて予想以上に楽しい展示でした。私もブログで観た展示をコレクションしているようなものなので、ちょっと親近感が沸きましたw ここは無料で観られますので、住宅に興味がある方はチェックしてみてください。
おまけ:
ギャラリー2では、クリエイションの未来展 第13回 清水敏男監修 「鈴木基真展 MOD」 という展示をやっていました。
【展覧名】
クリエイションの未来展 第13回 清水敏男監修 「鈴木基真展 MOD」
【公式サイト】
http://www1.lixil.co.jp/gallery/contemporary/detail/d_003863.html
【会期】
2017年10月12日(木)~12月24日(日)
こちらは点数が少なかったので詳細は割愛しますが、展示風景はこんな感じ。

壁に建っている家みたいなのが興味を引きました。
私が観た時はこういう展示風景でしたが、公式サイトではちょっと違う写真もあるので、変わるのかな?

ちょっと各作品の解説を要約するのが難しいので、ご興味ある方は公式サイトをご覧ください。
私が行った時、ギャラリー3は展示替えの準備中でした。この記事を書いている時点で新しい展示が始まっているようです。
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
先日、会社帰りに映画「ブレードランナー2049」を観てきました。この記事には少しだけネタバレが含まれていますので、事前知識なしで観たい方はご注意ください(とは言え前作の知識は必須だと思います。)


【作品名】
ブレードランナー2049
【公式サイト】
http://www.bladerunner2049.jp/
【時間】
2時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_4_⑤_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_4_⑤_名作
【感想】
料金をびた一文割り引いてくれないIMAX版で観ましたが、結構混んでいてコアなSFファンの期待ぶりが伺えました。
さて、この映画は35年前にハリソン・フォード主演で作られた前作があり、前作はフィリップ・K・ディック著『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作にしていたものの、原作とはだいぶ内容が異なっていて半ばオリジナルのような作品でした。そして今作は前作の35年後を描いた内容となっているので、前作を知らなければついてこれない話だと思います。(少なくともあらすじの予習は必要かと思います)
ここから前作の内容を含めてネタバレが入りますが、まずは前作からの世界観を振り返ると この映画の世界は環境破壊が進んでいて、過酷な労働を人間の代わりに行うレプリカントという遺伝子工学で作られた人造人間が出てきます。そしてブレードランナーとは脱走したり凶悪犯罪を行うレプリカントを解任と称して処刑する存在で、前作ではハリソン・フォードが演じるデッカードは面接をすることで人間とレプリカントの違いが分かるという特技がありました。
レプリカントは寿命が4年しかなく、人間と同程度の知識はあるものの浅い人生経験の為に共感性がないのが特徴だったので、面接すれば見破れたのですが、既に前作の時点で人間と思い込んでいて人間としての記憶も植えられているレプリカントも出てくるなど、人間とレプリカントの違いは何なのか?という哲学的な命題を鑑賞者に問いかける深い内容でした。デッカード自身も人間説とレプリカント説があって議論が分かれているなど、様々な謎やサジェスチョンを持ったSF映画の金字塔と言える作品です。
そんな大傑作の続編が出ると聞いた時は蛇足になるのではないかと心配したのですが、前作と同じ脚本家と「LOGAN ローガン」などで活躍する脚本家が名を連ねることを知り、さらに全米で公開され絶賛された様子が伝わってくると、非常に期待が高まって行きました。 そして観た後には大きな満足感と共に、これは1度観ただけでは足りないと感じました。今回も謎とサジェスチョンが示されてて、前作の良さを引き継ぎつつ新たな広がりと奥行きを見せた素晴らしい作品となっています。今作のネタバレはなるべく避けようと思いますが1つだけネタバレすると、今回のレプリカントたちは共感性の欠如という特徴はありません。そこが益々、人間なのかレプリカントなのか判別しづらくなっていて話が面白くなっています。
映像については今回3D IMAX版だったので吸い込まれるような3D体験ができました。前作では退廃したディストピア感と九龍城のような雑多なアジア的雰囲気(間違った日本観みたいなw)が何とも言えない魅力を出していたのですが今作でもそれは健在で、象徴的なシーンがいくつもあります。また、ドゥ~ンドゥ~ンという重厚な効果音がよく使われ、要所要所で緊張感が生まれます。この映像と音響だけでも一級の作品なので、できればIMAX版で映画館でしか観られない体験をするのがお勧めです。
役者も「ララランド」でも主役を務めたライアン・ゴズリングの演技が素晴らしく、役柄に合った表情を見せていました。
ここからは余談ですが、私はSFが大好きで、よく出来たSFは哲学に繋がると常々思っています。この映画は間違いなくその典型例で、作中に「人間らしさ」や「魂」という言葉も出て来るのですが、それが何を指すのか?何の意味を持つのか?と考えさせられます。 昨今、AIの発展がニュースになるようになり、時代がSFの世界に追いつきつつありますが、人間以外の知性が生まれた時に、何を以て人権の線引をするかという問題は今後必ず直面することになると思います。既にチューリングテストを突破できるような対話型AIが生まれつつあり、AIと話しているのか人間と話しているのかわからなくなる時はすぐ来ると予測されます。そうした現実を踏まえ、対話できる知性があれば人間なのか? 人間の母親から生まれれば人間か? 人間とレプリカントの違いは何か? 等など、新しい存在との共存までに考えるべきことがこの映画に詰まっているように思えます。それが35年も前から提示されていたのだから凄い話です。
ということで、大きな期待に応えてくれて大満足の作品でした。最近は毎年のように傑作SFが生まれてくるので、SFファンとしては嬉しい限りです。早くマニア同士の考察や議論も見たい!w
ちなみに、私はこの作品が大好きなので全部満点としていますが、前作を友人に勧めた結果 微妙だったと言われたことがありますw また、前作は途中で寝たと言っていた女性も知っていますので、デートで観るものではないのかも。 アベンジャーズのようなSFアクション物を期待していると全く方向性が違うので、コアなSFファン向けと言えそうです。



【作品名】
ブレードランナー2049
【公式サイト】
http://www.bladerunner2049.jp/
【時間】
2時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_4_⑤_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_4_⑤_名作
【感想】
料金をびた一文割り引いてくれないIMAX版で観ましたが、結構混んでいてコアなSFファンの期待ぶりが伺えました。
さて、この映画は35年前にハリソン・フォード主演で作られた前作があり、前作はフィリップ・K・ディック著『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作にしていたものの、原作とはだいぶ内容が異なっていて半ばオリジナルのような作品でした。そして今作は前作の35年後を描いた内容となっているので、前作を知らなければついてこれない話だと思います。(少なくともあらすじの予習は必要かと思います)
ここから前作の内容を含めてネタバレが入りますが、まずは前作からの世界観を振り返ると この映画の世界は環境破壊が進んでいて、過酷な労働を人間の代わりに行うレプリカントという遺伝子工学で作られた人造人間が出てきます。そしてブレードランナーとは脱走したり凶悪犯罪を行うレプリカントを解任と称して処刑する存在で、前作ではハリソン・フォードが演じるデッカードは面接をすることで人間とレプリカントの違いが分かるという特技がありました。
レプリカントは寿命が4年しかなく、人間と同程度の知識はあるものの浅い人生経験の為に共感性がないのが特徴だったので、面接すれば見破れたのですが、既に前作の時点で人間と思い込んでいて人間としての記憶も植えられているレプリカントも出てくるなど、人間とレプリカントの違いは何なのか?という哲学的な命題を鑑賞者に問いかける深い内容でした。デッカード自身も人間説とレプリカント説があって議論が分かれているなど、様々な謎やサジェスチョンを持ったSF映画の金字塔と言える作品です。
そんな大傑作の続編が出ると聞いた時は蛇足になるのではないかと心配したのですが、前作と同じ脚本家と「LOGAN ローガン」などで活躍する脚本家が名を連ねることを知り、さらに全米で公開され絶賛された様子が伝わってくると、非常に期待が高まって行きました。 そして観た後には大きな満足感と共に、これは1度観ただけでは足りないと感じました。今回も謎とサジェスチョンが示されてて、前作の良さを引き継ぎつつ新たな広がりと奥行きを見せた素晴らしい作品となっています。今作のネタバレはなるべく避けようと思いますが1つだけネタバレすると、今回のレプリカントたちは共感性の欠如という特徴はありません。そこが益々、人間なのかレプリカントなのか判別しづらくなっていて話が面白くなっています。
映像については今回3D IMAX版だったので吸い込まれるような3D体験ができました。前作では退廃したディストピア感と九龍城のような雑多なアジア的雰囲気(間違った日本観みたいなw)が何とも言えない魅力を出していたのですが今作でもそれは健在で、象徴的なシーンがいくつもあります。また、ドゥ~ンドゥ~ンという重厚な効果音がよく使われ、要所要所で緊張感が生まれます。この映像と音響だけでも一級の作品なので、できればIMAX版で映画館でしか観られない体験をするのがお勧めです。
役者も「ララランド」でも主役を務めたライアン・ゴズリングの演技が素晴らしく、役柄に合った表情を見せていました。
ここからは余談ですが、私はSFが大好きで、よく出来たSFは哲学に繋がると常々思っています。この映画は間違いなくその典型例で、作中に「人間らしさ」や「魂」という言葉も出て来るのですが、それが何を指すのか?何の意味を持つのか?と考えさせられます。 昨今、AIの発展がニュースになるようになり、時代がSFの世界に追いつきつつありますが、人間以外の知性が生まれた時に、何を以て人権の線引をするかという問題は今後必ず直面することになると思います。既にチューリングテストを突破できるような対話型AIが生まれつつあり、AIと話しているのか人間と話しているのかわからなくなる時はすぐ来ると予測されます。そうした現実を踏まえ、対話できる知性があれば人間なのか? 人間の母親から生まれれば人間か? 人間とレプリカントの違いは何か? 等など、新しい存在との共存までに考えるべきことがこの映画に詰まっているように思えます。それが35年も前から提示されていたのだから凄い話です。
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