関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

【ヤマザキマザック美術館】の案内 (名古屋編)

今日は写真多めです。前回ご紹介した名古屋のヤマザキマザック美術館の企画展を観た後、常設展も観てきました。ここの常設展は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【公式サイト】
 http://www.mazak-art.com/cgi-bin/museum/search/search.cgi?action=collection_index

【会場】ヤマザキマザック美術館(名古屋)
【最寄】新栄町駅(名古屋市営地下鉄東山線)

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【感想】
鑑賞時間を1時間としましたが、実際には閉館が迫っていて30分くらいで観るという暴挙となってしまいました…w 常設は2フロアあって、下階はアール・ヌーヴォー等の調度品のコレクション、上階が絵画のコレクションとなっています。それぞれ気に入った作品をピックアップしてご紹介していこうと思います。
 ※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れますが、撮影禁止の作品もあります。
 ※当サイトからの転載は画像・文章ともに一切禁止させていただいております。


まずは下階の展示です。今回はアール・ヌーヴォーの企画展だったので、常設も連続するような感じとなっていました。
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結構大型の家具類が並んでいます。これだけでも十分見ごたえのある内容です。

ルイ・マジョレル 「化粧台」
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こちらは1900年頃に作られた化粧台。特に足の辺りにアール・ヌーヴォーの優美さが感じられました。

ジャック・グルベール 「衝立」
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アール・ヌーヴォーのナンシー派でガラス工芸家のグリュベールですが、ここでもガラスを使って草花を表しています。結構大型で非常に見事な衝立でした。

この辺りにはグリュベールによる食器棚なんかもありました。

アンドレ・ドラン 「エーヴ・キュリーの肖像」
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有名なキュリー夫人の娘でフランスの芸術家であるエーヴ・キュリーを描いた作品。何となくお母さんの面影もあるような。優しそうで気品ある肖像です。

この美術館はドランの揃えが良いようで、上の階にも何点かドランの作品がありました。

こちらは1部屋まるごとアール・ヌーヴォーになっていました。
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植物を思わせる曲線が多く優雅な部屋となっています。この統一感がとても心地良い展示方法ですね。

ピエール・ボナール 「薔薇色のローブを着た女」
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ちょっと薄暗いですが、明暗がついて色調もボナールらしさを感じさせる作品。何か悩んでいるような表情が悲しげに見えました。

続いて上階の展示室へ。点数は70点くらいだったかな。ロココ様式がコレクションの根幹なのだとか。
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一周ぐるっと周るような感じで、概ね時代順に並んでいました。

ジャン=バティスト・グルーズ 「犬と遊ぶ子供」
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早速、ロココの作品がありました。犬も子供もこちらを観ていて、特に犬のつぶらな瞳が可愛いw 柔らかく優しい雰囲気の作品となっています。

ニコラ・ランクレ 「からかい」
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こちらもロココの優美な作品。くすぐって起こそうとしている様子が何とも楽しげ。ルイ15世の頃にヴェルサイユ宮殿を飾るために描かれたそうです。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 ヴェルサイユ宮殿

この近くにはアントワーヌ・ヴァトーなどもありました。確かにロココが多いです。

シオメン・シャルダン 「兎と獲物袋と火薬入れ」
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静物画の巨匠シャルダンによる静物。毛のモフモフ具合や火薬入れの質感などが見事で、暗い中で観たら実物と見間違いそう。真っ暗な背景で静寂が漂っているのも好みでした。
 参考記事:シャルダン展-静寂の巨匠 (三菱一号館美術館)

フランソワ・ブーシェ 「アウロラとケファロス」
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こちらもロココらしい作品。頭の上に星があるのが暁の女神アウロラで、その左にいるのが人間で恋人のケファロスのようです。女性的な優美さや軽やかさが画面全体にあふれていて、肉体の美しさが目を引きました。

ユベール・ロベール 「メレビル庭園の眺め」
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廃墟の絵を得意としたユベール・ロベールですが、庭園制作にも関わっていました。ここではメレヴィル庭園という庭園を描いているのですが、まるで神話の世界のようにも見えます。この庭はフランスで最初期の英国式庭園なのだとか。
 参考記事:ユベール・ロベール-時間の庭 感想後編(国立西洋美術館)

ヴィジェ=ルブラン 「エカチェリーナ・フェオドロヴナ・ドルゴロウキー皇女」
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マリー=アントワネットの画家であったルブランがフランス革命後にロシアに滞在していた時に描いた作品。やや微笑んだような可愛らしい顔で描かれていますが、こう見えて後に暗殺劇に加担した女性だそうです。知的な印象ですけどねえ。
 参考記事:マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン -華麗なる宮廷を描いた女性画家たち- 感想前編(三菱一号館美術館)

ウジェーヌ・ドラクロワ 「シビュラと黄金の小枝」
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これは叙事詩『アエネイス』に基づいた話で、アポロの巫女の女預言者シビュラが冥界に向かうアエネイスに、冥界の女王プロセルピナへの供物として黄金の小枝を探すように言い、指さしてその場所を教えているシーンです。鑑賞している人がアエネイスになったような視線になっているのが面白い構図でした。

ドミニク アングル 「ルイ14世の食卓のモリエール」
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新古典主義のアングルまでありました。写実的でありながら大胆な明暗で劇的な雰囲気となっています。アングル好きとしては国内で観られるのは嬉しい限り。

ファンタン=ラトゥール 「子供の顔」
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ラトゥールもありました。子供にしては凛々しい雰囲気で、じっと何かを見つめる眼差しが印象的。

この辺りから印象派前後の近代絵画のコーナーとなっていきます。

ギュスターヴ・クールベ 「波、夕暮れにうねる海」
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クールベがよく描いた波をモチーフにした作品。力強く波濤の音まで聞こえそうなほどのリアリティです。

カミーユ・ピサロ 「ルーアンの波止場・夕陽」
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ピサロ晩年の新印象主義的な作風で描かれた作品。点描で表現している点に後輩からも学ぶピサロの温厚な人柄まで出ているように思えます。

アルフレッド・シスレー 「サン=マメのロワン運河」
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これぞ印象派という明るい色彩の作品。青が爽やかで当時の川の様子が生き生きと描かれています。

アルベール・マルケ 「ラ・ショームの家並み」
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フォーヴと交流していたけどフォーヴっぽくないのがマルケですが、これは結構フォーヴっぽい強めの色彩かも。ぺったりとした筆致はマルケらしさも感じるのが面白い。

マルケも何点かあって好みの絵ばかりでした。

エドゥアール・ヴュイヤール 「アネモネ」
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割とナビ派の揃えも良くて驚きました。こちらは背景が割とごちゃついているように思えるけど、花が浮かびあがるように感じられました。色彩や筆致もヴュイヤールらしくて好み。

モーリス・ドニ 「聖母月」
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様々な白が印象的な作品。特に衣の明暗が目を引きました。神話の中のような神秘的な雰囲気も良いし、傑作です。

アメディオ モディリアーニ 「ポール・アレクサンドル博士の肖像」
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こちらはモディリアーニの作品ですが、初期の作品らしく 顔が細長くもないしアーモンド型の目でもない珍しい作風となっていました。

モーリス・ユトリロ 「マルカデ通り」
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製作年は白の時代だけど、色彩のせいか ぱっと観た感じは後の時代のように思えたかな。パリの町並みが美しい作品です。

この辺はエコール・ド・パリの頃の作品が並び、パスキンなどもありました。

モイーズ・キスリング 「ミモザとヒヤシンス」
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濃厚な色彩で盛り上がるようなマチエールのキスリング。花の白がボリュームを感じるほど力強く表現されていました。

この辺は撮影不可の作品も結構ありました。良い作品が多いので実際に観ることができて良かった…

シャイム・スーティン 「緑の木々」
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うねるような筆致が特徴のスーティン。下の方に人間がいますが、人までうねるようなw 風が吹いているように見えました。

スーティンも数点ありました。中々幅広いコレクションです

ラウル・デュフィ 「グッドウッドの競馬場」
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こちらは大型の作品。競馬場はデュフィがよく描いたモチーフの1つで、パノラマのように広がる風景が見応えあります。色彩が軽やかで社交界の華やかさまで伝わってきます。

フェルナン・レジェ 「サンバ」
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この美術館のコレクションで一番年代が若いのは恐らくこのレジェの作品でした。印刷機を描いたものかな? かなりデフォルメされていて色彩も強く感じられました。

ということで、幅広くて見応え充分の内容となっていました。高速で観るには惜しいほどのコレクションだったのでいずれ再訪して落ち着いて観たいと思います。名古屋に行く際には是非立ち寄りたい美術館です。


【名古屋編(2019年)】
  熱田神宮の写真
  名古屋城周辺の写真
  アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン (ヤマザキマザック美術館)
  ヤマザキマザック美術館の案内 (名古屋編)
  ウィリアム・モリスと英国の壁紙展 -美しい生活をもとめて- (松坂屋美術館)
  リニア・鉄道館 前編
  リニア・鉄道館 後編
  徳川美術館の案内
  徳川園の写真
  文化のみち二葉館の写真
  文化のみち橦木館と周辺の写真

【長島編(2019年)】
  なばなの里のイルミネーション

【犬山編(2019年)】
  博物館明治村の写真 前編 2019年01月
  博物館明治村の写真 後編 2019年01月

【犬山編(2013年)】
  野外民族博物館 リトルワールドの写真 前編(2013年12月)
  野外民族博物館 リトルワールドの写真 後編(2013年12月)
  有楽苑と犬山城の写真
  なり多 【愛知県犬山界隈のお店】
  博物館明治村の写真 前編 2013年12月
  博物館明治村の写真 後編 2013年12月

【名古屋編(2013年)】
  矢場とん 三越ラシック店【名古屋 栄界隈のお店】
  あつた蓬莱軒 松坂屋店【名古屋 栄界隈のお店】




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アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン 【ヤマザキマザック美術館】(名古屋編)

今日も引き続き名古屋編です。名古屋城を観た後、地下鉄でヤマザキマザック美術館に行って、「アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン」を観てきました。

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【展覧名】
 アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン

【公式サイト】
 http://www.mazak-art.com/cgi-bin/museum/infoeditor/info.cgi?action=data_list&mode=schedule-current

【会場】ヤマザキマザック美術館(名古屋)
【最寄】新栄町駅(名古屋市営地下鉄東山線)

【会期】2018年11月17日(土)~2019年2月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は日本の洋画黎明期に活躍した巨匠である浅井忠とアール・ヌーヴォー美術についてをテーマにしていて、前半はよく知られる浅井忠の画業、後半はフランスで収集したアール・ヌーヴォーの作品や自らが制作した工芸品などが並んでいました。名古屋観光に時間を取りすぎて閉館までわずか1時間で特別展と常設を観るという事態となってしまったので、細かいメモは取らずに早足で観てきました。各章ごとにごく簡単に内容を振り返ってみたいと思います。


<第一部〔浅井忠が滞欧期および帰国後に制作した油彩画・水彩画〕>
まずは浅井忠の絵画作品が並んでいました。油彩と水彩があり、浅井忠がフランス留学して学んだグレーやフォンテーヌブローといった地の風景画があります。この辺は割と見慣れた感じがするかな。バルビゾン派ゆかりの地でもあり、そこからの影響も伺えます。
その先はナポリやヴェネツィア、香港など様々な海外風景があり異国情緒の魅力溢れる作品となっていました。
そしてこの章の最後には帰国後の日本の風景もあり、聖護院や比叡山などを題材としていて、海外の光景とは違う日本独特の叙情性を出しているように思えました。


<第二部〔浅井忠、建築家武田五一が、京都高等工芸学校の教材としてフランスで蒐集した作品をはじめとする
19世紀末~20世紀初頭のポスター・工芸作品〕>

続いてはアール・ヌーヴォーの工芸品が並ぶコーナーです。浅井忠が留学した1900年頃はパリ万国博覧会が開かれていて、その監査役の職も務めていたようです。また、アール・ヌーヴォーの火付け役であるサミュエル・ビングとも交流があったそうで、思った以上にアール・ヌーヴォーに深い関わりがあったようです。

ここにはティファニーの壺や皿などが並び、特に花形のガラスの花瓶などは形の面白さと優美さを兼ね揃えていました。また、エミール・ガレの葉っぱ型のペン皿には蛙がとまったデザインとなっていて目を引きました。他にもショワジールロワによる日本製に見える陶器なども良かったかな。この辺りはアール・ヌーヴォーの王道と言った感じです。華やかで造形の面白さがあります。

その先には同時代のシェレやロートレック、ボナール、ミュシャなどの作品があります。また、ここにあったミュラーの「サダヤッコ」は名古屋にゆかりのある作品で、後日ご紹介予定の文化のみち「二葉館」を建てた川上貞奴をモデルにした作品です。

更に進むとガレの家具などがあり、寄せ木で花鳥を表していました。テーブルの足がトンボだったり、日本の技・精神性など幅広く深い理解をしていたのが伺える作品ばかりです。


<第三部〔浅井忠絵付陶芸作品、浅井忠の工芸図案、それをもとに制作された工芸作品〕>
最後は浅井忠による工芸品のコーナーです。浅井忠はアール・ヌーヴォーに影響を受けたようで、グレーの隣村の陶芸家の元で作陶するほどだったようです。

ここには陶芸の図案などがあり、花をデザインした壺や絵皿も展示されていました。アール・ヌーヴォーだけでなく蒔絵なんかもあって猪を図案にした作品などは今年の干支っぽくて面白い意匠でした。かなりアール・ヌーヴォーに寄せたデザインとなっているのが分かります。

また、ルイ・マジョレル、マイセン、バカラなどを使ったアール・ヌーヴォー調の食卓の再現があって、これがかなり見事です。テーブルの上に美しく優美な食器が並んでいました。 さらにルイ・マジョレルの巨大なベッドやテーブル、大型オルゴールなどもあり、猫が乗っかっているように見える彫刻付きの家具なんかもありました。この美術館はアール・ヌーヴォーのコレクションも有名なので、こうした作品が観られるのも流石と言ったところかな。ちなみにオルゴールは14時から実際に演奏を聞けるようでしたが、私が行った頃には終わっていましたw


ということで、かなり早いペースで観たのが悔やまれるほど良い品が並んでいました。ざっと観たくらいではありますが、浅井忠とアール・ヌーヴォーの関係の深さがよく分かるのも良かったです。さらにこの美術館には常設に素晴らしい絵画コレクションがあるので名古屋に行ったら是非立ち寄りたい美術館だと思います。次回はその常設で撮ってきた写真を使ってご紹介の予定です。


【名古屋編(2019年)】
  熱田神宮の写真
  名古屋城周辺の写真
  アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン (ヤマザキマザック美術館)
  ヤマザキマザック美術館の案内 (名古屋編)
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  リニア・鉄道館 前編
  リニア・鉄道館 後編
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  徳川園の写真
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【長島編(2019年)】
  なばなの里のイルミネーション

【犬山編(2019年)】
  博物館明治村の写真 前編 2019年01月
  博物館明治村の写真 後編 2019年01月

【犬山編(2013年)】
  野外民族博物館 リトルワールドの写真 前編(2013年12月)
  野外民族博物館 リトルワールドの写真 後編(2013年12月)
  有楽苑と犬山城の写真
  なり多 【愛知県犬山界隈のお店】
  博物館明治村の写真 前編 2013年12月
  博物館明治村の写真 後編 2013年12月

【名古屋編(2013年)】
  矢場とん 三越ラシック店【名古屋 栄界隈のお店】
  あつた蓬莱軒 松坂屋店【名古屋 栄界隈のお店】





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名古屋城周辺の写真 【名古屋編】

今日は写真多めです。前回に引き続き3連休に行ってきた名古屋の写真で、今日は名古屋城周辺について書いていこうと思います。

前回ご紹介した熱田神宮(神宮西駅)から名古屋城(名城公園駅)は地下鉄1本で15分くらいで行けました。名古屋は地下鉄が結構便利。

名城公園に入ってすぐの所に金シャチ横丁という飲食店街がありました。
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正門の義直ゾーン(伝統・正統のエリア)と東門の宗春ゾーン(新風・変化のエリア)があるようで、こちらは宗春ゾーン。台湾まぜそば とか最近のお店が並びます。ちなみに宗春は七代目の尾張藩藩主の徳川宗春のことで、歌舞伎のような奇抜なファッションをしていたそうですw
 参考リンク:http://kinshachi-y.jp/

こちらが名古屋城のある公園のマップ。
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地下鉄駅は東門の方にあるので、そちらから入って行きました。

どういう訳かお堀に水が入っていなかったけど、立派な石垣です。
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この櫓は東南隅櫓。この櫓は入ることが出来ませんが、同じような西北隅櫓は中に入ることができました。後で出てきます。

こちらは表二之門
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ここから本丸の中へと入っていきます。
 参考リンク:名古屋城公式ウェブサイト

こちらは本丸御殿。むちゃくちゃ新しい!w 元は1615年に建てられたのですが、戦時中に焼失してしまい再建されたのは2018年6月とのことで、真新しいうちに観ることができました。
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もちろん、中も見てきたのですがその前に天守などを観ることにしました。

そしてこちらが天守閣! 隣は先程の本丸御殿です。 トレードマークの金の鯱も輝いています。昔、この鯱の鱗が盗まれたことがあるんですよねw 
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入って観たかったのですが、あいにくと改修工事中でした。ちょうどこの天守にエレベーターを付けるか付けないか揉めてるニュースがあったばかりです。(付けないらしいです) これも焼失して1959年に再建されたものですが、元々は関ヶ原の戦いの後に豊臣家との戦いに備えて作らえました。

似たような角度で複数の箇所から撮ってみました。左にはエレベーターが横に付いている様子もあります。
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右の写真だと工事をしているのがよく分かります。耐震工事だそうです。

こちらは天守礎石が並ぶ一角。焼失した天守を支えていた石で、再建にあたってすぐ隣のこの場所に移されたそうです。
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堅牢な造りで、大きな天守を支えるだけのことはあります。

こちらは重要文化財の西北隅櫓。こちらは中に入ることができました。
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中はかなり急な階段があったりするので、足腰が弱いと登れないかも。

櫓の中はこんな感じ。それほど広くもなく簡素な造りとなっています。
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外からの攻撃に応戦する為の仕組みなんかもありました。お堀の外の様子もよく見渡せますが、今は普通の住宅街が広がっていますw

西北隅櫓を観た後、来た道をそのまま引き返して行きました。

再び天守の方へと戻ってきました。これは清正石と呼ばれる名古屋城で最大の石垣石材。
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本当は黒田長政が担当した地区らしいですが、加藤清正が積み上げたと伝わってこの名前になったようです。立て札と比べるとその大きさが分かるかな? これを運ぶのは相当大変だったでしょうね。

続いて本丸御殿へと入ってみました。こちらは玄関・大廊下あたりの部屋。デジタル複製された襖絵や書院が眩いばかりです。
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特に解説が無かったですが、狩野派が描いたんじゃないかな。消失前に国宝指定されていたこともあって綿密な資料や、運び出して消失を免れた障壁がなどを元に再現したので、元の絵の様子もよく分かるようになっています。

こちらも豪華な襖絵となっています。
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名古屋の人が派手好きというのは昔からの伝統なのかもしれませんねw

こちらは対面所。藩主と身内や家臣との私的な対面や宴席に使われたそうです。
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こちらは雅な雰囲気漂う画風となっていました。四季の名所や風物を描いているようです。

対面所は二重折上げ小組格天井という段差のある格天井となっていました。
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部屋の外から普通に観てると見落とす角度なので、しゃがんで観ないと見えないかもw 非常に格式を感じさせます。

こちらは上洛殿の廊下にあった欄間。
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やりすぎじゃないか?ってくらいの豪華さですw 極彩色で恐ろしいまでの技術を集結して作っているのが見て取れます。

そして一番の見どころはこの上洛殿上段之間
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狩野探幽による壁画などで埋め尽くされています。三代将軍家光の上洛に合わせて増築された部屋で、最も格式のある部屋となっていました。

天井にもびっしりと絵が描かれています。
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正に豪華絢爛で二条城などと比べても見劣りしない建物です。焼失してしまったのが本当に悔やまれますが、見事な再現ぶりでした。


と、名古屋城を観た後、周辺の建物などを観に散策してみました。名古屋城の辺りから徳川美術館の辺りにかけては「文化の道」と呼ばれる歴史的建造物郡があり、その一部が名城公園駅のすぐ近くにあります。

名城公園駅から名古屋城とは反対の方向を観るとこんな感じ。
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手前が名古屋市役所で奥が愛知県庁です。ここだけ時代が違うような光景が広がります。

名古屋市役所のアップ。1933年に竣工し、公募によって平林金吾の設計で建てられました。
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帝冠様式と呼ばれる和洋折衷のスタイルで、屋根が和風というか名古屋城をイメージしたものとなっているようです。

続いてこちらは愛知県庁。こちらは1938年竣工で西村好時と渡辺仁の設計を基本としているそうです。
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帝冠様式を推進した佐野利器が関わっていることもあって、こちらも帝冠様式となっています。頭に乗ってる瓦屋根が名古屋城をイメージしているのも同じです。名古屋城は愛されてますねw

この他にも近くに名古屋市市政資料館という洋風の建物もあります。そちらはいい写真が撮れなかった…

歩き疲れたので県庁の南にある「Q.O.L.COFFEE」というお店でお茶してきました。
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奥さんは もっと名古屋の昭和っぽいカフェに行きたいと言ってましたが、店構えからして良い予感がしたのでここにしましたw
 参考リンク:
  Q.O.L.COFFEE公式facebook
  食べログ

2017年にできたばかりだそうで、中も洒落た雰囲気です。
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そして予想以上にコーヒーにこだわりがあるようで、ストレートコーヒーもあるし、注文してからじっくりとコーヒーを淹れてくれました。

この日はコーヒーとタルトのセットにしました。コーヒーはブラジルです。
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非常に香りが良くて、口当たりもまろやかでした。これだけ美味しいコーヒーを飲めるとは驚きでした。タルトも美味しくて、特にイチゴがまさに旬といった感じで甘くて爽やかでした。


ということで、名古屋城周辺で色々と楽しんできました。特に本丸御殿は復元とは言え見事で、目がくらむほどの豪華さでした。「尾張名古屋は城でもつ」なんて言葉もあるくらいなので、一度は観ておきたい城の1つではないかと思います。



【名古屋編(2019年)】
  熱田神宮の写真
  名古屋城周辺の写真
  アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン (ヤマザキマザック美術館)
  ヤマザキマザック美術館の案内 (名古屋編)
  ウィリアム・モリスと英国の壁紙展 -美しい生活をもとめて- (松坂屋美術館)
  リニア・鉄道館 前編
  リニア・鉄道館 後編
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  徳川園の写真
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【長島編(2019年)】
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【犬山編(2019年)】
  博物館明治村の写真 前編 2019年01月
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【犬山編(2013年)】
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  博物館明治村の写真 前編 2013年12月
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【名古屋編(2013年)】
  矢場とん 三越ラシック店【名古屋 栄界隈のお店】
  あつた蓬莱軒 松坂屋店【名古屋 栄界隈のお店】




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熱田神宮の写真 【名古屋編】

この間の3連休に名古屋周辺の建物と美術館などを巡る旅行に行ってきました。今日からしばらく名古屋編をご紹介していこうと思います。まずは初日に真っ先に行った熱田神宮の写真です。

 公式サイト:熱田神宮

こちらが参道の入口。私はJRの熱田駅で降りてわざわざ正門まで歩いたのですが、名鉄神宮前駅→東門か、地下鉄神宮西駅→西門のほうが普通だと思います。
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わざわざ正門に行ったのは、正門のすぐ近くに鰻のひつまぶしで有名な「あつた蓬莱軒」がある為だったのですが、何と3時間くらい待つようだったので、ここでは一旦諦めました…

正門のすぐ近くに上知我麻神社という熱田の恵比須さま・知恵の文殊様を祀る神社があったのでお参りしてきました。
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ここは商売繁盛・家内安全や合格祈願などにご利益があるそうです。熱田神宮の中にはこうした神社が10箇所以上あって、全部お参りしていたらかなり時間がかかりそうなので一気に本宮を目指すことにしました。

参道はこんな感じ。広い道でかなり立派な神社です。
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この神社に着いて真っ先に感じたのは、名古屋の人は鳥居をくぐる時に一礼している人の割合が高いことでした。東京だとしない人も結構いますよね。ついでに、くぐる時は左足から入ると良いとされています。

参道を本宮に向かって行ったら、左手に きしめん屋さんがあったので入ってみました。お昼は鰻のはずが きしめんに…w
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10人くらい並んでいて、結構混雑していました。成人の日の週だったこともあるのかな? 神社自体も混んでたし。

宮きしめん 神宮店
 公式サイト:https://www.miyakishimen.co.jp/jingu/
 食べログ:https://tabelog.com/aichi/A2301/A230112/23004355/

私は右の「宮福きしめん(赤つゆ)」1200円、奥さんは左の「えび天金しゃちきしめん(白つゆ)」にしました。
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2種類のつゆの違いは何だろう?と思って少し交換したのですが、赤つゆは味が濃い目で 白つゆのほうが出汁が効いてる感じがしたかな。麺がひらべったいので つゆがよく絡んで美味しかったです。10分くらいで食べられるのも時短なので旅行中は嬉しいw

再び参道に戻り本宮を目指していくと今度は右手に文化殿・宝物館がありました。
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こちらは熱田神宮に伝わる宝物や資料を6000点、そのうち国宝・重要文化財・愛知県文化財に指定されたものは176点もあるそうです。特に熱田神宮は草薙神剣を奉っていることもあって刀剣類の揃えが良いのだとか。 しかし残念ながら時間の関係でここもスルーしてしまいました…。

そしてこちらが熱田神宮の本宮。主祭神は熱田大神で、御神体は三種の神器の1つである草薙神剣です。熱田大神ってどなた?と思ったら、熱田大神 = 草薙神剣 = 天照大神ということのようです。
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創建は646年頃とされていますが、現在の本宮は戦災で焼失した後に1955年に再建されたものです。本物の草薙神剣は壇ノ浦に消えたし、長い歴史の中で災難にも少なからず遭ってきましたが、現在もこうして立派な姿で多くの人の信仰を集めています。現在の建物は伊勢神宮と似た造りで、格式高い神宮と言えます。

参拝して引き返そうとしたら変わった絵馬を見つけました。
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星型の絵馬が並んでいました。合格祈願が多かったのはセンター試験直前だったからかな? 人のお願い事を読むのって面白いですw

こちらは本宮の東側にある神楽殿
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ここは神楽が行われる他、各種の祈祷を受けることもできるようでした。かなり大きくて新しい感じ。10年くらい前に新しく造影されたそうです。

他にも境内には様々な建物があり、こちらは又兵衛・茶席という登録文化財。近づくことができませんでしたw
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合掌造の原型といわれる江戸時代前期の建物だそうです。

花や池なども含めると他にも色々見どころがあって、本当に大きな神社でした。

ということで、名古屋の有名な神社に参拝することができました。時間があまり無かったので全部見て回れた訳ではないですが、パワースポットとしても有名なので神社を巡るのが好きな方には名古屋に行ったら外せない場所だと思います。

この後、地下鉄で名古屋城に向かいました。次回は名古屋城周辺の写真をご紹介しようと思います。


【名古屋編(2019年)】
  熱田神宮の写真
  名古屋城周辺の写真
  アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン (ヤマザキマザック美術館)
  ヤマザキマザック美術館の案内 (名古屋編)
  ウィリアム・モリスと英国の壁紙展 -美しい生活をもとめて- (松坂屋美術館)
  リニア・鉄道館 前編
  リニア・鉄道館 後編
  徳川美術館の案内
  徳川園の写真
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  文化のみち橦木館と周辺の写真

【長島編(2019年)】
  なばなの里のイルミネーション

【犬山編(2019年)】
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【犬山編(2013年)】
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  野外民族博物館 リトルワールドの写真 後編(2013年12月)
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  博物館明治村の写真 前編 2013年12月
  博物館明治村の写真 後編 2013年12月

【名古屋編(2013年)】
  矢場とん 三越ラシック店【名古屋 栄界隈のお店】
  あつた蓬莱軒 松坂屋店【名古屋 栄界隈のお店】





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吉村芳生 超絶技巧を超えて 【東京ステーションギャラリー】

昨年末の休日に東京駅の中にある東京ステーションギャラリーで「吉村芳生 超絶技巧を超えて」を観てきました。

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【展覧名】
 吉村芳生 超絶技巧を超えて

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201811_yoshimura.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅

【会期】2018年11月23日(金・祝)~2019年1月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんが結構いましたが大型の作品が多かったのでそれほど混雑感は無く快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は吉村芳生という2007年の「六本木クロッシング:未来への脈動」展 以降に注目を集め、惜しくも2013年に亡くなった現代画家の個展となっています。吉村芳生は日常のありふれた光景を描く画家なのですが、モチーフの選び方が非常に独特で 金網や新聞紙の模写など予想外の作品ばかりです。しかもその表現方法が恐ろしく根気のいる技法となっていました。 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<ありふれた風景>
まずは初期作品などのコーナーです。吉村芳生は山口芸術短期大学を卒業後に広告代理店にデザイナーとして勤務していたようですが、仕事をやめて東京に出て創形美術学校で版画を学びました。そして版画やドローイングを中心に、撮影した写真を利用して作品を制作したようで、自画像や新聞紙といった身の回りのものを描いていたようです。早速かなり独特の作品が並んでいました。

16 吉村芳生 「365日の自画像 1981.7.24-1982.7.23」
こちらは365日分の自画像のうち192点をずらっと展示していました。口ひげを生やして真正面を向いていて、まるで写真のような写実性ですが鉛筆で描かれています。明暗が見事で特に髪の毛や瞳の光がリアルに感じるかな。とにかく点数が圧倒的で、毎日の表情も様々で服装も変わっていきます。背景も屋内・屋外だったりするのですが、構図は全て真正面となっていました。こちらは写真に撮ったのを描き写したそうで、完成までに9年かかったのだとか。初っ端から驚きの作品でした。

この近くには友達を描いたハガキ大の作品などもありました。

1 吉村芳生 「ドローイング 金網」
こちらは17mもある金網を描いたドローイングで、六角形状にねじれた金網が整然と連なっています。その展示光景も圧巻ですが、そもそも何でこんなものを描いたんだ?という疑問がw 解説によるとこれは紙に写した凸凹の痕跡を鉛筆でなぞって70日かけて制作したそうで、「機械文明が人間から奪ってしまった感覚を再び自らの手に取り戻す作業」としてマラソンに例えていたそうです。よく観ると単純なコピーではなく一部が たわんでいたりして、本当に写して制作されたのが分かりました。ちょっと狂気すら感じる作品ですw

11 吉村芳生 「ドローイング 新聞 ジャパン・タイムズ 10点より」
こちら新聞の記事・写真・広告などの誌面をそのまま絵で描いた作品です。乾ききっていない新聞を転写し、それを頼りに鉛筆で写しているそうで、文字はタイポグラフィと手書きの中間みたいな味わいがあります。細かくて気が狂いそうな作業に思えるのですが、これが何枚も並んでいるので唖然とさせられました。身の回りを描くと言っても、これをモチーフにしようと思うか?? と、ツッコミを入れたくなる気持ちで一杯ですw

4 吉村芳生 「ROAD No.10」
こちらは車に乗った視点で道路を描いたドローイングです。近寄って観てみると無数の小さなグリッド状になっていて、1つ1つに斜めの細かい線が引いてあります。この斜めの線で濃淡を出したドット絵みたいな感じかな。解説によると、何度も版を腐食させて10段階の階調の明暗となっているようです。これも恐ろしく手間が掛かっていて、何気ない光景をこれだけ全力で表現しているようでした。…ヤバい作品しかないw

22 吉村芳生 「ジーンズ」
こちらはLeeのジーンズを描いた作品ですが、やはり尋常ではない表現方法となっていますw 生地の目まで正確に模写したものを10段階の色調の濃淡で表していて、離れてみると写真のように見えます。隣には下絵もあったのですが、グリッドに0~9の数字を入れて色調を指定している様子が伺えました。これも執念を感じるほどの徹底ぶりです。

この近くにあった「SCENE 85-8」という作品は見覚えがありました。この美術館の所蔵品かな?

26 吉村芳生 「徳地・冬の幻想」
こちらは雪の積もった木が描かれた作品です。この作品だけ他と異なる趣向で、雪の出す陰影がまるで人や動物の顔の様に見えてくるという仕掛けになっています。ちょっと心霊写真のようにも見えますが、探しきれないくらいの姿があって、その点は流石と言った感じでした。


<百花繚乱>
続いては花を描いた作品のコーナーです。1990年頃に初めて花を題材にして以降、色鉛筆で描いた花の絵へと重心を移していったそうで、花の絵は売り絵に格好の題材だったというのが背景にあるようです。(実際、花の絵のシリーズは人気があったそうです) また、2007年頃からは大型の作品を描くようになり、タイトルも意味深になっていったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

56 吉村芳生 「ケシ」
こちらは屏風のような六曲の大画面にケシが並ぶ様子を描いた作品です。柔らかい色合いが色鉛筆らしさを感じさせるかな。色が明るく感じられて特に赤が眩しいほどです。ここまでモノクロの版画だったので一気に華やかになったように思えます。また、大画面なのに細部まで精密に描写されていて、蕾の毛のようなものまで分かるほどです。これも写実的な表現方法ではあるものの、またこれまでと違う表現となっていました。

この近くには同様の作品が並んでいて、ケシは結構多いかな。他はタンポポや藤、ひまわり等がありました。

61 吉村芳生 「無数の輝く生命に捧ぐ」
こちらはフェンス越しの藤の木を描いたもので、横は10mくらいあるんじゃないか?という巨大な作品です。色は淡めで荘厳な雰囲気があり、近くで観ると藤に囲まれているような錯覚を覚えます。近くにはこの作品の構想の写真もあって見比べることもできるのですが、絵は実際の光景と違っていて、写真を張り合わせて合成しているようです。こちらもグリッドをつけたりして綿密な準備が伺えました。
なお、解説によると この作品の制作動機は東日本大震災だそうで、花の1つ1つが亡くなった人の魂だと思って描いたとのことでした。それでこの意味深なタイトルになっているんですね…。

62 吉村芳生 「コスモス(絶筆)」
こちらはコスモスを描いた作品なのですが、右側1/4程度が空白となっています。これは製作途中で画家が亡くなった絶筆である為で、左から右へと描いて行く流れであったのがひと目で分かります。下書き・下塗りするわけでなく、きっちりと順序よく描いていく辺りに性格が出ている気がしました。絶筆ゆえに制作過程も知ることが出来る興味深い作品です。

この辺には色鉛筆も展示されていました。赤でも似たような色を色調を変えて取り揃えていて、かなり短くなるまで使い込んでいました。また、コスモスを描いた作品は何枚かあるのですが、綺麗に描いた後にわざとダメージ加工したような作風となっています。花のシリーズの中でもコスモスはそれが顕著に表れているように思えました。

60 吉村芳生 「未知なる世界からの視点」
こちらも全長10m以上ありそうな最大級の作品で、菜の花が川面に写っている様子が描かれています。上下で2分されていて上が水面で下が実景かな? 上のほうが揺らめいて見えます。似たような光景が延々と続いていて、「永遠に繰り返す命のような世界、浄土のような感じ」として、「あの世の世界を描いている」と語っていたそうです。長閑に見えるようで、何処と無く寂しげな雰囲気もあり 確かにあの世とこの世の狭間のような印象を受けました。


<自画像の森>
最後は自画像のコーナーです。最初の章で365枚の自画像も出てきましたが、吉村芳生は非常に多くの自画像を描いていて世界で最もたくさん自画像を描いた画家ではないかとのことです。さらに2000年代からは新聞紙の模写の上に自画像を描くという合体技も表れたようで、ここには多種多様な自画像が並んでいました。

38 吉村芳生 「新聞と自画像 2008.10.8 毎日新聞」
こちらは新聞紙の上に鉛筆で自画像をドローイングしたように見える作品です。この日の記事はノーベル賞を日本人が3人受賞したニュースとなっていて、もちろんこの記事も色鉛筆や水彩で描いています。文字はタイポグラフィそのものに見えるくらい正確に模写しているし、広告欄までしっかり再現しています。新聞紙を描くだけでも大変なのに自画像まで描くとは…。まさに吉村芳生の集大成的な画風です。

この近くには北京五輪開幕や秋葉原の大量殺傷事件の日の記事を背景にした同様の作品が並んでいました。結構大きな出来事があった日が選ばれやすいのかな? この日に広告出した会社は芸術作品として残るとは思ってもみなかったろうなあ。

41 吉村芳生 「新聞と自画像 2009年 全364点」
こちらは休刊日の1月2日を除いた364日分の新聞に描いた自画像で、この作品では笑ったり しかめっ面をしていたりと表情豊かに描かれています。初期に比べるとだいぶ年をとっていてシワや髪の毛のボリュームに老いを感じさせるかな。ニュースと自画像の表情の相関性が気になるところですが、あるような無いような…w とにかく毎日これだけ精密な絵を描いていたことに圧倒されました。

42 吉村芳生 「[3.11から] 新聞と自画像 全8種(見・吁・光・阿・吽・失・共・叫)」
こちらは2011年の東日本大震災をテーマにした新聞に自画像を描いた8点セットの作品です。叫ぶような顔や悲しみの表情をしていて、痛ましい記事と呼応するようになっています。吉村芳生は東日本大震災にかなりショックを受けると同時に、それを作品で表現していたようです。作者自身の思いがよく分かる表情となっていました。

この後も同様の作品が並んでいました。多分、本物の新聞紙の上に描いた作品もあるんじゃないかな。(文字が手書き感がないのがあるのでそれで見分けていました) 最後にパリ滞在時の新聞に描いた自画像などもありました。


ということで、ヤバい!を連呼するような細密かつ巨大なドローイングが並んでいて、絵画の概念をぶっ壊すほどの驚きの多い展示となっていました。。技術も凄いけど、精神的にタフ過ぎるw 分かりやすい凄さなので、美術初心者でも楽しめると思います。もう会期末ですが、記憶に残る画家だと思うのでご興味ある方は是非どうぞ。


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明治150年記念 NIPPON 鉄道の夜明け 【旧新橋停車場 鉄道歴史展示室】

前回ご紹介した展示を観た後、新橋の旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で「明治150年記念 NIPPON 鉄道の夜明け」を観てきました。

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【展覧名】
 明治150年記念 NIPPON 鉄道の夜明け

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/shinbashi/

【会場】旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
【最寄】新橋駅

【会期】2018年12月18日(火)~2019年3月3日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_①_2_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は2018年が明治150年に当たるのを記念して企画されたもので、日本の鉄道の歴史の中で特に黎明期についてパネルなどで紹介する内容となっています。日本は明治維新の後にイギリスの援助を受けてエドモンド・モレル等お雇い外国人を招聘し、その指導の元に鉄道が敷設されるわけですが、この展示ではそれ以前の歴史から紹介されていて、意外なエピソードなどもありました。3章構成となっていましたので、簡単に各章ごとにその様子を振り返ってみようと思います。


<1章 夜明け前>
まずは鉄道敷設以前のコーナーです。ここには「別段風説書」という出島のオランダ商館長から提出された書物のコピーがあり、パナマ地峡やエジプトに鉄道を敷設するという記事が乗っています。まだ時代は江戸幕府ですが、鎖国中でもオランダを仲介して割と世界情勢について幕府の上層部は知っていたらしく、その中に鉄道も含まれているようです。(読んでも鉄道って何だ?ってなりそうな気がしますが)

さらに1853年にロシアの軍艦が来た際、蒸気機関車の鉄道を載せていたらしく佐賀藩がそれを実見したそうです。そして佐賀藩はその模型を自力で作ったようで、当時の再現模型の写真のコピーが展示されていました。模型と言ってもNゲージみたいなものではなく 縁日で子供を載せる機関車くらいあるやつで、仕組みを知ったとしてもそれを再現できるとは驚きでした。また、実はペリーも蒸気機関車を持ってきていたそうで、人を乗せて走っている様子を描いた絵のコピーも展示されていました。いずれも こんなものがあったとは意外です。

その先にはジョン万次郎から伝え聞いた「漂客談奇」の一部から鉄道についての記事のコピーが抜粋されていました。「レイロウ(レイルロード)」について語っているのですが、絵は無く分かりづらそうです。一方、同じく浜田彦蔵が漂流してアメリカの船で助けられた漂流記が並んでいて、こちらは下手だけどアメリカの汽車が描かれていました。テイストとしてはUFO目撃談のイラストみたいな感じですw まあ、当時の日本人にとっての鉄道は現在のUFOみたいなもんでしょうね。

そして章の最後には伊藤博文ら5人組がイギリスに密航した話が紹介されていて、中でも井上勝は鉱山と鉄道を学び 後に初代鉄道頭となっています。ここはその解説と写真くらいだったかな。


<2章 鉄道の夜明け>
続いてはよく知られる鉄道開業の頃のコーナーです。エドモンド・モレルら外国人技師を招聘した話があり、モレルの写真とか工部省の関連資料の写真、当時の辞令とか鉄道開業のイラストなんかもあります。(コピーばかりです) 烏帽子姿の明治天皇が横浜駅で汽車から降りている様子もあり、当時いかに大イベントだったのかが伝わってきました。

さらにここには開業の頃の錦絵のコピーもあり、横浜近くの海の上の専用線路を走っている様子が多かったように思います。他には当時の横浜駅の駅舎や新橋駅の写真などもありました。


<3章 日本の鉄道のその後>
最後はその後の鉄道史を一気に紹介するコーナーです。

昭和の頃の機関車や、ボンネット型のこだま号、戦前の燕号、0系ひかり、東北上越新幹線の開業などの写真が並んでいます。また、1号機関車というイギリスに発注した機関車の写真と模型があって、1880年に神戸に転属した旨などが紹介されていました。


ということで、大半はコピーによるパネル展示となっていましたが、特に夜明け前の1章の内容は知らなかったことが多かったので楽しめました。ここは無料で展示を観ることができるので、新橋やパナソニック 汐留ミュージアムに行く機会があったらついでに寄ってみるのもよろしいかと思います。



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三井記念美術館ミュージアムカフェ (2018年1月)【三井記念美術館 館内のお店】

前回ご紹介した三井記念美術館の展示を観た後、美術館の中にあるカフェでお茶してきました。このカフェは以前にもご紹介したことがありますが、かなり前なので改めてご紹介しようと思います。

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【店名】
 三井記念美術館ミュージアムカフェ

【ジャンル】
 カフェ/レストラン

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/floorguide/museum_cafe.html
 食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1302/A130202/13035073/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 銀座線三越前/新日本橋駅/東京駅/神田駅

【近くの美術館】
 三井記念美術館(館内のお店です)

【この日にかかった1人の費用】
 1000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
割と空いていて快適にお茶することができました。

冒頭にも書きましたが、以前にもご紹介したのですが7年くらい前なので再掲。その間にもちょくちょく行っていましたが、今年は初の訪問でした。今回もおやつタイムということで甘味をいただくことにしました。
 参考記事:三井記念美術館ミュージアムカフェ 【三越前界隈のお店】

店内はこんな感じ。展示室を出てすぐにあるので、この美術館で展示を観たら必ず通る場所にあります。
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シンプルながらも落ち着いた雰囲気で、軽快な音楽なんかも流れていました。

この日は白玉クリームあんみつ とセットのコーヒーを頼みました。(800円+200円+税80円)
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まずコーヒーは滑らかでコクはあるけど苦味は少なめかな。甘い香りで酸味もほんのりしていました。とにかくまろやか。続いてあんみつは蜜が結構甘めでしたが、あんこは軽やかな甘さで上品です。白玉と牛皮は結構もっちりした食感かな。キウイは酸っぱめw 下の方に栗が入っていたのは嬉しいサプライズでした。


ということで、今回も展覧会の余韻を味わいつつゆっくりとした時間を過ごすことが出来ました。このお店は隣にミュージアムショップもあるので、図録を買ってここで読むこともあったりします。この辺は美味しいカフェも多いですが、展覧会のすぐ後にゆっくりできる特等席なので、この美術館に訪れた際に利用してみるのもよろしいかと思います。




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国宝 雪松図と動物アート 【三井記念美術館】

先週の土曜日に三越前の三井記念美術館で「国宝 雪松図と動物アート」を観てきました。

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【展覧名】
 国宝 雪松図と動物アート

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

【会場】三井記念美術館
【最寄】三越前駅

【会期】2018年12月13日(木)~2019年1月31日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は毎年恒例の円山応挙の国宝「雪松図屏風」と共に、三井記念美術館のコレクションの中から動物をテーマにした作品がセレクトされた内容となっています。絵画・工芸・茶道具などに様々な動物が表されていて、巨匠たちの作品も多数ありました。詳しくは部屋ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<展示室1>
まず最初の部屋には動物をモチーフにした工芸品が並んでいました。

1-4 野々村仁清 「色絵鶏香合」
こちらは野々村仁清による鶏型の香合。彩色されていて色とりどりの華やかさがあり、ふっくらしたフォルムが可愛らしい作品です。仁清の同様の作品は結構観ますが、こちらも遊び心溢れていて良い品でした。

近くには鹿や狐の香合などもありました。他にも水指、堆朱、釜などに動物が表されていて、特に龍が多かった気がします。

1-15 惺斎 「竹置筒花入 銘白象」
こちらは竹でできた花入れで、どこにも象の姿はありません。しかし花入れの下の方に粒状の突起やシミのようなものがあり、この表面が象の足の肌を想起させ、竹の形も足っぽく見えてきます。背面には「白象」の号が入っていて、絶妙な銘名となっていました。


<展示室2>
続いての部屋は1点のみの展示です。

2-1 野々村仁清 「信楽写兎耳付水指」 ★こちらで観られます
こちらは蓋の方が胴より広い円筒形の水指で、側面に兎の顔が付いています。この兎の耳が非常に長くて、2又になって蓋を支えてる感じかな。解説によると、円形の口を付き、器全体を臼と見なすと「月に兎」の意匠となるようです。さらに側面の凹凸を波状文と見れば謡曲「竹生島」の寓意にもつながるのだとか。ユーモアや機知に富んだ作品となっていました。

展示室3は茶室で、動物にまつわる品は特に無かったかな。国宝の「志野茶碗 銘卯花墻 」が展示されています。


<展示室4>
続いては今回のタイトルになっている円山応挙の「雪松図屏風」を含め、屏風や掛け軸が並ぶコーナーです。

4-1 沈南蘋 「花鳥動物図」 ★こちらで観られます
こちらは全11幅のうち6幅が展示されていました。そのうちの「藤花独猫」は藤・牡丹・タンポポなどが咲く中に猫の姿があります。花は写実的なのに猫はぐにゃっとして妙な素朴さがあるかなw 他の幅にはリス、馬、猿、虎、鹿、鶴などの姿があり丹念に描かれていました。沈南蘋は円山応挙や伊藤若冲に影響を与えた中国の画家なのですが、その影響力も観ることができたように思えます。

4-3 円山応挙 「蓬莱山・竹鶏図」
こちらは3幅対で、中央に松にとまる鶴、右幅には雄鶏、左幅には雌鶏となっていて、左右の幅の竹も中央に向かって伸びて対になっている構図となっています。また、雄鶏は立派な尻尾を持っていて厳しい表情をして緊張感があるのですが、雌鶏は白く淡い色彩で優しい印象を受けました。中央には松の鶴意外にもダイナミックな渓流や舞い飛ぶ鶴もいて雄大な風景です。お正月らしいお目出度いモチーフに溢れた作品でした。

この他に応挙は亀を描いたものと龍を描いたものもありました。そして、今回の目玉の「雪松図屏風」(★こちらで観られます)もあります。この作品については何度もご紹介しているので、今回は割愛。今回もじっくり鑑賞できました。

4-8 山口素絢 「雪中松に鹿図屏風」 ★こちらで観られます
こちらは元々は一双の屏風のうちの右隻で、金地を背景に雪の中に2頭の鹿が歩いている様子が描かれています。毛並みを1本1本書いていて、写実的な一方で現代的な感性も感じるかな。足元にいくつかのヤブコウジという植物があり、その赤い実が白い中でアクセントとなっているようでした。

4-6 長沢芦雪 「白象黒牛図屏風」 ★こちらで観られます
こちらは六曲一双の屏風で、右隻に白い象、左隻に黒っぽい牛が共にうつ伏せになっている様子が描かれています。お互いに向き合って白黒の対比になっているようで、象の背中には黒いカラス、牛のお腹の辺りに白い犬と言った感じで、こちらも対になった色合いです。画面一杯に描かれた2頭はボリューム感があって、優しげな顔と共に大らかな雰囲気となっていました。それにしても牛の傍らの白い子犬のトボけた表情と足を崩す姿勢が何とも可愛いw マスコットになりそうなくらいの愛らしさでした。
なお、こちらと同様の作品はこれを含めて3点確認されているそうで、複数の注文に応じたと考えられているのだとか。

近くには森狙仙が得意とした猿を描いた「岩上群猿図屏風」(★こちらで観られます)なんかもありました。こちらも動物画の名手なので見どころと言えそうです。

4-10 酒井抱一  「秋草に兎図屏風」
こちらはヘギというものを貼って木目を出した地に描いた作品で、ススキやクズの葉っぱが傾いでいるのと共に、木目が強風に見えるという面白い趣向です。薄っすらと右上に浮かぶ月と、左で逃げるような姿勢の兎もいて、静と動が同居しているような画題となっていました。流石は酒井抱一と言った感じのアイディア溢れる作品です。


<展示室5>
続いては小さい絵画や工芸などのコーナーです。

5-1 円山応挙 「梅花双鶴図小襖」
こちらは小さな襖で、紅白の梅を背景に2羽の鶴が寄り添うように描かれています。解説によると、手前が丹頂鶴で奥は真鶴だそうで、小さめですがお目出度い雰囲気となっています。鶴の羽根は1本1本浮き上がるような感じで描かれているのも驚異的でした。

この近くには応挙の絵を蒔絵にしたものや盃なんかもありました。

5-10 永樂和全 「交趾写銭亀香合」
こちらは小さな亀の形の香合です。黄色い甲羅で丸っこい意匠が何とも面白いw 他にも獅子や龍、鹿、カニなど様々な香合があり それぞれ個性的でした。

5-23 円山応挙 「昆虫・魚写生図」
こちらは掛け軸にびっしりと虫や魚が細かく描かれ、その傍らに名前が添えられているスケッチブックみたいな作品です。カマキリ、コオロギ、バッタ、イナゴ、ハエ、カタツムリ、ゴリ、カマツカ、オイカワ、コアユなどで、実物大くらいのもあるかな。写実的で鱗なども1つ1つ描かれていて応挙の観察力も伺えました。

5-24 高瀬好山 「昆虫自在置物」
こちらは金属で出来た昆虫型の置物です。蝶、トンボ、蜂、カブトムシ、蝉、カミキリなどが並び、中でもクワガタムシは本物そっくりに見えるクオリティです。さらにこれは自在置物なので関節などが動くんですよね…。まさに明治の超絶技巧のリボルテック!w 隣には伊勢海老など大きめの自在置物もあって、一度動くところを実際に観てみたいものです。

この近くには源琦の「東都手遊図」なんかもありました。お目出度い雰囲気の玩具が並ぶ作品です。


<展示室6>
この部屋は小部屋で、動物をモチーフにした切手が並んでいました。日本の明治の頃の古い切手からモンゴルやルワンダといった馴染みの無い国のコレクションまで実に様々な切手が所狭しと並びます。その中でちょっと懐かしかったのが1988年のパンダの切手シリーズとか年賀状の干支のお年玉郵便切手などで、自然保護シリーズというのも見覚えありました。子供の頃、はがきを貰ってはお湯で糊を剥がして集めたものですが、今ではハガキ自体出さないですね…。


<展示室7>
最後は巻物や蒔絵、能衣裳などのコーナーです。

7-12 「百馬図巻」
こちらは沢山の馬が群れている様子を描いた巻物で、それぞれ色や模様が違う馬が並びます。毛色などが漢字名とカタカナの和訓が記されているのですが、こんなに種類あるの?ってくらいあります(若干無理やりな気がしますが) それぞれの馬のポーズや表情も豊かで、競馬好きとしては目を引く作品でした。

7-16 象彦・戸嶌光孚 「遊鯉蒔絵額」 ★こちらで観られます
こちらは一際大きな高蒔絵で描いた作品で、錦鯉が餌に群れている様子が表されています。近づいてみると凹凸もあって、実際に立体的な感じです。それもあって蒔絵とは思えないほどの迫力があり、うねりのような動きも感じられました。

7-1 「十二類合戦絵巻」 ★こちらで観られます
こちらは十二支と狸の戦いを描いた絵巻です。場面ごとに分かれているのですが、あらすじとしては 鹿の代わりに歌の判者となった狸が罵倒され、それを恨んで狼・熊・狐・トビなどを仲間に入れて十二支に戦いを挑み、敗れるという話です。最初は歌合の様子、その後に戦いの様子があり擬人化された十二支や狸たちが甲冑を着て入り乱れています。最後は敗北した狸が出家して腹鼓みをしながら念仏をする様子もあるのですが、やはり歌への思いが残っているようで草庵で歌を詠む姿で終わっていました。ちょっと哀れさもあって憎めないやつですね…。この作品もお正月にぴったりの画題でした。

最後に狂言や能の動物の面が並んでいました。


ということで、様々な表現による様々な動物を観ることができました。特に応挙の作品が多めとなっていた絵画作品はどれも名品で良かったです。お正月に即した作品も結構あったので、この機会に三井記念美術館の誇る国宝と共に楽しんでみるのも良いのではないかと思います。




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マイケル・ケンナ写真展 【東京都写真美術館】

今日は写真多めです。前回ご紹介した東京都写真美術館の3階の展示を観た後、地下の「マイケル・ケンナ写真展 MICHAEL KENNA A 45 Year Odyssey 1973-2018」も合わせて観てきました。こちらは一部を除き撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 マイケル・ケンナ写真展
 MICHAEL KENNA A 45 Year Odyssey 1973-2018 

【公式サイト】
 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3104.html

【会場】東京都写真美術館 地下1階
【最寄】恵比寿駅

【会期】2018年12月1日(土)~2019年1月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
結構お客さんがいましたが会場が広めなこともあって快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は現代の風景写真家マイケル・ケンナの日本初の回顧展で、その人気は世界屈指で今まで450回も個展を開いたことがあるカリスマ的存在のようです。この展示ではそのマイケル・ケンナの代表作を一挙に45年分も展示している上、日本で撮った写真などもあって非常に楽しめる内容となっていました。その面白さは観ればすぐに分かると思いますので、早速 写真を使ってご紹介していこうと思います。
なお、当サイトの写真は一切の転用を認めておりませんのでご了承ください。


<A 45 Year Odyssey 1973-2018>
まずは早速、代表作が100点ほど並ぶコーナーで、今回の展示のタイトルもついていました。撮影可能なのはこの章です。簡単にマイケル・ケンナについての説明があり、それによると1953年にイギリスの西北部ランカシャーに生まれ、ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティングで写真を学んだ後、サンフランシスコに拠点を移して活動しているようです。ここでは初期作から2018年までの作品が並んでいました。今回の展示は細かいキャプションは無いので、私の感想のみ添えておきます。

マイケル・ケンナ 「Sunset,Middleton Cheney,Northhamptonshire , England. 1974」
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こちらはかなり初期の作品。霧に霞むような光景が静かで神秘的な雰囲気です。まるで異世界に迷い込んだような感じすらしました。

マイケル・ケンナ 「Broughton Castle, Oxfordshire,England. 1977」
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こちらも霞む背景となっていますが、手前の黒々とした水草が一層に詩情溢れる感じを出しています。日本で言えば侘び寂びに通じるような感じですね。

マイケル・ケンナ 「Deckchairs, Bournemouth, Dorset, England. 1983」
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こちらはガランとしてちょっとシュールさを感じる光景。タイトルから察するにデッキチェアが置かれているようですが、何も無いより却ってうら寂しさが強調されているように思えます。

マイケル・ケンナ 「Chariot of Apollo,study 1, Versailles,France.1988」
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こちらはヴェルサイユにある泉のアポロンの戦車を撮ったもの。これは完全にファンタジーの世界だわw 光の輝きや反射が何とも耽美な雰囲気を出していました。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 ヴェルサイユ宮殿

マイケル・ケンナ 「Pont des Arts,study 1 , Paris, France 1987」
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こちらもパリのセーヌ川を撮ったもの。霞む街を背景に橋のシルエットが美しく、優美な印象を受けます。多くの人が訪れるパリでこんな光景を見つけることができるセンスが凄い…。
 参考記事:【番外編 フランス旅行】 オルセー美術館とセーヌ川

マイケル・ケンナ 「Swings, Catskill Mountains, New York, USA. 1977」
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こちらも普通の公園が神秘的に見える不思議w やはり輝きやぼやけた表現を使っていて、ちょっと怪異めいた不穏さもあって妙に心惹かれます。

マイケル・ケンナ 「Bill's Brandt's Chimney, Halifax, Yorkshire, England. 1983」
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こちらも何と言うことも無い場所がアートそのものとなっている作品。石畳の硬さや寒々しさが伝わってくるような光景です。

マイケル・ケンナ 「Chapel Cross Power Station, Study 1, Dumfries, Scotland. 1985」
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今回特に気に入ったのがこちらの作品。見るからに原発ですが、4つ並ぶ様子が規則的かつ人工的な一方で、山が連なっているような力強さもあります。そこから出る白い蒸気なども美しいような不安を覚えるような、様々な思いが湧いてくる作品でした。

マイケル・ケンナ 「Poles, Salt Pond, Moss Landing,California, USA. 1989」
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こちらはかなりシンプルですが、音1つ聞こえないような静止したような世界が好みでした。観様によっては死の世界のようにも思える…。

マイケル・ケンナ 「Plank Walk, Morecambe, Lancashire, England. 1992」
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こちらもシンプルで面白い作品。水面と空が一体化するような所に桟橋が伸びていて、空にかかる梯子の話を想起しました。幾何学性の美しさと、静けさを感じます。

マイケル・ケンナ 「The Rouge, Study 87, Dearborn, Michigan, USA. 1996」
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こちらは複雑な幾何学性と いかにも工場という建物のシルエットが面白い作品。工場の超然とした佇まいがちょっとシュールに見えるほどでした。

マイケル・ケンナ 「Didcot Power Station, Study 1, Oxfordshire, England. 1989」
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こちらも発電所から立ち上る水蒸気。手前の街灯もリズムを作っていて、人工物によって抽象絵画のような世界が広がっています。この構図も凄いですね…

展覧会の部屋の真ん中あたりには写真集が並んでいました。
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何と今までで70冊ほど出版されているそうです。これだけ素晴らしい写真を撮っていれば その人気も頷けます。

マイケル・ケンナ 「Manhattan Skyline, Study 1, New York, USA. 2006」
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こちらはマンハッタンを撮った写真。言わずとしれた大都会なのに、まるでゴーストタウンw ジグザグのシルエットが大都会の威容を感じさせる一方で、モノクロの静けさが廃墟感を出していました。

マイケル・ケンナ 「Morning Traffic, Midtown, New York, USA. 2000」
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こちらは朝の道路。通勤で賑わっているはずですが、マイケル・ケンナはこんなにも叙情的な光景にしてくれますw これがCDジャケットだったら確実に哀愁漂うバラードでしょうねw

マイケル・ケンナ 「White Bird Flying, Paris, France. 2007」
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こちらは今回のポスターにもなっている作品。白鳩の一瞬の羽ばたきを捉えていて、象徴的な印象を受けました。羽根がボケてるのも動きの速さを感じさせます。

マイケル・ケンナ 「Four Birds, St.Nazaire, France. 2000」
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こちらもシルエットが面白い作品。4羽の鳥が写っていて、何かの棒の先で休んでいます。この構図もシンプルだけど、不思議な光景に思えました。

マイケル・ケンナ 「Stone Pine Tunnel, Pineto, Abruzzo, Italy. 2016」
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ファンタジー世界の作品再び。このトンネルの先は異世界だろ…w 1本1本の木の幹の模様まで分かるのに暗さを感じる不思議な光景です。これが写真とは思えないほど幻想的でした。

マイケル・ケンナ 「Ten Balloons, Albuquerque, New Mexico, USA. 1993」
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こちらは気球を撮った作品。気球はルドンやルソーの絵にもよく出てきますが、何故か不安を覚えるんですよね…。 シュールさもあって好みでした。

マイケル・ケンナ 「Yuanyang, Study 3, Yunnan, China. 2013」
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こちらは中国の棚田。明暗をくっきり出していてマーブル模様の抽象絵画のようにも見えます。うねるような地形が力強さも感じさせました。

マイケル・ケンナ 「Torii, Study 2, Takaishima Biwa Lake, Honshu, Japan. 2007」
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こちらは琵琶湖の湖中大鳥居。モチーフ自体が美しいこともありますが、千切れ飛ぶような雲が神秘性を強めていました。こんな光景を目の当たりにしたら神が降臨しそうな予感しかないw

マイケル・ケンナ 「Five Poles, Tomamae, Hokkaido, Japan. 2004」
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こちrは北海道の苫前町の海岸風景。何のための杭か分かりませんが、寂れた感じを強調していて物哀しい雰囲気です。ここまで観てくるとマイケル・ケンナの好きそうな光景に思えてきましたw

マイケル・ケンナ 「Forest Edge, Hokkaido. Japan. 2004」
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こちらも北海道の雪山の光景。こんな森の切れ目みたいな所があるのかと驚き。スキー場か何か? 誰もいないし、とても不思議な光景です。日本人でもこんな場所があるなんて知らないのによく見つけてきますね。

他にも日本を撮った写真はいくつかありました。会場の外では北海道での撮影の様子を映像で流していましたが、結構過酷なものがありそうでした。

マイケル・ケンナ 「Plane and Sugar Loaf Mountain, Rio de Janeiro, Brazil. 2006」
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左下あたりにいるのは飛行機で、妙な形の岩はポン・ヂ・アスーカルというリオの巨大な奇岩です。これはどういう視点で撮ったのかさっぱり分からず首を傾げながら観ていました。

マイケル・ケンナ 「Daybreak Reflection, Angkor Wat, Cambodia. 2018」
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こちらはアンコールワット。一層にロマン溢れる風景となっていて、異郷への憧れを感じさせました。

<IMPOSSIBLE TO FORGET 1989-2000> ★こちらで観られます
こちらは12年の歳月をかけてナチスドイツの強制収容所28箇所を撮影したシリーズ作品のコーナー。ここはそれほど点数は無いのですが、物悲しい惨劇の痕跡が並んでいます。ポーランドのデスゲートと呼ばれる建物などは 見るからに死を感じさせる陰鬱さと重苦しさが感じられて不気味な静寂となっています。また、亡くなった方たちの遺品などもあり、沢山の靴や人毛が絡み合う様子、空き缶など 当時の状況を間接的に伝えてきました。鉄条網や見張り小屋は今でも残っているようで、人がいないのが却って恐ろしく思えました。

<RAFU Japanese NUDE STUDIES 2008-2018>
こちらは日本人女性のヌードのコーナーです。風景ばかりかと思ったら人物も撮っているようで、これもまた風景とは違った面白さがありました。障子越しや掛け軸を背景にしている裸婦などは日本的なモチーフとのコラボとなっていて 割と思いつきそうな気はするのですが、モデルによってポーズや体つきが違って個性を感じます。また、人体の一部分をトリミングしたような作品が特に面白く、抽象化されつつ柔らかさを感じられるのが好みでした。


ということで、予想以上の内容にかなり満足できました。視点・表現ともに静かで詩的な作風となっているので、日本人にも響く感性だと思います。この記事でご紹介していない素晴らしい写真も多々あり、写真に詳しくない人でも楽しめる内容じゃないかな。もう会期が残り少ないですが、おすすめの写真展です。



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建築 × 写真 ここのみに在る光 【東京都写真美術館】

この間の休みに恵比寿の東京都写真美術館で「建築 × 写真 ここのみに在る光」を観てきました。

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【展覧名】
 建築 × 写真 ここのみに在る光

【公式サイト】
 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3108.html

【会場】東京都写真美術館 3階
【最寄】恵比寿駅

【会期】2018年11月10日(土)~2019年1月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんが多かったですが、特に混雑するほどでもなく快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は「建築」の写真をテーマにしたもので、様々な建築物を撮った古今の写真コレクションが並んでいました。建物写真は写真の黎明期からあるようで、昔は動くものの撮影が困難だったことからも建築は格好の被写体だったようです。展覧会は2章構成で、1章がそうした黎明期などの写真、2章が日本人写真家11人による作品となっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 建築写真の歴史 ~東京都写真美術館コレクションより~>
まず1章は東京都写真美術館のコレクションのうち建築を撮った作品が並ぶコーナーです。現存する世界最古の建物写真は1827年頃にジョセフ・ニセフォール・ニエプスによって撮影された、窓から見える「たてもの」の一角だったそうですが、この章では1840年代くらいからの作品が並んでいました(この章は白黒写真のみ)

02 シャルル=イジドール・ショワズラ&スタニスラス・ラテル 「旧フロールの館とチュイルリー公園」
こちらは1845年頃のパリのチュイルリー公園(ルーヴル美術館の隣あたり)を撮った写真です。離れて観ると見づらいくらい暗めの画面となっているところに歴史を感じます。しかし建物自体は今も面影を残しているように思えるのが面白かったです。

06 ジャン=ルイ・アンリ・ル・セック 「パリ、ノートルダム寺院」
こちらはセーヌ川河畔のノートルダム聖堂を撮った写真で、かなり高い位置からの眺めとなっていて、どこから撮ったのかちょっと気になります。尖塔の像なども見えつつ下を流れる川が遠く見える構図が面白く、早くも単なる風景写真ではなく構図の妙を感じる作品となっているように思えました。

この隣にはルーヴルの窓や破風の彫刻を撮った写真などもありました。割とフランスの建物多めです。

09 フェリーチェ・ベアト 「愛宕山から見た江戸のパノラマ」
こちらは日本の江戸時代末期の頃の写真で、愛宕山から見下ろすパノラマが横長5枚続きにくっつけられています。見える風景には低層の瓦屋根の屋敷が整然と並んでいて、非常に秩序だった美しさを感じます。かつての江戸の町並みってこんなに美しかったのかと思うと共に、当時の貴重な写真がこうした形で残っていて良かったと思えました。

20 ベレニス・アボット 「ウエスト・ストリート 変わりゆくニューヨーク」
こちらは1938年頃の写真で、看板の掛かった建物が立ち並ぶ道が撮られています。手前には沢山の自動車がいて、こちらも当時のクラシックなアメ車のデザインで風情があります。ゴミゴミした都会っぽさとニューヨークの活気が感じられて、建物だけでなく街そのものを捉えているように思えました。

この辺はアメリカの1930年代の写真が並んでいました。「変わりゆくニューヨーク」のシリーズはいずれも良かったです。

29 ベルント&ヒラ・ベッヒャー 「9つの戦後の家」
こちらは綺麗な三角屋根を持つ3~4階建ての家を撮った写真(野球のホームベースをひっくり返したような形の家)が3×3で9枚並んでいる作品です。1つ1つの家の写真は個性的に思えるのですが、驚くほどに全体の形が似ているので、9つも並ぶと無個性に感じられます。暗にそうした皮肉も込められているのではないか?と勘ぐりたくなる作品でしたw


<第2章 建築写真の多様性 ~11人の写真家たち~>
続いては日本の11人の写真家による建物の写真のコーナーです。ここは1人1テーマずつ紹介されていて、全員方向性は異なりますが建物好きなら面白いと思え作品ばかりでした。11人全員、どのような作品郡だったか簡単にご紹介。

[渡辺義雄]
この人は伊勢神宮をテーマにした作品が並んでいて、いくつか見覚えがありました。「内宮東宝殿」という作品(★こちらで観られます)では立派な茅葺き屋根に丸太を並べたような装飾と、アンテナのように伸びた棟など独特の建築様式となっている様子がよく分かります。伊勢神宮の威容を感じさせる作品でした。他にも視点の面白さを感じる作品などもあります。
 参考記事:日本の美 伊勢神宮-写真 渡辺義雄- (FUJIFILM SQUARE フジフイルム スクエア)

[二川幸夫]
今回はこの人の写真が観たくてこの展示に行ったと言っても過言ではないw 以前に観た展示を今でも思い出せるくらい気に入ったので、久々に観る機会ができて嬉しかったです。
 参考記事:二川幸夫・建築写真の原点 日本の民家一九五五年 (パナソニック 汐留ミュージアム)
特に面白いのは「四国路 愛媛県南宇和郡西海町、外泊集落」という写真で、段々に並ぶ瓦屋根の家々を撮ったもので、石垣に囲まれた低層の建物の堅牢さと自然との戦いの厳しさを感じさせます。それ以外にも日本各地の風土や特産品に合わせて作った民家の写真が並んでいて、少数ながらも楽しめました。

[村井修]
この方は建築家の丹下健三が設計した写真が並ぶコーナーでした。「山梨文化会館」などは円筒の柱が目を引き、手前のいかにも昭和の大衆食堂といった感じの建物と対比すると近未来的でどっしりとした迫力があります。「メタボリズム」という建築運動の作品なのですが、ちょっと異様さもって独特の魅力があります。
 参考記事:メタボリズムの未来都市展 (森美術館)

[石元泰博]
この方は桂離宮を撮った写真がならんでいました。「中書院東庭から楽器の間ごしに新御殿を望む」(★こちらで観られます)という屋外の様子や、「伝い廊下南から北方を望む」という屋内の写真などが並び、いずれも縦・横・斜めに直線が連なり複雑な幾何学模様を作り上げています。それが何ともリズミカルで、落ち着きと気品を生んでいるように思えました。やはり日本人の美意識は桂離宮に極まるのかも。

[原直久] ★こちらで観られます
この方はイタリア山岳丘状都市を撮った写真が並んでいました。山と建物が一体化したような光景となっていて、軍事的な要塞の役割やマラリアなどの疫病から守る為にそうした造りとなったようです。「クラーコ、イタリア、1990」という作品では丘の上に家々がひしめいていて、丘の下にはオリーブの木々が並ぶというイタリアならではの風景で、こちらも密集具合が面白かったです。

[北井一夫]
この方はドイツ表現派の建物の写真が並んでいました。ドイツ表現派は20世紀初頭の建築様式で、主観的・有機的なデザインを基調とし、ガラスやコンクリートなどの素材の特徴を活かすという様式となっています。有名なところではブルーノ・タウトなんかが属していたようです。ここで気に入ったのは「円形教会 西ドイツ、エッセン」という写真で、まるでデコレーションケーキかUFOのように同心円状に段々に積み上がった教会となっています。上の方は全面ガラス張りで格子状に並ぶ様子などは確かにドイツ表現派の美学に沿っているように思えました。有機的と言うよりかはカッチリしてる気はしますがw
 参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2018年11月)

[奈良原一高]
この方は軍艦島の写真が並んでいました。「緑なき島-軍艦島:軍艦島全景」という作品は軍艦島を横から眺めた全景となっていて、本当に軍艦が浮かんでいるようなシルエットとなっています。他にも軍艦島の当時の生活の様子の写真が結構あって、子どもたちが遊ぶ様子など 今では観ることの出来ない光景も多めでした。軍艦島のイメージとのギャップも含めて魅力的な題材です。

[宮本隆司] ★こちらで観られます
この方はかつて香港にあった九龍城の写真が並んでいました。砦のような異様な圧迫感のある外観や、めちゃくちゃに建物がくっつきあっている様子、中の人たちの生活、複雑に絡み合う配線や無数に立つアンテナなどなど 九龍城のカオスな世界が眼の前に広がってきました。この無秩序っぷりが異世界っぽくて心引かれるんですよねw
 参考記事:東京スケイプ Into the City (世田谷美術館)

[細江英公] 
この方はアントニオ・ガウディのグエル公園やサグラダファミリア、カサ・ミラなどを撮った写真が並んでいました。特に「サグラダ・ファミリア #179」(★こちらで観られます)は正面から見上げる構図となっていて、複雑な装飾と共に荘厳かつ圧倒的な雰囲気となっています。…これはラスボスがいるダンジョンに違いないw 一方でカサ・ミラは柔らかい雰囲気で、抽象絵画のようにトリミングした写真が並んでいました。いずれも一度はバルセロナで実物が観てみたいです。

[柴田敏雄]
この方はカラー写真で、ローラン・ネイ(現代の建築家。2012年には日本の事務所もできた)の作品を撮ったものが並んでいました。植物や昆虫を思わせるようなフォルムの建物が多いかな。そのデザインも面白いのですが、写真もそうした建物をトリミングしたり リズムを感じさせるような部分を撮っていたりして視点が楽しめました。いずれも近未来的で洗練されたデザインです。

[瀧本幹也]
この方もカラー写真があって、ル・コルビュジエの建築を撮っていました。色とりどりで建物の一部をトリミングして撮った感じなので一見すると抽象絵画のようにも思えるかな。他にもグリッド状の窓ごしに見えるぼやけた風景など、こちらも普通の人では思いもつかないような視点が面白かったです。


ということで、様々な建築様式と写真家の感性の両方が楽しめる内容でした。点数は結構あるのですが、もっと観たいと思わせる写真ばかりで満足度高めです。この後、地下のマイケル・ケンナ展も観たのですが、そちらもかなり良かったのでセットで観るのが良いかも。ぐるっとパスなら提示で観られるのもお得でした。


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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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