関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに 【埼玉県立近代美術館】

2週間ほど前の日曜日に北浦和の埼玉県立近代美術館で「ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに」を観てきました。

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【展覧名】
 ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに 

【公式サイト】
 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=361

【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅

【会期】2017年10月21日(土)~12月10日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はメキシコの近代絵画で必ず名前が挙がるというディエゴ・リベラという画家についての展示となっています。正直、私は全く知らなかったのですが、意外と日本との関係もあるようで藤田嗣治との交流などもあった画家のようです。展覧会は9章構成となっていて、初期の作品から網羅的に並んでいましたので章立てに従って各章ごとに簡単にご紹介していこうと思います。


<1. プロローグ>
まずは画業の始まりについてのコーナーです。ディエゴ・リベラは1886年に生まれ、10歳からサン・カルロス美術学校で絵を学びました。その頃のメキシコ画家の教師たちは印象派などフランスの新しい絵画の流れを持ち帰って教えていたそうで、ディエゴ・リベラも早くから近代的な絵を学んでいたようです。ここにはディエゴ・リベラの10代の作品があり、農地や地元の山など風景画が中心かな。10代とは思えない才能を見せてくれます。

この章には先生だったホセ・マリア・ベラスコの作品や、少年時代に訪れたホセ・グアダルーペ・ポサダという民衆芸術風の画家の作品もありました。ホセ・グアダルーペ・ポサダは骸骨人間がユーモラスな感じで描かれている作品が多く、これは死者の日という風習を思わせるモチーフだとそうです。この画家はかなり個性的でした。


<2. ヨーロッパ時代のディエゴ・リベラ>
続いては20代でヨーロッパに旅行した時のコーナーです。ディエゴ・リベラはまずはスペインに2年、その後にパリを経て欧州を旅します。その旅の中で印象派→象徴主義→新印象派の点描→エル・グレコの様式→キュビスムといった感じで様々な画風に影響を受けたようで、ここにはそうした作品が並びます。画風がコロコロ変わるのもこの画家の特徴と言えるかも。画風が変わっても落ち着いた色彩であるのは共通しているように思いました。


<3. 壁画へ>
続いてはこの画家の一番有名な仕事である壁画についてです。ディエゴ・リベラはキュビスムなどを模索している頃にフランスの美術評論家のエリー・フォールに指針を与えられ、壁画の構想を促されたそうです。その後1910~1920年に渡って続いたメキシコ革命が終わりディエゴ・リベラが帰国すると、教育担当の大臣が文字が読めない人に歴史を伝える為の壁画の構想を立て、ディエゴ・リベラを含む画家達(主要な画家は3人)がその要請を受けました。
 参考リンク:メキシコ壁画運動のwikipedia

流石に壁画は展示できないので、ここには資料や写真、映像などの展示が並びます。具象的で鮮やかな色彩が使われた群像などがあり、政治的な雰囲気の作品もあったかな。映像で観ると"レバーで世界を操る男"を描いたシュールな壁画にはレーニンとかマルクスの姿があったり、ガスマスクをした兵士が描かれているなどちょっと不気味で恐ろしい雰囲気もあります。(共産革命の色合いがある革命のようです) また、ティナ・モドッティという女性写真家による壁画の写真もあり数多くの壁画が制作されているのがよく分かります。

ここには他にも同じく壁画に携わったホセ・クレメンテ・オロスコのリトグラフなどもありました。この画家の作品は革命のパワーを感じさせるもので、群衆が描かれた作品などとなっています。ちなみにこうした壁画は世界各国の芸術にも影響を与えたようで、日本の岡本太郎もメキシコの壁画にインスピレーションを得ているようです。

この章には同時代の油彩もあり、冒頭の看板にも載っている「とうもろこしをひく女」という作品もありました。ピカソの新古典主義の時代のような力強い肉体表現と強い色彩が目を引き、素朴な生活を感じさせます。


<4. 野外美術学校/美術教育/民衆芸術>
続いては より自由な「野外美術学校」の設立についてのコーナーです。この章のディエゴ・リベラ作品は1点のみで関わりがイマイチよくわからなかったのですが、この野外美術学校には日本人画家の北川民次も関わっていたそうです。北川民次の作品は3点ほどあり、平面的で力強い雰囲気はあるものの落ち着いた色彩が特徴かな。「インディオの姉妹」という作品はちょっと藤田嗣治を想起させるような感じでもありました。

他にも野外美術学校が力を入れた美術教育や小学生の描いた絵に関する雑誌、この運動の中心人物の作品なども並んでいます。


<5. メキシコの前衛-エストリデンティスモからi 30-30 !へ>
続いてはメキシコの2つの前衛芸術運動に関するコーナーです。まずは「エストリデンティスモ」で、これは甲高い・キンキンと響く・過激な といった意味を持つ言葉で理念的かつ概念的な運動だったそうです。これにはディエゴ・リベラや女性写真家のティナ・モドッティも参加したようです。
もう1つはi 30-30 !(トレインタ・トレインティスタス)で、こちらは野外美術学校の出身画家が中心となり現実的で具体的な運動だったようです。

ここには本や雑誌、広告などが並んでいます。プリミティブな雰囲気の版画やダダ・シュルレアリスム的なものがあるかな。特に気に入ったのはラマン・アルバ・デ・ラ・カナルという画家の作品で、ロシア・アヴァンギャルドに通じる幾何学性とプリミティブの融合のような作品が面白かったです。


<6. ディエゴ・リベラをめぐる日本人画家>
ここは日本人画家とディエゴ・リベラの交流についてのコーナーです。ディエゴ・リベラはヨーロッパ滞在中に藤田嗣治と川島理一郎と交流があったそうで、藤田によるディエゴ・リベラの肖像なんかも展示されています。藤田はメキシコ旅行の際にディエゴ・リベラを訪れたものの会えなかったようですが、その際にリベラの仲間たちと交流したりリベラの壁画を観て影響を受けたようです。その旅行の際に撮った写真なんかも展示されていました。
また、先述の北川民次は雑誌でリベラのことを書いたことがあるそうで、ここにも北川民次の作品が1点ありました。 さらにイサム・ノグチによるリベラの肖像もあったかな。
ちなみにディエゴ・リベラは葛飾北斎の神奈川沖浪裏を画中画に描いているそうなので、日本絵画からの影響も少しはあったのかもしれません。


<7. 肖像-人間への眼差し>
続いては肖像画のコーナーです。ディエゴ・リベラにとって肖像は主要なテーマだったようで、ここは割と色んな時代の作品が並びます。ここで目を引いたのは2点で、まずは今回のポスターにもなっている「裸婦とひまわり」です。これは褐色の肌の裸婦の後ろ姿と ひまわりを描いたもので、色の対比の強さと頭より大きなひまわりが力強い印象です。この画風はゴーギャンにも通じる気がしますが、メキシコ美術のプリミティブな要素もあるように思えました(実際にここまで観たプリミティブな作品群などと関係あるのか分かりませんですが) この展示の中では一番良い絵だと思います。
もう1点は「クカ・ブスタマンテの肖像」という作品で、民族衣装を着た姿と対比的な色彩が使われ、これも強い印象を受けました。

ここには他の画家の作品もあり、ダビッド・アルファロ・シケイロス(この人も壁画運動に携わった画家)の「婦人像」という作品が良かったかな。大きな瞳の女性をくっきりした輪郭線と強い影で描いていて、顔と手くらいしか無いのにインパクトある画風でした。


<8. 普遍性と多様性>
最後は民族主義的な流れに反発する美術の普遍性と多様性についてのコーナーです。1938年にアンドレ・ブルトンがメキシコを訪れたそうで、この章ではメキシコのシュルレアリスム的な作品も紹介しています。メキシコでは本格的なシュルレアリスム運動はなかったようですが、ディエゴ・リベラも「聖アントニウスの誘惑」で赤大根を擬人化したような絵を描いていてシュルレアリスムからも影響があったように見えます(本当に作風がよく変わりますw) 
このコーナーにはマヌエル・アルバレス・ブラボという人の写真が多く並んでいて、マン・レイに似た作風に思えるものが結構ありました。しかし死体を撮った作品など衝撃的なものもあり、驚きの個性があるかなw

他には「ファランヘ」や「コンテンポラネオス」といったメキシコの美術界を牽引した雑誌なども展示されていました。


ということで、全く知らなかったメキシコ絵画について知ることができる貴重な内容でした。しかしディエゴ・リベラの作品がそれほどなかったのと画風がよく変わるので、これ!という好みの絵が多くは見つからなかったかな。単に好みの問題ですが、波長が合いそうな方向けの展示だと思います。壁画を間近で観るような機会があれば考えも変わるかもしれませんね。


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映画「ザ・サークル」(ネタバレ多め)

先週、会社帰りにレイトショーで映画「ザ・サークル」を観てきました。今回はネタバレ多めとなりますので、事前知識無しで観たいという方は今回の記事は観た後にでも読んで頂ければと思います。

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【作品名】
 ザ・サークル

【公式サイト】
 http://gaga.ne.jp/circle/

【時間】
 1時間50分程度

【ストーリー】
 退屈_1_②_3_4_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_②_3_4_5_名作

【感想】
割と空いていて、それほど人気が出ている訳では無さそうです。

さて、この映画は架空のSNS「ザ・サークル」で働く女性が主人公でエマ・ワトソンが主演となっています。ザ・サークルはfacebookやgoogleなどを合わせたような設定で、様々なサービスに連結して生活のあらゆる所で役立つ みたいなことを予告動画で言っていたので、これはユートピアが反転してジョージ・オーウェルの「1984年」のようなビッグ・ブラザーが誕生する話か!?と期待して観に行きました。ポスターにも「いいね!のために、生きている」とか書いてあるので、もしかしたらそれが価値基準になって過剰にいいねを欲しがるディストピアか!?なんて別の期待もあったのですが…。

ここから濃い目のネタバレになりますが、結論から言うとどちらでも無く非常にショボい話ですw  現実では到底実現できなそうなことが実現するいうのはSF的なのでむしろ歓迎なのですが、肝心のテーマはプライバシーの問題とか 物事がネットで曲解解釈される問題とか、一部のユーザーが暴走するとか 既にSNSが直面している問題を今更持ち上げている感じが否めませんでした。しかもラストはこれからという所で話が終わってしまうので、尻切れトンボ感が強くてどうにも消化不良です。
途中までザ・サークルの設定を丁寧にしていて、センサーを飲み込ませて体調も管理できるとか 天才技術者の意味深な発言とか 色々面白くなりそうな設定があったのに全く話に活かせてません。主人公が溺れた時に見つけてくれたのはたまたま近くにカメラがあったおかげとか… そこは体内のセンサーで察知しろよ!w むしろセンサー飲み込んだら思考まで解析されるくらい設定を活かして欲しかった。 他にもえ?それだけ?という反応しかできないシーンが多くて、新鮮味も無ければ斬新さもありませんでした。

まあSFではなく現実のドラマとして観ろという意図であれば、宣伝の仕方が悪かったのかもしれませんが(宣伝が良くても尻切れトンボなストーリーはどうにもなりませんけど)、現実ドラマとしても既にアラブの春のようにSNSが世界を動かすような時代になっているのに、今更そんなテーマかよ…と20年くらい前でネットリテラシーが止まってるような時代錯誤感がありました。

と、期待はずれだったのでボロカス言ってますがエマ・ワトソンとトム・ハンクスはいい演技だったと思います。全くもって無駄遣いとしか言いようがありませんw 私としては映画館で観るほどのものではなかったと思いますので、あまりお勧めはできません。そのうちネット動画とかで出たら出演者を目当てに観るのも良いかな位の映画でした。




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久留正道・安藤忠雄 「国立国会図書館国際子ども図書館」

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観に行った際、すぐ近くの国立国会図書館国際子ども図書館にも立ち寄っていました。この建物は一部で撮影できますので、撮影した所については写真でご紹介していこうと思います。
 公式サイト:
  http://www.kodomo.go.jp/
  http://www.kodomo.go.jp/about/building/institution.html

まずは外観。黒田記念館の隣で、東京国立の裏手辺りにあります。
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この国立国会図書館国際子ども図書館(以降は子ども図書館と記載)は、明治39年に帝国図書館として建てられたもので、設計は設計はジョサイア・コンドルの弟子である久留正道と真水英夫らです。割と先生と似た感じの作風に思います。
ちなみにジョサイア・コンドルは明治期に今の三菱一号館美術館や旧岩崎邸庭園などを手がけ、東京駅を設計した辰野金吾を始め、日本の建築家を多く育てた近代日本建築の最重要人物です。河鍋暁斎の元で日本画を学んでいたりもしました。
 参考記事:
  黒田記念館の案内 (2010年11月)
  三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」 (三菱一号館美術館)

角度違いの外観。
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この子ども図書館は大きく分けて2つの棟があり、入口はレンガ棟となっています。レンガ棟はルネサンス様式で重厚な印象を受けます。一方、手前のガラスボックスみたいな所は最近の改築によるもので、改築の際には安藤忠雄 氏が設計に携わりました。今回久々にここに立ち寄ったのは、最近観た安藤忠雄展でこの子ども図書館が作品の1つとして紹介されていて、改めて実際に観に行った感じです。
 参考記事:安藤忠雄展―挑戦― (国立新美術館)

館内の見取り図。レンガ棟の後ろにはアーチ棟という建物があります。
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まずはレンガ棟の3階から観ることにしました。撮影可能な場所を伺った所、階段や廊下は可能で、図書室内部はNGとのことでした。(図書室内部については公式サイトに写真が載っています)

まずは階段。この辺は明治の頃から使っている所です。
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この雰囲気、三菱一号館美術館に似てませんか? ジョサイア・コンドルの一門であることを感じさせます。

こちらは3階のラウンジ。何と、レンガ棟を囲うように新しいガラス張りの建物が増築されているという造りになっています。
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安藤忠雄 氏はこうした新旧の建物を融合させる設計をいくつか行っていて、来年パリにオープンする「ブルス・ドゥ・コメルス」も建物の中に建物を入れ子のようにする大胆な設計を行っています。
なお、この建物の改築は1990年代に児童書専門の図書館設立を求める声の高まりと国立国会図書館の施設の限界を受けて1996年に基本計画が練られ、1999年に法整備されました。2000年から工事をしながら部分開館が行われ、2002年に全面開館となっています。古い建物を活かしつつ、現代的要素を取り入れた斬新な建物です。

階段側の古い扉は開かないようでした。3階は本のミュージアムとなっていて、この日は「日本の絵本の歩み」という展示をやっていました。
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本のミュージアムの中は撮影できなかったのですが、円筒状の仕切りがあったりして現代的な内装となっています。本のミュージアムはかつては普通閲覧室だったそうで、エディキュールという豪華な木製建具や赤レンガなんかも観られます。展示は観ている時間が無かったのでちょっと残念。

3階には建物の歴史についてのパネルなんかもありました。
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元々はロの字になる計画だったのが、明治期の1次と2次の工事でも色を塗った場所だけしか出来ませんでしたw って、これを観る限り入口も実は南側に作る予定だったんですね。

こちらはホール。
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ここには図書館の歴史や活動を紹介する展示コーナーもあります。

続いて2階へ。
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この階には「児童書ギャラリー」や中高生向けの「調べものの部屋」などがあります。図書室は昔からの建物です。

何やら中庭で工事をしていました。
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まだ何か作るのかな??

廊下部分はこんな感じ。
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こちらも三菱一号館美術館に似ているように思います。2階部分はあまり撮影出来る場所が無いかも。

続いて1階。
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1階には「子どものへや」「おはなしのへや」、旧貴賓室の「世界を知るへや」があります。旧貴賓室は寄木細工で作られた床板などもあるので、そこも見どころです。

1階にはカフェも併設されています。
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カフェベルというお店らしく、やはり子供連れが中心のようでした。

1階に安藤忠雄展を記念したスタンプラリーがありました。
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都内だけでも安藤忠雄 氏の設計した建物は結構あります。

改修時の設計図のパネルもありました。
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こちらは横から観た感じで描かれています。

レンガ棟1階から観たアーチ棟。こちらは安藤忠雄建築研究所と株式会社 日建設計による設計です。
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こちらは全面ガラス張りで2015年に竣工しました。私が以前来た時は無かったと思います。

これはレンガ棟を裏から見た様子。
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これだけ観ると現代建築そのものw 避雷針のところだけ面影があるかな。

アーチ棟を横から見た所。
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この中には研修室や資料室、書庫などがあるようです。流石に用もないのに入るのは憚れるのでこの辺で止めておきました。


ということで、新旧の建築家のコラボが見事な建物となっていました。先日の安藤忠雄展の人気ぶりからも建物好きには楽しい所だと思いますので、上野公園に行った際にでも足を伸ばしてみるのもよろしいかと思います。勿論、ここは児童書の蔵書も日本一なので、図書館として利用するのが本来の趣旨通りかなw


おまけ:
帰り道に上野公園で寛永寺の文殊楼を模したインスタレーションを見ました。(既に終了)
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こちらは数寄フェスの作品の1つで、大巻伸嗣 氏の作品です。
 公式サイト:TOKYO数寄フェス2017
 期間:2017年11月10日(金)~11月19日(日)

正面から見るとこんな感じ。
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水面に反射して非常に綺麗でした。

上野公園でも軽くイルミネーションが灯っていました。
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ここは桜並木なので桜っぽくした感じ。





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木戸修展 SPIRAL 螺旋の軌跡 【東京藝術大学大学美術館 陳列館】

前回ご紹介した東京藝術大学大学美術館の展示を観た後、本館の向かいにある陳列館で「退任記念 木戸修展 SPIRAL 螺旋の軌跡」も観てきました。こちらの展示は無料で、撮影可能でしたので写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 退任記念 木戸修展 SPIRAL 螺旋の軌跡 

【公式サイト】
 http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2017/kido/kido_ja.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館 陳列館
【最寄】上野駅

【会期】2017年11月16日(木)~12月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は東京藝術大学美術学部彫刻科で教鞭をとってきた木戸修 氏の退任記念と銘打たれていて、30点あまりの作品と制作の様子を示す映像やパネルなどが並ぶ内容となっています。私は木戸修 氏については全く存じ上げていなかったのですが、入口にあった作品を観て流れるようなフォルムの金属の美しさに惹かれました。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。

こちらが入口にあった作品。
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金属の円が連なる造形の美しさに惹かれました。

会場の中に入ると最初に各地に置かれたパブリックアートのパネルが展示されています。
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いくつか知ってる場所があったので、もしかしたら観たことがあるかも??

円形以外にも様々な作品があります。
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彫刻のような工業製品のような独特の形をしています。木戸修 氏は1980年代からこうした作品を作っているそうで、コンピュータによるプログラミングを制作にいち早く取り入れていたのだとか。

これも不思議な形をした作品。調理器具とかにありそうなw
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何となくダリの「記憶の固執の崩壊」を思い出しました。

こちらも何かの部品みたいに見えますが…
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金属なのに柔らかそうな感じを受けます。

こちらも柔らかそうな印象を受けた作品。
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金属自体の美しさも効果的で面白い。

こちらは何かの波かグラフみたいな形。
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他のに比べるとメカニカルな感じを受けますが、流れるようなフォルムです。

こちらのケースも個性的な造形です。
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手前のはラジエーターみたいに見えますが、何でしょうか??w

素描や金属にする前に試行したような品もありました。
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造形だけでも楽しいですが、解説がもうちょっと欲しかったかな。

部屋の外にも展示が続いています。こちらは2本が螺旋を描いて絡まるような作品。
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この流れるような美しさはブランクーシの空間の鳥を観た時と似た感動を覚えました

こちらは芸大前の通りからも観られる作品。
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複雑な形で、光の反射も含めて美しいです。この展示ではこれが一番気に入りました。

続いて陳列館に戻って2階にも展示が続きます。
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部屋の中央に大きな円形作品がありました。単に円ではなく捻れています。螺旋へのこだわりを感じます。

こちらはメビウスの輪を更に複雑にしたような形。
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よく観ると繋がっているのが分かります。

こちらもいつの間にか表が裏になっている造形
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前のに比べれば若干シンプルですが、反射する金属面の美しさではこちらのほうが好み。

この辺になると写真でも繋がってるのかどうか判別が難しいw
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優美な造形です。

最後に特に面白い形の2点
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左のはタバコの煙とかを彷彿とさせました。


ということで、全く予備知識もなく解説もありませんでしたが非常に楽しめました。工業的なようで自然物のようでもある近未来的な美しさを感じました。無料で観られるし写真も撮れるので、上野の展示を観に行く予定がある方は、ついでに寄ってみて欲しい展示です。




なお、同じ会期で本館 展示室3・4では下記の展示も無料で観られます。

【展覧名】
 東京藝術大学130 周年記念事業
 全国美術・教育リサーチプロジェクト- 文化芸術基盤の拡大を目指して-
 「子供は誰でも芸術家だ。問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかだ。パブロ・ピカソ」

【公式サイト】
 http://research-project.geidai.ac.jp/

こちらも子供とは思えない天才ぶりを発揮してる子の作品もあって面白かったです。


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皇室の彩 百年前の文化プロジェクト 【東京藝術大学大学美術館】

先週の土曜日に上野の東京藝術大学大学美術館で「皇室の彩 百年前の文化プロジェクト」を観てきました。

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【展覧名】
 東京藝術大学創立130周年記念特別展
「皇室の彩(いろどり) 百年前の文化プロジェクト」 

【公式サイト】
 http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2017/koshitsu/koshitsu_ja.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館
【最寄】上野駅

【会期】2017年10月28日(土)~11月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
かなり盛況で列を組んで観る感じでした。場所によってはしばらく待たないと作品を観られないくらいの混みようです。既に会期末となってしまいましたので、更に混んでいる可能性はあります。

さて、この展示はおよそ100年前の大正から昭和最初期の頃に 御成婚や御即位のお祝いとして皇室に献上された品々が並ぶ内容となっています。当時の選りすぐりの作家たちが勢揃いして総力を上げて作られたものばかりですが、今まであまり一般の目に触れられる機会がなかったようで今回は貴重な機会と言えそうです。展示構成は2章から成っていましたので、それぞれについてその様子をご紹介していこうと思います。


<第一章 皇室をめぐる文化政策と東京美術学校>
まずは献上品の歴史と東京藝術大学の前身である東京美術学校との関わりについての章です。今回並んでいるような献上品は、1894年の明治天皇の大婚25年の時から作られるようになったそうで、昭和の大礼(即位の礼)まで続いたそうです。慶事の際に技術の粋を集めて作られていたので文化の向上に一役買ってたとも言えるようで、驚くべき品が並びます。

最初に驚いたのが「綵観」(さいかん)という作品。これは18人による合作となっていて、作者は橋本雅邦、高村光雲、川端玉章、濤川惣助あたりは特に有名かな。非常に豪華なメンバーです。小さな衝立のように展示されていて1面ごとに各作者の個性が観られるのですが、素材も技法も異なり、絵だったり陶器だったり彫刻だったりします。これだけでも眼福なのですが、この作品すらまだ序章に過ぎませんw この後も怒涛のごとく合作ラッシュが続きます。
 参考リンク:芸大の収蔵品データベース

次に驚くのがやはり巨匠たちの合作の「東京名勝図・萬歳楽図衝立」です。これは衝立に描かれた当時の東京市の地図の周りに扇面散らしのように名勝を表した扇が並んでいるのですが、やはり絵だけではなく陶板だったり彫漆だったり彫金だったりします。まさに明治時代の日本美術の結晶! それぞれの作品も半端ないクオリティで何じゃこりゃ!??と目を丸くしながら観てきましたw 割と美術品は見慣れていますが、これだけの合作は滅多に観られないと思います。(しかしまだこれもこの展示の前座です) なお、裏面は舞いを踊る人が描かれているのでそちらも見どころです。
近くには扇面の図案なんかもありました。叙情的な風景が好みです。

他に序盤で気に入ったのは「軍鶏置物」で、これは脚でトカゲを踏んでいる鶏を表した置物。緊張感が漲っていて凛々しさを感じます。また、「萬歳楽置物」という動きのある舞楽の姿の彫刻も目を引きました。これは高村光雲によるもので、衣が特に軽やかで躍動感があります。そしてその台座も半端じゃないほどの螺鈿細工で埋め尽くされていて、非常に絢爛豪華な雰囲気でした。

そしてまた合作の作品「景雲餘彩」が目を引きます。日本美術院のメンバーらが描いたもので、横山大観が富士、前田青邨が鱒、近藤浩一路が松島、小林古径がリス、木村武山が養老(人物)、安田靫彦が良寛、中村岳陵がナマズ、下村観山が山を描いています。皆30代の頃の作品ということですが、既に完成度の高い作品ばかりでこれだけでも日本画好きには驚きの豪華共演と言えそうです。

部屋の奥には壁画のように大きな横山大観の「日出処日本」がありました。富士と真っ赤な朝日が描かれ雄大で日本の象徴のような光景です。また、絵画では次の部屋の辺りにあった松岡映丘の「住吉詣」という二曲一双の屏風も見事でした。源氏物語の澪標を題材に、鮮やかな色彩で伝統的な大和絵に遠近感のような新しい技法を取り入れていて、新しい時代を感じさせます。

最初の部屋の最後あたりには正木直彦(東京美術学校の校長を務めた人物)に関する資料が並びます。正木直彦は岡倉天心が辞職した際(日本美術院の連中も一気に辞めた事件)に就任し、その混乱を収めて長期に渡って安定した学校経営を実現しました。また、皇室と美術の繋がりを構築したり、官展の創設や古美術の保護、美術の国際交流など、様々な面で日本の美術界を支えてきたようです。ちなみに陳列館の裏の正木記念館には正木直彦の像があり、今でも芸大では正木直彦が敬われているのが分かります。


<第二章 大正十三年、皇太子御成婚奉祝>
続いては主に大正13年に後の昭和天皇のご成婚された際のお祝いの品々についてです。本当はその前年にご成婚のはずだったものの、関東大震災で1年延期を余儀なくされたようです。その際、献上品も自粛すべきではないかというムードが漂っていたようですが、正木直彦は献上品は国民の気持ちを表すものだとして強く主張し、それが通ったようです。 ここに展示された品々は制作年がご成婚の4年後の1928年(昭和3年)のものばかりですが、作るのに相当時間がかかったようです。その時間の分だけ驚異的なものを作っていた訳で、この章には前章を超えるラスボスが待っていますw 

この章の最初には「花電車」という市電を改造して山車みたいにした電車の 写真と図案が並んでいました。これは16日間走ったそうで、デザインは東京美術学校が担当したそうです。私は鉄オタでもあるのでこれは鉄道知識の方で知っていましたw 正直ちょっとダサいw(ちなみに現代でも花電車はたまに走ります。大体ダサいですw)

そして、今回の一番の見どころである「御飾棚 鳳凰菊文様蒔絵」という2つの棚が360度ぐるっと観られるように展示されています。これは鳳凰が表された天皇の棚と、鶴が表された皇后の棚となっていて、全面に蒔絵が施されています。これがまた超絶技巧で、かなり細かいところまできっちり表現されています。最近の研究で、鳳凰は彫りの段差が角い感じになっている一方、鶴の彫りの段差は柔らかく表現されているのが分かったそうで、天皇皇后のイメージに合わせた表現になっているそうです。そんな細かい所に気づく方が現れるまで100年かかりましたねw この棚の周りには棚を飾った品々があり、花瓶や壺、置物、香合などなど様々な品が並んでいます。勿論これらも当時最高の技術が使われているので、この棚のワンセットを揃えるのに4年かかったのも頷けます。本人たちも気に入っていたようで、皇后陛下が棚と一緒に写った写真なんかもありました。

この辺で他に目を引いたのは和田光石の「牙彫置物 唐子遊」です。これは象牙を彫って中国の子供を表したものなのですが、踊ったり楽器を演奏していて非常に生き生きして可愛らしい姿をしています。しかしそこに使われた技術はやはり超絶技巧で、指などはミリ以下の単位で表現しています。これは実物を観ると驚嘆する精密さだと思います。
また、73名が参加した「瑞彩」という画帳の一部もありました。73名って…w これも展示されてるのは日本美術院のメンバーなどが多かったかな。

そして最後にダメ押しで「二曲御屏風 腰彫菊花文様」と「二曲御屏風 腰彫桐文様」という2対の屏風が展示されています。これは黒漆の上に扇面や色紙を散りばめたもので、1面に6枚ず貼られています。これも様々な技法が使われているのですが、彫金、陶板、蒔絵などだけでなく、非常に贅沢な堆朱(赤い漆を層にして重ねてから彫ったもの)まで含まれていました。 最後まで驚かされっぱなしです。


ということで、まさに戦前の日本美術の総力戦と言った感じの品が並んでいました。現代では無理なレベルの品もあって、戦前の名工たちは限度を知りませんw 特に「御飾棚」と「二曲御屏風」は見どころで、非常に驚きでした。 もう会期末となってしまいましたが、工芸好きの方にお勧めの展示です。


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《地獄の門》への道―ロダン素描集『アルバム・フナイユ』 【国立西洋美術館 版画素描展示室】

今回も写真多めです。前回ご紹介した国立西洋美術館の常設を観た際、版画素描展示室で《地獄の門》への道―ロダン素描集『アルバム・フナイユ』という展示も観てきました。この展示も撮影可能でしたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 《地獄の門》への道―ロダン素描集『アルバム・フナイユ』 

【公式サイト】
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2017rodin.html

【会場】国立西洋美術館 版画素描展示室
【最寄】上野駅

【会期】2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は「考える人」で有名な彫刻家オーギュスト・ロダンの版画展となります。昔、トリビアという番組でもネタにもされましたが「考える人」は何について考えているか?というと、地獄について考えています。そもそも「考える人」は「地獄の門」の門上部の真ん中に置かれた像(元々はダンテだった)がソロデビューしたようなものなので、本来は地獄の門こそがロダンの代表作と言えると思います。 そしてこの展示では装飾芸術美術館の門扉として「地獄の門」を創作するにあたり ロダンが1年間に渡ってダンテの「神曲 地獄篇」を元に想像した地獄のデッサンを集めた「アルバム・フナイユ」を取り上げています。このアルバム・フナイユは142点のデッサンを版画化したもので、支援者の美術愛好家モーリス・フナイユの名を取ってこの名前となっているそうで、ロダン自身が制作に深く関わった為、高い評価を得ているようです。 とは言え、このデッサンは現実から離れ過ぎた為に一旦放棄して、自然に基づいてデッサンをやり直したそうで、地獄の門の完成作には出てこないモチーフもあるようです。そんな自由過ぎるほどの想像力を働かせた素描版画が並んでいましたので、詳しくは写真を使ってご紹介しようと思います。
 参考記事:手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描 (国立西洋美術館)
  

オーギュスト・ロダン「地獄の門のマケット(第三構想)」
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割と完成形の雰囲気に似ていますがまだ考える人もいないし細部はだいぶ違うかな。既に蠢くような感じは出てます。

冒頭にダンテの『神曲』についての簡単な説明がありました。平たく言えばキリスト教徒によるキリスト教徒の為のあの世の世界観を詰め込んだ本で、地獄篇、煉獄篇、天国篇の3つから成ります。ダンテ自身がローマの詩人ウェルギリウスに連れられて辺獄(リンボ)を抜け、地獄の責め苦を受ける8つの圏谷を観た後、煉獄(頑張れば天国に行ける魂を清める世界)を経て天国へと向かい、ついに神に会うというストーリーです。過去の偉人や罪人などが沢山出て来て、異教徒や異教の神なんかはメチャクチャ酷い扱いだったりするので、国によっては今でも発禁本扱いだったりします。(その様子はこの作品にも表れていますが、その辺の写真は載せないでおきます) 本は読むのが大変な割によく分からないのでwikipediaあたりで一度読んでみると概要が分かるかと思います。
 参考リンク:神曲のwikipedia


<地獄>
この版画集も神曲同様に3つに分かれているのですが、地獄、辺獄、習作という分かれ方で、まずは早速地獄からです。

オーギュスト・ロダン「異端者たち」「岩山の亡霊」
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異端者=地獄行きです。両方何をしているか分かりませんが、苦しみを感じるポーズや所在なげなポーズをしています。

オーギュスト・ロダン「復讐の女神エリニュスの一人」
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殺戮や嫉妬といったヤバいものを司る復讐の女神たちの1人で、勿論 地獄行きです。ぎょろっとした目と表情が怖いw かなりインパクトがあります。

オーギュスト・ロダン「地獄の亡者の像」「亡霊たちの群像」
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筋肉むきむきの亡霊たち。この肉体表現はロダンらしさを感じるかも。

オーギュスト・ロダン「ケンタウロスと子供」「3人の亡霊」
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このシリーズにはケンタウロスがよく出てきます。調べたところ、人を虐げた暴君たちを血の川において懲らしめる獄卒の役目を果たしているとのことで、仏教の地獄絵図の牛頭馬頭に近いかも。躍動感と緊張感があります。

オーギュスト・ロダン「ダンテに話しかける3人の亡霊」「亡霊」
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亡霊たちはもう疲労困憊といった感じ。虚ろな感じがよく出ています。

オーギュスト・ロダン「幻想の馬に乗ったダンテとウェルギリウス」「チャンに放り込む亡霊を見せる悪魔」
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亡霊かと思ったらダンテ一行でしたw ちょっと力ない感じを受けますが…。

オーギュスト・ロダン「牢獄のウゴリーノ」「惨い食事の途中でダンテに身の上を語るウゴリーノ」
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ウゴリーノは中世イタリアの貴族で海軍提督を務めた人ですが、ダンテはこの人を祖国への裏切り者として扱い、裏切り者の氷地獄(これが一番キツい地獄)に登場させています。ロダンはウゴリーノの話が気に入ったのか、何枚もウゴリーノを描いているようでした。

オーギュスト・ロダン「ケルベロス」「地獄に堕ちた亡者」
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ケルベロスって頭が3つある犬かと思っていましたが、ここでは人の身体をしています。メチャクチャ顔が怖い。 一方、亡者のこのスピード感! 残像?w

オーギュスト・ロダン「空中の悪魔」
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悪魔のこの躍動感! 背泳ぎしてるみたいなw 今回の展示で一番気に入ったのはこの作品でした。

オーギュスト・ロダン「空中の悪魔」
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完全にクロールでしょ これはw 地獄では悪魔は好き放題やってるのかも。

オーギュスト・ロダン「愛欲の圏谷」
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愛欲にまみれた男女が暴風に晒される地獄。どういう状況か分かりませんが、力強さと動きを感じます。

オーギュスト・ロダン「考える人」
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考える人もありました。ここまで観てきたような地獄を目の当たりにして考え込んでいます。


<辺獄>
続いては辺獄(リンボ) ここは地獄の入口あたりで、責め苦はありません。善良だけどキリスト教の洗礼を受けていない人が集まる所で、キリスト誕生以前の人はみんなここにいます。案内人のウェルギリウスだってここの住人です。他にもギリシャ神話のイカロスなんかも出てきますが、描かれているのは母子像が多いかな。まあ大半の日本人もここか煉獄行きでしょうねw

オーギュスト・ロダン「女と2人の子供の亡霊」「炎を渡る亡霊」
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右の亡霊の動きが面白いけど怖い! 身体が燃えているように見えます。

オーギュスト・ロダン「ダンテとベアトリーチェ」
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神曲において最も重要なのはベアトリーチェかもしれません。ダンテが子供の頃に心惹かれた女性でで若くして死んでしまい、「永遠の淑女」として愛の象徴として登場します。ダンテとベアトリーチェが会うのは煉獄で、天国へと導いて貰うストーリーです。

オーギュスト・ロダン「男と子供」「アナクレオンとクピド」
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アナクレオンは古代ギリシャの詩人です。どちらも子供と親みたいな感じで描かれていて、ここまで観てきた地獄と違いちょっと親密な空気が感じられました。


<習作>
ここは点数少なめです。ケンタウロスなど地獄篇との繋がりを示す作品もありますが、古代や神話を漠然と表すモチーフが描かれているようです。

オーギュスト・ロダン「2人の亡霊」「ミケランジェロ」
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ミケランジェロはちょっと争っているようにも見えますね…。ちょっとどういう意図か分かりませんでした。

オーギュスト・ロダン「ウェヌスとクピド/放蕩息子/バッカスの祭」「戦い」
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この辺は定番のモチーフといった感じがします。放蕩息子の場面は劇的で目を引きました。


版画はこれで終わりです。最後にこの国立西洋美術館の入口付近にある地獄の門をご紹介。

オーギュスト・ロダン「地獄の門」
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上部中央でじーっと考えているのが恐らくダンテです。版画を観てから実物を観ると色々違いがあるのが分かると思います。


ということで、彫刻家でありながら自由な発想の絵を描いていたことがよく分かる展示でした。この版画素描展示室の展示は観た時はそれほどインパクトが無くても、あちこちで展示を観て知識が深まるに連れて観ておいて良かったと思った展示が多々ありましたので、今回もそうなると思います。ちょっと渋めの展示ですが、北斎展に行かれる方はこちらも是非どうぞ。



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【国立西洋美術館】の案内 (常設 2017年11月)

前回ご紹介した展示を観た後、国立西洋美術館の常設も観てきました。しばらく記事にしていませんでしたが、ブログ休止中などにも新収蔵品が増えてきていましたので久々にご紹介しようと思います。今までご紹介していない作品をピックアップしました。

公式サイト:
 http://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_5_area.do

 ※常設展はフラッシュ禁止などのルールを守れば撮影可能です。(中には撮ってはいけない作品もあります。)
  掲載等に問題があったらすぐに削除しますのでお知らせください。

参考記事
 国立西洋美術館の案内 (常設 2011年10月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2011年07月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年10月 絵画編)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年10月 彫刻編)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年06月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年02月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年01月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2009年10月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2009年04月)

エヴァリスト・バスケニス 「楽器のある静物」
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こちらは所謂ヴァニタス画かな。本や楽器が並び意味深な感じ。リュートに埃が被っているのを指で擦った跡が残った表現が見事です。楽器による聴覚と触覚が表現されているのかな? 隠された意味を探すのが難しいけど面白い絵です。

スケッジャ(本名ジョヴァンニ・ディ・セル・ジョヴァンニ・グイーディ) 「スザンナ伝」
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こちらは2015年購入の新収蔵品。元々は長持の一部だったようで横長の画面になっています。旧約聖書の「スザンナと長老」という長老たちによるセクハラ&パワハラで濡れ衣を掛けられたスザンナがダニエルの知恵によって逆転する話で、これは最後の辺りのシーンで右の方で長老が石打ちの刑になっています。貞操を主題とした話なので嫁入り道具として作られたのだとか。この話、今期話題のあの展示にもありましたね。
 参考記事:怖い絵展 (上野の森美術館)

アンドレア・デル・サルト(本名アンドレア・ダーニョロ・ディ・フランチェスコ) 「聖母子」
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アンドレア・デル・サルトはルネサンスを牽引したのに今では知る人が少ない気の毒な画家。この聖母子は奥さんと子供をモデルに描いたそうで、生き生きと描かれています。そのうち再評価で有名になるかも?
 参考記事:夏目漱石の美術世界展 感想前編(東京藝術大学大学美術館)

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 「聖フスタと聖ルフィーナ」
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ちょっと聞いたことが無い聖人ですが、セビーリャの守護聖人とあがめられているそうで、これはセビーリャの聖堂を飾る祭壇画の習作だそうです。棕櫚の葉っぱを持っていることから殉教者であることが分かり、足元に陶器が転がっているのは彼女たちのアトリビューション(持ち物)で異教神礼拝用具を作れというローマ司祭に注文を拒否して殺された為のようです。習作の為か粗めの感じがしますが見事な描写でした。

アントニオ・ベルッチ 「キリスト降架」「羊飼いの礼拝」
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この2点は旧松方コレクションの一部で、2010年に購入したようです。アントニオ・ベルッチはバロック期ヴェネツィア派の画家で、これは天井画の下絵だそうです。キリストの誕生と死を対にして展示しているのが面白いですが、この完成作がある聖堂にはさらにキリストの昇天もあるそうです。

アンゲリカ・カウフマン 「パリスを戦場へと誘うヘクトール」
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こちらは新古典主義の女性画家による作品。パリスは「パリスの審判」で有名な牧童(実は捨てられたトロイアの王子)で、三美神で一番美しい神としてアフロディーテを選んだ見返りとしてスパルタ王の人妻ヘレネーと恋に落ちます(誘拐ですw) その結果、トロイアとスパルタは戦争になって、このシーンではパリスの兄がパリスに戦争に戻れと諌めています。隣に立ってるのがヘレネーかな。気品溢れる雰囲気です。 ちなみに、この戦争の結果、トロイアは滅亡します。

ジャン=ヴィクトール・ベルタン 「イタリア風景」
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新古典主義の画家でコローの師匠の1人でもある画家。風景画というジャンル自体があまり格が高くないとされていた時代ですが、理想的で神話の世界のようにすら感じられます。

ジャン=ヴィクトール・ベルタン 「ギリシアの風景」
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こちたもベルタンの作品。イタリアとの差が分からないw 理想化している為か、どれも似た感じに見えるのがアカデミックな絵画とも言えます。

ウィリアム・アドルフ・ブーグロー 「音楽」
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こちらは2015年購入の新収蔵品。ブーグローも新古典主義のアカデミックな画家ですが、これは平坦で中々大胆な表現に思えます。ちょっとブーグローの印象が変わる1枚でした。

ベルト・モリゾ 「黒いドレスの女性(観劇の前)」
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こちらは2017年の新収蔵品。印象派の女性画家モリゾの第二回印象派展出品作と思われるもの。マネを師と仰いだだけに黒の使い方が見事で、明るささえ感じさせました。主題もモリゾらしい感じ。久しくモリゾ展をやっていないのでどこかでやって欲しい。

ポール・ゴーギャン 「画家スレヴィンスキーの肖像」
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こちらは旧松方コレクション。1891年の作品なのでタヒチに行く直前かな。浮世絵から影響を受けたクロワゾニスムと呼ばれる黒い輪郭線と色面の表現が使われています。花束が明るくて手前に浮いてくるような印象を受けました。

ポール・セリュジエ 「森の中の4人のブルターニュの少女」
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ナビ派としてゴーギャンに指導を受けたセリュジエ。ブルターニュ地方独特の服を着た女性たちをクロワゾニスムで描いていて、色も対比的で目に鮮やかです。左上の女性のポーズの為か、流れるようなリズムも感じられました。

ラファエル・コラン 「楽」「詩」
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両方共2015年購入の新収蔵品。コランは日本洋画の重鎮である黒田清輝や岡田三郎助、和田英作らを指導したフランスの画家で、印象派と象徴主義を合わせたような外光派と呼ばれる形式で清純な女性をよく描いています。この作品でも霧に霞むように清らかな女性が意味深に描かれていました。黒田清輝の作品はコランの画風によく似ているというのも分かると思います。

モーリス・ドニ 「字を書く少年」
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国立西洋美術館はドニのコレクションが充実していますが、これは松方コレクションの1枚。ドニは親密な主題で心休まる絵をよく描いているので好み。この色合も温かみを感じます。

モーリス・ドニ 「若い母」
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これも松方コレクションですが初めて観た気がします。一種のママ会みたいなものでしょうか。昔も今も変わらない微笑ましい光景で幸せそうです。

アンリ=ジャン=ギヨーム・マルタン 「花と泉水」
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新印象主義の点描を使って非常に明るい色彩表現をしたマルタン。象徴主義的な作品も残していますが、ここではそういう神秘性はなく日差しの強い公園の一時といった感じに見えました。

エミール=アントワーヌ・ブールデル 「首のあるアポロンの頭部」
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ロダンの助手をしていたブールデルの作品。西洋美術館の入口にあるヘラクレスのイメージがあるので力強い彫刻家のように思ってしまいますが、こうした精神性を湛えるような作品もあります。


ということで、国立西洋美術館は今なお進化し続けているのがよく分かるコレクションとなっていました。それほどしょっちゅう変わるわけではないですが、この美術館の常設はかなり見応えがある作品が多いので特別展を観た後に併せて観ることをお勧めします。いまやル・コルビュジエの建物群の1つとして世界遺産になっている建物も楽しめます。


おまけ:
久々にカフェすいれん でお茶してきました。
 参考リンク:カフェ「すいれん」 【上野界隈のお店】

私はブリストルというケーキとコーヒー。
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ケーキは美味しかったですが、コーヒーはインスタントみたいな味w

連れはチーズケーキと紅茶。
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ポーションが来るってどうよw こちらもケーキは美味しかったようですが紅茶はイマイチだったようです。

ということで、上野公園のカフェのレベルが上がってきているだけにそろそろここもレベルアップして欲しいかな。世界遺産にあるカフェがインスタント並ってどうなのよw

とは言え、ここの眺めは最高なので、これ目当てに入りたくなりますw
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北斎とジャポニスム―HOKUSAIが西洋に与えた衝撃 【国立西洋美術館】

3週間ほど前となりますが、上野の国立西洋美術館で「北斎とジャポニスム―HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」を観てきました。

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【展覧名】
 北斎とジャポニスム―HOKUSAIが西洋に与えた衝撃 

【公式サイト】
 http://hokusai-japonisme.jp/
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2017hokusai.html

【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅

【会期】2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構混んでいて、あちこちで列を組んでいるような感じでした。私は2列目以降で鑑賞していたので、人によってはもっと鑑賞時間がかかるかもしれません。

さて、今回の展示は葛飾北斎が西洋美術に与えた影響についての展示です。北斎は有名な「富嶽三十六景」を始め多くの浮世絵を残していますが、それだけではなく「北斎漫画」という一種の絵手本となる冊子も出版していました。そうした作品はやがて「ジャポニスム」と呼ばれる西洋世界での日本美術の発見の際に非常に高い評価を受け、様々な影響を広範囲に渡って与え続けました。 この展示ではその様子を網羅的に6章に渡って紹介していましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。(今回は特にメモしていませんのでちょっとうろ覚えの所もあります)
 参考記事:ホノルル美術館所蔵「北斎展」 (三井記念美術館)


<1章 北斎の浸透>
まずは北斎の西洋での認知についてのコーナーです。ここには北斎漫画などからの模写などが並んでいました。西洋において絵画といえば宗教画・歴史画・人物画が中心で、北斎漫画に描かれた市井の人々や動植物といったものはあまり注目されていなかった為、その視点自体が西洋には驚きがあったのだと思います。特に北斎漫画はあらゆる題材を鋭い観察眼によって表していて、動植物の生態や人々の動きを生き生きと捉えています。一部は滑稽とも思えるものもあり、テーマも実に様々です。
西洋ではこうした北斎の作品を模写するだけでなく、やがてその本質である自然への観察や同時代の描写、同じものを何枚も描くといったアイディアについても取り入れて行くことになります。それについては2章以降の内容となります。


<2章 北斎と人物>
続いては人物画についてのコーナーです。ここには今回のポスターになっているドガの「踊り子たち、ピンクと緑」と北斎漫画十一編に描かれた相撲取りの後ろ姿を対比するように展示されていました。腰の後ろに手を当てるポーズが同じなのでオマージュ的な感じも受けますが、単にポーズが似ているだけなのでは?という気がしなくもないw とは言え、こうした何気ない日常を鋭く捉えるというのは北斎を始めとする日本美術の影響があったのは確かではないかと思います。
また、同様にメアリー・カサットの「青い肘掛け椅子に座る少女」が北斎漫画の布袋と共に展示されています。ソファにぐでーっと行儀悪く座っている子供と、自分の袋に横たわっている布袋が比較されていて、これも確かにポーズは似ていますが、単に似ているだけのような気はしますw まあそれを置いといてもカサットのこの絵自体が良い絵なのは確かなので、久々に観られて良かったです。
 参考記事:ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション 感想後編(国立新美術館)

この章には仕切られた小部屋みたいなのがあり、北斎の春画が展示されていました。クリムトやロダンの裸体作品と比較されていましたが、裸体については西洋画の方が以前から描かれているような気はします。

少し先には北斎の妖怪画のコーナーがあり、それとルドンの「ゴヤ讃」の「沼の花」が比較されていました。ルドンこの絵はタイトル通りゴヤや植物学者からの影響があるように思えますが、妖怪というモチーフがルドンにも刺さったのかもしれません。
 参考記事:ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)


<3章 北斎と動物>
続いては動物を描いた作品のコーナーです。ここにはボナールが描いた「兎のいる屏風」がありました。ボナールは仲間から「日本かぶれのナビ」と呼ばれるほどの日本美術好きなので、これは間違いなく日本美術から影響を受けているのが分かります。
また、ここにはゴーギャンによる「三匹の子犬のいる静物」という作品があり、ミルクを飲んでいる3匹の子犬が描かれていました。近くにあった葛飾北斎の「三体画譜」にも犬が描かれているのですが、両者の犬の姿はあまり似ていません。こちらはモチーフとして犬を描くという点において共通しているだけかもしれませんが、その視点にはそれまでの西洋画とは異なるものがあると思います。

ここには絵画以外にもガレのガラス器などもありました。ガレは特に北斎から影響を受け、初期は北斎漫画をそのままガラスに転写した作品なども残しているので、まさに北斎礼賛と言えそうです。しかしガレは単なる写しではなく、北斎の本質である観察眼を身に着けていった作家でもあり、今回の展示でもそれを観ることができると思います。
 参考記事:エミール・ガレの生きた時代 (目黒区美術館)


<4章 北斎と植物>
続いては植物を描いた作品のコーナーです。ここにはまずジャポニスムの立役者ともいえるフェリックス・ブラックモンのエッチングや皿などがありました。ブラックモンは日本から運ばれた陶器の緩衝材だった浮世絵や北斎漫画に最初に目をつけた人物で、やがてそれを自身の作品にも投影しています。このブラックモンのおかげで北斎が西洋で有名になったとも言えそうです。

また、ここには国立西洋美術館所蔵のゴッホの「バラ」やモネの「黄色いアイリス」なども展示されています。この辺は見慣れた感じがしますが、北斎と比較しながら観るというのは初めてなのでちょっと違った視点で観られました。
 参考記事:ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 (東京都美術館)

他にもガレやドームによるアール・ヌーヴォーの作品が並び、花鳥風月という題材そのものが西洋美術に取り込まれていったことが分かる内容となっていました。


<5章 北斎と風景>
続いては風景画のコーナーです。ここではモネの「陽を浴びるポプラ並木」と「冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷」が比較されていました。両者ともにリズミカルな並木が描かれているので、これは影響が分かりやすいかな。モネは「連作」という同じものを時間を変えて何度も描く手法を生みましたが、これも同じものを何度も描いた北斎に通じるものがあるのかもしれません。

ここでは画面の真ん中に木を描くという構図について他にも紹介しています。この構図は印象派の画家たちの作品にもよく出てきますが、これを取り入れたピサロの「モンフーコーの冬の池、雪の効果」なども展示されていて、モチーフだけでなく構図についても西洋画に影響を与えているのが分かります。

他にもギュスターヴ・モローのような北斎とは無縁そうな画家の作品などもあり、興味深かったです。


<6章 波と富士>
最後は富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」などに観られる波と富士に関するコーナーです。ここにはデフォルメされた波をモチーフにした作品や富士と似た山を描いた作品などが並びます。

セザンヌはサント・ヴィクトワール山を何枚も描いた画家として知られますが、そのうちの1枚は「冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二」と似た構図となっていて、両者を比較して観ることができました。実際にセザンヌが絵を描いた場所に行くと絵のまんまの風景なのでこれも偶然かもしれませんが、水平線を高めに取って俯瞰するような構図はそれまでの西洋画とは異なるものなので、北斎からの影響があったと思われます。
 参考記事:セザンヌゆかりの地めぐり (南仏編 エクス)

また、ここにはドビュッシーの「海」の楽譜の表紙が展示されていて、これは葛飾北斎の神奈川沖浪裏そのものからの引用となっています。音楽の印象派と呼ばれるドビュッシーも北斎から何らかの形で影響を受けているのかもしれません。
 参考記事:ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで 感想前編(ブリヂストン美術館)

他にもこの章には私の好きなアンリ・リヴィエールエッフェル塔三十六景もありました。この作品はタイトルからして富嶽三十六景に影響を受けているのは明らかで、北斎の洒落の効いた構図なども上手く取り入れてリヴィエール自身の構図として昇華されています。これは数点しか無かったのが残念。どうせなら全部展示してくれたら良いのに!
 参考記事:北斎とリヴィエール 三十六景の競演 (ニューオータニ美術館)


ということで、葛飾北斎が如何に西洋美術に影響を与えたかがよく分かる展示でした。国立西洋美術館を始め日本のコレクションが多かったので割と観たことがある作品が大半でしたが、素晴らしい作品も多々あり北斎を軸にした視点というのが面白かったです。



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現代の写実―映像を超えて 【東京都美術館】

今回は写真多めです。前回ご紹介したゴッホ展で貰った半券で観られると聞いて、同じ東京都美術館のギャラリーA・Cで上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」を観てきました。

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【展覧名】
 上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」 

【公式サイト】
 http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_uenoartistproject.html

【会場】東京都美術館 ギャラリーA・C
【最寄】上野駅

【会期】2017年11月17日(金)~2018年1月6日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。ゴッホ展の半券で観られるのに観ない人が多いのかな? 勿体無い。


さて、今回の展示は現代の写実ということで、現在活躍している画家たちのリアルな描写の作品が集まる内容となっています。東京都美術館は公募展にも力を入れている美術館ですが、この展示では各公募団体との連携展となっているようで、各公募団体から1名ずつの画家が紹介されていました。この展示では撮影することができましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。


<Ⅰ. 映像を超えて Transcending Photographic Images>
まずは写真のようにリアルさを持ちつつ、各画家の個性も感じられる絵画のコーナーです。

塩谷亮(二紀会) 「煌」
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この絵は観てすぐに塩谷氏の作品だと分かりました。どこか柔らかい雰囲気をまとった母子像で、古典からの影響も感じさせます。
 参考記事:
  ホキ美術館開館記念特別展 感想前編(ホキ美術館)
  ホキ美術館開館記念特別展 感想後編(ホキ美術館)
  現代の写実。ホキ美術館名品展 感想前編(ホキ美術館)

塩谷亮(二紀会) 「草音」
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こちらはリアルな描写ですが、どこか意味深なポーズの作品。演出されてちょっとシュールさも感じるかな。

塩谷亮(二紀会) 「一の滝」
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人物像だけでなく風景画もあります。静けさの中に滝の音が聞こえて来そうな雰囲気が神秘的。

小森隼人(白日会) 「Consideration」
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こちらは意味深な表情を浮かべる美女。黒い背景と光が当たったような表現の為か、写真を超えた強い色彩に思えます。

小森隼人(白日会) 「驟雨 天色」
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この画家は静物が特に良かったのですが、こちらは陶器の光沢などまでリアルです。このモチーフの選び方などからもフランドル絵画を彷彿とさせます。

小森隼人(白日会) 「黄色い果実と赤い柘榴」
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こちらもフランドル絵画やスペインの絵画を研究したのが伺える作品。しかし光の扱いがより鮮明に感じられるかな。

こちらは布地の部分のアップ。
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縫い目が分かるほどのリアルさと細かさ! これは間近で観ると驚くと思います。


<Ⅱ . 記憶のリアリティ The Reality of Memory>
続いてはどこか懐かしさを覚えるようなリアリティのコーナーです。

橋本大輔(独立美術協会) 「FAC3016」
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この画家は廃墟の中を描いた作品が何点かありました。人がいなくなった建物から寂しさのような神聖さのような雰囲気が漂い、ちょっと神殿みたいにすら思えます。廃墟好きの画家ユベール・ロベールに通じるものがあるかもw

橋本大輔(独立美術協会) 「観測所」
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こちらも廃墟。廃墟なのに明るい雰囲気があって面白いです。この作品は結構大型ですが、緻密に描かれていて吸い込まれるようでした。

こちらは右下あたりのアップ。
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この絵肌のリアルさ。何を使っているか分かりませんが、実物に近づける為に表現の工夫をしているのに驚きました。

小田野尚之(日本美術院) 「映」
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この画家は鉄道に関する風景を描いた作品が並んでいました。この作品は線路が対角線上に伸びる大胆な構図が面白かったです。

小田野尚之(日本美術院) 「くつおと」
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これは以前に観たのを覚えていました。タイトルのように靴音が響いて来そうな静けさが漂っています。
 参考記事:日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』 感想後編(東京都美術館)

小田野尚之(日本美術院) 「定刻着」
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こちらはローカル線の駅を思わせる作品。こういう景色を観ると旅情を誘われます。


<Ⅲ . リアリズムの諸相 Various Aspects of Realism>
最後は絵画にしかできないリアリズムということで、リアルだけれど現実ではない作品が並ぶコーナーとなっていました。

元田久治(日本版画協会)「Indication : Tokyo Tower 3」
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この画家は何度か観た覚えがありました。(アートフェア東京などでも観た気がします。) 現代の建物を廃墟化したような作品が並んでいて、こちらは東京タワー。リアルさがあるけど誰も観たことがない光景です。
 参考記事:幻想の回廊(東京オペラシティアートギャラリー)

他にも秋葉原や渋谷、スカイツリーなど様々な場所が廃墟になった作品が並びます。

元田久治(日本版画協会)「Foresight : Marina Bay Sands, Singapore 」
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こちらはシンガポールのマリーナベイサンズが廃墟になったもの。日本だけでなく世界中の有名な建物も廃墟化されていますw 

蛭田美保子(新制作協会) 「貴婦人」
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こちらは装身具をまとったトウモロコシ。まさに貴婦人のような華麗さがあります。

蛭田美保子(新制作協会) 「絢爛豪華な装身具」
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こちらは装身具をまとった巻き寿司みたいなもの。描写力も凄いですが、何故こうしたものを思いつくのか発想も独特で面白いw

稲垣考二(国画会) 「三面」
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こちらはかなりの大型作品で、壁画のような感じでした。1枚1枚は花を描いていたりするのですが、離れてみると人物画になっていて、アルチンボルドの絵を想起しました。
 参考記事:アルチンボルド展 (国立西洋美術館)

真ん中の人の顔の一部のアップ。
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これだけ観ると花が咲き乱れているように見えます。

佐々木里加(女流画家協会) 「HYPER BRAIN CYBERNETICS」
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この画家は脳をモチーフにした作品がいくつか並んでいました。脳が高速に情報を処理しているようなイメージに見えるかな。一種の心象風景をリアルに描いていました。

岩田壮平(日展)「flower」
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こちらは琳派を継承している画家で、色彩感覚が非常に好みでした。モチーフも華やかで目に鮮やか。

岩田壮平(日展)「こい」「花の形」
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ちょっとド派手なくらい目を引きます。この画家の作品はもっと観てみたいです。

この後、もう1部屋あり昔の画家の作品が並んでいましたが、そちらは撮影できませんでしたので割愛します。


ということで、ゴッホ展のオマケとは思えないほど楽しめました。一口に写実と言っても様々な手法や表現があり、まだまだ可能性があるものだと感心させられるばかりです。作品の深い意図がわからなくてもパっと観て楽しめる作品ばかりですので、ゴッホ展に行かれる際にはこちらの展示も覗いてみると楽しめるかと思います。



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ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 【東京都美術館】

前回ご紹介したゴッホの映画を観た次の日に、上野の東京都美術館で「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」を観てきました。

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【展覧名】
 ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 

【公式サイト】
 http://gogh-japan.jp/
 http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_goghandjapan.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅

【会期】2017年10月24日(火)~2018年1月8日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
私が行った時は入場待ちなどは無かったのですが、結構混んでいて列を組む感じでの鑑賞となりました。私は2列目などで観てきたため割と素早く観たと思いますが、人によってはもう少し鑑賞時間がかかるかもしれません。

さて、今回の展示は日本でも有名なゴッホに関する展示です。ゴッホは画塾にも行きましたが独学で学んだことが多く、その際にはバルビゾン派のミレーを始め様々な画家の作品を参考にしてきたことで知られています。そして、参考にしたものの中には浮世絵などの日本美術も含まれていて、実際に模写した作品や弟テオに宛てた手紙での言及、日本画を扱った店に通った事などが記録として残っています。今回はそうしたゴッホの日本文化からの影響について掘り下げる内容で、多彩な角度からその関わりを紹介していました。5章構成となっていましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。
 参考記事:
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)


<1 パリ 浮世絵との出逢い>
まずはゴッホの浮世絵との出会いのコーナーです。ゴッホは元々はオランダの生まれですが、画家を志してパリに出た際に印象派の作品と浮世絵に出会い大きな影響を受けました。 「アール・ヌーヴォー」という芸術運動の名前にもなったサミュエル・ビング(ジークフリート・ビング)の日本美術を紹介する店によく出入りしていたそうで、そこで浮世絵をコレクションしたりもしていました。ゴッホは浮世絵の絵をそのまま模写することもあったのですが、当時の西洋画に無い表現に驚きを感じたようで、その手法を自身の絵画に取り込んでいきます。

確か最初あたりにバルビゾン派のミレーへのオマージュとも言える「種まく人」が展示されていたと思います。(構成上は2章になっていますが) この絵に描かれた人物はミレーの作品に似ているものの、手前に大きな木が対角線上に描かれる大胆な構図が使われています。この木が目立つところに配されているのは歌川広重の名所江戸百景を思わせる構図で、浮世絵からの影響がよく分かる一例と言えそうです。(ちなみにこの絵は映画「ゴッホ最期の手紙」にも出てきます)

その先をしばらく行くと、渓斎英泉の「雲龍打掛の花魁」を油彩で模写した作品があります。これはゴッホが油彩で模写した浮世絵3点のうちの1点で、残り2点は前述の歌川広重の名所江戸百景から「大はしあたけの夕立」と「亀戸梅屋敷」となります。近くには渓斎英泉の浮世絵のオリジナルも展示されているのですが、オリジナルとゴッホの模写では左右が反転しているのが分かります。これはオリジナルではなく雑誌「パリ・インシュトレ」の表紙を飾った時の絵を模写したためのようで、雑誌になった際に反転していたようです。(その雑誌も展示されています) また、模写とは言えオリジナルな要素もあり、色彩が非常に強くなっているのと、描表装のように花魁の絵の周りを額のようにしてその背景に水辺の植物を描くなど面白い構図となっています。 これは初めて観ましたが、ゴッホが如何に浮世絵に関心を持っていたかを如実に物語っていました。

模写以外にもここには面白い品があり、パリ万博で使われた日本の貿易会社の看板の裏に絵を描いた作品もあります。描かれているのは3冊の本の静物でエミール・ゾラなどゴッホが当時読んでいた本です。この作品の近くには他にピエール・ロティ著「お菊さん」という本が展示されていたのですが、この本にゴッホは大きな影響を受けたらしく、ちょっと誇張された日本の様子が書かれているようです。ゴッホが憧れた日本は正確にはこの本や浮世絵の中の日本と言えるかも。 なお、ゴッホの叔父は海軍軍人として日本に滞在した経験がある他、父方の叔母の結婚相手も長崎で造船などを教えていた等 割と日本に縁のある環境にいたようです。その辺ももしかしたら興味のきっかけになったのかも??

この章の最後の辺りにはゴッホが浮世絵展を開催したカフェとその女主人を描いた作品もありました。この展示は好評だったようで、ゴッホ自身も浮世絵への理解を深めたようです。 また、近くにはマネやベルナール、同じ画塾に通ったロートレックなどの作品もありました。これらはいずれも当時の「ジャポニスム」と呼ばれる日本美術の受容を示すものです。(このベルナールは特に良い作品で、岐阜県美術館所蔵の名品です)
ちなみに、この展示と同時期に国立西洋美術館で開催しているの北斎とジャポニスムについての展示と内容がリンクしていますので、両方観ると理解が深まると思います。
 参考記事:
  ロートレック・コネクション (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  北斎とジャポニスム―HOKUSAIが西洋に与えた衝撃 (国立西洋美術館)

<2 アルル 日本の夢>
続いては南仏のアルルに移り住んだ頃のコーナーです。ゴッホは浮世絵に影が無いのを観て、光に溢れた土地を目指して南仏のアルルに向かい、そこで画家たちの共同生活を夢見ました。しかし実際に来てくれたのはゴーギャンだけ(しかもテオの援助目当て)で、2人の共同生活も長く続かなかったのですが、ここでも日本から影響を受けた多くの傑作を残しています。
 参考記事:ゴッホゆかりの地めぐり 【南仏編 サン・レミ/アルル】

まずここには雪景色の作品がありました。ゴッホがアルルに到着した日は一面雪景色だったらしく、「日本人画家たちが描いた冬景色のようだ」とテオへの手紙に書いていたそうです。この絵では白い雪と共に高い位置に地平線を取る構図が観られ、まさに浮世絵的な構図となっていました。近くには歌川広重の東海道五十三次や五十三次名所図会の雪景色の作品なども展示されていますので、風情を比較してみるのも面白いかと思います。

この辺には他にも「サント=マリーの海」や「麦畑」といった風景画が展示されているのですが、これらも水平線が高い位置に取られています。それと比較して観られるように葛飾北斎の富嶽三十六景より「武陽佃島」などが近くにありますので、如何に構図が似ているかが分かると思います。
また、ゴッホはモチーフにも日本からの影響が見受けられ、燕子花に似たアイリスや夾竹桃などをよく描いています。(夾竹桃は後の章でも触れられているので後述) ここにはアイリスやアーモンドを描いた作品があったのですが、植物をつぶさに観察して描くというのも日本的な視点と言えそうです。

この章にはゴッホ以外にも葛飾北斎の代表作である富嶽三十六景 神奈川沖浪裏なども展示されていました。

そしてこの章の最後あたりには「水夫と恋人」という肩を組んだ男女の後ろ姿を描いた大胆な作品が展示されています。実はこれは元々は跳ね橋を描いた際に手前にいた人物として描かれたのが切り取られたトリミングらしく、元の絵は失われているようです。しかし、手紙などから元の絵を推定することができるようで、日本人の古賀陽子 氏が復元した絵を観ることができます。何が気に入らなかったのか分かりませんが、日の出る位置など実際の風景とは異なる点もあるようです。
なお、この古賀氏は前回ご紹介した映画「ゴッホ 最期の手紙」で日本人で唯一作画を担当する1人としてクレジットされています。


<3 深まるジャポニスム>
続いてもアルルでの制作のコーナーです。ここには人物画があり、東洲斎写楽や三代歌川豊国の大首絵(胸から上だけの肖像の浮世絵)からの影響が指摘される「アルルの女(ジヌー夫人)」と「男の肖像」が並びます。いずれも強調された顔立ちをしている点は確かに大首絵を想起させます。また、背景が明るいこともあり、かえって人物に重厚感があるようにも思えました。

また、ここにはゴッホの「黄色い家」の部屋の中を描いた「寝室」や街中を描いた作品もあるのですが、色面を使い平面的かつ単純化され、さらに遠近感を強調して、影はあえて描いていません。こうした点は様々な浮世絵の特徴を合わせたような感じを受け、ゴッホは単に浮世絵を真似するだけでなく、要素を咀嚼して自分の表現へと昇華している様子が伺えました。

その先には精神を病んで近郊のサン・レミの病院に入院していた頃の作品もありました。うねった感じのタッチが独特で精神状態も表しているようにも思えるのですが、「渓谷(レ・ペレイル)」という作品ではいくつもの岩をパズルのように組み合わせている表現を東海道五十三次の「箱根」と比べて観ると、結構ニュアンスが近いように思えました。

この章の最後あたりには「ムスメと夾竹桃」というコーナーがありました。「ムスメの肖像」は素描で、ドレスを着た若い娘が椅子に腰掛けている絵なのですが、これは1章で観たピエール・ロティ著「お菊さん」に出てくるムスメという人物に関連しているらしく、フランス語のmouse(口を尖らす)とfrimousse(可愛い顔)に掛けた容貌になっています。その手には夾竹桃を持っていて、夾竹桃は日本へのあこがれを重ねたモチーフのようです。ここには夾竹桃の静物もあったのですが、非常に明るい色彩で描かれ目を引きました。
(ちなみに夾竹桃の静物の中にはエミール・ゾラの本も描かれていて、割とエミール・ゾラからの影響も感じられます)
 参考記事:映画「セザンヌと過ごした時間」 (軽いネタバレあり)


<5 日本人のファン・ゴッホ巡礼>
何故か構成上、5章が4章より先になっていました。ここまでゴッホが日本に憧れていた話がメインでしたが、ここではゴッホの死後に日本人がゴッホに憧れてゴッホゆかりの地を訪れたコーナーです。私もつい数ヶ月前にゴッホゆかりの地巡りをしてきたので親近感が湧きますw

日本では死後20年ほどして白樺派のメンバーらによってゴッホが紹介され始め、渡仏した多くの日本人がゴッホの足跡を追ってゴッホ最期の地オーヴェール=シュル=オワーズを訪れました。その頃には既にゴッホと懇意にしていたガシェ医師も亡くなっていましたが、その子供が大切に作品をコレクションしていたようです。ちなみにオランダのクレラー・ミュラー美術館のコレクションを築いたクレラー・ミュラー夫妻もゴッホの作品を多数保有していた為、そちらにも多くの日本人が足を運んだそうです。ここにはその頃のガシェ家に訪れた際の芳名帳や手紙があり、洋画家の里見勝蔵や荻須高徳、前田寛治、佐伯祐三の名前などもありました。何と佐伯はヴラマンクに叱責された翌日にガシェ訪れていたようです。(そう言えばヴラマンクもゴッホに影響を受けてたし、オーヴェールに住んでいましたね。それにしてもメチャクチャヘコんでたはずなのに佐伯も結構タフなのかも)

ここには他にもガシェ家で撮影した貴重なフィルム映像や、様々なゴッホに関する本なども展示されています。ゴッホがゴオホと記載されているのが結構多いですが、ホッホと書いてあるのもあってちょっと可笑しかったですw 流石にホッホではないだろ…w
 参考記事:
  白樺派の世界展 (清春白樺美術館)山梨 北杜編
  昭和の洋画を切り拓いた若き情熱1930年協会から独立へ (八王子市夢美術館)
  

<4 自然の中へ 遠ざかる日本の夢>
最後はサン=レミにいた頃と、その後に移り住み最期の地となったパリ北西部のオーヴェール=シュル=オワーズにいた頃に自然を描いた作品のコーナーです。アルルで日本人のように暮らしたいと考えていた夢がやぶれた為か、この頃になると手紙の中での日本美術の賞賛は無くなっていたようですが、依然として日本美術の影響を受けていたようです。ここには病院の花や林を描いた作品などが並んでいるのですが、花鳥画を思われる花を大きくクローズアップし左右非対称に描いたものや、画面に大きく木の幹を描いたものなど浮世絵的な構図の作品もありました。
 参考記事:映画「ゴッホ~最期の手紙~」(ややネタバレあり)

ということで、ゴッホと日本の深い関係について知ることができました。何故、日本人が殊更ゴッホの名前をよく知っているのかも理解できると思います。 結構観たことがある作品も多かったですが、切り口の面白い展示で楽しめました。ゴッホ好きの方は是非どうぞ。



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