関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

モネ それからの100年 (感想後編)【横浜美術館】

前回に引き続き横浜美術館の「モネ それからの100年」 についてです。前半は1~2章についてでしたが、今日は残りの3~4章についてです。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

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【展覧名】
 モネ それからの100年

【公式サイト】
 http://monet2018yokohama.jp/exhibition/
 https://yokohama.art.museum/exhibition/index/20180714-499.html

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅

【会期】2018年7月14日(土)~9月24日(月・休)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前半に比べると後半の方が展示スペースが広いので混雑感はやや薄れた感じがしました。

前編では筆触分割や移ろい行くモチーフについてご紹介しましたが、後半は主に「睡蓮」など晩年の作品に関する内容となっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<Ⅲ モネへのオマージュ ― さまざまな「引用」のかたち>
3章はモネのオマージュのコーナーです。モネの有名作を再解釈した作品が並んでいました。

57-62 ロイ・リキテンスタイン 「積みわら#1~#6、#6第1ステート」
こちらは6点の連作で、水玉のような網点を使ってモネの「積みわら」を模しています。それぞれ色が違っていて、それもモネが時間ごとに異なる光景を描いたのをオマージュしているように見えます。筆触分割を工業的な網点に置き換えている発想はリキテンスタインらしさを感じるかな。連作をコピーのように作ってる点なども面白い作品でした。

この隣には国立国際美術館所蔵のロイ・リキテンスタインの「日本の橋のある睡蓮」(★こちらで観られます)もありました。こちらもモネの庭の池と太鼓橋を表現していて、絵の中に鏡を使っていたりする面白い作品です。

67 福田美蘭 「モネの睡蓮」 ★こちらで観られます
こちらは大原美術館所蔵の「睡蓮」の構図を借りつつ、大原美術館にあるジヴェルニーのモネの池から株分けされた睡蓮を描いた作品です。水面には大原美術館の建物も反射していて、モネと大原美術館へのオマージュとなっています。画風もモネ風に寄せていて、ユーモアを感じさせました。
 参考リンク:大原美術館のモネ「睡蓮」

この辺にはジヴェルニーの睡蓮の庭をモチーフにした作品が数点ありました。次の章でも睡蓮がよく出てきます。
 参考記事:
  【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家
  モネとジヴェルニーの画家たち 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)


<Ⅳ フレームを越えて ― 拡張するイメージと空間>
最後の章は睡蓮の連作を中心として、反復表現、イメージの重ね合わせ、空間の広がりといった 視覚的・身体的な拡張をキーワードに、モネと現代アートの接点を探すというテーマとなっていました。この章に入ると円形の部屋にぐるっと睡蓮関連の作品が並び、オランジュリー美術館のモネの部屋を彷彿とさせる作りとなっていました。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 オランジュリー美術館とマルモッタン美術館

73 クロード・モネ 「睡蓮」 (個人蔵)
こちらは最初に睡蓮を描いた作品のうちの1つで、ピンクの蓮華が2つといくつもの葉っぱが描かれています。割と形はハッキリしていて、水面も落ち着いた色彩で描かれています。軽やかで抑えめな印象で、静かな感じの作品でした。

75 クロード・モネ 「睡蓮」 (山形美術館)
こちらも無数の睡蓮が描かれていますが、どちらかというと水面が主題のように思える作品です。水面には木々が反射していて、水面と反射の境界が曖昧になって同居するような感じです。空の色も反射していて、明るく爽やかな印象を受けました。

解説によると、モネはオランジュリー美術館の部屋の為に12年かけて描いた200点を超える習作を描いたようです。この近くにあったナーマッド・コレクション [モナコ]の「睡蓮、水草の反映」(★こちらで観られます)などもそのうちの1枚のようです。他にもこの近くには鹿児島市立美術館の「睡蓮」もありました。

93 鈴木理策 「水鏡17、WM-734」
こちらは水面とそこに反射した周りの木々が一体化したような写真です。意図的にぼかしているような感じで水面と実際の風景の境目が曖昧になっているように見えます。これは先程のモネの睡蓮と同じ発想に見えて、写真でも表現可能であることに驚きました。イメージの重ね合わせの技法は反射の中の存在のおかげで画面以上に世界が広がっているようにも思えるのも面白いです。

79 クロード・モネ 「バラの小道の家」
こちらはモネの庭のバラのアーチをモチーフに描いた作品です。両脇に赤いバラが咲いているようですが、細部はあまりハッキリせず ぼんやりしていて抽象がかっているように見えます。この絵を描いた頃にはモネは失明の危険があったので、こういう表現になったのではないか?とも考えられるようですが、目が悪くても色彩の取り合わせの素晴らしさは失われずに、かえって面白い効果になっていました。絵は上手ければ良いという訳ではないとよく言いますが、細部が曖昧だからこそ出る情感もありますね。

この近くには国立西洋美術館の「柳」(★こちらで観られます)もありました。

85-89 児玉靖枝 「深韻 水の系譜-白(六、十二、十三、二十四、三十四)」
こちらは5枚セットの真っ白な抽象画です。遠目で観るとただ白いように見えますが、よく観れば木々に雪が積もってホワイトアウトしているのが分かります。5枚の配置も絶妙で、広い空間の情報が断片的に得られるような感じです。色彩は異なりますが、こうした空間の広がりはモネの連作に通じるものがあるように思えました。それにしても、よくこんな真っ白な画面をモチーフにしたなあと変な所に感心してしまいましたw

94 福田美蘭 「睡蓮の池」
こちらはこの展覧会の為に描かれた特別出品の作品で、高層ビルの上層階にあるガラス張りのレストランの客席が描かれています。外は夜景で、ガラスには室内の様子も反射して見えています。また、テーブルの上に灯火が置かれているのが睡蓮の見立てとなっていて、テーブルが葉っぱ、光を放つ灯火が蓮華のように見えました。モチーフは現代ですが、ガラスに映る2重の世界の表現なんかはモネと同じだし、とにかく発想の面白い作品です。

この隣にも同様に福田美蘭が睡蓮の池から着想を得た作品が並んでいました。

81 サム・フランシス 「Simplicity(WC00956)」 ★こちらで観られます
こちらは横長の白地に赤・黄色・緑・青などの線や色ムラが描かれた抽象画です。飛び散るような表現で流し込みの技法を使っているのではないか?と思いますが、何処と無く有機的で 生命感溢れるビビットな色彩となっています。画面を超えても広がっていくような力強さがあり、躍動的でリズムを感じさせました。

この隣にはアンディ・ウォーホルの「花」もありました。空間拡張の意識をここでも用いていて、確かにモネとの共通点があるように思えます。


ということで、モネの作品と現代絵画を対比させる展示となっていました。安易に新印象主義を始めとした近代絵画のフォロワーと比べるのではなく、ちょっと離れた現代絵画と比較するというのが目新しかったと思います。モネ自体の作品は割と見慣れたのが多かった気がしますが、展示構成が面白くモネの偉大さが再確認できる展覧会でした。


おまけ;
美術館の前に小さい睡蓮の鉢がありました。
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暑いのに可憐な花をつけていますね。



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モネ それからの100年 (感想前編)【横浜美術館】

一昨日の土曜日に横浜の横浜美術館で「モネ それからの100年」を観てきました。注目の展示ですので前編・後編に分けて早めにご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 モネ それからの100年

【公式サイト】
 http://monet2018yokohama.jp/exhibition/
 https://yokohama.art.museum/exhibition/index/20180714-499.html

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅

【会期】2018年7月14日(土)~9月24日(月・休)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
初日の午後に行ったのですが、結構混んでいて場所によっては列ができるくらいでした。とは言え、少し待てばおおよそ自分のペースで観ることができたかな。

さて、今回の展示は印象派の代名詞的な存在であるクロード・モネの名前を冠していて、モネ25点とモネに影響を受けた後世代の26人の作家66点となっています。モネよりも他の作家の作品の方が多いのですが、割と現代絵画の割合が高くモネの先進性が浮き彫りになるような内容となっていました。展覧会は4章構成となっていましたので、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新 感想前編(国立西洋美術館)
  モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新 感想後編(国立西洋美術館)
  
  
<Ⅰ 新しい絵画へ ― 立ちあがる色彩と筆触>
まずは筆触分割の技法についてのコーナーです。モネを始めとした印象派はパレットの上で色を混ぜ合わせるのではなく、画面上で色の点を重ねる「筆触分割」を使うことで色が濁るのを避けて強い光を表現しました。この章ではモネの画業前半の作品と共にモネの技法を発展させた現代絵画なども並んでいました。
 参考記事:印象派を超えて-点描の画家たち 感想前編(国立新美術館)

78 クロード・モネ 「睡蓮」 (群馬県立近代美術館)
こちらは3章の作品ですが、冒頭にハイライトとして展示されていました。モネの代表作である睡蓮の連作のうちの1つで、池に浮かぶ睡蓮の花と葉が描かれています。葉っぱのフチは紫となっていたり、粗めの筆致となっていて、絵の右端には塗り残しがあるなど描きかけと言われても不思議じゃないくらい大胆です。画面全体の深い緑など色使いが強く感じられる作品でした。

1 クロード・モネ 「サン=シメオン農園前の道」
こちらは23歳頃の小型作品で、夕暮れの道と 道沿いの木々が描かれています。全体的に落ち着いた暗めの色調で写実的に描かれていて、割とコローの作風のような印象を受けるかな。遠近法などもしっかりしていて、まだ従来の絵画から脱していない感じもしました。

この辺には泉屋博古館の「モンソー公園」(★こちらで観られます)や上原美術館のクロード・モネ「わらぶき屋根の家」といった見覚えのある作品が並んでいました。
 参考記事:近代日本洋画の魅惑の女性像―モネ・印象派旗挙げの前後― (泉屋博古館分館)

6 クロード・モネ 「海辺の船」
こちらも見覚えある東京富士美術館の所蔵品。港に浮かぶ帆船を描いた作品で、縦長の画面に空が大きく取られていて爽やかな雰囲気です。船はやや傾いていて、周りの人と比べると結構大きそうに見えるかな。大胆なタッチで浜辺やマストに光が当たっている様子が表され、よく観ると部分的に下地が残っているようにも見えます。同じ印象派のシスレーなんかを思い起こす作品で、点々と色を置く印象派らしい技法が使われていました。

この辺はノルマンディー地方の断崖を描いた作品なども並んでいました。モネの作品は国内からの出品が大半なので過去のモネ展を観ている方には見覚えある作品が多いと思います。

14 ジョアン・ミッチェル 「紫色の木」
こちらは目の細かい金網のようなものの上に描かれた抽象画で、作者のジョアン・ミッチェルは1960年代に始まるシュポール/シュルファス(支持体/表面)を経て第一線で活動する画家です。黄色、緑、ピンク、オレンジなどの色が重ね合わせたり混じり合ったりしている感じで、モネの技法を発展させているとも解釈できるかな。透明感があって軽やかな印象を受ける作品でした。

この辺にはウィレム・デ・クーニングのアクション・ペインティングによる作品などもありました。1960~70年代頃の抽象画多めです。

8 クロード・モネ 「ヴァランジュヴィルの風景」
こちらは 手前に木立があり奥に海の見える風景画で、対岸には白い崖があるのも見えます。手前にあるヒョロ長い木々の合間から海が見える構図は浮世絵から学んだと考えられるようで、特に葛飾北斎の富嶽三十六景との類似が指摘されているようです。奥行きと日差しを強く感じられると共に、モネのルーツも垣間見られる作品でした。
 参考記事:北斎とジャポニスム―HOKUSAIが西洋に与えた衝撃 (国立西洋美術館)

22 丸山直文 「puddle in the woods 5」 ★こちらで観られます
こちらは ぼんやりとした色彩で木々が立ち並ぶ様子を描いた作品ですが、半ば抽象画のような雰囲気となっています。淡い黄色、ピンク、茶色などが使われ 木の幹の模様が斑点のように表されているのは筆触分割をさらに大胆にした感じです。この隣にはモネの「ヴィレの風景」(★こちらで観られます)も展示されていたのですが、即興的で色を置くような表現がこの作品と共通しているようにも思えました。とは言え、淡い色調なので優しく温かみを感じさせるのが独特でした。

この近くには岡崎乾二郎の非常にタイトルが長い2点の作品もありました。これも東京都現代美術館の好きな作品です。


<Ⅱ 形なきものへの眼差し ― 光、大気、水>
続いては形の無い移ろうものを主題としたコーナーです。モネや印象派は移ろい行く光、大気、水を表現するために様々な技法を新しく作ったので、印象派らしいコーナーとも言えそうです。

29 クロード・モネ 「ジヴェルニー近くのりメツの草原」
こちらは白っぽい緑の草原と、淡いピンクの中に溶け込んだような木々を描いた作品です。全体的に白みがかっていて、光に包まれてぼんやりしている感じの表現となっています。半ば抽象画のような作品で、当時としては先進的だったのではないかと思いました。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家

この辺にはポーラ美術館所蔵のクロード・モネ「セーヌ河の日没、冬」(★こちらで観られます)もありました。
 参考記事:ポーラ美術館の常設

34 クロード・モネ 「チャリング・クロス橋」 (メナード美術館)
こちらはモネがロンドンを訪れた際に描いた作品で、定宿のホテルから見下ろすようにロンドンのテムズ川に架かるチャリング・クロス橋を描いています。全体的に淡いオレンジがかった画面で、霧に包まれている光景となって、橋や遠くの塔の先端(ウェストミンスター宮殿?)もぼんやりしています。しかし、橋の上には煙が立ち上り 水面は光輝いている様子など微妙な色調の違いで表現しているのが見事です。モネは冬のロンドンの霧を好んで描いていて、今回の展覧会でもこちらを含めて3点ほど展示されていました。(山形美術館のクロード・モネ「テムズ河のチャリング・クロス橋」など)

近くにはアルフレッド・スティーグリッツやエドワード・スタイケンによる当時の写真もありました。2人とも印象派をはじめとした絵画の主題を写真に転用した写真家で、叙情的で確かに印象派を思い起こす構図となっています。

47 マーク・ロスコ 「赤の中の黒」
こちらは赤地の中に黒い長方形が描かれたような抽象画です。お互いの色のせいか赤地は明るく 黒地は力強く感じられるのですが、よく観ると赤にもちょっと色の違いがあって、フチはやや濃い目になっています。この色の大胆さと繊細さが同居するような表現はモネのロンドンの連作に通じるものがあるかな。 迫ってくるような色彩感覚でこれはロスコ好きには中々嬉しい不意打ちだと思います。

48 モーリス・ルイス 「ワイン」 ★こちらで観られます
こちらはロスコと同じくアメリカのカラーフィールド・ペインティングで活躍したモーリス・ルイスの作品で、台形を逆さにしたようなモチーフが描かれた抽象画となっています。画布にアクリル絵の具を垂れ流して画布に染み込ませる「ステイニング(滲み)」という技法を使い、大画面に茶色や赤などの帯状のいくつもの色が合わさって縦方向に層のようになっています。この隣にも「金色と緑色」という同様の作品がありましたが、そちらは色合いが異なっていました。いずれも、威厳すら感じられる不思議な作風です。

この近くには松本陽子「振動する風景的画面Ⅲ」もありました。この画家の温かみのある抽象画も好みです。
 参考記事:現代絵画の展望 24の時の瞳 前期:あの頃 (旧新橋停車場 鉄道歴史展示室)

休憩スペースには水野勝規による「photon」と「reflection」(★こちらで観られます)という映像作品がありました。「photon」は水面の光が瞬く様子の映像で、「reflection」は水面に写った木々が揺らめくの映像です。いずれもこの後の章のテーマに相応しい内容かな。真っ先にモネの睡蓮なんかを連想させました。


ということで、前半からモネの作品と共に現代絵画を楽しむような内容となっていました。正直、モネの作品はよく観るものが多くて最高級か?というと微妙ですが、頻繁に行われるモネ展の中では一風変わった趣向で面白い展示です。後半は睡蓮をテーマにしたオマージュなどもありましたので、次回は残りの章をご紹介していこうと思います。

 → 後編はこちら



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【旧朝倉家住宅】の写真

今日は写真多めです。前々回・前回とご紹介した東京都写真美術館の展示を観た後、代官山まで歩いて旧朝倉家住宅を見学してきました。こちらは撮影可能となっていますので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【公式サイト】
 https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/bunka/asakura.html

【会場】
 旧朝倉家住宅

【最寄】
 代官山駅・恵比寿駅・中目黒駅

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この施設は元々は東京府議会議長や渋谷区議会議長を歴任した朝倉虎治郎の邸宅で、朝倉家は享保の頃からの渋谷の大地主で、幕末の頃からは精米業を営んでいた家のようです。 この建物自体は大正8年に建てられ、広い庭園や会議室も備えた立派な屋敷で重要文化財にも指定されています。先述の通り、撮影することもできましたので、詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。

まず入口で入場券を買うのですが、大人はたった100円です! あまり知られていないのか空いていて、むしろ外国人観光客の方々によく会いました。

こちらは敷地内に入ってすぐにある附属屋。車庫として使われていたようです。
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建設当時からあるそうで、大正の頃から自動車に乗っていたというので偉い方だったんでしょうね。コンクリート製の丈夫そうな車庫です。何故か車庫の中には大谷石が置かれていましたが、屋敷の壁に使われていたそうです。
 参考記事:大谷資料館 坑道内の写真

続いては冒頭の写真の主屋に入りました。こちらは洗面所と廊下。
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直線と格子の多い昔ながらの日本の民家と言った趣です。このスッキリした幾何学製が美しい。

続いてこちらは応接間。
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書院造りで違い棚もありました。襖絵や小襖などにも装飾があって格式高い感じ。ここでお客さんを迎えていたようです。

応接間から廊下を観た様子。
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凛とした雰囲気が漂う邸宅です。外の緑もチラッと見えて清々しい。

まだ1階に入ったばかりですが、すぐに2階に上がるルートとなっています。

こちらは階段を上がった所。
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この近くに小部屋が2つありました。お互い繋がっていて使用用途は分かりませんが、控室みたいな部屋かな?

こちらは2階の広間。
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主の朝倉虎治郎が公職についていた時はここで会議することもあったようです。この写真だと分かりづらいですが、格天井となっていて格式の高い部屋となっています。

違い棚のアップ
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流水に扇面散らしという琳派的な襖絵が洒脱な印象となっています。

大広間に面した廊下と、そこから見える光景
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庭や建物が見えて清々しい雰囲気でした。

2階はここまでで、再び1階に戻りました。階段は2箇所あるようです。

こちらは中庭の様子と土蔵の入り口
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残念ながら中庭の向かいや土蔵は非公開エリアとなっています。中庭があるお陰か、屋内にいても明るくて 真夏なのに涼しい風が吹き抜けていきます。

こちらは杉の間と呼ばれる2つの部屋。
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数寄屋風の座敷で、特に右側の板張りの所に特徴があります。

板張り部分のアップ。踏み込み床という床の間で、松の一枚板を使用しています。
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この太さが一枚板と考えると、相当大きな松が使われたんでしょうね。

杉の間の隣には4畳半くらいの茶室もありました。
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中には入れませんが、立派な茶室です。

杉の間からは庭の緑がよく見えます。
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この庭園は時期によって様々な花が咲くようです。公式サイトには花ごよみも載っています。

こちらは杉の間のひさしの部分。
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幾何学的に組み合う様子が非常にリズミカルです。見つけて嬉しくなるポイントでしたw

杉の間から再び入口の方へと引き返す途中、仏間から縁側が見えました。
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この建物で一番美しかったのはここからの眺めじゃないかな。

こちらは仏間にあった引き戸の装飾。
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パッと観て河童か?と思いましたが河童ではないですw 八部衆の迦楼羅でした。阿修羅展で観た乾漆像を思い出しました。
 参考記事:
  阿修羅 天平乾漆群像展 (興福寺仮講堂)奈良編
  国宝 阿修羅展 (東京国立博物館)

続いては第一会議室(中の間) ここは洋間となっていました。
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中央官庁渋谷会議所として使われていた頃に洋風の会議室に改造されたようです。

第一会議室からの眺め。
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ここから庭をじっと見ていたのですが、時間がゆっくりと過ぎていく感覚でした。窓枠と景色がまるで額縁に入った絵のような世界です。

こちらも第一会議室からの眺めで、先程の仏間のほうを観た様子。
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この庭園は玄関前の前庭・主庭・中庭(坪庭)の3つに大別できるようで、主庭からは目黒川や富士山、田園風景も観られるようになっていたようです。今でも十分美しいですが、当時の風景が観てみたいですね。

入口付近に戻ってきて、こちらは洋間。
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この洋間は来客や執事の事務のスペースだったようです。家具がないのでガランとした印象。床張りなだけでなく、窓も上げ下げする洋風となっています。

こちらは内玄関。
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勝手口みたいなものかな。

建物は以上で、続いて庭園を散策してきました。結構広いです。

こちらが庭園の入り口
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この日は緑一色でしたが時期によっては花が咲いたり紅葉するみたいです。

先程の第一会議室を庭から観た所。2階の広間も見えています。
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日本家屋の美しさが凝縮されているような空間です。外国人の方たちはここの魅力に気づいているようで、写真を撮りまくっていましたw 代官山でアクセスも良いし、まだまだ人気が出そうなスポットです。

この先、アップダウンのある庭となっています。

こちらは入れなかった土蔵。
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関東大震災で外壁が崩落したらしく、今は鉄筋コンクリート造となっています。中々重厚な作りに見えました。この土蔵の裏あたりに裏門があるので、そこから出て見学終了となりました。


ということで、代官山の一等地にある大きな屋敷を堪能してきました。非常に静かで、蒸し暑い日だったのに涼風が感じられたのも良かったです。古き良き日本の建築を楽しむことができるので、建物好きの方は是非チェックしてみてください。


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TOPコレクション たのしむ、まなぶ イントゥ・ザ・ピクチャーズ 【東京都写真美術館】

前回ご紹介した東京都写真美術館の展示を観た後、3階に移動して「TOPコレクション たのしむ、まなぶ イントゥ・ザ・ピクチャーズ」も観てきました。

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【展覧名】
 TOPコレクション たのしむ、まなぶ
 イントゥ・ザ・ピクチャーズ 

【公式サイト】
 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3050.html

【会場】東京都写真美術館
【最寄】恵比寿駅

【会期】2018年5月12日(土)~8月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらもお客さんは結構いましたが快適に鑑賞することができました。

さて、こちらの展示は東京都写真美術館が誇る34,000点以上の写真コレクションの中から「たのしむ、まなぶ」をテーマに古今東西の名品が並ぶ内容となっています。キャプションがほとんどなくて作品の隣には番号しかないようになっていたのですが、これは写真を観て自分がどう感じるか、何が見えてくるかを重視する趣向のようです。構成は題材ごとに7つの章に分かれていましたので、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<1.まなざし>
まずは被写体となった人の視線が気になる作品のコーナーです。

1 ロベール・ドアノー 「ピカソのパン」 ★こちらで観られます
こちらはピカソを撮った有名な作品で、ピカソはテーブルに向かっていて、そこにはパンが置かれています。このパンが大きな指のように見えるのが面白い趣向です。ピカソは何故か右の方に視線を向けていて、何かを見つめているのかな? この写真は小学生の時に初めて観て、パンがでっかい手のように見えるのがちょっと不気味に思えたのですが、大人になって観るとピカソの作風(特に新古典主義の時代)の特徴も上手く取り込んでいるように思えました。

6 荒木経惟 「センチメンタルな旅より」
こちらはアラーキーの新婚旅行の時の写真で、新幹線の中で水玉の服の女性(奥さん)がじっと何かを見つめている様子が撮られています。視線の先が非常に気になる…w 何気ない日常を覗き込んだ感じもしますが、その鋭い眼光のせいか奥さんは芯の強そうな印象を受けました。
 参考記事:
  荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017- (東京都写真美術館)
  荒木経惟 写狂老人A (東京オペラシティアートギャラリー)

この近くには藤田嗣治を撮った写真もありました。

5 ウィリアム・クライン 「クリスマスの買い物、メイシーズ付近、ニューヨーク、1954年」
こちらニューヨークの人々が行き交う様子が撮られた作品で、3~4人のサングラスの婆さんたちがこちらをじっと伺うように観ています。目はサングラスで見えないけど、いぶかしげに観ているような…w それも3~4人もいると中々の圧を感じて面白かったです。
 参考記事:写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち- (21_21 DESIGN SIGHT)

この近くにあった森山大道「新宿#4.5118」という作品は狭い壁の間で3匹の猫が一斉に振り返った様子が可愛かったです。


<2.よりそい>
続いては主にポートレートのコーナーです。

25 植田正治 「<童歴>より」
こちらは子猫を猫つかみしている少年を撮った作品です。少年は笑顔で立っていて、子猫もキョトンとした顔をしているのが非常に可愛らしいです。いずれも無垢な雰囲気で、素朴な幸せが感じられる作品でした。童歴の作品を観るのも久々だったので嬉しい限り。
 参考記事:
  植田正治写真展 写真とボク (埼玉県立近代美術館)
  生誕100年!植田正治のつくりかた 感想前編(東京ステーションギャラリー)
  植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ -写真であそぶ- (東京都写真美術館)
  
31 ダイアン・アーバス 「一卵性双生児、ローゼル、ニュージャージー州、1966」
こちらは白いヘアバンドに黒い服を着た双子の女の子を撮った写真です。一卵性双生児なのでよく似ていますが、よく観ると右の子はハツラツとした表情の一方で左の子はやや怪訝そうに見えるかな。眉と髪型のちょっとした違いでそう感じられるのが面白かったです。それにしても双子の女の子の写真を観るとシャイニングの双子を思い出してしまいます…w(完全にトラウマです)


<3.ある場面>
続いてはちょっと変わった光景などを撮った写真が並ぶコーナーです。

61 W.ユージン・スミス 「楽園への歩み <ファミリー・アンド・フレンド>より」 ★こちらで観られます
こちらは葉っぱでトンネルみたいになった所から出ていく幼い兄妹の後ろ姿を撮った写真です。お兄ちゃんの手に捕まって慎重に進んでいるように見えるかな。ちょっと異世界から抜け出すような光景に見えて、小さいけど勇気を持って踏み出すような印象を受けました。

38 奈良原一高 「トイレット <消滅した時間>より」
こちらは岩だらけの砂漠の真ん中に立つ縦長の個室トイレを撮った写真です。MENと書かれていて1人の男性がそこに近寄っていく様子となっています。こんな砂漠に何故トイレ?というシュールさが面白く、背景とミスマッチした感じが印象に残りました。

40 エリオット・アーウィット 「ヴェルサイユ、フランス」
こちらは多くの絵画が並ぶ部屋の中を撮った作品で、何故か絵のない額縁の前に3人の人物が並んでじっとそれを観ています。額縁の中には張り紙のようなものがあるので、それを観ているのかな? 周りにはちゃんとした絵もあるのに絵のない所にお客さんが集まっているのが不思議で気になりました。 こういて野次馬は集まっていくのだろうか…w たまに貸出中の作品とかこんな感じにしてある美術館もあるので、それを想像させました。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 ヴェルサイユ宮殿


<4.会話が聞こえる、音が聞こえる>
続いては写真の中から会話や音が聞こえそうな作品のコーナーです。

73 ダイアン・アーバス 「ユダヤ人の巨人とその両親」
こちらは背を屈めていないと天井に頭が付きそうな若者と、その両親らしき夫妻が向き合って何かを話している様子を撮った作品です。若者は杖で体を支えているので、巨人症みたいな体質の問題で大きいのかもしれません。それを見上げる夫人はちょっと驚いたような顔をしていて、感嘆が聞こえてきそうな感じでした。

62 田沼武能 「浅草寺 賽銭箱をのぞく子供<東京 下町Part1 No.5>より」
こちらは恐らく浅草寺に初詣に来た様子を撮ったものだと思います。浅草寺の賽銭を投げ入れる所(賽銭箱ではなく賽銭エリアになっている)を柵の上から沢山の子供がじっと見ている様子が撮られていて、目線の先の沢山のお札のお賽銭を数えているのかも…。 その気持は痛いほど分かるw 大人でも気になるくらいのお札の集まり具合で、凄い!という子どもたちの心の声が聞こえてきそうでした。


<5.けはい>
続いては人は写っていないけれども人の存在を感じさせる作品のコーナーです。

90 北井一夫 「フナバシストーリーより」
こちらは団地のキッチンらしき所を撮った作品で、昭和っぽい雰囲気が漂います。所狭しと食器や台所用品が並んでいるのですが、雑多で片付いていないので生活感溢れています。住人はいないのですが、このキッチンを観るだけで住人の気質まで伝わってくるような写真となっていました。

この近くには植田正治の「小さな工場」もありました。UFOみたいな形の工場の写真です。

98 小畑雄嗣 「池田 <二月>より」
こちらは大きな観覧車を背景に、雪が壁のようになっている道を撮ったカラーの作品です。人っ子一人いない寂しい雰囲気と観覧車のミスマッチが面白くてシュールさと共に、逆に春になれば人が来るのではないかという気配を感じさせました。

87 アンドレ・ケルテス 「パリの椅子、1927年、パリ」
こちらは細い金属製の椅子が広場に無数に置かれた様子を撮った作品です。奥に1人だけ足早に歩いている様子が写っていますが、椅子に座っている人の姿は無くガランとしています。しかし微妙に向き合うようになっていたりして、普段はここで沢山の人が会話を楽しんでいる名残があるように思えました。寂しいようで想像力を掻き立てる作品です。
アンドレ・ケルテスは古本屋めぐりをして写真集を買い集めているくらい大好きな写真家ですので、是非とも個展を開催して欲しい…


<6.むこうとこちら>
こちらは撮るものと撮られるものの関係性などをテーマにした作品のコーナーです。

104 NASA 「ミッション:アポロ(サターン)14号」
こちらは月面にアメリカの国旗を突き立てて記念撮影している宇宙飛行士が写った写真です。手前には影があって、撮影者の存在を感じるかな。強い明暗からは地球とは異なる月面の環境の様子も伝わってくるようでした。

108 アンリ・カルティエ=ブレッソン 「ニューヨーク、アメリカ」 ★こちらで観られます
こちらはガラスの向こうで笑っている帽子にメガネの紳士と、ガラスの反射でニューヨークの町並みが写っている様子が撮られています。手前には2人の男女も反射に写っていて、どうやら船からニューヨークを望む場面のようです。反射を使って夢をもたせるようなニューヨークの建物の大きさや、それを観る各人の心境などを1枚で表現しているのが凄い視点でした。
 参考記事:マグナムを創った写真家たち~キャパ、カルティエ=ブレッソン、ロジャー、シーモア~ (FUJIFILM SQUARE フジフイルム スクエア)

この辺は影や反射で撮影者の存在を感じる作品がいくつかありました。


<7.うかびあがるもの>
最後は写っていない何かが浮かび上がってくるような写真のコーナーです。

128-141 中平卓馬 「<日常>より」
こちらは2枚ずつ一見するとお互い無関係の写真がセットになって展示されている作品です。庭木 と シマウマ、象 と ベンチで寝る人、ライオン と ベンチで寝る人 など、それぞれ対になっているのは何かの隠喩なのか?と考えてしまいます。一方で、雨の道を走る自転車 と 洋食屋のショーウィンドウ の組み合わせは、雨が降って急いで洋食屋に向かっているのかも?というストーリーを想像させました。色々考えさせてくれる面白い趣向の作品です。

118-127 ルイジ・ギッリ 「モランディのアトリエ」
こちらは観た瞬間にモランディのアトリエだと分かるくらいモランディの絵そのものといった感じの写真です。モランディの静物に使われたモチーフなどは思った以上に忠実なようです。また、背景を くすんだ茶色にするために紙を貼っていた様子など、制作過程も伺えたのも良かったです。


ということで、豪華な面々の代表的な作品が並ぶ贅沢な内容となっていました。鑑賞者同士で話すのも推奨されていたので、それぞれの写真を観てどう思うか意見交換するのも楽しいかもしれません。まさに写真を楽しむと共に学べる内容なので、写真好きのみならず幅広い方にお勧めできる内容でした。

ちなみに写美の1階にあるカフェ メゾン・イチで2018年8月5日(日)まで「ピカソのパン」を販売しているようです。この日は普通にパイとケーキを食べましたが、メゾン・イチは何でも美味しいので写美に行ったら毎回寄りたいお店です。
 参考記事:メゾン・イチ 東京都写真美術館内のお店(恵比寿界隈のお店)



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内藤正敏 異界出現 【東京都写真美術館】

この前の日曜日に恵比寿の東京都写真美術館で「内藤正敏 異界出現」を観てきました。

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【展覧名】
 内藤正敏 異界出現

【公式サイト】
 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3052.html

【会場】東京都写真美術館
【最寄】恵比寿駅

【会期】2018年5月12日(土)~7月16日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は異色の写真家とされる内藤正敏 氏の50年を振り返る個展となっています。初期は化学反応で生まれる現象を接写してSF的な作風となっていましたが、山形県の湯殿山麓で即身仏を観て以降、60年代後半から80年代にかけては主に東北地方で民間信仰をテーマにした作品を発表していきました。また、自らの写真に触発されて民俗学研究も手がけ、日本文化の思想体系を発見して研究論文を発表するなど写真に留まらない活躍をしています。さらに90年代以降はそうした研究と想像力を融合させて修験道の霊山を撮った「神々の異界」を手がけるなど、精力的に活動しているようです。展覧会は時期やテーマによって章分けされていて非常に点数が多かったので、章ごとに簡単にその様子をご紹介していこうと思います。


<初期作品>
まずは初期作品のコーナーです。ここにはSF小説の表紙にも使われた未来的な雰囲気の作品が並んでいました。

ここにはまず「トキドロレン」という時間泥棒連合という意味の作家の造語の作品があり、絵の具が混じり合うような感じで人の形になった写真とは思えないようなものがありました。エイリアン的な感じでちょっと不気味です。この辺にはそうした作風の化学反応を接写したような技法の作品があり、コラージュしたのか他の物体と一緒になっているものもあります。「キメラ」という作品なんかは暗闇の中に目がある表現で、バックベアードかハガレンのお父様みたいな…w 中々シュールで先進的な印象を受けます。 こうした作風はSF小説の表紙にも使われたようで、少し進むとSF小説が並んでいました。有名所では小松左京やレイ・ブラッドベリ、アーサー・クラークなんかもあって、名作揃いです。

<北海道開拓写真の発掘>
続いては北海道の開拓の様子を撮った写真のコーナーで、ここは4点のみです。これは内藤正敏 氏が撮ったものではなく武林盛一という写真家が1870~80年頃に撮ったもので、厳しそうな開拓風景が並びます。木材を運ぶ汽車など当時の様子がよく伝わるかな。内藤正敏 氏は写真の100年展の編集委員を務めた際にこの北海道開拓の写真について雑誌に載せたそうです。近未来的な作風の写真家だった人がこうした作品を研究するというのがちょっと意外に思えました。

<即身仏>
続いては運命の出会いとも言える即身仏の写真のコーナーです。内藤正敏 氏はこの出会いでSF写真をやめて民俗写真に切り替えたので、よほど衝撃を受けたのだろうと思います。ここにはミイラの顔のアップの白黒写真が並び、細かい陰影まで表されています、1体だけでなく複数体あって、厳かさというよりは強烈に訴えて来るような表情が確かに衝撃的です。写真家が感じたものが伝わってくるような力強い説得力がありました。

<東北の民間信仰>
ここからは主に東北の民間信仰をテーマにした作風となっていました。この章は3点のみで、「竈神 岩手県東和町」(★こちらで観られます)という作品は かまどの神様の顔らしきギョロっとした面のアップ写真となっています。ざらついた表面をしていて、岩のような質感です。シャーマニックな雰囲気もありプリミティブな力強さが印象的でした。題材自体がパワフルだけど表現方法がそれを倍増させているのがよく分かります。

<婆バクハツ!>
こちらは恐山のイタコ信仰をテーマにした写真シリーズです。イタコの婆さん達が顔を連ねた「お籠もりする老婆 高山稲荷」(★こちらで観られます)を筆頭に、生き生きとして まさに爆発するようなエネルギッシュなイタコたちの写真が並びます。入れ歯だらけで盲目で異形にも見える表情は山姥でも出たんじゃないかってくらいインパクトがありますw イタコで降霊しているシーンや、輪になっている様子など 独特の儀式も撮られていて民俗的な観点からも面白い作品じゃないかな。かなり高齢の婆さん達たちからこんなに力強い作品が撮れるというのには驚かされっぱなしでした。

<東京 都市の闇を幻視する>
こちらは1970~85年にかけて東京のアンダーグラウンドと言えるような場所を撮ったシリーズです。東京を歩いていると所々に江戸に通じているように感じたそうで、異界への入口の魅力として 狂ったような東京や帰る故郷の無い吹き溜まりなどを撮っています。ここには誰もいない街角をちょっと不気味な雰囲気で撮った作品や、はしゃいでいる若者、怪我して保護される人、街中で呑んだり寝ている浮浪者などを撮った作品が並びます。撮られた人は大概貧しそうに見えて駄目人間っぽさも漂っていますが、浮浪者の中には心底楽しそうな表情をしている人もいました。良くも悪くも、ありのままをさらけ出した人たちばかりなのかも。これも人の奥底まで捉えたような作品でした。

<遠野物語>
こちらは柳田国男の『遠野物語』を辿って訪れた岩手県の遠野を撮ったシリーズです。祭り、カッパ淵、墓、曲がり屋、神社、町の人々、面をかぶる人、遺影など、妖怪や風俗・宗教に纏わるモチーフが写し出されています。遠野物語の世界観に寄せているのか分かりませんが、ここでも信仰と人々が密接に関わっている様子が伺え、それが大切にされているのも伝わってきました。現実世界でありながら神秘的な雰囲気もあるシリーズです。
 参考記事:遠野の写真 (番外編 岩手)

<出羽三山>
こちらは修験道で名高い羽黒山、月山、湯殿山の出羽三山をテーマにしたシリーズです。(この辺からカラーもあったかな) ここでは仮面や仏像の顔をどアップで撮った作品などがあり、それらは剥落していたり やたらとリアルな面だったりします。私もこうした仏像等はよく観る方ですが、実物でもこれだけエネルギーが詰まった感じを受けることは それほど無いので、写真によって面の持つ力を引き出しているのだと思います。目をカッと見開いている顔が多いのも理由の1つかな。ここにも即身仏の写真があって、内藤正敏 氏の作風が凝縮されたような濃いシリーズでした。

<出羽三山の宇宙>
こちらは先程の出羽三山の写真と他の写真をコラージュしたようなコーナーです。炎を背景にした仏像や、地球を背景に仏像の目から上だけ撮った「びんずる尊と羽黒鏡、海向寺、出羽三山神社」(★こちらで観られます)など、一種異様でシュールさもありつつ、一層力を増すような表現となっていました。

<神々の異界>
こちらは信仰の対象となっている地を撮ったシリーズで、自然を撮った作品が多いかな。富士山から観た光景を星の軌跡と共に撮った写真(★こちらで観られます)や富士山頂の神秘的な光景を撮った作品が並びます。中には珍しいブロッケン現象(人に後光が差しているような山の現象)を撮ったものなどもあり、自然の神秘や不思議さ、畏敬の念などが込められているようでした。

<戦慄-東北芸術工科大学「内藤正敏の軌跡」展より 2004年>
こちらは2004年に開催された回顧展で使った大型プリントの写真が並んでいました。ここまで観てきた作品が順不同で並んでいる感じです。(いくつかここまでには無かった作品もあったかな) 大判で独特の世界観が迫ってくるように感じられて、ここだけで1つの展覧会が開催できるくらいの個性的な作品ばかりでした。

<聖地>
このコーナーはちょっとどの作品だか失念。リスト上では1点のみです。


ということで、民間信仰や都市のアンダーグラウンドなどまさに異界と言えるような世界観の作品が並んでいました。民俗的でエトスが凝縮されているので、強烈な印象と共に日本らしさも感じられると思います。もうすぐ終わってしまう展示ですが満足度高めだったので写真好きの方におすすめです。


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アートアクアリウム展2018 & ナイトアクアリウム 【日本橋三井ホール】

今日は写真多めです。先日、平日の会社帰りに三越前駅から直結のコレド室町1の中にある日本橋三井ホールで「アートアクアリウム展2018 & ナイトアクアリウム」を観てきました。この展示は撮影可能(動画不可)でしたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
 アートアクアリウム展2018 & ナイトアクアリウム 

【公式サイト】
 http://artaquarium.jp/

【会場】日本橋三井ホール
【最寄】三越前駅

【会期】2018年7月6日(金)~9月24日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適
  ※7/9(平日)の19:30です。混雑予想は後述します

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_4_⑤_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
私が行ったのは会期が始まったばかりの平日の夜だったこともあって空いていて快適に鑑賞することができました。この展示は毎年やっていますが、土日や金曜の夜は混む傾向にあります。特に夏休みに入るとビルの外まで行列していた年もあったので、タイミングによっては激混みになることも予想されます。 平日でも結構夜遅くまでやっているので、狙い目は平日の夜じゃないかな。都心で働いている方は会社帰りに寄るというのも手だと思います。

さてこの展示は先述のように毎年恒例となった金魚のアクアリウムで、日本の伝統芸能もモチーフにしつつインスタレーション的な感じの見せ方が特徴となっています。今年のコンセプトは「真の日本」ということで、何のことだろうと思いましたが、展示自体はいつもとあまり変わらなかったような…w 一応、今年は新作が1つあったり金魚の種類が分かるような展示が復活しているなど、昨年との違いはあったかな。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。なお、この展示は時間ごとに呼び名が違うようで私が行ったのはナイトアクアリウムの時間帯でした。(夜はイベントとかお酒の販売があります)

参考記事:
 アートアクアリウム展2017 & ナイトアクアリウム (日本橋三井ホール)
 アートアクアリウム展2013 & ナイトアクアリウム (日本橋三井ホール)
 アートアクアリウム展2012 & ナイトアクアリウム (日本橋三井ホール)
 スカイ アクアリウム2011 (森アーツセンターギャラリー)
 スカイアクアリウムⅢ (TOKYO CITY VIEW)

入口から大部屋に伸びる廊下に早速 今回の新作が展示されていました。
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これは天井を撮ったもので、「天井金魚」という作品のようです。時間の経過で色が変わっていくのが特徴で、幻想的な雰囲気の廊下となっていました。

こちらは屏風風の水槽。背景の映像も変わっていきます。
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以前は風景なんかを写していましたが、今回はより抽象的な感じになったかな。淡い色彩のほうが涼しげな雰囲気に思えます。

屏風の下の水槽を覗くとこんな感じ。
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様々な種類の金魚が泳いでいます。この金魚たちは1匹1匹大事にされているのだとか。光と音でストレスにならないかと毎年心配していたのですが、ちゃんと管理してるみたいです。

こちらは手毬をイメージした「手毬リウム」
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ちょっと擦りガラスみたいになっていてアップが撮りづらかったですが、中には割と大きめの金魚が元気よく泳いでいました。

今回のメイン会場の雰囲気はこんな感じ。今回は今までで最も空いているタイミングで観られましたw
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お馴染みの水槽が並んでいて、すっかり定番化したように思います。

こちらは「超花魁」という作品。毎年恒例の「花魁」のパワーアップ版のようです。こちらも色が変わっていきます。
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具体的には規模が3倍になったそうで、確かに大きくなった感じがします。会場でも特に目を引く作品です。

この辺の壁には切子が壁に嵌め込まれていました。
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こういう和テイストの演出がこのアートアクアリウムの特徴といえます。

こちらは「キリコリウム」という江戸切子をモチーフにした作品。
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非常に豪華な印象を受ける台座となっています。水槽は上の方にある鉢の部分となります。

キリコリウムの鉢の中はこんな感じ。
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ほっぺたが膨れた可愛い金魚がいました。水槽の色ともマッチしています。

こちらは「プリズリウム」という作品。ダイヤモンド状の形となっています。
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こちらも毎年定番の水槽で、色の移り変わりが楽しめます。

今回驚いたのはこちら。
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なんと、金魚じゃなく錦鯉がいましたw まあ似たようなものかもしれませんが…w

こちらは作品名がわかりませんが、水槽を段々に並べた作品。
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これは水槽ごとに違う金魚がいて、割と見やすいのが良かったです。

続いて奥の小部屋へと進んでいきました。奥はこんな感じ。
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両脇に金魚の種類別の展示があり、中央には「九谷金魚品評会」という九谷焼に入った金魚がいます。

こちらはブロードテール琉金という金魚
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名前の通り太い尻尾が特徴で、ちょっと熱帯魚みたいな形に見えるかな。

こちらは丹頂
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真っ赤な鶏冠のような頭部が特徴的です。たまにリーゼントみたいな形のもいて面白いw

こちらは らんちゅう
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これも頭がモコモコした感じかな。変わった形をしているので、この辺は記憶に残っていました。

こちらは地金
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銀色の部分が多めの金魚なのかな? 赤い部分のほうが少ないように見えます。

こちらはオランダガシラ
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結構大型で、ゆっくりと泳いでいて優美な雰囲気でした。中々貫禄があります。

こちらが九谷焼の器を金魚鉢にしたもの
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スッキリとした形で、器も涼しげな印象を受けます。

九谷焼の中はこんな感じ。
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この金魚の種類はわかりませんでしたが、本当に金色がかっていてヒレも大きく豪華な雰囲気です。

こちらは「床掛け金魚飾り」という作品。金魚は掛け軸の中にいます。
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ちょっと金魚が遠くて見づらいですが、日本の文化をデフォルメしたような空間となっています。

こちらは「カレイドリウム」という作品。
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万華鏡をイメージしていて、側面に三角やひし形の窓のようなものがあります。

「カレイドリウム」のアップ。この三角で万華鏡のようになるはずなのですが、特に無くても綺麗かなw
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敷き詰めたビー玉が一層色鮮やかに見せているように思えました。

最後に、バーカウンターがありました。
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19時以降はお酒を飲みながら鑑賞することができるようです。また、日によってはライブイベントなんかもあるようです。


ということで、今年も概ね例年通りの内容となっていました。日本文化をステレオタイプ化しているような気もしますが、非常に華やかな演出となっているので 多くの人が綺麗で幻想的な光景を観ることができる内容だと思います。撮影したりお酒を飲んだりと人それぞれの楽しみ方もあるんじゃないかな。日によっては混雑も予想されますので、お出かけの際は時間に余裕を持っていくと良いかと思います。


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近代洋画の先駆者浅井忠7-浅井忠のドローイング- 【千葉県立美術館】

ここ1週間ほど千葉の展示をご紹介してきましたが今回で最終回です。前々回・前回の千葉県立美術館の展示とセットになっていた「近代洋画の先駆者浅井忠7-浅井忠のドローイング-」という展示を観てきました。

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【展覧名】
 明治150年記念 近代洋画の先駆者浅井忠7-浅井忠のドローイング- 

【公式サイト】
 http://www2.chiba-muse.or.jp/www/ART/contents/1523866842940/index.html

【会場】千葉県立美術館 第3展示室
【最寄】千葉みなと駅

【会期】2018年4月21日(土)~7月8日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。この展示も既に終わっていますが、今後の参考になると思いますので記事にしておこうと思います。

さて、この展示は明治時代に洋画の先駆者として活躍した浅井忠についてで、下絵やドローイングを集めた内容となっています。浅井忠はバルビゾン派に影響を受けたアントニオ・フォンタネージに本格的な西洋画を学び、同級生の仲間を中心に日本最初の本格的な美術団体「明治美術会」を設立し、後に東京美術学校の教授にもなっています。教授就任の後にはパリやバルビゾンにほど近いフォンテーヌブローやグレーを訪れ、明るい色彩で季節感豊かな作品を残しました。パリではアール・ヌーヴォーにも触れ、自らも装飾活動に取り込むようになったそうです。この展示はそうした洋画と共に、日本画や工芸図案、挿絵、大津絵など様々な作品のドローイングが並んでいました。6つの章に分かれていましたので、簡単に各章ごとにご紹介していこうと思います。


<1 最初のドローイング>
確認されている浅井忠の最初のドローイングは10歳前後の頃に日本画の指導を受けて描いた作品で、当時は「槐庭(かいてい)」という号だったようです。ここはその時代のコピーが展示されていました。

1 浅井忠 「槐庭時代画帳」 ★こちらで観られます
こちらは佐倉藩の御用絵師 黒沼槐山の指導の一環として描かれた作品です。と言ってもコピーで、絵葉書サイズの18枚ありました。松竹梅や小動物など簡潔に描かれていて、大人なら上手いというほどでもないとは思いますが、10歳の作品とは思えない程の完成度です。既に情趣ある表現となっているのは高い才能を感じさせました。ちなみに浅井忠は子供の頃から温厚で高い人格を持っていたようで、絵の才能も抜群だったそうです。黒沼槐山も敬慕の念を持って接し、もはや教えることは無いと人格も才能も評価していたのだとか。


<2 西洋画家としてのドローイング>
続いては上京してから本格的に西洋絵画を学び、活躍していった時期のドローイングのコーナーです。

3 浅井忠 「曳舟通り」 ★こちらで観られます
こちらは冒頭のポスターにもなっている作品です。かなり緻密に描かれたデッサンで、用水路のような細い川沿いの家と そこを行く舟や馬が描かれています。長閑な光景を線と濃淡で表現していて、写実的でありながらも情感溢れる作品となっていました。ペンなのでやり直しがきかない中でこれだけの作品が描けるのは高いデッサン力があった為だと思います。

6 浅井忠 「スケッチブック(7)」
こちらは従軍した際に描いた「金州城南門外」の下絵となったスケッチで、堅牢な城壁と橋を渡って入城する軍隊らしき人々が描かれています。これも簡潔な描写ですが、かなりその場の様子が伝わってきて、少ない線で表現する力量が伺えます。ドローイングだからこそ作者の実力がよく分かるように思えました。

この他にも同様に従軍画家として朝鮮半島に訪れた時のスケッチがありました。 また、在学中の作品や、房総半島へ写生旅行に行った際の作品、フランス留学中のスケッチなどもあり、結構幅広い時期のコーナーでした。


<3 墨と筆によるドローイング>
続いては墨によるドローイングのコーナーです。洋画家のイメージがある浅井忠ですが、幼少期に日本画の指導も受けていたので、墨によるドローイングも身近な技法だったようです。ここには意外な作品が並んでいました。

9 浅井忠 「田植之図」
こちらは「明治美術会」を立ち上げた年に描いたものですが、洋画家としてのスタートと相反して日本画風の掛け軸となっています。笠を被って田植えをしている人々が簡略化して描かれ、雨が降っているようで上から薄っすらと黒い線が刷毛で塗られています。人がジグザグに連なっていて、農夫の1人は立ち止まってじっと田んぼを観ているような仕草が目を引くかな。奥に行くほど うっすらと霞むようで奥行きも感じさせました。湿気が感じられるような叙情的な作品です。

11 浅井忠 「虎図」
こちらは7幅セットで並んでいました。所々破れたりしていて、描きかけのものも多々あります。描かれているのはいずれも虎なのですが、中にはヒョウみたいに見えるのもいましたw いくつも虎のスケッチを描いていて、仙人みたいな人(豊干禅師?)の顔の下書きもいくつも描かれています。(生首みたいに首だけいくつも並んでいますw) 何度も構想を練りながら描いている推敲の様子が伺えるかな。ドローイングはインスピレーションを直に観ることができるという楽しみ方があるのですが、これは制作過程がつぶさに観られた気がしました。

その先には小さめのスケッチが並んでいました。

15 浅井忠 「山賊(4人)」
こちらはタイトル通り4人の山賊が描かれた作品で、座って休んで話し込んでいる様子となっています。槍や剣を持っていて、出で立ちはステレオタイプなコテコテな山賊に見えますw 戯画的な感じもあり、やや漫画チックです。解説によると、これは実際にモデルを観ながら描いたのではなく、経験則で色々なポーズで描いているのだとか。何だか洋画の浅井忠のイメージとはだいぶかけ離れた雰囲気に思える作品でした。

この近くには「大津絵」というタイトルもあったので大津絵も研究していたのかも (大津絵とは、江戸時代にお土産として描かれたゆる~い戯画みたいな絵のことです)


<4 挿絵でのドローイング>
続いては挿絵に関するコーナーです。浅井忠は小説や旅行記の挿絵も手がけていたようで、特にフランス留学中に同宿だった国文学者 池辺義象とは度々共演していたようです。

22 浅井忠 「浅井忠 画 池辺義象 歌」
こちらが池辺義象と共演した作品で、4曲1双の屏風となっています。1曲ごとに絵と歌がセットになっていて、それぞれにウサギ・犬・馬・牛・人などが描かれ歌に合わせた内容となっているようです。こちらは簡潔かつ軽やかな表現となっていて、情趣ある作品となっていました。解説によると、人物や動物たちはほとんどが向こう側を向いていて、主題の歌よりも目を引かないように配慮されているとのことでした。そんなさりげない気遣いができるなんて、確かに人格者だったんでしょうね。


<5 装飾のためのドローイング>
こちらは1点だけでした。前述のようにフランス留学中に浅井忠は装飾美術にも興味を持ったようで、特に壁画に関心を持ったようです。ここには壁画装飾で最も注力した皇太子のためのタペストリーの下絵が展示されていました。

24 浅井忠 「武士山狩図下絵」
こちらが先述の作品の下絵で、下絵でも大型となっています。鷹狩のような格好で騎馬した3人と3頭の馬が描かれ、武士は弓を持って遠くを観ているようです。線で描かれたラフな下絵ですが、馬が連なっているためか動きが感じられます。解説によると、これは白描画とよばれる墨と筆だけで線を基調に描いたもので、油彩画を元にタペストリーとして織られる過程で、作品の主題が損なわれないように油彩とタペストリーの中間的なものとして調整のために用意したのではないかとのことでした。


<6 工芸品のためのドローイング>
最後は工芸品の為のドローイングのコーナーです。浅井忠は帰国後に京都に新設された京都高等工芸学校の教授となって、染色科でドローイングと、図案科で図画実習・図画描法を指導していたようです。陶芸図案では京都の陶芸家と交流し、自らも図案の研鑽もしていたらしく ここにもその交流を伺わせる作品が並んでいました。

25 浅井忠 「向付皿」
こちらは清水焼の清水六兵衛の原型に浅井忠が絵付けした作品です。長方形をズラして重ねたような形の5枚の器に、百合・鹿・鶏・アヒル・雁などが簡潔に描かれています。割とゆるい雰囲気があってどことなく尾形乾山を思い出すかな。墨一色ですが、黒を効果的に使って味わい深い作品となっていました。


ということで、浅井忠のドローイングを通じて様々な活動の様子を知ることができました。浅井忠は洋画のイメージが強かったので、結構意外な作品が多かったかも。もう終わってしまった展示ですが、今後の美術鑑賞に役立ちそうな内容でした。



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ガラス工芸の魅力 【千葉県立美術館】

前回ご紹介した千葉県立美術館の展示を観た後、セットとなっている「ガラス工芸の魅力」という展示も観てきました。

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【展覧名】
 ガラス工芸の魅力

【公式サイト】
 http://www2.chiba-muse.or.jp/www/ART/contents/1523866842940/index.html

【会場】千葉県立美術館 第8展示室
【最寄】千葉みなと駅

【会期】2018年4月21日(土)~7月8日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はガラス工芸の発展に貢献した作家と、千葉県ゆかりの工芸家によるガラス作品が20点程度並ぶ内容となっています。作家も4人だけなのであっさり観られるのですが、高い技術と美意識が込められた作品ばかりで素人目にも驚きがありました。この記事を書いている時点でちょうど展示が終わってしまいましたが、今後の参考になるかもしれないので記事にしておこうと思います。それぞれ気に入った作品と共にご紹介して参ります。


[岩田藤七]
まずは昭和に活躍した岩田藤七の作品がありました。岩田藤七は帝展や日展で活躍し、パリ万国工芸展において銀賞も受賞していたそうで、「岩田硝子製作所」を設けています(後にこの会社に藤田喬平も入社しています。) 戦後はヴェネツィアガラスを学び、ギリシャ・ローマの彫刻や縄文・弥生の土器などにインスピレーションを得た作品も制作したようです。ここには岩田藤七の作品が6点並んでいました。

2 岩田藤七 「水指」
こちらは底がやや膨らんだ白い水指です。側面には白や黒のざらついた斑紋のようなものがあり、模様かと思いました。ガラスなのに質感が面白くちょっと力強さも感じられる作品です。

5 岩田藤七 「瓶」
こちらは貝殻のような形のガラス器で、ひだに沿って線が入っていて全体的にやや青みがかっています。形が優美な一方でこちらも斑紋のような細かいムラがあって、それが模様のようでした。遊び心を感じる作品です。


[各務鑛三]
続いては岩田藤七と共に「工芸作家協会硝子部東京会」を設立した各務鑛三(かがみこうぞう)のコーナーです。日本で初めてクリスタルガラスを本格生産した「各務クリスタル工芸硝子製作所」も設立したそうで、一貫してクリスタルガラスの美しさを追求し、日展や帝展でも活躍したようです。
ここには2点のみ展示されていました。円筒形の水指は蓋が付いていて側面には内側に凹んだ金属製の細い柱のようなものが並び、規則正しく整然とした印象を受けます。鈍い光も美しい作品でした。


[藤田喬平]
続いては藤田喬平のコーナーで、9点ほど並んでいました。藤田喬平はガラスが冷えて固まる瞬間を留めた流動シリーズや、琳派に触発された飾筥シリーズなどで知られ、1977年からはヴェネツィアのムラーノ島の工房で制作するようになり、現地の伝統技法を取り入れた作品なども作っていたようです。今回の展示の作家の中では最も頻繁に観る作家だと思いますが、流石と思える品々が並んでいました。

9 藤田喬平 「流動三彩」
こちらはドロドロに溶けたような感じの造形の作品で、赤・緑・青などがマーブル模様のように混じり合っています。溶岩のような印象を受けて、まさに流動的な三彩となっていました。用途はわかりませんが面白い作品です。

14 藤田喬平 「ヴェニス花鉢」
こちらは今回のポスターの作品で、角?のような形の台の上に、逆三角形の器が付いたガラスの鉢です。
DSC09829_201807081937176bc.jpg
器の側面には青・ピンク・緑の縦帯が規則正しく並び、レース紋様が細かく施されています。恐らくこの技法がヴェネツィアのレースグラスを模しているのだと思いますが、恐ろしく細かくて驚かされました。台座もくるっと丸まって植物的な感じにも観えました。
 参考記事:あこがれのヴェネチアン・グラス ― 時を超え、海を越えて (サントリー美術館)

16 藤田喬平 「飾筥・紅白梅」
これは東近美工芸館の作品とそっくりに見えるけど同じものかは分からず…。八角形の箱型の容器で、側面には金地に赤・黒・白・銀などを使って紅白梅を表しています。ヒビ割れのような細かい黒が木の枝のように見えるのが面白いかな。色彩感覚は琳派的で、ガラスと言わなければ蒔絵だと思ってしまいそうです。実に豪華かつモダンな雰囲気の作品でした。
 参考記事:日本の工芸ー自然を愛でるー (東京国立近代美術館 工芸館)


[石井康治]
最後は千葉県出身の石井康治のコーナーです。石井康治は「いいちこ」やAGFの「炭焼珈琲」のボトルデザインでデザインコンペの受賞をするなどの実績があり、1989年にスタジオを設立し千葉と青森にガラス工房を構えたそうです。東北の木立や花、渓流、湖などを題材に鮮やかな色彩と金銀を使ったきらびやかな作品が特徴のようで、ここにもそうした作品が並んでいました。

18 石井康治 「環象文器」
こちらはほぼ球体の器で、上に口がついています。青紫がかった感じの紋様が側面に組み合わさっていて、葉っぱのような、若しくは流水のような不思議な紋様となっています。緑やピンクなど淡い色彩と模様が美しく、これが東北のイメージなのかな? 可憐な雰囲気の作品でした。

19 石井康治 「彩花文器」
こちらは赤く平べったい形(スコップの先みたいな形)の縦長の容器です。フチは赤く全体的に赤~ピンクがかっています。側面には花の模様があり、流水に浮かんで流れていくような印象を受けました。軽やかで華やいだ雰囲気の作品でした。


ということで点数は少ないものの、4人とも異なる個性を発揮している作品が並んでいました。もう終わってしまいましたが、今後も観ることがある作家だと思うので記憶に留めておきたい内容でした。



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原勝郎と板倉鼎-それぞれの巴里- 【千葉県立美術館】

前回までご紹介した千葉市美術館の展示を観る前に千葉県立美術館でも展示を観てきました。3つの小展示がセットになっていて、まずはお目当ての「原勝郎と板倉鼎-それぞれの巴里-」から観てきました。

DSC09820_20180708012646359.jpg

【展覧名】
 原勝郎と板倉鼎-それぞれの巴里-

【公式サイト】
 http://www2.chiba-muse.or.jp/www/ART/contents/1523866842940/index.html

【会場】千葉県立美術館 第1・2展示室
【最寄】千葉みなと駅

【会期】2018年4月21日(土)~7月8日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は千葉にゆかりのある原勝郎と板倉鼎という2人の画家を中心に、関連画家の作品も数人紹介するという内容となっています。30点程度と作品数は少ないので充実度はそれほど高くしませんでしたが、作品自体は好みのものが多かったように思います。簡単にメモしてきたので、気に入った作品と共に振り返ってみようと思います。

まずは原勝郎のコーナーです。原勝郎は早くから画家を志し、黒田清輝らの白馬会系の葵橋洋画研究所で学んだそうです。その後1918年にホノルルに渡り雑誌の挿絵画家として働き個展も開いています。1920年にロサンゼルスの葡萄園で働いて費用を稼ぎ、1922年にフランスへと渡りました。パリではモンパルナスにアトリエを構え、サロン・ドートンヌなどにも出品をしていたようです。1939年に戦争の勃発で帰国すると描くべき対象を見失った時期もあったようですが、目黒の自然園の木々を描くようになりました。ここにはそうした各時代の作品が並んでいました。

1 原勝郎 「街灯のある風景」 ★こちらで観られます
こちらは今回もポスターの作品で、外国の茶色い屋根の家が建ち並ぶ様子が描かれ、手前に街灯と門のようなものがあります。単純化されて何処と無くセザンヌ風にも観えますが、くすんだ質感が落ち着きがあって哀愁漂う風景となっています。画面に人っ子1人いないのも静かで寂しげに思う原因かも。中々好みの作品でした。

2 原勝郎 「モンマルトル」
こちらはモンマルトルの坂道の街角を描いた作品です。右に坂、左に家々、奥に真っ白なサクレ・クール寺院の先端のあたりが観えています。先程の絵よりも筆致が大胆になっていて、筆跡が残っているのが面白いかな。この絵も1人もいなくて静かな雰囲気がありました。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 パリ モンマルトル界隈

この隣には夫人の肖像もありました。

4 原勝郎 「コーヒーひき」
こちらは机の上に乗ったコーヒーミルやポット、カップ、マッチ箱などを描いた作品です。ややざらついたマチエールで、背景も含めて全体的に暗めの画面となっていて重厚感があるかな。ややキュビスム風のようにも思えますが、写実性もありました。

8 原勝郎 「森(A)」 ★こちらで観られます
こちらは帰国後の作品です。パリでは石造りの建物を好んで描いていましたが、帰国後は描くべき対象を見失った後にこうした目黒の木々を描くようになったようです。この絵では木が無数に描かれていて、素早く重厚でややざらついたマチエールとなっています。木の枝が太めに画面中に横方向に伸びていて、こんなに枝って伸びるか?ってくらい目立ちますw 勢いが感じられ、やや抽象画みたいな雰囲気もありました。

10 原勝郎 「樹」
こちらも大きな木を描いた作品で、3~4本の太い幹に分かれてうねっています。全体的に黄緑や茶色が多くて明るめの色使いで、上の方には青空も見えて爽やかな雰囲気です。キャンバスの下地みたいな所も覗いているかと思えば厚塗りだったりと大胆な筆致で、素早く描かれた感じがありました。

この先は鉛筆のデッサンや水彩などがありました。パリの橋や木々、裸婦などを描いた作品となっています。

20 木内克 「石版画三葉集 3.手をくむ女」
こちらは朝倉文夫の弟子でパリで原勝郎と親交を結んだ彫刻家 木内克の版画作品です。頭の上で手を組み、右足を曲げて座る裸婦像で、胸とお腹と太ももが太めに描かれています。頭は小さめで表情は観えないかな。アンバランスな感じの体つきですが、豊満な雰囲気がよく出ています。この隣には裸婦の立ち姿の作品もありましたが、そちらは割とバランスが良い姿となっていました。
 参考記事:猫百態―朝倉彫塑館の猫たち― (朝倉彫塑館)

続いては板倉鼎のコーナーです。板倉鼎については去年に個展を観たばかりだったので結構覚えていました。来歴などは以前に描いたので下記を参照して頂ければと思いますが、今回も代表的な作風の金魚を描いた作品などもありました。
 参考記事:よみがえる画家-板倉鼎・須美子展 (目黒区美術館)

21 板倉鼎 「静物」
こちらは白い鍵付きテーブルの上の静物で、布の上にマスカットや瓶、花瓶、パイのようなものなどが載っている様子が描かれています。割と平面的で強い色彩が特徴的かな。特に中央の緑の瓶と花瓶が鮮やかな色合となっていました。ちょっと素朴でアンリ・ルソーなんかを思い起こします。

22 板倉鼎 「金魚と雲」 ★こちらで観られます
こちらは窓辺の赤いクロスの上に置かれた水槽で金魚が泳ぐ様子が描かれた作品です。クロスの赤、水草の緑、空の青が引き立て合うような色彩で、鮮やかで明るく感じられます。何故か金魚は水槽からはみ出た水草よりも手前に描かれているので、浮かんで見えるのがちょっと奇妙で面白いです。水槽の形もいびつだったり、不思議な光景となっていました。

この隣も金魚の水槽を描いた作品でした。近くにはこの作品の下絵のよな水彩もありました。何回も同じような構図で描いていたのかもしれません。

24 板倉鼎 「裸婦」 ★こちらで観られます
こちらは窓辺で頭の上で腕を組んで寝ている裸婦を描いた作品です。窓の外には空と一体化した海があり、ヨットが浮かんでいます。室内にはちょこんと金魚鉢も置かれているのが流石ですw 無数の点描のような表現の部分もあって、ちょっと岡鹿之助の作品にも似た印象を受けるかな(ルソーやボーシャンにも似た感じ) 女性の肌は明るく、傍らの花と共に明るく可憐な雰囲気の作品となっていました。

こちらも下絵らしき作品も展示されていました。近くにはパリを描いた作品なんかもありました。

26 中西利雄 「南仏風景」
こちらは原勝郎や板倉鼎と同じ時期にパリでサロン・ドートンヌに入選した中西利雄の作品です。この絵では街路樹の立つY字路がある街角が描かれ、左の道は坂になっています。赤、クリーム色、白など壁の色が南仏独特で、強い日差しも感じさせます。簡潔な表現で色は明るく、かなり好みの画風でした。カーニュ辺りの風景を思い出させてくれました。

28 堀江正章 「耕地整理図」
こちらは板倉鼎の先生の1人だった堀江正章の作品です。この絵では高い所から田んぼを見渡すような風景が描かれ、沢山の人が働く長閑な光景となっています。遠くには丘の麓の家々が建ち並ぶ様子も描かれていて、日本の原風景といった感じです。田んぼは直線が多用されたすっきりとした構図となっていて、遠近法も正確な感じでした。空も明るく清々しい風景がです。

31 黒田重太郎 「浴後」
こちらは二紀会の立ち上げに関わった黒田重太郎の作品で、板倉鼎は黒田重太郎も参考にしていたようです。この絵では手紙を持っている裸婦と周りで座ったり横たわる裸婦たちが描かれていて、合わせて5人の裸婦がいます。室内とバルコニーの間のような所にいて、タイトルから察するに水浴した後なのかな? ちょっとカクカクした感じですが、重厚な色彩で描かれていました。顔などはハッキリしませんが力強い印象の作品です。


ということで、小展示でしたが個性的な作品が多く楽しむことができました。特に原勝郎の作品は面白かったです。この記事を書いている時点で残り1日となってしまいましたが、気になる方は是非どうぞ。この後、セットの展示も観てきましたので次回はそれをご紹介しようと思います。



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浮世絵黄金期からの展開 【千葉市美術館】

前々回・前回とご紹介した岡本神草の展示を観た後、同じ千葉市美術館の常設も観てきました。今回の常設は「浮世絵黄金期からの展開」というタイトルで35点ほど展示されていました。

DSC09842.jpg DSC09839.jpg

【展覧名】
 浮世絵黄金期からの展開 

【公式サイト】
 http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2018/0530_2/0530_2.html

【会場】千葉市美術館
【最寄】千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など

【会期】2018年5月30日(水)~ 7月8日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらも空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の常設は「浮世絵黄金期からの展開」ということで、千葉市美術館が誇るコレクションの中から18世紀後半の浮世絵の有名作家の作品が並ぶ内容となっていました。点数は多くないので充実度は③にしていますが、版画だけでなく肉筆も結構あって密度は濃かったように思います。いくつか気に入った作品をメモしてきましたので、それと共に展示の様子を振り返ってみようと思います。

1 鳥文斎栄之 「吉野丸舟遊び」
こちらは5枚続きの大画面作品で、屋形船の中で沢山の芸姑たちが楽器を鳴らしたり舞を踊っていたりする様子が描かれています。船の先頭には生花らしきものもあり華やかな雰囲気が漂います。5枚続きの迫力を活かしつつも、1枚1枚も独立して成立しそうな構図も面白いかな。人物像も艶やかで雅な感じがするのも好みでした。

この辺には3枚続き、5枚続きの作品がいくつかあって、いずれも見事でした。

5 勝川春章 「花下の遊女」
こちらは版画ではなく肉筆で、桜の下の遊女と禿(かむろ)が描かれています。繊細な筆致で描かれていて、目と唇の小さな美人像となっているのが勝川春章らしい雰囲気に思いました。遊郭の花見の様子らしく、優雅な光景です。肉筆でも勝川春章はさすがですね。

11 喜多川歌麿 「納涼美人図」 ★こちらで観られます
こちらは立膝にして座り、床に左手を付き 右手は団扇を持っている黒い着物の遊女を描いた肉筆画です。薄い衣で中の襦袢が透けるような表現が見事で、顔などは緻密な描写となっています。一方では着物のひだや体の輪郭はデフォルメされていて、流れるような曲線が美しい造形となっていました。美人に目が行きますが絵としても面白い作品です。

17 喜多川歌麿 「谷風と金太郎の首引き」
こちらは横長の錦絵で、相撲取りの谷風と真っ赤な金太郎が向かい合って 首に縄を繋げて引っ張り合っている様子が描かれています。周りにはこの頃評判だった3人の美人が行司を務めていて競争をもり立てています。谷風はやや目を細めているのに対して金太郎は目を見開いてケロッとしている感じに見えるかな。ちょっと可笑しみも込められているように思います。また、こちらの作品も谷風の着物は大胆な輪郭で描かれていて面白いデフォルメでした。

この辺にあった喜多川歌麿の「見立邯鄲」という作品も好みでした。

26 歌川豊国 「五代目岩井半四郎と三代目坂東三津五郎」
こちらは目を見開く花魁の立ち姿と、座って振り返る男が描かれた肉筆画です。誇張されたような表情をしているのは歌舞伎役者というのも理由だと思いますが、歌川豊国の文化期の作品の特徴でもあるようです。解説によると昭和7年に鏑木清方がこの作品の箱書きを書いているそうです。何だか歴史の重みを感じさせますね。

この辺にも肉筆画が並んでいました。千葉市美術館の恐るべしコレクションです。

31 西川祐信 「四季風俗図巻」
こちらは巻物で、川の周りで漁をしたり 川床を作って宴会したり 川岸の館でも宴会している様子が描かれています。また、左の方では屋敷の中で月を観ながら詩を詠んでいるなど、場面毎に四季があるようで、風流かつ楽しげな様子が伝わってきました。色鮮やかで緻密な表現も素晴らしく、感情豊かに生き生きとした人物描写だと思います。

33 祇園井特 「美人図」
こちらは下唇を玉虫色に塗る当時の流行の化粧をした遊女が2枚対で並んでいました。目の瞳まで描いていたり、眉や毛は1本1本が見えるなど濃密な表現となっていて、やや洋画的な感じも受けました。そうした独特の表現を使いつつ、モデルの女性も個性が伺えるような顔つきとなっていたのも面白かったです。

小林清親 「猫と提灯」 ★こちらで観られます
最後に「美の巨人たち」(2018/2/3放送)で紹介されたこの作品も特別展示されていました。 提灯の中に手を入れて何かを取ろうとしている白黒の猫を描いた版画で、提灯の影や尻尾だけ見えているので恐らく中にいるネズミを追っているのかな。 一見すると可愛い猫の絵ですが、実はこの版画は超絶技巧満載で35回も摺りを重ねています。その結果、油彩のような表現を可能としてしていて、輪郭線を使わず点の連続で毛並みまでも緻密に表わしているようです。また、背景にも注目で仄暗いムラのある緑の空間には細かい格子がびっしりとあって 布地に刷られているように見えるのですが、これも西洋の油彩を版画で表す為の工夫のようです。 画像などを観ただけでは分からないので、じっくりと実物を観ることができて良かったです。


ということで、小展示ではありましたが粒ぞろいの内容となっていました。これだけの内容を特別展のオマケで観られるのは得した気分です。この記事を書いている時点で残り2日しかありませんが、この美術館の常設はこの展示に限らず良品がよく出てきますので、特別展とセットで楽しめると思います(たまに特別展しか無い時もあります) 



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