Archive | 2019年10月
今回は前回に引き続き森アーツセンターギャラリーの「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」についてです。後半も撮影可能な作品がいくつかありましたので、一部は写真と共にご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
→ 前編はこちら

【展覧名】
バスキア展 メイド・イン・ジャパン
【公式サイト】
https://www.basquiat.tokyo/
https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/basquiat/index.html
【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2019年9月21日(土)~11月17日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
後半も前半と同じくらいの混雑具合でした。引き続き気に入った作品と共に展示の様子を振り返ってみようと思います。なお、写真を使っているのは全て撮影可能だった作品となります。
ジャン=ミシェル・バスキア 「オニオンガム」

「ONION GUM MAKES YOUR MOUHT TASTE LIKE ONIONS」(玉ねぎガムはあなたの口を玉ねぎ味にする)という言葉が3回繰り返し書かれ、舌を出して辛いものを食べたような顔をしています。右上にはメイドインジャパンの文字もあって、オニオンガムは日本製なのかな?w 解説によるとこの頃アメリカにはメイドインジャパンの家電などが溢れていたらしく、行き渡り過ぎたことを皮肉っているのかも知れません。頭の上で操っているような人もいて日本製品の操り人形になっているイメージのようにも思えました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「メイドインジャパン1」「メイドインジャパン2」

こちらも当時のメイドインジャパン旋風を題材にしたと思われる作品。電話らしきものを持って日本製品でしょうか。こちらも難解な作品ですが、カリカチュア的な肖像となっていました。
この近くには空手をしている人のドローイングもありました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「木」
こちらはポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルとの共作で、中央に木が描かれ その周りにシリンダーや目に「EYE」と書いてある人の横顔が火を吹いています。周りには「WOOD」や「FEET」といった言葉もあり謎めいたシュールな雰囲気となっています。どこをどう共作しているのか分かりませんが、2人は何度か共作を作っていてバスキアはウォーホルを敬愛していたようです。バスキアが売れる前の18歳の時、レストランでウォーホルに出会って自作のポストカードを売ることに成功したそうで、その6年後にはスターダムに登りつめてこの作品を作ったことになります。2人の作風は異なりますが、お互いの才能を認め合っていたのはよく分かりました。
参考記事:アンディ・ウォーホル展:永遠の15分 感想後編(森美術館)
この近くにはウォーホルとの2人展のポスターが2枚ありました。両方とも一見するとボクシングの試合のポスターみたいな感じで、1枚はウォーホルがバスキアの顔にパンチを入れていますw もう1枚は2人でファイティングポーズを取っていて割とサマになってました。
その後はバスキアの日本滞在時の作品などが並んでいました。南青山のレストランCAYの壁に残した絵の一部や、日本で撮った写真(大きな瓦屋根の写真など)が展示されています。また、その先には音楽に関するドローイングなどもあり、その中にジャズのアーティストの名前を入れたりしています。バスキア自身もミュージシャンとして活動していたようで、映像でラップ調の音楽も流していました。(DJの手だけ写ってたりするので本人なのかは分からず…)
ジャン=ミシェル・バスキア 「消防士」

右側は確かに消防士っぽい人物像かな。左側は何故か腹にパンチを入れてて「BOF」っと効果音までついているのがちょっと可笑しいw 塗り残しのような所があったりして、非常に大胆な構成に思えました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「プラスティックのサックス」

断片的に貼り付けたような画面で、いくつか人の顔があります。中央あたりの人が何か吹いているようにも見えるからそれがサックスなのかな?と思ったけど詳細は不明です。(シャツの襟かもしれませんw)
一部をアップすると日本語が書かれています。

トーヨーの折り紙をトレースしたのかな。何箇所か同じように書いてあるけど、一部は おしがみ となってたりしますw 意図は分かりませんが、これも日本との関わりを感じさせました。
近くには日本の五重塔をモチーフにした作品もありました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「シー」
こちらは自らのドローイングを敷き詰めた背景に骸骨のような人物が目に手をあてて座っている様子が描かれた作品です。タイトルの「シー」は法王を示すらしいので、玉座に座る法王と考えることもできそうです。白黒の髑髏姿で描かれているのはちょっと不気味な雰囲気に思えます。前半の展示にも史上最悪と言われる法王アレクサンデル6世を題材にしたものがあったので、法王に対してちょっと批判的な意味合いがあるのかも?と思いましたが、自身の作品を背にしたバスキア自身の自画像と考えることもできるようです。この絵を描いた1985年にはニューヨーク・タイムズマガジンの表紙に載るなど時代の寵児となっていたらしいので、自らを法王に見立てつつ皮肉しているのかもしれませんね。
ジャン=ミシェル・バスキア 「炭素/酸素」

こちらは都市や宇宙開発を想起させるモチーフが並んだ作品。オカルト好きとしては中央の影が宇宙人に見えるw
こちらは一部をアップしたもの。

炭素+酸素→一酸化炭素といった化学式のようなものが描かれているのがタイトルの由来のようです。
こちらも一部をアップしたもの

日本の五重塔も入っています。割とお気に入りのモチーフだったのかな。科学をモチーフにした中に伝統的な建物が入っていて日本的なものを感じました。
この後にあった作品はちょっと作風が変わったものがありました。1986年以降、新しいスタイルに挑戦したそうで、ソ連のグラスノスチ(ゴルバチョフによる情報公開)を皮肉った作品ではかなりシンプルな色面と人物像が描かれていました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題(ドローイング)」

こちらは最後にあった1986年の作品。かなり大きくて壁画のような感じです。これもかなり読み解くのは難しいけど、とにかくHEY!が目につくw
HEY!のあたりのアップ

さらに小さくHEY!HEY!HEY!HEY!と書いてありますw たまにおかしくなってYEHになってるしw 最後まで謎めいた作風でした。
1987年にウォーホルが亡くなって、バスキアはその翌年の1988年に27歳の若さで亡くなりました。展覧会では言及されていませんでしたがヘロインの過剰摂取(オーバードース)が死因となっています。ウォーホルの死によって孤独が深まりヘロインに溺れたと考えられています…。
ということで、私は大満足で図録も購入しました。難解なところもありますがエネルギッシュな作品の数々を観ることができ、展覧会のサブタイトルにある「メイド・イン・ジャパン」についても作品で何度も取り上げられていて、日本との関わりなども伺えました。かなり人気の展示で日によっては待ち時間が発生すると思われますが、素晴らしい展示なので興味がある方は是非足を運ぶことをおすすめします。
→ 前編はこちら

【展覧名】
バスキア展 メイド・イン・ジャパン
【公式サイト】
https://www.basquiat.tokyo/
https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/basquiat/index.html
【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2019年9月21日(土)~11月17日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
後半も前半と同じくらいの混雑具合でした。引き続き気に入った作品と共に展示の様子を振り返ってみようと思います。なお、写真を使っているのは全て撮影可能だった作品となります。
ジャン=ミシェル・バスキア 「オニオンガム」

「ONION GUM MAKES YOUR MOUHT TASTE LIKE ONIONS」(玉ねぎガムはあなたの口を玉ねぎ味にする)という言葉が3回繰り返し書かれ、舌を出して辛いものを食べたような顔をしています。右上にはメイドインジャパンの文字もあって、オニオンガムは日本製なのかな?w 解説によるとこの頃アメリカにはメイドインジャパンの家電などが溢れていたらしく、行き渡り過ぎたことを皮肉っているのかも知れません。頭の上で操っているような人もいて日本製品の操り人形になっているイメージのようにも思えました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「メイドインジャパン1」「メイドインジャパン2」

こちらも当時のメイドインジャパン旋風を題材にしたと思われる作品。電話らしきものを持って日本製品でしょうか。こちらも難解な作品ですが、カリカチュア的な肖像となっていました。
この近くには空手をしている人のドローイングもありました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「木」
こちらはポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルとの共作で、中央に木が描かれ その周りにシリンダーや目に「EYE」と書いてある人の横顔が火を吹いています。周りには「WOOD」や「FEET」といった言葉もあり謎めいたシュールな雰囲気となっています。どこをどう共作しているのか分かりませんが、2人は何度か共作を作っていてバスキアはウォーホルを敬愛していたようです。バスキアが売れる前の18歳の時、レストランでウォーホルに出会って自作のポストカードを売ることに成功したそうで、その6年後にはスターダムに登りつめてこの作品を作ったことになります。2人の作風は異なりますが、お互いの才能を認め合っていたのはよく分かりました。
参考記事:アンディ・ウォーホル展:永遠の15分 感想後編(森美術館)
この近くにはウォーホルとの2人展のポスターが2枚ありました。両方とも一見するとボクシングの試合のポスターみたいな感じで、1枚はウォーホルがバスキアの顔にパンチを入れていますw もう1枚は2人でファイティングポーズを取っていて割とサマになってました。
その後はバスキアの日本滞在時の作品などが並んでいました。南青山のレストランCAYの壁に残した絵の一部や、日本で撮った写真(大きな瓦屋根の写真など)が展示されています。また、その先には音楽に関するドローイングなどもあり、その中にジャズのアーティストの名前を入れたりしています。バスキア自身もミュージシャンとして活動していたようで、映像でラップ調の音楽も流していました。(DJの手だけ写ってたりするので本人なのかは分からず…)
ジャン=ミシェル・バスキア 「消防士」

右側は確かに消防士っぽい人物像かな。左側は何故か腹にパンチを入れてて「BOF」っと効果音までついているのがちょっと可笑しいw 塗り残しのような所があったりして、非常に大胆な構成に思えました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「プラスティックのサックス」

断片的に貼り付けたような画面で、いくつか人の顔があります。中央あたりの人が何か吹いているようにも見えるからそれがサックスなのかな?と思ったけど詳細は不明です。(シャツの襟かもしれませんw)
一部をアップすると日本語が書かれています。

トーヨーの折り紙をトレースしたのかな。何箇所か同じように書いてあるけど、一部は おしがみ となってたりしますw 意図は分かりませんが、これも日本との関わりを感じさせました。
近くには日本の五重塔をモチーフにした作品もありました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「シー」
こちらは自らのドローイングを敷き詰めた背景に骸骨のような人物が目に手をあてて座っている様子が描かれた作品です。タイトルの「シー」は法王を示すらしいので、玉座に座る法王と考えることもできそうです。白黒の髑髏姿で描かれているのはちょっと不気味な雰囲気に思えます。前半の展示にも史上最悪と言われる法王アレクサンデル6世を題材にしたものがあったので、法王に対してちょっと批判的な意味合いがあるのかも?と思いましたが、自身の作品を背にしたバスキア自身の自画像と考えることもできるようです。この絵を描いた1985年にはニューヨーク・タイムズマガジンの表紙に載るなど時代の寵児となっていたらしいので、自らを法王に見立てつつ皮肉しているのかもしれませんね。
ジャン=ミシェル・バスキア 「炭素/酸素」

こちらは都市や宇宙開発を想起させるモチーフが並んだ作品。オカルト好きとしては中央の影が宇宙人に見えるw
こちらは一部をアップしたもの。

炭素+酸素→一酸化炭素といった化学式のようなものが描かれているのがタイトルの由来のようです。
こちらも一部をアップしたもの

日本の五重塔も入っています。割とお気に入りのモチーフだったのかな。科学をモチーフにした中に伝統的な建物が入っていて日本的なものを感じました。
この後にあった作品はちょっと作風が変わったものがありました。1986年以降、新しいスタイルに挑戦したそうで、ソ連のグラスノスチ(ゴルバチョフによる情報公開)を皮肉った作品ではかなりシンプルな色面と人物像が描かれていました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題(ドローイング)」

こちらは最後にあった1986年の作品。かなり大きくて壁画のような感じです。これもかなり読み解くのは難しいけど、とにかくHEY!が目につくw
HEY!のあたりのアップ

さらに小さくHEY!HEY!HEY!HEY!と書いてありますw たまにおかしくなってYEHになってるしw 最後まで謎めいた作風でした。
1987年にウォーホルが亡くなって、バスキアはその翌年の1988年に27歳の若さで亡くなりました。展覧会では言及されていませんでしたがヘロインの過剰摂取(オーバードース)が死因となっています。ウォーホルの死によって孤独が深まりヘロインに溺れたと考えられています…。
ということで、私は大満足で図録も購入しました。難解なところもありますがエネルギッシュな作品の数々を観ることができ、展覧会のサブタイトルにある「メイド・イン・ジャパン」についても作品で何度も取り上げられていて、日本との関わりなども伺えました。かなり人気の展示で日によっては待ち時間が発生すると思われますが、素晴らしい展示なので興味がある方は是非足を運ぶことをおすすめします。
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日付が変わって昨日となりましたが、金曜日に午後休みを取って六本木の森アーツセンターギャラリーで「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」を観てきました。充実の内容となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
バスキア展 メイド・イン・ジャパン
【公式サイト】
https://www.basquiat.tokyo/
https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/basquiat/index.html
【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2019年9月21日(土)~11月17日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
チケットを買うのに10分程度の待ちがあり お客さんはかなり多かったですが、作品が大きめなので自分のペースで観ることができました。とは言え、開催2日目(休日)に行った時は入場1時間待ちだったので、休日はかなり混むと思われます。(わざわざ平日の休みを取ったのは混むのが嫌だったからですw)
さて、この展示は1980年代のアメリカで活躍し若くして亡くなったジャン=ミシェル・バスキアの日本初の本格的な展覧会となります。バスキアは僅か10年の間に新たな具象表現的な要素を取り入れた3000点を越えるドローイングと1000点以上の絵画を残したそうで、生前に日本を訪れて日本をモチーフにした作品もあるようです。2017年に当時ZOZOの社長だった前澤氏がバスキアを123億円で購入したことで日本での知名度も一気に上がったように思えますが、今回の展示にはその作品も出品されていました。一部は撮影可能となっていましたので、いくつか写真を使いながら気になった作品をご紹介していこうと思います。
まず入口で音声ガイドを無料で貸し出していました。入場料が高いけど音声ガイド代もインクルードされていると思えば相場通りかなw この展示には章立て、作品リスト、解説のキャプションの類は無く 理解しづらい部分もありますので、音声ガイドが非常に参考になりました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題」
こちらは王冠のようなものをかぶり、手に黄色い杖を持った王様らしき人物を描いた作品です。グチャグチャっと渦巻くような筆致で落書きのような印象も受けますw しかし色も描写も鮮烈な個性があり、ひと目でバスキアと分かる特徴が感じられました。この後も同様の作風が多く並んでいるので典型的な作風なのかもしれません。 この絵の意図は分かりませんが、何か皮肉めいたものがあるように思いました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題(フライドチキン)」
こちらは全体的にオレンジがかった画面に男性の顔や沢山の文字が書かれた作品です。その中に「POLLO FRITO」という文字があり、これはスペイン語でフライドチキンのことだそうです。と、その単語の意味が分かったところで絵の解釈ができるわけではないのですが、バスキアの住むブルックリンの喧騒が詰められたような感じでしょうか。スペイン語なのはバスキアの父はハイチ人、母はプエルトリコ人である為のようで、たまにその出自を思わせるモチーフの作品もあったりします。解説によると、21歳の頃に描いたこの作品が世界進出のきっかけになったとのことでした。
ジャン=ミシェル・バスキア 「ポーク」
こちらは赤いドアの上に絵を描いた作品で、上部の6つの窓枠の中にはマークや人の顔、文字などが描かれています。一方、ドアの胴体部分にはアフロヘアのような黒人らしき顔が描かれていて、絵の一部にPorkと書いてあるのが作品名となったようです。ドアに描くというのが破天荒な印象ですが、これはストリートで拾ってきたドアだそうです。バスキアはストリートにこだわったアーティストでそれが端的に現れているとも言えそうです。また、この作品より前の時期は詩を中心に活動していたようなので、過渡期の貴重な作例のようでした。
ジャン=ミシェル・バスキア 「フーイー」

こちらは撮影可能でした。タイトルを日本語訳するなら愚か者という意味ですが、左下の方にいる人がちょっとそれっぽいかなw 王冠のようなものがいくつかあって意味深ですが読み解けませんでした。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題」

こちらは今回のポスターにもなっている作品で、前澤氏が購入したことで話題になりました。スプレーなどを使って人の顔を描いていますが、具象のような抽象のような。ストリートの落書きのようでもあり、強烈な色彩と髑髏を思わせる顔で一度観たら忘れられないインパクトです。
ジャン=ミシェル・バスキア 「ナポレオン」

VERSUS PORK(対 豚肉?)、SHOE POLISH(靴磨き)の打ち消し、そして100万円…。どこがナポレオンなのかも含めて謎だらけですw しかし意味を離れて色と文字のバランスだけ観るとリズムがあるように思えました。
その先には無数のドローイングが並んでいました。スケッチブックだけでなく紙の切れっ端のようなものにまで描いています。一見すると子供の絵のようなものもあり、太い輪郭と歪んだ線や飛び出すような色彩が特徴です。解説によるとバスキアは子供の頃から絵が好きで、漫画家になりたかったそうです。バスキアの母親は美術館に連れて行ったりして後押ししてくれたとのことでした。そのせいかゴッホをモチーフにして「ゴッホはアムステルダムの蝋人形館にいる」と書かれた作品もありました。リスペクトなのか皮肉なのか…w
少し先には作品制作している映像もありました。スプレーを使って下書きも無くささっと即興で描いているように思えます。本当に壁に落書きしているようなw 詩を書いていただけあって絵画作品でも文字を多用していて、映像の中でも文字を書くシーンが多かったように思います。
ジャン=ミシェル・バスキア 「自画像」

こちらも何かの板のようなものに描かれた作品。意地悪そうにニヤっと笑うシルエットが自画像で、バスキアは実際にこういうドレッドヘアをしています。
こちらは右側の部分のアップ

これについては解説がなかったですが、恐らく拾ってきた王冠だと思います。何故これを無数に貼り付けたか分かりませんが、アンディ・ウォーホルと仲が良かったのでポップアート的な表現にも思えました。王冠はバスキアの作品でよく出てくるのでシンボル的な意味があるのかな?
この隣にはモナリザをモチーフにした作品もありました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題(100円)」
こちらは中央に赤い王冠と¥マークが描かれ、上部に「100YEN」 下部に「DUNCE CAP」と文字が書かれた作品です。これはバスキアが初めて日本を訪れた1982年に描いたもので、この頃の日本経済はバブルに向かって絶好調でした。「DUNCE CAP」というのはアメリカの学校で怠け者に罰として被らされた帽子のことらしいので、私の解釈としては ワーカーホリックとまで言われた日本がアメリカを脅かすようになったのは、怠惰による罰と考えたのかも?と思いました。バスキアの作品は一見すると子供の落書きのようですが詩的で難解な文字の組み合わせが深い意味があるように思えます。
この近くには200YENと書かれた「New」と「Fake」というお互い似たような作品もありました。
ということで中途半端なところですが長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。作品の理解が難しいものの大型作品やドローイングなど予想以上の充実ぶりで、各作品が圧倒的なパワーを放っていました。後半も日本との関係を思わせる作品や、撮影可能な作品がありましたので次回は残りについてご紹介の予定です。
→ 後編はこちら

【展覧名】
バスキア展 メイド・イン・ジャパン
【公式サイト】
https://www.basquiat.tokyo/
https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/basquiat/index.html
【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2019年9月21日(土)~11月17日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
チケットを買うのに10分程度の待ちがあり お客さんはかなり多かったですが、作品が大きめなので自分のペースで観ることができました。とは言え、開催2日目(休日)に行った時は入場1時間待ちだったので、休日はかなり混むと思われます。(わざわざ平日の休みを取ったのは混むのが嫌だったからですw)
さて、この展示は1980年代のアメリカで活躍し若くして亡くなったジャン=ミシェル・バスキアの日本初の本格的な展覧会となります。バスキアは僅か10年の間に新たな具象表現的な要素を取り入れた3000点を越えるドローイングと1000点以上の絵画を残したそうで、生前に日本を訪れて日本をモチーフにした作品もあるようです。2017年に当時ZOZOの社長だった前澤氏がバスキアを123億円で購入したことで日本での知名度も一気に上がったように思えますが、今回の展示にはその作品も出品されていました。一部は撮影可能となっていましたので、いくつか写真を使いながら気になった作品をご紹介していこうと思います。
まず入口で音声ガイドを無料で貸し出していました。入場料が高いけど音声ガイド代もインクルードされていると思えば相場通りかなw この展示には章立て、作品リスト、解説のキャプションの類は無く 理解しづらい部分もありますので、音声ガイドが非常に参考になりました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題」
こちらは王冠のようなものをかぶり、手に黄色い杖を持った王様らしき人物を描いた作品です。グチャグチャっと渦巻くような筆致で落書きのような印象も受けますw しかし色も描写も鮮烈な個性があり、ひと目でバスキアと分かる特徴が感じられました。この後も同様の作風が多く並んでいるので典型的な作風なのかもしれません。 この絵の意図は分かりませんが、何か皮肉めいたものがあるように思いました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題(フライドチキン)」
こちらは全体的にオレンジがかった画面に男性の顔や沢山の文字が書かれた作品です。その中に「POLLO FRITO」という文字があり、これはスペイン語でフライドチキンのことだそうです。と、その単語の意味が分かったところで絵の解釈ができるわけではないのですが、バスキアの住むブルックリンの喧騒が詰められたような感じでしょうか。スペイン語なのはバスキアの父はハイチ人、母はプエルトリコ人である為のようで、たまにその出自を思わせるモチーフの作品もあったりします。解説によると、21歳の頃に描いたこの作品が世界進出のきっかけになったとのことでした。
ジャン=ミシェル・バスキア 「ポーク」
こちらは赤いドアの上に絵を描いた作品で、上部の6つの窓枠の中にはマークや人の顔、文字などが描かれています。一方、ドアの胴体部分にはアフロヘアのような黒人らしき顔が描かれていて、絵の一部にPorkと書いてあるのが作品名となったようです。ドアに描くというのが破天荒な印象ですが、これはストリートで拾ってきたドアだそうです。バスキアはストリートにこだわったアーティストでそれが端的に現れているとも言えそうです。また、この作品より前の時期は詩を中心に活動していたようなので、過渡期の貴重な作例のようでした。
ジャン=ミシェル・バスキア 「フーイー」

こちらは撮影可能でした。タイトルを日本語訳するなら愚か者という意味ですが、左下の方にいる人がちょっとそれっぽいかなw 王冠のようなものがいくつかあって意味深ですが読み解けませんでした。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題」

こちらは今回のポスターにもなっている作品で、前澤氏が購入したことで話題になりました。スプレーなどを使って人の顔を描いていますが、具象のような抽象のような。ストリートの落書きのようでもあり、強烈な色彩と髑髏を思わせる顔で一度観たら忘れられないインパクトです。
ジャン=ミシェル・バスキア 「ナポレオン」

VERSUS PORK(対 豚肉?)、SHOE POLISH(靴磨き)の打ち消し、そして100万円…。どこがナポレオンなのかも含めて謎だらけですw しかし意味を離れて色と文字のバランスだけ観るとリズムがあるように思えました。
その先には無数のドローイングが並んでいました。スケッチブックだけでなく紙の切れっ端のようなものにまで描いています。一見すると子供の絵のようなものもあり、太い輪郭と歪んだ線や飛び出すような色彩が特徴です。解説によるとバスキアは子供の頃から絵が好きで、漫画家になりたかったそうです。バスキアの母親は美術館に連れて行ったりして後押ししてくれたとのことでした。そのせいかゴッホをモチーフにして「ゴッホはアムステルダムの蝋人形館にいる」と書かれた作品もありました。リスペクトなのか皮肉なのか…w
少し先には作品制作している映像もありました。スプレーを使って下書きも無くささっと即興で描いているように思えます。本当に壁に落書きしているようなw 詩を書いていただけあって絵画作品でも文字を多用していて、映像の中でも文字を書くシーンが多かったように思います。
ジャン=ミシェル・バスキア 「自画像」

こちらも何かの板のようなものに描かれた作品。意地悪そうにニヤっと笑うシルエットが自画像で、バスキアは実際にこういうドレッドヘアをしています。
こちらは右側の部分のアップ

これについては解説がなかったですが、恐らく拾ってきた王冠だと思います。何故これを無数に貼り付けたか分かりませんが、アンディ・ウォーホルと仲が良かったのでポップアート的な表現にも思えました。王冠はバスキアの作品でよく出てくるのでシンボル的な意味があるのかな?
この隣にはモナリザをモチーフにした作品もありました。
ジャン=ミシェル・バスキア 「無題(100円)」
こちらは中央に赤い王冠と¥マークが描かれ、上部に「100YEN」 下部に「DUNCE CAP」と文字が書かれた作品です。これはバスキアが初めて日本を訪れた1982年に描いたもので、この頃の日本経済はバブルに向かって絶好調でした。「DUNCE CAP」というのはアメリカの学校で怠け者に罰として被らされた帽子のことらしいので、私の解釈としては ワーカーホリックとまで言われた日本がアメリカを脅かすようになったのは、怠惰による罰と考えたのかも?と思いました。バスキアの作品は一見すると子供の落書きのようですが詩的で難解な文字の組み合わせが深い意味があるように思えます。
この近くには200YENと書かれた「New」と「Fake」というお互い似たような作品もありました。
ということで中途半端なところですが長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。作品の理解が難しいものの大型作品やドローイングなど予想以上の充実ぶりで、各作品が圧倒的なパワーを放っていました。後半も日本との関係を思わせる作品や、撮影可能な作品がありましたので次回は残りについてご紹介の予定です。
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2週間ほど前に北浦和の埼玉県立近代美術館で「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」を観てきました。

【展覧名】
DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=414
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年9月14日(土)~11月4日(月・振休)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_②_3_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は1960年代末から70年代にかけての日本の「もの派」と呼ばれるアートをテーマに、当時の映像や資料と共にその活動状況を振り返るという内容となっています。タイトルに「ポスト工業化社会の美術」とあるように、工業製品を用いたり素材感を前面に出した作品が多く、まさに「もの」が主体となっているような感じです。章分けは特に無く解説も少なめなので理解するのが難しかったですが、簡単にその様子を振り返ってみたいと思います。
まずは金村修の大きなモノクロ写真が並んでいて、いずれも都市のゴチャゴチャした光景を写した作品となっていました。路地の看板やアパート、電信柱などが写っていて無機質で工業的な雰囲気です。また、街中の様子を撮った映像もあり、こちらは場面がよく切り替わって目がチカチカするw 人はあまり映らず、写真と同様に廃墟のような印象を受け、意図は分からないものの不安を覚えるような作風でした。
続いては関根伸夫のコーナーで、「位相-大地」という作品の写真を中心に紹介していました。この作品は巨大な円筒の土の塊(直径220cm×高さ270cm)と、それと同じサイズの穴が地面に空いているという作品で、まるで地面から円筒をくり抜いて脇に置いたような感じです。近くでその当時の制作の様子を映像を流していて、ツルハシとシャベルを使って掘って 隣に置いた木組みの円筒形の型に入れていくような工程となっていました。流石に土を入れるのはクレーンを使っていましたが、かなりの労力がかかっています。完成すると側面んは地層のような模様が出来ているのがちょっと不思議でした。
参考記事:日本の70年代 1968-1982 感想後編(埼玉県立近代美術館)
その先には関根伸夫の?型の椅子やモアイのような彫刻、様々なアイディアノートなどがありました。万里の長城に「位相-大地」を作る構想などがあって、これは実現したら面白かったかもw
さらに「位相 No.9」というメビウスの輪のような立体作品があり、壁から飛び出すような感じで赤・黄色・オレンジのグラデーションが付けられていました。土塊の位相とはだいぶ違って未来的な印象を受けました。
その後は再び関根伸夫の作家活動に関する資料が並び、「位相」以前の作品や展覧会の設置の様子、環境美術研究所に関する資料、会社の資料や計画書、都庁広場の「水の神殿」というオブジェの設計図、見積書、志木駅東口立体遊歩道のモニュメントの写真や設計図、関根伸夫の刊行物(自伝、関根伸夫が選ぶ庭10選)、個人的な資料(年賀状、手帳、子供の頃の記念写真)などなど、割とカオスな内容ですw この辺は関根伸夫に詳しい人でないとあまり有難味が実感できないような…
その次は小清水漸のテーブルや楕円を半分にしたような「鉄 I」という立体作品や、吉田克朗の「赤・カンヴァス・糸など」という抽象画の垂れ幕のような大型作品がありました。いずれも素材感を押し出したような作品で、モノ派という言葉が感覚で理解できたように思います。近くには他にも数人の立体作品やメイキングの写真などもありました。
その先の通路では4つの映像があり、高松次郎や野村仁の作品を紹介していました。やはり質感・素材感がテーマになっている作品が多いようで、野村仁などはこの後にも作品が出てきます。また、通路は小松浩子の「内方浸透現象」という白黒写真が壁中に貼られているだけでなく床にまで敷き詰めてあって、その上を歩いて鑑賞するようになっていました。工業製品や工場を写したと思われる機械的な写真が多く、無機質で雑多な廃墟に迷い込んだかのような感覚になります。垂れ幕や床には映像も写っていて、異様な展示風景となっていまいた。
次の部屋には野村仁の「Tardiology」という京都市美術館の前に置かれたダンボール4階建ての建造物の写真が並んでいました。最初はしっかりとそびえ立っているのですが、徐々にへたってきて横の壁が壊れて行き、自重を支えきれず潰れてしまいます。最後はただのゴミの山のようになっていて、時間の流れと形態の移ろいを感じさせました。近くにはスライドでこの作品をクレーンなどを使って建てている様子もありました。
その先には関根伸夫の「空相ー石を切る」という石を水平に切って表面を鏡張りした作品がいくつか並んでいました。見た目は椅子っぽいw 自然物を使いながらスパッと切れた断面が人工的な印象を受けました。
最後の部屋は様々な作家の作品が並んでいました。柏原えつとむの「これは本である」という本は、本文中に「THIS IS A BOOK」とか「コレハ本デアル」といったトポロジー的な言葉が延々と書いてありますw 本だと主張しているのに、本とは思えない内容の無さという矛盾が面白いw また、 飯田昭二の「Paper」は「Paper」と印字された紙がぐちゃぐちゃになって山になっています。これもPaperと主張しているけどゴミにしか見えないのが皮肉に思えました。 最後に野村仁の「Dryice」という記録映像があり、正六面体のドライアイスを並べて、それが小さくなっていく様子を映し出していました。野村仁の作品は時間の経過を見て取れる作品が多いので一種の実験を観ているような面白さがあります。
参考記事:
これは本ではない―ブック・アートの広がり (うらわ美術館)
野村仁 変化する相―時・場・身体 (国立新美術館)
ということで、しっかり理解したかは怪しいですが既存のアートの範疇を越えるようなスケールの大きな作品を観ることができました。7年前に同じ埼玉県立近代美術館で観た展示と似た部分もあったかな。現代アートに興味がある方向けの展示だと思います。
おまけ:
今回の常設は以前見た内容と同じようだったので今回は見ませんでした。ぐるっとパスだと常設展は別料金になるので…w
参考記事:2019 MOMASコレクション 第2期 (埼玉県立近代美術館)

【展覧名】
DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術
【公式サイト】
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=414
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2019年9月14日(土)~11月4日(月・振休)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_②_3_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は1960年代末から70年代にかけての日本の「もの派」と呼ばれるアートをテーマに、当時の映像や資料と共にその活動状況を振り返るという内容となっています。タイトルに「ポスト工業化社会の美術」とあるように、工業製品を用いたり素材感を前面に出した作品が多く、まさに「もの」が主体となっているような感じです。章分けは特に無く解説も少なめなので理解するのが難しかったですが、簡単にその様子を振り返ってみたいと思います。
まずは金村修の大きなモノクロ写真が並んでいて、いずれも都市のゴチャゴチャした光景を写した作品となっていました。路地の看板やアパート、電信柱などが写っていて無機質で工業的な雰囲気です。また、街中の様子を撮った映像もあり、こちらは場面がよく切り替わって目がチカチカするw 人はあまり映らず、写真と同様に廃墟のような印象を受け、意図は分からないものの不安を覚えるような作風でした。
続いては関根伸夫のコーナーで、「位相-大地」という作品の写真を中心に紹介していました。この作品は巨大な円筒の土の塊(直径220cm×高さ270cm)と、それと同じサイズの穴が地面に空いているという作品で、まるで地面から円筒をくり抜いて脇に置いたような感じです。近くでその当時の制作の様子を映像を流していて、ツルハシとシャベルを使って掘って 隣に置いた木組みの円筒形の型に入れていくような工程となっていました。流石に土を入れるのはクレーンを使っていましたが、かなりの労力がかかっています。完成すると側面んは地層のような模様が出来ているのがちょっと不思議でした。
参考記事:日本の70年代 1968-1982 感想後編(埼玉県立近代美術館)
その先には関根伸夫の?型の椅子やモアイのような彫刻、様々なアイディアノートなどがありました。万里の長城に「位相-大地」を作る構想などがあって、これは実現したら面白かったかもw
さらに「位相 No.9」というメビウスの輪のような立体作品があり、壁から飛び出すような感じで赤・黄色・オレンジのグラデーションが付けられていました。土塊の位相とはだいぶ違って未来的な印象を受けました。
その後は再び関根伸夫の作家活動に関する資料が並び、「位相」以前の作品や展覧会の設置の様子、環境美術研究所に関する資料、会社の資料や計画書、都庁広場の「水の神殿」というオブジェの設計図、見積書、志木駅東口立体遊歩道のモニュメントの写真や設計図、関根伸夫の刊行物(自伝、関根伸夫が選ぶ庭10選)、個人的な資料(年賀状、手帳、子供の頃の記念写真)などなど、割とカオスな内容ですw この辺は関根伸夫に詳しい人でないとあまり有難味が実感できないような…
その次は小清水漸のテーブルや楕円を半分にしたような「鉄 I」という立体作品や、吉田克朗の「赤・カンヴァス・糸など」という抽象画の垂れ幕のような大型作品がありました。いずれも素材感を押し出したような作品で、モノ派という言葉が感覚で理解できたように思います。近くには他にも数人の立体作品やメイキングの写真などもありました。
その先の通路では4つの映像があり、高松次郎や野村仁の作品を紹介していました。やはり質感・素材感がテーマになっている作品が多いようで、野村仁などはこの後にも作品が出てきます。また、通路は小松浩子の「内方浸透現象」という白黒写真が壁中に貼られているだけでなく床にまで敷き詰めてあって、その上を歩いて鑑賞するようになっていました。工業製品や工場を写したと思われる機械的な写真が多く、無機質で雑多な廃墟に迷い込んだかのような感覚になります。垂れ幕や床には映像も写っていて、異様な展示風景となっていまいた。
次の部屋には野村仁の「Tardiology」という京都市美術館の前に置かれたダンボール4階建ての建造物の写真が並んでいました。最初はしっかりとそびえ立っているのですが、徐々にへたってきて横の壁が壊れて行き、自重を支えきれず潰れてしまいます。最後はただのゴミの山のようになっていて、時間の流れと形態の移ろいを感じさせました。近くにはスライドでこの作品をクレーンなどを使って建てている様子もありました。
その先には関根伸夫の「空相ー石を切る」という石を水平に切って表面を鏡張りした作品がいくつか並んでいました。見た目は椅子っぽいw 自然物を使いながらスパッと切れた断面が人工的な印象を受けました。
最後の部屋は様々な作家の作品が並んでいました。柏原えつとむの「これは本である」という本は、本文中に「THIS IS A BOOK」とか「コレハ本デアル」といったトポロジー的な言葉が延々と書いてありますw 本だと主張しているのに、本とは思えない内容の無さという矛盾が面白いw また、 飯田昭二の「Paper」は「Paper」と印字された紙がぐちゃぐちゃになって山になっています。これもPaperと主張しているけどゴミにしか見えないのが皮肉に思えました。 最後に野村仁の「Dryice」という記録映像があり、正六面体のドライアイスを並べて、それが小さくなっていく様子を映し出していました。野村仁の作品は時間の経過を見て取れる作品が多いので一種の実験を観ているような面白さがあります。
参考記事:
これは本ではない―ブック・アートの広がり (うらわ美術館)
野村仁 変化する相―時・場・身体 (国立新美術館)
ということで、しっかり理解したかは怪しいですが既存のアートの範疇を越えるようなスケールの大きな作品を観ることができました。7年前に同じ埼玉県立近代美術館で観た展示と似た部分もあったかな。現代アートに興味がある方向けの展示だと思います。
おまけ:
今回の常設は以前見た内容と同じようだったので今回は見ませんでした。ぐるっとパスだと常設展は別料金になるので…w
参考記事:2019 MOMASコレクション 第2期 (埼玉県立近代美術館)
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前回ご紹介した展示を見る前に新橋・汐留のパナソニック汐留美術館で「ラウル・デュフィ展― 絵画とテキスタイル・デザイン ―」を観てきました。

【展覧名】
ラウル・デュフィ展― 絵画とテキスタイル・デザイン ―
【公式サイト】
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/19/191005/index.html
【会場】パナソニック汐留美術館
【最寄】新橋駅/汐留駅
【会期】2019年10月5日(土)~12月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構混み合っていて、狭い場所では混雑感がありました。それでも少し待てば概ね自分のペースで観ることができるくらいでした。
さて、この展示はフォーヴィスムの画家ラウル・デュフィの名をタイトルに冠していますが、よく知られる絵画作品よりもテキスタイルの仕事を中心にした一風変わった内容となっています。デュフィはポール・ポワレとの協業やリヨンの絹織物製造業ビアンキーニ=フェリエ社のために1912年から28年までテキスタイルのデザインを提供していたようで、上流階級の女性たちを魅了し大評判を得ていたそうです。この展示ではそうした品をモチーフのテーマごとに章分けしていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
アングラドン美術館 【南仏編 アヴィニョン】
【番外編 フランス旅行】 パリ市立近代美術館
ラウル・デュフィ展 ~くり返す日々の悦び~ (三鷹市美術ギャラリー)
<第1章 絵画 生きる喜び 陽光、海、そして音楽>
まずは絵画作品のコーナーです。今回の展示では初期から晩年まで16点の絵画作品が出品されていました。初期は印象派に影響を受けた作風で、マティスの作品と出会ったことでフォーヴィスムへと傾倒していき、セザンヌからも影響を受けたようです。1920年前後から南仏のヴァンスに滞在して制作に没頭し、華やかなテーマの作品を多く残しました。ここにはそうした特徴が観られる代表的な作風の作品が並んでいました。
1 ラウル・デュフィ 「グラン・ブルヴァールのカーニヴァル」
こちらはフランスの街角で行われているカーニヴァルを描いた作品で、粗くザラついたマチエールとなっています。一見して印象派からの影響が観られるので初期作品じゃないかな。奥に大きな建物にフランスの国旗が掲げられ、人々が練り歩いていて 賑わう様子が伝わってきます。全体的に暗めの色調なのは冬だからのようです。まだデュフィの個性は発揮されていませんが、都会的なセンスが感じられるのは流石でした。
3 ラウル・デュフィ 「サン=タドレスの大きな浴女」
こちらは海と海岸沿いの町を背景に、水着の女性が描かれています。女性はまるで遠近感を無視したかのような大きさで、ボリューム感のある体つきをしているので迫りくる感じがしますw 全体的に明るく素早い筆致で、色面と輪郭を使って表されているので勢いも感じられました。解説によると、この水着はココ・シャネルが提案したパンツスタイルの水着だそうで、当時は新しいファッションだったのかも。色鮮やかで大胆な作品です。
今回の油彩は割と見覚えがある作品が多いかな。国内のデュフィ作品はそれほど多くないので必然ではありますが…
6 ラウル・デュフィ 「ヴェルサイユ宮殿風景」
こちらは横長の画面で、奥にヴェルサイユ宮殿があり手前に泉のある光景となっています。空は青く宮殿は赤みがかっていて、対比的な色使いが目に鮮やかです。こちらも素早い筆致ですが、建物などの形態はしっかりしていて窓や柱にリズム感がありました。
5 ラウル・デュフィ 「ニースの窓辺」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品です。ニースの浜辺が見えるホテルの一室を描いた作品で、室内と眺望が両方見える光景となっています。この部屋はマティスも描いた部屋と考えられるようで、題材的にもマティスっぽさを感じるオマージュ的な作品です。全体的に青みがかっていて、左右の開け放たれた窓から見える海と空が非常に爽やかで開放的です。部屋の中まで色調を合わせているなど、現実よりも色の明るさを重視しているように思えました。
参考記事:ニースの写真と案内 【南仏編 ニース】
10 ラウル・デュフィ 「オーケストラ」
こちらはオーケストラの演奏の様子を描いた作品で、見下ろすような視点となっています。全体的に簡略化されていて、指揮者の身振りやティンパニー奏者の構えなどからは動きが感じられ、その流麗なフォルムが音楽の流れのように思えます。デュフィは幼い頃から音楽好きで、多くの音楽関連の作品を残しています。この作品にも音楽への愛が満ちていました。
この辺には音楽を主題にした作品がいくつか並んでいました。
<第2章 モードとの出会い>
続いてはモードとの出会いに関するコーナーです。デュフィは1910年に詩人のアポリネールから依頼されて『動物詩集またはオルフェウスの行列』への挿絵を木版で制作しました。この作品はドラマチックな明暗表現とモダンで簡潔な構図で表されたもので、こうしたグラフィックの仕事を観たデザイナーのポール・ポワレは、高く評価してレターヘッドを依頼したり協働して布地の開発を始めるようになったようです。この活動は短期間のものだったようですが、テキスタイル・デザインに関心を深めたデュフィは1912年にリヨンにあるビアンキーニ=フェリエ社と契約して、布地の図案を提供することになっていきました。この章ではそうした時期の作品が並んでいました。
R2 ラウル・デュフィ 「動物詩集またはオルフェウスの行列」(複製)
こちらがアポリネールに依頼されて作った版画で、フクロウ、亀と竪琴、馬(ペガサス)、果物とハツカネズミ、象などが描かれたページが展示されていました。いずれも白黒で彫りの太い大胆な作風で、素朴で力強い印象を受けます。油彩などとはかなり作風が違うように思えますが、単純化の仕方が面白く感じられました。
24 ラウル・デュフィ 「ペガサス」
こちらは緑地に赤と黄色で表されたテキスタイルで、先程の「動物詩集またはオルフェウスの行列」に描かれていた馬によく似ている姿となっています。パターン化されて同じ絵柄が連続しているのが布地らしい所で、ジャングルの中にいるような雰囲気がありました。
この辺からはテキスタイルが並んでいます。モチーフが単純化されて 繰り返される図様となっていて、色違いバージョンなども展示されていました。「動物詩集またはオルフェウスの行列」からの引用と思われるものが多かったように思えました。
35 ラウル・デュフィ 「仔象(下絵)」
こちらは象と仔象が椰子の木の下で戯れるような姿が描かれた原画です。全体的に色面を使って表現していて、植物の葉の形が象の身体に重なっているような独特の手法となっています。色違いのバージョンがいくつかあり、少ない色数でも豊かな色彩に感じられました。
17 原案:ポール・ポワレ、制作:モンジ・ギバン 「イヴニング・コート≪ペルシア≫」 ★こちらで観られます
こちらはポール・ポワレがデザインしたコートで、南方系の植物柄の布を使ってガウンのような形をしています。モード界では「着物のライン」と表現されたようで、ゆったりした印象を受けるかな。白黒の模様が何とも大胆で、コートの形とよく合っているように思えました。
11 ラウル・デュフィ 「公式レセプション」
こちらは油彩で、1925年のアール・デコ博でポール・ポワレ館の展示のために制作した14枚の壁掛けのうちの2枚を後に再構築したもので、元の絵に描かれていた人物がこの絵ではホールのような所で談笑している様子となっています。タキシードや軍服の男性、ドレスの女性などが集う華やかな社交界といった感じで、筆致は流れるようで色も鮮やかです。まさにデュフィの都会的センスが凝縮されたような作品でした。
この辺にはポール・ポワレの写真などもありました。
R17-22 「ビアンキーニ=フェリエ社の布地用版木」
こちらは布地用の版木で、細かい彫刻で模様を作っています。こうした版木を観る機会は少ないので 貴重なものではないかと思います。近くにはテキスタイルのサンプル帳などもあり、テキスタイル制作の様子なども伺えました。
<第3章 花々と昆虫>
続いては花や昆虫をモチーフにしたテキスタイルが並ぶコーナーです。デュフィは1912~28年の間、テキスタイルに本格的に取り組んだそうで、花や蝶は大きな人気となったようです。ここにはそうしたモチーフの作品が並んでいました。
59 ラウル・デュフィ 「薔薇」
こちらは赤とピンクの薔薇が並ぶテキスタイルです。よく観ると4つセットで同じ絵柄が繰り返し並んでいるのですが、そうとは感じさせない広がりがあるように思えます。簡略化されても可憐な印象の図像も見事でした。
この近くにあった「薔薇と花」というテキスタイルも好みで、葉っぱや花の形が滑らかな曲線で色が重なりある美しい作品でした。また、この付近の床には花柄のデザインがプロジェクションマッピングのように投影されていました。
63 ラウル・デュフィ 「野の花(下絵)」
こちらは白や赤の花々が並ぶテキスタイルの下絵です。下絵なのにパターン化されていて同じ絵柄が繰り返されています。色の対比が鮮やかで、可愛らしい花となっていました。
この辺はグワッシュの下絵が並んでいました。色違いで同じ図像を4パターン描いた品もあります。
16 ラウル・デュフィ 「花束」
こちらは大きな油彩の静物画で、白い花瓶に入った白い花と大きな葉っぱを描いています。背景は薄い緑色となっているので明るい印象を受けるかな。色面と輪郭が少しズレているところが多く勢いを感じました。
81 ドレス・デザイン、制作:オリヴィエ・ラピドス 「ドレス テキスタイル≪星空の花≫」
こちらは胸元がV字になったドレスで、大ぶりの花の模様が灰色と白のモノクロで表されています。モダンで落ち着きが感じられ、裾の長いドレスの形は華麗で気品ある雰囲気となっていました。
96 ラウル・デュフィ 「蚕」
こちらは蚕がぎっしり並んだ柄のテキスタイルです。整然と幼虫・成虫・桑の葉が並んでいるのですが、ちょっとキモいw 絹をイメージさせるけど正直苦手な絵柄でした。色違いもいくつかあって人気があったのかな??
<第4章 モダニティ>
最後はダンスホールやスポーツする女性など近代的なテーマのテキスタイルが並ぶコーナーです。
99 ラウル・デュフィ 「ヴァイオリン」 ★こちらで観られます
こちらは赤や白の薔薇、楽譜、赤青の2色で表されたバイオリンが描かれたテキスタイルです。渦巻くように配置されていて、重なり合って多面的になっているのがキュビスム的にも思えます。赤・白・青の色の対比が強く派手な色彩となっていました。
この隣には油彩の「黄色いコンソール」もありました。音楽モチーフ繋がりです。
103 ラウル・デュフィ 「テニス」
こちらは葉っぱに囲まれたテニスコートでテニスをする2組の男女(4人)が描かれたテキスタイルで、中央あたりにはボールがあって打とうとしているようです。モチーフはモダンだけど白黒で版画的な素朴さを感じるかな。解説によると1919年にフランス人がウィンブルドンで優勝したそうで、コットンワンピースのウェアも注目された頃なのだとか。
近くに中国風のデザインやダンスホールをデザインした作品もありました。
121 ドレス・デザイン、制作:モンジ・ギバン 「ドレス テキスタイル≪波≫」
こちらは赤・青・白の曲線を組み合わせた波状のテキスタイルを使ったドレスです。裾のあたりは同じ色でも違った波文様となっていて2種類の模様を組み合わせているようです。色は明るく華やかなものの、派手過ぎずに流れるようなフォルムがドレスの形とよく合っていました。今回観たドレスの中で一番好みかも。
この辺は幾何学模様のテキスタイルがいくつかありました。鱗をモチーフにしたドレスなどもあります。
127-130 ドレス・デザイン:アンソニー・パウエル、制作:モンジ・ギバン 「ドレス-マイ・フェア・レディ」
こちらだけは撮影可能となっていました。

ちょっとメルヘン過ぎる感じがして、これはそれほど好きになれなかったw
ということで、あまり知らなかったデュフィのテキスタイルの仕事をじっくり観ることができました。私が一番好きな洋画家はデュフィかマティスのどちらかなので、期待通りの満足感でした。少数ながら絵画も良い作品があるので、洋画好きの方にもオススメの展示です。

【展覧名】
ラウル・デュフィ展― 絵画とテキスタイル・デザイン ―
【公式サイト】
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/19/191005/index.html
【会場】パナソニック汐留美術館
【最寄】新橋駅/汐留駅
【会期】2019年10月5日(土)~12月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構混み合っていて、狭い場所では混雑感がありました。それでも少し待てば概ね自分のペースで観ることができるくらいでした。
さて、この展示はフォーヴィスムの画家ラウル・デュフィの名をタイトルに冠していますが、よく知られる絵画作品よりもテキスタイルの仕事を中心にした一風変わった内容となっています。デュフィはポール・ポワレとの協業やリヨンの絹織物製造業ビアンキーニ=フェリエ社のために1912年から28年までテキスタイルのデザインを提供していたようで、上流階級の女性たちを魅了し大評判を得ていたそうです。この展示ではそうした品をモチーフのテーマごとに章分けしていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
アングラドン美術館 【南仏編 アヴィニョン】
【番外編 フランス旅行】 パリ市立近代美術館
ラウル・デュフィ展 ~くり返す日々の悦び~ (三鷹市美術ギャラリー)
<第1章 絵画 生きる喜び 陽光、海、そして音楽>
まずは絵画作品のコーナーです。今回の展示では初期から晩年まで16点の絵画作品が出品されていました。初期は印象派に影響を受けた作風で、マティスの作品と出会ったことでフォーヴィスムへと傾倒していき、セザンヌからも影響を受けたようです。1920年前後から南仏のヴァンスに滞在して制作に没頭し、華やかなテーマの作品を多く残しました。ここにはそうした特徴が観られる代表的な作風の作品が並んでいました。
1 ラウル・デュフィ 「グラン・ブルヴァールのカーニヴァル」
こちらはフランスの街角で行われているカーニヴァルを描いた作品で、粗くザラついたマチエールとなっています。一見して印象派からの影響が観られるので初期作品じゃないかな。奥に大きな建物にフランスの国旗が掲げられ、人々が練り歩いていて 賑わう様子が伝わってきます。全体的に暗めの色調なのは冬だからのようです。まだデュフィの個性は発揮されていませんが、都会的なセンスが感じられるのは流石でした。
3 ラウル・デュフィ 「サン=タドレスの大きな浴女」
こちらは海と海岸沿いの町を背景に、水着の女性が描かれています。女性はまるで遠近感を無視したかのような大きさで、ボリューム感のある体つきをしているので迫りくる感じがしますw 全体的に明るく素早い筆致で、色面と輪郭を使って表されているので勢いも感じられました。解説によると、この水着はココ・シャネルが提案したパンツスタイルの水着だそうで、当時は新しいファッションだったのかも。色鮮やかで大胆な作品です。
今回の油彩は割と見覚えがある作品が多いかな。国内のデュフィ作品はそれほど多くないので必然ではありますが…
6 ラウル・デュフィ 「ヴェルサイユ宮殿風景」
こちらは横長の画面で、奥にヴェルサイユ宮殿があり手前に泉のある光景となっています。空は青く宮殿は赤みがかっていて、対比的な色使いが目に鮮やかです。こちらも素早い筆致ですが、建物などの形態はしっかりしていて窓や柱にリズム感がありました。
5 ラウル・デュフィ 「ニースの窓辺」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品です。ニースの浜辺が見えるホテルの一室を描いた作品で、室内と眺望が両方見える光景となっています。この部屋はマティスも描いた部屋と考えられるようで、題材的にもマティスっぽさを感じるオマージュ的な作品です。全体的に青みがかっていて、左右の開け放たれた窓から見える海と空が非常に爽やかで開放的です。部屋の中まで色調を合わせているなど、現実よりも色の明るさを重視しているように思えました。
参考記事:ニースの写真と案内 【南仏編 ニース】
10 ラウル・デュフィ 「オーケストラ」
こちらはオーケストラの演奏の様子を描いた作品で、見下ろすような視点となっています。全体的に簡略化されていて、指揮者の身振りやティンパニー奏者の構えなどからは動きが感じられ、その流麗なフォルムが音楽の流れのように思えます。デュフィは幼い頃から音楽好きで、多くの音楽関連の作品を残しています。この作品にも音楽への愛が満ちていました。
この辺には音楽を主題にした作品がいくつか並んでいました。
<第2章 モードとの出会い>
続いてはモードとの出会いに関するコーナーです。デュフィは1910年に詩人のアポリネールから依頼されて『動物詩集またはオルフェウスの行列』への挿絵を木版で制作しました。この作品はドラマチックな明暗表現とモダンで簡潔な構図で表されたもので、こうしたグラフィックの仕事を観たデザイナーのポール・ポワレは、高く評価してレターヘッドを依頼したり協働して布地の開発を始めるようになったようです。この活動は短期間のものだったようですが、テキスタイル・デザインに関心を深めたデュフィは1912年にリヨンにあるビアンキーニ=フェリエ社と契約して、布地の図案を提供することになっていきました。この章ではそうした時期の作品が並んでいました。
R2 ラウル・デュフィ 「動物詩集またはオルフェウスの行列」(複製)
こちらがアポリネールに依頼されて作った版画で、フクロウ、亀と竪琴、馬(ペガサス)、果物とハツカネズミ、象などが描かれたページが展示されていました。いずれも白黒で彫りの太い大胆な作風で、素朴で力強い印象を受けます。油彩などとはかなり作風が違うように思えますが、単純化の仕方が面白く感じられました。
24 ラウル・デュフィ 「ペガサス」
こちらは緑地に赤と黄色で表されたテキスタイルで、先程の「動物詩集またはオルフェウスの行列」に描かれていた馬によく似ている姿となっています。パターン化されて同じ絵柄が連続しているのが布地らしい所で、ジャングルの中にいるような雰囲気がありました。
この辺からはテキスタイルが並んでいます。モチーフが単純化されて 繰り返される図様となっていて、色違いバージョンなども展示されていました。「動物詩集またはオルフェウスの行列」からの引用と思われるものが多かったように思えました。
35 ラウル・デュフィ 「仔象(下絵)」
こちらは象と仔象が椰子の木の下で戯れるような姿が描かれた原画です。全体的に色面を使って表現していて、植物の葉の形が象の身体に重なっているような独特の手法となっています。色違いのバージョンがいくつかあり、少ない色数でも豊かな色彩に感じられました。
17 原案:ポール・ポワレ、制作:モンジ・ギバン 「イヴニング・コート≪ペルシア≫」 ★こちらで観られます
こちらはポール・ポワレがデザインしたコートで、南方系の植物柄の布を使ってガウンのような形をしています。モード界では「着物のライン」と表現されたようで、ゆったりした印象を受けるかな。白黒の模様が何とも大胆で、コートの形とよく合っているように思えました。
11 ラウル・デュフィ 「公式レセプション」
こちらは油彩で、1925年のアール・デコ博でポール・ポワレ館の展示のために制作した14枚の壁掛けのうちの2枚を後に再構築したもので、元の絵に描かれていた人物がこの絵ではホールのような所で談笑している様子となっています。タキシードや軍服の男性、ドレスの女性などが集う華やかな社交界といった感じで、筆致は流れるようで色も鮮やかです。まさにデュフィの都会的センスが凝縮されたような作品でした。
この辺にはポール・ポワレの写真などもありました。
R17-22 「ビアンキーニ=フェリエ社の布地用版木」
こちらは布地用の版木で、細かい彫刻で模様を作っています。こうした版木を観る機会は少ないので 貴重なものではないかと思います。近くにはテキスタイルのサンプル帳などもあり、テキスタイル制作の様子なども伺えました。
<第3章 花々と昆虫>
続いては花や昆虫をモチーフにしたテキスタイルが並ぶコーナーです。デュフィは1912~28年の間、テキスタイルに本格的に取り組んだそうで、花や蝶は大きな人気となったようです。ここにはそうしたモチーフの作品が並んでいました。
59 ラウル・デュフィ 「薔薇」
こちらは赤とピンクの薔薇が並ぶテキスタイルです。よく観ると4つセットで同じ絵柄が繰り返し並んでいるのですが、そうとは感じさせない広がりがあるように思えます。簡略化されても可憐な印象の図像も見事でした。
この近くにあった「薔薇と花」というテキスタイルも好みで、葉っぱや花の形が滑らかな曲線で色が重なりある美しい作品でした。また、この付近の床には花柄のデザインがプロジェクションマッピングのように投影されていました。
63 ラウル・デュフィ 「野の花(下絵)」
こちらは白や赤の花々が並ぶテキスタイルの下絵です。下絵なのにパターン化されていて同じ絵柄が繰り返されています。色の対比が鮮やかで、可愛らしい花となっていました。
この辺はグワッシュの下絵が並んでいました。色違いで同じ図像を4パターン描いた品もあります。
16 ラウル・デュフィ 「花束」
こちらは大きな油彩の静物画で、白い花瓶に入った白い花と大きな葉っぱを描いています。背景は薄い緑色となっているので明るい印象を受けるかな。色面と輪郭が少しズレているところが多く勢いを感じました。
81 ドレス・デザイン、制作:オリヴィエ・ラピドス 「ドレス テキスタイル≪星空の花≫」
こちらは胸元がV字になったドレスで、大ぶりの花の模様が灰色と白のモノクロで表されています。モダンで落ち着きが感じられ、裾の長いドレスの形は華麗で気品ある雰囲気となっていました。
96 ラウル・デュフィ 「蚕」
こちらは蚕がぎっしり並んだ柄のテキスタイルです。整然と幼虫・成虫・桑の葉が並んでいるのですが、ちょっとキモいw 絹をイメージさせるけど正直苦手な絵柄でした。色違いもいくつかあって人気があったのかな??
<第4章 モダニティ>
最後はダンスホールやスポーツする女性など近代的なテーマのテキスタイルが並ぶコーナーです。
99 ラウル・デュフィ 「ヴァイオリン」 ★こちらで観られます
こちらは赤や白の薔薇、楽譜、赤青の2色で表されたバイオリンが描かれたテキスタイルです。渦巻くように配置されていて、重なり合って多面的になっているのがキュビスム的にも思えます。赤・白・青の色の対比が強く派手な色彩となっていました。
この隣には油彩の「黄色いコンソール」もありました。音楽モチーフ繋がりです。
103 ラウル・デュフィ 「テニス」
こちらは葉っぱに囲まれたテニスコートでテニスをする2組の男女(4人)が描かれたテキスタイルで、中央あたりにはボールがあって打とうとしているようです。モチーフはモダンだけど白黒で版画的な素朴さを感じるかな。解説によると1919年にフランス人がウィンブルドンで優勝したそうで、コットンワンピースのウェアも注目された頃なのだとか。
近くに中国風のデザインやダンスホールをデザインした作品もありました。
121 ドレス・デザイン、制作:モンジ・ギバン 「ドレス テキスタイル≪波≫」
こちらは赤・青・白の曲線を組み合わせた波状のテキスタイルを使ったドレスです。裾のあたりは同じ色でも違った波文様となっていて2種類の模様を組み合わせているようです。色は明るく華やかなものの、派手過ぎずに流れるようなフォルムがドレスの形とよく合っていました。今回観たドレスの中で一番好みかも。
この辺は幾何学模様のテキスタイルがいくつかありました。鱗をモチーフにしたドレスなどもあります。
127-130 ドレス・デザイン:アンソニー・パウエル、制作:モンジ・ギバン 「ドレス-マイ・フェア・レディ」
こちらだけは撮影可能となっていました。

ちょっとメルヘン過ぎる感じがして、これはそれほど好きになれなかったw
ということで、あまり知らなかったデュフィのテキスタイルの仕事をじっくり観ることができました。私が一番好きな洋画家はデュフィかマティスのどちらかなので、期待通りの満足感でした。少数ながら絵画も良い作品があるので、洋画好きの方にもオススメの展示です。
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この間の祝日に、銀座のポーラミュージアム アネックス(POLA MUSEUM ANNEX)で「マルク・シャガール - 夢を綴る」を観てきました。

【展覧名】
マルク・シャガール - 夢を綴る
【公式サイト】
https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅・京橋駅
【会期】2019年10月4日(金)~11月4日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構多くのお客さんがいましたが、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は20世紀を代表する画家の1人であるマルク・シャガールの小個展で、普段は箱根のポーラ美術館で展示されている品が銀座のアネックスで無料で観られるという機会となっています。油彩7点に加え、『ダフニスとクロエ』のリトグラフ(全42点のうち20点)が並んでいて、少数ながらも豪華な展示です。展覧会は油彩→リトグラフの順に並んでいましたので、気に入った作品をいくつか挙げて、その雰囲気をご紹介していこうと思います。なお、シャガールについては何度か記事にしているので下記などをご参照ください。
参考記事:
シャガール 三次元の世界 (東京ステーションギャラリー)
国立マルク・シャガール美術館 【南仏編 ニース】
シャガール 愛をめぐる追想 日本未公開作品を中心に (日本橋タカシマヤ)
シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い―交錯する夢と前衛― (東京藝術大学大学美術館)
マルク・シャガール 「大きな花束」
まずは油彩画並んでいました。こちらは白いテーブルに置かれた花束を描いた作品で、葉っぱの形がハート型に盛られているように見えます。オレンジや赤の花が咲き、背景には海辺の町並みが見えていて、右下には赤い服の女性の姿もあります。色鮮やかで花瓶が浮かび上がるような存在感に思えるかな。全体的に爽やかで、穏やかな雰囲気に思えました。
マルク・シャガール 「恋人たちとマーガレットの花」 ★こちらで観られます
こちらは黄色い床の上で抱き合って踊る男女が描かれ、手前には黄色・ピンクのチェック柄のテーブルに置かれた果物籠と 白・黄色のマーガレットの花瓶が描かれています。男女の隣には赤い鳥の姿もあり、色が響き合うような構成になっているように思えます。全体的に色彩が明るく幸せな雰囲気が滲み出るような作品となっていました。
マルク・シャガール 「町の上で、ヴィテブスク」
こちらは抱き合う男女がシャガールの故郷のヴィテブスクの町の上を飛んでいる様子が描かれた作品です。筆致は細かくて割と細部までかっちりと描き込まれていて、落ち着いた色彩となっています。ヴィテブスクや恋人といったモチーフは晩年の作風に通じるものを感じますが、色彩や筆致は代表的な作風にはまだ至っていない感じでキュビスム的な要素もあったりします。テクニカルな部分よりも幸せな男女というテーマにシャガールらしさを感じました。
参考記事:肖像画の100年 ルノワール、モディリアーニ、ピカソ (ポーラ美術館)
この近くには「私と村」などポーラ美術館を代表するコレクションもありました。
参考記事:美術を変えた9人の画家 (ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX)
その先はダフニスとクロエのリトグラフのコーナーです。シャガールはこの古代ギリシアの物語の作品を制作するにあたり、実際に舞台となったギリシャに2度訪れたそうです。1度目の時にグワッシュで下絵を描き、2度目にリトグラフ制作に取り組んだようです。そうして作られた全42点のうち20点が展示されていました。
マルク・シャガール 「牧場の春(『ダフニスとクロエ』第05図)」
こちらは全体的に赤い画面で、丘の上に神殿や家々が並び さらにその上空に女性の顔・手・胸、男の顔などが浮かんでいる様子が描かれた作品です。モチーフが渦巻くように並んでいて、その色彩の効果のためか温かみが感じられます。リトグラフでも油彩のように力強い赤で、シャガールらしい色彩感覚となっていました。
マルク・シャガール 「葡萄の収穫(『ダフニスとクロエ』第15図)」
こちらは薄い緑地に沢山の人が籠を抱えて葡萄の収穫をしている様子が描かれています。長閑で幻想的な光景で、一種の理想郷のような雰囲気があるかな。 人々は簡略化されていて、リズムを感じるようなポーズとなっているのも面白い作品でした。
マルク・シャガール 「春(『ダフニスとクロエ』第28図)」
こちらは全体的に深い青で、水面に三日月が反射している夜の光景となっています。何組かのカップルが寄り添っていて、周りにはヤギが沢山いて、中には交尾しているヤギたちもいますw 赤毛に青い身体の女性の姿などもあり、静かで神秘的な雰囲気となっていました。
マルク・シャガール 「祝宴のとき、クロエが娘であることに気づいたメガクレース(『ダフニスとクロエ』第40図)」
こちらは全体的にオレンジ~赤で、沢山の人たちがテーブルに集まって祝宴をあげている様子が描かれています。中央に一際白い女性が描かれていて、これが主役の1人のクロエで彼女は捨て子で牧人に育てられました。その隣には赤い男性が何か話しかけようとしているように見えます。また、近くで黒いヒゲの人物が上座にいてこれが恐らく富豪でクロエの親のメガクレスじゃないかな。ドラマチックで物語性を感じさせる場面となっていました。
ということで、小展示ながらも本格的な内容となっていて、これだけのものを無料で観られるというのは貴重な機会だと思います。交通の便も良いところにありますので、銀座に行く機会がある方はこちらに足を運んでみるのもよろしいかと思います。

【展覧名】
マルク・シャガール - 夢を綴る
【公式サイト】
https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
【会場】ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX
【最寄】銀座駅・京橋駅
【会期】2019年10月4日(金)~11月4日(月・祝)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構多くのお客さんがいましたが、概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は20世紀を代表する画家の1人であるマルク・シャガールの小個展で、普段は箱根のポーラ美術館で展示されている品が銀座のアネックスで無料で観られるという機会となっています。油彩7点に加え、『ダフニスとクロエ』のリトグラフ(全42点のうち20点)が並んでいて、少数ながらも豪華な展示です。展覧会は油彩→リトグラフの順に並んでいましたので、気に入った作品をいくつか挙げて、その雰囲気をご紹介していこうと思います。なお、シャガールについては何度か記事にしているので下記などをご参照ください。
参考記事:
シャガール 三次元の世界 (東京ステーションギャラリー)
国立マルク・シャガール美術館 【南仏編 ニース】
シャガール 愛をめぐる追想 日本未公開作品を中心に (日本橋タカシマヤ)
シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い―交錯する夢と前衛― (東京藝術大学大学美術館)
マルク・シャガール 「大きな花束」
まずは油彩画並んでいました。こちらは白いテーブルに置かれた花束を描いた作品で、葉っぱの形がハート型に盛られているように見えます。オレンジや赤の花が咲き、背景には海辺の町並みが見えていて、右下には赤い服の女性の姿もあります。色鮮やかで花瓶が浮かび上がるような存在感に思えるかな。全体的に爽やかで、穏やかな雰囲気に思えました。
マルク・シャガール 「恋人たちとマーガレットの花」 ★こちらで観られます
こちらは黄色い床の上で抱き合って踊る男女が描かれ、手前には黄色・ピンクのチェック柄のテーブルに置かれた果物籠と 白・黄色のマーガレットの花瓶が描かれています。男女の隣には赤い鳥の姿もあり、色が響き合うような構成になっているように思えます。全体的に色彩が明るく幸せな雰囲気が滲み出るような作品となっていました。
マルク・シャガール 「町の上で、ヴィテブスク」
こちらは抱き合う男女がシャガールの故郷のヴィテブスクの町の上を飛んでいる様子が描かれた作品です。筆致は細かくて割と細部までかっちりと描き込まれていて、落ち着いた色彩となっています。ヴィテブスクや恋人といったモチーフは晩年の作風に通じるものを感じますが、色彩や筆致は代表的な作風にはまだ至っていない感じでキュビスム的な要素もあったりします。テクニカルな部分よりも幸せな男女というテーマにシャガールらしさを感じました。
参考記事:肖像画の100年 ルノワール、モディリアーニ、ピカソ (ポーラ美術館)
この近くには「私と村」などポーラ美術館を代表するコレクションもありました。
参考記事:美術を変えた9人の画家 (ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX)
その先はダフニスとクロエのリトグラフのコーナーです。シャガールはこの古代ギリシアの物語の作品を制作するにあたり、実際に舞台となったギリシャに2度訪れたそうです。1度目の時にグワッシュで下絵を描き、2度目にリトグラフ制作に取り組んだようです。そうして作られた全42点のうち20点が展示されていました。
マルク・シャガール 「牧場の春(『ダフニスとクロエ』第05図)」
こちらは全体的に赤い画面で、丘の上に神殿や家々が並び さらにその上空に女性の顔・手・胸、男の顔などが浮かんでいる様子が描かれた作品です。モチーフが渦巻くように並んでいて、その色彩の効果のためか温かみが感じられます。リトグラフでも油彩のように力強い赤で、シャガールらしい色彩感覚となっていました。
マルク・シャガール 「葡萄の収穫(『ダフニスとクロエ』第15図)」
こちらは薄い緑地に沢山の人が籠を抱えて葡萄の収穫をしている様子が描かれています。長閑で幻想的な光景で、一種の理想郷のような雰囲気があるかな。 人々は簡略化されていて、リズムを感じるようなポーズとなっているのも面白い作品でした。
マルク・シャガール 「春(『ダフニスとクロエ』第28図)」
こちらは全体的に深い青で、水面に三日月が反射している夜の光景となっています。何組かのカップルが寄り添っていて、周りにはヤギが沢山いて、中には交尾しているヤギたちもいますw 赤毛に青い身体の女性の姿などもあり、静かで神秘的な雰囲気となっていました。
マルク・シャガール 「祝宴のとき、クロエが娘であることに気づいたメガクレース(『ダフニスとクロエ』第40図)」
こちらは全体的にオレンジ~赤で、沢山の人たちがテーブルに集まって祝宴をあげている様子が描かれています。中央に一際白い女性が描かれていて、これが主役の1人のクロエで彼女は捨て子で牧人に育てられました。その隣には赤い男性が何か話しかけようとしているように見えます。また、近くで黒いヒゲの人物が上座にいてこれが恐らく富豪でクロエの親のメガクレスじゃないかな。ドラマチックで物語性を感じさせる場面となっていました。
ということで、小展示ながらも本格的な内容となっていて、これだけのものを無料で観られるというのは貴重な機会だと思います。交通の便も良いところにありますので、銀座に行く機会がある方はこちらに足を運んでみるのもよろしいかと思います。
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


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前回ご紹介した展示を観る前に、横須賀美術館の特別展「パリ世紀末 ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」を観てきました。

【展覧名】
パリ世紀末 ベル・エポックに咲いた華
サラ・ベルナールの世界展
【公式サイト】
https://www.yokosuka-moa.jp/exhibit/kikaku/1903.html
【会場】横須賀美術館
【最寄】馬堀海岸駅/浦賀駅
【会期】2019年9月14日(土)~11月4日(月・休)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
お客さんは多かったですが、快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はフランス芸術が花開いたベル・エポック(良き時代)と呼ばれる時代を象徴する女優サラ・ベルナールをテーマにした内容となっています。サラ・ベルナールは女優として活躍しただけでなく、自ら劇団を率いてそのプロモーション活動に関わり アルフォンス・ミュシャやルネ・ラリックといった新進のアーティストを起用して彼らの成功に大きく寄与しました。さらに自らも絵画・彫刻なども手掛けていたようで、そうした活動も含めて3つの章立てで紹介されていました。今回は作品ごとにはメモを取っていませんが、簡単に各章ごとにその様子を振り返ってみようと思います。
参考記事:
みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ-線の魔術 感想前編(Bunkamura ザ・ミュージアム)
ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち (世田谷美術館)
<第1章 サラ・ベルナールの肖像>
まずはサラ・ベルナールの肖像のコーナーです。サラ・ベルナールは早くから女優を志し、国立劇場のコメディ=フランセーズに入団して舞台デビューを果たします。30歳頃には既に名声を博し、自ら劇団を持ちアメリカへの進出を果たして大成功を収めて世界へと活躍の場を広げ、その名声と人気は世界的なものとなっていきました。また、演劇に留まらず執筆や彫刻、モードの世界でも才能を発揮したアーティストの顔も持ち、さらにイメージ戦略の重要性に気づき広告ポスターのモデルになりメディアを活用して自らをプロデュースするプロデューサーでもありました。その中でミュシャの才能を見出し、ラリックも彼女との邂逅によって道を開いていったようです。ここにはそうしたサラ・ベルナールの肖像が並んでいました。
まずはデビュー当時の頃からの白黒写真が並んでいました。目鼻立ちの整ったくっきりした顔つきで、ミュシャのポスターなどでお馴染みの顔かな。その中に北米公演の時の写真があり、これをサラ・ベルナールは吸血鬼に見えると受け取りを拒否したそうです。私にはそうは思えませんでしたが、セルフプロデュースに厳しかった一面が伺えるエピソードです。他には同僚や家族、友人、恋人の写真もあり、恋人は歴代の18人もの人物が並んでいます。中にはプリンス・オブ・ウェールズなんて写真もあって驚きました。
その先には調髪道具のセットやドレスなど身の回りの品が並び、やはりアール・ヌーヴォー的なデザインが多いように思います。ドレスは花が沢山刺繍されたフリルのついたデザインで、華やかで優美な雰囲気です。ちょっとやりすぎな感じもしますがw
その後は再び写真で、テーブルに両肘をついて頬に手を当てる58歳頃の写真などがありました。そう言われなければ30代くらいの美魔女っぷりで、流石は大女優ですw 他には自宅の写真があり、王宮のような部屋の中に豹やクマ?のような沢山の毛皮が飾られていました。毛皮マニアなのかも。ちょっと装飾過剰でゴテゴテした雰囲気ではありますが豪奢な生活が伺えます。また、少し先には40才下の愛人2人に囲まれた写真もあり、男性の愛人と女性の愛人となっています。この辺は以前の展示で知っていましたが、改めて驚きでした。
その先は絵画の肖像がありました。ウォルター・スピンドラーによる「サラ・ベルナールの横顔」は円形のパステル画で、ファム・ファタール的な妖しさがあります。この画家はサラ・ベルナールを数十点も描いていたそうで、「我が欲望の全ては願いの全ては彼女から我が身にもたらされる」と書き記しているそうです。ミュシャ作品の清純さとは違った見解に思えて、私の中でちょっとイメージが変わったかもw 近くにはリトグラフの肖像がいくつかあり、ミュシャの「ラ・プリュム誌」の表紙などもありました。
この章の最後のあたりにはロートレックによる素描のリトグラフの肖像もありました。簡素で素早いタッチで、お世辞にも可愛くは見えないw 特徴を誇張していてロートレックらしい皮肉っぽい雰囲気が感じられました。
他にはサラ・ベルナールをモチーフにした扇子やブロマイドのような葉書サイズの写真なども数点並んでいました。まさに時代の寵児といった様相です。
<第2章 女優サラ・ベルナール>
続いては出演していた演劇に関する作品が並ぶコーナーです。サラ・ベルナールは所属劇団を度々変えながら「フェードル」「エルナニ」などの悲劇で成功を収めて人気を得ていったそうで、1880年にサラ・ベルナール劇団を立ち上げました。自らプロデュースし、舞台衣装や広報まで関わりミュシャやラリックも舞台衣装に関わって行くことになります。ここにはそうした演劇関連の品が並んでいました。
参考記事:生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想前編 (国立新美術館)
この章もまずは写真が並び、豪華な衣装をまとってポーズをきめています。「テオドラ」に関する写真が多いかな、舞台上でなくわざわざ写真の為に衣装を着て撮ったらしいので、これもイメージ戦略を重視していた現れかもしれません。その先には舞台衣装のコーナーがあり、胸飾りやブローチなどが並びます。おそらくガラス製ですが、「テオドラ」や「クレオパトラ」など役によって様々な様式やデザインとなっていてかなり精密です。舞台から見えるような大きさじゃなくても妥協は無さそうでした。
その先には舞台に関する絵画が並び、テオパルド・シャルトランの「『ジスモンダ』でのサラ・ベルナール」が目を引きました。これは棕櫚の葉っぱを持つサラ・ベルナールで、ミュシャの「ジスモンダ」によく似た衣装とポーズとなっています(当たり前ですがw) 写真のように精緻に描かれ歯を見せるような笑顔となっていますが、全体的には妖艶な感じでした。見慣れたミュシャの「ジスモンダ」とは印象が違って面白い。
もう1つ、ウジェーヌ・サミュエル・グラッセによる「ジャンヌ・ダルク」のポスターが2点ありこれも見どころでした。いずれも胸に手を当てて上を向き槍を持つジャンヌ・ダルクに扮したサラ・ベルナールで、周りには矢が飛び交っています。2点あるのは修正前後のようで、修正前は短いチリチリ髪なのが修正後ではロングのストレートヘアになっていたり、顔の向きが正面になっていたり、裾の中の足が隠れていたりと細かい改変が観られます。それでもサラ・ベルナールは気に入らなかったようですが、全体的にアール・ヌーヴォー的な雰囲気があり、ミュシャに大きな影響を与えたようです。ミュシャのジスモンダもこの作品から影響を受けていると考えられているので、そんなに悪い作品じゃないと思うのですが…。このポスターが気に入られていたらミュシャの出番は無かったかもしれませんねw
続いてはミュシャのコーナーです。ミュシャについては何度も取り上げてきたので参考記事をご参照頂ければと思いますが、ジスモンダ、トスカ、椿姫、メディア、夢想、黄道12宮などの有名作が並んでいました。JOBもあったけど、これもサラ・ベルナールがモデルなのかな?
こちらはロビーにあった「メディア」と「椿姫」のパネル

可憐な椿姫に対してメディアの狂気に満ちた感じが怖いw
こちらもロビーにあった「ロレンザッチオ」のパネル

初めての男役で凛々しい雰囲気です。
他には恐らくミュシャの作品と思われる『メディア』の衣装案などもあって、これは目新しい所でした。また、ミュシャがチェコに帰国した後の「巫女」という油彩作品もあり、白い布をまとった女性が手に火を持っていて、神秘的な印象を受けます。全体的に淡い色彩で写実的な画風で「スラヴ叙事詩」の作風に近いかな。これがサラ・ベルナールと関係あるとは思えませんでしたが…。 その隣にも「女占い師」という油彩作品があり、それも魔術的な雰囲気でした。
その後はルネ・ラリックのコーナーです。サラ・ベルナールはラリックの初期からの顧客の1人で、1894年にはサラ・ベルナールの舞台のジュエリーを担当することになり一気に知名度を上げたそうです。ここにはミュシャがデザインしてラリックが制作した(と言われる)最初で最後のコラボ作品「舞台用冠 ユリ」がありました。(★こちらで観られます) 円環の周りに装飾があり、両耳のあたりに真珠を敷き詰めたユリの花の飾りが立体的に表されています。額の辺りには大粒のトルコ石があり、豪華な印象を受けました。ちょっとゴテゴテしてるけど舞台映えしそうな感じです。
その後は恐らくサラ・ベルナールには関係ないラリックの名品が並んでいます。スカラベやトカゲ、バッタをモチーフにした花器やアール・デコ時代の「つむじ風」、女性をモチーフにした指輪やブローチ、香水瓶などがあり、箱根ラリック美術館の所蔵品が多かったように思います。
参考記事:箱根ラリック美術館の常設 2018年1月(箱根編)
この章の最後にはその他の作家の作品がいくつかあり、舞台プログラムや座席の見取り図といった当時を忍ばれる品々となっていました。また、次の章との間にはサラ・ベルナール自身の彫刻作品もありました。1872~73年頃に突然 彫刻を始めたそうで、師のマシュー・ムスニエの作風を受け継ぎ物語性に富む具象彫刻を制作したようです。10年以上サロンにも出品していて、人物像を中心に25点が現在確認されているそうです。ここで目を引いたのは「キメラとしてのサラ・ベルナール」という自刻像で、コウモリの羽を持ち魚の尻尾もあって、肩には人の顔のような肩当てをつけているなどタイトル通りのキメラっぽさが漂います。結構不気味で何でこんな作品を急に作ったんだろ?という疑問がわきますが、多様な役柄を演じた自身を表しているとのことで、意外と自分自身を客観的に皮肉っていたのかもしれません。
他には演劇のワンシーンのような人物彫刻もあって、本当に自作なの??と疑ってしまうほどの見事な腕前でした。
<第3章 サラ・ベルナールが生きた時代>
最後はサラ・ベルナールが活躍したベル・エポックの時代のポスターのコーナーです。1896年12月9日に「サラ・ベルナールの日」が開催されたそうで、ルネサンス座でサラ・ベルナールの特別興行が行われ500人もの招待客が集まりました。その人気ぶりは死後も失われなかったようで、ここには生誕100年の時の作品なども並んでいました。
ここにはテオフィル=アレクサンドル・スタンランの「シャ・ノワール」、ロートレックの「ディヴァン・ジャポネ」「歓楽の女王」、ジュール・シェレの「カンナバル」などこの時代の有名作がありました。
参考記事:
ロートレック・コネクション (Bunkamuraザ・ミュージアム)
トゥールーズ=ロートレック展 (三菱一号館美術館)
パリ♥グラフィック—ロートレックとアートになった版画・ポスター展 (三菱一号館美術館)
ニース美術館 【南仏編 ニース】
こちらはロビーにあったテオフィル=アレクサンドル・スタンランの「シャ・ノワール」の複製

フランス語でシャは猫、ノワールは黒です。傑作中の傑作ポスターです。
こちらもロビーにあったロートレックの「ディヴァン・ジャポネ」

こちらもロートレックの代表作。左上の歌姫ではなく観客を描いているのが面白い。
こちらはシェレの「カンナバル」

オペラ座の1894年のカーニバルの際のポスターです。シェレはポスター画の先駆者でロートレックも彼に助言を受けています。
他にもオーギュスト・レーデルの「ムーラン・ルージュ 夜会・流浪の芸術家」やモーリス・ドニの「ラ・デページュ誌」、日本人女優を描いたアルフレード・ミュラーの「サダヤッコ」、ブールデルのアールデコ博のポスターなど有名作が目白押しでした。
参考記事:
文化のみち二葉館の写真 (名古屋編)
所蔵作品展 アール・デコ時代の工芸とデザイン (東京国立近代美術館 工芸館)
最後はサラ・ベルナール関連の品で、切手や「サラ・ベルナールの日」のメニュー、記念冊子、生誕100年のポスターなどがあり、今回の展示そのものも含めて近代芸術の黄金期の象徴として死後も多くの人にインスピレーションを与え続けている様子が伺えました。
ということで、サラ・ベルナールが芸術に与えた影響の大きさを知ることができる内容となっていました。この展示は冬に松濤美術館でも開催されるようですが、この横須賀美術館はロケーションが良く常設や谷内六郎館も楽しめるので、こちらで観て正解だったように思います。今後の美術鑑賞の参考になるような展示でした。
→ 後日、松濤美術館でも巡回展を観ました。
参考記事:サラ・ベルナールの世界展 (松濤美術館)
おまけ:
ミュージアムショップでシャ・ノワールの缶に入ったクッキーを買いました。

2300円と高かったですが、美味しかったです。むしろこの缶が目当てで絵葉書入れに使おうと思いますw

【展覧名】
パリ世紀末 ベル・エポックに咲いた華
サラ・ベルナールの世界展
【公式サイト】
https://www.yokosuka-moa.jp/exhibit/kikaku/1903.html
【会場】横須賀美術館
【最寄】馬堀海岸駅/浦賀駅
【会期】2019年9月14日(土)~11月4日(月・休)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
お客さんは多かったですが、快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はフランス芸術が花開いたベル・エポック(良き時代)と呼ばれる時代を象徴する女優サラ・ベルナールをテーマにした内容となっています。サラ・ベルナールは女優として活躍しただけでなく、自ら劇団を率いてそのプロモーション活動に関わり アルフォンス・ミュシャやルネ・ラリックといった新進のアーティストを起用して彼らの成功に大きく寄与しました。さらに自らも絵画・彫刻なども手掛けていたようで、そうした活動も含めて3つの章立てで紹介されていました。今回は作品ごとにはメモを取っていませんが、簡単に各章ごとにその様子を振り返ってみようと思います。
参考記事:
みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ-線の魔術 感想前編(Bunkamura ザ・ミュージアム)
ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち (世田谷美術館)
<第1章 サラ・ベルナールの肖像>
まずはサラ・ベルナールの肖像のコーナーです。サラ・ベルナールは早くから女優を志し、国立劇場のコメディ=フランセーズに入団して舞台デビューを果たします。30歳頃には既に名声を博し、自ら劇団を持ちアメリカへの進出を果たして大成功を収めて世界へと活躍の場を広げ、その名声と人気は世界的なものとなっていきました。また、演劇に留まらず執筆や彫刻、モードの世界でも才能を発揮したアーティストの顔も持ち、さらにイメージ戦略の重要性に気づき広告ポスターのモデルになりメディアを活用して自らをプロデュースするプロデューサーでもありました。その中でミュシャの才能を見出し、ラリックも彼女との邂逅によって道を開いていったようです。ここにはそうしたサラ・ベルナールの肖像が並んでいました。
まずはデビュー当時の頃からの白黒写真が並んでいました。目鼻立ちの整ったくっきりした顔つきで、ミュシャのポスターなどでお馴染みの顔かな。その中に北米公演の時の写真があり、これをサラ・ベルナールは吸血鬼に見えると受け取りを拒否したそうです。私にはそうは思えませんでしたが、セルフプロデュースに厳しかった一面が伺えるエピソードです。他には同僚や家族、友人、恋人の写真もあり、恋人は歴代の18人もの人物が並んでいます。中にはプリンス・オブ・ウェールズなんて写真もあって驚きました。
その先には調髪道具のセットやドレスなど身の回りの品が並び、やはりアール・ヌーヴォー的なデザインが多いように思います。ドレスは花が沢山刺繍されたフリルのついたデザインで、華やかで優美な雰囲気です。ちょっとやりすぎな感じもしますがw
その後は再び写真で、テーブルに両肘をついて頬に手を当てる58歳頃の写真などがありました。そう言われなければ30代くらいの美魔女っぷりで、流石は大女優ですw 他には自宅の写真があり、王宮のような部屋の中に豹やクマ?のような沢山の毛皮が飾られていました。毛皮マニアなのかも。ちょっと装飾過剰でゴテゴテした雰囲気ではありますが豪奢な生活が伺えます。また、少し先には40才下の愛人2人に囲まれた写真もあり、男性の愛人と女性の愛人となっています。この辺は以前の展示で知っていましたが、改めて驚きでした。
その先は絵画の肖像がありました。ウォルター・スピンドラーによる「サラ・ベルナールの横顔」は円形のパステル画で、ファム・ファタール的な妖しさがあります。この画家はサラ・ベルナールを数十点も描いていたそうで、「我が欲望の全ては願いの全ては彼女から我が身にもたらされる」と書き記しているそうです。ミュシャ作品の清純さとは違った見解に思えて、私の中でちょっとイメージが変わったかもw 近くにはリトグラフの肖像がいくつかあり、ミュシャの「ラ・プリュム誌」の表紙などもありました。
この章の最後のあたりにはロートレックによる素描のリトグラフの肖像もありました。簡素で素早いタッチで、お世辞にも可愛くは見えないw 特徴を誇張していてロートレックらしい皮肉っぽい雰囲気が感じられました。
他にはサラ・ベルナールをモチーフにした扇子やブロマイドのような葉書サイズの写真なども数点並んでいました。まさに時代の寵児といった様相です。
<第2章 女優サラ・ベルナール>
続いては出演していた演劇に関する作品が並ぶコーナーです。サラ・ベルナールは所属劇団を度々変えながら「フェードル」「エルナニ」などの悲劇で成功を収めて人気を得ていったそうで、1880年にサラ・ベルナール劇団を立ち上げました。自らプロデュースし、舞台衣装や広報まで関わりミュシャやラリックも舞台衣装に関わって行くことになります。ここにはそうした演劇関連の品が並んでいました。
参考記事:生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想前編 (国立新美術館)
この章もまずは写真が並び、豪華な衣装をまとってポーズをきめています。「テオドラ」に関する写真が多いかな、舞台上でなくわざわざ写真の為に衣装を着て撮ったらしいので、これもイメージ戦略を重視していた現れかもしれません。その先には舞台衣装のコーナーがあり、胸飾りやブローチなどが並びます。おそらくガラス製ですが、「テオドラ」や「クレオパトラ」など役によって様々な様式やデザインとなっていてかなり精密です。舞台から見えるような大きさじゃなくても妥協は無さそうでした。
その先には舞台に関する絵画が並び、テオパルド・シャルトランの「『ジスモンダ』でのサラ・ベルナール」が目を引きました。これは棕櫚の葉っぱを持つサラ・ベルナールで、ミュシャの「ジスモンダ」によく似た衣装とポーズとなっています(当たり前ですがw) 写真のように精緻に描かれ歯を見せるような笑顔となっていますが、全体的には妖艶な感じでした。見慣れたミュシャの「ジスモンダ」とは印象が違って面白い。
もう1つ、ウジェーヌ・サミュエル・グラッセによる「ジャンヌ・ダルク」のポスターが2点ありこれも見どころでした。いずれも胸に手を当てて上を向き槍を持つジャンヌ・ダルクに扮したサラ・ベルナールで、周りには矢が飛び交っています。2点あるのは修正前後のようで、修正前は短いチリチリ髪なのが修正後ではロングのストレートヘアになっていたり、顔の向きが正面になっていたり、裾の中の足が隠れていたりと細かい改変が観られます。それでもサラ・ベルナールは気に入らなかったようですが、全体的にアール・ヌーヴォー的な雰囲気があり、ミュシャに大きな影響を与えたようです。ミュシャのジスモンダもこの作品から影響を受けていると考えられているので、そんなに悪い作品じゃないと思うのですが…。このポスターが気に入られていたらミュシャの出番は無かったかもしれませんねw
続いてはミュシャのコーナーです。ミュシャについては何度も取り上げてきたので参考記事をご参照頂ければと思いますが、ジスモンダ、トスカ、椿姫、メディア、夢想、黄道12宮などの有名作が並んでいました。JOBもあったけど、これもサラ・ベルナールがモデルなのかな?
こちらはロビーにあった「メディア」と「椿姫」のパネル

可憐な椿姫に対してメディアの狂気に満ちた感じが怖いw
こちらもロビーにあった「ロレンザッチオ」のパネル

初めての男役で凛々しい雰囲気です。
他には恐らくミュシャの作品と思われる『メディア』の衣装案などもあって、これは目新しい所でした。また、ミュシャがチェコに帰国した後の「巫女」という油彩作品もあり、白い布をまとった女性が手に火を持っていて、神秘的な印象を受けます。全体的に淡い色彩で写実的な画風で「スラヴ叙事詩」の作風に近いかな。これがサラ・ベルナールと関係あるとは思えませんでしたが…。 その隣にも「女占い師」という油彩作品があり、それも魔術的な雰囲気でした。
その後はルネ・ラリックのコーナーです。サラ・ベルナールはラリックの初期からの顧客の1人で、1894年にはサラ・ベルナールの舞台のジュエリーを担当することになり一気に知名度を上げたそうです。ここにはミュシャがデザインしてラリックが制作した(と言われる)最初で最後のコラボ作品「舞台用冠 ユリ」がありました。(★こちらで観られます) 円環の周りに装飾があり、両耳のあたりに真珠を敷き詰めたユリの花の飾りが立体的に表されています。額の辺りには大粒のトルコ石があり、豪華な印象を受けました。ちょっとゴテゴテしてるけど舞台映えしそうな感じです。
その後は恐らくサラ・ベルナールには関係ないラリックの名品が並んでいます。スカラベやトカゲ、バッタをモチーフにした花器やアール・デコ時代の「つむじ風」、女性をモチーフにした指輪やブローチ、香水瓶などがあり、箱根ラリック美術館の所蔵品が多かったように思います。
参考記事:箱根ラリック美術館の常設 2018年1月(箱根編)
この章の最後にはその他の作家の作品がいくつかあり、舞台プログラムや座席の見取り図といった当時を忍ばれる品々となっていました。また、次の章との間にはサラ・ベルナール自身の彫刻作品もありました。1872~73年頃に突然 彫刻を始めたそうで、師のマシュー・ムスニエの作風を受け継ぎ物語性に富む具象彫刻を制作したようです。10年以上サロンにも出品していて、人物像を中心に25点が現在確認されているそうです。ここで目を引いたのは「キメラとしてのサラ・ベルナール」という自刻像で、コウモリの羽を持ち魚の尻尾もあって、肩には人の顔のような肩当てをつけているなどタイトル通りのキメラっぽさが漂います。結構不気味で何でこんな作品を急に作ったんだろ?という疑問がわきますが、多様な役柄を演じた自身を表しているとのことで、意外と自分自身を客観的に皮肉っていたのかもしれません。
他には演劇のワンシーンのような人物彫刻もあって、本当に自作なの??と疑ってしまうほどの見事な腕前でした。
<第3章 サラ・ベルナールが生きた時代>
最後はサラ・ベルナールが活躍したベル・エポックの時代のポスターのコーナーです。1896年12月9日に「サラ・ベルナールの日」が開催されたそうで、ルネサンス座でサラ・ベルナールの特別興行が行われ500人もの招待客が集まりました。その人気ぶりは死後も失われなかったようで、ここには生誕100年の時の作品なども並んでいました。
ここにはテオフィル=アレクサンドル・スタンランの「シャ・ノワール」、ロートレックの「ディヴァン・ジャポネ」「歓楽の女王」、ジュール・シェレの「カンナバル」などこの時代の有名作がありました。
参考記事:
ロートレック・コネクション (Bunkamuraザ・ミュージアム)
トゥールーズ=ロートレック展 (三菱一号館美術館)
パリ♥グラフィック—ロートレックとアートになった版画・ポスター展 (三菱一号館美術館)
ニース美術館 【南仏編 ニース】
こちらはロビーにあったテオフィル=アレクサンドル・スタンランの「シャ・ノワール」の複製

フランス語でシャは猫、ノワールは黒です。傑作中の傑作ポスターです。
こちらもロビーにあったロートレックの「ディヴァン・ジャポネ」

こちらもロートレックの代表作。左上の歌姫ではなく観客を描いているのが面白い。
こちらはシェレの「カンナバル」

オペラ座の1894年のカーニバルの際のポスターです。シェレはポスター画の先駆者でロートレックも彼に助言を受けています。
他にもオーギュスト・レーデルの「ムーラン・ルージュ 夜会・流浪の芸術家」やモーリス・ドニの「ラ・デページュ誌」、日本人女優を描いたアルフレード・ミュラーの「サダヤッコ」、ブールデルのアールデコ博のポスターなど有名作が目白押しでした。
参考記事:
文化のみち二葉館の写真 (名古屋編)
所蔵作品展 アール・デコ時代の工芸とデザイン (東京国立近代美術館 工芸館)
最後はサラ・ベルナール関連の品で、切手や「サラ・ベルナールの日」のメニュー、記念冊子、生誕100年のポスターなどがあり、今回の展示そのものも含めて近代芸術の黄金期の象徴として死後も多くの人にインスピレーションを与え続けている様子が伺えました。
ということで、サラ・ベルナールが芸術に与えた影響の大きさを知ることができる内容となっていました。この展示は冬に松濤美術館でも開催されるようですが、この横須賀美術館はロケーションが良く常設や谷内六郎館も楽しめるので、こちらで観て正解だったように思います。今後の美術鑑賞の参考になるような展示でした。
→ 後日、松濤美術館でも巡回展を観ました。
参考記事:サラ・ベルナールの世界展 (松濤美術館)
おまけ:
ミュージアムショップでシャ・ノワールの缶に入ったクッキーを買いました。


2300円と高かったですが、美味しかったです。むしろこの缶が目当てで絵葉書入れに使おうと思いますw
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前回ご紹介した展示を観た後、横須賀美術館の企画展と常設展を観てきました。ちょっと昨日の台風のおかげで色々と忙しかったので、先に常設展の方からご紹介していこうと思います。

【展覧名】
第3期所蔵品展 特集:山崎省三
【公式サイト】
https://www.yokosuka-moa.jp/exhibit/josetu/sho1903.html
【会場】横須賀美術館
【最寄】馬堀海岸駅/浦賀駅
【会期】2019年10月5日(土)~12月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は横須賀美術館で年に4回行われる所蔵品展の3期目で、今回もいくつかの特集があり「特集:山崎省三」のタイトルとなっていました。今回は山崎省三の特集の部屋だけメモしてきましたので、気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。なお、上記の評価概要は常設展全体のもので、山崎省三の特集は全16点と小規模なものとなります。
まず最初に山崎省三についての概略がありました。山崎省三は夭折した画家として知られる村山槐多の友人で、村山槐多の没後にいち早く顕彰に努めた画家だそうです。2人が出会ったのは1915年の19歳の頃で、何度か共同生活を送るなど密接した関係だったようです。しかし1919年に村山槐多は22歳という若さで生涯を終え、山崎省三はそれ以降 村山槐多の詩や絵画を集めて展覧会の開催や詩集・画集の出版に奔走していきます。この業績が無ければ村山槐多が世に知られることは無かったかもしれないので、山崎省三の果たした役割は大きいと思われます。そしてその後は村山槐多の叔父の山本鼎が牽引した「農民美術運動」や児童の自由絵画教育に携わりながら春陽会の画家として活躍していったようです。取材旅行でパリ・北海道・信州・伊豆大島・沖縄などに出向き、戦時中は南方に関心を寄せて従軍画家として広州やシンガポールを描きました。しかし終戦目前の1945年の6月にハノイで戦病死したそうで、この特集では晩年までの作品(横須賀美術館が所蔵する山崎省三の16点全て)が展示されていました。
参考記事:渋谷ユートピア1900-1945 (松濤美術館)
104 山崎省三 「布良風景」 ★こちらで観られます
こちらは手前に木々がありその奥に灰色や赤の屋根が連なる様子を描いた作品です。くすんだ重い色彩で、どっしりとした印象を受け、表現主義的な制作意図があるとのことです。キュビスム的な幾何学性のリズムも感じられて面白い構図となっていました。
106 山崎省三 「裸婦」
こちらは腰に手を当てて立つ裸婦を描いた木炭スケッチです。何度も描いた輪郭と黒々した陰影が付けられ、裸婦の身体が太めなこともあって力強い生命感が感じられます。ちょっと村山槐多との共通点もあるように思えました。
109 山崎省三 「田園風景」
こちらは手前から順に 水田、畑、農家、森、空といった感じで田園の風景が描かれた作品です。全体的に淡い色彩で単純化されていて、直線が多く使われ形態のリズムが感じられます。一見すると長閑だけど、この単純化は先進的なものを感じました。農民美術運動に関わっていたみたいだし、農村に関心があったのかな。
112 山崎省三 「K氏の肖像(岸辺福雄像)」
こちらはスーツ姿の紳士を描いた肖像で、描かれているのは岸辺福雄という幼児教育の先駆者で知られる人物だそうです。芸術教育運動の中で知り合ったそうで、温和な印象を受けます。粗めのタッチであるものの落ち着いた色調で、人となりが滲み出るような肖像でした。
115 山崎省三 「廈鼓双岸」
こちらは厦門(アモイ)とコロンス島の間の海峡を描いた風景画で、沢山の帆船が行き交う様子となっています。素早い筆致で潮の流れを表しているようにも見えるかな。軽やかな色彩が爽やかで、従軍時代の作品とは思えないほど平和な光景となっていました。
この隣も南方の港を描いた作品で、デュフィを思わせる躍動感ある筆致でした。
119 山崎省三 「マラッカ風景」
こちらはマラッカの聖フランシスコ・サビエル教会と思われる2つの塔のある教会を描いた作品です。教会はゴシック様式で、手前には家々や行き交う人の姿もあって当時のマラッカの賑わいを感じます。赤色が多く異国情緒も感じられ、明るい印象を受けました。
部屋の中央には山崎省三がまとめた村山槐多の画集や詩集もありました。合わせて自著も並んでいます。
ということで、村山槐多はよく観ますが山崎省三についてはまとめて観るのは初めての機会となっていました。小規模な展示ながら村山槐多との関係性や、山崎省三本人の画風を知ることができました。横須賀美術館は常設も見応えがあるので、特別展を見に行く機会があったら常設も合わせて観ることをオススメします。次回は特別展についてご紹介の予定です。

【展覧名】
第3期所蔵品展 特集:山崎省三
【公式サイト】
https://www.yokosuka-moa.jp/exhibit/josetu/sho1903.html
【会場】横須賀美術館
【最寄】馬堀海岸駅/浦賀駅
【会期】2019年10月5日(土)~12月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は横須賀美術館で年に4回行われる所蔵品展の3期目で、今回もいくつかの特集があり「特集:山崎省三」のタイトルとなっていました。今回は山崎省三の特集の部屋だけメモしてきましたので、気に入った作品をいくつかご紹介していこうと思います。なお、上記の評価概要は常設展全体のもので、山崎省三の特集は全16点と小規模なものとなります。
まず最初に山崎省三についての概略がありました。山崎省三は夭折した画家として知られる村山槐多の友人で、村山槐多の没後にいち早く顕彰に努めた画家だそうです。2人が出会ったのは1915年の19歳の頃で、何度か共同生活を送るなど密接した関係だったようです。しかし1919年に村山槐多は22歳という若さで生涯を終え、山崎省三はそれ以降 村山槐多の詩や絵画を集めて展覧会の開催や詩集・画集の出版に奔走していきます。この業績が無ければ村山槐多が世に知られることは無かったかもしれないので、山崎省三の果たした役割は大きいと思われます。そしてその後は村山槐多の叔父の山本鼎が牽引した「農民美術運動」や児童の自由絵画教育に携わりながら春陽会の画家として活躍していったようです。取材旅行でパリ・北海道・信州・伊豆大島・沖縄などに出向き、戦時中は南方に関心を寄せて従軍画家として広州やシンガポールを描きました。しかし終戦目前の1945年の6月にハノイで戦病死したそうで、この特集では晩年までの作品(横須賀美術館が所蔵する山崎省三の16点全て)が展示されていました。
参考記事:渋谷ユートピア1900-1945 (松濤美術館)
104 山崎省三 「布良風景」 ★こちらで観られます
こちらは手前に木々がありその奥に灰色や赤の屋根が連なる様子を描いた作品です。くすんだ重い色彩で、どっしりとした印象を受け、表現主義的な制作意図があるとのことです。キュビスム的な幾何学性のリズムも感じられて面白い構図となっていました。
106 山崎省三 「裸婦」
こちらは腰に手を当てて立つ裸婦を描いた木炭スケッチです。何度も描いた輪郭と黒々した陰影が付けられ、裸婦の身体が太めなこともあって力強い生命感が感じられます。ちょっと村山槐多との共通点もあるように思えました。
109 山崎省三 「田園風景」
こちらは手前から順に 水田、畑、農家、森、空といった感じで田園の風景が描かれた作品です。全体的に淡い色彩で単純化されていて、直線が多く使われ形態のリズムが感じられます。一見すると長閑だけど、この単純化は先進的なものを感じました。農民美術運動に関わっていたみたいだし、農村に関心があったのかな。
112 山崎省三 「K氏の肖像(岸辺福雄像)」
こちらはスーツ姿の紳士を描いた肖像で、描かれているのは岸辺福雄という幼児教育の先駆者で知られる人物だそうです。芸術教育運動の中で知り合ったそうで、温和な印象を受けます。粗めのタッチであるものの落ち着いた色調で、人となりが滲み出るような肖像でした。
115 山崎省三 「廈鼓双岸」
こちらは厦門(アモイ)とコロンス島の間の海峡を描いた風景画で、沢山の帆船が行き交う様子となっています。素早い筆致で潮の流れを表しているようにも見えるかな。軽やかな色彩が爽やかで、従軍時代の作品とは思えないほど平和な光景となっていました。
この隣も南方の港を描いた作品で、デュフィを思わせる躍動感ある筆致でした。
119 山崎省三 「マラッカ風景」
こちらはマラッカの聖フランシスコ・サビエル教会と思われる2つの塔のある教会を描いた作品です。教会はゴシック様式で、手前には家々や行き交う人の姿もあって当時のマラッカの賑わいを感じます。赤色が多く異国情緒も感じられ、明るい印象を受けました。
部屋の中央には山崎省三がまとめた村山槐多の画集や詩集もありました。合わせて自著も並んでいます。
ということで、村山槐多はよく観ますが山崎省三についてはまとめて観るのは初めての機会となっていました。小規模な展示ながら村山槐多との関係性や、山崎省三本人の画風を知ることができました。横須賀美術館は常設も見応えがあるので、特別展を見に行く機会があったら常設も合わせて観ることをオススメします。次回は特別展についてご紹介の予定です。
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今日は写真多めです。先週の土曜日に横須賀の横須賀美術館に行ってきました。特別展を見る前に谷内六郎館で「谷内六郎〈週刊新潮 表紙絵〉展 昭和というたからもの 岩崎俊一のコピーとともに」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
谷内六郎〈週刊新潮 表紙絵〉展
昭和というたからもの 岩崎俊一のコピーとともに
【公式サイト】
https://www.yokosuka-moa.jp/exhibit/taniuchi/tani1903.html
【会場】横須賀美術館
【最寄】馬堀海岸駅/浦賀駅
【会期】2019年10月5日(土)~12月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この谷内六郎館は昭和の頃に週刊新潮の表紙を飾っていた作品の原画が常設されていて、季節ごとに内容が入れ替わります。今回は谷内六郎の絵だけでなく、数多くの名コピーで広告を彩ったコピーライターの岩崎俊一が絵に添えたキャッチコピーも合わせて観るという いつもとは違った趣向となっていました。今回は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。
まず最初はいつも通り原画を観ていきました。
谷内六郎 「柿に残る西陽」

こちらは今回のポスターになっている作品。私の家でも柿が取れたので木登りした記憶もあって懐かしく思えます。秋の風情もしんみりして好みの作品でした。
谷内六郎 「リボンについてくる蝶」

白い蝶が髪に乗ってリボンのようになっているのが可愛い。谷内六郎の作風はこうした素朴な見立てが多いのが特徴だと思います。
谷内六郎 「制限速度で来てよ」

燕は非常に速く飛べる鳥なので、30kmなんてレベルじゃないでしょうねw 5月頃の爽やかな雰囲気が伝わってきます。
谷内六郎 「葉っぱのアクアラング」

大きな葉っぱを足ひれにしている発想が面白い。子供の遊びはこういう代用の発想が凄かったりしますね。地方では今でもこんな光景があるんでしょうか…
谷内六郎 「ミシンの音」

こちらはミシンの音を鉄道の音に見立てた作品。こちらも発想が面白いですが、それ以上に谷内六郎の作品を観ていると子供時代のことを思い起こしてノスタルジックな気分になります。
谷内六郎 「招かざる客」

鳥でも捕まえようとしてたのかな? 罠の餌を全部食べられていて可愛いw
谷内六郎 「みかん」

子供がミカンを差し出していて、せっかく張った障子も台無しにw 子供と猫は無邪気に障子を破る生き物だから仕方ないかなw
他にも沢山可愛らしくて懐かしい作品がありました。一通り見て回った後、出入口付近で流されていたスライドを観ました。今回の主旨はこのスライドにあります。
谷内六郎/岩崎俊一 「月夜の蚊帳」

流石は一流のコピーライターだけあって詩的なコピーです。蚊帳は張ったことがないけどテント気分になれそうw
谷内六郎/岩崎俊一 「待ちぼうけ」

冷たい井戸水にひたしてじっと待つ坊やが可愛いw みんなでワイワイ食べてるのが一番美味しいでしょうね…
谷内六郎/岩崎俊一 「たもとの中」

私は大人になるまでホタルを観たことが無かったので、このコピーは妙に心に響きました。豊かさとは何かを考えさせられますね。
谷内六郎/岩崎俊一 「コオロギのまつり」

都心では月を見る機会が少ないのは間違いないので、これも納得感がありますね。
ということで、谷内六郎の絵もさることながら岩崎俊一のコピーも心に染み入るような展示となっていました。便利になったことで失ってしまったものを思い出させてくれるかもしれません。この美術館に行く機会があったらこの館もじっくり観ることをオススメします。
この後、特別展も観てきましたので次回はそれについてご紹介の予定です。

【展覧名】
谷内六郎〈週刊新潮 表紙絵〉展
昭和というたからもの 岩崎俊一のコピーとともに
【公式サイト】
https://www.yokosuka-moa.jp/exhibit/taniuchi/tani1903.html
【会場】横須賀美術館
【最寄】馬堀海岸駅/浦賀駅
【会期】2019年10月5日(土)~12月15日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この谷内六郎館は昭和の頃に週刊新潮の表紙を飾っていた作品の原画が常設されていて、季節ごとに内容が入れ替わります。今回は谷内六郎の絵だけでなく、数多くの名コピーで広告を彩ったコピーライターの岩崎俊一が絵に添えたキャッチコピーも合わせて観るという いつもとは違った趣向となっていました。今回は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。
まず最初はいつも通り原画を観ていきました。
谷内六郎 「柿に残る西陽」

こちらは今回のポスターになっている作品。私の家でも柿が取れたので木登りした記憶もあって懐かしく思えます。秋の風情もしんみりして好みの作品でした。
谷内六郎 「リボンについてくる蝶」

白い蝶が髪に乗ってリボンのようになっているのが可愛い。谷内六郎の作風はこうした素朴な見立てが多いのが特徴だと思います。
谷内六郎 「制限速度で来てよ」

燕は非常に速く飛べる鳥なので、30kmなんてレベルじゃないでしょうねw 5月頃の爽やかな雰囲気が伝わってきます。
谷内六郎 「葉っぱのアクアラング」

大きな葉っぱを足ひれにしている発想が面白い。子供の遊びはこういう代用の発想が凄かったりしますね。地方では今でもこんな光景があるんでしょうか…
谷内六郎 「ミシンの音」

こちらはミシンの音を鉄道の音に見立てた作品。こちらも発想が面白いですが、それ以上に谷内六郎の作品を観ていると子供時代のことを思い起こしてノスタルジックな気分になります。
谷内六郎 「招かざる客」

鳥でも捕まえようとしてたのかな? 罠の餌を全部食べられていて可愛いw
谷内六郎 「みかん」

子供がミカンを差し出していて、せっかく張った障子も台無しにw 子供と猫は無邪気に障子を破る生き物だから仕方ないかなw
他にも沢山可愛らしくて懐かしい作品がありました。一通り見て回った後、出入口付近で流されていたスライドを観ました。今回の主旨はこのスライドにあります。
谷内六郎/岩崎俊一 「月夜の蚊帳」

流石は一流のコピーライターだけあって詩的なコピーです。蚊帳は張ったことがないけどテント気分になれそうw
谷内六郎/岩崎俊一 「待ちぼうけ」

冷たい井戸水にひたしてじっと待つ坊やが可愛いw みんなでワイワイ食べてるのが一番美味しいでしょうね…
谷内六郎/岩崎俊一 「たもとの中」

私は大人になるまでホタルを観たことが無かったので、このコピーは妙に心に響きました。豊かさとは何かを考えさせられますね。
谷内六郎/岩崎俊一 「コオロギのまつり」

都心では月を見る機会が少ないのは間違いないので、これも納得感がありますね。
ということで、谷内六郎の絵もさることながら岩崎俊一のコピーも心に染み入るような展示となっていました。便利になったことで失ってしまったものを思い出させてくれるかもしれません。この美術館に行く機会があったらこの館もじっくり観ることをオススメします。
この後、特別展も観てきましたので次回はそれについてご紹介の予定です。
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前々回・前回とご紹介した世田谷美術館の特別展を観た後、2階の常設展も観てきました。今回の常設は「ミュージアム コレクションⅡ 森芳雄と仲間たち」というタイトルで期間も設けられていました。

【展覧名】
ミュージアム コレクションⅡ 森芳雄と仲間たち
【公式サイト】
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection/detail.php?id=col00104
【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅
【会期】2019年8月3日(土)~2019年11月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は世田谷に馴染みの深い洋画家の森芳雄と、その仲間の画家たちの作品が並ぶ内容となっています。最初に森芳雄の作品が多く並び、その後に仲間のが数点ずつと言った感じです。画家ごとにコーナーが分かれていましたので、詳しくは各画家ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<森芳雄>
まずは今回の主役である森芳雄のコーナーです。森芳雄は1908年の麻布生まれで、慶應義塾普通部を修了し東京美術学校を受験するも2度に渡り失敗し、1930年協会の研究所で絵画を学びました。1931年には第1回独立美術協会展に入選し、同年に渡仏して今泉篤男、山口薫、浜口陽三らと知り合います。そして、翌1932年にはサロン・ドートンヌに入選、1934年には個展を開催し、その後も独立展などで受賞していったようです。しかし1945年には東京大空襲によって恵比寿のアトリエが全焼し、戦前の作品のほぼ全てが失われてしまうなどの悲劇もあったようです。戦後の1951年からは武蔵野美術学校で教鞭を執り、1981年まで後進の指導にあたりました。一方、1964年には自由美術協会を脱退し主体美術協会を結成して代表を務めています。その作風は 簡略化した人物像を画面に配し、形体相互の拮抗や調和に造形美を見出したものだそうで、特に母子像を多く描いたそうです。この章では貴重な戦前の作品も含め、亡くなった1997年までの作品が並んでいました。
参考記事:昭和の洋画を切り拓いた若き情熱1930年協会から独立へ (八王子市夢美術館)
1 森芳雄 「枝のある静物」
こちらは現存の少ない戦前の作品で、テーブルの上に置かれた枝が描かれています。かなり簡略的で大きな筆跡が残る大胆な作風で、背景の壁は黒と水色で強めのコントラストとなっていました。独立展系なのでやはりフォーヴ的な要素があるように思えました。
3 森芳雄 「真夏の道」
こちらも戦前の作品で、ブロック塀のある道が描かれています。奥にオレンジ色の屋根の家があり、恐らくフランスの田舎町の光景じゃないかな。赤い帽子と白い服の女性の姿もあり、籠を抱えていて買い物帰りでしょうか。手前には黒猫が横切っているなど 穏やかで心休まる風景です。色が強めで簡略化されていて、夏の日の雰囲気も出ていました。
14 森芳雄 「黄土地帯」
こちらは家々が立ち並ぶ街角を描いた作品で、全体的にオレンジがかっていて くすんだマチエールとなっています。下絵の輪郭のようなものも残っていて、それで何となく形が分かるような感じです。しみじみと寂しげな雰囲気ですが、一方で反対に温かみもあるように思えました。
この辺はくすんで ザラついたマチエールの人物像などもありました。
26 森芳雄 「婦人坐像」
こちらは恐らく横向きの婦人像で、手前のテーブルにリンゴが置かれています。婦人の腕だけは簡単な輪郭が分かりますが、他は赤・青・オレンジなどが交じるシルエットのようになっています。人物は半抽象・半具象と言った様相なのに、リンゴは割としっかり描かれているのが不思議で面白い作品でした。
19 森芳雄 「妻が置いた[みかん]」
こちらは時計、バラ、籠に入った葉っぱ付きのミカンなどが描かれた静物です。この絵ではかなりくっきりした画風となっていて、特にオレンジ色のミカンが色鮮やかに表されています。全体的に明るい色彩なのに穏やかな印象を受けるのも独特でした。
この近くにはパステルの風景素描などもありました。夕日の木立を描いたものが多いかな。
5 森芳雄 「人々」
こちらは大型作品で、人々が集まる所(バーのような所?)が描かれています。人というよりは木像が並んでいるような質感で、キュビスム的な簡略化と多面的な描写に思えます。何人いるのかも はっきりとは分かりませんが、形体的な面白さと人々の身体の重厚感が個性的に思えました。
この辺はたまにキュビスム的な作品がありました。
11 森芳雄 「広場-イタリア」
こちらは今回のポスターになっている作品で、上部に丸い窓のある石造りの建物の前に立つ女性と、建物の隣にある彫像が描かれています。全体的にくすんだマチエールで、細部はわからず風化したような印象を受けます。背景は地面あたりまで青空となっていて、やや超現実的な雰囲気もあるように思えました。
この近くにはメキシコのピラミッドを描いた作品などもありました。
17 森芳雄 「空しき祈願」
こちらは3人の裸体の男女が描かれた大型作品です。男性は天を仰いで何かを乞うように手を挙げていて、後ろには2人の女性が抱き合って何かを心配しているように見えます。人体はしっかり描かれていますが、激しい筆致で茶色っぽい色合いとなっていて荒々しい雰囲気です。どこか悲劇めいた印象を受ける作品でした。
30 森芳雄 「母子」
こちらはオレンジ色の服の子供を抱く青い服の母親が描かれた作品です。やはり細部は描き込まれていませんが、白っぽく明るい背景となっていて 子供の胸元の明るいオレンジの部分に光が降り注いでいるように見えました。全体的に神々しく、聖母子を思い起こすような主題です。
31 森芳雄 「道」
こちらは壁と電信柱らしきものが見える道を描いた作品で、画面の大半は引っ掻いたようなマチエールとなっています。細部は分かりませんが、暗い印象はあまりなく黄昏時のような幻想的な風景となっていました。
<山口薫>
続いては仲間の山口薫のコーナーです。2人は渡仏の際に知り合い、先に滞在していた山口薫が森芳雄の世話をしてくれたようです。何度も展覧会を共にした盟友とも言える仲です。
37 山口薫 「南仏・カッシス風景」
こちらはオレンジの屋根の家々を見下ろす風景画で、背景には森や赤土の山が見えています。四角く幾何学的な家はセザンヌも描いた南仏らしい光景で、屋根のオレンジと緑の対比によって色が鮮やかに感じられました。
40 山口薫 「娘の肖像 おぼえがき」
こちらは全体的に黄色い画面で、中央に人らしき輪郭と赤く太い線で囲まれています。これが娘なの?ってくらい抽象的で、先程の南仏の絵とはかなり画風が異なります。ザラついた様々な色が混じったマチエールも抽象性を高めているように思えました。
<須田寿>
続いては仲間の須田寿のコーナーです。森芳雄と須田寿は同じ武蔵野美術大学で13年間一緒に教鞭をとっていたようで、2人展も開催したことがあるようです。
44 須田寿 「ローマの影」
こちらは横たわった人が描かれ、背景には建物、手前には白い壺が置かれている様子となっています。全体的に茶色っぽく、くすんだマチエールでぼんやり描かれていて 細部までは描き込まれていません。人はマネキンのようで、そのせいかシュールな雰囲気がありました。
<麻生三郎>
続いては麻生三郎のコーナーです。森芳雄とは自由美術協会の会員同士で、武蔵野美術大学で30年ほど共に勤務した仲のようです。2人展も開催したことがあるのだとか。
59 麻生三郎 「胴体と太陽」
こちらは暗い画面にシミのように白い何かが描かれている抽象的な作品です。たまに円などがあって、これが太陽じゃないかな。他の部分はよく分かりませんが、やや不気味な雰囲気が漂っていました
この辺は同様の作品がいくつか並んでいました。
<難波田龍起>
続いては難波田龍起のコーナーです。森芳雄とは自由美術協会の会員同士だったようです。
55 難波田龍起 「流動する生命体」
こちらは青い背景に黒い線が無数に流れていくような抽象画です。ジャクソン・ポロックのポーリングを思わせるような感じで、有機的な躍動感と色彩の美しさが魅力的でした。
難波田龍起は戦前の具象と戦後の抽象がありました。
<脇田和>
最後は脇田和のコーナーです。森芳雄とは数多くの展覧会を共にしたそうです。
65 脇田和 「かたつむり」
こちらは上下2段になった大型作品で、それぞれの場面は繋がっているようです。左右に2人の白い人物像があり、中央は枯れた葉っぱ?で画面の真ん中あたりい小さく白いカタツムリらしき姿もあります。全体的に茶色っぽく、幻想的な光景かな。人物は子供のようで可愛らしい雰囲気でした。
この後の部屋には駒井哲郎の展示もありました。そちらは割愛します。
ということで、ミニ個展の様相となっていました。何度か目にしたことはありましたが、これだけまとまっていると時系列の作風の変化も観られて面白かったです。世田谷美術館に行く機会があったら、特別展だけでなく2階の常設展も見て回ることをオススメします。

【展覧名】
ミュージアム コレクションⅡ 森芳雄と仲間たち
【公式サイト】
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection/detail.php?id=col00104
【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅
【会期】2019年8月3日(土)~2019年11月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間40分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は世田谷に馴染みの深い洋画家の森芳雄と、その仲間の画家たちの作品が並ぶ内容となっています。最初に森芳雄の作品が多く並び、その後に仲間のが数点ずつと言った感じです。画家ごとにコーナーが分かれていましたので、詳しくは各画家ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<森芳雄>
まずは今回の主役である森芳雄のコーナーです。森芳雄は1908年の麻布生まれで、慶應義塾普通部を修了し東京美術学校を受験するも2度に渡り失敗し、1930年協会の研究所で絵画を学びました。1931年には第1回独立美術協会展に入選し、同年に渡仏して今泉篤男、山口薫、浜口陽三らと知り合います。そして、翌1932年にはサロン・ドートンヌに入選、1934年には個展を開催し、その後も独立展などで受賞していったようです。しかし1945年には東京大空襲によって恵比寿のアトリエが全焼し、戦前の作品のほぼ全てが失われてしまうなどの悲劇もあったようです。戦後の1951年からは武蔵野美術学校で教鞭を執り、1981年まで後進の指導にあたりました。一方、1964年には自由美術協会を脱退し主体美術協会を結成して代表を務めています。その作風は 簡略化した人物像を画面に配し、形体相互の拮抗や調和に造形美を見出したものだそうで、特に母子像を多く描いたそうです。この章では貴重な戦前の作品も含め、亡くなった1997年までの作品が並んでいました。
参考記事:昭和の洋画を切り拓いた若き情熱1930年協会から独立へ (八王子市夢美術館)
1 森芳雄 「枝のある静物」
こちらは現存の少ない戦前の作品で、テーブルの上に置かれた枝が描かれています。かなり簡略的で大きな筆跡が残る大胆な作風で、背景の壁は黒と水色で強めのコントラストとなっていました。独立展系なのでやはりフォーヴ的な要素があるように思えました。
3 森芳雄 「真夏の道」
こちらも戦前の作品で、ブロック塀のある道が描かれています。奥にオレンジ色の屋根の家があり、恐らくフランスの田舎町の光景じゃないかな。赤い帽子と白い服の女性の姿もあり、籠を抱えていて買い物帰りでしょうか。手前には黒猫が横切っているなど 穏やかで心休まる風景です。色が強めで簡略化されていて、夏の日の雰囲気も出ていました。
14 森芳雄 「黄土地帯」
こちらは家々が立ち並ぶ街角を描いた作品で、全体的にオレンジがかっていて くすんだマチエールとなっています。下絵の輪郭のようなものも残っていて、それで何となく形が分かるような感じです。しみじみと寂しげな雰囲気ですが、一方で反対に温かみもあるように思えました。
この辺はくすんで ザラついたマチエールの人物像などもありました。
26 森芳雄 「婦人坐像」
こちらは恐らく横向きの婦人像で、手前のテーブルにリンゴが置かれています。婦人の腕だけは簡単な輪郭が分かりますが、他は赤・青・オレンジなどが交じるシルエットのようになっています。人物は半抽象・半具象と言った様相なのに、リンゴは割としっかり描かれているのが不思議で面白い作品でした。
19 森芳雄 「妻が置いた[みかん]」
こちらは時計、バラ、籠に入った葉っぱ付きのミカンなどが描かれた静物です。この絵ではかなりくっきりした画風となっていて、特にオレンジ色のミカンが色鮮やかに表されています。全体的に明るい色彩なのに穏やかな印象を受けるのも独特でした。
この近くにはパステルの風景素描などもありました。夕日の木立を描いたものが多いかな。
5 森芳雄 「人々」
こちらは大型作品で、人々が集まる所(バーのような所?)が描かれています。人というよりは木像が並んでいるような質感で、キュビスム的な簡略化と多面的な描写に思えます。何人いるのかも はっきりとは分かりませんが、形体的な面白さと人々の身体の重厚感が個性的に思えました。
この辺はたまにキュビスム的な作品がありました。
11 森芳雄 「広場-イタリア」
こちらは今回のポスターになっている作品で、上部に丸い窓のある石造りの建物の前に立つ女性と、建物の隣にある彫像が描かれています。全体的にくすんだマチエールで、細部はわからず風化したような印象を受けます。背景は地面あたりまで青空となっていて、やや超現実的な雰囲気もあるように思えました。
この近くにはメキシコのピラミッドを描いた作品などもありました。
17 森芳雄 「空しき祈願」
こちらは3人の裸体の男女が描かれた大型作品です。男性は天を仰いで何かを乞うように手を挙げていて、後ろには2人の女性が抱き合って何かを心配しているように見えます。人体はしっかり描かれていますが、激しい筆致で茶色っぽい色合いとなっていて荒々しい雰囲気です。どこか悲劇めいた印象を受ける作品でした。
30 森芳雄 「母子」
こちらはオレンジ色の服の子供を抱く青い服の母親が描かれた作品です。やはり細部は描き込まれていませんが、白っぽく明るい背景となっていて 子供の胸元の明るいオレンジの部分に光が降り注いでいるように見えました。全体的に神々しく、聖母子を思い起こすような主題です。
31 森芳雄 「道」
こちらは壁と電信柱らしきものが見える道を描いた作品で、画面の大半は引っ掻いたようなマチエールとなっています。細部は分かりませんが、暗い印象はあまりなく黄昏時のような幻想的な風景となっていました。
<山口薫>
続いては仲間の山口薫のコーナーです。2人は渡仏の際に知り合い、先に滞在していた山口薫が森芳雄の世話をしてくれたようです。何度も展覧会を共にした盟友とも言える仲です。
37 山口薫 「南仏・カッシス風景」
こちらはオレンジの屋根の家々を見下ろす風景画で、背景には森や赤土の山が見えています。四角く幾何学的な家はセザンヌも描いた南仏らしい光景で、屋根のオレンジと緑の対比によって色が鮮やかに感じられました。
40 山口薫 「娘の肖像 おぼえがき」
こちらは全体的に黄色い画面で、中央に人らしき輪郭と赤く太い線で囲まれています。これが娘なの?ってくらい抽象的で、先程の南仏の絵とはかなり画風が異なります。ザラついた様々な色が混じったマチエールも抽象性を高めているように思えました。
<須田寿>
続いては仲間の須田寿のコーナーです。森芳雄と須田寿は同じ武蔵野美術大学で13年間一緒に教鞭をとっていたようで、2人展も開催したことがあるようです。
44 須田寿 「ローマの影」
こちらは横たわった人が描かれ、背景には建物、手前には白い壺が置かれている様子となっています。全体的に茶色っぽく、くすんだマチエールでぼんやり描かれていて 細部までは描き込まれていません。人はマネキンのようで、そのせいかシュールな雰囲気がありました。
<麻生三郎>
続いては麻生三郎のコーナーです。森芳雄とは自由美術協会の会員同士で、武蔵野美術大学で30年ほど共に勤務した仲のようです。2人展も開催したことがあるのだとか。
59 麻生三郎 「胴体と太陽」
こちらは暗い画面にシミのように白い何かが描かれている抽象的な作品です。たまに円などがあって、これが太陽じゃないかな。他の部分はよく分かりませんが、やや不気味な雰囲気が漂っていました
この辺は同様の作品がいくつか並んでいました。
<難波田龍起>
続いては難波田龍起のコーナーです。森芳雄とは自由美術協会の会員同士だったようです。
55 難波田龍起 「流動する生命体」
こちらは青い背景に黒い線が無数に流れていくような抽象画です。ジャクソン・ポロックのポーリングを思わせるような感じで、有機的な躍動感と色彩の美しさが魅力的でした。
難波田龍起は戦前の具象と戦後の抽象がありました。
<脇田和>
最後は脇田和のコーナーです。森芳雄とは数多くの展覧会を共にしたそうです。
65 脇田和 「かたつむり」
こちらは上下2段になった大型作品で、それぞれの場面は繋がっているようです。左右に2人の白い人物像があり、中央は枯れた葉っぱ?で画面の真ん中あたりい小さく白いカタツムリらしき姿もあります。全体的に茶色っぽく、幻想的な光景かな。人物は子供のようで可愛らしい雰囲気でした。
この後の部屋には駒井哲郎の展示もありました。そちらは割愛します。
ということで、ミニ個展の様相となっていました。何度か目にしたことはありましたが、これだけまとまっていると時系列の作風の変化も観られて面白かったです。世田谷美術館に行く機会があったら、特別展だけでなく2階の常設展も見て回ることをオススメします。
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今日は前回に引き続き世田谷美術館の「チェコ・デザイン 100年の旅」についてです。前半は5章の戦中戦後の頃までについてでしたが、今日は戦後の6~10章についてご紹介して行こうと思います。まずは概要のおさらいです。
→ 前編はこちら

【展覧名】
チェコ・デザイン 100年の旅
【公式サイト】
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00195
【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅
【会期】2019年9月14日(土)~11月10日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前編に引き続き、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第6章 1950-60年代:日常生活と応用美術の解放>
6章は社会主義国家となった1950年~60年代のコーナーです。1940年代の政治的転換はデザインや建築にも大きな影響があったようで、ソビエト由来の社会主義リアリズムが奨励されたそうです。しかし1950年代後半からはそうした状況が少しづつ緩和され始め、芸術家がどういう様式で制作するか厳格に要求されることはなくなっていきました。そして西側の動向や国内の消費産業にも注目してデザインは盛り上がりを見せ、1958年にはブリュッセル万国博覧会に参加して成功を収めました。その万博を機に広まった「ブリュッセル・スタイル」はこの時期特有の様式らしく、アンフォルメル、タシスム、抽象表現主義、シュルレアリスムなど自由な芸術様式からインスピレーションを得ていたようです。また、宇宙飛行の成功に影響を受けて 抽象的な台形や三角形をしたデザインや、プラスチックなど新素材を使ったものが登場したようです。そして1960年代はさらにイデオロギー的な制約は弱まったようで、ポップアートなども取り入れたデザインとなったようです。ここにはそうした意外にも自由だった時代のデザインが並んでいました。
105 エヴァ・ハヴェルコヴァー=リンハルトヴァー 「燭台」
こちらは有人宇宙飛行の成功にインスピレーションを得て作られた金色の燭台です。足の部分は鎌のようなものが3本あり、宇宙船の足をイメージさせます。全体的に軽さが強調されているようで、薄くて細身の作りになっているのも特徴かな。先進的で流線的なデザインの作品でした。
この隣にも宇宙開発を連想させる抽象的な絵柄のコーヒーセットがありました。
107 ヤロスラフ・イェジェク 「陶磁器製置物 1.ネコ 2.キジ 3.サギ」
こちらは黒い陶器の置物で、猫を表しているようですが顔は三角形で身体は溶けるように滑らかな曲線となっています。かなり単純化されても猫っぽさがあり、とにかくフォルムが美しく気品すら感じました。同様にキジとサギの置物もあったけど、サギはもはや何だか分からないくらい流麗なフォルムになっていて現代的な印象でした。
この辺はシンプルだけど滑らかで有機的なデザインの品が並んでいました。電話機や掃除機まであってチェコのデザインの豊かさを感じさせます。
116 ヤロスラフ・フランチシェク・コフ 「チェザタ・スクーター [501型]」 ★こちらで観られます
こちらは豚の鼻のようなライトが付いていることから「ピッグ」の愛称を持つスクーターです。長い鼻の部分に燃料タンクがあるらしく、座席の下に広いスペースが確保され車輪感覚も長くなり それによって乗り心地も良いそうです。色は白とスカイブルーのツートンカラーで、非常に爽やかな印象を受けます。何処か懐かしいレトロさもあって かなりお洒落な雰囲気でした。
この近くには映画のポスターや東京オリンピック向けのポスターがありました。
<第7章 1970-80年代:生活水準の見直しからポスト・モダンへ>
続いては1970~80年代のコーナーです。1968年に「プラハの春」とその後のワルシャワ条約機構軍による軍事介入(チェコ事件)が起きたことで その後20年間は創造的な機運と世界への門戸は閉ざされてしまいました。1970年の大阪万博の頃はまだ自由だった頃の気風があり成功することができたようですが、その後は外国に勝つための輸出製品と質の低い国内向けの製品に二分されるようになっていったようです。また、チェコ国内では深刻な住宅不足によって巨大団地が作られ、低品質の素材で作られた家具が並ぶ画一的なインテリアとなったようです。しかし1980年代前半以降は社会主義産業に背を向けてポスト・モダン的なデザインも生まれたそうで、ここにはそうした動乱の時代の作品が並んでいました。
134 ヤン・シュラーメク、ズビニェク・フジヴナーチュ、ヤン・ボチャン 「アームチェア [オオサカI]」
こちらは大阪万博のチェコ・スロバキア館のためのソファです。曲木で四角っぽい楕円を2つ並べて肘掛けとし、背もたれと座る部分も四角っぽい形を組み合わせています。滑らかで量感があり、1人用にしては大きくて堂々たる印象を受けました。確かにこれはまだモダンな雰囲気が残っているかもしれません。
この辺は電話機やアイロンなどもありました。またちょっとキュビスム的な雰囲気があるようにも思えるかな。割とソ連っぽい感じもあって未知で面白いw
153 ミラン・クニージャーク 「椅子 [コキューブ]」
こちらは白い木製の椅子で、背もたれの部分が稲妻のような変わった形をしています。全体的に直線的でカクカクしたデザインに思えるかなw これも1971年の作品なので、まだ自由さがあるように思えました。
<第8章 1990年代から現代まで:自由化と機能の再発見>
続いては1990年代から現代までのコーナーです。1989年のビロード革命によって民主化されると デザインの世界にも大きな影響を及ぼしたようで、多くの国営企業が民営化されたものの 外国との競争にさらされ多くの企業が破綻したようです。しかし外国からのデザインはチェコのデザイナーにインスピレーションを与え、亡命していたデザイナーたちが帰国してきて、1990年代初頭には独立したデザイン・スタジオも立ち上げられるようになったようです。その後はポスト・モダンやネオモダニズムといった様式が流行り、現在ではチェコ社会におけるデザインの社会的意義が高まっているそうです。ここにはそうした近年の品が並んでいました。
160 ラジム・パパーク、ヤン・トゥチェク 「ランプ [PUR]」
こちらは長方形のウレタンの頭と長く細い足を持つランプです。ちょっと異様な見た目で これがランプとは気づかずにスピーカーかと思いましたw オレンジのウレタンのランプは光った時の様子が想像できるのですが、黒いウレタンのランプもあって、どのように点灯するのか気になるところです。実際に光っているところを観てみたかったw
158 ヤン・チュトゥヴルニーク 「椅子 [コクシー]」
こちらは椅子で、正面から見ると正方形の青い背もたれにH型の穴が空いているような形をしています。横から見ると三角形に足がついているような感じで、何故 背もたれの部分に穴が空いているのかは分かりませんが、レトロヒューチャーな印象を受けるかな。2005年の作品らしいけど、斬新さと共にちょっと懐かしさを感じさせました。
169 マクシム・ヴェルチョフスキー 「花瓶 [ウォータープルーフ]」
こちらは白い長靴に見える花瓶です。滑らかで真っ白でツヤがあり優美な印象を受けます。それにしてもかなり長い長靴なので、相当に長い花しか入らなそうw アイディアが面白い作品でした。
この辺にはグラデーションが美しいガラスの花器などもありました。
159 ジュリー・コザ 「多機能椅子 [でんぐり返し]」 ★こちらで観られます
こちらはプラスチック?の椅子らしきもので、外側は白で くり抜かれた内側はオレンジ色となっています。有機的な形となっていて、ひっくり返したり立てたりすることで多機能性を持たせているそうです。とは言え、ひっくり返してどうやって使うんだ?という疑問もありますw 貝殻を思わせる滑らかで不定形なデザインが美しく、色も洒落た印象となっていました。
<第9章 (テーマ展示1)チェコのおもちゃと子どものためのアート>
続いてはチェコのおもちゃのデザインのコーナーです。ここには様々な時代の玩具が並び、民俗的な印象を受けるデザインが多く観られました。
191 ヴァーツラフ・シュパーラ 「小箱 [悪魔]」
こちらは四角い箱状のものを2つ重ねて手足をつけたロボットのような形の悪魔の像です。前面はスライドして外れそうなので恐らく小箱になると思われます。口は切り込みを入れて表し、目や角なども単純化されて表していて まるで口を大きく開けて笑っているような印象を受けます。素朴で憎めない顔で、民俗的なデザインにも通じているように思えました。
197 「掛け算計算筒」
こちらは円筒形の筒で、側面の上の方に1~10の数字が2段並んでいます。さらに下の方には斜めに円形の穴がついていて、その穴の中には数字が書かれています。つまり、この円筒形の数字を回転させるとその組み合わせの掛け算の結果が穴の中に表示される仕組みになっているようです。単純な作りですが、これは楽しみながら掛け算を覚えることができそうで面白い発想でした。これは知育に良さそう。
207 リブシェ・ニクロヴァー 「キツネのアコーディオン」 ★こちらで観られます
こちらはオレンジ色のキツネのプラスチックの玩具で、胴体の部分がアコーディオン状(蛇腹状)になっています。これを折りたたんだり伸ばしたりして遊ぶのかな? 他にも同様のライオンや猫などもあって可愛らしいデザインでした。
<第10章 (テーマ展示2)チェコ・アニメーション>
最後はチェコのアニメに関するコーナーです。チェコでは第二次世界大戦より前からアニメが作られていたようで、大戦後は国営の映画スタジオで作られたパペットアニメーションが世界的な評価を受けたようです。さらに1965年からは毎日夕方に子供向けのアニメが放送されていたそうで、アニメはチェコの文化を代表する創作領域の1つと言えるようです。ここにはそうした日本では知られざるアニメ作品が並んでいました。
213 ヨゼフ・チャペック(原案)、エデュワルド・ホフマン(監督) 「セル画 [こいぬとこねこは愉快な仲間]より」
こちらはタンポポにとまる蜂を見る赤毛のむく犬を描いたセル画です。背景は白地に水色の幾何学的な文様となっていて、かなりシンプルな印象を受けます。犬はマスコット的な可愛さで、1950年代とは思えないくらいのキャラクターでした。
この辺はアニメのセル画が並び、いずれも子供向けの可愛らしい絵柄でした。また、出口付近ではそうしたアニメを流していて、大半はセリフの無いカートゥーンアニメで軽快な音楽とパントマイム的な動きをしていました。可愛いものや滑稽なものがあって動きも滑らかでした。
最後にこちらは出口にあったビニールの牛の玩具(リブシェ・ニクロヴァー ファトラ社「膨らむおもちゃ [バッファロー]」)

実際に触ったり抱いたりすることができます。
角度違い

結構複雑な形をしています。目が可愛いw
ということで、後半も観たことがないチェコのデザインの数々を楽しむことができました。旧東側でしたが時代によっては自由な気風があったりして、西側とはまた違ったデザインです。貴重な機会だし かなり満足したので図録も買いました。プロダクトデザインに興味がある方にはオススメの展示です。
おまけ:記念撮影スポットの写真

→ 前編はこちら

【展覧名】
チェコ・デザイン 100年の旅
【公式サイト】
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00195
【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅
【会期】2019年9月14日(土)~11月10日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_4_⑤_満足
【感想】
前編に引き続き、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第6章 1950-60年代:日常生活と応用美術の解放>
6章は社会主義国家となった1950年~60年代のコーナーです。1940年代の政治的転換はデザインや建築にも大きな影響があったようで、ソビエト由来の社会主義リアリズムが奨励されたそうです。しかし1950年代後半からはそうした状況が少しづつ緩和され始め、芸術家がどういう様式で制作するか厳格に要求されることはなくなっていきました。そして西側の動向や国内の消費産業にも注目してデザインは盛り上がりを見せ、1958年にはブリュッセル万国博覧会に参加して成功を収めました。その万博を機に広まった「ブリュッセル・スタイル」はこの時期特有の様式らしく、アンフォルメル、タシスム、抽象表現主義、シュルレアリスムなど自由な芸術様式からインスピレーションを得ていたようです。また、宇宙飛行の成功に影響を受けて 抽象的な台形や三角形をしたデザインや、プラスチックなど新素材を使ったものが登場したようです。そして1960年代はさらにイデオロギー的な制約は弱まったようで、ポップアートなども取り入れたデザインとなったようです。ここにはそうした意外にも自由だった時代のデザインが並んでいました。
105 エヴァ・ハヴェルコヴァー=リンハルトヴァー 「燭台」
こちらは有人宇宙飛行の成功にインスピレーションを得て作られた金色の燭台です。足の部分は鎌のようなものが3本あり、宇宙船の足をイメージさせます。全体的に軽さが強調されているようで、薄くて細身の作りになっているのも特徴かな。先進的で流線的なデザインの作品でした。
この隣にも宇宙開発を連想させる抽象的な絵柄のコーヒーセットがありました。
107 ヤロスラフ・イェジェク 「陶磁器製置物 1.ネコ 2.キジ 3.サギ」
こちらは黒い陶器の置物で、猫を表しているようですが顔は三角形で身体は溶けるように滑らかな曲線となっています。かなり単純化されても猫っぽさがあり、とにかくフォルムが美しく気品すら感じました。同様にキジとサギの置物もあったけど、サギはもはや何だか分からないくらい流麗なフォルムになっていて現代的な印象でした。
この辺はシンプルだけど滑らかで有機的なデザインの品が並んでいました。電話機や掃除機まであってチェコのデザインの豊かさを感じさせます。
116 ヤロスラフ・フランチシェク・コフ 「チェザタ・スクーター [501型]」 ★こちらで観られます
こちらは豚の鼻のようなライトが付いていることから「ピッグ」の愛称を持つスクーターです。長い鼻の部分に燃料タンクがあるらしく、座席の下に広いスペースが確保され車輪感覚も長くなり それによって乗り心地も良いそうです。色は白とスカイブルーのツートンカラーで、非常に爽やかな印象を受けます。何処か懐かしいレトロさもあって かなりお洒落な雰囲気でした。
この近くには映画のポスターや東京オリンピック向けのポスターがありました。
<第7章 1970-80年代:生活水準の見直しからポスト・モダンへ>
続いては1970~80年代のコーナーです。1968年に「プラハの春」とその後のワルシャワ条約機構軍による軍事介入(チェコ事件)が起きたことで その後20年間は創造的な機運と世界への門戸は閉ざされてしまいました。1970年の大阪万博の頃はまだ自由だった頃の気風があり成功することができたようですが、その後は外国に勝つための輸出製品と質の低い国内向けの製品に二分されるようになっていったようです。また、チェコ国内では深刻な住宅不足によって巨大団地が作られ、低品質の素材で作られた家具が並ぶ画一的なインテリアとなったようです。しかし1980年代前半以降は社会主義産業に背を向けてポスト・モダン的なデザインも生まれたそうで、ここにはそうした動乱の時代の作品が並んでいました。
134 ヤン・シュラーメク、ズビニェク・フジヴナーチュ、ヤン・ボチャン 「アームチェア [オオサカI]」
こちらは大阪万博のチェコ・スロバキア館のためのソファです。曲木で四角っぽい楕円を2つ並べて肘掛けとし、背もたれと座る部分も四角っぽい形を組み合わせています。滑らかで量感があり、1人用にしては大きくて堂々たる印象を受けました。確かにこれはまだモダンな雰囲気が残っているかもしれません。
この辺は電話機やアイロンなどもありました。またちょっとキュビスム的な雰囲気があるようにも思えるかな。割とソ連っぽい感じもあって未知で面白いw
153 ミラン・クニージャーク 「椅子 [コキューブ]」
こちらは白い木製の椅子で、背もたれの部分が稲妻のような変わった形をしています。全体的に直線的でカクカクしたデザインに思えるかなw これも1971年の作品なので、まだ自由さがあるように思えました。
<第8章 1990年代から現代まで:自由化と機能の再発見>
続いては1990年代から現代までのコーナーです。1989年のビロード革命によって民主化されると デザインの世界にも大きな影響を及ぼしたようで、多くの国営企業が民営化されたものの 外国との競争にさらされ多くの企業が破綻したようです。しかし外国からのデザインはチェコのデザイナーにインスピレーションを与え、亡命していたデザイナーたちが帰国してきて、1990年代初頭には独立したデザイン・スタジオも立ち上げられるようになったようです。その後はポスト・モダンやネオモダニズムといった様式が流行り、現在ではチェコ社会におけるデザインの社会的意義が高まっているそうです。ここにはそうした近年の品が並んでいました。
160 ラジム・パパーク、ヤン・トゥチェク 「ランプ [PUR]」
こちらは長方形のウレタンの頭と長く細い足を持つランプです。ちょっと異様な見た目で これがランプとは気づかずにスピーカーかと思いましたw オレンジのウレタンのランプは光った時の様子が想像できるのですが、黒いウレタンのランプもあって、どのように点灯するのか気になるところです。実際に光っているところを観てみたかったw
158 ヤン・チュトゥヴルニーク 「椅子 [コクシー]」
こちらは椅子で、正面から見ると正方形の青い背もたれにH型の穴が空いているような形をしています。横から見ると三角形に足がついているような感じで、何故 背もたれの部分に穴が空いているのかは分かりませんが、レトロヒューチャーな印象を受けるかな。2005年の作品らしいけど、斬新さと共にちょっと懐かしさを感じさせました。
169 マクシム・ヴェルチョフスキー 「花瓶 [ウォータープルーフ]」
こちらは白い長靴に見える花瓶です。滑らかで真っ白でツヤがあり優美な印象を受けます。それにしてもかなり長い長靴なので、相当に長い花しか入らなそうw アイディアが面白い作品でした。
この辺にはグラデーションが美しいガラスの花器などもありました。
159 ジュリー・コザ 「多機能椅子 [でんぐり返し]」 ★こちらで観られます
こちらはプラスチック?の椅子らしきもので、外側は白で くり抜かれた内側はオレンジ色となっています。有機的な形となっていて、ひっくり返したり立てたりすることで多機能性を持たせているそうです。とは言え、ひっくり返してどうやって使うんだ?という疑問もありますw 貝殻を思わせる滑らかで不定形なデザインが美しく、色も洒落た印象となっていました。
<第9章 (テーマ展示1)チェコのおもちゃと子どものためのアート>
続いてはチェコのおもちゃのデザインのコーナーです。ここには様々な時代の玩具が並び、民俗的な印象を受けるデザインが多く観られました。
191 ヴァーツラフ・シュパーラ 「小箱 [悪魔]」
こちらは四角い箱状のものを2つ重ねて手足をつけたロボットのような形の悪魔の像です。前面はスライドして外れそうなので恐らく小箱になると思われます。口は切り込みを入れて表し、目や角なども単純化されて表していて まるで口を大きく開けて笑っているような印象を受けます。素朴で憎めない顔で、民俗的なデザインにも通じているように思えました。
197 「掛け算計算筒」
こちらは円筒形の筒で、側面の上の方に1~10の数字が2段並んでいます。さらに下の方には斜めに円形の穴がついていて、その穴の中には数字が書かれています。つまり、この円筒形の数字を回転させるとその組み合わせの掛け算の結果が穴の中に表示される仕組みになっているようです。単純な作りですが、これは楽しみながら掛け算を覚えることができそうで面白い発想でした。これは知育に良さそう。
207 リブシェ・ニクロヴァー 「キツネのアコーディオン」 ★こちらで観られます
こちらはオレンジ色のキツネのプラスチックの玩具で、胴体の部分がアコーディオン状(蛇腹状)になっています。これを折りたたんだり伸ばしたりして遊ぶのかな? 他にも同様のライオンや猫などもあって可愛らしいデザインでした。
<第10章 (テーマ展示2)チェコ・アニメーション>
最後はチェコのアニメに関するコーナーです。チェコでは第二次世界大戦より前からアニメが作られていたようで、大戦後は国営の映画スタジオで作られたパペットアニメーションが世界的な評価を受けたようです。さらに1965年からは毎日夕方に子供向けのアニメが放送されていたそうで、アニメはチェコの文化を代表する創作領域の1つと言えるようです。ここにはそうした日本では知られざるアニメ作品が並んでいました。
213 ヨゼフ・チャペック(原案)、エデュワルド・ホフマン(監督) 「セル画 [こいぬとこねこは愉快な仲間]より」
こちらはタンポポにとまる蜂を見る赤毛のむく犬を描いたセル画です。背景は白地に水色の幾何学的な文様となっていて、かなりシンプルな印象を受けます。犬はマスコット的な可愛さで、1950年代とは思えないくらいのキャラクターでした。
この辺はアニメのセル画が並び、いずれも子供向けの可愛らしい絵柄でした。また、出口付近ではそうしたアニメを流していて、大半はセリフの無いカートゥーンアニメで軽快な音楽とパントマイム的な動きをしていました。可愛いものや滑稽なものがあって動きも滑らかでした。
最後にこちらは出口にあったビニールの牛の玩具(リブシェ・ニクロヴァー ファトラ社「膨らむおもちゃ [バッファロー]」)

実際に触ったり抱いたりすることができます。
角度違い

結構複雑な形をしています。目が可愛いw
ということで、後半も観たことがないチェコのデザインの数々を楽しむことができました。旧東側でしたが時代によっては自由な気風があったりして、西側とはまた違ったデザインです。貴重な機会だし かなり満足したので図録も買いました。プロダクトデザインに興味がある方にはオススメの展示です。
おまけ:記念撮影スポットの写真

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