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山のホテルと箱根神社の写真 (箱根編)

今日は写真多めです。今回の箱根旅行では岩崎小彌太男爵別邸(の跡地)の「山のホテル」に泊まりました。また、山のホテルの近くにはパワースポットとしても有名な箱根神社(九頭龍神社)もあるのでそれと合わせてご紹介しようと思います。


まずは山のホテルから。芦ノ湖から見えるこの建物が「小田急山のホテル」です。
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 公式サイト:山のホテル
 参考サイト:じゃらんでのクチコミ

海賊船の船着き場まで送迎バスが出ているのが便利で利用しました。街からはほんの少し離れていますが歩けない距離ではありません。

山のホテルの近くには箱根駒ヶ岳ロープウェーや箱根園水族館などもあります。
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元箱根港とは逆方面で、むしろこっちのほうがやや遠いかな。今回は寄りませんでした。

こちらが山のホテルの近影。
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元々この地には三菱財閥の創始者である岩崎彌太郎の甥で4代目社長の岩崎小彌太の別邸がありました。その別邸はわずか1年で燃えた後、ジョサイア・コンドル設計の洋館が建てられたものの、それも関東大震災で崩壊、その後にジョサイア・コンドルの設計を活かした木造の建物として建て直され、その後も焼失や改築がありスイスのロッジ風の時代もあったようです。(この時点でジョサイア・コンドルの設計部分も燃えた) そして現在のこの建物になったのは1978年なので、そんなに古くはない建物だったりします。とは言え、格調高い雰囲気の洒落た外装です。

こちらは昭和24~33年頃の山のホテルの写真。今でこそ私のような庶民も行けますが、この頃は高級ホテルで庶民にはかなり敷居が高かったと思われます。
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もうこの頃にはジョサイア・コンドルの設計の部分は無かったようです。ジョサイア・コンドルの建物も結構失われてて凄く勿体無い話です。
 参考記事:三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」 (三菱一号館美術館)

館内には成川美術館の所有する絵画も展示されていました。
鳥山玲「希翔」
DSC08888.jpg
羽ばたく鶴たちが幻想的に表されています。
 参考記事:戦後日本画の山脈 第一回 【成川美術館】(箱根編) 

川瀬巴水がこの地を描いた作品もありました。岩崎小彌太に依頼されて描いたようです。左は「ベランダより見るつつじ庭」 右は「芦ノ湖の夕富士」です
DSC08898.jpg DSC08902.jpg
この地はシャクナゲやツツジの庭園も有名で、それを描いているようです。川瀬巴水らしい叙情性がある作品で好みでした。
 参考記事:馬込時代の川瀬巴水 (大田区立郷土博物館)

絵が並んでいる辺りは地下まで吹き抜けになっていました。地下にはカフェ兼バーがあって、夜には演奏会も開かれます。
DSC08924.jpg
ここには写っていませんが暖炉もあって風情がある空間です。

私が行った日はロシアの音楽をやっていました。ほとんど知らない曲でしたが数曲程度は誰でも知っている曲をやってくれました(テトリスで有名なトロイカとか)
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聞くのは無料ですが、基本的には何か頼むのが筋かなw 

一応、部屋はこんな感じ。すっきりして標準的なお部屋です。
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窓からは芦ノ湖を一望できるます。
ちなみに、部屋にもシャワーはありますが大浴場が別にあります。大浴場は勿論温泉で、サウナ、室内温泉、露天温泉の3つがありました。泉質は良さそうですが、お風呂は特に凝ったところはない普通の大きな浴槽かな。

せっかくなので夕飯はホテルでいただきました。
DSC08944.jpg
和食と洋食が選べたので和食にしました。このレストランからも芦ノ湖が望めます。ちょうど夕暮れ時で、夕日は山に隠れて見えませんが美しい空と湖を見ながら食事することができます。

前菜はこんな感じでした。
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細かいことは忘れましたが、見た目も華やかでどれも美味しかったです。戌と書かれていたのは戌年の1月に行った為ですw

この後も色々料理が出てきたのですが、器も箱根を意識したものが出てきて面白かったです。
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こちらは歌川広重の「東海道五十三次」の箱根を金蒔絵風にしたもの。連れのは小田原だったのでいくつか種類があるのかもw


と、こんな感じでホテル自体の歴史やアートに関する品もあって楽しめました。そして次の日の朝はすぐ近くにある箱根神社(九頭龍神社)に寄ってから美術館めぐりへと出かけていきました。

 公式サイト:箱根神社

こちらが神社の湖面側の入口近く。この神社は古くからの山岳信仰と関係があるようで、御祭神は、箱根大神(ニニギノミコト、コノハナサクヤヒメノミコト、ヒコホホデミノミコト)を祭神としています。
DSC08992.jpg DSC08997.jpg
かなり広い神社なので、まずは本殿を目指しました。この階段が結構キツイw

こちらは本殿前の門
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この神社が出来て1250年くらい経っているそうですが、建物は再建されたのかそれほど古さは感じませんでした。本殿とは別に宝物殿なんかもありますが、今回は時間の関係で寄りませんでした。

こちらが本殿。
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割と何にでもご利益があるようで、関東屈指のパワースポットと呼ばれているようです。何しろ鎌倉幕府よりも前からあるので源頼朝も訪れたことがあるのだとか。

こちらは本殿の隣にある九頭龍神社新宮
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元々は人々を苦しめていた龍がいたそうですが、箱根大権現に奉じた萬巻上人によって調伏され 龍は懺悔して龍神となったのがこの神社の祭神のようです。特に縁結びに効くそうで、熱心にお願いしている人たちが多かったです。ちなみに近くには安産杉なんてのもあります。

最後に、湖面に面した平和の鳥居も観てきました。(階段の昇り降りがキツイので上から観ただけですがw)
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これは成川美術館などからも見える鳥居の裏側です。箱根のシンボルの1つって感じです。


ということで、箱根神社に参拝してご利益を少し頂けたような気がしました。凛とした空気感の漂う場所なので、それだけでも満足です。箱根のシンボル的な神社ですので、一度は訪れたい場所ではないかと思います。


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【箱根ラリック美術館】の常設 2018年1月(箱根編)

前回ご紹介した箱根ラリック美術館の企画展を観る前に、常設も観てきました。

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【公式サイト】
 http://www.lalique-museum.com/museum/guide/index.html 

【会場】箱根ラリック美術館
【最寄】なし

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが快適に鑑賞することができました。

さて、こちらの美術館はその名の通り、アール・ヌーヴォーやアール・デコの時代に活躍したルネ・ラリックが制作した作品を専門にコレクションしています。(ルネ・ラリックについては以前の記事に詳しく書いているのでご参照ください) そのコレクションは1500点にも及ぶそうですが、常設ではそのうち230点を模様替えしながら展示しているようです。以前にもこの美術館を2回訪れたことがあるのですが、今回は観たことがない作品も結構あったように思いますので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。
 参考記事:
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想前編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想後編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 2回目感想前編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 2回目感想後編 (国立新美術館)
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<1 ラリックの仕事場から>
まず入口付近には装飾パネル「花束」があります。これは中々の大作でアール・ヌーヴォー的な優美さのあるパネルです。そしてその後にラリックのアトリエを再現したコーナーがあり、ラリック自身がデザインした机や椅子、装飾原案などが展示されています。ここでの見どころの1つはアトリエの扉で、重厚かつラリックらしい意匠となっています。また、ここには船の形をしたガラスの置物(センターピース?)などもあり、自らのアトリエを自らで作っていたのが伺えました。

少し先にはアール・デコ博覧会の噴水塔で使われた像のうちの1つが展示されています。これは泉の精メリトを表した像で、流線型の長い体躯が非常に優美でした。他にもバレエ・リュスの演目「火の鳥」に触発されて作った「火の鳥」というセンターピースも見どころで、これは下から赤いランプを照らして赤く燃える鳥のように見せる展示方法が良かったです。この美術館では実際にランプをつけて展示している作品がいくつかあり、輪郭に沿って光る様子など本来の姿が分かるようになっています。
 参考リンク:公式サイトの写真(アール・デコ博覧会)


<2 世紀末パリ アール・ヌーヴォーの彩り>
こちらはアール・ヌーヴォー時代の宝飾品などのコーナーです。ラリックは当時の大女優サラ・ベルナールの為に装飾品や舞台衣装を制作したり、オペラの演出家と交流して戯曲や楽譜の装飾本なども手がけたそうです。ここにはトカゲの柄のついたステッキや、ラリックの展示が賑わう様子を描いたヴァロットンの版画、香水会社のコティ社のプレートや香水瓶、サラ・ベルナールのメダルなど様々な品が並んでいました。アール・ヌーヴォー時代に既に大きな成功を収めていた華やかな印象の品々ばかりです。
 参考リンク:公式サイトの写真(ヴァロットンの版画)


<3 ガラスの革命>
こちらは香水瓶や花瓶、手鏡などが並ぶコーナーです。特に沢山の香水瓶があり、先日ご紹介したシダをモチーフにした香水瓶や側面に☆型のガラスがはめ込まれた球体の「ダン・ラ・ニュイ」の香水瓶なんかもありました。松濤美術館で見た時のよりちょっと小さめだったかな。
 参考記事:ルネ・ラリックの香水瓶 -アール・デコ、香りと装いの美- (松濤美術館)
また、この近くには浴室のパネルを一面に展示していました。棕櫚を単純化したデザインで高級感がありました。


<4 ラリックの宝飾>
続いては宝飾品のコーナーです。ここにはペンダントやコサージュ、バックル、チョーカーなどが並んでいるのですが、そのモチーフがトンボやバラといった動植物となっているのがラリックならではの面白さです。さらに戦っている男たちを表しているものなんかもあって、発想の豊かさを感じました。素材についても様々で、オリーブをグリーンオパールで表したり、省胎七宝やバロック真珠、金などをモチーフに合わせて自在に組み合わせている様子が分かります。

またここには♊みたいな形の門扉もありました。曲線が組み合った感じが美しいと共に重厚感があります。さらにこの辺にはデザイナーのジャンヌ・パキャンの家のダイニングを再現した部屋があり、ダイニングなのに中央にウエディングケーキみたいに4段くらいに重なった噴水があります。噴水の周りにはぎっしり詰まった果実を表したガラス装飾もあって、個人の邸宅にしては豪華過ぎる雰囲気でした。
 参考リンク:公式サイトの写真(噴水)


<5 ベル・エポックの部屋>
ここはベル・エポック(古きよき時代)と呼ばれた第一次世界大戦前の頃のパリにあった邸宅の一室を移築・再現コーナーとなっています。寄せ木のテーブルや椅子、ランプ、ステンドグラス、ミュシャやシェレのポスターなど華やかだった時代の余韻を感じることができます。また、ここでは睡蓮の池と呼ばれる庭も観ることができるので、ここでしばらく外を見ながらゆっくりすることができました。


<6 ラリックのデザインを紐解く>
この章から2階の展示となります。ここはユニークなデザインの作品が並ぶコーナーで、4羽の蝉が組み合った香水瓶や、蝉が細長くなったペーパーナイフ、側面に金魚が浮き出たカラフルな花瓶のシリーズ「台湾」が色違いで数点、コウモリが羽根を広げた簪、犬や鳥の形をした灰皿など、ちょっと変わった遊び心が感じられる品々となっていました。


<7 室内装飾「雀」>
こちらは1929年に発表された室内装飾「雀」が展示されていました。暖炉のある八角形の部屋の壁(のいくつかの面)に木々にとまる金色のスズメたちが表されています。かなりの大型作品で木々の部分は象嵌されているのかな? これもこの美術館でしか体験できない作品だと思います。
 参考リンク:公式サイトの写真(雀)


<8 アール・デコ デザインの精華>
こちらはラリックの花器が並ぶコーナーです。ラリックは生涯に200点ほどの花器を作ったそうで、そのうち16点がここに展示されています。まるでオパールのような乳白色のオパルセントグラスを使ったバッカスの巫女たちを表した花器では10体近く側面に浮き彫りになっていて、非常に優美な印象を受けました。また、スカラベがぎっしり表されたものや、大きな魚の花器なんかもあってちょっと花器とは思えないものもありますw ここでのお気に入りはやはり渦巻きが深く側面に刻まれた「旋風」で、シンプルながらも力強い表現が面白いです。
他にも熱帯魚?が表された作品なども面白かったです。
 参考リンク:公式サイトの写真(バッカスの巫女たち)


<9 テーブルウェア デザインを生活へ広げる>
続いてはテーブルウェアのコーナーです。ここには食卓やレストランを飾った品が並び、観音開きのバーキャビネットなどがありました。このキャビネットは内側に鏡と幾何学的なガラス装飾があり、開けると美しい空間が広がる工夫が面白いです。また、ルネ・ラリックの娘スザンヌが手がけた「ニコル」というティーセットも目を引きました。ニコルはスザンヌの娘の名前で、この辺は以前来た時にやっていた企画展で見た記憶がありました。


<10 ジャポニスムとその時代>
常設の最後は日本の芸術から着想を得た作品が並ぶコーナーです。ここで最も目を引くのはこの美術館のシンボルとも言える「蝶の女」という装飾柵で、蝶の羽根をもった女性像が表されています。その羽根は身体の何倍もの広がりがあり、華やかで流麗な印象を受ける傑作です。こうした自然をモチーフにした作風はラリック自身も得意だったので日本の影響だけではないと思いますが、根底には自然への畏敬という点で繋がっていると思います。
他にも皮と木で出来た屏風や大きな蝉の形の容器、蝶の羽根を持った女性のブローチなどもあり、優美かと思えば奇想の作品だったりと幅広いデザインが楽しめます。
 参考リンク:公式サイトの写真(蝶の女)

また、ラリックとの直接的な関わりは分かりませんが、ここには浮世絵やキセル、印籠、ジャポニスムの火付け役である「芸術の日本」なんかも展示されていました。これは参考展示なのかな?

その後にはカーマスコットのコーナーがあります。これは車のエンブレムの辺り(ボンネット上の先端部分)に取り付けるガラス装飾で、鷲の顔や鶴が飛ぶ様子などスピードや滑空を思わせる品が多いです。その中で「スピードの女」という頭に両手を組んで胸を突き出すポーズの像があるのですが、これが最も華麗な装飾で好みでした。他にもハウンド犬や、毛がなびいているような女性の頭部のエンブレムなんかもあります。

常設の最後にはブローチのコーナーもありました。「マリの女」という作品はユリの花が髪の毛のように表されている面白いデザインでした。
常設はここまでで、その先にはミュージアムショップと企画展の部屋があります。


ということで、ラリックの独創的かつ優美な作品の数々に出会うことができました。この美術館はラリックの作品だけでなくカフェやオリエント急行といった付属の施設も含めて楽しめるところですので、ガラス工芸などが好きな方は箱根にお出かけの際にでもチェックしてみてください。


おまけ:
美術館の前にはクラシックカーとカーマスコットが展示されています。
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マスコットのアップ。
DSC09480.jpg
これはちょっとスピードを感じないかなw 行く度に違うのを付けているので定期的に入れ替えていると思います。


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ラリックの花鳥風月  ジュエリーと、そのデザイン画 【箱根ラリック美術館】

前回ご紹介した箱根ラリック美術館のオリエント急行でお茶した後、美術館の常設と企画展を観てきました。実際には常設を先に観たのですが、先に企画展をご紹介しておこうと思います。

DSC09487.jpg

【展覧名】
 ラリックの花鳥風月  ジュエリーと、そのデザイン画 

【公式サイト】
 http://www.lalique-museum.com/museum/event/detail.html?id=37

【会場】箱根ラリック美術館
【最寄】なし

【会期】2017年12月23日(土)~2018年04月01日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はルネ・ラリックの手がけた様々な宝飾品の原点とも言えるデザイン画を実物と見比べる内容となっています。この美術館は常設が主な見どころであって企画展は1室だけで行われている小展示といった感じですが、ラリックらしい凝った意匠の装飾とその制作の様子を合わせて観ることができました。いくつかのコーナーに分かれていましたので、簡単に各コーナーごとにご紹介しようと思います。


<1 ラリックの創作の原点>
まずルネ・ラリックについてですが、ラリックはシャンパーニュ地方のアイ村で生まれ幼い頃から豊かな自然の中で育ちました。森や野原を散歩しては自然を観る目を養っていたようで、それは大人になってからのデザインでも活かされています。
 参考記事:
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想前編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想後編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 2回目感想前編 (国立新美術館)
  生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 2回目感想後編 (国立新美術館)
  ラリック家の女神たち (箱根ラリック美術館)
  箱根ラリック美術館 館内の案内
  
このコーナーには鉛筆と水彩による絵が並び、木の芽や花などが写実的に描かれていました。花は角度を変えて描くなど、つぶさに観察していたことが伺えます。既にデザイン的な感じもしたかな。


<2 素材の追求 色彩をまとうジュエリーの制作>
続いては素材や色彩に関するコーナーです。
ルネ・ラリックは16歳で金細工師に弟子入りし22歳でフリーのジュエリーデザイナーとなりました。当時の宝飾品はは宝石の量で価値が決まっていたようですが、ラリックは伝統に囚われず自然の美しさを形にした宝飾品を目指し35歳で下請けの仕事を一切断り、独創的なジュエリー制作をスタートしました。

ここには蘭のブローチがあったのですが、これはまだ下請け時代の作品でダイヤがぎっしり使われています。とは言え、既にその形の面白さがありその後の活躍を予感させるものと言えそうです。また、少し先には花の形のデザインがありました。他にもアザミやトンボを組み合わせたものやスカラベなどのデザイン画と実際の宝飾品が並んで展示されているので見比べて観ることができます。象牙やエマイユ(エナメル)、バロック真珠、省胎七宝といった素材を使っていかにデザインに近い本物っぽい質感を出しているかがよく分かり面白かったです。そうした素材を自在に使いこなす技術も勿論素晴らしく驚かされます。


<3 デザイン画を読み解く>
続いてはデザイン画のコーナーです。ここには水彩で描かれたデザイン画があり、細かい書き込みで何かの指示もしているようです。白鳥、羽根、スカラベなどをモチーフにしたブローチのデザインを描いていたかな。ちょっと書き込みの解説が欲しかったw


<4 ラリックとジャポニスム>
続いてはラリックと日本美術に関するコーナーです。
ジャポニスムとは近代におけるフランスを始めとした欧州での日本趣味の流行のことですが、ここにはその火付け役となったサミュエル・ビングによる著書「芸術の日本」などが展示されています。また、ラリックによる菊をデザインした髪飾りのデザイン画もあり、日本的なモチーフに関心があったことが伺えます。
そしてこのコーナーで面白かったのが今回のポスターにも載っているツバメを2羽ずつ左右対(計4羽)にしたものを円形に並べたネックレスで、デザイン画と実物が両方ならんでいました。空を舞う様子が軽やかで非常に洒落た作品でした。羽根が非常に長くてかなり繊細な繋がり方をしているのですが、それが洗練された印象を与えてくれます。


<6 日本の心を探す>
ここは内容的にも4章と一体化している感じだったので、ちょっと区切りが分かりませんが、ポスターにもある緑のさくらんぼが付いている髪飾りなどがありました。へたの部分が細かいダイヤが連なっているなど豪華な作りで、こちらもデザイン画と見比べて観ることができます。形なんかは日本の簪そのものといった感じでモチーフも日本趣味と言えそうです。また、素材には鼈甲やエマイユが使われていて艷やかな印象を受けました。鼈甲なんて素材も日本っぽいかな。


<5 こだわりのジュエリー制作>
最後は制作に関するコーナーです。
ラリックは1898年頃に写真に夢中になったそうで、身近な自然を撮っていたようです。また、ジュエリー制作の際に白鳥の剥製を博物館から取り寄せて制作するなど、様々な方法で自然を観察して作品に取り入れていたようです。ここにはその白鳥の剥製とペンダントとデザイン画(今回のポスターに載っている作品)がセットで展示されていて、ラリックのこだわりの制作過程をダイジェスト的に観ることができました。特にデザイン画はかなり正確に描かれていて、その描写力と観察眼の確かさが歴史的な作家となった原動力と言えるように思いました。


ということで、小規模な展示でしたがラリックの嗜好や制作過程が分かるような内容となっていました。素材感や組み合わせの面白さなどはラリックの魅力そのものだと思います。ここの常設はさらに様々な作品が並んでいますので、次回はそれについてご紹介しようと思います。

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【箱根ラリック美術館】のオリエント急行 [LE TRAIN](箱根編)

今回も写真多めです。前回ご紹介した成川美術館に行った後、船で桃源台まで行ってそこからバスで箱根ラリック美術館へ行きました。ラリック美術館ではカフェとオリエント急行にも寄りましたので、先にそれについてご紹介しようと思います。

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 オリエント急行 公式サイト:http://www.lalique-museum.com/letrain/
 カフェ・レストランLYS(リス) 公式サイト:http://www.lalique-museum.com/caferestaurant/guide/index.html

この美術館とカフェについては以前もご紹介しましたが、1つ心残りがあってそれが冒頭の写真にもあるオリエント急行の車両を使ったカフェに行くことでした。このオリエント急行は事前に予約が必要で、中に入る時間と出る時間が決められています。今回はたまたま13時の回の予約が取れたので、先にレストランでお昼を済ませてから乗ることにしました。
 参考記事:箱根ラリック美術館 館内の案内

こちらは箱根ラリック美術館の併設のカフェ・レストランLYS(リス)です。
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奥にチラッとオリエント急行が見えているように、このレストランからも車両を観ることができます。

この日はランチプレート1950円を頼みました。
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ちょっと詳しいことは忘れましたが、いずれも美味しいので値段に見合った内容です。

トマトソースが掛かっているのはチキンで、緑色のは白身の魚(スズキだったかな)です。
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この後にオリエント急行でデザートを食べることになるので、ここではセットのみにしておきました。

こちらがオリエント急行(ル・トラン)の乗車券。飲み物とデザート込みで2100円です。飲み物は予約時に申請します。
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この日は10時~16時まで1時間ずつ7回の案内でしたが、たまたま13時と16時が空いていました。遅い時間は以前も空いてたので狙い目かも。先着順なので先に予約を取って先に美術館を観るのも良いかもしれません。

カフェの隣に小さな待合スペースみたいなのがあって、そこで待ちました(とは言えお昼を食べて時間調整してたのですぐでしたが。)待合スペースにはオリエント急行に関係するグッズのようなものもあり、アルフィーが使ったオリエント急行の形のギターなんかもありました。また、私が行った時はちょうど『オリエント急行殺人事件』の映画をロードショーしていたこともあって、映画のポスターなども展示されていました。
 参考記事:映画「オリエント急行殺人事件」(ややネタバレあり)

そして時間になるとこのオリエント急行とルネ・ラリックに関する映像が始まります。
DSC09430.jpg
箱根の狭い道を運んできた苦労なんかが分かります。ちなみにこの車両は以前にも日本に来たことがある日本に馴染み深い車両です。1988年にフジテレビが行った企画で、鉄道少年だった私も一大事件として覚えていましたw 日本とは車輪の幅も違うし車両の長さも違う、細かいことを言えば防火設備や電源も違ったりと相当苦労して実現した夢の企画でした。当時のことについてのwikipediaも面白いので参考に貼っておきます。
 参考リンク:オリエント・エクスプレス '88のwikipedia

映像を観終わったら予約順に名前を呼ばれて車内へと移動します。

そしてこちらがオリエント急行 プルマン車No.4158DE
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1928年にルネ・ラリックが室内装飾を手掛けたので、この美術館に相応しい車両です。白と青に黄色の帯の気品ある外観。

こちらは中の通路。
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外から見えるマークの部分も透かしとなっていました。

そしてこちらが客室内。大きく分けて2つの部屋がカフェスペースとなっています(席は決まっています)
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この内装は当時のものをそのまま使っている非常に贅沢な空間となっています。

座席のアップ。
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ライトだけは当時のレプリカのようですが雰囲気があります。

席に着くと飲み物とチョコタルトが運ばれてきました。
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私はコーヒーを頼んだのですが、多分3杯分くらいありました。味もやや酸味強めで非常に美味しかったです。デザートも控えめな甘さで大人の味でした。

お茶を楽しんでいる間はスタッフの方がこの車両についてのエピソードを語ってくれます。質問も受け付けてくれるので、色々と聞いている人がいました。私は専ら写真を撮るのが忙しかったですw

こちらは椅子のアップと床のアップ。絨毯はトルコ絨毯です。
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細かいところにまで見事に装飾されています。椅子の中には藁が入っているのだとか。

こちらは車両の床付近に配置されたパイプ。
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これは暖房用です。ちなみにこの暖房はそれほど暖かくないようで、前述の企画で日本に来る際 ロシア(ソ連)の冬の寒さには対応できないということで冬は避けたようです。なお、冷房は無いようなので日本の夏も無理ですねw

そして、やはり美術好きとしては気になるのはラリックのデザインです。こちらは天井のランプシェード。
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これもラリックによるものだそうです。割とシンプルでラリックっぽいというよりは一般的なアール・デコ風に思えます。

こちらはあちこちにあったラリックの彫像。
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同じ種類のものもありますが、ぶどうのバリエーション等も含めて11種類あるようです。

こちらも彫像。酒の神バッカスの従者・巫女たちが表されています。当時の姿のままです。
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輝いて見えるのは裏面に水銀を貼っている為です。夜はスタンドに照らされてオレンジ色に染まるようです。

こちらは帰り際に通った個室のようになっている部屋。
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こちらの装飾パネルはルネ・ラリックの娘のスザンヌが手がけたようです。花束をガラスで表現した可憐な作品です。

カフェタイムを含めて40分間の乗車でしたが本当にあっという間に終わってしまった感じでした。

ということで、レストランとオリエント急行を楽しんできました。特にオリエント急行は念願だったので非常に楽しめました。お茶も美味しかったですが、そんなことを気にしている暇がないほど写真を撮ったりあちこちを観てきて、連れに落ち着きがないと言われたのもいい思い出になりましたw この後、もちろん箱根ラリック美術館の展示も楽しんできましたので、それについてもご紹介しようと思います。


おまけ:
オリエント急行は箱根まで行かないと乗れませんが、北斗星のカフェなら埼玉の東川口で乗ることができます。
 参考記事:ピュアヴィレッジなぐらの郷 グランシャリオ 【東川口界隈のお店】


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  箱根ラリック美術館の常設 2018年1月 箱根編
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戦後日本画の山脈 第一回 【成川美術館】(箱根編)

今回は写真多めです。引き続き箱根編で、今日は元箱根港のすぐ側にある成川美術館についてご紹介しようと思います。この美術館では撮影可能となっていましたので、写真を使っていこうと思います。

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【展覧名】
 開館30周年記念展 戦後日本画の山脈 第一回 

【公式サイト】
 http://www.narukawamuseum.co.jp/

【会場】成川美術館
【最寄】なし

【会期】2017年9月15日(金)~2018年3月15日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この美術館は以前にもご紹介しましたが、元箱根港から徒歩1分くらいのところに入口がある美術館です。日本の近代作家のコレクションが充実していて、大型作品も結構あります。今回はたまたま開館30周年記念展をやっていて、見ごたえのある作品が数多く並んでいました。冒頭にも書いたように撮影可能となっていました(以前は撮影できなかったと思います)ので、写真を使って気に入った作品をご紹介していこうと思います。

 参考記事:
  【成川美術館】の案内
  季節風 【成川美術館内のお店】


<第1室 現役作家の代表作>
まずは現役作家の代表作のコーナー。最初から見どころと言える作品が並んでいました。

竹内浩一 「艶」
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猫の表情はたまに哲学者みたいに凛々しいですが、これはそんな瞬間に見えました。佇まいに気品があります。

平松礼二 「日本の新しい朝の光」
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こちらは東日本大震災の後に描かれたそうで、富士山に献花する意味が込められているようです。日本らしいモチーフと琳派や浮世絵へのオマージュが感じられ、非常に見応えがありました。

米谷清和 「雪の日」
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これを観たのが2018年1月だったこともあり、つい1週間前に降った大雪の光景を思い出しました。都会に雪という取り合わせや橋脚の大胆な構図も面白い。

平岩洋彦 「白景」「秋の渓」
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実に見事な2点の大型作品。どちらも季節感のある渓流の光景で、自然への敬意や美しさが感じられます。細かいところでも秋草が優美に描かれていたりしてしばらくじっくり観てきました。


<第2室 女性画家を含む現役作家の名作>
続いても現役作家のコーナー。こちらには女性画家の作品もありました。

森田りえ子 「秋蒼穹」
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4曲1双の屏風で非常に目を引きました。華やかな花々がリズミカルに配置されて色の取り合わせも綺麗です。近くで観ると細やかなので写真だとちょっと伝わらないかな。

吉澤照子 「刻」
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すすき野に風が吹き渡るような光景が儚くも懐かしいような印象をうけました。伸びやかなすすきが1本1本描かれているのも驚きです。


<第3室 物故作家の輝き>
3室からは2階です。こちらは既に他界された画家のコーナー。巨匠の作品もズラリと並んでいました。

加山又造 「猫」
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私の大好きな加山又造の作品もありました。猫はシャム猫で、花は牡丹です。猫の毛並みや花びらの質感などが見事です。柔らかい表現が多い絵ですが、青い猫の目のおかげで全体的に引き締まって見えました。

加山又造 「中央公論 表紙絵原画」
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こちらは色紙大の表紙絵が何枚か並んでいたうちの一枚。どれもデフォルメぶりが優美で、色も雅な作品ばかりです。この辺は琳派の研究の成果じゃないかな。やっぱり加山又造の作品は好みですw

平山郁夫 「敦煌三危」
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こちらもかなりの大型作品で大パノラマが眼前に広がるような迫力です。敦煌のオアシスとしての側面や岸壁の遺跡なども垣間見える光景となっていました。

関口雄揮 「白い華」
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紅葉の中に白く輝くように立つ華が可憐で神秘的な作品。儚く幻想的で色彩の美しさが目を引きました。


<第4室 文化勲章受章作家を中心に>
4室は文化勲章受章者を中心とした作品が並ぶコーナーでした。

前田青邨 「豊公」
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豊臣秀吉を描いた作品で、背景に描かれているのは朝鮮半島の地図のようです。シャープな輪郭線でスッキリした印象に見えるかな。杓を持って座る姿はよく知られている秀吉像そのものといった感じでした。

杉山寧 「和」
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色の取り合わせが見事な鯉の作品。すい~っと泳いでいる感じも出ています。背景の水のマチエールが独特なのも杉山寧らしくて好みの作品でした。

松尾敏男 「秋行」
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猫の安らかな眠りと紅葉が秋のしんみりした雰囲気を出していました。淡い色彩が幻想的ですらあります。

山本丘人 「地上風韻」
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こちらは大型の作品。藤棚の下で静かに座る女性の後ろ姿が夢の中の光景のように思えました。写実的なのに儚さがあるのが面白いです。

麻田辨自 「花菖蒲」
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日本画だけど洋画のような趣のある作品。滲みを使った独特の表現と色彩が好みでした。


<研究室>
こちらは2階の奥にあった小部屋。こちらは会期が分かりませんが東山魁夷の「京洛小景」の12ヶ月セットの作品が展示されていました。

東山魁夷 「京洛小景より<一力>(1月)」
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祇園の壁を描いた作品。その色も良いけど、日本の生活の中にある幾何学性がこの1枚によく表されているように思いました。かなり気に入ったので、このシリーズの絵葉書も買いました。

東山魁夷 「京洛小景より<桂離宮書院>(8月)」
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このシリーズには建物以外にも色々あるのですが、とにかく建物が気に入りましたw こちらも桂離宮の魅力が詰まった1枚だと思います。

東山魁夷 「京洛小景より<落柿舎>(10月)」
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木の影が手前の柿の木の存在を教えてくれます。箕笠の円が直線の多い画面にアクセントになっていて非常に面白い。


<常設展示>
再び1階に戻って、常設も観てきました。常設は中国の秘宝や万華鏡などのコレクションが並びます。

常設のコーナーやカフェからは芦ノ湖を望めます。
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この日は残念ながら軽く雪がちらつく天気でした。晴れてると富士山も見えます。

この展望を望む足元にはこんな建材が使われています。
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よーく観ると化石が沢山含まれています1億5000万年前頃の軟体動物だそうです。模様かと思ったので驚きましたw

こちらが常設の中国の秘宝のコーナー。
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数は少なめです。

こちらは牙彫の「華夏文明」 近くで観るとヤバイw
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ぎっしりと楼閣や人々などが表されています。こんな大きな作品が1つの象牙なのかも分かりませんが恐るべし細かさで驚きです。

こちらは万華鏡のコーナー。花の万華鏡というのがあったので覗いてみました。
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花の本来の美しさとダイヤモンド状になっているのが綺麗でした。この発想も面白い。


ということで、今回も非常に見応えのある内容となっていました。今回は晴れていなかったので観られませんでしたが富士山と芦ノ湖を一望できる景色も見事ですので、箱根に行く際はこの美術館もルートに入れてみると色々楽しめるのではないかと思います。


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箱根の鉄道と周辺の写真(箱根編)

今回も箱根編です。今日は行き帰りで乗った鉄道や船なんかの写真をご紹介しようと思います。以前にも同様の記事を書いてますが、その時とはまた違った車両だったりするので改めて記事にしてみました。
 参考記事:鉄道の写真 【箱根旅行】

まず新宿からはロマンスカーで行きました。9時ちょうど発のVES(50000形)に乗りました。
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真っ白なボディが近未来的ですが、2005年運転開始なので結構前の車両です。VSEはVault Super Expressの略で、ドーム型の天井を持った超特急という意味です。設計はポンピドゥーセンターの設計チームにも参加した岡部憲明 氏によるもの。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 ポンピドゥー・センター(国立近代美術館)

こちらは一見するとビュッフェ車両に見えますがここでは販売をしていません。
DSC08773.jpg
代わりにワゴン販売をやってるのですが、せっかくならここで販売してくれれば昔の新幹線を思い出すんだけどなあw

窓が大きいのでしばらくここで車窓を眺めていました。
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まあ小田急はしばらくは住宅街が続くので厚木より先までは日常の光景とあまり大差ないかなw

ちょっとお客さんで埋まっていたので撮れませんでしたが、このVSEにはサルーンという個室があります。左に写ってるのが個室。
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この車両に乗るのであればサルーンか展望車に乗りたかったのですが、そんな簡単に取れる席ではなかったw しかしサルーンでなくても非常に快適な車両で、座り心地抜群です。2018年1月時点でロマンスカーで一番乗り心地が良いとまで言われています。

VSEのもう1つの売りは開口部の広い展望車です。
DSC08783.jpg
この日は空が澄んでいて正面に富士山が見えたりしました(私は2号車だったので、たまに観に行っただけですがw)

ちなみにこのロマンスカーは豪華な割に特別料金は箱根湯本までで890円です。更に新宿から箱根フリーパスも使えます。
DSC00113.jpg
箱根フリーパスは新宿からだと2日間で5000円程度です。箱根登山鉄道やバス、海賊船などが乗り放題なので私は余裕で元が取れました。
 参考リンク:箱根フリーパス

ちなみに帰りはこちら(LSE 7000形)でした。1980年から走るベテラン選手です。
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最も好きなロマンスカーはだいぶ前に引退したNSE(3100形)なのですが、これは先輩のNSEの面影があります。子供の頃はこれが最新だったので懐かしい限り。むしろ1987年にデビューしたHiSE(10000形)のほうが先に引退するとは意外でした。以前乗っておいて良かったw

こちらは車両が古いこともあって設備もレトロな感じです。
DSC00092.jpg
昭和の鉄道って感じが漂って楽しいw

LSEの展望者はこんな感じ。
DSC00085.jpg
当時はこの展望車に憧れました。こんな真っ暗で何にも観えない時間でも先頭には乗れませんでしたw

ついでに帰りに新宿で会ったEXE(30000形)VSEの1つ前の形で1996年にデビュー。
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これは展望ビューがないのであまり興味が湧きませんが乗ったことはあります。通勤用の特急みたいな感じ。2017年3月からはEXEαなんてのもデビューしています。
これでまだ乗ったことがないのはEXEαとフェルメール・ブルーと呼ばれるMSE(60000形)だけ! …と思ったら2018年3月17日に新しいGSEがデビューするようです。伝統を踏まえた近未来感がカッコイイ!
 参考リンク:「特急ロマンスカー・GSE」特設サイト

ロマンスカーに関してはこんな感じで、その後は箱根湯本駅で箱根登山鉄道に乗りました。

小涌谷駅で降りた時にすれ違った2000形。スイスのレーティッシュ鉄道と提携している関係でサンモリッツ号なんて呼ばれています。
DSC08798.jpg
こう見えて1989年デビューのベテランです。いつもピカピカで新車両みたい。

こちらは私が乗ってきた1000形。ベルニナ号と呼ばれています。
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1981年デビューで割と年季が入っていますが急坂もグイグイ登っていきます。途中、スイッチバックを3回行うのがこの登山電車の魅力の1つです。

こちらも小涌谷駅での1000形。
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2014年デビューでまだ観たことが無い3000形に会えるかなと思ったけど、会えませんでしたw 途中ですれ違ったのを見逃したのかなあ。

小涌谷駅からはバスで岡田美術館に行きました。前回ご紹介した通り岡田美術館はかなりのコレクションの量で3時間半もいた為、その後に彫刻の森美術館に行く予定だったのをやめて大涌谷までバスで行くことにしました(雪が多いしめちゃくちゃ寒かったのも彫刻の森を諦めた理由ですw) 本来なら強羅からケーブルカー、ロープウェイと乗り継いで行きたかったのですが、ロープウェイの点検で早雲山~大涌谷間が運休だったのでバスで直行となりました。しかし西武系列のバスだったので箱根フリーパスが使えないという悲劇w 岡田美術館から大涌谷まで400円くらいだったかな。

そしてこちらが大涌谷。
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2015年の6月に小規模な噴火があって、一時はどうなることかという感じでしたが2018年1月時点では落ち着いています。ちょうど草津のスキー場で噴火があった直後に行ったので、箱根も最近噴火したなとちょっと頭をよぎりました。 それにしても真冬に行った為か以前よりも水蒸気がえらい勢いに思えるのは気の所為でしょうか。硫化水素の香りも以前よりパワーアップしたような…。プラシーボ?
 参考記事:
  大涌谷の写真 【箱根旅行】 
  芦ノ湖~大涌谷の写真

ここに来た目的は勿論、黒卵。
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毎回食べきるのが至難だったりしますが、今回はお昼がうどんで少なかったので海賊船の中で2人で5個をあっという間に食べ切れました。

こちらは大涌谷の駐車場あたりから見えた富士山。
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こんなに綺麗に見えたのは冬の澄んだ空気のおかげかな。まさに心神といった威厳です。

大涌谷から桃源台まではロープウェイで行きました。
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今回は富士山がくっきり見えて芦ノ湖に夕日が映る素晴らしい光景が観られました。しかし逆光や反射がキツかったので良い写真は撮れずw

桃源台から最終の箱根町港行きに乗りました。冬は16時頃には最終になってしまうので注意。
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この海賊船は3隻いるのですが、この日も次の日もこのロワイヤルⅡ号でしたw

海賊船の船内の様子。空いているように見えますが、こちらは追加料金のかかる特別船室。
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ゴールデンウィークやシルバーウィークの時は混むのが嫌なので追加料金を払って利用したことがあります。今回は普通の船室にしました。今回はそれほど混んでもいなかったし。

普通の客室はこんな感じ。
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これはみんな下船した後に撮ったので誰もいませんが、今回はちょうど満員くらいでした。割とここからでも景色が楽しめます。

1階には売店もあります。
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あっという間に着くので使いませんでした。この海賊船は遊覧船ではありますが、芦ノ湖の端と端を結ぶ交通網としても便利です。


ということで、今回の旅行のテーマの1つは沢山の乗り物に乗ることだったので、特にVSEに乗れたのが良かったです。箱根に行くなら車より電車が一番です。 箱根2日目は3館ほど美術館めぐりをしたので、次回以降ご紹介の予定です。


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【岡田美術館】の常設 2018年1月(箱根編)

前回ご紹介した岡田美術館の特別展を観る前に、常設も観てきました。周辺の様子なども含めてご紹介しておこうと思います。

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【公式サイト】
 http://www.okada-museum.com/collection/
 
【会場】岡田美術館
【最寄】小涌谷駅

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
常設も空いていました。まあ観る分には概ね快適なのですが、この美術館には良い点と良くない点があっていくつか挙げるとこんな感じです。

[良い点]
 ・幅広い豊富なコレクション
 ・静かで広い鑑賞スペース

[良くない点]
 ・入館料2,800円
 ・カメラどころか携帯も館内持ち込み禁止(全てロッカーに預ける)
 ・館内に漂う硫化水素の香りw 作品はガラスケースの中だけど大丈夫??
 ・5階から庭に出られるものの一回出ると自動的に締め出され、戻る為には正面入り口まで坂を下って大回りする必要がある

まず入口で空港のようなセキュリティチェックを受けます。これは海外の美術館ではよくあるので別に気になりませんが、特に携帯持ち込みが駄目というのは本当に不便です。連れとはぐれると連絡手段がないので、旅行先で一番困るやつです。海外の人も多いのでルールが分からない人もいるのかもしれないですが、矮小なルールを守らせるのが一番大事みたいで、美術で社会貢献をするというよりは 少ない人数で商売してやろうという魂胆にしか見えません。(そもそも観光地にしてもこの入館料は異常です) 豪華なコレクションや立派な施設があれど根本的な部分が抜けていて、ちょっと運営方針には賛同できません。この辺はパチンコ・パチスロで財を成した会社だけに性悪説で考えているのでしょうか? 多くの人に美術を楽しんで貰おうとしているポーラ美術館とは対照的な美術館です。

と、運営方針に対してかなり不満があるので、運営に対しての満足度だけなら①くらいなんですが、コレクションは本当に豪華なのでそれに関しては満足度⑤くらいですw この愛憎入り乱れた所で間を取っての③としています。1階から5階まで(4階は特別展)広いフロアに数多くの品が並んでいましたので、各階ごとに振り返ってみようと思います。


<1階>
1~2階展示リスト

まず1階です。最初の辺りには埴輪や縄文土器が並んでいました。点数は多くないですが、そんなものまであるの?とちょっと驚きます。そしてその後には殷王朝時代の青銅器などが並んでいました。イメージとしては根津美術館の常設と似たような品々で、大きめの作品群が並んでいます。

その後は中国の陶磁器・青銅器、朝鮮の磁器などが並びます。大皿や大亀、唐三彩、俑陶、白磁、青磁などがズラッと展示されている光景は圧巻です。天目茶碗なんかもあって目を引きました。他にも元・明時代の色彩豊かな陶器や、越州窯青磁の特集なんかもあってダイジェスト的に中国の陶器の歴史を辿れるような感じです。清時代のコーナーでは景徳鎮が多かったかな。青花や五彩など様々な色の陶器があるのですが、気に入ったのは桃花紅の深いピンクの陶器や紅釉や藍釉といった落ち着いた濃い色合いの作品でした。「爐鈞釉双耳壺」という壺では側面に青い水滴が垂れているような模様もあったりして、色合いも模様も楽しめました。
さらに朝鮮の青花なんかもあって、1階だけでもかなりのコレクションです


<2階>
続いての2階は日本の陶器や横山大観の大作が並んでいました。まずは有田や古九谷、柿右衛門様式などがあり、小型から大型まで様々な陶器が並んでいます。古九谷はドギツイので私は好みではないのですが、柿右衛門なんかは中々良い品があるように思います。さらにガラスこコーナーでは珍しい薩摩切子なんかもあって、やや茶色がかった力強い色が輝くようでした。連れに魚子紋(ストロベリー・ダイアモンドカット)の説明をしてたらオバちゃんたちが横で聞いててちょっと恥ずかしかったw その他にも色ガラスなんかもあって、華やかです。

その後には揃いの陶器セットのコーナーや、2段のガラスケースにぎっしり入った染め付けなんかもあります。魚の形をしたお皿とか、緩い雰囲気の絵も含まれていてちょっと和みましたw また近くには金襴手様式のゴテゴテした壺なんかもありますが、この辺は好みではないのでさらっとw

そしてこの部屋には縦1m、横9mにも及ぶ横山大観の「霊峰不二」が展示されています。これは59歳の頃の作で、文楽座の座頭が病気から全快した時にその祝いとして制作されました。黒い雲間に白い頭の富士が描かれているのですが、余白が大部分でそれが雲と空に見えるような表現となっていました。これは雄大かつ神秘的で、とにかく作品の大きさが持つオーラがあるのでこの美術館に訪れたら是非見ておきたい作品の1つだと思います。

そしてその後には私の大好きな鍋島のコーナーがありました。鍋島は藩窯のため優れたデザインが多く、特に幾何学的なセンスが抜群です。色合いも上品だし本当に素晴らしい陶器です。ここもかなり満足できる内容でした。(割とこの2階はサントリー美術館の特別展で観たことがあるような品が多かった気がします。似たものかもしれませんが…。)

 
<3階>
3・5階展示リスト

既に1階2階とヤバイ品揃えでしたが、この3階も相当ヤバイですw まずは左右に金屏風がズラリと並ぶ部屋があります。その中には尾形光琳の「雪松郡禽図屏風」も含まれていて、この美術館はこの作品がコレクションの始まりとなったようです。金地を背景に雪をかぶった松の下に沢山の鴨の姿があり、金・緑・白の取り合わせが鮮やかです。単純化された水辺にも金で波を表現するなど光琳の魅力が詰まっている作品でした。他にも鈴木其一の「月次扇面図屏風」などもあり、この一角だけでもかなりのものです。

この先には小部屋があり、大人だけの春画のコーナーがあります。いずれも男女の性愛描写がダイレクトの無修正なわけですが、葛飾北斎や鳥文斎栄之といったビッグネームによる多色の鮮やかさは流石といった感じでした。

さらに進むと水墨画のコーナーです。雪舟風の久隅守景(狩野探幽の弟子)や伊藤若冲の鶏、森狙仙が得意とした猿を描いた作品、呉春の屏風なんかもあって江戸時代のオールスターみたいな感じです。さらに下村観山の神秘的な月を描いた作品もあり、コレクションの幅の広さに驚きます。ちなみに、この近くには数年前に再発見され大きな話題となった喜多川歌麿の「深川の雪」のコピーもありました。ちょっと前まで特別展で「吉原の花」と共に展示されててこれも話題となっていたのですが、138年ぶりの再開だったのだとか。その展示も観たかった…
 参考リンク:歌麿大作「深川の雪」と「吉原の花」―138年ぶりの夢の再会―

その後は、戌年ということで犬を描いた作品を集めた小特集となっていました。ここには円山応挙の犬を描いた作品(5点程度)があり、コロコロした子犬たちが非常に可愛らしいです。さらに弟子の長沢芦雪の「群犬図屏風」があり、こちらには洋犬らしき犬が13匹もいました。この展示は恐らく期間限定なので観られてラッキーです。他にも鈴木其一や下村観山、加山又造まであって本当に多彩です。

近くには名所絵ということで歌川広重の東海道五十三次、谷文晁の風景画なんかもあります。浮世絵や文人画まであるとは…。そしてこの階の最後には近現代の日本画もあり、土田麦僊、上村松園、鏑木清方、前田青邨、棟方志功、奥田元宋、片岡球子という錚々たる面々の作品が並びます。1点ずつではありますが良い作品ばかりです。割と見栄えがするコレクションが多いかな。地味な絵はあまりありませんw


<5階>
4階は特別展で、5階は仏教美術のコーナーです。ここは小部屋程度なのですが、慶派と思われる金剛力士像(阿吽が揃ってる)が並び、非常に躍動感がありました。また、近くには四天王の小像も揃っていましたが、小さいのに迫力がありかなり見応えがあります。他にも飛鳥時代や白鳳時代といったかなり古い時代の品もあって、小さい部屋でも濃密な内容です。

この5階から庭園とお食事処に抜けることができますが、冒頭に書いたようにここから出ると5階には戻れなくなり、外をグルッと回って1階まで戻らないとなりません。冬はめちゃくちゃ寒いので、うっかり薄着でご飯を食べに行こうとするとえらいことになるのでご注意。


<庭園>
この日、庭園は雪で埋まっていて閉鎖されていました。その代わり、お昼で開化亭というお店でうどんを食べました。ここも非常に値段が高い為か貸切状態でしたが、雪景色の庭を観ながら食事することができました。まあ、味は普通ですw

<足湯>
こちらは風神雷神図の壁画の前にある足湯。
DSC08813.jpg
別途入湯料がかかるようですが源泉かけ流しの温泉となっています。寒すぎて外にいるのが辛かったので私は入りませんでした。タオルは現地で売っています。


ということで、コレクションは凄いけど運営方針には不満という珍しいパターンの感想を持った美術館でしたw まあそのせいかお客さんは少ないのでゆっくり観られました。(食事、特別展と合わせて3時間半くらいいました) 予めそういう美術館だと割り切って行く分には非常に見応えのある内容だと思います。

おまけ:
この岡田美術館はユネッサンの目の前にあります。以前よく使っていたホテル小涌園の目の前でもあるわけですが、ホテル小涌園は2018/1/10で閉館しました。
DSC08819.jpg
バイキングとか良かったんですけどね。

高級ホテルになるとかニュースで見たかな。
DSC08820.jpg
老朽化も原因みたいなのでこの建物も見納めでしょうね。


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仁清と乾山 ―京のやきものと絵画―  【岡田美術館】(箱根編)

10日ほど前の土日に箱根に小旅行をして美術館めぐりをしてきました。今日から断続的に箱根編をご紹介していこうと思います。まず最初に訪れたのは小涌谷の岡田美術館で、「特別展 仁清と乾山 ―京のやきものと絵画―」を観てきました。

DSC08804.jpg DSC08808.jpg

【展覧名】
 特別展 仁清と乾山 ―京のやきものと絵画― 

【公式サイト】
 http://www.okada-museum.com/exhibition/

【会場】岡田美術館
【最寄】小涌谷駅

【会期】2017年11月3日(金・祝)~2018年4月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。この美術館は先に常設を観てから特別展に進むルートとなっているのですが、この特別展からご紹介していこうと思います。

さて、この展示は京焼の祖と呼ばれる野々村仁清と、京焼を発展させた尾形乾山の名を連ねたものとなっています。いずれも京都の風土に相応しい優美さのある陶器を残していますが、その個性はそれぞれ違います。今回は岡田美術館のコレクションの中からそうした両名の作品と、その周辺(主に琳派)の作品も含めて6章構成で展示されていましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。


<1 公家の文化と仁清>
まずは野々村仁清や当時の公家文化に関するコーナーです。野々村仁清は瀬戸で修行し陶器の技術を身に着けた後、京都の仁和寺の近くに御室窯を開きました。仁清という名前も仁和寺の「仁」と元々の名前である清右衛門の「清」を合わせたもので、当初はあまり有名ではなかったようです。しかし茶人の金森宗和の指導の元で作陶するようになると、金森宗和の茶会で仁清の作品が使われるようになり、名が広まっていったようです。この時代の京都は後水尾天皇が古典や茶の湯などの文化交流のサロンを開くなど文化的な後押しをしていたのもその背景にあるようで、ここには仁清の作品2点と当時の京都の文化を思わせる品が並びます。
 参考記事:
  仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ― 感想前編(東京国立博物館 平成館)
  番外編 京都旅行 金閣寺エリアその3

まずは洛外図屏風など江戸時代の京都を描いた作品や、後水尾天皇の宸翰若書などが並びます。修学院図屏風という作品では後水尾天皇が好みの焼き物を焼かせた窯が描かれていて、後水尾天皇の文化推進の様子が伺えます。
そして仁清は2点で、どちらも割と地味ですw 「錆絵星文茶碗」という茶碗は五芒星☆が2つ側面に描かれた器で、さらっと描いたような緩さがありました。仁清は色絵だけでなく銹絵も味わい深い作風ですが、この緩さにはちょっと驚きましたw

ここにはもう1つ見どころがあって、狩野探幽による2幅対の「風神雷神図」がありました。勢いよく風を出す風神と雷を落とす雷神がコミカルな感じで描かれていて、俵屋宗達から琳派へと伝わっていった題材を狩野派が描いていたというのも面白かったです。


<2 二条城行幸図屏風>
こちらは後水尾天皇が二条城へと行幸した時の様子を描いた屏風と絵巻が2点展示されていました。特に絵巻は壮麗な行列が描かれていて、着飾った人々が延々と連なる様子となっていました。この行幸は2年かけて準備されたそうで、二条城では狩野探幽が総指揮をとって行幸に備えたことで知られています。
 参考記事:【番外編】 京都旅行 二条城


<3 野々村仁清>
続いては仁清のコーナーです。と言ってもここでの仁清は4点となっています。
まず「銹絵雁香合」という雁の形をした香合が目を引きます。これもちょっとゆるキャラみたいな造形ですが、非常に可愛らしい雰囲気です。最近、三井記念美術館で観た仁清の鶏の香合を思い出しました。こうした鳥型の香合をいくつか作っていたのかも。
 参考記事:国宝 雪松図と花鳥 -美術館でバードウォッチング-(三井記念美術館)

打って変わって素朴な信楽焼の「信楽四耳壺」という作品もありました。あまり仁清っぽい華やかさを感じませんが、その分力強さを感じます。これは仁清だと言われても俄には信じられないほど意外でしたw 近くには同じく信楽で焼かれた他の作家(無銘)の作品もありました。

その後には仁清の「色絵輪宝羯磨文香炉」という側面に密教の法輪や三鈷杵が描かれた壺がありました。これは仁和寺に寄贈した壺らしく、モチーフが仁和寺に相応しいものとなっています。これは色絵ですが、意外とあっさりした印象を受けたかな。地に対してモチーフが控え目で色も明るすぎず調和した感じがありました。

もう1点の仁清は「色絵七宝文細水指」という作品で、これは側面上部に朝顔みたいな形の赤と緑のマークが交互に並んでいます。モダンな雰囲気で東南アジアの「安南」という陶器の影響を受けているようです。この展示の仁清の中ではこれが一番好みで、意外なところから影響を受けているのが面白かったです。


<4 尾形乾山>
続いてはもう1人の巨匠、尾形乾山のコーナーです。尾形乾山は琳派の中心人物である尾形光琳の弟で、仁清に学び京焼を発展させました。乾山の作品は仁清に比べてかなり多めにコレクションしているようで、ここは充実の内容となっていました。

ここは結構点数があったのですが、特に目を引いたのは乾山の「色絵立葵図香合」です。立葵の花を思わせる形となっていて、白、赤、緑といった色を使い目に鮮やかです。洒脱という言葉が真っ先に浮かんでくるような素晴らしい作品でした。

少し先には「秋草図扇面」という扇に描いた秋草の絵もありました。乾山は単に陶器を作るだけでなく絵も描いていたのですが、やはりどことなく兄の光琳と似た所があります。しかし乾山のほうがのんびりしているというか、情感ある素朴な味わいがあって親しみが持てる画風です。絵の才能もあって乾山の凄さが分かります。

そしてこの章の最後あたりにこの展示で最も目玉となる「色絵竜田川文透彫反鉢」がありました。これは多分何度か観ている作品だと思いますが、紅葉する木々を鉢の内側・外側 両方に描き、いくつか側面に穴が空いています。この穴が透かしてあることで陶器と絵が一体になった感じを受けます。また、この作品は特に色彩感覚に優れていて赤・黄・緑・白地といった色が響き合うように見えました。これだけでもかなり満足ですw
 参考記事:琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 (出光美術館)


<5 乾山とその周辺>
こちらも引き続き乾山のコーナーで、兄の光琳や 光琳が私淑した俵屋宗達・本阿弥光悦といった作品もあってかなり豪華です。

ここでまず見どころは尾形乾山の2幅対の掛け軸「夕顔・楓図」で、右幅に夕顔、左幅に楓が描かれています。デフォルメされた表現となっていますが、光琳にも似た画風で、琳派が得意とした滲みを使った「たらし込み」の技巧なんかも使われています。しかしやはり乾山は温和な雰囲気が漂っていて、色も形も柔らかめに感じました。

そしてここには予想外の素晴らしい品がありました。それは俵屋宗達と本阿弥光悦の共作「花卉に蝶摺絵新古今和歌集」で、絵を俵屋宗達 書を本阿弥光悦が担当しています。薄っすらと金と銀で竹や藤?、蝶などが描かれ、そこに流れるような本阿弥光悦の達筆が舞っているかのように書かれています。この2人の共作はいくつか観ていますが、これは掛け値なしの名品です。これが観られただけでも箱根に行った甲斐があったくらいw

その先には尾形光琳の六曲一双の屏風「菊図屏風」もありました。こちらは題名通り金地に菊が描かれているのですが、花の部分が立体的に盛り上がっています。菊の配置もリズミカルで、流石は尾形光琳と思わせるこれまた非常に素晴らしい作品でした。

また、この章には尾形光琳・乾山の兄弟の共作もあります。「銹絵白梅図角皿」という四角い皿で、絵を光琳が担当し明時代の詩を引用して林和靖の生き方への憧れが書かれています。この白梅図がかなり大胆で、抽象画に思えるほどのデフォルメぶりでモダンな雰囲気がありました。兄弟共作もよく観ますがこれも見どころだと思います。

そしてこの章の最後には俵屋宗達の「白鷺図」もありました。全体的に灰色がかった背景に、白鷺が描かれその白さが目に鮮やかです。輪郭を使わない没骨の技法が使われていることもあって柔らかい印象を受けます。また、白鷺が身をかがめるポーズも雅で、気品に溢れる作品でした。


<6 京の焼き物>
こちらは古清水焼きなどが並ぶコーナーです。17~19世紀の品が並んでいたのですが、割と仁清や乾山に似た雰囲気の作品が多いかな。2人の京焼への影響力の強さが感じられます。


<逸品室>
展示室の最後の方には逸品室という小展示スペースが2箇所あります。まず1つめは酒井抱一の「対に秋草図屏風」です。琳派を継承した抱一なので、今回のテーマとはちょっとズレているけどここにあってもそんなに違和感はありませんw この作品は襖絵だったようで、空に半月が浮かぶすすき野とが描かれています。月は現在は黒くなっていますが、元は銀色だったようです。すすきは細い線で伸びやかに描かれていて、月と合わせて幻想的な雰囲気がありました。かなり好みの作品です。

もう1点は伊藤若冲の「月に叭々鳥図」です。もはや江戸時代の京都でしか繋がって無い気がしますが、確かにこれは逸品です。モノクロの水墨で描かれた叭々鳥が、逆三角形となって急降下している様子が非常にスピードを感じさせます。目は真ん丸で口を開けていて、一見すると単純化・簡略化されていますが、羽根には筋目描きを使った様子なども見受けられます。また、月に見える部分は実は余白で、それ以外のところを薄っすらと色を塗って白を際立たせるという手法を用いていました。実は凄腕が随所にある名品です。


ということで、仁清は少なめで琳派が充実といった感じの展示でした。私は日本美術では琳派が最も好きなのでこれは嬉しい誤算ですw とは言え、仁清の作品をもっと観たかったかな。全体的には素晴らしい内容でしたので不満ではないけど、タイトルとはちょっと違った気がしますw
この美術館は更に驚きの常設もありますので、次回はそれについてご紹介の予定です。


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ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜 (感想後編)【東京都美術館】

今日は前回に引き続き東京都美術館の「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」についてです。後半は撮影可能なコーナーがあったので、一部は写真を使ってご紹介しようと思います。まずは概要のおさらいです。
 前編はこちら

DSC00152.jpg DSC00154.jpg

【展覧名】
 ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜 

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/brueghel/
 http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_bruegel.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年1月23日(火)~4月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前半は宗教や風景、冬景色、城、船などの主題のコーナーでしたが、後半は寓意や静物、農民を描いた作品などがならんでいました。


<第5章 寓意と神話>
この章では寓意と神話について取り上げていました。寓意と神話は17世紀に好んで描かれていたそうで、これを得意としたのがヤン・ブリューゲル1世と2世でした。
まず、ここにあったヤン・ブリューゲル1世の「ノアの箱舟への乗船」は沢山の種類の動物が描かれた風景画なのですが、2匹ずつ動物がつがいになって描かれ、背景にはノアの家族も描かれているなどノアの箱船のストーリーの通りである一方、動物の種類の多さは博物的な要素があると言えそうです。こうした1枚の絵にいくつもの種類の動物や昆虫、花などを詰め込むのもこの頃の特徴で、この展覧会では言及されていませんでしたが、この時代の博物的な関心を背景にしているのだと思います。近くには父の作品によく似たヤン2世の「地上の楽園」という作品もありました。
 参考記事:神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展 (Bunkamura ザ・ミュージアム)

その先にはヤン2世による「平和の寓意」「戦争の寓意」「嗅覚の寓意」「聴覚の寓意」「愛の寓意」といった寓意画が並びます。例えば「戦争の寓意」は戦争の神アレスと復讐の女神アレクトが空を舞う様子や、獣たちが山羊を食べたり鎧兜が転がっていたりと、あちこちに弱肉強食や戦争に関する品が描かれています。同様に「嗅覚の寓意」では画面中に花が咲き、裸婦と羽の生えた子(プットー?)が花束を渡す様子や麝香猫、犬など香りを思わせるモチーフが至る所にあります。「聴覚の寓意」も楽器だらけになっているなど、これでもかと連想させる品を並べているのは、先程の動物の絵と似た発想に思えました。

ここにはヤン・ブリューゲル2世による大地・水・大気・火の四大元素という古代ギリシャの思想を元にした作品が並んでいて、「大気」では様々な種類の鳥たち、「火」では鎧兜などの武具といったようにこちらも連想されるもので画面を埋め尽くしています。少し進むとアンブロシウス・ブリューゲル(ヤン1世の子供)による四大元素のセットなどもあったのですが、これもヤン2世とよく似た作品となっていて、一族でこうした寓意画を描いていたことが伺えました。

もう1つこの章での見どころは共作に関するコーナーで、この時代に巨匠同士の共作がよく行われたようです。例えば「豊穣の角をもつ3人のニンフ」はペーテル・パウル・ルーベンス(と工房)とフランス・スナイデルスの合作で、3人の女性(2人は裸婦)はどう観てもルーベンス風なので、恐らくそれ以外の部分がフランス・スナイデルスなのかな?なんて思いながら観ていました。キャプションを観ていると割と共作が多いことに気づくと思います。


<第6章 静物画の隆盛>
6章と7章のある一番上の階(2階)は期間限定(2018/2/18まで)で撮影可能となっていました。ここからは撮ってきた写真をいくつか使おうと思います。
まず6章では「花のブリューゲル」とも呼ばれるヤン・ブリューゲル1世の真骨頂とも言える花を描いた作品が並んでいます。

20180203 160242

ヤン・ブリューゲル2世 「ガラスの花瓶に入った花束」
20180203 160512
こちらは息子の2世の作品ですが、1世の特徴をよく受け継いでいるように思います。非常に写実的で暗闇を背景に明るい色彩で描かれています。花瓶の透明感なんかは写真のようですらあります。右下にカタツムリの姿があるのがちょっと可愛いw

ヤン・ブリューゲル1世/ヤン・ブリューゲル2世 「机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇」
20180203 160711
こちらは親子の共作(というか工房作) 今でこそこうした花の静物画は一般的になりましたが、この頃は絵画といえば神話や聖書、肖像画などが当たり前の時代なのでヤン・ブリューゲルによってこうした静物画が一般化されていった側面があると思われます。ヤン・ブリューゲルはチューリップをよく描いたのも特徴ですが、この頃はチューリップも世間で珍重されていたようです。ここに描いてある縞模様のは病気の症状だったりするようですが美しい花ですね。一方で左下に落ちてる花なんかはやがて朽ちるのを思わせます。

ヤン・ブリューゲル2世 「籠と陶器の花瓶に入った花束」
20180203 160743
こちらもチューリップやバラなど沢山の花が盛られています。割と転がってるのも多いし 虫なんかもいて、リアルさが増しているように思えるかな。一番下の台の影から茎が下に出ている描写が、画面から飛び出てくるような感覚になりました。

ヤン・ブリューゲル2世/フランス・フランケン2世 「彫刻と鍍金の施された花瓶に入った花束」
20180203 160929
この絵は共作で、ヤン2世が花を描きフランス・フランケン2世が花器を描いています。パッと観た感じ沢山の種類の花があって、これは全部同じ季節の花ではないのかも。割と枯れて見える花なんかもあります。花器は金属的な質感があって、戦う2人の姿が表されているのが分かります。そんな感じで描写自体はリアルですが、幻想的な雰囲気が好みでした。

ここには果実を描いた作品なんかもあります。また、ちょっと変わったコウモリと蝶を描いた作品もありました。

ヤン・ファン・ケッセル1世 「蝶、コウモリ、カマキリの習作」
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ヤン・ファン・ケッセル1世はピーテル・ブリューゲル1世の曾孫にあたる画家で、こうした虫の絵などを得意としたそうです。しかもこの絵は大理石に描いてあるのが珍しく独特の雰囲気です。これも博物的な側面があって、みんな羽根を広げて正面を向いているのが標本のように思えました(というか離れてみると絵ではなく標本が展示されているように見えます)


<第7章 農民たちの踊り>
最後は農民を描いた作品のコーナーです。ピーテル・ブリューゲル1世は「農民画家」とも呼ばれるほど農民を描いたのですが、それは宗教画が中心の時代で革新的な試みだったようです。こうした農民の絵は特に人気があったようで、息子のピーテル2世を始め、周辺の画家たちに多く描かれたようです。

ピーテル・ブリューゲル2世 「バグパイプ奏者と旅人のいる村」
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何か物語がありそうな場面を描いた作品。フランドル絵画は民俗画に当時のことわざを込めたりするんで、そういう類の作品なのかなと思いましたが詳細は不明。単にのどかな農村風景かもしれません。右下辺りが背景とつながってないのがちょっと気になりましたw

ピーテル・ブリューゲル2世 「聖霊降臨祭の花嫁」
20180203 161915
こちらは春の収穫を祝う農業祭。どこに花嫁がいるんだ??と思ったら真ん中あたりにいる子供が新郎新婦の仮装をしているようです。今も昔も変わらない子供が集まるお祭りの風景といった感じで、民衆をありのままに描いているように思いました。皮肉とかそういうのはあまり無さそう。

この辺にはマールテン・ファン・クレーフェというブリューゲルの追随者による民衆画の6点連作なんかもあって目を引きました。

ピーテル・ブリューゲル2世 「野外での婚礼の踊り」
20180203 162249
こちらは今回の目玉とも言える作品です。喧騒の様子がよく伝わる野外で行われている婚礼の踊りですが、肝心の新郎の姿はなく、新婦はテーブルで座っている女性のようです。新婦が悲しそうな顔をしているのが意味深ですが、この絵と似たピーテル1世の版画の銘文では新婦は妊娠していて踊ることができないことを暗示しているそうです。それにしても木の手前と奥では全然雰囲気が違っていて、奥の方の人達の中で踊りを観ているのは新婦だけっていうのも謎めいた感じに見えました。


ということで、展覧会まるごとブリューゲル一家という贅沢な展示でした。もう少しピーテル・ブリューゲル1世の作品やヤン・ブリューゲル1世の花の絵も観てみたかったですが、一族の中でも様々な個性があることも分かって面白かったです。2/18までは撮影できる場所もあるので、気になる方はお早めに行くことをお勧めします。


おまけ:
ブリューゲルのガチャなんてのもありましたw
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何処かで以前観た覚えがあるような…。 ちょっと高いので私は回しませんでしたが、キモかわいいキャラが入っていたりするようですw



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ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜 (感想前編)【東京都美術館】

この間の土曜日に上野の東京都美術館で「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」を観てきました。充実の内容で情報量も多い展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/brueghel/
 http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_bruegel.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年1月23日(火)~4月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
沢山のお客さんがいましたが、土曜日でもそれほど混んでる感じでもなく たまに人だかりができても少し待つ程度でほぼ自分のペースで観ることができました。とは言え、そんなのはまだ始まったばかりの頃に観たからだと思います。この内容だと会期末は混むのが必至なので、気になる方はお早めにどうぞ。

さて、今回の展示はブリューゲルという16~17世紀のフランドル地方に花開いた画家一族を取り上げた内容となっています。つい昨年にピーテル・ブリューゲル1世の代表作「バベルの塔」を東京都美術館で展示していたので記憶に新しい方も多いと思いますが(※当ブログは休止中だったので記事はありません)、ブリューゲルは写実あり 奇想あり 寓意あり と様々な作品を手がけ、それは子孫にも受け継がれていきました。この展示では何とピーテル・ブリューゲル1世から曾孫の代まで9人による約100点のブリューゲル一族の作品が並んでいて、まさに一族の展覧会といった感じです。しかもその作品の大半はプライベートコレクションという貴重なものです。
展覧会冒頭に一族各自の説明があります。以前はピーテル・ブリューゲル(父)とか(子)という表記が多かったですが、この展覧会では1世2世という表記になっていましたのでそれに合わせて記載しておきます。ざっくり特に有名な一族を挙げると

ピーテル・ブリューゲル1世
ヒエロニムス・ボスに影響を受けてボス2世と呼ばれた画家。ブリューゲルの繁栄の始まり。

ピーテル・ブリューゲル2世
ピーテル1世の息子。地獄のブリューゲルと呼ばれ、父の模作を多く制作。中産階級向けに薄利多売したので貧しかった。

ヤン・ブリューゲル1世
ピーテル1世の息子。花のブリューゲルと呼ばれ、風景・寓意・神話・花などを得意とした。聖職者や貴族を客にしたので裕福。

ヤン・ブリューゲル2世
ヤン1世の息子。父の模作をよく作った。風景や花などが多い。値段を欠かさず記録していた。次世代を育成した。

他にも5人ほど作品リストに名を連ねていますが、概ねこの4人を知っていれば大体OKだと思います。構成は主に主題ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに振り返ってみようと思います。


<第1章 宗教と道徳>
1章は宗教と道徳についての画題のコーナーです。まずブリューゲル一家の始まりであるピーテル・ブリューゲル1世についての説明があり、ピーテル・ブリューゲル1世は1545年頃にアントウェルペン(現在のベルギー)のピーテル・クック・ファン・アールストに弟子入りし、その娘と結婚したそうです。しかしその影響はみられないようで、むしろヒエロニムス・ボスに影響を受けていると考えられています。ボスと比較すると、ピーテル1世は当時の世相への批判や非難を目的とせず、多少の皮肉はあるものの より親しみをもって人々の営みを観察して忠実に描いたようで、この観察は後の一族・子孫へと受け継がれていきました。

まずはピーテル1世と工房による油彩画「キリストの復活」がありました。復活したキリストとその下でマリアたちにそれを告げる天使、周りには眠りこける墓守などこのテーマの定番の人物たちとなっています。光が強く明暗がくっきりしていて色鮮やかに感じるかな。解説によるとこれは素描とは左右逆転して描かれているのだとか。最初から見応えのある作品です。

その後も同時代の宗教画が並びます。ピーテル・ブリューゲル1世の師匠であるピーテル・クック・ファン・アールストと工房による「三連祭壇画 東方三博士の礼拝(中央)受胎告知(左翼)とキリストの降誕(右翼)」は観音開きになる窓型の作品で、キリストの誕生に関する3つの場面が描かれています。落ち着いた色彩で写実性もあって良い作品だけどブリューゲルの作風とは確かに違って見えるかな。

その先にはピーテル・ブリューゲル1世の版画「7つの美徳」から希望と節制の2点の出展がありました。この辺は結構よく観る作品だと思います。他にもボス風の作品(ヤン・マンデイン「キリストの冥府への降下」)やピーテル・ブリューゲル1世のバベルの塔を彷彿とさせる「バベルの塔」、 ボスの版画などもありました。

この章でもう1つ見どころは、ピーテル・ブリューゲル1世[下絵]/ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版]による「最後の審判」です。これも割と観る機会が多い作品ですが独特の怖さがあって、中央を境に左の天国と右の地獄(化物の口)へと進む大勢の人が描かれています。手前には奇妙は魚人間がいたりしてボスからの影響がよく分かる作風でした。


<第2章 自然へのまなざし>
続いては自然を描いた作品のコーナーです。ピーテル・ブリューゲル1世は1552年に2年ほどイタリア旅行に行ったそうで、当時のイタリアでは神話を元に理想的な人体を描くのが主流だったようです。しかしピーテル1世はそうした作品よりも帰り道のアルプスの景観を気に入ったようで、帰ってすぐに雄大な風景の版画下絵を制作しました。この頃の風景画は山や森・川に加えて砦や都市といった人工のものを配置した「世界風景」と呼ばれる形式が主流だったようです。

ここにはピーテル・ブリューゲル1世の「種をまく人のたとえがある風景」という作品があります。これは種を巻いても石の上では根が生えず、茨の合間では芽が伸びないといった例え話を風景の中に小さく描いています。川に船が浮かぶ雄大な景色を見下ろす光景のほうに目が行くので一見するとのんびりした絵に見えますが、信仰心が無ければ(石の上では)神の教えも根が生えないといったことを暗示しているようでした。1枚に自然や建物、さらに寓意なども込めていて「世界風景」の典型的な光景だと思います。また、同様にヤン・ブリューゲルの「水浴をする人たちのいる川の光景」もやや高い位置から遠くを見渡すような構図で、背景は遠くなるほど青みかかっているのも特徴です。かなり緻密に描かれていて非常に細かいのですが、人物よりも風景が主役のように見えるのも共通していると思います。(でも実は聖書の場面だったりします)
近くにはそうした形式の同時代の画家の作品も並び、ヤン・ブリューゲル1世からの影響力の強さも感じられました。ちなみに、このコーナーの絵はかなり緻密なので、じっくり観ると何時間でも観られると思います。しかし細かすぎて年配の方が音を上げてるのも目撃したので、単眼鏡などを持って行くのもよろしいかとw

この章の最後のあたりには画家同士の共作作品も並んでいました。ヤン・ブリューゲル1世(?)とルカス・ファン・ファルケンボルフによる共作「アーチ状の橋のある海沿いの町」では人物をヤン・ブリューゲル1世が描いて、それ以外をファルケンボルフが描いているようです。この絵では素人目には中々判別がつきづらいのですが、同様の共作「聖ウベルトゥスの幻視」はヤン・ブリューゲル2世による写しで一目でルーベンスっぽさがあって面白かったです。これは写しでなくオリジナルが観てみたいなあw


<第3章 冬の景色と城砦>
続いては冬景色と城砦を題材にした作品のコーナーです。ピーテル・ブリューゲル1世が冬景色を描いた「鳥罠」はピーテル・ブリューゲル2世によって40点程度コピーされたそうで、その功績によって冬景色は絵画の一分野と言えるほど広まったそうです。一方、弟のヤン・ブリューゲル1世も父が繰り返し描いた城砦をモティーフとして受け継ぎ、旅先で実際の城を描いたりしていたようです。(他の章でもそういう城が描かれた作品もあります) ここにはそうした主題の作品が並んでいました。

まず早速ピーテル・ブリューゲル2世による「鳥罠」が展示されています。
ちなみに上野の国立西洋美術館でもそっくりの作品があります。こちらは以前、国立西洋美術館撮影した時のもの
DSC_0822.jpg
多分、並べて観てもそっくりなんじゃないかと思います。これは、凍った川でスケートをして牧歌的な光景に見えますが、右下にある鳥を捕まえる罠がかなり意味深です。というのも、川には穴が空いていて、ここに落ちれば死んでしまう可能性もあるわけですが、そんな状況が鳥罠と似たようなもので、危険は常に日常の隣り合わせであることを暗示しています。また、こんなに精巧な絵をよく何枚も描けるものだと思いますが、これには写しのテクニックがあるようです。まずは原画をトレースをして、その輪郭線に細かい穴を開け、写す側にトレースを乗せて墨の粉を落とすと、点線で輪郭が写せるようです。あとはその点線をなぞれば おおよそのコピーの完成ということで、やけに正確な写しになっているのはそういう仕掛けのようでした。まあ、そんな豆知識が無くてもこの作品は良い絵なので、見どころの1つと言えると思います。
この他にもヤン・ブリューゲル2世による冬景色の作品などもあったので、地獄のブリューゲルだけでなくヤンの一族にもこの主題は引き継がれていったようでした。

城の絵の方はヤン・ブリューゲル1世の城の素描がいくつかありました。これはルーベンスとの共作のオーストリア公爵夫妻の背景の為のものらしく、正確な描写となっていました。この辺は画力の高さが伝わりますが特に好みというほどでもないかな。


<第4章 旅の風景と物語>
続いては旅の風景や船をモチーフにした作品が並ぶコーナーです。ブリューゲル一族の活躍したアントウェルペンは商業や金融で繁栄し、多くの人やものが集まるヨーロッパの中心地となっていたそうで、その繁栄を担っていたのは中産階級だったようです。彼らにとって船は貿易や富、未知の品々、情報などをもたらす冒険の象徴だったようで、好まれた画題でした。また、旅や行商隊も新たな画題となっていったようで、ここにはそうした作品がいくつかありました。

まずここにはピーテル・ブリューゲル1世が下絵を描いた「イカロスの墜落の情景を伴う3本マストの武装帆船」という版画があります。一見すると帆船を描いた作品ですが、右上の空中に2人の姿(イカロスとダイダロス)があり、イカロスは真っ逆さまに落ちていっています。何で船の絵にイカロスを描いたのか分かりませんが、ちょっと船の先行きに不安を覚えるのは私だけでしょうかw なお、この船もかなり写実的で船の構造まで分かるようでした。

この辺にはヤン・ブリューゲル1世による父の船を描いた作品のコピーもありました。この辺は素人目でどちらの作者か判別するのは困難ですが、こうしたモチーフも受け継がれていったことはよく分かります。また、ヤン1世は城と船を描いた作品なんかもあって、得意のモチーフの組み合わせとなっているのが面白かったです。

その後も版画が続きます。ヤン親子による農民や旅人のいる作品で、市場の様子なんかも描かれています。こうした作品は先程の風景画同様に遠くまで見渡せる光景を描いた作品もありますが、農民と同じ目線で描いた作品もあって、当時のその場に立っているような感覚になれました。こうした作品はこの後出てくる農民を描いた作品と通じるものを感じるかな。風俗画のように世相を伝えているようにも思えます。

ということで、長くなってきたので今日はこの辺までにしておこうと思います。前半から見どころが多く特に風景画なんかはブリューゲル一族の特徴が詰まった作品が多いように思いました。 後半には期間限定で撮影可能な場所もありましたので、次回はそれをご紹介しようと思います。

後編はこちら


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