Archive | 2018年06月
前回に引き続き国立西洋美術館の「ミケランジェロと理想の身体」 についてです。前半は1章についてご紹介しましたが、今日は残りの2~3章についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
前編はこちら

【展覧名】
ミケランジェロと理想の身体
【公式サイト】
http://michelangelo2018.jp/index.html
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018michelangelo.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2018年6月19日(火)~2018年9月24日(月・休)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
1章では古代ギリシャからルネサンス期への影響についてでしたが、2~3章はミケランジェに関する品が並んでいました。ミケランジェロ自身は自分を彫刻家と考えていたようで、その真骨頂とも言える彫刻2体を観ることができます。
<II ミケランジェロと男性美の理想>
2章は今回の目玉となる作品があるコーナーです。ミケランジェロは古代の美術から霊感を得て年齢に応じた肉体を分析し、自身の美の理想に従って新たな身体表現を作っていったようです。ここにはミケランジェロの作品と共にミケランジェロに影響を与えた作品(特にラオコーン)、ミケランジェロ作品を模したものなどが並んでいました
51 ミケランジェロ周辺の芸術家(ザッカリーア・ダ・ヴォルテッラ?)「磔にされた罪人」 1550年頃
こちらはキリストと共に磔刑にされた罪人の1人を表した像で、身をよじって膝を曲げた姿で表されています。割と筋肉質で見事な造形で、ミケランジェロのピエタ像のキリストに似ていると考えられているようです。キリストの磔刑の際には善い罪人と悪い罪人も同時に処刑されたのですが、これは右のキリストを観るような視線となっているので善い罪人の方と考えられるようでした。小さいけれども見事な作品です。
この先は下階の展示となります。下階は3点のみとなっていました。
48 ミケランジェロ・ブオナローティ 「ダヴィデ=アポロ」 1530年頃 ★こちらで観られます
こちらが今回のメインとなる作品の1つです。タイトルがダヴィデとアポロが合わさっているような名前になっているのはこの像が未完に終わった為で、いずれかを決定づける持ち物が作られなかったようです。未完の為かざらついた表面でノミの跡などが残っているのが逆に力強さを感じるかな。足元で球体を踏んでいるのはダヴィデが倒したゴリアテの首となるべきだったものでしょうか。一方、左手は右肩に回しているので背中の矢筒に手を掛けているようにも見えて、その場合はアポロと言えそうです。いずれにせよ体を捻って動きを出す表現はここまで観てきたギリシャ彫刻からの影響を感じさせます。また、この作品を作る経緯があったのですが、ミケランジェロは神聖ローマ帝国と教皇軍に逆らってフィレンツェの独立を守ろうとしたものの、フィレンツェは敗北して仲間たちは処刑されたようです。その際、連合軍の司令官バッチョ・ヴァローリのご機嫌を取る為に作られたのがこの作品でした。しかし作成途中で教皇にシスティーナ礼拝堂の壁画の仕事を命じられた為、完成することはなかったそうです。今となっては未完の大作と言えそうですが、それだけに想像をかきたてるミステリアスな作品に思えました。本当に見事な彫刻です。
49 ミケランジェロ・ブオナローティ 「若き洗礼者ヨハネ」 1495-96年 ★こちらで観られます
こちらはミケランジェロが20歳の頃に作った洗礼者ヨハネの像です。普通、洗礼者ヨハネは(幼子イエスと共に)幼児の姿で表されるか、イエス・キリストに洗礼を施した青年の頃の姿で表されるのですが、これは少年時代の姿という前例の無い年頃で表されています。ラクダの皮衣を着た筋肉質な姿ですが、5~6等身くらいで子供らしい所もあるかな。やや足を曲げるコントラポストのような姿勢は前編でご紹介したギリシャからの影響かもしれません。顔は理知的で既に預言者としての風格が漂い始めていました。よく観ると顔が黒ずんだ部分と白い部分に分かれていてブラックジャックみたいな顔になっていますが、これはこの像がバラバラに破壊された為のようです。1936年の夏にスペイン共和国軍が破壊し、14個の破片となってしまったそうで、2010~2013年にようやく修復されたようです。オリジナル部分は40%程度で、保管部分はマグネットで接合して今後オリジナルが見つかった場合には差し替え可能なように作られているのだとか。若き頃のミケランジェロの傑作が破壊されてしまったのは残念ですが、修復された像でも十分に非凡な才能を持った20歳だったことが伺えました。
50 ベネデット・ダ・ロヴェッツァーノ(ベネデット・グラッツィーニ) 「若き洗礼者ヨハネ」 1492-93年頃
こちらはかつてミケランジェロの作品と考えられてきた彫刻です。タイトルが先程のミケランジェロの作品と同じになっていますが、若いヨハネ像を作ったという記録が残っていたことから、この作品がそうではないかと考えられたという経緯のようです。胸に手を当てた青年の姿で、ほっそりしていて華奢な印象を受けるかな。やや口を開けて誰かと対話するように見えました。こちらの像もよく出来ていますが、ミケランジェロの作品とはイメージが違うように思えました。(方向性が違うというか…)
下階はここまでで、上階に戻ります。ここにあったラオコーンだけは撮影可能となっていました。
58 ヴィンチェンツォ・デ・ロッシ 「ラオコーン」 1584年頃 ★こちらで観られます

こちらは1506年にローマ皇帝ティトゥスの浴場跡から見つかった彫刻を模した作品の1つです。この彫刻の発見は当時大きな話題となり、ミケランジェロも発掘に立ち会うなどその名声はまたたく間に広まりレプリカや版画が作られました(バッチョ・バンディネッリの模刻などが評価が高かったようです) 観ての通りダイナミックなポーズで苦悶の表情も見事です。筋肉の付き方も理想的で力強さと共に気品も感じられます。
こちらは裏から見た様子

表に比べると地味ですが、ちゃんと肋や背筋なんかもついていました。なお、このラオコーンはトロイの木馬を市内に入れる止めようとした人物で、弓矢で馬を射たところ 海から2匹の蛇が表れて2人の息子と共に絞め殺されてしまったそうです。この彫刻はそのシーンを劇的に表わしているんですね。 ラオコーンが絞め殺されたのを観たトロイ人たちは神の罰を受けたと考えて木馬を市内に引き入れたらしいので、トロイの命運が決まってしまったシーンとも言えそうでした。
この近くにあったラオコーンと共にヴァチカン宮殿のベルヴェデーレの中庭に置かれた「裸体の男性」と「ベルヴェデーレのアポロン」も非常に見事でした。特に「ベルヴェデーレのアポロン」はミケランジェロもダヴィデ像を作る際に影響を受けているようで、優美な姿となっています。
<III 伝説上のミケランジェロ>
最後はミケランジェロについての伝記などについてのコーナーで、ここは短めです。ミケランジェロは生前から既に神話的な存在としてヴァザーリやコンディーヴィの伝聞によって広く知られていました。肖像の多くは本人を目の前にして描かれた2枚の絵を手本に作られたそうで、今でもその姿を知ることができます。また、後の時代になるとミケランジェロの肖像を彼の作品や有名なエピソードになぞらえて描くものも現れたようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
参考記事:
レオナルド×ミケランジェロ展 (三菱一号館美術館)
ミケランジェロ展―天才の軌跡 感想前編(国立西洋美術館)
ミケランジェロ展―天才の軌跡 感想後編(国立西洋美術館)
59 ジョルジョ・ヴァザーリ 「『偉人ミケランジェロ・ブオナローティ伝:アレッツォの画家兼建築家ジョルジョ・ヴァザーリ殿著。またアカデミア・デル・ディゼーニョにより彼のためにフィレンツェで執り行われた壮麗な葬儀について』」 第2版、ジュンティ版、1568年刊
こちらはミケランジェロの伝記で、ミケランジェロの肖像も描かれています。もじゃもじゃの髪と髭で、眼光が鋭くて頑固そうな雰囲気は我々現代人にもよく知られているところです。ルネサンス期の芸術家の様子はこのヴァザーリの著書によって伝わっている部分が多いと思われますが、ミケランジェロはどうも納得していなかったようで、弟子のアスカニオ・コンディーヴィに命じて『フィレンツェの画家、彫刻家、建築家そして貴紳、ミケランジェロ・ブオナローティ伝』を作らせたようです(隣に展示されています) そちらはこのヴァザーリの本への批判的な回答とも言えるそうで、そのエピソードも含めてミケランジェロの人柄が分かる気がしますw 若い男に入れ込んでた話とかは載ってるんでしょうかね??
62 パッシニャーノ(ドメニコ・クレスティ) 「ミケランジェロの肖像」 17世紀初頭 ★こちらで観られます
こちらは黒い衣を着てパレットと絵筆を持ったミケランジェロの肖像です。結構若くて微笑むような感じに見えるかな。背景にサン・ピエトロ大聖堂、手前には人体彫刻が置かれていて、それぞれ画家・建築家・彫刻家として3芸術に秀でていた事を示しているようです。石工の息子であったミケランジェロは自分を彫刻家と言っていたそうで、システィーナ礼拝堂の仕事も本業ではないと考えていたのだとか。これだけ観ると柔和な画家みたいに見えましたw
この近くには胸像やメダルなどもありました。
67 アドリアーノ・チェチョーニ 「モーセ像を制作するミケランジェロ」 1879-80年
こちらはミケランジェロが膝に小さなモーセ像を置き 両手で抑えてじっと観ている様子が表されたテラコッタ像です。眉間にシワを寄せて厳しい表情をしていて、ある意味イメージ通りな感じがります。ミケランジェロの偉業が後世にも伝わって敬意を持って肖像が作られたことが伺えました。
展覧会の最後にはミケランジェロの墓地が描かれた作品もありました。実はミケランジェロは最初は没したローマに埋葬されたようですが、死後に甥によって亡骸を盗み出され、改めてフィレンツェに埋葬されたそうです。ちょっと乱暴ですがフィレンツェを愛した人だけに納得かな。
ということで、やはりミケランジェロの2点とラオコーン像は非常に素晴らしかったと思います。この3つを観られただけでも行った甲斐があったかな。(後半に関しては満足度5点にしても良かったかも) 日本でミケランジェロ作品を観られるのは貴重な機会ですので、彫刻好きの方は是非足を運ばれてみてはと思います。
前編はこちら

【展覧名】
ミケランジェロと理想の身体
【公式サイト】
http://michelangelo2018.jp/index.html
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018michelangelo.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2018年6月19日(火)~2018年9月24日(月・休)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
1章では古代ギリシャからルネサンス期への影響についてでしたが、2~3章はミケランジェに関する品が並んでいました。ミケランジェロ自身は自分を彫刻家と考えていたようで、その真骨頂とも言える彫刻2体を観ることができます。
<II ミケランジェロと男性美の理想>
2章は今回の目玉となる作品があるコーナーです。ミケランジェロは古代の美術から霊感を得て年齢に応じた肉体を分析し、自身の美の理想に従って新たな身体表現を作っていったようです。ここにはミケランジェロの作品と共にミケランジェロに影響を与えた作品(特にラオコーン)、ミケランジェロ作品を模したものなどが並んでいました
51 ミケランジェロ周辺の芸術家(ザッカリーア・ダ・ヴォルテッラ?)「磔にされた罪人」 1550年頃
こちらはキリストと共に磔刑にされた罪人の1人を表した像で、身をよじって膝を曲げた姿で表されています。割と筋肉質で見事な造形で、ミケランジェロのピエタ像のキリストに似ていると考えられているようです。キリストの磔刑の際には善い罪人と悪い罪人も同時に処刑されたのですが、これは右のキリストを観るような視線となっているので善い罪人の方と考えられるようでした。小さいけれども見事な作品です。
この先は下階の展示となります。下階は3点のみとなっていました。
48 ミケランジェロ・ブオナローティ 「ダヴィデ=アポロ」 1530年頃 ★こちらで観られます
こちらが今回のメインとなる作品の1つです。タイトルがダヴィデとアポロが合わさっているような名前になっているのはこの像が未完に終わった為で、いずれかを決定づける持ち物が作られなかったようです。未完の為かざらついた表面でノミの跡などが残っているのが逆に力強さを感じるかな。足元で球体を踏んでいるのはダヴィデが倒したゴリアテの首となるべきだったものでしょうか。一方、左手は右肩に回しているので背中の矢筒に手を掛けているようにも見えて、その場合はアポロと言えそうです。いずれにせよ体を捻って動きを出す表現はここまで観てきたギリシャ彫刻からの影響を感じさせます。また、この作品を作る経緯があったのですが、ミケランジェロは神聖ローマ帝国と教皇軍に逆らってフィレンツェの独立を守ろうとしたものの、フィレンツェは敗北して仲間たちは処刑されたようです。その際、連合軍の司令官バッチョ・ヴァローリのご機嫌を取る為に作られたのがこの作品でした。しかし作成途中で教皇にシスティーナ礼拝堂の壁画の仕事を命じられた為、完成することはなかったそうです。今となっては未完の大作と言えそうですが、それだけに想像をかきたてるミステリアスな作品に思えました。本当に見事な彫刻です。
49 ミケランジェロ・ブオナローティ 「若き洗礼者ヨハネ」 1495-96年 ★こちらで観られます
こちらはミケランジェロが20歳の頃に作った洗礼者ヨハネの像です。普通、洗礼者ヨハネは(幼子イエスと共に)幼児の姿で表されるか、イエス・キリストに洗礼を施した青年の頃の姿で表されるのですが、これは少年時代の姿という前例の無い年頃で表されています。ラクダの皮衣を着た筋肉質な姿ですが、5~6等身くらいで子供らしい所もあるかな。やや足を曲げるコントラポストのような姿勢は前編でご紹介したギリシャからの影響かもしれません。顔は理知的で既に預言者としての風格が漂い始めていました。よく観ると顔が黒ずんだ部分と白い部分に分かれていてブラックジャックみたいな顔になっていますが、これはこの像がバラバラに破壊された為のようです。1936年の夏にスペイン共和国軍が破壊し、14個の破片となってしまったそうで、2010~2013年にようやく修復されたようです。オリジナル部分は40%程度で、保管部分はマグネットで接合して今後オリジナルが見つかった場合には差し替え可能なように作られているのだとか。若き頃のミケランジェロの傑作が破壊されてしまったのは残念ですが、修復された像でも十分に非凡な才能を持った20歳だったことが伺えました。
50 ベネデット・ダ・ロヴェッツァーノ(ベネデット・グラッツィーニ) 「若き洗礼者ヨハネ」 1492-93年頃
こちらはかつてミケランジェロの作品と考えられてきた彫刻です。タイトルが先程のミケランジェロの作品と同じになっていますが、若いヨハネ像を作ったという記録が残っていたことから、この作品がそうではないかと考えられたという経緯のようです。胸に手を当てた青年の姿で、ほっそりしていて華奢な印象を受けるかな。やや口を開けて誰かと対話するように見えました。こちらの像もよく出来ていますが、ミケランジェロの作品とはイメージが違うように思えました。(方向性が違うというか…)
下階はここまでで、上階に戻ります。ここにあったラオコーンだけは撮影可能となっていました。
58 ヴィンチェンツォ・デ・ロッシ 「ラオコーン」 1584年頃 ★こちらで観られます

こちらは1506年にローマ皇帝ティトゥスの浴場跡から見つかった彫刻を模した作品の1つです。この彫刻の発見は当時大きな話題となり、ミケランジェロも発掘に立ち会うなどその名声はまたたく間に広まりレプリカや版画が作られました(バッチョ・バンディネッリの模刻などが評価が高かったようです) 観ての通りダイナミックなポーズで苦悶の表情も見事です。筋肉の付き方も理想的で力強さと共に気品も感じられます。
こちらは裏から見た様子

表に比べると地味ですが、ちゃんと肋や背筋なんかもついていました。なお、このラオコーンはトロイの木馬を市内に入れる止めようとした人物で、弓矢で馬を射たところ 海から2匹の蛇が表れて2人の息子と共に絞め殺されてしまったそうです。この彫刻はそのシーンを劇的に表わしているんですね。 ラオコーンが絞め殺されたのを観たトロイ人たちは神の罰を受けたと考えて木馬を市内に引き入れたらしいので、トロイの命運が決まってしまったシーンとも言えそうでした。
この近くにあったラオコーンと共にヴァチカン宮殿のベルヴェデーレの中庭に置かれた「裸体の男性」と「ベルヴェデーレのアポロン」も非常に見事でした。特に「ベルヴェデーレのアポロン」はミケランジェロもダヴィデ像を作る際に影響を受けているようで、優美な姿となっています。
<III 伝説上のミケランジェロ>
最後はミケランジェロについての伝記などについてのコーナーで、ここは短めです。ミケランジェロは生前から既に神話的な存在としてヴァザーリやコンディーヴィの伝聞によって広く知られていました。肖像の多くは本人を目の前にして描かれた2枚の絵を手本に作られたそうで、今でもその姿を知ることができます。また、後の時代になるとミケランジェロの肖像を彼の作品や有名なエピソードになぞらえて描くものも現れたようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
参考記事:
レオナルド×ミケランジェロ展 (三菱一号館美術館)
ミケランジェロ展―天才の軌跡 感想前編(国立西洋美術館)
ミケランジェロ展―天才の軌跡 感想後編(国立西洋美術館)
59 ジョルジョ・ヴァザーリ 「『偉人ミケランジェロ・ブオナローティ伝:アレッツォの画家兼建築家ジョルジョ・ヴァザーリ殿著。またアカデミア・デル・ディゼーニョにより彼のためにフィレンツェで執り行われた壮麗な葬儀について』」 第2版、ジュンティ版、1568年刊
こちらはミケランジェロの伝記で、ミケランジェロの肖像も描かれています。もじゃもじゃの髪と髭で、眼光が鋭くて頑固そうな雰囲気は我々現代人にもよく知られているところです。ルネサンス期の芸術家の様子はこのヴァザーリの著書によって伝わっている部分が多いと思われますが、ミケランジェロはどうも納得していなかったようで、弟子のアスカニオ・コンディーヴィに命じて『フィレンツェの画家、彫刻家、建築家そして貴紳、ミケランジェロ・ブオナローティ伝』を作らせたようです(隣に展示されています) そちらはこのヴァザーリの本への批判的な回答とも言えるそうで、そのエピソードも含めてミケランジェロの人柄が分かる気がしますw 若い男に入れ込んでた話とかは載ってるんでしょうかね??
62 パッシニャーノ(ドメニコ・クレスティ) 「ミケランジェロの肖像」 17世紀初頭 ★こちらで観られます
こちらは黒い衣を着てパレットと絵筆を持ったミケランジェロの肖像です。結構若くて微笑むような感じに見えるかな。背景にサン・ピエトロ大聖堂、手前には人体彫刻が置かれていて、それぞれ画家・建築家・彫刻家として3芸術に秀でていた事を示しているようです。石工の息子であったミケランジェロは自分を彫刻家と言っていたそうで、システィーナ礼拝堂の仕事も本業ではないと考えていたのだとか。これだけ観ると柔和な画家みたいに見えましたw
この近くには胸像やメダルなどもありました。
67 アドリアーノ・チェチョーニ 「モーセ像を制作するミケランジェロ」 1879-80年
こちらはミケランジェロが膝に小さなモーセ像を置き 両手で抑えてじっと観ている様子が表されたテラコッタ像です。眉間にシワを寄せて厳しい表情をしていて、ある意味イメージ通りな感じがります。ミケランジェロの偉業が後世にも伝わって敬意を持って肖像が作られたことが伺えました。
展覧会の最後にはミケランジェロの墓地が描かれた作品もありました。実はミケランジェロは最初は没したローマに埋葬されたようですが、死後に甥によって亡骸を盗み出され、改めてフィレンツェに埋葬されたそうです。ちょっと乱暴ですがフィレンツェを愛した人だけに納得かな。
ということで、やはりミケランジェロの2点とラオコーン像は非常に素晴らしかったと思います。この3つを観られただけでも行った甲斐があったかな。(後半に関しては満足度5点にしても良かったかも) 日本でミケランジェロ作品を観られるのは貴重な機会ですので、彫刻好きの方は是非足を運ばれてみてはと思います。
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先週の土曜日に上野の国立西洋美術館でミケランジェロと理想の身体を観てきました。非常に見応えのある内容となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
ミケランジェロと理想の身体
【公式サイト】
http://michelangelo2018.jp/index.html
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018michelangelo.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2018年6月19日(火)~2018年9月24日(月・休)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
お客さんは多かったですが意外と混んでいるというほどでもなく、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、今回の展示はルネサンス期の巨匠ミケランジェロ・ブオナローティに関する内容で、特に彫刻について取り上げています。とは言ってもミケランジェロの作品は2点で後半にあるのですが、ミケランジェロに影響を与えたギリシャ彫刻などが並びルネサンスの表現の源泉を知ることができるようになっていました。詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。なお、ミケランジェロ自身については以前の展示の際にも記載していますので参考記事をご参照ください。
参考記事:
レオナルド×ミケランジェロ展 (三菱一号館美術館)
ミケランジェロ展―天才の軌跡 感想前編(国立西洋美術館)
ミケランジェロ展―天才の軌跡 感想後編(国立西洋美術館)
<I 人間の時代-美の規範、古代からルネサンスへ>
まずは古代からルネサンスへの影響に関するコーナーです。古代ギリシャでは美の価値が重視され、外見の美と内面の全は深く結びついていると考えられていたそうです。紀元前5世紀のギリシャの彫刻家ポリュクレイトスは、人間の体の部位を測定した値を元に基準値を設定し それを体全体としての調和を考えながら再統合して理論書「カノン」(規範)に結実させたようです。そしてこの男性美の理想として体現したのが神々や英雄、競技者といった裸体象でした。ギリシャ的な美の理想はその後の古代ローマに受け継がれていきましたが、キリスト教が広まるとその価値観の元で身体は隠されるようになってしまいます。それがルネサンス期に人文主義の元に回帰され、この時代にはギリシャ彫刻を範にした作品が作られたようです。この章ではその様子を観ることができるようになっていました。なお、この章では「コントラポスト」という言葉がよく出てきます。これは片足に重心をかけて立ち、体全体に動きを出すポーズのことです。ギリシャ彫刻やルネサンスの彫刻でよく観られる表現でこの章でもその様子が伺えました。
[I-1 子どもと青年の美]
この項では古代ギリシャの子供と青年の像を取り上げていました。古代ギリシャの体への関心はまず青年と大人に始まり、次に少年、その後に幼児へと向かっていきました。幼児は理想的なプロポーションとはかけ離れていて、コントラポストがもたらす美しい調和も生まれませんが むしろそれが楽しみとなっていたようです。一方、ルネサンス期の幼児表現は古代の石棺彫刻が着想になったそうで、古代より逞しい姿で表されました。また、古代の少年の表現はしなやかさを際立たせるためわざとバランスを崩す姿勢を追求したようで、そうした作品も並んでいました。
4 「プットーとガチョウ」 1世紀半ば ★こちらで観られます
こちらは右手を上に伸ばして、左手は傍らのガチョウを押さえつけている赤ちゃんの大理石像です。当時ガチョウはペットとして飼われていたらしく子供とセットで表されることも多かったようです。滑らかな表面で、関節の辺りに輪ゴムで留めたような線が出ているのがリアルな赤ちゃんっぽさを感じるかな。動きのあるポーズで表情も親に何かを訴えるように観えました。
この近くにはプットーのリリーフやヘラクレスの赤ん坊の頃をモチーフにした作品などもありました。
6 スケッジャ(ジョヴァンニ・ディ・セル・ジョヴァンニ・グイーディ) 「遊ぶ幼児たち」 1450-70年 ★こちらで観られます
こちらは円形の盆に描かれた絵画で、2人の裸の子供が布?のようなものを持って向き合っている様子となっています。これは1人を裏表で描いたらしく振りかぶるようなポーズと筋肉が躍動的な印象です。いくらなんでもこんな筋肉質な子供はいないだろ…とつっこみたくなるくらいムキムキでちょっとアンバランスに思えます。古代の大人と子供が混じり合ったようなルネサンス期独特の作風と言えるようでした。
この近くには17世紀の「6人の奏楽天使の群像」という6体の彫像もありました。こちらは割と子供っぽさを感じたかな。
10 「弓を引くクピド」 2世紀末
こちらは真上に向かって弓を引くポーズをした裸のキューピッドの像です。弓自体はないのですが、かなり劇的なポーズとなっていて子供にしては等身が長いようにも観えました。昔は弓を持ってたんでしょうか。子供でもリアルさがありつつ理想的な美しさが感じられます。
12 「アキレウスとケイロン」 65-79年
これは見覚えがあった作品で、ポンペイ近くのエルコラーノで発見されたフレスコ画です。上半身が人間、腰から下は馬のケンタウロスであるケイロン(キローン)がアキレウス(アキレス)に竪琴を教えている様子が描かれ、アキレウスは片方の足に重心をかけたコントラポストの表現となっています。ケイロンは思慮深い顔をしていて、それを振り返って見上げるアキレウスの表情には敬意が感じられるかな。陰影がついて立体的な表現となっていて、ケイロンの腕がちょっと細い気がしましたが理想的な美しさの身体表現となっていました。
参考記事:ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 感想前編(横浜美術館)
[I-2 顔の完成]
続いては顔の表現についてです。ギリシャ古典期の人々は肖像に興味を示さなかったようで、理想的な顔を求めたようです。その結果、男女の区別がつかないことも多くあり、年齢に応じている以外に差異の少ない顔となっているようです。一方、ルネサンス期も顔の表現の理想化が試みられたようですが、この頃には肖像にも知見があったため理想化されても個別的な特徴が残っているようです。ここには4点だけですが、その様子が伺える作品が並んでいました。
18 バッチョ・バンディネッリ 「バッカスの頭部」 1515年頃 ★こちらで観られます
こちらは頭部のみの青年像で、酒の神バッカスを表しているようです。眉から鼻筋がすらっと繋がるような彫りの深い顔だちで、頭に蔦の冠を被っているのでバッカスと分かります。やや巻き髪で少し口を開いて親しげに話しかけてくるようなイケメンとなっていました。
この近くには古代の神の像などが並んでいました。顔だけでは誰か分からないようで、持ち物などで判断するのかな。カロス・カイ・アガトスという外見の美=徳の高さ を求めたルネサンス期も同様で、理想化された人物像が中心と言えそうでした。
[I-3 アスリートと戦士]
続いてはアスリートと戦士の肉体表現のコーナーで、ギリシャ古典期の人体表現の規範はアスリートの体を通して確立されたそうです。同様に戦士もギリシャ美術の発展に不可欠で、ギリシャ民族の優位性を暗示していたようです。また、古代アスリートの裸体はルネサンス期の最良の教科書として複製・翻案されたようで、ここにはその範となったアスリート達の像が並んでいました。
24 「レスラー」 紀元前2世紀―紀元前1世紀
こちらは肘を上げて前傾姿勢になった裸体の男性像です。これはレスラーらしく肘に相手の手の一部がくっついているのですが、相手の像は失われています。元は2人で組み合っていたらしく、右の脇腹には相手の蹴りが入った跡と思われる所もあり、戦いを生々しく表現しています。筋肉隆々で動きがあり、これぞ古代彫刻といった理想化された躍動感がありました。
19 「アメルングの運動選手」 紀元前1世紀 ★こちらで観られます
これは頭と腕の無い男性像ですが、無駄のない筋肉質な体つきをしています。コントラポストのような姿勢で、腕は無いけど肩の様子から動きのあるポーズだったのではないかと思われます。割れた腹筋に浮き上がる肋骨はまさに理想の肉体像で、ちょっとダビデ像に似てるかも。 解説によるとこの人物は恐らくボクサーかパンクラティオンの競技者だったようで、オリジナルが別にあってこれはローマ時代にコピーされた品のようでしたが、十分に見事な作品となっていました。
[I-4 神々と英雄]
続いては神や英雄をテーマにした作品のコーナーです。古代ギリシャ人は神を最も美しい人間の姿で表し、完璧な肉体を誇っていました。特にヘラクレスが人気だったようで、欠かせないテーマだったようです。ルネサンス期も古代神話は格好の題材で、男性裸体表現の技を磨く重要な素材だったようです。ここにはそうした神の像が並んでいました。
32 「子どもたちを解放するテセウス」「ヘラクレスとテレフォス」 65-79年
これもエルコラーノで見つかった壁画で、テセウスがミノタウロスを倒した後のシーンが描かれているようで、足元にミノタウロスが倒れています。テセウスは均整の取れた姿でコントラポストの姿勢でS字を描くような感じで、意外とすらっとして優美な印象を受けました。
この隣には同様の壁画でヘラクレスを描いていたのですが、こちらはかなり筋骨隆々の姿となっていて、英雄によって異なる人体表現となっているようでした。
この近くにはヘラクレス像などもあって、確かにヘラクレス多めです。
37 クレオフラデスの画家 「アッティカ赤像式カルピス、ヘラクレスとネメアのライオン」 紀元前490年頃
こちらは黒地にオレンジで絵付けされた壺で、ヘラクレス12の功業の最初のエピソードであるネメアのライオン退治の様子が描かれています。ライオンを押さえつけて口を開けている様子で、人体表現は若干硬い感じに見えるかな。デフォルメされて平面的に表されているのが独特です。彫刻だけでなく装飾や絵画においても理想の肉体が表されていたのが伺えました。
ということで、長くなってきたので今日はこの辺にしておこうと思います。前半からギリシャ・ローマ時代の価値観や表現がよく分かる内容で、これがルネサンスにも影響を与えていた様子が伺えました。後半には今回のメインであるミケランジェロの作品がありましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。
→ 後編はこちら

【展覧名】
ミケランジェロと理想の身体
【公式サイト】
http://michelangelo2018.jp/index.html
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018michelangelo.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2018年6月19日(火)~2018年9月24日(月・休)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
お客さんは多かったですが意外と混んでいるというほどでもなく、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、今回の展示はルネサンス期の巨匠ミケランジェロ・ブオナローティに関する内容で、特に彫刻について取り上げています。とは言ってもミケランジェロの作品は2点で後半にあるのですが、ミケランジェロに影響を与えたギリシャ彫刻などが並びルネサンスの表現の源泉を知ることができるようになっていました。詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。なお、ミケランジェロ自身については以前の展示の際にも記載していますので参考記事をご参照ください。
参考記事:
レオナルド×ミケランジェロ展 (三菱一号館美術館)
ミケランジェロ展―天才の軌跡 感想前編(国立西洋美術館)
ミケランジェロ展―天才の軌跡 感想後編(国立西洋美術館)
<I 人間の時代-美の規範、古代からルネサンスへ>
まずは古代からルネサンスへの影響に関するコーナーです。古代ギリシャでは美の価値が重視され、外見の美と内面の全は深く結びついていると考えられていたそうです。紀元前5世紀のギリシャの彫刻家ポリュクレイトスは、人間の体の部位を測定した値を元に基準値を設定し それを体全体としての調和を考えながら再統合して理論書「カノン」(規範)に結実させたようです。そしてこの男性美の理想として体現したのが神々や英雄、競技者といった裸体象でした。ギリシャ的な美の理想はその後の古代ローマに受け継がれていきましたが、キリスト教が広まるとその価値観の元で身体は隠されるようになってしまいます。それがルネサンス期に人文主義の元に回帰され、この時代にはギリシャ彫刻を範にした作品が作られたようです。この章ではその様子を観ることができるようになっていました。なお、この章では「コントラポスト」という言葉がよく出てきます。これは片足に重心をかけて立ち、体全体に動きを出すポーズのことです。ギリシャ彫刻やルネサンスの彫刻でよく観られる表現でこの章でもその様子が伺えました。
[I-1 子どもと青年の美]
この項では古代ギリシャの子供と青年の像を取り上げていました。古代ギリシャの体への関心はまず青年と大人に始まり、次に少年、その後に幼児へと向かっていきました。幼児は理想的なプロポーションとはかけ離れていて、コントラポストがもたらす美しい調和も生まれませんが むしろそれが楽しみとなっていたようです。一方、ルネサンス期の幼児表現は古代の石棺彫刻が着想になったそうで、古代より逞しい姿で表されました。また、古代の少年の表現はしなやかさを際立たせるためわざとバランスを崩す姿勢を追求したようで、そうした作品も並んでいました。
4 「プットーとガチョウ」 1世紀半ば ★こちらで観られます
こちらは右手を上に伸ばして、左手は傍らのガチョウを押さえつけている赤ちゃんの大理石像です。当時ガチョウはペットとして飼われていたらしく子供とセットで表されることも多かったようです。滑らかな表面で、関節の辺りに輪ゴムで留めたような線が出ているのがリアルな赤ちゃんっぽさを感じるかな。動きのあるポーズで表情も親に何かを訴えるように観えました。
この近くにはプットーのリリーフやヘラクレスの赤ん坊の頃をモチーフにした作品などもありました。
6 スケッジャ(ジョヴァンニ・ディ・セル・ジョヴァンニ・グイーディ) 「遊ぶ幼児たち」 1450-70年 ★こちらで観られます
こちらは円形の盆に描かれた絵画で、2人の裸の子供が布?のようなものを持って向き合っている様子となっています。これは1人を裏表で描いたらしく振りかぶるようなポーズと筋肉が躍動的な印象です。いくらなんでもこんな筋肉質な子供はいないだろ…とつっこみたくなるくらいムキムキでちょっとアンバランスに思えます。古代の大人と子供が混じり合ったようなルネサンス期独特の作風と言えるようでした。
この近くには17世紀の「6人の奏楽天使の群像」という6体の彫像もありました。こちらは割と子供っぽさを感じたかな。
10 「弓を引くクピド」 2世紀末
こちらは真上に向かって弓を引くポーズをした裸のキューピッドの像です。弓自体はないのですが、かなり劇的なポーズとなっていて子供にしては等身が長いようにも観えました。昔は弓を持ってたんでしょうか。子供でもリアルさがありつつ理想的な美しさが感じられます。
12 「アキレウスとケイロン」 65-79年
これは見覚えがあった作品で、ポンペイ近くのエルコラーノで発見されたフレスコ画です。上半身が人間、腰から下は馬のケンタウロスであるケイロン(キローン)がアキレウス(アキレス)に竪琴を教えている様子が描かれ、アキレウスは片方の足に重心をかけたコントラポストの表現となっています。ケイロンは思慮深い顔をしていて、それを振り返って見上げるアキレウスの表情には敬意が感じられるかな。陰影がついて立体的な表現となっていて、ケイロンの腕がちょっと細い気がしましたが理想的な美しさの身体表現となっていました。
参考記事:ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 感想前編(横浜美術館)
[I-2 顔の完成]
続いては顔の表現についてです。ギリシャ古典期の人々は肖像に興味を示さなかったようで、理想的な顔を求めたようです。その結果、男女の区別がつかないことも多くあり、年齢に応じている以外に差異の少ない顔となっているようです。一方、ルネサンス期も顔の表現の理想化が試みられたようですが、この頃には肖像にも知見があったため理想化されても個別的な特徴が残っているようです。ここには4点だけですが、その様子が伺える作品が並んでいました。
18 バッチョ・バンディネッリ 「バッカスの頭部」 1515年頃 ★こちらで観られます
こちらは頭部のみの青年像で、酒の神バッカスを表しているようです。眉から鼻筋がすらっと繋がるような彫りの深い顔だちで、頭に蔦の冠を被っているのでバッカスと分かります。やや巻き髪で少し口を開いて親しげに話しかけてくるようなイケメンとなっていました。
この近くには古代の神の像などが並んでいました。顔だけでは誰か分からないようで、持ち物などで判断するのかな。カロス・カイ・アガトスという外見の美=徳の高さ を求めたルネサンス期も同様で、理想化された人物像が中心と言えそうでした。
[I-3 アスリートと戦士]
続いてはアスリートと戦士の肉体表現のコーナーで、ギリシャ古典期の人体表現の規範はアスリートの体を通して確立されたそうです。同様に戦士もギリシャ美術の発展に不可欠で、ギリシャ民族の優位性を暗示していたようです。また、古代アスリートの裸体はルネサンス期の最良の教科書として複製・翻案されたようで、ここにはその範となったアスリート達の像が並んでいました。
24 「レスラー」 紀元前2世紀―紀元前1世紀
こちらは肘を上げて前傾姿勢になった裸体の男性像です。これはレスラーらしく肘に相手の手の一部がくっついているのですが、相手の像は失われています。元は2人で組み合っていたらしく、右の脇腹には相手の蹴りが入った跡と思われる所もあり、戦いを生々しく表現しています。筋肉隆々で動きがあり、これぞ古代彫刻といった理想化された躍動感がありました。
19 「アメルングの運動選手」 紀元前1世紀 ★こちらで観られます
これは頭と腕の無い男性像ですが、無駄のない筋肉質な体つきをしています。コントラポストのような姿勢で、腕は無いけど肩の様子から動きのあるポーズだったのではないかと思われます。割れた腹筋に浮き上がる肋骨はまさに理想の肉体像で、ちょっとダビデ像に似てるかも。 解説によるとこの人物は恐らくボクサーかパンクラティオンの競技者だったようで、オリジナルが別にあってこれはローマ時代にコピーされた品のようでしたが、十分に見事な作品となっていました。
[I-4 神々と英雄]
続いては神や英雄をテーマにした作品のコーナーです。古代ギリシャ人は神を最も美しい人間の姿で表し、完璧な肉体を誇っていました。特にヘラクレスが人気だったようで、欠かせないテーマだったようです。ルネサンス期も古代神話は格好の題材で、男性裸体表現の技を磨く重要な素材だったようです。ここにはそうした神の像が並んでいました。
32 「子どもたちを解放するテセウス」「ヘラクレスとテレフォス」 65-79年
これもエルコラーノで見つかった壁画で、テセウスがミノタウロスを倒した後のシーンが描かれているようで、足元にミノタウロスが倒れています。テセウスは均整の取れた姿でコントラポストの姿勢でS字を描くような感じで、意外とすらっとして優美な印象を受けました。
この隣には同様の壁画でヘラクレスを描いていたのですが、こちらはかなり筋骨隆々の姿となっていて、英雄によって異なる人体表現となっているようでした。
この近くにはヘラクレス像などもあって、確かにヘラクレス多めです。
37 クレオフラデスの画家 「アッティカ赤像式カルピス、ヘラクレスとネメアのライオン」 紀元前490年頃
こちらは黒地にオレンジで絵付けされた壺で、ヘラクレス12の功業の最初のエピソードであるネメアのライオン退治の様子が描かれています。ライオンを押さえつけて口を開けている様子で、人体表現は若干硬い感じに見えるかな。デフォルメされて平面的に表されているのが独特です。彫刻だけでなく装飾や絵画においても理想の肉体が表されていたのが伺えました。
ということで、長くなってきたので今日はこの辺にしておこうと思います。前半からギリシャ・ローマ時代の価値観や表現がよく分かる内容で、これがルネサンスにも影響を与えていた様子が伺えました。後半には今回のメインであるミケランジェロの作品がありましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。
→ 後編はこちら
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今日も写真多めです。前回に引き続き5月末に行われた六本木アートナイトの振り返りで、今日は最終回で国立新美術館周辺の様子について写真でご紹介していこうと思います。
参考記事:
六本木アートナイト2018 六本木ヒルズ会場付近
六本木アートナイト2018 東京ミッドタウン会場付近
【展覧名】
六本木アートナイト2018
【公式サイト】
http://www.roppongiartnight.com/2018/
【会場】
六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、 21_21 DESIGN SIGHT、
国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
【最寄】
千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】
2018年5月26日(土)10:00 ~ 5月27日(日)18:00
コアタイム 5月26日(土)18:00 ~ 5月27日(日)6:00
参考記事:
「六本木アートナイト2012」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2013」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2014」の予告
「六本木アートナイト2017」の予告
「六本木アートナイト2018」の予告
「写真で旅する世界遺産」と「六本木アートナイト」と桜装飾 (2009年)
六本木アートナイト2010 (前編)
六本木アートナイト2010 (後編)
六本木アートナイト2012 (前編)
六本木アートナイト2012 (後編)
六本木アートナイト2013 (前編)
六本木アートナイト2013 (後編)
六本木アートナイト2014 (前編)
六本木アートナイト2014 (後編)
※2011年は東日本大震災で中止。2015、2016年はブログ休止中、2017年は記事にしませんでした。
前回ご紹介した東京ミッドタウンから国立新美術館に行く途中、近くにあった作品も観ながら向かっていきました。
こちらはミッドタウンの向かいのビルにあった志茂 浩和の「挟まる人」

実際に人が壁に挟まっているように観えますが、これは動画です。何人もの人が代わる代わる挟まっている様子が映されます。もがいたり考え込んだり暴れたり… 人によって様々な行動をするのが面白いです。こんな隙間を作品に使おうという発想に感心しました。
こちらは大通りから国立新美術館に向かう道に入ったトライセブン ロッポンギにあったシーラ・ヒックス「灯台」

どでかい糸束の塔のように観えましたが、灯台を表しているようです。観ている間は変化しませんでしたが、時間によって照明が動いて本当に灯台のような動きを表していたそうです。その様子を観てみたかったw
国立新美術館に到着したら非常にカラフルに染まっていました。

こちらは今回のメインプログラムアーティストの1人の鬼頭 健吾の「hanging colors」で、中から垂れ幕を垂らしてこのような色合いにしています。色の取り合わせも見事で、お互いを引き立てつつ心地良いリズムを感じました。
こちらも鬼頭 健吾で「broken flowers」 光が揺らめくように天井に反射しています。

これは5000個もの鏡を敷き詰めて花の映像を投影し反射させているもので、消えては浮かぶ幻想的な光景となっていました。
こちらは誰の作品かわかりませんでしたが、半透明なパネルで船のような形をしていた作品。

こちらもカラフルで意図が分からなくても色彩自体を楽しめました。
3つの作品を合わせて観られる欲張りな光景がこちら

実にカラフルでお祭り気分を盛り上げてくれました。見栄えの綺麗さではこの会場が一番だったかな。
中に入るとこちらにもオノ・ヨーコ「夢」がありました。

今回のアートナイトは国立新美術館の中は垂れ幕を除けばそれほど特設の作品はなかったので、こんな感じで素に近いかも。
こちらは1階にあったアール・ブリュット&障がいがある人の作品展「共生のエレメントー Dreaming ART Night」のミニ展示

アール・ブリュットは英語ではアウトサイダー・アートとも呼ばれ、精神などに障害がある方を含む、多くは正規の美術教育を受けず独自の路線を行く作家の総称です。その為、このミニ展示でも個性的な作品が並んでいました。
こちらは 健人「シロッコ」

強烈な色彩でポーリングしたような ほとばしる表現となっていました。アール・ブリュットの魅力は心の中を叫ぶように表す表現なので、これもその特徴があるのではないかと思います。
こちらは新橋はつらつ太陽(共同制作)「東京駅」

クラフトテープの切れ端を使ってモザイク画のように作ったもの。素朴な質感が独特の味わいになっています。これを作るには相当な根気が要りそうですね…。
これ以外にも独特の個性溢れる作品が並んでいました。アウトサイダー・アートや子供の絵には底知れぬパワーを感じますね。
この国立新美術館では他にも以前ご紹介した「こいのぼりなう!」のワークショップなども開催しているようでした。
参考記事:こいのぼりなう! 須藤玲子×アドリアン・ガルデール×齋藤精一によるインスタレーション (国立新美術館)
国立新美術館はこれくらいで、続いて周辺の展示です。
こちらは天祖神社にあった森 貴之「UVLS / Komainu」

ちょっとボケてますが、両脇に狛犬っぽい作品が並んでいます。
狛犬のアップ。3Dポリゴンのレイヤーみたいなが光っていました。時間が経つと明滅します。

伝統的なモチーフである狛犬が近未来的になっているのも面白いですが、透けて向こう側が見えているように錯覚するのも楽しかったです。
最後に六本木西公園へと向かいました。
公園についたら何やらその場で作品を制作するパフォーマンスをしていました。

この方は丸 倫徳という方で、黒地にマジック(修正液?)でガンガン描いていました。下書きも写真もなく想像力だけで描いているようで、六本木の喧騒を絵に込めていました。中々驚きの制作現場です。
こちらはボンドで描いた冨永ボンドの「ボンドアート」

こんなカラフルなボンドがあるの?と変な所に感心しましたが、絵自体もポップで面白い作品です。ワークショップなんかもあったらしいので、時間が合えば参加したかった…。
最後にこちらは遊具を使ったサムワンズガーデン x アトリエまあん「時のウロボロス」

∞の字を描くように平均台を歩いてウロボロス(自分の尻尾を食べる蛇)のように循環していく感じです。
この上を歩いていると、足元に光の影が映し出されました。

神秘的な音も鳴って、デ・キリコの絵の中のようなちょっとシュールな世界に迷い込んだような感覚になりました。
ということで、今年の六本木アートナイトをたっぷり楽しんできました。イベントにすべて参加するというのは無理なので、これでも結構頑張ったほうではないかと思います(4時間くらい歩きっぱなしで、限界だったので深夜前に撤退しましたw) 今年はもう終わってしまいましたが、次回以降もまた開催されると思いますので、その際の参考にしていただければと思います。非常にアートを身近に感じられる一夜限りの祭典です。
参考記事:
六本木アートナイト2018 六本木ヒルズ会場付近
六本木アートナイト2018 東京ミッドタウン会場付近
【展覧名】
六本木アートナイト2018
【公式サイト】
http://www.roppongiartnight.com/2018/
【会場】
六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、 21_21 DESIGN SIGHT、
国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
【最寄】
千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】
2018年5月26日(土)10:00 ~ 5月27日(日)18:00
コアタイム 5月26日(土)18:00 ~ 5月27日(日)6:00
参考記事:
「六本木アートナイト2012」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2013」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2014」の予告
「六本木アートナイト2017」の予告
「六本木アートナイト2018」の予告
「写真で旅する世界遺産」と「六本木アートナイト」と桜装飾 (2009年)
六本木アートナイト2010 (前編)
六本木アートナイト2010 (後編)
六本木アートナイト2012 (前編)
六本木アートナイト2012 (後編)
六本木アートナイト2013 (前編)
六本木アートナイト2013 (後編)
六本木アートナイト2014 (前編)
六本木アートナイト2014 (後編)
※2011年は東日本大震災で中止。2015、2016年はブログ休止中、2017年は記事にしませんでした。
前回ご紹介した東京ミッドタウンから国立新美術館に行く途中、近くにあった作品も観ながら向かっていきました。
こちらはミッドタウンの向かいのビルにあった志茂 浩和の「挟まる人」

実際に人が壁に挟まっているように観えますが、これは動画です。何人もの人が代わる代わる挟まっている様子が映されます。もがいたり考え込んだり暴れたり… 人によって様々な行動をするのが面白いです。こんな隙間を作品に使おうという発想に感心しました。
こちらは大通りから国立新美術館に向かう道に入ったトライセブン ロッポンギにあったシーラ・ヒックス「灯台」

どでかい糸束の塔のように観えましたが、灯台を表しているようです。観ている間は変化しませんでしたが、時間によって照明が動いて本当に灯台のような動きを表していたそうです。その様子を観てみたかったw
国立新美術館に到着したら非常にカラフルに染まっていました。

こちらは今回のメインプログラムアーティストの1人の鬼頭 健吾の「hanging colors」で、中から垂れ幕を垂らしてこのような色合いにしています。色の取り合わせも見事で、お互いを引き立てつつ心地良いリズムを感じました。
こちらも鬼頭 健吾で「broken flowers」 光が揺らめくように天井に反射しています。


これは5000個もの鏡を敷き詰めて花の映像を投影し反射させているもので、消えては浮かぶ幻想的な光景となっていました。
こちらは誰の作品かわかりませんでしたが、半透明なパネルで船のような形をしていた作品。

こちらもカラフルで意図が分からなくても色彩自体を楽しめました。
3つの作品を合わせて観られる欲張りな光景がこちら

実にカラフルでお祭り気分を盛り上げてくれました。見栄えの綺麗さではこの会場が一番だったかな。
中に入るとこちらにもオノ・ヨーコ「夢」がありました。

今回のアートナイトは国立新美術館の中は垂れ幕を除けばそれほど特設の作品はなかったので、こんな感じで素に近いかも。
こちらは1階にあったアール・ブリュット&障がいがある人の作品展「共生のエレメントー Dreaming ART Night」のミニ展示

アール・ブリュットは英語ではアウトサイダー・アートとも呼ばれ、精神などに障害がある方を含む、多くは正規の美術教育を受けず独自の路線を行く作家の総称です。その為、このミニ展示でも個性的な作品が並んでいました。
こちらは 健人「シロッコ」

強烈な色彩でポーリングしたような ほとばしる表現となっていました。アール・ブリュットの魅力は心の中を叫ぶように表す表現なので、これもその特徴があるのではないかと思います。
こちらは新橋はつらつ太陽(共同制作)「東京駅」

クラフトテープの切れ端を使ってモザイク画のように作ったもの。素朴な質感が独特の味わいになっています。これを作るには相当な根気が要りそうですね…。
これ以外にも独特の個性溢れる作品が並んでいました。アウトサイダー・アートや子供の絵には底知れぬパワーを感じますね。
この国立新美術館では他にも以前ご紹介した「こいのぼりなう!」のワークショップなども開催しているようでした。
参考記事:こいのぼりなう! 須藤玲子×アドリアン・ガルデール×齋藤精一によるインスタレーション (国立新美術館)
国立新美術館はこれくらいで、続いて周辺の展示です。
こちらは天祖神社にあった森 貴之「UVLS / Komainu」

ちょっとボケてますが、両脇に狛犬っぽい作品が並んでいます。
狛犬のアップ。3Dポリゴンのレイヤーみたいなが光っていました。時間が経つと明滅します。

伝統的なモチーフである狛犬が近未来的になっているのも面白いですが、透けて向こう側が見えているように錯覚するのも楽しかったです。
最後に六本木西公園へと向かいました。
公園についたら何やらその場で作品を制作するパフォーマンスをしていました。

この方は丸 倫徳という方で、黒地にマジック(修正液?)でガンガン描いていました。下書きも写真もなく想像力だけで描いているようで、六本木の喧騒を絵に込めていました。中々驚きの制作現場です。
こちらはボンドで描いた冨永ボンドの「ボンドアート」

こんなカラフルなボンドがあるの?と変な所に感心しましたが、絵自体もポップで面白い作品です。ワークショップなんかもあったらしいので、時間が合えば参加したかった…。
最後にこちらは遊具を使ったサムワンズガーデン x アトリエまあん「時のウロボロス」

∞の字を描くように平均台を歩いてウロボロス(自分の尻尾を食べる蛇)のように循環していく感じです。
この上を歩いていると、足元に光の影が映し出されました。

神秘的な音も鳴って、デ・キリコの絵の中のようなちょっとシュールな世界に迷い込んだような感覚になりました。
ということで、今年の六本木アートナイトをたっぷり楽しんできました。イベントにすべて参加するというのは無理なので、これでも結構頑張ったほうではないかと思います(4時間くらい歩きっぱなしで、限界だったので深夜前に撤退しましたw) 今年はもう終わってしまいましたが、次回以降もまた開催されると思いますので、その際の参考にしていただければと思います。非常にアートを身近に感じられる一夜限りの祭典です。
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六本木アートナイト2018 六本木ヒルズ会場付近
六本木アートナイト2018 国立新美術館会場付近
【展覧名】
六本木アートナイト2018
【公式サイト】
http://www.roppongiartnight.com/2018/
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国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
【最寄】
千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】
2018年5月26日(土)10:00 ~ 5月27日(日)18:00
コアタイム 5月26日(土)18:00 ~ 5月27日(日)6:00
参考記事:
「六本木アートナイト2012」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2013」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2014」の予告
「六本木アートナイト2017」の予告
「六本木アートナイト2018」の予告
「写真で旅する世界遺産」と「六本木アートナイト」と桜装飾 (2009年)
六本木アートナイト2010 (前編)
六本木アートナイト2010 (後編)
六本木アートナイト2012 (前編)
六本木アートナイト2012 (後編)
六本木アートナイト2013 (前編)
六本木アートナイト2013 (後編)
六本木アートナイト2014 (前編)
六本木アートナイト2014 (後編)
※2011年は東日本大震災で中止。2015、2016年はブログ休止中、2017年は記事にしませんでした。
六本木ヒルズから東京ミッドタウンに向かう前に、交差点から坂を下った所にある港区立三河台公園に行きました。ここは3つのメイン会場から少し離れているので観客はそれほど多くないのですが、よく体験型の展示を行っています。
今回の港区立三河台公園の展示の模型がありました。

坂上の入口辺りで案内を受けて、公園全体が会場となっているような感じでした。
公園内はこんな感じ。

沢山の提灯がぶら下がっていてまさにお祭りって感じです。
よく観ると、滑り台の横に小さな提灯が貼り付けてありました。また、提灯に紙を貼って装飾する作品なんかもあります。

こちらは小菱屋忠兵衛(小嶋 俊、小嶋 諒)の「提灯が照らす六本木ベースキャンプ」という作品の一部のようで、ミニワークショップなどで参加者が作ったようです。
こちらは提灯職人への弟子入り体験のコーナー。

予約制のようで私は体験できませんでしたが、結構本格的で面白そうでした。
続いてこちらは柴川 敏之「2000年後の六本木プロジェクト」という作品。

携帯電話や蚊取り線香、サングラスなどが遺跡の品のようになった作品が展示されていましたw 2000年後に地層からこんな感じで出てくるのかもしれません。
こちらもワークショップがあって、「賢者の道 |2000年後を ローラーで発掘しよう!」という体験が出来ました

これはまず、好きな所に短冊をおいて、上からローラーをかけて模様を作ります。
その後、くじ引きをして地球の未来を占うのですが、私は見事 大凶を引き当てましたw くじの結果によって色が異なるのですが、その色を塗っていきます。

大凶は紫です。先程の短冊に塗っていくと1つの作品のようになるのが面白い。
できた短冊はこんな感じで並べられていました。

この色ごとに数を集計して地球の未来を占うようです。結果は翌日出たそうですが、翌日は行かなかったので分かりません。これを観る限り紫が多いような…w 環境を大事にしろというメッセージかもしれませんね。
続いては東京ミッドタウンに向かいました。
ミッドタウンにもオノ・ヨーコ「夢」がありました。

こちらは比較的近くで観られるかな。隣の人と比べると大きさが分かると思います。
こちらはミッドタウンの前にいたカメラのようなプリントのトラックで、JR「インサイドアウト・プロジェクト IN JAPAN presented by Reborn-Art Festival」という作品

この中で顔を撮影すると巨大な紙にプリントアウトしてくれるようでした。こちらも大人気で体験できませんでしたが、ちょうどこの場所の地下の通路に沢山の人の顔が展示されていました。
こちらはフジフイルムスクエアの前辺りにあった小原 典子「鳥の交差点」

ちょっと妖しい光を放つ幻想的な羽です。(確か色も変わったかな) 夜ならではの演出で綺麗でした。
こちらは栗 真由美「ビルズクラウド」という作品。

木にクリスマスの飾りのように沢山の建物の模型がつけられているのですが、よく見ると六本木の街にあるお店をモチーフにしています。 「豚組」とか見覚えある方も多いのではw
こちらは今回のメインプログラム・アーティストの1人である宇治野 宗輝の「ドラゴンヘッド・ハウス」

既成品を組み合わせて音を出す作風で最近よく観る方ですが、まさか車を丸ごと使うとは驚きです。下顎の部分はトラック、上顎はタクシーになっていて歯は光るカラーコーンとなっています。
参考記事:
MOMコレクション005 リサイクル&ビルド(森美術館)
ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス (横浜赤レンガ倉庫1号館)
勿論、この作品も音を出します。ちょっと短いですが動画も撮りました。
カラーコーンの明滅と共にドラゴンの叫びのような感じとなっていました。
続いてミッドタウンの裏手の芝生公園に行きました。ビニールの巨人が転がっててこれまた驚き。

こちらは鈴木 康広「空気の人」という作品で、昼間には作者と共に巨人と一緒のポーズで写真を撮るイベントもあったそうです。
近くに行くとこんな大きさです。

作品の意味は分かりませんが、直感的に楽しい作品でした。
ミッドタウン内の地下では3日間だけのFuture Innovators Summit(フューチャー・イノベーターズ・サミット)というイベントも行われていました。

公式サイト:http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/4078/
期間:2018/5/25(金)~5/27(日)
この展示にはアーティストや研究者・技術者。科学者などが集まり、先端技術を使った作品が並んでいました。
こちらはBCL by 福原志保、ゲオルグ・トレメル「Biopresence」という作品

一見ただのリンゴに観えますが、このリンゴに亡くなった方の遺伝情報を埋め込んでDNAを保存するよいうプロジェクトのようです。家族のDNAを持つリンゴが生き続けると考えるか、生きたお墓と考えるべきか…。食べるのはちょっと抵抗ありそうですねw 何とも複雑な気持ちになるコンセプトです。
こちらは何やら変わったパックマンで「Pac-connect」という作品。実際に遊べました。

普通のルールと異なり、玉を食べた後に他のプレイヤーと接触するとクリアというルールで、それがコネクトという意味のようでした。意外とあっさりクリアできましたw
この近くにはパックマンのブロックみたいな品もありました。他にも色々あったのですが、ここは閉まるのが早くてあまりじっくり観られませんでした。
ミッドタウンの地下通路では以前ご紹介したストリートミュージアムが開催されていて、この日はアーティスト自身によるパフォーマンスもありました。

左は松本千里 氏、右は大野光一 氏のパフォーマンス。特に大野光一 氏のワークショップは大盛況でした。
参考記事:ストリートミュージアム 2018(東京ミッドタウン)
ミッドタウンの後に国立新美術館の会場に向かったのですが、頃合いをみて再びミッドタウンに戻り、DUNDU(ドゥンドゥ)の「光の巨人」のパフォーマンスを観てきました。
前回の記事でご紹介した六本木ヒルズのアリーナでも観ましたが、ここでもかなり接近して観ることができました
柱を上り下りしているような動きがまるで生きているようです
こちらは先程の小人が巨人に乗り移って起き上がるシーン。
目覚めて立ち上がるような仕草が何とも人間っぽいw 音楽もそれに合わせているのが面白いです。
最後に光の玉を追いかけてミッドタウンの広場の方へと走っていきました。
ふわふわと浮かぶように走る姿が実に神秘的です。今年はこれが間近で観られただけでも大満足でした。
ということで、ミッドタウン周辺の展示も魅力的な内容となっていました。ちょっと意図が分からない作品も多かったですが、直感で楽しめるものばかりだったように思います。この後、国立新美術館の会場に行ったらまた違った魅力がありましたので、次回は最終回で国立新美術館周辺についてご紹介する予定です。
参考記事:
六本木アートナイト2018 六本木ヒルズ会場付近
六本木アートナイト2018 国立新美術館会場付近
【展覧名】
六本木アートナイト2018
【公式サイト】
http://www.roppongiartnight.com/2018/
【会場】
六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、 21_21 DESIGN SIGHT、
国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
【最寄】
千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】
2018年5月26日(土)10:00 ~ 5月27日(日)18:00
コアタイム 5月26日(土)18:00 ~ 5月27日(日)6:00
参考記事:
「六本木アートナイト2012」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2013」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2014」の予告
「六本木アートナイト2017」の予告
「六本木アートナイト2018」の予告
「写真で旅する世界遺産」と「六本木アートナイト」と桜装飾 (2009年)
六本木アートナイト2010 (前編)
六本木アートナイト2010 (後編)
六本木アートナイト2012 (前編)
六本木アートナイト2012 (後編)
六本木アートナイト2013 (前編)
六本木アートナイト2013 (後編)
六本木アートナイト2014 (前編)
六本木アートナイト2014 (後編)
※2011年は東日本大震災で中止。2015、2016年はブログ休止中、2017年は記事にしませんでした。
六本木ヒルズから東京ミッドタウンに向かう前に、交差点から坂を下った所にある港区立三河台公園に行きました。ここは3つのメイン会場から少し離れているので観客はそれほど多くないのですが、よく体験型の展示を行っています。
今回の港区立三河台公園の展示の模型がありました。

坂上の入口辺りで案内を受けて、公園全体が会場となっているような感じでした。
公園内はこんな感じ。

沢山の提灯がぶら下がっていてまさにお祭りって感じです。
よく観ると、滑り台の横に小さな提灯が貼り付けてありました。また、提灯に紙を貼って装飾する作品なんかもあります。


こちらは小菱屋忠兵衛(小嶋 俊、小嶋 諒)の「提灯が照らす六本木ベースキャンプ」という作品の一部のようで、ミニワークショップなどで参加者が作ったようです。
こちらは提灯職人への弟子入り体験のコーナー。

予約制のようで私は体験できませんでしたが、結構本格的で面白そうでした。
続いてこちらは柴川 敏之「2000年後の六本木プロジェクト」という作品。

携帯電話や蚊取り線香、サングラスなどが遺跡の品のようになった作品が展示されていましたw 2000年後に地層からこんな感じで出てくるのかもしれません。
こちらもワークショップがあって、「賢者の道 |2000年後を ローラーで発掘しよう!」という体験が出来ました

これはまず、好きな所に短冊をおいて、上からローラーをかけて模様を作ります。
その後、くじ引きをして地球の未来を占うのですが、私は見事 大凶を引き当てましたw くじの結果によって色が異なるのですが、その色を塗っていきます。


大凶は紫です。先程の短冊に塗っていくと1つの作品のようになるのが面白い。
できた短冊はこんな感じで並べられていました。

この色ごとに数を集計して地球の未来を占うようです。結果は翌日出たそうですが、翌日は行かなかったので分かりません。これを観る限り紫が多いような…w 環境を大事にしろというメッセージかもしれませんね。
続いては東京ミッドタウンに向かいました。
ミッドタウンにもオノ・ヨーコ「夢」がありました。

こちらは比較的近くで観られるかな。隣の人と比べると大きさが分かると思います。
こちらはミッドタウンの前にいたカメラのようなプリントのトラックで、JR「インサイドアウト・プロジェクト IN JAPAN presented by Reborn-Art Festival」という作品

この中で顔を撮影すると巨大な紙にプリントアウトしてくれるようでした。こちらも大人気で体験できませんでしたが、ちょうどこの場所の地下の通路に沢山の人の顔が展示されていました。
こちらはフジフイルムスクエアの前辺りにあった小原 典子「鳥の交差点」

ちょっと妖しい光を放つ幻想的な羽です。(確か色も変わったかな) 夜ならではの演出で綺麗でした。
こちらは栗 真由美「ビルズクラウド」という作品。


木にクリスマスの飾りのように沢山の建物の模型がつけられているのですが、よく見ると六本木の街にあるお店をモチーフにしています。 「豚組」とか見覚えある方も多いのではw
こちらは今回のメインプログラム・アーティストの1人である宇治野 宗輝の「ドラゴンヘッド・ハウス」

既成品を組み合わせて音を出す作風で最近よく観る方ですが、まさか車を丸ごと使うとは驚きです。下顎の部分はトラック、上顎はタクシーになっていて歯は光るカラーコーンとなっています。
参考記事:
MOMコレクション005 リサイクル&ビルド(森美術館)
ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス (横浜赤レンガ倉庫1号館)
勿論、この作品も音を出します。ちょっと短いですが動画も撮りました。
カラーコーンの明滅と共にドラゴンの叫びのような感じとなっていました。
続いてミッドタウンの裏手の芝生公園に行きました。ビニールの巨人が転がっててこれまた驚き。

こちらは鈴木 康広「空気の人」という作品で、昼間には作者と共に巨人と一緒のポーズで写真を撮るイベントもあったそうです。
近くに行くとこんな大きさです。

作品の意味は分かりませんが、直感的に楽しい作品でした。
ミッドタウン内の地下では3日間だけのFuture Innovators Summit(フューチャー・イノベーターズ・サミット)というイベントも行われていました。

公式サイト:http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/4078/
期間:2018/5/25(金)~5/27(日)
この展示にはアーティストや研究者・技術者。科学者などが集まり、先端技術を使った作品が並んでいました。
こちらはBCL by 福原志保、ゲオルグ・トレメル「Biopresence」という作品

一見ただのリンゴに観えますが、このリンゴに亡くなった方の遺伝情報を埋め込んでDNAを保存するよいうプロジェクトのようです。家族のDNAを持つリンゴが生き続けると考えるか、生きたお墓と考えるべきか…。食べるのはちょっと抵抗ありそうですねw 何とも複雑な気持ちになるコンセプトです。
こちらは何やら変わったパックマンで「Pac-connect」という作品。実際に遊べました。

普通のルールと異なり、玉を食べた後に他のプレイヤーと接触するとクリアというルールで、それがコネクトという意味のようでした。意外とあっさりクリアできましたw
この近くにはパックマンのブロックみたいな品もありました。他にも色々あったのですが、ここは閉まるのが早くてあまりじっくり観られませんでした。
ミッドタウンの地下通路では以前ご紹介したストリートミュージアムが開催されていて、この日はアーティスト自身によるパフォーマンスもありました。


左は松本千里 氏、右は大野光一 氏のパフォーマンス。特に大野光一 氏のワークショップは大盛況でした。
参考記事:ストリートミュージアム 2018(東京ミッドタウン)
ミッドタウンの後に国立新美術館の会場に向かったのですが、頃合いをみて再びミッドタウンに戻り、DUNDU(ドゥンドゥ)の「光の巨人」のパフォーマンスを観てきました。
前回の記事でご紹介した六本木ヒルズのアリーナでも観ましたが、ここでもかなり接近して観ることができました
柱を上り下りしているような動きがまるで生きているようです
こちらは先程の小人が巨人に乗り移って起き上がるシーン。
目覚めて立ち上がるような仕草が何とも人間っぽいw 音楽もそれに合わせているのが面白いです。
最後に光の玉を追いかけてミッドタウンの広場の方へと走っていきました。
ふわふわと浮かぶように走る姿が実に神秘的です。今年はこれが間近で観られただけでも大満足でした。
ということで、ミッドタウン周辺の展示も魅力的な内容となっていました。ちょっと意図が分からない作品も多かったですが、直感で楽しめるものばかりだったように思います。この後、国立新美術館の会場に行ったらまた違った魅力がありましたので、次回は最終回で国立新美術館周辺についてご紹介する予定です。
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今日は写真多めです。1ヶ月ほど前の2018年5月26日に、六本木の街全体で行われた六本木アートナイトに行ってきました。既に終わったイベントですが、写真や動画を沢山撮ってきましたのでご紹介しておこうと思います。今日は六本木ヒルズでの展示の様子をご紹介しておこうと思います。
参考記事:
六本木アートナイト2018 東京ミッドタウン会場付近
六本木アートナイト2018 国立新美術館会場付近

【展覧名】
六本木アートナイト2018
【公式サイト】
http://www.roppongiartnight.com/2018/
【会場】
六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、 21_21 DESIGN SIGHT、
国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
【最寄】
千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】
2018年5月26日(土)10:00 ~ 5月27日(日)18:00
コアタイム 5月26日(土)18:00 ~ 5月27日(日)6:00
昨年の秋に行われたばかりなのであまり話題になりませんでしたが、今回は作品数はそれほど多くなかったものの非常に見どころとなる作品があったと思います。そのためか、オープニングイベントから大勢の人が集まっていました。早速、写真を使っていこうと思います。
参考記事:
「六本木アートナイト2012」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2013」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2014」の予告
「六本木アートナイト2017」の予告
「六本木アートナイト2018」の予告
「写真で旅する世界遺産」と「六本木アートナイト」と桜装飾 (2009年)
六本木アートナイト2010 (前編)
六本木アートナイト2010 (後編)
六本木アートナイト2012 (前編)
六本木アートナイト2012 (後編)
六本木アートナイト2013 (前編)
六本木アートナイト2013 (後編)
六本木アートナイト2014 (前編)
六本木アートナイト2014 (後編)
※2011年は東日本大震災で中止。2015、2016年はブログ休止中、2017年は記事にしませんでした。
今回の目玉は何と言ってもこのDUNDU(ドゥンドゥ)の「光の巨人」でした。

オープニングの時はまだ明るくて光っているのが分かりませんが、逆にこの質感はよく分かるんじゃないかな。この後、動画もあります。
こちらはオープニングアクトの動画。恐らく金氏徹平 氏による演出かと思います。
ちょっとライオンキングみたいな雰囲気かなw ちょっとシュールで力強いパフォーマンスでした。
オープニングの後は光の巨人の公演なのですが、まずは小さい光の巨人?が出てきます
この動きが可愛いw この小人が球を追いかけていって、巨人に乗り移るようなストーリーのようでした。笛の音が神秘的な雰囲気を盛り上げます。
そしてこちらがメインの光の巨人。滑らかな動きに注目です。
ふわ~~っと浮くような動きが実に見事でこの演目を観られただけでも今年は大当たりだったと思います。しかもこの後、毛利庭園の方に歩いて言った時にハイタッチもしてもらえました。意外と硬い素材で出来ているのに驚きました。
早速 光の巨人で満足した後、毛利庭園から観ていきました。
こちらは宮本宗「影ワニ」

口の部分が動くようになっていてパフォーマンスを不定期で行っていたようですが、残念ながら私が観た時は調整中でした。
こちらは毛利庭園の池に浮かぶ三枝 文子「踊るランタン」

結構ゆらゆらと揺らめいていて幻想的な光景となっていました。家族への思いをテーマにワークショップで作られたものだそうで、思いが詰まっているのかも。
これは誰の作品か分かりませんでしたが、毛利庭園の樹木に果実のようにぶらさがっていました。

こちらも淡い光で不思議な雰囲気を出していました。
続いては六本木ヒルズの中の作品です。
こちらはニコラ・ビュフ「提灯ロケット」

お神輿とゴシック建築とロケットをごっちゃにしたような独特の作りが面白いw 提灯があるだけでお祭り感がありますね。
こちらはJART(ジャール)の処女作品「ひったくられ続けるバッグ」

後藤淳平 氏のバッグを福徳秀介 氏がひったくろうとする映像が延々と続きますw その結果、ズタボロになったバッグも展示されていました。割とガチで戦ってたのでこうなるのも納得w
こちらは片岡 純也「すり抜ける紙飛行機」

一見、何だこれ?と思ったのですが、じっくり観てると驚きの作品でした。
こちらは片岡 純也「すり抜ける紙飛行機」を動画で撮ったもの。
タイトル通り紙飛行機が壁をすり抜けて回転しています。この発想が凄いですね。
こちらも誰の作品か分かりません(マグダ・セイエグの作品?)でしたが、いつもの柱がカラフルになっていました。

よく観ると色の配置も1本1本違っていますが、テイストは同じに見えるのが不思議。
この日はルイーズ・ブルジョワの「ママン」もカラフルに染まっていました。これはテキスタイルのアーティストであるマグダ・セイエグが毛糸で編んだそうです。

この辺には電飾を背負ったパフォーマーもいました。公式なのかは分かりませんでしたが、カラフルなのでマグダ・セイエグの作品にマッチしていますw
こちらはBMW「THE ALL-NEW BMW X2 ART CAR」

香取慎吾とのコラボとのことでしたが、このペイントがそうなのかな。何だかサイケデリックな雰囲気ですw
続いては六本木ヒルズの1階に臨時で開かれていた六本木アートナイトカフェの中の展示品です。
こちらは井上尚子「The Library of Smell(匂いの図書館)」

本の匂いを嗅ぐという作品で、様々な本が並んでいて嗅ぐことができました。本を買った時の匂いは好きですが、これはお寺の焼香の香りみたいな感じの本でしたw 外国の本はどうしてこんな香りになるんだろ?ってのがありますw
こちらは苦瓜推進協議会の苦瓜のジュース

ご自由にとのことで試しに飲みましたが、予想通りの味で美味しいもんじゃないw どこまで本気か分かりませんが、苦瓜のキャラクターなんかもいるようでした。
六本木ヒルズはこれくらいなので、六本木交差点の方に向かいました。
こちらは六本木駅へのエスカレーターの上にあったオノ・ヨーコ「夢」

かなり大きな書で、ここも含めて3箇所にありました。また、六本木ヒルズ内でこの「夢」が書かれた蓄光インクのシールを貰えたので、バッグに貼り付けて歩いていました。
これはタリーズの近くにあったツワージック・チン・チョー・レン「みんなのちから V, 東京」

このチューブの両端はマグネットになっていて、壁にひっつくようになっています。このダクトを自分の体に巻いて囚われているような遊びをしてる人が多かったかなw 私もやりましたが漫画のパワー系キャラが呪縛を無理やりこじ開ける的な感じに観えたらしく笑われましたw
今回は何と六本木交差点にも作品がありました。 左はスー・チャーシン(蘇佳星)「Lost in Memories」。右はmagma「wonder bolt」

素人なので詳しいことは分かりませんが、公共建築を作品にするのは中々許可がおりなそうなので、変な所に感心してしまったw 普段から街にこんなアートがあったら楽しいですね。右のネジは回転もしていました。
こちらも六本木交差点にあった生田目 礼一「未来庭園」

こういう菌類の植物ありそうw キノコやシダを思わせるちょっと怪しい未来の生物でした。
ということで、六本木ヒルズ周辺だけでもこれだけ個性的な作品があって、写真を撮ったり体験したりして楽しんできました。結構知らない人にも声をかけられたりして、アートを通じて街が盛り上がっていたのを実感しました。他の会場も同様に写真や動画を撮ったので、次回も続きをご紹介の予定です。
参考記事:
六本木アートナイト2018 東京ミッドタウン会場付近
六本木アートナイト2018 国立新美術館会場付近

【展覧名】
六本木アートナイト2018
【公式サイト】
http://www.roppongiartnight.com/2018/
【会場】
六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、 21_21 DESIGN SIGHT、
国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
【最寄】
千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】
2018年5月26日(土)10:00 ~ 5月27日(日)18:00
コアタイム 5月26日(土)18:00 ~ 5月27日(日)6:00
昨年の秋に行われたばかりなのであまり話題になりませんでしたが、今回は作品数はそれほど多くなかったものの非常に見どころとなる作品があったと思います。そのためか、オープニングイベントから大勢の人が集まっていました。早速、写真を使っていこうと思います。
参考記事:
「六本木アートナイト2012」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2013」と「アートフェア東京2012」の予告
「六本木アートナイト2014」の予告
「六本木アートナイト2017」の予告
「六本木アートナイト2018」の予告
「写真で旅する世界遺産」と「六本木アートナイト」と桜装飾 (2009年)
六本木アートナイト2010 (前編)
六本木アートナイト2010 (後編)
六本木アートナイト2012 (前編)
六本木アートナイト2012 (後編)
六本木アートナイト2013 (前編)
六本木アートナイト2013 (後編)
六本木アートナイト2014 (前編)
六本木アートナイト2014 (後編)
※2011年は東日本大震災で中止。2015、2016年はブログ休止中、2017年は記事にしませんでした。
今回の目玉は何と言ってもこのDUNDU(ドゥンドゥ)の「光の巨人」でした。

オープニングの時はまだ明るくて光っているのが分かりませんが、逆にこの質感はよく分かるんじゃないかな。この後、動画もあります。
こちらはオープニングアクトの動画。恐らく金氏徹平 氏による演出かと思います。
ちょっとライオンキングみたいな雰囲気かなw ちょっとシュールで力強いパフォーマンスでした。
オープニングの後は光の巨人の公演なのですが、まずは小さい光の巨人?が出てきます
この動きが可愛いw この小人が球を追いかけていって、巨人に乗り移るようなストーリーのようでした。笛の音が神秘的な雰囲気を盛り上げます。
そしてこちらがメインの光の巨人。滑らかな動きに注目です。
ふわ~~っと浮くような動きが実に見事でこの演目を観られただけでも今年は大当たりだったと思います。しかもこの後、毛利庭園の方に歩いて言った時にハイタッチもしてもらえました。意外と硬い素材で出来ているのに驚きました。
早速 光の巨人で満足した後、毛利庭園から観ていきました。
こちらは宮本宗「影ワニ」

口の部分が動くようになっていてパフォーマンスを不定期で行っていたようですが、残念ながら私が観た時は調整中でした。
こちらは毛利庭園の池に浮かぶ三枝 文子「踊るランタン」

結構ゆらゆらと揺らめいていて幻想的な光景となっていました。家族への思いをテーマにワークショップで作られたものだそうで、思いが詰まっているのかも。
これは誰の作品か分かりませんでしたが、毛利庭園の樹木に果実のようにぶらさがっていました。

こちらも淡い光で不思議な雰囲気を出していました。
続いては六本木ヒルズの中の作品です。
こちらはニコラ・ビュフ「提灯ロケット」

お神輿とゴシック建築とロケットをごっちゃにしたような独特の作りが面白いw 提灯があるだけでお祭り感がありますね。
こちらはJART(ジャール)の処女作品「ひったくられ続けるバッグ」


後藤淳平 氏のバッグを福徳秀介 氏がひったくろうとする映像が延々と続きますw その結果、ズタボロになったバッグも展示されていました。割とガチで戦ってたのでこうなるのも納得w
こちらは片岡 純也「すり抜ける紙飛行機」

一見、何だこれ?と思ったのですが、じっくり観てると驚きの作品でした。
こちらは片岡 純也「すり抜ける紙飛行機」を動画で撮ったもの。
タイトル通り紙飛行機が壁をすり抜けて回転しています。この発想が凄いですね。
こちらも誰の作品か分かりません(マグダ・セイエグの作品?)でしたが、いつもの柱がカラフルになっていました。

よく観ると色の配置も1本1本違っていますが、テイストは同じに見えるのが不思議。
この日はルイーズ・ブルジョワの「ママン」もカラフルに染まっていました。これはテキスタイルのアーティストであるマグダ・セイエグが毛糸で編んだそうです。


この辺には電飾を背負ったパフォーマーもいました。公式なのかは分かりませんでしたが、カラフルなのでマグダ・セイエグの作品にマッチしていますw
こちらはBMW「THE ALL-NEW BMW X2 ART CAR」

香取慎吾とのコラボとのことでしたが、このペイントがそうなのかな。何だかサイケデリックな雰囲気ですw
続いては六本木ヒルズの1階に臨時で開かれていた六本木アートナイトカフェの中の展示品です。
こちらは井上尚子「The Library of Smell(匂いの図書館)」

本の匂いを嗅ぐという作品で、様々な本が並んでいて嗅ぐことができました。本を買った時の匂いは好きですが、これはお寺の焼香の香りみたいな感じの本でしたw 外国の本はどうしてこんな香りになるんだろ?ってのがありますw
こちらは苦瓜推進協議会の苦瓜のジュース

ご自由にとのことで試しに飲みましたが、予想通りの味で美味しいもんじゃないw どこまで本気か分かりませんが、苦瓜のキャラクターなんかもいるようでした。
六本木ヒルズはこれくらいなので、六本木交差点の方に向かいました。
こちらは六本木駅へのエスカレーターの上にあったオノ・ヨーコ「夢」

かなり大きな書で、ここも含めて3箇所にありました。また、六本木ヒルズ内でこの「夢」が書かれた蓄光インクのシールを貰えたので、バッグに貼り付けて歩いていました。
これはタリーズの近くにあったツワージック・チン・チョー・レン「みんなのちから V, 東京」


このチューブの両端はマグネットになっていて、壁にひっつくようになっています。このダクトを自分の体に巻いて囚われているような遊びをしてる人が多かったかなw 私もやりましたが漫画のパワー系キャラが呪縛を無理やりこじ開ける的な感じに観えたらしく笑われましたw
今回は何と六本木交差点にも作品がありました。 左はスー・チャーシン(蘇佳星)「Lost in Memories」。右はmagma「wonder bolt」


素人なので詳しいことは分かりませんが、公共建築を作品にするのは中々許可がおりなそうなので、変な所に感心してしまったw 普段から街にこんなアートがあったら楽しいですね。右のネジは回転もしていました。
こちらも六本木交差点にあった生田目 礼一「未来庭園」

こういう菌類の植物ありそうw キノコやシダを思わせるちょっと怪しい未来の生物でした。
ということで、六本木ヒルズ周辺だけでもこれだけ個性的な作品があって、写真を撮ったり体験したりして楽しんできました。結構知らない人にも声をかけられたりして、アートを通じて街が盛り上がっていたのを実感しました。他の会場も同様に写真や動画を撮ったので、次回も続きをご紹介の予定です。
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1ヶ月ほど前の金曜日の会社帰りに六本木の森美術館で「六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展 建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」を観てきました。一部で撮影可能となっていましたので、写真を交えながらご紹介していこうと思います。

【展覧名】
六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展
建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの
【公式サイト】
http://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/japaninarchitecture/index.html
【会場】森美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2018年4月25日(水)~ 9月17日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
意外と空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はタイトルの通り、古今の日本の住宅を取り上げたもので時系列ではなく9つの視点に沿って紹介する内容となっています。森美術館では過去にル・コルビュジエ展や、丹下健三らのメタボリズムを取り上げた展示などスタイル別の建築展を開催してきましたが、今回はそういった展示とは違い広範囲に様々な建物を取り上げていました(今回はメタボリズム展で観られた品もあります) 展覧会の様子については各章ごとに簡単なメモと写真を使って振り返ってみようと思います。なお、撮影可能な場所は5箇所です。
<1.可能性としての木造>
まずは木造のコーナーです。初っ端から凄い木組みがお迎えしてくれました。
北川原温《ミラノ国際博覧会2015日本館 木組インフィニティ》
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。(以下同文)

高さ5.3mもある巨大な木組みです。近くで観ると中々圧倒される迫力がありました。
この章には他に さざえ堂や平等院鳳凰堂、隈研吾 氏の「梼原木橋ミュージアム」、東大寺南大門、古代の出雲大社、メタボリズムに影響を受けた磯崎新の「空中都市渋谷計画」、スカイツリー、東照宮五重塔などの模型などもあります。特に出雲大社の1/50サイズの模型は見どころで、実物は高さ48mもあったと考えられるので模型でも1mくらいの高さがありました。こんなものが古代にあったかと思うと驚きです。(以前1/10のサイズを観た時は本気で驚きました) こうした木造建築には釘を使わない技法で作られているものもあり、その組み方なども紹介されていました。
参考記事:
くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質 感想前編(東京ステーションギャラリー)
天上の舞 飛天の美 感想前編(サントリー美術館)
東大寺の写真 (奈良編)
メタボリズムの未来都市展 (森美術館)
古事記1300年・出雲大社大遷宮 特別展「出雲―聖地の至宝―」 (東京国立博物館)
日光東照宮 (日光編)
東京スカイツリーの写真(工事中の頃)
<2.超越する美学>
続いては異なる時代の建築を比べて共通項を探すという趣旨のコーナーです。ここでは伊勢神宮と谷口吉生 氏による鈴木大拙館(★こちらで観られます)を比較したりしていました。一見するとそれほど似ていませんが、日本の建築は直線や直角の多い簡潔な形をしているのが共通なのかもしれません。すっきりとして無駄な装飾が無い点に共通項があるように思えました。
他にも佐川美術館、小堀遠州の茶室などもあったかな。佐川美術館の屋根なんかは古代の日本の社殿を彷彿とさせるかも。
<3.安らかなる屋根>
続いては屋根に特徴のある建物のコーナーです。ここにはまず二川幸夫の「日本の民家」の写真集があり、各地の風土に合わせて作られた屋根の様子を観ることができました。この写真集、非常に素晴らしいのでいつか欲しいと思っていますw
また、ここには丹下健三の「国立代々木競技場」や山田守の「日本武道館」などに関する品もありました。武道館の屋根は山田守が富士こそ自然な美しさと考えて富士に見立てて作ったことなんかも紹介されています。そう言われてみると富士山っぽい末広がりになっていますね。
他には妹島和世の「京都の集合住宅」の巨大な模型が目をひきました。複数の家が入り組んでいて屋根が繋がっているような面白い構造です。
参考記事:二川幸夫・建築写真の原点 日本の民家一九五五年 (パナソニック 汐留ミュージアム)
<4.建築としての工芸>
続いては建築としての工芸ということで、工芸的な側面のある建物のコーナーです。まずは黒川紀章による「日本万国博覧会 東芝IHI館」に関する品があり、テトラポッドみたいな形の逆三角形を組み合わせて作った様子が紹介されています。これは最初から解体することを想定していたようで、分解しやすさと移動しやすさが設計に考慮されているようです。全体の見た目も斬新だし、万博で実際に観た人も驚いたのでは?
その先にはブルーノ・タウトが作った工芸品が展示されていました。行灯みたいな竹製のライトスタンドがあって、日本らしいシンプルさとモダンさが融合したような品です。
そしてここには京都の妙喜庵にある「待庵(たいあん)」のレプリカが展示されていました。ここは撮影可能です。

千利休が建てたとされる最古の茶室で、直線の多いシンプルさが美しい建物です。交代制で中に入ることもできました。
こちらは待庵の中の様子

茶室なので結構暗くて狭いですw 2畳くらいですが利休の美学が詰まったような空間です。
こちらも待庵の内部

1組あたり1分くらいなので慌てて変な構図になってますが、次の間も入れました。詫た壁の質感とかもよく再現されています。
この先にあった石山修武の「幻庵からアンモナイト美術館へ」という作品は以前の展示で観た「開拓者の家」に似ているように思えました。また、岡啓輔が12年間自力で建設している自邸も同じ展示で観た気がします。この自邸は普通の今クロートの2/3の水分らしく、複数回の打設が必要とのことでかなり苦労している様子を映像で観ることもできます。
参考記事:日本の家 1945年以降の建築と暮らし感想後編(東京国立近代美術館)
<5.連なる空間>
続いては撮影可能な場所が3箇所もあったコーナーです。20世紀のモダニズム建築の時代になり、重要なのは空間だという考えが強まったそうで、ここには空間の理想像を見出す様子などが展示されていました。
こちらはブックラウンジ。この本を実際に読むこともできます。

お客さんが多くて上手く写真が撮れませんでしたが、ここには丹下健三、長大作、剣持勇などがデザインした椅子もあって座ることもできます。むしろどこかで常設して欲しいくらい洒落たスペースです。
こちらは1/3サイズの丹下健三自邸の模型。結構大きく感じます。

既に現存しないのでこれだけリアルなものを観られるのは貴重な機会かも。日本っぽさとモダニズムを感じさせます。
丹下健三は他にも香川県庁舎に関する品がありました。猪熊弦一郎の壁画なんかもあるらしいので いつか訪れてみたい県庁です。
こちらは齋藤精一+ライゾマティクス・アーキテクチャー「パワー・オブ・スケール」 1分以内なら動画も撮影可能でした。
まるでその場に建物があるような驚きの映像で、原寸大で様々な建物が映し出されました。同潤会アパートとか割と狭いのかも。
他にも寝殿造や桂離宮といった日本古来の空間の使い方に関する品や、東博の法隆寺宝物館、藤本壮介「House N」など見覚えのある作品などもありました。
参考記事:
日本の家 1945年以降の建築と暮らし 感想前編(東京国立近代美術館)
東京国立博物館の案内 (法隆寺宝物館 2018年01月)
<6.開かれた折衷>
続いては洋風建築などと折衷された建物のコーナーです。ここは点数は多くないのですが、特に目を引いたのは現存しない「宮城県会議事堂」と前田健二郎の「大礼記念京都美術館(現在の京都市美術館)」の模型です。京都市美術館は私も訪れたことがある(ブログ休止中)のですが、レンガ風の古典主義だけど銅瓦葺に千鳥破風の屋根が日本っぽくて、遠くから観ても折衷されている様子がよく分かります。内部も折衷されてる感があるので、また訪れてじっくり観たい建物です。
<7.集まって生きる形>
続いては公共の空間に関するコーナーです。ここで目を引いたのは2019年竣工予定の山崎健太郎の「52間の縁側」で、長屋みたいな家が延々と続いている模型となっていました。途中に江戸時代の人の紙人形なんかおいてあるのも面白い演出かなw 完成すると94mにもなるそうで、デイサービスや子供食堂、宿泊施設なんかに使われる予定だそうです。 長屋を公共施設のようにするという発想にも驚かされましたが、考えてみれば確かに長屋は公共的な要素がありますね。
ここには他に日本初の庶民のための学校である旧閑谷学校に関する品や成瀬・猪熊建築設計事務所のLT城西なんかもありました。
参考記事:en[縁]:アート・オブ・ネクサス――第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展 (TOTOギャラリー・間)
<8.発見された日本>
こちらは日本建築と外国人の関わりについてのコーナーです。岡倉天心の意向を受けて平等院鳳凰堂を参考に作った久留正道の「シカゴ万博博覧会日本館 鳳凰殿」や、フランク・ロイド・ライトの旧帝国ホテル、弟子のアントニン・レーモンドの「赤星四郎週末別荘」、MOMAの中庭に建てられた吉村順三の「日本家屋展 松風荘」、同じく吉村順三の「ロックフェラー邸」などに関する品が並んでいました。フランク・ロイド・ライトは日本の浮世絵の展覧会を開いたことがあるようで、浮世絵もあります。また、最近では伊東豊雄の「台中国家歌劇院」(2016年)があり、こちらは洞窟のような曲線と穴が近未来的な雰囲気でした。
参考記事:
アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 (日光編)
【番外編】博物館明治村の写真 後編(2013年12月)
<9.共生する自然>
最後は自然と共生する建築についてのコーナーです。ここには象設計集団+アトリエモビルによる「名護市庁舎」があり、沖縄らしさを感じさせます。私もこの建物の横の道を通り過ぎたことはあるのですが、遠くからでもその変わった造形の雰囲気が独特で、驚いたのをよく覚えています。沖縄の文化などを研究しつつ断熱性や風の道を作り、公共建築とは何か?を考え抜いた傑作と言えると思います。
ここには他に鍾乳洞の洞窟のような石上純也の「House&Restaurant」や厳島神社、屋根に草の生えた藤森照信「ラ コリーナ近江八幡 草屋根」に関する品などもあり、まさに自然と共生している様子が伺えました。
ということで、日本の建築に関するダイジェスト的な内容で今まで観た色々な建築展の記憶が蘇って来ましたが、流石にそれぞれを深掘りしている訳ではないので建築の歴史を知っていないと流れとかは分かりづらいかもしれません。しかし、日本の建築の美味しいところを集めた感じなので、建物にあまり詳しくない方もこれを機に建物の面白さを知ることもできそうな展示です。

【展覧名】
六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展
建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの
【公式サイト】
http://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/japaninarchitecture/index.html
【会場】森美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2018年4月25日(水)~ 9月17日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
意外と空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はタイトルの通り、古今の日本の住宅を取り上げたもので時系列ではなく9つの視点に沿って紹介する内容となっています。森美術館では過去にル・コルビュジエ展や、丹下健三らのメタボリズムを取り上げた展示などスタイル別の建築展を開催してきましたが、今回はそういった展示とは違い広範囲に様々な建物を取り上げていました(今回はメタボリズム展で観られた品もあります) 展覧会の様子については各章ごとに簡単なメモと写真を使って振り返ってみようと思います。なお、撮影可能な場所は5箇所です。
<1.可能性としての木造>
まずは木造のコーナーです。初っ端から凄い木組みがお迎えしてくれました。
北川原温《ミラノ国際博覧会2015日本館 木組インフィニティ》
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。(以下同文)


高さ5.3mもある巨大な木組みです。近くで観ると中々圧倒される迫力がありました。
この章には他に さざえ堂や平等院鳳凰堂、隈研吾 氏の「梼原木橋ミュージアム」、東大寺南大門、古代の出雲大社、メタボリズムに影響を受けた磯崎新の「空中都市渋谷計画」、スカイツリー、東照宮五重塔などの模型などもあります。特に出雲大社の1/50サイズの模型は見どころで、実物は高さ48mもあったと考えられるので模型でも1mくらいの高さがありました。こんなものが古代にあったかと思うと驚きです。(以前1/10のサイズを観た時は本気で驚きました) こうした木造建築には釘を使わない技法で作られているものもあり、その組み方なども紹介されていました。
参考記事:
くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質 感想前編(東京ステーションギャラリー)
天上の舞 飛天の美 感想前編(サントリー美術館)
東大寺の写真 (奈良編)
メタボリズムの未来都市展 (森美術館)
古事記1300年・出雲大社大遷宮 特別展「出雲―聖地の至宝―」 (東京国立博物館)
日光東照宮 (日光編)
東京スカイツリーの写真(工事中の頃)
<2.超越する美学>
続いては異なる時代の建築を比べて共通項を探すという趣旨のコーナーです。ここでは伊勢神宮と谷口吉生 氏による鈴木大拙館(★こちらで観られます)を比較したりしていました。一見するとそれほど似ていませんが、日本の建築は直線や直角の多い簡潔な形をしているのが共通なのかもしれません。すっきりとして無駄な装飾が無い点に共通項があるように思えました。
他にも佐川美術館、小堀遠州の茶室などもあったかな。佐川美術館の屋根なんかは古代の日本の社殿を彷彿とさせるかも。
<3.安らかなる屋根>
続いては屋根に特徴のある建物のコーナーです。ここにはまず二川幸夫の「日本の民家」の写真集があり、各地の風土に合わせて作られた屋根の様子を観ることができました。この写真集、非常に素晴らしいのでいつか欲しいと思っていますw
また、ここには丹下健三の「国立代々木競技場」や山田守の「日本武道館」などに関する品もありました。武道館の屋根は山田守が富士こそ自然な美しさと考えて富士に見立てて作ったことなんかも紹介されています。そう言われてみると富士山っぽい末広がりになっていますね。
他には妹島和世の「京都の集合住宅」の巨大な模型が目をひきました。複数の家が入り組んでいて屋根が繋がっているような面白い構造です。
参考記事:二川幸夫・建築写真の原点 日本の民家一九五五年 (パナソニック 汐留ミュージアム)
<4.建築としての工芸>
続いては建築としての工芸ということで、工芸的な側面のある建物のコーナーです。まずは黒川紀章による「日本万国博覧会 東芝IHI館」に関する品があり、テトラポッドみたいな形の逆三角形を組み合わせて作った様子が紹介されています。これは最初から解体することを想定していたようで、分解しやすさと移動しやすさが設計に考慮されているようです。全体の見た目も斬新だし、万博で実際に観た人も驚いたのでは?
その先にはブルーノ・タウトが作った工芸品が展示されていました。行灯みたいな竹製のライトスタンドがあって、日本らしいシンプルさとモダンさが融合したような品です。
そしてここには京都の妙喜庵にある「待庵(たいあん)」のレプリカが展示されていました。ここは撮影可能です。


千利休が建てたとされる最古の茶室で、直線の多いシンプルさが美しい建物です。交代制で中に入ることもできました。
こちらは待庵の中の様子


茶室なので結構暗くて狭いですw 2畳くらいですが利休の美学が詰まったような空間です。
こちらも待庵の内部


1組あたり1分くらいなので慌てて変な構図になってますが、次の間も入れました。詫た壁の質感とかもよく再現されています。
この先にあった石山修武の「幻庵からアンモナイト美術館へ」という作品は以前の展示で観た「開拓者の家」に似ているように思えました。また、岡啓輔が12年間自力で建設している自邸も同じ展示で観た気がします。この自邸は普通の今クロートの2/3の水分らしく、複数回の打設が必要とのことでかなり苦労している様子を映像で観ることもできます。
参考記事:日本の家 1945年以降の建築と暮らし感想後編(東京国立近代美術館)
<5.連なる空間>
続いては撮影可能な場所が3箇所もあったコーナーです。20世紀のモダニズム建築の時代になり、重要なのは空間だという考えが強まったそうで、ここには空間の理想像を見出す様子などが展示されていました。
こちらはブックラウンジ。この本を実際に読むこともできます。


お客さんが多くて上手く写真が撮れませんでしたが、ここには丹下健三、長大作、剣持勇などがデザインした椅子もあって座ることもできます。むしろどこかで常設して欲しいくらい洒落たスペースです。
こちらは1/3サイズの丹下健三自邸の模型。結構大きく感じます。


既に現存しないのでこれだけリアルなものを観られるのは貴重な機会かも。日本っぽさとモダニズムを感じさせます。
丹下健三は他にも香川県庁舎に関する品がありました。猪熊弦一郎の壁画なんかもあるらしいので いつか訪れてみたい県庁です。
こちらは齋藤精一+ライゾマティクス・アーキテクチャー「パワー・オブ・スケール」 1分以内なら動画も撮影可能でした。
まるでその場に建物があるような驚きの映像で、原寸大で様々な建物が映し出されました。同潤会アパートとか割と狭いのかも。
他にも寝殿造や桂離宮といった日本古来の空間の使い方に関する品や、東博の法隆寺宝物館、藤本壮介「House N」など見覚えのある作品などもありました。
参考記事:
日本の家 1945年以降の建築と暮らし 感想前編(東京国立近代美術館)
東京国立博物館の案内 (法隆寺宝物館 2018年01月)
<6.開かれた折衷>
続いては洋風建築などと折衷された建物のコーナーです。ここは点数は多くないのですが、特に目を引いたのは現存しない「宮城県会議事堂」と前田健二郎の「大礼記念京都美術館(現在の京都市美術館)」の模型です。京都市美術館は私も訪れたことがある(ブログ休止中)のですが、レンガ風の古典主義だけど銅瓦葺に千鳥破風の屋根が日本っぽくて、遠くから観ても折衷されている様子がよく分かります。内部も折衷されてる感があるので、また訪れてじっくり観たい建物です。
<7.集まって生きる形>
続いては公共の空間に関するコーナーです。ここで目を引いたのは2019年竣工予定の山崎健太郎の「52間の縁側」で、長屋みたいな家が延々と続いている模型となっていました。途中に江戸時代の人の紙人形なんかおいてあるのも面白い演出かなw 完成すると94mにもなるそうで、デイサービスや子供食堂、宿泊施設なんかに使われる予定だそうです。 長屋を公共施設のようにするという発想にも驚かされましたが、考えてみれば確かに長屋は公共的な要素がありますね。
ここには他に日本初の庶民のための学校である旧閑谷学校に関する品や成瀬・猪熊建築設計事務所のLT城西なんかもありました。
参考記事:en[縁]:アート・オブ・ネクサス――第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展 (TOTOギャラリー・間)
<8.発見された日本>
こちらは日本建築と外国人の関わりについてのコーナーです。岡倉天心の意向を受けて平等院鳳凰堂を参考に作った久留正道の「シカゴ万博博覧会日本館 鳳凰殿」や、フランク・ロイド・ライトの旧帝国ホテル、弟子のアントニン・レーモンドの「赤星四郎週末別荘」、MOMAの中庭に建てられた吉村順三の「日本家屋展 松風荘」、同じく吉村順三の「ロックフェラー邸」などに関する品が並んでいました。フランク・ロイド・ライトは日本の浮世絵の展覧会を開いたことがあるようで、浮世絵もあります。また、最近では伊東豊雄の「台中国家歌劇院」(2016年)があり、こちらは洞窟のような曲線と穴が近未来的な雰囲気でした。
参考記事:
アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 (日光編)
【番外編】博物館明治村の写真 後編(2013年12月)
<9.共生する自然>
最後は自然と共生する建築についてのコーナーです。ここには象設計集団+アトリエモビルによる「名護市庁舎」があり、沖縄らしさを感じさせます。私もこの建物の横の道を通り過ぎたことはあるのですが、遠くからでもその変わった造形の雰囲気が独特で、驚いたのをよく覚えています。沖縄の文化などを研究しつつ断熱性や風の道を作り、公共建築とは何か?を考え抜いた傑作と言えると思います。
ここには他に鍾乳洞の洞窟のような石上純也の「House&Restaurant」や厳島神社、屋根に草の生えた藤森照信「ラ コリーナ近江八幡 草屋根」に関する品などもあり、まさに自然と共生している様子が伺えました。
ということで、日本の建築に関するダイジェスト的な内容で今まで観た色々な建築展の記憶が蘇って来ましたが、流石にそれぞれを深掘りしている訳ではないので建築の歴史を知っていないと流れとかは分かりづらいかもしれません。しかし、日本の建築の美味しいところを集めた感じなので、建物にあまり詳しくない方もこれを機に建物の面白さを知ることもできそうな展示です。
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六本木周辺の美術館めぐりをした際、六本木ミッドタウンの近く(国立新美術館に向かう方向)にあるブルーボトルコーヒー 六本木カフェでお茶してきました。

【店名】
ブルーボトルコーヒー 六本木カフェ
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
https://bluebottlecoffee.jp/
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13200314/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
六本木駅・乃木坂駅
【近くの美術館】
国立新美術館
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
など
【この日にかかった1人の費用】
450円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
メディアなどでよく取り上げられていたので凄く混んでいるイメージがありましたが、空いていてゆっくりコーヒーを楽しむことがました。いつもそれほど混んでないので、警戒しなくて大丈夫かも。
さて、このカフェは「サードウェーブ」と呼ばれるカフェの1つで、日本に上陸したときには大きな話題になったお店です。(ファーストウェーブは19世紀後半のコーヒーが一般に普及した時期、セカンドウェーブがスタバのようなシアトル系のお店に対して、サードウェーブは2000年頃から高品質なコーヒーを提供するカフェのことを指すようです。)ブルーボトルの創業者は銀座のカフェ・ド・ランブルなんかも参考にしたらしいので、日本の古き良きカフェのような丁寧な抽出が魅力となっています。
ネットではコピペとなった有名なツイートがあって、それのせいで意識高い系なんて言われますが、実際はリーズナブルで価格以上に美味しいコーヒーが楽しめます。
システムとしてはまずカウンターで注文します。

ストレートコーヒーが無いのがちょっと残念ですが、この日のお勧めを詳しく説明してくれたのでそれにしました。注文の際には名前を訊かれて、コーヒーが出来ると名前を呼ばれますw
店内はこんな感じ。持ち帰りもできますがせっかくなのでお店で頂きました。

かなりシンプルですっきりした感じで、あまり内装は好きなタイプではないかなw
この日はお勧めされたスリー・アフリカンズというブレンドにしました。

飲む前からフルーティな香りが漂っていました。飲んでみるとコーヒーとは思えないくらいの軽やかさで、酸味があって苦味はほんのり、後味は爽やかでした。コーヒーを飲みながらカウンターを見てたらすごいじっくり煮だしてくれてる様子が伺えました。
ということで、丁寧に作られたコーヒーを楽しむことができました。これだけの味を500円以下で飲めるのは中々ないと思います。ここは六本木の美術館巡りをする際によく通る道なので、さらっとお茶したい時にも使えると思います。

【店名】
ブルーボトルコーヒー 六本木カフェ
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
https://bluebottlecoffee.jp/
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13200314/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
六本木駅・乃木坂駅
【近くの美術館】
国立新美術館
サントリー美術館
21_21 DESIGN SIGHT
など
【この日にかかった1人の費用】
450円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
メディアなどでよく取り上げられていたので凄く混んでいるイメージがありましたが、空いていてゆっくりコーヒーを楽しむことがました。いつもそれほど混んでないので、警戒しなくて大丈夫かも。
さて、このカフェは「サードウェーブ」と呼ばれるカフェの1つで、日本に上陸したときには大きな話題になったお店です。(ファーストウェーブは19世紀後半のコーヒーが一般に普及した時期、セカンドウェーブがスタバのようなシアトル系のお店に対して、サードウェーブは2000年頃から高品質なコーヒーを提供するカフェのことを指すようです。)ブルーボトルの創業者は銀座のカフェ・ド・ランブルなんかも参考にしたらしいので、日本の古き良きカフェのような丁寧な抽出が魅力となっています。
ネットではコピペとなった有名なツイートがあって、それのせいで意識高い系なんて言われますが、実際はリーズナブルで価格以上に美味しいコーヒーが楽しめます。
システムとしてはまずカウンターで注文します。

ストレートコーヒーが無いのがちょっと残念ですが、この日のお勧めを詳しく説明してくれたのでそれにしました。注文の際には名前を訊かれて、コーヒーが出来ると名前を呼ばれますw
店内はこんな感じ。持ち帰りもできますがせっかくなのでお店で頂きました。

かなりシンプルですっきりした感じで、あまり内装は好きなタイプではないかなw
この日はお勧めされたスリー・アフリカンズというブレンドにしました。

飲む前からフルーティな香りが漂っていました。飲んでみるとコーヒーとは思えないくらいの軽やかさで、酸味があって苦味はほんのり、後味は爽やかでした。コーヒーを飲みながらカウンターを見てたらすごいじっくり煮だしてくれてる様子が伺えました。
ということで、丁寧に作られたコーヒーを楽しむことができました。これだけの味を500円以下で飲めるのは中々ないと思います。ここは六本木の美術館巡りをする際によく通る道なので、さらっとお茶したい時にも使えると思います。
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今日は写真多めです。前々回・前回とご紹介した国立新美術館の展示を観る前に、乃木坂駅のすぐ脇にあるTOTOギャラリー・間で「平田晃久展 Discovering New」を観てきました。この展示では撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
平田晃久展 Discovering New
Akihisa HIRATA:Discovering New
【公式サイト】
https://jp.toto.com/gallerma/ex180524/index.htm
【会場】TOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅など
【会期】2018年5月24日(木)~7月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
結構お客さんはいましたが快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は平田晃久 氏という現在活躍中の建築家の個展となっています。平田晃久 氏は建築を「生成する生命活動の一部」と捉えて植物・生物・気象現象などの有機活動を建築に取り入れているそうで、独特な造形が面白い建物を作られています。今までに何度か作品を目にすることがあったのですが、この展示では まとめて作品を観ることができる機会となっていて、会場も驚きの空間となっていました。正直、解説が難しくて詳細な部分はあまり理解できていないのですが、撮影可能だったので写真を使って簡単に私の感想だけ書いて行こうと思います。
参考記事:
東京都現代美術館の写真 (2012年01月)
ここに、建築は、可能か 第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展 (TOTOギャラリー・間)
六本木アートナイト2013 (後編)
会場の内部はこんな感じ。宙に浮かぶように模型が展示されていて、お互いが結びつくように観えました。

この辺は「からまりしろ」というコンセプトから生まれた作品が並んでいて、「側」「ひだ」「ライン」「階層」という言葉もキーワードとなっています。
こちらは何かのオブジェのように観えた作品。

確かに ひだを用いていますが、これが建築なんでしょうかね?? 初っ端から驚きの造形です。
こちらは階層構造が面白い作品。

これって何階建てって言えるんでしょうかw どこかキュビスム的なものを感じます。
こちらはまるで瓶のような形の建物。

ややぐにゃっとしていて有機的な印象を受けます。こういう独特な造形が面白い。
こちらは先進的な印象を受けた作品。

SF好きとしてはバイオスフィア2を思い出しましたw 幾何学的でありながら緑が生い茂るような未来を感じさせます。
こちらも多重構想となっている面白い造形。

途中で重心がちょっとズレてるように見えるのは気のせいでしょうか。いくつもの建物をがんがん積み上げたようなカオス感がありますw
こちらは緑溢れる住宅。

住居の部分が浮いていたり、家の中にスロープがあったり、側面の模様が目を引いたりと、とにかく変わっていて面白い。南大塚の地に合わせて設計したようです。
こちらは建物と庭が一体化したような作品。

ゆるいカーブがあるためか柔らかい印象を受けます。人工物でありながらどこか自然な造形を感じさせます。
こちらは今回特に面白かった作品。

有機的で貝みたいなイメージ。これは実際にあるなら観てみたい。
外のスペースもこんな感じで沢山の建物が展示されていました。

こちらも様々な造形の品が並んでいます。
これは今回のポスターの作品じゃないかな。台北で進行中の建物のようです。

建物の中を縦横無尽に植物が這うように一体化しているのが爽やかな印象です。
上階には木で出来た謎の構造物がありました。

木のぬくもりがありながら宇宙船のような流れを感じるデザインで驚きました。
この木の構造体の中に入ることもできます。複雑な形をしていました。

ここでは代表作の「太田市美術館・図書館」の映像が流れていました。外観も内観も楽しげな雰囲気なので一度は訪れてみたい所です。
ということで、コンセプトや解説を理解するのは中々難しかったですが、ご紹介した作品以外にも目を引く品はあって素人目にも面白い造形の建物の模型が並んでいました。 ここは無料で観られるし国立新美術館やサントリー美術館にも近いので、美術館めぐりでハシゴしてみるのもよろしいかと思います。

【展覧名】
平田晃久展 Discovering New
Akihisa HIRATA:Discovering New
【公式サイト】
https://jp.toto.com/gallerma/ex180524/index.htm
【会場】TOTOギャラリー・間(TOTO GALLERY・MA)
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅など
【会期】2018年5月24日(木)~7月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
結構お客さんはいましたが快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は平田晃久 氏という現在活躍中の建築家の個展となっています。平田晃久 氏は建築を「生成する生命活動の一部」と捉えて植物・生物・気象現象などの有機活動を建築に取り入れているそうで、独特な造形が面白い建物を作られています。今までに何度か作品を目にすることがあったのですが、この展示では まとめて作品を観ることができる機会となっていて、会場も驚きの空間となっていました。正直、解説が難しくて詳細な部分はあまり理解できていないのですが、撮影可能だったので写真を使って簡単に私の感想だけ書いて行こうと思います。
参考記事:
東京都現代美術館の写真 (2012年01月)
ここに、建築は、可能か 第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展 (TOTOギャラリー・間)
六本木アートナイト2013 (後編)
会場の内部はこんな感じ。宙に浮かぶように模型が展示されていて、お互いが結びつくように観えました。

この辺は「からまりしろ」というコンセプトから生まれた作品が並んでいて、「側」「ひだ」「ライン」「階層」という言葉もキーワードとなっています。
こちらは何かのオブジェのように観えた作品。

確かに ひだを用いていますが、これが建築なんでしょうかね?? 初っ端から驚きの造形です。
こちらは階層構造が面白い作品。

これって何階建てって言えるんでしょうかw どこかキュビスム的なものを感じます。
こちらはまるで瓶のような形の建物。

ややぐにゃっとしていて有機的な印象を受けます。こういう独特な造形が面白い。
こちらは先進的な印象を受けた作品。

SF好きとしてはバイオスフィア2を思い出しましたw 幾何学的でありながら緑が生い茂るような未来を感じさせます。
こちらも多重構想となっている面白い造形。

途中で重心がちょっとズレてるように見えるのは気のせいでしょうか。いくつもの建物をがんがん積み上げたようなカオス感がありますw
こちらは緑溢れる住宅。

住居の部分が浮いていたり、家の中にスロープがあったり、側面の模様が目を引いたりと、とにかく変わっていて面白い。南大塚の地に合わせて設計したようです。
こちらは建物と庭が一体化したような作品。

ゆるいカーブがあるためか柔らかい印象を受けます。人工物でありながらどこか自然な造形を感じさせます。
こちらは今回特に面白かった作品。

有機的で貝みたいなイメージ。これは実際にあるなら観てみたい。
外のスペースもこんな感じで沢山の建物が展示されていました。

こちらも様々な造形の品が並んでいます。
これは今回のポスターの作品じゃないかな。台北で進行中の建物のようです。

建物の中を縦横無尽に植物が這うように一体化しているのが爽やかな印象です。
上階には木で出来た謎の構造物がありました。

木のぬくもりがありながら宇宙船のような流れを感じるデザインで驚きました。
この木の構造体の中に入ることもできます。複雑な形をしていました。

ここでは代表作の「太田市美術館・図書館」の映像が流れていました。外観も内観も楽しげな雰囲気なので一度は訪れてみたい所です。
ということで、コンセプトや解説を理解するのは中々難しかったですが、ご紹介した作品以外にも目を引く品はあって素人目にも面白い造形の建物の模型が並んでいました。 ここは無料で観られるし国立新美術館やサントリー美術館にも近いので、美術館めぐりでハシゴしてみるのもよろしいかと思います。
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前回に引き続き国立新美術館の「ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか」 についてです。前半は2章の途中まででしたが、今日は2章の残りと3章についてです。まずは概要のおさらいです。
前編はこちら

【展覧名】
ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか
【公式サイト】
http://www.ntv.co.jp/louvre2018/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/louvre2018/
【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅・六本木駅
【会期】2018年5月30日(水)~2018年9月3日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半は「幕間劇」というコーナーが狭くて作品が小さめなので結構混雑していましたが、それ以外の場所は快適に鑑賞することができました。
参考記事:
【番外編 フランス旅行】 ルーヴル美術館
ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり- 感想前編(東京都美術館)
ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり- 感想後編(東京都美術館)
<第2章 権力の顔>
前編に引き続き、この章は権力の顕示の為に作られた作品のコーナーです。
[幕間劇1 持ち運ばれ、拡散する肖像-古代の硬化から17世紀ムガル朝インドのミニアチュールまで]
ここにはコインやカメオなどが展示されていました。こうした品には権力者の顔が表され、裏面にはモットーや信念などが刻まれたようです。カメオは親しい人への贈り物にもなったのだとか。他には指輪があり、これらはお守りとしての役割もあったようです。いずれの品も大体は横顔で、プロフィールと呼ばれる構図となっていました。
少し先にはちょっと珍しいインドのムガル帝国の「肖像画と絵画のアルバム(画貼)」という品もありました。こちらはタイトル通りアルバムのように様々な肖像が写実的に描かれていて、インドらしい生っぽさも感じられました。2枚対で横顔が描かれているものもあり、表現方法にはヨーロッパからの影響もあるようでした。
66 エジプト・前2世紀後半 「クレオパトラ2世、またはクレオパトラ3世の肖像」
こちらはよく知られるクレオパトラ7世の先祖であるクレオパトラ2世か、その娘の3世を描いた作品です。非常に厳しい表情で口を結んでいるのが印象的で、ちょっと気難しい人のように見えます。解説によると、この頃の宮廷は陰謀が渦巻いていたそうで、その中を逞しく生き抜いたのが表されているようです。また、この頃の肖像は一族の表情を強調しているそうで、母も娘も似た姿で描かれたので見分けがつかないとのことでした。美人で名高いクレオパトラの先祖がこうした顔で描かれているというのは意外で面白かったです。
この辺は女性の権力者の作品が並び、近くにはマリー・アントワネットの胸像をセーヴルのピスキュイ彫刻で作った作品もありました。また、マリー・アントワネットの娘のマリー=テレーズ=シャルロット・ド・フランスの肖像(ジャン・グロの作品)もあり、ブルボン朝時代の王妃として威厳ある姿となっていました。
72 イタリア・1世紀 「ホメロスの架空の肖像」
こちらはトロイア戦争について書いたイリアスとオデッセイアの作者であるホメロスの胸像です。ホメロスの顔なんて分かるの?と驚いたのですが、ホメロスは実在したかも定かでない人物なので、これは想像で作られたもののようです。もじゃもじゃの髭で盲目だったという伝承になぞらえて目は独特な表現となっています。想像とは言え 作家然とした雰囲気が伝わってくるのですが、それはこの作品が作家や哲学者はこう表すべきというコードに従って作った為のようでした。作家はこういう姿、皇帝はこういう姿というコードがそのまま現代人が持つイメージにも繋がっているのかもしれませんね。
[幕間劇2 持ち運ばれ、拡散する肖像-フランス国王ルイ18世のミニアチュール・コレクション]
こちらはカメオのような小さな肖像が並ぶコーナーです。ここも小部屋で作品が小さいので若干混んでいました。
79-81 「国王の嗅ぎタバコ入れの小箱」「国王の嗅ぎタバコ入れのためのミニアチュール48点」「ルイ18世の肖像」 ★こちらで観られます
こちらは楕円形のカメオのようなものに描かれたフランスの君主や王族、聖職者などの肖像が48枚並んでいました。豪華な嗅ぎタバコ入れに入っていて、ちょっとメンコみたいなw 理想化されたような姿で描かれていて、優美な姿の人が多かったように思います。
<第3章 コードとモード>
3章は前章にもあったコード(伝統的な型)と共にモード(流行)を取り入れた肖像のコーナーです。ルネサンス以降、肖像を所有する人とモデルの裾野がブルジョア階級からさらに下の階層へと広がり、個人的な記念や贈り物など私的な用途の為に制作されたようです。それらは上流階級の肖像表現の伝統的な「コード」を踏襲しつつ、一方で各時代の地域・社会に特有の「モード」が反映されたようです。ここにはそうしたルネサンスから19世紀の作品が並んでいました。
82 サンドロ・ボッティチェッリと工房 「赤い縁なし帽をかぶった若い男性の肖像」 ★こちらで観られます
こちらは赤い帽子の男性がやや斜めを向いた姿で描かれた作品です。ちょっと平面的な感じもしますが、陰影もあって写実的に描かれていて 目の辺りにボッティチェリらしい特徴を感じます。昔は肖像と言えば横向きの「プロフィール」が一般的な構図だったのですが、次第にこうした正面を向くようになっていったようです(ルネサンス期でも横向きの肖像はよく観ます) 赤毛の青年の凛々しい姿で、富裕層らしい気品が感じられる人物像でした。
86 ニコラ・ド・ラルジリエール 「パリ市参事会員ユーグ・デスノの肖像」
こちらは巻髪のカツラを付けた赤い衣の男性で、この衣は司法官であることを示しているそうです。肖像ではこうした服装や装飾品で身分を表すのはよくあることで、手には紙を持って職業をアピールするかのように描かれています。さらに背景の小物などはその人の教養を示したりするようで、肖像1枚からでも色々とその人について洞察することができるようでした。(とは言え、パっとみたらカツラを付けたオッサンにしか観えないですがw)コードに従っていると分かることもあるんですね。
この隣には「肖像(通称:フュズリエ爺さん)」という軍服のような姿の男性像がありました。こちらは逆に広く使われていた制服で描かれているので、何の職業の人物か特定できないようでした。
91 ヴェロネーゼ(本名パオロ・カリアーリ) 「女性の肖像(通称:美しきナーニ)」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている目玉作品で、胸に手を当てた青い服の金髪の女性が描かれています。身分の高そうな格好をしていて恐らくヴェネツィアの貴族の理想像と考えられているようですが、誰を描いたかは分かっていないようです。(元はナーニ家が所蔵していたのでナーニと呼ばれたのですが、後に無関係と判明したようです) 胸に手を当てるのは夫への忠誠を示し、金髪はこの時代の美人の条件だったようで、貞淑な印象を受けます。服装も当時の流行を反映しているようで、質感豊かに描かれているのも見どころです。また、この肖像は何処から観ても目線が合わないと言われていて、角度を変えながら観てみましたが確かにどこを観ているのか分からない不思議な目をしていました。赤みがかった頬、逆に影のついた体など緻密な表現も見事で、ルネサンスの傑作の1つであるのは間違いないと思います。
93 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「ヴィーナスとキューピッド」 ★こちらで観られます
こちらは17世紀オランダの服を着た女性と、頬を寄せた子供を描いた作品です。子供には羽が生えていてキューピッドの姿のようになっているので、母親はヴィーナスとも解釈できそうです(キューピッドはヴィーナスの子供) しかしこの女性はレンブラントの内縁の妻として後半生を支えたヘンドリッキェをモデルにしているようで、子供は娘のコルネリアと考えられているそうです。(レンブラントは他にもこうした身近な人を使って神話を題材にした作品をいくつか残しています。) 暗い中に明るく浮き上がるような明暗表現は流石で、慈愛に満ちた表情や仲睦まじい様子が微笑ましい作品となっていました。
95 エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン 「エカチェリーナ・ヴァシリエヴナ・スカヴロンスキー伯爵夫人の肖像」 ★こちらで観られます
これは女性画家のル・ブランによる作品で、こちらを観て微笑む青い服の女性が描かれています。モデルは美貌で知られた女性らしく、巻き髪でやや首を傾げて魅力的な雰囲気があります。瑞々しい肌や緻密な表現で、モデルの美しさを存分にあらわしているようでした。この展覧会で一番美人かもw
この隣にはオーギュスタン・パジューによるル・ブランの肖像もありました。ル・ブラン自身も美人です。
参考記事:
マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想前編(三菱一号館美術館)
マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想後編(三菱一号館美術館)
107 ジャン=フランソワ・ガルヌレ 「画家の息子アンブロワーズ・ルイ・ガルヌレ」
こちらは毛の長い猫を抱いて笑っている少年の肖像です。髪が長くて、一見すると女の子のように見えるイケメンかなw 赤い服を着ているせいか明るい色合いで、幸福そうな雰囲気が画面にあふれていました。猫もおとなしくしていて可愛い作品です。
106 フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 「第2代メングラーナ男爵、ルイス・マリア・デ・シストゥエ・イ・マルティネス」 ★こちらで観られます
こちらは犬を連れた男爵の姿を描いた作品ですが、男爵と言っても2歳8ヶ月の小さい男の子です。フリルのようなものをつけていて身分の高さを感じますが、あどけない雰囲気があるのは年相応かな。犬は猟の嗜みの為の存在のようですが、子供にとっては良い遊び相手のようで子犬のように小さく可愛らしく描かれていました。画面に背景の部分が多く、肖像が中央に寄っている為 ちょこんとした感じに見えるのも面白い構図でした。
参考記事:
プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想前編(国立西洋美術館)
プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想後編(国立西洋美術館)
108 フランツ・クサファー・メッサーシュミット 「性格表現の頭像」 ★こちらで観られます
こちらはめちゃくちゃ顔をしかめている禿げたオッサンの胸像ですw 梅干しを食べた時のような何とも個性的な表情ですが、よく観ると口をテープで止めているのが分かります。これは妄想の病と戦っているとのことで、思ったより深刻な理由でこうした顔をしているようです(失礼w) 作者は表情の研究をしていたようで、観相学からの影響もあるようでした。とにかくインパクトのある作品なので、記憶に残りそうな感じでした。
<エピローグ アルチンボルド―肖像の遊びと変容>
最後は16世紀後半に活躍した奇才の画家ジュゼッペ・アルチンボルドの「四季」から春と秋の2点が並んでいました。アルチンボルドについては昨年の西洋美術館の展示の記事を参照して頂ければと思いますが、寄せ絵のような肖像を描くことで皇帝の権威を示す狙いもあり、単なる奇想ではなく時代的な背景も面白い作品です。
参考記事:アルチンボルド展 (国立西洋美術館)
ジュゼッペ・アルチンボルド「春」「秋」 ★こちらで観られます
いずれも左向きの肖像で、春は沢山の花々、秋はカボチャ・洋梨・葡萄など様々な秋の作物を組み合わせて人の顔のようにしています。世界各国の花が描かれているのは世界中の花を観られる機会があったことを示すので、当時の神聖ローマ帝国の強大な国力も伺えるようでした。何度観ても発想の面白い作品です。
ということで、様々な肖像を多面的に観ることができる展示となっていました。これだけの揃えは流石はルーヴル美術館と言った感じですが、ダイジェスト的な感じだと思います。この展示を観れば肖像の歴史や各時代の表現も分かると思いますので、幅広い人が楽しめそうです。会期が長めですが、会期末はいつも混雑するので気になる方はお早めにどうぞ。
前編はこちら


【展覧名】
ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか
【公式サイト】
http://www.ntv.co.jp/louvre2018/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/louvre2018/
【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅・六本木駅
【会期】2018年5月30日(水)~2018年9月3日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半は「幕間劇」というコーナーが狭くて作品が小さめなので結構混雑していましたが、それ以外の場所は快適に鑑賞することができました。
参考記事:
【番外編 フランス旅行】 ルーヴル美術館
ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり- 感想前編(東京都美術館)
ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり- 感想後編(東京都美術館)
<第2章 権力の顔>
前編に引き続き、この章は権力の顕示の為に作られた作品のコーナーです。
[幕間劇1 持ち運ばれ、拡散する肖像-古代の硬化から17世紀ムガル朝インドのミニアチュールまで]
ここにはコインやカメオなどが展示されていました。こうした品には権力者の顔が表され、裏面にはモットーや信念などが刻まれたようです。カメオは親しい人への贈り物にもなったのだとか。他には指輪があり、これらはお守りとしての役割もあったようです。いずれの品も大体は横顔で、プロフィールと呼ばれる構図となっていました。
少し先にはちょっと珍しいインドのムガル帝国の「肖像画と絵画のアルバム(画貼)」という品もありました。こちらはタイトル通りアルバムのように様々な肖像が写実的に描かれていて、インドらしい生っぽさも感じられました。2枚対で横顔が描かれているものもあり、表現方法にはヨーロッパからの影響もあるようでした。
66 エジプト・前2世紀後半 「クレオパトラ2世、またはクレオパトラ3世の肖像」
こちらはよく知られるクレオパトラ7世の先祖であるクレオパトラ2世か、その娘の3世を描いた作品です。非常に厳しい表情で口を結んでいるのが印象的で、ちょっと気難しい人のように見えます。解説によると、この頃の宮廷は陰謀が渦巻いていたそうで、その中を逞しく生き抜いたのが表されているようです。また、この頃の肖像は一族の表情を強調しているそうで、母も娘も似た姿で描かれたので見分けがつかないとのことでした。美人で名高いクレオパトラの先祖がこうした顔で描かれているというのは意外で面白かったです。
この辺は女性の権力者の作品が並び、近くにはマリー・アントワネットの胸像をセーヴルのピスキュイ彫刻で作った作品もありました。また、マリー・アントワネットの娘のマリー=テレーズ=シャルロット・ド・フランスの肖像(ジャン・グロの作品)もあり、ブルボン朝時代の王妃として威厳ある姿となっていました。
72 イタリア・1世紀 「ホメロスの架空の肖像」
こちらはトロイア戦争について書いたイリアスとオデッセイアの作者であるホメロスの胸像です。ホメロスの顔なんて分かるの?と驚いたのですが、ホメロスは実在したかも定かでない人物なので、これは想像で作られたもののようです。もじゃもじゃの髭で盲目だったという伝承になぞらえて目は独特な表現となっています。想像とは言え 作家然とした雰囲気が伝わってくるのですが、それはこの作品が作家や哲学者はこう表すべきというコードに従って作った為のようでした。作家はこういう姿、皇帝はこういう姿というコードがそのまま現代人が持つイメージにも繋がっているのかもしれませんね。
[幕間劇2 持ち運ばれ、拡散する肖像-フランス国王ルイ18世のミニアチュール・コレクション]
こちらはカメオのような小さな肖像が並ぶコーナーです。ここも小部屋で作品が小さいので若干混んでいました。
79-81 「国王の嗅ぎタバコ入れの小箱」「国王の嗅ぎタバコ入れのためのミニアチュール48点」「ルイ18世の肖像」 ★こちらで観られます
こちらは楕円形のカメオのようなものに描かれたフランスの君主や王族、聖職者などの肖像が48枚並んでいました。豪華な嗅ぎタバコ入れに入っていて、ちょっとメンコみたいなw 理想化されたような姿で描かれていて、優美な姿の人が多かったように思います。
<第3章 コードとモード>
3章は前章にもあったコード(伝統的な型)と共にモード(流行)を取り入れた肖像のコーナーです。ルネサンス以降、肖像を所有する人とモデルの裾野がブルジョア階級からさらに下の階層へと広がり、個人的な記念や贈り物など私的な用途の為に制作されたようです。それらは上流階級の肖像表現の伝統的な「コード」を踏襲しつつ、一方で各時代の地域・社会に特有の「モード」が反映されたようです。ここにはそうしたルネサンスから19世紀の作品が並んでいました。
82 サンドロ・ボッティチェッリと工房 「赤い縁なし帽をかぶった若い男性の肖像」 ★こちらで観られます
こちらは赤い帽子の男性がやや斜めを向いた姿で描かれた作品です。ちょっと平面的な感じもしますが、陰影もあって写実的に描かれていて 目の辺りにボッティチェリらしい特徴を感じます。昔は肖像と言えば横向きの「プロフィール」が一般的な構図だったのですが、次第にこうした正面を向くようになっていったようです(ルネサンス期でも横向きの肖像はよく観ます) 赤毛の青年の凛々しい姿で、富裕層らしい気品が感じられる人物像でした。
86 ニコラ・ド・ラルジリエール 「パリ市参事会員ユーグ・デスノの肖像」
こちらは巻髪のカツラを付けた赤い衣の男性で、この衣は司法官であることを示しているそうです。肖像ではこうした服装や装飾品で身分を表すのはよくあることで、手には紙を持って職業をアピールするかのように描かれています。さらに背景の小物などはその人の教養を示したりするようで、肖像1枚からでも色々とその人について洞察することができるようでした。(とは言え、パっとみたらカツラを付けたオッサンにしか観えないですがw)コードに従っていると分かることもあるんですね。
この隣には「肖像(通称:フュズリエ爺さん)」という軍服のような姿の男性像がありました。こちらは逆に広く使われていた制服で描かれているので、何の職業の人物か特定できないようでした。
91 ヴェロネーゼ(本名パオロ・カリアーリ) 「女性の肖像(通称:美しきナーニ)」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている目玉作品で、胸に手を当てた青い服の金髪の女性が描かれています。身分の高そうな格好をしていて恐らくヴェネツィアの貴族の理想像と考えられているようですが、誰を描いたかは分かっていないようです。(元はナーニ家が所蔵していたのでナーニと呼ばれたのですが、後に無関係と判明したようです) 胸に手を当てるのは夫への忠誠を示し、金髪はこの時代の美人の条件だったようで、貞淑な印象を受けます。服装も当時の流行を反映しているようで、質感豊かに描かれているのも見どころです。また、この肖像は何処から観ても目線が合わないと言われていて、角度を変えながら観てみましたが確かにどこを観ているのか分からない不思議な目をしていました。赤みがかった頬、逆に影のついた体など緻密な表現も見事で、ルネサンスの傑作の1つであるのは間違いないと思います。
93 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「ヴィーナスとキューピッド」 ★こちらで観られます
こちらは17世紀オランダの服を着た女性と、頬を寄せた子供を描いた作品です。子供には羽が生えていてキューピッドの姿のようになっているので、母親はヴィーナスとも解釈できそうです(キューピッドはヴィーナスの子供) しかしこの女性はレンブラントの内縁の妻として後半生を支えたヘンドリッキェをモデルにしているようで、子供は娘のコルネリアと考えられているそうです。(レンブラントは他にもこうした身近な人を使って神話を題材にした作品をいくつか残しています。) 暗い中に明るく浮き上がるような明暗表現は流石で、慈愛に満ちた表情や仲睦まじい様子が微笑ましい作品となっていました。
95 エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン 「エカチェリーナ・ヴァシリエヴナ・スカヴロンスキー伯爵夫人の肖像」 ★こちらで観られます
これは女性画家のル・ブランによる作品で、こちらを観て微笑む青い服の女性が描かれています。モデルは美貌で知られた女性らしく、巻き髪でやや首を傾げて魅力的な雰囲気があります。瑞々しい肌や緻密な表現で、モデルの美しさを存分にあらわしているようでした。この展覧会で一番美人かもw
この隣にはオーギュスタン・パジューによるル・ブランの肖像もありました。ル・ブラン自身も美人です。
参考記事:
マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想前編(三菱一号館美術館)
マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想後編(三菱一号館美術館)
107 ジャン=フランソワ・ガルヌレ 「画家の息子アンブロワーズ・ルイ・ガルヌレ」
こちらは毛の長い猫を抱いて笑っている少年の肖像です。髪が長くて、一見すると女の子のように見えるイケメンかなw 赤い服を着ているせいか明るい色合いで、幸福そうな雰囲気が画面にあふれていました。猫もおとなしくしていて可愛い作品です。
106 フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 「第2代メングラーナ男爵、ルイス・マリア・デ・シストゥエ・イ・マルティネス」 ★こちらで観られます
こちらは犬を連れた男爵の姿を描いた作品ですが、男爵と言っても2歳8ヶ月の小さい男の子です。フリルのようなものをつけていて身分の高さを感じますが、あどけない雰囲気があるのは年相応かな。犬は猟の嗜みの為の存在のようですが、子供にとっては良い遊び相手のようで子犬のように小さく可愛らしく描かれていました。画面に背景の部分が多く、肖像が中央に寄っている為 ちょこんとした感じに見えるのも面白い構図でした。
参考記事:
プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想前編(国立西洋美術館)
プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想後編(国立西洋美術館)
108 フランツ・クサファー・メッサーシュミット 「性格表現の頭像」 ★こちらで観られます
こちらはめちゃくちゃ顔をしかめている禿げたオッサンの胸像ですw 梅干しを食べた時のような何とも個性的な表情ですが、よく観ると口をテープで止めているのが分かります。これは妄想の病と戦っているとのことで、思ったより深刻な理由でこうした顔をしているようです(失礼w) 作者は表情の研究をしていたようで、観相学からの影響もあるようでした。とにかくインパクトのある作品なので、記憶に残りそうな感じでした。
<エピローグ アルチンボルド―肖像の遊びと変容>
最後は16世紀後半に活躍した奇才の画家ジュゼッペ・アルチンボルドの「四季」から春と秋の2点が並んでいました。アルチンボルドについては昨年の西洋美術館の展示の記事を参照して頂ければと思いますが、寄せ絵のような肖像を描くことで皇帝の権威を示す狙いもあり、単なる奇想ではなく時代的な背景も面白い作品です。
参考記事:アルチンボルド展 (国立西洋美術館)
ジュゼッペ・アルチンボルド「春」「秋」 ★こちらで観られます
いずれも左向きの肖像で、春は沢山の花々、秋はカボチャ・洋梨・葡萄など様々な秋の作物を組み合わせて人の顔のようにしています。世界各国の花が描かれているのは世界中の花を観られる機会があったことを示すので、当時の神聖ローマ帝国の強大な国力も伺えるようでした。何度観ても発想の面白い作品です。
ということで、様々な肖像を多面的に観ることができる展示となっていました。これだけの揃えは流石はルーヴル美術館と言った感じですが、ダイジェスト的な感じだと思います。この展示を観れば肖像の歴史や各時代の表現も分かると思いますので、幅広い人が楽しめそうです。会期が長めですが、会期末はいつも混雑するので気になる方はお早めにどうぞ。
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先週の土曜日に六本木の国立新美術館で「ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか」を観てきました。非常に多岐にわたる品が並び、見どころの多い内容となっていましたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか
【公式サイト】
http://www.ntv.co.jp/louvre2018/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/louvre2018/
【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅・六本木駅
【会期】2018年5月30日(水)~2018年9月3日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
お客さんは結構いましたが、大きい作品も多い為か 意外にもそれほど混むこともなく ほぼ自分のペースで観ることができました。
さて、今回の展示は肖像をテーマにルーヴル美術館の多岐に渡るコレクションを紹介する内容となっています。肖像と一言で言ってもその役目は様々あり時代によって多様な表現で制作されてきたようで、この展示ではそうした役割ごとに章分けされていました。詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
【番外編 フランス旅行】 ルーヴル美術館
ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり- 感想前編(東京都美術館)
ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり- 感想後編(東京都美術館)
<プロローグ マスク―肖像の起源>
まずは肖像の起源についてです。エジプトでは来世での生を死者に確約する為にマスクを作ったそうで、新王国時代のマスクは理想化された姿として表され個人の容貌を反映したものではないようです。しかし1~3世紀頃になるとミイラの顔は板に描かれた肖像で覆われるようになったそうで、「ファイユームの肖像画」と通称されるタイプの肖像では 写実性が重視され故人の生前の容貌が表されようです。ここにはそうしたそれぞれの特徴を表す2点の肖像が並んでいました。
1 エジプト新王国時代 「棺に由来するマスク」 ★こちらで観られます
こちらは黒い瞳に青い縁取りの眼と青い眉を持つマスクです。瞳が大きく鼻が高いので、現在の基準から観ても美形と言えそうな顔つきです。バランスの良い顔は昔から共通した美形の特徴なのかな? 確かに理想化されているような雰囲気でした。
2 エジプト2世紀後半 「女性の肖像」 ★こちらで観られます
こちらは先程のマスクから1500年ほど後の時代の品で、板に若い女性の顔が描かれています。短い黒髪で、濃いめできりっとした眉が特徴的かな。こういう顔の女性は中東に今でもいそうなくらいリアルさがあって、目にも生気が感じられました。同じエジプトでも時代が変われば表現も全然違うんですね。
<第1章 記憶のための肖像>
続いては「人の存在を記憶する」という肖像の最も古い役割についてのコーナーで、古代から19世紀までの品が並んでいます。古代の地中海世界では祈願成就や信仰の証として自身の彫像などを奉納し、信心の記憶として残す習慣があったそうです。また、葬礼美術として亡くなった人や親族の記憶を残すために肖像が作られたそうで、その習慣はキリスト教が普及しても続いたようです。ここにはそうした品々が並んでいました。
6 ギリシャ・アテネ 前400年頃 「ソシッポスから英雄テセウスに捧げられた奉納浮彫り」
こちらは石版に浮き彫りで表された3人の人物像です。そのうちの1人はアテナイの英雄テセウスらしく、裸体で表され筋肉質な均整が取れた体つきとなっています。その右にいるのは手を挙げて挨拶するアテナイ市民のソシッポスとその息子らしく、この2人は衣のドレープが見事に表されていました。解説によると、こうした神々・英雄に挨拶する信者の浮き彫りは神殿に奉納されたそうです。結構出来が良いので、腕の良い職人がいたんでしょうかね?
この近くには他にもエジプトやシュメールの品もありました。文化や時代も様々ですが、肖像を作るというのはどんな文化にも共通するものなのかもしれません。
11-13 「墓碑肖像」
こちらは墓碑に浮き彫りになった4~7人くらいの人物の顔です。似たような顔をしているのですが、これは家族である為のようで、墓碑には妻の思い出の為に等と書いてあるそうです。割と素朴な感じの仕上がりですが、一族を大切にしていたのが伝わってきました。
この辺には他にもエジプトやギリシャの墓碑、女神像やモザイク画など様々な表現による品がありました。
16 イタリア150~170年頃 「狩りの女神ディアナとして表された若い娘の肖像」
こちらは大理石で出来た等身大の女性像で、弓を持って犬を連れた女神ディアナとして表されています。ディアナは処女神であり、若くして死んだ故人に永遠の純血を授けようと神の姿で作られているようです。起伏に富んだ見事な造形で、滑らかな大理石は艷やかで生気すら感じさせました。
この隣にはエロス(キューピッド)やヘラクレスとして表された子供の像などもありました。
21 オーベルニュ地方1510~1530年頃 「ブルボン公爵夫人、次いでブーローニュおよびオーベルニュ伯爵夫人ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム」
こちらは1511年に亡くなったと墓碑に記された女性の等身大の像です。ベールを被っていて顔は骸骨みたいで、体には大きな虫(ウジ虫?)が這い回るような感じとなっていて、お腹からは大腸もはみ出しています。まるでゾンビみたいでインパクトのある像ですが、こうした像はペストの脅威にさらされた14~16世紀の西ヨーロッパで流行ったそうで、「トランジ」と呼ばれるそうです。この像には対になる華やかに装った横臥像が作られたらしく、それによって美しかった頃の姿を残すのに対して、こうした像は罪を犯した肉体を罰することで救われるという意味があるようです。また、肉体が朽ちてもキリストによって永遠の命を得られると考えたそうで、わざわざ生前に死んでから○日後の姿を作ってくれとか頼むこともあったのだとか。ちょっと特異な風習にも思えますが、中々驚きだったので特に印象に残る作品でした。
23 ジャック=ルイ・ダヴィッドと工房 「マラーの死」 ★こちらで観られます
こちらはダヴィッド自身による同名作品のレプリカのうちの1枚です。モデルはフランス革命の頃のジャコバン派の指導者ジャン=ポール・マラーで、風呂で湯に浸かっている時に刺殺されたのを題材にしています。風呂にはテーブルのような蓋があり、裸体の男性が手紙とペンを手に持って胸から血を出して琴切れたように項垂れています。ダヴィッドらしい確かな描写とポーズがドラマチックな感じで、明暗の付け方も見事でした。これは以前観たことがありますが(それもレプリカかもしれませんが)、ダヴィッド好きには嬉しい作品です。今回の展示でも見どころの1つだと思います。
<第2章 権力の顔>
続いては権力の顕示の為に作られた作品のコーナーです。こうした作品には表現の規範(コード)があったようで、それを用いながら彫刻や絵画だけでなく貨幣やメダル、嗅ぎたばこの箱まで多岐に渡る媒体で表され権力を広く知らしめたようです。ここにはそうした権力者達の肖像が並んでいました。
29 イタリア2世紀前半(前340~330年頃にリュシッポスに制作されたブロンズの原作に基づく) 「アレクサンドロス大王の肖像、通称アザラのヘルメス柱」 ★こちらで観られます
こちらはアレクサンドロス大王の彫像で、元はアレクサンドロスが自身の像の制作を許した3人のうちの1人であるリュシッポスが作ったものをローマ時代に模刻したようです。リュシッポスはギリシャのクラシック期を代表する彫刻家だったようで、(模刻とは言え)この作品でも特徴的な姿をつぶさに伝えてくれます。前髪を逆立てたソバージュ気味の髪で、彫りの深い顔立ちをしています。瞳は表されていませんでしたが、理知的かつ緊張感のある面持ちとなっていました。こうした像で現代の我々もアレクサンドロスの姿を知ることが出来るので、まさに権力を知らしめる為の芸術ですね。
この近くにはエジプトのファラオやハムラビ王とされる像などもありました。
32 イタリア40年、50~60年頃 「トガをまとったティベリウス帝の彫像」
こちらはトガという布をまとったローマ皇帝ティベリウスの彫像です。ローマ市民としての姿で表されているようで、演説をしているところらしく 左手に巻物を持っているのは演説の原稿みたいなものかな。等身大より一回りくらい大きいので威厳を感じ、差し出した手など動きのあるポーズとなっているので迫力もありました。衣の下の胸筋がうっすら盛り上がってたりして芸が細かい…。皇帝らしい見事な彫像でした。
この近くには神官としての初代皇帝アウグストゥスや、ハドリアヌス帝、悪名高いカラカラ帝の像なんかもありました。割とみんな巻物を持ってるようです。
41 セーヴル王立磁器製作所 ジャン=バティスト・ピガールの原作に基づく 「ローマ皇帝として表されたルイ15世」
こちらはセーヴルの白磁で出来た彫刻(ピスキュイ彫刻)で、ローマ皇帝のように月桂冠を被って鎧を着たルイ15世が表されています。剣を携え右手を出すポーズで威厳を感じさせました。
また、この近くにはイアサント・リゴーの有名な作品の半分サイズの複製である「聖別式の正装のルイ14世」や、ジャック・サラザン「5歳のフランス国王ルイ14世」といった作品もありました。5歳でも古代ローマの皇帝のような格好で表されていて、ローマ皇帝から続く正統な統治者として表されている様子が伺えます。
参考記事:フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年 (サントリー美術館)
43 アントワーヌ=ジャン・グロ 「アルコレ橋のボナパルト(1796年11月17日)」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、ナポレオン・ボナパルトが27歳の時にイタリアでオーストリア軍と戦った時の姿を描いています。振り返った精悍な顔つきで、割と大胆な筆致で描かれているためスピード感のようなものも感じさせます。素早い筆致なのは同じポーズを取るのをナポレオンが嫌がって短時間で描かざるを得なかった為のようですが、かえって絵として面白くなっているように思いました。この作品をナポレオン自身が高く評価したそうで、グロにとって出世作となったのだとか。
45 クロード・ラメ 「戴冠式の正装のナポレオン1世」 ★こちらで観られます
こちらは月桂冠に白貂の毛皮、ビロードのマントを身につけたナポレオンの戴冠式の際の立像です。他の作家・画家の作品でも見覚えのある姿をしているのですが、ナポレオンはいくつか決まった形式でしか肖像を許されなかったらしく、これはそうしたコードに従って作られた公式な作品となります。等身大よりやや大きめで、杖を持ち堂々とした姿となっていて、特にマントの表現が見事です。ひだだけでなく滑らかなビロードの質感や、フワッとした部分、刺繍が重なった部分など、大理石とは思えないほどの表現力となっていました。
この近くには「ナポレオン1世のデスマスク」(★こちらで観られます)やドミニク・アングルの「フランス王太子、オルレアン公フェルディナン=フィリップ・ド・ブルボン=オルレアンの肖像」(★こちらで観られます)などもありました。アングルも今回の見所だと思います。
ということで、2章の途中ですが長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。本当に様々な文化の肖像が並んでいますが、目的の観点からすると共通点があるのが分かって面白い構成だと思います。後半にも目を引く作品がありましたので、次回は残りの2章続き~3章をご紹介の予定です。
→ 後編はこちら


【展覧名】
ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか
【公式サイト】
http://www.ntv.co.jp/louvre2018/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/louvre2018/
【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅・六本木駅
【会期】2018年5月30日(水)~2018年9月3日(月)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
お客さんは結構いましたが、大きい作品も多い為か 意外にもそれほど混むこともなく ほぼ自分のペースで観ることができました。
さて、今回の展示は肖像をテーマにルーヴル美術館の多岐に渡るコレクションを紹介する内容となっています。肖像と一言で言ってもその役目は様々あり時代によって多様な表現で制作されてきたようで、この展示ではそうした役割ごとに章分けされていました。詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
【番外編 フランス旅行】 ルーヴル美術館
ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり- 感想前編(東京都美術館)
ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり- 感想後編(東京都美術館)
<プロローグ マスク―肖像の起源>
まずは肖像の起源についてです。エジプトでは来世での生を死者に確約する為にマスクを作ったそうで、新王国時代のマスクは理想化された姿として表され個人の容貌を反映したものではないようです。しかし1~3世紀頃になるとミイラの顔は板に描かれた肖像で覆われるようになったそうで、「ファイユームの肖像画」と通称されるタイプの肖像では 写実性が重視され故人の生前の容貌が表されようです。ここにはそうしたそれぞれの特徴を表す2点の肖像が並んでいました。
1 エジプト新王国時代 「棺に由来するマスク」 ★こちらで観られます
こちらは黒い瞳に青い縁取りの眼と青い眉を持つマスクです。瞳が大きく鼻が高いので、現在の基準から観ても美形と言えそうな顔つきです。バランスの良い顔は昔から共通した美形の特徴なのかな? 確かに理想化されているような雰囲気でした。
2 エジプト2世紀後半 「女性の肖像」 ★こちらで観られます
こちらは先程のマスクから1500年ほど後の時代の品で、板に若い女性の顔が描かれています。短い黒髪で、濃いめできりっとした眉が特徴的かな。こういう顔の女性は中東に今でもいそうなくらいリアルさがあって、目にも生気が感じられました。同じエジプトでも時代が変われば表現も全然違うんですね。
<第1章 記憶のための肖像>
続いては「人の存在を記憶する」という肖像の最も古い役割についてのコーナーで、古代から19世紀までの品が並んでいます。古代の地中海世界では祈願成就や信仰の証として自身の彫像などを奉納し、信心の記憶として残す習慣があったそうです。また、葬礼美術として亡くなった人や親族の記憶を残すために肖像が作られたそうで、その習慣はキリスト教が普及しても続いたようです。ここにはそうした品々が並んでいました。
6 ギリシャ・アテネ 前400年頃 「ソシッポスから英雄テセウスに捧げられた奉納浮彫り」
こちらは石版に浮き彫りで表された3人の人物像です。そのうちの1人はアテナイの英雄テセウスらしく、裸体で表され筋肉質な均整が取れた体つきとなっています。その右にいるのは手を挙げて挨拶するアテナイ市民のソシッポスとその息子らしく、この2人は衣のドレープが見事に表されていました。解説によると、こうした神々・英雄に挨拶する信者の浮き彫りは神殿に奉納されたそうです。結構出来が良いので、腕の良い職人がいたんでしょうかね?
この近くには他にもエジプトやシュメールの品もありました。文化や時代も様々ですが、肖像を作るというのはどんな文化にも共通するものなのかもしれません。
11-13 「墓碑肖像」
こちらは墓碑に浮き彫りになった4~7人くらいの人物の顔です。似たような顔をしているのですが、これは家族である為のようで、墓碑には妻の思い出の為に等と書いてあるそうです。割と素朴な感じの仕上がりですが、一族を大切にしていたのが伝わってきました。
この辺には他にもエジプトやギリシャの墓碑、女神像やモザイク画など様々な表現による品がありました。
16 イタリア150~170年頃 「狩りの女神ディアナとして表された若い娘の肖像」
こちらは大理石で出来た等身大の女性像で、弓を持って犬を連れた女神ディアナとして表されています。ディアナは処女神であり、若くして死んだ故人に永遠の純血を授けようと神の姿で作られているようです。起伏に富んだ見事な造形で、滑らかな大理石は艷やかで生気すら感じさせました。
この隣にはエロス(キューピッド)やヘラクレスとして表された子供の像などもありました。
21 オーベルニュ地方1510~1530年頃 「ブルボン公爵夫人、次いでブーローニュおよびオーベルニュ伯爵夫人ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム」
こちらは1511年に亡くなったと墓碑に記された女性の等身大の像です。ベールを被っていて顔は骸骨みたいで、体には大きな虫(ウジ虫?)が這い回るような感じとなっていて、お腹からは大腸もはみ出しています。まるでゾンビみたいでインパクトのある像ですが、こうした像はペストの脅威にさらされた14~16世紀の西ヨーロッパで流行ったそうで、「トランジ」と呼ばれるそうです。この像には対になる華やかに装った横臥像が作られたらしく、それによって美しかった頃の姿を残すのに対して、こうした像は罪を犯した肉体を罰することで救われるという意味があるようです。また、肉体が朽ちてもキリストによって永遠の命を得られると考えたそうで、わざわざ生前に死んでから○日後の姿を作ってくれとか頼むこともあったのだとか。ちょっと特異な風習にも思えますが、中々驚きだったので特に印象に残る作品でした。
23 ジャック=ルイ・ダヴィッドと工房 「マラーの死」 ★こちらで観られます
こちらはダヴィッド自身による同名作品のレプリカのうちの1枚です。モデルはフランス革命の頃のジャコバン派の指導者ジャン=ポール・マラーで、風呂で湯に浸かっている時に刺殺されたのを題材にしています。風呂にはテーブルのような蓋があり、裸体の男性が手紙とペンを手に持って胸から血を出して琴切れたように項垂れています。ダヴィッドらしい確かな描写とポーズがドラマチックな感じで、明暗の付け方も見事でした。これは以前観たことがありますが(それもレプリカかもしれませんが)、ダヴィッド好きには嬉しい作品です。今回の展示でも見どころの1つだと思います。
<第2章 権力の顔>
続いては権力の顕示の為に作られた作品のコーナーです。こうした作品には表現の規範(コード)があったようで、それを用いながら彫刻や絵画だけでなく貨幣やメダル、嗅ぎたばこの箱まで多岐に渡る媒体で表され権力を広く知らしめたようです。ここにはそうした権力者達の肖像が並んでいました。
29 イタリア2世紀前半(前340~330年頃にリュシッポスに制作されたブロンズの原作に基づく) 「アレクサンドロス大王の肖像、通称アザラのヘルメス柱」 ★こちらで観られます
こちらはアレクサンドロス大王の彫像で、元はアレクサンドロスが自身の像の制作を許した3人のうちの1人であるリュシッポスが作ったものをローマ時代に模刻したようです。リュシッポスはギリシャのクラシック期を代表する彫刻家だったようで、(模刻とは言え)この作品でも特徴的な姿をつぶさに伝えてくれます。前髪を逆立てたソバージュ気味の髪で、彫りの深い顔立ちをしています。瞳は表されていませんでしたが、理知的かつ緊張感のある面持ちとなっていました。こうした像で現代の我々もアレクサンドロスの姿を知ることが出来るので、まさに権力を知らしめる為の芸術ですね。
この近くにはエジプトのファラオやハムラビ王とされる像などもありました。
32 イタリア40年、50~60年頃 「トガをまとったティベリウス帝の彫像」
こちらはトガという布をまとったローマ皇帝ティベリウスの彫像です。ローマ市民としての姿で表されているようで、演説をしているところらしく 左手に巻物を持っているのは演説の原稿みたいなものかな。等身大より一回りくらい大きいので威厳を感じ、差し出した手など動きのあるポーズとなっているので迫力もありました。衣の下の胸筋がうっすら盛り上がってたりして芸が細かい…。皇帝らしい見事な彫像でした。
この近くには神官としての初代皇帝アウグストゥスや、ハドリアヌス帝、悪名高いカラカラ帝の像なんかもありました。割とみんな巻物を持ってるようです。
41 セーヴル王立磁器製作所 ジャン=バティスト・ピガールの原作に基づく 「ローマ皇帝として表されたルイ15世」
こちらはセーヴルの白磁で出来た彫刻(ピスキュイ彫刻)で、ローマ皇帝のように月桂冠を被って鎧を着たルイ15世が表されています。剣を携え右手を出すポーズで威厳を感じさせました。
また、この近くにはイアサント・リゴーの有名な作品の半分サイズの複製である「聖別式の正装のルイ14世」や、ジャック・サラザン「5歳のフランス国王ルイ14世」といった作品もありました。5歳でも古代ローマの皇帝のような格好で表されていて、ローマ皇帝から続く正統な統治者として表されている様子が伺えます。
参考記事:フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年 (サントリー美術館)
43 アントワーヌ=ジャン・グロ 「アルコレ橋のボナパルト(1796年11月17日)」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、ナポレオン・ボナパルトが27歳の時にイタリアでオーストリア軍と戦った時の姿を描いています。振り返った精悍な顔つきで、割と大胆な筆致で描かれているためスピード感のようなものも感じさせます。素早い筆致なのは同じポーズを取るのをナポレオンが嫌がって短時間で描かざるを得なかった為のようですが、かえって絵として面白くなっているように思いました。この作品をナポレオン自身が高く評価したそうで、グロにとって出世作となったのだとか。
45 クロード・ラメ 「戴冠式の正装のナポレオン1世」 ★こちらで観られます
こちらは月桂冠に白貂の毛皮、ビロードのマントを身につけたナポレオンの戴冠式の際の立像です。他の作家・画家の作品でも見覚えのある姿をしているのですが、ナポレオンはいくつか決まった形式でしか肖像を許されなかったらしく、これはそうしたコードに従って作られた公式な作品となります。等身大よりやや大きめで、杖を持ち堂々とした姿となっていて、特にマントの表現が見事です。ひだだけでなく滑らかなビロードの質感や、フワッとした部分、刺繍が重なった部分など、大理石とは思えないほどの表現力となっていました。
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