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蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち (感想前編)【千葉市美術館】

ずっと更新できずに3週間以上前のこととなってしまいましたが、千葉市美術館に行って「蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち」を観てきました。この展示は何期かあり、2012/5/8あたりで大きく変わる内容が変わるようです。私が行った時は4/10頃の内容となっていました。メモも多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち

【公式サイト】
 http://www.ccma-net.jp/exhibition_01.html

【会場】千葉市美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など

【会期】2012年4月10日(火)~5月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
開催すぐの頃に行った為か、意外と空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回の展示は江戸時代の個性派絵師 曾我蕭白を主題とした内容となっています。蕭白が活躍した江戸中期は西洋や中国の文化を取り入れる動きが美術界にも波及し、特に京都では個性的な絵師が多く活躍したそうです。
 参考記事:
  三都画家くらべ 京、大坂をみて江戸を知る 前期 感想前編(府中市美術館)
  三都画家くらべ 京、大坂をみて江戸を知る 前期 感想後編(府中市美術館)
  
蕭白はそうした京都の商家に生まれ、父を早くに亡くして画業で身を立て、室町時代の絵師 曾我蛇足(そがじゃそく)に私淑(教えは受けていないが師と仰ぎ模倣すること)し、曾我を名乗りました。この頃盛んに出版されるようになった版木の画譜などを活用して古画に学んだようです。蕭白は特に伊勢地方で製作した作品が多く伝わっているようで、この展示では三重県立美術館所蔵の代表作や修復した襖絵、新出作品なども並んでいました。だいたい時系列の構成だったので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。


<第1章 蕭白前史>
蕭白は曾我蛇足の系譜に連なる蛇足軒十世と名乗り、桃山時代の曾我派の画風を取り入れたようです。また、雪舟の流れを組む雲谷派も学び、復古的な要素を個性的に変容させたそうです。ここでは蕭白以前の復古的な傾向の絵師の作品が並んでいました。

12 高田敬輔 「楼閣山水図」
この絵師は蕭白の師匠と推定されるそうで、これは高い山間にある楼閣を描いた作品です。門のあたりで迎えに来ているのか、人の姿もあります。解説によると垂直性の強い画面構成は室町時代の雪舟や周文、京狩野の山雪との関連が考えられるそうです。そのため蕭白も京狩野の画風を取り込んだのではないかとのことでした。 のんびりとした昔ながらの画風といった感じに思いました。

15 月岡雪鼎 「唐美人図」
この絵師は高田敬輔の弟子で蕭白とは兄弟弟子かもしれません。薄い蚊帳の中の廟のような所で横になる赤い衣の女性と、大きな団扇を持って側で仕える2人の女官らしき人物が描かれています。これは傾国の美女 西施(せいし)を描いたものらしく、身体を赤い線で描き、肌は白く塗り込め薄赤く陰影つけるのは蕭白と同じ手法だそうです。蕭白と似た画風と紹介されていましたが、色が濃い目に思いました。色っぽさを感じる作品でした。

22 大西酔月 「林和靖図」
この絵師は蕭白に似た画風だそうで、その師匠の望月玉泉の人物描写は蕭白に似ているそうです。(さらにその師の山口雪渓は蕭白以前に復古的な画風だった絵師です) 絵には中国風の男性がお伴の子供を連れている様子が描かれ、男性は上を見上げ、そこには丸い月と舞い飛ぶ鶴、梅の花が描かれています。この人物は林和靖(りんなせい。北宋時代の文人)で、3つのモチーフは林和靖が愛したものだと思われます。周りは水墨画のようですが、人物は色がくっきりしていて、水墨の中に着色した人物を置くのは蕭白の人物画を思わせるそうです。鶴が仰け反るような格好をしていたり、描かれているものも面白かったです。

26 大西酔月 「花鳥人物図押絵貼屏風」
6曲1双の屏風で、1扇ごとに寒山拾得や花鳥、布袋などが描かれています。画題や画風が何となく蕭白を思わせるように思いますが、こちらはしみじみとした静かな味わいがあり風流でした。これはこれで好きかも。


<第2章 第1部 曾我蕭白 -蕭白出現->
蕭白の最も早い作例は三重県津市の寺院に描かれた障壁画だそうですが、現存していないようです。29~30歳頃に伊勢地方で活動し、その後 播州にも遊歴したようです。このコーナーでは伊勢と播州での活動を含む、1758年~1763年に描かれたと思われる初期の作品が並んでいました。

31 曾我蕭白 「林和靖図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の大きな水墨の屏風で、右隻には梅の木に囲まれ頭巾をかぶった老人(林和靖)と2人の子供が描かれています。木の表現に勢いがあって、渦巻くようで抽象的にすら感じるほどです。一方、顔は細かく描かれ林和靖は嫌そうな顔をしているようにも観えました。解説によると隠棲に嫌気が差した虚ろな顔とのことです。左隻は月が浮かぶ水辺の梅の下で、2羽の鶴が身を低くしています。鶴の顔は非常に細かいのに背景は大胆で、早くも蕭白らしさを感じました。
近くには「柳下鬼女図屏風」という作品もあり、既に狂気すら感じる作風でした。この辺は屏風が多いかな。

35 曾我蕭白 「鷲図屏風」
これは6曲の屏風で、大きな樹の下で巨大な鷲が猿を襲っている様子を描いています。猿は鷲の足につかまって必死に抵抗しているようで、左にはもう一匹の黒い鷲がそれを見ています。松の葉のような毛を持った鷲は非常に迫力があり、背景の勢いを感じる筆致も劇的に感じました。鬼気迫る緊迫感のある作品です。

34 曾我蕭白 「塞翁飼馬・簫史吹簫図屏風」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の水墨の屏風で、右隻は「人間万事塞翁が馬」で知られる中国故事の様子、左隻は簫(しょう)という楽器の名手が演奏していたら鳳凰がやってきて、それに乗って昇天したという話を題材にしています。
右隻には扇を持って笑う老人、馬に餌をあげる人、餌を食べようとしている馬などが描かれ、馬はちょっと上目遣いかな。背景は凄い勢いで濃厚な感じなのに対して、人物と馬の顔の辺りは繊細で、薄いぼんやりしたぼかしに細い線で毛を表現していました。
左隻は簫を吹いている人物と脇で芭蕉扇みたいな扇を持っている人物、その目線の先に木にとまる眼光鋭い鳳凰の姿が描かれています。こちらも濃淡や密度の緩急があり、豪快かつ緻密な感じでした。なお、この絵の中には松竹梅の画題も隠されているようで、右隻に松と竹、左隻に梅も描かれていました。

42 曾我蕭白 「恵比寿図」
これは掛け軸で、ほとんど白黒で恵比寿が描かれ、恵比寿が持つ魚だけ色が付けられています。恵比寿は狩衣に烏帽子の姿で右手には日の出の扇を持ち、ニヤッと笑っているように観えるかな。表情は結構細かく濃淡で描かれていますが、服の輪郭は濃く太い黒で大胆に描かれていました。鯛の目の辺りも黒が強く、この黒のお陰で全体的に生き生きとしたリズムがあるように思いました。

45 曾我蕭白 「獅子虎図屏風」
これは2曲1双の水墨の屏風で、右隻に獅子と牡丹、左隻に虎と風に揺れる竹が描かれています。獅子は身体も顔も太く真っ黒な輪郭で大胆に描かれていますが、牡丹の周りを飛ぶ薄っすらとした蝶を見て、驚き仰け反っているいるようなポーズがちょっと可笑しいです。一方、虎は細かく描かれていますが縮こまっていて、迷惑そうな顔で右のほうを見ています。勇猛なはずの虎もこんな風に描かれているのは面白かったです。左右で見比べると筆遣いの違いも見られるのも楽しめました。
この隣にあった寒山拾得図も異様な密度で狂気を感じました。


<第2章 第2部 曾我蕭白 -蕭白高揚->
蕭白は35歳頃になると、2度目の伊勢遊歴を行い活発な制作活動を繰り広げたようです。斎宮の旧家である名門の永島家に描かれた襖絵などの代表作がこの地に伝わっているようで、この時期は創作意欲が最も高まりを見せていたようです。ここにはそうした水墨・着色共に充実している1764年~1766年頃の作品が並んでいました。

47 曾我蕭白 「月夜山水図襖」
これは4面から成る襖絵で、絶壁の崖やその下に流れる川、周りの家などを描いています。ちょっと分かりづらいですが月光に照らされているらしく、山の合間にちょこっと月が見えています。繊細な濃淡が付けられていて、奥はかすみ、手前は濃い感じでした。どことなく雪舟を思い浮かべるような画風にも思えたかな。

51 曾我蕭白 「鷹図」
木にとまる鷹と、その下の小さな2羽の鳥を描いた作品です。周りには桔梗や白菊など色とりどりの秋草が着色され、非常に鮮やかに見えます。堂々として威厳のある鷹も存在感があり見栄えがしました。

49 曾我蕭白 「竹に鶏図」
竹の下の立派な尾を持つ鶏が描かれた作品です。鶏冠だけ赤く、胴体や足などは緻密で鳳凰のようにすら思えるほどです。尾の先が黒く勢いのある筆致で力強さを感じます。解説によると、周りに薄く墨を塗ることによって筆の穂先で生じた塗り残しで量感を持っているように見せているそうです。細い筆線で毛羽立っているような胸の表現は比較的早い時期の作品にも見られるとのことでした。

この辺には関羽を描いた掛け軸などもありました。

55 曾我蕭白 「雪山童子図」
大きな着色の掛け軸で、釈迦の前世の物語を描いている作品です。木の上にいるバラモンと樹の下で座っている青鬼(羅刹。実はバラモンを試すために姿を変えた帝釈天)が描かれ、バラモンは偈(げ。仏を称える韻を踏む言葉)を聞いたことを引き換えに自らの身体を与えようとしているようです。木の上のバラモンは赤い布を履いていて、羅刹は青いので、その色の対比が強く鮮やかにみえました。対角線上に配置された2人の構図も面白く、羅刹には迫力がありました。


この辺で上階の展示は終わりでしたので、今日はここまでにしようと思います。既に後期の内容となっていますが、蕭白の魅力をじっくり楽しむ機会となっていますので、お勧めの展示です。次回は下階の展示をご紹介しようと思います。



   →後編はこちら



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