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ギュスターヴ・モロー展― サロメと宿命の女たち ― 【パナソニック汐留美術館】

10日ほど前に新橋のパナソニック汐留美術館で「ギュスターヴ・モロー展― サロメと宿命の女たち ―」を観てきました。

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【展覧名】
 ギュスターヴ・モロー展― サロメと宿命の女たち ―

【公式サイト】
 https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/19/190406/

【会場】パナソニック汐留美術館
【最寄】新橋駅/汐留駅

【会期】2019年4月6日(土)~ 6月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場が狭いこともあって割と混雑感がありましたが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は象徴主義の巨匠であるギュスターヴ・モローの個展で、パリのギュスターヴ・モロー美術館の作品を中心に特に女性像に着目していくつかの系統に分けて紹介する内容となっています。このパナソニック汐留美術館はジョルジュ・ルオーのコレクションを所有しているため毎年のようにルオー展を開催していますが、今回はちょっと変化球でルオーのアカデミー時代の先生であったモローを取り上げた感じでしょうか。展示はテーマごとに4章構成となっていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 モローが愛した女たち>
まずはギュルターヴ・モローが愛した恋人と母親をモデルにした作品が並ぶコーナーです。モローは建築家の父と音楽好きの母の元で育ち、両親を心から敬愛していたようです。特に母は妹を13歳で亡くしたことを機に絆を強めたそうで、この世で最も大切な存在と表現して繰り返し描きました。また、結婚はしなかったものの30年近く共に過ごしたアレクサンドリーヌ・デュルーも親密な視点で度々描いたようで、彼女が亡くなった際には墓は2人のイニシャルのAとGを重ねたデザインを施すほど愛は深かったようです。モローは小説家のジョリス=カルル・ユイスマンスに「パリの真ん中に閉じこもった神秘主義者」と呼ばれ、ミステリアスなファム・ファタル(破滅を招く運命の女)を描き続けたわけですが、社交界やジャーナリズムに距離を置いて生涯独身を貫き、老いた母親と自宅にひきこもって生活していたようです。ここには身近だった2人の女性を描いた作品が並んでいました。

1 ギュルターヴ・モロー 「24歳の自画像」
まずは自画像がありました。横向きでやや下の方に目をちらっと向けている表情に見えるかな。油彩での自画像はこれが唯一だそうで、アカデミックな教育で成果が得られずロマン主義へと傾倒した頃の姿のようです。ややぼんやりして顔に柔らかい光が当たるような表現なので、ちょっとそれも頷けるかも。口髭や顎髭があるけど厳格さはそれほど感じず、優しい雰囲気に見えました。既にモローっぽさを感じるような神秘性も若干あります。

この辺は母を描いた鉛筆の素描や、パレット、母に宛てたメモなんかがありました。母の晩年は耳が悪かったらしく、筆談で自分の絵を説明していたそうで、今ではそれが貴重な資料になっているようです。

6 ギュルターヴ・モロー 「アレクサンドリーヌ・デュルー」 ★こちらで観られます
こちらは鉛筆とインクのデッサンで、横向きで顔をこちらに向ける恋人のアレクサンドリーヌ・デュルーが描かれています。2人はモローのイタリア留学後に出会ったそうで、当時 彼女は家庭教師をしていて、モローが絵の手ほどきをしたのがきっかけだったようです。心優しい人だったようで、この絵でも理知的な目をしています。さっと描いたように見えるけど、流石のデッサン力で逆に画力の高さを再認識しました。

この隣にも木炭による肖像がありました。ランプのもとで新聞?を読んでいるようでリラックスした親密さを感じます。ちなみに母が亡くなってからはこの恋人が心の支えとなっていたのですが、彼女にも先立たれてしまい晩年は喪失感と共に制作をしていたようです。先述のお墓のデザインと実際のモンマルトルにあるお墓の写真なんかも観ることができました。また、パリのギュルターヴ・モロー美術館には彼女に送った作品なんかもあるらしく、写真で紹介していました。

10 ギュルターヴ・モロー 「パルクと死の天使」
こちらは馬に乗った死の天使と、手綱を引くパルク(人間の運命を支配する女神)を描いた作品です。右の方には丸い太陽があり、天には星が1つ輝いています。この2柱は顔もわからないほど粗いタッチとなっていて、死の天使は剣を構えて背後に光輪もあって威圧感のようなものを感じます。解説によると、この作品は恋人の死後に描かれたらしく、悲しみや喪失感のエネルギーをこの絵に転嫁しているとのことでした。


<第2章 《出現》とサロメ>
続いてはモローがよく描いた「サロメ」についてです。サロメは舞の褒美としてヘロデ王に洗礼者ヨハネの首を所望したユダヤの王女ですが、モローが数多く描いたファム・ファタルの中でも突出して描いたテーマでもあります。モローはサロメを男を幻惑する妖女として描いていて、ここにはそれを代表する作品も並んでいました。

11 ギュルターヴ・モロー 「洗礼者聖ヨハネの斬首」
こちらは油彩でサロメを描いた中で最も早い時期の作品です。中央の祭壇のような所で手を合わせ跪いている半裸のヨハネの姿が描かれ、後ろでは剣を構えた刑吏、その脇にはじっと見つめている黄色い衣のサロメの姿もあります。背景には縦長の円柱などがあり、明暗が神秘的な効果を生んでいて、左上から差し込む光が天からの光のようにも思えました。静かだけど恐ろしくも劇的な1枚です。

この辺には首を切ったあとの作品もありました。

16 ギュルターヴ・モロー 「サロメ」
こちらは1876年のサロン出品作「ヘロデ王の前で踊るサロメ」より 踊るサロメ像の部分の習作で、完成作と同じサイズで描かれています。祈るように右手を顔の前に出し目を瞑り、東洋風の長い衣をまとっている姿で、美しく魔術的な雰囲気があります。これだけ観るとミステリアスな美女って感じで、ファム・ファタルの妖しい色気が漂っていました。

18 ギュルターヴ・モロー 「出現」 ★こちらで観られます
こちらは中央に光り輝く光背を持つヨハネの首が空中に浮かび、それをサロメが指さしているという幻視の場面を描いた作品です。ヨハネの首は血が滴り目を開いてサロメを観ています。一方、サロメは睨むような顔に見えますが、後ろにいる王などはヨハネの首に気づいていないようで、サロメだけにしか見えていないようです。この絵は未完成らしく、背景の柱や宮殿の装飾などは白い線が下書きのように残っているのも特徴じゃないかな。偶像や装飾なども細かく描かれていて、緻密さが逆に際立って分かるようになっていました。ポーズや構成なども含めて独創的な作品です。

34 ギュルターヴ・モロー 「サロメ」
こちらは手をクロスして肩の上に置き、花を持っているサロメの裸婦像です。均整の取れた体つきで、腰を捻って優美な姿となっています。暗い背景に白く輝くような肌が特に妖しい美しさで、背後では王や母と思われる人物が裸体をじっと見つめています。妖艶さと神秘性を兼ね備えていて、まさにファム・ファタルといった1枚でした。


<第3章 宿命の女たち>
続いてはファム・ファタルの女たちを描いたコーナーです。魅惑的で呪われた宝石のように輝くような女性ばかりで、モローは「女というのはその本質において未知と神秘に夢中で、背徳的 悪魔的な誘惑の姿をまとって現れる 悪に心を奪われる無意識的存在なのである」という言葉を残しているそうです(現代だったら大問題になりそうな発言ですw) 歴史画家を自認して神話や聖書を題材にした作品を手がけていたこともあって、ここには神話に出てくるファム・ファタルたちが並んでいました。

37 ギュルターヴ・モロー 「トロイアの城壁に立つヘレネ」
こちらは夕日を背に城壁の上に立つヘレネを描いた作品です。パリスの審判のエピソードでパリスがウェヌスとの約束(賄賂みたいな)によってヘレネを掠奪して2人は結ばれる訳ですが、それがきっかけでトロイア戦争が起きてしまうので、ヘレネは傾国の美女として描かれています。ヘレネの右下には戦争で命を落とした兵士が折り重なっていて、血があちこちに滴っています。ヘレネの顔はのっぺらぼうのように何もないのですが、それでも美しく気品がある雰囲気をまとっています。不吉さと美しさが同居する破滅的な魅力がありました。

この近くには淫蕩のメッサリーナ、サムスンの怪力の秘密である髪を切ったデリラ、謎掛けをしては旅人を殺すスフィンクス、オルフェウスを八つ裂きにしたバッカスの巫女などの絵もありました。

47 ギュルターヴ・モロー 「ヘラクレスとオンファレ」
こちらはヘラクレスとリュディアの王女オンファレを描いた作品で、友人を殺した罰としてヘラクレスがオンファレの奴隷となるものの、愛人となったとエピソードとなっています。ここでは2人とも裸体で、座って花冠を被っているヘラクレスの頭に手をおいて立つオンファレの姿があり、背後には翼をもったキューピッドのような人物も描かれています。オンファレはなまめかしく柔らかい肉体表現で、それに従うヘラクレスは神妙な感じに見えるかな。筋骨隆々なのに良いようにされているようで面白かったですw

49 ギュルターヴ・モロー 「セイレーン」
こちらは夕日を背景に海の岩場で腰掛ける3人の裸婦を描いた作品です。足は蛇のようになっていて、男の死体に巻き付いている様子も描かれていて、どうやら彼女たちは船乗りを引き寄せては殺すセイレーンのようです。幻想的で美しい夕景と裸体の艶やかさとは似つかわしくないような、恐ろしさが同居しているのが何とも面白い。これぞファム・ファタルって感じでした。

この隣にも似た作品がありました。

51 ギュルターヴ・モロー 「レダ」
こちらはレダと白鳥の神話を元にした作品で、裸体のレダがゼウスが変身した白鳥を抱き寄せて口づけするように顔を近づけています。ストーリー的には白鳥(ゼウス)がレダに迫るはずなので、この構図は役割が逆になっているようでちょっと珍しいかも。むしろレダが誘っているような感じです。色は薄く、下書きが見えているので未完成かもしれないと思いながら観てました。暗い中で白く浮かび上がるような色彩でした。

57 ギュルターヴ・モロー 「エウロペの誘拐」 ★こちらで観られます
こちらはオウィディウスの変身物語の一場面で、王女エウロペと牡牛に姿を変えたゼウスが描かれています。顔だけゼウスになって光り輝いているのがちょっとキモいw 背に乗るエウロペはゼウスと視線をあわせていて官能的な雰囲気すらあるかな。エウロペの乗り方が妙な感じですが、体を斜めにして飛ぶような姿勢になっているのも面白い構図でした。大型なので特に目を引く作品です。

この近くにはアダムとエヴァのエヴァ、恋に破れて投身自殺した詩人サッフォー、クレオパトラなどをテーマにした作品もありました。


<第4章 《一角獣》と純潔の乙女>
最後の章は清らかな乙女のコーナーです。背徳的な美女を描いていた一方で汚れなき乙女も描いていたようで、処女だけが捕獲できる一角獣の題材はそれにぴったりだったようです。また、母と恋人を失った孤独の中で手がけたのは愛と慈悲の象徴である聖母マリアで、15世紀のヴェネツィア派の画家カルパッチョに構図を学んだ作品などもあるようです。ここにはそうした清らかな女性像が並んでいました。

63 ギュルターヴ・モロー 「一角獣」 ★こちらで観られます
こちらはクリュニー中世美術館のタピストリーを参照して描いた作品で、水辺の森で脇にユニコーンを抱えて寝そべる裸婦が描かれています。その脇にもドレスの女性が両脇にユニコーンを抱えていて、穏やかで理想郷のような光景です。女性の装飾品は中世フランス風らしく、細かい紋様がありかなり緻密です。女性たちは優しい眼差しをしていて、ここまで観てきた女性たちとはちょっと雰囲気が違っていましたw

66 ギュルターヴ・モロー 「妖精とグリフォン」
こちらは岩の洞窟の中で頭の後ろに手を回して横たわる真っ白な体の裸婦と、その手前で伏せたグリフォンが描かれた作品です。解説によると、冒し難い美しさゆえに欲望の対象となる女性を象徴的に描いているそうで、グリフォンは険しい表情でそれを護っているようです。真っ白で大理石像のように見えますが、確かに気品ある姿となっていました。
なお、この絵のバージョン違いを観たアンドレ・ブルトンは絵の虜になったのだとか。

最後にパリのギュルターヴ・モロー美術館の案内の映像もありました。狭い美術館に14000点もあるそうで、2回は画家の愛した調度品なんかも展示しているようです。パリに行った時、時間がなくて行けなかったのが悔やまれる…


ということで、ファム・ファタルだけでなく母や恋人、清らかな女性を描いた作品まであってモローの女性観を多面的に観ることができました。元々モローが好きなので十分満足できましたが、できればもう少し油彩が観たかったようにも思います。とは言え、サロメなど見応えのある作品もあるので、この展示でモロー好きが増える気がします。洋画好きにオススメの展示です。


おまけ:
ちなみの今回の展示から「パナソニック 汐留ミュージアム」から改名したわけですが、また改名か!と思ったのは私だけでないはずw その前は「パナソニック電工汐留ミュージアム」で、その前は「松下電工 汐留ミュージアム」と、本社の名前が変わる度にコロコロ変わってきました。今回は大阪のパナソニックミュージアムと紛らわしいのと博物館に指定されたので変更したのだとか。覚えづらいんで今度こそ定着してほしいものです…。



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映画「バイス」 (ネタバレあり)

先日の会社帰りにレイトショーで映画『バイス』を観てきました。この記事にはネタバレが含まれていますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください。

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【作品名】
 バイス

【公式サイト】
 https://longride.jp/vice/

【時間】
 2時間10分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_③_4_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_③_4_5_名作

【感想】
空いていてほぼ貸し切り状態だったような… ちょっと日本では苦戦してそうです。

さて、この映画は史実と検証(一部憶測含む)を元に作られた政治もので、ジョージ・ウォーカー・ブッシュ(子ブッシュ)の時代に副大統領を努めたディック・チェイニーの半生を描いた物語となっていて、今年のアカデミー賞では作品賞にノミネート、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞という評価を受けています。タイトルの「バイス」は英語で悪徳を意味する「vice」と、副大統領を意味する「vice president」を掛けたものですが、チェイニーはその両方が当てはまる史上最強&最悪の副大統領として描かれています。実際のチェイニーは911の時にアルカイダ殲滅の流れをイラク戦争まで持って行ったのですが、それもこの映画で描かれています。私はラムズフェルドの方が記憶に残っていたわけですが、その理由も影のように静かに事を進めるチェイニーらしい特徴だったのかもしれません。

ここからネタバレがあるのでご注意ください。

映画の序盤は平凡(と言ってもイェール大学の中ではという話)で喧嘩と酒に明け暮れた駄目なやつだったのが、奥さんに諭されて更生して政治の道に進み、やがて出世していく… と、立身出世の話のようになっています。この辺は家族思いの描写もあって憎めないやつに思えますが、やがてウォーターゲート事件に巻き込まれなかったことでチャンスを得て、ラムズフェルドの元で虎視眈々と権力を狙って行く様子などは野心が強く伺えます。その後も何度か挫折を味わいながらも奥さんのサポートで盛り返していきますが、自身の大統領選の出馬を考えた時に、中傷合戦や娘の事情などを考慮して一度は政界から引退もしています。その辺りで偽のエンドロールが流れてちょっと驚きw 副大統領になっていない内に終わる訳がないので席を立つ人はいませんでしたが、一応これに騙されないようご注意w

そして子ブッシュの誘いで副大統領になると、表向きはブッシュを立てつつ裏では自分の陣営で周りを固め、通信を傍受し情報を操作するなど、影の大統領としての活動が描かれます。この映画を観る限りだと、無知なブッシュを老練なチェイニーと取り巻き達が上手く誘導しているような印象を受けるかな。弁護士やシンクタンクを上手く使いながら法的解釈を広げて世論操作していく様子などは ちょっとした悪のカタルシスのようなものさえ感じますw そして911が起きると、それを好機と捉えてイラク侵攻まで進んでいく流れは 映画の作り手の解釈も加味されている気がするものの、概ね史実に思えました。結局イラクから大量破壊兵器は出てこず、何のための戦いだったのか?というのは今でも中東情勢に影を落としているので、チェイニーの影響力は計り知れないものがあります。

と、1990年代くらいからは当時の新聞やニュースをよく観ていたので私は理解できましたが、アメリカの政治の制度や政治家同士の対立構造については無知なので、その辺の事情があまり飲み込めないままに進んでいってしまいました。一々説明しないでテンポも早いので、予備知識がないとあっという間に置いていかれる可能性があります。特に911以降の流れについては知識が必須だと思います。 また、エンドロールの途中に「この映画、臭いと思ったらリベラル臭い。偏っている」という自虐ネタみたいなセリフがあって、それは随所で感じますw それに対して「事実を言ったらリベラルか?」と反論しているセリフもあって、その程度の批判は折込済と言ったところでしょうか。私はアメリカ人ではないのでどっちでも無いですが、アカデミー賞にノミネートされたってのはこの辺にあるのかなと邪推してみたり。陰謀論的な話があったのでオカルト好きとしてはそこをもうちょっと掘り下げて欲しかったかなw 


ということで、総合的に面白かったか?というと何とも言えませんw 公平かつ忠実に作ってるようでチェイニーの悪行を皮肉交じりに煽りながら糾弾しているのは確かです。そのテイストを下品に感じるか、痛快と感じるかは人によると思います。私はマイケル・ムーアなんかも楽しめますが、これは作り手の小粋な正義マンぶりがちょっと苦手でしたw もっとドキュメンタリー的に作ってくれたら面白く思えたのかも。アメリカの政治や歴史に興味がある人向けの映画だと思います。



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府中市美術館コレクション名作選 【府中市美術館】

前回ご紹介した府中市美術館の「へそまがり日本美術」を観た後、常設展も観てきました。今回の常設は「府中市美術館コレクション名作選」とタイトルが付いていて選りすぐりの作品が集まっていました。

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【展覧名】
 府中市美術館コレクション名作選

【公式サイト】
 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/jyosetu/ichiran/h30.html

【会場】府中市美術館
【最寄】京王府中駅

【会期】2019年3月16日(土)~5月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
特別展は凄い混みようだったのに、こちらは空いていて快適に観ることができました。特別展のチケットで観ることが出来るのに観ない人が多いのかな? 何とも勿体ない…。

さて、今回の常設は名作選ということで、府中市美術館が誇るコレクションの中から時代ごとに傑作を紹介するという内容となっていました。府中市美術館は改修明けなのでどう変わったのか?と思ったらルートが逆周りになったのと牛島憲之室の一部が変わったくらいで 思ったほど大きな変化は無いように思えます。(気がついてないだけかもしれませんが) いくつかのコーナーに分かれていましたので、各コーナーごとに気に入った作品と共に振り返ってみようと思います。


<府中市美術館コレクション名作選>
まずは常設の名作選のコーナーです。ここは時代ごとに節に分かれていました

椿貞雄 「泰山木花」
こちらは壺に入った大輪の白い花(泰山木)を描いた作品です。厚塗りで白の中にも黄色や赤も混じっていて濃密な色合いとなっています。葉っぱも黒みがかっているなど重厚さが出ていて、どっしりとした雰囲気です。師であり仲間である岸田劉生との共通性も感じられる作品でした。

宮本十久一 「夕凪」
こちらは掛け軸で、大正の頃の町並みと水路を背景に白い馬車馬が静かに佇んでいる様子が描かれています。背景の建物は水平・垂直を多用した構成で規則正しく並んでいて、護岸の石垣と共に整然とした美しさがあります。また、淡い色合いが夕暮の情感と静寂を感じさせ、白い馬が浮かびあがるように見えました。

[明治洋画の黎明]
川村清雄 「ベネチア風景」
こちらは小さめの画面に黒いゴンドラとその船頭、背景には白い壁の建物や行き交う人々などベネチアの水辺の情景が描かれています。写生的ながらも情感溢れていて、観ているだけで旅情を誘われました。川村清雄の高い技量も感じさせる作品です。
 参考記事:維新の洋画家 川村清雄 感想前編(江戸東京博物館)

ラファエル・コラン 「フロレアル」
こちらは水辺の草むらで横たわる裸婦を描いた作品です。右手を顔に当ててこちらを観ていて、滑らかな色合いと共に幻想的で清らかな雰囲気の女性です。ややぼんやりした筆致なのもそう感じさせるのかも。裸体の白さも印象的な作品です。東京藝術大学の所蔵品とよく似てるけどバリエーションなのかな?

近くにはコランの弟子で日本近代絵画の父とも言える黒田清輝の作品もありました。

[風景を描く]
アルフレッド・イースト 「富士山」
こちらは海の対岸に富士山が見えている構図で、手前の海面すれすれを無数の鶴が舞い飛んでいます。富士山の左には雲がかかり、右側は明るく光っていて、頂上付近はピンクがかっているなど神々しく雄大な雰囲気です。色は淡めでやや幻想的ですらあり、日本の美しさを凝縮したような作品となっていました。

青木繁 「少女群像」
こちらは3人の女性が輪になって踊っている様子を描いた作品です。3人とも左から右へと髪や衣が流れるようで動きを感じます。表情は分かりませんが古代風の衣装ということもあって、神話の世界のような象徴的で不思議な光景となっていました。

[昭和戦前期の絵画]
有島生馬 「三姉妹」
こちらは海が遠くに見える海岸で遊ぶ3人の少女を描いた作品です。1人はY字の木の幹に座り、1人は地べたで足を横にして座り、もう1人は立って目の前の犬の方に手を差し出すようなポーズをしています。3人とも顔は描かれておらずお互いに無関心なのがちょっとシュールに思えます。明るい色彩なのに夢の中の光景のように思えました。

長谷川利行 「カフェの入口」
こちらは長い線状の筆致を使ってカフェの入口を描いた作品です。観葉植物やドアっぽいものがあるようですが、かなり粗いタッチで判別するのは中々に困難です。激しくもあり即興的でもあり、長谷川利行の作風そのものといった感じの作品でした。
 参考記事:長谷川利行展 七色の東京 (府中市美術館)

[戦後のリアリズム絵画]
瑛九 「真昼」
こちらは抽象画で、青・赤・オレンジ・黄色などの斑点が放射状に並んでいるように見える作品です。タイトルの意味は分かりませんが、ほとばしるエネルギーのようなものを感じるので、昼をイメージしているのかな? 色の取り合わせが面白くクレーなどを彷彿とさせました。
 参考記事:生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)

岡本太郎 「コンポジション」
こちらは黒く太い輪郭線で5つくらいの目玉と顔のようなものを描いた半具象・半抽象の作品です。赤・黄色・オレンジなどの色がぶつかり合って不協和音のエネルギーが生まれ、強烈な色彩感覚となっています。全体的に暗めで不穏な雰囲気もありました。
 参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)

[多摩の風景]
児島善三郎 「水温む」
こちらはやや高いところから多摩の畑を見渡すような風景画です。土の部分多く、遠くには森や作業小屋らしきものがあり、手前に小川も流れています。描写も風景も素朴で長閑な光景に見えるかな。茶色が多いので温かみが感じられました。

[1960年代 前衛の挑戦]
ここは2点のみでした

磯辺行久 「モニュメント7」
キャンバスに大理石の粉を盛り上げて作ったその名の通りモニュメント的な作品で、緑色に塗られた門のように見えます。重厚で立体感があり、もはや絵画の枠を飛び出たような斬新な表現となっていました。

[昭和の人 幻想 小山田二郎と相笠昌義]
ここも2点のみでした。

相笠昌義 「橘果を持つ女」
こちらは飾り皿のかかる室内を背景に、真横を向いた現代女性が枝付きの緑の果実(橘果?)を差し出す様子が描かれた作品です。構図としてはルネサンス期のプロフィールのような真横からの顔ですが、表情は微笑みを浮かべていてアルカイックスマイルのような取り合わせなのが面白いです。写実的なのに神秘的な雰囲気もあって、不思議な静けさを感じました。

[開館後の美術活動と共に 平成の絵画]
こちらは府中市美術館の公開制作などで作られた作品が並んでいました。

曽谷朝絵 「Door」
こちらは浴室のドアを描いた作品で、全体的に虹色がかった画面となっています。淡く柔らかい色彩で、ドアの向こうからの優しい光を感じるかな。穏やかだけど楽しげで心弾むような画風となっていました。


<やわらかな牛島憲之の世界>
こちらは改修前と同じく牛島憲之に関する品が並ぶコーナーです。しかし牛島憲之のアトリエが無くなっていて、大部屋は牛島憲之以外の作品が並ぶ(次の章)など、ちょっと牛島憲之のコーナーが減ったように思えます。今季だけなのか、次からもそうなのかは今の所わかりません。


<海と空の風景>
こちらは元々は牛島憲之の作品が並んでいた大部屋。勿論ここにも牛島憲之の作品もありますが、今回はそれ以外の画家の作品も並んでいました。

和田英作 「三保の松原」
こちらは曇天の下の松林を描いた作品です。普通、このタイトルなら三保の松原から観た富士山でも描くところですが、砂地の松を描いた寒々しい絵となっていますw ガランとして寂しげな光景で、ある意味リアルな海岸の光景になっているように思えました

正宗得三郎 「白波の波」
こちらは手前に崖に生える松、奥に白波が押し寄せる砂浜が描かれています。紺碧の海と赤茶色の浜や山々の色の対比が強く感じられるかな。真っ白な波が幾重にも並んでいて、海が荒れているように思えました。


ということで、有名画家の典型的な作風の作品がいくつもあって、予想以上に満足できる内容でした。この美術館の美味しいところを集めた展示ですので、「へそまがり日本美術」を観に行く際には是非こちらも観ることをオススメします。


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へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで 【府中市美術館】

日付が変わって昨日となりましたが、府中市美術館で「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」を観てきました。非常に注目を集めている展示となっていますので、早めにご紹介しておこうと思います。なお、この展示は前期・後期に分かれていて、私が観たのは前期の最終日でした。

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【展覧名】
 へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで

【公式サイト】
 http://fam-exhibition.com/hesoten/
 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/hesomagari.html

【会場】府中市美術館
【最寄】京王府中駅

【会期】2019年3月16日(土)~5月12日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
非常に混んでいてチケットを買うのに5~10分待ちで、中も列を組んで観るような混雑ぶりでした。この美術館がこんなに混んでいるのを観たことがないくらいの混雑です。

さて、この展示は「へそ曲がり」をテーマにした展示で、江戸時代から現代にかけて絵の上手さや美しさを追い求めず独自の世界を開いた個性派の作品が並ぶ内容となっています。中には伊藤若冲や長沢芦雪といった本来は絵の巧みな画家の作品もありますが、あえて素朴で拙かったり不気味だったりと一筋縄ではいかない表現ばかりです。展覧会は4章構成となっていましたので、各章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。


<第1章 別世界への案内役 禅画>
まずは禅画のコーナーです。禅画は禅の教えを実践したり広めるたもの物なので、従来の絵画芸術には無いような大胆な作品が多く並んでいました。

37 仙厓義梵 「豊干禅師・寒山拾得図屏風」
こちらは六曲一双の屏風で、右隻には巻物を持つ寒山と箒を持つ拾得、左隻には虎に乗った豊干禅師が描かれ、その傍らには3匹の子虎の姿もあります。全体的に早描きでまるで漫画のようなタッチとなっていて、粗く思えるかな。○の中に点を打っただけの虎の目が何とも間が抜けて可愛いw 3箇所(小さいのがもう1つ)ほど賛があり、解説によるとそれぞれ「屏風の仕立てが悪いから上手く描けない」 「私は前世で豊干に会ったので上手く描けた」 「世の中の絵には描き方というものがあるが、私の絵にはない」という旨となっているようです。上手く描けたのか描けなかったのかどっちやねん!と、これも禅問答かと疑ってしまいますw 早描きで雑に見えても寒山拾得のやや狂気を感じる表情なんかは特徴がよく出ているように思えました。
 参考記事:仙厓礼讃 (出光美術館)

この辺には雪村周継の三幅対の布袋を描いた作品なんかもありました。

10 狩野山雪 「松に小禽・梟図」
こちらは直角に曲がる松の枝にとまっているフクロウを描いたもので、その近くにいる2羽の小鳥がフクロウをじっと見ています。フクロウはちょっとゴリラのような変わった見た目をしてるかなw 解説によると、「フクロウは不孝・悪声とされ 鳥の中で孤立してきたが、見方を変えればどうしてフクロウが悪いものか。人の印象など実体のないものだ」と賛に書いてあるようです。素朴で可愛らしいですが、ちゃんと意味が込められている作品でした。

この辺は白隠慧鶴の作品などもありました。
 参考記事:
  白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)

23 惟精宗磬 「断臂図」
こちらは達磨に弟子入りしに行ったのに無視されるので、自らの手を切り落として覚悟を示す慧可を描いた作品です。刀を持って今まさに切り落とそうとしているのですが、かなり ゆるい雰囲気となっていて、表情も何だか悲しげで情けないw 緊迫のシーンのはずなのにほのぼのとしていてギャップが可笑しく思えました。

27 風外本高 「南泉斬猫図」
こちらは「南泉斬猫」という禅の逸話を描いた作品です。禅僧たちが猫も人と同じように仏になる資格はあるか?という話をしていたところ、南禅和尚が「議論の余地のない正しい答えを言ってみよ。さもなくば猫を斬る」と言ったのですが、結局誰も答えられず あえなく猫が斬られたという話です。この絵では和尚の傍らに胴を真っ二つに斬られた猫の姿があり、絵のゆるさと対照的に可哀想に見えます…。この時不在の弟子がいれば答えられて猫も助かったのにということですが、何度聞いても酷い話です。

41 42 長沢芦雪 「狗子図」 円山応挙 「時雨狗子図」
こちらは師弟の2点を並べて比較するという趣旨となっていました。両方とも子犬が群れている様子を描いたもので、師の応挙は写実的に犬の毛をフサフサに描いていてリアリティもあるかな。一方の弟子の芦雪はややデフォルメ気味に滑らかな曲線で体を表している違いがありました。いずれもコロコロした感じで可愛いけど、先生と弟子でやや表現が違っているのがよく分かる展示方法でした。


<第2章 何かを超える>
続いては理論や芸術上の考えに注目したコーナーです。人と違ったり権威に背いた作品などが並んでいました。

45 小林一茶 「苦の娑婆や 自画賛」
こちらはやや後ろ向きに座っている自画像で、賛が付けられています。かなり筆数が少なくて一筆書きみたいな簡素な作風ですが、ちょっと悩んでいるような顔をしているのが分かります。賛には「苦の娑婆や さくらが咲ば さいたとて」とあるそうで、桜が散ってしまうことに気をもんでいるのかもしれません。ちょうどこの日の桜の散り具合とマッチしているようで面白く思えました。

この辺は俳画や南画が並んでいました。俗世間の美しさとは離れた非技巧の世界が広がります。

59 佐竹蓬平 「山水図」
こちらはいかにも南画といった感じの山水図で、山と麓の家、手前には外で語らう2人の文人らしき姿が見えています。点々を多用した描き方で、割と大雑把ではありますが理想郷のような雰囲気が出ていました。
この作品の隣には応挙の風景画があり、比べるとそのゆるさがよく分かる趣向となっていました。

66 夏目漱石 「柳下騎驢図」
こちらは夏目漱石の晩年の作で、柳の木と その隣に架かる橋を驢馬に乗って渡る中国風の人物が描かれています。木を見上げるような感じで、全体的に穏やかな印象を受けるかな。南画風で木の葉っぱを点々と表現しているものの、かなり素朴で子供の絵のような味わいがあります。解説によると、世俗的な美術を嫌い高い教養と純粋な心を拙さの中に表現する文人の精神を自覚していたのではないかとのことです。まあ夏目漱石は美術に詳しいので、間違いなくそれを念頭にしていたんでしょうね。
 参考記事:
  夏目漱石の美術世界展 感想前編(東京藝術大学大学美術館)
  夏目漱石の美術世界展 感想後編(東京藝術大学大学美術館)

67 伊藤若冲 「伏見人形図」
こちらは芭蕉扇のようなものを持った坊主頭の人形が7体縦に連なっている様子を描いた作品です。赤・緑・青の服の色の違い以外は同じ顔で、線と点で表現された表情が可愛らしく思えます。超絶技巧で有名な若冲ですが、この作品では簡素でゆるい雰囲気となっていました。ちなみに若冲は今回数点並んでいました。特に水墨はゆるい絵があったりするのも魅力だと思います。
 参考記事:
  Kawaii(かわいい) 日本美術 -若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで- (山種美術館)
  伊藤若冲 アナザーワールド (千葉市美術館)
  伊藤若冲 アナザーワールド 2回目(千葉市美術館)

この近くには歌川国芳の「荷宝蔵壁のむだ書」もありました。わざと下手な落書き風に描いているところが逆に技術の高さと反骨精神を感じさせます。
 参考記事:破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)

73 三岸好太郎 「友人ノ肖像」
こちらは洋画で、椅子に座ったスーツ姿の男性が描かれています。しかし手足の大きさのバランスがおかしくてやけにズングリした印象を受けるかな。表情もポカンとしているような妙な味わいがあります。背景は暗く、どことなくシュールさを感じました。解説によると、この作品はルソーに影響を受けたとのことで納得w
この隣には世田谷美術館が所蔵するアンリ・ルソーの「フリュマンス・ビッシュの肖像」もありました。大正時代に日本にもルソーが伝わってきて拙いブームが起きたようです。みんな一生懸命上手くなろうとしているところにルソーの素朴な絵が来て最新美術と言われたらショックを受けたでしょうねw
 参考記事:
  アンリ・ルソーから始まる 素朴派とアウトサイダーズの世界 感想前編(世田谷美術館)
  世田谷美術館の常設 (2010年08月)

その先には1970年代のヘタウマ漫画のコーナーがありました。糸井重里・湯村輝彦の『情熱ペンギンごはん』と蛭子能収の『骨正月』は一部が抜粋されてコピーをパネルで読むことができます。どちらも話が読めないシュールさで、特に蛭子能収は不条理と呼ばれるのも致し方ない意味不明さがありましたw ペンギンごはんは愛嬌があるからちょっと読んでみたい。

続いてはお殿様の絵のコーナーです。将軍や藩主が描いた絵が並んでいました。ここはかなりツボでしたw

84 徳川家光 「木菟図」
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この写真はロビーの記念撮影の所にあったコピーを撮ったものです。ひと目でミミズクと分かる特徴的な造形ですが、子供の絵みたいな素朴さを感じます。この頃、狩野探幽などが奥絵師として仕えていた訳ですが、その画風とも全く違っているのも興味深いところです。羽を丹念に描いているところやズングリした体躯など可愛らしい絵となっていました。

85 徳川家光 「兎図」
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この写真はロビーの記念撮影の所にあったコピーを撮ったものです。まるで兎の縫いぐるみみたいなw 韓非子の兎の話(ころりころげた木の根っ子の話)をモチーフにしているようですが、マスコット的なゆるさです。家光って将軍の中でも厳格なイメージがあるんですけどね…w

86 徳川家光 「鳳凰図」
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この写真はロビーの映像を撮ったものです。鳳凰というと威厳のあるものを想像しますが、小鳥かな?w 愛嬌たっぷりでこんな可愛い鳳凰を観たことがありません。

88 徳川家綱 「鶏図」
こちらは立派な黒い尾っぽを持つ鶏を描いた作品です。鶏冠や喉の部分が赤くなっていて、くちばしは黄色に着色されています。これも子供が描いたような簡素さで父親の家光に負けないくらい緩いw きょろっとした目が可愛らしく、やけに掛け軸下の方に小さく描いてあるのも萌えポイントでした。

他にも伊達藩の藩主の作品も良かったし、お殿様の純粋さが凄いw


<第3章 突拍子もない造形>
続いてはちょっと他とは違う造形の作品のコーナーです。ここも様々な時代やジャンルの作品が並んでいました。

104 岸礼 「百福図」
こちらは大きな掛け軸で、お多福みたいな顔の女性が画面中に無数にいて、洗濯したり化粧したり機織りしたり、中にはブランコ遊びみたいなことをしている女性の姿もあります。髪が真っ黒なのでカラスが群れているような不気味さもあるかなw 奇妙でちょっとキモいんだけど楽しげで目を引かれる作品でした。

108 児島善三郎 「松」
こちらはオレンジの幹と黄緑の葉から成る松を描いたもので、殴り描くような線を使ったり ぐちゃぐちゃに塗った筆致も見て取れます。松の葉は何故か楕円形となっていたりデフォルメが進んでいるのですが、それがリズミカルに感じられ、色の取り合わせと共に心地よく思えました。不思議な魅力のある作品です。

101 中村芳中 「十二ヶ月花卉図押絵貼屏風」
こちらは六曲一双の屏風で、一曲ずつに季節の草花が描かれています。松、梅、牡丹など形はやけに丸っこくデフォルメされていて、輪郭を描いて中を色面で表すような手法です。中村芳中は琳派に大きな影響を受けた画家で この絵でもそれがよく伝わるのですが やたらと滲みを活かした「たらし込み」を使っていたりするのも特徴です。華やかなのに拙いような面白い味わいとなっていました。


<第4章 苦みとおとぼけ>
最後は綺麗とか心地よさと対極にある苦味と、おとぼけという2つの要素を取り上げていました。

110 岸駒 「寒山拾得図」 ★こちらで観られます
こちらは箒を持つ拾得が念珠を持つ寒山の肩に手をかける様子が描かれた作品で、2人ともニヤニヤと笑っている表情となっています。まるで妖怪のようで尖った爪やボリューム感ある髪など 狂気を感じさせます。岸駒は実力ある画家だけに気味悪さも強く表現されていて、確かに「苦み」と言えそうな作品でした。

120 祇園井特 「美人図」
こちらは画面いっぱいに描かれた女性の肖像で、簪をして唇には笹紅を付けています。非常に目が大きく、全体的に濃ゆい顔に見えるかなw 色も強めで妙なリアリティがあり、理想化・様式化されていない女性像となっていました。

128 曽我二直庵 「猿図」
こちらは蔦に掴まっている猿を描いたもので、顔が白く手が長いテナガザルみたいな猿です。やや不敵な笑みを浮かべているようにも見えて人間ぽさも感じます。毛並みは丹念に描かれるなど絵自体は上手いのですが、確かにトボけた味わいがありました。

136 萬鉄五郎 「仁丹とガス灯」
こちらは暗い画面に赤々と「仁丹」の広告が描かれた作品です。かなり厚塗りされていて、仁丹の文字が非常に目を引きます。また、周りには星型のガス灯の光もあって、強烈な色彩感覚となっていました。どうして仁丹の広告?という可笑しさも魅力の作品です。


ということで、本当に個性豊かで絵の楽しさを再認識するような展示でした。西洋ではルソーなどによって認識されたジャンルですが、日本では江戸時代からこんなにも豊かな表現があったのかと驚くばかりです。既に非常に人気の展示となっていますので、これから出かけられる方は混雑を勘定してなるべく時間を多く取ってスケジュールしたほうが良さそうです。幅広い層が楽しめる今季オススメの展示です。



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フォレスタ 【早稲田界隈のお店】 と椿山荘の写真

ここ3日ほど早稲田界隈をご紹介してきましたが、今日で最終回です。前回ご紹介した講談社野間記念館の展示を観た後、歩いて5分くらいにある椿山荘のフォレスタというカフェでお茶してきました。ついでに椿山荘の庭園も観てきましたので合わせて写真でご紹介していこうと思います。

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【店名】
 フォレスタ

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 https://hotel-chinzanso-tokyo.jp/restaurant/foresta/
 食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130905/13003824/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 都電 早稲田駅、護国寺駅、江戸川橋駅など

【近くの美術館】
 講談社野間記念館
 永青文庫
  など

【この日にかかった1人の費用】
 1300円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
結構混んでいて10分ほど入店待ちとなっていました。

さて、このお店は椿山荘のロビーのすぐ側にあるお店で、バンケット棟の3階にあります。以前ご紹介したル・ジャルダンで久々にアフタヌーンティーを楽しもうと思ったらそちらも一杯だったので、こちらで頂くことにしました。
 参考記事:
  椿山荘の写真
  ル・ジャルダン 【早稲田界隈のお店】


このお店も豪華な作りで落ち着きがありました。ちょっとお客さんが多いので店内の写真は撮りませんでしたが、このお店は大きな窓から庭を見渡すことができます。
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残念ながら窓際には座れませんでしたw それでも窓が大きいので開放感があります。

この日はデザートセット(1600円)を頼みました。桜モンブランとブレンドコーヒーです。

まずはコーヒー。
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やや苦味があって酸味はそれほどなかったかな。後味がすっきりした飲みやすいコーヒーです。

奥さんはアイスココア(980円)でした。
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こちらは濃厚なチョコレートの香りがあって、甘さもしっかりしていました。スイーツと一緒だとかなり甘々になるかもw

こちらが桜モンブラン。
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本体だけでなく花模様のデコレーションが可憐な印象です。

桜モンブランの中にはイチゴ(あまおう)が丸ごと入っています
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他にも桜の塩漬けなども入っていて、色々な味が隠れてて美味しかったです。

カフェでゆっくり休んで落ち着いたので、ついでに椿山荘の庭園をめぐることにしました。庭園マップはこんな感じ
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割とアップダウンがあるので、今回はなるべく平坦な場所を歩くことにしました。

椿山荘というだけあって椿もありました。
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ちょうど4月くらいが見頃じゃないかな。幾重にも花弁が重なってゴージャスな華です。

庭園内には石像などがちょいちょい置いてあります。これは江戸時代予期の庚申塔。
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昔この辺りに野道があって置かれたようです。阿修羅かな。勇ましい姿をしています。

庭園で一番見晴らしが良いのがこの辺りかな。
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結婚式が盛んに行われることもあって、記念撮影している人たちもいました。

庭園内には滝もあります
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この滝の裏に周ることもできます。

他にも三重塔などの見どころもありますが、山を登るのが大変なので今回はやめておきましたw 

この日は庭園内の様々な場所で花を観ることができました。
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これは枝垂れ桜かな。非常に美しい花を咲かせていました。

こちらは御神木。
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ちょっと枝が切られていますが、樹齢500年くらいで高さは20m程度のようです。堂々たる姿でまさに御神木といった風格。

こちらは長松亭という茶室
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古く見えるけど1954年に建てられたようです。現在は隣接の料亭の個室としても使われているようです。

この近くに小川も流れていて、初夏の頃にはホタルを鑑賞するイベントなんかもあります。

庭園をどんどん下っていくと、神田川沿いに出ました。
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先日ご紹介しましたがこの日は神田川沿いの桜が満開で、ここでもその様子を観ることができました。

川面にはびっしりと散った桜が流れていました。
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お花見の時期に椿山荘に行くのもアリだと思います。


ということで、お茶と庭園を楽しむことができました。ここは高級ホテルとして有名な場所だけに立派な庭となっています。帰りは池袋まで無料直通バスもあるし、満足できました。この辺で美術館めぐりをする際には毎回コースに組み込んでいるので、今後も使っていきたいところです。


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村上豊展 夢幻の情趣、うつし世の情景。 【講談社野間記念館】

前回ご紹介した永青文庫の展示を観た後、すぐ近くにある講談社野間記念館で「村上豊展 夢幻の情趣、うつし世の情景。」という展示を観てきました。この展示は「夢幻」と「うつし世」の2期に分かれていて、私が観たのは前期にあたる「夢幻」でした。

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【展覧名】
 村上豊展 夢幻の情趣、うつし世の情景。

【公式サイト】
 http://www.nomamuseum.kodansha.co.jp/exhibitions/

【会場】講談社野間記念館
【最寄】都電 早稲田駅、護国寺駅、江戸川橋駅など

【会期】
   夢幻:2019年03月09日(土)~04月14日(日)
 うつし世:2019年04月19日(土)~05月19日(日)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間分40程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

この展示は24歳の時に司馬遼太郎の連載小説「風の武士」で挿絵画家としてデビューし、現在では82歳を超える村上豊という画家の個展となっています。新聞小説や絵本、書籍の装幀などに縁が深いようで、講談社野間記念館での個展はこれで6回目となっているようです。前期・後期で400点もの作品が並ぶとのことですが、前期の大きめの作品は60点程度じゃないかな(挿絵のコーナーがあるのでその点数を入れたら多いかも) 屏風や襖絵仕立ても含み ほのぼのとした心安らぐ画風の作品が並んでいましたので、気に入った作品と共に簡単に感想だけ書いていこうと思います。


<1.村上豊展>
まず最初の部屋は屏風作品などが目を引きました。

3 村上豊 「悠久」
こちらは二曲一隻の屏風仕立ての作品で、寝ている女性の着物の模様が江戸時代の山里の光景となっているものです。素朴で長閑な里の暮らしの中、子どもたちが楽しげに遊んでいます。また、女性は気持ちよさそうに寝ていて安らかな表情で、いずれも心暖まる雰囲気となっていました。

6 村上豊 「遊鬼図」
こちらは4面の襖絵で、赤鬼と青い子鬼、緑の鬼なども描かれています。鬼の横には「どうだどうだ」「やあはっはっはまいった」といったセリフも付けられていて何か競い合って遊んでいるのかな? かなり自由で大らかな筆致で、鬼なのにほのぼのとして穏やかな印象を受けました。

この辺はセリフ付きの作品が多かったように思います。装幀を手がけているだけに絵本のような発想なのかも。

12 村上豊 「慈」
こちらは今回のポスターの作品で、眠る女性の首が180度曲がっていて、背中に子供の姿が描かれています。傍らにはフクロウや猫、小鳥などもいて、腰のあたりは葉っぱや木の実で覆われています。黒地を背景に女性の白い肌が艷やかな一方、表情は慈愛に満ちていて 皆仲良く幸せそうな雰囲気が漂っていました。


<2.村上豊展>
次の部屋にも大型の作品が1点ありました。周りは額縁に入った作品が並びます。

11 村上豊 「紅蓮/とんでる」
こちらは4面から成る襖絵で、表面に絵が描かれています。「紅蓮」は武者たちの合戦の様子で、力強く太い炎の渦が大きく描かれ、人間の小ささと比べると火の勢いと強さを感じます。一方、裏面の「とんでる」は茅葺きの三角屋根が大きく描かれ、その家の中では子どもたちが遊んでいます。また、屋根にはカラスと戯れる天狗や飛んでいる天狗の子?などの姿があり、背景には鳥居が連なり狐が飛んでるなど長閑な風景です。どうして表裏でこんなにも印象が違うのか分かりませんが、対照的な作品となっていました。

この部屋にあった「虫の弦楽四重奏」という作品も微笑ましく可愛い作品でした。


<3.村上豊展>
こちらは小型の作品が並ぶコーナーで、主に本の挿絵・童話の挿絵などが並びます。

2 村上豊 「陰陽師 首」
こちらは牛車や月夜などが描かれた作品で、平安時代くらいの風物のように見えます。情感たっぷりに描いていて何処か郷愁を誘われました。

この辺には夢枕獏 氏の作品への挿絵などが並んでいました。

5 村上豊 「かぐやひめ」
こちらは絵巻仕立てで かぐや姫の物語の各場面が描かれています。素朴さと可憐さがあって棟方志功に通じるものを感じるかな。デフォルメぶりも面白くて個性を感じました。


<4.村上豊展>
最後の部屋は女性などをモチーフにした作品が並んでいました。

15 村上豊 「おんな」
こちらは3枚組で、着物の女たちが描かれています。髪を整える女、子供に乳を与える女、寝ている子供を背負った女となっていて、あちこちに小鬼が子供のようにまとわりついて可愛らしい雰囲気です。女たちは母性もありつつ魔性を感じさせるような所もあって、魅力的な作品でした。

11 村上豊 「阿修羅」
こちらは片足を曲げて立つ阿修羅を描いたもので、見た目は興福寺の阿修羅像とよく似ています。すらっとした体つきで凛々しい印象を受けるのですが、3面の顔の高さがそれぞれ違っていて、横向きの顔が独立しているような感じに描かれていました。ここまで観た作品とはちょっと趣が異なるせいか目を引きました。

1 村上豊 「夢幻」
こちらは髪を振り乱すように横たわる裸婦を描いた作品で、空中に浮かんでいるように見えます。体の周りには謎の生き物たちがいて、穏やかな顔をしています。一方で柔らかい体つきが艶かしく、妖しさもあるように思えました。

この辺は黒を背景にした妖艶な女性像がいくつか並んでいました。


ということで初めて知った画家ですが、和やかな雰囲気の作品が多くて癒やされました。ここは永青文庫のすぐ近くにあるので、2つセットで見て回るのも良いかと思います。機会があれば別の作品も観たくなる画家でした。

おまけ:
休憩室から見える庭。
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入り口付近には枝垂れ桜も咲いていました。



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早春展 石からうまれた仏たち ―永青文庫の東洋彫刻コレクション― 【永青文庫】

前回ご紹介した肥後細川庭園を観た後、隣接している永青文庫で「早春展 石からうまれた仏たち ―永青文庫の東洋彫刻コレクション―」という展示を観てきました。この展示は既に終了していますが、今後も展示されると思われるコレクションの展示でしたので参考までに記事にしておこうと思います。

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【展覧名】
 早春展 石からうまれた仏たち ―永青文庫の東洋彫刻コレクション―

【公式サイト】
 http://www.eiseibunko.com/end_exhibition/2019.html#haru

【会場】永青文庫
【最寄】都電 早稲田駅、護国寺駅、江戸川橋駅など

【会期】2019年1月12日(土)~4月10日(水)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は永青文庫の設立者である細川護立(もりたつ)が集めた仏像のコレクションが並ぶ内容で、特にインドと中国の品が多めとなっていました。冒頭に書いたように既に終わってしまいましたが、展示構成に沿って気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。


<インドの神々>
まずはインドの神像のコーナー。主に8~10世紀のパーラ時代の品々が並んでいました。

「四臂女尊坐像」 インド パーラ時代(8~10世紀)
こちらは台の上に座り、片足はあぐらのように組み、もう片足は台から垂らす姿勢(半跏思惟像みたいな)の女神像です。4本の腕があり丸みを帯びた体つきが優美に見えます。姿勢も含めてインドっぽさを感じる作品でした。

この部屋の中央にはインド美術に関する本なども展示されていました。

「弥勒菩薩坐像」 インド パーラ時代(8~10世紀)
こちらも先ほどの像と同じように足を組む弥勒菩薩で、手は与願印を結びもう一方で龍華樹を持っています。こちらはスラリとした肉付きで、彫りの深い顔つきが特徴に思えました。結構イケメンですw

「ターラー菩薩立像」 インド パーラ時代(9~10世紀)
こちらは三尊形式の立像で、三柱とも女性像となっています。中央はターラー菩薩、右は憤怒の顔のエーカージャター、左はアショーカカーンター・マーリーチという像だそうです。ちょっと聞き慣れない名前なのでインドの神様なのかな? 立体感があり、腰を少し捻って立っているのが動きを感じさせました。


<中国唐時代の石仏>
続いては中国の唐時代の石仏のコーナーです。ここは4点のみとなっていました。

「如来坐像」 中国 唐時代(8世紀前半)
こちらは如来の坐像で、先程のインドの仏像とは違って螺髪の頭で日本の仏像とよく似た姿となっています。薄布をまとっているのがよく分かる表現が見事で、ヒダが優美に流れています。体つきも滑らかで厚みが感じられます。表情も静かに瞑想していて気品ある姿となっていました。


<中国北魏~唐時代の石彫>
続いては中国北魏~唐時代の石彫のコーナーで、ここが最も多くの作品が並んでいました。

「四面像」 中国 西魏時代(6世紀前半)
こちらは四角柱の四面それぞれに仏像が彫られた作品です。如来と菩薩の三尊などが並んでいるのですが、摩耗していて細部は分かりづらいかな。6世紀の品らしく1500年くらいの長い時間が経っているのが実感できます。やや頭が大きめの像で摩耗のせいかデフォルメしたように見えました。

「如来三尊像」 如来三尊像 北周時代(6世紀後半)
こちらは黄華石を使った三尊の石仏で、如来は施無畏印を組んで座っていて、両脇の菩薩は立っています。三尊とも簡素な作りに思えますが、微笑んでいるような表情が印象的でした。

「菩薩半跏思惟像」 中国 北魏時代(6世紀前半)
こちらは片足だけ足を組み もう片足は下におろしている半跏思惟像です。上半身をやや前のめりに倒して物思いにふける典型的なポーズに思えます。右手が破損しているけど、恐らく頬に手を寄せてたんじゃないかな。やや微笑んでいて静かで知的な印象を受けます。また、体つきがほっそりして頭が大きめなのも優美に感じられました。

「道教三尊像」 中国 北魏時代 永平年間(508―511年)
こちらは見た目は三尊の仏像のようですが、道教の三尊像という珍しい品です。背景に飛天らしきものも2柱いてますます仏像っぽいw 日本の神像も仏像から影響を受けて作られたものがありますが、道教でも仏像から大きな影響を受けた像があるのが分かって面白い品でした。


<中国の金銅仏>
最後は金銅仏のコーナーです。金色に輝く仏などが並んでいました。

「如来坐像」 中国 宋時代 元嘉14年(437年)
こちらは金色の銅像で、座っていて炎のような光背があり、禅定印を組んでいます。衣のひだがかなり細かく刻まれていたり渦巻く光背など迫力が感じられる仏像でした。

「チャクラサンヴァラとヴァジュラヴァーラーヒー」 チベット 18~19世紀
こちらは2柱の神が抱き合う姿の金色の像です。1柱は4つの顔と12本の腕を持つチャクラサンヴァラ、もう1柱は妻のヴァジュラヴァーラーヒーらしく、足の下にはシヴァとドゥルガーを踏みつけています。腕が放射状に広がっている姿は威厳があり、緊張感をまとった像でした。

「観音菩薩立像」 中国 唐時代(8世紀前半)
こちらは宝冠と布をまとった観音の立像で、手には水瓶を持っています。かなり細身で腕と足が長く、流れる布と共に非常にすらっとした体型なのが目を引きます。小さいけどこの展示でも特に美しい造形の姿となっていました。


ということで、インド・中国を中心に様々な仏像を観ることができました。この永青文庫ではこうしたコレクション展をちょくちょく開催しているので、今後も観る機会があると思います。細川家のコレクションの深さが感じられる展示でした。



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【肥後細川庭園】と面影橋の桜

今日は写真多めです。先週の土曜日に、都電荒川線 早稲田駅の近くにある肥後細川庭園と、面影橋周辺の桜を観てきました。

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【公式サイト】
 https://www.higo-hosokawa.jp/

【施設名】肥後細川庭園
【最寄】都電 早稲田駅、護国寺駅、江戸川橋駅など

実際には、面影橋で都電を下車 → 川沿いの桜を鑑賞 → 肥後細川庭園 → 永青文庫の順で見て回ったのですが、先に肥後細川庭園について書いていきます。この肥後細川庭園は以前は「新江戸川公園」という名前で鬱蒼とした森のような公園だったのですが、改修を経て2017年にかつての姿を取り戻してリニューアルオープンしたようです。前にご紹介した時はかなり草木が伸び放題だったので、だいぶ印象が変わりました。
 参考記事:新江戸川公園の写真

こちらは肥後細川庭園の周辺マップ
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都電早稲田駅からほど近いところに庭園があります。庭園から永青文庫に続く道もあるので、早稲田から永青文庫に行くならここを通って行くのが良いと思います。また、桜マークになっている神田川沿いは桜の名所となっているので、これも後ほど写真を載せておきます。

こちらは入口。入口自体は大きく変わってない気がしますが、既に公園時代とかなり雰囲気が違っているのが分かります。しかし現在も無料なので気軽に入れます。
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ちょっと写真を撮り忘れましたが、この左手に松聲閣(しょうせいかく)という細川家の学問所だった建物があり、改築されて今は集会所や茶処などもあるようです。

庭園に入るとこんな感じの光景となっています。今はちゃんとした大名庭園っぽくなってますw
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ここは元々は細川家の下屋敷があった所で、回遊式泉水庭園となっています。

角度違い。それほど広くはないので、15分くらいあれば見て回れます。
DSC04152.jpg
この写真の右奥あたりにも入口があって通り抜けできるようになっていました。

少し進んだ辺り。
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左端にちょこっと写っているのが松聲閣です。ちなみにこの日は土曜日で、ガイドツアーも開催されていました。2019年は毎週土曜日14時に開催されるようです。
 参考リンク:公式サイトガイドツアー(2019年4月)

この辺などは特に大名の庭園っぽさを感じます。
DSC04157.jpg
以前は山奥みたいな雰囲気の公園だっただけに、驚くべき変貌ですw

庭園の半分は丘陵となっています。登っていくと冒頭の写真のように池を見渡すことができます。
DSC04163_20190411005117367.jpg
遠くに見えているのは神田川沿いの桜並木の一部です。

一応、この庭園内にも桜は咲いています。
DSC04165.jpg
ほんのちょっぴりですw 公式サイトのブログでは周辺の桜並木と共に咲き具合を紹介しているので、来年以降はそれを参考にするとベストタイミングを逃さないと思います。

庭園の奥はちょっとしたハイキングみたいな光景です。この日はシャガなども満開となっていました。
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この先に永青文庫があります。この日は桜並木→肥後細川庭園→永青文庫→野間記念館→椿山荘という流れで早稲田界隈を存分に楽しんできました。

と、庭園に関してはここまでで、一旦巻き戻って都電荒川線の面影橋駅周辺から肥後細川庭園に向かう桜並木をご紹介していこうと思います。

こちらが面影橋からの神田川の眺め。
DSC04131.jpg
中目黒の目黒川の光景によく似ていますが、こちらはあまり知られていないので空いていて快適ですw しかし江戸~明治頃は有名な名所だったようで、歌川広重の「名所江戸百景」にも描かれた場所です。元々は太田道灌の逸話「山吹の里」の地とされたらしく、これは太田道灌が雨にあって農家に箕を借りに行ったら娘に無言で山吹の花を出されて、その意味が理解できなかったという話です。後日、家臣からそれは後拾遺和歌集の「七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞ悲しき」(実の=箕 が無い)にかけたものだと聞かされ、自分の無教養に恥じて和歌を学ぶようになったのだとか。橋の側にその碑文らしきものもありました。

この日はまさに満開の日でした。
DSC04135.jpg
川沿いに無数の桜があるので水面に花びらが流れていく光景も観ることができました。

並木の脇を歩くこともできます。
DSC04136.jpg
途中に染め物のミュージアムや古いカフェなんかもあって心惹かれましたが、お昼を済ませた直後だったのでスルーしてしまったw

間近に観ることが出来るし、とにかく数が半端じゃないw
DSC04139.jpg
何故あまり花見客がいないのか不思議なくらいです。

これは早稲田の近くの橋だったかな
DSC04145.jpg

ラストにややアップ。
DSC04143.jpg


ということで、面影橋の桜と新しくなった肥後細川庭園を楽しんできました。2019年はもう桜の時期が終わってしまいますが、来年以降も美しい光景を観られると思います。あまり知られていないこともあって快適にお花見できる隠れた名所でした。
この後、肥後細川庭園を抜けて永青文庫の展示を観てきました。次回はそれについてご紹介の予定です。


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開化亭 【小涌谷界隈のお店(岡田美術館併設)】 箱根編2019

前々回・前回と岡田美術館の展示についてご紹介してきましたが、展示を観る前に併設のカフェ「開化亭」でお茶してきました。ここは撮影可能となっていましたので、写真と共にご紹介していこうと思います。

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【店名】
 開化亭

【ジャンル】
 和カフェ・うどん

【公式サイト】
 https://www.okada-museum.com/facilities/restaurant_kaikatei/
 食べログ:https://tabelog.com/kanagawa/A1410/A141001/14057250/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 小涌谷駅

【近くの美術館】
 岡田美術館

【この日にかかった1人の費用】
 1000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(金曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
金曜日の午後ということもあって空いていて特に待つこともありませんでした。ここでゆっくりしすぎて鑑賞時間が足りなくなった訳ですがw

さて、こちらは岡田美術館併設のお店で、美術館を利用せずここだけ利用することも可能です。以前、ここでうどんを食べたことがあるのですが、その際は美術館の5Fを通って行ったのでカメラやスマフォを持っていなかったので記事にしませんでした。(お店にスマフォを持ち込むのであれば、美術館の中からではなく側道を通って行く必要があります)

こちらはお店の前にあった看板。
DSC03990.jpg
このお店の裏には広大な庭園があり、普段は入場料を払う必要があるようですが この日は奥にある渓流散策コースが改修工事のため無料で観ることができました。以前訪れた時は雪で閉鎖だったし、中々タイミングが合わないw
 参考リンク:公式サイトの庭園紹介

お店の前に梅が咲いていました。3月末で都心では桜が咲いていましたが箱根はまだまだ寒かったです。
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紅白あって可憐です。

まず先に庭園を見て回ることにしました。こちらが庭園の様子。
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傾斜地となっていて軽いハイキングみたいなw 季節によっては花も楽しめるようです。

庭から望む開化亭。
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左半分の建物しか入ったことが無いですが、池に面していて非常に風流です。

一通り庭を散策して入店しました。他のお客さんがいたのでお店の中の写真は撮りませんでした。

この日は「箱根スイーツコレクション2019春」というキャンペーンをやっていて、「ほっこりおしるこ 3種の大福と共に」という期間限定のメニューがあったのでそれにしました。
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写真には写っていませんが、煎茶も付いてきます。これは「和がし 葉な」とのコラボレーションらしく、お汁粉と大福3つという甘党にはたまらないセットですw 
まず大福は中身が さつまいも・抹茶・イチゴの3種で、それぞれだいぶ味が違います。さつまいもはどっしりした甘味、イチゴは軽やかかつ爽やか、抹茶は香りと風味が楽しめます。特にイチゴはそれ自体も美味しいので満足できました。
続いてお汁粉は甘味強めです。濃厚だけどしつこさは無く、一杯で甘いものを食べたいという気持ちを満足させてくれました。ちなみに周りに転がっている茶色いのはラスクで、シナモンの風味が効いてカリカリした食感です。これをお汁粉に入れたら味変みたいな感じでしたw ついでにお茶は苦味が少なくすっきりしていて、口の中を程よくリセットしてくれました。

カウンター席からは庭園の池を望むことができます。
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自然に囲まれた感じが箱根っぽくて落ち着きます。

こちらも角度違い
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外にスリッパがあってテラスに出ることもできました。この池には鯉なんかもいて、ゆっくりすることができました。


ということで、美味しい甘味を楽しむことができました。居心地が良いのでついつい長居してしまったw 岡田美術館はかなり広くて観るのに時間がかかるので、観終わった後などにここでゆっくり休むのも良いと思います。少し高いですが うどんも出しているので、軽い昼食にも便利です。

今回の箱根編はこれで終了です。いつもならポーラとかラリックとか色々行くのですが、今回は案内係みたいな感じで行ったので美術館は岡田しか行けませんでしたw


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美のスターたち (感想後編)【岡田美術館】 箱根編2019

前回に引き続き箱根小涌谷の岡田美術館の「開館5周年記念展 美のスターたち ―光琳・若冲・北斎・汝窯など名品勢ぞろい―」についてです。前編は2階まででしたが、今日は残りの3~5階についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。(この記事を書いている時点で既に終了しています)

 前編はこちら

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【展覧名】
 開館5周年記念展 美のスターたち 
 ―光琳・若冲・北斎・汝窯など名品勢ぞろい―

【公式サイト】
 https://www.okada-museum.com/exhibition/archives/2018_2.html

【会場】岡田美術館
【最寄】小涌谷駅

【会期】2018年9月30日(日)~2019年3月30日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
後半も空いていて独占状態で観ることができたのですが、閉館時間が迫ってきて4階・5階はメモを取ることができませんでした。思い出せる限り書き残しておこうと思います。


<3階 日本絵画 金屏風・水墨画・春画など>
3章は日本画各種が並ぶコーナーです。

[3-1 金屏風]
3階に入ってまず驚くのがこのコーナーです。部屋一面に金屏風が並び壮観な眺めとなっています。

371 「紅白梅図屏風」
こちらは六曲一双の金屏風で、恐らく狩野派によるものと思われます。紅白の梅の花が入り乱れるように咲いていて、かなり花の数が多くて豪華な印象をうけます。また、木の周りには竹の柵がジグザグに並んでいて、縦の直線が多い構図となっています。それが幾何学的で奥行きとリズムを生んでいて面白い効果となっていました。

373 長谷川派 「浮舟図屏風」
こちらは六曲一双の金屏風で、源氏物語の51帖「浮舟」を題材にした作品です。薫の大将の恋人の浮舟を匂宮が連れ出し宇治川を渡るシーンとなっていて、小さい舟で身を寄せ合って心もとない雰囲気です。また、川は波の紋様のようになっていて、手前にある笹などと共に風を感じさせるかな。全体的に茶色がかって寒々した印象を受けるのも2人の行く末を暗示しているようでした。

[3-2 水墨画]
こちらは4点だけですが狩野元信や雪村周継などビッグネームの作品が展示されていました。

378 雪村周継 「瀟湘八景図」
こちらは瀟湘八景を1枚の小さな水墨にまとめた作品です。月の浮かぶ洞庭秋月や、漁村の様子を描いた漁村夕照、遠くの舟を描いた遠浦帰帆などお馴染みのテーマを簡潔かつ叙情的に表現しています。すらっと描いているようで情景が浮かぶのが驚きでした。

[3-3 春画]
こちらは部屋が仕切られていて春画が展示されています。

384 葛飾北斎 「波千鳥」
こちらは5点セットの作品で、墨の線だけを版木で刷って1図ずつ筆で彩色するという手の込んだ手法が使われています。春画なので男女の行為を描いているのですが、めちゃくちゃ細い線を駆使して細密に描いていたり 微妙な色彩で表現するなど気合の入り方が普通の版画よりも凄いかもw 葛飾北斎の知られざる画業を観ることができます。

他にも鳥文斎栄之や渓斎英泉の作品などもありました。

[3-4 後水尾院]
こちらは後水尾院の二条城行幸など、後水尾院に関する品が3点ほど並んでいました。

386 「後水尾天皇宸翰和歌書」
こちらは後水尾院の直筆の和歌書で、「故郷に 帰ればかはる色 もなし 山も見しやま 花を見し はな」と書いてあります。流れるように軽やかで、書においても卓越した才能を持っていたのが伺えます。近くには二条城行幸の大画面の作品もあって、少数ながらも秀でた天皇であったことを伝える品々となっていました。

[3-5 花鳥走獣]
こちらは鳥や獣を題材にした作品が並ぶコーナーで、今回の見どころとなる伊藤若冲の作品も展示されていました。

390 円山応挙 「子犬に綿図」
こちらは小さい綿の木が描かれ、その周りに白い子犬と茶色い子犬の姿も描かれています。2匹ともコロコロしていて、応挙がよく描いた狗子図の典型といった感じです。茶色の犬は毛をふわふわに、白い犬は太めの輪郭線で表現するなど2匹で表現方法が異なるのも面白く、どちらも ゆるキャラのような可愛さがありました。

391 伊藤若冲 「月に叭々鳥」
こちらは急降下してくる叭々鳥を描いた作品で、口を大きく開けて真っ黒な逆三角形の姿にデフォルメされています。上部には薄っすらと月も浮かんでいて、簡潔なようで勢いや技巧を感じさせる表現となっていました。

392 伊藤若冲 「孔雀鳳凰図」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている2幅対の掛け軸です。2015年に再発見された140.8cm×82.6cmの大型作品で、右幅は白い孔雀が松を背景に立ち、周りには富貴の象徴である牡丹が咲いています。一方、左幅は松の上に立つ極彩色の鳳凰で、上を見上げるような姿勢で尾をなびかせているのが圧巻です。孔雀の体は透けるように描かれていて、かなり細かく毛並みが描き込まれているのが分かります。鳳凰もミリ以下の単位の細かさで丹念に描いていて、現実を超えた鮮やかさとなっていました。以前聞いた話だと、これは動植綵絵に先立って描いた作品じゃなかったかな。伊藤若冲の特徴が凝縮されているような作品です。

[3-6 日本の風景画]
続いては風景画のコーナーで、箱根に因んだ作品が展示されていました。

401 歌川広重 「箱根温泉場ノ図・箱根湖上ノ不二」
こちらは2幅対の肉筆画で、右幅は場所は特定できないようですが塔ノ沢温泉付近の光景らしく、川に橋が架かって2人の人が渡っている様子が描かれています。一方の左幅は芦ノ湖のカーブしている部分で、背景に白い富士山が見えています。いずれも淡く緻密な筆致で、版画の浮世絵とは異なる魅力を感じます。解説によるとこれは天童にいた頃に依頼されたそうで、「天童広重」と呼ばれる肉筆画の1つのようです。色を抑えているのは武家好みの表現とのことでした。

ここには他に東海道五十三次(3図のみ)や葛飾北斎の富嶽三十六景から特に有名な「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「山下白雨」などもありました。

[3-7 御舟・古径・大観の水墨画]
続いては速水御舟、小林古径、横山大観のコーナーです。各画家1点ずつ合計3点のみとなっていました。

403 速水御舟 「木蓮(春園麗華)」
こちらは縦長の掛け軸で、木蓮の花が水墨で描かれています。写実的でありながら情感たっぷりで、墨の濃淡だけで木蓮の色を感じるような繊細さが見事です。葉っぱの葉脈まで分かったり、滲みを活かした花の色など表現に富んでいて見ごたえがあります。 解説によると、俵屋宗達を学んだ成果がこの絵に現れているとのことでした。

ここには巨大な富士山を描いた横山大観の絵もあって、少数でも驚きの多いコーナーでした。


<4階 日本・中国・韓国の絵画と工芸>
4階に到達した頃には蛍の光が流れてきて、猛スピードで観る羽目になりましたw ちょっと1~2階で時間を使いすぎた…。4階は細かく節が分かれていて様々な作品が紹介されています。

[4-1 歌麿「深川の雪」と美人画の逸品]
こちらは美人画のコーナー。歌麿の「深川の雪」だけ後の方に展示されていました。

411 伊東深水 「三千歳」
こちらは化粧している女性を描いた作品で、ふと何かに気がついたような表情をしています。解説によると、この女性は歌舞伎の演目のヒロインらしく、罪人の恋人を想い待ちわびているようです。白い肌に真っ赤な口紅が艶やかで、伊東深水ならではのミステリアスな雰囲気もありました。

この近くにあった円山応挙も見事です。

415 上村松園 「汐くみ」
こちらは振り返る着物の女性を描いた作品で、手に紐を持っています。紐の先には海水を汲み入れた容器を乗せた小さな台車があって、引っ張って運んでいるらしく、これは能の「松風」の因んでいるそうです。女性は上村松園が得意とした清らかで雅な雰囲気の女性となっていて、気品漂う佇まいとなっていました。

この階の出口に向かうあたりに歌麿「深川の雪」もありましたが、今回も複製でした。本物はまだ観たことがないですw

[4-2 調度品]
こちらは蒔絵の棚などが展示されていました。柴田是真の作品もあったのですが、あまりじっくり観ていられなかったのが残念。

[4-3 朝鮮時代の美術]
こちらは朝鮮の絵画や壺などが並んでいました。特に目を引いたのは正祖の「葡萄図」という掛け軸で、画面の縁を這うように伸びる葡萄の蔦がリズミカルかつ自由闊達な雰囲気に思えました。

[4-4 日本の文人画(南画)]
こちらは4点のみで池大雅、与謝蕪村、渡辺崋山、谷文晁という日本の文人画を代表する4人の作品が並んでいました。まあ南画は大して好きでもないので ここはささっとw

[4-5 琳派]
ここは大好きな琳派のコーナーなのでもっと時間を取って観るべきでした…。俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一という琳派を代表する絵師たちの作品がならび、特に俵屋宗達が絵を描き本阿弥光悦が書を書いた作品が目を弾きました。絵も字も風流で、時間ぎりぎりまで観てきましたw 

他にも以前ご紹介した尾形光琳の「雪松郡禽図屏風」などもあって、これも再会できて嬉しい作品でした。
 参考記事:岡田美術館の常設 2018年1月 箱根編

[4-6 風俗画]
ここは3点のみで、菱川師宣、葛飾北斎、英一蝶の肉筆画がありました。

[4-7 漆芸]
ここも3点のみです。中国2点、日本1点と少ないですが貴重な堆朱の作品もありました。

[4-8 近代日本画]
466 川合玉堂 「富嶽」
こちらは六曲一双の金屏風で、大きな富士山と松が描かれています。色が非常に鮮やかで、その大きさと共に富士山の堂々たる雰囲気がよく表れていました。

<5階 仏教美術>
最後、5階は仏教美術のコーナーで、仏画や仏像などが並んでいます。

[5 仏像・仏画・写経]
ここは時間切れで一瞬でしたが、金剛力士像が特に目を引きます。筋肉隆々で迫力があり、慶派のような作風に思えました。


ということで、せっかく行ったのに時間切れという事態になってしまいました。それというのも非常に濃密なコレクションが怒涛の如く並んでいるせいだったりしますw ここは携帯電話を持ち込めないとか、やたら入館料が高いといったマイナス面もありますが それを差っ引いても凄い美術館なので、箱根に行く際には是非立ち寄りたいアートスポットだと思います。

おまけ:美術館入り口にあった「深川の雪」のパネル
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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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