関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

昭和が生んだ写真・怪物 時代を語る林忠彦の仕事 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

ゴールデンウィークの頃と先週の日曜日に六本木のFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で「昭和が生んだ写真・怪物 時代を語る林忠彦の仕事」を観てきました。この展示は2部に会期が分かれていて、既に第1部は終わっていますが第1部・第2部共に観てきましたので合わせてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 昭和が生んだ写真・怪物 時代を語る林忠彦の仕事 

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/18040104.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅

【会期】
  第1部 2018年4月1日(日)~5月31日(木)
  第2部 2018年6月1日(金)~7月31日(火)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
いずれの会期も空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は今年で生誕100年を迎える写真家・林忠彦のミニ個展となっています。林忠彦は戦後間もない頃に活躍した写真家で、カストリ雑誌と呼ばれる雑誌のブームに乗って人気となり、戦後・高度成長期・バブル景気といった激動の昭和時代を撮り続けた人です。ちなみにカストリ雑誌とは物資の乏しかった時代に密造されたカストリ焼酎にちなんだ名前らしく3合飲めば潰れるのと掛けて、3号も出版したら潰れるような雑誌のことを指したようです。1部・2部共に20点程度の作品が並んでいましたので、それぞれ気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1部 激動の昭和をフィルムに写し込んだ>
1部は既に終了しましたが、こちらは戦後の世相などを捉えた作品(白黒)が並んでいました。1部のテーマは多岐に渡っていたので、作品ごとにいくつかご紹介していこうと思います。

林忠彦 「歓喜の復員」 品川駅 昭和21年
こちらは旧日本軍の兵士たちが終戦で復員して来た様子を撮ったもので、みんな満面の笑みを浮かべて喜んでいる様子を捉えています。この写真は初期のカストリ時代の傑作と言えるそうで、当時の復員の様子がありありと伝わってきます。生きて帰れた安堵感と希望に満ち溢れた作品でした。

林忠彦 「引き揚げ」 上野駅
こちらは外地から引き揚げてきた民間人を撮ったもので、上野駅でゴザをひいて寝ている母子の姿もあります。周りにも力なく項垂れた人がいて、先程の作品と対照的に戦後の喪失感や混乱を写しているようでした。戦後の陰と陽の対比のようで興味深い作品です。

林忠彦 「配給を受ける長い列」 銀座 昭和21年
こちらは銀座和真の時計台を背景にバラックみたいな平屋が並び、そこに行列する人たちを撮った写真です。周りが瓦礫や空き地のようになっていて、戦後すぐの銀座の姿に驚きを感じると共に、歴史を伝える報道写真のような側面があるように思いました。戦中・戦後は銀座も大変だったんですね…。

林忠彦 「太宰治 銀座5丁目のバー [ルパン]」 昭和21年 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターで、太宰治がバーの高い椅子の上で足を組んで座っている様子を撮ったものです。1948年(昭和23年)の文士シリーズでこの作品を発表したのですが、この連載を機に林忠彦は人気の写真家となったらしいので出世作と言えそうです。元は正方形の写真を縦長にトリミングしていたそうで、今回は正方形のノートリミング版で展示していました。戦後すぐなのにスーツ姿が似合う伊達男ぶりで、表情も精悍な印象を受けました。ちなみにこの隣には坂口安吾の後ろ姿も写っているようでした。

林忠彦 「犬を負う子ら」 昭和21年
こちらはボロボロのレンガの建物を背景に2人の子供が立っている様子が撮られたもので、1人は犬を背負っています。どこかの街の跡かと思ったら三宅坂の参謀本部の跡地らしく、今では跡形も無いのもうなずける廃墟となっています。2人の子もいかにも貧しそうな格好なので、これが三宅坂かという驚きもありました。

この近くには進駐軍関連の作品もありました。

林忠彦 「銀ブラの復活」
こちらはスーツに帽子の紳士と洋装の女性が腕を組んで銀座を歩いている様子を撮った写真です。行き交う子どもたちも含めて皆一様に表情は晴れやかで、舗装された道や街の雰囲気もだいぶ綺麗になっています。まさに日本の戦後の復興の様子を伺わせ、明るい雰囲気が表れた作品でした。

林忠彦 「日劇屋上の踊り子」 ★こちらで観られます
こちらは路面電車が走る有楽町の大通りを背景に、ビルの屋上の塀で腕枕して寝ている美女を撮った写真です。メイクが濃くて踊り子らしいですが、そんな所で寝てるのがちょっとシュールw これはポーズをとらせた演出なのか分かりませんが、面白い構図です。 また、ビルの下には疾走する蒸気機関車の姿もあり、この頃の復興の力強さの象徴のようにも思えました。


<第2部 日本文化の原風景をフィルムに写し込んだ>
2部は日本の原風景ということで、日本の風景や文化を捉えた作品が並んでいて、カラーの作品が多いかな。シリーズ的な作品が多かったのでこちらは丸っと。

まずは現在は犬山にある有楽苑(うらくえん)如庵という茶室を撮った写真がありました。(★こちらで観られます) この如庵は織田信長の13歳年下の実弟であり茶人でもあった織田有楽斎によって作られた茶室で、国宝にも認定されています。ここには外観・内観・庭・蹲居(つくばい)などの写真が並び、詫た雰囲気と凛とした空気感が漂っています。日本独特の美意識が詰まったような空間はまさに日本の原風景の1つと言えるんじゃないかな。
 参考記事:【番外編】有楽苑と犬山城の写真

その先にも妙喜庵待庵などの茶室や、兼六園の夕顔亭などの写真が並び、特に夕顔亭の赤い壁は派手なようで格調高い雰囲気を出しています。こうして日本建築の写真が並ぶと、改めて幾何学的な要素と落ち着きが感じられて、建築としてだけでなく日本人の感性そのものを観ているように思いました。
 参考記事:【番外編】金沢旅行 兼六園・金沢城の写真

その先には昭和の東海道を撮ったシリーズが並んでいました。日本橋の龍のような像をアップで撮ったものや、夕暮れの品川お台場の東大、鈴ヶ森の刑場後など、独特の視点による斬新な構図や叙情的な雰囲気で撮られています。フィルムによる色の表現も繊細で味わい深いかな。今回のポスターにもなっている豊川稲荷(★こちらで観られます)などは夕暮れを背景にして強い陰影と共に神秘的な雰囲気を出していました。最後の京都の三条大橋では擬宝珠をアップで撮るなど、様々な表現を駆使する様子は歌川広重の東海道五十三次に共通するものがあるかも。東海道シリーズ全体的に古き良き日本を思い出させてくれて、懐かしい気分になるのも良かったです。


ということで、ミニ個展ですが個性あふれる作品ばかりでした。点数が少ないので満足度は3にしましたが、作風自体は好みの写真家でもっと多くの写真を観てみたくなりました。ここは無料で観られるので、六本木に行く機会があったら寄ってみるのもよろしいかと思います。


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ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 (感想後編)【上野の森美術館】

前回に引き続き上野の森美術館の「ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵」 についてです。前半は1階についてでしたが、今日は2階の奇想の作品などについてです。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

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【展覧名】
 生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 

【公式サイト】
 http://www.escher.jp/

【会場】上野の森美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年6月6日(水)~7月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間45分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前回は1階についてでしたが、今日は2階についてです。2階も非常に混んでいてどこも行列が2重3重となっていました。
後半は騙し絵的な作品が前半よりも多かったかな。詳しくは今回も気に入った作品を通してご紹介していこうと思います。なお、エッシャーの来歴については前編や参考記事をご参照ください。
 参考記事:迷宮への招待 エッシャー展 (そごう美術館)


<6章 技法>
この章はエッシャーの版画技法についてのコーナーです。エッシャーの版画はリノカットから始まり、銅版やメゾチント、木口木版、木版、リトグラフ(石版)など多彩な技法の作品を残しています。この辺の違いは普段版画を観ていないと分かりづらいかもしれないので、参考までにこちらの画像を載せておきます。

これは以前ご紹介した町田市立国際版画美術館の展示にあった版画技法をまとめたボード。分かりやすくまとまっています。
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技法の違いによって表現可能なものも変わってきます。詳しくは各作品ごとにご紹介。

85 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「西部劇」
こちらは縦長の木版作品で、映画館で西部劇を観ている人が描かれています。幾重にも観客が並び、黒地に白い輪郭で簡潔に表されているのが特徴で、映画の画面から放射状の線が力強く伸びています。これは画面からの光を感じさせて、明暗が強い印象を受けました。こちらは普通に版画として面白い作品です。

90 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「地下聖堂の行列」
こちらは木版で、暗い地下聖堂の中を 白く長い覆面で白装束の人たちが蝋燭を持って横切る様子が描かれています。ちょっと不気味ですが神秘的で、インパクトがあるので以前にも何回か観たのを覚えていました。こちらも明暗の表現が巧みな作品です。余談ですが、この覆面の人がペロペロキャンディーを持ったような食玩がうちにあります。多分、2006年のbunkamuraのガチャガチャで手に入れたやつかな。

この近くには幻想的な「花火」もありました。こちらも明暗を上手く利用した面白い作品です。

100 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「ラヴェッロとアマルフィ海岸 のための習作」
こちらは版画ではなく鉛筆とチョークによる原画です。海岸の様子が描かれ、家々が無数にあって穏やかな光景となっています。その隣にはこれをリトグラフ化したものがあり、両者を比較すると描写はかなり正確に写されている一方、リトグラフは原画より鮮明な明暗となっていているのが分かりました。比較しながら観られるのが面白い趣向です。

104 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「蟻」
こちらは蟻を拡大して描いたリトグラフの作品で、かなり細部まで観察して緻密かつリアルに描かれています。写実的なだけとも言えますが、ここまでリアルだとちょっとシュールな感じすらします。この近くにはフンコロガシやトンボなども同様の作品があって、エッシャーの昆虫に対する興味も伺えました。この後に出てくる「メタモルフォーゼⅡ」にも蜂とか出てくるし、これも奇想の作品のルーツの1つと言えそうです。

106 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「眼」 ★こちらで観られます
こちらは眼を大きく描いたメゾティントの作品で、瞳の部分に骸骨が反射して観えています。何故骸骨なのか分かりませんが、骸骨は不気味さもありつつ何か笑ってるようにも見えます。 1946年の作品なので戦争で死が身近だったことと関連があるのかもと思いながら観ていました。 なお、これもかなり細密で、メゾティントの技法によってこのような細やかな表現が可能となったようです。しかしエッシャーはメゾティントの作品を8点しか残しておらず、やはり作るのが大変だったのが原因のようです。(確かメゾティントは繊細な表現が可能な一方で何度も刷れない特徴があったと読んだかな) 表現の為に様々な技法にチャレンジしていたことが伺える作品でした。

この近くには版木なんかもありました。むちゃくちゃ混んでいたので、あまりじっくり観られずw


<7章 反射>
続いては「反射」をテーマにしたコーナーです。エッシャーは鏡面反射を使った不思議な絵が多いのも特徴で、シュールさや騙し絵的な雰囲気を出している要因の1つではないかと思います。このコーナーは展示室自体も鏡張りとなっていて、エッシャーの世界観を盛り上げていました。

117 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「鏡のある静物」
こちらは鏡が置かれた静物ですが、映っているのは左右逆だったり、街の風景が映っていたりと普通の鏡ではありません。手前には歯磨きや蝋燭があるものの、それも映ったり映らなかったりします。一部だけ映る様子がシュールかつ不思議な光景で、鏡の持つ神秘的な側面を拡張したような感じの作品でした。

123 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「三つの世界」
こちらは水面に映る木々、水面に浮かぶ落ち葉、水面下の魚 という水面に接する3つの世界を描いたものです。その発想も流石ですが、それぞれの様子を濃淡のみで表現しているのも見事です。発想の面白さだけでなく、しっかりした表現力があってこそエッシャーの魅力になっているのが再認識できると思います。


<8章 錯視>
最後の章は錯視を利用したコーナーで、多くの人はエッシャーの名前を聞くとこの章にあるような作品を想起すると思います。ここは騙し絵的な作品が多めとなっていました。

128 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「発展Ⅱ」
こちらは赤と黒の市松模様が中心から外に向かって段々と6角形になり、さらにトカゲの形になっていく様子が描かれています。トカゲは色違いにお互いに組み合っているのもエッシャーらしい画風かな。同様の「言葉(地球、空、水)」や「魚」という作品もあり平面から立体に進化する様子などもありました。ここまで観てきた作品にも同じ表現があったし、エッシャーお得意の技法です。少し先にも有名な「昼と夜」(これも同様の技法)もありました

141 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「でんぐりでんぐり」
こちらは6本足の芋虫みたいな「でんぐりでんぐり」というキャラクターを描いた作品です。芋虫が 丸まってでんぐり返しするような様子を4体で表していて、1枚で時系列を感じさせます。この隣にはこのキャラクターを使った「階段の家」もあり、エッシャーが気に入っていたのが伺えました。

145 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「相対性」
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、3つの独立した重力が作用しているような部屋の内部が描かれています。階段でお互いが繋がっているのですが、階段の両面が逆転して使われているなど、重力関係がちぐはぐな感じが面白いです。ここまで観てきた建物の構造の研究なども活かされている様子も伺えて、観れば観るほど発見がある作品でした。

この近くには「ベルヴェデーレ(物見の塔)」、「滝」(★こちらで観られます)、「上昇と下降」といった有名作が並んでいました。エッシャーの代表作が集まっているコーナーです。

152 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「メタモルフォーゼⅡ」 ★こちらで観られます
こちらは4mにもなる横長の作品で、メタモルフォーゼを書いてある白黒の画面から始まり、それが市松模様となり、トカゲとなり、6角形となり、蜂の巣となり、蜂が蝶のようになって魚と向き合うようになり、魚が鳥と向き合うようになり、鳥が赤白のブロックとなり、建物と町並みとなり、城塞がチェスのコマ(ブロック)になり、チェス盤が市松模様となり、メタモルフォーゼを書いてある白黒の画面に戻っていく という感じです。エッシャーの騙し絵的な技法が凝縮されたような大作で、その発想とデザイン的なセンスに改めて感心させられました。これは今回の展示でも大きな見どころと言えます。

最後には彫刻作品の「魚で覆われた球体」もありました。これも久々に観られて嬉しい。


ということで、今回は騙し絵一辺倒というわけではなく、エッシャーはどのように奇想の作品を作っていったのかが分かるようになっています。もうちょっと時系列でも良かったような気もしますが、エッシャー好きには深く理解できるような機会となっていると思います。混雑がとにかく大変ですが、不思議な絵が好きな方は楽しめる展示です。会期末はさらに混雑すると思われますので、気になる方はお早めにどうぞ。(割と柔軟に営業時間を延長したりしているみたいです。詳しくは公式ツイッターなどをご覧ください)
 参考リンク:公式ツイッター

おまけ:
出口の辺りにミラクルデジタルフュージョンという合成を使った撮影コーナーがありました。
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あいにく私は閉館間際だったので体験できませんでしたが。。。(というか混み過ぎでこれを体験出来る人はほんの一部かもw)


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ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 (感想前編)【上野の森美術館】

先週の日曜日に上野にある上野の森美術館で「生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵」を観てきました。非常に点数が多い展示となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 

【公式サイト】
 http://www.escher.jp/

【会場】上野の森美術館
【最寄】上野駅

【会期】2018年6月6日(水)~7月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間45分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
非常に混んでいて、チケット待ちで10分・入場待ちで10分くらい並びました。しかしそれ以上に大変だったのが会場内で、どこも2重3重に列ができている感じです。作品が細かい版画なので後ろから観ることも難しく、延々と並んでいたら4時間近くかかりました。普段に比べて鑑賞マナーを知らない人も多いので満員電車に4時間いるのと大差ないくらい疲れました。今回の展示では特に時系列になっている訳ではないので、先に2階から観て特に混み合う1~3章あたりは閉館時間が近づいた頃に行くほうが効率的かもしれません。しかしそれでも時間がかかって観きれない可能性もあるのでなるべく鑑賞時間に余裕を持ったほうが良さそうです。

さて、この展示は騙し絵的な奇想の版画作品で知られるマウリッツ・コルネリス・エッシャーの大規模な個展となっています。エッシャー展は過去に何回か観ていますが、今回は世界最大のエッシャーコレクションを誇るイスラエル博物館の所蔵品が150点程度(大半は版画)並んでいました。エッシャーは生涯で450点程度の作品を残しているらしいので今回の展示で1/3も観られてしまうことになります。エッシャーの来歴等については以前の記事にも書いていますのでそちらを参考にして頂ければと思いますが、簡単に説明すると、父はお雇い外国人として日本にも来た水力工学の土木技師で、エッシャー自身も建築や装飾美術を学んでいました。その後、サミュエル・イエッスルン・ド・メスキータに才能を見出され版画の基本を学び、様々な題材の版画を制作していくことになります。今回の展示では主題ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、先に言っておくと騙し絵的な作品の割合はそれほど多くはありません。今回はエッシャーの作品全体を観ながら、どうして奇想の作品を作ることができたかを紐解くような感じの内容となっています。
 参考記事:迷宮への招待 エッシャー展 (そごう美術館)


<1章 科学>
まずは科学的な志向の作品のコーナーです。エッシャーは2次元平面はどのようにタイル状にすることができるかや、三次元の格子構造に興味を持っていたようで、幾何学的なモチーフがよく使われる作風となっています。ここにもそうした表現の作品が並んでいました。

1 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「貝殻」
こちらは巻き貝の貝殻を描いた作品で、緻密で市松模様のように白黒が交互になって渦巻く様子となっています。これは1919年にハールレムの建築装飾美術学校に入学した頃の作品で、レンブラントのエッチングに着想を得て描いているようです。割と写実的な感じがしますが早くも市松模様が使われている所に驚きます。 ちなみにこの学校で建築を学び始めたエッシャーですが、そこで版画家サミュエル・イエッスルン・ド・メスキータと出会い版画の道に本格的に転じていくことになります。

5 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「蝶」
こちらは蝶が無数に描かれた作品で、上の方はかなり単純化されていますが 下の方に行くほど大きくて緻密な描写となっています。お互いが組み合って模様となるような表現や徐々にリアルになるのはエッシャーが得意としたもので、この作品でもそれを観ることができました。割と蝶への博物的な関心も伺えるように思います。

3 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「バルコニー」
こちらはバルコニーの一部がレンズで観たような球体状に膨らんでいるような感じの作品です。これも騙し絵と言うよりかはレンズの歪みをよく研究しているように思えるかな。それを絵に活かそうとする発想も面白いです。

14 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「同心円状の球面片」
こちらは線で出来た球体の中にさらに球があるような構造を描いた作品です。反復・変容・反射のイメージに強い関心があったエッシャーですが、それだけではなく結晶体にも関心を持っていたようで、この作品ではそれが活かされているように思われます。こうした結晶体への関心はライデン大学で講師をしながら結晶学を研究していた異母兄からの影響のようです。エッシャーの不思議な世界を形作るパーツを観られたような感じの作品でした。

18 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「立方体とマジックリボン」
こちらは格子の中に入っている球状のリボンを描いた作品です。穴があって立体感がつけられているのですが、見ようによってはその部分が凸型のようにも凹型にも見えるのが不思議です。絵の上の方を観ていると凸型のはずですが、メビウスの輪のようになって何時の間にか凹型になっている…という何とも面白い趣向となっていました。

エッシャーはメビウスの輪もよく描いているようで、他にも∞状の裏と表が何時の間にか逆転するモチーフの作品がありました。


<2章 聖書>
続いては聖書からの主題のコーナーです。エッシャーは敬虔なカトリック教徒だったそうで、創世記や聖人の生涯をアール・ヌーボー様式のような作風で残しています。しかし1935年にヒエロニムス・ボスの「地上の楽園」の地獄の場面を模写して以降は伝説や宗教主題への関心が弱まっていったそうで、その頃の背景にはイタリアのファシズムに対する抗議があったようです。(その後イタリアを離れて二度と戻ることはなかった) ここには聖書を題材とする作品が並んでいました。

21 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「小鳥に説教する聖フランチェスコ」
こちらはアッシジの聖フランチェスコを描いた作品で、この聖人は自然や動物を愛し、動物に説教したことでも知られています。ここでは身振りをしながら様々な鳥に説教をしていて、聖フランチェスコとモア?には後光が差しているような感じで描かれています。騙し絵的な要素は全くなく、様式化された花などは確かにアール・ヌーボー的な雰囲気もあるかな。エッシャーのちょっと意外な側面が観られる作品だと思います。

23-27 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「天地創造」
こちらは旧約聖書の天地創造を主題にしたもので、4日目を除く1~6日目の場面が展示されていました。1日目は太陽のようなものの上を飛ぶ鳥、2日目は大雨と海の潮、3日目は沢山の植物、5日目は魚や鳥たち、6日目は椰子の木の下で肩を組む裸の男女(アダムとエバ)が描かれています。こちらも装飾的な感じで、制作年も1920年代なので学校の装飾美術からの影響なのかも?と思ったのですが、解説では特に触れていなかったので詳細は不明です。

この近くには失楽園やバベルの塔を主題にした作品なんかもありました。

30 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「地獄(ヒエロニムス・ボスの絵画に基づく)」
こちらはボスの作品の模写で、巨大な樹木人間の周りを沢山の人や悪魔が群がる様子が描かれています。一見するとボスの作品そのもののように観えますが、中にはエッシャーが作ったモチーフなどもあるそうです。奇想の画家で有名なボスにエッシャーも心惹かれたのかな。こちらもルーツの一端が垣間見える作品でした。
 参考記事:ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで (Bunkamura ザ・ミュージアム)


<3章 風景>
続いては風景画のコーナーです。エッシャーは1920年代にイタリア旅行に行き、そこでスケッチを描いて、ローマの夜景などを劇的な明暗で描いた版画を作ったようです。後にイタリアを離れてからは自然描写の関心を失ったようですが、初期には後のモザイクパターンや錯視を招く画風に繋がるモチーフも観られるようで、ここにはそうした作品も並んでいます。

31 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「サンジミニャーノ」
こちらはイタリアの町並みを仰ぎ見るような感じで描いた作品で、中央にオリーブの木があります。真っ暗な空に白い建物が映え、単純化された丘が波打つような表現となっていました。かなり明暗が強くてちょっとシュールな雰囲気の作品です。

この辺の作品は版画として面白い表現の作品が多かったです。

34 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「ローマ、ボルゲーゼの聖獣」
こちらは手前に大きな龍のような像(聖獣らしい)を描き、背景にイタリアの背景が描かれた作品です。水平・垂直の直線を多用したストライプの建物が建ち並んでいて、建築を学んだだけに単純化されても特徴的な感じがします。リズミカルな画面で、パターン化されたような感じも出ていて後の作風を予感させました。

やはり建築に興味があったようで、この辺は建物を描いた作品が多かったです。(イタリアの切り立った崖にも興味があったのか、崖の絵も多い)

55 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「ポジターノの古い家」
こちらはイタリアの家を描いたもので、1軒だけ切り出したような感じで描かれています。画風は特に変わった所はないのですが、段差の多い家で階段がいくつもあるのが特徴的です。これはエッシャーの騙し絵に出てくる家の雰囲気に似ているような…。 こうした風景や建物が下地となっていったのが伺える作品でした。

56 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「アマルフィ海岸」
海岸とそこに建つ城のような建物が描かれた作品で、複雑な階段と橋が組み合っている様子が写実的に表されています。ここでは細かい線や点を使った表現で明暗もくっきりだしていて、面白い手法となっています。また、複雑な構造からは後のパラドックスのある建物を生む下地になるようなものを感じました。


<4章 人物>
続いては人物のコーナーです。エッシャーは当初は主に家族をモデルにリアルな人物像を描いていたのですが、世界大戦後は人間社会に対する見方が暗くなり 無個性で時にグロテスクな人物像を描くようになったようです。ここにはいずれの時期の作品もあって、その変遷の様子も観ることができました。

61 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「子供の頭部」
こちらは18歳の頃の初期作品で、あどけない子供の頭部を描いています。版画家の道に進む前のものらしく、やや素朴な仕上がりにも思えますが目が生き生きしているように思いました。中々貴重なコレクションです。

この辺には19~21歳頃のリノカット(ゴム版みたいな凸版の版画)の作品も何点かありました。陰影が強くてちょっと不穏な感じも受けます。

70 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「父G.A.エッシャーの肖像」
こちらは虫眼鏡で新聞のようなものを観ている帽子の老人を描いた作品です。かなり細かくて写真のようなリアルさがあり、毛の1本1本まで表現されていて版画とは思えないほどです。エッシャーの騙し絵的な作品ではこうしたリアルで個性まで伝わるような人物はあまり観ないので、戦前の頃の作風がよく分かる作品だと思います。

この近くには自画像や奥さんを描いた作品なんかもありました。作品ごとに割と表現が違うので、色々試していたのかな。自画像は12点ほど残しているそうです。

72 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「婚姻の絆」
りんごの皮のようになった2人の顔が隣り合っていて、お互いが帯状に繋がっている様子が描かれています。これは左が妻のイエッタ、右はエッシャー自身でお互いが結びついていることを表しているようです。結構不気味な感じはしますが、2人の絆の意味もあるようで奥さんとの関係性も伺えました。

この近くには何度か観たことがある「出会い」もありました。戦時中の作品で、人間を原人のように描いているのは皮肉でしょうか。


<5章 広告>
続いては実用的な版画のコーナーで、エッシャーによる挨拶状や年賀状、広告、ロゴなどの仕事が並んでいました。

75 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「レストラン インシュリンデ(ハーグ)のためのエンブレム」
こちらは円形を3つに分けたベンツのマークみたいな枠の中に、椰子の木などの南国の風景が描かれたエンブレムです。エンブレムの周りには漢字も使われていて、南洋酒櫻と書かれています。そのせいか勝手に中華料理の店かと思いましたが、そこは解説がないので定かではなかったですw こうした広告の仕事も手がけていた様子がよく分かります。

この隣にも漢字用便箋のデザインなんかもありました。父親は日本で働いていたし、中国や東洋に関心があったのかな?

78 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 「アッセルベルフのための年賀状(グリーティングカード)」
こちらは白黒のパターンを組み合わせて魚と鳥が組み合うようになった作品です。鳥は上の方に行くと帆船に変わっていき、海に浮かんでいる様子となっていきます。年賀状の為に描いたようですが、この手法はエッシャーそのものといった感じの作品でした。


ということでこの辺までが1階の展示内容となっていました。割と騙し絵ではない作品が多いのですが、エッシャーの奇想な作品はいきなり作られた訳ではなく、科学や建物などへの関心から生まれているのがよく分かるのではないかと思います。後半には代名詞的な騙し絵のような作品もありましたので、次回は2階の内容をご紹介しようと思います。

 → 後編はこちら



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東京ロビー KITTE 丸の内 【丸の内界隈のお店】

前回ご紹介したインターメディアテクに行く前に同じKITTEにある東京ロビー KITTE 丸の内でお茶してきました。

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【店名】
 東京ロビー KITTE 丸の内

【ジャンル】
 カフェ/バー

【公式サイト】
 http://jptower-kitte.jp/shop/110.html
 食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1302/A130201/13153258/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 東京駅

【近くの美術館】
 インターメディアテク
 東京ステーションギャラリー
 三菱一号館美術館

【この日にかかった1人の費用】
 1200円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
結構混んでいて、入店待ちが15分くらいありました。

このお店はkitteの1階にありますが一旦kitteの外に出た所にあります。昼はカフェですが夜はバーになるようで、私は昼のカフェタイムで利用しました。

こちらが店内。
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すっきりして開放感があります。お客さんが多くても割と落ち着いた雰囲気。

このお店はパンケーキが名物らしいので、飲み物とのセットを頼んでみました。連れはクレールというクレープとワッフルの間の子みたいなものを頼みました。

こちらが名物の鉄鍋パンケーキ。これを頼むとパンケーキを作るのに20分かかるけど大丈夫かと聞かれました。
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あまりパンケーキを食べることがないので良し悪しが計りかねますが、こちらはしっとりしていて生地自体は甘さ控えめで美味しかったです。パンケーキは割とシロップ次第な気がします。

こちらがクレール。
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見た目も味もクレープのようなワッフルのようなw ベリー系の赤実とチーズが入っていて全体的には結構しっかりした甘さがありました。

何とセットメニューに水出しコーヒーがあったので、頼んでみました。水出しは非常に時間がかかるのにセットで選べるとは驚きです。
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滑らかで苦味はそれほどなく深いコクのあるコーヒーです。これは中々レベルが高いかも。

このお店はコーヒーにもこだわっているようで、ホットコーヒーは
 ・円錐ドリップ:豆の持つフルーティーな甘さと酸味が特徴
 ・ケメックス:フルーティーな酸味とコクが調和した味わい
 ・プレス:コーヒーを食べているような美味しさ
の3つの抽出方法が選べるようでした。いずれ違いを比較してみたいw


ということで、ちょっと変わった名物と美味しいコーヒーを楽しむことができました。東京駅の駅前で商業施設の1階ということもあっていつもお客さんの多いお店ですが、非常に便利な場所にあるので重宝しそうです。インターメディアテクや東京ステーションギャラリーに行った後、ゆっくり休むのも良さそうです。コーヒーにこだわりが感じられるのも面白いお店です。



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【インターメディアテク】の案内

前回ご紹介した東京ステーションギャラリーの展示を観た後、東京駅前のKITTEの中にある「JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク」にも行ってきました。

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【公式サイト】
 http://www.intermediatheque.jp/

【会場】JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
【最寄】東京駅

空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、このインターメディアテクは2013年にオープンした日本郵便が運営する商業施設KITTE(キッテ。東京駅の赤レンガの駅舎のすぐ近く)の2~3階の一角にある無料の博物館で、日本郵便と東京大学総合研究所博物館が共同で運営しています。(JPタワーというのは建物の名前です) この日は「特別展示『アヴェス・ヤポニカエ(4)――ディテールへの執念』」という展示もやっていましたが、特にメモは取りませんでしたので、今回はごく簡単に施設全体についてご紹介しようと思います。

まずこの博物館には東京大学の様々な学術文化財を集めた常設展示『Made in UMUT――東京大学コレクション』というコーナーがあります。ここには鉱物や金塊・宝石、化石、骨格標本、蝶など標本、剥製、アフリカやペルーの民俗に関する品(面とか)、土器などが並び、レプリカもあるようですが貴重な品を観ることができます。科学もあれば民俗もありといった感じで、割と脈絡ない感じが逆にワクワクする内容です。しかもこの建物自体が昭和初期のモダニズム建築なので、雰囲気としては研究室やクンストカンマー的な部屋のように思えます。私のお勧めは3階の動物の剥製で、点数はそれほど多くないですが美しい姿の動物たちを観ることができます。残念ながら作品や内部の写真は撮ることはできませんが、1部屋だけ撮影可能となっています。

こちらが撮影可能な部屋
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アカデミックな威厳溢れる雰囲気です。

壁にかかっているのは誰の肖像か分かりませんが、恐らく東京大学の教授かな
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普段はあまり近くに寄れないので遠くから観る感じ

蓄音機らしきものも見えます。
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このインターメディアテクはジャズのイベントも定期的にあるようで、この部屋で蓄音機で再生するのだとか。

さらに常設以外にも特別展を定期的に開催していて、この日も東京大学医学部附属病院の歴代教授の肖像画とかマニアックな品もありましたw 特別展はちょくちょく内容が変わりますが、やはり研究に関するものが多いかな。期間が長かったり短かったりまちまちなので、気になるのを見逃したこともありますw


ということで、割とカオスな感じが楽しめる博物館で、東京駅のすぐ近くで無料で観られるとは思えないくらいです。kitteはショッピングや食事で訪れるにも便利なので、非常に利便性の高い場所にあると言えます。東京ステーションギャラリーや三菱一号館美術館なども近くにあるので、美術館巡りのルートにも入れやすいと思います。ふらっと寄るのに向いているので、東京駅(赤レンガの丸ノ内南口辺り)に行く機会があったら立ち寄ってみると楽しめると思います。

ちなみに、2018年時点でこの博物館で秋篠宮家の眞子様が働いているそうです。私は見かけたことはないですが、もし見かけても驚いて失礼の無いよう心の準備はしていますw


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夢二繚乱 【東京ステーションギャラリー】

10日ほど前の土曜日に東京ステーションギャラリーで千代田区×東京ステーションギャラリー「夢二繚乱」を観てきました。

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【展覧名】
 千代田区×東京ステーションギャラリー「夢二繚乱」

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201805_yumeji.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅

【会期】2018年5月19日(土)~ 7月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
予想以上に多くの人で賑わっていて、場所によっては人だかりができるような感じでした。たまに列を作るくらいの混み具合です。

さて、今回は大正期に活躍し、現在でも人気の高い竹久夢二の大規模な回顧展となっています。この展覧会には夢二が関わった様々な媒体の作品が500点以上も展示されていて、初公開の初期の作品や『出帆』という自伝小説に関する作品なども並んでいました。私は夢二は好みでないので満足度は低めにしていますが、ファンには嬉しい内容ではないかと思います。展覧会は4章構成となっていましたので、各章ごとにご紹介していこうと思います(今回はあまりメモを取っていませんのでごく簡単に)


<第1章 夢二のはじまり>
まずは竹久夢二の若い頃のコーナーです。夢路は若い頃に新聞や雑誌に絵や詩を投稿して生活していたそうで、1905年6月に投稿した「筒井筒」という作品が入賞したことと「夢二画集 春の巻」の刊行が転機となり人気作家へとなっていったようです。ここには夢二が19歳の時に撮影した写真や、画文集『揺籃』という肉筆の中で最も若い頃の作品もあります。これは着物の女性が子供を抱いている姿が描かれていましたが、外国文学を翻訳したもののようです。若い頃からこういう仕事に携わっていた様子が伺えます。

その先には鉛筆や水彩などで描かれた作品があって、いわゆる夢二式美人と言われるスタイルで儚い雰囲気の女性像が早くも登場します。ちょっと拙い感じが好きになれない所ですがw 他には雑誌『中学世界』(筒井筒を投稿した雑誌)の編集者 西村渚山との書簡があり、この人が夢二の才能を見出したことが解説されていました。また、「夢二画集 春の巻」を始めとした画集がいくつかあり、これが出世作となったようです。

その先の小部屋には「夢二画手本」という絵の手本や子供向けの仕事のコーナーがありました。これらはシンプルな絵や童話的な雰囲気の作品で、子供向けの仕事も広く支持されたことが伺えました。…後で出てきますが、夢二が私生活がむちゃくちゃなので子供向けの仕事をしても良いのだろうか?などと思いながら観ていましたw


<第2章 可愛いもの、美しいもの>
続いては女性や子供に手の届く美術に関するコーナーです。夢二は正式に結婚した唯一の女性である岸たまきが経営する港屋に自らのデザインを提供したようで、日本橋呉服町にできた「港屋絵草紙店」は夢二の千代紙や便箋、封筒などを取り扱う一種のブランドショップだったようです。(離婚した時に自活出来るようにとこの店を出したそうです。) アール・ヌーボーや江戸趣味などを取り入れて若い女性に人気だったようで、若い画家たちも集まる一種のサロン的な面もあったようです。
また、この時期には たまきをモデルとして瞳の大きな女性像を描いていて、これが夢二式美人と呼ばれるスタイルの確立に繋がります。どこか儚げで陰りのある美人で、夢二の代名詞的なモチーフです。この先にもこのスタイルの美人画が多く出てきます。

まず肉筆画の掛け軸があり夢二式の美人が3点程度並んでいます。とろっとした表情の美人たちで色っぽい独特の雰囲気があり、細部は大胆に描いてあったりします。さらにこの時期は絵葉書、雑誌、挿絵、装幀など様々な活動を行っていたようで、少し先には絵葉書やテキスタイルが並んでいました。素朴な感じもありつつアール・ヌーボー調のテキスタイルもあったかな。絵葉書に関しては苦学生時代の頃にも早稲田の絵葉書屋に野球の早慶戦を描いた肉筆絵葉書を売り込んで生活費を稼いでいたのだとか。展示品の中には何故か鎧兜を着たり大工の格好で野球する様子が描かれた絵葉書なんかもありますw  しかしやはり女性像の絵葉書が人気だったようで、芸者や海の女を描いたものがありました。ちょっと変わった所では戦時下の人々の生活を描いたものがあり興味を引きました。

その先には装幀の仕事が並んでいます。夢二は他著の装幀300冊、自著の装幀57冊に携わったそうで、これも多彩な作品となっています。原画の横に書き込みで「中央キル」とか指定もあって実際の使われ方の指示なんかも分かりました。

その後は「子供之友」や「コドモノクニ」といった子供向けの雑誌と挿絵が並んでいます。楽しげな子供を描いているのですが、中にはマティスの「ダンス」を模したような作品(手をつなご)なんかもあって、意外な印象を受けました。


<第3章 目で見る音楽>
続いては楽譜の表紙などのコーナーです。夢二はセノオ楽譜などの表紙を手がけていて、世界各国の様々なイメージを取り入れて描いています。ここには壁一面に楽譜の表紙が並んでいるのが圧巻で、これは今回の展示の見どころと言えそうです。題材は各楽曲の国や時代を考慮したものとなっていて、絵柄自体もそれに寄せているような感じでした。他にも「新小唄」や「中山晋平作曲全集」、童謡といった楽譜集なんかも並んでいます。

この先には画家としての夢二の側面を紹介するコーナーがあり、当時の個展に出品した作品もありました。「コーヒーと女」という作品では手を組んで肘をついた姿勢でコーヒーを飲む女性が簡素な輪郭と少ない色数で描かれ、大正時代の洒落た雰囲気がよく出ていました。また、「海辺風景」という作品では寂しげな風景が漂っていて、ちょっと夢二の作品にしては珍しい気がしました。他にも着物の女性が振り返る様子が描かれた作品では色白で儚い女性が色っぽく、これが一番良い作品に思えました(タイトルは「早春第一枝」だったかな。うろ覚え)

さらにその先には『婦人グラフ』の表紙が並んでいました。この雑誌はグラビア詩で彩色木版を使った高級誌だったそうで、夢二も人気挿絵画家の1人でした。


<第4章 出帆>
最後は昭和2(1927)年に都新聞で連載された『出帆(しゅっぱん)』という自伝小説についてのコーナーです。これは登場人物の名前は変えてありますが、夢二が愛した女性たちや事件などが綴られたもので、素朴なデッサンと共に思い出が語られます。 …と書くと何だか美しい思い出のようですが全く違いますw 出てくる人物がみんな畜生だらけで、特に夢二はとんでもなく酷いw どれも濃すぎて波乱しかないのですが、少し例を挙げると唯一の妻となった たまき が病気になった時、医者を迎えに行く!と貯金通帳を持って出ていき、そのまま東北に雪見に旅行しに行って年末に帰って来たとか、刃傷沙汰になって別れたとか… 後半はお花(お葉)という元モデルの女性の話が多いのですが、この人も中々パンチの効いた人物で、後に心労で倒れてたりもします。 そんな話を新聞に載せるのだから竹久夢二は凄いw 勿論、この連載は当時大きな話題になったそうで、夢二は連載後に海外へ旅立ったそうです。
この章には134点の原画と共にそうした女性関係の年表があるので、それを読むだけでも夢二の人物像が想像できると思いますw


ということで、非常にボリュームのある内容だったと思います。とは言え、私はやはり夢二の作風は好きにはなれないかな。 「出帆」の畜生エピソードは面白かったですがw ファンの方には新しい発見もあると思いますので、夢二好き向けの展示だと思います。



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創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.2 -1990年代、発行部数653万部の衝撃- 【森アーツセンターギャラリー】

1ヶ月以上前のゴールデンウィーク中に、六本木の森アーツセンターギャラリーで「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.2 -1990年代、発行部数653万部の衝撃-」を観てきました。

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【展覧名】
創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.2 -1990年代、発行部数653万部の衝撃-

【公式サイト】
 https://shonenjump-ten.com/

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅

【会期】2018年3月19日(月)~6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
割と空いていて快適に鑑賞することができました。以前のVol.1の時はやけに厳しい鑑賞ルールが煩わしかったですが、今回はそれが解消されてたように思います。
 参考記事:週刊少年ジャンプ展VOL.1 創刊~1980年代、伝説のはじまり (森アーツセンターギャラリー)

さて、今回のこの展示は週刊少年ジャンプの歴史を辿るもので3期に分かれて展示が行われています。今期はvol.2と位置づけられていて、最高の売上を記録した黄金期の90年代に連載された40程度のタイトルの原画などが展示されていました。簡単なメモだけ取ってきたので、会場の様子をさらっとご紹介していこうと思います。

まず最初に壁一面にジャンプの紙面が貼られた部屋があり、ここでしばらく待たされます。vol.1の時もそうでしたが、この先に映像があって入る人の人数を調整する感じです。 …とは言え、この日はガラ空きでしたw そして映像の部屋は2部構成となっていて、1部は90年代の漫画のコマを使ってスピード感のある紙芝居みたいな映像が流れます。(これもvol.1と同じ) 続いて2部はドラゴンボールのフリーザ戦で悟空が超サイヤ人になる辺りを同様の映像で流していました。この辺の映像は既存のものを切り貼りしただけなので、別に何とも思わないかな。それよりも当時の制作風景とかインタビューとか、もっと他に良い映像が無かったのかと疑問です。

その後は各漫画の原画が並んでいます。基本的には1作品につき3~5枚程度で、人気作は10~20枚くらいです。人気作は展示スペースも作品に合わせた壁紙になってたりします。 原画は割と見開きとかカラーの時の原画が多いかな。当時読んでいた人には見覚えのあるシーンばかりなので、往年のジャンプファンには嬉しい原画と言えます。一方でそれほど有名でない作品は原画の数が少な過ぎるのがちょっと残念ですが…。ここから先は有名作のコーナー別にいくつかご紹介します。

「DRAGON BALL」鳥山 明
ここはサイヤ人が襲来した頃からブウまでの原画が並んでいました。たまにカラーの原画もあって、この辺は当時みんな毎週楽しみにしていたのを思い出しました。まあ、最近でもアニメの再放送とかやってるんで身近な感じではありますがw 他には関連のグッズがあって、消しゴム(キン消しみたいな)や、スカウターの玩具、ゲームなども展示されていました。ドラゴンボールの格ゲーは友達が集まって徹夜で延々やったのを思い出して何とも懐かしいw 他にもカードダスなんかもありました。この辺のグッズは80年代のほうが盛り上がっていたような気がします。(全体的にグッズの揃えはvol.1の方が充実してたように思います)

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」秋本 治
今回のこち亀は派出所を壁紙で再現したようなブースとなっていました。アニメの歌なんかも流れて雰囲気を出そうとしていますが、割とチープな作りですw ここには100巻頃までの原画が並んでいて、何度も繰り返し読んでいた私には感慨深いものがあります。また、ここにも関連グッズがあって、超合金のフィギュア等もありました。これが造形がイマイチというか… こち亀好きとしては原画以外の部分はもっとどうにかなったろ!と言いたくなるような中途半端なブースでした。

「ジョジョの奇妙な冒険」荒木飛呂彦
今回のジョジョは3部終盤から5部の内容となっていて、カラー原画8点とキャラクターの切り抜きの壁画みたいなものがありました。原画が少ないのが非常に残念ですが、この夏に国立新美術館でジョジョ展をやるのでそちらに期待といったところでしょうか。

割と好きな作品の扱いが酷くてこの辺では逆に怒りが湧いてきました。
その先には「マジカルたるルートくん」や「ダイの大冒険」なんかのコーナーもありました。ダイの大冒険は見開きの原画やメンバーの必殺技の原画があったので、ここは結構楽しめたかな。他には4~5枚ずつ「ジャングルの王者ターちゃん」「花の慶次」「山田太一」「変態仮面」など懐かしい面々もありました。

「幽☆遊☆白書」冨樫義博
幽遊白書はレベルEと一緒に20枚くらいの原画があり、カラーも少しありました。暗黒武術会のシーンが多めかな。仙水編とか魔界編は1枚程度だったように思います。レベルEはカラーが2枚だけなのでおまけ程度です。 幽遊白書は暗黒武術会の辺りが最高に盛り上がった気がするのでこのチョイスは妥当かも。今観てもカッコいい作風で、これだけのクオリティでも昔は今ほど休載しなかったのになあなんて思いながら観ていました。(仙水辺りから怪しかったけどw) 他には2等身位の人形とか、ゲームなんかもありました。

その先には森田まさのり の「ろくでなしBLUES」12点と「ルーキーズ」5点のコーナーもありました。これは毎回飛ばしてた漫画なので思い入れはありませんw

「SLAM DUNK」井上雄彦
多分、今回最も原画が充実してたのはこのコーナーじゃないかな。20点ほどの原画が並び、名シーンとされる三井が安西先生に「バスケがしたいです」と言うシーンなんかもありました。見開きのダイナミックな原画もあって、湘北メンバーはそれぞれ4枚くらいずつあったと思います。カラーは3枚、大型ポスター5枚、山王戦の映像なんかもあります。この映像は残り試合時間47.5秒のシーンをコマで映すもので、結果を知っていてもこれは見入ってしまいました。今も色褪せない名シーンですね。

この先には「アウターゾーン」や「珍遊記」、「ボンボン坂高校演劇部」「忍空」といった人気作も3~4点ずつ並んでいました。アウターゾーンはもう一度読み返したいなあ。

そして、ここに1990年代のジャンプの歴史を世相と共に紹介していました。1994年に達成した653万部は積み重ねると富士山52体分、縦に並べると六本木ヒルズから沖縄の那覇市までの距離に匹敵するのだとか。もうこの先はこの記録を抜けそうもないので、当時の勢いの凄さが一層よく分かります。

ここは撮影可能でした。こちらが653万部の号。
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知らないのが3つくらいあるけど、流石といったメンツです。

「るろうに剣心」和月伸宏
最近作者がやらかして飛天御剣流書類送検とか言われていましたが、ちゃんと展示されてて良かったw(続編の再開だそうで何とか立ち直ったw) ここには部屋の中央の硝子板に「天翔龍閃」や「火産霊神」「牙突」「回天剣舞・六連」といった各キャラクターの必殺技の絵が並び、壁際に20点程度の原画が並んでいました。やはり志々雄編が一番多くて、人誅編は2~3点くらいかな。原画が多くて、動きを感じる絵を楽しめました。 他にカードダスとかもあったと思います。

この近くには梅澤春人の「BOY」「HARELUYA」のコーナーや、「地獄先生ぬ~べ~」6点程度もありました。

「すごいよマサルさん」うすた京介
ここは15点でした。ここではPENICILLINのロマンスが流れてて、この曲とこのアニメの絶妙な組み合わせが思い出されましたw メソのぬいぐるみとかボケステの雲とか、当時のギャグが蘇ってきた感じの品が置かれています。

この先にはキャプテン翼(ワールドユース編)、マキバオー、モンモンモン、封神演義、ラッキーマンなんかも4~8点程度ありました。

「遊☆戯☆王」高橋和希
ここも原画20点くらいだったかな。しかしここは原画だけでなく遊戯王のカードゲームのカードも並んでいて、むしろカードのほうが充実しているような気がします。 ちょっと何版とかまでは分かりませんが有名なカードが並んでいました。遊戯王もMTGみたいなカードゲーム中心になってからこんなに長生きするゲームになるとは当時は予想もしなかったw

その先は「王様はロバ」「真島クンすっとばす」「I's」「電影少女」「ワイルドハーフ」「テンテン」「ホイッスル」「ライジングインパクト」「明稜帝梧桐勢十郎」「MIND ASSASSIN」などが少しずつありました。この辺は読んでなかったので原画を観てもピンと来なかったw

こちらは出口付近の撮影コーナー。
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今回の展覧会に寄せた各漫画家のコメントなんかもありました。

そして最後に次回のVOL.3に先駆けて「世紀末リーダー伝 たけし!」「COOL RENTAL BODYGUARD」「ZOMBIEPOWDER.」「カラクリ」「ROMANCE DAWN」が紹介されていました。ROMANCE DAWNは尾田栄一郎の作品で、見た目はワンピースそのものです。同様にカラクリは岸本斉史の作品で「NARUTO」のプロトタイプ的な感じが出ていました。

ショップは相変わらずレジは1回のみというルールでした。


ということで、鑑賞ルールが改善されて快適になった一方で、原画以外の展示品や会場の装飾は前回よりもショボくなっていた感じがします。この内容でルーヴル展などの本格的な展示よりも高い2000円というのは如何なものかと思います。(記事化を後回しにしていたのもあまりお勧めできるものじゃない為です。) ジャンプ好きには往年の思い出が蘇って来るとは思いますが、あまり満足という程でもありませんでした。次回のvol.3は撮影可能な所も増えるようですが、思い入れが無いので行かないのは確実です。

おまけ:
今回も会場のすぐ近くでジャンプカフェをやっていました。
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西洋古版画にみる「複製」と「創作」 【町田市立国際版画美術館】

前々回・前回とご紹介した町田市立国際版画美術館の特別展示を観た後、常設室で 西洋古版画にみる「複製」と「創作」 というミニ企画展も観てきました。こちらは撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 西洋古版画にみる「複製」と「創作」

【公式サイト】
 http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2018-388

【会場】町田市立国際版画美術館
【最寄】町田駅

【会期】2018年4月11日(水)~6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて今回の展示は常設室の無料で観られるもので、原作がある作品を版画にした「複製版画」などが並んでいました。対になるのは「創作版画」で、レンブラントやデューラーのように自分で絵も版も作ったものですが、「複製版画」は原作の画家(過去の名品含む)・版画家・版元といった共同作業で作られたようです。複製とは言え独自の解釈もされることがあり、今回はそうした様子も垣間見られるような内容となっていました。先述の通り撮影可能となっていましたので、詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。

版刻:マルカントニオ・ライモンディ 原画:ラファエロ・サンティ? 「『美徳』より 賢明」
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理想的な均整の取れた裸婦像。腕の辺りに若干の硬さがあるようにも思えますが、優美な肉体をしています。ラファエロはいち早く版画の潜在能力に気づいて、自らの作品を版画にして弟子の育成にも活用したのだとか。

当時は何枚も作り出せる版画によって素描を普及させる役割が重視されたようです。版画によって他の作品に転用されたりアイディアが伝えられたり、手本になっていきました。

版刻:マルコ・デンテ 原画:バッチオ・バンディネッリ 「嬰児虐殺」
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かなり多くの人達が色々なポーズで描かれています。当時のイタリアでは人物表現の多様さや人数の豊富さも評価されたらしいので、この絵は素描の宝庫とも言えそう。あちこちで子供が死んでるのはキリストの身代わりになった子どもたちでしょうね。

模刻:ニコラ・ベアトリゼ 版元:アントニオ・ラフレリ 「嬰児虐殺」
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さっきのと同じやんけ!と思った方は私と同じ反応ですw それもそのはず、こちらは先程の模刻となっていて高度な間違い探しみたいになってます。しかしよく観るとこちらの方が陰影が強めになっているようでした。版画家が変わると同じ絵でも解釈が違うんですね。

版刻:ウーゴ・ダ・カルピ 原画:ラファエロ・サンティ 「ダヴィデとゴリアテ」
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こちらは元々はラファエロの版画を作っていたライモンディが線刻した複製版画があったようで、それを「キアロスクーロ(明暗)」という技法で翻案したものです。「キアロスクーロ」は16世紀初めにドイツで生まれた技法で、線を表す板(ラインブロック)と色面を表す板(トーンブロック)を使って刷られているようです。その名の通り明暗が強めで遠近感や立体感がよく表れているように思えます。 こうした「キアロスクーロ」は複数の版を高度が必要なので高価であると共に、美しさ・希少さからコレクターズアイテムにもなったのだとか。

版刻:ジョルジョ・ギージ 壁画:ミケランジェロ・ブオナロティ「『システィーナ礼拝堂天井画の預言者と巫女』より  預言者エゼキエル」
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エゼキエルはバビロン捕囚の頃の預言者で、これはシスティーナ礼拝堂の天井に描かれたものを版画化したものです。ここにはこうしたミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井壁画の部分画が並んでいて、版画だけで天井画を観て回れる感じ。現地に行けない人や、下から観るだけでは見えづらい場所も手軽に観ることができるので重宝されたようです。ちょうど現在のインターネット上で写真を共有するような感じだったんでしょうな。

版刻:不明(コルネリス・コルト?) 原画:ピーテル・ブリューゲル(父) 版元;ヒエロニムス・コック「『軍艦』より 二隻のガレー船と軍艦」
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ブリューゲル一家が得意とした船の絵を版画化したもの。ここで版元の名前もわざわざ入っていますが、このコックは当時の流行やピーテル・ブリューゲル(父)の才能を見抜いて版画を大ヒットさせた人です。今でこそブリューゲル一家の名前は西洋絵画史に燦然と輝いていますが、それを見出したコックは名プロデューサーと言ったところでしょうか。割と版画の歴史では蔦屋重三郎とか渡邊庄三郎のように時代を作るプロデューサー的な版元がいるものですね。
 参考記事:ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜 感想前編(東京都美術館)

版元:フィリップス・ハレ 原画:ヤン・ファン・デル・ストラート「『使徒行伝』より 天使によって牢から救い出される聖ペテロ」
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こちらは先程のコックの元で活動していた版画家のハレが自ら版元になって刊行して作った連作の1枚。画中に版元の名前のみならず版画家の銘まで入っているそうです。私が観てもどこに銘があるのか分かりませんでしたが、出来が良いだけに名前を残したかったのかも。

版刻:ヤン・サーンレダム 原画:ヘンドリク・ホルツィウス 「ホロフェルネスの首をもつユディット」
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敵将のホロフェルネスに酒を勧めて寝首をかいたユディットを描いた作品。下の方にサインみたいなのがあるのは神聖ローマ帝国の中でこの作品の版権が守られていることを示すそうで、さらなる複製を禁止しているようです。今で言う所の著作権みたいなものですね。かなり緻密な作品なので真似るのも容易じゃないと思いますがw

版刻:パウルス・ポンティウス 原画:ペーテル・パウル・ルーベンス 「十字架を担うキリスト」
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ルーベンスは自分が監督した版画を多く作っていますが、版画に力を入れた要因の1つに勝手に他人に粗雑な版画が作られたことがあった為のようです。こちらは本人監修だけあって肉体表現の見事さはまさにルーベンス作品そのものと言った感じです。 こうした版画家は1人ではなく何人かいるようでした。

今回の内容はこれくらいで、他に中央のガラスケース(撮影不可)で畦地梅太郎の作品が展示されていました。

こちらは浮世絵玉手箱というコーナーで、普段はカーテンで覆われていて観るときだけ開けて観る感じになっています。
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三代歌川豊国の古今名婦伝で、左から須磨松風、小野小町、清少納言です。それぞれ故事にちなんでいるようで、小野小町は草子を洗って自らの嫌疑を晴らす様子が描かれています。御簾を上げてドヤ顔の清少納言は「香炉峰の雪」からでしょうねw

最後に版画の技法を紹介するコーナーがありました。
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余談ですが、同時期に上野の森美術館で開催されているエッシャー展では様々な版画技法が使われている様子が紹介されているのですが、技法の詳細は解説が無いので何だか分からないと言っているお客さんが多くいました。これは分かりやすいのでこれを観ると一発で分かるはずw


というわけで、点数はそれほどない小展示ではありますが、版画の歴史や技法について様々な知識を得ることが出来る内容となっていました。これを無料で観られるのは中々凄いことだと思います。この企画展はもうすぐ終わってしまいますが、この美術館は名前の通り古今東西の版画に精通しているので、訪れると今後の美術鑑賞の参考になることが多いと思います。



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浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・(感想後編)【町田市立国際版画美術館】

前回に引き続き町田市立国際版画美術館の「浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・」についてです。前半は女性像と風景についてご紹介しましたが、今日は残りの3章~5章についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

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【展覧名】
 開館30周年記念
 浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・

【公式サイト】
 http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2018-380

【会場】町田市立国際版画美術館
【最寄】町田駅

【会期】2018年4月21日(土)~ 6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
後半にも各章に撮影可能な作品がありました。今回も写真を使いながらご紹介していこうと思います。


<第Ⅲ章 役者 ―歌舞伎から新派まで>
こちらは役者絵のコーナーです。役者絵は江戸時代から人気のジャンルですが、この時代は歌舞伎だけでなく新派の役者なども描かれているようでした。

203 山村耕花(豊成) 「四世尾上松助の蝙蝠安」
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ほっぺたにコウモリ型のあざがあるのが特徴で、やや伏目がちに描かれています。脇役の名人だった役者だそうで、主役のような華やかさは無いですが個性が感じられる作品です。

204 山村耕花(豊成) 「七世松本幸四郎の関守関兵衛」
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こちらは七世松本幸四郎の役者絵。目が飛び出しそうなくらい見得を切っていて、ちょっとユーモラスにすら思えます。特徴を誇張したような表現が面白い。

211 山村耕花(豊成) 「梨園の華 十三世守田勘彌のジャン・バルジャン」
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こちらは名前から察するにレ・ミゼラブルのジャン・バルジャンを演じているのかな。凄く悪そうなので囚人時代でしょうかw 鬼気迫る印象を受けました。
 参考記事:映画「レ・ミゼラブル」(ネタバレなし)

223 名取春仙 「創作版画春仙似顔絵集 五世中村歌右衛門 淀君」
こちらは女形の役者の大首絵みたいな作品で、目の周りに赤い化粧をして口角を上げてニヤっとした表情をしています。妖艶で何処と無く悪巧みしているような顔が中々インパクトがあって目を引きました。淀君の役だからこういう雰囲気なのかも。

224 名取春仙 「新派似顔絵集 大河内傳次郎 丹下左膳」
こちらは片目は古い刀傷で閉じている、剣客らしき姿の役者絵です。もう一方の目は睨みつけるような鋭い眼光で、刀に手をかけて今にも抜きそうな感じです。緊張感があり、中々カッコいい風貌となっていました。

この近くには写楽のような画風の吉川観方の作品などもありました。


<第Ⅳ章 花鳥 ―求められる伝統性とその変容>
続いては花鳥をモチーフにしたコーナーです。ここには様々な草花や鳥などの動物が描かれた版画が並んでいました。

234 小原古邨(祥邨) 「五位鷺」
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夜の静けさが漂う情感たっぷりの作品。月で影が水面に写っている様子など神秘的な光景です。

237 小原古邨(祥邨) 「水に映る月をつかむ親子猿」
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水に映る月を捕まえようとする猿は「猿猴捉月」という題材で割とポピュラーですが、ここでは親子で手を繋いで仲が良さそうな印象を受けます。簡潔に毛の質感を出しているのも見事。

241 高橋松亭(弘明) 「堀きり花菖蒲」
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こちらは撮影できなかったので外にあった看板です。タイトル通り堀切の菖蒲を描いていて、手前の花が大胆な構図です。背景には菖蒲を鑑賞したり小屋で休んでいる人の姿もあって、楽しげな光景でした。

247 吉田博 「動物園 於ほばたん あうむ」
こちらは写実的に描かれたややピンクがかった白のオウムの像です。羽の模様を彫り跡みたいに白い輪郭で表していて、面白い効果を生んでいます。背景には荒いバレンの跡が黒っぽく渦まいていて、オウムの白さを際立たせているように思いました。
 参考記事:
  生誕140年 吉田博展 山と水の風景 (東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館) 

この近くにあった土屋光逸の鳥を描いたシリーズも情感豊かで見事でした。


<第Ⅴ章 自由なる創作 ―さまざまな画題と表現>
最後はその他の題材の作品のコーナーです。ここは色々な画題がありますが、当時の風俗を知ることができるような作品が多かったように思います。

260 ヘレン・ハイド 「かたこと」
こちらは着物の女性が赤子をあやしている様子が描かれていて、背景には藤と菖蒲が描かれた襖絵があるなど豪華な部屋で 大名のような有力な家の母子だと思われます。抑えがちな色彩で、着物にはうっすらとしたグラデーションがついているなど繊細な表現となっているのが特徴です。作者はアメリカ出身の版画家で、フェノロサの勧めで木版画を制作するようになったようです。この作品はシアトルの展覧会で金賞を取ったり、パリのサロンでも入賞したのだとか。

この辺は他にも来日した外国人による版画が並んでいました。

269 古屋台軒 「越後獅子」
こちらは雪の降る街の中を2人の越後獅子という軽業の芸人がトボトボと歩いている様子が描かれています。この2人は親子らしいですが、他に道には誰もおらず、背景の家々の明かりが逆に物悲しい雰囲気となっていました。芸人の悲哀みたいなものを感じます。

272 山村耕花 「踊り 上海ニューカルトン所見」
こちらは社交ダンスしている複数ペアの男女たちと、手前でテーブルに座ってそれを観ている2人の貴婦人が描かれています。孔雀の扇子に赤い羽根帽子というエレガントな装いで上流階級の女性かな。この施設は上海にありダンスホールや映画、レストランなどもあったそうで、非常に華やかな雰囲気です。 描写も鮮やかな色彩とアールデコ調の筆致が 垢抜けた都会的な作風となっていました。

この近くには竹久夢二の作品なんかもありました。

281 小早川清 「ダンサー(レヴュー)」
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こちらは今回の中でも見どころの作品。これを観てマトリックス避けだ!と思ったのは私だけではないはずw 躍動感溢れるポーズが踊りの特徴を凝縮したような感じで、惹きつける魅力がありました。

282 小早川清 「舞踊」
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こちらも軽やかに舞う様子で、ちょっと変わったポーズをしています。黒地に赤い服と白い肌が映えて動きが強く感じられます。

294 上村松園 「大近松全集 第12巻 「雪女五枚羽子板」の雪女」
こちらは横向きの全身真っ白な雪女を描いた作品で、手には刀を持っています。口を半開きにして幽霊のように立っている姿は何とも恐ろしげです。一方では か細い印象もあって、中々印象深い作品でした。

296 橘小夢 「唐人お吉」
こちらはアメリカの旗をなびかせる黒船を背景に、赤い着物の女性が描かれた作品です。これは下田の唐人お吉の話を元にしたもので、話の上では唐人お吉は日本の犠牲になったような同情すべき人なのですが、ここではニヤッと笑って上目遣いの妖艶な女性として描かれています。まあ橘小夢の女性は妖艶になりがちですがw 独特の色香が漂う作品となっていました。

299 小村雪岱 「初雪〔雪兎〕」
こちらは傘を差した女性がしゃがんで雪うさぎを手に取っている様子が描かれた作品です。周りは雪が降っていて、1人ぽつんとした感じでちょっと寂しいようにも思えますが、可憐な姿となっていました。
 参考記事:小村雪岱とその時代 (埼玉県立近代美術館)


ということで、後半も斬新な作品が多くて楽しめました。かなり満足できたので図録も購入して、観られなかった前期日程の作品も楽しんでいます。この記事を書いている時点で会期が残り1週間しかありませんが、お勧めの展示です。


おまけ:
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1階に今回の展示のスタンプがありました。吹き出し部分は空白で、自分で台詞を書くことができるようになっているのですが、奥さんからこの2枚を渡されましたw 早めに観てカフェに行くと約束したのに回るのが遅かったので恨まれましたw 点数が多くて2時間半もかかってしまった。



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浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・(感想前編)【町田市立国際版画美術館】

日付が変わって昨日となりましたが、土曜日に町田の町田市立国際版画美術館で「浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・」を観てきました。こちらは非常に点数が多く充実した内容となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、各章で撮影可能な作品もありましたので、写真も使って参ります。(色々ネタが溜まっていますが、会期末が迫っているので先に記事にしておきます)

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【展覧名】
 開館30周年記念
 浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・

【公式サイト】
 http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2018-380

【会場】町田市立国際版画美術館
【最寄】町田駅

【会期】2018年4月21日(土)~ 6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていましたが、自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は「浮世絵モダーン」というタイトルで、浮世絵版画の復興を目指して作られた「新版画」の名品が集まる内容となっています。新版画は大正初期から昭和10年代まで制作・出版された版画で、今回の展示でも「新版画運動」を提唱した渡邊庄三郎(版元)に関係する画家の作品などが多めだったかな。220点近くもあり 題材ごとに章分けされていますので、各章ごとに気に入った作品と共に振り返っていこうと思います。
 参考記事:
  馬込時代の川瀬巴水 (大田区立郷土博物館)
  伊東深水-時代の目撃者 (平塚市美術館)
  生誕140年 吉田博展 山と水の風景 (東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館) 


<第Ⅰ章 女性 ―近代美人画の諸相>
まず最初は女性を描いた版画が並ぶコーナーです。近代の美人画だけあって、洋画からの影響も感じさせる作品もありました。なお、撮影可能だった作品は写真を使っております。

5 フリッツ・カペラリ 「黒猫を抱く女」
こちらは無地の屏風の前で黒猫を抱いてしゃがんでいる女性が描かれています。上半身は裸で、下半身には赤い着物?を履いているようです。後ろの屏風は左端辺りはさらに後ろの部屋が見えていて、女性位置も合わせて不思議な空間構成となっています。何故 裸で黒猫を抱いているのかも不明で、描写も含めてミステリアスな雰囲気がありました。日本風のような西洋風のような独特の画風です。なお、この作者はオーストリア生まれの版画家で、1911年に来日して1915年に渡邊庄三郎と出会い木版画制作に取り組むようになったそうです。最低でも15点は制作されたことが分かっているのだとか。

8 橋口五葉 「浴場の女」
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『吾輩は猫である』の装丁も手がけた橋口五葉の裸婦像で、渡邊庄三郎の元で作った新版画での第1作目です。しかし橋口五葉は出来に満足しなかったそうで、貰った50部を焼いてしまい渡邊庄三郎との仕事もこれ1作で終わったのだとか。ちょっと体の線が硬いようにも思えますが良い出来だと思うんですけどねえ。

12 橋口五葉 「髪梳ける女」
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こちらは橋口五葉の版画の代表作。雲母引を背景に、清らかな女性が髪を整える姿が何度も可憐です。

16 伊東深水 「対鏡」
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こちらは撮影不可でしたが、代わりにポスターの写真です。試筆として作られた作品で、赤い長襦袢と白い肌・黒い髪の対比的な色合いが艶っぽい印象です。この長襦袢は3~4回も摺りを重ねているようです。また、この写真では分かりませんが、背景はバレンの丸い摺り目をつけて渦巻くような模様のようなものもあって、斬新さも感じました。

この背景の渦巻くような技法は近くにあった「浴後」や「春」などでも使われていました。

21 伊東深水 「伊達巻の女」
こちらは鏡の前で後ろ髪を整えて座っているピンク色の着物の女性で、うつむいた後ろ姿で顔は見えませんが、優美な雰囲気が漂います。着物のひだ等を細い輪郭線で表現したり、うなじ辺りは細い線で緻密に表現するなど、細部まで清廉な感じがしました。

25 伊東深水 「新美人十二姿 涼み」
こちらは橋の欄干に肘をついて川を観ている黒い浴衣の女性の後ろ姿を描いた作品です。帯は白地に青の輪郭で籠のような縞模様となっていて爽やかな雰囲気があります。顔は見えませんが、白い肌と佇む様子は絶対に美人だと予感させますw 夏の風情もあって素晴らしい作品でした。

この辺には同じく「新美人十二姿」が5点くらい並んでいました。1922年に予約会員200名に向けて頒布されたシリーズで、毎月1枚制作されたのだとか。

38 伊東深水 「現代美人集第二輯 吹雪」
こちらは吹雪の中を傘をさして歩く着物の女性を描いたもので、雪は着物にまで付いていて結構な勢いの吹雪ようです。ポーズも動きを感じさせるような感じが面白く、寒そうな雰囲気も出ていますがそれでも優美さが目を引きました。着物の色の取り合わせなども鮮やかでした。

この近くには画壇の悪魔派と呼ばれた北野恒富による妖艶な美女の作品などもありました。

39 山川秀峰 「婦女四題 秋」
こちらはショートカットのような髪型(耳の所で髪を束ねた変わった髪型)をした着物の女性を描いた作品で、着物の1枚にはハートやダイヤ、クラブといった模様があってモダンな印象を受けます。紅色の衣も非常にエレガントで、昭和初期の華麗なファッションと共に楽しめる1枚でした。

49 小早川清 「近代時世粧ノ内 六 口紅」
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鏑木清方 門下の日本画家による作品。ちょっと気の強そうな強い目をした女性の化粧の様子が艶やかです。特に指先に色気を感じました。

57 高橋松亭(弘明) 「裸婦と黒猫」
膝を崩して座る裸婦が手ぬぐいを持っていて、それを黒猫がじっと見ている様子が描かれています。背景は真っ赤で、白い肌と黒い猫が引き立って見えるかな。顔は浮世絵風なのですが、西洋画のような雰囲気があり、主題と相まって妖艶な女性像となっていました。

65 吉田博 「鏡之前」
こちらは裸で鏡に向かい合って化粧をしている女性が描かれています。吉田博にしては珍しい人物画じゃないかな。輪郭と明暗を上手く使って立体感を出しているので、洋画的な雰囲気がよく出ています。まあ、それが魅力的かどうかは別の問題ではありますがw ムラのある背景にも奥行きを感じさせました。

71 梅原龍三郎 「裸婦十題 座裸婦」
こちらは真っ赤を背景に緑の椅子に座る裸婦を描いた作品です。右後ろには花束も置かれていて、梅原っぽいモチーフが揃っている感じかな。黒く太い輪郭線が使われて力強い生命感のようなものが感じられました。先生のルノワールよりはマティス的な作風にも思えます。

この隣には安井曾太郎の版画作品もありました。


<第Ⅱ章 風景 ―名所絵を超えて>
続いては風景画のコーナーで、こちらは川瀬巴水が特に良かったです。戦時中に作られた戦争画とも呼べる外地の風景画なんかもありました。

78 坂本繁二郎 「日本風景版画 第六集 筑紫之部 神の湊 玄界灘を遠望」
こちらは 」の字のような形の砂浜と海を描いた作品で、遠くには岩も見えています。非常に単純化されてすっきりした画面構成になっているのが面白いです。坂本繁二郎がこんなに爽やかな作品を出していたのかとちょっと意外でした。

この近くにはつい先日観たばかりの伊東深水の「夜の池之端」もありました。
 参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2018年05月)

94 伊東深水 「近江八景 堅田浮御堂」
こちらは水辺に建っている小さなお堂に雪が降り積もっている様子が描かれています。木々や渡り廊下の欄干なども真っ白で、雪の日の静けさまで感じられそうです。空はやや暗く、しんみりと寂しさを感じました。

108 川瀬巴水 「東京十二題 大根がし」
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青物問屋の活気と川沿いの生活感が出ていて非常に風情があります。昔の東京の趣は情緒豊かで それだけ好みですw

109 川瀬巴水 「東京十二題 深川上の橋」
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川瀬巴水の魅力の1つにグラデーションの美しさがあるのではないかと思います。橋の下に舟が収まる構図も遊び心があって面白い。

126 吉田博 「牧場の午後」
こちらは4頭の牛が牧場を歩いている様子が描かれたもので、それぞれ色も模様も異なる牛です。空には輝くような雲があり、午後ののんびりした風景となっています。結構写実的にも思えますが、しっかり叙情性もあるのが吉田博の魅力じゃないかな。解説によると、1921年の「板画展」で伊東深水や川瀬巴水の作品は3~5円程度売られたようですが、吉田博は20円もしたのだとか。洋画家のほうが格上扱いだったのかもしれませんね。

150~152 吉田博 「瀬戸内海集 帆船 朝・午後・夕」
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こちらは以前の吉田博 展でも観られた色を変えて異なる時間を表したもの。透明感があり、特に夕方の色使いが好みです。並べて観られるので色による印象の違いもよく分かりました。

160 吉田博 「インドと東南アジア フワテプールシクリ」
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こちらはインド外遊中に観た光景を版画にしたもの。異国情緒溢れる1枚です。

168 土屋光逸 「東京風景 四ツ谷荒木横町」
こちらは建物の玄関に2人の芸姑が立っている様子を描いたもので置屋の様子かな。夜の光景となっていて、周りは暗いのですが建物から漏れる明かりが非常に強く感じられます。2階の障子には女性の人影もあって風情があり、どことなく川瀬巴水と似た作風に思いました。しかし巴水に比べると明暗がくっきりしているのが特徴と言えるかも。

この近くにあった石渡江逸(東江、庄一郎)の「夜の浅草」も幻想的で好みの作品でした。

179 伊東深水 「ジャワ ジャカルタ郊外」
こちらはジャカルタの街を描いた作品で、手前にスカーフを被った2人の女性がいます。奥には沢山の人たちがいて活気があり、明るい色彩からは強い光も感じられます。伊東深水は海軍報道班員としてこの地に派遣されたことがあったようで、その時の写生を元に版画にしたようです。よく観る伊東深水の作風よりもデフォルメされた感じにも思いますが、中々興味深い作品でした。

183 川瀬巴水 「かちどき」
こちらは廃墟のような城壁の上で日の丸の旗を降って両手を挙げる日本兵たちを描いた作品です。日本兵の手には銃剣があって、今しがた戦いに勝利したような光景ですが、実際に巴水はこの光景を観たわけではなく写真を元に描いたようです。巴水も戦争画を描いていたのは結構意外ですが、まあ夕暮れの色合いだけは巴水っぽさがあるかな。評論家も「これは芸術的とは言えない、巴水と戦争はあまりにも違った世界」と評しているようで、確かにその通りに思いました。逆に巴水を知る上で貴重な作品とも言えそうです。


ということで、前半からかなり濃密な内容となっていました。本当に新版画の美味しい所を詰め合わせにしたような感じで、大正の頃のモダンな雰囲気と相まって非常に満足度の高い版画ばかりです。後半もまだまだ見どころがありましたので、次回は残りの3~5章をご紹介の予定です。

→ 後半はこちら



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