Archive | 2018年09月
日付が変わって昨日となりましたが、土曜日に六本木のサントリー美術館で「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」を観てきました。非常に見応えのある内容となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-
【公式サイト】
http://daigoji.exhn.jp/
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_4/
【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2018年9月19日(水)~11月11日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
結構お客さんが多くて場所によっては人だかりができていました。まだ始まってそれほど経っていないうちにこの混みようだと会期末は混雑が予想されますので、気になる方はお早めにどうぞ。
さて、この展示は京都の山科盆地にある醍醐寺の歴史と共に、貴重な仏教美術を紹介する内容となっています。醍醐寺は貞観16年(874年)に天智天皇の流れをくむ理源大師聖宝によってに開かれた真言宗の寺で、真言密教の中でも特に加持祈祷・修法(すほう)などの実践を重視する寺として権力者たちの厚い帰依を受けて発展しました。そうした儀式の本尊となる彫刻・絵画・仏具など開創期からの名宝が数多く伝わっていて、今回の展示でも惜しげなく展示されていました。上階が1~2章、下階が3~4章となっていましたので、今日は前半の上階の展示について気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1章 聖宝、醍醐寺を開く>
まずは醍醐寺の始まりについてのコーナーです。醍醐寺を開いた聖宝は東大寺で諸宗を学んだ後、醍醐の味がする水が湧くという笠取山に草庵を結んで准胝観音(じゅんていかんのん)・如意輪観音の像を安置したそうで、これが醍醐寺の始まりとなります。その後、醍醐寺は醍醐天皇をはじめ歴代天皇の帰依を受けたようで、開創から数十年のうちには薬師堂や五大堂なども建てられ順調に整えられていきました。ここではそうした草創期の品などが展示さえていました。
15 「如意輪観音坐像」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている仏像で、繊細な細工の宝冠をかぶり、片膝を立てて肘を付き頬杖のようなポーズをしている如意輪観音像です。6本の腕があって、それぞれ宝珠を持っていたり、蓮の花を持っていたり、数珠を持っていたり、天を指さしていたりします。光背は2つの大小の円を重ねた感じで、縁がギザギザで光り輝くというよりは太陽のように燃えているようにも見えます。お顔は目を静かに閉じて気品があり、非常に優美な雰囲気がありました。解説によると、聖宝が最初に准胝観音と如意輪観音をまつって以来、如意輪観音は特別視されていたそうで、こちらは初代座主の観賢にまつわる品ではないかとのことです。かなりの傑作で、360度ぐるりと観ることが出来て貴重な機会でした。
7 乗淳 「醍醐寺縁起」 ★こちらで観られます
こちらは醍醐寺の縁起を書いた巻物で、江戸時代の模本ですが国宝指定されています。この縁起によると、聖宝が横尾明神という笠取山の神様に出会って醍醐寺の地を見出したことや、横尾明神が湧き水を醍醐味(=仏教の一番大事なところ)と言い表したことが書いてあるそうです。醍醐は昔のチーズとか乳酸菌飲料みたいなものと考えられているので、そういう味の水なんだろうか?と思ってしまいますが、当時は非常に美味しいもののたとえに使われていたみたいなので、単に美味しい水という意味かな。実際は地元のおじいさんがこの辺は美味しい水が出るよと教えてくれた話なのでは?と勘ぐりながら観ていましたw
この近くには聖宝の伝記や坐像もありました。聖宝は空海直系の弟子らしく、空海の像もあります。
2 空海 「大日経開題」
こちらは大日経の要点を書き留めたノートのような巻物です。達筆で知られる空海による品ですが、楷書・行書・ちょっとだけ草書が混じった書で、場所によっては文字列が斜めになっていたり、行間がみっちり詰め込まれていたりしてます。人に見せるものではなく勉強のために書いているような感じかな。手近な紙を継ぎ合わせているようで、熱心な研究の様子が伺えました。
<第2章 真言密教を学び、修する>
続いての2章は仏画や仏像の名品が並ぶコーナーで、恐らくこの章が最も充実していると思います。醍醐寺は真言密教の2大流派のうち小野流の拠点となり、修法に欠くことのできない仏具・彫刻・絵画・書物・記録などが蓄積されていったそうです。ここにはそうした品々が展示されていました。
17 「両界曼荼羅図」
こちらは金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅から成る2幅対の両界曼荼羅です。見分け方としては、格子状に9つのブロックに仏たちが分かれているのが金剛界曼荼羅で大日如来の知恵を表し、蓮華のような形で仏たちが配置されているのが胎蔵界曼荼羅で、我々の悟りの種が大日如来の導きによって花開く様子を表しています。細かい部分はくすんで見えなくなっていますが、金や赤を使い精緻で華やかに描かれていたことが伺えます。曼荼羅は宇宙を表すと言われるくらいなので、じっと見ていると吸い込まれそうなくらいですw
この近くには五鈷杵などの仏具もありました。九鈷杵という日本では珍しい品もあって、ちょっと驚きました。ちなみに修法(すほう)は現世での願いを叶える儀式ですが、息災・増益・敬愛・調伏の4つに分けられるようで、それに応じて本尊が選ばれるのだとか。少し先には訶梨帝母像(安産など子供関係の加護)や閻魔天(安産)などの仏画もありました。
24 「閻魔天騎牛像」
水牛に乗って右手の掌を挙げ、左手は先に仏の頭がついた杖を持っている閻魔天の像です。閻魔と聞くとすぐに死後の裁きを思い起こしますが、密教では安産などの祈願で用いられるそうです。どっしりとした体つきの牛と閻魔の存在感があり、頭の後ろには炎が3つ燃えている光背があって力強い雰囲気もあるのですが、静かな佇まいのようにも思えました。
26 快慶 「不動明王坐像」
こちらは右手に剣、左手に羂索を持って、燃え盛る火炎の光背を背にする不動明王像です。目がギロッとしている玉眼で 憤怒の形相をしているのですが、顔つきは端正で(歪ませているわけではなく)気品が感じられます。何処となく体つきも滑らかな感じもするかな。快慶らしい調和を感じさせる不動明王像でした。
38 「五大尊像」 ★こちらで観られます
こちらは5幅対の掛け軸で、合わせて五大明王が勢揃いしています。いずれも炎の光背が燃え盛っているのが目を引き、足を踏ん張ったり手を振りかざすなど動きのある姿勢となっています(不動明王は座っている) それぞれの装身具には截金が施されていて、大胆な図様の中に繊細さも観られます。輪郭線が強いのがそのまま力強さを感じさせるのかな。等身大くらいあるのも迫力と動きを感じさせる要因のように思えました。
この近くには白描図のコーナーもありました。白描図は輪郭だけの素描のようなもので、醍醐寺は修学の場でもあったので白描図が豊富に伝わったようです。彩色されていないので、仏達の形などがよく理解できる品となっていました。
22 「五大明王像」 ★こちらで観られます
こちらは初代座主の観賢が制作に関わっているとされる五大明王の像です。右から順に、矢や三鈷杵を持つ金剛夜叉明王、矢や弓を持ちシヴァを踏みつける降三世明王、剣と羂索を持つ不動明王、槍や法輪を持つ軍荼利明王、水牛に乗って印を組む大威徳明王となっています。いずれも目が飛び出すような顔をしているのが特徴で、大威徳明王以外は不動明王のほうに重心を傾けて足を踏ん張っています。まるで戦隊モノの決めポーズみたいでカッコいいw この像で特に変わっているのは大威徳明王で、通常は伏せている水牛が立っています。さらに水牛のつぶらな瞳が何とも可愛いw ちょっと珍しい作例の五大明王ですが、ずらりと並ぶ様子は圧巻でした。
この近くには国宝の一切経などもありました。
ということで、前半から見どころたっぷりの内容となっていました。何気なく国宝が連打される凄い品揃えで、見応えもあって非常に満足できました。後半はその後の醍醐寺の苦難や復興についても紹介されていて、仏具以外の名品も展示されていましたので、次回はそうした作品をご紹介していこうと思います。
→ 後編はこちら

【展覧名】
京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-
【公式サイト】
http://daigoji.exhn.jp/
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_4/
【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2018年9月19日(水)~11月11日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
結構お客さんが多くて場所によっては人だかりができていました。まだ始まってそれほど経っていないうちにこの混みようだと会期末は混雑が予想されますので、気になる方はお早めにどうぞ。
さて、この展示は京都の山科盆地にある醍醐寺の歴史と共に、貴重な仏教美術を紹介する内容となっています。醍醐寺は貞観16年(874年)に天智天皇の流れをくむ理源大師聖宝によってに開かれた真言宗の寺で、真言密教の中でも特に加持祈祷・修法(すほう)などの実践を重視する寺として権力者たちの厚い帰依を受けて発展しました。そうした儀式の本尊となる彫刻・絵画・仏具など開創期からの名宝が数多く伝わっていて、今回の展示でも惜しげなく展示されていました。上階が1~2章、下階が3~4章となっていましたので、今日は前半の上階の展示について気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1章 聖宝、醍醐寺を開く>
まずは醍醐寺の始まりについてのコーナーです。醍醐寺を開いた聖宝は東大寺で諸宗を学んだ後、醍醐の味がする水が湧くという笠取山に草庵を結んで准胝観音(じゅんていかんのん)・如意輪観音の像を安置したそうで、これが醍醐寺の始まりとなります。その後、醍醐寺は醍醐天皇をはじめ歴代天皇の帰依を受けたようで、開創から数十年のうちには薬師堂や五大堂なども建てられ順調に整えられていきました。ここではそうした草創期の品などが展示さえていました。
15 「如意輪観音坐像」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている仏像で、繊細な細工の宝冠をかぶり、片膝を立てて肘を付き頬杖のようなポーズをしている如意輪観音像です。6本の腕があって、それぞれ宝珠を持っていたり、蓮の花を持っていたり、数珠を持っていたり、天を指さしていたりします。光背は2つの大小の円を重ねた感じで、縁がギザギザで光り輝くというよりは太陽のように燃えているようにも見えます。お顔は目を静かに閉じて気品があり、非常に優美な雰囲気がありました。解説によると、聖宝が最初に准胝観音と如意輪観音をまつって以来、如意輪観音は特別視されていたそうで、こちらは初代座主の観賢にまつわる品ではないかとのことです。かなりの傑作で、360度ぐるりと観ることが出来て貴重な機会でした。
7 乗淳 「醍醐寺縁起」 ★こちらで観られます
こちらは醍醐寺の縁起を書いた巻物で、江戸時代の模本ですが国宝指定されています。この縁起によると、聖宝が横尾明神という笠取山の神様に出会って醍醐寺の地を見出したことや、横尾明神が湧き水を醍醐味(=仏教の一番大事なところ)と言い表したことが書いてあるそうです。醍醐は昔のチーズとか乳酸菌飲料みたいなものと考えられているので、そういう味の水なんだろうか?と思ってしまいますが、当時は非常に美味しいもののたとえに使われていたみたいなので、単に美味しい水という意味かな。実際は地元のおじいさんがこの辺は美味しい水が出るよと教えてくれた話なのでは?と勘ぐりながら観ていましたw
この近くには聖宝の伝記や坐像もありました。聖宝は空海直系の弟子らしく、空海の像もあります。
2 空海 「大日経開題」
こちらは大日経の要点を書き留めたノートのような巻物です。達筆で知られる空海による品ですが、楷書・行書・ちょっとだけ草書が混じった書で、場所によっては文字列が斜めになっていたり、行間がみっちり詰め込まれていたりしてます。人に見せるものではなく勉強のために書いているような感じかな。手近な紙を継ぎ合わせているようで、熱心な研究の様子が伺えました。
<第2章 真言密教を学び、修する>
続いての2章は仏画や仏像の名品が並ぶコーナーで、恐らくこの章が最も充実していると思います。醍醐寺は真言密教の2大流派のうち小野流の拠点となり、修法に欠くことのできない仏具・彫刻・絵画・書物・記録などが蓄積されていったそうです。ここにはそうした品々が展示されていました。
17 「両界曼荼羅図」
こちらは金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅から成る2幅対の両界曼荼羅です。見分け方としては、格子状に9つのブロックに仏たちが分かれているのが金剛界曼荼羅で大日如来の知恵を表し、蓮華のような形で仏たちが配置されているのが胎蔵界曼荼羅で、我々の悟りの種が大日如来の導きによって花開く様子を表しています。細かい部分はくすんで見えなくなっていますが、金や赤を使い精緻で華やかに描かれていたことが伺えます。曼荼羅は宇宙を表すと言われるくらいなので、じっと見ていると吸い込まれそうなくらいですw
この近くには五鈷杵などの仏具もありました。九鈷杵という日本では珍しい品もあって、ちょっと驚きました。ちなみに修法(すほう)は現世での願いを叶える儀式ですが、息災・増益・敬愛・調伏の4つに分けられるようで、それに応じて本尊が選ばれるのだとか。少し先には訶梨帝母像(安産など子供関係の加護)や閻魔天(安産)などの仏画もありました。
24 「閻魔天騎牛像」
水牛に乗って右手の掌を挙げ、左手は先に仏の頭がついた杖を持っている閻魔天の像です。閻魔と聞くとすぐに死後の裁きを思い起こしますが、密教では安産などの祈願で用いられるそうです。どっしりとした体つきの牛と閻魔の存在感があり、頭の後ろには炎が3つ燃えている光背があって力強い雰囲気もあるのですが、静かな佇まいのようにも思えました。
26 快慶 「不動明王坐像」
こちらは右手に剣、左手に羂索を持って、燃え盛る火炎の光背を背にする不動明王像です。目がギロッとしている玉眼で 憤怒の形相をしているのですが、顔つきは端正で(歪ませているわけではなく)気品が感じられます。何処となく体つきも滑らかな感じもするかな。快慶らしい調和を感じさせる不動明王像でした。
38 「五大尊像」 ★こちらで観られます
こちらは5幅対の掛け軸で、合わせて五大明王が勢揃いしています。いずれも炎の光背が燃え盛っているのが目を引き、足を踏ん張ったり手を振りかざすなど動きのある姿勢となっています(不動明王は座っている) それぞれの装身具には截金が施されていて、大胆な図様の中に繊細さも観られます。輪郭線が強いのがそのまま力強さを感じさせるのかな。等身大くらいあるのも迫力と動きを感じさせる要因のように思えました。
この近くには白描図のコーナーもありました。白描図は輪郭だけの素描のようなもので、醍醐寺は修学の場でもあったので白描図が豊富に伝わったようです。彩色されていないので、仏達の形などがよく理解できる品となっていました。
22 「五大明王像」 ★こちらで観られます
こちらは初代座主の観賢が制作に関わっているとされる五大明王の像です。右から順に、矢や三鈷杵を持つ金剛夜叉明王、矢や弓を持ちシヴァを踏みつける降三世明王、剣と羂索を持つ不動明王、槍や法輪を持つ軍荼利明王、水牛に乗って印を組む大威徳明王となっています。いずれも目が飛び出すような顔をしているのが特徴で、大威徳明王以外は不動明王のほうに重心を傾けて足を踏ん張っています。まるで戦隊モノの決めポーズみたいでカッコいいw この像で特に変わっているのは大威徳明王で、通常は伏せている水牛が立っています。さらに水牛のつぶらな瞳が何とも可愛いw ちょっと珍しい作例の五大明王ですが、ずらりと並ぶ様子は圧巻でした。
この近くには国宝の一切経などもありました。
ということで、前半から見どころたっぷりの内容となっていました。何気なく国宝が連打される凄い品揃えで、見応えもあって非常に満足できました。後半はその後の醍醐寺の苦難や復興についても紹介されていて、仏具以外の名品も展示されていましたので、次回はそうした作品をご紹介していこうと思います。
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先日ご紹介した丸の内の展示を観た際、出光美術館で「仙厓礼讃」も観てきました。

【展覧名】
仙厓礼讃
【公式サイト】
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/
【会場】出光美術館
【最寄】有楽町駅
【会期】2018年9月15日(土)~10月28日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
割とお客さんが多くて所によっては人だかりが出来るくらいでした。
さて、この展示は禅画で知られる仙厓義梵に関する展示です。礼賛というタイトルなのでフォロワー達の展示かと思いましたが全て本人の作品となっています。仙厓は2~3年くらい前にも出光美術館で展示をやっていました(当時はブログ休止中でした)が、その時と一部は被っているものの 今回は禅画以外もあり幅広い内容となっていたように思います。仙厓の作品の多くは住持職を引退して寺の境内の一隅にあった虚白院とい隠居所で過ごした四半世紀の間に制作されました。しかも隠居したのは還暦を過ぎてからで、悠々自適な第二の人生を過ごし名所・旧跡・寺社・仏閣への旅行や参拝、地元博多の祭などの見物、珍奇石や古器の収集、茶、書画、詩作、詠歌、句作などに親しみ、友人・知人・地元の人々との交流を大事にしていたそうです。この展示ではそうした様々な趣味にも触れていて、5章構成で紹介されていました。構成は時系列ではなくテーマごととなっていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1章 長寿は天からの授かりもの ―「老人六歌仙画賛」を中心に>
まずは長寿に関するコーナーです。仙厓は人間50年と言われていた時代に88歳まで生きたそうで、老後も充実していたと言えそうです。ここでは如何に生き、楽しく実りあるものにするのかをテーマにした作品が並んでいました。
1~3 仙厓義梵 「老人六歌仙画賛」 ★こちらで観られます
こちらは同じ題名の3点の掛け軸で、腰が曲がった6人の老人たちが杖をついている様子が描かれています。いずれも仙厓の作風の特徴であるゆる~い略画のような雰囲気で、いずれの老人たちも笑顔のように見えます。一方、賛に書かれた歌には「皺が寄ってホクロが出来て腰が曲がる。でしゃばって世話を焼きたがり、くどくどして気が短くなって愚痴を言い、欲深くなる。何度も自分の子供を褒めて達者自慢をするので人は嫌がる」と老人に手厳しく、皮肉と訓戒が込められている感じです。この歌自体は先人が詠んだものですが、仙厓の絵は反対に楽しそうで、老いていくことを肯定的に捉えているようにも見えました。
4 仙厓義梵 「百寿老画賛」
こちらは寿老人が100人くらい集まって長寿の祝いをしている様子を描いた作品です。踊ったり、壺の蓋を開けて覗いたりしていてみんな楽しそうな表情です。賛では百人の百歳が集まっても一万年にしかならず、有限である。そこで天南星(寿星)の化身で「寿老」の主を招いたを書いてあるようで、絵の上の方に輿に乗った一際目立つ神様の姿もありました。実際には100人以上集まっているそうで、賑わいが感じられました。
<第2章 力を尽くせば、必ず報われる ―仙厓画傑作選>
続いての2章は傑作選のコーナーです。仙厓は隠居してからも禅の行く末を気にしていたようで、禅の理解を深めて欲しいと禅画を描きました。ここにはそうした意味深な作品なども並んでいました。
12 仙厓義梵 「指月布袋画賛」 ★こちらで観られます
こちらは袋を持った上半身裸の布袋が左上を指さしていて、傍らの子供が両手を挙げて喜んでいるような作品です。指の先には何も無いのですが、画面外に月があるようです。子供は人と言うよりはヒヨコみたいに見えるくらい簡略化されているのが可愛いw と、そんな緩い雰囲気の作品であるものの、これは指月布袋の禅の教えを描いているようで、指(経典)に暗示された月(禅の真髄)は見えるが、中々手は届かない。厳しい修行を積んだ者のみに訪れるという意味が込められているようです。流石は禅の住持職だけあって深いですね…。
13 仙厓義梵 「坐禅蛙画賛」
こちらはふにゃっとした線で描かれたカエルで、じっとしている様子となっています。何故かニヤリと笑っているような表情をしていて、やや不敵な印象を受けます。賛には「座禅して人が仏になるならハ」とあり、全ての存在に仏性があるのならば、カエルも悟りを拓けるはずだが、カエルは悟りを求める求道の精神が備わっていないので、到達できないという意味のようです。激ゆるのカエルの絵にそこまでの意味が込められているとはw 賛の意味が分かると非常に興味深い内容となるようでした。
この近くには子犬を描いた作品もありました。
15 仙厓義梵 「○△□」 ★こちらで観られます
左から順に□△○の記号のようなものが描かれた作品です。この記号の意味ははっきりとは分からないようですが、禅画ではよく○(円相)が描かれて悟りを意味したりします。1つの解釈としては□から順に○の悟りへと段階となっているのではないかとの説があるようです。一方、これは3つの宗教(もしくは3つの宗派)を表しているいるのではないかという説もあります。いずれにしても何らかの意図が込められていると思われますが、出光佐三はこれを観て英題を「Univers」としたそうです。色々考えさせられる禅問答みたいな作品でしょうかw
この辺にはネギ、葦、柳、菊などの植物を描いた作品などもありました。
<第3章 楽しき思い出よ、いつまでも ―「書画巻」をめぐって>
仙厓は禅画のイメージが強いように思いますが、作品の過半は風俗や風景、動植物を描いた作品のようです。旅先での情景や着想をまとめ、漢詩や詩句・和歌などを記しておいて、虚白院に戻ってから画賛に仕上げていったそうです。ここにはそうしたスケッチとも言えるものをまとめた「書画巻」と、それを元にしたと思われる完成作などが並んでいました。
22 仙厓義梵 「書画巻(草稿)」
こちらはスケッチをまとめたもので、絵と賛が半々くらい描かれています。スケッチも素朴な感じですが、祭りの様子など訪れた先の光景をつぶさに素早く描いているように思えます。勿論、ゆるい雰囲気なので、まるで絵日記みたいな楽しさがありましたw
と、ここまで仙厓の絵はゆるい!と言いまくっていますが、実は仙厓は狩野派風の絵を描いていた時期もあります。そちらの作風は緻密でしっかりした描写となっているのですが、そういう絵では絵の上手さにばかり注目が集まるので、人々が親しみやすい無法の絵を描くようになったそうです。あくまでも禅の精神を広めることを考えて、こういう画風にしているんですね。
26 仙厓義梵 「天馬献上画賛」
こちらは馬が立ち上がって両脇の2人がそれを制御しようとしている様子を描いています。この馬は将軍家から朝廷に献上される習わしのことではないかとのことで、先程の書画巻の中によく似た馬が描かれています。しかし両者を比較すると馬の足の部分や人物の向きを変えているなど、構図の変化もあるようで、ゆるい絵のようで推敲を重ねてたのが伺えました。
29 仙厓義梵 「猿猴捉月画賛」
こちらは木の上から水面の月に伸ばす猿を描いた作品です。同様の主題は割とよく観ますが、この後この猿は溺死してしまいます。その意味は分不相応な欲望への教訓なのですが、この猿は目がくりっとして中々可愛い奴ですw こちらも書画巻に似た構図の作品があるのですが、非常に手が長くなっているのも特徴に思えました。
33 仙厓義梵 「芥屋大門画賛」
こちらは芥屋大門という高さ60mの岩山を描いた作品です。玄武岩の柱状節理が特徴の岩となっていて、岩肌には無数に縦の線が入っています。仙厓はこの造形に興味を持ったそうで、この絵でも薄めの線で柱状節理の模様を丹念に描いています。その結果、力強い雰囲気が出ていてその場の情景が見事に表現されていました。仙厓は岩マニアで石マニアなので、その趣味や知識が活かされているようにも思えました。
<第4章 悠々自適な隠居暮らし ―旅行三昧・趣味三昧の日々>
続いては隠居暮らしでの多才な趣味のコーナーです。様々な趣味に没頭し、日々を愉しんでいた様子が伺えます。
46 仙厓義梵 「曲芸画賛」
こちらは曲芸師がジャグリングしている様子が描かれた作品です。手を広げて5つの道具が宙を舞っていて、周りの人はそれを見上げて指さしている人もいます。一瞬の様子や周りの人の表情など、その場の雰囲気がよく伝わってくるように思えました。中々面白い題材で、仙厓がこうした絵も残しているのに驚きました。
この辺には祭りを題材にした作品もありました。
51 仙厓義梵 「不動滝画賛」
こちらは堅牢な石組みの下から流れ落ちる滝を描いた作品です。実際にこういう滝があるそうで、隣に展示されていた写真と見比べると石組みの様子などは正確で、実景に忠実に描いているようです。滝の流れの表現も丁寧に描かれていて、風情がありました。
この辺には実景に基づく名所を描いた作品などが並んでいました。仙厓は好奇心旺盛で、様々な所に出向いていたようです。
69 仙厓義梵 「書画入煎茶碗箱」
こちらは遺愛の茶碗箱で、縦長の長方形にU字の切り込みが入っています。そしてそこには人の顔が描かれていて、ニヤッと笑う表情となっていました。何故笑っているのか分かりませんが、ユーモアを感じさせ、ちょっと脱力感ある悪戯みたいな作品でした。
この辺には遺愛の品が並んでいました。茶道具が多かったかな。
71 仙厓義梵 「亀石之銘巻」
こちらは亀のような形をした石で、仙厓は珍奇石のコレクションが趣味でそれを目当てに旅をしたこともあるようです。石なのに亀のような造形の神秘に心ひかれたようで、賛まで付けています。解説によると悉有仏性(あらゆるものが仏になる仏性を持っている)の教えを想起させるのが刺さったようで、この石の他にも硯のような石などもありました。(どうしても欲しくて旅に出て譲り受けた石なんかもあるそうです。それを貰った時の喜びは相当なものだったのだとか。そんなに物事に執着したら駄目なんじゃないか?という気がしますが…w)
他にも貝殻の観音という絵などもありました。これも悉有仏性を感じそうです。
80 仙厓義梵 「トド画賛」
こちらは日本には珍しいトド(もしくはアザラシ)を描いた作品で、実際に北九州の海で網に掛かった時の様子を描いているようです。賛には「本名トド 北國の海に多い」とあり、「薬功本草」という書物で調べた旨も書いてあるようです。もじゃもじゃして尻尾が三叉状になっているなどあまり上手く描いてる訳ではないですが愛嬌があるかなw ちょっと珍しい画題で博物学的な興味も伺えました。
81 仙厓義梵 「芭蕉蛙画賛」 ★こちらで観られます
こちらは二幅対の作品で、いずれも芭蕉の木の下にいるカエルが描かれています。賛には「池阿らは(池あらば)飛て芭蕉にきかせたい」「古池や芭蕉飛こむ水の音」と添えられていて、松尾芭蕉の俳句をパロディにしたようなユーモアを感じる作品となっています。芭蕉の飛び込む音はヤバそうですねw カエルはまるまるとして、芭蕉は刷毛目のような濃淡で質感豊かにかかれていました。
<第5章 愉快なり、友との日々 ―仙厓流ユーモアを育んだ面々>
最後は多くの文化人や友人との交流のコーナーです。ここには合作なども並んでいました。
87 深慧源芳(画)仙厓義梵(賛) 「貧乏神葬式図」
こちらは合作で、絵を描いたのは深慧源芳という仙厓の身近な友人です。家の前で何人かで貧乏神の葬式の様子を描いているのですが、割と仙厓のゆるい画風に似ているかも。仙厓による賛では、貧乏神が死んで喜ばしいが残った借金は誰が払うのか?と添えているようです。この変わった主題はどちらのアイディアかは不明ですが、お互いウィットに富んだ感じが面白い作品でした。
この他にも深慧源芳との合作がいくつかありました。仙厓の虚白院は文化サークルの様相だったそうです。
95 斎藤秋圃(画) 仙厓義梵・斎藤愚連堂[凹](賛) 「涅槃図」 ★こちらで観られます
こちらは3人の合作で、釈迦の代わりに仙厓が横たわっている涅槃図のような作品です。周りには近隣の顔見知りや友人たち、その下には生活用品や植木鉢などの仙厓の愛用の品が並んでいて、上の方からは掛け軸の中から出てくる来迎の様子なども描かれています。仙厓らによる賛には、これを入滅ではなく昼寝に読み替えているようです。そのせいか、参列者たちも嘆くというよりはのほほんとした雰囲気に思えました。
ということで、仙厓の深い禅の教えの一端と、老後の悠々自適ぶりが伺えるような展示となっていました。あえて分かりやすい画風にしている為、多くの人に愛されるゆるキャラみたいな親しみが持てる画風だと思います。単純なようで奥深い面白い展示です。
おまけ;
今日、家に帰ったら金曜ロードショーで「海賊とよばれた男」をやっていましたが、劇中の社長室らしき所で一瞬、仙厓の「円相図」らしきものが映りました。(もしかしたら白隠かもしれませんが) この映画は観たことなかったですが、見覚えのある絵だったので出光佐三がモデルの話なんだなと分かりましたw

【展覧名】
仙厓礼讃
【公式サイト】
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/
【会場】出光美術館
【最寄】有楽町駅
【会期】2018年9月15日(土)~10月28日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
割とお客さんが多くて所によっては人だかりが出来るくらいでした。
さて、この展示は禅画で知られる仙厓義梵に関する展示です。礼賛というタイトルなのでフォロワー達の展示かと思いましたが全て本人の作品となっています。仙厓は2~3年くらい前にも出光美術館で展示をやっていました(当時はブログ休止中でした)が、その時と一部は被っているものの 今回は禅画以外もあり幅広い内容となっていたように思います。仙厓の作品の多くは住持職を引退して寺の境内の一隅にあった虚白院とい隠居所で過ごした四半世紀の間に制作されました。しかも隠居したのは還暦を過ぎてからで、悠々自適な第二の人生を過ごし名所・旧跡・寺社・仏閣への旅行や参拝、地元博多の祭などの見物、珍奇石や古器の収集、茶、書画、詩作、詠歌、句作などに親しみ、友人・知人・地元の人々との交流を大事にしていたそうです。この展示ではそうした様々な趣味にも触れていて、5章構成で紹介されていました。構成は時系列ではなくテーマごととなっていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1章 長寿は天からの授かりもの ―「老人六歌仙画賛」を中心に>
まずは長寿に関するコーナーです。仙厓は人間50年と言われていた時代に88歳まで生きたそうで、老後も充実していたと言えそうです。ここでは如何に生き、楽しく実りあるものにするのかをテーマにした作品が並んでいました。
1~3 仙厓義梵 「老人六歌仙画賛」 ★こちらで観られます
こちらは同じ題名の3点の掛け軸で、腰が曲がった6人の老人たちが杖をついている様子が描かれています。いずれも仙厓の作風の特徴であるゆる~い略画のような雰囲気で、いずれの老人たちも笑顔のように見えます。一方、賛に書かれた歌には「皺が寄ってホクロが出来て腰が曲がる。でしゃばって世話を焼きたがり、くどくどして気が短くなって愚痴を言い、欲深くなる。何度も自分の子供を褒めて達者自慢をするので人は嫌がる」と老人に手厳しく、皮肉と訓戒が込められている感じです。この歌自体は先人が詠んだものですが、仙厓の絵は反対に楽しそうで、老いていくことを肯定的に捉えているようにも見えました。
4 仙厓義梵 「百寿老画賛」
こちらは寿老人が100人くらい集まって長寿の祝いをしている様子を描いた作品です。踊ったり、壺の蓋を開けて覗いたりしていてみんな楽しそうな表情です。賛では百人の百歳が集まっても一万年にしかならず、有限である。そこで天南星(寿星)の化身で「寿老」の主を招いたを書いてあるようで、絵の上の方に輿に乗った一際目立つ神様の姿もありました。実際には100人以上集まっているそうで、賑わいが感じられました。
<第2章 力を尽くせば、必ず報われる ―仙厓画傑作選>
続いての2章は傑作選のコーナーです。仙厓は隠居してからも禅の行く末を気にしていたようで、禅の理解を深めて欲しいと禅画を描きました。ここにはそうした意味深な作品なども並んでいました。
12 仙厓義梵 「指月布袋画賛」 ★こちらで観られます
こちらは袋を持った上半身裸の布袋が左上を指さしていて、傍らの子供が両手を挙げて喜んでいるような作品です。指の先には何も無いのですが、画面外に月があるようです。子供は人と言うよりはヒヨコみたいに見えるくらい簡略化されているのが可愛いw と、そんな緩い雰囲気の作品であるものの、これは指月布袋の禅の教えを描いているようで、指(経典)に暗示された月(禅の真髄)は見えるが、中々手は届かない。厳しい修行を積んだ者のみに訪れるという意味が込められているようです。流石は禅の住持職だけあって深いですね…。
13 仙厓義梵 「坐禅蛙画賛」
こちらはふにゃっとした線で描かれたカエルで、じっとしている様子となっています。何故かニヤリと笑っているような表情をしていて、やや不敵な印象を受けます。賛には「座禅して人が仏になるならハ」とあり、全ての存在に仏性があるのならば、カエルも悟りを拓けるはずだが、カエルは悟りを求める求道の精神が備わっていないので、到達できないという意味のようです。激ゆるのカエルの絵にそこまでの意味が込められているとはw 賛の意味が分かると非常に興味深い内容となるようでした。
この近くには子犬を描いた作品もありました。
15 仙厓義梵 「○△□」 ★こちらで観られます
左から順に□△○の記号のようなものが描かれた作品です。この記号の意味ははっきりとは分からないようですが、禅画ではよく○(円相)が描かれて悟りを意味したりします。1つの解釈としては□から順に○の悟りへと段階となっているのではないかとの説があるようです。一方、これは3つの宗教(もしくは3つの宗派)を表しているいるのではないかという説もあります。いずれにしても何らかの意図が込められていると思われますが、出光佐三はこれを観て英題を「Univers」としたそうです。色々考えさせられる禅問答みたいな作品でしょうかw
この辺にはネギ、葦、柳、菊などの植物を描いた作品などもありました。
<第3章 楽しき思い出よ、いつまでも ―「書画巻」をめぐって>
仙厓は禅画のイメージが強いように思いますが、作品の過半は風俗や風景、動植物を描いた作品のようです。旅先での情景や着想をまとめ、漢詩や詩句・和歌などを記しておいて、虚白院に戻ってから画賛に仕上げていったそうです。ここにはそうしたスケッチとも言えるものをまとめた「書画巻」と、それを元にしたと思われる完成作などが並んでいました。
22 仙厓義梵 「書画巻(草稿)」
こちらはスケッチをまとめたもので、絵と賛が半々くらい描かれています。スケッチも素朴な感じですが、祭りの様子など訪れた先の光景をつぶさに素早く描いているように思えます。勿論、ゆるい雰囲気なので、まるで絵日記みたいな楽しさがありましたw
と、ここまで仙厓の絵はゆるい!と言いまくっていますが、実は仙厓は狩野派風の絵を描いていた時期もあります。そちらの作風は緻密でしっかりした描写となっているのですが、そういう絵では絵の上手さにばかり注目が集まるので、人々が親しみやすい無法の絵を描くようになったそうです。あくまでも禅の精神を広めることを考えて、こういう画風にしているんですね。
26 仙厓義梵 「天馬献上画賛」
こちらは馬が立ち上がって両脇の2人がそれを制御しようとしている様子を描いています。この馬は将軍家から朝廷に献上される習わしのことではないかとのことで、先程の書画巻の中によく似た馬が描かれています。しかし両者を比較すると馬の足の部分や人物の向きを変えているなど、構図の変化もあるようで、ゆるい絵のようで推敲を重ねてたのが伺えました。
29 仙厓義梵 「猿猴捉月画賛」
こちらは木の上から水面の月に伸ばす猿を描いた作品です。同様の主題は割とよく観ますが、この後この猿は溺死してしまいます。その意味は分不相応な欲望への教訓なのですが、この猿は目がくりっとして中々可愛い奴ですw こちらも書画巻に似た構図の作品があるのですが、非常に手が長くなっているのも特徴に思えました。
33 仙厓義梵 「芥屋大門画賛」
こちらは芥屋大門という高さ60mの岩山を描いた作品です。玄武岩の柱状節理が特徴の岩となっていて、岩肌には無数に縦の線が入っています。仙厓はこの造形に興味を持ったそうで、この絵でも薄めの線で柱状節理の模様を丹念に描いています。その結果、力強い雰囲気が出ていてその場の情景が見事に表現されていました。仙厓は岩マニアで石マニアなので、その趣味や知識が活かされているようにも思えました。
<第4章 悠々自適な隠居暮らし ―旅行三昧・趣味三昧の日々>
続いては隠居暮らしでの多才な趣味のコーナーです。様々な趣味に没頭し、日々を愉しんでいた様子が伺えます。
46 仙厓義梵 「曲芸画賛」
こちらは曲芸師がジャグリングしている様子が描かれた作品です。手を広げて5つの道具が宙を舞っていて、周りの人はそれを見上げて指さしている人もいます。一瞬の様子や周りの人の表情など、その場の雰囲気がよく伝わってくるように思えました。中々面白い題材で、仙厓がこうした絵も残しているのに驚きました。
この辺には祭りを題材にした作品もありました。
51 仙厓義梵 「不動滝画賛」
こちらは堅牢な石組みの下から流れ落ちる滝を描いた作品です。実際にこういう滝があるそうで、隣に展示されていた写真と見比べると石組みの様子などは正確で、実景に忠実に描いているようです。滝の流れの表現も丁寧に描かれていて、風情がありました。
この辺には実景に基づく名所を描いた作品などが並んでいました。仙厓は好奇心旺盛で、様々な所に出向いていたようです。
69 仙厓義梵 「書画入煎茶碗箱」
こちらは遺愛の茶碗箱で、縦長の長方形にU字の切り込みが入っています。そしてそこには人の顔が描かれていて、ニヤッと笑う表情となっていました。何故笑っているのか分かりませんが、ユーモアを感じさせ、ちょっと脱力感ある悪戯みたいな作品でした。
この辺には遺愛の品が並んでいました。茶道具が多かったかな。
71 仙厓義梵 「亀石之銘巻」
こちらは亀のような形をした石で、仙厓は珍奇石のコレクションが趣味でそれを目当てに旅をしたこともあるようです。石なのに亀のような造形の神秘に心ひかれたようで、賛まで付けています。解説によると悉有仏性(あらゆるものが仏になる仏性を持っている)の教えを想起させるのが刺さったようで、この石の他にも硯のような石などもありました。(どうしても欲しくて旅に出て譲り受けた石なんかもあるそうです。それを貰った時の喜びは相当なものだったのだとか。そんなに物事に執着したら駄目なんじゃないか?という気がしますが…w)
他にも貝殻の観音という絵などもありました。これも悉有仏性を感じそうです。
80 仙厓義梵 「トド画賛」
こちらは日本には珍しいトド(もしくはアザラシ)を描いた作品で、実際に北九州の海で網に掛かった時の様子を描いているようです。賛には「本名トド 北國の海に多い」とあり、「薬功本草」という書物で調べた旨も書いてあるようです。もじゃもじゃして尻尾が三叉状になっているなどあまり上手く描いてる訳ではないですが愛嬌があるかなw ちょっと珍しい画題で博物学的な興味も伺えました。
81 仙厓義梵 「芭蕉蛙画賛」 ★こちらで観られます
こちらは二幅対の作品で、いずれも芭蕉の木の下にいるカエルが描かれています。賛には「池阿らは(池あらば)飛て芭蕉にきかせたい」「古池や芭蕉飛こむ水の音」と添えられていて、松尾芭蕉の俳句をパロディにしたようなユーモアを感じる作品となっています。芭蕉の飛び込む音はヤバそうですねw カエルはまるまるとして、芭蕉は刷毛目のような濃淡で質感豊かにかかれていました。
<第5章 愉快なり、友との日々 ―仙厓流ユーモアを育んだ面々>
最後は多くの文化人や友人との交流のコーナーです。ここには合作なども並んでいました。
87 深慧源芳(画)仙厓義梵(賛) 「貧乏神葬式図」
こちらは合作で、絵を描いたのは深慧源芳という仙厓の身近な友人です。家の前で何人かで貧乏神の葬式の様子を描いているのですが、割と仙厓のゆるい画風に似ているかも。仙厓による賛では、貧乏神が死んで喜ばしいが残った借金は誰が払うのか?と添えているようです。この変わった主題はどちらのアイディアかは不明ですが、お互いウィットに富んだ感じが面白い作品でした。
この他にも深慧源芳との合作がいくつかありました。仙厓の虚白院は文化サークルの様相だったそうです。
95 斎藤秋圃(画) 仙厓義梵・斎藤愚連堂[凹](賛) 「涅槃図」 ★こちらで観られます
こちらは3人の合作で、釈迦の代わりに仙厓が横たわっている涅槃図のような作品です。周りには近隣の顔見知りや友人たち、その下には生活用品や植木鉢などの仙厓の愛用の品が並んでいて、上の方からは掛け軸の中から出てくる来迎の様子なども描かれています。仙厓らによる賛には、これを入滅ではなく昼寝に読み替えているようです。そのせいか、参列者たちも嘆くというよりはのほほんとした雰囲気に思えました。
ということで、仙厓の深い禅の教えの一端と、老後の悠々自適ぶりが伺えるような展示となっていました。あえて分かりやすい画風にしている為、多くの人に愛されるゆるキャラみたいな親しみが持てる画風だと思います。単純なようで奥深い面白い展示です。
おまけ;
今日、家に帰ったら金曜ロードショーで「海賊とよばれた男」をやっていましたが、劇中の社長室らしき所で一瞬、仙厓の「円相図」らしきものが映りました。(もしかしたら白隠かもしれませんが) この映画は観たことなかったですが、見覚えのある絵だったので出光佐三がモデルの話なんだなと分かりましたw
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日付が変わって昨日となりましたが、レイトショーで映画「アントマン&ワスプ」を観てきました。この記事には少しだけネタバレが含まれていますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください。

【作品名】
アントマン&ワスプ
【公式サイト】
https://marvel.disney.co.jp/movie/antman-wasp/home.html
【時間】
2時間00分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
公開から結構経っていることもあって、空いていて快適に観ることができました。
さて、この映画はマーベルシリーズの「アントマン」の2作目となります。と言っても、その間にマーベルヒーローが集まった「シビルウォー」も入っているので、アントマンが出てくる映画としてはそれ以来となります。軽くネタバレすると、シビルウォーから話が繋がっているので シビルウォーも観ていないと、どうしてこういう状況になっているのか詳細が分からない可能性がありますが、その点については作中で簡単に話しているので、ある程度は情報が得られると思います。 このヒーローの面白いところは根は善良だけど泥棒だったという点で、ちょっと間が抜けてる所もあって憎めない奴です。今回もそのキャラクターを存分に発揮してくれて、シリアスなはずなのにギャグのようなシーンも結構ありました。映画館ではちょくちょく笑いも起きていたので、それだけでも十分楽しめます。 一方、今回は量子力学的な話が出てくるので、この辺の知識が無いと分かりづらい設定もあります。…と言っても、いくら何でもご都合過ぎじゃないか?という設定も出てくるので、あまり深く考えないで良さそうではありますw そして、最後にこの映画はエンドロールの後にもちょっとだけ続きがあるので注意です。気になる終わり方をして引っ張るのがマーベルシリーズの定番となっている気がしますw
映像についてはマーベルシリーズとして安定しているので、今回も楽しめます。小さくなる(たまに大きくなる)ヒーローなので、小さくなった時の見せ方がこの映画の見所ではないかと思います。アクションも小さくなるのを利用した戦いの連続なので、オリジナリティがある作品です。今回は敵キャラも中々面白い動きを見せていたので、この辺の映像は流石と言った所でしょうか。
ということで、今回もクオリティの高いアメコミ映画に仕上がっていて満足できました。アベンジャーズ関連のシリーズが増えすぎて追うのが大変になっている感が否めませんが、この作品は楽しめました(たまに面白くないのに話の繋がりの為に観るシリーズ作もあるけど、これは大丈夫ですw) 今後のシリーズも楽しみになる内容でした。

【作品名】
アントマン&ワスプ
【公式サイト】
https://marvel.disney.co.jp/movie/antman-wasp/home.html
【時間】
2時間00分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
公開から結構経っていることもあって、空いていて快適に観ることができました。
さて、この映画はマーベルシリーズの「アントマン」の2作目となります。と言っても、その間にマーベルヒーローが集まった「シビルウォー」も入っているので、アントマンが出てくる映画としてはそれ以来となります。軽くネタバレすると、シビルウォーから話が繋がっているので シビルウォーも観ていないと、どうしてこういう状況になっているのか詳細が分からない可能性がありますが、その点については作中で簡単に話しているので、ある程度は情報が得られると思います。 このヒーローの面白いところは根は善良だけど泥棒だったという点で、ちょっと間が抜けてる所もあって憎めない奴です。今回もそのキャラクターを存分に発揮してくれて、シリアスなはずなのにギャグのようなシーンも結構ありました。映画館ではちょくちょく笑いも起きていたので、それだけでも十分楽しめます。 一方、今回は量子力学的な話が出てくるので、この辺の知識が無いと分かりづらい設定もあります。…と言っても、いくら何でもご都合過ぎじゃないか?という設定も出てくるので、あまり深く考えないで良さそうではありますw そして、最後にこの映画はエンドロールの後にもちょっとだけ続きがあるので注意です。気になる終わり方をして引っ張るのがマーベルシリーズの定番となっている気がしますw
映像についてはマーベルシリーズとして安定しているので、今回も楽しめます。小さくなる(たまに大きくなる)ヒーローなので、小さくなった時の見せ方がこの映画の見所ではないかと思います。アクションも小さくなるのを利用した戦いの連続なので、オリジナリティがある作品です。今回は敵キャラも中々面白い動きを見せていたので、この辺の映像は流石と言った所でしょうか。
ということで、今回もクオリティの高いアメコミ映画に仕上がっていて満足できました。アベンジャーズ関連のシリーズが増えすぎて追うのが大変になっている感が否めませんが、この作品は楽しめました(たまに面白くないのに話の繋がりの為に観るシリーズ作もあるけど、これは大丈夫ですw) 今後のシリーズも楽しみになる内容でした。
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今日は写真多めです。この間の祝日に丸の内にあるGOOD DESIGN Marunouchiで「2018台湾 地方創生-デザインによる地域イノベーション」東京展を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
「2018台湾 地方創生-デザインによる地域イノベーション」東京展
(中国語名:2018年「設計翻轉 地方創生」成果聯展 日本展)
【公式サイト】
http://www.keiwacorp.com/localvalue/event.html
【会場】GOOD DESIGN Marunouchi
【最寄】有楽町駅
【会期】2018年9月21日(金)~9月30日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は台湾の現代のデザインを集めたもので、「人、地、産」をテーマに台湾の「デザインによる地域イノベーション」を紹介するものとなっています。台湾は少子高齢化、都市への集中、地方の衰退、産業空洞化など日本と似た社会問題を抱えているようで、この展示ではそうした状況から生み出された品々が展示してありました。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
花蓮市 點?設計 Dot design「Marble&Jade Series」

こちらは花蓮県という2018年に大きな地震があった地方の品で、地震で砕けた石材を使ったデザインです。洒落た燭となっていて、マイナスをプラスに転じようとするアイディアに感心させられました。
台南市政府文化局 西屹設計「菱の殻焼き」

こちらは菱殻炭という炭を使った品々。特産品を地元の若者と共に活性化させようというデザインのようで、確かに日本の地方創生の発想に似ています。シンプルなデザインがモダンな印象です。
嘉義市 Woo Collective 「物Woo Collective 錫器」

こちらは100年ほど栄えた錫の産業を国際市場に出そうと試みているデザイン。台湾っぽさもあって温もりも感じられます。
嘉義市 呂勝南「交趾焼きの作品」

こちらは焼き物の作品。赤と黄色で中華っぽい雰囲気があります。何の用途かちょっと分かりませんが、交趾焼きはお祝いの贈答品として用いられるようです。
嘉義市 呂勝南「交趾焼きの作品」

こちらも同じ作者の交趾焼き。シーサーでしょうか? 巻き毛の表現が可愛らしく見えました。
金門県 金門県文化局 邸?能 「金合利金門包丁」

こちらは1970年に1人の兵士が砲弾を拾って、それを材料に包丁を作ったという驚きのデザイン。中華包丁っぽい形をしていて中々豪快です。
金門県 金門県文化局 邸?能 「金合利金門包丁」

こちらは砲弾の形をした水筒。ユーモアを感じるアイディアで結構カッコいいかもw 空港とかの手荷物検査でで引っかかりそうw
南投県 南投県政府 「竹山竹藝品」

こちらは竹細工を使った地方創生のためのデザイン。カバとカエルの顔が可愛くて、子供向けかな? 竹の合板の木目も綺麗です。
屏東県 屏東県政府 「先住民文化の手工芸品」

こちらは先住民たちによる工芸品。兵士たちだと思いますが、現代アートとプリミティブな両面が感じられて非常に面白い造形です。
屏東県 屏東県政府 「先住民文化の手工芸品」

こちらも先住民の品。蛇をモチーフにしているのかな? こちらもどこか土着の宗教観を感じさせるデザインが神秘的です。この他にも独特のセンスが面白い品が並んでいて、特に気に入ったコーナーでした。
台南市 點?設計 Dot design「Herbal Tea Collection」

有機的なデフォルメが美しい鳥型の容器。お菓子のヒヨコみたいなw 中にはお茶のパックが入っているようでした。
南投縣 點?設計 Dot design 「Bamboo Series」

竹を使って作ったカップが竹の節のように重ね起きできるデザイン。こちらも豊かな発想ですね。
苗栗県 程湘如 章琦? 「客家桐花季商品」

ちょっと用途が分かりませんが、鳥の形が楽しい器具。花模様も優美です。
壁には各地方の写真や魅了を紹介していました。

台湾の鉄道には心惹かれるものがあるかも。アジア圏の旅行は苦手ですが、流石に綺麗な所のようでした。
ということで、日本と似ている部分もあれば異文化の魅力もあるデザインとなっていました。会期が短いのですぐに終わってしまいますが、ここは無料で観られるので台湾が好きな方が有楽町あたりに行く機会があったら立ち寄ってみてはと思います。


【展覧名】
「2018台湾 地方創生-デザインによる地域イノベーション」東京展
(中国語名:2018年「設計翻轉 地方創生」成果聯展 日本展)
【公式サイト】
http://www.keiwacorp.com/localvalue/event.html
【会場】GOOD DESIGN Marunouchi
【最寄】有楽町駅
【会期】2018年9月21日(金)~9月30日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は台湾の現代のデザインを集めたもので、「人、地、産」をテーマに台湾の「デザインによる地域イノベーション」を紹介するものとなっています。台湾は少子高齢化、都市への集中、地方の衰退、産業空洞化など日本と似た社会問題を抱えているようで、この展示ではそうした状況から生み出された品々が展示してありました。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
花蓮市 點?設計 Dot design「Marble&Jade Series」

こちらは花蓮県という2018年に大きな地震があった地方の品で、地震で砕けた石材を使ったデザインです。洒落た燭となっていて、マイナスをプラスに転じようとするアイディアに感心させられました。
台南市政府文化局 西屹設計「菱の殻焼き」

こちらは菱殻炭という炭を使った品々。特産品を地元の若者と共に活性化させようというデザインのようで、確かに日本の地方創生の発想に似ています。シンプルなデザインがモダンな印象です。
嘉義市 Woo Collective 「物Woo Collective 錫器」

こちらは100年ほど栄えた錫の産業を国際市場に出そうと試みているデザイン。台湾っぽさもあって温もりも感じられます。
嘉義市 呂勝南「交趾焼きの作品」

こちらは焼き物の作品。赤と黄色で中華っぽい雰囲気があります。何の用途かちょっと分かりませんが、交趾焼きはお祝いの贈答品として用いられるようです。
嘉義市 呂勝南「交趾焼きの作品」

こちらも同じ作者の交趾焼き。シーサーでしょうか? 巻き毛の表現が可愛らしく見えました。
金門県 金門県文化局 邸?能 「金合利金門包丁」

こちらは1970年に1人の兵士が砲弾を拾って、それを材料に包丁を作ったという驚きのデザイン。中華包丁っぽい形をしていて中々豪快です。
金門県 金門県文化局 邸?能 「金合利金門包丁」

こちらは砲弾の形をした水筒。ユーモアを感じるアイディアで結構カッコいいかもw 空港とかの手荷物検査でで引っかかりそうw
南投県 南投県政府 「竹山竹藝品」

こちらは竹細工を使った地方創生のためのデザイン。カバとカエルの顔が可愛くて、子供向けかな? 竹の合板の木目も綺麗です。
屏東県 屏東県政府 「先住民文化の手工芸品」

こちらは先住民たちによる工芸品。兵士たちだと思いますが、現代アートとプリミティブな両面が感じられて非常に面白い造形です。
屏東県 屏東県政府 「先住民文化の手工芸品」

こちらも先住民の品。蛇をモチーフにしているのかな? こちらもどこか土着の宗教観を感じさせるデザインが神秘的です。この他にも独特のセンスが面白い品が並んでいて、特に気に入ったコーナーでした。
台南市 點?設計 Dot design「Herbal Tea Collection」

有機的なデフォルメが美しい鳥型の容器。お菓子のヒヨコみたいなw 中にはお茶のパックが入っているようでした。
南投縣 點?設計 Dot design 「Bamboo Series」

竹を使って作ったカップが竹の節のように重ね起きできるデザイン。こちらも豊かな発想ですね。
苗栗県 程湘如 章琦? 「客家桐花季商品」

ちょっと用途が分かりませんが、鳥の形が楽しい器具。花模様も優美です。
壁には各地方の写真や魅了を紹介していました。

台湾の鉄道には心惹かれるものがあるかも。アジア圏の旅行は苦手ですが、流石に綺麗な所のようでした。
ということで、日本と似ている部分もあれば異文化の魅力もあるデザインとなっていました。会期が短いのですぐに終わってしまいますが、ここは無料で観られるので台湾が好きな方が有楽町あたりに行く機会があったら立ち寄ってみてはと思います。
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前回に引き続き、迎賓館赤坂離宮についてです。前回は外観についてご紹介しましたが、今日は内観についてとなります。花鳥の間では特別展として「没後100年 渡辺省亭特別展」が行われていましたので、展覧会の様子と共にご紹介していこうと思います。

【展覧名】
没後100年 渡辺省亭特別展
【公式サイト】
https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/akasaka_news/seitei2018/
【会場】迎賓館赤坂離宮 花鳥の間
【最寄】四ツ谷駅
【会期】2018年8月31日(金)~10月6日(土)(開催期間が短縮される場合あり)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度(+館内見学に1時間程度)
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
それほど混むこともなく、自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は迎賓館赤坂離宮の花鳥の間で行われている特別展ですが、会場と一体化するように30点の七宝焼きによる絵画作品が並んでいます。この展示を観に行くためには迎賓館の館内を進んで行く必要があるので、せっかくなので迎賓館の見学ルートも合わせてご紹介していこうと思います。なお、迎賓館赤坂離宮の建物自体については前回の外観の記事に記載しておきましたので、そちらをご参照頂ければと思います。
参考記事:片山東熊 【迎賓館赤坂離宮】(外観の写真 2018年9月)
<正面玄関・中央階段> ★こちらで観られます
前回の記事でご紹介した建物の右側辺りから見学ルートはスタートするのですが、まずは玄関と中央階段から観ていくルートでした。実際には玄関も中央階段も入ることができないのですが、玄関は大理石による市松模様が美しく、ドアの装飾なども見事です。そして赤みがかった大理石の壁に囲まれた階段を登った所には8本の大理石の柱と、小磯良平の大型作品が2枚あります。(実際には中央階段の上の辺りは花鳥の間の後にルートに組み込まれているのですが、ここだけ先にご紹介しておきます)
小磯良平の作品は「絵画」と「音楽」というタイトルの2枚で、いずれも室内の群像となっています。特に右側の「音楽」は室内で演奏する様子が描かれ優美で気品があります。かなり大きな絵なので、描くのにも時間がかかったという話を館内の解説で流していました。
また、階段上で特に目を引くのが8本の柱で、いずれもイタリア産のビアンコ・カララという大理石でできています。その模様がダイナミックかつ重厚感に溢れていて、天然の芸術ぶりに驚かされました。
<花鳥の間> ★こちらで観られます
玄関の後は中央階段ではない別の階段を登って2階へ向かいます。この迎賓館では絨毯の上以外は歩けない&壁などにも手を触れることができないのですが、階段の手すりだけは触ってOKですw
そして、花鳥の間に入ると、すぐにその豪華さに圧倒されます。重厚なアンリ2世様式の部屋で、かつては「饗宴の間」と呼ばれ、現在では公式晩餐会や記者会見に使われています。館内にはパネルでトランプ大統領が訪れた時の写真なんかも展示されているので、ニュースなどで見覚えがある部屋かもしれません。
この部屋の見所は巨大な食器棚とシャンデリア、天井画、部屋の名前の由来となった花鳥画の七宝焼です。まず、食器棚は大きな鏡があり、部屋が倍の広さに思えるくらいでした。そしてシャンデリアはこの1t以上ある迎賓館の中で最も重いもので、燭台が無数に立っているような趣があります。天井画については完全にフランスの王宮を思わせる画風で、実際にフランス人が描いているようです。天井を覆い尽くすように鳥たちなどが描かれていました。そして今回の特別展示となっている30点の渡辺省亭の花鳥画が壁面に並んでいました。
<没後100年 渡辺省亭特別展> ★こちらで観られます
今回の展示の期間中は全30点観られるのですが、30点一気に観られるのは中々無い機会のようです。実物だけでなくデジタルサイネージでも解説しているので心ゆくまで鑑賞することができます。また、全作品が載っているリーフレットも貰えてお得でした。
花鳥画の下絵は渡辺省亭(わたなべせいてい)、七宝にしたのは濤川惣助(なみかわそうすけ)という豪華なタッグで作られたもので、渡辺省亭は渡仏してマネやドガと交流し欧米にも多くの作品が残る日本画家で、ブラックモンなどにも影響を受けた写実と叙情性を兼ね備えた画風となっています。
参考記事:日本画と洋画のはざまで (山種美術館)
モチーフは様々で、「燕に夾竹桃」「巴鴨に葦・寒菊」といった感じで季節感を感じる鳥と花がセットになって楕円形の画面に情緒豊かに表現されています。細部まで繊細に描かれているのですが、動きを感じさせたり 逆に静けさを感じさせたりと、絵の巧さよりも日本の自然の美しさを感じさせてくれます。ぼかしや線描をあまり使わない描法は伝統的な日本画とは違った艶めかしさがあり、七宝とは思えないくらい微妙な色彩となっているのは流石は濤川惣助と言ったところでしょうか。
この部屋だけで20分くらい観ていましたが、非常に見応えがあるのでここだけでも十分に満足できました。
この後、先程の中央階段を登った辺りを通って、次の大部屋へと向かいます。
<彩鸞の間> ★こちらで観られます
こちらは打って変わって白地に金彩の華麗な雰囲気の部屋で、ナポレオン1世の頃のアンピール様式となっています。本来は来客の控えの間だったようですが、「朝日の間」が改修工事中ということもあって天皇陛下や首相が国家元首との懇談やや首脳会談などにも使われているようです。この部屋は金のレリーフを観るのが面白くて、洋風の部屋なのに日本の鎧兜や刀を象ったものなどもあります。また、この部屋の名前の由来となった「鸞(らん)」という霊鳥が暖炉の上で羽を広げていて、その下の両脇にも鸞の姿があります。鸞は前回の外観の記事でもご紹介した通り、建物の屋根の上にもいるので、この建物にゆかりの深い霊鳥と言えそうです。鸞は中国の霊鳥だし、フランス・日本・中国のモチーフが破綻することなく調和しているのは日本っぽいと言えそうでしたw
<朝日の間> ★こちらで観られます
こちらは残念ながら改修中で見学できませんでした。「謁見の間」に相当する最も格式ある部屋らしいので、いずれリベンジしたいです。2019年4月に公開再開する予定なのだとか。
<羽衣の間> ★こちらで観られます
最後はかつて舞踏室で現在も演奏会などが行われる羽衣の間です。名前の由来は天井画に謡曲「羽衣」をモチーフにした絵が描かれているためで、花が舞っているような可憐な雰囲気となっています。また、この部屋の大きな特徴として2階部分にオーケストラボックスがあります。ちょっと狭そうにも思いますが、ここで生演奏しながら舞踏会をするのを想定していたんでしょうね。この部屋のシャンデリアは館内で最も大きなものらしく、小さなガラス玉がキラキラと輝く様子はまさに王宮そのものと言った感じでした。
ということで、迎賓館の内観と共に渡辺省亭と濤川惣助の合作を楽しむことができました。朝日の間が改修中だったのがちょっと悔やまれますが、快適に見て回れて良かったです。現役で使われている建物だけに警備も厳しいですが、その分 ニュースなどで観る度に思い出せるかも知れませんw 日本人なら一度は観ておきたい建物の1つではないかと思います。

【展覧名】
没後100年 渡辺省亭特別展
【公式サイト】
https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/akasaka_news/seitei2018/
【会場】迎賓館赤坂離宮 花鳥の間
【最寄】四ツ谷駅
【会期】2018年8月31日(金)~10月6日(土)(開催期間が短縮される場合あり)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度(+館内見学に1時間程度)
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
それほど混むこともなく、自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は迎賓館赤坂離宮の花鳥の間で行われている特別展ですが、会場と一体化するように30点の七宝焼きによる絵画作品が並んでいます。この展示を観に行くためには迎賓館の館内を進んで行く必要があるので、せっかくなので迎賓館の見学ルートも合わせてご紹介していこうと思います。なお、迎賓館赤坂離宮の建物自体については前回の外観の記事に記載しておきましたので、そちらをご参照頂ければと思います。
参考記事:片山東熊 【迎賓館赤坂離宮】(外観の写真 2018年9月)
<正面玄関・中央階段> ★こちらで観られます
前回の記事でご紹介した建物の右側辺りから見学ルートはスタートするのですが、まずは玄関と中央階段から観ていくルートでした。実際には玄関も中央階段も入ることができないのですが、玄関は大理石による市松模様が美しく、ドアの装飾なども見事です。そして赤みがかった大理石の壁に囲まれた階段を登った所には8本の大理石の柱と、小磯良平の大型作品が2枚あります。(実際には中央階段の上の辺りは花鳥の間の後にルートに組み込まれているのですが、ここだけ先にご紹介しておきます)
小磯良平の作品は「絵画」と「音楽」というタイトルの2枚で、いずれも室内の群像となっています。特に右側の「音楽」は室内で演奏する様子が描かれ優美で気品があります。かなり大きな絵なので、描くのにも時間がかかったという話を館内の解説で流していました。
また、階段上で特に目を引くのが8本の柱で、いずれもイタリア産のビアンコ・カララという大理石でできています。その模様がダイナミックかつ重厚感に溢れていて、天然の芸術ぶりに驚かされました。
<花鳥の間> ★こちらで観られます
玄関の後は中央階段ではない別の階段を登って2階へ向かいます。この迎賓館では絨毯の上以外は歩けない&壁などにも手を触れることができないのですが、階段の手すりだけは触ってOKですw
そして、花鳥の間に入ると、すぐにその豪華さに圧倒されます。重厚なアンリ2世様式の部屋で、かつては「饗宴の間」と呼ばれ、現在では公式晩餐会や記者会見に使われています。館内にはパネルでトランプ大統領が訪れた時の写真なんかも展示されているので、ニュースなどで見覚えがある部屋かもしれません。
この部屋の見所は巨大な食器棚とシャンデリア、天井画、部屋の名前の由来となった花鳥画の七宝焼です。まず、食器棚は大きな鏡があり、部屋が倍の広さに思えるくらいでした。そしてシャンデリアはこの1t以上ある迎賓館の中で最も重いもので、燭台が無数に立っているような趣があります。天井画については完全にフランスの王宮を思わせる画風で、実際にフランス人が描いているようです。天井を覆い尽くすように鳥たちなどが描かれていました。そして今回の特別展示となっている30点の渡辺省亭の花鳥画が壁面に並んでいました。
<没後100年 渡辺省亭特別展> ★こちらで観られます
今回の展示の期間中は全30点観られるのですが、30点一気に観られるのは中々無い機会のようです。実物だけでなくデジタルサイネージでも解説しているので心ゆくまで鑑賞することができます。また、全作品が載っているリーフレットも貰えてお得でした。
花鳥画の下絵は渡辺省亭(わたなべせいてい)、七宝にしたのは濤川惣助(なみかわそうすけ)という豪華なタッグで作られたもので、渡辺省亭は渡仏してマネやドガと交流し欧米にも多くの作品が残る日本画家で、ブラックモンなどにも影響を受けた写実と叙情性を兼ね備えた画風となっています。
参考記事:日本画と洋画のはざまで (山種美術館)
モチーフは様々で、「燕に夾竹桃」「巴鴨に葦・寒菊」といった感じで季節感を感じる鳥と花がセットになって楕円形の画面に情緒豊かに表現されています。細部まで繊細に描かれているのですが、動きを感じさせたり 逆に静けさを感じさせたりと、絵の巧さよりも日本の自然の美しさを感じさせてくれます。ぼかしや線描をあまり使わない描法は伝統的な日本画とは違った艶めかしさがあり、七宝とは思えないくらい微妙な色彩となっているのは流石は濤川惣助と言ったところでしょうか。
この部屋だけで20分くらい観ていましたが、非常に見応えがあるのでここだけでも十分に満足できました。
この後、先程の中央階段を登った辺りを通って、次の大部屋へと向かいます。
<彩鸞の間> ★こちらで観られます
こちらは打って変わって白地に金彩の華麗な雰囲気の部屋で、ナポレオン1世の頃のアンピール様式となっています。本来は来客の控えの間だったようですが、「朝日の間」が改修工事中ということもあって天皇陛下や首相が国家元首との懇談やや首脳会談などにも使われているようです。この部屋は金のレリーフを観るのが面白くて、洋風の部屋なのに日本の鎧兜や刀を象ったものなどもあります。また、この部屋の名前の由来となった「鸞(らん)」という霊鳥が暖炉の上で羽を広げていて、その下の両脇にも鸞の姿があります。鸞は前回の外観の記事でもご紹介した通り、建物の屋根の上にもいるので、この建物にゆかりの深い霊鳥と言えそうです。鸞は中国の霊鳥だし、フランス・日本・中国のモチーフが破綻することなく調和しているのは日本っぽいと言えそうでしたw
<朝日の間> ★こちらで観られます
こちらは残念ながら改修中で見学できませんでした。「謁見の間」に相当する最も格式ある部屋らしいので、いずれリベンジしたいです。2019年4月に公開再開する予定なのだとか。
<羽衣の間> ★こちらで観られます
最後はかつて舞踏室で現在も演奏会などが行われる羽衣の間です。名前の由来は天井画に謡曲「羽衣」をモチーフにした絵が描かれているためで、花が舞っているような可憐な雰囲気となっています。また、この部屋の大きな特徴として2階部分にオーケストラボックスがあります。ちょっと狭そうにも思いますが、ここで生演奏しながら舞踏会をするのを想定していたんでしょうね。この部屋のシャンデリアは館内で最も大きなものらしく、小さなガラス玉がキラキラと輝く様子はまさに王宮そのものと言った感じでした。
ということで、迎賓館の内観と共に渡辺省亭と濤川惣助の合作を楽しむことができました。朝日の間が改修中だったのがちょっと悔やまれますが、快適に見て回れて良かったです。現役で使われている建物だけに警備も厳しいですが、その分 ニュースなどで観る度に思い出せるかも知れませんw 日本人なら一度は観ておきたい建物の1つではないかと思います。
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今回は写真多めです。この記事で当ブログも2000回を迎えました。特にこれといってお祝いする訳でもないですが、今日はちょっと豪華に迎賓館赤坂離宮の写真をご紹介していこうと思います。

公式サイト:https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/
さて、この迎賓館赤坂離宮は四ツ谷駅からほど近い所にある外国人の要人を迎える施設として有名だと思いますが、その前は紀州徳川家の江戸中屋敷があった場所で、明治の頃に皇室に献上されて仮皇居があった場所でもあります。そしてこの建物は元々は東宮御所(皇太子時代の大正天皇)としてジョサイア・コンドルの弟子である片山東熊が総力をあげて設計し建てられたのですが、豪華すぎる建物となった結果、質素倹約を旨とする明治天皇に「贅沢過ぎる」とバッサリ言われてしまったという過去がありますw その為、東宮御所としてはあまり活躍する機会がなく、大正天皇の時代には離宮となりました。(豪華すぎて住みづらいというのもあったようです) 皇太子時代の昭和天皇も数年間は住んでいたそうですが、戦後にそこに移り住むように提案を受けた際にはやはり贅沢だと拒否されていますw 一応、今上陛下も1945年から半年程度住んでいたようですが、戦後は空襲の被害や迷彩による汚損など結構ボロボロの状態で、天井からは雨漏りして壁や美術品も荒れ果てていたそうです。そして戦後はしばらくの間、国立国会図書館・裁判官弾劾裁判所・内閣憲法調査会・東京オリンピック組織委員会など様々な公館として使われてきました。ではその間はどこが迎賓館だったかと言うと、現在の東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)で、手狭になってきたことから1962年にようやく現在の建物を迎賓館にしようという閣議が決まりました。そして1968年からの大改修(村野藤吾が改修設計を担当)を経て1974年に迎賓館として生まれ変わり、その年の11月にアメリカのフォード大統領を最初の国賓として迎い入れました。ということで、明治時代からあるのに迎賓館になったのは結構最近だったりします。2009年には国宝指定され、期間限定で一般公開もされていたのですがハガキによる応募→抽選という中々高いハードルがあって、何度も落選した苦い記憶がありますw しかし2016年からは予約無しで期間も通年となったことで一気に見学しやすくなったので、今回初めて足を運んでみました。 残念ながら内観は撮影できませんが、外観は撮影可能でしたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。なお、私が行ったのは2018/9/22(土)で、この日だけ特別なプログラムもあったので、常設されていないものも当記事には含まれています。
参考記事:建物公開 旧朝香宮邸物語 & 鹿島茂コレクション フランス絵本の世界 (東京都庭園美術館)
まず、この迎賓館は有名な表門が見学者用の入口ではなく、右側面の門から入っていきます。敷地内の首都高速4号線の地下高速道路を渡った辺りに検査所兼チケット売り場があり、チケットを買う前に手荷物検査とボディチェックを受けました。そこはちょっと撮影しませんでしたが、1人1人空港のようなチェックを受けます。チケット売り場の辺りにはトイレもありますが、プレハブのあまり綺麗ではないトイレで、迎賓館の中にはトイレは無いので、予め他で済ませてくるのが無難だと思います。
こちらは迎賓館の館内への入口。トンネルの先でチケットを渡します。

内部は撮影禁止となっています。迎賓館は毎日公開している訳ではなく、公務で使われる日は勿論入ることができません。公式サイトで日程表を確認できるので、日程調べてから行くことをオススメします。また、和風別館というのも見学可能なのですが、そちらは予約必須です。
参考リンク:参観ご希望の方へ
内部については次回 写真を使わずにご紹介しようと思いますので、今日はひたすら外観です。
先程の内部への入口から、まずは裏手の主庭に向かいました。これは側面から観た建物。

ネオバロック様式の華美な建物となっています。この辺に生えてる松も非常に立派なので、そちらも見所。
こちらは裏手から観た様子。

柱が何本も並ぶ様子からジョサイア・コンドルの旧岩崎邸のベランダを思い出しました。あれはコロニアル様式ですが、何となく趣味が似ている気がします。
参考記事:旧岩崎邸の写真 その1
主庭の様子。

大きな噴水があるのが特徴です。
花壇の花も綺麗に咲いていました。

この季節だけ咲くのかな? 割とシンプルな庭で他に花はあまり無さそうでした。
真裏から見た様子。

ここから観るとバロック建築のヴェルサイユ宮殿にも通じるものがあるかな。階段部分はちょっとフォンテーヌブロー宮殿を思い出しました。
参考記事:
【番外編 フランス旅行】 ヴェルサイユ宮殿
【番外編 フランス旅行】 バルビゾン村とフォンテーヌブロー宮殿
前の写真の場所を振り返ると噴水があります。創建当時のままで、国宝指定を受けています。

ちょっと分かりづらいですが、シャチや亀、下段にはグリフォンの姿が見えています。ここだけヨーロッパの宮殿が出現した感が凄いw
ぐるっと回って裏手の全体像をもう一度。

まあヨーロッパの宮殿に比べるとそれほど大きくはないのですが、整然として心地よいリズム感があって観ていて飽きない設計です。
こんな感じで主庭を見て回った後、前庭へと向かいました。
そしてこちらが迎賓館赤坂離宮の正面!

やはり表の顔のほうが華やかさがあります。屋上の左右に球体の彫刻があり、こちらも特徴となっています。
屋上のアップ。星のついた球体を鳳凰のような鳥が4羽で囲んでいます。

この鳥は鸞(らん)という架空の鳥で、中国の伝説で国が平和な時に現れるとされます。内部には彩鸞の間という部屋もあり、迎賓館に何羽の鸞がいるか探してみるのも面白いかもしれません。
正面玄関のアップ。右は中央の扉のアップ。

この建物で特に美しいのはこの扉と玄関だったように思います。幾何学文様と色彩が非常に優美。中央の扉だけ菊の御紋となっています。
この日、前庭の一角に屋台カーが集まってオープンカフェのようになっていました。

この日は夜間ライトアップが行われたこともあって、屋台がいたようです(いつもいるのかは分かりません)
せっかくなので、寄ってお茶をしました。

簡易的なパフェと飲み物。私はここには写っていないレモネードにしました。この日は暑かったのでアイスが一層美味しく感じられましたw 他にもアフタヌーンティーセットなんかをやっている屋台なんかもいました。(それもいつもいるかは分かりません)
帰りは正面から出ていくことになります。

こちらの内門も立派で洒落た色合いです。
途中、道の左右に衛舎があります。

こちらは昔は衛士が詰所にしていた所で、これも国宝です。外から観ても分かりませんが地下もあるのだとか。
振り返ると離宮の全体像が見えました。

この左手辺りに和風別館がありますが、そちらは見えませんでした。
こちらは門牆。フランスの宮殿に倣ったものです。右は門のアップ。

空の青に映える白さでした。中央上部にはしっかり菊の御紋もあります。左脇の小さな門が出口です。
最後に外から撮った門牆。

昔はここから観る程度でしたが、今回ようやく念願が叶いました。
ということで、非常に見応えのある建物となっていました。この日は夜にライトアップもあったのですが、予定があってそれは観られず残念。(この記事を書いた2018/9/24(月)までライトアップするそうなので、もし機会がある方はそちらもどうぞ。)
参考リンク:ライトアップの情報
勿論、中も観覧してきて「没後100年 渡辺省亭特別展」も観てきましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。

公式サイト:https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/
さて、この迎賓館赤坂離宮は四ツ谷駅からほど近い所にある外国人の要人を迎える施設として有名だと思いますが、その前は紀州徳川家の江戸中屋敷があった場所で、明治の頃に皇室に献上されて仮皇居があった場所でもあります。そしてこの建物は元々は東宮御所(皇太子時代の大正天皇)としてジョサイア・コンドルの弟子である片山東熊が総力をあげて設計し建てられたのですが、豪華すぎる建物となった結果、質素倹約を旨とする明治天皇に「贅沢過ぎる」とバッサリ言われてしまったという過去がありますw その為、東宮御所としてはあまり活躍する機会がなく、大正天皇の時代には離宮となりました。(豪華すぎて住みづらいというのもあったようです) 皇太子時代の昭和天皇も数年間は住んでいたそうですが、戦後にそこに移り住むように提案を受けた際にはやはり贅沢だと拒否されていますw 一応、今上陛下も1945年から半年程度住んでいたようですが、戦後は空襲の被害や迷彩による汚損など結構ボロボロの状態で、天井からは雨漏りして壁や美術品も荒れ果てていたそうです。そして戦後はしばらくの間、国立国会図書館・裁判官弾劾裁判所・内閣憲法調査会・東京オリンピック組織委員会など様々な公館として使われてきました。ではその間はどこが迎賓館だったかと言うと、現在の東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)で、手狭になってきたことから1962年にようやく現在の建物を迎賓館にしようという閣議が決まりました。そして1968年からの大改修(村野藤吾が改修設計を担当)を経て1974年に迎賓館として生まれ変わり、その年の11月にアメリカのフォード大統領を最初の国賓として迎い入れました。ということで、明治時代からあるのに迎賓館になったのは結構最近だったりします。2009年には国宝指定され、期間限定で一般公開もされていたのですがハガキによる応募→抽選という中々高いハードルがあって、何度も落選した苦い記憶がありますw しかし2016年からは予約無しで期間も通年となったことで一気に見学しやすくなったので、今回初めて足を運んでみました。 残念ながら内観は撮影できませんが、外観は撮影可能でしたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。なお、私が行ったのは2018/9/22(土)で、この日だけ特別なプログラムもあったので、常設されていないものも当記事には含まれています。
参考記事:建物公開 旧朝香宮邸物語 & 鹿島茂コレクション フランス絵本の世界 (東京都庭園美術館)
まず、この迎賓館は有名な表門が見学者用の入口ではなく、右側面の門から入っていきます。敷地内の首都高速4号線の地下高速道路を渡った辺りに検査所兼チケット売り場があり、チケットを買う前に手荷物検査とボディチェックを受けました。そこはちょっと撮影しませんでしたが、1人1人空港のようなチェックを受けます。チケット売り場の辺りにはトイレもありますが、プレハブのあまり綺麗ではないトイレで、迎賓館の中にはトイレは無いので、予め他で済ませてくるのが無難だと思います。
こちらは迎賓館の館内への入口。トンネルの先でチケットを渡します。

内部は撮影禁止となっています。迎賓館は毎日公開している訳ではなく、公務で使われる日は勿論入ることができません。公式サイトで日程表を確認できるので、日程調べてから行くことをオススメします。また、和風別館というのも見学可能なのですが、そちらは予約必須です。
参考リンク:参観ご希望の方へ
内部については次回 写真を使わずにご紹介しようと思いますので、今日はひたすら外観です。
先程の内部への入口から、まずは裏手の主庭に向かいました。これは側面から観た建物。

ネオバロック様式の華美な建物となっています。この辺に生えてる松も非常に立派なので、そちらも見所。
こちらは裏手から観た様子。

柱が何本も並ぶ様子からジョサイア・コンドルの旧岩崎邸のベランダを思い出しました。あれはコロニアル様式ですが、何となく趣味が似ている気がします。
参考記事:旧岩崎邸の写真 その1
主庭の様子。

大きな噴水があるのが特徴です。
花壇の花も綺麗に咲いていました。

この季節だけ咲くのかな? 割とシンプルな庭で他に花はあまり無さそうでした。
真裏から見た様子。

ここから観るとバロック建築のヴェルサイユ宮殿にも通じるものがあるかな。階段部分はちょっとフォンテーヌブロー宮殿を思い出しました。
参考記事:
【番外編 フランス旅行】 ヴェルサイユ宮殿
【番外編 フランス旅行】 バルビゾン村とフォンテーヌブロー宮殿
前の写真の場所を振り返ると噴水があります。創建当時のままで、国宝指定を受けています。

ちょっと分かりづらいですが、シャチや亀、下段にはグリフォンの姿が見えています。ここだけヨーロッパの宮殿が出現した感が凄いw
ぐるっと回って裏手の全体像をもう一度。

まあヨーロッパの宮殿に比べるとそれほど大きくはないのですが、整然として心地よいリズム感があって観ていて飽きない設計です。
こんな感じで主庭を見て回った後、前庭へと向かいました。
そしてこちらが迎賓館赤坂離宮の正面!

やはり表の顔のほうが華やかさがあります。屋上の左右に球体の彫刻があり、こちらも特徴となっています。
屋上のアップ。星のついた球体を鳳凰のような鳥が4羽で囲んでいます。

この鳥は鸞(らん)という架空の鳥で、中国の伝説で国が平和な時に現れるとされます。内部には彩鸞の間という部屋もあり、迎賓館に何羽の鸞がいるか探してみるのも面白いかもしれません。
正面玄関のアップ。右は中央の扉のアップ。


この建物で特に美しいのはこの扉と玄関だったように思います。幾何学文様と色彩が非常に優美。中央の扉だけ菊の御紋となっています。
この日、前庭の一角に屋台カーが集まってオープンカフェのようになっていました。


この日は夜間ライトアップが行われたこともあって、屋台がいたようです(いつもいるのかは分かりません)
せっかくなので、寄ってお茶をしました。

簡易的なパフェと飲み物。私はここには写っていないレモネードにしました。この日は暑かったのでアイスが一層美味しく感じられましたw 他にもアフタヌーンティーセットなんかをやっている屋台なんかもいました。(それもいつもいるかは分かりません)
帰りは正面から出ていくことになります。

こちらの内門も立派で洒落た色合いです。
途中、道の左右に衛舎があります。

こちらは昔は衛士が詰所にしていた所で、これも国宝です。外から観ても分かりませんが地下もあるのだとか。
振り返ると離宮の全体像が見えました。

この左手辺りに和風別館がありますが、そちらは見えませんでした。
こちらは門牆。フランスの宮殿に倣ったものです。右は門のアップ。


空の青に映える白さでした。中央上部にはしっかり菊の御紋もあります。左脇の小さな門が出口です。
最後に外から撮った門牆。

昔はここから観る程度でしたが、今回ようやく念願が叶いました。
ということで、非常に見応えのある建物となっていました。この日は夜にライトアップもあったのですが、予定があってそれは観られず残念。(この記事を書いた2018/9/24(月)までライトアップするそうなので、もし機会がある方はそちらもどうぞ。)
参考リンク:ライトアップの情報
勿論、中も観覧してきて「没後100年 渡辺省亭特別展」も観てきましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。
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前回ご紹介した展示を観る前に三越前の三井記念美術館で「仏像の姿(かたち)」 ~微笑(ほほえ)む・飾る・踊る~を観てきました。

【展覧名】
「仏像の姿(かたち)」 ~微笑(ほほえ)む・飾る・踊る~
【公式サイト】
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
【会場】三井記念美術館
【最寄】三越前駅
【会期】2018年09月15日(土)~11月25日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていましたが、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は古来から伝わる仏像の中から、仏師の豊かな独創性と高度な技術が観られる作品を集めた内容となっています。特に「顔」「装飾」「動きとポーズ」の3つに焦点を当てていて、作例の少ない珍しい作品も並んでいました。詳しくは展覧会の構成に沿って気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<展示室 1>
まず展示室1ではガラスケースに入った小さめの仏像が並び、360度から観られるようになっていました。今回のテーマの3つのポイントについてですが、以下のような見所が紹介されていました。
顔:仏であることを表す最も重要な所。仏師の信仰と感性と技術によってどう表現しているか
装飾:仏像を美しく荘厳する重要な要素。精緻な文様や装身具、技術などが観られる
動きとポーズ:一見動きがない菩薩なども合理的な微妙な体の動きが像全体に影響している。激しい動きの明王や天部は顕著で、動きを誇張するために人の実像と異なることもある
と、何やら難しそうですが、実際にこの先の仏像を観ていけば多分 納得できると思いますw
1-1 「迦陵頻伽立像」 室町時代・15 世紀 個人蔵
こちらは鳥の足でスカートのように翻る衣の身につけた迦陵頻伽(かりょうびんが)の像です。笑顔で手を挙げて踊っているようで、軽やかな印象を受けます。元は薬師三尊像の光背の一部だったそうで、極楽の喜びに溢れる世界を雰囲気を全身で表しているかのようでした。
1-3 康円 「四天王眷属立像(東方天眷属・南方天眷属)」 鎌倉時代・文永 4 年(1267) 東京国立博物館
こちらは四天王のうち東方の持国天と南方の増長天で、槍のようなものを持ったポーズをしています。持国天は赤く増長天は青黒っぽい色が付けられていて、顔は身近な人物をモデルにしたのではないか?という推測がされるほど その辺にいそうな人間っぽさがありました。しかめ面した表情も面白く顔に注目の作品です。
1-6 「観音・勢至菩薩立像」 鎌倉時代・13 世紀 神奈川・称名寺(神奈川県立金沢文庫保管)
こちらは合掌して前かがみになった勢至菩薩の立像で、極楽から来訪した姿を表現しているそうです。表面には金泥、体には装身具を身に着けていて緻密な技術が目に付きます。また、裾が後ろになびいていく感じなどは来迎している感じがあって細部の表現まで凝っています。この隣の観音菩薩も同様の姿となっていて、両方とも横から観るとその姿勢がよく分かって面白かったです。来迎中の仏像なんて中々珍しいんじゃないかな。
この近くには片足を踏み出すような十一面観音像もありました。こちらも動きのついた姿勢が目を引きました。
<展示室 2>
こちらの部屋は1点だけですが、今回の見所と言えそうです。
2-1 「不動明王立像」 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている不動明王像で、左足を伸ばし 右足は木の上に乗せて曲げています。また、右手は腰のあたりで剣を構え、左手は羂索を持つなど不動明王らしいアトリビュート(持ち物)となっています。この像で面白いのは何と言ってもそのポーズで、後ろから観ても横から観てもサマになる緊張感ある姿です。威嚇する顔も含めて歌舞伎の見栄を切るシーンみたいに思えるかな。衣の翻る様子など、動的な要素もあって今回の展示の趣旨を特に感じさせる逸品でした。
<展示室 3 截金紹介コーナー>
こちらは截金(きりかね)の技法を紹介するコーナーです。金箔を貼り付ける手順などがパネルと共に実際の截金の材料が並んでいるのですが、めちゃくちゃ細かい!w かなり細く切って、それを2本の面相筆で貼り付けるそうで、相当に手先が器用でないと難しそうです。この先に截金の技術を使った装飾の仏像がありますが、ここで技法を知ることで恐ろしく手間がかかるのを目の当たりにできると思います。
<展示室 4>
こちらはコの字状の展示室に、等身大くらいのやや大きめの仏像が並んでいました。
[仏像を飾る]
4-1 「毘沙門天立像」 平安時代・応保 2 年(1162)頃 東京国立博物館
こちらは左手で宝塔を持ち、右手で槍を持つ毘沙門天の立像です。邪鬼を踏みつけているなどモチーフ自体は典型的ですが、右足はやや踏み出す感じで、体は緩いS字の姿勢となっています。それが優美に感じられ、顔も穏やかに思えました。この毘沙門天の鎧にも唐草など かなり細かい截金の跡があるので、それも含めて目を引きました。
この辺には截金の技術が高い仏像が並んでいました。ミリ以下の精度で模様を作っていて驚きます。
4-5 「弥勒菩薩立像」 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵 ★こちらで観られます
こちらは茎の長い蓮の花を持つ弥勒菩薩の立像です。頭には宝冠を被っていて、これは王族だった釈迦の修行中の姿を踏襲しているようです。この像は光背も見事で、放射状に光が放たれるような表現となっていました。いずれも緻密で雅やかな印象を受けます。体つきも柔らかく、流れるような衣も含めて女性的な雰囲気も感じました。なお、この像の光背を裏から観ると蓮の花のようになるのだとか。
[踊る仏像の造形美]
4-6 「阿弥陀如来及び両脇侍像」 平安時代・ 9 世紀 大阪・四天王寺 ★こちらで観られます
こちらは阿弥陀如来とその脇の観音菩薩・勢至菩薩の像で、左は合掌し 右は蓮の台座を持っています。いずれも片足を後ろで組むような独特の立ち姿で、さらに腰を捻って踊るような感じに観えます。解説によると両脇侍像の肩から下は後の世に作られたそうで、元の姿は不明のようです。また、そもそもこの2体は対として作られたものではなく、似たポーズなので対とされたのだとか。色々と後付されているようではありますが、踊るようなコンビっぷりが珍しく、中々お目にかけないポーズとなっていました。楽しげな雰囲気です。
[天部の姿]
4-9 「毘沙門天立像」 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵
こちらは宝塔と槍を持った毘沙門天像で、珍しく兜を被った姿で表されています。しかしそれ以上に玉眼の目がギロッとこちらを観ているのがインパクト大で、非常に険しい表情となっています。一方、鎧の装飾なども力が入っているようで、腹帯を噛むような獅子の顔をしたベルト「獅噛(しがみ)」も力強く険しい顔となっていました。緊張感が漲っていて天部らしい勇ましさがある像です。
この近くは四天王像がズラッと並んでいます。毘沙門天が特に多めでした。
[不動明王の姿]
4-16 「不動明王立像」 鎌倉時代・13 世紀 埼玉・地蔵院
こちらは右手で肩に担ぐように剣を持ち、左手には羂索を持った不動明王の立像です。剣を持つ手はかなり後ろに引いているなど独特のポーズとなっています。何故か髪がまくれ上がるような表現になっているのも変わっているかな。解説によるとこうしたポーズは注文主のアイディアを反映しているそうで、独創性がありました。割と頭が小さめなのでスラッとした体つきになっているのも面白い作品でした。
[如来・菩薩の姿]
4-22 「十一面観音立像」 鎌倉時代・13 世紀 大阪・四天王寺
恐らくこの展覧会で一番大きな十一面観音の立像で、左手はかつて水瓶を持っていたんじゃないかな? 頭の上には10の化仏を乗せていて、頭頂部のみ如来の顔で他は菩薩の顔となっています。澄ましたり、怒ったり、笑っていたり…。それぞれ色々な表情を浮かべています。一方、体はややS字状になっていて、右足を少しだけあげているようで 緩やかな動きが出ていました。細かい動きが全体に波及する構成が素晴らしく、一層に優美な印象を受けました。
<展示室 5>
続いての5室は一木造と寄木造りの違いを取り上げ、それぞれの作品が数点ずつ並んでいました。
[「一木造」の彫技と量感]
一木造はその名の通り頭から体まで1つの木から彫り出す技法で、木の大きさ等から動きや表現に限界があります。しかし生命力や存在感が醸し出す雰囲気が見所となっているようです。
5-3 「十一面観音立像」 平安時代・ 9 世紀 大阪・長圓寺
こちらはずんぐりとした体型で水瓶を持つ十一面観音の立像です。衣文に特徴があるようで、素朴なように見えてかなり細かく彫られています。穏やかな顔つきとその量感から女性的な雰囲気もありました。
5-4 「五大明王像」 平安時代・10 ~ 11 世紀 奈良国立博物館 ★こちらで観られます
こちらは五大明王が揃った作品で、牛に乗る大威徳明王、片足を上げる軍荼利明王、あぐらを組む不動明王、胸の前で印を組む降三世明王、5つの目を持つ金剛夜叉明王となっています。不動明王以外は多面・多臂なので造形自体も力強いですが、特に軍荼利明王はそのポーズに躍動感がありました。いずれも非常にどっしりと構えていて、威厳溢れる雰囲気です。レプリカのフィギュアとかあったら欲しいw
[「寄木造」の妙技]
寄木造はいくつもの木を組み合わせるので、木材の制限を超えた大きさで作るのが可能な技法です。その為、ポーズも自由に作れます。 また、干割れを防ぐための内刳を容易にしてくれるようです(一木造はよく乾かさないとヒビが入りやすい)
5-5 「十二神将立像(子神~巳神)」 鎌倉時代・13 世紀 奈良国立博物館 ★こちらで観られます
こちらは十二支のうちネズミ(子)から蛇(巳)までの6種を司る十二神将が並んでいました。頭の上にそれぞれの干支を乗せているので、割とすぐ何の神か分かります。いずれも誇張されたポーズをしていて、厳しい表情を浮かべているかな。特に卯神が遠くを観るように額のあたりに手をかざすポーズが面白く、仏師のセンスが感じられました。
5-6 「伽藍神立像」 鎌倉時代・13 世紀 奈良国立博物館 ★こちらで観られます
こちらは猛烈にダッシュしているようなポーズの像で、衣が風でまくれあがり、スピード感満載ですw ただ、右手と右足が同時に出るようなフォームなので、ナンバ走りのような走法に見えます。 また、頭巾をかぶっているので一見すると七福神の大黒様のように見えるので、以前は「走り大黒」と呼ばれていたようですが、現在は伽藍神と推定されるようです。色々と謎の多い像ですが、 スピード感はこの展覧会でも随一といった作品でした。
この隣の雷神立像も動きが強く感じられました。また、近くには十一面観音像の化仏などが並んでいました。
<展示室 6 東京藝術大学文化財保存学(彫刻) 模刻作品・修復作品>
こちらは狭い部屋に1点のみです。前の部屋までで今回の展覧会の趣旨は終わりで、この後は東京藝術大学文化財保存学の修復や模刻の活動についてのコーナーとなっていました。
6-1 中村恒克 「模刻(復元) 宝菩提院 菩薩半跏像」 原本 平安時代 神奈川・光明院
こちらは片足を垂らして腰掛ける菩薩像で、平安時代の作品を元にして現代で模刻したものらしく体は赤く色付けされています。かなり衣のヒダが複雑で目を引くのですが、これが原作では一木造というのが驚きです。現代ではこれだけの大きさの木を手に入れることはできないので、2材を1木に見立てて模刻しているとのことでした。こうして模刻をすることで当時の制作状況なども分かるらしいので、非常に意義深い仕事ですね。
<展示室 7>
最後の部屋は模刻や修復された仏像が並んでいました。模刻には2種類あるようで、古く傷んだ感じまで再現するものと、制作当時を想定して模刻するものです。ここにはその両方が展示されていました。
7-3 小沼祥子 「模刻(現状) 興福寺 八部衆立像のうち乾闥婆立像」 個人蔵
こちらは興福寺の八部衆の乾闥婆を模刻したもので、木像ではなく 脱活乾漆造となります。見た目はかなり本物そっくりで、表面が古びた感じまで再現されています。まさに完コピといった感じで、これを本物と言って出されても気づけないと思えましたw
参考記事:阿修羅 天平乾漆群像展 (興福寺仮講堂) 奈良編
この先には天燈鬼立像なんかもありました。完コピの像と、当時の彩色を想定した真っ赤な像があって模刻ならでは面白さがあります。鮮やか過ぎるとちょっとチープに感じてしまいますがw
参考記事:運慶 (東京国立博物館 平成館)
部屋の真ん中にはパネルで研究や制作の様子などを紹介していました。わざわざ干割れを似せる様子などは執念を感じますw まさに仏師の追体験を求める様子が伺えました。
ということで、変わったポーズや様々な表情をしたレアな仏像たちに出会えることができる展覧会となっていました。既に人気ですがこの面白さならまだまだ人気が出そうな感じです。解説も緻密なので、詳しくない方もこれを機に仏像好きになれるんじゃないかな? ぐるっとパスなら提示するだけで観ることが出来ますので、オススメの展示です。


【展覧名】
「仏像の姿(かたち)」 ~微笑(ほほえ)む・飾る・踊る~
【公式サイト】
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
【会場】三井記念美術館
【最寄】三越前駅
【会期】2018年09月15日(土)~11月25日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていましたが、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は古来から伝わる仏像の中から、仏師の豊かな独創性と高度な技術が観られる作品を集めた内容となっています。特に「顔」「装飾」「動きとポーズ」の3つに焦点を当てていて、作例の少ない珍しい作品も並んでいました。詳しくは展覧会の構成に沿って気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<展示室 1>
まず展示室1ではガラスケースに入った小さめの仏像が並び、360度から観られるようになっていました。今回のテーマの3つのポイントについてですが、以下のような見所が紹介されていました。
顔:仏であることを表す最も重要な所。仏師の信仰と感性と技術によってどう表現しているか
装飾:仏像を美しく荘厳する重要な要素。精緻な文様や装身具、技術などが観られる
動きとポーズ:一見動きがない菩薩なども合理的な微妙な体の動きが像全体に影響している。激しい動きの明王や天部は顕著で、動きを誇張するために人の実像と異なることもある
と、何やら難しそうですが、実際にこの先の仏像を観ていけば多分 納得できると思いますw
1-1 「迦陵頻伽立像」 室町時代・15 世紀 個人蔵
こちらは鳥の足でスカートのように翻る衣の身につけた迦陵頻伽(かりょうびんが)の像です。笑顔で手を挙げて踊っているようで、軽やかな印象を受けます。元は薬師三尊像の光背の一部だったそうで、極楽の喜びに溢れる世界を雰囲気を全身で表しているかのようでした。
1-3 康円 「四天王眷属立像(東方天眷属・南方天眷属)」 鎌倉時代・文永 4 年(1267) 東京国立博物館
こちらは四天王のうち東方の持国天と南方の増長天で、槍のようなものを持ったポーズをしています。持国天は赤く増長天は青黒っぽい色が付けられていて、顔は身近な人物をモデルにしたのではないか?という推測がされるほど その辺にいそうな人間っぽさがありました。しかめ面した表情も面白く顔に注目の作品です。
1-6 「観音・勢至菩薩立像」 鎌倉時代・13 世紀 神奈川・称名寺(神奈川県立金沢文庫保管)
こちらは合掌して前かがみになった勢至菩薩の立像で、極楽から来訪した姿を表現しているそうです。表面には金泥、体には装身具を身に着けていて緻密な技術が目に付きます。また、裾が後ろになびいていく感じなどは来迎している感じがあって細部の表現まで凝っています。この隣の観音菩薩も同様の姿となっていて、両方とも横から観るとその姿勢がよく分かって面白かったです。来迎中の仏像なんて中々珍しいんじゃないかな。
この近くには片足を踏み出すような十一面観音像もありました。こちらも動きのついた姿勢が目を引きました。
<展示室 2>
こちらの部屋は1点だけですが、今回の見所と言えそうです。
2-1 「不動明王立像」 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている不動明王像で、左足を伸ばし 右足は木の上に乗せて曲げています。また、右手は腰のあたりで剣を構え、左手は羂索を持つなど不動明王らしいアトリビュート(持ち物)となっています。この像で面白いのは何と言ってもそのポーズで、後ろから観ても横から観てもサマになる緊張感ある姿です。威嚇する顔も含めて歌舞伎の見栄を切るシーンみたいに思えるかな。衣の翻る様子など、動的な要素もあって今回の展示の趣旨を特に感じさせる逸品でした。
<展示室 3 截金紹介コーナー>
こちらは截金(きりかね)の技法を紹介するコーナーです。金箔を貼り付ける手順などがパネルと共に実際の截金の材料が並んでいるのですが、めちゃくちゃ細かい!w かなり細く切って、それを2本の面相筆で貼り付けるそうで、相当に手先が器用でないと難しそうです。この先に截金の技術を使った装飾の仏像がありますが、ここで技法を知ることで恐ろしく手間がかかるのを目の当たりにできると思います。
<展示室 4>
こちらはコの字状の展示室に、等身大くらいのやや大きめの仏像が並んでいました。
[仏像を飾る]
4-1 「毘沙門天立像」 平安時代・応保 2 年(1162)頃 東京国立博物館
こちらは左手で宝塔を持ち、右手で槍を持つ毘沙門天の立像です。邪鬼を踏みつけているなどモチーフ自体は典型的ですが、右足はやや踏み出す感じで、体は緩いS字の姿勢となっています。それが優美に感じられ、顔も穏やかに思えました。この毘沙門天の鎧にも唐草など かなり細かい截金の跡があるので、それも含めて目を引きました。
この辺には截金の技術が高い仏像が並んでいました。ミリ以下の精度で模様を作っていて驚きます。
4-5 「弥勒菩薩立像」 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵 ★こちらで観られます
こちらは茎の長い蓮の花を持つ弥勒菩薩の立像です。頭には宝冠を被っていて、これは王族だった釈迦の修行中の姿を踏襲しているようです。この像は光背も見事で、放射状に光が放たれるような表現となっていました。いずれも緻密で雅やかな印象を受けます。体つきも柔らかく、流れるような衣も含めて女性的な雰囲気も感じました。なお、この像の光背を裏から観ると蓮の花のようになるのだとか。
[踊る仏像の造形美]
4-6 「阿弥陀如来及び両脇侍像」 平安時代・ 9 世紀 大阪・四天王寺 ★こちらで観られます
こちらは阿弥陀如来とその脇の観音菩薩・勢至菩薩の像で、左は合掌し 右は蓮の台座を持っています。いずれも片足を後ろで組むような独特の立ち姿で、さらに腰を捻って踊るような感じに観えます。解説によると両脇侍像の肩から下は後の世に作られたそうで、元の姿は不明のようです。また、そもそもこの2体は対として作られたものではなく、似たポーズなので対とされたのだとか。色々と後付されているようではありますが、踊るようなコンビっぷりが珍しく、中々お目にかけないポーズとなっていました。楽しげな雰囲気です。
[天部の姿]
4-9 「毘沙門天立像」 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵
こちらは宝塔と槍を持った毘沙門天像で、珍しく兜を被った姿で表されています。しかしそれ以上に玉眼の目がギロッとこちらを観ているのがインパクト大で、非常に険しい表情となっています。一方、鎧の装飾なども力が入っているようで、腹帯を噛むような獅子の顔をしたベルト「獅噛(しがみ)」も力強く険しい顔となっていました。緊張感が漲っていて天部らしい勇ましさがある像です。
この近くは四天王像がズラッと並んでいます。毘沙門天が特に多めでした。
[不動明王の姿]
4-16 「不動明王立像」 鎌倉時代・13 世紀 埼玉・地蔵院
こちらは右手で肩に担ぐように剣を持ち、左手には羂索を持った不動明王の立像です。剣を持つ手はかなり後ろに引いているなど独特のポーズとなっています。何故か髪がまくれ上がるような表現になっているのも変わっているかな。解説によるとこうしたポーズは注文主のアイディアを反映しているそうで、独創性がありました。割と頭が小さめなのでスラッとした体つきになっているのも面白い作品でした。
[如来・菩薩の姿]
4-22 「十一面観音立像」 鎌倉時代・13 世紀 大阪・四天王寺
恐らくこの展覧会で一番大きな十一面観音の立像で、左手はかつて水瓶を持っていたんじゃないかな? 頭の上には10の化仏を乗せていて、頭頂部のみ如来の顔で他は菩薩の顔となっています。澄ましたり、怒ったり、笑っていたり…。それぞれ色々な表情を浮かべています。一方、体はややS字状になっていて、右足を少しだけあげているようで 緩やかな動きが出ていました。細かい動きが全体に波及する構成が素晴らしく、一層に優美な印象を受けました。
<展示室 5>
続いての5室は一木造と寄木造りの違いを取り上げ、それぞれの作品が数点ずつ並んでいました。
[「一木造」の彫技と量感]
一木造はその名の通り頭から体まで1つの木から彫り出す技法で、木の大きさ等から動きや表現に限界があります。しかし生命力や存在感が醸し出す雰囲気が見所となっているようです。
5-3 「十一面観音立像」 平安時代・ 9 世紀 大阪・長圓寺
こちらはずんぐりとした体型で水瓶を持つ十一面観音の立像です。衣文に特徴があるようで、素朴なように見えてかなり細かく彫られています。穏やかな顔つきとその量感から女性的な雰囲気もありました。
5-4 「五大明王像」 平安時代・10 ~ 11 世紀 奈良国立博物館 ★こちらで観られます
こちらは五大明王が揃った作品で、牛に乗る大威徳明王、片足を上げる軍荼利明王、あぐらを組む不動明王、胸の前で印を組む降三世明王、5つの目を持つ金剛夜叉明王となっています。不動明王以外は多面・多臂なので造形自体も力強いですが、特に軍荼利明王はそのポーズに躍動感がありました。いずれも非常にどっしりと構えていて、威厳溢れる雰囲気です。レプリカのフィギュアとかあったら欲しいw
[「寄木造」の妙技]
寄木造はいくつもの木を組み合わせるので、木材の制限を超えた大きさで作るのが可能な技法です。その為、ポーズも自由に作れます。 また、干割れを防ぐための内刳を容易にしてくれるようです(一木造はよく乾かさないとヒビが入りやすい)
5-5 「十二神将立像(子神~巳神)」 鎌倉時代・13 世紀 奈良国立博物館 ★こちらで観られます
こちらは十二支のうちネズミ(子)から蛇(巳)までの6種を司る十二神将が並んでいました。頭の上にそれぞれの干支を乗せているので、割とすぐ何の神か分かります。いずれも誇張されたポーズをしていて、厳しい表情を浮かべているかな。特に卯神が遠くを観るように額のあたりに手をかざすポーズが面白く、仏師のセンスが感じられました。
5-6 「伽藍神立像」 鎌倉時代・13 世紀 奈良国立博物館 ★こちらで観られます
こちらは猛烈にダッシュしているようなポーズの像で、衣が風でまくれあがり、スピード感満載ですw ただ、右手と右足が同時に出るようなフォームなので、ナンバ走りのような走法に見えます。 また、頭巾をかぶっているので一見すると七福神の大黒様のように見えるので、以前は「走り大黒」と呼ばれていたようですが、現在は伽藍神と推定されるようです。色々と謎の多い像ですが、 スピード感はこの展覧会でも随一といった作品でした。
この隣の雷神立像も動きが強く感じられました。また、近くには十一面観音像の化仏などが並んでいました。
<展示室 6 東京藝術大学文化財保存学(彫刻) 模刻作品・修復作品>
こちらは狭い部屋に1点のみです。前の部屋までで今回の展覧会の趣旨は終わりで、この後は東京藝術大学文化財保存学の修復や模刻の活動についてのコーナーとなっていました。
6-1 中村恒克 「模刻(復元) 宝菩提院 菩薩半跏像」 原本 平安時代 神奈川・光明院
こちらは片足を垂らして腰掛ける菩薩像で、平安時代の作品を元にして現代で模刻したものらしく体は赤く色付けされています。かなり衣のヒダが複雑で目を引くのですが、これが原作では一木造というのが驚きです。現代ではこれだけの大きさの木を手に入れることはできないので、2材を1木に見立てて模刻しているとのことでした。こうして模刻をすることで当時の制作状況なども分かるらしいので、非常に意義深い仕事ですね。
<展示室 7>
最後の部屋は模刻や修復された仏像が並んでいました。模刻には2種類あるようで、古く傷んだ感じまで再現するものと、制作当時を想定して模刻するものです。ここにはその両方が展示されていました。
7-3 小沼祥子 「模刻(現状) 興福寺 八部衆立像のうち乾闥婆立像」 個人蔵
こちらは興福寺の八部衆の乾闥婆を模刻したもので、木像ではなく 脱活乾漆造となります。見た目はかなり本物そっくりで、表面が古びた感じまで再現されています。まさに完コピといった感じで、これを本物と言って出されても気づけないと思えましたw
参考記事:阿修羅 天平乾漆群像展 (興福寺仮講堂) 奈良編
この先には天燈鬼立像なんかもありました。完コピの像と、当時の彩色を想定した真っ赤な像があって模刻ならでは面白さがあります。鮮やか過ぎるとちょっとチープに感じてしまいますがw
参考記事:運慶 (東京国立博物館 平成館)
部屋の真ん中にはパネルで研究や制作の様子などを紹介していました。わざわざ干割れを似せる様子などは執念を感じますw まさに仏師の追体験を求める様子が伺えました。
ということで、変わったポーズや様々な表情をしたレアな仏像たちに出会えることができる展覧会となっていました。既に人気ですがこの面白さならまだまだ人気が出そうな感じです。解説も緻密なので、詳しくない方もこれを機に仏像好きになれるんじゃないかな? ぐるっとパスなら提示するだけで観ることが出来ますので、オススメの展示です。
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前回ご紹介した展示を観る前に、京橋のLIXILギャラリーで「海を渡ったニッポンの家具-豪華絢爛仰天手仕事-」を観てきました。

【展覧名】
海を渡ったニッポンの家具-豪華絢爛仰天手仕事-
【公式サイト】
http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1806/
【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)
【会期】2018年09月06日(木)~11月24日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は明治時代に海外への輸出品として作られた家具についての展示です。明治時代には絹と並んで家具は2大輸出品だったそうで、当時は国内でも高い評価を得ていたようです。しかし、機能性が重視され装飾が悪と見做される時代になると遅れたものとされ、輸出も止まり忘れていったようです。その後も侘び・寂び・粋の対極であるため悪趣味の権化として近代化路線では一貫して否定されてきましたが、この展示にはそうした家具に光を当て、10点ほどが紹介されていました。詳しくは各章ごとに振り返ってみようと思います。
<寄木細工>
まずは寄木細工のコーナーです。寄木細工は何と4000年以上の歴史があるそうで、西アジアから伝わってきたそうです。日本では江戸時代頃に箱根などで盛んに作られ、今でも箱根では名物としてお土産になっています。
「ライティングビューロー」 ★こちらで観られます
こちらは高さも横幅も2mくらいある大型の机で、あちこちに寄木細工で模様が付けられています。楓や十字の文様が並び、全面的に装飾性が高く重厚感もあります。確かにゴテゴテした印象も受けますが、幾何学文様なので意外と落ち着いていて結構好みです。寄木自体の技術も見事で、技術の粋を集めたという言葉も頷ける出来栄えでした。(多分以前観たのと同じじゃないかな。)
参考記事:和モダンの世界 近代の輸出工芸 ~金子皓彦コレクションを中心に~ (たばこと塩の博物館)
「チェステーブル」
こちらは長い猫脚を持つチェステーブルで、上面は寄木で市松模様となったチェス盤となっています。横にも突き出したテーブルがあり、これはお酒を飲む時に置く台のようでした。収納箱などもあって、機能性と優美さが兼ね備わった豪華なテーブルです。
<芝山細工>
芝山細工は下総国芝山村の大野木専蔵が考案した技法で、貝や象牙、鼈甲、珊瑚、瑪瑙などをレリーフ状にはめ込んだ精巧な細工です。
「衝立 豊年満作図」 ★こちらで観られます
こちらは2面から成る衝立で、農村の長閑な様子が芝山細工で表されています。木に留まる鳥たちや籠にぎっしり柿を詰め込んだ農夫と子供、稲穂を背負ってキセルを吸う男たちなど、絵柄は質素な生活のように観えます。しかし、人物の顔は象牙、鳥は白蝶貝、川は高蒔絵など豪華な材料が使われていて驚きます。羽などの細部まで螺鈿になっていたりサンゴや翡翠も嵌っていたりするので、じっくり観ていると割ととんでもない品ですw 1つの作品にこれでもかと様々な技法を使った贅の極みといった作品でした。
<横浜彫刻家具>
ここは写真のみのコーナーでした。開国した頃に居留地となった横浜では洋家具の修理や修復を手がけていたようで、それが横浜彫刻家具の始まりとなったようです。明治半ばには横浜特有の家具も作られたとのことで、ここにはその写真があります。婚礼家具3点セットの写真で、完全に洋風の家具に見えるかな。葡萄を象った猫脚付きの鏡面台で、日本の家には間違いなく合わないw 元々外国人向けということもあって国内にはほとんど残っていないようです。華美で装飾過多な感じが好きになれなかったw
<青貝細工>
青貝細工はアワビの貝殻を使った螺鈿で、透けて見えるほど薄く研ぐのが特徴らしく 精緻な技工が必要な技術のようです。
「手元箪笥」
こちらは全面的に七色に光る青貝の螺鈿で絵が描かれた箪笥です。中国風の家の周りや川の流れに沿って沢山の人が集まって宴を開いているので、王羲之が蘭亭序を書いた時の曲水の宴をテーマにしているのだと思います。川の流れも細い螺鈿で表されているなど かなり緻密で、裏面や側面にまでぎっしりと描かれています。しかしその色彩感覚がToo muchと言うかやり過ぎと言うか…w とにかく根気と技術は凄いけど、確かに粋とは対極ですねw 凄いんだけどちょっと…というのが正直なところでした。
<仙台箪笥>
仙台箪笥は旧仙台藩などで使われていたもので、明治には海外輸出用に作られました。実用性と装飾性を兼ね備えていて、他のコーナーに比べて質実剛健な印象を受けるコーナーです。
「鏡面台付き仙台箪笥」 ★こちらで観られます
高さ2.5mくらいある箪笥の上に鏡面台が乗っている品です。各引き出し部分に彫金でつくられた龍が渦巻く様子が表され、箪笥自体は赤っぽくツヤのあるコーティングとなっています。龍がいるおかげで木目が雲の流れのように思えて面白く、よく観ると龍も1体1体違いがあるようでした。解説によると、やたら高い位置に鏡があるのは姿を映すよりは照明の光を反射して部屋を明るくする為のようでした。
この箪笥の隣には金具の図案などもありました。
ということで、点数は少なかったですが濃い空間となっていました。正直、洗練されていない部分もあるように思いましたが、それも含めて明治期に高い技術で外国に向けて制作していた様子が伺えました。ここは無料で観られるので、銀座や京橋に行く機会があったら是非寄ってみるとよろしいかと思います。

【展覧名】
海を渡ったニッポンの家具-豪華絢爛仰天手仕事-
【公式サイト】
http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1806/
【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)
【会期】2018年09月06日(木)~11月24日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は明治時代に海外への輸出品として作られた家具についての展示です。明治時代には絹と並んで家具は2大輸出品だったそうで、当時は国内でも高い評価を得ていたようです。しかし、機能性が重視され装飾が悪と見做される時代になると遅れたものとされ、輸出も止まり忘れていったようです。その後も侘び・寂び・粋の対極であるため悪趣味の権化として近代化路線では一貫して否定されてきましたが、この展示にはそうした家具に光を当て、10点ほどが紹介されていました。詳しくは各章ごとに振り返ってみようと思います。
<寄木細工>
まずは寄木細工のコーナーです。寄木細工は何と4000年以上の歴史があるそうで、西アジアから伝わってきたそうです。日本では江戸時代頃に箱根などで盛んに作られ、今でも箱根では名物としてお土産になっています。
「ライティングビューロー」 ★こちらで観られます
こちらは高さも横幅も2mくらいある大型の机で、あちこちに寄木細工で模様が付けられています。楓や十字の文様が並び、全面的に装飾性が高く重厚感もあります。確かにゴテゴテした印象も受けますが、幾何学文様なので意外と落ち着いていて結構好みです。寄木自体の技術も見事で、技術の粋を集めたという言葉も頷ける出来栄えでした。(多分以前観たのと同じじゃないかな。)
参考記事:和モダンの世界 近代の輸出工芸 ~金子皓彦コレクションを中心に~ (たばこと塩の博物館)
「チェステーブル」
こちらは長い猫脚を持つチェステーブルで、上面は寄木で市松模様となったチェス盤となっています。横にも突き出したテーブルがあり、これはお酒を飲む時に置く台のようでした。収納箱などもあって、機能性と優美さが兼ね備わった豪華なテーブルです。
<芝山細工>
芝山細工は下総国芝山村の大野木専蔵が考案した技法で、貝や象牙、鼈甲、珊瑚、瑪瑙などをレリーフ状にはめ込んだ精巧な細工です。
「衝立 豊年満作図」 ★こちらで観られます
こちらは2面から成る衝立で、農村の長閑な様子が芝山細工で表されています。木に留まる鳥たちや籠にぎっしり柿を詰め込んだ農夫と子供、稲穂を背負ってキセルを吸う男たちなど、絵柄は質素な生活のように観えます。しかし、人物の顔は象牙、鳥は白蝶貝、川は高蒔絵など豪華な材料が使われていて驚きます。羽などの細部まで螺鈿になっていたりサンゴや翡翠も嵌っていたりするので、じっくり観ていると割ととんでもない品ですw 1つの作品にこれでもかと様々な技法を使った贅の極みといった作品でした。
<横浜彫刻家具>
ここは写真のみのコーナーでした。開国した頃に居留地となった横浜では洋家具の修理や修復を手がけていたようで、それが横浜彫刻家具の始まりとなったようです。明治半ばには横浜特有の家具も作られたとのことで、ここにはその写真があります。婚礼家具3点セットの写真で、完全に洋風の家具に見えるかな。葡萄を象った猫脚付きの鏡面台で、日本の家には間違いなく合わないw 元々外国人向けということもあって国内にはほとんど残っていないようです。華美で装飾過多な感じが好きになれなかったw
<青貝細工>
青貝細工はアワビの貝殻を使った螺鈿で、透けて見えるほど薄く研ぐのが特徴らしく 精緻な技工が必要な技術のようです。
「手元箪笥」
こちらは全面的に七色に光る青貝の螺鈿で絵が描かれた箪笥です。中国風の家の周りや川の流れに沿って沢山の人が集まって宴を開いているので、王羲之が蘭亭序を書いた時の曲水の宴をテーマにしているのだと思います。川の流れも細い螺鈿で表されているなど かなり緻密で、裏面や側面にまでぎっしりと描かれています。しかしその色彩感覚がToo muchと言うかやり過ぎと言うか…w とにかく根気と技術は凄いけど、確かに粋とは対極ですねw 凄いんだけどちょっと…というのが正直なところでした。
<仙台箪笥>
仙台箪笥は旧仙台藩などで使われていたもので、明治には海外輸出用に作られました。実用性と装飾性を兼ね備えていて、他のコーナーに比べて質実剛健な印象を受けるコーナーです。
「鏡面台付き仙台箪笥」 ★こちらで観られます
高さ2.5mくらいある箪笥の上に鏡面台が乗っている品です。各引き出し部分に彫金でつくられた龍が渦巻く様子が表され、箪笥自体は赤っぽくツヤのあるコーティングとなっています。龍がいるおかげで木目が雲の流れのように思えて面白く、よく観ると龍も1体1体違いがあるようでした。解説によると、やたら高い位置に鏡があるのは姿を映すよりは照明の光を反射して部屋を明るくする為のようでした。
この箪笥の隣には金具の図案などもありました。
ということで、点数は少なかったですが濃い空間となっていました。正直、洗練されていない部分もあるように思いましたが、それも含めて明治期に高い技術で外国に向けて制作していた様子が伺えました。ここは無料で観られるので、銀座や京橋に行く機会があったら是非寄ってみるとよろしいかと思います。
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先週の日曜日に銀座のポーラミュージアム アネックスで宮本佳美「消滅からの形成」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
宮本佳美「消滅からの形成」
【公式サイト】
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅・京橋駅
【会期】2018年9月7日(金)~9月24日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は宮本佳美 氏という1981年生まれの若手の女性アーティストのミニ個展で、五島記念文化賞美術新人賞を受賞されたりイムラアートギャラリーなどで個展を開催するなど現在活躍中の方のようです。その作風は白黒の光と影をテーマにしているそうで、オランダへの海外研修で17世紀のオランダ絵画の「ダッチライト」に触れ、それに変わる現代の光の表現を追求しているようです。冒頭に記載した通りこの展示は撮影可能となっていましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
展覧会場はこんな感じ。

結構大きめの作品が並び、奥には暗めの部屋もあります。全部で10点と少なめなので20分くらいで観られました。
宮本佳美 「first time」

写真のように思えましたが水彩とアクリルを使って描いたもののようです。(写真なども制作手段として使っているようです) ちょっとぼんやりした感じが温もりを感じさせるかな。タイトルから何かの初体験に胸の高鳴りを押さえているのかなと思いましたが詳細は不明です。
宮本佳美 「Surge of shadow」

こちらは先程よりも明暗が強めですが、それでも柔らかい光のように感じるのが不思議です。手前に焦点が合ってる感じとか写真みたいに思えます。
奥の部屋は暗室のような中で絵が浮かび上がるように展示されていました。
宮本佳美 「Everlasting truth」

男女が抱き合うロマンチックなタイトルの作品。明暗はくっきりしていますが、人体が滑らかに感じる影となっています。男性の方は力強い肉付きですね。
宮本佳美 「mutter」

mutterはドイツ語の呟きという意味かな? 薄っすらと口を開いて何かを言っているような感じです。目を閉じていることもあって祈っている姿にも観えました。柔らかくも精神性を感じる明暗です。
宮本佳美 「flash over」

こちらは花を描いたものかな。これだけ陰影が深いのに劇的と言うよりは女性的な繊細さを感じました。やはり ややボヤけている所が柔らかく感じられるのかも。
ということで、個性的な明暗の作品を堪能することができました。点数が少ないので満足度は普通にしていますが、作品自体は良かったと思います。もう会期末が迫っていますので、ご興味ある方はすぐにでもどうぞ。無料で20時までやっているので気軽に立ち寄れると思います。


【展覧名】
宮本佳美「消滅からの形成」
【公式サイト】
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅・京橋駅
【会期】2018年9月7日(金)~9月24日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、今回の展示は宮本佳美 氏という1981年生まれの若手の女性アーティストのミニ個展で、五島記念文化賞美術新人賞を受賞されたりイムラアートギャラリーなどで個展を開催するなど現在活躍中の方のようです。その作風は白黒の光と影をテーマにしているそうで、オランダへの海外研修で17世紀のオランダ絵画の「ダッチライト」に触れ、それに変わる現代の光の表現を追求しているようです。冒頭に記載した通りこの展示は撮影可能となっていましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
展覧会場はこんな感じ。

結構大きめの作品が並び、奥には暗めの部屋もあります。全部で10点と少なめなので20分くらいで観られました。
宮本佳美 「first time」

写真のように思えましたが水彩とアクリルを使って描いたもののようです。(写真なども制作手段として使っているようです) ちょっとぼんやりした感じが温もりを感じさせるかな。タイトルから何かの初体験に胸の高鳴りを押さえているのかなと思いましたが詳細は不明です。
宮本佳美 「Surge of shadow」

こちらは先程よりも明暗が強めですが、それでも柔らかい光のように感じるのが不思議です。手前に焦点が合ってる感じとか写真みたいに思えます。
奥の部屋は暗室のような中で絵が浮かび上がるように展示されていました。
宮本佳美 「Everlasting truth」

男女が抱き合うロマンチックなタイトルの作品。明暗はくっきりしていますが、人体が滑らかに感じる影となっています。男性の方は力強い肉付きですね。
宮本佳美 「mutter」

mutterはドイツ語の呟きという意味かな? 薄っすらと口を開いて何かを言っているような感じです。目を閉じていることもあって祈っている姿にも観えました。柔らかくも精神性を感じる明暗です。
宮本佳美 「flash over」

こちらは花を描いたものかな。これだけ陰影が深いのに劇的と言うよりは女性的な繊細さを感じました。やはり ややボヤけている所が柔らかく感じられるのかも。
ということで、個性的な明暗の作品を堪能することができました。点数が少ないので満足度は普通にしていますが、作品自体は良かったと思います。もう会期末が迫っていますので、ご興味ある方はすぐにでもどうぞ。無料で20時までやっているので気軽に立ち寄れると思います。
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先週の日曜日に映画「カメラを止めるな!」を観てきました。この記事ではネタバレしない範囲で書いていこうと思います。

【作品名】
カメラを止めるな!
【公式サイト】
https://kametome.net/index.html
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
ほぼ満員で注目度の高さが伺えました。
さて、この映画は口コミやネット話題となって上映映画館も拡大している作品で、映画ファンの間ではネタバレ厳禁で中身は言えないけど凄いと評判となっていました。おかげで事前に中身を一切知ること無く観ることができたのですが、確かに面白くて驚きの多い作品でした。ストーリーに関してはそれ以上のことを書くのはやめておこうと思いますが、ポスターなどに書いてある「最後まで席を立つな」だけは守った方が良いのは確かですので、これから観に行かれる方はご注意ください。公式サイトでは核心部分のネタバレがあるので、観るまでは閲覧しないほうが良いと思いますw
映像についてはあまり期待していなかったのですが こちらもかなり攻めていて、内容に沿って緻密かつ大胆な手法が取られているのでそこも見所と言えそうです。一方の役者さん達は知らない方ばかりでしたがこちらも中々驚きです。 演技を使い分ける感じがよく伝わってきました。 誰が役者として格上なのかが全く分からないので、役者からも展開が全く読めませんw 元々この映画は監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールの「シネマプロジェクト」の第7弾として作られたようなので、これから注目されそうな監督・役者さん達です。
と、映画の中身についてはあまり書けないので、それ以外の豆知識を書いていくと、まずこの映画は約300万円という低予算(しかもクラウドファンディングで集めた)で作られています。その低予算ぶりにはスクールでの制作という部分もあると思いますが、その辺の事情を知ってるとアイディア勝負で作られているのがよく分かると思います。一方、ストーリーに関しては既に解散した劇団の舞台に類似していると指摘があるようで、監督は正式な許諾を取っていない(取ったつもりだった? 劇団員の名前はクレジットしているそうですが…)と 揉めているようです。恐らくこんなにヒットしなければ話題にもならなかったと思いますが、権利関係の認識の甘さで冷水をかけられないか やや心配です。 と、本人たちも予想外であったろう大ヒットぶりで、国内では「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」の観客賞、イタリアの「ウディネ・ファーイースト映画祭」でも観客賞2位という賞も貰い、何よりも口コミで広がって行ったという点がその面白さを証明してくれると思います。大作映画とは違った面白さです。
ということで、噂通り凄い映画でした。映画館で観ると他のお客さんの反応なんかも伝わってきて、それも含めて良かったかな。周りに教えたいけど観ていない人に中身を話すと野暮になる…という映画なので出来れば誰かと一緒に観て感想戦するのが楽しいんじゃないかと思います。今年注目の映画です。

【作品名】
カメラを止めるな!
【公式サイト】
https://kametome.net/index.html
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
ほぼ満員で注目度の高さが伺えました。
さて、この映画は口コミやネット話題となって上映映画館も拡大している作品で、映画ファンの間ではネタバレ厳禁で中身は言えないけど凄いと評判となっていました。おかげで事前に中身を一切知ること無く観ることができたのですが、確かに面白くて驚きの多い作品でした。ストーリーに関してはそれ以上のことを書くのはやめておこうと思いますが、ポスターなどに書いてある「最後まで席を立つな」だけは守った方が良いのは確かですので、これから観に行かれる方はご注意ください。公式サイトでは核心部分のネタバレがあるので、観るまでは閲覧しないほうが良いと思いますw
映像についてはあまり期待していなかったのですが こちらもかなり攻めていて、内容に沿って緻密かつ大胆な手法が取られているのでそこも見所と言えそうです。一方の役者さん達は知らない方ばかりでしたがこちらも中々驚きです。 演技を使い分ける感じがよく伝わってきました。 誰が役者として格上なのかが全く分からないので、役者からも展開が全く読めませんw 元々この映画は監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールの「シネマプロジェクト」の第7弾として作られたようなので、これから注目されそうな監督・役者さん達です。
と、映画の中身についてはあまり書けないので、それ以外の豆知識を書いていくと、まずこの映画は約300万円という低予算(しかもクラウドファンディングで集めた)で作られています。その低予算ぶりにはスクールでの制作という部分もあると思いますが、その辺の事情を知ってるとアイディア勝負で作られているのがよく分かると思います。一方、ストーリーに関しては既に解散した劇団の舞台に類似していると指摘があるようで、監督は正式な許諾を取っていない(取ったつもりだった? 劇団員の名前はクレジットしているそうですが…)と 揉めているようです。恐らくこんなにヒットしなければ話題にもならなかったと思いますが、権利関係の認識の甘さで冷水をかけられないか やや心配です。 と、本人たちも予想外であったろう大ヒットぶりで、国内では「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」の観客賞、イタリアの「ウディネ・ファーイースト映画祭」でも観客賞2位という賞も貰い、何よりも口コミで広がって行ったという点がその面白さを証明してくれると思います。大作映画とは違った面白さです。
ということで、噂通り凄い映画でした。映画館で観ると他のお客さんの反応なんかも伝わってきて、それも含めて良かったかな。周りに教えたいけど観ていない人に中身を話すと野暮になる…という映画なので出来れば誰かと一緒に観て感想戦するのが楽しいんじゃないかと思います。今年注目の映画です。
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Author:21世紀のxxx者
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。
関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。
画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。
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