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大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演 (感想後編)【江戸東京博物館】

今日は前回に引き続き江戸東京博物館の特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」についてです。前編は歌麿と写楽のコーナーについてご紹介しましたが、後編は残りの北斎・広重・国芳についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」

【公式サイト】
 https://dai-ukiyoe.jp/

【会場】江戸東京博物館
【最寄】両国駅

【会期】2019年11月19日(火)~2020年1月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
後半も前半同様に凄い混みようでした。後半も引き続き気に入った作品と共にその様子をご紹介していこうと思います(超有名作や以前に詳しくご紹介したものはこの記事ではあまり詳しく書いていませんので、参考記事をご参照ください)


<第3章 葛飾北斎>
3章は葛飾北斎についてです。葛飾北斎は勝川春章に入門して画業を始め、30回の改名や90回以上の転居を繰り返し、90年の生涯で様々な画風の作品を残しました。特に「冨嶽三十六景」や「北斎漫画」は海外の画家にも大きな影響を与えたことで知られます。ここにはそうした北斎の代表作が並んでいました。
 参考記事:
  新・北斎展 HOKUSAI UPDATED 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  新・北斎展 HOKUSAI UPDATED 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  ホノルル美術館所蔵「北斎展」 (三井記念美術館)

まず最初に「冨嶽三十六景」が並んでいました。「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」など誰もが知る作品で、この展示でも特に人だかりが出来ていたかも。この辺は見慣れた感がありますが、何度見ても斬新な構図です。

187 葛飾北斎 「諸国瀧廻り 相州大山ろうべんの瀧」
こちらは「諸国瀧廻り」のシリーズの1つで、伊勢原の大山寺にある良弁の滝を描いた作品です。滝壺にフンドシ姿の男達が滝に打たれていて、身を清めています。と言っても楽しげで行楽のような雰囲気かな。みんな木刀を持っていて、それを奉納するお参りのようです。このシリーズでは水の飛び散る表現がそれぞれ違っていて、その違いを見比べると一層に北斎の水の表現へのこだわりが感じられました。

196 葛飾北斎 「諸国名橋奇覧 三河の八つ橋の古図」
こちらは板の橋が並ぶ様子が描かれていて、伊勢物語の八ツ橋を想起させる場面となっています。しかし8つどころではなく板の橋が曲がりくねっていてカクカクした構図で収まっています。また、橋の脇に咲いているはずのカキツバタは葉っぱだけになっているなど 伊勢物語とはちょっと違った印象です。遠近感がある構図なのは西洋からの影響かな。人々が行き交って楽しげな光景でした。

221 葛飾北斎 「芥子」 ★こちらで観られます
こちらは薄いオレンジのケシの花を描いた作品です。満開・蕾・枯れた花と時期の異なる花が並んでいて、1枚で時間の経過を感じさせます。風に揺られているのか一様に右向きに傾いでいて、茎が大きくカーブしています。これが動きを感じさせると共に神奈川沖浪裏の大波を彷彿とさせました。

近くには同様に花を描いたシリーズが並んでいました。冨嶽三十六景と同じ時期の作品群のようです。


<第4章 歌川広重>
続いては歌川広重のコーナーです。広重は歌川豊広の元に入門し、役者絵・美人画・武者絵などを手掛けていましたが北斎の「冨嶽三十六景」に刺激を受けてか風景画を描くようになり、1833年の保永堂版「東海道五拾三次之内」が大ヒットし、以降は多くの風景画を手掛けました。ここにはそうした多くの風景画が並んでいました。

まずは代表作の「東海道五拾三次之内」が並んでいました。雪の蒲原 や 庄野白雨といった特に重要な作品や、鞠子の名物茶屋など旅情を誘う作品などまさに名作と呼ぶに相応しいシリーズです。
 参考記事:殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次-保永堂版・隷書版を中心に- (サントリー美術館)

257 歌川広重 「木曽海道六拾九次之内 上ヶ松」
こちらは「木曽海道六拾九次之内」のシリーズの1枚で、橋の上から滝を眺める旅姿の2人の男が描かれています。そこに薪を背負った地元の人が通りかかり、滝には無関心そうなのが旅人と対比になっていて面白い趣向です。やけに細長く斜めった山や 氷のようにささくれた川の流れなど、表現方法も変わっていて斬新さもありました。

259 歌川広重 「木曽海道六拾九次之内 中津川」
こちらもシリーズの1枚で、川辺に並ぶ家々と手前に3人の雨合羽の人物が描かれた作品です。全体的に細い線が縦に連なり大雨の風情が出ています。解説によると中津川は2種類の版があり、こちらの「雨の中津川」は遺存例が少ない知られざる傑作とのことで、庄野白雨とはまた違った魅力のある作品となっていました。

272 歌川広重 「近江八景之内 矢橋帰帆」
こちらは琵琶湖に浮かぶ沢山の船を描いた作品です。船は対角線上に連なっていて、構図の面白さがあります。また、奥には比叡山らしき山があり その上は赤い夕日のような色合いとなっていて、叙情的な雰囲気となっていました。タイトルからも船が帰る時間なんでしょうね。こちらも素晴らしい傑作です。

280 歌川広重 「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」 ★こちらで観られます
こちらは亀戸の梅園にあった梅の名木を描いた作品です。手前にうねる幹が描かれ その後ろに満開の梅があり、空は赤のグラデーションに染まっています。また、よく観ると見物客の姿も多くて華やかな雰囲気です。それにしても目の前を木が塞ぐというのは大胆な構図で、こうした構図は西洋の印象派などにも影響を与えています。また、この絵はゴッホが模写していることで有名で、世界的な名画と言えそうです。木の配置も踊ってるような流れを感じました。

この隣の「名所江戸百景 日本橋江戸ばし」も擬宝珠が風景を塞ぐという驚きの構図となっていました。また、近くには猫が窓から外を見ている「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」や、舞い降りる鷹と共に空中から眺めたような「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」といった有名作もありました。


<第5章 歌川国芳>
最後は幕末に活躍した歌川国芳のコーナーです。国芳は歌川豊国に入門し、水滸伝をテーマにした武者絵がヒットし人気絵師となりました。その性格は親分肌の粋な江戸っ子そのものだったそうで、奇想と反骨の想像力で動物の擬人化、判じ絵、妖怪絵などなど独創的な作品を送り出しました。ここには国芳の代表作が並んでいました。
 参考記事:
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  没後150年 歌川国芳展 -幕末の奇才浮世絵師- 前期 感想後編(森アーツセンターギャラリー)

314 歌川国芳 「通俗水滸伝豪傑百八人之壹人 短冥次郎阮小吾」
こちらは出世作の水滸伝のシリーズで、取っ組み合って水中で争う2人の武者が描かれています。周りには魚も泳いでいて結構深いところまで沈んでいるように見えるかな。逞しい体つきに全身カラフルな彫り物をしていて、険しい表情を浮かべているなど全体的に力強く 緊張感があります。解説によると実際の水滸伝にはこういう水中戦の場面は無いらしいので国芳のイマジネーションの表れのようでした。

近くには猫が集まって骸骨模様に見える「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」や巨大な骸骨の妖怪が現れる3枚続きの「相馬の古内裏」など国芳ならではの発想の作品が並んでいました。

336 歌川国芳 「四條縄手の戦い」
こちらは6枚続きの大パノラマの作品で、1枚に1人づつ武者たちが描かれています。足利尊氏に仕えた武将 高師直が率いる6万の大群と楠木正行の最後の戦いをテーマにしていて、左から右に雨あられのごとく矢が飛んでいます。それぞれの武者はそれを前屈みになって防ぎながら左に向かって奮戦していますが、既に体には多くの矢が突き刺さり、血みどろで顔は青ざめています。壮絶な最期を迎える瞬間といった感じで、鬼気迫るものがありました。

346 歌川国芳 「流行猫のおも入」
こちらは3×3マスの猫の首輪の枠に入った9匹の人面猫を描いた作品です。それぞれ役者の顔を猫風に描いていて、やけに渋い顔をした猫もいてキモかわいいw 恐らく役者絵が禁じられた時の作品だと思いますが、規制をバネに一層に想像力豊かな絵に仕上げる所に反骨精神と洒落っ気を感じます。
この辺りは擬人化のシリーズや影絵のシリーズ、「寄せ絵」と呼ばれる 集合すると別のものに見える作品などもありました。本当に驚くべき発想ばかりです。

366 歌川国芳 「たとゑ尽のうち」
こちらは猫に関する諺や たとえ話を3枚続きの画面に沢山描いた作品です。猫背、猫舌、猫に小判、猫に鰹節などは見てすぐに分かりますが、猫に紙袋(後ずさりする様子。尻込み)、猫の尻に才槌(相応しくないもの)など現代ではあまり使われないものもあり、見ても分からないものもありますw こちらも擬人化されている猫がいて、面白可笑しい雰囲気がありました。きっと現場猫の先祖だな…w


ということで、後半も見どころの多い内容となっていました。この記事を書いている時点でちょうど終わってしまいましたが、これだけ豪華なラインナップは中々無い機会だったと思います。浮世絵入門になりそうな展示でした。



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大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演 (感想前編)【江戸東京博物館】

前回ご紹介した常設を観る前に江戸東京博物館で特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」を観てきました。メモを多めに取ってきたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、この展示は8つの会期があり、私が観たのは最後から2番めの会期でした。

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【展覧名】
 特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」

【公式サイト】
 https://dai-ukiyoe.jp/

【会場】江戸東京博物館
【最寄】両国駅

【会期】2019年11月19日(火)~2020年1月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会期末が近いこともあって非常に混んでいて、チケットを買うのに20分くらい並びました。中に入っても列が幾重にも出来ていて、あまり自分のペースで観ることはできませんでした。

さて、この展示は2014年に行われた開館20周年記念特別展「大浮世絵展」の第2段で、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳という5人の浮世絵師の代表作が集まる内容となっています。世界各国の著名な美術館・博物館から摺りの良い品が集まっていて、作者ごとに章分けされていました。詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 喜多川歌麿>
まずは歌麿のコーナーです。喜多川歌麿は狩野派の鳥山石燕に学び、北川豊章の号で役者絵などを描いていました。1781年からは歌麿と改め、蔦屋重三郎のサポートを得て活動しはじめ一気に実力を発揮していきました。ここにはそうした歌麿の代表的な作品が並んでいました。
 参考記事:歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎 (サントリー美術館)

2 喜多川歌麿 「婦人相学十躰 浮気之相」
こちらは横を見ている女性像で、腰の辺りまで描かれた半身像となっています。胸が露わで湯上がりの姿らしく、誰かと話しているような振り返るポーズをしています。このシリーズは観相学をテーマにしていて、この女性は浮気の相とのことですが、恋愛の浮気のこととは限らず落ち着きの無い様子という意味もあるようです。見た目は涼し気な美人といった感じで、切れ長の目が艷やかでした。

この辺は人相学のシリーズが並んでいました。色彩は淡めで線の細い画風です。

31 喜多川歌麿 「歌撰恋之部 あらはるる恋」
こちらは団扇を持ち項垂れるようなポーズの女性が描かれた作品です。簪を挿し直そうとしているけど、恋する気持ちが表に出て動揺しているのが現れた場面のようです。このシリーズは恋の諸相を描いたもので、心情表現が巧みな作品となっていました。

55 喜多川歌麿 「櫛」
こちらは更紗模様を背景に、鼈甲の櫛を持つ遊女が描かれた作品です。櫛が透けて顔が見えるような構図で、繊細な表現となっています。一方、背景がアジア風なので他の作品には無い異国情緒が感じられました。

この辺は遊女の生活を描いた作品などが並んでいました。

61 喜多川歌麿 「針仕事」
こちらは3枚続きの美人画で、質素な服を着た針仕事をする女性たちが描かれています。右下には猫に鏡を向けている子がいて、猫が毛を逆立てていたり、足元で子供が団扇で遊んでいたりと家庭的な雰囲気となっています。左下には布を透かして じっくり見ている女性がいて、その布越しに顔が見えるという 先ほどの「櫛」と似た発想も見受けられます。この頃は派手な絵が禁じられたりしていたようですが、日常の様子を描いても魅力ある作品となっていました。

この近くには同様に透かしものを通して美人が見えるという作品がありました。得意の構図だったと思われ、高度な技術と共に面白い趣向となっていました。

73 喜多川歌麿 「錦織歌麿形新模様 浴衣」
こちらは花柄の着物を着た女性を描いた作品です。珍しいのが着物を輪郭線を用いずに描いている点で、平面的に見えることもあって花模様が非常に目を引きます。手や顔には輪郭があるので、体だけちょっと違和感もあるけど、実験的で斬新な作風となっていました。

勿論、この他にも見どころが多く今回の5人の中では最も目新しさがあったように思います。


<第2章 東洲斎写楽>
続いては写楽のコーナーです。美術に詳しくない人でもその名を知っているほど有名な浮世絵師ですが、実際には突然デビューして1~2年で消えた謎の人物です。蔦屋重三郎の元で黒雲母摺28枚の大首絵というド派手なデビューを飾り当時センセーショナルを巻き起こしましたが、誇張した突飛な画風は長く支持されなかったようです。大田南畝の言葉を借りれば「あまりに真を画かんとて、あらぬさまにかきしかば、長く世におこなわれず、一両年にして止む」ということで短命の活動期間となっています。それでも10ヶ月で140点もの作品を発表するなど足跡は大きく、海外でもロートレックをはじめとして多くの芸術家に影響を与えました。現在、その正体は阿波侯の能役者 斎藤十郎兵衛が有力視されているようです。ここにはそんな写楽の代表作が並んでいました。
 参考記事:
  写楽 感想前編(東京国立博物館 平成館)
  写楽 感想後編(東京国立博物館 平成館)

105 東洲斎写楽 「3代目大谷鬼次の江戸兵衛」 ★こちらで観られます
こちらは写楽の作品の中でも特に有名な悪役を描いた大首絵です。黒雲母を背景に、着物の中から両手を開いて出し見得を切る姿で描かれていて、敵役らしい険しい表情を浮かべています。こちらは盗賊の頭で、今まさに襲いかかる所らしく 目は釣り上がり口をへの字にしていて誇張した感じに観えます。西洋の美術よりも早くこの境地に至っていたことに驚かされる1枚です。

110 東洲斎写楽 「初代市川男女蔵の奴一平」
こちらは先程の江戸兵衛に金を奪われる人物を描いた大首絵です。刀を持って金を守ろうとしていますが、やや頼りない顔つきで上半身が後ろに倒れ気味で腰が引けた感じになっています。やられ役だけあって既にその様子が表れているのが面白い。

115 東洲斎写楽 「市川鰕蔵の竹村定之進」 ★こちらで観られます
こちらは『恋女房染分手綱』のヒロインの父親役を描いた大首絵です。切腹する場面らしく歯を食いしばっていて鬼気迫る形相をしています。やはり誇張された表情ですが、真に迫る役者ぶりが伝わってくるようでした。

132 東洲斎写楽 「初代中山富三郎の松下造酒之進娘宮ぎの」
こちらは悲劇のヒロイン役をする女形の役者を描いた作品です。やたら目と口が小さく 鼻が長くて顎が出ている特徴的な顔つきとなっています。それでも微笑んでいるような感じが出ていて、戯画になりそうでならないギリギリの線に思えるかなw この初代中山富三郎は「ぐにゃ富」というあだ名が付いていたそうで、他の作品でも同様に描かれているので実際にこんな顔つきだったのかも? ひと目で覚えられる個性がありました。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。浮世絵の中でも特に有名な絵師の代表作を集めているので 割と見慣れた作品が多いですが、浮世絵のベスト盤とも言える内容だと思います。美術初心者でも楽しめるラインナップなので、人気なのも頷けました。後半も面白い作品が目白押しとなっていましたので、次回は残り3人についてご紹介の予定です。

 → 後編はこちら



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【江戸東京博物館】の案内 (2020年01月)

今日は写真多めです。先週の日曜日に両国の江戸東京博物館に行って特別展と常設展を観てきました。特別展の記事を準備中なので、先に常設展について取り上げて参ります。

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この日は特別展が混んでいたこともあって、常設展も結構な盛況ぶりでした。この博物館は2017/10/01~2018/3/31にリニューアル工事で休館していましたが、私はそれ以降 来ていなかったので結構久々に訪れました。リニューアルして何処か変わったのか楽しみにしていたら、エレベーターなどの補修工事だったようですw 企画展は今回は写真NGでしたが、ここの常設はルールを守れば写真を撮ることが出来ますので、今回も撮ってきた写真と共にいくつかご紹介しようと思います。

 参考記事:
 江戸東京博物館の案内 (2013年07月)
 江戸東京博物館の案内 (2013年01月)
 江戸東京博物館の案内 (2012年12月)
 江戸東京博物館の案内 (2012年09月)
 江戸東京博物館の案内 (2011年10月)
 江戸東京博物館の案内 (2011年06月)
 江戸東京博物館の案内 (2010年03月)
 江戸東京博物館の案内 (東京編 2009年12月)
 江戸東京博物館の案内 (絵画編 2009年12月)
 江戸東京博物館の案内 (江戸編 2009年12月)


こちらは棟割長屋の原寸大の再現
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木と紙で出来ているので燃えやすく焼屋とも呼ばれたそうです。6畳くらいしかないし押入れも無い…。否応なくミニマリスト的な生活ぶりだったんでしょうね。

こちらは「万世江戸町鑑」
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町奉行、町火消、名主支配付、江戸の町名、坂・橋などの地理案内が書かれているそうで、これは火消しに関するページかな? 纏らしきものが町ごとに描かれているようでした。

こちらは江戸町人の一年の行事をまとめたもの
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保存技術もなかったので、現代以上に旬に敏感なようです。花火や雪遊びなどは現代と変わっていないかも…w 重陽の節句だけは何故か今ではあまり祝いませんね。

渓斎英泉 「十二ヶ月の内:正月 春の遊び」
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着物で羽子板で遊ぶ女性が描かれ正月らしい雰囲気です。目で羽根を追っていますが、この時点でこの姿勢だと振り遅れる予感しかしませんw

こちらは江戸時代の日常のご飯
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イワシ2匹にタクワンと豆腐汁…。イワシがいるだけマシでしょうかね。江戸時代から3食になったようですが、圧倒的に物足りないw 私は江戸時代には生きられそうにないです。

こちらは歌川広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」の摺りの過程を並べて観るコーナー。
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ゴッホも模写した有名作です。この日の特別展でも出品されていました。

こちらは寿司の屋台の再現
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とにかく江戸時代の寿司はデカい!w おにぎりみたいな大きさで、赤酢を使用していたのでお米が赤みがかっていたようです。種も酢につけたもの・ヅケが多いと言われてますね。

こちらは蕎麦の屋台の再現
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やはり江戸の蕎麦は二八蕎麦です。と言っても、必ずしも蕎麦と小麦粉の割合のことを指している訳ではないようです。諸説あって2×8=16文(約320円程度)という説もあります。いずれにせよ、蕎麦は昔から屋台で人気があったのは確かです。

こちらはお米の単位
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1合は今でも使う単位なので、1000合で1石というのは覚えやすい。計算すると百万石の大名のヤバさが分かりますw

こちらは江戸時代の銀相場・銭相場のグラフ
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幕末にかけて急騰しています。もしタイムスリップしたらこの相場で儲けられますねw

歌川豊国 「初日の出」
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こちらは3人の人気役者が初日の出と共に描かれた作品。3枚続きで豪華に思えますが、実は5枚続きだったと考えられるのだとか。正月らしく豪勢で縁起が良い。

「明暦江戸大火之図(モンタヌス「日本誌」挿絵)」
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こちらはオランダ人宣教師が著した『日本誌』の挿絵で、明暦の大火についてオランダ使節の記録に基づいて述べられているようです。実際にこの人は日本に来たことがないらしいので、人々の描写がいまいちw しかしこんな本があるんですね。

こちらは江戸時代の女子の1日のスケジュール
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朝から晩まで寺子屋と習い事ばかりしています。三味線・踊り・琴など教養を身につけることが良縁の条件だったそうで、一種の婚活なのかも。

こちらは版元の蔦屋重三郎についてのボード
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蔦重と呼ばれ、狂歌本の出版だけでなく喜多川歌麿や写楽をプロデュースしたことで知られます。現代のツタヤはこの人にあやかろうと名前をつけているほどです。(直接の関係はありません) この日の特別展も歌麿と写楽があったのでタイムリーな展示物でした
 参考記事:歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎 (サントリー美術館)

久々に行ったのでこのコーナーは初めて観たかも??(リニューアル以前にあったのを忘れているだけ?)
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近くにミュージアムショップなどもあり、この辺は昔とは違うように思えます。

中はこんな感じです
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割と最近の昭和頃の品が並んでいました。

今では博物館でしか観なくなった黒電話。
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最近の子供はダイヤルの使い方が分からないのだとか。もう絶滅危惧種ですね。

再び展示室に戻って、続いては明治以降のコーナーです。

こちらは1903年(明治36年)に発行された催眠術を教育に応用する本。
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明治20~30年頃に催眠術ブームがあったそうで、その背景に受験競争があったのだとか。そんな昔に催眠術ってあったとは驚きました。

川瀬巴水 「東京二十景 浅草観音の雪晴」「東京二十景 荒川の月(赤羽)」
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大正から昭和初期にかけての東京を描いたシリーズ。郷愁を誘う色彩感覚が大好きな画家です。

こちらは1897年(明治30年)の英文タイプライター
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QWERTY配列ではない独特の並びで気になります。調べたらQWERTY配列は1882年に登場したらしいので、どうしてこうした配置になっているのか一層に謎でした。

こちらは1930年(昭和5年)に猟奇社から発行された『エロ』創刊号
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この時代のエロ・グロ・ナンセンスのブームを象徴するようなふざけたネーミングと表紙ですw まだ呑気な時代の余韻がありますね

こちらは1941年頃の国民服
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戦争色が強く、国民精神総動員の一環で制定されました。軍服としても着られることを想定しているので国防色と呼ばれるカーキ色になっているようです。

こちらは戦時中のラジオを聞くことができるマシン
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太平洋戦争開戦日の大本営発表など9つの中からボタンを押して選ぶと、当時の貴重な音声が聞けます。完全にプロパガンダばかりです

こちらは東京空襲の際に飛燕に撃墜されたB29の機関銃
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戦利品として地元の小学校に贈られたものの終戦直後に埋められ、1995年に掘り起こされたそうです。


ということで、久々に行ったこともあって一層に楽しめました。ここは江戸時代~昭和にかけての生活ぶりを深く掘り下げているのが面白いところだと思います。 特別展を観に行く際には常設展も寄ることをオススメします。



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カフェーパウリスタ銀座店 【銀座界隈のお店】

前回ご紹介したギンザ・グラフィック・ギャラリーの展示を観た後、近くのカフェーパウリスタ銀座店でお茶してきました。

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【店名】
 カフェーパウリスタ銀座店

【ジャンル】
 カフェ

【公式サイト】
 http://www.paulista.co.jp/shop.html
 食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13002648/
 ※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。

【最寄駅】
 銀座駅/新橋駅

【近くの美術館】
 資生堂ギャラリー
 パナソニック汐留美術館
  など

【この日にかかった1人の費用】
 1000円程度

【味】
 不味_1_2_3_④_5_美味

【接客・雰囲気】
 不快_1_2_3_④_5_快適

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【総合満足度】
 地雷_1_2_3_④_5_名店

【感想】
1階はちょうど満席くらいでしたが待つこと無く入れました。2階もあるので意外とすんなり行けるイメージがあります。

さて、このお店は銀座の中央通り沿いにある老舗中の老舗で、開業は明治44年(1911年)と100年以上の歴史があり、数多くの逸話のある名店です。多くの文化人が通い、画家だと藤田嗣治、村山槐多、吉田博らが常連だったそうで、東近美にはこのカフェを描いた長谷川利行の作品があったりします。

これが長谷川利行の描いたカフェパウリスタ
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下宿の家賃代わりに置いていったとされていますw
 参考記事:長谷川利行展 七色の東京 (府中市美術館)

パウリスタとはサンパウロっ子という意味があり、このカフェは日本でコーヒーの需要を作りたいという想いで作られたようです。当時は日本にカフェがなかったのでわざわざパリのカフェー・プロコプへ視察に行き 帰国後にカフェー・プロコプを模して作られたという開業物語もあります。さらに公式サイトによると
「銀ブラ」という言葉は、慶応義塾大学の学生が流行らせたもので“慶応のキャンパスから、銀座のカフェーパウリスタまで歩き、ブラジルコーヒーを飲みながら会話をすること”とする説があります。 - 公式サイト「銀座カフェーパウリスタの歴史」より引用
とのことで、銀座の文化に深く根付いているお店であるのは間違いありません。

で、現在はというと中はこんな感じ。
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流石に長谷川利行の描いた時代とは違いますが、シックで落ち着いた雰囲気となっています。

革張りの椅子や絵画があって、昔ながらの喫茶店の雰囲気が漂います。
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店員さんは中国語を話してたりするので、古いだけでなく最新の銀座事情に敏感なんでしょうね。

この日はケーキとコーヒーを頂きました。
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ザッハトルテとオールドコーヒーです。

まずザッハトルテ
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結構固めでフォークが刺さりづらいですが、軽いリキュールとベリーっぽい香りがして意外と軽やかな風味です。甘さも上品で美味しい。

続いてオールドコーヒー。
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こちらは深いコクでどっしりした感じでした。苦味は軽めで香ばしく、酸味はあまりなかったかな。それでいてまろやかでした。


ということで、伝統のお店でゆっくりと美味しいセットを頂くことができました。この辺はギャラリーが多く交通の便も良いので重宝します。銀座の歴史でよく名前が出てくるので、そういった意味でも一度は訪れてみると良いかもしれません。

おまけ:
このお店の裏手には名店として名高いカフェ・ド・ランブルもあります。銀座は流石にカフェも名店揃いですね。



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動きの中の思索―カール・ゲルストナー 【ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)】

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、銀座に移動してギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 動きの中の思索―カール・ゲルストナー 

【公式サイト】
 http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000749

【会場】ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
【最寄】銀座駅

【会期】2019年11月28日(木)~2020年01月18日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はスイスを代表するグラフィックデザイナー、カール・ゲルストナーの日本初となる個展となっています。カール・ゲルストナーはフリッツ・ビューラー・スタジオにて見習いとして研鑚を積むかたわらバーゼル工芸学校で学び、1949年から医薬品メーカーのガイギー社のデザインチームの一員となり、そこでコピーライター兼編集者のマルクス・クッターと出会いました。1959年に2人で広告代理店ゲルストナー+クッターを設立し、さらに1963年に建築家パウル・グレディンガーを迎えて、社名をGGK (ゲルストナー グレディンガー クッター)と改め、ヨーロッパ有数の成功を収めていったようです。しかし、1970年にゲルストナーはアートと厳選されたデザインプロジェクトに専念するため、同社を離れていったそうで、この展示では1950~1960年代頃の作品が中心となっていました。詳しくは気に入った作品の写真と共にご紹介していこうと思います。

まず1階はこんな感じで白黒のデザイン画が並んでいました。
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壁もデザイン画に合わせていて洒落た雰囲気となっています。

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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こちらはレモネードの広告。グラスを側面から捉えたシンプルな構図なのに洗練された雰囲気で涼しげに思えます。このセンスはヨーロッパ的なものを感じます。

ゲルストナー+クッター 「シュロッターベック:シトロエン2CV advertisement for automobile dealership」
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こちらは白黒の対比が強めとなったシトロエンの広告。車自体はそれほど大きくなくコラージュされた櫛や鏡?などより小さいw 車のスペックではなく洒落たライフスタイルを魅せるような広告ですね。

ゲルストナー+クッター 「ラインブリュッケ  advertisement for department store」
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こちたはデパートの広告。女性のハイヒールが何とも優美。このシルエットの美しさが特徴なのかもしれません。

ゲルストナー+クッター 「シュロッターベック:シトロエン2CV advertisement for automobile dealership」
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再びシトロエン。何故か背景に象がいてちょっとシュールw シトロエンは車の形自体が美しいので、エレガントな雰囲気の女性もよく似合います。

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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再びレモネード。このクローズアップのセンスは芸術的です。文字がやけに控えめなのも現代の日本の広告には無い感性ですw

ゲルストナー+クッター 「ヘンゼル ホルツミンデン advertisement for Lemonade」
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こちらもレモネードの広告。ガラスの透明感とレモネードの雫の清涼感が伝わってきます。もはや抽象絵画的な美しさw

ゲルストナー+クッター 「ラインブリュッケ advertisement for department store」
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こちらはデパートの調理器具の広告かな。調理器具が勢いよく伸びているような印象を受けますw こちらもシルエットを上手く生かしているように思いました。

カール・ゲルストナー 「スイス航空」
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恐らく今でも同じロゴじゃないかな。スイス国旗に近いとは言え、シンプルかつ高級感があるように思えます。

カール・ゲルストナー 「シェル石油(ロンドン)」
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こちらは誰もが観たことがあると思われるCI。これも名前通りの貝ではありますが、赤地に黄色で非常に目立ちますよね。

カール・ゲルストナー 「クリシェ・シュヴィッター」
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これは広告なのかすら分からずw 幾何学模様の抽象画のような印象を受けます。この人の作品は軽やかなリズム感があるように思えました。

続いて地下の展示。地下はカラフルな作品もありました。

カール・ゲルストナー 「メタクローム」
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あまり解説がないので詳細は分かりませんが、実験的な雰囲気があるように思えます。色と幾何学模様の組み合わせは現代アートそのものw

カール・ゲルストナー 「カロ64」
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こちらは壁にずらりと並んでいました。

一部をアップにするとこんな感じ
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微妙に1枚1枚異なる色合いとなっています。この作品は習作や専用ケースまで展示されていて、並々ならぬこだわりを感じさせます。とは言え、ちょっと意図は分からずw

ガラスケースには著書や習作などが並んでいました。

カール・ゲルストナー 「スイス時計連盟」
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スイスと言えば時計が有名ですが、こちらはスイス時計連盟の略称のなかにスイス国旗を表すという面白いアイディアとなっていました。

カール・ゲルストナー 「1955年作品シリーズより」
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こちらは先程の作品どうように色面のパズルのような作品。これも意図は分かりませんが広告というよりはアートに観えます

カール・ゲルストナー/マルクス・クッター 「メルクール」
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こちらはシンプルに文字主体ですが、力強くも柔らかい印象を受けました。


ということで、解説が少ないので何の為の広告なのか分からないのもありましたが、洗練されたデザインがかなり好みでした。ここは無料で観ることが出来ますので、銀座に行く機会があったら寄ってみるのもよろしいかと思います。




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ものいう仕口-白山麓で集めた民家のかけら- 【LIXILギャラリー】

今日は写真多めです。この前の土曜日に京橋のLIXILギャラリーで「ものいう仕口-白山麓で集めた民家のかけら-」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 ものいう仕口-白山麓で集めた民家のかけら-

【公式サイト】
 https://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1909/

【会場】LIXILギャラリー
【最寄】京橋駅(東京)

【会期】2019年12月5日(木)~2020年2月22日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は福井県白山麓にあった築200年以上の古民家で使われた江戸時代の「仕口」が並ぶ内容となっています。「仕口」は柱と梁のような方向の異なる部材を繋ぎ合わせる工法とその部分で、複雑な形で家を支えています。かなりマニアックなテーマで未知の世界でしたが、実物と図解でどのように接合していたか分かるようになっていましたので、その写真を使ってご紹介していこうと思います。

こちらが仕口。一見すると穴の空いた柱のように観えます。
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図解と共に観ると柱と梁を繋いでいた様子が分かります。先っぽの穴は伐採後に積雪を利用して山から里に下ろす際に引っ張る為の穴と考えられるのだとか。中々荒削りな見た目で古民家の力強い印象そのものです。

こちらも太い梁の一部だった材木
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上面は素材感がありますが、切り込み部分は綺麗な直角となっています。

組み込みの図解はこんな感じ。
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梁・桁をクロスさせるための仕口のようで、台形の突出部と組み合わせるシンプルな組み方となっています。台形の形を蟻の頭に見立てて蟻と呼んだのだとか。

こちらは鴨居と大黒柱の部分で使われていた仕口
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図解と実物を見比べるとかなり大きな大黒柱だと思われます。組み方も複雑で、民家と言えども高度な技術が使われていたことがよく分かりますね。

こちらもフォークのように先が割れている仕口。
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複雑な形で、何処にどう繋げるのか想像もつかないw まずは形を観て予想してもカスリもしませんでしたw

正解はこちら。梁と梁を繋ぐ仕口です。
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解説を読んでもかなり専門的で難解でしたが、雪国ならではの間取りによってこうした仕口が生まれたようです。

こちらは穴の数が多い仕口。
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いくつもの梁を繋いでいて高機能w 白山麓は木が巨木に育つそうで、巨木は得難く扱いが難しいものの 十分な長さと強さがあるので短い材を繋ぐ継手の必要がなく結果として手間を省けたようです。それにしてもこんなに複雑な形を考えられるのは職人技ですね。

工具も並んでいました。こちらは墨壺
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木材などに線を引いて目印をつける道具です。鶴と亀の装飾が付いていて縁起が良くてお洒落。

こちらは釿(ちょうな。手斧)
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木材を加工する時の工具で、宮大工の様子を描いた作品などでもよく見かけます。昔はこれで手作業で彫っていたんですね。

最後にもう1つ 恐ろしく複雑な形の仕口。
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もはやセンター的なポジションで無数の木材を束ねています。今まであまり意識していませんでしたが、仕口には長年の叡智が込められていますね。


ということで、専門性の高い内容でしたが 古民家に隠された凄い技術を目の当たりにすることが出来ました。これを観ることで今後 古民家を観る際の参考になりそうです。ここは無料で観ることが出来ますので、古民家好きの方はチェックしてみてください。


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坂田一男 捲土重来 【東京ステーションギャラリー】

先日ご紹介したインターメディアテクに行く前に、東京駅にある東京ステーションギャラリーで「坂田一男 捲土重来」を観てきました。

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【展覧名】
 坂田一男 捲土重来

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201912_sakata.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅

【会期】2019年12月7日(土)~2020年1月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_4_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は1920年代にパリで最新鋭の芸術潮流で活動した坂田一男という画家の個展となっています。出身地の岡山以外では大きく紹介されることがなかった知る人ぞ知るといった画家(私も知らなかったw)ですが、当時は世界的に高い次元に到達していたようです。フェルナン・レジェに師事しキュビスム~ピュリスム辺りの画風から独自の道へと進んで行ったようで、全般的に抽象画が多かったように思います。展示は活動時期ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、展示順と章が合わないところがありますが、観た順で書いて参ります。


<I 滞欧期まで 事物の探求 ― 事物に保管されたもの/空間として補完されたもの>
まずは初期のコーナーです。坂田一男の画家としての出発は1921年の渡仏後と見なす事ができるそうで、渡仏して数年でフェルナン・レジェに師事しました。レジェやオザンファンら同世代の仕事に接近し、その革新を理解して行動を共にするようになっていったそうで、ここではそうした時代の作品が並んでいました。

1-9 坂田一男 「コンポジション(顔と壺)」
こちらは幾重にも四角や長方形の色面が並び、そこにコックらしき人物の顔と壺が縦半分だけ描かれている半具象・半抽象の作品です。キュビスム的でレジェにも似た作風となっていて、落ち着いた色彩で静かな印象を受けます。中央に青い柱のようなものがあるのが大胆で、幾何学的な構成が巧みな作品でした。

この辺は同様のキュビスム的な作品が並んでいました。レジェほどは有機的な感じがせず、より平面的に思えます。

1-4 坂田一男 「キュビスム的人物像」 ★こちらで観られます
こちらは円錐形を無数に組み合わせた人物像で、パッと観た時に東郷青児の初期作品と似た印象を受けました。淡く明るめの色で意外と優しい印象を受けますが、マリオネット的な無機質さがあるかな。この作品では陰影が付けられていて立体的な感じも出ていました。

このへんは円形や円錐を組み合わせた人物像が並んでいました。それぞれ作風が違っていたりして試行錯誤の様子が伺えます。


<II 帰国後の展開 戦中期 カタストロフと抵抗 ― 手榴弾>
続いては帰国後のコーナーです。1933年にフランスから帰国し、戦時中においてもブレることなく一貫して抽象的思考を持続していたようです。この時期、手榴弾の主題が登場し柄のついた手投げ弾がコンポジションの中に現れるようになったようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

2-1 坂田一男 「コンポジション」 ★こちらで観られます
こちらは平坦な色面を組み合わせたキュビスム~ピュリスムのような作品です。中央に柄のついた白い逆三角形の物体が大きく描かれていて、これが件の手投げ弾のようです。一見すると電気ランプのような…w 大きく存在感があるものの、手投げ弾にしては明るい印象を受けました。

この隣ににも似たような2枚の作品がありました。素描にも手投げ弾のコンポジションがあったけど、静かな雰囲気で爆発しそうには観えなかったw

2-56 坂田一男 「端午」
こちらは黒い四角の中に赤い鯉のぼりが上向きになっている様子が描かれた半具象・半抽象の作品です。近くに赤・青・白のポールやロープらしきものも描かれています。黒地に赤白なので色の対比が強く非常に目を引きます。しかし画面は以前よりもざらついたマチエールになっているように思えました。

この近くには多くのデッサンが並んでいました。デッサンもキュビスム風で、中には鯉のぼりを描いたものもあります。また、銃を持つ兵士を描いた作品もいくつかあり、時代を感じさせました。

1-26 ル・コルビュジエ 「ニレ」
こちらはル・コルビュジエによるスケッチです。建築家で名高いル・コルビュジエですが、ピュリスムの画家としても活動していて このスケッチでは円やモコモコした感じの謎の静物を描いています。ニレなのかはちょっと分からないw 手を思わせるものなどもあるかな。解説が無いので坂田一男と直接関係があったのかは定かではないですが、これを観ても坂田一男はキュビスムよりはピュリスムに近いものがあるように思えました。

この近くにはニコラ・ド・スタールやモランディの作品もありました。モランディにも似ている部分があるかも。上階はこの辺までで、続いて下階の内容となります。

2-35 坂田一男 「コンポジション」
こちらは平面的な四角を背景に壺と工業製品が半分ずつ縦にくっついたような謎の静物画です。直線と円を組み合わせていて、色面でも錆のようなものを感じさせる描写もあります。背景には窓のような規則正しい格子があるなど、リズム感ある画面となっていました。


<II 帰国後の展開 戦中期 カタストロフと抵抗 ― 冠水>
引き続き帰国後の戦中~戦後のコーナーで、手榴弾と同じくこの時期の重要なモチーフとして冠水が挙げられるようです。1949年に瀬戸内海に面したアトリエが高潮の被害にあい、多くの絵画が冠水してしまいました。しかし坂田一男は冠水の影響を画面の構造として取り組んだ作品(画面が剥落してそこに別の絵画が浮上するような)を製作するようになったようです。ここにはそうした作品などが並んでいました。

2-67 坂田一男 「静物Ⅱ」
こちらは機械のようなものと中央に黒い壺型のものが描かれた作品です。キャンバスのあちこちがひび割れて剥落しているのが特徴で、まるで遺跡から出土したような風合いとなっています。これが冠水を逆手に取った作品だと思いますが、隣にそっくりの絵があり、比べてみると両方とも剥落している所があるので意図してやっているようにも思えました。ちょっとこの辺は何処までが偶然なのか分からないですが、風化した味わいが出ていて面白い独自性です。

近くには同様に剥落したような作品が並んでいました。


<III-1 戦後1 スリット絵画 ― 積層される時空 ― 海/金魚鉢>
続いては戦後のコーナーです。戦後の最も特徴的なスタイルはスリット状の形が横縞模様のように配置された縦位置の絵画だそうで、このシリーズの始まりではガラスの器の断面が重なったような透明な奥行きが示されたようです。時には金魚が描かれた金魚鉢も登場したようですが、やがて重なりの効果は後退して船の形が現れたようです。これはアトリエのある瀬戸内海をモチーフにしたと考えられるようで、ここにはそうした題材の作品が並んでいました。

4-1-11 坂田一男 「象岩」
こちらは赤い背景に象の横顔に見えるシルエットが描かれた作品です。シンプルな造形になって描かれていますが、実際にこの形の岩が瀬戸内海にあるらしく、隣りにあった写真と比べるとよく特徴が現れています。抽象的な表現ではあるけど具象的な特徴を捉えているのが面白い作品でした。

3-1-19 坂田一男 「金魚」
こちらは黄色を背景に横線が無数に描かれ、下の方は金魚鉢となっていて金魚が泳いでいるのが描かれています。かなりタッチが粗めで今までと異なる印象を受けるかな。隣にも金魚鉢を描いた作品がありましたが、そちらは白地に輪郭線のみで描いていて同じモチーフでも受ける印象はだいぶ違います。またここに来て画風を模索している様子が伺えました。

この辺はアンフォルメルのようなざらついたマチエールの作品が並んでいました。時期的にも近いので欧米の先端を取り入れたのかな?

3-1-14 坂田一男 「エスキース・コンポジション」
こちらはピンクがかった白地に横線と横帯が並ぶコンポジションです。下の方にはコマのような形の輪郭線があり、その下に薄い水色の横帯があるので瀬戸内海に浮かぶ船を思わせます。こちらも絵肌はざらついて風化したような質感になっていて、この時期の特徴のように思えました。

この近くにはこの作品と似た構図の絵がいくつかありました。明らかに船っぽい形の作品もあります。


<III-2 坂田一男のパラダイム>
こちらは同時代の作家との比較の章で、上階などにも点在して展示されています。坂田一男が当時の画家と同様の問題(課題)を共有し事物の探求をしている様子が伺える内容となっていました。

3-2-8 ジャスパー・ジョーンズ  「国旗」
こちらは裏返しになったアメリカの国旗で、落書きのようにグチャグチャな筆致となっています。その作品の下に坂田一男の「コンポジション」が並んで展示されていて、風化したような質感を出しています。画面に別の層を生み出すという点において両者は共通しているようで、お互いに革新的なアプローチの試行が伺えました。


<IV-1 戦後2 残された資料 時間の攪乱=アナーキーなアーカイブ>
続いて資料に関するコーナーです。坂田一男の作品は製作年が書かれていないので確定は難しいようですが、1944年と1954年の2度の冠水被害以降にアナクロリズム すなわち正常な時間の流れを失効させ異なる時間を並列に混ぜ合わせ・重ね合わせ・入れ替えることが重要な革新となったようです。ここはそうした時間の撹乱をテーマにした内容となっていました。

4-1-4 坂田一男 「上巳」
こちらは両手を広げた人物と その傍らに立つ小さめの人物をマネキンのように描いた作品です。桃の節句の雛人形らしく、平坦でシンプルな構図で背景の薄いオレンジに浮き上がるような色合いとなっています。この辺は人物を思わせる作品が並んでいて絵柄は似ていますが、マチエールが違っていたりして印象の違いを比較することができました。

近くには大量のデッサンが並んでいました。機械やマネキンを思わせるモチーフが多いように思います。


<IV-2 戦後3 黙示録=捲土重来>
最後は晩年のコーナーです。この頃には黒を基調とした作品やキリストの復活を思わせる図像の作品があるようで、捲土重来(巻回されうる時空の可能性)は坂田一男が終生 追求した画題で その果てに改めて聖書にたどり着いたようです。

ここはデッサンが大量にあり、確かに被昇天図や最後の晩餐を思わせる群像的な作品がありました。しかし形はハッキリせず沸き立つ黒い岩のようにも思えるのが独特で、指摘がなければ聖書主題には観えなかったかもw 最後まで謎めいた画家でした。


ということで、画風が変わり続けて中々とっつきづらい画家のように思えますが、こんな個性派がいた事を知ることが出来て満足できました。普段から洋画をよく観ている方にも目新しい展示だと思います。



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映画「ジュマンジ/ネクスト・レベル」(ややネタバレあり)

日付が変わって昨日となりましたが、レイトショーで映画「ジュマンジ/ネクスト・レベル」を観てきました。この記事はネタバレを含んでいますので、ネタバレ無しで観たい方はご注意ください

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【作品名】
 ジュマンジ/ネクスト・レベル

【公式サイト】
 https://www.jumanji.jp/

【時間】
 2時間00分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_③_4_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_④_5_名作

【感想】
公開から1ヶ月程度経っていますがレイトショーでも結構お客さんがいました。

さて、この映画は1995年に「ジュマンジ」として初めて映画化され、2017年に続編「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」で大ヒットとなったシリーズの第3段となっています。私は1作目は観たものの2作目は観ないままだったのですが、一昨日の金曜ロードショーで観て予想以上に面白くて笑えたので今回の映画も観に行ってみました。

早速ネタバレですが、今回は前作の「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」とはかなり密接な続編でキャストも被るところが多くなっていて、前作を観てからの方が楽しめるのは間違いありません。監督も前作と同じでテイストも変わらないので前作が好きな人は今作も気に入ると思います。(前作を知っているとちょっとしたサプライズ要素もあります) 今回もゲームの中に吸い込まれてしまい、命をかけてクリアを目指す…という単純明快なB級映画感が満載ですw タイトルにネクスト・レベルとあるように前作よりも難易度が上がってしまった深刻な状況なのに、常に可笑しくて笑えるシーンが続き、特にゲームのあるあるネタも多くてそれがシュールな笑いを誘います。一方、今回は前回よりも人間ドラマ的な要素も増えているように思えますが、ダレること無くテンポ良く話が進むので、最後まであっと言う間に観た感じでした。

映像に関しては今回もCGでリアルな世界観を出していました。残念ながら私は2D版で観ましたが、3D版だったらもっと没入感があったかも知れません。また、役者については特にゲーム内のキャラが非常に濃くて良い味出しています。見た目のキャラ(ゲーム内のアバター)と中身のキャラ(プレイヤー自身)のギャップを上手く表現していて、それがこの映画の魅力となっているように思いました。

ということで、今作も笑えて爽快であまり深いことを考えずに楽しめました。テーマもへったくれもなく完全に娯楽に振り切ってるのが清々しいw 特にゲーム好きの方には面白い映画だと思います。



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十九世紀ミラビリア博物誌――ミスター・ラウドンの蒐集室より 【インターメディアテク】

先週の日曜日に丸の内のインターメディアテクで「十九世紀ミラビリア博物誌――ミスター・ラウドンの蒐集室より」という展示を観てきました。

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【展覧名】
 特別展示『十九世紀ミラビリア博物誌――ミスター・ラウドンの蒐集室より』

【公式サイト】
 http://www.intermediatheque.jp/ja/schedule/view/id/IMT0198/module/default

【会場】インターメディアテク
【最寄】東京駅

【会期】2019年10月19日~2020年02月24日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はインターメディアテクの一室で行われている小規模なもので、銀行家ジョージ・ラウドン氏の博物誌的に貴重なコレクションを紹介する内容となっています。ラウドン氏は、ボヘミア生まれの標本師ブラシュカ父子が制作した19世紀ガラス標本に衝撃を受け、それ以来 近代科学の教育遺産を蒐集したようです。小規模ながらも多彩な内容となっていましたので、簡単に振り返ってみようと思います。

まずは「平天儀と平天儀図巻」という日本の1801~1802年頃の本がありました。こちらは地球・月・太陽・星などを描いた円盤状の部分があり、中央にかなり精密な世界地図があります。円盤は回転するようになっていて円のふちには十二支の名が書かれ方角を指しているようです。また、その内側には星座も描かれていて星の方向を確認する道具かな? 江戸時代にこんなものがあったのかと驚かされました。
この近くには1890年頃にパリ天文台が撮った月面写真や1849年にヘンリー・ブラントが作った月面の模型など天文学に関する品が並んでいました。いずれも宇宙好きには興味を引くものばかりです。

続いてのケースは生物学のコーナーでした。1855年に描かれたマストドンの骨格図があり、マンモスよりも小型のようですが立派な2本の牙を持ったリアルな図解です。そんな時代に既に古代生物の研究が行われていたというのも知らなかったので、これも目新しく感じました。
さらにその先にはウマ蹄・球節模型がありました。これは1893年のフランスの研究教材で、馬の蹄あたりの動脈・静脈、骨などがむき出しになった模型となっています。これも緻密な解剖の結果を反映しているように思えるかな。解剖人形はよく知られていますが解剖蹄なんてマニアックなものもあったとは…w
そしてもう1つ、「蛇頭骨 鉄製モデル」という模型も目を引きました。こちらは19世紀末にドイツで作られた平面的な蛇の頭の模型で、関節部分がクランクのように可動するようになっていて、どのように関節や骨が動くのかを再現しています。図解するよりも実際に動くところを観たほうが理解しやすいので、これは教育で用いるのに非常に実用的に思えました。

その先には観相学人形というものがありました。これは中国製の人の頭の模型で、顔には升目状の線があり各目には天中や天庭など部位の名前が書いてあります。手相の何とか線を説明するみたいな感じかなw こんなものまで集めたのかとこれまた驚きました。

その先にはジョージ・ラウドン氏が感銘を受けたレオポルド・ブラシュカとルドルフ・ブラシュカというガラス工芸技師の父子による模型が並んでいました。カタツムリ、ナメクジなどが並んでいて本物さながらの出来栄えです。微妙にざらついた肌の質感などはキモいくらいのリアリティw これは芸術品とも言えるほどのクオリティで、ジョージ・ラウドン氏が驚いたのも無理はないと思えました。
その隣には鰻、チョウザメ、ナマズ、タラなどの標本もありました。こちらは石膏に魚の皮を張って彩色したもののようですが、こちらもまた目を見張る精巧さでした。

少し入口方向に戻った辺りにはフランチェスコ・カルニエ・ヴァレッティという19世紀の果物模型の名手によるリンゴの模型がありました。模型はワックスを使って作っているそうで、遠目から観ると本物に観えますw また、少し離れた所には同じ作者によるザクロの模型もあり、こちらも今割ったばかりと言った感じのザクロに観えました。西洋の模型の写実性は半端じゃないw

近くには2つの頭を持つ猫の標本(双頭子猫標本)もありました。頭が横長になって4つ目があり、大きさは鼠くらいです。ちょっと怖いですが、こうした異類形は凶兆として遠ざける姿勢がある一方で、崇敬の念で敬う姿勢もあったようです。これは特に貴重な標本に思えました。

その先には胃石という石がありました。これは球に近い子供の頭くらいはある大型の石で、象か牛の胃の中で固まった石と考えられるようです。中世では胃石は解毒作用があると信じられていたそうで、王や貴族が珍奇なものを集めた「驚異の部屋」には不可欠だったのだとか。普通に丸っこい石に見えるんですけどねw

最後に江戸時代に加藤竹斎という人物が考案した木材扁額という作品もありました。これは棕櫚・モクセイ、椿などが描かれた植物画で、絵馬に似ています。やはり江戸時代は西洋に負けないくらい研究熱心だったのが伺えました。


ということで、科学研究の歴史の一端を知ることが出来ました。まるで化学室に迷い込んだような気分でワクワクさせられますw ここは無料で観ることが出来ますので、東京駅付近に立ち寄る機会があったらチェックしてみるのもよろしいかと思います。



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[李禹煥 版との対話] [山田七菜子] 【東京オペラシティアートギャラリー】

前回ご紹介した東京オペラシティアートギャラリーの企画展を観た後、常設展示も観てきました。こちらも既に終了していますが、メモを取ってきたのでご紹介しておこうと思います。今回は「李禹煥 版との対話」と「project N 77 山田七菜子 YAMADA Nanako」の2つの内容となっていました。

DSC00748.jpg

【展覧名】
 李禹煥 版との対話
 project N 77 山田七菜子 YAMADA Nanako

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh227.php
 http://www.operacity.jp/ag/exh228.php

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅

【会期】2019年10月16日(水)~12月15日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_②_3_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の収蔵品展は韓国の作家で日本の「もの派」の理論と実践における中心的役割を担った李禹煥の特集で、リトグラフやドライポイントの作品が並んでいました。また、後半のproject N77では山田七菜子 氏という若い女性アーティストが紹介されていて、こちらは撮影可能となっていましたので合わせてご紹介していこうと思います。


<李禹煥 版との対話>
まずは李禹煥のコーナーです。李禹煥はもの派として活躍したアーティストで、1970年代から継続して版画作品も手掛けていたそうです。2000年代初頭あたりまでの作品が展示されていましたので気になったものをいくつか挙げて行こうと思います。

02 李禹煥 「点より1」
こちらは白地に黒の縦長の楕円が縦に15個、横に30個くらい並んでいる抽象画です。1つ1つが縞模様のようになっていて指紋のような感じに観えます。濃淡がまちまちで形が崩れているものもあるかな。隣にも同様の作品があってシリーズとなっているらしく、いずれも離れてみるとシミが規則正しく並んでいるような感じがしましたw 奇妙で有機的なリズムのあるシリーズです。

07 李禹煥 「線より2」
こちらは無数の縦線が引かれている白黒の抽象画です。細長く節のようなものがあって竹が並んでいるように観えなくもないw これも真っ直ぐではなく歪んでいて隣とくっついていたり滲みがあったりします。何処と無く朝鮮磁器や日本の侘び寂びの感性に似たものがあるように思えました。
この隣にも横線が連なって簾のようになっている抽象画もありました。

44 李禹煥 「In Milano 4」
こちらは黒と淡い金色で描かれた謎の抽象画です。太い墨の短い線のようなもので、書を連想するかな。余白が多く静かで、幽玄の雰囲気が漂っていました。
近くにも似た作品があったので、これもシリーズなのかも知れません。イタリアで製作したっぽい名前ですがアジア的な感性です。

35 李禹煥 「都市の記憶より 2」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっていた作品で、画面中央に太い一文字があり、周りには横に書きなぐったような線や飛び散った点のようなものがあります。これも書道作品のような印象で、特に横一文字が太く勢いを感じさせました。もの派だけあって文字ではなく素材感で墨跡を書いた感じにも思えます。

この辺には似た作品が多く並んでいました。

47 李禹煥 「Avec l'espace」
こちらも今回の展示のポスターの1つで、白地の画面右下の隅っこに黒い四角形がポツンと描かれています。これも墨で描いたような味わいで、素朴で侘び寂びを感じさせます。それにしても何故こんな隅っこなんだ?wって突っ込みたくなるくらい面白い構図でした。

22 李禹煥 「From Line 11」
こちらは横長の楕円を黒の輪郭線で描いただけのシンプルな作品です。しかしよく観ると所々で途切れていて、形もいびつです。細い線がフニャッと伸びていて何かの植物の蔓のような印象を受けました。この辺は線を使ったシンプルな抽象画が多めでした。


<project N 77 山田七菜子 YAMADA Nanako>
続いては山田七菜子 氏のコーナーです。山田七菜子 氏はほぼ独学で絵を学んだそうで、2018年にVOCA展2018 VOCA奨励賞を受賞した際に「絵画が、壊れ傷ついたイメージをやさしくつつみこむことができるという感覚は以前からあり、絵というものは肯定的で楽観的で豊かなものだったら良い」と述べられたそうです。心情を濃い色彩で描いたように思える作品が20点ほど並んでいましたので、いくつか気になった作品を写真と共にご紹介していこうと思います。

山田七菜子 「歌舞伎者」
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背景は風景かな? 人の横顔らしきものと独特のプリミティブな色彩感覚で心象風景のように思えます。タイトルと絵の関連性は分かりませんでしたが、ちょっと物悲しい雰囲気に思えました。

山田七菜子 「雨降り」
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確かに雨が凄い勢いで降っているようです。人物は歯をむき出しにして何かを噛んでいるのでしょうか。怒っているか苦しい表情に見えるけどこれも心の中を観ているような感覚になりました。

山田七菜子 「湖畔」「砂丘、島」
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こちらは風景画のようですが、具象的なものがどこなのかちょっと判別がつきませんでした。この赤と青の深みがこの方の特徴のように思えます。

山田七菜子 「無題(ドローイング連作)」
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ドローイングもありました。人が登場するのが多いようで、夢の中のようなちょっとシュールで漠然とした不安感のある光景に思えました。

山田七菜子 「漁」
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これはハッキリと漁だと分かるけど、森の中のような不思議な背景で2人は会話しているのでしょうか。物語の一場面のような作品となっていました。

山田七菜子 「漁(朝)」
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こちらも漁ですが作風がかなり変わって具象性が増しているように思えます。神秘的でどこか懐かしくもある作風になっていました。

山田七菜子 「山水」
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こちらも具象的ではあるけど山と人が重なっているような構図が目新しい。花を持って楽しげに笑っているように見えるけど、空は夜のように暗いので幻想的な雰囲気に思えました。

山田七菜子 「海」
DSC00813.jpg
これは女性の横顔と海かな。深いブルーが印象深い。波が早そうだけど瞑想的な印象を受けました。


ということで、両方とも意図を汲むのは難しかったように思いますが、心に残る個性があったと思います。既に終了しましたが、今後も機会があったら観てみたいアーティストです。



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