Archive | 2020年02月
前回までご紹介した埼玉県立近代美術館に行った後、隣の浦和に移動して うらわ美術館の裏手にあるMICHELLE(ミシェル)というお店でコーヒーを買いました。

【店名】
MICHELLE(ミシェル)
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
https://www.instagram.com/michelle_urawa/
食べログ:https://tabelog.com/saitama/A1101/A110102/11050863/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
浦和駅
【近くの美術館】
うらわ美術館
【この日にかかった1人の費用】
1000円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
満席状態となっていましたので、お店で頂くのではなくテイクアウトにしました。席はテーブル4席とカウンター3席しかないのですぐに満席になってしまいそうです。
さて、こちらは うらわ美術館の入っているビルの裏手辺りに最近できたカフェで、雑誌『BRUTUS』のコーヒーの号にも載ったハンドドリップのこだわりのお店です。先に会計をして店内ではセルフサービスになっているなど、スタイルとしてはブルーボトル等に似ているように思います。
店内はこんな感じ。個人のお店なのでそれほど広くはありません。

シンプルですっきりとした印象です。ガラス張りで入りやすいのも良い感じ。
コーヒーは5~6種類あり、ストレートとブレンドがあります。

それぞれに説明があってフレーバーやロースト具合もわかりやすくなっています。
この日、私はグァテマラ。奥さんはブレンドにしました。グァテマラはカカオ・チョコレート、グレープフルーツ、クリーミーな質感、甘い余韻と説明されています。この日のブレントはブラジル6、ニカラグア3、エチオピア1の割合で、丸みのある口当たり、甘く長い余韻とのことでした。
待っている間ハンドドリップしている様子も観られます。

その場で豆をひくところからやるので、1杯あたり5分くらいはかかると思います。時間はかかるけどこれが美味しさに繋がるのでゆっくり待ちました。
こちらはご主人がじっくりと抽出している様子。

少しづつ注いで丁寧に淹れてくれます。この時点でいい香りが店内に広がります。
この日はチョコケーキも買ってテイクアウト。とりあえず写真w

グァテマラはコクと軽い苦味があって香りにも深みがあります。非常に美味しくて説明通りクリーミーな味わいです。ブレンドも少し貰って飲んだところ、軽い酸味と苦味がありグァテマラとは全然違うフレーバーです。こちらはバランスが良くて一層に飲みやすかったと思います。チョコケーキはナッツの香りがして、食べると濃厚なチョコの風味がします。小さいものの満足度高めです。
ということで、かなり本格的なコーヒーを楽しむことができました。ここは うらわ美術館のすぐ近くなので、合わせて訪れてみるのも良いかと思います。特にストレートコーヒーが好きな方にオススメのお店です。
おまけ:
この後 うらわ美術館へ…と行きたかったところですが、メンテナンスで休館中でしたw

【店名】
MICHELLE(ミシェル)
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
https://www.instagram.com/michelle_urawa/
食べログ:https://tabelog.com/saitama/A1101/A110102/11050863/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
浦和駅
【近くの美術館】
うらわ美術館
【この日にかかった1人の費用】
1000円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
満席状態となっていましたので、お店で頂くのではなくテイクアウトにしました。席はテーブル4席とカウンター3席しかないのですぐに満席になってしまいそうです。
さて、こちらは うらわ美術館の入っているビルの裏手辺りに最近できたカフェで、雑誌『BRUTUS』のコーヒーの号にも載ったハンドドリップのこだわりのお店です。先に会計をして店内ではセルフサービスになっているなど、スタイルとしてはブルーボトル等に似ているように思います。
店内はこんな感じ。個人のお店なのでそれほど広くはありません。

シンプルですっきりとした印象です。ガラス張りで入りやすいのも良い感じ。
コーヒーは5~6種類あり、ストレートとブレンドがあります。

それぞれに説明があってフレーバーやロースト具合もわかりやすくなっています。
この日、私はグァテマラ。奥さんはブレンドにしました。グァテマラはカカオ・チョコレート、グレープフルーツ、クリーミーな質感、甘い余韻と説明されています。この日のブレントはブラジル6、ニカラグア3、エチオピア1の割合で、丸みのある口当たり、甘く長い余韻とのことでした。
待っている間ハンドドリップしている様子も観られます。

その場で豆をひくところからやるので、1杯あたり5分くらいはかかると思います。時間はかかるけどこれが美味しさに繋がるのでゆっくり待ちました。
こちらはご主人がじっくりと抽出している様子。

少しづつ注いで丁寧に淹れてくれます。この時点でいい香りが店内に広がります。
この日はチョコケーキも買ってテイクアウト。とりあえず写真w

グァテマラはコクと軽い苦味があって香りにも深みがあります。非常に美味しくて説明通りクリーミーな味わいです。ブレンドも少し貰って飲んだところ、軽い酸味と苦味がありグァテマラとは全然違うフレーバーです。こちらはバランスが良くて一層に飲みやすかったと思います。チョコケーキはナッツの香りがして、食べると濃厚なチョコの風味がします。小さいものの満足度高めです。
ということで、かなり本格的なコーヒーを楽しむことができました。ここは うらわ美術館のすぐ近くなので、合わせて訪れてみるのも良いかと思います。特にストレートコーヒーが好きな方にオススメのお店です。
おまけ:
この後 うらわ美術館へ…と行きたかったところですが、メンテナンスで休館中でしたw
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今日は前回に引き続き埼玉県立近代美術館の「森田恒友展 自然と共に生きて行かう」についてです。前編では1~2章の初期についてご紹介しましたが、後編では渡欧した頃から晩年までについてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。
→ 前編はこちら

【展覧名】
森田恒友展 自然と共に生きて行かう
【公式サイト】
https://pref.spec.ed.jp/momas/2020.2.1-3.22--%E6%A3%AE%E7%94%B0%E6%81%92%E5%8F%8B%E5%B1%95
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2020年2月1日 (土) ~3月22日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半も空いていて快適に鑑賞できました。引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介して参ります。
<第3章 欧州漫遊>
3章は渡欧した頃のコーナーです。森田恒友は1914年ヨーロッパへと出発し、6月にパリに着くと美術館や画廊をめぐり 次第にセザンヌに惹かれていきました。しかし7月には第一次世界大戦が勃発するとパリは混乱し美術館も閉鎖されてしまいます。森田恒友は戦火を逃れてロンドンへと移り、その後も戦時下のヨーロッパを転々としていきます。11月にはセザンヌの故郷のエクス・アン・プロヴァンスを訪れ、一層にセザンヌへの敬愛への念を強めました。さらに翌年もイタリアやスペイン、ヴェトゥイユ、ブレハ島などに滞在していたようです。森田恒友はセザンヌの形態的な要素よりも自然を真摯に見つめて丹念に描く製作態度に共鳴していたそうです。一方、オノレ・ドーミエにも強く惹かれていたようで、鋭くユーモアある視点から社会を描いたドーミエに自らの関心との共通点を見出したようです。(森田恒友も渡欧前に雑誌の挿絵を描いていたので関心を持ったのだと思われます) ここには渡欧時代の作品が並んでいました。
参考記事:セザンヌゆかりの地めぐり 【南仏編 エクス】
3-03 森田恒友 「プロヴァンス風景」 ★こちらで観られます
こちらは 手前に曲がりくねった木が立ち、奥に丘が広がり赤い家々が並んでいる光景を描いた作品です。色合いや筆致が重なる点など、全体から細部までセザンヌからの影響が顕著に観られます。かなりの真似っぷりで流石に今までの画風と変わり過ぎだろとツッコミたくなりますw いかに傾倒していたのかが一目で分かる作品でした。
この近くにあった人物像もセザンヌ風でした。背景の色などまでよく研究しています。オルセー美術館では「カード遊びをする人々」なども観たようです。
3-06 森田恒友 「ヴェトゥイユの春」
こちらは中央にピンクの花を咲かせた木があり、赤土の丘に無数の木々が立ち並ぶ様子が描かれた風景画です。赤と緑の補色関係で色が強く感じられ、やはりセザンヌっぽさもありますが どちらかと言うとゴーギャンやナビ派のような印象を受けるかな。ヴェトゥイユと言えばモネの過ごした地ですが、モネっぽい感じではありませんでした。
この辺はフランス各地で描いた風景画が並んでいました。筆致は粗めで、未完成作に見える作品があるのもセザンヌぽいw 他にスケッチブックなどもありました。
3-19 森田恒友 「欧州風景」
こちらは日本画で、3幅対の掛け軸です。それぞれにヨーロッパの街角の様子が描かれ、ロバを引く人や談笑する人、道端で休む人など 穏やかでのんびりした光景となっています。余白も多く日本画らしい雰囲気で、南画のような緩さがありました。
<第4章 洋画から日本画へ>
続いては帰国後に日本画へと軸足を移していった頃のコーナーです。1915年にドーミエの「停車場」を模写して それを懐にして帰国し神戸に到着すると、京都で絵巻物の展覧会が開催されていることを知って観に行ったようです。そこで「鳥獣戯画」に再開して 生き生きとした人間性の表出にドーミエと共通するものを感じたようで、制作の方向性を見出していきます。その後、素描という言葉で線による骨格描写について考察を深めていきます。また、この時期には以前に増して俳句関係者との交流が深まったそうで、『ホトトギス』を中心とした人脈を頼って各地を旅しました。
帰国後の油彩はセザンヌの紹介者として反響を呼んだようですが、日本の湿度のある自然を表現するに及び 中間色を多用した くすんだ風景画へと変容していったようです。1916年には日本画の新グループ「珊瑚会」に参加し、翌年には二科展を脱退して次第に水墨へと軸足を移していきました。ここにはそうした時代の作品が並んでいます。
4-01 森田恒友 「作品名不詳(天草)」
こちら木の塀に囲われた家と、その前に立つ半裸の人物が描かれた作品です。台形の屋根や山が連なるリズミカルな構図で、全体的にセザンヌやゴーギャンのような色彩となっています。日本とは思えないような南方系の雰囲気となっていて、日本の光景には合わない画風なのかも知れません。とは言え、絵としては面白い作品で好みでした。この辺はまだ油彩が多いかな。
近くには版画もありました。地方を巡った時の風景画で、淡い色彩で人々の生活を描いています。
4-10 森田恒友 「村童」
こちらは日本画で、木登りしている子供と見守る男性、その背景には山が描かれています。ぐにゃぐにゃした輪郭が多くて南画のような画面かな。色は抑えめで農村の穏やかな雰囲気となっていました。
この辺は会津で描かれた掛け軸などが並んでいました。珊瑚会のメンバーがよく訪れたようで、森田恒友も4度訪れて長期滞在したようです。少し先には会津の風景の版画集もあり、素朴な営みと豊かな自然を描いていました。
4-24 森田恒友 「秩父路冬日」
こちらは手前に木々が横並びになり、その奥に家々が描かれ 背景には山がそびえている秩父の風景を描いた作品です。左下あたりで木材を運んでいる人の姿もあり、ぽつんとしてやや寂しげな光景に見えます。枯れ木が並び空が青いのは秩父の冬の気候や風土を感じさせるかな。やはりセザンヌ的な雰囲気もありますが色が、落ち着いていて静けさを感じました。
4-32 森田恒友 「漁村図」
こちらは掛け軸の水墨画です。台形の藁の家らしきものが3軒並んでいて、子供を背負った女性が庭先で作業しています。背景の海は波立ち空は薄曇りでやや暗く寂しげに思えます。一方で素朴さや逞しく生きている感じも出ていて 自然と人の営みの両面が伝わってきました。
<第5章 晩年の画境>
最後は晩年のコーナーです。森田恒友は1920年に日本美術院洋画部を脱退し春陽会に加わります。そこで「素描室」を設ける提案をして受け入れられたようです。そして、コンテ・鉛筆・木炭といった西洋の素描を「乾黒素描」、日本画の墨・淡彩を「水墨素描」として同時に作品を発表しました。晩年には生まれ故郷の関東平野を題材にして水墨描写を掘り下げていったそうです。また、帝国美術学校の西洋学科の教授を務め後進の指導を行いました。
1932年には依頼を受けて尾瀬を題材にした作品を発表しましたが、秋に病気となり翌年に52歳で亡くなったようです。ここにはそうした晩年の作品が並んでいました
5-12 森田恒友 「緑野」
こちらは今回のポスターにもなっている作品です。淡い緑がかった画面に薄い線で木々や山の稜線が描かれ、手前には馬に乗った人とそれを引く人が描かれています。幻想的な雰囲気がありつつ、穏やかで静かな印象を受けます。人物の顔が単純かつ素朴な感じで可愛いw 枯淡という言葉が似合う作品でした。
5-17 森田恒友 「四季田園和楽」
こちらは4幅対の横長の掛け軸です。それぞれ 田んぼでの農作業、川で遊んでいる様子、外で月見している様子、焚き火している様子などが描かれていて春夏秋冬の光景のようです。この作品もモノクロで淡い色彩で、ぼんやりした幻想性があります。一方で人々は楽しげで、理想郷のような穏やかさや幸福感があるように思えました。森田恒友の温厚な人柄が現れている感じがします。
この辺は掛け軸が並んでいました。淡い緑の風景が多いかな。その先にはスケッチで各地の風景がありました。また、この時期も俳句のネットワークからの支援を受けていたようで、『ホトトギス』や『早稲田文学』の冊子などもあります。仲間の小川芋銭・平福百穂・高浜虚子などのハガキなども並んでいました。
5-20 森田恒友 「丘と水田」
こちらは久々の油彩作品で、水田が広がる光景が描かれています。奥の方には2人の子供が向き合って何かを話しているように見えます。全体的に青緑がかっていて早朝なのかもしれません。幻想的で静けさが漂っていて、どこか郷愁を誘われます。こちらは自信作だったようで、知らない人に渡るのは好ましくないという旨の手紙も残しているとのことでした。
5-24 森田恒友 「尾瀬沼」
こちらは最晩年の作品で、尾瀬の湿原が描かれています。1人も人の姿がなく、水芭蕉が白い花を咲かしている清々しい光景です。水彩のような軽やかな色彩で、時間が止まったような静寂と寂しさも感じました。
最後に愛用のトランクや椅子、画材などもありました。
ということで、初期から晩年まで画風の変遷を観ることができました。誰々風という画風であったのが次第に自身の個性が出てきて、日本の風土にあった表現に変わっていったように見えました。埼玉以外ではあまり観る機会がない画家だけにこの展示は貴重な機会だと思います。絵画好きの方はチェックしてみてください。
→ 前編はこちら

【展覧名】
森田恒友展 自然と共に生きて行かう
【公式サイト】
https://pref.spec.ed.jp/momas/2020.2.1-3.22--%E6%A3%AE%E7%94%B0%E6%81%92%E5%8F%8B%E5%B1%95
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2020年2月1日 (土) ~3月22日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半も空いていて快適に鑑賞できました。引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介して参ります。
<第3章 欧州漫遊>
3章は渡欧した頃のコーナーです。森田恒友は1914年ヨーロッパへと出発し、6月にパリに着くと美術館や画廊をめぐり 次第にセザンヌに惹かれていきました。しかし7月には第一次世界大戦が勃発するとパリは混乱し美術館も閉鎖されてしまいます。森田恒友は戦火を逃れてロンドンへと移り、その後も戦時下のヨーロッパを転々としていきます。11月にはセザンヌの故郷のエクス・アン・プロヴァンスを訪れ、一層にセザンヌへの敬愛への念を強めました。さらに翌年もイタリアやスペイン、ヴェトゥイユ、ブレハ島などに滞在していたようです。森田恒友はセザンヌの形態的な要素よりも自然を真摯に見つめて丹念に描く製作態度に共鳴していたそうです。一方、オノレ・ドーミエにも強く惹かれていたようで、鋭くユーモアある視点から社会を描いたドーミエに自らの関心との共通点を見出したようです。(森田恒友も渡欧前に雑誌の挿絵を描いていたので関心を持ったのだと思われます) ここには渡欧時代の作品が並んでいました。
参考記事:セザンヌゆかりの地めぐり 【南仏編 エクス】
3-03 森田恒友 「プロヴァンス風景」 ★こちらで観られます
こちらは 手前に曲がりくねった木が立ち、奥に丘が広がり赤い家々が並んでいる光景を描いた作品です。色合いや筆致が重なる点など、全体から細部までセザンヌからの影響が顕著に観られます。かなりの真似っぷりで流石に今までの画風と変わり過ぎだろとツッコミたくなりますw いかに傾倒していたのかが一目で分かる作品でした。
この近くにあった人物像もセザンヌ風でした。背景の色などまでよく研究しています。オルセー美術館では「カード遊びをする人々」なども観たようです。
3-06 森田恒友 「ヴェトゥイユの春」
こちらは中央にピンクの花を咲かせた木があり、赤土の丘に無数の木々が立ち並ぶ様子が描かれた風景画です。赤と緑の補色関係で色が強く感じられ、やはりセザンヌっぽさもありますが どちらかと言うとゴーギャンやナビ派のような印象を受けるかな。ヴェトゥイユと言えばモネの過ごした地ですが、モネっぽい感じではありませんでした。
この辺はフランス各地で描いた風景画が並んでいました。筆致は粗めで、未完成作に見える作品があるのもセザンヌぽいw 他にスケッチブックなどもありました。
3-19 森田恒友 「欧州風景」
こちらは日本画で、3幅対の掛け軸です。それぞれにヨーロッパの街角の様子が描かれ、ロバを引く人や談笑する人、道端で休む人など 穏やかでのんびりした光景となっています。余白も多く日本画らしい雰囲気で、南画のような緩さがありました。
<第4章 洋画から日本画へ>
続いては帰国後に日本画へと軸足を移していった頃のコーナーです。1915年にドーミエの「停車場」を模写して それを懐にして帰国し神戸に到着すると、京都で絵巻物の展覧会が開催されていることを知って観に行ったようです。そこで「鳥獣戯画」に再開して 生き生きとした人間性の表出にドーミエと共通するものを感じたようで、制作の方向性を見出していきます。その後、素描という言葉で線による骨格描写について考察を深めていきます。また、この時期には以前に増して俳句関係者との交流が深まったそうで、『ホトトギス』を中心とした人脈を頼って各地を旅しました。
帰国後の油彩はセザンヌの紹介者として反響を呼んだようですが、日本の湿度のある自然を表現するに及び 中間色を多用した くすんだ風景画へと変容していったようです。1916年には日本画の新グループ「珊瑚会」に参加し、翌年には二科展を脱退して次第に水墨へと軸足を移していきました。ここにはそうした時代の作品が並んでいます。
4-01 森田恒友 「作品名不詳(天草)」
こちら木の塀に囲われた家と、その前に立つ半裸の人物が描かれた作品です。台形の屋根や山が連なるリズミカルな構図で、全体的にセザンヌやゴーギャンのような色彩となっています。日本とは思えないような南方系の雰囲気となっていて、日本の光景には合わない画風なのかも知れません。とは言え、絵としては面白い作品で好みでした。この辺はまだ油彩が多いかな。
近くには版画もありました。地方を巡った時の風景画で、淡い色彩で人々の生活を描いています。
4-10 森田恒友 「村童」
こちらは日本画で、木登りしている子供と見守る男性、その背景には山が描かれています。ぐにゃぐにゃした輪郭が多くて南画のような画面かな。色は抑えめで農村の穏やかな雰囲気となっていました。
この辺は会津で描かれた掛け軸などが並んでいました。珊瑚会のメンバーがよく訪れたようで、森田恒友も4度訪れて長期滞在したようです。少し先には会津の風景の版画集もあり、素朴な営みと豊かな自然を描いていました。
4-24 森田恒友 「秩父路冬日」
こちらは手前に木々が横並びになり、その奥に家々が描かれ 背景には山がそびえている秩父の風景を描いた作品です。左下あたりで木材を運んでいる人の姿もあり、ぽつんとしてやや寂しげな光景に見えます。枯れ木が並び空が青いのは秩父の冬の気候や風土を感じさせるかな。やはりセザンヌ的な雰囲気もありますが色が、落ち着いていて静けさを感じました。
4-32 森田恒友 「漁村図」
こちらは掛け軸の水墨画です。台形の藁の家らしきものが3軒並んでいて、子供を背負った女性が庭先で作業しています。背景の海は波立ち空は薄曇りでやや暗く寂しげに思えます。一方で素朴さや逞しく生きている感じも出ていて 自然と人の営みの両面が伝わってきました。
<第5章 晩年の画境>
最後は晩年のコーナーです。森田恒友は1920年に日本美術院洋画部を脱退し春陽会に加わります。そこで「素描室」を設ける提案をして受け入れられたようです。そして、コンテ・鉛筆・木炭といった西洋の素描を「乾黒素描」、日本画の墨・淡彩を「水墨素描」として同時に作品を発表しました。晩年には生まれ故郷の関東平野を題材にして水墨描写を掘り下げていったそうです。また、帝国美術学校の西洋学科の教授を務め後進の指導を行いました。
1932年には依頼を受けて尾瀬を題材にした作品を発表しましたが、秋に病気となり翌年に52歳で亡くなったようです。ここにはそうした晩年の作品が並んでいました
5-12 森田恒友 「緑野」
こちらは今回のポスターにもなっている作品です。淡い緑がかった画面に薄い線で木々や山の稜線が描かれ、手前には馬に乗った人とそれを引く人が描かれています。幻想的な雰囲気がありつつ、穏やかで静かな印象を受けます。人物の顔が単純かつ素朴な感じで可愛いw 枯淡という言葉が似合う作品でした。
5-17 森田恒友 「四季田園和楽」
こちらは4幅対の横長の掛け軸です。それぞれ 田んぼでの農作業、川で遊んでいる様子、外で月見している様子、焚き火している様子などが描かれていて春夏秋冬の光景のようです。この作品もモノクロで淡い色彩で、ぼんやりした幻想性があります。一方で人々は楽しげで、理想郷のような穏やかさや幸福感があるように思えました。森田恒友の温厚な人柄が現れている感じがします。
この辺は掛け軸が並んでいました。淡い緑の風景が多いかな。その先にはスケッチで各地の風景がありました。また、この時期も俳句のネットワークからの支援を受けていたようで、『ホトトギス』や『早稲田文学』の冊子などもあります。仲間の小川芋銭・平福百穂・高浜虚子などのハガキなども並んでいました。
5-20 森田恒友 「丘と水田」
こちらは久々の油彩作品で、水田が広がる光景が描かれています。奥の方には2人の子供が向き合って何かを話しているように見えます。全体的に青緑がかっていて早朝なのかもしれません。幻想的で静けさが漂っていて、どこか郷愁を誘われます。こちらは自信作だったようで、知らない人に渡るのは好ましくないという旨の手紙も残しているとのことでした。
5-24 森田恒友 「尾瀬沼」
こちらは最晩年の作品で、尾瀬の湿原が描かれています。1人も人の姿がなく、水芭蕉が白い花を咲かしている清々しい光景です。水彩のような軽やかな色彩で、時間が止まったような静寂と寂しさも感じました。
最後に愛用のトランクや椅子、画材などもありました。
ということで、初期から晩年まで画風の変遷を観ることができました。誰々風という画風であったのが次第に自身の個性が出てきて、日本の風土にあった表現に変わっていったように見えました。埼玉以外ではあまり観る機会がない画家だけにこの展示は貴重な機会だと思います。絵画好きの方はチェックしてみてください。
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更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
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前回ご紹介した埼玉県立近代美術館の常設を観る前に企画展の「森田恒友展 自然と共に生きて行かう」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

【展覧名】
森田恒友展 自然と共に生きて行かう
【公式サイト】
https://pref.spec.ed.jp/momas/2020.2.1-3.22--%E6%A3%AE%E7%94%B0%E6%81%92%E5%8F%8B%E5%B1%95
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2020年2月1日 (土) ~3月22日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は森田恒友という埼玉県熊谷市出身で明治末から昭和初期にかけて活躍した画家の個展となっています。私は何枚か観た覚えがある程度でほとんど知らなかった画家ですが、初期は青木繁と共に行動し、後に珊瑚会や春陽会といったグループに参加し晩年は日本画を描くなど多彩な活動をしていた画家です。冒頭の略歴によると、20歳で画家を志して上京し、不同舎や東京美術学校で洋画を学び、美術学校で先輩だった青木繁に影響を受けて浪漫主義的な作品を描いていたようです。美術学校を卒業すると雑誌や新聞の挿絵・漫画の仕事を担当しながら美術文芸雑誌『方寸』の創刊に携わりました。そして1914年にはヨーロッパに渡り現地でセザンヌに深く傾倒し、その影響を色濃く受けた作品を残しています。しかし第一次世界大戦が勃発したこともあり翌年には帰国したようで、日本各地を旅しているうちに水墨表現が日本の風景に適していることを見出し、後半生は柔らかな筆使いで旅先や武蔵野の自然をとらえた日本画を発表するようになったそうです。展示は時系列的に初期から晩年まで5つの章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1章 出発―洋画家として>
まずは初期のコーナーです。森田恒友は1881年に熊谷で生まれ、1901年に上京しました。中村不折の妻(いと)が同郷だったのを頼って中村不折に師事しましたが、すぐに不折が渡欧してしまったので小山正太郎の画塾 不同舎に入ります。そこで徹底した鉛筆の素描を学んだようで、着実に習得し 晩年まで素描を重視していたようです。1902年に東京美術学校洋画科に入り、さらに1904年からは太平洋画会研究所にも通って学びます。美術学校で同窓だった山本鼎や、太平洋画会の小杉未醒、平福百穂らとは生涯の親交を結び、中でも美術学校の先輩だった青木繁とは2度の共同生活を送るなど深い仲だったようです。青木繁の代表作「海の幸」が誕生した布良への旅行にも坂本繁二郎、青木繁の恋人(福田たね)と同行しています。その為、初期作品は青木繁の象徴主義的な作風に強く影響を受けましたが、やがてそこから脱して自らの方向性を模索していったようです。ここにはそうした初期の作品が並んでいました。
参考記事:
没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術 (ブリヂストン美術館)
開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」 感想前編(アーティゾン美術館)
1-02 森田恒友 「農家の洗場」
こちらは農家の軒先を描いた作品です。秋の光景らしく背景の木には柿がなり、屋根からもオレンジ色の農作物が吊るされています。細部はあまり描き込んでおらず ややぼんやりしていますが、重厚で素朴な色彩となっていて叙情的な雰囲気でした。
1-05 森田恒友 「大里郡深谷並木」
こちらは両脇に大木が並ぶ並木道を描いた作品で、その間を歩く馬と馬方を鉛筆で素描しています。並木の鬱蒼とした雰囲気を濃淡のみで表現していて、光が差し込む様子なども感じられます。情感豊かで静かな光景でした。
この近くには鉛筆による自画像や父、妹といった身近な家族の肖像もありました。少し先には小学校の修業書なんかもあって、子供の頃から成績優秀で級長だったことが紹介されていました。温厚な人格者だったみたいです。
1-10 森田恒友 「樵夫」
こちらはうずくまって顔を横にして目を瞑る女性と、そのすぐ横で顔を覗き込むような老人が描かれた作品です。周りはゴツゴツしていて背景は海っぽく見えるかな。全体的にぼんやりした感じが青木繁に似た幻想性があり、何かの物語の場面なのかもしれません。象徴主義的な要素もあって確かに青木繁からの影響が見て取れました。
1-12 青木繁・森田恒友 「春の夕」
こちらは青い肌をした人物が5人くらい描かれ、背景に満月が輝くという構図となっています。ぼんやりしていて顔は分かりませんが、道具を持って帰宅する姿のように思えます。青みがかった画面が神秘的で、静かな雰囲気となっていました。青木繁との共作っぽいけど青木繁の絵のようでもあるw
<第2章 『方寸』から无声会へ―模索の時代>
続いては卒業後から渡仏前の模索の時代のコーナーです。1906年に東京美術学校西洋画科選科を主席で卒業すると、幾度か落選したこともあったようですが第一回文展で「湖畔」が入選します。この頃には青木繁の影響から脱して、浪漫主義を基調に柔らかい色調や光で人物・草木などを捉えることに関心の軸を移していたようです。外光表現にも目を向け、房州や高原に取材した作品も残しています。一方、この頃から雑誌や新聞に携わり『方寸』の創刊に関わり、編集や発行の中心となっています。そして1908年からは結城素明の誘いで太平洋通信社に入社して『週刊サンデー』で風刺画や挿絵を担当しました。1911年には大阪に移り、渡欧までに帝国新聞や大阪毎日新聞の挿絵も手掛けていたようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。
2-11 森田恒友 「漁村(網干)」
こちらは横長の油彩で、漁網を干している3人の男性が描かれています。背景にも女性たちが作業しているのですが、半裸で仕事している人が多いかな。素朴さを感じる光景で、輪郭が強く色は浅めとなっているように思えます。長閑で漁村での暮らしの様子が伝わってくるようでした。
この辺には『方寸』が何ページか紹介されていました。白黒の版画だけでなくカラーページなどもあります。
2-04 森田恒友 「湖畔」
こちらは文展で入選した作品で、湖畔の森の中を描いた作品です。木や草が画面を覆い、正面の木陰には前屈みの姿勢の女性らしき姿もあります。全体的にぼんやりとしていて、鬱蒼とした雰囲気が強まっているように思えるかな。静かな中に人が横切った瞬間のような光景でした。
2-14 森田恒友 「川に沿う街」
こちらは川沿いの街を小高い場所から見下ろすような構図で描いた風景画です。手前の軒先では鉢植えの世話したり洗濯したりと のんびり過ごす人の姿もあります。一方、家々の屋根は幾何学的な連なりとなっているのが面白く、筆致は印象派のように粗めとなっています。道はピンクに染まるなど明るい雰囲気で、色彩も含めて この辺から近代絵画っぽさが増しているように思えました。
この近くにあった「着船」も色が明るく幾何学的な構図の面白さがありました。
その後は漫画の原画がありました。浅草の様子をやや戯画的に描いています。また、俳句雑誌『ホトトギス』や『サンデー』の表紙、大阪時代のスケッチなどもありました。特に『ホトトギス』は今後の交流関係で重要な存在です。
2-18 森田恒友 「海辺風景」 ★こちらで観られます
こちらは二曲一隻の金地の屏風で、木工作業をする人や 戯れる2匹の犬、それを観ている子供、餌を食べるアヒルなどが描かれています。それぞれが自由な雰囲気で、一種の理想郷的な安らぎが感じられます。ここまで洋画だったのが急に日本画になったのに驚きましたが、既に高い力量となっていることに一層驚かされます。素朴で南画に似た画風に思えました。
ということで、今日はここまでにしておこうと思います。初期は青木繁に影響を受けているのが顕著ですが、徐々に画風が変わっていくのが感じられました。後半はだいぶ変わって洋画だけでなく日本画作品が多くなっていましたので、次回は残りの3~5章をご紹介の予定です。
→ 後編はこちら

【展覧名】
森田恒友展 自然と共に生きて行かう
【公式サイト】
https://pref.spec.ed.jp/momas/2020.2.1-3.22--%E6%A3%AE%E7%94%B0%E6%81%92%E5%8F%8B%E5%B1%95
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2020年2月1日 (土) ~3月22日 (日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は森田恒友という埼玉県熊谷市出身で明治末から昭和初期にかけて活躍した画家の個展となっています。私は何枚か観た覚えがある程度でほとんど知らなかった画家ですが、初期は青木繁と共に行動し、後に珊瑚会や春陽会といったグループに参加し晩年は日本画を描くなど多彩な活動をしていた画家です。冒頭の略歴によると、20歳で画家を志して上京し、不同舎や東京美術学校で洋画を学び、美術学校で先輩だった青木繁に影響を受けて浪漫主義的な作品を描いていたようです。美術学校を卒業すると雑誌や新聞の挿絵・漫画の仕事を担当しながら美術文芸雑誌『方寸』の創刊に携わりました。そして1914年にはヨーロッパに渡り現地でセザンヌに深く傾倒し、その影響を色濃く受けた作品を残しています。しかし第一次世界大戦が勃発したこともあり翌年には帰国したようで、日本各地を旅しているうちに水墨表現が日本の風景に適していることを見出し、後半生は柔らかな筆使いで旅先や武蔵野の自然をとらえた日本画を発表するようになったそうです。展示は時系列的に初期から晩年まで5つの章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1章 出発―洋画家として>
まずは初期のコーナーです。森田恒友は1881年に熊谷で生まれ、1901年に上京しました。中村不折の妻(いと)が同郷だったのを頼って中村不折に師事しましたが、すぐに不折が渡欧してしまったので小山正太郎の画塾 不同舎に入ります。そこで徹底した鉛筆の素描を学んだようで、着実に習得し 晩年まで素描を重視していたようです。1902年に東京美術学校洋画科に入り、さらに1904年からは太平洋画会研究所にも通って学びます。美術学校で同窓だった山本鼎や、太平洋画会の小杉未醒、平福百穂らとは生涯の親交を結び、中でも美術学校の先輩だった青木繁とは2度の共同生活を送るなど深い仲だったようです。青木繁の代表作「海の幸」が誕生した布良への旅行にも坂本繁二郎、青木繁の恋人(福田たね)と同行しています。その為、初期作品は青木繁の象徴主義的な作風に強く影響を受けましたが、やがてそこから脱して自らの方向性を模索していったようです。ここにはそうした初期の作品が並んでいました。
参考記事:
没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術 (ブリヂストン美術館)
開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」 感想前編(アーティゾン美術館)
1-02 森田恒友 「農家の洗場」
こちらは農家の軒先を描いた作品です。秋の光景らしく背景の木には柿がなり、屋根からもオレンジ色の農作物が吊るされています。細部はあまり描き込んでおらず ややぼんやりしていますが、重厚で素朴な色彩となっていて叙情的な雰囲気でした。
1-05 森田恒友 「大里郡深谷並木」
こちらは両脇に大木が並ぶ並木道を描いた作品で、その間を歩く馬と馬方を鉛筆で素描しています。並木の鬱蒼とした雰囲気を濃淡のみで表現していて、光が差し込む様子なども感じられます。情感豊かで静かな光景でした。
この近くには鉛筆による自画像や父、妹といった身近な家族の肖像もありました。少し先には小学校の修業書なんかもあって、子供の頃から成績優秀で級長だったことが紹介されていました。温厚な人格者だったみたいです。
1-10 森田恒友 「樵夫」
こちらはうずくまって顔を横にして目を瞑る女性と、そのすぐ横で顔を覗き込むような老人が描かれた作品です。周りはゴツゴツしていて背景は海っぽく見えるかな。全体的にぼんやりした感じが青木繁に似た幻想性があり、何かの物語の場面なのかもしれません。象徴主義的な要素もあって確かに青木繁からの影響が見て取れました。
1-12 青木繁・森田恒友 「春の夕」
こちらは青い肌をした人物が5人くらい描かれ、背景に満月が輝くという構図となっています。ぼんやりしていて顔は分かりませんが、道具を持って帰宅する姿のように思えます。青みがかった画面が神秘的で、静かな雰囲気となっていました。青木繁との共作っぽいけど青木繁の絵のようでもあるw
<第2章 『方寸』から无声会へ―模索の時代>
続いては卒業後から渡仏前の模索の時代のコーナーです。1906年に東京美術学校西洋画科選科を主席で卒業すると、幾度か落選したこともあったようですが第一回文展で「湖畔」が入選します。この頃には青木繁の影響から脱して、浪漫主義を基調に柔らかい色調や光で人物・草木などを捉えることに関心の軸を移していたようです。外光表現にも目を向け、房州や高原に取材した作品も残しています。一方、この頃から雑誌や新聞に携わり『方寸』の創刊に関わり、編集や発行の中心となっています。そして1908年からは結城素明の誘いで太平洋通信社に入社して『週刊サンデー』で風刺画や挿絵を担当しました。1911年には大阪に移り、渡欧までに帝国新聞や大阪毎日新聞の挿絵も手掛けていたようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。
2-11 森田恒友 「漁村(網干)」
こちらは横長の油彩で、漁網を干している3人の男性が描かれています。背景にも女性たちが作業しているのですが、半裸で仕事している人が多いかな。素朴さを感じる光景で、輪郭が強く色は浅めとなっているように思えます。長閑で漁村での暮らしの様子が伝わってくるようでした。
この辺には『方寸』が何ページか紹介されていました。白黒の版画だけでなくカラーページなどもあります。
2-04 森田恒友 「湖畔」
こちらは文展で入選した作品で、湖畔の森の中を描いた作品です。木や草が画面を覆い、正面の木陰には前屈みの姿勢の女性らしき姿もあります。全体的にぼんやりとしていて、鬱蒼とした雰囲気が強まっているように思えるかな。静かな中に人が横切った瞬間のような光景でした。
2-14 森田恒友 「川に沿う街」
こちらは川沿いの街を小高い場所から見下ろすような構図で描いた風景画です。手前の軒先では鉢植えの世話したり洗濯したりと のんびり過ごす人の姿もあります。一方、家々の屋根は幾何学的な連なりとなっているのが面白く、筆致は印象派のように粗めとなっています。道はピンクに染まるなど明るい雰囲気で、色彩も含めて この辺から近代絵画っぽさが増しているように思えました。
この近くにあった「着船」も色が明るく幾何学的な構図の面白さがありました。
その後は漫画の原画がありました。浅草の様子をやや戯画的に描いています。また、俳句雑誌『ホトトギス』や『サンデー』の表紙、大阪時代のスケッチなどもありました。特に『ホトトギス』は今後の交流関係で重要な存在です。
2-18 森田恒友 「海辺風景」 ★こちらで観られます
こちらは二曲一隻の金地の屏風で、木工作業をする人や 戯れる2匹の犬、それを観ている子供、餌を食べるアヒルなどが描かれています。それぞれが自由な雰囲気で、一種の理想郷的な安らぎが感じられます。ここまで洋画だったのが急に日本画になったのに驚きましたが、既に高い力量となっていることに一層驚かされます。素朴で南画に似た画風に思えました。
ということで、今日はここまでにしておこうと思います。初期は青木繁に影響を受けているのが顕著ですが、徐々に画風が変わっていくのが感じられました。後半はだいぶ変わって洋画だけでなく日本画作品が多くなっていましたので、次回は残りの3~5章をご紹介の予定です。
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この前の日曜日に埼玉県立近代美術館で特別展を観てきたのですが、その際に常設も観てきました。特別展については準備中ですので、先に常設についてご紹介していこうと思います。今回は「2019 MOMASコレクション 第4期」というタイトルになっていました。

【展覧名】
2019 MOMASコレクション 第4期
【公式サイト】
https://pref.spec.ed.jp/momas/2020.2.8-4.19--2019MOMAS%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E7%AC%AC%EF%BC%94%E6%9C%9F
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2020年2月8日(土)~4月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は常設展示で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、これで2019年度最後の4期目となります。今回は一部で撮影可能となっていましたので、それを交えながら気に入った作品と共に振り返ってみようと思います。
参考記事:
2019 MOMASコレクション 第1期 (埼玉県立近代美術館)
2019 MOMASコレクション 第2期 (埼玉県立近代美術館)
2019 MOMASコレクション 第3期 (埼玉県立近代美術館)
<セレクション:シャガールとか佐伯祐三とか>
まずはこの美術館でも特に重要な近代西洋絵画のコーナーです。今回ここは撮影可能となっていました。
クロード・モネ 「ジヴェルニーの積みわら、夕日」

こちらはこの美術館を代表するコレクション。夕日に照らされた積みわらが何とも叙情的。時間を変えて描き続けた連作の1枚です。
参考記事:【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家
キスリング 「赤いテーブルの上の果実」

濃厚な色彩で艷やかな印象を受ける静物。色と形が響き合うようでリズム感があります。
参考記事:キスリング展 エコール・ド・パリの夢 (東京都庭園美術館)
佐伯祐三 「門と広告」

佐伯は広告をよくモチーフにしていたので、これもその1枚と言えます。重厚感のある門と共に独特のマチエールが魅力です。
ジョアン・ミロ 「詩画集『手づくり諺』より」

こちらはミロの詩画集の抽象画をリトグラフにしたもの。目玉があって生き物でしょうか? *は星を表すことが多い画家ですが、何か具象的なモチーフがあるのかな。
他にもシャガールやユトリロなど有名画家の作品が並んでいました。
<春陽会―旗揚げのころ>
続いては春陽会についてのコーナーです。次回の記事で森田恒友展を取り上げる予定ですが、春陽会は森田恒友も参加したグループです。特別展とのコラボ企画となっていました。
森田恒友 「山村早春」
こちらは風景画で、手前に背の低い木々が並び それを世話している男性の姿があります。その奥には家々が立ち並び、背景は丘(山?)となっています。幾何学的な家々はセザンヌに傾倒していた頃の名残を感じるかな。全体的に薄茶色っぽい色彩で、静けさや素朴さが感じられ、1人だけポツンと描かれているのが寂しげな印象を受けました。
岸田劉生 「路傍初夏」 ★こちらで観られます
こちらは岸田劉生が鵠沼に住んでいた頃の作品で、恐らくその辺りの光景だと思われます。土の道を遠近感強めで描いていて、空は雲1つない青空で日差しの強さを感じさせます。明暗が強く緑の木々が力強い印象で、手前の柵はリズミカルに並んでいます。この人の気配のない道を観ていると、代表作の「道路と土手を塀(切通之写生)」を思い起こしました。写生的なのにどこかシュールさすら感じる不思議な魅力です。
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
斎藤与里 「雪の日の天王寺公園」
こちらは縦書きで「ライオンはみがき」と書かれた広告のある通天閣が大きく描かれ、手前には雪が積もった公園で人々が行き交う様子が描かれています。淡く荒めの筆致ですが、楽しげで幸福感が感じられるような画風かな。何故か左の方に視線を向けている人が何人かいて、画面外への広がりを感じさせました。何があるのか気になりますw
山本鼎 「多治見の街」
こちらは焼き物が並ぶ多治見の陶器工場を描いた作品です。屋根の上の煙突は煙を出していて、屋根は幾何学的で複雑に重なり合う感じが面白い構図となっています。淡い色彩であるのに光が強く感じられました。セザンヌっぽさもありつつ個性的な作風です。
他には春陽会のポスターや展覧会当時の当番表なんかもありましたw
<サポーターズ・チョイス!>
最後はガイド・ボランティアとして活躍する美術館サポーターの方々が選んだお気に入り作品のコーナーです。目が肥えているだけあって良い作品が多かったです。
倉俣史朗 「ミス ブランチ」
こちらは透明なアクリルの椅子の中にバラの造花が無数に埋め込まれている作品です。以前にも観たことがありますが、流石は椅子のコレクションで有名な美術館だけあってきっちり抑えてますw まるでバラが浮かんでいるような感じで、これがあるだけで部屋が華やかになりそうです。
参考記事:倉俣史朗とエットレ・ソットサス (21_21 DESIGN SIGHT)
この辺にはデルヴォーやキスリング、藤田、クレー、ピカソなど錚々たる画家の作品が並んでいました。
福田美蘭 「湖畔」
こちらは黒田清輝の代表作である「湖畔」を元に再構成したオマージュ的な作品です。湖畔で団扇を持って佇む女性が描かれているのですが、オリジナルは女性にクローズアップしてトリミングされているような構図であるのに対して、福田美蘭 氏の本作では周りの風景がパノラマのように広がっています。さらに全体的に色あせた色彩になってコピー機かフイルム写真のような風合いとなっているのも特徴かな。名画の一部を切り取るのではなく、逆に背景を広げるという発想に驚かされます。洒落っ気があって面白い作品です。
福田美蘭 氏は他にもシャルル=ジョゼフ・ナトワール「黄金の雨に変身したジュピターを迎えるダナエ」を元にリプトン紅茶を貼り付けた作品などもありました。
鏑木清方 「慶長風俗」
こちらは二曲一双の屏風で、右隻に緑色の着物の女性が描かれ頭から衣をかぶっています。右の方にある白い花を観ているのかな? 一方、左隻はオレンジ色の着物の少女が屈んでいて、川の流れに手を入れています。いずれも清方らしい清純な乙女と言った感じで、衣装などは当時の風俗を研究している様子が伺えました。
上田薫 「ジェリーにスプーンC」
こちらはゼリーにスプーンを入れている様子が描かれた作品です。これが写真以上に生っぽい描写で、瑞々しくぷるんとした触感まで伝わってくるようなスーパーリアルとなっています。スプーンやゼリーに反射して部屋の中の様子まで見えるのが面白い。ここまでリアルだと逆に非現実感が出てきますw
ということで、今回の常設も楽しむことができました。一部の写真も撮れたし、サポーターチョイスも流石と言った所でいつも以上の満足度でした。この美術館に訪れる際には常設も合わせて観ることをオススメします。
次回は常設の前に観た「森田恒友展」についてご紹介の予定です.


【展覧名】
2019 MOMASコレクション 第4期
【公式サイト】
https://pref.spec.ed.jp/momas/2020.2.8-4.19--2019MOMAS%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E7%AC%AC%EF%BC%94%E6%9C%9F
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2020年2月8日(土)~4月19日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は常設展示で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、これで2019年度最後の4期目となります。今回は一部で撮影可能となっていましたので、それを交えながら気に入った作品と共に振り返ってみようと思います。
参考記事:
2019 MOMASコレクション 第1期 (埼玉県立近代美術館)
2019 MOMASコレクション 第2期 (埼玉県立近代美術館)
2019 MOMASコレクション 第3期 (埼玉県立近代美術館)
<セレクション:シャガールとか佐伯祐三とか>
まずはこの美術館でも特に重要な近代西洋絵画のコーナーです。今回ここは撮影可能となっていました。
クロード・モネ 「ジヴェルニーの積みわら、夕日」

こちらはこの美術館を代表するコレクション。夕日に照らされた積みわらが何とも叙情的。時間を変えて描き続けた連作の1枚です。
参考記事:【番外編 フランス旅行】 ジヴェルニー モネの家
キスリング 「赤いテーブルの上の果実」

濃厚な色彩で艷やかな印象を受ける静物。色と形が響き合うようでリズム感があります。
参考記事:キスリング展 エコール・ド・パリの夢 (東京都庭園美術館)
佐伯祐三 「門と広告」

佐伯は広告をよくモチーフにしていたので、これもその1枚と言えます。重厚感のある門と共に独特のマチエールが魅力です。
ジョアン・ミロ 「詩画集『手づくり諺』より」

こちらはミロの詩画集の抽象画をリトグラフにしたもの。目玉があって生き物でしょうか? *は星を表すことが多い画家ですが、何か具象的なモチーフがあるのかな。
他にもシャガールやユトリロなど有名画家の作品が並んでいました。
<春陽会―旗揚げのころ>
続いては春陽会についてのコーナーです。次回の記事で森田恒友展を取り上げる予定ですが、春陽会は森田恒友も参加したグループです。特別展とのコラボ企画となっていました。
森田恒友 「山村早春」
こちらは風景画で、手前に背の低い木々が並び それを世話している男性の姿があります。その奥には家々が立ち並び、背景は丘(山?)となっています。幾何学的な家々はセザンヌに傾倒していた頃の名残を感じるかな。全体的に薄茶色っぽい色彩で、静けさや素朴さが感じられ、1人だけポツンと描かれているのが寂しげな印象を受けました。
岸田劉生 「路傍初夏」 ★こちらで観られます
こちらは岸田劉生が鵠沼に住んでいた頃の作品で、恐らくその辺りの光景だと思われます。土の道を遠近感強めで描いていて、空は雲1つない青空で日差しの強さを感じさせます。明暗が強く緑の木々が力強い印象で、手前の柵はリズミカルに並んでいます。この人の気配のない道を観ていると、代表作の「道路と土手を塀(切通之写生)」を思い起こしました。写生的なのにどこかシュールさすら感じる不思議な魅力です。
参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
斎藤与里 「雪の日の天王寺公園」
こちらは縦書きで「ライオンはみがき」と書かれた広告のある通天閣が大きく描かれ、手前には雪が積もった公園で人々が行き交う様子が描かれています。淡く荒めの筆致ですが、楽しげで幸福感が感じられるような画風かな。何故か左の方に視線を向けている人が何人かいて、画面外への広がりを感じさせました。何があるのか気になりますw
山本鼎 「多治見の街」
こちらは焼き物が並ぶ多治見の陶器工場を描いた作品です。屋根の上の煙突は煙を出していて、屋根は幾何学的で複雑に重なり合う感じが面白い構図となっています。淡い色彩であるのに光が強く感じられました。セザンヌっぽさもありつつ個性的な作風です。
他には春陽会のポスターや展覧会当時の当番表なんかもありましたw
<サポーターズ・チョイス!>
最後はガイド・ボランティアとして活躍する美術館サポーターの方々が選んだお気に入り作品のコーナーです。目が肥えているだけあって良い作品が多かったです。
倉俣史朗 「ミス ブランチ」
こちらは透明なアクリルの椅子の中にバラの造花が無数に埋め込まれている作品です。以前にも観たことがありますが、流石は椅子のコレクションで有名な美術館だけあってきっちり抑えてますw まるでバラが浮かんでいるような感じで、これがあるだけで部屋が華やかになりそうです。
参考記事:倉俣史朗とエットレ・ソットサス (21_21 DESIGN SIGHT)
この辺にはデルヴォーやキスリング、藤田、クレー、ピカソなど錚々たる画家の作品が並んでいました。
福田美蘭 「湖畔」
こちらは黒田清輝の代表作である「湖畔」を元に再構成したオマージュ的な作品です。湖畔で団扇を持って佇む女性が描かれているのですが、オリジナルは女性にクローズアップしてトリミングされているような構図であるのに対して、福田美蘭 氏の本作では周りの風景がパノラマのように広がっています。さらに全体的に色あせた色彩になってコピー機かフイルム写真のような風合いとなっているのも特徴かな。名画の一部を切り取るのではなく、逆に背景を広げるという発想に驚かされます。洒落っ気があって面白い作品です。
福田美蘭 氏は他にもシャルル=ジョゼフ・ナトワール「黄金の雨に変身したジュピターを迎えるダナエ」を元にリプトン紅茶を貼り付けた作品などもありました。
鏑木清方 「慶長風俗」
こちらは二曲一双の屏風で、右隻に緑色の着物の女性が描かれ頭から衣をかぶっています。右の方にある白い花を観ているのかな? 一方、左隻はオレンジ色の着物の少女が屈んでいて、川の流れに手を入れています。いずれも清方らしい清純な乙女と言った感じで、衣装などは当時の風俗を研究している様子が伺えました。
上田薫 「ジェリーにスプーンC」
こちらはゼリーにスプーンを入れている様子が描かれた作品です。これが写真以上に生っぽい描写で、瑞々しくぷるんとした触感まで伝わってくるようなスーパーリアルとなっています。スプーンやゼリーに反射して部屋の中の様子まで見えるのが面白い。ここまでリアルだと逆に非現実感が出てきますw
ということで、今回の常設も楽しむことができました。一部の写真も撮れたし、サポーターチョイスも流石と言った所でいつも以上の満足度でした。この美術館に訪れる際には常設も合わせて観ることをオススメします。
次回は常設の前に観た「森田恒友展」についてご紹介の予定です.
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この前の祝日に映画「ヲタクに恋は難しい」を観てきました。この記事にはネタバレが含まれますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください。

【作品名】
ヲタクに恋は難しい
【公式サイト】
https://wotakoi-movie.com/
【時間】
1時間50分程度
【ストーリー】
退屈_1_②_3_4_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_③_4_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_②_3_4_5_名作
【感想】
まだ公開して間もないですが、空いていました。
さて、この映画は同名の漫画を原作にしたコメディで、ヲタク(オタク)の男女を主人公にした内容となっています。宣伝文句に「ヲタクたちの悲哀と歓喜の協奏曲(ララランド)」とありますが、所々にミュージカルシーンが入ってくるミュージカル映画でもあります。私は原作を知りませんが、監督が人気のコメディドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの福田雄一 氏で俳優陣にもムロツヨシ氏、佐藤二朗 氏がいるようだったのでそちらが気になって観てみました。
ここからネタバレになりますが、ミュージカルシーンを抜くと非常に薄いストーリーで、しかも唐突に終わる感じがするので話自体に面白さがありません。特に見どころも無く、まさに山無し落ちなし状態。恋愛ものとしても あまりに盛り上がりが少ないです。さらに売りであるはずのミュージカルが良くないw メロディがつまらない上に何言ってるのかハッキリしないので、ヲタ用語を羅列しただけの寒さだけが残るような…。歌は下手という訳でないので逆に残念感が強まります。ラ・ラ・ランドのオマージュシーンなんかもあったけど、本家は一発で覚えられるメロディだったのに この作品で思い出せる曲は1つもありませんw 時間を食って話が薄くなるし、ミュージカルにしたこと自体が失敗だった気がしてならない。
そして、何よりも気になったのがヲタクの描写。ハッキリ言ってヲタクを分かってないw そもそもゲーム・アニメ・アイドル・コスプレ・コミケという狭い範囲でしか描いていないし、昔のステレオタイプなイメージでヲタ=特殊な趣味の人 という感じになってます。そもそも葛藤のあるヲタなんて今どきいますかね?w この辺は同じフジテレビ系の「電車男」の方が全然上手かった気がするかな。ニコニコ動画風の映像とか00年代で認識が止まってるんじゃないか?と失笑しました。 ヲタ用語を並べ立てたり、あるあるネタを入れてきても滑っていて笑いはほとんど起きてませんでした。 所々で本家の協力を得たオマージュがあるけど、これもセルフパロディみたいで寒かった。
役者については主役の山崎賢人 氏と高畑充希 氏に関しては演技力があって歌や踊りも良かったと思います。(楽曲が残念なだけで) 脇役も概ね良かったけど、期待していたムロツヨシ氏、佐藤二朗 氏はいつも通り過ぎたかなw ツッコミ役がいないと結構キツいw
と、まあ何だかボロカス言ってますがここ数年で最もモヤモヤした映画でした。原作を知らないけど、恐らく映画の作りの問題だと思います。サブスクで観れば十分… というかサブスクでも観る時間がもったいな(以下省略

【作品名】
ヲタクに恋は難しい
【公式サイト】
https://wotakoi-movie.com/
【時間】
1時間50分程度
【ストーリー】
退屈_1_②_3_4_5_面白
【映像・役者】
不足_1_2_③_4_5_充実
【総合満足度】
駄作_1_②_3_4_5_名作
【感想】
まだ公開して間もないですが、空いていました。
さて、この映画は同名の漫画を原作にしたコメディで、ヲタク(オタク)の男女を主人公にした内容となっています。宣伝文句に「ヲタクたちの悲哀と歓喜の協奏曲(ララランド)」とありますが、所々にミュージカルシーンが入ってくるミュージカル映画でもあります。私は原作を知りませんが、監督が人気のコメディドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの福田雄一 氏で俳優陣にもムロツヨシ氏、佐藤二朗 氏がいるようだったのでそちらが気になって観てみました。
ここからネタバレになりますが、ミュージカルシーンを抜くと非常に薄いストーリーで、しかも唐突に終わる感じがするので話自体に面白さがありません。特に見どころも無く、まさに山無し落ちなし状態。恋愛ものとしても あまりに盛り上がりが少ないです。さらに売りであるはずのミュージカルが良くないw メロディがつまらない上に何言ってるのかハッキリしないので、ヲタ用語を羅列しただけの寒さだけが残るような…。歌は下手という訳でないので逆に残念感が強まります。ラ・ラ・ランドのオマージュシーンなんかもあったけど、本家は一発で覚えられるメロディだったのに この作品で思い出せる曲は1つもありませんw 時間を食って話が薄くなるし、ミュージカルにしたこと自体が失敗だった気がしてならない。
そして、何よりも気になったのがヲタクの描写。ハッキリ言ってヲタクを分かってないw そもそもゲーム・アニメ・アイドル・コスプレ・コミケという狭い範囲でしか描いていないし、昔のステレオタイプなイメージでヲタ=特殊な趣味の人 という感じになってます。そもそも葛藤のあるヲタなんて今どきいますかね?w この辺は同じフジテレビ系の「電車男」の方が全然上手かった気がするかな。ニコニコ動画風の映像とか00年代で認識が止まってるんじゃないか?と失笑しました。 ヲタ用語を並べ立てたり、あるあるネタを入れてきても滑っていて笑いはほとんど起きてませんでした。 所々で本家の協力を得たオマージュがあるけど、これもセルフパロディみたいで寒かった。
役者については主役の山崎賢人 氏と高畑充希 氏に関しては演技力があって歌や踊りも良かったと思います。(楽曲が残念なだけで) 脇役も概ね良かったけど、期待していたムロツヨシ氏、佐藤二朗 氏はいつも通り過ぎたかなw ツッコミ役がいないと結構キツいw
と、まあ何だかボロカス言ってますがここ数年で最もモヤモヤした映画でした。原作を知らないけど、恐らく映画の作りの問題だと思います。サブスクで観れば十分… というかサブスクでも観る時間がもったいな(以下省略
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今日も写真多めで、前回に引き続き東京都庭園美術館の「ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」についてです。前編は本館2階の書斎まででしたが、今日は残りの部屋と新館についてです。まずは概要のおさらいです。
→ 前編はこちら
【展覧名】
北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美
【公式サイト】
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/200201-0407_lalique.html
【会場】東京都庭園美術館
【最寄】目黒駅・白金台駅
【会期】2020年2月1日(土)~ 4月7日(火)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半も意外と混雑することなく快適に鑑賞できました。引き続き気に入った作品の写真と共にご紹介して参ります。
ルネ・ラリック 「花瓶(牧神)カット装飾」

こちらは殿下居間にあった杯。台座の部分に牧神の顔が表されています。目が釣り上がっていてちょっと怖いw
ルネ・ラリック 「マントルピース用ランプ(牧神)」

こちらも牧神ですが、躍動感のあるポーズをしています。凹凸で筋肉の張りなども表現されていて驚きます。
続いてはデザイン画などが並んでいるコーナーです。
ルネ・ラリック 「デザイン画(写真立/鏡 セキレイ)」

こちらはセキレイを四角形の枠に配したデザイン画で可愛らしい雰囲気。よく観ると一部が切り取られていてガラスに施される透かし彫りの様子を示しているようでした。
ルネ・ラリック 「写真立/鏡 (セキレイ)」

こちらが先程のデザイン画を実際に制作したもの。微妙に穴が空いている部分があって、透かしになっているのも再現されているようでした。デザイン画と並べて観られるのは面白い趣向です。
他にもいくつかのデザイン画がありました。
バスルームにも作品が置かれていました。

とても背景に馴染んでいる感じがします。置かれているのは白粉のケースです。
ルネ・ラリック 「円形蓋物(ドガ)」

印象派の画家ドガが作品名になっていて、ドガが得意とした踊り子がモチーフになっています。スカートが広がって蓋になるというアイディアが秀逸です。こんなに広いスカートなんて無いとは思いますがw
続いてはアクセサリーと化粧道具のコーナーです。

鏡、化粧箱、香水瓶、パフ、アクセサリーなどが妃殿下寝室に置かれています。部屋にマッチした展示方法が今回の展覧会の魅力ですね。
こちらは各種香水瓶

「ダナエ」などモチーフの名前がそのまま商品名になっている品もあります。思わず集めたくなるような優美な瓶ばかりですw
ルネ・ラリック 「香水瓶(三羽のツバメ)」

こちらは刀の鍔をモチーフにしたと思われます。ツバメもジャポニスムの定番モチーフですが、それを組み合わせることで勢いを感じる作品にするとは流石です。
ルネ・ラリック 「常夜灯電気式パフューム・バーナー(バラ)」

こちらは常夜灯を兼ねた電気式の香炉で、電灯の熱で香りが広がるそうです。バラの香りでも入れたのかな? こうしたパフュームランプは3種類しかなく現存品も少ないのだとか。
ルネ・ラリック 「香水瓶(真夜中)ウォルト社」

真夜中の大・中・小3点セット! 天球儀のような形と色だけでもロマンチックですが、中身が入っていると星の部分が金色になり 減ると銀色になるという仕掛けもあるそうです。中に入れたところを観てみたいですねw
続いての北側ベランダ(北の間)はカーマスコットが並んでいました。車のボンネットの部分につけるアクセサリーです。
ルネ・ラリック 「カーマスコット(スピード)オパルセント」

風を感じるような姿勢をした女神。スピードという名に相応しい躍動感があります。こんなのが車についてたらセンス抜群ですねw
ルネ・ラリック 「カーマスコット(ハイタカの頭)」

こちらもカーマスコットで鷹の頭。やはりスピード感溢れるモチーフで、遠くを観るような目が凛々しい。
他にもトンボや馬もありました。中には照明装置とフィルタで様々な色で光らせることもできたカーマスコットもあるようでした。
姫宮居間にはいくつかの花瓶が置かれていました。

こちらも自然光の中で観られてムードが出ています。
ルネ・ラリック 「花瓶(バリ)」

無数の鳥が表された花瓶。花瓶の形自体がカクカクした形になっていて、複雑に折り重なるように見えて面白いデザインでした。
続いては再び1階に戻ってこちらは小食堂にあった作品。

何気なく置かれた感じがサマになって、朝香宮家で使われていたと言われても違和感無いかもw
本館はこの辺までで、続いては新館についてです。ここではラリックの生前に日本に渡った作品が並んでいました。
新館の中はこんな感じ。

門が連なるようなレースが垂れ下がっていて、エレガントな雰囲気となっています。
ルネ・ラリック 「デザイン画(朝香宮邸正面玄関扉)」

本館の象徴とも言える玄関の女神像のデザイン画。4種類の図案があったそうで、裸婦像が選ばれたものの裸婦像は避けたいという申し出があったので完成品は着衣の姿になったのだとか。
ルネ・ラリック 「中型常夜灯(キューピッド)」

2人のキューピッドが表された常夜灯。刀の鍔を思わせるデザインとシンプルな本体がなんとも気品ある雰囲気です。
ルネ・ラリック 「カーマスコット(大トンボ)」

朝香宮家の第一王女 紀久子様の夫君の鍋島直泰公は大の車好きでカーマスコットを乗せて走っていたそうです。壊れた時のスペアも持っていたらしいので、2つあるのはそういうことのようです。 同じようで片方は台座が無いのが気になりました。
こちらは1925年のアール・デコ博に関するコーナーで、ラリック館の外観写真

このアール・デコ博はかなり大規模で日本にも大きな影響を与えました。当時の建物が残っていないのが残念な限りです。
こちらはアール・デコ博の絵葉書

特にこの噴水塔が象徴的な存在です。他にも当時の写真やカタログなどもありました。
ルネ・ラリック 「花瓶(インコ)一対」

こちらは昭和天皇が1921年の皇太子時代にパリ土産として買ってきた作品。日本で最も早い時期にやってきたラリック作品なのだとか。後に農商務大臣に下賜されたようです。
ということで、後半にはこの庭園美術館に縁の深い品もありました。見慣れた作品も多いですが、ここでこうして観られることに意義を感じます。ラリックは日本からの影響が強く 理屈抜きでも素晴らしいデザインばかりなので、幅広い方が楽しめる展示だと思います。
→ 前編はこちら
【展覧名】
北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美
【公式サイト】
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/200201-0407_lalique.html
【会場】東京都庭園美術館
【最寄】目黒駅・白金台駅
【会期】2020年2月1日(土)~ 4月7日(火)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
後半も意外と混雑することなく快適に鑑賞できました。引き続き気に入った作品の写真と共にご紹介して参ります。
ルネ・ラリック 「花瓶(牧神)カット装飾」


こちらは殿下居間にあった杯。台座の部分に牧神の顔が表されています。目が釣り上がっていてちょっと怖いw
ルネ・ラリック 「マントルピース用ランプ(牧神)」

こちらも牧神ですが、躍動感のあるポーズをしています。凹凸で筋肉の張りなども表現されていて驚きます。
続いてはデザイン画などが並んでいるコーナーです。
ルネ・ラリック 「デザイン画(写真立/鏡 セキレイ)」

こちらはセキレイを四角形の枠に配したデザイン画で可愛らしい雰囲気。よく観ると一部が切り取られていてガラスに施される透かし彫りの様子を示しているようでした。
ルネ・ラリック 「写真立/鏡 (セキレイ)」

こちらが先程のデザイン画を実際に制作したもの。微妙に穴が空いている部分があって、透かしになっているのも再現されているようでした。デザイン画と並べて観られるのは面白い趣向です。
他にもいくつかのデザイン画がありました。
バスルームにも作品が置かれていました。

とても背景に馴染んでいる感じがします。置かれているのは白粉のケースです。
ルネ・ラリック 「円形蓋物(ドガ)」

印象派の画家ドガが作品名になっていて、ドガが得意とした踊り子がモチーフになっています。スカートが広がって蓋になるというアイディアが秀逸です。こんなに広いスカートなんて無いとは思いますがw
続いてはアクセサリーと化粧道具のコーナーです。

鏡、化粧箱、香水瓶、パフ、アクセサリーなどが妃殿下寝室に置かれています。部屋にマッチした展示方法が今回の展覧会の魅力ですね。
こちらは各種香水瓶

「ダナエ」などモチーフの名前がそのまま商品名になっている品もあります。思わず集めたくなるような優美な瓶ばかりですw
ルネ・ラリック 「香水瓶(三羽のツバメ)」

こちらは刀の鍔をモチーフにしたと思われます。ツバメもジャポニスムの定番モチーフですが、それを組み合わせることで勢いを感じる作品にするとは流石です。
ルネ・ラリック 「常夜灯電気式パフューム・バーナー(バラ)」

こちらは常夜灯を兼ねた電気式の香炉で、電灯の熱で香りが広がるそうです。バラの香りでも入れたのかな? こうしたパフュームランプは3種類しかなく現存品も少ないのだとか。
ルネ・ラリック 「香水瓶(真夜中)ウォルト社」

真夜中の大・中・小3点セット! 天球儀のような形と色だけでもロマンチックですが、中身が入っていると星の部分が金色になり 減ると銀色になるという仕掛けもあるそうです。中に入れたところを観てみたいですねw
続いての北側ベランダ(北の間)はカーマスコットが並んでいました。車のボンネットの部分につけるアクセサリーです。
ルネ・ラリック 「カーマスコット(スピード)オパルセント」

風を感じるような姿勢をした女神。スピードという名に相応しい躍動感があります。こんなのが車についてたらセンス抜群ですねw
ルネ・ラリック 「カーマスコット(ハイタカの頭)」

こちらもカーマスコットで鷹の頭。やはりスピード感溢れるモチーフで、遠くを観るような目が凛々しい。
他にもトンボや馬もありました。中には照明装置とフィルタで様々な色で光らせることもできたカーマスコットもあるようでした。
姫宮居間にはいくつかの花瓶が置かれていました。

こちらも自然光の中で観られてムードが出ています。
ルネ・ラリック 「花瓶(バリ)」

無数の鳥が表された花瓶。花瓶の形自体がカクカクした形になっていて、複雑に折り重なるように見えて面白いデザインでした。
続いては再び1階に戻ってこちらは小食堂にあった作品。

何気なく置かれた感じがサマになって、朝香宮家で使われていたと言われても違和感無いかもw
本館はこの辺までで、続いては新館についてです。ここではラリックの生前に日本に渡った作品が並んでいました。
新館の中はこんな感じ。

門が連なるようなレースが垂れ下がっていて、エレガントな雰囲気となっています。
ルネ・ラリック 「デザイン画(朝香宮邸正面玄関扉)」

本館の象徴とも言える玄関の女神像のデザイン画。4種類の図案があったそうで、裸婦像が選ばれたものの裸婦像は避けたいという申し出があったので完成品は着衣の姿になったのだとか。
ルネ・ラリック 「中型常夜灯(キューピッド)」

2人のキューピッドが表された常夜灯。刀の鍔を思わせるデザインとシンプルな本体がなんとも気品ある雰囲気です。
ルネ・ラリック 「カーマスコット(大トンボ)」

朝香宮家の第一王女 紀久子様の夫君の鍋島直泰公は大の車好きでカーマスコットを乗せて走っていたそうです。壊れた時のスペアも持っていたらしいので、2つあるのはそういうことのようです。 同じようで片方は台座が無いのが気になりました。
こちらは1925年のアール・デコ博に関するコーナーで、ラリック館の外観写真

このアール・デコ博はかなり大規模で日本にも大きな影響を与えました。当時の建物が残っていないのが残念な限りです。
こちらはアール・デコ博の絵葉書

特にこの噴水塔が象徴的な存在です。他にも当時の写真やカタログなどもありました。
ルネ・ラリック 「花瓶(インコ)一対」

こちらは昭和天皇が1921年の皇太子時代にパリ土産として買ってきた作品。日本で最も早い時期にやってきたラリック作品なのだとか。後に農商務大臣に下賜されたようです。
ということで、後半にはこの庭園美術館に縁の深い品もありました。見慣れた作品も多いですが、ここでこうして観られることに意義を感じます。ラリックは日本からの影響が強く 理屈抜きでも素晴らしいデザインばかりなので、幅広い方が楽しめる展示だと思います。
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今日は写真多めです。先週の日曜日に目黒の東京都庭園美術館で「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、前編・後編に分けて写真と共にご紹介していこうと思います。

【展覧名】
北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美
【公式サイト】
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/200201-0407_lalique.html
【会場】東京都庭園美術館
【最寄】目黒駅・白金台駅
【会期】2020年2月1日(土)~ 4月7日(火)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
お客さんは多かったですが、意外と快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は諏訪湖の畔の北澤美術館が所蔵するルネ・ラリックのガラス器を紹介する内容となっています。ルネ・ラリックはアール・ヌーヴォー、アール・デコの時代を代表するデザイナーの1人で、この東京都庭園美術館にも数多くの作品がインテリアとして使われています。そのため、会場と作品が非常にマッチしていて、一体感のある空間となっていました。今回の展示は撮影可能となっていましたので、詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。(ラリックについては今まで何度も取り上げていますので、参考記事などをご参照ください)
参考記事:
生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想前編 (国立新美術館)
生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想後編 (国立新美術館)
箱根ラリック美術館の常設 2018年1月(箱根編)
ラリックの花鳥風月 ジュエリーと、そのデザイン画 (箱根ラリック美術館)
箱根ラリック美術館のオリエント急行 [LE TRAIN](箱根編)
まずは大広間です。早速、素晴らしい作品の数々が待ち受けていました。
ルネ・ラリック 「ランプ(孔雀)」

左が全体で右は首の部分のアップ。非常に細長い孔雀が表され、洗練された優美さを漂わせています。孔雀はジャポニスムの典型的なモチーフで、ラリックもよく作品に取り入れています。
ルネ・ラリック 「テーブル・センターピース(三羽の孔雀)」

こちらはディナー・テーブルに置かれたセンターピース。厚さは2cmしかありませんが、細かい凹凸で立体感を出していて、光を当てるとドラマティックな印象を受けます。それにしても孔雀の羽が豪華さを感じさせますね。
ルネ・ラリック 「電動置時計(二人の人物)」

こちらは人物像。鏡越しに裏側も見えていますが、そちらも見事な出来栄えです。まるで花輪を持っているようで、神話的な雰囲気でした。
続いては食堂。こちらは自然光も入って一層に映えて見えました。
ルネ・ラリック 「花瓶(ピエールフォン)」

名前はフランスのピエールフォン城のことかな? 渦巻くような把手がシンメトリーになっていて幾何学的な印象を受けました。色も綺麗。
ルネ・ラリック 「花瓶(つむじ風)」

この作品は何度観てもインパクトがあります。彫りが深く力強い雰囲気で好みです。デザインは娘のシュザンヌが原案だったそうで、父娘のコラボとなっています。
ルネ・ラリック 「花瓶(バッタ)」

バッタもジャポニスムのモチーフの1つで、草にとまっているバッタが無数に配されています。草のリズム感も軽やかで、色も爽やかな印象でした。
ルネ・ラリック 「大皿(ダリア)」

黒い花が円を描く大皿。何となく日本の染め付けを思い起こすものがあるかな。デフォルメぶりが非常に好みの作品でした。
食堂のテーブルの上にラリックのテーブルセットが並んでいました。

まさにこの空間に相応しいセットで一体感が凄いw
一部のアップ。

「トウキョウ」のシリーズかな。このセットで食事してみたいものですw
ルネ・ラリック 「センターピース(二人の騎士)」

こちらは騎馬試合のようなモチーフのセンターピース。アール・ヌーヴォー期に前衛芸術家たちの間でもてはやされたワーグナーの『ワルキューレ』から着想を得ていると考えられるようです。ダイナミックだけど優美さも持ち合わせていて特に目を引きました。
続いてはコティ社とのコラボなど香水瓶のコーナーとなっていました。
こちらはテスターのケース。金属プレートをラリックが手掛けているようです。

こうした香水瓶のデザインで香りをイメージさせることでラリックの評価は高まっていきました。
ルネ・ラリック 「香水瓶(カーネーション)」

こちらは花の部分に香水が入るようになっているようです。中身もカーネーションの香りだったようで、この花の形に色を染めていたのかな。
ルネ・ラリック 「円形蓋物(孔雀)」

再び孔雀のモチーフ。凛とした孤高の雰囲気があり、より日本的なデザインに思えました。
続いては2階です。
ルネ・ラリック 「花瓶(ナディカ)」

こちらは晩年の作品。水の妖精を表していて、把手も渦巻くような形をしています。普通の作り方ではなく把手と本体を同時に作る高度な技が使われているそうで、見た目に応じた革新的な技術が使われているんでしょうね。
ルネ・ラリック 「花瓶(ナンキン)」

こちらは娘のシュザンヌがデザインした花瓶です。幾何学的な連なりが非常に斬新で、未来派のようでもあり古代彫刻のようでもありました。
続いては乳白色の「オパルセント・ガラス」を使った作品が並ぶコーナーです。
ルネ・ラリック 「円形大型蓋物(二人のシレーヌ)」

この乳白色のガラスがオパルセント・ガラスです。微妙な濃淡で身体や髪を表していて、幻想性が増しているように思えます。シレーヌもよく用いられるモチーフです。
ルネ・ラリック 「立像(タイス)」

オパルセント・ガラスは光を当てると半透明になって、透けた感じが美しく表れます。この薄布をまとった感じが凄くないですか?
ルネ・ラリック 「花瓶(バッカスの巫女)」

こちらは妖艶な印象を受けるモチーフの作品。滑らかな乳白色が女性の肌の柔らかさを感じさせるようでした。
この先はカラフルな色ガラスの作品が並んでいました。
ルネ・ラリック 「花瓶(エスカルゴ)」

名前の通りカタツムリの殻を思わせる花瓶。水色の色ガラスとなっていて爽やかな雰囲気かな。アンモナイトの化石みたいw
ルネ・ラリック 「花瓶(ボロメ)」

ボロメはイタリアのマッジョーレ湖に浮かぶボロメオ諸島に由来するそうで、貴族の別荘があり美しい庭園が営まれているそうです。この孔雀は楽園のイメージなのだとか。複雑に組み合っていて孔雀が密集しているような感じに見えました。
この先には金型ではなく上顧客の為に1点製作された手作りの「シール・ペルデュ」と呼ばれる蝋型鋳造作品が並んでいました。指紋まで写し取れるほど原型を忠実に再現できる手法なのだとか。
ルネ・ラリック 「シール・ペルデュ水差(小さな牧神の顔)」

ややザラついて見える質感で、今まで観てきた作品と異なる印象を受けます。確かに非常に繊細な凹凸まで再現しているようでした。
今回は本棚の部屋がルートになっていました。

光が差し込んでムードを盛り上げてくれます。
ルネ・ラリック 「電動置時計(昼と夜)」

男性は昼、女性は夜を表していて、女性の方が陰影が濃くなっています。動と静、現世の儚さなども表しているそうですが、円を描く2人のポーズが劇的に思えました。
ルネ・ラリック 「置物(座るねこ)」

今回は書斎にも入れました。棚の中にこの猫も飾られていて、じっとこちらを伺っています。猫の表情や仕草がリアルで可愛い
ということで長くなってきたので今日はここまでにしておこうと思います。やはりこの美術館で観られるというのが素晴らしく、建物と作品の共演が見どころではないかと思います。後半もラリックの魅力がよく分かる作品が並んでいましたので、次回はそれについてご紹介の予定です。
→ 後編はこちら

【展覧名】
北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美
【公式サイト】
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/200201-0407_lalique.html
【会場】東京都庭園美術館
【最寄】目黒駅・白金台駅
【会期】2020年2月1日(土)~ 4月7日(火)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
お客さんは多かったですが、意外と快適に鑑賞することができました。
さて、この展示は諏訪湖の畔の北澤美術館が所蔵するルネ・ラリックのガラス器を紹介する内容となっています。ルネ・ラリックはアール・ヌーヴォー、アール・デコの時代を代表するデザイナーの1人で、この東京都庭園美術館にも数多くの作品がインテリアとして使われています。そのため、会場と作品が非常にマッチしていて、一体感のある空間となっていました。今回の展示は撮影可能となっていましたので、詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。(ラリックについては今まで何度も取り上げていますので、参考記事などをご参照ください)
参考記事:
生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想前編 (国立新美術館)
生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想後編 (国立新美術館)
箱根ラリック美術館の常設 2018年1月(箱根編)
ラリックの花鳥風月 ジュエリーと、そのデザイン画 (箱根ラリック美術館)
箱根ラリック美術館のオリエント急行 [LE TRAIN](箱根編)
まずは大広間です。早速、素晴らしい作品の数々が待ち受けていました。
ルネ・ラリック 「ランプ(孔雀)」


左が全体で右は首の部分のアップ。非常に細長い孔雀が表され、洗練された優美さを漂わせています。孔雀はジャポニスムの典型的なモチーフで、ラリックもよく作品に取り入れています。
ルネ・ラリック 「テーブル・センターピース(三羽の孔雀)」

こちらはディナー・テーブルに置かれたセンターピース。厚さは2cmしかありませんが、細かい凹凸で立体感を出していて、光を当てるとドラマティックな印象を受けます。それにしても孔雀の羽が豪華さを感じさせますね。
ルネ・ラリック 「電動置時計(二人の人物)」

こちらは人物像。鏡越しに裏側も見えていますが、そちらも見事な出来栄えです。まるで花輪を持っているようで、神話的な雰囲気でした。
続いては食堂。こちらは自然光も入って一層に映えて見えました。
ルネ・ラリック 「花瓶(ピエールフォン)」

名前はフランスのピエールフォン城のことかな? 渦巻くような把手がシンメトリーになっていて幾何学的な印象を受けました。色も綺麗。
ルネ・ラリック 「花瓶(つむじ風)」

この作品は何度観てもインパクトがあります。彫りが深く力強い雰囲気で好みです。デザインは娘のシュザンヌが原案だったそうで、父娘のコラボとなっています。
ルネ・ラリック 「花瓶(バッタ)」

バッタもジャポニスムのモチーフの1つで、草にとまっているバッタが無数に配されています。草のリズム感も軽やかで、色も爽やかな印象でした。
ルネ・ラリック 「大皿(ダリア)」

黒い花が円を描く大皿。何となく日本の染め付けを思い起こすものがあるかな。デフォルメぶりが非常に好みの作品でした。
食堂のテーブルの上にラリックのテーブルセットが並んでいました。

まさにこの空間に相応しいセットで一体感が凄いw
一部のアップ。

「トウキョウ」のシリーズかな。このセットで食事してみたいものですw
ルネ・ラリック 「センターピース(二人の騎士)」

こちらは騎馬試合のようなモチーフのセンターピース。アール・ヌーヴォー期に前衛芸術家たちの間でもてはやされたワーグナーの『ワルキューレ』から着想を得ていると考えられるようです。ダイナミックだけど優美さも持ち合わせていて特に目を引きました。
続いてはコティ社とのコラボなど香水瓶のコーナーとなっていました。
こちらはテスターのケース。金属プレートをラリックが手掛けているようです。

こうした香水瓶のデザインで香りをイメージさせることでラリックの評価は高まっていきました。
ルネ・ラリック 「香水瓶(カーネーション)」

こちらは花の部分に香水が入るようになっているようです。中身もカーネーションの香りだったようで、この花の形に色を染めていたのかな。
ルネ・ラリック 「円形蓋物(孔雀)」

再び孔雀のモチーフ。凛とした孤高の雰囲気があり、より日本的なデザインに思えました。
続いては2階です。
ルネ・ラリック 「花瓶(ナディカ)」

こちらは晩年の作品。水の妖精を表していて、把手も渦巻くような形をしています。普通の作り方ではなく把手と本体を同時に作る高度な技が使われているそうで、見た目に応じた革新的な技術が使われているんでしょうね。
ルネ・ラリック 「花瓶(ナンキン)」

こちらは娘のシュザンヌがデザインした花瓶です。幾何学的な連なりが非常に斬新で、未来派のようでもあり古代彫刻のようでもありました。
続いては乳白色の「オパルセント・ガラス」を使った作品が並ぶコーナーです。
ルネ・ラリック 「円形大型蓋物(二人のシレーヌ)」

この乳白色のガラスがオパルセント・ガラスです。微妙な濃淡で身体や髪を表していて、幻想性が増しているように思えます。シレーヌもよく用いられるモチーフです。
ルネ・ラリック 「立像(タイス)」

オパルセント・ガラスは光を当てると半透明になって、透けた感じが美しく表れます。この薄布をまとった感じが凄くないですか?
ルネ・ラリック 「花瓶(バッカスの巫女)」

こちらは妖艶な印象を受けるモチーフの作品。滑らかな乳白色が女性の肌の柔らかさを感じさせるようでした。
この先はカラフルな色ガラスの作品が並んでいました。
ルネ・ラリック 「花瓶(エスカルゴ)」

名前の通りカタツムリの殻を思わせる花瓶。水色の色ガラスとなっていて爽やかな雰囲気かな。アンモナイトの化石みたいw
ルネ・ラリック 「花瓶(ボロメ)」

ボロメはイタリアのマッジョーレ湖に浮かぶボロメオ諸島に由来するそうで、貴族の別荘があり美しい庭園が営まれているそうです。この孔雀は楽園のイメージなのだとか。複雑に組み合っていて孔雀が密集しているような感じに見えました。
この先には金型ではなく上顧客の為に1点製作された手作りの「シール・ペルデュ」と呼ばれる蝋型鋳造作品が並んでいました。指紋まで写し取れるほど原型を忠実に再現できる手法なのだとか。
ルネ・ラリック 「シール・ペルデュ水差(小さな牧神の顔)」

ややザラついて見える質感で、今まで観てきた作品と異なる印象を受けます。確かに非常に繊細な凹凸まで再現しているようでした。
今回は本棚の部屋がルートになっていました。

光が差し込んでムードを盛り上げてくれます。
ルネ・ラリック 「電動置時計(昼と夜)」

男性は昼、女性は夜を表していて、女性の方が陰影が濃くなっています。動と静、現世の儚さなども表しているそうですが、円を描く2人のポーズが劇的に思えました。
ルネ・ラリック 「置物(座るねこ)」

今回は書斎にも入れました。棚の中にこの猫も飾られていて、じっとこちらを伺っています。猫の表情や仕草がリアルで可愛い
ということで長くなってきたので今日はここまでにしておこうと思います。やはりこの美術館で観られるというのが素晴らしく、建物と作品の共演が見どころではないかと思います。後半もラリックの魅力がよく分かる作品が並んでいましたので、次回はそれについてご紹介の予定です。
→ 後編はこちら
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前回ご紹介したカフェに行く前に新橋のパナソニック汐留美術館で「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展」を観てきました。

【展覧名】
モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展
【公式サイト】
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/200111/index.html
【会場】パナソニック汐留美術館
【最寄】新橋駅/汐留駅
【会期】2020年1月11日(土)~3月22日(日) ※2月29日~3月15日は休館
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
割とお客さんが多く、場所によっては混雑感がありましたが概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は1933年に亡命してきたドイツの建築家ブルーノ・タウト、その指導を受けた日本モダンデザインの巨匠 剣持勇、タウトを招き銀座で家具工芸店「ミラテス」を営んだ井上房一郎、井上と親交のあった建築家アントニン・レーモンドとその妻でインテリアデザイナーのノエミ・レーモンド、レーモンドの元でも働いた木工家具デザイナーのジョージ・ナカシマ、そして剣持勇と親交のあった彫刻家イサム・ノグチという 日本のモダンデザインの歴史で重要な役割を担ったアーティストたちの展示となっています。それぞれの分野や方向性に違いはありますが、お互いの能力を認め交流していた様子も含めて紹介されていて、家具や建築の図面、模型、写真など160点程度が並んでいました。各章ごとに簡単にメモしてきましたので、その様子を振り返ってみようと思います。
<第1章 ブルーノ・タウトと井上房一郎たち-「ミラテス」を中心に>
まずはブルーノ・タウトと井上房一郎についてのコーナーです。ブルーノ・タウトは1933年に53歳でナチスから日本に亡命してきて、仙台の商工省工業指導所を経て1934年に井上房一郎に迎えられ高崎の洗心亭に仮住まいを得ました。ブルーノ・タウトは4年ほどでトルコへと去りますが、そのうちの2年2ヶ月を高崎の地で工芸運動に費やしています。一方、井上房一郎は山本鼎の「農民美術運動」に共鳴し、さらに1925年のアール・デコ博の洗礼を受けて触発されたようで、高崎に木工・織物組合を組織し、近代化と生活改善に取り組みました。そして1935年に井上房一郎が銀座に家具工芸店「ミラテス」を開き「タウト井上」印で品質保証した商品を販売していきます。ここにはそうした2人の取り組みが紹介されていました。
最初に井上房一郎によるスチール製の椅子・机、漆塗りなどがありました。シンプルな形で中世ヨーロッパの僧院の椅子を基本形態にしているようです。
その先にはブルーノ・タウトと桂離宮について紹介されていました。(この話、高校の教科書とかで見覚えがありますw) ブルーノ・タウトは来日してすぐに桂離宮を観に行き(その日は誕生日)、パルテノン神殿とならぶ世界的な建築物であると非常に高く評価し、翌月に『ニッポン』を著してやがて世界に知らしめることになります。今回の展示では触れていませんでしたが、この話にはいくつか逸話があって日光東照宮を見せたら「キッチュ」と酷評したりもしていますw 桂離宮の美しさを自分の設計に取り込んだ所、日本的になりすぎてドイツ風を期待した顧客ががっかりして建築計画がフイになったなんて話もあるので、かなり入れ込んでいたのは確かでしょうね。
この辺にはタウトの画帖や日記、東大で行った講義を取ったノートなどもありました。また、イスタンブールから送ったタウトの書簡は掛け軸仕立てになっていて、自在鉤らしきものや帆船、木々などを水墨のように描いていました。手紙の内容は日本の文化を愛していて、ハイカラ(西洋かぶれ)に批判的であり続けて欲しいと心配している様子が書かれているようでした。日本人は今でも日本の良さを知らずに捨てがちですからね…w
その後は小物が並び、グラス、煙草入れなどがありました。丸みが柔らかい印象のデザインです。そしてミラテスについて紹介されていました。ミラテスは「アドミィラ・ティシュウ」の略で、「布地を見る」という意味だそうです。ここにはミラテスのカタログや、タウトがデザインした包み紙、看板などがあります。当時の写真を観るとかなり洒落た店構えで、包み紙までモダンな雰囲気が出ています。
その先には 円形で渦巻くようなデザインの竹細工の裁縫箱や、竹細工のマガジンラック・バスケットなどが並んでいます。やはり日本的な竹に目をつけていたようで、先進性と日本的な要素の両面が感じられます。さらに椅子とテーブルがあり、折りたたみ椅子は木の温かみが感じられる素朴な印象でした。また、特に面白かったのは「伸縮自在本立」という作品で、日本の格子から着想を得て作った本立です。これは名前の通り折りたたんだり伸ばしたり変形が可能となっていて、置き場所や本の冊数に合わせることが出来るようになっています。日本の職人と共に作っていたようで、両者の発想と技術に驚かされました。
なお、ミラテスにはフランク・ロイド・ライトと共に帝国ホテルの建築で来日したレーモンド夫妻も訪れていて、それがきっかけで井上房一郎と親交が始まったようです。ブルーノ・タウトは日記でアントニン・レーモンドを職人気質と評していたのだとか
ここまでは家具ばかりで建築家っぽさがない訳ですが、本人も当時「建築家の休日」と皮肉交じりに言っていたようです。しかし日本にも1軒だけ建築作品があり、熱海の旧日向別邸の地下室が映像で紹介されていました。(ここは見学可能ですが2022年4月まで休館中) 3部屋あり、洋間・社交室・和室となっています。日本的な配色になっていて、設計も幾何学的にスッキリした印象を受けるかな。一方で裸電球がいくつもぶら下がって並んでいるのが装飾的で、屋台みたいなw こういうのはキッチュじゃないの?と思ってしまいますが、整然と並ぶ様子は回廊のような印象でした。また、旧日向別邸の椅子やテーブルもあって雰囲気を盛り上げていました。ここはいずれ行ってみたい所です。
<第2章 アントニン&ノエミ・レーモンド>
続いてはアントニン・レーモンドと妻のノエミ・レーモンドについてのコーナーです。アントニン・レーモンドはチェコ出身のアメリカ人建築家で、前述の通り帝国ホテルの仕事で来日し井上房一郎と出会っています。当初はフランク・ロイド・ライトに強い影響を受けていましたが、西洋建築を日本に押し付けるのではなく、日本に合った建築を目指すようになり独自の道を歩んでいきました。前川國男や吉村順三といった日本の巨匠もアントニン・レーモンドの元で学んでいます。
一方、ノエミ・レーモンドも夫と共にフランク・ロイド・ライトの事務所で働き、帝国ホテルのインテリアにも携わっていたようです。ここには2人の作品が並んでいました。
参考記事:
アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 【日光編】
日本の家 1945年以降の建築と暮らし 感想前編(東京国立近代美術館)
ここでは まず軽井沢での聖ポール教会の設計図などが並んでいました。今でも現存する三角屋根の教会です。また、近くにはノエミによる「帝国ホテル 孔雀の間のための装飾習作」などもありました。先程の聖ポール教会の透視図などにも関わっている他、壁紙やファブリックのサンプルの見本帳などもあり、幅広い分野で夫と共に活躍していたことが伺えます。ノエミの手掛けた椅子には竹が使われていて、割と素朴さもありつつ洒脱なところも共存しているような 温かみを感じるデザインでした。
その先には笄町のレーモンド夫妻の自邸と井上房一郎邸についてのコーナーがありました。オリジナルは現存していませんが、レーモンド邸に惚れ込んで そっくりコピーした井上房一郎の邸宅が高崎に残っているようです。設計図を見るのでなく実寸を採寸したそうで、見た目は平屋で屋根が斜めになっている木造建築です。まさに和洋折衷と言った感じで、スッキリ簡潔な美しさがあります。やはりこれも日本の風土に合わせたモダニズム建築となっているようでした。
さらに少し先にはアントニン・レーモンドによる絵画作品もありました。ややキュビスム的な抽象絵画で、高崎の群馬音楽センター(これも設計した)のロビー壁画も手掛けています。他に陶芸作品もあり建築だけでなく多彩な芸術への関心と才能が伺えました。
この章の最後には軽井沢の新スタジオという夏用の事務所も紹介されていました。コンクリート製の巨大な円筒形の暖炉を中心に12角形の和室が広がっています。この暖炉が大黒柱の代わりになっているようで、まるで傘のような作りに見えました。
<第3章 剣持勇の「ジャパニーズモダン」>
続いては剣持勇についてのコーナーです。剣持勇はブルーノ・タウトの助手を務め、戦時中は技術官僚として働きました。そして敗戦後は一転して進駐軍の家具の政策に携わり、やがてプロダクトデザインを手掛けるようになっていきます。公人の立場では量産前提の国策に沿って機能と効率を研究しつつ、私人として民具をこよなく愛してインテリアデザインに用いたようです。また、1950年には来日したイサム・ノグチに製作の場を提供し、1952年にはイサム・ノグチの紹介で渡米しています。そうして公私で培った2つの価値をジャパニーズ・モダンというスタイルへと結びつけていたようです。
ここには椅子が4脚あり、いずれも異なる形態と素材となっています。「スタッキング・スツール202」という公団住宅向けの椅子では秋田の曲げ木の技術が用いられていて、足が滑らかなV字を描いています。一方で座る部分が青となっているのがモダンな印象も受けるかな。まさに伝統とモダンの融合です。
その先には「柏戸椅子T-7165」という木製のどっしりした椅子がありました。これは柏戸という力士の名前を取っているだけあって重厚感があり、ブロックを重ねたモザイクのような模様があります。見えない底の部分はくり抜いて軽量化しているとのことですが、かなり重そう… 割と硬そうに見えたけど座り心地が気になる所です。
そして代表作である「丸椅子C-316」がありました。これは藤を編んで作った丸っこい椅子で、中央に赤い座布団が置かれたようなデザインです。割とあちこちで観られるので、これは馴染み深いかな。ボリューム感があり、優美なフォルムが特徴です。藤という伝統素材を使っているのも親しみやすい。
ここでは映像で剣持勇のその他の仕事も紹介していました。ヤクルトの容器も手掛けていたのだとか。昔の駅のベンチとかも手掛けていたし、意外と身近なところに剣持勇のデザインがあるかもしれませんね。
<第4章 ジョージ・ナカシマと讃岐民具連>
続いては日系2世で「木匠」と呼ばれるジョージ・ナカシマについてのコーナーです。ジョージ・ナカシマはレーモンド夫妻のもとで軽井沢の聖ポール教会などの建設現場監督を務めていました。その後インドに渡り修行者と共に2年間の共同生活をして「美を楽しむ者」という称号を授かったそうです。やがてアメリカに帰国すると1942年に日系人収容所に抑留されますが、そこで日本人の大工から木工の基礎を習得し、手仕事の産業化を目指すモノづくりを始めます。1943年にレーモンド夫妻にホープ農場に招かれ(まだ戦時中で助けてもらった)、1957年にはスタジオを完成させました。さらに1964年には日本の讃岐民具連に招かれて高松で生産指導を行ったようです。
ここには木の椅子がずらりと並んでいました。木霊と交流する・木の声を聞くというのを信条としていたらしく、木目の美しさや素材感が生かされているのが見て取れます。少し先には「コノイド・スタジオ」の写真があり、これはジョージ・ナカシマのスタジオでコノイドとはシェル構造のことを指すようです。コノイドスタジオの椅子や内観写真もあり、特に「コノイドベンチ」という椅子はかなり幅広となっていて目を引きました。形もきちっとしている訳でなく、それが木材ならではの味わいとなっているように思いました。
他にミングレンミュージアム(讃岐民具連の美術館)のテーブルなどもあり、その仕事ぶりを伝えていました。
<第5章 イサム・ノグチの「萬來舎」とあかり>
最後はイサム・ノグチのコーナーです。イサム・ノグチについては下記の記事などを参照頂ければと思いますが、この章では慶應義塾大学の「萬來舎」と「あかり」シリーズを取り上げています。前述の通り剣持勇に製作場を提供して貰い、さらに翌年にはアントニン・レーモンドの依頼を受けるなどお互いに交流があった様子が紹介されています。
参考記事:イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─ (東京オペラシティアートギャラリー)
ここには萬來舎の模型と写真、そこに飾った石膏作品の写真などがありました。モダンでありながら内部は円柱が並んだ神殿のようで、何処か荘厳な雰囲気のある建物となっています。
最後に「あかり」のコーナーがあり、ここだけ撮影可能となっていました。

岐阜の提灯に着想を得て作られたもので、現在でも和モダンに欠かせないアイテムになっています。
と言うことで、お互いの交流の様子や代表作を俯瞰することができる展示となっていました。できれば1人1人の個展を観てみたいですが、こうして繋がりを観るとお互いの共通点や違いが分かって面白かったです。インテリアデザインや建築に興味がある方にオススメの展示です。

【展覧名】
モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展
【公式サイト】
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/200111/index.html
【会場】パナソニック汐留美術館
【最寄】新橋駅/汐留駅
【会期】2020年1月11日(土)~3月22日(日) ※2月29日~3月15日は休館
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
割とお客さんが多く、場所によっては混雑感がありましたが概ね自分のペースで観ることができました。
さて、この展示は1933年に亡命してきたドイツの建築家ブルーノ・タウト、その指導を受けた日本モダンデザインの巨匠 剣持勇、タウトを招き銀座で家具工芸店「ミラテス」を営んだ井上房一郎、井上と親交のあった建築家アントニン・レーモンドとその妻でインテリアデザイナーのノエミ・レーモンド、レーモンドの元でも働いた木工家具デザイナーのジョージ・ナカシマ、そして剣持勇と親交のあった彫刻家イサム・ノグチという 日本のモダンデザインの歴史で重要な役割を担ったアーティストたちの展示となっています。それぞれの分野や方向性に違いはありますが、お互いの能力を認め交流していた様子も含めて紹介されていて、家具や建築の図面、模型、写真など160点程度が並んでいました。各章ごとに簡単にメモしてきましたので、その様子を振り返ってみようと思います。
<第1章 ブルーノ・タウトと井上房一郎たち-「ミラテス」を中心に>
まずはブルーノ・タウトと井上房一郎についてのコーナーです。ブルーノ・タウトは1933年に53歳でナチスから日本に亡命してきて、仙台の商工省工業指導所を経て1934年に井上房一郎に迎えられ高崎の洗心亭に仮住まいを得ました。ブルーノ・タウトは4年ほどでトルコへと去りますが、そのうちの2年2ヶ月を高崎の地で工芸運動に費やしています。一方、井上房一郎は山本鼎の「農民美術運動」に共鳴し、さらに1925年のアール・デコ博の洗礼を受けて触発されたようで、高崎に木工・織物組合を組織し、近代化と生活改善に取り組みました。そして1935年に井上房一郎が銀座に家具工芸店「ミラテス」を開き「タウト井上」印で品質保証した商品を販売していきます。ここにはそうした2人の取り組みが紹介されていました。
最初に井上房一郎によるスチール製の椅子・机、漆塗りなどがありました。シンプルな形で中世ヨーロッパの僧院の椅子を基本形態にしているようです。
その先にはブルーノ・タウトと桂離宮について紹介されていました。(この話、高校の教科書とかで見覚えがありますw) ブルーノ・タウトは来日してすぐに桂離宮を観に行き(その日は誕生日)、パルテノン神殿とならぶ世界的な建築物であると非常に高く評価し、翌月に『ニッポン』を著してやがて世界に知らしめることになります。今回の展示では触れていませんでしたが、この話にはいくつか逸話があって日光東照宮を見せたら「キッチュ」と酷評したりもしていますw 桂離宮の美しさを自分の設計に取り込んだ所、日本的になりすぎてドイツ風を期待した顧客ががっかりして建築計画がフイになったなんて話もあるので、かなり入れ込んでいたのは確かでしょうね。
この辺にはタウトの画帖や日記、東大で行った講義を取ったノートなどもありました。また、イスタンブールから送ったタウトの書簡は掛け軸仕立てになっていて、自在鉤らしきものや帆船、木々などを水墨のように描いていました。手紙の内容は日本の文化を愛していて、ハイカラ(西洋かぶれ)に批判的であり続けて欲しいと心配している様子が書かれているようでした。日本人は今でも日本の良さを知らずに捨てがちですからね…w
その後は小物が並び、グラス、煙草入れなどがありました。丸みが柔らかい印象のデザインです。そしてミラテスについて紹介されていました。ミラテスは「アドミィラ・ティシュウ」の略で、「布地を見る」という意味だそうです。ここにはミラテスのカタログや、タウトがデザインした包み紙、看板などがあります。当時の写真を観るとかなり洒落た店構えで、包み紙までモダンな雰囲気が出ています。
その先には 円形で渦巻くようなデザインの竹細工の裁縫箱や、竹細工のマガジンラック・バスケットなどが並んでいます。やはり日本的な竹に目をつけていたようで、先進性と日本的な要素の両面が感じられます。さらに椅子とテーブルがあり、折りたたみ椅子は木の温かみが感じられる素朴な印象でした。また、特に面白かったのは「伸縮自在本立」という作品で、日本の格子から着想を得て作った本立です。これは名前の通り折りたたんだり伸ばしたり変形が可能となっていて、置き場所や本の冊数に合わせることが出来るようになっています。日本の職人と共に作っていたようで、両者の発想と技術に驚かされました。
なお、ミラテスにはフランク・ロイド・ライトと共に帝国ホテルの建築で来日したレーモンド夫妻も訪れていて、それがきっかけで井上房一郎と親交が始まったようです。ブルーノ・タウトは日記でアントニン・レーモンドを職人気質と評していたのだとか
ここまでは家具ばかりで建築家っぽさがない訳ですが、本人も当時「建築家の休日」と皮肉交じりに言っていたようです。しかし日本にも1軒だけ建築作品があり、熱海の旧日向別邸の地下室が映像で紹介されていました。(ここは見学可能ですが2022年4月まで休館中) 3部屋あり、洋間・社交室・和室となっています。日本的な配色になっていて、設計も幾何学的にスッキリした印象を受けるかな。一方で裸電球がいくつもぶら下がって並んでいるのが装飾的で、屋台みたいなw こういうのはキッチュじゃないの?と思ってしまいますが、整然と並ぶ様子は回廊のような印象でした。また、旧日向別邸の椅子やテーブルもあって雰囲気を盛り上げていました。ここはいずれ行ってみたい所です。
<第2章 アントニン&ノエミ・レーモンド>
続いてはアントニン・レーモンドと妻のノエミ・レーモンドについてのコーナーです。アントニン・レーモンドはチェコ出身のアメリカ人建築家で、前述の通り帝国ホテルの仕事で来日し井上房一郎と出会っています。当初はフランク・ロイド・ライトに強い影響を受けていましたが、西洋建築を日本に押し付けるのではなく、日本に合った建築を目指すようになり独自の道を歩んでいきました。前川國男や吉村順三といった日本の巨匠もアントニン・レーモンドの元で学んでいます。
一方、ノエミ・レーモンドも夫と共にフランク・ロイド・ライトの事務所で働き、帝国ホテルのインテリアにも携わっていたようです。ここには2人の作品が並んでいました。
参考記事:
アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 【日光編】
日本の家 1945年以降の建築と暮らし 感想前編(東京国立近代美術館)
ここでは まず軽井沢での聖ポール教会の設計図などが並んでいました。今でも現存する三角屋根の教会です。また、近くにはノエミによる「帝国ホテル 孔雀の間のための装飾習作」などもありました。先程の聖ポール教会の透視図などにも関わっている他、壁紙やファブリックのサンプルの見本帳などもあり、幅広い分野で夫と共に活躍していたことが伺えます。ノエミの手掛けた椅子には竹が使われていて、割と素朴さもありつつ洒脱なところも共存しているような 温かみを感じるデザインでした。
その先には笄町のレーモンド夫妻の自邸と井上房一郎邸についてのコーナーがありました。オリジナルは現存していませんが、レーモンド邸に惚れ込んで そっくりコピーした井上房一郎の邸宅が高崎に残っているようです。設計図を見るのでなく実寸を採寸したそうで、見た目は平屋で屋根が斜めになっている木造建築です。まさに和洋折衷と言った感じで、スッキリ簡潔な美しさがあります。やはりこれも日本の風土に合わせたモダニズム建築となっているようでした。
さらに少し先にはアントニン・レーモンドによる絵画作品もありました。ややキュビスム的な抽象絵画で、高崎の群馬音楽センター(これも設計した)のロビー壁画も手掛けています。他に陶芸作品もあり建築だけでなく多彩な芸術への関心と才能が伺えました。
この章の最後には軽井沢の新スタジオという夏用の事務所も紹介されていました。コンクリート製の巨大な円筒形の暖炉を中心に12角形の和室が広がっています。この暖炉が大黒柱の代わりになっているようで、まるで傘のような作りに見えました。
<第3章 剣持勇の「ジャパニーズモダン」>
続いては剣持勇についてのコーナーです。剣持勇はブルーノ・タウトの助手を務め、戦時中は技術官僚として働きました。そして敗戦後は一転して進駐軍の家具の政策に携わり、やがてプロダクトデザインを手掛けるようになっていきます。公人の立場では量産前提の国策に沿って機能と効率を研究しつつ、私人として民具をこよなく愛してインテリアデザインに用いたようです。また、1950年には来日したイサム・ノグチに製作の場を提供し、1952年にはイサム・ノグチの紹介で渡米しています。そうして公私で培った2つの価値をジャパニーズ・モダンというスタイルへと結びつけていたようです。
ここには椅子が4脚あり、いずれも異なる形態と素材となっています。「スタッキング・スツール202」という公団住宅向けの椅子では秋田の曲げ木の技術が用いられていて、足が滑らかなV字を描いています。一方で座る部分が青となっているのがモダンな印象も受けるかな。まさに伝統とモダンの融合です。
その先には「柏戸椅子T-7165」という木製のどっしりした椅子がありました。これは柏戸という力士の名前を取っているだけあって重厚感があり、ブロックを重ねたモザイクのような模様があります。見えない底の部分はくり抜いて軽量化しているとのことですが、かなり重そう… 割と硬そうに見えたけど座り心地が気になる所です。
そして代表作である「丸椅子C-316」がありました。これは藤を編んで作った丸っこい椅子で、中央に赤い座布団が置かれたようなデザインです。割とあちこちで観られるので、これは馴染み深いかな。ボリューム感があり、優美なフォルムが特徴です。藤という伝統素材を使っているのも親しみやすい。
ここでは映像で剣持勇のその他の仕事も紹介していました。ヤクルトの容器も手掛けていたのだとか。昔の駅のベンチとかも手掛けていたし、意外と身近なところに剣持勇のデザインがあるかもしれませんね。
<第4章 ジョージ・ナカシマと讃岐民具連>
続いては日系2世で「木匠」と呼ばれるジョージ・ナカシマについてのコーナーです。ジョージ・ナカシマはレーモンド夫妻のもとで軽井沢の聖ポール教会などの建設現場監督を務めていました。その後インドに渡り修行者と共に2年間の共同生活をして「美を楽しむ者」という称号を授かったそうです。やがてアメリカに帰国すると1942年に日系人収容所に抑留されますが、そこで日本人の大工から木工の基礎を習得し、手仕事の産業化を目指すモノづくりを始めます。1943年にレーモンド夫妻にホープ農場に招かれ(まだ戦時中で助けてもらった)、1957年にはスタジオを完成させました。さらに1964年には日本の讃岐民具連に招かれて高松で生産指導を行ったようです。
ここには木の椅子がずらりと並んでいました。木霊と交流する・木の声を聞くというのを信条としていたらしく、木目の美しさや素材感が生かされているのが見て取れます。少し先には「コノイド・スタジオ」の写真があり、これはジョージ・ナカシマのスタジオでコノイドとはシェル構造のことを指すようです。コノイドスタジオの椅子や内観写真もあり、特に「コノイドベンチ」という椅子はかなり幅広となっていて目を引きました。形もきちっとしている訳でなく、それが木材ならではの味わいとなっているように思いました。
他にミングレンミュージアム(讃岐民具連の美術館)のテーブルなどもあり、その仕事ぶりを伝えていました。
<第5章 イサム・ノグチの「萬來舎」とあかり>
最後はイサム・ノグチのコーナーです。イサム・ノグチについては下記の記事などを参照頂ければと思いますが、この章では慶應義塾大学の「萬來舎」と「あかり」シリーズを取り上げています。前述の通り剣持勇に製作場を提供して貰い、さらに翌年にはアントニン・レーモンドの依頼を受けるなどお互いに交流があった様子が紹介されています。
参考記事:イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─ (東京オペラシティアートギャラリー)
ここには萬來舎の模型と写真、そこに飾った石膏作品の写真などがありました。モダンでありながら内部は円柱が並んだ神殿のようで、何処か荘厳な雰囲気のある建物となっています。
最後に「あかり」のコーナーがあり、ここだけ撮影可能となっていました。

岐阜の提灯に着想を得て作られたもので、現在でも和モダンに欠かせないアイテムになっています。
と言うことで、お互いの交流の様子や代表作を俯瞰することができる展示となっていました。できれば1人1人の個展を観てみたいですが、こうして繋がりを観るとお互いの共通点や違いが分かって面白かったです。インテリアデザインや建築に興味がある方にオススメの展示です。
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


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前々回・前回とご紹介した展示を観た後に資生堂ギャラリーの近くにあるカフェ・ド・ランブルでお茶してきました。

【店名】
カフェ・ド・ランブル
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
http://www.cafedelambre.com/
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13002564/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
銀座駅/新橋駅
【近くの美術館】
資生堂ギャラリー
パナソニック汐留美術館
など
【この日にかかった1人の費用】
1000円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
いつも混んでいるイメージですが、この日もちょうど満席くらいとなっていました。
さて、このお店はコーヒー好きなら一度は名前を聞いたことがあると思われる有名店です。外国人のお客さんも多く訪れているようで来店した際にも3組くらいは海外の人たちでした。コーヒー界のサードウェーブと呼ばれるブルーボトルコーヒーの創業者がこのお店を含む日本の名店を参考にしたらしいので、世界的にも知られているようです。店内は混んでいたので内観は撮っていませんが、昔ながらの喫茶店という趣でカウンター7~8席、テーブル3~4席となっていて、昼間でも暗めでムードがあります。ただ、全面的に喫煙可能(2020年2月時点)なので、タバコ嫌いの私はせいぜい2~3年に1回くらいしか訪れないのですが、先日 目の前にあるパウリスタに寄った際に久々に行きたくなり寄ってみました。
参考記事:
カフェーパウリスタ銀座店 【銀座界隈のお店】
ブルーボトルコーヒー 六本木カフェ 【六本木界隈のお店】
看板に「珈琲だけの店」と硬派な看板がありますが、メニューもその通りで洋菓子はおろか紅茶などもありませんw 一方、コーヒーは多彩なストレートをはじめブレンドや水出しなどコーヒー好きには嬉しいラインナップです。濃さも選べたりして通い慣れた人は自分好みの合わせることもできるようです。
この日、私はグアテマラのダブル(1000円)を頼みました。濃さは普通です。

カウンターに座ったので、じっくりと抽出している所を観ることができました。円を描くようにお湯を少しずつ注ぎ丁寧に煎れてくれます。抽出してから温め直し、カップもお湯で温めておくなど温度に関しても余念がありません。そして肝心の味はコクと香りが深く、苦みは少なめでした。まろやかで後味がスッキリした感じで、非常に美味しかったです。強いて言えば近くでタバコを吸われたので、その匂いが混じってきたのが残念。(その為、⑤でなく④にしてます) せっかくの香りが台無しになるので苦手ですw 2020年4月の全面禁煙化の施行対象になるのか分かりませんが、なってくれればもっと通いますw
ということで、美味しいコーヒーを楽しむことが出来ましたが、やはり全面的にタバコOKなのが難点でした。その点を許容できるのであればコーヒー好きなら一度は体験しておきたいお店だと思います。

【店名】
カフェ・ド・ランブル
【ジャンル】
カフェ
【公式サイト】
http://www.cafedelambre.com/
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13002564/
※営業時間・休日・地図などは公式サイトでご確認下さい。
【最寄駅】
銀座駅/新橋駅
【近くの美術館】
資生堂ギャラリー
パナソニック汐留美術館
など
【この日にかかった1人の費用】
1000円程度
【味】
不味_1_2_3_④_5_美味
【接客・雰囲気】
不快_1_2_③_4_5_快適
【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【総合満足度】
地雷_1_2_3_④_5_名店
【感想】
いつも混んでいるイメージですが、この日もちょうど満席くらいとなっていました。
さて、このお店はコーヒー好きなら一度は名前を聞いたことがあると思われる有名店です。外国人のお客さんも多く訪れているようで来店した際にも3組くらいは海外の人たちでした。コーヒー界のサードウェーブと呼ばれるブルーボトルコーヒーの創業者がこのお店を含む日本の名店を参考にしたらしいので、世界的にも知られているようです。店内は混んでいたので内観は撮っていませんが、昔ながらの喫茶店という趣でカウンター7~8席、テーブル3~4席となっていて、昼間でも暗めでムードがあります。ただ、全面的に喫煙可能(2020年2月時点)なので、タバコ嫌いの私はせいぜい2~3年に1回くらいしか訪れないのですが、先日 目の前にあるパウリスタに寄った際に久々に行きたくなり寄ってみました。
参考記事:
カフェーパウリスタ銀座店 【銀座界隈のお店】
ブルーボトルコーヒー 六本木カフェ 【六本木界隈のお店】
看板に「珈琲だけの店」と硬派な看板がありますが、メニューもその通りで洋菓子はおろか紅茶などもありませんw 一方、コーヒーは多彩なストレートをはじめブレンドや水出しなどコーヒー好きには嬉しいラインナップです。濃さも選べたりして通い慣れた人は自分好みの合わせることもできるようです。
この日、私はグアテマラのダブル(1000円)を頼みました。濃さは普通です。

カウンターに座ったので、じっくりと抽出している所を観ることができました。円を描くようにお湯を少しずつ注ぎ丁寧に煎れてくれます。抽出してから温め直し、カップもお湯で温めておくなど温度に関しても余念がありません。そして肝心の味はコクと香りが深く、苦みは少なめでした。まろやかで後味がスッキリした感じで、非常に美味しかったです。強いて言えば近くでタバコを吸われたので、その匂いが混じってきたのが残念。(その為、⑤でなく④にしてます) せっかくの香りが台無しになるので苦手ですw 2020年4月の全面禁煙化の施行対象になるのか分かりませんが、なってくれればもっと通いますw
ということで、美味しいコーヒーを楽しむことが出来ましたが、やはり全面的にタバコOKなのが難点でした。その点を許容できるのであればコーヒー好きなら一度は体験しておきたいお店だと思います。
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今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観る前にギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で「河口洋一郎 生命のインテリジェンス THE INTELLIGENCE OF LIFE」という展示を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

【展覧名】
ギンザ・グラフィック・ギャラリー第378回企画展
河口洋一郎 生命のインテリジェンス
THE INTELLIGENCE OF LIFE
【公式サイト】
http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000752
【会場】ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
【最寄】銀座駅・新橋駅など
【会期】2020年01月30日(木)~03月19日(木)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
お客さんは結構いましたが、快適に鑑賞することができました。
さて、こちらの展示はコンピュータグラフィックアートの世界的先駆者である河口洋一郎 氏の個展で、生物の発生・成長・進化をプログラミングして5億年後の生命体をシミュレートしたCGが展示されています。なんと1970年代半ばのCG黎明期から演算機能で運動する造形作品を作ろうと考えていたようで、この展示では1980年代以降に作られた作品が並びます。
1階は手描きスケッチ作品、地下は動画が中心となっていましたので詳しくは写真を使ってご紹介してまいります。
こちらは入口付近にあった動画。

ぐにゃぐにゃと有機的な色彩が混ざり合う感じで、かなりサイケデリックな印象を受けます。確かに昔のCGっぽさもあるかも
こちらはずらっと並んだ手描きのスケッチ作品

心病める人の絵を思い起こす極彩色と異様なまでの細かさが特徴です。
こちらは蟹のような生物

観ていて不安になるw 進化している為か人もような顔をしていて知性はありそうですね。
こちらは複雑な管が絡み合う謎の生物

ちょっとクトゥルフ的な造形に思えるかも。どういう環境で進化するとこうなると予測できるんだろ…
こちらも異形の生物

カタツムリやナメクジを彷彿としましたが、これも詳細は不明。
これとかも生物なのかも怪しいw

毒々しくて結構キモいw こんな生物のいる時代には生まれたくないですね
こちらは今回の展示のポスターなどにもなっている宇宙蟹 Cracco

まさか蟹が宇宙で進化する姿とは思わなかったw ダライアスのボスにいそう。弾幕張ってくるようなw
こちらはダニでしょうか。

顔みたいなのがあって怖すぎます。
続いて下階。こちらは映像が主体です。

ぐにゃぐにゃポコポコと生まれてくる生命らしきものの群れがダイナミックかつグロテスクw
こちらは「グロースプリミティブ」という作品

これはタイトル通り原初的な雰囲気の生き物に見えるかな。現在でもこういう生き物いそうです。
この部屋は大型スクリーンで映像を流していました。

ずっと観ていると軽く酔うw 動きのある映像です。
こちらは「宇宙貝」

シュールな感じもしつつ生物っぽさを感じます。
こちらは「宇宙海綿」

海綿ならこうなってもちょっと納得w それにしても集合恐怖症の人が観たら大変なことになりそう
地下で今回の展示のスタンプラリーを配っていました。

DNPプラザでも河口洋一郎 氏の連動企画をやっているようです。8mもある宇宙鳳凰が観られるのだとか。
DNPプラザ公式サイト:http://plaza.dnp/kawaguchi.html
スタンプラリーでgggのすぐ裏手にあるMMM(メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド)にも寄ってみました。

gggの南側にあり、アート関連の品が並ぶお店です。よくgggと連動しています。
こちらでは河口洋一郎 氏のグッズを打っていました。

スタンプ台がなく、店員さんに訊いたら押してくれました。全部集めるとオリジナルグッズ(詳細不明)が先着順でもらえるようです。
ということで、かなりサイケデリックな雰囲気の作品の数々に驚かされました。ちょっと苦手な感じの造形だっただけに記憶には残りそうですw ここは無料で観られますので、興味がある方は足を運んでみるのもよろしいかと思います。

【展覧名】
ギンザ・グラフィック・ギャラリー第378回企画展
河口洋一郎 生命のインテリジェンス
THE INTELLIGENCE OF LIFE
【公式サイト】
http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000752
【会場】ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
【最寄】銀座駅・新橋駅など
【会期】2020年01月30日(木)~03月19日(木)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
0時間30分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
お客さんは結構いましたが、快適に鑑賞することができました。
さて、こちらの展示はコンピュータグラフィックアートの世界的先駆者である河口洋一郎 氏の個展で、生物の発生・成長・進化をプログラミングして5億年後の生命体をシミュレートしたCGが展示されています。なんと1970年代半ばのCG黎明期から演算機能で運動する造形作品を作ろうと考えていたようで、この展示では1980年代以降に作られた作品が並びます。
1階は手描きスケッチ作品、地下は動画が中心となっていましたので詳しくは写真を使ってご紹介してまいります。
こちらは入口付近にあった動画。

ぐにゃぐにゃと有機的な色彩が混ざり合う感じで、かなりサイケデリックな印象を受けます。確かに昔のCGっぽさもあるかも
こちらはずらっと並んだ手描きのスケッチ作品

心病める人の絵を思い起こす極彩色と異様なまでの細かさが特徴です。
こちらは蟹のような生物

観ていて不安になるw 進化している為か人もような顔をしていて知性はありそうですね。
こちらは複雑な管が絡み合う謎の生物

ちょっとクトゥルフ的な造形に思えるかも。どういう環境で進化するとこうなると予測できるんだろ…
こちらも異形の生物

カタツムリやナメクジを彷彿としましたが、これも詳細は不明。
これとかも生物なのかも怪しいw

毒々しくて結構キモいw こんな生物のいる時代には生まれたくないですね
こちらは今回の展示のポスターなどにもなっている宇宙蟹 Cracco

まさか蟹が宇宙で進化する姿とは思わなかったw ダライアスのボスにいそう。弾幕張ってくるようなw
こちらはダニでしょうか。

顔みたいなのがあって怖すぎます。
続いて下階。こちらは映像が主体です。

ぐにゃぐにゃポコポコと生まれてくる生命らしきものの群れがダイナミックかつグロテスクw
こちらは「グロースプリミティブ」という作品

これはタイトル通り原初的な雰囲気の生き物に見えるかな。現在でもこういう生き物いそうです。
この部屋は大型スクリーンで映像を流していました。

ずっと観ていると軽く酔うw 動きのある映像です。
こちらは「宇宙貝」

シュールな感じもしつつ生物っぽさを感じます。
こちらは「宇宙海綿」

海綿ならこうなってもちょっと納得w それにしても集合恐怖症の人が観たら大変なことになりそう
地下で今回の展示のスタンプラリーを配っていました。

DNPプラザでも河口洋一郎 氏の連動企画をやっているようです。8mもある宇宙鳳凰が観られるのだとか。
DNPプラザ公式サイト:http://plaza.dnp/kawaguchi.html
スタンプラリーでgggのすぐ裏手にあるMMM(メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド)にも寄ってみました。

gggの南側にあり、アート関連の品が並ぶお店です。よくgggと連動しています。
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