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映画「トップガン マーヴェリック」4DX SCREEN吹替版 (ややネタバレあり)

先週、グランドシネマサンシャイン池袋で「トップガン マーヴェリック」の2回目を観てきました。1回目は字幕版、2回目は4DX SCREEN吹替版だったので、池袋の4DX SCREENならではの体験についてと合わせてご紹介していこうと思います。なお、この記事にはネタバレが含まれますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください。

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【作品名】
 トップガン マーヴェリック

【公式サイト】
 https://topgunmovie.jp/

【時間】
 2時間10分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_3_4_⑤_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_4_⑤_名作

【感想】
通常版の時も満席で、池袋の4DX SCREEN版は予約が即満席の盛況ぶりでした。4DXは各地にありますが、4DX SCREENは現時点で日本に4箇所しかないようで、予約するのも中々大変です。

さて、この映画はトム・クルーズの出世作となった1986年の「トップガン」の36年振りの続編で、前作の登場人物や設定がそのまま引き継がれています。私は前作は観たはずだったけど、全然覚えてなかったので事前にamazon primeで予習していきました(現時点では追加料金無しで観られます。netflixにもあったと思います) まあ前作は当時話題になったものの今観ると戦闘機アクションはすごいけど、話としては恋愛ドラマが多すぎじゃないかな?って感じではあるものの、今作に繋がる重要な人間関係があったり、オマージュシーンも結構あるので観ておいて良かったと思います。ちょっとネタバレになりますが、今作で出てくる元彼女は前作の教官ではありませんw 名前だけ出てくる艦長の娘です。

まず今作のストーリーについてですが、これは良い意味でハリウッドの王道を行くような単純明快な内容で、戦闘機乗りの教官となった主人公マーヴェリックと生徒たちが1つのミッションの為にお互いに成長していく物語となっています。大まかな流れはミッション・インポッシブルとゲームのエースコンバットを合わせたような感じかなw 生徒の中に前作の相棒の息子がいるのが非常に重要なポイントで、お互いの心境なんかも混じって緊張感と苦悩がよく伝わってきます。また、戦友や元彼女との時を経た繋がりも見どころで、単なる添え物でなく深みを感じる内容となっていました。そこに懐かしの音楽やオマージュシーンなんかもあるので、往年のファンには一層に感慨深いものがあると思います。
そして何と言っても空中アクションシーンがこの映画の見どころとなっています。主演のトム・クルーズはスタントなしでのアクションが有名ですが、今回は何と共演者たちにも実際の戦闘機に乗らせて撮影していますw 急降下急上昇でGがかかっているシーンで顔が歪むのも実写ならではで、演技の上手さだけでは出せないリアリティです。相変わらず桁違いのスケールで無茶してますw

メイキング動画


さらに誰が生き残れるのか分からないミッションなのでギリギリのアクションに手に汗握り、全編に渡ってひりつくようなスリルがありました。 戦闘機ならではのスピード感や爽快感も混じって色々な感情がカタルシスを生んでいきます。トム・クルーズはコロナ禍でも劇場での公開にこだわったそうですが、確かにこれは映画館で観ないと本当の面白さが味わえないと思います。

と、1回目は前作がそれほどピンと来なかったので字幕の通常版で観たのですが、視聴後にこれはもっとちゃんとした環境で観なければ!と思い、日本で観られる最高峰の環境であるグランドシネマサンシャイン池袋の4DX SCREEN(吹替版のみ)で2回目を観ました。最初は吹き替えってどうよ?と思ったのですが、4DXは半ば遊園地のライドみたいなものなので、字幕読んでたら酔いそうw 声優さんたちも各キャラのイメージにバッチリだったので、吹き替えも観られてむしろお得でした。

で、4DX SCREENは普通の4DXと違い前面だけでなく両側面にも映像が映し出されます。大半はぼんやり映ってる程度ではあるんですが、F18に乗ってるシーンでは視界が一気に広くなり没入感が増しました。そして4DXこんな感じの効果があります。
 ・耳元辺りから音が聞こえる
 ・戦闘機の揺れに合わせてシートが揺れる
 ・衝撃などもドンっと来てリアル
 ・発進の時など風が吹いてその場にいるような感じ
 ・アフターバーナーの時に首元の辺りから熱気が出る
 ・水上シーン等では前方のシートから飛沫が飛んでくる
 ・機銃を発射すると足元でその振動を感じる
 ・ビーチでのアメフトシーンで筋肉の匂いがするという噂が…w(これはマスクしてるから分からなかった)
と、五感に訴えるような仕掛けを各シーンに合わせて体験できるので、別次元の面白さとなります。スクリーン入口にはロッカーもあるので荷物は基本的に預けて、ジェットコースターに乗るのと同じだと思ったほうが良いですw この映画ほど4DXが合う映画も中々無いのでは??

ということで、存分にこの映画を楽しんできました。2回観ると無茶だなと思ったシーンもちゃんと伏線があった事に気づけたりして良かったです。間違いなく今年No.1の映画で、ここ5年くらいの間でもこれほど面白かったのは数少ないと思うので、非常におすすめです。気になる方は、是非できる限り良い環境でお早めに(原作者の家族と著作権の継続の件で揉めてるんで、先行きも気になるし)

おまけ:
同じトム・クルーズ主演のミッション・インポッシブルの最新作の宣伝をやっていました。最終章と思われますがpart1とあったので何作かに分かれるのかも? これまた非常に楽しみです。


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映画「シン・ウルトラマン」(ややネタバレあり)

先週末に映画「シン・ウルトラマン」の2回目を観てきました。この記事にはネタバレが含まれますので、ネタバレなしで観たい方はご注意ください

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【作品名】
 シン・ウルトラマン

【公式サイト】
 https://shin-ultraman.jp/

【時間】
 1時間50分程度

【ストーリー】
 退屈_1_2_3_④_5_面白

【映像・役者】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【総合満足度】
 駄作_1_2_3_4_⑤_名作

【感想】
公開から1ヶ月程度経ったものの、まだ結構お客さんがいて人気ぶりが伺えました。

さて、この映画はエヴァンゲリオンシリーズで有名な庵野秀明 監督が手掛けた新しいウルトラマンで、シン・ゴジラと同じくタイトルに「シン」がつけられています。昨年に国立新美術館で庵野秀明展が行われ恐らくそこでも触れられていたと思いますが(私はコロナで外出自粛していました)、庵野秀明 氏は元々特撮が大好きで、「帰ってきたウルトラマン」のファンムービーを自主制作してしまったほどなので、ウルトラマンの映画を撮るというのは夢だったのではないかと思われます。その為、ウルトラマンへの愛があちこちに感じられる作りとなっていました。
ストーリーとしては初代ウルトラマンの話をベースにしていて、登場してくる敵キャラクターも同シリーズでお馴染みの宇宙人(この映画では外星人と呼んでます)や怪獣となっています。しかしウルトラマンのデザインは当時の成田亨(なりたとおる)氏の初期デザインを踏襲してカラータイマーが無かったり、登場キャラの中には特撮ファンの間でネタとなっていた誤植?を逆輸入したようなキャラもいて、古いデザイン/設定そのままという訳ではありません。ネロンガやガボラの着ぐるみの使いまわしを生物兵器のアタッチメントの違いとするなど、当時の事情を逆手に取ったような設定も見事で愛を感じます。音楽やSEもウルトラQを始めとして懐かしのものがあり、カメラワークも「実相寺アングル」に寄せているシーンが多いので、TVシリーズが好きな方ほど庵野秀明 氏の思い入れの深さが伝わってくるのではないかと思います。
一方で、庵野秀明 氏の独自の持ち味も十分に発揮されていて、エヴァで観たようなシーンもあったりしますw 官邸や政治を絡めた作りはシン・ゴジラを踏襲していたし、科学的な考証も出てきてこの辺は庵野秀明 氏のファンの期待にも応えていると思います。某キャラの吐く火球のエネルギー量について『空想科学読本』でネタにされていたのもしっかりと逆手に取って吸収されているのも楽しかったですw また、ネタバレになりますが怪獣散歩で司会をやってた某星人が今回の映画でも非常に人気となっていて、独特の語り口調がSNSなどでミームとなっていました。2回目に行ったときには名刺を特典として配布するほどの盛り上がりぶりで、キャラクターの面でも一癖加わって面白くなっていると思います。

と、私としては非常に楽しめたのですが、シン・ゴジラに比べると一般受けするかはややクエスチョンかな。全般的にストーリーが詰め込み気味で早いw シン・ゴジラと同じく口調も専門的な感じなので、置いて行かれる人がいても仕方ないと思います。本来は子供向けのコンテンツだけど、子供には難しいのではw なので、これは元々ウルトラマンが好きな人や大人向けのSFと捉えた方が良いと思います。特撮好き/アニメ好きのクラスターが特に楽しめる作品でした。
それにしても、巨大フジ隊員ネタは会田誠 氏も作品に反映してたりするし、この年代の人たちへの影響は絶大ですw

 参考記事:
  館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技 エヴァの原点は、ウルトラマンと巨神兵。 (東京都現代美術館)
  ウルトラマン・アート! 時代と創造-ウルトラマン&ウルトラセブン- (埼玉県立近代美術館)
  【番外編】青森県立美術館の常設(2012年8月)と「没後10年特集展示:成田亨」 (青森県立美術館)




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メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 (感想後編)【国立新美術館】

今日は前編に続き国立新美術館の「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」についてです。2章の途中から最後までご紹介して参ります。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

【公式サイト】
 https://met.exhn.jp/
 https://www.nact.jp/exhibition_special/2021/met/

【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅/六本木駅

【会期】2022年2月9日(水)~5月30日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
後半は最初のコーナーあたりに比べるとちょっと空いていたかな。大体どの展示でも後半になるほど空いてますw


<II.絶対主義と啓蒙主義の時代>
前編に引き続き、17~18世紀頃の作品のコーナーです。

23 ピーテル・クラース 「髑髏と羽根ペンのある静物」 ★こちらで観られます
こちらは典型的な「ヴァニタス」と言われる精密かつ意味深な静物画です。タイトル通り本に乗った髑髏と手前に羽ペンや倒れたグラス、奥にオイルランプなどが描かれています。それぞれのモチーフに意味があり、髑髏は死、本は努力や知識、オイルランプの煙は時の流れなどを示し、人生の儚さと共に信仰による救いなどを示します。手前のグラスには反射で窓が写りこんでいるなど質感表現も見事で、この時代のスーパーリアリティといったところでしょうか。一種の謎解きのような要素のある作品です。

33 レンブラント・ファン・レイン 「フローラ」 ★こちらで観られます
こちらは花の女神の名前がタイトルになっていて、花飾りのついた帽子の女性が横向きで手に果実のようなものを持っています。この構図はティツィアーノの「フローラ」などを参考にしたと考えられ、モデルはレンブラントの妻のサスキアと考えられていましたが、この作品が描かれる10年以上前に亡くなっています。まあ詳しいことは分かりませんが、顔は写実的であるものの周りは大胆な描写となっていて、それが違和感なく調和しているのが流石です。やや力なく儚げな雰囲気の女性像でした。

32 ヨハネス・フェルメール 「信仰の寓意」 ★こちらで観られます
こちらは大きな磔刑図の前で胸に手を当てて地球儀を足で踏んでいる青い衣の女性像です。左側には画面を塞ぐようにカーテンのようなものが描かれ大胆な画面構成に思えます。この女性は信仰を擬人化したもので、胸に手を当てる仕草は心の中の信仰、地球儀を踏むのはカトリック教会による世界の統治を示すそうです。また、十字架・杯・ミサ典書が乗ったテーブルは聖餐式を暗示、原罪を表す林檎、キリストの隠喩である教会の「隅の親石」に押しつぶされた蛇など宗教的なモチーフが散りばめられています。この頃、オランダはプロテスタントだったわけですが、家の中の教会でミサや集会を行うのは容認されていたようで、フェルメールも恐らく1653年の結婚を機にカトリックに改宗しています。フェルメールにしては珍しい題材であるものの、室内の人物という点ではフェルメールらしさを感じる複雑な構成に思えます。上からぶら下がってるガラス球が何だか気になりましたが、これも天を表すようで解説無しでは分からないものも多かったですw 精緻で陰影に富み、ややぼんやりした感じが特徴的でした。

38 ヤン・ステーン 「テラスの陽気な集い」
こちらは乱痴気騒ぎをしているテラスの様子を描いた作品。ヤン・ステーンはこうした愚かな人々の行いを描いて、その中に教訓を込める作風なわけですがこの作品でも遺憾なくそれが発揮されています。左の方には自画像と思われる姿もあり、自戒の意味もあるのかな?と思ったり。

18 ペーテル・パウル・ルーベンス 「聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者聖ヨハネ」
こちらは中央にキリスト、左に聖フランチェスコ、右上に聖ヨセフ(後世に加筆)、聖母マリア、聖アンナ、洗礼者ヨハネといった聖家族が描かれた作品です。斜めの構図となっていて目の動きが中央の聖家族に向かうようになっていて、柔らかくも強い陰影と滑らかな肌がルーベンスらしい気品を感じさせました。ルーベンスは本当に遠くから観ても分かるくらい鮮やかな色彩ですね。

この辺にはベラスケスも2点ほどありました。有名どころが惜しげなく出てきますw

42 フランソワ・ブーシェ 「ヴィーナスの化粧」 ★こちらで観られます
こちらはロココ時代最盛期の画家による作品で、裸体のヴィーナスが身をくねらせ耳に手を当てて化粧をしているようです。透き通るような肌で、息子のキューピッドやバラ、腕に白い鳩を抱くなどヴィーナスの象徴も描かれています。ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人の身繕いの部屋に置かれたそうで、明るく軽やかな色彩で華やかな雰囲気でした。ちょっと甘ったるいw

45 マリー・ドニーズ・ヴィレール 「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)」 ★こちらで観られます
こちらは女性画家による作品で、一時は新古典主義の巨匠のダヴィッドの作品と思われていたほどの腕前です。窓辺でソファに座ってこちらを観ている女性が描かれ、スケッチブックに絵を描いてるのかな? 強い光の輪郭が神々しいほどで、背景には割れたガラス越しに語らう男女や見えて何かを示唆しているようにも思えます。真剣な表情と陰影が非常に印象に残る作品でした。


<III.革命と人々のための芸術>
最後の3章は近代絵画のコーナーです。19世紀から20世紀初頭くらいの作品が並んでいました。

48 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む」 ★こちらで観られます
こちらはヴェネツィアの川と舟やゴンドラを描いた作品で、ターナーは44歳の時に初めてイタリアを旅して以来この国に魅せられたそうで、特にヴェネツィアを愛しました。実景とは微妙に異なり風景の魅力を強調しているとのことで、半ば理想郷のような光景に思えます。水彩画のような淡く透明感のある色彩で、やや湿気を帯びたような雰囲気すらありました。

50 ギュスターヴ・クールベ 「水浴する若い女性」
こちらは水浴する女性を描いた作品ですが、写実主義のクールベは理想化することなく現実的な女性を描いています。腰回りの脂肪やセルライトのボコボコまで表現してると解説されていましたが、確かにこれまでの時代の裸婦には無いようなお肉がw 特にお尻に肉が付いてて、美しさというよりもありのまま描くことを貫いているのが伝わってくるようでした。近くにあったアカデミズム画家ジャン=レオン・ジェロームの「ピュグマリオンとガラテア」(★こちらで観られます)と比べるとえらい違いですw

この辺にはコローなどもありました。

53 オノレ・ドーミエ 「三等客車」
こちらはお客がぎっしり詰まった三等客車を描いた作品です。粗いタッチで茶色がかった重苦しい色彩で、押し黙っているような雰囲気が漂います。一方で乳をあげる母など庶民の暮らしをリアルに伝えていて、この時代の空気感が伝わってきました。

56 オーギュスト・ルノワール 「海辺にて」
こちらはフランスのノルマンディー地方の海岸を描いた作品で、かなりぼんやりしているものの、その中にいる女性はくっきり描かれています。印象派と古典的な技法を組み合わせて描いていて、顔は滑らかで丁寧に仕上げ、服などは印象派っぽく描くといった表現となっていました。ルノワールの女性美も流石です。

この辺にはセザンヌの風景画もありました。セザンヌの理論がキュビスムに繋がっていったのが分かるような構図で面白い。

60 ポール・ゴーギャン 「タヒチの風景」
こちらはゴーギャンがタヒチに最初に滞在したときの風景画で、赤や黄色など目に鮮やかな色彩で描かれています。しかし割りと写実的に描いていて、色もまだドギツいほどでもなく控えめで素朴な印象を受けました。

この隣にはアルル時代のゴッホの作品もありました。

65 クロード・モネ 「睡蓮」 ★こちらで観られます
こちらはモネを代表する連作の1枚で、大画面に紫や青の葉っぱが浮かび、赤い花を咲かれています。反射で映り込んだ木などは一体化していて、遠近感がないのですがこれはモネが白内障を患っていたのが原因のようです。しかしそれが却って大胆かつ抽象的な雰囲気となっていて、新しい表現に繋がっていったのを感じます。これだけ大型の睡蓮は久々で驚きました。


ということで、今回の展示は有名な画家ばかりな上に その画家の中でも良い作品が観られてかなり満足できました。長く記憶に残りそうな展示です。



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メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 (感想前編)【国立新美術館】

前回ご紹介した展示を観たあと、同じ国立新美術館の1階で「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」を観てきました。この展示は既に終了していますが今後の参考にもなるので記事にしておこうと思います。

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【展覧名】
 メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

【公式サイト】
 https://met.exhn.jp/
 https://www.nact.jp/exhibition_special/2021/met/

【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅/六本木駅

【会期】2022年2月9日(水)~5月30日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
時間指定の意味があるのか?というくらい混んでいて、あちこちで人だかりが出来ていました。

さて、この展示はアメリカのニューヨークにあるメトロポリタン美術館のコレクションを紹介するもので、ルネサンス前後から近代にかけて西洋絵画の歴史を俯瞰するような超豪華なラインナップとなっていました。名だたる巨匠の作品ばかりで日本初公開の作品も多々あり、絵画ファンには見逃せない内容だったと思います。3章構成となっていましたので、各章ごとに気に入った作品と共にその様子を振り返って参ります。


<I.信仰とルネサンス>
まずはルネサンスの頃からのコーナーです。ここは時代的にも神話や宗教画が中心となっていました。

8 フラ・フィリッポ・リッピ 「玉座の聖母子と二人の天使」
青と赤の衣を着たマリアが赤ん坊のキリストを抱いて座り、その背後に天使が向き合うように立っている姿が描かれた作品です。左の天使は巻物を持っていて、旧約聖書の一節が書かれているようです。また、キリストは真正面を向いて本を開いていて やや硬い表情に見えるかな。右足をこちらに向けることで奥行きを出していて、この時代の作品にしては立体感があるように思いました。

1 フラ・アンジェリコ(本名 グイド・ディ・ピエトロ) 「キリストの磔刑」 ★こちらで観られます
こちらは上部がドーム型になった作品で、キリストが磔刑にされて周りに多くの人が集まり、手前ではマリアが倒れ込んでいる姿が描かれています。打ちひしがれる悲壮な雰囲気や、槍で点かれてキリストの脇腹から血が滴る様子など細やかかつドラマチックになっていて、感情表現が豊かなのがルネサンスの特徴と言えます。作者は「天使のような修道士」という意味の通り名で、遠近法を用いて3次元空間を表現した最初の画家の1人とされています。まるでその場にいるような光景を表したのは画期的だったのでしょうね。

15 エル・グレコ(本名 ドメニコス・テオトコプーロス) 「羊飼いの礼拝」 ★こちらで観られます
こちらは中央に生まれたばかりのキリストが描かれ、その周りには礼拝しにきた羊飼いや天使などが描かれています。キリストから強い光が放たれているような陰影となっていて、神秘的な雰囲気となっています。くすんだ色合いや縦に引き伸ばされたような描写にエル・グレコっぽさを感じるかな。身振り手振りも大きくドラマチックで動きも感じられました。

17 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 「ヴィーナスとアドニス」 ★こちらで観られます
こちらは狩りでイノシシに突き殺される直前のアドニスと、狩りに行くのを抱きしめて止めようとしている恋人のヴィーナスが描かれています。仰け反るような裸体のヴィーナスやアドニスの踏み込む姿勢などは動きがあってルネサンスからバロック的な表現になっているようにも感じます。陰影も巧みで2人に光が当たって瑞々しい肉体美となっていました。

5 ラファエロ・サンツィオ(サンティ) 「ゲッセマネの祈り」 ★こちらで観られます
こちらはラファエロの20歳頃の作品で、キリストが最後の晩餐の後にオリーブ山で祈りを捧げている様子が描かれています。周りには寝てしまった弟子たちがいて、右上には天使がキリストに向かっていくような感じで浮遊しています。リアリティのある細やかな描写で聖書の場面を忠実に表し、画面は鮮やかでありながら落ち着いた色彩となっていました。若くして気品すら感じられる画風です。

14 ルカス・クラーナハ(父) 「パリスの審判」 ★こちらで観られます
ユノ(ヘラ)、ミネルヴァ(アテナ)、ヴィーナス(アフロディーテ)の三女神の誰が最も美しいか?をパリスが選ぶという頻出の画題の作品です。ここではパリスは牧童ではなく甲冑を着たトロイアの王子としての姿で描かれ、裸体の三女神を見上げるような感じとなっています。女神たちはほっそりした体に小ぶりな乳房というクラーナハ特有の姿となっていて、スラッとした印象となっています。それぞれ横向き、正面向き、後ろ姿となっていて、やや官能的な雰囲気すらあるかな。中央には水晶玉を持つメリクリウス(伝令の神)、左上にはキューピッドの姿もあって物語の流れも詰め込まれているように思いました。


<II.絶対主義と啓蒙主義の時代>
続いては王家による絶対主義の17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての時代のコーナーです。宗教改革/対抗宗教改革の影響もあって主題の幅も広がっています。

25 アンニーバレ・カラッチ 「猫をからかう二人の子ども」
こちらは兄妹らしき子供が右下の猫にザリガニのようなものを突きつけてニヤニヤしている様子が描かれています。猫は体を丸めて警戒しているように見えて可哀そう。。。子供の無邪気な残酷さのようなものを感じました。

28 シモン・ヴーエ 「ギターを弾く女性」
こちらはタイトルの通りギターを弾いている女性を描いたもので、かなり写実的に描かれています。陰影が濃くドラマチックな光となっていて赤みがかった肌なども含めてカラヴァッジョからの影響ではないか?と思わせる作風でした。この隣にカラヴァッジョがあったのでそう思ったのかもw

26 カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ) 「音楽家たち」 ★こちらで観られます
こちらは駆け出しだった26歳のカラヴァッジョが、最初のパトロンとなったデル・モンテ枢機卿のために描いたもので、そのパトロンの元に集まった音楽家の青年たちが描かれています。後ろ姿で楽譜?を観ている人、リュートらしき楽器を持つ人などがいて、奥で角笛を持ってこちらを観ている人はカラヴァッジョの自画像とも言われているようです。濃い陰影で描かれた半裸の青年たちの肌が透き通るような白さで、気怠い表情も妙に色っぽいのでカラヴァッジョが同性愛者ではないかと言われるのも分かる気がします。解説によると左端にキューピッドもいるので「音楽」と「愛」の寓意が込められているのではとのことでした。これだけの傑作を目にできるとは驚きです。

27 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 「女占い師」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、若者が占い師の老婆に占ってもらっている様子を描いたもので、周りには3人の女性の姿もあります。占いで気を引いている間に周りの女性達が宝飾品をスリ盗ってるわけですが、この時代の作品では占い師が出てくると大体こんな感じの胡散臭い役割ですw 若者も若干奇抜な衣装をしているのは芝居にヒントを得たのではないか?とのことで鋭い目線で警戒している感じがします。(老婆は囮なわけですがw) この画家は「昼の絵」と「夜の絵」に大分され、私は夜の絵の光の超絶技巧のほうが好きですが この絵も昼の絵は代表作と言えるほどの傑作となっています。非常に色鮮やかなのはカラヴァッジョの影響が指摘されているようですが、どうやってそれを知ったのかは謎なのだとか。これだけの実力がありながら死後急速に忘れられて、20世紀になって再評価されたというのも数奇な画家ですね。


ということで2章の途中ですが長くなってきたので残りは後編とします。前半だけでも驚いていたけどこの後も良い作品ばかりでしたので、次回はその様子をお伝えしようと思います。

 → 後編はこちら



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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

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