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近代の京焼と京都ゆかりの絵画―受け継がれるみやこの美― 【泉屋博古館 分館】

10日ほど前の日曜日に、六本木一丁目の泉屋博古館 分館で「近代の京焼と京都ゆかりの絵画―受け継がれるみやこの美―」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれているようで、私が観たのは前期でした。

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【展覧名】
 近代の京焼と京都ゆかりの絵画―受け継がれるみやこの美―

【公式サイト】
 http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

【会場】泉屋博古館 分館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木一丁目/神谷町


【会期】
 前期:2012年4月14日(土)~5月13日(日)
 後期:2012年5月15日(火)~6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。さて、今回の展示は住友コレクションの中から京都の近世~近代の焼き物と絵を集めた内容となっています。京都の雅な文化を感じさせる作品が並んでいましたので、詳しくは気に入った作品を通じてご紹介しようと思います。
 参考記事:
  三都画家くらべ 京、大坂をみて江戸を知る 前期 感想前編(府中市美術館)
  三都画家くらべ 京、大坂をみて江戸を知る 前期 感想後編(府中市美術館)


<第1章 典雅の世界>
まずは昔からの伝統を感じさせる作品が並ぶコーナーです。いくつか細かいコーナーに分かれていました。

<みやこのにぎわい>
「二条城行幸図屏風」 ★こちらで観られます
六曲一双の金屏風で、上洛中の3代将軍 徳川家光と秀忠が後水尾天皇を二条城に招いて行幸された際の京の様子を描いた作品です。上下2段に描かれ、およそ3,200人とも言われるほど沢山の烏帽子をかぶった人々が行列している様子が描かれています。周りでは見物人のような人や、警護している人々などもいてお祭り騒ぎのようにも見えます。やまと絵風で、金地に精密かつ鮮やかに描かれ、人々の表情も豊かで生き生きとしていました。

<仁清作品にみるみやこの美>
仁清 「色絵龍田川水指」
側面に柳の木と籠目のような模様が入った色絵の水指です。上面には紅葉があり、和歌の意匠を取り組んでいるようです。雅やかですが、意外と素朴に感じたかもw
ちなみに仁清は仁和寺の門前に窯を築き、御室焼を創し仁和寺にあやかって仁清を名乗ったようです。

この辺には鶴の形の香合もありました。

<近代みやこの画家-木島桜谷->
木島桜谷 「柳桜図」 ★こちらで観られます
六曲一双の大きな屏風で、右隻にはリズミカルな曲線の柳、左隻には満開の桜が描かれています。薄めの金地を背景に、鮮やかな緑と桜色が対になるように配置されているように思いました。花は写実的で厚みがあるのですが、装飾的な雰囲気もある不思議な感じでした。
木島は京出身の画家で、円山四条派を中心とする伝統的な写生派の画風に西洋の写実を融合させたそうです。琳派を彷彿とさせる日本絵画の装飾性と写実性を持っているとのことでした。

<近代の京焼に継承されたみやこの美>
初代宮川香山 「乾山写百合形向付」
百合の花の形をした向付です。中には雄しべなども描かれていて見た目が百合の花っぽく、意匠が面白い作品でした。
この辺には乾山や仁清に倣った作品などが並んでいました。

初代宮川香山 「依仁清意孔雀形香炉」 ★こちらで観られます
こちらは部屋の中央付近に置かれていました。孔雀が羽を広げている様子の香炉で、その羽は背中の上で貝のように丸くなって乗っかっています。精密な彩色が施され豪華な印象があるのですが、丸みを帯びた形が可愛らしくも感じられました。

五代清水六兵衛 「色絵鴛鴦置物」 ★こちらで観られます
色絵がつけられ2羽のおしどりが表された置物です。メス?の上は目を閉じてうずくまり、可愛らしい姿をしています。2羽寄り添う姿はまさにおしどり夫婦で微笑ましい雰囲気があります。背中にも細かい彩色があるのも見所でした。

十五代永楽善五郎(正全) 「仁清写白鶴香合」
先程ちらっと挙げた仁清の鶴の形の香合とそっくりの作品です。こちらの方は写されたもののようで、ツヤがある分新しく観えました。

<近代みやこの陶芸家1-伊東陶山と住友家->
初代伊東陶山 「色絵金彩桐鳳凰形香炉」
木にとまる鳳凰の形の香炉です。細かい彩色が施されていて羽は青、黄色、緑など色とりどりとなっていました。形も優美です。
この人は京都に生まれ、画家を志した後に陶芸家になったそうです。釉薬も研究し家伝とされた技を公開するなど功績は大きく帝室技芸員(今で言う人間国宝)にもなったようです。

この辺には瓢箪や小槌の形の作品もありました。

<京焼界の挑戦-欧米の技術導入->
四代高橋道八 「色絵牡丹文丸形釣香炉」
非常に色鮮やかで水彩画のような色絵のついた香炉です。周りの緑の中に牡丹が描かれピンク色が引き立つようでした。
これは欧米の科学的な釉薬を使ったものだそうで、この辺にはこうした海外の技法を取り入れた鮮やかな釉薬の作品が並んでいました。中には砂地を思わせる変わった質感の作品もありました。

<10周年特別出品 近代陶芸界の傑作>
板谷波山 「ほ光彩磁珍果文花瓶」 ★こちらで観られます
これは以前ご紹介した気もしますが改めて。桃などが描かれた大きな花瓶で、全体的に白く薄い膜が貼ったようなつや消しの釉薬がかかっています。淡く控えめなのが上品な感じに思いました。
この近くには図案や花瓶を収めた箱の蓋も展示されていました。


<第2章 清風の世界 -住友コレクションにみる文人趣味と煎茶->
続いては茶や文人趣味に関するコーナーです。

<文人へのあこがれ -近代のみやこにおける清風の心->
尾形乾山 「椿図」
水墨の掛け軸で、花瓶に入った単純化された椿が描かれています。葉っぱにはたらし込みの技法が使われ、バランスよい形をしていました。清純な雰囲気があり、かなり気に入りました。

沢田宗山 「葡萄に栗鼠模様花瓶」
長い壺に葡萄の木の上のリスが描かれています。さらっとした素朴な筆跡ですが、リスの特徴がよく捉えられていると思います。味わい深い作品でした。

<自然の恵みへの賛歌 -「蔬菜」京の食文化と中国->
呉春 「蔬菜図巻」 ★こちらで観られます
レンコン、ごぼう、わさび、たけのこ、瓜、かぼちゃ、なす、せり など、身近な野菜からあまり見ないような野菜まで多種多様な野菜が写実的に描かれた作品です。薄い色合いで、どこか優美な雰囲気があり、のびのびとしてリズミカルに描かれていました。

<近代の京焼にみる中国古器学習>
初代三浦竹泉 「露翠じこ式花瓶」
上部がラッパのように広くなった形の花瓶です。ひすいのような美しい緑をしていて、黒の斑点がついています。これもアクセントとなって魅力的な色合いとなっていました。

この隣にあった真っ白な器も上品でよかったです。

<近代みやこの製陶家2 -京都出身・横浜で活躍 宮川香山の世界->
初代宮川香山 「藤花絵菊花形共蓋壺」
西洋風の明るい色で、側面に藤が描かれた壺です。かぼちゃの側面のような凹凸のある(菊型の)壺で、その形も含めて面白い作品でした。
この人は京都生まれで横浜に移住し、輸入磁器で名を上げたようです、初期は栗田焼や薩摩風の装飾性の強い作品を作り、後に伝統的な釉薬を研究し、京焼の乾山風の作品なども残したそうです。その功績が認められ、陶芸で2人目の帝室技芸員にもなったようです。

<近代みやこの製陶家3 -三代清風与平の世界->
三代清風与平 「天せい碌瓜に虫彫文花瓶」
澄んだ水色をした花瓶です。側面に花とトンボのような文様があり、形はシンプルですがおだやかな青が上品な雰囲気を出していました。
この人は陶芸で初めての帝室技芸員だそうで、中国宋の青磁や白磁の写しに優れた中国風の作品を残したようです。

<近代の文人にみる理想郷 -村田香谷の世界->
村田香谷 「青緑西園雅集図」
これは大きめの掛け軸で、中国の山間の川辺で沢山の人が集まっている様子が描かれています。机に向かっている2人を中心にしていて、彼らは文人たちのようです。文人の理想の隠遁生活が伝わってくるような、高潔でのんびりした光景でした。


ということで、思った以上に楽しむことが出来ました。静かにささっと観ることが出来ますので、気になる方は是非どうぞ。

 参照記事:★この記事を参照している記事


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