Archive | 2018年01月
お正月明けの土曜日に映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』を観てきました。この記事はややネタバレを含んでいますので、事前知識なしで観たいという方はご注意ください。

【作品名】
キングスマン:ゴールデン・サークル
【公式サイト】
http://www.foxmovies-jp.com/kingsman/
【時間】
2時間20分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
公開して2~3日くらいで行ったこともあり、満席近くなっていました。前作がぶっ飛んでただけに今作も期待が高かったんじゃないかな。
さて、この映画は2014年の映画『キングスマン』の続編で、シリーズ2作目となります。基本的に前作とは別件の話ですが、登場人物や設定は前作との繋がりが強いので前作を観ていないと分からない所もあるかもしれません。のっけからアクションシーンで始まるスパイもので、様々な仕掛けの機械が出て来るところなんかは王道のスパイ映画といった感じですが、前作同様にお下品でシニカルな所があって笑えます。広告に「極めて上品なスパイ映画」と謳ってますが、完全に嘘ですw ご家族で観てたらアレなやつです。 007よりはふざけてるけどオースティン・パワーズほどはやり過ぎてない位の立ち位置じゃないかな。この辺はキック・アス等を手掛けたマシュー・ヴォーン監督の持ち味がよく出ているように思えます。
ここからはちょっとネタバレになりますが、前作でも某国の王室とかこれ大丈夫なの?って感じの人物設定がありましたが、今回はそれに輪がかかった感じでこの人はこんな役で出てきて大丈夫なの?というサプライズもあります。(というかそのインパクトが強すぎて全部持ってかれた感すらあるw) また、前作同様に誰がどうなるか最後まで気が抜けない展開が面白いです。前作に比べるとぶっ飛んでる爽快感はやや少ないように思えますが、テイストは近いので前作のファンはこの作品も概ね楽しめると思います。
色々と驚きの展開があったり、アクションシーンも見応えがあるし、悪役を含めて登場人物も個性的なのですが、この映画を観てから2週間くらい経ってこの感想を書くにあたり、真っ先に思い浮かぶのはあの歌とあの人…。もうあの人の為の映画になっているようにしか思えない!! 事前知識無しで観たので、唐突に本人役で出てきて本当にサプライズでした。(連れはその人の名前しか知らなかったので変わった人が出てきた程度に思ったようですが、知ってる人は唖然とすると思います) 個人的には今回の見所はキャストかな。名優たちが多いという意味だけでなくw
ということで、前作同様に楽しむことができました。まだ続編もあるみたいなので、次回作も楽しみです。新しいスパイ映画のシリーズ化に期待したいところです。


【作品名】
キングスマン:ゴールデン・サークル
【公式サイト】
http://www.foxmovies-jp.com/kingsman/
【時間】
2時間20分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
公開して2~3日くらいで行ったこともあり、満席近くなっていました。前作がぶっ飛んでただけに今作も期待が高かったんじゃないかな。
さて、この映画は2014年の映画『キングスマン』の続編で、シリーズ2作目となります。基本的に前作とは別件の話ですが、登場人物や設定は前作との繋がりが強いので前作を観ていないと分からない所もあるかもしれません。のっけからアクションシーンで始まるスパイもので、様々な仕掛けの機械が出て来るところなんかは王道のスパイ映画といった感じですが、前作同様にお下品でシニカルな所があって笑えます。広告に「極めて上品なスパイ映画」と謳ってますが、完全に嘘ですw ご家族で観てたらアレなやつです。 007よりはふざけてるけどオースティン・パワーズほどはやり過ぎてない位の立ち位置じゃないかな。この辺はキック・アス等を手掛けたマシュー・ヴォーン監督の持ち味がよく出ているように思えます。
ここからはちょっとネタバレになりますが、前作でも某国の王室とかこれ大丈夫なの?って感じの人物設定がありましたが、今回はそれに輪がかかった感じでこの人はこんな役で出てきて大丈夫なの?というサプライズもあります。(というかそのインパクトが強すぎて全部持ってかれた感すらあるw) また、前作同様に誰がどうなるか最後まで気が抜けない展開が面白いです。前作に比べるとぶっ飛んでる爽快感はやや少ないように思えますが、テイストは近いので前作のファンはこの作品も概ね楽しめると思います。
色々と驚きの展開があったり、アクションシーンも見応えがあるし、悪役を含めて登場人物も個性的なのですが、この映画を観てから2週間くらい経ってこの感想を書くにあたり、真っ先に思い浮かぶのはあの歌とあの人…。もうあの人の為の映画になっているようにしか思えない!! 事前知識無しで観たので、唐突に本人役で出てきて本当にサプライズでした。(連れはその人の名前しか知らなかったので変わった人が出てきた程度に思ったようですが、知ってる人は唖然とすると思います) 個人的には今回の見所はキャストかな。名優たちが多いという意味だけでなくw
ということで、前作同様に楽しむことができました。まだ続編もあるみたいなので、次回作も楽しみです。新しいスパイ映画のシリーズ化に期待したいところです。
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この前の日曜日に日本橋三越で「写真展オードリー・ヘプバーン」を観てきました。色々とネタが溜まっていますが、もうすぐ終わってしまう展示なので先にご紹介しておこうと思います。

【展覧名】
写真展オードリー・ヘプバーン
【公式サイト】
http://mitsukoshi.mistore.jp/store/nihombashi/event/audreyhepburn/index.html
【会場】日本橋三越 新館7階
【最寄】三越前駅
【会期】2018/1/10(水)~1/22(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
半端なく混んでいて、満員電車の寿司詰め状態みたいな感じでした。作品の前どころか通路まで人でぎっしりで、逆側の壁に掛かっている作品を観るのも一苦労という感じだったので、片側だけ観て半分くらいは諦めましたw 我先にとタックルしてくるオバサンとかいてちょっと辟易ですw
日曜だから混んでいたのかもしれませんが、入場規制とかしないでガンガン入れてるみたいなので、これから行こうという方はご注意ください。
さて、この展示は映画「ローマの休日」や「ティファニーで朝食を」などの名画の主演女優として知られるオードリー・ヘプバーンの人気絶頂期の写真が並ぶ内容となっています。激混みでメモなど取れる余裕も無かったのでごく簡単に展示の様子をご紹介すると、ハリウッドのフォトグラファーたちによる200点程度の作品があり、ファッション・映画・プライベートの3部構成となっていて、映画を撮っている間やオフショットの写真などが多かったように思います。どんなポーズやどんなアイテムと合わせても様になる世紀の美女として名高いオードリー・ヘプバーンですが、そのファッションセンスはハリウッドの美術担当たちも絶賛していたようで、まさに時代のアイコンとして無欠の美女と言った感すらあります。ジバンシーと共にファッションを作っていった時期なんかは特に美しい写真が多いように思います。
一方で、今回並んでいる写真にはただ美しいだけでなく彼女の人柄が伝わってくるような写真があるのも面白いです。飼っていた子鹿のイブと犬のミスターフェイマスと共に写っている写真も多々あり、彼らを撮影でコンゴに行くときも連れていったらしく深い愛情が感じられる写真もあります。また、そのコンゴで撮った尼僧物語では自らも禁欲的な生活を役作りをしたというエピソードもあり、過酷な撮影環境でも役作りをストイックに行っていた様子なども分かります。
後半になると旦那さんや子供との写真が増えてきて、母としての顔も見せてくれるようになります。スイスに住み、家族で過ごす時間を大事にして映画のオファーを断っていたらしく、子供に愛情を持っていたのは写真からもよく伝わってきます。そうした写真は澄ました顔ではなく心底嬉しそうな顔をしていたりして、素のオードリーが伺えるように思えました。
それ以外にも各映画の撮影時に紐づくような写真もあるので、特に全部の映画を観ているようなファンには一段と感慨深いものがありそうです。熱く語ってるおばちゃん達が結構いたので、熱心なファンが来てるんじゃないかな(オードリーの気品の1/1000でもあればタックルしたり大声で喚かないと思いますが…w)
そして最後にこの展示はもう1つ人気のポイントがあって、それはグッズ販売です。ここもかなりの混みようで会計に行列ができていましたが、結構充実していて今回の写真集やポストカード、大判のポスターなんかもあります。21万もする写真が何枚も売れていて恐るべし人気ぶりです。
ということで、かなり点数も多く素晴らしい写真ばかりですが、そもそも混雑しすぎな上に鑑賞マナーがろくでもない人が多くて観るのが大変でした。せめて全部の作品を観たかったw もうすぐ終わってしまう展示なので益々混みそうな予感がしますが、ファンの方には嬉しい機会だと思いますので、気になる方は混雑覚悟で時間にゆとりを持って行かれるとよろしいかと思います。
おまけ: 本展の広告


【展覧名】
写真展オードリー・ヘプバーン
【公式サイト】
http://mitsukoshi.mistore.jp/store/nihombashi/event/audreyhepburn/index.html
【会場】日本橋三越 新館7階
【最寄】三越前駅
【会期】2018/1/10(水)~1/22(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
半端なく混んでいて、満員電車の寿司詰め状態みたいな感じでした。作品の前どころか通路まで人でぎっしりで、逆側の壁に掛かっている作品を観るのも一苦労という感じだったので、片側だけ観て半分くらいは諦めましたw 我先にとタックルしてくるオバサンとかいてちょっと辟易ですw
日曜だから混んでいたのかもしれませんが、入場規制とかしないでガンガン入れてるみたいなので、これから行こうという方はご注意ください。
さて、この展示は映画「ローマの休日」や「ティファニーで朝食を」などの名画の主演女優として知られるオードリー・ヘプバーンの人気絶頂期の写真が並ぶ内容となっています。激混みでメモなど取れる余裕も無かったのでごく簡単に展示の様子をご紹介すると、ハリウッドのフォトグラファーたちによる200点程度の作品があり、ファッション・映画・プライベートの3部構成となっていて、映画を撮っている間やオフショットの写真などが多かったように思います。どんなポーズやどんなアイテムと合わせても様になる世紀の美女として名高いオードリー・ヘプバーンですが、そのファッションセンスはハリウッドの美術担当たちも絶賛していたようで、まさに時代のアイコンとして無欠の美女と言った感すらあります。ジバンシーと共にファッションを作っていった時期なんかは特に美しい写真が多いように思います。
一方で、今回並んでいる写真にはただ美しいだけでなく彼女の人柄が伝わってくるような写真があるのも面白いです。飼っていた子鹿のイブと犬のミスターフェイマスと共に写っている写真も多々あり、彼らを撮影でコンゴに行くときも連れていったらしく深い愛情が感じられる写真もあります。また、そのコンゴで撮った尼僧物語では自らも禁欲的な生活を役作りをしたというエピソードもあり、過酷な撮影環境でも役作りをストイックに行っていた様子なども分かります。
後半になると旦那さんや子供との写真が増えてきて、母としての顔も見せてくれるようになります。スイスに住み、家族で過ごす時間を大事にして映画のオファーを断っていたらしく、子供に愛情を持っていたのは写真からもよく伝わってきます。そうした写真は澄ました顔ではなく心底嬉しそうな顔をしていたりして、素のオードリーが伺えるように思えました。
それ以外にも各映画の撮影時に紐づくような写真もあるので、特に全部の映画を観ているようなファンには一段と感慨深いものがありそうです。熱く語ってるおばちゃん達が結構いたので、熱心なファンが来てるんじゃないかな(オードリーの気品の1/1000でもあればタックルしたり大声で喚かないと思いますが…w)
そして最後にこの展示はもう1つ人気のポイントがあって、それはグッズ販売です。ここもかなりの混みようで会計に行列ができていましたが、結構充実していて今回の写真集やポストカード、大判のポスターなんかもあります。21万もする写真が何枚も売れていて恐るべし人気ぶりです。
ということで、かなり点数も多く素晴らしい写真ばかりですが、そもそも混雑しすぎな上に鑑賞マナーがろくでもない人が多くて観るのが大変でした。せめて全部の作品を観たかったw もうすぐ終わってしまう展示なので益々混みそうな予感がしますが、ファンの方には嬉しい機会だと思いますので、気になる方は混雑覚悟で時間にゆとりを持って行かれるとよろしいかと思います。
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今日も写真多めです。前回ご紹介した国立科学博物館日本館の地下の展示を観た後、1階の企画展示室に移動して「南方熊楠生誕150周年記念企画展 南方熊楠-100年早かった智の人-」を観てきました。この展示では撮影することが可能でしたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

【展覧名】
南方熊楠生誕150周年記念企画展 南方熊楠-100年早かった智の人-
【公式サイト】
https://www.kahaku.go.jp/event/2017/12kumagusu/
【会場】国立科学博物館 日本館1階 企画展示室
【最寄】上野駅
【会期】2017年12月19日(火)~2018年3月4日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞できたのですが、アンデス文明展と地衣類展の予想以上の充実ぶりに時間を取られ、僅か30分くらいで閉館というギリギリの時間となってしまいました。とりあえず後半は写真を撮って周っただけになってしまったw ちゃんと観れば1時間はかかる内容だと思います。
さて、この展示は大正から昭和にかけて活躍した学者、南方熊楠に関する展示です。昭和天皇に講義を行ったエピソードや、破天荒な人物像などで知られる南方熊楠ですが、この展示ではその生涯と研究についてダイジェスト的に紹介されていました。かなり細かく章・項分けされていましたので、要点をかいつまんで写真を使ってご紹介していこうと思います。
<1 熊楠の智の生涯>
まずは南方熊楠の生涯についてのコーナーです。
[1-1 幼少~青年期]
熊楠は1867年に和歌山の商家に生まれ、幼いときから百科事典や本草書といった本の筆写に精を出していたそうです。中でも江戸時代の「和漢三才図会抜書」とい百科事典に出会い、知識を集めることに喜びを見出していました。 その後、中学に進むと西洋から来た博物学を学ぶのですが、数学など理系科目は苦手だったようで、東京帝国大学予備門(現在の教育学部)に進学したものの代数で落第点を取ってドロップアウトし、郷里に戻っています。しかし、予備門時代にアメリカのアマチュア菌学者カーティスがイギリスの菌学者バークレーに6000点の菌類標本を送ったという話を聞いてそれ以上の標本を集めたいと考えていた熊楠は博物学への憧れを捨てきれず、商売のためと称して1886年にアメリカへと留学していきました。
こちらは「和漢三才図会抜書」 「和漢三才図会」を南方熊楠が筆写したものです。

かなり細かいところまで写していて、こうした筆写はこの後も様々な本で行われています。読むだけでなく書くと細部まで覚えますよね。
こちらは予備門時代のノート

ここには植物の名前と科が描かれているようです。漢字と英語が併記されています。ちなみに南方熊楠は非常に語学力があった人で、何カ国語も理解できたそうです。
[1-2 アメリカ時代]
アメリカ時代は最初に商業と英語の勉強をしていたそうですが、商業に関心が持てずに退学して、農学校に入りなおしています。しかし、そこで喧嘩や飲酒事件を起してそこも退学しますw その後、学園都市アナーバーに移り学校には通わずアマチュア菌学者のカルキンスと交流しながら標本採集に精を出します。(熊楠はどこかの大学で研究していたのではなく、個人で研究していました) アメリカ時代にはキューバなどにも採集に訪れたようです。
こちらは旧友に宛てた書簡で、アメリカの生活の様子と共にキノコの標本がつけられたもの。

記号が振られて説明文らしきものもあります。ちょっと読めませんがw
こちらはカルキンすが熊楠に送ったフロリダ産の菌類標本帳

正式な学者でもない熊楠にこうした品をくれるなんて、この人からの影響は大きいのかもしれません。しかしカルキンスとは書簡のやりとりをよくしたものの直接会うことはなかったのだとか。
[1-3 ロンドン時代]
1892年に25歳となった熊楠はロンドンへと渡りました。ロンドンではアメリカ時代と打って変わってフィールドワークではなく大英博物館の図書館で膨大な数の書籍を読み漁ったようで、ここで民俗学や自然科学などの知識を収集し、自分のノートに抜書きしていきました。そしてこの抜書きをもとに雑誌『ネイチャー』に投稿を始めるなどの活動もしていたようです。一方、私生活では酒造会社をやって裕福だった実家の父が亡くなり、その7年後には仕送りが止まってしまったようで生活苦で帰国を決意したようです。
こちらがロンドンで抜書したノート。

やっていることは幼いころの筆写と同じようなことかな。南方熊楠の勉強・研究方法の原点はこうした写しにありそうです。
[1-4 那智・田辺時代]
帰国後、熊楠は那智に住んで採集に明け暮れていました。ここではロンドン時代の抜書を使った論文執筆や、熊楠独自の思考構造を表した「南方マンダラ」を描くなど充実した研究生活を送っていたようです。しかし、投稿した論文は次々に不採択になったようで、1904年には那智での生活を打ち切り紀伊田辺へと移り住みます。そして田辺でも隠花植物 特にキノコの標本採集を行うと共に、城下町だった田辺にある書簡や住民からの聞き取りで抜書なども作っていたようです。そして1906年には神社宮司の娘と結婚し、田辺時代は熊楠の人生で最も長く安定した生活となったようです。
田辺時代の研究面も、変形菌目録という本を出版したり新種を発見したこともあって、摂政宮(後の昭和天皇)に標本を献上するという成果を出し一定の評価を得たようです。
こちらは神社合祀に関して柳田國男とやりとりした書簡。

神社合祀に関しての活動は後の章で出てきますが、民俗学にも精通していたのがこうした運動に繋がったようです。
こちらは変形菌類の進献標本。1926年に後の昭和天皇に献上されました。

90種類程度の菌類があるようです。これはちゃんと献上される感じで綺麗に並んでいます。
[1-5 晩年]
1929年に62才の熊楠は変形菌類に関心を持っていた昭和天皇に対する御進講の機会を得ます。その際、献上標本などをキャラメル箱に入れて持ってきたそうで、これは昭和天皇が後に懐かしんで語っていたなど南方熊楠らしいエピソードとして有名です。その人柄がよく伝わってきますw
そんな熊楠ですが、70歳を迎えるころになると盟友たちが相次いで亡くなり気落ちしてしまったようで、1941年にこの世を去りました。
こちらが献上されたキャラメル箱と同じ型のもの

普通は桐の箱とかに入れるのをこれで持ってきたのには流石に昭和天皇も驚いたようですが、それを嬉しく思っていたようです。熊楠は60を超えても子供っぽいところがあって面白いw
<2 一切智を求めて>
続いては南方熊楠のフィールドワークについてのコーナー。
[2-1 南方のフィールドワーク]
前述の通り、日本に戻った熊楠は積極的にフィールドワークを開始し種類ごとに採集目標を立てたのですが、僅か9ヶ月でそれを達成したそうです。那智で採集した以降は、玉置山、瀞八丁などの紀伊山地、高野山など紀伊半島を中心に活動し、1922年の日光への採集行以外は紀伊半島から出なかったようです。
これは水田や池に生息する藻類を標本する際に使う微細藻類プレパラート入れ

引き出しの中に沢山のサンプルが収まるようです。隣には携帯顕微鏡のレプリカもあったので、その場で観てたのかな。
こちらは絵具と描画道具入り採集箱

今だったら写真に撮りますが、昔は高価だったので採集したての状態で水彩画を描いたようです。熊楠は絵も上手いので本当に多彩な人です。
他にも長持ちなどの道具や、集めた標本なども並んでいました。
[2-2 現在のフィールドワーク]
こちらは現在のフィールドワークのコーナー。いつどこで誰がどのように採集したかを記録し、良好な状態に保ち適切に保存するのという採集に使われる道具などが展示されています。技術の進歩でかなり精度や効率は良くなっているようですが、作業自体は熊楠のやっていたことと同じのようです。
こちらが道具。

GPSなんかは最近っぽさを感じますが、割とアナログな道具が多いかな。地道な研究って感じがします。
[2-3 熊楠の人文系研究]
ここまで菌類の研究の話ばかりでしたが、熊楠は人文系の研究でも名を残しています。説話や民話、伝説などを集めて図譜と同じようにノートに記していったようです。
こちらは抜書をまとめて雑誌や新聞に投書したもの。

「性の研究」とか「変態心理」とか何だか怪しい雑誌もありますw どんな研究を載せたのでしょうか…。
<3 智の広がり>
この章は熊楠が興味を持って集めた隠花植物を紹介するコーナー。現在の標本資料と対比しながら紹介されていました。
[3-1 大型藻類]
こちらは海藻などの大型藻類。熊楠の時代は下等な植物と思われていたようですが、淡水の藻類まで広く収集したようです。しかしその成果は出版されることはなかったのだとか。
熊楠が採集した標本。

綺麗に標本化されていて、隣にあった現代の標本に見劣りしない見事な標本です。
[3-2 微細藻類]
こちらは顕微鏡サイズの藻類のコーナー。熊楠はこうした藻類も多く収集し、日本の微細藻類の分布を1903年のネイチャーで論文で発表しているようです。また、淡水藻類研究では世界の第一線といえるレベルだったようですが、日本国内でその知識を発表したりすることはなかったようです。
こちらが標本。

小さいので1つの箱に沢山入っているようです。1枚1枚にメモ書きもありました。
[3-3 地衣類]
こちらは藻類と菌類が共生する地衣類のコーナー。詳しくは前回の記事をご参照ください。
南方熊楠による地衣類の標本。

南方熊楠は700点以上もの標本を収集したそうですが、大部分は未同定(分類上の所属が決まっていない)ようです。同定するための適切な指導者がいなかったのが原因のようですが、惜しいですね。
[3-4 変形菌類]
変形菌類は熊楠の時代には動物と植物の中間的な原始生物と考えられていたようです。南方熊楠はこの不思議な生物のリストをまとめて発表したそうですが、1920年頃からは自分自身で採集することはあまりせず、弟子たちが採集していたようです。
こちらは熊楠が採集した変形菌類の標本

ちょっと中身が観られませんが、かなりの数を集めているのが分かります。
[3-5 菌類]
カビやキノコ、酵母などの菌類。実は熊楠は変形菌類よりも菌類のほうが沢山集めていたようです。
熊楠hが採集した菌類標本。

これらも残念ながら未同定のものが多数あるようです。
<4 智の集積-菌類図譜->
続いては数千枚にも及ぶ「菌類図譜」に関してのコーナーです。その大部分は国立科学博物館に所蔵されているようですが、欠けている部分もあり、近年発見された部分も展示されていました。
菌名がない図譜。

未同定のものも含まれているようですが、かなり細かい記載が横に書かれていました。
この辺に面白いエピソードがありました。神社合祀に反対して騒ぎを起こした熊楠は牢獄に何日か収監したそうですが、その獄中でキノコを見つけて採取していたようです。図譜にもしているようで、F1252と採番した上で署名入りで獄中で採取した旨が描かれているのだとか。
キノコを集めることで精神を安定に保とうと考えていた話などもあり、やはり何処か普通の人間とは違ったのでしょうねw
<5 智の展開-神社合祀と南方二書->
続いては菌類等の研究以外で成果が出た活動のコーナー。神社合祀への反対について取り上げられていました。
[5-1 神社合祀とは]
神社合祀というのは町村合併に伴って複数の神社を一町村で1つに統合し、廃止した神社の土地を民間に払い下げるという動きで、日露戦争の戦費の借金返済を目的に行われました。南方熊楠は貴重な鎮守の森が消えてしまうことを懸念し、各界の有識者に呼びかけ反対運動を展開したようです。
こちらはアオウツボホコリという新種として報告された変形菌。

これを採取した猿神社が近隣の稲荷神社と合祀されたことで、神社林が完全に伐採されてしまったそうで、これが神社合祀反対運動を展開するきっかけとなったようです。せっかく新種を見つけたのに… 他にも人知れず消えた種もあるのかもしれませんね。
[5-2 南方二書]
南方熊楠は神社合祀反対運動の中で1911年に東京帝国大学教授の松村任三に2通の手紙を書いたそうで、その中で森林伐採で生物が絶滅を招くことや日本文化の精神的な影響などを説いたそうです。それまで収集してきた生物や民俗などの知識を総動員して例示したそうで、これが後に柳田國男に出版されて南方二書と呼ばれるようになったようです。
これが南方二書の原本。

図解なども入れて熱心に反対の旨を伝えているようです。
その甲斐もあって、田辺湾の神島は天然記念物に指定されるなど、実を結んだところもあったようです。
<6 智の構造を探る>
続いては南方熊楠の「腹稿」と呼ばれる構想メモに関するコーナー。
これが腹稿のコピーで、十二支考という連載の為に、虎に関する史話、民俗、生物学的特徴などを羅列したもの。

ひたすら思いついたのを並べたようにみえるかな。項目同士で線をむすんで連続した話題にし、内容をまとめていったようです。
これは「虎」の腹稿

これを観ると、現代のデータ解析を想起します。相関関係を可視化しているみたいな。
こちらは原稿。

腹稿を元に書かれたものですが、この原稿は採用されなかったそうです。まあその御蔭で返却されて今でも残っているみたいなので怪我の功名というか…w
<むすび 一切智の人>
最後は南方熊楠がいかに現代的な思考を持っていたかというコーナーです。先程の虎の腹稿のように、情報を集め、データ化し、必要に応じて自在に取り出す という流れは現代のwebに近いもので、それを100年前にやっていたのだからまさに早すぎた知性だったのかもしれません。
ここには南方熊楠のデータベースの体験コーナーもありました。

私は蛍の光を聴きながら閉館時間にならないうちに必死に周っていたので体験できませんでしたw
ということで、南方熊楠について深く知ることのできる内容で満足でした。大人になっても子供の心を持ってる点や収集癖があるところに親近感が湧きます。もうちょっと時間を取って観るべき展示だったw この展示も常設内で特別展のチケットで合わせて観ることができるので、アンデス文明展に行かれる方はこちらもチェックしてみるとよろしいかと思います。

【展覧名】
南方熊楠生誕150周年記念企画展 南方熊楠-100年早かった智の人-
【公式サイト】
https://www.kahaku.go.jp/event/2017/12kumagusu/
【会場】国立科学博物館 日本館1階 企画展示室
【最寄】上野駅
【会期】2017年12月19日(火)~2018年3月4日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞できたのですが、アンデス文明展と地衣類展の予想以上の充実ぶりに時間を取られ、僅か30分くらいで閉館というギリギリの時間となってしまいました。とりあえず後半は写真を撮って周っただけになってしまったw ちゃんと観れば1時間はかかる内容だと思います。
さて、この展示は大正から昭和にかけて活躍した学者、南方熊楠に関する展示です。昭和天皇に講義を行ったエピソードや、破天荒な人物像などで知られる南方熊楠ですが、この展示ではその生涯と研究についてダイジェスト的に紹介されていました。かなり細かく章・項分けされていましたので、要点をかいつまんで写真を使ってご紹介していこうと思います。
<1 熊楠の智の生涯>
まずは南方熊楠の生涯についてのコーナーです。
[1-1 幼少~青年期]
熊楠は1867年に和歌山の商家に生まれ、幼いときから百科事典や本草書といった本の筆写に精を出していたそうです。中でも江戸時代の「和漢三才図会抜書」とい百科事典に出会い、知識を集めることに喜びを見出していました。 その後、中学に進むと西洋から来た博物学を学ぶのですが、数学など理系科目は苦手だったようで、東京帝国大学予備門(現在の教育学部)に進学したものの代数で落第点を取ってドロップアウトし、郷里に戻っています。しかし、予備門時代にアメリカのアマチュア菌学者カーティスがイギリスの菌学者バークレーに6000点の菌類標本を送ったという話を聞いてそれ以上の標本を集めたいと考えていた熊楠は博物学への憧れを捨てきれず、商売のためと称して1886年にアメリカへと留学していきました。
こちらは「和漢三才図会抜書」 「和漢三才図会」を南方熊楠が筆写したものです。

かなり細かいところまで写していて、こうした筆写はこの後も様々な本で行われています。読むだけでなく書くと細部まで覚えますよね。
こちらは予備門時代のノート

ここには植物の名前と科が描かれているようです。漢字と英語が併記されています。ちなみに南方熊楠は非常に語学力があった人で、何カ国語も理解できたそうです。
[1-2 アメリカ時代]
アメリカ時代は最初に商業と英語の勉強をしていたそうですが、商業に関心が持てずに退学して、農学校に入りなおしています。しかし、そこで喧嘩や飲酒事件を起してそこも退学しますw その後、学園都市アナーバーに移り学校には通わずアマチュア菌学者のカルキンスと交流しながら標本採集に精を出します。(熊楠はどこかの大学で研究していたのではなく、個人で研究していました) アメリカ時代にはキューバなどにも採集に訪れたようです。
こちらは旧友に宛てた書簡で、アメリカの生活の様子と共にキノコの標本がつけられたもの。

記号が振られて説明文らしきものもあります。ちょっと読めませんがw
こちらはカルキンすが熊楠に送ったフロリダ産の菌類標本帳

正式な学者でもない熊楠にこうした品をくれるなんて、この人からの影響は大きいのかもしれません。しかしカルキンスとは書簡のやりとりをよくしたものの直接会うことはなかったのだとか。
[1-3 ロンドン時代]
1892年に25歳となった熊楠はロンドンへと渡りました。ロンドンではアメリカ時代と打って変わってフィールドワークではなく大英博物館の図書館で膨大な数の書籍を読み漁ったようで、ここで民俗学や自然科学などの知識を収集し、自分のノートに抜書きしていきました。そしてこの抜書きをもとに雑誌『ネイチャー』に投稿を始めるなどの活動もしていたようです。一方、私生活では酒造会社をやって裕福だった実家の父が亡くなり、その7年後には仕送りが止まってしまったようで生活苦で帰国を決意したようです。
こちらがロンドンで抜書したノート。

やっていることは幼いころの筆写と同じようなことかな。南方熊楠の勉強・研究方法の原点はこうした写しにありそうです。
[1-4 那智・田辺時代]
帰国後、熊楠は那智に住んで採集に明け暮れていました。ここではロンドン時代の抜書を使った論文執筆や、熊楠独自の思考構造を表した「南方マンダラ」を描くなど充実した研究生活を送っていたようです。しかし、投稿した論文は次々に不採択になったようで、1904年には那智での生活を打ち切り紀伊田辺へと移り住みます。そして田辺でも隠花植物 特にキノコの標本採集を行うと共に、城下町だった田辺にある書簡や住民からの聞き取りで抜書なども作っていたようです。そして1906年には神社宮司の娘と結婚し、田辺時代は熊楠の人生で最も長く安定した生活となったようです。
田辺時代の研究面も、変形菌目録という本を出版したり新種を発見したこともあって、摂政宮(後の昭和天皇)に標本を献上するという成果を出し一定の評価を得たようです。
こちらは神社合祀に関して柳田國男とやりとりした書簡。

神社合祀に関しての活動は後の章で出てきますが、民俗学にも精通していたのがこうした運動に繋がったようです。
こちらは変形菌類の進献標本。1926年に後の昭和天皇に献上されました。

90種類程度の菌類があるようです。これはちゃんと献上される感じで綺麗に並んでいます。
[1-5 晩年]
1929年に62才の熊楠は変形菌類に関心を持っていた昭和天皇に対する御進講の機会を得ます。その際、献上標本などをキャラメル箱に入れて持ってきたそうで、これは昭和天皇が後に懐かしんで語っていたなど南方熊楠らしいエピソードとして有名です。その人柄がよく伝わってきますw
そんな熊楠ですが、70歳を迎えるころになると盟友たちが相次いで亡くなり気落ちしてしまったようで、1941年にこの世を去りました。
こちらが献上されたキャラメル箱と同じ型のもの

普通は桐の箱とかに入れるのをこれで持ってきたのには流石に昭和天皇も驚いたようですが、それを嬉しく思っていたようです。熊楠は60を超えても子供っぽいところがあって面白いw
<2 一切智を求めて>
続いては南方熊楠のフィールドワークについてのコーナー。
[2-1 南方のフィールドワーク]
前述の通り、日本に戻った熊楠は積極的にフィールドワークを開始し種類ごとに採集目標を立てたのですが、僅か9ヶ月でそれを達成したそうです。那智で採集した以降は、玉置山、瀞八丁などの紀伊山地、高野山など紀伊半島を中心に活動し、1922年の日光への採集行以外は紀伊半島から出なかったようです。
これは水田や池に生息する藻類を標本する際に使う微細藻類プレパラート入れ

引き出しの中に沢山のサンプルが収まるようです。隣には携帯顕微鏡のレプリカもあったので、その場で観てたのかな。
こちらは絵具と描画道具入り採集箱

今だったら写真に撮りますが、昔は高価だったので採集したての状態で水彩画を描いたようです。熊楠は絵も上手いので本当に多彩な人です。
他にも長持ちなどの道具や、集めた標本なども並んでいました。
[2-2 現在のフィールドワーク]
こちらは現在のフィールドワークのコーナー。いつどこで誰がどのように採集したかを記録し、良好な状態に保ち適切に保存するのという採集に使われる道具などが展示されています。技術の進歩でかなり精度や効率は良くなっているようですが、作業自体は熊楠のやっていたことと同じのようです。
こちらが道具。

GPSなんかは最近っぽさを感じますが、割とアナログな道具が多いかな。地道な研究って感じがします。
[2-3 熊楠の人文系研究]
ここまで菌類の研究の話ばかりでしたが、熊楠は人文系の研究でも名を残しています。説話や民話、伝説などを集めて図譜と同じようにノートに記していったようです。
こちらは抜書をまとめて雑誌や新聞に投書したもの。

「性の研究」とか「変態心理」とか何だか怪しい雑誌もありますw どんな研究を載せたのでしょうか…。
<3 智の広がり>
この章は熊楠が興味を持って集めた隠花植物を紹介するコーナー。現在の標本資料と対比しながら紹介されていました。
[3-1 大型藻類]
こちらは海藻などの大型藻類。熊楠の時代は下等な植物と思われていたようですが、淡水の藻類まで広く収集したようです。しかしその成果は出版されることはなかったのだとか。
熊楠が採集した標本。

綺麗に標本化されていて、隣にあった現代の標本に見劣りしない見事な標本です。
[3-2 微細藻類]
こちらは顕微鏡サイズの藻類のコーナー。熊楠はこうした藻類も多く収集し、日本の微細藻類の分布を1903年のネイチャーで論文で発表しているようです。また、淡水藻類研究では世界の第一線といえるレベルだったようですが、日本国内でその知識を発表したりすることはなかったようです。
こちらが標本。

小さいので1つの箱に沢山入っているようです。1枚1枚にメモ書きもありました。
[3-3 地衣類]
こちらは藻類と菌類が共生する地衣類のコーナー。詳しくは前回の記事をご参照ください。
南方熊楠による地衣類の標本。

南方熊楠は700点以上もの標本を収集したそうですが、大部分は未同定(分類上の所属が決まっていない)ようです。同定するための適切な指導者がいなかったのが原因のようですが、惜しいですね。
[3-4 変形菌類]
変形菌類は熊楠の時代には動物と植物の中間的な原始生物と考えられていたようです。南方熊楠はこの不思議な生物のリストをまとめて発表したそうですが、1920年頃からは自分自身で採集することはあまりせず、弟子たちが採集していたようです。
こちらは熊楠が採集した変形菌類の標本

ちょっと中身が観られませんが、かなりの数を集めているのが分かります。
[3-5 菌類]
カビやキノコ、酵母などの菌類。実は熊楠は変形菌類よりも菌類のほうが沢山集めていたようです。
熊楠hが採集した菌類標本。

これらも残念ながら未同定のものが多数あるようです。
<4 智の集積-菌類図譜->
続いては数千枚にも及ぶ「菌類図譜」に関してのコーナーです。その大部分は国立科学博物館に所蔵されているようですが、欠けている部分もあり、近年発見された部分も展示されていました。
菌名がない図譜。

未同定のものも含まれているようですが、かなり細かい記載が横に書かれていました。
この辺に面白いエピソードがありました。神社合祀に反対して騒ぎを起こした熊楠は牢獄に何日か収監したそうですが、その獄中でキノコを見つけて採取していたようです。図譜にもしているようで、F1252と採番した上で署名入りで獄中で採取した旨が描かれているのだとか。
キノコを集めることで精神を安定に保とうと考えていた話などもあり、やはり何処か普通の人間とは違ったのでしょうねw
<5 智の展開-神社合祀と南方二書->
続いては菌類等の研究以外で成果が出た活動のコーナー。神社合祀への反対について取り上げられていました。
[5-1 神社合祀とは]
神社合祀というのは町村合併に伴って複数の神社を一町村で1つに統合し、廃止した神社の土地を民間に払い下げるという動きで、日露戦争の戦費の借金返済を目的に行われました。南方熊楠は貴重な鎮守の森が消えてしまうことを懸念し、各界の有識者に呼びかけ反対運動を展開したようです。
こちらはアオウツボホコリという新種として報告された変形菌。

これを採取した猿神社が近隣の稲荷神社と合祀されたことで、神社林が完全に伐採されてしまったそうで、これが神社合祀反対運動を展開するきっかけとなったようです。せっかく新種を見つけたのに… 他にも人知れず消えた種もあるのかもしれませんね。
[5-2 南方二書]
南方熊楠は神社合祀反対運動の中で1911年に東京帝国大学教授の松村任三に2通の手紙を書いたそうで、その中で森林伐採で生物が絶滅を招くことや日本文化の精神的な影響などを説いたそうです。それまで収集してきた生物や民俗などの知識を総動員して例示したそうで、これが後に柳田國男に出版されて南方二書と呼ばれるようになったようです。
これが南方二書の原本。

図解なども入れて熱心に反対の旨を伝えているようです。
その甲斐もあって、田辺湾の神島は天然記念物に指定されるなど、実を結んだところもあったようです。
<6 智の構造を探る>
続いては南方熊楠の「腹稿」と呼ばれる構想メモに関するコーナー。
これが腹稿のコピーで、十二支考という連載の為に、虎に関する史話、民俗、生物学的特徴などを羅列したもの。

ひたすら思いついたのを並べたようにみえるかな。項目同士で線をむすんで連続した話題にし、内容をまとめていったようです。
これは「虎」の腹稿

これを観ると、現代のデータ解析を想起します。相関関係を可視化しているみたいな。
こちらは原稿。

腹稿を元に書かれたものですが、この原稿は採用されなかったそうです。まあその御蔭で返却されて今でも残っているみたいなので怪我の功名というか…w
<むすび 一切智の人>
最後は南方熊楠がいかに現代的な思考を持っていたかというコーナーです。先程の虎の腹稿のように、情報を集め、データ化し、必要に応じて自在に取り出す という流れは現代のwebに近いもので、それを100年前にやっていたのだからまさに早すぎた知性だったのかもしれません。
ここには南方熊楠のデータベースの体験コーナーもありました。

私は蛍の光を聴きながら閉館時間にならないうちに必死に周っていたので体験できませんでしたw
ということで、南方熊楠について深く知ることのできる内容で満足でした。大人になっても子供の心を持ってる点や収集癖があるところに親近感が湧きます。もうちょっと時間を取って観るべき展示だったw この展示も常設内で特別展のチケットで合わせて観ることができるので、アンデス文明展に行かれる方はこちらもチェックしてみるとよろしいかと思います。
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今日も写真多めです。前々回、前回と国立科学博物館の特別展をご紹介してきましたが、同じ国立科学博物館の日本館の地下で「地衣類―藻類と共生した菌類たち―」という展示も観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

【展覧名】
地衣類―藻類と共生した菌類たち―
【公式サイト】
https://www.kahaku.go.jp/event/2017/12lichen/
【会場】国立科学博物館 日本館 地下1階 多目的室
【最寄】上野駅
【会期】2017年12月19日(火)~2018年3月4日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
こちらの展示は空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は「地衣類」という菌類&藻類を紹介する科学館らしい展示となっています。正直、地衣類の知識はゼロで学生の時に聞いたような気がする程度でアンデス文明展のオマケとして観に行った感じでしたが、意外にも奥深い世界で好奇心が刺激される内容となっていました。冒頭に書いたように撮影可能となっていましたので、詳しくはコーナーごとに写真と共にご紹介していこうと思います。
<1.地衣類とは>
まずはそもそも地衣類って何だ?というところから説明されているコーナー。ここはボード中心です。
地衣類は○○コケという名前が多いのですが、実は苔ではありません。日本語ではコケを「小毛」または「木毛」とも書くので、それが由来になって紛らわしい感じです。 では地衣類は何かというと、藻類と菌類が共生して「地衣体」と呼ばれる構造になっているもので、要するに菌類の一種です。菌類は10万種ある中で地衣類は2万種程度を占め、日本では1800種程度の地衣類が存在するようです。藻類が光合成して作った糖を菌類が利用し、菌類は乾燥や紫外線から藻を守る共生となります。地衣化すると自給自足のように独立した栄養系を確立し、単独の菌類では作らないような化学物質を作ったりします。その為、単独では生きていけないような所でも生存できるようになり、極限状態のような場所にまで地衣類は存在しています。むしろ適合する藻が見つからないと枯死するみたいなので、単独では生きられない生態系のようです。 この後、そうした変わった地衣類の生態が分かる展示となっています。
<2.地衣類の色々>
ここは様々な地衣類の標本が並ぶコーナーです。実際に観るとどんなものかよく分かります。
[針葉樹林帯の地衣類]
まずはモミの木やカラマツといった針葉樹林で観られる地衣類のコーナー。
こちらはナメラカブトゴケという地衣類。

見た目は木の葉みたいであまり菌類といった印象を受けません。
こちらはナガサルオガセ

先程とまったく異なる形態で、およそ同じ種類の生物とは思えません。何かモコモコしてるしw
こんな感じで、全く色も形も違う生態となっているようです。

木の皮かと思うようなものもあるので、意外と目にしても気づいていないだけなのかも。
[高山の地衣類]
続いて高山の地衣類。高山では日本も世界と共通した地衣類が多く観られるそうで、地球が氷期だった頃に各地で分布を広げた種が暖かくなった後に高山に残ったと考えられるそうです。もしくは遠く離れた高山や極域圏の間で現在も地衣類が移動している可能性も示唆されているのだとか。
こちらはアオウロコゴケ

確かに青い鱗のように見えます。きのこを作る担子菌の地衣類らしいので、苔よりきのこと似た生態なのかも。
こちらはアカウラヤイトゴケ

これもよく見るとちょっと菌類っぽさが分かるような気がします。こういうのって葉っぱが腐ったのかと思ってましたが地衣類なんですね。
[熱帯~亜熱帯の地衣類]
続いては熱帯の地衣類。熱帯は湿度が高いので多様な地衣類が生育しているそうで、いまだに毎年多くの新種が見つかるなど研究も発展途上のようです。
こちらは葉っぱの上に多様な地衣類が混在しているもの。

「生葉上地衣類」と呼ばれるようで、熱帯地域ではこうした混在は珍しくないのだとか。こういう葉っぱの染みみたいなのは地衣類だったんですね。
[街なかの地衣類]
続いては我々の生活にも溶け込んでいる地衣類のコーナー。街路樹や石垣などにも地衣類は存在するそうです。

こんな白っぽいのが多いんじゃ、普通に生活してて気づかないのは当然と言えそうw
これは瓦屋根に張り付いたヤマキクバゴケ

瓦は安定しているので格好の生育場所なのだとか。地衣類は光合成さえできれば土なんか無くても生きていけるんですね。
こちらは逆にエナガという鳥が地衣類を巣に使っている様子。

カモフラージュのためにこうした地衣類を巣に使うようです。自然の共存関係って奥深いですね。
<3.スタジオ地衣類>
こちらは体験コーナーで、擬態マントという蛾の模様から作った布地を使い、この壁の模様の中に溶け込むという擬態体験をします。

マントは6種類でモニターで自分の姿を確認したり、撮影している人も多かったです。
ちなみにこの中に8匹の蛾が隠れています。

ウォーリーを探せ並に難しいですが、私は全部見つけることができました。
一部分のアップ。

蛾が隠れていいるのが分かりますか? 上の方にいます。
<4.特殊環境の地衣類>
続いては極域や砂漠、重金属汚染地域など他の生物には生育が困難な場所で育つ地衣類のコーナーです。
こちらはテマリチイという地衣類

オーストラリアやタスマニア、ニュージランドの乾燥地帯に分布するそうで、風に吹かれて転がっていくようです。観た感じかなり乾燥しているけど、水が少なくても生育できるのか気になります。
こちらはクジラの化石についた地衣類

そういえばクジラには苔みたいなのがついてたりしますが、地衣類もくっついてるんですね。 地衣類は陸地だけではなかった… しかも南極w
こちらはイオウゴケ

なんと硫黄の多い温泉地などでも生育する地衣類があるようです。たくましいにも程があるw
他にもきのこの上とか地衣類の上に生える地衣類とかもあり、恐るべし生命力を感じます。
<5.地衣類に含まれる化学物質>
続いては地衣類の中に含まれている化学物質についてのコーナー。
わかっているだけでも700種類以上におよぶ化学物質を作っているようで、そのうち650種類は地衣類に特有なもののようです。中には人間の役に立つものまでありました。
こちらはリトマス試験紙に使われるリトマスゴケ

日本にはリトマスゴケは無いようですが、代わりにウメノキゴケで同様のものが簡単に作れるようです。ウメノキゴケをアンモニアを薄めた水と僅かなオキシドールを入れて1ヶ月ほど浸しているとリトマス原液になるのだとか。意外過ぎる用途で驚きました。
こちらはウメノキゴケとマツゲゴケで染めたウール

地衣類は最も有用で最も知られていない染料と言われているそうで、多くの地衣類は良質な染料となるそうです。この見本でも分かるように、元の色からは想像もつかないような鮮やかな色を作れるようで、これも驚きでした。
こちらは紫外線によって光る地衣類と光らない地衣類を組み合わせて作った一種のアート。小さな覗き窓から中を覗いて光を照らします。

光を照らす前は全部同じに見えますw
こちらが光を照らした後。

青白く光るのがタイワンサンゴゴケ、白っぽいのがトキワムシゴケ、黄色いのがゴンゲンゴケという地衣類だそうです。見事にニコニコマークとひまわりが浮かんできました。これもまた不思議な生態ですね。
<6.地衣類と人の暮らし>
最後は地衣類と人の暮らしについてのコーナーです。
こちらはカラタチゴケの一種を食用としたもの。

え、食べられるの!?と思いましたが、きのこと同じ菌類だしモノによるのかなw 中国で炒め物に使う他、結婚式の時も食べたりするそうです。
こちらはマンナチイという地衣類

出エジプト記のモーセの物語で、天からマンナが降ってきてそれを食べて飢えを凌いだとされるそうです。神話にまで出てくる地衣類! 何だか地衣類を知らなかったのが申し訳ないくらいですw
こちらは地衣類を使った香水

染料や食用を観た後なので、これくらいではもう驚きませんが本当に様々な所で使われているようです。
ということで、地衣類の魅力を知ることができました。身近なのに全然知らない世界があったことに驚くと共に地衣類の凄さに感服です。全然知らなかった私でも楽しめましたので、国立科学博物館でこれからアンデス文明展を観ようとしている方はこちらもセットで観るのもよろしいかと思います(常設展の一部なので、特別展のチケットで観られます)

【展覧名】
地衣類―藻類と共生した菌類たち―
【公式サイト】
https://www.kahaku.go.jp/event/2017/12lichen/
【会場】国立科学博物館 日本館 地下1階 多目的室
【最寄】上野駅
【会期】2017年12月19日(火)~2018年3月4日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
こちらの展示は空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は「地衣類」という菌類&藻類を紹介する科学館らしい展示となっています。正直、地衣類の知識はゼロで学生の時に聞いたような気がする程度でアンデス文明展のオマケとして観に行った感じでしたが、意外にも奥深い世界で好奇心が刺激される内容となっていました。冒頭に書いたように撮影可能となっていましたので、詳しくはコーナーごとに写真と共にご紹介していこうと思います。
<1.地衣類とは>
まずはそもそも地衣類って何だ?というところから説明されているコーナー。ここはボード中心です。
地衣類は○○コケという名前が多いのですが、実は苔ではありません。日本語ではコケを「小毛」または「木毛」とも書くので、それが由来になって紛らわしい感じです。 では地衣類は何かというと、藻類と菌類が共生して「地衣体」と呼ばれる構造になっているもので、要するに菌類の一種です。菌類は10万種ある中で地衣類は2万種程度を占め、日本では1800種程度の地衣類が存在するようです。藻類が光合成して作った糖を菌類が利用し、菌類は乾燥や紫外線から藻を守る共生となります。地衣化すると自給自足のように独立した栄養系を確立し、単独の菌類では作らないような化学物質を作ったりします。その為、単独では生きていけないような所でも生存できるようになり、極限状態のような場所にまで地衣類は存在しています。むしろ適合する藻が見つからないと枯死するみたいなので、単独では生きられない生態系のようです。 この後、そうした変わった地衣類の生態が分かる展示となっています。
<2.地衣類の色々>
ここは様々な地衣類の標本が並ぶコーナーです。実際に観るとどんなものかよく分かります。
[針葉樹林帯の地衣類]
まずはモミの木やカラマツといった針葉樹林で観られる地衣類のコーナー。
こちらはナメラカブトゴケという地衣類。

見た目は木の葉みたいであまり菌類といった印象を受けません。
こちらはナガサルオガセ

先程とまったく異なる形態で、およそ同じ種類の生物とは思えません。何かモコモコしてるしw
こんな感じで、全く色も形も違う生態となっているようです。

木の皮かと思うようなものもあるので、意外と目にしても気づいていないだけなのかも。
[高山の地衣類]
続いて高山の地衣類。高山では日本も世界と共通した地衣類が多く観られるそうで、地球が氷期だった頃に各地で分布を広げた種が暖かくなった後に高山に残ったと考えられるそうです。もしくは遠く離れた高山や極域圏の間で現在も地衣類が移動している可能性も示唆されているのだとか。
こちらはアオウロコゴケ

確かに青い鱗のように見えます。きのこを作る担子菌の地衣類らしいので、苔よりきのこと似た生態なのかも。
こちらはアカウラヤイトゴケ

これもよく見るとちょっと菌類っぽさが分かるような気がします。こういうのって葉っぱが腐ったのかと思ってましたが地衣類なんですね。
[熱帯~亜熱帯の地衣類]
続いては熱帯の地衣類。熱帯は湿度が高いので多様な地衣類が生育しているそうで、いまだに毎年多くの新種が見つかるなど研究も発展途上のようです。
こちらは葉っぱの上に多様な地衣類が混在しているもの。

「生葉上地衣類」と呼ばれるようで、熱帯地域ではこうした混在は珍しくないのだとか。こういう葉っぱの染みみたいなのは地衣類だったんですね。
[街なかの地衣類]
続いては我々の生活にも溶け込んでいる地衣類のコーナー。街路樹や石垣などにも地衣類は存在するそうです。

こんな白っぽいのが多いんじゃ、普通に生活してて気づかないのは当然と言えそうw
これは瓦屋根に張り付いたヤマキクバゴケ

瓦は安定しているので格好の生育場所なのだとか。地衣類は光合成さえできれば土なんか無くても生きていけるんですね。
こちらは逆にエナガという鳥が地衣類を巣に使っている様子。

カモフラージュのためにこうした地衣類を巣に使うようです。自然の共存関係って奥深いですね。
<3.スタジオ地衣類>
こちらは体験コーナーで、擬態マントという蛾の模様から作った布地を使い、この壁の模様の中に溶け込むという擬態体験をします。

マントは6種類でモニターで自分の姿を確認したり、撮影している人も多かったです。
ちなみにこの中に8匹の蛾が隠れています。

ウォーリーを探せ並に難しいですが、私は全部見つけることができました。
一部分のアップ。

蛾が隠れていいるのが分かりますか? 上の方にいます。
<4.特殊環境の地衣類>
続いては極域や砂漠、重金属汚染地域など他の生物には生育が困難な場所で育つ地衣類のコーナーです。
こちらはテマリチイという地衣類

オーストラリアやタスマニア、ニュージランドの乾燥地帯に分布するそうで、風に吹かれて転がっていくようです。観た感じかなり乾燥しているけど、水が少なくても生育できるのか気になります。
こちらはクジラの化石についた地衣類

そういえばクジラには苔みたいなのがついてたりしますが、地衣類もくっついてるんですね。 地衣類は陸地だけではなかった… しかも南極w
こちらはイオウゴケ

なんと硫黄の多い温泉地などでも生育する地衣類があるようです。たくましいにも程があるw
他にもきのこの上とか地衣類の上に生える地衣類とかもあり、恐るべし生命力を感じます。
<5.地衣類に含まれる化学物質>
続いては地衣類の中に含まれている化学物質についてのコーナー。
わかっているだけでも700種類以上におよぶ化学物質を作っているようで、そのうち650種類は地衣類に特有なもののようです。中には人間の役に立つものまでありました。
こちらはリトマス試験紙に使われるリトマスゴケ

日本にはリトマスゴケは無いようですが、代わりにウメノキゴケで同様のものが簡単に作れるようです。ウメノキゴケをアンモニアを薄めた水と僅かなオキシドールを入れて1ヶ月ほど浸しているとリトマス原液になるのだとか。意外過ぎる用途で驚きました。
こちらはウメノキゴケとマツゲゴケで染めたウール

地衣類は最も有用で最も知られていない染料と言われているそうで、多くの地衣類は良質な染料となるそうです。この見本でも分かるように、元の色からは想像もつかないような鮮やかな色を作れるようで、これも驚きでした。
こちらは紫外線によって光る地衣類と光らない地衣類を組み合わせて作った一種のアート。小さな覗き窓から中を覗いて光を照らします。

光を照らす前は全部同じに見えますw
こちらが光を照らした後。

青白く光るのがタイワンサンゴゴケ、白っぽいのがトキワムシゴケ、黄色いのがゴンゲンゴケという地衣類だそうです。見事にニコニコマークとひまわりが浮かんできました。これもまた不思議な生態ですね。
<6.地衣類と人の暮らし>
最後は地衣類と人の暮らしについてのコーナーです。
こちらはカラタチゴケの一種を食用としたもの。

え、食べられるの!?と思いましたが、きのこと同じ菌類だしモノによるのかなw 中国で炒め物に使う他、結婚式の時も食べたりするそうです。
こちらはマンナチイという地衣類

出エジプト記のモーセの物語で、天からマンナが降ってきてそれを食べて飢えを凌いだとされるそうです。神話にまで出てくる地衣類! 何だか地衣類を知らなかったのが申し訳ないくらいですw
こちらは地衣類を使った香水

染料や食用を観た後なので、これくらいではもう驚きませんが本当に様々な所で使われているようです。
ということで、地衣類の魅力を知ることができました。身近なのに全然知らない世界があったことに驚くと共に地衣類の凄さに感服です。全然知らなかった私でも楽しめましたので、国立科学博物館でこれからアンデス文明展を観ようとしている方はこちらもセットで観るのもよろしいかと思います(常設展の一部なので、特別展のチケットで観られます)
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今回も写真多めです。前回は「古代アンデス文明展」の先土器時代からチャビン、モチェ、ナスカといった文化についてご紹介しましたが、今回はそれ以降からインカ帝国滅亡までの章についてです。前編からの流れとなっていますので、前編をお読み頂いていない方は、そちらから読んで頂けると嬉しいです。 後半も撮影することが出来ましたので写真を使ってご紹介しようと思います。(※掲載していけないものがある場合はコメントやメール等でお知らせください)
古代アンデス文明展 前編(国立科学博物館)

【展覧名】
特別展「古代アンデス文明展」
【公式サイト】
http://andes2017-2019.main.jp/andes_web/
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2017/andes/
【会場】国立科学博物館
【最寄】上野駅
【会期】2017年10月21日(土)~2018年2月18日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半は前半に比べるとやや空いてるように感じたかな。後半は主にティワナク、ワリ、シカン、チムー、インカなどの章となっていました。
<4 地域を超えた政治システムの始まり>
アンデスでは6世紀後半に干ばつや洪水などの深刻な気候変動によって社会が大きく変化したようで、人口の集中が顕著に現れました。北部海岸や中部海岸のモチェやリマには特に多くの人が集まり都市とみなすことができる街となったようです。一方、南部海岸のナスカでは多くの人が海岸部を離れて高地へと移り住みました。こうした中、中部高地南部のアヤクチョ地域の1つの集落が急速に都市化し、ワリという国家の首都になり、ワリはティワナクとナスカの要素を合わせた新しい宗教も生んだようです。同じ頃、ティワナクの人々も太平洋岸に近い谷に植民地を築き、10世紀にはペルー北部海岸に強力な国家シカンも成立するなど同時期にいくつかの国家が地域ごとに発生していたようです。この章にはそうした時代の品々が並んでいました。
[4-1 ティワナク文化 紀元後500年~後1100年頃]
ティワナクは標高3800mにある巨大なティティカカ湖の湖畔にある盆地で繁栄した文化で、巨大な石造建造物が並び石の文化・石の文明と呼ばれるようです。15000~30000人ほどの人口があったようで、7世紀頃から周囲に宗教的・経済的に影響力をもったようですが、11世紀頃に衰退していったようです。
ティワナク文化 「かみ合う犬歯が生えた髑髏をかたどった銀の葬送用冠」

これは葬送用の冠で、穴の部分が目になた髑髏をかたどっているようです。何故牙が生えているのか分かりませんが、よく見ると横向きの髑髏が表されているなど高度な加工技術が見て取れました。
ティワナク文化 「2人の男性の顔が彫られたティワナク様式の石のブロック」

石の文化と呼ばれるだけあって、こうした石造がいくつか並んでいます。これはコカの葉を噛んでいる像と考えられるそうで、わずかに右の頬が膨れています。かなり微妙ですがw 建築の装飾みたいだけど、何でこうしたモチーフにしたんだろ?
ティワナク文化 「ネコ科動物をかたどった多彩色土製香炉」

前編でも沢山出てきたネコ科動物のモチーフはティワナクでも健在です。これは恐らくジャガーと思われるようですが、恐ろしげな顔で牙むき出しです。側面に様々な文様が付けられていました。
ティワナク文化 「カラササヤで出土した金の儀式用装身具」

ネコ科の動物やラクダ科の動物などを模した装身具。権力者が金で装飾するのは洋の東西問わず共通の文化なのかも。祭祀や葬送用に使われたそうです。
この辺にティワナクについての面白い話がありました。ティワナクは標高3800mという富士山の頂上くらいの所にあるのですが、こんな所でどうやって都市が繁栄できたのか疑問に思われていたようです。しかしジャガイモの農法を工夫したり、寒さに強いリャマを飼って標高の低い土地までキャラバンを組んで遠征するなどして生活を維持していたと考えられているのだとか。
ティワナク文化 「パリティ島で出土した肖像土器」

耳飾りと口にピアスのようなもの(テンベタ)をしたアマゾン低地の住民と思われる肖像土器。野球のマー君の顔にそっくりじゃないですかね?w かなり写実的に作られていて当時の人々の顔が想像できそうでした。
この辺は他にもパリティ島というティティカカ湖の小島で出土した品々が並んでいました。精巧に作った土器をわざわざ粉々にして生贄のリャマの骨と共に収められたようです。前述の作品のように遠くはなれたアマゾン低地の住民の肖像が何故出てくるのか不明のようですが、交流があったことが分かる貴重な品のようでした。
ティワナク文化 「パリティ島で出土した台部が人頭の儀礼用鉢」

こちらもアマゾンの人を模した土器。上にちょこんとネコ科動物が乗っているのがちょっと可愛いw それにしてもアマゾンとティワナクの間に交易でもあったんでしょうか??
[4-2 ワリ文化 紀元後650年~後1000年頃]
続いてはワリの文化。図像や建築技術が似ていることなどから以前はティワナクの一部と考えられていたようですが、今では武力で広い範囲を領土として他民族を統治した帝国と考えられているようです。ナスカとティワナクの要素を融合した新しい宗教を持ち、ペルー海岸部に飛び地の植民地を持つなど海と高地の覇権を握った国だったようです。
ワリ文化 「人間の顔が描かれた多彩色鉢」

様々な種族の人が描かれた鉢。それぞれ舌を出して可愛く見えますが、これは権力者が人々に語りかける様子 もしくは 敵を絞殺した様子を表しているようです。後者だと怖いですが、いずれにせよ多くの種族と関係のあった文化なのは伝わってきました。
ワリ文化 「多彩色の水筒型壺」

これは海岸部のワリの地方高官の墓から発掘された壺。壺の口が顔で側面に胴体が描かれているのが面白い作品です。幾何学的な文様もモダンな感じに見えました。
ワリ文化 「ワリのキープ」

こちらはキープと呼ばれる糸。文字を持たないアンデスではこのキープの結び目が文字の替わりとなっています。この後のインカ帝国でも行政に使われましたが、インカが我々と同じ10進法であるのに大してワリは5進法なのだとか。これを解読するのは文字よりよっぽど難しそうに見えるw
ワリ文化 「チュニックの一部(?)」

男性用のチュニジアと思われる品。色とりどりに幾何学を組み合わせていて非常に明るい印象を受けます。現代絵画でこういうのありそうw これも繊細な染色技術が伺えるように思えました。
[4-3 シカン文化 紀元後800年~後1375年頃]
続いてシカン文化のコーナー。シカンは以前この博物館で観たのをよく覚えていました。記事にも残しているので詳細は下記を読んで頂ければと思います。シカンはモチェとワリの文化の特徴を併せ持つ新たな様式と宗教を持っていて、ワリ帝国もシカンの地域には覇権を確立できないくらいの勢力だったようです。
参考記事:
特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン 1日ブログ記者 感想前編(国立科学博物館)
特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン 1日ブログ記者 感想後編(国立科学博物館)
中期シカン文化 「打ち出し技法で装飾をほどこした金のコップ(アキリャ)5点セット」

シカンは金を使った品が結構多いように思いますが、こちらは飲料の容器。蛇の頭や神・王などが表されているようです。割とどれも同じに見えるので、どうやって作ったのか気になりました。型でも無いとこんなに似せるの難しいんじゃないかな。
中期シカン文化 「金めっきした儀式用ナイフ(トゥミ)」

変わった形のトゥミという儀式用ナイフ。生贄の首を切るのに使われたナイフです。禿げて下地が見えるので金箔が如何に薄いかが分かるようでした。
中期シカン文化 「リャマの頭部をかたどった黒色壺」

こちらはリャマの頭の実物大くらいの壺。歯もむき出していてちょっとトボけた感じ。リャマはシカンでは食料にもなってた動物だったりもします。
中期シカン文化 「ロロ神殿[西の墓]の中心被葬者の仮面」

面白い顔の形の仮面。金を銅・銀に混ぜて表面だけ金の含有量を多くしていたらしく、当時は表面を磨いて金色に見えていたと考えられるようです。ちょっと赤っぽいのは辰砂(赤色硫化水銀)が塗られていたためで、血を想起させる生命力の象徴だったとかんがえられるようです。割と可愛い顔してますが、かなりの権力者だったのかも。 この隣には真っ赤に辰砂が塗られた頭蓋骨も展示されていました。死者の再生を願って真っ赤に塗ったようです。
[チャンカイ文化]
チャンカイはペルー海岸部にあり、強大なチムー帝国と宗教的中心地パチャカマクの間に位置していたそうです。白黒の土器と優れた織物が有名だそうで、ここにも織物が並んでいます。(ここは点数少なめ)
チャンカイ文化 「図案サンプル」

こちらは多様な技法で織り込んだ4枚の布をつなぎ合わせたもの。パターンの見本と考えられているようで、模様も様々です。鳥っぽいのが多いかな。幾何学的に動物を表した模様のように思える部分もありました。
<5 最後の帝国 チムー王国とインカ帝国>
続いては強大な帝国を築いたチムーとインカについてです。紀元1000年頃にワリとティワナクの生態が崩壊すると再び多数の地域政体が成立し、対立や衝突が生じたようですが、北部海岸でチムー王国が急速に拡大し14世紀末にはシカンを征服して有力勢力となりました。一方、ペルー南部高地のクスコでは小勢力だったインカが急速に力を付けていき、1470年にインカはチムーを破り最大規模の帝国となっていきました。その領域は4000kmにも及ぶものでしたが、急速に発展しただけに不安定で帝国内部には反乱もあったようで、1532年にスペイン人が来る時には内戦状態でした。その後はたった168人のスペイン人の侵略でインカ帝国は崩壊へと向かっていきます。 この辺も以前の展示で詳しく紹介されていたのでよく覚えていました。詳細は下記の記事などをご参照ください。
参考記事:
マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展 感想前編(国立科学博物館)
マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展 感想後編(国立科学博物館)
[5-1 チムー王国 紀元後1100年頃~後1470年頃]
チムーはシカンを征服しシカンの金属精錬の技術も受け継いだそうです。海岸部などとの交易のネットワークなどもあり強い国だったようですが、1470年頃にインカと激突し敗北してしまいました。
チムー文化 「木製柱状人物像」

チムーの首都チャンチャンの遺跡で見つかった柱。王宮の入口にあったようで、何かを持っているのですが保存が悪くて詳細は分からないようです。兵士っぽいし武器なんじゃないかな??
チムー文化 「木製ミニチュア建築物模型」

こちらは建築物の模型。何のために作ったのかキャプションにはありませんでしたが、儀式をする人の像もあったと考えられているらしいので何か宗教的なものかもしれません。この近くにはこの人形と似た葬送行列のミニチュア模型などもありました。
[5-2 インカ帝国 15世紀前半~1572年]
インカ帝国は彼らのケチュア語で「タワンティンスーユ(4つの部分が一緒になった)」と呼んでいたようで、アンデスを統一した意味が込められているようです。アンデス史上最大にして最も強い政体で、ワリやティワナクなどの習慣や制度を用いて大規模な開発(インカ道など)も作って強大な帝国を作りました。(しかし皮肉にもインカ道はスペイン人の征服にも使われたりしました。)
インカ文化 「金合金製の小型人物像(男性と女性)」

左の像を観て稲中卓球部を思い起したのは私だけではないはずw 面白い顔をしていますが、生贄の儀式で子供と共に神に捧げられた人形らしく、それを知るとちょっと怖いです。ちなみにこれは金の合金で出来た品ですが、インカの遺物で現存する金製品は少ないようです。何しろスペイン人が徹底的に集めて溶かして本国に送っていたので…。色々な意味でインカの歴史が感じられる品でした。
インカ文化 「インカ帝国のチャチャボヤス地方で使われたケープ」

再度出てきたキープ。さっき観たキープよりも紐の本数が多くて半端ない大きさです。しかも途中で枝分かれしてたりするし、インカは文字が無くても高度に発展した文化であったことがよく分かります。
この後はインカの滅亡の歴史を年表で説明していました。1532年にインカ王が殺された後、傀儡政権となってからもスペインとの戦いは意外と長く、征服されてからも反乱があったようです。ようやくスペインから独立したのは1821年なので、実に300年くらいは征服されていたようです。
ディエゴ デ ラ プエンテ 「アンデスの[最後の晩餐]」

こちらはアンデスでのキリスト教の布教に使われた絵画。卓上の食べ物が新大陸のものとなっているなど、現地に合わせた仕様になっているようです。
<6 身体から見たアンデス文明>
最後の章は撮影禁止でした。チリバヤ文化(紀元900年頃~1440年頃)の人体に関する品が並び、外科手術を施した頭蓋骨や男児のミイラの実物などが展示されています。乾燥した地域なので死ぬと自然にミイラになるようで、ミイラと共に暮すなど独特のミイラ文化があったようです。定期的にミイラの衣服を取り替えていたのだとか。
また、頭蓋骨は黒曜石で穴を開けて治療した跡が残っていて、その後もしばらく生きて頭蓋骨が治ってきていた様子も伺えるなど独特の外科技術があったことも伺えました。
<それ以外>
展覧会は6章までですが、それ以外にもいくつかの展示物がありました。
こちらは日系ペルー人の120年の歴史を紹介するコーナー。

1899年から日米開戦の1941年までに33000人の日本人が移民としてペルーに渡り、ペルーの発展に大きく貢献したようですが、その歴史は苦難だらけだったことがよく分かります。
こちらは過去のアンデス関連の展示のポスター。

これまで5回の展示で400万人も動員した人気のシリーズです。
最後はシカンの発掘現場での島田泉教授の発掘の様子を紹介するコーナー。

ここには割とアナログな道具が並びますが、調査には年代測定や地中レーダー探査、DNA分析など科学的な検証が行われているようです。
ということで、かなりのボリューム感がある展示でした。これまでのアンデス文明の展示と違って1つ1つは点数少なめですが、その流れを詳しく知ることができたので面白かったです。撮影することもできますので、これから行かれる方は混雑情報をキャッチして空いている時にでもカメラを持って行くと一層楽しめるのではないかと思います。考古学系の展示が好きな方にお勧めの展示です。
古代アンデス文明展 前編(国立科学博物館)

【展覧名】
特別展「古代アンデス文明展」
【公式サイト】
http://andes2017-2019.main.jp/andes_web/
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2017/andes/
【会場】国立科学博物館
【最寄】上野駅
【会期】2017年10月21日(土)~2018年2月18日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半は前半に比べるとやや空いてるように感じたかな。後半は主にティワナク、ワリ、シカン、チムー、インカなどの章となっていました。
<4 地域を超えた政治システムの始まり>
アンデスでは6世紀後半に干ばつや洪水などの深刻な気候変動によって社会が大きく変化したようで、人口の集中が顕著に現れました。北部海岸や中部海岸のモチェやリマには特に多くの人が集まり都市とみなすことができる街となったようです。一方、南部海岸のナスカでは多くの人が海岸部を離れて高地へと移り住みました。こうした中、中部高地南部のアヤクチョ地域の1つの集落が急速に都市化し、ワリという国家の首都になり、ワリはティワナクとナスカの要素を合わせた新しい宗教も生んだようです。同じ頃、ティワナクの人々も太平洋岸に近い谷に植民地を築き、10世紀にはペルー北部海岸に強力な国家シカンも成立するなど同時期にいくつかの国家が地域ごとに発生していたようです。この章にはそうした時代の品々が並んでいました。
[4-1 ティワナク文化 紀元後500年~後1100年頃]
ティワナクは標高3800mにある巨大なティティカカ湖の湖畔にある盆地で繁栄した文化で、巨大な石造建造物が並び石の文化・石の文明と呼ばれるようです。15000~30000人ほどの人口があったようで、7世紀頃から周囲に宗教的・経済的に影響力をもったようですが、11世紀頃に衰退していったようです。
ティワナク文化 「かみ合う犬歯が生えた髑髏をかたどった銀の葬送用冠」

これは葬送用の冠で、穴の部分が目になた髑髏をかたどっているようです。何故牙が生えているのか分かりませんが、よく見ると横向きの髑髏が表されているなど高度な加工技術が見て取れました。
ティワナク文化 「2人の男性の顔が彫られたティワナク様式の石のブロック」

石の文化と呼ばれるだけあって、こうした石造がいくつか並んでいます。これはコカの葉を噛んでいる像と考えられるそうで、わずかに右の頬が膨れています。かなり微妙ですがw 建築の装飾みたいだけど、何でこうしたモチーフにしたんだろ?
ティワナク文化 「ネコ科動物をかたどった多彩色土製香炉」

前編でも沢山出てきたネコ科動物のモチーフはティワナクでも健在です。これは恐らくジャガーと思われるようですが、恐ろしげな顔で牙むき出しです。側面に様々な文様が付けられていました。
ティワナク文化 「カラササヤで出土した金の儀式用装身具」

ネコ科の動物やラクダ科の動物などを模した装身具。権力者が金で装飾するのは洋の東西問わず共通の文化なのかも。祭祀や葬送用に使われたそうです。
この辺にティワナクについての面白い話がありました。ティワナクは標高3800mという富士山の頂上くらいの所にあるのですが、こんな所でどうやって都市が繁栄できたのか疑問に思われていたようです。しかしジャガイモの農法を工夫したり、寒さに強いリャマを飼って標高の低い土地までキャラバンを組んで遠征するなどして生活を維持していたと考えられているのだとか。
ティワナク文化 「パリティ島で出土した肖像土器」

耳飾りと口にピアスのようなもの(テンベタ)をしたアマゾン低地の住民と思われる肖像土器。野球のマー君の顔にそっくりじゃないですかね?w かなり写実的に作られていて当時の人々の顔が想像できそうでした。
この辺は他にもパリティ島というティティカカ湖の小島で出土した品々が並んでいました。精巧に作った土器をわざわざ粉々にして生贄のリャマの骨と共に収められたようです。前述の作品のように遠くはなれたアマゾン低地の住民の肖像が何故出てくるのか不明のようですが、交流があったことが分かる貴重な品のようでした。
ティワナク文化 「パリティ島で出土した台部が人頭の儀礼用鉢」

こちらもアマゾンの人を模した土器。上にちょこんとネコ科動物が乗っているのがちょっと可愛いw それにしてもアマゾンとティワナクの間に交易でもあったんでしょうか??
[4-2 ワリ文化 紀元後650年~後1000年頃]
続いてはワリの文化。図像や建築技術が似ていることなどから以前はティワナクの一部と考えられていたようですが、今では武力で広い範囲を領土として他民族を統治した帝国と考えられているようです。ナスカとティワナクの要素を融合した新しい宗教を持ち、ペルー海岸部に飛び地の植民地を持つなど海と高地の覇権を握った国だったようです。
ワリ文化 「人間の顔が描かれた多彩色鉢」

様々な種族の人が描かれた鉢。それぞれ舌を出して可愛く見えますが、これは権力者が人々に語りかける様子 もしくは 敵を絞殺した様子を表しているようです。後者だと怖いですが、いずれにせよ多くの種族と関係のあった文化なのは伝わってきました。
ワリ文化 「多彩色の水筒型壺」

これは海岸部のワリの地方高官の墓から発掘された壺。壺の口が顔で側面に胴体が描かれているのが面白い作品です。幾何学的な文様もモダンな感じに見えました。
ワリ文化 「ワリのキープ」

こちらはキープと呼ばれる糸。文字を持たないアンデスではこのキープの結び目が文字の替わりとなっています。この後のインカ帝国でも行政に使われましたが、インカが我々と同じ10進法であるのに大してワリは5進法なのだとか。これを解読するのは文字よりよっぽど難しそうに見えるw
ワリ文化 「チュニックの一部(?)」

男性用のチュニジアと思われる品。色とりどりに幾何学を組み合わせていて非常に明るい印象を受けます。現代絵画でこういうのありそうw これも繊細な染色技術が伺えるように思えました。
[4-3 シカン文化 紀元後800年~後1375年頃]
続いてシカン文化のコーナー。シカンは以前この博物館で観たのをよく覚えていました。記事にも残しているので詳細は下記を読んで頂ければと思います。シカンはモチェとワリの文化の特徴を併せ持つ新たな様式と宗教を持っていて、ワリ帝国もシカンの地域には覇権を確立できないくらいの勢力だったようです。
参考記事:
特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン 1日ブログ記者 感想前編(国立科学博物館)
特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン 1日ブログ記者 感想後編(国立科学博物館)
中期シカン文化 「打ち出し技法で装飾をほどこした金のコップ(アキリャ)5点セット」

シカンは金を使った品が結構多いように思いますが、こちらは飲料の容器。蛇の頭や神・王などが表されているようです。割とどれも同じに見えるので、どうやって作ったのか気になりました。型でも無いとこんなに似せるの難しいんじゃないかな。
中期シカン文化 「金めっきした儀式用ナイフ(トゥミ)」

変わった形のトゥミという儀式用ナイフ。生贄の首を切るのに使われたナイフです。禿げて下地が見えるので金箔が如何に薄いかが分かるようでした。
中期シカン文化 「リャマの頭部をかたどった黒色壺」

こちらはリャマの頭の実物大くらいの壺。歯もむき出していてちょっとトボけた感じ。リャマはシカンでは食料にもなってた動物だったりもします。
中期シカン文化 「ロロ神殿[西の墓]の中心被葬者の仮面」

面白い顔の形の仮面。金を銅・銀に混ぜて表面だけ金の含有量を多くしていたらしく、当時は表面を磨いて金色に見えていたと考えられるようです。ちょっと赤っぽいのは辰砂(赤色硫化水銀)が塗られていたためで、血を想起させる生命力の象徴だったとかんがえられるようです。割と可愛い顔してますが、かなりの権力者だったのかも。 この隣には真っ赤に辰砂が塗られた頭蓋骨も展示されていました。死者の再生を願って真っ赤に塗ったようです。
[チャンカイ文化]
チャンカイはペルー海岸部にあり、強大なチムー帝国と宗教的中心地パチャカマクの間に位置していたそうです。白黒の土器と優れた織物が有名だそうで、ここにも織物が並んでいます。(ここは点数少なめ)
チャンカイ文化 「図案サンプル」

こちらは多様な技法で織り込んだ4枚の布をつなぎ合わせたもの。パターンの見本と考えられているようで、模様も様々です。鳥っぽいのが多いかな。幾何学的に動物を表した模様のように思える部分もありました。
<5 最後の帝国 チムー王国とインカ帝国>
続いては強大な帝国を築いたチムーとインカについてです。紀元1000年頃にワリとティワナクの生態が崩壊すると再び多数の地域政体が成立し、対立や衝突が生じたようですが、北部海岸でチムー王国が急速に拡大し14世紀末にはシカンを征服して有力勢力となりました。一方、ペルー南部高地のクスコでは小勢力だったインカが急速に力を付けていき、1470年にインカはチムーを破り最大規模の帝国となっていきました。その領域は4000kmにも及ぶものでしたが、急速に発展しただけに不安定で帝国内部には反乱もあったようで、1532年にスペイン人が来る時には内戦状態でした。その後はたった168人のスペイン人の侵略でインカ帝国は崩壊へと向かっていきます。 この辺も以前の展示で詳しく紹介されていたのでよく覚えていました。詳細は下記の記事などをご参照ください。
参考記事:
マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展 感想前編(国立科学博物館)
マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展 感想後編(国立科学博物館)
[5-1 チムー王国 紀元後1100年頃~後1470年頃]
チムーはシカンを征服しシカンの金属精錬の技術も受け継いだそうです。海岸部などとの交易のネットワークなどもあり強い国だったようですが、1470年頃にインカと激突し敗北してしまいました。
チムー文化 「木製柱状人物像」

チムーの首都チャンチャンの遺跡で見つかった柱。王宮の入口にあったようで、何かを持っているのですが保存が悪くて詳細は分からないようです。兵士っぽいし武器なんじゃないかな??
チムー文化 「木製ミニチュア建築物模型」

こちらは建築物の模型。何のために作ったのかキャプションにはありませんでしたが、儀式をする人の像もあったと考えられているらしいので何か宗教的なものかもしれません。この近くにはこの人形と似た葬送行列のミニチュア模型などもありました。
[5-2 インカ帝国 15世紀前半~1572年]
インカ帝国は彼らのケチュア語で「タワンティンスーユ(4つの部分が一緒になった)」と呼んでいたようで、アンデスを統一した意味が込められているようです。アンデス史上最大にして最も強い政体で、ワリやティワナクなどの習慣や制度を用いて大規模な開発(インカ道など)も作って強大な帝国を作りました。(しかし皮肉にもインカ道はスペイン人の征服にも使われたりしました。)
インカ文化 「金合金製の小型人物像(男性と女性)」

左の像を観て稲中卓球部を思い起したのは私だけではないはずw 面白い顔をしていますが、生贄の儀式で子供と共に神に捧げられた人形らしく、それを知るとちょっと怖いです。ちなみにこれは金の合金で出来た品ですが、インカの遺物で現存する金製品は少ないようです。何しろスペイン人が徹底的に集めて溶かして本国に送っていたので…。色々な意味でインカの歴史が感じられる品でした。
インカ文化 「インカ帝国のチャチャボヤス地方で使われたケープ」

再度出てきたキープ。さっき観たキープよりも紐の本数が多くて半端ない大きさです。しかも途中で枝分かれしてたりするし、インカは文字が無くても高度に発展した文化であったことがよく分かります。
この後はインカの滅亡の歴史を年表で説明していました。1532年にインカ王が殺された後、傀儡政権となってからもスペインとの戦いは意外と長く、征服されてからも反乱があったようです。ようやくスペインから独立したのは1821年なので、実に300年くらいは征服されていたようです。
ディエゴ デ ラ プエンテ 「アンデスの[最後の晩餐]」

こちらはアンデスでのキリスト教の布教に使われた絵画。卓上の食べ物が新大陸のものとなっているなど、現地に合わせた仕様になっているようです。
<6 身体から見たアンデス文明>
最後の章は撮影禁止でした。チリバヤ文化(紀元900年頃~1440年頃)の人体に関する品が並び、外科手術を施した頭蓋骨や男児のミイラの実物などが展示されています。乾燥した地域なので死ぬと自然にミイラになるようで、ミイラと共に暮すなど独特のミイラ文化があったようです。定期的にミイラの衣服を取り替えていたのだとか。
また、頭蓋骨は黒曜石で穴を開けて治療した跡が残っていて、その後もしばらく生きて頭蓋骨が治ってきていた様子も伺えるなど独特の外科技術があったことも伺えました。
<それ以外>
展覧会は6章までですが、それ以外にもいくつかの展示物がありました。
こちらは日系ペルー人の120年の歴史を紹介するコーナー。

1899年から日米開戦の1941年までに33000人の日本人が移民としてペルーに渡り、ペルーの発展に大きく貢献したようですが、その歴史は苦難だらけだったことがよく分かります。
こちらは過去のアンデス関連の展示のポスター。


これまで5回の展示で400万人も動員した人気のシリーズです。
最後はシカンの発掘現場での島田泉教授の発掘の様子を紹介するコーナー。

ここには割とアナログな道具が並びますが、調査には年代測定や地中レーダー探査、DNA分析など科学的な検証が行われているようです。
ということで、かなりのボリューム感がある展示でした。これまでのアンデス文明の展示と違って1つ1つは点数少なめですが、その流れを詳しく知ることができたので面白かったです。撮影することもできますので、これから行かれる方は混雑情報をキャッチして空いている時にでもカメラを持って行くと一層楽しめるのではないかと思います。考古学系の展示が好きな方にお勧めの展示です。
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今回は写真多めです。去年の年末に上野の国立科学博物館で特別展「古代アンデス文明展」を観てきました。この展示は撮影可能で沢山の展示物があったので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。(※掲載していけないものがある場合はコメントやメール等でお知らせください)

【展覧名】
特別展「古代アンデス文明展」
【公式サイト】
http://andes2017-2019.main.jp/andes_web/
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2017/andes/
【会場】国立科学博物館
【最寄】上野駅
【会期】2017年10月21日(土)~2018年2月18日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
去年の最終営業日だったこともあり平日でも割と多くのお客さんがいましたが、普段の土日に比べれば快適に鑑賞できたと思います。
さて、この展示はその名の通り南アメリカのアンデス文明についての展示です。国立科学博物館ではアンデス文明に関する展示を今までも何回も開催していて毎回人気を博しているのですが、今回はちょっと範囲が今までと違います。アンデス文明と一口に言ってもその歴史は長く地域も広いので、過去の展示ではそれぞれの文化について細分化して紹介されていましたが、今回は15000年のアンデス文明全体の流れをダイジェスト的に紹介しています。出品されているのも各文化ごとに合わせて200点にも及び、非常に見応えのある内容となっています。展覧会は6章構成となっていましたので、今日は前半部分の1~3章についてご紹介しようと思います。
こちらが会場風景。

時代順に章が進んでいくので、文明の進歩についても知ることができます。
こちらは冒頭にあった映像。

時系列で観ると、B.C.3000年頃からカラル文化、B.C.1000年前後にチャビン文化、紀元頃からナスカが始まり、その後にモチェ、ティワナク、ワリ、シカン、チムーと続き、スペインに滅ぼされたインカまでとなっています。
<1 アンデスの神殿と宗教の始まり>
まず最初の章は人類がアンデスに到達した頃から始まります。南北アメリカにはおよそ15000年前に人類が入ったようで、23000年前に東アジアやヨーロッパ人を祖先とする人達が当時陸地だったベーリング海峡を渡ってアラスカ辺りで8000年ほど暮らし、その後新大陸に入って13000年ほど前に南北アメリカ大陸を分布する集団と北アメリカに住む集団の2つに分かれたようです。その後、5000年前頃から先土器時代が始まり、3500年頃前の先土器時代後期には農業に基づく定住生活となり社会と政治が複雑になっていったようです。5000年前の紀元前3000年~2500年にはカラル遺跡など大規模な神殿も現れ、その後も各地に祭祀センターが発達していき、それは何千年もの間も保たれたようです。4000年前の起源2000年頃には身分の差が生まれたようで、副葬品にその違いが現れているらしく、ここにはそうした先土器時代の品々が並んでいました。
先土器時代後期 「未焼成の小型男性人像(レプリカ)」

こちらは紀元前3000年~前1500年頃のカラル文化の土偶。手が欠けているのは埋葬の儀式で壊されたのではないかと考えられているようで、この隣にあった同様の土偶も手が欠けていました。(レプリカですが) ニット帽を被った子供にしか観えなくてちょっと親近感がw
先土器時代後期 「線刻装飾のある骨製の笛2本(レプリカ)」

これはレプリカですが、ペリカンの骨でできた笛。側面には猿や鳥、ネコ科の動物などが表されています。穴の塞ぎ方で音色を調整するようですが、割と本格的な装飾付きの笛が早くも作られていたことに驚きます。
この他にも北部高地にあったコトシュ遺跡(紀元前2500~1800年頃)のコーナーもありました。交差した手の浮き彫り2点と神殿の模型くらいなので点数は少なめです。
<2 複雑な社会の始まり チャビン文明>
続いては紀元前1300年~500年頃にアンデスを文化的に統一したと考えられるチャビン文化(現在のペルーのリマの北辺り)についてのコーナーです。アンデスは文化の統一と各地に個別の文化が育つ時代が交互に現れたと考えられているようで、このチャビンが初めての文化的統一となったようです。チャビンの美術や宗教はそれまでのアンデスのいくつもの宗教伝統を統合し、多様な祭祀センターとの交流によってできあがったようですが、贅をこらした遺物からは権力への関心も伺えるようです。
チャビン文化 形成期後期 「テノンヘッド」

これは神殿の壁面に置かれた頭像。人間離れした異形をしていますが、神殿での儀式で幻覚剤を摂取した人がネコ科の動物に変容する感覚を体験したものを表していると考えられているようです。日本の鬼瓦みたいに見えますが、ちょっと意味合いは違いそう。
この辺には自分の首を切った人の像などもありました。不自然な方向に首が曲がっていて怖い像ですw
クピスニケ文化 形成期中期(前1200年~前800年) 「刺青またはフェイスペイントをした小像」

何かのマスコットみたいな顔をした人物像。目や鼻、お腹に穴が開いているのは焼いた時に破裂しないようにするためのようですが、何とその穴を使ってオカリナとして吹くこともできるのだとか。私にはマワシを付けたお相撲さんの像に見えましたが意外な用途w
形成期後期(前800年~前500年) 「十四人面金冠(レプリカ)」

こちらはチャビン文化と同時期のクントゥル・ワシ遺跡(チャビンより北。紀元前800~前550年頃)からの出土品のレプリカ。六角形の中に14の頭部が表されています。切断された首が多数詰められた籠を表現しているとのことで、その意味を知ると怖い文化があったのかも。アンデスは割とその手の話題が多い気がします。
<3 さまざまな地方文化の始まり>
続いてはチャビンの後の文化についてのコーナー。何故チャビンの宗教が権威を失ったか理由は分かりませんが、チャビンが力を失ってからその影響から離れた各地の伝統が復活していったようです。ペルー北部でペルー芸術の古典となったモチェや、南部でチャビンと隣接のパラカスから文化を取り入れたナスカなどもこの時代に栄えたようです。
[3-1 モチェ文明 紀元後200年~後750(800)年頃]
モチェは灌漑施設を発達させ、経済的発展によって文化も豊かだったようです。洗練された写実的な土器や黄金の装飾品など様々な出土品が並びます。
ガイソナ文化 「ガイソナの双胴壺」

ちょっと間が抜けたゆるキャラみたいな顔を持つ壺ですが、手には棍棒と盾を持っています。これも笛のようになるそうですが、それも意図して作ったのかな?? この表情がアンデスらしさなのかも。
モチェ文化 「アシカをかたどった鐙型単注口土器」

これとか完全にゆるキャラでしょw モチェの人は棍棒でアシカを狩って食料や物づくりの材料にしていたそうですが、宗教美術にも登場するので単なる食料以上の存在だったのかもとのことです。それにしてもこのデフォルメぶりは現代的なものを感じます。
モチェ文化 「チチャ造りをする男女を表した鐙型注口土器」

チチャというのはトウモロコシ酒で、それを男女で作っている様子のようです。チチャは儀礼でも使われたそうで、広く愛飲された飲み物だったと考えられています。この像自体は何に使ったのか気になりますが、当時の様子がよく分かる品と言えそうです。
モチェ文化 「金地に象嵌だれた人形面の装飾品」

こちらは胸飾りのパーツの1つだったと考えられている品。後ろからに紐を通す穴が2箇所あいているようです。目を見開いて歯が細かく表されていて中々迫力がある表情です。金地に象嵌する技術が見事。
後期モチェ文化 「ネコ科動物の毛皮を模した儀式用"ケープ"」

この展示で多く観られたのがネコ科動物に関する品々です。ネコ科動物が具体的に何なのか分かりませんが、結構身近な存在だったのかもしれません。これは毛皮を模した儀式用の品なので、宗教的に意味のある動物だったんじゃないかな。金ピカで威圧感もありますが、抜けた顔と猫っぽい手が可愛いw
ちなみにモチェでは4つの世界を生きていたと考えられているようで、自然の世界、自然と隣合わせで生きる人間の世界、自然と人間に影響を与える神々の世界、そして死者や祖先の世界 の4つとなります。死者や自然を近くに感じてたのかもしれません。
モチェ文化 「ネコ科動物の足をかたどり めっきをほどこした爪を付けた土製品」

こちらもネコ科動物を模した神殿から見つかった品。鋭い爪を持っているので危険な動物を模してると思いますが、かなり精密に作られていて肉球までわかりました。
前期モチェ文化(?) 「象嵌のマスク」

こちらは何となく先程の装飾品と似た感性があるように思えました。現代のアート作品のようにも思えるw
モチェ文化 「人間型のシカの坐像をかたどった鐙型注口土器」

シカ人間のような像。何だかヨガをしているみたいなポーズが面白かったですw
この辺には様々な神様を表した作品などもありました。
モチェ文化(古シパン王墓) 「擬人化したネコ科動物(レプリカ)」

目のつり上がった鬼みたいな顔をしていますがネコ科動物を擬人化しているようです。頭の上の双頭の蛇はこの後のシカン時代にまで使われていくモチーフなのだとか。これも鋭い爪ですね。
[3-2 ナスカ文明 起源前200年頃~後650年頃]
こちらはモチェと同時期の地上絵で有名なナスカのコーナー。ナスカは北部に比べて農業には向かない干ばつの多い地域で、神へ願いを届けるために優れた芸術品を作ったそうです。しかし気候変動の影響で近くの高地に移住して文化は途絶えてしまったのだとか。
ナスカ文化 「4つの首が描かれた土製内弩鉢」

これは首級(斬られた首)をモチーフにした鉢。目が上を向いているのは死んでるからのようです。ちょっと変顔したパフィみたいと思ったけど、そんな可愛いものじゃなかったw
なお、アンデスでは首級に力が宿っているという信仰がどの文化でも共通してあったようですが、ナスカは特に好んで土器などに表していたようです。
ナスカ文化 「クモが描かれた土器」

これもさっきの顔に似ていますが、クモを表しています。クモは豊穣と関連すると信じられていたそうで、そう言えば地上絵にもクモが描かれていますね。
ちなみにナスカの地上絵は水を求めた儀式に関係があると考えられているようです。宇宙人へのメッセージではなく神へのメッセージでしょうねw
ナスカ文化 「11本の管を持つ大型の土製パンパイプ(アンタラ)」

11本も管のある楽器。最初に観た笛に比べてかなり複雑な楽器が現れました。どういう音がするんだろうか。
ナスカ文化 「8つの顔で装飾された砂時計型土器」

こういう顔のイラストって現代でも見かける気がしますw 上部はちょっとキュビスムを感じるし色使いもアーティスティック。
パラカス・ネクロポリス期、前300~後200年頃 「刺繍マント」

こちらは高位者のミイラの包みの1枚。非常に緻密な模様となっています。
アップ

このクオリティで沢山織り込まれているのが凄い技術です。身分と権力がよく伝わってきました。
ということで、長くなってきたので今日はこの辺にしておこうと思います。前半から既に見どころが多いですが、後半にも多くの驚くべき品が並んでいましたので、次回はそれをご紹介しようと思います。
後編:古代アンデス文明展 後編(国立科学博物館)

【展覧名】
特別展「古代アンデス文明展」
【公式サイト】
http://andes2017-2019.main.jp/andes_web/
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2017/andes/
【会場】国立科学博物館
【最寄】上野駅
【会期】2017年10月21日(土)~2018年2月18日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
去年の最終営業日だったこともあり平日でも割と多くのお客さんがいましたが、普段の土日に比べれば快適に鑑賞できたと思います。
さて、この展示はその名の通り南アメリカのアンデス文明についての展示です。国立科学博物館ではアンデス文明に関する展示を今までも何回も開催していて毎回人気を博しているのですが、今回はちょっと範囲が今までと違います。アンデス文明と一口に言ってもその歴史は長く地域も広いので、過去の展示ではそれぞれの文化について細分化して紹介されていましたが、今回は15000年のアンデス文明全体の流れをダイジェスト的に紹介しています。出品されているのも各文化ごとに合わせて200点にも及び、非常に見応えのある内容となっています。展覧会は6章構成となっていましたので、今日は前半部分の1~3章についてご紹介しようと思います。
こちらが会場風景。

時代順に章が進んでいくので、文明の進歩についても知ることができます。
こちらは冒頭にあった映像。

時系列で観ると、B.C.3000年頃からカラル文化、B.C.1000年前後にチャビン文化、紀元頃からナスカが始まり、その後にモチェ、ティワナク、ワリ、シカン、チムーと続き、スペインに滅ぼされたインカまでとなっています。
<1 アンデスの神殿と宗教の始まり>
まず最初の章は人類がアンデスに到達した頃から始まります。南北アメリカにはおよそ15000年前に人類が入ったようで、23000年前に東アジアやヨーロッパ人を祖先とする人達が当時陸地だったベーリング海峡を渡ってアラスカ辺りで8000年ほど暮らし、その後新大陸に入って13000年ほど前に南北アメリカ大陸を分布する集団と北アメリカに住む集団の2つに分かれたようです。その後、5000年前頃から先土器時代が始まり、3500年頃前の先土器時代後期には農業に基づく定住生活となり社会と政治が複雑になっていったようです。5000年前の紀元前3000年~2500年にはカラル遺跡など大規模な神殿も現れ、その後も各地に祭祀センターが発達していき、それは何千年もの間も保たれたようです。4000年前の起源2000年頃には身分の差が生まれたようで、副葬品にその違いが現れているらしく、ここにはそうした先土器時代の品々が並んでいました。
先土器時代後期 「未焼成の小型男性人像(レプリカ)」

こちらは紀元前3000年~前1500年頃のカラル文化の土偶。手が欠けているのは埋葬の儀式で壊されたのではないかと考えられているようで、この隣にあった同様の土偶も手が欠けていました。(レプリカですが) ニット帽を被った子供にしか観えなくてちょっと親近感がw
先土器時代後期 「線刻装飾のある骨製の笛2本(レプリカ)」

これはレプリカですが、ペリカンの骨でできた笛。側面には猿や鳥、ネコ科の動物などが表されています。穴の塞ぎ方で音色を調整するようですが、割と本格的な装飾付きの笛が早くも作られていたことに驚きます。
この他にも北部高地にあったコトシュ遺跡(紀元前2500~1800年頃)のコーナーもありました。交差した手の浮き彫り2点と神殿の模型くらいなので点数は少なめです。
<2 複雑な社会の始まり チャビン文明>
続いては紀元前1300年~500年頃にアンデスを文化的に統一したと考えられるチャビン文化(現在のペルーのリマの北辺り)についてのコーナーです。アンデスは文化の統一と各地に個別の文化が育つ時代が交互に現れたと考えられているようで、このチャビンが初めての文化的統一となったようです。チャビンの美術や宗教はそれまでのアンデスのいくつもの宗教伝統を統合し、多様な祭祀センターとの交流によってできあがったようですが、贅をこらした遺物からは権力への関心も伺えるようです。
チャビン文化 形成期後期 「テノンヘッド」

これは神殿の壁面に置かれた頭像。人間離れした異形をしていますが、神殿での儀式で幻覚剤を摂取した人がネコ科の動物に変容する感覚を体験したものを表していると考えられているようです。日本の鬼瓦みたいに見えますが、ちょっと意味合いは違いそう。
この辺には自分の首を切った人の像などもありました。不自然な方向に首が曲がっていて怖い像ですw
クピスニケ文化 形成期中期(前1200年~前800年) 「刺青またはフェイスペイントをした小像」

何かのマスコットみたいな顔をした人物像。目や鼻、お腹に穴が開いているのは焼いた時に破裂しないようにするためのようですが、何とその穴を使ってオカリナとして吹くこともできるのだとか。私にはマワシを付けたお相撲さんの像に見えましたが意外な用途w
形成期後期(前800年~前500年) 「十四人面金冠(レプリカ)」

こちらはチャビン文化と同時期のクントゥル・ワシ遺跡(チャビンより北。紀元前800~前550年頃)からの出土品のレプリカ。六角形の中に14の頭部が表されています。切断された首が多数詰められた籠を表現しているとのことで、その意味を知ると怖い文化があったのかも。アンデスは割とその手の話題が多い気がします。
<3 さまざまな地方文化の始まり>
続いてはチャビンの後の文化についてのコーナー。何故チャビンの宗教が権威を失ったか理由は分かりませんが、チャビンが力を失ってからその影響から離れた各地の伝統が復活していったようです。ペルー北部でペルー芸術の古典となったモチェや、南部でチャビンと隣接のパラカスから文化を取り入れたナスカなどもこの時代に栄えたようです。
[3-1 モチェ文明 紀元後200年~後750(800)年頃]
モチェは灌漑施設を発達させ、経済的発展によって文化も豊かだったようです。洗練された写実的な土器や黄金の装飾品など様々な出土品が並びます。
ガイソナ文化 「ガイソナの双胴壺」

ちょっと間が抜けたゆるキャラみたいな顔を持つ壺ですが、手には棍棒と盾を持っています。これも笛のようになるそうですが、それも意図して作ったのかな?? この表情がアンデスらしさなのかも。
モチェ文化 「アシカをかたどった鐙型単注口土器」

これとか完全にゆるキャラでしょw モチェの人は棍棒でアシカを狩って食料や物づくりの材料にしていたそうですが、宗教美術にも登場するので単なる食料以上の存在だったのかもとのことです。それにしてもこのデフォルメぶりは現代的なものを感じます。
モチェ文化 「チチャ造りをする男女を表した鐙型注口土器」

チチャというのはトウモロコシ酒で、それを男女で作っている様子のようです。チチャは儀礼でも使われたそうで、広く愛飲された飲み物だったと考えられています。この像自体は何に使ったのか気になりますが、当時の様子がよく分かる品と言えそうです。
モチェ文化 「金地に象嵌だれた人形面の装飾品」

こちらは胸飾りのパーツの1つだったと考えられている品。後ろからに紐を通す穴が2箇所あいているようです。目を見開いて歯が細かく表されていて中々迫力がある表情です。金地に象嵌する技術が見事。
後期モチェ文化 「ネコ科動物の毛皮を模した儀式用"ケープ"」

この展示で多く観られたのがネコ科動物に関する品々です。ネコ科動物が具体的に何なのか分かりませんが、結構身近な存在だったのかもしれません。これは毛皮を模した儀式用の品なので、宗教的に意味のある動物だったんじゃないかな。金ピカで威圧感もありますが、抜けた顔と猫っぽい手が可愛いw
ちなみにモチェでは4つの世界を生きていたと考えられているようで、自然の世界、自然と隣合わせで生きる人間の世界、自然と人間に影響を与える神々の世界、そして死者や祖先の世界 の4つとなります。死者や自然を近くに感じてたのかもしれません。
モチェ文化 「ネコ科動物の足をかたどり めっきをほどこした爪を付けた土製品」

こちらもネコ科動物を模した神殿から見つかった品。鋭い爪を持っているので危険な動物を模してると思いますが、かなり精密に作られていて肉球までわかりました。
前期モチェ文化(?) 「象嵌のマスク」

こちらは何となく先程の装飾品と似た感性があるように思えました。現代のアート作品のようにも思えるw
モチェ文化 「人間型のシカの坐像をかたどった鐙型注口土器」

シカ人間のような像。何だかヨガをしているみたいなポーズが面白かったですw
この辺には様々な神様を表した作品などもありました。
モチェ文化(古シパン王墓) 「擬人化したネコ科動物(レプリカ)」

目のつり上がった鬼みたいな顔をしていますがネコ科動物を擬人化しているようです。頭の上の双頭の蛇はこの後のシカン時代にまで使われていくモチーフなのだとか。これも鋭い爪ですね。
[3-2 ナスカ文明 起源前200年頃~後650年頃]
こちらはモチェと同時期の地上絵で有名なナスカのコーナー。ナスカは北部に比べて農業には向かない干ばつの多い地域で、神へ願いを届けるために優れた芸術品を作ったそうです。しかし気候変動の影響で近くの高地に移住して文化は途絶えてしまったのだとか。
ナスカ文化 「4つの首が描かれた土製内弩鉢」

これは首級(斬られた首)をモチーフにした鉢。目が上を向いているのは死んでるからのようです。ちょっと変顔したパフィみたいと思ったけど、そんな可愛いものじゃなかったw
なお、アンデスでは首級に力が宿っているという信仰がどの文化でも共通してあったようですが、ナスカは特に好んで土器などに表していたようです。
ナスカ文化 「クモが描かれた土器」

これもさっきの顔に似ていますが、クモを表しています。クモは豊穣と関連すると信じられていたそうで、そう言えば地上絵にもクモが描かれていますね。
ちなみにナスカの地上絵は水を求めた儀式に関係があると考えられているようです。宇宙人へのメッセージではなく神へのメッセージでしょうねw
ナスカ文化 「11本の管を持つ大型の土製パンパイプ(アンタラ)」

11本も管のある楽器。最初に観た笛に比べてかなり複雑な楽器が現れました。どういう音がするんだろうか。
ナスカ文化 「8つの顔で装飾された砂時計型土器」

こういう顔のイラストって現代でも見かける気がしますw 上部はちょっとキュビスムを感じるし色使いもアーティスティック。
パラカス・ネクロポリス期、前300~後200年頃 「刺繍マント」

こちらは高位者のミイラの包みの1枚。非常に緻密な模様となっています。
アップ

このクオリティで沢山織り込まれているのが凄い技術です。身分と権力がよく伝わってきました。
ということで、長くなってきたので今日はこの辺にしておこうと思います。前半から既に見どころが多いですが、後半にも多くの驚くべき品が並んでいましたので、次回はそれをご紹介しようと思います。
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三が日に映画『オリエント急行殺人事件』を観てきました。この記事ではややネタバレを含んでいますので、事前知識無しで観たいという方はご注意ください。

【作品名】
オリエント急行殺人事件
【公式サイト】
http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/
【時間】
1時間50分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
お正月は娯楽が少ないこともあってかかなりの盛況ぶりでした。
さて、この映画はアガサ・クリスティの同名の本格ミステリー小説を原作としたもので、非常に有名な作品なので読んだことがあるかたも多いかと思います。私は中学生くらいの時に読んだきりなので、細部は忘れていましたが、肝心な部分についてはよく覚えていました。40年くらい前にも映画化されていますが、今回は現在の豪華キャストと共に全く別物として作られています。
何を書いてもネタバレになってしまいそうですが、概ね原作通りの雰囲気で作られていて原作ファンも安心して観ることができるのではないかと思います。逆に言うとシャーロック・ホームズの映画みたいな意外性は特に無いので、中には物足りないと感じることも方もいるかもしれません。一方で、この映画の一番の見どころと言えそうなのはやはり豪華キャストかと思います。監督兼主演のケネス・ブラナーを始め、ジョニー・デップやアカデミー女優のミシェル・ファイファーなど実力派が揃っていて、沢山の人物が出て来るにも関わらず全員個性的でその実力を遺憾なく発揮していました。だいたいキャストで役割が分かってしまうのもネタバレと言えなくもないw 現場となるオリエント急行の内部もしっかり作られていて、オリエント急行自体の魅力もよく伝わってきます。
ただ、欲を言えばもうちょっと話や状況を整理してくれたらより楽しめるんじゃないかな。殺人事件の現場の様子などがイマイチよく分からなかったりするので、そこで理解ができない部分が出る人もいるのではないかと思いました。話のテンポも早くて多くの名前を覚えるのが大変なので、話に集中したい人は字幕より吹き替えが良いかも? テンポが早い一方で心情表現などをじっくりしている感じもあるので、人間ドラマとしても面白いと思います。
ということで、期待した通りの映画だったと思います。安定感があるのでこの小説を知っている人も、知らない人も楽しめると思います。ネタバレ感想を話しながら映画館を出て行く人達がいたので、そういう人達に遭遇しないように注意してくださいw

【作品名】
オリエント急行殺人事件
【公式サイト】
http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/
【時間】
1時間50分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
お正月は娯楽が少ないこともあってかかなりの盛況ぶりでした。
さて、この映画はアガサ・クリスティの同名の本格ミステリー小説を原作としたもので、非常に有名な作品なので読んだことがあるかたも多いかと思います。私は中学生くらいの時に読んだきりなので、細部は忘れていましたが、肝心な部分についてはよく覚えていました。40年くらい前にも映画化されていますが、今回は現在の豪華キャストと共に全く別物として作られています。
何を書いてもネタバレになってしまいそうですが、概ね原作通りの雰囲気で作られていて原作ファンも安心して観ることができるのではないかと思います。逆に言うとシャーロック・ホームズの映画みたいな意外性は特に無いので、中には物足りないと感じることも方もいるかもしれません。一方で、この映画の一番の見どころと言えそうなのはやはり豪華キャストかと思います。監督兼主演のケネス・ブラナーを始め、ジョニー・デップやアカデミー女優のミシェル・ファイファーなど実力派が揃っていて、沢山の人物が出て来るにも関わらず全員個性的でその実力を遺憾なく発揮していました。だいたいキャストで役割が分かってしまうのもネタバレと言えなくもないw 現場となるオリエント急行の内部もしっかり作られていて、オリエント急行自体の魅力もよく伝わってきます。
ただ、欲を言えばもうちょっと話や状況を整理してくれたらより楽しめるんじゃないかな。殺人事件の現場の様子などがイマイチよく分からなかったりするので、そこで理解ができない部分が出る人もいるのではないかと思いました。話のテンポも早くて多くの名前を覚えるのが大変なので、話に集中したい人は字幕より吹き替えが良いかも? テンポが早い一方で心情表現などをじっくりしている感じもあるので、人間ドラマとしても面白いと思います。
ということで、期待した通りの映画だったと思います。安定感があるのでこの小説を知っている人も、知らない人も楽しめると思います。ネタバレ感想を話しながら映画館を出て行く人達がいたので、そういう人達に遭遇しないように注意してくださいw
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今回は写真多めです。昨年末の仕事納めの帰りに東京駅にある東京ステーションギャラリーで「鉄道絵画発→ピカソ行 コレクションのドア、ひらきます」を観てきました。この展示は撮影可能となっていました(撮影できない作品もあります)ので、写真を使ってご紹介しようと思います。

【展覧名】
鉄道絵画発→ピカソ行 コレクションのドア、ひらきます
【公式サイト】
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201712_picasso.html
【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅・大手町駅
【会期】2017年12月16日(土)~2018年2月12日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
平日の昼間に行ったこともあり、空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は東京ステーションギャラリーが30年間かけて収集してきたコレクションから100点あまりを紹介する内容となっています。章分けを駅に例えているなど鉄道と深い関係を感じさせるもので、鉄道絵画が特に充実しているのが特徴と言えそうです。それ以外の作品も多岐に渡り、5章構成となっていましたので詳しくは章構成に従って写真を使ってご紹介しようと思います。
<始発駅 鉄道絵画>
まずは早速 鉄道をテーマにした作品が並ぶコーナーです。特に東京駅をテーマにした作品が多かったように思います。
相笠昌義 「東京駅風景・冬」

喧騒の場面を静かに描くのが特徴の相笠昌義 氏らしい作品。これもどこかシュールな雰囲気が漂っていて、写実なのに不思議な光景となっていました。
本城直季 「new tokyo station」

カメラのあおりの手法を使って実景をミニチュアのように写すのが特徴の写真家。玩具にしか観えないのが好奇心を掻き立てます。
元田久治 「Indication -Tokyo Station-」

現代の著名な建築物を廃墟のように描く画風で話題を集めている元田久治 氏の作品。東京駅も廃墟になってしまったw 最近特によく見かけるので今後も注目したい画家です。
参考記事:現代の写実―映像を超えて (東京都美術館)
村井督侍 「山手線のフェスティバル ドキュメンタリー写真」

こちらは中西夏之や高松次郎、木下新、K村田といったアーティストが集まり山手線で実行したアートイベントの記録写真。割と不気味なメイク?で車内でゲリラ的にやっているように見えるかな。結構攻めてた企画だったのかも。
長谷川利行 「赤い汽罐車庫」

これはかつての田端駅をモチーフにしたそうで、強い色彩が目を引きました。タッチも力強くて汽車の印象にあっているように思います。
この辺には今回のポスターにもなっている中村岳陵「驀進」などもありました。こちらも良い絵でしたがあえて出し惜しみしておきます。
遠藤彰子 「駅」

この画家の絵も最近よく見かける気がします。一見すると駅の光景のように見えますが、地下や窓の外がシュルレアリスムのようで不思議な世界が広がっています。お互いに無関心な人々もどこか象徴的に思えました。
立石大河亞 「アンデスの汽車」

この方は画家でもあり漫画家でもありイラストレーターでもあったそうです。最晩年に描かれた作品は3コマの漫画のようにも思えるかな。遠近感がおかしくなった奇妙な世界が面白い作品でした。
斎藤吾朗 「軽井沢駅物語」

軽井沢駅の歴史を1枚に凝縮したような作品。懐かしのボンネット型の白山(489系白山色)やアプト式の10000系らしき車両等、鉄道好きには懐かしい作品。色々詰め込んでいるので観ていて飽きません。
<2駅目 都市と郊外>
続いては東京近郊で作成された作品や、現代の作家による風景画のコーナー。ここも点数多めでした。
吉村芳生 「SCENE 85-8」

これは白黒写真に見えますが、写真を鉛筆で写し取った作品。写しとはいえその写実性も見事ですが、この独特の構図にセンスを感じました。
椿貞雄 「鵠沼風景」

岸田劉生の弟子であり盟友であっただけに岸田劉生からの影響が強く感じられる作品。リアルで濃密な描写が特徴と言えそうです。
この近くには同じく岸田劉生に親しい木村荘八の作品もありました。こちらも見どころの1つと言えそうです。
岡本信治郎 「大時計・上野地下鉄ストア」

かつて上野にあったビル全体が大時計だったという上野地下鉄ストアを描いた作品。戦災で建物は失われたそうですが、下の方に赤い火のようなものが見えるのはそれを意味しているのかな? 建物は楽しげな雰囲気なのに不穏な印象を受けました。
森村泰昌 「自画像としての[私](メデューサ)」

こちらはカラヴァッジョの作品を由来としたメデューサに扮する作者の自画像。有名人になりきるだけでなく絵の中の人物や架空の人物になりきることもあって面白い作家です。あちこちで作品を観るので、美術ファンはこの顔を観ただけですぐに分かるんじゃないかなw
藤浪理恵子 「anonymous L(25-25) 匿名シリーズ」

タイトルのLはローマ数字の50を示すようで、事件報道が犠牲者を数で扱うことにインスピレーションを得たようです。50人が何かを訴えるような表情を浮かべているように見えてちょっと怖かったけど、考えさせられます。
<3駅目 人>
続いては人物画のコーナーです。
阿部金剛 「山査子と裸婦」

日本のシュルレアリスムの先駆け的な画家の作品。マネキンっぽいのでシュルレアリスム的にも思えますが、ちょっとそうとも言い切れないようなデフォルメぶりが面白い。むしろこの路線のほうが個性があって好きだなあ。
郭徳俊 「大統領と郭 シリーズ」

これはTime誌の表紙(歴代大統領)の上半分の顔と作者の下半分の顔を合わせて1枚とするシリーズ。世界で一番権力を持つものと無力な1人の人間を合体することで無意味という事実を確認するという意図を持っているようです。元々1枚の写真に見える完成度の高いのもありますw
小川信治 「バルコニーにて1 <Behind You>シリーズ」

これは写真のように見えますが鉛筆で描いた作品。左右で世界の中心が逆転しているように見えますが、よく見ると違いがあります。お互いを見比べて間違い探しのように観てきましたw
<4駅目 抽象>
続いては抽象画のコーナー。ここはちょっと意図が分からない難しめの作品が並びます。
元永定正 「Funi Funi」

アクリルとエアブラシで描かれた謎の抽象画。フニフニというタイトルのせいかちょっと生物に見えるかもw
曽谷朝絵 「Circles」

幾重にも円が広がり波紋のように見える作品。淡い色合いから温かみが感じられました。
辰野登恵子 「Dec-9-2002」

チェック柄のような抽象ですが、とにかく色が強く感じられる作品。陰影がついているのもそれを強めているように思いました。
<5駅目 ピカソ>
最後にピカソの作品が4点並んでいました。ここは撮影禁止でしたが写実的な時代、キュビスムの時代といった感じで少数ながらもピカソの画風の変遷と違いを楽しむことができました。
ということで、様々な作家の作品を楽しむことができました。鉄道オタクでもある私としては鉄道絵画のコーナーが特に面白かったです。方向性がバラバラではありますが、この美術館のコレクションを一気に観られるチャンスだと思います。

【展覧名】
鉄道絵画発→ピカソ行 コレクションのドア、ひらきます
【公式サイト】
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201712_picasso.html
【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅・大手町駅
【会期】2017年12月16日(土)~2018年2月12日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
平日の昼間に行ったこともあり、空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は東京ステーションギャラリーが30年間かけて収集してきたコレクションから100点あまりを紹介する内容となっています。章分けを駅に例えているなど鉄道と深い関係を感じさせるもので、鉄道絵画が特に充実しているのが特徴と言えそうです。それ以外の作品も多岐に渡り、5章構成となっていましたので詳しくは章構成に従って写真を使ってご紹介しようと思います。
<始発駅 鉄道絵画>
まずは早速 鉄道をテーマにした作品が並ぶコーナーです。特に東京駅をテーマにした作品が多かったように思います。
相笠昌義 「東京駅風景・冬」

喧騒の場面を静かに描くのが特徴の相笠昌義 氏らしい作品。これもどこかシュールな雰囲気が漂っていて、写実なのに不思議な光景となっていました。
本城直季 「new tokyo station」

カメラのあおりの手法を使って実景をミニチュアのように写すのが特徴の写真家。玩具にしか観えないのが好奇心を掻き立てます。
元田久治 「Indication -Tokyo Station-」

現代の著名な建築物を廃墟のように描く画風で話題を集めている元田久治 氏の作品。東京駅も廃墟になってしまったw 最近特によく見かけるので今後も注目したい画家です。
参考記事:現代の写実―映像を超えて (東京都美術館)
村井督侍 「山手線のフェスティバル ドキュメンタリー写真」

こちらは中西夏之や高松次郎、木下新、K村田といったアーティストが集まり山手線で実行したアートイベントの記録写真。割と不気味なメイク?で車内でゲリラ的にやっているように見えるかな。結構攻めてた企画だったのかも。
長谷川利行 「赤い汽罐車庫」

これはかつての田端駅をモチーフにしたそうで、強い色彩が目を引きました。タッチも力強くて汽車の印象にあっているように思います。
この辺には今回のポスターにもなっている中村岳陵「驀進」などもありました。こちらも良い絵でしたがあえて出し惜しみしておきます。
遠藤彰子 「駅」

この画家の絵も最近よく見かける気がします。一見すると駅の光景のように見えますが、地下や窓の外がシュルレアリスムのようで不思議な世界が広がっています。お互いに無関心な人々もどこか象徴的に思えました。
立石大河亞 「アンデスの汽車」

この方は画家でもあり漫画家でもありイラストレーターでもあったそうです。最晩年に描かれた作品は3コマの漫画のようにも思えるかな。遠近感がおかしくなった奇妙な世界が面白い作品でした。
斎藤吾朗 「軽井沢駅物語」

軽井沢駅の歴史を1枚に凝縮したような作品。懐かしのボンネット型の白山(489系白山色)やアプト式の10000系らしき車両等、鉄道好きには懐かしい作品。色々詰め込んでいるので観ていて飽きません。
<2駅目 都市と郊外>
続いては東京近郊で作成された作品や、現代の作家による風景画のコーナー。ここも点数多めでした。
吉村芳生 「SCENE 85-8」

これは白黒写真に見えますが、写真を鉛筆で写し取った作品。写しとはいえその写実性も見事ですが、この独特の構図にセンスを感じました。
椿貞雄 「鵠沼風景」

岸田劉生の弟子であり盟友であっただけに岸田劉生からの影響が強く感じられる作品。リアルで濃密な描写が特徴と言えそうです。
この近くには同じく岸田劉生に親しい木村荘八の作品もありました。こちらも見どころの1つと言えそうです。
岡本信治郎 「大時計・上野地下鉄ストア」

かつて上野にあったビル全体が大時計だったという上野地下鉄ストアを描いた作品。戦災で建物は失われたそうですが、下の方に赤い火のようなものが見えるのはそれを意味しているのかな? 建物は楽しげな雰囲気なのに不穏な印象を受けました。
森村泰昌 「自画像としての[私](メデューサ)」

こちらはカラヴァッジョの作品を由来としたメデューサに扮する作者の自画像。有名人になりきるだけでなく絵の中の人物や架空の人物になりきることもあって面白い作家です。あちこちで作品を観るので、美術ファンはこの顔を観ただけですぐに分かるんじゃないかなw
藤浪理恵子 「anonymous L(25-25) 匿名シリーズ」

タイトルのLはローマ数字の50を示すようで、事件報道が犠牲者を数で扱うことにインスピレーションを得たようです。50人が何かを訴えるような表情を浮かべているように見えてちょっと怖かったけど、考えさせられます。
<3駅目 人>
続いては人物画のコーナーです。
阿部金剛 「山査子と裸婦」

日本のシュルレアリスムの先駆け的な画家の作品。マネキンっぽいのでシュルレアリスム的にも思えますが、ちょっとそうとも言い切れないようなデフォルメぶりが面白い。むしろこの路線のほうが個性があって好きだなあ。
郭徳俊 「大統領と郭 シリーズ」

これはTime誌の表紙(歴代大統領)の上半分の顔と作者の下半分の顔を合わせて1枚とするシリーズ。世界で一番権力を持つものと無力な1人の人間を合体することで無意味という事実を確認するという意図を持っているようです。元々1枚の写真に見える完成度の高いのもありますw
小川信治 「バルコニーにて1 <Behind You>シリーズ」

これは写真のように見えますが鉛筆で描いた作品。左右で世界の中心が逆転しているように見えますが、よく見ると違いがあります。お互いを見比べて間違い探しのように観てきましたw
<4駅目 抽象>
続いては抽象画のコーナー。ここはちょっと意図が分からない難しめの作品が並びます。
元永定正 「Funi Funi」

アクリルとエアブラシで描かれた謎の抽象画。フニフニというタイトルのせいかちょっと生物に見えるかもw
曽谷朝絵 「Circles」

幾重にも円が広がり波紋のように見える作品。淡い色合いから温かみが感じられました。
辰野登恵子 「Dec-9-2002」

チェック柄のような抽象ですが、とにかく色が強く感じられる作品。陰影がついているのもそれを強めているように思いました。
<5駅目 ピカソ>
最後にピカソの作品が4点並んでいました。ここは撮影禁止でしたが写実的な時代、キュビスムの時代といった感じで少数ながらもピカソの画風の変遷と違いを楽しむことができました。
ということで、様々な作家の作品を楽しむことができました。鉄道オタクでもある私としては鉄道絵画のコーナーが特に面白かったです。方向性がバラバラではありますが、この美術館のコレクションを一気に観られるチャンスだと思います。
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今回は写真多めです。ついこの間の成人の日の祝日に六本木の東京ミッドタウン・デザインハブで「クラフトNEXT-第57回日本クラフト展」を観てきました。色々ネタが溜まっていますが、この展示は会期が短いので早めにご紹介しておこうと思います。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

【展覧名】
東京ミッドタウン・デザインハブ 特別展
-クラフトNEXT-第57回日本クラフト展
【公式サイト】
http://designhub.jp/exhibitions/3387/
【会場】東京ミッドタウン・デザインハブ
【最寄】六本木駅
【会期】2018年1月6日 (土) ~ 1月14日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は1960年から開催されている工芸品の公募展で、今年で57回目という伝統ある展示です。この展示は大きく分けて日本クラフトデザイン協会の会員の作品と公募の作品があり、様々なジャンルの工芸品が800点程度並んでいました。かなり点数があったもののほんの一部しかご紹介できませんが、気に入った作品を写真と共にご紹介しようと思います。なお、解説などは受賞作品にしか無いので大半は私の感想のみとなります。
※掲載して欲しくない作品がございましたらコメントやメールフォーム等でお申し付けください。
中井善子 「ブルーライトA」「ブルーライトB」

模様と色合いが美しいライト。幾何学的でリズム感があるのが好みでした。
成田幸子 「麻糸の照明1」「麻糸の照明2」

麻糸で出来た和風カバーのライト。大事なものを包んでいるようで気品がありました。
ケストラー・ベルンド 「レースライト」

球体のカバーのライト。見た目も素晴らしいですが、非常に緻密で技術の高さが伺えました。
望月ゆかり 「万年筆式具蒔絵棚」

こちらは招待審査員賞 秋元雄史賞という賞を受賞した作品。何と作者は学生さんなのだとか。現代の万年筆やセロテープホルダーの為に蒔絵棚を作る発想も面白いですが、この完成度の高さに驚きました。日本の工芸の未来は明るいですね。
隗楠 「朝顔の形」

こちらも学生賞を受賞した学生さんの作品。朝顔を象っているようですが、直線や綺麗な曲線にモダンなデザインセンスを感じました。
CHUNG Wen-ting 「恋果物語」

こちらは優秀賞。作者名の漢字がJISで書けなかったのですが中華圏の方かな? 色彩と模様のデフォルメ具合が軽やかさのある洒落た雰囲気で好みでした。
熊谷綾乃 「セリペロネ」

こちらは招待審査員賞 須藤玲子賞という賞の受賞作品。花をイメージした刺繍作品。右はアップしたものですが、かなり細かい編み込みでした。
和山忠吉 「地産地消テーブル」

東北3県の形をしたテーブル。県によって色が違っているのも面白い発想でした。
小黒三郎 「円びな七段飾り」

丸っこい積み木のような雛飾り。ポップで可愛らしいけど、転がっていかないか気になるw
桂川美帆 「PLEASE -love me-」「PLEASE -don't leave me-」

こちらは絹の掛け物。非常に目を引く色使いと たらし込みのような模様が何処と無く琳派のようで好みでした。
宮坂美穂 「Cache-Cache」

これは何と猫用の2段ベッド! 猫ちぐらを2段ベッドにする発想が面白いです。ここで猫が寝るのを想像してニヤニヤしながら観ていましたw
江田由美子 「ハンドバッグ」「クラッチバッグ」

こちらは木製のバッグ。バッグを木で作るという発想がよく出てくるものだと驚かされます。しかも非常に洒落た色合いなのも素晴らしかったです。
山下哲(木の歯車工房) 「赤とんぼ-はねやすめ・ホバリング-」

こちらは奨励賞の受賞作品。ハンドルを回すとトンボが羽ばたいて飛び立ち、回し続けると竿の先でしばらく休むという動きをします。単に羽ばたき続けるのではなく、あえて動かないところもある点がトンボらしさを表現しているように思いました。
たまたま作者の方に話を伺うことができたのですが、この方は他にも木製の歯車作品を多く作られているようで、更に驚きの作品があるようです。youtubeで観ると驚くと思います。
海外の人によくパクられて勝手に商品化されたこともあるのだとか。出来が良すぎる故の悩みですね。
鄭 継深「色織りの器」

色と模様が美しいガラス器。これだけ複雑な模様を綺麗に作るのはかなり技術が要るのではないかと思います。モダンな感性も見事。
小山恵美 「クロムピンク線条文鉢」

落ち着いた桜色の鉢。この色だけで華やいだ気分になれそう。線条も美しい。
この近くにはガラス工芸などもありました。ちょっと選びきれないくらい面白い作品があります。
東沙津香 「かものはしの靴べら」

カモノハシの尻尾が靴べらになっている作品!w これも発想が面白く、何だか飛び出してきたようなポーズが悪戯っぽくて可愛かったです。
田羅義史 「剥製鞄」

こちらはカブトガニの形の鞄!w 実際にどうやって携帯するのか観てみたいですが、革の光沢がカブトガニっぽさを出してるのも絶妙です。
松野加奈 「おせちパズル」

こちらは木と漆でできた玩具。今の時期にぴったりで、伊達巻とかかまぼこあたりは本物と間違えそうw どうやって遊ぶパズルなのか知りたかったです。
宇佐美亮 「朽葉Ⅰ~Ⅴ」

まるで蒔絵の絵の中から飛び出てきたような指輪。どうやって指に嵌めるのか気になりました
顧真源 「動物の模様絵-"キモカワ"シリーズ」

こちらは学生さんの作品で、奨励賞を受賞したテキスタイル。気持ち悪い+可愛いを合わせたキモカワの生き物(蛙、モグラ、コウモリ)をモチーフにしています。右の写真はコウモリのアップ。確かにキモカワだw 離れてみるとモダンな柄に見えるのも良かったです。
奥のほうには布を使った作品がありました。

ということで、非常にハイレベルな展示となっていました。工芸的な技術の高さに加えて発想の豊かさが面白かったです。会期が短いのが難点ですが、これだけの内容を無料で観られますので六本木に行く用事がある方は寄って観るのもよろしいかと思います。 工芸好きにお勧めの展示です。

【展覧名】
東京ミッドタウン・デザインハブ 特別展
-クラフトNEXT-第57回日本クラフト展
【公式サイト】
http://designhub.jp/exhibitions/3387/
【会場】東京ミッドタウン・デザインハブ
【最寄】六本木駅
【会期】2018年1月6日 (土) ~ 1月14日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は1960年から開催されている工芸品の公募展で、今年で57回目という伝統ある展示です。この展示は大きく分けて日本クラフトデザイン協会の会員の作品と公募の作品があり、様々なジャンルの工芸品が800点程度並んでいました。かなり点数があったもののほんの一部しかご紹介できませんが、気に入った作品を写真と共にご紹介しようと思います。なお、解説などは受賞作品にしか無いので大半は私の感想のみとなります。
※掲載して欲しくない作品がございましたらコメントやメールフォーム等でお申し付けください。
中井善子 「ブルーライトA」「ブルーライトB」

模様と色合いが美しいライト。幾何学的でリズム感があるのが好みでした。
成田幸子 「麻糸の照明1」「麻糸の照明2」

麻糸で出来た和風カバーのライト。大事なものを包んでいるようで気品がありました。
ケストラー・ベルンド 「レースライト」

球体のカバーのライト。見た目も素晴らしいですが、非常に緻密で技術の高さが伺えました。
望月ゆかり 「万年筆式具蒔絵棚」

こちらは招待審査員賞 秋元雄史賞という賞を受賞した作品。何と作者は学生さんなのだとか。現代の万年筆やセロテープホルダーの為に蒔絵棚を作る発想も面白いですが、この完成度の高さに驚きました。日本の工芸の未来は明るいですね。
隗楠 「朝顔の形」

こちらも学生賞を受賞した学生さんの作品。朝顔を象っているようですが、直線や綺麗な曲線にモダンなデザインセンスを感じました。
CHUNG Wen-ting 「恋果物語」

こちらは優秀賞。作者名の漢字がJISで書けなかったのですが中華圏の方かな? 色彩と模様のデフォルメ具合が軽やかさのある洒落た雰囲気で好みでした。
熊谷綾乃 「セリペロネ」


こちらは招待審査員賞 須藤玲子賞という賞の受賞作品。花をイメージした刺繍作品。右はアップしたものですが、かなり細かい編み込みでした。
和山忠吉 「地産地消テーブル」

東北3県の形をしたテーブル。県によって色が違っているのも面白い発想でした。
小黒三郎 「円びな七段飾り」

丸っこい積み木のような雛飾り。ポップで可愛らしいけど、転がっていかないか気になるw
桂川美帆 「PLEASE -love me-」「PLEASE -don't leave me-」

こちらは絹の掛け物。非常に目を引く色使いと たらし込みのような模様が何処と無く琳派のようで好みでした。
宮坂美穂 「Cache-Cache」

これは何と猫用の2段ベッド! 猫ちぐらを2段ベッドにする発想が面白いです。ここで猫が寝るのを想像してニヤニヤしながら観ていましたw
江田由美子 「ハンドバッグ」「クラッチバッグ」

こちらは木製のバッグ。バッグを木で作るという発想がよく出てくるものだと驚かされます。しかも非常に洒落た色合いなのも素晴らしかったです。
山下哲(木の歯車工房) 「赤とんぼ-はねやすめ・ホバリング-」

こちらは奨励賞の受賞作品。ハンドルを回すとトンボが羽ばたいて飛び立ち、回し続けると竿の先でしばらく休むという動きをします。単に羽ばたき続けるのではなく、あえて動かないところもある点がトンボらしさを表現しているように思いました。
たまたま作者の方に話を伺うことができたのですが、この方は他にも木製の歯車作品を多く作られているようで、更に驚きの作品があるようです。youtubeで観ると驚くと思います。
海外の人によくパクられて勝手に商品化されたこともあるのだとか。出来が良すぎる故の悩みですね。
鄭 継深「色織りの器」

色と模様が美しいガラス器。これだけ複雑な模様を綺麗に作るのはかなり技術が要るのではないかと思います。モダンな感性も見事。
小山恵美 「クロムピンク線条文鉢」

落ち着いた桜色の鉢。この色だけで華やいだ気分になれそう。線条も美しい。
この近くにはガラス工芸などもありました。ちょっと選びきれないくらい面白い作品があります。
東沙津香 「かものはしの靴べら」

カモノハシの尻尾が靴べらになっている作品!w これも発想が面白く、何だか飛び出してきたようなポーズが悪戯っぽくて可愛かったです。
田羅義史 「剥製鞄」

こちらはカブトガニの形の鞄!w 実際にどうやって携帯するのか観てみたいですが、革の光沢がカブトガニっぽさを出してるのも絶妙です。
松野加奈 「おせちパズル」

こちらは木と漆でできた玩具。今の時期にぴったりで、伊達巻とかかまぼこあたりは本物と間違えそうw どうやって遊ぶパズルなのか知りたかったです。
宇佐美亮 「朽葉Ⅰ~Ⅴ」

まるで蒔絵の絵の中から飛び出てきたような指輪。どうやって指に嵌めるのか気になりました
顧真源 「動物の模様絵-"キモカワ"シリーズ」


こちらは学生さんの作品で、奨励賞を受賞したテキスタイル。気持ち悪い+可愛いを合わせたキモカワの生き物(蛙、モグラ、コウモリ)をモチーフにしています。右の写真はコウモリのアップ。確かにキモカワだw 離れてみるとモダンな柄に見えるのも良かったです。
奥のほうには布を使った作品がありました。

ということで、非常にハイレベルな展示となっていました。工芸的な技術の高さに加えて発想の豊かさが面白かったです。会期が短いのが難点ですが、これだけの内容を無料で観られますので六本木に行く用事がある方は寄って観るのもよろしいかと思います。 工芸好きにお勧めの展示です。
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この間の土曜日に浦和の うらわ美術館で「ここが見どころ スポットライト!うらわ美術館展」を観てきました。色々ネタが溜まっていますが、会期末が迫っているので早めにご紹介しておこうと思います。

【展覧名】
ここが見どころ スポットライト!うらわ美術館展
【公式サイト】
http://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p000000a.html
【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅
【会期】2017年11月18日(土)~2018年1月14日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
ちょうどギャラリートークの時間帯だったこともあり多くのお客さんで賑わっていましたが、快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はうらわ美術館のコレクションを紹介するもので、地元の浦和に集まった画家に関する章と、珍しい本のコレクションに関する章の2章立てとなっています。軽くメモしてきましたので、久々に各章ごとに気になった作品を簡単にご紹介しようと思います。
<第1部 浦和に集った画家たち>
まずは地元の画家を取り上げた章です。浦和は「鎌倉文士に浦和画家」と言われるほど画家が集まってコミュニティを作っていた地で、特に関東大震災以降に被害の少なかったことから多くの画家が集まりました。主に別所沼(中浦和駅の辺り)から常盤(うらわ美術館の辺り)にかけて多く住んでいたそうで、この美術館ではゆかりの画家の作品を多く収集しているようです。
福原霞外(馬三郎) 「別所沼」
この画家は明治時代から浦和で活躍していた師範学校の先生です。別所沼の夕暮れと水鳥を描いた作品で、厚塗りされた重厚な色彩で詩情溢れる光景となっています。ちょっと神話的な雰囲気すらある作品でした。
田中保 「マドロナの影」
この画家は今は浦和と同じさいたま市となった岩槻出身で、浦和の学校に通っていました。世界的に活躍し、エコール・ド・パリの画家としても知られています。(というか日本では逆にあまり知られていないパターン) 裸婦を得意とした人ですが、この作品は着衣で横向きの女性の立ち姿となっていました。どこか寂しげで象徴的な雰囲気がある作品で、かなり気に入りました。
武内鶴之助 「気にかかる空」「雲」「黎明」「朝もや」「寒村」
この人も海外(イギリス)でも評価された画家で、日本においてはパステル画の先駆者となりました。空や雪景色、朝もやといった風景画が描かれていて、恐らくいずれもイギリスの光景かな。ギャラリートークで聞いた話では、雲を描くのが下手だと先生に言われたので何度も何度も雲を描いていたそうです。淡い色彩ですが、一見すると印象派的な感じにも見えるかな。空気感まで伝わってきそうな清廉な作風に思います。
寺内萬治郎 「髪」
この人は黒田清輝に師事した画家で、裸婦を得意として「裸婦の寺内」と呼ばれていたそうです。この絵も深い赤を背景にした裸婦で、髪を整えるようなポーズをしています。その肌の色はやや黄色みがかっていて「黄金の裸婦」と言われたほど美しい色合いです。赤と黄色の組み合わせのため非常に存在感があるのですが、不思議と落ち着いた感じがあり優美な印象が強かったです。これは今回の展示の中でも特に素晴らしい作品だと思います。
この近くには寺内萬治郎の弟子の金子徳衛と渡邉武夫の作品もありました。金子徳衛は寺内萬治郎と共にお互いの肖像を描き、それが日展で特賞となったそうです。一方の渡邉武夫も中央画壇でも活躍した画家で、この展示では浦和の街のあちこちを描いた作品が並び、今でも名残がある風景のようでした。
高田誠 「桐の咲ける風景」
生粋の浦和生まれの画家で、16歳で二科展に入選した才能の持ち主です。入選後に安井曾太郎に師事し熊谷守一にも学んだことがあるようです。今回の展示では4~5点が並び、ざっくりとその画風の変遷も観ることができました。まずこの絵は風景画なのですが、安井曾太郎の弟子らしい安井の画風そのものといった感じとなっています。ややぺったりとした塗り方で、明快な色使いが目に鮮やかでした。
高田誠 「残雪の妙高山麓」
こちらは打って変わって点描を使って描かれた作品で、岡鹿之助の作風を彷彿とさせる仕上がりとなっています。題名通り 妙高山を描いた作品で、大型作であることからも雄大な印象を受けます。一方で点描がどこか素朴さを漂わせていて親しみも感じられました。
高田誠 「浦和田島ヶ原のさくら草」
こちらは浦和の天然記念物の花「さくら草」を描いた作品で、この美術館からほど近いコルソ(伊勢丹と一体化している)というデパートの外壁を飾る壁画の原画となっています。こちらも点描で描かれているのですが、壁画らしくややフレスコ画的な印象も受けるかな。軽やかな色合いで描かれ理想郷的な印象も受けます。花を見下ろす視点と遠くを観る視点が1つになっているのが面白く、半円状の道などのアクセントも効いています。
こちらはコルソの実際の壁画。

ちょっとビニールカバーが汚れているので色が濁ってますが、原画はこれ以上に鮮やかな色合となっていました。
コルソの壁画のアップ

実物はモザイク画になっているようです。原画も点描なのでちょうど良いかもw
斎藤三郎 「セビージャの祭」
この人はこの絵で1972年二科展の内閣総理大臣賞を取った画家です。大型作品で、全体的黄土色がかった色合いでスペインのセビージャの踊り子達を描いています。マチエールを輪郭のようにしているためか軽やかな印象を受け、異国情緒溢れる作品となっていました。これもこの展示の見どころと言えそうです。
この先には瑛九も4点ありました。瑛九は一番よく目にする浦和画家かも? 初期のキュビスム風作品からこれぞ瑛九といった作品まで作風の変遷を追うこともできました。
参考記事:
生誕100年記念 瑛九展 (埼玉県立近代美術館)
生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)
杉全直 「きっこう」
1章の最後の部屋は抽象画のコーナーで、特にこの作品に目が行きました。深い青緑色の画面に六角形(亀甲模様)を描いていて、厚塗りしたところにパレットナイフか何かで線を引いたように表されています。意味は分かりませんが深海のような静けさを持つ色に引き込まれる感じで気に入りました。
<第2部 本をめぐるアート>
続いて2章は本に関する展示です。この うらわ美術館は本をテーマにしたアート作品のコレクションが充実していて1300点近く所蔵しているらしく、しばしば展覧会を開催しているのですが今回もそのコレクションの中から面白い作品が並んでいました。
藤堂良門 「資本論」
こちらはマルクスの『資本論』を緑色のガラスで作った作品です。背表紙の部分は普通の本ですが、中身の所がガラスになっています。ガラスは何枚も重ねられていて、それが本っぽさを醸し出しているのも面白いです。意図は分かりませんが綺麗で直感的に興味を引く作品でした。
西村陽平 「本」
こちらは作者が「本の化石」と呼んでいる本を焼いた作品。元々は赤本や辞書、女性誌などだったりするのですが、いずれも紙の束のようにしか観えないかも。 温度調整をして焼くと文字が抜けるそうで、何も書いてないので元は何だったのか作品名が無いと分かりませんw しかし元の材質によっても仕上がりがだいぶ違うようで、まさに化石のような印象を受けました。この作品は何度か観たことがありますが、観るたびに本を焼くことのやってはいけない感がしますw
参考記事:これは本ではない―ブック・アートの広がり (うらわ美術館)
淤見一秀 「TEXT No.19」
これは金属の線を網のようにして作った本です。テキストとテキスタイルを掛けたタイトルのようですが、本とは何か?という定義に限りなく挑戦しているような気がしますw(ここにある他の作品もそうですが) ちょっと変わり種で面白かったです。
ヴェロニカ・シェパス 「1912年3月29日」
こちらは透明な巻物みたいな本で、所々に点々が打たれています。解説によるとこれは南極探検隊のロバート・スコット(2番乗りで南極点到達したものの帰り道に全滅した)に関する作品らしく、ロバート・スコットが亡くなった日付がタイトルとなっています。この作品は日記を透明にしたもので、点々の所は文中に使われたiとjの文字の点の位置を示しているようです。一番下には半透明の字でit seems~と英語でこれ以上書くことは出来ない旨の文字が描かれていて、ロバート・スコットの無念と諦めのような言葉となっていました。見た目の綺麗さと裏腹に悲劇を感じさせる作品です。
その先には河口龍夫の鉛で出来た本に植物の種子を入れた作品が数点ありました。チェルノブイリ事故からインスピレーションを得て作られたタイムカプセルみたいな作品群です
参考記事:河口龍夫展 言葉・時間・生命 (東京国立近代美術館)
ということで、浦和画家も本のアートも期待以上に楽しめる展示でした。こうした地元密着の展示は大型展には無い魅力があるので、よく展示を観ている方にも新しい発見があるのではないかと思います。もう会期末が迫っていますので、ご興味ある方はお早めにどうぞ。

【展覧名】
ここが見どころ スポットライト!うらわ美術館展
【公式サイト】
http://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p000000a.html
【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅
【会期】2017年11月18日(土)~2018年1月14日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
ちょうどギャラリートークの時間帯だったこともあり多くのお客さんで賑わっていましたが、快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はうらわ美術館のコレクションを紹介するもので、地元の浦和に集まった画家に関する章と、珍しい本のコレクションに関する章の2章立てとなっています。軽くメモしてきましたので、久々に各章ごとに気になった作品を簡単にご紹介しようと思います。
<第1部 浦和に集った画家たち>
まずは地元の画家を取り上げた章です。浦和は「鎌倉文士に浦和画家」と言われるほど画家が集まってコミュニティを作っていた地で、特に関東大震災以降に被害の少なかったことから多くの画家が集まりました。主に別所沼(中浦和駅の辺り)から常盤(うらわ美術館の辺り)にかけて多く住んでいたそうで、この美術館ではゆかりの画家の作品を多く収集しているようです。
福原霞外(馬三郎) 「別所沼」
この画家は明治時代から浦和で活躍していた師範学校の先生です。別所沼の夕暮れと水鳥を描いた作品で、厚塗りされた重厚な色彩で詩情溢れる光景となっています。ちょっと神話的な雰囲気すらある作品でした。
田中保 「マドロナの影」
この画家は今は浦和と同じさいたま市となった岩槻出身で、浦和の学校に通っていました。世界的に活躍し、エコール・ド・パリの画家としても知られています。(というか日本では逆にあまり知られていないパターン) 裸婦を得意とした人ですが、この作品は着衣で横向きの女性の立ち姿となっていました。どこか寂しげで象徴的な雰囲気がある作品で、かなり気に入りました。
武内鶴之助 「気にかかる空」「雲」「黎明」「朝もや」「寒村」
この人も海外(イギリス)でも評価された画家で、日本においてはパステル画の先駆者となりました。空や雪景色、朝もやといった風景画が描かれていて、恐らくいずれもイギリスの光景かな。ギャラリートークで聞いた話では、雲を描くのが下手だと先生に言われたので何度も何度も雲を描いていたそうです。淡い色彩ですが、一見すると印象派的な感じにも見えるかな。空気感まで伝わってきそうな清廉な作風に思います。
寺内萬治郎 「髪」
この人は黒田清輝に師事した画家で、裸婦を得意として「裸婦の寺内」と呼ばれていたそうです。この絵も深い赤を背景にした裸婦で、髪を整えるようなポーズをしています。その肌の色はやや黄色みがかっていて「黄金の裸婦」と言われたほど美しい色合いです。赤と黄色の組み合わせのため非常に存在感があるのですが、不思議と落ち着いた感じがあり優美な印象が強かったです。これは今回の展示の中でも特に素晴らしい作品だと思います。
この近くには寺内萬治郎の弟子の金子徳衛と渡邉武夫の作品もありました。金子徳衛は寺内萬治郎と共にお互いの肖像を描き、それが日展で特賞となったそうです。一方の渡邉武夫も中央画壇でも活躍した画家で、この展示では浦和の街のあちこちを描いた作品が並び、今でも名残がある風景のようでした。
高田誠 「桐の咲ける風景」
生粋の浦和生まれの画家で、16歳で二科展に入選した才能の持ち主です。入選後に安井曾太郎に師事し熊谷守一にも学んだことがあるようです。今回の展示では4~5点が並び、ざっくりとその画風の変遷も観ることができました。まずこの絵は風景画なのですが、安井曾太郎の弟子らしい安井の画風そのものといった感じとなっています。ややぺったりとした塗り方で、明快な色使いが目に鮮やかでした。
高田誠 「残雪の妙高山麓」
こちらは打って変わって点描を使って描かれた作品で、岡鹿之助の作風を彷彿とさせる仕上がりとなっています。題名通り 妙高山を描いた作品で、大型作であることからも雄大な印象を受けます。一方で点描がどこか素朴さを漂わせていて親しみも感じられました。
高田誠 「浦和田島ヶ原のさくら草」
こちらは浦和の天然記念物の花「さくら草」を描いた作品で、この美術館からほど近いコルソ(伊勢丹と一体化している)というデパートの外壁を飾る壁画の原画となっています。こちらも点描で描かれているのですが、壁画らしくややフレスコ画的な印象も受けるかな。軽やかな色合いで描かれ理想郷的な印象も受けます。花を見下ろす視点と遠くを観る視点が1つになっているのが面白く、半円状の道などのアクセントも効いています。
こちらはコルソの実際の壁画。


ちょっとビニールカバーが汚れているので色が濁ってますが、原画はこれ以上に鮮やかな色合となっていました。
コルソの壁画のアップ

実物はモザイク画になっているようです。原画も点描なのでちょうど良いかもw
斎藤三郎 「セビージャの祭」
この人はこの絵で1972年二科展の内閣総理大臣賞を取った画家です。大型作品で、全体的黄土色がかった色合いでスペインのセビージャの踊り子達を描いています。マチエールを輪郭のようにしているためか軽やかな印象を受け、異国情緒溢れる作品となっていました。これもこの展示の見どころと言えそうです。
この先には瑛九も4点ありました。瑛九は一番よく目にする浦和画家かも? 初期のキュビスム風作品からこれぞ瑛九といった作品まで作風の変遷を追うこともできました。
参考記事:
生誕100年記念 瑛九展 (埼玉県立近代美術館)
生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)
杉全直 「きっこう」
1章の最後の部屋は抽象画のコーナーで、特にこの作品に目が行きました。深い青緑色の画面に六角形(亀甲模様)を描いていて、厚塗りしたところにパレットナイフか何かで線を引いたように表されています。意味は分かりませんが深海のような静けさを持つ色に引き込まれる感じで気に入りました。
<第2部 本をめぐるアート>
続いて2章は本に関する展示です。この うらわ美術館は本をテーマにしたアート作品のコレクションが充実していて1300点近く所蔵しているらしく、しばしば展覧会を開催しているのですが今回もそのコレクションの中から面白い作品が並んでいました。
藤堂良門 「資本論」
こちらはマルクスの『資本論』を緑色のガラスで作った作品です。背表紙の部分は普通の本ですが、中身の所がガラスになっています。ガラスは何枚も重ねられていて、それが本っぽさを醸し出しているのも面白いです。意図は分かりませんが綺麗で直感的に興味を引く作品でした。
西村陽平 「本」
こちらは作者が「本の化石」と呼んでいる本を焼いた作品。元々は赤本や辞書、女性誌などだったりするのですが、いずれも紙の束のようにしか観えないかも。 温度調整をして焼くと文字が抜けるそうで、何も書いてないので元は何だったのか作品名が無いと分かりませんw しかし元の材質によっても仕上がりがだいぶ違うようで、まさに化石のような印象を受けました。この作品は何度か観たことがありますが、観るたびに本を焼くことのやってはいけない感がしますw
参考記事:これは本ではない―ブック・アートの広がり (うらわ美術館)
淤見一秀 「TEXT No.19」
これは金属の線を網のようにして作った本です。テキストとテキスタイルを掛けたタイトルのようですが、本とは何か?という定義に限りなく挑戦しているような気がしますw(ここにある他の作品もそうですが) ちょっと変わり種で面白かったです。
ヴェロニカ・シェパス 「1912年3月29日」
こちらは透明な巻物みたいな本で、所々に点々が打たれています。解説によるとこれは南極探検隊のロバート・スコット(2番乗りで南極点到達したものの帰り道に全滅した)に関する作品らしく、ロバート・スコットが亡くなった日付がタイトルとなっています。この作品は日記を透明にしたもので、点々の所は文中に使われたiとjの文字の点の位置を示しているようです。一番下には半透明の字でit seems~と英語でこれ以上書くことは出来ない旨の文字が描かれていて、ロバート・スコットの無念と諦めのような言葉となっていました。見た目の綺麗さと裏腹に悲劇を感じさせる作品です。
その先には河口龍夫の鉛で出来た本に植物の種子を入れた作品が数点ありました。チェルノブイリ事故からインスピレーションを得て作られたタイムカプセルみたいな作品群です
参考記事:河口龍夫展 言葉・時間・生命 (東京国立近代美術館)
ということで、浦和画家も本のアートも期待以上に楽しめる展示でした。こうした地元密着の展示は大型展には無い魅力があるので、よく展示を観ている方にも新しい発見があるのではないかと思います。もう会期末が迫っていますので、ご興味ある方はお早めにどうぞ。
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