Archive | 2019年03月
10日ほど前の日曜日に六本木の森アーツセンターギャラリーで「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」を観てきました。非常に点数が多く見どころもたっぷりでしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
新・北斎展 HOKUSAI UPDATED
【公式サイト】
https://hokusai2019.jp/
https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/hokusai/index.html
【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2019年1月17日(木)~ 3月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
3時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
非常に混んでいて下のエレベーター待ちで30分、会場の前で10分ほど並びました。また、中に入ってもどこも行列しているので観るのに3時間以上かかりました。これから見る予定の方は一層に混んでいると思われますので十分に時間を取ってスケジュールすることをオススメします。
さて、この展示は日本で最も有名な絵師である葛飾北斎を時系列的に6期に分けて全480点(入れ替えあり)の大ボリュームで紹介する内容となっています。葛飾北斎というのは46~50歳頃の画号にすぎず 画風も画号もコロコロ変えた(50くらいある)のですが、今回はその変遷の様子などもよく分かるようになっています。また、版画の浮世絵だけでなく直筆の肉筆画も多いのが特徴で、これだけ揃いの良い展示は久々の機会だと思います。詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1章:春朗期─デビュー期の多彩な作品>
まずはデビュー期のコーナーです。後に葛飾北斎となる幼名:時太郎は1760年に江戸に生まれ、6歳の頃から絵を描き始め12歳のときには貸本屋で働くようになり、14歳で版木彫りの仕事をするようになりました。そして19歳の頃に勝川春章に入門し、勝川春朗の号を授けられてデビューしました。その後15年ほど様々な題材を描いていましたが、1792年に師が没すると叢春朗(くさむらしゅんろう)を用いて画風も変化していきます。この章ではそうした初期の作品が並んでいました。
参考記事:すみだ北斎美術館の案内 (常設 2017年12月)
5 葛飾北斎 「五代目市川団十郎 あげまきのすけ六」
こちらは役者絵で、傘を持った五代目市川団十郎を描いた作品です。色は淡く輪郭がよく分かるのですが、筆致は細かいものの まだぎこちなさもあって、発展途上の頃と言った感じでしょうか。師匠の勝川春章の作風にも似ていて影響の強さが見て取れます。「春朗画」の印もあって初期作品の画風がよく分かる作品でした。
この辺は同様の色が薄めの版画作品が並んでいました。題材は様々で、美人画や風俗画なんかもあります。
16 葛飾北斎 「花くらべ弥生の雛形」
こちらは3人の遊女を描いた作品で、1人はまだ幼くデビュー前の少女です。2人は等身がスラリとして艶やかな雰囲気があり、輪郭もだいぶ軽やかになっていて流麗な印象を受けます。解説によると、これは鳥居清長の作風から影響を受けているようです。確かに似ていて他の流派からも積極的に学んでいた様子が伺えました。(それが原因で破門になったりしたわけですが…w) ちなみに勝川派の中堅になっても生活は苦しかったようで、唐辛子や暦を売る副業で生活していたなんてエピソードも紹介されていました。
55 葛飾北斎 「鎌倉勝景図巻」
こちらは初公開の巻物の作品で、現在の横浜の磯子あたりから江ノ島にかけての風景を地名と俳句を添えて9mに渡って描いています。緻密で落ち着いた画風となっていて、大仏や建長寺といった現代でも人気の名所も見受けられるのが面白いかな。この作品では叢春朗となっていて、勝川派と袂別した後の作品のようでした。なお、勝川派にいた頃、兄弟子に絵の拙さについて からかわれて絵を破り捨てられたことがあったそうで、それに奮起したことで絵が上達したと後に語っていたようです。兄弟子との不仲も勝川派を離脱した一因のようです…。
この近くのケースには黄表紙がいくつか並んでいました。
<第2章:宗理期─宗理様式の展開>
続いては主に「宗理」を名乗っていた時期のコーナーです。1794年に勝川派から離脱した後、琳派の宗理の名を受け継いで画風が一気に変わったようです。この時期は浮世絵制作は減り、摺物へと軸足を移していて肉筆も多く手がけて様々な描法を用いているようです。特に瓜実顔の女性は「宗理風」と呼ばれるスタイルとしてこの時期を代表する画風となっています。そして1798年には宗理の画号を門人の宗二に譲り「北斎辰正」へと改号、さらに「画狂人北斎」へと次々に号を変えています。宗理様式の作画は1805年ころまで続いたそうで、この時期には西洋風の画風も取り込んだりしたようです。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
79 葛飾北斎 「ぎやうとくしほはまよりのぼとのひかたをのぞむ」
こちらは海岸を描いた作品で、岩や家が描かれています。遠近感があり陰影がつけられているなど、西洋の技法を取り入れた風景画に見えるかな。水平線が低めで広々とした雰囲気が感じられ、これまでの作品とはだいぶ異なる画風となっているのがよく分かりました。
他にも同様に西洋技法の遠近法が使われた作品がいくつかあり、緻密で写実的なものもあります。
この辺は読本(よみほん)が並んでいました。曲亭馬琴(北斎と袂別後に南総里見八犬伝を書いた滝沢馬琴)とのコンビで人気を博していたのですが、曲亭馬琴の指示に従わない挿絵を描くことがしばしばあったようで、ある時 草履を咥えた人物を描くようにとの指示を鼻で笑って取り合わず、それが原因で絶交になったというエピソードがあります。タイプの違う天才同士ではこうなるのも致し方無いのかもw 北斎は破天荒エピソードだらけですw
117 葛飾北斎 「玉巵弾琴図」
こちらは2幅対の肉筆掛け軸で、右幅には玉巵という西王母(不老長寿の仙女)の娘が描かれ、左幅には玉巵の愛用の琴を持った雲龍が描かれています。この玉巵は瓜実顔をしていて、典型的な宗理様式となっているようです。一方の龍は琴を抱きかかえるようにしながら厳しい表情をしていて、周りに飛び散った墨と共に迫力が感じられました。中々見事な肉筆です。
この辺は肉筆掛け軸がずらりと並んでいました。これだけ集めるとは北斎展の決定版みたいな感じ。
118 葛飾北斎 「美人愛猫図」
こちらも肉筆の掛け軸で、猫を抱えた着物の女性が描かれています。真っ白な肌をしていて色っぽく、8等身くらいあるすらっとしたプロポーションも優美です。この女性も瓜実顔の富士額で、ちょっと俯いているのも宗理様式の典型のようです。首の辺りには中の赤い衣が出ていて、白い肌と共に艶やかなアクセントとなっていました。
その後は注文に応じて作られる摺物のコーナーとなっていました。津和野藩伝来の摺物が全点公開されるのは今回が初の機会だそうです。ポストカードくらいからノートサイズまで大きさも様々で、絵暦なんかが多いかな。小松引きなど季節を感じさせる主題などを描いていました。
その先の休憩スペースでは今回の展示の核となっている永田コレクションの永田生慈 氏に関する映像が流れていました。北斎研究の第一人者で、太田記念美術館の副館長などもされていた方です。晩年に島根県立美術館に多くのコレクションを寄贈し、惜しくも去年(2018年)に亡くなってしまいました。これだけ北斎について詳しく知ることができるのは永田氏のおかげですね。
葛飾北斎 「しん板くミあけとうろふやしんミセのづ」

こちらは休憩スペースにあった撮影可能な複製品。組上絵というパーツを組み立てて作る作品です。かなり出来が良いのは計算しつくされている為かな。北斎はこうした組上絵も10種類ほど手がけていたようです。
ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。非常に混んでいて観るのが大変でしたが、永田コレクションを中心とした貴重な作品の数々を観ることができました。時系列になっているのも理解しやすいし、北斎を詳しく知る良い機会だと思います。後編は特に有名な浮世絵や貴重な肉筆画などもありましたので次回は残りの章をご紹介の予定です。
→ 後編はこちら

【展覧名】
新・北斎展 HOKUSAI UPDATED
【公式サイト】
https://hokusai2019.jp/
https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/hokusai/index.html
【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2019年1月17日(木)~ 3月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
3時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
非常に混んでいて下のエレベーター待ちで30分、会場の前で10分ほど並びました。また、中に入ってもどこも行列しているので観るのに3時間以上かかりました。これから見る予定の方は一層に混んでいると思われますので十分に時間を取ってスケジュールすることをオススメします。
さて、この展示は日本で最も有名な絵師である葛飾北斎を時系列的に6期に分けて全480点(入れ替えあり)の大ボリュームで紹介する内容となっています。葛飾北斎というのは46~50歳頃の画号にすぎず 画風も画号もコロコロ変えた(50くらいある)のですが、今回はその変遷の様子などもよく分かるようになっています。また、版画の浮世絵だけでなく直筆の肉筆画も多いのが特徴で、これだけ揃いの良い展示は久々の機会だと思います。詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1章:春朗期─デビュー期の多彩な作品>
まずはデビュー期のコーナーです。後に葛飾北斎となる幼名:時太郎は1760年に江戸に生まれ、6歳の頃から絵を描き始め12歳のときには貸本屋で働くようになり、14歳で版木彫りの仕事をするようになりました。そして19歳の頃に勝川春章に入門し、勝川春朗の号を授けられてデビューしました。その後15年ほど様々な題材を描いていましたが、1792年に師が没すると叢春朗(くさむらしゅんろう)を用いて画風も変化していきます。この章ではそうした初期の作品が並んでいました。
参考記事:すみだ北斎美術館の案内 (常設 2017年12月)
5 葛飾北斎 「五代目市川団十郎 あげまきのすけ六」
こちらは役者絵で、傘を持った五代目市川団十郎を描いた作品です。色は淡く輪郭がよく分かるのですが、筆致は細かいものの まだぎこちなさもあって、発展途上の頃と言った感じでしょうか。師匠の勝川春章の作風にも似ていて影響の強さが見て取れます。「春朗画」の印もあって初期作品の画風がよく分かる作品でした。
この辺は同様の色が薄めの版画作品が並んでいました。題材は様々で、美人画や風俗画なんかもあります。
16 葛飾北斎 「花くらべ弥生の雛形」
こちらは3人の遊女を描いた作品で、1人はまだ幼くデビュー前の少女です。2人は等身がスラリとして艶やかな雰囲気があり、輪郭もだいぶ軽やかになっていて流麗な印象を受けます。解説によると、これは鳥居清長の作風から影響を受けているようです。確かに似ていて他の流派からも積極的に学んでいた様子が伺えました。(それが原因で破門になったりしたわけですが…w) ちなみに勝川派の中堅になっても生活は苦しかったようで、唐辛子や暦を売る副業で生活していたなんてエピソードも紹介されていました。
55 葛飾北斎 「鎌倉勝景図巻」
こちらは初公開の巻物の作品で、現在の横浜の磯子あたりから江ノ島にかけての風景を地名と俳句を添えて9mに渡って描いています。緻密で落ち着いた画風となっていて、大仏や建長寺といった現代でも人気の名所も見受けられるのが面白いかな。この作品では叢春朗となっていて、勝川派と袂別した後の作品のようでした。なお、勝川派にいた頃、兄弟子に絵の拙さについて からかわれて絵を破り捨てられたことがあったそうで、それに奮起したことで絵が上達したと後に語っていたようです。兄弟子との不仲も勝川派を離脱した一因のようです…。
この近くのケースには黄表紙がいくつか並んでいました。
<第2章:宗理期─宗理様式の展開>
続いては主に「宗理」を名乗っていた時期のコーナーです。1794年に勝川派から離脱した後、琳派の宗理の名を受け継いで画風が一気に変わったようです。この時期は浮世絵制作は減り、摺物へと軸足を移していて肉筆も多く手がけて様々な描法を用いているようです。特に瓜実顔の女性は「宗理風」と呼ばれるスタイルとしてこの時期を代表する画風となっています。そして1798年には宗理の画号を門人の宗二に譲り「北斎辰正」へと改号、さらに「画狂人北斎」へと次々に号を変えています。宗理様式の作画は1805年ころまで続いたそうで、この時期には西洋風の画風も取り込んだりしたようです。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
79 葛飾北斎 「ぎやうとくしほはまよりのぼとのひかたをのぞむ」
こちらは海岸を描いた作品で、岩や家が描かれています。遠近感があり陰影がつけられているなど、西洋の技法を取り入れた風景画に見えるかな。水平線が低めで広々とした雰囲気が感じられ、これまでの作品とはだいぶ異なる画風となっているのがよく分かりました。
他にも同様に西洋技法の遠近法が使われた作品がいくつかあり、緻密で写実的なものもあります。
この辺は読本(よみほん)が並んでいました。曲亭馬琴(北斎と袂別後に南総里見八犬伝を書いた滝沢馬琴)とのコンビで人気を博していたのですが、曲亭馬琴の指示に従わない挿絵を描くことがしばしばあったようで、ある時 草履を咥えた人物を描くようにとの指示を鼻で笑って取り合わず、それが原因で絶交になったというエピソードがあります。タイプの違う天才同士ではこうなるのも致し方無いのかもw 北斎は破天荒エピソードだらけですw
117 葛飾北斎 「玉巵弾琴図」
こちらは2幅対の肉筆掛け軸で、右幅には玉巵という西王母(不老長寿の仙女)の娘が描かれ、左幅には玉巵の愛用の琴を持った雲龍が描かれています。この玉巵は瓜実顔をしていて、典型的な宗理様式となっているようです。一方の龍は琴を抱きかかえるようにしながら厳しい表情をしていて、周りに飛び散った墨と共に迫力が感じられました。中々見事な肉筆です。
この辺は肉筆掛け軸がずらりと並んでいました。これだけ集めるとは北斎展の決定版みたいな感じ。
118 葛飾北斎 「美人愛猫図」
こちらも肉筆の掛け軸で、猫を抱えた着物の女性が描かれています。真っ白な肌をしていて色っぽく、8等身くらいあるすらっとしたプロポーションも優美です。この女性も瓜実顔の富士額で、ちょっと俯いているのも宗理様式の典型のようです。首の辺りには中の赤い衣が出ていて、白い肌と共に艶やかなアクセントとなっていました。
その後は注文に応じて作られる摺物のコーナーとなっていました。津和野藩伝来の摺物が全点公開されるのは今回が初の機会だそうです。ポストカードくらいからノートサイズまで大きさも様々で、絵暦なんかが多いかな。小松引きなど季節を感じさせる主題などを描いていました。
その先の休憩スペースでは今回の展示の核となっている永田コレクションの永田生慈 氏に関する映像が流れていました。北斎研究の第一人者で、太田記念美術館の副館長などもされていた方です。晩年に島根県立美術館に多くのコレクションを寄贈し、惜しくも去年(2018年)に亡くなってしまいました。これだけ北斎について詳しく知ることができるのは永田氏のおかげですね。
葛飾北斎 「しん板くミあけとうろふやしんミセのづ」

こちらは休憩スペースにあった撮影可能な複製品。組上絵というパーツを組み立てて作る作品です。かなり出来が良いのは計算しつくされている為かな。北斎はこうした組上絵も10種類ほど手がけていたようです。
ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。非常に混んでいて観るのが大変でしたが、永田コレクションを中心とした貴重な作品の数々を観ることができました。時系列になっているのも理解しやすいし、北斎を詳しく知る良い機会だと思います。後編は特に有名な浮世絵や貴重な肉筆画などもありましたので次回は残りの章をご紹介の予定です。
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今日は写真多めです。3週間ほど前の金曜日の夜に森美術館で「森美術館15周年記念展 六本木クロッシング2019展:つないでみる 日本の現代アートの今を見せたい!」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
森美術館15周年記念展
六本木クロッシング2019展:つないでみる
日本の現代アートの今を見せたい!
【公式サイト】
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2019/index.html
【会場】森美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2019年2月9日(土)~ 5月26日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
平日の夜ということもあって快適に鑑賞することができました。この時間って外国人の方が多いくらいかも
さて、この展示は2004年から3年毎に行われている「六本木クロッシング」の第6回目で、今回は1970~80年代生まれを中心とした日本のアーティスト25組を紹介する内容となっていました。先述の通り撮影可能となっていましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
飯川雄大 「デコレータークラブ―ピンクの猫の小林さん―」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
入口にいた大きなピンクの猫!w この作品を写真に撮ろうとするとどうやっても全体像が撮れないようになっているようで、真実や全体を俯瞰することの難しさや、写真で本当の状況や感動を伝える無意味さを提示しているとのことです。入口でぬっと顔を出しているのが可愛くて、みんな記念撮影に夢中でしたが割とシリアスなテーマですw
土井樹+小川浩平+池上高志+石黒浩×ジュスティーヌ・エマール 「ソウル・シフト」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは池上高志 氏や石黒浩 氏といったロボット・人工生命の研究者との「生命とは何か」をテーマとした作品。オルタ1とオルタ2という2体のロボットが会話するような映像で、SFの世界が現実になったような面白さがありました。そのうち、人権はどこまで認めるかとか哲学の話になるかもしれませんね。
青野文昭 「なおす・復元-沖縄の村はずれで破棄された車の復元-『GUN』2018」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
破棄された自動車を使った作品。途中で薄く消えかかって見えているのは途中から絵になっているためです。どこまでが実体か近寄っても中々判別が難しいのが面白い。
青野文昭 「なおす・代用・合体・連置-ベンツの復元から-東京/宮城(奥松島・里浜貝塚の傍らに埋まる車より)2018」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは貝塚に埋まっていたという車。歴史に埋もれる点では貝塚と似たようなものかも。こちらも家具と一体化するような修復となっていて、何度観ても不思議でした。
裏側はこんな感じ


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
ご丁寧にハンドルを持ったドライバーまでいますw 他にも2人ほど埋まっているように描かれていて、こちらもシュールな感じでした。
山内祥太 「ロキ、黄昏」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは北欧神話のロキの「城壁作り」の物語をクレイアニメーションで作ったという作品。この半球のスクリーンが世界全体を象徴しているのだとか。手間のかかるクレイアニメーションが15分近くも続くのにも驚き。2ヶ月半かけて制作されているとのことでした。
林千歩 「人工的な恋人と本当の愛 -Artificial Lover & True Love-」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは部屋全体が作品のようになっていました。ロボットが切ない歌を歌って愛を語らう2人が映されています。近い将来にこういうことも本当に起こり得るのではないか?と思いながら観ていました。最近は人間との境目がどんどん無くなってきてる感じ。
目 「景体」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
目というのは荒神明香 氏・南川憲二 氏・増井宏文 氏を中心とするチームらしく、部屋に巨大な海のような作品を展示していました。写真だけみるとうねる海が目の間に迫ってる感じw スケールと発想に驚く作品でした。
磯谷博史 「母親の子、祖母の孫」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは美術館の柱に2600mもの真鍮製のチェーンを巻き付けた作品。右の写真はそのアップです。チェーンの一部は作者の祖母と母親のネックレスによって繋がれているようですが、この中から探すのはかなり至難で諦めましたw 繋がりや時間の流れなどを表現しているようでした。
花岡伸宏 「手」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは彫刻作品で、右は一部をアップにしたものです。手が柱から生えているようなちょっと不気味な感じだけど、妙な艶めかしさも感じられました。意図はちょっと分かりませんでしたが、近くには同様に謎の人体像などが並んでいました。
毒山凡太朗 「君之代-斉唱-」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらはドキュメンタリーのような映像作品で、台湾の老人たちに日本統治時代の様子を語ってもらうというものです。会場にちょっとたどたどしい日本語で蛍の光が流れていると思ったら、このような映像となっていました。統治時代の悪い部分もある一方、割と懐かしんでいる様子なんかも観られて、貴重なインタビューに思えました。彼らも終戦によって良くも悪くも一気に状況が変わったようです。
アンリアレイジ 「A LIVE UN LIVE」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらはフラッシュ撮影可能な作品。光が当たると色鮮やかになる仕掛けで、パウチモーターと分光素材で出来ているそうです。まずこれは通常時。マネキンが4つあるのは四季を表しているとのことですが、この状態だと全部同じに見えます。
アンリアレイジ 「A LIVE UN LIVE」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
フラッシュを当てるとこんな感じ。それぞれ異なる色合いとなっていて、近未来的な斬新さとなっていました。中々カッコいいのでイベントとかで流行るかも。
竹川宣彰 「猫オリンピック:開会式」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
今回特に面白かったのがこちら。猫のオリンピックをテーマにした作品群で、スタジアムにはぎっしり猫が集まっています。
竹川宣彰 「猫オリンピック:開会式」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
アップにするとこんな感じ。陶器の猫が1300弾き以上も並んでいます。みんな反時計回りに並んでいて渦巻くような圧巻の光景です。可愛らしいですが、この作品は愛猫のトラジロウが交通事故で亡くなったのがきっかけで作られたそうで、この中にはトラジロウも含まれているのだとか。
竹川宣彰 「猫オリンピックのポスター」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
ポスターだってあります。 ちょっと落書きみたいに描かれているのがユルくて可愛いです。 猫の新体操はじゃれているようにしか見えないw
この近くにはマイケル・ジャクソンが赤羽の児童施設を訪れたエピソードをテーマにした作品なんかもありました。そこは撮影禁止なのが残念。
津田道子 「王様は他人を記録するが」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは『鏡の国のアリス』をモチーフにした作品で、市松模様の床はチェス盤に見立てています。カメラがキング、モニタがクイーン、フレームがナイト、壁がルーク、鏡がポーン(アリス)だそうで、実際にここを歩くこともできて鏡やモニタに自分の姿が映されます。上にあるのは小説に出てくる詩を逆さまにくり抜いたものでそれも壁に逆さに写っているようでした。鏡が無いものもあったりして、デジタル技術を使ったミラーハウス的な面白さがありました。
ヒスロム 「いってかえって-浮力4」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは加藤至 氏、星野文紀 氏、吉田祐 氏の三人のグループの作品。これは建築物の巨大な貯水池にゴムボートで侵入したという体験を題材としているそうで、その場に木材や建築資材を放置したようです。映像もあってその時の記録のようでした。あまり褒められた行動じゃないけど異世界的な面白さがあって見入ってしまいましたw
ということで、今回も個性的な発想の作品が並んでいました。いずれもまだまだ活躍が予想されるアーティストたちなので、まさに現在進行系のアートを体験できる展示だと思います。現代アートがお好きな方にオススメの展示です。
おまけ:
今回のMOMコレクションは1点のみでしたが、非常に面白かったので合わせてご紹介。
【展覧名】
MAMコレクション009 米谷 健+ジュリア
【公式サイト】
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection009/index.html
【会期】2019年2月9日(土)~ 5月26日(日)
米谷 健+ジュリア 「生きものの記録」

こちらは暗闇の部屋の中で光る巨大なアリ型のインスタレーションです。これは大地掘り起こすと緑のアリが現れて世界を踏み潰し破壊するというアボリジニの神話「緑アリの教え」をテーマにしているそうですが、1970年代にアボリジニの反対を押し切ってウラン鉱山を開発したそうで、この作品には反核の意味も込められているのだとか。そう言われるとチェレンコフ光を表しているように思えてきますね…
この展示は六本木クロッシングとセットで観られるので、こちらも合わせて楽しめると思います。

【展覧名】
森美術館15周年記念展
六本木クロッシング2019展:つないでみる
日本の現代アートの今を見せたい!
【公式サイト】
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2019/index.html
【会場】森美術館
【最寄】六本木駅
【会期】2019年2月9日(土)~ 5月26日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
平日の夜ということもあって快適に鑑賞することができました。この時間って外国人の方が多いくらいかも
さて、この展示は2004年から3年毎に行われている「六本木クロッシング」の第6回目で、今回は1970~80年代生まれを中心とした日本のアーティスト25組を紹介する内容となっていました。先述の通り撮影可能となっていましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
飯川雄大 「デコレータークラブ―ピンクの猫の小林さん―」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
入口にいた大きなピンクの猫!w この作品を写真に撮ろうとするとどうやっても全体像が撮れないようになっているようで、真実や全体を俯瞰することの難しさや、写真で本当の状況や感動を伝える無意味さを提示しているとのことです。入口でぬっと顔を出しているのが可愛くて、みんな記念撮影に夢中でしたが割とシリアスなテーマですw
土井樹+小川浩平+池上高志+石黒浩×ジュスティーヌ・エマール 「ソウル・シフト」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは池上高志 氏や石黒浩 氏といったロボット・人工生命の研究者との「生命とは何か」をテーマとした作品。オルタ1とオルタ2という2体のロボットが会話するような映像で、SFの世界が現実になったような面白さがありました。そのうち、人権はどこまで認めるかとか哲学の話になるかもしれませんね。
青野文昭 「なおす・復元-沖縄の村はずれで破棄された車の復元-『GUN』2018」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
破棄された自動車を使った作品。途中で薄く消えかかって見えているのは途中から絵になっているためです。どこまでが実体か近寄っても中々判別が難しいのが面白い。
青野文昭 「なおす・代用・合体・連置-ベンツの復元から-東京/宮城(奥松島・里浜貝塚の傍らに埋まる車より)2018」


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは貝塚に埋まっていたという車。歴史に埋もれる点では貝塚と似たようなものかも。こちらも家具と一体化するような修復となっていて、何度観ても不思議でした。
裏側はこんな感じ


この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
ご丁寧にハンドルを持ったドライバーまでいますw 他にも2人ほど埋まっているように描かれていて、こちらもシュールな感じでした。
山内祥太 「ロキ、黄昏」


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こちらは北欧神話のロキの「城壁作り」の物語をクレイアニメーションで作ったという作品。この半球のスクリーンが世界全体を象徴しているのだとか。手間のかかるクレイアニメーションが15分近くも続くのにも驚き。2ヶ月半かけて制作されているとのことでした。
林千歩 「人工的な恋人と本当の愛 -Artificial Lover & True Love-」


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こちらは部屋全体が作品のようになっていました。ロボットが切ない歌を歌って愛を語らう2人が映されています。近い将来にこういうことも本当に起こり得るのではないか?と思いながら観ていました。最近は人間との境目がどんどん無くなってきてる感じ。
目 「景体」


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目というのは荒神明香 氏・南川憲二 氏・増井宏文 氏を中心とするチームらしく、部屋に巨大な海のような作品を展示していました。写真だけみるとうねる海が目の間に迫ってる感じw スケールと発想に驚く作品でした。
磯谷博史 「母親の子、祖母の孫」



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こちらは美術館の柱に2600mもの真鍮製のチェーンを巻き付けた作品。右の写真はそのアップです。チェーンの一部は作者の祖母と母親のネックレスによって繋がれているようですが、この中から探すのはかなり至難で諦めましたw 繋がりや時間の流れなどを表現しているようでした。
花岡伸宏 「手」



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こちらは彫刻作品で、右は一部をアップにしたものです。手が柱から生えているようなちょっと不気味な感じだけど、妙な艶めかしさも感じられました。意図はちょっと分かりませんでしたが、近くには同様に謎の人体像などが並んでいました。
毒山凡太朗 「君之代-斉唱-」


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こちらはドキュメンタリーのような映像作品で、台湾の老人たちに日本統治時代の様子を語ってもらうというものです。会場にちょっとたどたどしい日本語で蛍の光が流れていると思ったら、このような映像となっていました。統治時代の悪い部分もある一方、割と懐かしんでいる様子なんかも観られて、貴重なインタビューに思えました。彼らも終戦によって良くも悪くも一気に状況が変わったようです。
アンリアレイジ 「A LIVE UN LIVE」


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こちらはフラッシュ撮影可能な作品。光が当たると色鮮やかになる仕掛けで、パウチモーターと分光素材で出来ているそうです。まずこれは通常時。マネキンが4つあるのは四季を表しているとのことですが、この状態だと全部同じに見えます。
アンリアレイジ 「A LIVE UN LIVE」


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フラッシュを当てるとこんな感じ。それぞれ異なる色合いとなっていて、近未来的な斬新さとなっていました。中々カッコいいのでイベントとかで流行るかも。
竹川宣彰 「猫オリンピック:開会式」


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今回特に面白かったのがこちら。猫のオリンピックをテーマにした作品群で、スタジアムにはぎっしり猫が集まっています。
竹川宣彰 「猫オリンピック:開会式」


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アップにするとこんな感じ。陶器の猫が1300弾き以上も並んでいます。みんな反時計回りに並んでいて渦巻くような圧巻の光景です。可愛らしいですが、この作品は愛猫のトラジロウが交通事故で亡くなったのがきっかけで作られたそうで、この中にはトラジロウも含まれているのだとか。
竹川宣彰 「猫オリンピックのポスター」


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ポスターだってあります。 ちょっと落書きみたいに描かれているのがユルくて可愛いです。 猫の新体操はじゃれているようにしか見えないw
この近くにはマイケル・ジャクソンが赤羽の児童施設を訪れたエピソードをテーマにした作品なんかもありました。そこは撮影禁止なのが残念。
津田道子 「王様は他人を記録するが」


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こちらは『鏡の国のアリス』をモチーフにした作品で、市松模様の床はチェス盤に見立てています。カメラがキング、モニタがクイーン、フレームがナイト、壁がルーク、鏡がポーン(アリス)だそうで、実際にここを歩くこともできて鏡やモニタに自分の姿が映されます。上にあるのは小説に出てくる詩を逆さまにくり抜いたものでそれも壁に逆さに写っているようでした。鏡が無いものもあったりして、デジタル技術を使ったミラーハウス的な面白さがありました。
ヒスロム 「いってかえって-浮力4」


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こちらは加藤至 氏、星野文紀 氏、吉田祐 氏の三人のグループの作品。これは建築物の巨大な貯水池にゴムボートで侵入したという体験を題材としているそうで、その場に木材や建築資材を放置したようです。映像もあってその時の記録のようでした。あまり褒められた行動じゃないけど異世界的な面白さがあって見入ってしまいましたw
ということで、今回も個性的な発想の作品が並んでいました。いずれもまだまだ活躍が予想されるアーティストたちなので、まさに現在進行系のアートを体験できる展示だと思います。現代アートがお好きな方にオススメの展示です。
おまけ:
今回のMOMコレクションは1点のみでしたが、非常に面白かったので合わせてご紹介。
【展覧名】
MAMコレクション009 米谷 健+ジュリア
【公式サイト】
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection009/index.html
【会期】2019年2月9日(土)~ 5月26日(日)
米谷 健+ジュリア 「生きものの記録」

こちらは暗闇の部屋の中で光る巨大なアリ型のインスタレーションです。これは大地掘り起こすと緑のアリが現れて世界を踏み潰し破壊するというアボリジニの神話「緑アリの教え」をテーマにしているそうですが、1970年代にアボリジニの反対を押し切ってウラン鉱山を開発したそうで、この作品には反核の意味も込められているのだとか。そう言われるとチェレンコフ光を表しているように思えてきますね…
この展示は六本木クロッシングとセットで観られるので、こちらも合わせて楽しめると思います。
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前回ご紹介した常設展を観る前に埼玉近代美術館で「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」を観てきました。

【展覧名】
インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=386
【会場】埼玉近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年2月2日 (土) ~ 3月24日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
会期末が近いこともあって結構混んでいて場所によっては人だかりができていました。
さて、この展示は20世紀以降の国内外の建築において完成に至らなかった設計・計画を取り上げ、それらを「インポッシブル・アーキテクチャー」と称して紹介するものです。わざわざインポッシブルに打ち消し線が入っているのですが、これは「インポッシブル」が不可能を意味するのではなく、逆説的に建築の極限の可能性や潜在力を探るという前向きな意味として使っている為のようです。40人の建築家・美術家の図案や模型などが並んでいましたので、詳しくは気に入った作品と共に振り返ってみようと思います。
ウラジーミル・タトリン 「『第3インターナショナル記念塔』(教育人民委員会造形芸術部門、1920)」
こちらは高さ400mにも及ぶ螺旋と斜塔を組み合わせたような記念塔で、模型が置かれていました。円筒形・三角錐・円柱が入れ子のように組み合わされているのですが、それぞれ
円筒…1年で1周
三角錐…1ヶ月で1周
円柱…1日で1周
のペースで回転する仕掛けも考えられていたようです。近くには長倉威彦 氏による実現したらこうなっていたというバーチャル映像もあり、かなりリアルに表されていました。ロシア・アヴァンギャルドなんかを思い起こすような幾何学性が圧倒的かつちょっと独特の怖さがありますw 見るからに難易度の高そうな建物だけにこんな巨大な塔が出来ていたら世界的な観光地になってたと思えました。
この辺にはマレーヴィチによるシュプレマティズムを建築にしたような作品もありました。
参考記事:ロシアの夢 1917-1937 革命から生活へ-ロシア・アヴァンギャルドのデザイン (埼玉県立近代美術館)
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ 「「摩天楼」『曙光』第4号」
こちらはガラス張りの高層ビルで、20階建ての高さ80mの高層住宅として設計したものです。反射の効果などを計算して単調さを避ける工夫をしているそうで、上から見ると複雑な星型のような形をしています。その斬新さ故にコンペで落選してしまったそうで、これは実現してたら相当に時代を先取りした建物だったのではないかと思えました。
川喜田煉七郎 「霊楽堂(ある音楽礼拝堂)」
こちらは円形が連なり 周りも卵型の有形的な形状の区分けとなっている聖堂の草案や図面、模型などです。作者の川喜田煉七郎は学校(現在の東京工業大学)の教育が構造学に重きが置かれているのに反発して、傾倒していた山田耕筰が提唱する霊楽堂を構想したのがこの建物のようです。滑らかで音楽的なリズムのあるデザインとなっていて、内部のスケッチはゴシック聖堂と近未来を融合したような雰囲気がありました。これも1926年の作とは思えないほど未来感があって面白い作品でした。
川喜田煉七郎は他にもウクライナの劇場の応募案などもありました。
前川國男 「東京帝室博物館建築設計図案懸賞募集(前川國男案)」
こちらは現在の東京国立博物館の案として作られた設計です。前川國男の師匠であるル・コルビュジエの設計に似た近代的な印象を受けるかな。しかしこの建物の要件には日本風というのがあったようで、一見するとそれに沿っているようには思えません。現在のトーハクの本館は帝冠様式で分かりやすい和風っぽさがあるので、コンペに負けたのも分かる気がします。しかし、前川國男は帝冠様式のような表向きの和風ではなく、日本的とは何かを問うような建築を目指したようで、シンプルで幾何学的なこの案を落選覚悟であえて応募したようです。ピロティとかル・コルビュジエ風じゃないか?と思う部分もありますが、和室の幾何学性なんかを考えると この建物の美意識は確かに日本的でもあるように思えました。
黒川紀章 「東京計画1961-Helix 計画」
こちらはポスターにもなっている二重螺旋構造の建物で、巨大な模型や この建物からインスパイアされた映像作品などがありました。東京湾の都市計画として考案されたもので、とてつもなく大きな居住空間です。メタボリズムの思想で作られていて、DNAの螺旋構造に着想を得ているようでした。SFの世界のような豊かな発想で、スケールの大きな計画です。
参考記事:メタボリズムの未来都市展 (森美術館)
この辺には同じく黒川紀章の「農村都市計画」の模型もありました。農村に近未来都市が現れたような斬新さです。
長倉威彦 「マイケル・ウェブ ドライブ・イン・ハウジング」
こちらは建築と車が一体化するようなコンセプトの映像作品です。車をエレベーターに乗せて台車を取り外し、マンションの部屋の中に収納するような感じかな。車もPCのマウスみたいな形をしていてちょっと変わっています。こちらはユニットが動いたり変形することなどを提案した作品らしく、私には非常に面白いアイディアに思えました。車が自動運転になって電気自動車が電池代わりになったらこういう未来があるかもしれない…と思えました。
この近くにはソットサスのレトロ・フューチャー感あるドローイングなどもありました。
参考記事:倉俣史朗とエットレ・ソットサス (21_21 DESIGN SIGHT)
磯崎新 「東京都新都庁舎計画」
こちらもメタボリズム関連のビッグネームによる作品で、模型と平面図で都庁の計画が並んでいます。当時の都庁の要件は超高層の2棟だったらしいので、現在の都庁は分かりやすくそれを満たしているわけですが、ここでは低層の計画となっています(一応、23階建てらしい) 見た目はフジテレビの社屋に似ているかな。建物の上部に球体のホールのようなものがあります。また、建物の中央部分は高さ90m、長さ300mにも及ぶ吹き抜けとなっていて、それを区切りと思えば2棟にも見えました。こちらも発想のスケールが常人とは違って驚きでした。
この近くには安藤忠雄の「中之島プロジェクトⅡ-アーバンエッグ」の模型や平面図などもありました。
参考記事:安藤忠雄展―挑戦― (国立新美術館)
荒川修作+マドリン・ギンズ 「問われているプロセス/天命反転の橋」 ★こちらで観られます 1
こちらは長さ13mにも及ぶ模型が展示室に置かれていました。実物は140mになるフランスの橋の計画らしく、橋の途中に21の装置が並び「光の身体推量」とか「惑星の叫び」といった名前がつけられています。これらは障害物のようになっていて、くぐったり斜めに避けて歩く仕掛けのようです。中を見ると橋というよりはアスレチックのような複雑な構造で、サスケの障害物レースみたいな…w 解説によると、要請された行いの必然性に従うという拘束的な空間の体験をもたらすもので、それがポストユートピア時代の人間としての私達を形成し直すことになると解釈できるのではないかとのことでした。
藤本壮介 「ベトンハラ・ウォーターフロントセンター設計競技1等案」 ★こちらで観られます 2
こちらは螺旋が無数に渦巻く形の商業施設で、セルビアのコンペで1等を獲得したそうです。洗練されたフォルムが近未来的で、ガラス張りとなっているのが明るい印象となっています。これは何故インポッシブルなのか分かりませんが、実現したらお洒落スポットになること間違いなしですw
会田誠 「東京都庁はこうだった方が良かったのでは?の図」
山口晃 「都庁本案圖」
こちらはセットで展示されていて、原案を会田誠 氏が作って山口晃 氏が油彩・水彩で絵画化した感じです。都庁がこうだったら良かったのではないかとのことで、天守閣の石垣部分がビルの窓になっているなどパロディ的な雰囲気で、落書きっぽい楽しさがありますw それを日本画風にした山口晃 氏の作品は歴史的な絵みたいな感じも出ていたり、予算があれば可能みたいなコメントもあって、2人とも皮肉が効いているように思えました。
参考記事:会田誠展 天才でごめんなさい (森美術館)
ザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JV 「新国立競技場」
こちらは記憶に新しいオリンピックの新国立競技場の案で、予算面が合わないということでインポッシブルの仲間入りとなってしまいました。自転車のヘルメットみたいな流線型がカッコいいし、屋根の開閉のギミックも面白いので個人的にはこれでも良かったと思うんですけどね。
この辺りは予算が合わなかった作品が並び、会田誠 氏の予算があれば可能という皮肉がジワジワきますw
マーク・フォスター・ゲージ 「ヘルシンキ・グッゲンハイム美術館」 ★こちらで観られます 4
今回のポスターにもなっている作品で、これも財政上の理由で計画が破棄されてインポッシブルとなりました。これも実現したらこうだったという映像があり、遠くから観るとロボットが立っているような門のような不思議な形をしていますが近づくと昆虫やトカゲが組み合わさっているような生物の集合体のごとき彫刻が施されています。ちょっと不気味でこれはヤバイw 同じく102階建ての「西57丁目のタワー」という作品の映像ではビルに羽が生えたり聖堂のような彫刻が施されたビルが映されていました。FFのボスでも出てきそうなタワーですw
ということで、実現できたはずなのに…というものも含めて驚きの計画が目白押しとなっていました。各建築家の設計思想や実験性が強く出ていて、実現した建物よりも個性的な建物ばかりだと思います。この記事を書いている時点で残り1週間しかありませんが、建築好きは是非観ておきたい企画が光る展示でした。


【展覧名】
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=386
【会場】埼玉近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年2月2日 (土) ~ 3月24日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
会期末が近いこともあって結構混んでいて場所によっては人だかりができていました。
さて、この展示は20世紀以降の国内外の建築において完成に至らなかった設計・計画を取り上げ、それらを「インポッシブル・アーキテクチャー」と称して紹介するものです。わざわざインポッシブルに打ち消し線が入っているのですが、これは「インポッシブル」が不可能を意味するのではなく、逆説的に建築の極限の可能性や潜在力を探るという前向きな意味として使っている為のようです。40人の建築家・美術家の図案や模型などが並んでいましたので、詳しくは気に入った作品と共に振り返ってみようと思います。
ウラジーミル・タトリン 「『第3インターナショナル記念塔』(教育人民委員会造形芸術部門、1920)」
こちらは高さ400mにも及ぶ螺旋と斜塔を組み合わせたような記念塔で、模型が置かれていました。円筒形・三角錐・円柱が入れ子のように組み合わされているのですが、それぞれ
円筒…1年で1周
三角錐…1ヶ月で1周
円柱…1日で1周
のペースで回転する仕掛けも考えられていたようです。近くには長倉威彦 氏による実現したらこうなっていたというバーチャル映像もあり、かなりリアルに表されていました。ロシア・アヴァンギャルドなんかを思い起こすような幾何学性が圧倒的かつちょっと独特の怖さがありますw 見るからに難易度の高そうな建物だけにこんな巨大な塔が出来ていたら世界的な観光地になってたと思えました。
この辺にはマレーヴィチによるシュプレマティズムを建築にしたような作品もありました。
参考記事:ロシアの夢 1917-1937 革命から生活へ-ロシア・アヴァンギャルドのデザイン (埼玉県立近代美術館)
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ 「「摩天楼」『曙光』第4号」
こちらはガラス張りの高層ビルで、20階建ての高さ80mの高層住宅として設計したものです。反射の効果などを計算して単調さを避ける工夫をしているそうで、上から見ると複雑な星型のような形をしています。その斬新さ故にコンペで落選してしまったそうで、これは実現してたら相当に時代を先取りした建物だったのではないかと思えました。
川喜田煉七郎 「霊楽堂(ある音楽礼拝堂)」
こちらは円形が連なり 周りも卵型の有形的な形状の区分けとなっている聖堂の草案や図面、模型などです。作者の川喜田煉七郎は学校(現在の東京工業大学)の教育が構造学に重きが置かれているのに反発して、傾倒していた山田耕筰が提唱する霊楽堂を構想したのがこの建物のようです。滑らかで音楽的なリズムのあるデザインとなっていて、内部のスケッチはゴシック聖堂と近未来を融合したような雰囲気がありました。これも1926年の作とは思えないほど未来感があって面白い作品でした。
川喜田煉七郎は他にもウクライナの劇場の応募案などもありました。
前川國男 「東京帝室博物館建築設計図案懸賞募集(前川國男案)」
こちらは現在の東京国立博物館の案として作られた設計です。前川國男の師匠であるル・コルビュジエの設計に似た近代的な印象を受けるかな。しかしこの建物の要件には日本風というのがあったようで、一見するとそれに沿っているようには思えません。現在のトーハクの本館は帝冠様式で分かりやすい和風っぽさがあるので、コンペに負けたのも分かる気がします。しかし、前川國男は帝冠様式のような表向きの和風ではなく、日本的とは何かを問うような建築を目指したようで、シンプルで幾何学的なこの案を落選覚悟であえて応募したようです。ピロティとかル・コルビュジエ風じゃないか?と思う部分もありますが、和室の幾何学性なんかを考えると この建物の美意識は確かに日本的でもあるように思えました。
黒川紀章 「東京計画1961-Helix 計画」
こちらはポスターにもなっている二重螺旋構造の建物で、巨大な模型や この建物からインスパイアされた映像作品などがありました。東京湾の都市計画として考案されたもので、とてつもなく大きな居住空間です。メタボリズムの思想で作られていて、DNAの螺旋構造に着想を得ているようでした。SFの世界のような豊かな発想で、スケールの大きな計画です。
参考記事:メタボリズムの未来都市展 (森美術館)
この辺には同じく黒川紀章の「農村都市計画」の模型もありました。農村に近未来都市が現れたような斬新さです。
長倉威彦 「マイケル・ウェブ ドライブ・イン・ハウジング」
こちらは建築と車が一体化するようなコンセプトの映像作品です。車をエレベーターに乗せて台車を取り外し、マンションの部屋の中に収納するような感じかな。車もPCのマウスみたいな形をしていてちょっと変わっています。こちらはユニットが動いたり変形することなどを提案した作品らしく、私には非常に面白いアイディアに思えました。車が自動運転になって電気自動車が電池代わりになったらこういう未来があるかもしれない…と思えました。
この近くにはソットサスのレトロ・フューチャー感あるドローイングなどもありました。
参考記事:倉俣史朗とエットレ・ソットサス (21_21 DESIGN SIGHT)
磯崎新 「東京都新都庁舎計画」
こちらもメタボリズム関連のビッグネームによる作品で、模型と平面図で都庁の計画が並んでいます。当時の都庁の要件は超高層の2棟だったらしいので、現在の都庁は分かりやすくそれを満たしているわけですが、ここでは低層の計画となっています(一応、23階建てらしい) 見た目はフジテレビの社屋に似ているかな。建物の上部に球体のホールのようなものがあります。また、建物の中央部分は高さ90m、長さ300mにも及ぶ吹き抜けとなっていて、それを区切りと思えば2棟にも見えました。こちらも発想のスケールが常人とは違って驚きでした。
この近くには安藤忠雄の「中之島プロジェクトⅡ-アーバンエッグ」の模型や平面図などもありました。
参考記事:安藤忠雄展―挑戦― (国立新美術館)
荒川修作+マドリン・ギンズ 「問われているプロセス/天命反転の橋」 ★こちらで観られます 1
こちらは長さ13mにも及ぶ模型が展示室に置かれていました。実物は140mになるフランスの橋の計画らしく、橋の途中に21の装置が並び「光の身体推量」とか「惑星の叫び」といった名前がつけられています。これらは障害物のようになっていて、くぐったり斜めに避けて歩く仕掛けのようです。中を見ると橋というよりはアスレチックのような複雑な構造で、サスケの障害物レースみたいな…w 解説によると、要請された行いの必然性に従うという拘束的な空間の体験をもたらすもので、それがポストユートピア時代の人間としての私達を形成し直すことになると解釈できるのではないかとのことでした。
藤本壮介 「ベトンハラ・ウォーターフロントセンター設計競技1等案」 ★こちらで観られます 2
こちらは螺旋が無数に渦巻く形の商業施設で、セルビアのコンペで1等を獲得したそうです。洗練されたフォルムが近未来的で、ガラス張りとなっているのが明るい印象となっています。これは何故インポッシブルなのか分かりませんが、実現したらお洒落スポットになること間違いなしですw
会田誠 「東京都庁はこうだった方が良かったのでは?の図」
山口晃 「都庁本案圖」
こちらはセットで展示されていて、原案を会田誠 氏が作って山口晃 氏が油彩・水彩で絵画化した感じです。都庁がこうだったら良かったのではないかとのことで、天守閣の石垣部分がビルの窓になっているなどパロディ的な雰囲気で、落書きっぽい楽しさがありますw それを日本画風にした山口晃 氏の作品は歴史的な絵みたいな感じも出ていたり、予算があれば可能みたいなコメントもあって、2人とも皮肉が効いているように思えました。
参考記事:会田誠展 天才でごめんなさい (森美術館)
ザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JV 「新国立競技場」
こちらは記憶に新しいオリンピックの新国立競技場の案で、予算面が合わないということでインポッシブルの仲間入りとなってしまいました。自転車のヘルメットみたいな流線型がカッコいいし、屋根の開閉のギミックも面白いので個人的にはこれでも良かったと思うんですけどね。
この辺りは予算が合わなかった作品が並び、会田誠 氏の予算があれば可能という皮肉がジワジワきますw
マーク・フォスター・ゲージ 「ヘルシンキ・グッゲンハイム美術館」 ★こちらで観られます 4
今回のポスターにもなっている作品で、これも財政上の理由で計画が破棄されてインポッシブルとなりました。これも実現したらこうだったという映像があり、遠くから観るとロボットが立っているような門のような不思議な形をしていますが近づくと昆虫やトカゲが組み合わさっているような生物の集合体のごとき彫刻が施されています。ちょっと不気味でこれはヤバイw 同じく102階建ての「西57丁目のタワー」という作品の映像ではビルに羽が生えたり聖堂のような彫刻が施されたビルが映されていました。FFのボスでも出てきそうなタワーですw
ということで、実現できたはずなのに…というものも含めて驚きの計画が目白押しとなっていました。各建築家の設計思想や実験性が強く出ていて、実現した建物よりも個性的な建物ばかりだと思います。この記事を書いている時点で残り1週間しかありませんが、建築好きは是非観ておきたい企画が光る展示でした。
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先週の日曜日に北浦和の埼玉近代美術館で特別展を観てきました。その際に常設も観てきましたので、先にそちらをご紹介しようと思います。今回は「2019 MOMASコレクション 第4期」というタイトルとなっていました。

【展覧名】
2019 MOMASコレクション 第4期
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=378
【会場】埼玉近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年1月12日(土)~4月14日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は常設展で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、今回は2018年度最後の4期となってきました。大きく分けて3つの章から構成されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<瑛九と光春―イメージの版/層>
まずはこの埼玉県立近代美術館がある浦和に馴染み深い瑛九と、瑛九を研究した山田光春に関するコーナーです。瑛九は油彩、フォト・デッサン、コラージュなど、山田光春はガラス絵、素描などが並んでいました。
参考リンク:
生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)
生誕100年記念 瑛九展 (埼玉県立近代美術館)
瑛九 「女性像」
こちらは椅子に肘をかけて座る女性を描いた作品で、少々不機嫌そうに見える表情をしているかな。やや単純化しているものの写実的に描かれていて、落ち着いた色彩となっています。まだ具象の時代のものかな? これを観ても瑛九だとは分からないほど堅実な感じの作風でした。
この辺には瑛九の写真作品がいくつかありました。瑛九にはマン・レイのレイヨグラフのような写真とは思えないような作品もあります。
瑛九 「作品(69)」
こちらはレースのようなものをフォトデッサンして印画紙に彩色した作品です。不思議な色合いとなっていて、滲みを活かして抽象画そのものと言った感じに見えます。具象と抽象の狭間のような自由さが面白い作品でした。
この辺には山田光春の作品もいくつかありました。
瑛九 「ともだち」
こちらは「印象派からやり直す」と宣言していた頃の作品です。屋内のテーブルで向き合っている2人の男性が描かれ、背景には女性らしき姿もあります。かなり粗目のタッチで描いていてちょっと落書きチックな描写に見えるかな。油彩だけど下書き線らしきものも残っていて、水彩のような色合いとなっていました。またちょっと具象に戻ったような感じ。
瑛九 「青の中の黄色い丸」
薄い青の背景に無数の円や楕円が重なり合うように描かれている抽象画で、瑛九と言えば真っ先に思い浮かぶ作風はこれじゃないかな。オレンジ、黄色、青、緑など色とりどりで、泡や星なんかを彷彿とさせます。抽象画だけど有機的な印象を受け、色の取り合わせやリズムを直感的に楽しく感じる作品です。
瑛九 「手」
こちらは型紙を用いて吹付け等の技法で制作した作品で、手の形が大きく描かれ その中に女性の人影が見えています。青い色が無数に重なりあって温かみを感じるかな。近くには制作に使われた型紙も展示されていて、制作工程を創造しながら観ると一層面白く感じられました。
<特別展示:瑛九の部屋>
こちらは瑛九の「田園」のみを暗室で展示するという一風変わった趣向となっています。暗室には照明のつまみがあって、それを回すと明るさが変わって絵の印象も変わって見えるという仕掛けになっています。
瑛九 「田園」 ★こちらで観られます

写真はポスターの一部を拡大したものです。無数の点描で描かれた大型の作品で、黄色や赤が多くて太陽や青空の下の田園風景と言われたらそう見えるかな。先述の通り明るさの調整をしながら観ると、まるで昼間から夕暮れに変わっていくような視覚体験もできました。明らかに印象が変わるし、これは企画が光る展示方法かも。
<セレクション:ユトリロとかパスキンとか>
続いては埼玉県立近代美術館が誇る西洋画・日本人洋画家によるコーナーです。今回はシニャックの新収蔵品が特に目を引きました。
ポール・シニャック 「アニエールの河岸」 ★こちらで観られます

写真はポスターの一部を拡大したものです。川岸から川を望む光景を描いた作品で、川を眺める人の姿などもあります。朝の光景らしくまだモヤが立ち込めるような柔らかめの色調となっているように感じます。しかしこの絵ではシニャックの割にあまり点描っぽさが出ていないように思えました。(水面あたりはちょっと点々としている) 解説によると、こちらの作品は最後の印象派展である第8回印象派展に出品された品のようです。そう考えると印象派展の終焉に関わった歴史的な作品と言えそうです。
斎藤豊作 「フランス風景II」
こちらはフランスの田舎を描いた作品で、バラ色に染まる道や植物に覆われた壁、その向こうの黄色い壁の家などが描かれています。かなり強めの色彩で、ピンクや緑の対比を使っていたりして鮮やかです。大きな筆跡を残して点描のように描いているのも特徴で、大胆かつ可憐な印象を受けました。
斎藤与里 「暁の金剛山」
こちらは蓮の葉や蓮華の咲く池が描かれ、その奥に雄大な金剛山が描かれています。単純化されて輪郭を素早く描いたように見えるかな。荒々しいけど素朴で郷愁を誘いました。
ということで、常設でも半分は瑛九についてのミニ企画展の様相となっていて満足できました。この美術館は常設に驚くような品もあるので、特別展に行かれる際には常設も観ることをオススメします。(と言いつつ ぐるっとパスだと特別展は提示で観られるけど常設は別料金で見逃しがち気味です…w)

【展覧名】
2019 MOMASコレクション 第4期
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=378
【会場】埼玉近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年1月12日(土)~4月14日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は常設展で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、今回は2018年度最後の4期となってきました。大きく分けて3つの章から構成されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<瑛九と光春―イメージの版/層>
まずはこの埼玉県立近代美術館がある浦和に馴染み深い瑛九と、瑛九を研究した山田光春に関するコーナーです。瑛九は油彩、フォト・デッサン、コラージュなど、山田光春はガラス絵、素描などが並んでいました。
参考リンク:
生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)
生誕100年記念 瑛九展 (埼玉県立近代美術館)
瑛九 「女性像」
こちらは椅子に肘をかけて座る女性を描いた作品で、少々不機嫌そうに見える表情をしているかな。やや単純化しているものの写実的に描かれていて、落ち着いた色彩となっています。まだ具象の時代のものかな? これを観ても瑛九だとは分からないほど堅実な感じの作風でした。
この辺には瑛九の写真作品がいくつかありました。瑛九にはマン・レイのレイヨグラフのような写真とは思えないような作品もあります。
瑛九 「作品(69)」
こちらはレースのようなものをフォトデッサンして印画紙に彩色した作品です。不思議な色合いとなっていて、滲みを活かして抽象画そのものと言った感じに見えます。具象と抽象の狭間のような自由さが面白い作品でした。
この辺には山田光春の作品もいくつかありました。
瑛九 「ともだち」
こちらは「印象派からやり直す」と宣言していた頃の作品です。屋内のテーブルで向き合っている2人の男性が描かれ、背景には女性らしき姿もあります。かなり粗目のタッチで描いていてちょっと落書きチックな描写に見えるかな。油彩だけど下書き線らしきものも残っていて、水彩のような色合いとなっていました。またちょっと具象に戻ったような感じ。
瑛九 「青の中の黄色い丸」
薄い青の背景に無数の円や楕円が重なり合うように描かれている抽象画で、瑛九と言えば真っ先に思い浮かぶ作風はこれじゃないかな。オレンジ、黄色、青、緑など色とりどりで、泡や星なんかを彷彿とさせます。抽象画だけど有機的な印象を受け、色の取り合わせやリズムを直感的に楽しく感じる作品です。
瑛九 「手」
こちらは型紙を用いて吹付け等の技法で制作した作品で、手の形が大きく描かれ その中に女性の人影が見えています。青い色が無数に重なりあって温かみを感じるかな。近くには制作に使われた型紙も展示されていて、制作工程を創造しながら観ると一層面白く感じられました。
<特別展示:瑛九の部屋>
こちらは瑛九の「田園」のみを暗室で展示するという一風変わった趣向となっています。暗室には照明のつまみがあって、それを回すと明るさが変わって絵の印象も変わって見えるという仕掛けになっています。
瑛九 「田園」 ★こちらで観られます

写真はポスターの一部を拡大したものです。無数の点描で描かれた大型の作品で、黄色や赤が多くて太陽や青空の下の田園風景と言われたらそう見えるかな。先述の通り明るさの調整をしながら観ると、まるで昼間から夕暮れに変わっていくような視覚体験もできました。明らかに印象が変わるし、これは企画が光る展示方法かも。
<セレクション:ユトリロとかパスキンとか>
続いては埼玉県立近代美術館が誇る西洋画・日本人洋画家によるコーナーです。今回はシニャックの新収蔵品が特に目を引きました。
ポール・シニャック 「アニエールの河岸」 ★こちらで観られます

写真はポスターの一部を拡大したものです。川岸から川を望む光景を描いた作品で、川を眺める人の姿などもあります。朝の光景らしくまだモヤが立ち込めるような柔らかめの色調となっているように感じます。しかしこの絵ではシニャックの割にあまり点描っぽさが出ていないように思えました。(水面あたりはちょっと点々としている) 解説によると、こちらの作品は最後の印象派展である第8回印象派展に出品された品のようです。そう考えると印象派展の終焉に関わった歴史的な作品と言えそうです。
斎藤豊作 「フランス風景II」
こちらはフランスの田舎を描いた作品で、バラ色に染まる道や植物に覆われた壁、その向こうの黄色い壁の家などが描かれています。かなり強めの色彩で、ピンクや緑の対比を使っていたりして鮮やかです。大きな筆跡を残して点描のように描いているのも特徴で、大胆かつ可憐な印象を受けました。
斎藤与里 「暁の金剛山」
こちらは蓮の葉や蓮華の咲く池が描かれ、その奥に雄大な金剛山が描かれています。単純化されて輪郭を素早く描いたように見えるかな。荒々しいけど素朴で郷愁を誘いました。
ということで、常設でも半分は瑛九についてのミニ企画展の様相となっていて満足できました。この美術館は常設に驚くような品もあるので、特別展に行かれる際には常設も観ることをオススメします。(と言いつつ ぐるっとパスだと特別展は提示で観られるけど常設は別料金で見逃しがち気味です…w)
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前回に引き続き上野の国立西洋美術館の「国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」についてです。前編は1章まででしたが、今日は残りの章についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
前編はこちら

【展覧名】
国立西洋美術館開館60周年記念
ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
【公式サイト】
https://lecorbusier2019.jp/
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019lecorbusier.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2019年2月19日(火)~5月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
2章以降は展示順が複雑になっていました。私が観た順にご紹介していこうと思いますが、作品番号などを見ると各章を行ったり来たりしていたようです。作品名の隣に作品番号を記載しておきますので、詳しくは出品リストをご参照ください。
参考リンク:出品リスト(PDF)
<2.キュビスムとの対峙>
2章はキュビスムとピュリスムの関係についてです。キュビスムは1910年代に最も革新的な絵画として興隆していましたが、第一次世界大戦で主要な芸術家が従軍し、保守派からの批判もあって存亡の危機にさらされました。しかし、大戦後は勢力を回復し、実験的性格の薄い平明で安定した構成を特徴とする古典主義的傾向が主流を占めるようになったようです。前章で観た通り、ジャンヌレとオザンファンはキュビスムを批判していた訳ですが、実のところは戦後のキュビスムの方向性と基本的に一致していたようで、1921年以降はキュビスムの芸術家との交流を深めていきました。そして支援者であるラ・ロシェの代理人としてキュビスム絵画のオークションで作品を集め、コレクションを築くのに寄与したようです。そして1910年代初頭のピカソ、ブラック、レジェの作品に初めて接したことで認識を完全に改めていくことになります(って、一体何を観て批判してたんだ?って話ですがw) 既にキュビスムの創始者たちが「構築と総合」の芸術を実現したと悟り 多義的な空間表現に理解を深め、それ以降のジャンヌレ(ル・コルビュジエ)の絵画・建築は大きな影響を受けているようです。ここにはそうしたキュビスムとの関係を示す品などが並んでいました。
50 フアン・グリス 「ギター、パイプ、楽譜のある静物」
こちらは離れて観たらブラックの作品かと思いました。タイトル通りの品が並ぶ静物で、幾何学的な平面を組み合わせて描いています。落ち着いた色彩で、陰影も感じられるかな。オザンファンやジャンヌレもグリスに大きな影響を受けたようで、彼らは物がパズルのように組み合わさる方法を学んで取り入れていったようです。ピュリスムのルーツの1つと言えそうです。
この辺にはジョルジュ・ブラックやフェルナン・レジェの作品もありました。
41 パブロ・ピカソ 「静物」
こちらは机の上の水差しとギターらしきものが描かれた作品で、ジャンヌレたちの支援者のラ・ロシェのコレクションです。赤やくすんだ青、線で表した影のようなもの等、シンプルな構成でかなり抽象化している印象を受けました。
この辺にはキュビスムのいい作品が結構ありました。東近美のファン・グリスの「円卓」なんかもあります。
104 東京芸術大学美術学部建築科 益子研究室(当時) 「ヴァイセンホフ・ジードルンクの住宅」1/50模型
こちらは近代建築の三大巨匠の1人であるミース・ファン・デル・ローエが全体計画を行ったヴァイセンホフ・ジードルンクという33棟17人の建築家による住宅郡のうち、ル・コルビュジエが担当した2つの建物の模型です。(時期的にはピュリスム終焉後の4章の内容です) 地面から浮かび上がるような建物で、1階部分が柱になっています。この作品はル・コルビュジエが唱えた近代建築の五原則をよく表していて、その5つとは
1.ピロティ
2.屋上庭園
3.自由な平面
4.水平連続窓
5.自由な立面
となります。この建物は大評判だったようで、近代建築の代表作とされるようです。ル・コルビュジエの建物は同様に5つの原則に従っているのが多いので、覚えておくと見方も変わりそうですね。
72 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「多数のオブジェのある静物」 ★こちらで観られます
こちらはピュリスム後期の代表作で、半透明の色面が重なり合う多層的な空間となっています。瓶、カップ、ポットなどが並んでいるようですが、かなり複雑に絡み合っていて、どこからどこまでというのが明確でないものもあります。そうした点からキュビスム的な要素が強まっているようにも思えるかな。複雑な重なり合いとなる一方、色は以前より薄くなっていて軽やかなリズムとハーモニーを奏でるような雰囲気です。解説によると、この頃にはオザンファンとの画風の違いが明らかになり、やがて別の道へと進むことになります。(割とオザンファンは以前のままですが、ピュリスム以降は結構迷走している感がある気がします)
なお、ピュリスム後期の特徴は、モティーフを平面で捉えることで、重なり合う部分は透明か輪郭線が重なって前後が曖昧となり、連続した繋がりになっています。これはル・コルビュジエとしての建築設計にも生かされていて、重なり合う空間として閉じられていな空間が連続することで空間の変化を生んでいるようです。現にこの国立西洋美術館の常設(今回の会場)は、吹き抜けがあって仕切りもなく連続しているのが実感できると思います。
<3.ピュリスムの頂点と終幕>
続いてはピュリスムの頂点から終幕にかけてのコーナーです。前編でご紹介した雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』の建築の連載を通じてジャンヌレは建築家ル・コルビュジエとしての顔を世に示して行きましたが、1922年頃に財政難から1年数ヶ月に渡って休刊していたようです。1923年に再開されると、その2年後に開催が予定されたパリ国際装飾芸術博覧会に焦点を定め、装飾芸術論と都市計画論の連載を発表していきました。そして、それは1925年にパビリオンとしてエスプリ・ヌーヴォー館によって具体的に示されることになります。これはピュリスム最大のプロジェクトで、「諸芸術の総合」の最初の試みだったようです。 この博覧会のテーマでもある「装飾芸術」を真っ向から否定し、規格化し大量生産の原則に基づく近代的な生活環境を提示したのですが、絵画や彫刻といった「純粋芸術」は近代の都市生活にも不可欠と訴えたようです。
一方、このプロジェクトがきっかけでオザンファンとの関係は修復不可能となり、オザンファンはエスプリ・ヌーヴォーの編集から降りて、ピュリスムは終焉しました。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
55 ジャック・リプシッツ 「ギターを持つ水夫」 ★こちらで観られます
こちらはエスプリ・ヌーヴォー館に協力したキュビスムの作家による彫刻です。人物像をキュビスム的に表していて、どこから観ても立方体が組み合うような感じに見えるのが面白い。確かにギターを持っているようにも見えるし、キュビスム絵画が立体化したような単純化ぶりも見事でした。
この辺にもレジェの作品が数点ありました。
87 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「エスプリ・ヌーヴォー館の静物」 ★こちらで観られます
こちらは先程の「多数のオブジェのある静物」の隣に展示されていました。多くの瓶やグラスが並ぶ様子が描かれた作品で、やはり重なってくっついているように見えます。しかしこちらのほうが すっきりした構成となって形態も幅広になって安定しているように思えるかな。ますます色に透明感が出ていて、色彩も一層軽めに見えます。解説によると、この作品はタイトルの通りエスプリ・ヌーヴォー館に展示されていたようです。近くにはエスプリ・ヌーヴォー館の内部の様子の写真などもありました。(★こちらで観られます)
<4.ピュリスム以降のル・コルビュジエ>
最後はピュリスム以降のコーナーです。ピュリスム運動は1925年に終焉を迎えた訳ですが、建築家ル・コルビュジエの知名度は格段に広まり重要な注文を引き受けることになります。1927年には先述のヴァイセンホフ・ジードルンクの近代住宅建築展で「新しい建築の5つの要点(近代建築の五原則)」が発表され、近代建築の第一人者として国際的な名声を得ました。一方、絵画においては1925年以降の制作は個人的な活動と位置づけ、展覧会への出品は止めてしまいましたが、熱意が衰えた訳ではなく毎日午前中はデッサンと絵画を描くことを習慣づけていたようです。絵画は自然の形態に接し、造形の着想を引き出す為の考察と実験の場になっていったらしく、1928年から絵画作品にル・コルビュジエの名で署名されるようになりました。この頃からまた画風も変わっていて、曲線的な瓶や水差しに有機物のような生命体を描いたり、自然の風景や女性などもレパートリーに加わっています。こうした変化は幾何学的な秩序に変わって人間と自然との調和が絵画の新しいテーマになったことを物語っていて、その方向性はピュリスム建築の集大成とされるサヴォワ邸の設計にも生かされたようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。
95 アメデ・オザンファン 「グラス、壺、瓶のある静物」
こちらはグラス、壺、瓶が暗い部屋に並んでいるような静物です。真ん中辺りに青空のようなものが描かれているのが目を引きます。単純な形態が並ぶスッキリとした感じで、以前のように上から見た瓶の口が無く、横からの視点のみのようにも思えます。しかし瓶や壺には縞模様があってリズムが感じられるかな。とは言え、それほど以前と大きく画風が変わった訳ではなく、激変していくル・コルビュジエとは既にだいぶ違っているのがよくわかりました。
96 アメデ・オザンファン 「真珠母 No.2」
こちらは瓶やカップ、水差しなどが並んだ静物です。透明がかっていて中心に寄っている構図で、平坦に組み合う様子などはル・コルビュジエに寄せている感じがするかな。仲違いしたというのにちょっと意外です。解説によると、オザンファンはレジェと共に美術学校を建てたり、1930年代以降はピュリスムとは全く違う人物画なども手がけたのだとか。もう完全にル・コルビュジエとは別の道ですね…。
この近くにはレジェによるピュリスム的な作品もありました。
135 ル・コルビュジエ 「灯台のそばの昼食」
こちらは瓶、フォーク、ナイフ、スプーン、手袋、貝殻などがテーブルの上に置かれ、テーブルの下には遠くの灯台が見えているという面白い構図となっています。確かに全ての物が有機的なウネリを出していて、直線がかなり減って柔らかい印象を受けます。それでも以前の幾何学性と自然を対立したものとして捉えていた訳ではないようで、自然界は混沌としていても幾何学的な原理が根底にあると考えていたようです。
140 ル・コルビュジエ 「レア」
こちらも色とりどりな有機的な品が並ぶ作品で、庭のテーブルとやバイオリン、牡や骨などを描いているようです。しかし、もはや抽象画のようにも見えるくらいで、一見すると画風は初期とだいぶ違います。むしろ色彩なんかはレジェの作品と共通するものを感じるかな。ちょっとシュールさもあるのですが、これは妻や犬と過ごした幸福な時間を表現しているとのことでした。サインがル・コルビュジエの名前となっていることも確認できます。
最後辺りにサヴォワ邸の設計図、映像、写真、模型などがありました。近代建築の五原則をすべて満たしているのがわかります。西洋美術館に雰囲気がよく似ているように思えました。 他には回転式アームチェアやスツールなんかもありました。シンプルで滑らかな形をしていて、人間工学に基づくデザインとなっています。
ということで、ル・コルビュジエの建築が如何に自身のピュリスムやキュビスム絵画から影響を受けているのか よく分かる内容となっていました。その分、建築の方は内容少なめな気がしますが、会場自体がル・コルビュジエの設計なので非常に説得力があると思います。ル・コルビュジエの作品群は今や世界遺産として認知度が高まっていますので、この機会に何が凄いのか知っておくのも良いのではないかと思います。
前編はこちら

【展覧名】
国立西洋美術館開館60周年記念
ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
【公式サイト】
https://lecorbusier2019.jp/
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019lecorbusier.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2019年2月19日(火)~5月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
2章以降は展示順が複雑になっていました。私が観た順にご紹介していこうと思いますが、作品番号などを見ると各章を行ったり来たりしていたようです。作品名の隣に作品番号を記載しておきますので、詳しくは出品リストをご参照ください。
参考リンク:出品リスト(PDF)
<2.キュビスムとの対峙>
2章はキュビスムとピュリスムの関係についてです。キュビスムは1910年代に最も革新的な絵画として興隆していましたが、第一次世界大戦で主要な芸術家が従軍し、保守派からの批判もあって存亡の危機にさらされました。しかし、大戦後は勢力を回復し、実験的性格の薄い平明で安定した構成を特徴とする古典主義的傾向が主流を占めるようになったようです。前章で観た通り、ジャンヌレとオザンファンはキュビスムを批判していた訳ですが、実のところは戦後のキュビスムの方向性と基本的に一致していたようで、1921年以降はキュビスムの芸術家との交流を深めていきました。そして支援者であるラ・ロシェの代理人としてキュビスム絵画のオークションで作品を集め、コレクションを築くのに寄与したようです。そして1910年代初頭のピカソ、ブラック、レジェの作品に初めて接したことで認識を完全に改めていくことになります(って、一体何を観て批判してたんだ?って話ですがw) 既にキュビスムの創始者たちが「構築と総合」の芸術を実現したと悟り 多義的な空間表現に理解を深め、それ以降のジャンヌレ(ル・コルビュジエ)の絵画・建築は大きな影響を受けているようです。ここにはそうしたキュビスムとの関係を示す品などが並んでいました。
50 フアン・グリス 「ギター、パイプ、楽譜のある静物」
こちらは離れて観たらブラックの作品かと思いました。タイトル通りの品が並ぶ静物で、幾何学的な平面を組み合わせて描いています。落ち着いた色彩で、陰影も感じられるかな。オザンファンやジャンヌレもグリスに大きな影響を受けたようで、彼らは物がパズルのように組み合わさる方法を学んで取り入れていったようです。ピュリスムのルーツの1つと言えそうです。
この辺にはジョルジュ・ブラックやフェルナン・レジェの作品もありました。
41 パブロ・ピカソ 「静物」
こちらは机の上の水差しとギターらしきものが描かれた作品で、ジャンヌレたちの支援者のラ・ロシェのコレクションです。赤やくすんだ青、線で表した影のようなもの等、シンプルな構成でかなり抽象化している印象を受けました。
この辺にはキュビスムのいい作品が結構ありました。東近美のファン・グリスの「円卓」なんかもあります。
104 東京芸術大学美術学部建築科 益子研究室(当時) 「ヴァイセンホフ・ジードルンクの住宅」1/50模型
こちらは近代建築の三大巨匠の1人であるミース・ファン・デル・ローエが全体計画を行ったヴァイセンホフ・ジードルンクという33棟17人の建築家による住宅郡のうち、ル・コルビュジエが担当した2つの建物の模型です。(時期的にはピュリスム終焉後の4章の内容です) 地面から浮かび上がるような建物で、1階部分が柱になっています。この作品はル・コルビュジエが唱えた近代建築の五原則をよく表していて、その5つとは
1.ピロティ
2.屋上庭園
3.自由な平面
4.水平連続窓
5.自由な立面
となります。この建物は大評判だったようで、近代建築の代表作とされるようです。ル・コルビュジエの建物は同様に5つの原則に従っているのが多いので、覚えておくと見方も変わりそうですね。
72 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「多数のオブジェのある静物」 ★こちらで観られます
こちらはピュリスム後期の代表作で、半透明の色面が重なり合う多層的な空間となっています。瓶、カップ、ポットなどが並んでいるようですが、かなり複雑に絡み合っていて、どこからどこまでというのが明確でないものもあります。そうした点からキュビスム的な要素が強まっているようにも思えるかな。複雑な重なり合いとなる一方、色は以前より薄くなっていて軽やかなリズムとハーモニーを奏でるような雰囲気です。解説によると、この頃にはオザンファンとの画風の違いが明らかになり、やがて別の道へと進むことになります。(割とオザンファンは以前のままですが、ピュリスム以降は結構迷走している感がある気がします)
なお、ピュリスム後期の特徴は、モティーフを平面で捉えることで、重なり合う部分は透明か輪郭線が重なって前後が曖昧となり、連続した繋がりになっています。これはル・コルビュジエとしての建築設計にも生かされていて、重なり合う空間として閉じられていな空間が連続することで空間の変化を生んでいるようです。現にこの国立西洋美術館の常設(今回の会場)は、吹き抜けがあって仕切りもなく連続しているのが実感できると思います。
<3.ピュリスムの頂点と終幕>
続いてはピュリスムの頂点から終幕にかけてのコーナーです。前編でご紹介した雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』の建築の連載を通じてジャンヌレは建築家ル・コルビュジエとしての顔を世に示して行きましたが、1922年頃に財政難から1年数ヶ月に渡って休刊していたようです。1923年に再開されると、その2年後に開催が予定されたパリ国際装飾芸術博覧会に焦点を定め、装飾芸術論と都市計画論の連載を発表していきました。そして、それは1925年にパビリオンとしてエスプリ・ヌーヴォー館によって具体的に示されることになります。これはピュリスム最大のプロジェクトで、「諸芸術の総合」の最初の試みだったようです。 この博覧会のテーマでもある「装飾芸術」を真っ向から否定し、規格化し大量生産の原則に基づく近代的な生活環境を提示したのですが、絵画や彫刻といった「純粋芸術」は近代の都市生活にも不可欠と訴えたようです。
一方、このプロジェクトがきっかけでオザンファンとの関係は修復不可能となり、オザンファンはエスプリ・ヌーヴォーの編集から降りて、ピュリスムは終焉しました。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
55 ジャック・リプシッツ 「ギターを持つ水夫」 ★こちらで観られます
こちらはエスプリ・ヌーヴォー館に協力したキュビスムの作家による彫刻です。人物像をキュビスム的に表していて、どこから観ても立方体が組み合うような感じに見えるのが面白い。確かにギターを持っているようにも見えるし、キュビスム絵画が立体化したような単純化ぶりも見事でした。
この辺にもレジェの作品が数点ありました。
87 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「エスプリ・ヌーヴォー館の静物」 ★こちらで観られます
こちらは先程の「多数のオブジェのある静物」の隣に展示されていました。多くの瓶やグラスが並ぶ様子が描かれた作品で、やはり重なってくっついているように見えます。しかしこちらのほうが すっきりした構成となって形態も幅広になって安定しているように思えるかな。ますます色に透明感が出ていて、色彩も一層軽めに見えます。解説によると、この作品はタイトルの通りエスプリ・ヌーヴォー館に展示されていたようです。近くにはエスプリ・ヌーヴォー館の内部の様子の写真などもありました。(★こちらで観られます)
<4.ピュリスム以降のル・コルビュジエ>
最後はピュリスム以降のコーナーです。ピュリスム運動は1925年に終焉を迎えた訳ですが、建築家ル・コルビュジエの知名度は格段に広まり重要な注文を引き受けることになります。1927年には先述のヴァイセンホフ・ジードルンクの近代住宅建築展で「新しい建築の5つの要点(近代建築の五原則)」が発表され、近代建築の第一人者として国際的な名声を得ました。一方、絵画においては1925年以降の制作は個人的な活動と位置づけ、展覧会への出品は止めてしまいましたが、熱意が衰えた訳ではなく毎日午前中はデッサンと絵画を描くことを習慣づけていたようです。絵画は自然の形態に接し、造形の着想を引き出す為の考察と実験の場になっていったらしく、1928年から絵画作品にル・コルビュジエの名で署名されるようになりました。この頃からまた画風も変わっていて、曲線的な瓶や水差しに有機物のような生命体を描いたり、自然の風景や女性などもレパートリーに加わっています。こうした変化は幾何学的な秩序に変わって人間と自然との調和が絵画の新しいテーマになったことを物語っていて、その方向性はピュリスム建築の集大成とされるサヴォワ邸の設計にも生かされたようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。
95 アメデ・オザンファン 「グラス、壺、瓶のある静物」
こちらはグラス、壺、瓶が暗い部屋に並んでいるような静物です。真ん中辺りに青空のようなものが描かれているのが目を引きます。単純な形態が並ぶスッキリとした感じで、以前のように上から見た瓶の口が無く、横からの視点のみのようにも思えます。しかし瓶や壺には縞模様があってリズムが感じられるかな。とは言え、それほど以前と大きく画風が変わった訳ではなく、激変していくル・コルビュジエとは既にだいぶ違っているのがよくわかりました。
96 アメデ・オザンファン 「真珠母 No.2」
こちらは瓶やカップ、水差しなどが並んだ静物です。透明がかっていて中心に寄っている構図で、平坦に組み合う様子などはル・コルビュジエに寄せている感じがするかな。仲違いしたというのにちょっと意外です。解説によると、オザンファンはレジェと共に美術学校を建てたり、1930年代以降はピュリスムとは全く違う人物画なども手がけたのだとか。もう完全にル・コルビュジエとは別の道ですね…。
この近くにはレジェによるピュリスム的な作品もありました。
135 ル・コルビュジエ 「灯台のそばの昼食」
こちらは瓶、フォーク、ナイフ、スプーン、手袋、貝殻などがテーブルの上に置かれ、テーブルの下には遠くの灯台が見えているという面白い構図となっています。確かに全ての物が有機的なウネリを出していて、直線がかなり減って柔らかい印象を受けます。それでも以前の幾何学性と自然を対立したものとして捉えていた訳ではないようで、自然界は混沌としていても幾何学的な原理が根底にあると考えていたようです。
140 ル・コルビュジエ 「レア」
こちらも色とりどりな有機的な品が並ぶ作品で、庭のテーブルとやバイオリン、牡や骨などを描いているようです。しかし、もはや抽象画のようにも見えるくらいで、一見すると画風は初期とだいぶ違います。むしろ色彩なんかはレジェの作品と共通するものを感じるかな。ちょっとシュールさもあるのですが、これは妻や犬と過ごした幸福な時間を表現しているとのことでした。サインがル・コルビュジエの名前となっていることも確認できます。
最後辺りにサヴォワ邸の設計図、映像、写真、模型などがありました。近代建築の五原則をすべて満たしているのがわかります。西洋美術館に雰囲気がよく似ているように思えました。 他には回転式アームチェアやスツールなんかもありました。シンプルで滑らかな形をしていて、人間工学に基づくデザインとなっています。
ということで、ル・コルビュジエの建築が如何に自身のピュリスムやキュビスム絵画から影響を受けているのか よく分かる内容となっていました。その分、建築の方は内容少なめな気がしますが、会場自体がル・コルビュジエの設計なので非常に説得力があると思います。ル・コルビュジエの作品群は今や世界遺産として認知度が高まっていますので、この機会に何が凄いのか知っておくのも良いのではないかと思います。
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


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10日ほど前の土曜日に上野の国立西洋美術館で「国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」を観てきました。非常に見どころの多い展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
国立西洋美術館開館60周年記念
ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
【公式サイト】
https://lecorbusier2019.jp/
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019lecorbusier.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2019年2月19日(火)~5月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
結構混んでいて、場所によっては列を組んで観るような混雑ぶりでした
さて、この展示は近代建築の三大巨匠の1人であり 国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエことシャルル=エドゥアール・ジャンヌレに関する展示です。特にジャンヌレ時代からの「ピュリスム」の絵画に焦点を当て それが建築設計に与えた影響を考察するという内容となっていて、自身の設計した美術館(しかも1階と2階)で開催されるという何とも贅沢で粋な展覧会となっています。 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想前編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想後編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと国立西洋美術館 (国立西洋美術館)
ル・コルビュジエ 「ラ・シテ・ラディユーズ(ユニテ・ダビタシオン)」 【南仏編 マルセイユ】
映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」(ネタバレあり)
<1階>
まず1階にはル・コルビュジエとして設計した建物の模型が並んでいました。内容的には絵画作品(特にエスプリ・ヌーヴォーの時代が終わった辺り)を観てからのほうが分かりやすいのですが、最初に展示されています。1階だけは撮影可能となっていましたので、こちらは写真を使ってご紹介
77 横浜国立大学工学部建築学科 山田研究室(当時) 「画家オザンファンのアトリエ・住宅」1/30模型

こちらはジャンヌレに絵を教え 共にピュリスムを宣言したオザンファンのアトリエの模型で、実物は1920年代はじめ頃にパリで初めて実現した建物です。芸術にも普遍的な規則が必要と考え、幾何学的な美しさを追求し装飾性のないデザインとなりました。既にこの時点でル・コルビュジエの建築の方向性が強く感じられると思います。
86 東京理科大学アルカディア自由ゼミナール(当時) 「イムーブル=ヴィラ」1/100模型

こちらは1925年の「ヴォワザン計画」という自動車社会に対応した都市計画の中の1つで、大型の集合住宅となっています。特徴としては空中庭園と呼ばれる各部屋のテラス、中央に公園やテニスコートがあるといった点で、住宅やオフィスを高層化することで都市の中に緑地や公園をもっと増やせると考えていたようです。これも幾何学的でユニテ等を思い出すデザインかな。近くにはヴォワザン計画の都市模型もあり、大規模な構想だったことが伺えました。
103 芝浦工業大学工学部建築工学科 三宅研究室(当時) 「スタイン=ド・モンヅィ邸」1/30模型

こちらも後で出てくる近代建築の五原則を思わせる設計となっています。先に2階の展示を観てから戻ってきた方が理解しやすいと思います。
この他に、ピュリスムについての説明映像などもありました。
<1.ピュリスムの誕生>
2階からが本編で、1章はピュリスムの誕生期についてです。1917年の春に、当時29歳の建築家シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)は生国のスイスからパリへと移り、1歳年上の画家アメデ・オザンファンと出会いました。2人は意気投合し、オザンファンに教えを受けて油彩画を学びました。そして第一次世界大戦が終わった1918年にオザンファンとジャンヌレの2人でパリで小さな絵画展を開き「キュビスム以後」という著作を出版し、芸術の刷新を訴えました。その内容は、今日の芸術は近代化に対応していないとして、特に最先端だったキュビスムを主観的で無秩序な芸術と批判したようです。そして科学的精神によって普遍的な物の表現を目指す新しい芸術の名称として「ピュリスム」を掲げ、活動していきます。1920年には方法と様式を確立し、秋には雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』を創刊し、この中でル・コルビュジエのペンネームを使い建築論を発表していくことになります。ここにはそうした初期の時代の作品が並んでいました。
22 アメデ・オザンファン、シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)(編) 雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』1-28号
こちらが雑誌『エスプリヌーヴォー』で、1号~28号まで全て揃って並んでいました。表紙の真ん中に号数の数字があり、デザインはほぼ全巻同じで幾何学的なシンプルさがあります。この『エスプリヌーヴォー』は日本語訳すると「新精神」で、1920年10月から1925年まで発行されピュリスムの理念を広めた総合的な芸術雑誌となります。当初はオザンファン、ジャンヌレ、ポール・デルメの3人で創刊したもののデルメは間もなく手を引いて、4号からは2人体制となりジャンヌレは財務、オザンファンは実務を担当していたようです。「構築と総合」の精神を雑誌のモットーに掲げ、工業化社会の発展に対応する新たな時代の芸術の創造を訴えて、機械を近代の象徴とし科学技術の進歩を肯定的に捉え 芸術も同じ所から生まれなくてはならないと主張しました。一方で過去の芸術を否定するのではなく、共通する普遍的な規則があると考えていたようで、それは幾何学的な秩序であるとし、ピュリスムもその考えに沿ったものとなっています。
28 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「赤いヴァイオリンのある静物」
こちらはバイオリン、皿、瓶などが並ぶ油彩の静物画です。赤・黒・灰色といった色の面を使って表現していて、単純化された形態となっているのが画風の最大の特徴と言えます。また、上から見下ろした視点と横からの視点が1つのモチーフで共存しているのはキュビスムとよく似ているかな。立体的でリズムも感じられる作品でした。
この辺はジャンヌレとオザンファンの静物画が並びます。いずれもグラスやギターをモチーフにして構成の妙が面白い作品なのですが、2人の画風はそっくりです。キュビスムと違って形をあまり崩さないので元の形も分かりやすいかな。この後、2人の画風に違いが出てくるのですが、ピュリスム初期の特徴としては前述の作品のように上からと側面からの2つの視点で立体的に表現する点と、モチーフの配置を黄金比にしている点などが挙げられるようです。リズムが心地よいのはこの黄金比によるものかもしれませんね。
70 アメデ・オザンファン 「瓶のある静物」
こちらは窓辺らしき所に並ぶ瓶やグラスなどを描いた静物です。やはり色面を使って表現していて、輪郭も単純化されています。色はコントラストのような組み合わせが使われ、物の重なりを色の違いで表現していました。
解説によると、これは2人がとても仲が良かった最後の頃の作品だそうで、ジャンヌレが建築家ル・コルビュジエとしての名が高まると関係が変化していきました。(その辺は次回の記事で…)
4 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「カップ、本、パイプ」
こちらはスケッチです。油彩作品と違ってかなり写実的に描かれていて、観たまま描いていると言った感じです。コップとパイプなどはピュリスムでお馴染みのモチーフですが、ここでは陰影がつけられていて割と普通の表現かなw
この辺には同様のスケッチが並び、風景画などもありました。ピュリスムに目が慣れてからだと逆に新鮮に思えましたw
10 アメデ・オザンファン 「自画像」
こちらはオザンファンの自画像で、本を持ってこちらをチラっと見る姿で描かれています。背景に机らしきものや本、机などもあるので書斎かな? こちらもやや単純化されていますが、結構写実的でキュビスムみたいな多角的な感じではありませんでした。
この辺でピュリスムの技法についての解説がありました。2人は「規整線」(トラセ・レギュラトゥール)という手法を用いていて、これはジャンヌレが建築の研究書から学んだ方法の応用のようです。(1920年代のル・コルビュジエとしての建築にも応用されています) 画面の底辺から中心軸に向かう2つの直角2等辺三角形の頂点の位置が見る者の目を引きつける戦略的な中心線として重視されているとのことで、何のこっちゃ?と思ったら分かりやすい図解もありました。先述の黄金比もそうですが、構図において科学的に配置しているのが伺えるエピソードです。
13 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「暖炉」
こちらはジャンヌレが初めて描いた油彩作品です。タイトルの通り暖炉を描いているようですが、暖炉の上に白い立方体らしきものが乗っている謎の絵です。最初に描いた作品とは思えないくらいの完成度ですが、それ以上に最初でこんなに謎の絵を描くの?って驚きがありますw 背景も平坦な色面となっているなど既にジャンヌレが目指した芸術の萌芽が観られるような…。解説によるとこの白い立方体はアクロポリスの丘の古代建築になぞらえたものとのことで、一層に常人離れした作品に思えました。
この近くの小部屋には2人の支援者だったラ・ロシュの邸宅の模型(「ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸」1/30模型)などが並んでいました。ル・コルビュジエ初期のピュリスム建築の傑作と言える建物です。
ということで長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。5年くらい前に同様の展示を観た気がしますが、その後に世界遺産に決まったということで注目度も一気に高まっているようです。ル・コルビュジエは絵画も非常に面白く、彼の建築を理解するのに欠かせない要素でもあるのでこの機に知っておくと建物を見る目も変わると思います。後半ではさらに建築との関わりが密接になっていきますので、次回は残りの章についてご紹介予定です。
→ 後編はこちら

【展覧名】
国立西洋美術館開館60周年記念
ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
【公式サイト】
https://lecorbusier2019.jp/
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019lecorbusier.html
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅
【会期】2019年2月19日(火)~5月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
結構混んでいて、場所によっては列を組んで観るような混雑ぶりでした
さて、この展示は近代建築の三大巨匠の1人であり 国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエことシャルル=エドゥアール・ジャンヌレに関する展示です。特にジャンヌレ時代からの「ピュリスム」の絵画に焦点を当て それが建築設計に与えた影響を考察するという内容となっていて、自身の設計した美術館(しかも1階と2階)で開催されるという何とも贅沢で粋な展覧会となっています。 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想前編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと20世紀美術 感想後編(国立西洋美術館)
ル・コルビュジエと国立西洋美術館 (国立西洋美術館)
ル・コルビュジエ 「ラ・シテ・ラディユーズ(ユニテ・ダビタシオン)」 【南仏編 マルセイユ】
映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」(ネタバレあり)
<1階>
まず1階にはル・コルビュジエとして設計した建物の模型が並んでいました。内容的には絵画作品(特にエスプリ・ヌーヴォーの時代が終わった辺り)を観てからのほうが分かりやすいのですが、最初に展示されています。1階だけは撮影可能となっていましたので、こちらは写真を使ってご紹介
77 横浜国立大学工学部建築学科 山田研究室(当時) 「画家オザンファンのアトリエ・住宅」1/30模型

こちらはジャンヌレに絵を教え 共にピュリスムを宣言したオザンファンのアトリエの模型で、実物は1920年代はじめ頃にパリで初めて実現した建物です。芸術にも普遍的な規則が必要と考え、幾何学的な美しさを追求し装飾性のないデザインとなりました。既にこの時点でル・コルビュジエの建築の方向性が強く感じられると思います。
86 東京理科大学アルカディア自由ゼミナール(当時) 「イムーブル=ヴィラ」1/100模型


こちらは1925年の「ヴォワザン計画」という自動車社会に対応した都市計画の中の1つで、大型の集合住宅となっています。特徴としては空中庭園と呼ばれる各部屋のテラス、中央に公園やテニスコートがあるといった点で、住宅やオフィスを高層化することで都市の中に緑地や公園をもっと増やせると考えていたようです。これも幾何学的でユニテ等を思い出すデザインかな。近くにはヴォワザン計画の都市模型もあり、大規模な構想だったことが伺えました。
103 芝浦工業大学工学部建築工学科 三宅研究室(当時) 「スタイン=ド・モンヅィ邸」1/30模型

こちらも後で出てくる近代建築の五原則を思わせる設計となっています。先に2階の展示を観てから戻ってきた方が理解しやすいと思います。
この他に、ピュリスムについての説明映像などもありました。
<1.ピュリスムの誕生>
2階からが本編で、1章はピュリスムの誕生期についてです。1917年の春に、当時29歳の建築家シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)は生国のスイスからパリへと移り、1歳年上の画家アメデ・オザンファンと出会いました。2人は意気投合し、オザンファンに教えを受けて油彩画を学びました。そして第一次世界大戦が終わった1918年にオザンファンとジャンヌレの2人でパリで小さな絵画展を開き「キュビスム以後」という著作を出版し、芸術の刷新を訴えました。その内容は、今日の芸術は近代化に対応していないとして、特に最先端だったキュビスムを主観的で無秩序な芸術と批判したようです。そして科学的精神によって普遍的な物の表現を目指す新しい芸術の名称として「ピュリスム」を掲げ、活動していきます。1920年には方法と様式を確立し、秋には雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』を創刊し、この中でル・コルビュジエのペンネームを使い建築論を発表していくことになります。ここにはそうした初期の時代の作品が並んでいました。
22 アメデ・オザンファン、シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)(編) 雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』1-28号
こちらが雑誌『エスプリヌーヴォー』で、1号~28号まで全て揃って並んでいました。表紙の真ん中に号数の数字があり、デザインはほぼ全巻同じで幾何学的なシンプルさがあります。この『エスプリヌーヴォー』は日本語訳すると「新精神」で、1920年10月から1925年まで発行されピュリスムの理念を広めた総合的な芸術雑誌となります。当初はオザンファン、ジャンヌレ、ポール・デルメの3人で創刊したもののデルメは間もなく手を引いて、4号からは2人体制となりジャンヌレは財務、オザンファンは実務を担当していたようです。「構築と総合」の精神を雑誌のモットーに掲げ、工業化社会の発展に対応する新たな時代の芸術の創造を訴えて、機械を近代の象徴とし科学技術の進歩を肯定的に捉え 芸術も同じ所から生まれなくてはならないと主張しました。一方で過去の芸術を否定するのではなく、共通する普遍的な規則があると考えていたようで、それは幾何学的な秩序であるとし、ピュリスムもその考えに沿ったものとなっています。
28 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「赤いヴァイオリンのある静物」
こちらはバイオリン、皿、瓶などが並ぶ油彩の静物画です。赤・黒・灰色といった色の面を使って表現していて、単純化された形態となっているのが画風の最大の特徴と言えます。また、上から見下ろした視点と横からの視点が1つのモチーフで共存しているのはキュビスムとよく似ているかな。立体的でリズムも感じられる作品でした。
この辺はジャンヌレとオザンファンの静物画が並びます。いずれもグラスやギターをモチーフにして構成の妙が面白い作品なのですが、2人の画風はそっくりです。キュビスムと違って形をあまり崩さないので元の形も分かりやすいかな。この後、2人の画風に違いが出てくるのですが、ピュリスム初期の特徴としては前述の作品のように上からと側面からの2つの視点で立体的に表現する点と、モチーフの配置を黄金比にしている点などが挙げられるようです。リズムが心地よいのはこの黄金比によるものかもしれませんね。
70 アメデ・オザンファン 「瓶のある静物」
こちらは窓辺らしき所に並ぶ瓶やグラスなどを描いた静物です。やはり色面を使って表現していて、輪郭も単純化されています。色はコントラストのような組み合わせが使われ、物の重なりを色の違いで表現していました。
解説によると、これは2人がとても仲が良かった最後の頃の作品だそうで、ジャンヌレが建築家ル・コルビュジエとしての名が高まると関係が変化していきました。(その辺は次回の記事で…)
4 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「カップ、本、パイプ」
こちらはスケッチです。油彩作品と違ってかなり写実的に描かれていて、観たまま描いていると言った感じです。コップとパイプなどはピュリスムでお馴染みのモチーフですが、ここでは陰影がつけられていて割と普通の表現かなw
この辺には同様のスケッチが並び、風景画などもありました。ピュリスムに目が慣れてからだと逆に新鮮に思えましたw
10 アメデ・オザンファン 「自画像」
こちらはオザンファンの自画像で、本を持ってこちらをチラっと見る姿で描かれています。背景に机らしきものや本、机などもあるので書斎かな? こちらもやや単純化されていますが、結構写実的でキュビスムみたいな多角的な感じではありませんでした。
この辺でピュリスムの技法についての解説がありました。2人は「規整線」(トラセ・レギュラトゥール)という手法を用いていて、これはジャンヌレが建築の研究書から学んだ方法の応用のようです。(1920年代のル・コルビュジエとしての建築にも応用されています) 画面の底辺から中心軸に向かう2つの直角2等辺三角形の頂点の位置が見る者の目を引きつける戦略的な中心線として重視されているとのことで、何のこっちゃ?と思ったら分かりやすい図解もありました。先述の黄金比もそうですが、構図において科学的に配置しているのが伺えるエピソードです。
13 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ) 「暖炉」
こちらはジャンヌレが初めて描いた油彩作品です。タイトルの通り暖炉を描いているようですが、暖炉の上に白い立方体らしきものが乗っている謎の絵です。最初に描いた作品とは思えないくらいの完成度ですが、それ以上に最初でこんなに謎の絵を描くの?って驚きがありますw 背景も平坦な色面となっているなど既にジャンヌレが目指した芸術の萌芽が観られるような…。解説によるとこの白い立方体はアクロポリスの丘の古代建築になぞらえたものとのことで、一層に常人離れした作品に思えました。
この近くの小部屋には2人の支援者だったラ・ロシュの邸宅の模型(「ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸」1/30模型)などが並んでいました。ル・コルビュジエ初期のピュリスム建築の傑作と言える建物です。
ということで長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。5年くらい前に同様の展示を観た気がしますが、その後に世界遺産に決まったということで注目度も一気に高まっているようです。ル・コルビュジエは絵画も非常に面白く、彼の建築を理解するのに欠かせない要素でもあるのでこの機に知っておくと建物を見る目も変わると思います。後半ではさらに建築との関わりが密接になっていきますので、次回は残りの章についてご紹介予定です。
→ 後編はこちら
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2週間ほど前に上野の国立西洋美術館の展示を観てきたのですが、その際に常設の版画素描展示室で「林忠正―ジャポニスムを支えたパリの美術商」を観てきました。

【展覧名】
林忠正―ジャポニスムを支えたパリの美術商
【公式サイト】
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019hayashi.html
【会場】国立西洋美術館 新館 版画素描展示室
【最寄】上野駅
【会期】2019年2月19日(火)~5月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
閉館ギリギリに行ったのでお客さんも減っていました。とは言え、かなりダッシュで見ることになって実際には15分程度で観てきました。普通に観たら30分くらいだと思います。
さて、この展示は林忠正という明治期に初めて西洋で日本の美術品を商った人物を紹介する内容となっています。林忠正はパリ万博などで日本趣味が興隆する時代にパリで店を開き、単に美術品を売るだけでなく該博な知識と共に紹介することでジャポニスム興隆の原動力となりました。(一方で日本美術の国外への流出させたなんて批判もあったりします) また、日本での美術館建設を夢見て同時代の作家を中心とする西洋美術コレクションも少しづつ充実させていたようですが、それは林忠正の帰国と早すぎる死によって実現せず、コレクションも散逸を余儀なくされました。展覧会は大半は資料となっていて、そうした活動やコレクションについて4章構成で紹介していました。各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。
<I. 修業時代ー西洋との出会い>
まずは修行時代からのコーナーです。林忠正は1853年に加賀藩(今の高岡)の武士の家に生まれ、父は蘭方医だったようです。その後、従兄弟の養子となって上京し、フランス語の塾に入りました。しかし1878年にパリ万国博覧会が開催されることを知ると、通訳となるため万博に参加する会社に入り、目論見通りに渡仏を果たします。そして万博で日本美術・工芸品が大きな人気となっているのを観て、パリ万博の後もパリに留まりそれらを扱う店を構えるようになっていきます。
ここには開成学校に通っていた頃の写真などがありました。同級生たちと写っていたりしますが、まあこれを観てもあまりピンと来ないかなw 他にはパスポートや1878年パリ万国博覧会の通行証、髭をはやしたポートレート、ルイ・ゴンスによる著書『1878年万国博覧会:美術と装飾芸』などもありました。この辺は資料的な感じ。
<II. 画商としてー万国博覧会の時代>
続いては画商としての活躍についてです。林忠正は日本の美術品の販売の中で美術批評家のルイ・ゴンスと知り合い、『日本美術』の2巻の刊行の為に様々な情報を提供していたようです(ルイ・ゴンスは日本語が読めないので林忠正の協力は必須でした。) また、1884年に若井兼三郎と組んで若井・林商会を設立しパリでの美術商としての地歩を固めて行きます。対面で品物の由来や技法を説明するのは日本の資料が読めない西洋の商人には出来ないことで、林忠正にはその点にアドバンテージがあったようです。
ここには欧米の万博や博覧会に参加した資料がありました。
1889年 パリ万国博覧会
1893年 シカゴ・コロンブス記念万国博覧会
1894年 リヨン国際植民地博覧会
1898年 トリノ・イタリア勧業博覧会
1900年 パリ万国博覧会
といったように立て続けに参加していて、当時の博覧会の様子を示す本や入場券、エッフェル塔のポスター、書簡などがあります。「巴里大博覧会 出品意見草稿」や日仏協会講演会原稿「1900年万国博覧会における日本」といったように万博で積極的に働いていたことが伺える資料もあって、関係者として活躍していたようです。また、いくつか本もあり先述のルイ・ゴンスの『日本美術』、やパリ万博日本事務局による『日本美術史』なんかもありました。フランスでも功績が認められていたらしく、レジオン・ドヌール勲章も展示されていました。
<III. 華麗なる交流ージャポニスムの拡がり>
続いてはジャポニスムの広がりについてです。林忠正の店から500mも離れていないところにアール・ヌーヴォーの興隆に大きく貢献したサミュエル・ビング(ジークフリート・ビング)が店を構えていたそうで、両者はライバルだったようです。しかしお互いに一目置く存在だったらしく、林忠正はオークションの鑑定をビングに任せるなど、協力する部分もあったようです。また、林忠正は浮世絵などと作家の作品を交換してコレクションを築いていき、特にポール・ルヌアールに入れ込んでいたようです。
ここにはビングの有名な著書『芸術の日本』や林忠正への手紙などがありました。商売敵でもあり 協力する仲でもあるというのが面白いです。また、ポール・ルヌアールが描いた林忠正の肖像や、林忠正に宛てた個展案内状、書簡などポール・ルヌアールとは特に親しかったことが伺えます。(ポール・ルヌアールの作品を見る機会は少ないですが、かなり前に林忠正に絡めた特集をやってた気がします) 他にも黒田清輝の師匠であるラファエル・コランを始めとした多くの作家との書簡など(石膏の能面なんかも)もあって、幅広い人脈を築いていることが伺えました。西園寺公望や黒田清輝と写ってる写真もあったりするし、かなり歴史的な大物と付き合いがあったみたいですね。
ここには当時人気を博したアール・ヌーヴォー風のポスターや、アンリ・リヴィエールの「エッフェル塔三十六景」シリーズなんかもあるので、軽くジャポニスムとは何かを知ることもできるんじゃないかな。アンリ・リヴィエールとも書簡が残っていました。
<IV. コレクションの行方>
最後は散逸したコレクションについてです。先述のように幅広い人脈を使って集めたコレクションも今は残り少ないのですが、日本美術品は生前に散逸し、西洋美術品は没後に散逸したようです。
ここには当時の病床の日記や葬儀の写真などがありました。もうちょっと長生きしていれば貴重なコレクションが日本の美術館で観られたかもしれないと思うと残念です。コレクションはアメリカに売られたりした訳ですが、一部(ポール・ルヌアールの作品など)は日本の東博に伝わっているようです。見覚えのある黒田清輝の作品なんかも展示されていました。
ここには『林忠正蒐集西洋絵画図録』という本があって、当時はピサロ、ルノワール、モネ、シスレー、コランなどを所有していたそうです。今でも世界的に大人気の画家だけに散逸は惜しい限りです。
ということで、今回は資料多めだったように思えますがジャポニスムの原動力となった重要人物について知ることができました。ジャポニスムは印象派やアール・ヌーヴォーを生んだと言っても過言ではないので、美術史においても非常に意義ある活動をしていた人物だと思います。ちょっとマニアックなのである程度以上の美術知識が必要かもしれませんが、面白い趣向の展示でした。

【展覧名】
林忠正―ジャポニスムを支えたパリの美術商
【公式サイト】
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019hayashi.html
【会場】国立西洋美術館 新館 版画素描展示室
【最寄】上野駅
【会期】2019年2月19日(火)~5月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
閉館ギリギリに行ったのでお客さんも減っていました。とは言え、かなりダッシュで見ることになって実際には15分程度で観てきました。普通に観たら30分くらいだと思います。
さて、この展示は林忠正という明治期に初めて西洋で日本の美術品を商った人物を紹介する内容となっています。林忠正はパリ万博などで日本趣味が興隆する時代にパリで店を開き、単に美術品を売るだけでなく該博な知識と共に紹介することでジャポニスム興隆の原動力となりました。(一方で日本美術の国外への流出させたなんて批判もあったりします) また、日本での美術館建設を夢見て同時代の作家を中心とする西洋美術コレクションも少しづつ充実させていたようですが、それは林忠正の帰国と早すぎる死によって実現せず、コレクションも散逸を余儀なくされました。展覧会は大半は資料となっていて、そうした活動やコレクションについて4章構成で紹介していました。各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。
<I. 修業時代ー西洋との出会い>
まずは修行時代からのコーナーです。林忠正は1853年に加賀藩(今の高岡)の武士の家に生まれ、父は蘭方医だったようです。その後、従兄弟の養子となって上京し、フランス語の塾に入りました。しかし1878年にパリ万国博覧会が開催されることを知ると、通訳となるため万博に参加する会社に入り、目論見通りに渡仏を果たします。そして万博で日本美術・工芸品が大きな人気となっているのを観て、パリ万博の後もパリに留まりそれらを扱う店を構えるようになっていきます。
ここには開成学校に通っていた頃の写真などがありました。同級生たちと写っていたりしますが、まあこれを観てもあまりピンと来ないかなw 他にはパスポートや1878年パリ万国博覧会の通行証、髭をはやしたポートレート、ルイ・ゴンスによる著書『1878年万国博覧会:美術と装飾芸』などもありました。この辺は資料的な感じ。
<II. 画商としてー万国博覧会の時代>
続いては画商としての活躍についてです。林忠正は日本の美術品の販売の中で美術批評家のルイ・ゴンスと知り合い、『日本美術』の2巻の刊行の為に様々な情報を提供していたようです(ルイ・ゴンスは日本語が読めないので林忠正の協力は必須でした。) また、1884年に若井兼三郎と組んで若井・林商会を設立しパリでの美術商としての地歩を固めて行きます。対面で品物の由来や技法を説明するのは日本の資料が読めない西洋の商人には出来ないことで、林忠正にはその点にアドバンテージがあったようです。
ここには欧米の万博や博覧会に参加した資料がありました。
1889年 パリ万国博覧会
1893年 シカゴ・コロンブス記念万国博覧会
1894年 リヨン国際植民地博覧会
1898年 トリノ・イタリア勧業博覧会
1900年 パリ万国博覧会
といったように立て続けに参加していて、当時の博覧会の様子を示す本や入場券、エッフェル塔のポスター、書簡などがあります。「巴里大博覧会 出品意見草稿」や日仏協会講演会原稿「1900年万国博覧会における日本」といったように万博で積極的に働いていたことが伺える資料もあって、関係者として活躍していたようです。また、いくつか本もあり先述のルイ・ゴンスの『日本美術』、やパリ万博日本事務局による『日本美術史』なんかもありました。フランスでも功績が認められていたらしく、レジオン・ドヌール勲章も展示されていました。
<III. 華麗なる交流ージャポニスムの拡がり>
続いてはジャポニスムの広がりについてです。林忠正の店から500mも離れていないところにアール・ヌーヴォーの興隆に大きく貢献したサミュエル・ビング(ジークフリート・ビング)が店を構えていたそうで、両者はライバルだったようです。しかしお互いに一目置く存在だったらしく、林忠正はオークションの鑑定をビングに任せるなど、協力する部分もあったようです。また、林忠正は浮世絵などと作家の作品を交換してコレクションを築いていき、特にポール・ルヌアールに入れ込んでいたようです。
ここにはビングの有名な著書『芸術の日本』や林忠正への手紙などがありました。商売敵でもあり 協力する仲でもあるというのが面白いです。また、ポール・ルヌアールが描いた林忠正の肖像や、林忠正に宛てた個展案内状、書簡などポール・ルヌアールとは特に親しかったことが伺えます。(ポール・ルヌアールの作品を見る機会は少ないですが、かなり前に林忠正に絡めた特集をやってた気がします) 他にも黒田清輝の師匠であるラファエル・コランを始めとした多くの作家との書簡など(石膏の能面なんかも)もあって、幅広い人脈を築いていることが伺えました。西園寺公望や黒田清輝と写ってる写真もあったりするし、かなり歴史的な大物と付き合いがあったみたいですね。
ここには当時人気を博したアール・ヌーヴォー風のポスターや、アンリ・リヴィエールの「エッフェル塔三十六景」シリーズなんかもあるので、軽くジャポニスムとは何かを知ることもできるんじゃないかな。アンリ・リヴィエールとも書簡が残っていました。
<IV. コレクションの行方>
最後は散逸したコレクションについてです。先述のように幅広い人脈を使って集めたコレクションも今は残り少ないのですが、日本美術品は生前に散逸し、西洋美術品は没後に散逸したようです。
ここには当時の病床の日記や葬儀の写真などがありました。もうちょっと長生きしていれば貴重なコレクションが日本の美術館で観られたかもしれないと思うと残念です。コレクションはアメリカに売られたりした訳ですが、一部(ポール・ルヌアールの作品など)は日本の東博に伝わっているようです。見覚えのある黒田清輝の作品なんかも展示されていました。
ここには『林忠正蒐集西洋絵画図録』という本があって、当時はピサロ、ルノワール、モネ、シスレー、コランなどを所有していたそうです。今でも世界的に大人気の画家だけに散逸は惜しい限りです。
ということで、今回は資料多めだったように思えますがジャポニスムの原動力となった重要人物について知ることができました。ジャポニスムは印象派やアール・ヌーヴォーを生んだと言っても過言ではないので、美術史においても非常に意義ある活動をしていた人物だと思います。ちょっとマニアックなのである程度以上の美術知識が必要かもしれませんが、面白い趣向の展示でした。
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1週間ほど前に映画「グリーンブック」を観てきました。この記事にはネタバレが含まれていますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください。

【作品名】
グリーンブック
【公式サイト】
https://gaga.ne.jp/greenbook/
【時間】
2時間10分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
アカデミー賞受賞から間もない時期ということもあって、混んでいて席もかなり埋まっていました。
さて、この映画は2019年2月のアカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚本賞の3部門を受賞した話題の作品で、実話を元にした2人の人物の物語となっています。公式サイトで分かる程度のネタバレをすると、舞台は1962年のアメリカで、イタリア系白人が黒人のピアニストの運転手を務め、黒人差別の激しい南部へのコンサートツアーに帯同するという話です。その為、話のテーマは人種差別を取り扱っている部分が多く、あとは2人が信頼関係を築いていくという内容になります。 同時期に人気を博している「翔んで埼玉」のなんちゃって差別と違ってこちらはガチの差別なので、黒人はこんなに差別されていたのか…と目を疑うようなシーンもあったりします。 しかしそれでもあえて南部に向かって旅するピアニストのシャーリーは非常にインテリで、どんな時も冷静沈着な印象を受けます。一方で、白人運転手のトニー・リップはちゃらんぽらんで最初は黒人を差別しているようなシーンも出てきます。そんな2人が道中様々なトラブルを共に乗り越えて行く様子は割と淡々としていて、扇情的ではないのが逆に心に残るかな。それでも話が暗くならないのはトニー・リップの駄目人間っぷりがコメディ要素となっていて、所々に笑いも起きていました。どうしようも無い奴なんだけど憎めないキャラですw 見どころは やはり2人の会話で、シャーリーの考えや孤独なんかを吐露するシーンなどは考えさせられるものがありました。この辺は演技の良さもよく分かる所だと思います。
とは言え、満足度は4点くらいが正直な所です。日本には馴染みの薄い黒人差別の問題なのであまり実感が沸かないというのは私の想像力の欠如でしょうか。ナチュラルに差別されているシーンとか、観ていて結構ショックで、面白いというよりは いたたまれない気持ちになったりしました。
ちなみに本国アメリカでは白人救世主が黒人に手を差し伸べる構図となっているという批判もあるようです。私はそうは思いませんでしたが、用心棒の側面もあるので助けてるのは間違いないかな。この辺は被差別を感じている当事者達にしか分からない感覚な気もします。
ということで、あまりスカッとするような感じではなく、じんわり来て考えさせられるような映画となっていました。特にシャーリーの耐え忍びながらも諦めない姿が心を打ちます。評価が割れているように現在進行系で難しいテーマではありますが、真正面から取り組んだのは流石はアカデミー賞受賞作だと思います。

【作品名】
グリーンブック
【公式サイト】
https://gaga.ne.jp/greenbook/
【時間】
2時間10分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
アカデミー賞受賞から間もない時期ということもあって、混んでいて席もかなり埋まっていました。
さて、この映画は2019年2月のアカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚本賞の3部門を受賞した話題の作品で、実話を元にした2人の人物の物語となっています。公式サイトで分かる程度のネタバレをすると、舞台は1962年のアメリカで、イタリア系白人が黒人のピアニストの運転手を務め、黒人差別の激しい南部へのコンサートツアーに帯同するという話です。その為、話のテーマは人種差別を取り扱っている部分が多く、あとは2人が信頼関係を築いていくという内容になります。 同時期に人気を博している「翔んで埼玉」のなんちゃって差別と違ってこちらはガチの差別なので、黒人はこんなに差別されていたのか…と目を疑うようなシーンもあったりします。 しかしそれでもあえて南部に向かって旅するピアニストのシャーリーは非常にインテリで、どんな時も冷静沈着な印象を受けます。一方で、白人運転手のトニー・リップはちゃらんぽらんで最初は黒人を差別しているようなシーンも出てきます。そんな2人が道中様々なトラブルを共に乗り越えて行く様子は割と淡々としていて、扇情的ではないのが逆に心に残るかな。それでも話が暗くならないのはトニー・リップの駄目人間っぷりがコメディ要素となっていて、所々に笑いも起きていました。どうしようも無い奴なんだけど憎めないキャラですw 見どころは やはり2人の会話で、シャーリーの考えや孤独なんかを吐露するシーンなどは考えさせられるものがありました。この辺は演技の良さもよく分かる所だと思います。
とは言え、満足度は4点くらいが正直な所です。日本には馴染みの薄い黒人差別の問題なのであまり実感が沸かないというのは私の想像力の欠如でしょうか。ナチュラルに差別されているシーンとか、観ていて結構ショックで、面白いというよりは いたたまれない気持ちになったりしました。
ちなみに本国アメリカでは白人救世主が黒人に手を差し伸べる構図となっているという批判もあるようです。私はそうは思いませんでしたが、用心棒の側面もあるので助けてるのは間違いないかな。この辺は被差別を感じている当事者達にしか分からない感覚な気もします。
ということで、あまりスカッとするような感じではなく、じんわり来て考えさせられるような映画となっていました。特にシャーリーの耐え忍びながらも諦めない姿が心を打ちます。評価が割れているように現在進行系で難しいテーマではありますが、真正面から取り組んだのは流石はアカデミー賞受賞作だと思います。
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日付が変わって昨日となりましたが、恵比寿の山種美術館で「山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 生誕130年記念 奥村土牛」を観てきました。

【展覧名】
山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 生誕130年記念 奥村土牛
【公式サイト】
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2019/togyu.html
【会場】山種美術館
【最寄】恵比寿駅
【会期】2019年2月2日(土)~3月31日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんが多くて場所によっては人だかりができていましたが、概ね自分のペースで鑑賞することができました。
さて、今回の展示は穏やかな画風で人気がある奥村土牛の個展となっています。奥村土牛は山種美術館の創立者・山﨑種二と関わりが深く、無名だった時期から半世紀に渡って交流していたそうで、山種美術館には135点もの土牛の作品がコレクションされているようです。この展示ではその中から約60点ほどが時期別に3章に渡って並んでいました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:生誕120年 奥村土牛 (山種美術館)
<冒頭>
最初に、奥村土牛で特に有名な「醍醐」が展示されていました。
44 奥村土牛 「醍醐」 ★こちらで観られます
こちらは白い塀を背景にピンク色の枝垂れ桜が満開となっている様子が描かれた作品です。木の幹が画面の中央に来る大胆な構図で、滲みを活かした幹の表現も風格を感じさせます。淡い色彩で柔らかく温かみのある雰囲気となっていました。春爛漫といった明るい作品です。
<第1章 土牛芸術の礎>
1章は大正期から昭和20年代にかけてのコーナーです。奥村土牛は1889年に東京の京橋で生まれ、画家を志していた父のもとで絵画に親しみ16歳で梶田半古に入門し、そこで生涯の師と仰ぐ兄弟子の小林古径に出会いました。1920年から2年ほど小林古径の画室に住み込んで影響を受けたそうで、小林古径の指導により日本・中国の古画や西洋画(特にセザンヌ)などに学びました。1926年からは速水御舟の研究会に参加し、38歳で再興院展で初入賞しています。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
2 奥村土牛 「雨趣」
こちらは高めの視点から見下ろすように 屋根が連なる赤坂の街に雨が降る様子を描いた作品です。縦に無数の線があり、雨が強く降りしきる様子が遠目でもわかります。屋根の幾何学的なリズムはセザンヌからの影響を思わせるかな。静かで叙情的な作品です。
近くには兎や鹿を描いた作品もありました。ふわふわしたアンゴラウサギを描いた作品なんかも可愛くて好みです。
17 奥村土牛 「軍鶏」
こちらは二曲一隻の屏風で、2羽の軍鶏が描かれていて、1羽は立ち上がり、もう1羽は俯いて地面をついばむような姿勢をしています。いずれも鋭い目をしていて緊張感があるかな。体つきはちょっと誇張しているように思えますが、すらっとした筋肉質で力強い印象を受けました。
<第2章 土牛のまなざし>
続いては60代から70代頃までのコーナーです。奥村土牛は写生を好んでいたそうで、形を表面的に写すのではなく物質感 つまり気持ちを捉えるのが大切と考えていたようです。そのため描く対象の本質や生命感を表現するのを重視したらしく、色彩についても精神を意味したものでなければならないと考えていました。また、60代から70代の頃は何か開放された気持ちになって自由に伸び伸びと制作できるようになったと感じていたようで、ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
25 奥村土牛 「踊り子」
こちらは金地を背景に「白鳥の湖」の衣装を着たバレリーナが描かれています。手を腰に当てて背筋を伸ばす様子に気品があり、均整の取れた体つきとなっています。土牛はこのバレリーナの人柄に惚れ込んでいたそうで、人となりも表現されているように思えました。
29 奥村土牛 「那智」
こちらは那智の滝を描いた作品で、滝を中央真正面に捉えて真っ直ぐ下に落ちていく流れを描いています。高さ3mくらいある大型の画面なので、目の前に滝があるかのような臨場感もあって見応えがあります。岩のゴツゴツした感じや透明感のある水の表現など質感も豊かで、岩肌はセザンヌからの影響が観られるようです。奥村土牛はこの滝に崇高なものを感じたらしく、それを上手く表現していました。
この近くには「鳴門」や姫路城を描いた「城」などの代表作があり、写生も合わせて展示されていました。
33 奥村土牛 「茶室」
こちらは茶室の中を描いた作品です。障子や柱、壁などの質感を描き分けつつ、水平・垂直・直角の多い構図が半ば抽象画のようでもあって非常に面白く感じます。影で奥行きを作ったりするなど、微妙な色彩による表現も見事でした。
37 奥村土牛 「稽古」
こちらは相撲の栃錦を中心に左右に若い力士を従えた3人の像です。脇の2人はややすっきりした体格なのに比べて栃錦はがっしりして貫禄のある姿に見えます。簡潔で明確な輪郭線で描かれているのも特徴で、単純化されつつも凛々しい雰囲気がよく出ていました。
<第3章 百寿を超えて>
最後は80歳から晩年のコーナーです。奥村土牛は101歳まで生きて100歳を越えても制作を続けていたようです。ここには最後まで衰えを知らぬ晩年の作品が並んでいました。
41 奥村土牛 「朝市の女」
こちらは能登で見かけたという若い朝市の売り子の女性を描いた作品です。白い半袖のブラウスに青いモンペのようなものを履き、頭には笠を被った姿となっていて、日焼けした褐色の肌と共に逞しい印象を受けます。手前には無数の魚が置かれているのですが、ちょっと台からはみ出していて平面的な描写となっていました。
この辺には花を描いた作品などが並んでいました。
57 奥村土牛 「海」
こちらは千葉の鴨川の海を描いた作品です。手前の岩に波が押し寄せている様子で、海面は青に緑が混じって滲みがいい味を出しています。広々とした海は雄大な光景となっていました。単純な構図だけど美しい作品です。
52 奥村土牛 「吉野」
今回の展示はこの作品のみ撮影可能でした。

穏やかな色彩で春の暖かさまで感じられるような光景です。
続いて第二会場です。
62 奥村土牛 「山なみ」
こちらは99歳の白寿を記念して開催された展覧会に出す為に描かれた作品で、雪が積もって真っ白に染まった富士山を描いています。手前には黒っぽい山?が滲みを使って描かれていて独特の風合いとなっています。富士山は稜線辺りが金色となっていて光輝くような神々しさを湛えていました。
この部屋には他にも富士山の山頂付近を描いた作品が2点ありました。また、この絵の隣には自筆で「白寿記念」と書いた墨跡もありました。長生きで素晴らしいですねw
60 奥村土牛 「犢」
こちらは95歳の頃の作品で、黒い牛と そのお腹の辺りに隠れている黒い子牛が描かれています。親牛は滲みを使って力強く表されている一方、子牛は色合いが薄めでちょっと気弱そうに見えました。牛の内面まで伝わるような描写と観察眼は晩年まで健在だったことを伺わせる作品です。
ということで、ちょくちょく見かける作品が多かったですが、久々に奥村土牛の作品をまとめて観ることができました。代表作が目白押しで奥村土牛の画風の特徴などもよく分かる内容だと思います。近代の日本画が好きな方にオススメの展示です。

【展覧名】
山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 生誕130年記念 奥村土牛
【公式サイト】
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2019/togyu.html
【会場】山種美術館
【最寄】恵比寿駅
【会期】2019年2月2日(土)~3月31日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんが多くて場所によっては人だかりができていましたが、概ね自分のペースで鑑賞することができました。
さて、今回の展示は穏やかな画風で人気がある奥村土牛の個展となっています。奥村土牛は山種美術館の創立者・山﨑種二と関わりが深く、無名だった時期から半世紀に渡って交流していたそうで、山種美術館には135点もの土牛の作品がコレクションされているようです。この展示ではその中から約60点ほどが時期別に3章に渡って並んでいました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:生誕120年 奥村土牛 (山種美術館)
<冒頭>
最初に、奥村土牛で特に有名な「醍醐」が展示されていました。
44 奥村土牛 「醍醐」 ★こちらで観られます
こちらは白い塀を背景にピンク色の枝垂れ桜が満開となっている様子が描かれた作品です。木の幹が画面の中央に来る大胆な構図で、滲みを活かした幹の表現も風格を感じさせます。淡い色彩で柔らかく温かみのある雰囲気となっていました。春爛漫といった明るい作品です。
<第1章 土牛芸術の礎>
1章は大正期から昭和20年代にかけてのコーナーです。奥村土牛は1889年に東京の京橋で生まれ、画家を志していた父のもとで絵画に親しみ16歳で梶田半古に入門し、そこで生涯の師と仰ぐ兄弟子の小林古径に出会いました。1920年から2年ほど小林古径の画室に住み込んで影響を受けたそうで、小林古径の指導により日本・中国の古画や西洋画(特にセザンヌ)などに学びました。1926年からは速水御舟の研究会に参加し、38歳で再興院展で初入賞しています。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
2 奥村土牛 「雨趣」
こちらは高めの視点から見下ろすように 屋根が連なる赤坂の街に雨が降る様子を描いた作品です。縦に無数の線があり、雨が強く降りしきる様子が遠目でもわかります。屋根の幾何学的なリズムはセザンヌからの影響を思わせるかな。静かで叙情的な作品です。
近くには兎や鹿を描いた作品もありました。ふわふわしたアンゴラウサギを描いた作品なんかも可愛くて好みです。
17 奥村土牛 「軍鶏」
こちらは二曲一隻の屏風で、2羽の軍鶏が描かれていて、1羽は立ち上がり、もう1羽は俯いて地面をついばむような姿勢をしています。いずれも鋭い目をしていて緊張感があるかな。体つきはちょっと誇張しているように思えますが、すらっとした筋肉質で力強い印象を受けました。
<第2章 土牛のまなざし>
続いては60代から70代頃までのコーナーです。奥村土牛は写生を好んでいたそうで、形を表面的に写すのではなく物質感 つまり気持ちを捉えるのが大切と考えていたようです。そのため描く対象の本質や生命感を表現するのを重視したらしく、色彩についても精神を意味したものでなければならないと考えていました。また、60代から70代の頃は何か開放された気持ちになって自由に伸び伸びと制作できるようになったと感じていたようで、ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
25 奥村土牛 「踊り子」
こちらは金地を背景に「白鳥の湖」の衣装を着たバレリーナが描かれています。手を腰に当てて背筋を伸ばす様子に気品があり、均整の取れた体つきとなっています。土牛はこのバレリーナの人柄に惚れ込んでいたそうで、人となりも表現されているように思えました。
29 奥村土牛 「那智」
こちらは那智の滝を描いた作品で、滝を中央真正面に捉えて真っ直ぐ下に落ちていく流れを描いています。高さ3mくらいある大型の画面なので、目の前に滝があるかのような臨場感もあって見応えがあります。岩のゴツゴツした感じや透明感のある水の表現など質感も豊かで、岩肌はセザンヌからの影響が観られるようです。奥村土牛はこの滝に崇高なものを感じたらしく、それを上手く表現していました。
この近くには「鳴門」や姫路城を描いた「城」などの代表作があり、写生も合わせて展示されていました。
33 奥村土牛 「茶室」
こちらは茶室の中を描いた作品です。障子や柱、壁などの質感を描き分けつつ、水平・垂直・直角の多い構図が半ば抽象画のようでもあって非常に面白く感じます。影で奥行きを作ったりするなど、微妙な色彩による表現も見事でした。
37 奥村土牛 「稽古」
こちらは相撲の栃錦を中心に左右に若い力士を従えた3人の像です。脇の2人はややすっきりした体格なのに比べて栃錦はがっしりして貫禄のある姿に見えます。簡潔で明確な輪郭線で描かれているのも特徴で、単純化されつつも凛々しい雰囲気がよく出ていました。
<第3章 百寿を超えて>
最後は80歳から晩年のコーナーです。奥村土牛は101歳まで生きて100歳を越えても制作を続けていたようです。ここには最後まで衰えを知らぬ晩年の作品が並んでいました。
41 奥村土牛 「朝市の女」
こちらは能登で見かけたという若い朝市の売り子の女性を描いた作品です。白い半袖のブラウスに青いモンペのようなものを履き、頭には笠を被った姿となっていて、日焼けした褐色の肌と共に逞しい印象を受けます。手前には無数の魚が置かれているのですが、ちょっと台からはみ出していて平面的な描写となっていました。
この辺には花を描いた作品などが並んでいました。
57 奥村土牛 「海」
こちらは千葉の鴨川の海を描いた作品です。手前の岩に波が押し寄せている様子で、海面は青に緑が混じって滲みがいい味を出しています。広々とした海は雄大な光景となっていました。単純な構図だけど美しい作品です。
52 奥村土牛 「吉野」
今回の展示はこの作品のみ撮影可能でした。

穏やかな色彩で春の暖かさまで感じられるような光景です。
続いて第二会場です。
62 奥村土牛 「山なみ」
こちらは99歳の白寿を記念して開催された展覧会に出す為に描かれた作品で、雪が積もって真っ白に染まった富士山を描いています。手前には黒っぽい山?が滲みを使って描かれていて独特の風合いとなっています。富士山は稜線辺りが金色となっていて光輝くような神々しさを湛えていました。
この部屋には他にも富士山の山頂付近を描いた作品が2点ありました。また、この絵の隣には自筆で「白寿記念」と書いた墨跡もありました。長生きで素晴らしいですねw
60 奥村土牛 「犢」
こちらは95歳の頃の作品で、黒い牛と そのお腹の辺りに隠れている黒い子牛が描かれています。親牛は滲みを使って力強く表されている一方、子牛は色合いが薄めでちょっと気弱そうに見えました。牛の内面まで伝わるような描写と観察眼は晩年まで健在だったことを伺わせる作品です。
ということで、ちょくちょく見かける作品が多かったですが、久々に奥村土牛の作品をまとめて観ることができました。代表作が目白押しで奥村土牛の画風の特徴などもよく分かる内容だと思います。近代の日本画が好きな方にオススメの展示です。
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今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た際、東京国立近代美術館本館の常設展も観てきました。こちらは撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。
【展覧名】
所蔵作品展 MOMAT コレクション
【公式サイト】
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20190129/
【会場】
東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー
【最寄】
東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2019年1月29日(火)~ 5月26日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【感想】
この日は空いていて快適に鑑賞することができました。今回も気に入った作品の中から今までご紹介していないものを写真で並べていこうと思います。
※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れますが、撮影禁止の作品もあります。
※当サイトからの転載は画像・文章ともに一切禁止させていただいております。
菱田春草 「梅に雀」

掛け軸としては菱田春草の最後の作品。もう絵筆もとれなかったくらい状態だったらしく やや動きの少ない感じにも見えるけど、それでも春を感じさせる優しい雰囲気に見えました。この後、36歳の若さで亡くなってしまったのだとか。
野田九浦 「辻説法」

この辻説法しているのは日蓮だそうです。聞き入っている人々の視線が集まる日蓮が一際目を引きました。何かに立ち向かうような凛々しさです。
有馬さとえ(三斗枝) 「赤い扇」

赤い扇を持った女性像。やや微笑んでいて魅力的な雰囲気です。首が長いせいか頭が小さく見えました。
河野通勢 「好子像」

河野通勢は岸田劉生の草土社に参加していただけあって、作風にも共通点があるように思えます。この絵はデューラーっぽい感じもするし、遠くから見たら岸田劉生かと思いました。
石垣栄太郎 「腕」

この画家は社会主義運動に参加していたらしく、労働をモチーフにしている点にそれを感じるかな。大胆なトリミングで力強い表現です。ディエゴ・リベラと交流があったらしく、その影響も受けているのだとか。
参考記事:ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに (埼玉県立近代美術館)
織田一磨 「東京風景より 日本ばし」

こちらは1916年頃の東京を描いた作品。町並みはすっかり西洋化しているけど、舟は日本っぽさがあるのが面白い。叙情的な雰囲気も好みでした。
この辺は織田一磨の版画がいくつも並んでいました。
織田一磨 「画集銀座 第一輯より 屋台店」

こちらは昭和初期の銀座の風景。光の効果が郷愁を誘ってどこか懐かしい。漏れてる影を観ると支那そば屋さんは満席っぽいですねw
寺田政明 「魔術の創造」

何だかわからないものが無数に並ぶ不可思議な光景。シュルレアリスム的でちょっと不気味な所もあるけど、はっきりした色彩や配置が心地よく感じられました。
北脇昇 「空港」

楓の種子を飛行機に見立てたシュルレアリスム的な作品。こちらはどんよりしていることもあって言いしれぬ不安感があるかな。寂しげな光景に思えました。
香月泰男 「水鏡」

水面をじっと観る子は水鏡に何を観ているのでしょうか。背後にある枯れ草のようなものや、右下の決壊したような表現から不吉な感じも受けます。解説によると、生命の象徴である少年が鑑賞者に背を向けていることに戦争の影響を指摘する人もいるのだとか。
山口蓬春 「香港島最後の総攻撃図」

こちらは1941年の日本軍による香港島への攻撃を描いた作品。戦火さえ無ければ青が綺麗なんでしょうけどね…。山口蓬春も戦争美化は避けては通れなかったようです。
吉原治良 「火山」

まるで記号のように単純化されていてジョアン・ミロを想起しました。タイトルを観ると火山と黒雲であることがわかりますねw
岡田謙三 「元禄」

どうしてこれが元禄なんだろ?としばらく考えてみましたw 幾何学的な構成で色合いは日本的な色に見えるかな。漆喰の壁とか、朱塗りのような色彩に思えました。
岡本太郎 「燃える人」

こちらは1954年の第五福竜丸の被爆事件に着想を得た作品。左下辺りに船があって、顔が付いているような船もあります。激しい色のぶつかり合いで叫ぶような雰囲気がありました。
参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)
田中敦子 「作品 66 - SA」

こちらは吉原治良をリーダーに結成された具体美術協会のメンバーの1人の作品。絵の具が滴るような描写で一見すると抽象のようですが、元は色電球とコードでできた「電気服」をドローイングしたもので、それを発展してこうした絵になったようです。これも色が強烈な作品でした。
参考記事:カンティーニ美術館 (南仏編 マルセイユ)
奈良原一高 「消滅した時間より ハイウエー・テレフォン、ニューメキシコ」

何の変哲も無い道端の公衆電話ですが、遠くの稲光と暗雲のせいか非常に寂しげに見えます。これから嵐が来るんでしょうかね。
川西英 「小品より 水仙」

こちらは木版の版画で、非常に明快でシンプルな色彩となっています。背景が黒となっていることもあって光を強く感じました。
前田青邨 「郷里の先覚」

この2人は前田青邨と同じ中津川出身の幕末の人物(右:市岡しげ政、左:間秀のり)だそうです。すっきりとして太さに変化がなくどこまでも続くような線で輪郭線が描かれていて、こうした線を小林古径、安田靫彦、前田青邨の3人は理想としたのだとか。
水越松南 「虎穴図」

南画風だけどちょっとコミカルな雰囲気もある作品。虎の顔がなんとも可愛いw 墨の滲みの表現が自在に感じられました。
有元利夫 「室内楽」

やけに胴体が大きい体つきの人も木になりますが、中世の壁画を思わせるような風化したような色彩が特に面白い。シュールさもあって非常に好みの画家です。
参考記事:有元利夫展 天空の音楽 (東京都庭園美術館)
黒田アキ 「裏返しに」

ギリシャ建築の女人柱(カリアティード)のような4本の柱が描かれているとのことですが、実際には何だか分かりません。青々とした画面やリズム感が好みで、裏返しになっている組み合わせなんかも面白く感じました。
辰野登恵子 「Work 86-P-1」

これも何を描いているか全く分かりませんが、色合い・マチエール・形などが目を引きました。
山口啓介 「花の心臓/くるみ循環系」

こちらは心臓がくるみや花に似ていることに着想を得た索引だそうです。アクリルっぽく見えますが、顔料と樹脂を描いているそうで、非常に鮮やかな色合いとなっていました。滲みも面白い効果を生んでますね。
ということで、今回も見どころの多い展示となっていました。この美術館も訪れる度に発見があるので毎回楽しみにしています。今回の常設展も会期が長めですので、特別展などを観に行く際には十分に時間を取って常設も観ることをオススメします。
参考記事:
東京国立近代美術館の案内 (2018年11月)
東京国立近代美術館の案内 (2018年06月)
東京国立近代美術館の案内 (2018年05月)
東京国立近代美術館の案内 (2017年12月前編)
東京国立近代美術館の案内 (2017年12月後編)
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東京国立近代美術館の案内 (2010年02月)
東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
【展覧名】
所蔵作品展 MOMAT コレクション
【公式サイト】
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20190129/
【会場】
東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー
【最寄】
東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2019年1月29日(火)~ 5月26日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【感想】
この日は空いていて快適に鑑賞することができました。今回も気に入った作品の中から今までご紹介していないものを写真で並べていこうと思います。
※ここの常設はルールさえ守れば写真が撮れますが、撮影禁止の作品もあります。
※当サイトからの転載は画像・文章ともに一切禁止させていただいております。
菱田春草 「梅に雀」

掛け軸としては菱田春草の最後の作品。もう絵筆もとれなかったくらい状態だったらしく やや動きの少ない感じにも見えるけど、それでも春を感じさせる優しい雰囲気に見えました。この後、36歳の若さで亡くなってしまったのだとか。
野田九浦 「辻説法」

この辻説法しているのは日蓮だそうです。聞き入っている人々の視線が集まる日蓮が一際目を引きました。何かに立ち向かうような凛々しさです。
有馬さとえ(三斗枝) 「赤い扇」

赤い扇を持った女性像。やや微笑んでいて魅力的な雰囲気です。首が長いせいか頭が小さく見えました。
河野通勢 「好子像」

河野通勢は岸田劉生の草土社に参加していただけあって、作風にも共通点があるように思えます。この絵はデューラーっぽい感じもするし、遠くから見たら岸田劉生かと思いました。
石垣栄太郎 「腕」

この画家は社会主義運動に参加していたらしく、労働をモチーフにしている点にそれを感じるかな。大胆なトリミングで力強い表現です。ディエゴ・リベラと交流があったらしく、その影響も受けているのだとか。
参考記事:ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに (埼玉県立近代美術館)
織田一磨 「東京風景より 日本ばし」

こちらは1916年頃の東京を描いた作品。町並みはすっかり西洋化しているけど、舟は日本っぽさがあるのが面白い。叙情的な雰囲気も好みでした。
この辺は織田一磨の版画がいくつも並んでいました。
織田一磨 「画集銀座 第一輯より 屋台店」

こちらは昭和初期の銀座の風景。光の効果が郷愁を誘ってどこか懐かしい。漏れてる影を観ると支那そば屋さんは満席っぽいですねw
寺田政明 「魔術の創造」

何だかわからないものが無数に並ぶ不可思議な光景。シュルレアリスム的でちょっと不気味な所もあるけど、はっきりした色彩や配置が心地よく感じられました。
北脇昇 「空港」

楓の種子を飛行機に見立てたシュルレアリスム的な作品。こちらはどんよりしていることもあって言いしれぬ不安感があるかな。寂しげな光景に思えました。
香月泰男 「水鏡」

水面をじっと観る子は水鏡に何を観ているのでしょうか。背後にある枯れ草のようなものや、右下の決壊したような表現から不吉な感じも受けます。解説によると、生命の象徴である少年が鑑賞者に背を向けていることに戦争の影響を指摘する人もいるのだとか。
山口蓬春 「香港島最後の総攻撃図」

こちらは1941年の日本軍による香港島への攻撃を描いた作品。戦火さえ無ければ青が綺麗なんでしょうけどね…。山口蓬春も戦争美化は避けては通れなかったようです。
吉原治良 「火山」

まるで記号のように単純化されていてジョアン・ミロを想起しました。タイトルを観ると火山と黒雲であることがわかりますねw
岡田謙三 「元禄」

どうしてこれが元禄なんだろ?としばらく考えてみましたw 幾何学的な構成で色合いは日本的な色に見えるかな。漆喰の壁とか、朱塗りのような色彩に思えました。
岡本太郎 「燃える人」

こちらは1954年の第五福竜丸の被爆事件に着想を得た作品。左下辺りに船があって、顔が付いているような船もあります。激しい色のぶつかり合いで叫ぶような雰囲気がありました。
参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)
田中敦子 「作品 66 - SA」

こちらは吉原治良をリーダーに結成された具体美術協会のメンバーの1人の作品。絵の具が滴るような描写で一見すると抽象のようですが、元は色電球とコードでできた「電気服」をドローイングしたもので、それを発展してこうした絵になったようです。これも色が強烈な作品でした。
参考記事:カンティーニ美術館 (南仏編 マルセイユ)
奈良原一高 「消滅した時間より ハイウエー・テレフォン、ニューメキシコ」

何の変哲も無い道端の公衆電話ですが、遠くの稲光と暗雲のせいか非常に寂しげに見えます。これから嵐が来るんでしょうかね。
川西英 「小品より 水仙」

こちらは木版の版画で、非常に明快でシンプルな色彩となっています。背景が黒となっていることもあって光を強く感じました。
前田青邨 「郷里の先覚」

この2人は前田青邨と同じ中津川出身の幕末の人物(右:市岡しげ政、左:間秀のり)だそうです。すっきりとして太さに変化がなくどこまでも続くような線で輪郭線が描かれていて、こうした線を小林古径、安田靫彦、前田青邨の3人は理想としたのだとか。
水越松南 「虎穴図」

南画風だけどちょっとコミカルな雰囲気もある作品。虎の顔がなんとも可愛いw 墨の滲みの表現が自在に感じられました。
有元利夫 「室内楽」

やけに胴体が大きい体つきの人も木になりますが、中世の壁画を思わせるような風化したような色彩が特に面白い。シュールさもあって非常に好みの画家です。
参考記事:有元利夫展 天空の音楽 (東京都庭園美術館)
黒田アキ 「裏返しに」

ギリシャ建築の女人柱(カリアティード)のような4本の柱が描かれているとのことですが、実際には何だか分かりません。青々とした画面やリズム感が好みで、裏返しになっている組み合わせなんかも面白く感じました。
辰野登恵子 「Work 86-P-1」

これも何を描いているか全く分かりませんが、色合い・マチエール・形などが目を引きました。
山口啓介 「花の心臓/くるみ循環系」

こちらは心臓がくるみや花に似ていることに着想を得た索引だそうです。アクリルっぽく見えますが、顔料と樹脂を描いているそうで、非常に鮮やかな色合いとなっていました。滲みも面白い効果を生んでますね。
ということで、今回も見どころの多い展示となっていました。この美術館も訪れる度に発見があるので毎回楽しみにしています。今回の常設展も会期が長めですので、特別展などを観に行く際には十分に時間を取って常設も観ることをオススメします。
参考記事:
東京国立近代美術館の案内 (2018年11月)
東京国立近代美術館の案内 (2018年06月)
東京国立近代美術館の案内 (2018年05月)
東京国立近代美術館の案内 (2017年12月前編)
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