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カフェ ダール(café d'Art) 【ハラ ミュージアム アークのお店】

前回ご紹介した伊香保グリーン牧場を楽しんだ後、隣接するハラ ミュージアム アークに行ったのですが まずは敷地内のカフェ ダールでランチを摂りました。

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【店名】
 カフェ ダール(café d'Art)

【ジャンル】
 レストラン・カフェ

【公式サイト】
 http://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/cafe/
 食べログ:https://tabelog.com/gunma/A1004/A100401/10001324/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 渋川駅 

【近くの美術館】
 ハラ ミュージアム アーク(敷地内のお店です)
 伊香保グリーン牧場
 群馬ガラス工芸美術館

【この日にかかった1人の費用】
 1600円程度

【味】
 不味_1_2_③_4_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
お昼時でこの日は展覧会に合わせた音楽ライブをやっていた為にほぼ満席となっていました。

さて、このお店は伊香保グリーン牧場の隣にあるハラミュージアムアーク併設のレストラン兼カフェで、11時~15時がランチタイムとなっています(変更の可能性もあるので公式サイトで要確認) 品川にある原美術館のカフェと同じ名前となっているので、お店も同じところがやってるのかな? いずれにせよ原美術館は2020年12月には閉館となるので、その後はここだけになってしまうと思われます。
 参考記事:原美術館とカフェ ダール

中に入るとこんな感じ。この日は暑かったので中にしましたが、テラス席もあります。
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席を確保してからカウンターで先に会計する方式となっています。この後、一気に満席になりましたw

この日はパスタとサラダとドリンクのセット(1550円)を頼みました。

まずはサラダ。
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至って普通のサラダです。ちょっと量が少なめかな。味も普通。

こちらは魚介(エビ、イカ、アサリ)とトマトの地中海風のパスタ。
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やや細めでモチモチした感じの麺で、全体的に美味しいと言える部類だけど普通かなw

飲み物はアイスティーにしました。
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まあこれも特に何の変哲もないと言ったところです。

と、味に関しては不味いわけではないけど、この値段でどうよ?とやや疑問を感じる部分もあるかなw しかしこのカフェには他にはない魅力があります。

それがこの風景。
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この写真自体は店の外から撮っていますが、中からでも観られる光景です。夏は緑が清々しい。

カフェの隣にはアンディ・ウォーホルの「キャンベルズ トマトスープ」の大型作品もあります。
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ウォーホルと言えばこのトマトスープを真っ先に思い浮かべる方も多いのでは? 現代アートの象徴的な作品です。

こちらはカフェからは遠くて見えないですが、小野節子の「夢」
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流麗な曲線と輝くステンレスが美しい作品です。透明感がありますね。

ちなみにこのカフェの辺り(トマトスープの背景の辺り)は春には桜が咲くようです。季節によってはテラス席も楽しめそうです。


ということで、味は普通だったけど美しい牧場とアートに囲まれたロケーションを楽しんできました。伊香保グリーン牧場の中にもカフェはありますが、美術鑑賞の前後にはこちらのお店の方が便利ではないかと思います。
この後、ハラミュージアムアークの展示を観てきましたので、次回はそれについてご紹介の予定です。


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【伊香保グリーン牧場】の案内(2019年08月)

今日は写真多めです。先週の土曜日に、青春18切符を使って渋川から伊香保にかけて美術館めぐりをしてきました。まず最初に伊香保グリーン牧場を観てきましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【公式サイト】
 https://www.greenbokujo.jp/

【会場】伊香保グリーン牧場
【最寄】渋川駅

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【感想】
真夏の炎天下ということもあって、お客さんもそれほど多くなかったかな。めちゃくちゃ暑い日だったので快適という訳ではないですがw

さて、この伊香保グリーン牧場は伊香保温泉に程近い所にある牧場で、羊や馬といった動物と身近に接することができる場所となっています。今までも何回か訪れているのですが、今回は結構久々(多分4年くらい?)で、いつの間にか色々と状況が変わっていました。詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。
 参考記事:伊香保グリーン牧場の写真(2010年02月)

こちらは入口を入ってすぐの辺り。
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バーベキューやアーチェリー場などがあります。他にもミニ遊園地やドッグラン、キャンプ場などもあって色々と楽しめるようになっています。

牧場に入って少し行くと、早速ヤギがお迎えしてくれました。
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まだ小さな子ヤギもいて可愛い。小さくてもしっかりと角が生えるようでしっかりと管理されていました。

勿論、羊もいます。
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夏なのにモコモコして暑そうw みんな日陰に固まっていましたw

セルフ販売で動物たちのおやつが売っていました。これは以前は無かった気がします。
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1個300円で自販機で券を買う方式です。1つ買ってみました。

おやつを差し出すと物凄い勢いで羊とヤギが集まってきますw
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だいぶこの子に食われましたw たまに食いしん坊がいます。動物たちは結構お行儀良いけど、小さい子は手を噛まれないように注意しないと。

ヤギたちはアスレチックを登っていたりします。
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ヤギは崖の上を軽々と登っていく生き物というのが目の当たりにできましたw 絶妙なバランス感覚を持った動物です。

こちらは以前乗ったことがある乗馬体験のコーナー。
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今回は乗りませんでしたが、この牧場で特に人気のあるコーナーらしく、5組くらいが列になっていました。思い出になる体験です。

こちらはポニーたち
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5頭くらいいたかな。ここは金網に手を入れると危険です

ここでも人参を売っていたので購入。
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300円でスティック状の人参が買えます。ここは自販機ではなく投入方式です。

人参をあげようとしたらこの表情w
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さっきの可愛さは何処へ行ったのか… 狂気を感じますw この子に半分くらい食われましたw

続いてこちらはふれあいハウス。以前は牛が沢山いたのですが、今回は牛はいなくなっていました。 
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調べた所、餌代の高騰で赤字だったため酪農は2015年4月にやめてしまい、2016年11月には牛の乳搾り体験もやめてしまったようです。グリーン牧場は牛のイメージだったのでこれは驚きでした。

ふれあいハウスのなかは「うさんぽ」というウサギとの触れ合いコーナーになっていました。
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時間帯によってはお休みしているようで、私が行った時は1匹だけ顔を出していたけど休んでいました。ちょこちょこ歩く様子が非常に可愛い。

以前、乳搾りした場所は今はシープドッグショーというコーナーになっていました。
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ちょうどショーが開催されている時間だったので入ろうかと思ったら別途300円でした。聞こえてくるアナウンスが終盤ぽい雰囲気だったので今回は諦めました。

シープドッグショーの入り口付近にも馬がいました。
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こちらをじっと観る真っ白な馬が可愛い。優しそうな目をしています

こちらは「どうぶつふれあいパーク」という広場にいた羊たち。ここも以前は無かったと思います。
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羊・ヤギと一緒にお散歩できるというコーナーになっていました(別途500円)ちょうど休憩時間に入ってしまったのでこちらも観るだけでしたが、みんな大人しくお散歩していました。

以前、冬にいちご狩りしたハウスは夏は入れないようです(当たり前かw)
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公式サイトに絵はあるけど名前が無いのがちょっと気がかり。色々状況が変わっているので、いちご狩りのシーズンでやっているのかは事前にwebなどで確認したほうが良いかもしれません。


ということで、少し行かない間に牛がいなくなっていたり、触れ合いの割合が増えているなどの変化がありました。時間帯によっては休憩してたりするので、目的のアクティビティがある方は事前に調べてから行くことをオススメします。 そしてこのグリーン牧場には美術好きなら誰しもが知る美術館が併設されています。近日中にそちらについてご紹介の予定です。


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見る,楽しむ,考える スポーツ研究所 【NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)】

前回ご紹介したICCの常設を観た後、企画展の「ICC キッズ・プログラム 2019 見る,楽しむ,考える スポーツ研究所」も観てきました。この展示は既に終了していますが、撮影可能となっていましたので写真を使ってご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 ICC キッズ・プログラム 2019
 「見る,楽しむ,考える スポーツ研究所」 

【公式サイト】
 https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2019/icc-kids-program-2019-sports-laboratory/

【会場】NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
【最寄】初台駅

【会期】2019年7月20日(土)~8月25日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
さて、こちらは毎年行われているキッズプログラムの2019年版で、様々なデジタル技術を応用してスポーツを「見る,楽しむ,考える」という内容となっていました。タイトルを観てもあまり内容を予想出来なかったものの、見れば納得という感じでしたので写真を使ってご紹介していこうと思います。

Aokid,福留麻里,時里充 「テーブルテニスダンサーズ」
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まず会場に入ると卓球の音が鳴り響いていました。しかし実際に卓球している訳ではなく、卓球の音に合わせて踊っている人の映像が流れるという作品です。 何と言うかエア卓球みたいな?w やはり違和感があってちょっと可笑しい動きに見えるかな。変わった鑑賞法で驚きました。

中路景暁 「Sequences/Consequences」
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こちらはベルトコンベアを使った作品で、装置によって生み出される身体性や感覚を刺激する要素、人と装置の関係性を多様な形で提示するという意図のようです。

こちらはシーケンスの1つの映像。
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これのどこがスポーツなんだろうか?という気はしますが、テトリスのブロックみたいなのが流れてきます。

流れてくると見事にハマっていきましたw どうせならテトリス棒を最後に差し込んで欲しかったw
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他にもベルトコンベアの一定の速度の性質を利用した様々なシーケンスの映像が流れていました。発想が面白いものばかりでしばらく観ていました。

リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC 「見えないスケートボードの存在感」
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こちらはスケートボードの台と映像が対になるように展示されていて、映像の中の人が滑ると台の部分にその音と振動が伝わってくるという作品です。この台に座って鑑賞していると まるでその場をスケートボードが通り過ぎるようなリアルな感覚がありました。臨場感が凄いので、これはなにかに応用できそうな技術じゃないかな。

伊藤亜紗(東京工業大学)/林阿希子(NTTサービスエボリューション研究所)/渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) 「暗闇で感じるテニス」
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こちらはテニスコートを模した台を触りながらテニスを鑑賞する作品です。映像のボールの動きと落ちた場所に合わせて台が振動するという仕組みです。

前方にはこんな感じで映像が流れていて、ラリーが続きます。
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最初は映像・音・振動の3つセットで始まるのですが、映像が消え、音が消え、振動だけになっていきます。振動だけになっても試合の様子が伝わってくるのが面白い作品でした。目や耳が不自由な方でもテニスを一層楽しむことが出来そうなアイディアです。

伊藤亜紗(東京工業大学)/林阿希子(NTTサービスエボリューション研究所)/渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) 「手のひらで感じるテニス」
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こちらは先程の作品の小型版みたいな台。これでも十分に感覚が伝わってくるので、ポータブルな4DXといった感じでしたw

伊藤亜紗(東京工業大学)/林阿希子(NTTサービスエボリューション研究所)/渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) 「スポーツソーシャルビュー」
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こちらは目の不自由な方が柔道を楽しむという作品。両脇の2人が画面に合わせて手ぬぐいを引っ張り合って、真ん中の男性がその勢いや強さで試合を感じるという仕掛けのようです。割と原始的な手法だけど、言葉より伝わりそうですね。

リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC 「ラグビー 触覚ビューイング」
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こちらはラグビーボールのガジェットを持ってみんなでライブビューイングしようという作品。

やはり こんな感じで試合の内容とリンクして振動したり光ったりします。
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どちらのチームがボールを持っているかでチームカラーに合わせた色に変わったりしますが、抱きながら画面を観てると ボールの発光はあまり分からないような…w 他の人のボールも一斉に色が変わるのでそれで把握するのかな? 一体感を出すのも意図のようでした。


ということで、従来に無かったスポーツの楽しみ方を提案するような内容となっていました。来年は東京オリンピックも開催されるので、こうした取り組みが実現したら面白いかもしれません。ちょっと未来を感じる先進的な取り組みです。


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オープン・スペース 2019 別の見方で 【NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)】

前回ご紹介したカフェに行く前に同じオペラシティの中にあるNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で「オープン・スペース 2019 別の見方で」という展示を観てきました。この展示は一部で撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 オープン・スペース 2019 別の見方で

【公式サイト】
 https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2019/open-space-2019-alternative-views/

【会場】NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
【最寄】初台駅

【会期】2019年5月18日(土)~2020年3月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。どういう訳かこの日は入場無料でお得な日でした。

さて、この展示は毎年模様替えを行っているICCの常設で、今年も様々な分野の先端技術を使った作品が並んでいました。今回も撮影できる作品はそれほどありませんでしたが、いくつか写真を使ってご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  オープン・スペース 2018 イン・トランジション (NTTインターコミュニケーション・センター ICC)
  オープン・スペース 2017 未来の再創造 (NTTインターコミュニケーション・センター ICC)

シンスンベク・キムヨンフン 「ノンフェイシャル・ポートレイト」
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こちらは数点の肖像画が並んでいる作品。画家に「人工知能に顔として認識されないこと」を条件に肖像を描いて貰ったようです。

例えばこんな感じ。確かに撮影時に顔センサーが反応しませんでしたw
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のっぺらぼう的で かすかに眉毛と鼻が分かる程度かな。輪郭はしっかりしているのでそのうちAIも顔と認識しそうな気もしますが、ここまで崩さないと認知されるというのに驚きます。2019年時点でも顔認識は相当に進んできましたね。

岡ともみ 渡邊淳司 「10円の移動日記」
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今年も電話ボックスを使った作品がありましたw 突然、ここに電話が掛かってきて出ると「今どこそこにいます」という内容を告げてきます。1回の通話で10円分の縛りの中で通話するそうで、距離によって通話できる時間が違う(最長77.5秒から最短8秒)ことを認識してお互いの距離を再認識するという趣旨のようでした。最近はめっきり電話ボックスを使いませんが、昔は遠距離だと10円を連コインしましたよねw

梅田宏明 「kinesis #3 - dissolving field」
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こちらは部屋の中全体に粒子状の映像が映される作品。鑑賞者の動きに応じて変わっていくそうで、人の動きにおける力の流れや運動の場を体験できるという意図があるようです。私の動きが現れているようですが、何処がどう反応しているのかはよく分かりませんでしたw

こちらは「触れてつながるラボ」というコーナー。
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いくつか体験型の品があり、これは「鼓動トーク」というモニター越しの相手に自分の鼓動が伝わるという作品でした。ドクドクと動いて心臓を持ってるみたいなw 触覚を用いたコミュニケーションアイテムとして面白いかも。

細井美裕 「Lenna」
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こちらは無響室に置かれたスピーカーを使った作品で、整理券で予約を取って体験しました。体験中は真っ暗になりスピーカーの音だけとなり、22.2チャンネルサラウンドの立体感を味わうことができます。 女性の歌声が目の前で発せられているような音像で、かなりリアルな感じがします。これが一般的になったら現実と錯覚するような音響が楽しめそうです。

後藤映則 「ENERGY #01」

こちらは3Dプリンターでメッシュ状の立体を作り、そこにレーザー光線を当てることで光の軌跡がアニメーションのように見える作品。以前にも観たことがありましたが、驚きの発想力で非常に幻想的な光景です。これを観られるだけでも今年のICCは観る価値があると思います。
 参考記事:THE ドラえもん展 TOKYO 2017 (森アーツセンターギャラリー)

後藤映則 「アニマの再創造」
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こちらは先程の作品の原理がよく分かる品で、旧石器時代のショーヴェの洞窟壁画に既にアニメーションの発想が描かれていたという説や19世紀の映像装置にインスピレーションを得て作ったそうです。素材自体は昔からあるものを使っていて、そのメイキング映像なども含めて面白い内容となっていました。これに光を当てると人が歩いているように見えるのが不思議ですw

こちらも軽石に穴を開けて紐を通すことで先程と同様に光のアニメーションを作れるようになっています。
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もしこんな品が太古の昔にあったら…と考えるとロマンですねw 

映像では実際に光を当てていました。人の形が写っているのがわかります。
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原理は簡単なので自由研究とかで真似して作れそうだけど、思いついた発想力は唯一無二ですね。

青柳菜摘 「彼女の権利-フランケンシュタインによるトルコ人,あるいは現代のプロメテウス」
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こちらは1770年にヴォルフガング・フォン・ケンペレンによって作られた自動チェス人形「トルコ人(The Turk)」をモチーフにした作品。そんな昔にチェスのロボットがいたの?って話ですが、人形の台の中にチェスの名人が入って操作していたそうです。この話は創造物が創造主の思惑を超える隠喩ということで、これからのAI時代を思わせるテーマでした。

他にも結構色々ありましたが撮影ができないものや難解だったので割愛します。

ということで、今年の展示もAIなど最新の技術動向を取り込んだ意欲的な作品があり、科学への好奇心が湧く内容となっていました。 特に後藤映則 氏の作品が観られたのが良かったです。ここは東京オペラシティアートギャラリーと同様に ぐるっとパスなら提示だけで観られますので、両方合わせて訪れると一層お得だと思います。


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椿屋珈琲 東京オペラシティ店 【オペラシティのお店】

前回ご紹介した東京オペラシティアートギャラリーの展示を観た後、すぐ下の階にある椿屋珈琲 東京オペラシティ店でお茶してきました。

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【店名】
 椿屋珈琲 東京オペラシティ店

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 https://www.towafood-net.co.jp/cafe/store/omokageya_operactiy/tabid/226/Default.aspx
 食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131807/13152565/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 初台駅

【近くの美術館】
 東京オペラシティアートギャラリー
 NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)

【この日にかかった1人の費用】
 1600円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
それほど混むこともなく自由に席を選べるくらいでした。

さて、このお店は椿屋珈琲の支店で、最近は割とよく見かけるようになった気がします。六本木や銀座の椿屋はちょくちょく利用しているのですが、オペラシティのこのお店は初めて入ってみました。
 参考記事:
  椿屋珈琲店 有楽町茶寮 【有楽町界隈のお店】
  珈琲茶房 椿屋 丸ビル店 【東京駅界隈のお店】
  椿屋珈琲店 【銀座界隈のお店】
  椿屋珈琲店 上野茶廊 【上野界隈のお店】
  珈琲茶房 椿屋 渋谷店 【渋谷界隈のお店】
  椿屋珈琲店 六本木茶寮 【六本木界隈のお店】

内装はこんな感じ。
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椿屋珈琲はどこでも似た感じで、和とアール・ヌーヴォー風を合わせたようなレトロな雰囲気となっています。

この日はプレミアムコーヒーのケーキセット(1600円)にしました。
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この日のランチの倍くらいの値段で、むちゃくちゃ高いですw

こちらはメロンケーキ
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メロンがジューシーでさっぱりして爽やかです。生地とクリームは上品な甘さで軽やかな感じ。メロンがフォークで切れないので若干食べづらいですが、結構ボリュームもあって満足できました。

続いてはコーヒー。プレミアムはアイスコーヒーも可能だったのでアイスにしました。
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酸味が強めで、軽い苦味と焙煎の香りが豊かです。かなり濃厚なので普段はブラックで飲む私ですが少しだけガムシロップを入れて飲みました。美味しくて高級感があるので値段も納得。300円でおかわりもできます。この夏に何度か飲みましたw


ということで、ちょっと高いのが難点ですが、安定の美味しさと落ち着きのあるお店となっていました。東京オペラシティアートギャラリーのすぐ下の辺りにあるので展覧会の後に寄るのに丁度良いと思います。



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[池田良二の仕事] [末松由華利] 【東京オペラシティアートギャラリー】

前回ご紹介した東京オペラシティアートギャラリーの企画展を観た後、常設展も観てきました。今回は「収蔵品展067 池田良二の仕事」と「project N 76 末松由華利 SUEMATSU Yukari」の2つの内容となっていました。

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【展覧名】
 収蔵品展067 池田良二の仕事
 project N 76 末松由華利 SUEMATSU Yukari

【公式サイト】
 https://www.operacity.jp/ag/exh224.php
 https://www.operacity.jp/ag/exh225.php

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅

【会期】2019年7月10日(水)~ 9月23日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_②_3_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の収蔵品展は「池田良二の仕事」ということで、半抽象・半具象といった作風の池田良二 氏の版画作品が並んでいて、小さな個展のような趣きとなっていました。また、展示の後半のproject N76では末松由華利 氏という若い女性アーティストが紹介されていて、こちらは撮影可能となっていましたので、合わせてご紹介していこうと思います。


<池田良二の仕事>
まずは池田良二 氏のコーナーです。池田良二 氏は1947年に北海道で生まれ、武蔵野美術大学で油彩を学んだ後 1975年から独学で銅版画を制作しはじめました。その3年後の31歳の時には自身の版画工房「プリント・スタジオKAFU」を設立したそうで、「私自身のあるべき銅版画を求めて生きる、そこに私の全状況がある、銅版が私自身の[鏡]になる」と語るほどに自分自身を映し出す鏡と捉えて制作し続けてきたそうです。ここには70点近い版画が並んでいました。

03 池田良二 「Note-two square, atmosphere 気圏」
こちらは上半分は薄茶色地に赤い斑点、下半分は赤地に無数のグリッドが描かれいて、よく観ると赤地の周りも薄茶色地になっています。赤い斑点に見えるのは文字らしいけどかすれたアルファベットの筆記体のような感じで、意味は読み取れません。全体的に抽象のような画面で、非常に静かな印象を受けました。解説によると、作者の手で文字を彫る行為そのものが時間の蓄積であり それらを版に表すことでその時間を自分自身の記憶の層として重ねている とのことでした。

近くには似た感じの作風の作品がずらりと並んでいました。左右半分に分かれているものもあり、片面は文字でもう片面はグリッドになっているものが多いようでした。何となくマーク・ロスコを思い起こすような静謐さです。

23 池田良二 「Cape watershed 岬の分水嶺」 ★こちらで観られます
こちらは画面の上下半分の辺りに地平線のようなものがあり、下側は濃い焦げ茶、上側は薄い焦げ茶の画面となっています。中央辺りには建物と雲らしきものがコラージュのように貼られていて、砂漠の中の建物のような光景となっています。また、この作品にも細かい文字やグリッドもあってシュールな印象を受けました。
この辺は写真を転用したようなモチーフの作品がありました。

33 池田良二 「Window under the midnight sun 白夜の窓」 ★こちらで観られます
こちらは今回の展示のパンフレットの表紙にもなっている作品です。建物の壁らしき写真と無地の正方形を組み合わせたような画面に、読めない筆記体の文字が建物の写真の上に描かれ、周りは無数の水玉模様のひび割れとなっています。こちらも難解で意図は分かりませんが、風化したような質感から時間の流れや 沈み込むような色彩から静かな雰囲気が感じられました。白夜の夜の印象なのかな?

15 池田良二 「Transmission 伝導」
こちらは薄茶色の地にぎっしりと読めない筆記体の文字があり、左側に祝福のポーズをとるローブ姿の人物像があります。何故か人物像の首はないものの、キリスト教の伝道師らしき感じかな。一種の遺跡の像のような印象を受ける作品でした。
この近くには同様に首のない人物像や仏像を組み合わせた作品もありました。いずれも廃墟や遺跡を思わせる雰囲気です。

38 池田良二 「昭和天皇」
こちらは昭和天皇が左右に向き合うようにコラージュされた作品で、上のほうに1985 JAPANと書かれているのでその頃の姿だと思われます。モノクロでこれも静かな雰囲気で、何か歴史的な意味があるのかも??

この近くには同様に歴史上の人物の作品が並んでいました

43 池田良二 「フリードリッヒ・ニーチェ」
こちらは横向きのニーチェの顔が石造りのアーチの中に収まるような感じの画面で、上には「ウィルヘルム・ニーチェ 1844-1900」と書いてあります。それが何となく墓標のようにも見えました。近くには同様にドストエフスキー、アンドレ・ジード、ゲーテ、マリリン・モンロー、チャールズ皇太子、坂本竜馬などもあって、人選の基準が分からないw

54 池田良二 「ウィリアム・シェークスピア」 ★こちらで観られます
こちらはシェイクスピアの肖像の顔の部分だけを転用していますが、何故か目の下から顎先にかけての部分が黒い長方形で隠されていて黒モザイクみたいなw これも意図は解説されていませんが検閲を思わせるかな。ちょっとギョッとするような不思議な肖像になっていました。


<末松由華利>
続いては1987年生まれの新進作家の末松由華利 氏のコーナーです。末松由華利 氏は2010年に多摩美術大学で油画専攻を卒業し、それ以降 グループ展や個展を開催し、2019年からは第33回ホルベイン・スカラシップ奨学生として活躍しているようです。ここは撮影可能となっていましたので、いくつか写真を使ってご紹介していこうと思います。

末松由華利 「捨てるために選ぶのか」
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哲学的なタイトルで画面は抽象的な水玉模様に思えますが、点々の大小や配置によって手前に迫り出すというか、立って花畑を眺めているような光景にも見えました。滲みを使った柔らかい表現で水彩のような軽やかさも感じました。

末松由華利 「他人事ほど優しくいられる」
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何だか辛辣なタイトルですが、これも観た感じは抽象的で意図を組むのは難しい…。タイトルのせいか何となく1つ1つが人影のように見えて都市の群像のようにも思えました。

末松由華利 「向こう岸の出来事」
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これも全く意図は分かりませんでしたが、色合いから木々の間から向こうを垣間見ているような光景に思えました。やはり色彩が独特で勢いやリズムが感じられます。

末松由華利 「いずれ溶け合う」
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こちらは絵の具が滴り落ちている作品。

アップするとこんな感じ
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普通の赤が滴ると血みたいになりそうですが、この色だと温かみが感じられました。これは何だろう?と鑑賞者が考えるところまでが作品の一部のようです。

末松由華利 「架空の値打ち」
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こちらは10点セットの作品。ずらりと廊下の両脇に5点ずつ並んでいました。

そのうち3枚を並べるとこんな感じ。
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この中央の円が少しずつ上がって行き、山型の頂点至るとまた下がってきます。色合い的に夜の月の運動を表しているのではないか?と推測しましたが、実際のところは分かりません。同じように見えてすこしずつ滲みが違っているのも味わいがありました。


ということで、いずれも意図を汲むのが難しいアーティストの作品でしたが、ミニ個展のようになっていて多くの作品を楽しむことができました。ここはぐるっとパスなら提示するだけで企画展と常設を観ることが出来るので、合わせて観ると非常にお得だと思います。



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ジュリアン・オピー 【東京オペラシティアートギャラリー】

今日は写真多めです。お盆休みに初台の東京オペラシティアートギャラリーで「ジュリアン・オピー」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 ジュリアン・オピー

【公式サイト】
 https://www.operacity.jp/ag/exh223/

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅

【会期】2019年7月10日(水)~9月23日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが自分のペースで観ることができました。

さて、この展示はイギリスを代表するアーティストの1人であるジュリアン・オピーの個展で、日本では約11年ぶりの機会となっています。ジュリアン・オピーは太い輪郭線を用いて単純化したポートレートなどが主な作風で、絵画だけでなく3次元の作品やLEDを使ったインスタレーションなども手掛けています。この展示ではそうした作品の数々を観られますので、詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。

展示室に入ると大きな絵画作品が展示されていて驚きました。
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ジュリアン・オピーは1980年代からヨーロッパのアートシーンで頭角を現したそうで、輪郭線を強調した作風は自身でもコレクションしている日本の浮世絵からも着想を得ているのだとか。

ジュリアン・オピー 「Sam Amelia Jeremy Teresa」
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こちらは電球を使って発光している作品。タイトルはそれぞれの人物の名前かな? 頭部とかもはや記号のような単純化ですが、ポップで流麗な印象を受けました。

ジュリアン・オピー 「Walking in New York 1」
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こちらは巨大な壁画のような作品。最小限の表現ながらニューヨークの喧騒を思わせるような場面となっているのが面白い。

ジュリアン・オピー 「Towel」「Headphones」
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ジュリアン・オピーの作品はタイトルも凄くシンプルですw いずれも都会的なセンスを感じます。

ジュリアン・オピー 「Walking in Boston 3」
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こちらも巨大な壁画作品。最初の部屋にあった作品はみんな横向きに歩いている構図となっていました。こちらは黒人も描かれていて先程のニューヨークの作品よりも多様性を感じるかな。

次の部屋はこんな感じ。
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こちらは立体作品なども並んでいました。

ジュリアン・オピー 「Cardigan」
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こちらは輪郭だけ立っているような立体作品。こんなにシンプルなのにカーディガンを持っていると分かる単純化の仕方が凄い。仕草で女性の性格まで伝わってくるようなw

ジュリアン・オピー 「Jada Teresa Yasmin Julian 2」
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こちらはLEDを使ったインスタレーション。人々が歩いていきます。動きがあるとまた違った感じに見えます。延々と交差点でも眺めているような気分になりましたw

ジュリアン・オピー 「3 stone sheep」
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これは羊を表した立体作品。豚か牛かと思いましたw 滑らかになりすぎてモコモコ感があまりないのがちょっと残念。

ジュリアン・オピー 「River 3」
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人物だけでなく風景画もありました。限りなく削ぎ落としていて、色面を重ねた抽象画のようにも見えました。

ジュリアン・オピー 「Towers 1」
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こちらも立体作品。高層ビルのガラスに隣のビルの反射が写っているため、ビルは5つ以上にあるように思えて奥行きを感じさせます。

ジュリアン・オピー 「Crows」
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こちらもLEDを使った作品。アニメーションでカラスが動きます。かなりシンプルなのにカラスらしい動きをして驚き。よっぽどカラスを観察して根本的な要素を抽出してるのではないでしょうか。

ジュリアン・オピー 「Telephone」
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立ち止まってスマフォを操作している女性像。街でよく見かける姿です。こういう同時代性も作品の特徴ではないかと思います。

ジュリアン・オピー 「Sonia Elvis Elena Paul」
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こちらは白黒の面を人が走るアニメーションとなっています。

しばらく観ていると、黒地の人物が白地へと進み白黒が反転します。
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これも粗いドット絵なのに滑らかに走っているように思えました。最小限の表現でこれだけ表すことが出来ることに関心します。

ジュリアン・オピー 「Street 1」
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こちらは4面に表された作品。ぐるっと周って観ることができます。

老若男女がいるというのが伝わってきます。
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単純化されても髪型、服装、肌の色などの違いで個性を感じられるのが面白い。

ジュリアン・オピー 「Carp」
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こちらはアニメーションになっている作品。鯉がスイスイ泳いでいて涼し気な光景です。この辺りでは静かな音楽も流れていてそれも作品の一部のようでした(恐らくジュリアン・オピーが作曲したものではないかと思います)


ということで、記号的なまでにポップに単純化されていながら、対象の特徴を端的に表すような画風となっていました。これだけ捨象しているのに豊かに表現されるのは写実的に描くよりよほど難しいと思います。この展示はぐるっとパスなら提示だけで観られる上、撮影可能なので気になる方は是非どうぞ。現代アート好きの方にオススメの展示です。



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円山応挙から近代京都画壇へ (感想後編)【東京藝術大学大学美術館】

今日は前回に引き続き東京藝術大学大学美術館の「円山応挙から近代京都画壇へ」についてです。前半は上階についてでしたが、後編は下階の内容についてご紹介して参ります。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 円山応挙から近代京都画壇へ

【公式サイト】
 https://okyokindai2019.exhibit.jp/
 https://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2019/maruyama-shijo/maruyama-shijo_ja.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館
【最寄】上野駅

【会期】
  前期:2019年08月03日(土)~09月01日(日)
  後期:2019年09月03日(火)~09月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
下階は部屋ごとに章分けされていました。引き続き気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。(前期日程の内容についてです)


<山、川、滝。自然を写す。>
こちらは山水画のコーナーです。日本において山水画は円山応挙までは大和絵か中国画が基本で、現実とは違った名所絵の世界や 観たこともない山水世界が描かれていました。しかし応挙は実際の場所を好んで描き、さらに観た時の臨場感までを映し出そうと試みました。遠近法を踏まえて描こうとする表現は山水画というよりも風景画に通じる側面があり、より自然な形で近代絵画へと変化していきます。ここにはそうした山水画が並んでいました。

66 円山応挙 「春秋瀑布図」
こちらは2幅対の掛け軸で、右幅は桜の咲く崖と流れ落ちる滝が描かれ、左幅は赤い紅葉が連なる溪谷の滝が幾重にも並ぶ様子が描かれています。余白を使って水の流れを表現したりするのが面白く、単なる写実にとどまらない叙情的な山水画となっていました。

72 呉春・岸駒 「山水図」
こちらは呉春と岸駒の合作の掛け軸で、既にお互いに独自の一派(四条派と岸派)を形成していた時期に描かれたものとなります。手前に2本の木が並ぶ光景があり、近くに呉春のサインもあります。中央辺りは空白で水辺っぽい感じとなり、奥には水際に並ぶ家々が描かれ 近くに岸駒のサインがありました。お互いの画風を合わせていて違和感が無いのは共に応挙の元で写生を学んだ為と考えられるようです。遠近感もあり応挙の教えが弟子たちに受け継がれている様子が伺えました。

92 野村文挙 「近江八景図」
こちらは琵琶湖を描いた8幅対のうち「三井晩鐘」「唐崎夜雨」「堅田落雁」「比良暮雪」の4幅が展示されていました。特に「唐崎夜雨」が好みで、琵琶湖の小さな島にぼんやりと船や鳥居が描かれ、奥は霞がかっています。墨の濃淡で柔らかい湿気まで感じられて、現実世界らしさもありつつ詩情溢れる光景となっていました。

84 木島櫻谷 「山水図」
こちらは明治から昭和にかけて活躍した画家による六曲一双の巨大な屏風で、横幅10mくらいあるようです。中央辺りに巨大な山があり、手前の小さな家や馬に乗る人などと比べると、その大きさが際立って感じられます。霧の沸き立つ様子や遠近感などもリアルで、細部も写実的です。しかし全体的には幻想的で神秘的ですらある光景となっていて、四条派らしい情感がありました。
 参考記事:
  木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険 (泉屋博古館分館)
  木島櫻谷 PartⅡ 木島櫻谷の「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し(泉屋博古館分館)

19 岸竹堂 「大津唐崎図」
こちらはスケッチを元にした実景を描いた六曲一双の屏風です。右隻は明け方の大津の浜、左隻は夕暮れの唐崎の松が描かれています。特に右隻の明け方の静まり返った家々の様子が清々しく、早起きした時の気分を思い起こします。また、家の屋根が連なり幾何学的なリズム感もあって構図も面白く感じられました。一方、左隻は丈に支えられた老松が画面一杯に広がっていて、景色とともに雄大な印象となっていました。この展示でも特に気に入った作品の1つです。


<美人、仙人。物語を紡ぐ。>
最後は主に人物を描いた作品のコーナーです。円山応挙は美人画でも新生面を拓いていたようで、狩野派や南画とは一線を画した温和で品格のある女性を表現しました。仙人や物語の人物画はその後の円山派・四条派でも描かれたようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

101 山口素絢 「女官図(緋大腰袴着用) 」
こちらは応挙門下で美人画を得意とした山口素絢による作品です。欄干にもたれて水辺の燕子花を愛でる女房(女官)が描かれていて、白と赤の装束が鮮やかです。解説によると、山口素絢は女房装束の知識も正確に持っていたそうで、仕草の習慣までもこの絵で描き表しているようです。流石にそこまでは私には分かりませんでしたが、女性の花を愛でるうっとりした表情が優美で好みでした。

98 長沢芦雪 「大原女図」
こちらは頭に沢山の薪を載せて売り歩く京都の大原女(おはらめ)を描いた作品です。片手で薪を抑えてこちらをチラッと見る切れ長の目が何とも色っぽい。紺の着物や手甲など細かい部分もしっかり表されていて、人物像においてもしっかり写生を活かしているようでした。こんな美人が昔にいたのかも。

104 岸竹堂 「太夫図」
こちらは太夫(最高位の遊女)を描いた掛け軸で、立派な簪や 薄い青紫の植物文様の着物をまとって艶やかな雰囲気となっています。やはりこの作品も写実的で、顔はキリッとしていて凛とした印象を受けます。振り返るようなポーズで動きもあり、見事な美人画でした。この展示の岸竹堂はいい作品ばかりだったし、いずれ個展をやって欲しい…

113 月僊 「東方朔図」
こちらは身をかがめて抜き足差し足で歩く「東方朔」という前漢時代の侍従を描いた作品です。これは東方朔が西王母の不老長寿の桃を盗んでいる所らしく、桃はサッカーボールくらいあるかもw デカいので抱えて運んでいます。周りを警戒していてちょっとコミカルな雰囲気もあるかな。割とファンタジックな題材ですが写実性もあって滑稽な印象を受けました。

この隣には三国志の三顧の礼の様子を描いた「風雪三顧図」が3点(円山応挙・呉春・中島来章)ほどありました。三者三様の画風で同じ題材でも個性があります。 ちなみに東京国立博物館で開催している「三国志展」との相互割引なんかもやっているようです。
 参考記事:
  特別展「三国志」 感想前編(東京国立博物館 平成館)
  特別展「三国志」 感想後編(東京国立博物館 平成館)

97 円山応挙 「江口君図」 ★こちらで観られます
こちらは普賢菩薩の化身で、小さな象に腰掛けている遊女が描かれています。遊女と言っても普賢菩薩の化身の為か清廉な雰囲気で、象も賢そうな顔で大人しくしています。(ちょっと鼻が細すぎる気もしますw) 解説によると、これは西行法師が宿を借りようとしたものの貸してくれなかった話に題材しているそうで、遊女(菩薩)は西行の俗世への執着がないようにとの思いやりでそうしたのだとか。この清らかな雰囲気は円山・四条派を受け継いだ上村松園に通じるものを感じました。流石は始祖ですねw


ということで、後半も見どころの多い内容だったと思います。円山派・四条派で時代が交錯するので写実と言っても画風も様々で、比較して観るのも面白いと思います。かなり良かったので後期も観に行くかも?? 日本画の中でも大きな地位を占める一派ですので、これから日本画を知りたいという方にもオススメの展示です。



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円山応挙から近代京都画壇へ (感想前編)【東京藝術大学大学美術館】

先週のお盆休みに上野の東京藝術大学大学美術館で「円山応挙から近代京都画壇へ」を観てきました。見どころの多い展示でしたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、この展示は前期後期で大きな展示替えがあるようで、私が観たのは前期の内容でした。

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【展覧名】
 円山応挙から近代京都画壇へ

【公式サイト】
 https://okyokindai2019.exhibit.jp/
 https://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2019/maruyama-shijo/maruyama-shijo_ja.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館
【最寄】上野駅

【会期】
  前期:2019年08月03日(土)~09月01日(日)
  後期:2019年09月03日(火)~09月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
そこそこ混んでいて場所によっては人だかりがありましたが概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は京都画壇の王道とも言える円山派と四条派を中心にそこから派生した流派まで歴代の実力派が一堂に会するという内容となっています。画風の異なる2つの流派ですが、両者を学ぶものも現れ いつしか円山四条派と呼ばれるようになっていきました。4章構成で円山応挙からの流れと題材別に章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<すべては応挙にはじまる。>
まずは円山応挙からの円山派の始まりに関するコーナーです。円山応挙は18世紀半ばから後半に活躍した京都の画家で、写生を重んじ自然や花鳥・動物を生き生きと写し取った斬新な画風はたちまち京都で評判となりました。弟子には息子の円山応瑞、源琦(げんき)、山口素絢(やまぐちそけん)、渡辺南岳、長沢芦雪などがいて、さらに与謝蕪村の高弟だった呉春も晩年の応挙に弟子入りを請いましたが応挙は親友として迎えいれたようです。呉春は与謝蕪村譲りの南画と応挙の写生を融合させた四条派の祖となり、円山派と四条派はその後の京都画壇の中心となっていきます。さらに円山派の分派には原派・岸派・森派・鈴木派などもあり、このコーナーでは各派を代表する画家たちの作品が並んでいました。
 参考記事:円山応挙-空間の創造 (三井記念美術館)

12 山跡鶴嶺 「円山応挙像」
こちらは正座して座る円山応挙の肖像です。やや禿げていて、穏やかな顔つきをしているかな。応挙は弟子たちに自分の肖像を描かせ、最も似ていたこの作品を子孫に伝えたそうです。そのエピソードでも写生を重んじていた様子が伺えました。

11 円山応挙 「写生図巻(乙巻)」 ★こちらで観られます
こちらは応挙が様々なものをスケッチした写生図鑑です。筍、猿、蜘蛛、ホタル、松、ススキなど写実的かつ洒脱な雰囲気で描きあげています。特に猿のフワフワした毛並みなどはリアルでありながら可愛らしい雰囲気となっていました。解説によると、当時は筆使いの個性がないとの批判もあったそうです。曾我蕭白は「絵を望むのなら私に乞うべきだが、絵図なら円山主水(もんど。応挙のこと)が良かろう」と言っていたようで、それまでの絵画と一線を画するものと考えられていたのかもしれません。確かに曾我蕭白のファンタジックな作風とは大分違う気はしますw 一方、応挙は「実物に即して描かないと絵とは呼べない。強さや生命力は形をしっかり描けば備わる」と考えていたようです。応挙は西洋絵画の影響を受けた眼鏡絵などを描いていたこともあるので、西洋的なアプローチだったのかもしれませんね。
 参考記事:蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち 感想前編(千葉市美術館)

この隣には長沢芦雪の「孔雀図」もありました。写実的で堂々たる威厳のある孔雀図です。

この先に兵庫県の大乗寺の障壁画がその場に再現されるように展示されていました(東京会場のみ) これは応挙だけでなく一門が参加して作ったもので、大乗寺全体では13の部屋に165面もの障壁画を作成したそうです。仏間を中心に立体曼荼羅になっていると考えられるらしく、
 多聞天:仙人の間。生命・医薬
 持国天:農業の間。生産・経済
 増長天:芭蕉の間。政治
 広目天:山水の間。芸術
のような構成となっているようです。ここでは孔雀の間の円山応挙「松に孔雀図」、農業の間の呉春「四季耕作図」、使者の間の山本守礼「少年行図」と亀岡規礼「採蓮図」、禿山の間の呉春「群山露頂図」の4面がぐるりと廻って観られるようになっていました。

1 円山応挙 「松に孔雀図」 ★こちらで観られます
こちらが大乗寺の4×2面からなる襖絵で、金地を背景に松の木が描かれ、もう一方には松の下の岩の上で口を開けている孔雀が描かれています。墨の濃淡で描いているのですが、光の当たり方や観る角度によっては青っぽく見えるとのことで、確かに松は緑っぽく見える気がします。割と単純化されているようにも思えるものの、質感や生命感が強く感じられました。亡くなる3ヶ月前に完成した最晩年の作品です。

8 呉春 「群山露頂図」 ★こちらで観られます
こちらは点々を多用した南画風の作品で、いくつもの岩山の頭を描いています。空を飛ぶ鳥が観ているような景観で、霧が立ち込めるような感じも出ています。応挙というよりは南画の作風が濃いめのようですが、その分 情感豊かな表現となっていました。

6 山本守礼 「少年行図」 ★こちらで観られます
こちらは狩野派も学んだ応挙の弟子の作品で、中国の山間の道に馬を乗った人や少年らしき姿が描かれています。これは李白の七言絶句「少年行」を主題にしているそうで、狩野派譲りの漢画っぽさもありつつ南画のような感じも若干あるように思えました。応挙の弟子には色々いて面白い。

7 亀岡規礼 「採蓮図」 ★こちらで観られます
こちらも李白に詠まれた漢詩を題材にしていて、蓮を採った西施という美女にちなむ画題だそうです。蓮池で船に乗った女性たちが描かれ、優美な雰囲気です。これも南画的な感じを受けるかな。この画家は写生的な花鳥のイメージがあったのでちょっと意外。

9 呉春 「四季耕作図」 ★こちらで観られます
こちらは先程の「群山露頂図」から8年後に描かれたもので、だいぶ画風が変わっています。右から左へと季節が移り変わっていて、田植えのシーンと脱穀のシーンが描かれています。細部まで緻密ながら詩情溢れる光景となっていて、応挙と与謝蕪村の2人から学んだものが融合されているように思えました。

と、ここまでが大乗寺の障壁画です。ぐるりと観て回れるのが何とも贅沢な展示となっていました。

この先にあった長沢芦雪の「花鳥図」も良い作品です。近くにはだいぶ時代を隔てた上村松園の「羅浮仙女図」もありました。上村松園の先生の幸野楳嶺は円山派と四条派の両方に学んだ画家(もう1人の先生の竹内栖鳳も幸野楳嶺の弟子)なので、京都らしい系図と言えそうです。


<孔雀、虎、犬。命を描く。>
続いては動物を描いた作品のコーナーです。円山応挙は鳳凰や龍といった架空の動物よりも生きた鳥や動物をよく観察して描こうとしたそうで、それは弟子にも引き継がれていきました。写生に徹底する特徴は近代の京都画壇の重要な特性としてその後も強く影響していくことになります。ここにはそうした特徴の作品が並んでいました。

31 円山応瑞 「牡丹孔雀図」
こちらは応挙の息子が描いた孔雀図で、雌雄の2羽が並び長い羽が非常に優美な印象です。緑青・群青の色彩が輝くようで、力強さも感じられるかな。円山派が得意とした題材だけに見応えのある作品となっていました。

38 都路華香 「雪中鷲図」
こちらは江戸末期から明治にかけて活躍した幸野楳嶺の弟子の作品で、枝?にとまる鷲が描かれています。じっと見つめる眼が鋭く、大きな体つきが威圧感があり 鋭い爪と共に緊張感を漂わせています。周りには白い雪が舞っていて、自然の厳しさを感じさせました。ちょっと誇張した感もあるけど、迫力ある作品です。

近くに一番弟子の源琦による「四季花鳥図」もありました。こちらは穏やかで雅な雰囲気で、理想郷のような光景です。

59 森寛斎ほか 「魚介尽くし 」
こちらは28人の円山派・四条派の画家たちが描いた魚介類が並ぶ作品です。幸野楳嶺のカレイや望月玉泉のシジミ、森寛斎のサザエなど1人1人が様々な魚介を描いているわけですが、驚くほどに画風は統一されていて いずれも素早いタッチで描かれています。これだけお互いの作風を似せられるのは写生を元に研鑽を積んだからでしょうね。1人で描いたと言われたら信じそうな位の統一感でした。

51 岸竹堂 「猛虎図」 ★こちらで観られます
こちらは六曲一双の屏風で、左隻に1頭 右隻に3頭の虎の姿があります。中央に渓流があり左右の虎が睨み合って威嚇しているような構図で、虎は厳しい顔つきをしています。虎は来日したイタリアのサーカスで実際に観て描いたものらしく、我々の知る虎そのものです(それ以前は虎の皮と猫を参考に空想で描いたりしていた) 力強い体躯で筋肉の張り方までリアリティがあります。無数の線で表された毛の質感まで見事でした。

この近くには猿を得意とした森狙仙の「雪中燈籠猿図」などもありました。灯籠の中に隠れて雪から身を隠す猿たちが可愛い作品です。

48 長沢芦雪 「薔薇蝶狗子図」 ★こちらで観られます
こちらは5匹の子犬が戯れている様子が描かれた作品で、お座りしたり 伏せていたり 他の犬の尻尾を掴もうとしたり と無邪気な仕草をみせています。つぶらな眼をしていて芦雪らしい子犬かな。師匠の応挙もコロコロした犬をよく描きましたが、一層に可愛らしいマスコット的なものを感じました。

43 国井応文・望月玉泉 「花卉鳥獣図巻」
こちらは2人の合作による長い巻物で、国井応文は極彩色で鶏、孔雀、ガチョウ、七面鳥、朝顔、バラなど花鳥などを描いています。2人の画風はかなり異なり、望月玉泉は落ち着いた色彩で鶯や雀、梅などを描いていました。国井応文は円山派、望月玉泉は四条派なのでその違いが現れているようにも思えました。


ということでここまでが上階の展示となっていましたので今日はこの辺にしておこうと思います。やはり見どころは大乗寺の障壁画をそのまま展示している点で、実際の作りさながらに各画家の画風の違いなども楽しめました。また、写生を元にした動物画は可愛くもあり凛々しくもあって、各画家の個性も現れているように思えました。後半も見どころの多い内容となっていましたので、次回は残りの地下の展示をご紹介の予定です。

 → 後編はこちら



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山口蓬春展 新日本画創造への飽くなき挑戦 (感想後編)【日本橋タカシマヤ】

今日は前回に引き続き日本橋タカシマヤの「山口蓬春展 新日本画創造への飽くなき挑戦」についてです。前半は1~2章についてでしたが、後編は3章から最後までご紹介して参ります。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 山口蓬春展 新日本画創造への飽くなき挑戦

【公式サイト】
 https://www.takashimaya.co.jp/store/special/event/hoshun.html

【会場】日本橋タカシマヤ(日本橋高島屋)
【最寄】日本橋駅

【会期】2019年8月7日(水)~8月19日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前半は蓬春モダニズムまでの流れを追ってきましたが、3章以降は西洋画と日本画が融合したような新日本画が花開く時期の作品が並んでいました。引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<Ⅲ 南方へ>
3章は大型作品1点と資料となっていました。山口蓬春は1938年に台湾総督府主催の美術展の審査員として台湾に赴き、初めて目にする異国の風景に創作意欲を掻き立てられたそうです。そしてその後も毎年のように台湾・中国を訪れるようになります。この頃、画風の変化も始まっていたそうで、フォルムの単純化や装飾的な造形の芽生えが観られるようになりました。また、戦時中は戦争協力を求められ、戦争画を描くこともあったようですが、激戦の1945年頃には世田谷から山形へと疎開したようです。ここには台湾を題材にした作品が展示されていました。

23 山口蓬春 「南嶋薄暮」 ★こちらで観られます
こちらは赤い屋根と白い壁の台湾の家を背景に、木に繋がれたコブ牛が描かれています。家の周りには褐色の肌のパイワン族の女性たちが頭の上に荷物を載せて運んでいる様子や、家の中でチャイナ服のような女性が座って手仕事をしている様子も描かれています。空は深い青で、星が1つだけ輝いているのが清々しく、強い色彩と共に南国の情緒が漂っていました。細かい筆致で写実性があるのに南国での感動をそのまま表しているような印象を受けるのも見事です。

この近くには蓬春が撮った写真も並んでいて、この作品そのものの家やコブ牛、女性たちが写っていました。


<Ⅳ 蓬春モダニズムの展開>
続いては戦後間もない頃のコーナーです。山口蓬春は1947年に山形から神奈川県の葉山に移り、翌年に新居(今の山口蓬春記念館がある所)を構えました。この新居はすぐ近くに葉山御用邸があることから香淳皇后に絵の手ほどきをすることもあり、皇室との縁も深まったそうです。また、戦後は日展を中心に活動したようで、新しい日本画を目指し時代感覚を取り入れた近代的な造形に昇華していきます。漫然とした自然描写を廃し、「もっと明るく、もっと複雑な、もっと強い、もっとリズミカルな」といった画風は「蓬春モダニズム」と呼ばれていきました。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。

28 山口蓬春 「夏の印象」
こちらはテーブルの上の麦わら帽子や貝殻を描いた作品で、画面の周りには朝顔の花と葉っぱが額のように取り囲んでいます。色面と輪郭がちょっとズレている表現はデュフィやマティスを思わせるかな。淡く軽やかな色彩で清涼感のある雰囲気です。葉っぱのリズムや単純化も心地よく、この展示でも特に気に入りました。

30 山口蓬春 「望郷」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品(の本画)で、北極のシロクマと南極のペンギンが一堂に会するという自然界にはありえない風景となっています。シロクマは遠くを観ていて、タイトルから察するに故郷を思っているのでしょうか。氷は縞模様で表されていたり、空の太陽が日食のように重なっているのも誇張された感じがします。解説によると、上野動物園でシロクマを観て画題に選んだようです。また、左右にこれとほぼ構図の小型作品が2点並んでいて、それぞれ小下絵と小下図となっています。小下絵は本画の前に描いて東山魁夷の新築祝いの際に贈ったそうで、小下図は歌舞伎役者の中村歌右衛門がクマ好きと聞いて贈ったのだとか。3点揃っての展示は今回が初ということで貴重な機会となっていました。


<Ⅴ リアリズムの追求>
続いては静物のコーナーです。近代的な形や色を追求する作品は先程の「望郷」を1つの区切りを迎えたそうで、その後は清澄な詩情の時代へと変わります。1955年に「これからの日本画はすべて写実が基盤になる」と語り、リアリズムを目指す静物画を中心に制作するようになりました。

35 山口蓬春 「枇杷」
こちらは古九谷の皿に入った枝付きの枇杷の静物画です。丸々してるけど まだ緑から黄色に変わる頃なので、食べても美味しくなさそうw 写実的で皿の模様まで丁寧に描いている一方、実際には角度的に見えないはずの高台まで描いていて、装飾的に表現しているようです。どっしりとした質感があって、これまでの作風からまた変わったのが感じられました。

34 山口蓬春 「まり藻と花」 ★こちらで観られます
こちらはテーブルの上のグラスに入ったマリモと、花瓶に入った朝顔を描いた作品です。写実的に描いていますがキュビスム的な平面性・多面性や単純化が観られるように思います。黒の隈取がこの頃の特徴らしく、この絵でもそれが確認できます。青を背景にして落ち着いた雰囲気で、洋画のような色彩感覚でした。

この頃、山口蓬春に指導を求める若手が20人近く蓬春の元に集まっていたそうで、画塾という形では無かったようですが日本画の1つの指針を示していたようです。


<Ⅵ 新日本画への昇華>
続いては晩年のコーナーです。山口蓬春はかつては大和絵の文学的叙情性から抜け出すために動物や人物を画面から消しとっていましたが、1960年頃に春夏秋冬の連作を描き始めると、小鳥が再び登場するようになったようです。意識的に遠ざけていた四季花鳥という伝統的な大和絵の画題に 敢えて挑戦する円熟した境地に達したようで、晩年は岩絵具の清澄な色彩に深みが増し 洗練された構図に明るさが満ちたそうです。没後、山口蓬春について美術評論家の河北倫明は「誰かが蓬春のレベルを維持しなくてはならない」と語っていたそうで、蓬春は西洋画・日本画を超えた近代日本画の1つの到達点と言えるようです。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。

41 山口蓬春 「新冬」 ★こちらで観られます
こちらは金地を背景に真っ赤な紅葉の落ち葉が重なり、その上で小鳥がじっとしている様子が描かれた作品です。金と赤が響き合い 強い色彩ですが 深みがあり不思議なほど落ち着いた印象を受けます。単純化された紅葉と写実的な小鳥が静かで、冬を迎えようとする時期の風情が感じられました。

この辺は静物画も多く並んでいました。

42 山口蓬春 「花菖蒲」
こちらは金地を背景に青・白・紫などの5つの花菖蒲が描かれた作品です。緑の葉っぱも鮮やかで、リズミカルな配置となっています。題材や色合いからやはり琳派を思わせるかな。初期とは違った画風に思えますが、画題は回帰している感じも受けました。

近くには紫陽花と白い菖蒲を描いた作品などもありました。油彩のような鮮やかさの作品が多いです。

46 山口蓬春 「陽に展く」
こちらは大輪を咲かすヒマワリを描いた作品で、金地を背景にして夏の日差しを感じさせます。正面を向いて力強い花や、後ろを向いている花、下向きの花、花のないものなどもあり、ヒマワリの様々な姿や過程が1つの絵に表されているようにも思えます。単純化されつつ生命感が感じられ、特に目を引く作品となっていました。

この近くには皇居宮殿正殿松の間の「楓図」の下絵もありました。今でも重要な行事で使われる部屋に飾られている山口蓬春の代表作の下絵です。


<エピローグ 蓬春へのオマージュ>
続いては蓬春に触発された画家のコーナーです。と言っても2点のみで、東山魁夷と片岡球子が1点ずつでした。山口蓬春は若い頃に画壇の板挟みになって悩んだこともあるので自らの画塾は作らなかったようですが、慕ってきた後進画家を熱く指導したようです。蓬春の新日本画の精神を受け継いだ著名画家の中から上記2名が選ばれて展示されていました。

50 片岡球子 「富士に献花」
金地を背景にかなり縦長でいかつい形をした富士山が描かれ、手前には3輪の牡丹が描かれています。強い色彩とややグロいデフォルメで、ひと目で片岡球子と分かる個性です。これまでの日本画にはない強烈な画風で、自由な精神が感じられました。

この隣に東山魁夷の作品もありました。


<画室再現>
こちらだけ撮影可能となっていました。今でも葉山に山口蓬春の記念館があります(ブログ休止中に行ったことがありますが、非常に良いところです)
DSC03820_201908200133577a4.jpg

この近くには美術界だけでなく多くの人と交流があったのをボードで解説していました。アートディレクター的な形での関わりで小津安二郎や先述の中村歌右衛門などの名もあり、意外なところでは日本野鳥の会などもありました(師匠である松岡映丘の兄の柳田国男もメンバー) また、映像でこの展示で観てきた流れに沿って山口蓬春の変遷を紹介していました。


<髙島屋所蔵の山口蓬春作品>
最後にタカシマヤと山口蓬春の関わりを示す品が数点並んでいました。

53 山口蓬春 「鳥」
こちらは横浜タカシマヤの団扇の原画で、葉っぱにとまった小鳥が描かれています。1962年の作なので この展示では6章あたりの頃のものです。葉っぱは滲みを活かした色彩と単純化された形態で、やや琳派風に思えるかな。小品ながらも愛らしく、ノベルティとは思えないほどの気品が感じられました。


ということで、後半は特に面白い作品が多かったように思えます。展覧会のタイトル通り、蓬春モダニズム以降も飽くなき挑戦を試みていた様子も伝わってきて予想以上に楽しめました。東京では既に終わってしまいましたが、今後の参考にもなる展示でした。




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