Archive | 2018年04月
今回は写真多めです。先週の日曜日に横浜の原鉄道模型博物館に行ってきました。こちらの博物館では館内撮影ができましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【公式サイト】
http://www.hara-mrm.com/
【会場】原鉄道模型博物館
【最寄】横浜駅、新高島駅、高島町駅など
※営業時間・休館日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【感想】
子連れで結構お客さんが多かったですが、混雑しているというほどでも無く概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この博物館は原信太郎という物凄い鉄道愛好家のコレクションを元に作った施設で、2012年に開館しました。以前、開館して間もない頃に記事にしたことがあるので詳しくはそちらをご参照頂ければと思いますが、その頃は撮影できなかったのが今では撮影できるようになったみたいです。(展示品自体は大きく変わったわけではありません) 今回は撮ってきた写真を中心にご紹介していこうと思います。
参考リンク:原鉄道模型博物館の案内(2012年08月)
入口はこんな感じ

駅の自動改札みたいなに見えますがバーコード式です。
まず最初は鉄道模型のコーナーです。少年時代に作った模型から並んでいます。
こちらは原信太郎 氏が小学六年生の頃に初めて作った鉄道模型。

初めてでこんなクオリティで作れるの?w ボディは屋根の板を使ったりパンタグラフには針金を使ったりしたオリジナルで、大人でも普通は作れるものじゃないです。市販のモーターも入ってるみたいなので動くのかも。恐ろしい才能を目の当たりにできます。
こちらは明治末期に九州鉄道がアメリカに発注した豪華列車「或る列車」です。

せっかく作ったのに国鉄に買収された後に日本に到着したので営業運転には回されず教習車と使われ、全国各地に分散されました。原信太郎 氏は少年時代にそのうちの1両を実際に観ていたそうで、図面や資料を参考に自身のイメージでこの模型を作ったのだとか。ちなみに、現在のJR九州では「或る列車」の名前を冠した水戸岡鋭治 氏がデザインの列車も走っています。監修はこの博物館の副館長です。
参考リンク:JR九州 或る列車のコンセプト
こちらはワゴン・リ。オリエント急行です。

こちらは屋根が着脱できるようで、中の乗客までリアルに作られていました。こだわりが半端じゃないw
こちらは私鉄の模型。

ここに並んでいるのは近畿地方のものです。車種も古くてあまり馴染みはないですが阪神急行や新京阪などでした。
こちらはSLのコーナー。

C62をはじめ、国鉄時代に活躍した汽車が並びます。ちなみにこの博物館の模型はNゲージやHoゲージではなく、1番ゲージ等サイズの大きい模型なので非常に見栄えがします。
こちらはロンドン&ノース・イースタン鉄道 A4形 マラード号。

1938年に202km/hを記録したイギリスの機関車です。昔の新幹線並のスピードが出せたことも驚きですが、この流線型と色合いが非常に美しい。
こちらはペンシルバニア鉄道 S1形 S1 6100

こちらも1939年に162km/hというスピードを出していたようですが、バランスが悪く動輪が空回りすることが多かったので1両のみしか作られなかったそうです。見た目はアール・デコっぽさがあって非常にカッコイイんですがw この素材感が本物の機関車のようで非常にリアル
模型は他にも沢山あって、非常にテンションが上がります。とにかく完成度が半端じゃないw そして原信太郎 氏は模型以外に名を馳せたコレクションがあります。
それがこちらの一番切符。

現在の京王井の頭線の開業当時のもので、一番最初に発行されたものを一番切符と呼びます。これをゲットするために何日も前から作戦を立てて駅で待機していたようですw この切符は14歳の頃に初めて手に入れた一番切符で、その後も数々の一番切符を手に入れていきます。
病欠と偽って切符を集めたものの、雑誌に載ってバレたというエピソードもありますw その時は平謝りだったようです。 ちなみに原信太郎は慶応幼稚舎から慶応の付属に通い、慶應義塾大学から東京工業大学に行った秀才です。無数の特許も取得したほどの人で、賢い人がガチで趣味に没頭すると博物館が建つほどになるんですねw
こちらは新幹線ひかり1号の開業当時の一番切符

1号車1番B席という徹底ぶり。新大阪発のひかり2号の一番切符もゲットしているので、本当に凄いコレクションです。
この辺は原信太郎 氏の愛用カメラも並んでいました。

収集鉄だけでなく撮り鉄だってやってましたw 旧共産圏で写真を撮りまくってたら電車を停めて尋問されたなんてこともあったそうです。
再び模型で、これはドイツのヴッパータール空中鉄道の模型。

国際電話をかけっぱなしでクリスティーズのオークションで競り落としたもので、ヴッパータール市の博物館から譲って欲しいと申し出されたほどの美品です。
他にも世界に15台しかないメルクリン社の模型など、この辺は特に貴重なコレクションが並びます。
今回はやけに子供が多いなと思ったら、機関車トーマスに関する企画の期間中でした。

これはプラレールで出来たトーマスの模型。この部屋では沢山の子供たちがプラレールで遊んでいました。(これは触れません) 今年のGW期間が終わる頃までのようです。
【展覧名】
きかんしゃトーマス スペシャルギャラリー
【公式サイト】
http://www.hara-mrm.com/event/event1804_01.html
【会期】2018/04/18(水)~05/07(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
そしてこの博物館の一番の見どころはこちらの巨大ジオラマです。

30m×10mの広さで1/32の模型の街が出来ています。鉄道以外の部分も非常に緻密でリアルです。
時間が経つと夜になる凝りようです。

鉄博のNゲージと違い、こちらはかなり大型なのが魅力です。カメラもあって画面には疾走する様子などが写されていました。
こんな感じで橋や山間部などもあります。

ちょっと分かりづらいですが、ロープウェイなんかもいます。
この日はトーマスの仲間たちも走っていました。

私も子供の頃に読んでいましたがキャラの名前を忘れましたw 周囲の子供たちは大きな声で連呼していて、今も愛されているようです。
ちょっと架線で見切れていますが、こんな感じで走っていました。

ちなみにこの架線は飾りではなく、電車はこの架線から給電する本物さながらの作りになっています。本当にこだわりっぷりが半端じゃないw
こちらは運転台。

整理券があれば運転体験もできるようです。競争率高そう…。
こちらは各模型のサイズ比較ができるケース。

日本で一般的なNゲージと1番ゲージの大きさを比べると、この博物館の模型の大きさも分かるかも。
この博物館にはもう1つジオラマがあります。

こちらは古今の横浜駅をテーマにしたジオラマ。背景にみなとみらい(の写真)も見えています。
こちらは京浜東北線

この模型はそれほど大きくなかったと思いますが、間近で観るとやはりよく出来ていました。
ということで、久々に驚異のコレクションの数々を楽しめました。今回は写真も撮れたので違った楽しみ方もできたかな。ここは横浜駅からも近いので、鉄道好きの方は一度は観ておいて損は無いのではないかと思います。子供も大喜びの施設です。ちなみに同じビル内に天賞堂の鉄道模型屋もあって、テンションが上がったところで大人買いしそうになりましたw
おまけ:
こちらは会場外にあったニューブロックで作ったパーシー。

7000ピースも使ったようで、表情豊かでした。

【公式サイト】
http://www.hara-mrm.com/
【会場】原鉄道模型博物館
【最寄】横浜駅、新高島駅、高島町駅など
※営業時間・休館日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【感想】
子連れで結構お客さんが多かったですが、混雑しているというほどでも無く概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この博物館は原信太郎という物凄い鉄道愛好家のコレクションを元に作った施設で、2012年に開館しました。以前、開館して間もない頃に記事にしたことがあるので詳しくはそちらをご参照頂ければと思いますが、その頃は撮影できなかったのが今では撮影できるようになったみたいです。(展示品自体は大きく変わったわけではありません) 今回は撮ってきた写真を中心にご紹介していこうと思います。
参考リンク:原鉄道模型博物館の案内(2012年08月)
入口はこんな感じ

駅の自動改札みたいなに見えますがバーコード式です。
まず最初は鉄道模型のコーナーです。少年時代に作った模型から並んでいます。
こちらは原信太郎 氏が小学六年生の頃に初めて作った鉄道模型。

初めてでこんなクオリティで作れるの?w ボディは屋根の板を使ったりパンタグラフには針金を使ったりしたオリジナルで、大人でも普通は作れるものじゃないです。市販のモーターも入ってるみたいなので動くのかも。恐ろしい才能を目の当たりにできます。
こちらは明治末期に九州鉄道がアメリカに発注した豪華列車「或る列車」です。

せっかく作ったのに国鉄に買収された後に日本に到着したので営業運転には回されず教習車と使われ、全国各地に分散されました。原信太郎 氏は少年時代にそのうちの1両を実際に観ていたそうで、図面や資料を参考に自身のイメージでこの模型を作ったのだとか。ちなみに、現在のJR九州では「或る列車」の名前を冠した水戸岡鋭治 氏がデザインの列車も走っています。監修はこの博物館の副館長です。
参考リンク:JR九州 或る列車のコンセプト
こちらはワゴン・リ。オリエント急行です。


こちらは屋根が着脱できるようで、中の乗客までリアルに作られていました。こだわりが半端じゃないw
こちらは私鉄の模型。

ここに並んでいるのは近畿地方のものです。車種も古くてあまり馴染みはないですが阪神急行や新京阪などでした。
こちらはSLのコーナー。

C62をはじめ、国鉄時代に活躍した汽車が並びます。ちなみにこの博物館の模型はNゲージやHoゲージではなく、1番ゲージ等サイズの大きい模型なので非常に見栄えがします。
こちらはロンドン&ノース・イースタン鉄道 A4形 マラード号。

1938年に202km/hを記録したイギリスの機関車です。昔の新幹線並のスピードが出せたことも驚きですが、この流線型と色合いが非常に美しい。
こちらはペンシルバニア鉄道 S1形 S1 6100

こちらも1939年に162km/hというスピードを出していたようですが、バランスが悪く動輪が空回りすることが多かったので1両のみしか作られなかったそうです。見た目はアール・デコっぽさがあって非常にカッコイイんですがw この素材感が本物の機関車のようで非常にリアル
模型は他にも沢山あって、非常にテンションが上がります。とにかく完成度が半端じゃないw そして原信太郎 氏は模型以外に名を馳せたコレクションがあります。
それがこちらの一番切符。

現在の京王井の頭線の開業当時のもので、一番最初に発行されたものを一番切符と呼びます。これをゲットするために何日も前から作戦を立てて駅で待機していたようですw この切符は14歳の頃に初めて手に入れた一番切符で、その後も数々の一番切符を手に入れていきます。
病欠と偽って切符を集めたものの、雑誌に載ってバレたというエピソードもありますw その時は平謝りだったようです。 ちなみに原信太郎は慶応幼稚舎から慶応の付属に通い、慶應義塾大学から東京工業大学に行った秀才です。無数の特許も取得したほどの人で、賢い人がガチで趣味に没頭すると博物館が建つほどになるんですねw
こちらは新幹線ひかり1号の開業当時の一番切符

1号車1番B席という徹底ぶり。新大阪発のひかり2号の一番切符もゲットしているので、本当に凄いコレクションです。
この辺は原信太郎 氏の愛用カメラも並んでいました。

収集鉄だけでなく撮り鉄だってやってましたw 旧共産圏で写真を撮りまくってたら電車を停めて尋問されたなんてこともあったそうです。
再び模型で、これはドイツのヴッパータール空中鉄道の模型。

国際電話をかけっぱなしでクリスティーズのオークションで競り落としたもので、ヴッパータール市の博物館から譲って欲しいと申し出されたほどの美品です。
他にも世界に15台しかないメルクリン社の模型など、この辺は特に貴重なコレクションが並びます。
今回はやけに子供が多いなと思ったら、機関車トーマスに関する企画の期間中でした。

これはプラレールで出来たトーマスの模型。この部屋では沢山の子供たちがプラレールで遊んでいました。(これは触れません) 今年のGW期間が終わる頃までのようです。
【展覧名】
きかんしゃトーマス スペシャルギャラリー
【公式サイト】
http://www.hara-mrm.com/event/event1804_01.html
【会期】2018/04/18(水)~05/07(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
そしてこの博物館の一番の見どころはこちらの巨大ジオラマです。

30m×10mの広さで1/32の模型の街が出来ています。鉄道以外の部分も非常に緻密でリアルです。
時間が経つと夜になる凝りようです。

鉄博のNゲージと違い、こちらはかなり大型なのが魅力です。カメラもあって画面には疾走する様子などが写されていました。
こんな感じで橋や山間部などもあります。

ちょっと分かりづらいですが、ロープウェイなんかもいます。
この日はトーマスの仲間たちも走っていました。

私も子供の頃に読んでいましたがキャラの名前を忘れましたw 周囲の子供たちは大きな声で連呼していて、今も愛されているようです。
ちょっと架線で見切れていますが、こんな感じで走っていました。

ちなみにこの架線は飾りではなく、電車はこの架線から給電する本物さながらの作りになっています。本当にこだわりっぷりが半端じゃないw
こちらは運転台。

整理券があれば運転体験もできるようです。競争率高そう…。
こちらは各模型のサイズ比較ができるケース。

日本で一般的なNゲージと1番ゲージの大きさを比べると、この博物館の模型の大きさも分かるかも。
この博物館にはもう1つジオラマがあります。

こちらは古今の横浜駅をテーマにしたジオラマ。背景にみなとみらい(の写真)も見えています。
こちらは京浜東北線

この模型はそれほど大きくなかったと思いますが、間近で観るとやはりよく出来ていました。
ということで、久々に驚異のコレクションの数々を楽しめました。今回は写真も撮れたので違った楽しみ方もできたかな。ここは横浜駅からも近いので、鉄道好きの方は一度は観ておいて損は無いのではないかと思います。子供も大喜びの施設です。ちなみに同じビル内に天賞堂の鉄道模型屋もあって、テンションが上がったところで大人買いしそうになりましたw
おまけ:
こちらは会場外にあったニューブロックで作ったパーシー。

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今日は写真多めです。先週の日曜日に恵比寿のEBiS303 イベントホールで「Re 又造 MATAZO KAYAMA|加山又造アート展」を観てきました。この展示は撮影可能(スマートフォンのみ可能)となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
Re 又造 MATAZO KAYAMA|加山又造アート展
【公式サイト】
https://rematazo.tokyo/
【会場】EBiS303 イベントホール
【最寄】恵比寿駅
【会期】2018年4月11日(水)~ 5月5日(土・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は日本画の伝統に基づき革新をもたらした加山又造に関する内容となっています。しかし代表作を集めた個展というよりは、加山又造の作品を再解釈するような作品が多めで、実物よりも映像やインスタレーションが多く並んでいたように思います。詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。
こちらは倣北宋寒林雪山

幽玄な雰囲気の出た作品ですが、マスキングやエアブラシを使った斬新な技法が使われています。
こちらは部分のアップ

まるで龍の爪のような木々がうねるようで迫力がありました。
こちらは「狐」

何かを警戒するような仕草で、筋肉にも緊張感がありました。
こちらは「猫」

画面外に何か気になるものがあるのかな? 絵の外にも広がりを感じる面白いポーズです。
こちらは「おぼろ」 陶板の作品で、G7伊勢志摩サミットの首脳本会議場の前に飾られたそうです。

周りは花びらが降るような演出となっていました。手前には花びらも転がっているというこだわりも。
こちらは雑誌「新潮」の表紙の原画

この辺は琳派風に見えるかな。加山又造は中央公論の表紙なども手がけていて、いずれも季節感があります。
参考記事:戦後日本画の山脈 第一回 (成川美術館)箱根編
こちらの表紙。

この千鳥は「千羽鶴」でも観覚えがあるかな。デザイン化された花や波などが非常に雅な雰囲気です。
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2013年09月)
こちらは「若い白い馬」

1950年頃の作品。どこかキュビスム的な雰囲気もあって西洋画の研究の成果が見て取れます。
こちらは「月と縞馬」 ちょっと鑑賞者が映り込んじゃってますが…w

こちらは1954年の作品で、やはりキュビスムやシュルレアリスムに影響を受けていたのが分かります。非常に斬新! 足の部分とか8本どころじゃないw
こちらは「夏の海・冬の濤」より「夏の海」

琳派とキュビスムが融合したような勢いある波が見事。動きを感じます。
この辺には山種美術館の華扇屏風の複製などもありました。ここから先は複製が多くなってきます。
こちらは「黒い鳥」

加山又造の作品にはよくカラスが出てくるイメージがあります。これは暗い中でぼんやり浮かぶように展示していて、たまにチカチカ光る演出をしていました。
この辺にはブリューゲル絵画を思わせる東京近代美術館所蔵の「冬」を元に、カラスたちを動かしたような映像もありました。
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
こちらは「火の島」の複製

この作品は盟友の横山操に「君の作品は内向的だ」と指摘され横山操の「炎炎桜島」に影響を受けて描いたそうです。こちらは複製ですが、強い色彩でほとばしるようなエネルギーが表現されています。
こちらは「黄山雲海」

これも先程の作品と同じようにエアブラシを使ってるんじゃないかな。湿気を感じる画面に牧谿からの影響も感じます。
こちらは「春秋波濤」を元にした作品。

3層になっていて、層と層の間を通ることもできます。でもこの作品は大好きなので久々に本物を観たかったw 記念撮影に良い場所かな。
こちらは「風」 これは本物だったか複製だったか忘れましたw

羽が半透明に見えるのは細い線が密集しているからで、近くで観ると非常に細かく描かれているのが分かります。
最後の方の大広間では天龍寺の「雲龍図」(左)と身延山久遠寺の「墨龍」(右)の再現がありました。

これは流石に普通の展覧会では観られない品なので、ありがたいかもw いずれも加山又造がすべての技術をつぎ込んだ傑作です。
この部屋の映像ではその制作の様子なども流しています。

エアブラシをかけるなんて日本画の常識をぶち破る革新ですね。
こちらは「黒い薔薇の裸婦」を元にした映像作品。

女性たちがたまに動く映像となっていました。これも本物自体がすごく面白い作品なので、逆にストレスが溜まるw 本物が観たいんじゃ!w
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)
ということで、加山又造の作品を元にした映像やインスタレーションが中心と言った感じでした。色々頑張っているのだとは思いますが、本物が少なく重要な傑作は複製だったりするので入場料2000円というのは高すぎる気もします。 面白くなかった訳ではないのですが、加山又造の作品が大好きなだけにちょっと物足りないかったというのが正直なところです。別にエンタメを求めているわけじゃないんだけどなあ


【展覧名】
Re 又造 MATAZO KAYAMA|加山又造アート展
【公式サイト】
https://rematazo.tokyo/
【会場】EBiS303 イベントホール
【最寄】恵比寿駅
【会期】2018年4月11日(水)~ 5月5日(土・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は日本画の伝統に基づき革新をもたらした加山又造に関する内容となっています。しかし代表作を集めた個展というよりは、加山又造の作品を再解釈するような作品が多めで、実物よりも映像やインスタレーションが多く並んでいたように思います。詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。
こちらは倣北宋寒林雪山

幽玄な雰囲気の出た作品ですが、マスキングやエアブラシを使った斬新な技法が使われています。
こちらは部分のアップ

まるで龍の爪のような木々がうねるようで迫力がありました。
こちらは「狐」

何かを警戒するような仕草で、筋肉にも緊張感がありました。
こちらは「猫」

画面外に何か気になるものがあるのかな? 絵の外にも広がりを感じる面白いポーズです。
こちらは「おぼろ」 陶板の作品で、G7伊勢志摩サミットの首脳本会議場の前に飾られたそうです。

周りは花びらが降るような演出となっていました。手前には花びらも転がっているというこだわりも。
こちらは雑誌「新潮」の表紙の原画

この辺は琳派風に見えるかな。加山又造は中央公論の表紙なども手がけていて、いずれも季節感があります。
参考記事:戦後日本画の山脈 第一回 (成川美術館)箱根編
こちらの表紙。

この千鳥は「千羽鶴」でも観覚えがあるかな。デザイン化された花や波などが非常に雅な雰囲気です。
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2013年09月)
こちらは「若い白い馬」

1950年頃の作品。どこかキュビスム的な雰囲気もあって西洋画の研究の成果が見て取れます。
こちらは「月と縞馬」 ちょっと鑑賞者が映り込んじゃってますが…w

こちらは1954年の作品で、やはりキュビスムやシュルレアリスムに影響を受けていたのが分かります。非常に斬新! 足の部分とか8本どころじゃないw
こちらは「夏の海・冬の濤」より「夏の海」

琳派とキュビスムが融合したような勢いある波が見事。動きを感じます。
この辺には山種美術館の華扇屏風の複製などもありました。ここから先は複製が多くなってきます。
こちらは「黒い鳥」

加山又造の作品にはよくカラスが出てくるイメージがあります。これは暗い中でぼんやり浮かぶように展示していて、たまにチカチカ光る演出をしていました。
この辺にはブリューゲル絵画を思わせる東京近代美術館所蔵の「冬」を元に、カラスたちを動かしたような映像もありました。
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2010年12月)
こちらは「火の島」の複製

この作品は盟友の横山操に「君の作品は内向的だ」と指摘され横山操の「炎炎桜島」に影響を受けて描いたそうです。こちらは複製ですが、強い色彩でほとばしるようなエネルギーが表現されています。
こちらは「黄山雲海」

これも先程の作品と同じようにエアブラシを使ってるんじゃないかな。湿気を感じる画面に牧谿からの影響も感じます。
こちらは「春秋波濤」を元にした作品。

3層になっていて、層と層の間を通ることもできます。でもこの作品は大好きなので久々に本物を観たかったw 記念撮影に良い場所かな。
こちらは「風」 これは本物だったか複製だったか忘れましたw


羽が半透明に見えるのは細い線が密集しているからで、近くで観ると非常に細かく描かれているのが分かります。
最後の方の大広間では天龍寺の「雲龍図」(左)と身延山久遠寺の「墨龍」(右)の再現がありました。


これは流石に普通の展覧会では観られない品なので、ありがたいかもw いずれも加山又造がすべての技術をつぎ込んだ傑作です。
この部屋の映像ではその制作の様子なども流しています。

エアブラシをかけるなんて日本画の常識をぶち破る革新ですね。
こちらは「黒い薔薇の裸婦」を元にした映像作品。

女性たちがたまに動く映像となっていました。これも本物自体がすごく面白い作品なので、逆にストレスが溜まるw 本物が観たいんじゃ!w
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)
ということで、加山又造の作品を元にした映像やインスタレーションが中心と言った感じでした。色々頑張っているのだとは思いますが、本物が少なく重要な傑作は複製だったりするので入場料2000円というのは高すぎる気もします。 面白くなかった訳ではないのですが、加山又造の作品が大好きなだけにちょっと物足りないかったというのが正直なところです。別にエンタメを求めているわけじゃないんだけどなあ
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今日も写真多めです。前回に引き続き あしかがフラワーパークについてで、今回は夜のライトアップの写真をご紹介しようと思います。まずは概要のおさらいです。
昼の写真はこちら

【公式サイト】
http://www.ashikaga.co.jp/index.html
【会場】
あしかがフラワーパーク
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
3時間00分程度
前回ご紹介したのは夕方くらいの写真でしたが、日が暮れるとライトアップされます。「ふじのはな物語~大藤まつり2018~」と名前がついていて、ライトアップ期間中は21時まで開館しています。
ライトアップの会期:2018年4月14日(土)~5月20日(日)
ライトアップの公式サイト:https://www.ashikaga.co.jp/fujinohana_special2018/jp/
夜になるとこんな感じ

藤に光が当たって幻想的な光景になります。
こちらは大藤棚

私が行った時はまだ蕾のものが半分くらいありましたが、2018/4/27時点では満開になっているそうです。
太鼓橋もライトアップします

ここは特に人気の撮影ポイントなので人が沢山いました。
夕暮れ時は特に美しい光景となっていました。

昼間見た時の印象と全然違うので、ライトアップしてから同じところを周っていますw
こちらは前回の記事に似た構図(逆側からですが)で撮った写真があるので、比べて見てください。

水面にも光が当って綺麗です。
きばな藤のトンネルのトンネルも昼とは雰囲気がガラリと変わります。この時は咲いてませんでしたがw

きばな藤は他の種類に比べて やや遅めの時期に見頃が来るようですが、ここは一際綺麗になりそう。
花のピラミッドがある辺りも明るくライトアップされています。

まるで何かの遺跡のような厳かな雰囲気ですw
歩道の花壇もちゃんと照らされていました。

シュルレアリスムの絵に出てきそうな不思議な陰影となっています。
花壇はこんな感じ。

こちらも綺麗に列ができていて非常に手入れが行き届いています。
藤とツツジの共演。ライトアップされていると昼間より撮影しやすかったりします。

この2枚は同じ場所で撮っています。ちょっと欲張りすぎな構図で美術的にはイケてないやつですw
八重桜もライトアップされていました。

こちらは若干光のスポットが1箇所に集中するような感じでした。
こちらも人気の撮影スポットから撮った写真。

もうちょっと感度を上げると水面に反射した藤も綺麗に写りそう。私は三脚を使わないので諦めましたがw
藤のスクリーンもライトアップされていました。

昼間より花がよく見えるかもw 昼は全然咲いていないように見えたけど意外と紫がかっています。
これもシュルレアリスム的な光景で面白かった場所。

この辺はバラやチューリップなどがありました。
正門の辺りに戻ってきました。これなんかはアンリ・ル・シダネルのアンティミスムの絵みたいな光景です。

明るいうちに2時間、休憩1時間、日が暮れて1時間くらいいたと思います。正味で3時間ですが、待ってた時間を合わせると4時間くらいかも。7時半を過ぎると人も減ってきて快適です。
お腹が空いたのでフードコートで佐野ラーメンを食べました。

700円とちょっと高めですが、しっかり出汁の効いた昔ながらのラーメンで美味しかったです。佐野は足利からも近いので名物も一緒に楽しめた感じ。
ツツジもライトアップされていました。

本当に予想以上のライトアップぶりでした。こんなに綺麗だとは。
ということで、夜の あしかがフラワーパークも大いに楽しんできました。世界的に有名になった理由もよく分かる満足度です。暗い中に明るく浮かび上がる花は神秘的で、デ・キリコやデルヴォーのような不思議な陰影を作っていたのが印象的でした。
ちなみに足利にはこの施設の他にも足利学校や古い街並みもあり、周辺には美術館や佐野のアウトレットモールなどもあります。今回はそれらには行かなかったのですが、この界隈は1日遊んでも足りないくらい見どころがあるので、ゴールデンウィークに行く所を探している方は参考にしてみてください。
参考リンク:足利るるぶ特別編集
昼の写真はこちら

【公式サイト】
http://www.ashikaga.co.jp/index.html
【会場】
あしかがフラワーパーク
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
3時間00分程度
前回ご紹介したのは夕方くらいの写真でしたが、日が暮れるとライトアップされます。「ふじのはな物語~大藤まつり2018~」と名前がついていて、ライトアップ期間中は21時まで開館しています。
ライトアップの会期:2018年4月14日(土)~5月20日(日)
ライトアップの公式サイト:https://www.ashikaga.co.jp/fujinohana_special2018/jp/
夜になるとこんな感じ


藤に光が当たって幻想的な光景になります。
こちらは大藤棚


私が行った時はまだ蕾のものが半分くらいありましたが、2018/4/27時点では満開になっているそうです。
太鼓橋もライトアップします

ここは特に人気の撮影ポイントなので人が沢山いました。
夕暮れ時は特に美しい光景となっていました。


昼間見た時の印象と全然違うので、ライトアップしてから同じところを周っていますw
こちらは前回の記事に似た構図(逆側からですが)で撮った写真があるので、比べて見てください。

水面にも光が当って綺麗です。
きばな藤のトンネルのトンネルも昼とは雰囲気がガラリと変わります。この時は咲いてませんでしたがw

きばな藤は他の種類に比べて やや遅めの時期に見頃が来るようですが、ここは一際綺麗になりそう。
花のピラミッドがある辺りも明るくライトアップされています。

まるで何かの遺跡のような厳かな雰囲気ですw
歩道の花壇もちゃんと照らされていました。

シュルレアリスムの絵に出てきそうな不思議な陰影となっています。
花壇はこんな感じ。


こちらも綺麗に列ができていて非常に手入れが行き届いています。
藤とツツジの共演。ライトアップされていると昼間より撮影しやすかったりします。


この2枚は同じ場所で撮っています。ちょっと欲張りすぎな構図で美術的にはイケてないやつですw
八重桜もライトアップされていました。

こちらは若干光のスポットが1箇所に集中するような感じでした。
こちらも人気の撮影スポットから撮った写真。

もうちょっと感度を上げると水面に反射した藤も綺麗に写りそう。私は三脚を使わないので諦めましたがw
藤のスクリーンもライトアップされていました。

昼間より花がよく見えるかもw 昼は全然咲いていないように見えたけど意外と紫がかっています。
これもシュルレアリスム的な光景で面白かった場所。

この辺はバラやチューリップなどがありました。
正門の辺りに戻ってきました。これなんかはアンリ・ル・シダネルのアンティミスムの絵みたいな光景です。


明るいうちに2時間、休憩1時間、日が暮れて1時間くらいいたと思います。正味で3時間ですが、待ってた時間を合わせると4時間くらいかも。7時半を過ぎると人も減ってきて快適です。
お腹が空いたのでフードコートで佐野ラーメンを食べました。

700円とちょっと高めですが、しっかり出汁の効いた昔ながらのラーメンで美味しかったです。佐野は足利からも近いので名物も一緒に楽しめた感じ。
ツツジもライトアップされていました。

本当に予想以上のライトアップぶりでした。こんなに綺麗だとは。
ということで、夜の あしかがフラワーパークも大いに楽しんできました。世界的に有名になった理由もよく分かる満足度です。暗い中に明るく浮かび上がる花は神秘的で、デ・キリコやデルヴォーのような不思議な陰影を作っていたのが印象的でした。
ちなみに足利にはこの施設の他にも足利学校や古い街並みもあり、周辺には美術館や佐野のアウトレットモールなどもあります。今回はそれらには行かなかったのですが、この界隈は1日遊んでも足りないくらい見どころがあるので、ゴールデンウィークに行く所を探している方は参考にしてみてください。
参考リンク:足利るるぶ特別編集
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今日は写真多めです。10日程前の日曜日(2018/4/15)に栃木県足利市にある「あしかがフラワーパーク」に行ってきました。昼と夜でそれぞれ花の写真を沢山撮ってきましたので、今日はまず昼に撮った写真をご紹介していこうと思います。

【公式サイト】
http://www.ashikaga.co.jp/index.html
【会場】
あしかがフラワーパーク
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
3時間00分程度
結構お客さんは多かったですが、2年前にゴールデンウィークに行った時に比べるとまだ空いていたかな。ゴールデンウィークは花の盛りと重なるので、混雑も予想されます。ちなみに今回は16時頃に入園しました。遅くに行ったのは夕方以降のライトアップに合わせたためです
さて、今回ご紹介する あしかがフラワーパークは1997年に開業した施設で、毎年4月中旬から5月中旬にかけて藤の花が見事に咲くことで有名です。2014年にアメリカのCNNが選ぶ「2014年の世界の夢の旅行先10カ所」で日本で唯一選出されるなど世界的な注目も集めるようになり、今回も多くの外国人が訪れていました。
そして今年(2018年)の4月1日には園の目の前に新駅も出来て、更なる活況が予想されています。

以前は割と駅から延々と歩いた(狭い上に大勢で歩いたので大変だった)ので、この駅でグッと便利になりました。東京からだと東北線の小山駅から両毛線に乗り換えるルートで割と簡単に行けます。
こちらが入口(正門) 他に西門というのもあります

見た目は地方によくあるテーマパークみたいなw しかしこの建物は単なるグッズショップです。(西門にもグッズショップはあります)
ショップ内はこんな感じ

花に関するお土産物もあるし、鉢植えなんかも沢山あります。ここは帰る時にでも寄れば良いんじゃないかな。
冒頭の写真のハートの花壇は正門を抜けてすぐのところにありました。記念撮影している人が多かったです。
この日は東京は曇っていましたが、足利は快晴でした。

飛行機雲も出て爽やかな気候でした。早速、満開の花が出迎えてくれます。
花壇にもカラーなど沢山の花が咲いていました。

ちなみにこの あしかがフラワーパークは季節によって入場料が変わりますw やはり花が一斉に咲くゴールデンウィークあたりがピークのようです。
こちらも花壇の花。

花の咲き具合は公式サイトに載っています。ちなみにこの記事を書いた2018/4/26は、年間で最高の時と迎えているようです。
参考リンク:公式サイトの咲き具合のページ
何と言ってもこの あしかがフラワーパークの見どころは藤です。

園内のあちこちに藤があります。種類によって咲く時期がちょっと異なるので、こちらは満開でした。いい香りが漂います。
こちらは樹齢140年以上と言われる日本一の藤棚。

私が行った時はまだ五分咲きくらいでしたが、この記事を書いた時点では満開となっているようです。
こちらは2年前の2016年ゴールデンウィークに行った時の写真。

見事な花が咲き、非常に見ごたえがあります。この藤棚だけでも観る価値があると思います。
この他にも白藤のトンネルなんかもあって、そちらも見どころです。私が行った時は咲いてなかったので写真はありませんw
園内には水辺があり、こちらはモネの池を思わせる光景となっています。

ここも季節によってはさらに綺麗になりそうです。
参考記事:【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家
こんな感じで太鼓橋もあります。

太鼓橋の天井からも藤が垂れ下がっているので、ここも良い撮影ポイントです。ちょっと人が多すぎで、人が映り込みますがw
他にも水辺があって、花のピラミッドみたいなものがありました。

背景に見える3つのアーチ状のものは何でしょうか?? 以前は無かったので、また何か作ってるのかな?
こちらも花のピラミッド

非常に手入れの行き届いた美しい庭園美も楽しめます。
こちらは きばな藤のトンネル

きばな藤はちょっと遅めのようで、他の藤が満開でもまだ咲き始めとかだったりします。
私が行った時は八重桜も非常に見事に咲いていました。

八重桜、ツツジ、藤と行った花々が一気に咲いている欲張りな光景ですw
園内のあちこちに咲いていました。

今はどうなっているか分かりません。以前行った時はそんなに無かった気がするので、藤より前に終わってしまうのかも。
八重桜のアップ

ちょっと夕方で影が深くなってしまいましたが、間近で観ることができました。
歩き疲れたので、少し休憩。藤のアイスです。

見た目の色と香りが藤っぽくて、中々美味しいです。あちこちに座るところもあるので快適です
こちらは藤のスクリーン

こちらも私が行った時はまだ咲いていませんでしたが、ゴールデンウィークの頃には見頃となっているはずです。
園の奥の方にはツツジの海というエリアがあります。

この日は色とりどりのツツジが咲き乱れていて甘い香りがしました。子供の頃に蜜を吸った覚えがw
こちらもツツジ。

紫のツツジとか初めて見ました。非常に美しい光景です。
ということで、私が行った時は藤にはまだちょっと早めでしたが、今まさに花盛りとなっているようです。これからゴールデンウィークも始まるので、花好きの方は参考にして頂ければと思います。
次回は昼間とはまた違った魅力のある夜のライトアップの写真をご紹介の予定です。
→ 夜のライトアップの記事はこちら

【公式サイト】
http://www.ashikaga.co.jp/index.html
【会場】
あしかがフラワーパーク
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
3時間00分程度
結構お客さんは多かったですが、2年前にゴールデンウィークに行った時に比べるとまだ空いていたかな。ゴールデンウィークは花の盛りと重なるので、混雑も予想されます。ちなみに今回は16時頃に入園しました。遅くに行ったのは夕方以降のライトアップに合わせたためです
さて、今回ご紹介する あしかがフラワーパークは1997年に開業した施設で、毎年4月中旬から5月中旬にかけて藤の花が見事に咲くことで有名です。2014年にアメリカのCNNが選ぶ「2014年の世界の夢の旅行先10カ所」で日本で唯一選出されるなど世界的な注目も集めるようになり、今回も多くの外国人が訪れていました。
そして今年(2018年)の4月1日には園の目の前に新駅も出来て、更なる活況が予想されています。

以前は割と駅から延々と歩いた(狭い上に大勢で歩いたので大変だった)ので、この駅でグッと便利になりました。東京からだと東北線の小山駅から両毛線に乗り換えるルートで割と簡単に行けます。
こちらが入口(正門) 他に西門というのもあります

見た目は地方によくあるテーマパークみたいなw しかしこの建物は単なるグッズショップです。(西門にもグッズショップはあります)
ショップ内はこんな感じ

花に関するお土産物もあるし、鉢植えなんかも沢山あります。ここは帰る時にでも寄れば良いんじゃないかな。
冒頭の写真のハートの花壇は正門を抜けてすぐのところにありました。記念撮影している人が多かったです。
この日は東京は曇っていましたが、足利は快晴でした。

飛行機雲も出て爽やかな気候でした。早速、満開の花が出迎えてくれます。
花壇にもカラーなど沢山の花が咲いていました。

ちなみにこの あしかがフラワーパークは季節によって入場料が変わりますw やはり花が一斉に咲くゴールデンウィークあたりがピークのようです。
こちらも花壇の花。

花の咲き具合は公式サイトに載っています。ちなみにこの記事を書いた2018/4/26は、年間で最高の時と迎えているようです。
参考リンク:公式サイトの咲き具合のページ
何と言ってもこの あしかがフラワーパークの見どころは藤です。

園内のあちこちに藤があります。種類によって咲く時期がちょっと異なるので、こちらは満開でした。いい香りが漂います。
こちらは樹齢140年以上と言われる日本一の藤棚。

私が行った時はまだ五分咲きくらいでしたが、この記事を書いた時点では満開となっているようです。
こちらは2年前の2016年ゴールデンウィークに行った時の写真。

見事な花が咲き、非常に見ごたえがあります。この藤棚だけでも観る価値があると思います。
この他にも白藤のトンネルなんかもあって、そちらも見どころです。私が行った時は咲いてなかったので写真はありませんw
園内には水辺があり、こちらはモネの池を思わせる光景となっています。

ここも季節によってはさらに綺麗になりそうです。
参考記事:【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家
こんな感じで太鼓橋もあります。

太鼓橋の天井からも藤が垂れ下がっているので、ここも良い撮影ポイントです。ちょっと人が多すぎで、人が映り込みますがw
他にも水辺があって、花のピラミッドみたいなものがありました。

背景に見える3つのアーチ状のものは何でしょうか?? 以前は無かったので、また何か作ってるのかな?
こちらも花のピラミッド

非常に手入れの行き届いた美しい庭園美も楽しめます。
こちらは きばな藤のトンネル

きばな藤はちょっと遅めのようで、他の藤が満開でもまだ咲き始めとかだったりします。
私が行った時は八重桜も非常に見事に咲いていました。


八重桜、ツツジ、藤と行った花々が一気に咲いている欲張りな光景ですw
園内のあちこちに咲いていました。

今はどうなっているか分かりません。以前行った時はそんなに無かった気がするので、藤より前に終わってしまうのかも。
八重桜のアップ

ちょっと夕方で影が深くなってしまいましたが、間近で観ることができました。
歩き疲れたので、少し休憩。藤のアイスです。

見た目の色と香りが藤っぽくて、中々美味しいです。あちこちに座るところもあるので快適です
こちらは藤のスクリーン

こちらも私が行った時はまだ咲いていませんでしたが、ゴールデンウィークの頃には見頃となっているはずです。
園の奥の方にはツツジの海というエリアがあります。

この日は色とりどりのツツジが咲き乱れていて甘い香りがしました。子供の頃に蜜を吸った覚えがw
こちらもツツジ。

紫のツツジとか初めて見ました。非常に美しい光景です。
ということで、私が行った時は藤にはまだちょっと早めでしたが、今まさに花盛りとなっているようです。これからゴールデンウィークも始まるので、花好きの方は参考にして頂ければと思います。
次回は昼間とはまた違った魅力のある夜のライトアップの写真をご紹介の予定です。
→ 夜のライトアップの記事はこちら
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前回に引き続き東京国立博物館の 創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年 特別展「名作誕生-つながる日本美術」 についてです。前半は第一会場についてご紹介しましたが、今日は残りの第二会場についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
前編はこちら

【展覧名】
創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年
特別展「名作誕生-つながる日本美術」
【公式サイト】
http://meisaku2018.jp/
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1889
【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅
【会期】2018年4月13日(金) ~ 5月27日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半は絵画作品が多めの内容となっていました。
<第2章 巨匠のつながり>
第二会場は2章からの続きとなります。俵屋宗達と伊藤若冲について展示されていました。
[宗達と古典]
俵屋宗達は人気の扇屋だった絵師で、古画の人物や場面をトリミングして再配置(コラージュ的な)するなど図様の転用が見られるようです。ここにはそうした様子が分かる作品が並んでいました。
52 俵屋宗達 「扇面散屛風」
こちらは8曲1双の屏風に48枚の扇が画中画のように描かれた作品です。それぞれの扇には「平治物語絵巻」からの引用が見られるようで、近くにある「平治物語絵巻」や写真と共に比較しながら観ることができます。図様はそのまんまですが、扇の向きを変えたりして自由自在にコラージュしている感じが面白く、軽やかなリズム感も生まれています。色彩鮮やかで たらしこみ等、琳派に受け継がれていく技法も確認できました。
[若冲と模倣]
{鶴の変容}
続いては最近では大人気の絵師となった伊藤若冲のコーナーです。伊藤若冲は独自の画風に思えますが、文正や沈南蘋に学んだことが知られています。ここでは若冲と同じく文正から学んだ狩野探幽の作品も含めて3者を比較するように並んでいました。
文正「鳴鶴図」 伊藤若冲「白鶴図」
海を背景に松の下で上を向く鶴と、羽を広げて舞い降りてくる鶴が描かれた作品で、全く同じ構図の2幅対の掛け軸が3セット展示されていました。文正の作品は松ではなかったり、若冲は海の文様が大胆だったりしますが、鶴自体は一見すると見分けがつかないほどです。どちらもかなり細かいですが、若冲のほうが透ける羽が細部まで丹念に描いているように見えるかな。この隣にはさらに同じ図様の狩野探幽「波濤飛鶴図」もあって、まるで間違い探しみたいな感じでしたw いかに若冲と探幽が文正の作品から学んでいたがよく分かる作品です。
{若冲の鶏}
こちらは若冲の代名詞とも言える鶏のコーナーです。
65 伊藤若冲 「仙人掌群鶏図襖」
こちらは金地の襖絵で、6枚の襖に多くの鶏が描かれています。また、左右の1枚ずつにはサボテンが描かれていて、日本画としては珍しいモチーフです。これは薬問屋の注文で作られたので、それを踏まえて描かれていると考えられるようです。 鶏については極彩色で細密に描かれ、尾などは躍動感のある表現となっています。たまにヒヨコなんかもいて可愛いw 解説によると、この作品は70代の頃の作のようですが、若い頃に描いた鶏を自己模倣して描いているのだとか。若冲の魅力が凝縮された作品でした。
<第3章 古典文学につながる>
続いては古典文学を題材にした作品のコーナーです。特に伊勢物語の八橋・宇津山・竜田川と、源氏物語の夕顔・初音の帖をテーマにした作品が並んでいました。
[伊勢物語]
72 尾形光琳 「八橋蒔絵螺鈿硯箱」

※写真はかなり前に常設展示されていた時に撮影したものです。(今回の展示は撮影不可です)
蒔絵、金、螺鈿を使って作られた硯箱で、燕子花の花が螺鈿で輝くようになっています。これは在原業平が東下りの際に三河の八橋で見た燕子花をモチーフにしたもので、蓋の表面から側面をぐるっと周る感じで橋が並んでいます。橋の部分は鉛で出来ているようで素材の使い分けも見事です。遊び心とデザインの面白さを感じられる超名品です。
この辺には縫箔や打掛など、伊勢物語を題材にした文様の着物も展示されていました。
[源氏物語]
80 「夕顔蒔絵手箱」
こちらは蒔絵の手箱で、蓋には牛車がぽつんと置かれていて牛も人もいない情景が表されています。背景の垣根には夕顔らしき花が表されていて、これで源氏物語の夕顔との出会いのシーンを想起させるようになっています。(昔の教養人はこれで十分分かったのです) 夕顔も源氏もいない「留守文様」のため、静けさと共に物語の予感を感じさせる作品となっていました。
この近くには同様の意匠の能装束などもありました。
85 幸阿弥長重「初音蒔絵硯箱(千代姫婚礼調度のうち)」
こちらは大きな庭のある屋敷と、根引きの松、うぐいすなどが表された硯箱です。このモチーフだけで「初音」の帖であると分かる人は昔の人に負けない源氏物語のファンかもw この作品でも人の気配はなく、軒先で口を開けて鳴く黄金のうぐいすが目を引きました。このうぐいすが非常に可愛らしいので注目ですw また2箇所に葵の紋があるのですが、これはこの作品が徳川家光の長女 千代姫の婚礼道具だったためのようでした。この作品も非常に貴重なものですね。
<第4章 つながるモチーフ/イメージ>
最後はモチーフごとに各時代の作品が並ぶコーナーです。山水、花鳥、人物、古今のテーマで節分けされていました。
[山水をつなぐ]
こちらはさらに3つの項に分かれていました。
{吉野山}
94 「豊公吉野花見図屛風」
こちらは六曲一双の屏風で、何処まで言っても桜が咲いている吉野の山を題材としています。沢山の武士たちが連なっていて、その列の中に輿に乗った秀吉らしき姿も描かれています。これは秀吉が開催した有名な花見の様子を題材にしたものですが、当時の華やかな様子がよく伝わってくる作品でした。
この近くにあったMOA美術館が所有する尾形乾山の「色絵吉野山図透彫反鉢」や仁阿弥道八の「色絵桜楓文鉢」なども見事でした。
{富士三保松原}
ここは後期からのコーナーじゃないかな。前期はありませんでした。
{松林}
こちらは前期だけのコーナーです。
90 長谷川等伯 「松林図屛風」

※写真はかなり前に常設展示されていた時に撮影したものです。(今回の展示は撮影不可です)
この作品も今回展示されていました。技術的には牧谿からの影響を感じますが、細かいことは忘れてこの世界に没頭したい作品です。
この近くには長谷川等伯の「山水松林架橋図襖」もありました。名前を売るために大徳寺に入って勝手に描いちゃったけど、あまりに見事だったのでセーフだったいうやつ(のうちの4面)で、「松林図屛風」に先行して似た雰囲気があります。こちらも必見ですね。
参考記事:没後400年 特別展「長谷川等伯」 感想前編(東京国立博物館 平成館)
[花鳥をつなぐ]
続いては花鳥画のコーナーです。
{蓮}
蓮は独特の形や宗教的な動機からアジアで古くから盛んに描かれたモチーフで、宋時代に蓮池水禽図の形式が生まれたそうです。
104 「蓮池図屛風」
こちらは2曲1隻の日本現存最古の蓮池水禽図屏風で、鎌倉時代の作品です。満開の蓮の花と葉が描かれていて、水面には水鳥の姿もあり飛び立つ鷺?なども描かれています。輪郭線を使わず大ぶりな花が描かれ躍動感もあって古い作品とは思えない面白さがありました。
この近くにあった俵屋宗達・本阿弥光悦の「蓮下絵和歌巻断簡」や能阿弥の「蓮図」も非常に素晴らしい作品でした。
109 酒井抱一「白蓮図」
白い花に長い茎の蓮を描いた作品で、その後ろには大きな葉っぱが描かれています。下の方には つぼみもあって蓮の花の一生を1枚の中に表しているようです。色がモノクロにも感じられますが、かすかに緑や金も使われているのが分かります。簡潔な構図で静寂が漂い、儚さも感じられました。解説によると牧谿や宗達の水墨を念頭に仏画の手法も合わせているとのことでした。
{雀}
続いては雀のモチーフです。雀は北宋時代に描かれたものを範とした作品が並んでいました。(ここは3点のみ)
110 伝宋汝志 「雛雀図」
籠の中に入った5匹の雀の雛たちが描かれた作品で、籠のふちあたりには2羽が暴れて籠が倒れそうになっているようにも見えます。丸々として可愛らしい姿をしていて、かなり丹念な描写でリアルさもありました。
[人物をつなぐ]
続いては人物画の節です。
{戸をたたく男}
こちらは紫式部をからかった藤原道長が謝罪に訪れた際の逸話などをテーマにした作品が並んでいました。
113 「紫式部日記絵巻」
紫式部は浮気者だとからかう歌を詠んだ藤原道長が、謝罪に紫式部の部屋を訪れるシーンを描いた作品です。紫式部は畏れおののいて部屋の中で息を殺して伏せているようで、部屋の外に立つ藤原道長の呼びかけには応じていません。と言っても中は丸見えのような…w ちょっと変わった題材となっていました。
ここには岩佐又兵衛の「梓弓図」もありました。
{縁先の美人}
ここも後期からのコーナーじゃないかな。前期はありませんでした。
{交わされる視線、注がれる視線}
こちらは洛中洛外図や浮世絵の美人画が並ぶコーナーです。
124 菱川師宣 「見返り美人図」
こちらは教科書などにも載っていた有名作で、振り返る赤い着物の女性が描かれています。たまむすびという髪型で、帯は当時の流行のものとなっているなど、17世紀後半の最新のファッションに身を包んでいるようです。右に視線を向けていて何を観ているのかミステリアスな感じもあり、細い輪郭で描かれた流れるようなプロポーションが優美な印象となっていました。
[古今をつなぐ]
最後は江戸時代の浮世絵と岸田劉生を繋ぐモチーフのコーナーとなっていました。
{江戸の坂、東京の坂}
こちらは坂を描いた作品がありました。
128 岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」

※写真はかなり前に東京近代美術館で常設展示されていた時に撮影したものです。(今回の展示は撮影不可です)
ここに来てまさかの近代絵画!w 古今東西の古画に学んだ岸田劉生の作品の中でもこちらは名作として名高い逸品です。坂の急な様子と強い日差しが感じられます。
この近くには北斎や広重が描いた坂の絵がありました。
{寒山としての麗子}
最後は寒山拾得図を元にした岸田劉生の作品が展示されていました。
130 岸田劉生 「野童女」
おかっぱで赤い着物を来た女の子を描いた作品です。これは岸田劉生が頻繁に描いた娘の麗子で、ニヤッとした顔をしていて妖怪みたいな顔つきとなっていますw この作品の隣にはこの作品を描く際に参考にした(写真を元に描いた)伝 顔輝の「寒山拾得図」もありました。見比べて観られるのは貴重な機会と言えるかも。確かに雰囲気が似ているのがよく分かりますが、濃厚な色彩で描いている点に岸田劉生らしさを感じました。
参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)
ということで、まさに日本の華と呼ぶに相応しい超豪華な展覧会となっていました。私は結構観たことがある作品が多かったのですが、これだけ一気に有名作を観られる機会は中々無いと思います。日本美術の源流なども知ることができるので、美術初心者も楽しめるんじゃないかな。1ヶ月半と会期が短めで、入れ替えも細かくなっているので、お目当ての品がある方は事前にリストを観てお出かけすることをお勧めします。今季最も充実したラインナップの展示です
前編はこちら

【展覧名】
創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年
特別展「名作誕生-つながる日本美術」
【公式サイト】
http://meisaku2018.jp/
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1889
【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅
【会期】2018年4月13日(金) ~ 5月27日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半は絵画作品が多めの内容となっていました。
<第2章 巨匠のつながり>
第二会場は2章からの続きとなります。俵屋宗達と伊藤若冲について展示されていました。
[宗達と古典]
俵屋宗達は人気の扇屋だった絵師で、古画の人物や場面をトリミングして再配置(コラージュ的な)するなど図様の転用が見られるようです。ここにはそうした様子が分かる作品が並んでいました。
52 俵屋宗達 「扇面散屛風」
こちらは8曲1双の屏風に48枚の扇が画中画のように描かれた作品です。それぞれの扇には「平治物語絵巻」からの引用が見られるようで、近くにある「平治物語絵巻」や写真と共に比較しながら観ることができます。図様はそのまんまですが、扇の向きを変えたりして自由自在にコラージュしている感じが面白く、軽やかなリズム感も生まれています。色彩鮮やかで たらしこみ等、琳派に受け継がれていく技法も確認できました。
[若冲と模倣]
{鶴の変容}
続いては最近では大人気の絵師となった伊藤若冲のコーナーです。伊藤若冲は独自の画風に思えますが、文正や沈南蘋に学んだことが知られています。ここでは若冲と同じく文正から学んだ狩野探幽の作品も含めて3者を比較するように並んでいました。
文正「鳴鶴図」 伊藤若冲「白鶴図」
海を背景に松の下で上を向く鶴と、羽を広げて舞い降りてくる鶴が描かれた作品で、全く同じ構図の2幅対の掛け軸が3セット展示されていました。文正の作品は松ではなかったり、若冲は海の文様が大胆だったりしますが、鶴自体は一見すると見分けがつかないほどです。どちらもかなり細かいですが、若冲のほうが透ける羽が細部まで丹念に描いているように見えるかな。この隣にはさらに同じ図様の狩野探幽「波濤飛鶴図」もあって、まるで間違い探しみたいな感じでしたw いかに若冲と探幽が文正の作品から学んでいたがよく分かる作品です。
{若冲の鶏}
こちらは若冲の代名詞とも言える鶏のコーナーです。
65 伊藤若冲 「仙人掌群鶏図襖」
こちらは金地の襖絵で、6枚の襖に多くの鶏が描かれています。また、左右の1枚ずつにはサボテンが描かれていて、日本画としては珍しいモチーフです。これは薬問屋の注文で作られたので、それを踏まえて描かれていると考えられるようです。 鶏については極彩色で細密に描かれ、尾などは躍動感のある表現となっています。たまにヒヨコなんかもいて可愛いw 解説によると、この作品は70代の頃の作のようですが、若い頃に描いた鶏を自己模倣して描いているのだとか。若冲の魅力が凝縮された作品でした。
<第3章 古典文学につながる>
続いては古典文学を題材にした作品のコーナーです。特に伊勢物語の八橋・宇津山・竜田川と、源氏物語の夕顔・初音の帖をテーマにした作品が並んでいました。
[伊勢物語]
72 尾形光琳 「八橋蒔絵螺鈿硯箱」

※写真はかなり前に常設展示されていた時に撮影したものです。(今回の展示は撮影不可です)
蒔絵、金、螺鈿を使って作られた硯箱で、燕子花の花が螺鈿で輝くようになっています。これは在原業平が東下りの際に三河の八橋で見た燕子花をモチーフにしたもので、蓋の表面から側面をぐるっと周る感じで橋が並んでいます。橋の部分は鉛で出来ているようで素材の使い分けも見事です。遊び心とデザインの面白さを感じられる超名品です。
この辺には縫箔や打掛など、伊勢物語を題材にした文様の着物も展示されていました。
[源氏物語]
80 「夕顔蒔絵手箱」
こちらは蒔絵の手箱で、蓋には牛車がぽつんと置かれていて牛も人もいない情景が表されています。背景の垣根には夕顔らしき花が表されていて、これで源氏物語の夕顔との出会いのシーンを想起させるようになっています。(昔の教養人はこれで十分分かったのです) 夕顔も源氏もいない「留守文様」のため、静けさと共に物語の予感を感じさせる作品となっていました。
この近くには同様の意匠の能装束などもありました。
85 幸阿弥長重「初音蒔絵硯箱(千代姫婚礼調度のうち)」
こちらは大きな庭のある屋敷と、根引きの松、うぐいすなどが表された硯箱です。このモチーフだけで「初音」の帖であると分かる人は昔の人に負けない源氏物語のファンかもw この作品でも人の気配はなく、軒先で口を開けて鳴く黄金のうぐいすが目を引きました。このうぐいすが非常に可愛らしいので注目ですw また2箇所に葵の紋があるのですが、これはこの作品が徳川家光の長女 千代姫の婚礼道具だったためのようでした。この作品も非常に貴重なものですね。
<第4章 つながるモチーフ/イメージ>
最後はモチーフごとに各時代の作品が並ぶコーナーです。山水、花鳥、人物、古今のテーマで節分けされていました。
[山水をつなぐ]
こちらはさらに3つの項に分かれていました。
{吉野山}
94 「豊公吉野花見図屛風」
こちらは六曲一双の屏風で、何処まで言っても桜が咲いている吉野の山を題材としています。沢山の武士たちが連なっていて、その列の中に輿に乗った秀吉らしき姿も描かれています。これは秀吉が開催した有名な花見の様子を題材にしたものですが、当時の華やかな様子がよく伝わってくる作品でした。
この近くにあったMOA美術館が所有する尾形乾山の「色絵吉野山図透彫反鉢」や仁阿弥道八の「色絵桜楓文鉢」なども見事でした。
{富士三保松原}
ここは後期からのコーナーじゃないかな。前期はありませんでした。
{松林}
こちらは前期だけのコーナーです。
90 長谷川等伯 「松林図屛風」

※写真はかなり前に常設展示されていた時に撮影したものです。(今回の展示は撮影不可です)
この作品も今回展示されていました。技術的には牧谿からの影響を感じますが、細かいことは忘れてこの世界に没頭したい作品です。
この近くには長谷川等伯の「山水松林架橋図襖」もありました。名前を売るために大徳寺に入って勝手に描いちゃったけど、あまりに見事だったのでセーフだったいうやつ(のうちの4面)で、「松林図屛風」に先行して似た雰囲気があります。こちらも必見ですね。
参考記事:没後400年 特別展「長谷川等伯」 感想前編(東京国立博物館 平成館)
[花鳥をつなぐ]
続いては花鳥画のコーナーです。
{蓮}
蓮は独特の形や宗教的な動機からアジアで古くから盛んに描かれたモチーフで、宋時代に蓮池水禽図の形式が生まれたそうです。
104 「蓮池図屛風」
こちらは2曲1隻の日本現存最古の蓮池水禽図屏風で、鎌倉時代の作品です。満開の蓮の花と葉が描かれていて、水面には水鳥の姿もあり飛び立つ鷺?なども描かれています。輪郭線を使わず大ぶりな花が描かれ躍動感もあって古い作品とは思えない面白さがありました。
この近くにあった俵屋宗達・本阿弥光悦の「蓮下絵和歌巻断簡」や能阿弥の「蓮図」も非常に素晴らしい作品でした。
109 酒井抱一「白蓮図」
白い花に長い茎の蓮を描いた作品で、その後ろには大きな葉っぱが描かれています。下の方には つぼみもあって蓮の花の一生を1枚の中に表しているようです。色がモノクロにも感じられますが、かすかに緑や金も使われているのが分かります。簡潔な構図で静寂が漂い、儚さも感じられました。解説によると牧谿や宗達の水墨を念頭に仏画の手法も合わせているとのことでした。
{雀}
続いては雀のモチーフです。雀は北宋時代に描かれたものを範とした作品が並んでいました。(ここは3点のみ)
110 伝宋汝志 「雛雀図」
籠の中に入った5匹の雀の雛たちが描かれた作品で、籠のふちあたりには2羽が暴れて籠が倒れそうになっているようにも見えます。丸々として可愛らしい姿をしていて、かなり丹念な描写でリアルさもありました。
[人物をつなぐ]
続いては人物画の節です。
{戸をたたく男}
こちらは紫式部をからかった藤原道長が謝罪に訪れた際の逸話などをテーマにした作品が並んでいました。
113 「紫式部日記絵巻」
紫式部は浮気者だとからかう歌を詠んだ藤原道長が、謝罪に紫式部の部屋を訪れるシーンを描いた作品です。紫式部は畏れおののいて部屋の中で息を殺して伏せているようで、部屋の外に立つ藤原道長の呼びかけには応じていません。と言っても中は丸見えのような…w ちょっと変わった題材となっていました。
ここには岩佐又兵衛の「梓弓図」もありました。
{縁先の美人}
ここも後期からのコーナーじゃないかな。前期はありませんでした。
{交わされる視線、注がれる視線}
こちらは洛中洛外図や浮世絵の美人画が並ぶコーナーです。
124 菱川師宣 「見返り美人図」
こちらは教科書などにも載っていた有名作で、振り返る赤い着物の女性が描かれています。たまむすびという髪型で、帯は当時の流行のものとなっているなど、17世紀後半の最新のファッションに身を包んでいるようです。右に視線を向けていて何を観ているのかミステリアスな感じもあり、細い輪郭で描かれた流れるようなプロポーションが優美な印象となっていました。
[古今をつなぐ]
最後は江戸時代の浮世絵と岸田劉生を繋ぐモチーフのコーナーとなっていました。
{江戸の坂、東京の坂}
こちらは坂を描いた作品がありました。
128 岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」

※写真はかなり前に東京近代美術館で常設展示されていた時に撮影したものです。(今回の展示は撮影不可です)
ここに来てまさかの近代絵画!w 古今東西の古画に学んだ岸田劉生の作品の中でもこちらは名作として名高い逸品です。坂の急な様子と強い日差しが感じられます。
この近くには北斎や広重が描いた坂の絵がありました。
{寒山としての麗子}
最後は寒山拾得図を元にした岸田劉生の作品が展示されていました。
130 岸田劉生 「野童女」
おかっぱで赤い着物を来た女の子を描いた作品です。これは岸田劉生が頻繁に描いた娘の麗子で、ニヤッとした顔をしていて妖怪みたいな顔つきとなっていますw この作品の隣にはこの作品を描く際に参考にした(写真を元に描いた)伝 顔輝の「寒山拾得図」もありました。見比べて観られるのは貴重な機会と言えるかも。確かに雰囲気が似ているのがよく分かりますが、濃厚な色彩で描いている点に岸田劉生らしさを感じました。
参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)
ということで、まさに日本の華と呼ぶに相応しい超豪華な展覧会となっていました。私は結構観たことがある作品が多かったのですが、これだけ一気に有名作を観られる機会は中々無いと思います。日本美術の源流なども知ることができるので、美術初心者も楽しめるんじゃないかな。1ヶ月半と会期が短めで、入れ替えも細かくなっているので、お目当ての品がある方は事前にリストを観てお出かけすることをお勧めします。今季最も充実したラインナップの展示です
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10日程前の金曜の会社帰りに上野の東京国立博物館 平成館で、創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年 特別展「名作誕生-つながる日本美術」を観てきました。非常に充実した内容となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年
特別展「名作誕生-つながる日本美術」
【公式サイト】
http://meisaku2018.jp/
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1889
【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅
【会期】2018年4月13日(金) ~ 5月27日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
展覧会初日の金曜夕方ということもあって、割と空いていて快適に鑑賞することができました。それでも場所によっては人だかりができるような感じだったので、これから先は混むのではないかと思います。混んでいないのに観るのに2時間半もかかったので、時間に余裕を持ってお出かけすることをお勧めします。
さて、今回の展示は岡倉天心と高橋健三が中心となって朝日新聞社出版で1889年に創刊した『國華』の130周年を記念したもので、日本美術史上の名作の数々をその流れと共に130件も紹介する豪華な内容となっています。『國華』については最初の入口に創刊号~3号まで展示されている程度で、単純に日本美術の名品とそれに影響を与えた名品(主に中国美術)をひたすら楽しむような感じです。古くは奈良時代から大正の頃まで、絵画・彫刻・工芸など様々な品が並んでいました。テーマごとに章分けされていましたので、簡単に各章ごとにその様子をご紹介していこうと思います。
なお、この展示は会期が6期あり1~3期と4~6期で大きく分かれます。私が観たのは1期の内容でした。
<第1章 祈りをつなぐ>
まずは仏教美術のコーナーです。日本で木彫りの仏像が作られるようになったのは、鑑真と共に渡来した工人たちが日本には仏像に適した石が無かったので 木で作り出したのが始まりだったようです。ここにはそうした木造の仏像などが並んでいました。
[一木の祈り]
この節には一木造の仏像が並びます。木造の仏像には白檀が相応しいとされたのですが、白檀は貴重なのでカヤに白檀の色を塗って表現していたそうです。
2 「伝衆宝王菩薩立像」
こちらは肘から先がない等身大の仏像です。胴体が長めで下半身の帯布の辺りに唐時代に作られた仏像(近くに十一面観音菩薩立像)に影響を受けているそうです。全体的に彫りが浅めで優美な雰囲気の仏様でした。
1 「伝薬師如来立像」
こちらも肘から先がない立像で、台まで含めて一木で造られているようです。こちらは鑑真と共に渡来した工人による作と考えられるようで、日本で木造の仏像が作られるきっかけになったものの1つと言えそうです。全体的に肉厚的で、肩からかけた布のひだが流れる感じの表現で木目と合っているように見えたのが面白かったです。これは結構大きいので、元の木も相当立派だったのではないかと思います。
[祈る普賢]
続いては普賢菩薩に関するコーナーです。日本の普賢菩薩像は9世紀に最澄の弟子の円仁が普賢菩薩の白描図像を請来したのがきっかけとなったようで、10世紀半ばの法華経の信仰の広がりを受けて多く表されました。さらに行者の守護者である十羅刹女も宮廷の女の姿を反映して和装で描かれるなど、日本でも独自の表現で広まっていったようです。
13 「平家納経のうち観普賢経」
こちらは平家が厳島神社に奉納した33巻のうちの1巻です。見返りには十二単の女性が剣を持って観ている様子が描かれていて、これが和装姿の十羅刹女のようです。お経自体は金銀の箔を散らした華麗なもので、非常に精緻な筆跡で書かれていました。流石は国宝の平家納経だけあって別格の気品が感じられます。なお、法華経では女性も成仏できるとしているので、こうした十羅刹女も信仰の対象になっているようでした。
15 「普賢菩薩騎象像」
こちらは白い象(結構色は落ちている)の背に載せた蓮の座に座る普賢菩薩の木像です。静かに目を閉じていて女性的な雰囲気をたたえているかな。解説によるとこれは平安時代の円派による作を考えられているようです。結構大きくて存在感があり、優美な印象を受ける名品でした。
16 「普賢菩薩像」
こちらは国宝第一号となった作品で昨年に京都で観たので記憶に新しかったです。白い象の背に載せた蓮の台座に座り合掌する姿で描かれ、象も菩薩も白い色彩が鮮やかに残っています。両者ともに切れ目で優美な印象を受け、こちらも女性的な美しさがあるように思いました。國華の223号ではこの作品を平安最大の傑作として評価しているそうです。
参考記事:国宝 (京都国立博物館)京都編
この近くには10人の羅刹女と共に普賢菩薩が描かれた「普賢十羅刹女像」という作品もありました。
[祖師に祈る]
続いては仏教の真言宗の祖師や聖徳太子の事跡や物語を描いた作品が並ぶコーナーです。むしろ聖徳太子を描いた作品が中心でした。
24 「真言八祖行状図」
こちらは前期後期で4幅ずつ展示されるようで、前期では空海、恵果、一行、善無畏の4人の真言の祖師達が描かれた幅が展示されていました。俯瞰で寺を覗き込むような感じで祖師達の様子を描いていて、物語的な感じを受けます。かなり傷んでいるのが難点ですが、風景画的な要素もあるように思いました。なお、後期ではインドの4人の祖師の幅が展示されるようです。
25 遠江法橋 「聖徳太子絵伝」
こちらは6幅対の掛け軸で、右上から漫画のように場面毎に聖徳太子の事跡が描かれています。その傍らには○歳と年齢も書いてあるので、成長期みたいな感じかなw 描かれている姿は平安貴族のように見えましたが、色鮮やかで華やかな雰囲気がありました。聖徳太子の逸話は思っていた以上に沢山あって驚きましたが、解説ボードもあって参考になります。
この近くには法隆寺にあった日本最古の聖徳太子絵伝である秦致貞「聖徳太子絵伝」もありました。当時は法隆寺から観た方向に即してその方面で起きた事跡を描いていた等、解説機では学芸員さんの面白い話が聞けました。
<第2章 巨匠のつながり>
[雪舟と中国]
この章は章の途中で会場が分かれます。今日は第一会場の雪舟についてだけ取り上げます。(俵屋宗達と伊藤若冲は次回ご紹介します)
{玉澗をつなぐ}
雪舟は若い頃から玉澗の画風の山水画を描いていたそうで、ここにはその様子がよく分かる作品が並んでいました。
37 玉澗 「山市晴嵐図」
こちらは南宋から元の時代にかけて活躍した天台宗の画僧 玉澗の作品です。墨の濃淡で山合いの家を描いていて、かなり素早く描いたような筆跡となっています。これは潑墨山水という墨をはね散らかす技法で、まるで19世紀の西洋の印象派を先取りしたような表現はまさに先進的です。その効果もあって、叙情性に富んだ作品でした。
この隣にも玉澗の作と伝わる品があり、そちらは濃淡で湿気を感じさせるような表現となっていました。
32 雪舟等楊 「破墨山水図」
こちらは正に玉澗の潑墨山水に倣ったのがよく分かる作品で、背景の山は柔らかい墨の濃淡で描かれ、遠近感も感じられます。一方、手前の岩?は粗く描かれていて墨も黒々した感じです。大胆さと繊細さが同居したような感じが面白く、玉澗と比べて観られることで雪舟のルーツもよく分かるように思いました。
この近くにも雪舟の若い頃の玉澗風の作品がありました。
{風景をつなぐ}
この項は前期はありません。後期からとなります。
{「和」「漢」をつなぐ}
雪舟は玉澗だけでなく明時代の画風を取り入れてダイナミックな構成の花鳥図を描いたそうで、ここには漢の画風を四季の屏風という和のフォーマットで表現した作品が並んでいました。
48 雪舟等楊 「四季花鳥図屛風」
こちらは六曲一双の屏風で、右から春夏秋冬となっています。春はキジなどの鳥たち、夏は松の下の鶴、秋は枯れた芦、冬は雪の積もる木と鴛鴦などが描かれ、色々詰め込まれています。カクカクした岩やうねる松などは漢画的な感じで、後の狩野派が雪舟から学んでいたこともこれを観るとよく分かります。この作品の隣には明時代の呂紀の四季花鳥図もあり、中国からの影響と見比べられるのも面白い趣向でした。
さらにこの近くには狩野元信の四季花鳥図もありました。松と岩が雪舟とほぼ同じ雰囲気ですが、ややスッキリした画面構成となっています。これはこれで見事な作品でした。
{本場の水墨をつなぐ}
ここも後期からの項かな。
ということで、この辺で展覧会の半分くらいなので今日はここまでにしておこうと思います。前半は割と古い時代の作品が多かったですが、いずれも貴重な品で特に雪舟のコーナーは見応えがありました。後半は江戸以降の近代が多めとなっていましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。
→ 後編はこちら

【展覧名】
創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年
特別展「名作誕生-つながる日本美術」
【公式サイト】
http://meisaku2018.jp/
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1889
【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅
【会期】2018年4月13日(金) ~ 5月27日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
展覧会初日の金曜夕方ということもあって、割と空いていて快適に鑑賞することができました。それでも場所によっては人だかりができるような感じだったので、これから先は混むのではないかと思います。混んでいないのに観るのに2時間半もかかったので、時間に余裕を持ってお出かけすることをお勧めします。
さて、今回の展示は岡倉天心と高橋健三が中心となって朝日新聞社出版で1889年に創刊した『國華』の130周年を記念したもので、日本美術史上の名作の数々をその流れと共に130件も紹介する豪華な内容となっています。『國華』については最初の入口に創刊号~3号まで展示されている程度で、単純に日本美術の名品とそれに影響を与えた名品(主に中国美術)をひたすら楽しむような感じです。古くは奈良時代から大正の頃まで、絵画・彫刻・工芸など様々な品が並んでいました。テーマごとに章分けされていましたので、簡単に各章ごとにその様子をご紹介していこうと思います。
なお、この展示は会期が6期あり1~3期と4~6期で大きく分かれます。私が観たのは1期の内容でした。
<第1章 祈りをつなぐ>
まずは仏教美術のコーナーです。日本で木彫りの仏像が作られるようになったのは、鑑真と共に渡来した工人たちが日本には仏像に適した石が無かったので 木で作り出したのが始まりだったようです。ここにはそうした木造の仏像などが並んでいました。
[一木の祈り]
この節には一木造の仏像が並びます。木造の仏像には白檀が相応しいとされたのですが、白檀は貴重なのでカヤに白檀の色を塗って表現していたそうです。
2 「伝衆宝王菩薩立像」
こちらは肘から先がない等身大の仏像です。胴体が長めで下半身の帯布の辺りに唐時代に作られた仏像(近くに十一面観音菩薩立像)に影響を受けているそうです。全体的に彫りが浅めで優美な雰囲気の仏様でした。
1 「伝薬師如来立像」
こちらも肘から先がない立像で、台まで含めて一木で造られているようです。こちらは鑑真と共に渡来した工人による作と考えられるようで、日本で木造の仏像が作られるきっかけになったものの1つと言えそうです。全体的に肉厚的で、肩からかけた布のひだが流れる感じの表現で木目と合っているように見えたのが面白かったです。これは結構大きいので、元の木も相当立派だったのではないかと思います。
[祈る普賢]
続いては普賢菩薩に関するコーナーです。日本の普賢菩薩像は9世紀に最澄の弟子の円仁が普賢菩薩の白描図像を請来したのがきっかけとなったようで、10世紀半ばの法華経の信仰の広がりを受けて多く表されました。さらに行者の守護者である十羅刹女も宮廷の女の姿を反映して和装で描かれるなど、日本でも独自の表現で広まっていったようです。
13 「平家納経のうち観普賢経」
こちらは平家が厳島神社に奉納した33巻のうちの1巻です。見返りには十二単の女性が剣を持って観ている様子が描かれていて、これが和装姿の十羅刹女のようです。お経自体は金銀の箔を散らした華麗なもので、非常に精緻な筆跡で書かれていました。流石は国宝の平家納経だけあって別格の気品が感じられます。なお、法華経では女性も成仏できるとしているので、こうした十羅刹女も信仰の対象になっているようでした。
15 「普賢菩薩騎象像」
こちらは白い象(結構色は落ちている)の背に載せた蓮の座に座る普賢菩薩の木像です。静かに目を閉じていて女性的な雰囲気をたたえているかな。解説によるとこれは平安時代の円派による作を考えられているようです。結構大きくて存在感があり、優美な印象を受ける名品でした。
16 「普賢菩薩像」
こちらは国宝第一号となった作品で昨年に京都で観たので記憶に新しかったです。白い象の背に載せた蓮の台座に座り合掌する姿で描かれ、象も菩薩も白い色彩が鮮やかに残っています。両者ともに切れ目で優美な印象を受け、こちらも女性的な美しさがあるように思いました。國華の223号ではこの作品を平安最大の傑作として評価しているそうです。
参考記事:国宝 (京都国立博物館)京都編
この近くには10人の羅刹女と共に普賢菩薩が描かれた「普賢十羅刹女像」という作品もありました。
[祖師に祈る]
続いては仏教の真言宗の祖師や聖徳太子の事跡や物語を描いた作品が並ぶコーナーです。むしろ聖徳太子を描いた作品が中心でした。
24 「真言八祖行状図」
こちらは前期後期で4幅ずつ展示されるようで、前期では空海、恵果、一行、善無畏の4人の真言の祖師達が描かれた幅が展示されていました。俯瞰で寺を覗き込むような感じで祖師達の様子を描いていて、物語的な感じを受けます。かなり傷んでいるのが難点ですが、風景画的な要素もあるように思いました。なお、後期ではインドの4人の祖師の幅が展示されるようです。
25 遠江法橋 「聖徳太子絵伝」
こちらは6幅対の掛け軸で、右上から漫画のように場面毎に聖徳太子の事跡が描かれています。その傍らには○歳と年齢も書いてあるので、成長期みたいな感じかなw 描かれている姿は平安貴族のように見えましたが、色鮮やかで華やかな雰囲気がありました。聖徳太子の逸話は思っていた以上に沢山あって驚きましたが、解説ボードもあって参考になります。
この近くには法隆寺にあった日本最古の聖徳太子絵伝である秦致貞「聖徳太子絵伝」もありました。当時は法隆寺から観た方向に即してその方面で起きた事跡を描いていた等、解説機では学芸員さんの面白い話が聞けました。
<第2章 巨匠のつながり>
[雪舟と中国]
この章は章の途中で会場が分かれます。今日は第一会場の雪舟についてだけ取り上げます。(俵屋宗達と伊藤若冲は次回ご紹介します)
{玉澗をつなぐ}
雪舟は若い頃から玉澗の画風の山水画を描いていたそうで、ここにはその様子がよく分かる作品が並んでいました。
37 玉澗 「山市晴嵐図」
こちらは南宋から元の時代にかけて活躍した天台宗の画僧 玉澗の作品です。墨の濃淡で山合いの家を描いていて、かなり素早く描いたような筆跡となっています。これは潑墨山水という墨をはね散らかす技法で、まるで19世紀の西洋の印象派を先取りしたような表現はまさに先進的です。その効果もあって、叙情性に富んだ作品でした。
この隣にも玉澗の作と伝わる品があり、そちらは濃淡で湿気を感じさせるような表現となっていました。
32 雪舟等楊 「破墨山水図」
こちらは正に玉澗の潑墨山水に倣ったのがよく分かる作品で、背景の山は柔らかい墨の濃淡で描かれ、遠近感も感じられます。一方、手前の岩?は粗く描かれていて墨も黒々した感じです。大胆さと繊細さが同居したような感じが面白く、玉澗と比べて観られることで雪舟のルーツもよく分かるように思いました。
この近くにも雪舟の若い頃の玉澗風の作品がありました。
{風景をつなぐ}
この項は前期はありません。後期からとなります。
{「和」「漢」をつなぐ}
雪舟は玉澗だけでなく明時代の画風を取り入れてダイナミックな構成の花鳥図を描いたそうで、ここには漢の画風を四季の屏風という和のフォーマットで表現した作品が並んでいました。
48 雪舟等楊 「四季花鳥図屛風」
こちらは六曲一双の屏風で、右から春夏秋冬となっています。春はキジなどの鳥たち、夏は松の下の鶴、秋は枯れた芦、冬は雪の積もる木と鴛鴦などが描かれ、色々詰め込まれています。カクカクした岩やうねる松などは漢画的な感じで、後の狩野派が雪舟から学んでいたこともこれを観るとよく分かります。この作品の隣には明時代の呂紀の四季花鳥図もあり、中国からの影響と見比べられるのも面白い趣向でした。
さらにこの近くには狩野元信の四季花鳥図もありました。松と岩が雪舟とほぼ同じ雰囲気ですが、ややスッキリした画面構成となっています。これはこれで見事な作品でした。
{本場の水墨をつなぐ}
ここも後期からの項かな。
ということで、この辺で展覧会の半分くらいなので今日はここまでにしておこうと思います。前半は割と古い時代の作品が多かったですが、いずれも貴重な品で特に雪舟のコーナーは見応えがありました。後半は江戸以降の近代が多めとなっていましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。
→ 後編はこちら
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日付が変わって昨日となりましたが、日曜日に六本木一丁目の泉屋博古館分館で 生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅡ 木島櫻谷の「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し を観てきました。

【展覧名】
生誕140年記念特別展 木島櫻谷
PartⅡ 木島櫻谷の「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し
【公式サイト】
https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html
【会場】泉屋博古館分館
【最寄】六本木一丁目駅/神谷町駅
【会期】2018年4月14日(土)~5月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
Part1の時は激混みでしたが、Part2の今回はどういう訳か空いていて快適に鑑賞することができました。
参考記事:木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険 (泉屋博古館分館)
さて、この展示はその名の通り木島櫻谷(このしまおうこく)の展示の第2弾となっています。今回はPart1のように木島櫻谷についての説明はあまり無く、木島櫻谷の作品自体も展示スペースの半分で6点(全て屏風)のみとなります。残り半分は住友に関係が深い画家の花鳥図が並ぶ内容となっているので、個展という程でも無いかもしれません。木島櫻谷の作品については、大正半ばに大阪茶臼山に竣工した住友本邸を飾るために制作した四季連作屏風が並び、当時流行にもなった琳派風の作風となっていました。 簡単にメモしてきましたので、それぞれの作品についてご紹介していこうと思います。なお、公式サイトでそれぞれの作品の画像も観ることができます。
木島櫻谷 「竹林白鶴」
こちらは六曲一双の屏風で、竹林の中に3羽の鶴がくつろぐ様子が書かれています。金地で確かに琳派のような平面的かつ装飾的な雰囲気となっています。特に川の流れを群青に金の輪郭で描くあたりは琳派そのものといった感じでした。(特に酒井抱一の江戸琳派みたいな感じ)
木島櫻谷 「柳桜図」 ★公式サイトで観られます
こちらも六曲一双で、満開の桜と緑の柳の木が描かれています。桜は近くで観ると結構厚みがあって、間に赤い葉っぱも混じって1つ1つ丁寧に描き込まれています。一方の柳もしなる曲線がリズミカルで優美な印象です。こちらも琳派の影響を感じさせますが、たらし込みのような技法はなく明るくスッキリした雰囲気が独特でした。
木島櫻谷 「燕子花図」 ★公式サイトで観られます
こちらも六曲一双で、金地を背景に無数のカキツバタが描かれています。画題もぱっと観た感じも琳派そのものといった感じで、尾形光琳の燕子花図屏風を真っ先に思い浮かべる作品です。色合いや平面的なところはそっくりですが、たまに蕾があったり近くで観ると若干厚塗りされていたりする特徴があります。葉っぱの密集度も高く、あまり上下に配置されていないのも光琳とは違うかな。いずれにせよ色の響き合いが美しく、この時期にぴったりな作品です。
木島櫻谷 「菊花図」 ★公式サイトで観られます
こちらも六曲一双で、満開の白い菊と小さめの赤い菊が咲いている様子が描かれています。左右の隻で花が対角線上に密集する構図となっていて、左隻は上から葉っぱが垂れ下がってきているようにも見えるかな。この葉っぱの葉脈の部分は金で描かれていて、華やかな印象を受けました。また、花は筆跡を活かした感じで、細い輪郭のようになっていました。これは遠くでは金地に映える白を楽しめ、近くで観ると1枚1枚の花の描写が楽しめる作品でした。
他にも雪中梅花という冬の光景を描いた作品や、参考展示として江戸時代の田能村直入の花卉図なんかもありました。
木島櫻谷 「秋草図」 ★公式サイトで観られます
こちらは四季連作の6年後の作品で、やはり金地の六曲一双となっています。ススキ、芙蓉、藤袴、小菊など秋の草花が描かれていて、描写や題材なんかは酒井抱一みたいな感じに思いますが、色合い(特に葉っぱ)が薄めで、軽やかで明るい印象を受けます。じっと観ていると秋というよりは春のような爽やかさもあるかもw
木島櫻谷の作品は以上で、残り(第二室)は他の画家による花鳥図となっていました。
富田范渓 「鰻籠」
二曲一双の屏風で、銀地を水面として手前には緑の芦が生い茂る様子が描かれています。そして所々に籠が沈められていて、これが鰻籠のようです。銀の水面には木の葉も浮かび、その色合いのせいか静けさが漂っているように思えました。情緒溢れる雰囲気で、中々の名品だと思います。こちらも江戸琳派の装飾空間を思わせる作風でした。
高島北海 「草花図屏風」
こちらは六曲一双の屏風で、左右に1本ずつ木があり、その周りに紫陽花、立葵、夾竹桃、ヒマワリなどが描かれています。木は墨の濃淡のような表現で描かれていますが花は色鮮やかで、全体的に南画風のように思いました。しかし意外にもフランスのナンシー派(アール・ヌーヴォーのガレとかの一派)から影響を受けているとのことでした。 そう言えば高島北海はガレと交流があるんでしたね。忘れていました。
他にも望月玉泉の子供の望月玉渓や山口玲熙の作品などもありました。
ということで、思った以上に琳派風の作品が並んでいてPart1とはかなり趣の異なる画風だったように思います。私は琳派が好きなのでこれはこれで満足できましたが、part1の画風が好きな方は驚くかもしれません。まだまだ木島櫻谷については未知の部分が多いので、いつかまたまとめて作品を観る機会があったら観に行きたいと思います。

【展覧名】
生誕140年記念特別展 木島櫻谷
PartⅡ 木島櫻谷の「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し
【公式サイト】
https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html
【会場】泉屋博古館分館
【最寄】六本木一丁目駅/神谷町駅
【会期】2018年4月14日(土)~5月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
Part1の時は激混みでしたが、Part2の今回はどういう訳か空いていて快適に鑑賞することができました。
参考記事:木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険 (泉屋博古館分館)
さて、この展示はその名の通り木島櫻谷(このしまおうこく)の展示の第2弾となっています。今回はPart1のように木島櫻谷についての説明はあまり無く、木島櫻谷の作品自体も展示スペースの半分で6点(全て屏風)のみとなります。残り半分は住友に関係が深い画家の花鳥図が並ぶ内容となっているので、個展という程でも無いかもしれません。木島櫻谷の作品については、大正半ばに大阪茶臼山に竣工した住友本邸を飾るために制作した四季連作屏風が並び、当時流行にもなった琳派風の作風となっていました。 簡単にメモしてきましたので、それぞれの作品についてご紹介していこうと思います。なお、公式サイトでそれぞれの作品の画像も観ることができます。
木島櫻谷 「竹林白鶴」
こちらは六曲一双の屏風で、竹林の中に3羽の鶴がくつろぐ様子が書かれています。金地で確かに琳派のような平面的かつ装飾的な雰囲気となっています。特に川の流れを群青に金の輪郭で描くあたりは琳派そのものといった感じでした。(特に酒井抱一の江戸琳派みたいな感じ)
木島櫻谷 「柳桜図」 ★公式サイトで観られます
こちらも六曲一双で、満開の桜と緑の柳の木が描かれています。桜は近くで観ると結構厚みがあって、間に赤い葉っぱも混じって1つ1つ丁寧に描き込まれています。一方の柳もしなる曲線がリズミカルで優美な印象です。こちらも琳派の影響を感じさせますが、たらし込みのような技法はなく明るくスッキリした雰囲気が独特でした。
木島櫻谷 「燕子花図」 ★公式サイトで観られます
こちらも六曲一双で、金地を背景に無数のカキツバタが描かれています。画題もぱっと観た感じも琳派そのものといった感じで、尾形光琳の燕子花図屏風を真っ先に思い浮かべる作品です。色合いや平面的なところはそっくりですが、たまに蕾があったり近くで観ると若干厚塗りされていたりする特徴があります。葉っぱの密集度も高く、あまり上下に配置されていないのも光琳とは違うかな。いずれにせよ色の響き合いが美しく、この時期にぴったりな作品です。
木島櫻谷 「菊花図」 ★公式サイトで観られます
こちらも六曲一双で、満開の白い菊と小さめの赤い菊が咲いている様子が描かれています。左右の隻で花が対角線上に密集する構図となっていて、左隻は上から葉っぱが垂れ下がってきているようにも見えるかな。この葉っぱの葉脈の部分は金で描かれていて、華やかな印象を受けました。また、花は筆跡を活かした感じで、細い輪郭のようになっていました。これは遠くでは金地に映える白を楽しめ、近くで観ると1枚1枚の花の描写が楽しめる作品でした。
他にも雪中梅花という冬の光景を描いた作品や、参考展示として江戸時代の田能村直入の花卉図なんかもありました。
木島櫻谷 「秋草図」 ★公式サイトで観られます
こちらは四季連作の6年後の作品で、やはり金地の六曲一双となっています。ススキ、芙蓉、藤袴、小菊など秋の草花が描かれていて、描写や題材なんかは酒井抱一みたいな感じに思いますが、色合い(特に葉っぱ)が薄めで、軽やかで明るい印象を受けます。じっと観ていると秋というよりは春のような爽やかさもあるかもw
木島櫻谷の作品は以上で、残り(第二室)は他の画家による花鳥図となっていました。
富田范渓 「鰻籠」
二曲一双の屏風で、銀地を水面として手前には緑の芦が生い茂る様子が描かれています。そして所々に籠が沈められていて、これが鰻籠のようです。銀の水面には木の葉も浮かび、その色合いのせいか静けさが漂っているように思えました。情緒溢れる雰囲気で、中々の名品だと思います。こちらも江戸琳派の装飾空間を思わせる作風でした。
高島北海 「草花図屏風」
こちらは六曲一双の屏風で、左右に1本ずつ木があり、その周りに紫陽花、立葵、夾竹桃、ヒマワリなどが描かれています。木は墨の濃淡のような表現で描かれていますが花は色鮮やかで、全体的に南画風のように思いました。しかし意外にもフランスのナンシー派(アール・ヌーヴォーのガレとかの一派)から影響を受けているとのことでした。 そう言えば高島北海はガレと交流があるんでしたね。忘れていました。
他にも望月玉泉の子供の望月玉渓や山口玲熙の作品などもありました。
ということで、思った以上に琳派風の作品が並んでいてPart1とはかなり趣の異なる画風だったように思います。私は琳派が好きなのでこれはこれで満足できましたが、part1の画風が好きな方は驚くかもしれません。まだまだ木島櫻谷については未知の部分が多いので、いつかまたまとめて作品を観る機会があったら観に行きたいと思います。
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今日は写真多めです。前回ご紹介したポーラミュージアムアネックスに行った後、すぐ近くのLIXILギャラリーで「ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション-」という展示を観てきました。この展示では撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション-
【公式サイト】
http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/post-20/
【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)
【会期】2018年03月08日~05月26日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は日本の近代貝類学・貝コレクターに関する展示で、貝そのものよりもコレクター達の功績に着目したユニークな内容となっています。貝は昔からコレクションの対象となり、王侯貴族がクンストカンマーのような部屋に集めたものから、現代の庶民がお土産で買ってきたようなものまで様々なものがあると思いますが、みんな一様に集めた貝は何という貝なのか?と知りたくなるのは同じだと思います。コレクターは特に珍しいコレクションを貝学者に訊くわけですが、中には研究対象として貴重なものもあり、コレクターと学者が相互連携で知識を深めてきた歴史があるようです。この展示ではコレクター達の功績と共に美しい貝・珍しい貝が並んでいましたので、それぞれの写真を使ってご紹介していこうと思います。
なお、貝は主に炭酸カルシウムで自ら殻を作っているようで、小さな貝だと1年程度の寿命ですが記録では220年程度生きた貝もいるそうです。雌雄同体のような種もいたり、高山から深海まで生息していたりと生命力も強く10万種近くいると考えられるのだとか(そのうち巻貝が85%程度を占める)
<平瀬與一郎 (1859-1925)>
まずは日本の貝コレクターの端緒を開いた平瀬與一郎のコーナーです。平瀬與一郎は8000種類以上を集め、私財を投じて「平瀬貝類博物館」を作ると共に、後に著名な貝学者となる黒田徳米を育てるなど、日本の貝研究界の礎を築いた人物のようです。
こちらは「平瀬貝類博物館」のチラシ。展示開始早々にマニアック過ぎる品が出てきてちょっと可笑しかったw

大人は5銭、子供は3銭という入場料だったようですが、この文字ばかりのチラシで貝の魅力が伝わるんだろうかw
こちらが平瀬貝類博物館。1913年(大正13年)にオープンなのでまだ100年くらい前の話のようです。しかしそんな時代に貝の博物館が流行ったのだろうかと一抹の不安が…。

実はこの博物館、1年で資金難となり1919年に閉館してしまったのだとか。ちょっと時代を先取りしすぎた感がしますね。
こちらは博物館の作った絵葉書

かなり精密かつ正確な描写となっています。このセンスをチラシに活かせていれば…w
ちゃんと貝のコレクションも展示されていました。

絵の具で塗ったんじゃないかと疑いたくなるくらい可憐で鮮やかな色をしています。これを実際に観ると貝の魅力も分かります。
平瀬信太郎 (1884-1939)
続いては平瀬與一郎の息子で貝学者の平瀬信太郎のコーナーです。元々は貝に興味がなくて文学部で心理学を修めたようですが、博物館の開館の翌年に東京帝国大学の理学部動物学科に入って軟体生物の研究の道に進んだようです。教員としても優秀だったようですが、日本初のカラー貝類図鑑を刊行するという業績を残しました。
こちらが『天然色写真日本貝類図譜』の初版本

父が夢見ていた図鑑らしく、親の夢を見事に果たした本のようです。改訂版を執筆中に机の上で亡くなったというのだから、学者然とした人だったのかも。
<黒田徳米 (1886-1987)>
続いては平瀬與一郎が同郷から連れてきて育成し、貝界のレジェンドとなった黒田徳米のコーナーです。平瀬與一郎の助手みたいな感じで、標本の管理や雑誌の編集、博物館の案内から研究員まで様々なことを経験したのですが、博物館の閉鎖で失職してしまいました。それを湯川秀樹の父でもある小川琢治に抜擢されて貝類の研究の仕事に就き、やがて昭和天皇にご進講するまでの学者になったようです。100の新属、650の新種を発見し、100歳の誕生日直前まで研究を続けるなど、その功績はまさにレジェンド。貝研究の大巨人のようです。
こちらは観たことない細長い巻き貝が何匹かセットで展示されていました。

ちゃんと採集した場所や日付も書かれているようでした。このラベルで黒田に同定(種類を見極める)されるのをコレクターたちは何よりも大事にしたそうです。
他にも沢山のカタツムリの標本や昭和天皇の相模湾コレクションをまとめた本などもありました。
<菊池典男 (1915-2013)>
続いては西宮回生病院の院長でもあった菊池典男のコーナーです。子供の頃から貝が好きで1965年には菊池貝類研究所を作り、黒田徳米のために研究室や資料室も作ったそうです。さらに1984年には兄弟で集めた8000種の貝殻を収蔵した菊池貝類館を建設、黒田の死後は西宮市に黒田の膨大な標本と資料を寄贈して博物館の建設を提案し、1999年に西宮市貝類館が出来たそうです。2013年に菊池が亡くなると菊池貝類館の品は西宮市貝類館に寄贈されて師匠の遺品と再開を果たしたのだとか。
こちらは素人目にも綺麗な貝が並んでいました。

見慣れない貝ばかりで、いずれも美しい色形をしています。
こちらはホネガイ

トゲトゲが南方系の貝のイメージですが、和歌山県で採集したようです。 2枚貝を食べる肉食なのだとか。
こちらはタガヤサンミナシという貝。

この貝は毒性の強い矢を放つようです。形がイモガイなので毒があるのも納得。イモガイは見た目は可愛いけど超危険生物なので、こういう形の貝を見たら絶対に触らないようにして下さい(神経毒で人間も簡単に死にます)
<鳥羽源藏 (1872-1946)>
続いては「岩手博物界の太陽」「西の熊楠、東の源藏」とまで評され、昆虫学・植物学・貝類額・地質学・考古学などで功績を残した鳥羽源藏のコーナーです。平瀬與一郎や黒田徳米とも交流があったそうで、赴任先の台湾で貝類採集をしていたようです。帰国後も採集を続け、20000点にも及ぶ標本を作ったのだとか。ちなみに地元岩手の作家 宮沢賢治の『猫の事務所』に出てくる猫たちの名前は鳥羽源藏にあやかっているようです。
参考記事:南方熊楠-100年早かった智の人- (国立科学博物館 日本館1階)
こちらは現在は陸前高田市博物館に収められている貝が並んでいました。

2011年の東日本大震災で「海と貝のミュージアム」も被災して水没したようで、現在でも修復作業が続いているそうです。
<吉良哲明 (1888-1965)>
続いては小学校教員で住職という異色のアマチュアコレクター吉良哲明のコーナー。やはり黒田徳米に指導を受けたようで、『原色日本貝類図鑑』や貝類研究誌『夢蛤』を発刊するなど精力的に活動し、貝類学者と愛好家を繋ぐ役割を果たした功績があるようです。
こちらも全く知らない貝がズラリと並んでいました。

これは『原色日本貝類図鑑』に載せてある貝を実際に再現したもののようです。
かなり沢山あって、種類ごとに分けて並んでいました。

この形の貝はイモガイですね…。お子さんがいる方は子供に絶対拾わないようによく教えておいてください。
<山村八重子 (1899-1996)>
続いては父が椰子園を開いたフィリピン南部に住み、現地で様々な動物の標本を作った山村八重子のコーナーです。美人で女性初のコレクターだったので「麗人博物学者」というあだ名もあったようです。
いずれもフィリピン南部のバシラン島で採集したもの

ハート形の貝なんかもいて、女性のコレクションらしい可愛さもあります。
こちらはコノハザクラという名前の貝。

こちらも可憐な印象を受ける貝でした。
<波部忠重(1916-2001)>
続いては日本産貝類約6500種のうち、5分の1近く(1300以上)の新種新属を発見した波部忠重のコーナー。黒田徳米に学び、助手として日本の貝類の目録を作ったそうです。さらに吉良哲明の『原色日本貝類図鑑』に続く『続・原色日本貝類図鑑』を発刊し、その2冊で日本の半分の貝種を網羅するほど載っているのだとか。
こんな感じで貝が並んでいるのですが、めちゃくちゃ小さいのが多いw

波部忠重のコレクションはこうした小さい種や比較的どこにでもいる貝に注目した点らしく、それが『続・原色日本貝類図鑑』にも活かされているようです。これによって貝のコレクターの裾のが広がることになったのだとか。
一方で大きい貝もありました

波部忠重が新種記載した貝類のも含まれているようでした。
<櫻井欽一 (1912-1993)>
続いては鳥すき焼きの店主であり鉱物学界の重鎮でもあった櫻井欽一のコーナーです。鉱物の専門教育は受けていないものの独学で研究して国立科学博物館の嘱託になったほどで、鉱物好きから化石、貝類と研究領域が広がったようです。貝類も1万種5万点の標本をあったようで、今では貴重な種も多々含まれるコレクションとなっているようです。
日本各地から集められた変わった貝が並んでいました。

同じ種でも可能な限り複数の産地から集めて変異と観られる型も丹念に集めたのだとか。几帳面に記載しているノートなんかも展示されていました。
<河村良介(1898-1993)>
最後は1万種10万点以上、世界の主要な貝類をほとんど網羅する日本一のコレクションを築いた河村良介のコーナーです。元銀行員で実業家でありながら日本貝類学会の創立メンバーの1人として黒田徳米や吉良哲明などとも交流があったようです。
流石は日本一のコレクターだけあって世界各国の貝のコレクションが並んでいます。

左下のハートが幾重にも重なるようなピンクの貝が特に目を引きました。名前から察するに沖縄の貝なのかな?
河村良介が名前をつけた「ワタナベボラ」なんて名前の貝もありました。

自ら発見した新種もあるようです。
ということで、最初はなんちゅうマニアックな展示だ??と驚きましたが、綺麗な貝を観られるだけでなく日本の貝研究の系譜まで分かる面白い内容となっていました。何の分野でもマニアが全力で集めたコレクションというのは情熱を感じさせるものがあります。無料で観られる展示ですが、国立の博物館並に濃い内容となっていましたので、貝好きのみならず多くの人が楽しめる内容だと思います。

【展覧名】
ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション-
【公式サイト】
http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/post-20/
【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)
【会期】2018年03月08日~05月26日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は日本の近代貝類学・貝コレクターに関する展示で、貝そのものよりもコレクター達の功績に着目したユニークな内容となっています。貝は昔からコレクションの対象となり、王侯貴族がクンストカンマーのような部屋に集めたものから、現代の庶民がお土産で買ってきたようなものまで様々なものがあると思いますが、みんな一様に集めた貝は何という貝なのか?と知りたくなるのは同じだと思います。コレクターは特に珍しいコレクションを貝学者に訊くわけですが、中には研究対象として貴重なものもあり、コレクターと学者が相互連携で知識を深めてきた歴史があるようです。この展示ではコレクター達の功績と共に美しい貝・珍しい貝が並んでいましたので、それぞれの写真を使ってご紹介していこうと思います。
なお、貝は主に炭酸カルシウムで自ら殻を作っているようで、小さな貝だと1年程度の寿命ですが記録では220年程度生きた貝もいるそうです。雌雄同体のような種もいたり、高山から深海まで生息していたりと生命力も強く10万種近くいると考えられるのだとか(そのうち巻貝が85%程度を占める)
<平瀬與一郎 (1859-1925)>
まずは日本の貝コレクターの端緒を開いた平瀬與一郎のコーナーです。平瀬與一郎は8000種類以上を集め、私財を投じて「平瀬貝類博物館」を作ると共に、後に著名な貝学者となる黒田徳米を育てるなど、日本の貝研究界の礎を築いた人物のようです。
こちらは「平瀬貝類博物館」のチラシ。展示開始早々にマニアック過ぎる品が出てきてちょっと可笑しかったw

大人は5銭、子供は3銭という入場料だったようですが、この文字ばかりのチラシで貝の魅力が伝わるんだろうかw
こちらが平瀬貝類博物館。1913年(大正13年)にオープンなのでまだ100年くらい前の話のようです。しかしそんな時代に貝の博物館が流行ったのだろうかと一抹の不安が…。

実はこの博物館、1年で資金難となり1919年に閉館してしまったのだとか。ちょっと時代を先取りしすぎた感がしますね。
こちらは博物館の作った絵葉書

かなり精密かつ正確な描写となっています。このセンスをチラシに活かせていれば…w
ちゃんと貝のコレクションも展示されていました。

絵の具で塗ったんじゃないかと疑いたくなるくらい可憐で鮮やかな色をしています。これを実際に観ると貝の魅力も分かります。
平瀬信太郎 (1884-1939)
続いては平瀬與一郎の息子で貝学者の平瀬信太郎のコーナーです。元々は貝に興味がなくて文学部で心理学を修めたようですが、博物館の開館の翌年に東京帝国大学の理学部動物学科に入って軟体生物の研究の道に進んだようです。教員としても優秀だったようですが、日本初のカラー貝類図鑑を刊行するという業績を残しました。
こちらが『天然色写真日本貝類図譜』の初版本

父が夢見ていた図鑑らしく、親の夢を見事に果たした本のようです。改訂版を執筆中に机の上で亡くなったというのだから、学者然とした人だったのかも。
<黒田徳米 (1886-1987)>
続いては平瀬與一郎が同郷から連れてきて育成し、貝界のレジェンドとなった黒田徳米のコーナーです。平瀬與一郎の助手みたいな感じで、標本の管理や雑誌の編集、博物館の案内から研究員まで様々なことを経験したのですが、博物館の閉鎖で失職してしまいました。それを湯川秀樹の父でもある小川琢治に抜擢されて貝類の研究の仕事に就き、やがて昭和天皇にご進講するまでの学者になったようです。100の新属、650の新種を発見し、100歳の誕生日直前まで研究を続けるなど、その功績はまさにレジェンド。貝研究の大巨人のようです。
こちらは観たことない細長い巻き貝が何匹かセットで展示されていました。

ちゃんと採集した場所や日付も書かれているようでした。このラベルで黒田に同定(種類を見極める)されるのをコレクターたちは何よりも大事にしたそうです。
他にも沢山のカタツムリの標本や昭和天皇の相模湾コレクションをまとめた本などもありました。
<菊池典男 (1915-2013)>
続いては西宮回生病院の院長でもあった菊池典男のコーナーです。子供の頃から貝が好きで1965年には菊池貝類研究所を作り、黒田徳米のために研究室や資料室も作ったそうです。さらに1984年には兄弟で集めた8000種の貝殻を収蔵した菊池貝類館を建設、黒田の死後は西宮市に黒田の膨大な標本と資料を寄贈して博物館の建設を提案し、1999年に西宮市貝類館が出来たそうです。2013年に菊池が亡くなると菊池貝類館の品は西宮市貝類館に寄贈されて師匠の遺品と再開を果たしたのだとか。
こちらは素人目にも綺麗な貝が並んでいました。

見慣れない貝ばかりで、いずれも美しい色形をしています。
こちらはホネガイ

トゲトゲが南方系の貝のイメージですが、和歌山県で採集したようです。 2枚貝を食べる肉食なのだとか。
こちらはタガヤサンミナシという貝。

この貝は毒性の強い矢を放つようです。形がイモガイなので毒があるのも納得。イモガイは見た目は可愛いけど超危険生物なので、こういう形の貝を見たら絶対に触らないようにして下さい(神経毒で人間も簡単に死にます)
<鳥羽源藏 (1872-1946)>
続いては「岩手博物界の太陽」「西の熊楠、東の源藏」とまで評され、昆虫学・植物学・貝類額・地質学・考古学などで功績を残した鳥羽源藏のコーナーです。平瀬與一郎や黒田徳米とも交流があったそうで、赴任先の台湾で貝類採集をしていたようです。帰国後も採集を続け、20000点にも及ぶ標本を作ったのだとか。ちなみに地元岩手の作家 宮沢賢治の『猫の事務所』に出てくる猫たちの名前は鳥羽源藏にあやかっているようです。
参考記事:南方熊楠-100年早かった智の人- (国立科学博物館 日本館1階)
こちらは現在は陸前高田市博物館に収められている貝が並んでいました。

2011年の東日本大震災で「海と貝のミュージアム」も被災して水没したようで、現在でも修復作業が続いているそうです。
<吉良哲明 (1888-1965)>
続いては小学校教員で住職という異色のアマチュアコレクター吉良哲明のコーナー。やはり黒田徳米に指導を受けたようで、『原色日本貝類図鑑』や貝類研究誌『夢蛤』を発刊するなど精力的に活動し、貝類学者と愛好家を繋ぐ役割を果たした功績があるようです。
こちらも全く知らない貝がズラリと並んでいました。

これは『原色日本貝類図鑑』に載せてある貝を実際に再現したもののようです。
かなり沢山あって、種類ごとに分けて並んでいました。

この形の貝はイモガイですね…。お子さんがいる方は子供に絶対拾わないようによく教えておいてください。
<山村八重子 (1899-1996)>
続いては父が椰子園を開いたフィリピン南部に住み、現地で様々な動物の標本を作った山村八重子のコーナーです。美人で女性初のコレクターだったので「麗人博物学者」というあだ名もあったようです。
いずれもフィリピン南部のバシラン島で採集したもの

ハート形の貝なんかもいて、女性のコレクションらしい可愛さもあります。
こちらはコノハザクラという名前の貝。

こちらも可憐な印象を受ける貝でした。
<波部忠重(1916-2001)>
続いては日本産貝類約6500種のうち、5分の1近く(1300以上)の新種新属を発見した波部忠重のコーナー。黒田徳米に学び、助手として日本の貝類の目録を作ったそうです。さらに吉良哲明の『原色日本貝類図鑑』に続く『続・原色日本貝類図鑑』を発刊し、その2冊で日本の半分の貝種を網羅するほど載っているのだとか。
こんな感じで貝が並んでいるのですが、めちゃくちゃ小さいのが多いw

波部忠重のコレクションはこうした小さい種や比較的どこにでもいる貝に注目した点らしく、それが『続・原色日本貝類図鑑』にも活かされているようです。これによって貝のコレクターの裾のが広がることになったのだとか。
一方で大きい貝もありました

波部忠重が新種記載した貝類のも含まれているようでした。
<櫻井欽一 (1912-1993)>
続いては鳥すき焼きの店主であり鉱物学界の重鎮でもあった櫻井欽一のコーナーです。鉱物の専門教育は受けていないものの独学で研究して国立科学博物館の嘱託になったほどで、鉱物好きから化石、貝類と研究領域が広がったようです。貝類も1万種5万点の標本をあったようで、今では貴重な種も多々含まれるコレクションとなっているようです。
日本各地から集められた変わった貝が並んでいました。

同じ種でも可能な限り複数の産地から集めて変異と観られる型も丹念に集めたのだとか。几帳面に記載しているノートなんかも展示されていました。
<河村良介(1898-1993)>
最後は1万種10万点以上、世界の主要な貝類をほとんど網羅する日本一のコレクションを築いた河村良介のコーナーです。元銀行員で実業家でありながら日本貝類学会の創立メンバーの1人として黒田徳米や吉良哲明などとも交流があったようです。
流石は日本一のコレクターだけあって世界各国の貝のコレクションが並んでいます。

左下のハートが幾重にも重なるようなピンクの貝が特に目を引きました。名前から察するに沖縄の貝なのかな?
河村良介が名前をつけた「ワタナベボラ」なんて名前の貝もありました。

自ら発見した新種もあるようです。
ということで、最初はなんちゅうマニアックな展示だ??と驚きましたが、綺麗な貝を観られるだけでなく日本の貝研究の系譜まで分かる面白い内容となっていました。何の分野でもマニアが全力で集めたコレクションというのは情熱を感じさせるものがあります。無料で観られる展示ですが、国立の博物館並に濃い内容となっていましたので、貝好きのみならず多くの人が楽しめる内容だと思います。
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前回ご紹介した展示を観た後、京橋方面にあるポーラミュージアム アネックスで「ポーラ ミュージアム アネックス展2018 後期 -イメージと投影-」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
ポーラ ミュージアム アネックス展2018 後期 -イメージと投影-
【公式サイト】
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅
【会期】2018年3月23日(金)~4月22日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はこのミュージアムの名前を冠したもので、毎年恒例のポーラ美術振興財団が助成している若手芸術家を成果を披露する内容となっています。前期・後期でメンバーが違っているようで、前期は観に行かずに終わったのですが後期は「イメージと投影」と題して4人のアーティストの作品を展示していました(と言ってもこのタイトルは特に意味がなく自由に作っているようですw) 詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
<村上 亘(Wataru MURAKAMI)>
まずはドイツの美術大学で西洋美術を学んだ村上亘 氏のコーナー。
こんな感じでズラリと写真が並んでいました。

瑞々しい印象を受ける静物ばかりで好み。
写真の中に写真があったりして、リズミカルな感じ。

明るくスタイリッシュな感性が個性的です。こんな写真を撮ってみたいw
こちらは描いた絵の写真かな。

色彩感覚も軽やかで観ていて楽しい作品ばかりでした。
<冨田 香代子(Kayoko TOMITA)>
続いては冨田香代子 氏による擬音語・擬態語を表す「オノマトペ」をテーマにした作品のコーナー。
こちらに映像と共に擬音語を発音する音声がついて流れます。

9つ画面があるのは、異なる母語を持つ9人に見せて、それぞれが思い浮かぶオノマトペを発声するという趣旨となっている為です。「パチパチ」なんて分かりやすい擬音でも国によっては全く思いもよらない音に聞こえているようで驚きでした。「ピカピカ」みたいな擬態語になると根本的にイメージが違うしw これは文化的にも面白い作品でした。
壁にもヘッドフォンと共に映像がありました。

こちらも同様の趣旨のようでした。
<今村 綾(Aya IMAMURA)>
続いては今村綾 氏による西洋絵画の「女性とヴェール」の寓意から着想を得て制作された3点の作品が並ぶコーナーです。
こちらは鏡の中に絵が置かれた「カレイドスコープ(万華鏡)」という作品。

現代の我々から観ると不適切なニュアンスもあるとのことですが、観る角度によって見えるものが全く異なるのが正に万華鏡のようで面白い発想でした。
こちらは本のようになったプリントの側面に絵が表された作品。

こちらにも裸婦らしき姿が確認できました。これは物語性を感じるけど、女性の姿が中途半端に観えないのがもどかしいw ヴェールを被った女性と通じるような表現に思えました。
<古川 あいか(Aika FURUKAWA)>
最後は二次元の絵画を三次元的に展示する試みをする古川あいか 氏のコーナー。
こんな感じで会場と絵画が一体化したように並んでいました。

展示された絵の上から絵を描いたり、地面と同化するかのように吊り下げられた作品など、2次元と3次元の境目が曖昧になるような空間となっています。この発想も素晴らしい
ということで、小規模な展示でしたがいずれのアーティストも個性的な作品が並んでいました。この記事を書いている時点でもう残り2日しかありませんが、無料で観られる上に撮影もできるので、銀座付近に行く機会がある方が是非足を運んでみてはと思います。今後も期待できる方たちばかりでした。

【展覧名】
ポーラ ミュージアム アネックス展2018 後期 -イメージと投影-
【公式サイト】
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅
【会期】2018年3月23日(金)~4月22日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はこのミュージアムの名前を冠したもので、毎年恒例のポーラ美術振興財団が助成している若手芸術家を成果を披露する内容となっています。前期・後期でメンバーが違っているようで、前期は観に行かずに終わったのですが後期は「イメージと投影」と題して4人のアーティストの作品を展示していました(と言ってもこのタイトルは特に意味がなく自由に作っているようですw) 詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
<村上 亘(Wataru MURAKAMI)>
まずはドイツの美術大学で西洋美術を学んだ村上亘 氏のコーナー。
こんな感じでズラリと写真が並んでいました。

瑞々しい印象を受ける静物ばかりで好み。
写真の中に写真があったりして、リズミカルな感じ。

明るくスタイリッシュな感性が個性的です。こんな写真を撮ってみたいw
こちらは描いた絵の写真かな。

色彩感覚も軽やかで観ていて楽しい作品ばかりでした。
<冨田 香代子(Kayoko TOMITA)>
続いては冨田香代子 氏による擬音語・擬態語を表す「オノマトペ」をテーマにした作品のコーナー。
こちらに映像と共に擬音語を発音する音声がついて流れます。

9つ画面があるのは、異なる母語を持つ9人に見せて、それぞれが思い浮かぶオノマトペを発声するという趣旨となっている為です。「パチパチ」なんて分かりやすい擬音でも国によっては全く思いもよらない音に聞こえているようで驚きでした。「ピカピカ」みたいな擬態語になると根本的にイメージが違うしw これは文化的にも面白い作品でした。
壁にもヘッドフォンと共に映像がありました。

こちらも同様の趣旨のようでした。
<今村 綾(Aya IMAMURA)>
続いては今村綾 氏による西洋絵画の「女性とヴェール」の寓意から着想を得て制作された3点の作品が並ぶコーナーです。
こちらは鏡の中に絵が置かれた「カレイドスコープ(万華鏡)」という作品。

現代の我々から観ると不適切なニュアンスもあるとのことですが、観る角度によって見えるものが全く異なるのが正に万華鏡のようで面白い発想でした。
こちらは本のようになったプリントの側面に絵が表された作品。

こちらにも裸婦らしき姿が確認できました。これは物語性を感じるけど、女性の姿が中途半端に観えないのがもどかしいw ヴェールを被った女性と通じるような表現に思えました。
<古川 あいか(Aika FURUKAWA)>
最後は二次元の絵画を三次元的に展示する試みをする古川あいか 氏のコーナー。
こんな感じで会場と絵画が一体化したように並んでいました。


展示された絵の上から絵を描いたり、地面と同化するかのように吊り下げられた作品など、2次元と3次元の境目が曖昧になるような空間となっています。この発想も素晴らしい
ということで、小規模な展示でしたがいずれのアーティストも個性的な作品が並んでいました。この記事を書いている時点でもう残り2日しかありませんが、無料で観られる上に撮影もできるので、銀座付近に行く機会がある方が是非足を運んでみてはと思います。今後も期待できる方たちばかりでした。
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2週間ほど前に資生堂ギャラリーで「蓮沼執太: ~ ing」という展示を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
蓮沼執太: ~ ing
【公式サイト】
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/
【会場】資生堂ギャラリー
【最寄】銀座駅 新橋駅など
【会期】2018年4月6日(金)~6月3日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて今回の展示は1983年生まれの蓮沼執太というアーティストの個展となっています。蓮沼執太 氏は作曲やコンサートなど音楽活動を活発に行っている方らしく、自らがミュージシャンを集めた蓮沼フィルという音楽集団ともコンサートを行っているようです。今回の展示の趣旨は公式サイト等にも書いてありますが、現代アートにありがちな読んでもいまいちピンとこない難しいことが書いてあります。 しかし中身は理屈抜きでも驚くような作品が並んでいましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。なお、この展覧会のタイトル「 ~ ing」は、事物(人間)を繋ぐ関係性の象徴としての「~」と、進行形・Thing・Beingという意味での「ing」を組み合わせている とのことで、人と人、人と物との繋がりなどを表現しているようです。
蓮沼執太 「Walking Score in Ginza」

こちらは地上から地下に入るところにあった映像作品。ちょっと長居できない場所だったので1分も観ていませんでしたが、この映像では銀座でマイクを転がして音を採集した様子が流れていたようです。まるでマイクを犬の散歩のように連れ回していますw
解説によるとこの作品では街と人との繋がりを表しているようで、わざわざ階段の所に設置したのも地下鉄の階段の上り下りをイメージしてのことのようでした。最早、音楽という領域を越えた斬新な手法です。
蓮沼執太 「Thing~Being」

メインの展示会場に入るとこんな光景が広がっていて驚きました。何やら細かいものがゴロゴロと転がっていて、鑑賞者が踏む度に金属的な音がします。部屋は銀色の壁に囲まれていて無限の空間を感じさせる意図があるようです。
こちらは金属片のアップ。この中を歩くことが出来ますが、鋭利なものもあるので要注意。

よく観ると管楽器などの部品であるのが分かります。製造過程で出る金属材のようです。
こちらもアップ。たまに何の楽器か分かるくらい大きなものもありました。

この作品ではこうした金属片と触れることで、物との関係性や、同じ会場で音を鳴らす他者との関係性を感じさせるものとなっているようでした。これは理屈が分からなくても非常に驚きと好奇心の湧く作品だと思います。
蓮沼執太 「Change」

こちらはメールを使ったプロジェクトをまとめた作品で、メールに作者が採集した環境音とその場所の位置情報からイメージ検索した画像を添付して数名に送るというプロジェクトだそうです。最初観た時に普通の映像かと思いましたが、画像と音は微妙に違っているようにも思えました。これは時間・空間・フィクションなどの要素や日記性・反復的性質などを持っていて、テクノロジーや通信との関係性についても言及しているようですが、そこまで深いことは素人の私には気づけなかったですw
蓮沼執太 「Tree with Background Music」

こちらはたまに大きな音が出るスピーカーと、その前に置かれた観賞用植物から成る作品。音が出ると木の葉っぱが揺れて音楽を可視化するという意図があるようです。改めて音は振動そのものであるのがよく分かりますが、ライブ会場とか行くと音による振動を体で感じるので、割とよく体験している現象かもw
蓮沼執太 「We are Cardbord Boxes」

こちらは隣のスピーカーの作品に気を取られてちょっと聞こえづらかったですが、この箱の中から作者が段ボールを使って演奏した音楽が流れてくるというもの。もちろん打楽器のような感じに聞こえるのですが、ここから音が出ているとは中々気づけませんでしたw この意外性が狙いのようで、人とのコミュニケーションを生んだり物との関係を考えるきっかけとなるのを意図しているようでした。
ということで、解説を読まないと中々真意を知るのは難しい作品が多かったですが、単純に驚きが多くて 体験型とも言える作品があったのが面白かったです。この展示は無料でそれほど時間をかけずに観ることができますので、銀座にお出かけの際にでも寄ってみるのもよろしいかと思います。

【展覧名】
蓮沼執太: ~ ing
【公式サイト】
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/
【会場】資生堂ギャラリー
【最寄】銀座駅 新橋駅など
【会期】2018年4月6日(金)~6月3日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて今回の展示は1983年生まれの蓮沼執太というアーティストの個展となっています。蓮沼執太 氏は作曲やコンサートなど音楽活動を活発に行っている方らしく、自らがミュージシャンを集めた蓮沼フィルという音楽集団ともコンサートを行っているようです。今回の展示の趣旨は公式サイト等にも書いてありますが、現代アートにありがちな読んでもいまいちピンとこない難しいことが書いてあります。 しかし中身は理屈抜きでも驚くような作品が並んでいましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。なお、この展覧会のタイトル「 ~ ing」は、事物(人間)を繋ぐ関係性の象徴としての「~」と、進行形・Thing・Beingという意味での「ing」を組み合わせている とのことで、人と人、人と物との繋がりなどを表現しているようです。
蓮沼執太 「Walking Score in Ginza」

こちらは地上から地下に入るところにあった映像作品。ちょっと長居できない場所だったので1分も観ていませんでしたが、この映像では銀座でマイクを転がして音を採集した様子が流れていたようです。まるでマイクを犬の散歩のように連れ回していますw
解説によるとこの作品では街と人との繋がりを表しているようで、わざわざ階段の所に設置したのも地下鉄の階段の上り下りをイメージしてのことのようでした。最早、音楽という領域を越えた斬新な手法です。
蓮沼執太 「Thing~Being」

メインの展示会場に入るとこんな光景が広がっていて驚きました。何やら細かいものがゴロゴロと転がっていて、鑑賞者が踏む度に金属的な音がします。部屋は銀色の壁に囲まれていて無限の空間を感じさせる意図があるようです。
こちらは金属片のアップ。この中を歩くことが出来ますが、鋭利なものもあるので要注意。

よく観ると管楽器などの部品であるのが分かります。製造過程で出る金属材のようです。
こちらもアップ。たまに何の楽器か分かるくらい大きなものもありました。

この作品ではこうした金属片と触れることで、物との関係性や、同じ会場で音を鳴らす他者との関係性を感じさせるものとなっているようでした。これは理屈が分からなくても非常に驚きと好奇心の湧く作品だと思います。
蓮沼執太 「Change」

こちらはメールを使ったプロジェクトをまとめた作品で、メールに作者が採集した環境音とその場所の位置情報からイメージ検索した画像を添付して数名に送るというプロジェクトだそうです。最初観た時に普通の映像かと思いましたが、画像と音は微妙に違っているようにも思えました。これは時間・空間・フィクションなどの要素や日記性・反復的性質などを持っていて、テクノロジーや通信との関係性についても言及しているようですが、そこまで深いことは素人の私には気づけなかったですw
蓮沼執太 「Tree with Background Music」

こちらはたまに大きな音が出るスピーカーと、その前に置かれた観賞用植物から成る作品。音が出ると木の葉っぱが揺れて音楽を可視化するという意図があるようです。改めて音は振動そのものであるのがよく分かりますが、ライブ会場とか行くと音による振動を体で感じるので、割とよく体験している現象かもw
蓮沼執太 「We are Cardbord Boxes」

こちらは隣のスピーカーの作品に気を取られてちょっと聞こえづらかったですが、この箱の中から作者が段ボールを使って演奏した音楽が流れてくるというもの。もちろん打楽器のような感じに聞こえるのですが、ここから音が出ているとは中々気づけませんでしたw この意外性が狙いのようで、人とのコミュニケーションを生んだり物との関係を考えるきっかけとなるのを意図しているようでした。
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