Archive | 2018年12月
この間の日曜日に銀座のポーラミュージアム アネックスで「WE ARE LOVE photographed by LESLIE KEE」という展示を観てきました。
【展覧名】
WE ARE LOVE photographed by LESLIE KEE
【公式サイト】
https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅・京橋駅
【会期】2018年11月23日(金・祝)~12月24日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間15分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はLESLIE KEE(レスリー・キー)というシンガポール生まれの写真家の個展で、親子・恋人・友人を撮った写真が並んでいます。特徴的なのはLGBTのカップルのヌードの写真が多くを占めている点で、LGBTのカップル同士のウェディング写真のコーナーもあります。LGBTという言葉は最近よく聞くようになって、何となく性的マイノリティを指すというのは知っていたのですが、たまたまNHKの「ねほりんぱほりん」でLGBTカップルの回をやっていて、それによるとLGBTとは「Lesbian(女性同性愛者)」「Gay(男性同性愛者)」「Bisexual(両性愛者)」「Transgender(性同一性障害)」の頭文字だそうで、さらにQ(Question)とA(Asexual、Aromantic、Agender)というのもあるそうです。レスリー・キー氏は「すべての愛は、うつくしい」を掲げ、そうしたダイバーシティーと平等を訴えるという意図があるようで、濃密なカップルの写真が多く展示されていました。
この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介… と、思ったのですが、割と露出多めの写真なので検索エンジンのAIによってポルノサイトに分類される恐れがあるので露出高めのシリーズは遠景にとどめて置こうと思います。(私は差別する気は無いし、ヌードはどこまでが芸術か?とかそういうややこしい話をしたいわけでもないです。そう思ったらそもそも記事にする必要もないわけですしw)
こちらが会場風景。奥にずらっと冒頭のポスターのような「SUPER LOVE」というシリーズが並んでいます。

これが結構な露出度なので詳細は割愛しますが、親子、男女、男男、女女といった感じでスカーフに包まれています。中にはアクロバティックなポーズがあって、ちょっとジョジョ立ちみたいなものもあるかなw カラフルで喜びに溢れた表情をした写真ばかりです。
「SUPER LOVE」の中にはワンちゃんもありましたw

このワンちゃんはLGBTか分かりませんが、LGBTというのは人間だけでなく動物や昆虫にも広く観察されるようです。まあ、日本も江戸時代まで同性愛は普通だったというし、偏見の根源は性=悪の宗教的観念の一部が作用してる気がします。
参考リンク:動物の同性愛のwikipedia
こちらはLGBTのウェディング写真の「harMony SUPER LGBT WEDDINGプロジェクト」

100組以上撮ったそうです。同性の場合、2人ともウェディングドレスだったり1人はスーツだったり様々なケースがあるんですね。
こちらもウェディングのキスシーン。

愛し合っている様子が端的に現れた写真でした。
ということで、LGBTをテーマにした内容で「すべての愛は、うつくしい」というテーマ通りの写真だったと思います。アート・音楽・ファッションの世界にはLGBTのアーティストが多いし、こうしたテーマの作品もよく観る気はしますが、この展示は特に前向きなメッセージとなっていたと思います。もう会期が短いので気になる方はお早めにどうぞ。無料で撮影可能の展示です。

【展覧名】
WE ARE LOVE photographed by LESLIE KEE
【公式サイト】
https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅・京橋駅
【会期】2018年11月23日(金・祝)~12月24日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間15分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はLESLIE KEE(レスリー・キー)というシンガポール生まれの写真家の個展で、親子・恋人・友人を撮った写真が並んでいます。特徴的なのはLGBTのカップルのヌードの写真が多くを占めている点で、LGBTのカップル同士のウェディング写真のコーナーもあります。LGBTという言葉は最近よく聞くようになって、何となく性的マイノリティを指すというのは知っていたのですが、たまたまNHKの「ねほりんぱほりん」でLGBTカップルの回をやっていて、それによるとLGBTとは「Lesbian(女性同性愛者)」「Gay(男性同性愛者)」「Bisexual(両性愛者)」「Transgender(性同一性障害)」の頭文字だそうで、さらにQ(Question)とA(Asexual、Aromantic、Agender)というのもあるそうです。レスリー・キー氏は「すべての愛は、うつくしい」を掲げ、そうしたダイバーシティーと平等を訴えるという意図があるようで、濃密なカップルの写真が多く展示されていました。
この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介… と、思ったのですが、割と露出多めの写真なので検索エンジンのAIによってポルノサイトに分類される恐れがあるので露出高めのシリーズは遠景にとどめて置こうと思います。(私は差別する気は無いし、ヌードはどこまでが芸術か?とかそういうややこしい話をしたいわけでもないです。そう思ったらそもそも記事にする必要もないわけですしw)
こちらが会場風景。奥にずらっと冒頭のポスターのような「SUPER LOVE」というシリーズが並んでいます。

これが結構な露出度なので詳細は割愛しますが、親子、男女、男男、女女といった感じでスカーフに包まれています。中にはアクロバティックなポーズがあって、ちょっとジョジョ立ちみたいなものもあるかなw カラフルで喜びに溢れた表情をした写真ばかりです。
「SUPER LOVE」の中にはワンちゃんもありましたw

このワンちゃんはLGBTか分かりませんが、LGBTというのは人間だけでなく動物や昆虫にも広く観察されるようです。まあ、日本も江戸時代まで同性愛は普通だったというし、偏見の根源は性=悪の宗教的観念の一部が作用してる気がします。
参考リンク:動物の同性愛のwikipedia
こちらはLGBTのウェディング写真の「harMony SUPER LGBT WEDDINGプロジェクト」

100組以上撮ったそうです。同性の場合、2人ともウェディングドレスだったり1人はスーツだったり様々なケースがあるんですね。
こちらもウェディングのキスシーン。

愛し合っている様子が端的に現れた写真でした。
ということで、LGBTをテーマにした内容で「すべての愛は、うつくしい」というテーマ通りの写真だったと思います。アート・音楽・ファッションの世界にはLGBTのアーティストが多いし、こうしたテーマの作品もよく観る気はしますが、この展示は特に前向きなメッセージとなっていたと思います。もう会期が短いので気になる方はお早めにどうぞ。無料で撮影可能の展示です。
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前回に引き続きBunkamura ザ・ミュージアムの「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア」についてです。前編は1~2章についてでしたが、今日は残りの3~4章についてです。まずは概要のおさらいです。
前編はこちら

【展覧名】
国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅
【会期】2018年11月23日(金)~2019年01月27日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前編は風景画と人物画のコーナーでしたが、後半は子供を描いた作品と都市の風俗画となっていました。引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア (Bunkamuraザ・ミュージアム)
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア 2回目 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
<第3章 子供の世界>
3章は人物画の中でも子供をテーマにした作品が並んでいました。ここは点数はそれほど多くなかったかな。
52 アレクサンドル・モラヴォフ 「おもちゃ」
こちらは沢山の木製のカラフルな玩具が並んでいる様子を描いたもので、親子連れの人々が集まっていてフリーマーケットみたいな感じの場所となっています。全体的に色鮮やかなのですが、ぐにゃぐにゃした筆致が特徴的かなw 活気あふれる様子と共に夏の日差しも感じられ、力強い作風となっていました。
48 アレクセイ・ステパーノフ 「鶴が飛んでいく」
こちらは草原に寝転がったり座ったリして遠くの空に鶴の群れが飛んでいくのを眺めている15人くらいの子どもたちを描いた作品です。周りは広々とした平野が広がっていて、ロシアの広大さと物哀しい雰囲気が感じられます。舞い飛ぶ鶴は6羽ほどで隊列を組んで、越冬のため南へと向かって行くようです。寒くなって夏が終わっていく様子が情感豊かに表現されていて、子供の視線と共に鶴に目が行く構図も面白い作品でした。
53 セルゲイ・ヴィノグラードフ 「家で」
こちらは明るい室内の片隅に立つお下げ髪の女の子の後ろ姿を描いた作品です。テーブルで何かを見ているのか、じっとしているような感じで静けさが漂います。窓の外は夏の日差しのようで、強くも優しい光の表現となっているかな。室内の白と緑のストライプの壁紙なども洒落ていて、平穏で幸せな雰囲気となっていました。
<第4章 都市と生活>
最後の4章は都市の生活を描いたコーナーです。18世紀初頭にピョートル大帝は首都をモスクワからサンクトペテルブルクへと移し、ヨーロッパを手本とした美と威厳を与えたそうで、ここにはモスクワやサンクトペテルブルクを描いた作品も並んでいます。他にも風俗画のような作品もあり、当時のロシアを伺い知れるような章となっていました。
[都市の風景]
こちらは都市生活の節で、当時の生活感溢れる作品が並んでいます。
64 コンスタンチン・コローヴィン 「小舟にて」 ★こちらで観られます
こちらは木々に囲まれた小舟に乗った男女を描いた作品で、男性は本を読んで 女性は話しかけるような表情をしています。静かな2人の時間と言った感じで、ロマンティックでのんびりした光景かな。テーマも画風も印象派的に思えたのですが、この画家は印象派からの影響を受けているとのことでした。
67 ウラジーミル・マコフスキー 「大通りにて」
こちらは町を見渡せる小高い公園のベンチに座る夫婦を描いた作品です。男はアコーディオンを持っていて女は子供を抱いているのですが、男は酔ってボーっとして歌い 女は気が抜けたような表情をしています。周りに霧が出てどんよりしているのも無力感を増している感じかな。解説によると、これは19世紀ロシア文学の特徴である無力な人々の人生への同情が表されているとのことで、当時の厳しい現実を描いているように思えました。
68 ウラジーミル・マコフスキー 「ジャム作り」 ★こちらで観られます
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。

大きな庭の木の下でテーブルを出してジャムを作る老夫婦を描いた作品で、女性はジャムを煮詰めていて男性はテーブルで作業をしています。周りは明るく夏のような明暗となっているのが爽やかに感じる一方、男性は真剣な面持ちで緊張感があります。解説によると、平凡な人々を情愛の籠もった皮肉めいた眼差しで眺めて滑稽に描いているとのことで、ちょっと場面に不釣合いな大仰な感じです。真面目すぎて可笑しみを感じさせるのが狙いの作品のようでした。
[日常と祝祭]
最後はロシアの都市風景を描いた作品のコーナーです。
59 ニコライ・グリツェンコ 「イワン大帝の鐘楼からのモスクワの眺望」 ★こちらで観られます
こちらは高い所から見下ろすクレムリンの川沿いの風景画です。玉ねぎ型のドーム状の建物が並んでいて、ロシアの建物のイメージそのものじゃないかな。解説によると、このドームの形は雪が落ちやすい為こうなったとか、ロウソクの炎で精霊を表しているとか諸説あるようです。割と大胆な筆致で描いていて、変わった視点や川の曲線など構成も面白い作品となっていました。
58 セルゲイ・スヴェトスラーフスキー 「モスクワ美術学校の窓から」
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。

こちらはタイトルの通りモスクワの美術学校の窓から描いたものと思われますが、右から左へと尖塔が段々になっている構図が目を引きました。これだけ大胆な構図はここまであまり無かったので先進的に思えました。遠くまで真っ白で、これもロシアの風土を感じさせました。
61 アレクセイ・ボゴリューボフ 「ボリシャヤ・オフタからのスモーリヌイ修道院の眺望」
こちらはサンクトペテルブルクのネヴァ川の修道院を描いた作品です。川幅が広く船が行き交っていて、水の町みたいな感じに見えます。水平線が低く、大きく撮られた空が開放的で、雲が雄大な雰囲気となっていました。穏やかな都市の景観です。
ということで、ロシアの画家たちの様々な作品を楽しめました。こうした画家たちを観る機会は少ないので、今回も図録を買いました。この展示に出てくるロシア絵画は写実的で分かりやすい美しさとなっているので、美術初心者でも楽しめる内容だと思います。今季は大型の西洋画展が数多くありますが、洋画好きの方はチェックしてみてください。
おまけ:
この日はbunkamuraの中にあるカフェドゥマゴでロシア風のクレープを食べてみました。

いちごジャムたっぷりで、ロシア風ってそういうこと??w ロシアンティーはジャム入れるし、ロシアってジャム好きなんですかね。
参考記事:
ドゥ マゴ パリ (2018年3月)【渋谷界隈のお店】
ドゥ マゴ パリ 【渋谷界隈のお店】
前編はこちら


【展覧名】
国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅
【会期】2018年11月23日(金)~2019年01月27日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前編は風景画と人物画のコーナーでしたが、後半は子供を描いた作品と都市の風俗画となっていました。引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア (Bunkamuraザ・ミュージアム)
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア 2回目 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
<第3章 子供の世界>
3章は人物画の中でも子供をテーマにした作品が並んでいました。ここは点数はそれほど多くなかったかな。
52 アレクサンドル・モラヴォフ 「おもちゃ」
こちらは沢山の木製のカラフルな玩具が並んでいる様子を描いたもので、親子連れの人々が集まっていてフリーマーケットみたいな感じの場所となっています。全体的に色鮮やかなのですが、ぐにゃぐにゃした筆致が特徴的かなw 活気あふれる様子と共に夏の日差しも感じられ、力強い作風となっていました。
48 アレクセイ・ステパーノフ 「鶴が飛んでいく」
こちらは草原に寝転がったり座ったリして遠くの空に鶴の群れが飛んでいくのを眺めている15人くらいの子どもたちを描いた作品です。周りは広々とした平野が広がっていて、ロシアの広大さと物哀しい雰囲気が感じられます。舞い飛ぶ鶴は6羽ほどで隊列を組んで、越冬のため南へと向かって行くようです。寒くなって夏が終わっていく様子が情感豊かに表現されていて、子供の視線と共に鶴に目が行く構図も面白い作品でした。
53 セルゲイ・ヴィノグラードフ 「家で」
こちらは明るい室内の片隅に立つお下げ髪の女の子の後ろ姿を描いた作品です。テーブルで何かを見ているのか、じっとしているような感じで静けさが漂います。窓の外は夏の日差しのようで、強くも優しい光の表現となっているかな。室内の白と緑のストライプの壁紙なども洒落ていて、平穏で幸せな雰囲気となっていました。
<第4章 都市と生活>
最後の4章は都市の生活を描いたコーナーです。18世紀初頭にピョートル大帝は首都をモスクワからサンクトペテルブルクへと移し、ヨーロッパを手本とした美と威厳を与えたそうで、ここにはモスクワやサンクトペテルブルクを描いた作品も並んでいます。他にも風俗画のような作品もあり、当時のロシアを伺い知れるような章となっていました。
[都市の風景]
こちらは都市生活の節で、当時の生活感溢れる作品が並んでいます。
64 コンスタンチン・コローヴィン 「小舟にて」 ★こちらで観られます
こちらは木々に囲まれた小舟に乗った男女を描いた作品で、男性は本を読んで 女性は話しかけるような表情をしています。静かな2人の時間と言った感じで、ロマンティックでのんびりした光景かな。テーマも画風も印象派的に思えたのですが、この画家は印象派からの影響を受けているとのことでした。
67 ウラジーミル・マコフスキー 「大通りにて」
こちらは町を見渡せる小高い公園のベンチに座る夫婦を描いた作品です。男はアコーディオンを持っていて女は子供を抱いているのですが、男は酔ってボーっとして歌い 女は気が抜けたような表情をしています。周りに霧が出てどんよりしているのも無力感を増している感じかな。解説によると、これは19世紀ロシア文学の特徴である無力な人々の人生への同情が表されているとのことで、当時の厳しい現実を描いているように思えました。
68 ウラジーミル・マコフスキー 「ジャム作り」 ★こちらで観られます
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。

大きな庭の木の下でテーブルを出してジャムを作る老夫婦を描いた作品で、女性はジャムを煮詰めていて男性はテーブルで作業をしています。周りは明るく夏のような明暗となっているのが爽やかに感じる一方、男性は真剣な面持ちで緊張感があります。解説によると、平凡な人々を情愛の籠もった皮肉めいた眼差しで眺めて滑稽に描いているとのことで、ちょっと場面に不釣合いな大仰な感じです。真面目すぎて可笑しみを感じさせるのが狙いの作品のようでした。
[日常と祝祭]
最後はロシアの都市風景を描いた作品のコーナーです。
59 ニコライ・グリツェンコ 「イワン大帝の鐘楼からのモスクワの眺望」 ★こちらで観られます
こちらは高い所から見下ろすクレムリンの川沿いの風景画です。玉ねぎ型のドーム状の建物が並んでいて、ロシアの建物のイメージそのものじゃないかな。解説によると、このドームの形は雪が落ちやすい為こうなったとか、ロウソクの炎で精霊を表しているとか諸説あるようです。割と大胆な筆致で描いていて、変わった視点や川の曲線など構成も面白い作品となっていました。
58 セルゲイ・スヴェトスラーフスキー 「モスクワ美術学校の窓から」
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。

こちらはタイトルの通りモスクワの美術学校の窓から描いたものと思われますが、右から左へと尖塔が段々になっている構図が目を引きました。これだけ大胆な構図はここまであまり無かったので先進的に思えました。遠くまで真っ白で、これもロシアの風土を感じさせました。
61 アレクセイ・ボゴリューボフ 「ボリシャヤ・オフタからのスモーリヌイ修道院の眺望」
こちらはサンクトペテルブルクのネヴァ川の修道院を描いた作品です。川幅が広く船が行き交っていて、水の町みたいな感じに見えます。水平線が低く、大きく撮られた空が開放的で、雲が雄大な雰囲気となっていました。穏やかな都市の景観です。
ということで、ロシアの画家たちの様々な作品を楽しめました。こうした画家たちを観る機会は少ないので、今回も図録を買いました。この展示に出てくるロシア絵画は写実的で分かりやすい美しさとなっているので、美術初心者でも楽しめる内容だと思います。今季は大型の西洋画展が数多くありますが、洋画好きの方はチェックしてみてください。
おまけ:
この日はbunkamuraの中にあるカフェドゥマゴでロシア風のクレープを食べてみました。

いちごジャムたっぷりで、ロシア風ってそういうこと??w ロシアンティーはジャム入れるし、ロシアってジャム好きなんですかね。
参考記事:
ドゥ マゴ パリ (2018年3月)【渋谷界隈のお店】
ドゥ マゴ パリ 【渋谷界隈のお店】
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この前の土曜日に渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア」を観てきました。見どころの多い展示でメモを多めに取ってきたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅
【会期】2018年11月23日(金)~2019年01月27日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていて、場所によっては人だかりが出来るくらいでした。
さて、この展示はロシアの国立トレチャコフ美術館が所蔵するコレクションの中から19世紀後半から20世紀初頭の作品を72点紹介する内容となっています。時期的にはロシア帝国の崩壊が迫りつつある頃で、美術の世界では印象派を始めとした近代絵画が花咲く頃に当たります。ちなみに今回のポスターに「また お会いできますね」とあるのは約10年ほど前にもイワン・クラムスコイの「忘れえぬ女」をはじめとしたトレチャコフ美術館の所蔵展が行われた為で、bunkamuraはちょくちょくロシア関係の美術を紹介しているように思います。(事前に10年前の図録を観てから行ったのですが、いくつか同じのが来ているものの大半は違う作品でした) 展覧会は4章構成で題材ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア (Bunkamuraザ・ミュージアム)
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア 2回目 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
<第1章 ロマンティックな風景>
まずは風景画のコーナーです。ここにはロシアらしい風景を描いた作品が季節ごとに並んでいました。
[春]
ロシアでは春は再生の時と考えられているようです。ここには春の光景を題材にした作品がありました。
5 イサーク・レヴィタン 「春、大水」
こちらは雪解けで川が氾濫している様子を描いた作品です。白樺の木々が水に浸かっていて結構な洪水ですが、荒れ狂った感じはなく静かな印象を受けます。日差しが当たって白樺の幹が明るく見え、それがリズミカルな配置に思えました。河岸のカーブなども心地良いし、氾濫してても春の訪れを喜んでいるような絵に思えました。結構緻密で澄んだ色彩も好みでした。
4 アブラム・アルヒーポフ 「帰り道」
こちらは10年前にも来ていた作品だと思います。馬車とそれを追う御者の後ろ姿が描かれ、背景には木の無い広大な平野が広がり地平線まで見えています。馬の蹄で土埃が舞い上がる様子など、緻密な描写で臨場感があって足音まで聞こえそうな感じです。物悲しいような郷愁を誘う光景が叙情的でした。
[夏]
続いては夏です。ロシアの夏は短いのですが、ここには他の季節よりも沢山の作品が並んでいました。
22 ミハイル・ヤーコヴレフ 「花のある静物」
こちらは白いテーブルの上に置かれた 赤や黄色の花々が入った花瓶?を描いた静物です。厚塗りで筆跡が残る大胆な筆致となっていて、この展覧会の中ではモダンな印象を受けます。色合いも強烈で印象派というよりはフォービスム的な雰囲気でした。
18 イワン・シーシキン 「正午、モスクワ郊外」 ★こちらで観られます
こちらは金色のライ麦畑の間に農具を持って歩く農民たちを描いた作品です。遠くに塔のような建物がありますが、いかにも農村と言った感じかな。縦長の画面に水平線を低めに取っているのが広々とした印象で、光溢れる明暗も爽やかで穏やかです。解説によると、これはロシアの自然のイメージそのものなのだとか。
この隣にあったイワン・シーシキンの「森の散歩」は見覚えありました。イワン・シーシキンはドイツとスイスで修行した画家で、移動展覧会協会に所属し、ロシアの風景を描き続けました。この移動展覧会協会はトレチャコフが好んでコレクションした一派のようで、今回の展覧会ではそれに関連した画家が多く紹介されています。名前の通り、各地の都市で移動しながら展覧会を開催していた一派です。
13 アルカージー・ルイローフ 「静かな湖」
こちらは森の木々の隙間から小さな湖を覗いたような構図の作品です。そこには小舟に乗った人が手元を見ていて、どうやら釣りの用意をしているようです。割とぺったりした色彩で装飾的な要素もあるように見えるかな。静かで明るい日差しを感じました。解説によると、これは作者自身の体験を描いているようです。
12 コンスタンチン・クルイジツキー 「月明かりの僧房」
こちらは月光に照らされた三角屋根に十字マークの僧房を描いた作品で、周りは巨大な木々に囲まれています。僧房の前には杖を持つ白い衣と帽子の人物と、その傍らで座っている黒衣の人物が何か話し合っているように見えます。全体的に青白く、月光が微妙な明暗を作っていて神秘的な雰囲気となっていました。
15 イワン・シーシキン 「雨の樫林」 ★こちらで観られます
こちらは樫の林の間のぬかるんだ道を歩く3人の人物の後ろ姿を描いた作品です。その内の2人の男女は1本の傘で身を寄せ合っているので恋人同士かな? 奥の方は霧で霞んでいて烟るような感じです。樫の林の湿度まで感じられ、ロマンティックな詩情溢れる作品でした。
9 イワン・アイヴァゾフスキー 「海岸、別れ」
こちらは夕暮れの穏やかな砂浜の海岸にボートが1艘留まっている風景画で、手前には家族が別れを惜しんでいる様子が描かれています。夫妻が抱き合い、子供が見守っていて、これは漁師が海に出る前の別れのシーンのようです。沖合には大きな船があり今まさに出航と言ったところでしょうか。滑らかな色彩で、全体的にオレンジが輝いているように見えます。美しい風景と共に しんみりとした心の機微も描かれている作品でした。
[秋]
続いては秋のコーナーです。ここはやや少なめだったかな。
27 イワン・ゴリュシュキン=ソロコプドフ 「落ち葉」
こちらも移動展覧会のメンバーで、見覚えある作品かも。紅葉に染まる森の中を描いていて、葉っぱに光が当たっていて一層美しい光景です。緻密で写実的な作風で 悲哀を込めて描いているとのことですが、ちょっとセンチメンタルな気持ちになる光景な一方で、明暗が劇的な効果を生んでいるように思いました。
26 コンスタンチン・ユオン 「粉引き場、10月」
こちらは粉挽き小屋の当たりで人々やロバたちが働いている様子を描いた作品です。大きな袋を担いだり運んだり、傍らにはミルストーンらしきものが転がっていたりします。画面の左半分は川に橋がかかっていて、青が鮮やかに見えたのですが、これは光の表現を誇張しているようです。あまり細部は細かくないですが、生き生きとした情景の作品となっていました。
[冬]
冬はロシアで最も長く過酷な季節です。しかし雪や氷が美しい風景を生む季節でもあり、ここにはそうした作品も並んでいます。
29 ミハエル・ゲルマーシェフ 「雪が降った」
こちらは雪の積もった平原と 手前に立つ木の壁と門が描かれた作品で、門の間を列を組んで歩いているアヒルの姿も描かれています。7羽ほど並んでいてよちよち歩きで可愛らしいw 空も真っ白で積み藁にも雪が積もるなど寒々しい光景ですが、アヒルの存在でほっこりとした雰囲気となっていました。
31 ワシーリー・バクシェーエフ 「樹氷」 ★こちらで観られます
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。

こちらは木々に囲まれた雪道を描いた作品です。青と白で明暗を付け、輝くような樹氷の様子を描いています。寒さの厳しいロシアならではの光景で、過酷ながらも爽やかな雰囲気となっていました。
32 ニコライ・サモーキシュ 「トロイカ」
こちらは3頭立てのソリである「トロイカ」を正面から描いた作品で、3匹とも足を浮かせて疾走している様子となっています。こちら側に飛び出してきそうなダイナミックな構図となっていて、目をひんむいて鼻息は白くなっているなど 冬でも逞しく走る馬の力強さが感じられました。解説によると、この作品では写真で馬の走る筋肉を撮って活用したとのことで、写実的で真に迫るものがありました。
<第2章 ロシアの人々>
続いては人物像のコーナーです。肖像画は19世紀後半から20世紀初頭に最も豊かな展開を見せたそうで、この時期はロシア文学が発展した時期と重なるようです。ロシア文学の心理分析などを学んで絵画の心理描写に活かしたとのことで、ここには内面がよく現れた作品が並んでいました。
[ロシアの魂]
こちらは画家同士で描いた肖像画などが並んでいました。
34 イリヤ・レーピン 「画家イワン・クラムスコイの肖像」
こちらはこの後に出てくる「忘れえぬ女」を描いたイワン・クラムスコイを描いた肖像です。イワン・クラムスコイはレーピンの最初の師匠らしく、ここでは足を組んで座りこちらをじっと観る威厳ある姿となっています。レーピンがイワン・クラムスコイの特徴を語った通り、くぼんだ眼窩の深みにあるのにハッキリした目となっていて、灰色の強い瞳が印象的でした。背景が灰色なのも相まって 落ち着いて知的な感じに見えました。
この隣にもレーピンの肖像がありました。有名な音楽家を描いた作品などがあります。
[女性たち]
こちらは女性を描いたコーナー。なんと言ってもイワン・クラムスコイによる2つの作品が白眉です。
40 イワン・クラムスコイ 「忘れえぬ女」 ★こちらで観られます
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。

こちらは今回のポスターになっている作品で、背景はサンクトペテルブルクの町並みのようです。当時からこのモデルは誰か?が論争になったようで、トルストイの『アンナ・カレーニナ』やドストエフスキーの作品に出てくる自立した女性と言う説もあったようです。というのも、幌を上げて馬車に乗るというのは当時は珍しかったそうで、堅苦しい社会への挑戦とも受け止められていたようです。その睥睨するような眼差しが何とも印象的で、気品ある顔立ちと共に「忘れ得ぬ女」という邦題がぴったりな気がします。丹念な描写で描かれた小物の質感や、浮かび上がる色彩なども女性の存在感を強めていました。
39 イワン・クラムスコイ 「月明かりの夜」 ★こちらで観られます
こちらも今回の見どころの1つで、木々に囲まれた水辺のベンチに腰掛けている白い衣の女性が描かれています。周りは暗いのですが女性にだけ月光があたっていて神秘的な光景です。それでも月光は柔らかく感じられるかな。やや微笑んでいるような表情も魅力的で、遠くを伺うような眼差しが物想いに耽っているように見えました。詩的で物語のワンシーンのような作品です。
ということで、展覧会の中盤あたりに今回の見どころがありますが、それ以外もハイレベルで見ごたえがあります。表現自体はそれほど新しさを感じないのですが、まさにロマンティックな作品ばかりです。後半も魅力的な作品ばかりでしたので、次回は残りの展示について書こうと思います。
→ 後編はこちら

【展覧名】
国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア
【公式サイト】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅
【会期】2018年11月23日(金)~2019年01月27日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていて、場所によっては人だかりが出来るくらいでした。
さて、この展示はロシアの国立トレチャコフ美術館が所蔵するコレクションの中から19世紀後半から20世紀初頭の作品を72点紹介する内容となっています。時期的にはロシア帝国の崩壊が迫りつつある頃で、美術の世界では印象派を始めとした近代絵画が花咲く頃に当たります。ちなみに今回のポスターに「また お会いできますね」とあるのは約10年ほど前にもイワン・クラムスコイの「忘れえぬ女」をはじめとしたトレチャコフ美術館の所蔵展が行われた為で、bunkamuraはちょくちょくロシア関係の美術を紹介しているように思います。(事前に10年前の図録を観てから行ったのですが、いくつか同じのが来ているものの大半は違う作品でした) 展覧会は4章構成で題材ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア (Bunkamuraザ・ミュージアム)
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア 2回目 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
<第1章 ロマンティックな風景>
まずは風景画のコーナーです。ここにはロシアらしい風景を描いた作品が季節ごとに並んでいました。
[春]
ロシアでは春は再生の時と考えられているようです。ここには春の光景を題材にした作品がありました。
5 イサーク・レヴィタン 「春、大水」
こちらは雪解けで川が氾濫している様子を描いた作品です。白樺の木々が水に浸かっていて結構な洪水ですが、荒れ狂った感じはなく静かな印象を受けます。日差しが当たって白樺の幹が明るく見え、それがリズミカルな配置に思えました。河岸のカーブなども心地良いし、氾濫してても春の訪れを喜んでいるような絵に思えました。結構緻密で澄んだ色彩も好みでした。
4 アブラム・アルヒーポフ 「帰り道」
こちらは10年前にも来ていた作品だと思います。馬車とそれを追う御者の後ろ姿が描かれ、背景には木の無い広大な平野が広がり地平線まで見えています。馬の蹄で土埃が舞い上がる様子など、緻密な描写で臨場感があって足音まで聞こえそうな感じです。物悲しいような郷愁を誘う光景が叙情的でした。
[夏]
続いては夏です。ロシアの夏は短いのですが、ここには他の季節よりも沢山の作品が並んでいました。
22 ミハイル・ヤーコヴレフ 「花のある静物」
こちらは白いテーブルの上に置かれた 赤や黄色の花々が入った花瓶?を描いた静物です。厚塗りで筆跡が残る大胆な筆致となっていて、この展覧会の中ではモダンな印象を受けます。色合いも強烈で印象派というよりはフォービスム的な雰囲気でした。
18 イワン・シーシキン 「正午、モスクワ郊外」 ★こちらで観られます
こちらは金色のライ麦畑の間に農具を持って歩く農民たちを描いた作品です。遠くに塔のような建物がありますが、いかにも農村と言った感じかな。縦長の画面に水平線を低めに取っているのが広々とした印象で、光溢れる明暗も爽やかで穏やかです。解説によると、これはロシアの自然のイメージそのものなのだとか。
この隣にあったイワン・シーシキンの「森の散歩」は見覚えありました。イワン・シーシキンはドイツとスイスで修行した画家で、移動展覧会協会に所属し、ロシアの風景を描き続けました。この移動展覧会協会はトレチャコフが好んでコレクションした一派のようで、今回の展覧会ではそれに関連した画家が多く紹介されています。名前の通り、各地の都市で移動しながら展覧会を開催していた一派です。
13 アルカージー・ルイローフ 「静かな湖」
こちらは森の木々の隙間から小さな湖を覗いたような構図の作品です。そこには小舟に乗った人が手元を見ていて、どうやら釣りの用意をしているようです。割とぺったりした色彩で装飾的な要素もあるように見えるかな。静かで明るい日差しを感じました。解説によると、これは作者自身の体験を描いているようです。
12 コンスタンチン・クルイジツキー 「月明かりの僧房」
こちらは月光に照らされた三角屋根に十字マークの僧房を描いた作品で、周りは巨大な木々に囲まれています。僧房の前には杖を持つ白い衣と帽子の人物と、その傍らで座っている黒衣の人物が何か話し合っているように見えます。全体的に青白く、月光が微妙な明暗を作っていて神秘的な雰囲気となっていました。
15 イワン・シーシキン 「雨の樫林」 ★こちらで観られます
こちらは樫の林の間のぬかるんだ道を歩く3人の人物の後ろ姿を描いた作品です。その内の2人の男女は1本の傘で身を寄せ合っているので恋人同士かな? 奥の方は霧で霞んでいて烟るような感じです。樫の林の湿度まで感じられ、ロマンティックな詩情溢れる作品でした。
9 イワン・アイヴァゾフスキー 「海岸、別れ」
こちらは夕暮れの穏やかな砂浜の海岸にボートが1艘留まっている風景画で、手前には家族が別れを惜しんでいる様子が描かれています。夫妻が抱き合い、子供が見守っていて、これは漁師が海に出る前の別れのシーンのようです。沖合には大きな船があり今まさに出航と言ったところでしょうか。滑らかな色彩で、全体的にオレンジが輝いているように見えます。美しい風景と共に しんみりとした心の機微も描かれている作品でした。
[秋]
続いては秋のコーナーです。ここはやや少なめだったかな。
27 イワン・ゴリュシュキン=ソロコプドフ 「落ち葉」
こちらも移動展覧会のメンバーで、見覚えある作品かも。紅葉に染まる森の中を描いていて、葉っぱに光が当たっていて一層美しい光景です。緻密で写実的な作風で 悲哀を込めて描いているとのことですが、ちょっとセンチメンタルな気持ちになる光景な一方で、明暗が劇的な効果を生んでいるように思いました。
26 コンスタンチン・ユオン 「粉引き場、10月」
こちらは粉挽き小屋の当たりで人々やロバたちが働いている様子を描いた作品です。大きな袋を担いだり運んだり、傍らにはミルストーンらしきものが転がっていたりします。画面の左半分は川に橋がかかっていて、青が鮮やかに見えたのですが、これは光の表現を誇張しているようです。あまり細部は細かくないですが、生き生きとした情景の作品となっていました。
[冬]
冬はロシアで最も長く過酷な季節です。しかし雪や氷が美しい風景を生む季節でもあり、ここにはそうした作品も並んでいます。
29 ミハエル・ゲルマーシェフ 「雪が降った」
こちらは雪の積もった平原と 手前に立つ木の壁と門が描かれた作品で、門の間を列を組んで歩いているアヒルの姿も描かれています。7羽ほど並んでいてよちよち歩きで可愛らしいw 空も真っ白で積み藁にも雪が積もるなど寒々しい光景ですが、アヒルの存在でほっこりとした雰囲気となっていました。
31 ワシーリー・バクシェーエフ 「樹氷」 ★こちらで観られます
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。

こちらは木々に囲まれた雪道を描いた作品です。青と白で明暗を付け、輝くような樹氷の様子を描いています。寒さの厳しいロシアならではの光景で、過酷ながらも爽やかな雰囲気となっていました。
32 ニコライ・サモーキシュ 「トロイカ」
こちらは3頭立てのソリである「トロイカ」を正面から描いた作品で、3匹とも足を浮かせて疾走している様子となっています。こちら側に飛び出してきそうなダイナミックな構図となっていて、目をひんむいて鼻息は白くなっているなど 冬でも逞しく走る馬の力強さが感じられました。解説によると、この作品では写真で馬の走る筋肉を撮って活用したとのことで、写実的で真に迫るものがありました。
<第2章 ロシアの人々>
続いては人物像のコーナーです。肖像画は19世紀後半から20世紀初頭に最も豊かな展開を見せたそうで、この時期はロシア文学が発展した時期と重なるようです。ロシア文学の心理分析などを学んで絵画の心理描写に活かしたとのことで、ここには内面がよく現れた作品が並んでいました。
[ロシアの魂]
こちらは画家同士で描いた肖像画などが並んでいました。
34 イリヤ・レーピン 「画家イワン・クラムスコイの肖像」
こちらはこの後に出てくる「忘れえぬ女」を描いたイワン・クラムスコイを描いた肖像です。イワン・クラムスコイはレーピンの最初の師匠らしく、ここでは足を組んで座りこちらをじっと観る威厳ある姿となっています。レーピンがイワン・クラムスコイの特徴を語った通り、くぼんだ眼窩の深みにあるのにハッキリした目となっていて、灰色の強い瞳が印象的でした。背景が灰色なのも相まって 落ち着いて知的な感じに見えました。
この隣にもレーピンの肖像がありました。有名な音楽家を描いた作品などがあります。
[女性たち]
こちらは女性を描いたコーナー。なんと言ってもイワン・クラムスコイによる2つの作品が白眉です。
40 イワン・クラムスコイ 「忘れえぬ女」 ★こちらで観られます
↓これはショーウィンドウにあった複製を撮った写真です。

こちらは今回のポスターになっている作品で、背景はサンクトペテルブルクの町並みのようです。当時からこのモデルは誰か?が論争になったようで、トルストイの『アンナ・カレーニナ』やドストエフスキーの作品に出てくる自立した女性と言う説もあったようです。というのも、幌を上げて馬車に乗るというのは当時は珍しかったそうで、堅苦しい社会への挑戦とも受け止められていたようです。その睥睨するような眼差しが何とも印象的で、気品ある顔立ちと共に「忘れ得ぬ女」という邦題がぴったりな気がします。丹念な描写で描かれた小物の質感や、浮かび上がる色彩なども女性の存在感を強めていました。
39 イワン・クラムスコイ 「月明かりの夜」 ★こちらで観られます
こちらも今回の見どころの1つで、木々に囲まれた水辺のベンチに腰掛けている白い衣の女性が描かれています。周りは暗いのですが女性にだけ月光があたっていて神秘的な光景です。それでも月光は柔らかく感じられるかな。やや微笑んでいるような表情も魅力的で、遠くを伺うような眼差しが物想いに耽っているように見えました。詩的で物語のワンシーンのような作品です。
ということで、展覧会の中盤あたりに今回の見どころがありますが、それ以外もハイレベルで見ごたえがあります。表現自体はそれほど新しさを感じないのですが、まさにロマンティックな作品ばかりです。後半も魅力的な作品ばかりでしたので、次回は残りの展示について書こうと思います。
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前回ご紹介した松濤美術館の展示を観た後、渋谷方面に向かったところにあるガレットリアというお店で遅い昼食を摂ってきました。このお店は以前にもご紹介したことがあるのですが、6年前なので改めて記事にしてみました。

【店名】
ガレットリア
【ジャンル】
レストラン・カフェ
【公式サイト】
http://www.many.co.jp/galettoria/
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13045560/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
京王井の頭線神泉駅/渋谷駅
【近くの美術館】
松濤美術館
Bunkamuraザ・ミュージアム
戸栗美術館
など
【この日にかかった1人の費用】
2500円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
結構混んでいてほぼ満席でしたが、遅い時間だったこともあって待たずに入れました。よく列が出来ている人気のお店です。
さて、このお店はbunkamuraから松濤美術館に向かう途中にある壁に蔦の生えた建物のお店で、松濤公園に行く方との分かれ道にあるので結構目を引くと思います。今回は内装の写真は不可だったので撮りませんでしたが、以前から変わりなく南仏の田舎風のインテリアも洒落た印象となっています。今回は2階に通されました。
参考記事:ガレットリア 【渋谷界隈のお店】
この日はカフェメニューだけというのは無く、セットメニューのみとなっていました。確か2500円くらいだったかな。(しょっちゅう通っているわけではないですが、日によって違うのかな?) セットはガレットに飲み物が付きます。 お店の名前はガレットとトラットリアを合成した名前なので、ガレットが名物となっています。さらに1人分はデザートのクレープも付くセットにしました。
こちらはハムと卵のシンプルなガレット。見た目も綺麗なのが良いですね。

生地にチーズが入っていて、絶妙な塩梅で非常に美味しいガレットです。ペッパーなども効いていて全く飽きません。
こちらは奥さんが頼んでいた生ハムと野菜がたっぷり乗ったガレット

中に先程のガレットが入っている感じです。野菜の彩りもあって女性に人気がありそう。
1人分だけデザートのクレープも付けました。

こちらも食感がもちもちして程よい甘さが美味しかったです。隣にあるのはアイスかと思ったらクリーム状でしたw
飲み物はミカンジュースにしました。

オレンジジュースではなく、ミカンだ!と分かる風味でした。酸っぱさは無くまろやかで飲みやすいジュースです。
奥さんは紅茶にしていました。

少し頂きましたがアールグレイをベースに何か他に入ってるのか、非常に爽やかな香りでした。紅茶だけでもかなりのものです。
ということで、今回も美味しいガレットを楽しんできました。松濤美術館とBunkamuraザ・ミュージアムをハシゴする際に丁度コース上にあるのも便利なので、今後も利用することがあると思います。お店の中の雰囲気も良いし、美術館めぐりのお供にもってこいのお店です。

【店名】
ガレットリア
【ジャンル】
レストラン・カフェ
【公式サイト】
http://www.many.co.jp/galettoria/
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13045560/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
京王井の頭線神泉駅/渋谷駅
【近くの美術館】
松濤美術館
Bunkamuraザ・ミュージアム
戸栗美術館
など
【この日にかかった1人の費用】
2500円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
結構混んでいてほぼ満席でしたが、遅い時間だったこともあって待たずに入れました。よく列が出来ている人気のお店です。
さて、このお店はbunkamuraから松濤美術館に向かう途中にある壁に蔦の生えた建物のお店で、松濤公園に行く方との分かれ道にあるので結構目を引くと思います。今回は内装の写真は不可だったので撮りませんでしたが、以前から変わりなく南仏の田舎風のインテリアも洒落た印象となっています。今回は2階に通されました。
参考記事:ガレットリア 【渋谷界隈のお店】
この日はカフェメニューだけというのは無く、セットメニューのみとなっていました。確か2500円くらいだったかな。(しょっちゅう通っているわけではないですが、日によって違うのかな?) セットはガレットに飲み物が付きます。 お店の名前はガレットとトラットリアを合成した名前なので、ガレットが名物となっています。さらに1人分はデザートのクレープも付くセットにしました。
こちらはハムと卵のシンプルなガレット。見た目も綺麗なのが良いですね。

生地にチーズが入っていて、絶妙な塩梅で非常に美味しいガレットです。ペッパーなども効いていて全く飽きません。
こちらは奥さんが頼んでいた生ハムと野菜がたっぷり乗ったガレット

中に先程のガレットが入っている感じです。野菜の彩りもあって女性に人気がありそう。
1人分だけデザートのクレープも付けました。

こちらも食感がもちもちして程よい甘さが美味しかったです。隣にあるのはアイスかと思ったらクリーム状でしたw
飲み物はミカンジュースにしました。

オレンジジュースではなく、ミカンだ!と分かる風味でした。酸っぱさは無くまろやかで飲みやすいジュースです。
奥さんは紅茶にしていました。

少し頂きましたがアールグレイをベースに何か他に入ってるのか、非常に爽やかな香りでした。紅茶だけでもかなりのものです。
ということで、今回も美味しいガレットを楽しんできました。松濤美術館とBunkamuraザ・ミュージアムをハシゴする際に丁度コース上にあるのも便利なので、今後も利用することがあると思います。お店の中の雰囲気も良いし、美術館めぐりのお供にもってこいのお店です。
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先週の日曜日に渋谷の松濤美術館で「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」を観てきました。

【展覧名】
終わりのむこうへ : 廃墟の美術史
【公式サイト】
http://www.shoto-museum.jp/exhibitions/181haikyo/
【会場】松濤美術館
【最寄】渋谷駅・神泉駅
【会期】2018年12月8日(土)~2019年1月31日(木)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんは多かったですが、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は「廃墟」をテーマにした絵画展で、古今東西の画家の作品が並ぶ内容となっています。廃墟の絵画は西洋美術の中で繰り返し描かれていたのですが、18世紀から19世紀にかけて廃墟趣味が流行し、廃墟が主役の地位となっていったようです。この廃墟を描く美学は近代の日本にも伝わり、現代まで息づく流れとなっています。展示は大きく2階と地下に分かれていて、時代を追っていく感じになっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<I章 絵になる廃墟:西洋美術における古典的な廃墟モティーフ>
まずは2階の展示で、ここは17~18世紀の廃墟を主題にした作品から始まります。18~20世紀にも廃墟のテーマは引き継がれていったようで、ざっくりとその伝統を観ることができました。
2 ユベール・ロベール 「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」
これはポスターを撮ったものです。

こちらは今回のポスターの1つとなっている作品で、コリント式の柱や回廊のある神殿の廃墟の中の人々を描いています。人のおかげで廃墟の大きさがわかるのですが、かなりの広さです。遠近感が強いのも一層そう感じさせるかな。人々の服装も古代風で、神話のような理想的な美しさがありました。ユベール・ロベールといえば廃墟なので、このチョイスは王道ですね。
参考記事:
ユベール・ロベール-時間の庭 感想前編(国立西洋美術館)
ユベール・ロベール-時間の庭 感想後編(国立西洋美術館)
5 アンリ・ルソー 「廃墟のある風景」
こちらは打って変わって近代絵画のルソー。崩れかかった壁のある廃墟と、教会の屋根が見えていて手前には籠を持った女性が歩いている姿もあります。解説によると、ルソーの中で他に類のない主題なので、版画作品などをもとに描いていると考えられるそうです。全体的に滑らかな筆致で、現実を描いているのにややシュールな雰囲気もありました。これは以前観た時の記憶が蘇りました。
参考記事:レオナール・フジタ ― ポーラ美術館コレクションを中心に 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
<II章 奇想の遺跡、廃墟>
続いては18~19世紀頃のコーナー。この頃あえて廃墟や遺跡を好んで描く廃墟趣味が隆盛したそうで、その背景には18世紀にポンペイ遺跡などが相次いで見つかって世間の関心を得たのと、上流階級が「グランド・ツアー」というイタリアへの留学で歴史遺跡を訪ねるのが流行したことがあるようです。ここには地誌的・歴史的な正確さに基づいて描かれた作品が並んでいました。
6-11 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ 「『ローマの景観』より」
これはポスターを撮ったものです。

こちらはローマ遺跡を描いたエッチングの版画集で、かなり精密で濃淡を活かして質感や遠近感を出しています。所々に人を配して廃墟の大きさや偉大さを示しつつ、時間の経過も感じさせます。 流石に人が小さすぎるのでは?と思うような絵もありましたが、丹念な描写に圧倒されました。
参考記事:ピラネージ『牢獄』展 (国立西洋美術館)
この辺は確かにかなり緻密で写実的な版画が並んでいました
<III章 廃墟に出会った日本の画家たち: 近世と近代の日本の美術と廃墟主題>
続いては日本人による廃墟の絵画です。近代までは日本に廃墟を描いた作品はなかったようですが、廃墟趣味の輸入版画を元に浮世絵にした作品なんかも存在するようです。明治以降は洋画教育の中で伝播していったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
28 亜欧堂田善 「独逸国廓門図」
こちらは江戸時代にドイツを描いたもので、オベリスクやドーム状の宮殿が立ち並ぶ光景となっていて、観た感じは西洋画そのものです。廃墟ではないな…w 解説によると、ドイツではなく実際には古代ローマの繁栄の図などを元に描いているそうで、先程のピラネージの版画の中にも似た作品があるようです。亜欧堂田善は日本の西洋画の先駆け的な存在ですが、この作品は特に西洋から学んでいる様子がよく分かりました。
この近くには浮世絵になった奇妙な西洋風景などもありました。また、日本の近代絵画に大きな影響を与えたフォンタネージによる廃墟のデッサンなどもあります。
34 不染鉄 「廃船」
こちらは昨年話題になった不染鉄による作品で、巨大な貨物船らしき廃船が壁のように大きく描かれています。手前には家々が立ち並んでいるのですが、その大きさの違いで圧倒的な迫力を感じます。重く暗い色合いで水が滝のように落ちている様子など、船というよりは遺跡と言った感じに見えました。重厚感・威圧感がある一方、戦時中に帰ってこなかった船を想う気持ちもあるようでした。
45 岡鹿之助 「廃墟」
こちらは積み重なるような廃墟の建物を描いた作品で、フランスのロワール地方に現存する中世の廃墟だそうです。まるでテトリスのように積み上がっていて、細かい引っかき傷のようなマチエールが風化した質感を出していました。素朴で静かで超現実的な雰囲気のある作品です。
2階はこんな感じで、続いて地下の展示です。
<IV章 シュルレアリスムのなかの廃墟>
地下の最初はシュルレアリスムのコーナーです。ここは姫路のデルヴォーが多めで、マグリットやデ・キリコなど横浜美術館の所蔵品なども並んでいました。
47 ポール・デルヴォー 「水のニンフ(セイレン)」
こちらは海で水浴びしている裸婦(ニンフまたはセイレーン)を描いたもので、背景には古代神殿のようなものが立ち並び、浜辺で1人のステッキを持った紳士がニンフ達を眺めています。ニンフたちは目が死んでいて怖いのですが、神殿との取り合わせも奇妙で 夢の中の世界のような不思議さがありました。
この隣には名作の「海は近い」(★こちらで観られます)もありました。デルヴォーはリトグラフも含めて6点もあって、これだけでもデルヴォー好きとしては嬉しい驚きです。
参考記事:
ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅 (府中市美術館)
ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅 (埼玉県立近代美術館)
53 ジョルジオ・デ・キリコ(工房) 「吟遊詩人」
こちらは普段は横浜美術館の常設にある作品で、単純化された建物の間に立つマネキンが描かれています。左端には人の影が伸びていて、ちょっと不穏な雰囲気があるかな。ぺったりとした画風で、寂しさと共に言い知れぬ魅力も感じる作品です。これぞデ・キリコといったモチーフと画風となっています。
この近くには同じく横浜美術館のマグリットの作品もありました。
<V章 幻想のなかの廃墟:昭和期の日本における廃墟的世界>
続いては昭和期の日本のシュルレアリスムに描かれた廃墟のコーナーです。
56 北脇昇 「章表」
こちらは丘の上の城塞の壁のようなものが並ぶ光景で、かなり単純化されていて不思議な親しみを感じます。解説によると、北脇は1930年台に中国に旅行したことがあるそうで、その時見た風景なのかもしれないとのことです。実在すると言っても絵は心象風景のような雰囲気で、どこか柔らかいような感じを受けました。
57 浜田浜雄 「ユパス」
こちらは女性の横顔のような岩や、人体を思わせる岩などが並ぶ水辺と、そこを歩く4人の少女が描かれた作品です。滑らかな色合いで、抽象化している部分もあって廃墟という感じはそれほどしないかな。ダリに強い影響を受けているのが見て取れて、夢の中を描いているような感じでした。
<VI章 遠い未来を夢見て: いつかの日を描き出す現代画家たち>
最後は現代日本のアーティストたちによる廃墟のコーナーです。ここは今回の見どころの1つだと思います。
65 大岩オスカール 「動物園」 ★こちらで観られます
こちらはかなり大型の作品で、北千住の廃墟が描かれています。柱が立ち並ぶ工場のような堅牢な建物の内部で、瓦礫が転がり何かの機材も見えています。一方、柱の外には町並みが描かれ、遠くにはビルが並んでいるなど明るい雰囲気です。明暗が強く、光の当たる柱を境に違う世界が同居しているようにも見えるかな。柱は神殿のような荘厳な雰囲気も出していました。
68 元田久治 「Indication : Diet Building, Tokyo 3」
こちらは廃墟になった国会議事堂を描いた作品で、木々が生い茂って一体化しつつあり、国会議事堂がラピュタになったみたいな感じですw 俯瞰する構図でくすんだ色合いとなっているのも面白く、失われた文明を目の当たりにしているようなSF感がありました。
参考記事:現代の写実―映像を超えて (東京都美術館)
67 元田久治 「Foresight: Shibuya Center Town」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。

こちらは渋谷の駅あたりが廃墟になった様子。リアルさがあって、滅んだら本当にこういう風になりそうな…。元田氏の作品は身近な場所ほど面白く感じられます。
他にも渋谷駅の銀座線の線路辺りを俯瞰する構図の作品などもありました。
71 野又穫 「交差点で待つ間に」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。

一見すると大都会の交差点を描いたように見えて、左下の犬の像なんかは渋谷っぽく思えます。しかしよく観ると建物は古代風なパーツがあったりして、独特の建築様式となっていて異世界感があります。解説によると、これはピラネージのオマージュから渋谷の交差点と古代ローマを混ぜた感じになっているそうで、白っぽく淡い色調も白化した世界のような静かな雰囲気となっていました。
参考記事:幻想の回廊 (東京オペラシティアートギャラリー)
と言うことで、廃墟と言っても遺跡から架空の廃墟まで様々な作品がありました。遺跡や廃墟はそれ自体も心惹かれる存在ですが、特に地下の展示は想像力豊かで面白い内容だったと思います。廃墟の絵画の歴史も分かるし、廃墟好き必見の展示です。

【展覧名】
終わりのむこうへ : 廃墟の美術史
【公式サイト】
http://www.shoto-museum.jp/exhibitions/181haikyo/
【会場】松濤美術館
【最寄】渋谷駅・神泉駅
【会期】2018年12月8日(土)~2019年1月31日(木)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんは多かったですが、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は「廃墟」をテーマにした絵画展で、古今東西の画家の作品が並ぶ内容となっています。廃墟の絵画は西洋美術の中で繰り返し描かれていたのですが、18世紀から19世紀にかけて廃墟趣味が流行し、廃墟が主役の地位となっていったようです。この廃墟を描く美学は近代の日本にも伝わり、現代まで息づく流れとなっています。展示は大きく2階と地下に分かれていて、時代を追っていく感じになっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<I章 絵になる廃墟:西洋美術における古典的な廃墟モティーフ>
まずは2階の展示で、ここは17~18世紀の廃墟を主題にした作品から始まります。18~20世紀にも廃墟のテーマは引き継がれていったようで、ざっくりとその伝統を観ることができました。
2 ユベール・ロベール 「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」
これはポスターを撮ったものです。

こちらは今回のポスターの1つとなっている作品で、コリント式の柱や回廊のある神殿の廃墟の中の人々を描いています。人のおかげで廃墟の大きさがわかるのですが、かなりの広さです。遠近感が強いのも一層そう感じさせるかな。人々の服装も古代風で、神話のような理想的な美しさがありました。ユベール・ロベールといえば廃墟なので、このチョイスは王道ですね。
参考記事:
ユベール・ロベール-時間の庭 感想前編(国立西洋美術館)
ユベール・ロベール-時間の庭 感想後編(国立西洋美術館)
5 アンリ・ルソー 「廃墟のある風景」
こちらは打って変わって近代絵画のルソー。崩れかかった壁のある廃墟と、教会の屋根が見えていて手前には籠を持った女性が歩いている姿もあります。解説によると、ルソーの中で他に類のない主題なので、版画作品などをもとに描いていると考えられるそうです。全体的に滑らかな筆致で、現実を描いているのにややシュールな雰囲気もありました。これは以前観た時の記憶が蘇りました。
参考記事:レオナール・フジタ ― ポーラ美術館コレクションを中心に 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
<II章 奇想の遺跡、廃墟>
続いては18~19世紀頃のコーナー。この頃あえて廃墟や遺跡を好んで描く廃墟趣味が隆盛したそうで、その背景には18世紀にポンペイ遺跡などが相次いで見つかって世間の関心を得たのと、上流階級が「グランド・ツアー」というイタリアへの留学で歴史遺跡を訪ねるのが流行したことがあるようです。ここには地誌的・歴史的な正確さに基づいて描かれた作品が並んでいました。
6-11 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ 「『ローマの景観』より」
これはポスターを撮ったものです。

こちらはローマ遺跡を描いたエッチングの版画集で、かなり精密で濃淡を活かして質感や遠近感を出しています。所々に人を配して廃墟の大きさや偉大さを示しつつ、時間の経過も感じさせます。 流石に人が小さすぎるのでは?と思うような絵もありましたが、丹念な描写に圧倒されました。
参考記事:ピラネージ『牢獄』展 (国立西洋美術館)
この辺は確かにかなり緻密で写実的な版画が並んでいました
<III章 廃墟に出会った日本の画家たち: 近世と近代の日本の美術と廃墟主題>
続いては日本人による廃墟の絵画です。近代までは日本に廃墟を描いた作品はなかったようですが、廃墟趣味の輸入版画を元に浮世絵にした作品なんかも存在するようです。明治以降は洋画教育の中で伝播していったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
28 亜欧堂田善 「独逸国廓門図」
こちらは江戸時代にドイツを描いたもので、オベリスクやドーム状の宮殿が立ち並ぶ光景となっていて、観た感じは西洋画そのものです。廃墟ではないな…w 解説によると、ドイツではなく実際には古代ローマの繁栄の図などを元に描いているそうで、先程のピラネージの版画の中にも似た作品があるようです。亜欧堂田善は日本の西洋画の先駆け的な存在ですが、この作品は特に西洋から学んでいる様子がよく分かりました。
この近くには浮世絵になった奇妙な西洋風景などもありました。また、日本の近代絵画に大きな影響を与えたフォンタネージによる廃墟のデッサンなどもあります。
34 不染鉄 「廃船」
こちらは昨年話題になった不染鉄による作品で、巨大な貨物船らしき廃船が壁のように大きく描かれています。手前には家々が立ち並んでいるのですが、その大きさの違いで圧倒的な迫力を感じます。重く暗い色合いで水が滝のように落ちている様子など、船というよりは遺跡と言った感じに見えました。重厚感・威圧感がある一方、戦時中に帰ってこなかった船を想う気持ちもあるようでした。
45 岡鹿之助 「廃墟」
こちらは積み重なるような廃墟の建物を描いた作品で、フランスのロワール地方に現存する中世の廃墟だそうです。まるでテトリスのように積み上がっていて、細かい引っかき傷のようなマチエールが風化した質感を出していました。素朴で静かで超現実的な雰囲気のある作品です。
2階はこんな感じで、続いて地下の展示です。
<IV章 シュルレアリスムのなかの廃墟>
地下の最初はシュルレアリスムのコーナーです。ここは姫路のデルヴォーが多めで、マグリットやデ・キリコなど横浜美術館の所蔵品なども並んでいました。
47 ポール・デルヴォー 「水のニンフ(セイレン)」
こちらは海で水浴びしている裸婦(ニンフまたはセイレーン)を描いたもので、背景には古代神殿のようなものが立ち並び、浜辺で1人のステッキを持った紳士がニンフ達を眺めています。ニンフたちは目が死んでいて怖いのですが、神殿との取り合わせも奇妙で 夢の中の世界のような不思議さがありました。
この隣には名作の「海は近い」(★こちらで観られます)もありました。デルヴォーはリトグラフも含めて6点もあって、これだけでもデルヴォー好きとしては嬉しい驚きです。
参考記事:
ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅 (府中市美術館)
ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅 (埼玉県立近代美術館)
53 ジョルジオ・デ・キリコ(工房) 「吟遊詩人」
こちらは普段は横浜美術館の常設にある作品で、単純化された建物の間に立つマネキンが描かれています。左端には人の影が伸びていて、ちょっと不穏な雰囲気があるかな。ぺったりとした画風で、寂しさと共に言い知れぬ魅力も感じる作品です。これぞデ・キリコといったモチーフと画風となっています。
この近くには同じく横浜美術館のマグリットの作品もありました。
<V章 幻想のなかの廃墟:昭和期の日本における廃墟的世界>
続いては昭和期の日本のシュルレアリスムに描かれた廃墟のコーナーです。
56 北脇昇 「章表」
こちらは丘の上の城塞の壁のようなものが並ぶ光景で、かなり単純化されていて不思議な親しみを感じます。解説によると、北脇は1930年台に中国に旅行したことがあるそうで、その時見た風景なのかもしれないとのことです。実在すると言っても絵は心象風景のような雰囲気で、どこか柔らかいような感じを受けました。
57 浜田浜雄 「ユパス」
こちらは女性の横顔のような岩や、人体を思わせる岩などが並ぶ水辺と、そこを歩く4人の少女が描かれた作品です。滑らかな色合いで、抽象化している部分もあって廃墟という感じはそれほどしないかな。ダリに強い影響を受けているのが見て取れて、夢の中を描いているような感じでした。
<VI章 遠い未来を夢見て: いつかの日を描き出す現代画家たち>
最後は現代日本のアーティストたちによる廃墟のコーナーです。ここは今回の見どころの1つだと思います。
65 大岩オスカール 「動物園」 ★こちらで観られます
こちらはかなり大型の作品で、北千住の廃墟が描かれています。柱が立ち並ぶ工場のような堅牢な建物の内部で、瓦礫が転がり何かの機材も見えています。一方、柱の外には町並みが描かれ、遠くにはビルが並んでいるなど明るい雰囲気です。明暗が強く、光の当たる柱を境に違う世界が同居しているようにも見えるかな。柱は神殿のような荘厳な雰囲気も出していました。
68 元田久治 「Indication : Diet Building, Tokyo 3」
こちらは廃墟になった国会議事堂を描いた作品で、木々が生い茂って一体化しつつあり、国会議事堂がラピュタになったみたいな感じですw 俯瞰する構図でくすんだ色合いとなっているのも面白く、失われた文明を目の当たりにしているようなSF感がありました。
参考記事:現代の写実―映像を超えて (東京都美術館)
67 元田久治 「Foresight: Shibuya Center Town」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。

こちらは渋谷の駅あたりが廃墟になった様子。リアルさがあって、滅んだら本当にこういう風になりそうな…。元田氏の作品は身近な場所ほど面白く感じられます。
他にも渋谷駅の銀座線の線路辺りを俯瞰する構図の作品などもありました。
71 野又穫 「交差点で待つ間に」 ★こちらで観られます
こちらはポスターを撮ったものです。

一見すると大都会の交差点を描いたように見えて、左下の犬の像なんかは渋谷っぽく思えます。しかしよく観ると建物は古代風なパーツがあったりして、独特の建築様式となっていて異世界感があります。解説によると、これはピラネージのオマージュから渋谷の交差点と古代ローマを混ぜた感じになっているそうで、白っぽく淡い色調も白化した世界のような静かな雰囲気となっていました。
参考記事:幻想の回廊 (東京オペラシティアートギャラリー)
と言うことで、廃墟と言っても遺跡から架空の廃墟まで様々な作品がありました。遺跡や廃墟はそれ自体も心惹かれる存在ですが、特に地下の展示は想像力豊かで面白い内容だったと思います。廃墟の絵画の歴史も分かるし、廃墟好き必見の展示です。
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今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観る前に表参道駅の駅前にあるスパイラルガーデンで「CITIZEN“We Celebrate Time”100周年展」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
CITIZEN“We Celebrate Time”100周年展
【公式サイト】
https://citizen.jp/100th/event/spiral/index.html
【会場】スパイラルガーデン
【最寄】表参道駅
【会期】2018年12月7日(金)~12月16日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
初日の夜に行ったのですが、田根剛 氏の講演会があった為か結構混んでいて場所によっては人だかりができていました。
さて、この展示は1918年に創業したシチズンの100周年を祝うイベントで、注目を集めている若手建築家の田根剛のインスタレーションが話題となっています。半分くらいはそのインスタレーションで、残り半分はシチズンや「時」をテーマにした内容となっていて、8つの章に分かれていました。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
<01. LIGHT is TIME - We Celebrate Time ver.>
まずは田根剛 氏の「LIGHT is TIME」です。(実際には2章の方が入口に近いですが章の順にご紹介) この作品は元々2014年の「ミラノサローネ」というミラノで行われた世界最大級の家具見本市で作られたインスタレーションで、今回は日本での凱旋展示と言った所でしょうか。田根剛 氏はこの冬に相次いで個展を開催していて、この展示を含めて3つ同時開催という盛況ぶりです。その建築作品は土地の歴史を深掘りすることでインスピレーションを得るという特徴があり、この作品でも時計の部品を使って作られています。
参考記事:
田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building (東京オペラシティアートギャラリー)
田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research (TOTOギャラリー・間)
会場に入るとこんな感じ。

規則的にびっしりと金色の粒粒が並んでいる空間となっています。
そのうちの1つをアップで撮るとこんな感じ。

これは「地板」という時計を支える基盤の部品だそうで、今回は全部で12万個もの地板を使っているようです。
写真で観ると放射状のように見えますが、整然と並んでいます。

光と時をテーマにしていて「光は時間であり、時間は光である」という考えで作られているのだとか。理屈抜きでも星空のように輝いて美しい光景です。
部屋の真ん中には60個のムーブメントに囲まれたメッセージが置かれていました。

「時計は生命を宿した製品です」とのことで、シチズンの信念かな?
「LIGHT is TIME」は部屋の周りの螺旋状の通路を登って上の方からも観ることができます。

結構沢山の人が角度を変えて楽しんでいました。
私はこれが目当てだったので、これで概ね満足w 一応、他の展示も見て回ってきました。
<02. Synchronized Time>
こちらは1秒に起こることの映像と共にいくつかのムーブメントが展示されていました。
こんな感じでずらっと並んでいます。

特に解説なども無いのでよく分かりませんが1つ1つ違った動きをしてたように思います。
そのうちの1つのアップ

小刻みに動いていて、「1秒間に起こる出来事の共時性と針に有機的な動きを与え視覚化した」とのことです。
映像では1秒間で起きるできごとをどんどん流していました。

24時間×60分×60秒として考えれば、それほど多くない気ももしますw 1秒という時間を考えさせる内容ではあったかな。
<03. Making Time>
こちらは時計の設計図や映像などが流れていたコーナー。
こんな感じで設計図がありました。

ただ、ここは講演会待ちの人の列が出来ていてほとんど観られませんでしたw まあ時計マニアではないので、特に気にしませんでしたがw
<04. Thinking Time>
こちらはかつて革新的だったシチズンの時計などが並ぶコーナー。
こちらはクオーツ(水晶)を想起したデザインの作品。これは時計じゃないとは思うんですが…w

クオーツ時計は時計愛好家にはあまり好まれていないようですが、確実に時計に革命を巻き起こした技術ですね。
こちらは1978年のデジアナという時計。

デジタル時計とアナログ時計が合体していますが、お互いの時間が違ってるのはどういうこっちゃ?w
こちらは1984年のサウンドウィッチ

腕時計にラジオが付いているという斬新なデザインです。腕に巻いたらめっちゃイヤホンが邪魔になりそうw 携帯ラジオに時計をつければ良いのでは?という疑問も湧きますが、こういう攻めたガジェットは好きですw
こちらは1924年の16型懐中時計。

シチズンと名付けられた尚工舎時計研究所の第一号。シチズンの時計作りの歴史はこの時計から始まったんですねえ。
<05. Discovering Time>
続いては時計や時間についての歴史のコーナー。
ここはパネルのみで、暦の始まりなんかを紹介していました。

5000年前の古代エジプトの時代には1年が12ヶ月365日となっていたそうで、暦の歴史は相当古いようです。
<06. Tuning Time>
こちらは時計作りの道具やチューニングの写真などのコーナー。
工具を観ても何に使うかすら検討もつかないw

細かい作業が多そうなので、不器用な私にはとても無理な仕事です…。
<07. Encountering Time>
続いては1967年から1970年までシチズン広報誌に連載された、寺山修司の掌編15編を収めた書籍『時をめぐる幻想』の挿絵が並ぶコーナーです。ここは予想以上に面白いコーナーでした。
こちらは「魔女時計」

妖しくて まどマギに出てきそうな…w 大抵の時計は丸か四角ですが、これは人形の形をした時計とのことでした。
こちらは「花時計」

花車のようなものが女性の頭の上に乗っていて可憐な印象を受けました。
こちらは「火時計」

不動明王の光背のような火炎を背負う女性が妖しい色気でこれも面白い絵でした。
他にも猫時計という作品なんかもありました。
<08. CITIZEN Shop>
これは2階にあったショップのコーナーだと思います。ここでは撮影しませんでしたが、様々な時計にまつわる品などが売られていました。
ということで、田根剛 氏のインスタレーションを目当てに行ったのですが思った以上に色々と展示してありました。この展示を含めると田根剛 氏の展示は現在3箇所で同時開催という異例の盛り上がりぶりですので、3点制覇して一気に詳しくなれるチャンスかもしれません。この展示は残り期間が短いので気になる方はお早めにどうぞ。

【展覧名】
CITIZEN“We Celebrate Time”100周年展
【公式サイト】
https://citizen.jp/100th/event/spiral/index.html
【会場】スパイラルガーデン
【最寄】表参道駅
【会期】2018年12月7日(金)~12月16日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
初日の夜に行ったのですが、田根剛 氏の講演会があった為か結構混んでいて場所によっては人だかりができていました。
さて、この展示は1918年に創業したシチズンの100周年を祝うイベントで、注目を集めている若手建築家の田根剛のインスタレーションが話題となっています。半分くらいはそのインスタレーションで、残り半分はシチズンや「時」をテーマにした内容となっていて、8つの章に分かれていました。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
<01. LIGHT is TIME - We Celebrate Time ver.>
まずは田根剛 氏の「LIGHT is TIME」です。(実際には2章の方が入口に近いですが章の順にご紹介) この作品は元々2014年の「ミラノサローネ」というミラノで行われた世界最大級の家具見本市で作られたインスタレーションで、今回は日本での凱旋展示と言った所でしょうか。田根剛 氏はこの冬に相次いで個展を開催していて、この展示を含めて3つ同時開催という盛況ぶりです。その建築作品は土地の歴史を深掘りすることでインスピレーションを得るという特徴があり、この作品でも時計の部品を使って作られています。
参考記事:
田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building (東京オペラシティアートギャラリー)
田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research (TOTOギャラリー・間)
会場に入るとこんな感じ。

規則的にびっしりと金色の粒粒が並んでいる空間となっています。
そのうちの1つをアップで撮るとこんな感じ。

これは「地板」という時計を支える基盤の部品だそうで、今回は全部で12万個もの地板を使っているようです。
写真で観ると放射状のように見えますが、整然と並んでいます。

光と時をテーマにしていて「光は時間であり、時間は光である」という考えで作られているのだとか。理屈抜きでも星空のように輝いて美しい光景です。
部屋の真ん中には60個のムーブメントに囲まれたメッセージが置かれていました。

「時計は生命を宿した製品です」とのことで、シチズンの信念かな?
「LIGHT is TIME」は部屋の周りの螺旋状の通路を登って上の方からも観ることができます。


結構沢山の人が角度を変えて楽しんでいました。
私はこれが目当てだったので、これで概ね満足w 一応、他の展示も見て回ってきました。
<02. Synchronized Time>
こちらは1秒に起こることの映像と共にいくつかのムーブメントが展示されていました。
こんな感じでずらっと並んでいます。

特に解説なども無いのでよく分かりませんが1つ1つ違った動きをしてたように思います。
そのうちの1つのアップ

小刻みに動いていて、「1秒間に起こる出来事の共時性と針に有機的な動きを与え視覚化した」とのことです。
映像では1秒間で起きるできごとをどんどん流していました。

24時間×60分×60秒として考えれば、それほど多くない気ももしますw 1秒という時間を考えさせる内容ではあったかな。
<03. Making Time>
こちらは時計の設計図や映像などが流れていたコーナー。
こんな感じで設計図がありました。

ただ、ここは講演会待ちの人の列が出来ていてほとんど観られませんでしたw まあ時計マニアではないので、特に気にしませんでしたがw
<04. Thinking Time>
こちらはかつて革新的だったシチズンの時計などが並ぶコーナー。
こちらはクオーツ(水晶)を想起したデザインの作品。これは時計じゃないとは思うんですが…w

クオーツ時計は時計愛好家にはあまり好まれていないようですが、確実に時計に革命を巻き起こした技術ですね。
こちらは1978年のデジアナという時計。

デジタル時計とアナログ時計が合体していますが、お互いの時間が違ってるのはどういうこっちゃ?w
こちらは1984年のサウンドウィッチ

腕時計にラジオが付いているという斬新なデザインです。腕に巻いたらめっちゃイヤホンが邪魔になりそうw 携帯ラジオに時計をつければ良いのでは?という疑問も湧きますが、こういう攻めたガジェットは好きですw
こちらは1924年の16型懐中時計。

シチズンと名付けられた尚工舎時計研究所の第一号。シチズンの時計作りの歴史はこの時計から始まったんですねえ。
<05. Discovering Time>
続いては時計や時間についての歴史のコーナー。
ここはパネルのみで、暦の始まりなんかを紹介していました。

5000年前の古代エジプトの時代には1年が12ヶ月365日となっていたそうで、暦の歴史は相当古いようです。
<06. Tuning Time>
こちらは時計作りの道具やチューニングの写真などのコーナー。
工具を観ても何に使うかすら検討もつかないw

細かい作業が多そうなので、不器用な私にはとても無理な仕事です…。
<07. Encountering Time>
続いては1967年から1970年までシチズン広報誌に連載された、寺山修司の掌編15編を収めた書籍『時をめぐる幻想』の挿絵が並ぶコーナーです。ここは予想以上に面白いコーナーでした。
こちらは「魔女時計」

妖しくて まどマギに出てきそうな…w 大抵の時計は丸か四角ですが、これは人形の形をした時計とのことでした。
こちらは「花時計」

花車のようなものが女性の頭の上に乗っていて可憐な印象を受けました。
こちらは「火時計」

不動明王の光背のような火炎を背負う女性が妖しい色気でこれも面白い絵でした。
他にも猫時計という作品なんかもありました。
<08. CITIZEN Shop>
これは2階にあったショップのコーナーだと思います。ここでは撮影しませんでしたが、様々な時計にまつわる品などが売られていました。
ということで、田根剛 氏のインスタレーションを目当てに行ったのですが思った以上に色々と展示してありました。この展示を含めると田根剛 氏の展示は現在3箇所で同時開催という異例の盛り上がりぶりですので、3点制覇して一気に詳しくなれるチャンスかもしれません。この展示は残り期間が短いので気になる方はお早めにどうぞ。
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先週の金曜日の会社帰りに表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で「JESUS RAFAEL SOTO - Pénétrable BBL Bleu」という展示を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
JESUS RAFAEL SOTO - Pénétrable BBL Bleu
【公式サイト】
http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/
【会場】エスパス ルイ・ヴィトン東京
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅、表参道駅
【会期】2018年12月7日~2019年5月12日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
初日の閉館間際に行ったこともあってか結構お客さんはいたように思いますが、快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はオプアートやキネティック彫刻などで知られるヘスス・ラファエル・ソトによるインスタレーション「Pénétrable BBL Bleu」1点だけという内容となっています。(充実度2なのはその為です) 簡単にヘスス・ラファエル・ソト自身についての解説を要約すると、1923年ベネゼエラ出身で、20代後半でフランスに渡りアバンギャルドモダニズムに傾倒し、抽象芸術界の一員として活動したそうです。その後、1960年代後半にはキネティック・アートを牽引する存在となり、今回展示されている「Pénétrable(浸透可能なるもの)」シリーズは1967年からキャリア終盤まで続きたそうで、その名の通り没入型のインスタレーションとして制作されました。冒頭に書いたように撮影可能となっていましたので、写真と共に振り返ってみようと思います。
この人がヘスス・ラファエル・ソト。

2000年にキャリアを終え2005年に亡くなってしまいましたが、日本でも埼玉県立近代美術館に所蔵品があるので意外とソトの作品を目にしたことがある方も多いかもしれません。
参考記事:MOMASコレクションⅢ 2012 (埼玉県立近代美術館)
こちらが「Pénétrable BBL Bleu」 正直、読めないですw 意訳の「浸透可能なるもの」で覚えておこうと思います。

青いチューブのようなものが無数にぶら下がったインスタレーションで、この作品は1999年にブリュッセル・ランベール銀行(BBL)で開催された回顧展の為に制作したものだそうです。青々とした簾みたいだな…というのが第一印象でした。
観ていたらギャラリーの方に、この作品は中に入ることが出来ますと言われて驚き。入るって何?みたいなw とりあえず何でも体験するのがモットーなので入ってみることにしました。
1本1本は柔らかめのチューブみたいなもので出来ています。

これなら顔に当たっても痛くないので、突っ込んでみることにしました。
こちらが中に入った様子。青い麦畑の中に入ったような光景です

進む時はやはり簾をくぐるような感覚でした。没入するような作品との関わりを体験するのが趣旨のようです。
やや上を見上げた様子。青々として抽象絵画を想起します。ちょっと目がチカチカするのはオプアートの画家でもある為でしょうかw

インタビュー映像などを観ると、ヘスス・ラファエル・ソトは印象派に大きな影響を受けていたようで、この作品もモネの睡蓮と同じアイディアから作られているのだとか。
参考記事:【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家
モーセのようにこの青いチューブの海を割ってずんずん歩いてみました。
ペチペチという音を立てながら柔らかいチューブが当たるのも体験型ならではです。子供は絶対楽しいやつだこれ と思いながら体験してきました。
部屋の奥から観た会場全体はこんな感じ。

割と縦長になっているようでした。
夜に行ったら外の夜景も綺麗で、それも含めて楽しめます。

青い海を抜けたら夜景が広がっている…という幻想的な会場構成ですね。
近くの教会だっけかな?

表参道は冬はイルミネーションもやっているので、夜に行くと一石二鳥でした。
ということで、意図を理解できたかは怪しいところですが 単純に何だこれ!?という驚きと 没入型の仕掛けが面白い展示となっていました。ここは無料で観られる上、10分くらいあれば存分に楽しめると思いますので、表参道に行く機会があったらフラっと訪ねてみるのもよろしいかと思います。

【展覧名】
JESUS RAFAEL SOTO - Pénétrable BBL Bleu
【公式サイト】
http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/
【会場】エスパス ルイ・ヴィトン東京
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅、表参道駅
【会期】2018年12月7日~2019年5月12日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_②_3_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
初日の閉館間際に行ったこともあってか結構お客さんはいたように思いますが、快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はオプアートやキネティック彫刻などで知られるヘスス・ラファエル・ソトによるインスタレーション「Pénétrable BBL Bleu」1点だけという内容となっています。(充実度2なのはその為です) 簡単にヘスス・ラファエル・ソト自身についての解説を要約すると、1923年ベネゼエラ出身で、20代後半でフランスに渡りアバンギャルドモダニズムに傾倒し、抽象芸術界の一員として活動したそうです。その後、1960年代後半にはキネティック・アートを牽引する存在となり、今回展示されている「Pénétrable(浸透可能なるもの)」シリーズは1967年からキャリア終盤まで続きたそうで、その名の通り没入型のインスタレーションとして制作されました。冒頭に書いたように撮影可能となっていましたので、写真と共に振り返ってみようと思います。
この人がヘスス・ラファエル・ソト。

2000年にキャリアを終え2005年に亡くなってしまいましたが、日本でも埼玉県立近代美術館に所蔵品があるので意外とソトの作品を目にしたことがある方も多いかもしれません。
参考記事:MOMASコレクションⅢ 2012 (埼玉県立近代美術館)
こちらが「Pénétrable BBL Bleu」 正直、読めないですw 意訳の「浸透可能なるもの」で覚えておこうと思います。

青いチューブのようなものが無数にぶら下がったインスタレーションで、この作品は1999年にブリュッセル・ランベール銀行(BBL)で開催された回顧展の為に制作したものだそうです。青々とした簾みたいだな…というのが第一印象でした。
観ていたらギャラリーの方に、この作品は中に入ることが出来ますと言われて驚き。入るって何?みたいなw とりあえず何でも体験するのがモットーなので入ってみることにしました。
1本1本は柔らかめのチューブみたいなもので出来ています。

これなら顔に当たっても痛くないので、突っ込んでみることにしました。
こちらが中に入った様子。青い麦畑の中に入ったような光景です

進む時はやはり簾をくぐるような感覚でした。没入するような作品との関わりを体験するのが趣旨のようです。
やや上を見上げた様子。青々として抽象絵画を想起します。ちょっと目がチカチカするのはオプアートの画家でもある為でしょうかw

インタビュー映像などを観ると、ヘスス・ラファエル・ソトは印象派に大きな影響を受けていたようで、この作品もモネの睡蓮と同じアイディアから作られているのだとか。
参考記事:【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家
モーセのようにこの青いチューブの海を割ってずんずん歩いてみました。
ペチペチという音を立てながら柔らかいチューブが当たるのも体験型ならではです。子供は絶対楽しいやつだこれ と思いながら体験してきました。
部屋の奥から観た会場全体はこんな感じ。

割と縦長になっているようでした。
夜に行ったら外の夜景も綺麗で、それも含めて楽しめます。

青い海を抜けたら夜景が広がっている…という幻想的な会場構成ですね。
近くの教会だっけかな?

表参道は冬はイルミネーションもやっているので、夜に行くと一石二鳥でした。
ということで、意図を理解できたかは怪しいところですが 単純に何だこれ!?という驚きと 没入型の仕掛けが面白い展示となっていました。ここは無料で観られる上、10分くらいあれば存分に楽しめると思いますので、表参道に行く機会があったらフラっと訪ねてみるのもよろしいかと思います。
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今日も写真多めです。前々回、前回とご紹介した自由学園明日館に行った際、遠藤新による設計の講堂も見学してきました。講堂も撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。
参考記事:
フランク・ロイド・ライト 「自由学園明日館」(2018年12月)
自由学園明日館のカフェ 【自由学園明日館 館内のお店】

公式サイト:https://jiyu.jp/tour/
さて、この建物はフランク・ロイド・ライトの弟子である遠藤新による設計で、中央館が手狭になった為 1927年にテニスコートを利用する形で建てられました。本館は1921年なので約6年後に作られたこともあってこちらはフランク・ロイド・ライトは関わっていません。1989年から大規模な改修をして1997年には重要文化財に指定され、2001年からは動態保存の先駆けとして結婚式やコンサート、講演会に使われるようになりました。しかし、2011年の東日本大震災を無事乗り切ったものの翌年の耐震診断で対策の必要性が判明したそうで、2015年2月~2017年7月まで耐震工事を行ったそうです。詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。
こちらが外観。シンプルでスッキリした形ですが幾何学的な美しさはフランク・ロイド・ライトに通じます。

フランク・ロイド・ライトは帝国ホテルの建設途中で費用がかかりすぎるということでクビになって帰国するのですが、その後釜として帝国ホテルを完成させたのは遠藤新らライトの弟子たちでした。それもあってか、作風が似ているのも当然かもしれません。
参考記事:
【番外編】博物館明治村の写真 後編(2013年12月)
アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 【日光編】
こちらは角度違い。

この講堂を建てる際に全校の父母に呼びかけて募ったお金で建てたというのだから中々驚きです。結構立派な建物だから相当にお金もかかったんじゃないかなあ。
エントランス部分はこんな感じ。

結構簡素で、大谷石を使っている点なんかはライトと同様だったりします。
エントランスを中から撮った様子。

水平・垂直、そして斜めの直線のリズムが非常に美しいデザインです。高価な素材でなくても美しく感じる所が素晴らしい。
先程の場所から講堂の後方辺りを撮った写真。

奥に暖炉が見えます。本館でも多くの暖炉がありますが、ここもライトと同様の設計と言えそうです。ここも使った跡があってイベントで炊くのかも。それにしても柱が頑丈そうですが、これだけでは耐震性は満足じゃなかったのかな?
そしてこちらが講堂のメインフロアです。

ちょっと定員が分かりませんが、200人くらいは入りそうに思えます。この日、無料コンサートがあってこの講堂で楽しむことが出来ました。
流石にコンサート中に撮影はしませんでしたが、月に1回 休日見学日の日に無料の「ホリデーコンサート」が開催されます。豊島区内の東京音楽大学生(それ以外の若手の方も含むようです)による演奏で、選曲も出演者自身が決めるようです。日程は公式サイトで発表されています。
参考リンク:見学カレンダー
私が観た時は第91回でコマズカルテットというサックス四重奏のグループでした。サックスと一口に言ってもソプラノ・アルト・テノール・バリトンに分かれていてかなり幅広く伸びやかで流石の演奏ぶりでした。40分の予定のところ1時間ほど堪能できたのですが、参考までに2018年12月はこんな感じのセットリスト
ルパン三世のテーマ、A列車で行こう、デイヴィッド・マスランカ「マウンテンロード」の中から1楽章、彼方の光、クリスマスメドレー(諸人こぞりてジングルベル、I wish you a merry christmas、きよしこの夜 など)、ラテンメドレー、情熱大陸
結構、外に音漏れがする講堂なのであまり大きな音を出すのはNGみたいな話をしていましたが、今回は実験もかねてのサックス四重奏だったようです。他にも声楽だったり、他の楽器だったりとどんなチョイスかはその時次第なのかも。
こちらは講堂の舞台側から観客席側を観た様子。

2階にも席があるのが見えています。こちらは後ほどご紹介。
先程の写真で一番奥に写っていた1階の窓。

こちらもシンメトリーで美しい模様の格子となっています。窓の右側に見えているのが階段で、2階に上がることができます。
こちらは昭和初期のトイレ。2015~2017年の改修の際に再発見されたそうで、それまではベニア板で塞がれた備品倉庫として使ってたようです。

個室は頭の上に木製のタンクがあったり、トイレットペーパーの備え付けが後ろだったりと今とは異なる雰囲気です。昔は今とは逆向きに座っていたという説もあるのだとかw
続いて2階を見て回りました。2階を観ていたら自由学園明日館についての建物ガイドのスライドを流していました。休日見学すると色々とお得なことだらけですw
2階の入口側の窓。

先程の外から観た様子とはまた違った印象を受けるかな。本館のホールと趣味が似ています。
こちらは屋根裏が見える部分。

耐震工事が終わった時に、よく来る人に「何も変わってないのに2年も何してたんだ?!」って訊かれたそうですが、何も変わっていないように見えるというのが技術の高さの証明ですねw 屋根裏を観るとしっかり補強されている様子なんかも伺えました。
こちらはベランダのようになった部分。

ここは何のための部屋か分かりませんでしたが、タイルまで幾何学文が入っていて簡素ながらも洒落た雰囲気です。
最後に2階から観た講堂。

ちょっと遠いですが、舞台を見渡せるので結構良い席かも。
ということで、シンプルで美しい講堂と共に若手音楽家の無料コンサートや建物のガイドを楽しむことができました。これだけ色々てんこ盛りの内容で この日かかった費用は600円!w 至れり尽くせりで大満足の建物探訪でした。池袋駅メトロポリタン口から徒歩5分という便利な場所でもあるので、建物好きの方はスケジュールを確認の上 カメラを持っておでかけしてみるのもよろしいかと思います。
参考記事:
フランク・ロイド・ライト 「自由学園明日館」(2018年12月)
自由学園明日館のカフェ 【自由学園明日館 館内のお店】

公式サイト:https://jiyu.jp/tour/
さて、この建物はフランク・ロイド・ライトの弟子である遠藤新による設計で、中央館が手狭になった為 1927年にテニスコートを利用する形で建てられました。本館は1921年なので約6年後に作られたこともあってこちらはフランク・ロイド・ライトは関わっていません。1989年から大規模な改修をして1997年には重要文化財に指定され、2001年からは動態保存の先駆けとして結婚式やコンサート、講演会に使われるようになりました。しかし、2011年の東日本大震災を無事乗り切ったものの翌年の耐震診断で対策の必要性が判明したそうで、2015年2月~2017年7月まで耐震工事を行ったそうです。詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。
こちらが外観。シンプルでスッキリした形ですが幾何学的な美しさはフランク・ロイド・ライトに通じます。

フランク・ロイド・ライトは帝国ホテルの建設途中で費用がかかりすぎるということでクビになって帰国するのですが、その後釜として帝国ホテルを完成させたのは遠藤新らライトの弟子たちでした。それもあってか、作風が似ているのも当然かもしれません。
参考記事:
【番外編】博物館明治村の写真 後編(2013年12月)
アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 【日光編】
こちらは角度違い。


この講堂を建てる際に全校の父母に呼びかけて募ったお金で建てたというのだから中々驚きです。結構立派な建物だから相当にお金もかかったんじゃないかなあ。
エントランス部分はこんな感じ。

結構簡素で、大谷石を使っている点なんかはライトと同様だったりします。
エントランスを中から撮った様子。

水平・垂直、そして斜めの直線のリズムが非常に美しいデザインです。高価な素材でなくても美しく感じる所が素晴らしい。
先程の場所から講堂の後方辺りを撮った写真。


奥に暖炉が見えます。本館でも多くの暖炉がありますが、ここもライトと同様の設計と言えそうです。ここも使った跡があってイベントで炊くのかも。それにしても柱が頑丈そうですが、これだけでは耐震性は満足じゃなかったのかな?
そしてこちらが講堂のメインフロアです。

ちょっと定員が分かりませんが、200人くらいは入りそうに思えます。この日、無料コンサートがあってこの講堂で楽しむことが出来ました。
流石にコンサート中に撮影はしませんでしたが、月に1回 休日見学日の日に無料の「ホリデーコンサート」が開催されます。豊島区内の東京音楽大学生(それ以外の若手の方も含むようです)による演奏で、選曲も出演者自身が決めるようです。日程は公式サイトで発表されています。
参考リンク:見学カレンダー
私が観た時は第91回でコマズカルテットというサックス四重奏のグループでした。サックスと一口に言ってもソプラノ・アルト・テノール・バリトンに分かれていてかなり幅広く伸びやかで流石の演奏ぶりでした。40分の予定のところ1時間ほど堪能できたのですが、参考までに2018年12月はこんな感じのセットリスト
ルパン三世のテーマ、A列車で行こう、デイヴィッド・マスランカ「マウンテンロード」の中から1楽章、彼方の光、クリスマスメドレー(諸人こぞりてジングルベル、I wish you a merry christmas、きよしこの夜 など)、ラテンメドレー、情熱大陸
結構、外に音漏れがする講堂なのであまり大きな音を出すのはNGみたいな話をしていましたが、今回は実験もかねてのサックス四重奏だったようです。他にも声楽だったり、他の楽器だったりとどんなチョイスかはその時次第なのかも。
こちらは講堂の舞台側から観客席側を観た様子。

2階にも席があるのが見えています。こちらは後ほどご紹介。
先程の写真で一番奥に写っていた1階の窓。

こちらもシンメトリーで美しい模様の格子となっています。窓の右側に見えているのが階段で、2階に上がることができます。
こちらは昭和初期のトイレ。2015~2017年の改修の際に再発見されたそうで、それまではベニア板で塞がれた備品倉庫として使ってたようです。


個室は頭の上に木製のタンクがあったり、トイレットペーパーの備え付けが後ろだったりと今とは異なる雰囲気です。昔は今とは逆向きに座っていたという説もあるのだとかw
続いて2階を見て回りました。2階を観ていたら自由学園明日館についての建物ガイドのスライドを流していました。休日見学すると色々とお得なことだらけですw
2階の入口側の窓。

先程の外から観た様子とはまた違った印象を受けるかな。本館のホールと趣味が似ています。
こちらは屋根裏が見える部分。

耐震工事が終わった時に、よく来る人に「何も変わってないのに2年も何してたんだ?!」って訊かれたそうですが、何も変わっていないように見えるというのが技術の高さの証明ですねw 屋根裏を観るとしっかり補強されている様子なんかも伺えました。
こちらはベランダのようになった部分。


ここは何のための部屋か分かりませんでしたが、タイルまで幾何学文が入っていて簡素ながらも洒落た雰囲気です。
最後に2階から観た講堂。

ちょっと遠いですが、舞台を見渡せるので結構良い席かも。
ということで、シンプルで美しい講堂と共に若手音楽家の無料コンサートや建物のガイドを楽しむことができました。これだけ色々てんこ盛りの内容で この日かかった費用は600円!w 至れり尽くせりで大満足の建物探訪でした。池袋駅メトロポリタン口から徒歩5分という便利な場所でもあるので、建物好きの方はスケジュールを確認の上 カメラを持っておでかけしてみるのもよろしいかと思います。
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前回のご紹介した自由学園明日館の本館を観ている途中で、館内の食堂にあるカフェでお茶をしてきました。食堂内でも撮影可能となっていましたので、食堂のインテリアと共にご紹介していこうと思います。
→ 食堂以外の写真はこちら

【店名】
自由学園明日館
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
https://jiyu.jp/tour/
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13061399/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
池袋駅
【近くの美術館】
自由学園明日館(館内のカフェです)
【この日にかかった1人の費用】
200円程度(+入館料400円)
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_4_⑤_快適
【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
結構多くのお客さんがいましたが席は割と好きに選べる程度でした。
さて、このお店は自由学園明日館(みょうにちかん)の中にある食堂をカフェにしたもので、お店の名前は特にないようです。特徴としては館内で会計するのではなく、建物の入口で入館料を払う際にカフェ付きかどうか聞かれるので、入館料400円に200円追加するとカフェメニューを選べます。(カフェメニューについては後述) 2017年にはNIKKEI STYLEが選ぶ「NIKKEI 文化財カフェ」で東日本1位になったそうで、その魅力は何と言っても世界的な建築家であるフランク・ロイド・ライトによる設計の建物の中でお茶できる点だと思います。勿論、写真を撮ってきたので まずは店内の様子をご紹介していこうと思います。
参考リンク:NIKKEI STYLE
こちらが食堂。左右対称に出来た幾何学的な部屋となっていますが元々の設計とは異なっているようです。

ライトが設計した時点ではメインフロアのみで、左側に写っている北の小部屋と、奥の東の小部屋、そしてこの背後の西の小部屋は手狭になったので弟子の遠藤新が増築したものだそうです。元々は窓の外はテラスだったらしく、当時の写真も飾られていました。
ちなみに加工して隠していますが、立って話している人たちは恐らくウェディングの相談をしているようでした。ここは結婚式場としても利用できるので、こちらも使われるんでしょうね。
参考リンク:ウェディング
続いてこちらは北の小部屋。カフェメニューはここでオーダーします。

昔はこのフロアの下の階に台所があったそうで、当番の生徒が作ってダムウェーター(昇降機)で上にあげてたそうですが、実際には面倒でバケツリレーしてたというエピソードもあるのだとかw
こちらは先程写っていなかった西の小部屋。

この日はここに座ることにしました。遠藤新の設計ですが、テイストは完全にフランク・ロイド・ライト風です。
西の小部屋の窓。

この建物はお金をかけずに美しさを演出しているのが特徴で、この幾何学的な模様が何とも優美です。
こちらはテーブルと椅子。

この背もたれが六角形の椅子は遠藤新による設計です。前回ご紹介したホールの椅子とも違ってるようです。
椅子のアップ。

座り心地は普通の木の椅子ですが、所々のオレンジ色の線がアクセントになって落ち着きの中に華やいだ雰囲気があります。
この食堂でもう1つの見どころがこの天井と照明です。

元々は食堂の四隅に照明を取り付ける予定だったのですが、ライトが建設途中に現場を訪れて、少女たちが座って食事する様子を思い浮かべた際、天井までに間が抜けた空間ができてしまうと感じたそうです。そしてその晩に吊り具を設計し、翌日にも現場にきて遠藤新に吊り具を付けさせたというエピソードもあるのだとか。こんな大胆な吊り具を一晩で考えて作ってしまうとは天才過ぎますねw
こちらは暖炉。薪が置かれていました。

焦げ跡もあるし、ここもイベント時には暖炉を使うのかな? この建築は暖炉があちこちあるのも特徴なので、探してみるのも面白いです。
大体撮影して気が済んだので、お茶にしましたw
ここでカフェメニューを頼みます。メニューはコーヒーと紅茶のいずれかと焼き菓子です。見学者と施設利用者では値段が違います。

焼き菓子は2種類だったので、奥さんと1つずつ頼んでみました。これ、200円ってむちゃくちゃお得感があります。
私はコーヒー、奥さんは紅茶にしました。焼き菓子も半分ずつ食べてみました。

200円ではそれほど期待できないのでは?と思ったら、コクも香りもしっかりしていて驚きました。お菓子も甘さ控えめでちょうど良い感じです。流石は東日本1位だけあって、ちゃんとしてますw (上野の某遺産の中のカフェも何とかならないものでしょうか…w)
せっかくなので、ミュージアムショップでクッキーも買って一緒に食べてみました。(カフェでは売ってません)

こちらもゴマや紅茶などの香りが効いていて上品な味でした。お土産に買うのも良さそうです。
ちなみに、この食堂は「明日館レストラン」として年4回ほどレストランメニューとなる日があるようです。
HPを確認すると、
・春・4月下旬─5月上旬、夏:8月、秋:2018年10月28日、冬:2019年2月3日
・日時限定、年4回、メニュー1回3種
・詳細は開催日の3週間くらい前に載せる
と書いてありました。そのタイミングを狙ってみるのも良いかもしれません。
参考リンク:イベント
ということで、フランク・ロイド・ライトと遠藤新の美しい建物・インテリアに囲まれてお茶できるという非常に贅沢な空間となっていました。入館料と合わせて600円(カフェ分は200円)という破格のサービスにも驚きです。今はそれほど混んでいませんが、池袋のラーメン屋に押し寄せている外国人観光客の波がここに気づくのも時間の問題かも…w 建物好きの方は是非足を運んでみてはと思います。
次回は自由学園明日館の最終回で、講堂と無料コンサートについてご紹介しようと思います。
参考記事:遠藤新 「自由学園明日館 講堂」(2018年12月)
おまけ:ミュージアムショップで売ってた食堂の椅子のミニチュア

3500円くらいだったかな。クオリティが高くて かなり迷った末に買いませんでしたが、未だに後ろ髪を引かれる思いですw
→ 食堂以外の写真はこちら

【店名】
自由学園明日館
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
https://jiyu.jp/tour/
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13061399/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
池袋駅
【近くの美術館】
自由学園明日館(館内のカフェです)
【この日にかかった1人の費用】
200円程度(+入館料400円)
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_4_⑤_快適
【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
結構多くのお客さんがいましたが席は割と好きに選べる程度でした。
さて、このお店は自由学園明日館(みょうにちかん)の中にある食堂をカフェにしたもので、お店の名前は特にないようです。特徴としては館内で会計するのではなく、建物の入口で入館料を払う際にカフェ付きかどうか聞かれるので、入館料400円に200円追加するとカフェメニューを選べます。(カフェメニューについては後述) 2017年にはNIKKEI STYLEが選ぶ「NIKKEI 文化財カフェ」で東日本1位になったそうで、その魅力は何と言っても世界的な建築家であるフランク・ロイド・ライトによる設計の建物の中でお茶できる点だと思います。勿論、写真を撮ってきたので まずは店内の様子をご紹介していこうと思います。
参考リンク:NIKKEI STYLE
こちらが食堂。左右対称に出来た幾何学的な部屋となっていますが元々の設計とは異なっているようです。


ライトが設計した時点ではメインフロアのみで、左側に写っている北の小部屋と、奥の東の小部屋、そしてこの背後の西の小部屋は手狭になったので弟子の遠藤新が増築したものだそうです。元々は窓の外はテラスだったらしく、当時の写真も飾られていました。
ちなみに加工して隠していますが、立って話している人たちは恐らくウェディングの相談をしているようでした。ここは結婚式場としても利用できるので、こちらも使われるんでしょうね。
参考リンク:ウェディング
続いてこちらは北の小部屋。カフェメニューはここでオーダーします。

昔はこのフロアの下の階に台所があったそうで、当番の生徒が作ってダムウェーター(昇降機)で上にあげてたそうですが、実際には面倒でバケツリレーしてたというエピソードもあるのだとかw
こちらは先程写っていなかった西の小部屋。

この日はここに座ることにしました。遠藤新の設計ですが、テイストは完全にフランク・ロイド・ライト風です。
西の小部屋の窓。

この建物はお金をかけずに美しさを演出しているのが特徴で、この幾何学的な模様が何とも優美です。
こちらはテーブルと椅子。

この背もたれが六角形の椅子は遠藤新による設計です。前回ご紹介したホールの椅子とも違ってるようです。
椅子のアップ。

座り心地は普通の木の椅子ですが、所々のオレンジ色の線がアクセントになって落ち着きの中に華やいだ雰囲気があります。
この食堂でもう1つの見どころがこの天井と照明です。


元々は食堂の四隅に照明を取り付ける予定だったのですが、ライトが建設途中に現場を訪れて、少女たちが座って食事する様子を思い浮かべた際、天井までに間が抜けた空間ができてしまうと感じたそうです。そしてその晩に吊り具を設計し、翌日にも現場にきて遠藤新に吊り具を付けさせたというエピソードもあるのだとか。こんな大胆な吊り具を一晩で考えて作ってしまうとは天才過ぎますねw
こちらは暖炉。薪が置かれていました。

焦げ跡もあるし、ここもイベント時には暖炉を使うのかな? この建築は暖炉があちこちあるのも特徴なので、探してみるのも面白いです。
大体撮影して気が済んだので、お茶にしましたw
ここでカフェメニューを頼みます。メニューはコーヒーと紅茶のいずれかと焼き菓子です。見学者と施設利用者では値段が違います。

焼き菓子は2種類だったので、奥さんと1つずつ頼んでみました。これ、200円ってむちゃくちゃお得感があります。
私はコーヒー、奥さんは紅茶にしました。焼き菓子も半分ずつ食べてみました。

200円ではそれほど期待できないのでは?と思ったら、コクも香りもしっかりしていて驚きました。お菓子も甘さ控えめでちょうど良い感じです。流石は東日本1位だけあって、ちゃんとしてますw (上野の某遺産の中のカフェも何とかならないものでしょうか…w)
せっかくなので、ミュージアムショップでクッキーも買って一緒に食べてみました。(カフェでは売ってません)

こちらもゴマや紅茶などの香りが効いていて上品な味でした。お土産に買うのも良さそうです。
ちなみに、この食堂は「明日館レストラン」として年4回ほどレストランメニューとなる日があるようです。
HPを確認すると、
・春・4月下旬─5月上旬、夏:8月、秋:2018年10月28日、冬:2019年2月3日
・日時限定、年4回、メニュー1回3種
・詳細は開催日の3週間くらい前に載せる
と書いてありました。そのタイミングを狙ってみるのも良いかもしれません。
参考リンク:イベント
ということで、フランク・ロイド・ライトと遠藤新の美しい建物・インテリアに囲まれてお茶できるという非常に贅沢な空間となっていました。入館料と合わせて600円(カフェ分は200円)という破格のサービスにも驚きです。今はそれほど混んでいませんが、池袋のラーメン屋に押し寄せている外国人観光客の波がここに気づくのも時間の問題かも…w 建物好きの方は是非足を運んでみてはと思います。
次回は自由学園明日館の最終回で、講堂と無料コンサートについてご紹介しようと思います。
参考記事:遠藤新 「自由学園明日館 講堂」(2018年12月)
おまけ:ミュージアムショップで売ってた食堂の椅子のミニチュア

3500円くらいだったかな。クオリティが高くて かなり迷った末に買いませんでしたが、未だに後ろ髪を引かれる思いですw
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今日は写真多めです。先週の日曜日に池袋にあるフランク・ロイド・ライトが設計した「自由学園明日館」を見学してきました。この施設では撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

公式サイト:https://jiyu.jp/tour/
結構沢山の人がいましたが、建物マニアの人たちというよりは公民館的な感じで使われているので、そうしたイベントの人が多かったように思います。さらにここにはカフェと講堂もあって、この日は無料コンサートもあったのでそれで混んでいたのかも。講堂とカフェ(旧食堂)については別記事で書こうと思いますので、今日は本館のカフェ部分以外についてです。
この建物は近代建築の三大巨匠の1人であり日本とも少なからず関係のあるフランク・ロイド・ライトによる設計で、恐らくライトの設計で現役で使われているのは日本でここだけだと思います。明治村の旧帝国ホテルは玄関部分だけを切り取ったものだし、「FUKUHARA HOUSE(福原有信邸)」は関東大震災で倒壊したし、丸々生き残ってるのは奇跡のような建物です。しかも池袋駅から徒歩5分という場所にありながら一般にはあまり知られていないというのも穴場感があります。
元々ここは羽仁吉一・もと子 夫妻が1903年に『家庭之友』という雑誌の事務所と自宅を建てる為に、おさつと大根の畑だったこの地を借り受けたのですが、2人は女性教育のための学校設立を夢見て 実際に創立する際に、当時2人が通っていた教会の教会員でありフランク・ロイド・ライトの弟子である遠藤新に学校の設計を依頼しました。すると、遠藤新は自分よりもフランク・ロイド・ライトに頼んではどうかと勧められ、帝国ホテルの建設で忙しいライトに紹介され、2人の教育理念を話したところ ライトの深い共感を得ることができて、校舎の設計を快諾されたそうです。帝国ホテルの建設でめちゃくちゃ忙しくて遂には首になったライトがよく引き受けてくれたな…と驚くと共に、そんな中でも時間を作って数日でラフスケッチを作ったというのにも更に驚きです。成り立ちを知ると如何に貴重な建物かが分かります。と、感慨深いエピソードが色々あるのですがちょっと前置きが長くなってきたので、写真を使いながら合わせてご紹介していこうと思います。
参考記事:
【番外編】博物館明治村の写真 後編(2013年12月)
アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 【日光編】
【大谷資料館】 坑道内の写真
それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio 【資生堂ギャラリー】
こちらは全体の外観。

「簡素な外形のなかにすぐれた思いを充たしめたい」という羽仁夫妻の思いを基調としているようで、割とシンプルな見た目です。
こちらが本館部分の見取り図。(現在位置は無視してくださいw)

タリアセンという部屋がありますが、タリアセンというのはフランク・ロイド・ライトが設計した建設のことを指したりする言葉です。豊島とかマニアーニャ(明日)とかモーゼスとか、この建物にゆかりのある名前が多いですね。
こちらが本館の入口部分。ここで入館料を払います。

入館のみとカフェ込のチケットがあり、私たちはカフェ込のチケットにしました(日によってはカフェをやっていないようです)
入口の隣の隣の部屋では婦人之友社の書籍を紹介するコーナーがありました。

婦人之友社のおかげでフランク・ロイド・ライトの建物が日本でも観られるんですね。本当にありがたいことです。
こちらは講堂側の入口部分。左右対称になっていてほとんど同じに見えます。

こちらは生涯学習の事務所として使用しているようでした。
講堂側の側面部分の教室は結婚式の相談所?として使われています。

この自由学園明日館を土日に見学しようとすると月に1日しか見学出来る日が無いのですが、それ以外の土日は結婚式場として予約が埋まっているそうです。こんな名建築で結婚式が出来るのは幸せなことでしょうね。 一方、私のように単にこの建物を休日に見学したい場合は、公式ページのカレンダーをよくチェックしておくことをお勧めします。
こちらは本館のドア。幾何学的な模様が美しい!

この写真にも写っていますが、あちこちに大谷石が使われています。フランク・ロイド・ライトの熱い大谷石へのこだわりが感じられますねw
ドアの内側から観るとこんな感じ。

シンプルながらも むちゃくちゃ絵になる幾何学模様で、テンションあがりっぱなしでしたw (同じ構図の写真を10枚は撮ってきたw)
続いて、この建物で一番の特徴とも言えるホール。右は吹き抜けの二階から見下ろす構図で撮っています

この窓は限られた工費で抑えつつ、空間を充実させる為の工夫が見どころです。高価なステンドグラスではなく幾何学模様となっていて、独特の美しさです。保存修理をする前は中敷居を入れて風が強い日も安心なよう小さな窓に改変していた時期もあったようですが、今は文化財修理の原則に基づいてオリジナルに戻されているそうです。
ホールを振り返るとこんな感じです。吹き抜けの2階はフランク・ロイド・ライトミュージアムということでミニ展示室となっています。

ここで注目したいのが、ここに並ぶ椅子です。六角形の背もたれを持つ椅子は、真ん中にスリットがあってフランク・ロイド・ライトのテイストがよく現れています。(ライトもしくは遠藤新の作品と考えられているようですが、他の椅子と比較しても遠藤新っぽい気もします。) 六角形にしたのはこの部屋が六角形を基調とした窓があるためのようで、非常に調和した雰囲気となっていました。
こちらもホール。窓に向かって右手奥にある壁画です。

1997年からの修理工事で発見された壁画だそうで、壁の下から現れたようです。創立10周年の頃に美術講師でもあった美術家・石井鶴三の指導の下で生徒たちによって作られたそうで、出エジプト記を題材にしているようです。
こちらは先程写っていたホールの暖炉。

ライトは「火のあるところには人は集まり、団欒の場を共有するのだ」と考えていたそうで、この明日館には5箇所の暖炉があります。冬の夜間見学の日など年に何回か焚いているそうで、煤がついていました(夜間見学もスケジュール表に載っています。基本的に毎月第3金曜日のようです)
こちらは廊下。

廊下の窓にも装飾があって優美な雰囲気です。
こちらは先程とは別のドア。天井部分がガラスになっている所がありました。

間接照明みたいな感じかな? デザインが非常に美しい。
前述の通り色々とイベントをやってたりするので、たまに入れない部屋がありますがいくつか教室にも入れて貰えました。

物置に学校らしさを感じるけど、こんな洒落た木組みは観たことありませんねw
窓だって様になっています。

ちなみに、この建物は設計を依頼してわずか3ヶ月で建てられたそうで、塗装も終わっていないような段階で入学式を迎えたのだとか。その後も授業と並行して建設工事が続けられ、約1年後に中央棟全体が完成したそうです。
こちらは黒板。

周りの木枠があるだけで洒落た感じが出る不思議w
一番奥の部屋は自由学園のPR室になっていました。

流石にここでは手狭になって、今の自由学園は東久留米市にあるそうです。ここで初の入学式を行ったそうで、1921年に完成した部屋という意味でRm.1921と名づけられたそうです。もう少しで100周年です。
中の造りは他の教室と似た感じ。

お食事会、会議、ミーティング等でも使えるということで、この部屋の隣を公民館のように使っているグループもありました。
ここにも先程のと同じ形の椅子がありました。

レトロだけど先進性があって、欲しくなりますw
この後、カフェのある食堂に行ったのですが、それについては次回ご紹介の予定です。とりあえず、食堂をさらに階段を登って先程のホールの吹き抜けにあるフランク・ロイド・ライトミュージアムをご紹介。
こちらは明日館の模型。

こうして綺麗に残っていますが、空襲の危機(付近は全部焼けたけど免れた)や老朽化で取り壊す危機なんかもあったそうです。1997年に国の重要文化財に指定され、1999年から修理康史を開始して2001年に中央棟、東西教室棟の3棟が復元されました。
こちらは模型を横から見たところ。

この建物は使い続けることが保存につながるという「動態保存」を旨として使われています。日本の宝みたいな建物なので、末永く残ってほしいものです。
この部屋にはこの建物の成り立ちや、自由学園の創立当時のエピソードなんかもありました。見学する上で非常に参考になります。
ミュージアム内の調度品もフランク・ロイド・ライトのタリアセンを使っていました。

この照明、市販で7~8万円しますw 流石にこの建物にピッタリ合いますね。
最後におまけでミュージアムショップ。ここには色々と魅惑の商品があって、遠藤新の食堂の椅子のミニチュアとかにも心を惹かれたのですが、Tシャツを買いました。

このTシャツのデザインは食堂にあるライトがデザインした照明です。まあ、これを観て分かる人はあまりいないと思いますがカッコいいので衝動買いですw
ということで、それほど大きくない建物ですが見どころが多すぎて2時間以上はぐるぐる周って写真を撮ってきました。特に建築好きの方は一度は訪れておきたい建物だと思います。
次回は引き続き、明日館のカフェをご紹介しようと思います。
参考記事
自由学園明日館のカフェ 【自由学園明日館 館内のお店】
遠藤新 「自由学園明日館 講堂」(2018年12月)

公式サイト:https://jiyu.jp/tour/
結構沢山の人がいましたが、建物マニアの人たちというよりは公民館的な感じで使われているので、そうしたイベントの人が多かったように思います。さらにここにはカフェと講堂もあって、この日は無料コンサートもあったのでそれで混んでいたのかも。講堂とカフェ(旧食堂)については別記事で書こうと思いますので、今日は本館のカフェ部分以外についてです。
この建物は近代建築の三大巨匠の1人であり日本とも少なからず関係のあるフランク・ロイド・ライトによる設計で、恐らくライトの設計で現役で使われているのは日本でここだけだと思います。明治村の旧帝国ホテルは玄関部分だけを切り取ったものだし、「FUKUHARA HOUSE(福原有信邸)」は関東大震災で倒壊したし、丸々生き残ってるのは奇跡のような建物です。しかも池袋駅から徒歩5分という場所にありながら一般にはあまり知られていないというのも穴場感があります。
元々ここは羽仁吉一・もと子 夫妻が1903年に『家庭之友』という雑誌の事務所と自宅を建てる為に、おさつと大根の畑だったこの地を借り受けたのですが、2人は女性教育のための学校設立を夢見て 実際に創立する際に、当時2人が通っていた教会の教会員でありフランク・ロイド・ライトの弟子である遠藤新に学校の設計を依頼しました。すると、遠藤新は自分よりもフランク・ロイド・ライトに頼んではどうかと勧められ、帝国ホテルの建設で忙しいライトに紹介され、2人の教育理念を話したところ ライトの深い共感を得ることができて、校舎の設計を快諾されたそうです。帝国ホテルの建設でめちゃくちゃ忙しくて遂には首になったライトがよく引き受けてくれたな…と驚くと共に、そんな中でも時間を作って数日でラフスケッチを作ったというのにも更に驚きです。成り立ちを知ると如何に貴重な建物かが分かります。と、感慨深いエピソードが色々あるのですがちょっと前置きが長くなってきたので、写真を使いながら合わせてご紹介していこうと思います。
参考記事:
【番外編】博物館明治村の写真 後編(2013年12月)
アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 【日光編】
【大谷資料館】 坑道内の写真
それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio 【資生堂ギャラリー】
こちらは全体の外観。

「簡素な外形のなかにすぐれた思いを充たしめたい」という羽仁夫妻の思いを基調としているようで、割とシンプルな見た目です。
こちらが本館部分の見取り図。(現在位置は無視してくださいw)

タリアセンという部屋がありますが、タリアセンというのはフランク・ロイド・ライトが設計した建設のことを指したりする言葉です。豊島とかマニアーニャ(明日)とかモーゼスとか、この建物にゆかりのある名前が多いですね。
こちらが本館の入口部分。ここで入館料を払います。

入館のみとカフェ込のチケットがあり、私たちはカフェ込のチケットにしました(日によってはカフェをやっていないようです)
入口の隣の隣の部屋では婦人之友社の書籍を紹介するコーナーがありました。

婦人之友社のおかげでフランク・ロイド・ライトの建物が日本でも観られるんですね。本当にありがたいことです。
こちらは講堂側の入口部分。左右対称になっていてほとんど同じに見えます。

こちらは生涯学習の事務所として使用しているようでした。
講堂側の側面部分の教室は結婚式の相談所?として使われています。

この自由学園明日館を土日に見学しようとすると月に1日しか見学出来る日が無いのですが、それ以外の土日は結婚式場として予約が埋まっているそうです。こんな名建築で結婚式が出来るのは幸せなことでしょうね。 一方、私のように単にこの建物を休日に見学したい場合は、公式ページのカレンダーをよくチェックしておくことをお勧めします。
こちらは本館のドア。幾何学的な模様が美しい!

この写真にも写っていますが、あちこちに大谷石が使われています。フランク・ロイド・ライトの熱い大谷石へのこだわりが感じられますねw
ドアの内側から観るとこんな感じ。

シンプルながらも むちゃくちゃ絵になる幾何学模様で、テンションあがりっぱなしでしたw (同じ構図の写真を10枚は撮ってきたw)
続いて、この建物で一番の特徴とも言えるホール。右は吹き抜けの二階から見下ろす構図で撮っています


この窓は限られた工費で抑えつつ、空間を充実させる為の工夫が見どころです。高価なステンドグラスではなく幾何学模様となっていて、独特の美しさです。保存修理をする前は中敷居を入れて風が強い日も安心なよう小さな窓に改変していた時期もあったようですが、今は文化財修理の原則に基づいてオリジナルに戻されているそうです。
ホールを振り返るとこんな感じです。吹き抜けの2階はフランク・ロイド・ライトミュージアムということでミニ展示室となっています。

ここで注目したいのが、ここに並ぶ椅子です。六角形の背もたれを持つ椅子は、真ん中にスリットがあってフランク・ロイド・ライトのテイストがよく現れています。(ライトもしくは遠藤新の作品と考えられているようですが、他の椅子と比較しても遠藤新っぽい気もします。) 六角形にしたのはこの部屋が六角形を基調とした窓があるためのようで、非常に調和した雰囲気となっていました。
こちらもホール。窓に向かって右手奥にある壁画です。

1997年からの修理工事で発見された壁画だそうで、壁の下から現れたようです。創立10周年の頃に美術講師でもあった美術家・石井鶴三の指導の下で生徒たちによって作られたそうで、出エジプト記を題材にしているようです。
こちらは先程写っていたホールの暖炉。

ライトは「火のあるところには人は集まり、団欒の場を共有するのだ」と考えていたそうで、この明日館には5箇所の暖炉があります。冬の夜間見学の日など年に何回か焚いているそうで、煤がついていました(夜間見学もスケジュール表に載っています。基本的に毎月第3金曜日のようです)
こちらは廊下。

廊下の窓にも装飾があって優美な雰囲気です。
こちらは先程とは別のドア。天井部分がガラスになっている所がありました。


間接照明みたいな感じかな? デザインが非常に美しい。
前述の通り色々とイベントをやってたりするので、たまに入れない部屋がありますがいくつか教室にも入れて貰えました。

物置に学校らしさを感じるけど、こんな洒落た木組みは観たことありませんねw
窓だって様になっています。

ちなみに、この建物は設計を依頼してわずか3ヶ月で建てられたそうで、塗装も終わっていないような段階で入学式を迎えたのだとか。その後も授業と並行して建設工事が続けられ、約1年後に中央棟全体が完成したそうです。
こちらは黒板。

周りの木枠があるだけで洒落た感じが出る不思議w
一番奥の部屋は自由学園のPR室になっていました。

流石にここでは手狭になって、今の自由学園は東久留米市にあるそうです。ここで初の入学式を行ったそうで、1921年に完成した部屋という意味でRm.1921と名づけられたそうです。もう少しで100周年です。
中の造りは他の教室と似た感じ。

お食事会、会議、ミーティング等でも使えるということで、この部屋の隣を公民館のように使っているグループもありました。
ここにも先程のと同じ形の椅子がありました。

レトロだけど先進性があって、欲しくなりますw
この後、カフェのある食堂に行ったのですが、それについては次回ご紹介の予定です。とりあえず、食堂をさらに階段を登って先程のホールの吹き抜けにあるフランク・ロイド・ライトミュージアムをご紹介。
こちらは明日館の模型。

こうして綺麗に残っていますが、空襲の危機(付近は全部焼けたけど免れた)や老朽化で取り壊す危機なんかもあったそうです。1997年に国の重要文化財に指定され、1999年から修理康史を開始して2001年に中央棟、東西教室棟の3棟が復元されました。
こちらは模型を横から見たところ。

この建物は使い続けることが保存につながるという「動態保存」を旨として使われています。日本の宝みたいな建物なので、末永く残ってほしいものです。
この部屋にはこの建物の成り立ちや、自由学園の創立当時のエピソードなんかもありました。見学する上で非常に参考になります。
ミュージアム内の調度品もフランク・ロイド・ライトのタリアセンを使っていました。


この照明、市販で7~8万円しますw 流石にこの建物にピッタリ合いますね。
最後におまけでミュージアムショップ。ここには色々と魅惑の商品があって、遠藤新の食堂の椅子のミニチュアとかにも心を惹かれたのですが、Tシャツを買いました。


このTシャツのデザインは食堂にあるライトがデザインした照明です。まあ、これを観て分かる人はあまりいないと思いますがカッコいいので衝動買いですw
ということで、それほど大きくない建物ですが見どころが多すぎて2時間以上はぐるぐる周って写真を撮ってきました。特に建築好きの方は一度は訪れておきたい建物だと思います。
次回は引き続き、明日館のカフェをご紹介しようと思います。
参考記事
自由学園明日館のカフェ 【自由学園明日館 館内のお店】
遠藤新 「自由学園明日館 講堂」(2018年12月)
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