Archive | 2019年05月
前回ご紹介した うらわ美術館を観た際、バスで移動して駒場競技場の近くにあるさいたま市青少年宇宙科学館でプラネタリウムを観てきました。

【公式サイト】
http://www.kagakukan.urawa.saitama.jp/main.html
【会場】さいたま市青少年宇宙科学館
【最寄】北浦和駅・浦和駅
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【感想】
GW中だったこともあって親子連れが結構いて賑わっていました。
さて、この施設はかつて浦和レッズが本拠地にしていた駒場競技場の隣にある科学館で、本格的なプラネタリウムを併設しているのが特徴となっています。主に宇宙に関する様々なことを体験しながら学べる展示も多く、宇宙好きには楽しい所です。
この日はプラネタリウムを目当てに来たので、まずはチケットを買いました。プラネタリウムだけ有料で、他の展示は無料というお得な施設です。プラネタリウムは時間が来たら入口に集合し、早いもの順に席が埋まっていくという方式となっていました。一番早い回まで40分くらいあったので、常設展示を観ながら待つことにしました。
<常設展示室>
常設展示は1階と2階にあり、1階は物理や科学の体験コーナーが多め、2階はパネルや映像で宇宙について解説する展示が多めとなっています。1988年5月に開館ということで30年ほど経過していることもあって情報が少し古い感じはしますが、ワクワクするような仕掛けが多く子供が宇宙好きになりそうな要素が満載です。
参考リンク:常設の紹介ページ
1階は人が多くて あまり写真を撮らなかったのですが、2階は空いていたので撮ってみました。

こんな感じで星の一生や地球の成り立ちなど様々なことを説明しています。宇宙っぽい効果音も聴こえてきて幻想的な雰囲気です。
2階の宇宙のコーナーにはソユーズで宇宙に行った若田光一 氏のコーナーがありました。若田光一 氏はさいたま市北区の生まれで、この施設にほど近い浦和高校に通っていたこともあって縁が深いようです。
ソユーズのコクピットを模した展示

これが実物大か分かりませんが、中はかなり狭いですw
こちらは宇宙船の中の寝室。

寝袋を固定してそこで寝るようでした。
何故か埼玉県のマスコットのコバトンが置いてありました。

何と、このコバトンと同型のぬいぐるみが若田さんと共にディスカバリーで宇宙に行ったのだとかw えらいもん持って行ったな…w
他にも色々あって楽しめました。1階は特に体験型が多いので、大人でも十分に楽しめます。
そして時間になったのでプラネタリウムを観ました。今回は「ムーミン谷のオーロラ」というプログラムでした。

【プログラム名】
ムーミン谷のオーロラ
【期間】
2019年4月2日(火)~不明
【公式サイト】
http://www.kagakukan.urawa.saitama.jp/pln20190401.html
プラネタリウムの中はこんな感じ。

さいたま市の小学生たちが社会科見学で訪れるようで収容人数もかなりのものです。
プラネタリウムはまずこの施設から見える今日の星座について紹介していました。星がドーム内に移り、ポインタで説明する形式です。春の星座とその神話をかいつまんで話してくれるので、初心者も安心です。
そしてムーミンのプログラムはあまり星と関係ないアニメでしたw ムーミンたちは冬に冬眠するらしく、まだ冬が終わっていないのに目覚めてしまったもののムーミンママだけが起きないので、原因を求めて冒険に出るという話です。可愛らしいムーミンたちにほっこりすると共に、声優陣の豪華さに驚きましたw ムーミン (高山 みなみ)、ムーミンパパ (大塚 明夫)、ムーミンママ (谷 育子)、フローレン (かない みか)、リトルミイ (佐久間 レイ)、スナフキン (子安 武人)、ナレーション (麻上 洋子)だそうで、名探偵コナンの映画に負けないくらいの面子ですw ちなみにこのプログラムは人気で以前にやっていたのが復活上映されたものだそうで、この施設以外のプラネタリウムでも配信しているところがあるようです。人気になるのも頷ける可愛い作品でした。
ちなみにこの施設でこのプログラムを観たらコスモスの種を貰えました。早速家に帰ってベランダのプランターに撒いて20日くらい経ちますがまだ芽は出ていません…。秋が待ち遠しい。
ということで、宇宙の不思議やプラネタリウムを楽しんできました。これだけ楽しんで500円程度というのも嬉しいし、都内と違って特に並ばずに観られるので穴場と言えそうです。駅からちょっと離れているのが難点ですが、お子さんのいるご家庭にオススメの施設です。

【公式サイト】
http://www.kagakukan.urawa.saitama.jp/main.html
【会場】さいたま市青少年宇宙科学館
【最寄】北浦和駅・浦和駅
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【感想】
GW中だったこともあって親子連れが結構いて賑わっていました。
さて、この施設はかつて浦和レッズが本拠地にしていた駒場競技場の隣にある科学館で、本格的なプラネタリウムを併設しているのが特徴となっています。主に宇宙に関する様々なことを体験しながら学べる展示も多く、宇宙好きには楽しい所です。
この日はプラネタリウムを目当てに来たので、まずはチケットを買いました。プラネタリウムだけ有料で、他の展示は無料というお得な施設です。プラネタリウムは時間が来たら入口に集合し、早いもの順に席が埋まっていくという方式となっていました。一番早い回まで40分くらいあったので、常設展示を観ながら待つことにしました。
<常設展示室>
常設展示は1階と2階にあり、1階は物理や科学の体験コーナーが多め、2階はパネルや映像で宇宙について解説する展示が多めとなっています。1988年5月に開館ということで30年ほど経過していることもあって情報が少し古い感じはしますが、ワクワクするような仕掛けが多く子供が宇宙好きになりそうな要素が満載です。
参考リンク:常設の紹介ページ
1階は人が多くて あまり写真を撮らなかったのですが、2階は空いていたので撮ってみました。

こんな感じで星の一生や地球の成り立ちなど様々なことを説明しています。宇宙っぽい効果音も聴こえてきて幻想的な雰囲気です。
2階の宇宙のコーナーにはソユーズで宇宙に行った若田光一 氏のコーナーがありました。若田光一 氏はさいたま市北区の生まれで、この施設にほど近い浦和高校に通っていたこともあって縁が深いようです。
ソユーズのコクピットを模した展示

これが実物大か分かりませんが、中はかなり狭いですw
こちらは宇宙船の中の寝室。

寝袋を固定してそこで寝るようでした。
何故か埼玉県のマスコットのコバトンが置いてありました。

何と、このコバトンと同型のぬいぐるみが若田さんと共にディスカバリーで宇宙に行ったのだとかw えらいもん持って行ったな…w
他にも色々あって楽しめました。1階は特に体験型が多いので、大人でも十分に楽しめます。
そして時間になったのでプラネタリウムを観ました。今回は「ムーミン谷のオーロラ」というプログラムでした。

【プログラム名】
ムーミン谷のオーロラ
【期間】
2019年4月2日(火)~不明
【公式サイト】
http://www.kagakukan.urawa.saitama.jp/pln20190401.html
プラネタリウムの中はこんな感じ。

さいたま市の小学生たちが社会科見学で訪れるようで収容人数もかなりのものです。
プラネタリウムはまずこの施設から見える今日の星座について紹介していました。星がドーム内に移り、ポインタで説明する形式です。春の星座とその神話をかいつまんで話してくれるので、初心者も安心です。
そしてムーミンのプログラムはあまり星と関係ないアニメでしたw ムーミンたちは冬に冬眠するらしく、まだ冬が終わっていないのに目覚めてしまったもののムーミンママだけが起きないので、原因を求めて冒険に出るという話です。可愛らしいムーミンたちにほっこりすると共に、声優陣の豪華さに驚きましたw ムーミン (高山 みなみ)、ムーミンパパ (大塚 明夫)、ムーミンママ (谷 育子)、フローレン (かない みか)、リトルミイ (佐久間 レイ)、スナフキン (子安 武人)、ナレーション (麻上 洋子)だそうで、名探偵コナンの映画に負けないくらいの面子ですw ちなみにこのプログラムは人気で以前にやっていたのが復活上映されたものだそうで、この施設以外のプラネタリウムでも配信しているところがあるようです。人気になるのも頷ける可愛い作品でした。
ちなみにこの施設でこのプログラムを観たらコスモスの種を貰えました。早速家に帰ってベランダのプランターに撒いて20日くらい経ちますがまだ芽は出ていません…。秋が待ち遠しい。
ということで、宇宙の不思議やプラネタリウムを楽しんできました。これだけ楽しんで500円程度というのも嬉しいし、都内と違って特に並ばずに観られるので穴場と言えそうです。駅からちょっと離れているのが難点ですが、お子さんのいるご家庭にオススメの施設です。
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GW中に浦和にある うらわ美術館で「素描礼讃 ―岸田劉生と木村荘八―」を観てきました。

【展覧名】
素描礼讃 ―岸田劉生と木村荘八―
【公式サイト】
https://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p063254.html
【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅
【会期】2019年4月20日(土)~6月23日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は大正期を代表する画家である岸田劉生と、その仲間で昭和期に挿絵で独自の地位を築いた木村荘八の素描やスケッチが並ぶ内容となっています。2人は10代の頃に白馬会の画塾で出会い、早くからポスト印象派に関心を向けて情熱的な色彩の油彩画を描きましたが、やがて素描の重要性への認識を深めていったようです。展覧会は各人ごとに章分けされていて、笠間日動美術館、うらわ美術館、小杉放菴記念日光美術館が所蔵する200点もの作品が展示されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<1 岸田と木村 銀座築地スケッチ&エッセイ>
まずは2人の名前を冠した章となっていますが、大半は木村荘八の銀座界隈を描いた小さめのスケッチとなっていました。
29 岸田劉生 「木村荘八之像」
こちらはメガネを掛けた木村荘八の肖像です。コンテで丹念に描かれ、微妙な陰影でリアルな存在感があります。1917/7/14の日付もあり、しばしば描いていた木村荘八の像のうちの1枚のようでした。
この辺では岸田劉生が雑誌『みずゑ』に寄せた素描に関する文書を紹介していました。それによると、「素描は骨子で色は素描に比べればむしろ客の感がある」とのことで、素描の重要さを説いています。一方の木村荘八も雑誌『アトリエ』で「挿絵、すなわち素描である」と述べている文があり、同様に素描を重要視していたことが伺えました。
161 木村荘八 「銀座一丁目日就社『東京繁昌記』「築地-銀座」」
こちらは日就社(今の読売新聞。1917年に改称)の建物を描いた作品で、1912年にこの建物の3階で岸田劉生らが主催する「フュウザン会」の旗揚げが行われました。路の角に入口があるモダンな造りの洋館で、結構な早描きでフリーハンドで描いている感じがします。注釈があり、中の階段を3階へ登ったという思い出が記載されているようでした。彼らにとっては特別な場所なんでしょうね。
164 木村荘八 「汽車開通式の図『東京繁昌記』「築地-銀座」」
こちらは旧新橋駅(今の旧新橋停車場 鉄道歴史展示室がある場所)の前で鉄道の開通式を行っている様子を描いた素描です。人は丸と線で単純化されていて、即興的な感じに見えますが、建物は今と変わらない外観となっています。ツリー状の祝いのための飾りがあり、電飾イルミネーションが灯るなど当時の賑わいが伝わってくるようでした。
この辺の素描を見ると当時の暮らしの様子がよく分かる作品が多かったように思います。関東大震災の後の資生堂や歌舞伎座、松屋、築地の「延遼館」などの姿も描かれていました。
参考記事:浜離宮と新橋停車場~東京150年 江戸から明治へ~ (旧新橋停車場 鉄道歴史展示室)
131 木村荘八 「明治初年図 銀座及周辺『銀座界隈』」
こちらは銀座辺りの地図を描いたもので、今の浜離宮の辺りには外国人居留地や海軍省などが置かれているのが分かります。他にも年代ごとの地図がいくつか並んでいて、銀座・築地あたりの変遷の様子を比較しながら観ることができました。この辺は歴史的な意味でも貴重な作品かも。
<2 岸田劉生 素描・単色画を中心に>
続いては岸田劉生の素描のコーナーです。意外と油彩画も多く、久々に日本画もまとめて観ることができました。
参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)
8 岸田劉生 「自画像」
こちらは笠間日動美術館にある油彩の自画像で、1913/10/26に描いて個展に出品したと考えられている作品です。こちらをじっと観るメガネに短髪の容貌で、ざらついた画面となっています。岸田劉生は「自分は寂しい微笑みを浮かべる」と述べていたそうで、この絵からもそうした雰囲気が出ているかな。同時に実直そうな感じも出ているように思えました。
12 岸田劉生 「第2回フュウザン会展会場装飾画」
こちらは半円状の油彩の装飾パネルで、中央にうずくまって顔を押さえる人と、うなだれている(祈っている?)男がいて、後ろには畑を耕す2人の人物の姿もあります。また、右には網を引いて漁をする人がいて背景は太陽が真っ赤に輝いています。何故か太陽の両脇に謎の渦があって、ムンクを彷彿とするような作風かな。恐らくアダムとイブの失楽園をテーマにしていると思いますが、大胆なタッチと構図となっていて目を引きました。
岸田劉生も銀座・築地界隈にした作品がいくつかありました。
66 岸田劉生 「夏の路(鵠沼海岸)」
こちらは油彩で岸田劉生が療養していた鵠沼の周辺を描いた作品です。濃い緑と濃い青空、そこに土の路が質感豊かにかかれていて、中央辺りに日傘の女性の姿があります。明暗が強く、夏の強い日差しを感じさせるような作品でした。
この辺には版画などもありました。
61 岸田劉生 「丸山君の像」
こちらは弟子の丸山行雄を描いた油彩の肖像で、手にミカンを持ち 青い服に赤い帽子を被っている姿となっています。写実的でデューラーに影響を受けていた時期の作品ではないかと思います。 人柄まで伝わってくるような岸田劉生の肖像画らしい作品でした。
その後は静物画等もありました。また、雑誌『白樺』が1918/7月号~1923/5月号あたりまでずらりと並んでいます。岸田劉生は白樺の表紙を描いたこともあったようで、麗子像らしきものもありました。
参考記事:白樺派の世界展 (清春白樺美術館) 山梨 北杜編
213 岸田劉生 「水彩素描 麗子於松」
こちらは18枚のA3サイズくらいの大きさの麗子像(岸田劉生の娘の像)です。大体は右向きで、おかっぱ頭で着物を着ています。頭に椿の花を乗っけているのも多いかな。写実的な作品や、寒山拾得のようなちょっと妖しい雰囲気のものもあります。岸田劉生の作風の変化や、提唱していた「デロリの美」を試している様子が伺えました。それにしても麗子ちゃんは実際は可愛かったみたいなのに妖怪っぽい肖像が多くてちょっと気の毒ですw (後に画家になっています)
この先には童話の装丁などもありました。童話は素朴な絵柄となっていて親しみやすいです。素朴な絵柄で描いた麗子像なんかもありましたw
72 岸田劉生 「猫図」
こちらは白黒の猫が丸まっている様子を描いた作品です。目は鋭く、こちらをじっと伺っているように見えるかな。かなり毛並みを細かく描いていて中国風の画風となっています。解説によると、これは1926年の夏に描いたらしく、宋代の画家に倣って描いたと書いてあるそうで、微宗皇帝(皇帝でありながら画家としても北宋時代最高と言われる人物)の作と伝わる猫図を意識しているようです。緻密で透けるような毛並みが見事な作品でした。
この辺には南画のような作風の掛け軸もありました。
84 岸田劉生 「麗子十六歳之像」
こちらは岸田劉生の晩年の作(38歳で亡くなった)で、髪飾りを付けて雅な着物姿をしている娘の麗子を描いています。ここでは珍しく美人に描いていて、化粧をした顔を写実的に表しています。下塗りの線が見えるくらいの薄塗りで繊細に表現されていて、愛娘を素直に写生した作品となっていました。
74 岸田劉生 「寒山拾得図」
こちらは掛け軸で、墨で大胆に寒山と拾得の2人を描いています。巻物を持った寒山と 背を向けて箒を持つ拾得は妖怪のようにニタっと笑っているのがやや不気味ですw この近くには同じように寒山拾得を描いた作品がいくつかあり、宋元画に「卑近美」を発見したというエピソードなんかも紹介されていました。そしてデロリとか卑近美の実験に使われるのはいつも麗子像です…w
<3 木村荘八 挿絵原画を中心に>
最後は再び木村荘八のコーナーで、こちらは挿絵原画を中心にと言いつつ様々な作品が並んでいました。
27 木村荘八 「襟巻きをせる自画像」
こちらは黒い洋服に茶色い帽子の自画像で、メガネに口ひげという風貌で背景には緑の布のようなものがあります。こちらをじっと見る表情は厳しく凛々しい雰囲気があるかな。かなり写実的で岸田劉生の画風に似ているように思えました。
この近くにあった日比谷公園を描いた作品は後期印象派風の厚塗りの画風となっていました。
14 木村荘八 「祖母の顔」
こちらは祖母の顔を大きく描いた肖像で、背景は恐らく戸外かな。かなり粗い筆致が残っていて、厚塗りの画面です。近くで観ると表情が分かりづらいのですが、離れて観ると困ったような表情がよく分かりました。こちらも後期印象派の影響を受けた作品のようでした。
この後には再び風景のスケッチが並んでいました。街中を描いたものが多く、メモも添えてあります。
26 木村荘八 「裸婦」
こちらは腰の後ろに右手を当てて立つ裸婦を描いた作品です。ややうつむき加減で、線で明暗をつけて立体感がある写実的な画風となっています。やや太腿が太すぎる気もしますが、堂々たる姿となっていました。当時の木村荘八の指導者は岡田三郎助だったらしいので、何だか納得ですw
この辺は人物の顔の素描が並んでいました。その後は日本橋あたりのスケッチが並び、水辺や町並みを描いていて当時の風情が伝わってきます。簡素ながらも幾何学的なリズムのある作品が多いようでした。
更にその後もスケッチが並び、寄席や舞台、落語などを描いた作品がありました。
88 木村荘八 「歌妓支度」
こちらは大型の油彩で、鏡に向かって着付けする女性の後ろ姿と、その背後でしゃがんで腰の帯を直している女性が描かれています。立っているのは後の奥さんらしく、すらりとした立ち姿で顔は見えませんが美しく凛としています。着物の縞模様も流れるようで、優美な雰囲気がありました。
この辺は和装の人を描いた小さなスケッチがありました。その先には湯浴みやストリッパーを描いた素描などもあります。木村荘八は人物を描く時、裸体を描いて構図を決め、そこに衣装を身に着けていくという手順で描いていたようです。足などの体のパーツだけを描いた作品もあり、研究を重ねていた様子も伺えました。
最後は江戸時代の物語を描いた作品や、戯画・漫画のような挿絵がありました。素朴で親しみを感じさせます。
ということで、予想以上に盛りだくさんで見応えのある内容となっていました。あまり時系列的でなく説明も少ないので、この2人の画家についてある程度の事前知識は必要にも思えますが、この2人を少しでも知っている方には楽しめると思います。


【展覧名】
素描礼讃 ―岸田劉生と木村荘八―
【公式サイト】
https://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p063254.html
【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅
【会期】2019年4月20日(土)~6月23日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は大正期を代表する画家である岸田劉生と、その仲間で昭和期に挿絵で独自の地位を築いた木村荘八の素描やスケッチが並ぶ内容となっています。2人は10代の頃に白馬会の画塾で出会い、早くからポスト印象派に関心を向けて情熱的な色彩の油彩画を描きましたが、やがて素描の重要性への認識を深めていったようです。展覧会は各人ごとに章分けされていて、笠間日動美術館、うらわ美術館、小杉放菴記念日光美術館が所蔵する200点もの作品が展示されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<1 岸田と木村 銀座築地スケッチ&エッセイ>
まずは2人の名前を冠した章となっていますが、大半は木村荘八の銀座界隈を描いた小さめのスケッチとなっていました。
29 岸田劉生 「木村荘八之像」
こちらはメガネを掛けた木村荘八の肖像です。コンテで丹念に描かれ、微妙な陰影でリアルな存在感があります。1917/7/14の日付もあり、しばしば描いていた木村荘八の像のうちの1枚のようでした。
この辺では岸田劉生が雑誌『みずゑ』に寄せた素描に関する文書を紹介していました。それによると、「素描は骨子で色は素描に比べればむしろ客の感がある」とのことで、素描の重要さを説いています。一方の木村荘八も雑誌『アトリエ』で「挿絵、すなわち素描である」と述べている文があり、同様に素描を重要視していたことが伺えました。
161 木村荘八 「銀座一丁目日就社『東京繁昌記』「築地-銀座」」
こちらは日就社(今の読売新聞。1917年に改称)の建物を描いた作品で、1912年にこの建物の3階で岸田劉生らが主催する「フュウザン会」の旗揚げが行われました。路の角に入口があるモダンな造りの洋館で、結構な早描きでフリーハンドで描いている感じがします。注釈があり、中の階段を3階へ登ったという思い出が記載されているようでした。彼らにとっては特別な場所なんでしょうね。
164 木村荘八 「汽車開通式の図『東京繁昌記』「築地-銀座」」
こちらは旧新橋駅(今の旧新橋停車場 鉄道歴史展示室がある場所)の前で鉄道の開通式を行っている様子を描いた素描です。人は丸と線で単純化されていて、即興的な感じに見えますが、建物は今と変わらない外観となっています。ツリー状の祝いのための飾りがあり、電飾イルミネーションが灯るなど当時の賑わいが伝わってくるようでした。
この辺の素描を見ると当時の暮らしの様子がよく分かる作品が多かったように思います。関東大震災の後の資生堂や歌舞伎座、松屋、築地の「延遼館」などの姿も描かれていました。
参考記事:浜離宮と新橋停車場~東京150年 江戸から明治へ~ (旧新橋停車場 鉄道歴史展示室)
131 木村荘八 「明治初年図 銀座及周辺『銀座界隈』」
こちらは銀座辺りの地図を描いたもので、今の浜離宮の辺りには外国人居留地や海軍省などが置かれているのが分かります。他にも年代ごとの地図がいくつか並んでいて、銀座・築地あたりの変遷の様子を比較しながら観ることができました。この辺は歴史的な意味でも貴重な作品かも。
<2 岸田劉生 素描・単色画を中心に>
続いては岸田劉生の素描のコーナーです。意外と油彩画も多く、久々に日本画もまとめて観ることができました。
参考記事:没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)
8 岸田劉生 「自画像」
こちらは笠間日動美術館にある油彩の自画像で、1913/10/26に描いて個展に出品したと考えられている作品です。こちらをじっと観るメガネに短髪の容貌で、ざらついた画面となっています。岸田劉生は「自分は寂しい微笑みを浮かべる」と述べていたそうで、この絵からもそうした雰囲気が出ているかな。同時に実直そうな感じも出ているように思えました。
12 岸田劉生 「第2回フュウザン会展会場装飾画」
こちらは半円状の油彩の装飾パネルで、中央にうずくまって顔を押さえる人と、うなだれている(祈っている?)男がいて、後ろには畑を耕す2人の人物の姿もあります。また、右には網を引いて漁をする人がいて背景は太陽が真っ赤に輝いています。何故か太陽の両脇に謎の渦があって、ムンクを彷彿とするような作風かな。恐らくアダムとイブの失楽園をテーマにしていると思いますが、大胆なタッチと構図となっていて目を引きました。
岸田劉生も銀座・築地界隈にした作品がいくつかありました。
66 岸田劉生 「夏の路(鵠沼海岸)」
こちらは油彩で岸田劉生が療養していた鵠沼の周辺を描いた作品です。濃い緑と濃い青空、そこに土の路が質感豊かにかかれていて、中央辺りに日傘の女性の姿があります。明暗が強く、夏の強い日差しを感じさせるような作品でした。
この辺には版画などもありました。
61 岸田劉生 「丸山君の像」
こちらは弟子の丸山行雄を描いた油彩の肖像で、手にミカンを持ち 青い服に赤い帽子を被っている姿となっています。写実的でデューラーに影響を受けていた時期の作品ではないかと思います。 人柄まで伝わってくるような岸田劉生の肖像画らしい作品でした。
その後は静物画等もありました。また、雑誌『白樺』が1918/7月号~1923/5月号あたりまでずらりと並んでいます。岸田劉生は白樺の表紙を描いたこともあったようで、麗子像らしきものもありました。
参考記事:白樺派の世界展 (清春白樺美術館) 山梨 北杜編
213 岸田劉生 「水彩素描 麗子於松」
こちらは18枚のA3サイズくらいの大きさの麗子像(岸田劉生の娘の像)です。大体は右向きで、おかっぱ頭で着物を着ています。頭に椿の花を乗っけているのも多いかな。写実的な作品や、寒山拾得のようなちょっと妖しい雰囲気のものもあります。岸田劉生の作風の変化や、提唱していた「デロリの美」を試している様子が伺えました。それにしても麗子ちゃんは実際は可愛かったみたいなのに妖怪っぽい肖像が多くてちょっと気の毒ですw (後に画家になっています)
この先には童話の装丁などもありました。童話は素朴な絵柄となっていて親しみやすいです。素朴な絵柄で描いた麗子像なんかもありましたw
72 岸田劉生 「猫図」
こちらは白黒の猫が丸まっている様子を描いた作品です。目は鋭く、こちらをじっと伺っているように見えるかな。かなり毛並みを細かく描いていて中国風の画風となっています。解説によると、これは1926年の夏に描いたらしく、宋代の画家に倣って描いたと書いてあるそうで、微宗皇帝(皇帝でありながら画家としても北宋時代最高と言われる人物)の作と伝わる猫図を意識しているようです。緻密で透けるような毛並みが見事な作品でした。
この辺には南画のような作風の掛け軸もありました。
84 岸田劉生 「麗子十六歳之像」
こちらは岸田劉生の晩年の作(38歳で亡くなった)で、髪飾りを付けて雅な着物姿をしている娘の麗子を描いています。ここでは珍しく美人に描いていて、化粧をした顔を写実的に表しています。下塗りの線が見えるくらいの薄塗りで繊細に表現されていて、愛娘を素直に写生した作品となっていました。
74 岸田劉生 「寒山拾得図」
こちらは掛け軸で、墨で大胆に寒山と拾得の2人を描いています。巻物を持った寒山と 背を向けて箒を持つ拾得は妖怪のようにニタっと笑っているのがやや不気味ですw この近くには同じように寒山拾得を描いた作品がいくつかあり、宋元画に「卑近美」を発見したというエピソードなんかも紹介されていました。そしてデロリとか卑近美の実験に使われるのはいつも麗子像です…w
<3 木村荘八 挿絵原画を中心に>
最後は再び木村荘八のコーナーで、こちらは挿絵原画を中心にと言いつつ様々な作品が並んでいました。
27 木村荘八 「襟巻きをせる自画像」
こちらは黒い洋服に茶色い帽子の自画像で、メガネに口ひげという風貌で背景には緑の布のようなものがあります。こちらをじっと見る表情は厳しく凛々しい雰囲気があるかな。かなり写実的で岸田劉生の画風に似ているように思えました。
この近くにあった日比谷公園を描いた作品は後期印象派風の厚塗りの画風となっていました。
14 木村荘八 「祖母の顔」
こちらは祖母の顔を大きく描いた肖像で、背景は恐らく戸外かな。かなり粗い筆致が残っていて、厚塗りの画面です。近くで観ると表情が分かりづらいのですが、離れて観ると困ったような表情がよく分かりました。こちらも後期印象派の影響を受けた作品のようでした。
この後には再び風景のスケッチが並んでいました。街中を描いたものが多く、メモも添えてあります。
26 木村荘八 「裸婦」
こちらは腰の後ろに右手を当てて立つ裸婦を描いた作品です。ややうつむき加減で、線で明暗をつけて立体感がある写実的な画風となっています。やや太腿が太すぎる気もしますが、堂々たる姿となっていました。当時の木村荘八の指導者は岡田三郎助だったらしいので、何だか納得ですw
この辺は人物の顔の素描が並んでいました。その後は日本橋あたりのスケッチが並び、水辺や町並みを描いていて当時の風情が伝わってきます。簡素ながらも幾何学的なリズムのある作品が多いようでした。
更にその後もスケッチが並び、寄席や舞台、落語などを描いた作品がありました。
88 木村荘八 「歌妓支度」
こちらは大型の油彩で、鏡に向かって着付けする女性の後ろ姿と、その背後でしゃがんで腰の帯を直している女性が描かれています。立っているのは後の奥さんらしく、すらりとした立ち姿で顔は見えませんが美しく凛としています。着物の縞模様も流れるようで、優美な雰囲気がありました。
この辺は和装の人を描いた小さなスケッチがありました。その先には湯浴みやストリッパーを描いた素描などもあります。木村荘八は人物を描く時、裸体を描いて構図を決め、そこに衣装を身に着けていくという手順で描いていたようです。足などの体のパーツだけを描いた作品もあり、研究を重ねていた様子も伺えました。
最後は江戸時代の物語を描いた作品や、戯画・漫画のような挿絵がありました。素朴で親しみを感じさせます。
ということで、予想以上に盛りだくさんで見応えのある内容となっていました。あまり時系列的でなく説明も少ないので、この2人の画家についてある程度の事前知識は必要にも思えますが、この2人を少しでも知っている方には楽しめると思います。
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今日はやや写真多めです。前回ご紹介した埼玉県立近代美術館のカフェで休んだ後、常設展も観てきました。また、天気が良かったので美術館の周りにある作品群の写真も撮ってきましたので合わせてご紹介しようと思います。

【展覧名】
2019 MOMASコレクション 第1期
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=418
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年4月20日(土)~7月21日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は常設展で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、今回は2019年度最初の1期となってきました。大きく分けて3つの章から構成されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<セレクション:ウジェーヌ・ドラクロワから新印象主義へ>
まずは西洋絵画コレクションのコーナーです。新収蔵品のシニャックにちなみ、ポール・シニャックの著作『ウジェーヌ・ドラクロワから新印象主義へ』をタイトルにした章となっていました。
参考記事:2019 MOMASコレクション 第4期 (埼玉近代美術館)
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「イタリアの想い出」
こちらは右側に木立、左側に遠くにドーム状の教会らしきものが見える風景を描いたエッチングの作品です。遠くは薄く手前は黒が強めで遠近感が感じられます。空や背景を素早く描いている感じで、叙情性もありました。この作品は若い頃のイタリア旅行の想い出を描いた一連の想い出シリーズの1つのようです。
ウジェーヌ・ドラクロワ 「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」
こちらはぐったりしている聖ステパノが描かれ、周りに血だらけの石が転がっています。(聖ステパノは石打ちで殉教した聖者のため、セットで描かれます) 細部はぼんやりしているものの、ステパノの顔には光が当たって目を引きます。血の滴りなんかもドラマティックな雰囲気です。また、周りの弟子たちの身振りなどからも動きが感じられました。
この隣にはポール・シニャックの著作『ウジェーヌ・ドラクロワから新印象主義へ』もありました。結構小さめの冊子です。また、新収蔵品の「アニエールの河岸」もありました。
ポール・ゴーギャン 「死霊は見ている」
こちらはゴーギャンがタヒチで過ごした時の様子を版画化した作品で、家の中でうずくまっている女性の後ろ姿が描かれています。その向こうには黒い影があり、目と口が白く まさに死霊のような不気味な雰囲気です。女性はそれに気づいているのか顔に手をあてて怯えているように見えます。全体的に荒削りで未開の楽園を求めたゴーギャンらしい力強さがありました。
この近くには同じシリーズの版画がいくつか並んでいました。
参考記事:ゴーギャン展2009 (東京国立近代美術館)
<山水から風景へ>
続いては日本画のコーナー。近現代の山水・風景画が並んでいました。
橋本雅邦 「月夜山水」
こちらは薄っすらと浮かぶ満月の下の山水を描いた作品です。縦長の山が霧に霞み、中腹には家らしきものも見えています。その下には家に通じる道もあり、人が天秤を担いで歩いている姿もあります。しんみりして静かな光景で、霧のような表現と手前の黒々とした表現の違いで奥行きと情感が感じられました。
横山大観 「朧夜」
こちらは月夜の下の黒い木々を描いた作品で、木は左から右へと倒れるようにいくつも連なり リズムが感じられます。月は一際明るく見えますが、ぼんやりとして神秘的な雰囲気となっていました。墨の濃淡だけでこれだけ叙情的な光景を作れるのだから見事です。
速水御舟 「夏の丹波路」 ★こちらで観られます
こちらは見下ろすような視点で山間の家と畑を描いた作品です。結構大胆な筆使いで点描みたいになっている部分もあり、南画を思わせる部分もあるかな。緑と茶色の色の取り合わせも強く目を引きました。解説によると21歳頃の作品で琳派や印象派を取り入れていた今村紫紅から影響を受けたのだとか。
大野百樹 「秋韻」
こちらは赤い山(岩?)を背景に大きな松が並んでいる様子が描かれています。カクカクしていて強い輪郭線の幹は、機械の部品のように見えるほど幾何学的な文様となっています。全体的に色が重めで力強い迫力がありました。
この辺は割と最近の作品がいくつか並んでいました。
<自然の造形―増田三男作品を中心に>
展示室内で最後のコーナーは さいたま市出身で、彫金の人間国宝である増田三男を中心に、いくつか彫金の作品が並んでいました。
増田三男 「金彩銅壺 山茱萸と鷽」
こちらは茶色い丸々とした壺に金彩で花(さんしゅゆ)、鳥(うそ)、蝶を表した作品です。いずれも装飾的に単純化され、線刻で文様を表現しています。そのデフォルメ具合が面白く、デザインセンスを感じました。解説によるとこうしたデザイン化は陶芸家の富本憲吉の教えによって自然観察の中から見出したそうです。
今回の常設は以上です。
<その他>
ここからは美術館内外にある彫刻作品などについてです。建物自体も作品と一体化していたり、散歩して回ると面白い作品が多々見つかります。ここからは写真を使ってご紹介。
宮島達夫 「Number of Time in Coin-Locker」

こちらはロッカーにある作品です。150個のデジタルカウンターが入っていて、それぞれ異なるペースで数字が変化していきます。これによって時間の流れが無数に存在することを示しているのだとか。なお、このカウンターの速度を決めたのは公募で選ばれた埼玉県民の方々らしく、カウンターの裏に名前が入っているそうです。
田中米吉 「ドッキング(表面No.86-1985)」

こちらは冒頭の突起部分を中から観た様子。建物の中まで突き刺さったような感じとなっています。黒川紀章の設計した美術館に唐突に切り込んできていて、この美術館に初めて来た人は驚くと思いますw
湯村光 「天空へのメッセージ」

こちらは裏手の公園にあるモニュメント。御影石で出来ているそうで、つるつるしていたり場所によってはザラザラしています。硬い石だけど滑らかな曲線が軽やかで生き物のようなフォルムにも見えます。解説によると作者は「天空に向かって陽光に向かって立ち上がるフォルム、それは生あるものへの賛歌です」と語っていたのだとか。
サトル・タカダ 「子午線-1993」

こちらは巨大な鉄製の作品。本来はレールを走りアームも可動するように作られているようで、タイトルの「子午線」はこうして作らせる曲線を見立てているそうです。工業的なようで不思議と親しみが持てる作品に思えます。
山本信 「這うものたちの午後の眠り」

まるで蛇のようなカラフルなタイルで出来た作品。子供たちがよく跨って乗っていますw 楽しげな雰囲気が遊具っぽさも出しているので子供にも人気なんでしょうね。
重村三雄 「階段」

美術館に来た人が金属像になってしまったような作品w 常設の部屋から実際にこの階段を登って観ることもできます。お互いあまり関心が無いように見えるのも面白い。
西野康造 「風の中で」

こちらは美術館のある北浦和公園のシンボル的な作品。ずっと昔からあるように思えますが2002年に破損してしまい、ステンレスからチタンに変えて再設置されたそうです。ここに来る度、噴水と共に開放的な気分にさせてくれます。
ということで、今回も常設も楽しむことができました。この美術館は周りが爽やかな公園で、彫刻作品が溶け込んでいるのも魅力だと思います。新緑の時期は特に散歩が楽しいので、特別展を観に行った場合は周りも見て回ることをオススメします。

【展覧名】
2019 MOMASコレクション 第1期
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=418
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年4月20日(土)~7月21日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は常設展で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、今回は2019年度最初の1期となってきました。大きく分けて3つの章から構成されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<セレクション:ウジェーヌ・ドラクロワから新印象主義へ>
まずは西洋絵画コレクションのコーナーです。新収蔵品のシニャックにちなみ、ポール・シニャックの著作『ウジェーヌ・ドラクロワから新印象主義へ』をタイトルにした章となっていました。
参考記事:2019 MOMASコレクション 第4期 (埼玉近代美術館)
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「イタリアの想い出」
こちらは右側に木立、左側に遠くにドーム状の教会らしきものが見える風景を描いたエッチングの作品です。遠くは薄く手前は黒が強めで遠近感が感じられます。空や背景を素早く描いている感じで、叙情性もありました。この作品は若い頃のイタリア旅行の想い出を描いた一連の想い出シリーズの1つのようです。
ウジェーヌ・ドラクロワ 「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」
こちらはぐったりしている聖ステパノが描かれ、周りに血だらけの石が転がっています。(聖ステパノは石打ちで殉教した聖者のため、セットで描かれます) 細部はぼんやりしているものの、ステパノの顔には光が当たって目を引きます。血の滴りなんかもドラマティックな雰囲気です。また、周りの弟子たちの身振りなどからも動きが感じられました。
この隣にはポール・シニャックの著作『ウジェーヌ・ドラクロワから新印象主義へ』もありました。結構小さめの冊子です。また、新収蔵品の「アニエールの河岸」もありました。
ポール・ゴーギャン 「死霊は見ている」
こちらはゴーギャンがタヒチで過ごした時の様子を版画化した作品で、家の中でうずくまっている女性の後ろ姿が描かれています。その向こうには黒い影があり、目と口が白く まさに死霊のような不気味な雰囲気です。女性はそれに気づいているのか顔に手をあてて怯えているように見えます。全体的に荒削りで未開の楽園を求めたゴーギャンらしい力強さがありました。
この近くには同じシリーズの版画がいくつか並んでいました。
参考記事:ゴーギャン展2009 (東京国立近代美術館)
<山水から風景へ>
続いては日本画のコーナー。近現代の山水・風景画が並んでいました。
橋本雅邦 「月夜山水」
こちらは薄っすらと浮かぶ満月の下の山水を描いた作品です。縦長の山が霧に霞み、中腹には家らしきものも見えています。その下には家に通じる道もあり、人が天秤を担いで歩いている姿もあります。しんみりして静かな光景で、霧のような表現と手前の黒々とした表現の違いで奥行きと情感が感じられました。
横山大観 「朧夜」
こちらは月夜の下の黒い木々を描いた作品で、木は左から右へと倒れるようにいくつも連なり リズムが感じられます。月は一際明るく見えますが、ぼんやりとして神秘的な雰囲気となっていました。墨の濃淡だけでこれだけ叙情的な光景を作れるのだから見事です。
速水御舟 「夏の丹波路」 ★こちらで観られます
こちらは見下ろすような視点で山間の家と畑を描いた作品です。結構大胆な筆使いで点描みたいになっている部分もあり、南画を思わせる部分もあるかな。緑と茶色の色の取り合わせも強く目を引きました。解説によると21歳頃の作品で琳派や印象派を取り入れていた今村紫紅から影響を受けたのだとか。
大野百樹 「秋韻」
こちらは赤い山(岩?)を背景に大きな松が並んでいる様子が描かれています。カクカクしていて強い輪郭線の幹は、機械の部品のように見えるほど幾何学的な文様となっています。全体的に色が重めで力強い迫力がありました。
この辺は割と最近の作品がいくつか並んでいました。
<自然の造形―増田三男作品を中心に>
展示室内で最後のコーナーは さいたま市出身で、彫金の人間国宝である増田三男を中心に、いくつか彫金の作品が並んでいました。
増田三男 「金彩銅壺 山茱萸と鷽」
こちらは茶色い丸々とした壺に金彩で花(さんしゅゆ)、鳥(うそ)、蝶を表した作品です。いずれも装飾的に単純化され、線刻で文様を表現しています。そのデフォルメ具合が面白く、デザインセンスを感じました。解説によるとこうしたデザイン化は陶芸家の富本憲吉の教えによって自然観察の中から見出したそうです。
今回の常設は以上です。
<その他>
ここからは美術館内外にある彫刻作品などについてです。建物自体も作品と一体化していたり、散歩して回ると面白い作品が多々見つかります。ここからは写真を使ってご紹介。
宮島達夫 「Number of Time in Coin-Locker」

こちらはロッカーにある作品です。150個のデジタルカウンターが入っていて、それぞれ異なるペースで数字が変化していきます。これによって時間の流れが無数に存在することを示しているのだとか。なお、このカウンターの速度を決めたのは公募で選ばれた埼玉県民の方々らしく、カウンターの裏に名前が入っているそうです。
田中米吉 「ドッキング(表面No.86-1985)」

こちらは冒頭の突起部分を中から観た様子。建物の中まで突き刺さったような感じとなっています。黒川紀章の設計した美術館に唐突に切り込んできていて、この美術館に初めて来た人は驚くと思いますw
湯村光 「天空へのメッセージ」

こちらは裏手の公園にあるモニュメント。御影石で出来ているそうで、つるつるしていたり場所によってはザラザラしています。硬い石だけど滑らかな曲線が軽やかで生き物のようなフォルムにも見えます。解説によると作者は「天空に向かって陽光に向かって立ち上がるフォルム、それは生あるものへの賛歌です」と語っていたのだとか。
サトル・タカダ 「子午線-1993」

こちらは巨大な鉄製の作品。本来はレールを走りアームも可動するように作られているようで、タイトルの「子午線」はこうして作らせる曲線を見立てているそうです。工業的なようで不思議と親しみが持てる作品に思えます。
山本信 「這うものたちの午後の眠り」

まるで蛇のようなカラフルなタイルで出来た作品。子供たちがよく跨って乗っていますw 楽しげな雰囲気が遊具っぽさも出しているので子供にも人気なんでしょうね。
重村三雄 「階段」

美術館に来た人が金属像になってしまったような作品w 常設の部屋から実際にこの階段を登って観ることもできます。お互いあまり関心が無いように見えるのも面白い。
西野康造 「風の中で」

こちらは美術館のある北浦和公園のシンボル的な作品。ずっと昔からあるように思えますが2002年に破損してしまい、ステンレスからチタンに変えて再設置されたそうです。ここに来る度、噴水と共に開放的な気分にさせてくれます。
ということで、今回も常設も楽しむことができました。この美術館は周りが爽やかな公園で、彫刻作品が溶け込んでいるのも魅力だと思います。新緑の時期は特に散歩が楽しいので、特別展を観に行った場合は周りも見て回ることをオススメします。
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前回ご紹介した埼玉県立近代美術館の特別展を観た後、館内のペペロネというお店でお茶してきました。このお店は以前にもご紹介しましたが9年前なので改めてご紹介しておこうと思います。

【店名】
イタリアン ペペロネ美術館
【ジャンル】
カフェ・レストラン
【公式サイト】
http://peperone.jp/
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/index.php?page_id=58
食べログ:https://tabelog.com/saitama/A1101/A110102/11002246/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
北浦和駅
【近くの美術館】
埼玉県立近代美術館(館内のお店です)
【この日にかかった1人の費用】
810円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(休日15時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
空いていて快適にお茶することができました。
さて、このお店はイタリアンレストラン兼カフェで、どちらかというとレストランメニューが豊富だったりします。(私はいつもカフェとして利用していますw) 埼玉県立近代美術館の中にありますが、レストラン専用の出入り口もあって北浦和公園で遊んでいる人たちも気軽に利用できるようになっているようです。また、与野本町にある彩の国さいたま芸術劇場にも同名の姉妹店、浦和の埼玉会館にはフランス料理のビストロやま という別ブランドの店もあるようです。いつの間にかリニューアルしたみたいなので、改めてご紹介。
参考記事:ペペロネ (埼玉県立近代美術館のお店)
店内はこんな感じ。

ガラス張りで爽やかな公園の緑を観ながら落ち着いて過ごすことができます。
この日はケーキセット(810円)にしました。美術館側の入口付近(レジ付近)でこの日のケーキを観ながら思案。

頼めば席までサンプルを運んでくれます。残り1つのモンブランにしましたw
こちらがモンブラン。

栗の香りと滑らかな舌触りが特徴で、結構甘めかな。台の部分がチョコになっててチョコの風味が意外と強かったです。台はチョコ以外にサクサクした変わった素材も使っていて美味しかったです。
こちらはセットで選んだコーヒー。

コクが強くて苦味と酸味は少なめでした。どっしりしてケーキに合います。200円でおかわり可能となっていました。
ということで、今回も落ち着いた雰囲気の中でカフェタイムを過ごすことができました。ここは緑も爽やかなので、展覧会の図録などを観ながらゆっくり過ごすのに向いていると思います。埼玉県立近代美術館に行ったら寄りたいお店です。

【店名】
イタリアン ペペロネ美術館
【ジャンル】
カフェ・レストラン
【公式サイト】
http://peperone.jp/
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/index.php?page_id=58
食べログ:https://tabelog.com/saitama/A1101/A110102/11002246/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
北浦和駅
【近くの美術館】
埼玉県立近代美術館(館内のお店です)
【この日にかかった1人の費用】
810円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_3_④_5_快適
【混み具合・混雑状況(休日15時頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
空いていて快適にお茶することができました。
さて、このお店はイタリアンレストラン兼カフェで、どちらかというとレストランメニューが豊富だったりします。(私はいつもカフェとして利用していますw) 埼玉県立近代美術館の中にありますが、レストラン専用の出入り口もあって北浦和公園で遊んでいる人たちも気軽に利用できるようになっているようです。また、与野本町にある彩の国さいたま芸術劇場にも同名の姉妹店、浦和の埼玉会館にはフランス料理のビストロやま という別ブランドの店もあるようです。いつの間にかリニューアルしたみたいなので、改めてご紹介。
参考記事:ペペロネ (埼玉県立近代美術館のお店)
店内はこんな感じ。

ガラス張りで爽やかな公園の緑を観ながら落ち着いて過ごすことができます。
この日はケーキセット(810円)にしました。美術館側の入口付近(レジ付近)でこの日のケーキを観ながら思案。

頼めば席までサンプルを運んでくれます。残り1つのモンブランにしましたw
こちらがモンブラン。

栗の香りと滑らかな舌触りが特徴で、結構甘めかな。台の部分がチョコになっててチョコの風味が意外と強かったです。台はチョコ以外にサクサクした変わった素材も使っていて美味しかったです。
こちらはセットで選んだコーヒー。

コクが強くて苦味と酸味は少なめでした。どっしりしてケーキに合います。200円でおかわり可能となっていました。
ということで、今回も落ち着いた雰囲気の中でカフェタイムを過ごすことができました。ここは緑も爽やかなので、展覧会の図録などを観ながらゆっくり過ごすのに向いていると思います。埼玉県立近代美術館に行ったら寄りたいお店です。
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今日は写真多めです。GW中に北浦和にある埼玉県立近代美術館で「ブラジル先住民の椅子」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
ブラジル先住民の椅子
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=412
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年4月6日 (土) ~ 5月19日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
結構お客さんはいましたが、会場が広めなので快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はブラジルの先住民たちによる椅子をテーマにした内容で、昨年に目黒の庭園美術館で開催された展示の巡回となります。アールデコ様式の建物が美しい庭園美術館に比べると埼玉県立近代美術館は至って普通の会場ではありますが、椅子のコレクションが充実している美術館なので、この展示の開催地にピッタリと言えそうです。また、色々な角度から観られるようになっていたり、カテゴリーA~Cの作品郡をそれぞれの部屋に分けて展示しているので構成が分かりやすくなっていました。
ちなみに昨年のおさらいで、カテゴリA~Cは
A:日用で使う実用的な椅子(幾何文様など)
B:シャーマンが座って宗教儀式で使う椅子(動物の形など)
C:動物彫刻の椅子(アートや民芸品として作っている椅子)
となります。特にC郡が多めかな。いずれも意匠が面白い作品ばかりなので、今回も写真を使ってご紹介していこうと思います。(今回は庭園美術館の時に紹介しなかった作品をピックアップしています)
参考記事:ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力 (東京都庭園美術館)
<カテゴリーA 伝統的な椅子-実用性、しきたりに基づく->
まずは日用で使う比較的シンプルな椅子のコーナーです。
不詳 「幾何文様」 (カテゴリーA カヤビ)

シンプルな幾何学性が現代的なデザインと類似するように思えます。素朴なのに洗練と似ているのが面白い。
不詳 「幾何文様」 (カテゴリーA ワイワイ)

手作り感があってプリミティブな雰囲気です。このセンスは日本人には出ないと思うw
不詳 「カメ」 (カテゴリーA リクバツァ)

かなりシンプルな形ですがカメと分かる特徴を捉えているように思えます。椅子としても使いやすそう。
<カテゴリーB 動物形態の伝統的な椅子-村で使用、宗教的効用->
続いては宗教的な儀式で使う椅子のコーナーです。主に動物の形をしています。
展示風景はこんな感じです。

明るく開放的で360度ぐるりと見回すことができるので、じっくり鑑賞することができました。
不詳 「コンドル」 (カテゴリーB メイナク)

背中の部分は幾何学文様になっているなど完成度が高い椅子。首が長くて飛んでいる感じが出てますね。
カナリ 「ホウカンチョウ」 (カテゴリーB クイクロ)

こちらは赤いくちばしが特徴の鳥。目はくりっとしていて可愛らしいw
ウリサパ 「カエル」 (カテゴリーB クイクロ)

割とリアルな形のカエル。足の形が特にカエルをよく観察しているように思えました。
不詳 「エイ」 (カテゴリーB メイナク)

エイの椅子もいくつかあってメイナクは海に近いところなのかな? 水玉文様があるのが面白い。
不詳 「ジャガー」 (カテゴリーB ユージャ)

こちらも文様とやや黄色みを帯びているのがジャガーっぽさを出していました。ちょっと赤べこみたいな形w
不詳 「カオグロナキシャクケイ」 (カテゴリーB ワウジャ)

こちらはデフォルメ具合がシャープなのがスマートで、木目が毛並みのようにも見えました。
ウルフ 「オウギワシ」 (カテゴリーB メイナク)

こちらは赤を基調とした文様が見事な作品。呪術的なものを感じます。
ヤワピ 「ハチドリ」 (カテゴリーB カマユーラ)

くちばしの長いハチドリもいました。南米はハチドリをモチーフにした造形が多い気がします。
不詳 「サル」 (カテゴリーB カマユーラ)

尻尾がくるりと巻いたサル。やや眠たそうな顔も可愛いw
<カテゴリーC 動物彫刻の椅子-先住民としての存在陽明、想像力->
最後は現代において民芸やアートとなった椅子のコーナーです。ここは作者名がハッキリしている作品が多めです。
カテゴリーCもこんな感じでかなり間近に観られます。

動物たちが群れているような展示風景も面白いw
カワカナム&ヤルル 「ジャガー」 (カテゴリーC メイナク)

立派な体格のジャガー。身構えるようなポーズに見えました。ジャガーは南米ではかなり強い動物でしょうね。
スクリ 「ジャガー」 (カテゴリーC カマユーラ)

こちらもジャガー。何かを伺うようなポーズに見えます。顔も若干怖い。
ウルフ 「ジャガー」「カピバラ」 (カテゴリーC メイナク)

こちらは対峙するように展示されていました。実際にカピバラがジャガーと鉢合わせになったらヤバそうですが、こちらはのほほんとした雰囲気でしたw
アパリタ 「ウミガメ」 (カテゴリーC メイナク)

甲羅がつるつるの亀。座ったら滑りそうw 甲羅もしっかり表現されています。
不詳 「魚」 (カテゴリーC タピラペ)

もはやこれは椅子なのか?という造形ですが、鱗まで表現して魚だとひと目で分かります。目が素朴w
ウルフ 「シカ」 (カテゴリーC メイナク)

やたら首が長い鹿。隣にも小さめの鹿があって親子のように並んでいました。
最後の出口付近にこちらの小型の作品があり、これだけ触ることができました。

見た目以上にずっしりとした重さがあります。表面はつるつるですが、木の温もりがありました。
ということで、面白い造形に再会することができました。展示の仕方も面白かったし、2度目でもかなり満足です。もうすぐ終わってしまいますが、ぐるっとパスの提示で入れる上に写真も撮れる展示ですので気になる方はお早めにどうぞ。オススメの展示です。

【展覧名】
ブラジル先住民の椅子
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=412
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年4月6日 (土) ~ 5月19日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
結構お客さんはいましたが、会場が広めなので快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はブラジルの先住民たちによる椅子をテーマにした内容で、昨年に目黒の庭園美術館で開催された展示の巡回となります。アールデコ様式の建物が美しい庭園美術館に比べると埼玉県立近代美術館は至って普通の会場ではありますが、椅子のコレクションが充実している美術館なので、この展示の開催地にピッタリと言えそうです。また、色々な角度から観られるようになっていたり、カテゴリーA~Cの作品郡をそれぞれの部屋に分けて展示しているので構成が分かりやすくなっていました。
ちなみに昨年のおさらいで、カテゴリA~Cは
A:日用で使う実用的な椅子(幾何文様など)
B:シャーマンが座って宗教儀式で使う椅子(動物の形など)
C:動物彫刻の椅子(アートや民芸品として作っている椅子)
となります。特にC郡が多めかな。いずれも意匠が面白い作品ばかりなので、今回も写真を使ってご紹介していこうと思います。(今回は庭園美術館の時に紹介しなかった作品をピックアップしています)
参考記事:ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力 (東京都庭園美術館)
<カテゴリーA 伝統的な椅子-実用性、しきたりに基づく->
まずは日用で使う比較的シンプルな椅子のコーナーです。
不詳 「幾何文様」 (カテゴリーA カヤビ)

シンプルな幾何学性が現代的なデザインと類似するように思えます。素朴なのに洗練と似ているのが面白い。
不詳 「幾何文様」 (カテゴリーA ワイワイ)

手作り感があってプリミティブな雰囲気です。このセンスは日本人には出ないと思うw
不詳 「カメ」 (カテゴリーA リクバツァ)

かなりシンプルな形ですがカメと分かる特徴を捉えているように思えます。椅子としても使いやすそう。
<カテゴリーB 動物形態の伝統的な椅子-村で使用、宗教的効用->
続いては宗教的な儀式で使う椅子のコーナーです。主に動物の形をしています。
展示風景はこんな感じです。

明るく開放的で360度ぐるりと見回すことができるので、じっくり鑑賞することができました。
不詳 「コンドル」 (カテゴリーB メイナク)

背中の部分は幾何学文様になっているなど完成度が高い椅子。首が長くて飛んでいる感じが出てますね。
カナリ 「ホウカンチョウ」 (カテゴリーB クイクロ)

こちらは赤いくちばしが特徴の鳥。目はくりっとしていて可愛らしいw
ウリサパ 「カエル」 (カテゴリーB クイクロ)

割とリアルな形のカエル。足の形が特にカエルをよく観察しているように思えました。
不詳 「エイ」 (カテゴリーB メイナク)

エイの椅子もいくつかあってメイナクは海に近いところなのかな? 水玉文様があるのが面白い。
不詳 「ジャガー」 (カテゴリーB ユージャ)

こちらも文様とやや黄色みを帯びているのがジャガーっぽさを出していました。ちょっと赤べこみたいな形w
不詳 「カオグロナキシャクケイ」 (カテゴリーB ワウジャ)

こちらはデフォルメ具合がシャープなのがスマートで、木目が毛並みのようにも見えました。
ウルフ 「オウギワシ」 (カテゴリーB メイナク)

こちらは赤を基調とした文様が見事な作品。呪術的なものを感じます。
ヤワピ 「ハチドリ」 (カテゴリーB カマユーラ)

くちばしの長いハチドリもいました。南米はハチドリをモチーフにした造形が多い気がします。
不詳 「サル」 (カテゴリーB カマユーラ)

尻尾がくるりと巻いたサル。やや眠たそうな顔も可愛いw
<カテゴリーC 動物彫刻の椅子-先住民としての存在陽明、想像力->
最後は現代において民芸やアートとなった椅子のコーナーです。ここは作者名がハッキリしている作品が多めです。
カテゴリーCもこんな感じでかなり間近に観られます。

動物たちが群れているような展示風景も面白いw
カワカナム&ヤルル 「ジャガー」 (カテゴリーC メイナク)

立派な体格のジャガー。身構えるようなポーズに見えました。ジャガーは南米ではかなり強い動物でしょうね。
スクリ 「ジャガー」 (カテゴリーC カマユーラ)

こちらもジャガー。何かを伺うようなポーズに見えます。顔も若干怖い。
ウルフ 「ジャガー」「カピバラ」 (カテゴリーC メイナク)

こちらは対峙するように展示されていました。実際にカピバラがジャガーと鉢合わせになったらヤバそうですが、こちらはのほほんとした雰囲気でしたw
アパリタ 「ウミガメ」 (カテゴリーC メイナク)

甲羅がつるつるの亀。座ったら滑りそうw 甲羅もしっかり表現されています。
不詳 「魚」 (カテゴリーC タピラペ)

もはやこれは椅子なのか?という造形ですが、鱗まで表現して魚だとひと目で分かります。目が素朴w
ウルフ 「シカ」 (カテゴリーC メイナク)

やたら首が長い鹿。隣にも小さめの鹿があって親子のように並んでいました。
最後の出口付近にこちらの小型の作品があり、これだけ触ることができました。

見た目以上にずっしりとした重さがあります。表面はつるつるですが、木の温もりがありました。
ということで、面白い造形に再会することができました。展示の仕方も面白かったし、2度目でもかなり満足です。もうすぐ終わってしまいますが、ぐるっとパスの提示で入れる上に写真も撮れる展示ですので気になる方はお早めにどうぞ。オススメの展示です。
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この前の日曜日に映画「名探偵ピカチュウ」を観てきました。この記事にはややネタバレが含まれていますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください。

【作品名】
名探偵ピカチュウ
【公式サイト】
https://meitantei-pikachu.jp/
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
結構お客さんがいて、ヒット映画となっているようです。
さて、この映画はゲーム「ポケットモンスター」シリーズの「名探偵ピカチュウ」をハリウッド映画にしたもので、アニメでなく実写とCGという点がこれまでのポケモン映画と大きく異なります。私はポケモン世代より上なのでそれほど深く知っている訳では無いですが、ポケモンGOはそこそこやってたのでどんなものか観に行ってみました。結論から言うとポケモンについて詳しく知っていなくてもある程度は説明してくれるので、ファン以外の人も楽しめると思います。(勿論、各ポケモンの能力や習性など長年のファンほど楽しめる要素が多いとは思います。)
ここからややネタバレとなりますが、まずストーリーは名探偵というくらいなので謎解き要素があります。と言っても推理するというよりは勘と行動で解決していくような感じなので名探偵コナンみたいなノリではありませんw 一方でちょっと子供には難しい人間関係みたいな話も出てくるかな。割と話自体は初代ポケモン世代くらいの大人向けかもしれません。また、ピカチュウの言動がオッサンっぽいのがこの映画の特徴で、映画「テッド」よりは上品ですが見た目の可愛さとのギャップが笑いを誘います。他のポケモンの性質や能力もストーリーに絡んできますが、今回が実写映画1作目なのでその辺の設定も丁寧に描写していて分かりやすかったです。
続いて映像に関してですが、ぬいぐるみ感とCG感があったものの特に違和感はありませんでした。この辺はリアル過ぎても怖いので、ちょうど良いくらいだと思いますw ポケモンの種類も結構多く出てくるので、ファンには嬉しいんじゃないかな。特に大型のポケモンは迫力ある映像となっていました。また、吹き替え版で観たので声に関しては分かりませんが、役者もポケモンがその場にいるような演技で自然な映像となっていたように思います。この辺もこの映画のクオリティの高さが端的に分かる部分でした。(字幕版のピカチュウの声はデットプールのライアン・レイノルズらしいので、聞きたかった…w)
ということで、予想以上に楽しめる映画でした。アクションあり謎解きありで、観終わった後に納得感がありました。子供にはやや難しいところもあるかも知れませんが、ピカチュウが可愛いという理由だけでも観に行くのもありだと思います。 ポケモンが好きな方には特にオススメの映画です。
おまけ:
それにしても、以前からポケモンのアニメでも思っていましたが、同じ種族が沢山いるのに各自に固有の名前が無いのは何故なんだろう… 犬のことを 犬!って呼ぶみたいなw


【作品名】
名探偵ピカチュウ
【公式サイト】
https://meitantei-pikachu.jp/
【時間】
1時間40分程度
【ストーリー】
退屈_1_2_3_④_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_3_④_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_2_3_④_5_名作
【感想】
結構お客さんがいて、ヒット映画となっているようです。
さて、この映画はゲーム「ポケットモンスター」シリーズの「名探偵ピカチュウ」をハリウッド映画にしたもので、アニメでなく実写とCGという点がこれまでのポケモン映画と大きく異なります。私はポケモン世代より上なのでそれほど深く知っている訳では無いですが、ポケモンGOはそこそこやってたのでどんなものか観に行ってみました。結論から言うとポケモンについて詳しく知っていなくてもある程度は説明してくれるので、ファン以外の人も楽しめると思います。(勿論、各ポケモンの能力や習性など長年のファンほど楽しめる要素が多いとは思います。)
ここからややネタバレとなりますが、まずストーリーは名探偵というくらいなので謎解き要素があります。と言っても推理するというよりは勘と行動で解決していくような感じなので名探偵コナンみたいなノリではありませんw 一方でちょっと子供には難しい人間関係みたいな話も出てくるかな。割と話自体は初代ポケモン世代くらいの大人向けかもしれません。また、ピカチュウの言動がオッサンっぽいのがこの映画の特徴で、映画「テッド」よりは上品ですが見た目の可愛さとのギャップが笑いを誘います。他のポケモンの性質や能力もストーリーに絡んできますが、今回が実写映画1作目なのでその辺の設定も丁寧に描写していて分かりやすかったです。
続いて映像に関してですが、ぬいぐるみ感とCG感があったものの特に違和感はありませんでした。この辺はリアル過ぎても怖いので、ちょうど良いくらいだと思いますw ポケモンの種類も結構多く出てくるので、ファンには嬉しいんじゃないかな。特に大型のポケモンは迫力ある映像となっていました。また、吹き替え版で観たので声に関しては分かりませんが、役者もポケモンがその場にいるような演技で自然な映像となっていたように思います。この辺もこの映画のクオリティの高さが端的に分かる部分でした。(字幕版のピカチュウの声はデットプールのライアン・レイノルズらしいので、聞きたかった…w)
ということで、予想以上に楽しめる映画でした。アクションあり謎解きありで、観終わった後に納得感がありました。子供にはやや難しいところもあるかも知れませんが、ピカチュウが可愛いという理由だけでも観に行くのもありだと思います。 ポケモンが好きな方には特にオススメの映画です。
おまけ:
それにしても、以前からポケモンのアニメでも思っていましたが、同じ種族が沢山いるのに各自に固有の名前が無いのは何故なんだろう… 犬のことを 犬!って呼ぶみたいなw
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前回ご紹介した松岡美術館の展示を観た後、東京都庭園美術館に移動して「キスリング展 エコール・ド・パリの夢」を観てきました。

【展覧名】
キスリング展 エコール・ド・パリの夢
【公式サイト】
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/190420-0707_kisling.html
【会場】東京都庭園美術館
【最寄】白金台駅・目黒駅
【会期】2019年4月20日(土)~7月7日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00s分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんが多く、会場が狭くなっている所では若干の混雑感もありましたが概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は「エコール・ド・パリ」と呼ばれるフランス以外の国の画家が活躍していた頃を代表する画家であるモイーズ・キスリングの個展となっています。これだけまとまった展示は日本で12年ぶりとのことなので、恐らく府中市美術館で観た展示以来だと思います。若干、構成が分かりづらいものの、個性的で華やかな作品が60点ほど並んでいましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<序 キスリングとアール・デコの時代>
まずはこの美術館特有のアールデコの部屋の中でキスリングの名品を観るというコーナーです。エコール・ド・パリとアール・デコの時代は重なる部分があり、キスリングは影響を受けたわけではなさそうですが、1920~30年代頃の取り合わせとなっていました。
58 モイーズ・キスリング 「花」
こちらは大型の作品で、花瓶にぎっしりと色とりどりの沢山の花が活けられている様子が描かれています。色彩が強く、花の形に沿って厚塗りしていて暗い背景に対して明るすぎじゃないか?というくらいの存在感です。暗い中から花が浮き上がるようにも感じられ、一際目を引く作品です。
69 モイーズ・キスリング 「アトリエの画家とモデル」
こちらはキスリングのアトリエの中を描いた作品で、右手前でイーゼルの前で絵筆を取るキスリング、左奥の窓辺にポーズを取る裸婦が描かれています。遠近感がちょっと奇妙でやけに裸婦が小さく見えるかな。部屋中にある絵や家具などは幾何学的・直線的でキュビスムに通じるものを感じました。色が淡く水彩のような軽やかさも特徴的な作品です。
57 モイーズ・キスリング 「花」
こちらは花瓶に入った紫の花や黄色い花(ミモザ?)などを描いた作品です。ミモザの部分は渦巻くように絵の具が厚塗りされていて、実際に花の部分が盛り上がって見えます。それが離れて観ると立体感があって面白く感じました。キスリングの作品は実物を観ないと分からない要素がありますね。
17 モイーズ・キスリング 「赤い長椅子に横たわる裸婦」 ★こちらで観られます
こちらは真っ赤な部屋を背景に、裸婦がベッドで横たわり頭の後ろに腕を回している様子が描かれた作品です。手前には皿に乗った洋梨のような果実もあって、全体的にセザンヌ風の作風のように見えます。解説によると、マネの「オランピア」やティツィアーノの「ウルビーノのビーナス」からも影響を受けているようです。濃密な色彩ですが、裸婦の体が一際目を引く色の配置も面白く感じられました。
13 モイーズ・キスリング 「サン=トロペでの昼寝(キスリングとルネ)」 ★こちらで観られます
こちらは南仏の庭で後の奥さんと過ごす画家自身が描かれた作品です。午睡のテーマや保養地の情景はルノワールやボナール、マティスらが好んで描いた画題で、彼らも南仏に住んでいたこともあります。キュビスム的な画風で色とりどりに描かれていて、対比的な色彩の使い方はフォーヴィスムからの影響のようでした。明るく穏やかな雰囲気で、夕日が郷愁を誘う光景です。
55 モイーズ・キスリング 「ベル・ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)」 ★こちらで観られます
こちらは後に映画界やジャーナリズムで活躍した女性の20歳頃の姿を描いた肖像です。背景はアンリ・ルソーのような南国風というかちょっと不思議な葉っぱで、女性のドレスは黄色・緑・赤のチェック柄(伊勢丹の包みたいなw)となっていて背景に映えます 手には純粋・純血を表す百合を持っていて清廉な感じかな。若干つまらなそうな顔をしているのが気になりますが、大型ですらりとした等身が優美でした。
続いて2階の展示です。
68 モイーズ・キスリング 「赤い長椅子の裸婦」
こちら今回の展示でも特に見どころとなる作品で、ピンクっぽい長椅子に横たわり、右腕を背中のほうに回している裸婦が描かれています。こちらを見る目は艶めかしくミステリアスで、白く透けるような肌も滑らかで色気を感じます。よく観ると腰の辺りは異様に太くなっているのですが、これはドミニク・アングルからの影響らしく、全体的に引き伸ばしたような誇張された姿となっています。それでも写実性は高めで、非常に魅力的な裸婦像となっていました。
<第1部 1910-1940:キスリング、エコール・ド・パリの主役>
<第1部 セザンヌへの傾倒とキュビスムの影響>
この章は2つの節に分かれているようですが、境目がよく分かりませんでしたので合わせてご紹介。キスリングは1910年にパリに着き、19歳の頃にモディリアーニやピカソ、ブラックらと親交を結び、その2年後にはスーティンとも出会っています。初期はセザンヌやキュビスムに傾倒していたようで、特にセザンヌっぽさは端々に観ることができます。ここにはそうした初期の頃から次第に自分の作風を見出していく様子が伺える作品が並んでいました。
02 モイーズ・キスリング 「水差しと果物のある静物」
こちらは林檎や洋梨といった果物と水差しが並ぶ静物で、モチーフから色使いまでセザンヌそのものと言った感じですw 手前のナプキンと林檎などもその研究の様子が観られ、相当に傾倒していたのが伺えました。
04 モイーズ・キスリング 「ルシヨンの風景(セレのジャン・サリ橋)」
こちらは縦長の画面に家々が立ち並ぶS字の坂道を描いた作品です。幾何学的なリズムがあって こちらも色彩や構成はセザンヌの風景画を思わせます。やや重めの色調で、ゴーギャンからの影響もあるようです。まだこの頃はキスリングの個性は感じられませんが、キスリングの解釈も入ってきているように思えました。
11 モイーズ・キスリング 「レオポルド・ズボロフスキーの肖像」
こちらは親友のモディリアーニの画商だった人物の肖像で、椅子に座って腕組みして足も組んでいる様子が描かれています。何だか痩せていて、足とかひょろっとした感じに見えるかな。アトリエに対しても小さめなので、ぽつんとした印象を受けました。さっきの裸婦とえらく画風が違って見える作品です。
この先の殿下居間は写真とパネルが並んでいました。セレ、サン=トロペ、サナリー=シュル・メール、カーニュ=シュル・メールなどにゆかりがあるようです。また、キスリングの仲間に関しても紹介されていて、モンマルトルの洗濯船やモンパルナスのラ・リューシュの写真もありました。日本の藤田嗣治とも深い親交があったことなども書かれていました。
参考記事:
【番外編 フランス旅行】 パリ モンマルトル界隈
【清春芸術村】の写真 前編 (山梨 北杜編)
29 モイーズ・キスリング 「北イタリア、オルタ風景」
こちらは湖と山を望む風景で、手前には家々が連なる坂道が描かれています。建物が織りなす幾何学的な構成と 背景へと目を誘導する構図が面白く、色の取り合わせもリズムが感じられます。割と軽めの色彩で全体的に調和した風景画となっていました。
この少し前には松岡美術館の「ブルターニュの女」もありました。
54 モイーズ・キスリング 「座る若い裸婦」
こちらは裸婦の上半身を描いた作品で、肉感的な体つきとフランス人形のような顔をしています。1930年代の暗い時代を思わせるような憂いを帯びた表情で、陰影もしっかりつけられています。ピカソの新古典主義の時代ほどではないですが、古典に立ち戻っているようにも思えるかな。解説によると、この作品でもセザンヌに倣って手を粗描きのまま未完成にして、顔の印象を際立たせているのだとか。それでもだいぶキスリングの個性が出てきたように感じられました。
この辺にも松岡美術館の「シルヴィー嬢」がありました。ご近所の松岡美術館が大活躍ですw
参考記事:松岡コレクション ― エコール・ド・パリを中心に (松岡美術館)
47 モイーズ・キスリング 「緑色のスカートの女性」
こちらは白いブラウスと緑のスカートの女性が地面に座っている様子が描かれています。ツヤのある黒い髪と赤い首飾りがアクセントとなっていて、色が強く感じられるかな。微笑んで親しげな様子で、異国情緒ある雰囲気です。解説によるとオランダ旅行に行った際に描いたと思われるのだとか。この頃になるとキスリング独自のスタイルとなっているように思えました。
51 モイーズ・キスリング 「ジプシーの女」
こちらは褐色の肌に黒髪のジプシーの女性の上半身を描いた作品で、他に比べてやや写実要素が高めの画風となっているように思えます。強い目をしていて明暗も強いこともあって神秘的な印象を受ける一方、やや肩から下が異様に広いようにも思えました。
73 モイーズ・キスリング 「花」
こちらは花瓶に様々な花が入っている様子を描いた作品です。花が正面を向いているようなのが多く、アンドレ・ボーシャン等の素朴派の作品を彷彿とするかな。デフォルメ具合が面白く、筆跡が残っているのも大胆に思える作品でした。
71 モイーズ・キスリング 「長椅子の裸婦」
こちらは緑の長椅子に横たわり、左手を頭の後ろにまわしている裸婦が描かれています。非常に滑らかな色彩と緩やかな曲線のハーモニーが美しく、大型の画面と相まってここまで観た中でも指折りの傑作です。解説によるとモンパルナスの画家たちがこぞってモデルにしたキキに似ているとのことでした。
この隣にはモンパルナスのキキを描いた作品もありました。2人はカフェ「ラ・ロトンド」で出会ったのだとか。
参考記事:【番外編 フランス旅行】 パリ市街の写真
62 モイーズ・キスリング 「トゥーロンの港」
こちらは青空と海を大きく取った港の光景で、海には黒い煙を吐く船が無数に停泊しています。キスリングには珍しい画題で、サナリー=シュル・メールに家を建てた年に描いたそうです。青が多く、同じ方向に流れる煙で風の流れも感じられ爽やかな光景となっていました。
この隣にはユダヤ系であるためにナチスに追われ、死刑宣告をされた頃に描いた「マルセイユの港」という作品もありました。アメリカに亡命する前に描いたようですが、そうとは思えないくらいの爽やかな作品です。
<第2部 1941-1946:アメリカ亡命時代>
続いてはアメリカに亡命していた戦中・戦後の頃のコーナーです。先述の通りユダヤ系で反ナチスの活動をしていたこともあり、死刑宣告をされアメリカに亡命した頃の作品が数点並んでいました。
78 モイーズ・キスリング 「ブルターニュの女」
こちらは黒い服と白いレースを頭に被った女性の肖像で、これはブルターニュの伝統的な衣装のようです。やや横向きの姿となっていて、目は憂鬱そうでこの時代の心情を表しているようにも思えます。水彩かと思うような軽やかな色彩も特徴的でした。
この近くにも松岡美術館の「グレシー城の庭園」がありました。あれはアメリカ亡命時代の作品だったんですね…
<第3部 1946-1953:フランスへの帰還と南仏時代>
最後は亡命からフランスへ帰還した晩年のコーナーです。晩年はサナリーに住みつつパリにアトリエを持っていたようで、パリで行った展覧会では戦前の輝きを取り戻し称賛されたようです。
92 モイーズ・キスリング 「果物のある静物」
こちらはテーブルの上に置かれた林檎・レモン・バナナ・パイナップルなど様々な果物の静物です。テーブルの手前にそれが反射して写っていてツヤツヤした質感を感じます。果物もツヤがあって瑞々しいかな。全体的にキュビスム的な構図となっているのも回帰のようで面白く思えました。
ということで、キスリングの傑作の数々を観ることができました。特に女性像は流石で、それだけでも観た甲斐がありました。人気の割に貴重な機会なので図録も買って満足です。キスリングはエコール・ド・パリを語る上で欠かせない存在ですので、洋画好きの方にオススメの展示です。

【展覧名】
キスリング展 エコール・ド・パリの夢
【公式サイト】
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/190420-0707_kisling.html
【会場】東京都庭園美術館
【最寄】白金台駅・目黒駅
【会期】2019年4月20日(土)~7月7日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00s分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構お客さんが多く、会場が狭くなっている所では若干の混雑感もありましたが概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は「エコール・ド・パリ」と呼ばれるフランス以外の国の画家が活躍していた頃を代表する画家であるモイーズ・キスリングの個展となっています。これだけまとまった展示は日本で12年ぶりとのことなので、恐らく府中市美術館で観た展示以来だと思います。若干、構成が分かりづらいものの、個性的で華やかな作品が60点ほど並んでいましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<序 キスリングとアール・デコの時代>
まずはこの美術館特有のアールデコの部屋の中でキスリングの名品を観るというコーナーです。エコール・ド・パリとアール・デコの時代は重なる部分があり、キスリングは影響を受けたわけではなさそうですが、1920~30年代頃の取り合わせとなっていました。
58 モイーズ・キスリング 「花」
こちらは大型の作品で、花瓶にぎっしりと色とりどりの沢山の花が活けられている様子が描かれています。色彩が強く、花の形に沿って厚塗りしていて暗い背景に対して明るすぎじゃないか?というくらいの存在感です。暗い中から花が浮き上がるようにも感じられ、一際目を引く作品です。
69 モイーズ・キスリング 「アトリエの画家とモデル」
こちらはキスリングのアトリエの中を描いた作品で、右手前でイーゼルの前で絵筆を取るキスリング、左奥の窓辺にポーズを取る裸婦が描かれています。遠近感がちょっと奇妙でやけに裸婦が小さく見えるかな。部屋中にある絵や家具などは幾何学的・直線的でキュビスムに通じるものを感じました。色が淡く水彩のような軽やかさも特徴的な作品です。
57 モイーズ・キスリング 「花」
こちらは花瓶に入った紫の花や黄色い花(ミモザ?)などを描いた作品です。ミモザの部分は渦巻くように絵の具が厚塗りされていて、実際に花の部分が盛り上がって見えます。それが離れて観ると立体感があって面白く感じました。キスリングの作品は実物を観ないと分からない要素がありますね。
17 モイーズ・キスリング 「赤い長椅子に横たわる裸婦」 ★こちらで観られます
こちらは真っ赤な部屋を背景に、裸婦がベッドで横たわり頭の後ろに腕を回している様子が描かれた作品です。手前には皿に乗った洋梨のような果実もあって、全体的にセザンヌ風の作風のように見えます。解説によると、マネの「オランピア」やティツィアーノの「ウルビーノのビーナス」からも影響を受けているようです。濃密な色彩ですが、裸婦の体が一際目を引く色の配置も面白く感じられました。
13 モイーズ・キスリング 「サン=トロペでの昼寝(キスリングとルネ)」 ★こちらで観られます
こちらは南仏の庭で後の奥さんと過ごす画家自身が描かれた作品です。午睡のテーマや保養地の情景はルノワールやボナール、マティスらが好んで描いた画題で、彼らも南仏に住んでいたこともあります。キュビスム的な画風で色とりどりに描かれていて、対比的な色彩の使い方はフォーヴィスムからの影響のようでした。明るく穏やかな雰囲気で、夕日が郷愁を誘う光景です。
55 モイーズ・キスリング 「ベル・ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)」 ★こちらで観られます
こちらは後に映画界やジャーナリズムで活躍した女性の20歳頃の姿を描いた肖像です。背景はアンリ・ルソーのような南国風というかちょっと不思議な葉っぱで、女性のドレスは黄色・緑・赤のチェック柄(伊勢丹の包みたいなw)となっていて背景に映えます 手には純粋・純血を表す百合を持っていて清廉な感じかな。若干つまらなそうな顔をしているのが気になりますが、大型ですらりとした等身が優美でした。
続いて2階の展示です。
68 モイーズ・キスリング 「赤い長椅子の裸婦」
こちら今回の展示でも特に見どころとなる作品で、ピンクっぽい長椅子に横たわり、右腕を背中のほうに回している裸婦が描かれています。こちらを見る目は艶めかしくミステリアスで、白く透けるような肌も滑らかで色気を感じます。よく観ると腰の辺りは異様に太くなっているのですが、これはドミニク・アングルからの影響らしく、全体的に引き伸ばしたような誇張された姿となっています。それでも写実性は高めで、非常に魅力的な裸婦像となっていました。
<第1部 1910-1940:キスリング、エコール・ド・パリの主役>
<第1部 セザンヌへの傾倒とキュビスムの影響>
この章は2つの節に分かれているようですが、境目がよく分かりませんでしたので合わせてご紹介。キスリングは1910年にパリに着き、19歳の頃にモディリアーニやピカソ、ブラックらと親交を結び、その2年後にはスーティンとも出会っています。初期はセザンヌやキュビスムに傾倒していたようで、特にセザンヌっぽさは端々に観ることができます。ここにはそうした初期の頃から次第に自分の作風を見出していく様子が伺える作品が並んでいました。
02 モイーズ・キスリング 「水差しと果物のある静物」
こちらは林檎や洋梨といった果物と水差しが並ぶ静物で、モチーフから色使いまでセザンヌそのものと言った感じですw 手前のナプキンと林檎などもその研究の様子が観られ、相当に傾倒していたのが伺えました。
04 モイーズ・キスリング 「ルシヨンの風景(セレのジャン・サリ橋)」
こちらは縦長の画面に家々が立ち並ぶS字の坂道を描いた作品です。幾何学的なリズムがあって こちらも色彩や構成はセザンヌの風景画を思わせます。やや重めの色調で、ゴーギャンからの影響もあるようです。まだこの頃はキスリングの個性は感じられませんが、キスリングの解釈も入ってきているように思えました。
11 モイーズ・キスリング 「レオポルド・ズボロフスキーの肖像」
こちらは親友のモディリアーニの画商だった人物の肖像で、椅子に座って腕組みして足も組んでいる様子が描かれています。何だか痩せていて、足とかひょろっとした感じに見えるかな。アトリエに対しても小さめなので、ぽつんとした印象を受けました。さっきの裸婦とえらく画風が違って見える作品です。
この先の殿下居間は写真とパネルが並んでいました。セレ、サン=トロペ、サナリー=シュル・メール、カーニュ=シュル・メールなどにゆかりがあるようです。また、キスリングの仲間に関しても紹介されていて、モンマルトルの洗濯船やモンパルナスのラ・リューシュの写真もありました。日本の藤田嗣治とも深い親交があったことなども書かれていました。
参考記事:
【番外編 フランス旅行】 パリ モンマルトル界隈
【清春芸術村】の写真 前編 (山梨 北杜編)
29 モイーズ・キスリング 「北イタリア、オルタ風景」
こちらは湖と山を望む風景で、手前には家々が連なる坂道が描かれています。建物が織りなす幾何学的な構成と 背景へと目を誘導する構図が面白く、色の取り合わせもリズムが感じられます。割と軽めの色彩で全体的に調和した風景画となっていました。
この少し前には松岡美術館の「ブルターニュの女」もありました。
54 モイーズ・キスリング 「座る若い裸婦」
こちらは裸婦の上半身を描いた作品で、肉感的な体つきとフランス人形のような顔をしています。1930年代の暗い時代を思わせるような憂いを帯びた表情で、陰影もしっかりつけられています。ピカソの新古典主義の時代ほどではないですが、古典に立ち戻っているようにも思えるかな。解説によると、この作品でもセザンヌに倣って手を粗描きのまま未完成にして、顔の印象を際立たせているのだとか。それでもだいぶキスリングの個性が出てきたように感じられました。
この辺にも松岡美術館の「シルヴィー嬢」がありました。ご近所の松岡美術館が大活躍ですw
参考記事:松岡コレクション ― エコール・ド・パリを中心に (松岡美術館)
47 モイーズ・キスリング 「緑色のスカートの女性」
こちらは白いブラウスと緑のスカートの女性が地面に座っている様子が描かれています。ツヤのある黒い髪と赤い首飾りがアクセントとなっていて、色が強く感じられるかな。微笑んで親しげな様子で、異国情緒ある雰囲気です。解説によるとオランダ旅行に行った際に描いたと思われるのだとか。この頃になるとキスリング独自のスタイルとなっているように思えました。
51 モイーズ・キスリング 「ジプシーの女」
こちらは褐色の肌に黒髪のジプシーの女性の上半身を描いた作品で、他に比べてやや写実要素が高めの画風となっているように思えます。強い目をしていて明暗も強いこともあって神秘的な印象を受ける一方、やや肩から下が異様に広いようにも思えました。
73 モイーズ・キスリング 「花」
こちらは花瓶に様々な花が入っている様子を描いた作品です。花が正面を向いているようなのが多く、アンドレ・ボーシャン等の素朴派の作品を彷彿とするかな。デフォルメ具合が面白く、筆跡が残っているのも大胆に思える作品でした。
71 モイーズ・キスリング 「長椅子の裸婦」
こちらは緑の長椅子に横たわり、左手を頭の後ろにまわしている裸婦が描かれています。非常に滑らかな色彩と緩やかな曲線のハーモニーが美しく、大型の画面と相まってここまで観た中でも指折りの傑作です。解説によるとモンパルナスの画家たちがこぞってモデルにしたキキに似ているとのことでした。
この隣にはモンパルナスのキキを描いた作品もありました。2人はカフェ「ラ・ロトンド」で出会ったのだとか。
参考記事:【番外編 フランス旅行】 パリ市街の写真
62 モイーズ・キスリング 「トゥーロンの港」
こちらは青空と海を大きく取った港の光景で、海には黒い煙を吐く船が無数に停泊しています。キスリングには珍しい画題で、サナリー=シュル・メールに家を建てた年に描いたそうです。青が多く、同じ方向に流れる煙で風の流れも感じられ爽やかな光景となっていました。
この隣にはユダヤ系であるためにナチスに追われ、死刑宣告をされた頃に描いた「マルセイユの港」という作品もありました。アメリカに亡命する前に描いたようですが、そうとは思えないくらいの爽やかな作品です。
<第2部 1941-1946:アメリカ亡命時代>
続いてはアメリカに亡命していた戦中・戦後の頃のコーナーです。先述の通りユダヤ系で反ナチスの活動をしていたこともあり、死刑宣告をされアメリカに亡命した頃の作品が数点並んでいました。
78 モイーズ・キスリング 「ブルターニュの女」
こちらは黒い服と白いレースを頭に被った女性の肖像で、これはブルターニュの伝統的な衣装のようです。やや横向きの姿となっていて、目は憂鬱そうでこの時代の心情を表しているようにも思えます。水彩かと思うような軽やかな色彩も特徴的でした。
この近くにも松岡美術館の「グレシー城の庭園」がありました。あれはアメリカ亡命時代の作品だったんですね…
<第3部 1946-1953:フランスへの帰還と南仏時代>
最後は亡命からフランスへ帰還した晩年のコーナーです。晩年はサナリーに住みつつパリにアトリエを持っていたようで、パリで行った展覧会では戦前の輝きを取り戻し称賛されたようです。
92 モイーズ・キスリング 「果物のある静物」
こちらはテーブルの上に置かれた林檎・レモン・バナナ・パイナップルなど様々な果物の静物です。テーブルの手前にそれが反射して写っていてツヤツヤした質感を感じます。果物もツヤがあって瑞々しいかな。全体的にキュビスム的な構図となっているのも回帰のようで面白く思えました。
ということで、キスリングの傑作の数々を観ることができました。特に女性像は流石で、それだけでも観た甲斐がありました。人気の割に貴重な機会なので図録も買って満足です。キスリングはエコール・ド・パリを語る上で欠かせない存在ですので、洋画好きの方にオススメの展示です。
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今日も写真多めです。前回ご紹介した松岡美術館の展示を観た後、隣の部屋で同時開催の「松岡コレクション 元気な文様たち 五彩・青花を中心に」という展示も観てきました。こちらも撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
松岡コレクション 元気な文様たち 五彩・青花を中心に
【公式サイト】
http://www.matsuoka-museum.jp/exhibition/exhibition.html
【会場】松岡美術館
【最寄】白金台駅
【会期】2019年2月20日(水)~6月1日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は松岡美術館の中国磁器のコレクション展で、明時代の青花と五彩を中心に紹介する内容となっています。青花は元時代に完成された技法ですが、この時代にさらに素材・技術の度をましたようです。明時代中期になると白磁の美しさを活かした端正な文様構成と精緻な作りは緊張感を欠いていったようですが、代わりに自由闊達な筆運びや勢いが加わりエネルギッシュな作風へと展開したようです。この展示も撮影可能となっていましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
「青花双龍文水注」 明時代 景徳鎮窯

白地に青が映える青花らしい作品。絵柄だけでなく水注の形もS字の口などが優美でした。
「青花龍文瓢形瓶」 明時代 景徳鎮窯

こちらは瓢箪型の瓶。側面にも規則正しく精緻に紋様が施されています。この時期に大変好まれた形らしく、いくつか同じような作品がありました。
「五彩龍文大壺」 明時代 景徳鎮窯

こちらは空白の縦溝で6面に区切って模様を付けた作品です。色鮮やかで青花にはない濃厚な雰囲気に思えます。つまみにいるのは麒麟とのことでした。
「青花蓮池水禽文壺」 明時代 景徳鎮窯

水辺の生き物達を描いた壺。パターン化されているようにも見えますが、揺らめくような葉っぱなどが風流に思えました。
「五彩魚藻文壺」 明時代 景徳鎮窯

まさに五彩と言えるカラフルな色彩感覚が軽やかです。金魚のオレンジ色は黄色の上に薄く赤を塗って、さらに鱗などを赤で線描しているのだとか。高い技術が使われた作品です。
「五彩獅子唐草文壺」 明時代 景徳鎮窯

こちらは重厚な色彩と精緻な紋様となっていました。ちょっと間抜けな顔をした獅子が可愛いw 獅子と牡丹はセットで描かれることが多いです。
「青花飛龍霊獣文合子」 明時代 景徳鎮窯

龍を中心に、側面に沢山の動物が描かれた合子。麒麟などの霊獣の姿もあるかな。解説によると龍のポーズにいまいち締まりがなく意味不明な図様もあるとのことですが、格式張らない柔軟な発想でユニークな紋様となっているようでした。
「五彩金襴手人物図仙さん瓶」 明時代 景徳鎮窯

金襴手という割に金彩が無いですが、これは摩耗してしまったようです。高士と従者を描いた作例は珍しいそうで、なんだか緩い漫画のような感じが可愛らしかったですw
「黄地紅彩龍文壺」 明時代 景徳鎮窯

こちらは黄色と赤の色が非常に強く感じられます。龍の目がくりっとしていてトボけた感じが可愛かったw
「五彩霊芝文方合」 明時代 景徳鎮窯

この植物は霊芝らしく色とりどりで白に色が映えています。蓋に小さい穴があるのですが、これは温かい料理の蒸気がこもらないためのようです。中に何を入れて食べたのか気になりますねw
「五彩龍鳳文合子」 明時代 景徳鎮窯

S字の区切りがあり、中の模様が龍と鳳凰は区切りごとに交互に描かれているようです。どこか ゆるキャラみたいな龍とかいてのびのびした雰囲気に思えました。
「五彩魚藻文柑子口瓶」 明時代 景徳鎮窯

魚は余と同音のため豊かな生活に繋がる吉祥、海老は難所を乗り越える吉祥、蟹は官吏試験の上位3名の「一甲」を連想させる吉祥の紋様だそうです。自由な雰囲気で色のバランスも良く、この展示の中でも特に気に入りました。
「五彩百蝠文壺」 明時代 景徳鎮窯

蝙蝠の蝠は福と発音が似ているので吉祥の動物とされています。下の方は「福は東海の如く」という成句を表しているそうで、いずれもおめでたい図様です。こちらも色彩のリズムと蝙蝠の軽やかさが面白い作品でした。
「五彩人物図面盆」 明時代 景徳鎮窯

こちらは側面に様々な場面が描かれた作品。何の題材か分かりませんが絵巻のように連なっているのが面白く感じました。
「五彩神仙図壺」 明時代 景徳鎮窯

こちらも人物を表した作品。ちょっとゆるめですが、神仙ということなので仙人などでしょうか。大らかな雰囲気がありました。
「五彩帆船図大盤」 明時代 しょう州窯

こちらは官窯の景徳鎮を真似た地方の窯による作品。しかしひと目で景徳鎮とは異なる色彩感覚になっているのが分かります。船などのモチーフも違っているし、景徳鎮とは異なる個性を感じました。
「柿釉双龍文大盤」 明時代 しょう州窯

最後にこちらは茶色地に白の紋様というこれまで観た作品とは大きく異なる感性の作品。抽象画のようなデザインもモダンに感じられました。
ということで、明時代の多様な磁器を観ることができました。特に五彩は色彩豊かで華があります。この展示は常設の一部なので、もし松岡美術館に行くのであれば、こちらにも寄ることをおすすめします。
おまけ:
この美術館はいつもは ぐるっとパスの提示で入れるのですが、2019年度はぐるっとパスに参加していないようでした。6月から長期休館に入るからかな。

【展覧名】
松岡コレクション 元気な文様たち 五彩・青花を中心に
【公式サイト】
http://www.matsuoka-museum.jp/exhibition/exhibition.html
【会場】松岡美術館
【最寄】白金台駅
【会期】2019年2月20日(水)~6月1日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間20分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は松岡美術館の中国磁器のコレクション展で、明時代の青花と五彩を中心に紹介する内容となっています。青花は元時代に完成された技法ですが、この時代にさらに素材・技術の度をましたようです。明時代中期になると白磁の美しさを活かした端正な文様構成と精緻な作りは緊張感を欠いていったようですが、代わりに自由闊達な筆運びや勢いが加わりエネルギッシュな作風へと展開したようです。この展示も撮影可能となっていましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
「青花双龍文水注」 明時代 景徳鎮窯

白地に青が映える青花らしい作品。絵柄だけでなく水注の形もS字の口などが優美でした。
「青花龍文瓢形瓶」 明時代 景徳鎮窯

こちらは瓢箪型の瓶。側面にも規則正しく精緻に紋様が施されています。この時期に大変好まれた形らしく、いくつか同じような作品がありました。
「五彩龍文大壺」 明時代 景徳鎮窯

こちらは空白の縦溝で6面に区切って模様を付けた作品です。色鮮やかで青花にはない濃厚な雰囲気に思えます。つまみにいるのは麒麟とのことでした。
「青花蓮池水禽文壺」 明時代 景徳鎮窯

水辺の生き物達を描いた壺。パターン化されているようにも見えますが、揺らめくような葉っぱなどが風流に思えました。
「五彩魚藻文壺」 明時代 景徳鎮窯

まさに五彩と言えるカラフルな色彩感覚が軽やかです。金魚のオレンジ色は黄色の上に薄く赤を塗って、さらに鱗などを赤で線描しているのだとか。高い技術が使われた作品です。
「五彩獅子唐草文壺」 明時代 景徳鎮窯

こちらは重厚な色彩と精緻な紋様となっていました。ちょっと間抜けな顔をした獅子が可愛いw 獅子と牡丹はセットで描かれることが多いです。
「青花飛龍霊獣文合子」 明時代 景徳鎮窯

龍を中心に、側面に沢山の動物が描かれた合子。麒麟などの霊獣の姿もあるかな。解説によると龍のポーズにいまいち締まりがなく意味不明な図様もあるとのことですが、格式張らない柔軟な発想でユニークな紋様となっているようでした。
「五彩金襴手人物図仙さん瓶」 明時代 景徳鎮窯

金襴手という割に金彩が無いですが、これは摩耗してしまったようです。高士と従者を描いた作例は珍しいそうで、なんだか緩い漫画のような感じが可愛らしかったですw
「黄地紅彩龍文壺」 明時代 景徳鎮窯

こちらは黄色と赤の色が非常に強く感じられます。龍の目がくりっとしていてトボけた感じが可愛かったw
「五彩霊芝文方合」 明時代 景徳鎮窯

この植物は霊芝らしく色とりどりで白に色が映えています。蓋に小さい穴があるのですが、これは温かい料理の蒸気がこもらないためのようです。中に何を入れて食べたのか気になりますねw
「五彩龍鳳文合子」 明時代 景徳鎮窯

S字の区切りがあり、中の模様が龍と鳳凰は区切りごとに交互に描かれているようです。どこか ゆるキャラみたいな龍とかいてのびのびした雰囲気に思えました。
「五彩魚藻文柑子口瓶」 明時代 景徳鎮窯

魚は余と同音のため豊かな生活に繋がる吉祥、海老は難所を乗り越える吉祥、蟹は官吏試験の上位3名の「一甲」を連想させる吉祥の紋様だそうです。自由な雰囲気で色のバランスも良く、この展示の中でも特に気に入りました。
「五彩百蝠文壺」 明時代 景徳鎮窯

蝙蝠の蝠は福と発音が似ているので吉祥の動物とされています。下の方は「福は東海の如く」という成句を表しているそうで、いずれもおめでたい図様です。こちらも色彩のリズムと蝙蝠の軽やかさが面白い作品でした。
「五彩人物図面盆」 明時代 景徳鎮窯

こちらは側面に様々な場面が描かれた作品。何の題材か分かりませんが絵巻のように連なっているのが面白く感じました。
「五彩神仙図壺」 明時代 景徳鎮窯

こちらも人物を表した作品。ちょっとゆるめですが、神仙ということなので仙人などでしょうか。大らかな雰囲気がありました。
「五彩帆船図大盤」 明時代 しょう州窯

こちらは官窯の景徳鎮を真似た地方の窯による作品。しかしひと目で景徳鎮とは異なる色彩感覚になっているのが分かります。船などのモチーフも違っているし、景徳鎮とは異なる個性を感じました。
「柿釉双龍文大盤」 明時代 しょう州窯

最後にこちらは茶色地に白の紋様というこれまで観た作品とは大きく異なる感性の作品。抽象画のようなデザインもモダンに感じられました。
ということで、明時代の多様な磁器を観ることができました。特に五彩は色彩豊かで華があります。この展示は常設の一部なので、もし松岡美術館に行くのであれば、こちらにも寄ることをおすすめします。
おまけ:
この美術館はいつもは ぐるっとパスの提示で入れるのですが、2019年度はぐるっとパスに参加していないようでした。6月から長期休館に入るからかな。
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今日も写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、タクシーで松岡美術館に移動して2つのミニ展示を観てきました。まずは「館蔵 日本画 伝統芸能と音色の響き」をご紹介していこうと思います。なお、この展示は撮影可能となっていましたので写真を使って参ります。

【展覧名】
館蔵 日本画 伝統芸能と音色の響き
【公式サイト】
http://www.matsuoka-museum.jp/exhibition/exhibition.html
【会場】松岡美術館
【最寄】白金台駅
【会期】2019年2月20日(水)~6月1日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は松岡美術館の所蔵品の中から伝統芸能をテーマにした日本画が並ぶ内容となっています。主に近現代の絵画が中心で、再興院展関連の画家のコレクションが多かったかな。特に章分けなども無かったので、簡単に気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。
「大原御幸図」

こちらは作者未詳の作品で、琵琶を伴奏に語る『平家物語』の『灌頂巻』からの画題だそうです。建礼門院の晩年を題材としていて平曲200余曲の中でも特に秘曲とされるのだとか。金屏風に色鮮やかで雅な雰囲気がありました。
池田蕉園 「桜舟」

旧姓表記だと榊原蕉園。水野年方の弟子で、同門には夫の池田輝方や鏑木清方がいる女流画家です。この作品は六曲一双のうちの右隻で、左隻は夫が秋を題材に描いたものとなっています。女性が琵琶を奏でている様子が描かれ、これも平曲を弾いているものと考えられるようです。全体的に鏑木清方に通じるような清廉で風流な雰囲気があり、かなり見ごたえがありました。31歳の若さで亡くなってしまいましたが、長生きしていればもっと多くの傑作が観られたかもしれませんね…。
上村松園 「藤娘之図」

こちらは大津絵(江戸時代のお土産物のゆるい感じの絵)をルーツにした作品で、歌舞伎にも大津絵の中から藤娘が抜け出して踊るという舞踊があるそうです。このポーズも大津絵に倣っているようで軽やかで爽やかな雰囲気となっていました。
宮前秀樹 「姫(初菊)」

こちらは『絵本太巧記』という羽柴秀吉が明智光秀を討つまでの13日間を1日1段で構成する歌舞伎を描いたものだそうです。ここでは10段目の「尼崎」で初菊が光秀の息子 十太郎と祝言をあげるシーンとなっているようで、真っ赤な衣装が目を引きます。ちょっと平面的で顔つきは男っぽい感じがするかもw 三角となる構図が存在感を出していました。
宮前秀樹 「怨映」

こちらは安珍・清姫伝説を元にした『道成寺』を題材にした作品。安珍を想い追う清姫が日高川で蛇体に変化する直前の様子らしく、水面には既に異形が写っています。清姫の周りもオーラのようなものがあって髪が逆立ち異様なムードが漂っていました。
宮前秀樹 「置かれた人形」

こちらは文楽の人形を描いたものらしく、一番上と一番下は既婚女性の「老女形」、残り3体は「娘」だそうです。目を見開いてだらりと寝ている様子が人形っぽさを感じさせます。人物像のようでもあって不思議な光景でした。
伊東深水 「仕舞熊野」

こちらは平宗盛の愛妾 熊野が病気の母を見舞う為に東国への帰郷を請うが許されず、舞の中でその心情を詠んで帰国が許されたという平家物語を題材にした世阿弥の謡曲を舞っている様子です。平面的で現代的な雰囲気があり、特に顔に伊東深水の個性が感じられました。
鎌倉秀雄 「奏」

こちらは日本画にしては珍しいエジプト風の作品。異国情緒がありつつ不思議と日本画の表現との調和を感じました。
松室加世子 「竪琴」

こちらは桃山時代のキリシタンがハープを弾く様子で、空想で描いた場面のようです。背景も西洋っぽいし、取り合わせが面白く思えます。キリシタンのその後を考えると、静かな中に哀しさもあるように思えました。
大森運夫 「伝承・浄夜 毛越寺」

こちらは平泉の毛越寺で毎年1月20日に行われる二十日夜祭の「延年の舞」を描いたもの。大画面に大胆な構図で描かれていて、動きのある力強い雰囲気となっていました。
最後に、松岡美術館はこの展示が終わった次の日の2019年6月2日から2021年10月4日まで休館となるようです。

設備点検と所蔵品の修復調査の為のようです。しばしのお別れですね。
ということで、このテーマでこれだけコレクションがあるのかとちょっと驚きました。今まで観たことが無い作品も多く、松岡美術館のコレクションの豊富さに感心させられます。この展示の後に約2年半という長い休館となるので、今のうちに「猫の給仕頭」やエジプトの棺に挨拶しておくのも良いかもしれません。

【展覧名】
館蔵 日本画 伝統芸能と音色の響き
【公式サイト】
http://www.matsuoka-museum.jp/exhibition/exhibition.html
【会場】松岡美術館
【最寄】白金台駅
【会期】2019年2月20日(水)~6月1日(土)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は松岡美術館の所蔵品の中から伝統芸能をテーマにした日本画が並ぶ内容となっています。主に近現代の絵画が中心で、再興院展関連の画家のコレクションが多かったかな。特に章分けなども無かったので、簡単に気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。
「大原御幸図」

こちらは作者未詳の作品で、琵琶を伴奏に語る『平家物語』の『灌頂巻』からの画題だそうです。建礼門院の晩年を題材としていて平曲200余曲の中でも特に秘曲とされるのだとか。金屏風に色鮮やかで雅な雰囲気がありました。
池田蕉園 「桜舟」

旧姓表記だと榊原蕉園。水野年方の弟子で、同門には夫の池田輝方や鏑木清方がいる女流画家です。この作品は六曲一双のうちの右隻で、左隻は夫が秋を題材に描いたものとなっています。女性が琵琶を奏でている様子が描かれ、これも平曲を弾いているものと考えられるようです。全体的に鏑木清方に通じるような清廉で風流な雰囲気があり、かなり見ごたえがありました。31歳の若さで亡くなってしまいましたが、長生きしていればもっと多くの傑作が観られたかもしれませんね…。
上村松園 「藤娘之図」

こちらは大津絵(江戸時代のお土産物のゆるい感じの絵)をルーツにした作品で、歌舞伎にも大津絵の中から藤娘が抜け出して踊るという舞踊があるそうです。このポーズも大津絵に倣っているようで軽やかで爽やかな雰囲気となっていました。
宮前秀樹 「姫(初菊)」

こちらは『絵本太巧記』という羽柴秀吉が明智光秀を討つまでの13日間を1日1段で構成する歌舞伎を描いたものだそうです。ここでは10段目の「尼崎」で初菊が光秀の息子 十太郎と祝言をあげるシーンとなっているようで、真っ赤な衣装が目を引きます。ちょっと平面的で顔つきは男っぽい感じがするかもw 三角となる構図が存在感を出していました。
宮前秀樹 「怨映」

こちらは安珍・清姫伝説を元にした『道成寺』を題材にした作品。安珍を想い追う清姫が日高川で蛇体に変化する直前の様子らしく、水面には既に異形が写っています。清姫の周りもオーラのようなものがあって髪が逆立ち異様なムードが漂っていました。
宮前秀樹 「置かれた人形」

こちらは文楽の人形を描いたものらしく、一番上と一番下は既婚女性の「老女形」、残り3体は「娘」だそうです。目を見開いてだらりと寝ている様子が人形っぽさを感じさせます。人物像のようでもあって不思議な光景でした。
伊東深水 「仕舞熊野」

こちらは平宗盛の愛妾 熊野が病気の母を見舞う為に東国への帰郷を請うが許されず、舞の中でその心情を詠んで帰国が許されたという平家物語を題材にした世阿弥の謡曲を舞っている様子です。平面的で現代的な雰囲気があり、特に顔に伊東深水の個性が感じられました。
鎌倉秀雄 「奏」

こちらは日本画にしては珍しいエジプト風の作品。異国情緒がありつつ不思議と日本画の表現との調和を感じました。
松室加世子 「竪琴」

こちらは桃山時代のキリシタンがハープを弾く様子で、空想で描いた場面のようです。背景も西洋っぽいし、取り合わせが面白く思えます。キリシタンのその後を考えると、静かな中に哀しさもあるように思えました。
大森運夫 「伝承・浄夜 毛越寺」

こちらは平泉の毛越寺で毎年1月20日に行われる二十日夜祭の「延年の舞」を描いたもの。大画面に大胆な構図で描かれていて、動きのある力強い雰囲気となっていました。
最後に、松岡美術館はこの展示が終わった次の日の2019年6月2日から2021年10月4日まで休館となるようです。

設備点検と所蔵品の修復調査の為のようです。しばしのお別れですね。
ということで、このテーマでこれだけコレクションがあるのかとちょっと驚きました。今まで観たことが無い作品も多く、松岡美術館のコレクションの豊富さに感心させられます。この展示の後に約2年半という長い休館となるので、今のうちに「猫の給仕頭」やエジプトの棺に挨拶しておくのも良いかもしれません。
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
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今日も写真多めで、前回に引き続き目黒の目黒区美術館の「京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて」についてです。後半も写真を使ってご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
→ 前編はこちら

【展覧名】
京都国立近代美術館所蔵
世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて
【公式サイト】
http://mmat.jp/exhibition/archive/2019/20190413-63.html
【会場】目黒区美術館
【最寄】目黒駅
【会期】2019年4月13日(土)~2019年6月9日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後編も各章ごとに気に入った作品を写真を使いながらご紹介していこうと思います。分離派やウィーンの美術の流れについては以前の記事などもご参照ください。
参考記事:同時期に開催の展示
クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想前編(東京都美術館)
クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想後編(東京都美術館)
ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 感想前編(国立新美術館)
ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 感想後編(国立新美術館)
世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 感想前編(目黒区美術館)
世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 感想後編(目黒区美術館)
参考記事:過去の展示
ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)
クリムト 黄金の騎士をめぐる物語 感想前編(宇都宮美術館)
クリムト 黄金の騎士をめぐる物語 感想後編(宇都宮美術館)
<2 新しいデザインの追求>
2章はそれまでにない新しいデザインの追求のコーナーです。産業革命で新しく台頭した市民階級は新しい製産工程に相応しいデザインを必要としたようで、こうした背景を元にクリムトやコロマン・モーザーといった新進気鋭の芸術家たちが過去の借り物でないデザインを提示していきました。
[1.図案集の隆盛]
ここは様々な図案集が並んでいました。
マルティン・ゲルラハ(編) 「アレゴリー、新シリーズ、著名現代芸術家によるオリジナルデザイン」

こちらは分離派の著名な作品の図案集。クリムトなども含めて華麗な図案が並んでいて見ごたえがあります。
カール・オットー・チェシュカ/マルティン・ゲルラハ(編) 『ビネット形式のアイデア大全[『ディ・クヴェレ(泉)』第1巻]』

こちらはアイデア集。神話的な図案が多いかな 中には不気味な作品もありました。
マックス・ベニルシュケ(著・画)『書籍装丁と平面模様』[『ディ・クヴェレ(泉)』第2巻]

こちらも図案集。アールヌーヴォー的なデフォルメが優美な雰囲気。
マックス・ベニルシュケ 「『書籍装丁と平面模様』[『ディ・クヴェレ(泉)』第2巻]のためのデザイン案」

ずらりと並んだ平面模様。様々なパターンがありアーツ・アンド・クラフツに通じるものを感じます。どれもリズミカルで面白い図案です。
ヨーゼフ・マリア・オルプリヒ 『オルプリヒ アイデア集』

こちらはアイデア集。甲殻類を図形のようなポーズで描いているのが面白い。こうしてデフォルメさせていったのかな?
ベルトルト・レフラー(編)「ディ・フレッヒェ(平面)-装飾デザイン集(新シリーズ)第2巻」

こちらも様々な図案集。左下のちょっと情けない顔したのがツボでしたw 画風も様々で、この時代のウィーンはまさに芸術の宝庫ですね。
[2.デザイン研究のプラットフォーム-ウィーン工芸学校とウィーン工房を中心]
デザイン創造の担い手を多く輩出したのがウィーン工芸学校で、そこで教えていたヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザーが中心となりウィーン工房が設立されました。ウィーン工房によって実際にデザインが製品化されて社会へと広がっていったようで、そこでは多くの女子学生や女性デザイナーも活躍していたのだとか。
オスカー・ココシュカ 「窓辺の少女[ウィーン工房絵葉書No.152]」

こちらは中世の木版のような感じです。国立新美術館の展示にもあったの『夢見る少年たち』に似た感じなので同じシリーズかな? 素朴さが心に残る作品です。
レオポルト・フォルストナー 「モザイク・デザイン案<サロメ>」

こちらはサロメを題材にした作品。この時代に流行ったファム・ファタール的な妖しさとなっていて、持っているのは洗礼者ヨハネの首です。色気と恐ろしさを感じる1枚です。
コロマン・モーザー 「踊り子 [ウィーン工房金工作品エンボスのためのデザイン]」

こちらは平面的でデザイン的な踊り子。割とアールヌーヴォーっぽいかな。独創的なポーズと曲線がそう感じさせるのかも。
コロマン・モーザー 「マーブル紙(山椒魚、球形)」

何かのマスコットみたいなサンショウウオ。オタマジャクシかと思いましたw デフォルメぶりが可愛い。
[3.オットー・ヴァーグナーとヨーゼフ・ホフマン そしてアドルフ・ロース]
続いては分離派に参加した建築家のコーナーです。彼らの多くはオットー・ヴァーグナーに学びんだそうで、その影響の様子や、弟子であるヨーゼフ・ホフマン、オットー・ヴァーグナーに学びながらも分離派に批判的だったアドルフ・ロースの作品などが並んでいました。
オットー・シェーンタール(編)『ウィーン造形芸術アカデミーにおけるオットー・ヴァーグナー顕彰年-学生プロジェクト・習作・素描作品集』

これは誰の建物家分かりませんが、近代的な要素と装飾性が目を引きました。中の様子も詳しく描いてあって創造しやすい。
ヨーゼフ・ホフマン 「ブロンシア・コラー=ピネルのための家具デザイン案」

こちらは家具のデザイン。直線の多いシンプルさが特徴かな。幾何学的な美しさがあります。
<3 版画復興とグラフィックの刷新>
続いては版画のコーナーです。この時代、写真が普及し 複製や記録を担っていた版画は自立した芸術としてのあり方を模索をしていたようで、日本の浮世絵ブームが起こると木版の復権の起爆剤となったそうです。日本に学んだ分離派のエミール・オルリークによって制作技法が伝えられたそうですが、日本と違って製作工程全てを芸術家ひとりが担って作っていたらしく、そうして作られた版画は美術雑誌や展覧会で広く紹介され、販売もされました。版画は幅広い社会階層の生活に芸術を行き渡らせるという目的実現に最も効果的な媒体だったとのことで、ここには多種多様な版画が並んでいました。
[1.木版画の復権]
こちらは木版のコーナーです。
ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユンクニッケル 「シェーンブルンのあずまや」

多色刷りで描写も緻密な版画です。黒を効果的に使っているのが洒落た雰囲気に思いました。
カール・モル(版画)/ヨーゼフ・ホフマン、ウィーン工房(装丁) 版画集「ベートーヴェンの家」

こちらはその場に訪れているようなリアルな構図が面白く感じました。ベートーヴェンの家とのことで、分離派はベートーヴェン好きですね。(礼賛の展覧会を開いたこともあります)
ルドルフ・カルヴァハ 「トリエステ港」

こちらは色彩豊かで構図も複雑な作品。ちょっとごちゃごちゃしていますが、港町の情感が伝わってきました。
フランツ・フォン・ツューロウ 「畑野」

こちらは単純化された畑が面白い作品。色もパターン化されて紋様的なリズムがありました。
[2.版画の新潮流]
続いては新しい潮流の版画のコーナーです。
エルンスト・シュテール 「山の湖」

これまでの版画に比べて一層に色を感じます。サイズも大きくて、これが版画なの?というくらい見事な作品でした。
ルイーズ・ボッセ 「庭」

こちらも油彩のような明るい色彩となっていました。画風もモダンに思えます。
[3.素描の魅力]
ここは素描に色をつけたような版画が並んでいました。
エドゥアルト・ステラ 「分離派風ライフスタイル」

分離派のデザインの家具に囲まれた生活が都会的に思えます。男性の顔が怖いのでどこか皮肉めいたものも感じますがw
<4 新しい生活>
最後は分離派が目指した芸術の普及についてのコーナーです。分離派は絵画や彫刻といった純粋芸術と、人々の生活とより直接的な関係を持つ応用芸術の違いを認めず、それらを総合した新たな芸術で生活と社会を刷新することを目指しました。そのため、装丁やポスターなど様々な分野でも多くの作品を残しています。ここにはそうした品々が並んでいました。
[1.日常生活とグラフィック・デザイン]
こちらはカレンダーやポスターなどのコーナー。
コロマン・モーザー 「月次絵」

色とりどりで美女たちが並ぶ様子が優美です。縦長の画面で月次で並べるというアイディアは日本の(特に琳派などが得意とする)12幅対の掛け軸のアイディアに似ているように思えました。
エディタ(ディタ)・モーザー 「1910年度版カレンダー」「1908年度版カレンダー」「1913年度版カレンダー」

こちらもカレンダー。こんなカレンダーが家にあったら一気に雅な空間になりそう。現代でも再販してほしいくらいですw
オトカル・マッシャ 「オーストリアのポスター芸術」

こちらは図録みたいな本の一部で、国立新美術館の展示にもあったココシュカの『殺人者、女たちの希望 』のポスターを紹介している頁。白黒になっても怖いですが、これは色付きのほうがインパクト大なのでちょっと惜しいw
[2.挿画と装丁]
最後は挿絵や装丁についてのコーナーです。
ジョン・ウィルモット・ロチェスター(著)/ユリウス・クリンガー(挿画)「ソドム:ある遊戯」

性の乱れによって滅ぼされたとされるソドムをタイトルにしていて、ちょっと艶っぽい退廃的な雰囲気があるように思えました。
この辺は作者と作品名が多いので一気にまとめてご紹介。

本だけでなくトランプまでデザインしています。どれも絢爛な雰囲気があって気品を感じます。
最後に本の装丁。

表紙に金色を使ったりして豪華な作りです。きっと中も美しい絵が並んでいるんでしょうね。
ということで、美しいグラフィックデザインの数々を観ることが出来ました。作風も様々で個性豊かな内容です。同時期にウィーン分離派関連の展示が上野と六本木でも行われていますが、この展示も合わせて観ると 一層に分離派の魅力が分かるのではないかと思います。分離派好きの方は是非3館制覇を狙ってみてください。
→ 前編はこちら

【展覧名】
京都国立近代美術館所蔵
世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて
【公式サイト】
http://mmat.jp/exhibition/archive/2019/20190413-63.html
【会場】目黒区美術館
【最寄】目黒駅
【会期】2019年4月13日(土)~2019年6月9日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後編も各章ごとに気に入った作品を写真を使いながらご紹介していこうと思います。分離派やウィーンの美術の流れについては以前の記事などもご参照ください。
参考記事:同時期に開催の展示
クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想前編(東京都美術館)
クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想後編(東京都美術館)
ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 感想前編(国立新美術館)
ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 感想後編(国立新美術館)
世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 感想前編(目黒区美術館)
世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 感想後編(目黒区美術館)
参考記事:過去の展示
ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)
クリムト 黄金の騎士をめぐる物語 感想前編(宇都宮美術館)
クリムト 黄金の騎士をめぐる物語 感想後編(宇都宮美術館)
<2 新しいデザインの追求>
2章はそれまでにない新しいデザインの追求のコーナーです。産業革命で新しく台頭した市民階級は新しい製産工程に相応しいデザインを必要としたようで、こうした背景を元にクリムトやコロマン・モーザーといった新進気鋭の芸術家たちが過去の借り物でないデザインを提示していきました。
[1.図案集の隆盛]
ここは様々な図案集が並んでいました。
マルティン・ゲルラハ(編) 「アレゴリー、新シリーズ、著名現代芸術家によるオリジナルデザイン」

こちらは分離派の著名な作品の図案集。クリムトなども含めて華麗な図案が並んでいて見ごたえがあります。
カール・オットー・チェシュカ/マルティン・ゲルラハ(編) 『ビネット形式のアイデア大全[『ディ・クヴェレ(泉)』第1巻]』

こちらはアイデア集。神話的な図案が多いかな 中には不気味な作品もありました。
マックス・ベニルシュケ(著・画)『書籍装丁と平面模様』[『ディ・クヴェレ(泉)』第2巻]

こちらも図案集。アールヌーヴォー的なデフォルメが優美な雰囲気。
マックス・ベニルシュケ 「『書籍装丁と平面模様』[『ディ・クヴェレ(泉)』第2巻]のためのデザイン案」

ずらりと並んだ平面模様。様々なパターンがありアーツ・アンド・クラフツに通じるものを感じます。どれもリズミカルで面白い図案です。
ヨーゼフ・マリア・オルプリヒ 『オルプリヒ アイデア集』

こちらはアイデア集。甲殻類を図形のようなポーズで描いているのが面白い。こうしてデフォルメさせていったのかな?
ベルトルト・レフラー(編)「ディ・フレッヒェ(平面)-装飾デザイン集(新シリーズ)第2巻」

こちらも様々な図案集。左下のちょっと情けない顔したのがツボでしたw 画風も様々で、この時代のウィーンはまさに芸術の宝庫ですね。
[2.デザイン研究のプラットフォーム-ウィーン工芸学校とウィーン工房を中心]
デザイン創造の担い手を多く輩出したのがウィーン工芸学校で、そこで教えていたヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザーが中心となりウィーン工房が設立されました。ウィーン工房によって実際にデザインが製品化されて社会へと広がっていったようで、そこでは多くの女子学生や女性デザイナーも活躍していたのだとか。
オスカー・ココシュカ 「窓辺の少女[ウィーン工房絵葉書No.152]」

こちらは中世の木版のような感じです。国立新美術館の展示にもあったの『夢見る少年たち』に似た感じなので同じシリーズかな? 素朴さが心に残る作品です。
レオポルト・フォルストナー 「モザイク・デザイン案<サロメ>」

こちらはサロメを題材にした作品。この時代に流行ったファム・ファタール的な妖しさとなっていて、持っているのは洗礼者ヨハネの首です。色気と恐ろしさを感じる1枚です。
コロマン・モーザー 「踊り子 [ウィーン工房金工作品エンボスのためのデザイン]」

こちらは平面的でデザイン的な踊り子。割とアールヌーヴォーっぽいかな。独創的なポーズと曲線がそう感じさせるのかも。
コロマン・モーザー 「マーブル紙(山椒魚、球形)」

何かのマスコットみたいなサンショウウオ。オタマジャクシかと思いましたw デフォルメぶりが可愛い。
[3.オットー・ヴァーグナーとヨーゼフ・ホフマン そしてアドルフ・ロース]
続いては分離派に参加した建築家のコーナーです。彼らの多くはオットー・ヴァーグナーに学びんだそうで、その影響の様子や、弟子であるヨーゼフ・ホフマン、オットー・ヴァーグナーに学びながらも分離派に批判的だったアドルフ・ロースの作品などが並んでいました。
オットー・シェーンタール(編)『ウィーン造形芸術アカデミーにおけるオットー・ヴァーグナー顕彰年-学生プロジェクト・習作・素描作品集』

これは誰の建物家分かりませんが、近代的な要素と装飾性が目を引きました。中の様子も詳しく描いてあって創造しやすい。
ヨーゼフ・ホフマン 「ブロンシア・コラー=ピネルのための家具デザイン案」

こちらは家具のデザイン。直線の多いシンプルさが特徴かな。幾何学的な美しさがあります。
<3 版画復興とグラフィックの刷新>
続いては版画のコーナーです。この時代、写真が普及し 複製や記録を担っていた版画は自立した芸術としてのあり方を模索をしていたようで、日本の浮世絵ブームが起こると木版の復権の起爆剤となったそうです。日本に学んだ分離派のエミール・オルリークによって制作技法が伝えられたそうですが、日本と違って製作工程全てを芸術家ひとりが担って作っていたらしく、そうして作られた版画は美術雑誌や展覧会で広く紹介され、販売もされました。版画は幅広い社会階層の生活に芸術を行き渡らせるという目的実現に最も効果的な媒体だったとのことで、ここには多種多様な版画が並んでいました。
[1.木版画の復権]
こちらは木版のコーナーです。
ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユンクニッケル 「シェーンブルンのあずまや」

多色刷りで描写も緻密な版画です。黒を効果的に使っているのが洒落た雰囲気に思いました。
カール・モル(版画)/ヨーゼフ・ホフマン、ウィーン工房(装丁) 版画集「ベートーヴェンの家」

こちらはその場に訪れているようなリアルな構図が面白く感じました。ベートーヴェンの家とのことで、分離派はベートーヴェン好きですね。(礼賛の展覧会を開いたこともあります)
ルドルフ・カルヴァハ 「トリエステ港」

こちらは色彩豊かで構図も複雑な作品。ちょっとごちゃごちゃしていますが、港町の情感が伝わってきました。
フランツ・フォン・ツューロウ 「畑野」

こちらは単純化された畑が面白い作品。色もパターン化されて紋様的なリズムがありました。
[2.版画の新潮流]
続いては新しい潮流の版画のコーナーです。
エルンスト・シュテール 「山の湖」

これまでの版画に比べて一層に色を感じます。サイズも大きくて、これが版画なの?というくらい見事な作品でした。
ルイーズ・ボッセ 「庭」

こちらも油彩のような明るい色彩となっていました。画風もモダンに思えます。
[3.素描の魅力]
ここは素描に色をつけたような版画が並んでいました。
エドゥアルト・ステラ 「分離派風ライフスタイル」

分離派のデザインの家具に囲まれた生活が都会的に思えます。男性の顔が怖いのでどこか皮肉めいたものも感じますがw
<4 新しい生活>
最後は分離派が目指した芸術の普及についてのコーナーです。分離派は絵画や彫刻といった純粋芸術と、人々の生活とより直接的な関係を持つ応用芸術の違いを認めず、それらを総合した新たな芸術で生活と社会を刷新することを目指しました。そのため、装丁やポスターなど様々な分野でも多くの作品を残しています。ここにはそうした品々が並んでいました。
[1.日常生活とグラフィック・デザイン]
こちらはカレンダーやポスターなどのコーナー。
コロマン・モーザー 「月次絵」

色とりどりで美女たちが並ぶ様子が優美です。縦長の画面で月次で並べるというアイディアは日本の(特に琳派などが得意とする)12幅対の掛け軸のアイディアに似ているように思えました。
エディタ(ディタ)・モーザー 「1910年度版カレンダー」「1908年度版カレンダー」「1913年度版カレンダー」

こちらもカレンダー。こんなカレンダーが家にあったら一気に雅な空間になりそう。現代でも再販してほしいくらいですw
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こちらは図録みたいな本の一部で、国立新美術館の展示にもあったココシュカの『殺人者、女たちの希望 』のポスターを紹介している頁。白黒になっても怖いですが、これは色付きのほうがインパクト大なのでちょっと惜しいw
[2.挿画と装丁]
最後は挿絵や装丁についてのコーナーです。
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