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グレース・タン「Materials & Methods」 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】

2週間ほど前に銀座界隈をめぐった際に、ポーラミュージアム アネックスで「グレース・タン Materials & Methods」という展示を観てきました。この展示は既に終わっていますが、撮影可能だったので写真を使ってご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 グレース・タン「Materials & Methods」

【公式サイト】
 http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/archive/detail_201801.html

【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅

【会期】2018年1月19日(金)~2月18日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はマレーシア生まれのシンガポールの女性アーティストであるグレース・タン氏の個展となっています。この規模の展示は日本初ということで私も知らなかったのですが、この展示では初期から最新までの代表作35点が並んでいました。前述したように撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

展覧会の中にはこんな感じで小部屋がありました。
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マテリアルラボと書いてありますが、確かに実験室みたいな感じ。

こちらは地層のように様々な素材が積み重なっている作品。
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解説によると地球上の素材・顔料と構造方法を探る作品とのことですが、ちょっとその意味が理解できなかったかなw しかし1つの要素を反復するという手法はこの後の作品とも共通しているように思います。

こちらはタグやピンを重ねて作った作品。
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これだけ観ると単に沢山のタグを並べたように見えますが、この状態を観た上でこの先の作品を観ると一層楽しめます。

こちらが先程と同じタグを使って作られた作品。
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まるで菊などの花束のように見えます。既製品の無機物が有機的に見えるのが非常に面白い。

近くで観るとこんな感じ。
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やっぱりタグとピンですw 花のように見えるところも先程の素材を上手く組み合わせて作っているのが分かります。

こちらは無数のプリーツ(ひだ)のあるドレス。
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華やかな見た目もさることながら、これはフィボナッチ数列の概念を元にしているようです。フィボナッチ数列はいわゆる黄金比であり自然の中にも観られる不思議な配列なので、無意識に美しさを感じるのかも。

こちらは非常に見事な円形の幾何学模様を織り込んだもの。
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2次元を3次元にする発想や、幾何学的な美しさが面白いです。

こちらも球体をパターンで作った作品。
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よく見ると6角形を組み合わせています。6角形も自然の中に現れる形で、ハニカム構造と呼ばれ強度の高い構造として有名です。それが数学的な美しさをもって球体になっているのが面白い。

こちらは双曲幾何学という形を作品にしたもの。
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自然界ではウミウシやレタス、サンゴ礁などが双曲幾何学の形をしているようです。緑色なのはレタスっぽいかもw プリーツを使う辺りにはこの作家の個性も感じられます。

こちらは様々なプリーツが組み合わさってごっちゃになったような作品。
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これは秩序と無秩序のバランスを表現しているようです。確かに個々のプリーツは秩序があるけど全体的には無秩序に見えるw


ということで、繰り返しや幾何学性を用いた作風が特徴のアーティストでした。黄金比と呼ばれるフィボナッチ数列なんかは元々アートと親和性が高い為か、絶妙なバランスで面白かったです。「美」の正体は自然の中にある数学的な調和を無意識に求めているのものなのかも?と思わせ、数列を読み解けば美を要素分解できるのではないか等と考えながら観ていました。
もう終わってしまいましたが、今後も活躍が期待されるアーティストなので、また見る機会を楽しみにしたいと思います。


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ルドン―秘密の花園 (感想後編)【三菱一号館美術館】

今回は前回に引き続き、三菱一号館美術館の「ルドン―秘密の花園」の後編です。前半は4章までご紹介しましたが、今日は残りの5~8章をご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
 前編はこちら

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【展覧名】
 ルドン―秘密の花園 

【公式サイト】
 http://mimt.jp/redon/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅など

【会期】2018年2月8日(木)~5月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時00間分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
閉館ギリギリまで粘って観ていたこともあって、後半は特に空いていましたw 閉館との時間の勝負という諸刃の剣ですが、金曜の夜は静かに観られるチャンスだと思います。

さて、前半ではルドンの初期作品や今回の目玉であるドムシー男爵装飾壁画などをご紹介しましたが、後半にもグラン・ブーケを始めとして多数の見どころがありました。後半もルドンの人生などについて紹介しているところもありましたが、以前の記事に詳細に書いていますのでそちらもご参照ください。
 参考記事:
  ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
  ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)
  オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想前編(損保ジャパン東郷青児美術館)
  オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想後編(損保ジャパン東郷青児美術館)
  19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)


<5 「黒」に棲まう動植物>
この章は版画のコーナーでです。前回ご紹介したクラヴォーからの影響もありルドンは絵画、文学、ダーウィンの進化論、民間伝承、夢理論、催眠術など様々なものに興味を持ち吸収していった訳ですが、それは作品に活かされて奇想の動植物として表現されていきました。ここにはモノクロのそういった作品が並んでいました。

オディロン・ルドン 「預言者」
こちらは木炭で描かれた作品。木を背景に男か女か分からないフードを被った人が描かれていて、これはドルイドの巫女ではないかという説もあるようです。その曖昧とした感じが独特で 力ない亡霊のようにも観えるのですが、その割には目が大きいのが余計怖いw ルドンの不可思議な世界観がよく出ていると思います。なお、この作品でも木が出て来るためか作品リスト上では2章の扱いになっています。木とルドンという今まであまり気付かなかった関係性がここでも再確認できました。

オディロン・ルドン 「『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた」
こちらは山菜のゼンマイのような渦を巻く植物に目がついているような姿を描いた版画で、割とルドンの作品の中でも有名かな。それだけでもシュールで不気味なのですが、どういう訳か恨めしそうな上目遣いが印象的ですw 植物学者クラヴォーからの植物学的知識がこういう形で表現されるというのがルドンならではの魅力ではないかと思います。
 参考リンク:ルドンの「黒」

オディロン・ルドン 「『 起源 』 III. 不恰好なポリープは薄笑いを浮かべた醜い一つ目巨人のように岸辺を漂っていた」
こちらは目が1つしかない類人猿みたいなのがニヤニヤしている姿を描いたものです。ルドンの作品にはこうした目が1つしかないモチーフがよく出てきますが、こいつはどういう訳か歯を見せて笑っていて怖いというよりはキモかわいいw このタイトルからも察することができるように、ルドンは進化論にも興味があったのですが、猿が人間に進化したという話をルドンの解釈でこうした姿に反映したのかもしれませんね。

この辺にはゴヤ頌や悪の華といったシリーズの一部も展示されていました。ちなみに、ゴヤはルドンの生まれたボルドーで亡くなった画家ですが、陰鬱な版画を多く残していてどこかルドンと共通するものを感じます。勿論、ルドンはそれを知っていたので、ある意味ゴヤの生まれ変わりと言えるのかもしれません。
 参考記事:
  プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想前編(国立西洋美術館)
  プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想後編(国立西洋美術館)


<6 蝶の夢、草花の無意識、水の眠り>
こちらは色彩のある作品のコーナー。タイトル通り蝶や無意識などをモチーフにした作品がありました。また、この章に残りのドムシー男爵家の壁画装飾とグラン・ブーケも展示されています(構成上は4章)

オディロン・ルドン 「花と蝶」
こちらは4匹の蝶が花の周りを飛ぶ様子が描かれた作品です。4羽とも羽根が広がった姿で描かれ、舞い降りてくるというよりは標本が浮いているようにも見えるかな。赤い蝶などもいて色鮮やかですが、ややくすんだ感じがある為、幻想的な雰囲気となっていました。
 参考リンク:色彩への移行

なお、日本の洋画家の藤島武二がルドンの蝶の作品を模写したものがあるそうです。藤島の作風は色々変わっていますが、ルドンも研究していたとは意外でした。
 参考記事:藤島武二展 (練馬区立美術館)

この辺には人と花を描いた作品が並んでいました。国内の有名なコレクションなんかも並んでいるので見応えがあります。

オディロン・ルドン 「ステンドグラス」
巨大なアーチ状の窓を背景に、果物や花が宙に浮かんでいるように描かれた作品です。両脇には光背のある人物が2人描かれているので、その窓の大きさがよく分かります。こちらも色彩豊かですが、くすんだ感じでシュールな夢の中にいるような雰囲気が出ていました。花のモチーフや色の取り合わせだけなら華やかになりそうなのに、そうはならないのがルドンらしいところかなw

オディロン・ルドン 「オルフェウスの死」
こちらは岐阜県美術館の名コレクションで、川の畔に竪琴の上にオルフェウスの頭部が乗っかって流れ着いた様子が描かれています。これはオルフェウスがディオニュソスの巫女たちの相手をしなかった為に八つ裂きにされたという神話に基いた作品で、象徴主義の画家ギュスターヴ・モローなんかもこのテーマを描いていました。(多分それも知ってたんじゃないかと) オルフェウスの顔は眠っているようで、周りは明るいこともあって死んでいるのに穏やかな光景に見えるのが面白かったです。

この辺には同じく岐阜県美術館の「眼をとじて」もありました。今回のポスターにもなっている作品です。

そして階下に進むとここに残りの壁画装飾とグラン・ブーケがあります。
こちらは前回同様に休憩室にあったレプリカの写真。
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グラン・ブーケはやや暗めの部屋に展示してあるのが絶妙で、静かに浮かび上がってくるような感覚になれるので是非間近で観て頂きたい作品です(グラン・ブーケだけはこの展示以外でも常設されて観ることができます)


<7 再現と想起という二つの岸の合流点にやってきた花ばな>
続いてこちらは花瓶に入った花束などのコーナーです。ルドンの奥さんは1909年にパリ郊外のビエーブルの土地と家を相続したそうで、そこがルドンの晩年の拠り所となりました。アトリエを設けて制作に励みここにあった作品なども制作していたようです。

オディロン・ルドン 「花:ひなげしとマーガレット」
こちらは一見するとルドンの作品とは思えませんでした。1867年の作品なので、版画でのデビュー前の作品かな? その名の通り小さな花瓶に入ったひなげしとマーガレットが描かれているのですが、かなりくっきりと対象が表されています。また、背景も暗いのですが幻想性は無く明暗が対比的に思えました。

オディロン・ルドン 「日本風の花瓶 」
こちらは日本のポーラ美術館の所蔵で、能の衣装を着た人物が描かれた花瓶に花が入っている様子が描かれた作品です。背景は薄い黄色~ピンク色で全体的に明るく、軽やかな色彩となっています。ルドンの作品の中でこれだけ生き生きと感じるのは多くはないかも。日本的なモチーフと相まって馴染みやすい作品だと思います。

オディロン・ルドン 「青い花瓶の花」「首の長い花瓶にいけられた野の花」
こちらは両方とも同じ花瓶に入った花を角度違いで描いたものです。花瓶はルドンと親しかったロシアの女性陶芸家マリー・ボトキンが作ったもので、場所によって色が変わるような豊かな色彩となっています。2点を比べるといずれもルドンらしい幻想的な画風ですが、入っている花も違うしパステルと油彩の違いもあったりして、表現の違いが感じられます。この2点は是非比較しながら観てみることをお勧め。


<8 装飾プロジェクト>
最後はルドンがキャンバス以外に絵を描いた作品が並ぶコーナーです。1900~1911年頃に個人の収集家から装飾の依頼を受けることがあったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

オディロン・ルドン 「オリヴィエ・サンセールの屏風」
こちらは日本の屏風の形式で描かれた作品。4曲1隻で、一応画面が繋がっているように見るかな。テンペラや油彩で花などが描かれていて、何の花かは分かりませんが、全体的に薄い黄色っぽい色彩と相まって心休まるような印象を受けました。先程の日本の花瓶も含めて日本趣味の隆盛の影響が感じられます。

オディロン・ルドン 「タピスリー用下絵」
これは国から注文を受けて作った椅子のための装飾下絵です。様々な花が宙を舞うような模様で、座面・背もたれ・肘掛け部分の各パーツの下絵を施しています。よく観ると椅子の背もたれの形に輪郭があって芸が細かいです。近くにはロラン・ルスタンが作った「ルドンの下絵に基づく《ひじ掛け椅子》」もあって、実際の椅子を観るとこんなところまで下絵を描いていたのかと驚くと思います。


ということで、国内の作品はほぼ観たことがあるものでしたが、今回のルドン展はドムシー男爵の食堂装飾があったのが大きいと思います。また、ちょっと変わった切り口で観られたのも面白かったので図録も購入しました。ルドンはその不思議さと不気味さで好奇心を駆り立てる作品が多いので、美術初心者でも楽しめる内容だと思います。洋画好きにお勧めの展示です。



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ルドン―秘密の花園 (感想前編)【三菱一号館美術館】

2週間ほど前の金曜日の会社帰りに、三菱一号館美術館で「ルドン―秘密の花園」を観てきました。充実した内容で見どころも多かったので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 ルドン―秘密の花園 

【公式サイト】
 http://mimt.jp/redon/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅など

【会期】2018年2月8日(木)~5月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時00間分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
まだ開催して間もない時の金曜の夜ということもあって、空いていて快適に鑑賞することができました。しかしこれだけの内容なら今後人気が出ると思うので、土日は混むようになるのではないかと思います。

さて、今回の展示は幻想的な絵画で知られるオディロン・ルドンの大規模な展示で、国内外の作品が90点程度集まる豪華な内容となっています。この美術館にはルドンのグラン・ブーケという大作が所蔵されているため以前にもルドン展が行われましたが、今回はグラン・ブーケと共にドムシー男爵家の食堂を飾っていた壁画(オルセー美術館所蔵)が1980年以来の来日という貴重な機会となっています。その他にも今までとは異なる切り口もありましたので、展覧会の構成に沿ってご紹介していこうと思います。

参考記事:
 ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
 ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)


<1 コローの教え、ブレスダンの指導>
まずはルドンの画業の始まりなどについてです。ルドンの生い立ちについては以前にも詳しく書いたことがあるので、そちらを参照して頂ければと思いますが、簡単に紹介するとオディロン・ルドンは1840年のボルドー生まれで、モネやロダンと同い年となります。
参考記事:
 オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想前編(損保ジャパン東郷青児美術館)
 オディロン・ルドン ―夢の起源― 感想後編(損保ジャパン東郷青児美術館)
 19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)

ルドンのデビューは遅かったようで、39歳の時に版画集『夢のなかで』を刊行しました。ルドンには大きく分けて黒の時代と色彩の時代があるのですが、黒の時代でも油彩を描かなかったわけではなく、彩色された作品も残っているようです。それらは作者の為の習作と呼んで大切に保管されていたようですが、今回の展示ではそれを見ることもできます。
また、ルドンは長い修業の中でカミーユ・コロー助言や、ブレスダンからエッチングの指導を受ける機会があったようで、その成果をリトグラフ、パステル、油彩、デトランプといった多彩な技法を使って表現しています。ここにもそうした作品が並んでいました。

オディロン・ルドン 「木々の習作」
まずは大きな木を描いた木炭の絵が目を引きました。ただの木を写実的に描いた作品なのですが、既にルドンらしい幻想性があって夢の中ような独特の雰囲気が漂っています。 また、今回の展示でユニークなのはルドンの樹木を描いた作品に着目している点で、樹木のモティーフはルドンのどの時代でも共通していて初期から晩年まで描かれているようです。この後もこうした樹木をモティーフにした作品がいくつか出て来るので、この展示で頭に入れておきたいポイントです。

この辺にはブレスダンに習っていた頃の版画などもありました。

オディロン・ルドン 「ペイルルバードの小道」
こちらは油彩の作品。木が茂る小道を描いたもので、1人の女性らしき姿もあります。空が青々して静まり返った雰囲気はルドンらしさを感じる一方、ぼんやりとした空気感はコローからの影響を感じさせます。(近くにあった「メドックの秋」という結構後の時代の作品も同様にコローからの影響が伺えます) ルドンはコローから毎年同じ木を描くように教えられたそうで、こうした木々を描いていたようです。また、「不確かなものの隣に確かなものを置くと良い」とも教わったらしく、それを実践している様子も伺えます。この作品の制作年は分かりませんが、既に色彩に神秘さが出ているように思いました。


<2 人間と樹木>
続いては人と樹木が共に描かれた作品などが並ぶコーナーです。

オディロン・ルドン 『夢のなかで』
こちらは版画集で、その中から扉絵と「5.賭博師」が展示されていました。ルドンはアンリ・ファンタン=ラトゥールからもリトグラフを習っていたそうで、この作品に活かしています。この作品にもやはり木々が多く出て来るのですが、まさに夢の中のようなシュールで怖い絵が入った版画集です。「賭博師」では巨大なサイコロを担ぐ人物が描かれていて、何かの刑罰を受けているかのような不気味さがあります。これは何度も観たことがありますが、いつ観ても不安を覚えると共に妙に惹かれてしまう不思議な作品です。

この辺には『夜』や『ゴヤ頌』などの版画集の一部の作品もありました。こうした作品は見る機会も多いかな。

オディロン・ルドン 「キャリバン」
こちらは木の上にいる 目がギョロっとし子鬼みたいな妖怪チックなものを描いた作品。これはシェイクスピアの「テンペスト」に出てくる奇形の奴隷だそうで、闇の中でこっちを観ている様子が怖いw これも奇妙ですが不思議とそのキャラクターに愛嬌も感じるような…w 隣にも「キャリバンの眠り」という同様のモティーフの作品がありました。そっちはちょっと猿っぽくて可愛いかもw
 参考リンク:本展の見どころ

オディロン・ルドン 「エジプトへの逃避」
これは聖書の同名のシーンを描いた作品です。暗闇の中、木の下に座るマリアとヨセフと幼子イエスの姿があり、イエスが光を放って辺りを照らしています。このテーマはブレスダンも描いていたようで、その影響かな? (割とよくあるテーマですが) 明暗の使い方が独特で、これも幻想的な光景となっていました。

このコーナーではルドンの家庭環境についても紹介されていたのですが、ルドンは生後間もなくペイルルバードの親戚に育てられたそうです。一方、父から土地を受け継いだ兄は音楽の神童だったそうで、ルドンも兄からの影響を受けて音楽に関心があったようです。音楽家のエルネスト・ショーソンとピアノとヴァイオリンで共演したこともあるらしいので、結構な腕前だったのかも? ちなみに1897年にペイルルバードの家は売却されるのですが、ルドンはこれを不満に思っていたそうです。


<3 植物学者アルマン・クラヴォー>
続いてはルドンが大きく影響を受けた植物学者のアルマン・クラヴォーについてのコーナーです。2人はルドンが10代の頃に出会い、クラヴォーはルドンにインドの詩や文学、異教への関心などの影響を与えました。幻想的でちょっと陰鬱なルドンの作風はこのクラヴォーの教えによるところが大きいように思われます。しかしクラヴォーは1890年に自殺してしまったそうで、ルドンはそれを偲び版画集『夢想』では「我が友クラヴォーの思い出に」と言葉を添えていたようです。

オディロン・ルドン 「『 夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』 Ⅰ. ……それは一枚の帳、ひとつの刻印であった……

こちらはクラヴォーの顔を聖ヴェロニカの聖顔布の奇跡(ゴルゴタの丘に向かうキリストの汗を拭いたらヴェールにキリストの顔が浮かび上がった)を題材に、その顔をクラヴォーの肖像にした作品。そのテーマ選びからしてクラヴォーへの敬愛の様子が伺えます。自殺するような感じの人には観えない気もしますが、やや虚ろな感じかな。博学そうな雰囲気も感じられます。なお、ルドンはクラヴォーから進化論や植物の知識なども教えて貰ったようで、そうした題材の作品も多数残しています。

ここには夢想の」版画が並んでいました。一見よく分からない浮遊物を描いていたりしますが、それは微生物を模したものだったりするので、クラヴォーから得た科学的知識を反映しているのも分かります。
 参考リンク:ルドンの「黒」 

オディロン・ルドン 「若き日の仏陀」
こちらはルドンの異教趣味が現れている作品。目を閉じてうつむく仏陀の横顔が描かれ、背景には曖昧ですが花のようなものが描かれています。細く赤い輪郭があるものの独特のマチエールで表現していて、静かで象徴的な印象を受けました。これもクラヴォーの思想の賜物と言えそうです。


<4 ドムシー男爵の食堂装飾>
続いては今回最も見どころとなっている大部屋の展示です。ドムシー男爵は1893年(ルドンが60歳の頃)にルドンと知己を得て作品を購入していき、やがて小品だけ描いていたルドンに父の城館の食堂装飾を依頼するようになりました。この三菱一号館美術館が所蔵するグラン・ブーケもこのドムシー男爵の食堂装飾の一部として15点の壁画と共に描かれたそうで、この美術館にとっても念願の展示なのかもしれません。壁画は油彩を広げた上ににかわを使うデトランプという技法が使われているそうで、この部屋にはそうした壁画が三方向を囲うように展示されていました。(グラン・ブーケは他の部屋で展示)

今回の展示では写真を撮ることはできないのですが、休憩室にやや小さめのコピーがあってそれは撮影可能でした。代用ですがそれをちょっとご紹介。
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装飾的でナビ派からの影響が感じられます。

花が舞っているような壁画です。
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この配置も絶妙で、実際に見ると花が流れていくような構成となっていました。

こんな感じで、細長い壁画もあります。
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実際には窓なんかもあるので、そうした部分以外を埋めている感じかな。

こちらは人物っぽい姿もあります。上にあるのは太陽ではなく恐らくミモザ。
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ルドンは壁画制作にあたって南仏のルノワールを訪ねたそうで、そこで観たミモザに感動してミモザを壁画に描いたそうです。
 参考記事:ルノワール美術館 【南仏編 カーニュ・シュル・メール】

これはレプリカなので小さめですが、実際の作品はかなり大きいので驚くと思います。他にも男爵のルドンコレクションや夫人の肖像、ドムシー家に関する資料なんかもありました。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。食堂装飾の再現は正に圧巻で、これだけでも今回の展示の意義があるのではないかと思えました。装飾は1部屋に収まりきらず、後半にも一部が展示されていましたので、次回はそれも含めてご紹介しようと思います。

 → 後編はこちら


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ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち 【世田谷美術館】

前々回・前回とご紹介した静嘉堂文庫美術館の展示を観た後、バスで世田谷美術館に移動して「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」を観てきました。

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【展覧名】
 ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち

【公式サイト】
 http://paris2017-18.jp/
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00187

【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅

【会期】2018年01月13日~04月01日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
土曜日に行ったこともあって割とお客さんが多かったですが、混んでいるというほどでもなく概ね自分のペースで見ることができました。


さて、この展示は今も昔もファッションや文化をリードしてきた パリに住む女性たち「パリジェンヌ」をテーマにした内容となっています。特定の画家や時代をテーマにしている訳ではない珍しい展示で、18世紀以降の各時代のパリジェンヌをとりまく環境や、その役割、芸術との関わりなどで章分けされていました。ごく簡単にメモしてきましたので、構成に沿って振り返ってみようと思います。


<第1章 パリという舞台 ~邸宅と劇場にみる18世紀のエレガンス>
まずはパリがフランスの中心となっていった頃のコーナーです。ルイ14世の時代の後、フランスの文化の中心はヴェルサイユからパリへと変わったそうで、文化の場として女主人が個人の邸宅を「サロン」として文化人を集めた交流を行っていたようです。このサロンによって新しい考えや芸術が広がっていったので、歴史的にもその役割は大きいものだったと思われます。また、舞踊の中心地もパリに移動したそうで、舞台のドレスや工夫をこらした髪型が刊行物によって流行していったようです。

ここにはサロンの邸宅の室内を描いた絵があり、割とこじんまりした空間で芸術論議をしていた様子が伺えます。また、日本の柿右衛門様式のティーセットやロココ時代のドレスなどがあり、様々な様式を取り入れた文化的に豊かな集いであったのも分かります。ドレスはこの先にも多く展示されているので、各時代の特徴を比べて観られるのもこの展示の見どころと言えそうです。

その先には当時の髪型と帽子の様子が分かる作品もありました。逆立った髪型や巨大な帽子を被った女性像の中には、船の形(当時のフリゲート艦)の形の帽子なんかも描いてあります。こうした帽子は他の展示でも観たことがありますが、なんど見ても奇抜で驚かされます。帽子の高さは1.2mもあるらしいので背が高い女性だと背丈と合わせて高さは3m近くあったんじゃないかなw
 参考記事:マリー・アントワネット物語展 (そごう美術館)

その先にはバレエの踊り子について取り上げていて、マリー・サレという踊り子についてやバレエの衣装なんかが紹介されていました。当時のバレエの衣装は結構重そうなドレスなのが意外でした。


<第2章 日々の生活 ~家族と仕事、女性の役割>
フランス革命を経てナポレオンの時代になると社会は大きく変化していき、フェミニズム運動なども起こりました。そして小説家や批評家として活躍する女性も現れたようですが、女性は結婚して母となり家庭を護るという価値観は依然根強く、女性は辛抱していたようです。ちなみにこの頃のフランスでは子供を育てるのは乳母が一般的だったようですが、ジャン=ジャック・ルソーによって母親が直接育てるべきという教育論が唱えられたそうです。その為か絵画でも母子を描く作品が強調されるようになったようで、ここにはそうした労働や日常での女性を描いた作品などが並んでいました。

ここには「良き母親」という作品があり、三人の子供と穏やかに過ごす女性が描かれていました。恐らくこれが当時 女性に求められた理想像で、現在でも少なからずこうした姿が求められている部分があると思います。また、アンリ・ファンタン=ラトゥールによる「窓辺で刺繍をする人」では2人の姉妹が刺繍をしていて、明暗の強さも相まって静けさと親密な空気が感じられました。これも女性像として象徴的かもしれません。
さらに隣の「アイロンをかける若い女性」という作品はこちらをふと観た女性が描かれているのですが、女性の目が強くて、目が合うような感じが面白かったです。17世紀オランダ絵画からの影響があるようで、強い明暗で写実的 かつ くっきり描かれているのも好みでした。

そしてここにはオノレ・ドーミエによる「青鞜派」という版画作品が2点あります。これは小説家を目指す女性を風刺したもので、背後で子供がたらいに頭を突っ込んでいるのに気付かずに小説に夢中になっている様子や、旦那のズボンのボタン付けを拒否する様子などが描かれていて、女性の社会進出に対して批判的な感じです。ドーミエ自身は権力に対して批判的な革新派なのですが、女性に対しては古風な価値観を持っていたという意外な側面が伺える作品でした。


<第3章 「パリジェンヌ」の確立 ~憧れのスタイル>
続いてはパリジェンヌというスタイルが確立されていく時代のコーナーです。この時代の展覧会を観ているとよく出てくる話ですが、昔のパリは不衛生でゴミゴミした街だったのをナポレオン3世が1853年にジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン男爵に命じて大改造を行い、一気に近代都市へと変貌を遂げました。そうした状況を背景にファッション業界は重要な位置を占め、その働き手としても女性が活躍していくようになります。そしてパリジェンヌのスタイルは憧れの対象となり、やがて海を渡りアメリカなどにも広がっていきました。

ここには印象派の先駆けであるブーダンによる「海岸の着飾った人々」という作品があり、ドレスを着た女性たちが海岸に集まっている風景が描かれています。海岸は社交の場の雰囲気そのものといった感じですが、少しだけ海で海水浴している人の姿もあります。背景には着替え用の小さいテントがあるのですが、この頃は水着ではなく上着にズボンの姿で海に入ったらしく、それでも人目につくのを嫌がってテントごと海に入ることがあったと紹介されていました。
この辺にはコルセットしてフリフリした感じのドレスを着た女性を描いた作品も多く、まだまだ女性たちもあまり弾けてないというか、貞淑な感じもするかな。コルセットは気絶するほど締め付けるらしいので相当大変だったようです。

そしてその後にイギリス人のファッションデザイナー シャルル・フレデリック・ウォルトによって生み出されたオートクチュールについてのコーナーがあります。現在のファッションショーやモデルの活用を思いついたのもウォルトで、ウォルトによってデザイナー主導のモードが始まったと言えるくらい革新的なファッション界の巨人です。ここには手袋やサテンの靴、コルセットなどがあり 特に靴とコルセットは当時オシャレな人達がこだわったアイテムだったようです。また、着飾った人達を描いたコスチュームプリントもあり、髪型などもカタログのように描かれていました。(恐らくこうしたもので流行が広まったんでしょうね)

このコーナーには今回のポスターにもなっているジョン・シンガー・サージェントの「チャールズ・E. インチズ夫人(ルイーズ・ポメロイ)」があり、ウォルトのデザインに着想を得た赤いイブニングドレスを着た女性が描かれています。キリッとした表情と深い赤がエレガントな雰囲気を醸しているのですが、これはフランスではなくアメリカの女性をフランスの流行に合わせているようでした。まさに海を超えてもパリジェンヌが手本となっていたことが伺えます また、フランスからアメリカに帰ったウィリアム・モリス・ハントによる「マルグリット」という作品でも当時のフランス風のお下げ髪の女の子を描いていて、やや暗い象徴的な雰囲気がありつつもフランスからファッションに至るまで影響を受けている様子がよく分かりました。


<第4章 芸術をとりまく環境 ~製作者、モデル、ミューズ>
4章からは2階です。ここは女性がモデルを務めたり自身が芸術家である女性画家を取り上げたコーナーとなっていました。当時、絵画を学ぶアカデミーには女性は入ることができませんでしたが、印象派など新しい勢力に参加していたようです。

まずは印象派に参加したベルト・モリゾの静物がありました。モリゾの静物は珍しく20点ほどしかないようですが、静物も大胆なタッチで如何にも印象派風に描かれています。青い背景に器の中の白い花という爽やかな色彩で、モリゾらしい安らぐ雰囲気があったように思います。また、ここにはアメリカの印象派画家メアリー・カサットの作品もあり、ソファで本を読む女性が描かれていました。こちらも印象派そのものといった感じですが、色彩が濃厚でサテンが輝くような質感の表現などは独自性があり見事でした。
その近くにはカサットと姉と共にルーヴル美術館で観ている様子が描かれた作品もあり、そうやって絵を学んで行った様子が伺えます。

このコーナーでちょっと驚いたのはサラ・ベルナールによる女性の横顔の肖像(ブロンズ肖像)です。ミュシャなどに描かれた大女優であるサラ・ベルナール自身もこうした作品を作っていたようで、自宅にアトリエを設けて制作し、官展にまで出品していたようです。その腕前も中々で、凹凸のせいでやや老けた貴婦人に見えますが、彫刻家の作品かと思いました。ちなみにこの女性はサラ・ベルナールの恋人だった人のようです。

その先にはルノワールやロートレック、ピカソなどによる女性像が並び、ミューズとしての女性たちが紹介されています。洗濯女よりはモデルのほうが高給取りだったようですが、不安定な職業だったようです(今もそうでしょうけど) そして、ここに今回の目玉となるマネの「街の歌い手」がありました。流しの歌手がぶどうを食べてギターを持っている様子が描かれ、彼女のイヤリングはぶどうっぽい形をしています。これは代表作「草上の昼食」と同じモデルのヴィクトリーヌ・ムーランを使って描いたものですが、マネが道端でこういう女性を見つけてモデルの誘いを断られたらしいので、実際にその時の印象を込めているのかもしれません。灰色のドレスに黒い帽子という派手さはない格好ですが、たくましく生きている強さが感じられます。 なお、モデルのムーランもその後に画家として活動していたというのが最近の調査で分かったそうです。この時代の女性も懸命に頑張っていたんですね。


<第5章 モダン・シーン ~舞台、街角、スタジオ>
最後は主に1900年頃からそれ以降についてのコーナーです。1900年にパリ万国博覧会が行われた頃はキャバレーが次々と開店し、歌手や踊り子が活躍したそうです。仕事やスポーツに勤しむ女性たちも増え、活動的になった様子も絵に描かれています。ここにはジュール・シェレによるポスターや絵葉書、写真などがあり、カンカン踊りや舞台の様子、新聞売りや花売りをする女性が表されていました。中年の女性なんかは堂々としていて中々たくましいです。当時の1/3くらいの労働人口は女性だったらしいので、結構進出していたようです。
しかし女性が完全に自由だったわけではなく、女性がズボンを履けるのは自転車に乗る時だけ、しかも公園とか限られた場所だったりしたようで、女性のあるべき姿みたいなのは依然として残っていたのかもしれません。

この先にはモンパルナスのキキの写真なんかもありました。エコール・ド・パリの時代の画家達の作品によく出てくるミューズなので、この顔は覚えておくと良いかもw

そしてこの部屋の真ん中にはアールデコ期のドレスや第二次大戦後のドレスなどもあります。1960年代の宇宙をイメージしたドレスなんかもあって面白いコーナーです。第一次世界大戦で男が戦場に行った後はますます女性が社会進出していったわけですが、段々と動きやすい格好になっていく様子が分かります。最後には戦後のファッション写真などもありました。



ということで多岐にわたる内容となっていました。パリジェンヌというか女性の社会進出みたいな内容にも思えましたが、パリジェンヌが単にオシャレなだけでなく逞しく生きてきたのもよく伝わりました。そのテーマが強いので好みの作品はそれほど多くなかったので満足度は普通ですが、こうした背景をご存知ない方はこの展示を見ることで近代芸術の背景も知ることができると思います。





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【静嘉堂文庫美術館】の建物と庭園

前回ご紹介した静嘉堂文庫美術館の展示を観た後、敷地内の庭園も観てきました。まだこの美術館の庭園についてご紹介したことが無かったので、写真を使ってご紹介しておこうと思います。

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 公式サイト:http://www.seikado.or.jp/about/garden.html

まずは静嘉堂文庫とは何かというそもそもの話ですが、ここは三菱財閥を発展させた岩﨑彌之助(三菱第2代目社長)とその息子の岩崎小彌太(三菱第4代目社長)の親子によって作られ、古典や古美術品を集めて保存するのが目的となっています。古美術品は6500点、古典籍は何と20万冊もあるそうで、国宝や重要文化財も多く含まれ、敷地内の美術館で展示されたりしています。一時期は国立国会図書館の支部だったようで、その後に三菱の私立図書館に戻ったのが1970年、一般公開されたのは1977年、美術館ができたのは100周年の1992年なので、こうしてこの地で展示を観られるのは長い歴史の中では割と最近です

こちらが静嘉堂文庫。
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桜井小太郎による設計で1924年に建てられました。当時のイギリス郊外住宅の様式を元にしているようです。

こちらは入口。残念ながら私は中に入ったことはありません。
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研究目的の学者さんなどは本を閲覧できるようですが、事前の予約が必要のようです。大学生などは教授の紹介状も必要なのだとか。(建物に入れるのかも分かりません)

続いては美術館の裏手にある庭園を観てきました。

美術館には展望室もあって見晴らしの良い風景が広がります。
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眺めだけで良いなら美術館の中から楽しめますw 冬は寒いせいか庭園まで来る人は少数派でした。

庭園は斜面に広がる感じです。5~10分くらいで観られるくらい。
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こんな寒い中でも綺麗な花を見ることができます。

2月の上旬でしたが、この日は水仙の花が沢山咲いていました。
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辺りに爽やかな香りが漂っていました。水仙は見た目も香りも良いし、こんな寒い時期に花を咲かす貴重な植物ですね。

こちらは紅梅。勾配に紅梅なんて親父ギャグみたいなことを考えてましたw
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白梅もあるので、紅白揃ってめでたい感じ。幹や枝のうねり具合が琳派の作品みたいで面白い。

花のアップ。
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梅は四君子と呼ばれるうちの1つですが(梅、蘭、竹、菊)、その香りの清廉さなどもその理由の1つだったと記憶しています。

庭から見上げた美術館。
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割とアップダウンがあるのでいい運動になりますw

続いて、美術館の正面左手方向にある岩﨑家廟を観てきました。
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こちらは裏手。教会のようで教会ではない独特の形をしています。

こちらが正面から観た様子。大きな香炉みたいなのがあって、西洋風と東洋風が合わさったような不思議な場所です。
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設計したのはジョサイア・コンドルで、この時代の三菱財閥の建物と言えばジョサイア・コンドルです。実際にここはお墓となっているようなので、辺りには静寂が漂います。ここ最近、三菱財閥の建物めぐりをしている気がしないでもないw
 参考記事:
  山のホテルと箱根神社の写真 (箱根編)
  三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」 (三菱一号館美術館)

ということで、合わせて15分くらいで観られる庭園ですが、歴史ある建物と真冬でも咲いている花を楽しむことができました。ちなみに次回の展示「酒器の美に酔う」では曜変天目も出てくるようです。(期間中に展示替えがあるようなので全期間で観られるかは不明) この美術館に訪れる際にはお庭も見学することをお勧めします。
 展覧会名:酒器の美に酔う
 会期:2018年4月24日~6月17日


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歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~ 【静嘉堂文庫美術館】

10日ほど前の土曜日に世田谷の静嘉堂文庫美術館で「歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~」を観てきました。この展示は前期・後期に会期が分かれていて、私が観たのは前期の内容でした。

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【展覧名】
 歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~ 

【公式サイト】
 http://www.seikado.or.jp/exhibition/index.html 

【会場】静嘉堂文庫美術館
【最寄】用賀駅

【会期】
 <前期>2018年1月20日(土)~2月25日(日)
 <後期>2018年2月27日(火)~3月25日(日)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
予想以上にお客さんが多くてやや混んでいる感じもしましたが、だいたい自分のペースで鑑賞することができました。

さて、この展示は江戸時代の浮世絵師 歌川国貞についての展示となっています。歌川国貞は59歳の時に師の名前を継いで三代歌川豊国を名乗ったので、三代歌川豊国の名前で紹介している美術館も多い気がしますが、いずれの時代も美人画を得意として数多くの作品を残しています。今回の展示でも美人画を中心にそれ以外の題材の作品もありましたので、簡単にいくつか気に入った作品をご紹介しようと思います。(作品リストに年数が書いていないので当記事の中では歌川国貞の名前でで統一しておきますが、豊国時代の作品もあります)

歌川国貞 「今様見立士農工商 職人」「今様見立士農工商 商人」
まず冒頭で目を引いたのがそれぞれ3枚続のこの2つの作品です。錦絵作りを行う様子と販売する様子が描かれているのですが、全て女性となっています。鮮やかな画中画や美人達の生き生きとした姿が華やかで、3枚続きならではの大画面の見栄えもありました。

その後には化粧をしたり子供を風呂に入れる女性など、様々な女性像が並んでいます。こうした日常風景も実は何かの見立てだったりしますが、当時の風俗が伝わってくると共に親密さが感じられます。こうした画題は後に西洋の印象派の画家たちも描くようになったのを考えると、浮世絵からの影響は表現だけでなく画題にも及んでいたのではないかと思います。

歌川国貞 「今様化粧鏡」(シリーズ作品)
こちらは「合わせ鏡」、「眉かくし」、「牡丹刷毛」、「眉毛抜き」、「房楊枝」、「鉄漿つけ」のシリーズ6点が並んでいました。いずれも手鏡の中に反射して映る女性像といった感じの構図となっているのが面白くて、お歯黒や眉毛抜きといったお化粧している姿が描かれています。特に「合わせ鏡」は鏡を合わせて女性の背中側まで描かれているという変わった構図で、ウィットに富んだ作品となっていました。
 参考リンク:今風化粧鏡(牡丹刷毛)

この近くにはポーラ美術館所蔵の日本髪の雛形や髪飾りなどが展示されていました。昔は髪型や化粧で身分が分かったりしたみたいなので、この辺が詳しくなると浮世絵の人物を見る時に面白くなると思います。

歌川国貞 「娼家内証花見図」
こちらも3枚続きの大画面で、2階建ての屋内の様子が描かれています。恐らく花魁たちだと思うのですが、女性たちの多く描かれ喧騒が聞こえてきそうなくらいに動きのあるポーズをしています。そしてこの作品で面白いのが非常に強い遠近法を使っている点で、消失点が分かるような感じです。その効果で広々した家だという印象を受け、いち早くそうした西洋絵画の手法を取り入れているように思えました。

歌川国貞 「訛織当世島(くわえ楊枝)」「訛織当世島(金花糖)」
こちらは2枚セットで展示されていました。くわえ楊枝のほうはタイトル通り楊枝を加えた粋な女性、金花糖は子供と金魚を観ている女性が描かれているのですが、この両作品で面白いのは背景です。縦に波線のようなものが描かれていて、その縞模様がモダンでアールデコの建物の壁紙などを予見しているのような雰囲気です。どうしてこうした背景にしたかは分かりませんが、かなり洒落た印象になっていて好みでした。

歌川国貞・歌川広重 「風流源氏夜の庭」
こちらは既に三代豊国の時代だったと思います。遠近法や明暗の表現が使われた山と川の夜の風景を背景に、行灯を持つ女性と見送るような人物が描かれています。やや人物が大きすぎる感じもしますが、こうした表現も西洋画的なものを感じます。この作品は『偐紫田舎源氏』に題材したもので、歌川国貞はこの本の挿絵を手掛けたことで有名です。

この近くには源氏絵のコーナーがありました。

歌川国貞・歌川広重 「双筆五十三次」(シリーズ作品)
双筆というのは2人の合作という意味で、このシリーズでは人物を歌川国貞(三代豊国)、背景を歌川広重が担当しています。シリーズのうち10点ほど展示されていたのですが、人物と風景はいずれも独立した画面となっているものの、絵の中の土地に合わせた人物を描いているようでした。完全な合作ではないですが2人の巨匠のコラボぶりが面白いです。人物と風景の何が関連しているかは解説を読まないと分かりませんがw
 参考リンク:双筆五十三次

歌川国貞 「仁木弾正左衛門直則 五代目松本幸四郎 秋野亭錦升 後 錦紅」
こちらは今回のポスターにもなっている目玉作品です。鼻の高い役者が横向きで描かれ、肩から上しかない大首絵となっています。引き締まって凛々しい表情には緊張感があり、ちょっと悪そうな顔をしていましたw この横向きの顔というのもルネサンス(とその影響を受けた)肖像以外で見る機会は少ないので面白い構図でした

歌川国貞 「豊国漫画図絵 袴垂保輔」「豊国漫画図絵 将軍太郎良門」
こちらは2点セットで並んでいました。いずれも悪党を役者の見立てで描いたシリーズで、口をへの字に曲げて見栄を切るような憎たらしい表情をしていますw 個性的な雰囲気がある為か、こうした悪党を描いたシリーズは当時人気があったようです。

歌川国貞 「芝居町 新吉原 風俗絵鑑」
こちらは版画ではなく肉筆画。吉原の芝居小屋を描いたもので、大パノラマで芝居小屋の中のお客さんまでも描かれています。お客さんは何かを食べたり喧嘩したりしていて、お前ら芝居観てないだろ?wとツッコミを入れながら観てきましたw 配達している人なんかもいて、現代で言えば劇場よりは野球観戦のほうが雰囲気が近いかも。とにかく多くの人が描かれていて、圧巻の作品です。


ということで、それほど広くない会場に多くの作品が並んでいました。しかも発色の良い摺りが多かったので、満足度の高い内容でした。艶やかな美人が沢山観られる展示ですので、美術初心者でも楽しめる内容だと思います。


おまけ:
静嘉堂文庫美術館に行く前に、以前ご紹介した西庵カフェでお蕎麦を食べてきました。静嘉堂文庫の近くにあるしアートの図録なんかもおいてあるお店なので、この美術館に行く方にお勧めのお店です。
 参考記事:西庵カフェ 【用賀界隈のお店】

西庵カフェの外観
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洒落た雰囲気で時期によってはお花も咲いています。

内装はこんな感じ。
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静かな空間で美術展の図録なんかを観ながらくつろげました。

こちらはかき揚げ蕎麦の大盛り
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蕎麦もツユもかき揚げも美味しいですw この後デザートも頼んでそれも美味しいので何を食べても美味しいお店だろうと思いますw


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クインテットIV 五つ星の作家たち 【東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館】

今日は写真多めです。1週間程ほど前の祝日に新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「クインテットIV 五つ星の作家たち」を観てきました。この展示は既に終了してしまいましたが、撮影可能となっていたので写真を使ってご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 クインテットIV 五つ星の作家たち

【公式サイト】
 http://www.sjnk-museum.org/program/past/5165.html

【会場】東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
【最寄】新宿駅

【会期】2018年1月13日(土)~2月18日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんがいましたが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はこの美術館が力を入れている現代画家を紹介するもので、今までも同じ名前で開催されたことがあります。4回目となる今回は「具象と抽象の狭間」をテーマに将来有望な5人の画家の作品を合わせて80点ほど展示していて、1人ずつ章分けされていました。詳しくは各人ごとに写真を使ってご紹介していこうと思います。


<船井美佐>
まずは1974年生まれで日本画も学んでいた船井美佐 氏のコーナーです。

船井美佐 「womb-世界の内側と外側はどちらが 内側で外側なのか」
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早速、大型の作品がありました。何を意味しているかは分かりませんが、花のような星雲のようなものが軽やかな色彩で表されていて目に鮮やかです。

船井美佐 「Hole/桃源郷/境界/絵画/眼底」「楽園/境界」「Hole/Trans rabbit, Kaiba」「まる・さんかく・しかく」
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船井氏の展示スペースはこんな感じでした。絵画だけでなく鳥や動物を象った立体作品や、鏡を使った作品などもあって部屋全体に独特のリズムがありました。

船井美佐 「Strokes/猿」「Strokes/馬」
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こちらも動物をモチーフとしていますが、先程の絵とはだいぶ違う雰囲気に思えました。具象と抽象を自在に使いこなしている感じがします。


<室井公美子>
続いては1975年生まれで大学で洋画の講師もやっている室井公美子 氏のコーナーです。

室井公美子 「Psyche (プシュケー)」
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プシュケーを日本語にすると命のことですが、タイトルの意味とこの絵にどのような関係性があるのかは分かりません。滴ったり飛び散るような表現が独特で勢いが感じられました。

室井公美子 「Santa Cecilia (聖チェチェリア)」
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聖チェチリアは殉教した聖女で、音楽を奏でる姿などが題材とされます。この絵の右側に人影っぽく見えるのがそうなのかな?と考えながら観ていました。

室井公美子 「Anima (アニマ)」
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アニマも命という意味があります。こちらは一層激しく滴っていますが、色の取り合わせが好みでした。右上辺りのは顔かな??


<竹中美幸>
続いては1976年生まれで最近数々の賞を受賞している多摩美大出身の竹中美幸 氏のコーナーです。

竹中美幸 「titles 2017-1」
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こちらの作品はフィルムに色をつけて表しています。透明感があって爽やかな印象を受けました。

フィルムのアップ。
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昔から透明なものが好きだったそうですが、キャンバスではなくフィルムを使うという発想が面白い。

竹中美幸 「内側の気配」「外側の気配」
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こちらは水彩やパステルを使った作品。上の絵から下の絵が抜け出したような感じになっていて、これも発想の面白さがあります。色彩もやはり軽やかです。

竹中美幸 「何処でもないどこか(境界に浮かぶ橋)」
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こちらは何と樹脂を使った作品。ゼリー状のものが張り付いて模様を作っています。

樹脂部分のアップ
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部屋の光も反射していて輝くような透明感でした。

この隣には雨滴のように見える同様の樹脂の作品もありました。素材の選び方も自由な感じ。


<田中みぎわ>
続いては1974年生まれで東京藝術大学で日本画を学んだ田中みぎわ 氏のコーナーです。

田中みぎわ 「夜長の雨」
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墨や胡粉を使って烟るような湿気を表しているように思います。モノクロで静かな情景は長谷川等伯に通じるものを感じました。

こちらは先程の絵のアップ。
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かなり細部まで繊細かつ緻密に描かれています。近くで見たり離れて観たりすると印象が変わりました。

田中みぎわ 「やさしい雨」
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こちらはかなりの大型作品。雨の降る海を観ているような気分になれました。

この他にも月光を描いた作品や川の情景など、どこか懐かしさと叙情性のある作品が並んでいました。


<青木恵美子>
最後は1976年生まれで昨年にはFACE展グランプリやVACA展でも活躍していた青木恵美子 氏のコーナーです。

青木恵美子 「夏色」
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強い色彩ですが、色をぼかしているせいかちょっとやわらかい印象も受けました。

青木恵美子 「INFINITY Blue No6」
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こちらは非常に厚塗りされていて彫刻作品のような立体感のある絵画です。描いているのは花だと思いますが、色の強さと相まって力強い生命力が感じられました。

斜めから見るとその盛り上がり具合がよく分かります。
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盛り上がりが本当に花びらのようになっています。

青以外にも紫やピンクなどのカラーバリエーションもありました。

青木恵美子 「INFINITY Colors」
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こちらは小型にしたバージョン。カラーバリエーションも様々でした。


ということで、5人とも同年代の女性でしたがそれぞれ異なる個性を楽しむことができました。抽象画は難しいのでもうちょっと制作意図を知りたかったかな。とは言え、今回の展示の趣旨の通りまだまだこれからの活躍が楽しみな方たちですので、今後もこうした機会があれば他の作品も観てみたいと思います。もう終わってしまいましたが印象深い展示でした。





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竹村京 ーどの瞬間が一番ワクワクする? 【ポーラ美術館 アトリウム ギャラリー】

今回で箱根編は最終回です。前回ご紹介したポーラ美術館の常設を観た後、アトリウム ギャラリーで「竹村京 ーどの瞬間が一番ワクワクする?」を観てきました。この展示も撮影可能でしたので写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 竹村京 ーどの瞬間が一番ワクワクする?

【公式サイト】
 http://www.polamuseum.or.jp/hiraku_project/02/
 http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20180113ag01/ 

【会場】ポーラ美術館 アトリウム ギャラリー
【最寄】なし

【会期】2018年1月13日(土)~3月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は竹村京 氏という1975年生まれの女性アーティストの個展となっています。この方ポーラ美術振興財団の在外研究員としてベルリンで研修をしていたそうで、写真やドローイングの上に刺繍を施す手法が特徴のようです。展覧会は20点程度と小規模でしたが、その特徴がよく分かる内容となっていましたので写真を使ってご紹介しようと思います。

こちらはトランプらしき作品。
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よく見ると手描きみたいな部分と元々の絵柄のような部分があるのでコピーした上からドローイングしてるのかな? ちょっと観ただけでは意図が分からないので解説が欲しかったw

こちらはトランプの上に刺繍が施されている作品。
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これは解説によるとドイツ製のトランプを地にオーストリア製のトランプの図柄を日本製の絹糸で刺繍しているそうで、時代性や国籍の組み合わせの偶然性を表しているようです。ハートのマークの刺繍がポップで楽しげな印象に思えました。

この辺りにはこうしたトランプの作品が並び「Playing Cards 2017,Austrian Cards on German Cards」というタイトルで24点あるようです。

こちらもトランプに刺繍されています。
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ハートのキングのはずが刺繍はクラブになっているようなw 遊び心を感じます。

こちらはタロットかと思いましたがやはりトランプかな?
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よく見ると下地とずれて上から描いたような複雑な構成となっています。

こちらは下地のトランプの草花文と刺繍が一体化しているような作品。
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離れて見るとどこから絵なのかちょっと分からないくらい自然な感じに見えました。

こちらは「Playing Dominos in J.Cityのためのドローイング」という作品。
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このカードみたいなのはインドネシアのジョグジャカルタで流行っているドミノというカードゲームらしく、現地の人と遊んだ時の配置を日本の絹糸で縫いとめたそうです。楽しんだ瞬間を縫い止めて取っておくような作品に思えて今回の展示のタイトルはそういう意味なのかな?と考えながら観ていました。

こちらは「May I open the book?」という作品
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ちょうど節分のちょっと前頃に行ったので、豆まきの鬼かな?と思いましたが詳細は不明。背景の子供たちの写真と相まって、鬼なのに可愛らしい楽しげな雰囲気がありました。

こちらも背景に子供の写真を使った作品。
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下地のポーズを活かして手に持った本がめくれて飛び出したような遊び心が感じられます。左の子も大きな本を開いているように見えました。


ということで、小展示でしたがユニークな作品が並ぶ内容となっていました。もうちょっとキャプションがあったほうが楽しめるようにも思えますが、トランプの刺繍なんかは単純に面白い作品だったように思います。気軽に楽しむことができるので、ポーラ美術館に行く機会があったらアトリウム ギャラリーも覗いてみることをお勧めします。


 2018年の箱根シリーズ
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 2010年の箱根シリーズ
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  ポーラ美術館の常設
  箱根ラリック美術館 館内の案内
  ラリック家の女神たち (箱根ラリック美術館)



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【ポーラ美術館】の常設 2018年1月(箱根編)

今回も写真多めです。前回ご紹介したポーラ美術館の企画展を観た後、常設展示も観てきました。こちらも撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【公式サイト】
 http://www.polamuseum.or.jp/collection/

【会場】ポーラ美術館
【最寄】なし

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。ここには今まで4~5回行ったことがありますがこんなに空いていたのは初めてかも。私の訪れる1週間前には雪で臨時休館もあったようですが、1月はオフシーズンなのかどこも空いていて屋内なら至極快適です(外はめちゃくちゃ寒いけどw)
 参考記事:
  ポーラ美術館の常設(2010年秋)
  ポーラ美術館の常設(2009年)

ちなみにこのポーラ美術館は「ミュージアムセレクト2」というチケットを使うことができます。
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これは6つの美術館のうち2つに2000円で入れるというお得なチケットで、私は箱根ラリック美術館とポーラ美術館の2館で使用しました。ラリック美術館の単独入館料が1500円、ポーラ美術館は1800円なので、半端なくお得感があります。(対象で一番高い入館料はポーラ美術館です) 2018/3/31までに箱根で美術館めぐりする方は是非ご活用ください。
 参考リンク:ミュージアムセレクト2の公式サイト
 発売期間・有効期間:2017年12月1日(金)~2018年3月31日(土)


さて、ここからが本題です。こちらの常設は普段は洋画・日本画・化粧道具・中国磁器といった感じのジャンルになっているのですが、今回は洋画と日本画は企画展の方とくっついていた感じだったので、今日は化粧道具と中国磁器のコレクションについてご紹介していこうと思います。冒頭に書いたように撮影可能だった(以前は撮影不可だった)ので、写真を使って参ります。


<西洋の化粧道具 揃い物の美の系譜>
こちらは化粧品メーカーの会社らしい化粧道具のコレクションのコーナーです。18世紀から20世紀にかけての化粧道具が並び、特に揃い物としてのセットが多く展示されていました。

「卵型ケース入り香水瓶」
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これは18世紀フランスの香水瓶。色も形も高級感のある優美な香水瓶です。宝飾品みたいなケースでした。

この近くには同時代の化粧道具が並びます。つけぼくろなどの「パッチ化粧」なんかが流行っていたそうです。

「珊瑚象嵌化粧ケース」
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こちらは19世紀イギリスの化粧ケース。香水瓶やマニュキュアセット、手鏡なんかも入っています。まさに揃物で同じ柄となっていて、珊瑚が象嵌された豪華なセットとなっていました。

続いては19世紀のコーナーです。

左「花紋マイクロモザイク手鏡」 中「革製モノグラム入り手鏡」 右「エナメル製手鏡」
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右はフランス製で他2つはイタリア製です。この時代になるとブルジョワが台頭して柄も最新の流行を取り入れたものとなっていったようです。結構多彩な模様となっているのが分かります。

「緑ガラス化粧セット」
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こちらは19世紀後半のガラスのセット。エメラルドグリーンが爽やかで形もむしろ現代的なシンプルさがあって好みでした。

「花かご文銀と鼈甲製手鏡」
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こちらは鼈甲で出来ているので日本っぽさも感じますが1907年のイギリス製です。文様だけでなく縁取りにまで細やかな装飾性があり気品が感じられました。

「ローズ色ガラス化粧セット」
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こちらは1940年頃のバカラの化粧セット。化粧するのにこんなに瓶を使ったの?というくらい沢山ある揃物です。螺旋状の捻りの模様が洒落た印象で色合いも可愛らしいセットでした。

「ガラス化粧セット」
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こちらは1900年頃のフランスのセット。本体はシンプルな形ですが、蓋の部分が装飾的で洗練されたセンスを感じました。

ルネ・ラリック 「ガラス化粧セット エレーヌ」
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ラリックによるガラス瓶もありました。側面に女性像が表されていて、衣が流れるような表現が女性たちの美しさとよく合います。ラリックの化粧セットなんて贅沢ですね。

エミール・ガレ 「蜻蛉文香水瓶」
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アール・ヌーヴォーの代名詞とも言えるエミール・ガレの香水瓶もありました。これはまだ普通の瓶に蜻蛉を表しただけですが、ジャポニスムからの影響が感じられます。

ルイス・カムフォート・ティファニー 「蜻蛉文ランプ」
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こちらはアメリカのアール・ヌーヴォーの巨人ティファニーによる作品。ランプシェードの部分がトンボっぽいですが。むしろ赤い目の王蟲みたいなw

この辺りは20世紀の化粧道具が並んでいました。

「青革製旅行ケース」
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深い青が目を引く化粧セットですが、革製の旅行ケースに入っているのが特徴となっています。これを持って旅行したのかな。相当なお金持ちだったのだろうと思います。

この他にも様々な化粧道具が目を引きましたが、実際に観て驚いて頂きたい品が多いので出し惜しみしておこうと思います。


<東洋陶磁 名作でめぐる中国陶磁の世界>
続いては中国の磁器のコーナーです。割と広い年代の名品が並びます。

「三彩馬」
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こちらは7~8世紀の唐の時代の三彩です。口を開けていななくような写実性が見事で、三彩の色の使い方もセンスがありました。

「黒釉油滴斑碗」
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こちらは12~13世紀の金の時代の黒釉磁器。やや虹色の油滴が宇宙的な印象を受けました。油滴の磁器ってどうやって作るんだろう?と考えながら観ていましたw

大清康煕年製 「五彩花鳥文盤」
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薄めの色彩で気品溢れる清時代の景徳鎮の品。非常に細やかで富貴やめでたさを表すモチーフが集まっています。特に花びらの周りが美しく感じられました。

大清乾隆年製 「火焔紅双耳方壺」
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こちらも清時代の景徳鎮によるもの。この力強い色彩感覚は現代の作品かと思ってしまうくらい大胆です。中国磁器は幅が広くて凄い…。

「五彩唐子文方壺」
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こちらも清時代の景徳鎮によるもの。絵はゆるめですが、ブレイクダンスでもしてるのか?って子供がいたりして喧騒が聞こえそうなくらい生き生きとしていました。

他にも中国磁器も豊富なコレクションとなっていて見ごたえがありました。

化粧道具や中国磁器以外に屋内外に彫刻作品もあったりします。

niu(にゅう) 「しあわせな犬」
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これは2016年の作品なのでつい最近に作られたようです。雪と相まって はしゃいでいる犬に見えますw 犬が嬉しい時ってこんな感じでジャンプしてくるのを思い出しながら観ていました。


ということで、常設も楽しめました。私は箱根に行く際は美術館めぐりをするのですが、ポーラ美術館には必ず立ち寄るようにしています。(他はローテーションで行ったり行かなかったり) 本当に素晴らしいコレクションを持っているので、箱根に行くなら是非立ち寄ってほしい美術館です。


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100点の名画でめぐる100年の度 【ポーラ美術館】(箱根編)

今日は写真多めです。先日ご紹介した箱根ラリック美術館を観た後に、ポーラ美術館に移動して「100点の名画でめぐる100年の度」を観てきました。何とこの展示は撮影可能(一部は不可)となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 100点の名画でめぐる100年の度

【公式サイト】
 http://www.polamuseum.or.jp/sp/best_collection_100/

【会場】ポーラ美術館
【最寄】なし

【会期】2017年10月1日(日)~2018年3月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は豊富なコレクションを持つポーラ美術館の名品の中から100点を選び、近代絵画の100年を俯瞰するという内容となっています。誰もが知る巨匠の作品が惜しげなく展示されていて、さらに撮影可能という嬉しい機会となっていましたので、一部の気に入った作品を写真を使ってご紹介していこうと思います。


<1 大自然を歩く -印象派前夜 1860s-1870s>
まずは印象派直前のコーナーです。

エドゥアール・マネ 「サラマンカの学生たち」
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スペインの逸話を描いたマネの作品。自然が主役ではないものの、マネの別荘の辺りの風景を描いたようです。黒い服の人物が目を引きます。

近くにはコローやクールベ、シスレー、ブーダンなど印象派の誕生には欠かせなかった画家の作品が並んでいました。


<2 雲と煙 -モネとモダニスム 1870s>
こちらはモネのコーナーです。特に充実しているモネのコレクションがならんでいます。

クロード・モネ 「散歩」
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アルジャントゥイユにいた頃の作品。穏やかで光を感じるモネらしい作品です。日傘の女性が優雅な雰囲気。

他にもサンラザール駅を描いた作品やセーヌ河を描いた作品など、モネの魅力がよく分かる作品が並んでいました。


<3 人物の研究 -セザンヌとドガ 1870s>
こちらはセザンヌとドガのコーナー。

ポール・セザンヌ 「4人の水浴の女たち」
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人物が三角形に配置されている作品。セザンヌはこうした構成を意識した作品が多いので、これはそれが特によく現れていると思います。

勿論ここにはドガもありました。全部お見せるのもあれなので出し惜しみしておきますw


<4 光を描く-モネからスーラ 1880s>
こちらはモネやその後の新印象派のスーラなどの作品などが並んでいました。

ジョルジュ・スーラ 「グランカンの干潮」
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スーラはよく船を描いていて、代名詞的な点描の技法で描かれています。割と点が細かいのがスーラの特徴かな。

近くには点描を取り入れた頃のピサロの作品などもありました。他にもモネやセザンヌ、マネなどによるこの時代の作品も並んでいます。


<5 美しき女性たち-マネとルノワール 1880s>
こちらはマネとルノワールによる女性像のコーナーです。特にルノワールが充実していました。

ピエール・オーギュスト・ルノワール 「ムール貝採り」
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この美術館のコレクションの中でも特に好きな作品の1つです。子供の可愛さとムール貝採りという素朴な題材が楽しい。

他にもここにはこの美術館でも特に人気の作品が並んでいるので、見どころの1つだと思います。


<6 カンヴァスの上のサムライたち -日本近代洋画の黎明 1880s-1890s>
こちらは西洋画を学んで日本でも描き始めた頃の作品が並ぶコーナーです。

浅井忠 「武蔵野」
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バルビゾン派風の絵画を学んだ浅井忠ですが、ここでは武士の鷹狩という歴史的な場面を描いています。写実的で細やかな筆致からアカデミックな感じも受けました。

他に小山正太郎の作品などもありました。


<7 印象派の向こう側 -ポスト印象派の挑戦 1890s>
続いてはゴッホやゴーギャン、セザンヌなどポスト印象派の作品が並ぶコーナーです。このコーナーはそんなに点数は多くないのですが素晴らしい作品ばかりです。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「アザミの花」
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オーヴェル・シュル・オワーズのガシェ医師の家で描いた作品。晩年独特の大胆な筆致が残っているので、これは是非近くで見て頂きたい逸品です。

ポール・セザンヌ 「砂糖壺、梨とテーブルクロス」
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セザンヌの静物の魅力が詰まった1枚。球体や幾何学性、色彩の取り合わせなどが面白いです。

ポール・ゴーギャン 「異国のエヴァ」
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これは一見するとタヒチの様子のように見えますが、タヒチに行く前にパリ万博で観た異国の品を観たのを元に描いていると考えられているようです。いずれにしても原始を求めたゴーギャンの指向性が感じられる作品。


<8 モネ、水の世界へ 1890s>
再びモネのコーナー。こちらは水が描かれた作品が中心となっていました。

クロード・モネ 「睡蓮の池」
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ジヴェルニーの自宅の太鼓橋を描いた作品。睡蓮が水面に広がっていて、美しい光景です。どちらもモネの中でも特に有名なモチーフかな。

この他にも睡蓮そのものを描いた作品やルーアン大聖堂を描いた作品などもありました。


<9 1900年 -時代は動き、芸術が変わる 1900s>
こちらは印象派もあればその後の流れもある感じです。日本の近代洋画を導いた黒田清輝の作品なんかもありました。

アンリ・ルソー 「エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望」
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素朴派と呼ばれた偉大な素人アンリ・ルソー。人形のような人物や色合いがちょっとシュールな感じすら思えますが、どこか懐かしさを覚えます。

アンリ・ルソー 「エデンの園のエヴァ」
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何の植物か分からないうねったジャングルを描いた熱帯シリーズの1枚。エヴァと素朴な画風がマッチして非常に幻想的な光景となっています。

オディロン・ルドン 「アポロンの二輪馬車」
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ドラクロワがルーヴル美術館の天井に描いたアポロンの馬車に触発されて描いた作品の1枚。くすんだ感じの色彩や超現実的な光景がルドンならではの独特の世界となっています。

<10 色とかたちの冒険-フォーヴとキューブ 19000s-1910s>
続いてフォーヴィスムとキュビスムのコーナー。ここは撮影可能なものがありませんでしたが、ヴラマンクやブラック、ピカソなどがありました。ちなみにピカソの作品は全面的に撮影禁止となっています(多分、亡くなってからそれほど経ってないからかな?)


<11 Bonjour!巴里-パリと日本の画家たち 1910s>
続いてはパリと日本の画家についてのコーナーです。

佐伯祐三 「アントレ ド リュード シャトー」
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パリの建物をよく描いた佐伯ですが、ユトリロからの影響も感じさせます。しかし色彩の重厚さは独自のもので見事です。

近くにはユトリロの建物の作品もありました。見比べてみるのも面白いかも。


<12 美の競演-女性像にみる西洋と日本 1910s-1920s>
こちらは再び女性像に関するコーナーです。西洋と日本の女性像が並んでいます。

岸田劉生 「麗子坐像」
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岸田劉生といえば娘の麗子を描いた作品を真っ先に思い浮かべる人も多いのでは。こちらは細部まで緻密な描き方で、北方ルネサンス(特にデューラーあたり)を思わせる表現となっています。芸術の為とは言え子供ならもうちょっと可愛く描いてあげれば良いのにと毎回思いますw

他にもボナールや国吉、村山槐多なんかも好みでした。


<13 薔薇とキャベツ-静物画の魅力 1920s>
続いては静物画のコーナー。

小出楢重 「静物」
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このコーナーのタイトルを観てキャベツって何のこっちゃ?と思ったら、この絵に描かれてましたねw 色彩は強いのに軽やかさがあるのが小出楢重の魅力で、この作品でも野菜・果実が艷やかに描かれていました。

この近くには和田英作の薔薇を描いた作品もありました。


<14 描かれた日本のエレガンス-洋画の美人画 1920s>
続いては日本洋画の女性像のコーナーです。

岡田三郎助 「あやめの衣」
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沢山の着物を所有しモデルに着せていた岡田三郎助の作品。着崩して色っぽい姿が目を引きました。着物の柄も優美です。


<15 パリに集う異郷人たち-エコール・ド・パリの肖像 1920s>
続いてはエコール・ド・パリの画家たちのコーナーです。

ワシリー・カンディンスキー 「支え無し」
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色と形が音楽的なハーモニーを奏でる1枚。何が描かれているか分かりませんが、リズム感があって一目でカンディンスキーと分かる特徴があるのが面白いです。

この絵の近くには絵と一体化してみる体験コーナーみたいなのがありました。
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横からみるとこんな感じ。ここで遊んでから絵を見直すと何か違ってみえるかも?

シャイム・スーティン 「青い服を着た子供の肖像」
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ちょっと不機嫌そうな顔をした少女像。この構図やポーズは過去のルーヴルで観た巨匠の作品から学んでいるそうです。

近くにはモディリアーニやパスキン、ローランサンなんかもありました。


<16 魔術的芸術の魅力-シュルレアリスムの広がり 1930s>
続いてはシュルレアリスムのコーナーです。

古賀春江 「白い貝殻」
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空中なのか水中なのかマネキンのような人がポーズを取っているのが幻想的な作品。マネキンっぽいのはデ・キリコからの影響を受けているようです。海は古賀春江によく出てくる背景かも。


<17 みのりの季節-マティスとピカソ 1930s-1940s>
続いては主にマティスとピカソが中心のコーナー。とは言えボナールやデュフィ、マルケなどもあって充実しています。私は西洋画で最も好きなのはマティスかデュフィかという感じなのでこのコーナーは特に満足度が高かったです。

アンリ・マティス 「リュート」
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マティスならではの強い色彩の背景が目を引く作品。装飾的で軽やかな雰囲気が素晴らしい! リュートを持つ女性も優美な印象の逸品です。

ラウル・デュフィ 「パリ」
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水彩のように透明感のある色彩ですが油彩です。こちらも軽やかでのびのびした雰囲気がかなり好みでした。やはりデュフィは最高ですね。

このコーナーもピカソは写真が撮れませんが、いずれも素晴らしい作品が並んでいました。


<18 画家たちと戦争-揺れる時代の絵画 1940s>
こちらは第二次大戦の頃のコーナーです。

安井曾太郎 「中国風景」
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こちらは1944年に安井が中国を訪れた際に描かれた作品。のんびりしていて明るい色彩が穏やかですが、実際はこの頃は終戦近い時期なので世相は暗かったのかも。

<19 戦後の絵画-写実と抽象のはざまで 1950s>
こちらは戦後の日本洋画のコーナーです。

児島善三郎 「箱根仲秋」
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箱根の美術館に相応しい作品。児島善三郎の作品はいつの時代も好みですが、この単純化された作風も面白いです。色彩が強く感じられるのも素晴らしい1枚でした。


<20 それぞれの宇宙-描かれた幻想 1960s>
最後はすべて撮影不可でしたが、デルヴォーの大作を始め、シャガールの色彩や岡鹿之助の素朴さなど、各画家の個性溢れる作品が並んでいました。特にデルヴォーが観られて嬉しかったです。

この後、ポーラ美術館の日本画のコーナーもありました(ここも撮影不可) 大作が並ぶ光景は圧巻です。


ということで、豊富なコレクションをじっくりと堪能することができました。近代に限って言えば国立美術館にも匹敵するような充実のコレクションと言えるのではないかと思います。今回は近代絵画の流れに沿った内容だったので、美術初心者の方には美術の流れがよく分かる構成ではないかと思います。ポーラ美術館の凄さを再確認できる展示でした。


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Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。

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