関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展 【Bunkamura ザ・ミュージアム】

10日ほど前の金曜日の会社帰りに、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展」を観てきました。

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【展覧名】
 神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_rudolf/

【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅

【会期】2018/1/6(土)~3/11(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
混んでいるというほどではありませんでしたが、思ったより多くの人で賑わっていました。

さて、今回の展示は16世紀の神聖ローマ帝国の皇帝であり絵画を始め様々な文化・芸術を庇護したルドルフ2世についての内容となっています。ルドルフ2世はちょっと変わり者で政治にはあまり興味を示さなかったのですが、文化面では大きな足跡を残していて やや大袈裟に言えば現代のテクノロジーの数々もこの皇帝がいなかったら土壌が生まれていなかったかも?と思われるほど歴史上で重要な人物です。展示はその生い立ちからコレクションや歴史的背景などを紹介していましたので、章立てに沿って簡単に振り返ってみようと思います。


<プロローグ ルドルフ2世とプラハ>
まずはルドルフ2世と遷都したプラハについてのコーナーで、最初に12分ほどの映像コーナーがあります。ルドルフ2世はハプスブルク家に生まれ、11歳から19歳まで母の兄であるスペイン王フェリペ2世の宮廷で過ごしました。フェリペ2世も様々な美術品のコレクターで、そこにはヒエロニムス・ボスやティツィアーノの作品などもあり、幼き頃のルドルフ2世もその影響を受けたようです。やがてルドルフ2世が皇帝になると自身も美術品だけでなく世界中の珍奇なものを集めていくことになります。また、ルドルフ2世は都をウィーンからプラハに遷都した人物でもあり、その背景には宗教改革でカトリックとプロテスタントが争う時代だったことや、自身がボヘミア王だったことなどが挙げられるようです。プラハに移ってからは錬金術師や画家などを都に住ませ、文化的に発展を遂げていきました。

最初の方にルドルフ2世の肖像が展示されていました。(これは東急のショーウィンドウの写真です)
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ハプスブルク家は顎が出ているのが特徴で、ルドルフ2世もその特徴が出ているように思います。これは30歳頃の姿なのだとか。

他にも父のマクシミリアン2世やフェルディナント1世~3世、中にはローマ皇帝のオクタヴィアヌス・アウグストゥスの肖像などもありました。ハプスブルク家はローマ皇帝から繋がっているという自負があったようです。

このコーナーの入口には戦国時代の「泰西王侯騎馬図屏風」の複製もありました。この屏風の左端でトルコ王と戦っているのがルドルフ2世と考えられるのだとか。そう言えば以前本物を観た時にそう言ってたなと思い出しながら観ていました。国内だけでなくイスラーム勢力とも戦うとは大変な時代ですね。
 参考記事:南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎 (サントリー美術館)


<第1章 拡大される世界>
続いては世界情勢を感じる作品や天文学の品々が並ぶコーナーです。

まずはバベルの塔を描いた作品が2点ほど並びます。バベルの塔は神の怒りによって言語が分けられる話を題材にしていますが、この時代の宗教紛争を暗に示しているようです。ここにあったのはそれほど大きい塔には見えないかなw  ブリューゲルのバベルの塔を去年観たばかりのせいかもしれませんがw ちなみにブリューゲルの絵も元々はルドルフ2世のコレクションだったようです。

この辺にはフランドル絵画がいくつか並んでいました。イタリアではルネサンス後のマニエリスムくらいの時代で、イタリアっぽいフランドル絵画なんかもあったりします。

そして少し先には天文学に関するコーナーがあります。前述のようにルドルフ2世は錬金術にのめり込んでいましたが、この頃の科学とオカルトは線引がなく、ついでに宗教ともくっついているような時代です。星座や天動説の本、ガリレオの本、ガリレオの望遠鏡(複製)、ヨハネス・ケプラーの本(複製)やケプラーの世界地図(複製)など、天文学の世界ではレジェンド級の学者の品も並びます。天動説と地動説の折衷みたいな説もあったそうで、それも面白いです(地球以外は地動説みたいな) ケプラーはブラーエに招かれてルドルフ2世に仕えていたようで、世界地図の緻密さには驚かされます。こうした学者を庇護していたから天文学や物理学は発展していったと思うとルドルフ2世の功績は大きいのでは。


<第2章 収集される世界>
続いては世界中から珍奇な動植物を集めた「驚異の部屋(クンストカンマー)」等に関するコーナーです。クンストカンマーはプラハの居城にあったのですが、ルドルフ2世の後の時代の遷都や戦乱で失われてしまいました。ここにはかつての様子を伺わせる品々が並んでいます。

まずはルーラント・サーフェリーによる動物画や植物画、昆虫画などが並びます。非常に細密かつ写実的に描かれていて図鑑のような趣きの作品(前向き、後ろ向き、横向きの姿を描いた感じ)もありますが、廃墟を背景に神話のオルフェウスと共に動物を描いている幻想的な作品などもあり、しっかりした芸術作品となっています。また、ここには花のブリューゲルことヤン・ブリューゲル(父)の作品もあり、様々な季節の46種類もの花が描かれていました。こうした博物的かつ超現実的な作風はこの時代独特のものかもしれません。ルドルフ2世は大航海時代で世界中から集まってくる珍しい動植物を動物園や植物園にしていたようで、そこで芸術家が目にして描いていたようです。ルドルフ2世のコレクション熱の生んだ芸術かな。こういう研究も科学の礎と言えそう。

確かこの作品も2章か3章にありました。(これは東急のショーウィンドウの写真です)
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かなり多くのモチーフが並んでいて1つ1つは写実的だけど全体的には超現実的な印象を受けます。


<第3章 変容する世界>
続いてはルドルフ2世の集めた品々から生まれた芸術などについてのコーナーです。ここは2章と内容的に似ていた気がします。

ここには今回のポスターにもなっているアルチンボルドによるルドルフ2世の肖像画がありました。詳しくは過去のアルチンボルド関連の記事をご参照頂ければと思いますが、果実などの植物を寄せ集めて人の顔にしたもので、ハッキリ言うとルドルフ2世には似てませんw しかし季節を超えた植物の集合体は皇帝の権力を示していて、ルドルフ2世もこうした絵を好んでいたようです。アルチンボルドの追随者の作品もいくつかありました。
 参考記事:アルチンボルド展 (国立西洋美術館)

他にもこうしたトリックアート的なものがあり、一見すると山を描いた風景画だけど横向きにすると聖フランチェスコの顔に見える作品などもあります。また、ボスやデューラーの作風に似せたものなどもあり、奇想から写実まで様々な絵画をコレクションしていたことが伺えます。大型の作品の中では農民たちのワイン造りの絵なんかが当時の様子がよくわかって面白いかな。これは1ヶ月1枚の12ヶ月セットのうち9月らしく、こうしたモチーフにも皇帝の収集癖が出ているようにも思いました。

その先にはルドルフ2世の旧蔵品が並んでいました。ハンス・フォン・アーヘンという画家の作品の何枚かがこの章に展示されているのですが、特にルクレツィアや少女を題材にした作品は目を引きます。そしてハンス・フォン・アーヘンはルドルフ2世の美術収集のアドバイザーだったようで、イタリアの滞在経験をもとに様々な画家を宮廷に推薦して宮廷に招いたようです。これによってプラハが文化的中心地になったので、ハンス・フォン・アーヘンは自身の作品以外の功績も大きいようでした。

もう1つここで見どころと言えそうなのがディルク・ド・クワード・ファン・ラーフェステインの「ルドルフ2世の治世の寓意」で、これは戦争の神マルスの姿をした皇帝が部屋の外から入ってくるトルコ風の男をブロックしている様子が描かれ、ルドルフ2世がトルコと戦っていたことを暗示します。また、その手前には正義・豊穣・平和の女神が描かれ、学問の神がその3人にマルス(皇帝)が近づけないようにしています。さらに学問の神と正義の神は鷲を中心に金の鎖で繋がれているなど、様々な寓意が込められていました。学問が戦争を遠ざけているようにも思えますが、実際のルドルフ2世は学問の庇護もしているので、ちょっとその辺の解釈がよく分かりませんでしたが当時のルドルフ2世の権勢と方針が伺えるようでした。


<プロローグ 驚異の部屋>
最後はクンストカンマーの絵画や資料以外の品のコーナーです。ここには工芸品が数多く並び、ガラス、金銀、珊瑚、貝などを使って杯や箱、ボウルなどに加工しています。貝の元の形を上手く活かして杯にしていたりするので、その創意も楽しめます。また、この頃にはカラクリ時計も作られていたようで、象の形の時計は目が動いて乗っている人も周るという仕掛けがあったようです。これは実際に観てみたいけど、静止状態での展示です。他にも持ち運び式のオルガンにバックギャモンのゲーム盤をくっつけたようなものがあったりと、工芸品も一風変わった品が多いように思いました。

最後の辺りには宝石の原石、ダチョウの卵、一角の角(当時はユニコーンの角とされた)、望遠鏡、天球儀、錬金術の本などなど、本当に珍しい品ならオールジャンルで集めていた様子が伺えます。これらをまとめた目録も展示されていて、管理するのも大変そうでしたw


そんなルドルフ2世ですが、晩年は弟のマティアスに権力を奪われて失意の日々を送ったようです。マティアスの時代には再びウィーンに都を移され、クンストカンマーの品々も大半はそちらに移されました。その後、プラハは戦乱に見舞われてプラハに残ったクンストカンマーは失われたそうで、ルドルフ2世も浮かばれないような残念な歴史となっています。


出口付近に現代の作家フィリップ・ハースによるアルチンボルドの作品を立体化した彫像が並んでいました。ここだけ撮影可能です。
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四季の寄せ絵が勢揃い! 去年アルチンボルド展を観た人は特に楽しめるのでは?

こちらはコロッサス
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正面から観ると顔っぽいけど斜めの角度だとちゃんと風景っぽいのが面白いです。3Dだと観る角度の違いを楽しめます。


ということで、多岐にわたるコレクションとルドルフ2世の偉業を知ることのできる展示でした。去年はアルチンボルド展があったし今年はブリューゲル展があるので、ルドルフ2世について知っておくとその界隈の画家たちの制作背景も知ることが出来るのもこの展示の魅力だと思います。美術ファンなら抑えておきたい展示でした。

おまけ:東急のショーウィンドウ
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横山大観 ―東京画壇の精鋭― 【山種美術館】

前々回にご紹介した根津美術館に行く前に、山種美術館で「横山大観 ―東京画壇の精鋭―」を観てきました。(この2館は結構近いのでハシゴしやすかったりします) 

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【展覧名】
 〔企画展〕生誕150年記念 横山大観 ―東京画壇の精鋭―

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/2018/taikan.html

【会場】山種美術館
【最寄】恵比寿駅

【会期】2018年1月3日(水)~2月25日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんが入っていましたが、自分のペースで鑑賞することができました。

さて、今回の展示は山種美術館が得意とする院展系の日本画家のうち、最も有名で中心的な横山大観をタイトルにしたものとなっています。大観については以前にも記事にしているの詳しくはそちらを参考にして頂ければと思いますが、東京美術学校で学び、岡倉天心と共に学校を去り「日本美術院」を立ち上げて新しい日本画を模索した画家で、当初は朦朧体と揶揄されたり五浦へと都落ちするなど苦難の時代もありましたが、やがて押しも押されもせぬ日本画家の代表となっていきました。今回は山種美術館が所蔵する横山大観の全ての作品40点程度と、仲間の院展(日本美術院)・再興院展系の画家達の作品が並んでいましたので、簡単に各章ごとに気に入った作品と共に振り返ってみようと思います。

 参考記事:
  横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い 感想前編(横浜美術館)
  横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い 感想後編(横浜美術館)

<第1章 日本画の開拓者として>
まずは明治から大正にかけてのコーナーで、空気を描こうとした「朦朧体」の時代も含まれる時期についてです。橋本雅邦に学び、下村観山や菱田春草と共に切磋琢磨した頃で、そうした仲間たちの作品も並んでいます。

下村観山 「朧月」
こちらは盟友の観山の作品。2本の竹と薄っすらとした月が描かれていて、その色合いは非常に繊細です。輪郭のない濃淡で表現されていて幻想的な春の夜を叙情溢れる様子で描いていました。

菱田春草 「釣帰」
こちらも仲間の春草。朦朧体と揶揄されたぼんやりした雰囲気で木々を背景にした舟に乗る4人の人物が描かれています。こちらも朦朧としているところが神秘的で、奥行きや湿潤な空気感まで伝わってくるようでした。

横山大観 「楚水の巻」
こちらは14mにも及ぶ水墨画。中国旅行で見た揚子江の景色が描かれていて、建物は線で強く表現し 山は濃淡で表現するなど対象によって異なる表現方法となっています。町は賑わい川は穏やかでのんびりした雰囲気が漂っていました。

横山大観 「作右衛門の家」
こちらの作品だけは写真撮影可能です。
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大正期に南画や大和絵の影響を受けて描いたもので、他にも琳派っぽく思えるところもあるかな。馬と人の長閑な暮らしを思わせ、隠居生活のようにも見えます。大観は五浦を日本のバルビゾン村のようにしたかった話を聞いたことがあるので、そういう意味も込められているのではないかと思いました。

横山大観 「陶淵明」
こちらは六曲一双の金屏風で、琳派のような作風です。陶淵明というのは五柳先生とも呼ばれる中国の元役人の文学者で、ここでは松に触って鳥を観る話を元に描かれています。後ろ姿がちょっと寂しげな詩情溢れるシーンで、中国の話を日本っぽく描いているのが面白かったです。余白が多いの空間表現も見事です。

横山大観 「喜撰山」
こちらは文人画と琳派を合わせたような画風の作品です。補色関係のオレンジと緑が目に鮮やかで、強い色彩となっていました。大観も色々と試していたようで、こういう画風もあるのが面白いです。


<第2章 大観芸術の精華>
続いては再興院展以降のコーナーで、昭和初期から戦後まで幅広く並びます。この時期はローマ日本美術展覧会の使節団長を務めたり帝室技芸員に任命されるなど幅広く活躍していて、富士山や桜といった画題をよく描いていて横山大観といえば富士というくらい有名になっていきました。
 参考記事:大倉コレクションの精華II-近代日本画名品選- (大倉集古館)

横山大観 「天長地久」
こちらは戦時中に描かれた作品で、松林と沢山の鶴が飛ぶ様子が描かれています。濃淡で奥行きを出し、緻密に描かれた画面からは清廉な印象を受けました。こうしたおめでたいモチーフで国の平安を祈っていたのでしょうか。

この近くには「華厳瀑」と「飛瀑華厳」という かつての朦朧体を思わせる作品がありました。お互いによく似ていて間違え探しみたいに見比べながら観てきましたw

横山大観 「心神」
心神とは富士山のことで、雲から頭を出す神々しい富士山が書かれています。これぞ大観の富士!といった威厳ある風格で、どっしりとした印象を受けます。大観にとって富士を描くということは富士に映る自分の心を描くことだったようで、その性格も読み取れるようでした。
この辺には他にも富士を描いた作品がありました。また、桜を描いた作品もあり日本っぽいモチーフが並んでいます。

横山大観 「月出皎兮」
こちらは詩経からの一節をタイトルとした水墨画で、山と麓の湖、その周りの家々などが書かれています。山の上には銀泥の月があり、下の方には1羽の白い鳥が舞っていました。静けさと神秘の漂う画面で、今回の展示の中でも特に好みの作品です。情感溢れる傑作だと思います。

この先には大観、川合玉堂、川端龍子の3人で1枚ずつ描いた松竹梅なども並んでいました。
 参考記事:
  没後60年記念 川合玉堂 ―四季・人々・自然― (山種美術館)
  川端龍子 -超ド級の日本画- (山種美術館)


<第3章 東京画壇の精鋭たち>
最後は東京画壇の精鋭たちということで、山種美術館が誇るコレクションの中から選りすぐりの品々が並んでいました。

奥村土牛 「山中湖富士」
こちらは青い富士を描いた作品ですが、横山大観の富士とはだいぶ印象が違います。どこか優しく懐かしいような雰囲気があり温和な点が大観の厳格な作風とは違って思えました。どっちも素晴らしいです。

山口蓬春 「卓上」
こちらは絵皿(プロフィールと呼ばれる真横を向いたポーズの女性が描かれている)と、テーブル、洋梨などを描いた作品。女性のポーズはルネサンス時代からの伝統的なものですが、画風自体はミュシャに通じるものを感じるかな。一方で、真上から観ているのに多面的に感じる点などはキュビスム風にも思えます。西洋絵画から吸収した様々な表現が活かされている面白い作品でした。

この他にも東山魁夷の「年暮る」など自慢のコレクションも並んでいました。


ということで、山種美術館の横山大観コレクションを中心に楽しむことができました。正直、観たことがある作品が大半ではありますが、大観のコレクションが一堂に会する機会は今回が初めてということで貴重な機会となっています。横山大観がお好きな方はこの機に足を運んでみるのもよろしいかと思います。



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YANG FUDONG THE COLOURED SKY:NEW WOMEN II 【エスパス ルイ・ヴィトン東京】

前回ご紹介した根津美術館の展示を観た後、表参道にあるエスパス ルイ・ヴィトン東京で「YANG FUDONG THE COLOURED SKY:NEW WOMEN II」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 YANG FUDONG THE COLOURED SKY:NEW WOMEN II

【公式サイト】
 http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/

【会場】エスパス ルイ・ヴィトン東京
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅、表参道駅

【会期】2017/10/17 ~ 2018/03/11
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_②_3_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は中国の現代アーティストであるヤン・フードン(楊福東)の映像作品を紹介する内容となっていました。ヤン・フードンは画家として正規の教育を受けたそうですが、その表現は絵画だけでなく映像やインスタレーションなど多岐に渡るそうで、今回の作品のようにマルチスクリーンを好んで使うようです。これまでは35mmモノクロフィルムでの制作を基本としていたようですが、今回は初のカラーフィルム作品となっているようでした。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。


こちらがインタビューに答えるヤン・フードン氏 
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1971年の北京生まれだそうで、これから先も活躍が期待できそうな年代です。

展示室に入ると真っ暗で、暗闇の中に5つのスクリーンが点在していました。
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これらのスクリーンで、太陽、海、浜辺、遊び、食べ物、西洋美術への言及、馬と鹿といった映像が映し出されます。ドゥ~ンと不穏な音響が鳴り響き、ちょっと怖い雰囲気w

こちらは馬と鹿の映像。背景がやけに鮮やかな色合ですw
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これは中国の故事「鹿を指して馬と為す」を下敷きにしているようです。権力で鹿を馬と言い張った故事なので、虚実がごっちゃになった世界観に合ってるかも。

こちらも鹿の映像。こうした映像は5つの画面のあちこちで映るので、1箇所で映る訳ではありません。
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幻想的な色合いで、初めてのカラー作品とは思えないほど豊かな色彩感覚です。

こちらは食べ物を映していますが、フランドル絵画の静物のようにも思えます。
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ナメクジ?がゆっくり這っていて、どこか死や老いをイメージさせました。何しろ音響が怖いのでそう感じるのかもw

こちらは謎のピラミッド。シュルレアリスムの世界に迷い込んだような光景です。
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この色合と共にブレードランナーの世界観を思い出しました。 効果音も何となく似てるしw

こちらは浜辺の美女の映像。
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背景はセットであるのが一目瞭然で逆にシュールさが際立ちます。無表情なのも怖いw

こちらも美女たち
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グラビアのようにも見えますが、マネキンのように精気がない雰囲気でした。この女性たちがスローモーションで動くのも印象的です。

こちらは最も絵画的に思えた映像
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背景が不穏な明るさで揺らめくような感じでした。

勿論ご紹介した以外にも印象深い映像が流れていました(何分くらいあるのかわかりませんが、20分ほど観てました)

ということで、詳しい意味などは分かりませんでしたが、シュールな世界が広がる展示となっていました。部屋全体が暗くて重い音響が鳴り響くのも独特の空間となっています。無料で観られる上に写真も観られますので、表参道付近に行く機会があったら立ち寄ってみるのもよろしいかと思います。


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墨と金 狩野派の絵画 【根津美術館】

先週の土曜日に根津美術館で「企画展 墨と金 狩野派の絵画」を観てきました。この展示には前期後期の会期があり、私が観てきたのは前期の内容となっていました。

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【展覧名】
 企画展 墨と金 狩野派の絵画

【公式サイト】
 http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/

【会場】根津美術館
【最寄】表参道駅

【会期】2018年1月10日(水)~2月12日(月・祝)
     前期:1月 10日(水)~ 1月 28日(日)
     後期:1月 30日(火)~ 2月 12日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は主に狩野派についての展示で、前期後期合わせて25点程度の屏風や掛け軸が並んでいます。点数は少ないもののタイトルの通り水墨もあれば金をふんだんに使った屏風もあるといった感じで、狩野派の魅力をダイジェスト的に紹介していました。簡単にメモしてきましたので、会場の様子をさらっとご紹介しようと思います。


<企画展>
まずは狩野派以前のコーナーです。ここには唐物と呼ばれる中国から伝わった作品に基いて「筆様」としてスタイルを模倣した作品が並びます。ここでの見どころは拙宗(雪舟等楊と名乗る前の名前としての説が有力)の「潑墨山水図」で、南宋時代の玉澗に倣った水墨画です。木々と舟が描かれているのは分かるけどやや抽象画のような大胆な筆使いとなっていて、濃淡で空気感や遠近感まで表現しているかのようでした。 この作品以外にも南宋の夏珪に倣った芸阿弥の「観瀑図」もあり、日本画は南宋から大きな影響を受けているのが伺えます。

その先は狩野元信と「画体」についてのコーナーです。画体については昨年の狩野元信展の際に書いたので詳しくは下記記事を参照頂ければと思いますが、簡単に言うとそれまでの「筆様」と異なる真・行・草の3つの「画体」を設け、注文に応じた格式を提供できるようにした制度です。この画体によって狩野派は天下の絵師となったとも言えそうです。ここには最も格式が高く緻密な真体の「養蚕機織図屏風」を始め5点程度の作品がありました。全て「伝 狩野元信」や「元信 印」となっているのはそれだけ工房と一体になって制作していた為かと思います。
 参考記事:天下を治めた絵師 狩野元信 (サントリー美術館)
伝狩野元信の「養蚕機織図屏風」には養蚕と機織の様子が描かれ、理想郷のような光景を緻密に漢画風で描かれています。中央に川を挟み、所々雲がなびいているなど叙情的な印象を受けました。解説によるとこうした庶民の暮らしを描いた作品は為政者がその苦労を知り労るという目的もあったそうで、そうした点でも天下の絵師として相応しい画題となっています。

その先には室町時代の狩野派の諸派と思われる作品があり、その後に狩野探幽を始めとする江戸狩野派の作品が並びます。戦国時代の狩野派は豪華絢爛な狩野永徳などが有名ですが、江戸時代に幕府の御用絵師となった狩野探幽は余白をたっぷり取った情趣溢れる画面を得意とし瀟洒な雰囲気の作品を作りました。
ここでの見どころは「両帝図屏風」と「山水花鳥図屏風」かな。いずれも6曲1双の屏風で目を引きます。まず「両帝図屏風」は左隻に琴を弾く舜帝(琴を弾いて天下を治めたことに由来)と、右隻に舟と車と共に黄帝(舟や車で難所を克服したことに由来)が描かれています。背景は柔らかい金色の雲に覆われていて、豪華絢爛というよりは優美な印象が漂います。皇帝達も気品があり、こうした帝王の画題は為政者にも好まれたようです。この辺が戦国時代の永徳の豪放さとは大きく異なる特徴と言えそうです。
もう1つの「山水花鳥図屏風」は狩野探幽の弟の狩野尚信によるもので、こちらは水墨画です。山を背景に鳥が描かれているのですが、大半は余白となっている大胆さで、まさに空を舞っているように見えます。こちらは筆致も流麗で兄とはまた違った魅力を発揮していました。正直、私は尚信の方が好みですw
また、その先にあった狩野宗信の「桜下麝香猫図屏風」もまた違う雰囲気で、余白が多いのは江戸狩野っぽいですが色合いなどは大和絵風の金屏風となっています。左右に2匹づつ描かれたジャコウネコが桜を振り返って見上げているような姿をしていたり、生き生きとした姿で描かれていました。
ちなみに、狩野派が金屏風を初めて作ったのは中国の明の皇帝に献上するときだったそうで、当時は金が日本的と見なされていたということが暗示されると共に、漢画を得意とする狩野派が本場の中国と対峙したのを契機に日本化を進めたとも取れるそうです。確かに本場のモノマネよりもオリジナリティがあったほうが珍重されるでしょうね。

そしてもう1つの部屋は京狩野のコーナーとなっていました。京狩野は狩野永徳の流れを強く受け継ぎ、濃厚な画風が特徴です。
ここには幾何学的なモチーフをよく取り込んだ狩野山雪の「藤原惺窩閑居図」などがありました。これは松林に囲まれた家を描いたもので、塀や家に水平・垂直の線が多用されています。周りの松も真っ直ぐで、こうした幾何学性が画面の静けさだけでなくリズミカルな雰囲気を出していました。
もう1つこの部屋で気に入ったのが狩野山雪の2幅対の「梟鶏図」で、右幅にフクロウ、左幅に鶏が描かれています。このフクロウがとぼけた顔をしていて、ゆるキャラみたいな可愛さですw また鶏もジロっとした目をしているのが面白くて、両幅とも愛嬌がありました。輪郭をあまり使わずに水墨の濃淡で描いている手法も見事です。

と、今回の展示はここまでですが、点数が少なかったので今回の常設も簡単にご紹介しておこうと思います。

<常設>
1階の仏教美術や2階の古代中国の青銅器はいつも通りですが、今回面白かったのは展示室5の「百椿図」と展示室6の茶道具のコーナーでした。

まず「百椿図」ですがこれは何度か観たことがあるのでこの季節に合わせて出てきたのかな? この百椿図も狩野山雪によるものと伝わっていて、濃厚な色彩で様々な種類の椿や、それを入れる花器や蒔絵を描かれている巻物です。絵には詩も添えられていて優美な逸品なのですが、これが部屋を囲うようにズラッと広げて展示されているのは圧巻で非常に華やいだ雰囲気がありました。今回の狩野派展や季節にもマッチしたナイスチョイス。

そして茶道具のコーナーでは長沢芦雪の「竹狗児図」が展示されていました。これは丸っこい2匹のワンちゃんを描いたもので、円山応挙の弟子だけあって応挙の描いた子犬とよく作風が似ています。1匹は背中を向けているのも可愛らしく、戌年のはじめにピッタリな作品でした。これを観るだけでも癒やされます^^


ということで、狩野派の展示と常設を楽しんできました。この前のサントリー美術館と内容が重なる部分もあったので、狩野元信展を楽しめた人には特にお勧めです。点数は少ないものの狩野派の中でも個性が異なるのがよく分かるので、今後の美術鑑賞にも役立ちそうな展示でした。


おまけ:
勿論、この美術館の見どころの1つである庭も観てきました。
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紅葉や燕子花の頃には何度も足を運んでいますが、こんなに何にも無い季節に行ったのは久々でしたw 今週だったら雪が積もってレアな光景だったのかなあ


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野性展:飼いならされない感覚と思考 【21_21 DESIGN SIGHT】

今日も写真多めです。前回ご紹介した東京ミッドタウンの展示を観た後、すぐ近くの21_21 DESIGN SIGHTで「野性展:飼いならされない感覚と思考」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 野性展:飼いならされない感覚と思考

【公式サイト】
 http://www.2121designsight.jp/program/wild/

【会場】21_21 DESIGN SIGHT
【最寄】六本木駅・乃木坂駅

【会期】2017年10月20日 (金) ~ 2018年2月4日 (日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は「野性展」という一風変わったタイトルとなっています。今回の展示のディレクターは、現代は理性や合意性ばかりが唱えられているものの、その一方で野性の感覚というのは私たちの中にも潜んでいて「まだ飼いならされない心の領域」が今まさに大切になっていると考えてこの展示を企画したようです。展示品は多岐に渡り、様々な表現を通じて野性の発見方法を紐解くという趣旨となっていましたので、詳しくは気に入った作品の写真を使ってご紹介していこうと思います。

こちらは丸石神と呼ばれる石。
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これは山梨の笛吹川の川沿いの至る所にあるそうで、自然で丸くなった石を神聖なものが宿っていると考えて神として祀ったものだそうです。まさに自然崇拝的で原始的な印象を受ける石でした。

このあたりにはこうした丸石神の写真や、ほとんどただの木にしか観えない熊の像などが並んでいました。

「Finding Perceptions aircode」
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こちらは南方熊楠のいう「縁起」を視覚化したもので、お客さんの動きによって映像が変わるという作品です。解説に脳神経細胞に電気信号が伝わるような映像と書かれていましたが、まさいそういった感じかな。南方マンダラや華厳経のインドラの網にも見えるとも書いてありましたが、ノイズが走って反応する様子は人の頭の中を覗いているような感じが強かったです。
 参考記事:南方熊楠-100年早かった智の人- (国立科学博物館 日本館1階)

「あなたに続く森」「南方熊楠の道具」
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この辺には南方熊楠に関する作品がありました。ガラスでできた菌類らしき作品や南方熊楠の道具などが並びます。南方熊楠は植物採集で有名な人物ですが、心に野性を取り戻すことで新しい発見や発明をなすことができると考えていたようです。

こちらも南方熊楠関連の品々。
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科博の南方熊楠展を観てからこの展示を観たので一層面白く感じました。

こちらは南方熊楠の写真。
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フィールドワークをしていた森かな? 野性そのものといった風貌ですw

こちらも南方熊楠。
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ただのオッサンにしか観えませんが、非常に賢い人です。禅画でこういう人がよく出てくるけど、この人もどこか達観していたのかも。

鈴木康広「水の切り株」
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こちらは天井から結露が滴って切り株型の容器の水面に波紋が起こる作品。まるで年輪のように見えるのが面白いですが、これのどこが野性なんだろう?と思っていたら窓の外に似た作品がありました。

鈴木康広「始まりの庭 水の切り株、土の切り株」
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こちらは10年前には先程の「水の切り株」だった作品で、屋外に保管されて居たために草が生い茂る切り株となったようです。作者の手を離れて10年越しに野生化した姿が観られるというのは面白い発想でした。

黒田征太郎「無題」
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イラストレーターでグラフィックデザイナーの黒田征太郎氏はひたすら絵を描いているようで、ここには沢山のメモ帳をまとめて本のようにした作品が並んでいました。

中はこんな感じでひたすらに絵が描かれています。これとかホテルのメモ帳だしw
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黒田征太郎 氏はこうして南方熊楠の腹稿のように見聞や思考を書き出すことで制作されるそうです。ゆるい雰囲気ですが、知の巨人とやってることは同じなのかも。

こちらは黒田征太郎 氏が描かずにはいられない心境を語ったもの。
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小学生の時に1+1が2になるのは分かるけど、何で足さないといけないのか?と質問して殴られたエピソードが書かれていますw エジソンの子供時代もそんな話があったような…w

続いては「かわいい」の考古学ということで、日本的な概念である可愛いをテーマにした作品が並んでいます。可愛いは魅力的な野性の表現と言えるのだとか。

日本の古代からの可愛いと言えば土器、土偶、はにわといった所でしょうか。
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特に土偶は可愛さと力強い野性が感じられます。毎度この造形を数千年前に作っていたというのに驚かされます。

こちらはコルゲンコーワのケロちゃんとコロちゃん。右は二代目で、私はこちらのほうが好きです。
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蛙は縄文時代には神話にも出てくる生き物、近代では鳥獣戯画など様々な作品のモデルとなりましたが、ここでは可愛い造形です。脈々と現代まで愛されてるんですね。

茂木多喜治「這い熊」
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この辺は木彫りの熊がたくさんありました。元々は北海道八雲町で尾張徳川家第19代当主 徳川義親が運営していた農場で農作業が出来ない冬季の副業として作られるよういなったそうです。この素朴さと熊の姿は野性そのものですね。手作り感が凄いw

田島征三「獣の遠吠え」
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ツクシのようにみえるのはモクレンの未成熟な実だそうで、かなりの数が集まって渦を巻くように見えます。1本1本の力強さと共に渦巻き模様が圧倒的な雰囲気でした。

エルンスト・ガンペール「139/08//200」
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似た名前の作品が3点あったので別物のタイトルかもしれませんが、いずれもこうした木を薄くなるまでくり抜いた作品でした。年輪が浮かんでいる様子や木の本来の形も残っているようにも見えて加工品ながらも野性味を感じられました。

こちらはオセアニアやアフリカの仮面。
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前回の記事では日本の仮面を被った儀礼の写真をご紹介しましたが、やはり仮面には民俗が色濃く反映されてプリミティブな要素が高密度で詰まっています。猫や妊婦の身体を象った仮面や、胴体よりも長い仮面などどれも個性的です。


ということで、中身も変わった展示でしたが野性というだけあって力強く心を動かす作品が結構あったと思います。この展示は既に会期末となっていますので、気になる方はお早めにどうぞ。


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民俗写真の巨匠 芳賀日出男 伝えるべきもの、守るべきもの 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

成人の日の祝日に、六本木のFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で「民俗写真の巨匠 芳賀日出男 伝えるべきもの、守るべきもの」という展示を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 FUJIFILM SQUARE 写真歴史博物館企画写真展
 「民俗写真の巨匠 芳賀日出男 伝えるべきもの、守るべきもの」

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/18010404.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅

【会期】2018年1月4日(木)~2018年3月31日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は芳賀日出男という写真家の個展で、芳賀氏は「民俗写真」の地位を確立した方だそうです。芳賀氏は1921年に満州の大連で生まれ、大学受験の為に母国日本へ来たそうで慶應義塾大学に進学しました。大学時代に写真にのめり込む一方で民俗学に開眼して日本の年中行事をとるようになり、以降60年に渡って日本のみならず世界各地のさまざまな祭礼を撮るようになっていったようです。その数なんと40万点! 今回はその中から約30点あまりが3つのテーマに沿って展示されていました。冒頭にも書いたようにこの展示は撮影可能でしたので、詳しくは気に入った作品の写真を使ってご紹介しようと思います。


<祭りで人は神になる。>
まずは民俗学の面白さが如実に現れる祭りのコーナー。様々な衣装に身を包んだ祭りの様子が並んでいました。

芳賀日出男 「訪れ神」 沖縄県八重山郡竹富町租納(西表島)1988年
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この光景を観て昭和初期くらいかと思ったら予想以上に最近の写真で驚きました。福々しい神様が訪れてきたのかな? 仮面が持つパワーが写真にも出ている感じがします。

芳賀日出男 「奄美の祝女」 鹿児島県大島郡龍郷町秋名(奄美大島)1992年
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こちらは奄美の写真。海に向かって祈っている様子でしょうか。独特の衣装を着て儀式をする姿が神秘的な印象です。

芳賀日出男 「鷺舞」 島根県鹿足群津和野町 弥栄神社 1967年
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白鷺の格好をしたお祭りのようで、大きめの衣装となっています。浅草で観た白鷺の舞を思い出しましたが、あれよりもかなり大きいかな。
 参考記事:浅草寺と白鷺の舞

芳賀日出男 「火防せの神の使い」 宮城県登米群東和町(現・登米市)1996年
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藁に包まれた独特の衣装でインパクトがあります。ちょっと藁納豆みたいですが、火を防いでくれる神の使いのようです。まさに祭りで人が神になった感じがしました。

芳賀日出男 「国津神事」 福井県三方郡三方町向笠(現・三方上中群若狭町向笠)国津神社 1973年
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こちらは手前の2人のナイスな笑顔が目を引きました。祭りのめでたい雰囲気が凝縮されているような表情が素晴らしい。

芳賀日出男 「円座のかんこ踊り」 三重県伊勢市円座町 正覚寺 1969年
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思わず何じゃこりゃ!?と驚いたのがこちら。この箒を逆さにしたような格好は何を表しているのか分かりませんが、調べてみると五穀豊穣の祭のようです。日本にはまだまだ知らない面白い祭りがありそう。

芳賀日出男 「西大寺会陽」 岡山県西大寺市(現・岡山市)西大寺 1963年
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祭りの力強さがひしひしと伝わってくる作品。この構図と明暗の強さが非常に印象的でした。


<人生儀礼>
続いて人生における節目で行われる儀礼に関するコーナー。ここは点数少なめですが、生後すぐの儀礼や冠婚葬祭などの写真が並んでいました。

芳賀日出男 「嫁入り」 福島県田村郡三春町 1960年
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こちらは結婚の儀式を撮ったもの。昔ながらの光景に思いますが、今は結婚式場で挙式する人が多いのでこうした光景も減ってきているのかも。

芳賀日出男 「臨終」 鹿児島県大島郡宇検村(奄美大島) 1957年
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人生で最も大きい出来事である臨終を撮った写真。それぞれの表情も目を引きますが、ちょっと独特の儀礼のように見えて気になりました。


<稲作儀礼>
最後は日本の歴史と切っても切れない稲作に関する儀礼についてのコーナーです。

芳賀日出男 「虫送り」 愛知県中島郡祖父江町甲新田(現・稲沢市祖父江町甲新田) 1957年
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虫送りというイナゴなど害虫の被害にあわないようにする儀礼の写真。この儀礼は全国各地にあったので存在は知っていましたが写真で観るのは初めてでした。これを観ると神秘的なお祭りに見える一方、何か畏れのようなものも感じました。

芳賀日出男 「壬生の花田植」 広島県山県郡千代田町(現・北広島町壬生)1981年
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おそろいの衣装で田植えをする様子。太鼓を担いでいる人の姿もあって楽しげな様子が伝わってきます。

芳賀日出男 「一粒の種から」 愛知県海部郡大治村馬島(現・大治町馬島)1956年
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このシワだらけの手から厳格さと、握られた種から生命力が感じられる作品。農業への讃歌とも思えて厳かな雰囲気すらあるように思えました。


ということで、非常にエネルギッシュな写真の並ぶ展示で予想以上に満足出来る内容でした。儀礼の際の空気感、感情、エトスなどが凝縮されたような作品が多かったのが良かったです。ここは無料で観られる上に今回は写真も撮れますので、六本木に行く機会があったらフラッと寄ってみるのもよろしいかと思います。




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たばこと塩の博物館の案内 (2018年1月 たばこの歴史と文化)

今日も写真多めです。前回に引き続き、たばこと塩の博物館の常設についてで今回はタバコの歴史と文化についてご紹介します。ここでも撮影することができましたので、写真を使っていこうと思います。

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【公式サイト】
 https://www.jti.co.jp/Culture/museum/collection/tobacco/index.html

【施設名】
 たばこと塩の博物館

たばこのコーナーは3階にありました。私はタバコを吸わないし嫌煙なのですが、この博物館に来ると毎回タバコの常設も観ていますw ここは渋谷時代に比べて広くなっている気がして、コレクションも以前より充実しているように思いました。いくつかのコーナーに分かれていましたので、順序に沿ってご紹介していこうと思います。

まずはコレクションギャラリーから。観ました。青貝を使った煙草盆など特に貴重なコレクションが並びます。

こちらは漆が塗られた煙草盆。
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青貝によってキラキラとした模様となっています。江戸時代のものかな。灰落としまで装飾されていて豪華。

こちらは朝顔を蒔絵で表した煙草盆。
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黒地に金という豪華でありながら落ち着いた雰囲気が素晴らしい品です。朝顔も洒脱な雰囲気。

こちらは「青貝桜下遊宴図ゲーム箱」
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これは国外向けの箱だそうです。通りでゴテゴテしてるw 青貝をふんだんに使って豪華ですがセンスが日本っぽくないかな。

続いてはタバコ文化の発生と伝播に関するコーナー。

いきなり神殿みたいなものがあります。これは渋谷時代には無かったと思うけど忘れてるだけ??
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これはメキシコのマヤ文明のパレンケ遺跡にある「十字の神殿」のレリーフを模したものらしく、タバコをくゆらす神が表されています。昔は神と結びつく神聖なものだったみたいです。

こちらはタバコの葉っぱ。大航海時代にアメリカ大陸からヨーロッパに渡り、さらに世界中へと広まっていきます。
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元々ペルーの高地が産地で、アンデスの儀式で使っていたそうです。たばこはナス科で、栽培されているのは2種なのだとか。
 参考記事:古代アンデス文明展 前編(国立科学博物館)

これはマヤで見つかった壺。7~11世紀頃の品です。
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側面にタバコをすっている人がいます。この儀式が今では嗜好品となっているのがちょっと不思議w

15~16世紀頃になるとヨーロッパにタバコが広まり、嗜好品となっていきました。むしろ当時は薬として盛んに利用されたのだとか。

こちらは当時の様々なパイプ。
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粘土で出来たクレイパイプや装飾の施されたパイプなど様々な品が並んでいます。この頃はまだパイプが主役です。

こちらもヨーロッパのパイプ。
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フランスのパイプなんかナポレオンの頭の形をしていますw かなり大きいものが多くて吸うのも大変そう。

タバコはヨーロッパだけでなくイスラム圏にも伝播します。イスラム圏では水パイプによる喫煙習慣が定着し、今でもその姿が観られるそうです。
こちらはエジプトのガラス製水パイプ
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水パイプの仕組みがイマイチよく分からないのですが、デザインがイスラム風なのはよく分かりますw

パイプ以外の喫煙グッズもあり、これは猫の頭の形をしたタバコジャー。
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あんまり可愛くないw 他にも犬や人の頭の形のジャーもありました。

こちらは嗅ぎタバコのコーナー。様々な材質の豪華な小箱が並びます。
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ヨーロッパに伝わった当初は喫煙よりもタバコを鼻から吸う嗅ぎタバコのほうは主流だったそうで、特に17世紀フランス宮廷で大流行したのだとか。

こちらは一大産地となったアメリカのパイプ。なんとトマホークの形をしています。
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元々は先住民を懐柔するためのアイテムだったようですが、その後各部族の長の権力を誇示する品へとなったそうです。そのまま攻撃できそうw

こちらは狩猟図が描かれたセイウチの牙製パイプ。
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今ではこんな品も作れないと思います。牙彫も中々見事な出来栄え。

他にも中国の喫煙グッズなどもたくさんありました。

これは鼻煙壷とよばれる中国の嗅ぎタバコ
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タバコは17世紀頃にヨーロッパ諸国から中国宮廷にもたらされたようです。こうした小壷に入れて楽しむのが中国独自のスタイルのようです。

こちらはタバコのパッケージなどのコーナー。
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昔は健康被害なんて知らなかったせいか子供と一緒に描かれているなど長閑な感じがします。今じゃこんな広告は無理ですねw

こちらはシガレットケース
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シガレットが普及した頃の包装が脆かったのでこうしたケースが使われたようです。包装が丈夫になってからもステータスシンボルとなったのだとか。

こちらはシガレットのおまけで付いてきたたばこカード。
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何しろ箱が脆かったので芯紙として入れたのが始まりのようですが、色々な絵柄があるのでコレクションしたくなるのは分かりますw

続いては日本のタバコのコーナー。日本では江戸時代初期に広まり、細く刻んでキセルで吸うスタイルが根付きました。

当時の日本の産地。
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東日本だけでもこれだけあります。やはり寒冷な地に合うのかな。

こちらは当時のタバコ屋さんの再現。ちなみにこの部屋の隅に猫ちゃんがいます。
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お店の人はタバコを刻んだり巻いたりしています。産地ごとにブランド化されてたようで、特に「国分(国府)」は高級タバコとして看板に書かれることも多かったそうです。コーヒーのブルーマウンテンみたいなものかな?w  

続いてはタバコを吸っている人などを描いた浮世絵のコーナー。むしろ「有掛絵」のコーナーと言うべきかも。

こちらは歌川国盛「己酉年八月酉の日酉の刻より木性の人うけに入る」
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描かれているのは、富士山やふたご山、ふさんかいの湊、ふ老門、ふけいのうら、ふきあげの濱、ふたみが浦 という頭が「ふ」で始まるものばかりで、これは有掛絵と呼ばれるものです。

この辺にはこうした有掛絵が並びます。これは江戸時代の俗信「有掛無卦説」に基づくもので、有掛(うけ)という7年の幸運期と無掛(むけ)という5年の不運の時期があり12年で1周期となる節です。その上で生まれ年によって木性、火性、土性、金性、水性という振り分けをして有掛に入る時期がきめられたそうです。有掛に入る人への祝儀として「富」や「福」といった「ふ」の字で始まる品々が贈られたらしく、有掛絵も贈答用として多く作れたようです。この解説を読むと先程の作品名も意味が分かると思います。(何故急にそんな絵が並んでいるのかはわかりませんがw)

こちらも有掛絵。三代歌川豊国の「七ふ字有掛入絵」
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何処に「ふ」が付くものがあるんだ?と思ったら歌舞伎の登場人物が「ふ」で始まるそうです。背景の富士山も含めてふで始まるものが11点あるようですが、現代人にはサッパリわからないと思います。

続いては明治以降の喫煙のコーナー。開国以来、西洋の喫煙文化も伝わってきたらしく、葉巻やパイプ、紙巻きたばこが新たに加わりました。

こちらは紙巻きたばこに使う品々。
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シガレットケースなども純和風の造りとなっているのが面白いです。

続いては刻みたばこの技術に関するコーナー。

こちらは19世紀初頭の手押し刻み機
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1日1貫(3.75kg)ほど製造できたそうで、これで作ると質が高いことから上級品の刻みに使われたのだとか。

この後、機械式の刻み機なんかもありました。

こちらは明治以降のタバコの広告のコーナー。
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この辺は見覚えがあるものもチラホラありました。割と時代を映してる感じがするので健康被害に関しての広告もここで展示すれば良いだろうに。

渋谷時代にもあった街角のタバコ屋さんの再現もありました!
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いつの間にか業平たばこ店になっている芸の細かさw もうこういうお店は観なくなったなあ。


ということで、タバコに否定的な私でもその歴史や文化について楽しむことが出来ました。タバコの良いところだけを見せてる気がしなくもないですが、付随する歴史なども垣間見られて良かったです。



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たばこと塩の博物館の案内 (2018年1月 塩の世界)

今日は写真多めです。たばこと塩の博物館で前回ご紹介した展示を観た後、常設も観てきました。この博物館の名前の通り、常設にはタバコのコーナーと塩のコーナーがあるのですが、まずは塩のコーナーから観ました。ここの常設は撮影することができましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【公式サイト】
 https://www.jti.co.jp/Culture/museum/collection/salt/index.html

【施設名】
 たばこと塩の博物館

常設は空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この「たばこと塩の博物館」は日本専売公社(現在のJT)が専売していたタバコと塩の歴史や文化を紹介する博物館で、以前は渋谷の公園通りにありましたが2015年4月に東京スカイツリーの近くに移転してきました。渋谷時代にも常設をご紹介したことがありますが、当ブログは2015年頃は休止中で移転後はまだ記事にしていなかったので、今回改めてご紹介しようと思います。確か以前は撮影できなかったので、写真でお見せするのは初めてとなります。
 参考記事:たばこと塩の博物館の案内 (2010年05月)

まず最初に動物は塩が無いと生きていけないという映像とボードがあります。
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肉食動物は他の生物の血から塩を得ているのですが、草食動物は塩を含む湧き水なんかで補っているようです。象が塩を求めて穴を掘る話とかを映像で流してました。考えたこともなかったけど、動物も自然から塩を得る方法があるんですね。

続いては塩資源についてのコーナー。日本には無いですが世界には塩湖や岩塩といった様々な姿で塩が存在しています。実は海水から作られる塩は1/4~1/3程度でしかないそうです。

こちらはイスラエルの塩湖(死海)から取れた塩
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塩湖は元々は海だったところが湖となり、水の蒸発で塩分濃度が濃くなった湖です。死海は身体も浮くほど塩分濃度が高いというので有名かな。

こちらは実際に触れる塩のブロック。有名なボリビアのウユニ塩湖で取れたものです。
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ざらざらして塩というよりは岩みたいな感じです。

こちらはウユニ塩湖の写真。
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一見すると南極みたいに見えますが、この白いのが塩です。

続いては岩塩のコーナー。岩塩は塩湖が地中に埋まり長い時間で化石になったようなものです。

こちらは岩塩で出来た聖キンガの像。
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聞いたことがない聖女ですが、元々ハンガリーの王女だったそうでポーランド王との結婚が気に入らず指輪を岩塩坑に投げ捨てたそうです。しかし結局は嫁いだのですが、何故か指輪はヴィエリチカという場所で発見された為、その地下を掘るように命じたら広大な岩塩層が見つかったのだとか。この事件をきっかけに岩塩発掘でポーランドは繁栄したらしく、この岩塩坑は世界遺産にも登録されているそうです。

この辺にはその岩塩坑の映像もあったのですが、聖人像どころか聖堂そのものが全部塩で出来ている空間が広がっているようです。水で解けないように排水をしっかり行うなど、細やかな仕組みもあるようでした。

こちらは各地の岩塩がずらっと並ぶ様子。
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私は海外に行くと岩塩を買ってきますw 日本のお塩よりコクがある気がします。

こちらはポーランドで取れた岩塩の柱。
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先程触った塩に比べるとかなりツルツルした表面でした。

続いては日本の塩のコーナー。実は日本は塩に恵まれていない国で、岩塩も塩湖もないし天日で海水を干すような乾季もありません。そこで、日本では大昔から海水を煮詰めて塩を作ることが行われてきました。

これが塩を煮詰める窯。
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いきなり海水を煮詰めるのではなく、塩浜に海水をまき ある程度天日で干して塩分濃度を上げ、その砂ごと煮詰めて塩を取ります。その後、濾過して更に濃くなった海水を煮続けると結晶とにがりに分離するようです。

日本の塩作りは揚げ浜と入浜という方式があり、これは入浜式塩田の模型。
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満潮と干潮の潮位差を利用して海水を導く方式が入浜です。潮位差の大きい砂浜がこの方式に向いていたようです。

とにかく日本の塩作りは海水を煮詰める必要があるのですが、そのためのエネルギーが馬鹿にならないので入浜式などで海水の塩分濃度を上げてから煮詰めて効率化を図っています。塩分濃度を上げるのを「採かん」、煮詰めるのを「せんごう」というようで、この2つの工程は今でも同じなのだとか。

こちらは流下式塩田というより効率的な方式
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立体になってるので単なる塩田より効率良さそうですが、ポンプの力が必要そうに見えます。

そして1972年以降はイオン交換膜法という方式に全面的に変わったようです。
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これは電気の力で海水中のイオンを集める方式ですが、海水の塩分濃度を上げるという点においてはそれまでと同じと言えそうです。

続いて煮詰める「せんごう」の歴史のコーナー。

こちらは蒸気利用式塩釜
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海水を煮詰める際の煙や水蒸気の熱を利用して1つ前の工程の窯も温めることで燃料の効率化を図っています。省エネ設計です。

こちらは真空式蒸発缶
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山の頂上でお湯を沸かすと沸点が低いのと同じように、気圧が下がると沸騰しやすくなるのを利用した窯です。低い温度でも水を蒸発させることができるのでますます燃料の効率が上がりました。

と、こんな感じで塩作りのコーナーの後は塩にまつわる豆知識みたいなコーナーです。

一口に塩といっても塩にはソーダ灰(ガラスや鉄鋼の原料)や塩素、苛性ソーダなど様々なものがあります。このグラフは塩の消費量と使い途についてです。
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何と食用は13%程度で他は産業用となっているようです。これはちょっと驚き。

さらに日本の塩の自給率はこんな感じ。
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わずか11.6%! ほとんどは海外からの輸入です。やはり天然に転がってる塩には勝てないのかな? ちょっと危機感が湧きます。

他にも色々な情報があって、こうしたタッチパネルみたいな機械で調べることができました。
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塩のことなら何でも調べられそうw

こちらは人体と塩の関係についてのコーナー。
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人体の塩は大体は血の中だろうと思ってましたが、血などの体液に含まれているのは全体43%程度で、骨にも43%程度含まれているそうです。骨は必要に応じて体液の塩の量を調整する貯蔵庫の役割になっているのだとか。

こちらは塩の結晶のコーナー。基本的には正六面体になるそうですが、成長の様子で形が変わるようです。
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非常に綺麗な結晶。人工物のように直角にできています。塩水の表面に浮かんだ結晶が重みで徐々に沈みながら成長するとこうなるようです。ピラミッドみたいw 

こちらは球体。
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これも人工物に見えますが塩水の中で転がりながら成長するとこうなるようです。自然にこういう形ができるというのに驚きです。


ということで、塩について様々な角度から焦点を当てた展示となっています。科学的にも歴史的にも面白い内容となっていて、普段あまり意識しない塩の不思議を観ることができました。好奇心が刺激されますので、この博物館に行かれる際には是非ゆっくり観てみることをお勧めします。


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和モダンの世界 近代の輸出工芸 ~金子皓彦コレクションを中心に~ 【たばこと塩の博物館】

2週間程前の土曜日に東京スカイツリーの近くにある たばこと塩の博物館で「和モダンの世界 近代の輸出工芸 ~金子皓彦コレクションを中心に~」を観てきました。この展示は既に終了していますが、参考になる内容でしたのでご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 和モダンの世界 近代の輸出工芸 ~金子皓彦コレクションを中心に~ 

【公式サイト】
 https://www.jti.co.jp/Culture/museum/exhibition/2017/1711nov/index.html

【会場】たばこと塩の博物館
【最寄】とうきょうスカイツリー駅

【会期】2017年11月3日(金・祝)~2018年1月8日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
次の日が最終日だったこともあって結構混んでいました。

さて、この展示は「和モダン」ということで和をベースに洋を折衷したような作品が並びますが、和モダンと聞いてイメージするものというよりは明治期に輸出用として作られた工芸品を集めた内容となっていました。以前にも似た展示を観た記憶があるので、この博物館が得意とする内容なのかもしれません。 大部屋に所狭しと200点ほどジャンルごとに並んでいましたので、簡単に各ジャンルで気に入った作品などをご紹介しておこうと思います。(なお、冒頭にも書いたようにこの展覧会は既に終了しております)
 参考記事:華麗なる日本の輸出工芸 ~世界を驚かせた精美の技~ (たばこと塩の博物館) 


<海を渡った日本の木工品 寄木細工と木象嵌>
まずは寄木細工のコーナーです。寄木細工は徳川家光の頃に賤機山麓に浅間神社を造営するにあたって全国から集めた職人が造営後もその地に残って基とある技術を創り上げたそうです。またこの時に漆職人たちによって様々な気を寄せ集めて漆で仕上げる寄木塗りが寄木細工の始まりとなりました。その後、江戸時代後期に駿河から箱根に伝えられて発展し、現在でも箱根の伝統工芸となっています。

展覧会に入ると今回のポスターにもなっている全面に寄木が使われたライティングビューロー(大型の机)がありました。草花文の彫刻も施され かなり緻密で圧倒されます。寄木の複雑さも見事で複雑に組合ながら幾何学的な模様等を作っていました。近くには同様の机やチェステーブル、ネストテーブルなどもありチェステーブルは蝶番で開くとテーブルにもなるように作られていました。

そしてしばらく進むと26種類もの文様を寄木で表した飾り棚もありました。これは模様自体の工夫も面白く高い技術と共にデザイン的な美しさも楽しめました。他にも洋風のレターボックスを寄木でモザイク模様のように作った作品や、お馴染みの寄木細工のからくり箱、寄木の材質を使ってレンガのような風合いを出した家型の箪笥、木目を水面の波紋に見立てた「笹に雀図四脚盆」というお盆などもあり、遊び心も素晴らしい作品が多かったです。

そしてもう1つこのコーナーで面白かったのが、寄木細工の濃淡を用いて絵画作品でした。普通の絵かと思うくらい繊細な濃淡で役者絵を描いていて、これもかなりの驚きでした。


<ジャポニスムと日本の輸出陶磁器>
続いては輸出用の陶磁器のコーナーです。陶磁器の輸出に関しては、1867年に開催されたパリ万博で江戸幕府・佐賀藩・薩摩藩が陶磁器を出品すると人気となり、特に金襴手の薩摩焼は高い評価を受けたそうです。その後、明治期にはヨーロッパでジャポニスムというムーブメントが起きるなど、日本の陶磁器は益々人気になって行きました。(明治政府も殖産興業と貿易拡大に力を入れていたので陶磁器は盛んに輸出されたようです。)
1876年のフィラデルフィアの万国博覧会では九谷・有田・淡路・伊勢・京都・瀬戸・美濃・横浜・東京などから陶磁器が出品されていたらしく、東京にまで輸出用の陶磁器生産をする窯があったのだとか。

ここは点数はそれほど多くなかったのですが、薩摩焼や九谷焼、有田焼などの陶磁器が並んでいました。製法は日本でも形はコーヒーポッドやコーヒーセットとなっていて、海外向けというのがよくわかります。横浜焼という横浜産の陶磁器もあり、人物や花卉を絵付けしたカップとソーサーが並んでいました。海外向けの豪華な陶磁器はちょっと趣味じゃないのもあるけど、いかにも外国人が好みそうな感じでした。


<外国人を魅了した日本の輸出漆器>
続いては漆器のコーナー。漆器は江戸時代初期にはオランダ東インド会社との交易で西洋に渡り高い評価を受けていました。イギリスでは漆器のことをジャパンと呼ぶほど驚きを持って受け入れられていたようです。明治維新後は駿河と会津で外国人向けに意匠化された漆器が実用と鑑賞を兼ねて大量に作られ横浜から欧米へと輸出されていったようです。

まずここには黒漆に金蒔絵の衝立がありました。鷹が爪で猿を握っている様子が描かれ、猿の苦悶の表情が恐ろしげです。鷹は力強く雄々しい雰囲気で、威厳を感じさせる衝立となっていました。他にも碁盤や手提げ弁当箱、箪笥、長手箱など様々な品が並びます。ここで面白かったのが黒漆と金の装飾で作られたキリストの磔刑像の十字架で、キリスト自体は銀で作られています。他にも赤漆でできたIHS(イエズス会)のマーク入りの書見台や蝋燭台など、漆器で作る発想が無い品々まであって驚きました。これも海外向けというのがよく分かる品々です。


<麦わら細工の輝き>
続いては麦わら細工のコーナーです。麦わら細工は大麦などの藁をそのまま使ったり染色して使ったりする工芸で、立体的に編んで動物や人物像など様々なものを表現します。また、乾燥させた藁を切り開いて幾何学模様を構成し、模様を組み合わせて文字や花、風景、人物などの文様に切り抜いて箱などに張る「張り細工」という技法もあるようです。
麦わら細工は東京の大森や兵庫の城崎などが産地だったようですが、大森での生産は絶えてしまったようです。海外との関わりについては古くはシーボルトが帰国の際に持ち帰ったそうで、明治期にはパリ万博で高い評価を得るなど、外国から注目された日本の伝統工芸の1つだったようです。

ここは主に箱型の作品が並び、見た目は寄木細工に似ています。藁とは思えないような品ばかりで、筋目が有るのでかろうじて藁と分かる程度かな。シガレットケースやボンボン入れ、郵便配達人の図像のある葉書切手箱、小さい箪笥、髪結い道具箱などが並び、今回の展示では主に張り細工の作品が中心となっていました。あまり馴染みはありませんが、城崎の作品ばかりだったので城崎の麦わら細工のレベルの高さが伺えるようでした。


<貝細工の輝き>
続いては貝細工のコーナー。貝細工というと螺鈿が思い浮かびますが、ここには螺鈿の他に貝殻を使った作品などもありました。螺鈿は昔から作られて日本工芸の代表みたいなものですが、貝細工は江戸後期に菊人形のように貝で人物や花鳥を象った細工が作られるようになったそうで、見世物やおみやげとして人々に親しまれたそうです。

ここで目を引いたのは紫色に輝く貝を使った孔雀の作品です。孔雀の羽根1枚1枚を貝で表現していて、その色合いと形の活かし方が面白いです。身体も貝で出来ていて貝細工となっています。他にも茶色っぽい模様の貝で作った鳥などもあり、色の選び方が絶妙です。色だけでなく帆船を表した作品では貝の形が生かされていて、アイディアが光る作品ばかりでした。


<芝山細工と横浜芝山漆器>
続いては芝山細工のコーナー。芝山細工は貝や珊瑚、象牙、鼈甲などを用いて文様を表して漆面に象嵌するもので、中には蒔絵や螺鈿を施すものもあるようです。元は1770年頃に上総国芝山村で考案されたもので、江戸時代には大名家や富裕層で好評を得ていました。それが開港期になると外国人から高い評価を受けて売れるようになり、横浜へと大量に職人が移っていきました。そこで作られた横浜芝山漆器は家具だけでなく飾額や写真帖など様々な品が作られ隆盛を誇っていたようですが、関東大震災や横浜大空襲といった歴史によって衰退し、現在では伝統が絶えようとしているようです。

ここもそれ程点数は無かったのですが、白蝶貝と獣骨を使って花と蝶を象ったお盆などが目を引きました。虹色に鈍く光る様子が幻想的で、蝶の図様にピッタリです。 他にも額縁の花飾りが立体的に表された飾額などもあり、獣の骨などを使っているようですがかなり精緻に作られていました。 とは言え、中にはちょっと日本が誇張された感のある品もあったかなw 輸出用に作られた作品は多かれ少なかれそんな雰囲気があったりします。


<そのほかの日本の輸出工芸>
最後はそれ以外の様々な工芸品のコーナー。やはりパリ万博などが契機となり輸出された品が並びます。ここには七宝や象牙の牙彫、ガラス絵などがありました。また、出入口付近には「生人形」というリアルな人形も数体あり、驚きました。特に二代山本福松による「羅生門」という人形は肌の色や髪の毛は人間そのものといった感じで、目にも輝きがあります。私は人形が苦手でちょっと怖いですが、技術の高さに感心させられました。


ということで、輸出向けの工芸品が中心となっていました。派手好きの外国人の為かちょっとゴテゴテした感じのものもありましたが、明治期の日本の工芸のレベルが恐ろしく高かったのがよく分かる内容です。特に寄木細工のコーナーが面白くて、机などは圧巻で見応えがありました。中には観た覚えがある品があったように思いますので、いずれまた観られる機会があるかもしれません。記憶にとどめておきたい展示でした。


おまけ:
この日、本当はスカイツリーと すみだ水族館に行こうと思っていたのですが、かなり混んでいたので諦めましたw
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新しくなった たばこと塩の博物館は東京スカイツリーから徒歩10分以内にあるので、混んでいたらこちらに足を運ぶのもよろしいかと思います。なお、このブログではこの美術館が移設されてから初めてのご紹介となりますが、美術館自体については次回にご紹介しようと思います。



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国宝 雪松図と花鳥 -美術館でバードウォッチング-【三井記念美術館】

以前ご紹介した日本橋三越での展示を観た際、すぐ近くの三井記念美術館の「国宝 雪松図と花鳥 -美術館でバードウォッチング-」も一緒に観てきました。この展示も会期末が近くなってきているので、先にご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 国宝 雪松図と花鳥  

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

【会場】三井記念美術館
【最寄】三越前駅

【会期】2017年12月9日(土)~2018年2月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
割と多くの人で賑わっていて盛況でした。しかし気になるほどでもなく比較的快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は三井記念美術館のコレクションの中から、タイトルにもなっている円山応挙の「雪松図」と共に鳥をテーマにした作品を集めたものです。三井家は鳥を描いた作品を好んだようで絵画だけでなく様々な品が部屋ごとにジャンル分けされて展示されていました。軽くメモしてきたので各章ごとに簡単に内容を振り返ってみようと思います。


<展示室 1 | 茶道具Ⅰ |>
まず展示室1の前に三井家の人々が作った鳥を題材にした立体的な絵画作品が展示されていました。かなり巧みな技で作られていて画家としての才能も持っていたのが分かります。これは結構驚きの完成度でした。
そして展示室1は茶道具が並んでいます。ここでの見どころは仁清の「色絵鶏香合」だと思います。鶏の形をしている彩色された香合で、小ぶりながら優美で可愛さもあります。 また、十一代 中村宗哲「鳳凰桐蒔絵大棗」は側面に隙間なく金色の蒔絵が施され、鳳凰と桐が描かれていて格式高い印象でした。他にも鶴や孔雀の卵を香合にした作品などもあり、内側を赤漆や金で装飾していました。これは発想が面白いと思います。


<展示室 2 | 茶道具Ⅱ |>
ここは1点だけで、「玳皮盞 鸞天目」となっています。名前の通りの天目茶碗で、内側に鸞天が2羽飛んでいる様子が描かれ側面は黒地に茶色い斑点があります。渋くて気品のある逸品で、鸞天が伸びやかな印象でした。


<展示室 3 | 茶室「如庵」展示ケース |>
ここは茶室になっている部屋。国宝の「志野茶碗 銘卯花墻」が展示されています。ややピンクがかった色で温かみを感じる志野らしい品です。ここはいつも通りかな。


<展示室 4 | 花鳥画Ⅰ |>
続いては特に充実の花鳥画のコーナーです。まず最初に牧谿の作と伝わる「蓮燕図」があり、蓮に止まるツバメの姿が簡略化されて描かれています。さらっと描いてあるように見えますが叙情的な作品です。その後には沈南蘋による花鳥動物図が6幅並んでいるのが目を引きます(本来は11幅) 密度の高い筆致でリアルな鳥たち 特に鶏を観ると伊藤若冲が如何に沈南蘋から影響を受けているのか分かるのではないかと思います。軽やかに舞う様子なども描かれ、いずれも生き生きとしていました。今回の展示の中でも特に見どころとなる作品だと思います。

そしてこの部屋に円山応挙の「雪松図屏風」があります。円山応挙の最高傑作とも呼ばれる作品で、左右一対で雪の積もった松が描かれています。松の葉1本1本まで勢いよく描かれ、薄めの金地を背景に力強い存在感です。背景には濃淡があり奥行きを感じるのも応挙っぽさがあるように思いました。何度観ても飽きない傑作です。

この部屋にはもう1点、驚きの作品があります。渡辺始興による「鳥類真写図巻」で、63種の鳥を17mにも渡る巻物に描いた作品です。ここでは写真と比較しながら観られる趣向となっていて、色形が本物そのものであることが分かり卓越した観察眼と写実性が伺えます。羽根や尾のクローズアップなども描かれ、図鑑のような博物学的要素もあるように思えました。


<展示室 5 | 花鳥画Ⅱと工芸品 |>
ここには花鳥画の続きと工芸品が並んでいました。螺鈿の蒔絵や印籠、牙彫などが並びます。
まず目を引いたのは永樂妙全による「仁清写色絵雉子香炉(雄・雌)」で、大きなキジの姿の香合です。これは背中あたりが開きそうに見えるかな。仁清の写しだけあって気品に溢れています。 この辺には他にも銀製の鶏の置物も面白い作品があり、T字の止まり木にとまり長い尾を垂らし鋭い目つきで威厳すら感じられました

小さめの作品では「牙彫鶏親子置物」という牙彫が好みでした。象牙とは思えないほど羽根が柔らかく観え、鶏冠や羽根まで緻密かつ写実的に作られています。今ではもうこうした作品も作られないので貴重な品だと思います。

そしてこの部屋で最も大きい「月宮殿蒔絵水晶台」という蒔絵の台も目を引きました。これは水晶を置くための台で、水晶を月に見立てて表面には緑やピンクの石も象嵌されています。2段目は石が絵の中の岩のように見える意匠となっていて面白かったです。


<展示室 6 | 花鳥画Ⅲ |>
ここは4点のみですが、2点ほど気に入りました。まず源琦の「東都手遊図」は玩具のフクロウを描いているのですが、周りには犬の玩具や鼓なども描かれています。フクロウには福々しい模様が描かれ、おめでたい雰囲気がありました。ちょっととぼけた顔も良いw
そしてもう1点は小林古径の「木兎図」で、これは枝にとまるミミズクが描かれたものです。黄色い目とふっくらした体が可愛くて、濃淡で描かれた羽根がふわふわした質感となっていました。


<展示室 7 | 花鳥図Ⅳと新寄贈作品 |>
最後の部屋も花鳥画です。ここは狩野派と応挙という豪華な部屋となっています。まず狩野探幽の「芦鷺図」は雪の積もる葦とサギの群れが描かかれています。薄い墨で外側をぼかす外隈の技法を使っていることもあり柔らかい印象を受け、幽玄の世界が広がっていました。
応挙は今回のポスターにもなっている「蓬莱山・竹鶏図」など3点がありました。蓬莱山・竹鶏図は三幅対で真ん中に蓬莱山、右に雄鶏、左に雌鶏という珍しい画題です。左右を見比べると雄は凛々しく、雌は優美な印象となっていて、背景にある竹も雄は真っ直ぐで雌は緩やかなカーブとイメージに合った表現となっていました。
また、この近くにあった双鶴図も遠近感など応挙らしい特徴と正月に相応しいおめでたい画題となっていて目を引きました。他に小さな襖絵の「梅花双鶴図小襖」や、三井高福による応挙風の「海辺群鶴図屏風」なども見どころと言えそうです。

最後に三井家の人が描いた作品や最近寄贈された作品などが数点展示されていました。



ということで、充実のコレクションを楽しむことができました。特に「雪松図」は流石の存在感です。もう会期も残り少なくなっていますので、気になっている方はお早めにどうぞ。



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